○今野
参考人 ただいま御紹介いただきました東大の今野でございます。
先生方が、熱心にこの
道路整備法案を御審議いただきますことに対しまして、国民の一人としまして、心から敬意を表するものであります。同時に、私、日ごろ考えております
考え方をここで申し述べる
機会を与えられましたことに対しまして、感謝をいたしております。
この法案そのものに対して、結論的に申しますと、私、希望を述べ、あるいは若干の条件を述べさせていただきまして、賛成するものであります。しかし、ただいま石油業界の
代表の方からも
お話がございましたように、今後こういうガソリン税のみの
財源によって日本の
道路金融財政をまかなうということは、だんだん困難になってまいりますので、ここで先生方に私、ぜひ根本的にお考え願いたいという幾つかのお願いをしたいと思います。
申し上げますことは、
道路整備五カ年
計画で、膨大な四兆一千億でございますが、当局の試算によりましても、わが国の
道路を近代化するために二十三兆何がし、約二十四兆円の資金を要するわけでございます。それだけの資金を投下して
道路を近代化するという必要は、私、十分あると思います。むしろいままでおそ過ぎたということもございますので、規模はその
程度は必要だと思いますが、ただ問題は、私、
道路の財政並びに金融制度というものが、その
程度のことでいいのだろうかということに不安を持つものであります。と申しますのは、わが国のガソリン税の制度は均一的なガソリン税でございまして、アメリカの例で申しますと、一九二〇年代の税制的な
考え方でございます。しかもわれわれは、この高いガソリン税プラス有料
道路、大体有料
道路によって
高速道路をつくるという政策でございますが、これをあわせてとっております。でありますから、まだガソリン税そのものの税率は西欧
——イギリス、ドイツ、イタリアに比べまして高いとは申しませんけれ
ども、今後これが高くなってまいりますと、われわれ国民の、
自動車のユーザーにとって非常な負担になるということと同時に、そもそも
道路をよくするということは、
経済成長に役に立つということであり、同時に日本の割高な
自動車運賃の国際競争力を国際的に引き下げるということであろうと思います。日本のバスの運賃の原価、あるいはトラックの運賃原価、あるいは乗用車の運賃原価は、国際的にきわめて高いものであります。日本の経済がここまで成長してきたということは、鉄道運賃が国際的に見て安かった、船の運賃が安かったということに一つは原因があるわけでございます。ただし
道路に関しましては、運賃原価が高い、これを安くするために、最適の
高速道路及び
国道、
地方道を
整備していただくということは、狭い
意味での交通
隘路の打開以上に大事なことであって、われわれはそれによってのみ、日本の
経済成長を長期にわたって安定的にはかることができると思うのであります。そういう国の
経済成長の
基盤をつくるための
道路政策であり、またその
財源を捻出するということでありますれば、その
財源の捻出の方法がきわめて合理的であってほしいというのでありますが、いままでのところ、低かったとは思いますけれ
ども、均一的にガソリン税を上げてきたということがございます。しかしこれを私たち
道路の利用者あるいは
自動車の利用者から見ますと、ガソリン税はやや西欧の最高水準に近づいている、有料
道路の料金も世界的に最も高い、両方とられますとどういうことになりますか。払える人は払ってもいいのですけれ
ども、しかし、それによって私たちの運賃の原価が高くなるということは、やはりはね返って日本の国際商品の、あるいは人間の活動の、それだけの国際競争力をその面から減殺するということになってまいりますので、ぜひ最適な
高速道路を
中心にする
道路網をお考え願いたいと同時に、税金につきましても、しかるべき税制をお考え願いたいというのが、私のお願いしたいことでございます。
たいへん恐縮なんでございますけれ
ども、ちょっと説明の便宜上、先生方のお手元に私のパンフレットをお届けしたことをお許し願いたいのでございます。もしお許しいただければ、その八ページ目をごらんいただきたいのでございますけれ
ども、これはアメリカ的な
考え方であり、また私、合理的な
考え方だと思うのでございますが、八ページ目のところに、「
道路構造に対する車輌の車軸重量別負担基準」という図がございます。こういうふうに、ガソリン税を
割り当てる場合に、ただ均一的に
割り当てるのではなくして、
道路の利用から受ける便宜の度合いに応じてかけるという、コストとベネフィットの比率に応じてかけるという
考え方が一つございます。そういう
考え方を、将来のガソリン税の中に導入していただけないだろうか、そうすることによって、
道路を利用する割合に応じてかけることができるということが一つございます。もう一つはリラティブ・ユース・メソッドと申しますか、通過交通と地元の交通というふうに分けて考えることもできると思います。この図にありますような
考え方は、アメリカでは、追増法とでも申しましょうか、インクリメンタル・メソッドと申しております。もう一つは使用の函数法と申しますか、すべての車が共通に負担しなければならない
部分、それから車の大きさあるいは
道路に対して与えるプレッシャー、スペースというふうなものに比例してとるとり方、あるいは
道路の利用度に応じてとるとり方というものもございます。そういうふうな車両によって受ける便益の度合いが違いますので、これはもう一つのとらえ方によりますと、便益差というものを考えてガソリン税をとるという
やり方でございまして、ディファレンシャル・ベネフィット・メソッドとも申します。そのほかに、
道路を営業のために
——これは御反対があるかとも思いますが、アメリカで現に実施している方法でございますけれ
ども、営業のために利用する方が、つまり
道路の特別利用者でございまして、これに、スペシャル・ユーザーズ・タックスでございますが、グロス・トン・マイル・メソッドと申しまして、要するに
道路をどれだけ利用するかという、利用の度合いに応じてかけるという
考え方がございます。そういたしますと、アメリカの計算によりますと、たとえば乗用車が一年間に支払う税が二十六ドルだといたしますと、トラック、これはトラックでもやや大型のトラックが約百ドル払っておる、あるいはダンプが四百ドル近く払っておる、さらに大きな、二台つないだセミ・トレーラーの場合には二千五百三十七ドルも払っておるというふうに、
道路をいためる度合い、あるいは
道路に対するプレッシャーに応じて、有料
道路の料金もガソリン税もとっております。そうしませんと、頭割りで、人頭税のような
意味で、ガソリン税をすべての車にかけるという基本的な最初の
考え方、一九二〇年代の
考え方というものは、一九六〇年代あるいは七〇年代、さらに八〇年代の
道路整備を考えますと、限度があるのじゃなかろうか、こういう点を今後におきましては御研究願いまして、合理的なガソリンの税制をお考え願いたいということでございます。それによって公平になる。
もう一つは、
道路は、申し上げるまでもなく、
自動車だけが利用するものではなくして、
道路の便益というものは、やはり一般的な便益もございますので、一般の財政負担ということも必要でございますから、そういうふうな
道路の、
自動車というユーザーだけではございませんで、非利用者と申しますか、国全体なり
地方全体が責任を持って費用を分担する
部分もあるわけでございます。それらを勘案いたしますと、財政につきましては、まず一般
財源が負担するものと、そして
自動車の負担分部につきましても、いま申し上げたようないろいろな答えを出しまして、合理的な税制をおつくり願いたいというのが私の
考え方でございます。なお、そういうハイウエーのコストをどういうふうに利用者なり一般の国民に
割り当てるかという、アメリカで研究したファイナル・レポート・オブ・ザ・ハイウエー・コスト・アロケーション・スタディという
冊子が出ておりまして、当局も御研究なさっておりますけれ
ども、将来こういうふうな徹底した御研究をいただきまして、もっと合理的な税制を確立していただきたいということを、希望として述べさせていただきたいと思います。(拍手)