運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-06-17 第46回国会 衆議院 外務委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十七日(水曜日)     午前十時三十分開講  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 椎熊 三郎君 理事 古川 丈吉君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       菊池 義郎君    佐伯 宗義君       竹内 黎一君    野見山清造君       福井  勇君    三原 朝雄君       川崎 寛治君    黒田 寿男君       田原 春次君    帆足  計君       山本 幸一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     三枝 三郎君         検     事         (入国管理局次         長)      富田 正典君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局外務         参事官)    広瀬 達夫君         文部事務官         (調査局国際文         化課長)    佐藤  薫君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 六月十七日  委員田原春次辞任につき、その補欠として川  崎寛治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員川崎寛治辞任につき、その補欠として田  原春次君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(沖繩及び日韓問題等)      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  川崎寛治君。
  3. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 去る六月の二日に衆議院予算委員会で、また五日に参議院予算委員会で、沖繩の最近の情勢についていろいろと質疑があったわけであります。ところが、そのときにはたいへん甘い分析もなされておったわけでありますけれども、けさの各新聞紙が報道いたしておりますように、沖繩における大田主席政治責任をとって辞表を提出をした、こういう報道がなされておるわけであります。十三日に沖繩自民党自治権後退の問題をめぐって分裂をし、ついに主席としても、キャラウェー高等弁務官がたいへんバックアップをしたのでありますけれども、そのバックアップにもかかわらず、責任をとって辞表を提出せざるを得ない、こういう羽目に至ったわけであります。この沖繩自民党刷新派といわれます脱党いたしました長嶺議長を含みます十一名の諸君の脱党の理由、あるいはその前の六月十日におきますアメリカ政府に対する自治権拡大についての要請決議、それらのものからいたしまするならば、たいへん不幸なことには、ケネディ政策発表以後の沖繩における事態というものは、日本政府判断をしていた方向ではなくて、逆の方向に進んで今日の事態に至ったと思います。今日の事態に至ったことについては、ただ単に大田主席をはじめ沖繩政府政治能力云々の問題ではなくて、本土側日本政府の対米外交の結果が今日の事態をもたらしたと思うわけでありますが、今日の事態に至った原因について、どうしてこういう事態になったか、この点について外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま沖繩が直面しておる事態は、川崎委員が御指摘のように、きわめて不幸な事態でございまして、私どもといたしましても深甚な関心を持ちましてこの推移を見ておるころでございます。なぜこういう事態が出来してきたかということにつきましては、アメリカ側施政権行使一つ一つ運営につきまして吟味しなければなりませんし、これに対して沖繩県民の反応がどういうものであったかということにつきまして分析をしなければならぬわけでございますが、私といたしましては、アメリカ沖繩政策というものは、ケネディ声明で宣明されておるように、基本は確立しておると思いますし、その方向に向かって日米協力いたしまして着実に進めてまいるべきだと思っておるわけでございまして、アメリカ沖繩政策基本が変わったためにこうなったとは考えていないわけでございます。施政権運営実態につきましていろいろな不幸な問題が出てきたと承知いたしておるわけでございまして、関係者が冷静にこの事態を見直して、公正な解決のめどを見出していただくように努力されることを希望いたしますし、また、そのように努力されるものと私は考えております。
  5. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 十日の日に自治権拡大決議琉球立法院がいたしておるのでありますが、その内容は、「沖繩住民意思に反して祖国日本から分離され、米国統治下に置かれてから実に十九年が経過した。その間、沖繩の全住民はその政治目標祖国復帰に置き、かつまた住民の総意として自治拡大を要求し続けてきた。琉球列島管理に関する行政命令民主主義を基礎とする旨規定しているが、現実の沖繩政治実態は、法案の事前、事後の調整及び布令、指令の続発などによって、立法予算の執行、人事行政などの各面において琉球政府自主的運営を阻害し、高等弁務官の直接統治が表面に露呈している。これは近代民主政治の原理にもとり、住民不満を醸成している。米国政府は全住民自治の要求にこたえ琉球政府行政主席公選制を実施し、沖繩日本主権のもとに復帰することを目標として琉球政府立法行政、司法上の権能を大幅に委譲するよう強く要請する。」、こういう決議でありますが、これをそのままお認めになりますか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 いままで明らかにされておりますアメリカ側沖繩政策自治権に関する部分は、アメリカが保有することを必要としないものは琉球政府にゆだねるということが明らかにされておるわけでございます。問題は、何を保有する必要があり、何を保有する必要がないと見るべきかという判断の問題にかかっておると思うのであります。いま御指摘のもろもろの決議にあらわれておりまする考え方は、沖繩自治能力から申しまして、立法院の申しておりますことは、もっと自治権拡大という方向で問題を進めてまいることが正しいという御認識であると思うのでございます。それを施政権者たるアメリカがどのように判断するかという問題にかかっておると思うのでございます。私といたしましては、どちらが正しい、どちらが間違っておるというより、問題は、先ほど申しましたように、施政権運営実態を冷静に分析評価いたしまして、その中から公正な解決を見出して、沖繩政策として宣明されておりまする政策の線に沿って自治権が着実に前進していくような環境をつくっていくように、施政当局、そしてまた琉球政府当局に対しましても心から希望をするわけでございます。
  7. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 事態ははっきりしているのでありますから、くどくどとわけのわからぬ回りくどい論理をもてあそぶ段階ではないと思います。だから、この沖繩立法院決議をしたその内容について、そういう事態をはっきり認めるのかどうか認めるならば日本政府としてどうするのかそういう姿勢がはっきりされなければならぬと思うわけであります。  そこで、何べんお尋ねしても例の答弁どおりが続けられると思いますので、もう少し具体的にお尋ねをしますが、六月五日の参議院予算委員会で、制度運用の問題だ、こういうことを大臣答弁をしておられます。そこで、制度の問題につきましては、先ほどケネディ政策以後のことを触れられたのでありますが、それはそれとしておいて、それならば、今回の事態運用の面で出てきたのかどうか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 いま冒頭にあなたから御質問がありましたように、今日の事態をもたらした原因が何であったかという点につきまして、われわれも吟味をいたしておる最中でございますので、的確にこうであったという結論をいま持っておりませんけれども、しかし、大体の感じといたしましては、いま御指摘のように、施政権運用面にあらわれた運用面の問題であるという感じを私は持っております。
  9. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 六月二日の衆議院予算委員会、あるいは六月五日の参議院予算委員会におきます質疑の中においては、直接担当の大臣であります野田総務長官等は、六月二日の予算委員会においては、自治権後退だということに断定する資料をまだ持っていない、こう言っておるわけであります。それから、両委員会におきまして、大平外務大臣池田総理も、十分な情報を持っていない、こういうことであったわけであります。そのことは、六月の二日なり五日なりにおいて、十分に調査をし、そうして言うべきことはアメリカ政府にも言うのだ、こういうことを答弁をしておられるのでありますけれども、それからすでに十日たっております。南方連絡事務所という総理府出先機関が現地にあるわけでありますけれども、そうした出先機関がこれらの事態について的確な自治後退情報を伝えてきておるのかどうか、それを判断をする体制があるのかどうかお尋ねしたいと思います。
  10. 三枝三郎

    三枝政府委員 ただいま御指摘になりました自治権後退と目される一連事案があるわけでございますが、それにつきましてある程度の情報が入っております。たとえば、農連農中金に対して検査を強行したという件、あるいは通信事業布令改正についての問題、あるいは麻薬類及びある特定の薬品類取り締まり布令公布、それから病院、診療所等調査をしたということ、あるいは物品税法改正に関する件、あるいは宮古水道管理局設置についての布令公布、こういう一連事案が、自治権後退したケースではないかというぐあいに見られておりますが、いろいろ調査しておりますが、まだ確実にこの点が後退したものだというぐあいに出ておりません。たとえば、この前の委員会総務長官も答えられましたが、麻薬類に関する布令公布ども、相当前からそれについて琉政当局民政府のほうから立案するように指示があったらしいのですが、なかなかその決定ができない、一方青少年にもいろいろ麻薬についての弊害が出ておるし、軍人、軍属にも出ておるというようなことで、布令公布されたというような程度のことは入っております。しかし、どこまでが後退と見なされるはっきりしたケースかどうかということは、いましばらくまた検討を要する問題ではないかと思います。
  11. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 制度の問題と運用の問題、大臣運用の問題だと言われたのでありますが、それでありますならば、今日の事態を招いた運用根本的な問題点はどこにあるかお尋ねいたします。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、アメリカ側が必ずしも保有する必要のない事項は何かということの限界をどう見るかについて双方の見解が非常に違っておるのではないかという印象を受けるわけでございます。これは施政権者琉球政府との間のお互いの信頼の問題と思うのでございますが、それが必ずしも十分でないという印象を強く受けるわけでございます。
  13. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それが運用根本だというならば、いままで何をしておったかわけがわからぬのであります。ワシントン・ポストに出ております「不幸なアジアのとりで」と題する記事、これは内閣調査室から出されております資料に再録されておりますが、ワシントン・ポストスタインバーグ記事、これはもうすでに大臣も一お読みであろうと思いますが、この中では、キャラウェー高等弁務官の個人的な性格というものをはっきり描いておるわけであります。つまり、スタインバーグによれば、琉球におけるデモクラシーはまやかしにすぎない、大田主席をはじめ沖繩の全島民がこの点に憤慨をしておる、これはただひとりキャラウェーの意見だけが重要なんだ、そして、キャラウェーが、諸君には不満であろう、喜んでもらえないかもしれない、しかし、私は正しいのだから言うとおりにしなさい、こういうことで特に最近強くなされてきた結果が、今回の直接政治として、全島民をあげての憤激になってまいっておると思います。そういたしますならば、その運用根本の問題は高等弁務官であるキャラウェー性格それ自体にかかってまいると思います。大臣はそれについてはいかがお考えでありますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 施政権者琉球政府との間の信頼と申しますか相互の信頼が必ずしも十分でなかった、そういう印象を受けるということを先ほど私はお答え申し上げたのでございます。キャラウェー高等弁務官の御性格に対する批評という点は、ごかんべんいただきたいと思います。
  15. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 キャラウェー高等弁務官は三月アメリカの下院の秘密会沖繩統治についての証言をいたしておるわけであります。その中では思うままずばりずばり言っておる。ですから、今日の沖繩九十万の県民が当面いたしております不幸な事態、そういうものが制度の面ではなくて運用の面から出てきたのだということであるならば、キャラウエー高等弁務官の個人的な性格が今日の事態を招いた、こういうことであるならば、日米友好にとってもたいへん不幸なことでありますから、日米対等の立場から、そして沖繩島民の幸福のためにも、また日米友好のためにも、この点に対して遠慮なくあなたが、日本国民である沖繩県民九十万の今日受けておる不幸な事態を打開していくためにはそういう個人的な性格というものが今日の事態を招いておるのだということを大胆率直に日本国会指摘をされる、そのことがやはり今日の不幸な事態というものを運用の面で是正していく根本になると思うのであります。でありますから、再度その点について、キャラウェー高等弁務官アメリカの議会でずけずけ言っておるのだから、あなたも日本国会でこの不幸な日本人の事態についてはっきり言っていただきたいと思います。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 日米間の外交の問題といたしまして、その重要なる問題の一つといたしまして、施政権者たるアメリカ琉球政府との間に信頼がよみがえるように、そういう環境をつくらなければならぬということは、私のかねがね一貫して考えておるところでございまして、そういう方向に今日まで努力してまいりましたし、今後とも努力を惜しまないつもりであります。
  17. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、今日施政権者であるアメリカ琉球沖繩県民諸君との間に一つ信頼が欠けておるという点についてはお認めになりますか。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 信頼とだけ申すと正確でありませんが、信頼とか判断自治権という問題にからまる事案に対する判断というものが一致していないところに今日の事態が起きたということは申し上げられると思います。
  19. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、今後今日のこういう不幸な事態を打開していくために具体的にいかようにしていこうとされるのか、方針をお示しいただきたいと思います。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 今日まで生起いたしました事態というものを、先ほど申しましたように、十分検討させていただきまして、日米協力によって沖繩政策を所定の目標に沿って推進していこうという線に沿って、いかにすればいいかという考え方を固めまして、アメリカ側の考慮を求むべきものは求めなければならぬと思います。
  21. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 今日の沖繩実態というものは、漫画にたとえて言いますならば、赤ん坊が大きな軍靴で踏みつけられておる姿だと思うのであります。そして、その赤ん坊は、母親に対して、早くその軍靴を除いてくれ、こう願っているのであります。ところが、その母親は、軍靴で押えつけておるおじさんは決して悪い人じゃない、いい人だから信頼してくれ、そのうちには軍靴を取り除いてくれるだろう、こうつぶやいている漫画だと思うのです。たいへん不幸なことだけれども、極端に表現をすればそういう事態だと思います。今日そういう不幸な事態にある赤ん坊であります沖繩九十万の県民の皆さんは、この一九年間必死になって、早く軍靴を取り除いて日本に復帰できるようにしてくれ、こういう願いを訴えてきておるわけであります。  時間の関係もございますので、少し先を急ぎたいと思いますが、日本国会におきましても四たび祖国復帰の問題についての決議をいたしております。沖繩におきます立法院においては十回の決議をいたしておるわけであります。ところが、五月のワシントン・ポストでも、スタインバーグが、返還の具体的な計画をアメリカ側は示せ、こういうことを言っておるのでありますし、あるいは、六年前の立法院におきます施政権返還に関する日本政府への要請決議、そういうものにおきましても、日本政府が先頭に立って戦ってくれ、——戦ってくれという表現であります。これは、自民党を含めまして、戦ってくれという表現日本政府に対する要請決議をいたしておるわけであります。また、一昨年の四月二十五日、立法院からまいりました代表の諸君が、本外務委員会において打ち合わせ会を行なったその席におきましても、もはや決議段階ではなくて、具体的に返還をかちとっていく方向に向かって日本政府は腹を据えてやってくれ、こういうことを言っておるのであります。ところが、これまで施政権返還については一生懸命やっておるということを言い続けてまいっておる日本政府でありますけれども実態は少しも改善をされないで、むしろ沖繩におけるアメリカとの信頼関係も傷つけられ、さらには、ワシントン・ポストも言っておるように、パナマ事件などが吹っ飛んでしまうようなそういう事態にもなりかねない、こうまでアメリカの中の世論が訴えてくる段階に至っておるわけであります。  そこで、施政権の問題について少し次にお尋ねをしたいのでありますが、私は六月五日の参議院予算委員会における池田総理答弁はたいへん大事だと思います。池田総理は、六月五日の参議院における答弁におきまして、施政権放棄したんだ、こう答弁をしておるのであります。そのとおりでありますか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、川崎さんも御承知のように、平和条約で明記されておりますように、沖繩信託統治に移すことに対しまして日本は異議を言わぬということでありまして、その信託統治にいつ移すかということにつきましては何らの約束がないわけでございまして、その間アメリカ施政権行使するという状態になっておるわけでございます。そのことについて総理がそういう表現を用いられたのではないかと思います。
  23. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 その点については、平和条約の第三条について戸叶委員あるいは岡田春夫委員等が特に中心になりまして行なってまいりましたこれまでの各国会外務委員会における論議、特に第四十国会における外務委員会討議等においては、ある程度いろいろな点が平行しておりますが、はっきり出てきておるわけであります。それは、あくまでも、平和条約第三条の後段で、「提案が行われ且つ可決されるまで」という、それまでの間施政権の全面的な行使認めるのだということになっておるわけでありますが、認めるのだということと放棄したということはたいへんな違いだと思います。その点をもう一度お願いします。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 やはり、あなたの御説明されたような取りきめを、総理はそのように表現されたのではないかと思うのでございます。施政権アメリカにあることを認める、そういう意味であろうと思います。
  25. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃ、放棄という表現もかまわぬわけですか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう実態をそういうことばで表現したのではないかと思います。
  27. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それはいいかげんなことじゃいけないと思うのです。放棄というのと、それまでの間認めるということとは、たいへんな違いです。放棄というのは捨てっばなしです。その間暫定的に認めるという意味放棄というふうに表現できるということであるならば、これまで潜在主権云々ということでやってきておりますいろんな交渉にいたしましても、その点はたいへん姿勢が変わってくると思うのです。この表現は適当ですか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 総理はそんなことを全然考えていないと思います。
  29. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この議事録にちゃんと出ているのですよ。これは不穏当ですか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう実態をそのように言われたのじゃないかと思います。
  31. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 大平外務大臣と押し問答したって始まらぬことですが、しかし、日本総理大臣参議院予算委員会という国会の公式の席上で放棄という言明をしたこと、このことが妥当であるかどうかもし妥当でなければ当然これは取り消すべきだと思うのです。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 沖繩日本との関係につきましては平和条約に明記されているところでございまして、それは何人も動かすことはできないと思います。
  33. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほどのとおり、アメリカ施政権は暫定的なものですね。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約に定められたワク内においてあると思います。
  35. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 第四十国会におきましても、小坂外務大臣あるいは当時の中川条約局長が、信託統治にはしない、提案しないと思うということをはっきり言っておるわけであります。その点をお認めですか。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 少なくともただいままでアメリカ信託統治にするという意図を示した徴候は一切聞いておりません。
  37. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 大臣の時間がないそうでありますので急ぎたいと思いますが、それであるならば、信託統治にする意思がない。一方、国連憲章七十八条によりまして、日本国連に加盟しておる今日、当然信託統治意思がないならば早急に返還してくれ、こういう交渉をされたわけでありますか。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 これは日米間の高度の政治の問題でございまして、私どもはたびたび国会で申し上げておりますように、日本に返していただきたいということは、歴代の政府首脳はあらゆる機会を通してアメリカ側の注意を喚起しておるところでございます。
  39. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 信託統治にはしない、それならばもうすでに平和条約の三条の根拠というものはなくなっているわけです。ですから、当然に日本返還をさせるべきでありますが、なぜアメリカ返還しないのですか。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 極東緊張が続く間は保持したいという希望アメリカとしては持っておるようであります。
  41. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 極東において脅威と緊張状態が存在する限り、そういうものが条約条件としてどこにあるのですか。そういうものが条約の中に入る余地があるのですか。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 条約上そういう文句があるとは聞いておりません。
  43. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それならば、当然そういう条件というものはこの条約の中に解釈として入れらるべきではないと思います。そうして、そういう義務の問題につきましても、当事者の間で義務の不明確である場合には、義務を負う側ではなくて相手側のほうが不利になるべきだ、これが国際法上の精神だと思います。それでありますならば、日本が負うべき義務の点が今日の条約上そういうふうにきわめて不明確な状態になっておるならば、当然相手側であるアメリカのほうが後退をすべきだと思います。その点国際法上どうですか。
  44. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 平和条約の実規定上は、いつまでに提案しなくちゃならぬという期限はきめられていないわけであります実。
  45. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 きめられておらなくとも、暫定的なものであるということは明確なんです。それならば、ほんとうに返してもらいたい、ほんとうに取り返したい、こういう意思があるならば、その点をもっと煮詰めるべきだと思います。どういうぐあいに煮詰めますか。
  46. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 いまの条文の解釈としては先ほどのとおりでございまして、返還という点については、外交政治上の交渉として、法律問題を離れて、いままでアメリカとの間で取り上げてきておるわけであります。
  47. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 押し問答をやっても切りがないと思いますし、たいへん時間がございませんから、条約論につきましては別の機会に譲りたいと思いますけれども、今日の不幸な沖繩における事態というものを考え、これについてはアメリカの国内においても世論が起こっておりますが、エイルズ陸軍長官が何と言おうとも、またキャラウェー高等弁務官アメリカの議会で何と証言しようが、沖繩日本に早く返すべきだ、こういう世論が沖繩の県内ばかりではなくて日本国全土にわき起こってくる、こう私は確信をいたしております。私たちは、また日本社会党として、そのために全力をあげて、これからそういう国民運動を起こすために政府の弱腰については遠慮なくたたいてまいりたいと思います。  次に移りまして、マイクロウエーブの問題についてお尋ねしますが、これは三十六年以来の問題でありますけれども、確かに、四月一十五日発足いたしました日米協議委員会、あるいは日米琉の技術委員会、これらのものが発足したときには、こういう問題はその委員会解決をするというお話のはずであったと思うのであります。ところが、先般新聞紙上で見ますと、金丸郵政政務次官がアメリカにまいりましてこの問題についてアメリカ側に訴えておる、こういう記事が出ておるのでありますが、そういたしますと、この三十六年以来のマイクロウエーブを設置するという一つの問題が、先般発足をした両委員会においては解決ができない、それを越えるものである、そういうふうに見てよろしいですか。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう委員会段階にまでまだ問題が取り上げられてきていないのでございまして、両電電公社の間、またそれを監督されておりまする郵政当局の間で、両当事者並びに関係者の間で問題を解決しようという努力がいま行なわれておる段階でございまして、私ども協議委員会としてまだ持ち込まれていないわけでございます。
  49. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この委員会はどちらかが要求すれば開かれる、こういうことになっていたと思うのでありますが、なぜ要求しないのですか。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 問題の解決は両当事者の間で解決ができればそれが最善の解決だと思うわけでございまして、要請がないのにこちらから取り上げるという意図は私は持っておりません。
  51. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いつごろ解決すると思いますか。
  52. 三枝三郎

    三枝政府委員 マイクロ回線の問題でございますが、いま外務大臣からお答えしましたように、この問題は両電電公社の間でいま折衝中でございますが、御承知のように、なかなかまとまらない。そこで、郵政省並びに総理府のほうで何とかこれをまとめるようにいま努力中でございます。これは折衝中でございますからいつまでということは申し上げられませんが、いま国内のほうの意見を統一するということで、まだ外交交渉に乗せるとかあるいは再び両電電公社の間で話を進めるというところにはいっていない段階でございます。
  53. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、時間がありませんので、その問題はそれぐらいにしまして、次に渡航の問題でお尋ねしたいと思うのです。神戸大学の永積教授が琉球大学から呼ばれていたのですけれども、米民政府のほうが、好ましくない、こういうことで渡航入域を拒否いたしております。この問題についてどう処理されてきたか、経過を御説明願いたいと思います。
  54. 三枝三郎

    三枝政府委員 私どものほうからお答え申し上げます。  いまお話がございました神戸大学の永積教授の渡航の問題でございますが、四十日間の予定で沖繩入域許可申請書が出てまいりましたのは一月でございます。私ども二月二十八日に必要な書類をつくりまして米側に送りましたが、その後なかなかおりませんので、再三にわたって許可の促進を行ないました。また、琉球大学のほうにも連絡をとりまして、積極的に現地で米側に働きかけるようにも話してまいりましたが、四月六日に米側から、結局本件は好意的に取り運ぶわけにいかないという返事がございまして、その理由は全然示されておりません。そういうことで、どういうことで渡航ができなくなったかということは、私どもとしては知ることができないわけでございます。
  55. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 大臣の時間の関係がございますから、渡航の問題はちょっとあと回しにしまして、大臣に最後に二、三項目にわたってお尋ねしたいのです。今日のこういう不幸な事態に陥った中で、これを打開をしていくために次の幾つかの項目についてお尋ねしますので、その所信をお示し願いたいと思います。  まず第一に、キャラウェー高等弁務官は八月で交迭をされ退役になる、そしてアルバート・ワトソン中将が次の高等弁務官として来る、こういうふうに発表されておるわけでございます。そういたしますならば、一個の特異な性格を持った弁務官がかわるいい時期でありますから、こういうときにこそ日本政府としてはこれまでの制度運用上のそういう不幸な問題を解決をしていく好機であると思います。そこで、まず第一に、そういうキャラウェー高等弁務官とアルバート・ワトソン中将の交代の時期に、自主的な立法院における立法の権限、このことを求める気持ちがあるかないか、お尋ねいたします。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 いままで沖繩で生起いたしました事態をいろいろ究明いたしまして、先ほども申しましたように、アメリカ側に考慮を求むべきものにつきましては求めるとお答え申し上げたのでございます。お示しのように、今度高等弁務官がかわられるということでございます。新任弁務官とは緊密な連絡をとりたいと思っております。
  57. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日米協議委員会あるいは日米琉技術委員会、こういう二つの委員会を通じて、沖繩を県並みの水準に引き上げていく、そのためには、援助というものが自由にできる、こうすべきだと思うのです。その点を努力されますかどうですか。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、いままで日本政府は各省専門別に調査団を派遣し、沖繩の民生、経済の状況を把握いたしまして、その実態に合ったような援助の方針を貫くべく努力いたしておるわけでございます。ただ、日本施政権が及ばないという地域でごさいますので、法制的な制約その他がございますので、県並みに沖繩を取り扱うという場合には制度的な制約がいろいろございますが、基本の方針は、あなたがお示しになりましたように、実態に合ったように県並みの水準に引き上げることを目標にいたしまして鋭意やってまいるつもりでございます。
  59. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 立法院におきます自治権拡大要請決議とかあるいは脱党派の諸君の脱党理由、そういうものの中にも明確に出てまいりますが、ケネディ政策が発表された際に沖繩県民の皆さんが期待をした主席の公選というものが踏みにじられた。そうして、その不幸な結果が今日大田主席の進退をしてきわめてみじめなものにしたことになっておると思うのです。その主席の公選について日本政府としては公選制に持っていくように努力できるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答え申しましたように、沖繩事態につきましては、十分これを究明いたしまして、アメリカ側の考慮を求むべき点は求めてまいらなければならぬと思っております。いま御指摘主席公選制の問題につきまして、私どもといたしましても十分研究してみたいと思います。
  61. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 最後に、国会におきます討議、質疑を通じて見ますならば、総理大臣をはじめみなさんは全部沖繩ということばを使っておられるのです。決して琉球ということばを使っておられない。それは日本人の感情として当然であろうと思います。沖繩ということばは日本では行政上も使われておりまして、日本の全国的な廃藩置県は明治四年でありますけれども沖繩の場合は明法十二年に廃藩置県が行なわれて、それ以来沖繩という呼称が行なわれてまいっております。あるいは古い文献によればすでに八世紀以来このことばは使われておるわけであります。当然に日本人の立場から沖繩ということばが使われるべきだと思いますし、アメリカ側においてもケネディ政策の中では沖繩という表現が使われてまいっております。琉球沖繩という二つの呼称があるわけでありますが、この際、一歩でも前進をさせる、そういう意味においては、日米間における公のことはとしましても、私は当然に沖繩ということばを使うべきだと思うのです。明治十二年以来終戦まで使われてまいりましたことばというものが、アメリカ側からかってに琉球というふうに変えられておるわけでありますが、日本政府として、この呼称を沖繩という用語で通していけるかどうかまた、そういう努力をされるかどうか決意の表明をしていただきたいと思います。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 十分検討いたします。
  63. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、最後に、渡航の制限、これはぜひ撤廃のために全力を尽くしてもらいたいと思います。私は特に沖繩の隣県の鹿児島の者ですから、いつも港で不幸な姿を見ております。どうかこの点については全力をあげて現地の皆さんの要望にこたえるようにしてもらいたい。
  64. 臼井莊一

    臼井委員長 午後一時三十分より本問題に関する質疑を継続することとし、この際それまで休憩いたします。    午前十一時二十二分休憩      ————◇—————    午後一時三十六分開議
  65. 臼井莊一

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。帆足計君。
  66. 帆足計

    ○帆足委員 沖繩行政主席が辞意を表明せられまして、いまきわめて重大な政局にぶつかっておりますことにつきまして、午前中川崎君からきわめて適切な質問がありましたが、なお政府の答弁に対して私ども十分に納得いたしかねることがありますし、この際外務委員として十分に御要望いたしておきたいと思いますので、しばらく御質問をお許し願います。  まず第一に、沖繩の現状は、民政府と言いますけれども、その実は軍政が、しかも間接的でなくて直接的な軍政が行なわれておりまして、住民施政権自治権が極度に制限されておる、なきにひとしい状況に制限されております事実について、政府は十分なる認識を持っておられますか、外務大臣に確かめておきたいと思います。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 沖繩アメリカ施政の実態をどのように評価すべきかという問題でございますが、真の意味の民主政治が行なわれておるという地域ではないと私は思います。
  68. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣にしてはきわめて率直な御答弁で、全くの事実としてそのとおりだと思いますが、世界にいま、このような直接的な外国の支配が行なわれ、その住民権がかくも制約されている場所が幾つくらいありますでしょうか条約局長ちょっと御答弁願います。もう平素からちゃんと調べてあることと思いますから。
  69. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 沖繩日本の、平和条約に基づく全く特殊な地位でございまして、施政の実態がどこと似ているかというようなことは私はっきり答弁いたしかねます。
  70. 帆足計

    ○帆足委員 私はそういうことをお尋ねしたのじゃないのです。現在、世界人権宣言があり、植民地解放宣言があって、他国の支配を受けておるところ、住民権のない場所について、その住民権を育成し独立を与えることは世界各国の義務となっており、それに日本も賛成の調印をしているのです。したがいまして、外務省当局としては、現在、自治権がない、沖繩のごとく制約されておるような例が他にどこにあるかということをお尋ねしたわけであって、答えきれなかったら条約局長おやめにならなければならぬということになるのじゃないでしょうか。御答弁を願います。われわれは冗談で質問しているわけではないのですから、もう少し真剣な御答弁を願います。なお、ちょっと注意を促しますが、答えるべきことは率直に答えればいいのです。政治上の問題は政治家が調整しますから、事実をお尋ねしたときは事実をもって答えるように願います。アメリカもそういう国柄に対してむしろ敬意を表するでしょう。わけのわからぬ状況にしておけば、南ベトナムのバーベキューの魔女みたいな事態が起こる。ゴ・ジンジエムのような事態が起こるわけです。そうではなくて、常にフランクに論理的に、いい点悪い点を述べて、悪い点をお互いに直し合う、いい点は伸長し合う、私はそういう趣旨でお尋ねしているのですから、条約局長その他事務当局は、もっとてきぱきと、教養ある人間としてお答え願いたい。
  71. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私は、先ほどは、私にあてた御質問でしたから、法律的な根拠が同じようなものがあるかということに御質問をとったのでありますが、非自治地域としてあるものは世界で五十六地域ございます。
  72. 帆足計

    ○帆足委員 沖繩程度に直接的に外国支配を受けておる国は、幾つそういう例が他にありますか。私が知っている限りでは、アフリカの象牙海岸にも見当たらない、パナマにも見当たらないけれども、かろうじてパナマのカナル・ゾーンが全く同じ状況に置かれていて、そのパナマは、最初は奮起して、いまは平和のうちにアメリカと合理的に交渉しつつある、こういうふうに心得ておりますが、パナマ、沖繩と全く同じ状況の程度にはなはだしい国が世界にあと幾つぐらいありましょうか。外務省お調べになっておりますか。調べていなければ、この次調べて御報告願えばいいのです。
  73. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 各地域の施政の実態については、私ここで的確に御答弁いたしかねますので、帰りまして調べたいと思います。
  74. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、住民自治権がない、やがて自治権が与えられるであろうけれども、その過渡期の国を幾つかに分類いたしまして、そして、数種類ある、そのうち沖繩の状況に似ている国が幾つある、そういう一覧表を御提出願いたい。  第二、国連憲章並びに世界人権宣言及び植民地解放宣言、これは世界の八十数カ国が賛成署名をしております。署名をした条約に対しては守る義務があるわけです。これらの憲章に、住民自治権回復を擁護し、そして自治権回復を奨励するような政策をとらねばならぬ、各国はそういうあたたかい目でこれを遇さねばならぬという規定があるということだけは御承知でしょうか。御承知かどうかを伺っておきたい。
  75. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 国連憲章及びほかの二つの国連総会の決議にはそのような趣旨が含まれていることは承知いたしております。
  76. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、その次にお尋ねしますが、そういう自治権を回復しようとする運動に対していささかの干渉・弾圧を加えてはならぬという条項がこの植民地解放宣言第四項に明記されておるのを御承知ですか。
  77. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 そういう趣旨が四項にあることは承知いたしております。
  78. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、さらにお尋ねいたします。しからば、沖繩祖国復帰、また沖繩自治権拡大沖繩施政権返還の要求、これは琉球立法院が満場一致決議している常識でありますけれども、それを主張したからといって差別待遇を受け、パスポートを拒絶されることは干渉・弾圧の一種であると思いますけれども条約局長はそのように理解いたしますか。そういうことをやっている者がいるかいないか、いま聞いているわけではありません。それは干渉とか弾圧の一種に当たるおそれがあるというふうにお考えですか。
  79. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 直前にお尋ねになりました植民地解放宣言との関連でとられますと、若干またちょっと申し上げなくちゃならないのですが、植民地独立宣言というのは沖繩には適用がないということ、前々から政府はそういう立場をとってまいっておるわけでございます。
  80. 帆足計

    ○帆足委員 これは、国際連合憲章、世界人権宣言と相連関しているものでありまして、趣旨としては、自治権回復の運動に干渉弾圧を与え、差別待遇を与えることは倫理的に好ましくないということが国連憲章及び国連決議しておる諸宣言の気持ちである、原則的趣旨であるということは理解されておりますか。
  81. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 その点は、最初に申し上げましたように、私はそのとおりに理解いたしております。
  82. 帆足計

    ○帆足委員 うわさに聞きますと、沖繩においては、アブラハム・リンカーン、この人の思想は、人民の手による人民のための人民の政治ということで、まことに正確にして尊敬すべき民主政治の定義でありますが、このアブラハム・リンカンとかジーファーソンの思想を説いた書物を販売することは好ましくないとされておる、時としてはそういう書物を読むとブラックリストに入る、ビザの交付にもパスポートの交付にも支障が起こるといううわさを聞きますが、外務省当局はそれに対してどのようにお考えですか。
  83. 三枝三郎

    三枝政府委員 ただいま御指摘になりましたような事実が沖繩にあるかどうか、私どもまだ承知しておりませんが、いずれ後日調べましてお答えしたいと思います。
  84. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 関連して。
  85. 臼井莊一

  86. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いまのはたいへんいいかげんな答弁だと思うのです。三十六年の十月十日の本委員会で、戸叶委員から、沖繩から日本にまいります渡航の問題についていろいろと具体的な例をあげて質問をいたしておりますが、その際に当時の伊関アジア局長が次のように言っておるわけです。まさかこれは外務省は言った覚えはないと言うことはないと思うのでありますが、伊関アジア局長戸叶委員の実質問に対しまして、「おっしゃる通りの」、つまり、労働組合の指導者であるとか、あるいは復帰運動をやったとかそういうことで沖繩から日本に来ることを拒否されたということ、そういうふうな「おっしゃる通りの事例であれば、私の方から交渉して直さすようにいたします。」、こう言明いたしておるわけであります。それに対して戸叶委員は、力強い答弁を全面的に喜びます、こういうことで結んでおるわけでありますが、三十六年の十月十日の本委員会で、外務省においては今度はアメリカ局のほうに沖繩班をつくるわけでありますけれども、そういうぐあいに、当時のアジア局長が、交渉して直ちに直します、こう言明しておるのでありますが、それが直っていない。これが現状であります。その点について責任のある答弁を願いたいと思うのです。
  87. 帆足計

    ○帆足委員 私も同じ趣旨ですから、御答弁願います。
  88. 三枝三郎

    三枝政府委員 ただいまのお話でございますが、沖繩から本土へ渡航してきた数、これは国内におきましては入国管理局が数字をあげております。向こうでどの程度の申請があったかというのは発表されていないわけであります。それで、私先ほど申しましたのは、アブラハム・リンカーンの書籍を読んでいる場合にそれがいろいろ問題になっているという事実についてお答えしたのでございまして、それが直ちに渡航に響いたかどうかというようなことはまた別の問題で、もしそれがあれば私どもも調べてみたいと思います。  なお、これも御参考になると思いますが、こちらから渡航申請して渡航できた者の数でございますが、大体毎年許可になったパーセンテージですが、〇・一九%というような数字が最近あがっております。これはいずれも理由があるらしいのですが、はっきりしておりますのは、申請者の身元引き受け人が本人の申請者を知らないのに引き受け人になっていたということで不許可になったり、あるいは身元引き受け人自体が住所がはっきりしないということで不許可になったものはありますが、また、別に理由が明示されないで不許可になった者もおります。おそらくその中にそういったものがあるのではないかということが推測されるかもしれませんが、これはいずれ調査をした上で善処したいと思っております。
  89. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの川崎君の質問の問題ですが、現に、このたび、四月二十八日、沖繩祖国復帰に関する記念日がありまして、そのときに沖繩から日本本土にそれに対してあいさつを述べるために来ようとした友人の非常に多くの人たちが渡航許可証を交付されませんでした。沖繩自治権拡大し、沖繩施政権の復帰を願うという思想は、少年時代にアブラハム・リンカーンの書物を読み、またジェファーソンの書物を読み、福沢諭吉の書物を読む、その系統からそういう意識が生まれるのでありまして、子供のときにただ白虎隊の本を読むとかそれから封建思想しか植え付けられなかったならば、他国の自由になろうと、住民の権利がどう侵害されようと、それに対して不感症になるのであります。少年時代にアブラハム・リンカーンの伝記を読み、「トム・ソーヤの冒険」を読み、そしてジェファーソンの思想の一端にも触れておれは、青年期に達すれば自治権を要求するようなりりしいよき教養ある市民になることは当然であります。また、その教えを受けて善良なる従業員になったときは、良識ある労働組合運動もし、祖国復帰運動にも参画し、そして住民権、施政権を確立しようという健全なる要求を持つようになるのは当然であります。それをアメリカ自身が好まないという事実を私は見聞いたしまして、まことに残念だと思います。外務省当局はその一連の系統を調べて、特にことしの四月二十八日に何人申請があって何人拒絶されたか、——拒絶された人たちの大部分はみなアブラハム・リンカーンの思想を尊敬している人たちです。こういう方は、いま植民地解放宣言が適用するのかせぬのかということがありましたが、これは別といたしまして、とにかく、国連憲章並びにそれに連関する国際連合総会の決議はすべて、そういう運動が合理的に行なわれる場合は奨励すべきであって、いささかも弾圧・干渉にわたるべきではない、こうなっておるにもかかわらず、祖国復帰運動、住民拡大の運動、当然の自由主義運動が弾圧を受けているという状況はまことに残念なことであって、政府当局としては、もう少し認識を明確にしていただきたい。  続いて御質問いたします。ケネディ大統領が、とにもかくにもこの原則を認めて、住民権を拡大しよう、将来の落差をなくすように努力しようという公約をしたことに対して、沖繩県民は感謝をし、当時大いに期待をしました。しかし、その後、大山鳴動してネズミ一匹も出ず、沖繩県民は絶望をしておるのであります。まず、外務大臣は、前の公約が少なくとも政治の面において一歩前進しておるというふうにお考えでしょうか、それとも、停滞しあるいは後退しているという瀬長副主席の意見、並びに大田主席が進退きわまって辞職された事情に対して、まことに残念ながらそのような状況にあるという御認識でありましょうか。午前に質問がありましたけれども、重要な問題ですから、重ねて外務大臣の御認識を伺っておきたいと思う次第であります。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 ケネディ政策が明らかにされまして以来、アメリカの対沖繩政策が変わったということは聞いておりません。私どもは、一昨年三月のケネディ声明というものがアメリカ沖繩政策の根幹であると承知いたしております。しかしながら、いま現前の事態はいろいろな問題が出てまいりまして、困難な不幸な状態にあることも承知いたしておりますが、これはアメリカ沖繩に対する政策の根幹が変わったことではなくて、施政権運用の面に問題があるのだというように私は理解をしておるということを、けさの川崎さんの御質問に対してもお答えをいたしたのであります。
  91. 帆足計

    ○帆足委員 ケネディ大統領がとにもかくにも前向きになろうとした主観的善意については、だれしもその善意を多とするでしょう。そして、その方向が変わらないことを期待するでしょう。外務大臣の御答弁のとおりでしょう。しかし、実効が伴っていないということを皆が嘆いておるわけです。そこで、実効が伴っているかどうか。第一は、このケネディ声明がなされた直後、これを取り消すがごとき動きがアメリカ上下両院にあった。沖繩の戦略価値というのがそのときの速記録に残されておるから、外務大臣にごらんになったかとお尋ねしたら、遺憾ながら読んでいないということです。私は外務大臣の周辺の人の不実の責任がからむのではないかと当時警告した次第です。ところが、最近、都内の五大新聞を読みますと、こう書いてある。アメリカ議会下院歳出委員会がさきに行なわれた沖繩に関する秘密会内容を明らかにしているが、それを読んでみると、キャラウェー高等弁務官らの証言や会議の全般を通じて見ると、基地に執着するあまり、沖繩住民自治権の回復等の問題、沖繩同胞の問題についてはほとんど理解も関心もないかのごとき感を受けた、と一般の常識的な新聞が書いているわけです。われわれがこうした経緯を考えると、アメリカ当局が沖繩の軍事的な基地の面を重視するのあまり、沖繩県民自治に対する要求やその特殊の立場について関心が薄いことを心配する、こう書いております。同時に、さらにまた、有力な新聞の昨日の社説には、これは米国が外国の許可を求めることを必要とせずにいかなる危険な兵器、兵力も自由自在に展開し得る独自の軍事基地としての利点を持つ沖繩への執着を考えて、その戦略価値をすべてに優先させるがために住民を犠牲にしてきびしい施政権の剥奪を行なっているものと考えざるを得ないことはまことに遺憾である、これも都内の有力な五大新聞の一つですが、そこまで書いております。  そこで、私は要求しますが、最近のアメリカ議会の下院歳出委員会沖繩に関する秘密会の速記録を、外務省は、すでに新聞に出ているくらいですから、御入手になっているでしょうか。外務大臣は御承知でしょうか。並びに外務委員にこれを御提出願いたいと思います。御答弁を願います。
  92. 竹内春海

    竹内(春)政府委員 この公表されました議事録は入手しておりますので、委員会に提出し得ると思います。
  93. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、これはひとつ委員会に御提出願うと同時に、外務大臣にもこういう事実をお目通しを願って、現実の事態がどうであるかという正確な御判断をお願いしたい。  時間がありませんから、とりあえず急いで質問することだけを申し上げますが、そこで、ケネディの公約した政策が、とにかく外務大臣見解では後退していないはずであるとお考えであるとしても、実行に移されていないことは事実である。最近拒否権の行使が非常に多くなり、直接なディレクティブの数が非常に多くなってきておりますが、その統計を、一覧表を御提出願えますか。時間がありませんから、いま説明を聞きますよりも上覧表を提出願いたいと思います。いかがですか。
  94. 三枝三郎

    三枝政府委員 午前中にもお答え申し上げましたが、自治権後退といわれております一連事案がございますので、その件につきまして後日作成しまして提出したいと思います。
  95. 帆足計

    ○帆足委員 川崎君が先ほど質問しましたように、前に伊關局長が、施政権返還自治権拡大等のいわゆる理論的、常識的要求のためにアメリカ・パスポート当局の差別待遇を受けたという例があるというときはこれに対し注意を行なうと言われた。これは国連精神から抗議の意味でしていただくのは当然のことですけれども、いまでも外務当局はそういうお考えですか。ちょっと伺っておきたいと思います。伊關さんのような良識を皆さんがやはり同じくお持ちであるかどうか。
  96. 竹内春海

    竹内(春)政府委員 そのような具体的な問題が私どものところに提起されましたならば、それに基づいて検討してみたいと思います。
  97. 帆足計

    ○帆足委員 検討ということばはちょっと不十分だと思います。そうして、その検討の結果それが国連精神に反しておるときは、また人権宣言の精神に反しているときには、また植民地廃止宣言に反するときは、これは倫理的なものですから、沖繩にとって適用し得るかし得ないかというようなへ理屈をここで論議するよりも、施政権のないところにこれを適用すると書いてあるわけですから、そういうときには抗議し、そうして注意を促す、こういう御答弁をわれわれは要求するわけです。こういうことに対して理解のない高等弁務官またはアメリカ軍の職業的オフィサーがいた場合には、外務委員会に召喚し、参考人として意見を述べさせるくらいのことが必要であるとわれわれは思っておりますが、外務大臣はどうお考えですか。私は高等弁務官外務委員会に連れてきて意見を述べさせたい。そうしても、う少し勉強さして、アブラハム・リンカーンの書いた書物の一冊でも朗読してやりたい、こう思っているわけです。外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかくのお話でございますけれども、それは国会の問題でございます。
  99. 帆足計

    ○帆足委員 外務委員会における重要なる委員の一人からそういう発言があったということが速記録に書かれて、そしてそれがアメリカの善良な方方の反省の手段になれば私は光栄と思う次第です。私は、アメリカの暗い一面を軽べつしておりますけれども、そしてダラスの町に遊覧に行くことは当分の間は考えておりませんけれどもアメリカの美しい伝統、開拓者的伝統に対しては心から尊敬している者の一人ですから、あえて申し上げます。  最後に、大田主席辞表を提出いたしました。あとの主席がだれになるかということは、人生の一場のドラマで、忠臣蔵のようなもので、だれもかれも全部大星由良之助になるわけにはいかぬ。だれかが高師直になり、鷺坂伴内、お軽、勘平も引き受けなければならない。なぜならば、私は、一種のヒューマニズムから言って、大田主席のこれまでの御努力と御苦衷のほど察するに余りある、こう思っております。野党たる私がこういうことを言ってまことに恐縮ですけれども、やはり一個の同胞として大田主席の苦衷のほどを察するに余りあると思っております。あとはだれがなるかといえば、だれがなっても容易ならぬことである、つらいことであると私は思います。高等弁務官からベルで呼び出されるような地位で、どうして沖繩住民の生活を守ることができるでしょうか。むしろ琉球立法院を背景として電話で高等弁務官に来てもらって相談をするというくらいの地位でなければ、百万の沖繩住民の利益を守ることはできない。したがいまして、あとの人選に対していま沖繩住民また政治諸君がどれほど苦慮しておるかということは、私は察するに余りあります。最近の下馬評によりますと、皆さんと関係の御友人の一人に白羽の矢が立つというような風評も聞いておりますが、白羽の矢が立った者は哀れなるなかでありまして、まことにむずかしい任務であると思います。だとするならば、結局主席は公選にすべきである。公選されておるならば国民の意思を体して仕事をするのでありますから、そこによりどころを得てアメリカと対等の資格で友情をあたためることもできるでしょう。しかし、ベル一つ高等弁務官に呼ばれ、拒否権一つでかってに、まるで勅令によってやってしまわれるというような状況で、だれがやったって一体主席の仕事がつとまるでしょうか。したがいまして、いまの沖繩性格はまことに深刻であると思います。外務大臣大田主席の辞職に対しましておそらく一掬の同情の涙を注いでおられることと思いますけれども、どういう心境のもとできょうの新聞をごらんになっておられるか、人は理屈よりもやはりお人柄、心持ちのほうが大事でございますから、お心持ちのほどを伺っておきたい、こう思う次第です。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約締結にあたりまして、わが国がしばらくの間沖繩の施政を見ることができない立場にあった。それがために、沖繩住民の方々、大田主席ばかりでなく、皆さんにたいへん十字架を背負っていただいておるということに対しまして、心が重い気持ちでございます。
  101. 帆足計

    ○帆足委員 野党の私どものような荒武者ですらがなおかつ大田主席の苦衷を察しておるのでありますから、外務大臣がいま心重いと言われることばを伺いまして、同胞として相共鳴もし、いよいよ祖国を深く愛せねばならぬ思いを痛感する次第でございます。  最後に、信託統治の問題はすでにもう消えてしまっておる。国連憲章によって、一国が国際連合に加盟した以上、その国の一部を信託統治にすることができない、すでに終着駅は来ている。結婚の見込みがない、しかるにまだペッティングだけ続けてしようというようなことは、これは結婚詐欺のようなことで、終戦後一年か二年の間の占領ならば、これは手続上許されるべきであるけれども、すでに十九年にわたって結婚詐欺を続けておる、こういうふうに外国のある批評家は言っておるわけです。いまやいかなる法的根拠もない。日本がかりに沖繩施政権の一部を譲り渡すことを約束しようとも、今日、児童憲章あり、売春禁令あり、またはその他児童虐待防止法があるがごとく、子供をタコ部屋に売ろうと親の実自由であるという時代は過ぎて、売ったほうもよくないし、買ったほうもよくないわけです。したがって、沖繩施政権アメリカに譲り渡す権能は日本政府にないわけです。それは違反行為です。同時に、アメリカがそれをもらうことも違反行為です。ただし、そういうことは倫理的にも国際法上からもできないから、信託統治にする、それならばよかろう、信託統治までの暫時の間の手続の期間だけを直接占領するということで、連合国をだまくらかしてこれを通過させた。それに気がついたのはインドとエジプトであって、この二つの国が反対投票した。こういういきさつです。したがいまして、すでにもう十九年、法的根拠はないわけです。こういう事情であります実から、広義の意味の植民地として、アメリカの代表が、住民権を奪われ他国の直接の支配を受ける国がすなわち植民地であると定義した、その定義に当てはまるということを条約局長が一言言えば、一週間で解決がつくのです。軍事基地の問題は、貸し借りの問題ですから、これは別問題です。しかし、施政権の問題に関する限り、一週間で国際連合で解決がつくにかかわらず、日本政府が過度に遠慮して言わないから、いつまでたっても解決しない。軍事基地の問題は軍事基地の問題としてわれわれ独自の見解を持っております。いまはそれを述べる機会でありませんし、時間もありませんから述べません。しかし、住民権の問題は、いまの児童虐待防止法の問題と同じように、そもそも譲り渡すという権能が日本政府にないのです。沖繩を捨て子にする権利なんというものはない。池田さんが酒屋の子供であっても、ウイスキー屋の子供であっても、そんなことは身分にかかわりはありません。とにかく一国の総理にそういう権能はいま国際法上与えられていないのです。その法のことを知らずに、法の盲点の中で沖繩が苦しんでいる、世にもふしぎな物語である、これが私が諸外国を歩いたときの国際法学者のみな言われることです。そして、その方々の言われるのには、沖繩は無人島かせめて四、五千の人口だと思っておったから、自分らはこれを看過していたのだけれども沖繩の人口が百万であって、パナマの人口が六十万とするならば、それはもうコンサーバティブに考えても無理であろうというのが、各国の外務省、また国際法学者の意見でありました。そのことをスカラピノ教授もよく知っており、また、学者として尊敬しているライシャワー博士もよく知っております。アメリカ国務省はこのことを知っておるから、若いケネディ大統領の弟さんが東京に来て、そうして、びっくりして帰って、ワシントンで、にいさん、これはたいへんだ、沖繩の法的根拠というのはきわめて薄弱である、信託統治というならば法的根拠があるけれども、その時代はすでに過ぎた、したがって、もはや日本に返すスケジュールだけが残されているというので、これがアメリカの国務省の意見でありました。それらのことはワシントン・ポストに説き尽くされて余すところのないような状況でございます。そのような状況であるにかかわらず、外務省はなぜこの法的盲点を突かれないのか。それは、国際連合の公の席でなくても、プライベートの席でも、これが諸外国に知られ、野党から攻撃を受け、国際連合でどこかの国から発言されたならば、アメリカとしては答うべきことばもないだろう。したがって、ケネディ大統領の公約した方向に進むだけでなく、実行に移してもらいたいということを強く迫ることをわれわれは政府に要求するわけです。  与えられた時間も過ぎましたから、以上の要望を申し上げまして、いずれ、日本社会党といたしましては、与党の方とも相談いたしますが、社会党という狭い気持ちでなくて、国民を代表する一つの党として、外務大臣にわれわれは要望書を差し上げることになっておりますから、そのときは要望書をよくお目通し願いまして、いろいろ苦しい事情もおありでしょうけれども、言うべき論理を尽くしていただく、言いにくいときは、野党がこう言っておる、かくも論理整然たる外務委員が野党にたくさんおる、これではどうも与党は負けることになってしまうのではないか、与党が負けたらアメリカも困るではないか、そう言うていただいてけっこうですから、ひとつ言うべきことは論理を尽くしていただきたいということを要望して、質問にかえる次第でございます。
  102. 臼井莊一

    臼井委員長 関連して、川崎寛治君。
  103. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 具体的に簡単なことをお伺いしますけれども日本で市販をされ、学校で使っております地図においては、沖繩は外国ということになっておるわけであります。これは沖繩のほうにもそうした地図が持ち込まれておるわけであります。このことを外務大臣はどうお考えになりますか。それが誤りであるならば、その地図を直すように、この点具体的に所信を表明していただきたいと思います。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 領有権と施政権、つまり、施政権アメリカにあり、領土権は日本にあるということなので、その外国と規定したのがどういう趣旨でどういうふうに書かれておるのかよく調べて正確を期さなければならないと思いますから、善処したいと思います。
  105. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 保留しておきます。
  106. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの川崎君の質問は重大ですし、外国の地図にもありますから、これは文部省と外務省と相談しておいてください。川崎君と一緒に継続質問して明確にしたいと思いますから、保留しておきます。
  107. 臼井莊一

    臼井委員長 山木幸一君。
  108. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 それでは、時間がないようですから、端的に結論だけ質問しますが、政府がオリンピックの選手に対して非常に寛大な措置をとられる、いわばスポーツは国境を越えて、あるいは政治無差別、こういう立場で入国をそれぞれ許可されておる。これはたいへんいいことだと思うのですが、実は、私、きのうのスポーツ新聞を見ますと、こういうことが記事に出ておるのです。「北朝鮮オリンピック委員会から十五日、在日朝鮮人体育会にあて、東京大会の予選に在日朝鮮人選手も参加するように、と呼びかける手紙が届いた。同体百会にはすでに在日朝鮮人選手から祖国の予選に参加したいという数多くの希望が寄せられており、二十五日までに希望者を審査した上北朝鮮オリンピック委に推薦、再入国手続について外務省との交渉を始めた。北朝鮮オリンピック委からの手紙によると、同国ではすでに東京オリンピック二十種目の第一次予選がはじまっている。」、最終予選が七月一日から二十五日まで平壌で行なわれるということで、あとは省略しますが、在日朝鮮人体育会からも要請をしておるし、北朝鮮側からもそういう勧誘が来ており、外務省側といろいろ折衝しておるということです。なお、その選手については、いまのところ名前があがっておりますのは、陸上競技の長距離朴世振、これは日体大出です。それから柔道で劉泰光三段、これは拓大です。それから朴清美、これも柔道三段、天理大学。重量あげで呉徳守、さらに中京大学のキム・ヒョンギ。こういう数名の人の帰国往来についての外務省との折衝があることが記載されております。おそらく外務省は御承知だと思うのですが、いまこれはどうなっておりますか。
  109. 大平正芳

    大平国務大臣 私はまだ伺っておりません。ただ、私が申し上げたいのは、オリンピック関係、体育関係のごとは、団体のほうの自主的な規制でやられておりますので、政府は関与しないことにいたしておるのです。そのケースはどういうケースなのか私はよくわかりませんが、ただいままでのところまだ下から上がってきていませんから……。
  110. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 これは、もう一ぺんわかりやすく言うと、在日朝鮮人にそれぞてれ選手がおるわけです。そこで、北朝鮮がオリンピックに参加するについて、在日朝鮮人の選手に、本国で予選をやるものですから、その予選参加の勧誘が来ているわけですね。それについて、在日朝鮮人の団体である朝鮮人体育会、これが外務省と折衝をしておる、こういう記事なんですよ。入管局次長、わかりませんかあなたのほうで。
  111. 富田正典

    ○富田政府委員 お答えいたします。  その問題につきましては、私もきょうここへまいる前にこういう新聞記事が東京新聞に出ているということを拝見いたしましただけでございまして、事務当局のほうへそういう接触があるということを全然聞いておりません。いずれOOCのほうに問題を確かめてみた上で具体的に検討してみたいと考えております。
  112. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 大平さん、いまあなたおっしゃったように、これらは団体のほうへ扱い方をまかしておるということでしたね、規制等について。そういう御答弁でしたな。
  113. 大平正芳

    大平国務大臣 まかしておくんじゃなくて、そういうたてまえになっておるんです。まかすようなたてまえでもないので、つまり政府は関与しないことなんです。
  114. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 それじゃ、団体のほうからそういう申請が、あった場合には認めますか。本国の予選に加わって、また帰ってくることを認めますか、認めんならぬでしょうな。これは、あなた、政治無差別、スポーツは国境を越えてという原則からも、認めるのはあたりまえですがな。どうでしょうかな。私はあたりまえだと思うが、これまでにあまり政治色を加えぬようにしてもらいたい。もう少しすっきりとすんなりとやってもらいたい。韓国のほうはもちろん行くのですよ。韓国の人たちはやはり三、四人韓国のほうの予選に加わるわけです。行かれたかどうか知らぬが、行かれてまたこちらへ帰ってこられるわけですね。だから、オリンピックという、政府が入国を認めた精神に基づいていけば、在日朝鮮人の選手のうち予選に加わる希望者、これはわずかですからな、三、四人だから、そういう人の往来は、まあ法務大臣のおっしゃる一項の国際政治犯だとかスパイ行為とかいうそんなばかなことはないと思うのだが、これはすっきりと認めてもらうようにあなた方してくださいよ。
  115. 富田正典

    ○富田政府委員 この問題は法務大臣が再入国を許可するかどうかという裁量の問題で、その裁量権をどう行使するかということにかかってまいることだと思います。御指摘のように、確かにオリンピックに際しましては未承認国からの入国も認めておるわけでございます。しかしながら、一面に、その在日朝鮮人が一度北鮮にまいって、予選をやりまして日本へ戻ってくるという問題につきましては、一体希望する者が何でもかんでも向こうに行って予選に参加し得るものかどうか、事前にもう少しOOCのほうで問題を具体的にこなして持ってきていただきませんと、われわれのほうでもまだ判断のしようがない。現存、新聞記事を拝見いたしましただけでございまして、何とも局の中でも相談もいたしておりませんし、いまの段階ではどういうふうにお答えしていいかちょっとわかりかねる次第でございます。
  116. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 いまいろいろ御答弁があって、なるほどまだOOCのほうからそういう具体的な手続がないかもしれません。私もきのうの新聞できょう初めて見たんだから、そうかも知らぬが、考え方としてはそういう正規の手続を踏んでおやりくださるということですね。しかも予選に加わる人の名前はもうきっちり出ているわけですね。わずか数名、五、六名です。その種目等も明らかになっておるし、選手等の資格も、いまお読みしたように、それぞれ明からになっておるわけです。そういう者が正規の手続を踏んで出した場合には、これはやっぱり法務省としても他のいろんな邪念を考えずに認めてやるという考え方があるかどうかということを聞いておるのです。これはひとつ、もっとおおらかな気持ちで、鋼鉄に焼きを入れたようなつもりでなく、軽い気持ちでやってもらったほうがいいと思います。どうですか。
  117. 富田正典

    ○富田政府委員 御承知のように、再入国問題につきましては、自由往来運動と申しまして、いままでいろいろ問題になってきておりまして、その問題とも切り離して考え得るかどうか、そういうふうな問題もございますので、これはやはり法務省といたしまして慎重に大臣まで上げて検討いたさなければ、私がここで御答弁し得る立場じゃないと考えておる次第であります。
  118. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 あなたと言っておってもしょうがないから、これは法務大臣に来てもらうよりほかないと思うのですがね。研究してみてくださいよ。いまあなたに言ってみたってしょうがない。研究してもらう。ただ、私は、その他の再入国との問題の関連だとあなたはおっしゃるけれども、そうじゃないと思うのです。あなた方が認可されるオリンピックの選手が入国してまた帰っていく、向こうに予選に行ってまた帰ってくる、ちっとも変わらぬと思うんです。どこにも変わったところはないと思うんです。だから、そういう変な考え方でなしに、法務大臣とよく相談してもらわなければならぬ。どうもあなた方石頭でものごとを判断していかぬと思うのだ。もう少しその点は事実に即した方法で考えてもらいたい、そうしてくださいよ。至急相談してください。これ以上あなたとやってみたってしょうがない。  そこで、外務大臣、もうあまり時間がないですから、ちょっと日韓問題であなたにいろいろ聞きたいのですけれども、まあこの間黒田さんが本会議で質問されて大体尽きておると思うのですけれども、まあ御承知の、先般来韓国で学生を中心にする民衆の大衆運動があって、その大衆運動が非常な発展をして、いまでは戒厳令で押えられておる、こういう状況なんですが、この大衆運動は最初の学生の日韓反対とは少し趣を異にしてきておる。言うならば、強権政治反対、民主主義を守る戦い、あるいは軍政に似通ったようなファッショ政治はいけない、それから国民生活が非常に苦しくなるということを非常に訴えている。なかんずく、政治の腐敗、不正、堕落、汚職、そういう問題をきびしくついて、そしてあなた方が信頼しておられた金鍾泌さんの追放まで要求に出ておる。最後のその決着点としては朴政権の打倒退陣、こういう問題まで運動が非常に発展してきておるわけですね。そこで、まあこういうようないまの段階から考えれば、私ども、どう考えてみても、朴政権は長く持たぬのじゃないかこう思うのです。私どもはですよ。こういう運動について、朴政権は朴政権本来の本質をむき出しにして非常戒厳令を公布して一応運動は押えておりますよ。押えておりますが、これは、何人が常識的に判断しても、弾圧と強権政治で押えているだけであって、うっかりすると運動はもっと深刻な状況に入っていく。俗に言う地下にもぐって、そうしてねばり強い深刻な運動に発展していると新聞は伝えておるわけです。こういういまの韓国の情勢の中で、朴政権を相手にしてあなた方が日韓会談を続けられるのかどうか、あなた方は韓国の実情を一体どういうふうに受け取っておられるか把握しておられるかこれをちょっと聞いてみたいと思うのです。
  119. 大平正芳

    大平国務大臣 ざっくばらんに申しますと、他国の政治情勢につきまして国会で私が自分の見ているところをしゃべる立場でないことは、あなたもよく御承知のことと思います。私がいつもお答え申し上げておりますように、われわれは日韓交渉という接触点を持っておりまするので、あなたの言われる韓国の政治情勢というものがこの日韓交渉にどのように反映してまいるかということに注意を怠らないでおるというのが私の責任であろうと考えております。私のほうから会談を打ち切るというようなことは考えていないわけであります。
  120. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 大臣、なるほど私の質問が、あるいはあなたの答弁しがたい質問かもしれない。質問かもしれないが、いまあなたの答弁を聞いていると、日韓会談はこちらからは打ち切る気はないと言う。こちらから打ち切る気はないということは、かなり含みのあることばのように聞くのです。どう聞くかというと、なるほど山本の言ったように韓国は……。これはあなた言いませんよ。言いませんけれども、腹の中にそういうものが横たわっておる。したがって、であるけれども外交上の関係からこちらから打ち切ることはまずいんじゃないかこういうことだと私は理解するわけですが、ところが、現実には、これもまた答弁しがたいことかもしらぬが、韓国が長い間アメリカからたくさん援助を受けておるにかかわらず、非常な経済的な混乱がずっと続いておる。あなたも御承知のように、いわば他国依存主義、アメリカ依存主義、そういうことが韓国の自立経済を妨げているということも言えると思います。他面はやはり軍事費にあまり金を使い過ぎているとも言えると思います。私どもいろんな書物で見ると、韓国の公務員は、いまや昼めし朝めしを抜きにして晩めしだけを食べるという連中がおる、兵隊さん以外は満足に三食食べていない、木の実あるいは草の根を食べている民衆もおる、こういうことをいろんな書物で拝見するのですが、現状は非常に困難な経済事情にあるわけですね。そういう経済事情にあるからこそ、先ほど私が言ったように、いわゆる朴政権の政治そのものについて鋭い批判が出てきておる。その結果、朴政権は退陣しろ、こういう民衆の要求になってきておるわけです。そこで、そういう事態だけはあなたも否定できぬと思う。いまここで公にそうでございますとかどうとか言えぬにしても、これは否定できぬと私は思うのです。これは私だけの意見でなくて、あらゆる書物、あらゆる新聞が書いているのですから、韓国から帰ってきた人々が書いているのですから、そういうものを相手にして、こちらから打ち切りませんと言って、一体いつまで続けるつもりなんですか。ちょっと私ども見当がつかない。いつまで続けるつもりなんです。こちらから打ち切らぬと言いながら、私がいま言ったように、朴政権はもう寿命は長くないと見ておる。よその国に対して失礼かもしらぬけれども、そういう判断をする。そういう判断は、単に私一人じゃない、相当数多くあると思います。そういうときに、こちらから打ち切りませんからと言って、便便と一体いつまで続けるつもりなのか、これをちょっと聞いておきたいと思います。
  121. 大平正芳

    大平国務大臣 私は山本さんより息を長く考えているのです。日韓交渉の沿革を見ても、足踏みしたときもあれば進展したときもございます。政局が非常に混迷したときもあれば、総体的に安定した時代もあるわけでございまして、現在の時点、現在の状態というのは、長い流れの上の一こまだと思っておるわけでございまして、そのように考えておるということをまず御了承願いたいと思います。  それから、いつまでやるかという点、先方に熱意がある限りやってまいるつもりです。
  122. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 大平さん、日韓会談の問題はここ一、二年の問題じゃありませんから、そういう従来の背景、経緯は私も知っておりますよ。しかし、従来のそれと今度の日韓会談を通じての韓国内の民衆運動とは、本質が全くそれは違うと思う。そして、いまやその民衆の声で朴政権は危機に追られておる。こういうときに依然として、相手の誠意のある限りはこちらから打ち切り等はしない、こういうことが続けられるでしょうか。私は続けられぬと思う。私は、むしろ逆に、言うならば、日韓会談そのもので学生や民衆が朴政権について鋭い反対をすると同時に、なおその中にもかかわらず日本政府交渉を続けていこうとする態度に韓国の民衆や学生は多大の疑いを持っているのです。だから、ほんとうに韓国政権を安定させようとするなら、逆に、この際、政治判断から言っても、日韓会談は一まず打ち切って、そうして韓国の政治情勢の安定に協力する、そういうことのほうが得じゃないかね。あんた、そういう手もあるんですよ。私どもはそう判断するのですが、どうですかね。
  123. 大平正芳

    大平国務大臣 ちょっと山本さんとぼくは考えが違うのです。今度のような事件というものは、日韓交渉に決定的にマイナスであるという判断があなたにあるようですけれども、私はそう思っていないのです。外交というのは政府がやっておる仕事でございますが、しかしながら、これは全国民がともかく消化し理解していかなければ本物にならぬわけでございます。ようやく日韓交渉というようなものが学生層の関心を今度呼んだ。そこで屈辱外交云々というようなかっこうでこれに対する反発が起こった。このことは、言いかえれば、この交渉に彼らが関心を持ちかけた証拠なんでありまして、これは韓国の各層の方々が十分考えて、日韓関係というのはどうあるべきかというあり方について十分考える一つの契機になっておるんじゃないかと私は思うのでございます。私どもがいまとっておる態度で、私はちっとも差しつかえないと思います。
  124. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 大平さん、学生は関心を持っているから反対するのですよ。関心を持っていなかったら反対しないんですよ。関心を持つ者こそが積極的に賛成するか反対するかのどちらかなんです。学生の関心を持っているのは、いまの日韓交渉がいけないのだということで、こういう点で反対している。私は時間がないからくどいことは言いませんよ。そういう意味において反対しているわけですね。しかも、学生だけじゃありませんよ。学生の背後には必ず相当数の多い民衆がバックになっておる。こういう事情は先般来の新聞であなたも知ってみえると思う。特に最近問題になってきたのは、御承知のように、韓国のというより、朝鮮の経済自立の路線方向というものは、これはもう両国の統一以外にない、こういう声が非常に強くなってきておる。底辺にまでしみ渡っておるわけですね。したがって、そういう声を受けて、与野党が、ここ一週間ほど前ですか、両国連合体の話し合いをしておる。統一ということばは出ておりませんでしたが、しかし、きょうの新聞によると、民主共和党、いわゆる与党が、野党に向かって統一委員会の設立を提唱しておる。こういうところまで来ておるわけですね。これは、いわば、朝鮮が一体になることによって、より民主的な国家ができるし、経済の自立が可能である、こういう立場に立っているわけですね。したがって、そういう点から踏んまえてみると、あなたの考え方と私ども考え方とは全く逆ですけれども、何も私は自分の考え方を固執するわけじゃないが、どうもあなたの考え方は、従来の立場上やむを得ぬからそういう主張をするんだというふうにしか私は聞こえぬと思う。むしろ私どもに言わせると、朴政権がどうなるかは、それはわかりませんけれども、先ほど私が申し上げたように、少なくとも相当脆弱であることはもう事実だと思う。危機の寸前にあることは事実だと思う。これと同時に起きてくるのが、やはり両朝鮮の統一問題だと思うのです。だから、むしろ日本あたりは、この際ひとまず会談を打ち切って、そうして逆に両朝鮮の統一に効果的な措置を考える必要があるんじゃないか。私はそのために必要な経済援助はやったらいいと思います。これは何も全部が全部反対しているんじゃない。そういう前向きのやり方なら経済援助を考えてもいい。両朝鮮統一の推進の中に経済援助を考えるとか、何らかの援助を考えるとか、そういうことについて私どもは別段反対はしないわけです。現に韓国の中で、いま申し上げたように、統一の機運か政治家の中にすら高まってきた。これはやはり、一般民衆が、いわゆる朝鮮の経済自立のためには三つの朝鮮が一つにならなきゃいけないんだ、こういう強い要求を受けて立ったのが、いま言った与党からも提唱されるような統一委員会の設置、そういう問題が出ておるわけです。これは少しあなた方も考え方を変えなきゃいけないんじゃないか。だから、従来のいろいろないきさつだとかメンツにこだわらずに、ここで勇気を持ってやはりひとまず打ち切る、打ち切って出直す、こういう考え方を持たれるのが私はいいと思うのですが、どうですか。
  125. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたの論理に若干飛躍があるのです。私が申し上げておるのは、まず日韓交渉というものに関心があるという契機になっておると言ったので、日韓交渉というようなものを十分理解の上に立って云々というところまでまだ問題が十分消化されていない状況じゃないかと判断しておるわけでございまして、あるべき日韓関係というようなものについて、反対もあるでしょう、賛成もあるでしょう、反対論者が賛成に変わることもあるでしょう。しかし、少なくとも日韓問題というものを学生層がここで受けとめて、ちょっと最初の反応をともかく示したという意味で、これは一つの契機になっておるんじゃなかろうかというように私は考えるわけです。  それから、第二の統一問題は、私がたびたび申し上げておるとおり、これは朝鮮民族の問題であるということを申し上げておるわけでございまして、日本政府が云々すべき問題でないということは、もう厳格に私は申し上げてあるわけでございます。朝鮮民族が考えるべきもので、こちらがおせっかいをやく問題じゃないという、こちらは非常に折り目正しい態度をとっておるつもりなんでございます。そして、その統一問題と日韓交渉とはかかわりはないということも、またたびたび政府は申し上げてあるところで、御理解いただきたいと思うのでございます。
  126. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 私はまだたくさん問題はあるのですが、どうも大平さんの答弁は納得できぬ。私らは別段統一問題に日本が介入しようとか干渉しようとかいうことは一言も言っておらぬのです。いま統一の機運が高まりつつあるときに、わざわざ韓国側と妙な協定をやって統一に阻害を与えることはよろしくない、むしろ逆に統一に期待し、統一可能な方向日本もよその国であっても協力するようなそういう態度をとることこそが全朝鮮の人民が非常に期待するところじゃないか、こういう議論を言っているので、干渉しろとか関与しろとかそんな失礼なことを言いませんよ。それはあなた、わしらがそういうことを言ったなんてとんでもない誤解ですよ。そういうことはよく誤解のないようにしてもらいたい。  それから、この間朝鮮の人事往来で私どもの同志がたびたび質問をしております。人道上の問題として、たくさん資料を赤松君が読み上げて、あなたお聞き及びだと思う。私はきょうは一つずつ読んであなたの頭にしみ込むようにしてあげたいと思ったけれども、あなたは時間がない時間がないというので、後日に譲りますが、これは純然たる人道問題として、あなた方もそういう立場で答弁していらっしゃる。それから、外務大臣は、いろいろなものも交流しているときに人事の交流がそういう状況では不自然だ、こういう答弁をしていらっしゃる。私はその点では非常に理解をしております。あなたの答弁内容はよくわかります。ところが、いよいよ突っ込んでみると、それは不自然であるから何とか改善しなければならないけれども、現下の国際情勢では、こう来るわけだ。現下の国際情勢とは何ぞやと言ってさらに突っ込んでみると、ぼそぼそと小さい声で、日韓会談というようなことを言外に言われるわけだ。これはこの間私の質問に法務大臣も言われた。ところが、日韓会談はいまや何が何だかさっぱりわからぬ。そういうときにも依然として朝鮮の人事往来の問題を政治的にからませて、改善はするぞと言って、答弁はいかにも、私どもに満足とはいかぬにしてもやや喜びそうな答弁をなさってみえるが、これはいつになるのかさっぱりわからぬ。しかも、申請している諸君は何も何万人というのではありませんよ。わずか十人か二十人が申請している。法務大臣もあなた方も、ケース・バイ・ケースでこれを扱うと言われておる。一体ケース・バイ・ケースとは何のことです。ケース・バイ・ケースとは、申請書が出て、その申請書の内容を検討審査して、この人はこうだとか、この人はよろしいとか、こういうことを言うんじゃないですか。ケース・バイ・ケースとは政治判断を言っているわけじゃないと私は思う。そういうはっきりした答弁国会でしておいて、改善をするとは言いながら、全然これが進捗していない、こういう状況なんですね。私はこの問題をもっと具体的にいろいろ申し上げたいのですよ。しかし、時間がないからいま一まとめにかいつまんで言ったんだが、この姿勢は、大平さん、いまの段階では少し変えてもらわなければいけないと思う、もっと前向きに。限られた人なんですから、私は無理を言っているのではない。そんな何千人も何万人も来て、審査すらも時間がかかるような人数ではない。それから、もう一つは、法務大臣がかねがね心配なすっていらっしゃる思想的な判断、いわゆるスパイ行為が行なわれるのではないかとか、いろいろな工作が行なわれるのではないかというような御判断、あるいは法務大臣らしい心配もしていらっしゃるけれども、共産主義の中国もやはり一定の制限のもとにどんどん出入国しているわけですから、それと同じような形式をとればいいのだ、こう私は言っているのですからね。無理なことを言っているのではない。かりに、百歩・二百歩譲歩して、法務大臣の言うようにおそれがあるなら、中国だって一緒ですよ。私はそんなことはないと信じておりますが、あるとすれば、中国だって一緒です。だから、これは、いろいろな小理屈や国会答弁ではなしに、ほんとうに前向きで考えてもらいたい。人道問題として考えてもらいたい。だからといって、申請者を全部私はいま許可してくれと言うのではない。その中で明らかに必要な人、認めなければならぬ必要な人だけを抜き取ってもやってもらいたい。これを読んでみると、全く非痛ですよ。こういう非痛な文章にあなた方は一ぺん目を通してみなければいけないですよ、人間らしく、だから、そういう点で、法務大臣と相談して考えてもらえますかどうですか。
  127. 大平正芳

    大平国務大臣 この前あなたとこの委員会でやりとりしたことに変わりありません。これは、今月の二十六日にこの国会が終わるからという逃げ口上ではございません。われわれと野党との間は、われわれしょっちゅう監視されておるわけでございますから、一時の言いのがれはきかぬわけでございます。だから、私はあの心境に変わりはないということをまず申し上げます。  それから、第二点として、人事の交流問題、これは不自然であるから、どういうように改善していくかという手順の問題でございますが、まず最初に考えていくべきだと考えておるのは、貿易関係の要員についていま事務当局に検討させておるわけでございます。一般的な人事交流ということをいま全体として消化する、解決するというところまではまだまいりませんので、貿易関係の最小限度の要員というものに対しては、どういう時期にどうするか、そういう点を具体的に検討を命じておるところでございます。
  128. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 そうすると、貿易関係のものが結論づいたら、これに移るということですか。そういう意味ですか。
  129. 大平正芳

    大平国務大臣 いま私が申し上げておるところまでいま考えておるところでございます。
  130. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 一般的な出入国じゃないですよ。特別なものですよ。わずか三十名か二十五名に限られた、病気見舞い、親子の面会、墓参り、そういう特別なものですよ。そういうものですから、一般的なものとは違うのです。したがって、そういう意味において前向きでやってもらいたい。一般的には言っておりません。そういうことまでは。それは、あなた、前に開始した中国ですらいまのような制限のもとにあるのですから、そんなわからぬことは私ら言わぬですよ。だから、考えてくださいよ。  そこで、いまの問題はどうも法務省が一番かたいのです。あなた、これをお読みになっておられますか。
  131. 富田正典

    ○富田政府委員 読んでおります。
  132. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 人間的にどういうふうに感じられましたか。
  133. 富田正典

    ○富田政府委員 十件ばかり拝見いたしましたし、そのほかにも、先日赤松先生の御質問に対してお答えしました際に四十四件、五十名の申請と申しますか事情を具申した書類がまいっております。それも一応拝見しております。その文書、書面だけを拝見いたしますと、いろいろニュアンスはございます。二十年来会っていない、戦前から別れ別れになった老父母の死に目に会いたいというような切実なものもございますし、私は子供が結婚したから会いに行きたい、北鮮帰還で帰って二、三年前に別れた子供が結婚するから会いに行きたいというような、比較的それほど高度の人道的な理由と言えるかどうかは別といたしまして、いろいろニュアンスはございますが、みんな拝見してございます。したがいまして、いままで、三月中旬に院内で懇談会を催しました際に、一件もそういったケースがあるかどうかわからぬじゃないかということで、あの懇談会の際に、それじゃ一応そういう御希望があるならばそういうお申し出をいただきたい、それを拒むものじゃないということから、四十四件、五十名ばかりのものが集まりまして、それをわれわれが見まして、確かに少数であるが御指摘のような人道的な理由、ニュアンスはあるが、そういうものがあるということは認識したわけでございます。したがいまして、あの当時よりワンステップ、ツースッテプ進展しておると思います、問題は。しかしながら、先日の赤松先生の御質問の際にも申し上げましたように、この運動のスタートそれから運動のあり方やその後われわれの耳にいたしますいろんなものを総合いたしまして、人道問題であるけれども、この人道問題がどういうふうに政治的に利用されるかわからないという心配がまだあるわけでございます。この心配を踏み切ることが、そういう心配が全然ないということから踏み切りますかあるいは多少心配はあってもこういうふうな関係があるからひとつ目をつぶるかというような判断、これができますればおのずから解決の時期がまいると思うのでございますが、それにはやはり、中共の場合でも、経済関係の人事交流がいろいろありました後に相当の年月を経て戦犯を日本に帰してやるという問題等にからみましてこれがスタートしておるようなわけでございまして、やはり、経済なりスポーツなりその他の往来があって、ほんとうにこれは経済目的で来て経済目的だけでお帰りになるかスポーツ目的だけで来て政治的な問題でなくてスポーツだけでお帰りになったか、こういうような事実が積み上がっていきますと、その面からおのずから解決する面が出てくるかもわかりませんし、あるいはそこまで至らなくてもまた解決するような場合もあるかもわかりませんし、その辺は、現在の段階におきましては、まだ踏み切るだけのいろいろ心配なり疑問が解消しておらない、そういうふうに御理解いただきたいのです。
  134. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 次長さん、あなたの説はよくわかりますよ。言わんとするところは十分わかります。いわば、実績を積み重ねて、大義名分を立てて、役所の何人もそれならよかろうというところで踏み切りたいと思う、もう一歩前進して、場合によれはもっと積極的にひとつ腹を割って踏み切るかどうかを検討してみたい、こういう御答弁はわかりますが、中国のような、北朝鮮に比較したら共産主義国としてはもっともっと指導的な立場にあり、もっと強大な国、そういう国で、過去何年か出入国されてどんなトラブルが起きたかというならば、呉学文さんの問題くらいのものです。実際問題として心配せられたトラブルと称するのはそんなものです。いわゆるいろんな工作をしたとか、発言をしたとか政府を非難したとかいう、その程度のことであって、それじゃ具体的に呉学文さんのああいうトラブルがあって日本人がどれだけ赤くなったとか青くなったとかいう思想的な変化は見られないと思うのです、率直に言って。そういう長い歴史もちゃんとわかっておるのですよ。いわんや、朝鮮は、中国九億五千万から比較するならば、まさに一千二百万か一千万程度であって、その力関係から言ってもそれは問題にならない。そういうのを、中国との歴史をひもといてそれと同じようなケース判断せられるということは、あまりにもあなた方臆病じゃないですか。われわれは、共産主義なんていうものは天から降ったり地からわいたりするものではないと思うのです。日本政治運行、政治運営あるいは経済体制がしっかりしてくれば何主義だって一向心配はないのだから、そういうことをおそれてはいけない。それから、中国で経験しておるこの程度のケースなら、特にこのこと自体については政治色はないのですし、これはあなたがお認めのように純人道的な問題なんです。ただ、これが実施せられることによって次に起きることをあなたはおっしゃっておられるわけですね。このものは別に政治色はない。政治的な心配はないのですから、その純人道的なものなら、限られたものであるので、これはひとつあなた方も、後段で言われたいわゆる従来の積み重ね方式から割り切るというより、もっと積極的にこれと取り組んで、積み重ね方式を待たずして人道問題として処理するのだ、こういうふうに私は取り組んでもらいたいと思うのです。さもないと、これは国会のつどやらなければならない。国会のつどいろいろ具体的な例を示さなければならない、こういうことになりますから、あまり私どもにはやらせないで済むように、あなた方積極的に前向きでもってやってもらいたいと思うのです。やってくれるでしょうね。
  135. 富田正典

    ○富田政府委員 中共を中心といたしましたアジア共産主義の勢力の脅威の問題につきましては若干意見を異にするものでございますけれども、その点については、むしろ後段の問題について、中共系の在日中国人の再入国問題と比べて同じように考えたらいいじゃないかという点についてだけお答えいたしたいと思います。  確かに、人道ケースに対する再入国問題ということだけについて見れば、お説のとおりかと思います。しかしながら、内政、外交上の観点からどういうような違いがあるかということを考えてみますと、国府との間には条約もできまして、相当安定した関係にございます。こういう点で、やはり、北鮮との往来の問題につきましては、中共関係とは若干趣を異にするのじゃないかと思います。また、在日中国人は、左右を含めまして四万五千程度と承知しておりますが、それに比べまして約六十万の在日朝鮮人がおります。これが韓国政府を支持するか北鮮政権を支持するかということで相当確執相克関係にあると承知しております。その点は、中国関係のほうはそれほどのトラブルもないように存じております。そういう面で、内政上の面から見ましても、これはおのずから相違があるわけでございます。そこで、そういう内政、外交上の問題を踏まえまして、先ほど言ったようないろいろな心配を解消できるような状態がいつ来るかは、相当高度な政治判断の分野に属するわけでございまして、その辺のニュアンスがあるんだということを御理解いただきたいと思います。
  136. 山本幸一

    ○山本(幸一)委員 次長と政治議論をやってもしようがないから言いませんが、そのために中国の場合にでも日赤がちゃんと窓口になって保証をされておるわけです。ですから、おやりになるときには何も青空でやれと私は言っているのじゃないのだから、あなた方が心配のないようにそういうちゃんとしたシステムをつくって、そこできちんと一定の制限のもとにやられるわけでしょう。だから、そういうことを前提に私はしゃべっているので、何でもかんでも無原則でという話をしているのじゃありません。だから、法務大臣と違って、事務当局のあなた方は一切のことを存じてみえると思う。それだけに、いま一歩人間的な立場に立って考えてあげて、もっと積極的に進めてもらうように。話があったつど答弁するというのでなしに、答弁一つ一つ前進していくんだ、そういう形でこれから検討してもらいたいと思います。  私はきょうはこれ以上あなたに言ってもしようがありませんから申し上げませんが、いずれこの次の機会に法務大臣外務大臣がそろった席でもろと政治的な問題で私は私なりのことを聞いてみたい、こういうつもりでおりますから、きょうはこの程度でやめておきます。  そこで、委員長、恐縮ですが、次の機会をつくってください。法務、外務両大臣のそろったところで、もっと深く、いろいろな政治情勢とか判断、そういうものについてきちんと言い合って、それと人道の問題は全く別だということを明らかにしなければならない。そういうふうに考えますから、そういう機会をおつくりいただきたいと思います。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 関連して議事進行。
  138. 臼井莊一

  139. 戸叶里子

    戸叶委員 閉会中の委員会はもちろんですけれども、来週の水曜日が当然最終の委員会になると思うのです。だとしますと、理事会で懸案になっていてまだ返事をいただいておらないこともあるわけですから、来週の水曜日にはぜひ理事会を開いていただいて、委員会をやっていただきたい。ことに、いま山本委員から法務大臣外務大臣と両方出ていただいていまの問題をやるという話も出ておりますので、来週の水曜日は国際情勢の日としてやり、もしそのほかの金曜日にでもとれましたら一度やっていただきたいことを要望したいと思います。
  140. 臼井莊一

    臼井委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。午後三時五分散会