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1964-05-27 第46回国会 衆議院 外務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十七日(水曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 安藤  覺君 理事 椎熊 三郎君    理事 正示啓次郎君 理事 高瀬  傳君    理事 穗積 七郎君       仮谷 忠男君    木部 佳昭君       鯨岡 兵輔君    佐伯 宗義君       竹内 黎一君    武市 恭信君       塚田  徹君    野見山清造君       藤尾 正行君    三原 朝雄君       森下 國雄君    渡辺 栄一君       赤松  勇君    黒田 寿男君       田原 春次君    帆足  計君       山本 幸一君    永末 英一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         公安調査庁長官 吉河 光貞君         外務政務次官  毛利 松平君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁保安局         保安課長)   海江田鶴造君         検     事         (刑事局青少年         課長)     桂  正昭君         外務事務官         (条約局外務参         事官)     兼松  武君         厚 生 技 官         (薬務局麻薬参         事官)     久万 楽也君         厚 生 技 官         (国立衛生試験         所・麻薬部長) 朝比奈晴世君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 五月二十七日  委員愛知揆一君宇都宮徳馬君、鯨岡兵輔君、  園田直君、濱地文平君、福井勇君及び田原春次  君辞任につき、その補欠として仮谷忠男君、塚  田徹君、武市恭信君、木部佳昭君、渡辺栄一君、  藤尾正行君及び山本幸一君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員仮谷忠男君、木部佳昭君、武市恭信君、塚  田徹君、藤尾正行君、渡辺栄一君及び山本幸一  君辞任につき、その補欠として愛知揆一君、園  田直君、鯨岡兵輔君、宇都宮徳馬君、福井勇君、  濱地文平君及び田原春次君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の領事条約の締  結について承認を求めるの件(条約第五号)(  参議院送付)  千九百六十一年の麻薬に関する単一条約締結  について承認を求めるの件(条約第一六号)      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の領事条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 この前の質問に継続いたしまして大臣にお尋ねしますが、問題の十七条について、この前申しましたように、この(b)項というのは、これは私も再検討してみましたが、どうもいい条項ではないように思いますが、外務省、どんなお考えでございましょうか。一週間たって少しは反省されるところがあったでしょうか。ございませんか。ものは話し合いだから……。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 この点につきましては、この前の委員会お話を申し上げましたとおり、この条約によって派遣国領事日本国内領事警察権を付与するというような大それたものではない、ただ、派遣国国民便宜のために、領事仕事として身体検査本国に帰ることなくこちらでできるということで、それがいやであれば本国に帰っておやりになるわけでございまして、これは私どもといたしましてはそんなにシリアスなものとは決して思っていないわけでございます。その考え方につきましては、私全然変わっておりません。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 こういうような規定が、いままで日本が他国と結んだ条約例の中にございましょうか。
  6. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 こういう用語を用いたものはございませんが、元来こういう領事条約なんというものはいままで結んだことがございません。これは前々説明しておりましたように、こういう非常に詳しい条約を結ぶということは戦争後に特に新しく始められたことなわけでございます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 私の聞いているのは、領事条約については仰せのとおりで心得ておりますが、こういう条項の入った条約が他に例がありますかということを聞いておるのです。何条約でもけっこうです。
  8. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 ございません。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 私がいろいろ調べてみますと、一つだけ見つけたのは、古い条約でこれと同じ屈辱的な規定があるのです。それは、一九三七年、すなわち昭和十二年十一月五日に、いわゆる旧満州国の新京におきまして日本国満州国との問で結んだ条約規定に、第十六条でございましたかに、文章はちょっと違いますけれども内容はこれと同じ屈辱的な条項が一項あるのです。こういうものを見ますと、当時の日本満州国との関係が置きかえて今日のアメリカ日本との関係であるかのごとく、しかも、わが国が形の上では欲してアメリカ兵隊軍事基地を置かしめており、そしてそこにおいて徴兵検査もできるという、寡聞にして私はただ一つだけ発見したわけですけれども、まさにどうも彼我の関係をほうふつたらしめるものがあると思うのです。私がこの前取り越し苦労だといって大臣からおしかりを受けましたが、取り越し苦労じゃなしに、まさに私の言わんとするところがこの条約歴史の中の事実によって証明されておる。まことにこれは悪規定だと思うのです。この交渉したときの条約局長はあなたではないけれども、あなたにはお気の毒ですけれども責任はサクセサーで引き継ぎになっておるから、あなたは条約局長としてちょっと心中じくじたるものはございませんか。これはおかしいでしょう。ほかにこんなものはないですよ。
  10. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 いまお話しになりました日満間の昭和十二年の条約の第十六条、この規定は、「徴集服役召集等兵事二関スル行政行フコトヲ承認スベシ」、こうございまして、表現が違っておるのみならず、内容も全然違いまして、これは、兵事行政権徴集する権限召集権限、それから服役せしむる権限、こういうものは全部あるわけでございます。それに対しまして、この日米領事条約のこの規定は、単に身体検査本国に帰らないで日本で行なうことを可能ならしめるというだけのことでございまして、召集とか徴集とか服役とかなんとかいうこととは全然関係のない、そういうものは全然これに含まれておらないわけでございます。したがって、表現は違うが内容は同じとおっしゃるのは当たらない、かように考えます。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 当時の日本の陸軍というものはやはりちょっとむき出しなところがあるものですから、抜き身の刀を持ってこれは威嚇したり殺したりするぞという形になっているが、このごろのアメリカ兵隊どもは燕尾服を着た殺人犯みたいなもので、やんわりとつつんでいますけれども、これは中身は徴兵検査なのです。同じことです。これは、この徴兵に関する行政というのは、徴兵検査ども当然含むわけです。だから、重なっている部分があるわけですね。私はなぜこういうことを神経質に言うかといえば、それは相手国の友好国の便宜をはかるためだと言うけれども日本にはアメリカ基地が置いてあるのです。日本アメリカ基地を置いていないのですから、一方的でしょう。しかも、日本にはそういう服務義務規定というものは憲法をはじめないわけですから、アメリカに対する一方的サービス、ワンサイド・サービスです。そして、しかも、現在の在日米人というものは約一万五千、このうちには年寄りもおれば女もおる、子供もおるわけですから、こういう服役義務に服する適齢期の人はごくわずかなわけですね。しかも、これは従来それでやっておったわけです。しかも、私は冒頭に伺いましたが、領事というものは一体何かといえば、文化・経済交流在外自国人身分関係財産関係保護をするということが目的である。したがって、従来領事官権限というものにはこういうものはない。新たな権限を付加し、しかも、その付加した内容というものは、従来の領事官権限としては常識にはずれる、ワクにはずれるような新たなる権限を与える。政府の弁明なさいますどの点をとってみても、百理のうちの一理すらない。一つの理屈すらない。どこにあるのですか。相手国便宜を与えると言うが、一万五千のうち、こんな身体検査をしなければならぬ適齢期の者は一体何人あるでしょう。しかも、この一万五千人というのは一カ月以上滞在の先生やらみな登録した者でしょう。形式からいきましても、領事官に与える権限からいきましても、これはまさに悪い逸脱です。大臣閣下、いかがお考えですか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたのおっしゃること、ことばを変えて言えばこういうことになると思うのです。つまり、身体検査する者は本国に帰ってやれということであります。領事館でもできる、これは在留米人といたしましては領事館でやったほうが本国に帰ってやるより便利なわけですが、日本ではそういうことをしてもらいたくない、そういうことになると思うのです。領事館でこれをやらなければならないというものではないので、領事館ではそういう仕事もやります、やれるのだということにしておくだけの話なんで、在留米人がそれでは領事館へ行って身体検査をして、その書類を送っておこうというようにするだけの話なんでございます。何回押し問答を繰り返しましても、私は、あなたが考えるようにこれは重大な規定とはちっとも思っておりません。また、あなたが御指摘になりましたように、日本平和憲法を持ち、また日本はいま徴兵というようなことを考えていないし、そのことも重々承知をいたしておるわけでございまして、日本ではアメリカ在米邦人領事館身体検査をするというようなことは全然考えていないし、その必要もないわけでございます。この間も申し上げましたように、相互主義を型どおり厳格に貫こうとすると、日米両国法令の末端に至るまで全部同じ法令を適用していないといけないことになりますので、そんなことは私はないだろうと思うのでございまして、おのおのの国はその国情に応じてそれぞれの法制を持っておるわけでございまして、そういうことを前提にいたしまして、派遣国領事派遣国法令に従ってどういうことがやれるかということを領事条約できめておこうというだけの話なんでございます。くれぐれも申し上げますように、これで領事警察権を付与しようとかいうような大それた気持ちはみじんもないわけでございますから、その点は穂積さんに御了解をいただくより道はないのではないかと思います。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 われわれは反対しておりますけれども政府韓国との間に国交正常化をはかろうとしておる。そうなりますと、日本韓国との間に領事条約というものができる可能性がある。そしてこの条項がまた入る可能性がある。現在日本長期滞在いたしております外国人では朝鮮の人が一番多いわけです。法務省に登録されておるだけで五十八万近くある。そうすると、これらの服務検査をやり出すということになりますと、その国籍取り扱いとともに非常に好ましからざる現象が随伴をして起きてくる危険性がある。そういう点も副作用としてわれわれは考えておかなければならない。これに対する大臣のお考えはいかがでございますか。まず第一に、あなた方がやろうとしておる日韓国交正常化した場合には、当然、その経済交流あるいは在日朝鮮人の数の上からいきましても、日韓間の領事条約というものがあなた方の頭に必ず浮かんでくる。そのときに、この条文をどういうふうにお取り扱いになるおつもりであるか、それから随伴して起きる現実的ないろいろなトラブルに対して、好ましからぬことであるというふうにお考えにならぬか、その二点の御所感を承りたいと思います。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 在日朝鮮人法的地位の問題につきましては、いまいろいろ双方交渉中でございまして、これは、穂積さんの御指摘になるように、いろいろ歴史的沿革もございますし、人数も非常に多い。したがって、そういう特殊性を考慮いたしまして考えてまいらなければならないという立場に立ちまして検討を進めておるわけでございます。法的地位をどのようにきめるか、国籍取り扱いをどうするかということは、そういう特殊な事情を考慮して、社会的な安定をそこなわないようにやってまいらなければならぬと考えております。ただいまの段階はそういう段階でございまして、正常化後のことにつきましても、領事条約というようなことは考えていないわけでございます。いま領事条約考えておりますのは、この間イギリスと署名を了しましたのと、ブラジルでございましたかを考えておるだけでございまして、その他の国とはまだ考えていないわけでございまして、いまそういうことについて具体的に申し上げるという段階ではございません。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、事務当局にお尋ねいたしますが、いままでこういう領事に関する条約というものがなかったのに、明文規定をしようということでこういうふうに発展をしつつあるわけです。そうなりますと、日韓の間で、もし不幸にして、あやまって国交が回復されたということになりますと、かの国とわが国との人事交流あるいは在日朝鮮人の数の実情からいきまして、当然、向こうからも、こちらからにいたしましても、いずれかから領事条約締結の話が出る可能性が非常にあると思います。事務的にはどういうふうに御判断になりますか。将来のことのようですけれども
  16. 兼松武

    兼松説明員 ただいまの御質問でございますが、大原がたびたび、前回の委員会におきましても、またただいまも非常に明確にお答えになっておられますとおりでございまして、せんだって結びましたイギリスとの条約、それから、一応従来から長い間、準備しておりますブラジルとの条約を除きましては、さしあたり具体的な問題として取り上げているものはございません。そこで、御質問韓国との関係が将来どうなるかという点でございますけれども、これは全く将来の問題でございまして、基本関係もまだこれからの問題でございます。それで、具体的に一番問題になりますのは、やはり不法入国、その他非常に複雑な関係がございますので、そういう問題も両国間で円満に話し合いをつけるには、かりにそういう具体的な問題を取り上げたといたしましても、かなり時間がかかるのではないか。それで、日本韓国人が多数おるということは先般ここで論議されたとおりでございますが、その後も韓国においてそういう実際上の多くの必要が起きてくる、それから両国間でそういう問題を現在諸外国で行なわれておるような形で処理することについての合意ができなければならないわけでございますが、それには、いろいろ複雑な問題、いま申しました不法入国以外にも多数の問題がございまして、やはり、なかなか、話し合いがまとまるとかそういうふうになるには、かりに交渉が始まるようになりましても、いろいろ複雑な問題がございますので、容易にそういう見通しなり判断は現在の状況ではつけがたいとわれわれは判断いたしております。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 将来のことだからわからぬなんという、そんなあいまいな話で私は引き下がりませんよ。そんなものはごまかしの答弁というのだ。事務的に客観的に見て、何党が政権をとろうが、朝韓日本との間で国交が正帯化されて、人事往来経済往来が多くなって、在日自国人というものは世界で一番多い、六十万もおる、そうなれば、両国間において相当数領事の交換というものは当然考えられます。そうすれば、領事条約というものは先例があるのだからやろうじゃないかということになったら、断わる理由はない。それで、今度は内容にわたってきて、一番必要なのは、アメリカの人民が女も子供年寄りも入れてたった一万五千で、わがほうは六十万なんだ、それに対して身体検査便宜規定権限規定を入れないという不当なことがあるかと言ってきたら、一言もないじゃないですか。当然なことですよ。われわれはこの条約を何もそれだけで反対しておるわけではございません。それだけでこの条約が悪いということを言っているのじゃないのです。そうじゃないけれども、将来の見通しとして、これは副作用として必ず出てくるということです。私たちは日韓会談反対だけれども、あなた方がやろうとしおるのだから、あなた方の論理に従ってやれば、当然出てくるでしょう。一番近くて一番仲よし、かわいい子供だから日韓に乗り出していこうというのだから、そういうことなら日韓領事条約というものは必ず出てくる。出てくれば必ずこの規定が入ってくる見通しもありましょう。そんなことはなかなかできませんという子供だましみたいな答弁で、はあそうですかと言って引き下がるわけにはいきません。議論のきっかけをみずからあなた方はつくっておる。ちゃんとしたことを言ってもらいたいのだ。正直な話を。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 正直に言っておるわけでございます。つまり……
  19. 穗積七郎

    穗積委員 将来のことはわからぬということがありますか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 将来のことがわかったように言いますと、またあなた方からおこられるわけなんです。われわれは国会で申し上げることはいいかげんなことを申し上げられないわけでございまして、いま兼松君が申し上げたことも、兼松君がほんとうにそう思っておる心情を吐露しておるわけなんで、それは御了解いただきたいと思いますが、ただ、穂積さんに私申し上げておきたいのは、日韓在日朝鮮人法的地位の問題は、先ほど私が申し上げましたように、特殊な沿革を十分考慮しなければいかぬし、数が多いことも考慮しなければいかぬし、それから、国籍の選択の問題にいたしましても、これはなかなか重大な問題でございまして、つまり、領事事務なんという事務的な問題に入る以前の問題としていろいろ考えなければならぬ問題がたくさんあるわけでございます。そういった問題をいまわれわれは討議いたしておりますということを申し上げておるわけでございます。こういう基盤がちゃんとすれば、そうして社会的な安定をそこなうことなくこういった問題が日韓双方でも将来まとまるというふうなことになってくれば、あなたがおっしゃるような領事条約というような問題が全然出てこないといまから私は言えぬと思います。その先行するもろもろの条件の整備ということがいまの時点における問題であると申し上げているわけでございます。かりに非常に事態がスムーズにまいりまして、国籍の問題も円満に片づく、いまの在日朝鮮人地位も安定してしまう、そしてそのことを通じて日本の社会に対する影響も少なくなるというようなことになってくれば、それはけっこうなことでございまして、あなたが言われるように領事条約両国で結ぶことができるような状態になったら、これはもうたいへんいいことだと思うのでございます。もしそういういい状態が出てきて領事条約を結ぼうということになれば、相互便宜考えるのは当然だと思うのでございます。領事条約というのは、事務的なことでございまして、領事はどういう仕事をするかということでございます。そういう徴兵政策とかその国の平和政策とかいう大それたことと関係ないことでございまして、その点は、私が申し上げておることばが足らぬかもしれませんけれども、あなたに御了解を切にお願いする次第でございます。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 日本アメリカとの関係については、私は、相手に与える実益も大したことはないし、のみならず、領事というものの国際通念を逸脱する権限だと思うのです。こんなものは与うべからざる権限です。それが一つ。それから、平和憲法を持っておる日本としては、こういう軍事的なものにつながる行政行為、しかもいままで例のない、それを屈辱的に認めるということは汚らわしいことだ。だから、やめたらどうだと言うのです。さらに、こういうことをやり出すと、いまお話のあるとおり、われわれが不幸にして反対の力が少ないために、あなたが無理やりに向こうのかいらい政権と結託をして日韓会談をでっち上げたということになれば、やがて必ずこれが出てくる。そうすると、六十万という多数の在日朝鮮人徴兵検査身体検査の問題が日本において行なわれるということで、その在日朝鮮人法的地位規定の問題と関連をしながら、法律的にも行政的にも非常なトラブルを持ち込むことになる。いまおっしゃったとおり、韓国日本との間の正常化が行なわれたとすれば、将来のことだからまだはっきり何とも具体的には言えぬけれども、そういうことはあり得る、あるにきまっている。そうなりますと、さらにつけ加えてもう一つ、そういう副作用的な非常に好ましくないトラブル日本国内に持ち込むことになります。どの点から見てもよくない。のみならず、私が指摘したように、こんな条文というものはいままでの条約の中にどこにもない。領事条約にもなければ他のものにもない。いま私が寡聞にしてさがし出しました昭和十二年に新京で結ばれた日満条約の中にこれに類した屈辱的な軍事的なにおいのする規定がただ一つだけある。こんなものは消えてなくなっている。そのときに何を好んで一体こんなところに突如としてお入れになるのか。どう考えても、外務大臣、ちょっとおかしいと思うのです。あなたは経済的合理主義で、われわれ、あなたとこれから共通の広場を大いに見出そうと思って、それを一%でも多くしようと思って、いろいろ激励したり期待をかけたりしているけれども、こんなものを入れて、あなた、ちっとも真剣に答えないようじゃだめですよ。落第ですよ。あとで必ず韓国との間に出てきますよ。実益から言ってもありはしない。年寄りから細君から子供まで含めてたった一万五千人。しかも二ヵ月以上の長期滞在だ。こんな屈辱的なけしからぬ条約、ただ一つ例があるような条文をこんなところへ突如として持ち込んで、よろしくないですよ。日満条約と比較して恥ずかしくお思いになりませんか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の日満の条約と今度の日米領事条約との根本的な違いの点につきましては、先ほど条約局長からるる御説明申し上げたとおりでございます。要するに、あなたのおっしゃることは、身体検査を受けるなら本国へ帰って受けろ、それだけのことでしょう。それを領事館へ行ってやることができるということにするだけのことでございます。海を渡って身体検査を受けに帰るよりは、日本でやれるということの便宜を供与してあげるというだけのことでございます。あなたがいろいろ引例されて反対されておるのは、要するに、本国に帰ってやったらどうだろうということに尽きるわけでございますが、日本人の身体検査をするわけではないんですから、逆に、米人身体検査領事館でやることにして何が悪いのかとぼくは思うのです。ただそれだけの違いでございまして、それがいやな人は本国へ帰ったらよろしい。領事館身体検査をする用意がありますということを書いてあるだけの話であります。穂積さんは外交問題に精通されている方でございますから、私が申し上げておることをなぜ御理解いただけないのか、私はむしろふしぎに思うのでございまして、ただそれだけの非常に事務的な規定なのでございます。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 それから、もう一点は、この身体検査関連をいたしまして、この前明確になっていないことがありますから、少なくともこれは質問した以上は責任上そのままあいまいにしておくわけにいきませんから、お尋ねいたします。  いまの取り扱いについて、二重国籍の場合、何を基準にしてどっちにつけるかということです。これは、私は、国際慣例では、より多くの保護を受けている国のほうの法律に従うべきである、このように判断をいたしますが、この前局長は、そのときに日本に在住しておれば日本国民として取り扱うんだというふうに簡単におっしゃいましたけれども、私はそうは考えないですね。二カ月以上滞在しておった、それでたまたま六十一日目に身体検査の指令が来たという場合に、これは拒否できないと思うのです。これはどっちにしますか。二重国籍の場合、何を基準にして分けますか。それをちょっと伺っておきたい。
  24. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 結局、結論は、純粋のアメリカ人でも、二重国籍者の場合でも、身体検査を受けることを強制されるというようなことはあり得ないんだから、この条文のもとで日米間に問題が起こることはあり得ませんということでけりがついたわけでございますが、(穗積委員「ついてないよ」と呼ぶ)私としてはつけたつもりでおりますが、その前段のより多くの保護を受けるとかなんとかいうことは、これは結局言い回しの問題だと思うのでございまして、たとえば、ある日米二重国籍を持っている人が、日本に三年も四年もいながら、自分はより多くアメリカ保護を受けているんだというようなことを言える義理はないわけでございます。それでまた、そういう場合には、アメリカとしても、その人はもう日本では日本人として完全に扱われる、日本の主権を尊重するというのが、これは国際間の、何といいますか、礼譲といいますか、義理でございまして、別にそういうことの誤解から問題が生ずる余地はないと私は確信いたしております。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっとそれじゃ具体的例をもってお尋ねしてみましょう。アメリカで生まれてアメリカで育った、アメリカの大学も出た、それから日本へ来た、しかも数ヵ月間滞在しておった、つまり法務省でいういわゆる長期滞在です。そのときに、いまの服務義務による身体検査の通告があった、本人はそれを拒否しようとしておる、日本国籍もあるからという理由でそのアメリカ領事館からの通告に服しない、そしてそのときに日本政府に、そのことの正当性を証明するなり庇護してもらうなり、あるいは場合によればアメリカ大使館あるいはアメリカ領事館交渉してもらいたいということの申し出があったときに、外務省はどうなさいますか。
  26. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 その人が領事館に行って身体検査をここでやってくださいと言わなければ領事館はしないわけでございままして、日本の外務省に庇護を求めるなんという事態は起こり得ないわけでございます。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 庇護といって、ただ追跡逮捕はしませんよ。追跡逮捕はしませんが、通告があったときに、私は日本人として法に服するつもりだからアメリカ領事が発してきた通告というものは拒否したいと思うと言ったときに、どっちに判断なさいますかというのです。
  28. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 そういう通知が誤ってなされたとして、その日米両国籍を持っている人が領事館に、私は日本国籍も持っているから通知はここでは受理しませんと言ったら、それっきりになるはずでございます。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 それから、あと二点。  条文を用いてください。二十六条。領事官権限をいろいろ列挙的に十五条から二十三条まできめておるけれども、ここに、それは列挙主義ではないんだということで、受け入れ国で異議を申し入れない行為は何でもできると書いてある。そうなりますと、この「異議」が問題になるわけです。わが国アメリカ領事官の行為が好ましくないということでそういう権利を与えるわけにいかぬといって拒否することができるのだから心配はない、無制限・無原則に行なわれる心配はない、規定の上ではそうなりますけれども、いまのアメリカ日本との力関係、長年にわたるこの二十年近くの間の日本外務省のアメリカ政府に対する追随的な根性というものが今日もなお残っているとすれば、おそろしくてこの異議が申し立てられないこんな簡単なことでないもっと重大なことで、国権が害せられておったり平和を脅かされながら、さっぱり言えないのですから。たとえば、この次の機会にお尋ねしたいと思うのですが、南ベトナムに対する援助ですら断わることができない。言われたら、ヘビの前のカエルのごとく、直ちにへいへいといって向こうの要求する以上のことをこちらはサービスしたいという根性でおるのだから、異議なんていうものは消えてなくなってしまう。安保条約におけるコンサルテーションと同じことです。一方的です。そうなりますと、この領事官がいろいろな日本の団体その他個人についての調査活動をやったり、好ましくない、領事官として逸脱したような行動・行為を行なう場合に、これは無制限になってしまうのですね。しり抜けだ。十五条から一十三条まで、いままで常識的に慣行として行なわれておった領事権限領域、それを単にそのままプロジェクトして条文化してきちんとしておくという趣旨で始まったのだというこの領事条約が、いまの十七条の(b)項のような規定を持ち込んでくる、そしてここに無制限規定が入っておる。これはちょっとおもしろくないですね。いかがでございますか。
  30. 兼松武

    兼松説明員 ただいまの御質問の点ですが、二十六条に至るまで教多くの領事の職務に関する具体的な規定がここにございます。もちろん、この領事の職務に関する規定は、先ほど大臣が先ほどの問題に関しまして御答弁になりましたように、各国の国内法制というもので、領事官にいかなる仕事をさせるかということは、それぞれ国によって異なっておるわけでございます。範囲の一致しておるものもございます。しかし、ある国では領事にある法制でその仕事をさせる、しかし相手国ではそういう法制がないという例が多々あるわけでございます。そこで、たとえば、これはたまたま日本が戦後結びました二国間条約の新しい例でございますが、昨年ウィーンにおきまして採択されました多数国間の条約の例で見ますと、やはり、領事の任務といたしまして約十三、これも非常に概括的な規定でございますが、列挙しておるわけでございます。しかも、この概括的な規定を列挙しながら、さらに、そういうことでは従来の領事の職務に関する国際慣行で認められたものの範囲は尽くせない、そういうことから、前文におきまして、条約で具体的に書いてないことは従来の国際慣行に従ってやるのだということをまた念のために書いておるわけでございます。したがいまして、日米条約をつくりました際にも、かなり詳細に領事の職務内容規定しようということが条約交渉の主目的の一つでございました。しかしながら、いかに重要な事項をかつ現在の事態あるいは予見し得る将来の数年間のことを考え規定いたしましても、なお包括的ではあり得ないのであります。また、各国の国内法制に規定してあることを全部網羅することは、条約の性質といたしまして不可能なことでございます。したがいまして、従来の国際先例の内容にほぼ合致いたしまして、ウィーン条約で申しておりますように、具体的に書いてないことは従来の国際先例によるという趣旨を念頭に置きまして、日米両国間におきまして、ここに列挙してない事項については、相手国において異議を申し立てないものは国際法ないし国際慣行に合致しておる限り行なえるのだ、こういう趣旨の規定を設けたわけでございます。  念のために具体的な事例をあげて御説明いたしますと、日米領事条約にはこれほどの詳細な規定がございますが、なおここに書いてない事項でたとえばウィーン条約においてあげておる事例としては、未成年者、禁治産者、無能力者の保護ということがあります。これは非常に一般的な条約でございますが、日米条約ではこれを取り上げておりません。しかし、一般国際条約でそういうことは当然できるのだという趣旨のことを書いております。それから、最近は、先般も論議がありましたように、領事の職務というものが国際交流の発展に伴いまして非常に広範にわたってくる。その関係から、どうにも列挙しようがないという問題と、それから、ただいま申しましたように、各国の国内法制が異なっておる。国内法制が、個々の事項について、それぞれ、ある国はある事項を規定して、他の国は規定してない、そういう例がございます。その例といたしましては、たとえば、わが国に関しましては、「外国駐在ノ本邦領事ニ依リ強制執行ヲ為シ得ヘキトキハ第一審ノ受訴裁判所ハ之ヲ其領事ニ嘱託ス可シ」、これは民事訴訟法の五百五十七条にこういう規定がございますが、そのほかに、国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律、これによりましても、個別的に領事日本の法制ではこういう職務を行なえるということがあるわけでございます。さらに、万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律という法律がございまして、この法律によって、翻訳権の申請書を送付する、これは領事を通じて行なう、こういうような法律があるわけでございます。したがいまして、網羅的に領事の職務を書くということばどうしても不可能である。それで、二国間条約をつくる以上、やはり明示的に条約に番いた事項以外で、しかもそれぞれの国の法制に基づきまして領事が行なえることというのを念頭に置きまして、このように、特に相手国が異議を申し立てない行為は行なえるのだ、こういうことをはっきりさせたのがこの条文の趣旨でございます。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと違いますよ。こうなっておるのだ。はっきり読んでください、条文を。そんな不正確なことを言っちゃ困るよ。いいですね、「接受国の法令に抵触しない」もの、それから、「領事官に関する国際法若しくは国際慣行に適合しているもの」、これだけで区切ってあるならいいが、これは「又は」ですよ。その中で受け入れ国の政府が異議を申し立てないものとなっているのじゃないのですよ。「又は」ですよ。条文をそんなかってな解釈をやっちゃだめですよ。受け入れ国の法令に違反してない、国際法並びに国際慣行にも適合しておる、そのものの中で、しかも条件が加わって、あなたの説明のように、受け入れ国すなわち日本国政府の異議のないものについてはその行為を自由に行なうことができると書いてあるのではない。いいですか。日本法令に抵触しないものと、国際法並びに国際慣行に適合しておるもののほかに、異議を申し立てないものは何でもできる、こう書いてある。「又は」ですよ。条文というものは、それはあなた方のような権威者がそう不明確なことを説明の中で言っちゃ困る。「又は」ですよ。これを私は問題にしておる。又は受け入れ国により異議を申し入れられていない行為と、「又は」となっておりますよ。
  32. 兼松武

    兼松説明員 全く先生がおっしゃっていらっしゃるとおりのことをただいま御説明申し上げたつもりでございます。「又は」と申しますのは、従来の国際慣行によりますこと、そのことと、それから相手国が異議を申し入れない行為について行なうこと、これも国際慣行の一部をなすものなのでございます。これは別の意味の国際慣行でございます。従来、二国間条約領事職務条約というものをつくりまして、特定の職務について規定するのが戦前の慣行であったわけでございます。したがいまして、戦前の条約領事職務条約と書いてあったわけでございますが、相手国に異議がある場合には、それは明示的に示さない、その範囲しかできないということになったわけでございます。そこで、職務の範囲に関しまして、戦前は多く最恵国待遇という規定を設けまして、一々二国間で条約ではっきり規定できないものは、そういう一般的なセービング・クローズによりまして、どの範囲を行なえるか、第三国に許していることは自分の国にも認め相手国にも認める、そういう趣旨で書いておるわけでございまして、やはり、異議を申し入れないということによって領事の実際に行なえる範囲が違うということは、まさしくそのとおりで、そういう国際慣行が従来からあったわけでございます。その国際慣行をまたここに移しておるわけでございまして、前のほうの国際慣行と申しますのは、もっと具体的な意味のことを言っておるわけでございます。実は領事制度の沿革がそういうふうにできておるわけでございます。文字どおり、先生のおっしゃるとおり私も理解しております。ただ、国際慣行ということばの意味が、前のほうに言っている国際慣行の意味と、又は接受国が異議を申し入れない、こういうことも、それぞれの国が自分の国の法制上考えて適当であるか不適当であるかということを従来から判断し、かつそれを普通の場合は条約によって定める、条約をつくらない場合には、慣行上外交交渉によって、そういうことはやらないでくれ、あるいはそういうことは認められるというような慣例になっておったわけでございます。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 この条文でいきますと、受け入れ国の法令に抵触しない行為、それから国際慣行に適合している行為、これは認められる。ところが、受け入れ国が異議を申し入れるという場合でも、国際慣行に反している、あるいはまた自国の法令反にしているものを拒否するわけだ。だから、ここで切ればいいのですよ。国際慣行で包括しているなら、なおさら、この「又は接受国により異議を申し入れられていない行為」というところまで、これは不要です。これは国際慣行なら国際慣行でインクローズしてしまったらいいじゃないですか。「又は」が入っているのだから、これは別ですよ。しかも、多数国条約なら私はあまりそう神経質にならない。何となれば、多数国条約ですと、この条約によってたとえば他の国はどういう行為をしたという範囲がわかるから、したがって、他の国は許さないことを私のほうでも許すわけにいかぬということを異議または抗弁することができますけれども、二カ国条約で、特殊関係があるのだから、日本アメリカとは特別じゃないかということでどんどん言ってくると、ついそこが、多数国条約ですと他の国が拒否したことが防波堤になるけれども日本と二カ国の場合は無制限になるわけだ、この異議申し入れのないものはという規定が。そういう力関係日本の外務省の従属的な習性、これを私は心配しておる。二カ国条約だから、特にこの又は異議申し入れ云々という条項、クローズが非常に気になるわけだ。これは別になっておる。  大平外務大臣、国際法令に違反しない、それから国際慣行に適合しておる、それで切っておけばいいものを、さらに、「又は」の接語で、これは別で、異議申し入れのないものとにいうことを書いてある。異議を申し入れる根性なんかないでしょう。そういう反省の中で、これをやったら無制限規定になるということを私は心配するのです。法律の解釈からいきましても、これを受けとめる政府の態度・方針からいきましても、二カ国条約だからこそなおさら心もとないと思うのですが、それらについての御所見をひとつ伺いたい。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 対米外交は、いつもおしかりを受けるわけでございますが、私どもといたしましては最善を尽くして日本の利益のために自主的にやっておるつもりでございます。もともと外交というのは自主的だと思っておるわけでございまして、私どもはそれ以外のことは考えていないつもりでございます。  それから、条文の書き方でございますが、これは四六時中条約に打ち込んでおる諸君の能力を信頼いたしております。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ議定書についてちょっとお尋ねいたしますから、議定書の第一項を見てください。除外規定に沖繩は入りますね。沖繩が入った場合において、沖繩在住九十万日本人の領事館による保護というものは放棄せざるを得なくなるわけですね。何でこういうような不当な規定をお入れになったのか、この解釈からまずやってください。
  36. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 沖繩はこの条約の適用地域に入っておりません。これは、沖繩の地位特殊性にかんがみて、アメリカの一般の領土とは実際別扱いにしたほうがよろしい、かように考えたからでございます。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 沖繩九十万の人は、領事館による保護というものは受けないわけだな。なぜ放棄したのか。
  38. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 普通の場合に、領事館でやるようなことは南方連絡事務所で取り扱うというたてまえになっております。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 南方連絡事務所でやるなら、こんなことを書く必要はないじゃないか。南方連絡事務所があるくらいは知っていますよ。南方連絡事務所と領事館とは別でしょう。問題は経済・文化並びに生活に対する保護規定だ。これは、あなた、大使館があるのに領事館は幾らでも置くごとく、南方連絡事務所と領事館とは違うでしょう。そういう条約規定になっておる。それなら除外する必要はないじゃないですか。こんなところに除外規定をわざわざ置く必要はないじゃないですか。
  40. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 領事館と南方連絡事務所とは違いますから、除外する必要があるわけでございまして、ですから除外されておるわけでございます。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 除外されておるから、すなわち南方連絡事務所と違う領事館保護は受けないことになるのだ、九十万沖繩日本人は。それはおかしいじゃないかというのだ。
  42. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 これは、つまり、沖繩の地位というものは、沖繩として別にきまっておるわけでございまして、この領事条約というものは、沖繩にもとからおる日本国民保護するというようなことのための条約じゃないわけでございます。したがいまして、私が南方連絡事務所で扱っておると申し上げましたのは、つまり、これは領事事務とはレベルの違う問題として日本アメリカ考えてやっておるわけでございます。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 それはちょっとおかしいですよ。沖繩の連絡事務所が領事館の行なう権限を全部包括しておるなら、こんなところに除外規定を書く必要はないのだ。沖繩除外ということを書く必要はないですよ。書いた以上は、あすこに介入させ一ないということですか。介入させないで、アメリカの施政権でやる連中が、兵隊どもがかってにやるということですよ。それで、日本に上がってきて徴兵検査ができて、そんなばかな話がありますかと言うのだ。それで、二十六条では無制限規定を入れ込んで、これはもっと悪い。この三つが関連しておるんだ。すべて、日米間の屈辱的な状態、追随的な状態というものがこの条約の中に客観的にあらわれている。これはよくないですよ。こんなものは削りなさい。なぜ一体沖繩九十万の日本人を放棄したのですか。それでは領事館による外交保護というものがないじゃないですか。他の外国におる、他の施政権下におる日本人には領事館保護の権利があるのに、これはどういうわけですか。領事館は軍事的なものじゃないですよ。あすこは軍事基地沖繩であっても、あなた方は九十万人の人民というものは日本人だということを認めているのだ。また、アメリカ日本政府もそう言って喜ばしているじゃないか。それなのに、具体的にこんな身の回りの自国民保護をすべき領事館の設置権限すら放棄するということはどういうわけですか。これは間違っていますね。
  44. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 考え方として、外国に散在している日本人を保護するためにできておる領事制度というものは、沖繩に対する日本の関心といいますか、特別の関係を律するといいますか、全部カバーするのに適当なやり方ではない、沖繩の問題は沖繩の問題として別個に扱うというのが従来から日本政府のとっている立場であると私は了解しております。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、条約文はあなたがネゴシエーションされたのじゃないと思うけれどもも、この議定書の第一項を提案したのは、日本から提案したのですかアメリカから提案したのですか。アメリカに違いありません。こんなくだらないことを考えるに至っては、われわれは頭を疑わざるを得ないですよ、日本外務省が提案したとしたら。いま、日本外務省の立場で、沖繩の特殊な立場、権益というものをくずさないという立場でこれがいいのだと言ったでしょう。日本の利益のために、国益になる規定だと言っておる。それなら、日本政府が提案したのですね。そうじゃないと思うのです。この議定書というものはアメリカの提案に違いない、内容を見ても。それを日本がずるずるとのんじゃったのだ。外務省がそんなおためごかしの説明をしちゃいけませんよ。誤りがあれば正せばいい、まず事実を認めなさい。
  46. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 この条項をどちらから提案したかということは、私ちょっと存じませんけれども、しかし、私どもの立場から言いますれば、沖繩にたとえばサンフランシスコに置いておるような日本の総領事館を置くよりは、やはり、あそこには別のステータスのものを、特別のステータスのところでございますから、特別のそのための日本在外事務所を置くというのが、やはり一番筋じゃないかと考えます。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 その考えはぼくも賛成だ。そんならなぜここに書かないのですか。サンフランシスコ平和条約締結地域については、当該地区に設置されておる日本事務所日本政府の機関が領事の職務を行なう、だからこれを除外する、こういうふうにはっきり書いたらいいじゃないですか。領事館と南方連絡事務所とは違いますよ。領事館保護というものを放棄しておるだ。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカの本土に散在しておる在米沖繩御出身の日本人は、日本領事館保護しております。問題は、あそこに集中いたしておる九十万沖繩県民の方々、この方々に対して、あなたの言うような意味で領事館仕事をあそこの南方連絡事務所をしてやらせるというようなことをわれわれがやったら、むしろたいへん穂積さんにわれわれおこられると思うのです。そんなことをやってはたいへんだと私は思うのです。これは日本の潜在主権を認めておることだし、日本に復帰を約束されておるところでございます。先ほど条約局長が申し上げましたように、そういう特殊な地位に応じた特殊な取り扱いをやっておるわけでございまして、この条約で沖繩は適用地域として入れていないという配慮はそこにあるわけでございますから、そこにわざわざ領事事務は南方連絡事所にやらすなんてことを書いたら、私は日本の国会にたいへんおこられると思います。そういうことはいたしてないわけでございます。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 それはどういう意味ですか。そうすると、事実が問題なんだ。あの国は潜在主権があると称しておる。それで、あそこの人民は日本国籍の日本人であると称しておるだけなんだ。実際はどうなんだといえば、この前も帆足君が指摘したように、これはもう植民地以下の独裁的な取り扱いをやっておる。この間の国会でも与党の議員が質問をして、沖繩政府次席が何と答えておるか。最近になってどんどんとアメリカは自治権というものを縮小低下しておると言っているじゃないか。そういう軍事独裁政権が行なわれているのです。民主主議もへちまもあったものじゃない。事実、保護されていないのですよ。強姦された者、あるいは殺された者、これに対してすら、日本国内では想像のつかないような卑屈な態度をもってこれに臨んでおる。そういうことですから、だから私は実質的に言っているのですよ。こういうことを向こうから提案があったのを機会に、南方連絡事務所の権限拡大をなぜ主張しなかったか。そのことをここへ明記すべきじゃないですか。この条約の施行地域ですね、通用領域について話が出たときに、沖繩についてはかくかくだということを一体なぜ明記しないのです。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 私がいま申しましたように、特殊地域でございますから、特殊な取り扱いをすべきだと私は確信したわけでございます。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 それは、ここにおいてもアメリカ提案のワンサイド条約だ。あなたは主観的に自主性があるとか何とか言っているが、私は客観的に言っているのですよ。反対党にけちつけるために言っているのじゃない。事実をもって言っている。事実の報道と客観的な事実をもって言っている。特に、前回から指摘いたしましたように、特別悪いのがこの十七条です。それから、いまの無制限規定二十六条、それから議定書、これはよろしくない。そういうふうにお感じにならないでしょうか。  これ以上質問したって意見の違いであって質問になりませんから、もう一ぺん御所感を最後に伺って、私の質問を終わります。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 各条にわたりまして克明な御審議をいただきまして、私どもといたしましては、穂積さんが指摘された問題点を通じまして、この条約は決してアメリカ領事領事警察権を与えたものじゃない、この条約の性質が穂積さんの質疑を通してだんだん明瞭になってきたと思うのでございます。しかし、いま御指摘の三点につきまして見解が一致しないことはきわめて遺憾でございます。
  53. 臼井莊一

    臼井委員長 川上貫一君。  なお、ちょっと申し上げますが、ILOのほうの関係で実大臣は時間がございませんから、ひとつ簡単にお願いいたします。
  54. 川上貫一

    ○川上委員 私の質問は簡単です。この領事条約については、この前も質問しているわけで、いまも穗積委員質問したのですが、結局、これは、もう徴兵検査をやる、徴兵の検査ということは、実際これはそうなっているのです。そのことは、いろいろ言われますけれども、この条約によって領事が事実上の徴兵検査をやることになるので、これはもういろいろ言われてもそのとおりなんです。  それから、私は前にこういう質問をした。かりに日韓会談妥結の結果、将来韓国側が、身体検査徴兵、これについて同じ要請をした場合はどうなるかという質問をした。そのときの政府答弁は、日米領事条約は特例法ではない、要請があればほかの国にも与える、この速記録になっておる。そう答弁になっておるのです。きょういろいろ穗積委員も言われたけれども答弁は非常にあいまいで、何とかかんとか言われましたが、前にちゃんと答弁してある。なるほど韓国にも与えるとは答弁してありませんが、特例法ではないんだから、ほかの国から要請があれば断わるわけにはいかぬと言ってある。これは非常に重要な問題で、穗積委員の言われたとおりだと思う。  きょうの穗積委員質問、非常に重要だと思う。政府答弁は、それは答弁が間違っておるか、ごまかしておるか、——これは二十六条です。これが非常に重要なんです。これは外務大臣よく読んでごらんになればそうなっておるのですが、きょうわけのわからぬような答弁をされた。まとめて言います。領事官が遂行することができる業務は、第十五条から第二十三条までに定めてあるこれ、これに限らない、これが第一段。第二段は、領事官は、相手国法令に抵触しないその他の職務で、相手国で認められておる領事官に関する国際法、国際慣行に適合しておるもの、これはやる。そして、「又は」とある。この「又は」は、国際法に適合しておるものじゃないですよ。それならば「又は」は要らぬのです。「又は」からあとが国際法並びに国際慣行の中に入るならば、「又は」からあとは要らない。又は相手国が異議を申し入れていない行為を遂行する、これはどんな行為があるのですか。これはもう野放しです。いろいろいま答弁がありましたが、あの答弁は、普通の常識で日本語の解釈にはならぬと思う。日本語でいきましょう、日本の文章で。そうすれば、「又は」は国際慣行の中には入りません。入るならば「又は」からあとは要らぬのです。これは何を一体やれるのか。私はここで押し問答しようと思わぬ。時間をとるばっかりですから。ここで押し問答はしませんが、これは謀略以外にはありませんぜ。そのほかのことなら、国際慣行、国際法、そこへみな入ります。そのほかは、職務というものはこの条約規定してあるのです。又は相手国が異議を申し出ないものは何でもやるというこれは規定なんです。こう解釈しなければ日本語の解釈にはならぬ。そうすれば何をやるのか。何でもやれるということです、異議を申し立てなければ。これで押し問答しましても、おそらく前に言われたような答弁しかできやしないと思う。そこで、つまらぬと思うのです。こんなことを何ぼやっても底をつきやせぬと思う。わかっておるんだから。外務大臣もこれはそうじゃとは言いません。言うたら大ごとだから、言いますまいけれども、実際はそういうことになっておるのです。一体、領事官というものは、これはおよそ世界的通念でやる仕事はきまっておるはずです。これは私は一々言いませんが、外交関係の方はよく知っておられる。このことのほかに、又は異議を申し出ぬものはやる。しかも、その権限はこうなっておる。しかもがあるのですな。しかも、この権利を使う限度はアメリカが決定すると、こうある。向こうさんです。これまた御丁寧にちゃんとここへ載っておる。何でもやる。その限度はアメリカがきめる。これは何ができるのですか。私は、普通の概念から言うて、謀略以外にはないと思う。国際慣行も何もないのだから。そこで、この押し問答を私はしない。時間を食うだけだから。  そこで、聞きたいと言うのです。昨年の七月に神戸から大阪へ移ったアメリカ領事です。労組担当部というものを大阪に来て新設している。労組や大衆団体の工作をやっておる。工作の内容は分裂工作です。そうして、労組の中に親米グループ、名前は違いますよ、これをつくっている。これは一体領事権限かどうなのか、これを聞きたいのです。一ぺんに聞きます。コリンズ副領事というのがやってきた。その人はなかなか日本語がうまいそうです。私は会うたことはありません。昨年八月十六日に総評の大阪地評が原水禁の分裂大会というものを開いたことがある。この時分に行って激励のあいさつをしている。この分裂大会を激励するあいさつです。領事ですよ。このコリンズという副領事は、私は政治と労組担当の責任者だと公言しておる。日本の労組担当、これは何をするのでしょうか。これは一体領事仕事なんですか。また、コリンズ副領事です。衆議院の選挙の時分に和歌山へ行っておる。滋賀へ行っておる。社会党の選挙情勢を調査しておる。こういうことをするのが一体領事仕事なんですか。ところが、この条約でもこれができることになるのです。こんなことをするなと異議を申し出てはおらぬ実でしょう。同じく昨年九月、選挙の前に大阪の新聞社の論説委員のデスクを集めている。デスクを集めて新聞講座というのを開いた。そこで何を言うたかという記録もわれわれは取っております。必要があるなら出します。これがアメリカ領事仕事なのか。国鉄労組の神戸の鷹取支部には政治宣伝の資料を領事が配っている。こんなことが領事仕事になるのか。これをあなたどうしなさるのです。もっと顕著な事実は、中国との貿易でビニロンプラントの輸出に乗り出した倉敷レイヨンの大原総一郎さんに昨年の一月アメリカの総領事が尾行しておるじゃないですか。これが問題になって大原氏は大いに抗議しておる。これは領事のする仕事ですか。こういうことはどうなるのです。この条約のどこでこれを取り締まるのです。逸脱行為です。内政干渉です。こんなことは領事ができる仕事じゃありません。これは片っ端からやっておるじゃないですか。資料を出せというなら、こんなものを出しますよ。われわれは全部調べてあるから。これができるような条約になっておる。「又は」なんて、こんな条約は困るというのです。そこで、穗積委員がこれはどっちが言い出したのかということまで聞いておられる。正しい質問だと思う。どっちが言うたかわからぬというような答弁をしておられる。この領事条約というものは、それは根深いいろんな考えを含んでおるものだと思うのです。  そこで、私は、質問ですから、いま具体的事実をあげたそれが領事仕事かどうかということを聞きたい。これに対して政府はどういうことを申し出ましたか、野放しにしておりますかこの点を第二点に聞きたい。外務大臣に御答弁願います。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカばかりじゃなく、どこの国からもわが国は内政干渉を受けたくないわけでございます。私は、いまあなたが御指摘になったようなことは領事仕事でないと思います。そういうことをやっておるはずはないと思いますが、(「もしやったときはどうするか」と呼ぶ者あり)もしやったら、私のほうへお申し出をいただきたいと思います。
  56. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣はやっておるはずはないとおっしゃるが、やっておるのですから、どうするのです。私はこれはいいくらいのことを言うておるのではありません。労働組合、大衆団体がはっきりと文書を出せといえば出してきますよ。われわれが主観的にいいくらいのことを摸造して言うておるのではない。ところが、外務大臣はこれは領事仕事じゃないとおっしゃったでしょう。この条約ではこれができるようになっている。異議を申し立てぬものは何でもできる。しかもこれを決定するのはアメリカがやるということになっておる。これが「又は」なんです。こういう条約だという点を穗積委員は正確に指摘をしたと私は思う。それをごまかされておるのです。  私は長く質問しませんが、これが事実なんですから。徴兵検査の問題にしても、韓国の申し出があれば、——韓国とはおっしゃらぬけれども、断われぬという御答弁にしても、また、この「又は」の答弁にしても、これはこの条約というものがいかにひどいものかということのあらわれです。私は外務大臣にこれ以上の答弁を求めません。これは幾ら答弁を求めても決着せぬと思います。ここでけんかするのが問題じゃないのだから。領事がこういうことをやっておるという事実、これについては政府は野放しにしておられるという事実、これは領事のする仕事でないと言われた事実、同時に、内政干渉は決して認めないといま言われた事実、これじゃ全部食い違います。私はこれがこの条約の「又は」以下でできるようになるのだということを言いたい。  あとは、これは論議になりますから、これ以上は言いません。問題の要点を指摘して私の質問は終わりますが、外務大臣は相当お考えになるほうがけっこうだ。しかも、このことについては、これはだれが言い出したのかという穗積委員質問は重要な問題です。どっちが持ち出したのかということ。これには答弁は要りません。時間を食うばかりだから。これで私の質問を終わります。
  57. 臼井莊一

    臼井委員長 本件に対する質疑はこれにて終局いたします。     —————————————
  58. 臼井莊一

    臼井委員長 これより討論に入ります。  討倫の申し出がありますので、これを許します。穗積七郎君。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 ただいま議題となっていろいろ審議をいたしました日本国アメリカ合衆国との間の領事条約につきまして、私は日本社会党を代表して反対の態度を明らかにいたしたいと思います。  すでに総括的または各条ごとの質問の中でわれわれの態度、問題点というものも指摘いたしてありますから、ごく簡潔にいたしたいと思います。  まず第一に申し上げたいのは、この条約は、政府答弁によりますと、従来の国際慣行として行なわれていた領事の職務遂行をそのままプロジェクトして、そして、だんだんと複雑多岐になってきておるからこれを明文化して、お互いのトラブルをなくすのが目的であるという点が一点。それから、領事とは一体何だということに対する国際通念的な解釈につきましては、われわれ野党と政府との間で意見の一致をみました。すなわち、領事とは、概括的に申しますならば、この前私の解釈は申し上げましたが、概括的に申し上げますならば、経済。文化の交流並びに相手国に在留いたします自国民の権利擁護あるいは便宜の供与、そういうことを任務といたしました在外機関であるということであったのであります。ところが、内容を検討いたしますと、随所に、日米関係において、特に今日の実情から見ましてアメリカ側に一方的に奉仕をする、そして場合によりますと内政の干渉を許したり、あるいはまた、平和憲法を持っておりますわが国の政策として好ましくない、汚らわしい権利を他の国の領事官日本国内において遂行ができるような規定が見られるわけです。  私はそういう一般的な傾向を指摘いたしますが、特にここで問題になりますのは、条文第十七条(1)の(b)項の規定によりまして、アメリカ領事官日本国内におきまして在日自国民身体検査、すなわち徴兵検査を含む身体検査を遂行することができるという規定であります。これは、先ほど申しましたような政府とわれわれと同じ認識に立って討議をいたしました領事官の従来の権限に新たなる権限を付加するものであるし、しかも、その新たに付加する権限内容というものが、領事官のなすべき国際通念的な職務を逸脱する軍事的な目的を持ったものである。こういう悪質な、日本にとっては危険な職権をアメリカ領事官に与えるというこは、これは、自主的な立場から見ましても、平和の立場から見ましても、あるいはまた従来の領事官の職務の国際通念からいたしましても全く逸脱するものである。私が指摘いたしましたように、この条項をつぶさに検討してみますと、こういう条項というものは、領事条約に限らず、他の国際取りきめの中で前例を見ません。ただ一つ見ますのは、昭和十二年に旧満州国においてこちらが圧倒的に取りきめました日満条約の等十六条でこれに類した規定をただ一つ発見することができる。これはもうすでに戦争の悪夢とともに消え去った条約でございます。それ以外にない。これを新たにここで設定するということは非常に間違っておると思うのです。というのは、日本平和憲法のもとにありますから、この権限というものは、アメカの一方的な権限として、片務的な権限になります。  それから、さらに問題になりますのは、在日外国人の中で圧倒的に多数なものは朝鮮人の同胞でございます。将来政府が企図しておりますように韓国との間で国交正常化をはかる、そして日韓の間でこのような前例に従いました領事条約が結ばれ、しかもこの条項が挿入されますということになりますと、これは非常にいまわしいばかりでなく、また他国のトラブルわが国に持ち込むという結果になりまして、そのことを想定いたしますならば寒心にたえないわけでございます。  さらに、二十六条の規定でございますが、ここにおきましても、アメリカに対する屈辱的な追随的なことが客観的に証明される取りきめが行なわれておりまして、特にその第一項で、受け入れ国の法令に抵触しない行為、それから国際法もしくは国際慣行に適合している行為、それから、それとは別に、受け入れ国で異議を申し入れられていない行為、一切これはアメリカ領事官にすべて合法的な職務として受け入れ国たるわが国が認める、こういうことになるわけでございます。他の委員によって指摘されましたように、アメリカの最近のアジア政策なりまたは後進国に対するいろいろな恥知らずな行為、特にCIAを中心といたしましたキューバに対する、パナマに対する、いま行なわれつつあります南ベトナムに対する、ラオスに対する、あるいはまた、やがてはわが領土である沖繩における行為、さらに日本本国における行為、こういうものを想定いたしますならば、この領事官の粉飾をまといましたアメリカの機関に、国内の内政干渉なり、あるいはスパイ行為なり、あるいは政治工作なり、そういうことを自由自在に行なわしめることになる。それが今日の多数国条約でありますならば、まだ、他国の例がありますから、そこで拒否・抵抗の策もできるわけでありますが、日米二カ国条約ですから、そうなりますと、力関係で、特に日本外務省の終戦後二十年間のアメリカ追随、アメリカ迎合、アメリカ屈辱の一方的な習性、それが習いとなっているような状態のもとにおきましては、これは無制限規定であるというはんぱな誤りを犯しております。  さらに、議定書の第一項におきまして、沖繩県日本人の領事官職務からの外交上の保護が除外され放棄されている。政府が説明するように、あれはわが国であり、わが人民である、外国ではないということであるから南方連絡事務所ということですが、この政府機関がすべてこれを行なうということの条項がここに明記されますならばよろしゅうございましょう。ところが、アメリカの沖繩政策というものは、領土権が潜在的にあるとか、人民は日本人であるというようなことを言っておりますけれども、幾たびか指摘されたように、植民地以下の取り扱いを受けて、そのことを、沖繩政府自身の責任者も、ますます沖繩の自治権の低下あるいはアメリカの圧力を率直に述べておるのが事実であります。そういう情勢の中で、このあいまいな規定のままで沖繩県日本人九十万に対する領事官の外交保護職務というものを放棄するということは、非常な誤りではないか。  したがってって、特に私が痛感いたしました日本アメリカとの関係から見ました不当なこの条約というものは、この三点をもっていたしましても反対するに余りある理由があると考えるのでございます。
  60. 臼井莊一

    臼井委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  61. 臼井莊一

    臼井委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  63. 臼井莊一

    臼井委員長 次に、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
  64. 帆足計

    ○帆足委員 十一時から麻薬条約の審議に入る予定でしたが、もはや十二時近くになりまして、われわれも人類の一員ですからそろそろ空腹を感じておりますし、同僚議員に迷惑をかけるのも恐縮ですから、簡単に質問いたしまして、次回に続けていたしたいと思います。しかし、関係官庁の方がお見えになっておりますから、人道的見地から、せっかくお呼び立ていたしまして質問申さないのも恐縮でございますから、きょうは序論だけ質問いたしまして、そして次回引き続いて質問することを委員長に御了承願いたいと思います。  この麻薬条約自体は、きわめて重要な条約でありまして、私はこの趣旨に賛成でありますけれども、要は実行と条約とが互いに一致することが重要であろうと思っております。とかく、条約を結びましても、その条約の解釈、それから厳重な励行を怠る傾向が、これは日本のみならず各国にも、まだ人類進化の過程でそういう傾向がありますことは、まことに遺憾であります。たとえば沖繩の問題にいたしましても、条約局長は、いつでしたか、潜在主権があれば植民地と言えない、こういうへ理屈を言われた。私は、条約局長として、やはり心の中ではおっかさんやおとっつぁんのことを思いながら恥しいが、職業上やむを得ないとお考えになっているに違いないと思うのでありますが、そういうことを言われる。一体そういうような解釈が国際連合憲章のどこに書いてあるか。植民地解放宣言の文章または討議の速記録の中に一行でもあるか。一体そういう珍妙な御答弁をどこで発見されたか。窮鼠ネコをかむといいますけれども、苦しまぎれに変なことを言われてはまことに迷惑であります。国会という場はやはりシンセリティーと論理の通用する場所でなければならぬ。論理通用せざれば結局暴力が横行する。暴力触発局長というようなことになってしまうわけでございます。したがって、御答弁はやはり筋を通していただきたい。そして、その政治的措置はやはり政務次官なり大臣がおやりになるべきである、日本の誠実なる官僚諸君は、やはり法規を守り、論理を守り、筋を通す、そして、実施の過程における若干の緩急よろしきは、それは政治の問題として政治家が行なう、こういうふうに考えていただきたい。麻薬の問題にいたしましても、やはり誠実に実行に移していただきたい。たとえば沖繩からのパスポートの問題にいたしましても、国際連合で満場一致きまった植民地解放宣言の中で、ある自治権を奪われている国が自治権回復のため、施政権回復のために猛烈な努力をしたとしたならば、それはアブラハム・リンカーンの思想の弟子として、すなわち民主主義の信奉者として、そういう傾向を保護、助成すべきであって、いやしくも弾圧、干渉を加えてはならぬと、こう書いてあるわけです。条約局長はそのことばを御承知でしょうか。したがいまして、もし、自治権拡張のための運動をするからといって、沖繩に渡りあるいは沖繩から日本にそういう用件で来た人に対してパスポートを渡さないというようなことは、国連憲章できめた諸規定違反になる、こういうことになっておるにかかわらず、外務省は認識を明確にされない。そういうような心がけでは、いまからこのアヘン条約を論議してみたところで、私は、これはばかを相手にして論議しているようなことで、まことに心もとないと思うのでございます。したがいまして、その関連事項として、条約局長に一言いま申し上げたことについて御答弁を願いたい。答弁しにくいことはないでしょう。   〔委員長退席、高瀬委員長代理着席〕
  65. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 ちょっと御質疑の趣旨がよくのみ込めませんでしたので、もう少し御説明を願いたいと思います。
  66. 帆足計

    ○帆足委員 またそういうことを言われる。地位の安全は官吏服務規律で保障します。したがいまして、施政権回復のために努力するというような理由のもとでパスポートをかりにアメリカが渡さないというようなことがあったならば、それは国連の八十一カ国がきめた憲章違反になるというようなことくらいは十分に御承知でしょうが、そういうことが行なわれたならば外務省は当然抗議をするというお考えでございますが、こう条約局長に解釈を聞いたわけです。
  67. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 具体的な事案について態度を決すべきものと心得ております。
  68. 帆足計

    ○帆足委員 またそういう答弁をする。具体的に言ったわけです。沖繩の施政権回復のための連動を善良なる民主主議者がする、破壊主義者でも何でもない者、しかも、日本の国会が承認し、琉球立法院が承認し、国際連合が承認しておるその原則によって施政権返還のための運動をした人に、施政権返還の運動をすることは気にさわるという心持ちのためにパスポートをよこさないということをアメリカがしたときは、これは条約局長としては国連憲章できめた諸規定の違反になるという解釈でございますかこう聞いたのです。きわめて具体的に言っている。違反になると言えばいいのですよ。
  69. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 そのままやはり、具体的なケースでございませんと、どういう運動のしかたをしたとかいろいろあるわけでございまして、私は、法律上の結論というものは具体的なケースについてやるべきものだと心得ておりますから、申し上げたわけです。
  70. 帆足計

    ○帆足委員 条約局長は裁判官じゃありません。法律の原則をお尋ねしているわけです。すなわち、自治権獲得の問題を平穏に運動した人に対しては、むしろそれを奨励し保護すべきであると国連の諸規定に書いてある。それは確かにアメリカ軍部にとっては、いかに穏健にやっても気にさわる。しかし、自治権獲得のために平静な運動をした人に対して干渉が加わるということはいけないことと書いてある。そういう原則を申し上げているわけです。あなたに裁判官として具体的事例を聞くのではない。そう聞いたところで、あなたは裁判官でも何でもないでしょう。いつ裁判長に任命されましたか。条約局長でしょう。条約局長として、法の原則的解釈をお尋ねしているのだから、それはそうです、そういう具体的事例があったときは、その原則に照らして間違っているようなことがあったときは外務省としても警告を発します、こう答えるべきである。答え方まで教えなければならぬとは、これは授業料をもらわなければならぬ。外務委員というものはあなた方に教えねばならぬ役割りを持っているのでしょうか。これは純法律上のことを確かめたわけです。それを答え切らぬような意思薄弱な人を相手にしてこれからアヘン問題という重大な問題に入ることはとうていできないと思うのです。
  71. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私は、やはり、具体的なことが起こりませんと、ただ抽象的に、友好国がどういうことをした場合とかいう、仮定に基づいて友好国が国連憲章違反になるというようなことを言うことは、政府の当局にある者はやはり慎むべきじゃないかと思います。
  72. 帆足計

    ○帆足委員 意思喪失者ならば、これは松沢病院なんかに移さねばならぬ。または、学歴調査をして、にせ大学生であるかどうか鑑定せねばならぬ。特にそれほどまでこの善良にして常識的な外務委員に言わせるということは、事重大だと思うのです。そういうことを聞いているのじゃないのです。施政権返還のためにきわめて常識的な平穏な運動をした市民が、そのためによってパスポートを拒否されるような事例が起きたというならば、これは国連憲章のきめた諸規定の違反になるだろうということです。これは文章に書いてあるわけです。だから、そのことを条約局長は知っておるか確認されておるかこういうことです。同じことばかり言わさないでください。相手アメリカでなくてもいいです。
  73. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 いままで答弁したことで御了承をいただきたいと思います。
  74. 帆足計

    ○帆足委員 私が意思のない人を相手にして論議をせねばならぬという人生の不幸に対して、委員長はどのようにお考えですか。与党の議員諸君も大体われわれと同じインテリであって、新聞記者諸君もおられることだから、こういう答弁で一体審議ができるでしょうか。委員長から警告を願いたいと思います。  もう一度答弁願います。百万べんでも私は聞きますよ。国民を代表してひとつお尋ねしますが、施政権の返還を平穏に要求した人たちに対しては、これを国際連合加盟諸国は奨励し育成すべきであって、それが多少かんにさわるからというぐらいのことで差別待遇をしたり干渉してはならぬという条項が、国連できめられた宣言、決議の中にある。それは御存じですね。知っていますか、知っていないですか。無知のやからは別にして、人にして学ばざれば禽獣のごとしで、無知なれば無知局長というふうになさればいい。それはどうですか。それも答え切れぬですか。
  75. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 よく決議を検討したいと思います。
  76. 帆足計

    ○帆足委員 そのくらいのことをいまから検討せねばわからぬという条約局長を持ったことは、外務委員会としても非常に不幸なことでないか。私は個人として人の悪口はほんとうは言いたくない性分なんです。というのは、自分も欠陥だらけの人間だということを知っておるから言いたくないのですが、私は私の職務に関する限り誠意をもって努力しているわけです。職務の時間が済めば一ぱい飲んだりしますけれども、職務に関する限りは、われわれ与党、野党の外務委員はみなまじめにやっているのです。しかるに、条約局長は、知っておりながら返答せぬで、これから勉強するというようなことを言われる。それじゃ、いま私が質問した条項が植民地解放宣言の第何項にあるくらいのことは御承知ですか。うしろの方と相談してもいいのです。あなたの弟子とどうぞ。
  77. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私も宣言、決議は読んだことはございますけれども、何項にあるというようなことは記憶いたしておりません。本日はその関係の資料は持ってきておりません。
  78. 帆足計

    ○帆足委員 この前私は沖繩の問題について約一時間半講義をしたわけなんです。結局講義という結果になってしまった。しかも、まだその授業料はいただいていない。そのときに、国連総会で決定し、八十数ヵ国が賛成した植民地廃止宣言の第四項であったと思いますが、その文章まで読み上げて御注意を促した。しかも、そういう理由のためにパスポートがもらえない人がたくさんあるのです。私も近く沖繩の踊りを見にいきたいと思っておるけれども、沖繩の県民の施政権返還に対しては当然私は熱心です。なぜかと言えば、与党の床次さんが提案し、野党の私が代表演説をして賛成をしておる。施政権返還の問題は軍事基地の問題ではないのです。施政権返還の問題は与党、野党含めて満場一致決議したことなんです。そのことに対して熱心であるあまり、パスポートのもらえない人たちがちょいちょい出ておりますから、重大問題だと思ってたびたびこの委員会で御注意を促しているのです。条約局長、そのことをお聞きないですか。それともこの前かわったばかりなんですか。ちょっと御答弁を願います。
  79. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 いままでのケースについていろいろやりとりがあったということは私存じておりません。
  80. 帆足計

    ○帆足委員 あ然として言うべきことなしというところです。それじゃ、こうしましょう。研究しておいてください。これはおとうさんやおかあさんの悪口を言うわけにもいかぬし、学校時代のしつけの問題でしょうが、言うべきことはきちっとお答えになって、あと政務次官なり大臣なりが政治的なことはお答えになればよろしい。しかし、法律の解釈についてはりりしく答えていただかないと、植民地解放宣言や国連憲章が泣いておるじゃないですか。人権憲章も知らない、植民地廃止宣言の内容も知らない、国連憲章も忘れた、最後には、新日本憲法も忘れたからしばらく勉強させてくれ、こういうようなことになって、条約局長というのじゃ、穂積さん、私は質問する気力が減退してくると思うのです。こういう生理現象及び心理現象に対して、委員長、どう取り扱ったらいいものでしょうか。これは委員長から少し警告を発していただけないでしょうか。すなわち、答弁側がまじめじゃないのです。
  81. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  82. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 速記を始めて。
  83. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、この問題は一ぺん理事会にかけていただきたい。忍耐にも限度があると思うのです。やはり、苦しいことでも時々刻々世界は進歩する。国連憲章の規定に対して現実の植民地政策なり各国の政策がおくれる。おくれたものは矛盾を感ずる。また、軍備縮小などが行なわれれば職業軍人は困る。民主主義が非常に強調されれば官僚主義というものは反省を促される。帝国の官僚が人民の公僕というようなより美しい内容の概念に変わってくる。そうすると、多少の抵抗もあり摩擦もあります。しかし、そのときは、皆さんは法律の番人として給料をもらっているのですから、やはり法律の解釈に忠実な答弁をしてくださらなければ、われわれ外務委員としては質問するのがばからしくなるのです。常識で考えまして、忍耐力には限界がありますから、これは次の理事会にかけていただいて、もう少し誠実な御答弁を要求します。  時間がありませんからきょうは序論だけでやめますが、アヘンの問題につきましては、私は幾つかの本を最近読みました。実はアヘンのことは私はあまりよく知らなかったのです。委員長と同じように私も多少は酒をたしなむ日本男子であります。それも適当にたしなんでおります。しかし、アヘンをたしなむ機会は幸いにありませんでしたし、将来といえども永遠にないと思います。したがって、アヘンの問題については、アヘンの味方としてではなくて、アヘンを敵とする立場に立っておりますから、アヘンを国際的に技術的に取り締まり、またアヘンに関する犯罪人を国際的に連帯して取り締まるという趣旨のこの条約には、私は敬意を表し、また、そのために努力されております関係当局の皆さんの涙ぐましい努力に対しては心から敬意を表します。映画やテレビ、ラジオ等で皆さんの御努力の半面もよく拝見いたしまして、非常に感謝しておることをまず申し上げます。  ところが、人生には、たとえば、「キツネには穴あり、されど人の子には住むところもなし」と言ったイエスキリストの弟子たちがいつしかローマ法王となって、カイザルのものはカイザルに返せと言ったその法王庁がカイザルの機関になった、あるいは、愚禿親鸞といわれ、こじき親鸞といわれ、「善人なおもて往生す、いわんや悪人をや」と言った親鸞の子孫がいつしか大本願寺となって皇族、貴族の地位にすわる、人生矛盾に満ちております。私は、アヘンを退治するその書物や勢力の中に、アヘン密売者の軍資金なり力なりが入っておることは、国によってはちょいちょいある事例を書物で発見いたしました。日本の警察当局は幸いにまだ腐敗してないと思います。しかし、私が王難の罪を受けて政治犯ということになり、その政治犯すら、私は当時社会運動に志を断っておりましたから無事の罪でありましたが、冤罪によって一年間憲兵隊及び刑務所に入れられたときの経験を見ましても、当時、警察などの中の約三割ぐらいの人たちは、どろぼうよりもっと悪い検事、看守で、たくさんおりました。だから、おそらくその残党はおるでしょう。現実というのはふしぎなもので、教会の中に悪魔がおるように、警察などの中に、今度は逆にギャングの一味と非常につうつうの人たちがおったり、彼らと一ぱい飲んだり、また、趣味としては、浪花節までは許容することができますけれども、入れ墨的趣味を愛好しておる方が検事の中に相当おる。そして、平和の歌やベートーベンやショパンなどはあまり気が向かない。そして、ギャングを取り締まりながら実際はギャングに一種の精神的あこがれを持っておるというような方も相当数警察の中にはおられる。これが人生の悩みというものでありましょう。  まず、麻薬についての何冊かの書物を読みましたが、一番よくできておるのは、さすがに厚生省麻薬課長の久万楽也氏の「麻薬物語」が非常によく書かれております。非常にすぐれて、非常に科学的に、行政官としてよき方が書かれたものです。おそらく親のしつけもよかったし、学校時代の成績もよかったのでしょう。条約局長はよく反省なさってしかるべきだと思います。それに対しまして、菅原通濟先生の書いた本があります。この人は一種の自由人でありまして、趣味深く、善意を持っている人でありますけれども、この内容はきわめて非科学的なものでありまして、私は内容を読んで驚きました。この書物の序文には、日本における麻薬の中毒患者は数百数千でなくして四万人、常用者は二十万、愛好者五十万に及ぶ、しかるに世間はそれほど騒いでいない、しかも麻薬密輸で年々七百億円をこともあろうに正体あいまいな第三国人によりせしめられていることに十分気づいていない、いかに外貨の獲得に骨を折り、健全な観光収入の増加などに骨を折り、国際収支をよくしようとしても、正体不明な第三国人に年々七百億円も麻薬の不当利益を与えているようなことでよいであろうかそれのみか、約五十万人の同胞が麻薬の地獄街道にのたうち回っている姿を皆さんはどう考えるか、麻薬と梅毒が国を滅ぼすとは昔から言い伝えられたことである、——私はこの序文のことばにあふれている菅原さんの熱意、善意というものはよくわかります。ところが、一たび内容を読んでみますと、まず立川文庫程度の内容でありまして、読んでみて驚きました。支離滅裂です。この方は非常に趣味深く、敬愛している方でありますけれども、現在麻薬について何か審議会の公職におられるのですか。
  84. 久万楽也

    ○久万説明員 厚生省の麻薬対策推進のための会の座長をやっておられます。それから、もう一つ、総理府のほうで売春対策審議会の会長をやられております。その中で麻薬の部会がございます。
  85. 帆足計

    ○帆足委員 そういう重要な地位についておられる方ですから、その気持ちと善意に対しましては心から敬意を表します。また、御努力についても敬意を表しますが、遺憾ながら、この「麻薬天国ニッポン」という書物の内容は、はなはだしく科学性を欠いておる。そして、資料の出所が、逆に麻薬業者の軍資金から出た資料に基づいておる。すなわち香港情報から出ている。その香港情報の出所もまた彼は科学的に分析していない。まことに遺憾なことでございます。厚生省の課長さんの書いたこの書物の観点からごらんになれば、これとこれとは天地雲泥の相違がございます。  まず、国際麻薬条約は、戸叶里子女史がどのようにいつ通過させるように理事会で約束したか存じませんけれども、私はこれは簡単に通過させるわけにはまいらない。というのは、良心的に麻薬退治のために努力しておられる方々を国際的規模において助けようという条約の批准でありますから、私は、その実施の過程を確かめ、力の足らざる忠実なる官吏諸君を助け、この麻薬地獄を解消する方向に向かって前進するのでなければ、形の上だけでただ条約に判こを押して能事終われりというわけにはまいらぬと思う。しかも、いまや、占領政策の惰性でもって、穂積さんがたびたび指摘されたように、われわれには多少主体性に欠けるところがある。産業は戦前の三倍にも回復したというのに、われわれの主権はどうであるか。かつての封建的絶対専制主義、独善主義が終わったことはいいことでありましょうけれども、人間的な、自治的な、そして国民的な国をいとしむ心、そして人間的な主権を愛する心、そういうものは、新憲法に基づいても、国会にもお役所にもみなぎっていなければならない。そういう観点からしますと、今日の日本の対外関係には非常に不明朗なものがありまして、出所不明なる一部の第三国人が横行闊歩している。私は、民族的.封建的偏見のいかなるものも持たず、その民族的偏見とは戦わねばならぬと思っておる平和主義者でありますけれども、何分にもいわゆる不良外人というのが国内に横行闊歩しておる。これは占領政策の惰性でありまして、そこに麻薬の問題が連関しているというごとは御承知のとおりでございます。  したがいまして、きょうは要点だけを述べまして、次は資料をもちまして具体的に御答弁をいただきたいのでありますが、まず、菅原さんの書物によりますると、麻薬の出所は、終戦直後の混乱状況に始まり、それから身元あいまいな第三国人と連結がある、それから、麻薬の本拠としては、香港かその一つ、タイのバンコックがその一つである、また、戦いに疲れた進駐軍が、朝鮮関係から戦争と結びついて、そして麻薬密売者となって、戦争の退廃それと結ぶ哀れな犠牲者であった日本の売春婦、それをめぐる暗黒街と結びついて、こういうことを順次指摘しております。しかし、同時に、ふしぎなことには、中国が自分の五カ年計画を達成する重要なる軍資金として大量に麻薬の密売を企てて、その販売ルートは膨大なものであるというので、これに十数ページを費やして書いておるのでございます。世にもふしぎなことがあるものかなと思って、そういうことがあるならば、私は中国の方と交際もしたくないし、また隣邦中国の友として当然警告も発せねばなりませんけれども、阿片戦争であれほど苦しみ、国内ではたんつばを吐くことすら禁止している国で、もちろんアヘン吸飲者などは一人もいないであろうほどの、明治維新のような復興の気に満ちている中国が、他国の国民にアヘンを売りつけて、そのギャングを助けるというようなことは、常識ある人間としては、共産主義がきらいとか好きとかいう趣味の問題は別として、また利害の問題は別として、科学的、理性的に考えて、あり得ざることでございます。しかるに、わざわざ大きな題名をつけまして「中共と麻薬」と書き、中共のアヘン密輸ルート、共産党の細胞組織、これに約二十八ページを費やしております。そして、ずっと読んでみますと、最後に、資料の出所は香港である、——私はおそらくこれは香港のギャングの一味であろうと思いますが、ギャングは麻薬と結んでおりますから、麻薬業者の資料でもって麻薬撲滅の本が書かれておる。まことに人生の縮図であるかのごとくでもありますが、それに対して厚生省当局並びに警察当局の御注意をまずきょうは促しておきたい。  第二に、久万さんのお書きになった書物は、冷静に科学的に書いておられまして、非常に勉強になりました。そこで、もう時間がありませんから、きょうは第一回目として総論的にお伺いいたしますが、久万さんの書物によりますと、密輸ルートのことも詳しく書いてありまして、アヘン輸入を商売にして、そして検挙されました者の数は千九百名、うち大半は無職の者であって一千八十名、次に売春婦九名、貸し席業八名、パチンコ屋一名、飲食業七十六名など、主として水商売に関連する職業に従事する者が百七十名と圧倒的に多く、次いで貧乏な労務者関係の者が八十名となっておる、こういうことであります。密輸入のルートにつきましては幾つかのルートを順次あげて、最初には、もちろん国際的な魔の都といわれる香港が中心であります。また、駐留軍基地周辺の暗黒街が中心であります。また、朝鮮ルート、それから、最近は、麻薬というものは数量はわずかでも非常にもうかるものでありますから、飛行機が上手に使われておる、そうして、その航空路と使われた飛行機の名前もずっと列挙いたしております。  こういうことでありまして、中国がいい悪いの問題は、各国政体がみな違いまして、皆さんが大英帝国を賛美して、そしてエリザベス女王さまのお顔が愛らしいからといって恋愛を感じてみたところで、これはいかんともすることができないし、かといって、毛沢東主席が最近少しお太りになり過ぎたといって、それについて男ぶりをあげつらってみたところで、これもしかたのないこと。すなわち、国々はそれぞれの独自の道を歩いておる。したがいまして、その国の政体についての好悪の感情と、アヘン・麻薬問題とは関係がないわけです。麻薬問題は、その麻薬の密売をだれが行なっておるかどういうところに震源地があるかということを現実的・科学的に探求し、その禍根を絶つというところに問題があるわけです。したがいまして、まずお尋ねいたしますが、麻薬問題に対して、中華人民共和国、すなわち新中国が関連したという事例が一件でもありますかどうか関係当局にまずこれを伺っておきたいと思います。
  86. 久万楽也

    ○久万説明員 麻薬でつかまりました人の中には中国人というのがおります。しかし、その中国人が台湾かあるいは中共かということはわかっておりません。  それから、先生のお話は、中国の大陸から麻薬が出たという事実があるかどうかということだと思いますけれども、私たちとしては今まででは確証を握ったものはございません。
  87. 帆足計

    ○帆足委員 麻薬そのものは、病気に専門家のお医者さんが相当量使います。したがいまして、インドの麻薬も中国の麻薬も、またフィリピン産の麻薬も、正規のルートによってならば、医者のルートによって使われることはあろうと思います。私はいまそれを論じておるのでなくして、麻薬密売犯罪人に、中華人民共和国で教育を受け、そこで住み、そこに責任を持たねばならぬ国籍の者がおった例があるかということを聞いておるわけです。私の承知しておるところでは、ほとんど居所不明の第三国人であると聞いておりますが、世の中には一億人に一人くらい気違いがおりますから、その一億人に一人の気違いは別といたしまして、そういう事例が二十八ページも費やさねばならぬほどあるかということをお尋ねしているわけです。
  88. 久万楽也

    ○久万説明員 先ほどお話ししたように、私たちのほうとして確証を握っている事件はございません。ただ、菅原先生の弁護をするつもりはございませんけれども、私たちがうわさで聞いたり見たりしているのでは、台湾系から出ている中国の新聞、そういうものには明らかに書いてございます。
  89. 帆足計

    ○帆足委員 しからば、第三国人という中に、香港系及び台湾系が相当おる。それから南朝鮮系がおる。私は南朝鮮の人民を少しも軽べつしようと思う者でもありません。また、麻薬退治に対しては、政治的見解は異なっておりますけれども、南朝鮮政府といえど、いま没落の過程にある蒋介石政権といえど、政権の首脳部そのものが麻薬を奨励するとは思っておりません。しかし、その下のほうの暗黒街には、麻薬巣くつ的人物がうじゃうじゃするほどおるということを存じております。第三国人が非常に多かったというのは、そのウジ虫組であったと思いますが、いかがですか。
  90. 久万楽也

    ○久万説明員 先生のおっしゃるウジ虫組かどうかわかりませんけれども、私のほうとしては、初めのうちは非常に第三国人が密売の手先とかなんとかに使われておりましたけれども、最近は相当上のほうでやっているというふうに考えております。
  91. 帆足計

    ○帆足委員 その第三国人という意味は、中国革命が起こって中国で教育を受けた人は私は一人もいないと思っております。あなたも御承知のとおり、その第三国人というのは、香港でうろついたり、台湾でうろついたり、南朝鮮系でうろうろ密貿易をしたり、そういうたぐい。私がウジ虫と言ったのは、そういう悪いことをするたぐいのことをウジ虫と言った意味でありまして、決して人権憲章に反した表現を使ったわけではありません。そういうことでしょうか。
  92. 久万楽也

    ○久万説明員 大体筋が通ってはっきりどういう階級の人がやっているということは私たちはつかみにくいです。ただ、私が最近は非常に上のほうの者もやっていると言うのは、金を持っていて、——その私の本に書いてございます。密売の組織の上のほうのルート、国内の上のほうのたとえば小口の輸入とかあるいは大口の輸入とか、そういうところに第三国人がだいぶ入っているということでございます。
  93. 帆足計

    ○帆足委員 そういう第三国人というのは、いわゆる国籍あいまいな、香港系、台湾系、南期鮮系の、すなわち、まじめな社会運動をしているとか平和運動をしているとか、そういう人たちの線ではなくて、密貿易や為替操作による貿易などでもうけようとしている国際的ブローカー、そういうたぐいである、そういうブローカーの中のやや上の者が最近はまたこれに手を出している、私はそういうふうに見ておりますが、いかがでしょう。
  94. 久万楽也

    ○久万説明員 先生と全く同意見であります。
  95. 帆足計

    ○帆足委員 そういうことでありますならば、わが親愛なる菅原通濟さんのこの書物の内容はきわめて非科学的なものとして、菅原さんのお気持ちを害しないような方法において多少啓蒙しておいていただくことが私は必要であろうと思います。と申しますのは、香港情報というものが問題だと思う。それから、台湾も、蒋介石さんなどは上の人ですからこういうことまで手を出さないでも軍資金があると思いますけれども、私が承知しておりますのは、日本国内で土地ブローカーでもうけたり、色彩好ましからざるあくどい喫茶店をつくったり、パチンコ屋を流行さしたり、それから赤線地帯を復活させたりする者の中には、国籍不明な不良第三国人が充満しているように思います。これらの世界がすなわちアヘン密売の巣くつと関連のあることは一目瞭然たることでございます。したがって、問題はその問題に持ってくるべきであって、一方ではケネディ前大統領が民主主義を主張し、他方ではフルシチョフ氏が社会主義を主張している、そういう政治問題とこれは現段階においては関係がないと思っております。そうではなくして、こういう国際的ルンペンブローカーが、日本においても、これが終戦後多少の特権を持っていた時代の余勢をかってばっこしていると同時に、インフレ経済下における貧苦の者たちの絶望感、その心理的弱さと結びついて、従来戦前にはこれほどでなかったアヘンという害毒、当初はヒロポン、後にはアヘンという害毒で広がっている、こういう現象だと思うのです。問題の本質を菅原さんのこの書物ではそらしておる。一体この香港の情報の軍資金はどこから出ておるかといえば、これは暗黒街から出ておる。暗黒街の軍資金はアヘン密売者から出ておる。アヘン密売者がアヘン撲滅の本に対して資料を提供した、こういうことになっておることを、ひとつ皆さんもよく考えていただきたい。  それから、第二には、中国または朝鮮政府がアヘン密売に関係したという記事がときどき周期的に新聞の社会面に出ます。私は警視庁の外事課に対して注意を促したい。新中国は、御承知のように、長所もあり、また他国から見ればだれしも欠点があるでしょう。しかし、私ども多くの議員の人たちがまいりまして、長所として数えておるものは、潔癖であり、そして儒教的である点です。男女関係においても非常に美しく、それから、つばきを吐くことすら禁止され、子供たちの教育は、三歩退いて師の影を踏まず、私は逆に教育勅語の御精神がそのまま中国で採用されておるような錯覚をすらときどき抱くくらいです。これくらい東洋的道義においてかたくなっております。もちろん、それを諸君が好むか好まないかは、趣味の問題ですから、あえて深く立ち入りません。北朝鮮にまいりまして痛感いたしましたことは、革命直後の朝鮮の混乱状況については皆さんも御承知のとおりですが、その後たいへんよくなっております。おそらく中国から非常に学ぶところがあったのでしょう。朝鮮の諸君はやはり長い間苦しみましたために感情に激しく、そして当初は徳性において欠くるところが多少ありはしないかという偏見もわれわれ持っておりました。しかし、朝鮮の農村にまいりますと、非常に牧歌的な、古代的な、コミュニティ的な空気が濃厚であることを見て驚くと同時に、都会におきましては、中国の影響を受けまして、非常に道徳的というか、むしろかた過ぎるくらい道義的になっている。私どもから言わせるならば、もう少しやわらかくてもいいのではないかと思うくらいでございます。こういう状況でありますから、北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国並びに中華人民共和国がアヘン密売でもうけて、それを国内建設に使うということは道義的にもあり得ないし、そういうことの一つでもあったならば、国民の信用を失なってしまう、そういう緊張した空気でございます。いわんや、アヘン戦争で苦しんだ国でありますから、アヘンを憎むこと中国・朝鮮ほど激しいものはないという風景を見てまいったのでございまして、アヘン患者矯正の機構は秋霜烈日のごときものでありまして、いまはもはや世界で最もアヘン患者のない国の一つでございましょう。そういう事情であるにかかわらず、北朝鮮国籍の者、すなわち、北朝鮮国籍といっても、名目上の国籍でなしに、そこで教育を受けた者または中国で教育を受けた者がひそかに脱出して、アヘンでもうけて、経済建設の資金を求めるということは、犯罪人でない限りは、私はノーマルにはあり得ないことであると思っておりますが、周期的にときどきそういう記事が新聞に出る。これは警視庁外事課または調査庁の中にアメリカのCIAの手が伸びているのではあるまいかという説を唱える者があるくらいでありまして、私は確証なきことによってわが誠実なる官僚諸君に恥を与えようとは思いませんので、あえてそのことを断言いたしませんが、それについての相当の資料をわれわれに提供し、そうして相当の警戒を必要とするという助言をしてくれた信用ある人たちのことばも、また資料も多少手にいたしていることをまことに残念に思う次第でございます。私が無事の罪で憲兵隊に投獄されましたときに担当しておりました思想検事さんなども、お心持ちは後悔されておるかどうか知りませんが、やはりそれぞれ局の中に御在任あって、そしてときどきアメリカにおもむかれているというような様子を新聞で伺いまして、よき日本人に立ち返ってくださっているならばいいことであるけれども、悪にも強ければまた悪にも強い、どうせやけのやんぱちで、昔はファッショであったから、今度はひとつアメリカのCIAにでもサービスをしようというようなお心持ちになっておられたならば、お子さんのためにまことに不幸なことであるし、当人のためにもまことに不幸なことであると、ときどき新聞の辞令などを読んで私は心配しているような状況でございます。また、周期的に北朝鮮及びソ連のスパイ事件の報告が出ております。最近、朝鮮赤十字が日本に来るというその時期を逸せず、「東京にいた北朝鮮スパイ、ホテルを根城に暗躍」という記事が二日にわたってどの新聞にも出ております。私がこのことを述べましたことの一つは、先年もまた、たぶん新潟海岸だったと思いますが、朝鮮のスパイが漂流してきた、そうして、一人は死骸になっていかだに浮いている、数名はテントの中でふるえていて、日本語もろくにできない、ドルと暗号電報と無線電信機を持っていた、こういう記事がありました。私は普通の常識から考えてきわめてけげんにたえないのでありますが、朝鮮戦争の最中であるならば、非常事態としてそういうこともまた考え得るかもしれません。一国が死活の境に置かれたときにはいかなる非常事態が起こるか想像の及ばぬこともあり得るかもしれません。しかし、今日の事態においてそういうことがあり得るか。それは、日本の一般情勢を知りたい点もあるでしょう。また、彼らの一般的・軍事的情勢をわれわれの防衛機関が知りたいという点もあるでしょう。しかし、それはそれにふさわしい合法的方法がある。特に、日本はいま、機密のない国として、共産党も公認されておりますし、あらゆる種類の政治的団体も公認されております。自己の政治信念のもとに自分の得たところの知識を送達するということは、言論及びジャーナリズムの自由として許さておりますから、ことさらことばのわからない人間が流れ漂ったり、天幕の中でふるえたり、暗号電報をつくって急いで通知しなければならぬというような事情はないと思います。通信するならば、わずか一週間で、いまは飛行便でしかも秘密に通信はできるわけです。常識で考えられざる事件が大々的にしかも十分なる真偽も確かめずに新聞に出るということは、私は、このカンパニアを起こしている勢力があるということを考えることは、別に推理小説の愛読者でなくても、やはり常識で憂慮するところであろうと思います。したがいまして、こういうような事件に対しては警視庁当局はもう少し慎重であってもらいたい。裁判の結果そのようなことがあったならばやむを得ないけれども相手が小国であるからといって、軽率なる記事を大々的に新聞に発表するというようなことばやめてもらいたい。これがもしフランス、イタリアまたアメリカ相手だったら、こんなことはしないでしょう。私は常識で申してこういうことはまずあり得ないことであると思います。先年、柏崎のほとりでしたか、日本海を流れただようたという事件も、竜頭蛇尾と聞いておりますが、なぜ警視庁はこういうような発表のしかたをされるか。警視庁はただ事件があったというような発表をしたのを、新聞記者諸君がちょっと大きく取り上げたのであるから責任は新聞社側にあると言われればそれまででありますけれども、だれしも、常識ある者としては、どうもこういう現代のおとぎ話のような記事が出ることは好ましいことでないと思うでしょう。私は、日をあらためて、こういう事件が幾つあってその結末がどうなったかということを、いずれ法務委員会と相談して伺いたいと思っております。私は日本の警視庁及び公安調査庁にアヘン勢力がまだ侵入しておるとまでは思っておりませんけれどもアメリカのCIAとの関係は相当あろうと思っております。それがよい仕事のためにあること、たとえばアヘン密売を禁止する、また国際的ギャングを取り締まる等のために提携をすることはよいことですけれども、変な政治的策動を強制され、資金が流れ、そのCIAのカンパニアに参加するということは慎しむべきことであると思います。アメリカのCIAが行なった罪悪の数々は、ラジオやテレビでわれわれは知っております。またアメリカ人の書いた小説の中でも知っておりますし、南ベトナムにおいて、アメリカの諜報機関がいかなる罪悪を犯しつつあるかということは、もう世界周知のことで、フランスの文献によって詳しく発表されておるとおりです。そのフランスがまたアルジェリアにおいていかなる暴虐なことをしたかということも、いまはドゴールが認め、そのあやまちを二度と繰り返してはならぬとマンデス・フランスが叫んでおることも御承知のとおりです。満州事変のときに日本軍が張作霖をどういうような殺し方をしたかは皆さんの御承知のとおりです。私どもは、警視庁の方々を全部敵に思ったり、警察庁の方を敵に思ってはおりません。夜道井之頭公園の近所を娘が帰ってくるときに、巡らのおまわりさんたちをどれほど心強いものに思い、私たちはたよりにしていることでしょう。政治的デモンストレーションのときなどは互いに衝突いたしますけれども、これは歴史の宿命でありまして、個人的にお互いに憎むべきことではなく、お互いにやむを得ない歴史上の摩擦であると思います。しかし、アヘン問題またはギャング退治、暴力団退治等に対しては、互いに誠実であって、いやしくも暴力団とつながりを持ったり、アヘン密売者とつながりを持ったり、またはアメリカのCIAのカンパニアに乗って隣邦諸国と政体が違おうとも、平和共存の今日、原爆の今日、その国交を阻害するような記事をわざわざ流すような軍資金なり機密資金なりまたは現金が流れておるとするならば、私は日本人として恥ずかしいことであると思います。この問題について多少の資料をわれわれは用意いたしておりますから、次の機会に関係当局にお尋ねしますが、どうか、過去においてそういうことがあったことはやむを得ないとしても、今後ないとしても、今後はもう少し慎んでいただきたい。今後同じようなことをされるならば、私どもは断固としてその根源を追跡し、そして日本の官吏として責任をとっていただかなければならぬ日が来ると思います。私ども日本の国会議員ですから、アメリカの圧力などはおそれておりません。また、ソ連、中国に対しては、正当なことを言われるならば、それは理あることとして聞きます。また、かりに正当でありましても、日本国民的利害と一致しない点は、一致するように話をつけて、われらの祖国の敷島の大和の国といわれるこの日本をよい国にして、子供たちによい遺産を残したいという気持ちは、野党、与党を問わず、外務委員全員の心持ちであると思っております。  アヘン国際条約をいま審議し批准する前夜にあたって、私はこういうような複雑な問題がからんでおるということを御出席の関係官庁の皆さんにきょうは申し上げまして、この次は具体的例をもって多少御質問いたしますから、皆さんのほうでもわれわれをこわがらずに、過去において多少の行き届かぬ点があったのは終戦直後以来の惰性であると存じますが、今後はひとつ一そう清らかな警視庁になり、一そう清らかな公安調査庁になっていただきたい。政治のための意見の相違は、それはやむを得ない。いつの時代でもあることです。しかし、不正なことがあっては、卑怯なことがあっては、不潔なことがあってはよくないと思います。たとえば、公安調査庁にいたしましても、朝鮮人帰国の問題につきまして、あのとき、この外務委員会で、まあ三千人から三万人くらい帰るであろうと証言しましたが、あれは希望的観測で、帰らぬほうがいいと思っているからそういうことを言う。私は、役所というものは、やがて社会党が政権を取ることもありますし、自民党が政権を取ることもある、そのときに急に腰を抜かしたりすることのないように、常に法律と憲法に忠実に、中立の立場で仕事をなさる、そして指図は上司の指図を受ける、しかし、法律と憲法に関する限りはそれに忠実に職務をなさって、ことさらに人為的なことはされない、朝鮮人帰国の見通しはどうかと聞かれたならば、正確な統計を取って、朝鮮人の貧窮の状況がどのくらい、犯罪状況がどのくらい、そしていま目ざめつつある状況はどのくらい、混乱に陥って見通しを失っている人の数はどのくらい、それから類推してこれくらいの数の者が安定した場所へ帰りたいと思うであろう、こういうふうに客観的資料を出していただくようにお願いしたい。その資料をどう処理するかは、これは政府仕事である。現在すでに朝鮮人帰国者の数は八万人をこえております。しかるに、当時最高三万人と言った公安調査庁の諸君の顔色いずれにありや。良心というものがあるならば、おれは調査マンになるよりも別な職業を選んだほうがよかった、こう後悔なさるべきであろうと思います。また、こういうような記事を軽率に流布する警視庁外事課の態度は改めていただきたい。ダレス全盛のときならば、共産圏の悪口を誘発するような記事を書けばまあ金鶏勲章がもらえたでしょう。しかし、いまは、吉田さんも、もはや原子力のもとでは政体、国体、経済体制が違っても互いに内政干渉しないで平和共存しようというふうに変わり、また、アメリカも、ケネディ大統領のなきあと、ジョンソン大統領は、やはり論理と合理性を持って話し合っていこうということで、そういう方向に世界が向かいつつあることは御承知のとおりです。そして、アメリカにおいてCIAの総裁であったところのアレン・ダレスは恥ずかしめを受けて国民嘲笑のもとに彼はついにやめさせられたということも、諸君は十分に考えておいていただきたい。いまはダレス国務長官の時代ではなくして、なきケネディの志を受け継いだジョンソン大統領の時代です。アメリカに多くの欠陥はありますけれどもアメリカにはなおかつ開拓者精神及び理性の一片というものが残っておることをわれわれは期待しておる状況です。したがいまして、CIAと結託して奇妙な情報を流すというようなことは、ひとつ今後は慎んでいただきたい。  たとえば鹿地亘君の事件でもそうです。私は鹿地君に対しては別に関心を持っておりません。しかし、アメリカのCIAにつかまって、あげくの果て神宮外苑かどこかに捨てられたという事件を見て、私は怒髪天をつきました。これはひどいことです。こういうようなことの中に、また三橋という奇妙な人物があらわれて、もうわけのわからぬ状況になっておる。そして、だれもこのなぞを解く人はないでしょう。ないけれども、奇妙きてれつだということは明らかです。いやしくも一国の司法機関が犯人として人をつかまえておきながら、沖繩に連れていって拷問して、あげくの果て、そのコックさんに見つかって、帰すに帰されず、殺すに殺されず、神宮外苑に車で捨てて帰ってしまうとは何事ぞ。そして、そういう機関を追及する努力を日本の外務省は怠っておるとは何事ぞ。これが文明国と言えるか。しかし、もうそれはアメリカ自身がさばきました。その責任を負ってアレン・ダレスは首になり、そして、CIAに対しては、アメリカ国務省及びアメリカ大統領がみずから権限を縮小し、その再調査を命じ、その悔い改めを要求しておる。しかるに、まだその尾てい骨が残っておる。南ベトナムでは、ゴ・ジンジエムを殺し、バーベキュー夫人という魔女を生み、そしてその魔女がまた反逆してフランスに逃げ出す、まことに複雑怪奇な国際情勢でありまして、私は沖繩におけるアメリカのスパイ訓練機関の内容についての報告書を外務委員として入手をいたしましたが、驚くべき諜報機関の残虐ぶりであって、われわれ文明人をして目をおおわしめるような訓練がそこで行なわれておる次第でございます。軍備の存在しておる今日、世界どこでもそういうことがあるというならばそれまでのことでありましょうけれども、こいねがわくは、わが国における司法機関も警察機関も清潔でありたい、こう私は思っておる次第でございます。(「腹がすいたよ」と呼ぶ者あり)腹がすいたという声がいよいよ盛んになってまいりまして、この点は超党派でございますから、きょうは私は警告の意味でこれだけ申し上げまして、この次具体的に質問いたしますから、ひとつ皆さんは、外務委員会を別にこわがる必要はありませんから、率直に説明をしていただいて、今後は平和共存時代にふさわしい清らかな検察機関になっていただく。また、厚生省御当局の涙ぐましい御努力に対しては、仕事のしやすいようなふうに外務委員からも大蔵省その他に警告を発して、予算の裏づけその他警官職員の待遇改善等には御協力いたしますから、きょうは質問の皮切りに心持ちだけ申し上げておきます。大体、国会というところは政府の意見を聞くところのように思っておりますけれども、そうではなくて、国民の心を皆さんに伝えるのが国会の役割りでありまして、あとは問いただして意見を承ればいいのでありますから、さよう御了承願いたいと思います。
  96. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる二十九日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時五十四分散会