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1964-05-27 第46回国会 衆議院 建設委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十七日(水曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 丹羽喬四郎君    理事 加藤 高藏君 理事 瀬戸山三男君    理事 廣瀬 正雄君 理事 福永 一臣君    理事 岡本 隆一君 理事 兒玉 末男君    理事 山中日露史君       逢澤  寛君   稻村左近四郎君       大倉 三郎君    木部 佳昭君       木村 武雄君    正示啓次郎君       田中 六助君    中村 梅吉君       堀内 一雄君    松澤 雄藏君       山本 幸雄君    渡辺 栄一君       井谷 正吉君    金丸 徳重君       久保田鶴松君    阪上安太郎君       西宮  弘君    原   茂君       八木 一男君    吉田 賢一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (近畿圏整備本         部次長)    八巻淳之輔君         総理府技官         (首都圏整備委         員会事務局長) 谷藤 正三君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  山口 一夫君         建設事務官         (計画局長)  町田  充君  委員外出席者         専  門  員 熊本 政晴君     ————————————— 五月二十六日  委員田村元辞任につき、その補欠として木部  佳昭君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員天野光晴君、井谷正吉君及び山崎始男君辞  任につき、その補欠として田中六助君、八木一  夫君及び阪上安太郎君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員田中六助君、阪上安太郎君及び八木一男君  辞任につき、その補欠として天野光晴君、山崎  始男君及び井谷正吉君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 五月二十五日  住宅地造成事業に関する法律案内閣提出第一  五八号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  土地収用法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一四五号)  首都圏既成市街地における工業等制限に関  する法律の一部を改正する法律案内閣提出第  一六七号)  近畿圏既成都市区域における工場等制限に  関する法律案内閣提出第一六八号)  近畿圏近郊整備区域及び都市開発区域整備  及び開発に関する法律案内閣提出第一六九  号)      ————◇—————
  2. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  土地収用法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑を続行いたします。西宮弘君。
  3. 西宮弘

    西宮委員 それでは、土地収用法に関連いたしまして、若干お尋ねをいたしたいのでありますが、時間もないようでありますから、ごく要点だけお尋ねをいたします。  私は、北上川の支流にあたります石淵川に設けられた石淵ダム建設の際に行なわれた土地補償を具体的な一例として、それに関連して、そこからいろいろな問題が考えられるので、そういう点について三、三お尋ねをしたいと思うのです。  石淵ダム建設に伴っての補償実態については、これは政府筋からも報告がなされておりますので、十分御承知だと思うのです。それによりますと、この石淵ダムは、昭和二十一年に着工して、二十八年に完成しております。十三億三千六百万という工費で仕上げたダムでありますが、その際に、石淵部落というところに十三戸の農家があって、それが水没するというので、他に移転をしたわけでありますが、その農家実態をごくかいつまんで申し上げると、水没前には相当の生活をしておった部落なんであります。たとえば耕作面積は二戸平均で一町三反五畝持っておる。米や雑穀をつくって、食糧は自給をしておる。さらに山菜とかキノコなどをとったり、あるいはまた一戸平均二頭の短角牛を養っておる。肉牛を飼養しておる。さらに木炭を生産して、ちょうど木炭統制時代でありますから、非常に木炭収入がよかった。こういう農家でありまして、それが水没というので、大体移転をすることになって以来、非常にみじめな状態にあるということで、問題になっておるわけでありますが、ちょっと一言だけでけっこうですが、それじゃ、そういう石淵ダムのその後の悲惨な状態というようなことについて御承知でしょうか。まずそのことだけ一言伺っておきたい。
  4. 町田充

    町田政府委員 当然ダム建設に伴いましての補償問題になりますから、事情を承知いたしております。
  5. 西宮弘

    西宮委員 そこで問題にしたいのは、その当時、たとえば水没前、ダム建設前の農家はいま申し上げたような程度で、相当裕福な生活をしておった。裕福とまでいかないかもしらないが、平均的な農家生活状態だった。たとえば新円切りかえ当時、いまの金に換算いたしますと、一戸平均百五十万の貯金を持っておった。それがいまでは貯金どころの騒ぎではない。耕地はいずれも以前よりは縮小いたしまして、非常に少なくなっておる。しかもその農家は各地に四散をして、ほんとうにばらばらになってしまった。あるいはその中で生活扶助を受けているものが五戸、医療扶助を受けておるものが二戸、しかもその生活扶助ないしは医療扶助というのも、再補償運動というのを起こして、あの補償ではとうていわれわれは立っていけないというので、再補償を要求する運動を起こしたわけですが、その運動を起こしてから初めて、生活扶助なり医療扶助をもらうようになった。そういう状態で、それ以前の状態はなおさら悲惨な状況で、いずれも栄養失調におちいって、非常などん底にあえいでおったという状態であります。そういう点については報告書が詳細に述べておるので、私はあえて繰り返すつもりはないのでありますが、あるいはその悲惨なできごとの一例として、その十三の農家の中で二戸の経営者世帯主自殺をしております。一人は、もう生活できない、それに加えて家族に言病人ができたということで、自殺をしておる。もう一人は、木炭でかせいで、そのかせいだ金で酒を買ってきて、その酒を世話になった人たちにふるまって、酒をくみかわして、その上で自殺をしている。まことに読むにたえないほど悲惨な状態に今日あるわけです。しかしその関係者は再補償を要求するという運動を起こしましたが、だいぶ日数もたっておるので、運動としても十分に結集されないというような点もありましょうし、その後いろいろその生活状況が変わっておるので、さっき言ったように、いずれもちりぢりばらばらになってしまっておる。そういう状態もあって、運動としては結集されておらないが、しかし私はこういう実態を見るにつけても、こういう際における補償の問題というのがまことに重大な問題だということを痛感するわけです。私はいまそれらの具体的な問題について一々ここで取り上げて論議をしようというような考え方は毛頭ないので、そういうつもりではないが、ただその中から、いろいろ感じさせられる問題を二、三お尋ねをしたいということなんです。しかし、いま申し上げたあの石淵ダム建設に伴っての水没者に対する対策ないしはその後の生活実態、そういう問題等について、もし当局のほうからそれは事実と違うとか何か、そういう点でお話があるなら、まず承ります。
  6. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 予定時間がありますから、簡単に御答弁願います。
  7. 町田充

    町田政府委員 石淵ダムのこまかい資料はただいま持ち合せておりませんので、御指摘のような事実がはたしてあったかどうか、ちょっとここではお答えができませんが、その後最近の実情を申し上げますと、御承知のとおり、損失補償基準要綱もできまして、これに基づきまして各起業者で適切な補償をやっております。それ以上に現在私どもが困っておりますのは、その補償金目当てに、従来家もなかったところへ、ダム周辺にわざわざ家を建てるとかいうふうなケースがあり、むしろそういったダム建設に伴う不当な補償、そういうものをどういうふうにして防止をするかということに頭を痛めておるような実情でございます。
  8. 西宮弘

    西宮委員 私は、この問題を通して考えさせられる問題の一つは、この土地収用法がどういうふうに利用されているかという点でありますが、少なくともいままでは、土地収用法にかけるぞということが、一種の威嚇的に使われておるということは否定できない事実だ。それはあえて石淵の問題だけでは決してなしに、むしろ土地収用法というものがいわゆる伝家宝刀として、伝家宝刀を抜くぞということでおどかしをかけて、それで問題を簡単にきめてしまおう、こういうふうに扱われておったのが、少なくとも従来のやり方であったと思うのであります。今日そういう考えはないかといってお尋ねをしたら、ないとお答えになるに相違ないと思うのですが、ただ私は、これから先も、この法律をどういうふうに、やはりできるだけは合意の上で話をきめるということを中心にしていくのか、あるいはむしろそうではなしに、初めからこの法律を適用させる、こういう態度でいくのか、ということをお尋ねしたいと思うのです。
  9. 河野一郎

    河野国務大臣 だいぶ実際仕事をしております者の苦労しておりますこととはかけ離れがございます。御承知のように、今日全体の工事を通じて、土地の問題、要するに取得が終わるまでが八割の仕事といわれるくらいに、この問題を解決することが、工事をやるよりもむしろ非常に大きな仕事考え行政をやっておるような始末でございます。なおかつ非常に工事が遅延しておる。遅延は工事にかかって遅延するのじゃない、用地取得にかかっておる。その遅延するのはなぜかといいますと、収用法そのもの運用が非常にスローで、収用法にかけても半年、一年はかかるのだ、だから収用法にかけるよりは話し合いでやったほうが早いのじゃないかというので、話し合い期限が非常に延びておるということが現実でございます。したがって、これをおどしの種に使ってどんどん片づく、そういうふうに片づいておれば、この特例法をさらに改めるというような考えは毛頭ないのでございまして、現実は、私かねて申しましたとおり、いまやっておりますものでは非常に長くかかる。したがって、一般執務しております者は、長くかかるなら話し合いでやったほうがかえって早いのじゃないかというので、半年、一年あえて辞せずに話し合いをぶらぶら、ぶらぶらやっておるということが、公共事業のおくれておる原因であるという意味から、やむを得ず、実は期限を切ってやらなければしかたがないだろうというので、期限を切るという処置に出ておるわけでございまして、決して無理してこれで圧迫しておるということではございません。あえて申しますれば、御承知のように、安く買おうという量見は毛頭ございません。これは住宅公団が家を建てる単価が低いじゃないかというが、いま用地取得する場合に、どなたからも、土地代が高いじゃないか、高く買い過ぎるじゃないかというお話はありましても、安くたたいて買ったじゃないかということは、私は全然ないとは申しませんけれども、ほとんど全国にその例を見ないのではないかと思うのでございます。そういう実情でございます。初めから地方土地価格につきましては十分に調査いたしまして、大体この辺で買えということは指示してあるわけでございますから、それより安く買ったものについて、賞金を出すとか奨励するというようなことをやって、たたいておるなら別でございますけれども、そういうようなことは毛頭しておりません。実際話し合いがつきませんで、十分説明し、説得も十分尽くして、それでも結論を得られませんものを、やむを得ずやるということでございますから、私はその点、御心配のような点は、いま現実にはあらわれていないと思うのです。なおまた、昨日も全国から係官を集めまして、今度の法律がもし制定されたならば、その運用にあたってはこういう点は特に注意せよということを、私は厳重に指示いたしております。そしてその事務のごときも簡略にして、そしてこの法律をみだりに乱用してはいかぬということも注意をいたしておるような次第でございまして、慎重にやるつもりでおります。
  10. 西宮弘

    西宮委員 石淵の例をとりますと、たとえば買収価格は、水田の場合は、当時と値段が違いますから、今日と比較して米でいうと、一斗五升程度値段水田買収しているわけです。あの当時少なくとも最低二俵、八斗はとれておった田なんでありますが、一斗五升に相当する金額で買収をしているのです。しかもその十三の農家の中には、全く文字を解しない無学の者もおったわけです。それを、即日調印をしろということで、即日その場で調印をさしておるわけです。そういうことで、まことに今日想像できないような値段で買い上げておる。さらにいま大臣が、いわゆるおどかしをかけるというようなことは一切しないと言われたが、おそらく今日、大臣などのお考えはまさにそのとおりだと思うのでありますが、必ずしも末端がそのとおりにいっておらないということの一例だと思うのでありますが、この石淵の場合のごときは、その交渉をする前に既成事実が相当に進行しておったのであります。たとえば仮排水路であるとか、石灰の運搬道路であるとか、営林軌道のつけかえ工事であるとか、測量はもとより、労務者の宿舎の建築であるとか、そういう作業が二十一年、二十二年と続いてまいりまして——そういう作業国有地その他でやっておったのでありましょうから、別に地元と相談しなければならない問題ではないのかもしれないが、そういう事実を積み上げて、そうしてもうどうにもならぬのだ、立ちのく以外に手がないのだという状態に、いわば追い込んでおいて、そして安い値段できめてしまっておる、こういうのが実態であった。私は、大臣のお考えはまさにそのとおりだと思うのだけれども、ややもすると、そういう点が末端に徹底してないということを強く指摘しておきたいと思います。  そこで、大臣にいまちょっとお尋ねをいたしますが……
  11. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 西宮君に申し上げますが、もう予定の時間がだいぶ過ぎましたから、その辺で結論をひとつ……。
  12. 西宮弘

    西宮委員 たとえば、安くきまったという場合には、本省のほうからそれをチェックするというようなことがありますか。あるいはまた特に民間業者がこの法律を適用するというような場合、法外に安かった、これはけしからぬ、といってチェックするというようなことをされますか。
  13. 河野一郎

    河野国務大臣 いまのお話は、だいぶ古い話じゃないかと思います。今日の実例を申しますと、実際は、大体団体交渉でやっておるようであります。地元沿線該当業者が集まって、そうして役所のほうとの間に交渉しておるという例が多い。その中でおれは仲間に入らぬというのは、もっとこわばった人が仲間に入らぬというのであって、特に安く買う、予定価格を下回って買うというような例は全然ございません。しかも予定価格は、かねて申しておりますとおりに、地方の実際を十分調査した上でやっておりますから——あとから考えてみると、安かったじゃないかということにはなると思います。道路をつけることによって、もしくは公共投資をすることによって、地価が上がりますから、三年、五年たって、あの地所は安かったじゃないか、これはあると思います。しかしそのときは時価でやっておるのでありますから、そういうことはないと思います。  それから、民間鉄道軌道用地を買うというような場合には、こういう法律は適用さすべきじゃないと思います。例外中の例外で、必ずしも絶無とは申しませんけれども、おそらく他の法律でいいのであって、いま改正をお願いしておるような法律は、民間にはこれをみだりに適用さすべきではないと考えております。
  14. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 西宮君、よろしゅうございますか、もう時間もはるか超過いたしております。紳士協約は守ってください。
  15. 西宮弘

    西宮委員 あと二点だけ簡単にお尋ねいたしますが、例の再建計画なりあるいは現物補償なり、こういう点をもっと徹底させるべきだ。たとえば、いまの石淵のごときは、そういう点が行なわれなかったところに問題があると思うのですが、これを今後どういうふうに徹底さしていくか。大臣の方針をお尋ねしたい。
  16. 河野一郎

    河野国務大臣 その点も、私は先ほどちょっと述べましたが、今日ダム補償のごときは、逆な場合が多うございまして、代替地提供せいとか何をどういうふうにせいとかいうようなことは、およそわれわれの想像できるものは、そして可能なことは全部考えてやっておるのであって、そうして話し合いをしておることは事実でございます。いまお話しのような、いまから十年、十五年前のようなことは全然ございませんで、逆に困っておりますのは、ダム予定地に新しく家を建てて、待ちかまえておって、きたらば取ってやろうというのが、先ほど申しましたように現にあるのでございます。実はもう三十何軒建ってしまった、どうしようかというようなことでございまして、およそいま御心配いただいておるようなこととは逆の方向に行っておる。それをどうしようかということを心配しておるというのが現実だと私は思っております。十二分に相談に乗って、いやしくもあとでお困りになるというようなことのないように、厳に戒めてやらせることにいたしたいと思っております。
  17. 西宮弘

    西宮委員 大臣のお答でありまするし、昭和三十六年に現在の特例法ができた際にも、その点を当時の大臣は強調しておったのであります。ところが、たとえば道路公団で出しております「用地補償のあらまし」というのを見ると、代替地提供は、通常公団が適当な代替地を持っている場合でないとできませんので、この点はあらかじめ御了承願います、というようなことが書いてあって、初めから断わっておる。こういうやり方では、せっかく法律にきめられ、大臣が強調しておられることが、実際には行なわれておらないということになるのではないかという点を、私は特に御注意申し上げておきたいと思います。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 現にそういうことでやっております。これは自分の当面した実例でございますが、昨年の夏に、京葉道路用地買収の現場にまいりました。ところが、話が進まぬ、なぜ代替地をさがさぬかと言って、代替地をさがさせて、代替地を買わせまして、そうして話をつけた。自分で直に命令しまして、直に代替地を買わせまして、直にやらせたというようなことでやっておりますから、これからは、そういうふうにやると思います。
  19. 西宮弘

    西宮委員 行政監察局長が来ておりますので、一言だけお尋ねしたいのですが、それは、先ほど大臣は、無理に安く買おうというようなつもりはないというお話ですが、ことしの五月に行政管理庁で出された、国鉄新幹線についての監査結果の報告でありますが、それを見ると、用地費が高くかかり過ぎているということを指摘したあとに、「交渉過程において所定の時期までに所定価格をもって妥結できないと認められる場合は、遅滞なく事後の収用手続を進め、機を失せず裁決申請」をしろ、いわゆるこの法律を適用しろということを言っておるのですが、ここに書いてあるこういう考え方所定の時期までに所定価格をもって妥結をしないとき、つまり政府があらかじめいわゆる所定価格をきめて、それで強引にやるのだ。やれないときには収用法にかけるのだ、こういう考え方が、政府のほうに一貫しておるのじゃないかということを私は非常に心配するのです。その意味でその点を特に一まあ大臣のさっきの考え方政府全体の考え方が、大臣の答弁のとおりではないということを私は非常に心配するので、その点をお尋ねしたい。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 国鉄新幹線用地取得につきましては、私もその沿線におりますので多少——工事を急がれる関係から、少し高くお買いになるという気持ちもございましょう。しかしこれは安いこともいけない、高いこともいけない、およそ政府のほうでは時価で買うということになっております。時価はどこできめるかということだと思うのでございまして、これは周囲の売買実例、さらに所定されております機関の認定価格というようなものを参考としてきめるということにして、指示してきております。それの値段で大体お買いなさいということにしておりますから、しかもそこに書いてありますように、予定の時期がきたら早く収用法にかけてやれと言っておりますけれども、これは先ほどから申しますように、国鉄でも建設省でも同じことでございまして、むしろいままででございましたら、収用法にかければ、そのためにかえっておくれてしまう。だから、収用法にかけずに話し合いでやったほうが早く結論が得られるのだから、話し合いで徹底的にいけというので、話し合い期間が半年、一年になっておるところがたくさんございます。したがってそういうふうにやっておっちゃいかぬじゃないかということが、逆の面から、行管がそういう指摘をしたのだろうと思いますが、実際仕事をいたしておりますものといたしましては、いままでのところは、収用法にかければかえって長引いてしまう。長引いてしまうから、少々交渉期間が長引いても、交渉のほうが早い。だから、そのことでやって、かえっておしかりを受けるということが実際だろうと思います。実際仕事をしております立場としてはよくわかることでございまして、その点を今回の改正によりまして、ある段階まで十分手を尽くして、そして結論が得られなければ、期限を切ったこの収用法によって結論を得るということで、ある時期まではいきたいという気持ちでおります。
  21. 西宮弘

    西宮委員 これで質問を終わることにいたしますが、そこで言うところの適切妥当な価格で買えない場合は云云、あるいは時価で買えない場合は云云というならば、話はわかると思うのです。ところが、所定価格で買えない場合にはこの法律を適用しろということは、あくまでもこの法律をいわゆるおどかしの手に使っているとしか考えられないので、そういうことのないように、くれぐれも要望いたしまして、終わりにいたします。
  22. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 吉田賢一君。  吉田君にあらかじめ申し上げますが、お約束の時間が十分でございますから……。
  23. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 よろしゅうございます。大臣、ひとつ簡明でよろしゅうございますから、お答え願います。  二点だけ伺いたいのですが、一つは、住宅問題、道路問題をめぐりまして、やはり土地価格の問題がぶつかったままになっております。いろいろ考えられておると思うのですが、これに対する、ただいまの段階における大臣地価高騰に対する施策として、どんな構想を持っておられるか。相当具体的なものが現在あるやいなや。あるいはまた、ある種の税制等法律制度なりをやろうとしておられることがあるのかどうか。ともかく、これはあらゆる土地利用の政策に関連したきわめて重要な共通の問題でありますので、ひとつお伺いしておきたい。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 特定の目的のために用地取得するについて、特定法律を研究中であることはあります。それとは別に、いまお尋ねのような、一般的に申しますれば、私は需要供給関係である、一部は仮需要があって、したがってこれが地価高騰原因である、したがって供給量をふやすことが一番大きな問題である。でございますから、公共投資をすみやかにいたしまして、そして供給の面において、所要される土地をなるべく広範に提供するようにすることが必要であるという考えのもとに、道路その他土地利用を大幅にするための公共投質を急いでいく、こういう所存でございます。
  25. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから第二問といたしまして、これは当然土地収用法特定事業にもなり、あるいは公共用地特別措置法特定事業になっておりますが、いわゆる国際空港の問題、この間、委員会におきまして、社会党の赤松委員からも御質問があったらしいですが、昨夜の夕刊によりますと、何か、閣内で新国際空港の意見がまつ一つに分かれて、対立的な印象を国民に与えておる。これは実に遺憾なことであります。聡明な練達の大臣ですから、この辺は適当に御処理になるとは信じますけれども、一体河野さんは、第一は羽田空港を廃止するという御意見を持っておられるかどうか。それからもう一つは、すでに昨年航空審議会におきまして決定を見まして、そして答申も見ております。これを調べてみると、三十名の委員で、ずいぶんと専門家が寄り、慎重に検討した結果らしいのだが、これが答申を出しております。またあるいは産業計画会議なども勧告したりしておりますが、そういう幾多の民間の案とかあるいは審議会の案とかいろいろあるようですが、しかし、時勢は超音速機の非常に近接した状況にかんがみまして、早急に国際空港を設定しなければいくまいということ、それからまたこれに関連して、建設費ということになると、これは膨大なものでございまして、やはり千億円をこえることは自明の理でありますから、こういうことにかんがみますると、これはまたいろんな角度から見て、きわめて重要でありますので、この機会に、大臣のこの国際空港に対する御所信、どこにどうしようとなさるのか、いま述べました数個の点について、いずれもこれをどういうふうに批判しておられるのか、この点、ひとつはっきり聞きたいと思います。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 昨日、実は閣議におきまして、航空行政言は運輸行政である、したがって建設大臣が要らざることを発言することは適当でないというお小言を受けました。しかし、私はそうは思わぬのであります。それは所管は運輸省かもしれませんが、国務大臣として、ないしはまた首都圏整備委員長として、首都を中心として、航空に対して考え、計画を立てることは当然のことである。しかし最終決定は、むろん運輸省において、それでいいか悪いか、ないしはまた、そういうものをやるかやらぬかということはやります。でございますから、運輸省からも首都圏整備委員会の中には有力な事務当局をまじえて検討しておるのでありますから、決して私は間違っておるとは思っていないのであります。ただ、新聞の記事で誤解を生じますことは、いま吉田さんもお話しになりましたとおりに、超音速の旅客機は一体いつ飛ぶのだ、どういう計画があるのだということになりますと、皆さん御承知のとおりに、七年先にアメリカでそういう飛行機ができて飛ぶ計画になっておるということだそうでございます。私は、七年先でも十年先でもよろしい、そういうものを考えてその用意をしていくような、財政が豊かで、そしてそれだけの余裕がある国家になりたいとは考えます。なりたいとは考えますけれども、いま当面いたしておる羽田の飛行場は百万坪前後のものであって、皆さんもたびたび御経験になりますように、いま飛行場がいっぱいだからおりられません、しばらくの間は上空でもって待っていなければいけません、霧がなんでございますからどうでございます、というような、ああいう込み合った、定時に飛行機が発着できぬというような飛行場をそのままにしておくことは適当でなかろう、やはり国際水準までの飛行場を持つことが必要であろう。いやしくも世界の各国を見ましても、一等の都市が、一つの、しかも狭い飛行場で満足しておる都市はございません。どこへ行きましても、大体ABCくらいの飛行場は持っております。少なくとも二カ所、多いところは三カ所の飛行場を持っております。してみれば、現在の東京におきまして、あの飛行場で七年先まであれでいいのかどうかということになりますと、私はそうはいかぬだろうという意味において、現在われわれが想定をいたしております、世界を飛んでおりますジェット機、こういうものは七年もしくは十年以内になくなってしまうわけじゃない。運輸省の話を聞きますと、アジアでは北京とか上海にそういう飛行場の計画があるそうだ、北京か上海へその基地が行ってしまったらたいへんだ、日本にもつくっておかなければいかぬじゃないかということをおっしゃいますから、それはつくることはけっこうだ、またそういう場所があってやるならそれもけっこう、金があってやるならそれもけっこう、それを私は反対するのじゃございません。しかしいま言うように、羽田の飛行場で、今後五年なり七年なり十年あれでいけるかというと、私はいけぬと思います。そういう意味において、第二空港の設置が必要だろう、首都圏整備委員長としても当然考えなければならぬという立場に立って、私はしいて申せば羽田の大型、せめて世界の水準に合いますような、現在飛んでおります飛行機の水準に合いますような三、四百万坪の飛行場をつくることは必要だろう。さらに飛行機が込んでくるだろうということになりますと、どうしても第二をさがす必要がある。そういうことになりますと、専門家の意見によりますと、羽田をあのままにしておいてさがすとすれば、よほど遠隔の地でなければ、角度もしくは電波の関係から困難だそうでございます。そういうことになりますと、東京湾の中は、羽田を存置しておいたのでは適当でないということでございます。千葉の海岸も適当でないということでございます。しかし、もしそうならば、その中型のものができたときに、羽田をつぶしてそちらへ移ってもいいじゃないか、羽田でいいということではないのだから、別に飛行場をつくって、羽田を他の用途に、たとえば首都圏整備意味から申しますれば、もしくは東京の将来を考えますれば、相当大規模の物資の集積地が必要だ。他の目的、用途に羽田を使って、そして羽田の飛行場にかわるべき、もう少し大型の整備された飛行場をつくってもいいじゃないかというような意味において、東京湾内に適当なところがあるかどうかということで、これが調査をいたしておるということでございますから、運輸省当局もしくはただいま御指摘になりました審議会において、いまお話しの七年先、十年先の超音飛行機が飛ぶようになって、それが飛ぶにはどうしても七百万坪以上なくてはいけないという意味のものと、私がいま総理大臣の命令を受けて検討しておるものとはものが違う、目的が別なんだということに御理解いただくということで、昨日の閣議におきましても、意見が対立したわけじゃないので、いま運輸省がやっておるのは、調査費も本年度の予算にもあるのだから、それで引き続き調査していったらいいだろう、ただ、建設大臣がいま努力しているのは、そのまま努力を続けていって、すみやかに羽田にかわるものにするか、ないしは、まだどういう結論になるか知らぬが、もう少し大型の、三、四百万坪のものを東京湾もしくはその周辺に、そういう適地があるかどうかということを調査することはいいだろう、検討すればいいだろうという結論になったわけであります。私はその調査を続けていくという所存でございます。
  27. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その点は、少し私の質問のしかたがくどかったので、誤解を生んだかもわかりませんが、私があなたに伺いたいのは、すでに答申案が出ておりますから、答申案に対する大臣の所見はいかがか、こういうふうな聞き方をしております。  それからもう一つは、一体羽田をつぶすとかなんとか申しましても、すでに聞けば千億円前後投資しておりますし、またローカル専門の空港が必要であることはもちろんであります。また首都の付近に二港くらいなければならぬということは、これは世界の趨勢でありますし、したがって、それを存置するのかどうかについての大臣の所見を聞いておきたい。これは新聞があれだけに伝えるのですから、私は相当重要な発言があったものと考えられます。しからば、お互いの大臣がそれぞれ相当強い御所信を持ってお述べになっておるものと思いますので、羽田の存置いかんというその点。  それからもう一つは、関連しますけれども、しきりにこれをめぐりまして巷間いろいろな文書が飛びますが、あるいは木更津で埋め立てをするとか、あるいは浦安で埋め立てをするとか、膨大な経費が要るとか、いろいろそういった暗躍があるとかいうことも伝わりますので、こういうふうな中にきわめて不明朗なものでも生じてまいりますと、われわれ国会といたしましてもまことに遺憾でありますので、この辺、大臣の率直なところを聞きたいのです。別に私自身は、地域関係で何の利害も行きがかりも持っておりませんので、非常に重大な問題であるだけに、その点に対する率直な御意見を伺っておきたいと思います。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 率直にお答えいたしますが、答申案に対する意見はどうか、こういうことでございますが、答申案は私は拝見いたしておりません。これは運輸大臣に答申されまして、運輸大臣はさらにこれに対して今年度の調査費をとって、その調査費によって調査を進める、その答申案について、いいとか悪いとか、閣議の決定を求められたことはございません。したがって、運輸大臣はその答申案に基づいて、さらに今年度一億の調査費を要求して、そうして今年度の予算に一億の調査費がついております。その調査費によってさらに調査を進める、ということに相なっておると私は考えております。したがって私は、それに対して、いまここに、拝見もいたしておりませんし、意見をとやかく申し上げることは僭越なことだと心得ます。  第二の点でございます。第二の点は、御承知のように、いまもお答えいたしましたように、羽田をやめるとかやめぬとかいう結論にまだ達しておりません。しいて申し上げますれば、羽田をいまのままにしておいたのでは、東京湾もしくは木更津にしても浦安にしても、そういうところに飛行場をつくるということは不適当である、不可能であるということであるならば、いまの羽田があの程度ではどうにもならない、もう少し百万坪を三百万坪、四百万坪程度のものにして、そうしてローカルなものも一緒にして、そこから飛ばすことにしたらどうだということも考えられるのじゃないか。ただ私の申しますのは、そうは言いましても、東京港——ことに私は浦安の地帯をぜひやりたいと思っておるのです、一番近うございますから。道路費に五、六百億かかったのでは、それだけでもなかなか楽じゃない。その道路が他に援用できるならよろしいが、飛行場に行くために五、六百億の予算をとられるというのは、非常に私どもとしては重大でございます。したがってなるべく飛行場までの道路予算がかからぬところにしたい、これが私が浦安を主張するゆえんでございます。しかし浦安には地元の非常な強い反対がございます。したがって、私は浦安からなるべく海上遠く離れたところにしたい。離れましても、そんなに五里も十里も行くわけじゃございませんけれども、浦安の海上の離れたところに、しかも埋め立てにして十メートル前後までのところなら、一万円もあれば十分埋め立てができるそうでございますから、しかもそういった意味で、なお砂礫層のところは相当にあるから、調査をしてみろというような民間から御要望もございます。したがってもしそういう適地があるならばそこを考えたらどうだ、なければやむを得ません、必要なら考えてみましょうということで、いませっかく地質調査をしておるということでございます。東京港内にいろいろ意見もありますけれども、いずれにしても、なるべく費用のかからぬところで、東京から距離の近いところで、そして地質のいいところというようなものがあったら、そこを選ぶのが一番いいじゃないかという意味で、調査をしておるということでございまして、いま何も浦安だとか木更津だとかどこだとかいうようなところは私は考えていない。いま申し上げたように、基本的になるべく東京に近いところ、地元の人の反対の少ないところ、そしてなおかつ地盤がいいところ、こういうものがあれば、あるかないか、あればそこにきめたらいいじゃないかという意味で、基礎調査をしておるというのが現状でございます。
  29. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 他に質疑の通告もありませんので、本案に対する質疑は終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  31. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 これより、本案を討論に付します。  討論の通告がありますのでこれを許します。瀬戸山三男君。
  32. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 自由民主党を代表いたしまして、土地収用法等の一部を改正する法律案に賛成の意見を申し上げます。  土地収用法の問題点は、おおむね私権の立場と公共の立場と申しますか、国民的利益をはかる立場との調整の問題であろうと思います。現行の土地収用法によってその問題に当たっておるわけでありますが、だんだん実施の段階におきまして、なおかつ公共、言いかえますと、国民的利益をはかる部面において、必ずしも適当でないことがある、こういう意味で、この改正案が出されておるものと了解するのでありますが、私は、現在までの法律の実施の実績にかんがみまして、この程度法律改正は適当である、こういうふうな原則的な考えを持っております。  具体的に一、二申し上げますと、この改正の大きな部面となっております、いわゆる海面あるいは海底を収用対象とする問題であります。これは従来の例によりますと、まだまだそういう必要性を認めていなかった時代でありましたが、日本の産業、経済、文化の非常な発展によりまして、場合によっては海底の使用を必要とする事業が相当に多くなっております。これに対処するために、この点の改正を必要とする、いわゆる漁業権を対象とする収用権の改正が必要である。これは現在の事態においては当然であろうという考えを持っておるわけであります。その他土地収用法の対象の事業としてありますが、それに密接な関連を持っておる事業に対しても収用法の適用をするということは、これは当然なことであります。  なお、各種の事務手続の簡素化と申しますか、せっかく国民的利益をはかるという目的を持った収用法の手続規定が、あまりに煩瑣で、しかもその目的を達成することがきわめて困難であるという事態に対して、各種の手続簡素化の改正が行なわれた。これもしごくもっともな改正であるということであります。  それから第四が、これも同じことでありますが、従来の収用委員会の構成が形式的に流れており、その活動が必ずしも適当でなかった。いわゆる兼職禁止の規定をここに盛られたということも、事務の推進をはかるという意味において、適切な改正である。  なお、この改正の中に、公共用地取得に関する特別措置法の一部改正が盛られておりますが、御承知のとおりに、特例法は特に重要なる事業について列挙をいたしておりますが、事態の進展に応じまして、必ずしも、これを列挙しておくだけでは、必要があるという場合、実情にかなうということで、限定できない場合がある。したがって、これと同等の事業というものが今後出てくる可能性があるわけであります。そのたびに法律改正するということもきわめて煩瑣であり、また実情に合わない場合もありますので、この点は、政令の制定には十分考慮をしなければなりませんが、やはり一部政令にまかせるということも、これも政令の実情に合っておる、こういうふうに考えるわけであります。  問題になっておりまする、収用委員会の裁決代行を、場合によって建設大臣が行なう——これは理論的にいろいろ議論があるわけでありますけれども、これもやはり一般法の事務の推進をはかる、収用法の目的に沿った収用の推進をはかるという面からいって、場合によっては、二カ月以内に収用裁決がないときは、建設大臣が代行裁決、これも、国民的利益をはかる、万一の場合の法の改正でありますから、適当であるという考えを持っております。  簡単でありますが、以上の次第によりまして、私どもは、自由民主党としてこの改正案に賛成をいたす次第であります。
  33. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 岡本隆一君。
  34. 岡本隆一

    ○岡本委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております土地収用法等の一部改正案に対し、反対の理由を申し述べんとするものであります。  反対の第一の理由は、政府がみずからの政策の貧困を、権力をもって補わんとする態度についてであります。最近とみに増大せる公共事業は、非常な用地雑に苦しんでおります。いま政府は、この用地難を、企業体の収用権を強化することによって解決せんといたしております。しかし、問題は権力の強化のみによっては断じて解決できるものではありません。用地難の最大の原因は、最近の著しい地価の高騰にあります。政府のいわゆる高度経済成長政策は、企業の激しい設備拡張競争となり、それは人口及び産業の著しい都市集中、ひいては宅地及び工場用地の値上がりを呼びまして、この十年間に、地価全国平均で六倍、都心においては十数倍に達しております。このことは、呼び値が呼び値を生みまして、公共事業にもその用地取得に著しく膨大な補償を必要とするに至っているのであります。すなわち、政府公共投資を置き忘れた経済成長政策が、いまにわか仕立ての急速な公共設備の拡充として、地価を著しくつり上げ、国民を住生活の面で苦しめ、政府みずからも公共用地取得難に苦しんでいるのであります。  いま、政府は、何らの地価対策を持っておりません。思惑買いが地価の暴騰の最大の原因となり、土地を投機の対象として、至るところ宅地開発が行なわれ、最近の新聞紙などに見る誇大広告をもって地価をあおらんとする不動産業者の姿には、目に余るものがあります。こうした土地の思惑買いや大企業の工場用地の買い占め、電鉄その他不動産業者の近郊農地の買いあさりなどに対し、政府は全然これを放置し、土地の値上がり防止には全く無為無策と言うのほかありません。こうして出てくる地価の暴騰、またそれに伴う用地取得難を、地価対策の強化によって解決しようとせず、一にこれをごね得として、土地収用権の強化にたよらんとするがごときは、まさに的をはずれたものといわなければなりません。土地収用法の強化の前には、まず地価の安定策こそ講ずるべきでおります。これ、本改正案に反対する第一の理由であります。  第二に本改正案に反対するゆえんのものは、特別措置法において建設大臣に付与されんとする代行裁決権に関してであります。元来土地収用法は、私権と公権との調整をはかるのを目的としたものであります。公共の福祉の名のもとに、建設大臣特定企業に強化されたる土地収用権を与え、時として建設大臣みずからが起業者として土地を収用するのであります。その起業者たるもしくはそれに近い立場にある建設大臣が、中立的機関として公権と私権との調整をはからんとする収用委員会にかわって、紛糾せる収用問題に関し、委員会が緊急裁決を行ないかねているとき、二カ月間の期間を限って、ずばり代行裁決を行なわんとするがごときは、まさに専制的権限であり、土地収用法本来の精神を抹殺するものであります。委員会の審査の過程において、河野建設大臣も、これは無理を承知で提案しているのであると言っておられますが、政府の施策の怠慢が積み重なって、地価の暴騰、さらには公共事業のどろなわ式の拡充強化となり、それがその用地取得難の原因となっているとき、無理を無理やり押し込んで当面をごまかそうとするがごときは、許されるべきことではありません。起業者的立場にある建設大臣に与えられる代行裁決権は、土地収用委員会の中立性、独立性を奪うものであり、土地収用法を殺すものであります。これ、われわれが本改正案に反対する第二の理由であります。  第三にわれわれが本改正案に反対する理由は、本案におきましては、収用権の強化を行なっても、これに伴うべき義務を課することを忘れているということであります。土地収用法は、公共の名のもとに、私権を否定することを特定の企業に許しております。それゆえに、公共の福祉の名のもとに、土地収用権を背景としてその用地取得した企業は、その事業本来の目的以外にその土地を収用することは許さるべきではありません。さればこそ、土地収用法は、第百六条において、土地所有者に買い戻し権を付与しております。しかしながら、土地収用法は、立体的に使用されつつある最近の土地の利用に対しては、何らの規制をいたしておりません。これは土地収用法における一つの盲点であります。たとえば、高速道路国鉄、私鉄の高架道下のごとき空間の管理については、何らの規制がありません。それをいいことに、企業によりましては、これを全く営利の目的に利用し、遮蔽によって通風、採光を阻害するのみか、騒音、悪臭等の公害をまき散らし、時としては、飲み屋街をつくって風俗上、治安上の悪影響を誘致するなど、目に余るものがあります。公共の福祉の名のも一とに、強権を背景として取得された土地が、このような公共の福祉に反するがごとき姿で管理されてはなりません。権利を与えられたものには義務の付随することを忘れてはなりません。私どもは、土地収用法の置き忘れた盲点を是正するために、本改正案に修正案を用意したのでありますが、政府与党はがんとしてこれに応じなかったのであります。当然の義務を課することを忘れて、権限の強化のみをはかるがごとき、まさに片手落ちと言うのほかありません。過日の委員会審査の過程において、運輸大臣は、今後行政指導をもってかかる悪弊を排除し、公共の福祉に沿うよう、公正な管理を行なわせる言言明されましたが、本来、これは当然法律をもって明確に規定すべき性質のものであります。これ、われわれが本案に反対する第三の理由であります。  著しく立ちおくれた公共事業を遂行するため、土地収用法を強化すること、事務手続を簡素化することの必要性をわれわれもまた否定するものではありません。しかしながら、政府は、地価を安定することによって、公共用地取得を容易にすることを忘れております。また今回の改定は、起業者的立場にある建設大臣に代行裁決権を与えて、土地収用法本来の精神を没却しております。まさに改悪であります。また収用権を背景に用地取得したものに、当然付随すべき義務を課することを忘れて、権限を強化して、起業者の便宜のみを考え、公共の福祉を第二義的立場に追いやっております。  かかる改悪案に対しては、日本社会党は残念ながら賛成することができません。  以上をもって、本案反対の趣旨説明を終わります。
  35. 丹羽喬四郎

  36. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、本案には賛成するものであります。  しかしながら、この土地収用法自体は、同氏の権利義務に関するきわめて重大な法律であり、またその構造は、各省庁にわたりまして、幾多の規定を含んでおる重大な法律でありますので、問題の数点を指摘いたしまして、何ゆえ賛成するかの理由を明らかにしたいと思います。  まず第一点は、この法律は、二つの大きな矛盾した根本的要素を包含いたしております。それは憲法で明らかな私有財産権の保護であります。私有財産権の保硬を絶対的に主張いたしますると、公共の用途は狭められ、多くの公共事業がなし得なくなることは、理の当然であります。そこで公共の利益と相調和する、この点におきまして、私有財産権の保護は与えられておるものと考えます。そこで、この公共の利益を増進し私有財産を保護するということは、元来は矛盾する要素であろうと考えます。なぜならば、もし公共事業の理由のもとに私有財産、土地所有権を収用するとなれば、まさにこれは私有財産権の侵害であります。侵害であるが、公共の事業の立場から見ますると、それが必要である。必要と侵害とをいかにして解決するかというところに、非常にむずかしい点がございます。絶対的に公共性優位を主張いたしますると、いつぞやの参考人のごとくに、土地国有論というところまで到着することになるかもしれません。このようにして私有財産権の絶対性を否定し、また公共の事業を推進するに必要な規制を加えて、この両者を調整するということが根本的に重要でございますので、ここにおきまして幾多の問題が生じてまいります。公共性からまいりますると、土地収用手続の簡素化を要請しましょうし、私有財産権保護の見地から見ると、正当な補償を強く要請いたしましょう。こういう点がありますので、これをいかにして調整するかということが大きな課題でありますから、収用法の手続の簡素化も必要であるし、また、補償の適正執行も必要である。両者両全を期するところに妙があると思いますので、私は、問題は問題といたしまして、この法律の持っておる使命とその性格がこのような問題があることを指摘いたしまして、運用の適切を期すべきではないかと考えておるのであります。  第二の点は、政令に重要な特別公共事業が認定し得る権限を付与した点であります。これは、私が河川法の改正にあたっても指摘いたしましたごとくに、委任命令というものが無制限に行なわれましたならば、ついに国会の世論に発展いたします。最後にやはり官僚独裁の傾向すら生じます。最も端的な行政をやり得るのは、議会が無用な場合であります。こういうわけでありますので、この委任命令——政令に重要な国民の権利義務に関する事項を委任することは、厳に戒めねばなりません。したがいまして、私は、この点につきましても違憲論を一応主張いたしまして、参考人の所見を聞いた次第でございます。これらの点につきましては、やはり政令の制定にあたりまして、この委員会での発言を尊重せられて、配慮あらんことを希望したいのであります。  第三の問題点は、地価問題であります。地価問題はいまなおくるくる回りいたしまして、政府も適切な案が立たず、さりとて、本委員会におきましても、ずばりと解決の対案が出てまいりません。それほどこれはむずかしいのでございます。むずかしいけれども、この地価問題と取り組んで解決することなくしては、土地を対象とする公共事業は、いつまでも重要な問題の解決が遷延し、トラブルが繰り返されていくということを憂慮するものであります。これもいわゆる追随時価というようなもので決定するのではなしに、これに対しまして、すみやかに法的措置あるいは税法的措置その他行政的措置など、あらゆる角度から地価対策と取り組んで、速急にこれが相当筋道の通った対案が出されなければなるまいと考えております。  第四の問題は、補償問題であります。補償は過小であることは許されず、また過大であることも許されません。もちろんごね得は許されるべきでありません。さりとて、切り捨てごめん的な権力の圧力によって正当な補償をしないということは、とんでもないことであります。かかる意味におきまして、特に最近は社会、経済が、二重構造の結果、非常にいびつになっておりますので、生活の環境も人によってまちまちであります。したがいまして、生活権の保護というようなことも、より一そう慎重な態度をもって補償問題と取り組んでいかねばなりません。補償に関する基準の閣議決定等も拝見しましたし、御説明も聞きましたけれども、抽象文句でありまして、なかなか処方せんをもって投薬するというような適切なものではございません。また、機械的に処方せんをもってすることが適当かどうかも問題です。事さほどに重要でありますので、補償問題につきましては、特に国民生活の重要な角度に立って、取る者の側ではなしに、取られる立場に立って、一そう深甚なる配慮をしながら、また他面、国民の税金を使うべき公共事業が大部分でございますので、これらの角度から、補償の適正なる執行を期待してやみません。  第五の問題は、公共事業を執行する上におきまして、とかく大部会に偏重するきらいがまざまざと見えます。これは大都会に富が集中するのみならず、財政の配分につきましても、東京都、大阪市などにかなり偏重しておることが現実に見えておりますが、これが勢い補償が過大になるという傾向をさらに誘発いたしますので、大都会偏重の公共事業、また補償問題の扱い方につきましても、一段のくふうがなければなるまい、こう考えるのであります。  それから、第六番目には、いまの代行裁決権の問題でございまして、建設大臣が代行裁決することは収用委員会の独自性の侵害という疑いが生じます。やはりこの場合、収用委員会は独立の機関といたしまして、事業者の立場にも立たず、さりとて被収用者の立場にも立たず、公正適切に収用委員会の決定をなし、裁決をなすのがその使命である。でありますので、これを建設大臣が代行するということは、何としてもふに落ちないのでございます。この点につきましては、事態のいろいろの複雑なのにかんがみまして、事情はある程度了といたしますけれども、その行使は厳に慎重を期すべきであることを強く要請せざるを得ないのでございます。  第七番目には、新たに海底もしくは水面の埋め立て等に伴いまして、漁業権が補償の対象になって浮かび出ました。これは当然なことでございますが、この点も、漁業権とはいわないが、いわゆる知事並びに大臣の許可漁業がございます。この点、当委員会でも明らかになりましたけれども、全国の沿岸漁業者といたしましては、むしろこの許可漁業の権利義務の関係こそ重要でございますので、この施行にあたりまして、これらの点について一段と慎重を期し、万遺憾なく補償をなすことを強く期待せざるを得ないのであります。  以上数点にわたりまして、私は、本案の持っております欠陥、またこの運営いかんによっての違憲性、本質的な問題点等を指摘したのでございますが、いずれにいたしましても、現状の各種公共事業の遂行の途上、いまの土地収用制度を、相当妥当な客観性のある手続の簡素化ないしは適正化というものが必要であるという概論的なことは、万人大体一致するところでございますので、完全な改正ではありませんけれども、私は、将来に法律と制度のより完ぺきを期し、最善の姿にすることを期待いたしまして、本案に賛成するものであります。
  37. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより、土地収用法等の一部を改正する法律案を採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  38. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 起立多数。よって、土地収用法等の一部を改正する法律案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  39. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 ただいま議決いたしました土地収用法等の一部を改正する法律案に対して、自由民主党、日本社会党、民主社会党を代表して、瀬戸山三男君外二名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。瀬戸山三男君。
  40. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 三党を代表いたしまして、土地収用法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議をお願いしたいと思います。  その決議の案文は、お手元にお配りしてございますので、煩を避けまして、朗読することを省略させていただきます。 ————————————— [参照] 土地収用法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議 政府は、本法の施行に当たつては、左の諸点について、適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。 一、漁業権等の収用等に当たつては、漁業調整委員会関係行政機関をはじめ、沿岸漁業権者等の意見を十分に尊重し、また、一般被収容者の生活再建についても、職業の斡旋、新たな漁場、換地等の確保について、総合的かつ具体的な方策を講ずること。 二、特定公共事業に係る緊急採決に当たつては収用委員会期間内に、裁決をなすよう鋭意努力し、また建設大臣は、代行裁決に当たつては慎重を期し、乱用することのないよう留意すること。 三、公共事業の施行に当たつては、各種事業計画の有機的総合化をはかり、被収用者の生活基盤の確保について考慮すること。 右決議する。 —————————————  一、二項、三項とございますが、これは審議の過程においても、またただいま討論の内容においても、いろいろ御議論のあったところでありますが、第一は、漁業権等の収用については、いろいろ論議があったところであります。御承知のとおり、沿岸漁業の最近の推移に応じて、それに対する対策として、政府及び国会が沿岸漁業の振興の方策を鋭意進めておる段階でございます。そういう際にあたって、沿岸漁業における漁業権あるいはいま討論の中にありましたような入漁権等を公共事業のために収用いたします場合において、そういう権利者の人々の将来の生計を十分に尊重するということは当然でありまして、それに対する生活再建の道について、種々総合的な方策を講ぜられんことを期待する、こういうことであります。  第二の、特定公共事業における建設大臣のいわゆる代行裁決の規定は、先ほど討論の中にも申し上げましたように、これは異例の措置であります。いわば公共事業を遂行する場合の伝家宝刀でありますから、もちろんみだりに乱用すべきものではないのであります。これもその趣旨を十分尊重されたいということであります。  第三は、一般公共事業を行ないます場合に当然起こってくる問題でありますが、私権と国民的利益との調整の問題であります。公共事業の対象地となって、土地が取り上げられる、あるいは買収される、そういう場合に、そこを基盤とする生活者の将来の生活について、第一の漁業権の場合と同様に、やはり将来の生活の基盤を確立するための総合的な対策を講ぜられることが適当である、こういうことを十分に御配意されるべきであるということであります。  御賛成を願いたいと思います。
  41. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議について、別に発言の申し出もありませんので、これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  42. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 起立総員。よって、本動議は可決され、本案に対して戸瀬山三男君外二名提出の動議のとおり、附帯決議を付することに決定いたしました。  この際、建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。河野建設大臣
  43. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま附帯決議として御決議いただきましたその精神を体しまして、慎重に、万遺漏ないようにやってまいりたいと思います。     —————————————
  44. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。    〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  46. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 次に、首都圏既成市街地における工業等制限に関する法律の一部を改正する法律案近畿圏既成都市区域における工場等制限に関する法律案近畿圏近郊整備区域及び都市開発区域整備及び開発に関する法律案の三案を一括議題として、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。阪上安太郎君。
  47. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいま議題になりました近畿圏整備法に関連する一法案について、御質問いたしたいと思います。  すでに御案内のように、政府におかれては、近畿圏整備法に基づいて、この二法案を提出されたわけでありますが、まことに手回しのいい措置じゃなかろうかというふうに私は考えております。ただしかし、過去におきまして、新産都市法の施行に際しましても同様のことがあったのでありますが、さて新産都市の場合におきまして、現在逢着しております状況は何かというと、非常に入れものはりっぱでありましたけれども、内容がこれに伴っていないというようなことでもって、いろいろな問題が出ております。公害の問題にいたしましても、あるいは財政援助の問題にいたしましても、いろいろな問題が出てきておる。あるいはまた入れものを早目につくった関係から、地域指定等におきましても、新産都の場合においては、工業整備特別地域などというえたいの知れないものを、いままた持ち出さなければならぬというようなことにもなっております。こう考えてまいりますと、入れものを先につくるということも一つの行き方でありましょうけれども、しかしそこに入れるものの内容というものを先に決定して、その内容に合ったような入れものをつくっていくという考え方による関連法律を出してくることが適当ではなかろうか、かように私は考えるわけなんであります。そういった観点に立ちまして、たいへんこまかいことになるかもしれませんが、質問いたしたいと思います。  最初は、事務的なことでございますので、事務当局からお答え願います。区域の指定についてお伺いいたします。近畿圏というものは、これは決定したのですか、どうなんですか。
  48. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 近畿圏の範囲につきましては、近畿圏整備法で、その第二条の規定におきまして、きまっておるわけでございます。
  49. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私はそんなことは聞いてない。近畿圏法の第二条によってきまっているが、政令で除く範囲というものがあるではないか。それは一体どういうふうになっているかということを聞いている。
  50. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 法律第二条では「「近畿圏」とは、福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県及び和歌山県の区域(政令で定める区域を除く。)」となっております。この、「政令で定める区域を除く。」となっておりますが、ただいまのところは、この範囲から除くということを政令で定めておるものはござ言いません。
  51. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これは「政令で定める区域を除く。」とありますが、これは必要なんじゃないでしょうか。たとえば新産都の関係あるいは低開発との関係、北ブロック開発との関係等、そういったものを考えてくるときに、特に三重県であるとか福井県というようなところにおいて、政令で当然除かなければならぬような場面があるのじゃないかと思うのですが、そういう必要性はない、したがってそういうものは必要ないのだ、こういうふうに考えられておるのですか。
  52. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいまの段階におきましては、計画策定の段階でございまして、全県を一区としてのいろいろな統計調査等もございまして、したがいまして、ただいま計画策定の段階におきましては、特に政令でもってある特定の地域を除くという作業はいたしておりません。将来の問題といたしまして、たとえば、御指摘のように、福井県というようなものにつきましては、北陸開発計画というものとダブる面が出てくる、こういうふうな折衝面におきまして、そういうような必要な事態が起こるということも予想されるわけでございますが、ただいまのところは、政令で除外しておるという段階ではございません。
  53. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいま計画と言われるのは、おそらく整備計画あるいは基本整備計画だと思うのですが、それを目下作業中であるから、したがって、それがきまったあとでなければ、近畿圏というものは確立しないのだ、こういう意味ですか。
  54. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 近畿圏の定義は、すでに二府六県というふうに範囲がきまっておるわけでございまして、そのうちの一部を政令で除けるようになっておるわけでございます。あくまでも近畿圏というのは、広い意味ではこの二府六県、こういうふうに考えております。
  55. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そうすると、法律でもって「政令で定める区域を除く。」ということは、予想されたものではない、こういうことになるわけですね。
  56. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 政令でもって一部を除くということもあり得るということを、これに保留してあるわけであります。
  57. 阪上安太郎

    ○阪上委員 次に、同じく区域の指定についてでありますが、法の二条三項の既成都市区域、これは大阪市、神戸市、京都市及び連接する区域のうち政令で定めるもの、こういうことになっておるのでありますが、この既成都市区域というものは、いまきまっておりますか。
  58. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 既成都市区域の区域の取り方につきましては、政令で定められるようになっておりますが、その実態といたしましては、既成都市区域をきめることは、すなわち近郊整備区域との折衝点をきめるということに相なりますので、全体の区域の策定といたしまして、ただいま、整備審議会の下部機構でございます専門委員会の計画部会において、検討いたしております。
  59. 阪上安太郎

    ○阪上委員 近郊整備区域をきめるためにそういうのが必要だ、こういう解釈なんですか。そうじゃなくて、既成都市区域というものは、やはり政令できめなければいけないのじゃないですか。
  60. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 既成都市区域とは、ここに書いてございますように、大阪市、神戸市、京都市並びにこれらと連接する都市の区域の中で、産業、人口の過度の集中を防止しなければならない、こういうような密集の市街地というものを政令できめよう、こういうわけでございます。どういう区域をきめるかということは具体的な問題でございまして、これらにつきましては、ほかの地域指定との関連も一ございますので、計画部会において、現段階において検討しておるわけでございます。
  61. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そうあなた、逃げちゃいかぬよ。作業をおくらしておいて、いまだに近畿圏というものはどういうものであるかということの区域の指定も決定しないし、また、ましてこの法律関連二法案の基本的な要件になるところの既成都市区域というものもいまだになおざりにしておる、それはおかしいじゃないですか。  そこで、私がやはり問題にしているのは、すでに大阪市、神戸市、京都市、こんなことはわかり切っておるのであって、問題になるのは、それに隣接するところの地域を既成都市の区域に指定するかしないかの問題なんです。これをなぜ早くやらないのですか、何をしているのです。
  62. 河野一郎

    河野国務大臣 たいへん事務がおくれておることについてお小言でございますが、法案ができまして、近畿圏整備審議会が発足いたしまして、そして本格的に予算がついたのがことしからであります。そして人員の整備、大阪の出張所の機構の改革のできたのもことしでございます。これは御承知のとおりでございます。したがって、大阪事務所に人間をそろえることにして、仕事を始めたのは五月になってからでございます。それまでは、去年の段階におきましては、本部に暫定の人をそろえている程度で、お小言をちょうだいする段階までまだ至っていない。これが実相と、私は責任者として思います。この法律を、ようやく機構を整えましたのは、ことしの国会で御承認を得て、機構を整えたという程度でございます。先般御承認をいただいたという程度で、予算も、ことしから人員の予算をいただいた。大阪の事務所を五月からやるという程度でございます。そういうわけでございまして、審議会も両三回開きまして、地元の方の御意見を承っておる程度でございます。でございますけれども、地元の各委員諸君の御要望がございまして、こういう法律を早く整えて、そして手回しよくしておけということでございますから、その地元の審議会の決定に基づいて、この法案を提出した。こういうことでございますから、その点御了承をいただきたいと思います。
  63. 阪上安太郎

    ○阪上委員 おそらくやはりそういう実際的な隘路があったのだと思います。しかしながら、こういった近郊整備区域にいたしましても、それから既成都市区域にいたしましても、これがいまだに決定されていない。しかもこれにはやはり相当手続が必要だと私は思います。法が明示しておりますように、まず関係地方公共団体の意見をやはり聞かなければいけませんし、それから審議会の意見も聞かなければならぬ。ここに地方自治を尊重するところの一つの方法が規定されておるわけなんであります。こういったものをつくってやらずに、いきなりこういった関連法案が出てくるということについては、これはいろいろと考え方があると思いますけれども、少し実態に沿わないような物入れになってしまうのではないかという気持ちがいたしますので、私はこういった問題を非常に重要視しているわけなんであります。さらにまた、都市開発区域の問題にいたしましてもなかなかきまってこない。もちろん、新産都の場合もずいぶん苦労なさったことは私も知っております。知っておりますけれども、それだけに、こういった問題については、関連法案もさることながら、手回しよくやはり早く決定して告示をして、効力を発生さすという方向に持っていかなければいけない。それがいまだにおくれております。しかも、工業都市あるいは住居都市その他の都市というような概念等につきましても、あまり明白になっていない。そのままでこういった関連法案が出てくる。その法案を審議しろとおっしゃる。非常に無理があるのじゃないか、こういうように私は思うわけであります。あるいはまた保全区域等につきましても同様の言い方ができる、私はかように思うわけなんでありまして、やはり観光資源とか、緑地とか、文化財とかいうものの開発保全といったような観点に立って、保全区域なども早くきめてしかるべきじゃないか、こう思うのでありますが、こういった手続も全然踏まれていないということで、案外、こういう法律をつくりましても、いまの段階では、内容にそぐわないものができてしまうのではないか。たとえば新産都の場合、あるいは低開発地域工業開発促進法、水資源開発と、いろんな地域関係法がたくさん出ておりますけれども、入れものはできておるのでありますけれども、内容がほとんど伴っていないような感じがするわけなんであります。それと同じような轍を、こういうことをやっておりますと、踏んでいくのではないか。私は、三党共同でもってやってきたこの近畿圏整備をほんとうにうまくやっていくために、そういったことがなおざりにされておるとは言いません。先ほど大臣がおっしゃったような経過もありますから、よくわかるのでありますが、こういった関連法案を出す以前に、そういったものを早くきめていかれることが必要じゃないか、こういうように思うのであります。
  64. 河野一郎

    河野国務大臣 御理解をいただいておりますように、法案ができ、それが近畿圏整備審議会となりましても、性質が審議会でございますから、審議会の決定なくして事務が進むことはないのでございます。したがって、この審議会を開きますと、これが法律に示しておりますように、委員の諸君が県の代表である、地方町村の代表であるという方々が非常に多うございまして、これらの人々がそれぞれ地域代表の立場で意見を述べられます。   〔委員長退席、加藤(高)委員長代理着席〕 したがって、これらの意見を事務的に調整して案を持っていかなければならぬということになっておりますので、事務局が整備いたしましてから、そういう方向に順次進んでいくということが経過になるだろうと思います。しかし、そこまでいくのに、首都圏の場合を考えましても、相当の時日を要します。はたしてそういうふうにしていっていいものかどうか考えますと、それじゃできるものはやっておいたらどうだろうということで、そういう審議会の決定があって、首都圏の例にならって、首都圏のほうで一応整備されておる法律は、こっちのほうでもやったらどうだ、もしくは首都圏の先例にならい、経験にならってひとつやっておいたほうがよいものはやっておいたらどうだろうという審議会の御要望がございまして、そうして審議会の答申を得て、ここに法律を提出しておる。早いかおそいかということは、いまのような考え方でやっておるのでありまして、ほかのものができぬのに、これは早過ぎるじゃないかとおっしゃられれば、早過ぎるかもわかりません。実際に必要の程度はいつ起こってくるかということになりますと、これは多少、来年の国会でもいいじゃないかという場合があるかもしれません。しかしまたある県によって、地方によって、おれのところは非常に急いでおるから、その適用を早くせいという御要望があるかもしれません。そういうような意味合いを勘案いたしまして、私自身といたしましては、審議会の決定に従って、遅滞なく事務を進めておるという意味合いでございまして、決してこれは近畿圏整備本部長官の発意によってこういう法案を急いで出しておるという先行的なことではないのでございまして、この点は審議会の経過等についても御承知のとおり、早くやれ、しかも近畿圏の場合には、委員諸君その他の民間の方々が非常に御熱心でございまして、首都圏よりも進行状態が非常によろしいという実情でございます。しかも、いま申し上げるように、前例があるものでございますから、やれるものについてはわりあい簡単に、前例もしくは先例にのっとってやれ、そういうほうの準備だけは早く進めておけ、進めておきましょうということでやっておる。それがいいか悪いかは議会で御決定をいただくということでございますから、しかるべく御判断をいただきたい、こう思っております。
  65. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それと関連いたしまして、近畿圏整備審議会は何回くらい開かれましたでしょうか。いままでに開催された内容でほとんど決定されたものはないと私は思うのでありまして、意見が出ておるという程度だと思うのですが、その点ひとつ説明してください。
  66. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 近畿圏整備審議会は昨年総会を開きまして、ことしの三月十六日に第二回目の総会をやっております。なお近畿圏整備審議会といたしましては、その下部機構でございますところの専門委員会というものを構成いたしまして、この専門委員会のほうは計画部会と法制部会の二つの部会に分けまして、相当精力的に会合をいたしております。なお計画部会、法制部会につきましても、その活動の中途におきましては、しかるべきチャンネルを通じて、審議会の委員に御連絡するという方向をとっております。この法制部会においては、ことしの春から七回にわたりまして会議を重ねまして、この二法案につきましての要綱を御決定いただき、それを三月十六日に近畿圏整備審議会にかけまして、御賛同をいただいておる、そういうふうな次第でございます。
  67. 阪上安太郎

    ○阪上委員 近畿圏整備審議会令というのをおつくりになっておりまして、それによって運営されておると思うのであります。私寡聞にして会長がだれかということも知りません。あるいはまたこの会議が非公開になっておるということにつきましても疑問を持っておりますし、それから幹事会の運営等におきまして、近畿圏整備本部次長がその議事を掌握しておるという点につきましても、いろいろ問題がございますが、まあそれはささいなことでありますので、あまり問題にいたしませんけれども、いま伺った範囲内では、あまり審議会を開いておられぬように私思うのです。一回ですか二回ですか知りませんが……。いま諮問されている事項は何なのですか。
  68. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 三月に付議いたしました事項は、この二法案につきましての要綱につきまして御了承を得たいという点でございます。今後は計画の策定がだんだんと進捗いたしますので、この近畿圏整備法本来の規定に従いまして、地区指定に関する原案の付議、また施設の整備計画についての原案の付議、基本方針についての原案の付議というような問題が起こってくるわけでございまして、その下準備を現在計画部会においてやっておる、私どもの本部の作業員もやっておる、こういう段階でございます。
  69. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで問題は、結局は、まだ近畿圏整備計画等についての下準備をやっておるというような段階であるということなんです。先ほどから伺っておりますと、やはり地域指定——時間的に非常にせっぱ詰まっておりまして、たいへんだったと思うのでありますが、そういった指定もなかなか簡単にやれない理由として、背後に横たわっている難関といいますか、問題は、やはり近畿圏整備計画自体がまだ全然手がつけられていないということなんでありまして、問題はそこから出てきておるんじゃないかと私は思うのであります。基本方針は一体どうなっておりますか。それから、基本整備計画が最終的な決定にはなっていなくても、一体どの程度の青写真ができておるのか。もしそういうようなことがありましたら、またここで示していただきたいと思うのでありますが、その間の状態はどうなっておりましょうか、ひとつお伺いいたします。
  70. 河野一郎

    河野国務大臣 元来、近畿圏整備委員会は、皆さんの御要望、皆さんの御意思によってでき上がったものと私は心得ます。したがって、近畿地区に非常に御熱意を持っていらっしゃる人は、諸般の情勢はよく御存じと私は思っております。私はその本部長官に就任いたしましたが、近畿圏各県がばらばらに、それぞれの県が、それぞれの県において、振興計画、整備計画をつくっていらっしゃる、それぞれの町はそれぞれの町でつくっていらっしゃる、こういうものはそれぞればらばらで進んでは困るだろうというようなことから、近畿圏を広域行政の面において大きく指導しなきゃいかぬということで、こういうものをおつくりいただいたと思うのであります。そういう認識に立って、私はこの指導をいたしております。したがって目的は、各県がそれぞれ持っておりまする整備計画、それらの御提出を願い、これらの間の調整をしてまいることが先決問題だ。われわれとしては、われわれ自身がこういう青写真を持って、ここに近畿圏整備をしていこうということを、政府の発意で、政府の要請によって私はお願いしたのじゃないのでございまして、それは地元の方がその間の事情はよく御承知だろうと思います。また無理無体に私のほうで青写真を持って臨んだわけではない。でございますから、いませっかく各県からそれぞれのものを提出していただいて、そしてそれをいかに調整していくかという方向をいまやっておるということが第一。第二は、私この委員に責任を持ちまして、まず大阪の過熱都市その他のものをいかに疎開するか、そうしていかにそこに整備したものをつくるか、また同時に、各地の未開発の地域をいかに開発してまいるか、この過熱地帯と未開発地帯の調整をどうはかっていくか、ということについて考える必要があるだろうというふうに考えまして、閣議の了解を得まして、基本として五項目ほど決定したものがございます。これだけは早急にひとつかかろうというてきめたものがございます。これについては、それぞれ御調査を願っておるということでございます。  また、この機会に申し上げておきますが、整備審議会の委員は、法律でおきめいただきましたように、それぞれ仕事をなさる方が委員になっていらっしゃいませんので、各県の議会議長であるとか、各町村の議会議長であるとか、各県の知事さんであるとか、市長さんの代表であるとかいうような方が大部分でございまして、それらの人は、こちらから出した案をいいか悪いか、きめていただく方だという人がなっていらっしゃいます。そこでその下に専門委員を置いて、その専門委員会でそれぞれの案を審議していただく、立案していただくということにいたしております。したがって専門委員の活動をもっばら活発にしていただくということにしておりますが、何ぶんこれらの諸君も専門職ではございません。したがって活発にやれとおっしゃっても、これは常勤の人でもございませんし、その間にどうも首都圏整備委員会と言い、近畿圏整備委員会と言い、こういうものができて、私はいずれも責任者になっておりますけれども、首都圏の場合でも、御承知のとおり、何かとりとめがないような、あるようなかっこうになっております。魂が入っておるような、入っていないようなかっこうになっておりますが、事務もその間にしかるべく進めておるということでございますが、私は首都圏の経験から見て、こういうようなことに持っていきたくない、近畿圏のほうは何か一つ一貫したものをこれに持っていって、そして何かまとまったものにこれをおさめたいという情熱は私は持っております。したがって、大阪の貨物駅を適当のところに移したらどうだ。それがいいか悪いか、移すとすればどこへ移すかというようなものにつきましても、閣議の了解を得て、私はこれに調査を命じております。というような方向でいこうとしておるのでございまして、可能な範囲において、できることは急いで——事務として、われわれのほうとしてやるだけのことは急いでやっておかなければいかぬ。あと地元の方々の御要請、御熱意、御協力というものを待たなければ、なかなか自治体の大きな眼目に触れることでございますから、これは私どもといたしましてみだりに推進できません。でございますから、案ができれば、一応審議会にかけて、審議会の御了解を得て、御賛成を得ればやるということでございますから、審議会を開かぬのではないのでございます。審議会にかける案がまだ専門委員会から上がってこないというのが実情でございます。したがって、先ほど申し上げましたように、一応事務局を整備して、そして専門委員会の開催に支障のないように、事務が進行できるということに人員の整備——ようやくそれがいま終わるか終わらぬか、これからやるというようなことで、法律関係、予算の関係から、その実態はそうでございます。でございますから、そういうことでやっておるということに御了承いただきたい。  なお、法律が早いじゃないかとおっしゃれば、先ほど申し上げたとおりのことでございまして、早いと地元の方がごらんになったら、早いとして、継続審議で、私は決してそれじゃいかぬと思いません。しかし少なくとも地元実態は、早くやらなければ困るという地区もある、まだそこまでいっていないところもある、というのが実態だと思います。したがって、私は整備しておいて、発動するならば、審議会の委員の決定を見て、発動していいんじゃないか、こういうのが私の心境でございます。
  71. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私、いま大臣の説明を受けまして、非常に敬服しております。私はそれで非常にいいと思います。この近畿圏整備法をつくるときにも、それらの点が問題になりまして、頭ごなしに青写真を押しつけて、整備本部からこれでどうだというふうな行き方よりは、むしろ名を捨てても実を取っていただくことのほうがいいじゃないか。その意味において、在来とも各関係府県等におきまして、それぞれの計画を、いまおっしゃったように持っております。それを吸い上げてきて、しかる後に基本方針等を立てていく、それからそれを審議会に諮問していくとか、あるいはそれに基づいて基本計画の意見を徴していくという行き方は、私は方向としては非常にいいと思います。ただ、それがいまできていない、こういうことだと思います。  そこで大臣、先の見通しが早いものだから、触れられましたが、私はただここでこういった関連法案が、こういった状態の中で出てくる場合に、非常におそれていることが一つございます。それは何かというと、近畿圏整備法の目的でありますところの総合的な整備開発、この総合性を乱すのじゃないかという考え方であります。人口の規模及び配分であるとかあるいは産業の配置であるとか土地、水その他の資源の保全、開発土地整備及び開発、交通体系の確立、こういったものが総合的にかつ基本的に出てまいりませんと、何か総合性を欠いてしまうのじゃなかろうか。したがって、これらの二法案の内容を見ましても、何かそこに総合性を欠いたような形の入れものになっている感じが強うございます。しかしながら、この近畿圏整備をやる場合にわれわれが強く要望しておりました点は、近畿は一体であるという考え方、これをあくまでも堅持していくのだ。したがってむしろ個々の県内における、そこのいままでやっておったところの県計画というものではなくして、それを乗り越えていった広域性のある部面で問題を解決し、それを一体性に持っていくのだ、そういうきわめて高度な広域行政としての立場を堅持していかなければならぬ、そういったものが、この二つの関連法律案を見ておりますと、ちっともその関連性が出てきてない、そういう印象を受けるのでありまして、そういったことにつきまして、この問題をずっと検討していきますと、少し先走り過ぎたのじゃないかという感じが実はするわけなんです。  繰り返して申し上げますけれども、そういう点、これはあるいはまた各県のそういう調整をやらなければ、水資源の問題にしましても、琵琶湖水系の開発にしましても、それ自体が問題なんでありまして、そういった点の配慮というものが、あるいはそういったものの写真ができてきていないという段階でこれをやっていくということは、総合性を非常に乱すのじゃないか、こういう考え方を持つわけなんです。くどいようですが、この点どうでしょうか。
  72. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように、現に大阪並びに近畿所在の都市が非常に過熱しておる、これを整備しようということは、どなたも御異論がないと思います。そういたしますと、都市計画であらかじめ、こういう全部やらぬまでも、一応網をかけて、こういうふうに、将来はこういう計画を立てる、したがってここには高層建築もしくは永久建築は困りますよというものを線を引くということは、これは御承知のとおりであります。それと同時に、これらの地区においては、これ以上学校をつくったり、これ以上工場をつくったりしたのでは、もう人口はますます過熱になる。したがって工場をつくったり学校をつくったりすることはもうお控えをいただきたいというのがこの法律の本旨でございまして、それをどこの市に適用するかということは、これから地元で御了解を得たならば、その法律は用意してありますから、ひとつあんたの町にやりましょうというふうに適用できるようにしていこう、こういうことであります。その行く先がなければだめじゃないかということに、むろんなります。しかしその行き先がなければ困る範囲においては、適用もまたいたしませんということでございまして、工場団地をどこに設定していこうか、工場団地を希望される地区が、あるいは奈良方面にある、どこにある、それぞれの県に計画があるということでありますから、そういうものと見合っていけるだろうということになりますれば、暫定的にそれぞれの県の所在の都市にこの法律を適用するということもいいじゃないか。なるべく早く適用したほうが、あとになってから、立ちのいてくれ、どっちに行ってくれということよりも迷惑をかけないことになるのじゃないかということがねらいでございまして、もしそういうものを要望されたときに、法律がまだできておりません、準備ができておりませんでは、私の責任上適当ではないという考えから、法律は、当然首都圏においても必要な法律として、最もこれは先行した必要な法律として、首都圏の例にならって活用しております。こういう意味において、この法律の御審議を願っておこう、こういうことでございまして、別にこれをやったから、すぐに全部のものに発動してどうこうするというような考えは毛頭持っておりません。近畿圏整備の行き方としては、先ほど申し上げたとおりの方向、順序で行くわけでございますから、その過程において、それぞれが持っていらっしゃる案が、総合的にも適当であろうということになりますれば、審議会の決定によって適当であろうということであれば、その所在の地区にはひとつ早くこういう法律を適用して、そしてこれ以上もう過熱の要件を除去していこうということのために法案を整える、こういうことでございます。
  73. 阪上安太郎

    ○阪上委員 自分たちで十分審議をしておきながら、こういうことを申すのはどうかと思いますが、新産都市の場合に、あれだけの審議をいたしまして、法律ができまして、いまになって、たとえば財政援助等の面につきまして、これが全然裏づけが出てこないというようなことで、先に法律をつくってしまうと、とかくそれであとは一安心、これは地方自治体のことですから、政府が安心するなんということは少しことばが過ぎるかとも思いますが、しかしもうできたんだから、この範囲内でおさめてしまえというようなことで、昭和四十年度における予算措置なども、ついついなおざりになっていくおそれがあるのではないか。これは新産都市の場合が、私は好適な事実だと思うのであります。そこでこの事業実施につきましては、この基本法である近畿圏整備法の十六条、十七条、十八条、十九条、二十条、二十一条、二十二条というようなところで、いろいろと規定されておるのであります。この十六条で「当該事業に関する法律」ということをいっておりますけれども、地方自治法の過般の改正によって出てまいりました事業団というようなものは、これに該当するものですか。事務的な問題ですが……。
  74. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 十六条の「地方公共団体」ということばの中には、事業団は含まれています。
  75. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それから十七条の「できる限り協力」、これはいつも財政措置につきましてはばく然としたことばで言われておるのでありますが、これは一体どんな構想をお持ちでございますか。
  76. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 十七条の「関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者は、基本整備計画及び事業計画の実施に関し、できる限り協力しなければならない。」という規定でございますが、これは、こういうふうな協力義務をうたった規定は新産都市法等にありますので、本法の運用につきましては、近畿圏整備計画なりあるいは事業計画なりというものを打ち立てます段階におきまして、関係行政機関の長が十分参与して、そうしてその意向が反映されておるわけでありますから、その実施段階におきましても、そのときの線に沿って、できるだけ実現してもらうというふうにお願いいたしておるわけでありますし、またそういうことが行なわれないならば、近畿圏整備長官のほうから勧告をするということもやるわけでございます。
  77. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私財政問題は一番キーポイントだと思いますので伺うのですけれども、その程度のことでは全く意味がない。こんな関連二法案を出してきたって、そのことが明確になっていなければ何の意味もないのです。ひとつこれをやっていこうという考え方に立つならば、少しずるい考え方に立って、関連二法案でもって何かきめつけようというくらいのところまでいってもらわぬと、どうも基本法でうたわれておる道徳規定みたいな程度のものをそのままで放任しておくということはどうかと私は思うのです。もう少し何か、具体的にこういうようなものを持っているのだということまで伺えれば、非常に私は幸福だったと思うのです。  それから同時に、全体計画としての所要財源を、財政投融資の形等も含めて、公共投資はどのくらい持ってくるのだ、それからいま一つは設備投資はどういうふうになっていくのだ、そうして公共投資の場合における国の直轄事業はどの程度に持っていくのだ、県、市町村の負担分はその場合どうなってくる、ことに最近非常に赤字を出しております。しかも近畿圏整備の計画立案の場合に重要な要件となっている道路交通の問題、そういった部面から、御承知のようにたいへんな赤字を出しております。こうした段階における地方公営企業の負担分は一体どうなのだ、そういったものが出てこないと、これをなおざりにしておきますと、また新産都のようなことになる。あの場合、押し問答になってしまって、まだそういう計画はできておりませんといって、数字が明白にならないままでずっときたものですから、新産都はいまのような状態に入っております。それと同じ轍を踏むのじゃないかと私は思いますので、そういった所要財源の見積もり、公共投資の問題について、ここで数字をあげて、このくらいのものを考えておるのだということを言い切れないはずがないと私は思うのですが、ひとつ大臣から伺いたいと思います。
  78. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、元来が、各県が非常な意欲を持って、それぞれの計画をお立てになっておやりになろうとしていらっしゃる、それを総合的にまとめていくというのが今日あらわれたものである。したがって、各県のほうで金がない、各県で金がないものをどうするかということは、これは私よりも、各県のほうが御承知だろうと思うのです。私は、先ほど申し上げましたように、各県で御要望になり、御計画になっておりますものをまとめて、その案ができたならば、そのときに一体どのくらいかかるかというものはきまってくる。それは一体国家財政の面から考えて適当であるかどうかという調整はいたします。したがって、そのときにならなければ、幾ら金がかかるとか、どうなるというようなことは、まだ大蔵当局に交渉する段階に至っていないということだと思うのでございます。ただし、これがあるとないとにかかわらず、近畿圏以外に対する公共投資の予算は、それぞれの面において、政府はしかるべく考えておる。道路道路、河川は河川、その他住宅の問題にしても、都市計画の問題にしても——それは公共投資の中に相当のものがあるわけでございます。これを総合的にどう使っていくかということで、じゃ金はないのかといえば、いま申し上げるように、すでに既定の予算として、相当のものは政府にはその用意はある。しかし、それが適当であるかどうか、それだけで足りるか足りないか、どの程度のものになるか、年次はどうなるかというようなことは、具体的な案を見なければ申し上げることはできないと思います。  御参考までに申し上げますれば、首都圏の場合には七年かかってその基本法案ができたそうでございますから、私は、近畿圏の場合には、少なくともその半分の三年くらいにはつくらなければなるまい、こう考えております。これが実情でございますから、申し上げたのであります。しかも、先ほどから予算について、新産都市の話をお話しになりますけれども、決して自分で手柄話を申し上げるわけではございませんが、少なくとも、近畿圏整備事務局の場合におきましても、首都圏をこえるわけにはまいりません。けれども、首都圏に比べて納得していただく程度に、事務費にしても、大蔵省から、これにつけることにしてつけてもらっております。したがって、首都圏にあんなに金をやっておるが、近畿圏のほうはどうだというお小言はちょうだいせぬでもいいようにしてあるつもりでございます。どうかそれで御了承いただきたいと思います。
  79. 阪上安太郎

    ○阪上委員 新産都の場合、御承知のように、地方の言い分を聞いてやるとすれば、二兆八千五百億円くらいのものは考えなければならぬ。その場合に、国の直轄事業が一三%程度にとどまっておるというのが現況じゃないかと思います。したがって、首都圏並みということばをいま大臣から言われて、並み、あるいはそれを下回らぬということで、ある程度の希望は持てるのでありますけれども、新産都との関係において、財政的な位置づけはどうなんでしょうか、そういった点についてどこまで考えておられますか。
  80. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、近畿圏の場合と新産都市の場合とは全然ケースが違う、これを参考にして御議論いただくことは、かえって迷惑だと考えます。むしろ私は、先行しております首都圏あとを追っているのであります。私は、新産都市と同日に議論をする、もしくはものを考えるという考えはいたしたくございません。
  81. 阪上安太郎

    ○阪上委員 多少意見をまじえますが、この審議会が、いずれ時期を見て答申しなければならぬ近畿圏整備計画、それを審議する段階において、おそらく相当な、あれもこれもという希望が出てくると思います。この場合に、大体の財政規模というものがめどがありませんと、私は事業計画を審議しようにも審議しようがないんじゃないかという考え方を持つものでありまして、この二法案と関連しても、やはり同様のことが言えるんじゃないか、こういうことで、地方から言うてきた事業を全部取り上げてここで検討していくんだという、筋道はそうであるかもしれないけれども、なかなかそう簡単には私はまいらないんじゃないかと思うのであります。いずれにしても、財源の裏づけというものが明確に総額において出てまいりませんと、やはり審議はできないんじゃないかという感じがするのでありますが、こういった点、いかがですか、くどいようでありますけれども。
  82. 河野一郎

    河野国務大臣 誤解があるといけませんから、重ねて申し上げておきますが、たとえばここで整備されます近畿圏道路計画、その予算はどうかといえば、すでに近畿圏を通じて道路五カ年計画というものを持っております。その五カ年計画と近畿圏整備の立場から考えた計画とが合致するかどうかということが考えられます。金はあります。五カ年計画の金はありますから、この金を持っていきます。道路予算において、五カ年計画に全部平均してみた道路計画の中の道路予算はありますから、この道路予算で、いま近畿圏整備する場合に、これで足りるか足りないかという問題が起こる、それ以上の必要が起こってきて、他の方面をはずしてもそれに入れるか、入れる必要はあるか、この五年の間に起こってくるもの、この五年の次の五年で間に合うか間に合わぬかという問題が研究、検討されるのであって、金があるとかないとかいう問題じゃありません。河川についても同様に言われます、港湾についても同様に言われます。主たる財源は、政府はそれぞれ所要のものを持っております。持っておる中からどう引き出していくか、どう繰り回していくかということでございますから、引き当て財源が全然ないのに、から相談してもだめじゃないかというようなことが、もし誤解の結果生まれると、われわれとしても非常な迷惑であります。地方の方にも非常に失望を与えますから、その点は誤解のないように、国家予算として一定のワクがある、そのワクの中で公共投資には幾らのワクがある、その公共投資の中で、それぞれのものがきまっておる、それとどういうふうにこの整備計画との調整をとっていくかというところに問題があるだろう、こう考えるのであります。財源引き当てが全然ないということは誤解でありまして、私は、そうじゃないということに御了承いただきたいと思います。
  83. 阪上安太郎

    ○阪上委員 したがって、住宅計画等については、国の住宅計画にのっとってそれとどうマッチしていくか、道路道路、それから環境衛生関係はどうだ、下水はどうだ、こういうふうに持っていかれると思うのであります。ただ私は、そこでこの法律をつくる場合に、それらの、国がすでに出しておるいろいろな五カ年計画とか、いろいろな長期計画、そういったものの関連ということについては、これはもう全く別の法律でまかしてあるのであって、この関連二法案、ことに開発関係法律案については、もうそういうことは考慮する必要はないのだ、こういうふうにしてここにつくられてきておるような感じがするのでありますが、それではやはりまだ総合的な開発計画にはならぬのじゃないか。こういう都市開発区域の場合におきまして、あるいは近郊整備区域の場合におきまして、この点はどうなんでございましょうか。
  84. 八巻淳之輔

    ○八巻政府委員 この開発法は、結局開発計画、つまり近畿圏整備計画のさらに細部計画を律して、近畿圏整備計画を実行していくというための道具をそろえた、こういうことでございまして、これらの道具をそろえまして、計画が実現に移されるという段階におきまする開発計画そのものの財源というものは、先ほど来大臣からお話のございましたように、それぞれの予算、長期計画に基づく予算の範囲内で、それぞれ適当につぎ込まれて、一つの地域における開発計画になってくる、その実現になってくる、こういうふうに理解しております。
  85. 阪上安太郎

    ○阪上委員 まだ基本計画等も策定されておりませんからですが、先ほど言いましたように、やはり考え方を伺っておかぬといかぬと思うのであります。これをやり始めると、相当な時間を実は食うわけなんであります。先ほど言いましたような総合計画的な方向にこれを持っていくということの必要性は皆さんも御同感だと思うのでありますが、そうなってきますと、ここでこの法律に出ているような程度のことではいけないと思うのです。言いたいことはたくさんあるのです。それで、それをやっておりますと時間がかかりますので、次会に譲ることにしまして、きょうはこの程度にとどめておきたいと思います。
  86. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 次会は、明後二十九日金曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十二分散会