○清井
説明員 ただいまの問題は、実は先年のこの委員会におきましても、先生から十分おしかりをいただいた問題であります。私ども
公庫の
仕事の運営上、私どもといたしましても一番問題にいたし、その
改善について努力をいたさなければならないと思っておりました点の重要な
一つでございます。
公庫ができましたのは二十八年でございますから、当初からそういう問題があったわけでございますが、申し上げるまでもなく、この検査院の御
指摘の問題の大
部分は
土地改良事業でございます。私どもは長期低利のいわゆる
政策的な金融をいたす
関係上、やはりある程度自己負担をしてもらわなければならぬというたてまえでございますので、八割の限度でお貸しする、こういうことにいたしております。したがって、実際
事業をいたしました結果八割の限度を超過いたしますると、その超過
部分をお返し願うというお約束になっておるわけであります。その点が主としていままで実行されてなかった。たとえば当初の
計画に対しまして、
事業を実施した結果、その
事業費が安く済みました場合は、当然限度が超過するわけでございますから、それをさっそく約束にしたがって返していただけばいいわけでありますけれども、これについて返していただかなかったという手抜かりがあったことについておしかりを受けておったわけでございます。私どもといたしましては、七割にしろ八割にしろ、制度金融のたてまえでやる以上ある程度の自己負担をしていただくのが当然であると思っております。したがって、私どもが八割ときめた以上は、八割の限度を超過するものは必ず返していただかなければならぬのが当然であります。それについておしかりを受けることも当然であると思っておるわけでございます。ただ言いわけを申し上げるようで恐縮でございますが、私どもは
公庫ができました当初は直接貸し付けをいたしていなかったのでございまして、全部県の信用
農業協同組合連合会、農林中央金庫それから地方の銀行等に全部委託いたしまして、直接貸し付けば全然いたしていなかったのございます。全部貸し付けの実施は委託機関にまかせまして、私どもは最後の決定だけいたすということでございますので、現実の審査なり決定の実際上の判断は委託金融機関にまかしておったわけでございます。ところがそういう問題が種々起こってまいりますし、あるいは先ほど山田委員からも御
指摘のありました延滞等の問題も実は起こっておりますので、これでは私どもといたしまして金融機関としての責任に欠けるということで、
昭和三十三年から支店を設置いたしてまいりまして、支店において直接
公庫が貸し付けをいたすという道も開いてまいったのでございますけれども、いまだに全体の貸し付けのうちの一五%程度しか直接貸し付けをいたしておらないのでありまして、八五%は地方の各委託金融機関に委託をして貸し付けをしているという実情でございます。したがいまして、私どもの人数も少ない等の
関係もございまして、貸し付けをいたしました直接の相手方に対しまして、はたして貸し付けをしたとおりの
計画で
事業が完遂しておるかどうかということを、これは調べればいいのでありますけれども、その調べがなかなか思うようにいかなかった、それである程度受託金融機関におまかせをいたしまして、それを信用しておったということで
推移してきたわけでございます。まことに御
指摘のとおり、私どもといたしましては、守らなければならない八割の限度融資ということが、実際上貸し付けを受けた相手方を調査することが不十分であったというためにいまのような
事態が起こってきておるということであるのでございます。
したがいまして、
仕事が
土地改良事業でありまして、先生御
承知のとおり、
土地改良事業というものはなかなか
計画どおりに
事業がいかないという場合が多い。それで、どうしても八割の限度一ぱい貸しておりますから、どうかするとその限度を越すということもあり得るわけでございます。これがかりに、八割の限度によっておりましても、六割ぐらいになっておればそういうことはむろん起こらないのでございますけれども、こういうことをいたしますければ、これまた
土地改良事業者に対しましてはたいへんなことでございますので、やはり要望どおり限度一ぱい八割貸すということで、そういたしますとすぐに限度超過というものが起こってくるということでございます。したがって、私どもが、貸し付けをしたあと現地に行きまして、借り受け者がはたして
計画どおり
事業をしておるかどうかをずっと調べてまいりまして、もし限度超過をしておればすぐにお返し願うということが、直接できないにいたしましても、受託金融機関におまかせしまして、全部を回って調べておりますれば、これは問題なく円満に
事業が進行したかと思いますけれども、御
承知のとおり、私どもの貸し付けば年に十数万という貸し付けをいたしておりますので、実際問題といたしまして、全部の貸し付けの相手方を回ってくるということもできないような事情がありましたので、やはり受託金融機関におまかせをする。受託金融機関にいたしましても、たまには御批判がありますけれども地方の借り受け者について回っていただきましても、全部を十分に回って歩くというわけには参りません。その点について、検査院が地方回りをいたしまして、実際の借り受け者に対しましてこういう問題点があるというようなことの
指摘を受けた、こういう実情でございます。そこで、私ども御
指摘を受けまして、何とかしてこの問題を解決しなければならぬと思いまして、支店長
会議のつど、あるいは受託金融機関の
会議のつど、常々
土地改良事業について問題があるから、貸し付けたあとの地元をよく回って見ていただきたい、もしこういう
事態があったら必ず返してもらうように処置していただきたいということをたびたびお願いしてまいったのでございます。
もう
一つは、私どもの貸し付けば全部知事の認定が要るわけでございます。
公庫だけで直接に貸し付けをしておるものは
一つもないのであります。これは全部知事または農林
大臣その他の方の
事業の認定がありまして、その認定に基づいて私どもがお貸し付けをするということでございますので、県庁の方にも最初の
土地改良事業の認定の際には、これは貸し付けが多過ぎる点があるのではないかということを十分お調べを願いまして、その結果私ども御推薦を願いたいということをお願い申し上げておるわけでございます。そういうことにつきましても十分慎重にやっていただいておりますけれども、これまた時には、
土地改良事業あるいは災害復旧
事業等におきまして、当初の
事業計画と実際の
事業とが違うという結果、私がいま申し上げたようなことが起こるということであったわけでございますが、その間、私どもといたしましては、たびたび口頭あるいは文書でお願いをいたすと同時に、また借り受け者に対しましてもそういうことがないようにということで必ず特約をいたしておるのでありますけれども、経理
指導が不十分であって、あるいはそう思いながらもついそういう
事態が起こってきておるということがあり得るのでございます。
あるいはまた、御
承知のとおり、
土地改良事業というものは地元の
労働力を使います。そういたしますと、一見ただのように見えるのでございますけれども、負担金をかけると同時に、その
農業者を使って労働させるということになるわけでありますから、そういった出し入れの
関係で、帳簿が不十分であるということになりますと、実際上は金を払っておりながら払っていないということに見える場合があります。そういうことがありました場合には、経理
指導等を十分にいたしまして、
会計検査院の検査の場合にも、そういう
事態を十分御
説明できるようにするということが
一つの問題点でございますので、そういう点を尽くしまして、数年来実は努力いたしてまいったのございますけれども、どうしても御
指摘の数がなかなか減らない。やはり相変わらず見て回っておるとこういう
事態が起こっておるということを毎回実は私どもは御注意を受けておったわけであります。そこで検査報告にも御
指摘のような数字があがってきておるわけでございます。そこで私どもといたしましては、もう幾らやっても問題は解決しない、しかしこれはあくまで政府の制度金融のたてまえ上、八割の限度率というものを守らなければいかぬ、そこで受託金融機関におまかせして借り入れ者を回っていただくことはもちろんだけれども、これは
公庫自身が回ってみなければとてもたいへんだ、私どもの責任も遂行できないということでございますので、私どもはごく最近、
昭和三十八年度でございますが、もともと検査役というのがあったのでございますが、検査部と
機構を拡充いたしまして、今度は
公庫がみずから地元へ行って、
公庫の貸し付けを受けた方の帳簿を見せていただくことにしよう、そうして実際上限度が超過しておればその分を返していただくということにいたしますれば、これは全部ということは必ずしも申し上げられませんけれども、逐次その問題がいいほうに向かってきて、超過した場合には必ずその超過分を返していただくようにしていただけるだろうということで、
昭和三十八年度から人員を強化し、
予算もふやしまして、直接に現地に行って調査をするということを始めたわけでございます。もっともこれも
公庫といたしまして初めてやったわけではないのでございますが、時々監事さんが回っていた場合におきましても、監事さんが貸し付け対象
事業の借り入れ者のほうをお回りになっている場合もございますし、受託金融機関が回っていただく場合もあるわけでございますけれども、やはりその趣旨がはっきりいたしませんと、なお借り入れ者の側がとかくお返しをいただけない場合が多いのでありますから、やはり
公庫自身が回って歩くことによって、事実を発見するとともに、借り入れ者の方々も、八割を超過したら必ず返していただくということを十分認識していただく、いやが上にも認識していただくということにしようということで、おそまきながら実はやっておるような次第でございます。ずいぶん長い間かかっておるのに、いまだに何にもしなかったというおしかり、まことに重々ごもっともでございます。私どもその点について安易に過ごしておったわけではございませんが、しかしいままでやっておった点が十分
効果を発揮しないということでございましたので、この際検査部をつくりまして、直接貸し付け対象を調査いたしてまいるということにいたしまして、
昭和三十八年度におきましても相当個所を調査いたしました。事実、ある程度限度超過の分を発見いたしまして、修正いたしておるようなこともございます。これを契機といたしまして、私どもは今後当検査部の人員なり
予算なりをさらにふやしまして、検査院の御検査にあたりましても、こういう問題が今後起こることのないように努力をいたしていきたいと思っております。
それからもう一点は特約条項の問題でございますが、これはもしも、返せばいいじゃないかということであれば、いままで不当に使っておったのは不都合じゃないかという問題がございますので、そういう場合にはむしろ、罰則といってはなんでございますけれども、少しよけいに金利をとったらどうか、こういう御
意見が出ておったわけでございます。この点につきましても、十分私ども検討いたしまして、こういう例は少ないのでございますけれども、先般来いろいろ
お話の補助金適正化法の例もあるのでございますが、そういう場合も、私どものほうも八割限度を超過した場合とかあるいは目的外に使用した場合には、その限度超過分あるいは目的外に使用した金額につきましては、私どもがお貸しております金利以上に普通金利としての差額を追徴金としていただくことにしようということにいたしますれば、借り入れ者のほうにも、これを超過して黙っていればよけい金利がかかるということになりますので、そういうことによって一面から規則を守っていただくようにするということも
考えておりまして、これはもうほとんど成案を得まして、できますればこの四月早々から実施をいたすということにいたしておるわけであります。
そのほか経理の
指導といたしましても、やはり
土地改良区などが預金をいたす場合には、なるべく
一つの金融機関に預けるようにしてもらいたい、方々の銀行なり金融機関に分けて預けてありますと、私どもが調べさせていただく場合に不自由でございますから、なるべくならば
一つの金融機関に集めて預金をしていただく、そこまでやっていただくということにいたしますれば、私どもが調査に行った場合にも非常に便利であるということがございますし、いろいろ経理
指導もいたしまして、万全を期したいと思っております。もっともこれによってすぐあしたからよくなるということはなかなかお約束はできませんけれども、これによって幾ぶんでもこの
事態を
改善し、さらに何年かたちますれば、おそらくそういう御
指摘は絶対に受けることのないようにいたしたいというふうに
考えているわけでございます、制度金融の長期、低利の貸し付けをいたすわれわれといたしましては、これは当然の義務でありまして、私どもいままでとかくいろいろの措置を講じながらも、なかなか
効果的な措置を講じ得なかったことは、はなはだ恐縮でございますけれども、今回三十八年度から出発いたしましたこの制度を今後さらに拡充いたしまして努力をしてまいりたい、こう
考えておる次第でございます。