○村山
説明員
日本育英会の
育英資金は、その性質上、その返還につきましても奨学金を受けた者の良識によって、自発的に返還することを当初は実は期待いたしておりまして、卒業して社会に出る際に、借用証を入れて以後二十
年間以内に年賦で償還させる。償還の
状況が悪いものは文書で督促をするという程度でやっておったわけでございます。しかしいま申しましたように、返還の
状況がはなはだ芳しくないという遺憾な状態になりましたので、通常の貸与金の返還
措置にならいまして、返還を促進するような
措置をいろいろ進めてまいりました。たとえばはがきだけではなかなか返還する気が
——返還をしない気はなくても、自発的に返還するという積極的な気分まで起こさないのではないかということからいたしまして、外務員を置きまして、出向いて直接督促するというような
措置を、三十五年ごろから始めました。育英会で奨学金を受けた者の比較的多いところ、たとえば東京だとか、大阪には支所を設けまして、外務員を置いて直接要返還者のところまで出向いて返還を督促するというような
措置をとることにいたしました。
それからさらに、
育英資金を受けた者は、現実の問題としては大体いろいろな職場に勤めておるわけでございます。職場から直接集金することができれば返還が促進ずる次第でございますので、
昭和三十七年十二月の政務次官
会議におきましても、返還督促の促進について申し合わせがなされましたので、その線に沿いまして各官庁初め民間の事業体にも
協力を求めまして、その同意と
協力のもとに、各職場において給与支払いの際に、返還金を月賦で納付するという職場集金
制度を実施いたしました。これはまだ発足早々でございますが、現在までのところ官庁
関係で十六団体、民間事業体で十九団体が
協力されておられるわけでございまして、さらに若干の官庁、会社等がその
措置に参加されることが今年度中にも期待されておる次第でございます。
〔勝
澤委員長代理退席、山田(長)委
員長代理着席〕
それから三番目に、そのような返還促進の
措置を講じましても、なおかつ返還に応じないという者がかなりおるわけでございますが、そのうちから特に悪質なものにつきましては強制的な徴収の
措置を進めるために、
昭和三十八年に育英会がこの貸与金の回収業務に関する
文部省令をつくりまして、要返還者に対しましては六カ月ごとに返還の請求をする。それから返還を延滞しておる者につきましては延滞金を課することといたしました。従来は無利息であったわけでございますが、延滞金を課することにいたしました。それからさらに悪質な者に対しましては民事訴訟の手段によりまして強制徴収を行なうことといたしました。それから雇用主に対しまして返還回収業務の一部の委託ができるようにいたしました。それからさらに積極的に返還を促進する
措置といたしまして、繰り上げ償還した者に対しましては報奨金を支払うことができるようにいたしました。
それからさらに
昭和三十八年の五月になりまして
日本育英会法の施行令の一部を改正いたしまして、悪質な延滞者に対しましては、先ほど申し上げましたように二十年以内の割賦償還になっておりますが、割賦による返還を認めないで一時に全額の返還を請求することができることといたしました。一時に全額の返還を請求して、さらに悪質な者につきましては、当然先ほどの民事訴訟の強制徴収もやるわけでございますが、そのようないろいろな手段を講じまして返還の促進をはかってまいったわけであります。
それから返還につきまして、
一般に貸与金は返すべきものであるという当然の認識が必ずしも徹底していないという反省もございますので、育英会の機関誌その他の手段によりまして、官庁、職場、報道機関などの
協力も求めまして返還金の重要性の認識を高めるようにいたしまして返還金の促進をはかってまいっております。
なお、育英会の業務組織につきましても、事務の機械化等の
措置を講じまして、事務の能率の悪いために返還が進まないということのないようにも
配慮をいたしておる次第でございます。
そのような
努力をいたしましても、現在なおかつ六七%程度の返還にとどまっていることははなはだ遺憾でございますけれども、さらに
努力をいたしたいと思っております。