運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-04-22 第46回国会 衆議院 建設委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十二日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 丹羽喬四郎君    理事 加藤 高藏君 理事 瀬戸山三男君    理事 服部 安司君 理事 福永 一臣君    理事 岡本 隆一君 理事 兒玉 末男君       逢澤  寛君   稻村左近四郎君       大倉 三郎君    木村 武雄君       正示啓次郎君    中村 梅吉君       堀内 一雄君    堀川 恭平君       松澤 雄藏君    山本 幸雄君       渡辺 栄一君    井谷 正吉君       久保田鶴松君    西宮  弘君       原   茂君    山崎 始男君       玉置 一徳君    吉田 賢一君  出席政府委員         建設政務次官  鴨田 宗一君         建 設 技 官         (河川局長)  畑谷 正実君  委員外出席者         農 林 技 官         (農地局参事         官)      永田 正董君         建設事務官         (河川局次長) 国宗 正義君         自治事務官         (財政局交付税         課長)     山本  悟君         参  考  人         (一橋大学教         授)      田上 穰治君         参  考  人         (北海道大学教         授)      金澤 良雄君         参  考  人         (兵庫土木部         長)      片岡  武君         専  門  員 熊本 政晴君     ————————————— 四月二十二日  委員田村元辞任につき、その補欠として宇野  宗佑君が議長指名委員に選任された。 同日  委員宇野宗佑辞任につき、その補欠として田  村元君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十五日  滋賀県甲西中学校生徒通学用国道一号線横断  地下道または陸橋建設に関する請願外十五件(  西村関一紹介)(第二七四八号)  地代家賃統制令の一部改正に関する請願木村  武千代紹介)(第二八〇二号)  河川法案等反対に関する請願横山利秋君紹  介)(第三〇三一号)  建設省矢作川、豊橋両工事事務所統廃合反対  に関する請願横山利秋紹介)(第三〇三二  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  河川法案内閣提出第八号)  河川法施行法案内閣提出第二四号)     —————————————    午前十時四十三分開議
  2. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 これより会議を開きます。河川法案及び河川法施行法案を議題とし、審査を進めます。  本日は、両案審査のため、参考人として、北海道大学教授金澤良雄君、一橋大学教授田上穰治君及び兵庫土木部長片岡武君の三君の御出席を願っております。  参考人の各位には、御多忙のところ、本委員会に御出席をいただき、ありがとうございました。どうか忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いをいたします。  議事の順序について、まず田上穰治君、金澤良雄君の御両名の参考人から御意見の開陳を願い、次いで両参考人及び政府当局質問を行ないますから、これを御了承願います。  田上参考人にお願いいたします。
  3. 田上穰治

    田上参考人 河川法案につきまして、まだ私もあまり勉強しておりませんが、これまでの現行法がきわめて古いものであって、これは当然、終戦後の今日改正を要することは疑いをいれないと思うのでございます。  大体現行法は、新憲法のもとでありますから、たとえば現行の第三条で、河川流水敷地私権目的となることを得ないというような規定を見ますると、これは正当な補償条項がなかった明治憲法のもとでは格別の問題はなかったかと存じまするけれども、現行憲法二十九条で見ますると、河川流水が何か方向が変わる、自然の状況によって従来民有地であったものが、河川敷地に入るということになりますると、無償でその所有権を失い、いわば国の公物となってしまう、これは自然公物の性質からやむを得ないかと思いまするけれども、土地まで私権目的となることを得ないというのは行き過ぎでありまして、これは現行憲法に違反するように私どもは考えております。これは一例でございますが、そういう意味におきましても、当然河川法改正されなければならないと考えております。  さて、現行法とこの法案とを比較いたしますると、現行法は非常に古い規定でございますから、たとえば河川の監督の規定などを見ますると、すでに代執行であるとか、あるいは間接強制のような、一方で戦後行政執行法改正され、今日の行政代執行法で大体まかなわれておる、こういう現状と比較いたしまして、著しく均衡を失するのでございます。明治憲法時代行政執行法よりもさらに古い河川法のこういった関係条文が、行政執行法の廃止になりました今日においてもなお残っておるということは、非常なアンバランスでございまして、当然改正しなければならない。  それから現行河川法内容に入りまして、簡単に法案比較いたしますると、河川管理のところでございますが、これが現行法地方行政庁つまり府県知事管理者原則に上がっております。新しい法案は、一級河川につきましては、国と申しますか、建設大臣管理することになっております。これはかなり問題のあるところだと私は考えるのでございます。つまり二級河川ならば、従来の河川管理と大体違いがないのでありますが、一級河川になりますと、建設省の直接所管に入るたてまえ、指定区域を除きますと、そういうふうに条文はなっておりますが、むろん、これまでも建設省の直轄の改修工事、またそれに関連して、建設省管理のことが現行法でも認められておりまするが、法律のたてまえからいえば、きわめて例外というふうに見られるのでございます。ところがこれに対して、新しい法案では、一級河川、二級河川というふうに区別をしておりまして、一級河川は必ずしも例外ではなくて、政令指定いたしますると、相当多数の河川一級河川として正面から建設省所管に入り、その次に二級河川、こういう段階でございまして、これは道路法とは少し調子が違うようでございますが、とにかく道路の場合にも一級国道、二級国道、そして都道府県道という区別、こういうふうに考えますると、建設省所管である一級河川が、現在の制度のもとにおけるよりも相当広くなるのではないかというような感じがするのでございます。この点は、一方で、やはり相当大規模な数府県にまたがるような河川でありますと、現在もそうだと思いますが、やはり地方行政庁というよりは、中央建設省のほうで管理するほうが適当であると私も考えるのでございますが、そういう意味において、今度の法案規定のしかたに賛成いたしまするけれども、ただ問題になると思いまするのは、これは現行法との比較ではございませんが、新しい法案の第四条におきまして「「一級河川」とは、国土保全上文は国民経済上特に重要な水系政令指定したものに係る河川政令指定したものをいう。」こうありまして、どの程度河川一級河川として指定されるかが、必ずしもこの法案では明瞭になっていない。  そこで私の感想でございますが、これは常識的に一府県区域内にとどまる河川の場合には、大体その地元府県知事をして管理させることが妥当ではないかということでございます。しかし、これはこの法案そのものに対する意見ではないのでございまして、将来政令を制定、立案いたしまするときに、主としては法案の第四条の河川審議会関係都道府県知事意見を聞いて、建設省で立案、制定されるわけでございますが、その場合の問題だと思いまするけれども、私の気持ちとしては、一級河川指定は慎重にすべきではないかというふうに思うのでございます。  いまの憲法地方自治相当に尊重している。もちろん何でもみな地方にまかせる、あるいは地方と申しますか、この場合には府県機関知事でございますが、それにまかせるというのが適当だとは思いませんけれども、しかしできるだけ地方意見、そして地方機関を尊重するということが、いまの憲法の精神ではないか。少なくとも明治憲法比較いたしますと、新憲法では地方にかなりの重点を置いて考える体制でございますから、これを中央一級河川として処理するということは、かなり慎重な態度を要すると思うのでございます。しかしこれは直接法案に対してどうこうという意見ではございません。  それからいま申し上げました現行法の第三条で、「河川並其敷地ハ流水ハ私権目的トナルコトヲ得ス」というこの条文が、この法案では削られている。これは当然でございまして、特に敷地についてまで私権目的たることを得ずというのは、いまの憲法の上から申しますと、承認できないのでございます。  それからややこまかいことになりますが、たとえば舟筏、船、いかだの通航、流木に関する規程は、現行規定では命令に譲っております。またそのほか、そういう点を、一例でございますが、比較いたしますると、今度の法案では、河川管理のほうで「河川使用及び河川に関する規制」という第三節の部分にかなり明瞭に規定があるわけでございまして、もっともこの法案におきましても、省令に譲っておる部分がかなりございますが、現行法に比べますと、かなり明確になっているということは、私は今度の法案のほうがまさっておると思うのでございます。  それから、なお、法案におきまして、特に私は水利調整の、たとえば四十条の規定などは非常に興味を持っているのでございまして、従来の現行法の二十条の規定で、建たん管理者が与えた使用許可を取り消すにつきましての簡単な規定がございます。これは水利権が公権であるか私権であるかということに関連して、しばしば引用される条文でございまして、普通の私権、私法的な権利のごとく、既得権として十分に保障されないものである。公共の利益のためにかなりきびしい制約があるわけであります。現行二十条においても指摘されるのでございますが、ただそういう場合に、それならばたとえば現行の「公益ノ為必要アルトキ」には、一たん河川使用許可占用許可を与えたのを取り消すことができる、あるいは効力を停止することができるというふうに書いてございますが、この程度でありますと、かなりばく然としておりまして、管理者あるいは当局が、その裁量余地がかなり広く受け取れるのでございます。もっとも解釈上は、このような現在の規定であっても、行き過ぎのないように裁量権の限界を論ずることができないわけではございませんが、今回の法案の四十条でありますと、すでにその同じ河川について占用権者水利権者のある場合に、新たにまた別の申請者占用許可をする、水利使用許可をするというような場合には、従来よりも一そう公益性が著しく大きい場合でなければならないとか、あるいは損失防止のために必要な措置をする余地があるかどうかというふうなことが出ておりまして、これも必ずしも詳しい規定ではございませんが、こういった公益比較によって行政当局裁量規制され、同時にこのような水利権というものが単純な私権ではないということが、かなり明確にされていると思うのでございます。つまり河川公共用物としての本質相当に明確になっている。このように思うのでございます。  ただ、これも蛇足でございますが、従来の河川法三条に当たるものがなくなってしまった結果としまして、河川敷地について私権の成立する余地は出てきたのでございますが、流水のほうは一体どうなるのか、流水についてもこれが私権の対象となるかどうか、あるいは法律の文面では不明確に見えるのでございますが、私は、この点は一応法理上きわめて明瞭であって、自明の理である。言いかえれば、自然公物本質から、特に規定をしなくても明瞭であると思うのでございます。むしろ肝心なのは、河川敷地について私権の成立する余地を認めるという法律でございまして、この意味において、従来の三条規定をはずしたということが、今度の法案において私の賛成する一つの点でございます。  そのほかまた御質問がありましたらお答え申し上げますが、河川に関する費用につきまして、現行の二十四条では、府県負担とするというふうにございまして、国庫負担もございますが、原則としては、府県負担というふうに規定が出ております。しかしこれは私は特に新しい法案一級河川のような、国が主として責任を持つものにつきましては、府県負担合理性がないと思うのでございまして、この点実際にはあまり変わりがないと思いますが、条文規定のしかたとしては、今回の法案のように、一級河川は本来国がその経費負担すべきものである、二級河川都道府県経費負担するたてまえであるという書き方のほうがわかりやすいというか、筋が通っておると考えております。しかし、この点も、法案について全然問題がないわけではないのでございまして、一級河川につきまして、今回の法案では、府県が半ば——国庫負担と、それに対して府県が二分の一でありますか、負担することでありまして、その意味においては、あるいは一級河川は全額その経費国庫負担とするという考え方も考えられると思うのでございます。しかしこれはその一級河川指定範囲によってもかなり事情が変わってくるわけでありまして、国と地方との負担区分を明確にするという考えでありますると、一級河川として指定する範囲をできるだけしぼって、それについては国庫負担をたてまえとする。これはいまの法案もそのように読めるのでございますが、その裏のほうから申しまして、府県負担にならないように考慮するということが望ましいのではないか。しかしこれはやはり、政令一級河川として指定する範囲が、法律の上には明確になっておりませんので、この点、私も特に一級河川について、府県負担を認めないようにということをはっきり考えておるわけではございませんが、大体のたてまえが、今度の法案のように、国の負担原則とするという書き方のほうが筋が通っていると思っております。  このほか、もう少し申し足りないことがございますが、なお金澤参考人の御意見の時間もございますから、あとは、ひとつ御質問を伺いまして、意見を申し上げたいと思います。  大体において今回の法案は当然であり、現行法は当然改正さるべきでありまして、その内容としては、私は特にこの新しい法案について反対部分はございません。簡単でございますが。(拍手)
  4. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 どうもありがとうございました。  次に、金澤参考人にお願いいたします。
  5. 金澤良雄

    金澤参考人 このたびの河川法につきまして、その改正特色のあらましを申し上げ、それに関連して、問題点を若干指摘さしていただきたいと思います。  第一の特色は、ただいま田上先生からもお話がございましたように、現行河川法三条の「河川並其敷地ハ流水ハ私権目的トナルコトヲ得ス」という規定を削りまして、法案の二条で「河川は、公共用物であって、」という表現になっているわけであります。この点は従来も解釈上の問題があった点でございますが、現行法によりますと、たとえば河川敷あるいは河川管理施設敷地というようなものが、たとい私的所有権が認められておるものであっても、そのままで管理できるという実際上に即した便宜が出てくるわけで、現行法に対して、改正法案はすぐれているということが言えると思います。  第二の特色は、水系主義考え方を取り入れようとしている点であります。一級河川、二級河川指定水系ごとについて行なうということになっておりまして、これは現行法区間主義であるのに対して水系主義である。つまり河口から水源までできるだけ一貫的な管理をするというたてまえに変わってきたということが言えるのではないかと思います。もちろん改正法案におきましても、一級河川について指定区間というのがございまして、この指定区間の間のものについては、都道府県知事管理の一部を行なわせることができるということがございますし、また一級河川指定におきましても、これはその区間を明らかにするというわけで、河口から最上流部まで一貫して一級河川であるということではないかもしれないのでありますが、しかし少なくとも水系主義的な考え方現行法に比べてはっきりと出てきておる。これはまさに水の実態に即した有効な河川管理やり方として適当な方法であろうと思います。ただそこで問題になりますのは、水系主義ということがすぐれてよいといわれているゆえんのものは、一体として計画性を持たせて管理していくということではないかと思うのであります。つまり水資源保全開発利用についての全般的な有機的な計画性ということが必要であるということが今日一般にいわれているわけでございますが、そのためであるということが考えられます。  ところで、この点について考えてみますと、改正法案は、必ずしもそういった水の利用保全についての総合的な計画性をうたってはおらないように思われます。もっとも工事実施段階につきましては、工事実施基本計画というのが定められることになっておるのでありまして、十六条でございますが、この点は、この前の国会でこれが修正されまして、その前は工事実施基本事項ということであったのですが、これが修正されまして基本計画ということになりまして、同時に水害発生状況並びに水資源利用の現況及び開発を考慮し、かつ国土総合開発計画との調整をはかって、その基本計画を定めるといったような表現がつけ加わりましたことは、確かに計画性を持たせるという意味で、一歩前進したものといえると思います。しかしこれも河川工事ということに限定されているのでありまして、またそれは実施段階に関連する計画性であります。そこでさらにそのもう一つ上の工事、総合的な治水利水との調整の問題、あるいは利水相互間の調整の問題というような意味での総合的な計画性というのは、法律上は一体どこで確保されるのか、これが私の一つの疑問であります。もちろん水資源開発促進法というのが御承知のようにできておりまして、これが指定水系について基本計画を定めてやっていく。淀川、琵琶湖、利根川について、すでに基本計画もできております。だからこれにまかせておけばいいではないかということも考えられるのでございますが、ただそこでちょっと疑問になりますのは、水資源開発促進法のほうは、いわば利水面からのアプローチに重点を置いているのでありまして、御承知のように、「産業の開発又は発展及び都市人口の増加に伴い用水を必要とする地域に対する水の供給を確保するため、」云々ということになっているわけです。そこで治水利水の両面をにらみ合わせ、そしてまた利水相互間の関係をにらみ合わせて、全般的な水系についての計画を一体どこが立てるのかということになりますと、今度の改正法案もあるいは水資源開発促進法も、法律制度的にはこたえてくれないということになって、この点が一つ問題点、大きな意味での水法上の問題点であろうかと思います。ただ、この点は、行政機構との関係でいろいろむずかしいことがあろうかとも思うのでございますが、その点を一つ指摘しておきたいと思います。  次に、第三の点は、一級河川管理権建設大臣に与えるということ、この点は、先ほど田上先生からもこまかくお話がございました。この点につきましては、私も田上先生と同意見でございまして、なるほど、一級河川は、法律上は、国土保全あるいは国民経済上特に重要な水系について指定するということになっておりまするが、まずその数都府県にまたがる、あるいは数都府県利害関係のある河川——このごろは水系の変更というようなこともございますし、必ずしも数府県にまたがらなくてもよい。あるいは数府県利害関係のある河川水系については、一級河川として建設大臣管理権を持たせるということが今日の実情から見まして有効である、その必要性が多いということは確かに言えると思います。しかし、ただその都道府県に限っている川ということになりますと、これはあるいはむしろ知事管理するほうが望ましい。河川地元住民の水の行政に非常に密接な関係があるわけでありまして、そういう水の行政は、他の行政との関連もございますし、そういうものを総合的に勘案してやっていく立場ということになりますと、これはやはり知事ということが好ましい地位にあるものということが言えるのではないかと思います。ただ、改正法案では、関係都道府県に対する考慮がかなり払われているのでありまして、たとえば一級河川指定であるとか、指定区間指定であるとか、河川管理施設操作規則であるとか、そういうようなものについて、知事意見を聞くというたてまえをとっておりますので、この運営のよろしきを得れば、その地元関係都道府県の意向を十分に反映した中央官庁行政が行なわれるということも期待されようかと思います。  第四の特色は、河川管理に関する規定を整理したことであります。たとえば河川工事につきまして、工事実施基本計画、先ほど申しましたそういうものを定めるということにいたしますとか、あるいは河川使用につきまして、水利調整規定を新たに設けた、あるいはダムに関する規定を設けたというような点であります。これらは、現行河川法相当部分省令以下に譲っておりますものを、かなり法律事項として、現在の新憲法下立法としてふさわしいような形で打ち出してきたということにおいては、はるかにすぐれた点かと思います。ただ問題点は、利水面での規制を見ますと、これは非常に大まかである、考え方によれば、現行河川法横すべりといった感じを受けるのであります。もちろんその水利調整につきましては規定が設けられまして、これは確かに一歩前進であると思われるのでありますけれども、その他の点につきましては、たとえば二十三条以下なんかを見ますと、現行河川法横すべりという感じを受けます。この点については、現在の水利用高度化というような実態に即応して考えてみましたときに、もう少し利水面での規定をきめこまかくやる必要があろうかという感じがいたします。水利権についての規定も、何もございませんし、もちろんこれは解釈上、法案の二十三条によって流水占用した者が水利権を持つということになろうかと思いますけれども、しかし、水利権ということが一般にいわれながら、他の法律ではちょくちょく水利権ということばが出ますけれども、肝心の河川法そのものではそういうことばも何もないということなのであります。この辺は立法技術として非常にむずかしい問題かと思いますけれども、理想的な水法というものを考えた場合には、そういった面のきめこまかな規定が必要かと思います。また水の利用と申しましても、いろいろの形態の利用があるのでありまして、一級河川管理権建設大臣が持つといたしましても、そのすべての管理権建設大臣が持つということがはたして望ましいかどうかということにも、若干の疑問があるわけでありまして、水の利用のしかたが、水の使用水そのものの消費ということに関係のない非常に軽微なものについては、たとえ一級河川であったとしても、いわば一級河川指定区間ということにおいて、地理的に一定区間の権限を知事に委任するというやり方は、この法案でも出ているのですけれども、水利用に関して、事項的に、一定のものは知事にまかすというようなことも考えられるのではないかと思います。それから水利調整に関する規定でありますが、これも、許可を与えるに際しましての調整なのでありますが、実際問題といたしましては、許可を与えるときということもそれはありますけれども、渇水時が生じた場合に、その水利権相互間の調整をどうするかということが重要なのであります。この点につきましては、緊急時の措置といたしまして、法案の五十三条に、「渇水時における水利使用調整」の規定がございますが、これによりますと、河川管理者が最終的にはあっせん調停することになっております。これははたしてあっせん調停というような段階でとどまっていいかどうかというのが一つ問題点かと思います。もっともこのような場合には、先ほど田上先生からもお話がございました監督処分権、七十五条二項五号の発動によりまして調整するということが考えられます。しかし特に緊急措置として、何らかの処分権は明確にしておく必要があるのではないかということを思います。  それから第五に、河川費用の負担でございますが、この点につきましては、私はこういうふうに考えております。最初、河川法案の立案過程においてわれわれ耳にいたしました限りでは、一級河川は国のまるがかえである、つまり先ほど田上先生がおっしゃいましたように、国が管理するものはすべて国の費用でやるのだという考え方、しかし現行法においては、一級河川であっても二分の一、改良工事の場合には三分の一、昭和四十四年度まででございましたか、は、四分の三というものが都道府県負担になるということであります。ただこの問題は、管理権をどっちが持つからその負担がどっちにいくというような、必ずしも論理必然的な結びつきはないものと考えてよいのではないか。負担をどのように分配するかということについては、またおのずから財政面から考えていかなければならない問題があり、政策的な考慮がそこに働く余地が十分にあると思います。したがって、現在のように地方公共団体の財政が非常に逼迫しているというような事態におきましては、できるだけ国がめんどうを見てやることが望ましいのではないかと思うのであります。この点については、何も一級河川、二級河川だけでなしに、むしろ今日中小河川が非常に問題になっているのでありまして、中小河川については、地方公共団体では何ともやれないというような事情であるとすれば、これは地方財政の再建の問題を根本的に考えていくか、あるいはそれが十分できない場合には、国の補助ということも考えてよいのではないかと思います。  以上、大体法案特色に応じて、それぞれ問題点を申し述べたのでありますが、なお若干こまかい問題について申し上げておきたいと思うのであります。  その一つは、六条の河川区域ということでありますが、この区域は、六条に示されているようなものが区域になるわけです。ところで、この中で特に明確なのは、河川管理施設敷地、堤外の土地であって河川管理者が指定した区域ということでありますが、一号は非常に自然の状態にまかせられた判断になるわけであります。そういうことでいいという考え方もあろうかと思うのでありますが、ただ最近のわが国の河川は、自然河川というよりも、非常に人工河川になってきておる。そういう場合に、この一号の判断ということが、実際問題として問題が生ずるおそれがあろうということを懸念するわけであります。特に流水の中にもし伏流水を含むということになりますと、伏流水を含むという考え方は——外国の立法では、伏流水はほとんど地表水と同じ取り扱いをしているわけであります。そういうことになりますと、第一号に当たる河川区域というものがどの状態であるかということがなかなかわかりにくいということも生じてくるのではないか。そこで、それが二十六条、二十七条あたりの工作物の新築の許可であるとか土地の掘さくということをやる場合に、そこがはたして河川区域なのかどうかということの判定がむずかしいという問題も生ずる懸念があるのではないかと思うのであります。こういう場合には、あるいは河川区域というものは、何らかの形で明らかにして指定しておくことが必要ではないかということが一つの問題であります。  それから十五条でありますが、他の河川管理者との協議について定められております。この場合に、「河川に著しい影響を及ぼすおそれがあると認められるときは、河川管理者は、あらかじめ、当該他の河川管理者に協議しなければならない。」ということになるわけなんですが、一体この著しい影響の判断はだれがするのか、その当該河川管理者にまかせておいてよいかどうかということが一つの問題であります。  それから二十一条、「工事の施行に伴う損失の補償」でございますが、この規定が新たに設けられたことにつきましては、私たいへん賛成なのであります。ただ、その二項で「損失の補償は、河川工事の完了の日から一年を経過した後においては、請求することができない。」という規定がございます。この損失補償の規定は、御承知のように、現行道路法規定をそのまま持ってきておる。道路法七十条でありますが、それをそのまま持ってきたものであるといってよい。ところが道路法の場合には、道路工事が完了した日から一年を経過した後には損失の補償を請求することができないというふうに規定いたしましても、これは差しつかえないのでありますが、河川の場合には道路と違うのでありまして、一つ工事が行なわれますと水は動くのでありますから、その工事に伴ういろいろの状況がその後生じてくる。はなはだしきに至っては、二年、三年後にそういう事態を発生してくることがあるのであります。ですからただ形式的に、道路法規定があるからそれを河川法にもそのまま持ってくるということでは、実態に合わないと思うのであります。ですから、できればこの一年とするという期間は何とか考えていただきたい。取り除くか何か考えていただければいいのではないかと思います。  それから三十八条、三十九条でございます。これは水利調整の場合に、関係河川使用者の意見の申し立てができるということになっておるのでありますが、こちらのほうにはむしろ申し立ての期間を定める必要があるのではないか。そうしませんと、なかなか申し立ててこないで、あとからおれは意見があるとかなんとかいうことになりますと、なかなか水利使用許可というものができない、支障を来たすおそれがあるのではないかという感じでございます。  以上、たいへんお粗末でございましたけれども、私の意見を終わります。(拍手)
  6. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  7. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 これより両案についての質疑を、参考人に対して行ないます。岡本隆一君。
  8. 岡本隆一

    ○岡本委員 最初に田上先生にお尋ねしたいと思います。  先ほど、この法律でもって、自然公物としての本質から、流水私権の対象になっておらない、そういうふうに読み取れる、こういうふうな御意見がございました。先般来、本委員会で、流水私権の対象であるかないかが非常に問題になっております。私どもは、流水私権の対象であるかのように読みとれないこともない、だからそれを法文上明らかにしておけ、こういうことを主張いたしております。その根拠とするところは、旧法におきましては、流水並びに河川敷地私権目的とすることができない、こういうふうに規定されておる。ところが、その後昭和何年でございましたか、多目的ダム法ができまして、多目的ダム法では、ダム使用権は物権とみなすということが規定されておりますので、この多目的ダム法において、ダム使用権というのをどういうふうに解釈しておるかということが一つの問題でございますが、しかし私どもは、ダムの使用権というものは、ダムに一定の工作物を設けてダムに水をためるということ、さらにそのたまった水を有効に利用して経済効果をあげるという、この二つがダム使用権の内容である、こういうふうに解釈しております。そういたしますと、そのダム使用権を物権と認めますと、たをわえられた水そのものも、やはり私権の対象になっておる。それが放流されれば、いわば有効に使ったあとの廃棄物だから、もちろん私権はなくなります。しかし、それが有効に利用されるまでの間は、暫定的にそれが施設を設けたものの私権の対象になっておる、こういうふうにとれないこともない。そうすると、母法の河川法で、流水私権の対象でないという規定が消えないということ、このことは、ダム使用権の物権としての中に含まれておる流水、これの性格というものが従来と変わってくるような心配がある。また、変わったと解釈をすることができるのではないか。だから、流水また私権の対象である。だから洪水その他緊急の措置を講ずる場合に、命令としてその水を予備放流やれということを強制する権原が、河川管理者にどの程度の強さでもってあるのかないのかというふうなこと、そういう点について将来非常に大きな疑義を生じる。だから、やはりこれははっきりと私権の対象にならないということを、流水についても規定しておく必要がある。なるほど新憲法下河川敷地、これがいろいろな事情のために、本人の意思に反して河川の中に取り込まれてしまったというふうな場合、その私権まで否定するのは仰せのとおりでございます。だから私どもも、河川敷地私権の対象にならないというふうなことまで主張しようとは思いません。先生のおっしゃるとおりでけっこうと思うのです。しかしながら、流水については、やはりはっきりと明記しておく必要があるのではないか、こういうふうに思って、先般来から意見を主張いたしております。ところが、政府のほうでは、いや、もうそれで公共物であるから、第二条の規定にしたがって、これは明らかに流水私権は否定されておるものである、こういうふうな説明でございますが、田上先生からいま一度はっきりと、ダム使用権というふうな規定があっても、ダム使用権が物権であるという規定が多目的ダム法の中にあっても、なおかつその私権は否定されるものであるという解釈ができますかどうかということ。それからまた、ダム使用権についても、物権と認められておるダム使用権において、物権と認められておるダム使用権の物権というところの内容は、どういうふうなものをさしておるか、その二点について、田上先生からも御意見を承っておきたいと思います。
  9. 田上穰治

    田上参考人 いまの流水私権目的となることを得ないということは、お説のとおりであります。ただそれを規定の上に明確にするかどうかという点の御質問ではないかと思いますが、私は、積極的にその御意見反対する理由は毛頭ないのでございます。ただ、一面におきまして、理論的に、流水がその自然公物としての性格上、私的な所有権の客体になり得ないということと、それから、これに関して、現行法でも、法案でもございますが、占用許可により水利権の生ずることが多いのでございます。そういう権利としての私法的な権利、つまり、民法の根本には法理がございますが、そのような意味で、既得権としての十分な保障はないのであって、つまり、逆に申しますと、公益のため、つまり公共用物として、一般公衆の自由使用というものから見まして厳重な、かなりきびしい制限が加えられるという点におきまして、従来から公法的な権利であるというふうに考えている者でございます。  その点と、それから、もしこれを規定の上に出したらどうかと申しますと、一方では、流水の定義になってまいりますが、法律では流れと言い、あるいは水流と言い、水面と言い、いろいろなことばを使っているのでございます。ただその場合に、多少疑問の余地が出てくると思いますのは、御承知のように、河川法で考える流水のほかにも、私権目的となり得ない水がございます。第一は、申すまでもないのでありますが、わかりやすく言えば、公有水面埋立法などを見ますと、海、河、湖、沼その他の公共の用に供する水流または水面、おもに水面でございますが、それについて公有水面埋立法規定がございます。このように考えますと、公の水、私権目的となり得ない水というのはかなり範囲が広いわけでございまして、その中の河川法で考えている流水とは、かなり重要な部分でございますが、それだけではないということが一つと、その意味で、むろん制限的に解釈されるとははっきり申し上げるわけではございません。これは注意的な規定になると思うのでございますけれども、解釈のしかたによりますと、そのほかに公の水があるかないかということに、多少問題の余地があると思うのでございます。  もう一つの、逆に申しますと、流水の中の、先ほど金澤参考人も言われましたが、伏流水のような、あるいは広く申せば地下水ということになってまいりますと、まだかなり明確でない点がございます。つまり、地下水は、一面において私的なもの、私水であるという見方、むろんこれは現在もきまっているわけではございませんが、地方的な慣習により、特に温泉などになりますと、公水、公の水というふうに通常は解釈されますけれども、地下水のすべてが当然公法的なものであるかどうか、これはかなり疑問がございます。地下水がすべて流水に入るかどうかという点、これもそもそも議論がございましょうけれども、地下水というものを考えた場合に、すべて公のものであるということにつきましては、若干問題の余地があると思うのでございます。そういう意味で、しいて入れることが不適当であるとは思いませんけれども、一方ではかなり明瞭な法理であり、他方でもし入れますと、流水の中に、つまり私水と思われる地下水のあるもの、一定範囲における地下水はどうなるのか、あるいは河川法で考える流水以外の、海あるいはその他の水面がどうなるのかという点もありますので、私はこれは結局立法必要性程度でございますが、どちらかといえば、入れなくても十分に明瞭であるというふうに考えております。先ほど御指摘の多目的ダム法のほうは、私はあまり勉強しておりませんが、排他性の権利を一応法律で認められているといたしましても、それは流水につきましては、民法の単純な絶対に保障された権利というのではなくて、民法においても、もちろん物権の制限はございますけれども、もっと幅の広い、弾力性のある、公益の見地からする制限というものが加わることは、かなりはっきりしていると思うのであります。しかし、それは多少あいまいだというのでございましたら、入れることが適当だということになりましょうが、入っていなくても、結論においては明瞭ではないかと考えております。先ほどちょっと申し上げましたが、中心は、御指摘のように敷地について、従来の現行の第三条規定が明らかに不適当である。その点を特に正す、直すということが中心であって、しかしそれを特に敷地について私権の成立を認めるというふうに書く必要はないと思うのでございますが、その裏のほうの流水について、従来どおりと申しますか、そういうことは将来においても変わりがないということを明確にする必要がそれほどないのではないか、これが私の考えでございます。
  10. 岡本隆一

    ○岡本委員 田上先生のような権威のある先生方から、流水私権の対象でないということをはっきりと、そういうように解釈を明らかにしていただけたということは非常にけっこうだと思うのです。ただし、いま先生が、たとえば地下水が私水か公水かという問題がある——これも私は同じように非常に重要な問題だから、この機会に、もう一度御意見を承ってはっきりしていきたい。これは地盤沈下の問題と非常に関係がありますから、本委員会でもしばしば問題になりました。この地盤沈下の原因が、どんどん自分の地面でポンプを使って水をくみ上げるから、どんどん地下水が低下する。水位が低下するだけでなしに、自分の土地が沈むだけでなしに、その辺一体の、その地域住民全部の地盤を実際どんどん沈めていく。そのことが結局非常に大きな災害の原因になって、大阪では大騒ぎをしておる。また東京でも江東地区は大騒ぎをいたしておる。だからそういう意味においては、私どもはやはり、地下水はこれは私水ではない、公水である、これはやはり共通にすべての人の地下を同じように流れているんですから、地下水はこれは公水であるという考え方に立たなければならないと思うのです。また地下水が私水であると仮定するなら、たとえばガソリンスタンドを掘った。そのガソリンが漏れたために周囲の井戸がガソリンくさくなって使えなくなったというような事件も出ておりますし、また九州の福岡では、かつて戦争当時航空用のガソリンの中にまぜておった四塩化炭素ですか、非常に有毒なものが、ドラムかんが腐食してそれが地下に流れ込んだために、その周囲の水全体が有毒になって、もう飲用水としては使用することができなくなったというふうな事件が起こって、大問題になったことがございます。そういうふうな事例から見ますときに、地下水というものは、これはひとり個人のものではない。これはすべてその地域住民全体の利益につながるものである。だからそういう意味においては、地下水も公水と理解しなければならない、こういうふうに私どもは理解いたしております。だから、この点も、やはりある範囲においては私水である、ある範囲を越えれば公水であるというおことばのようでございますが、これは地域住民に迷惑をかけない範囲においては自由に使ってもいいが、しかしながら、それ以上の限界を越える場合には、これは自由に使ってはいけない。だから、そのことは、私水ではないというように私はなってくると思います。公水であっても、地域住民に迷惑をかけないから使っていいんであって、だからその範囲を越えたら、これは公的なものだから、自由に処分してはいけない、こういうふうに理解しなければならないと思うのでございますが、その点についての御意見を承っておきたいと思います。  それともう一つ、いまのダムの使用権の問題でありますが、私はダムの水を利用して、そうして経済効果を上げるということは、一定の施設を設けたことに対する権利としてその使用権が与えられて、使用の自由が許されておるのではなしに、資格としてその自由が許されておる。使用が許されておる。だからやはりこの場合は明らかに私権は否定されるべきだ。しかし新たに法文の中に明らかにしなくても、ダムの中にたくわえられれた水は、これは絶対に私権の対象にはならないんだ。だから災害その他緊急の必要のある場合には、やはり公的な公共の安全のためには喜んで法制、命令、その他指示に従がわなければならないんだというふうな理解の上に立って、ダム使用権というものを考えていいのかどうかということを、もう一度明確にしておいていただきたいと思います。
  11. 田上穰治

    田上参考人 同じようなことを繰り返すことになりますけれども、御意見に対しまして、私、正面から反対を申し上げる理由は毛頭ないと思うのでございます。ただ、もう一度申し上げますると、公法的なもの、公水か、あるいは私法的な私権の客体としての水であるかどうか、この区別になりますと、大体いまの流水河川法でいう流水の場合は明確であろうと思いますが、これは絶対に水と油のような相いれないものではなくて、結局公、私というのは、いまの民法の所有権の客体になるかどうかというような形で出してまいりますと、河川法河川の場合の流水は一応はっきりと答えられるのでございますが、これが所有権まで至らない使用権の程度でありますと、かなり程度の問題でございまして、要するに物あるいは物質、水、そういうものを支配するという点においては、公といい、私といい、権利においては共通性がございます。ただ公という場合に、だからこの場合は公益性公益による制限が非常にきびしくなる。つまりもともとそういう公水の使用権は、それが許可される、設定されるときから、すでに権利者個人の利益よりもむしろ公共の利益のために適合するから許可されるわけでございますが、許可された後も常に公共の利益ということによって制限を受けるわけでございまして、より重大な、著しく重大な公益のために新しい事態が発生いたしますと、従来のより少ない公益性による使用権はそれに負けてしまって、既得権として対抗できない、こういうことでございまして、私権としても、民法の権利においても、今日公共の福祉による制限があることはほとんど通説であり、また民法の明文の規定も入っております。でありますから、それが互いに概念として排斥するというふうにきびしくは私は考えていないのでございますが、ただこの場合に、御指摘の地下水につきましては、確かに地盤沈下の問題は東京、大阪その他新潟などもございまして、非常に大問題になっております。その意味においては、その限度では、地下水が公水であるということは私も当然だと考えております。ただ先ほど申し上げましたのは、やはりこれにも限界があるわけでございまして、一切の地下水がどうかというふうな議論になりますと、これはかなり現実から離れますが、ところによっては、公水として、特に公法的な、公益的な制限を強く打ち出す必要のないような場合も考えられるわけでございまして、そういう問題になりますと、これは立法政策として、その法文で明確にし、議論の余地のないようにして、しかもこれはきわめてはっきりとした解決方法でございますが、もう一つの方法は解釈余地を残して——多少あいまいにおとりになるかわかりませんが、解釈余地を残して、もし争いがあれば、判例によって明らかにしていくという道がございます。そこで立法政策としては、まず九〇%までもう私水なんという余地はないし、あとはそういう個人的な、特に地主の利益を強く主張する、尊重するような余地はほとんどないということでありますと、法文の上で一刀両断に、公水、あるいは私権目的にならないということを明確にする。ところがそうでない多少そこに私有財産といいますか、特に土地所有者の利益というものをなおある程度尊重する余地があるのであれば、これを法文の上にはっきりとした一〇〇%の結論を出さないで、これを特に裁判所の解釈に譲るということも一つの方法ではないか。私は、そういう意味で、立法政策として、地下水のようなものは特に限定いたしまして、市街地あるいは工業の用地でありますとか、そういうような問題になっているようなところに限定すれば、公水と見る立場でございますけれども、一般の地下水一般ということになると、なお解釈上幾分の余地を残すことが穏当であって、その結論は、だから法文の上よりも、むしろ判例のほうで明らかにするのが望ましい、こういうつもりでいるのでございます。しかしそういう余地はほとんどない、そういう考慮の必要はないのだから、法文で明示せよということでございましたら、格別それ以上私反対の理由を持っているわけではごいざません。
  12. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 吉田賢一君。
  13. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 田上先生にまず少しお伺いしたいのですが、新河川法によりますと、全文を通じまして総計五十二カ条にわたって、政令の字句があるのでごいざます。とりわけ重要なのは、第四条であろうかと思うのでございます。そこで河川の一級に指定されるか二級に指定されるかということは、これは国民のあらゆる基本的人権等にも影響する重要な事項の決定にかかわります。そこで、この数十カ条にわたる政令は一応別といたしましても、この第四条の政令に至りましては、重大な国民の権利義務に影響する字句が政令に委任されておる、そこに問題があるのではないかと思います。つきまして、憲法第七十三条第六号によりますると、法律が委任命令を出す範囲がかなり限定されておるものと思われます。したがいまして、法律執行するとかあるいはその手続等につきましてはこれは別といたしましても、このような基本的な規定政令に委任するということは、あるいは違憲の疑いを生ずるおそれがあろうかと思うのでございます。この点について、憲法学者としての先生の御意見をひとつ伺ってみたいと思います。
  14. 田上穰治

    田上参考人 政令の委任なりあるいは建設省令に対する委任が非常に多いことは、先ほど金澤先言生も御指摘になっておりますし、私も気づいているのでございすが、ただ特に御指摘の四条につきましては、私は具体的にどの水系に属する河川一級河川と見られるかというところ、おそらくそういう御趣旨ではなくて、もう少し政令できめる範囲と申しまするか、あるいは指定する基準をもう少しというか、四条の規定の上に法律で直接示すべきではないかという御意見ではないかと思うのでございます。委任の程度があまりに包括的であるからという御意見のようでございまするから、反対に申しますると、この委任の範囲をもっとしぼっておけば、この政令指定しても差しつかえないというふうに御趣旨を伺うのでございます。この政令は、御承知のように、建設言省できめるのと違って、閣議に出すのでございますから、一つのほかの政府の部内で、政令できめることになると、建設省だけで自由にかってにきめるということができないわけでございまして、そういう含みで考えますると、問題は、その政令を出す場合の基準内容のもの、指定をする場合の基準を、法律の上にある程度明確にすべきではないかという御趣旨ではないかと私思うのでございます。その点で、私自身は、金澤先生もおっしゃったように、一級河川をあまり広い範囲指定することには賛成しかねるのでございます。これは憲法論というより、むしろ行政の実際から申しまして、つまり地域的な総合性ということから考えますると、現在の行政機構では、府県あるいは府県当局管理権を認めることが適当だというふうに私は考えております。これは府県行政機構というものが、地域においては、広域行政には必ずしも適当でございませんけれども、同一府県区域内でありますると、かなり総合性が維持されている。ところが国のほうでありますと、これも理屈は内閣によって一本に統制されているはずでございますが、実情は必ずしもそう簡単にいかないので、むしろ各省間の調整がかなり困難であるということを考えますると、府県知事のほうに管理を認める二級河川のほうを広く認めるのが適当であり、そういたしますると、一級河川指定にあたっては、先ほど金澤先生も言われましたが、二つ以上の都道府県の利害に関係のあるものというような基準を、これは法律に示すほうが適当であるというように思うのでございます。しかしこの考えに対しまして、私はちょっとちゅうちょしている点がございますが、その趣旨は私も賛成でございますけれども、現在の府県区域あるいは府県の規模というものが絶対なものではない。近い将来には、もう少し府県が統合される余地があり、可能性がある、またそれが私は適当だと考えております。また直接府県が統合されなくても一府県区域を越える広域的な行政の処理につきまして、現在の府県なりあるいは府県知事には全く見込みがないというか、適当でないと、こう一がいにきめられないこともございまして、広域行政についてもできるだけ工夫をして、府県側でもって処理できるようにすべきではないかというふうに思うのでございますから、一がいに現在の府県というものを基準にいたしまして、その区域を越えるものはもう機械的にといいますか、原則として一級河川、こうきめてしまうことにちゅうちょするのでございます。そういう意味におきまして、どういうふうに書けばよろしゅうございますか、この法律の中で直接に、この二府県以上の都道府県の利害に関係のあるもの、こう書くのは、必ずしも私賛成できないのでございます。でありまするから、はなはだこの点は不明確でございますが、河川審議会とか、関係府県知事意見を聞く、こういう点を特に重視し、また実際にこの法律の運用にあたって、私の希望は、建設省が、一府県のみの利害で処理できるようなものは、一級河川として指定することは適当でないという希望でございますが、これを法律規定に明示いたしますと、あるいは私の希望する以上にもっと広い範囲一級河川というものが考えられるおそれがないとはいえない。私は現在の一府県区域を越えるものにつきましても、必ずしも一級河川が適当であるというふうには考えないのでございまして、そういう意味で、現在の法案程度でよろしい、こう考えているのでございます。  それからなお、御質問範囲を越えるかもわかりませんが、一般政令とか省令に委任する範囲が多いということは確かでございますが、省令の中で、たとえば先ほどの河川占用許可その他につきまして、省令に委任しておるものがあるということは確かでございまして、この点は、現行河川法から見て、それほど進歩していないのじゃないかというような御意見も先ほど伺いました。ただ私は、人権を侵害する行政の場合と違って、河川占用許可は、これは当然河川につきまして何人もこれを独占的に使う権利がある、あるいは人類普遍の原理であるというふうな意味では考えていないわけでございまして、公共用物は、御承知のように、自由な、公衆が共同で使うという範囲におきましては、当然保障されなければなりませんけれども、特定の会社その他事業所などが独占的に公の流水使用する、これは特別な権利であり例外の場合であり、むしろ厳重に規制されなければならない権利でございますから、その権利を与える、つまり占用許可は、もともと政府当局にかなり裁量が広く認められるものでございまして、たとえば集会などの許可許可をきめるというような場合とは違いますから、必ずしもその要件が厳格に法律の上できめられてなくても、憲法第三章の関係で特に憲法違反であるというふうには考えないのでございます。要はこれは立法政策の問題でございまして、私も基準を明確にすることができるならば、それを法律に入れることが適当だと思うのでございますが、しかし、たとえば技術的な基準というようなものになりますと、性質上法律に入れないで、むしろ専門の立場の意見を十分尊重し、そして法律の上ではある程度の弾力性を認めることが立法政策として望ましい、このように考えております。だから一がいに、この要件を法律で明確にしなければ憲法の趣旨に合わないというふうには——権利を設定する行為の場合でありますから、そのように考えております。
  15. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 両先生、何かよんどころのない御用があるようでありますから、できるだけ私は要点だけを申し上げまして、お答えを願いたいと思います。  法案を読みましても、河川とは何ぞやということになりますと、河川とは一級と二級を指定したものが河川である、自然に河川がないのかと言われると、昔から河川はある、こういうようなので、何かものの認識がぐるぐる回りするような感じがするのであります、そこで、私がいま御指摘申しましたのは、この法律のいう河川を決定するということになりましたならば、つまり政令によって指定するということになりましたならば、国民は幾多の権利、義務を課せられます。無断で使用することができなければ、入って工作物をつくることもできませんし、刑罰に処せられる、そういうようなこともありますし、またその他経済的にも、生活にも、産業にも、きわめて重大な直接の権利、義務に影響をもたらします。  そこで、このような河川という自然に存在するものをつかまえて法律上の河川とするということのむずかしさは、だんだん政府当局の御説明でわかるのです。しかしながらそれはそれとして、法律の制定の秩序は、やはり国会が最高の機関として、立法の責任を持っておるのでありますから、この国民の権利、義務に重大な関係のある事項を法律としてきめますには、やはり国会でできるだけ明らかにする必要がなければならぬと思うのです。いまのお説によりますと、指定すべき条件をもっと明確にすることがいいのではないかというような御意見もあったらしいのですが、いずれにいたしましても、河川そのものを決定するのは政府である。政府がどういう基準によろうとも、きめるように国会が委任するということは、これはやはり後日問題になるのではないか。  まことに古い話ですけれども、明治二十九年の現行河川法が制定される当時の貴族院の速記録なるものがございまするが、有名な箕作麟祥先生の質問によりましても、法律というものは、事物を規定してこうである、そうでないということをきめて、その上に、この法律はある事項をあえて命令に譲る、こういうことはなし得ましても、やたらに命令が条文に出てくるということはふしぎなことである。ふしぎなことであるという表現さえ使っております。そして箕作麟祥博士も、四十一カ所命令があるということを主張しております。ずいぶん奇態な法律であるという表現までしておるのです。二十九年にさえこういう批判が貴族院で行なわれている。  それからまた、例の災害対策の基本法が制定されましたときに、これは地方行政委員会の質疑応答でありましたけれども、松井誠委員も、やはり同法百九条が、内閣が臨時国会など召集するようないとまがないときは、内閣が物資の配給あるいは価格の決定、あるいは金銭債務の支払いの延期、といったような臨機の措置がなし得るということが違憲的な疑いありとして、論議されていることがありました。  そこで、七十年来の河川法が空前の新しい大法律になるのでありますから、このような議論の余地がないようにすることが、立法技術としては当然であると思う。先生のお話では、行政的な面の便宜からどうも御意見があるようなふうに私には受け取られるのでありますが、行政上の難易の問題、もしくは特定法律規定することの難易の問題もさることながら、やはり法律制定の憲法上の筋だけは通すということは、これは国会といたしましては当然の責任ではないか、このように考えるのです。でありますので、やはりここは国土保全上あるいは国民経済上特に重要な水系ということを一つの基準としてあげまして、以下行政府が政令でつくれ、しかし知事意見も聞いたり、知事はまた議会の議決を経るという手続はありますけれども、しかし知事といい、議会といい、審議会といい、そういったものは国会ではありませんから、唯一独立の立法府としての国会の意思でありませんので、やはりそこで問題は解決されません。こういうことになりますので、やはり非常にこの点は大事だと思いますので、試みに、たとえば宮澤俊義氏のコメンタールの、「日本国憲法」の五百七十三ページによりましても、法律の委任を許される範囲を限定しますこと、つまり「具体的・個別的な委任は許されるが、抽象的・一般的な委任は許されない、」これが通常である。これはいまの最高裁の田中二郎判事も、それからまた佐藤功教授も同説であります。以上のようなことであります。いかがでしょう。その点は、立法技術として非常にむずかしいことはわかるのです。自然の河川法律に限定することはむずかしいことはわかりますけれども、むずかしくはあるけれども、この点最善を尽くさねばならぬというので、やはり政令に委任するということは、国会から見たら、立法権を放棄するということにもいくのじゃないか、こうも思うのですが、どんなものでございましょう。
  16. 田上穰治

    田上参考人 ただいま引用されました宮澤先生その他の書物にいわれている、委任が包括的なものであってはならない、できるだけ範囲法律で明確にしなければならぬということは、私もそのとおりだと考えております。ところで、いまお話がございました河川の概念につきましては、私はこの河川法で包括的に委任しているというふうには考えないのでございます。これは河川の定義の問題のように思うのでございます。そこで伺っておりますと、この法案の、たとえば第三条とか、そういうところで、「この法律において「河川」とは、」というところで、もう少し河川の概念を明確にせよという御趣旨ではないかと伺ったのでございます。ところが、河川の概念は、むろん法律でもっと明確にできればそれはけっこうでございますが、こういうのは半ば経験的な概念でございまして、もちろん技術的な面もございますが、大体は一応経験の法則によってそのワクがつかめるのではないか。でありますから、政令で明確にするというよりは、むしろ政令なり法律、何かそういった条文の上で明確にしないでも、大体河川とは何かということがわかるのじゃないか。ただ河川法で論じますときには、そういう経験的な河川という概念を前提にいたしまして、その中で特に国が経費負担する場合はどの部分であるか、あるいは二級河川として管理する場合はどの部分であるか。さらに御承知のように、法案の百条にございますが、一級、二級いずれでもなくて、その他のもう少し規模の小さい河川の場合に、市町村長が指定する準用河川とも言うべきものがなお考えられており、しかしまたわれわれがこの法案を読んだ感じでは、市町村長がその場合に指定しないなお残りの河川も、われわれの常識で出てくるように思います。その場合には、これが河川法で言う河川でないことは結果的に明瞭でございますが、しかしそもそもそれは河川でないのかというと、そう簡単には言えないので、ただしかしその場合に、河川法の直接適用なりあるいは準用でなくて、もっと簡単な方法で処理できるというふうに見るわけでございます。たとえば従来の普通河川のような、つまり国が法律で直接に規律しない場合には、地方公共団体の条例によって処理することも可能であり、何らかの法律規制が必要ならば、河川法以外のところで処理できる、このように思うのでございます。でありますから、河川法で言う河川というのを特に限定する必要がある場合には、法律で明確にする、必ずしもこれを政令に譲らないで、法律で明確にする、ということが一つの御意見であり、私もそう思うのでございますが、そもそも河川とは何かということにさかのぼりますと、これは必ずしも河川法にきめなければならない、河川法のワクの中で考えるというのじゃなくて、もっと広い概念のように思うのでございます。  それからもう一つは、現行河川法が、これまで長く、明治時代からつくられておりますが、こういった経過を見ましても、おのずからそこに、ある意味でわれわれの常識として、河川とは何かという概念がつくられているのじゃないか、こういうふうに思いますので、私はこれは委任の問題とは少し別に考えているのでございますが、法律で特に河川の定義をどこまで明確にする必要があるかと申しますと、現在のこの程度、ということは、むしろ河川の定義よりは、河川の種類のほうにいきなり法律は入って規定しておりますが、これでも差しつかえあるまいという気がするのであります。それはほかに例は法律で幾らもございますけれども、そういう直接法律で定義の規定を設けない場合には、経験の法則によって解釈するというのが、われわれの考えておるところでございまして、あとは憲法の議論というより、むしろ立法政策として、どこまで経験概念を明確に法定するのが適当であるかという、適当か不適当かというふうな問題として考えられるわけでございますが、その場合に、河川につきましては、特に現行河川の種別、種類を明確にするほかに、河川そのものの一般的な定義を置く、積極的に必要はあるまい、こういうことでございまして、ただもっと適当な表現があるということであればむろんけっこうでありますが、私の考えておりますのでは、大体河川の概念は、経験的に理解されるというふうに思っております。
  17. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 田上参考人は、所用のために退席いたされます。  この際、田上参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただき、貴重な御意見をお述べ下さいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  金澤参考人には、質疑の通告がありますので、いましばらく御在席をお願いいたします。  質疑を続行いたします。兒玉末男君。
  18. 兒玉末男

    ○兒玉委員 金澤先生に、二、三点でありますが、お伺いしたいのであります。  先ほどの御説明でもございましたけれども、河川工事による損害補償の請求期限が、一年が妥当かどうかという点についても質疑があったのですが、私も、この点については、実は昨年の委員会でも当時の局長に伺ったのですが、一年でもけっこうだ、こういうふうなお答えがあったのですけれども、私も別に統計を持っておるわけではありませんが、現在の河川に関する工事が非常に多い状況から判断いたしまして、特に最近集中豪雨が目立っておるのですが、こういう特殊な事情から判断いたしましても、やはり最低一年半から二年程度の補償請求期限というものが必要ではないかと考えるわけですが、これらの点について、先生の御意見なりお考えをお聞かせ願えれば非常に幸いだと思います。
  19. 金澤良雄

    金澤参考人 先ほど、法案の二十一条第二項につきまして、この規定道路法の七十条でございましたかを、そのまま持ってきたというふうに申しましたのですが、実際われわれ見ておりますと、確かにいまおっしゃいましたように、工事が終わってからしばらくたってからいろいろな問題が出てくるということがあるわけです。ただ、この二十一条の解釈をどういうふうに解釈するのか、その点、私も多少疑問でございますが、この二十一条の表題には、「工事の施行に伴う」と、こう書いてあるのです。これは一体——直接その工事そのものの場合に、たとえばここに農業用水の取り入れ口がある、それがダムサイトになるとかりに仮定して、その場合にはそれをほかへ持っていかなければならないというような意味、そういうことだけに限っているのか、そうでなくて、つまり工事が施行された、そこに工作物なりなんなりができるとして、それによって生ずる損害も二十一条で含むというふうに考えますと、この「伴う」という意味工事の施行によるというふうに考えますと、確かにその後にいろいろと問題が出てくる。ダムの建設に伴って、土砂の堆積状態が変わってくるというようなことが往々にしてあるわけです。そうすると、いままでの取り入れ口がふさがれてしまうとか、いろいろな、つまり河川は生きておりますから、そういう変化が出てくる。道路の場合には、そういうことは出てこないと考えていいと思います。したがって、そもそもその損失が工事完了後に発生してくるという場合も、河川の場合に大いにあるわけです。だから、工事完了後一年というふうに限りますと、それだけでは不十分であるという感じがいたします。
  20. 岡本隆一

    ○岡本委員 関連して。河川工事を行ないますと、それに伴って流域にいろいろの変化が出てまいります。その変化が出てまいりますのは、大体洪水の場合が多うございます。洪水があるまでは、その土砂の堆積であるとかあるいはその流通の疎通を阻害したための迷惑だとか、そういうふうなものがはっきりしないように思います。そうすると、次の洪水まで——一年以内に次の洪水が来ることもございますし、数年たたなければ来ないというふうなこともございます。そういたしますと、この期間が一年であるということはあまりに少のうございますが、では、それが何年が適当であるかということになると、私どもも非常に判断に苦しむのでございますが、しかしながら、まず大洪水でなしに、通常ある程度の洪水あるいは通常ある程度の増水というふうなものを考えてみますときには、二、三年それでためしてみる、経過を見てみるというふうなことが必要ではないかと私どもは考えますので、少なくとも三年程度にするのが適当ではないかというふうな考え方も持てると思うのでございますが、それについての先生の御見解。  それからもう一つ河川局長に御一緒に御答弁願いたいのですが、昨年来ていただきましたときに、この点強く金澤先生は指摘しておられるのです。ところが、それにもかかわらず、今度出してこられましたこの法案において、どうしてそういう点を是正して提案されなかったか、その必要がないとお認めになるのなら、その理由をお答え願いたいと思います。
  21. 金澤良雄

    金澤参考人 洪水がある場合に変化がある。それを三年ぐらいと見ればいいじゃないかというお話ですが、私もそれはそれでけっこうかと思います。ただ、こういう場合がございます。ダムができまして、たとえば十年ぐらいたって、そのテールウオーターのほうにだんだん土砂がたまってきて、そこの水かさが高くなってきて——これは実際に例があったことがありますが、補償してくれというようなことが地元から出てきた。こういう場合も二十一条が含むのかどうか、解釈論の問題もあろうかと思いますが、もしそういう場合も含むということになりますと、三年でもなんだか割り切れないという気がします。ただし、この点は、それではこの法律二十一条がなければ——もし二十一条が現在の改正法案どおり、一年を経過した後においては請求できないと書いてあったとして、そして十年後に、いま申しましたような土砂の堆積のために、だんだんとテールウォーター部分が洪水を起こすようになって、被害を生ずるようになった。そして、家の立ちのきなんかやらなければならない事例が実際にあったわけです。そういう場合に、新築、改築に要する費用を補償してくれといってきた場合に、それは、法律上そんなことを補償する規定はないんだから、補償しなくていいんだということが言えるか、あるいは憲法二十九条に基づいて、直接損失補償が要求できるかという問題があろうかと思うのです。
  22. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 これは、私も昨年のお話で承っておりますが、昨年も河川局長から、お話のとおりに、経験的にいって、ここに二十一条に書いてございますとおりに、「河川工事の施行により、当該河川に面する土地について、通路、みぞ、かき、さくその他の施設若しくは工作物を新築し、増築し、修繕し、」云々と、非常に明確な、いわゆる工事によって、当然すぐわかる、こういうようなことでございまして、また経験的にいっても、そういうような事例も、いままで過去何十年かやっているわけでございますが、そういうような経験もないということで、これで十分である、こういうふうに考えて、この条文はこのままになっておる、こういうことでございます。
  23. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは、その期間について、一年でいいということを主張されますか、あるいは、私どもは、解釈の問題よりも、むしろあなたにお尋ねしておったのは、昨年、金澤先生から御指摘があったのに——もう少し期間を延ばして提案されるべきではなかったんではないかと思うのですが、その点についての御見解を承りたい。
  24. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 期間の点については、いまお話しのとおり、十分私も検討いたしましたが、この程度で差しつかえないと考えておるわけでございますが、先ほど先生からお話しのとおりに、洪水というものはその年に来ない、あるいは三年に来る、五年に来る、百年に一ぺん来る、こういう問題がございます。これは私どもいろいろな工事を施行する場合に、この川にはこういう水が来る、あるいはこの川で百年なら百年に一ぺん洪水が来るということを考えまして、工事をするわけでございますので、そういうものは当然組まれておる、こういうわけです。
  25. 岡本隆一

    ○岡本委員 私の申しておりますのは、洪水よりも、通常の出水と申しますか、そういうようないろいろな程度——豪雨あるいは大雨、いろいろななにがあると思うのですね。大洪水の場合には、それは至るところに事故が起こります。そういう河川工事であるとか、そういうふうなもののいかんにかかわらず、非常な事故が起こってまいります。しかしながら、少なくとも少し大水が出たという程度で、従来よりもはなはだしく機能が阻害されて、あるいは事故が起こったというようなことであっては、やはり補償させる必要があるんですね。だから、そういう意味においては、一年では少し短か過ぎるのではないかと思うのですが、これはまたあとで、まだほかの問題もございますから、話し合いをさしていただこうと思います。  いまのに関連いたしまして、金澤先生にお尋ねいたしたいのでございますが、ダムをつくった場合の背水、背砂の問題でございますね、ダムをつくった場合に、上流における背砂、背水ですね。あるいはバック・ウオーターというようなものに伴うところの洪水でございますが、これは四十四条に、従前の機能を維持するようにつとめなければならないという規定がございます。それについての政令ではダムをつくったために、その後土砂が堆積したり、あるいはバック・ウオーターのために洪水が生じたような場合には、提防、護岸の新築または改築であるとか、「低地の盤上げその他の措置を行なわせるほか、必要に応じて予備放流により貯水池水位を低下させ、背水末端附近の土砂の堆積を防止させるものとする。」こういうような政令が設けられてございます。しかしそういうような政令がありましても、私は非常に不十分であるように考えております。たとえば、一番適例は御承知の泰阜ダムであろうと思います。泰阜ダムをつくりましたときに、ずいぶん古いことでございますが、今日のような天竜におけるところの上流の河床の上昇というものは夢にも予想しておらなかったのです。それが三十数年後の今日になって、飯田地域の大洪水の原因になってまいりました。ああいうふうなことが起こりましたときに、やはりこの四十四条というものは発動するのかどうかということでございますが、先生はいかが御解釈でございましょうか。
  26. 金澤良雄

    金澤参考人 この法文から見ますと、その辺少し不明瞭な点もあろうかと思います。というのは、この四十四条はダムを設置する場合、その時点においてこういう措置が必要とされるのか、設置された後でも、必要があれば、そういう措置をとらせることができるのかということなんですが、これでは「許可を受けて設置するダムで、」云々というふうに書かれているところから見ますと、どうも設置する時点において、事前にできるだけ河川の従前の機能を維持するとか、たとえば調整池を下流につくるとか、そういうようなことじゃないかという気もします。その辺、解釈上の問題は立案当局者の御意見を伺っていただければけっこうかと思いますが、そういうように感じております。
  27. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは河川局長から、いまの泰阜ダムのような状態が三十年も四十年も後になって起こった場合に、この四十四条におけるところの規定並びに四十四条の政令に基づくところの指示はどうなるのでしょうか、その辺についての政府の御見解をお聞かせ願いたい。
  28. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 そういう場合には、この四十四条は働かないというふうに考えております。
  29. 岡本隆一

    ○岡本委員 お聞きのとおりでございます。  そこで私は今度の何に対しまして、川はいろいろな反応を起こしてまいりまして、思わぬところへ思わぬ時期に洪水が出てまいります。しかもそれが常襲化されてくるという現象が出てくるのです。その一番の適例は泰阜ダムでございます。泰阜ダムをつくったために、今日天竜峡の上流というものは災害常襲地帯になりました。あるいはまたそうでなしに、伊賀の上野であるとか京都の嵐山の嵐峡でございますが、非常に狭窄部でございます。その狭窄部の上流を、河川改修をやって、水の疎通をよくしますと、どんどん早く流れて、水が狭窄部まであふれてきます。ところが下流の措置が十分できていないから、狭窄部を開さくすることができない。ですから、そこはいわば人造のダムになりまして、自然の調整池にされてしまうわけです。そうすると鉄道はつかり、国道もつかり、多数の民家もつかるというふうな現象が出てまいりまして、非常な災害常襲地になって、多い年には年に二回、もうほとんど毎年のように水害が出てまいります。政府の水行政のために、そういうふうな水害常襲地がつくられてくるわけです。そういうふうな場合には、政府は、そういう水害常襲地帯に対しては、何をおいても優先的に、その水害を防除するための措置をとらなければならぬ義務があるのは当然であります。ところがそれに対する措置が、非常に大きな事業になってまいりますので、なかなか政府のほうでは予算的な措置がとりにくいというようなことのために、今日、そういう地域は、十年以上にわたって、水害常襲地帯として放置されておるわけであります。だから私どもは、この河川法改正を機会に、このような政府みずからがつくった災害常襲地帯に対する態度のなまぬるさと申しますか、放漫さと申しますか、それはきびしく批判しなければならぬ。したがって今度の法律改正を機会に、災害常襲地域というものを指定して、少なくとも二次的に、そのようにつくられた災害常襲地域については、当然補償事業という考え方の上に立って、優先措置をやるべきであるというような修正案を私どもは用意して、いま話し合っておるのです。ところが与党のほうはなかなかそれに応じそうにないのでございます。これは、金澤先生から別に助け舟をいただくということよりも、正しい見解をひとつこの機会にお述べ願いたいと思うのでございますが、当然今度そういうふうな画期的な河川法改正をやるなら、政府は、利水については一元的に政府にまかせろ、こう言っておきながら、いろいろな利水施設をつくってそのために起こってきたところの災害については、予算が足りないからというような理由でもってほおかぶりすることは、政治の道義というようなものからも許されないと思います。だから私どもは、そういうような災害常襲地帯に対する優先措置というものを要求しておりますが、ひとつ先生の御意見を承っておきたいと思います。
  30. 金澤良雄

    金澤参考人 なかなかむずかしい問題でございまして、恐れ入るのですけれども、私、一般的にこういうふうな考えを持っております。ということは、損失補償の対象となるものが、現在の法律規定では、非常にまちまちでアンバランスである。できるだけこれを適正な方向にむしろ拡大していく必要があるのではないかということであります。河川法でも、現行法にないのが、二十一条で出てきた。しかし先ほど伺いますと、これは河川に面する土地についての問題だ、こういうわけで、一般にある公共事業、国の事業とか行なわれます場合には、前はこんなものはなかったわけです。こういう規定も何もなかったわけです。ところがまず面する土地についてはやるというところまで出てくるわけです。しかし問題は、「面する土地」というのは何を言っておるのか、ちょっとその接点のところだけを言うのか、わかりませんが、しかし被害を受けるという側からいえば、面しない、もう少し奥のほうの土地も同じような被害を受けるわけであります。したがって、災害常襲地帯に対する特別規定を置くということは、そういう被害を受ける者に対する公平な立場から、少なくともその災害常襲地帯については、そういう特別の規定で、損失補償あるいは何かの方法を講じていくということは、私は賛成であります。しかし問題は、何も災害常襲地帯に限らないのでございまして、一般にそういう公共的な事業によって損失をこうむる場合がある場合には、これを補償していかなければならぬということは、憲法のたてまえから見て必要なことだろうと思うのです。したがって、何も面する土地についてだけの問題ではないということが、公平の理論から言えるのじゃないかという感じでございます。
  31. 兒玉末男

    ○兒玉委員 金澤先生に二点お聞きしたいのですが、一つは、この法律の第二十三条に、流水占用許可という項があるわけです。これは単に「河川流水占用しようとする者は、」ということで表現されておりますけれども、現在水の利用ということは、多面性と、もう一つは非常に高度の利用ということが指摘できると思うのです。そういう点から考えますならば、水の占用ということは、たとえばその用途別なりもう少しこまかい規定が必要ではなかろうか、たとえば、まず人間の飲む飲料水というものは最優先的に許可さるべきものである、その次は軸物とかあるいは農業用水とか工業用水とか、そういう優先順位といいますか、内容についてある程度こまかい規定をする必要が、この法律の趣旨を生かす上から、必要じゃなかろうかと私は考えるわけですが、この点について、先生の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  32. 金澤良雄

    金澤参考人 その点、私も同感でありまして、先ほどその点は触れなかったのでありますけれども、たとえば現行法と同じような規定が、二十三条流水占用許可ということで出ております。これはいかにも古めかしいことばでありまして、今日ではむしろ流水の引用というような表現がふさわしいものではないかという感じがいたします。  それからきめこまかいということなんですが、その点、私の考えといたしましては、今日、河川使用というのは、流水の引用あるいは取水だけではないのでありまして、先ほどダム使用権の問題が出ましたが、貯留をするということも非常に重要なことになってきておるわけです。それからまた排水をするということも重要なことになっております。外国の立法例では、こういうものをすべて水利権水利用権として認めておるものが多いのであります。排水と申しましても、これはいわゆる公水を利用するわけでありまして、公水の中へものを捨てるのですから、それを利用するのだという意味で、やはり水の利用であるという考えがはっきりと出ております。したがって、今日、明治二十九年の河川法制定当時想像されなかったよらないろいろな形での水の利用が行なわれてきておる、貯留なんかはそうでありますが、だから広くそれを水利権と称することができるとすれば、そういうものについてもう少し明白な、きめのこまかい規定があることが望ましいということであります。たとえばダム使用権にいたしましても、多目的ダム法によるダム使用権というのは、実質的にはそのダムによって水をたくわえるという権利だと思うのです。その場合には、ダムそのものの所有権は国にあるわけですけれども、少なくともその工事の費用の負担はその使用権を設定される者が出しているわけです。だからそれだけの投資をして——投資というと語弊がありますが、いわば受益負担みたいな形で、国から工事費用の負担をさせております。このアロケーション、これは特定多目的ダム法によらない、他の従来行なわれてきておった多目的ダムのような場合の費用振り分けと同じような方法で、工事費用の負担をさせておるわけですから、実質的にこれを見ますと、それはやはり一つの権利であるということで、一種の貯留権であるというふうに考えてよいのではないかと思います。そういうことは何も多目的ダム法だけの問題ではなくて、根本的には、河川法上あるいは水法上明確に定めていくことが必要かと思います。
  33. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから、これは非常に私権の制限ということになろうかと思うのですけれども、私はっきり記憶ございませんが、たしか昭和三十七年だったと思うのですが、神奈川県下に非常に集中豪雨がありまして、私も現地の視察に行ったのです。一つは横浜市を流れるたしか相模川だと思うのですが、当時の県の土木部長の説明によりますと、いままで遊水地帯であったのが、ここに建設業者が非常に住宅を建てて、水の遊ぶ場所が全然なくなった、工事は大したことはなかったけれども、このことで、いわゆる下流地帯の横浜市内に水がはんらんしたということが起きておるわけであります。もう一つは、これは鎌倉だったと思うのですが、いままで雑木林や松林であったのが、ゴルフ場ができたために非常に下流がはんらんしたという説明を私は記憶いたしておるわけであります。昨日はたまたま利根川水系を視察したわけでありますが、この遊水地域言なり、あるいはよくわかりませんけれども、この法律に、河川保全区域というものは原則として五十メートル以内にしようということが書いてあるわけでありますが、私は今日の集中豪雨の実態から判断いたしますと、そういうような遊水地域なりまたは河川の流域において災害発生の場合に、下流の流域に非常に甚大なる損害を及ぼすという統計上の資料があるならば、当然そういうようなゴルフ場の設置なりまたは住宅地域等の設定等については、河川管理者である建設省が事前に調査しまして、ある程度規制を加える必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。これらの点については、今度の新河川法に明確な規定がなされてないように考えるわけでございますが、私権の制限に関する問題でありますので、非常に問題が大きいと思うのですが、こういう点についての先生の御意見をひとつお聞かせ願いたい。
  34. 金澤良雄

    金澤参考人 その点につきましては、これは二十九条、現行河川法で申しますと十九条でありましたか、この運営である程度押えられる場合もあるのではないかと考えます。と申しますのは、二十九条によりますと、河川の流量等について、「河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為」ということでありまして、この行為は、河川敷地内あるいは河川保全区域内でなくても、これを制限することができるというふうに考えられるのではないかと思います。たとえばこの点では、ある地域で地下水をどんどんくみ上げるために、その地下水が本来伏流水であるという場合に——伏流水になるとちょっと問題は別ですけれども、その上流部で、それをどこか流域のほかのほうへ持っていくために、本来こっちの河川に行くべき水が来なくなるというようなことで、現行十九条に基づく地方令でそういうことを規制したというような例を、私はちょっと聞いたことがあるのですが、河川の流量に非常に影響を及ぼすような、洪水を起こすというような事態が発生するような行為は、たとえばいままで森林地帯であったのを、森林を切ってしまってゴルフ場にしたというような場合に、事前にもしそういう因果関係が明らかであるということがはっきりしてくれば、二十九条を発動することも考えられるのではないかという気がするのです。そこまでは非常に行き過ぎだという考えもあろうかと思いますけれども、そういうことも可能かと思います。
  35. 兒玉末男

    ○兒玉委員 この際、局長にお伺いしたいと思うのですが、今度の河川法は、水系主義をとっておるという点が一つの特徴だというふうに聞いておるわけであります。そういう点から考えますならば、先ほど言った鎌倉を一つの例として、これはひとつ水系主義からいって、そこは山であったがゴルフ場になった関係で、水が一ぺんに流れてきた、これは現実に起きた問題なんです、また将来発生する可能性のある問題ですから、こういうことは当然私は明確な規定づけをしておかないと、二十九条の規制行為が適用できるかどうか、この辺の関連について、局長なり、また金澤先生の法的な見解をお聞かせいただきたい。
  36. 金澤良雄

    金澤参考人 ちょっと補足さしていただきますが、私の個人的意見といたしましては、改正法二十九条は現行十九条の横すべりだと思いますが、この改正法二十九条なんかも、もう少し実態に即して分析して考えてみる必要があるのじゃないか。この規定をもう少し整備すると申しますか、そういうことが必要じゃないかとも考えております。
  37. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 いまのお話の問題は、二十九条ともからみますが、要すれば、この前からも議論のありますとおりに、やはり河川区域としてそういうようなところをいかに指定して、河川の本来のそういう性格に対してのいろいろな規制をどうするかという問題だと思います。それで、今回の河川法によりまして、いわゆる水系として基本計画を立てるときに、それを河川工事として、こういう範囲において、こういう貯留あるいはこういう洪水調整をするということがきまれば、それに従った河川区域ができ、それに従った規制ができる、こういうふうに考えております。
  38. 岡本隆一

    ○岡本委員 金澤先生にお尋ねをいたしたいのですが、この新河川法では、遊水地帯、遊水地域の保全——従来、自然河川には大きな遊水地域がございました。だんだん堤防その他で狭めていきますから、遊水地域というものは減少していきます。今度の新河川法のものの考え方というものは、水を囲って、早く海へ流そうという従来の河川工事考え方から、できるところへ、至るところへなるべく多く調節地域をつくりまして、流量の調節をやることによって災害を防ごう、国土を守ろう、こういう考え方に変わってきておる。それが新河川法一つ考え方の特徴であると思います。だからダムをつくる。ダムについての特別の規則をつくって、ダムの統制をやっていく。しかしダムだけじゃ足りないから、いわゆる遊水地域というものもつくっていこうというので、昨日ヘリコプターでずっと利根を見学してまいりましたが、渡良瀬の遊水地域あるいは田中の遊水調節池、なかなか田中の調節池なんかはよくできております。溢流堤をつくりまして、ある高水位がくるまではからにしてある。一定の高水位がきて危険になりますと、ひとりでに流れ込むようになっている。下流からまた減水すると、自然排水できるようになっているというふうに、なかなかよくできております。だから少なくともそういうふうな考え方を今度の新河川法がとって進む限り、やはり従来あるところの遊水池というものはできるだけ保全しなければいけない。ところが、いまは土地が少ないものですから、どんどん経済が川を蚕食していっているわけです。現に田中の遊水池の隣に手賀沼という沼がございます。相当大きな沼です。従来ああいう低地帯のことでございますから、利根の水を洪水のときには相当のんで、その地域は、原始河川のまま無堤の状態に置かれておりますから、相当周囲がはんらんしておったでしょうが、まあ遊水機能を果たしておったと思います。ところがいまそれが三分の一ほどは堤防で仕切られまして、どんどん干拓工事が進められております。片一方でそういう調節池をつくりながら、片一方ではもう遊水地域を取りこぼっておるというような矛盾したことを現在の行政はやっておるわけです。だから私どもは、少なくとも現在あるところの遊水地域というものは、これを保全する努力をしなければならぬ、だからやはりそういう考え方法律の中にちゃんと入れておく必要がある、こういう考え方に立っておるのでございますが、先生の御見解を承らしていただきたいと思います。
  39. 金澤良雄

    金澤参考人 その点は、私申しましたように、この法律では河川工事実施基本計画ということはうたわれているのですけれども、いま申しましたような問題は、まさに総合的な河川保全利用開発計画がまず必要である。それがばらばらであるために、いまのような問題が生ずるかと思うのです。ですから、そういった河川治水利用あるいは利水総合、すべてを含めた総合的な計画性というものを法律で確保するということが必要だと思います。
  40. 岡本隆一

    ○岡本委員 先生、北海道の大学の先生でございますから、石狩についてはよく御存じでもあると思うのでございますが、先年、現在の畑谷局長が防災課長当時に、石狩のはんらんを視察に行きました。あの石狩を見ましたときにも、江別付近の、例の石狩川へ千歳川、さらに夕張川が合流しておる三川合流地帯でございますが、あの辺一帯は非常に広い範囲の泥炭地帯でございます。そのことは、長い間に、アシの繁茂しているところへはんらんしてどろをかぶる、それがまた、そこへアシがはえて、またどろをかぶってというふうにして、何メートルというところのアシとどろとをまぜたような地域ができ上がっておるわけです。いわば地形的にこれはもう遊水地帯なんです。だから歩きましても、カステラの上を歩いているようにふわふわしている。そういうふうな地域に、いまどんどん耕地の開発が行なわれている。私はそれを見ましたときに、こういうことをするからだめなんだ、こういう遊水地域は保全しなければだめなんだ、少なくともあの地域に、田中の調節池をきのう見せていただきまして、私はなるほどうまく利用していると思いましたが、ああいうふうな遊水地域をつくって、しかる後にその周辺を干拓していくというのなら話はわかるのです。それを全然しないで、そういうふうな調節機能をつくらずに、どんどん遊水地帯を取りこぼっていっているというところに、大きな先年の石狩のはんらんの原因があったと思うのです。だから、今度河川法をこのような抜本的な改正をするなれば、いま先生がおっしゃったそういう意味においては、河川管理基本計画というものをまずつくって、それから工事計画をつくるべきだ、こういうことを私どもも主張しておるのですが、同時にそういうような考え方に立って、新河川法というものは、水の流量調節によって高度利用をはかると一緒に、土地の高度利用もはかっていくのだという考え方に立つなれば、やはり遊水施設の保全というものは大きく考えていかなければならないと思うのです。ところがなかなか、農林省あるいはその他の工業用地の開発というふうなことから、政府の部内でもその調整が困難なために、そういうふうな考え方河川法の中に織り込むことが困難なのではないかというふうには見受けられるのですが、しかしその困難を乗り越えてこそ、私は、新河川法の意義がある、こういうふうに理解するのですが、先生の御意見をもう一度承らしていただきたいと思います。
  41. 金澤良雄

    金澤参考人 その点は、現在の行政機構を前提として河川法改正するということになりますと、そこにおのずからワクがあると思うのです。ですから、この問題は、水行政一般の根本問題に連なる問題でありまして、私、理想といたしましては、基本的な水法というようなものを制定していただきたいと実は考えておったわけなんです。理想としては、おっしゃるとおりだと思います。
  42. 岡本隆一

    ○岡本委員 では、この程度で、午前の質問を終わります。
  43. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 この際、金澤参考人にごあいさつ申し上げます。本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、両案審査に非常に参考になりました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  なお、片岡参考人には、質疑の通告がありますので、いましばらく御在席をお願いいたします。  この際、暫時休憩し、午後二時より再開いたします。    午後一時一分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  44. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  河川法案及び河川法案施行法案を議題とし、審査を進めます。  質疑を続行いたします。岡本隆一君。
  45. 岡本隆一

    ○岡本委員 けさほどから、ダムの設置に伴うところの諸般の後遺症と申しますか、あとから出てくるいろいろな災害について問題があると思いますから、淀川の問題について、具体的にいろいろお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  淀川では、いま天ケ瀬ダムと高山ダムの建設が進められております。天ケ瀬は大体でき上がりましたが、高山はこれからでございます。そこで高山ダムでございますが、当初建設省計画を承りますと、治水と工業用水と発電の三つを兼ねたダムであるというふうに発表されておりました。私どももそのように存じておったのでございますが、最近になりますと、そのダムの計画から発電が抜けておるのですが、発電はもうお取りやめになったのか、またその理由を承りたい。
  46. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 高山ダムは洪水調節と、不特定かんがいと、それから利水、上水道用水、これだけでございまして、発電の計画は持っておりません。
  47. 岡本隆一

    ○岡本委員 たとえば建設省の白書とか、あるいはその他あなたのほうから出しておられる書類の中には、最初発電というものが入っておる。それが抜けまして、したがってアロケーションも、洪水調節用が五三・六%、かんがい用が五・七%、上水道が四〇・七%というふうになっております。発電が入るとこのアロケーションのパーセンテージが、たとえば上水道なんかも相当小さくなりますし、また災害に対して持たなければならない京都府、大阪府の負担も軽くなると思います。それが発電が抜けますと、水道の持ち分もあるいはまた地方自治体の持ち分も大きくなってまいると思うのです。どうせ水をおろすのだったら、ことにこれは上水道が大きいのでありますから、水道用水をおろすのでございましたら、下には長柄の可動ぜきがございますから、そこで押えれば、少々ピーク時に大量に出たからといっても、ある程度の調節ができるのじゃないか。これはいわば河口におけるところの一種の調整池のようなものでございます。したがって流された水を押えることによって、発電を有効に使うことによって、上水道の費用を少し安くすることができる、こういうふうに思うのでございますけれども、その点については、ピーク発電だけしかできないようなところで、しかも発電をやってもあまり発電会社が喜ばないというふうなことでお取りやめになったのか、その間の事情をもう少しわかりやすく説明していただきたいと思います。
  48. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 私はその間の詳しい事情というものはわかりませんが、いわゆる多目的ダムを設置するときに、発電とか農業用水とか上水とか、そういうものを総合的に必要の範囲においてやっていくことが原則でございます。いろいろそういう点を考慮するわけでございますが、やはり発電は発電としての効用、それの費用分担の限界というものがございまして、少なくともこのダムにおいては、いまのところ、発電としては計画にはのせてないということで、発電がないということであります。
  49. 岡本隆一

    ○岡本委員 当初計画にはっきり発電と出ておって、それが途中から消えていっておるということは、発電会社がうまみがないから取りやめたということのために、発電が計画からはずされた、こういうふうな勘ぐりと申しますか、邪推と申しますか、そういうようなものも出ないではないと思います。そういうようなことでありますと、うまいところだけは発電に使うが、うまみのないところは逃げていくというふうなことであるとするならば、これは発電側があまりに営利的に考え過ぎておるのじゃないか。さらにこれは水資源公団がやるのですから、そういう点で水資源公団は少し力が弱いのじゃないか。どうせ水道用に相当大量の水をおろすならば、そのおろす力を発電に回したっていいわけであります。また発電に回すことによってアロケーションが散らばって、それぞれの負担が軽くなるのならば、そういう利用の道を当然考えるべきである、そういうふうに思うのでありますが、これは局長はその間の事情をあまり御存じないとするならば、また別の機会にもう一度お伺いすることにしようと思いますが、そういう考え方があるということだけは御承知おきを願いたい。その利益率は大きくなくても、それを発電に使うことによって、ある程度経済効果をあげることができ、またアロケーションによるところの負担を軽くすることができるならば、そういう道も考えてみようというふうなことは御配慮願ってもよいのじゃないか。ことにこれから用地買収にかかり、ダムの建設にかかるということでございます。またあなたのほうからいただきました「日本の多目的ダム」という非常に大部の書物がありますが、あれを見ますと発電は未確定というようなことになっておったやに記憶いたしております。だから、そういう点で、この地元負担を少なくするために、やはりそういうふうな配慮というものはもう一度再検討をしてみていただきたい。  それから、このダムをつくることによって、やはりいろいろな後胎症と申しますか、医者のことばを使えば、あとから出てくる病気の後胎症、泰阜ダムと同じような問題が出てくると思います。それは上流におけるところの土砂の堆積とか、下流におけるところの河道の掘さくに伴って、当然木津川の下流沿岸に対するところの渇水に対する手当てというものが、ダムの建設とともに行なわれなければならない。ところが、ダムの建設と時期を一にいたしまして、ちょうど符合したかのように、いま木津川の沿岸の土地改良事業というものが出てまいっております。それで、私はその状況を農林省からお話を聞く中で、やはりダムとの関連を少し考えてまいりたいと思うのであります。  まず農林省からお答え願いたいのでありますが、木津川沿岸地区土地改良事業というものを、農林省との話し合いの上で、京都府がその計画を進めてまいっておるようでございますが、これはいつごろ着手し、いつごろ竣工させる予定なのか。次には経費はどのくらいかかるのか、農民の負担は反当たりどの程度になるのでしょうか、その辺を承りたいと思います。
  50. 永田正董

    ○永田説明員 ただいまの木津川沿岸の土地改良事業についてでございますが、この事業は、三十八年度で、農林省といたしましては、調査調整費を企画庁予算でいただきまして、航空写真の図化をやったのが農林省の調査の最初でございます。前年、県からの、国営の土地改良事業として、調査地区として採択をしてくれという申請に基づきまして、三十九年度から国営の土地改良事業の候補地区として調査に着手するわけでございます。調査の期間は、中身に入ってみないと確定的には申し上げられませんが、標準的には二年程度、こういうぐあいに考えておるわけでございます。本年度は最初の年でありますので、国の調査費といたしましては三百三十万円、県としましてはこれと並行して百八十万円ばかりを、ただいまのところ予定いたしておるようでございます。したがいまして、計画は現在のところその概要を県が立てて、そういうつもりであるからひとつ国でしっかり調査をしてくれという段階でございまして、県からきております事業の規模といたしましては、面積が三千五百町歩弱でございます。これは全部水田でございます。これを全部用排水改良をやりたいということでありまして、総事業費は三十八億七千万円ということで、そのうち国営事業といたしましては二十一億七千万円、県営といたしましては五億三千万円、団体営といたしましては六千万円、圃場整備事業として十一億見ておりまして、そういう内容で持ってこられたのであります。これを足がかりといたしまして、三十九年度から国が直轄で調査に入る、こういうことであります。  調査が終了いたしますと、事業採択、全体設計にかかりまして、全体設計の期間は、通常標準的にはやはり二カ年間程度見るのが普通でございますが、早いものは一年で上がるものもございます。上がれば着工という段階になるわけでありまして、着工になりますと、特別会計で着工されれば七年間ということが常識的になっておるわけでございますが、通常最近では最初の採択は一般会計で採択をいたしまして、それから一、二年様子を見た上で特別会計に編入される、というようなことが最近の例になっておるようでございます。
  51. 岡本隆一

    ○岡本委員 地元から、県の要望として、国営土地改良事業にしてやってもらいたいという要望が出てまいったというお話でございました。そこで、先般来農民側から私どものほうに入ってまいります話では、とにかく反当たりの負担金が一万七千円余り土地改良事業にかかる。そうすると、それを十カ年間に支払っていかなければならないとすると、これは非常な負担になってきている。しかも、こういうふうな土地改良事業をやらなければならない理由というものは、木津川の水位の低下にあるのだ。木津川の水位の低下は砂利の採取が非常に大きな原因をなしておる。都市の建築ブームで、どんどん業者に砂利採取を許す。そのことが水位の低下を来たし、渇水が起こってくる。そういうことになりますと、これは河川管理が悪いからそのような渇水が起こってきておる。だから従来のように河川の水位というものが維持されておるなれば、あえて土地改良をこのような大きな金をかけてやらなくても水は入ってくる、こういうふうな主張で、土地改良事業によって、農民は受益者であるというよりも、むしろ事実は被害者の立場に現在はいるのだから、こういうふうなことはもっと国のほうで——河川管理の過誤というと語弊があるかもしれませんが、河川管理がうまくいかないために、こういうふうな用水計画というものを立てなければならなくなった原因があるのだから、こういう考え方に立っておるようであります。  それからもう一つは、いまお話によりますと、これから調査に二年、設計に二年、それから工事に七年、合わせて十一年かからないと工事は完了しない。この用水というものは完了しない。ところが高山ダムは、ことしから建設が始まりまして、三年で完了する。高山ダムが三年で完了いたしまして、ダムの貯水が始まりますと勢い——これは発電ダムが使命でありますと、ピーク発電で非常に流量に日々の変動が強うございますから、河道の掘さくの状況も強いだろうと思います。水道用水でありますと、なるほど幾分違ってまいると思います。しかしながら夜間は水道用水は使いません。昼間が主として使われる。そうすると、その放流も昼間に主力が置かれて、夜間はしぼられるということになるのであろう。だからやはり河道に流れる水の流量というものは、下における水の需要の状況に応じて相当に時間差がある。だから、下はやはり大きな急速な流れが来たりとまったり、来たりとまったりということになりますから、当然河道は掘さくされていきます。そうすると高山ダムによって現在よりも一そう状況が悪くなったとするなれば、これはダムの補償事業として行なわれるのが当然ではないか、こういうふうな意見も出てくるのはまた考えられるところなんです。事実そういう声が出てまいっておるのであります。でありますから、これは政務次官にお尋ねいたしますが、ダムの建設が予定されておる。そしてダムの建設で泰阜ダムと同じように、上流には土砂の堆積が起こり、下流には砂利がおりてまいりませんから、河床の低下が起こる、そういうことが当然予想される場合には、もしそれを補うために必要な用水事業を土地改良事業でやるとするなれば、そこにダムの補償というものが当然含まれるべきだと思いますが、それについての見解を次官から伺っておきたい。
  52. 鴨田宗一

    ○鴨田政府委員 ただいま途中からまいりまして、いきさつがよくわかりませんが、ただ、私のただいままいりましてからの御質問に対しまして、私の考えといたしましては、その補償につきましてはこれは、やるべきが当然であるというふうに解釈をいたします。
  53. 岡本隆一

    ○岡本委員 そういたしますと、農林省の参事官にお尋ねをいたしますが、現在のところ、工事計画の中にはダムの補償費というものが入っておりませんが、やはりこれは地元計画として織り込まれて持ってまいったら、これは当然しかるべきものとして、建設省と話し合って、計画の中へ織り込んでいただけるかどうかということ。  また次に、河川局長にお尋ねをいたしますが、次官はあのようにおっしゃていただきましたが、やはりそういうことが予想される場合には、検討して——もちろんそれはいま即座に無条件でということは私も申しません。しかしながら、検討して、ある程度ダムの建設による流量の変化というものが、下の河床に影響を与えるものとするなれば、その分についてはダムの補償費からめんどうを見る、こういうふうなお考えをお持ちでございましょうか。その辺、農林省、建設省両方から御見解を承っておきたいと思います。
  54. 永田正董

    ○永田説明員 建設省のほうで補償費を出すということにきまりますれば、私のほうでは、その分を事業費の、いま申し上げた二十一億の中に入れまして、それ以外のものについては、土地改良事業としてやるということでまいりたいと思います。そこで私のほうでも、いまから約二年間ぐらい調査の期間があるわけでありますが、この間において用水の不足の原因、それから河床が低下しておるというお話を非常に強く聞いておるわけでございますが、それの原因等につきましてできるだけ調査もし、また建設省側ともよく連絡をとっていきたいと考えております。
  55. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 いま政務次官が御答弁されたとおりに、そのダムによって影響があれば、これは当然補償なりそういう行為をやらなければいけないと思います。問題は、その影響というものがはっきり出るかどうかということは、実際問題として非常にむずかしい、こう思います。
  56. 岡本隆一

    ○岡本委員 これは将来に対する予想でございますから、過去のいろいろな同様のケースと比べてはじき出していく以外に道はないと思うのです。だからはじき出された数字に匹敵するような影響があるか、あるいはより以上の影響があるか、これはわからないと思う。しかし予想というものはある程度当然つくと思うのです。だから、予想がつかないからめんどうを見られない、補償できないんだ、こういうようなものではなかろうと私は思うのです。今度の法案の四十四条に、ダムの設置者に対して、従前の機能の維持に対する義務を課しております。この義務を課しておるというなにが、先ほどのあなたのお答えでは、泰阜ダムのような三十年も四十年も先に起こってきた事故については、これは関係ないんだ、こういうようなお答えであったように思います。しかしながら、二、三生先に起こってくるようなことなら、これは当然補償なりそれをなくするための措置を講じなければならぬ、しかし非常に年数が長ければ、緩慢にやってくるものなれば、それは知らぬ顔でいいんだ、こういうふうな、期間の長短によって、その課せられた義務が免ぜられたりあるいはそうでなかったりというふうなことは、私はおかしいと思うのです。期間の長短のいかんを問わず、ダムの設置というものがその河道に影響を及ぼし、その結果洪水が起こったり、下に渇水が起こったり、そのことによって上下流の住民の生活に大きな影響を与えるなら、当然それを排除するための努力というものは、ダム設置者はすべきだ、そういうふうに私は理解するのでございますが、局長のお考えを承りたい。
  57. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 この四十四条の条項は、先ほどお話しのとおりに、設置するときの時限の問題でございます。ですから、その後の問題については、この四十四条の条項は適用しないと私は思います。ただこの四十四条が適用しないから、そういうような後年度に起こったものは全然措置をしないのだということとはまた別の問題でございます。これは河川管理上あるいはダムの設置のためにいろいろな影響があったというのは、当然それぞれの原因によってその措置をしなければならない。ただ四十四条で措置をするということではない、こういうことでございます。
  58. 岡本隆一

    ○岡本委員 四十四条はダムを設定する時限の問題であるという御解釈は、これはあなたのほうからいただきました四十四条に関する政令、この四十四条の第二項「河川管理者の指示の基準は、政令で定める。」というところの、河川管理者は、機能の維持を阻害した場合にはどういう指示を出すかという政令でございますが、それに対して、「ダムの設置に伴う背水及び背砂によって洪水時において河川又はその周辺の土地その他の物件に対する著しい影響が生ずるおそれがあると明らかに認められるときは」、つまりダムを設置し、そのためにバック・ウオーターが起こったり、土砂が上流に沈着して、そのために著しい影響が周辺の土地その他にあるときには、護岸を新築をさせたり、堤防をつくったり、あるいは土地のかさ上げをさせたり、そういうふうなことを行なわせるということが、はっきり政令に書かれております。だからこういうふうな政令をあなたのほうでつくっておられるということは、そのダムの設置の時限におけるところの影響に対する措置でなくて、これはやはり数年あるいは十数年以上たった後に起こってくる現象に対する措置を命じようとする、こういう意味であります。バック・ウオーターにいたしましても、バック・ウオーターはすぐ出てくるかもしれませんが、それでもこのバック・ウオーターという意味は、河床の上昇に伴って、その上流の水位が上がるというふうな意味であろうと思うのです。ただその水が貯留された、その水面というものをさしているのじゃないと思うのです。バック・ウオーターはだんだん上流にしたがって高くなります。だからその高くなった水そのものをバック・ウオーターと呼んでいるのだと私は思います。だから堆砂がこのように起こるということは、これはダムを設置した時限に起こるのではなくして、ダムを設置して数年後になって起こってくるのです。だからそれに対して、ダム設置者に対して、そういうふうな数年、十数年後に起こるところの変化に対して責任を負わそうというのがこの政令の精神である、こういうふうに私は読んでおるのですが、いかがなものでしょうか。
  59. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 いま先生のお話しのとおりです。ダムをつくることによって、その川の水系計画として、どういう最高の洪水流量が出る、あるいはこの水系の上流の土質その他の状態から見て、どういう堆砂が起こる、これは時限の問題ではございません。当然将来を予想し、いわゆる予測される最大の状態を見て、それに対応する水位、堆砂するならばその堆砂に応じた水位というものまで見て、そういうような施設をするということですから、そういう意味においては、当然相当の将来を見て、それを完全にやる、こういうことでございます。ただ問題は、それじゃ、その推定がはたして当たるか当たらないかといういろんな問題があって、そのときに瑕疵があったり、そういうことがあれば、これは別な問題として、当然措置されなければならない。ですから、この問題は確かに先生のお説のとおりに、将来をおもんばかったものであるということは事実でございます。
  60. 岡本隆一

    ○岡本委員 そうしますと、あるダムをつくります、そうすると、上流に堆砂が起こるであろう、それに見合って築堤の強化をやる、あるいはそこに内水がたまるであろうと予想されるならば、土地のかさ上げをする、その程度までのなには、ダム設置のときにきちっと一緒にやらせる、こういうような御意見でございますか。——そうすると、今度は下流においても河道の掘さくが起こるのは当然でございます。どのダムでも、河道の掘さくの起こってないダムはございません。そうすると、下流においては水位が低くなります。だから、それに伴うところの施設を当然つくらなければならぬ。そうすると、ダムの補償事業として木津川用水事業というものは行なわれている、こういうふうな理解ができるのでございますが、その辺はいかがでしょうか。
  61. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 先生のお話しのとおりなんです。そういうダムをつくったために河床が下がって、そのために水位がとれなくなるとか、いろいろな問題については、当然ダムの工事に伴っての問題でございますから、ダムとして措置しますけれども、普通の場合は、そういうことのないように、そのダムによって直下流においてはいろいろな河床の変化がございます、ですが、それが下流に及ぼすことがあるならば、その下に河床の維持をするような施設をしまして、下流に影響のない動作はいたします。ですから、問題はそれ以上にいろんな河床の状況が——ダムの設置と別に、いろいろな問題があるのが普通だと思います。ダムの直接の影響で、下流のいわゆる河床がどんどん下がるということであれば、これは当然ダムの設置として措置をいたします。
  62. 岡本隆一

    ○岡本委員 しかし、ダムができれば、上から土砂はおりてまいりませんよ。それだけでも土砂の堆積というものは行なわれない。しかもときどき流量が変わって流されれば、河道が掘れるのは当然でございまして、どのダムを見ましても、たとえば、ついこの間も筑後川の夜明ダムを見てまいりました。夜明ダムの下流は、やっぱり相当ずっと掘れております。だから、それに伴ったところの新たな取り入れの水路というものがつくられております。だから、そういうふうなダムをつくれば、ことに耕地に近いところでダムをつくれば、当然そういう現象は考えられなければなりません。そういう点はこれ以上議論をいたしましても千日手のような議論になると思います。農民側からわれわれのところに持ってまいる話というものは、反一万七千円というふうな負担では、とても米をつくっていけない。しかも河道が掘さくされれば、あの辺は砂利でできておりますから、床どめができていない。俗にかご田と申しておりますが、水位が低下すれば、肥料も落ちてしまうし、水も何ぼ入れても底に入ってしまうということで、木津川の水位の低下が耕地に及ぼすところの影響は非常に大きい。しかもその上に、そういうふうな負担がかぶさるということは困るというふうな意見が出てまいっておりますので、そういう点は、ダム建設の際にやはりお考え置きを願いたい、こういうことをひとつお願いしておきます。  それからもう一つ、いつも私は申すのですが、例の亀岡におけるところの逆流の問題でございます。災害常襲地帯の話に関連する問題でございます。それで災害常襲地帯については、建設省側でも、これは別に常襲地帯という指定をやらなくたってやるのが当然だ、だから別にそんなふうな修正をしなくてもいいじゃないかという御意向でございます。それに対して、私どもが、災害常襲地帯の指定をしてぴしっときめなければ、建設省側がやらないからだめだ。これはいまの上野の盆地でも亀岡の盆地でも同じでございますが、現状のままでもしいくとするなれば、これは百年河清を待つというほどではなくても、十年、二十年はまあいまのままだろうというふうに思われます。なるほど、宮村ダムの計画がされております。宮村ダムの計画につきまして、建設省はどういうふうにお考えになっておられるのか、私はそのお話を承っておきたいと思うのでございますが、あそこに、ダムの地点として、三つの地点が考えられております。宮村ダム建設の最初の計画は一番上でございました。その次にだんだん下へおりてまいりました。下へおりてまいりますと、なるほどふところは大きくなります。一番下の地点になりますと新たな谷ができまして、その谷に百戸ほど水没分がふえるのです。最初の計画でありますと、例の天若の谷に沿ったところの部分百戸ぐらいが水没でございます。ところが地点を一番下までおろしますと、なるほど湛水容量は非常にふえますが、そのかわり、日ごろ全然災害のない、平和に暮らしておる部落が百戸ほど水没する。だから、そこの地域の人たちが猛烈に反対しておるために、宮村ダムは調査ができない、こういうことでございます。同じダムをつくるなら、大きな経済効果を考えられるのは当然でございます。しかしながらその大きな経済効果をねらうとするなれば、そこの反対をしずめるまでは建設できません。そこまで含めようとすれば、下筌と同じような反対が出てくると思う。しかしダムサイトを一つ上げていけば、湛水量は減ります、経済効果も減るでしょう。しかしながら、やはりそれでもってダムの設置の目的は達せられる。ことにそれにつきましては、いま水資源に行っておられる小林さんが現地に住んでおられまして、最初にその計画をされたときのことを座談的に聞いたのでありますが、最初計画されたときには一番上の地点であった。そこで亀岡の盆地における調節量くらいは十分確保できるというふうなお話を、私は最初の計画を設計された人からも聞いておる、しかし後になって、いやここよりももっと下のほうがうんと効果があがるぞ——それは経済効果を欲ばるのはいいですよ。しかしながら、そのことのために十年も、以上も長く水害に耐えなければならないとするならば、これは災害常襲地帯の住民にとっては非常な犠牲である、かわいそうだと思う。それにまた現地の宮村地域の住民の声もある。なるほど新たに入れられる地域の人は反対でございますが、すでにもう宿命的に、設定された地域で、おれのところは水没だというふうに頭から覚悟しておる人たちにいたしますと、いつまでこんな状態に置かれるのか、いずれはできるのだろう、いずれはできるであろうのに、なかなかその調査が始まらない、こういうふうなヘビのなま殺しのような状態に置かれたのでは、生活の設計の立てようがない、いずれは出ていかなければならぬと思ったら、家がいたんでも修理する気にならない。また土地の改良をやる気にもならない。災害でたんぼが荒れても、それをもう一度再建するというのも力が入らない。いずれは水没になるのだというふうなことを考えると、すべて将来の設計というものができないで、そのとき限りのものとしてやっていかなければならない。同時に、家が沈むようなところへ嫁にやるわけにもいかぬというようなことで、子供の縁談にまで響いてきておる。だから、同じダムをつくるなら、早くつくってもらいたいというのが水没予定地区、というと語弊がございますが、水没やむを得ないという意味で覚悟をしておる天若地区の住民の声なんです。だから、一面では、もう早くつくってくれという現地の声がある。またそのダムを大きくしよう、経済効果を大きくしようという欲ばった考え方建設省が捨てられるならば、ダムは何どきでもつくれるのだ。しかも下流の亀岡の住民はそれによって災害から免れるのだ、こういうふうな状況になっておるのに、なおかつ調査は困難だ、大きいところをねらっているから調査は困難である。だからここでもう一度出発点に戻って、ほんとうにその地域にダムをつくることによって、はたして下流の水害を防除できるのか、あるいはまた、淀川水系全体の問題として考えていくときに、ダムサイトをどこにすべきかというふうなことをもう一度再検討して、すみやかにダムをつくる。そして、その水害常襲地帯を早くなくするというふうな努力をされることができないものかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  63. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 実際、先生のお話しのとおりに、地元の人たちから見ると、非常にもたもたしている、何をしているのだというふうに思われるかもしれませんが、私どもの立場からすると、御承知のとおりに、ダムというのは、普通の河川施設のうちでは最も重要で、最も金がかかる、しかもそれが、一たん堤防が切れてもいいというわけじゃございませんが、このダムに事故が起こるということは絶対に許されない状態です。ですから、ダムの設定については十分な調査をして、はたしてここで完全にわれわれの目的に合するものができるかどうかという調査が必要でございます。一応机上で、図面でもって、大体エリヤがこれくらいなら、これくらいの洪水調節ができるということで、一応の計画は立てますけれども、実際に土質、地質、そういうものを見た場合に、はたしてそれだけの計画の高さができるかということに実は非常に苦慮するわけでございます。いまの地点の問題にしましても、決してぐずぐずやっておるわけじゃございませんが、私どもからすれば、やはり治水効果も十分に全うでき、しかもそれに相当するようなダムができて、これが完全に、ダムの機能が終生ともにくずれずに、できてくるということを願っているわけでございます。ここがいいとか、あそこがいいとかいうのは、やはりそういう地点を全部見て、ここが一番いいのだというところにつくらなければ、われわれとしても責任が負えないじゃないかということなんでございます。したがいまして、私どもがそういうことをやりましても、また地元のほうから言うと、やはりおれの土地はどうだ、おれはこうだという、もちろんそういう問題はございますが、私どものそういう調査と、地元の方たちのそれに対する御意見を十分伺って、それのうまく調子の合ったところでいきたいと思うのですが、いまのところは、何もかもきてしまったからもうおしまいだというお考えではないかもしれませんけれども、なかなかそこまでいかないので、私ども苦慮しておるわけでございます。その点も十分御理解願いたいと思います。
  64. 岡本隆一

    ○岡本委員 一応、地元の情勢がそういうものであるということだけは御理解願っておきます。もしもあなたのほうで経済効果の大きいことをねらって、ダムサイトを一つ下げようというような場合には、非常な因難が伴う。しかしながら、ダムサイトを最初の地点まで戻されるならば、地元はむしろ喜んで——喜んでと言うと語弊がありますが、そのほうがよろしい、いつまでもこういう状態に置かれているより、そのほうがよろしいということで、むしろ早いことを望んでいる、水没地帯すら、そういう状況に熟してきているということ、しかも下流の水書常襲地帯に至っては、一日も早からんことを待っている、こういう状態に熟してきているということを御理解願って、私はダム建設を促進されるようにお願いしておきたいと思います。  それから、けさほどから調節池といいますか、遊水地帯の問題が出ておりますが、たとえば利根川沿岸の田中の調節池でございます。従来からそこは耕地になっておった。しかしながら、今度河川区域の中に指定をされて、いわゆる遊水地帯となって、しかもそこで営農をしていくというようなことになっておる模様でございますが、こういう地域について、固定資産税はどうなりますでしょうか。河川区域になっておる。しかもときどき農家は災害覚悟で営農をしなければならない、洪水覚悟で営農をしなければならない、こういうところの固定資産税はどうなっておりますか。
  65. 山本悟

    山本説明員 ただいまの御質問、自治省の税務局の所管でございまして、私財政局でございますから、ちょっと的確なお答えがしにくいわけでございます。どうもたいへん申しわけございませんが、連絡が、ただいまの税の関係の御質問というぐあいに聞いてこなかったものでございますから、その点、ちょっと御容赦いただきたいと思います。
  66. 岡本隆一

    ○岡本委員 建設省では、そういう点あらかじめ農林省とお打ち合わせいただいているではないかと思いますが、どのように理解しておりますか。
  67. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 私ども直接この問題についてはタッチしておりません。しかし、河川区域ということになれば、当然その中における問題として、保全区域の問題がございます。いわゆる減税といいますか、そういう点では十分考慮してもらわなければならぬ、こういうように思っております。
  68. 岡本隆一

    ○岡本委員 免税になるのですか減税になるのですか。その辺はどうでしょうか。
  69. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 通常の場合は、免税にはならないように考えております。減税というように……。
  70. 岡本隆一

    ○岡本委員 非常に行為制限を受けております。とにかく、耕作以外一切できない、こういうところでございます。しかも、数年に一回は洪水を覚悟しなければならない、こういうようなところに課税されるというのは、私はどうかと思うのです。しかし、これはあなたに申し上げても無理かもしれませんので、後ほど御意見を聞こうと思います。ただ私は、遊水地域の保全ということに非常に強い関心を待っている。また、そうすべきだと思う。どんどんふやすべきだ、こういうふうな理解を持っているのです。たとえば、先ほど話題にいたしておりました手賀沼にいたしましても、あのような何をやるなら、遊水池として堤防をつくって、ときどきそこへ水を溢水さすような施設をつくられてもよいと思うのです。だから、周辺には水害を及ぼさないように護岸をつくってそこにどっと水を入れてくる。しかしながら、平生は干拓して、耕地として使わせるというふうなことをやるべきだと思うのです。それを護岸も何にもつくらない、ただずるずると開田を許しておくというふうなところに、私はほんとうに歯がゆさを感じるのです。  農林省の参事官にお伺いいたします。そういう開田事業でございますが、けさほどから参事官はお見えになっていたので、石狩川のお話を聞いていただいたと思います。石狩川の泥炭地帯、江別近辺ですね。千歳川、あるいは夕張川というふうな川の沿岸で、大規模な農地の造成が行なわれております。そして、つくられた土地は、その泥炭地帯はなかなかよくとれるらしいのです。そして、非常にあの辺は農地として開けてまいっておりますし、同時にまた、非常に大規模な床どめの作業が行なわれております。空中ケーブルでずっと粘土を運んでまいりまして、泥炭地の上に床どめをやって、その上につくっておりまして、非常に土地改良事業が大規模に行なわれております。ああいうふうな大規模な土地改良事業が行なわれる場合には、その地域のせっかく造成された農地が洪水をかぶらないように、当然それに伴うところの施設をまずつくらなければならない。それが、利根の沿岸は、非常に広いところの田中の調節池、その他ぼつぼつ調節池がつくられておりますが、そういうものを併設してやっていくべきだ、手放しでやっていくべきでないというふうに思いますが、農林省は、やはり農地の造成をやられる場合に、治水というものをあわせてやっていくというふうな方針は全然お考えにならないのか、建設省と相談して、そういうようなことを従来はちっともおやりにならないのか、あるいはそういうことを、従来はいざしらず、今後は建設省と相談しつつ造成したい、土地の半分は調節池として残す、そしてそれによって、半分は洪水をかぶることの少ない良好な農地としてつくり上げていく、というふうな方針をとっていただくべきではないか、こういうふうに思うのでありますが、農林省の御見解はいかがでしょう。
  71. 永田正董

    ○永田説明員 お話しの、たとえば千葉県の田中の地区、それから印旛の地区等につきましては、これはもともと遊水池なんです。通常の場合に水面であったというところを、これを堤防で囲み、あるいは多少一部埋め立てたりして、水面のところに陸地がはみ出しておるというようなかっこうになっております。こういうところは、田中については、利根川の河川敷であったと了解しております。それから、手賀沼については、準用河川であったと了解しております。これらのところに手をつけました場合には、当然建設省許可を受けて、その上で仕事を進めておるわけでございまして、たとえば田中の場合でございますと、堤防は建設省予算でやられたのであります。中の排水ポンプ、これは農業の予算でやったわけであります。堤防の上に洪水余水吐けをつくって、ある程度水位が局まってまいりますと、地区内に水が入るということは、最初からわれわれのほうの計画の中にものっておったわけです。手賀沼の場合には、洪水の際には水面が減る計画でございますから、減れば水位が上がるわけでございますから、そこでポンプをつけまして水位があまり上がらないように、したがいまして三十年なり五十年なり、いま何十年に一度の洪水を基準にしたか、ここでわかりませんけれども、通常ならば五十分の一くらいの頻度で押えまして、それくらいの洪水ならばポンプではける、こういう計画を了承のもとに、埋め立て計画許可された、こういうことになっておるわけでございすから、当然治水とも十分協議の上で、排水に支障がないという計画のもとで実施されておる、こういうことだと了解しておるわけでございます。  それから、北海道についてでございますが、北海道については、私の了解しておるところでは、大河川治水関係工事相当おくれておる面がある。したがって、どこが将来遊水池になるかならないかということも、そうはっきり全部がきまっておるわけではない。それで泥炭地が全部遊水池であったかどうかということについては、私は、現在開拓をいたしております地域は、そうたくさんは遊水池だったところはないはずだと了解しております。ただ、最近に至りまして、いろいろ治水工事のほうも逐次進んでまいりますし、需要側の農業等もだんだん進んでまいりまして、いままで湛水しなかったようなところが湛水がひどくなったというような現象が起きております。そういうところにつきましては、特に石狩川の沿岸は開拓も、それから用排水の改良も、重複して非常に大規模に行なわれておるのでございまして、国営事業の排水事業の中に湛水防除という項目を一つ起こしまして、湛水防除の施設を土地改良の排水事業の中に含めて、その部分につきましては、三十九年度から新たに多少補助率をいままでのものより上回ったものでやるという方向で進んでおるわけでございます。
  72. 岡本隆一

    ○岡本委員 河川局長にお尋ねをいたしますが、北海道の場合、河川工事が進んでおらない、なるほどそのとおりでございます。したがって、農林省としてはそういうふうな状況だから、いまの湛水もある程度やむなしとして、湛水排水事業を行ないつつ開田をやっていくというようなお話でございますが、しかしながら、これから少なくも十三カ年の治水水系計画をもってして、全国の河川の洪水をなくしよう、こういうふうな雄大な規模をもって、いま治水事業を始めようとしておる。その治水水系計画の中では、それでは泥炭地域におけるところの遊水地域の設定は、相当規模織り込んでやっていかれるおつもりがあるのか、そういう点を私は伺っておきたい。私がこういうことを特に申し上げるのは、淀川で巨椋池という大きな遊水地帯——これは豊臣秀吉がつくったものです。この豊臣秀吉のつくったところの遊水地帯を、戦時中の食糧増産ということでつぶしてしまった。なるほど、米はとれます。しかし、そのことのために、淀川の治水工事というものが非常に大きな困難に逢着しておるということは、あなたも御承知であると思うのです。そしてまた、その巨椋池の遊水地帯をなくしたために、他のところへしわ寄せがいって、他の地域が洪水常襲地帯になっておる。だからこれから後、新たなる構想の中で、なるほど北海道は一部原始河川のままです。だから、そういう新たなる構想に立って、これから治水計画を立てる地区については、遊水地帯を相当残してやっていくべきではないか。あまり水を攻め過ぎてはだめだ、こういうことを私は申し上げている。このことはやはり京都に流れている由良川についても言えると私は思うのです。由良川についても、やはりそういう遊水地帯を残しつつ、治水計画をお立てになるべきではないか。同時に由良川については、ほかにも問題がございますが、これはきょう、あすに何を控えて、まだ質問相当兒玉君など残しておられるようですから、私はこの程度で終わりますが、遊水地域の設定ということを特に重要視されるということを、この機会に強調しておきたいと思うのでございますが、河川局長の今後の方針に対する御所見のほどをひとつ承っておきたいと思います。
  73. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 私はちょっと先生の考えと違いまして、確かに遊水地区というのは現状においては必要だと思います。先ほどお尋ねの水系計画において、そういう遊水池を大幅に取り入れるかどうかという御質問に対しては、私はできるだけ遊水池というものはなくして、これにかわるダムとかそういうものをつくって、できるだけ河道をそういうもので調節いたしまして、こういう遊水池を将来においては利用価値のある土地にしたい、こういうふうに考えております。ですけれども、これは将来の大計画でございまして、その間におきまして、現状においてはどうしても工事がなかなか進みません。北海道の石狩川の例をとられましたけれども、これは確かに農林省が言うとおりに、河川工事がおくれておるわけでございまして、現在は遊水池のようなかっこうになっておりますが、堤防をつくれば、別に遊水池としての効用がなくても相当いいところがあるわけでございます。これは早く堤防をつくって、そういう土地をもっともっと利用する、こういうふうに進めていきたい。現状においては先生のお話しのとおりに、十分に遊水池というものを考えてやっていきたいと思います。
  74. 岡本隆一

    ○岡本委員 河川局長のいまのお考えは、非常に高い次元になった段階におけるお話だと思います。少なくとも、現段階において、遊水池なくしては治水というものはできない、流量調節ということはできない。ことに琵琶湖の場合、琵琶湖というものは相当大きな遊水地帯という考え方に立たなければ、淀川治水はできません。だからおっしゃることはわかります。できるだけ土地の有効利用をしなければならない、同時にまたできるだけ水も有効利用をしなければならない、これはおっしゃることはよくわかります。しかしながら、治水という目的からいけば、やはり経済があまりに水の領域を侵し過ぎておるから、洪水が出てまいる。やはりそれに伴う調節機能を持たせなければいかぬ。だから琵琶湖なんかの開発の場合でも、もし湖岸のほうで農地を開発されるなれば、これからは遊水地帯として開発していく。だから溢流堤をつくる。洪水のときには入るということを覚悟で、何と申しますか、ちょうど田中の調節池と同じような形で、農地開発をやっていただきますなれば、将来琵琶湖、淀川治水の上に非常に大きな役に立つと思います。これは農林省の永田参事官にもお考えおきを願いたいと思うのでございますが、今後とも琵琶湖において農地開発が湖岸で行なわれると思うのです。そういう場合にも、もちろん営農が可能なように考えなければなりませんが、しかしながら税の免税であるとかいろいろなことと考え合わせて、新たにつくっていくところは絶対に使っちゃ困るのだということでなしに、やはり護岸をやり、溢流堤をつくって、遊水池という形にして、耕地の開発をやっていくというふうにして、耕地の開発と一緒に、水の調節機能も持たしていくというふうな程度にしていただくように、今後の計画の中で配慮していただくようにお願いをいたしておきたいと思う。これ以上は議論になりますから、この程度で終わりますが、建設省のほうで、あるいは農林省のほうで、そういう点については特に配慮をしていただくように、自治省のほうに強硬に話し合いを進めていただくように、お願いをいたしておきたいと思います。
  75. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 吉田賢一君。片岡参考人は午前中からお待ちになっておりますから、参考人に対する御質問を先にしていただきます。
  76. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 きょうは、兵庫県の水系各般の事情を中心にして伺います。これはやはり全国的に同じような事情のもとにある府県にも御参考になると思いますので、知事出席を要望したのですけれども、ちょうど最近外遊をされました由で、かわりに見えました片岡土木部長にお伺いいたしたいと思います。  まず兵庫県の水系のあらましにつきまして、ちょっと御説明をいただきます。
  77. 片岡武

    片岡参考人 片岡でございます。兵庫県の水系のあらましをという御質問でありますので、お答えを申し上げます。  東から猪名川、武庫川というのが、大体阪神地区に流れておる川でございます。明石から西のほう、これは播磨工業地帯と称しておりますが、播磨工業整備特別区域指定を受けております。この地域にある大きな水系を申しますと、加古川、市川、揖保川、千種川というような川がございます。大体その水系が播磨地区に流れておるのでございます。さらに日本海側には圓山川というのがございまして、これが但馬を流域に持ちまして、日本海に注いでおります。そのほか、由良川の上流が、一部竹田川ということで、由良川に注ぎまして、以下京都府内を流れまして、日本海に注いでおります。大体、水系別に分けますと、ただいま申し上げたとおりになるかと思います。
  78. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 兵庫県は、北は日本海に、南は瀬戸内海に面しておる地域であります。そうすると、北のほうは主として農業かんがい用、南のほうは農業用水並びに工業用水というような、こういう区分でもできるんでしょうが、その辺はいかがですか。それからまた、東のほうの大阪寄りの地域の河川
  79. 片岡武

    片岡参考人 ただいまの御質問は、水系別に主とした水の使用目的はどうかというお尋ねかと思いますが、北のほう、ただいま申し上げました圓山川の水系におきましては、御案内のとおり、現在使用されておりますおもなものは、農業用水でございます。なお、一部発電が行なわれております。なお、南のほうに流れておりますもののうち、特に西のほうとおっしゃいましたのは、播磨地区に流れておる加古川、揖保川をおさしになったと思いますが、これらにつきましては、もちろん農業用水が最も多く占めておりますが、さらに上水道並びに工業用水道に使用されております。特に揖保川におきましては、県営の工業用水道を、また市川、加古川等におきましてもただいま工事を施工中でございます。  なお、東部と申しますのは、阪神地区と存じますが、阪神地区の武庫川、猪名川等は、農業用水もございますけれども、主として上水道に使われておりまして、この地区は非常に水が足りませんので、他の地区から上水道並びに工業用水道の水を受け入れておる、こういう状況でごいざます。
  80. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そのような状況のもとにある各水系で、大体河川に対する事業の大体の目標、要綱をごく簡単でよろしゅうごいざますが伺ってみたい。たとえば治水あるいは利水に対しまして、その他特殊なダム工事等につきまして、いろいろと河川工事計画があると思います。それは大体どういう順序になるのでしょうね。
  81. 片岡武

    片岡参考人 河川のいろいろな事業を大分けいたしますと、まず治水事業になるかと存じます。治水事業は建設大臣直轄施工でやっておられる分と、いわゆる補助河川としまして、工事名では中小河川その他でございますが、そういうものでやるべきところがございますが、大体直轄でただいま施工されておりますものは、圓山川と揖保川でございまして、合計いたしまして、本年度は約三億の治水工事が行なわれております。また、その他の河川、圓山川、加古川、千種川、市川等につきましては、国庫補助をいただきまして、中小河川工事その他でやっておりますが、これが二億一千万円ばかりでございます。合計いたしまして約五億一千万円余が治水工事でございます。そのほかにただいま実施をいたしておりますのが、市川水域におきまする工業用水道でございます。この金額はちょっとはっきり覚えておりませんが、約五万トンを補給するということで実施をしております。そのほか市川にただいまダムの調査を実施をしております。さらに加古川におきましては、加古川流域の工業用水いわゆる東播磨地区の工業用水道の事業を実施しておりまして、ただいまダムの建設と水道管の布設をやっておりますが、年額約五億程度の事業をやっております。これは今後約四年間ばかりかかる見込みであります。そのほか、東のほうにおきましては、淀川から水を引いてまいりまする阪神上水道並びに神戸市の工業用水道事業が実施をされております。これはずっと継続で行なわれております。また、尼崎、伊丹を含めます地区の工業用水道事業、こういったものが実施されております。
  82. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 水系から見まして、工業用水並びに農業用水、あるいは治水関係というふうに概観いたしますると、比較的重要なのが加古川水系でないかと考えられるのですが、その辺は県としてはどういうふうにお考えになっていますか。
  83. 片岡武

    片岡参考人 加古川水系につきましては、県も非常に重要視している一つでございます。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、播磨工業整備特別地域という指定を受けましたが、県自体の計画といたしましても、播磨に工業都市を建設するという計画があり、すでに熱度も非常に高まりまして、御案内のとおり、広畑の富土鉄をはじめといたしまして、非常にたくさんの工場が進出しております。なお今後この付近におきまして、数百万坪の、将来計画でございますが、埋め立て地をつくりまして、工場を建設する予定にしております。したがいまして、この地域の中に入ってきます各河川、特に大きいのは加古川でございますが、これは治水の面からいたしましても、利水の面からいたしましても、特にこの工業地帯の水を供給する元といたしまして、県でも非常に重視しております。したがいまして、県におきましては、ただいま学術調査を委託いたしまして、その結果がようやくまとまったところでございます。これを基本にいたしまして、今後加古川水系開発を具体的に進めていきたい、かように考えております。  先ほど申し上げましたように、すでに加古川から水を引きまして、工業用水道の計画をしておりますけれども、これはそのごく一部でございまして、将来はこの加古川から一日に二百万トン程度の水をとらなければならないのじゃないか、かように考えております。そのためにダム計画等も一応持っておりますが、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、まだ学術調査の域を出ておりませんので、具体的な計画まで至っておりませんが、以上申し上げましたように、加古川は播磨、特に東播磨地区の今後の発展あるいは開発のために非常に基礎になる重要な河川だ、このように考えております。
  84. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 加古川は兵庫県の播磨、丹波地区を分水嶺にして流れている水ではないかと思いますが、これは京都府には行っておりませんね。
  85. 片岡武

    片岡参考人 仰せのとおりでございまして、丹波の地区から南に流れ込んでおります。
  86. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 播磨の工業地帯の開発が、鉄工業だとかあるいは化学工業などの一流の企業の工場が進出してまいっておりますることは、社会周知の事実でございまするが、これはあそこが一つは阪神工業地帯の整備発展ということに伴いまして、西への大きな拠点になり、基点になっておるという事情もあることかと思います。同時にまた、用水関係におきまして、いまお述べになりましたような、加古川とかあるいは姫路の市川とか、西部の揖保川とか、そういった、比較的大河川ではありませんけれども、相当水量もあり、またその海の関係で港としても良好な条件もあり、そういうことが主たる条件として、この地域が先行的な開発条件にあると思われます。それで特に加古川水系を例にとってみますと、かなりダムの計画を、地方におきましても、用水をそこに求めるために、一そう充実を早くしてくれ、こういうような声もだんだん聞くのですが、たとえば最近のことでありましたが、川崎重工業の、加古川市平岡工場におきまして、水不足を訴えております。加古川地区におきましてこういう事情がありまして、地下水をくみ上げておるのです。ところが、あんな大きな工場が地下水というのじゃ問題になりません。そういうことを私は工場長から耳にしたことがありますが、そういう点からいたしますと、加古川水系におけるダム工事というものは、工業用水の利用の角度から見ても非常に重要だと思うんだが、こういうことにつきましては、相当積極的に、少なくとも計画を持って進めていくというふうには、県ではなさっておるのだろうか、どうだろうか、この辺をひとつ伺っておきたい。
  87. 片岡武

    片岡参考人 加古川水系について、ダムの計画を積極的にやっておるかというお尋ねかと存じます。先ほどちょっと申し上げましたように、加古川水系につきましての開発計画は、県といたしましては、積極的に、特に加古川水系一つ区切りまして、先行いたしまして、調査研究をしておる次第でございます。これがダムの計画につきましても、先ほどちょっと触れましたが、何カ所かダムの地点がございます。地点がございますけれども、こうしたダムをいよいよ建設するということに相なりまするには、先ほど河川局長からお答えがあったかに聞いておりましたが、いろいろ慎重な調査が必要になってまいります。したがいまして、この兵庫県で実施をいたしました学術調査を基本にいたしまして、今後積極的に、実際の地点にあたりまして、詳細の調査をするようにいたしたいと思いますし、特に、こうした大きな問題につきましては、国のほうにも、十分、今後、県といたしましては御相談を申し上げて、進めていきたい、このように考えております。
  88. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ところで、加古川の場合ですが、たとえば、だんだんと下に下がりまして、加古川市のほうに参りますると、治水の事業はあまりそう進捗しておらぬような声も相当聞くのであります。これは相当かけ足でいかなくちゃならぬと思いますが、また、利水につきましても、工場の計画がどんどん進んでまいりまして、一方、用水にこと欠く懸念がある。何かそういうことについて、河川管理の面とか、その他——やはり絶えず建設省との連絡、あるいはまた要請とか、指示を受けたりする等々、いろいろ交通はひんぱんに行なわれておるものと思いまするが、財政の事情もあろうと思いますけれども、やはりそういう問題についてはどういうことが障害になるのでしょうか、その辺をひとつ聞かしておいてもらいたいと思います。
  89. 片岡武

    片岡参考人 ただいまダムの問題で、国のほうとも十分お打ち合わせをしたいというふうにお答えを申し上げましたことは、ただいまお話のございました、治水問題とも非常に関連があると私考えておるためでございます。いまも御指摘がございましたが、加古川級の河川と申しますか、これはたしか二千平方キロくらいの流域を持っておりますが、この程度河川治水事業というのが、私の考えで申しますと、比較的いま一番おくれているのじゃないか。いわゆる直轄河川と中小河川の間におきまして、中小河川の上位にあるような大きな川という程度のところが一番おくれているのじゃないか。たまたま新しい河川法ができまして、今後、水系を一貫して計画を立て、おそらく、それによりまして、実施にも移れることと期待をいたしておりますが、そういたしまするならば、加古川等の治水事業というものも、いまの利水と関連いたしまして、非常に促進できるのではないかと期待しております。現在でも、加古川につきましては、約一億四、五千万円、年々改修費がついております。しかしながら、ただいまのところは、現行法によりますと、河川が加古川一本じゃなくて、区域指定といいますか、そういうことになっておりますので、あるいは杉原川といい、あるいは佐治川といい、そういった河川河川で改修が行なわれておって、加古川という大きなものに予算がつくまでになっていないような状況ではないかと思うのでございます。今後、こうした大きな川につきましては、やはり新しい河川法の趣旨によりまして、水系一貫として治水計画を考えていただけるならば、非常に治水が促進できるという期待が持てるのではないか、このように私は考えております。
  90. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いまの治水にしろ、利水にしろ、河川工事につきまして、私はしいて障害的な面を伺ったのですが、それは、財政がおもになるのか、あるいは、計画調査に大きなウエートがあるのか、河川そのものの管理主体の所在にあるのか、その他、行政あるいは地方の組合関係者との面にあるのか、その辺についていかがなものでございましょうか。もっとも、管理の面になりますと、これはあなたは、知事ではおありでありませんので、どの程度おっしゃれるかわかりませんけれども、いずれにしても、実情といたしまして、あなたの御経験から、どういう点が最も望ましい、こうありたいということ、非常に大事な仕事をかかえて、そうして、あるいはおくれてい、る調査がまだできないという面も多々あるやに見ておりまするが、どこに障害があるということに理解すればいいのでしょうか。その点どういうものでございましょうか。
  91. 片岡武

    片岡参考人 非常にむずかしいお尋ねでございますが、確かに財政的な面にいろいろ障害があることは、一つの障害であるかと思います。特に、最近、地方財政の現状からいたしますと、なかなか治水費という膨大な費用というものはいろいろ苦しいという面があるかと思います。しかし、兵庫県の場合におきましては、これはまた別でありまして、特に、播磨工業地帯というものが、兵庫県の一番重要な施策として動かしておりまして、しかも、その水の補給源が加古川はじめその他の河川である、しかも、加古川は、工業地帯になる、また、開発される地帯を流れておる川でありまして、治水利水の面からも、県といたしましては、最重点を入れるべき一つだと思っております。そのような点から、ただ簡単に、財政だけの欠陥ではない、このように考えておりますが、地方財政の現況は決して楽だということではございませんので、多少その原因もある、こういうふうに存じております。なお、その他いろいろおあげになりましたように、いろいろあると思いますが、先ほど申し上げましたように、区間認定主義でありました現行河川法で、何本かの河川がございますが、これをやっていきますのに、どの川、どの川ととるのがやはり小さいものでございますから、大きな、加古川全体というものになかなか実際に力が入らなかったという点は、私どもも残念に思っております。これも一つの原因だと思いますが、いま申し上げましたように、加古川が非常に重要な川であり、ことに、新しい河川法で、水系として認定をされ、考えられていくということになりますと、こういう重要な川を今後御認識いただけるのじゃないかというふうに期待をしておる次第でございます。
  92. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 河川管理のいずこにありやということよりも、伺ってみると、どうも、経費負担に重きを置いて見るのが妥当ような感じがいたします。調査あるいは地方民の協力、地方公共団体の協力とか、管理とか、そういう面よりも、むしろ、いま申し述べましたような財政が、やはり率直にいえば、一番大きなウエートを置くことになっておるのですかね。
  93. 片岡武

    片岡参考人 ただいまお尋ねの点は、一級としたほうがいいんじゃないか、二級にしたらいいんじゃないかというお尋ねじゃないかと思うのでございますけれども、どうもその点につきましては、私もちょっとはっきり申し上げかねますが、ともかく、こうした大きな川がなお未改修の状態で、特に上流が改修されて、中流、下流が未改修の部分が多いというようなのが実情でございますが、こういったものは、やはり金さえあれば早く進むのだということが言えるのじゃないかと思います。また管理の点でございますが、この点につきましては、要するに地元といいますか、流域の各人々の協力が得られる態勢が一番いい、こういうふうに考えております。
  94. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 さっきおっしゃった調査ですね。調査というのは、実態はよく存じませんが、非常に年月を要する、もしくは経費を要するようでありますが、その点はどんなものでしょうか。
  95. 片岡武

    片岡参考人 一がいに申し上げかねますけれども、たとえばある一つのダムの地点ということになりますと、三年ないし五年、ある程度の調査をすればいいんじゃないかという程度にお答え申し上げたいと思います。
  96. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これは河川局長にちょっと伺いたいのでありますが、いまの調査ですね。非常に科学の進歩した時代でございますし、また一方新しい技術革新で、鉱工業の建設、発展の過程は非常に急速度に進みつつあるおりから、自然を対象としたとはいえ、やはりそこに経済もしくは技術者、技術自体もしくは協力、それに何か障害があるのでしょうか。私ども、ある時間をかけないとある一定のもののデータが出ないからくるのかも存じませんけれども、ちょっと三年も要するというようなことは、少し間がゆうちょう過ぎるような感じがするのですが、いろいろな事業の計画等におきましても、一年もたたぬでも、さっと相当充実した計画、調査が完成するというふうにはいかぬものなのですか。その点どうなんですか。簡単でよろしゅうございます。
  97. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 調査そのものが完全な状態で実行されるということになれば、いま部長さんがお話しされましたけれども、私はもっと短期間にできると思います。ただ実際の問題として、特にダムのような問題でございますが、調査の段階に入るまでに、やはりいろいろな地元の人たちのお話とか、あるいはそれと別に、いわゆる水理調査というのですけれども、たとえばその川の経年のいろいろな流量とか水量あるいは水位、それから土質の状態、そういうような資料を膨大にかかえて、それと同時に、やはり土質——ダムをつくるとすればダムサイトの土質、それからそれをいよいよ高さをきめればどのくらいの戸数、うちがかかるとかなんとか、相当要るわけでありまして、そういうような障害がスムーズにいくということは、現状としては非常にむずかしいですから、実際問題としては、やはり三年ないし五年かかる、こういうような現状であります。
  98. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 水系に関するいろいろな工事とか事業というものはずいぶん長年月を要するということは、きのうも利根川ダムの視察の途中に、遊水池の買収その他について十年以上を要したということを実は伺いました。そういうこともあったのかなと思って聞いておったのですが、その辺のところはよくわかりますが、いろいろと歩調を合わせて進歩するのが望ましいと思いますが、自然を対象にした、また地元の多数人の協力が要るということであると、そういうこともあるかと思います。  そこで土木部長さんに伺うのですが、兵庫県におきましてはずいぶんたくさんな池があるのは、これは天下の名物になっております。私は二万と聞き、ある県会議員は、いや二万どころじゃない、小さいのを合わせたら五万あるとか言っておりましたが、やはりこの池も農業のかんがいをする貯水池ではありますけれども、しかし侵水の地域をかかえております関係上、あるいは驟雨等になりますと、その池がないと被害が生ずることは当然でございます。そこで、このため池、農業用のため池ですが、これが工場の進出、あるいは団地ができ、あるいは道路ができる等で、ある程度つぶされつつあるようですが、つぶされていくということになりまと、二万か五万かどちらか存じませんけれども、どちらかお教えいただきまして、そういうことは集水の関係、したがって広い意味における流水関係河川関係、特に中小河川へ、したがってまた災害へというふうないろいろな影響もあるのじゃないかと、しろうとながら想像せられるのですが、有名な兵庫県の池のことでありますので、この多数の池の問題はどういうふうにお考えになっておりましょうね。
  99. 片岡武

    片岡参考人 ただいま池の管理をどうするかということを、河川法と関連いたしまして、私からお答えいたしますには、まだ少し勉強が足りないのでございますが、新しい河川法ができますので、主管省であります建設省の御見解等を十分聞きまして、河川法にのっとりまして、必要があるときには必要な管理をする、こういうふうにしたいと私は考えております。
  100. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それでは河川局長に伺いますが、いまの池は一級、二級に属さないで、市町村長が指定いたしますれば二級河川規定を準用される河川と決定を見るわけでないでしょうか.法案解釈はそれでよろしゅうございますね。
  101. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 いまのかんがい用のため池の問題でございますが、大体普通の場合には、河川法の適用されない水面、たとえば土地改良工事で持っている、農業組合で持っている、そういうようなことでございまして、河川法の適用は、したがって、一級河川にも二級河川にもならない、こういうふうに考えております。
  102. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この法案には、単純に四条の二行目にカッコして、「公共の水隙及び水面」とありますが、水面とあるだけで、消極的に、いまのような場合を排斥するような字句も見つからぬようでありますが、これはいかがでありましょうか。
  103. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 かんがい用のため池は公共のものでないという解釈をしております。したがいまして、この河川法の適用は受けません。
  104. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうしますと、公共とは何ぞやということに、こまかくなってくるのでありますが、一万坪のため池はざらにございます。一万坪ですと数百町歩にわたっております。したがいまして、これが公共用の水面でないというのはちょっと社会通念に反すると思うのでございますが、その辺はいかがなものでしょうか。
  105. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 公共用という問題が非常に厳格に解釈されると、非常にむずかしいかもしれませんが、いわゆる農業専用の特定目的を持っておるというふうな解釈を私どもしておるわけであります。
  106. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 農業専用の特定目的を持ったら河川にあらず、そうしますと人工貯水池、あるいは少し質問が横へそれていって恐縮ですが、あるいは静岡県にある養鰻の大きな池、あるいはその他人工の湧水、これは湧水とは若干違うと思いますけれども、人工流水ということはこれは無数にあるわけですが、少しその辺は法律自体には明確になっておりません。これは、そうしますと施行令とかあるいは別に政令などでその辺を具体的になさる用意がある、こういうことになるのでしょうか。
  107. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 当然これはその趣旨によりまして、一応河川区域指定をするわけでございまするが、そういうときに、河川区域指定されるかしないかということで、はっきり出てくるわけでございます。
  108. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 指定というのは、これは管理者のほうの指定でございますね。大臣の指定になるあるいは知事指定になる、あるいは市町村長の指定になる……。そうではなしに、指定する以前に、自然的な河川または自然的な流水、人工的な流水あるいは悪水路とか運河とか発電用の水路とか、その他指定を受くべき対象になる自然及び人工の水面及び流水があるはずでございますね。それでいまお述べになってお答えになりましたのは、それを指定する基準とか、指定した結果とか、そういうものが法律以外の命令で上がってくる。しかしその以前に、それに指定されるべきもしくは指定から漏れる河川となるものがあるはずであります。それを政令もしくはその他の命令で用意をしていかれるのではないか、こういうふうな点を伺っているわけです。
  109. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 確かに先生のお話しのとおりに、指定はかってにできるのだから、指定の前に何か基準を設けたらどうか、こういうお話だと思います。確かにそうでございまするが、ここに私ども考えておりますのは、はっきりとだれが見てももう農業専用につくっておるのだ、そういうようなことで、これは非常にはっきりしておる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  110. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ところが加古川の付近には、農業の専業がなくなって兼業のみになりました。統計によりますと、二次産業、三次産業が断然ふえつつあります。加古川流域におきまして、五十年には百五十万人の人口が大体想定されております。そういうようなわけでありまして、だんだんと用途が変形しつつあるのは事実なのです。したがいまして、水田が少なくなってくればほかの用に用いる。より少なくなってくれば、さらにそれを干拓してしまう、あるいは宅地化する、工場敷地化するというふうに、伸展しつつある現状でありますので、それが河川でないならそれでいいんですよ。いいのだけれども、経過的には一応どこかでその性格を掌握しなければならぬ。それはやはり河川と見て、それを一つの他へつないで、さらに流水一つ水系の一部にするとかなんとかの工事の対象になり得る可能性が漸次できつつあるわけですね。そこでいまの段階におきまして、それをどういうふうに掌握するかということが問題だろうと思うのです。ことに、兵庫県におきまして、ともかく最低二万あるのです。これは驚くべきことです。これは農業が非常に古い農業でございますからですけれども、ただいまそういう段階にありまするので、流動的な状態にあるものと見て、そこでその池水なるものをどういうふうに見るかというふうなことは、やはり問題だろうと思うのです。そこでそれを法律制定の際に明らかにしておく、将来それを扱うものを明らかにしておくというふうにする必要がある。実はもっと端的に申しますと、一万坪なら一万坪あるのです。その池を、あるときに処分しちゃったら、その処分した金の持って行き場に困っちゃった。なぜならば、その池の所有者はだれだろうかということになったのです。いや村のものだ、百姓のものだ、いやそうでなしに、これは昔からあったものだ。それならば、それは特別財産でどこか保護したらどうかというようなことになったり、そういう問題が実はあるわけなんです。だからいま水面となっておりまするので、そのようなものはここにいう水面でないというのならば、何か法律、命令等によって明らかにしておきませんと、運用面において当事者は困るのじゃないか、こういうふうに思いますので、一応尋ねたのですがね。
  111. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 よく御趣旨はわかります。一応一般的には、そういうため池というものはいわゆる特定の目的だということで考えておりますが、先生がいまお話しのとおりに、実際はそういうような名目で入っておるけれども、その後の状況は変わって、これは河川と非常に影響があるのだということになれば、当然河川関係ということで、そういうような河川というものに考えなければならない。  それからもう一つは、そういうもので、いろいろその中のものを規制するという問題でございまするが、これが河川管理と影響があるならば、当然河川区域として考えなければならぬ。そうでない範囲においては、それぞれの分野でやるというふうに考えております。
  112. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 部長さんになお伺ってみるのでございますが、私の見るところでは、一般的には社会に著名な川というのがすぐに一級河川と連想するようなふうで、したがって河川法というと、何か一級、二級、そこに重点を置いて施策するような感じがするわけですが、実は社会生活の実情から見ますると、むしろ小さい名もないような幅三間か四間くらな川で、しかし毎年はんらんするというのはずいぶんとございます。その辺が非常に大事であります。そこで兵庫県の場合におきましても、これは市町村長が指定するということになると、この法案によりますれば、法の百条によりまして、二級河川規定が準用されておるようでありますが、この問題は相当重視して、地方都道府県知事は実際に行政をやっていくのだろうと思うのですが、小さな川で、ときにははんらんし、豪雨のたびに水害を起こしたりするようなのがずいぶんとあるわけなんですが、こういうものにつきましては、これは何か特別に、こういう機会に、たとえば維持改良とか、災害復旧とかということについて特別な配慮をしておかねばならぬということを、地方行政の実際の経験から見て、お感じになりませんでしょうかね。
  113. 片岡武

    片岡参考人 ただいまお話の川は、非常に小さな川であるけれども、地方的に洪水の被害等が大きい、あるいはその他産業上重要な地位にある川で、現在の準用河川にもなっておらぬ、そういう川が今度は二級河川にもならぬが、それに対して何か措置を考えておるかという御直間だと思いますが、やはりこの第五条でございますか、二級河川というものを指定する、この法律に準拠いたしまして、今後そういった川につきましても、十分研究いたしていきたいと思っております。
  114. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 自治省の財政局の方にお尋ねするのですが、いま土木部長さんにお尋ねしました問題点は、つまり一級河川、大臣の管理する河川に属しない、知事管理する河川にも属しない、ただし河川であるには間違いない、そして小さな川で、ときどき災害も起こる、したがって、地方住民にとりましても、そのあたりに工場の進出等を考慮しましても非常に重要である、こういうのがずいぶんたくさんありまするが、そこで、こういう際に、国の保護ないしは地方公共団体のこれに対する財政的なかまえ、用意というものが相当必要だろうと思うのですが、維持改良あるいは災害復旧などにつきましては、事実上どういうふうな財政的扱いをしていくということになるのでしょうか。
  115. 山本悟

    山本説明員 ただいまの新河川法によりまする一級、二級以外の、従来で申し上げますと、いわゆる普通河川、そのうちで市町村長が指定をいたしますと、今後は二級河川法律関係が準用されるという制度が新しくできるようでございます。従来の適用河川準用河川関係経費につきましては、地方交付税の配分なり、あるいは起債の配分等におきまして、それぞれ基礎があってやっていたわけでございますが、単純な市町村の管理とされております普通河川につきましては、その実態といったような数字も的確につかめないような状況でございました関係上、正確な要素で交付税の積算基礎にも入ってこないというような状況であるわけであります。今後新河川法によりまして、市町村長の指定によって法が準用されるというようなものが相当出てくるということになってまいりますれば、的確なかっこうで交付税上も積算をするというようなことも考えていかなければならぬじゃないかというような問題が起こってまいるだろうと思います。ただこれは、どの程度どういうかっこうでそういうものが出てくるか、私どもでも現在十分つかまえられる状況でもございませんものですから、将来の問題として、そういう意味では検討が必要になってくるのじゃないか、かように存じているわけでございます。
  116. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この指定を受けまする場合には、それぞれ維持改良なり災害のときの備えなりは、相当地方財政に計画されていかなければならないと思うのですが、これはただいまの交付税法によりまして、行政の項目にはなっておらぬのですか、なっておるのと違うのですか。たとえば災害の場合はあるようでありますが、維持改良につきましては、それは交付税が交付されるということになるのじゃないですか。
  117. 山本悟

    山本説明員 御指摘のとおり、交付税の基準財政需要額の計算上、災害関係は、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法が適用になるそうでございますので、その分で起債を起こしましたら、元利償還金が交付税上も入ってまいるというかっこうになっております。  それから、普通交付税の計算に使っております経費の種類といたしましては、府県分につきましては、河川費というのを起こしております。そして河川の延長を測定単位にいたしまして、必要額の計算をするということをいたしておりますが、市町村分につきましては、現在まだ河川費というものは起こしておりません。ただ河川費を起こしていないから、河川関係を全部シャットアウトしているかというと、必ずしもそうではございませんで、市町村管理河川については、そもそも何キロメートル河川があるかということさえわかっていないという状況でございますので、各団体別に計算ができない状況でございます。実際を申しますと、やむを得ず、その他の諸費というところに、市町村の面積を測定単位にいたしております。そういうもので面積の単位費用をつくりまして、一平方キロ当たり幾らということでやっておりますが、そういう際には、そういう市町村がやっております普通河川のための経費というものも考えて単位費用をつくっておる、こういうやり方でやっているわけでございます。  府県の場合には、準用河川、適用河川ということで、数字も非常にはっきりいたしておりますし、計算もできるわけであります。市町村の場合には、面積でもって代用するという荒っぽい形になっておるというのが実情でございます。
  118. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 特に市町村の財政が、自治省の発表によりましても、三十七年度の地方財政の白書のようなもので発表したところによると、四百以上の団体が赤字が出ておるようであります。したがいまして、地方財政が一般的にだんだんと窮屈になってくると、特に国の事務が地方負担させられておるというようなものも次第にふえる状況で、このようなことを思いますると、地方財政の将来のために、この機会に積極的に、いまのようなその他に属せしむるのではなくて、各市町村ごとに明確にこれをあげて、そして財政援助もしくは交付税を交付し得る対象を明らかにしていくという措置がとられることが、この際は必要でないかと思いまするので、ひとつその点を積極的に省内の意見を取りまとめられるようにお運びを願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  119. 山本悟

    山本説明員 御指摘のように、将来の問題といたしまして、この新制度によりますと、指定がどの程度されてくるか、そういったような状況を見ながら、検討を続けてまいりたい、かように思います。
  120. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 部長さん、ちょっと伺いますが、あるいはこういうことはあなた自身で集計されておらないかもしれませんが、過日兵庫の県会議員に、一体いま申しましたような一級にも二級にも属さないが、しかし大事な、特に治水の面から見たりあるいは小さな用水路的な河川として考えるときに非常に大事な河川、こういうものを拾ったらどれくらいあるだろうかと話しましたところ、その人は兵庫県で三日間たんねんに調査してくれて、四千四百ありますという報告があったのです。これは詳しい正確なデータでないので、ここだけでお聞き流し願ってもいいのですけれども、とにかくこの問題は、掘り下げていくと、意外に民衆生活に重要な関係を持った問題が伏在しておるように思うのです。やはり県の総合行政の見地から見まして、有名な川だけに力を入れるのでなしに、無名な川でそして社会生活に重要な関連のあるようなものを片っ端から拾い上げて、そしてその他の地方公共団体と協力するということが望ましいと思いますが、いかがなものでございましょうか。
  121. 片岡武

    片岡参考人 先ほどお答えいたしましたように、その点につきましては、今後も十分注意をし、調査をいたしたいと思っております。
  122. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 局長にちょっと伺いますが、いまの一級、二級に属しない、そして二級を準用する河川指定をいたしましたものは、もちろん例の台帳に載るのでございますね。そこであなたのほうとしては、指定はしないけれども、指定すればできるというようなものについて、注意的に自治省とでも御相談になって、広い意味における河川管理行政の見地から、国のお立場から地方自治体に注意を促して、積極的に求めるという手をお打ちになることもむだじゃないと思いますが、いかがでしょうか。
  123. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 いま先生お話しのとおりに、やはり河川水系一貫という大きな目から言えば、そういうことは十分配慮してやらなければならぬ、こういうように思います。
  124. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 なお、最後に部長さんに伺っておきますが、兵庫県といたしまして、次第に農業よりも鉱工業の発展の速度が速くて、農業は一種の停滞ぎみのようにも私は感じておるのですが、しからば特に工業用水という問題にぶつかっていきますが、工業用水につきまして、河川流水も大事だが、同時にやむを得ずいま地下水を使っておるというような、いま私が例をあげました一流工場の加古川の川崎重工業にその実例があるのですが、その地下水ですら、地下水とか伏流水とかいうものにつきまして、地下水を使えば河川流水が減るとか、あるいはその付近の飲用水が減るとか、何かそういうこともあるようですけれども、地下水につきましては、いまのところ格別施策あるいは事業というものはないのですか。
  125. 片岡武

    片岡参考人 地下水の問題につきましては、直接河川法関係ないことでございますが、何ぶん河川開発ができるまでに、やはり地下水をとることが早いので、これを若干開発しておりますが、兵庫県につきましては、御案内のとおり、すでに地下水面も逐次低下をしておりますので、これが開発にはある程度限度があるというように考えております。
  126. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっと忘れておりましたが、淀川の水系のあの水を飲用水として、上水道として神戸に引いておる。さらにそれを西部にも引く、こういう計画はあるわけですか。
  127. 片岡武

    片岡参考人 ただいま私どものほうで計画しておりますのは、淀川の水は明石まで引いてくるという範囲で考えております。
  128. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 あなたへの質問はこれで終わることにいたします。  なお、時間がたちましたので、簡単にひとつ建設省当局に伺っておきたい。
  129. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 参考人はよろしゅうございますか。——片岡参考人には、遠路当委員会に御出席をいただきまして、長時間貴重な御意見を賜わり、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
  130. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 実は四十三国会におきまして、この法案について相当審議が行なわれまして、多少内容において変わっておると思いますけれども、そういう会議録もあることですから、なるべく重複は避けたいと思いますが、二、三の点につきまして、あるいは重複になるかと思いますけれども、この機会に、なお私どもとしまして明らかにしておかねばなるまいと、こう考えます。  御出席になっておりますのは、そうしますと……。自治省も農林省もよろしゅうございますからどうぞ。建設省はどなたですか。——河川局長さんと一問一答みたいになってしまいますが、非常に重要な画期的な法案と取り組んでおいでになりますので、きわめて核心に触れた、もしくはほんとうにそこをついたような御検討の結果、これが立案せられたものと思っております。なお、前々国会におきましていろいろと議論のあった点が、若干でもさらに新しい法案に取り入れられているという態度は、非常に好ましいことであると考えております。事、さほどにどうも考えるとむずかしいので、私も正直な告白をすれば、河川法と初めて取り組みますので、百八条からの河川法を読むのは実際三べんも五へも汗かいた次第であります。  そこで、非常に初歩的なことで恐縮ですけれども、ひとつ重複をいとわずして、なおこの際明らかにすることをお許しを願いたいのです。そこで私は、形式論とお思いなさらずに聞いてもらいたいのだが、どうしても法の体系といたしましては、やはり何らかの形で、河川とは何であるかということをほんとうに端的にしてほしかったのです。この法案によりますと、自然の河川あり、そしてまた法律上の河川あり、つまり政令によって指定したものが法律上の河川で、指定を受けないものは自然の河川である、こういうことになっておるので、どうもこの点が、法律の体系といたしましては、明治二十九年以来あまり進歩がない感じがいたしますのですが、むずかしいことはよくわかります。山についての法律をつくるときに、富士山とは何ぞやということの定義はちょっとむずかしいと思いますが、その辺は何とかこれを、河川につきましてもう少し、河川なるものの概念を明白にすることはできなかったものであろうか。またする必要がないのであろうか。河川の定義というものを、ずばりと自然もそれも貫いて、これを明らかにするということはできぬものであろうか、その辺はどうなんでございますか。長い御答弁は要りませんから……。
  131. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 この問題は、先ほどもちょっと参考人の先生が触れたと思いますけれども、河川とは何ぞやという概念は一応私ども持っておるわけでございます。いわゆる河川という、われわれが常識的に持つ概念というものであるならば、これは表現できるかと思います。ただしこれは文学的表現になるといいますか、そういうような文章上の表現になるわけでございますが、私どもがこの河川という言葉を使い河川をどういうふうに管理し、どういうふうにそれを育てていくかということになりますと、やはりいろいろな工事計画を立て工事実施し、しかもそれらのものについていろいろな行政的な管理をする、そういう区域というものが一つ問題になってくるんじゃないか。そこで、ここに書いてあるこの河川法に入ってくる河川の、そういうような工事計画を立て、あるいは行政管理をする区域ということを明確にするために設けられたものが、この条文の中ではっきりするわけでございます。それは一級河川、二級河川、それからこれらに準用する河川、それらが、われわれが行政的に河川として維持管理し得る範囲であり、またその範囲において、こういう公益性あるいは行政管理をすることによって、河川というものの実態が十分に公益あるいは維持管理が全うされる、こういうことでございますから、やはり河川区域とか、そういうものの指定というものが条文にはっきりすれば問題ないんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  132. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 条文にはっきりすれば問題はないのです。条文にはっきりしないで、政府がはっきりさそうとなさるのです。条文にははっきりいたしておりません。条文には、やはり自然河川が書いてある。その自然河川を、行政行為によって法律河川規定する、そこで初めて法律上の河川の資格ができる、こういうことになるのですから、だからこの前のときも、その点御質問したわけですが、やはり人間は人間なんです。人間は人間としてある資格を与えることはわかる。しかしその前に、人間という定義はやはりこしらえてもらわないといけません。近来の法律の形は、一応劈頭に目的が書かれ、次に語の定義が書かれ、次には語の定義からどういうふうに法律を扱っていくかということを順次展開するのが法律の形でございます。そこで、これは何を私は言うかといえば、それならば、政府にしたって、どれをきめようかというときに、前にずらっと並ぶものを、どれをまずきめると予定する対象に限定するかということは、政府はおわかりになっておらぬ。それは、ある基準を持ってきて、基準の鏡に当てはめて、ものさしに当てはめてみるということなんですね。それならその基準をもっと明確にでも打ち出すことができておったら、この議論も非常に影が薄くなってくるわけです。これはさっきの田上教授の言われた点にひっかかってくるのです。ひっかかってくるけれども、この基準たるや、四条によれば、抽象概念にすぎません。これは各種の法律の第一条に書いてある字句と同じことです。経済発展のために、あるいは何とか地域格差をなくすために、というようなことをみな書いてありますが、これは一つことばです。さっきあなたがお述べになった文章です。文章で、平和のために何とかするというのと同じことです。そうでなしに、具体性を持った基準があるのならばなおよろしい。その具体性をこれからつくるというのですからね。実はこれからものさしをつくって、それからというのですから、この法律ができたときには、まだいわば自然の河川だけがあって、法律概念はないと言うたら少し言い過ぎですけれども、そういうことになるのじゃないか。そこで、どうしても河川というものの定義があげにくければ、あげたほどの価値のあるようなものを、やっぱり法律の中に明記してもらいたいです。これはいつまでいきましても議論は解決いたしません。おそらくは参議院でも、私のようなこういうしろうとくさい法律論じゃなしに、憲法論を堂々と論陣を張りましたならば、私はこの問題は相当論ずる価値があると思うのです。というほどに、最近の立法例に見ましても、異例な形です、と私は申し上げるのです。それも、河川というのはともかく人間の社会、生活、産業、文化、あらゆる問題に、日本におきましては特に重要な、歴史的な関係のある河川法の画期的改正に際してですから、さらに一段とほんとうにくふうがあってほしかったと思うのですが、その用意がまだ示されておらぬということですから、私はほんとうは非常に残念に思っております。しかし、あなたが良心的におやりになったのはよくわかるのですよ。そしてこれは非常にむずかしい問題だということはよくわかるのですが、むずかしくても踏み越えて、どうしてこれをきめることをなさらぬのだろうと思うのですが、何かありましたら、答えておいてください。これは議論が尽きませんからね。
  133. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 先生のお話には二つあると思うのですけれども、この四条に書いておりますいわゆる一級河川にするか二級河川にするかというこの指定の問題、それから、一級河川、二級河川指定の問題じゃなく、いわゆる河川区域というものをどうするか、河川というものは何ぞやということは、これは先ほども言ったとおりに、一つの概念としてはありますけれども、河川行政を営むといいますか、そういう区域というものは、やっぱりこの法律上で明示といいますか、はっきりしておればいいのじゃないかということで、私はお話しするわけでございますが、たとえば同じ川があって、流域の面積が幾らある、流量が幾らある、川幅が幾らある、勾配がどのくらいある、そういうような一つの基準もおそらく川の基準ということに成り立とうかと思います。しかし、川というものは、そういうことで、はたして管理というものの実体がそのまま生まれてくるかというと、必ずしもそうじゃないと思います。同じようなそういうような一つの流量とか面積、川幅、勾配、そういうようなことがありましても、やはりそこの地形、地目、いろいろな周囲の状況等によって、はたしてこれを管理する必要があるかどうか、一級河川にしましても、二級河川にしましても、あるいは準用河川として行為制限する場合にも、そういうようなことをやるというのは、やはりそこの実体的な認定といいますか、そういうことでその区域がきまってくるわけでございます。条文法律上そういうことを明確にするということも、私はなかなかできがたい、こういうふうに考えております。
  134. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 その点はどうもついに私の納得する明快な御答弁が得られませず、やむを得ないからこの程度でおきますが、いま四条と私申し上げましたのは三条でございます。三条は、河川とはという、これが一応定義的なものかと思います。なぜならば、一級河川と二級河川、それからいわゆる河川管理施設、こういうことになっておりますので。しかしこれは非常に残念なことだと私は考えております。そこで、かくして非常に困難な中を、この程度のものをおつくりになったのですが、また四十三国会における会議録を読んでみましても、その他の文献によってみましても、若干あらわれておりますが、この大体一級河川の認定基準というものは、どういうふうにただいまのところ御想定になっておるのでございましょう。
  135. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 第四条に「「級河川」とは、国土保全上又は国民経済上特に重要な水系政令指定したものに係る河川政令指定したものをいう。」と、こういうふうに書いてございまして、私ども、この法律で考えておりますのは、一級河川水系、何々水系、それからその中の河川名、これらにつきまして、関係都道府県知事並びに河川審議会意見を聞きまして、それによって指定をする、こういうふうに考えております。
  136. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それは手続をどう運ぶかということでございます。私の聞いておるのは、そうじゃなしに、運ぶ前に、主体的にあなたのほうでやはり基準をお持ちになっておらなければならぬ。この点は四十三国会における河野さんの答弁にもありますが、やはり事務当局として、正確にお述べいただいたほうが私はいいだろうと思うのです。でありますから、三つなら三つでもよろしゅうございますが、大体何を目標に、目標といいますか、基準の内容にお考えになっておりますか、それをひとつお述べ願いたいのです。
  137. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 この基準ということでございますが、一応ここに書いてございますとおりに、「国土保全上又は国民経済上特に重要な水系で」云々、それらの川に入るものはどういう川であるかということは、一応知事さんあるいは河川審議会意見を聞くということでございまして、私ども特別に基準を持ち合わしておるということはないわけでございますが、しかし実際問題として、運営する場合に、どういうことを頭に入れなければならぬということは当然あるわけでございまして、この内容としましては、いわゆる流域面積とか流量とか延長、それからその流域の周囲の開発状況あるいは水の需要の程度、そういうようなものを勘案いたしまして、そういう基準の考え方の中に入れていきたい、こう思っております。
  138. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 同じところに問答が停滞いたしておりますが、それならば、この法律案が可決いたしましたときに、施行令はさっそくつくるんじゃなしに、施行令は地方知事などの意見を聞いた後になるのですか。
  139. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 施行令のほうは、先ほどもお話ししましたとおりに、そういうことで水系の名前が出てさましたら、施行令で、水系の名称とそれから河川の名称を書く、こういうふうに考えております。
  140. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 施行令で四条の基準になるものをおきめになるのではないですか。つまり政令自体が、政令ができてその政令で——今度施行令は政令になるのでしょう。だから、施行令は政令になりますから、施行令ができて、そしてその政令によって、今度は知事意見を求める、知事都道府県の議決を経る、こういうことになるんですから、その施行令自体の内容つまり政令自体の内容が、一級河川、二級河川指定せられる以前に、先行制定されなければいけません。それをなさるんでしょう、こういうふうに私、だめを押しているんですが、これは当然のことですけどね。
  141. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 施行令いわゆる政令の中に基準を設けるべきじゃないかというお話なんですけれども、そういうつもりではございません。前にもお話ししましたとおり、水系の名前とそれからそれの河川の名前、それを政令に載せる、こういうことでございます。
  142. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そういたしますると、知事意見を聞きまする場合に、建設省といたしましては、「国土保全上又は国民経済上特に重要な水系」、こういうことがそのものさしとして提供せられるのでございますか。
  143. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 この知事意見とか、あるいは河川審議会に出す前に——出したあとは、いまお話しのとおりに、施行令に水系の名前と河川名が載るだけでございますが、その前に、私どもがいろいろそれを運営する間におきましては、その河川実態というものを、それをひとつはっきりしておきたい。それはどういうものかというと、まあ流域面積とか、流量とか延長とか、あるいはその沿岸の開発状況とか、最近非常に重要な水利の利用状況、こういうことでございまするが、必ずしもこれだけで認定できるわけではないと思います。いろんな地元関係の要素もございましょうし、非常にそういう面の関係は複雑でございまするから、そういうようなものを一応参考にいたしまして、それによって、知事さんの意見なり、あるいは河川審議会の御意見を聞いて決定する、こういうふうにしたいと考えております。
  144. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうすると、やはりこの流域とか延長とか人口とか産業のようなものとか、あるいは河川の数府県にまたがった利害関係があるとかいう点は、あらかじめ頭の中に置かれて、それが国土保全とか、国民経済の上に重要な水域という内容をなすというふうにお考えになっておるんですか。
  145. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 いまお話ししましたとおりに、こういうような、私が例示しました要素だけでは、この国民経済上あるいは国土保全上特に重要だというわけにはなかなかまいらない。その他のいろんな問題もありまするから、これを関係知事さんなり河川審議会の御意見を聞きまして、総合的な判断のもとに決定していきたい、こういうふうに考えております。
  146. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 やや前進いたしましたが、そこで、大きな川、小さい川というようなもの、これはよく学者の方もその点指摘しておりましたが、管理の問題と費用負担の問題と、それから大小と重要性と必ずしも一致しないという問題点ですね。私はやはり河川というものはそんなものじゃないか、こう思います。そこで、いわゆる社会的に見て非常に延長の長い、水量の大きな、流域面積の大きいのではないけれども、これはやはり一級河川になるべきものだということも、事実上はあり得るんでございますね。もしくは理論的にもあり得るんでございましょうね。
  147. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 お話しのとおりでございます。
  148. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこで、これは来年の四月から実施なさるということに法案にはなっておりますが、実施期が来年の四月一日、そういうことになりますると、実施はしたけれども、まだ一級河川、二級河川指定されておらぬというときには、そうすると、旧法がそのまま行なわれていくということになるわけですね。
  149. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 お話しのとおり、この法律そのものは四月一日から施行せられますけれども、附則にも書いてございますように、四月一日から河川指定をしてどうのこうのということは、これはでき得ませんので、この法律によりまして、この第五章のいわゆる河川審議会、これによりまして、河川指定、そういう行為は公布の日から言やれる、こういうふうにしております。
  150. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 河川指定が何ぼになるか存じませんけれども、かなり時間がかかると、その間に事実上行政的に、たとえば関東ではいち早く指定がされ、九州では十カ月おくれた、こういうような場合には、そこに行政的に、地方によって事実上担当といいまするか、政府の担当官も、もしくは地方の担当者も、言行政にちぐはぐができてお困りになりませんか。
  151. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 これはまあ指定の運営の問題だと思いますが、私ども、先生のお話しのように、きょうは一河川あしたは一河川ということでは、いろんな問題があろうかと思います。私どもやはり、第一回に指定するときには、四月一日から全部できるというようなものについて、四月一日までに同じよ言うな歩調でもって指定しておきたい、こういうふうに思っております。
  152. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 河川敷地につきまして、ちょっとお尋ねいたしたいのですが、先般、河川敷地私権の対象になり得る、こういうような御答弁がございましたね。そこで、個人の所有する河川敷地があるといった場合に、個人の所有したままにあるということでは、たとえば賃料を払うとかあるいはまたさきに遊水池の問題で課税問題が議論になっておりましたが、まあいろいろと補償の問題等々、やっかいなことがありまするが、やはりこの私権の対象になるものがあるとするならば、それは買い上げするとか、何かもっとすっきりした本質的な措置をとっておくということが、行政といたしましては非常に簡素化され、そうして筋ではないかと思うのですが、敷地問題について、その点いかがでしょうか。
  153. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 敷地の問題につきましては、いまお話しのとおりに、私権の対象になり得るということでございまするから、当然河川区域内に私権がある、しからばその私権について、私有地につきまして、いろいろな行為の規制その他をやって、非常に侵害するじゃないかというお話でございますが、これは私どもは、河川区域内にある土地というものは、元来がそういような公共の福祉の面からいってある程度やっぱり河川維持、洪水を容易に流し得るという一つの受忍義務というものが当然あると思っております。その範囲内における行為の規制でございまして、その範囲の行為の規制であれば、別にあらためて補償し、云々しなくてもやれるのじゃないかというふうに思っております。ただ問題は、それじゃ用地買収をしてどんどんやったらいいじゃないかという御意見につきましては、私ども、できるならばそういう河川区域内における問題については、できるだけ買収というようなことも進めていったほうがいいというように考えております。
  154. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これはやはりできるだけということではなしに、その点はどうするかということを明確にして、そうして買収をするとか、補償をするとか、何か明確にして、統一的にしておかねばいくまいじゃないか、やはり種々雑多な法律問題があとに残るということでは、立法のしかたとしてもまずいのじゃないか、こう思われますので、その点、敷地については特に配慮して、これこそ運営の実施の命令としましても、明確なものを打ち出しておくことが後日のためじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  155. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 この敷地の問題につきましては、御承知のとおりに、現行河川法の体系からすれば、非常にその管理の面に明確にここに記載したというふうに私ども考えております。ですからもう私権というものは当然入ってくる。だだ工事上、そこに掘さくをするとかというところにつきましては、どんどん用地買収をして、工事執行いたしますが、その他の地区につきましては、私有地というものを河川敷内に置いて、それによって管理をして十分河川管理ができるというふうに考えております。
  156. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それから漁業権、淡水漁業といううことも、特に清潔な川等においては相当重要なものになっている地域があるのでありますが、この漁業権はやはり流水使用者もしくは慣行水利権などと同じように扱って、台帳に記入するというような措置がとられるのでございましょうか。
  157. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 漁業権につきましては、河川法と全然別であるというふうに考えております。河川法関係なく、漁業権についてのいろんな許認可が別にできるというふうに考えております。ただその漁業権を行使するときに、いろいろ河川区域内に工作物をつくるとか施設をつくるとかという問題になりますと、これは河川法のいろんな行為規制にひっかかってくるというふうに考えております。
  158. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私の伺っておるのは、その点ではなくして、漁業をするためには流水を使わねばなりません。それから、船を浮かべたり等いたしますので、河川占用しなければなりません。その淡水漁業者の漁業権は、当然八十七条の、権利権原によって流水使用しておる者、これに該当するのではないか。そうすると、八十八条によりまして、届け出をして台帳に登録する、こういうことになるのではないかと思うのですが、これは二十三条からくる規定であろうと思うのですが、この点どうでありましょうか。
  159. 国宗正義

    国宗説明員 漁業権が流水に関する権利でありやいなやということにつきましては、法律上も疑義があるところでございますが、ここに申します河川の許認可の継続に関しまする第八十八条には、漁業権を受けた者はこれに入らないわけでございます。ここの八十八条は、河川法に申します二十五条、二十七条、五十五条もしくは五十七条等の規定に基づく行為者のみでありまして、漁業権はこの中には入っておらないのでございます。
  160. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうしますと、二十三条河川流水占用する者、この占用というのは、継続的占用であって、河川使用して漁獲をするということは放任行為ということになりますか。
  161. 国宗正義

    国宗説明員 漁業法におきまして川の水をいわゆる用いあるいは使う関係は、自由使用でございます。ちなみに、内水面共同漁業といいますのは物権とみなされておりますが、川に対する支配権を持つものとは一般に考えておりません。定置、区画漁業につきましては、河川敷の占用許可を得まして使う関係に入りますと、初めて河川関係を持つわけでありますが、その場合におきましては、やはり許可の継続等の措置が考えられるわけでございます。
  162. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっと私その点を調べておらぬのですが、漁業法によりまして定置漁業に入るのでしょうか。つまり長良川でアユをとったりあるいは兵庫県の加古川でアユをとったりするのは、漁業法によって定置漁業に入るのですか。
  163. 国宗正義

    国宗説明員 長良川でアユをとる場合でありますが、こういう場合は、内水面共同漁業として指定されておりまして、定置漁業でも区画漁業でもないのが一般であります。
  164. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そういたしますと、その法律によって漁業権がある、漁業者はその漁業権に基づいて流水を一時的に占用する、または常時占用するということは、他の法律によって、本法の許可を受けるという適用を除外される、こういうことになるわけですか。つまり私の聞くのは、漁業権によって権利はあるけれども、この場合は法二十三条で、ある特定の河川河川法による河川指定せられた以後は、八十七条によって従来権原に基づいて使用しておったものというふうにすべきではないかと思うのですが、そうではなしに、お答えによりますと、漁業権者は二十三条の適用から除外されておる、こういうことですか。
  165. 国宗正義

    国宗説明員 仰せのとおりでございまして、内水面漁業の許可を得た者は、河川許可を何ら得ることなくして川の水を使うことができるわけでありまして、先ほど申しましたように、自由使用でありまして、何らの排他性はないわけであります。ただし、やな、えり等を設置いたしますさような漁業権の行使等につきましては、工作物の設置の許可が要ることは申すまでもないことであります。
  166. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 なお一点。慣行による水利権ですね。これは主として農業と思いますが、慣行によるものは、やはり二十三条によりまして、流水を権原によって使用してきたもの、そうしてこれは八十七条の規定によって、許可があったとみなされ、かつ届け出をして登録を受ける、こういうことをするわけでありますね。
  167. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 慣行水利権には、二十三条とか二十四条とかのそういう許可行為という事実行為がないわけでありまして、それなくしてそういうような行為に相当するものとして認めてきたわけであります。したがって、今回の八十八条にも、そういうような慣行水利権には、一応こういうような許可行為があったものとして認めたものをそのまま引き継いでいこう、そうして尊重していこう、こういうことでございます。
  168. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そういたしますと、この届け出というのは、地方公共団体もしくはその他の団体に注意を促して届け出を求めるということになるのですか。あるいは法律が公布されたらほっておいて、届け出たければ届け出ればよいし、届け出なければあるときに失効するということになってしまうのですか、どちらですか。
  169. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 慣行水利権というものは、私どもできるだけ、いわゆる河川水系一貫の水利調整という意味から、実態の把握をしなければならないと思っておるのでありますが、この新しい水系一貫の河川法に従いまして、慣行水利権実態を明確にしていきたい。それにはやはりいわゆる水利台帳というもので明確にそういうような実態をつかむ、そのために一応届け出をしてもらうわけでありますが、やはりこれはどこまでも届け出がなければしてもらうように、いろいろな行政措置をしていきたい、こう思います。
  170. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いろいろな行政措置というのはなかなかむずかしいわけでありまして、東京におられて、もしくはどこかの出張所、官庁だけではとてもそういう協力は得られないと思います。それで、私は、地方公共団体等にも促して、届け出を求めるというふうな手をお打ちになるのか、もしくはほうっておかれるのか、重要な権利であろうと思いますし、ことに地方によりましては、水利権というものが訴訟になったりあるいは村の水騒動の原因になったり、長年の歴史を持ったところがずいぶんとあるわけです。これは実態把握、重要性の御認識は当然のことでありまして、しからば、これに相即応するような一つの手は、やはり相当綿密な手を打たぬといくまいじゃないか。あるいは学者の方の指摘しておるがごとく、ずいぶんと数がたくさんであるから、とても煩瑣でないか、煩瑣なことをよくやり得るだろうかということまでも指摘した点を私は見たわけでありますが、この点も実際において困るんじゃないかと思います。実効のあがる手をお考えにならぬといくまいと思いますが、いかがでございましょう。
  171. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 先生のお話しのとおりでございます。これを実行するには相当強固な意思によってやらなければいけないと思いますが、河川法執行体制によりまして、水利台帳というものを明確にして、そしてほんとうの水系一貫としての水利権の行使をしていくというのには、どうしてもそういう実態をつかまなければならない、そのためには河川管理者がまず主体になりまして、そういうものの実態を調査するためのいろいろな届け出を励行してもらう動作ももちろんしてもらいますし、河川管理者自身が、それに対してもっと積極的に、いろいろな実態調査もあわせてやっていかなければならぬ、こう思っております。
  172. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 河川審議会というものができるわけでございますね。新たにまたできるようですが、この審議会というのはずいぶんとたくさんにございまして、これはたいへん時代の要請であろうと思いますが、これらの審議会が河川関係についてつながりがある面が相当生じてくるだろうと思うのです、たとえば国土総合開発審議会にしましても、あるいは水資源開発審議会にしましても。そうなりますると、これらの審議会の組織とかあるいは所掌事項とか、そういうものは適当に整理をいたしまして、たとえば水系なら水系をひとつ目標にしまして、おのおのの審議会の位置づけも必要でないかというふうに思うのですが、いかがですか。
  173. 畑谷正実

    ○畑谷政府委員 ここの河川審議会というのは、御存じのとおりに、河川に関する専門的な分野におけるいろいろな重要事項について審議をしてもらうわけでございまして、たとえて言うと、一級水系規定とかあるいは工事実施基本計画、そういう専門的な河川に関する行政の面でございまして、もちろんそれとは別個に、そういう基本計画を立てる前に、国土総合開発、それとの調整はもちろんとるわけでございますが、ここにおける河川審議会というものは、特別に河川に関してそういう専門的な重要事項について審議をするということで進めていきたいと思います。
  174. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 終わります。
  175. 丹羽喬四郎

    丹羽委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、明二十三日木曜日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時十四分散会