○帆足
委員 野党の私
どものような荒武者ですらがなおかつ
大田主席の苦衷を察しておるのでありますから、
外務大臣がいま心重いと言われることばを伺いまして、同胞として相共鳴もし、いよいよ祖国を深く愛せねばならぬ思いを痛感する次第でございます。
最後に、
信託統治の問題はすでにもう消えてしまっておる。
国連憲章によって、一国が国際連合に加盟した以上、その国の一部を
信託統治にすることができない、すでに終着駅は来ている。結婚の見込みがない、しかるにまだペッティングだけ続けてしようというようなことは、これは結婚詐欺のようなことで、終戦後一年か二年の間の占領ならば、これは手続上許されるべきであるけれ
ども、すでに十九年にわたって結婚詐欺を続けておる、こういうふうに外国のある批評家は言っておる
わけです。いまやいかなる法的根拠もない。
日本がかりに
沖繩の
施政権の一部を譲り渡すことを約束しようとも、今日、児童憲章あり、売春禁令あり、またはその他児童虐待防止法があるがごとく、子供をタコ部屋に売ろうと親の実自由であるという時代は過ぎて、売ったほうもよくないし、買ったほうもよくない
わけです。したがって、
沖繩の
施政権を
アメリカに譲り渡す権能は
日本政府にない
わけです。それは違反行為です。同時に、
アメリカがそれをもらうことも違反行為です。ただし、そういうことは倫理的にも
国際法上からもできないから、
信託統治にする、それならばよかろう、
信託統治までの暫時の間の手続の期間だけを直接占領するということで、連合国をだまくらかしてこれを通過させた。それに気がついたのはインドとエジプトであって、この二つの国が反対投票した。こういういきさつです。したがいまして、すでにもう十九年、法的根拠はない
わけです。こういう事情であります実から、広義の
意味の植民地として、
アメリカの代表が、
住民権を奪われ他国の直接の支配を受ける国がすなわち植民地であると定義した、その定義に当てはまるということを
条約局長が一言言えば、一週間で
解決がつくのです。軍事基地の問題は、貸し借りの問題ですから、これは別問題です。しかし、
施政権の問題に関する限り、一週間で国際連合で
解決がつくにかかわらず、
日本政府が過度に遠慮して言わないから、いつまでたっても
解決しない。軍事基地の問題は軍事基地の問題としてわれわれ独自の
見解を持っております。いまはそれを述べる
機会でありませんし、時間もありませんから述べません。しかし、
住民権の問題は、いまの児童虐待防止法の問題と同じように、そもそも譲り渡すという権能が
日本政府にないのです。
沖繩を捨て子にする権利なんというものはない。池田さんが酒屋の子供であっても、ウイスキー屋の子供であっても、そんなことは身分にかかわりはありません。とにかく一国の
総理にそういう権能はいま
国際法上与えられていないのです。その法のことを知らずに、法の盲点の中で
沖繩が苦しんでいる、世にもふしぎな物語である、これが私が諸外国を歩いたときの
国際法学者のみな言われることです。そして、その方々の言われるのには、
沖繩は無人島かせめて四、五千の人口だと思っておったから、自分らはこれを看過していたのだけれ
ども、
沖繩の人口が百万であって、パナマの人口が六十万とするならば、それはもうコンサーバティブに考えても無理であろうというのが、各国の外務省、また
国際法学者の意見でありました。そのことをスカラピノ教授もよく知っており、また、学者として尊敬しているライシャワー博士もよく知っております。
アメリカ国務省はこのことを知っておるから、若い
ケネディ大統領の弟さんが東京に来て、そうして、びっくりして帰って、ワシントンで、にいさん、これはたいへんだ、
沖繩の法的根拠というのはきわめて薄弱である、
信託統治というならば法的根拠があるけれ
ども、その時代はすでに過ぎた、したがって、もはや
日本に返すスケジュールだけが残されているというので、これが
アメリカの国務省の意見でありました。それらのことは
ワシントン・ポストに説き尽くされて余すところのないような状況でございます。そのような状況であるにかかわらず、外務省はなぜこの法的盲点を突かれないのか。それは、国際連合の公の席でなくても、プライベートの席でも、これが諸外国に知られ、野党から攻撃を受け、国際連合でどこかの国から発言されたならば、
アメリカとしては答うべきことばもないだろう。したがって、
ケネディ大統領の公約した
方向に進むだけでなく、実行に移してもらいたいということを強く迫ることをわれわれは政府に要求する
わけです。
与えられた時間も過ぎましたから、以上の要望を申し上げまして、いずれ、
日本社会党といたしましては、与党の方とも相談いたしますが、社会党という狭い気持ちでなくて、国民を代表する
一つの党として、
外務大臣にわれわれは要望書を差し上げることになっておりますから、そのときは要望書をよくお目通し願いまして、いろいろ苦しい事情もおありでしょうけれ
ども、言うべき論理を尽くしていただく、言いにくいときは、野党がこう言っておる、かくも論理整然たる外務
委員が野党にたくさんおる、これではどうも与党は負けることになってしまうのではないか、与党が負けたら
アメリカも困るではないか、そう言うていただいてけっこうですから、ひとつ言うべきことは論理を尽くしていただきたいということを要望して、質問にかえる次第でございます。