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1964-05-13 第46回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十三日(水曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 小泉 純也君    理事 青木  正君 理事 岡崎 英城君    理事 加賀田 進君 理事 島上善五郎君    理事 畑   和君       上村千一郎君    鍛冶 良作君       仮谷 忠男君    久保田円次君       小島 徹三君    長谷川 峻君       藤田 義光君    大柴 滋夫君       堀  昌雄君    山中日露史君       山下 榮二君  出席国務大臣         自 治 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正  する法律案内閣提出第一六五号)      ————◇—————
  2. 小泉純也

    小泉委員長 これより会議を開きます。  内閣提出第一六五号、公職選挙法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。大柴滋夫君。
  3. 大柴滋夫

    大柴委員 お配りになった公職選挙法関係改正案現行法という書類がありますが、これの順序に従って事務的なことをひとつお尋ねしたいと思います。  その一ページの第二十六条のところに、一の項も二の項も盛んに「三箇月以来その市町村区域内に住所を有する」あるいは二の項においても「日本国民で、当該市町村区域内に住所を有し」こういう文句が使ってあるわけでありますが、この補充選挙人名簿における住所というものの規定はいかなることをいうのでありますか。
  4. 長野士郎

    長野政府委員 補充選挙人名簿におきましても基本選挙人名簿におきましても同様でございますが、選挙人名簿調製の基礎になりますものは選挙権でございます。選挙権につきましては、国会議員の場合でございますと、御承知のように日本国民年齢満二十年以上のものは選挙権を有する、しかも、欠格条項はございますが、そういうことが選挙権資格を得る要件になっておるわけであります。それから地方公共団体の場合の選挙権につきましては、その上に三カ月以来の市町村住所要件というものが、選挙権の取得の一つ要件になっておるわけでございます。それから選挙人名簿につきましては、国のほうがそういうことで住所が必ずしも要件になっておりませんが、逆に選挙人名簿調製いたしますときには、これは名簿調製上の必要といいますか、技術的な必要、またその人がそこにおるということを確認しませんと、市町村ごと選挙人名簿をつくるということが現在のたてまえになっておりますので、そういうことからいたしまして、名簿をつくりますときの要件といたしましては、三カ月以来引き続きその市町村区域内に住所を有する者について名簿調製のときに登載をする、こういうことにたてまえが相なっておるわけでございます。したがいまして、いまの二十六条は補充選挙人名簿調製規定でございます。そこで三カ月以来その市町村区域内に住所を有するということに相なるわけでございます。それから第二項のほうにおきましては、ただ「住所を有する」と書いておりますが、それは今回の改正案によりまして、補充選挙人名簿調製の際に、新たに年齢満二十年に達した人あるいは新たにその市町村住所を移された人につきまして、二十年以上に達したとか、あるいは住所を移されたときにはまだ補充選挙人名簿をつくる時期でございませんでも、あらかじめ申し出をすることによりまして、補充選挙人名簿をつくるときまでにさらに三カ月なら三カ月というような要件が満たされれば載せてもらえる、載せることができるようにする、こういうことを考えたわけでございます。したがいまして、申し出のほうの第二項、新しく今度加えることになる条文のほうは、三カ月以来ということは落としてというか抜いておりまして、申し出だけは一応できるというかっこうを随時とれるようにいたしますために抜きまして、住所ということだけをここに書いておるわけでございますが、名簿登載いたしますときには、やはり三カ月以来の住所要件という第一項のほうに返ってまいりまして、それが登載の際の一般のいわゆる住所要件というものを満たさなければ登載はしない、こういうことにいたすわけでございます。そういう意味で、三カ月以来の住所要件というものが名簿調製いたします場合の要件になっておる。これは国の場合も地方の場合も同じ選挙人名簿を用いまして選挙をいたすという便宜の問題もございますが、現在の考え方といたしましては、名簿調製上の必要からそういう住所要件を国の選挙権行使の場合にも持たしておる、こういうふうにいわれておるわけでございます。
  5. 大柴滋夫

    大柴委員 たいへん失礼ですが、問題がたくさんにわたりますから、要点のみをひとつお答え願いたい。この場合の住所ということはどういうことかそのことを聞いておるのです。
  6. 長野士郎

    長野政府委員 失礼いたしました。住所は、これは民法上の住所と同じ考え方でございまして、本人生活本拠というものが住所である、こういうことに考えております。
  7. 大柴滋夫

    大柴委員 そうすると、たとえば神奈川県大船に住んでおる。しかし何かいろいろの関係東京大田区なら大田区を住所と指定して、大田区の選挙管理委員会に届け出ておく。こういうものは住所になるのでありますか。虚偽申請というか、選挙権保持者となるのですか。どっちなんですか。
  8. 長野士郎

    長野政府委員 いまのように神奈川県にほんとう住所があるということでございますと、大田区の選挙管理委員会大田区に住所があるという申し出をするということは真実でないわけでございます。この住所本人が自分でそうありたいと思えばきまるという考え方でございませんで、客観的な生活実態というものと、それから本人主観的意思というものと両方が一致しなければならないということでございますから、そういう意味住所でないところを住所だと言ってみましたところで、それが住所になるわけではございません。したがいまして、場合によれば、お話のとおり虚偽の申し立てということに相なるかと思います。
  9. 大柴滋夫

    大柴委員 その客観的にそこに住んでいるかどうかということは、選挙管理委員会はどういう事実をもってお調べになるのか、あるいは認証するのか、その辺の具体的な処置ということはどういうようになされておりますか。
  10. 長野士郎

    長野政府委員 補充選挙人名簿登録の場合には、まず登録申請書といいますか、登録申し出申請をするわけでございます。そうしてその申し出につきましては、大体選挙法関係で申しますと、選挙法施行規則で一応の様式がきめてあります。そして大体その様式に準じまして選挙管理委員会できめましたものがございます。それにはやはり本人の氏名とか住所とか年月日とかいろいろなことを書くようになっておりまして、それは市町村状態によりまして、農村なんかでありますと、すぐわかるような場合には、申し出事項とか登載する事項というものが少なくなっておるかと思いますが、大都会等でありますと、単にそういうものだけでございませんで、さらに生活の事実がわかりますようなもの、たとえば法的な機関の証明でございますとか——と申しますと、たとえば民生委員とか、そういう人が証明したものであるとか、あるいは場所によれば町内会長——これは必ずしも法的とは申せないかもしれませんが、町内会長等が証明しておる、あるいはそこにあてて手紙がきておるその手紙でありますとか、また取引なり生活のために、ガスなり水道の料金をそこで支払っておるその領収書でありますとか米穀通帳みたいなものでありますとか、必要によっていろいろな資料を総合いたしまして住所認定をする。なおそれでもわからなければ実地について調査する、こういうことで取り扱っておるのであります。
  11. 大柴滋夫

    大柴委員 その事実認定として、米穀通帳手紙、あるいはガス集金書というようなものは、今日大都会において必ずしも選挙権ほんとうにそこに住所があるかどうかということの認定にはいささか疑義があるだろうと思います。そうしますと、適正事項として民生委員判こがあるならある、あるいは、ちょっとおかしいので、あなたのおっしゃるとおり言うのでありますが、町内会長認定書があるとかいうようなことを決定的の要素にするというようなわけにはまいりませんか。
  12. 長野士郎

    長野政府委員 たとえば住民登録本人がしておるというような場合も、法的な記録でございますから、これは重要な資料として取り扱うことには相なります。しかし何か一つだけを決定的な要素として取り扱うことが、それだけでいいという場合もございましょうが、それも事実に反することがあってはいけませんので、いろいろな資料を取り寄せたり調べたりいたしまして総合的に判定をする、こういうことにしたほうがいいのではないだろうか、単なる一つ資料だけということになりますと、そこにも事実に反する、あるいは事実と違うことができたらいかぬというような考え方で、現在までいろいろな資料を、資料のウエートの置き方はいろいろあると思いますが、総合的に判定をした上で住所認定をする、こういうことにいたしております。
  13. 大柴滋夫

    大柴委員 実は私ども、昨年の東京都における都議会議員選挙の際に、たいへん補充選挙人名簿のいろいろなうわさを聞いたのです。たとえばこれは一つの例でありますが、おそらく私の記憶に間違いなければ東京板橋区は基本選挙人名簿有権者が十五、六万だったろうと思う。そしてそれに補充選挙人名簿有権者が一万五、六千、約一割なんですね。しかもその一万五、六千のうち明らかに八千ぐらいは住民登録がない、ただ申請だけによって選挙権を確保している、こういうような現地の社会党の話を聞いたわけなんです。かかることが、いまあなたがおっしゃるようなことを総合的に実際的にしたら生まれるわけがない。こういうものが生まれるという状況というものはどこにあるのでありますか。
  14. 長野士郎

    長野政府委員 市町村補充名簿、これは基本選挙人名簿も同じことでございますが、一つは、お話のような場合というものは特に補充選挙人名簿の場合には、特定選挙が公示または告示されましてから一定期間申請をするというようなことにいまのところはなっております。そこで選挙のいろいろな準備と並行いたしまして補充名簿登録をする、縦覧するというような事務が重なるわけでございます。したがいまして、その場合にあるいは非常に粗漏なといってはあれでございますが、やはり十分でない認定をするというようなことが事務上の問題として起きてまいるということが一つあります。それからさらに根本的な問題といたしましては、従来はなるべく多くの人に投票の機会を失しないようにすることがいい、たてまえだというような考え方でございましたが、どちらかといえば住所認定について甘い扱いをするという考え方が特に強く出ているところもありはしないかというふうに思われるわけでございます。
  15. 大柴滋夫

    大柴委員 そういうような場合、要するに選挙管理委員会のほうで忙しいままに甘い扱いをする、そして明らかに虚偽申請をして、たとえば板橋区なら板橋区で六千ぐらいの補充選挙人名簿をつくって、区会議員とか都会議員というようなものは、区会議員の三人ぐらい、都会議員当選圏内に送ることぐらいは明らかにできるわけです。そうすると、一つ目的を持って、特定候補者投票をさせようという目的を持ってもし現に住所を有しない、要するに虚偽申請をして補充選挙人名簿をつくり、選挙権を確保したというようなことが後ほどわかった場合には、それに対する罰則というものは一体どういうようになっておりますか。
  16. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 お答えします。  罰則のことについてはまた選挙局長から申し上げますが、いま御質問になっている方向は私もよくわかるわけでありまして、住所が何かということは一言でいえば生活本拠ということですけれども、どっちが本拠なのかわからぬ者がたくさんあることは御案内のとおりです。たとえば代議士にしても、東京で宿舎やいろいろなところで年三分の二は暮らしておる人でも自宅はまた選挙区にある。また神奈川県と東京都を御比較になられても、こういう例が実にたくさんある。その人にとってどっちが生活本拠であるかということになると、なかなかむずかしい問題だと思うのです。しかしながら、あと選挙局長が申し上げると思いますが、選挙人名簿に二重登録することについては明らかに罰則があるわけでありまして、そういうことが発見された場合には自後何年間公民権が停止さる、罰金が二千五百円ですか、私の記憶でははっきりいたしませんが、何か罰則があるわけでございます。  そこで、こういったことが起こり得るかどうかということですけれども、いまのようなこう移動の激しい世相のもとでは、いろいろなことが行なわれる可能性はあると私は思うわけです。そこで、この国会にも、これは総理府から出しておると思いますけれども住民台帳をつくるという法律を提案して、目下審議中だと思いますが、それはどういう意味かと申しますと、公選法の附則にいま御指摘になりました問題について、「選挙人名簿については、住民登録法第三条の住民票に基づきこれを調製し、毎年定時に及び選挙を行なう場合においてはそのつど、これに登録されていない者を登録する制度をすみやかに実施しなければならない。」というふうに明らかにしているわけでございます。ところが住民登録をしなさいといってもしない人がたくさんあるし、そこらのところは——事実一人残らずきちっとそれぞれどこかの地区選挙資格を持たせるということにつきましては、具体的になかなかやりにくい面はありますけれども、そういうことを端からできるように、間違いが起こらないようにという方向にいま努力しつつあるわけでございます。ただいまの時点で、そういう他の区に臨時にちょっと籍を移して選挙権だけ獲得するというようなことがいま行なわれておるやのうわさもございますし、事実話題にもなって、ここで論議をされておるわけでありますけれども、こういう間違いは起こればやはり処罰の対象にもなるし、選挙人としての大切な公民権をそういう乱雑な扱いをするということはいいことではありませんので、やはり反省を促さなければならぬわけでございます。そういった問題点はいろいろありますが、今後ともそういう事態が起こらないように進めつつある段階でございます。
  17. 大柴滋夫

    大柴委員 それはわかった場合にはどういう処罰をするのでありますか。なお、これはだれかが告発したとか告訴したとかいうことに基づいてやるのでありますか。選挙管理委員会が見てこれはおかしい、明らかに違反だと思うときには選挙管理委員会のほうで告訴なり告発なりするのでありますが、どういうふうにするのでありますか。
  18. 長野士郎

    長野政府委員 公職選挙法の二百三十六条という条文がございまして、それに罰則が書いてあるわけでございます。それは詐偽方法をもって選挙人名簿登録された者は二千五百円以下の罰金に処する。こういうことになっておりまして、これが詐偽登録についての罰則規定でございます。どういう場合にこれが適用になり、摘発されるかということでありますとこれは取り締まり当局がお答えすることがあるいは適当かと思いますが、私どもが聞いておる範囲でございますと聞き込み、あるいはそういううわさ、あるいは選挙管理当局等からの連絡等によりまして捜査の端緒を見出す、こういうことのようでございます。
  19. 大柴滋夫

    大柴委員 千五百円以下の罰金でありますか。
  20. 長野士郎

    長野政府委員 二千五百円以下であります。
  21. 大柴滋夫

    大柴委員 私どもも、選挙をやっておりますと、パンフレットを配ったとか配らぬとか、ただそれがどこどこへ門口へ入っていったとか入らぬとか、直ちに罰金五千円云々というようなことになるのでありますが、まあ善意でもないかもしらぬが、そういうことに五千円をして、そうして詐偽目的を持ってやったものが二千五百円以下といったようなことは、高いか安いか知らぬが、これはちょっとバランスがおかしいじゃないですか。
  22. 長野士郎

    長野政府委員 お話のような点は確かにあるようで、私どもも、しろうと考えと申してはあれでございますが、考えられるようなところがございます。これはなおいま関係当局とも、将来の他の罰則との均衡の関係もございますので、共同して検討するというようなかっこうをとってまいりたいと思っております。元来詐偽登録というものは、むしろその場合があるということ——あったからということではございませんで、非常に用心のためにこしらえたような規定であったのです。むしろそういう状態のときに、しかしこういうことを考えておかなくちゃいけないというようなことが一つのあれになっております。最近もしそういうお話のような場合がございますと、確かにそこのところが少し見忘れられてあったと申しますか、それにつけ込んでいるということになりますが、そういう事情があるのではないかと思いますが、なおこれは量刑の問題でございますので、検討をいたすべきだと思っております。
  23. 畑和

    畑委員 関連して。いまの問題ですが、そうした詐偽登録詐偽的な登録選挙人名簿登録をした人が投票をするといった場合に、詐偽投票にはなりませんか。
  24. 長野士郎

    長野政府委員 先ほど申し上げましたところの横の二百三十七条という条文に、詐偽投票規定がございます。お話のように、詐偽登録をして、その者が詐偽投票するということになれば——もちろんそういう意味詐偽登録をしたわけでございますから、詐偽投票の罪というものが成立するということになると思います。
  25. 畑和

    畑委員 それは、二百三十七条に、「選挙人でない者が投票をしたときは、一年以下の禁錮又は一万五千円以下の罰金」、したがって、実際真実選挙人ではない、ところが選挙人として登録をして——その登録すること自体が詐偽登録、そして今度投票すれば、この二百三十七条で詐偽投票になる、こういうことになりますね。
  26. 長野士郎

    長野政府委員 そうです。
  27. 大柴滋夫

    大柴委員 そういう場合に、個人は別に意思がなくても、一つ政党なら政党一つ団体が、よし、あいつを当選させるために、ひとつ、三十人はこのA地区へやる、あとの五十人はB地区へやる、あとの三十人は何地区へ行って、三千人なり五千人なりしたような場合、その音頭をとった首謀者というものの罪はどうなるのですか。
  28. 長野士郎

    長野政府委員 いまの規定でいきますと、首謀者までは必ずしもひっかからない。もしそういう首謀者があるといたしますと、それまでが直接にひっかかるかどうかということは、正確には多少疑問がございます。むしろどちらかといえば消極的な解釈になるのではないだろうか。これは取り締まり当局の御見解もあると思いますが、私どもはそういうふうに思っております。そういうことも十分予想されることでございます。今度の改正法政正の趣旨も、そういう意味本人申請主義というものに切りかえようということで、そういう場合をなくするということに考えてまいりたいと思っておるわけでございます。
  29. 山中日露史

    山中(日)委員 ちょっと関連して。いまの登録の問題ですけれども、二重登録ということになれば、これはむろん罰則があるわけです。そこで先ほど大柴委員からお話がありました、たとえば神奈川に住居があって、ある目的のために東京住所登録する。両方住所があるということになれば、これは三重登録です。もしある目的のために、神奈川県のほうからは一時転出したことにして、そして神奈川県の住所は抹消してある目的のために東京に一時住所を移す、そうして目的を達したならばまた元に戻す、こういうようなことをやられた場合においては、それを罰する方法はないということになるかどうか、その点はどうなんですか。
  30. 長野士郎

    長野政府委員 いまお話しのように、神奈川県でありましても、実際にある一定期間ほんとう住所が移ってくれば、これはそこに住所がないとは言えない、これはいたし方のないことであろうと思います。しかしながらそれはやはり住所登録する際の要件といたしましては、三カ月以来の住所要件が必要でございますから、それを十分満たすだけのことにならなくちゃいけないと思います。それからていさいだけでなくて、実際に生活本拠がそこに移らなくちゃいけない。しかしながらそういうことがほんとうに行なわれれば、そのときに選挙があるというときに、補充選挙人名簿をつくるということで、たまたまそこがそういう時期で、要件も満たしておるといたしますと、そのときは補充選挙人名簿にこれは載ることに相なると思います。これはいたし方ございません。
  31. 山中日露史

    山中(日)委員 ほんとう住所を移せばそうですけれどもほんとう住所を移さないでそういうことをやる場合が想像されるわけです。その場合に先ほど来のお話ですと、それを防ぐためには、東京のほうの登録がはたしてほんとう住所が移っているかどうかということを調べるのに、いろいろな資料で総合的に調べるということをやるそうですが、今度は前の神奈川県のほうからほんとうに転出したのかどうか。住所がまだそこにあるのかどうかということの取り調べといいますか、調べ方はどういうふうにしてやるのか。その辺もはっきりしておきませんと、新たに登録するほうの条件だけ調べても、前の条件というものを十分調べないと防げないのではないか、実はこういうふうに思うのです。
  32. 長野士郎

    長野政府委員 先ほどの御説明の際に、少しどうも御説明のしかたが足りなかったのでございますけれども転出者住所を移転した場合は、申し出申請書に必ず前住所地を書かせることになっております。その書かせる意味は、前住所地といわれるところに照会をする必要からそういうことにいたしておるわけでございます。前住所地への照会及び戸籍の照合、こういうことも調査の一つの手順といたしまして、特に転住者につきましてはいたすように指導はいたしております。
  33. 大柴滋夫

    大柴委員 刑事局長にちょっとお尋ねいたしますが、いままで言ったことの蒸し返しになるかと思いますが、たとえば千代田区なら千代田区に住所はない。事実上の住所は品川区なりあるいは神奈川県にあるのを、千代田区に住所があると申請して、そうしていろいろのことから選挙管理委員会はこれを認めた。そうして投票をやった。ところがあとになって、その住所申請というものは全く特定候補を当選せしむる目的を持ってやったことで、事実上の住所はそこにない、こうわかった場合には、これは虚偽申請をしたことに対して、先ほど選挙局長のほうは、二千五百円以下の罰金だ、こう言われる。それならば選挙をしたことに関しては、それは申請虚偽であろうとなかろうと、一応公の選挙管理委員会というものが選挙権があるということを認めたのでありますから、その選挙というものは大体無効になるのか、やはり有効になるのか。選挙そのものはどういうようになるのでありますか。
  34. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、選挙そのものが無効になるかどうかという点は、これはまた別途に考えなきゃならぬ点でございますが、それより前に、そのような行為が罰則に触れるかどうかということについてお答えを申し上げたいと思いますが、選挙管理委員会住所ありと認めたといたしましても、それは真実住所がなかったものをそういうように錯覚して、あとになってそういうことがわかったのでございますから、先ほど出ておりました二百三十六条の虚偽登録をした、それからまた虚偽登録に基づいて虚偽投票投票を偽ったというこの二つの罪が成立いたしますことは当然でございまして、たとえ中間において選挙管理委員会がこれを承認しておったといたしましても、それは住所があることを前提として承認しておったのでございまして、それが住所がなかったということが後になって証拠によって明確になった以上は、もし犯意があったとすれば、二つの罪が成立するということになると私は解しております。  ついでに申し上げますが、先ほど御質問の中にありました、そういうものをある者が多くの人にけしかけてそういうようにやらした場合に、そのけしかけた人はどうなるのだろうかという点につきまして、選挙局長からお答えがあったのでございますが、選挙罰則も刑罰でございますので、この刑罰につきましては、刑法の総則がすべてかぶってくるのでございまして、刑法の総則の規定によって、御承知のように共犯になる場合があるわけでございまして、かような行為をそそのかし、あるいは幇助しということになりますると、その首謀者となるような人は、共同正犯になるか、あるいは教唆犯になるか、あるいは幇助犯になるかということで、刑法の総則の適用によって同時に処罰されることもあり得る、かように考えておるのでございます。  それから最後に、選挙が無効になるかどうかという点につきましては、これは選挙局長のほうからお答えをいただくのが適当かと思います。
  35. 大柴滋夫

    大柴委員 その場合に、虚偽申請によったときに二千五百円以下の罰金、それに基づいて選挙をやったときには罰則はどうなっているのですか。
  36. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 二百三十七条の、選挙人でない者が投票したときの罪でございますが、これは一年以下の禁錮または一万五千円以下の罰金、かようになっております。
  37. 大柴滋夫

    大柴委員 じゃ、ちょっと論を進めますが、この前の選挙に沖繩の人の安里積千代さんという人が全国区の参議院議員候補に出ましたが、何も安里さんに限らず、沖繩の人が日本へ来て全国区参議院をやった場合の被選挙権あるいは選挙権というものはどうなっているのでありますか。あわせて、いま沖繩県人の被選挙権というものは法律的には何と呼んでいるのか、またそれはどういう出所に基づいて呼んでいるのか、ちょっとその辺のところをお答え願いたいと思います。
  38. 長野士郎

    長野政府委員 被選挙権につきましては、公職選挙法の第十条に、参議院の場合でございますと、参議院議員の選挙日本国民年齢満三十年以上の者というものに被選挙権があるということであります。そして沖繩の人たちにつきましては戸籍法の適用がございまして、現在それは福岡県の——福岡県庁じゃございませんが、福岡法務局の出張所でございましたか、ちょっとそこのところは正確に記憶しておりませんが、戸籍の取り扱いもいたしております。したがいまして、被選挙権がある、こういうことであります。
  39. 大柴滋夫

    大柴委員 そうすると、あの沖繩県人安里積千代氏の場合は、被選挙権があって、選挙権はどうなっていたのですか。
  40. 長野士郎

    長野政府委員 被選挙権につきましては、いま申しましたように、日本国民年齢満三十年以上であればみんな被選挙権があるわけでございますから、住所のことは格別問題には必ずしもならないと考えますが、選挙権につきましては、必ず本土といいますか、こちらに住所がなければ——選挙権要件には住所要件がくっついておりますので、これは満たされる必要があるのだと思います。ぎりぎり申しますと、被選挙権につきましては、本来は妙だといえば妙な考え方になるかもしれませんから、常識的には住所があったほうがいい。こちらに移住といいますか住所を移すといいますか、そういうことがあるはずでありますが、ぎりぎりの考え方からいえば、法律的には、形式的には、年齢満三十年以上で日本国民であれば被選挙権はあるのであります。こういうことになると思います。
  41. 大柴滋夫

    大柴委員 そうすると、沖繩県人というのは、満幾つかの人は被選挙権というのはあるけれども選挙権がないという事態があるのであります。それは公職選挙法か何か、日本の法律にどこかありますか。
  42. 長野士郎

    長野政府委員 現に沖繩に住んでおられる方々は、これはいわゆる施政権がそちらに行なわれておりませんので、いまの衆議院議員選挙法そのものが、あるいは公職選挙法そのものがそちらの区域について動かないと申しますか、停止されておるといいますか動かないわけでございますから、ここでは何ともならない、こういうことであろうと思います。
  43. 大柴滋夫

    大柴委員 それでは、もちろん沖繩の人は被選挙権があるわけですから、東京一区で衆議院の選挙をやることも可能なわけですね。
  44. 長野士郎

    長野政府委員 衆議院の選挙についても、お話のようにそれは可能だということであります。
  45. 大柴滋夫

    大柴委員 ちょっと大臣に質問しておきますが、その五ページの第八十六条、「当該選挙の期日の公示又は告示」という二つのことばを使っている。われわれは政党人でありますので、公示とは衆議院を言い、あと選挙は告示、こういう二つのことばの使い分けをしているのでありますが、自動車でひき殺されるような時代に、こんな古いことばをわざわざとっておく必要がどこにあるのでありますか。衆議院の選挙だけは特に公示というこの理由について……。
  46. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 恐縮ですがそこまで研究しておりませんでした、聞いてみましたところ、昔からそういうしきたりになっておるので、いま使っておるということでございます。  それから前段の御質問ですが、沖繩県人は私ども本人として、われわれの同胞と考えておりますので、この方々に被選挙権があるのは言うまでもなく、あたりまえのことです。ただ選挙人としての資格があるかどうかということは、これまた資格があるはずです。あります。ただほかの人と同じように、三カ月という条件はついておりますけれども、その要件を満たしさえすれば、沖繩県以外の他の住民と同じことであると私は考えております。ちょっと参議院に行ってまいりますので……。
  47. 大柴滋夫

    大柴委員 大臣どうぞ行ってください。
  48. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 関連して。いまの沖繩の問題ですが、抽象的にはなるほど日本人であって、被選挙権はある。だが沖繩におるときと、日本にきているときと違いますよ。沖繩においてもあるかということを、第一番に聞きたい。沖繩におれば選挙法の何だけで言えば、それは抽象的にはあろうけれども、沖繩におる間は日本の行政権は及ばないでしょう。それでもありますか、そこを明らかにしておかぬと、今後これは実例が出ますよ。
  49. 長野士郎

    長野政府委員 確かに先生のおっしゃるようにむずかしい問題のように思いますが、もちろんいま私どもが頭に浮かべましたのは、沖繩にずっとおりながら被選挙権が当然あるということを申し上げるつもりじゃないわけです。もちろん日本本土へやって来まして、そしてどうせそこに住所があるわけでございましょうが、そこで選挙運動なり何なりをやる場合には被選挙権があるということに相なると思います。しかしながら公職選挙法規定の上からは、住所を必ずしも要件にいたしておりませんので、沖繩から日本本土へ来ることは、どうしても必要でございます。沖繩にずっとおったのじゃ、いわゆる施政権が停止されておりますから、それ自身に被選挙権があるとは申せないように私どもも思います。しかし形式的には、公職選挙法住所を被選挙権要件国会議員の場合はしておりませんから、本土にやってきまして選挙運動なり何なりして、あるいはそこで立候補するということを前提にしなければなりませんので、その点は私の説明が非常に足りなくて申しわけなかったと思います。
  50. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると沖繩県人といえども、日本に住所のない限りは、日本の行政権が適用にならないから、沖繩におってはいけない。そうすると日本内地のどこそこにおる沖繩人、こう言えば初めて被選挙権がある、こう解釈してよろしゅうございますね。私はそうだろうと思うんだが……。
  51. 大柴滋夫

    大柴委員 無理にそういうことを答弁しないでもよろしいです。あなたのほうの統一見解をあと調べて出しておいてください。  それからなお選挙局長、公示だ、告示だと両方のことばを使うことは、これははなはだしく時代おくれだと思う。意味はないのじゃないですか。理屈をつければ理屈はあるけれども、あなた方のほうの答弁、大臣みずから古いしきたりだと言われる。だからこれもひとつ考えておいてください。  たいへん時間がかかって恐縮でありますが、九十二条の供託の件でありますが、いま衆議院議員選挙の法定選挙費用で一番少ないのは、一体どのくらいでできますか。
  52. 長野士郎

    長野政府委員 法定選挙費用につきましては、いまちょっと調べておりますので、調べましてからお答えいたしたいと思います。
  53. 大柴滋夫

    大柴委員 おそらく二百万以下でできるだろうと思うのです。そういう場合に、衆議院議員の選挙の供託金が三十万円、選挙費用の六分の一かあるいは七分の一くらいの供託金を納めることは、金持ちの候補者にはいいだろうと思いますが、普通にあまねく選挙をひとつ公職選挙でやろうというような人には、これは若干高いんじゃないですか。私は高いと思うのですが、十五万円を三十万円とした理由はどこにあるのですか。
  54. 長野士郎

    長野政府委員 これは、一つは、現在の選挙公営が制度の整備に伴いまして、年々拡大をされていっておるわけでございます。なお今度の改正法によりましても、テレビによる経歴放送を認可する、あるいは新聞広告の回数をふやすというようなことも、公営の拡充として行なわれるわけであります。現在そういう公営経費というものは、大体所属候補者一人当たり六十万円必要としておるわけです。これは衆議院の場合でございます。それだけが全部の例ではないと思いますけれども、供託金が十五万円、そういたしますと、泡沫候補というようなものを考えました場合には、十五万円の供託金を出せば、六十万円の売名行為が極端に言いますとできるわけです。これが適当かどうか別でございますが、少なくともできるわけです。これは売名としては非常に有力な手段でございます。十五万円で六十万円の売名行為がさしてもらえるというようなことは、おそらくどこにもないんじゃないか。そしてこれは国民の税金でございます。そういうことから考えますと、やはり私どもといたしましては、実際は六十万円程度に引き上げたいということを初めは考えたわけでございますが、またそれは、戦前のことを申してはあれかもしれませんが、立候補の供託金が衆議院の場合二千円、そうするといまの物価に引き直しましても、大体六十万円をこえるわけでございます。また、公営費用としてその候補者に直接かけます経費も六十万円をこえるわけであります。そうしますとそこまでいくのがいいのじゃないだろうかということも考えられましたが、やはり新人の抑圧になるとか、そういう問題もあわせて考える必要もありますので、改正案としては、新聞広告とか、世上この前の選挙でいろいろいわれましたような問題の起こる余地ぐらいは少なくともなくすることが望ましいのじゃないかというようなこともございまして、衆議院の場合は三十万円、そういうふうに考えたわけでございます。
  55. 大柴滋夫

    大柴委員 そうしますと、四号の都道府県の議会の選挙、たとえば東京都議会議員、私のところの例を引いては失礼でありますが、人口七十四万近い大田区の東京都の都会議員でも三万円なんです。これはどうして上げないのですか。上げたには違いないけれども、今度は上げない。こことのバランスはどういうぐあいになっておりますか。
  56. 長野士郎

    長野政府委員 一つは、今度上げましたのは、そういう公営の拡充なり何なりの観点とも関連をして考えたわけでございまして、同時にまた一つは泡沫候補といわれる者の出ぐあいといいますか、そういう者の最もよく出るところだけに限定をして考えた。そうしませんと、軒並み上げればすべていろいろな問題、また新人を抑圧するとかいろんな議論が出てくるわけであります。ぎりぎり必要なところまでに限定をしたほうがいいのじゃないか。そうしますと、地方選挙の場合の公営というものもそれほどまだ進んでいる段階ではございません。また、いわゆる泡沫候補というものも、その言ってはあれでございますけれども、国の選挙、都道府県知事選挙ぐらいのところで最初は考えていくほうがいいのじゃないか、こう考えたわけであります。
  57. 大柴滋夫

    大柴委員 それから八ページの百四十条の二、要するに街頭演説あるいは連呼その他が午前八時から午後八時まで、朝が二時間、夜のほうか、時間短縮したわけでありますが、これは私ども事実上選挙をやっておりまして、いま東京都の一般の人は全部七時半から八時半ごろまで電車に乗るわけです。あるいは農村において午後八時以降始まる個人演説会というものは数限りもなくある。そういう場合にそういうことを、どこどこでだれだれの演説会がありますとこう言って周知徹底せしむるために、その三時間の制限が公職選挙法の精神にむしろ違反するのではないか、こう考えるわけでありますが、何か朝あまり早いとおじいさんは車に乗れぬだろうというようなはなはだしく現職優先、六十、七十のおじいさん向きの選挙運動方法になっているのですが、これは一体どういうことになりますか。
  58. 長野士郎

    長野政府委員 今回の改正法は、昨年の衆議院の総選挙におきますところの特例法を基礎にいたしまして、恒久化するという問題であったわけでありますが、御承知のように昨年の衆議院選挙におきますところの特例法におきましては、車上の連呼というものを認めたわけです。その連呼は午前九時から午後五時までということになっております。それから一般の街頭演説その他、また街頭演説の場所における連呼というものはいままででも認められておったわけでございます。それは午前六時から午後九時までということになっております。そこで非常にまぎらわしい。まぎらわしいといいうことが車上の連呼の時間制限というものをある場所ではほとんど無意味にならしめる。非常に混乱をする。したがってこれは統一的に考えるべきであるという考え方一つ出てきておるわけでございます。また同時に、連呼につきましては、あまり早朝からあるいは相当深夜に至る、と言っては語弊がありますが、相当おそくまで認めるということになれば、これは世論もなかなかきびしいわけでございます。  そこで、こういう連呼行為を認めるということが戸外における選挙運動に非常に威力を加えたわけでありまするので、そうなりますと通常の人の社会生活時間というものは、大体戸外でございますと、午前八時から午後八時ごろまでおおむね妥当な線ではないだろうか。そしてあとの八時から朝の八時までというものは少なくとも個人生活の時間として考えるのが常職的ではないだろうかというようなこととから、午前八時から午後八時までということにいたしたわけでございます。
  59. 畑和

    畑委員 関連。私も大柴君の意見と同じなんです。どうもこれはさっき言った連呼というのを、特例で一部朝の九時から午後の五時まで認めた。まあそいつを恒久化しようという際に便乗的に、まぎらわしいから街頭演説の時間も合わせよう、こういうことのようですが、それはどうもわれわれは承知できない。さっき言ったとおり、われわれは大体朝相当早くから街頭を歩く人たちに呼びかけなくちゃならぬ。八時なんということになりますと、もうつとめに出かけてしまう。会社の中に入ってしまう人が多い、あるいは電車の中の人が多い。その電車にこれから乗ろうという人に大いに呼びかけなくちゃわれわれとしては効果がないのです。  連呼連呼と言いますけれども、一体連呼というのはどういうのか私は大体これがはっきりしないと思うのです。連呼行為というのは一体どういうことですか、まずそれを聞きたいと思う。
  60. 長野士郎

    長野政府委員 確かに非常にむずかしいのでございますが、連呼といいますのは、非常に短い文言を繰り返して言う、これが連呼でございます。ただ名前だけでもなく、文言を繰り返して言う場合、これが連呼でございます。  それで先生のお話で、工場に入ってしまうということでございますが、それはごもっともであります。しかしまた工場から出てくるわけであります。入りっきりではありませんので、午後というのもあるわけでございまして、そこのところは入るときだけでなければならぬということでもないと思います。
  61. 畑和

    畑委員 それは入れば出るにきまっている。しかし入るときには、とにかくつとめは大体短時間に密集している。帰りは、どうも途中で遊んできたり何かするか、相当ばらばらになって長時間にわたる。朝のほうがわれわれとしては非常に効果的なんです。一緒にたくさんの人に宣伝できるわけです。そういう点ではこれは非常に困るですね。  いま連呼の定義の話が出ましたけれども、必ずしも革に候補者の名前だけではなくて、短いことばを繰り返して言うのが連呼だ。そうすれば、何も朝などただ繰り返して言うだけでなくて、街頭演説の中でそれをときどき繰り返すようなことが出るかもしれないだろう。しかしその区別というものは非常にむずかしい。それが連呼か連呼でないか普通の街頭演説かということは非常にむずかしいかと思います。いままではおもにいわゆる連呼云々というのは、車の中で動きながら繰り返してやるということがいけないというふうに常識的にはとられた。しかし、法文上では必ずしもそうじゃない。ところが実際とまってしゃべっていれば連呼でもいいのだということになった。それは何かというと街頭演説だ、とまっていれば街頭演説だ。ところが法文上は確かにそうじゃないようです。とまっていれば街頭演説と見る、繰り返したってそれは街頭演説なんだ、街頭演説は許されているのだ、こういうことなんです。われわれはそういうふうに常識的にはいままでやってきたつもりだけれども、法文的にはどうもそうじゃないらしい。しかし実際われわれはそういうふうにいままでやってきているのです。だから停止中は連呼はいい、ところが法文上はそうじゃないようですね。その辺どうも実際問題と法文との間に少し混乱があるのではないか。要するに繰り返しながらやかましく町を過ぎ去るということがいけない。じゃ車に乗って動きながら長々と演説をすることはいいわけです。連呼でなければいいわけです。ところが実際はそれはやはりうまくない。とまっていればいいというふうにいままで理解されてきているわけです。ところが今度の場合は法文に従って連呼行為の禁止、それから自動車での街頭演説は禁止、両方とも原則はそうなんです。連呼行為ばこういうときだけ許されるという規定になる。今度はまた自動車の上での街頭演説は本来禁止だけれども、とまっているときはいいというのでしたね。それで今度はただ、いま言ったとまっていても動いていてもどちらでも衆議院の場合には何時から何時までよろしい、こういうふうに規定が整備されるような案だと思うのですが。そういう点で非常に連呼行為の点がはっきりしない。法規上ははっきりしているようだけれども、われわれいままで実際にやってきた場合の理解のしかたとはだいぶ違うような気がするのです。そういう点で朝も従来どおり街頭演説は認めて、それで連呼行為は何時から悪い、何時からいい、こういうふうにすることは私は何ら差しつかえはないと思う。何も必ずしも合わせる必要はない、こう思うのですが、どうですか。
  62. 長野士郎

    長野政府委員 確かに連呼というものもいままででもお話のとおりでございまして、街頭演説の場所において行ないますところの連呼というものは認められておったわけでございます。したがいまして、とまってやるというよりむしろそれが街頭演説の場所と認められる限り認められておった、こういうことでございます。これは私ども推測でございすすが、連呼といい、演説といい、その境目のところはなかなか区別がしにくい。同じ演説でも候補者の名前を二分間くらいの間に十ぺんくらい言うくらいのやり方もできるわけでございますから、そうなると、演説と連呼とほとんど紙一重の場合もある。そういうことから現在の法制では街頭演説の場所において行なう連呼は認める、それから運行中の車上における連呼は従来はこれは騒音だ、そんなものはいかぬのだ、あれは騒音であって公害だ、この間もさる新聞が公害と書いておりましたが、公害だという考え方なんです。思想を述べるわけではない、あれは公害だという考え方が一力にあるわけであります。そこのところがありますので、ひとつ社会生活時間と考えられる範囲でそこを考えていくのがどうであろうかということでございます。  同時にまた、片一方で街頭演説の場所における連呼というものと時間を食い違いにしておったのが、この間の衆議院の総選挙の場合ですけれども、そうするといかにもそれがまぎらわしい、いやそれは街頭演説の場所である、制止されるとちょっととまって何かおやりになる方がだいぶおられたようでありまして、まことにややこしいというので、やはりそういうものはひとつ——連呼という以上は騒音的なものであるという考え方も非常に世間には強くありますので、連呼になるものと街頭演説は違うじゃないかという議論もありますが、やはりそこのところは非常にまぎらわしいことも行なわれておるようでございますので、一応通常の人の社会的時間に合わせて考えるほうが実にすっきりするじゃないか、こういうことであります。
  63. 畑和

    畑委員 とにかく公害だといういろいろ批判があるのです。ところが今後の場合は特例でやってみて衆議院、参議院それから知事、この程度は候補者の数も少ない、だから公害としても耐えられる程度のものではないか。市会議員や何か数の多い、狭い区域でやるときには非常にうるさいけれども、一選挙区で五人か六人、せいぜい七人というようなことではめったに同じところに回ってこない。むしろ選挙気分をあおる、選挙を意識させるという点で、この程度は認めたほうがその点でよろしいということで、公害の点が見送られて特例がある程度歓迎されたと思う。したがってそれを恒久化するということは私はけっこうだと思います。ただいま問題は選挙運動時間を同じくするというので、選挙運動が朝は六時というのが八時ということになるし、夜は九時というのが八時になる。それは候補者自身にとっては楽です。特にわれわれ革新系にとりましては車に乗って宣伝をすることが生命です。したがってこれ以外には——選挙連動というものはほとんどそれが大半です。保守系のほうは逆の場合が多い、ほとんど候補者は乗っていない。われわれはいつも朝から乗っておる。事実われわれも朝六時からかり出されて車に乗るということはつらいけれども、それが反面また効果のあることだから無理して乗っておるわけでありますが、候補者自身だんだん年をとってくるとおっくうになる。選挙活動の時間、街頭演説の時間をむしろ短くしたほうがいいという気分もあると思います。特に保守系の人には多いと思う。しかしわれわれはそれが生命であるのですから、やはり街頭演説の時間の制限ということには賛成できない。以上です。
  64. 大柴滋夫

    大柴委員 これはいま畑君の言ったように、夏など四時ごろ夜が明けるわけです。太陽がのぼる。朝の八時まで選挙の候補者は何をしておるのだと考えれば、午前八時から公の運動ができるなどということは、候補者自身をはなはだしく軽べつしたものですよ。だからぜひいろいろの状況をお考え願いたいこれは私どもの要望でございます。  次に一〇ページ、百四十三条の一号の「選挙事務所を表示するために、その場所において」と書いてありますが、その場所においてということはどういうことでありますか。
  65. 長野士郎

    長野政府委員 これは選挙事務所の表示でございますから、表示と申しますのは外に見えるわけです。外に見せたい。ここに選挙事務所があるということがわかるようにするわけです。したがいましてこれは中というよりも外であります。外でその場所においてというのは、その選挙事務所を直接表示するような場所でございます。したがいまして、あまり離れていますと、これはどこを表示しておるかわかりませんから、要するにそこはどこまでいったら「その場所において」でなくなるかどうかということは、それぞれの場所の状況によって多少の振幅は出てくるだろうと思いますが、しかしながらおおむね言えますことは、選挙事務所を表示して、そこに選挙事務所があることがわかる範囲、要するにその事務所の前、事務所そのものの前というか戸口というか屋根の上というか、多少歩道があれば電信柱などありまして、そこになわ張りができないか飛び出した三角の看板など出せないかとか、いろいろ問題が出てくるわけでございますが、まあまあその辺のところということになるのだろうと思います。
  66. 大柴滋夫

    大柴委員 ちょっと例はひどいですが、衆議院の第一会館みたいなところ、一番上の一番向こうに事務所を設けた、そういう場合は、小泉純也事務所というようなことをあの入口にしていいわけでありますか。前でありまして、確かに入口はそこでありますから。
  67. 長野士郎

    長野政府委員 このビルという、これはつらい御質問でございますが、従来でございますと、非常にかたいことを言っておりまして、そのビルの入口などということは往々にして乱用されるおそれがある。だから消極的に解したいという考え方のようでございます。しかしながら、だんだんビルが出てまいりまして、実際問題として、ビルの中の何階かのどこかのところということになってまいるわけでございましょうから、まあまあ場所によってはそういうものも可能だというような考え方も出てこざるを得ぬのじゃなかろうか。それは構造なりその建物の事務所のある場所の表示のしかたの問題、そこの廊下のその部屋の前まで行かなければ表示させない、廊下というものは通路である、こういう考え方も案外強いわけでございますけれども、それだけで必ずしも社会的な常識に合うのかどうかというといささか問題がございます。したがいまして、いまのようなお話のところでは、ある程度、そこのビルの共通の入口というところに立てられるような場合も、「その場所において」といわざるを得ぬという場合が出てくるのじゃなかろうかと思っておりますが、なおもう少し検討はいたして、解釈の考え方を統一させるようにいたしたいと思います。
  68. 大柴滋夫

    大柴委員 一二ページのポスターの掲示場、これはちょっと私の質問に無理があるかもしれませんが、掲示場をつくりまして、選挙管理委員会か何かから掲示場はこことここだ、こういうことを個々の候補者の事務所のほうに通知してくれますか。通知をしないとどこに掲示場があるか実際は選挙管理委員会に聞きに行くわけなんですかこれは通知をしてくれるようになっておりますが、どういうふうになっておりましょう。
  69. 長野士郎

    長野政府委員 いまの資料で申しますと、一七ページのところでございますが、百四十四条の二という関係改正条文の中でございますが、そこの初めのほうのところに第三項から第四項としたしるしがございます。「公職の候補者は、第一項の掲示場に、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会が定め、あらかじめ告示する日から」云々という下に「この場合において、市町村選挙管理委員会は、ポスターの掲示に関し、政令で定めるところにより、当該公職の候補者に対し、事情の許す限り便宜を供与するものとする」。というこういう規定を新たに加えようとしておるのであります。これは、候補者にその場所がわかり、一般の選挙民にも場所がわかるようにするということで、そのしかたを、まあいろいろやり方はあると思いますが、候補者のところにわかるような方法を考えるように指導していきたいと考えております。
  70. 大柴滋夫

    大柴委員 じゃ、ぜひひとつわかるように御通知を願いたいと思います。  それから一六ページ、都道府県の議会の議員、市の議会の議員の候補者のポスターが千三百枚とありますが、これはどうでありますか。たとえば七十三万の大…区のようなところで都会議員を争うときも千二百枚、人口四万ぐらいの市の市会議員を争う場合もこの規定によれば千三百枚でありますが、少しバランスがひど過ぎはいたしませんか。
  71. 長野士郎

    長野政府委員 確かにお話のような点が実情としてもあるようでございます。そこで私どももこの次そういう実態を調査いたしまして、バランスがとれるようにいたしたい。同時に、あるところでは少しポスターが多過ぎるというようなことを言われている面もありますので、そういう面も考慮いたしまして、もっと合理的に検討をいたしたいと思います。
  72. 大柴滋夫

    大柴委員 一九ページ百四十四条の四、そのまん中どころに改正案で、「ただし、ポスターの掲示場の数は、一投票区につき一箇所以上とする。」これは、ポスターの掲示場へも張るし、それからまた自分が自由に千二百枚の範囲内で張ってもよろしい、こういうことでありますか。
  73. 長野士郎

    長野政府委員 そういうことでございます。
  74. 大柴滋夫

    大柴委員 その都道府県の場合の選挙の公報というようなものは、自治省としてはどういうような指導をしておりますか。たとえば東京都の選挙管理委員会などは、数年にわたって都議会議員の公報を出す出さぬで争っているわけです。こういうことは明らかに出したほうが一般的にもいいだろうと思うのでありますが、公報も出さぬというような反動的な分子がおりまして、選挙管理委員会がさっぱり進まぬのでありますが、どういう指導をしているか。
  75. 長野士郎

    長野政府委員 いま聞きますと、出すように指導をしているようでございます。いままで現実に出ていないとすれば、そこにいろいろな問題があるのかもしれません。  先ほどちょっと説明が足りませんでしたので、補足さしていただきます。百四十四条の四は、御承知のとおり今度のポスター公営掲示場以外に張らない選挙以外の選挙でございますから、今度の場合は、都道府県の知事選挙と国の選挙、そういうものに限定いたしております。あと地方選挙につきましては、なぜしなかったかという問題でございますが、これは長についてはやってやれぬことはございませんけれども、議会その他になりますと、これは非常に数も不同でございまして、技術的にもなかなか一ぺんにいかない、今後検討しなければいけないということで、任意制のポスター掲示ということも次第にならしていくようにしていきたい、こういうことでございます。
  76. 島上善五郎

    ○島上委員 関連して。いまの公報ですが、地方議員の立ち会い演説会もたしか任意制でやれるようになっている。立ち会い演説会も、公報をなるべく出すように自治省では指導しているはずだと思うのですが、どうですか。
  77. 長野士郎

    長野政府委員 立ち会い演説会も同様でございます。
  78. 島上善五郎

    ○島上委員 ところが実際には公報を出しているところは寡聞にして聞いたことはありませんし、立ち会い演説会も、実際にやっているところは一カ所か二カ所ではないか。これは私の耳に入らぬで、あるいはやっているのかもしれませんが、寡聞にして聞いていないのです。この際せっかく御指導されておるとすれば、地方選挙で公報を出しているところ、立ち会い演説をやっているところありましたらどの程度かお知らせ願いたい。
  79. 長野士郎

    長野政府委員 任意制の立ち会い演説会、それから公報をやりました選挙は、地方選挙でございますが、そういうところは数はそれほど多くはないかとも思いますが、あるようでございますので、資料はひとつさっそくつくりまして、提出さしていただきたいと思います。
  80. 島上善五郎

    ○島上委員 指導がきわめて不徹底かそれとも指導されても怠慢しているのかしらぬけれども地方の選管では世話がやけることは何もしたくない。悪いけれども、そういうふうに考えているところもあるようです。全部が全部そうだとは申しませんけれども、その結果ではないかと思うのですが、公報を出しているところ、それから立ち会い演説会をやっているところ——私は立ち会い演説会をやっているところは、青森県くらいのものではないかと思うのですが、もうりょうりょうたるものです。指導するというからには出すことが好ましい、立ち会い演説会をやることが好ましい、そういう考えの上に立っているし、法の精神も任意制だとは申せ、そういう精神であると思うのです。ですからいまここでおわかりにならなければ、あとで御報告願うとしましても、その指導はもっと本腰を入れて積極的にやってほしいということを、この際希望しておきます。
  81. 大柴滋夫

    大柴委員 二二ページの百五十条、政見放送がラジオのみに限られているわけでありますが、いまの状況ではむしろテレビを用いたほうが多数の人も見るし、そして選挙の趣旨も徹底するだろうと思うのでありますが、このテレビを用いる用いないという話し合いは、一体どういうようになっておるのかあるいは将来の見通しというものはどうなっているのか、それをお伺いしたい。
  82. 長野士郎

    長野政府委員 テレビにつきましては、将来の方向の見通しというものをいま持っておるかということになりますと、持っておるとか方針をきめておるということは正直に申してまだ申し上げられる段階ではございませんが、私どもがばく然と考えておることは、将来はテレビでそういう政見放送ができるようになることが望ましいというふうには思っております。ただ現在はNHKでやっております経歴放送にいたしましても、いまの一人三十秒というのが技術的にはぎりぎりでございまして、そこで政見放送となりますと、相当な時間を要するわけでありますし、それからまたこれは経費も相当かかるわけであります。ネット網その他の技術的な問題もございまして、なお検討をしなくちゃいけない、こういう段階であると思います。
  83. 島上善五郎

    ○島上委員 関連して。私も技術的には各候補者がテレビで政見放送するということは非常にむずかしいと思います。ところで、いま党の政見放送の選挙放送といいますか選挙の期間中ばかりではなく、その前に多額の金を出せば自由にできる。こういうのが現状だと思うのです。党首でもあるいは政審会長でも、党のしかるべき代表的な人物が、もちろん個々の候補者の選挙運動に直接なるわけではありませんが、党の大きな選挙運動になる。放送は金さえ申せば自由にできるはずなんです。特に金さえ出せば自由にできるということは、選挙運動期間中に行なわれるということは、私は選挙の公正な競争に反することになりはしないかということを考えるのですが、そういう放送を、候補者個々の放送が技術的にむずかしいとするならば、党代表の放送を一定のルールによって公正に行なう。こういうことをお考えになる必要はないでしょうか。
  84. 長野士郎

    長野政府委員 お話のように、現在の法制では政党の政治活動はある面では非常に自由にしておりますので、政党が政治活動を政策の普及宣伝と申しますか、そういうような形で政治活動を行ないます手段といたしまして、テレビジョンを利用するというのは自由になっておるわけでございます。それはあくまで政党の政治活動としての問題でございまして、選挙運動ということで考えられておるわけではないのでございますから、そこのところは一線が画されておると申しますか、限界——個々の選挙運動にわたらないということではっきりしております。政治活動については自由だ。自由だから、したがってあらゆる利用できるものは利用できる、こういうことになっておるのだろうと思うわけでございます。そこで各党首が政治活動としておやりになることは、これは全く当然できるわけであります。それを共同してやられるとか、討論のような形でおやりになるとかいうようなことが選挙運動期間中にどれだけ可能であり、どれだけ実現されるかということは、これはもっぱら各党の話し合いの問題、あるいはそれを企画して進める人の問題であろうと思いますので、それを何か一定の拘束をいたしまして結びつけるというようなことば、いまの政治活動は自由にしておるたてまえから見まして、どういうものであろうかというふうに思われるわけでございます。
  85. 島上善五郎

    ○島上委員 選挙運動期間中は政党の政治活動、選挙活動は一定の規制があるのです。全く野放しではないのですよ。選挙運動期間中でない期間は野放しです。しかし選挙運動期間に入ると、ポスターについても一定の制限があるし、演説会についても制限があるし、政治活動のトラックについても制限がある。制限といえば制限ですが、公正な選挙のルールがあるのです。しかるにテレビだけはルールがないのですよ。金を出せば自由にやれるのです。これだけがルールがないということは、均衡上おかしいのではなかろうか。私はこういうふうにすべきだという案をいまここで持っておるわけではないけれども、それを検討する必要があると考えるのです。それだけがルールがないのは均衡上おかしいから検討する必要がある、こういうことなんです。
  86. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 関連して一つ政党のほうは研究してもらいたいと思うが、候補者について、私は特にテレビでなければいかぬと思うたことを申し上げますが、いまこれだけテレビが普及しましたら、どの家でもラジオかけないですよ。われわれの家でも、ラジオはあるけれどもほとんど使わないです。したがいまして政見発表をラジオだけでやっておっては、せっかくやっておってもたいへん聞かぬ者が多くなっておる。そうなるとどうもテレビがなくちゃいかぬ、こう思って、テレビと併用できぬものかということを考えるのだけれども、これはぜひひとつそう考えてもらいたいと思うが、いかがですか。私の考えが間違っているかどうか。
  87. 大柴滋夫

    大柴委員 この前、逓信委員会で、NHKの副会長に質問しましたら、あなたの言うように技術的にも経済的にも、そうむずかしくないと言うのですよ。テレビのカバーレージが八三ぐらい日本全国いっておりまして、そうして技術的に異議がないし、NHKはほかに料金をとっているのでありますから、どうこうはないのでありましてわれわれは、これは明らかにあなたたちの怠慢だと思うのですよ。だからこれはNHKとも関係官庁とも話してテレビによる政見放送というものの相談をしてみて、十日ぐらいのうちにひとつ返事をいただきたいと思いますが、どうでありますか。選挙局長は技術的にも経済的にもむずかしいと言うけれども、聞いてみたらむずかしくないのです。
  88. 長野士郎

    長野政府委員 NHKの会長がどういうふうに言われましたか、私どもNHKにただしてみるつもりでございますが、技術的には非常にむずかしいというふうに私どもは聞いております。特に近畿とか関東とか、中央局みたいな大きな局がございまして、そこがブロック的なところを一括して放送しておる、波を流しておるようなところでは非常にむずかしい、こういうことになりまして、時間的な制約が非常に出てくるわけでございます。NHKが全県的にテレビの局を持つようになれば、これは可能になるというふうに思われるのでございますが、私どものいままで聞いておりますところでは、この点で技術的に非常にむずかしいということであります。また、いまのネットでは、そういうことを言うとおこられるかもしれませんが、八五%しかおおっていないようであります。そこにも一つ問題がございまして、経歴放送というのは、そういう意味でテストとして逐次進める一つの道をいままで開いてきた、こういうことになっておるわけでございます。
  89. 大柴滋夫

    大柴委員 あなたの御答弁はそれでけっこうでありますが、大臣、これはちょっと食い違っていますから、技術的にむずかしいならNHKもあるし、NHK教育放送もあるわけですから、なぜ技術的にむずかしいということをもう少し調べて、なぜテレビの政見放送ができないかということを十日か二週間のうちに御答弁を願いたいと思います。よろしゅうございますか。
  90. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 二百一条の五で、自動車も加えてこれこれということに法文ではっきりしております。ですが、いま御指摘のとおりに、何といってもテレビの時代になりましたので、いま経済的あるいは技術的な問題があってちょっと困難な事情があるようでございますけれども、近い将来にはやはりテレビというものが活用されるときがくるわけでございまして、ただいま御要求のありましたことにつきましては、NHKあるいは教育テレビ当局、その他これに関連するテレビの関係者といろいろ協議いたしまして、結果を御報告いたしたいと思います。
  91. 大柴滋夫

    大柴委員 最後に質問をしたいと思うのでありますが、第百六十五条、立ち会い演説会の件であります。立ち会い演説会は本人もしくは代理が必ず出る、そうして二回ないし三回にわたって出られぬような者は、もう立ち会い演説会に出る権利を剥奪する、こういうようにでもやらぬと、東京都のような場合の泡沫候補が出た場合には、間に一時間くらい、たとえば私が九時からやるとすれば八時から九時くらいまで間がある。九時からやる者はたいへん迷惑になる。こういうことの規定についてはいかがお考えですか。
  92. 長野士郎

    長野政府委員 立ち会い演説会につきまして、この前の総選挙のときにいまお話しのような関係で他の候補者の方々に当時非常に迷惑をかけた事例が相当各地にあったことは私ども承知しております。その点について考えてみますと、いま先生のおっしゃいましたようなことと大体が似通うことでありますが、いかなる事由があっても何回か——極端に言えば、私どもは一回でもそういう無届け欠席をするようなときはそこからはずすというようなことにでもしなければいかぬという気もして実は検討したわけであります。しかしそれがそこまでいくのはどうかという議論になってまいりました。あるいはそれを一番最後の時間に回してやれということになりました。立ち合い演説会で一番最後に回るのが案外一番よくなったりして、なかなかそれもむずかしいわけであります。そこでもう一ぺん、急場のことではなくて少し腰を落ちつけて検討してまいりたいということで十分検討する意思は持っておりますが、今回は主として特例法の恒久化ということを中心にしたわけでありますので、そこまでは改正の手をあまり伸ばさなかったということでありますが、検討はいたしておりまして、おっしゃいますような形の合理化を進めていくことが、どうしても選挙運動の秩序を保持するためには必要ではないかというふうに思っております。
  93. 大柴滋夫

    大柴委員 御存じだろうと思いますが、いままで私ども選挙区なども立ち会い演説会に平均七百人くらいの人が入っておったわけです。泡沫候補が来まして三十分なり一時間というようなことをしましたら、この前の選挙などは平均百人あるかないかです。そうなってくると、今度はわれわれ泡沫候補でないほうは、あんなところに行ってもつまらぬじゃないか、あんな立ち会い演説会に行くよりもトラックの上か何かで駅の前でやっておったら三百人か四百人の人はすぐ集まるじゃないかというような議論になってきて、立ち会い演説会そのものがつぶれてくる。だからこれは早急に御勘案を願いたい。  それからもう一つ選挙中における政党運動、トラックならトラックで政党の演説会をやる場合には当然候補者も   日本社会党の街頭大演説会があるときにはたとえば東京六区であれば島上善五郎がトラックの上に乗っていろいろ政見を発表し、この政見を持っている私にどうぞよろしくと言うことも、今度の法案では可能でありましようね。
  94. 長野士郎

    長野政府委員 街頭演説会におきましては選挙運動にわたることができるわけでありますから、そういうことは可能でございます。
  95. 大柴滋夫

    大柴委員 終わります。
  96. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この機会に刑事局長がおられるから、ひとつ質問をさしていただきたいと思います。両局長から承りたいのですけれども、ある候補者を落選せしめようと思って、ある者に金を出さして落選せしめる選挙運動をやれば、これは選挙違反になりますね。この点は言わぬでもわかっているようだが、まずその点を聞いておきたい。
  97. 長野士郎

    長野政府委員 選挙違反になると思います。
  98. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 二百二十一条でしたか、当選を得しめまたは得しめざる目的を持って、でしたね。そこで、その当選を得しめない行為ということはたいへん広いものであって、私の知っておる範囲では、そのうちの最も悪質なものが見のがされておる実情があります。その点をひとつお聞きしてみたいと思うのですが、いわゆる泡沫候補を立てるのです。私なら私を落とそうと思うと、私の足元にいって泡沫候補を立てる。主として泡沫候補は金がないからその者に金をやってそして立候補せしめる、供託金並びに運動金までも渡して。さようなことをやれば、私はその二百二十一条の得しめざるの最も悪質なものだと思うが、この点はどう思います。
  99. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私の意見を申し上げますが、これはいま御指摘のように、最も悪質な落選させる行為であると見られる場合もございますし、その泡沫候補をあくまで泡沫候補でないと信じて金をやっている人もありましょうし、そこは事実認定によってきまる問題だと思います。したがいまして、客観的に見て、いま仰せのような落選させる目的でそれをやったと見られる事実関係が証拠によって認められるならば、それを前提といたしまして、先ほど選挙局長がお答えになりましたような法律の適用を考えていいと思います。
  100. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いま局長の言われたところにたいへんな懸念があるのですが、そう認められるならば、こういうことですが、それを認める認めぬは捜査の問題ですよ。さようなことをやれば選挙違反であるということをまず認めることがほんとうだと思います。ところが実際にそういうことをやっても、きまっておらぬものだから、いまあなたの言われるように、そう言ってみたって、向こうが泡沫でない、ほんとうは当選すると思っていたら因りますなどといって取り締まりをしていないことがある。だからそういうことはいかぬのだ。それは選挙違反として最も悪質なんだということをまずきめておいて、あとは事実上あがるかあがらないかは、それは検察当局の腕次第だ。私はそうでなければいかぬと思うのですが、実際においてそういうものを書いて出さなければやらないのです。だから、そういうことを明らかにひとつ条文に載せたほうがいいのじゃないかと思うが、いかがですか。
  101. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私は、それは法律問題じゃなくて、事実問題だと思うのでございます。事実問題が固まってまいりませんと、それに適用すべき法律は何かということはきまらないのであって、いま先生の御指摘のように、そういうものは犯罪だというふうに——そういうものというのは泡沫候補とか何とかあいまいなことでは事実はきまらないのでありまして、やはり二百二十一条一項一号のような規定がありまして、そして事実をそれに当てはめてみる。その事実が二百三十一条一項一号に当たるならば、それで罰する。こういうのであるのが筋合いだと思うのでありまして、いまの仰せの点は少し意見が違うかもしれませんが、私は事実問題だと思います。
  102. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言うのは、あの条文があるから、そういうことがあればやれるわけなんだ、そういうことですね。ところがやらないのです。なぜやらないかというと、いまあなたの言われるように、やってみたが、それはどうも泡沫候補だとあなたは言われるけれども本人ほんとうに出ると思っておったから、自分が金をやったのは陣中見舞いだ、こういうことではいかぬからというので手をつけないのですよ。第一、そういう立候補した者をやめさせるために金をやれば、これは違反だ。これはちゃんと別途条文があるのです。これだって当選を得しめないためにやめさせておる。だから、ほんとうはそんなものがなくてやれるわけだ。その条文を特別に入れてやっておる以上は、いま言うとおり、やる気のない者に——やる気のないというのはおかしいが、落とそうという目的を持って一人の候補者を立てる場合にも重く罰する規定が必要だと思うが、これは大臣からも御意見を承っておきたいと思います。
  103. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 お互いに選挙をやっていると、いろいろなことが気になるし、またそれに類することもおそらくあるのではないかと容易に想像がつくわけでございます。いま刑事局長が事実問題だと言いましたが、まあ泡沫候補だと言っておるその隣のほうが、いや君のほうが泡沫だと言うかもわからぬし、結局これは厳密に言えば、出てきた票によって、かえって泡沫視されておったほうが点数が多かったというようなことも、考えればあり得ないことでもありませんし、事実そういう悪質の、たとえば某候補を落とさんがために、悪質のそういう妨害行為をやったということは、結果を見なければわからないのではないかとも考えるわけでございます。結局は先ほど刑事局長が言いましたとおりになるのではないかと私も判断するわけであります。
  104. 小泉純也

    小泉委員長 畑和君。
  105. 畑和

    畑委員 一時ごろまでに終える予定でございましたが、だいぶ時間が過ぎましたので、刑事局長は早くから来て待っておられますから、刑事局長に関連する分を先に質問をいたしまして、あとは次会に回してもよいと思います。  それは、この改正の問題と直接関係がないのでございますが、いつか聞いてみたいと思っておりました。この前、私、資料請求をいたしましたところ、法務省のほうから出てまいりました資料がございますが、それはいままでの参議院選挙、それから地方選挙、衆議院選挙、これを通じての選挙違反事件の裁判の結果についての資料要求をいたしたのですが、まだ統一選挙とそれから衆議院選挙については資料がまとまらない、こういうことで参議院の選挙選挙違反の結果調べだけが出されております。実はこれだけではわからぬのでありまして、このあと最近のものがわからぬとはっきりしないと思うのでありますが、しかしそれが出るまでは一応相当時間がかかりましょうと思いますので、この参議院選挙の結果調べというものを基礎にして、その後の趨勢など大体のことがわかったらそれをお答え願いたい。  それに関連するのでありますが、まず結果調べについて——もう資料が出ているのですからいいようなものですが、ひとつ法務省から出ておるものを私ちょっと読んでみますと、「三十七年七月施行の参議院議員通常選挙における選挙選反事件裁判結果調」こういうことになっておりまして、第一が起訴人員、合計が六千八百十五人、内訳が、公判請求が千百九十一人、略式請求が五千六百二十四人で、公判請求のパーセンテージが一七・四%、略式請求のほうが、パーセンテージが八二・六%ということであります。その次に、裁判結果、懲役または禁錮に処せられた人員が計二百九十三人で、内訳は、実刑が十二人で四・一%、執行猶予が二百八十一人で九五・九%、右に伴う公民権停止状況、これの関係で不停止が三人、一%、期間短縮が百十四人、三八・九%、停止が百七十六人、六〇・一%、それから罰金または科料に処せられた人員、計四千九百四十六人、内訳が、実刑が四千九百二十三人で九九・五%、執行猶予が二十三人で〇・五%、次に、右に伴う公民権停止状況につきましては、不停止が千十四人、二〇・五%、期間短縮が二千百九十三人で四四・二%、停止が千七百三十九人で三五・二%、こういう報告に接しておるわけでございます。  ここで私が問題にしておりますのは、公民権停止の関係でございます。御承知のように選違挙反で処罰されると同時に、公民権停止の問題が判決で一緒にきまるわけです。そのまま略式でやられ、あるいは判決でやられる場合に、黙っておれば停止を五年間食う、それを、あるいは期間短縮、あるいは停止せずというのをつければ、そういうことができるということになるわけであります。現存におきましては法が改正されまして、買収、供応あるいは利害誘導等の重要な罪の場合には、公民権は必ず停止をされなければならぬ、それ以外の罪については従前と同じように不停止または期間短縮がつけられるということに変わりました。これはたぶん、参議院選挙のときにはその法が改正になる前だと思います。そういう関係でわりあいに不停止あるいは期間短縮が多いのだと思うのです。これによりますと、懲役刑の場合は不停止がわずかに一%、期間短縮が三八・九%、停止が六〇・一%になっております。これは懲役になるくらいの場合ですから、今度の法律によりますとおそらく期間短縮、不停止がなくなるわけでありますが、この表によりますと、実績によりますと、懲役刑の場合にも、期間短縮などは三八・九%もある。それで一方罰金の場合のほうは、不停止が二〇・五%、さすがにこれは懲役刑の場合よりもはるかに不停止が多い。期間短縮が四四・二%、これもはるかに多い。停止が三五・三%こういうことになっております。この趨勢というのは表には出てきておりませんけれども、これがその後どういうふうに変わっておるか、これをひとつ承りたいのです。実は、選挙違反にもいろいろ態様がございまして、悪質といわれる買収、供応、利害誘導等のものは公民権の停止というように今度なったわけですが、これは当然だと思うのです。それで、もっと軽い形式犯的なものについては、従前と同じということになっております。しかし、これの場合でも、たとえば略式請求をする場合に、その辺の配慮はあまりせずに検事のほうで略式請求をするときに、公民権を停止せず、あるいは公民権の期間短縮というのをつけない場合が多いのじゃないか。そうすると、裁判官のほうはそのまま受けて、そのままつけない。ところが形式犯でありまして、つけてもよろしいと思われるものが相当あるけれども、そういった惰性でその辺の弾力性に欠けるところがありはしないかこう思うのです。特に、私京都のほうの選挙違反について一つ聞いておるのですが、事務所開きの通知を出した、実際われわれも実は出すのです。これも正式にいえば例の文書違反だろうと思うのです。しかし、これも、実際上の儀礼的な問題もあるし、わからないから出す。これがたまたま引っかかって調べられて、略式起訴になった。これは約二十三名の人に、選挙はがき以外のはがきを使って出したから文書違反だということで四名ばかり起訴になっておる案件がございます。具体的名前は差しさわりがありますから出しませんけれども、こういったものなどは、起訴された以上罰金はいたし方ないといたしましても、政治関係関係しておる人にとりましては、特にこれから立候補でもしようというような人、あるいはまたさらに現職の市会議員であるとかなんとかいう場合には特に非常に痛いわけです。そういう点はやはり相当考慮をして、私は弾力性を持ってしかるべきだろうと思う。悪質な罰は、これはいけないということで法は改正されたわけですが、そういう形式犯的なものはもっと相当弾力性を持たしてよろしいのじゃないかと思うのです。その辺が、三十七年の参議院選挙の結果によりますと、一応略式罰金の場合には、相当、不停止が二〇%あり、あるいは期間短縮が四四%あるようになっておるのです。まあ弾力的にやっているようにも思われますが、その後、公民権の問題はやかましくいわれるような関係もありまして法も改正になった影響もあって、この略式の場合の不停止あるいは期間短縮というのが、パーセンテージが実際には少なくなっているのじゃなかろうか、こう思うのでございますが、まだ資料が出てないのでその辺断定できないのですが、その趨勢などわかりましたら、それと同時に、それに対する私の意見的なことをいろいろ申しましたけれども、法務省としての御見解をひとつ承っておきたい、こう思うのです。
  106. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 昭和三十七年七月施行の参議院議員選挙は、ちょうど法改正によってやりました選挙でございまして、その選挙でございますが、事前運動で処罰されましたものの中には、旧法の適用を見たものがございます。そこでこの統計は、大部分が新法でございますけれども、なお旧法の処罰を受けましたものも入っておりますので、いうならば中間的な資料でございまして、実質をはっきりつかみ得ないわけでございますが、ただ、それにいたしましても、昭和三十四年の参議院の選挙と比較をいたしてみますと、公民権停止になりましたパーセンテージは、法改正によりましてずっと上がってきておるのでございます。たとえば公判請求を受けまして執行猶予になりましたものが、三十七年には二百八十一人の九五・九%でございますが、これが三十四年の選挙のときには百六十七人でございまして、倍までにはいきませんが、ほとんど倍に近い数字が公民権停止になっておるわけでございます。これに準じまして以下いずれも公民権停止の範囲が広がっておりますことは法改正の趣旨に従っておるわけでございます。なお、その後の選挙につきましては裁判結果でございますためにまだ集計ができないのでございますけれども、逐次報告を受けております資料によりますと、さらにこの公民権停止の制度は徹底して処理されておるように見ておるのでございます。  ところで、ただいまお話しの公民権は、一定の犯罪につきましてはすべてこれは停止するたてまえでございまして、ただ不停止にはできないが、期間を短縮する道が裁判上開かれておるのでございます。そこで検察官が事案の性質によりましてある者には期間短縮の意見を付して裁判所に回す。特に略式命令を請求する比較的軽微な事件につきましては、そういう措置をとることが場合によっては妥当な措置であるというような御趣旨も、いま御質問の中に入っておったかと思うのでございますが、私その点は全く同感でございまして、事情によりましてはそういう措置を、検察官として意見を述べることもやっておる庁もあると思うのでございます。ただ、一般的に申しますと、裁判では非常に裁判官の個人差と申しますかものの考え方によりまして千差万別でございまして、ある裁判所の裁判官はもう法律どおりぴしっとどんな事件でも公民権の停止期間の短縮を認めないという態度で裁判をされる庁もあるかと思うと、もうこまかく短縮をしてきめのこまかい判決をされる裁判所等もありまして、そういうのを見ますと非常にまちまちでございます。そこへもっていってまた検察官がいろいろ意見をつけて区別をしますことは、ますます短縮制度を混乱させるというような配慮もございまして、検察官の大勢としましては法律の命じておるとおりに運用していこうということになっておりますけれども、例にあげられましたような非常に経微な事件であって、いかにもそれによって公民権が五年間も停止されるということは適当でないと思われるような事案につきましては、進んで検察官のほうから付せんをつけまして、検察官の意見として適当に短縮を考慮されたいというような意見をつけて出すという例もないではないわけでございます。大体公民権停止の問題につきましてはそういう運用の実情になっておるかと思っております。
  107. 畑和

    畑委員 公判の場合におきましてはいろいろこまかい審理等が行なわれまして、その犯罪の実態等が相当こまかくわかるわけであります。したがってこれは裁判完に一任せざるを得ないわけでありますが、略式命令は、先ほど申し上げましたように、大体検事さんの意見のとおりにそのままやるというのがほとんどでございまして、特別にさらに判事のほうがその本人に会うわけではありませんので、ほとんど実態がわからずに検事の意見どおりになる。ところが検事さんといたしましてはやはりなるべく重くというのはおかしいかもしらぬけれども、法を守る当事者といたしましてとかく規則どおりになりやすい傾向におる。したがって略式の場合などこそ起訴、不起訴、それからさらにまた起訴になった場合には具体的実情に応じてやはり期間短縮、停止ができるならできるというふうな意見を述べる必要があると思うわけです。いま刑事局長からもそういう方針で付せんをつけてやっておるというようなことでございますが、とかくそのまま書面審理で刑が言い渡されることになる場合が多いのでありますから、ひとつ十分そういう点を考慮していただきまして、実情に応じた弾力的な措置を、検察陣のほうでひとつこの場合だけは特に考えてやっていただきたい。この京都の事件など私もちょっと聞きまして、このこと自体、起訴すること自体がどうかと思ったけれども、法に触れるということになりますればいたし方ございませんが、そういった配慮で緩和するというごとにひとつ今後とも御指導を願いたいと思います。この点につきましてはこれで終わりますが、今度の法改正のことにつきまして罰金の問題に関するところがございますので、それについて一、二質問をしたいのです。  これは選挙局長のほうで先に答弁していただいて、あと刑事局長のほうにお願いするということになると思います。今度の改正で、先ほど大柴君の引用されました資料新旧対照というもののページ数で申しますと、四七ページと四八ベージ、四九ページにわたりますが、二百三十四条の改正点は「電報」というのが入った。それから二百三十五条、これもやはり電報による場合が入りました。これらはなぜ電報をつけ加えたかということなんです。その場合に普通の郵便は入らないのかどうか、電話などの場合はどうかこれをまず選挙局長にお伺いいたしたい。電報、たけを特に入れた理由、これは「新聞紙、雑誌、引札、ポスター」こういうのですから、大体そういうもので公にだれも見られるような状態になる犯罪、これを取り締ろうということかと思うのです。電報というのは個々人に行くわけですから、その辺少しいかまでのと違うと思うのです。ただ電報が非常にたくさん使われるとすると、同じような結果になる、こういうことで電報を入れた。そうだったら郵便は入るのかどうか、電話はどうなんだ、こういうような疑問が出てくるわけです。この点二百三十四条と二百三十五条の「電報」を入れたことについて、ひとつ選挙局長から答弁してもらいたい。
  108. 長野士郎

    長野政府委員 立案の過程におきましての考え方でございますが、あと法律的に詳しいことは刑事局長にお願いすることといたしますが、実は二百三十五条の四という新しい条文を考えまして、そしてこれで虚偽虚偽と申しますか人の名前を使いまして、そうして通信したり依頼状を出したり電報を出したりすることを問題にしておったわけです。この二百三十五条の四というものを条文で書きあらわしました場合に「郵便、電報又は電話」こういうふうに出てきたわけでございます。その場合に、それともう一つ虚偽事項の公表罪につきましても、事実を歪曲していまお話のございましたような状況で電報というものもあり得るわけでございますので、そこでそこへも平仄を合わせて電報というのを入れるほうが適当じゃないか、その辺からだんだん発展をしたかと思いますが、実はここで二百三十五条を入れますと、三百三十五条には「雑誌、引札、ポスター」と書いてある。そうすると二百三十四条のほうも「雑誌、引札、ポスター」と同じことがあるものでございますので、やはりその間に電報を入れたほうが条文ていさいもいい。それからこれは事実認定の問題もあるかと思いますが、これは二百三十四条、二百三十五条は、「いかなる方法をもってするを問わず」、ということでございますので、こういう犯罪の構成要件が成立をいたしますと、郵便はどうだというお話でございましたが、いかなる方法をもってするのも問わないわけでございますから、この刑が成立するということになれば、それは郵便であっても、こういう場合には該当する、犯罪の構成要件というものを満たせば当たるのじゃないかと思いますが、その辺は刑事局長のほうからお願いしたいと思います。
  109. 畑和

    畑委員 そうすると、結局二百二十五条の四を新設するということの際に、「電報」というのがあるから、こちらの二百三十五条も電報を入れたほうがよろしい。しかしそこに重点があるというのではなくて、「その他いかなる方法をもってするを問わず」、ということもあるくらいだから、例示的に示しただけだ。ただ問題は、公にした公表罪あるはは虚偽事項を公にした、あるいは事実を歪曲して公にした、要するに虚偽事項の公表罪だ、したがって、公にすること自体に重点があり、それでなければ構成要件にはまらないということだから、それに重点があるから、電報というのもそうたいした意味ではなくて、二百三十五条の四とつり合い上入れた。「その他いかなる方法をもってするを問わず、」と書いてあるから、そのほかのことでもいいのだ、したがって電報もその意味で入れたのだ、こういう御答弁のようですが、それでよろしゅうございますか。
  110. 長野士郎

    長野政府委員 大体そういうことでございます。  さらにもう一つつけ加えさしていただきますと、従来は電報を打つということで、電報を受け取るということは、それはいいことであって、あまり罪にならないと申しますか、むしろ電報をいただいたというので非常にありがたがる、そこでそういうふうに電報の値打ちがあるものだから、そういう電報がたくさん怪文書として出てくる傾向にある、そこでやはり電報はいかぬのだ、電報というものをそういう場合に打って、受け取ると、これは妙になるのですよということを明らかにした意味もあったわけでございます。そこでいままで電報という字句が虚偽事項の公表なり虚偽表示というようなかっこうの場合に出てないものでございますから、そこで新しく電報というものを入れまして、選挙民によくわかるように、要するに電報はいかぬ、このとおり書いてありますよ、こういう選挙法罰則は、住民によくわかるという意味もありますので、電報というものはいかぬということをはっきりさせる意味もありまして、先ほど申し上げましたものと合わせまして、電報という規定を入れさしていただきたい、かように思っておるわけでございます。
  111. 畑和

    畑委員 そうたいして積極的な意義はなさそうだ、片方の三百三十五条の四というものは、通信をする罪、要するに虚偽の名前を使って通信する罪、そこに重点がある。片方は虚偽事項を公表するというか、みなに知られるような方法でやるということでございまして、これはちょっと違うわけです。したがって、電報というものをことさら入れること自体どうかとすら思うくらいです。これはていさいもあるというのですが、電報は個々にいくだけだが、引札、新聞、雑誌、ポスターは、だれもが見るということで意味がある。だがら電報を入れたことは、そういった二百三十五条の四との関連だと言われるのは、ちょっと説得力がないように思います。この点はおそらく法務省のほうと協議をされたと思うのでございますが、その辺、法務省のほうの御意見はいかがですか。
  112. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私のほうでも御協議をいただきまして、一緒に研究はしたのでありますが、電報を入れますことの必要性につきましては、先ほど選挙局長から申し上げましたように、電報を利用してのこの種の公表罪あるいは虚偽表示罪、こういうものの悪質なものが逐次ふえてきたという実情に対処しますために、解釈論としてはあるいは入るのかもしれませんけれども、これを文字どおり掲げることによりまして、その趣旨を明らかにすることが一般の高い意味の効果をあげるのに必要である、かように結論がなりまして、この電報という文字を挿入いたしたのでございますが、この電報の性質からきます問題は、むしろこの電報そのものよりも、電報を使ってやる場合の虚偽事項を公にし、歪曲して公にしとか表示するというのが、どういうときに着手になり、どういうときに完成するかということが問題であったように私は承知いたしているわけであります。
  113. 畑和

    畑委員 その次に二百三十五条の追加ですが、虚偽事項を公にし、又は事実を歪曲して公にしたとき。これはいままでは「虚偽事項を公にしたとき」ということだけでしたが、それではぴたりとこない場合がある。ある程度事実はあるけれども、それが歪曲されている、全然虚偽ではないけれども尾ひれをつけたり何かして、だいぶ実態と違っている、こういうものの取り締まりの方法が、いままでの虚偽事項ということだけではつかみ切れないということで、こういうのを追加したと思うのですがこれはそのとおりで間違いないですか。
  114. 長野士郎

    長野政府委員 そのとおりでございます。
  115. 畑和

    畑委員 次に二百三十五条の四、これはほんとうの新設でありますが、「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって真実に反する氏名、名称又は身分の表示をして郵便、電報又は電話により通信をした者は二年以下の禁錮又は二万五千円以下の罰金に処する」。この場合に「真実に反する氏名、名称又は身分の表示」というのは実在するその人には何の連絡もなしに、たとえば社会党の河上委員長の名前で、だれだれ候補危うし、よろしく頼むということは、これになるのだと思いますが、そういう場合。あるいはまた全然実在しない人の名前を使う、こういうものを含むのか、その点はいかがですか。
  116. 長野士郎

    長野政府委員 両方含むと考えております。
  117. 畑和

    畑委員 刑事局長、いかがですか。
  118. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私も全く同様に考えております。
  119. 畑和

    畑委員 こうしたいわゆる郵便、電報また電話で実在する人間の名前をかたって当選を得もしくは得しめ、または得しめない目的をもってということで選挙が非常に混乱することがあるわけです。あるいはまたそのときに全然実在しない人間の名前を使うことも同時に処罰される、こういうことであるように思います。ただしかしこの場合に、場合によっては、これをしゃくし定木に解釈すると相当何でも引っかかってしまうおそれがある、こういう可能性もあると思いますが、悪質なものは別としまして、そういうたいした罪がなくて、こういう条文のとおりに一応当てはまるという場合もあろうと思いますが、そういう点につきましては配慮されたかどうか、ひとつお聞きしたい。
  120. 長野士郎

    長野政府委員 まあ悪意でなくという、そういう場合もあるのかもしれませんが、しかしいずれにいたしましても、当選を得もしくは得しめ、または得しめない目的をもって、当該本人が知りません、連絡もなく、無断で氏名なり何なりを用いるということでございますから、これはもうどうもそれが軽微な場合と非常に重要な場合というものは、多少それは場合によってはあるのかもしれませんが、しかしながら、ついつい、そういう善意というか、常識的な意味での悪意がなくてやったというようなことは、この場合それがうまくはまるような実例が出てくるかどうかということはよくわからないのでございますが、まあ事実の実際が重要な影響を及ぼしたようなかっこうであったか、あるいはそれが非常に大きな影響を及ぼさない、だれでも考えられるようなことでやりそこなったようなことをやっておられるのかというようなことが結果として出てくる場合があるかもしれませんが、いずれにしましても、当選を得、もしくは得しめ、または得しめない目的をもってやっておるのでございますから、気がつかずにやったというようなことは、どうもあまり該当がないのではないだろうかというふうに考えます。
  121. 畑和

    畑委員 では、あとのこまかい点はこの次にします。
  122. 小泉純也

    小泉委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二分散会