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穗積委員 そうでありますならば、お尋ねいたしますが、実は、そういう
日本の基本的かつ政治的な路線というものは、この
条約の中では必ずしもまだ実現されておらない。ただの願望になっておるわけです。この
条約で禁止まで持ち込んでおりますものは、空中、水中の実験だけなんですね。そうして、これを裏返して
考えますと、
条約機構に関する限り、純法理的に見ますと、この
条約に参加しておる
諸国は、将来その国の政治並びに外交路線が変わりましたときには、いま申しましたようにこの禁止規定にのみ縛られる、それにのみオブリゲーションを感ずる、こういうことになりまして、それ以外の、すなわち、製造、それから地下実験、それから貯蔵、使用、これらのものはこの
条約で禁止されておりませんから、したがって、その行動というものは、参加する
諸国すべて、百九カ国問におきましては、それは自由である、違法ではない、言いかえれば、その事実行為というものは、法律上あるいは
条約上、禁止されていないから合法性を持っておる、この
条約が相当長く固定して前進がないとすれば、そういう結果も裏返して理解できるわけですね。そういうことでありますならば、
日本の
政府の方針、
国民の世論というものが、地下実験に眼目があるのではないのだ、全面禁止に眼目があるのだということでありますならば、他の国はいざ知らず、百九カ国のうち
日本に関する限りは、われわれ自身は、他の禁止されていない自由、すなわち製造、地下実験、保有、使用、これらら禁止されていないから、結局合法的な権利、——権利と言うのはなにですけれ
ども、自由ですね、そういうものを確保するためにこの
条約に入ったのではないということを論証するためには、
日本自身が核武装はしないという基本路線を国の内外に明らかにするということが、この
条約に
日本が参加するその趣旨が具体的に証明される結果になると思うのです。
なぜ私がこういうことを言うかというと、その
理由は実は二点あります。第一点は、この
条約を締結してまいりました
アメリカの代表、並びにその後この
条約を審議するにあたって国会における
アメリカ政府当局の説明は、むしろこの
条約によって、全面禁止に重点があるのではなくて、われわれは地下実験だけ自由を確保しておけば、われわれの今日の技術
段階では核の生産、開発あるいは保有、使用は自由に前に推し進めることができるのだというところに重点を置いて、国会における
答弁も証言もそのようになっている。それからまた、この
条約に入っていないフランスまたは中国が、この
条約の非常な抜け穴を指摘している。抜け穴というのは、具体的に言えば、現在保有する三カ国が核兵力を独占して、そして持たざる国に制限を加える、
現実的には核開発を不可能ならしめる、こういうことで、今日の国際政治の中において、使用はしないけれ
ども、いつでも製造し、保有し、貯蔵をし、開発をし、さらに使用すらできるのだという独占的、軍事的大国主義の地位を確保して、それを背景にして国際外交における発言権を強めていこう、こういう危険すらあるわけです。この
条約の持つ機構そのものを客観的に判断いたしますならばそうです。しかも、
アメリカ当局はそういうことを国会において公言をしておるのみならず、その他の談話でもって国の内外にその
態度を明らかにしておる。こういう状態でありますから、この
条約に入りさえすれば、これを締結した原締約国三カ国もこれから参加するわれわれも、全部この
条約の目標というものは全面かつ完全禁止ということをかちとることができるのだ、それがこの
条約の眼目だ、そしてその可能性がこれでできるのだということの証明にはならぬわけです。それは、どういうふうになるかということは、保有国をはじめとする参加
各国の努力、すなわち継続的努力いかんによってこれはきまるわけです。そういうわけですね。
そうでありますならば、われわれがこれに参加するのは、持つつもりはないから禁止規定を受ける必要はないけれ
ども、完全かつ全面的なる禁止をかちとるために内部に入ってこれを促進するのだ、そこに
条約参加の
意味があるのだ、こういうことを言われるならば、与党・野党何ら違いはありません。中国も違っていない。中国も、七月三十一日のこの
条約に関する
政府の声明というものはそういうことになっておる。中国は核兵器を開発し、保有し、実験し、貯蔵し、場合によれば使用するということを目標にしているのではない・中国はそうではなくて、この
条約の前文にうたっておる全面的かつ完全な禁止を実現することがわれわれの当面の
政策でなければならない、こういうことを言っておるわけですね。
ところが、それに至るまでの継続的交渉の努力というものを怠ったり、それから、この
条約というものをそういうふうに前向きに理解しないで、うしろ向きに、これから開発しようとするもの、それらを押えようとする、自分だけの軍事的独占地位を維持しようとする言動がもうすでに原締約国の中にある
情勢の中においては、まず
日本自身としてなすべきことは、私は、この
条約に参加する以上は、裏返しのきかないためには、やはりわれわれ自身は永久に完全に核武装をしないのだという宣言をする必要があると思います。
〔
椎熊委員長代理退席、
委員長着席〕
日本がこれに参加する
理由は、禁止規定を必要としておるというのではなくて、全面かつ完全なる禁止をかちとることが目的だとするならば、そういう
態度をとることが、すなわち核武装はしないという宣言を内外に向かってすることが同時に行なわれて初めて、参加の
態度の筋も通りますし、参加する目的に対して効果的な措置であるというふうに私は
考えるわけです。抽象的に私は言っているのではありません。あなたと私
どもといま一致したように、この
条約の眼目というものは第一条の禁止規定にあるのではないのだ、そのことに満足するものではないということ。ところが、これによって、空中、水中の汚染がなくなるということの一面には、実際は軍事的大国主義がこれから国際外交の中でのし歩く危険があるし、そうして、フランス、中国のそういうものに対抗するための核武装の努力というものが触発される危険があるということでありますから、当然、これに入る以上は、その精神、基本方針でありますならば、入る必要を認めて入る以上は、私は、こういう抜け穴の多い
条約の場合においては、まず
日本が、核武装はしないのだ、
アメリカとは違った
態度と方針によってこれに参加するのだ、ソビエトとも違う、イギリスとも違うという
態度を表明して初めて、国際世論の先頭に立って、
日本が核武装禁止につきましてはその唯一の被爆国の外交として名誉ある指導性が発揮できる、こういうふうに思うのでございます。いや味を言っているのではありませんよ。どうぞ御理解をいただきまして、そうして、この
条約が国会を通ります場合には、同時に
日本の非核武装の宣言決議を国会でもすれば、
政府もそれに即して明らかにする、このことによって初めて、いまわれわれが場合によったら賛成しようとし、あなたが必要がないのにあえてこの
条約に参加するという趣旨が具体化されると思うのです。まじめにひとつ御
答弁をわずらわしたいと思います。