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1964-04-10 第46回国会 衆議院 建設委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月十日(金曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 丹羽喬四郎君    理事 加藤 高藏君 理事 瀬戸山三男君    理事 服部 安司君 理事 廣瀬 正雄君    理事 福永 一臣君 理事 岡本 隆一君    理事 兒玉 末男君 理事 山中日露史君       逢澤  寛君   稻村左近四郎君       正示啓次郎君    中村 梅吉君       堀内 一雄君    堀川 恭平君       山本 幸雄君    渡辺 栄一君       井谷 正吉君    川俣 清音君       久保田鶴松君    東海林 稔君       西村 関一君    原   茂君       山崎 始男君    玉置 一徳君  出席政府委員         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         建設政務次官  鴨田 宗一君         建 設 技 官         (河川局長)  畑谷 正実君  委員外出席者         農 林 技 官         (農地局参事         官)      永田 正董君         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      森田  進君         建設事務官         (河川局次長) 国宗 正義君         専  門  員 熊本 政晴君     ————————————— 四月十日  委員金丸徳重君、原茂君及び山崎始男君辞任に  つき、その補欠として川俣清音君、西村関一君  及び東海林稔君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員川俣清音君、東海林稔君及び西村関一君辞  任につき、その補欠として金丸徳重君、山崎始  男君及び原茂君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  河川法案内閣提出第八号)  河川法施行法案内閣提出第二四号)      ————◇—————
  2. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 これより会議を開きます。  河川法案及び河川法施行法案を議題とし、審査を進めます。  両案に対する質疑を続行いたします。西村関一君。
  3. 西村関一

    西村(関)委員 河川法審議にあたりまして、一般的な立場からの審議は、建設委員プロパーの方がなさることでございますから、私は主として農業の面から見ました新河川法案問題点について、若干の質問をしてみたいと思うのでございます。  本法案は、現行河川法が明治二十九年制定になっております非常に古い法律でございますので、これに対する社会経済の異常な進歩、変革、発展に伴いまして、強い水行政基本的な改正を行なうという要請にこたえて出されたものでございまして、そういう意図のもとに国会に提案をされております本法案の趣旨については了承するものでございますが、内容的に考えまして、いろいろ疑問に感ずる点、また問題を覚える点がございますので、主として建設省当局からお答えをいただきたいのでございますが、あわせて、農林漁業関係する問題でございますから、農林省からのお答えもいただきたいと思っておるのであります。  まず第一点は、この法案性格についてでございますが、現行河川法性格は、どちらかといえば治水に限定をされておる治水法であるという性格に対しまして、本法案におきましては、利水面についても何らかの規制を行なっていこうという点が見られるのでございまして、治水利水との総合的な法律を目ざしておられるというふうにうかがわれるのであります。もともと、治水利水の統一した別の統一水法ともいうべきものを出すべきであるという意見が従来しばしば行なわれておったのでございますが、建設省利水立場からも河川法をよりよくしていく、また農林省通産省、あるいは厚生省経済企画庁等利水関係官庁におきましては、別の法律をつくるべきであるという意見も行なわれておったようでございます。しかし、関係各省との間である程度の話し合いが行なわれまして、この法案国会に提案されておる、というふうに聞いておるのでございますが、その間の事情につきまして、利水関係関係各省建設省との話し合いはどのようになっておったか、また、そういう話し合いの結果、総合的な水法としての新河川法としては、内容的に、これらの要請に対して十分にこたえているとは考えられない、いろいろな問題点があると思うのでございますが、その点につきまして、まず建設当局のお考えを承りたいと思います。
  4. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いまのお話でございまするが、私どもこの新しい法案考えましたゆえんは、現在の河川法によりますと、河川管理というものが、個々の地域といいますか、いわゆる区間主義というような制度をとりまして、その間に、お話しのとおりに、非常に社会情勢の変化があったということ、それから河川の流域が非常に開発されまして、その間に、特に水利利用の面についてもいろいろな利用の問題が起こってきておる、そういうことから考えまして、いままでのように区間主義でなく、水系を一貫した計画のもとに広域的な河川管理をする、こういうことで新しい法案考えたわけでございます。要すれば、河川の実態をつかまえまして、河川上流山間部から海に至るまでのいわゆる水系を一貫して、その間における河川管理を全部やる、なお、最近非常に問題になっておりまする水利調整、これも水系一貫としてやる、こういうふうな考えで、この法案考えた次第でございます。もちろんその中に、やはりそういうような水利の問題にしましても、河川工事にしましても、各省といろいろな関係がございまして、これらにつきましては、それぞれ各省と必要な調和をとりまして、十分なお打ち合わせをした上で、この法律をつくっておる、こういうことでございます。
  5. 西村関一

    西村(関)委員 この水系主義をとられたということについては、私も了解するのでございますが、しかし区間指定という点もこの法案の中には含まれておるので、水系主義区間主義とが混乱しておる。これはやはり関係各省との関係において、そういう内容になったものだと思うのでございますが、それらの点についてのこまかい、特に農林省との調整はどういうふうになさったのか。承るところによりますと、建設省農林省の両大臣の間に覚え書きが交換されておるというふうに聞くのでありますが、その覚え書き内容等をこの委員会にお示しを願いたいと思うのであります。
  6. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いまお話しのとおり、区間主義をとっておるというお話でございますが、御指摘のとおりに、新しい河川法によりましても、指定一級水系におきましては、指定区間というものをとりまして、この河川工事とかあるいは一定規模以下の行政の面について、知事さんにお願いするということをやっておりますが、水系一貫としてのいわゆる工事実施基本計画基本になりますそういう計画は、水系一貫でやっている。それから広域的な考えを持たなければならぬ水利行政については、これも一貫して考える、こういうことでございます。もちろんいまお話しのとおりに、水利関係におきましては、いろいろ、特に農林省との関係がございまして、それぞれその点につきましてはお打ち合わせをしておりますが、こまかい取り扱いの問題、あるいは具体的に調和をとるときにどういうふうにするかという点につきましては、覚え書きをつくりまして、それに対応する措置をしております。
  7. 西村関一

    西村(関)委員 その覚え書き内容をお示し願いたいと思うのです。
  8. 畑谷正実

    畑谷政府委員 この法案によりまして、いろいろ農林省との関係条項でございまするが、覚え書き条項といたしましては、十八項目につきまして覚え書きをこしらえております。たとえば一級河川河川法に基づく政令の制定とか、開発とか、そういうようなものもすべてやはり農林省との関係において非常な問題がございますので、そういう改廃の場合には、農林省とお打ち合わせの上そういうことをする、あるいは一級河川指定をする場合におきましても、二級河川指定をする場合においても、当局担当課農林省担当課との間で協議をした上で、そういうような下準備の上で、協議の整ったことによりましてそういう指定をする。あと国有林野または保安林もしくは保安施設、これと河川地区、こういう問題につきましても、河川保全区域または河川予定地にしようとするときには、農林大臣または都道府県知事協議する、こういう条項。それから漁港法に規定する漁港区域につきまして、これを河川区域指定しようとする場合、あるいは変更しようとする場合には、農林大臣打ち合わせをする、こういう条項。それから建設大臣河川工事を実施しましたり、あるいは農林大臣土地改良事業を実施する場合におきましては、あらかじめそれぞれの計画の策定または変更について、相互にこれを協議いたしまして、その間にそごのないようにする。あとそのほかの一般的な項目としまして、それぞれの条項におきまして、農林省といろいろな協議、お打ち合わせをすることにつきまして、各項目によって分かれておりますが、それぞれ許認可をする場合、そういうようなときに必要な協議をするというようなことを覚え書きに織り込みまして、覚え書きをつくっております。
  9. 西村関一

    西村(関)委員 ただいまのは、建設大臣農林大臣との間にかわされた覚え書きでございますね。
  10. 畑谷正実

    畑谷政府委員 両者の事務次官の間の覚え書きでございます。
  11. 西村関一

    西村(関)委員 事務次官の間にかわされた覚え書き以外に、大臣大臣との間にかわされた覚え書きというのはないのでございますか。
  12. 畑谷正実

    畑谷政府委員 大臣大臣、いわゆる法律的に協議するべきことは全部協議いたしまして、これによりまして、事務的といいますか、取り扱い上においてどういうふうにするということについて、覚え書きをとりかわしたわけでございます。
  13. 西村関一

    西村(関)委員 いま局長の言われました覚え書き内容につきましては、農林水産業に従事する者たちにとりましては、非常に影響するところが大きいので、重大な関心を持たざるを得ない点が多々含まれておると思うのでございます。  そこで、私は委員長お願いをいたしますが、ただいまの事務次官同士の間にかわされました覚え書きの一切を、本委員会に御提出を願いたい。そういうお取り計らいを委員長お願いいたしたいのでございます。よろしくお願いをいたします。  そこで、ただいまの覚え書き内容にもあることでございますが、河川及び河川区域認定についてでございます。現行河川法では、河川について私権を認めておりません。そういう規定がございますが、新法案では、河川は、公共用物として、私権存在を認めることとしております。このことは、私権存在を顧慮することなく河川認定を行ない、公共用物として必要な制限を課することができる、ということを意味するように解釈できると思うのでございます。そうなりますと、このために、農業者にとりましては、この制限が拡大をされるおそれが多分にある。こういう解釈によって、公共用物としての必要な制限を行なうという考え方に立って、その制限を拡大されるということになりますと、農業従事者利益に非常に反することが起こってくる場合があると思うのでございます。こういうようなことが顧慮されまして、ただいまの覚え書きがとりかわされたと思うのでございますが、大体こういう覚え書きがとりかわされなければならないというところに、この法律の弱点がある。それをなぜ法文化できなかったか、なぜ事務次官同士の事務的な覚え書きでその問題をカバーしようとなさったのであるか、なぜそういう点を法文化する努力をなさらなかったか。これは農林立場から申しますと、非常に大きな影響がある点でございますから、この覚え書きの将来の保証につきまして、どういう保証がなされるか、事務次官同士覚え書きを取りかわしたということで、そのことが将来の保証としてたよりになるものであるかどうか、そういう点を明確にしておいていただきたいと思うのでございます。
  14. 畑谷正実

    畑谷政府委員 もちろん、原則的には法文で大方針——方針というとおかしいかもしれませんけれども基本的な事項につきましては、先ほどお話ししたとおりに、十分に協議をいたしまして、河川管理体系を整えておるわけでございます。ただ事務的にいろいろ各省取り扱いの間において、さらにその方針が徹底するということで、覚え書きをかわしておるわけでございます。もちろんこの覚え書きをかわした以上、この線に沿いまして、事務的には万全の処置をする、こういうつもりで私ども考えて、それの確実な実行をはかるつもりでおります。
  15. 西村関一

    西村(関)委員 ただいまの覚え書き内容にもございました、上流における国有林野関係と、下流における漁港関係、一貫した水系主義をとっておられます建設省といたしまして、この一つ河川一級河川あるいは二級河川指定をいたしまする場合に、河川区間を明らかにする場合に、上流河川区域国有林野の問題、下流におけるところの漁港の問題というようなこととからみまして、重複する面ができてくる。このためにいまお話しのような覚え書き内容となったと思うのでございますが、このような問題に対しまして、どういう考え方に立って、農漁民利益制限せられ、あるいは阻害されることを防ぐことができるとお考えになっておりますか。そういう点につきまして、農林省当局のお考えを伺いたいと思います。
  16. 永田正董

    永田説明員 いまお話建設省側からありましたように、河川管理者規制を受けるというような場合には、農林大臣協議を要するということにしておりまして、また後段に言われました、下流漁港なり上流国有林あるいは保安林等との重複の問題、これにつきましても、行政の円滑をはかるということのために、相互に十分に協議を行なうというような、調整をはかることにしておるわけであります。ところで、実際問題といたしましては、いろいろの問題が出てくると思うのでありまして、たとえば被害を受けると言いますとなんですけれども、生産を多少でも低下するというようなことが——従前と変わらない場合もあろうし、従前と変わる場合もある。いろいろなことがありますけれども、われわれといたしましては、農業利益の確保という方向を十分尊重しながら、建設省協議してまいりたい、このように考えておるわけであります。
  17. 西村関一

    西村(関)委員 林野庁考え方はどうですか。
  18. 森田進

    森田説明員 ただいまお話がございました、国有林あるいは保安林あるいは保安施設地区と、河川保全区域あるいは河川予定地との重複問題でございますが、これも、建設大臣河川保全区域等指定されますときは、農林大臣協議されることになっておりますし、また農林大臣がそういった地域保安林あるいは保安施設地区あるいはまた国有林に編入するといったような場合も、事前に十分協議いたすことになっておりますので、従来の例に比べまして、重大な変更を生ずるということはないというように考えております。
  19. 西村関一

    西村(関)委員 河川認定につきまして、いま私の指摘いたしました点だけを取り上げましても、農林漁業者に対する問題点が、いまの御答弁だけでは解消されたとは思われない点があると思うのでございます。いまの御答弁から考えましても、またこの種の覚え書きが両省の間に取りかわされなければならないというような点から考えましても、本法案があくまでも治水本位であって、利水の面が軽視されておる。これは現行河川法がそうでございますから、その上に立って新しい法案が出されておる点から考えまして、一応河川の守役といいますか、そういう立場に立つ建設省としては、そういう点に重点が置かれるということは、これは国土の保全という面から考えまして、私は一面うなづかれると思うのでございますけれども、同時に、水資源の高度の利用、今日の産業経済の異常な発展に伴うところの、利水の面の重要性がいよいよ強く要望されておりまするときに、新河川法がやはりこういう要請にこたえて、治水利水とあわせた総合的な水法としての性格を多少でも帯びていこうというところに改正のねらいがある、そういうことであるだけに、われわれとしても、この法案に対して成立に協力することはやぶさかではないのでございますが、しかし、そういういまの御答弁の中から考えましただけでも、あまりにも治水偏重であって、利水の面が軽んぜられている、私はどうしてもまだそういう考え方を改めるわけにはいかないのであります。  そこで、次の問題に入りたいと思いますが、この法案の八十条、八十一条、八十二条あるいは八十三条にございます審議会、それから審議会委員及び特別委員の問題でありますが、この審議会委員は、従来のような構成であってはならないと思いますし、またその運営の面におきましても、ただいま私が触れましたような利水の面をも考慮した人選を行ない、また運営を行なうことが、この法律運営の妙を期するゆえんであろうと思うのでございますが、そういう点につきまして、組織運営について、従来の審議会がそのまま引き継がれるというようなことではいけないと思うのでございます。特に水の最大の使用者農業者であるという点から考えまして、農業水利関係の団体の代表者を入れるということが当然考えられることだと思うのでございますが、こういう審議会及び特別委員構成並びに運営につきまして、建設当局いかがお考えでございますか。
  20. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いまお話しのとおりに、河川法というものは、あらゆる面について、関係各省の数も非常に多いわけでございます。それぞれそういうような分野との競合といいますか、そういう関連がございます。したがいまして、私どもこの委員お願いするにいたしましても、それぞれそういう分野専門の人に出ていただきまして、あらゆる面から、そういう面の検討を総合的にやっていただく、こういうふうに考えております。もちろん委員の人にも、特に利水の人は除くあるいは治水だけという考えでなく、治水の面においても利水の面においても、そういうあらゆる関係専門の人においでを願いまして、総合的な審査をしていただく、こういうふうに考えております。
  21. 西村関一

    西村(関)委員 先般農林水産委員会におきまして、近幾圏整備本部調査官でしたか、この長官は、御承知のとおり河野建設大臣であり、次長以下それぞれ役職員がおられるのでありますが、ちょうどそのときは調査官農林水産委員会にまいられまして、私の質問に答えられたのでございますが、水資源保全涵養について、上流地帯に木を植えるということは、むしろその木が水を吸い上げて蒸発させて、水資源保全涵養には不利だ、こういうまことに奇妙な見解を述べられたのでありまして、私は、これは聞き捨てならないということで、鋭く追及をいたしまして、その見解を訂正せられましたけれども、これは建設省の人ではございませんが、やはり関係のある近幾圏整備本部調査官であります。そういう考え方で水の問題を取り上げられたのでは、非常に困るのでございます。これは、私は、近畿圏整備の問題と関連をいたしまして、次の委員会で、本部長にしかと伺いたいと思っておりますけれども建設省としては、水の問題を、水資源保全涵養についての造林計画というものと同列考え、その林業者事業なり利益同列考えて、水の問題を取り扱うということなくしては、私は円滑な水行政はできないと思うのでございます。その意味におきまして、ただいまの局長の、審議会なり特別委員会構成なり運用について格段の配慮をしていくという御答弁を、私は信頼してまいりたいと思いますが、いま私の申し述べましたような点について、農林漁業者立場から心配する向きが相当にあるということを、河川局長はよく理解をせられまして、今後の取り扱いに格段の御留意をお願い申し上げる次第でございます。  と同時に、八十六条にございます都道府県審議会につきましても、同様の配慮が必要であると考えますが、この点いかがでございますか。
  22. 畑谷正実

    畑谷政府委員 都道府県河川審議会においても、同じように、河川というものが、あらゆる分野のそういうような関係において、一つの完成した管理体系ができますので、こういうことからして、当然都道府県においても、そういう考えでいきたい、そういうように指導していきたい、こう思っております。
  23. 西村関一

    西村(関)委員 次に、先ほども指摘いたしました、本法案私権存在を認めておるということにつきまして、河川敷地のみならず、流水につきましても私権が認められることになるのでございますか。その点はいかがでありますか。
  24. 畑谷正実

    畑谷政府委員 河川の中には、敷地と流れる水がございまして、敷地においては、いまお話しのとおり、私権を一応認めておるわけでありますが、流水については私権対象にならない、こういうふうに考えております。
  25. 西村関一

    西村(関)委員 従来、流水使用権法律的性質につきましては、公権説私権説と両方あることは、局長も御存じのところだと思います。いま局長の御見解として、これは公権説である、私権ではないという御見解を述べられたのでありますが、しかし流水私権であるという学説もあるのでございます。また、そういう見解をとっておる官庁もあるわけでございます。そういう点につきましての調整いかがなされたのでありますか。あるいは農林省通産省厚生省等との見解食い違いはございませんでしょうか、いかがですか。
  26. 畑谷正実

    畑谷政府委員 そういう食い違いはないと考えております。ただ、ダムをつくったためにそこに水がたまる、そういうようなダム施設をつくったために効果的にたまった水がある、これをあたかも私権のようなかっこうに考え向きがございますが、これにつきましても、同じように私権対象ではない、こういうことでは、各省も明快に打ち合わせておるわけでございます。
  27. 西村関一

    西村(関)委員 一応行政官庁特許によるところの権利であって、いわゆる私法適用外にあるところのものである、こういう考え方に立って、あくまでもこれは公権であって私権ではない、そういうお考えのようでございますが、しかし私法学者及び判例の主張するところによりますと、水利権権利者が自己のために流水を使用するものであって、他の私権内容性質が同じである、こういう判例も出ております。そういう学説もあるのでございます。そういうような見地に立ちまして、行政官庁特許によりまして設定されておりましても、私権であるものがある。漁業権であるとか鉱業権であるとかいうようなものにつきまして、これは水そのものではなく、水に関係のある漁業権、あるいは川の底にあるところの鉱業権といったようなものにつきましても、これは行政官庁特許によって設定されたところの私権である、こういうことの解釈が成り立つと思うのでありますが、その点はそれでよろしゅうございますか。
  28. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いまのお話漁業権とか鉱業権の問題につきましては、少なくとも流水についてのそういう権限については、先ほどお話しのとおり、私権対象にならない、このように考えております。
  29. 西村関一

    西村(関)委員 後段に私の申し述べたのは、流水の問題とは別でございますから、その点に対するお答えがございませんでしたけれども流水については私権でない、こういう御見解を承ったわけでございます。局長の御見解は御見解でありますけれども私権であるという学説もあり判例もあるわけですから、そういう点につきましてなお御梅計を願いたい。たとえば、私の居住地でございます滋賀県の場合など、県の六分の一を占めるところの琵琶湖、これはただいま問題になっております水資源二法から申しましても、この法案立場から申しましても、水系指定される場合には淀川水系に入る。琵琶湖も全体淀川水系に入る、琵琶湖に注ぐところの河川淀川水系に入る、こういうことになるかと思うのでございます。それにつきましてもいろいろ問題があるわけでございますけれども、そういう場合に、この琵琶湖の水は一体だれのものかという問題が出てくると思うのでございます。これは、一級河川については、水系全体の監督権は建設大臣が持つということで、琵琶湖に生まれ、琵琶湖に生きて、琵琶湖とともに死んでいくところの琵琶湖の周辺の住民たちは、これは御先祖さまから受け継いでおるところのおれたちの水だと思っておるが、いやそれはそうじゃないんだ——また、滋賀県民を代表するところの滋賀県知事におきましても、この琵琶湖の水の問題については、滋賀県として発言力があると考えておっても、これは建設大臣の監督のもとにあって、滋賀県知事は一指も触れることができない、局長のお考えを推し進めてまいりますと、そういう結論になると思うのであります。そういうふうなことになりますと、私は問題はなかなか簡単には片づかないと思うのでございます。一方においては、流水私権であるという学説もあり、判例もあるという点等もあわせ考えまして、なお大きな問題が——いま一例として琵琶湖の問題をあげましたが、その他にも同じような問題があると思うのでございます。これは住民の生活に密着しておる。またいまの住民だけじゃなくて、何千年も前からずっとそこに住みなれておるところの一つの伝統と、水の問題は結びついておる。そういうものを無視することはできないと思うのでございます。そうであればこそ、流水私権説学説として一方に成り立っておるということも考えられますので、ただ従来の建設省考え方だけに固執をなさらないで、なおそれらの具体的な問題と照応しながら、これらの問題の処理に、幅のある考えのもとに、当たっていただきたいということを私は要望申し上げたいのでございます。と同時に、漁業権の問題、鉱業権の問題等につきましても、私のいま指摘いたしましたような問題もあり、これはやはり私権であるということも当然だと思いますが、前段に私が申しました点につきまして、含みのある局長の御答弁を願いたいと思うのでございます。
  30. 畑谷正実

    畑谷政府委員 お話の趣よくわかります。一応私権対象にはならないと申しますけれども、実際問題としましては、やはり一つの施設をつくって、そこにいわゆる水としての効用が当然あるわけです。その効用によって漁業を営み、あるいは発電をするとか、あるいは用水をする。こういう効用によって利用されておるということはわれわれも承知いたしておるわけでございます。ただ私権がないから、その水を使って、いろいろ効用している人たちのいままでのいろいろな権限といいますか、権利を剥奪してしまうということは全然考えておりません。その水を効用的に利用する人たちのいままでの権利とか権限というものは十分尊重していきたい、こういうように考えております。
  31. 西村関一

    西村(関)委員 いまの問題につきましては、私は一応それで了解をいたします。  次の問題に移りたいと思いますが、河川認定につきまして、農業用水路をどういうふうにお考えになっておいでになりますか。現行法によりましても、準用河川として認定されておるところがあることも御承知のところでございますが、この新しい法案におきましては、農業用水路についてはどのようにお取り扱いになるお考えですか。
  32. 畑谷正実

    畑谷政府委員 ただ単に農業用水路というふうに専門的に使っておるものは入りませんが、それも含めまして公用水といいますか、一般的な水も入るというものについては、河川考えております。
  33. 西村関一

    西村(関)委員 利根川の見沼用水、これは明らかに農業用水です。これなども、現行法によりますと、やはり準用河川としての取り扱いを受けておる、そういうものが相当あるのです。ほかの、農業用水という形のものだけではどうも入らないというふうに言われますが、このところの限界といいますか、どこまでが、農業用水だけじゃなくてほかの水も入るのだということについては、ケース・バイ・ケースでお考えになるということでございましょうけれども、これが河川認定を受けるか受けないかということによって、取り扱い上いろいろな便、不便ができてくるわけでございますが、そういう基準ですね、その点をお伺いしたいのでございます。  その前に農林省にお伺いをいたしますが、農業用水路というものが一体全国にどのくらいあるのでございますか。これは大小実に数が多いものだと思いますが、そういう統計はございますか。
  34. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 農業用水路の問題でございますが、その水を農業用に使うという意味におきまして、河川から引っぱるという意味での農業用水路、あるいは排水路から河川に落とすという意味で、河川農業用水路として利用されるという形態もあるわけでございます。  そこで御質問農業用水路の数はどのくらいあるかということに相なりますと、実はいま手元に資料は持っておらないわけでございますが、問題は、むしろ考え方といたしまして、取り入れ口とかあるいは頭首工とか、そういう施設につきましては、水系別にいるいろ調査をした資料は、農林省としては持っておるわけでございます。いわゆる農業に使われる河川が何本あるかという点につきましては、遺憾ながら資料をいま用意しておりません。
  35. 西村関一

    西村(関)委員 それでは、準用河川認定されておるところの農業用水路はどのくらいありますか。
  36. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 たとえば、いま先生御指摘の見沼代が準用河川認定されておる、そういうような事例的な調査はございますが、まことに恐縮でございますけれども、準用河川認定されておる農業用水路は幾らかということにつきましては、集計をしてみませんとちょっと出ない、かように存じます。
  37. 西村関一

    西村(関)委員 これはこの新河川法案に非常に関係がある点でございますから、農林省としては、当然この新しい法律ができた場合でも、従来から準用河川認定を受けておるところは当然認定を受けるべきだという見解をお持ちになるべきだと思うのでございますが、そういう点についての調査ができていないということは——調査はできているのでしょうが、いまここで持ち合わせていないと言われるのだろうと思いますけれども、それはすぐわかるのですか、丹羽局長どうですか。
  38. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 水利実態調査というのを、長い間農林省でやっておりまして、全国の六十河川につきましては詳細な調査をいたしまして、膨大な資料をつくっております。この六十河川を中心にいたしまして、その水利実態調査から抽出いたしますれば、その資料はできるわけであります。引き出してみないと、ちょっと何本あるか一すぐ提出できるという状態にはないのでございます。
  39. 西村関一

    西村(関)委員 従来、準用河川認定を受けているものは、今度の新しい法律におきましても、やはり認定を受けられるとお考えですか。
  40. 丹羽雅次郎

    ○丹羽(雅)政府委員 これは建設省からお答え願ったほうがいいかと存じますが、現在御審議願っている施行法で、現に準用河川認定を受けているもので、あるいは普通河川認定を受けているもので、一級河川指定を受けないものは二級河川になるということでございます。したがいまして、現在準用河川認定を受けているものは、そのまま二級河川となるというわけでございますが、実は問題はその川が一級河川、二級河川になるかどうかということの問題よりも、私どもとして非常に問題にしておりました点は、そこにおきます工事なり何なりの問題でございます。たとえば第八条で、「「河川工事」とは、河川流水によって生ずる公利を増進し、又は公害を除却し、若しくは軽減するために河川について行なう工事をいう。」となっております。そういう意味におきます工事河川に行なわれますことにつきましては、当然河川管理立場からの仕事であろう。と同時に、農業用の関係でその河川を使うことにつきましては、土地改良事業としてこれを使って、あとの許認可の関係流水の占用の許可その他の手続はございますが、工事は別個に並行できる。したがって、河川が準用河川であるか、あるいは一級河川、二級河川であるかどうかということ自身には、実際上の問題としての問題点はないというふうに私ども考えております。その川の利用のしかたその他の形におきまして、農業河川管理関係調和を十分とってまいりたい、こういう立場で、この法律ができます過程におきましていろいろ御審議もし、三十五条その他の協議事項を特に建設省と御相談いたした次第でございます。
  41. 西村関一

    西村(関)委員 受益者が農民だけに限られておるという場合には、不特定多数の利益すなわち公共のためという立場に立つ河川法では認定しがたいという点はわかるのでありますけれども、しかし従来から準用河川認定されておる面につきましては、他の要素も加味されてそうなっておると思うのでありますが、この新しい法案におきましては、その種のものについて、建設省としてはどういうふうにお考えになっておいでになりますか。
  42. 畑谷正実

    畑谷政府委員 前にお話がありましたとおりに、現在準用河川認定されておりますものは、一級河川でなければ必ず二級河川指定する、こういうたてまえであります。
  43. 西村関一

    西村(関)委員 次に河川工事についてでございますが、河川工事河川管理の中で非常に重要な事項であることは申すまでもございませんが、本法案の第八条におきまして、河川工事につきましては、ただいまも指摘がありましたように、「河川流水によって生ずる公利を増進し、又は公害を除却し、若しくは軽減するために河川について行なう工事をいう。」こういうふうにきめられてございます。そこで、公利公害とは不特定多数の人を対象とする概念でありまして、この規定によりまして、特定された農業者のための水路、そういうものの工事河川工事ではない、こういう解釈が出てくることは明らかでございます。ところが、河川管理者は、水系ごとに河川の総合的な管理が確保されなければならない、そういう形で河川工事について工事の実施計画を定めることになっておる。これは十六条に規定されておるわけでありますが、農業水利事業を行なう場合に、河川に関しましては河川法の許可を受けなければならない。これが二十三条、二十四条、二十五条であると思いますが、そういうふうになっておるのに反しまして、一般の河川工事につきましては、管理者の一方的な意思で行なうことができる。こういうような点から考えますと、上流下流にある農林水産業者は甚大な影響を受ける。何ら相談を受けないで河川工事をやられた場合に、上流下流農漁民は大きな影響を受けるということが考えられると思うのでございますが、その場合に審議会意見を聞かなければならないという一項があるだけで、利害関係者の意見が疎外される心配があると思うのでございます。この点も、先ほど覚え書きの中には、聞き漏らしたかもしれませんが、触れてなかったように思いますが、そういう点につきましての建設省のお考えいかがでございますか。
  44. 畑谷正実

    畑谷政府委員 河川工事は、本来河川管理者がやるのがたてまえでございまして、先ほどお話しのとおりに、まず水系青貝としての工事実施基本計画というのを立てまして、それに従いましてそれに合うような河川工事が実施されるわけでございます。ただその間に河川管理者以外の人が施設として持ち、財産として持つ、こういうものを築設するときには、その工事計画なり河川工事調和のとれたものにしてもらわなければならない、そういうことで、河川管理者河川管理者以外の施設の所有者とが話をして、全体の工事計画に合ったような工事をする、こういうふうな考えでございます。
  45. 西村関一

    西村(関)委員 施設の場合はいいのでございますが、つまり河川管理者以外の者がやる河川についての施設をつくる場合の協議はいいのでございますが、河川工事をやる場合に、上流下流農漁民が受けるところの被害、そういう点につきましては、一方的にやられるという心配が多分にある、こういう点を申し上げているのでございまして、河川工事河川を安定し、公利の増進及び公害の防除がねらいだということがはっきり出ておりますが、その半面、その工事を実施いたしますために、河床、水位の低下によるところの農業用水の取り水が困難になるとか、あるいはダムの築造によるところの上流部の排水が不良になるとか、さまざまな障害や犠牲が上下流に起こってくる、こういう事例が非常に多いのであります。こういう点に対して、農漁民がいたします施設の工事などについては、管理者の許可を受けなければならぬ、つまり建設省の許可を受けなければならないことになっておりますが、河川プロパーの工事につきましては、上流下流農漁民利益を、極端にいえば度外視してでもやれる。その結果、いま私が申し上げましたような、その他にもありますが、そういうような行為が起こってくる、こういう点に対して、先ほど覚え書きの中にも触れられてなかったように思うのですが、そういう点に対しまして、まず農林当局はどういうふうにお考えになっておりますか。そういう点についての心配が多分にあると私は思いますが、それは建設省との間の話し合いはどうなっておりますか。
  46. 永田正董

    永田説明員 河川工事の実施についての基本となる、河川工事基本実施計画を定めるわけであります。このときには、あらかじめ河川審議会審議を尽くすことになっております。それから政令の制定にあたって関係行政機関の間で協議する。これによって適切な工事が実施されるように、慎重に措置することを考えておるわけでございます。また、具体的に工事を実施する場合には、法の運用上、建設当局農林当局との間で協議することになっております。河川工事の実施によりまして、農林漁業に悪影響を及ぼすというようなことがないように、十分事前の措置を講じていきたい、こういうぐあいに考えております。  なお、覚え書きでも、先ほど河川局長から言われましたが、河川工事の実施について、協議事項が載っておるわけでございます。
  47. 西村関一

    西村(関)委員 河川局長にお伺いいたしますが、それらの問題についてどういう配慮をなすっていただけますか。私ども承知しております範囲におきましては、三十一年の次官通達で、河川工事をやる場合には十分に関係農民の意思を尊重するように、こういう通達が地方建設局長都道府県土木部長に出ている。これは現実には一向守られていない。守られておれば、こういうことをお尋ねしないのです。農林省もああいう御答弁をなさいますけれども、実際農林省農漁民立場に立っておられますけれども、事実私どもが現場で農業者や、また細々と内水面漁業をやっている住民に接しますと、そのためにいつも苦しんでおる。そういうことで、ただ一片の次官通牒だけでは私は解決つかない問題だと思う。こういう点に対して、この法案審議にあたって、建設当局としてはどういう配慮を今後やっていこうとお考えになりますか。
  48. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いまお話のとおりに、三十一年に、河川工事農林省との関係工事についての調整につきましては、通達で出しているわけでございまして、私どもそれを励行しているというふうに考えているわけでございます。ただ、河川工事をやるために土砂の採掘をするときにその濁り水を下流に流すとか、工事をやるために補完的にそういう施設を侵すというような、工事によりましてそういう利益をいろいろ侵害する場合があると思います。そういう場合には、当然一般的な補償とか、そういうことは関係者間でその調整をとっていかなければならないわけでございます。もしそういう点で不備があれば、私ども具体例によりまして、十分それを執行していかなければならぬ、こういうふうに思います。
  49. 西村関一

    西村(関)委員 私の申し上げておりますのは、関係農漁民との間における事前の協議が非常に不十分である。そういう点から迷惑を及ぼしている事例が非常に多いのでございます。  農林省にお伺いをいたしますが、他事業におけるかんがい排水の障害事例という農林省から出された第一集があると思うのでありますが、そういうものを見ましても、あるいは私がここに持っております「水利経済論」、水利問題の焦点という副題がついております佐藤武夫氏の書物を見ましても、非常にたくさんいま私の指摘いましましたような事例があるのでございます。これはただ単に河川工事だけでなく、その他の事業あるいは鉱害によるかんがい排水に及ぼす影響とか、工場の汚水の問題とか、その他ダム建設によるかんがん排水に及ぼす影響というような点等につきまして、数多くの事例がこの本の中にも示されておるのでございます。そういう点が、事前の協議が不十分であるということのために、一方的に農漁民に犠牲がしいられておる。これはやはり、ただ単なる次官同士の覚え書きということだけでなしに、あるいは建設省の一片の次官通牒でなしに、なぜこれを法文化しなかったか、こういう問題についての明確な規制を法文の中にきちんとしなかったかということに対して、そういうことをしなければならないという議論もあった。確かになかったらふしぎだと思うのです。この法案が出るまでの過程において、そういう議論が必ずあったと思うのでありますが、それがなされないで、そうしてこのまま、非常に弱い立場にあるところの農林漁業者利益が阻害されるという形で出てきたということについては、私はもう一つ納得がいかないのです。これは私は衆議院の図書室で借りてきたのですが、いまの他事業によるところの被害の事例について、農林省はどういう資料をお持ちになっておられますか。
  50. 永田正董

    永田説明員 他産業によるかんがい排水の障害の原因といたしましては、発電とか上水道、鉱工業用水、鉱工業の排水、治水等が考えられるわけであります。最近、これは三十一年から三十七年まででございますが、他産業との関係で用排水障害が生じた問題になっている事例を、私のほうで県の報告によってとっておるわけでございます。これは県によりまして一律の制度であるとは申せませんけれども、それによりますと、たとえば総計数でいいますと、三十一年は七十七件上がってきておりますし、三十四年は……。
  51. 西村関一

    西村(関)委員 一番多いのは三十七年ですから、三十七年だけ言ってくださればいいですよ。あと時間がないですから……。
  52. 永田正董

    永田説明員 三十一年が七十七で一番多うございます。三十七年がそれに次ぎまして六十一件でございます。その一二十七年の六十一件の中身を申し上げますと、発電に基因するものが二十六件、上水が十件、それから鉱工業用水が八件、鉱工業の排水が九件、治水その他が八件、こういうようなぐあいになっております。障害の具体的内容といたしましては、いろいろの要因が錯綜して発生している場合が非常に多いのでございますけれども、これを分けて考えてみますと、発電によります場合は、ピーク発電による流量の変化、ダム等による河床の変動、流心の変化、それから水温の低下というようなことがあげられます。上水道については、鉱工業用水、流量の減少というようなことがあげられ、鉱工業の排水につきましては、工場排水といいますか、工場廃液と申しますか、それから都市下水等による汚染、鉱毒水等による汚染等があげられます。治水その他につきましては、河川改修によって河床や流心が変わったというような問題、それから砂利採取による河床の変動、他事業による水路等の変更によって障害が起きたといったような問題があげられておるわけであります。詳細につきましては、ちょっと申しかねますが、なんなら、後刻お届けしてもけっこうだと思います。
  53. 西村関一

    西村(関)委員 私はこの書物の中で、「灌漑排水障害事例集」というものが第一集が出ておるということを承知したのです。それは私の手元にないわけですが、第二集は出ておりますか。昭和三十二年の十一月に農林省から出ておると、この本に書いてあるのです。これは農地局の計画部の資源課から出ておる。第一集が三十二年に出たままで、第二集以降が出ておるか、出てないか。これは三十八年度に出版された本でございますから、おそらくその後は出ていないのではないかと思うのですが、そういう地事業によるところのかんがい排水に及ぼした障害の事例についての資料を、この本に書いてあります事例集第一、並びにその他の関係資料をいただきたい。なおよく検討したいと思います。  また、その他のいま言われましたような点についてのいろいろな河川に関する障害が起こってきておる。これは単に河川工事だけじゃないということもいま明らかでございますけれども河川工事によるところの障害も起こってきておる。しかもそれが事前の協議が十分でないということのために、泣き寝入りをしておるというケースが非常に多いわけなんでございまして、これは問題解決への調停、仲介の問題にも関係がありますし、補償の問題にも関係がございますが、そういう点について、非常に弱い立場にあるところの農漁民の生活を守るといいますか、そういう点に対する建設省の格段の御配慮を願いたい。そういうことのために、私は時間を費してこのような質問をしているのでございますが、その点、建設省のほうからのお考えをお伺いいたしたい。
  54. 畑谷正実

    畑谷政府委員 もし、こういう覚え書きがただ通り一ぺんの書類で、事前の打ち合わせができないために、そういう事態になったということであれば、私どもははなはだ遺憾でございます。そういうことが絶対にないように今後も努力し、またそういう点でいろいろな具体例があるならば誠意をもって解決したい、こう思います。
  55. 西村関一

    西村(関)委員 その次は、河川工事の結果損害を受けました場合の補償についてでございますが、これは、法案の二十一条に定められておるようでございますが、河川工事に直接関連するところの、河川に面する土地につきましては整備されておりますが、河川区域内の私権及び間接的な被害につきましては規定がない。二十一条の中にそういう規定がないように思われます。河川工事によりますところの影響は、工事の結果、さきに私が指摘いたしましたような間接的な被害が起こってくる。水を取り入れる口の問題であるとか、河床の問題であるとか、いろいろな問題が間接的に起こってくるのでございます。そういうような場合が多いのでございますから、工事実施の準則、基本計画の策定あるいは事前協議等の活用によって、これらの問題点を避ける努力をいたさなければいけないと思うのでございます。こういう被害につきましての救済規定が弱いと思うのです。この法案の中を見ますると、間接被害に対するところの救済規定というものに欠けておる、こういうことを私は指摘せざるを得ないのであります。これが本法案一つの大きな欠陥ではないかとさえ思うのでございます。どちらかといいますと、上流下流にあるところの農漁民立場がいわば疎外されておる、こういう印象を受けざるを得ないのでございます。これは国家賠償法の規定によって補償するというお考えなのであるか。そういうことでは、私は根本的な解決にはならないと思うのです。もう少しあたたかみのある——非常に弱い立場に置かれておるところの農漁民立場に立って、これらの直接、間接の被害を救済するということに対して、河川の守り役であるところの建設省としては、十分に配慮をしてもらわなければならないと思うのでございます。泣き寝入りをするケースが非常に多い。国家賠償法の規定によってやられるということだけでは、泣き寝入りに陥る場合が非常に多いと思うのでございますが、こういう点に対して、もう一度局長から御見解を承わりたいと思います。
  56. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いまのお話は、河川工事によります直接、間接の被害があった場合の補償その他の御指摘だと思いますが、直接工事に伴いますいろいろな問題につきましては、通常の補償なり、そういうような措置によって、これが効果的に行なわれておると思います。間接的というお話でございますが、これが河川工事によるならば、これは当然補償の対象の問題になる。ただ一般的に、河川工事というようなはっきりした因果関係がない、総合的ないろいろな原因によってそういうような方々の御迷惑といいますか、いろいろないままでの効用価値がくずれる、こういうことであろうかと思いますが、やはり河川工事ということでなければ、これはまた別な問題になりますが、ただ私どもとしましては、河川工事というものは、本来河川の中を、流水を完全に安全に流し、なおかつその水がせいせいと流れる、水質の問題にしましても、それの中の用水の取水の問題にしましても、あるいは河床の安定にしましても、正常な機能のもとに流水を流すという使命を持っておるわけであります。そういう意味におきまして、河川工事もその線に沿うて努力して、お互いの損失がないように、河川工事本来の上からも、そういうような点を排除していきたい、こういうように思っております。
  57. 西村関一

    西村(関)委員 時間がありませんので、はしょって質問をしてまいりたいと思いますが、次は水利調整についてでございます。  新法案におきましては、新規水利権の許可にあたりましては、利害関係者に損失を与えない場合に限り許可するのが河川管理の原則であるというふうになっていると思います。水利権の許可によりまして、著しい損失をこうむるものがある場合には、公益性が著しく大きい場合、及び損失防止のために必要な施設を設置する場合でなければ、許可してはならないということが四十条にうたわれてございます。そして公益性が著しく大きい場合であれば、既得水利権者が損害をこうむるものがあっても許可する、こういうふうなことになるかと思うのでございますが、そういうことになりますと、公益性が著しく大きい場合といえば、たとえば発電所であるとか、あるいは上水道であるとか、工業用水であるというような点が考えられると思いますが、そのために既得の水利権を持っておるところの非常に弱い立場にある農漁民水利権が制約をされるし、あるいは失う——極端な場合をいえば、失うということになってしまうというようなことも起こり得る、こういう場合に、公益性とは、一体何を基準として公益性あるいは公益性の大小というのであるか、一方的に零細な農漁民の犠牲において、発電所あるいは上水道、工業用水等の水利権が設定されるということでは、私はどうも納得がいかないと思うのでありますが、その点の考えいかがでございますか。
  58. 畑谷正実

    畑谷政府委員 公益性という問題は非常にむずかしい解釈で、これはそれこそ個々の問題についてそれを検討しなければならぬと思います。水利権の申請におきましても、たとえば農業水利にしましても、いままで個々の水源といいますか、水門から取っておったものを、一カ所に集めて、総合的な一つ水利権というものを申請する、あるいは発電にしましても、小さい発電所を一本にして大きな発電所にする、あるいは農業水利、発電水利というものの中に、新しく工業水利が入ってくるというふうにいろいろなケースがありまして、必ずしもいま先生の御指摘のとおりに、農業水利が公益性がないとか、そういうことではないわけでございます。個々のケースについて、これを納得のいくような線で、公益性というものがおのずからきまってくるのだ、こういうふうに思います。
  59. 西村関一

    西村(関)委員 いま局長の御答弁になったような趣旨は、三十八年でありましたか、本委員会における久保田委員質問に対する河川局長お答えの中に、小規模の多くの取り入れ口を改造し、新規なものにするような場合には、公益性が大であると考える、こういう御答弁があったと会議録に出ておりますが、いまの局長の御答弁も、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  60. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いま私がお話ししましたのは、例示の問題でございまして、新しく水利権が申請されるときに、そういう申請もございます。発電所も同じように各所の発電所をまとめてやる、それから別々に水利権が出てくる、こういういろいろな問題があるわけでございます。ただ個々のケースによりまして、そのときにその公益性というものをしんしゃくしていかなければならぬ、こういうように考えているわけでございます。
  61. 西村関一

    西村(関)委員 でございますから、幾つかの取り入れ口を一つにして、みなが共有してやっていくといった場合には、これは公益性がある、こういう、三十八年の六月の、この委員会における御答弁を再確認いたしまして、同時に、農業者の従来の慣行水利権というものを圧迫しないということにつきましても、これははっきりやっていただくことができますか。
  62. 畑谷正実

    畑谷政府委員 慣行水利権については、従来慣行的に権利を持っておったものについては、この権利を侵害する、縮小する、そういうことは絶対に考えておりません。従来の慣行権を十分尊重する、こういうたてまえであります。
  63. 西村関一

    西村(関)委員 いまの御答弁明快でございますから、了解をいたします。国策に合う、いわゆる合国策ということで、公益性を割り切るということになりますと、一体何が国策に合う事業であるかということになると思うのでございます。やはり非常に悪い条件のもとに、こつこつとして、食糧の生産に日夜をあげて努力しているところの、労多くして報いられるところの少ない農民の立場、それを国策に合わないといって、その従来からの慣行水利権というものが圧迫されるようなこと、阻害されるようなことがあっては、これは政治にならないと思うのでございます。ただいまの局長の御答弁が明快でございますから、私はこの点について、これ以上お尋ねをいたしませんで、ただいまの御答弁に信頼して——私は農民の立場考えながら、いろいろとくどくどしく申し上げておりますけれども、私の意図するところは、局長もよくおわかりいただいていると思うのでございます。  そこで、その次の問題に移りたいと思います。新法案におきましては、新しい事業を起こす場合の水の新しい需要というものの対策は、既存の用水から収奪するのではなくて、あくまでも水資源の開発によってなさるべきであろう。また新たな水利使用の許可にあたりましては、本法案におきましては、利害関係者がある場合の協議(四十二条)へ損失補償(四十一条)、裁定(四十二条)、渇水時における調整、あっせん、調停(五十三条)等が規定されておりますが、これらは現実的にどのように運営されていくのでございましょうか。その基本的な方針につきまして、いま私の指摘いたしました各条文の基本的な運営方針について、簡単にお答えをいただきたいと思います。時間がありませんから、簡単でけっこうでございます。
  64. 畑谷正実

    畑谷政府委員 水利権の問題でございまするが、現在の河川についてまだ水利権としての余分のあるものについては、あながち開発しなくても水利権調整というものはできると思います。ですが、最近の異常な水需要の要望に応じまして、大都市付近におきましては、水が非常に払底いたしておりまするから、そういう地点においては、新しくやはりダムその他をもって、そういう水利源をつくらなければならぬと思います。もちろん、そういうものにつきまして調整をする場合に、やはり既存の水利権というものを十分尊重して、それぞれの調整をとっていく、どこまでも現在の既得水利権といいますか、そういうものを尊重した上で、それを調和のとられたあてはめ方をしていく、こういうようなことを基本的に考えております。
  65. 西村関一

    西村(関)委員 農業水利に関するところの紛争が、年々歳々ふえていっているのであります。これは農林省農地局編集の「農地」という雑誌の百九十二、百九十三合併号に、農業水利交渉の実態という一文が載っております。これを見ますと、その概況がきわめて簡潔によく述べられておると思うのでございます。紛争の解決の問題でございますが、その紛争の半数が、農業とほかの水利事業との間の紛争でございまして、また紛争の発生の河川につきましても、三十七年度におきましては百十件に上っております。こういうような状態でございまして、この農業水利事業の紛争の解決のために、やはり河川水系主義から申しますならば、管理者であるところの建設省が解決の衡に当たらなければならない、こういうたてまえになると思うのでございますが、河川管理者知事となっている河川の紛争につきましては、知事がこれに当たるわけなんでしょうけれども、これはこの「農地」に指摘されておるところによりますと、知事のもとにあるところの土木部あるいは河川課が、その紛争の解決に乗り出しておるよりは、むしろ農林部のほうがその解決に乗り出している場合が非常に多いのでございまして、これはそれが実態である、また農業水利の紛争でございますから、そういうふうになるのが自然だということも言えますけれども、そういう農業水利紛争の実態に対しまして、新法案におけるところの水利調整規定、及び河川審議会水利調整部会の運用の基本的な方針が、やはりもう一つ明確でない、こういうことを思うのでございます。それからこういう紛争に対しましても、建設省の出先の紛争に対する処理方針、本省から示されておるこの処理方針によって当たられると思うのでございますが、県知事管理者になっている二級河川におきましては、いま私が申し上げましたような実態が大部分であるということが示されておる。こういうことについて、水利調整規定が不明確であるというふうに私は思うのでございますが、その点につきまして、もう少し基本的な方針を、運用の面においてお出しになる必要があると考えられますが、いかがでございましょう。
  66. 畑谷正実

    畑谷政府委員 これは、方針としては、今回こういう条文をつくったことによって、非常に明確になったというふうに私ども解釈しておるわけでございます。要すれば、調停でございまするから、お互い相互間になかなか意見の一致がない、お互いの主義、主張がそれぞれ相反するということでございまして、それをいかに調停するかという問題、実際運営にあたってどうするかという問題じゃないかと思います。
  67. 西村関一

    西村(関)委員 一に運営にゆだねられておる点ではございますが、やはりそういう調整の規定につきましても、実情に即した規定を入れたほうが、運営もしやすいというふうに考えられます。局長はきわめてしやすくなったという御見解でございますけれども農業水利につきましての問題については、まだ私は紛争の解決についての規定が不十分であると考えられますから、この点については、運営の面において十分そういう問題の解決に配慮していきたい、こういう御見解のようでございますから、その点も、実情に即した運営をやってもらいたいということを強く御要望申し上げておきます。  次に、先ほどもちょっと触れましたが、慣行水利権取り扱いについてでございます。慣行水利権が、河川法改正でどのような取り扱いを受けるか、これは関係者の一番大きな関心事であると思うのでございます。当初承るところによりますと、建設省は、法律施行後三年以内に確認申請を行なって申請しないときは十年後に効力を失なう、というような原案をおつくりになったというふうに聞いております。後いろいろ議論が出まして、届け出制になって、八十八条の規定になったと聞いております。この届け出の結果は新しい水利権を設定するものではないとされておりますが、その取り扱いいかんによりましては、慣行水利権を縮小するおそれがあるというふうに考えられます。一方、非農業者の側からは、過大な届け出がなされるということも考えられます。こういう点につきまして、従来の慣行水利権農漁民の持っておりますところの慣行水利権というものが、届け出制によって圧迫されるという心配がないかどうか、これが実施にあたっては、慎重な配慮と検討が必要ではなかろうかと考えられますが、いかがでございますか。
  68. 畑谷正実

    畑谷政府委員 私ども慣行水利権につきましては、先ほど申し上げましたとおりに、従来持っておりました権限は十分に尊重いたしましてこれを取り扱っていく、こういうように考えております。  それから、八十八条によりまして届け出をしてもらいますが、これは水系一貫として水利調整水利権の行使をするという場合に、やはり水利の実態がどうなっておるかということを十分つかまなければならない。そのために水利台帳というものをつくりまして、そういうような実態をつかむ。逆に、私どもは、この届け出をしてもらいまして、実態がこうであるということを私どもが確認して、その権利を十分に尊重していくというふうに利用したい、こう思います。
  69. 西村関一

    西村(関)委員 農林省にお伺いをいたしますが、いま私が指摘いたしております慣行水利権の問題は、非常に大事だと思うのでございますが、これに対する農林省農業水利実態調査というものを、六十河川についてなすったということを、先ほど答弁がございましたが、慣行水利権内容、いろいろあると思うのでありますが、その内容等について、いまここで、時間がございませんから、お答えをいただかなくてもけっこうですが、その他の小河川にあるところの非常に小さな慣行水利権、こういうものをもうおそらく各都道府県を通じて調査をしておられると思うのでございますが、こういうものがいま審議しておりますところの河川法に非常に関係があるわけでございますし、その資料をお届けいただきたいということをお願いいたします。慣行水利権の合理化の問題は、農業近代化の上に非常に重大な意義を持つものでございますから、これの的確な資料は農林省でもちろんつかんでおられると思うのですが、われわれ審議に当たる者といたしましても、それらの資料を手に入れたいと思いますので、委員長におかれましては、資料として農林省提出されることを、ぜひ御配慮願いたいと存じます。  同僚の川俣委員がおられますので、私はあと一問だけ申しまして、質問を終わりたいと思いましたが、簡単には済みませんので、これで、不十分ではありますが、時間の関係がございますので、あと質問はまた別の機会にさしていただくことにしまして、一応私はこれで農林及び内水面漁業者の立場からの、本法案に対する質疑を終わらしていただきます。
  70. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 川俣清音君。
  71. 川俣清音

    川俣委員 私は建設省に二、三お尋ねをいたし、後に農林省にお尋ねをしていきたいと思うのでございます。  まず、建設省には、河川区域または保全区域の境界と申しますか、幅と申しますか、上限等について、どのようにお考えになっておりますか、この点を明らかにしてほしいと思うのであります。
  72. 畑谷正実

    畑谷政府委員 河川区域につきましては、河川区域と、それから河川保全区域というものがございます。河川区域の中には、いわゆる常時水の流れておるところ、それからそれに類するところ、それから堤防等の施設、こういうものを含みます。その外側に、そういう施設を安全にするためのある程度の規制措置をしなければならぬという範囲に限りまして、保全区域というものを考えております。
  73. 川俣清音

    川俣委員 どうも説明が足りないですね。河川区域という幅はどれだけをさすのか、あるいは堤防までとか、堤防ののりまでとか、あるいはのりから何メートルぐらいまでが河川区域であるとか、あるいは上限は——特に上限の場合には、どの辺までを河川区域とするものか。流域という表現ですけれども河川法河川指定された河川の流域なのか。流域ということになりますと、あるいは流水があるということになりますと、かなり上限のところにいくわけですね。たとえば建設省が砂防工事をしておるところは河川区域なのか、あるいは保全区域なのか、こういう点について明らかでないようでございますので、明らかにしてほしい、こういうことでございます。
  74. 畑谷正実

    畑谷政府委員 ここに書いてありますとおり、私、幅のところだけ御説明しましたが、長さの問題でございますが、一級水系、二級水系、ともにこの水系の長さにつきましては、それぞれ指定した区間、長さでございますので、簡単にいいますと、現在準用河川として指定されておる延長につきましては、これが一応全部河川区域、こういうふうに考えていいと思います。ただ、その上流に、河川区域でないいわゆる河川の形態をなしておるところがございます。これは市町村でいろいろな規制措置をしなければならぬ、そういうふうにすべきだという場合には、それに準ずる河川として考えております。  それから、今度は河川の上と下の問題でございますが、別に概念的には河川の底から何メートルとか上から何メートルというふうには考えておりませんが、ただいろいろな工作物を規制する場合に、それぞれこういう区間については規制措置をしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  75. 川俣清音

    川俣委員 まだあいまいなんですね。河川区域に木を植栽する、あるいは伐採する場合の制限規定がございますね。そうすると、一体植栽の可能なところとか、あるいは現に立木のあるようなところということになりますと、相当渓流の存在するところまで、いわゆる渓流の流水のあるところまでが想定されるように考えられます。そうでしょう。植栽をする制限規定、伐採の制限規定があるということになると、おそらく砂防工事までしておるところをさすのではないかという誤解を——誤解というか、そういう感じを受けるわけです。そこで上限はどこか、こうお尋ねしたわけです。建設省の砂防地域河川区域じゃない、こうなるのですか、区域なのですか。これがわからない。
  76. 畑谷正実

    畑谷政府委員 砂防法による砂防の工事をするところと、それから河川法による河川工事をするところ、あるいは規制をやるところというのは、大体別であるという考えでございまするが、たまたまやはり河川区域内に砂防指定地というものが指定される場合もございます。原則的には離れておる。砂防指定区域河川区域上流部ですから、大体一割程度はダブって指定される、こういうことでございます。
  77. 川俣清音

    川俣委員 抽象的にはわからぬわけではないのですよ。こういうところに植栽を禁ずるとか、あるいは伐採を禁ずるとか、制限をするという規定がありますところを見ると——河川区域内において云々ということですね。そうすると、砂防区域まで河川区域に入るのではないかという感じを受けるのも無理ではないと思うのです。あなたはそうじゃないとおっしゃるが、私は砂防区域まで入るのではないかという印象を受けるのです。いや、違うんだとおっしゃるわけですけれども、なぜこういう規定があるかということの疑問が出てまいりますので、あえてお尋ねをしたわけです。やはり流水存在するところ、それから砂防地域までというところは、砂防地域存在する上流地まで含まれるのかどうか。砂防地域は砂防法によって指定されますが、砂防地域存在する地域まで上限になるのかどうか、この点なんです。砂防地域河川地域は違うことはわかりますが、この区域は上限がどこまでいくのかという問題です。どこを想定されておるのか。上限をどこまで想定されておるのかという問題です。
  78. 畑谷正実

    畑谷政府委員 砂防指定地の上まで河川区域を延長するという考えは持っておりません。ただ、河川工事管理からして、そういう行為を河川管理の面から規制をしたい、こういうことでございます。
  79. 川俣清音

    川俣委員 河川管理の領域だということになると、これは河川区域じゃないのですか。特にダムの工作物の規定等がございますが、この許可、認可にあたりましても、河川区域なのか、区域よりも越えた上流のところなのか、という問題がこの法律自体に出てくるのですよ。そうじゃないですか。
  80. 国宗正義

    国宗説明員 御質問河川法、砂防法は、それぞれ受け持つ分野を持っておりまして、砂防法におきましても、やはり治水上砂防を必要とするものに向かって行政をいたしておりまして、おのずからそれぞれの受け持ちの区域はきまっております。上流の部分は砂防法、それから、下流河川法、かように相なっておりまして、たてまえといたしましては、それらの区域はいずれも建設省でやっておりますので、ダブらないようにいたしておりますが、特別の必要がございまして、ダブって指定されているところは、区域としては若干ございます。さような場合を想定して、第二十七条の土地の掘さく、盛土もしくは切土その他土地の形状を変更する行為、または竹木の植栽または伐採の規定を置いておるのではございません。砂防法におきましては、砂防法に基づいて必要なる規制並びに工事をいたすように相なりますが、下流における河川区域といえども、盛土、切土その他の形状変更のみならず、竹木の存在なしといたしませんので、現にございます竹木の伐採あるいは積極的に植栽いたしますことは、河川に影響いたしますことがございますので、それを許可にいたし、害がないようにいたす、こういう趣旨でございます。
  81. 川俣清音

    川俣委員 河川流水、水流に大きな影響を与えないようにということは、影響ということには悪影響もあれば好影響もある。たとえば耕地整理組合等あるいは土地改良等において、上流地に土砂どめをいたす場合がございます。これは工作物でしょう。これらの上流地帯河川区域になるかどうか。あなた方は、頭の中では、抽象的に河川区域だと思っておるでしょうが、これはいろんな罰則もありますることでありますから、明確にしなければならない。これも入るなら入るでよろしいのですよ。いい悪いの問題ではない。どこまでを一体考えておられるのか、どこまでを制限するのか、それによってこの法律の賛否もまたきまることだと思うのです。もっとも行為的に水流を緩和するための施設がある。あるいは洪水を予防する施設もあるわけです。そういう施設にまで制限を受けなければならないのかどうか。私は受けてもいいと思いますが、それが河川区域として制限を受けるのかどうかという問題ですね。
  82. 国宗正義

    国宗説明員 先ほど申し上げました、河川の中に木がある。それが常に害があるものではございません。無届け放任の状態にいたさないということでございまして、常に禁止するというものでは決してございません。そうしていまの上流砂防施設等を行なっておる区域まで河川区域と相なるかということにつきましては、そういうふうに相なるものではございません。ただ川の区域、いわゆる常識的にいって、洪水の疎通する区域におきまして河川区域が入り、かつ砂防区域がありますゆえんは、例をもって申せば、鬼怒川の最上流、日光の滝つぼまで河川の延長の区域に入っております。それは河川としても管理いたし、あそこに東京電力の発電並びに自家発電等がございます。それらに向かって砂防法でもって水利権を与える例がございます。河川としても管理しておりますし、かつ砂防の区域として、川の中はもとより、関係のある山腹においても砂防の工事をいたし、もっぱら砂防の事業をいたしておるわけです。さような場合は、区域がダブるわけでございます。竹木の植栽は、下流、中流に至りましても、長州並びに天然河岸において竹木を育成することは通常である場合もあります。かような竹木を無届け、無許可で伐採あるいは植栽されることは、河川に影響するところが大きい。そのことを申し上げたわけでございます。
  83. 川俣清音

    川俣委員 河川区域流水存在するところばかりではなくして、さらに河岸をも河川区域指定されるであろうことは想定されます。そのように承知されておるようであります。そうすると、河岸という場合、かなり渓谷のほうになりますると、河岸というのは、いわゆる山林地域に入るわけです。山林地内は、自然の堤防であるわけです。したがって渓谷、それも河川区域の中に入るのかどうか、こうお尋ねをしておるわけです。あるいは入ることを想定して、この法律計画されておるのかどうか。区域というのですけれども、それをつくった人には区域というのは、あるいは頭の中で想定されておるかしらないが、一般に理解させなければならないのが河川法の本質だと思うのです。そうして、理解の上に立って規制をするということでなければならないと思うのです。また罰則等もございますから、特にその点は明快にしなければならないと思うのです。そういう意味で、一体河川区域というのは、河岸にも及ぶ、これはわかります。当然なことと思います。それだけに、一体河川の上限はどこまで登るのかということが明快にならなければならないと思うのです。
  84. 畑谷正実

    畑谷政府委員 具体的な例で御説明願わなければわかりませんが、いま先生のお話しのようなことは、河川区域に入らない、こういうふうな考えでございます。
  85. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、河川区域指定する場合には、この法律に基づいて、政令によって河川指定がされるわけですが、その場合には、上限及び幅等が明示されるわけですか。
  86. 畑谷正実

    畑谷政府委員 幅は明確に明示されます。ただし上限、たとえば天井何メートルとか川底から地下に何メートル、そういうものは明示されません。ただ実際の運営にあたりましては、たとえば川底何メートル、これは場所によっても違いますけれども、いろいろな規制行為をする、あるいは川の面から何メートル以内においてはこういう工作物はいけない、こういう規制運営上いたします。しいて言えば、それが一つの限界かと思います。
  87. 川俣清音

    川俣委員 上下は別にいたしまして、上流の限度はどこまでを指定される予定ですか。
  88. 畑谷正実

    畑谷政府委員 簡単に申し上げますと、現在準用河川として指定されておる最上流、これが上流、こういうふうにお考え願えれば、大体概念がつかめると思います。
  89. 川俣清音

    川俣委員 この上限の問題については、建設省意見は必ずしもいままで定まっておらないんですよ。これは速記録をごらんなさい。根本建設大臣のときには、水の発生するところまで川だという表現を、国会速記録の中にされております。ですから、水の発生するところまでということになると、山まで入るのですね。あるいは流水存在するところまで、流水存在すれば、それが河川のもとだ、こういう解釈をされたことがあるんですよ。だから、担当者がかわれば変わるという河川はおかしいですね。建設省見解でなければならぬと思う。河川局長見解、あなたの考え方ではなくて、建設省全体として、河川は一体どこまで河川として指定するつもりかということが明確にならなければならないと思うのです。そういう意味で、当時私は予算の分科会のときにお尋ねしたのですが、それでは流水存在するところまでということになると、渇水期は川が下がって、水が多くなったときは川の延長が延びるということになるのじゃないか。じゃどこまでを河川として指定するんだ。常に政令を変えなければならない、こういう結果になる。やはり公共物でありますために、これについては明快な基準がなければならぬのじゃないか、こういう意味でお尋ねしているのです。
  90. 国宗正義

    国宗説明員 河川の上限の延長につきましては、この法案の第四条第四項によりまして、川の名前を明らかにするとともに、上限である区域を明らかに指定し、政令において明らかにいたすことにいたしております。なお上限の区域につきましては、先ほど答弁申し上げましたように、現に準用河川として管理いたしております延長をもってとりあえずは延長にいたすということでございますが、しいて申せば、川として管理する必要のある延長の区間管理する、こういうたてまえになろうかと思います。
  91. 川俣清音

    川俣委員 もう時間がないから、あまりしつこく言わないのですけれども、準用河川といいましても、準用河川指定は、時にはだんだんと延長されてきておるのが歴史的に明らかであります。現にと言うけれども、やかましく言うと、何日現在だということにならなければならないのじゃないかと思う。現にと言うけれども、現に延長しつつある。予算の制約を受けて延長がとどまっているのであって、川自身のためにとどまっているんじゃない。準用河川指定を受けたというのは、予算的な必要上、ここまでを準用河川にするということなんでしょう。河川の本質じゃない、準用河川というのは。もちろん本質もありましょうけれども、予算的に裏づけできるかどうかということによって準用河川というものが制限を受けておるのが現状でしょう。河川の本質じゃないのですよ。それは認めるでしょう。現にと言うけれども、現にというのは予算上の処置が至らないために、現にここまでよりきていないというだけのことなんだ。何も河川の本質じゃないんだ、そうお考えになりませんか、どうですか。
  92. 国宗正義

    国宗説明員 準用河川区域指定につきましては、長年建設省におきまして指定基準を定めまして、各県に指示いたしまして指定事務を行ない、現在に至っておるところでございます。準用河川に相なりますと、県知事管理ということに相なりますが、直ちに積極的に改良工事を行なうというものではございませんで、むしろ一般管理に要する経費が必要となるだけでございまして、地方交付税交付金におきましては、河川延長として基準財政需要に算定されることに相なっております。現にと申します時期は、この法律が施行されるときに、現に川として管理されておるものを、川として管理いたさないことはきわめて不都合でございますので、この法律施行の際に現に存する河川は、そのまま一級河川になるものはその区域をもってし、その他のものは二級河川に相なるといたしまして、この新法施行に伴う激変を避けるという趣旨でございます。
  93. 川俣清音

    川俣委員 現に私全国的な資料をとっておりませんが、いま府県の県会等が開かれ、あるいは終わったところもございましょうが、準用河川指定を受けたいという陳情が国会にも請願としてあらわれ、あるいは地方議会にもあらわれている。そのことは御存じでしょう。現にと言うけれども、いまの説明だと、この法律の施行のときに、こういうことですね。そうなると河川の本質じゃないのですよ。本質というものは変わるわけはないのですね。県会の多数決というものでも、河川の本質を変えるものじゃない、そういう性質のものだということなんですね。だから、現にと言うけれども、施行のとき、こういうことになるでしょう。その後河川指定を受けるということになりましょうから、あとのことは別にして、現にという意味は河川の本質じゃないが、私はあえて一体どこまで上流なのか、こうお聞きせざるを得ないのです。そういう意味で御答弁願いたい。
  94. 畑谷正実

    畑谷政府委員 ちょっと話の次元が違っておると思うのですけれども、ただ、河川といいますか、水が流れておる、そういうような状態を川というならば、山のてっぺんから川口に至る、こういうことになろうかと思います。ですからそういうものを概念的に河川というならば、そういうことでございますが、河川法によります河川というのは、そういうような実体的な、水が流れて川口まで至る、その間にいろいろな公利を増進したり公害を除去したりしなければならぬという面におきまして、どこの範囲を河川管理区域とするか、こういうことであろうと思います。ですから、この流域の開発の状態とかあるいは水利利用の状態とか、そういうことによって、こういう河川法区域というものはおのずから変わってくる、こういうふうに考えます。
  95. 川俣清音

    川俣委員 そのとおりでいい、そのとおりでいいが、どう指定されるのか。指定しなければならないのですね。どこまでを指定するのかをお尋ねしているわけだ。
  96. 畑谷正実

    畑谷政府委員 これは河川管理者が、それに従って、ここまでは管理する必要があるという範囲を指定する、こういうふうに考えております。
  97. 川俣清音

    川俣委員 河川管理者といっても、河川について詳しいわけじゃない、結局あなた方の調査に待たなければできない。河野さんがいかに実力者といえども管理者がこれを河川にすべきかどうか——これはできるものではない。多くの資料や事務当局の積算、そういうものがなければできないと思うのです。そこで、あなた方は一体どういうところまで指定しようと考えてこの法律を出されたか、という点をお尋ねしているのですが、まあ大体いいでしょう。  次に、農林省にお尋ねしたいのですけれども保全区域の中に一つ制限がございます。「土地の掘さく、盛土若しくは切土その他土地の形状を変更する行為」、これに対して農林省は、これを農業上の行為と見ないかどうか。農林省はどういうふうにお考えですか。これらの行為は農業上の行為じゃないと見るのか、農業上の行為だと解釈されるのか、農林省解釈をお尋ねしたい。
  98. 永田正董

    永田説明員 農業の担当者のほうが、農業の必要によって工事をやるという場合、それから農業以外のものが農業を営んでおる土地に何かをやるという場合があると思うのです。前者の場合には、農業の仕事であるというぐあいに考えます。農業以外がそこに工事を行ないたいというものは、これは農業以外の仕事だ、もちろんその場合には、農業側に協議される、こういうぐあいに解釈いたします。
  99. 川俣清音

    川俣委員 私があえて農林省にお尋ねしておるのは、これらの制限を受けるということになると、農業作業上の制限を受けるというふうにみなすかどうか、この点をお尋ねしているのです。農業以外のことについては、建設省にお尋ねいたします。この規定のものは、農業上の作業に影響する制限であると理解されないかどうか、農林省としての見解を聞きたい。建設省建設省見解があるだろうと思いますが、農林省協議された場合、これは検討されたと思うのです。
  100. 永田正董

    永田説明員 農業上の行為である場合には、当然建設省農林省協議をする。それが小さな場合には、出先機関の地建と地方農政局との協議、さらに小さくなりますれば、県内部の土木部と農林部との協議ということになろうかと思いますので、出先機関なり県に対しては指導の万全を期していきたい、こういうぐあいに考えます。
  101. 川俣清音

    川俣委員 いまこの法律が施行されますと、あなたの解釈のようにはならない。これは農林省協議して制限をするという規定にはなっていないわけです。しかもこれには罰則があるわけです。農業者農業を営むことによって罰則があるということはおかしいんですよ。そこで農林省はこれを検討されておるかどうか、こういうことをお尋ねしているのです。ほかのもの、盛り土をするとか、これは別ですよ。これは農林省以外のことです。これは建設省にお尋ねしますけれども、これらの行為が農業経営の上に制限を受けるというふうに読まれるのではないか、こういう点についてお尋ねいたします。
  102. 永田正董

    永田説明員 保全区域を決定する際には、当然協議農林省は受けます。その指定されたところで、農業側の行為が行なわれる場合には、これは農業の進め方と、河川保全地域としての河川法上の取り扱いとが競合するわけでございますから、これは当然協議をするということで了解をしておるわけでございます。
  103. 川俣清音

    川俣委員 協議をするというふうに、建設省農林省との間で了解がついておるという御説明のようでございましたが、それでは、こういう土地の掘さくなどやる場合、たとえばこういう場合があるのです。最近の河川では伏流水といいますか、わき水が河川の周辺に出る場合がございます。それを防ぐために、除去するために、堤防と自分の耕作地との間にみぞをつくってそこで遮断をする、こういう土地の掘さくがございますね。これは農業に付帯した行為、農業を営むため、伏流水と申しますか、あるいは湧水、これを除去しなければならぬ、これらの除去が農業者でなく、当然加害者である、管理者である建設省事業として行なわれる、こういう了解なんですか。あるいは現にありますところは補償されるという了解なんですか。
  104. 永田正董

    永田説明員 政令段階で定める点も、前提としてあるわけでございますけれども、漏水をとめるというような問題が、農業関係があるかないかということだと思います。農業関係がある場合に、それが利益のほうであるか、損のほうであるかという点で、損のほうの場合には、当然農林省のほうに協議があるという了解でございます。
  105. 川俣清音

    川俣委員 そこで、建設省にお尋ねいたしますが、現にかつての堤防等が、その足が浅いために、伏流水となって、あるいはわき水となって、——ことに砂地の地帯、あるいは河床の上がった地帯では、わき水が出る、伏流水が出てくるわけです。これをいまのような説明だと、これは建設省が補償するのか、あるいはそういう損害を起こさないように施設を講ずるのか、どちらの意味ですか。被害を与えたということになりますと——被害といっても、被害かどうか非常に問題なんですね。川が存在することによっての被害なんというものは非常に想定しにくい。しかし事実はある。河床が上がって下が砂質である、あるいは砂利質であるために、川の量が、水圧が加わりますと伏流水になって出るわけです。必ずしも河岸ばかりには出ない、かなり遠くまで出る。これは河川による被害であるかどうかというと、これは非常にむずかしい問題で、したがって、いままでも補償の対象にはなっていない。なっていないために、みずから工作をしなければならないということになり、みずから工作をすることに制限を受けるということになるから、私はこの問題をあえて取り上げたのです。
  106. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いまの問題でございますが、河川施設、たとえば堤防とか護岸とか、そういうものが伏流水といいますか、水が通るために非常に危険になる、あるいは流水を完全に疎通するために、いろいろな悪影響がある場合には、当然河川工事の一環として、伏流水をとめるという工事はいたしますが、範囲外になりますと、河川工事としては取り扱い得ない。ただ問題になりますのは、いま先生御指摘のように、実際地元の人たちがそれに対応する動作をする場合に、この規制にひっかかることは確かにひっかかると思います。ただしこれは工法その他によって、そういう行為があるときに協議といいますか、許可を受けなければならないというようなことでございまして、いろいろな動作をすることによって、その行為ができると思います。ただ動作をするときに、こういう状態でやりなさい、こういう工法でやりなさいという許可条件といいますか、そういうことがあり得るわけであります。全然禁止するということではございません。
  107. 川俣清音

    川俣委員 法律上の損害とか請求権があるかないかは別にして、被害があることが事実だとして、この被害を除くことをするならば、この規定でもよろしいと思う。被害を与えておきながら、それに許可を与えるというような考え方について問題があるんじゃないかと思うのです。そうでしょう。自分で損害を与えておいて、損害をなくするということについて、制限をするとか規制をするということはどういうわけだ。みずからそれをやるのだからして、やらせないというなら別ですよ。ほうりっぱなしにしておいて被害が出た、その作業をすることまで制限を受けなければならぬ。おそらくこういう工程でなければだめだといって、ばく大な費用をかけなければならないような施設を工事しなければならぬだろうと思う。こういう制限規定があるから、農業者でありますならば、そんな経費までかけてやりたくないということが起こってくる。それならば損害を保償するか、いやこれは公用物の直接の被害でない、そこで問題になってくるのですね。水圧によって、下の土質が悪いために、吹き出る水ですから。河川の直接の被害には違いない、水が伏流水でくるわけですから、それを除去しなければならぬ。田にいたしましても、伏流水がありますと水温が下がりますから、結局収穫に影響するという被害があるわけです。それを除かなければならぬというので、許可を受けなければならぬ、被害を与えた者が許可を要するのだと言うことは、法体制から見てもおかしいんじゃないかと思う。加害者ですよ。被害者が、被害者の要請に基づかなければ作業ができないんだ、それは少し無理じゃないでしょうか。加害者でなければ別ですよ。加害者ですよ。加害者が被害者の行為に対して制限をするということは、一体どういうことなんですか。
  108. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いま加害者、被害者というお話がございましたが、河川工事によりましてそういう新しい被害という、実態的の被害が出ておるというならば、これは当然河川工事として補償なり、河川工事としてその対策をやるべきだと思います。当然いたします。ただしそういう場合でないお話だと思うのですが。もし河川工事のためにそういうことが起こるならば、河川工事の一環として、そういうことのないように、当然河川工事として処置をいたします。
  109. 川俣清音

    川俣委員 河川工事であるかどうかということで、いつでもあなた方逃げているのですね。いままで堤防の工事が悪いわけじゃないのだ、したがってこれは川の本質から出てくる伏流水だ、こういうことで、加害者の地位を免れようとつとめておられる。従来加害者でありながら、加害者の地位を免れようとしておる。堤防工事が悪いんじゃないのだという、しかし堤防工事も、足を深くすればあるいはこれを防げるかもしらぬというのが地元の要望である場合がたくさんあります。堤防の根が深ければ遮断できるのじゃないか、それを普通の工事をやったからです。別に加害をする意思はないのだ、加害をする意思がないことは明らかです。しかし意思がなくとも、伏流水が生じた場合にはどうするのかという問題なのです。現にある問題なのです。あなたのほうの出先は、これは故意にやったのじゃないのだ、自然の災害だ、こういうことでのがれておられるわけですね。その抗弁も成り立たないとは思いません。成り立つと思いますけれども、逆に言って、こういう問題だというと、加害者が、被害を減少しようという行為に制限を加えるということは何事だということです。
  110. 国宗正義

    国宗説明員 ただいま加害、被害ということに相なりましてございますが、元来川は天から降ってきた水が洪水となって海のほうに疎通するところでございまして、そこを無害に通すために河川管理いたし、運営いたしておるわけでございますが、いま御指摘のお話のように、もしここに堤防がなければ、初めからそこらあたりの耕作はかなわないところでございまして、ここへ堤防を設置し、なお伏流水があるがゆえに、したがって加害者であるとおっしゃられる点には、ちょっと了承しかねるのでございます。防ぎつつあるところでございまして、防ぐことのまだ不十分であるという点は大いに認めるところでございます。いま洪水を防ぐことが不十分な状態において、その害を除くことは必要なことでございまして、農業者が個人でおやりになるなり、あるいは土地改良事業で、国なり県の補助を受けてやるなら、大いに望ましい事業でございます。その事業であるがゆえに、いま川の立場からの許可を要しないという点につきましては、もし河川管理者の許可を得ず、そしてその工事がさらに伏流水を助長する、あるいは積極的に洪水の疎通に害を及ぼすということに相なりますれば、その堤防はもとより、その農地も被害を受けるところでございます。したがいまして、そういう川に影響のありまするところには、最小限度のものに限っておりますが、許可を要し、そうして常に禁止するというわけではございません、害のないようにいたして、さような工事をやっていただく、こういう趣旨になっていると思います。
  111. 川俣清音

    川俣委員 堤防を築くために受ける利益もありましょう。堤防は何のために築くのです。付近の産業に被害を及ぼさないための施設として、堤防というものは考えられているのです。それが役立たない堤防となったら、堤防の意味をなさないじゃないか、そういう意味なのですよ。本来であれば、やり直すということも問題でありましょうけれども、それをするのはたいへんだ。それをとにかく自己の負担で、あるいは土地改良区の負担でやろうとすることを制限するというのは何事だ。やらなければならぬことをやらずにおいて、人の行為を制限するというようなことは越権だと私は思うのです。
  112. 畑谷正実

    畑谷政府委員 お話の趣はよくわかります。これは二つに分かれると思うのです。堤防をつくるということ、それから、そういう実態をどうするかということです。いま次長が言いましたとおりに、堤防をつくるから軽減するじゃないかという意見もありますけれども、しかしそれはそれとして、やはり堤防をつくる、つくらないにかかわらず、そういう伏流水がいろんな悪影響といいますか、いろんな問題をはらみ、非常に厳密に言うならば、堤防の下が水がある程度通って——これは程度にもよりますけれども、やはり堤防にある程度の悪影響があるということはわれわれも考える、できるだけそういう点で、そういうことのないように、もちろんしなければなりません。それからもう一つは、その河川保全区域について、先生御指摘のように、自分でそういうことをやるのをさらに制限するのじゃないかといいますけれども、これは確かに制限でございますが、もしそれを無制限にやった場合に、堤防が切れた、あるいは堤防に危害を与えて大災害を起こしたということを考慮するならば、やはり工法とかいろいろな面について、そういう点を配慮していかなければならぬ、そういうふうに考えております。
  113. 川俣清音

    川俣委員 そのために河川管理を行なうというのですから、その趣旨は私は認めざるを得ないと思うのですよ。しかし公益全体のために、ある地域のある産業に危害を与えていいということにはならないと思う。公益優先なことは認めます。そうでなければならぬ。公益を優先するために、ある他産業に大きな被害を与えてもいいということにはならない。それほど公共性の高いもの、公益性の高いものであるならば、それに対する救済措置なり、あるいは被害を与えない措置を講ずるのが、河川管理者の責任だと私は思う。そうでなければ、河川管理をまかすわけにはいかぬと思う。これだけの権限を与えるからには、それ相当の措置を講ずることが、河川管理者としての当然な責務です。管理者がいなければ別です。あらためて法律のもとにおいて管理者が生まれた。その管理の責任を果たすことが、河川法の本来の姿でなければならぬ。私はそう思う。それだからこそ権限を与えたと思うのです。河川管理の義務者はどうお考えになりますか。
  114. 畑谷正実

    畑谷政府委員 私も先生の趣旨に同感であります。ただそういうような河川管理者がおって、公害を除却し、公利を増進するということについては問題ございませんが、ただそういういろいろな河川の施設を管理する場合に、それを完全に守るというふうに、いろいろなそういう行政的な措置もやっていく、こういうことでございます。
  115. 川俣清音

    川俣委員 大体わかった。人に守らせると同時にみずからも守らなければならぬ。私はその点を指摘したい。人には守らせるけれども、自分は守らないという河川管理者は、無責任だというのです。  次に、この前の委員会で、保全地域に対して免税措置、あるいは減税措置をとる必要があるのじゃないかという質問に対して、将来大いに検討しましょうということになっておるのですが、どのような検討がなされたか、お尋ねしたいと思う。
  116. 畑谷正実

    畑谷政府委員 河川保全区域内の問題につきましては、前にいろいろ御指摘がありましたので、その後、私のほうも慎重に関係省とも打ち合わせまして、いろいろと検討したわけでございますが、いままでお話しのとおりに、許可制度にはなっておりますが、全面的にこういうものを許可しないということでなく、一定の行為の動作の間において、そういうものを規制していこうというのです。使用収益は全然なくなるということじゃございませんので、やはりまだ使用収益が残っておる、そういう観点から、これを非課税にしてしまうということはなかなかむずかしい。同時にほかの法令の、海岸保全区域とか、あるいは地すべり防止地区とか、同じようなそういう行為制限の例示もありまして、それと調和をとるには、これを非課税とするということは不適当である、こういうふうにわれわれは考えておりますが、実際問題として、こういう行為制限、あるいは制限の中に、許可しないとか、いろいろな規制の態様が違っておりますが、規制の態様によりまして、この程度に応じまして、減税の処置を、市町村に通達を出してもらって、そういう処置をしてもらうというふうには、自治省としてやっております。
  117. 川俣清音

    川俣委員 他の法令に例がないのだということでありますが、たとえば、先ほど一般的に指摘いたしました植栽、伐採の制限等が保安林にはあるわけです。公益上の必要から、植栽及び伐採の制限を受けておるのが保安林の本質でございます。この保安林については、免税措置が講ぜられておる。すなわち所有者の利益に反して、公益的に管理しなければならないというところから、免税措置がとられておる。そういうのがないわけじゃないのですよ。現にあるのです。あなたの保全区域と同じような性質のものが、保安林にはあるわけです。たとえば、植栽を禁ずる、あるいは伐採を禁ずるという規定がございます。これは森林の場合は、保安林指定を受けるわけです。保安林指定を受けますと、免税措置が講ぜられるばかりでなくて、指定を受けたものの補償の問題も出てきておるわけです。指定を受けただけでですよ。それで保安林の機能を十分発揮させようという問題がございます。したがって、これらの保全区域におきましても、同様に使用収益の制限を受けるわけですから、やはり減税措置なり免税措置なりを講じる必要があるのじゃないか。それが公益上必要だということで、個人の使用収益を制限する。個人の利益のためじゃなくて、国全体のために、あるいは公益のために、これを制限せざるを得ない。この制限はよろしいのです。当然のことです。しかし公益だけのために制限をするならば、公益性が高ければ高いほど、やはり救済措置を講ずるのが適当じゃないか、こう考えるのは私は妥当じゃないかと思う。そうして河岸、河川保全区域というものに対する理解を深めていくという形が、私は河川法の本質の姿ではないかと思う。それを御考慮願いたい。大いに検討するということですが、どのような検討をされたかということなんです。あまり検討されなかったのじゃないかと私は思うが……。
  118. 畑谷正実

    畑谷政府委員 検討は十分いたしまして、先ほどお話ししましたとおり、先生のお話しのとおりに、いわゆる保安林という問題がございます。ですけれども保安林規制措置の強さといいますか、そういうものと比較しまして、多少収益が大きい、こういうふうに考えておりますのと、それから実際の運営にあたって、非課税とはできませんが、減税の処置として、そういう実際の面で指導していきたい、こういうふうな、自治省とのいろいろな話し合いを進めまして、そういう面で運営していきたい、こういうふうに考えております。
  119. 川俣清音

    川俣委員 減税という意味は、地租、固定資産税を意味するものと思いますが、今後固定資産税の再評価の問題等が当然起こってきておるわけです。そういう意味からも、一体固定資産税については、評価は時価主義です。時価主義というのは、自治省の解釈によりまして、あるいは会計検査院の国有財産の管理のあり方から見て、時価主義というのは、客観的なものでなければならない。客観的とは何かというと、この付近の売買価格が客観的な評価だと、こういう説明がなされておる。使用収益の権原が押えられますと、押えられていない地域と同じところであっても、そこで制限を受けるのですから、やはり救済措置が必要なのではないかと思うのです。現に評価額がおそらく安くなると思う。そうして減税されなければならないということになるのだろうと思うのです。減税というのはどういうふうにお考えになっておるかわかりませんけれども、救済措置もありましょう。あるいは免税措置もあり、あるいは税の軽減措置もある。自治省あたりは、そういうところは評価を安くするんだ、こういうことのようであります。それで救済するんだ、それは救済じゃないですよ。当然な価格なんです。ただ、付近の価格に比べてみれば、制限のある土地と制限のない土地では、評価が安くなるということは当然なことです。これは別に減税措置でも何でもない、あたりまえのことなんです。そういう土地評価が安くなるような事態をつくる。人の財産を軽減するんだから、人の財産を減らす行為なんだ。これは人の財産を制限をするのですから、使用収益の権原が侵されれば、それだけ土地価格というものは安くなるわけです。だから、人の財産を減らしておいて、それは公益のためにやむを得ないんだというわけにはいかないのじゃないか。道路のような場合にはすぐ受益というものがつきまとうわけですが、河川のような場合には、必ずしも利益がすぐ伴ってくるわけではないのです。河川は何十年に一回かというような利益があるかもしれませんけれども、使用収益するような便利なものではない。何十年に一回かの被害が免れるというだけのものであります。何十年に一回か免れるのですから、河川の改修については、災害が起きると、急に改良費が増してくるけれども、災害がしばらく遠のくと、なかなか予算化が困難でしょう。そういう事態なんです。だから、直接被害があるとやかましくなる。したがって、こういうものは将来の保全のために設けられた制度でありますから、この制度は私は非常にいい制度だと思います。いい制度をもう少し役立たせるように、一歩前進してはどうかということで、免税措置なりあるいは軽減措置をとることだ。これは国のため、公益のためです。これは町村のためでもなく、個人のためでもない。公益全体のためのものですから、一般会計でこれを負担する。あるいは補償をする。あるいは、補償ができなければ、税金を軽減する。その軽減の分を町村に還元するという措置を講ずべきじゃないかと思うのです。これは前から指摘しておるのであって、御検討願っておる。私はこれはずっと検討してきておる。保全区域というのは、河川法のほんとうの動脈になるのですよ。従来、保全区域が十分でなかったということが、河川管理上の一つの欠陥であったことは認めます。それほど重要なところです。保全区域というのは、その重要さを強調する必要があるのではないかということなんです。もう一度検討されたらどうですか。
  120. 畑谷正実

    畑谷政府委員 これは前から御指摘のありましたことによりまして、十分私ども内部的に検討した結果でございます。ただ、考え方として、確かに先生の御指摘のとおりに、そういうような面の考えもございますが、やはり土地柄として、公共の福祉に反しない範囲において、ある程度そういうような公共施設をしっかりと守っていかなければならないというところに、どんな土地でも、どういう措置でもできるということはないわけです。そういう、受忍とは言いませんけれども、ある程度、そういう行為に対してやはり別なそういうような見方がある。公共的に、それを何らかの受忍の範囲内において守っていくだけの、そういう規制も必要じゃないか、こういうふうに考えます。
  121. 川俣清音

    川俣委員 規制の必要なことは認めるのですよ。河川管理上必要な区域だと思います。必要度が高ければ高いほど、個人の財産については、補償をやることが必要なのではないか。何も建設省利益のためにやっておるのではない。国土保全という上から、あるいは災害防止という上から、河川管理という上から、流水管理の上から、絶対必要な制度だと私は思うのです。その必要に基づいて行なわれる行為でありますから、救済措置が必要なのではないか、こういうことなんです。国がそれだけ利益を得る、公益がそれだけ確保されるのですから、そのくらいの負担は国が受けて立つべきではないか、こういう意味ですから、御検討願いたいと思うのです。  そうすると、河川は国有財産でしょうが、公用財産なのか、あるいは普通財産なのか。同時に、いままでは、これは公用財産だということで、国有財産台帳には載せないでおりましたが、今度は告示して明瞭になってくると、国有財産台帳に載せることになるのではないかと思う。これは私が思うだけですが、建設省いかがお考えですか。
  122. 畑谷正実

    畑谷政府委員 河川区域の中には、先ほどお話のとおりに、私有地もあります。国有地もある……。
  123. 川俣清音

    川俣委員 いままでは、公用財産として、国有財産の台帳には載せていなかった。今後は、これほど明らかに告示をするということになると、載せるのか、従来どおりの形をとるのか、というお尋ねなんです。
  124. 国宗正義

    国宗説明員 河川自体は統合体としての河川でございますから、国有財産に載っけるのに適当でないので、載っかりません。従来無主の不動産とされた河川敷につきまして、国有財産として登記をすることにいたしております。
  125. 川俣清音

    川俣委員 次に、流水の占用料です。これは政令によってきまるように規定されておりますが、一体基準はどうなのか、あるいは土地の占用料の基準はどういうふうになるのか、大体のことでけっこうです。
  126. 国宗正義

    国宗説明員 土地の占用料につきましては、河川敷の占用料につきましては、従来各県において実施いたしております。基準をおおむね参考といたしまして、定めたいと思います。従来の実績では非常に安い占用料が設定されておるのが実情でございます。それから農業水利権に対する水利使用料につきましても、従来行なっておりますところの関係各省協議した結果、実施しておる占用料基準というものがございますが、おおむねそれに基づいて占用料を徴収していきたいと考えます。なお、農業の取水につきましては、占用料は現在においても無料でございますので、将来においても徴収いたさないことに相なると思います。
  127. 川俣清音

    川俣委員 流水利用については、問題が二つ出てくると思います。一つは、農業用水については無料だということでございますが、最近は有料でございます。なぜかといえば、施設の負担費を流水利用ということで負担させておりますから、無料だということにはならないわけでございます。そのことは別にして、流水について占用料をとるということになりますと、私はこのことは悪いことじゃないと思うのですけれども、次に発展する問題がある。それを指摘したいと思う。たとえば今後保安林地域に貯溝をつくりましたり、横穴をつくりまして、一度貯水をして、間断なく下流に流すというような施設が、保安林地域に行なわれることになるのではないかと思います。水資源確保の上から、施設が保安林地域内あるいは水源林地域内に講じられるのではないかと思うのです。これは現に保安林の中に東電がこれらの施設をいたしております。この施設のために、東電の利益が非常に削減されるという問題はございますけれども、この施設を講じつつあるのであります。こういうふうになって、流水の使用料がいまあらためて出てまいりますると、農業用の流水利用税というものが現にございますが、これは利用税というような形でございますか、どのような形でございますか。
  128. 国宗正義

    国宗説明員 流水利用税というかっこうではございません。現在ございます流水利用する関係には多々ございます。特定の利水事業者が特定の目的に利用する場合でございまして、言うならば、公共物を特許使用するわけでございますので、そのような特許使用に至りましては特許使用料という性質をもって、流水使用料を上水道、工業用水道から徴集いたすのでございまして、農業では、川にせきを設けて取水する場合においても、なお河川管理者利用税というようなものを徴集いたすものではございません。不特定の水利用者に対して用水を補給する、いわゆる不特定かんがい田水補給事業は、建設省が公共事業費でもって施行いたすところであります。もとよりこれは占用料徴収の対象ではございません。
  129. 川俣清音

    川俣委員 そこで、いま申し上げたように、上流保安林地帯あるいは民有林地帯で、これから水の使用料が取れるのだということになりますと、自己の立木あるいは木から出る利益よりも、水から出る利益がかなり多いのではないかと思う。施設地域で木を植えるよりも、水を売るほうが山林としての利益が上がることになりはせぬかと思うのです。こういうことを助長することになるのではないかと思うのですよ。建設省なら水を売ってもいいが、個人なら水を売っても悪いということにはならないと思うのです。そういうことを助長されても、私は必ずしも悪いとは思いません。悪いとは思いませんけれども、被害を受けるのは建設省ではないかということで、あえてお尋ねしておるのです。水は自然のものだなんて考えておったところが、今度は水は売ってもいいのだ、売ることができるのだということですと、それならば水売り商売を始めよう、個人で水売り商売を始めたって悪いことにはならない。建設省みずからがおやりになるのでありますから、やる者が出てもあえてこれを拒めないと思うのです。河川地域内なら問題でございますが、もっと上流地域だということになりますと、建設省の権限の及ばざるところで行なわれるのでありますから、水売りはいけないのだということにはならないと思うのです。そういうことを御検討になったのですか。おそらくそういうことは御検討にならないで、これをきめておられるのではないかと思うのですが、この点をお尋ねいたしたい。
  130. 国宗正義

    国宗説明員 水の売買と申しますか、水を供給し、その対価を取り、あたかも売買のようなことになりますことは、都市における上水道あるいは工業用水道しかりでございます。上流においてみずから設置する池では、完全にその水を支配することができまして、それを他の人に供給するということを事業として考える場合でございますが、それが全くの公の水ではなくて、私水——自分の土地にある池で、自分の土地の上にある施設で他人に供給する、こういう姿になりますれば、あたかも都市における水道と何ら変わらないところでございますが、一たん川という公水に出た場合には、水を売る関係は許されるところではございません。現にこういう施設を償却するための施設費分担というのは、農業の土地改良区の内部においては行なわれるところでございますが、これまた施設の償却費を支払うにすぎないのでございまして、水を売る関係とは必ずしも言えないと思います。それらの点を考えまして、公の水というものは、私人が完全に把握し、支配するものではございませんので、将来とも売買の対象になるとは考えられないのでございます。
  131. 川俣清音

    川俣委員 これで終わりますが、問題は、施設の分担金を払わせるということになると、従来もそうですか、個人のやった施設の分担金は払わないでもいいということにはならない。水は山林の機能の一つだということになる、山林の生産物だとも見られる。したがって、生産物ならば、売って悪いということにはならないと思うのです。しかしそういう立場をとらないにしても、施設に対する負担金というものが考えられるということになる。それ自体はお認めになりますね。本来は分担金でありましょうが、分担金というと大きくなるので、むしろ流水利用料というほうが格安になるのではないかと思う。分担金ということになると、たいへん大きなことになるし、だれが分担するかという大きな問題にもなってくると思います。今後、水資源の不足から、こういうことが考えられるということが言えるのじゃないかと思う。これに対して、建設省水資源について怠慢でありまするならば、そういう経済条件の生まれてくることがあるであろうということを警告する。いままでのように、公水であるから建設省の所管だということで漫然としておられるならば、そういうことでは許されない、水は急迫を告げているし、問題はもっと深刻になりつつあると思う。そういう意味で、建設省で十分検討をしていただきたいし、責任も感じていなければならぬところへきている。建設省みずから責任を負わなければ、そういう事態に発展するであろうということを警告して、私の質問を終わります。
  132. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 本日は、この程度にとどめ、次会は、来たる十四日、火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。   午後一時三十八分散会