○佐藤(達)
政府委員 お答え申し上げます。
第一の
条約との
関係、すなわち
国家公務員法の
改正と
条約との
関係は、私どもは今回の
条約批准に関連して
国家公務員法の
改正を行なう必要はないと
考えております。その理由は、最後の第四のところでさらに触れます。要するに
条約に伴う
改正の必然的の必要は、私どもの
立場から言えばない。
それから第二点は、人事局の設置に関連いたしまして、人事管理の
責任体制云々というようなことから見て、あるいは
公務員法のたてまえから見てどうか、そこを詳しく言えというお話でございます。人事局の設置そのものと
人事院の解体――解体と言うとことばが過ぎますけれども、分割くらいに遠慮しておきますが、
人事院の分割というものとは、これは観念上の問題としては私は二つ並立し得るものだと思うのであります。これは昨日もちょっと触れましたけれども。しかし、この人事行政あるいは人事管理の
責任体制というものが現行
制度の
もとでとれないものかどうか、確立できないものかどうかということにつきまして、これはわれわれ、
政府プロパーから申しますと部外者としてたいへん僭越なことと思いますけれども、お聞き流しをいただきたいと思います。申すまでもなく、現行
制度のたてまえとしては、
公務員に採用するためには試験を通らなければいかぬ、その試験は
人事院で行なう試験をパスした者でなければいかぬという制約はございますけれども、その中でだれを任命するかという任命権は、すでにもう各省の
大臣、各庁の長官が現行
制度上お持ちになっているわけでございます。またその中のだれを昇進させるかという人事権も、すでに現在各省各庁でお持ちになっておる。あるいは罷免権もお持ちになっておる。ただし罷免については
公務員法の
条件がありますけれども、その
条件に当たる者を現実に罷免処分に付することは、各省各庁の人事管理者がすでにお持ちになっておる。また不心得な者がおりました場合の懲戒についても、
国家公務員法に該当する懲戒原因がありますれば、やはり各省
大臣その他各庁の
責任者が懲戒権を行使できるたてまえになっておるわけです。そのほか
公務員の服務の統督等につきましても、これは言うまでもありません、各省各庁の
責任者が統督権をお持ちになっておるわけでありますから、それらの統督権なり任免権なりの現実の行使のためにさらに
責任体制を確立しようといろ場合に、
政府部内のいろいろな組織、機構、運営等によっておやりになることは、これはわれわれ
人事院のとやかく申し上ぐべきことではない。
〔
澁谷委員長代理退席、
委員長着席〕
政府部内の権限を一元化するために人事局をおつくりになる、これはわれわれのとやかく言う筋ではない。ところが、それに伴って今回の法案で企図されておりますのは、さらに今度は従来中立
機関、独立
機関とされて相当重大な
責任を負わされてまいりました、その
人事院の権限を大幅に今度は人事町へお移しになるというところに、今度はわれわれのほうの所管の問題として、そこに重大な転回が行なわれる。それを私どもは深刻に憂えておるわけであります。これは二、三回申しましたとおりに、現在の
国家公務員法は、確かに大幅な
責任を
人事院にお与えいただいておりますけれども、これは独立性のある中立
機関としての
人事院を置いて、そうして公務あるいは人事行政の運営の適正、公正、中立性をここに守らせる。それから一方、先ほどおことばにございましたように、
労働権を制約されておる勤労者たる
公務員の利益
保護のためには、どうしても中立
機関がその衝に当たるのは、これはあたりまえのことでございますから、そういう大きな任務を今日の
国家公務員法では
人事院にお与えいただいている。これは筋の通った当然のことだろうと思うのです。今回の
改正案におきまして、そこから大幅な権限が今度は人事局に移されるということになりますと、
公務員法の理念とするところがはたしてそれで貫かれ得るものかどうか、維持できるかどうかという
意味で、これは重大な、
公務員制度上の歴史的な転回だと私どもは心配しておるわけです。そこに問題があるということになります。
それに関連いたしまして、第三点として、規則が大幅に政令に移される、これについてどう思うか。これがいままでお話ししましたところの
一つの象徴として出てくる、私はポイントだと思います。これを数字で申しますと、現在
国家公務員法、それからもう
一つ、今回の
改正案では付則のほうで改められることになっておりますから目立ちませんけれども、一般職の給与に関する
法律というものが、同時に法案の付則において大幅に改められることになっております。それらを通じまして、現行
制度上
人事院の規則にゆだねられておるものの数は七十五項目、すなわち七十五の
人事院規則が現在あるわけであります。
一つや二つの違いはあるかもしれませんけれども、要するに七十五とお
考えいただいてよろしいと思います。その中で、今回の法案によって政令あるいは
総理府令に移されるものは
幾つかと申しますと、七十五のうち五十が人事局のほうの所管に移る。七十五のうち五十であります。規則として残るのが十六であります。しかしこれは
人事院内部の、事務総長に対する委任だとか、内部の組織だとかのつまらぬ問題がたくさんございますから、十六全部が
意味のあるものではございませんけれども、要するに五十対十六という形になります。そのほか十ばかりありますが、これはまあ廃止されるものとか、あるいは
法律に格上げされるものというようなものがございます。大体五十対十六という形で政令事項に大幅に移っていく。現在の
公務員法で非常に大幅な授権が、
法律から
人事院規則になされております。これは
憲法学者の間に相当議論がある。こういう大幅な授権立法というものが
憲法上認められるかどうか。それに対する弁護論あるいはそれが正しいという
見解の基礎となっておるのは、制定者が、これは三人の人事官によって構成される合議
機関である、しかもその三人の人事官は
国会の御
承認によって任命される民主的な
機関である、そういう中立
機関であり、独立性を持っている
機関であるから、大幅な規則制定権をゆだねても、そう
憲法の精神に抵触することはない、これが
一つであります。これは
一つでありまして、もっと重点をなすのは、先ほど申しましたような
公務員法の大理念からいって、
人事院に預ける
仕事と申しますのは、公務の公正中立ということから申しますと、これはむしろ中立
機関に与えるべきだということ、それから
団交権の代償、代行機能といわれておりますように、勤労者としての
公務員の利益に関する事項、これは
使用者側にきめてもらったのでは
意味をなしませんから、中立
機関たる
人事院にきめさせるのがあたりまえじゃないかという二つの面から、現在の
人事院規則というものが認められてきておるわけです。そういう点から申しまして、それらの
事柄が今回政令に
一括して移されてしまうということについては、いま申しました二つの点から重大な疑義がありはしないか。前会私が明治
憲法時代をほうふつたらしめると申しましたのも、明治
憲法時代は御
承知のように、すべて勅令できめられておった、その形に非常に似た形になりはしないかというようなことを申し添えたわけでございます。
それで最後の
労働問題懇談会、これは私どもは直接
関係しておりません、むしろ
労働省が主管であると思いますけれども、これはおっしゃるように私どもも、この
国家公務員法関係のものは
解釈の変更で十分だという結論であったと了承しておりますし、そういう懇談会の問題は別にいたしましても、御
承知のように、今日の
条約の
批准に関連して
公務員法上問題になる条文といえば、九十八条の第二項で、
代表者選任がどうなるかという問題。ところが現行法をごらんになりますとわかりますように、
代表者は職員に限るということはどこにも書いてない。したがって、率直に申しますと、
昭和二十四年前は
人事院も
代表者はだれでもいいのだという
解釈できておったのです。ところが、私は事情は知りませんが、おそらく当時のGHQのお話や何かあったと思いますが、卒然として
解釈を変更して、窮屈なほうの
解釈に変更したものですから、今日
条約との関連が問題になっている。その
解釈をまた変えれば、前にそういう
解釈をしたのですから、
もとの触釈に戻せばこれは何でもないことで、
条約との
関係はなくなってしまう。これはきわめて理論的に、
法律的に申し上げましたけれども、そういうのが私どもの見ておる現在の
制度だということでお答えにいたしたいと思います。