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1964-06-04 第46回国会 衆議院 決算委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月四日(木曜日)    午前十時五十分開議  出席委員    委員長 白浜 仁吉君    理事 押谷 富三君 理事 鈴木 善幸君    理事 竹山祐太郎君 理事 勝澤 芳雄君    理事 山田 長司君       鍛冶 良作君    田川 誠一君       根本龍太郎君    神近 市子君       栗原 俊夫君    森本  靖君       吉田 賢一君  出席政府委員         大蔵事務官         (管財局長)  江守堅太郎君         農林政務次官  松野 孝一君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (畜産局長)  檜垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  酒折 武弘君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者         農林事務官         (食糧庁総務部         長)      筒井 敬一君         会計検査院事務         総長      上村 照昌君         会計検査院事務         官       小沢 定司君         (第四局長)         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計歳入歳出決算  昭和三十七年度特別会計歳入歳出決算  昭和三十七年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和三十七年度政府関係機関決算書  昭和三十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和三十七年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和三十七年度物品増減及び現在額総計算書  (大蔵省所管農林省所管)      ————◇—————
  2. 白浜仁吉

    白浜委員長 これより会議を開きます。  昭和三十七年度決算外三件を一括して議題といたします。  本日は大蔵省及び農林省所管について審査を進めます。  まず農林省所管について質疑に入ります。  質疑通告がありますので、順次これを許します。勝澤君。
  3. 勝澤芳雄

    勝澤委員 まず最初に、質問中身よりも出席の問題について、官房長にお尋ねいたしたいと思います。  この食糧庁の問題につきまして決算委員会で過去二回にわたりまして、きょうを含めて三回、農林大臣並びに食糧庁長官出席を求めておるわけであります。農林大臣はいろいろ御都合があったようでありますが、食糧庁長官は、きょうを含めて三回とも、朝になってから出席できません、こういうような実は通告を受けておるわけであります。その経過についておわかりになる範囲でお答えを願いたいと思います。
  4. 中西一郎

    中西政府委員 きょうの委員会のことは、すでに事前にわれわれも了解しておりまして、大臣、さらに食糧庁長官出席方をわれわれ事務当局としても、当然先生方の従来の御質疑経緯等にかんがみまして、出ていただいたほうがいいと考えまして連絡をしておったわけですが、大臣のほうは、河川法合同審査ということで参議院のほうに行っております。食糧庁長官は昨夕までは出られそうな気配で、私どもそういう手順でおったわけですが、けさ方になって若干気分が悪いというようなことで、あまり無理も言いかねまして、先生方の御期待に反したわけでございますが、御了承願いたいと思います。
  5. 勝澤芳雄

    勝澤委員 おからだが悪いのに出席を無理にとは申し上げませんけれども、ほかの委員会ですと、食糧庁長官出席できないなら、きょうは法案審議しない、法案を上げない、こういうことになりますから、官房長としても、まさか首になわをつけて連れてくるわけにもいかないでしょうけれども、何とか融通をして出すことに促進をするわけであります。しかし、決算委員会というのは、とにかく頭を下げていれば終わってしまう、休んでいれば終わってしまう、こういうことであるわけでありますから、官房長、たいへんおつらいでしょうが、この決算委員会で、本日を含めて過去三回食糧庁長官出席を求めましたが出てまいりません。だから、その三回になぜお出になれなかったかという経過について、ひとつ詳細に御本人より決算委員会に書面としてお出し願いたい、こう思うのでございますが、よろしゅうございましょうか。
  6. 中西一郎

    中西政府委員 了承いたしました。
  7. 勝澤芳雄

    勝澤委員 その次にもう一度官房長、今度は資料要求でありますけれども、実は四月一日資料要求をいたしたわけであります。この資料要求議事録を見れば、親切丁寧に資料要求してあるわけであります。たとえば、当時の様子が古いことですからおわかりにならないかもしれない、しかしおわかりにならなかったらおわかりにならない経過をひとつ知らしてもらいたい、あるいは不明確だったら不明確でけっこうですから、どういうわけで不明確だかという点もあわせてお知らせ願いたい、こういう実は質問をしておったわけであります。四月一日にこの資料要求して、五月になっても出ずに、決算委員会食糧庁質問をすると言ったら、きのう私のところへ総務部長説明に来たわけであります。委員会には、けさ委員にお出しを願ったわけであります。これでは、われわれ国会審議に対して一体食糧庁はどうお考えになっているか、はなはだ疑問であって遺憾にたえないわけであります。これは質問というよりも、ぜひ今後こういうことのないように、官房長のほうから十分その取り扱いについて厳重に御注意をしておいていただきたい、こう思います。いかがですか。
  8. 中西一郎

    中西政府委員 いろいろな経緯があったと思うのですが、今後そういうことのないように十分配慮いたします。
  9. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それでは本題に入りまして質問に入りますが、消費者米価値上げ価格差益につきまして前回質問いたしました。そうしてこの価格差益につきましては、過去にわたりまして会計検査院からも御注意があったようであります。会計検査院から、いつどういう御注意があったかという点について食糧庁のほうからお答え願いたいと存じます。
  10. 筒井敬一

    筒井説明員 一つは二十八年度の決算に関する結果についての会計検査院注意事項といたしまして、昭和二十九年十二月二十五日に検査院の第三局長から長官あてに二十八年の決算の問題といたしまして御注意をいただいておるのが一つございます。  それからもう一つは、日時がはっきりしておりませんのでございますが、昭和二十六年の決算結果についての会計検査院からの注意事項といたしまして、当時の検査院の第二局長から長官あて注意事項が出ております。
  11. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そうしますと、二十六年決算に対する消費者米価価格差益の問題で御注意があり、二十八年決算の際にも御注意があった、そうして今回は改善意見という形であった、いままで三回消費者米価の問題についてはあった、こう理解してよろしゅうございますか。
  12. 筒井敬一

    筒井説明員 そういうように御理解願ってけっこうでございます。
  13. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そこで、二十六年のときにも、決算について消費者米価価格差益について御注意があった、二十八年の決算にあたっても消費者米価価格差益について御注意があった。この二回の御注意について食糧庁としてはどういうふうにお取り扱いをいたしましたか。
  14. 筒井敬一

    筒井説明員 これは、この前もお答え申しましたように、消費者米価改定の問題は、御存じのように物価統制令でやっておるわけでございますが、その物価統制令に当時までは価格差益徴収規定があったわけでございます。それが昭和二十五年に十九条の差益徴収規定が削除されまして、したがいまして法的根拠を失った次第でございます。したがいまして、その後いろいろ御注意を受けたのでありますけれども、明確にそれを処理いたしていくというような根拠がないものでございますけれども、できるだけこれらの点につきまして注意いたしまして、十分とは言いかねるのでございますけれども、二十六年におきまして御業者マージン改定、これは手数料でございますが、その改定のときに差益の要素も入れまして据え置きにいたすとか、あるいは二十八年におきましては、末端の消費者価格はしばらく旧価格で半月ばかり置きまして、しかし、その他の卸売り小売りに対しましての売却については新価格で、すなわち高い価格でするというような操作をいたしまして、若干でも差益吸収に努力いたした次第でございます。
  15. 勝澤芳雄

    勝澤委員 二十六年の八月のときには、消費者米価改定にあたって、マージンについて、価格差益について、ある程度全額が卸売り小売り業者に取得されないような措置をした。二十八年一月、二十九年一月、このときにも新旧価格の調整を行なって、この価格差益についての処理を行なった。したがって、二十六年八月、二十八年一月、二十九年一月、この三回にわたって、少しずつでもその価格差益についての処理をいたしてきたわけでありますが、三十二年の十月、三十七年の十二月、この二回にわたっては何らの措置もされていない。何らの措置もしなかった理由はどういうわけなんですか。
  16. 筒井敬一

    筒井説明員 三十二年の場合につきましては、その事情を、この前のお話もございましたので操作いたしたのでございますが、いろいろ検討いたしたのでございますけれども、当時、先ほど言いましたような大きな根拠がなかったというような事情もございまして、このときにはやっておらないわけでございます。  それからまた、今度問題になっております三十七年の場合におきましても、いろいろ検討いたしたわけでございますけれども、なかなかしかく明確に措置をいたしていくということも困難であったのでございますが、三十七年の場合でも、マージン改定を二カ月ばかり延ばしたというような措置は、普通消費者米価改定と同時にマージン改定も行なっておるのが通例でございますけれども、これも二月から改定をいたしたというような程度でございまして、この差益の全面的な吸収ということはなかなかむずかしい問題がありましたので、いたさなかった次第でございます。
  17. 勝澤芳雄

    勝澤委員 お聞きのような経過で、会計検査院が過去二回にわたって注意書を出したけれども、その実効をあげ得なかった、実効があがらないから、会計検査院としては今回は改善意見を出した、この意見に対して食糧庁としてはどういうような処理をすることが好ましいと期待をいたしておったのですか。
  18. 小沢定司

    小沢会計検査院説明員 消費者米価の問題につきましては、先ほどお話がございましたように、過去数回にわたって本院のほうから注意書を発しております。また今回は院法規定によりまする改善要求をいたしております。その改善要求をいたしました結果、立法措置でおやりになるか、あるいは行政指導でおやりになるか、あるいは特約でおやりになるかということは、これは行政の実際の担当をされまする農林省当局考えるということでございまして、私どものほうとしては、そうした何らかの方法によってこれが解決されるということを期待いたしております。
  19. 勝澤芳雄

    勝澤委員 注意書というものと、それから改善意見というものについての相違点といいますか、取り扱いといいますか、これはどういうふうに理解されて取り扱っておりますか。
  20. 上村照昌

    上村会計検査院説明員 改善事項と申しますと、会計検査院法三十四条ないし三十六条で出すものを一応操作してやっておるわけでございますが、注意書と申しますのは御承知のように、検査院の権限といたしまして、会計検査院は常時会計検査を行ない、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ是正をはかるというような点もございまして、やはり検査をした結果に基づきまして、相手方官庁経理が十分適正になるということが好ましいことでございますので、検査の結果につきまして注意をいたすという取り扱いをいたしておるわけでございます。したがいまして、改善事項と申しますのは、三十四条、三十六条を銘打って、そういう形でしたものが改善事項、こういうふうに考えます。
  21. 勝澤芳雄

    勝澤委員 同じような事案について注意書になり、また三十四条、三十六条になるということは、どこで仕分けをするのですか。
  22. 上村照昌

    上村会計検査院説明員 確かに御質問のような点がございます。したがいまして、最近におきましては、過去二年でございますが、従来改善事項という形で決算報告に掲記した事項も幾ぶんはございましたが、二年前から改善事項については特に重視して、積極的に取り上げて、相手方是正改善をはかるということが適当ではなかろうかという点、あるいは国会方面からのそういうふうな御意見もございましたので、できるだけ改善事項として処理するというたてまえにいたしておるわけでございまして、ただ、そういう関係上、二十九年なりあるいは二十六年のことと御比較になりますと、多少矛盾をするという感じもおそらく受けられるのではないか、かように考えております。
  23. 勝澤芳雄

    勝澤委員 会計検査院が、国会なりあるいは今日の国民の世論の中から方向を変えられてきて、当然法律に基づいた処理をされてきたということについては、これはたいへんうれしく思うわけであります。しかし、同じ事案について、同じ消費者米価の同じような状態について、過去二十六年、二十八年と二回も注意をしておったにかかわらずその是正がされていない。そうして今回ようやく改善意見を出した。同じ事案なんですね。何も中身が違っていないわけです。同じ事案についての取り扱いで、最初注意だ、次も注意だ、今度は法律に基づく処理だ。しかし、その法律に基づくあなたのほうの改善意見に対しての回答も従来と何ら変わりのない取り扱いになっている。私はここにたいへん不満があるわけであります。そうしてあなたのほうがこうして改善意見というものを出したから、初めて国民の目に、消費者米価の値上がりの際に、そんなに大きな金額というものが——私が言うならば、これは不当利得だと言う。価格差益が、卸が十一億八千万、卸売り業者の十一億八千万というのは大した額ではないと私は思った。しかし、三百九十六業者と聞いて、一軒当たり三百万だ、一番上の人はとにかく幾ら利得になったのだと聞いてみましたら、これは後ほど御説明していただこうと思うのですが、ある業者は、一卸売り業者が一億一千万円も価格差益を生じているという状態なんです。これは私は黙視するわけにいきません。それから小売り業者のほうは五万七千五十九業者で、四億八千七百九十五万円、これは捕提が困難であります。しかし、こういうことを会計検査院が二十六年も二十八年もやりながら、国民に明確に、あるいは国会に明確に、こういう事実がありましたという報告をすれば、そのときにもっと処理のしかたがあった。消費者米価値上げによって食管赤字がこれだけ出ているという宣伝をしているようでありますけれども、その是正が可能であったと私は思う。それを今日までなおざりにしてきたということは、明らかに会計検査院が一あなたじゃないのですよ。過去の会計検査院取り扱いがあまりにもルーズというか積極性に欠けておった、会計検査院本来の任務に欠けておったと実は言わざるを得ないと思うのです。こういうことについての御答弁いかがでしょう。
  24. 上村照昌

    上村会計検査院説明員 ただいまの御批判は確かにもっともな点があると思います。私のほうでもそういう注意書なり改善事項扱い方につきましては、先ほど申しましたように、改善事項を積極的に取り上げていくという方向にいきますと同時に、従来は実は注意書局長名で出しておった時期が三十三年くらいまではありますが、最近におきましては、注意書を出します場合、総長のところで審議しまして総長のところで出すという形をとりまして、これも慎重な扱いをするということで、ただいま御批判のあったような点も将来はおそらくないのじゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  25. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そこで注意書についての取り扱いでありますが、注意書にするのか、それとも改善なりにするのか、この区別はどういう形でなされるのですか。
  26. 上村照昌

    上村会計検査院説明員 ただいまの点で、過去の問題でいろいろ御論議されますと、これは非常に困るわけでございますが、ただいま扱っております扱い方は、改善事項に該当するというようなものについてはなるべく検査官会議の議にかける、そして判断をしてもらうという体制で考えております。だれが考えましても、改善事項でいかなくても、注意書でいいんじゃないかというものは、われわれの判断で一応注意書という形で出しまして、検査官に大体こういう形で出したということを御披露して——これは御批判があればもちろん変えていかなければなりませんけれども、現在のところはそれで大体スムーズにいっておるわけであります。
  27. 勝澤芳雄

    勝澤委員 これからはどういうふうに各省が受け取るかはよくわかりません。しかし、いままでの各省の受け取り方を見てみますと、注意書というものについての受け取り方は明らかに黙殺されておると私は断言せざるを得ない。それは最近になって、注意書について特に決算委員会注意して、注意書を出してくださいということをここ数年間続けてまいったわけであります。しかし従来は実は注意書については決算委員会資料要求したことがなかったわけであります。それがたまたま会計検査説明書を読みましたところが注意書が出ておる。何省に幾らという記事があったのをヒントに注意書資料で出してくれというのが始まりなのです。しかし今度は、そういうことがあった翌年度から注意書の発遣件数というのはその資料の中からわざわざ削除されたわけです。悪く解釈するならば、過去には会計検査院注意書についてまであの説明書の中に書いておったけれども、このごろは注意書決算委員会要求されるので、要求さえ忘れてしまったら注意書を出さなくてもいいんだから、これはあの説明書から削除したほうがいいといって削除されたと思わざるを得ないと思うのです。ですから私は言うのですが、会計検査院で見たことについては——それはいろいろの問題があろうと思うのです。各省で困るという問題もあろうと思う。ですからそれはそれとして、目に余るもの、ある程度注意書として公式的なものを出したものについてはやはりどしどし国民の前に明確にして、それを是正させなければならないと思う。そういう点では検査院は、片方では院法に従って三十四条、三十六条で積極的にやりながら、片方では少しは役所の肩を持ってやろう、こういうふうな両面あらわれているということは、事務総長よくお考えいただきたいと思うのです。私も、注意書というのはあの説明書にはこのごろなくなったなと思うのです。注意書があの説明からなくなった理由は何かということを質問するほど私も考えておりませんけれども、しかし私たちが決算委員をやっているときにはこういうものがあったんだ、しかし決算委員がかわったとたんに、そういうものに気がつかずに、注意書については検査院役所の間だけで処理されておる、そしてそれが注意書でにっちもさっちもいかなくなって解決できないときに初めてここに指摘事項になる、それから改善意見になってくる、こういうことになるわけです。ですから私は、注意書はこの際なるべくやめていただいて、指摘事項なりあるいは改善意見として出していただきたいと思う。  一つ申し上げますと、この三十七年度の中でも、たとえば防衛庁が出ております。防衛庁のこれは、国内にいい品物があるにかかわらず、わざわざ外国製品を買っている。ただそれ自体でありますけれども、なぜ外国製品を買ったのかといって調べてみますと、これは調べる価値のあるものがあるのです。なぜ外国製品を買わなければならないのかということを調べる価値のあるものがあるわけでありますから、ひとつ注意書については慎重な配慮をして、できるだけ指摘事項なりあるいは改善意見なりにして、二度とこういう問題が起きないようにしていただきたいということを特に要求いたしたいと存じますが、どうぞこの注意書の問題については十分な御審議をしていただきたいと思う。
  28. 上村照昌

    上村会計検査院説明員 全部注意書をなくすることができるかどうかという点はちょっとよく考えてみなければなりませんが、できるだけ御意見等も尊重してまいりたい、こういうふうに考えております。
  29. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それでは農林省にお尋ねいたしますが、消費者米価値上げがいま政治の課題にのっているようであります。しかし、この委員会農林大臣は、消費者米価値上げは今年度はいたしませんということを明確に御答弁されております。そこで消費者米価値上げになったときには、当然この価格差益というものが問題になると思う。会計検査院からも指摘されておる。それについての御答弁もされておる。したがって、この差益の問題の処理については、次に消費者米価が上がるときには当然世間が納得する何らかの方向というものをきめておかなければならないと私は思いますが、それについてのお考えをお尋ねいたします。
  30. 筒井敬一

    筒井説明員 今後消費者米価が上がる場合におきまして、その値上げ幅とかあるいは配給状態等によりまして若干態様が変わるかとは思いますけれども、従来からも御指摘なり御批判なりもございますので、できるだけこの差益世間の納得のいくような形で処理いたしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  先ほども申しましたように、法的な根拠もございませんので、一人一人から完全に巻き上げるというのも非常にむずかしゅうございますので、実質的にさような差益取り扱い業者に帰属しないようにという観点からいたしますならば、いろいろ方法もあろうかと思いますけれども、当方で考えております現在のやり方といたしましては、一つは、その価格改定時におきまして、売却をしていく上におきまして、非常に多く在庫を持つというようなことのないようにやっておりますけれども、さらに売却の点について十分配慮いたしていきたいという点でございます。  それから第二点は、かようにいたしましても、毎日食べる食糧でございますので、どこかの機会配給ストップというわけにはまいりませんので、ある程度のランニング・ストックといいますか、配給に必要な最低限の在庫というのは卸、小売りの段階に生ずることはやむを得ないわけでありますから、その間に生じました差益吸収いたす方法としては、従来、卸、小売り業者マージン改定を毎年いたしておりますけれども、このマージン改定時におきまして、消費者米価改定時におきますところの在庫の量とそれからその差益というものとを見計らいまして調整していくのが、最も実効性のあるやり方ではないか、かように考えておる次第でございます。
  31. 勝澤芳雄

    勝澤委員 政務次官にお尋ねいたしますが、先ほどからお聞きになっていると思うのですが、前回の消費者米価値上げの際に価格差益が出たわけです。十一月三十日それから十二月一日、ここで価格が変わったわけであります。その価格差益が卸、小売り業者合計で十六億七千万円あったわけであります。そのうち一番大きなのは、卸業者で三百九十六で十一億八千万、一軒当たり三百万円、しかし詳細に調べてみますと一業者で一億一千万というのがあるわけであります。したがって、これは国民感情といたしまして全額取り上げろということについては、いろいろ事務的にも議論があろうと思うんですが、しかしやはりこれをこのまま卸業者小売り業者に取得させるということは、食糧管理統制品であるという現状からいって好ましくないと思うのであります。これはやはり、次に消費者米価をもし上げるとするならば、また上げる機会があったならば、当然この問題を明確に処理してからでなければ私はいけないと思う。これについてのお考えを簡単でけっこうですからお聞かせ願いたいと思います。
  32. 松野孝一

    松野政府委員 ただいま勝澤委員の御指摘のとおり、私もそのとおりに思っております。過去において会計検査院から数回御指摘をいただいておるのであります。ところが実際問題として、ただいま食糧庁から御答弁があったように、なかなかむずかしい点があるというので、多少の措置はいたしたもののきわめて微温的なもので、十分なものではないと思います。やはり消費者米価改定のあった場合におきましては、その時点において販売業者が持っておる在庫に対しては不当の利益を与えるということになりますので、これを何とかしなければと思いまして、ただいま食糧庁からお話のありましたとおり、われわれとしても次回からはぜひとも改善したい、こういうふうに思います。大臣もそういう考えでおります。そういうふうに御答弁を申し上げたはずでありますが、それにはやはり現在公権力をもってどうするという法律の裏づけがないものでありますから、いろいろ研究しました結果、やはり政府の売り渡し価格を持ってくるようにして一定価格を高くするというようなことで差益吸収する、こういう考え方でおります。きちんとはいかないかもしれませんが、大体はそれで可能ではないかというふうに思っております。その前提として、やはりいま食糧庁から答弁がありましたように、各販売業者のランニング・ストックの平準化、ことに米価改定があればもうかるというので、たくさんの数量を政府から早くから引き取ることがないように、最小限度のランニング・ストックの平準化ということで公平に処理できるようにしていきたい、次回からはそういうふうにいたしたいと思います。
  33. 勝澤芳雄

    勝澤委員 これからの問題につきましていま明確になりましたので、それでは、この間の価格調整によって利得をした問題の処理について私は少し考えたいと思うのでありますが、三十七年十一月のときに、私が先ほどからある業者は一億一千万も価格差益があるという話をしているわけでありますが、前回栗原委員からも上位二十社程度はどれくらいあったのだ、わかるではないか、こういう質問がなされておるわけであります。そこでひとつ各業者十軒ぐらいでけっこうですから、どの業者価格差益が大体どのくらい、ストックがどのくらいあったかというようなことについて御説明を願いたい。
  34. 筒井敬一

    筒井説明員 この前栗原委員からも御質問があったのでございまして、卸業者につきましてどの程度の差益が生じたかということについて調査いたしたのでございますが、個々の具体的な業者につきまして幾ら差益があったかということを発表いたしますことは、違法行為をやっておるわけではございませんので、具体的にどの会社ということを言うのは控えさせていただきたいと思いますけれども、それでもぜひ発表しろということであれば別でございますけれども、一応私どもで調べたところを一般的に申しますならば、大体十社程度のものの差益でありますが、一番大きなのは先生いまお話のように一億をこえるものもございます。その次からはずっと下回って四千万弱でございまして、四千万から一千二、三百というところに落ちつきます。しかし、これは御存じと思いますけれども、大きな業者というのは、むしろ個人企業あるいは株式組織というのは非常に少のうございまして、中小企業協同組合の連合会なり、あるいは協同組合という形態をとるものが非常に多うございます。これは過去の零細なお米屋さんが集まってその卸の組織をつくり上げたというような、過去の経緯もございます関係上、協同組合でやっておるものが非常に多いということも、これらの場合におきますところの一つの大きな特徴ではないかというふうに考えておるわけであります。
  35. 勝澤芳雄

    勝澤委員 私は、零細な企業だとか中小企業だからということで価格差益を与えてもいいのだ、こういう議論については別の話だと存じます。私のお聞きしているのは、この消費者米価改定の際に、どういう会社がどれくらいの価格差益を得たのかということをお聞きしておるわけでありまして、どの会社がどれくらいの利得を得たのだということをもう少し明確にお答え願いたいと思うのです。
  36. 筒井敬一

    筒井説明員 もう少し申せということでございますが、いま先生のおっしゃるように協同組合であるからとか、あるいは中小会社であるから差益が生じてもいいのだとかどうだとかいうことではございませんで、念のために協同組合が多いという形態を申し上げたのでありますが、主として今度の場合に大きな差益を生じておりますのは大都市の卸業者、これは当然でございますが、大都市の卸業者取り扱い量も多い、したがいまして、在庫もある程度持っていなければならぬというような関係がございまして、東京とかあるいは北海道とか大阪とか、こういう地域の業者において先ほど申しましたような差益を生じている、あるいは十社の中にそういうところのものが大部分入っておると考える次第でございます。
  37. 勝澤芳雄

    勝澤委員 前回の栗原委員質問で、あなたはそういう資料をお出しいたします、こういう御答弁がされておるわけでありますが、   〔委員長退席、押谷委員長代理着席〕 別に、どの業者幾ら価格差益があったかということについて、あまり遠慮しなくとも私はいいのじゃないだろうかと思うのです。遠慮すればするほど、一体食糧庁は米穀卸業者とどうなっておるのか、おかしいのじゃないか、実はこう言わざるを得ないわけであります。ですから、あなたがお話しにくいならば、私がひとつ申し上げますと、たとえば大阪の業者は一億一千三百万、新潟の業者では三千八百万、東京では二千五百万、愛知では一千九百万、東京のほかの業者で一千七百万、もう一つ業者は一千九百万、北海道では一千六百万、東京で一千五百万、北海道で一千三百万、東京で一千二百万、これが上位十の会社の価格差益であるわけであります。ですから一番最高である会社は大阪で一億一千三百十一万三千円、こういう推定がなされるわけであります。これはこの前の消費者価格のときにこれだけこの業者価格差益で利益をしたのだ、それは法律上も何としようもなかったのだ、これでもけっこうですよ。しかしそれを多くの国民に知らせることによって、それは法律制度が悪い、あるいはまた農林省行政のしかたが悪いということになるならば、これはやはり是正をさせなければならぬわけです。それが国民の代表として出てきているわれわれの任務であるわけであります。ですから、この内容についてはおおむね間違いがないと思うのですが、いかがですか。その程度ならお答えできるでしょう。
  38. 筒井敬一

    筒井説明員 大体先生のおっしゃったことにつきまして間違いはないわけでございますが、一番目の大阪のは、やはりこれは事業協同組合でございます。その点があれでございますが、大部分のものは、その中では協同組合でございます。ところが、たとえば大阪の一億一千万というのは相当大きな金額になるわけでございますが、これは大体大阪の卸の取り扱い数量といたしましての八割弱の取り扱いをしておる零細な業者の集まりであるということでありまして、これが持っておりますところの在庫量というのは総量としては多うございますけれども配給する日数といたしましては平常の正常なランニング・ストック程度のものしか持っておらないわけでありまして、世帯が大きい、取り扱っておる規模が元来から大きいというようなことから、大阪の場合は特に大きくなっておるわけであります。そのほかのものも、先ほどお話し申しましたように、やはり東京とかあるいは愛知とかそういうところで、登録の小売り商も非常に多い、配給量も多いというようなことでございまして、一日当たりの、日数にいたしますところの在庫量といたしましてはそれほど多くのものをここに持っておったというわけじゃないように考えておるわけでございます。
  39. 勝澤芳雄

    勝澤委員 大阪は業者一つになっているから金額が多い。東京は、私が手元で調べただけでも二十ランクの中で八社ありますから、八社集めれば約一億ぐらいの金額になるわけでありますから、あなたのおっしゃるとおりだと存じます。  そこで私はこの価格差益についてはある程度食糧庁としても、これほど問題になっているのでありますから、回収をして、あるいはまた供出をしていただいて、そして何らかの処理をやはりしなければならない、こういうふうに思うのです。これが当然なことじゃないだろうかと思うのです。それは砂糖の価格差益を調べてまいりましても、あるいはパイナップル、バナナ、こういうものを見ましても、ある程度そういう指導を農林省として行なって回収をしておるわけであります。そしてまたその回収された金額については、別途の形でその業界の発展なんかのために使われておるわけであります。ですから、そういう点からいうならば、やはりこの三十七年のときにはあまりにも金額が大き過ぎるわけであります。ですから、私は何かで解決をすべきだと思うのです。前回農林大臣は、これにつきまして不明確ではありますけれども、まあある程度考えなければならないであろうというような御答弁をされているように私は見受けられます。したがって、この問題については、過去の分について何かやはり検討すべきじゃないだろうか、こう思うのでありますけれども、これは政務次官どうですか、御答弁願いましょうか。
  40. 松野孝一

    松野政府委員 お話しの点は私もそう思います。ただ非常にむずかしい点があるのであります。今後の米価改定にあたりましては、先ほど申し上げたような処理をしていきたいと思っておりますが、この過去における超過利益というものの吸収については、もう少しよく検討して、何かの方途を考えるようにいたしたいと思っております。
  41. 勝澤芳雄

    勝澤委員 いまの政務次官の御答弁と、それから三月二十六日の赤城農林大臣の御答弁とは、おおむね似通っておるわけであります。過去の問題について明確ではないのですけれども、何かの方法をしたい、こういうお考えがあるようでありますし、この問題につきましてはこれ以上質問してもあれですから、いずれ委員長に御相談して、決算委員会としてどういうような方向農林省に要請をしようかという点について相談をいたしたいと思いますので、質問を終わります。
  42. 栗原俊夫

    ○栗原委員 関連して。勝澤君からたいへん掘り下げた質問があったのですが、私も一点だけ納得のいくところまで御説明をいただきたいのは、大阪は卸売りが少なくて、しかも人口が多いから、こういうことなんですが、三十七年十一月末日の大阪の卸売り業者が手持ちした数量は一万二百一トンだ、こういうお話でございます。そこでこの卸売り業者が受け持っておる小売り店は何軒か、そしてその小売り店の先に連なっておる世帯数というか、消費人口は何名なのか、この点を明らかにしてもらいたいと思います。
  43. 筒井敬一

    筒井説明員 大阪の場合は、登録の小売り店が二千二百九十軒でございます。登録人口は四百六十九万六千四百七人になっております。
  44. 栗原俊夫

    ○栗原委員 これは問題になっておる大阪の事業協同組合の管轄下にある小売り店並びに配給人口数ですか、これは大阪だけの全体を言ったのと、かりに大阪には複数の卸売り業者があるという場合には、少し関係が変わってきますから、この報告の中にある一万二百一トンを持っておった卸売り業者の管轄する小売り業者の数並びにこれに連なる配給人口の数、この点はっきりしてくださいよ。
  45. 筒井敬一

    筒井説明員 いま申しましたのは、大阪の先ほどお話の出ました一億一千万の差益を出した協同組合の系列について申し上げたのでございます。
  46. 栗原俊夫

    ○栗原委員 これは計算すれば出ることと思いますが、四百六十九万六千四百七名受配人口、この人たちの一日の消費数量、したがって、それから計算した一カ月の消費数量、これをトン数に直すとどのくらいになりますか。
  47. 筒井敬一

    筒井説明員 精米トンで申しますと、月間の消費量でございますが、約三万三千トン程度になります。
  48. 栗原俊夫

    ○栗原委員 そういうことになりますと、その販売業者が持っておった手持ち数量というのは大体十日分の消費数量である、このように理解していいわけですか。
  49. 筒井敬一

    筒井説明員 十日というのはちょっと多いんじゃないかと思いますけれども、八日ないし九日程度ではないかと思っております。
  50. 栗原俊夫

    ○栗原委員 この販売業者がランニング・ストックとして各月末に持っておった数量の、これ以前の何カ月かの数量がおわかりだったらひとつ知らしていただきたいと思います。すなわち、具体的には、これは十一月末日ですが、十月末、九月末、八月末、もちろん端境期にも入ると思いますから、いろいろ数量の変化はあろうと思いますけれども、どんなぐあいに推移しておりましたか。
  51. 筒井敬一

    筒井説明員 この協同組合の、この当時以前の各月の具体的な数字は持っておりませんけれども、一般的に申しまして七日くらいの手持ちというのが卸の普通の場合における在庫、こういうふうに考えております。
  52. 栗原俊夫

    ○栗原委員 そうしますと、お出し願った約上位二十というこの業者、それぞれの数字は異なりますが、大体においてその管轄する消費人口の消費する数量の七日分程度を持って月を越したのだ、七日分くらいを持っておったのだ、このように理解してよろしゅうございますか。
  53. 筒井敬一

    筒井説明員 具体的にこの組合が過去においてどうだったかということはわかりませんけれども、大体全国において五日ないし七日というのが、従来平常時において持っております正常在庫の数字であるというように御理解願ったらばけっこうだと思います。
  54. 栗原俊夫

    ○栗原委員 この値上がりを一つの機として、特に手持ちの数量が常日ごろよりも多かったというような異常な店は見当たらない、こう理解してよろしゅうございますか。
  55. 筒井敬一

    筒井説明員 いまの例に見ますように、平生在庫よりは若干多く持っておったというような結果になっております。
  56. 栗原俊夫

    ○栗原委員 勝澤委員からもお話がありましたとおり、さらにわれわれのほうでもいろいろと協議しまして、いま少しくお話を承る場合があろうと思いますが、本日はこれで。
  57. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 山田長司君。
  58. 山田長司

    ○山田(長)委員 林野庁当局に伺いたいと思います。  三十七年度の決算報告書に数件、営林署の批難事項をあげられておりますが、いま私が伺おうとするのは、その批難事項ではなく、別な角度からこれを伺いたいと思っております。   〔押谷委員長代理退席、委員長着席〕  最初に伺いたいと思いますことは、林産物の需給に関する長期見通しについてです。木材価格の安定の機能については、国有林の果たす役割りというのは実に大きいわけで、当然十年ないし二十年の長期見通し計画というものがあるものと思われますけれども、この計画の概要をお知らせ願いたいと思うのです。
  59. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 木材の需給の長期見通しにつきましては、森林法の規定に基づきまして行なっておるわけでございますが、現在の見通しを申し上げますと、国民経済の所得倍増計画の構想の線に沿って推移するという前提に立ちます場合に、昭和四十七年度におきましては、まず需要量のほうから申し上げますと、八千五百万立方メートル、それからさらに十年先の五十七年度で一億四百万立方メートル、それからさらに十年先の六十七年度におきましては、一億二千百万立方メートル、それから七十七年度におきましては、一億四千百万立方メートル、こういうふうに推計をしております。この需要の増の中心といたしましてはやはり建築用材、それからパルプ用材が中心となっております。  一方、それに対応しますところの生産の見通しにつきましては、この需要に対しまして、人工造林を積極的に拡大をしてまいる、それから林道も積極的に拡充をいたします。それから林木の育成の技術その他の改善を十分に講ずることによりまして、昭和四十七年度で六千万立方メートル、五十七年度で六千九百万立方メートル、六十七年度で八千五百万立方メートル、七十七年度で一億八百万立方メートル、こういうふうになる見通しでございます。  そこで、供給不足の分がなお出てまいりますけれども、この点につきましては、特にパルプの面については、チップ、廃材をもって補ってまいる、それからさらに補完的に外材輸入をはかるというふうに考えております。
  60. 山田長司

    ○山田(長)委員 国有林野事業の特別会計制度の改善の問題について、次は伺いたいと思います。  国有林野事業は、国土の保全、国民の保健、それから林産物の生産を行なう部面、それから企業的に運営する面、これらのものは一般会計と区分されて特別会計制度の経理内容になっておりますが、これを国有林の公共事業と生産事業とを混同して経理がされておるという印象を持つわけですが、この混同されている計算の結果、利益積み立て金と、それから特別積み立て金に折半されて特別積み立て金の一般繰り入れ等がなされておるわけですが、したがって、国民が事業成果の面についてこれを見る場合に、判断に苦しむ点があるわけです。この点木材価格が高騰している場合は弊害がないとしても、将来不況にでもなった場合に、経営改善の資金に充当するために当然生産事業と公共事業の経理の面とが区別されるようになってしかるべきじゃないかと思います。生産事業の三分の一の利益準備金として内部保留をはかるよう改善すべきじゃないかと思うのですけれども、この点について長官の御意見がありましたならば、この際に聞かしていただきたいと思います。
  61. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 国有林野事業の合理化をはかりまして、そうしてその国有林野事業の内部の充実をはかるとともに、また一般の民有林、協力にも寄与してまいるということは、これはかねてから国有林野事業の目的でもございますし、また数度にわたる林業政策関係法案国会における成立の過程におきまして、その附帯決議としても要請をされてまいったところでございます。そこで、国有林野事業の経理につきましては国有林野事業特別会計法によって行なわれておりますが、その会計の決算上利益を生じたときには、その利益の半ばを特別積み立て金といたしまして林業の振興その他の事業に充てるために一般会計に繰り入れるという制度がございます。あとの半ばにつきましては、これは利益積み立て金といたしまして、いまお説のような内部の充実に対する内部保留としてこれを考えていくという制度になっております。そういう意味から申しますと、この決算上生じた利益を民有林の協力に充てていくという制度は明確になっているわけでございます。ただ、一方、本来の国有林野事業として、たとえば林木の育種事業であるとか、あるいは民有保安林の買い入れとそれの治山工事であるとか、あるいはまた官行造林事業の保育の事業であるとか、そういういわば民有林協力の事業でありながら国有林野の事業の中に混在して事業が行なわれ、かつ経理が行なわれているという面がございまして、その点につきましてはお説のような問題点をはらんでいると存じます。そこで、これからの将来の検討事項といたしましては、このような本来の事業の中で行なわれております民有林協力事業につきましても、国有林野事業自体の経理決算を明確にする上からいいまして、それを区分経理するとか何らかの方法によって改善をしてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  62. 山田長司

    ○山田(長)委員 政府の農業改善の促進による林野の貸し付け及びその売り渡しについて昨年次官の通達が出されておるやに伺っております。そしてさらに積極的にこれを実施しているというお話でございますが、次官通達の概要及び次官通達指示後の実績はどんなふうになっておりますか、伺います。
  63. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 国有林野を農業的利用に活用をするということにつきましては、現在、いまお話しのございました昨年の六月に事務次官通達をもちまして、農業構造改善のための国有林野の活用についてという通達を出しまして、この通達に基づいてその活用が行なわれているわけでございます。  まず先に現在の活用の状況について申し上げますと、これは農業構造改善事業の計画樹立がまずあって、その改善事業の中で、何を成長農作物として取り上げ、そしてその土地の利用をどのように考えていくかという計画が先行をいたしまして、その際に、たまたま、もよりの地帯に適当な国有林野がある。そうしてそれを活用することによって、その構造改善の目的が達成されるというふうに、市町村あるいは地方農政局、あるいは都道府県が判断をいたしました場合に、それは初めてその計画の中へ国有林野の活用が織り込まれてまいるわけでございますが、いまのところ、その活用の実績につきましては、まだ面積としてわずかなものでございます。  それからその次は活用の方針でございますが、この活用をするための事業につきましては、たとえば開拓パイロット事業の実施要綱に基づくところの開拓パイロット事業であるとか、あるいは果樹農業振興特別措置法に基づくところの樹園地造成計画であるとか、その他いろいろございまして、要するに、農業構造改善事業の計画に乗った場合に、その国有林野の活用を認めていくという方針でございます。国有林野を使う場合に、その使うことについての一応のものさしがございます。たとえば、国有林野を使うにいたしましても、そこが国土保全上、あるいはまた自然公園法との関係から、その場所を農用地に使うことが好ましくないと考えられるような場所、あるいはまた植えたばかりの人工造林地であって、そこに人工林の造成計画が進もうとしておるような場所、あるいはまた一定の循環事業として直営生産団地になっているというふうに考えられるような場所、そういうような場所は、できたら、なるべく避けていくというものさしがございます。しかしながら、そういう場合であっても、もし、どうしてもその国有林野を、たとえそれが植えたばかりの造林地であっても、活用しなければ、その農業構造改善の計画が樹立できないというような場合には、これは例外の容認といたしまして、これも活用をしていくというふうな方針になっております。なお、この活用をする場合の組み入れ方の方式でございますが、農地法に基づきますところの自創地造成の特別会計に売り渡し方式で繰り入れる方法、それから貸付でいく方法、あるいは売り払いでいく方法、それぞれに分かれて行なわれることになっております。以上でございます。
  64. 山田長司

    ○山田(長)委員 農村更生の大きなねらいとして農業改善が進められているわけでありますが、実際はなかなか魂が入らずにいるのが実情と思うのです。そこで、ただいま長官のお話しになりましたように、これがもし自治体の更生のために、土地を自治体に払い下げて改善事業の一つとすることができれば、農村の更生ができるという目安の判断といいますか、そういうものは知事及び当局でするものと思われますが、この売り渡しの方法については、交通の便のいいところとか、あるいは交通の便の悪いところとか、あるいは東京、大阪の周辺あるいは東北とか九州とか、その周辺によって、価格の違いがあるものと思われますが、大体今日までの払い下げをされた価格というものはどんな状態であり、それから払い下げを受けたところは構造改善事業の目的のために申請をしていると思いますが、どんな内容のものが申請の対象になっておりますか。
  65. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 この事務次官通達に基づいて活用されました国有林野の利用につきましては、この面積について、先ほども申し上げましたように計画の樹立に従って進められることになっておりますので明確な数字がなお把握できておりませんけれども、一応三十八年度におきましては四千ヘクタールの予定でございました。そこで価格につきましては、これは売り渡し方式によります自作農創設特別措置特別会計への所属がえの場合につきましては、あの農地法にいうところの方式がございますので、それによることになりますし、それから売り払いの場合につきましては、それぞれの国有林野の所在するもよりの地価等を十分に調査をいたしました適正な時価によるということにいたしております。
  66. 山田長司

    ○山田(長)委員 これの払い下げを受けた自治体、あるいはそのほかの近代化に対処するための団体等の監督、いわば使用目的で貸し与えおくが、これの監督は、将来どこがやることになりますか。
  67. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 農業構造改善事業の計画、それから実施、さらにそれの指導と以後の監督につきましては、これは農政局並びに地方農政局ということになるかと存じますが、一方国有林を活用いたしました面につきましては、これは林野庁といたしましても、その活用のしかたについて追跡をいたしまして、その活用の目的どおりにそれが言使用されたかどうかの判断をしてまいりたい、こう考えております。
  68. 山田長司

    ○山田(長)委員 私がきょう、ただいまの問題を伺いましたのは、近く、これは私どもの選挙区でもなんでもありませんが、福島県のある自治体から、近代化のための国有林野の使用についての陳情がくることになっております。いわばこの陳情の前ぶれとも言うべき人たちが、実は農村更生の一つにどうしても国有林の払い下げを受けなければ立っていかないということで、自治体の議員諸公から相談を受けたわけでありますが、この近代化のための指導は、むろん林野庁がやるのではなくて、農政局なり園芸局なりが担当して指導するものと思われますが、指導の部分が明確になっておらないと、せっかく土地の払い下げを自治体が受けて、この自治体が近代化の推進をやろうとする場合に障害が起こってくると思うのでありますが、つくり出すあるいは植林する、そういう近代化のためのものではあるが、この指導は農政局、園芸局、どういうものは園芸局に属し、どういうものは農政局に属するという区分があるはずだと思いますけれども、この点について、区分をひとつこの機会に教えていただきたいと思います。
  69. 昌谷孝

    昌谷政府委員 ただいまお話に出ております国有林の活用の関係でございますが、これは三十八年度から三十九年度にかけて先ほど林野庁長官から御説明のありましたような方法で活用がはかられております。お話のようにそれぞれ活用の目的を異にいたしておりますし、管理主体を異にしておりますが、私どもが三十八年度につきまして次官通達に基づいて活用がはかられたというふうに把握をいたしております林野面積は、おおむね千三百町歩、これを事業主体別に見ますると、市町村が主体になりましたものが約半数、四八%程度、それから利用組合等、地元の、何と申しますか部落単位のグループといったようなもので活用いたしておりますのが約三六%、残余が農協というようなことになっております。またこの活用されました目的別に、いまの千三百町歩を分析をいたしてみますと、草地あるいは放牧地等畜産関係への活用が最も多く、そのうちの八六・六、約八七%が畜産関係の活用ということになっております。その他に約六%ほどのものが、果樹園の造成敷地として活用されております。それから茶園が〇・七%、桑園が果樹園とほぼ同じ五・六%、それから普通の農地の造成に充てられましたものは一・四%、こういった目的別の分類が見られます。  なお活用方式別に見ますると、貸し付けの形をとりましたものが四二%、それから売り渡しの形式をとりましたものが一八・八%、それから農地の特別会計を通じません売り払いの形式をとりましたものが三六・八%、なおどの方式によるものか未定のものが約二%残っております。おおむね貸し付けを使うのがだんだん利用形態としては多いようでございます。  以上のような内容の活用でございますので、私どもといたしましては構造改善事業の成果を確保し、また地元の農業の発展に寄与するという意味での一般的な事後指導は、地方農政局構造改善部または各都道府県の構造改善主務課を通じまして、この構造改善事業としての成果の維持確保にはその行政ルートで御指導あるいは御相談に応ずるというたてまえをとっておりますが、いま申しましたように、内容といたします事業が相当部分が畜産でございますが、若干他の専門部分にも及んでおります。それらの技術内容の指導その他については、それぞれ都道府県の畜産課とかあるいは蚕糸関係主務課とか、そういうところの御援助も得まして、構造改善事業として活用されましたものが当初の目的どおり有効に活用されますよう、事後指導ということにも十分注意を払っておる次第でございます。
  70. 山田長司

    ○山田(長)委員 終わります。
  71. 白浜仁吉

    白浜委員長 吉田賢一君。
  72. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 まず第一点は、農林省の農林行政のあり方につきまして御質問を申し上げたいのであります。  なお、これは、時間の関係もありますので、私は質問の要点を申し上げますから、答弁をひとつ文書で出していただきまして、できますならば、この委員会において答弁があったものとして文書によって答弁を御掲載願いたいと思いますが、委員長においてしかるべくお取り計らいを願います。
  73. 白浜仁吉

    白浜委員長 承知いたしました。吉田君要求の文書は、会議録に掲載することを御了承願います。
  74. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ではお尋ねいたしますが、行政管理庁が昨年の十月から十二月まで、農業構造の改善事業促進対策の運営状況について実地の調査をいたしました。その結果、全部で七項目にわたりまして相当辛らつな勧告をいたしております。これは行政のあり方としまして注目すべき一つの状況なり傾向を示すものでありますから、以下、その概要と趣旨だけを申し上げてみたいと思います。  そこで、行政管理庁といたしましては、農業構造の改善事業が三十七年の発足以来軌道に乗りつつありますけれども、必ずしも効果的にまた円滑な進捗がせられておらぬという認定をいたしております。そこで、これは農民自身のこの改善事業に対する自覚とかあるいは意欲、そういうものの不十分ということにも一つの原因はあるかもしれないけれども、さらにこの行政の運営の面においても次の諸点の改善が最も必要である。なお、これに関連いたしまして構造改善事業の促進を最も有効に推進して構造改善の総合的効果を期待するために、たとえば農林助成事業などとの総合性を一そう強化するように検討する必要があろう。あるいはまた基本施策といたしましては、農畜産物の価格の問題、流通の対策問題、労働力の対策問題、農地制度の問題等、あるいはまた内外の経済諸般の情勢にもかんがみてこれを並行的に改善充実する必要がある、こういうふうな一つの断定をいたしております。そこで、以下七項目を一応列挙いたします。  第一は、農業発展の地帯性に応ずる構造改善事業の進め方でありまして、農業の発展は自然的、経済的条件に応ずる合理的地帯形成によって期待せられる。そこで構造改善の事業におけるこの基幹作目の選定状況は、各種主産地形成計画等と必ずしも十分な関連性がないと見られるものがある。計画作成にあたっては、基幹作目の選定についても適地適産あるいは主産地形成を助長するなど、適正な地域的態様の実現を指向するよう一そう指導する必要がある。これらにつきまして立地条件あるいは経済力あるいは農家が兼業化しつつある地域、あるいは都市付近における工業化の影響、そういったあらゆる社会経済等の実情も十分な考慮をしなければなるまいという点。  第二点といたしましては、この実施体制についての指導に欠くるところがある。市町村におけるこの指導体制は一般的に弱体であるほか、国であるとかあるいは都道府県における指導体制は一応整っておりますけれども、運用必ずしも実効的ではない。市町村に対する指導が人によってまちまちでありますこと。あるいは総合結集のための各種協議会等の運営がまことに形式的である。計画の内容が実情に即しない。だから事業の実施に行き悩んでおる。近代化施設が遊休化しておるものの事例は相当ある。試験研究機関の協力あるいは普及員の資質の向上などに一そう努力をする必要がある。  第三点といたしましては、関連する各種事業等との総合性の確保であります。この点につきましては直接に関連するたとえば土地の改良事業、河川の改修事業等との調整など、あるいは農協その他の諸団体との連携など、または国有林野の活用に関する営林当局との連携等も依然として不十分であって、構造改善事業の進捗を欠くところの一原因をなしておるのではないか。いまの段階においてこれらの事業との調整及び関連機関との意思疏通などをはかるよう一そう努力する必要がある。  さらに第四といたしましては、この大規模経営に関する技術体系の確立を要望する点であります。これは大型機械あるいは大規模施設に関する技術体系におきまして部分的には不安定のあることは、それは構造改善事業を推進する上の障害となっておる。これらの技術体系の確立に一そう積極的な努力を傾注する必要があろう。これは特にこの技術近代化、いろいろな大型機械の導入等によりまして当然起こる問題で、いまこれに打ち当たっておる感が切実なのであります。  第五点といたしまして、もっと認定の事務を簡素迅速化する必要があろう。計画の認定に関する一切の事務のうち、地方農政局と都道府県の協議に最大のウエートが置かれてきたのは、事業発足当初の期待上やむを得なかったのではあるけれども、しかし都道府県における審査能力も非常に向上しておるものと見られる今日、国における内容審査を一そう重点的に行なって、都道府県の自主性強化、その認定の促進をはかるべきではないか。まことに切実な点であります。  さらに第六点といたしましては、融資について農林漁業金融公庫の資金及び農業近代化資金の融資が末端の段階においてとかく円滑を欠いておる。これは事業を阻害しておる一つの大きな原因であって、関係機関について十分な指導が必要である。もっともこの点につきましては、私自身の私見を加えるならば、日本の農林漁業における融資は世界的に金利が高いのではないか。こういった点については大臣とも問答したような次第でありました。この点には触れておりませんけれども、とかく融資の問題が構造改善事業の大きな障害になっておるという事実はいなむことはできません。  そこで七は、啓蒙宣伝の徹底でありますが、改善事業の実施地域におきましても、一部農民の反対のため事業が行き悩んでおるという事例が若干見られるのであります。これは農民の理解と熱意を推進するために農業団体等を一そう活用いたしまして末端まで徹底的にPRするという必要があろう、こういったふうに結んでおります。これは前段申しましたとおりに文書をもって御答弁を願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  75. 松野孝一

    松野政府委員 ただいま御指摘になった点に関しましては、後刻文書をもってお答えいたすことにいたします。   〔答弁書は本号末尾に掲載〕
  76. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 同じく農林行政のあり方といたしましてお尋ねしたい第二の問題は、最近あるいは新聞ないしは国会の他の委員会等々におきまして問題になっておるレモンの輸入自由化の問題であります。レモンは、日本の輸入農産物の全体量あるいはまたこれが消費量等からいたしますと大した量ではありませんけれども、いま、たとえば経済専門誌のエコノミストにしましても、あるいは週刊文春にいたしましても、その他日本経済新聞にいたしましても、あるいはその他の日刊新聞等々に相当大きく取り扱っておりますように、世上大きな注目をしておる案件であります。これは生産者問題にもつながりましょう。あるいは国民消費の問題にもつながりましょう。あるいは輸入貿易行政にもつながっていきましょう。まあいろいろな角度から検討を要すべき問題であろうと思いまするが、第一に、五月八日の官報告示、通産省告示二百四十九号によりまし、輸入割り当てを受ける貨物からレモンをはずすことに公告をいたしております。これは輸入貿易管理令の第三条によりまして当然発効するものと思いますが、一体どのような手続きでこれをなされたか、まず簡潔に御答弁願いたい。
  77. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 五月七日の経済閣僚懇談会におきましてレモンを自由化するという方向が決定されまして、上司の命によりまして、翌日の五月八日に告示をしたというような経過であります。
  78. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 経済閣僚懇談会というのは、経済閣僚会議の趣旨と理解していいのですか。
  79. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 これは貿易の自由化の方針を決定する場合に、通常、関係経済閣僚つまり総理大臣以下企画庁長官、通産大臣農林大臣、大蔵大臣等、関係経済閣僚集まっての会議であります。
  80. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 しからば、正規の経済閣僚会議で決定をせられた御様子でありますが、あなた方事務当局はどういう趣旨でこれに御同意になったのか、それを伺いたい。
  81. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 われわれといたしましては、自由化の方針が決定いたしました以上、最もすみやかなる手続をとって自由化を発効させるということが事務的に当然のことかと存じまして、実施したわけであります。
  82. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は自由化が決定したあとの事務をいかに行なうかという点を伺うのじゃなしに、やはり経済閣僚会議で貿易の自由化、しかも国民生活に直接つながり、三十二年ですか三十三年ですか、一たび自由化したのを再び自由化を廃止したというような、いわくつきの歴史もある場合に、一体事務当局に相談もせずにこれを大臣でおやりになる、こういう経過になっておるのですか、その点を伺いたい。
  83. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 御承知のとおり、現在各品目につきまして自由化についての考え方をどうするかということは、すでに検討しておるわけでございます。レモンにつきましても、従前からこれを自由化したらばどういう影響があるだろうか、あるいは現在の輸入状態はどうであろうかということにつきましては、十分事務的にも検討しておりましたし、大臣にもその内容につきましてはよく御説明してあります。したがいまして、内容なり問題点がどこにあるかというようなことにつきましては、十分検討済みのことでありますが、ただ五月七日に自由化を決定するということにつきましては、あらかじめ相談したわけではございません。
  84. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 しからば、この自由化するというのは、そもそも事務当局が事前に何かと意見も具申してあったようでありまするが、一体自由化するのはよいということであったのか、いま直ちに自由化することが必要である、適切であるという御意見であったのか。そこらはやはりはっきりしておいてもらいたいのです。
  85. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 われわれは大臣に対する補佐といたしまして、自由化した場合の影響の問題とか、あるいは自由化しない場合における国内の価格なり消費者物価の問題とか、そういう点についていろいろ実情なりわれわれの意見なりは申し上げておりますが、やはり最終決定は大臣がなされるべきものかと思います。
  86. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 歯にきぬを着せぬで、これはずばり言ってもらいたいのです。これは一応できたのでありまするので、したがいまして、今後のこともありますからよく伺っておきたいと思うのですが、そもそも積極的に自由化を是なりとする理由は何なのです。
  87. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 われわれ自由化の可否を考えます場合に、自由化に伴います国内産業への影響とか深さとか広がり、あるいはまた消費者価格の観点、あるいは流通合理化の観点、そういったものを総合的に勘案いたしまして可否を決定すべきものだと思います。レモンにつきましてはまず国内生産の実態でございますけれども、御承知のとおりきわめてわずかな生産でございまして、面積で申しますと、われわれの調査では全国で百四十九ヘクタールということで、日本の農産物の中でも最も面積の少ない部類に属する一つのものかと思います。しかも非常に個々の栽培面積が小さくて、平均いたしますとおそらく一戸当たり五畝前後という程度の小さい面積でありますので、農家の収入源として見ましても、大部分のものは農家収入の中の一%に満たないという実態だと考えております。そういうふうな点で、栽培が、国内生産が非常に少ないということと、しかも収入の面においてウエートが低い。同時にまたかりに自由化いたした場合におきましての影響を考えてみましても、現在はレモンが一反当たりの粗収入が二十万円から二十五万円くらいでございまして、これは他の果樹に比較いたしますと、最もよいと言われます温州ミカンよりもさらによいという実態でございます。これを自由化すれば、後における価格というものはなかなか測定しにくいわけでありますけれども、一応コスト面から考えてみますと、輸入ものが現在の半値程度になるだろうということを考えておったのであります。それに即応いたしまして、やはり国内ものは品質が劣りますので、国内ものも同じような比率で下がっていくとすれば、やはり半値程度になる、そういったような想定をかりに立ててみました場合、約十万円あるいは十一、二万円というのがレモンの反当粗収入ということになるわけであります。その程度の粗収入がありますならば、温州ミカンにはやや劣りますけれども、他の果樹と比較いたしますと、むしろまだまだ有利であるという実態でございますので、自由化いたしましても、影響は避けられないにいたしましても、決定的な影響では必ずしもないのじゃないか。今後生産面における合理化をはかっていくことによって、産業としても十分成り立ち得る余地もあるであろうということを考えまして、この際消費者物価の問題等も勘案しながら自由化に踏み切ったというわけでございます。
  88. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 輸入品は半分ぐらいに下がるだろう。しからば消費者物価を勘案する、つまり消費者はそれだけ喜ぶということが一つ理由にあげられるようでありますが、これは農政局長に聞くのですが、あるいは政務次官にあわせてお答え願っておくのですが、日本の農産物は、米にしろあるいは畜産物にしろあるいは野菜にしろ、果樹にしろ、外国品を輸入することによって価格が下がればけっこうではないか、そういう思想で、農産物行政はおやりになっておるのですか、その点をはっきりしておいてもらいたい。
  89. 松野孝一

    松野政府委員 御質問の点は、もうわれわれといたしましては、外国から幾ら自由化の声が大きいにいたしましても、やはり農民の保護ということを考えなければいけませんから、その点を十分考えて、はたして自由化すればそれに対抗できるかどうかということを考えて、そして慎重に対処していく方針であります。今回の場合におきましては、ただいま園芸局長から御説明がありましたとおり、これは生産量も少ない、それから農家の粗収入も一〇%以下が大部分であるという点もありますが、それにいたしましても生産者に対する影響は免れない。しかしながら、この点については、レモンの品質それ自体は気候的に落ちるのであります。だからサンキストのレモンなどにはとても対抗できないのでありますけれども、しかしとった後の処理、催色、黄熟の処理についてはなお拙劣な点がありますので、この点について生産対策の一環として改良を加えていけば、相当やっていけるのじゃないか、私はこういうふうに考えております。
  90. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 どうも答えがよくわからぬ。自由化に踏み切ったのは、一つ理由として、輸入レモンが半値に下がるだろう、消費者がそれだけ助かるだろう、これは日本の消費経済、今日の重要な物価問題、国民経済、生活の問題から考えてきわめて重要な点であります。だから単純に消費者経済からいうならば、まさにそのとおりでございます。そこでそれを貫いていくならば、言いかえると、国際的に適正な価格でないものは、たとえ百姓の産物であろうと何であろうとどんどん輸入競争して、そうして戦後一部で、百姓にうんと投資するようなことをしないで、安い米を外国から買えばいいじゃないかというようなことをいったこともあるわけですが、一体そういう思想かどうかという点をはっきりせよと言ったら、慎重にやるというような、そういう御説明は必要じゃないのですよ。これは何か事前に抽象的に大臣といろいろ方針、政策についてお話しになっていたような御答弁もさっきあったのだが、さて何がこれを是とする理由かと聞いてみると、重要な一つ理由として、輸入品は半値に下がるだろう、半値に下がれば消費者が喜ぶ、だからこれは自由化に踏み切ったんだというふうに受け取れるのです。そんな思想でいくならいくでこれも一つのあり方ですが、あれはこの思想でいく、この場合はこういう弁解をする、この場合はこういうような主張をするというようなことでは、日本の農政もしくは農林省行政やり方をほんとうに疑います。だからそこはこういう重要な問題にぶつかったときは、首尾一貫して原理は明らかにしておいてもらいたいのです。でありますから、たとえば多分影響が少ないと見たときには、どんどん自由化に踏み切るのだというような考え方で、なしくずしに全部自由化していくのだという問題なのか。次に何かという問題が起こってきますが、とにかく輸入品の価格は半値に下がるということがどうも重要な理由だったらしいのだが、そのような考え方に間違いないかをはっきりしておいてもらいたい。
  91. 松野孝一

    松野政府委員 われわれといたしましては、自由化の声は非常に大きいのでありまするけれども、現在九二%くらい自由化しておりますが、むろん消費者対策、消費者物価のためには自由化すればいいという点もわかりますけれども、しかしながら、そのつくる農民のことを考えないわけにはいかぬのでありまして、そのレモンならレモンの生産がどの程度農民に影響するか、その影響の範囲という点を十分考慮する、それからそれに対する対抗策を考えて自由化をするという方針でございまして、ただ消費者物価対策のみ考えて自由化するという考えは全然ありません。今日御承知のとおり、米とか麦とかいう種類のものは国家管理、これは自由化されていない。それから今後、農業構造改善の重要なる成長産業物となっている畜産の自由化は、われわれは絶対に軽々しくいたさないつもりであります。レモンと同じように新聞で問題になった、たとえばコンニャクの問題、これはレモンとは非常に違いまして、栽培条件、栽培面積、栽培農家等を考えると、軽々に自由化することはできないのであります。そういう点は十分農民の保護ということを考えて対処する方針であります。
  92. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 栽培面積が百五十ヘクタールくらいである、農家の粗収入の割合は少ないものである、こういったようなことも何か理由にあげておられたらしいが、たとえば人口が一万人だから、それは一億と比較するならばごくわずかな人間だから、その被害はどうあってもというのは、これは政治じゃありません。たとえ一人でも、これは古い例ですけれども、イギリスのある軍艦でしたか、水兵が一人大海に落ちまして、びっくりした艦長は、もう二日間もあちらこちらとその一人の落ちた水兵をさがし回ったということがあるわけなんです。だからやっぱり政治は、少数であるから切り捨てていいというような考え方は、ほんとうの民主主義じゃありません。だからレモンの裁培者がかりに二千戸であろうと、面積が百五十ヘクタールであろうと、粗収入の割合が少なくてあろうと、いかんにかかわらず、ともかく重要な一品目として、これは従来割り当て品目に入っておったものをはずすのですから、そういう見方、考え方でなしに、大事にしていくということが、私は農政の一つのコツであると思うのです。こういうふうに少ないんだから、小さいのだから、切って捨てていいというような思想じゃ、これは切り捨てごめんでたいへんなことですから、この点はそんなことはないと思いますが、いまのおことばの一節にそういうことがあったので、一応私は申し上げておきたい。  それからもう一つは、合理化を今後していって、内地品の品質も向上さして、そしてその農家を対応していけるように指導していきたいという趣旨の御発言に見たのですが、一体合理化について、ほんとうにそこまで積極的にやるならば、私をして言わしむれば、抜き打ち的に自由化を発表しててんやわんやの騒ぎを起こさして世論の注視のまとになる前に、なぜもっと事前にやっておかなかったのか。事前にやることは、あなたのお説によれば日本国中じゃない、だから狭い地域だから、少数の対象なんだから、しごくそれは簡単と思いますが、それがどうしてできなかったのだろう。この点をひとつはっきりしておいてもらいたい。
  93. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 実はレモンに関します合理化の促進につきましては、三十七年度におきまして、兵庫県、広島県、熊本県の三県に催色、黄熟の設備の補助というものをすでにやっておるわけでございます。したがいまして、全然政府が従来手を打たなかったというわけのものではなかったと思います。ただ御承知のとおり、レモンの生産は非常に分散的で小規模でございますので、なかなか政府としても全般にわたっての十分の手を打ちにくいという実態でございます。
  94. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 レモンの問題は、これは生産者問題でもあり、消費者問題でもあり、あるいは貿易問題でもありないしは行政のあり方の問題でもあり、あるいは政治問題と言われるほどに、私はあらゆる角度から検討に値する問題だと思っておるのですが、時間の関係で私はこれは打ち切ります。  問題は一転いたしまして、農政局長を中心に実は伺いたいのでございます。  一つは、やはり農業基本法ができまして以来、ずいぶんいろいろと大きな期待を持たせておりましたけれども、日本の農業の今日及び今後につきましては、必ずしも一般に大きな過去の期待がそのとおり進行しておるとは思いませんので、問題を列記的に申し上げましてひとつ御答弁をいただきたいのであります。  やはり日本の農業がいろいろと困難な面に逢着いたしまする一番大きな一つの原因といたしまして、国際的にも国内的にも大きな資本の圧力がこれに加わってまいりまするので、経営の面におきましても、あるいはまた資金の面におきましても、流通の面においても、技術、設備の面におきましても、あらゆる面において資本の圧力がこれを圧迫いたしまするので今日の困難を来たしているんじゃないだろうか。たとえば、選択的拡大の問題で、私の友人が養鶏十万羽を目ざしてやりつつあるのですが、そうすると近くの大きな資本家は、こっちも十万だというので別の企業のようにどんどん進んでまいります。こういうようなものがありまするので、そこで、私はこのような世界、国内の経済社会の諸情勢のうちで、日本の農業をほんとうに発展的に整備さしていきまするためには、たとえば、日本の国家の見地から見まして、国民食糧として、その他農産物そのものが従業者のために、あるいは労働するためにも適正なる報酬あるいは生活条件が約束せられるというようなこと、あるいはまた、その投下資本に対しまして適正な収益があるというようなこと、そういう諸条件を考慮いたしまして、ある特殊な作物に特に重点を置いてあらゆる角度から徹底した保護を加えていくということに踏み切ることが必要でないだろうか。それは、たとえば米につきましては、販売において確実でありますし、価格が確実でありますし、また時間も少なくて安定性もございますし、野菜類におきましても、ビタミンその他いろいろ必要なものだし、外国からの輸入競争もあまりございませんし、あるいはまた果実等につきましても一そうこの需要が拡大しつつありますし、あるいは牛乳等、畜産物等におきましても、日本の食生活の拡大の状況からかんがみまして非常に将来性があると思いますので、こういうものを重点的に設定をいたしまして、そうして価格差の補給制度あるいは設備、技術、機械その他につきまして補助制度、たとえば先年外航船舶の建造にあたりましては、製造の鉄板に三割国が補助したようなこともございまするが、やはり数十万円ないし百万円をこえます大機械は容易なことじゃありませんので、そういう面に対する補助とか、すなわち生産費を引き下げるために役立ちまするし、生産性を引き上げるために役立ちますると、このように価格差の補給の制度、それから徹底した施設等の補助制度、この二本を新たに打ち立てていくようにすべきでないだろうか。なるほど予算その他の方針等によりまして、かなりそういう方面に出ておられまするけれども、やはり総花のそしりを免れませんので、この際踏み切ってそういくべきではないだろうか、こういうように思われまするのですが、その点農政局長いかがでございましょうか。
  95. 昌谷孝

    昌谷政府委員 私どもも、いま御指摘のような方向一つ方向だと実は存じております。御承知のように農業基本法におきましても、選択的拡大というような方向を打ち出しましたのも、いわば将来非常に需要の伸びる農作物について、いわゆる総花的でない、総花的な増産に対応するものとして選択的拡大という目標を掲げた次第でございますが、それにいたしましても、わが国の農業経営の経営規模の零細さという問題がつきまとっておりまして、従来は国際競争力に耐えるといったところまでまだ行き届いておりません。今後の農業施策の重点として心がけるべき点は、何と申しましても経営規模の零細なこと、これを一ぺんにはまいりませんが、根気よく気長にそういった方向に日本の農業を育て上げていくというのが、御指摘の資本効率の問題にいたしましても、労働報酬の適正化の問題にいたしましても、あるいは国際競争力の点から申しましても、問題解決の抜本的な方策であろうかと思います。そういった方向と、先ほど申しましたような、御指摘にもありました成長作物に対する重点的な施策、いわゆる選択的拡大と基本法ではいっておりますけれども、こういう方向で施策を貫いていくことが肝要かと存じます。
  96. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 つきましては、農林就業者の問題をごく簡単に申し上げておきまして、これで終わりたいと思います。  農林就業者が漸減する傾向にありますことは、まことに憂慮すべきことでございまして、総理府の報告によりましても、家族従業員が激減しております。それから、若年を中心にした減少、あるいは女子の従業者、老齢者が増加、言いかえると労働力が、数において、質において絶対的に劣勢になりつつあるというのが日本の農業でありますので、この際政府といたしましては、農業をほんとうに発展の体制に置きかえようとするならば、これらの従業者につきまして、たとえば自営者に対しましては農業の合理化の指導、あるいはまたその企業的な指導であるとか、あるいは農業後継者その他農業技術者等につきましては、一そう専門的知識と技術を導入する必要があるのではないだろうか、たとえば工学的にあるいは理学的に、自然科学的に。そういった角度から技術を高度化する必要があるのではないだろうか。さらに、補助労働者といたしまして婦人、老齢者、こういった人に対しましては、たとえば婦人教室、婦人学級とか、ちょうど青年学級があるがごとくに、定期的、地域的に、いまの農業に適切な指導訓練をする必要があるのじゃないか。農業従業者につきましてそのような施策が広範に行なわれることが、いま最も切実であって、もしそうでないならば——本年三十八年度に七十万人も農業従事者が減ったということは、これはついに農村が荒廃に帰する。農村が荒廃に帰するならば、これは日本の国の根本的な問題にかかわってくると思いますので、農林業の就業者問題をいまのような角度から扱って推進してはどうかと思うが、所見はいかがですか。
  97. 昌谷孝

    昌谷政府委員 農業の就業人口が他産業に流れ出しますことは、農業自体の従来の過剰就業と申しますか、先ほど申しました零細経営を非常に余儀なくしておりました農業の従前の環境との関係から申しまして、必ずしも農業にとってマイナス面ばかりではないと存じますが、これを積極的に農業のためになるように生かすかどうかということが根本的な問題であり、私どもの課題であろうかと存じております。御承知のように、一方では非常な勢いで流れ出しております。反面、高校卒業者等で、かなりの専門的知識を備えた優秀な青年諸君が、農村に残って農業独自の楽しみと申しますか、自分が自分の主人公であるという農業の特色を十分活用して生きがいを感じてやっておられる青年諸君も一方にあることも、事実でございます。私どもとしては、そういった諸君の数をなるべくふやすということがいろいろの施策の中心になろうかと思いますが、基本的には、日本の農業自体がそういう青年諸君の期待と希望をつなぎ得るような将来性のあるものにならなければいけません。そういう意味では、構造改善事業等一連の施策が一般的に行なわれることが、後継者対策の基本であろうかと思います。ただ、そういった基本的な一般的な施策のみでなく、私どもとしては、今後そういう優秀な青年諸君が村に残れるような環境も積極的に講じなければいかぬと思います。三十九年度から、貸与資金制度の中でいわゆる後継者資金というようなものが設けられましたのも、実はそういったところに着目をした施策のつもりでおります。青年諸君が経営主たる父親のもとで、単純な労働と、補助者として相当の年配まで定収入もなく、また自分の創意を生かす余地もなく、農家の中で労働補助者として扱われておりました従前の家族農業経営の欠陥を多少とも補いたいというのが、後継者資金のねらいでございます。そういった青年諸君に独立部門の経営を始めていただいて、その範囲内での自分の創意くふうを生かし、独立の定収入を確保する、こういうことをねらいとした資金制度、無利子の貸し付け金をつくりましたのも、そういった趣旨でございます。  なお、医療普及制度あるいは生活改善の普及制度を通じまして、高い技術水準とまた合理化された農村の生活環境を一日も早くつくりたいということで努力はいたしておりますが、何さま長年にわたってつちかわれました日本の農業の現状でございますので、成果がそう性急に上がりませんことは、私どもの努力の足りない点もございまして、はなはだ遺憾でございますが、今後とも教育施設等の充実によって御趣旨に沿ってまいりたいと思います。  なお本年度から、農閑期を利用いたしまして、いわゆる自営者冬季学級というような名前をつけまして、いわゆる青年学級とでもいいますか、そういった若い経営者あるいは後継者諸君に、農閑期を活用しての高い農業技術あるいは生活技術の訓練をやるということも、新しく始めたいと思っております。そういったことを逐次継ぎ足しながら、堅実に御趣旨に沿ってまいるということであろうかと思います。     —————————————
  98. 白浜仁吉

    白浜委員長 次に、大蔵省所管について質疑を行ないます。質疑通告がありますので、これを許します。神近市子君。
  99. 神近市子

    ○神近委員 関連質問がたいへん多かったので、時間が非常に逼迫しましたから、私は、次会に大蔵大臣の御出席を願ってぜひ聞いていただかなければならないと思っておりますけれども、きょうはその前提として、一部この間の御報告についてお尋ねいたします。  私どもは二月の十八日でございましたか、日銀の地下室にあったダイヤモンドを見聞に参りました。それはどういう動機であったかということを詳しく申し上げることはできませんが、それに基づいて、御報告を十九日付でいただいております。御報告は、保存されてあった文書からお出しになったものか、あるいは新しく御記録ができていて、それによって御報告になったものか、お伺いいたします。
  100. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 すでにございました資料を整理して御提出いたしましたものでございます。
  101. 神近市子

    ○神近委員 これはあとにいろいろ問題を引きますから、詳しくあとで伺いますけれども、ダイヤモンドを供出した人たちの名簿、たとえばどういう数量をどういう人が出したというようなものは、保存してございますか。
  102. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 戦争中に供出されましたダイヤ、これは当時回収機関であります交易営団あるいは中央物資活用協会、それらの団体がこれを買い上げたわけでございます。その当時の買い上げ者の氏名、数量その他等は、現在ございません。
  103. 神近市子

    ○神近委員 ないと、いまおっしゃったんでしたね。
  104. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 ございません。
  105. 神近市子

    ○神近委員 ちょっとそこのところがおかしいというのは、御存じのようにマレー大佐という人が六百五十ですか。魔法びんか何かに入れてアメリカに持って帰りましたね。そして、あれが発見されて裁判になったときには、名簿がわかっていたのですよ。岡田さんという人と秋葉という子爵夫人を呼んで、マレー大佐がこれは南方から買ってきたんだ、日銀のいまのあのダイヤじゃないということを言い立てた。そのときにお一人か三人お出になって、そしてその中に私の出したものはこれだということをはっきり指摘なすったので、マレー大佐はとうとう十年かの刑になった。あれがあれば——いなというのは何かちょっと…。あれがあったから名前が出てきたのでしょう。それをないといまずっとおしゃっているのは、どうも私どもには何かお隠しになる動機があるのじゃないかという気がするのですが、ほんとうになくて、あのときだけあったのですか。それはどうなんですか。
  106. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 当時の名簿がございましたならば、私どもといたしましても、今後ダイヤモンドの処分をいたします際などについて、非常に貴重な資料になるわけでございます。私どもとしても、そういった資料があるということは非常に望ましいと考えております。でございますが、残念ながらございません。ただいま、ある事件に関連して特定の人を呼んだこと等については、政府のほうでもそれがわかるような資料がなければこういう者は呼べなかったではないか、こういう御質問でございますが、そういった網羅的に交易営団等が買い上げました相手方の氏名、数量というものはございませんけれども、ごく特殊なダイヤなどにつきましては、あるいはこれは自分がいつ幾日出したのだというふうにちゃんとはっきり申される方もございます。私はその当時の事件の経緯は存じませんが、おそらくそういった事実上いろいろ知り得たというようなことに基づいて来ていただいて、いろいろお話を伺ったということではないかと思います。
  107. 山田長司

    ○山田(長)委員 ちょっと関連。神近委員のただいまの御質問に関連してダイヤの問題について伺いたいと思います。  それでは、供出者の氏名がわからなかったとするならば、さらに私は伺いたいのは、占領軍が調査をして大蔵省に引き渡したときの数量、この占領軍当局の数量と、大蔵省当局で受け取ったときの数量等については、大蔵省でわかっていると思うのですが、この点はどうなんですか。
  108. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 進駐軍から日本政府が接収貴金属の引き渡しを受けましたときの数量、品目ははっきりわかっております。
  109. 山田長司

    ○山田(長)委員 その数量につきまして、占領軍が渡したときの数量と、現在大蔵省が提出された資料とでは数字的に違いがあるのです。それで、私は、数字的に違いがあるということは、鑑定者に問題があるから数量に違いが起こったのじゃないかという印象を持つわけですが、この点については、数量の違いはどういうところから起こっていると思われますか。
  110. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 いま山田委員が仰せられました進駐軍が日本政府に引き継いだときの数量と、その後日本政府が保管しております数量とに違いがあるというお話でございますが、問題は、日本政府が引き継ぎました数量は幾らであるかということでございます。二十六年に日本政府が進駐軍からダイヤその他金銀等の貴金属を引き継ぎを受けました。そのときの引き継ぎの実務の状況を申し上げますと、きわめて短期間に限られた係員の立ち会いのもとに引き継ぎを受けたわけでございます。したがいまして、日本政府は進駐軍から引き渡されますときに、その数量を一々しさいに調べまして、明確に、たとえばダイヤモンドで申しますと、ダイヤモンドは何個、何カラットということまでちゃんと検定をいたしまして引き継いだのではございません。主として進駐軍が記録しておりますところ、それも非常に明確に整理をして記録をしております書類に基づきまして、二、三の物件はもちろん現物をも見ましたけれども、そういった形で引き継いだわけでございます。そうして、引き継ぎましたあとにおきまして、日本政府の責任におきまして数量は幾らというようなことを実際調査をしたわけでございます。その調査しました結果出てきました数字が十六万一千二百八十三カラット七五でございます。この数字につきましては、日本政府がその後ずっと保管しておりますが、全然狂いはないのでございます。ただ、進駐軍から引き継ぎましたとき、その引き継ぎも、先ほど申しましたように、全部数量を当たって引き継がないで、やむを得なかったと思いますが、そういう形で引き継ぎました数量と、日本政府がその後自分の責任において明確にいたしました数量との間には多少差がございます。でございますが、それ以後におきまして日本政府が自分の責任において数量を明確にいたしましてからあとにおきましては、その数量はそのまま間違いなく日本政府が保管をしております。
  111. 神近市子

    ○神近委員 これを聞くとみんなびっくりしますけれどもね。大体供出のときの事情を聞きますと、予定したものよりは九倍出ているのです。最初の買い入れの資金としては大体二億円予定しておったのですね。ところが、そんなにたくさん出てきたものですから、第一回には十五億を追加し、その次にはまた二億円追加して、そうしていま残っているのが十六万ですか。そうすると、これを換算していけば、大体五十万か六十万カラットあったはずなんです。それもたいへんな量で、これはその当時みんなびっくりしたんだそうで、そのとき日本のみんながどんなに戦争というものが大ごとかということを考えていたかということがわかると思うのですけれども、その、最低に見積って五十万カラットのものがいま十六万一千カラットというようになっているのです。それで私が伺ってみたいということは、いま山田委員も、同じ問題だろうと思うのですけれども、占領軍の手で返してもらったときに十二万九千カラット、最終的に御報告になっているところから見ますと十二万九千カラット、そのときに、国内産業用あるいは被接収者に中間解除したものが三万四千カラット、こうお示しになっている。たとえば、最低に見積りまして五十万カラットとしましても、十七万五千カラットぐらいは行くえがわからなくなっております。これにはマレー大佐事件のようないろいろなことがあったろうということも考えられますけれども、私は、最大の原因は、やはり終戦時に軍需省が隠匿を命令したというようなことに原因がある、ここにひとつちょっと朗らかでないところがあると思う。これは青木代議士が何かに書いておられますけれど、桐生から即時に持ってきて、その晩、一晩じゅうかかって書庫の下にいけた、結局それが三日後か一週間後にわかって、そうして駐留軍から命令がきて、また掘って返したというようなこと、それはたった一つの例であります。これはダイヤモンドだけでなく、金や白金も入っていましたから量は相当多かっただろうと思いますけれど、これを青木代議士の群馬県のところまで分けて預けたといえば、そのときに相当散らかったというように私は考えます。この隠匿されたときに摘発されなかったものが相当残ったろうということが一つ。それからこの御報告の四ページのところに三十七年二月五日から三月六日まで現品調査をしたといまあなたもおっしゃった。現品を駐留軍に渡されてあらためて——山田委員もその点だろうと思うが、そこのところが非常に不明朗なんです。三十七年の一月五日から三月五日まで現品調査をなさった、これはどういう必要があってなさったか。
  112. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 先ほど私、山田委員にお答えいたしましたのは、進駐軍から日本政府が引き継いだ数量を確認するためにいたしました調査でございます。それが十六万一千二百八十三カラット七五ということでございます。この十六万一千二百八十三カラット七五につきまして、進駐軍はこれを分類をいたしております。その分類のしかたが非常に複雑でございまして、九十一分類に分かれておったのでございます。この分類は非常に複雑でございまして、私どもが今後ダイヤモンドの認定、返還等の仕事をしていきます上においてあまりに複雑過ぎる、のみならずわが国の一般の分類というものからいいましても非常に複雑過ぎるということでございましたために、当時のわが国の市場で一般に行なわれておる分類方法をとりまして、これを従来九十一等級に分けてございましたのを八等級に分けたわけでございます。そのための調査をしたのが、昭和三十七年二月五日から三月五日まで行なった調査でございます。
  113. 山田長司

    ○山田(長)委員 神近委員質問が出ましたのでさっき続いて聞くことを避けたのですが、局長はしさいに調べたと言われますが、この間、実は地下へ行って保管の責任者である部長からも伺ったのですが、吹けば飛ぶようなダイヤと言っておるのです。こういう吹けば飛ぶようなものであるので調べられなかったと言っておる。またこの間日銀の地下へ行ってもそうなんです。吹けば飛ぶようなものであるからなかなか調べがつかないのだと言っておるのです。それだからわれわれとしても、さらにその問題が残っているときに新たに聞こうという気になっているわけです。いま局長はしさいに調べが済んでいると言っておるけれども、まだしさいに調べが済んでいない。それだからわれわれとしては、また新たに聞かなければならぬ事態になってしまったのです。これは私ばかり聞いているのではなくて、委員長も当時聞いておるはずなんです。
  114. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 進駐軍から引き継ぎましたときにおいては、先ほど申しましたように、数量は最終的に確認をして引き継いだわけではございません。しかしその後日本政府の責任においてこれを引き継ぎましたときは、非常にこまかいダイヤに至るまで一つ一つ数えたのでございます。十六万一千カラットのうち〇・五カラット以下のものが十一万五千カラットほどございます。〇・一カラット以下のものは約六万個にも及ぶのでございます。そういったものを全部一つ一つ勘定をいたしまして出ました数量が、資料として差し上げたかと思いますが、ここにございますところの個数にいたしまして百四十九万八千九十三個、重量にしまして十六万一千二百八十三カラット七五ということでございまして、全部一つ一つ勘定をいたしました。
  115. 山田長司

    ○山田(長)委員 私は、このダイヤモンドの問題については、いまから十二年前から、行政監察特別委員会当時から調べておって、進駐軍の数量を知っておるんですよ。日本政府に出した数量、個数の書いてある資料を持っておるわけですよ。ですからどうしてこの占領軍の調べた数量と大蔵省当局が調べた数量との相違が起こったのか。いま聞くと、新たに調べたと言われますが、新たに調べたときの鑑定人に問題がある。実際に進駐軍が調べたときの鑑定人というのは、向こうの博物館の専門家たちが来てその数量を調べておるわけだ。ところがこっちの場合は業者が調べておる。業者が調べておること必ずしも私は悪いというのではないけれども、なぜもっと権威ある人たちに調べさせなかったかというところに問題があるのです。どうしてこれは業界の人たちだけで調べさせたのですか。
  116. 神近市子

    ○神近委員 それにちょっと付随いたしますから伺いますが、進駐軍が来て二十一年に調べたときのお名前もちゃんとわかっておりますが、いま問題になっておるときの調査、三十七年の二月五日、それには同じ人が三人は入っておる。ただ城谷二郎という人だけがその中から抜けておる。この人は商売人ではないのですよ。私はよく知っていますけれど、この人をなぜ抜かしたか。あなたは御存じあったかなかったか知りませんが、山田委員がいま持っていらっしゃる疑惑がそこから生まれておるということなんです。その四人のうちの三人は同一の貴金属商の人です。一人は抜けられておる。そこに私どもは何か割り切れないものを感ずるのです。
  117. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 まず一番私重要なことと思いますのは、米軍から引き継いだ数量と政府の調査した数量が違うのではないかという御質問でございますが、米軍から引き継ぎましたダイヤモンドの数でございますが、この個数は、米軍は比較的大きなカラットのものにつきましては一々勘定をいたしておりますが、小さなものは全部袋に入れておったわけであります。その袋に入れておった数量は向こうは勘定しておりません。私どもは、米軍が比較的大きなものを勘定いたしました個数と、そうして袋の中に幾ら入っておるかわからないけれども袋の中に入っておるものを袋として勘定をしていただいたのでございます。したがいまして、その後それをあけて一つ一つ勘定した数量と米軍が私どもに渡しました数量が違うのはやむを得ないことだと私は思います。  それから鑑定人にどうしてああいう鑑定人を選んだかということにつきましては、残念ながら、私ただいま何とも御答弁できないのでございます。当時の情勢におきまして、政府はもちろんそういうことについては全くしろうとでございます。またそういうことについて識見、能力を持っておられる方方も非常に限られておったと思います。その中から当時慎重にお選びをしてお願いをしたのだと思いますけれども、なぜこういうものを入れなかったのかということについては、はなはだ残念ながら、私いま何とも御答弁いたしかねる次第でございます。
  118. 山田長司

    ○山田(長)委員 ただいまの局長答弁にはだいぶ間違いがあるのです。それは品位の点におきましては、AAというのは四百八十一個、これは占領軍の調べたのも大蔵省の調べたのも同じです。ところが、完全無欠なものがAAなんですが、ABというのは、これは大きなものではっきりする筋のものですが、それは占領軍が調べたのは五百一個ある。大蔵省が調べたのは五千百九十六個。ですから、占領軍の調べたものにプラスすることの四千六百九十五ある。ABの第二位の品物でもこういう数字になってくるし、さらに今度はACの場合も同じように、占領軍が調べたのが一万六千六百十あるのです。大蔵省が調べたのが一万七千六百三十四個になっている。ですから個数が千二十四個ふえているわけです。   〔委員長退席、押谷委員長代理着席〕 そういうふうに大蔵省の調べた数量のほうがふえてしまっている。ここにわれわれとしては疑念を持つわけです。どうしてそういうふうに、占領軍の調べたものから比較いたしまして大蔵当局が調べたものは優秀な部門の品物がふえたか、これがわからぬわけです。
  119. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 米軍から引き継ぎました種別ABの数量、個数はいま仰せられたとおりでございます。政府が調査いたしました数量と相当変わっておりますが、これは先ほど申しましたように、ABクラスのものにつきましても、袋に入っておったのが二つございます。その袋に入っておりました二つのものについては、それをあけまして全部個数を勘定して私どもは受け取ったわけではないのでございます。これをその後あけまして勘定いたしますと、四千七百二個あったということでございます。また、ACについても同じでございます。袋に入っておりましたのが千十一個ございましたが、それについてはわれわれが占領軍から受け取りますときには一つ一つ計算をしないで、ただ一袋ということで受け取るということで、米軍の記録にございます引き継ぎ数量と政府が調査いたしました数量と違っておりますのは、もっぱらこういう事情によるものでございます。
  120. 山田長司

    ○山田(長)委員 そうすると、占領軍の連れてきた専門家の調べたものが、一つの袋の中に優秀なる品物と優秀でない品物とが混同していたということになるわけですね。
  121. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 混同したということではないと思います。向こうが鑑定をなさいましたときに、ABクラスであるというものをもなお袋の中にお入れになった、向こうの仕事のやり方がそうであったということでございます。その中にあったものが、向こうが鑑定なさいましたときにはABであったということには間違いはないと思います。
  122. 山田長司

    ○山田(長)委員 そうしますと、進駐軍の専門家が調べたものの数に変化が起こってきているわけですから、その数量の変化は日本の鑑定者によって発見されたということにあなた方は解釈しているわけですね。
  123. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 半軍から引き継ぎました数量を政府が調査いたしまして数量を確定いたしましたときは、主として日本政府の大蔵省の役人がその数量を一つ一つ計算したのでございます。久米鑑定人が一人だけこれに加わっておられたということでございます。したがってこの数量はあくまで大蔵省一つ一つ勘定して調べ上げた個数でございます。
  124. 山田長司

    ○山田(長)委員 数量の変化はそれでわかったが、品質については専門家でない大蔵省の方々にわからぬのじゃないかと思うのです。こういう点で国民に、大蔵省の人や鑑定者の久米さんを信用しないわけじゃないけれども、やはりもっと明確に、専門家によって調べられた数量であり品質であるということが、この機会に明らかにされなければならぬところにきているのではないかという気がするのですが、この点はどう思いますか。
  125. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 品質については、全く私どもはこれを鑑定する力を持っておりません。したがいまして進駐軍から引き継ぎましたときにAAというふうに区別されておりますものは、すべてAAという種別に入れた、ただ個数だけがさっき申しましたような事情でふえたということでございます。これを、その後昭和二十七年の二月から三月までの現品調査の際に鑑定人に入っていただきまして、進駐軍の九十一の分類を八の分類に分けました際に、鑑定をしていただいて種類分けをし直したということでございます。
  126. 山田長司

    ○山田(長)委員 大蔵省で調べた、占領軍から引き継いだときのダイヤの品質を見ますと、実は進駐軍が調べた品質よりもはるかに要約して書類が出ているわけです。私の持っている資料によりますと、どうしてこんなにこまかくダイヤモンドの品質分けができたものかというほど品質がこまかく分けてある。その品質が日本の専門家ないし大蔵省の人たちによって非常に簡略になってきているんだろうと思うのですけれども、どうして簡略にしなければならなかったのですか。
  127. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 占領軍が分類いたしましたのは、先ほど申しましたように、九十一の等級に分けております。私どもは、その当時におきましてダイヤモンドの認定をする、そして返還すべきものは返還するというような仕事を進めてまいります上において、この分類ではあまりにこまか過ぎるという、一つ技術的な問題がございました。のみならず、国内の一般のダイヤモンドの分類も、わが国におきましては、このようなこまかい分類をしていなかったのでございます。当時市場で一般に行なわれております分類をとりまして、これをA、B、C、D、E、Aはブルーホワイト、Eはイエローブラウンに至りますまでの分類をいたしまして、それをさらに大きさによってそれぞれをまた分けていくという分け方をしたわけでございます。
  128. 神近市子

    ○神近委員 いまその鑑定人の問題が出ていますけれども、進駐軍の場合に鑑定した人はアメリカから来て、鑑定した人は、地質学者でヘンダーソンという人、それからウィンストンという、これは貴金属商かと思うのですけれども、その支配人のポーシャッポという人、この二人で鑑定したのであります。ですけれど、このポーシャッポという人はなくなりまして、いま生きていらっしゃるのは地質学者のヘンダーソンだけでありますが、私はこの問題をきょうここで御質問しているのは、この問題の処理について考えなくてはならない段階にきているということを考えているからであります。また再鑑定ということをいまおっしゃったように、あなた方は非常に簡略にした、専門家の地質学者で非常によく宝石のことがわかっていらっしゃる人がやったのを、処理にお困りになったのだろうと思いますが、簡略になさったということが一つと、それからマレー大佐の場合にガラス玉のなにとこれを入れかえていたというようなことで、この現品の調査ということとそれからこれを調査した人たちが払い下げをしきりに求めていたところの商人であったということで、いろいろの疑惑が生まれているのであります。この調査のときに、おそらく日銀の地下室でなさったのだろうと思うのですが、どういう状態で調査なさったか。この間入ってみまして、入口のかぎが幾つもありましたけれども、その奥の箱の前で審査するときにはどういう状態でなさったか。あなたはその時代の状態のお聞き込みはないですか。
  129. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 当時の事情は、日本銀行の中に特別の一つの部屋を鑑定室としてつくりまして、武装警官一名、日本銀行警備員一名を常時配置して警備に当たらせたのでございます。そして鑑定室には出入簿を設けまして、鑑定室に出入りした者につきましては全部氏名その他出入の時間というものを記録いたしました。それから作業に従事する者につきましては、毎日責任者及び副責任者をきめまして、ことに責任者といたしましては、当時の貴金属一課長が毎日そこに参りまして従事いたしました。また現品の取り扱いにつきましては、責任者であります貴金属一課長が収納箱の封印を確かめた上で開封をいたしまして、収納してある袋の数を点検したのでございます。それからあと、この袋を副責任者が開封をいたしまして、袋に示してある個数と現物のダイヤの個数とを突合確認した上、鑑定のために鑑定人にお渡しいたしました。鑑定が終わったダイヤモンドは、鑑定人から副責任者、副責任者から責任者へと戻す際に、渡しましたと同じような手続でもって数量を確認いたしたのでございます。
  130. 神近市子

    ○神近委員 身体検査まではなさらなかったのでしょう。
  131. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 身体検査はいたしませんでした。
  132. 神近市子

    ○神近委員 マレー大佐の一つの例がありますから、この駐留軍の問題はほかにも起こっております。しかしこのマレー大佐が一番有名なんですけれども、この人がガラス玉と入れかえておいたというようなことで、質の悪いものといいものとの取りかえがあったのじゃないかという−これはあなた方の御責任ではないから、何も御弁解は要らないのですけれども、そういう疑惑が生まれているということは頭に入れておいていただいて、これからのお取り扱いを慎重にやっていただきたいということが一つであります。  それからこの御報告の最終ページのところに、中間解除された数量が出ております。国内産業用あるいは被接収者には幾らというふうに書いてあるのですが、閉鎖機関の交易営団の清算人ということを、これは意味するのですか、この中に個人の供出者を含んでいますか。「国内産業用又は被接収者に中間解除された数量」、それが三万四千カラットと出ております。
  133. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 中間解除されました解除先は、個々にすべてわかっております。
  134. 神近市子

    ○神近委員 どこですか。
  135. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 たとえば日本ダイヤモンド、交易営団、東北金属工業、旭ダイヤモンド、日鉄鉱業、芝浦電気等でございます。
  136. 神近市子

    ○神近委員 それはどういうところからその特定の人たちにだけお返しになったのですか。
  137. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 これは日本政府が進駐軍からダイヤモンドの引き継ぎを受けます前におきまして、占領軍が保管しておりました当時、占領軍が保管しておりましたダイヤモンドの中から、当時の日本の産業の特別に緊急な需要に必要ありとして、占領軍が解除されたものでございます。日本政府が引き継ぎましてからあとにおきましては、こういうものはございません。
  138. 神近市子

    ○神近委員 占領軍から引き継いだ数量があって、そして「被掠奪国へ返還した数量」、それから「国内産業用又は被接収者に中間解除された数量」、こう出ておりますね。その最後の「国内産業用又は被接収者に中間解除された数量」、これは進駐軍がやったことだというのですか。
  139. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 そうでございます。
  140. 神近市子

    ○神近委員 きょうの質問のおもな目的は、戦争のときのお話と関連すると、いつでも食べもののこと、それから住宅のこと、必ずこれが出てきます。そしてその次か次には、日銀のダイヤモンドの話が一般の話題になるのであります。これは戦争のときといまの生活が御存じのようにたいへん変わってきまして、あのダイヤがあればなあというようなことが供出した人たちみんなの頭にある、いま解除になって入りますけれども、値段が大体千倍くらいの価格に変わっております。だからいつも話が出ると、供出した人は特に失ったダイヤの話を出すのです。ですから、もう戦争が済んでから二十年、そしてこのダイヤが日銀の倉庫に入ってから十二年、もうそろそろこの解除あるいは始末をしなくちゃならないというようなことを私ども一般には考えているのですけれども大蔵省の中でそういう考え方を持って話題とかあるいはいろいろの談義の材料になったことがありますか。
  141. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 接収貴金属の処理のうち、ダイヤモンド以外の金、銀、白金というようなものにつきましては、非常に仕事が進みまして、認定、返還というような仕事が大体目鼻がついたわけであります。一方ダイヤモンドにつきましては、その仕事に追われましたということと、何ぶん非常に複雑な問題でありましたために、比較的処理がおくれまして、ダイヤモンド全部を政府が処分できるという時期は昭和四十年度以降になると思います。こういった、何ぶん十六万一千カラットにも及ぶ大量のダイヤモンドの処分でございます。しかも、仰せのとおりその大部分は、戦争中個人の方々が供出をされたダイヤモンドでございます。したがって、それをどのようにして処分するかということは、そういった供出された方々のお気持ちにも合うように、また大量のダイヤモンドを処分するという観点からいっても間違いのないように、慎重に考えて処分しなければならないと思います。ただそれを具体的にどのように処分するかということにつきましては、たとえばこの法律が通りましたときに、参議院の附帯決議で、こういうものを処分して得た収入は極力戦争犠牲者の費用に使えというような附帯決議もございました。また巷間、こういうものは外貨準備に使っていいではないかという御意見もあるように承っております。ただこれをどのように具体的に処分するかということにつきましては、これが処分できるような段階になりまして、これはほんとうに大蔵省だけではございません、政府全体として慎重に考えて処分しなければならないというふうに考えております。
  142. 山田長司

    ○山田(長)委員 ダイヤモンド以外の製品がスムーズに処理されてきているということについて御報告がありましたが、この点については異存を申し上げる筋合いではないのですが、この機会に私は明確にしておいてもらいたいものは、アメリカ人が持ち去った白金の問題です。この白金はやみからやみに、いまだにこれが事件の処理については、いかなるために持っていったのかということについては、国民の前に明確になっていないと思うのです。これはダイヤモンドに並行いたしまして、白金を米軍が持っていったことについての問題も、場合によっては明白にしなければならぬと思いますが、この問題について白金をどう処理したのか明確にしてもらいたいと思います。
  143. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 引き継ぎを受けます前に本国に持って帰って処分したのは事実でございます。その代金は大部分が金、一部分がドルで日本政府に返されまして、それが現在政府が保管しております接収貴金属の中に入っております。
  144. 山田長司

    ○山田(長)委員 それはどこに入っているのですか。
  145. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 現在、これは少し数字は古うございますが、三十九年の二月に金が二十三トンございます。それからドル預金が二億七千万円ございます。その中にいま申しました身がわりの金が六・六トン、ドルが五十二万ドル入っております。
  146. 神近市子

    ○神近委員 そうすると、参議院で附帯決議がついたとおっしゃると、これの処理法がもうすでにでき上がっているということですか。
  147. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 参議院の附帯決議は、接収貴金属全般につきまして、その処分収入から得た金を戦争犠牲者等の費用に使うようにという御決議でございます。それから、この金は別に特別会計ではございませんで、一般会計に入る金でございます。別に色がつくわけではございませんが、政府は御承知のとおり戦争犠牲者その他社会福祉的な費用に毎年相当の支出をいたしております。そういった意味で参議院の附帯決議の御趣旨に沿っておると思いますが、一般的にダイヤモンドを処分する際にこれをどういうような処分の仕方をするかということにつきましては、いま言った附帯決議の御趣旨は十分尊重いたしますが、はたしてどのようにするかということについてはまだ全然きまっていない状況でございます。
  148. 神近市子

    ○神近委員 本年の予算で若干の予算が出て、これからたしかダイヤモンドの価格の調査というようなことをお考えになっているようですけれども、それはどのくらいの予算で、どういうところの価格を調べようとお考えになっておりますか。
  149. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 ダイヤモンドの市場を調査いたします予算は、総額で二百三十五万六千円でございます。そのうち国内の市場を調査いたしますために予定しておりますのが十九万円、海外市場の調査をいたしますために予定いたしておりますのが二百十六万六千円であります。これは何分にも近くこのダイヤモンドを処分しなければならない立場に政府はなるわけでございますが、政府はダイヤモンドの市況あるいは販売組織その他につきまして全くのしろうとでございます。したがいまして、どういった処分方法考えるかというためのほんとうの基礎的な知識を獲得するという意味で、こういった海外の状況も十分承知しておきたいということを考えておるわけでございます。
  150. 神近市子

    ○神近委員 きょうは時間がいろいろなことで非常に短くなりましたから、あまりこまかいことをお尋ねできないのですけれども、最後に、これは委員長に御要請をしようと思っていたことなんですけれども、御退席になりましたから、記録でひとつよく見てくださるようにお伝えを願いたいのです。  この間、私どもが日銀地下室に見に行ったのは、物見見物の意味ではなかったと思うのです。それでこのダイヤモンドの処理については、いま山田委員も言われましたように、行政監察特別委員会があったときに、十三、十四、十五、十六国会でずっと問題になってきてそしていまの処理法が通ったのだったと思います。そのときには非常にしつこく、今日その一部が問題になりましたけれども、鑑定とか保管とか運搬、いろいろなことに疑問が出て、それを問題にしたことがございます。でも、みな過去のことで、いまお役人もおかわりになってそのときのことをあまりこまかくさがすといったって無理だと私は考えるのです。何しろ、この宝石は、さっきも申しましたように国民が好意でもって、愛国の至情で出したものでございますから、何か役をしなければならないと私は考えます。いまおっしゃったように、この戦争罹災者あるいは子供や夫を戦争で死なせた人たちのために使うということが、私は一番はっきりしていると思う。それで、確かにその当時の行政監察特別委員会の決定は、非常に私はりっぱな決定だと思うのです。これは審査委員を二十何人か設けて、その人たちの合議によって処理する、それから目的もそれによって決定する。たいへん私はそのときの法案を拝見して、なるほどこれでなくてはならないというように考えたのでございます。いま行政監察特別委員会がなくなりましたから、この議員立法をもしやるとすれば——そのときもどうしても議員立法でなくてはならないという結論が出たようですけれど、これはもし議員立法するとすれば、この決算委員会が最適の委員会だと私は考えます。それでこの処理あるいはその目的あるいはその性格、そういうものについてひとつぜひこの委員会で後日御検討いただいて、そして次の国会あたりにでも立法する、そういう準備をしていただきたいと思います。このことについてはまた大蔵大臣に御出席願ったときに簡単にこの情勢をお話ししまして、そして御決定を願いたいというふうに考えますから、ひとつ今後の日程のうちに組み込んでいただいて、ぜひひとつ実現させていただきたいと思います。  私の質問はこれで終わります。
  151. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 了承しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十二分散会      ————◇—————