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1964-05-28 第46回国会 衆議院 国際労働条約第八十七号等特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十八日(木曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 愛知 揆一君 理事 安藤  覺君    理事 田中 正巳君 理事 森山 欽司君    理事 河野  密君 理事 多賀谷真稔君    理事 野原  覺君       秋田 大助君    稻葉  修君       小笠 公韶君    亀山 孝一君       佐々木秀世君    正示啓次郎君       渡海元三郎君    永田 亮一君       長谷川 峻君    濱田 幸雄君       山本 勝市君    有馬 輝武君       大出  俊君    小林  進君       田口 誠治君    堂森 芳夫君       安井 吉典君    山田 耻目君       栗山 礼行君    吉川 兼光君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局参事         官         (第一部長)  吉國 一郎君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (管理局長)  小林  巖君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         外務政務次官  毛利 松平君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎭男君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         労働事務官         (労政局労働法 青木勇之助君         規課長)     ————————————— 五月二十八日  委員小笠公韶君田澤吉郎君及び小林進辞任  につき、その補欠として田中龍夫君、山本勝市  君及び堂森芳夫君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員堂森芳夫辞任につき、その補欠として小  林進君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第  八十七号)の締結について承認を求めるの件(  条約第二号)  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三号)  地方公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第四号)      ————◇—————
  2. 愛知揆一

    愛知委員長代理 これより会議を開きます。  委員長は所用のためおくれて参りますので、委員長指名により委員長の職務を行ないますから、よろしくお願いいたします。  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案国家公務員法の一部を改正する法律案、及び地方公務員法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題とし、質疑を続行いたします。濱田幸雄君。
  3. 濱田幸雄

    濱田委員 ILO八十七号条約批准並びにこれに関連する国内法改正につきましては、もう私がここで申すまでもないことでございますが、過去四年間にわたっての懸案となっておるものでございます。しかるに今日に至ってなおこれが解決を見ていないということは、まことに遺憾であるのであります。この特別委員会が設置せられることになりました際に、与野党の間で申し合わせがとり行なわれておる。これも私がここで申す必要もないことでございます。結局、この特別委員会において条約案審議国内法改正についての審議を行なうにあたりましては、十分に論議を尽くして、そしてわが国労働界、特に官公労組のあり方についてその正常化をはかるために、悔いを千載に残さないよう、そういう気持ちをもって、そしてわれわれといたしましては、将来の見通し、確信、これを持ってこの批准国内法改正というものをやっていくということが、私ども委員会に属しております委員全体としての義務であり、また使命であると私は考えておる。本委員会が開かれましてからもうたくさんの同僚諸君政府の所感あるいは所信をただされてまいったのでございます。これに対する政府からの答弁も十分私は承ってまいりました。しかし、これまでの質問応答を伺いながら、私はやはりいま申したように、いたずらに時日を費やして審議するという意味ではなくて、われわれはほんとうに真剣になってこの案件審議しなければならぬということを、つくづくあらためて考えるようになっておる。特に最近に至りましては、御承知のとおり、この議会の審議に対して地方公共団体におきましてはその成り行きを非常に憂慮していることも、政府当局が御承知のとおりでございます。実は昨晩からけさにかけて、私の自宅にも、いなかのほうの町村長諸君から、このILO条約批准にあたっては、あくまでも国内法改正についての政府原案を貫徹してもらいたいということを電報によって申し込んできておるのでございます。これは他の同僚諸君も同じようなことになっておると私は推察をするのでございますが、あくまでもこの委員会においてのお互い論議政府所信の発表というものを通しまして、このILO条約なるものがいかなるものであるか、これに関連しての国内法改正がどういう実体を持っておるものかということをよく国民に理解をしていただいて、そして条約批准なり法律改正をやっていくということが絶対に必要であると私は思うのでございます。したがいまして、私がここで繰り返して申す必要もないのでございますが、いやしくも、目前の事態を収拾せんとするその熱意のあまり、安易なる妥協を万が一にでもはかってこの問題を処理するということがありとするならば、私はお互いよほどこれを相戒むべきことだと信ずるのであります。この法律案審議をするにあたって、私は冒頭に内閣のこの問題に対するお気持ちというものをあらためて承ってみたいと思うのであります。実は、総理大臣が御出席になれば、ぜひこのことを私申して御所信を聞いてみたいと思っていましたが、お見えにならない。官房長官もきょうはお見えになっておりませんので、政府を代表して労働大臣大橋さんから率直なお考えを承れれば幸いだと思うのでございます。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ILOの八十七号条約につきましては、政府といたしましてはすみやかにこれを批准いたしたいという考えを持っておることは、しばしば申し上げましたとおりでございます。ただ、これに関連いたしまして国内法改正は避けることのできないところでございます。この国内法改正につきましては、政府としては数次にわたって必要なる法律改正案を提案いたした次第でございます。私どもは、この政府案の持っております意味を十分に御理解いただきますとともに、国家的立場に立って当面するこの問題を委員会審議を通じて委員の皆さまに御検討をいただきたい、かように念願いたすのみでございまして、これに関連して安易なる妥協によって当面を糊塗しようというような考え方を持っておるのではなく、やはりわが国現状に基づいて考えておりまする労働行政、また国家公務員制度維持改善、こういう線はどこまでも審議にあたっても政府の意図を明らかにし、御考慮いただきたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 濱田幸雄

    濱田委員 ただいま労働大臣から政府を代表しての御所信のほどを承りまして、私も非常に意を強ういたす次第でございます。  なお、この条約案とかあるいは法律案審議するに先立ちまして、私のこれに対する考え方の一端と申しまするか、一つの所見を申しながら、政府の御意向を承ってみたいと思います。  それは、これも私がここでるる説明する必要のない事柄でございますが、今日このILO加盟をしております国々、私の承知しておるところでは、約百十カ国前後あるのではないかと思う。いわば全世界国々がほとんどこのILOに現在加盟をいたしておる。そして各国が、あのILOの場を通して、それぞれの国内における、あるいは世界的な意味における労使関係正常化というか、労働者勤務条件維持改善ということに寄与いたしておることも、言うまでもないことでございます。ところが、こういう百十カ国といわれる加盟国政治経済、文化、あらゆる面において、それぞれの国は非常な特徴を持っておると言っていいと思います。あえて低開発国とか先進国ということばはここで使うべきでないと思うのでありますが、それぞれの国が大きな特徴を持っておるということ、したがって、国民空活の態様もやはり千差万別に相なっていること、これは御案内のとおりでございます。したがいまして、このILOの場において採択せられるところのいわゆる条約、あるいは決議案というものもあり、勧告というものもありましょうが、そういう条約案なんかを私すなおな気持ちで見てまいりまして強く感ずることでございますが、いま申したような各国事情が非常に違っておりますために、そういう条約案を取りまとめていくには、どうしても各国のそれぞれ異なった国内情勢を見て、そして最大公約数的な取りきめを行なわざるを得ないことになる。ILO八十七号の条約を見ても、まさに私はその感を深くするものでございます。いわゆる結社の自由、これに関する条約採択をいたそうとしてILOの総会でこの問題が具体的に取り上げられたのは、一九二七年であったと私は聞いています。ところが、その当時からのILOにおけるこの問題の取り扱い方については、国内事情がそれぞれ非常に違うということで、そう簡単にこの条約案というものはまとまらなかったのでございます。一九四四年の例のフィラデルフィア宣言採択、いわばILO基盤となるところの根本原則としての結社の自由というものを再確認したあの宣言によりましても、「表現及び結社の自由は不断の進歩のために欠くことができない」とうたっておる。そうしてこの宣言のあと、やっと一九四八年の七月にILO八十七号の採択を見た。こういうような沿革を振り返って見ましても、結社の自由ということを国際条約で取りきめるにあたっても前後二十年以上の歳月を要しておる。先ほど申したような事情でそうなったことは言うまでもありません。特に私が非常に興味を覚え、また痛感する点でございますが、この条約の八条の一項におきまして、これも私が読み上げる必要もないくらいのことでございますが、「この条約規定する権利を行使するに当たっては、」云々ということから、「国内法令を尊重しなければならない。」といっておる。ところが、その第八条の第二項におきましては、「国内法令は、この条約規定する保障を阻害するようなものであってはならず、また、これを阻害するように適用してはならない。」と規定しておる。これはこの八十七号条約というものの本質というか、性格というものをほんとうにうまく表現しておる条約文であると私は見ておるものであります。条約規定する権利行使にあたっては、それぞれの国内法に従えといいながら、その反面、また、国内法令条約の大精神に反しては相ならぬぞといっておる。私どもは、日本憲法九十八条の第二項でございましたか、いわゆる条約優先という大原則があることを承知しておる。国内法条約精神にまつこうから矛盾するようなことがありますれば、条約精神を尊重してこれを適用していかなければならぬというのが、われわれのこれまでの常識でございますが、そういうような日本憲法九十八条二項のあの規定とは多少ニュアンスの違ったようなこの八十七号条約規定であるように私は思いまして、いま申したとおり私はこれに対して非常に興味を覚えておる一人であります。一言すれば、二律背反であります。いかにも相矛盾するがごとき条文である。しかし、実際はそうでなくて、ILOというものの本来の性格から見て、こういうような条約案文というものができ上がったことは、これは私は当然の成り行きだと思うのです。別書すれば、条約の面でうたっております結社の自由とか、あるいは団結権保護というような理想、これは大きな精神でございますが、この精神を具現するにあたりましては、加盟しておりまする国々は、それぞれの国内事情に適応したところの国内法令をもって労使関係を調整していかなければ相ならないことだと思うのであります。私は寡聞にしてこれまで日本批准しております条約をほとんど承知しておりませんと言っていいくらいのものでございます。しかし、私の承知しておるところでは、このILO条約八条のような規定を実際に織り込んでおりますような条約というものは、そうたくさんないのではないかとすら考える。そこにILO条約の本来の性格があるものと私は思うのでございます。しかも、この国内法制定あるいは適用に際しましては、この結社の自由、団結権保護というものをILO条約によっては許されることになっておるのですが、そういうような意味合いで、いま本委員会審議しておりますこの国内法改正にあたりましても、その法律が適用せられるところのわが国の現在、また、私は将来と言いたい、わが国の現在並びに将来にわたる内外の政治経済社会、その基盤をつぶさにお互い認識をして、そしてその認識の上に立ってこの案件審議すべきものと思う。この点について労働大臣の御所信を承ってみたいものでございます。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国際条約批准にあたりまして、国内事情を十分に考慮しなければならぬということは、これは当然のことであると思うのであります。しかして、その国内事情というにあたりましても、単に一部の事情だけではなく、国家及び民族の将来についての長い展望の上に立って、条約の趣旨とするところを国内に適用することが、真に国家民族の利益に適合するものであるという確信のもとに初めてその条約採択が合理づけられるものだ、こういう御意見につきましては、私も全く同感でございます。
  7. 濱田幸雄

    濱田委員 いま私のつたない意見に対して労働大臣も御同感の意を表していただきまして、まことに光栄に存じます。申すまでもないことでございますが、このILO条約批准に際しまして具体的に問題になっておるのは、いわゆる民間における労働組合あるいは労働者の問題ではないのであって、問題になるのは、これもるる申すまでもない次第でございますが、国家及び地方公務員とか、あるいは公共企業体なんかに属しております職員とか、あるいは地方公営企業に属しております職員、そういう職員に関係する部門であるのでございます。そこで、私ちょっと申してみたいのは、戦後すでに十九年になろうとしておるわが国のこの官公労組活動、これにはいろいろの見方もあると思います。いわゆる戦後の日本民主主義というものがだんだん成長してまいって、そしてそういうような官公労組動きにつきましても、もちろん年を追って正常化の道をたどっておるということを否定することはできないのでございますが、しかし、現実の状態を見ますると、これは多少言い過ぎかもしれませんが、一言もって尽くせば、遺憾ながら、今日までの官公労組の本来の使命を逸脱したところの政治闘争あるいは行政闘争、これによって社会秩序を乱すいろいろの災いを残しておること、これも否定することはできない。一々そういうことに触れるつもりでは毛頭ありません。先般、仙台における日教組の二十七回定期大会において採択せられたところの運動方針というものを、私はつぶさに読ましてもらった一人でありますが、あのスローガンにどういうことをうたっているか。十数項目スローガンを並べておりますが、そのうちに、いまわれわれが取り上げておるところのILO八十七号条約即批准国内法改悪反対労働基本権の奪回、これは労働争議権まで日教組諸君は奪回しようとしておる、そういうことをうたっておる。また、安保条約破棄日韓会談粉砕、新暴力法粉砕原子力潜水艦寄港阻止、F105機というのですか、あの飛行機、あるいは軍事基地撤去沖縄即時祖国復帰実現、さらに、日中国交回復とか、あるいは日ソ平和条約締結日鮮往来自由化実現、こういうことを先般の日教組大会においてスローガンとして掲げて、これを日教組諸君採択しておる。最近の日教組活動状態は、だんだん正常化せられておるように、私はひいき目で見ておりますが、しかし、あの大会においては依然としてこういうようなスローガンを掲げ、これに関連してるる論議を尽くしたようでございます。こういう一例を見ましても、日本官公労組の最近に至るまであるいはここ当分の間の動きというものは、そう本質的に、根本的に変わってきていないのではないかというような心配を私はするものでございます。これはやはり、私の考えることでございまするが、わが国の現在の大きな一つ特徴、特殊な現象であるように思う。これについて話せばまた枝葉が出ますから、これ以上は申し上げたくありませんが、一口に申して、私が常日ごろ感ずることは、世界のいわゆる自由主義陣営に属しておるといわれる民主主義国々において、日本の国ほど、いわゆるマルクス主義というのですか、ああいう主義というか、考え方、思想というか、これが広く取り入れられているのは、非常に珍しい現象ではないかと思うのです。そういうようなことが一つ。  もう一つつけ加えて申したいのですが、今日、国内におきましては、一九七〇年の危機というようなことがちらほらわれわれの耳に入る。日米安全保障条約期限が一九七〇年にくること、それから、その前の年だと思うが、一九六九年にはNATOの条約期限が一応到来することに相なっておる。国際共産勢力日本に対するいろいろの工作、これはもうここであげつらうつもりもありません。いま日教組大会において取り上げておりますところの、革新勢力日米安全保障条約破棄日韓会談反対、そういうようなもろもろの社会的な運動が現在展開せられておる。先般本委員会において公安調査庁長官からの御報告も承りました。永山委員に対する御答弁であったと思うのですが、現在の日本共産党員の数というものは、かれこれ十万を越しておるということであった。そのうちに、いわゆる官公庁公共企業体等に属しております党員が二万八千前後だということである。約三年前に比べまして、全体の党員の数は約二万人余りふえておるが、官公労組なんかに属しておりますところの党員の数というものは、この三年足らずのうちに、一万七千人からいまの二万八千人になっておるという御報告を承りました。これは大体正しい御調査の結果だと私は言っていいと思う。  そういうような今日の日本社会事情というものでありますので、私はこれは老婆心と思いますけれども日本公務員諸君が、憲法十五条二項のあの精神によって、あくまでも全体の奉仕者であるという気持ちを捨てずに、その自覚と信念を持って今後の職場を守ってもらいたいと思う。そして団体活動を展開するにあたりましても、何と言っても、法秩序維持というものを守ってもらわなければ、私は今日の日本現状から考えて、このままの姿でいっていいとはどうも思わないのです。  また、これは私いたずらに公務員諸君を責める意味じゃありません。これに対応して、政府自体としても、よほどこの職員団体活動正常化せられるように、これを受けて立つだけの信念を持って臨んでいただきたいと思う。私は、先月のあの四・一七ストに際して政府当局のとられた態度、これはいろいろの見方もあると思う。非常な御苦心をなさったことを私はありがたく思う。しかし、冷静にいまから振り返って考えますと、あの公共企業体諸君たち要求しておった賃金引き上げ、これに対する政府当局あるいは事務当局のこの数カ月にわたるところの態度、これはよほど政府自体としても反省をしなければならぬと思う。あれくらいの賃金引き上げ要求があっても、いわゆる政府側の当事者というものは、数カ月にわたってゼロ回答をよこしたじゃないですか。仲裁裁定が行なわれて、ああいう賃金引き上げの線が出た。そのときに政府はこれをのむことになった。私は、日本の国の財政事情から考えて、公務員諸君たちがああいうような要求をしても、どうもこれは措置ができないということでゼロ回答をよこしておるものとひそかに考えておったのです。ところが、この仲裁裁定をのもうとして、政府は別に補正予算を組む必要はありません、現在の成立予算の範囲内で項目の流用をやってまかないがつくということを言っておる。そういうことがあるならば、この数カ月にわたって政府はなぜそういう面についてこれが検討を加えなかったか、私はこれは非常に残念に思う。  これから二、三の点にわたって具体的な問題を取り上げながら伺ってみたいと思うのですが、そういう問題を取り上げる前に申したいことがある。このILO条約批准とか、国内法改正、特に国家公務員地方公務員その他のああいう職員たち団体活動をこの法律によって規制しようとしておる。これは単なる法律問題だけでないのですよ。政府のこの官公労組に対する姿勢を根本的に改めろ——と言うと失礼でございますが、考えなければ、幾らわれわれが法律案審議し、条約批准し、そして法律によって公務員諸君たち団体行動を規制しようとしましても、これは意味がなくなるおそれがあるのです。その点を私は承ってみたい。これは要らぬおせっかいでございますが、政治というものの要諦は、一面、春風駘蕩というのですか、何ものをもあたたかく抱きかかえる気持ちがなければ政治ができぬことは、言うまでもない。しかし、そういう春風駘蕩だけじゃいけない。一面、秋霜烈日というのですか、もし不正があればこれを断固として押えていくということ、そういう両面がなければ、私は政治にならぬと思うのです。この法律案とか条約案審議するにあたって、特にこの委員会が設置せられて、これまでの同僚諸君質問政府答弁の様子を私承りながら、現在私がここに立っておる心境から申しますると、いま申したような気持ちになる、これは偽らざる私の気持ちでもあります。多少失礼にわたる点もあったと思いますが、私の口べたは許していただいて、こういう問題について政府側はどういうお気持ちで対処するのでありますか、率直に御所信のほどを承ってみたいと思います。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまは濱田委員の憂国の念に出発されましたまことに公正なる御意見を承りまして、深く敬意を表する次第でございます。  先般当委員会におきまして公安調査庁から報告せられましたごとく、最近におきまする共産分子活動の状況、党員が八万人から十万人にふえておる間において、その二万のうちの過半数、すなわち一万一千人は官公庁職員である、こういう事実は、私ども真剣に取り組まなければならない深刻な問題であると考える次第なのでございます。  御指摘のとおり、わが国労働組合運動も、ここ数年来の傾向を見ますると、民間労働組合は、いろいろな法令の制限が職員組合に比して取り払われております。その自由なる制度のもとにおきまして、漸次健全化の方向に向かっておるように思われるのでございまして、特に一時は官公関係労組と相並びまして、経済問題よりは政治問題に主活動を指向いたしておったものが、近年の傾向といたしまして、経済闘争重点主義に移ってきておる、そうしてその行動も漸次常軌に復しつつあるように思うのでございます。これに比較いたしまして、官公庁における労働組合並びに官公企業、公社関係の労働組合の実情は、非常に進歩の度合いがおくれておると認めざるを得ないと思うのでございまして、この点濱田委員の御指摘になりましたとおり、私ども認識をいたしておる次第なのでございます。  ただしかし、この間において、私ども多少言い得ることは、官公庁関係の労働組合におきましても、表面活動の上にはたいした目立った成果は期し得られないといたしましても、すでにこの組合運動の指導者の間には、各組合ごとに相当なる交代が行なわれておるのでございまして、逐次堅実なる指導者の手によって指導されつつあるようでございまして、私ども労働省といたしましては、いろいろな情報からしてさような見方をいたしておる次第なのでございます。これらの堅実なる指導者は、共産勢力に対しまして組合を守っていこうという強い意図のもとに奮闘されておるように私は考えております。そして組合員の大多数の方々も、この指導者を中心にして、共産勢力に対して組合を守っていきたいというお考えは相当根強いものがあろうと田やりのでございます。  ただ、これに対します政府当局の対組合のあり方というものにつきましては、今年の春闘におきます公労協に対する各三公五現当局の賃上げ問題に対する表面的に見てきわめて熱意のない態度、こういった点がこれらの堅実なる指導者を苦しませ、そしてむしろ反主流的な共産主義者に組合に入り込む機会を与えるような傾向があるやに認めておる次第なのでございます。私どもは、この点につきましては、公社当局の労働問題についての権限というような点において、現行制度に欠陥があるのではなかろうか、こうした意味で根本的解決の一つといたしまして、公社制度のあり方について政府部内においても検討をいたすことにいたしておるのでございますが、ひとりこの組合問題についての政府態度というものは、これのみに限られてはおらないと思うのでございまして、一般職員組合に対するいろいろな団体交渉等におきましても、やはり態度の上において相当反省をしていいのじゃないかというふうに思われる面もあるわけなのでございます。  ことに職員組合要求に対しまして、いままで痛感されております点は、各省それぞれに各省所属の組合と交渉する道は開かれ、ある程度進められておりますが、しかし国家公務員全体の労働組合政府全体と交渉していく、またそうしなければ解決できないというような問題も労使間においてはかなり考え得るところでございまして、そうした場合の交渉の窓口ということになりますと、いままでの政府の機構といたしましては非常に不備であった。こうした組合に対する政府の受け入れ態勢の不備は、結局やはり組合の諸要求についての組合側に対する政府の回避的な態度を生み、それが結局組合側に欲求不満の気持ちを与える。組合員のうちにいつとはなしに政府態度に対する不満が生まれてくる。そこへ危険分子が入り込むという余地が考えられる次第なのでございます。したがって、私どもは、日本の労働運動全体の健全なる発展の上から申しまして、今日最も必要なることは、民間労働組合に対する指導育成というよりは、最もおくれているところの官庁関係の労働組合をいかにして健全にしていくかということを考えることだ、こう私は考えている次第なのでございます。  こうした立場から考えました場合におきましては、政府といたしましても、やはり組合に対する責任機関というものを整備し、そして組合のまじめな要求に対しては、まじめな態度をもって接していく、そしてできるだけ公務員全体が国家の、国民の公僕として自分の私生活を顧みずに、快く国家のために働けるような環境をつくり上げていくために、政府としてはできるだけの努力をするということが大切なことだ、こう思うわけなのでございます。  かような意味合いにおきまして、私どもは、このたびのILO条約批准し、そして各国において行なわれておりますような結社の自由を日本公務員諸君にも保障し、その公務員の問題を処理する政府の責任機関としての人事局の整備、これを提案いたしている次第でございまして、労使おのおのがこの問題にまじめに取り組む体制をつくり上げることが、私は、日本の労働運動健全化のための、一番遠いように見えても、しかし最も大切な道ではなかろうか、こう思っている次第でございます。
  9. 濱田幸雄

    濱田委員 いまの御答弁、私もよくわかるのでございますから、今後もぜひ政府でそういう面についての御配慮を尽くしていただきたいと思います。  それでもう一つ承ってみたいと思うことがありますが、これは外務政務次官見えておりますから、政務次官に主として承ってみたいと思うのであります。  このILO八十七号批准に関連して国内法改正を行なうにあたりまして、ちょっと私自分でしろうと考えとして頭に浮かんでいることがありますので、私の考えが間違っておれば教えていただきたいと思うのでございます。といいますのは、昭和三十三年以来ILO日本側からたくさんの提訴が行なわれている。これに対するILOからの見解も詳細にわれわれは報告を受けてきております。もちろんこのILOの見解あるいは勧告、こういうものをわが国として尊重することについては、だれも異論のないあたりまえのことで、ILO加盟しておる国としては当然のことであります。しかし今度の条約批准にあたりまして、対象となってくるところの国内法改正、これを適用しまたは解釈をしていくにあたりましては、結論を先に私のしろうと考えとして申してみたいのですが、あくまでもILOの勧告あるいは意見を尊重しながら、ぎりぎり決着のところは、どこにその解釈なり適用の権威を置くかということです。私は、やはりこれは日本政府自体あるいは最高裁判所の判決、ここに求めなければならぬと思う。ILOの見解とわれわれのほうの解釈とに食い違いを起こすということは、ほとんど考慮する必要もないくらいのこととは私は思っています。しかし、あのILO報告文を見ましてもわかりますとおりに、その見解はやはり一般的に考えると抽象的な面がございます。これを受け入れて現実に国内に当てはめていくときには、この見解なり報告文を見る人々の主観というか考え方というものが、いろいろニュアンスを異にすることに相なるのは、これは当然だと思います。本委員会において多数の委員がすでに質問をなさった。その御質問を私つぶさに静かに聞きながら、やはりそれぞれの政治理念、あるいは立場というのですか見地というかそれによって、あの報告文を具体的に適用しなければならぬという面になると、多少違ってくる面がお互いの間に出てくるのではないかというような気がする。これは否定のできない事柄であります。よって私がここで伺いたいことは、今日においてもそうだしまた将来においても、万が一このILOの見解に基づき国内法を解釈、適用する場合にあたって、冒頭に先ほど私申した結論のことでございますが、当然これは、最後の権威をもってこれを解釈し、あるいは適用していくのは政府当局である、あるいは最高裁判所の判決である。しかもその政府の解釈あるいは適用、運営ということは、少なくとも今度の法律案審議にあたって、この委員会等においてお互い論議した議会における論議、これを参考というか、これを十分に考慮に入れてやるべきものだというような気がするのです。そういうふうに私は考えておりますが、いわば今後このILOの八十七号条約批准に伴う国内法改正の結果、この国内法を運営するにあたっては、将来にわたってもいろいろILOからの見解なり勧告がくるかとも私は思うのです。これは冒頭に申したとおり尊重しなければならぬが、国内の実際の社会情勢から考えて、その勧告文どおりに、しかも一部の人々の解釈というものに、いわば十分に配慮をし過ぎるような配慮をして、そして適用するというようなことはどうだろうかなと思うのです。私の申し上げたいことは、今後このILO条約批准国内法改正にあたっては、政府は自信をもってこの適用なり解釈をやっていくことが望ましいことだ。またそれが当然のあり方だと私は思うのす。私しろうとでありますから、あるいはこれは単なる濱田の独断ということになるかもしれませんけれども外務政務次官からそれに対するお考え方をひとつあらかじめ承っておくと、これからの審議に非常に役立つものと思うのでございますから、ぜひともよろしくお願いいたします。
  10. 毛利松平

    ○毛利政府委員 国連局長答弁いたさせます。
  11. 齋藤鎭男

    ○齋藤(鎭)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま濱田委員の御指摘になりましたような、非常にデリケートな点がございますけれども、もちろんILOの勧告等は、それ自体拘束力を持っておりません。しかし、従来これらの問題は、条約適用に関する委員会その他権威のある機構によってきめられておりますので、政府としてはできるだけこれを尊重するという立場をとっております。ただ、いま御指摘のように、各国おのおの国内事情もございますから、条約規定はもちろん、条約精神に反しない限りは、その勧告を考慮に入れて国内法を解釈するということは許されると存じます。特に国連におけるこれらの勧告、決議等の効果につきましては、法律的にも確定した解釈がございませんので、各国ともやや自由に解釈しておるようでございますが、ただその権威の上からいって、これを尊重するという立場はぜひ堅持したい、こう考えております。
  12. 濱田幸雄

    濱田委員 これから私が質疑を申したい前提としての政府側考え方、詳細に承りまして、私もまさにそのとおりであろうと思うのであります。そういう意味合いでこれから質疑に入りますが、ただその前にもう一言申してみたいことがありますことは、これは委員長のほうの御了承をいただきたいと思うのですが、この委員会において、もう約九名の方々が私の前に質疑をなさっておる。特に稻葉委員からは非常に精微なと言ってよいのですか、非常に法理論をえぐっていくような法律的な論議が展開せられておりまして、それによって政府側の意のあるところも、大体私は承知することができたような気がするのです。ただこれまでの政府の御答弁を私は私なりに承ってまいって、まだ何か少し明確を欠く点があるではないかなというようなこと、あるいは政府の御答弁は御答弁としても、私にはまだ十分に納得のいかないと思うような面もありますから、本日はおもにそういう面について私から質問をいたしてみたいと思います。  なお一言いたすことがあるのですが、私はただいま本委員会に提案になっております条約案、あるいは政府の原案としての国内法改正案、これに対象を置いて質問をいたしたいと思っています。またそれが本来のわれわれの仕事だと思っています。しかし、やはり何といいましても、先ほど申したとおりに、日教組大会においても、このILO条約批准というものを具体的に取り上げておる。そして、あの意味は、政府原案を否定して、何かの修正案というものを通すべきものだという意味だと解釈するのです。また地方公共団体からの、これと相反するところの要望が出ております。今日の段階になると、われわれが審議をするにあたって、これをどうしても頭に入れていかなければ本物の審議ができないのではないかという気がする。そういう意味合いで、ある程度は世間でいういわゆる修正案、こういう問題に触れるということを委員長として御了承いただきたいと思う。  それから、もう一つ私お断わりしておきたいと思います。国内法律改正案でございますが、いろいろそういう問題について触れていきますと、つい話が多岐にわたり、また混雑するおそれがありますから、きょう私がこれからお伺いをいたすのは、主として公務員法についてこれを対象として、政府所信を伺うことにいたしますから、この点を御了承いただきたいと思います。  それでまず私がお伺いしたいのは、職員団体の目的ということであります。このいま私どもの手元に出されておりますところの国家公務員法地方公務員法改正案でございますが、この国家公務員法の第百八条の二の第一項、これには、「この法律において「職員団体」とは、職員がその勤務条件維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体をいう。」ということになっておる。地方公務員法におきましても、その第五十二条一項において同様の規定がある。この改正案と現在の国家公務員法あるいは地方公務員法の当該条項との間に、もちろん表現はいろいろ変わっておりますが、その法律規定の実質的差異があるのかないのか。すなわち現行法においては、国家公務員法九十八条の二項において、「職員は、組合その他の団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。職員は、これらの組織を通じて、代表者を自ら選んでこれを指名し、勤務条件に関し、及びその他社交的厚生的活動を含む適法な目的のため、人事院の定める手続に従い、当局と交渉することができる。」というような表現でございます。地方公務員法の五十二条一項を見ても、「職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し当該地方公共団体の当局と交渉するための団体(以下本節中「単位職員団体」という。)を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。」という現行法規でございます。この現行法規と今度の政府提案になっておる改正法案と、どの点で違っておるか、違っていないか、これをお伺いしたいと思いますが、いま労働大臣がちょっと席をはずしておられますので、できれば人事院総裁からその御解釈のほどを承ってみたいと思うのであります。
  13. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 申すまでもございませんが、今回の改正案そのものについては私ども全然参画いたしておりませんので、権威あるお答えはまたその立案の関係の当局者からひとつお聞きいただきたいと思います。ただいまお読みいただきましたとおりでございまして、字句の違いとしては、現行法に「及びその他社交的厚生的活動を含む適法な目的のため、」というようなことがことばとしては入っておりますが、そこが、これは目的の問題よりも、むしろその交渉の内容を示したものかどうかという問題もございます。そういう点について、これはやはり私として責任ある御答弁はできませんし、先ほど申しましたように当局者から一応お聞き取りをいただきたいと思います。
  14. 濱田幸雄

    濱田委員 それでは、法制局第一部長が見えておりますから、部長から御答弁願います。   〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  15. 吉國一郎

    吉國政府委員 今回御提案申し上げております国家公務員法の一部を改正する法律案の第百八条の二におきましては、従来は職員団体の定義というかっこうの規定を設けませんで、第九十八条の第二項におきまして、職員は組合その他の団体を組織することができるということを直ちに規定したわけでございますが、今回の法律案におきましては、まず職員団体の定義を置きまして、ILO第八十七号条約批准に関連をいたしまして、職員が組織する職員団体の法的な性格を明らかにいたしまして、次にその職員団体の結成についての職員の権能というものを規定するかっこうにいたしたわけでございます。御質疑の主たる点と申しますか、御質疑の一番問題になさっておられます点は、「職員がその勤務条件維持改善を図ることを目的として組織する」という点が、現行法においては、一つは「勤務条件に関し、」第二には「その他社交的厚生的活動を含む適法な目的のため、」というような規定をしていることとどう違うかということにあると存じますが、第百八条の二の第一項の職員団体の定義の規定といたしましては、この委員会におきましても労働大臣その他から何回かお答え申し上げておりますように、この第一項におきまして「職員がその勤務条件維持改善を図ることを目的として」と書いてございますのは、労働組合法の第二条第一項におきまして労働組合の定義をいたしましたのと趣旨においては全く変わらないわけでございまして、勤務条件維持改善をはかることがこの団体の主たる目的になっておればよいということでございます。それではなぜそういうような書き方になったかということでございますが、これは法律規定の技術といたしまして、勤務条件維持改善をはかることを目的とすると申せば、それがこの団体の存立の目的であるということを規定したわけでございまして、これによって職員団体の存立の基礎たる目的は明らかになっているということでございます。その点は、百八条の五の交渉の規定におきましても、これが主たる目的であるということは反対解釈としてうかがわれるところであると考えております。
  16. 濱田幸雄

    濱田委員 ただいま吉國さんからの法律的な御見解を承ったのですが、どうもその点について、実はまだ私すっきりこれでけっこうだというような感じがいたさないのでございます。先月の二十七日の澁谷委員質問に対する労働大臣の御答弁、また五月七日の稲葉委員質問に対する労働大臣の御答弁、これを私拝聴をし、あとで速記録も一応よく目を通してみたつもりでおりますが、そのときに労働大臣の御答弁になりました大体の要点は、こういう意味のことであったように私は理解しておる。いま大臣がお見えになりませんので、政府委員の方々にお聞きいただきたいと思います。  大橋労働大臣の御答弁は、公務員というものも、本来憲法二十八条一項、いわゆる勤労者の団結権団体交渉権、その他の団体行動保障についての規定でございますが、この憲法二十八条一項、及びいま吉國さんから御説明がありましたところの労働組合法二条一項、この規定を参酌していくべきものであって、結局労使関係の基本法であるところの労働組合法二条一項の趣旨、これは読み上げるまでもないところでありますが、「労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」ということになっておるが、この労働組合法二条一項の趣旨と同様であるという御説明でありましたが、いま法制局第一部長の御答弁もまさにそのとおりであると私は承った。念のために労政局長かその他労働省の当事者の方から、まさにそのとおりであるかどうかということを承っておきたいと思います。
  17. 青木勇之助

    ○青木説明員 お答え申し上げます。  憲法二十八条の法意につきましては、すでに古く昭和二十四年の五月に最高裁の大法廷の判決が出ておりまして、この判決におきまして、憲法二十八条が、勤労者に対しまして団結権団体交渉その他の団体行動をする権利というものを、使う者と使われる者の間において、経済上の弱者である勤労者のために勤務条件維持改善その他の経済的地位の向上をはかるために認められたものである、こういう二十八条の法意が最高裁の判決で述べられております。ざらにその後の最高裁の判決、特に昭和二十八年の大法廷判決等におきましては、公務員もなおこの二十八条の勤労者である。もちろん少数意見はございましたが、多数意見はなお二十八条の勤労者である、こういうふうに判示をされておりまして、結局二十八条で団結権が認められておりますのは、経済的地位の向上、労働条件の維持改善、その他をはかることを主たる目的として、憲法二十八条がこれを認めているものである、そういうふうにわれわれは解釈しているわけでございまして、労働組合法第二条の規定もその趣旨を具現したものと考えております。
  18. 濱田幸雄

    濱田委員 いま説明員からの御説明を承りましたが、やはりそれに私はまだ疑問が残る。いま憲法二十八条第一項を取り上げての御見解を承ったのですが、もちろん私も、いわゆる公務員国家公務員にしましても地方公務員にしましても、そういう公務員憲法二十八条一項の規定によって、それをもとにしてもろもろの法律を通して規制を受けるということは当然のこと、これは私は全然疑問にしておりません。そういう意味合いで最高裁のこれまでの判決がありましたが、これも当然のことだと私は本来考えております。問題は、憲法二十八条一項と労働組合法二条一項とを直結さして、そして職員団体の目的というものをどういうふうに理解するかというところにあると思う。これまで労働大臣は、いま申しましたとおりに、公務員も勤労者として憲法二十八条一項による団結権保障を受けている。これはいま私が繰り返して言うまでもない当然の御理解だと思うのです。そして労働大臣は、憲法二十八条一項によって団結権保障せられた公務員が、労働組合法二条一項の規定により、一般労働春と同様の団結権というものが本来あるはずだという、いままでのお考えですね。そこに私はちょっと考え方が違ってくる。公務員公務員たる立場というものは、労働組合法二条一項なんかによって考えるのではなくて、憲法十五条、いわゆる公務員というものは全体の奉仕者であるということ、そこに私は重点を置いて考えなければならぬことがあると思うのです。私はいま申しますように、公務員団体については、繰り返して申すようですが、やはり憲法十五条に重点を置きながら、これと見合って今後の立法をやっていかなければならぬと思うのです。換言すれば、国家公務員法とか地方公務員法はむしろ労働組合法に対する特別法だと私は思うのです。少なくともこの団体結成についての保障というのですか、この面においてはそういうように考える。そこに私は国家公務員法とか地方公務員法が特別法としての存在の理由が十分にあると思う。その面においては、せっかく特別法が公務員法によってできているにかかわらず、現在の労働組合法二条一項でああいう規定があるからといって、これからお互いが立法をやろうとするにあたって、公務員法の規定について労働組合法と同じような解釈、またそういう条文を設けるのが当然でないかというところに、私繰り返して非常に失礼でございますけれども、どうもまだ十分に理解できないところがあるのです。非常に卑近な例で、こんなことを申すのはおかしいのですけれども、人間は動物だ、サルも動物だ、お互い動物であるから、人間社会の規制をやるにあたって、サルの社会の生活を規制するようなやり方でいっていいじゃないか、これは非常に極端な例ではありますが、そういうことはいえないのだ。やはり公務員公務員として憲法十五条によってもああいうふうに規定づけられておる。公務員法によってもはっきり公務員の仕事というものは規定せられておるのですよ。公務員の仕事をやる態度というものは法律によって明記せられておる。それをやはり一般の労働組合法並みに公務員改正にあたっての規定を設けていったらいいじゃないかということについて、そこに私はどうも理解ができない点がある。  それで結局、私もう時間がありませんので突き詰めて言うのですが、大橋労働大臣がこれまで御答弁なさっておる点、ちょうど国家公務員あるいは地方公務員においてもこの法律改正にあたって勤務条件維持改善を主たる目的として団体を結成することができるというように解釈もし、また政府提案を委員会において修正をしても本来の政府のこれまでの解釈と違いませんということでございますが、そこに私の疑問がある。これ以上もう申し上げてもいたずらに同じことを繰り返すおそれがあるのですが、私はこの修正案の意図というものが、やはり勤務条件維持改善のほかに、あるいは政治的、宗教的、もろもろの目的をも一応組合の目的として織り込んでも、主たるものでなければ差しつかえないというように相なるものと見ておりますが、この修正案に結局落ちついていくようなそういう労働大臣の御見解のように承るのでございます。結社の自由というものは、言うまでもない、これは憲法二十一条ですか、すべての国民に認められておる。単に労働者とかあるいは公務員だけでないのです。もし公務員としての勤務条件維持改善ということを目的とする団体であるなれば、政府原案のとおりに、またこれまでの現行法のとおりに、公務員というもののつくる団体というものの目的はあくまでも経済的目的、これはILO精神にも沿うと思う。ILOの八十七号、言うまでもない、これはお互い勤務条件、労働条件の維持改善ということを大精神としておるのですよ。それ以外のことは大体考えておらないといって私はいいと思う。  その精神によれば、私は、いま議題になっておりませんからこれ以上申し上げる必要もないと思うのですが、現在の労働組合法二条一項自体についても、将来機会があれば、これをもう少し検討してみる必要があるのじゃないか。労働組合そのものはあくまでも労働者の生活の改善、勤務条件の向上ということを目的にしておる。かりにそれ以外の政治的目的を持って一般の労働者結社を組織するとすれば、憲法二十一条の精神によってやっていいのです。それは全部の国民に認められておる。私どもはこの法律案審議するにあたって、十分にこれを腹に入れてかからないと、いたずらに議論を紛糾させるおそれがあると思うのです。そういう点を私、先般来ずっと気にかげながら疑問としてまいっておるものでございます。  言いかえれば、いま法制局当局あるいは労働省の説明員の説明を聞いて思うのでございますが、いまのような解釈、あなたたちの御解釈によっていきますと、やはり私は冒頭に申したとおりに、いまの官公労組活動、私ども法律を逸脱した面が多々あったと思うのですが、そういう常軌を逸した活動を今度のこの法律改正によってかえって裏づけていくのではないだろうか、これを正当化するのではないかとすら私は心配しておる。そういう意味合いで、人事院総裁は今度の改正案については御答弁をいただけぬというようなお話でありましたから申し上げるのは遠慮いたしたいと思いますが、先ほどから労働省の説明員のお話はお話として私は承っておりますが、いま労働大臣も御欠席であり、私はこの場ではこれ以上答弁を求めません。私はやはりそういうことを考えておる。このことをはっきりこの場でお聞きをいただきたいと思います。  次に、多少関連することでございますが、これも非常に微々たる問題のような気も一面しますけれども、一応確かめておきたいことがある。現在の公務員法による職員団体のいわゆる構成員、これはいわゆる公務員に限定せられておるということは政府の解釈であろうと見ています。国家公務員法の九十八条の二項にも、「職員は、」云々と書いて、そして「組合その他の団体を結成し、」云々というような用語を使ってある。地方公務員法の五十二条一項においても大体似たような規定がある。「職員は」ということを書いてある。今度の政府の御提案になっております改正法案も、私はごくすなおな気持ちでこれを読みますと、現行法の公務員法と同じような趣旨のものと思うのでございます。改正案によりますると、国家公務員法では、第百八条の二の第一項「この法律において「職員団体」とは、職員がその勤務条件維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体をいう。」地方公務員法改正案におきましても五十二条一項において同じような文句がある。私が現行の公務員法の解釈をしても、公務員の組織するところの団体というものの構成員はあくまでも公務員そのものだ。公務員でない第三者というのですか、極端なことをいえば、たとえば大蔵省なら大蔵省の職員団体に私が一代議士として加入するということは認めてないはずだと思うのです。私はそういうように解釈しておる。おそらく政府もそうであると思いますが、これはほんとに私気にかかっておる点でございますので、人事院総裁にあらためて私のいま申したことが誤っておるかどうか、これをお伺いをいたしたいと思います。
  19. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 現行制度について職員団体の構成員を職員のみに限っておるということは、これはおっしゃるとおりでございまして、その制度がいいか悪いかということについての御批判にこれは触れることであろうと思いますが、私どもといたしましては現行制度が絶対的によろしいというところまでは申し上げませんけれども、しかし、現行制度は現行制度としてこれはりっぱに一つの筋が通った制度であるというふうに考えております。要するに、国の公務員、地方の公務員という立場というものの特殊性ということもございますが、職員団体という以上は、当然職員をもって構成されるのがあたりまえじゃないかというようなことも、これは常識として考えられることでございますし、また諸外国にもそういうような行き方をとっている例もございますから、現行制度が悪いとは考えておりません。
  20. 濱田幸雄

    濱田委員 私、同僚のこれまでの御発言になった速記録をもとにしていろいろ申し上げるのは必ずしも適当とは思いませんけれども、いまの点について一応伺ってみたいことがある。同僚の澁谷委員が先般御質問をなさった際に、国家公務員法改正案の第百八条の二の第一項というものは、八十七号条約批准せられる以上は、職員以外の者も加入を許す趣旨であると理解をなさっておる。これは、先ほども労働組合法二条一項に触れたのでございますが、労働組合法二条によりましても、「労働組合とは、労働者が主体となって」ということをうたっておるから、労働組合法の本来の趣旨から見ても、国家公務員法改正にあたっては、労働組合法と同じように、公務員を主として組織する団体、一部公務員以外の者が参加しても差しつかえないというような御理解だと私は解釈していますが、そういうふうにこの前澁谷委員は御質問をなさったと思う。そうして政府当局も大体これに御賛成をなさったものと私は理解をしておる。  それで、ILO八十七号条約では、よくいわれる無差別加入の原則というので、公務員職員団体公務員以外の者も自由に、入りたければ入れても差しつかえないというようなことに相なっておると称する。八十七号条約にも明らかなことでございますが、労働者団体に加入できる者は労働者だけであるというふうに私は本来すなおにこれを見ておるのです。しかも、加入する者は労働条件の維持改善を目的とするということ、したがって職務上の、あるいは職業上の利益、いわゆる経済的利益を共通しない者がその組合に組合員として加入することは、役員としてじゃなく、無差別に何人も組合員としてそれに加入するということは、ILO精神を幾らわれわれが尊重しようとしましても、国内法においてそういうような解釈をし、適用をし、またそういうような改正をやるということは何だか非常に不自然なような気がするのです。特に公務員団体については、これはもう公務員性格から見ても当然でございます。あえてちょうちょうする必要はないと思うのです。そのILOの無差別加入というあの理想というのですか、考え方、これに対して一体われわれはどういうふうに理解をしていっていいのか。私はしろうとして考えておる。いわゆる無差別加入というものは、宗教的な立場、人種的な相違、そういうもろもろの条件を考慮に入れて、そうして職員でありあるいは労務者であれば、その労務者なり職員をそういう人種とか宗教とかいうものを超越して当然加入をさすべきものである。そういうことで一部労務者なりあるいは職員を排除してはいけないという精神であるかと思うくらいであります。  そういう点で、われわれが無差別加入ということを理解するにあたりまして、あまりにこれを広く解釈し過ぎてしまって、しかも公務員でもない者が公務員の組織しておる団体に加入するということを認める。何のためにそういうことを認めるのか、何のためにそういう組合に加入しようとするのかと突き詰めていいますと、何も公務員としての共通の利害関係のない者が入ってくることになれば、それは何かの意図があると思うのです。その意図というものは、私ここで申すまでもないことなんです。そういうことを今度の法律改正にあたってわれわれがやらすようなことにしていいのかどうか。私は、これは先ほど申した、いかにも小さい問題のようでございますが、もしいま政府でお考えになっておるような解釈、適用というものを今後公務員法において行ない、またはそういう趣旨で法律改正でもするとすれば、将来非常な影響を官公労組のうちに及ぼすおそれがあると断定するものであります。そういうことは、われわれこの委員会といたしましても慎重に考えていかなければならぬと思うのですが、一応労働省の局長見えておりますから、局長から御答弁をいただきたいと思う。
  21. 三治重信

    ○三治政府委員 ILOの八十七号でいいます団結の自由、その団結の自由の中の無差別加入の原則、これはそういう結社をする者の一つの規約またはそういう加入についての団体の自主的な決定によって、その条件を承認した者が入る。それについて政府がとやかく法律なり命令というもので強制力でもって制限はしない、こういうのが無差別加入の原則と抽象的にいえるわけでございます。その場合に、このILOの関係は労働者のことについていっておるわけでございますから、もちろん賃金労働者、いわゆる雇用労働者がそういう一つ団体に無差別加入されるについては、そういう入ろうとする団体規定する定款なり規約の条件を自分が守るということにおいて入るという自由を政府から得ておる、政府はそれについて制肘をしない、こういうことであるわけでございます。それが原則でございます。  ただ、今度は国家公務員なりあるいは地方公務員なり、そういうふうに国なりあるいは地方の公務員として法律命令が規制されているような特殊な職業に従事する者、こういう者についてはどうかということになるわけですが、その一般的なワクにおきましては、地域的に制限する、あるいは職業というものによって形式的に制限されるのは、それは形式的な制限であって、実質的な制限ではないというのがILOの解釈であるわけでございます。ただ、そこの場合においても、そういう単位団体としての結社の自由と申しますか、についての一定のワクはけっこうだけれども、そのういう団体自体の運営なり、いわゆる役員の範囲、役員の選任というものについては、その所属員でなければならないというふうな規制があってはならないというのが一つ。それから、そういう職業的にまたは地域的に制限された団体においては、それがそれだけの連合体ということではまずいので、ほかのいわゆる労働組合との連合体、事実上の連合する連合体に加入することができる。その二つは、役員選出の自由というものと、上部団体と申しますか、団体への加入の自由というこの二つは、やはり職業的あるいは地域的にその結社の自由を制限した場合においても確保されなければならないというのが、現在のILO結社の自由委員会の解釈でございます。  国家公務員法職員団体につきましては、国家公務員関係の政府委員から御答弁さしていただきます。
  22. 濱田幸雄

    濱田委員 ただいまの労政局長の御答弁を承りまして、何だか私のただしたいことと、ちょっと要点が離れておるような気もします。何度も繰り返して言うのは私もあまり好まない。私は役員を選任するのにどうとかいうんじゃないのですよ。組合員としてその職場に全然関係のない第三者——私、先ほど極端なことを言った。労働省の職員の、あるいは大蔵省の職員の組織しております団体に、縁もゆかりもない一濱田というような、私のようなものが加入する自由があります。いわゆる無差別加入の自由がある。また、それにわれわれが加入を申し込んでいったときには、ほかにたいした理由がなければこれを拒否することもできないというようないき方、言いかえれば構成員というものについて、いまの労働組合法の二条ではいわゆる労働者、勤労者というものが主たる中心になって労働組合というものを組織するということになっておる。それと同じように国家公務員法においても、将来、結社の自由、無差別加入の精神というか、これを適用して、あるいは法律改正をやり適用していくというようなことについてはどうかなと私は思いながら先ほどから質問をしておるのですよ。  そういう意味合いでいままでの労働省側の御答弁を承ると、どうも私のいまの解釈と食い違いがある。食い違いがあるからといって、どうも私、このままにしておいても申しわけないような気もするのですから、きょうあらためて伺っておる。まあ適当なことばとは思いませんけれども労政局長はあくまでも労働省の立場というものをお考えになって、いわば国全体というよりも、むしろ民間労働問題というものを取り上げて先ほどもたまたま御答弁があったんです。国家公務員法については私はどうこうする立場でないというお話があった。まさにそのとおりなんだ。ところが、どうもこの国家公務員法改正なんかを通して、私、労働省御当局のこれまでの説明を聞いてみますと、国家公務員法地方公務員法なんかについても一般の労働組合に対する根本的な考え方をそのまま適用していくような傾向があるように私には受け取れるのだ。そこに私どもが慎重に考えなければならぬ点がありますよ。  そこで、私はもう繰り返して書いたくない。国家公務員でない者が国家公務員の組織しておる団体に、おれを加盟さしてくれ、加入さしてくれと言っていったときに一体どういうことになるのですか。しかも極端なことを申しますると、その団体のメンバーのうちの、まあ半ばとは言わぬですが、三割、四割の、職員以外の者が加盟しても法律上やむを得ません、というようないままでの答弁でございますが、これについては私冒頭に申した。労政局長はまだ見えてなかったと思うのですが、この条約なり国内法審議するにあたってあくまでも今日の次元における日本官公労組活動そのものをつぶさにわれわれが検討して、そしてこれに適応するような法律を制定していかなければならぬというのが私の考えだ。それは労働大臣も趣旨においては賛成せられておるのだ。ILOについても私は言ったのだ。ILOの勧告あるいは報告、これは当然われわれは尊重するんですよ。けれども、その勧告なり報告というものをわれわれが読んでみますると、これは先ほども言ったから私は繰り返したくないが、非常に抽象的な報告が多い。これをどういうふうに解釈し、どういうふうに適用していくかというと、それぞれの主観によって、われわれの立場立場によって解釈ができる面もある。それだから結局はILOでこういう勧告がありましたというようないわゆる字句だけを取り上げて、そうして極端にいえばその字句のままに今後国内法改正に当たっていいのかどうかということが私の疑問です。いま労働大臣見えましたから、あなたにこれ以上質問をこの問題についてする必要もないかと思いますが、この点がよほど労働省当局としてお考えいただきたいと思います。  ちょうど大臣が見えましたから……。  実は団体のメンバー、職員団体の構成員、これにつきましてこれまでの本委員会において労働省側の御答弁を聞いてみると、結社の自由ということで、職員団体を結成するにあたって職員以外の、まるで縁もゆかりもない、極端な例でございますが、そういう者を入れてもいいじゃないか、いわゆるILO精神による無差別加入、これを広く解釈し、適用して——私いま声を大にして申した次第でございますが、われわれのような一濱田という人間がある公務員団体に加入するということが当然のことなんだ、差しつかえないことなんだというような法律の適用というものをやっていいのかどうか。やはり私は職員団体である以上は、あくまでも原則として職員そのものがこの団体を組織していくということが本来の姿でないか。もちろん解雇せられて一年以内とかあるいは係争中の人々が、もとおれは組合員だったから急に脱退することはいけないということで、これを認める。これは今度の改正法案にもそのとおりになっており、そういうことは非常にけっこうだと思うが、根本の考え方としていまのような面については、これまでの政府の御答弁について私いろいろ危惧の念を持って見ておる次第でもありますので、労働大臣からあらためての御答弁を承ってみたいと思うのです。
  23. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のとおり国際労働憲章付属書といたしまして宣言採択せられておるのでございまして、その宣言によりますると、結社の自由というものを尊重するということに相なっておるのであります。このことはILO条約八十七号を批准するとせざるとにかかわらず、それ以前において日本政府ILO憲章を批准し、ILO加盟をいたしておるのでございまするから、その付属文書であるこの宣言における結社の自由というものを原則的に承認したものとみなされるのは、これは当然だと思うのでございます。かような前提のもとに、今日ILO結社の自由委員会において、日本における結社の自由の原則の適用の状況がどうなっておるかということが調査されておるわけなのでございます。私どもは、ILO条約の八十七号条約批准ということが形式的に批准されているかいないかということも大事な問題でございまするが、しかしそれ以外に、日本において結社の自由が労働者について認められておるかいないかということがさらに別の重要な問題だ、こう考えなければならないと思うわけなのでございます。  そこで、従来から、そうした意味から考えまするというと、労働組合の組合の構成員を限定するということは、そうしたILOの労働憲章の付属書にいわゆる結社の自由の原則というものからいって問題があるのではないかというのでございまして、労働組合一般につきましては、したがって結社の自由の原則をどこまでも認めていくということがたてまえでございます。職員組合におきましても同様に、組合をつくるという事実上の行為に対しましてはその構成員を政府が制限するというわけには参らない。これは結社の自由の原則を否認することになるからであります。そこで、そこに一つの登録という手続をとることにいたしまして、この登録手続をとる場合においては無差別加入の原則ということではいけない、やはりおのずからある程度の組合員の制限が必要だということで、組合員の制限の規定があるわけであります。これにつきましては改正案にあるような次第でございます。
  24. 濱田幸雄

    濱田委員 せっかくの労働大臣の御答弁でございますが、もう私この問題にいつまでもこだわっておるのは適当と思いませんが、いま承りましても、やはり筋としては職員組合のメンバーとしては職員でなければならぬということは、ILOの八十七号とかあるいはILOの憲章の精神に基づいて本来無差別加入にまでしなければならぬというふうには私は広く解釈しません。  けれど、これは私の所見でございますが、いま御答弁のうちに登録というものを通してということがあったのですが、私は登録とこの団体構成員の範囲というものはやはり別のカテゴリーで考えていかぬといかぬと思うのです。それは、無差別加入は許しておいて、あまりたくさん職員以外の者が加入するような団体に対しては登録を拒否する、認めないというようなことになると、これはやはり問題が起こりますよ。いま労働大臣のお気持ちはどの程度にそのめどを置いておるかわかりません。職員がかりに千人で、五十人くらいはその職員外の者が入ってもいいではないか、そのときは登録することを認めるというようなお考えかとも思うが、それでは五十人がいいか百人がいいかということになると非常に問題がある。そういう意味合いで、どうも私、せっかく労働大臣の御答弁でございますが、まだいまの御答弁では十分なる理解ができない。これは非常にくどいことでございますが、いまの程度のお考えをずっと持っておられるかどうか、もう一度念のために伺ったほうがよくはないかと思うのです。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私の答弁が不十分であって御理解を得られなかったということは、私もそう思います。そこで、答弁を補充させていただきたいと存じます。  そもそも結社の自由の原則というものにおいて、これと切り離すことのできない問題は、結社の自由という以上は、一つ結社においてその結社のメンバーをいかにするかということは、結社自体が自主的にきめるべきものだということでございます。これが結社の自由の原則一つの欠くべからざる一部になっておる、こういうふうに私は理解をいたしておるのであります。濱田先生の仰せられましたるごとく、職員組合という以上は職員ばかりで組織するのが当然ではないか、私は常識として全く同感に思います。したがって、職員組合というものは職員だけが組織していくのが何といってもいいのだというのは、これは私は常識だと思う。ただ、その常識に基づいてその組合のメンバーを職員に限定するかどうかということは、これは政府の行政の関与ということによってそれをきめさせることではなくして、組合自体の自主的な規約によってきめさせていこう、これが結社の自由の原則だ、こう思うわけなのでございます。  私は、日本公務員諸君もわれわれとその常識においては全く同じであると思いまするから、こうしたことを行政的にきめなくとも、彼らの賢明なる常識によりましておのずから先生の期待されるような理想的な職員組合がつくられるもの、こういうふうに考えておるのでございます。そこで法律で制限はいたしておりませんし、また法律で制限するということは条約の趣旨にも反するわけでございまして、要するに私は、堅実なる労働者の常識というものを前提にして初めてこういう結社の自由というような原則と取り組んでいくわれわれの体制ができるのだ、こう考える次第でございます。
  26. 濱田幸雄

    濱田委員 いまの御答弁、御答弁としてよく承りました。やはり冒頭に申したとおりに、この結社の自由というものについて国内法をいかに調整していくかということがいまわれわれの作業になっておる。それで、いわゆる結社の自由、しかも無差別加入というような理想ですか、これを掲げていけば、まあ極論すれば国内法なんかあまり関心を持たなくともいいじゃないかというところまでいきかねぬおそれがありますから、特に公務員に対しては一般のいわゆる労務者とはまた別の立場でわれわれはこれを扱っていかなければならぬ。  冒頭に労働大臣にも伺ったところでございますが、結局ILO精神とか勧告とかいうものをわれわれがどの程度これを理解していくか、これを尊重していくかということになりますと、国内事情から考えて、よその国ではこういうことをやっておるが日本ではできないということもあり得る。そういう点を私はこの問題についても頭に入れてみたい。これ以上繰り返して駄弁を弄することは失礼でございますから、これなりにしておきたいと思います。  ちょうど文部大臣が見えておりますので、一言念のために伺ってみたいのは、いわゆる学校職員の管理職員としての範囲を、今度の法律改正にあたっては政令によって一応基準をきめて、その基準に沿うて処理していくということでございます。いわゆる管理職というものが各職場職場を通じてどの範囲のところまでいくのかということをきめますときには、やはり労使お互いの間で話し合いによってきめるという筋であっては十分でないような気がする。これは一般の労働組合についてもそうではないかと私なりに思うくらいです。民間の事業においても、労働組合労働者と使用者の間で管理職をどこまで認めるかというのは、むしろ使用者であるところの会社、経営者、当事者がその本来の筋をきめるべきものだと思う。何がしという人間は管理職であるとかないとかいうことを労使の間で相談するということが実はどういうものだろうかなという感じをそもそも持っておる。  そこで、先般も承ったことでございますが、学校の校長とかあるいは教頭というような人々が、いわゆる管理職手当というものをいただきながら一般の職員団体にずっと加盟をしておる。そこに学校職員のこれまでの団体活動において不明瞭な面もあるのではないかと思うのです。そこで私は、今度の政府提案による改正案というものが当然のいき方だと思いますが、もちろんこれに対していろいろな批判もある。地方公務員であるところの学校の職員の管理職の範囲は、人事委員会とかあるいは公平委員会において標準をきめる。そしてそこで具体的にきめていくということになっています。先ほどから私は繰り返し巻き返しここで質問をしながら、自分のつたない意見を申しておる次第でございますが、今日の官公労組動きというものを見て、特に地方のああいうような職員団体というものを見て、そして人事委員会とかあるいは公平委員会で一応のめどをつけて、具体的にいざだれを管理職にするかということについて、万一でも当事者とその職員の間で話し合いの場を持つということになりますと、私はそのげじめというものがなかなかつかないのではないかと思うのです。そして根本は、管理職というものはむしろ使用者側が大きな方針を固めて、そこできめていく。もちろん労務者に全然相談しないという意味ではありません。相談をすべきものはすべきものでありますが、根本の方針はそこに置くべきものでないかと思うが、特に現在の学校の職員団体における状態を見て、もう一度私は文部大臣から所信を承っておいたほうがいいような気がしますから、御答弁をお願いします。
  27. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 管理職の範囲をどうするか、この決定については私は詳細は存じませんけれども、いわゆる労働組合におきましては相互の話し合いによってきまっておる。こういうふうなことになっておるように伺うのであります。しかし、公務員の場合になりますと、必ずしも一般労働組合というふうなやり方では適当でないものもあろうかと私は思うのであります。御承知のように、公務員につきましては法令でもってその職務内容等がきまっておるものも多々あるわけであります。その職務の内容にはいわゆる管理職の仕事としてきめられておるものがあるわけでありますから、これが相互の話し合いできまるというようなことになりますと実情に合わないということにもなってこようかと思うのであります。  そこで、今回のいわゆる改正案におきましては、地方の第三者機関であるところの公平委員会あるいは人事委員会で標準をきめる、こういうことになっておるのであります。ただ、学校の場合におきましては、御承知のように学校教育法あるいはこれに基づく施行規則等において校長とか教頭等の任務は明確にきまっておるのであります。しかも、これはやはり全国同じような姿で学校の運営がなされなければならないというようなこともございますので、私どもとしましては、人事委員会あるいは公平委員会で基準をきめられる前にまずもって中央におきまして政令でもって基準をきめることが適当でないか、このように考えまして特別な規定を入れていただくようにいたしましたわけであります。
  28. 倉石忠雄

    ○倉石委員長 午後は二時より再開することといたしまして、この際暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  29. 倉石忠雄

    ○倉石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。濱田幸雄君。
  30. 濱田幸雄

    濱田委員 先ほどに引き続きまして、一、二の点を取り上げながら政府の所見を承りたいと思うのでございますが、まず公務員職員団体の登録制度と、そしてその団体の当局に対する交渉、これを中心にして伺ってみたいと思います。  現在の公務員法の九十八条二項には、「職員は、これらの組織を通じて、代表者を自ら選んでこれを指名し、勤務条件に関し、及びその他社交的厚生的活動を含む適法な目的のため、人事院の定める手続に従い、当局と交渉することができる。」とうたっている。地方公務員法の五十五条一項にも大体似たような規定がございまして、「登録を受けた職員団体は、条例で定める条件又は事情の下において、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、当該地方公共団体の当局と交渉することができる。」ということになっておる。今度の政府提案の改正案を見ますると、公務員法につきましては百八条の五、一項に「登録された職員団体は、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、当局と交渉することができる。」とうたっておる。地方公務員法五十五条一項の改正案につきましても「登録を受けた職員団体は、」云々とあって、「当該地方公共団体の当局と交渉することができる。」ということに相なっておるのであります。この現行法と、今度政府が提案をなさっておるところの改正法案をごくすなおな気持ちで読んでみますと、登録団体のみが勤務条件について当局と交渉する権能があって、当局もこれに応ずる法律上の義務があるというふうに私は解釈するのです。ところが、本委員会においてこれまで政府当局の御答弁を承ると、政府の見解というものは、これまで労働大臣の御答弁を通じてもわかりまするが、こういうようなことに相なっておる。交渉については、登録、非登録には関係がないということ、すべての職員団体は当局との交渉を行なう能力を有するということ、登録団体に対しては、政府は積極的に応ずるが、非登録団体に対しては、それが職員団体としての条件を具備せるものかどうかを確認した上、それが職員団体たるの条件を具備せるものと認めたるときにおいて交渉に応ずるものだというような説明また御答弁でございます。私は、この御答弁を、何回もこの委員会で同僚の諸君質問に対しての御答弁として承っておりますが、これは非常に大事な点であると思います。したがいまして、これまで労働大臣その他の政府御当局の御答弁は承っておりますけれども、まだ十分に自分で納得といいますか、理解をすることができない面があるのでございますので、ここで重ねて論議をいたしてみたいと思うのでございます。  四月の二十七日に、やはりわれわれの同僚の澁谷委員質問があったのですが、その質問のうちに、国家公務員法第百八条の五第一項に「登録された職員団体」と規定しておって、その次の第二項以下は単に職員団体というような規定をしておる。「登録された」という文句は使ってない。この点を澁谷委員は取り上げまして、そしてその第二項以下は登録、非登録をも含む団体であると解釈していいのかどうかというような質問の要旨であったと承っております。それに対しまして政府委員は、いま申しました第二項以下の職員団体というのは登録、非登録をも含みますというような御答弁であった。これを受けて澁谷委員は、登録、非登録それぞれの団体をも交渉能力を有するとの御答弁はまことに当然のことである、八十七号条約精神よりして団結に何らかの条件をつけることは条約違反となるおそれがあるというような御見解、その見解によって改正案の第百八条の五第一項の規定は、立法論としては適切ではないのではないかというような見解を述べられた。これに対して労働大臣は、そういう趣旨のような欠点があると大臣御自身も思うというような御答弁であったのです。私はこれに対していささか見解を異にしております。たとえばこの登録団体、非登録団体法律的な地位というか性格というか、そういうものを取り上げます際に、職員団体には登録であろうが非登録であろうが、本来交渉の能力があるというような、いわゆる交渉の能力というような用語を使われてこの条文を解釈していくということには、多少私は不安があるのです。交渉能力というような用語、これはこの場合においてはいわゆる法律的な用語といえるかどうか。交渉能力があるかないかということは事実問題なんです。いかなる団体を見ても当局と交渉するだけの能力があるか、あるいはないかということは、法律的にきめるべきものでなくて、やはり組合そのものの実体によって判断をしなければならぬと思うのです。個人にしてもそうでございます。未成年者には選挙権はない。選挙をする権利がない。能力があるとかないとかということは、私は、法律的な用語とは考えられないのです。まあいえば、この問題をいまお互いが取り上げまして、この委員会の席上で論議を進めます際に、いま繰り返して申しますように、交渉能力があるとかないとかということをあげつらうことは、私は無意味でないだろうかとすら考えています。また承りますと、この交渉につきましては、結社の自由と団結権保護を目的とする八十七号条約にももちろん触れております。団体交渉については八十七号条約にも一条規定がありますが、しかしこの八十七号の当該条項は、団体交渉についての基本的な方針をお互いが確認をして、各国がそれぞれ適切な措置をとろうでないかという一種の申し合わせ的な規定であろうと思います。その八十七号条約のたしか十一条であったと思うが、その十一条を受けて、ILO九十八号の条約ができたはずであります。したがいまして、私がここで申し上げたいのは、この団体交渉という広い意味での職員団体の交渉についての能力とか権能とか権利とかというような問題は、むしろ八十七号の結社の自由、団結権保護を目的としておるところの条約よりも、九十八号条約によってこれを私どもとしては判断をし、そして国内法の制定なり改正をしていかなければならぬのではないか。国内法改正にあたっては、八十七号条約でなくて、九十八号条約基盤として、それに立ってお互いが処理をしなければならぬではないかというふうに私は存じております。そしていうまでもありませんが、九十八号のいわゆる団結権及び団体交渉権条約というものには、第六条によって公務員にはこれを適用せられないということをうたっておる。ここに私どももう一度政府当局の御意見を確かめてみなければならぬ点があるのではないかと思うのであります。  もう一度私が別の見方から申し上げますと、登録と交渉というものをからめ合わせて、登録ができれば、あるいは登録ができなければというような問題と、団体の交渉権能というものとを直結させて、法律の解釈あるいは改正をやるということは、私は適当と思いません。登録問題即交渉権問題であると見るのは適当でないと思う。登録と交渉権は、法律的な立場から言いますると、まるで別のカテゴリーに入っておるものであるように私は見ています。元来結社の自由と団体交渉権というものはさい然と区別して、いま申しますような別のカテゴリーに当てはめて今後取り扱っていかなければならぬ問題点であるように私は思います。何ゆえにただいま政府当局の御答弁になっておりますように交渉能力という用語を用いるように相なっておるか。私はやはり交渉権あるいは交渉の権利とかあるいは権能とかいうようなことばを本来使ってみたいと思っておりますが、どうもその点で、これまで労働大臣その他の政府委員からの御答弁を承りまして、私にはまだまだ釈然としない面があるのでございます。重ねてこれからいろいろ伺う面もありますので、あらためて政府側の御所信をいまの点についてお聞かせをいただきたいと思うのでございます。
  31. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御質問は、ILO八十七号条約の対象となっておりまする結社の自由という問題に関する根本問題に関係ある事柄だと考えます。  ILO八十七号条約結社の自由ということは、先ほど申し上げましたるごとく、労働憲章の付属書となっておりまする宣言において、表現及び結社の自由ということがうたわれておるのでございまして、これによって出発してきておるのでございます。しこうして、国際労働憲章におきまして結社の自由というものを特に尊重するゆえんのものは何であるかということを考えてみますと、国際労働機関の憲章におきましては、世界の平和が社会正義を基礎として確立、することができるということを承認いたしましたしで、世界の平和及び協調が危うくされるほど大きな社会不安を起すような不正、困苦及び窮乏を多数の人民にもたらす労働条件が存在をしているではないか、そうしてこの劣悪なる労働条件を改善することが今日の世界にとって急務である、こういう基本的な精神に出発をいたしておるわけなのであります。しこうしてこの結社の自由というものは、労働条件の改善というこの緊急なる目的を達成する一つの手段として、労働憲章においては欠くべからざる大切なものになっておる、かように考えなければならないのでございます。したがって、労働条件の改善というものは、原則的には労使間の団体交渉によって可能となるものでございますから、このILOにおいて、いわゆる結社の自由というものが団体交渉というものと切り離すことのできないものであるということを、われわれはまずもって十分に心得ておく必要があるのではなかろうかと存ずるのでございます。つまりILO八十七号条約における結社の自由ということは、労働条件の改善を目的とした団体交渉の方式としてこれが認められておる、かように考えるのが私は労働憲章の趣旨であると思うわけなのでございます。したがいまして、この労働組合結社の自由というものを認めるにいたしましては、その結社がはたして団体交渉を通じて労働条件の改善に寄与する能力があるかどうかということを問題にするのは、これは当然なのでございまして、そういう意味において交渉能力という問題が免じてくるのでございます。  労働組合法におきましては、この点について一つの要件を規定いたしております。それは、まず労働組合の組織の問題でございまして、労働組合の組織については労働者が主体となって組織する結社でなければならぬというのが第一点であり、第二点といたしましては、労働条件の改善を主たる目的とする結社でなければならぬというのが第二点になっておるわけなのでございます。したがって、結社の自由を認め、労働組合を認めまする上からいって、その組織並びに目的について制限をすることは条理上当然のことでございまして、このことを認めることは、決して結社の自由の原則に反するものとは思われません。  しかしながら、この結社の存在を認め、またその労働条件改善のための団体交渉という組合の基本的機能をこの二つの事柄以外の事柄によって区別をして取り扱うということは、これは結社の自由の原則、すなわち、八十七号条約違反になるわけなのでございます。そこで、私どもは登録という方式を設けてはおりますものの、しかし組合の基本的機能でございます団体交渉の能力というものにつきましては、この登録という行政的な措置によって、あるものは認め、あるものは認めないというような区別をいたしますることは、これはILO八十七号条約精神に根本的に反するというふうに認めておるわけなのでございます。  もとより団体交渉につきましては、御指摘のような九十八号条約が存在をいたしております。この九十八号条約においては、団体交渉の権限を公務員の組合についてはある条件のもとに制限をすることは差しつかえないという趣旨になっておるのでございまして、政府の従来からの取り扱いといたしまして、公務員団体につきましては、三公社五現業の職員は完全なる団体交渉の能力を認めておりますが、しかしながら、その他の一般公務員あるいは地方公務員団体につきましては、団体交渉権を制限いたしまして、団体交渉の話し合いを行なうということは認めておりますが、しかし、その交渉の結果に基づいて協約を締結する場合においても、その協約に対しては法律上の保護を与えないという制限、すなわち団体協約締結権は法律上認めないという制限をいたしておるのでございまして、この点は九十八号条約に照らしても決して間違ってはいないというふうに思うのでございます。
  32. 濱田幸雄

    濱田委員 労働大臣のいまの御見解、やはり問題が残るような気がしてなりません。ILOの憲章の精神とか、あるいは八十七号条約精神とか、これによる結社の自由、この結社の自由を尊重しなければ、真の世界的な平和あるいは国内の繁栄ということも期待ができない。これは当然のことであって、その点は私は何もつけ加えて申す必要はないのです。ただ、たまたまいまもお話がありましたのでございますが、やはり八十七号条約批准によって、公務員団体の交渉能力といわれますが、一応能力ということばを私使ってみましょう、能力に差別をつけることは、ILO本来の精神に反するというような御意見のようにいま承った。私は、実は冒頭に労働大臣にも伺ったことでもありまするが、今回このILO八十七号の批准をやるにあたって、やはり国内法との関係をどの程度でけじめをつけていくかということが、われわれの苦心の存するところでもあります。午前中の質問の際にも申したILO結社の自由ということを尊重するということばかりに、極端にいえば重点を置いていきますと、国内法改正のようなこともたいして意義がないじゃないかというふうにすら私は本来考えております。現行法においても、先ほど私が申し上げたように、とにかく公務員団体の当局に対する交渉というものは、登録を受けたものでなければ、いわゆる法律的な意味での権能というものはないのじゃないだろうかというふうに、私は私なりに解釈してきておる。そのけじめというのですか、今後われわれが条約批准に伴って国内法改正をするにあたって、そのけじめというものは、八十七号条約批准しようがしなかろうが、やっぱりわれわれは持っておらなければならないのじゃないだろうか。特に私申した、いま労働大臣も大体御同感でございましたが、この団体交渉、もちろん公務員に与えられたところの団体交渉の、私がいえば権能といいたいのですが、その団体交渉の幅というものは、一般の民間労働組合に対する団体交渉権とはうんと違うこと、これも重々承知しておる。またそれがあたりまえだと思う。そういうところから今日の国内法のたてまえというものも置かれておるのですよ。今回八十七号を批准するために、午前中から何度も私同じようなことを申したのですが、結社の自由ということにほとんど無制限な——ことばづかいはむずかしいと思うのですが、重点を置いて、そうして国内法を今後処理していくということにつきましては、やっぱりお互い考えてみなければならぬ点があると思います。いま労働大臣の御答弁がありましたことは、私、これまでこの委員会の席で承ったところと大体変わってないものでございますから、このことをあまりここにこだわって質問を繰り返すことは避けたいと思いますが、ただ、私、この問題につきまして、さきにも申したとおり、今度の国内法改正につきましては非常に重要な面があると思うのでございますので、私どもといたしましては、いまの公務員団体のあり方というものについて、十分に慎重な考慮を払わなければならぬと思うのでございます。私、もう率直に申す。昨年の春のころまででないかと思うのですが、四十三国会の召集せられました当時までの——いま私が御質問しております職員団体の交渉権能——私は、能力でなくて権能と言いたいのですが、その権能についての政府の御見解は、この委員会で先日来労働大臣が御所見を述べられておりましたのとは、かなり違っておったものがあると私は見ています。こういうことをここで申すのは、私は適当とは思いません。適当と思いませんが、私は繰り返して言いますとおり、この問題は、ILO条約にからんでの国内法改正としては非常に重要な問題でございますから、あえて申し上げます。  昨年の第四十三国会召集当時に、自治省の一部局において作成したところのいわゆる答弁資料——これは各省共通だろうと私は見ています。この席でこういうことを私が申すのは非常に不適当と思いますが、しかし、この問題を解明をしていくには、どうしてもこれに触れざるを得なくなってしまった。そこで、私はその自治省の答弁資料を拝見さしてもらったことがあるのですから、いま。ここに控えてきたものを一応読んでみたいと思う。これを許していただきたい。  問いとして、「登録団体に対し当局は交渉に応ずる義務を負うのか」という、一応想定せられた質問でございます。これに対する答えは、「改正法五十五条一項」——というのは地方公務員法改正法案でございましょう。「五士五条一項は、登録を受けた職員団体勤務条件に関する交渉権能を明記したものであって、このように法律上明確な交渉権能を有する職員団体から適法な交渉の申し込みがあれば」云々とあって、「交渉に応ずべき義務を負うものである。」当局はその義務を負うものであるといっておる。さらに問いとして、「登録されない団体は当局と交渉ができないのか」ということでございます。これを受けて答えは、「登録されない職員団体も交渉する能力を否定されていないものであるから、これと交渉を行なうことを禁止されてはいない」そこに交渉の能力ということをうたっておる。「当局が交渉することが望ましいと判断したときは交渉に応ずるものである。」というような答弁の資料でございます。これは一資料でございますよ。一官庁の資料だ。私はこういうことをここで取り上げたくないが、やはり結論をつけるためにはこういうものをも参考にしなければならぬと思う。自治省のある一部局のそういう答弁資料というものは、この委員会においてはたいした権威あるものとは、私はもちろん思っておりません。しかし、そういうような見解は、少なくとも昨年の春ごろまでは、おそらく日本政府あるいは事務当局としては持っておったものでないかと私には思われる。それが去年あたりからずっと変わってきた。いま労働大臣の御説明のとおりに変わってきておる。私はその間のいきさつは知らない。政府の見解が今日のように変わってきたといえば、それだけのことでございしょう。しかし、これは、私といたしまして純法理論的な立場から見ますと、やはり昨年の三、四月ごろまで事務当局考えておったような、登録団体には当局と交渉する権能——権能というのがいいか権利というのがいいか、私にはその区別は十分につきませんが、とにかく単なる能力ではない、権能がある。そういう登録を受けたところの団体が当局に交渉を申し込んできたときには、当局はこれに応じなければならぬ義務があるといっておる。ところが、今日は、登録団体であろうが非登録団体であろうが、すべて同じように交渉の能力がある。そしてこの交渉の能力がある団体が当局に交渉を申し込んできたときには、登録団体については、その性格が十分にあらかじめわかっておるから、すみやかに当局は交渉に応ずるだろう。非登録団体ではそうでないから、よく実体を調べた上で、本来の職員団体としての性格を持っておるなれば当然この交渉に応ずるということを言っておる。私は、応ずるとか応じないとかということは、この法律案審議するにあたってたいして問題でないと思うのですよ。やはりこの法律案において、または現行法において、とにかく登録団体はこういうことができる、非登録団体はそれができないというように、いままで大体書き分けてきておったものが、その交渉の能力という一本にしぼってしまって、そうして登録団体であろうが非登録団体であろうが、同じ交渉の能力があるという。しかも、政府あるいは当局の立場からいうと、登録団体であろうが非登録団体であろうが、その交渉がありましたときにこれを受けて立たなければならない義務があるとかないとかというようなことは、一切触れないような言い方、ここに私は、今後問題を処理するにあたってお互いが注意しなければならぬ点があると思うのです。これは私の単なる推察であります。昨年来この問題を中心にして、自民党と社会党の間で話し合いが進められたことは、もう否定することのできない厳然たる事実です。そうして、その話し合いのうちに、登録団体であろうが非登録団体であろうが、同じように当局に交渉することができるように今後処理してみようでないかというような空気がかもされたんではないかと私にはとれるんですよ。その空気に対応するために、いまのように、登録団体であろうが非登録団体であろうが、同じ交渉の能力がある、権利義務の関係ではないというように御解釈をなさっておる節があるんではないかと私は推察するのですが、その点はどうでございましょう。政府側からの率直ないきさつなり御見解を承ってみたいと思うのです。
  33. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど来私がお答え申し上げましたような趣旨で政府の原案を解釈するということは、三十六年の五月に日本政府からILOに対しまして、この問題についての政府の解釈を通告いたしております。その通告において、すでにいま申し上げたような趣旨がうたわれておるのでございまして、その大体の要旨は、登録されない団体についても交渉能力を否定する趣旨ではないが、登録した団体については当局が積極的に交渉に応ずる体制をとる、こういった趣旨の回答日本政府からILOの事務局のほうにいたしておるわけでございます。したがいまして、先ほど来申し上げました解釈というのは、少なくとも三十六年五月の日本政府のその回答以後、政府としては一貫いたしておるところでございます。  次に、交渉の義務を登録した団体について当局が負うかどうかという問題でございまするが、実は当局が交渉の義務を負うものであるかないかということについては、われわれの解釈といたしましては、政府原案においては規定はないということでございます。御承知のとおり一般の民間労働組合に適用する労働組合法におきましては、労働組合団体交渉に対して、使用者は正当な理由なくしてこれを拒否することのできない、いわゆる応諾義務というものを負うておるのでございまして、これは法律に明らかに規定をいたしてあります。そうしてこの義務に対応する組合の権利が侵害された場合、すなわち交渉が不当に拒否されたという場合においては、不当労働行為として矯正する手段が法律規定してあるのであります。しかし、公務員法あるいは地方公務員法におきましては、何らさような規定はないのでございまして、法律上交渉に対する応諾義務は規定されていない、単に組合側の能力規定のみを規定してある、こういう趣旨でございます。ただ、その団体交渉の申し入れに対して、登録した団体については積極的に当局は応ずるのであるという一つの行政方針が法律の中に規定してある、こういうふうに解釈をいたしてまいっております。
  34. 濱田幸雄

    濱田委員 政府の見解を定められましたいきさつにつきましては、よくいまの御答弁を承りまして、そのいきさつがあったということは承知をいたすものでございまして、これ以上この問題を論じておりますと、いたずらに枝葉にわたるおそれがありますので、あまり法律的な問題についてさらに質問を繰り返すことは遠慮をいたしたいと思っています。ただ、いま労働大臣の御答弁法律上義務があるというような規定がないからというだけで、この問題を、先ほど御見解を述べられたように処理していいのかどうかということは、私まだ多少気にかかっております。このことだけは一応念を入れて申しておきたいと思う。  さらに、午前中に労働大臣にも私のつたない意見を申したとおりでございますが、国内法改正にあたっては、やはり現在における日本官公労組の交渉のやり方その他の事情というものをよく考慮に入れていかなければ、将来いろいろの禍根を残すでないかというふうに私は心配をしておるものでございます。それで、かりにいま労働大臣の御所見のように、非登録団体も登録団体と同じように交渉能力を持つものだというような考え方でこの法律改正していくということになると、その結果はどうなるのだろうかということも多少私ども頭の中では思い浮かべることのできるようなもろもろの現象が予想せられるのであります。たとえば、登録団体に対しては積極的に当局はその交渉に応ずるということ、非登録団体に対してはそういうように積極的に応じないかもしれないということ、ところが、実際のいまの職員団体動きを見たときに、非登録団体が当局に交渉を申し入れて、当局が、その団体が交渉に応ずるだけの性格を持っておるものであるかということを判別いたします際にも、これは非常に問題が出てくると思います。非常に困難だと思うのです。その事情、そうしてさらに私突き詰めて考えますると、その非登録団体が交渉を申し入れたときには、当局の判定を待たず、従来のような、いわゆる法律を逸脱するがごとき交渉を、いわゆる事実上交渉でございますが、続けるのではないだろうか。さらに私もう一つ申したいことは、登録団体であろうが非登録団体であろうが、本来法律的な立場から言うと、政府に交渉する能力があるというような一本やりでいきますと——しかも先ほど午前中に私が伺った点ともからんでいくのですが、職員団体の構成ということを見て、職員以外の者がそのメンバーに入っても差しつかえないというようなことも一応頭に入れて、そうして今後の職員団体と当局との交渉というものがどういう姿でいくのだろうかということをいろいろ頭の中で私は想像してみておるのです。非常に最悪のときを予想しておることでもございますが、結社の自由ということで、一つの官庁の職員がごく少数のメンバーで自由に組合をつくることができると思います。そうしてそこには、これは別に思想的なものをここで取り上げる意味ではありませんが、他の職員といろいろ立場を異にしておる人々が小団体を結成して、もちろんこれは登録をするということは考えていないでしょう、それが登録団体と同じように、おれたちは能力があるから政府は交渉に応じなければならぬということを申し入れたときに、その官庁としてどういうさばきができますか。実際のこれは行政面のことでございますが、これを考えますると私は非常に危惧の念にたえない面があるのです。非登録団体のいままでの違法的な団体行動、これももう一々ここで申し上げる必要はありません。そういう面をかれこれ総合してみますると、いま労働大臣の御見解のごとく、登録団体も非登録団体も本来法律的な立場では同一のものであるというような考えでこの国内法改正をやり、そしてそういう解釈によって法律を運用していったときに、はたして職員団体団体活動というものをいわゆる交通整理ができますか、できませんか。交通整理ができないとなると、これは何のための立法ぞやということになるのです。少なくとも団体交渉だといわれておる当局との職員団体の交渉について、われわれが法律をつくる以上は、しかも登録という制度を厳として置いておく以上は、何のための立法ぞや。私は先ほどから申し上げることにあえて固執するような気持ちでこんなことを申しておるのではないのですが、しかしせっかく登録制度というものを認めて、この法律改正をやろうとしておるときに、少なくともいまの点だけから見ますると、われわれの法律改正という趣旨が雲散霧消するのではないだろうかというような気がするのです。私は冒頭に自分の所見を申したとおりでありますが、やはり登録団体には権利といっていいか、権能といっていいのか、非登録団体とは別の立場で当局と交渉することができる地位を保障するということ、そして政府が義務があるとかないとかいうことは私は言いたくありませんが、少なくともそういうような登録団体から交渉の申し入れがあれば、政府は当然のこととしてこれを受けて立つということ、これでなければこういうような公務員団体の権能、団体交渉についての国内法改正なんかやる必要はないじゃないか。率直なことを申しますると、私冒頭に伺ったとおり、現行法については登録団体は正々堂々と交渉することができる、非登録団体はその立場は認められてないということですが、私はそれが正しい見方だと思う。国内法をこれから改正しようがしなかろうが、それが本然の姿だ。私は何度も申し上げたのですが、ILOの勧告とか、あるいは条約文というものを見て、ただ抽象的に結社の自由とか、団体交渉の能力とか権能とかいうものを見て、そして国内法の処理をする、改正をするということは、よほどお互いが戒めなければならぬと思います。非常にくどいことを申し上げて恐縮でございますが、現行法の解釈なりまた今度の改正法についての考え方を、もう一度労働大臣と、人事院の総裁も見えておりますので、もし人事院総裁として私にそういう問題について何か教えてくださることがあるならば御所見を承ってみたいと思いますから、御答弁のほどをお願いします。
  35. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 お教え申し上げるなどという大それたことはなんでございますが、私どもが現在おあずかりしております制度のたてまえを申し上げますと、これはいまさら繰り返すまでもございませんが、現在の人事院規則におきましては相当激しいと申しますか、交渉は人事院に登録した職員団体によってのみ行なわれるというようなきわめてはっきりした表現がございます。しかし私どもとしては、これは別に事実上職員団体以外の団体が話し合いにこられるという場合にそれを受けてはいけない、そういう意味ではないということはもちろんでございますが、要するに、のみというような非常に力んだ表現をしておるわけです。この趣旨はおそらく現在の制度におきましては職員団体というものの条件をはっきりいたしまして、登録などもこまかに規定をいたしまして、そしてこの職員団体は真に職員を代表するものだということが登録によってはっきり証明されている、そういうはっきりした証明を持っておる団体の方々が交渉にこられた場合には、これをむげに断わることはいけませんよ、すなわち、正当な事由があれば別でありますけれども、正当な事由がない限りは当局者としては当然これに応諾すべき拘束を受けるのだという考え方で、割り切ってまいっておるわけであります。しかし、先ほど申しましたように、その他の団体の関係においても実際上話し合いにこられ、交渉にこられることを拒絶しなければならないというところまではきめておりませんから、ひいてはILO条約精神にもこれは反することはない、こういう考え方でおるわけであります。だんだんと今回の改正に関連いたしましてこの登録というものの意味ということにわれわれいろいろ思いを及ぼすような場面が出てまいるのでございますが、今日まで人事院で登録しておる団体は、千何百職員団体がございます。これは登録といってもなまやさしいことではございませんので、非常に慎重な調査をした上でわれわれが見きわめをつけた団体をはっきり登録申し上げているということでございますから、それほど慎重に手数をかけて行ないますこの登録がだんだん意味のないものになってきては、今後改正案において私ども職員団体の関係でお引き受けする仕事は実は登録の仕事だけなんであります。その登録だけの仕事について、それが意味がなくなるようになるということは、きわめて、これは感情論でございます。理屈はどうか知りませんけれども、私どもその立場におる者としてはどうもそういう感じを禁じ得ないということでございます。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現行制度の登録につきまして、ただいま人事院総裁からお話がございましたが、現在の登録制度また改正法律案における登録制度には、登録についての法律上の要件というものがあることは御承知のとおりでございます。しこうして、これらの要件は結社の側からいえば労働者結社権に対する一つの制限ということに相なるわけであります。したがってこれをそのままにいたしておきますると、ILO八十七号条約の第二条に「労働者及び使用者は、事前の認可を受けることなしに、自ら選択する団体を設立し、及びその団体の規約に従うことのみを条件としてこれに加入する権利をいかなる差別もなしに有する。」というこれについて違反のおそれがございまするし、さらにまた第四条の「労働者団体及び使用者団体は、行政的権限によって解散させられ又はその活動を停止させられてはならない。」という条項、それから第十一条の「この条約の適用を受ける国際労働機関の各加盟国は、労働者及び使用者が団結権を自由に行使することができることを確保するために、必要にしてかつ適当なすべての措置をとることを約束する。」これらの条項にひっかかってくるおそれがあるわけなのでございます。しかし、それは団体交渉だけのための制限であって、結社そのものは自由じゃないか、したがって、九十八号条約の問題であって、八十七号条約の問題ではないじゃないかという論もあるいは考えられるわけでございますが、これについては先ほど私が申し上げましたるごとく、ILO結社の自由ということを尊重するゆえんは何であるか、それはまず労働条件の改善ということを頭に置いての問題である、労働条件の改善というのは、結社ができたというだけでは成り立たないのであって、それを実現するためにその団結した組合が団体交渉を通じて使用者と交渉するということによって初めてその団体の意義があるわけなのであります。したがって、団体交渉を制限するということは団結の自由を認めるということの意味を全く無意味に終わらせることになるわけでございまして、ILO条約にいわゆる結社の自由というのは、単なる国民としての結社の自由でなく、これは勤労者の団結権保障しておるのであります。勤労者の団結権であるというところに団体交渉を通じて労働条件の改善という結果を生じてくる。この点は切っても切り離せない問題でございまして、一般的な結社の自由という観念でもって扱うべき問題ではないのでございます。かような趣旨から、政府の原案につきまして登録を通じて交渉権が制限されておるようなことになっているのではないかということをILOの当局が心配いたしまして、それに対して日本政府がさような事実はないということを回答したという経緯もあるわけでございます。したがって、私どもILO条約八十七号を批准いたします限りにおいては、先ほど来申し上げたような政府原案の解釈をとるほかはない、こう考える次第なのでございます。
  37. 濱田幸雄

    濱田委員 重々にわたっての労働大臣の御答弁でございますので、敬意を払って承ります。ただ、私の考えというのはやはり変わらないということになりますので、これ以上はもう論及いたしません。  次に、世間でよく言う中央交渉につきましては、私、先般から当委員会における政府側の御答弁を承りまして、大体私どもが理解をしておるように関係各大臣からも御答弁ができたように思いますので、これにはもう私、触れたくありません。ただ、この地方公務員法改正について、いわゆる修正案として考えられておることで、ちょっと私まだ理解を十分にいたしかねる点があるのは、修正案にうたっておるところを見ますと、「職員又は職員団体は、職員団体以外の団体又は連合体を事実上組織することを妨げず、」というようなことがあるのでございますが、ここでいう「職員団体以外の団体」というのはどういう意味合いのものであるか、何かこれは考え違いをしていないかと私自身もいままで見てまいっておりますが、何か特別の意味があるのでしょうか。職員団体としての連合体なんかをつくる際に、職員団体以外の職員団体が一緒になって組合をつくるということ、何か特別な意味があってこういうことを事実上認めることに相なっておるかどうか、これは私、自分で十分に了解をまだしてない点がありますから、御答弁をいただいて理解ができれば理解をさせていただきたいと思うのでございます。
  38. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 職員団体と申しますのは、労働条件の維持改善を目的とする団体でございます。それの単位職員団体の連合体も職員団体ということに改正案ではなっておりますが、そのほかに地方公務員法上の職員団体と、地方公営企業労働関係法上の労働組合とが連合体をつくっておるというものは法律上の職員団体ではございませんので、この御指摘の場合の事実上の労働者団体に当たることになるわけでございます。私どもの関係で申しますと自治労などがそれに当たると思います。
  39. 濱田幸雄

    濱田委員 いまの御説明によりましてよくわかりました。もちろん、これは単なる修正案でございますので、これが政府の提案にもなっていませんので、これ以上論議する必要もないくらいに思いますが、いまのような解釈なれば、私としてはその意味がよくわかりますので、いまの御答弁を感謝いたします。  次に、私伺ってみたいのは、いわゆるチェックオフについてのことでございます。現行国家公務員法にはもちろん  このチェックオフというものは認めてない。地方公務員法においてはおそらく条例において事実上実施しておるところも相当あるのじゃないかと思われますが、今度の地方公務員法改正案を見ますと、その二十五条の二項で「職員の給与は、法律又は条例により特に認められた場合を除き、通貨で、面接職員に、その全額を支払わなければならない。」ということになっております。これがいわゆるチェックオフを将来やめるという一つの基本原則であると思います。ただ、法律または条例によって特に認められた場合を除くということになっておりますので、そういう例外も将来あることと思う。先般河野密委員から総理大臣に御質問がありました際に、たとえばチェックオフとかあるいは専従職員というような制度、これはいわゆる職員団体としての既得権である、したがって、今度ILO条約批准国内法改正をいたすにあたっても、この職員団体の既得権を無視するようなことは適当でないでしょうというような御質問であったと私聞いております。それに対して総理大臣答弁をなさっていますが、この問題にからんで一部の人々の意見として私これまで耳にしておることがありますので、念のために自分の所見を申し上げながら政府の御見解を承ってみたいと思います。というのは、このチェックオフを将来原則として取りやめるということについて、やはり河野密委員からの御所見があったように、いままでの職員あるいは職員団体としての既得権は尊重しなければならぬというような意味合いで、その一つの方法として、別にこれはここで改正案をつべこべあげつらう意味ではありません、将来の適用としての問題になるが、いわゆる労働金庫に天引きしたところの資金を預託をするような行き方が最も賢明でないだろうかというような考え方も実はわれわれの間にもあるのでございます。それについて念のために承っておきたい。  この労働金庫は私がここで読み上げるまでもないことでございますが、労働金庫法によりますと、労働金庫というものは、その金庫に加入しておるところの団体の福利、共済活動のための融資をやる、そして事業運営については政治的中立を維持しなければならぬというような意味規定があったと記憶するのです。そういうような意味からいいまして、労働金庫そのものがいわゆる労働争議のための資金を融資をすることは法律上認められてないことだと私は解釈しておる。きょうは大蔵省の専務当局も見えておることでございますので、そういうふうに大蔵省とかあるいは労働省が労働金庫に対しての監督あるいは指導というものをやっておるとは思いますが、その実情をもし御説明ができるなれば、あらかじめ承ってみたいと思います。どういうことに実態はなっておるか、これをお伺いいたします。
  40. 三治重信

    ○三治政府委員 労働金庫の機能は、いま先生が申されたようになっておるわけでございまして、実態はどうなっておるか、こういうことでございますが、実際は組合で預金をし、組合で借りたり、それを福利施設、福利的に使っている。また、その個人も加入資格があって、加入しておれば、自分も預金をしてまた貸し出しができる、こういうことでございまして、だんだん労働金庫も、初めはいろいろの生活資金的に使われていた部面が多かったわけでありますが、私が見ているところでは、最近やはり労働者住宅の貸し付けとか、また福祉施設の設置のための貸し付けとかいう方面に活用しようとする意欲が非常に強く見えているというふうに申し上げることができるのではないかと思います。
  41. 濱田幸雄

    濱田委員 労政局長からいまの御説明を承りまして、まさにそのとおりになっておればまことに私はけっこうなことだと思うのです。おそらくこれまで労働省もそうだと思いますが、大蔵省側にしましても、地方財務局なんかにおいて労働金庫のいわゆる事務監査というものをやっておることと思います。どの程度の監査をやっておるかということを、この席で承る時間もありませんので省略させていただきますが、それぞれの立場立場で指導なり監査をなさっておりましょう。私は、いま労政局長からの御答弁がありましたように、本来の労働金庫そのものの使命というものを逸脱しないように、せっかく各団体なり個人からの預金を預かっておる金庫でございますから、今後とも事務当局におきましてもその点の御指導を特にお願いをしたいと思います。ただここで私がチェックオフについて、労働金庫というものと結びつけて発言をいたしましたのは、いま労政局長の御答弁のとおりに現在もまた将来も労働金庫の資金というものが運用せられていくなればけっこうでございますが、ちょっと私にはこれについて気にかかる点がある。といいますのは、月刊の「労働金庫」という雑誌がある。私たまたまこれを見ることができたので申し上げる次第でございますが、これは社団法人の全国労働金庫協会で発行しておる雑誌でございます。本年の一月号に、総評の事務局長の岩井章氏の論文が載せられておる。その論文のうちにこういうことがあります。「労働金庫に対し、労働者はそのストライキ資金の貯蔵所として、大きな期待を持っている」ということです。また「積極的に、ストライキ資金の貯蔵所としての使命を果たしてほしい。」ということを言っておる。これは労働者の立場からでございます。こういうような総評の事務局長の労働金庫に対する期待でございますね。私は期待せられておるからといって、法律がある以上そのとおりになるとは思いません。しかし先ほどお話のありましたように、生活資金あるいは住宅建設のための資金、そういうようなことで当然融資せられておりますが、いま、この岩井事務局長考えておるように、形はそういう形式をとって融資をせられておるだろうが、実質的には労働争議のための資金としてこれが運用せられておる、あるいは将来せられるということが万が一でもあるとすると、これは私どもよく注意をしなければならぬことだと思います。それで私はあえて申す。いわゆる労働金庫に預託すれば一挙両得だからチェックオフなんかも続けてみてもいいじゃないかというような考え方は、これは何も具体的に出てない問題でございますが、一応老婆心を持って私の考えを申し上げる次第でございますけれども、そういう面についてよく配慮を続けていただきたいと思います。そういうことについてあらためて労働大臣の御所見を承ってみたいと思うのでありますが、どうでございましょう。
  42. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国家公務員地方公務員は御承知のとおり争議行為を禁止されておるのでございまして、国家公務員あるいは地方公務員労働組合がストライキを行ない、そのためにストライキ中の生活資金を労働金庫から借り入れるというようなことはあるべきことではないのでございまして、私どもはさようなことのないように労働行政を常に心がけていきたいと思っております。
  43. 濱田幸雄

    濱田委員 大体私が承ってみたいと思います具体的な事項は以上数点でございましたが、なお専従職員に対する処理とかあるいはその他の面についても、同僚の諸君からすでに質問がありましたので、この際はこれを遠慮して言及することは差し控えてみたいと思います。  今度の国家公務員法改正にあたって、内閣に人事局を置いて人事管理体制を整えていくということ、その考え方は私は十分理由があることと思います。が、しかし、実際にああいう機構をいまの案で立てていって、われわれが期待するような人事管理の実績をあげることができるかというと、ちょっと私はまだ十分にこれでだいじょぶだというようには考えかねる面があるのでございます。しかし私は言うまでもなく与党の一委員でもありますので、政府の提案になっております法律案に対してこの席で具体的な批判は差し控えさしていただきます。  ただ、私の所見でございますが、今後この法律案お互いの手によって審議するにあたりましては、政府当局におきましてもそういう面をもう一度お考えをいただく機会を持っていただいてはどうだろうかという私の希望的な意見でございますが、これについて——実はすでに人事院総裁からも先般承りました。人事院総裁の立場によっての御所見、これは十分私は敬意を持って承っております。政府側というか、内閣を代表しての大橋労働大臣として具体的にこれをどういうふうに処理するということは、もちろんこれを口にする今の段階ではありますまい。が、しかし、政府原案で完全無欠とは、私、思わない点が実はあるのでございますので、そういう点はよくこの委員会を通して検討してみられますかどうか、それに対して政府側はどういう態度に出られるか、御答弁が願えれば承ってみたいと思います。
  44. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、このたびの機会に人事行政の責任体制を確立するという考えのもとに人事局を設置するという方針で提案をいたしておるのであります。しかし、この人事局の所掌事項につきましては、いろいろ広範でありまするし、また改組後の人事院との関係等各般にわたって考えるべき点は多々あろうと思うのでございます。政府は一応原案をもってよしとして提案をいたした次第でございまするが、国会の御審議の過程を通じまして御意見のほどはざらに十分に拝聴さしていただきたいと存じております。
  45. 濱田幸雄

    濱田委員 以上、るる私つたないことばを使って政府所信を承ったのでございますが、午前中から午後にかけて御答弁を承りながら私の感じておる点は、今回のこの国内法改正、これは国家公務員法地方公務員法だけでありません、その他の二つの法律案を総合して考える点でございますが、個々の政府原案に対する手直しというのですか、修正意見というものは、先ほど申し上げたとおりに、現実の姿としてわれわれの前にもう出されておる。これは否定することができない事実でございます。そういうようないわゆる修正案というものと、そしていま政府が提出なさっております法律案を対照しながら私の感じておる点は、十数項目にわたってのいわゆる修正案というものを個々ばらばらにこれを見てまいりますと、あるいはなるほどもっともだと思う点もあるのです。私はこれを全部消極的に批判するつもりではありません。が、しかし、先ほどから申し上げますように、職員団体の目的にからんでの問題、あるいは職員団体の構成についての問題、登録、非登録の関係、あるいはいま申したチェックオフ、そういうようないろいろ修正案といわれておるものを総合して、これをまとめて判断をしたときに、政府原案に対してこういう修正案がいまわれわれの前に出されておるということ、そういう修正案をつくったのは——つくったというのはおかしいのですが、話し合って、そしてそういう修正案を要求せられておる立場にある人々のその意図というものがどこにあるかというと、私は、やはりこれに参画した革新陣営にある人々が、今度の法律改正にあたってこの修正案というものを生かして今後の労働運動を従来以上に活発に——私はことばづかいがへただから言い過ぎかもしれませんが、違法的な活動をも続けていくということ、これを意図しての一つの足がかりをつくろうとしておるのではないかとすら私にはとれる。左翼の陣営に属する人々は、公務員についてもいわゆる完全な意味団体交渉権あるいは争議権を奪回しなければならぬということを主張しています。その人々の立場は立場として私はよく理解をすることができる。そういう意図を持っての今度の修正案になっておるのではないかと私にはとれます。その点を少なくともわれわれ国政に直接関係する者といたしましては理解をして、万が一——このILO条約というものを批准して、日本労使関係正常化する、特に公務員団体活動正常化していくという意欲を持ってお互いがこの審議に携わっておるのですが、万が一いまのようなことになると、せっかくのILO条約批准したわれわれの意図、目的というものと相反する結果を将来に残すおそれがある。これは杞憂といえば杞憂でありましょうが、私にはそういう感じがほんとうにするのです。そういう意味合いで、このILO八十七号条約批准国内法改正につきましては、十分にわれわれも注意をしていくつもりでおりますが、政府当局におきましても、そういう面はよくお考え置きをいただきたいと思います。これに対する労働大臣の御所見を率直に承ってみたいと思う。
  46. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府提案の原案に対しまして、社会党、自民党両党の代表者間において、いろいろ審議の過程を通じて検討すべき諸点が指摘せられたことは政府承知をいたしておるのであります。これらの点がどういうふうに委員会において御決定になるか、これについては政府も深い関心を持っていろいろな角度から検討を進めておるところでございますが、しかしかような修正案が出るに至った経緯に関しまして、労働組合の内部において組合活動を過激、違法な活動に引きずっていこうというような意図を持った人々があり、その人々がこうした問題点を当委員会においてお取り上げになるような情勢をつくり上げてきたのではなかろうか、こういう点につきましては、私どもはむしろ率直に申し上げまして逆な見方をいたしておるのでございます。というのは、確かに今日国家あるいは地方の公務員及び公共企業体などの職員の間において、これらの職員団体を今後どういうふうに持っていこうかということについて相対立する二つの考え方が組合内部にあることは私も認めざるを得ないと思うのであります。その一つは、けさほども申し上げましたるごとく、共産党員が相当入り込んでおり、これらが中心になっていわゆる執行部に対する反主流派的な動きをいたしておる。これに対してむしろ組合の活動を適法、堅実なものにして、そうして公務員組合として公務員の生活を安定し、公職に専念させるような、そういう方向へ組合を引きずっていこうという動きもあるのでございます。この二つの力がいかに働いて両党の申し合わせというような動きになったかということにつきましては、私はむしろ穏健な人たちが過激な人たちを押えつけるという形でこの話し合いが行なわれてきた、こういうふうに労働省といたしましては、いろいろな情報に徴しましてさような見方をいたしておるということを申し上げておきます。
  47. 濱田幸雄

    濱田委員 ただいま労働大臣所信のほどを承りまして私も安心をいたします。  もうこれ以上質問する必要もないかと思いますが、せっかく今度の苦心の作であるILO条約批准国内法改正をやるにあたりまして、いろいろ日本の思想、国民の間の思想の流れというものも十分御判断のことでございましょう。まあ、いえば宋襄の仁におちいるようなことのないように、この上とも私は祈るような気持ち政府当局にお願いいたしたいと思います。  これをもって私の質問を終わります。
  48. 倉石忠雄

    ○倉石委員長 安井吉典君。
  49. 安井吉典

    ○安井委員 ILO結社の自由に関する実情調査調停委員会のエリック・ドライヤー委員長の書簡が、大平外務大臣並びに各提訴の労働組合に対して過日届いたわけであります。初めに私はその内容につきまして、さらにまたそれに対する政府の対策についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  今度のこの書簡は、この委員会にこの事件における各申し立てを付託することに同意された日本政府の決定を高く評価いたします、とこう述べながらも、きわめてきびしい態度でしたためられているわけであります。  大体考えてみましても、八十七号条約批准の問題は、ILO結社の自由委員会の第百七十九号事件関係報告をくってみますと、第三十二次報告のときに初めて出てまいりまして、日本政府の情報を理事会に報告することを求めているわけでありますが、それが第三十六次の報告にまいりますれば、近い将来における解決を希望する、こういう表現になっております。第四十四次報告では、早期解決を希望する、四十九次になりますと、法案の不成立を見たものでございますから、成立を希望するという言い方、五十二次になりますと、次期会期の承認を希望する、それから五十八次の一九六一年のころになりますと、失望の意を表明する、ディスアポイントメントということばが出てまいっております。第六十次になりましたら、その失望の再確認をする、とこういうことです。第六十四次になりましたら、強い失望という、キーン・ディスアポイントメントということばが使われております。第六十六次には、再び強い失望の意を表明する。それから六十八次ごろからは、政府のかまえもだいぶ変わってまいりまして、法案の提出、与野党の話し合いというようなものが出てくるものですから、何か希望を持ったような書き方がなされていたわけですが、いよいよ第七十三次になりましたら、もう業を煮やして、伝家の宝刀を抜いた。こういうようなかまえがこの調査調停委員会の設置であり、ILOといたしましてはそれこそ初めての実質的な活動日本問題について入った、こういうふうな段階であります。私どもが見ましても、思いのほかにきびしい態度であり、この日本調査に熱意を持って当たろうという気持ち、とにかく突っ込んだ徹底的な調査をしたいというふうな意向が見られるわけであります。とにかくこの機会に、日本の労働問題を深くえぐって、徹底的に検討してみよう、こういうかまえが見られるわけであります。  まず私は、この書簡を受け取った政府が、これに対しましてどういうふうな姿勢で臨もうとされるのか、この点からひとつ伺いたいわけであります。
  50. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 いま安井さんからお話しございました点でありますが、私どもは、この調査団が客観的に公平な審査を行なっていただけるものと期待いたしまして、この調査団に付託することについての同意をいたしておりますので、今度この書簡にもありますような審査方針に基づきまして関係の事実を調査される、この点はその御意向を十分に尊重して、その要請に従って調査に協力してまいりたい、こう考えております。
  51. 安井吉典

    ○安井委員 政府は追加陳述書を来たる七月四日までに委員会に提出する機会を与えられた、こういうふうな書き方になっているわけでありますが、それについての準備等につきましてひとつ伺いたいと思います。
  52. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これにつきましては、労働省が中心になってただいま準備にかかろうといたしておるのでございますが、いずれにいたしましても、本問題の重点は、当委員会において御審議になっておりまする八十七号条約批准いかんということでございます。私どもは、まだ十分に時間の余裕もございまするので、この機会に委員会の皆さまに極力お願いいたしまして御審議の促進をはかることが第一であって、陳述についての事務的な準備というものは、事務的には準備をさしておりまするが、まだ私どもが直接それに携わるという段階ではございません。極力当委員会の御審議に御協力申し上げるという考えでおります。
  53. 安井吉典

    ○安井委員 委員会が証言聴取を希望する人たちは九つの区分に従って非常に大きな数と内容に及んでいるようであります。これのほうはまだ時間的な余裕があるからでありますが、いずれにいたしましても、当面追加陳述書の提出というような段階に当たっておりますので、政府のほうの準備が十分に進められなくてはならないわけであろうと思うのであります。  なお、続いてこの書簡について伺いたいのでありますが、日経連に対しましてこの委員会が陳述書の提出の機会を与えることを決定しているようであります。これについてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  54. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ILOの書簡で示しておりまする各機関に対しましては、日本政府を通ずることなく、ILOから直接に要請が行っているわけでございまして、それに基づいて各団体ともそれぞれ御準備中のこととは存じますが、日経連の実情につきましては、まだ連絡いたしておりません。
  55. 安井吉典

    ○安井委員 私はこの書簡の中の、この委員会日本の現行法制の解明書案を作成して送付するという点にたいへん興味を覚えるわけであります。別便で送るという書き方になっておりますが、まだ着いておりませんか。
  56. 大橋武夫

    大橋国務大臣 未着でございます。(「来てるよ」と呼ぶ者あり)
  57. 安井吉典

    ○安井委員 それではこの点につきましては、到着し次第、これは重要な資料となると思いますので、この委員会に御提出を願っておきたいと思います。  ところで、私はこの委員会審議に終始ここにすわっていたわけじゃありませんが、いろいろお話を承りましたり、あるいはまた速記録を全体的に読み返したりしてみまして感ずるわけでありますが、自民党の委員諸君の御発言は、一番初めの澁谷委員から始まりまして、きょうの濱田委員まで、どうも同じ党所属の議員の御発言かということに不審を抱かざるを得ないような内部混乱があるように思うわけであります。私は、池田総理がこの委員会で、一番初めの河野質問に対しまして、この国会でぜひ条約並びに各法案一括してあげようというふうな、そういう熱意をお示しになったように記憶をするわけでありますが、どうもそういうふうな御努力が全くなされていないのではないか、こういうふうな印象を受けるわけでりあます。  ところが一新聞を見ますと、前尾幹事長は十日ごろ衆議院を通すのだ、そういうふうなことも言っておられるようでありますし、あるいはまた新聞の報道によりますと、総裁の改選の問題にこれがからんでおるのではないか、こういう書き方をしている新聞もあります。私は、まさか、国のこういう重大事件が一党の党内事情の中に左右される、そういうような扱いになっているとは考えたくないのであります。しかしながら、もちろん私ども議員は一人一人発言権を持つわけでありますが、同じ党の中のやはり早く一本になった姿勢というようなものをつくってもらわなければ、この問題の解決というものはおぼつかないのではないか、かように考えるわけであります。   〔委員長退席、安藤委員長代理着席〕 どうでしょう、官房長官は池田内閣の大番頭という立場から、きょうは残念ながら総理においでをいただけておりませんので、この問題に対する、政府はこういう熱意で解決に当たりたいのだというそういう政府としてのお気持ちをひとつお話し願いたいし、それからまた、窓口になっております労働大臣も一番中心的なお立場に立っておられるわけでありますから、何かもたもたしている状態を一日も早く解決していかなくてはならないのではないか。そういう点についての御決意をこの際ひとつ伺いたいわけです。
  58. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 お話のとおりに、この条約の問題につきましては、何回か国会に提出しては審議にまでも入らないというようなことで年を経てまいりまして、まことに残念に存じておりましたが、今国会におきましては、委員会の御審議も始まり、非常に活発にお取り上げ願っておりますので、ひとつこの委員会の御審議を通じてよい結論を得て、そうして一日も早く成立を見ることができますように、ぜひ期待をいたしたいと存じます。
  59. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま官房長官の言われましたとおりに私も考えております。
  60. 安井吉典

    ○安井委員 私どもは、この問題の処理につきまして、河野・倉石会談という形で実質的に問題処理が進んでまいりましたことをよく知っております。しかし、俗に倉石案というふうな言い方がされておりますが、私どもは、これは倉石案ではないと思うのです。あくまで倉石・河野案でなくてはならないと思うのです。そういうしっかりした前提に立って問題を処理していかなくてはならないというふうに考えております。  ところが、その一応のまとまりました修正案の内容につきましても、全体的にはきわめて不満が多いというふうにいわれております。しかし、まあまあというようなところで、ようやく一応のまとまりを見せたという次第であります。  ところが、一部には、何かせっかく窓口折衝できまった倉石・河野案が若干後退をするのではないかというふうな考え方が流れたり、そういうようなことがあったあとへ、今度は調査調停委員会はきわめてきびしい態度で徹底的に日本の労働問題を洗うのだ、こういうようなかまえを見せてきた。こういうような問題もからんでまいりますと、せっかくまとめ上げた倉石・河野案というふうなものが後退するようならば、もうこんなものは流してしまって、もっと抜本的な徹底的な問題の処理というふうなことに進むほうがよいのではないかというふうな声も出てこないではないと思うのです。現に出ているという意味で私は言うわけではありません。会期の延長はしたが、どうもなかなか最後の結論にいくには道が遠い、こういうようなことでは私はならぬのではないかと思うわけです。これはただ単に政府だけを責めることで解決ができるということではないかもしれません。しかしながら、やはり政党政治の中におきましても、政府そのものの本気にやるかどうかという取り組み、そういうようなものが国会を動かす力になるのではないかと私は思うわけです。  どうでしょうか。さっき労働大臣は、あまりみずからの御意思を通すというふうなお気持ちじゃなしに、長官のしり馬に乗ったようなお答えであったわけでありますが、一番大事なお立場にあなたはあるわけですから、再度ひとつ伺いたいわけです。
  61. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、労働大臣就任の第一の使命といたしまして、長年の懸案でありましたこのILO問題を解決することは池田内閣としてのなさねばならぬ仕事であり、これをぜひなし遂げるべく最善の努力をしなければならぬというふうに考えてまいっておるのでございます。しかるに政府の提出いたしておりまする改正案に対しましては、御承知のとおり、各党それぞれにいろいろなお立場からいろいろな御意見があるのでございます。いわゆる倉石・河野会談を通じてある種の方向が示されておるようでございまするが、はたしてこれが当委員会審議を通じていかなる決着に落ちつくであろうかということにつきましては、政府といたしましても全く予想ができないような状況でございます。しかしながら、当委員会における各委員におかれましては、今日ILO八十七号条約批准するということは日本の将来のためにきわめて必要なことであり、この国会においてそれをなし遂げるということがあわせて必要なことで断るということにつきましては十分御理解を持っておられる方々であると考えておるのでございます。したがいまして、当委員会におけるいろいろな御論議は、今国会においてこの条約をぜひ批准したい、ついてはこの批准に伴って国内の労働法規の改正をできるだけ日本の労働運動の健全なる発展、また日本の産業の発展、そういった前向きの姿で解決しようという熱意に燃えた方々ばかりであると思うのでございまして、そういう意味で、皆さまの御意見に対しましては政府といたしましても心から傾聴し、敬意をもってその御意見を拝聴し、またこれに対しては誠実に政府の見解を申し上げておるつもりなのでございます。この上とも、積極的に御審議が進められまして、ぜひとも今国会において解決に相なりまするよう、重ねて希望を表明いたす次第でございます。
  62. 安井吉典

    ○安井委員 ちょうどいい機会でございますので、これは外務省の報告なのですか、労働省がおつくりになったものですか、このILO結社の自由委員会に対する報告集の中に、日本政府の陳述等が掲載されているわけでありますが、第六十四次報告や第六十六次報告の中に国会の審議についての記載があります。あるいはまた法案の処理についての記載がございます。その中に与野党の交渉担当者ということばが出てくるわけです。これはいわゆる倉石・河野会談を意味していると私は思うのですが、どうですか。
  63. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そのつもりで書いたわけでございます。
  64. 安井吉典

    ○安井委員 ということになりますと、自民党の中では、倉石さんのほうは党の窓口とは認めないというふうな言い方があるというふうに聞くわけですが、しかし政府のほうは、はっきり倉石さんは自民党の窓口だ、そういうことにおきめになってILOにも御報告になっていた、こう理解してよろしいわけですね。
  65. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは党の執行部の意向を確かめまして、そうして自民党で正式に委任をした交渉者だ、こういうふうに私どもは認めて報告をいたしておるわけであります。
  66. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ、自治大臣はおられませんが、行政局長がおられますので、ちょっと伺いたいわけであります。  自治省は、このILOの法案の処理につきまして、いま労働大臣からは倉石・河野会談というものをそれが両党の窓口だというふうにお考えになっているという御答弁があるにもかかわらず、全国の市長会とか町村会に働きかげていわゆる倉石修正というものはいけないのだというふうな動きを見せたり、その他役所という立場ではどうかと思われるような動きをなすっていらっしゃる、こういうようなうわさを聞くわけですが、その点はどうですか。
  67. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 自治省といたしましては、先ほど労働大臣がおっしゃいましたような気持ちで法案の成立をこいねがっておるわけでございます。ただいま先生が御指摘になりましたような地方関係の団体をけしかけて云々というようなことはいたしておりません。
  68. 安井吉典

    ○安井委員 いまの御答弁で安心したわけですが、うわさであればけっこうであります。ぜひそういう態度で役所としてのお立場はしっかり守ってお進みをいただきたいと思うわけであります。  きょうは一時間きりありませんので、もう一点だけ伺って終わりたいと思うのであります。  私がいまお伺いいたしたいのは、これまでのいろいろな議論の中で、特に社会委員の発言の中では、公労法四条三項、あるいは同様な意味の地公労法五条三項の規定は、今度の八十七号条約批准の以前に九十八号条約ですでに死文になっているのではないか、こういう指摘を今日まで続けてまいっております。ここで立つ委員諸君はみな口をきわめてそういう言い方をするわけであります。そこで、私がこれがどういう形でそうなるかという点をいろいろなILO報告書等を引用してもうここで説明する必要がないほど、これまでたびたび繰り返されているわけであります。この点、いままで労働大臣の御答弁もあったわけでありますが、私のこの主張に対する御見解をあらためて伺いたいと思います。
  69. 三治重信

    ○三治政府委員 九十八号条約規定に公労法の四条三項並びに地公労法の五条三項が抵触するというふうな、勧告と申しますか、結論は、条約勧告適用委員会においてそういう見解が示されておるということは、労働省も承知しております。それに対して政府は、九十八号条約には違反はしていないという、答弁と申しますか、報告ILOにして、今日に至っておるわけでございます。
  70. 安井吉典

    ○安井委員 いままでこれが九十八号条約に違反をしているということについての立証がしばしば行なわれたわけでありますが、もう少し私が拾ったそれに関連のある個所を申し上げますと、ILO条約勧告適用専門委員会の一九五九年の報告書にまず最初の指摘があるようであります。そして五九年の四十三回総会の条約勧告適用委員会におきましては、専門家委員会言及のごとく廃止の希望を表明している。その後日本の国会の中でも論争がありましたが、一九六〇年の第三十回会期で、ILOの専門家委員会は、はっきり違反を確認しているわけです。一九六一年分第三十一回会期でも、その後の日本政府の提供した情報及び報告書を検討した後、また再確認をしております。結社の自由委員会もその後その意見を裏書きしている、こういうふうな次第であります。すなわち、九十八号条約の第二条違反ということは、ILOの場ではきわめて明白となっているわけです。その条約を私ども批准をし、昭和二十九年の十月二十日から発効しているはずです。この発効の日付について間違いがあったら、あとで政府のほうで御訂正を願いたいと思いますが、私はそういうふうに調べているわけでございます。ここまではっきり、そういう条約を書いた立場の人たちが結論を出している以上、その条約批准し、その条約国内法に優位であるという例の憲法九十八条第二項の原則から判断をすれば、公労法四条三項は明らかに効力を失っている、こういうふうに私ども考えざるを得ないわけであります。法制局の御見解をこの機会にひとつ伺いたいわけです。
  71. 吉國一郎

    吉國政府委員 公共企業体等労働関係法第四条三項の規定ILO第九十八号条約第二条に違反するものではないという理由につきましては、先日来あるいは昨年の国会におきましても労働省からもお話し申し上げてあると思いますが、法制局としての見解を申し上げたいと思います。  公共企業体等職員を解雇することができます事由は、公共企業体等労働関係法以下、あるいは三公社のそれぞれの組織法でございまするとか、公務員法に明らかに規定をせられておるわけでございまして、その法定の事由以外の事由による解雇は許されておりません。さらに、職員が組合の組合員であること、あるいは組合の役員であることを理由といたしまする解雇は、不当労働行為として禁止をされておりまして、かつ、それは無効でございます。このような解雇が行なわれました場合の行政上あるいは司法上の救済手続も法律上定められております。組合の役員である職員が解雇されますと、公共企業体等労働関係法第四条第三項の規定によりまして、その者は組合の役員の地位にとどまることはできないのでございまするが、いままで申し上げましたように、公共企業体等が組合に対する干渉をするというような意図をもって組合の役員を解雇することはできませんし、このような解雇を受けました者に対する保護措置も十分に講ぜられておりまする以上は、公共企業体等労働関係法第四条第三項の規定があるということによって公共企業体等の組合に対する干渉が容易になるということは言えないと思っております。現在公共企業体等労働関係法第四条三項の規定がございまするために、役員である職員が罷免をされますると、その職員は役員たる身分を失うことになりますが、これはいまだILO条約第八十七号を批准しておりません現在におきましては、公労法の第四条三項が有効な規定として現に存在しているということの結果でございまして、使用者がある意図をもって行なう干渉の結果ではないということに相なりまするので、この規定ILO条約第九十八号の第二条の規定に違反するというILOの見解も十分に承知をいたしておりますけれども、このような批判は当たらないものであると私ども考えております。なお、これは下級審の判例でございまするので、あるいはまた今後どうなるかはわかりませんけれども、盛岡地方裁判所の昭和三十七年の判決におきましては、公共企業体等労働関係法第四条第三項が、すでにわが国批准しているILO第九十八号条約に抵触するということは断定できないという趣旨のことを判旨において述べておることをつけ加えさせていただきます。
  72. 安井吉典

    ○安井委員 きょうはちょっと時間もありませんので、議論はいたさないことにいたしたいと思います。これはいままでもいろいろやってまいりましたし、その議論はあとに残したいと思うのですが、それは日本政府の見解でしょう。しかし、この条約を立案したILOの立場からいうと、そういうふうな結論がはっきり出ているわけであります。きのう労働大臣は、小林委員質問に対しまして、今度八十七号条約改正をするのだから、それによって完全に失効させるのだからよいではないか、そういうふうな言い方をなさっておられたわけですが、私はそれだけでは問題は解決しないと思うのであります。どうでしょうか。
  73. 大橋武夫

    大橋国務大臣 問題は二つあると思います。第一の問題は、公労法四条三項、地公労法五条三項が、日本がすでに批准いたしておりまする九十八号条約に抵触する理由をもって、憲法九十八条の規定によって失効したものと取り扱うべきかどうかという点だと思うのでございます。この点につきましては、有権的に日本国内において最終的な決定権を持つものは、最高裁判所の判決以外にはあり得ないわけでございます。現在までのところ、行政府の見解といたしまして、失効はしていないという見解が示されておる。これに対して、安井委員の御指摘になりましたるごとく、ILOの正式機関の意向として、公労法の当該規定は九十八号条約に違反しておるという断定が下されておるわけなのであります。このいずれを認めるかということは、今日においては日本国内においては有権的には解決ができておらぬということだと思うのでございます。そこで、いずれにいたしましても、この法律の当該条項について問題があることは確かでございます。政府といたしましては、日本の労働運動現状から見て、この規定を削除することが政策的に必要だという考えを持っておるのでございまして、ことに八十七号条約批准いたしまする以上は、政府といたしましても、八十七号条約には少なくともこの規定は抵触する、こう考えておりまするから、この際明文をもって廃止する措置を講じたい、こういう考えでございます。
  74. 安井吉典

    ○安井委員 これから先のことは労働大臣の御答弁でいいと思うのですが、しかし、これまでの段階におきまして、この条文があるために日本の労働運動はどれだけ痛手をこうむってきたか、はかり知れないものがあるわけであります。そこで、いま法制局のほうから訴訟のお話がございましたが、この条文を正面から取り立てて無効確認の訴訟は、これまであったのですか。それから、今後もやろうと思えばできますね。
  75. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほども申し上げました判例は、盛岡地裁の判決は、住居侵入事件の判旨の中で述べられております。  それから、四条三項自体の無効を争うことができるかというお話でございますが、これは、四条三項によってその他位を失ったと考えられる——と申しますか、地位を失う人が、その身分の保有の確認というようなかっこうで訴訟を提起する道はございます。
  76. 安井吉典

    ○安井委員 いろいろな団交が否認されたり、団体協約の破棄が行なわれたり、そういうような事態がこれの関係から起きているわけですね。そういう形からもその無効確認の訴訟という道があるのではないでしょうか、どうですか。
  77. 吉國一郎

    吉國政府委員 かりに団体交渉の拒否という事態がございまして、それを不当労働行為として争うという場合に、当局側が第四条三項というものを一つの論点として出すと存じますが、それに対して一定の論証をするという方法によりまして争う道は、これは訴訟の技術の問題でございますけれどもございますと思います。
  78. 安井吉典

    ○安井委員 私は、この問題を、別に訴訟を起こすとか起こさないとか、そういうことで申し上げておるわけではありませんけれども、これまでILOの中で論議が尽くされ、結論が出されているのを、日本政府は相変わらず拒んでおられるわけです。そういうふうな事態からいえば、訴訟という形で問題の決着をつけるということも、考えるべき二つの手がかりではないかというふうな気もするわけでありますが、いずれにいたしましても、昭和二十九年の十月からあの条約の効力は発生しているわけですから、憲法九十八条の規定との関運からいうと、もしも訴訟に勝てばその日からこれは無効ということになるわけです。そうなりますと、あの条文があるために、活動を麻痺させようというふうな意図で有能な幹部の更迭が行なわれたり、意識的な不当解雇、そういうようなことが行なわれたことに対する補償の問題も起きてくるかもしれない。あるいは、団交のできぬ労働組合はもう存在の意義がないということで、脱退を慫慂するというふうな、そういう措置も現にあったわけでありますが、そういうような不当労働行為も問題になってくるかもしれない、あるいはまた、団交を否認し、その結果、アウトサイダーの扱いとなって、既存の労働協約を破棄されざるを得なかった、そういう損害もあります。いわゆるF項の問題にも結ぶわけでありますが、こういうふうな事態が、政府考え方いかんでこれはもうどっちにどうなるかという重大な問題になるのではないかと思います。しかし、きょうここで論議していても水かけ論になるわけですが、裁判所がきめるような形になるかどうか、これは別といたしまして、一応私はきょうこの問題を取り上げた最後の要求として資料をお願いいたしたいと思います。  この条約、つまり九十八号条約が発効して以来のこの種のケースの概要、それ以来における処分になった内容、これはきのう小林委員要求がありましたが、この期日以後の分ということに限定をしてお願いをしたいと思います。それからまた、解雇三役の取りかえというふうな事態も起きておるはずでありますが、その数、労働協約が二十九年以降におきましてどの程度失効させられているか、そういうふうな状態、一応それらの内容につきまして、これは労働省の所管ではないかもしれませんが、窓口としてひとつお集めの上、御提出をいただきたいと思います。  きょうは、ちょうど切りがいいので、これで終わります。
  79. 安藤覺

    ○安藤委員長代理 次会は、明二十九日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会