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1964-05-13 第46回国会 衆議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十三日(水曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 安藤  覺君 理事 椎熊 三郎君    理事 正示啓次郎君 理事 高瀬  傳君    理事 古川 丈吉君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君       宇都宮徳馬君    鯨岡 兵輔君      小宮山重四郎君    佐伯 宗義君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    野見山清造君       福井  勇君    藤本 孝雄君       松山千惠子君    三原 朝雄君       森下 國雄君    亘  四郎君       黒田 寿男君    田原 春次君       平岡忠次郎君    帆足  計君       松井  誠君    永末 英一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         国 務 大 臣 福田 篤泰君  出席政府委員         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎭男君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  梅沢 邦臣君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 五月十三日  委員愛知揆一君池田正之輔君宇都宮徳馬君、  鯨岡兵輔君、園田直君及び森下國雄君辞任につ  き、その補欠として藤本孝雄君、小宮山重四郎  君、地崎宇三郎君、亘四郎君、松山千惠子君及  び西岡武夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小宮山重四郎君、地崎宇三郎君、西岡武夫  君、藤本孝雄君、松山千惠子君及び亘四郎君辞  任につき、その補欠として池田正之輔君、宇都  宮徳馬君、森下國雄君、愛知揆一君園田直君  及び鯨岡兵輔君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実  験を禁止する条約の締結について承認を求める  の件(条約第三号)  国際情勢に関する件(南ヴィエトナム問題)      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。  戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ごろ国会におきまして南ベトナムとの賠償の問題でたいへんに論議が戦わされたことは御承知のとおりでございます。その後の賠償問題等もいろいろあるわけでございますが、きょうは、部分的核停条約に対して質問をするという時間の制約もございまして、深く質問することはできませんけれども、いま問題になっております南ベトナムに対する援助の問題に限って二、三点質問をしたいと思います。  まず最近に、きのうの参議院の外務委員会あるいは閣議等大平外務大臣の発言を新聞で見ておりますと、南ベトナムの今日の情勢に対して、アメリカ政府からと、それから日本にいられる大使館を通じての代表からの南ベトナムに対する援助申し入れがあった、そこで日本は何らかの援助考えるというような積極的な御意思のように承っておるのでございますが、どういうような形でどういうふうなものをベトナムに対して援助をされようとしているのが、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカから援助要請がありましたことはいま御指摘のとおりでございますが、これには、商品援助技術援助資本援助、三つのカテゴリーに分けて例示的にこういうものが望ましいという意味要請でございます。私どもとしては、援助規模態様等につきましては十分各省とお打ち合わせをしなければなりませんので、この要請なるものはよく検討させてもらおうと思っております。この問題について政府がどのような態度で臨むかということにつきましては、そういうこととあわせて慎重に考慮いたしまして、アジアにおける日本立場というもの、それからアジアの平和という問題に対する日本関心というものも十分考慮に入れて日本の出方を考えたいと思って、目下検討中ということでございますから、今日の段階でどのようなものをどう援助するというところまで問題が煮詰まっていませんので、申し上げかねるわけであります。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの外務大臣のおことばの中からは、要請に対しての検討と、それから要請されたものの内容についての検討と、両方に受け取れるのですけれども要請に対する検討をしているというふうに理解してもよろしゅうございますか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 南ベトナムのああいう内戦が行なわれている現実において、どういう物資が足らぬとか、どういうサービスが足らぬとかいうようなことは、南ベトナム政府ないしはこれを支援しているアメリカ側が一番よく承知していることでございますので、エマーソン大使が持ってまいりました要請、例示的にいろいろ書いてありまする要請書なるものは、そういう意味吟味に値すると思っておりまして、それはもとより私ども検討しなければならぬ問題だと思います。同時に、日本といたしましては、先ほど申しましたように、日本立場というものがあるわけでございますから、そういう点もあわせてこの問題の結論を出すにつきましては考えておかなければならぬ問題であると考えております。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、結果的には、日本立場考えるけれどもアメリカからの要請は受け入れる、こういうことでございますか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカベトナム現地でたいへん苦労されておる、そして日本その他友好国に援助を求められておりますから、日本アメリカ友邦としてできるだけのことを考えてみたいと思っております。ただ、これをどういう援助規模とか態様とかいうようなことにつきましては、先ほど申しましたように、まだ検討してみなければわかりませんし、私どもとしては、日本として可能な限りは応ずるという姿勢方向検討してみたいと思っております。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、アメリカ要請に対して、これを受け入れる、こういうことを外務大臣はおっしゃったわけです。  そこで、その問題は別にいたしまして、次に伺いたいことは、アメリカがNATOその他の二十五カ国に要請をいたしたといわれておりますけれども、その内容なり何なりについて、またそれらの国々態度について御存じでありましたら、お知らせ願いたいと思います。
  10. 後宮虎郎

    後宮政府委員 現在各国の反響もよく調査中の段階でございまして、目下のところ新聞電報でわかっております程度でございます。韓国、それから西ドイツにおいては、否定、肯定両様のニュースがございまして、これもいま確かめ中でございます。韓国につきましては、御承知のとおり、前向きに考えるという新聞電報がございます。それから、アメリカ側にはっきりいままで入っておりますところでは、フィリピンが原則として前向きの姿勢考える。それだけがいまわかっている段階でございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういう内容はどういうものでございますか。軍隊ですか軍事援助につながるものだと思いますが、どうでしょうか。
  12. 後宮虎郎

    後宮政府委員 各国にどういう具体的な援助申し入れをしたかはアメリカがこちらのほうに明らかにしておりませんが、ただ、一般的に申しまして、軍事的の援助SEATO諸国要請するというのが一般的な方針のように承知しております。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 SEATOに対して要請して、そこで援助を求めるということになるわけですね。SEATOの中にも反対をしている国があるということを聞いておりますが、この点はいかがでございましょうか。
  14. 後宮虎郎

    後宮政府委員 SEATOという一つ条約機構に対して要求したのではないのでございまして、SEATOのメンバーに個別に要請したように承知しております。それでございますから、たとえばフランスのようにSEATO結論に同意しなかったところにまではたして要請をいたしたかどうかこれは承知しておりません。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまお話を伺いましてもはっきりしておりますように、ベトナム援助に対しては批判的な国さえもあるわけでございます。そういうことも頭の中に外務大臣は入れておいていただきたいと思います。  そこで、お伺いしたいことは、今度の南ベトナムで起きておりますこの紛争というのは、念のために伺いますが、これは内乱ですね。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 現象的には政府軍と俗にベトコンといわれておるものとの間の戦いでございますが、その背景は純然たる内乱という性質を越えた性格も持っておるように考えられます。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 結局、そういうような内乱を越えたような性格を持っている、そういうところヘアメリカ介入をしていったわけなのでございますけれども、一九五四年の七月二十一日にジュネーブできめられた協定とか、あるいはそのときに調印されました停戦協定というものの中にはっきりと書いてあることは、外国軍隊とか軍事要員の入国とか各種兵器弾薬の搬入を禁ずるとかそういった、いろいろな国がベトナムで軍事的な面で活躍することを禁じられているわけです。そういう中でアメリカが今回軍事的な面で介入をしているわけでございますけれども、こういうこと自体ジュネーブにおいてのこの条約に違反するのではなかろうかこういうふうに考えるわけでございますが、この点は外務大臣どういうふうにお考えになりますか。
  18. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 アメリカ及びベトナムは、北ベトナム側がすでにジュネーブ協定に違反して人員・武器を南ベトナムに潜入せしめることによってゲリラ分子援助している以上、これに対抗する自衛手段を講ずることは当然である、こういう立場をとっております。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの条約局長の御答弁でございますけれども、そういう立場をとっておりますというアメリカ側立場に立っての弁護ですけれども、そういうようなことははっきりと具体的に説明できるのですか。
  20. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 一九六二年の六月に、ベトナムにおります国連国際休戦監視委員会報告を出しまして、その報告書でも、北ベトナム南ベトナムにおけるゲリラ活動援助しているということをはっきり認めております。ただし、この休戦監視委員会は、カナダ、インド、ポーランドの三カ国で構成しておるのでございますが、ポーランドだけはこの結論反対しております。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうように監視委員会の中でも意見が一致しないということは、やはりそこに何か問題があるというふうに考えなければならない面があると思います。そうして、さらに、北ベトナムのほうからの、先ほどの御説明のような形での南ベトナムへの侵入というようなことをなぜしたかというような、そういった原因の問題にもやはり追及されていかなければならないと思いますが、そういう問題はあとで質問することにいたしまして、ただ私どもが非常にふしぎに思いますことは、今日のこの紛争介入をしておるアメリカが、二十五カ国に対して援助を求め、また日本にも援助を求めてきたということでございます。よその国の紛争に対して、いろいろな事情はあるにしても、アメリカが行っていて、そして、そのアメリカが今度は二十五カ国に対して援助を求めて、日本にもよその国にいて援助を求めてきておる、こういうようなことが一体これまでにどこかであり得たかどうかということが問題だと思いますし、また、私どもも非常に奇異に感じるわけです。よその国に行ってアメリカ日本の国なりほかの国にそういう援助を求める、こういうようなことが一体許されるかどうかこのことも念のために外務大臣にお伺いしておきたいと思います。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう事例外交史上どのようにあったかは私はつまびらかにしてはおりませんが、現実事態について、ベトナムの方々の経済、民生、衛生等について関心を持つ国々援助をしていただけば非常にしあわせだ、そういうすなおな申し入れと思うわけでございまして、そういうことが過去において事例としてどうあったかということは、私、いまつまびらかにいたしておりません。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの外務大臣お話では、すなおな形での申し入れということでございますけれども、これは相当大きな問題だと思うのです。よその国の紛争アメリカがタッチして、その国の援助のために、その国からの要請でなくて、アメリカからよその国なりまた日本なりに援助を求めてきているというようなことは、やはり、日本国民としては、どういう資格でそれをやっているんだろうというふうに疑問を抱かざるを得ないわけでございますけれども、別に資格も何もない、まあ向こうに行っていて、そして困っているのだからおまえさんたち助けてくれよ、そういうような簡単なものだというふうにおとりになっていらっしゃるのですか。この点も念のために伺いたいと思います。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 まあそうやかましくお考えになる必要はないんじゃないか現地事情に一番通じておるアメリカとして、こういうことが望ましいと考え要請があったものと思います。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣は私にそうむずかしく考えなくてもいいとおっしゃるのですが、私は外務大臣にそんなに簡単に考えてもいいものかしらというふうに伺いたくなるわけです。というのは、どう考えても日本国民としてはふしぎなんですよ。ベトナムという国にアメリカがいて、それがまたあっちこっちに頼んで歩くというふうなことが非常にふしぎなんです。こういうふうなことを簡単にお考えになって援助をすること自体が私は問題だと思うのです。たとえば、私たちが危惧いたしますのは、——おそらく政府としておっしゃりたいことは、アメリカ自由主義陣営にいろいろと援助を頼んでいる、日本自由主義陣営の一員と政府はおっしゃるでしょう。アメリカについている日本の国としては、アメリカから要請されたんだから、それに従ってその要請に応じましょうということだろうと思うのですけれども、そうなってまいりますと、いわゆるベトナムの中にある内乱の一方に加担をしたことになる。そして、その勢力を助けているということによって、今度は他方においての悪い影響が出てくるんじゃないか。そういうふうなことを考えましたときに、やはり日本がいま紛争の一方の片棒を持つような形ということはすべきではない、そういう危険な中に入るべきではない、しかも、アメリカからの要請であって、ベトナムからの要請でもない、こういう中にあってそういう態度をとるべきではないと私は思うわけでございますけれども外務大臣は、いや何が何でもアメリカ要請なんだからそれに応ずるというふうなお考えでいらっしゃるかどうか、この点を念のためにもう一度伺いたいと思います。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 何が何でもというようなことは考えていないわけでございまして、冒頭に申し上げましたように、日本にはアジアにおける日本立場というものがあるわけでございまして、アジア友邦に対しましては可能な限り経済技術等援助は繰り広げていくんだ、それが日本役割りであるということはたびたび申し上げておるわけでございまして、アメリカ援助要請があろうがなかろうが、日本といたしましてはそういう姿勢でおりますし、現にそういうアジア諸国に対してもお役に立っておるわけなので、ベトナム政府も、先般土木大臣が私のところにまいりまして各種援助要請をしてまいりました。したがって、私どもといたしましては、日本吟味いたしまして、かの地の農業、水産、公共土木、それから住民の健康管理等のたてまえから、日本が可能なことはして差し上げる、そういう立場日本はおるのだということは、先ほども申し上げたとおりでございます。アメリカから今回要請があったから、しゃにむに何でもしなければならぬのだというぞんざいな考え方では決してないわけでございまして、ただ、私が申し上げましたように、現地事情に一番精通しているアメリカからの資料が届きましたので、これは吟味に値する資料だと思いまして、われわれはその中で日本として可能なものは考えてみるという方向検討しておるということでございます。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が先ほど申し上げましたように、今日の内乱に対して一方的な立場をとりますと、必ずその巻き添えを食うというような結果になるわけでございまして、これは歴史の示すところでありますから、どうかそういうふうな点を気をつけてもらいたいと思うのです。  ことに、私が心配いたしますのは、最近現地を視察してこられた外国新聞記者の手記を読んでみましても、はっきり書いていることは、農村地帯において民族解放運動が非常に盛んになってきている。ああいうふうな農業国民族解放運動が盛んになってきているということになりますと、一方のほうに日本なりあるいはアメリカを中心とした勢力が何らかの形で援助をしますと、そういうふうな運動と非常に相反するものが出てきて、そしてベトナム自体に対してもかえって迷惑をかけるような結果になると思いますが、こういう点、いまやっておりますアメリカ態度というものは正しいというふうに外務大臣はお考えになるでしょうか。この点を伺いたいと思います。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 ベトナム事態をどう収拾するか、インドシナ半島の平和をどのようにしてもたらすかにつきましては、いろいろな考え方があり、いろいろな提案があることは、戸叶さんも御承知のとおりでありますが、アメリカとしては、いままでやっておる対ベトコン作戦というものは続けるのだ、こういうことで進めておるわけでございます。これはアメリカもよくよく考え考えてこういう政策を踏襲しておられると思うのでありますが、そのアメリカといえどもベトナム事態は軍事的に解決がつくのだ、そういう確信を持っておるとも思えません。やはり、これは大きくは政治の問題であるという認識を持っておるわけでございます。でございますから、私どもは、アメリカが現に踏襲しておりまする政策を遂行していく過程の中で、アメリカ自身がいろいろ施策を進めていかれるのではないかと思うわけでございまして、アメリカの対ベトナム政策というものを全然ネグレクトしてしまって、それでベトナムの平和を論じてみても、これは一つの議論としては成り立ちますけれども現実の問題といたしましては、アメリカ自体態度が変わらない限りどうにもならぬわけでございます。現実の問題は現実過程の中から英知を出して収拾していく方向に持っていかなければならぬわけで、私どもは、あの事態が大きな動乱に転化することのないように収拾されることを心から希求しておるものでございます。そうして、日本といたしましては、日本立場というものを考えながら、可能な限りの経済技術援助はして差し上げる用意があるのだし、それを真剣に考慮していくということは、当然の日本の役割じゃないかと思っておるわけでございます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 現実過程の中から英知をしぼって大動乱にならないようにやっているのだ、そしてそういうふうな方向日本もそれを信用していくというおことばでございますけれども、一方においてベトナム自体の中に民族解放を願っている勢力もどんどん台頭してきているわけでございまして、今日のようなアメリカの強引な政策をやっていたのでは、やはり必ず失敗が来るし、またベトナム自身にも大きなマイナスになるというようなことも、よく冷静に考え日本が進言をしていくべきだというふうに私は考えております。これもどうぞ外務大臣として私の申し上げましたこともよく考えていただきたいと思うのです。  そこで、もう一点だけ伺いまして他の委員に譲りますが、具体的な問題として、先ほど農業関係のものを非常に望んでいるということでございましたが、たとえば、医療のことを考えたり、農業のこと、資本のことも考えなければならないということがどこかに出ていたのでございますけれども医療とか農業とかそういうふうなことを今後においても考えていかれるおつもりですかどうですか、この点も念のために伺っておきます。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 今度のアメリカ側要請にも医療の点もございました。それから、この前に安保協議会があったときにも、アメリカ側から、非常に医療要員が不足しておるという報告もありましたが、その後ベトナム政府側から格別の要請もなかったので、日本側として具体的にそのことを考慮するというところまでいかなかったのです。今度の要請の中にはそういう点もございますが、これは、物を援助するということと違いまして、人間というのはなかなか問題でして、たとえば最近も長崎医大の先生をサイゴンにお願いして話がついておったのですが、まあ現地事情がああいう事情なんでしばらく差し控えたいというて本人が断わってこられた例もあるのです。したがって、何がこの時点で可能かということは、政府検討吟味してみないといけないと思うのでございます。日本としてはできることはひとつ前向きに考えてみようと思っておりますが、何ができるかという点は、各省いろいろ御協議いただかないと判明しないと思います。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私と外務大臣との違いは、外務大臣のほうは、何かあったら大いに援助していこうというふうな、非常に積極的な援助をするという気持ちなんですね。私のほうは、いまそういうふうな片一方の勢力を応援するというようなこと、しかもアメリカ要請もあってするというようなことはすべきでないという考え方に立って伺っておるわけなんですが、医療の問題につきましても、やはり医療に従事している人たちが今日の状況ではとても行く気はないと思います。行って公平な立場でそこに奉仕するというようなことならまた別でございますけれども、命をかけるような危険をおかしてまでもその中に飛び込んでいくというようなこと、そしてしかも意味がないというようなことをやる人はないと思うのです。したがって、医療関係に従事している人たちもこれに対しては非常に反対をしているわけでございますので、そういう問題は、やはり特にそういう反対があるということも考えておいていただきたいと思うのです。それから、どうしても物でやるということになりますと、直接間接にやはり軍事的な援助ということになるのじゃないか。ああいうふうな状態にある中への物資を送るということになると、軍事的な援助ということが多分に含まれるわけでございまして、そういう点も十分考慮をしなければならないと思うわけでございます。それらのことをずっと勘案してまいりますと、どうも今回のこの内乱といいますか内乱よりもっと大きくなったというふうに外務大臣はおっしゃいますが、そういうふうな中の巻き添えを食わされるような形の援助ということはどうかおやめになっていただきたい、こういうことを要請いたしまして、私の質問は終わって、穗積委員に譲りたいと思っております。
  32. 臼井莊一

  33. 穗積七郎

    穗積委員 いまの問題に関連しまして、まだ大臣の御答弁がどうも不明確で納得がいかないので、続いてお尋ねいたしましょう。  まず第一にお尋ねいたしますが、ベトナムに対して、いまのお話のように、特にいろいろな物資その他による経済援助をしなければならない、してもらいたいとアメリカは言ってきた、日本はしたほうがいいと考えるということについては、何か緊急なる理由があると思うのですが、それは、ベトコンとの戦いで政治的または軍事的に敗色の一途をたどって、もうくずれるかもわからぬ、総くずれになるかもわからぬという緊急事態が今度の要請になり、これを援助するというのが目的ではないのですか。他に理由がございましょうか。特にいまの段階援助しなければならぬという緊急理由はどこにあるのですか。どういうふうに日本の外務省は見ておるのかアメリカから要請があった場合に一体どういうことを理由にしてそういうことを要請してきたかそれを明確にしていただきたいのです。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 お断わり申し上げておきたいのは、穗積さんも御理解いただけると思うのですけれども日本アジア諸国に対する関係というものは欧米と違うと思うのです。欧米各国は場合によっては引き上げてもいいわけなんでございますけれども日本は引き上げることができないわけですから、やはり、アジア諸国とのつき合い方というのは、日本という国は便宜主義じゃいかぬと思うのです。都合がいいからとか都合が悪いからとか、そういう便宜的な視点に立って援助をやるとかやらぬとかそういう根性では私は日本アジア政策というのはできぬと思うのです。それはあなたも御理解いただけると思うのです。したがって、アジアの皆さんのしあわせを願う以上は、日本としても可能な限り援助していく、お役に立っていくという基本の立場、この立場は原則としてあるわけでございます。たまたまアメリカ援助要請があったからそれではひとつみこしを上げようか、そんなものじゃないのです。現にベトナムに対しましては現在研修生も百八十八名受け入れております。現に東京でも勉強されておりますし、日本から技術者も行って指導をしておるわけなんでございます。たまたまベトコン掃討作戦というのがあるから、それにからめて日本の対ベトナム政策全部をそういう角度から割り切っていくという、私どもはそういう狭い視野で考えていないわけでございます。ただ、戸叶さんの御質問にも申し上げましたように、いまベトナムでは何が必要かということを十分検討して、それで、日本援助要請をするということもなかなかままならぬような現地事情でございまして、その事情によく精通しているアメリカ側からもたらされたデータというものは私は吟味に値すると思いまして、それで各省と協力してこれはひとつ検討してみようと思っておるのです。これは、戸叶さんも御心配されましたけれども、軍事的性格なんか少しも持っておりません。農業の肥料であるとか種子であるとか農具であるとか水産の漁具であるとか、生産用の物、それから、小さいツール、手工工具であるとか、つまり、いまさしあたって生産のために、製造のために必要とするようなものというものがずっと列記されてあるわけでございます。そういうようなものは日本として一体可能かいなか十分吟味して検討して差し上げたいと思っておるわけなのでございます。ストラテジックにものを考えるというのでは決してないわけでございますから、その点誤解のないようにお願いしたいと思います。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねしているのは、そういう気持ちのことではないのです。具体的にこういう援助をしなければならなくなってきているというその相手国の必要さですね。最近の状況はそういうものをどういうわけで必要としているかということです。抽象的に、いまおっしゃるように、アジア諸国に対しては友好的にこれを援助しなければならぬという精神的な方針なり気持ちというものは、そんなことは何でもないことで、問題は具体的なことです。アジア諸国に対してはまんべんなく日本が始終援助しなければならぬ、援助するんだという無原則、無制限であるわけではないでしょう。特にいま南ベトナム政府に対してこういう援助をしなければならなくなっておる原因、事情はどういうことかということです。それを伺っているのです。アジア諸国とは隣づき合いだから、隣づき合いに対しては精神的にヨーロッパの諸君とは違うんだという、そういう基本の心がまえを伺っているのではございません。南ベトナム政府に対していまこの際こういうものを援助しなければならなくなっておる緊急な理由というものがあると思うんですね。特殊な理由があると思うんですね。その理由はどういう理由ですかということを聞いておるのです。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたは何でもないとおっしゃいましたけれども、われわれのアジア諸国に対する気持ちは、一番根本はそういうアジア国民に対する友情だと思うのです。それで……。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 それはわかっています。あなた以上にわれわれは友情は持っているんだから。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 したがいまして、そういう心がまえであらゆる場合に対処していかなければならぬわけで……。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 この場合はどうですかと聞いているんですよ。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 この場合は、ベトナムがああいう治安状況にございまして、国民が非常に困っておる状況にあり、いろいろな点に不足がちな状況でございます。何がどのように不足かというような点は十分把握できないような事情にあったわけでございますが、たまたま援助要請というような形で一応見当はつきましたので、その点を中心に日本として可能なものは拾ってみようと考えておるわけです。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 アジアの同胞、諸人民に対する援助というような美しいことを言われますけれども、この際はアメリカの不当な軍事干渉によるかいらい政権を援助するということです。人民が一体何を求めているのかそうしてまた南北ベトナム全体の人民の統一と幸福のためにどういう政策がいいのかということは、この際の日本政府援助とちっとも結びついていない。そうじゃなくて、アメリカは勝手に軍事干渉して、二度も三度もクーデターをやらして、そうして、かすかにその反共的な軍事の地歩を固めるために困ってしまったから、そこで各国に泣きついて援助をさせる、こういうことでしょう。大多数の人民の将来に対して何ら関係がないのです。アメリカの不当なかいらい政府援助する、それから、場合によれば、日本の、何といいますか 一種の権益を保護するという不当な干渉のきっかけになると思うのです。いかがなものでございましょうか。私は、いまおっしゃったアジア諸国に対する精神的友情なんというもので簡単に今度の問題を国民に納得させようということは、これは欺瞞だと思うのです。  その点はあなたはほんとうのことをおっしゃらないから、次に伺いますが、それでは、援助するについては、農機具とか医薬とかあるいはその他の物資等々、いろいろいま検討中だということですけれどもアメリカから要請のあったものは何ですか。
  42. 後宮虎郎

    後宮政府委員 商品といたしましては、トタン板とかセメントのような建築資材、あるいは肥料、それから手工具、小型発電機あるいは漁船用のモーター、そういうものもございます。そのほか農薬、種子でございます。それから、医療関係ではワクチン、そういうものでございます。それから、技術要員といたしましては、先ほど大臣が申されましたような医療関係、医者あるいは医科大学で教える教授、衛生技師、そういうようなものを言ってきております。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 いままで賠償日本が協力しておる。たとえば、いままでやりましたダンヒム発電所あるいはビーンホワの送電線、それからミーチュアンの橋梁、スチール・ミル、これらは純然たる経済援助だといいながら、実はこれがアメリカの軍事基地と結びついた必要な軍事的戦闘力を培養するために、すなわち、アメリカのかいらい政権の戦闘力を培養するために役立てられておるというので問題になっておるわけですね。  それで、いま伺いますと、これらの建設資材、セメントその他モーター、医薬は、これは民生に関係して軍事的性格はないように見えますけれども、一昨年、例の日赤を中心とする医療班を派遣しようとしたときに、これは従軍医療班になる危険があるというので、実は当事者の中にも強い反対があり、国民の中にも広範に反対があって、さたやみになった。だから、これらは全部そういうものに、戦闘力につながるわけです。いままでのものがそういう危険な実績があるわけですから、これはよろしくないですよ。民生安定なんというものではない。あるいは非常にコレラがはやったとかあるいはまた災害、水害があったとかいうことでいわゆる救援物資をお贈りしようというのとは違います。そういう性質のものではないのですね。客観的事実は、ベトコンに押しまくられて、これから雨季に入る、そうすると、ドゴールも指摘しておるように、どろ沼に入ってアメリカは抜き差しならなくなる、その窮余の一策としてこういう救援活動を国際的に始めたというのが事実だと思うのです。こういう物資というものは、これは明らかにもう戦闘力につながるものでしょう。そうして、日本のいままでのやりましたものを一種の権益化して、これを増強しようという考えでしょう。  続いてお尋ねいたしますが、品目がそういうことであるなら、アメリカ要請しまたは日本でこれから考えるということですが、大体援助の額はどのくらいに考えておられますか。もう一点はその条件です。これは有償ですか無償ですか。額と条件についてお尋ねをいたします。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 いま検討を始めたばかりでございまして、金額とか条件とかいうのはまだ申し上げられる段階ではございません。よく検討した上できめたいと思っています。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 アメリカからの要請は大体どういうことですか。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 金額なんかまだ示してありません。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 条件は有償か無償か。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 無償とかイージー・タームなローンとかいうものが望ましいとは書いてありますけれども、イージー・タームというのはどういう水準を言うのかそういうことは具体的に示してありません。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 アジア局長にお尋ねいたしますが、アメリカから、エマーソンですか 一昨日か外務省にやってきたでしょう。彼が口頭または文書でもって示しました内容をここで明らかにしていただきたい。援助物資の品目については大体こういうものという希望があったようだが、およその見込みは一体どのくらいに考えて、条件は有償を希望しておるのか無償を希望しておるのか、具体的にお尋ねいたします。ありのままをお尋ねします。
  50. 後宮虎郎

    後宮政府委員 いま大臣の申されましたとおり、具体的に金利が何分とか年限がどうとかいうことは全然言っておりません。イージー・タームの借款による商品援助、またはグラント・ベースによる商品援助、あるいは技術援助、そういうふうにごく抽象的に言いまして、そうして例示的に商品を並べたわけでございます。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 イージー。タームというのは、これは経済的にはどういう条件ですか。どういうふうに日本の外務省は理解していますか。
  52. 後宮虎郎

    後宮政府委員 長期・低利という意味だというふうに理解しております。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 それから、イージー・タームの次に大臣がおっしゃったのはプラントですか、ちょっとよく聞こえなかったのですが。
  54. 後宮虎郎

    後宮政府委員 グラント、無償供与です。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 グラントは、これはプレゼントですね。むろん無償ですね。それから、もう一つ種類はそれだけですか。イージー・タームとグラントと、それから……。
  56. 後宮虎郎

    後宮政府委員 その二つと、それから技術援助です。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 技術援助は有償ですか無償ですか。
  58. 後宮虎郎

    後宮政府委員 それは触れておりません。商品についてはグラントであるとかあるいはイージー・タームのローンであるとか、それと技術援助としまして医療技師とか衛生技師とか、そういうことを言っているわけです。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっとお尋ねしますが、一昨年医療班を派遣しようとしたときは、これは有償でやるつもりだったのですか無償でやるつもりだったのですか。サービスですか。いまの技術援助の一種ですか。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 いままで向こうへ技術者を派遣しているのは、みんなコロンボ・プランで日本がまる持ちでやっています。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、あとの第三の技術援助もそれで、日本まる持ちでやるという考えですね。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 やるとなればそうしたいものだと思います。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、これらの品目、わからぬのは額だけですが、ほとんど全部が無償援助になりますね。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 でございますから、いま検討中だ、こう申し上げているわけであります。いろいろ検討してみないとわかりません。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 いまのアジア局長の御理解では、アメリカの希望も大体無償援助が大部分ということで、どれとどれを、どれくらいの額をイージー・ターム、つまり長期・低利のものに組み入れるかということですけれども、第二のグラントははっきりしているけれども、第三の技術援助日本持ちの援助ということになると、大部分のものは無償援助で送る、こういうことになる見込みでございましょうね。
  66. 後宮虎郎

    後宮政府委員 一昨日申し入れを受けまして、昨日から検討を始めた段階でございますので、ちょっとそこまでパーセンテージはわかりません。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 パーセンテージはわかりませんが、多くは無償になる見込みでございましょう。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 外務省はお金を持っておりませんので、お金を持っておる実力者と相談しなければいかぬわけであります。まだ何とも申し上げられません。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 そんなあなた御答弁では困りますよ。案をつくるのは外務省じゃないですか。外務省の自主性で外交的判断でやろうというのですから、これは大体わかっているでしょう。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 私の気持ちとしては、技術援助はいままで日本がまる持ちでやっておる、もし可能なものがございますれば、従来の方法で送り出すということをやりたいと思いますが、商品援助につきましては、ああいう事情でございますので、どうしても無償が多くなろうかそう考えております。
  71. 臼井莊一

    臼井委員長 ちょっと申し上げますが、大平外務大臣が参議院の本会議にちょっと出なくちゃならぬので、二十分にここを去ります。その前に関連質問もございますから……。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点だけ、いままで質問したことについてお尋ねいたしますが、それを決定されます前には、重要な政策でございますから、委員会で報告していただいて審議の対象にしていただくことを、当然だと思いますが、あらかじめ伺っておきたいと思います。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 こういう問題は、政府がよく検討しまして、政府の責任で処理いたしたいと思いますが、その結果は国会に御報告するのは当然だと思います。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから、さらに総括してお尋ねいたしますけれども南ベトナムにおける状況は、アメリカがクーデターまたクーデターをやって、かいらい政権を次々につくってみても、人民はさっぱり救われない。国民の一握のかいらい政権の買弁勢力南ベトナム政府と称しておるだけであって、人民の大多数、地域の大多数というものは、御承知のとおり、ベトコンというものが四分の三ないし五分の四も、もうすでに大勢を占めつつある。したがって、前に経験のあるフランスですら、もうすでに、この行率先は明瞭である、こういうばかばかしい国外のむだな反共戦線を継続することは、自由主義諸国のたてまえからしても、アジアにおける諸国立場から見ても、またベトナム内における人民の将来から見ても、最も愚策である、愚策の愚策である、したがって、これらを早く見切りをつけて、そして中立政策を早く確立することのほうが、すべての本国人並びにその他のアジア諸国にとって望ましいことでもある、ヨーロッパ諸国にとっても望ましいことである、こういう態度をとっているわけです。これは私は一考に値する提案であると考えております。そういうことでありますなら、さっき言ったように、今度の原因は、コレラがはやったとか長雨で洪水で死傷者が出たとかあるいは遺族が出たとかそういうことで臨時の援助ではないのです。さっき言ったように、アメリカが不当な軍事干渉をやってかり立てかり立ててかいらい政権に戦わしてみたけれども何ら効果がない、それで困り果てて、ここで全面敗退して引き下がるか、最後の手としてNATO、SEATOに——もうすでに日本に言ってくるなんというのが不届きなんで、SEATOの仲間だと思っておるからこういうことになってくるのです。そういうことでNATO、SEATOの軍事同盟諸国に最後の協力を求めておるというのがこの問題ですよ。そんなばかばかしいことに——日本はすでに大陸であれだけのばかばかしいどろ沼戦争をやった経験があるので、外交上は、その点先進国ですから、ひとつ、アメリカのもの知らずの対後進国外交政策というものに対して、このベトナム問題を解決するにあたって、フランスとの間で話し合いをしながら、あなたはこの間友好を深めたのだから、話し合いをしながらこの問題に対して積極的な大きな解決策というものを打ち立てて、南北統一の立場に立ってこれを促進すべきであると思う。それをやらずして、あなた、アジアの外交なんというものを、そんなものをだれが信頼しますか。あなたはさっき、アジアにおけるアジア外交の自主性、アジア外交の友情ということを強調されたでしょう。私に説教したじゃないか。それをほんとうにあなたが考えておられるなら、こんなばかばかしいどろ沼戦争で、汪兆銘政権に武器を送るような、そういうようなことを繰り返すようなばかばかしいことはやめて、早くやはり本来の民族の統一と独立、そうしてアジア諸国との間における平和政策を打ち立てせしめる、これが自主独立のアジア政策じゃありませんか。ドゴールの中立政策についての外務大臣の御所感を伺って、私の質問は留保しましてまたあらためてお尋ねいたしますが、きょうはそれをお答えいただきますようにお願いをいたします。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 ベトナム政府がどういう国の援助を求め、国際的にどういう立場をとって平和を回復するかということは、ベトナム政府の問題でありまして、私どもがとやかく申し上げる性質のものではないと思います。ただ、いま御指摘の中立化政策につきましては、まだ世界各国の中でこれを支持する国が少ないということ、それから、中立化政策を主張しておる当のフランスといえども、今日のアメリカがやっておる政策を全的に否定しているものでもないと承知いたしておるわけでございます。私どもといたしましては、こういう非常に不幸な事態が起きておりますけれども、これを各国の努力によりまして収拾する過程を通じて平和が回復されるということを期待いたしております。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ不満足ですが、またこの次にいたします。      ————◇—————
  77. 臼井莊一

    臼井委員長 次に、大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約の締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  穗積七郎君。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 いま議題になっておりますのは、御承知のとおり部分核停条約の問題でございますけれども、実は外務大臣とも一緒にお尋ねしたいのだが、いまの事情でまだ御出席がないようですから、まず防衛庁長官だけに技術的な点でお尋ねしておきましょう。  第一に、アメリカは、この条約を結びました後に、これはソ連もイギリスもそうだと思いますが、あの程度に進んだ核保有国は、これから核兵器を開発するにあたっては、もう空中、水中における実験は不要だ、地下実験だけでこれが目的を達し得るのだということを国会でも証言しておる。ですから、これは間違いなかろうと思うのです。ところが、これから開発しようとしておるたとえばその他の国々、フランスをはじめとするこれらの国々の実情、または、これに参加しておる、これから参加しようとしておる百六の諸国、これらの諸国が核兵器を開発しようとする場合には、地下実験だけでは初歩からの開発は困難ではないかあるいは不可能ではないかと言われておるわけですが、この点についての技術的な立場に立って防衛庁の御検討はどういうことになっておりましょうか。
  79. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 このたびの部分的核実験停止の条約の趣旨は、御指摘のとおり、アメリカにしましてもソ連にしましても、すでにオーバー・キルの時代に入っておりまして、大気圏の実験は必要を認めないという考え方は、確かにその背景にあったと思います。なお、その他の国は、御承知のとおり、フランスはまだ非常に執拗に今後も核兵器の装備強化について熱意を持っておるようでございます。ただ、最近の情報によりますと、ミラージュが積んで原爆をやる、ことしの夏ごろに五十機ぐらい考えたようでありますが、原爆の型が大き過ぎまして不可能だとわかり、大体専門家によると今後三年くらい延びるのではないかということを言われております。なお、その他の国としては中共でございますが、これもいろんな報道があります。最近の陳毅外相の英国新聞記者団に対する発表を見ましても、核実験そのものはやはり従来の観測どおり一、二年の以内になし得るのではないかしかし、核装備するにはなお相当かかる、また、ソ連との確執の影響も受けまして、そのおくれ方も相当幅が広くなり、従来数年と言われておりましたけれども、おそらく十年くらいはかかるのではないかこういうことが言われております。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、技術的に見ましても、フランスをはじめとするその他の諸国がこれから米、英、ソ三カ国に核兵器開発について追いつくためには、あるいはまた兵器でなくても核の開発ですね、その場合にはやはりまだ技術的に見て空中または水中における実験を必要とする段階である、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  81. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 フランス、中共等はやはりそういう考え方を持っておるのではないかと推測いたしております。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは防衛庁長官であるとともに外務省出身で条約についても正確な御理解を持っておられるわけでしょうから、お尋ねいたしますが、日本をはじめとする百六のあとから追加いたしました参加国ですね。前の三カ国は別として、あとのこれらの国々は、この条約に入ることによって、条約のたてまえからいくと、核の製造、それから地下における実験、保有、それから戦争が起きた場合の使用、これだけは合法的に参加国は認められることになりますね、その正当性が国際的に認められることになりますね、日本を含んで。そう理解すべきだと思いますが、いかがですか。
  83. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 これは外務省の条約局長のほうから答弁いたさせます。
  84. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 実験のうちの地下実験以外のものが禁止されるというだけでございまして、それ以外の核兵器関係のことについてはこの条約は全然触れておらないのでございます。ただ、これが端緒となって将来核兵器のすべての実験的爆発の永久的停止を目ざすという趣旨のことが前文には終局の目的としてうたわれておるわけであります。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことを聞いておるのではないのです。何をあなたは答弁しようとしておるのですか。これは前文は目的ですよ。これは、中国を含むどの国だって、どの思想を持つ国だって反対は一人もない。戦争をしたいというやつ以外にないですよ。日本で言えば素心会の人以外にないわけですよ。ところが、そうじゃなくて、この条約において規定された権利義務というものは、地下を除く実験だけを禁止しておる規定にあるわけです。したがって、そのほかの製造と地下実験と保有と使用、これは合法的にジャスティファイされる結果になるということです。
  86. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 これこれのことが合法化されるということば意味でございますが、普通にはこれは従来禁止されておるとか合法でないものが合法になるというので、合法化なので、私は、そういうことには触れないでこれだけのものを禁止するというだけであるということを前段に申し上げたわけでございます。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 これはあなた違いますよ。これはあとで伺おうと思っておるのですが、多数国間の条約における相互間の権利義務関係というものは条約に明確にしておかなければならない。こんな前文の抽象的・理想的目標、これが条約参加国の間における権利義務であるかのごとき説明をしてごまかそうとしておる。そういうことはいけないですよ。多数国間における条約として、とにかくここで条約を結ぶ以上は、政治上でなくて条約土相互間に権利義務関係というものができるわけですね。そうでありますならば、原締約国以外の百六カ国もこれに参加することによって同様な権利義務関係というものが生ずるわけです。それを聞いておるわけです。それによって合法的なものとして認められる結果になるということです。
  88. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 さっきから申し上げておりますように、この条約は特定の実験を禁止しておるだけでございまして、この条約に基づいてこの条約に規定してある以外のことが合法化されるという関係はないのでございます。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことはありません。禁止されざるものは、非合法ではなく、すなわち合法的ですよ。自由な権利は全部合法的です。法律によってジャスティファイされているんですよ。私がだれと結婚しようがだれから借金しようが、これを踏み倒したり詐欺をしない限り合法的に認められているんですよ。法律行為です。事実行為であるとともに、その事実行為は法律行為であるのだ。非合法でない法律行為はすべて列挙主義じゃありませんよ、法律に禁止されていない自由なる行動というものは、その事実行為というものは合法的に成立した行為として認められるのが当然でしょう、権利義務関係としては。そういう法律解釈でごまかそうというのはおかしいですよ。あなた、前文の大目的だけで一切縛っちゃって文句は言わせないというような審議のしかたは、特に条約局長がそういうことを言われたんでは、大臣が言われるならまだしものこと、条約局長が言われるのはおかしいと思う。一々禁止していないものが、これが認められる。ここに禁止規定があるんですから。
  90. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私も何もたとえば核兵器の製造が現在合法であるとか違法であるとかいうことを申しているのじゃなくて、むしろ、違法であるという実定国際法はできてないと言ったほうが正しいと思うわけであります。ただ、そういうことに触れていないからといって、この条約の力でそういうものが合法化されていると言うのは飛躍ではないかと申し上げておるわけでございまして、むしろ、この条約は、そういうものを合法化するという趣旨じゃなくて、そういうものもほんとうは禁止したいのだけれども、ここではこれだけのことしかできなかったという趣旨が前文にうたわれているということを関連で申し上げているわけでございます。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 この条約ができましてからアメリカは四十二回地下実験をやっておる。これは合法的なものですか違法なものですか。
  92. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 この条約では禁止されていないわけでございます。四十二回というのはちょっと不正確で、たしか二十二回かだったと思います。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 回数は間違っておったら訂正してけっこうですが、四十二回でも二十二回でも、とにかく同じことですが、これの条約のたてまえから見ますと、空中、水中が禁止規定がありますから、したがって、あと許されておる地下実験をやった、この行為は一体合法でも非合法でもないということですか。私はこの条約のたてまえから見れば合法行為であると思うのです。
  94. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 さっきも申し上げましたように、現在の実定国際法上からは違法とは占えないだろうということを申し上げたわけでございます。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 違法でないものは合法ですよ。違法でない自由なる事実行為というものは、法律的に見て合法です。違法でないものは合法なんです。いいですか、これは法律の法理論として当然なことじゃありませんか。禁止規定で列挙された場合に、それ以外の自由行為という事実行為というものは、契約にしてもあるいは事実行為は全部これは合法ですよ。
  96. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 いまのこの条約に禁止されている以外のことは、この条約ができたことの効果としてそうなったのかそれとも実定国際法上そうなのかという論点の違いでございまして、実体の認識においては私と先生と別に変わりはないと思います。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 防衛庁長官の御所見をそれについてちょっとお聞きしておきたい。今後これに参加することによる国際的な日本の防衛力増強計画に関する合法性の問題。これは大事ですから。国内の政治方針は別ですよ。国際的こ……。
  98. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 わが国が一貫して核実験の禁止について非常な熱意を示しており、国会においてしばしば決議をされておる、こういう精神から申しますと、このたびの条約の加盟ないし批准はまことに私は喜ぶべきことではないか将来は全面的な核兵器の国際管理まで私どもは持っていきたいという理想を持っております。一歩前進であります。きわめて有意義であると考えております。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 もう一つ技術的に防衛庁長官に時間がありませんからお尋ねしておきたいと思うのは、例の査察ですね。全面禁止に至るための障害、すなわち口実の一つに使われておるのが査察ですね。査察は、いまの技術からいきますと、一々他国の領土のうちにスパイ的な査察班が入らなくても、各国における実験というものは把握できるのじゃないでしょうか。その核兵器における技術水準のことをちょっとお尋ねしたいと思います。どういう段階になっているか。
  100. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 査察の問題は、私ども聞いている範囲では、この部分的核実験の禁止条約の場合でも、たとえば地下爆発については、ソ連がまだきわめて実験が少ない、まだやる必要がある、アメリカもこれを続けたいという話がきまっておるようでありますが、この間において査察については双方ともまだ難点があるようであります。一方、航空機の発達その他でいろいろな意味から昔のようにあらゆるものを機密に置いておくということはだんだん困難になってきたことは、これは事実だと思いますが、当事国としましては、特にソ連などは査察に対してはやはりきびしい態度をとって注意をしておるというのが現状のようであります。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点は、例のアメリカの原子力潜水艦の寄港問題ですが、これは、その後のわれわれの手にしている報道では、アメリカの原子力潜水艦というものはほとんど核武装をする段階になっているようです。その真否は別といたしまして、せんだってから要請されておりました原子力潜水艦の基地化、すなわちわが国への寄港問題は、その後どうなっているのか今後どう処理されるつもりであるか、それを一点伺っておきたいと思います。
  102. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 原子力潜水艦のわが国寄港問題は、事外交的な問題でございまして、外務当局からお答えさせていただきたいと思います。
  103. 臼井莊一

    臼井委員長 永末英一君。
  104. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官の出席を要求しておりましたが、非常に時間が短いので、もし十分に御回答がなければ、もう一度ひとつ出席要請をしたいと思います。  私どもは、この部分的核実験停止条約について、いままで政府の説明はこの条約の前文にあらわれている目的あるいは決意というところに重点を置いておられますが、現実の世界が核戦略時代になっている場合に、どういう意味合いでこの条約を締結するに至ったかについての特に原締約三カ国についてはっきりとした防衛上の方針を明確にしておかなければ、まぼろしを追って非常に不分明なままでこれを認めることになる、このことを心配いたします。そこで、そういう観点から、特に防衛庁長官に、一体日本の防衛当局としては、これらの特に三国やその他核保有国になるであろうと思われておる国々の状態についてどういう現状分析をしておられるかそれを私この委員会において明確にしていただきたいと思います。  第一はアメリカでありますけれどもアメリカ側がこの協定を結ぶにあたって現在アメリカの核戦略について一体どういうような判断をしておるか、つまり、この条約で禁止していない事項についてはどういう準備をしておると防衛庁はお考えかこれを伺いたい。
  105. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 アメリカのいままでの考え方並びに現状でありますが、これは一月二十七日のマクナマラ国防相の下院における証言に相当具体的に明らかにされておると思うのです。すなわち、彼は、すでにアメリカとしては十分以上の戦略核兵器を保有しておる、米ソがともに核兵器を使っての全面核戦争が行なわれることはまずあり得ないことである、これは人類の滅亡を意味すると彼ははっきり割り切っておる。したがって、アメリカの現在の戦術、戦略のおもな対象は、中規模以下の戦闘、中規模以下の武力衝突、これが重点であると彼は言っております。私どもいろいろなデータを見ましても、すでにアメリカは九百億トンの破壊力を持っておる。ソ連がその二分の一ないし三分の一と言われておりますが、これを第二次大戦中にアメリカが全世界に投下しました約四百万トンの爆弾に比べますと、天文学的に飛躍しておる。したがって、相手方を倒すために必要な核破壊力の数倍を米ソともに持っておる、もてあましておるというのが現状ではないかこう私ども考えております。
  106. 永末英一

    ○永末委員 いま防衛庁長官の言われましたところで、二点いささかわれわれの考えている現実認識と違う。第一点は、核兵器をたくさんつくり過ぎてもてあましておるからこの条約を結んだのだ、こういうことではないと思うのです。つまり、核兵器はたくさんつくってみたけれども、これ以上つくることによってアメリカの安全性が大きくなっていくという判断をしかねる、こういう表現でなければ正確でないと思うのです。第二には、しかしながら、もしアメリカ側が核兵器による一撃を受けても、アメリカがいままでたくわえてきた第二兵器力によって、アメリカの安全はたとえ大幅に破壊されていようとも、敵に対してせん滅的な打撃を与えることができる、したがって、その準備はされておるから、これ以上の大気圏、宇宙圏、水中実験は不必要である、こういう判断に立つ、しかしながら、地下実験については、これを続けていかなければ、いま開発しつつある、これから開発しようとするものに対しては不十分である、だからこれはやっていく、こういうことであって、そういうことと切り離して中型、小型の戦闘にのみアメリカがこれから用意をすればいいというようなことは、マクナマラ長官は私の知る限りではアメリカ議会における証言で一つも言ってないとわれわれは承知しておりますが、あなたはどう思いますか。
  107. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 アメリカの現在の現況という意味で御質問がありましたので、お答えしたわけであります。条約との関連においては、御指摘のとおり、いわば必要がなくなったということが一番大きな原因でもあり背景であろうと考えます。なお、マクナマラ国防相の証言でございますが、前年の十一月にニューヨークで、エコノミスト・クラブでありますかやはり同じような演説をやっております。そこでもはっきり言っていることは、後の下院の証言と同じ趣旨、すなわち、米ソ間の全面核戦争というものはもう考えられないのだ、むしろわれわれは中型、中規模以下の戦争状態について十分な検討をしなければならぬ、彼はそういう考えを明らかにしておる。したがって、初めはいわゆるボタン戦争的な核兵器でお互いに撃滅すると考えていた考えがだんだん修正されて、攻撃をいたしましても相互に非常な打撃を与え合う、最終的な勝利者というものはあり得ないというのが、米ソ間の首脳部の考え方ではないか、私はそう考えております。
  108. 永末英一

    ○永末委員 マクナマラ長官の証言によれば、むしろ大規模な戦争がこれでなくなると期待してはならぬということを言っておるとわれわれは考えておる。つまり、再三繰り返して、これによってそういう大規模な殺戮戦争というものがなくなるような幸福感に酔ってはならぬということを警告しておるとわれわれは承知しておるが、福田防衛庁長官の御認識はいかがですか。
  109. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 もちろん、あの表現自体から見れば、あくまで米国としては防衛努力について軽視してはならない、これははっきり言っている。ただ、しかし、あの表現の中にも言っておりますように、米ソの全面的核戦争というものをいまのところ考えてはいかぬし、また考えられないということを、並行して彼は論じていると思います。
  110. 永末英一

    ○永末委員 もう一つ大きな理由は、いわゆる要撃ミサイルの開発についていまのところナイキ・エックスの開発をやりつつありますけれども、これはマクナマラ長官の表現ですが、あと数年はかかるのであって、これはいま実験に訴えてやることは非常に困難である、こういう技術的段階に立って、これ以上大気圏ないしはこの条約に禁止してあるようなところでの実験を続けてみても短期間に目的を成就することはできない、そういういわば核兵器に対する防御上の技術の未熟さというものが、この条約を締結せしめたもう一つの大きな原因であるとわれわれは思いますが、あなたはどういうふうに考えますか。
  111. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 御質疑の点、確かにそれが原因であろうと思います。
  112. 永末英一

    ○永末委員 もう一つの問題は、いままで政府の説明によれば、何かこれで核兵器の拡散が防がれるようなニュアンスを御説明になってきたように思いますが、これによって、他のいままで保有してない国々に実験の援助が送られることもなくなり、あるいはまた条約に署名をした国々では地下実験を除いて実験が行なわれなくなる。したがって、それぞれの国が保有する核兵器の拡散が行なわれるという状態はどうなるかしれませんが、たとえばNATOの多角的核戦略の構想にあらわれているように、現在ある核兵器については拡散をしようという意思が現実にあり、またそれをめぐっていろいろなことが行なわれている。防衛庁長官は核兵器の拡散というものはこれによって大いに阻害されるとお考えかどうか伺いたい。
  113. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 核兵器の拡散の問題は、二つの逆のいわば矛盾した傾向が同時に動いているのではないか。一つは、いまお尋ねのとおり、いわばこれ以上分散してはならないという考え方、これは米ソも英国もそのようであります。同時にまた、英国の核兵器がNATOの管理下に置かれたことも一つのあらわれではありますが、同時に、逆の傾向としては、フランスなり中共がいわば国際政治力の背景としての核兵器保有という意味もたびたび強調しております。この条約につきましても、フランスも当分入るまいというのが大体の見通しで、中共も、これは世界の人民大衆を欺瞞したものであって一部の強大国の独占を認めるものだということをはっきり言っております立場から言いましても、やはり自分たちも持ちたいんだという考えを捨てないと思います。したがって、分散をきらう傾向、また実験分散をとめようとする流れと、同時にまた、一部では持ちたいという一、二の国がある。この二つの逆の現象がありまして、まだはっきり言えませんが、私ども立場から言えば、分散はあくまで避くべきであって、一日も早く何らかの話し合いあるいは協定によって国際管理下に置くことが正しい、そういう希望を持っております。
  114. 永末英一

    ○永末委員 希望と現実とは非常に違うのでありますが、逆に今度はソ連側がなぜこの禁止条約に賛成をしたか。いままでこの程度のものではいかぬと言っておったソビエトが反転をしてこれに賛成をいたしました。賛成の理由は、八月二十一日のソビエト政府が中共政府に送った声明に理由が書いてありますが、防衛庁長官は、防衛上の見地から、ソビエトが賛成をした理由をどうお考えか伺いたい。
  115. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 これは、先ほど申し上げたとおり、ソ連自体アメリカを核兵器によって撃滅する核戦力のすでに何倍かのものをつくり上げて保有しておる、したがって、大気圏の実験については、アメリカと同じような立場で、その必要がないということが背景であろうと思います。ただ、地下爆発は、アメリカから見てきわめて大切であり、今後もやらなければならないということは米ソ間でやり取りがあったようでございます。したがって、ソ連としては、そういう考えで、アメリカと同じような共通の利益、共通の原因が存在しておった、そう考えております。
  116. 永末英一

    ○永末委員 私は、アメリカ側とソビエト側とにはいささかやはり戦略上の違いがあると思うのです。その違いは、たとえアメリカ側が第一撃を受けても、生き残るであろうという核兵器は、これは相当多くのものが残るであろう。これは、ポラリスにしろ、ミニットマンにしろ、そういうものの数を考え、配置を考えれば、容易に想像できると思います。ところが、ソビエト側が第一撃を受けた場合にはそうではない。しかし、ソビエト側の核戦力の問題は、いわゆる最小限抑止論といいますかつまり大都市核爆撃を行なうという機会が起こり得るならば核兵器を持っている実益は残るのだということで、もちろん経済的な理由もありますが、これ以上の大気圏等の実験をやめてもいい、アメリカ側とは相当な開きがあってこういうことをやったと思うのです。しかし、ともにこの時点でこの条約を締結するに至ったのは、やはり、ソビエトもアメリカも、核兵器を他国につくらせまいという、いわば独占の意図というものがこの二つを合意せしめた一番大きな有力な契機でなかったかと私は思うのですが、防衛庁長官はどう思われますか。
  117. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 一番大きいかどうかは別でありますが、やはり、分散させまい、いわば独占のもとに強力な発言権なり戦力を保持したいという気持ちは確かに共通だと思います。ただ、供給力の問題は、いささか私は考え方を異にいたしておりまして、ソ連のここ数年の動きを見ておりますと、いままでの地上軍を中心とした陸軍的な軍事国家から、海洋軍事力のほうに非常に努力してまいりまして、現在潜水艦も世界一でございます。四百隻を優に越している。原子力潜水艦も、極東その他に配して、猛訓練をしていることも御承知のとおりでございます。ポラリスその他のアメリカのいろいろな報復力、あるいは残存報復力と申しますか、第二戦力と申しますか、これに対抗するものとして、ソ連自体も、地上ミサイルのみならず、海洋方面において非常な努力もしておる。この点は私はむしろアメリカとも似ておるのではないかという感じをいたしておるわけであります。
  118. 永末英一

    ○永末委員 同じ種類の兵器を開発しようとすれば、その使用も同じようになってくるし、発達、開発の程度の違いはだんだん縮まってくる。しかし、いま差がある現状においてなぜこれを合意したかということは、もう少し突き進んだ見解を防衛庁としては持っていなければならぬのではないか。たとえば、海洋戦力が充実してきた、こうおっしゃいますけれども、その海洋戦力の実体なるものは、たとえばアメリカのボラリスと同等のものを開発して持っている現状ではないのである。むしろそれを理由にして防衛庁が海上自衛隊の装備を考えていくということであれば、そういう判断の上にそれをやっていくというのであれば、私は間違いが出てくるという感じがいたしますが、それは別といたしまして、先ほどイギリスの実立場をおっしゃいました。しかし、イギリスがいま第三の核保有国として現実に独自の核弾頭は持っておるけれども、これを運搬する用具については、いろいろ経緯の結果、ついに断念をして、ほとんど断念をして、アメリカのポラリスに依存しようとはかっております。しかし、あなたは先ほど、なぜにイギリスがこの核兵器の——あとはことばがよくわからなかったのですが、まかせるというような意味合いのことばがございましたが、イギリスは、その場合でも、自分のイギリス国家の致命的な利害関係が問題になる場合には、その使用については自分の権利を留保する、こう言って、やはりその限りにおいては核兵器の独自の所有、使用ということについての最後の一線は譲ろうとはしていないのです。したがって、核保有国であるイギリスがあのような狭いヨーロッパにおいてすらなおかつ独自の核戦力を自国に保有しようというのは、裏を返せば、この条約は他国に対する拡散を何としても防ぎとめよう、こういう趣旨のあらわれではないかと思いますが、どう思われますか。
  119. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 英国は現在アメリカの大体百分の一程度しか持っておらぬわけでありますが、核兵力の第一戦力の分散についての考え方は御指摘のとおりであろうと思います。
  120. 永末英一

    ○永末委員 そこで、問題は、すでにこの条約に加盟をしているこれら三カ国の核保有国のほかに、フランスが核を保有しておりながらこの条約に参加をしていないということであります。このフランスの方針は、メスメール国防相の声明にも明らかなとおり、やはりフランスが独自の核戦力を持たなければ自国の安全が脅かされる可能性が残るのだ、こういう判断が最終的にこの条約に加盟をしない態度を持たせている原因だと私は思います。あなたもそう思われますか。
  121. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 そういう点も確かにあろうと存じますが、もう一つ大きいのは、やはり、ドゴールが政権を取った直後発表した彼の核兵器に対する基本的な構想だと思います。すなわち、彼が政権を取った直後にいわゆる三つの政策を発表しました。その中の一つで、われわれフランスは大国である、いままでアメリカが原爆製造に成功したのもフランスの優秀な物理学者その他の協力があってこそであるが、その後何らの情報もよこさない、われわれは独力で大国民の実力を示して原爆をつくってみせる、また保有することが今後の欧州並びに世界に対するフランスの国際政治的な発言力の大きな裏づけになると彼は断言し、また、その方向で努力してまいって、一部成功しておるわけであります。したがって、そういう大国意識と申しますか、並びにアメリカその他に対する独自の核兵器に対するいままでのいきさつ、感情、そういうものを見のがしてはならないと私は思います。
  122. 永末英一

    ○永末委員 ドゴールさんは大平さんのことばをかりると神秘的な人だそうですが、そういう大国意識ではなくて、やはり、せっぱ詰まった、自国の安全というものについて真剣に考えているのだと私は思います。たとえば、メスメール国防相のことばをかりますと、欧州の存立するためにも、欧州がみずからの防衛の重荷と責任を引き受け、そのために核兵器を保有せねばならないであろう、こういう見解を披瀝しておる。つまり、こういう見解が残っておるというのは、この条約が調印され、進んでいきましても、独自の核兵器を生産しよう、その生産の成果を問うためには実験をしよう、こういうものが残ってくるということがはっきり事実だということを予定してかからねばならぬ、私はそのように思うのですが、あなたはどう思われますか。
  123. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 先ほどお答えしましたとおり、そういう点も確かにございますが、同時にまた、事核兵器に関しましては、対米あるいは対英との関係上対立という気持ちを多分に持っておるということも、私どもは見のがしてはならないと考えております。
  124. 永末英一

    ○永末委員 フランスのことはわれわれ日本には直接の関係はございませんが、そういう一つの発想法でこの条約に参加をしていない国というのは、お隣に北京政府というものが現存しておるわけである。先ほど、北京政府が企てようとしておる核戦力の保有についての一応の見通しを防衛庁長官の口から申されましたが、見通しがそうであったら、一体、日本政府は、防衛庁は、その北京政府が核戦力を保有するに至る過程においてどうやればいいとお考えですか。それを伺いたい。
  125. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 防衛庁としましては、核兵器を持たないということが基本的な鉄則でございます。問題は、すぐ目の前にある隣国の強大な中共という国がたとえ十年後あるいは何年後にいたしましても核装備しようという意図を示したことについては、当然無関心ではあり得ません。ただ、われわれの核兵器を保有しないという鉄則から考えまして、現在のところは日米安保体制という共同防衛の基盤に立ってアメリカの抑制力に期待する、これが私ども考えであります。
  126. 永末英一

    ○永末委員 この前の委員会で大平外務大臣は、安保条約の効用を、突き進めて言えば、アメリカの核のかさを借り得る、こういうところにあるような発言がございました。同様な発言をいまあなたがやられた。私は先ほどイギリスやフランスの例を申し上げた。しかも、中国がソビエトとの確執をした一番大きな理由一つとして、核兵器製造に関してソビエトが一方的にその援助をやめたということを大きく取り上げております。そこで、その理由はどこにあるかといえば、核兵器というような非常に強大な殺戮兵器を自国が持たない場合に、自国の安全について政治的指導者は自分の国民に対して一体どこまで責任を全うし得るかという判断が各国の防衛担当者の脳裏にいつも去来していると私は思うのです。ところが、わが国の防衛担当者は、安保条約アメリカは必ず核のかさを貸してくれるであろうという意味合いの発言を国会でされておる。あなたはあくまでそれをお信じになりますか。
  127. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 核装備をした国に対して核兵器を持たなければ対抗できないという考え方は幼稚であろうと考えます。やはり、あらゆる国際情勢、客観的な保障の体制を固めていく以外は日本としては私は無理ではないかと思うのです。したがって、現在の観点から言えば、日米安全保障体制という構想によってアメリカの核兵力抑制力に期待する、これは態度を変えておりません。
  128. 永末英一

    ○永末委員 私は、わが国が核兵器を持てなどということは一つも言っていない。たとえば中共が核兵力を持つに至る時期に、日本がなおかつ日米安保条約があればその中共の核兵力の脅威に対してその部分だけは安全だというたてまえで日本の防衛方針を進められるのですか。フランスもイギリスも、ドイツですら、NATO諸国全部そうでしょう、アメリカが独占をしておる核兵力に対しては全面的に信頼をしていいかどうかその判断については迷っている現状で、日本の防衛庁長官は一つも迷いはない、こういうことですか。
  129. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 アメリカとNATOとの微妙な内部的ないろいろな矛盾あるいは対立が最近特にいろいろな点で目立っておるようでありますが、私ども立場から言えば、安保体制というものは現時点においては日本の安全と独立とを保障する一番いい方法であると考えております。  なお、中共との関連においてどうだというお尋ねでありますが、先ほど申し上げたとおり、装備するにいたしましても、とうてい数年ではなし得ない。相当遠い未来の問題でございます。現実の脅威となるまでには相当長い時間的な余裕もございます。現在の時点におきましては、日米安保体制、これで十分保障し得るとわれわれは考えております。
  130. 永末英一

    ○永末委員 あなたが現実に防衛を担当されるのはごく短期間かもしれません。中国が核兵器を開発するのは相当未来のことかもしれません。しかし、日本の防衛体制も一朝一夕にしてなるものでもなく、相当長い準備をしなければならない。その場合に、アメリカがこの核停条約を調印した時点に立って一体どういう戦略を考えているか、あなたがどう思っているかを私が当初に質問したのはそこにあるのである。アメリカ側は、ソビエトが直接にアメリカに向けて核攻撃を加えてくることを計算しておるはずです。その計算の上に立って、なおかつ、地下核爆発を除いてこれ以上新しい核実験はしなくてもいいという判断をしておると私は思う。  それならお尋ねいたしますが、安保体制というもので、いまのような核戦略時代に日本は一体アメリカに何を寄与しているとあなたはお考えですか。十年前や五年前ではございません。これからです。何を寄与しているとあなたはお考えなのか、あなたのお考えを聞きたい。
  131. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 具体的にあるいは数字的にというのはお答えするのに非常にむずかしいことでありますが、総合的に言いまして、共通の利益と申しますか、共同の安全に相互に寄与し合っているという考えでございます。
  132. 永末英一

    ○永末委員 そういうあいまいなことを言われるから、日本国民は一体日本の防衛はどうなんだということがよくわからない。わからないから、あなたのほうがいかに自衛隊の隊員の募集をされても定員充足すらできないということになっているのです。そんな問題はほうっておいて国防省だと言われても、国民の世論がすなおに受け入れるかと思うのです。その前に、相互の利益と言われるが、私の判断するところでは、安保体制のできたころは、核兵器を戦略爆撃機に載せ、そうして、日本の場合、太平洋側から共産圏にアメリカの飛行機がそれを載せて飛び得る範囲内に基地を求める、その用に日本の列島線が供せられたと私は判断するわけです。しかし、いまや戦略爆撃機による核兵力の行使というものの比重は非常に少なくなっている。それならば日本の列島線で軍事基地特に航空基地をアメリカに与えておるところの安保条約というものの意義が変わってくるのではないかと私は思いますが、あなたはそう思われませんか。
  133. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 兵器の発達その他いろいろな科学の長足な進歩で、刻々と防衛体制なり戦術が変わることは、御指摘のとおりであります。しかし、総合的な立場から申しまして、在日米軍の存在ということは、日本の安全保障の上でやはり欠くべからざるものであります。現在のわれわれが持っている航空自衛隊のみの戦力ではとうてい日本の領空の防衛は困難である、そう考えております。
  134. 永末英一

    ○永末委員 どうも直接のお答えがないようでございますが、私どもは、それぞれの軍事基地、たとえば航空基地にしろあるいは港にしろ、どういう兵器を使うためにその航空基地が必要であり港が必要であるかこういう物理的な技術的な理由があると思うのです。もし防衛庁長官が日本国民日本の防衛を知らしたいというのなら、そういう具体的な事実を国民に知らさなければ、単に国を守れなんて言ったって、どっちを向いて守るのかすでに占領されているではないかという意見もあるのであります。したがって、そういうようなことをはっきりさせなければならない。しかも、この核実験停止条約が結ばれたというのは、核戦略がある段階に来て、一つの転機だとわれわれは判断する。その転機をつかまえて、いまのような防衛の問題を国民に知らさぬということを押し通していくのではなくて、この機会にひとつ、この条約の持っている意味合い、これを防衛庁としては国民に明らかにする御用意はございませんか。
  135. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 この条約の持っている意義については、冒頭においてお答えしたとおりであります。全面的な核実験禁止への一歩前進である、非常に意義もあり、また喜ぶべきことであると私は考えております。この点は最初に申し上げたとおりでありまして、この条約に対するわれわれの考え方は変わっておりません。
  136. 永末英一

    ○永末委員 私は、だからあなたに特にこの委員会に来ていただいたのです。総理大臣とか外務大臣がそう言われるなら、そういう立場かもしれないと思われる節もないではございません。しかし、防衛庁長官は、そういう目的ではなくて、現実にいま、私は恐怖の均衡だと思いますけれども、バランスのとれている時点において、この条約の示している現状というものをひとつ国民の前に明らかにしてほしい。将来全面的核禁止に至る第一歩だというのは政治的表現であって、むしろ、私どもは、これがまとめられたのは、いまの核保有国の核独占をしようとする意図、しかも他国が核保有をしていこうとするならばその時期をおくらせようとする意図、しかも、もう一つには、現在の機力、実力をもってすれば相手方からの攻撃を防ぎとめ得ないという判断、現実的な防衛問題の担当者としてはそういう判断が一番大きいと思うのです。そうでなければ、アメリカの議会においてテーラー統合参謀本部議長もあるいはまた担当のルメー将軍も、われわれがこの条約を結ぶことによって準備をしなくちゃならぬことはこれこれだということばかりを言っている理由が私はわからないと思う。おそらくはソビエトでも同じ議論があったと思う。イギリスでも同じ議論がございます。あなたはそういうようなことを明らかにしようとする意思はございませんか。
  137. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 この条約の持つ意義なり、またわが国の防衛ないしはアジアの軍事情勢、こういう分析判断については、御指摘のとおり、いろいろ重要な具体的な問題があろうと思います。これは、外務省あたりと十分連絡いたしまして、適当な方法で実態を国民の皆さんにもお知らせする、あるいはわれわれの考えも明らかにするということは考えてみたいと思っています。
  138. 永末英一

    ○永末委員 五年ほど前に、赤城さんが防衛庁長官時代に、その時点に立って同様の質問を私は参議院で行ないました。そうすると、同じような答弁であった。適当な機会にひとつ国民日本の防衛の現状を明らかにしたいと思うと言われた。それから五年たって、ひとつも明らかになっていない。また適当な機会というのは、どういう機会なんです。それをしなくちゃならぬ義務が防衛庁長官としてあなたの在任中にあるとはお考えになりませんか。
  139. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 防衛に対する正しい認識を国民にしていただくために、実は常時やっております。ただ、御指摘のように、この条約に関連してという御質疑でありましたので、適当な機会に、外務省とも十分打ち合わせて、有効な解明と申しますか、あるいはわれわれの考え方と申しますか、この点についても何らかの形で国民にお知らせしていきたいと思います。
  140. 永末英一

    ○永末委員 私が申し上げているのは、この条約現実に世界人類が直面している核兵器の脅威というものの内容を明確に世界の人類に示している条約だと思うのです。それだからこそ、この機会にその内容について日本の防衛当局はどういう判断をしておるかということを明らかにする義務があると思います。それでなければ、この条約が批准された暁において、あなたが三回ほど言われ、外務大臣が繰り返して言われておるように、全面核兵器の禁止の一歩であって、おめでたい限りであるというようなことであっては、日本の防衛内容というもの、あるいはこれから組み立てていく防衛方針というものが全国民に明らかにならない。そこで、私は、めんどうくさいことでございましたが、各国考え方を一応あなたがどう判断されているか伺った。それは、裏を返せば、絶えず日本の防衛当局がこれらの問題にどういう判断をしておるかということだと思うのです。そういう意味合いで、いまの時期にあなたはこれを発表しなければならぬとはお考えになりませんか。
  141. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 これは条約問題でありますから、やはり外務省が正式の窓口で、役人的な答弁ではなくて、その筋は守っていくべきである。ただ、先ほど申すとおり、核兵器の問題はいろいろな矛盾した動きがしょっちゅう世界の各国にまた各地域で現に行なわれている。分散問題でも、それをとめようという考えと、なおまた、自分で持とうという矛盾した考え方も同時に行なわれていることは、私どもお答えしたとおりだと思います。こういうむずかしい、また複雑な状況につきましては、資料その他を十分整備いたしまして、何らかの形で現在の時点における状況並びに見通しについても国民の皆さんに報告していきたいと考えております。
  142. 永末英一

    ○永末委員 時間がないようですから、あと一問にとどめたいと思いますが、つまり、日本の防衛力をもってしては独自で日本の平和を保ち得る能力がいまのところ備わっていないというお考えのように承ったわけです。だといたしますと、それを補うために、自民党政府としては、日米安保条約が必要である、こういうお考えのようですが、それだけではなく、そのほかに、先ほど申しておりましたように、中共側が核兵器を開発しようという並々ならぬ熱意を持っていることは、みんな知っているわけである。これはおそかれ早かれ実現する可能性を持っている。その時点に立ち至るまでいまのような態勢でぼやっと進むのではなくて、その中共が世界の軍縮あるいは平和機構に参加し得るために防衛当局は努力をすることが必要ではないか。さらにはまた、日本が核兵器を持たないというためには、相手方も持たないような、そういう一定の地域を限り国と国との約束で非核武装地帯をつくり上げる、こういうことも日本としてのなし得る一つの方法ではないか。私はそういういろいろな方法があると考える。防衛庁がそれは外務省の所管であっておれの所管でないと言われるなら、その点は外務大臣に伺いますが、先ほど申し上げましたように、中共が核兵器を保有することは現実の問題だとして、防衛庁がいま準備をしていることは何かありますか。これをひとつ最後に伺っておきたい。
  143. 福田篤泰

    ○福田(篤)国務大臣 現実に準備というものはいたしておりません。ただ、安保条約のみが日本の安全と独立を防衛する唯一の道であるという表現は違う。御指摘のとおり、多角的なあらゆるもの、組織なりあるいは動きなりあるいは問題というものを積み重ねて総合的なものの努力が必要である。これは御指摘のとおりであります。中共の問題にいたしましても、先ほど申したとおり、中共の代表者の条約に対する批判を考えましても、いまの段階においては、中共に呼びかけて、かりに実験停止を申し入れても、受諾することはとうてい予想できませんし、今後、長い問題ではありますが、私どもは絶えず検討し、これに対する考え方を常にまとめ、また研究していく必要があろうと考えます。
  144. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官は時間がございませんので、先ほどあなたがお約束されたように、適当の機会に発表すると言っておられるのだから、ぜひひとつ国民に明らかにしていただきたいと思います。  この条約の政治的・外交的問題に関する点について、外務大臣が出席されたときに質問をすることを留保して、とりあえず防衛庁長官にはこの程度で……。
  145. 臼井莊一

    臼井委員長 この際、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ————◇—————    午後二時二十三分開議
  146. 臼井莊一

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  帆足計君。
  147. 帆足計

    ○帆足委員 同僚の議員の皆さんと御相談しまして、ベトナムの問題につきまして簡単に質問し、同時に核兵器の問題につきまして一言だけ問いただして、それで他の同僚に譲ります。  南ベトナムについての援助のことを新聞で読みまして、実は私ども驚いたのでございます。と申しますのは、御承知のごとく、南ベトナムの政情が非常に不安定でありまして、だれしも前途を見通すことのできないようなこんとんたる状況でございます。バーベキュー婦人などという有名な魔女が飛び出すような状況でございまして、日本語に訳せば焼き鳥女史と申しますかこういう複雑怪奇な状況でございます。そこで、貴重な国の財政をもって援助するとすれば、よく現状と将来を見通してでなければ相すまぬわけでありまして、数年前にマンデス・フランスがディエンビエンフーの激戦の犠牲を目のあたり見まして、ひとつ従来の方針を改めたほうがよかろうというので、有名なジュネーブ会議が開かれまして、そして南ベトナムの政治的・経済的安定策について列国の方針がきまったことは御承知のとおりでございます。残念ながらジュネーブ協定のとおりに状況は進んでいないようでございますから、私は、とりあえず、同僚議員各位の御注意を促しますために、委員長を通じまして、南ベトナムの安定に関するジュネーブ協定の全文を次の機会に全委員にお配りをお願いしておきたいと思います。  問題はそこから出発いたしまして、先日も与党の三木議員とある雑誌で対談会がございましたときに、三木議員が申されますのには、ドゴール将軍が中国に対してフリー・ハンドに思い切った行動ができたのは今日のフランスが身軽な立場にあるからである、こういう御発言がございました。しかし、私ほそのとき申したのですが、今日フランスが身軽な立場にあるということは、フランスが理性を取り戻して、アルジェリアに対して、南ベトナムに対して、過去の植民地政策に対してあきらめるべきものはあきらめ、見通しを立てて協力すべきものは協力する、こういうけじめがついたのでフランスがフリー・ハンドになったのではないだろうか。すなわち、日本で言えば宇垣将軍と近衛さんと一緒にしたような、英知と勇気を持っている一種の魅力のあるドゴール大統領は、アルジェリアの板垣関東軍に対して弾圧を下して、ずるずるべったりと拡大方針に引き込まれるのではなくして、打ち切るべきときは打ち切った。あたかも、二十年前に英国は十年間もガンジーを投獄したが、そのイギリスがいまではインドと親戚のような間柄になっておる。これは英国があきらめるときにあきらめて合理的政策をとったからであろうと思いますが、ドコールがアルジェリア板垣関東軍を断罪に処したことによって、アルジェリアとフランスとの関係は必ずしも今日悪い関係にはなっておりません。マンデス・フランスの勇断によって南ベトナムは新しい道を進もうとした。そのあとにやってきたのが四十男のアメリカ、これがやってきまして、そして変にちょっかいを出し、どろ沼の中に入ってしまって、いまのような魔女事件を生んだということになっておることは御承知のとおりです。戦争中に、先ほども穗積君が指摘されましたように、われわれは中国に対して道義的にもまた実態的にも誤った政策をいたしまして、当時どこまで続くぬかるみぞという軍歌がありましたけれども、まことに南ベトナムの状況はどこまで続くぬかるみぞという状況になっておりまして、レンコン畑の中にゴムぐつをはいて浮きつ沈みつしておるような姿でございます。一体どういうような救命ボートでお助けにまいりますのかひとつ御苦労のほども伺いたいのでございますけれども外務大臣が御苦労することは、外務大臣の御趣味でございますから、あえてとがめませんけれども国民がその巻き添えになりまして、貴重な財政をこのために使うことは、議員として黙視することはできません。こういう外務大臣の御苦労に対して監視をし助言をし忠告することが当外務委員会の使命でございますし、そして、眼光紙背に徹する議員がおりまして苦言を呈し、それが新聞に伝えられ、それがアメリカ当局の反省の材料にもなれば、与党の外務大臣としても仕事がしやすい、こう考えまして、私は援護射撃のつもりで質問しておる次第でございます。  そこで、一体、自分がどろ沼の中におちいっておって手が回らないのに、そういうあまり好ましくない仕事に対して手伝ってくれというような無礼な申し入れをしたのは、一体アメリカ国務省であろうか軍部からお話があったのかどういう筋から外務大臣にそういう要請があったのかまずそれをお聞かせ願いたい。同時に、二十五カ国に対してそういう要請があったといいますけれども、その二十五カ国のうち、先ほど戸叶さんが質問しましたが、どこの国がそれに対して返答したか。外務大臣アジア人としての友情にかられてと言われましたけれども、それならば、インドはどういう回答をしたかインドネシアはどういう回答をしたか、コロンボは、アラブ連合は、またはラオス、カンボジアは、エチオピアはどういう返答をしたかまたどういう態度をとりつつあるかひとつそれをお尋ねしたいし、また、自由主義国と行をともにするというお考えでありましたならば、これに対しまして最も関心の深いフランスはどういう返答をしたかイギリスはどういう態度をとったか、またイタリアはどういう態度をとりつつあるかこれについていま持ち合わせの資料をまず伺いたいと思う次第でございます。
  148. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカからの要請は国務省からでございます。それから、二十五カ国に接触を持っておるということを伺いましたわけでございますが、それらの国々がNATO各国SEATO各国を含んでおることは間違いないようでございますが、具体的にどういう国々であることまでは伺っておりません。ただ、私ども援助をきめるまでには、各国アメリカ要請に対する反応なるものは、いま帆足さんが指摘されますように、あらまし承知していなければならぬと思うのでございますが、ただ、まだ各国の反応はさだかにわかりません。いまの段階ではわかりませんから、漸次判明次第われわれもそれをよく承知しておかなければならぬと思っております。もちろんフランスもその例外でないわけで、それらの国々がどういうような反応をするかは参考までに十分承知した上で日本としての態度をきめていかなければならぬと考えております。
  149. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの外務大臣の御回答はきわめて重大でございまして、各国の反応を見届けるということはこの際きわめて重要であると思うのです。それは他国を顧みて右顧左べんせよという意味ではありませんで、やはりこの問題の実際的見通しを立てる上において重要でありますが、政府は非常なる情報網をお持ちであるにかかわらず、われわれよりも情報が少ないということは驚くべきことで、われわれは理性という情報網を持っておりまするし、友人という情報網も持っておりまするし、また新聞ニュースという情報網も持っております。それを総合いたしまして、インド、インドネシア、コロンボ、ラオス、カンボジア、エチオピア、一国としてこれに対して深入りして加勢しようという国はありません。フランスがすでに否定的反応を呈しつつありますことは新聞で御承知のとおりでございましょうが、イギリス、イタリアもしばらく黙して語らずというところでありましょう。そこで、日本のみがついていくとすれば、アメリカに金魚のうんこならまだよいのですが、アメリカのトイレット・ペ−パーになるならば、トイレット・ペ−パーというものはきわめて不潔なものでございまして、臭気ふんぷんとして、神州清潔の国には私は適当でない役割りであると存ずるのでございます。したがいまして、このどろ沼に入った南ベトナムに対しまして、この際しばらく冷却期間を置いて、イギリス、フランス、それからイタリアの意見も聞き、またジュネーブ会議に参加した諸国民の動向も察知し、また、アジアの友と言うならば、アジアの大国である中国及びインド、アラブ連合及びインドネシアの意見なども尊重しつつ考慮すべきことであろうと思う。マンデス・フランスがすでにあきらめたあとを四十男のアメリカが深入りして、そして因業にもどろ沼の中、ハス畑の中に落っこちてしまった。そこへただ無謀にも素手で手伝いに出かけるということはきわめて危険なことである。こういう状況でありまするから、もう少し慎重にしていただくことを、われわれ野党として外務大臣に要求する次第であります。  特に、先日私はベトコン征伐の写真やニュース映画を見ました。同時に、ベトコンを征伐するための沖繩における演習の状況も詳しくニュース映画で見る機会を持ちました。驚くなかれ、ジャングルの中に至るところに穴を掘りまして、網をかぶせて、そうして木の葉をまきまして、そうしてベトコンの農民が落っこちるのを待っておる。そして、まるでヒョウかトラ狩りをするようなことをやっております。(「ウサギ狩りだな」と呼ぶ者あり)ウサギ狩りより多少深刻でございます。そこで、例の有名なデルタ地帯の大部分にも、もはやベトコンが出没しているという状況でございますから、私は、生命財産の安全という見地からも、日本医療班をここにいま送ることにはあまり賛成できません。大体、私が十二年前に最初にモスクワにまいろうとしたときに、当時のモスクワは生命財産に何の危険もなかったのに、生命財産に対して危険があるおそれがあるという理由をもって私にパスポートをくれなかったほどねんごろな外務省が、それほど御親切な外務省が、その後私が肺炎になって入院したときには一向お見舞いもいただきませんでしたけれども、そのとき私の生命財産を最も深く考えておりましたのは私の家内でありまして、新宿裏ではしご酒を飲むよりも、しばらくモスクワにいらして息抜きをしてきたほうが健康によかろう、あなたのノイローゼもなおるんじゃないの、こう言ってくれました。そのことを思い出しましても、この混乱したベトナム医療班をいま早急に派遣するのが適当であるかどうか。私はニュース映画を見ながら考えました。農民もまた人類です。また、社会主義者であろうと社会主義者でなかろうと、それはその時代の偶然によってなるのでありまして、もし大平外務大臣が一橋の御出身でなくて炭鉱夫のお子さんであったならば、三池闘争に巻き込まれていたかもしれません。人生まことに浮き沈みの多いものでありまして、このようにベトナムの農民がトラ狩りにあっているような状況の中に、何でわれわれが巻き込まれる必要があるか。現にカンボジアもラオスもそうですが、やはり、ジュネーブ協定にもう一ぺん戻って、もう一ぺん会議を開いて、この辺で四十男のアメリカのおつむを少し冷やしたほうがよくはなかろうか。来年の秋には新中国も国連に加盟し、台湾の帰趨についても、もはや問題のある種の見通しが出つつある。そういう過渡期でありますから、外務大臣のお立場の苦しいこともわかりますけれども、しかし、二十五カ国の大部分はおそらくそっぽを向くであろうところのこのどろ沼深きハス田の中にゴムぐつもはかずに入っていくというのはあぶないことであろう、こう私は思って、もう心からあふるるほどの善意をもって政府にいま助言しつつあるわけでございます。忠告などというものは足軽・町人のやることでありまして、みだりにすべきことでありません。しかし、われわれは誠意をもって助言をし警告を申し上げる。  実は、おそらく国民の大部分もこの問題について驚いておるでありましょう。したがいまして、さらにお尋ねいたしますが、そういう状況のもとに、外務省はおしりを上げるのが早過ぎた。アメリカのトイレット・ペーパーになることはお断わりしたほうが、先ほど申し上げましたように、神州清潔の国としては望ましいことであろう。そこで、かりに援助をいたすとすればどういう項目かということはいま局長から承りましたが、その援助の費用は一体何の予算から出るのか。民間の借款であるのか、政府の予算から出るならばそれは予備費から出るのか外務大臣の交際費から出るのか。外務大臣が赤坂に出入りされてお飲みになる経費を減らされる限りでは、それもまた外務大臣の趣味の問題ですからあえて関与しませんけれども、われわれといえども相当の税金を払っております。国会の税金は免税が多くてまことにありがたい次第でありますが、しかし、文筆業者として私は相当額を印税についてとられております。したがいまして、印税のうらみというものはなかなかこれは強いものでありまして、そういうわれわれの貴重な血税をそうむざむざベトコンのどろ沼につぎ込むことには、われわれがまんできません。同時に、われわれは多くの市民を与党の議員の皆さんとともに代表しているわけでありまするから、これはどうしても政府に対して警告を発し、アメリカと義理因縁の深い与党といたしましても、もう少し情勢を見送るというほうが賢明ではあるまいかという助言を野党としては言わざるを得ない。したがいまして、一体どういう財源からお出しになろうとしており、総額はどのくらいの見当をお考えになっておられるか有償、無償、技術援助の資金の出どころ、そのワク等について一応の原案をもう少し詳しく御説明願いたいと思う次第です。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、おととい要請がございまして、きのうからわれわれは検討に入っておるわけでございまして、したがって、一体どういう費目からやるかとか幾らやるかとかそんなところまで全然まだいっていないわけなんでございまして、せっかく、日本立場においてどうすべきかするとしてどういうことが可能かというようなところから検討してみたいと考えておる段階でございまして、あなたがおっしゃるような具体的なところまではまだいっていないわけです。
  151. 帆足計

    ○帆足委員 私は、与党の方にも御理解願えるし、一般国民の方にも御理解願えるような常識的表現で、余すところなく、この問題について慎重な態度が必要だということを申し上げた次第でございます。おととい申し入れがあって、もう新聞にこういう中腰になった政府の姿が出ておるということは、まあニュースのあまりに早きを嘆くとともに、政府側が少し結論を出すことに軽率でなかったかと思う次第でありまして、結論でなくして中間報告であるならば、もう少しやはり大平さんの持ち味を生かして、何事もすべて慎重にというその大平さんの御家風を生かしていただくことを私は切望する次第です。特に野党からアメリカのトイレット・ペ一パーになったんでは不潔ではないかというきわめて辛らつな質問もあるから、これはよほど慎重に考慮せねばならぬと、われわれの名をあげて、われわれを悪者にして政府がいい子になってけっこうでございますから、野党の反撃はなかなか強いから、やはりせめて英国流かフランス流の合理主義、西ヨーロッパ流の合理主義の筋が通っていなければなかなかむずかしいし、むだなことになるからということを深く御記憶願いたい。また、アメリカとの交渉においても御発言願いたいと思います。  最後にお尋ねいたしますが、それでは、今日までの反応については、フランスの反応、インドの反応、またはアラブ連合の反応は一つもまだ御存じないわけでございましょうか。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 まだ承知いたしておりません。
  153. 帆足計

    ○帆足委員 委員長もお聞き及びのとおりでございまするから、この問題の審議は今後さらに続行するといたしまして、互いに善意をもって国のために慎重な態度をとっていただくようにしたいと思います。そうして、われわれは、結論としてはこの援助には反対である、別な形におい丁南ベトナムの民衆に対するわれわれの友情を披瀝する方法はまた別な機会にあろう、こう思っておることを申し上げまして、実は、同僚議員と相談いたしまして、私は先に退席させていただくので核兵器について一言申し上げる予定でございましたが、議題が違いますから、議題の宣言が出ましてから申し上げます。  最後に一言委員長にお願いしたいのですが、沖繩問題につきまして最近世界各国新聞に同情的世論が相次いで出ております。これは今後の外務大臣のお仕事をなしやすからしめる動向であろう。そうして、アメリカ軍部とアメリカ国務省の間に相当意見の隔たりがあることが明らかになって、駐日アメリカ大使館はどちらかといえば国務省の道、すなわち、敬愛するなきケネディが約束した道を順次進みたいという考えのよし新聞に漏れ伝わっておりますが、ワシントン・ポスト紙五月一日以降にこれについての論文が連日掲載されており、これに対してアメリカ軍部の軽率なる反論が行なわれ、それに対するアメリカ国務省筋の再反論が行なわれる、各方面の反響が掲載されているようでございますから、緊急のことですから、当面は英文でけっこうですから、資料を御提出願いたい。そうして、その後は日本文に翻訳して、だれでも気楽に読めるような形で委員全部にお配り願いたいということをお願いします。  議題が変わりましてから、あとほんの四、五分ですから……。
  154. 臼井莊一

    臼井委員長 永末英一君。
  155. 永末英一

    ○永末委員 先ほどから南ベトナムに対するアメリカ政府筋からの援助要請に対して日本政府がどう対処するかということに関する外務大臣の御答弁を聞いておりますと、一つには、元来その要請があろうがなかろうが日本アジアの一国であるから隣国を援助するのは当然であるという考え方、もう一つは、やはりアメリカ政府から援助要請があったから具体的に考えようと思う、二つのことが一緒に答えられていると思うのです。どっちですか、これをひとつお伺いしたい。
  156. 大平正芳

    大平国務大臣 基本的には前者でございまして、日本アジアにおけるユニークな立場というものをいつも私どもは踏まえて施策をしてまいらなければいかぬと思っております。そうして、後段のアメリカ援助要請の問題は、あなたの御発言はちょっと正確でないので、私が申し上げたのは、本来は南ベトナム政府が友好国に対しましてこれこれの援助がほしいという意味要請があるのが本筋なんです。それで、実はそれはないわけじゃないので、日本との賠償協定、これはもうほとんど終わりましたけれども、それに伴う経済協力の具体化の問題について、先般閣僚がまいりまして、土木大臣からはその動かし方についての話はございました。ただ、農業問題とか、水産問題とか、あるいは医療問題とかいうような問題では具体的な要請もなかったわけでございますが、あの地域の事情に非常に通じているアメリカから援助要請が具体的にあったわけです。で、それは吟味に値する材料だと私は心得ておる、したがって検討に入っておる、こういうことを申し上げたわけでございます。基本的には、アジアにおける日本立場として、援助要請があるないにかかわらず、日本としては考えなければならぬ立場におるということが基本にあると思います。
  157. 永末英一

    ○永末委員 今のお話ですと、アメリカ援助するのでなくて、南ベトナム政府援助する、こういうことについて考えておられると私は承りました。そうしますと、他国を援助するという場合には、日本政府との間に何らかのやっぱり要式行為があって、それを実践していく、実行していく、こういうことになろうと思うのです。個別々々でむやみやたらにやることはないと思います。たとえば、いままででも、賠償援助であるかどうか別問題としまして、賠償条約があるからそれを実行していく、コロンボ・プランに参加をしているから、そこで取りきめられたものに従ってそれぞれの個別の国もそれをなしていく、こういう形になっているのじゃないかと思います。そこで、今度の場合には、南ベトナム政府と何らかの要式行為をやって実行していこう、こういうことを考えておられますか。
  158. 大平正芳

    大平国務大臣 当然のことなんでございまして、私どものほうの出先の関係とも従来からこういう問題については打ち合わせをしておるわけでございまして、日本として援助することになりますれば、——援助することになりますまでに十分調べなければいけませんが、援助することになりますれば、当然あなたが言われるようにベトナム政府日本との間の問題として処理しなければいかぬわけで、したがって、私が申し上げたように、援助規模だとかあるいは援助態様というものについては十分検討しなければならぬと言っているのはその意味でございます。
  159. 永末英一

    ○永末委員 アメリカ日本と友好国であるから、アメリカのそういう申し入れがあったから考えるというのが理由のいわば大部分ではなくて、むしろ、南ベトナム政府に対して、もともと日本政府は、その他の国も含めてですが、援助しなくちゃならぬと考えておったが、アメリカ政府からのそういう申し入れに触発されてこれを実行に移そう、こういうことなんですか。その辺をはっきりひとつ伺いたい。
  160. 大平正芳

    大平国務大臣 大体そうでございます。
  161. 永末英一

    ○永末委員 私は、どうも私が質問したからそう言われるような気がする。しかし、南ベトナムの国内において南ベトナム政府ベトコン軍と戦闘状態に入っていることは、これは天下周知の事実です。しかも、この戦闘は、南ベトナム政府とその領土内における集団との戦闘状態ではなくて、その外の国と連絡があることは、これまた先ほど条約局長が何か読み上げた報告によっても明らかなようです。といたしますと、そもそも、日本アジアの一国として隣国の経済困難なところを援助するのは信義上当然であるという言い方と別にそこである紛争が起こっている、結果的に客観的に見れば、片一方を援助し、いわばそこで起こっている対立を激化せしめる一翼をなす、こういうぐあいに見られた場合に、あなたはどうお答えになりますか。
  162. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど帆足さんの御質疑の中でもありましたように、今日の事態を非常に明快に割り切りまして、非常に自信のある解明をされて、アメリカがやっておられることに対する御批判を前置きとして帆足さんも言われたわけなんで、私もあのように非常に明快な解明ができるような頭になりたいと思うのですけれども事態はそんなに簡単じゃないと私は思うのです。つまり、あそこにおける内乱の様相を持っておるが、しかし、代理戦争的な状態も出ておる、この状態をどうして収拾してまいるかということは、いろいろな試みがなされて、ジュネーブ協定というのができたが、しかし、それもワークしなかったというところに問題があるわけなんで、事態のほうがやっかいなわけなんでございます。それでございますから、いまある状態においてこちらが何かやることははっきりどちらかの側に味方することになるじゃないかそういう割り切り方をしますと、あるいはそうかもしれないのです。ただ、私はいつも申し上げておりますとおり、事態が非常にむずかしい事態なんでございますが、あそこのベトナムの住民が今日ただいま苦しんでおることはもう事実でございますし、ゆうちょうな議論をしておる間にも苦しんでおるわけでございます。われわれはわれわれとして、この事態が非常に大きな動乱にまで転化するようなことがないように念願するが、そして、できたらこれが平和裏に収拾できることを期待するが、それがどういう時点においてどうすればはっきりこういう結果が出てくるのだという見通しが、私ども不明にしてよくキャッチできません。問題は、そういう置かれた条件のもとにおきまして、アジアの平和を念じつつ、日本立場考えながら、可能なことは何かということの見定めをつけて、それをわれわれが実行してまいるということがわれわれの分別ではないかと思っておるのでございます。結果としてそうなるのだからということであれば何にもしないということなんで、これはそういうことでいいだろうかということを反省しなければいかぬのじゃないか私はそういう感じがいたしますが、永末さんはもっといい考えがあったらひとつ教えてもらいたいと思います。
  163. 永末英一

    ○永末委員 私が申し上げたいのは、あの地域で戦闘状態がある。これをひとつ何とかおさめなくてはならぬ。元来ベトナム国におります人民は生活水準が低いところへ、加えてこういう戦闘があるために、なお生活困難を来たしておる。その場合に、戦闘状態を引き起こしておる一方のみを援助するということが、この戦闘を終結せしめ、ベトナム国の人々の生活を安定させるために手助けになるとは、普通の頭だったらストレートには考えられないのではないか。もし片一方の手助けになるという行為を日本政府がした場合には、逆に、かえって、この国における戦闘を終結せしめる手だてについて、日本政府の発言権は全くその時点でそれ以後なくなってくるおそれがありはしないか。もちろん、一国の外務大臣がわからぬのに一外務委員がわかってそれをお教え申し上げるところまでなかなか至りませんが、ただ、態度としては、あなたは非常に慎重に、アメリカが言うてきたのはその材料をよく知られておるので検討に値すると思うから検討する、こう言うておられます。そのことばは、要求に応じてやるのではないということを言いたいのだと思う。しかし、全部が認識しておるところは、たとえそれベトナム日本の隣国だから日本援助しなくちゃならぬと前から思っておるとあなたは言われましても、現実にはやはりアメリカ政府要請にこたえる姿勢を示しておることは事実だ。それを契機にしてある行動を政府がとっていくということは、ベトナム戦争に日本政府が一翼加担したという結果になる。この結果をあなたはおそれられませんか。
  164. 大平正芳

    大平国務大臣 であるから何にもしないほうが無難だということでいいかというと、私はそうはいかぬのじゃないかと思う。何となれば、この事態がいつどういう姿で収拾されていくか、その見通しがはっきりしておる、目の前にそれが見えておる、そういうような見方をされておる人もありますけれども、なかなかそう簡単にいかないところに事態のむずかしさがあるのではないかと私は考えておるのです。したがって、この戦火が拡大していくようなことにならぬようにまず考えなければいかぬと思うのです。したがって、いつも申し上げておりますように、われわれといたしましては、軍事援助的な色彩を持ったものは慎まなければいかぬと思っておるのでございますが、そこの住民の方々の実際の経済、実際の生活、そういった面について日本としてやはり黙視して見ておれない、そのあたりに何か可能なものがありはしないかということを見きわめをつけていこうといま検討をしておる、そういう心境でございます。
  165. 永末英一

    ○永末委員 何かしなければならぬ、しかし、何かする相手方が動いておる、あるいは反対方向に動いておる片方の力を増してやるという現実的結果になれば、戦乱をおさめたいという根本の目的には背馳することになる。何もなさないことも、戦乱を終結させるためには非常に有効なことかもしれない。それはひとつ慎重にお考え願いたい。  しかし、もし政府南ベトナム政府に対する援助を決定することがあれば、それがどういう影響を及ぼすか。いま政府は、今年の予算が通過いたしましたので、いわゆる東南アジア等に対して、日本という国はアジアにあるのであるから、同様にその周辺にある経済の発展程度の低い国に対してでき得る援助をしよう、そしてひとつ平和部隊みたいなものをつくってみようということを政府の方針できめられて、その調査団を近いうちに派遣される。これはつまり日本政府独自の行動ですね。ところが、これが出ていこうとする場合に、その相手方は、伝えられるところによれば、たとえばインドネシアやインドあるいはセイロンというような非同盟国。もちろん調査団が行ってからどうするかということはこれからの問題であり、まだ何も政府の案はないと思いますが、その前に東西対立の激化をせしめる一翼の行動を日本政府がやっておるということで、あなたが一番最初に言われたように、日本人がアジア人の一人として少なくともアジア周辺の諸国に対して経済発展を助長せしめるようなことに努力をして援助をしたいという言い方が、一体すなおに通るものかどうか。平和部隊というものは日本政府考え出したものです。ところが、ベトナムへもし人間を送って、それが医療であろうとほかの技術であろうと農業であろうと、そういう援助をするという態勢をとった場合には、すなおにその他の国に入らないという危惧を私は持つのですが、あなたはどう思いますか。
  166. 大平正芳

    大平国務大臣 われわれの平和的な意図というものを十分理解されていないサークルにおきましては、あるいはあなたが御心配されるような疑惑が全然ないとは言えぬだろうと私は思うのですが、それだからといって、私はそういう努力をやめるべきじゃないと思うのです。われわれの意図が純粋であれば、それでいいのじゃないでしょうか。そういう方向に努力していくべきでなかろうかと私は思います。
  167. 永末英一

    ○永末委員 人間と人間のつき合いなら、自分の個人の純粋なる意図というものがしばらくはわからなくてもそのうちにわかるだろう、いやわからなくても自分の意思が純粋であればいいということは通るかもしれませんけれども、国の政治、国際間の政治の中で、おれは純粋な意図を持っておるからこうやったってわかってくれるだろうでは、私は通らぬと思う。つまり、私が申し上げておる判断の切れ目というものは、南ベトナム援助することは、これは一国の問題ですよ。そういう姿勢日本政府がとっていくことが、その他のアジア諸国に対してこれから平和部隊をつくってそういう援助姿勢をとっていこうとすることに支障があるのじゃないかということを考えるがゆえに、初めのことはやめておいたほうがいいと私は思うわけです。つまり、ベトナムだけに局限される問題ではなくて、日本アジア諸国に対する援助の問題はもっと違う規模があるのじゃないか。OECD加盟に際しても同じことを申し上げておいたはずです。そういう広い視野でながめて対処していただく。アメリカから申し入れがあったから南ベトナムの問題だけは解決しなければならぬということばかりに根を詰めると、そういうことの裏をかいて、もっと広い東南アジアに対する日本政府の真意すら、あなたから言えば間違って曲解されたと言われるかもしれぬけれども、客観的に言えばそう考えるほうが至当だということで、平和部隊すらできないということになりはしないかとおそれますが、もう一度御答弁願いたいと思います。
  168. 大平正芳

    大平国務大臣 だから、アメリカ要請があったからこうすると端的に割り切っているわけではないと断わっているわけなんです。アメリカ要請もわれわれは吟味しておるが、アジアにおける日本立場というものを踏まえた上で、日本としてやるべきこと、可能なこと、そういうことは何かということを見きわめてやろう、それから、各国の出方も、先ほど帆足さんの御注意もありましたけれども、反応も十分見てやりたいと思っているのです。というのは、あなたが御指摘されるように、国際社会でございますから、日本も国際社会の一員でございますから、この間も、サイプラスの紛争というものについて、日本から見れば縁遠い話でございますけれども、若干のコントリビューションをさしてもらった。これは一つの国際間のおつき合いなんです。やはり、インドシナの問題なんというのはそれよりずっと近接した問題だし、そこで多くの国がいま非常に骨を折っておるわけなんです。そこでそういう国が骨を折るところは骨を折るし、そういうくたびれもうけはやめようとかそういう局外者としての批判だけしておれる日本かというと、そうではないと私は思います。アメリカの苦労に対しても十分評価しなければならないと思います。というのは、インドシナの事態は、ただあそこの戦火がおさまれば万事終われりというような問題ではなくて、おさまったあとの状態が大事だと思います。それで、アメリカもまたそのために戦っておるのだろうと思いますが、そういうような現在のアメリカ南ベトナムに対する政策に対して非常な批判があることは承知しております。また、圧倒的な多くの国が支持しておることも事実でありますし、国際社会のそういう現実に処して、日本が国際社会の一員としてどうビヘーブするのがよいかということは、われわれは、この援助を打ち出すまでの間には、あなたが御指摘のように、十分日本立場ないしナショナル・インタレストということを考えて、日本のビヘーブのしかたというものは十分練っていかなければならない、それは私は当然の責任だと思います。
  169. 永末英一

    ○永末委員 日本アメリカとの関係においては、大平さんの政府は安保条約というもので完全な一つのコミットの姿勢をとっておる。しかし、日本がことに関係の深いアジア諸国に対する態度においては、おのずからその間自主的な外交路線をとっていく必要があるとわれわれは考えてまいりました。その一つの端的なあらわれが、たとえば平和部隊か南ベトナムへの援助かということで象徴的に出てきておるのがいまの問題ではないかと思います。私どもは私どもの主張に従って厳重に政府の対処のしかたを監視しておりますから、この問題はこの程度で終わります。      ————◇—————
  170. 臼井莊一

    臼井委員長 次に、大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約の締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。  帆足計君。
  171. 帆足計

    ○帆足委員 この問題もまた諸外国の国際世論と連関した重要な問題でありますが、先ほど外務大臣は、今日のこんとんたる状況を帆足委員や永末委員のように割り切って考えるのはいかにも頭がよいようであるが、不敏にして自分は頭がよくないと、言外に、君たちはこんとんたる世の中を十分に認識し得ずしてどうも頭が悪いようであるが、外務大臣たる余のほうは頭がよいというようなアイロニカルな表現をされまして、まことに光栄の至りでありますが、外務大臣は頭は悪くないのであります。頭はよいけれども、心がけにおいてはわれわれのほうが多少よいのではあるまいか。頭がよいということよりも、われわれ日本国民は、心がけがよいということはもっと大事なことではないかと私は思っております。そういう点で、核兵器の問題もそうですが、南ベトナムの問題のような重要な問題については、やはり、同じ保守党でも、七十男といわれる英国、六十男といわれるフランス、五十男といわれるイタリアの意見を、四十男のアメリカの意見だけお聞きにならずに、よく聞いていただきたい。近ごろの安っぽいガールフレンドどもは四十男が好きだそうですが、しかし、やっぱり七十の経験をなめておる英国、六十歳のフランス、五十歳のイタリア、それから、若いはつらつたる三十代のアラブ連合、インド、インドネシアなどの声を十分お聞きになってからおやりになるということを切望いたしまして、これについては次回に政府の研究の経過を伺いながらともに審議してまいりたいと思っている次第でございます。  今次の核兵器の禁止の条約につきましては、私は外務大臣の御発言の一部に非常に共鳴している点があるのです。というのは、ある国々はこれをもって非常なる勝利のごとく言うておりますが、日本政府としましては、一歩前進ではあるけれども、原爆の被害を受けた日本としてはもの足らぬ点が多い、こいねがわくは人類の今日の段階においては全面軍縮、人類の理想としては全面軍縮並びに全面的な核兵器の禁止まで進む、それが日本国憲法の理想、国連憲章の理想に沿うものであるという意味の御発言があったことに対しては、こいねがわくは実行がこれに伴いますならば、御努力が伴いますならば、われわれはそれに対しては敬意を表する次第でございます。私どもといたしましても、この条約自身は、日本が海洋国としての特殊の立場から言うならば、南太平洋における水爆実験が停止になるわけでありますから、だれが何と言おうと、やはり水産資源国として直ちに国民の胸にぴんと来るものがあるということはよくわかり、理解できるのでございます。しかし、条約自身を見ますると、三カ月の予告をもっていつでも脱退し得る、また、核生産の継続、貯蔵、配置、譲渡等々については何の取りきめもなく、あるいはまた地下実験も継続して行ない得るというような点については、われわれの理想と隔たることあまりにも遠く、一種の売春禁令にも似たざる条約というかたるの底なきごとき感もいたすのでございます。問題は、結局、これをきっかけとして前進するかまたはただ現状を固定させるかということにあるのでありまして、幸いにしてこれをきっかけにして前進する努力を署名国が続けるならば、それはよい方向に向かうし、小成に安んじてこれをもって満足するというならば、またかえって危険と停滞を伴うおそれも含んでおる、こう思うのでございます。幸いにして、この条文の中に、加盟国は条約の改正についていつでも提案することができる、こう書いてありますから、日本政府が志し、国連憲章が裏づけし、日本国憲法が裏づけするような方向に向かって日本政府もときとしては提案もし、また、そのようなよき提案をした平和の国々がありましたときには、その提案の方向に努力なさることを切に期待する次第でございます。  そこで、一、二のことだけ、これはきわめて重要でありますから問いただしておきますけれども、現在この条約の具体的欠点としてはどういう点がまだもの足りないとお考えでしょうかまたは、今後改正していくとすればどういう方向に改正したらよかろうとお考えでしょうかこれを第一にお尋ねしておきたい。
  172. 大平正芳

    大平国務大臣 いまの御指摘の中に、すでに、本条約の持っている不完全性というか、もの足りなさというかそういう点が指摘されておるので、それは私もそのとおりだと思います。われわれは、しかしながら、そのものの示すように部分的な実験禁止という第一歩であったが、それができたことは非常によかったと思いますし、それよりも、そういうことについて合意を見たというその事実に希望をつなぐゆえんでございます。これにこれだけの合意を見ることができれば、その他のところにも合意を見る可能性があるわけでございまして、その可能性を今後どう探求して、それを発見し固めていくかということが今後の課題であろうと思うのでございます。したがって、非常に完全な条約案を書いてみろといわれれば、それは頭のいい人はすぐ書くかもしれませんけれども、そういうことでなくて、帆足さんの御質問は、おそらく、現実実現の可能性があるセカンド・ステップは何かということだろうと思うのでありまして、ただいまの軍縮会議の討議の状況を見まして、第二ラウンドで何がつかみ取り得るかということはまださだかにわれわれもわからぬのでございますが、議論が多く出ておる問題は、やはり核兵器の運搬手段の凍結問題とかあるいは拡散防止問題とかそういう点が多く議論されておるようでございまして、このあたりに関係国がどこか共通の関心を持つものを発見するように努力して、それが条約に化体されてまいりますように努力していくべきではないか。その他にもいろいろな問題がございますけれども、この論議はずいぶんこれから長く続いていくことでございますし、にわかにその将来を見通すということは私にはむずかしくてできぬことでございます。ただ、日本立場から申し上げさせていただきますと、日本は戦中・戦後ずいぶん長い間のブランクの時代がございまして、ほんとうはこの軍縮問題の討議研究もおくれておるわけでございます。また、最新の兵器自体も持っておりませんし、そういう知識にも暗いし、したがって、いまの時代の軍縮問題を世界的レベルにおいて日本が問題としてまいるというにはまだ準備が不十分でございます。そこで、われわれ外務省といたしましても、若手の俊秀をすぐりましていま軍縮問題を一意勉強させておるわけでございます。そして、こういう憲法を持ちこういう平和的意図を持った国として、何か世界に建設的な提案ができ、しかもそれがプラクチカルな提案であり得るようなものを練り出していくことができ、素材をみずから消化してつくり上げるようになりたいものだ、そう念願しまして、いろいろ若い者に勉強させておる段階でございます。にわかに第二ラウンドは何かと問われましても、さだかに答えることはできませんけれども、軍縮問題の討議も非常に注意深く見守っていなければなりませんし、私ども自体も軍縮問題の討議研究については怠りなく努力いたしまして、その間に拾うべき珠玉は拾っていくというふうに努力していかなければならぬと思うのであります。
  173. 帆足計

    ○帆足委員 同僚議員の御質問もありますから簡単に申し上げますが、ただいまの御答弁を伺いますと、前の岸内閣時代に比べまして、私どもが受けました印象は、多少なりとも前向きに問題を解決しようとする御努力の萌芽のようなものが感ぜられる次第でありますが、日本の平和憲法は国連憲章とちょうど相呼応するようなたてまえになっておりまして、このような体制になって進んでいきますことは憲法の趣旨にも沿うものである、こう思うものでありますが、しかし、日本政府がむしろこういう原爆の試練を受けた国として世界よりも一歩先んじてもう少し強く主張されることを九千万同胞はだれしも望んでおるのでないかと思うのでありますが、どうも経済的にアメリカにお世話になっているという関係から過度に遠慮し過ぎるという感を抱くのは、私一人でないと思います。経済的に言えば、アメリカがくしゃみすればこちらがかぜを引くと言われておりますが、ケネディ大統領がちょっとロマンティックな演説をなさると、池田さんの施政演説がその世俗的なお人柄にも似合わぬえらい理想主義的な表現をお使いになる。どうもおかしいなと思って見ると、その前日にケネディ大統領が非常に高邁な演説をしている。こういうことではまことに愉快ではないのでありまして、日本のほうがこういう問題についてはむしろ先進国のはずです。ちょうどネール首相が軍事力は弱いにかかわらず精神的には非常に大きな影響力を持っているのと同じように、原爆の試練を受けた国として、核兵器の問題については相当ラジカルな意見を持っておる。平和憲法ができましたときのあの議事録を読みましても、幣原さんが、とにかく原爆というもので戦争の観念は変わってしまった、目に涙を浮かべて、憲法第九条などと言えば人は気違いだと思うかもしれないけれども、気違いざた以上の変化がこの世に起こっておる、まさに夢に夢見るほどの変化が原爆という形をもってあらわれておる、その観点から考えるならば、新日本憲法もむしろ理想主義的というよりも実際的と言えないであろうか後世の者が振り返ってみて、やはり原爆の子としてあの憲法が生まれ、時代の先がけになったのだと言う日が来るであろうということを言っている。マッカーサー元帥という人は、あの回想録を見ましても、ちょっとふしぎな神秘的な人柄の人でありまして、一面職業軍人としての狭い意識が濃厚でありながら、他面は、何かピューリタンというか、非常に精神主義的なところがありまして、幣原さんと互いに相擁して涙を流して、そうして裸身で生きていこうとする平和憲法をつくったということが、いまでは正確に伝えられておるのでありますが、それらのことを思いますと、一体、外務大臣は、この条約を前向きに解釈されまして、たとえば署名国会議などが開かれまして、もっとよい方向に改正しようというようなときには、積極的態度をおとりになって署名国会議にも参加されるようなお考えであるかどうかその一点も確かめておきたいと思います。
  174. 大平正芳

    大平国務大臣 まだそういう議がどこからも出てきておりませんが、そういう機運になりましたら、とくと考えまして、前向きに考えていかなければならぬ、また、措置していかなければならぬ問題だと思います。
  175. 帆足計

    ○帆足委員 最後に確かめておきたいのですが、そのような態度であられるならば、私は、アジアに非核武装地帯をつくったらどうであろうかという多くの人々の提案、または、日本に核兵器を導入することは断わっておりますけれども、国会の決議としてやはりこれをお断わりしておいたほうが妥当であろうというような提案に対しても、政府はもう少し積極的に前向きの姿勢をとるべきであるまいかと思うのですが、それについてのただいまの外務大臣の御心境と、それから、もう一つ、これも外務大臣にお尋ねしたいのですが、アメリカはなぜ地下実験の継続を固執したのであるかその技術的理由につきまして、外務大臣のほうで明確でありませんでしたならば専門家のほうからこの際承っておきたい。なぜ地下実験だけを例外にしたかということについては、国民のだれしもが疑問を持っている次第であります。これもあわせて伺っておきたい。
  176. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 核実験を禁止しないことを固執したという趣旨ではございませんで、地下実験につきましては確実に国外から探知することができない、国内に探知組織をつくることについてはソ連と米英の間にどの程度でいいかということで意見の一致を見られなかった、そういうことから、さしあたり合意ができるほかの環境のものだけを禁止しようということであったわけでございます。
  177. 帆足計

    ○帆足委員 私どもが聞いております情報によりますと、まことに遺憾なことですが、地下実験の問題は、小型原爆の実験、部分戦争に原爆を使う実験のために必要であるということを申しておる専門家の方々もおるようでありまして、この点は心痛にたえない次第だと思っております。というのは、大型実験の悲惨もさることながら、小型原爆でもまた悲惨なことにおいては変わりはないのでございます。また、小型原爆はやがて大型原爆を誘発いたしますから、危険な度において変わりはない。したがいまして、政府当局が言うておるようにただ探知装置の問題だけならば、これはまだ装置の問題で原子科学者の協力を得てそして解決の方法もあろうと思われるのでございますから、そういうことだけでないということの議論についても、もう少し慎重な御審議を願いたい。  結論としまして、空中実験がなくなることは、とにもかくにも、海洋民族、漁業民族の日本の特殊性として、大部分の国民からその点は歓迎されておると思います。私は、この特殊性については諸国民の理解を大いに得たいと思っております。しかし、この条約それ自身の持っておる弱点、すなわち、いわゆるざる法案的要素に日本政府が最初から非常に慎重に首をかしげたということは、さもありなんと私は思う。その慎重な態度に敬意を表するのですけれども、三カ月をもっていつでも脱退し得るとか地下実験は残るとか生産、貯蔵、特に大臣が核の運搬並びにその他のことを指摘されましたけれども、私は、そのほかに核の配置の問題等も非常に危険な問題であると思います。核配置の問題は核運搬の問題とちょうど並行した問題であると思います。こういう問題に触れておりませんから、たるの底なきがごとし。しかし、そのたるでも何かのきっかけになるではないかという議論も、議論として成り立ち得る。   〔委員長退席、椎熊委員長代理着席〕 結局それは署名する者の心がけいかんにあるわけでございまして、積極的にこれを橋頭堡として前進するという覚悟が必要で、この条約がざる法案的意味を持つということもよく国民に知ってもらいまして、このくらいなものでは安眠もできない、熟睡もできない、このことはフルシチョフ首相みずからも指摘しておるところであり、アメリカの中の国務省筋または民間の学者も、これで満足すべきでないと、心ある人は指摘しておる。中国においては、むしろこのまま停滞するならば全面的にかえって有害無益であろうとまで、中国の論評を見るとこれに痛烈な批判を加えておるということも、他山の石として私は参考になることであると思っております。また、フランスもこれに参加してないという状況を考えるならば、これをもって能事終れりとすべきではない。売春禁止法もちょうどざる法であったけれども、吉原をなくすためにはそれもまた半歩前進であったというのと同様の意味において、このざる条約に対して、どのようにこの問題をとらえ、どのような姿勢でこれに対処するかということが今日の日本としてはきわめて重要な問題であろう、幸いにして政府も前向きで善処すると言われる。しかし、その態度については、いろいろと制約を受けて、われわれが希望するほど積極的でないことをまことに残念に思う次第です。私といたしましては、この条約にある重大なる欠陥の数々をやはり国民にPRすることがあわせて必要であると思っておる次第でございます。  これ以上質問いたしましても時間をとりますし、同僚委員から質問もございますから、私としては、この条約にひそんでおる、たるの底なきがごとき、ざる法案的要素に対しても十分心をとめられまして、今後の署名国会議においては、大臣が確約されたような前向きの姿勢で前進するということを切に希望して、質問を終わる次第でございます。
  178. 椎熊三郎

    椎熊委員長代理 穗積七郎君。
  179. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣に最初にお尋ねいたしますが、この条約の中心は、具体的に言いますと、第一条の空中並びに水中における実験を禁止するというところに第一の実定上の眼目があると思います。こういう禁止条項を中心といたします条約というものは、現に核兵器を保有し、またはこれから保有しようとするものにとっては、そのことに関する限り効果があるものでございます。ところが、わが国のように、核武装は夢にも考えていないという国にとっては、この第一条の禁止規定をこの条約の第一のメリットとして考えますならば、これは必ずしもわれわれがこれに参加する必要はないわけです。やるつもりはないわけですから、無縁のものであるわけですね。したがって、当時、外務省なりあるいは日本国内の識者の一部には、これは日本にとっては関係のないものであって、われわれはもう、地下実験、空中並びに水中の実験どころか製造も保有も使用も考えていないのであるから、われわれは平和政策についてはもっと先へ先へ進んでおる、だからこういうものにあえて参加する必要はないという考え方もあり得たと思うのですね。にもかかわらず、これにあえて参加するということの外務省の論拠といいますかこの動機といいますか、そういうものが当時論争された後に参加に決定をされたと思うのですが、まずそこの点を、外務省の動機、論拠を伺っておきたいと思います。
  180. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、わが国の平和政策から申しまして、わが国が核実験を考えるとか核兵器の開発を考えるとかいうようなことは毛頭考えていないわけでございまするから、ことさらにこの条約に署名する必要はないじゃないかという論拠は成り立ち得ると思うのです。ただ、この条約は、この前に戸叶さんからの御質問でも御指摘されましたように、大気圏、空中、水中の実験を禁止する、そうして、それに対する何らの罰則もないわけです。ただ、どっかが破ろうと思えば、これは三カ月の予告をもって脱退できるということで、条約の基礎はくずれてしまうのだという脅威があるということ、条約特有の一つのエッセンスはそこにあると思うわけでございます。だといたしますると、この条約にはできるだけ多数の国が署名して、そうして政治的にこの条約の実効性をあげるような基礎を固めると申しますかそういうことは世界平和のために望ましいと思うわけでございまして、わが国がこれに署名し、批准をお願いいたしておるゆえんのものも、そういう考え方にのっとって、世界全体がこいねがわくはこの条約の基礎を固めて、核保有国といえども、また核開発を志しておる国々も、そういう世界の世論の大きな壁に当たって思いとどまるようなぐあいになる、そういうことを期待すべきではないか、そういうことがわれわれの加盟しようとする意図でございます。
  181. 穗積七郎

    穗積委員 そうでありますならば、この条約に即してお尋ねいたしますと、第一条の禁止規定にむしろその眼目があるのではなくて、これをてことして、目ざすところは、その前文に言っておる「全面的かつ完全な軍備縮小」、すなわち廃止でございますね、それを実現するための促進をより効果的にするためには、外部におるよりは内部に参加して、この条約に伴う、つまりここで言っておるいまの目標に向かっての継続的交渉を促進する、目ざすところは第一条の禁止規定ではなくて、前文の全面かつ完全なる禁止、それを積極的に促進する役割を果たす、そこにこの条約に参加する日本政府の眼目を置いておるのだ、こういうふうに理解すべきであると思いますが、そのように理解してよろしゅうございますね。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりです。
  183. 穗積七郎

    穗積委員 そうでありますならば、お尋ねいたしますが、実は、そういう日本の基本的かつ政治的な路線というものは、この条約の中では必ずしもまだ実現されておらない。ただの願望になっておるわけです。この条約で禁止まで持ち込んでおりますものは、空中、水中の実験だけなんですね。そうして、これを裏返して考えますと、条約機構に関する限り、純法理的に見ますと、この条約に参加しておる諸国は、将来その国の政治並びに外交路線が変わりましたときには、いま申しましたようにこの禁止規定にのみ縛られる、それにのみオブリゲーションを感ずる、こういうことになりまして、それ以外の、すなわち、製造、それから地下実験、それから貯蔵、使用、これらのものはこの条約で禁止されておりませんから、したがって、その行動というものは、参加する諸国すべて、百九カ国問におきましては、それは自由である、違法ではない、言いかえれば、その事実行為というものは、法律上あるいは条約上、禁止されていないから合法性を持っておる、この条約が相当長く固定して前進がないとすれば、そういう結果も裏返して理解できるわけですね。そういうことでありますならば、日本政府の方針、国民の世論というものが、地下実験に眼目があるのではないのだ、全面禁止に眼目があるのだということでありますならば、他の国はいざ知らず、百九カ国のうち日本に関する限りは、われわれ自身は、他の禁止されていない自由、すなわち製造、地下実験、保有、使用、これらら禁止されていないから、結局合法的な権利、——権利と言うのはなにですけれども、自由ですね、そういうものを確保するためにこの条約に入ったのではないということを論証するためには、日本自身が核武装はしないという基本路線を国の内外に明らかにするということが、この条約日本が参加するその趣旨が具体的に証明される結果になると思うのです。  なぜ私がこういうことを言うかというと、その理由は実は二点あります。第一点は、この条約を締結してまいりましたアメリカの代表、並びにその後この条約を審議するにあたって国会におけるアメリカ政府当局の説明は、むしろこの条約によって、全面禁止に重点があるのではなくて、われわれは地下実験だけ自由を確保しておけば、われわれの今日の技術段階では核の生産、開発あるいは保有、使用は自由に前に推し進めることができるのだというところに重点を置いて、国会における答弁も証言もそのようになっている。それからまた、この条約に入っていないフランスまたは中国が、この条約の非常な抜け穴を指摘している。抜け穴というのは、具体的に言えば、現在保有する三カ国が核兵力を独占して、そして持たざる国に制限を加える、現実的には核開発を不可能ならしめる、こういうことで、今日の国際政治の中において、使用はしないけれども、いつでも製造し、保有し、貯蔵をし、開発をし、さらに使用すらできるのだという独占的、軍事的大国主義の地位を確保して、それを背景にして国際外交における発言権を強めていこう、こういう危険すらあるわけです。この条約の持つ機構そのものを客観的に判断いたしますならばそうです。しかも、アメリカ当局はそういうことを国会において公言をしておるのみならず、その他の談話でもって国の内外にその態度を明らかにしておる。こういう状態でありますから、この条約に入りさえすれば、これを締結した原締約国三カ国もこれから参加するわれわれも、全部この条約の目標というものは全面かつ完全禁止ということをかちとることができるのだ、それがこの条約の眼目だ、そしてその可能性がこれでできるのだということの証明にはならぬわけです。それは、どういうふうになるかということは、保有国をはじめとする参加各国の努力、すなわち継続的努力いかんによってこれはきまるわけです。そういうわけですね。  そうでありますならば、われわれがこれに参加するのは、持つつもりはないから禁止規定を受ける必要はないけれども、完全かつ全面的なる禁止をかちとるために内部に入ってこれを促進するのだ、そこに条約参加の意味があるのだ、こういうことを言われるならば、与党・野党何ら違いはありません。中国も違っていない。中国も、七月三十一日のこの条約に関する政府の声明というものはそういうことになっておる。中国は核兵器を開発し、保有し、実験し、貯蔵し、場合によれば使用するということを目標にしているのではない・中国はそうではなくて、この条約の前文にうたっておる全面的かつ完全な禁止を実現することがわれわれの当面の政策でなければならない、こういうことを言っておるわけですね。  ところが、それに至るまでの継続的交渉の努力というものを怠ったり、それから、この条約というものをそういうふうに前向きに理解しないで、うしろ向きに、これから開発しようとするもの、それらを押えようとする、自分だけの軍事的独占地位を維持しようとする言動がもうすでに原締約国の中にある情勢の中においては、まず日本自身としてなすべきことは、私は、この条約に参加する以上は、裏返しのきかないためには、やはりわれわれ自身は永久に完全に核武装をしないのだという宣言をする必要があると思います。   〔椎熊委員長代理退席、委員長着席〕 日本がこれに参加する理由は、禁止規定を必要としておるというのではなくて、全面かつ完全なる禁止をかちとることが目的だとするならば、そういう態度をとることが、すなわち核武装はしないという宣言を内外に向かってすることが同時に行なわれて初めて、参加の態度の筋も通りますし、参加する目的に対して効果的な措置であるというふうに私は考えるわけです。抽象的に私は言っているのではありません。あなたと私どもといま一致したように、この条約の眼目というものは第一条の禁止規定にあるのではないのだ、そのことに満足するものではないということ。ところが、これによって、空中、水中の汚染がなくなるということの一面には、実際は軍事的大国主義がこれから国際外交の中でのし歩く危険があるし、そうして、フランス、中国のそういうものに対抗するための核武装の努力というものが触発される危険があるということでありますから、当然、これに入る以上は、その精神、基本方針でありますならば、入る必要を認めて入る以上は、私は、こういう抜け穴の多い条約の場合においては、まず日本が、核武装はしないのだ、アメリカとは違った態度と方針によってこれに参加するのだ、ソビエトとも違う、イギリスとも違うという態度を表明して初めて、国際世論の先頭に立って、日本が核武装禁止につきましてはその唯一の被爆国の外交として名誉ある指導性が発揮できる、こういうふうに思うのでございます。いや味を言っているのではありませんよ。どうぞ御理解をいただきまして、そうして、この条約が国会を通ります場合には、同時に日本の非核武装の宣言決議を国会でもすれば、政府もそれに即して明らかにする、このことによって初めて、いまわれわれが場合によったら賛成しようとし、あなたが必要がないのにあえてこの条約に参加するという趣旨が具体化されると思うのです。まじめにひとつ御答弁をわずらわしたいと思います。
  184. 大平正芳

    大平国務大臣 地下を除くスペースにおける実験禁止を規定したこの条約は、地下を除く以外のスペースにおける実験をこの条約によって合法化するとかそういうものではない、これはこの条約ができる以前の状態と全然変わらぬ状態である、このことはこの前の委員会で川上先生との間のいろいろやりとりを通じてお聞き取りいただいたと思うのでございますが、条約の解釈としてそのように考えておるわけでございます。すなわち、この条約が禁止していないこと、核兵器の製造とか運搬とか貯蔵とか使用とかいうようなことをこの条約が権威づけるとかあらためて合法化するとかそういうものではないのだということ、そのことは川上さんの御質問に対して申し上げておいたわけでございます。御理解をいただきたいと思います。  それから、この条約のねらいは全面軍縮に至る第一歩である、そういう願いを込めてわれわれはやるのだ、われわれは核武装をする意図もないということは、これはもうたびたび政府が国会を通じて内外に申し上げていることでございますし、この条約の署名にあたりまして政府が声明を出しておるわけでございまして、それで十分だと私は考えております。
  185. 穗積七郎

    穗積委員 しかるにかかわらず、実はこれは政府のことではありませんで国会のことでありますが、今日の政党政治であります以上は、多数党と政府というものは政策上は一体の政治的責任がある。そこで、さらにこれを国民の全体の世論として、核武装はしないという政府の方針は全国民的なかたい決意であるという意味で、国会において非核武装宣言の決議をするということは、私は当然望ましいことだと思うのです。あなたは外務大臣ですから、執行部としての御意見を伺うものではなくて、あなたの立っておる背景である多数与党の領袖として私はお尋ねいたしますが、そういうことで政府の方針をさらにコンファームする、全国民的世論に固めておくということは望ましいことだとお考えになりますかどうか。私はこのことがさらに必要であるというふうに考えますが、いかがでございましょう。
  186. 大平正芳

    大平国務大臣 日本政府がすでに内外に申し上げていることでございまして、それがたよりないからもう一度やるのだということは、私はよくないことだと思うのでございます。政府がやりましたことにちゃんと権威を認めていただくということでありたいと思います。
  187. 穗積七郎

    穗積委員 そうでありますならばお尋ねいたしますが、この条約の交渉に当たりましたアメリカの代表並びにアメリカ政府当局が、国会その他における証言や談話におきまして、むしろこの条約の効果というものを、そういう方向へ目標を差し示めさないで、実は自国の製造、開発あるいは貯蔵、使用は何ら拘束されるものではないということですね。場合によりますと、そのことが、先ほどからもちょっと問題になりましたが、事実上核の独占、軍事的大国主義になる。そういう言動がまき散らされましたことは大臣も御承知のとおりです。これはわれわれとしてははなはだ心外に思っておるわけでございますが、日本外務省としても、先ほどからの基本方針から見れば、これははなはだしくこの条約の精神を歪曲する証言であり声明である、こういうふうに理解すべきだと思いますが、御所感はいかがでございますか。
  188. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカの国会等におきましてこの条約が論議されたことは承知いたしております。また、この条約の署名について反対の意見があったことも承知いたしております。しかし、この条約が結局においてコングレスの承認を得たことも承知をいたしておるのでございます。その過程におきましてどういう論議が行なわれ、それに対しておまえはどう思うかということでございますが、そういうことまで私からお答え申し上げるのはいかがかと思います。
  189. 穗積七郎

    穗積委員 他国のことではないわけです。われわれがここに参加しようとする多数国条約、しかもこの条約機構の中においてもまた特別な地位を与えられておる原締約国、このものがそういう方針なり態度をとることは、これからこの条約を通じて関係のあることです。そうであるならこの条約の精神というものを歪曲するものだと私は思うのです。そういう理解のしかた、そういう今後の方針。だから聞くんです。アメリカの内政に干渉する意味大平外務大臣の御感想を伺っておるのではございません。この条約をどう受け取るかということに対する審議のために必要なことでありますからあえて伺っておるのでありまして、一般的な内政干渉とは違います。
  190. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、この条約の前文にもありますように、「核兵器のすべての実験的爆発の永久的停止の達成を求め、その目的のために交渉を継続することを決意し、また、放射性物質による人類の環境の汚染を終止させることを希望して、次のとおり協定した。」、この求める決意、そしてそれを希望する、それがおごそかにこの条約に規定され、承認を得ておるわけでございます。ここに示されたような崇高な目標に向かって私ども日本政府としては最大限の努力をするということでございまして、この条約各国の国会に出て、そこでいろいろ論議をされて、その節々についてとやかく申し上ぐべきじゃないのじゃないのでしょうか。日本政府の決意を聞いていただけば、もうそれで十分ではないかと思います。
  191. 穗積七郎

    穗積委員 アメリカ当局の発言に対して批評を加えることを恐怖しておられるようですけれども、私はそういうものではないと思います。この条約の前文は大きなる願望であるけれども、具体的な条約上の効果はないわけです。これで全部をおっかぶせて説明をして、あとは、この条約反対するものは好戦国である、あるいは好戦主義者であるというきめつけをする、そういうことであるなら、私はこれは欺瞞だと思うのです、世界の民衆に対する。しかも、これに対して希望を持とうとしておる、全面完全軍縮に対して希望を持たそうとしておるこの条約に対する期待を裏切るものです。原締約国がそういう理解をし、今後これを運営していこう、利用していこうということであるならば、それはいま私とあなたと一致して支持しておるこの前文の崇高な精神・目標というものを冒涜するものでありますと言うことが、これこそ目的を実現するための日本外務省の第一の行動でなければならぬわけでしょう。そういう誤った原締約国の解釈、それはどこにそういうことが書いてあるのか。崇高な目標に反するわけです。そういう言辞に対しては、遺憾の意を表し、あるいはその理解を改めしめる努力がなくして、この崇高な目的を実現するためのてことしてこの条約に参加するなんという態度はどこかに埋没してしまっていると思うのです。日本国民の期待を裏切るものであり、そして、あえてアメリカに恐怖するもので、自主性がない、そう言われてもしようがないじゃありませんか。他国のことじゃありません。条約でこれから結ばれていく国です。しかも原締約国でございます。もう一ぺん所感を伺いたい。
  192. 大平正芳

    大平国務大臣 日本政府の願っておりますこと、決意しておりますこと、これはすでに申し上げたわけでございます。アメリカでは安全保障の立場からこの条約は署名すべからずという意見もあって、それに対していろいろな論議が行なわれたことは知っておりますが、そういう意見があるからけしからぬというようなことは、これは穗積さん少し無理じゃないでしょうか。いろいろな議論があるので、そういう議論があってはならないなどということは、それは少し無理な相談じゃないかと思います。ただ、アメリカの国会におきましてもこれが承認されておることは事実でございます。われわれはここにうたわれたような崇高な目標に向かってお互いに努力しようじゃありませんか。
  193. 穗積七郎

    穗積委員 それから、もう一つ大事なことは、特にフランス並びに中国では、こういう米英ソ三カ国の核政策に対して、国際的な不均衡を是正するために、その大国主義を是正するために、核武装をするという動きがもうすでに反射的に出てきておるわけでございます。このことは、この条約の基礎をはなはだしくくずすというか、傷つける結果になるわけです。そのときにわれわれが一体どういう態度をとるかということは、先ほども心配して質疑があったわけでございます。そこで、私は、問題は特に隣の中国の問題だと思うのです。中国は、今日目前の政策としては、こういう大国三カ国が軍事的大国主義によって核兵器の独占をはかろうとするというようなことであるならば、われわれはこれに屈服してはいないということで、独自の核開発をやるということを言っているわけですが、そのことがわが国におきましてもはね返りまして、実はわが国の核武装そのものを促進しよう、正当化していこうというような一部の意見、動きもあるわけでございます。そこで、われわれとしては、こういう前文の精神こそがこの条約参加の目的であるとするならば、この問題をやはり今後処理していく必要があると思うのです。それは、この三カ国、現在は百九カ国ですが、百九カ国内部における交渉の継続への努力ですね。大目的に向かっての交渉の継続への努力と同時に、この条約に参加していない諸国との間におきましても、核武装の必要を認めさせないような国際関係をつくっていく、こういうことが一番大事なことになると思うのです。  そこで、私は具体的にお尋ねいたしますが、中国は、これに対しまして、この直後、七月三十一日であったと記憶いたしますが、全面的かつ完全なる禁止、すなわち、空中、水中の実験だけではなくて、地下実験はもとより、製造も保有も運搬も、さらに当然貯蔵、使用も全部禁止しようということを提案いたしました。これはこの条約の前文の大目的と完全に一致するものでございます。すでに周恩来提案として当時内外に明らかにしました政策、方針、これはこの前文と完全に一致する。これはこの前文をさらに具体的に差し示した政策である。これは当然われわれとしては支持して、この条約に中国が入らないでも、この問題について話し合いを進めていく必要があると私は思うのです。それなくしてこの条約の目的を達するわけにはいかない。特に中国は隣国でございます。そういうことでありますから、中国の、この前文をさらに具体的に内容を示しました七月三十一日の提案に対しては、当然賛成、同感である、われわれはそういうふうに受け取っておりますが、日本外務省はどういう御検討をなさいましたか。大臣はどういう御感想をお持ちになっておられるか、これについて伺っておきたいと思うのです。
  194. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘のように、中共は、核実験禁止のみならず、核兵器の製造、使用、貯蔵の禁止、さらには核非武装地帯設置問題等、幅広い問題について会談を提唱しております。これらの問題は全面完全軍縮の一環として当然検討しなければならないことだと思います。ただ、私どもが理解しかねるのは、中共が部分的な核実験停止条約には強く反対しながら、一足飛びに全面的核実験禁止の世界首脳会議の開催を提案しておることであります。これは現実的なかつ建設的な御提案かどうか問題だと思うのでございます。われわれは、たびたび申し上げておるように、部分的核停条約というのは不完全なものであることは十分承知いたしておりますが、これが全面禁止に至る一つのステップとして十分評価すべき意義があると考えておるわけでございます。中共がそういう考え方になっていただくことが望ましいのではないかと考えております。
  195. 穗積七郎

    穗積委員 そういうことを示しておる政策そのものについては賛成である、これから全面禁止ということであるならば、その具体的な内容を示しておる中国の提案というものは検討に値する、こういうことでありますならば、前向きですから、その態度そのものはけっこうです。  それでは具体的に続いてお尋ねいたしましょう。私は、この条約の機構について、参加した以上、日本ははっきりした態度をとるべきだと思う。あなたが、中国に対して、全面的完全禁止に向かってもっと具体的にものを考えてもらいたいということでありますならば、そういうことを要求する日本自身が一体どういうことをこれからやろうとしておるかこのことを示す必要がある。そして、参加した以上は、継続的な努力をする必要があり、また、権利が生ずるわけです。そこで、まず第一にお尋ねいたしますが、この条約の機構上のことです。第二条の改正条項、これは私は改正すべきだと思う。すなわち、第二項に、原締約国の票を含むという、原締約国三カ国の拒否権がここで認められておるわけです。このような特殊な規定というものは一体どこから何の必要があって出てきておるのか。真にアメリカ、ソビエト、イギリスが、前文でうたっておるような全面的かつ完全なる軍縮−を望むならば、しかもそれは、保有三カ国だけでなくて、世界の多数国がこれに参加、協力してもらいたい、こういう門戸を開いて、第三条では、「署名のためすべての国に開放される。」、こういうふうに言っておるからには、その内容をもっと前進せしめるような条約改正、改善していこう、水中と空中の実験だけではなくて、その大目標の全面禁止に向かって一歩一歩進み出そうということのためには、まず第一着手としてこの条約の機構を改正しなければいけない。ところが、この規定の第二条第二項におきましては、「原締約国の票を含む」ということで、これは拒否権が認められておるわけですね。こういう非民主的な多数国条約というものはあまり例を見ない。第三条で門戸は開放されておるごとくでありますけれども、一体、こういった条約機構における大国主義の多数国間条約というものが、条約局長、まず第一にほかに例がありますか。それから、第二に、ついでに伺っておきたいのは、これは民主的な多数国間条約としてははなはだ欠点の多いものだと私は思うのですが、それに対する条約局の御理解を伺っておきたい。
  196. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 若干性質は違いますが、国連憲章自身に五つの常任理事国の拒否権が認められておるわけでございます。この条約の第二条で三国の拒否権が認められておることは御指摘のとおりでございます。こういう形にしましたゆえんのものは、結局、かりに拒否権を認めませんで、いずれかの核保有国の反対する改正が行なわれて、その改正によって拘束されるというような仕組みにしますと、その核保有国は条約から脱退するとかいうことになって、条約の存立それ自体が失われてしまう。そういうふうな事態にならないように、この条約は少なくとも確保しておこうという考え方に立脚しておるわけでございます。
  197. 穗積七郎

    穗積委員 正当性はどうです。これははなはだしく好ましくないと思うのです。こんなものは非民主的ですよ。
  198. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 そういう批判は、たとえば、さっき申し上げた国際連合の安全保障理事会の仕組みにもあるわけでございまして、確かに主権平等という見地から言えば同じでございましょうが、また、実態をにらんで考えますと、たとえば、全然核武装なんというようなこととは無縁のどこかの国と、現に巨大な核武装をし得る国とを全くその票を等価値に見るということが実態的に公平であるかどうかという問題もまたあるだろうと思うのです。
  199. 穗積七郎

    穗積委員 あなたの、条約局長として、法律家として、その態度がもう間違っているのです。それが大国主義に対する事大主義ですよ。そのことがいま世界の平和を傷つけておるのです。この条約機構そのものが第一大国主義だ。多数国の参加を求めなければならぬというなら、参加国間においては少なくとも平等、民主的でなければならない。多数決によって条約内容は前進また前進が続けられるような仕組みにしなければいけない。その努力すら初めから放棄しているじゃありませんか。この条約の大眼目、われわれが参加する目的は、日本は核保有あるいは核武装する考えがないから必要ないけれども、わが国のことではない、世界全体の核武装を完全にかつ全面的に禁止する段階を実現するために参加するんだというなら、まず第一に、条約機構としてそれがいつ実現するかは今後の努力でありますけれども、当然継続的努力ということをわれわれはここで約束するわけですよ。日本人民に対しても、諸民族に対しても約束するわけだ。最初の努力は、第二条第二項のこの条約機構における大国主義を打破することです。私は具体的に提案いたします。すなわち、空中、水中という実験だけではなくて、一歩一歩これを実現する方法を、これを改正をして示せと言っておるのです。われわれ社会党はそれを提案いたします。一方、中国の七月三十一日の提案にも、これは一足飛び過ぎて食いつけない、しかしこれは検討に値すると、こう言われた。それならば、これに到達するための、しかも参加国全部が大目標として掲げておるものを実現するための第一歩というものは、条約第二条第二項のこの規定を改正することです。国連におきましても、国連憲章の改正意見というものはもうほうはいとした国際世論になっておる、そのうちの第一は、やはり安全保障理事会の拒否権の問題、それはすなわち加盟各国の人民を土台とする代表選出、その多数決。これは、私は、高橋条約局長時代でしたか、この委員会で外務省に提案いたしました。外務省は当時まじめに、その改正案に対する御趣旨は非常に尊重いたしまして今後検討をしたいと言って、実はそのままになっておるのです。この民主的だと言われるわれわれ核武装する考えが夢にもない国が参加して、そしてこれを国際的世論の中で前文にある大目標に向かって一歩前進していこう、中国の提案もこれと合致しておるということであるなら、われわれはまずこのワクの中でこの条約の側から努力する必要があるわけでしょう。その第一歩の努力を私は提案いたします。この第二条の改正です。内容じゃない、機構上の改正ですから、当然考えるべきである。これは非民主的な好ましくない条約構造である。あなたがこれをジャスティファイするために一生懸命言っておる国連の安全保障理事会の拒否権なんかも、批判の対象になっておるわけです。同様に、日本外務省としては、ほんとうにこれを念願するならば、その点の努力をすべきです。大平外務大臣の先ほど言われた精神とわれわれと一致するものとわれわれは思っております。中国とも一致しておるでしょう。そうであるならば、具体的努力が問題です。継続的努力が問題です。局長、参加したならば直ちにそういう検討をひとつ始めていただきたいのです。
  200. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私が申し上げた趣旨は、決して大国主義とかなんとかいう主義じゃないのでございまして、いまのわれわれの前にある条約でも、アメリカかソ連のうちの一国が入らなければもう存在し得ないわけでございまして、これが入っておるということは、たとえば、中国じゃございませんが、予見し得る対象として核武装をしそうもないような一国が入っておるか入っていないかという問題とは、もう実態的にたいへんな差があるわけでございまして、アメリカとかソ連とかいう国が同意し得ないような改正ということは、この条約の存立に、よって立つ基礎に関連する問題だということ、その現実の事実を申し上げておる次第でございまして、何か大国主義なんというものから言っておるわけではないのであります。
  201. 穗積七郎

    穗積委員 それを大国に対する事大主義と言うのです。これに入った以上は、当然なことじゃありませんか。脱退して逃げるときめる必要はない。何の理由で逃げるか。逃げたら逃げてみたらいいですよ。国際世論がそれをどう批判するか。前文の大目標を掲げて、全世界の人民に訴えて、わが国はそれに希望をつないで参加するわけでしょう。そうであるならば、一歩前進するための最初のじゃまになるネックというものは、この第二条第二項です。これを修正しようじゃないかということで日本外務省が検討したから、すぐソビエトもアメリカもイギリスも全部この条約機構を放棄して、脱退規定によって逃げる、こんなこと、あなたきめてかかる必要ないじゃないか。それじゃ前進ができないじゃありませんか。大目標に向かっていく可能性があるということはうそじゃないか国民を欺瞞するものですよ。最初の第一歩から、そんなことはできませんできません、それじゃ三カ国が逃げるかもわからぬ、おこるかもわからぬ、そういう事大主義的な態度で、平和をかちとる国際的な外交における努力はできましょうか。できるかできぬかいつできるか約束しろと言っているのじゃない。少なくともその方向に向かって努力すべきだ、私はこう言っているのです。それすら答弁できないなんて、そんな理想のないことじゃ、あなた、困りますよ。  お聞きのとおりです。外務大臣の御所感を伺いたい。私は条約局長の事大主義的な卑屈な態度に対しては納得するわけにはいきません。
  202. 大平正芳

    大平国務大臣 いまのやりとりは、つまり、第二条に拒否権があるのはどういうわけかという御質疑があって、これはこういうわけでございますと条約局長が答えたまでの話で、そこへ今度あなたの御提案があったわけで、御提案のほうは承っておきますが、私どもといたしましては、まだこの条約の御批准をお願いしておるところなんで、まず御批准のほうを先にお願いしたい。
  203. 穗積七郎

    穗積委員 そうじゃないのです。この条約は、全面かつ完全禁止に向かっててこ入れになれば、非常に効果のある条約になる。ところが、そうじゃなくて、このまま腰を落ちつけて、場合によっては逆向きになって軍事的大国主義を振り回していこうという情勢が国際外交の中に出てくれば、これはかえって有害な条約になり、前進すれば効用のある条約である。このまま腰を落ちつけてしまえば、有害な条約の側面を非常に持ってくるわけです。だから言っているのですよ。この条約によって全面禁止に向かっててこ入れをしようじゃないかと言って国民に訴えられておるわけでしょう。国会に承認を求めておるわけだから、そうであるならば、その決意のほどを伺わなければ、何とも言えぬじゃありませんか。審議の条件を具体的に示せと言うから、具体的に示しておる。
  204. 大平正芳

    大平国務大臣 第二条はこういうわけで拒否権を規定してありますということでございます。
  205. 穗積七郎

    穗積委員 だから、これは改正提案をしようじゃないかと言っておる。
  206. 大平正芳

    大平国務大臣 まず批准をお願いしたいと思います。
  207. 穗積七郎

    穗積委員 いやいや、批准をするについては、この条約の受け取り方があるわけだから、だから、政府の方針を伺っておるわけです。
  208. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申し上げましたように、日本政府としては、たびたび申し上げますように、この条約はいろいろ不完全なものでございますけれども、これを第一歩として、次に漸次建設的な方向に持っていくように努力したいと思います。
  209. 穗積七郎

    穗積委員 これはいまの条約の機構上の不当な点でありますが、内容的に言いますと、これは水中並びに空中の実験だけ禁止しておるわけですね。これに対して、政府として、及びわれわれ日本国民として進むべきものは、地下実験も禁止する、実験の全面を当面禁止するということ、これを条約を改正して百九カ国に提案をすれば、私は支持されると思うのです。第一条の改正になるわけですね。内容的改正です。すなわち改善、前進でございます。これは、日本がこれに参加して正当な発言権を確保いたしますならば、当然適当な時期に提案をして、第一条の内容的改善をはかる、すなわち前進をはかるべきだと思いますが、大臣の御所感はいかがでございますか。
  210. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、これはわれわれは第一歩と心得ておるということでございまして、これから状況に応じて実効のある建設的な処置を各国と協力してやっていかなければならぬという気持ちを持っておるということを御理解いただきたいと思います。
  211. 穗積七郎

    穗積委員 実験の全面禁止の次の段階は、やはり製造、保有、拡散並びに使用の禁止であるわけですね。それについても時期を見て前向きに努力する御用意はございませんか。
  212. 大平正芳

    大平国務大臣 この前の委員会でも御答弁申し上げましたように、国連がいま軍縮委員会のほうに問題の検討をゆだねてございまして、いま御指摘のような問題を初め、軍縮にからまる一切の問題がいま取り上げられて検討に入っておるわけでございます。同時に、わが国は軍縮委員会のメンバーでございませんけれども、わが国の軍縮問題の研究というものは非常におくれておりまして、われわれもおくればせながら軍縮問題の研究にいま手をつけておるわけでございます。われわれ自身ができますれば、そしてそれが実行可能であり平和に建設的に寄与するというものでございますならば、われわれはその場合に応じて適切な処置を講じてまいりたいと思います。
  213. 穗積七郎

    穗積委員 この条約に参加いたしましたときに権利義務関係が生ずる。その中で、具体的に前進すべき階段といいますか方向が問題だと思うのです。そうであるなら、同時に、私はこれに関連してお尋ねいたしておきたいのは、こういうふうに全面かつ完全禁止を目標としてわれわれがこれに参加するという態度を表明する以上、条約機構の中における努力も必要であるとともに、その他の外交政策の中でもこれに即応した努力が必要である。まず第一は、F105Dの配置、それから、続いて原子力潜水艦のわが国における基地化、これらはもう、この参加する精神、先ほどから言われた精神、参加したならば条約機構内においてする努力の方向、それから見ますならば、外における外交政策と並行して、当然これらの問題は処理すべきだと思うので、特に問題になっております原子力潜水艦は懸案のままになっておりますが、これは、わが国が原子力潜水艦の基地を貸与するということは、この条約の御趣旨あるいは政策路線に当然反するものであると思います。これはもう中止なさるべきが当然だと思うのですが、念のために伺っておきたい。
  214. 大平正芳

    大平国務大臣 私はそういうふうには考えませんで、軍縮問題というのは、世界の平和、安全をそこなうことなく実行していかねばいかぬ問題でございます。現にある軍備というものは、世界の軍事的な均衡を失うことなく、漸次低水位に持っていくべきものと考えるのでございます。私は、世界の状態がそういう核兵器などがない状態で平和が保たれるというようになることを心から願いますけれども現実の問題としてそうなっていないわけでございます。われわれは集団安全保障機構に入って現実の問題として日本の安全を守っておるわけでございます。いま御指摘の飛行機の問題、潜水艦の問題はそのカテゴリーの問題でございまして、この条約とは直接何ら関係がありません。
  215. 穗積七郎

    穗積委員 関係がないというのはあなたの論理的な誤りだと思うのです。これに結びつけられては困ると言って逃げておられますけれども、これは基本精神から言えば重要な関連があるわけです。しかも、日本の領土だといわれておる沖繩は、完全な核基地になっておる。すなわち、日本の領土内に拡散が行なわれておる、核装備が行なわれておるわけです。こういうことは、この際私どもとしては、この条約に参加して、その目的がいま言ったような前文の大理想を実現するものであるということでありますならば、そして、中国が核武装をしないように、軍事的な対立のなくなるように、そういうことを実現するためには、このアジアにおけるいまの中国封じ込め政策、中国を仮想敵国とする軍事基地化あるいは核武装化、こういう方向というものは積極的になくしていかなければならない。これから行なわれんとする危険のあるものはもとよりですが、現在あるものといえば沖繩の核基地ですが、これを早く取り戻して、少なくとも核基地たることはもう解放する、少なくともこれだけの努力がなければ、私はこの条約に参加する日本態度にはむしろ非常に矛盾撞着があると思う。そして、前方の大理想に向かって努力し、場合によっては中国の提案もその具体的なものにほかならないから検討に値する、場合によっては国交の話し合いができる段階にまで話し合いしなければならぬ、そういうことでありますならば、いま言いましたような原子力潜水艦の問題とか、あるいは沖繩の核基地化を解放する、こういうことはわがほうとしてなすべきまず第一着の外交措置ではございませんか。そうお考えになりませんか。
  216. 大平正芳

    大平国務大臣 この条約の崇高な目的につきましては、穗積さんと私と非常に思想が一致したのですが、そこになってくると非常に違ってくる。あなたは沖繩というのをそれだけの問題として取り上げられるわけでございますけれども、沖繩に核兵器がありとすれば、私どもはそれは拡散であるなんて思っていない。そういうのをわれわれは拡散とは言わないんです。われわれは現在の世界の軍事力の均衡の一環と見ているから、これを簡単に取りはずすとか、ぞんざいに取り扱うということは、世界の平和に対して脅威だと思う。むしろこれは慎重にやらなければならぬと思っておるわけです。したがって、軍備の水準を全体のバランスをとりながら落としていくというのが私たちジュネーブにおける課題ではないかと思うのでございまして、ちょっと目ざわりだからここらあたりでやめないかというぞんざいな考え方には、私は、お親しい仲でございますけれども、絶対に同調できません。
  217. 穗積七郎

    穗積委員 あなたの認識が私は誤っていると思うのです。論理的矛盾だと思うのです。政策上の分裂だと思うのです。  最後に一点お尋ねいたしておきますが、いまの保有国を含む全世界、グローバルな全面完全禁止ということはなかなか一ぺんにいかぬとするならば、条約機構外の一つの努力としては、非核武装地帯、それには保有国を含む、これの設定に努力するということ。このアジア・太平洋地域の非核武装地域というものは、あなたのほうの党の元老である石橋先生も、全く同感であるのみならず、この問題を積極的に諸外国に向かって提案をし、この実現をはかろうとしておるわけです。そして、これらの提案に対しましては、ソビエトも賛成をしておる、中国も賛成をしておる、日本国内でも非常に多くの人がこれに賛成をしておる。あと残るのは、日本国内の一部の人と、それからアメリカだけなんです。これは、唯一の被爆国日本として、こういう核武装の全面完全禁止を目標にしてこの条約に賛成するという以上は、条約機構外の外交政策として今後検討に値する重要な外交政策である、私はこういうふうに思うのです。それに対するあなたの御所感を伺っておきたいと思います。
  218. 大平正芳

    大平国務大臣 穗積さんとその問題のとらえ方で順序が違うわけなんでございます。非核武装地帯を設置するということができれば東アは平和にいくじゃないかこれは非常に美しいことばでございますが、この東アの事態というのは、非核武装地帯を設置するということに関係国の意見が一致を見るような簡単な事態でないとわれわれは承知しておるわけでございまして、むしろ、逆に、非核武装地帯をつくりあげようじゃないかというような空気ができてくるような事態に早くなりたいものだ、こう私は思うわけでございます。非常に緊張した軍事的均衡の上に平和があるわけでございまして、そういった軍事力のにない手である国々が真剣に考えるべき問題であろうと思うのでございまして、日本でとやかく申し上げるよりは、核保有国であられる国々がそういった問題を真剣に考えてもらいたいものだと思います。
  219. 穗積七郎

    穗積委員 まだありますけれども質問者がありますから、一ぺん交代いたしまして、審議の模様によって、余裕があれば、留保して質問いたします。
  220. 臼井莊一

    臼井委員長 関連質問が一問あるそうですから、これを許します。川上貫一君。
  221. 川上貫一

    ○川上委員 いま外務大臣は、穗積委員質問に対して、この条約で地下実験の合法化ということは間違いだ、そんなことはない、こういう答弁をなさった。私にもなさった。しかし、これは私はこの条約を承認するかどうかという問題の一つの点として重要な点だと思います。この地下実験というのは、アメリカにとっては実は非常に都合のよいものであって、これには非常な意味もあり、もくろみもあるのですけれども、この前言うとおり、これは差しおきます。ただ、これが条約によって合法化されるという問題、これは私もこの前これを述べた。そうしたら、そういうことを言うのは牽強付会だとあなたは言った。しかし、およそ国際的な条約というもので、一つの問題で、ある部分は禁止した、ほかの部分はそのままにしておる、こういうことになれば、これは国際的な条約を解釈する慣例として、残ったる問題は黙示の承認をしたことになる。これは通念だと思うのです。それはそうじゃないと言うのならば、牽強付会だというような答弁じゃあかんですな。事を明らかにして、これは条約上の解釈ですからはっきりする必要があると思う。あなたは牽強付会だと言われますが、この条約を結ぶより一年前、一九六二年の八月です。これとほとんど同じ内容の提案をアメリカがした。その時分のソ連の代表は、これは御承知のようにクズネツォフという人である。この人がどう言うたか。もしも条約に地下実験を禁止しないならば、地下実験は合法化されることになるのである、こう言うて、その当時アメリカの提案に猛烈に反対した。これはこの調印の当事国の正式代表です。一九六二年の八月です。これも牽強付会ですか。私は何もこのクズネツォフのことばをつかまえて云々するのじゃありませんが、何も私は牽強付会のことを言うておると思わない。こういう問題。調印国それ自身の代表が、同じ内容を持ったアメリカの提案に対して、地下実験をとめなければ地下実験は合法化するんだと言うて反対した。それで、その時分には、この核実験の条約は部分核停条約です。これはその時分には通らなかった。調印にならなかった。これは事実なんです。これを言うておる。一方は今回調印をしたソ連であるということなんです。外務大臣はこういうことを一体どうお考えになるか。私はあげ足をとるのじゃありませんが、この条約については全体に意見がありますけれども、特にこの地下実験の問題は、この条約を承認しようかすまいかという場合に重要な一つのかなめでありますから、これは、あなたの言うことは牽強付会だというような妙な答弁をするんじゃなくて、そうではありません、国際法的に考えて、国際慣習的に考えて、また法的に考えて、われわれや穗積君の意見が間違いであるということを親切に答弁しなければ、審議にならない。私は関連でありますからたくさんは言いませんが、これだけは明らかにしておいてもらいたい。これはおそらく本日採決されるかもわからぬと思うのですが、このときの態度に影響する非常に重大な問題です。これだけです。
  222. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 この条約のもとにおきまして地下爆発が禁止されておらないということは、仰せのとおりであります。しかし、それがこの条約によって合法化されたということになりますと実態と違うのでございまして、私どもは、実定国際法上一切の核実験を行なうことが禁止されておる、そういう国際法がすでにできておるというふうには言えないと思うのでございます。そのうちで空中、大気圏外、水中、それだけのものがここで新たに禁止されることになる、それで、地下爆発は禁止の網はまだかぶさっておらないという状態が続いていくというだけでございまして、合法化と言いますと、いままで禁止されていたものが合法になるように聞こえますけれども、そういうわけではないということを言っておるわけでございます。
  223. 大平正芳

    大平国務大臣 私、牽強付会ということばを使ったとすれば、それは言い過ぎでございまして、ただいま条約局長から御説明申し上げたような趣旨で申し上げたつもりでございます。
  224. 川上貫一

    ○川上委員 関連ですから、もう時間をとりません。それは、条約局長、違うのじゃないですか。いままで合法化されておったとか何とか言うのじゃない、私の言った質問は。事実上合法化されたではないかと、事実上ということばを使ってある。法律解釈ではない。いままでは何も条約はなかった。初めて条約をつくるのです。条約をつくって、ある一つの問題で、その条約の上で一部分は禁止した、ほかの部分はそのままにしてあるということになれば、条約にした場合、その残った部分は当事国として事実上黙示の承認をすることになるのだ、ということを聞いておるのです。あなたの答弁、私は違うと思います。まじめに、ほんとうのことを言うほうがいいと思うのです、言い抜けではなくて。だから、事実上アメリカはもう二十一回もやっておる。のうのうとやっておる。世界じゅうがほとんど抗議しなかった。この事実をどう見るか。初めはアメリカの実験に対しては猛烈な抗議が全世界からあった。いまはほとんどとまっておる。これは何ですか。事実上承認になるじゃないかということを言っておるのです。法律解釈を聞いておるのと違うのだ、こういう問題は。もう聞きませんけれども
  225. 臼井莊一

    臼井委員長 松井誠君。
  226. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この条約の政治的な意義についてはいままで多くの委員からお尋ねがありましたので、私は簡単に、この条約やそれをめぐる軍事的な意義といいますかそういうものについて二、三お伺いをいたしたいと思います。  きょうも永末委員からいろいろと軍事的な観点からの御質問がありましたけれども、私は軍事科学については全くのしろうとでまだよくわからない。  一つは、この条約が地下爆発を除外しておる。そのことによって、ソ連にしてもアメリカにしても、自国の脅威にはならないんだということをいろいろな機会で言っておられる。アメリカは上院の聴聞会でそのことをを主として明らかにしておる。これはあるいは批准を願うという立場からの多少の誇張があるかもしれないと私は思うのですけれども、たとえばソ連にしましても、私の目に触れた文書では、去年の九月の一十二日のソ連の声明で、たとえばこういうことを言っておるわけです。帝国主義者に侵略を思いとどまらせているソ連の核戦力の基礎は、地下実験という手段によって開発されるような型の核兵器ではなく、ソ連が優位を保っているような型の核兵器である、これは秘密ではないし、多くのアメリカの指導者もこの点は認めないわけにはいかないのである、こう言っている。これは実は論争の声明でありますので、あるいはこれも正確ではなくて多少の誇張もあるかもしれませんが、しかし、われわれが常識的に考えると、地下爆発に縛られるというのは、やはり、実験のいろいろなデータを、大気中や水中でやる実験と違って集めにくいだろう、あるいは地下爆発というのはやはり大型の爆発の実験には適さないだろう、そういう制約があるだろうというように常識的には考えられるわけです。しかし、それにもかかわらず、これがこれからあとの核の開発に支障がない、国の安全の脅威には全然ならないのだということを繰り返し言っておる。これは具体的には軍事的にどういう理屈の筋道からそうなるのか防衛庁の方がお見えになっておりませんので、おわかりの方どなたでもけっこうなのですが、ひとつ教えていただきたい。
  227. 梅沢邦臣

    ○梅沢説明員 地下爆発の問題についてはあまりデータを持っておりませんが、大体、実験をやります場合に、穴を大きくしまして非常に深くすれば、相当量のことはできるのじゃないかと思います。ただ、測定器の関係がございまして、測定器がどのくらいまで開発されておるかというところにいきますと、大体二十キロトンくらいのところまでは一応の実験が可能となっておるのじゃないかそうしますとせいぜい数十キロトンくらいの実験ができる状態ではないか、これは私が現在持っております知識でのお答えでございます。
  228. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は何かで読んだのですけれども、現在地下爆発では百キロトンくらいのものの実験ができるのだ、地下二百メートルと言っていましたか何かそれくらいのところでの実験ができるのだというようなことを読んだ記憶があるのですけれども、百キロトンの爆発というのはこういう実験の規模としてはどの程度のものか。これはやはり大型になるのですか。
  229. 梅沢邦臣

    ○梅沢説明員 それは、地下の地殻の構造の固さ、その点からまいりますので、私たちもちょっと、それがどの辺までいくか判断がいたしかねます。
  230. 松井誠

    ○松井(誠)委員 核の開発について少しも支障がないのだ、したがって国の安全の脅威にはならないのだという考え方は、そのまま一〇〇%割引なしに受け取っていいというように、軍事科学の点から考えていいものかどうか。
  231. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私も専門外でありますけれども、けさ防衛庁長官の御答弁を拝聴しておりましたところが、米ソとも、核爆発物についてはオーバーキルの状態まで達しておると思う、十分以上に持っているようになったので、この実験禁止をやっても差しつかえがないという判断をしたものじゃないかというふうに説明しておられました。
  232. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、単にオーバーキルの問題だけではないと思うのです。それも現在たくさん持っておる、一ぺん殺した人間を二度、三度殺すというわけにはいかぬから現在の殺戮力でもって必要量の四倍、五倍あるというだけではなくて、これからあとの開発にも差しつかえないということ。現在の核兵器がもうほんとうに過剰殺戮力といわれるようなそういう分量になっているというだけでなしに、これからあとの核兵器の開発にも支障がないということをやはり心配をし、答弁をしている。アメリカの上院なんかでもしていると思うのです。これは別に他意あってお尋ねをするのではなくて、この条約というものが持っておる軍事的な意義というものが正確にわからないと困りますのでお伺いをするのですけれども、どうしてもおわかりにならなければしようがありませんけれども、いかがですか。
  233. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 どうも先ほど御答弁申し上げました以上のことを私存じませんので、ごかんべん願います。
  234. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それでは、この核停条約が締結をされたあとで、やはり世界の軍縮について二つばかり一つの前進と見得る問題があったと思うのです。一つは、去年の秋、国連でいわゆる核衛星といいますかそれの軌道への打ち上げを禁止するという決議案が通った。これは軍事的に見てどういう意味を持っておるのか。もっと具体的にお尋ねをしますと、この核衛星というものは軍事力というものは非常に強いのだけれども、したがって、それを禁止をされるということは何がしか国の脅威にはなるのだけれども、別の理由によって米ソという国が賛成をしたのかあるいは、これが軍事的にもたいして理由がなくなったので賛成をしたのかそういう軍事的な意義といいますか・それについておわかりでしたらひとつお答えをいただきたいと思います。
  235. 齋藤鎭男

    ○齋藤(鎭)政府委員 この決議が成立しました審議過程におきまして、このこと自体が米ソ両国の自発的な意図に基づいて行なわれ、しかも、その理由が、かような大量破壊兵器というものを宇宙に配列するということは、地上においてこれを行なうことよりもはるかに被害が大きい、その効果が大きいということが論ぜられておりまして、この決議ができる過程において行なわれました軍事的な意義に関する発言はそういうことでございました。
  236. 松井誠

    ○松井(誠)委員 非常に効果が大きい。効果が大きいから、本来ならばそれを禁止をされるということは何がしか苦痛である。とすれば、それを禁止するということに賛成したけれども、むしろ、殺戮力が強ければ強いほど、少なくともいままでの経過から言えば反対をする、あるいは賛成をしがたい立場におったのではないか。私は、これは全くのしろうとのあれですけれども、こういうことを聞いたことがあるのですけれども、その軌道に乗ったままで爆発をする、そうしてそれが地上にその殺戮的な効果を及ぼすためには、非常に大きな核兵器でなければならぬ、ところが、それが軌道からおりてきて地球に近づいて適当なところで爆発するというような形になりますと、これは核兵器の防御の網にひっかかってだめになってしまう、そういう意味で、この核衛星というものが軍事的にあまり意義がないということが賛成に踏み切らせた大きな原因だという観測を読んだのですが、これが軍事的に見て正確なものであるのかどうかおわかりですか。
  237. 齋藤鎭男

    ○齋藤(鎭)政府委員 この決議のできました関連におきましては、ただいま私が申し上げましたように、いまだかような高度の科学的な発達をしておりますのは米ソ両国だけであって、しかもその強大な効果については米ソ両国だけが一番よくわかっておる。その段階におきましては、両国がもし共通の意図を持つならば、これはやめて、両方の利益のためにやめたほうがいいということで、共通の意思に基づいてその意思を表明したというように了解しております。
  238. 松井誠

    ○松井(誠)委員 どうも専門家がいないものですからうまくありませんけれども、もう一つ、ことしになって、四月の下旬だったと思いますけれども、例の核分裂物費の生産の削減。アメリカがプルトニウムについては二〇%、ウラニウムについては四〇%の削減をする。ソ連も、原子炉の建設の中止だとかあるいは何でしたかそういう声明をする。そういう軍事上の核物質の生産の削減というのは、これはどういう事情に基づいて行なわれたのか。これもいままでの軍縮会議で何度も提案された一つの項目であるのですけれども、いまそれが実は突如として声明という形になって実を結んだのはどういう理由からなのか。
  239. 齋藤鎭男

    ○齋藤(鎭)政府委員 従来の軍縮の過程を通じての本問題の取り扱いにつきましては、アメリカ側は、その軍縮の一環として、特に長期にわたってのものでなくして、とりあえずすぐにやるべきものとしての軍縮の手段としてこの問題を提起しておりましたが、ソ連はこれに対して何らの反応を示さないで、この発表に至ったのでございますが、現実においては、情報によりますと、この軍縮会議以外の場においても本件についての交渉が行なわれたようでございます。しかして、この問題が解決しました理由につきましては、これは表面に出ておりませんので、その意図については明確にいたしませんが、想像するところによりますと、第一は、問題が世界のほかの国に直接関係するものではなくして、主として米ソ両国間だけで話し合いのつく性格のものである、軍事的に見て、両方だけが話し合いすればお互いにやめられるという、そういう性格の問題であるという点が第一点。第二点としまして、これはあるいは間違っているかもわかりませんが、核分裂物質の生産を減らしても、もちろんあればあるほどよいのでございましょうが、減らしてもとりあえずの米ソ両国の国防に大きな不安を与えることはないという点があるのではないかと想像されます。もちろん、この点は、減らせば国防にある程度マイナスにはなると思いますが、不安をもたらすという程度には至らないという点が第二点。第三点としましては、今次の措置には従来軍縮において最も問題になりました査察とか検証ということが必要でない、そういうものを伴わないということで、やりよいという意味がございましたようでございます。  以上三点がこれができました理由でございますが、近時の核兵器の傾向としまして逐次小型のものが発達していく方向にございますので、したがって、かような兵器を生産するに必要な物質もそんなにたくさんある必要がなくなったという点も科学的には言えるのではないかこういうふうに了解しております。
  240. 松井誠

    ○松井(誠)委員 いま御答弁のあったように、おそらく、この生産の削減というのは、最大の理由は、さっきもちょっとお話があったオーバーキルにつながる、多くなり過ぎてもてあましているという、そういう状態がこのような声明に踏み切らした原因だと考えていいんだろうと私は思うのです。そうしますと、この条約の地下爆発以外の禁止にしろ、その後出てきた具体的な軍縮の条項の実現にしろ、いま核兵器を持っておる大国についてはあまり影響がない。逆に言えば、影響があればこういう条約なり決議なりは行なわれなかったであろうといううらはらの関係もあるわけですけれども、そういう意味で、いまの核を持っておる大国はあまり大きな犠牲がなくてこの軍縮の提案の実現を見ておる。これは私はそのマイナスの面を別に強調するつもりはありませんけれども、したがって、これが現実に可能な措置がまず取り上げられたという意味ではそれなりに意味があると思いますけれども、しかし、こういう段階にとどまっておる限りは、つまり、大国が自分自一身ではちっとも縛られないという形で続く限りでは、この条約なりあるいはその軍縮の措置なりのプラスの面というものがなかなか出てこないのじゃないかそういうことを心配をするものですからお尋ねをしたわけですが、最後に一点大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどちょっと大臣は、この条約で脱退の条項がある、で、条約の締結国という意味であったかどうかわかりませんけれども、それがこの条約に違反をして大気圏なり何なりで爆発の実験をする、そうすれば脱退ができるというお話でしたけれども、ただそれだけではやはり脱退はできないので、これは、文字どおりに解釈をすれば、自国の至高な利益を危うくしていると認めるという条件がもう一つくっつくと思うのです。そこで、お尋ねをしたいのですが、いまフランスや中国がこの条約から抜けておるというのがこの条約の致命的な欠陥だと私は思うのですけれども、フランスなり中国なりが、この条約にあるような、禁止をしておるような場所で、大気圏なり空中、水中で核爆発の実験をする、そうすればやはりこの条約から締約国は脱退するという理由になるのじゃないかと思いますけれども、それはそうでしょう。
  241. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 そこは、この条約では、機械的にどこかでどの国かがやったらすぐ脱退するというふうにはいきませんで、その場合場合によって関係国が評価を下してその態度を決定するというぐあいに、ゆとりを持たしておるわけでございます。
  242. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ですから、この書き方も、「この条約の対象である事項に関連する異常な事態」が生じた場合ということになっておる。したがって、締約国の条約違反ということには限られない、締約国外の動きによって、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が生ずれば、それでもいいわけです。それが自国の至高な利益を危うくするという条件が出てくればそれでもいい、それはそうでしょう。
  243. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 仰せのとおりでございます。ただ、私がさっきちょっとあいまいなことを申し上げたのは、核爆発が非常に小さいものでこれからまだ説得の可能性があるというような状態のもとでは、すぐ脱退をしないで、それほど重要なことでないと思って説得の努力を続けるというような場合もあるかもしれないという意味で申し上げたわけでございます。
  244. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それは、フランスなり中国なりがこの条約に違反をするような爆発の実験をやる、それが米ソというような大国にとって直接至高の利益を危うくするという状態にはならないだろうということは常識的には考えられる。しかし、そうであるかどうかということの判断をするのはその締約国自体だと思うのです。そうしますと、フランスがもしどこかアフリカでもう一度実験をする、あるいは中国が初めてどこかで実験をする、そうなって、それを理由にしてこの条約を結んでおる大国が脱退するということはあり得る。したがって、この条約は、そういう意味では、非常にしり抜けというどころではなくて、いつ崩壊するかわからない、そういう累卵の危うきに立っておるような条約機構だ、そういうことになると思うのですけれども大臣の認識はいかがですか。
  245. 大平正芳

    大平国務大臣 条約の解釈といたしましては、仰せのとおりだと思います。
  246. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、なおさら、この条約にフランスなり中国が参加をしていないということは致命的な欠陥だと思うのです。そして、このフランスなり中国なりをひとつ参加させる、参加させなければ、この条約機構がそのままかりに残っておったとしても、実質上の効果というものは非常に薄くなり、いわんや条約機構そのものがこわれるという危険さえも持っておることになると、フランスや中国の参加ということが非常に大きな問題になるだろうと思うのです。その参加を実現させるために日本政府として一体なし得ることはどういうことかそういうことをお考えになっておるかどうか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  247. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう非常に欠陥があるわけでございますけれども、しかし、米ソ両国を主体にした核兵器開発競争というものが少なくともこの限度においては抑制される、そういう効果はこの条約によって期待されると思うのでございます。しかし、フランス中共等核開発を志している国々が入ってこれを補強するということになることは、これは仰せのとおり望ましいことでございますし、今後この条約の実効性をあげていく上から大切なことだと思うのでございます。しかし、これらの国々が主権国家としてどう対処していくかということは、その国々考えることでございまして、れれわれがどうするこうすると申すべき性質のものではないと思います。ただ、フランス政府と接触したり限りにおきましては、フランス政府の意図するところは、こういう不完全なものであるからいけないということに力点が置かれておるように拝聴いたしておるわけでございます。この条約のただいま禁止しておることからさらにセカンドラウンド、サードラウンドと次々に実効をあげてくる措置がフランスにどうアピールするかこれは中国においても同様なことだと思うのでございまして、この条約を基礎にいたしましてどういう前進が今後期待できるかということに一つはかかわると思うのでございます。これは、申し上げましたように、十八カ国委員会で討議いたしておるところでございまするし、また、国連におきましても関心を持ち、これはバックアップする姿勢を前の総会において示しておりますことも御案内のとおりでございまして、そういう一連の活動にわれわれも参加して、そしてその推進に当たるというようにいたしたいものだと思うのでございます。  それから、フランスは国連のワク内におりまするけれども、中共は御案内のように国連の外におる。中共の国連における中国代表権問題というものは御案内のような過程を通っておるわけでございます。このことは、この軍縮問題だけでなく、いろいろな観点から重要問題になっておるわけでございます。この帰趨もまたこれとの関連において考慮してまいるべき問題であると考えます。
  248. 松井誠

    ○松井(誠)委員 いまの御答弁から大事な点が二つ出てきたと思うのです。一つは、フランスが入らない理由としては、この条約が不完全だからということ。不完全だというのは、地下爆発が許されておるということ。許されておるという表現が悪ければ、禁止をされてないということ。このことは何を意味するかといえば、フランスとしては、いまの発展の段階では大気圏や水中における実験が必要だ、ソ連やアメリカやイギリスがもうそういうところでの実験は必ずしも必要でないという段階にあって、フランスの手を縛ろうとするのはいけないじゃないかという趣旨だと私は思うのです。つまり、フランスなり中国なりがこの条約あるいは核実験の全面的禁止に参加をするためには、同じ土俵に上がらなければならないのではないかつまり、この核実験の全面的禁止というそれに向かっての実質的な動きが出てくる、その全面的な禁止というものと一緒でなければ参加ができない、自分は自由になっておれの手だけを縛ろうというのか、そういうことだと思うのです。これは、そのこと自体がいい悪いということは別として、少なくともそういう状態である限り、つまり、地下爆発だけを許しておいて、それ以外のスペースでの実験は禁止をするという形が、フランスにそういう態度をとらせているのではないか。この前文においては固定化をしないようなうたい文句が出ておりますけれども、しかし、現実にその前文に沿うような動きというものは必ずしも顕著にはないわけです。ですから、この二つの国が同じ土俵に上がってくるためには、ほんとうに全面的な禁止という、そのことに真剣に取り組むということがまず必要ではないかということが一つ。もう一つは、中国については、中国の特殊な事情として、国連の代表権の問題というのが、やはりこういう世界の平和の問題と切っても切れない関係にある。したがって、やはり、そういう観点から言っても、中国代表権の問題をあらためて考える必要があるのではないか。そういう措置と一緒でなければ、このフランスや中国の参加を呼びかけることが無意味だし、無意味どころではなくて、かえって有害であるというふうに考えるわけです。そのことについて大臣の御意見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  249. 大平正芳

    大平国務大臣 第一点につきましては、仰せのとおりでございまして、全面完全軍縮というものでなければこの両国を納得させ得ないのがいまの段階ではないかと思いまして、その方向に着実な努力を進めるべきものと思います。  第二の代表権の問題は、この軍縮問題との関連においてだけ議論いたしますと、それが望ましいと思いますが、その他もろもろのファクターがありまして、先ほど申しましたように、いまのような過程をたどっておるわけでございまして、われわれといたしましては、そういういろいろなファクターをかかえた世界平和にとって重要な問題であるという認識に立って、慎重に対処しなければならぬと考えております。
  250. 臼井莊一

    臼井委員長 永末英一君。
  251. 永末英一

    ○永末委員 私は、この条約を批准するについて、政府が締結に際してとってきた態度並びにこれからの態度、両面について若干の質問を行ないたいと存じます。  政府は、提案の趣旨説明におきまして、この条約を批准することはわが国の核兵器実験禁止に対する熱意を国連の場においてもまた広く世界の一般世論にも印象づける点について非常に大きな意義を持つのだ、こういう打ち出し方をしておられる。ところが、この条約が原締約国で署名されましたのが八月五日、日本政府がこれに署名いたしましたのが八月十四日、順番で申しますと、五十六番から五十九番の間である。もしそういう熱意を持っておられるなら、いち早くひとつ署名をして、こんなに熱心なんだというような態度があってよかったのではなかったかと私ども思うのですが、なぜ十日間も日を過ごされたかワン・オブ・ゼム、すなわち多数の一員というわからぬような状態で過ごされたのかそういうような経緯について、特別な事情があったかどうかをひとつ伺いたい。
  252. 大平正芳

    大平国務大臣 特別な事情は別にないのでございます。ランニングレースではございませんから、早いのがいいわけではないので、ただ、条約の原文を見ていなかったわけでございまして、新聞からの報道されただけですぐアクションをとるのはいかがかと思いまして、一応公文を待って、これは多数国条約という変わった条約でございますから、条約の各条項を一応検討してから閣議にお願いする手順にすべきではないかと考えただけで、ほかに事情はございません。
  253. 永末英一

    ○永末委員 この条約を結ぶについて、日本政府は全面的核兵器実験禁止、こういう目標を追求したい、こういうことでございますが、先ほどからの質疑を伺っておりますと、たとえば軍縮の問題では、いま研究しているその研究が実ったところで、ひとつ軍縮会議のメンバーにしてくれろという用意をしておる、こういうことを伺ったのですが、こういう核兵器の全面禁止に関する世論を国際的にも起こしていきたいという政府の意向は伺いましたが、具体的にどうしようといまの時点でお考えかお考えがあれば伺っておきたい。
  254. 大平正芳

    大平国務大臣 まず第一に、やはり、国民的な確信と申しますかそういうものが確立されることが第一でございますが、幸い、この問題につきましては、与党も野党も一致したサポートを得ておりまして、政治的に問題はないわけでございますし、国民も唯一の被爆国としての悲願を持っておるわけでございます。  それから、国連の場においての活動でございますが、国連に加盟をしておるわが国といたしましては、たくさんの委員会にシートを持ちたいのはやまやまでございますけれども、これは、地域的に申しまして、欲ばってあらゆるところに顔を出したいわけでございますけれども、そうもまいりません。国際社会のことでございまして。したがって、いま軍縮委員会にシートを持っていないということは残念でございますけれども、これは、全体の国連機構の問題といたしまして、安保理事会のメンバーの拡充の問題とか、経済社会理事会もふやそうとかいう問題、一連の憲章改正と関連いたしまして論議が行なわれておるわけでございまして、そういう論議を通じまして、わが国は実力に相応した適正なシートを重要な委員会には持つべきだ、そのように努力をすべきだ。幸いわが国に対する各国のサポートは相当ちょうだいいたしておりまするので、われわれが国連活動において公正に活動してまいる限りにおきましては、われわれの適正な希望は漸次満たされていくものと思うのでございます。  そういう段取り、雰囲気というものは別にいたしまして、具体的にそれでは日本がどういう時点においてどういう提案をすべきかという問題は、こういう国際的な論議の道程というものを十分把握してみなければなりませんし、国際世論の帰趨も見きわめていかなければなりませんが、同時に、わが国自体が、軍縮問題につきまして、腰を落ちつけた、より深い究明がなされていなければならぬと思うのでございます。それは、私が先ほど申しましたように、ずいぶん長い間ブランクがございまして、そういった点が十分でございません。民間におきましても若干のアルバイトがございますけれども、これとても十分じゃございませんで、われわれといたしましては、長い課題の問題として、若い世代にも勉強していだくし、世界の平和の観点からも、日本の安全保障の観点からも、軍縮問題についてはうんと勉強していきたい。そういうみずから相当頼むところがないと、やはり提案をいたすにいたしましてもぞんざいなものになりはしないかと心配するわけでございまして、みずから持するところをつくり上げるという努力が、いまの段階におけるわれわれの任務じゃないかと考えております。
  255. 永末英一

    ○永末委員 私は、この核兵器の問題については、わが国が唯一の被爆国でございますから、政府の行動として、先ほどから言われているような全面禁止の方向に努力をしている姿を国際的に示していくということが、やはり、日本国民の中における世論の指導、あるいはまたそれを通じての世界の世論への反映という点からも、非常に必要だと思うのです。その意味合いで、たとえばこの条約によって地下核爆発が許されたのだというとんでもない考えが残っていくとすると、これはもうこの条約の大半の意義は失われてくると思います。したがって、まず第一歩として、それを合意によって禁止することができないのならば、せめて国連の中に国際的な査察制度を設けて、今後行なわれる一切の地下核爆発についてこれを記録をする、ここまでひとつ提案をされるような趣旨はございませんか。
  256. 大平正芳

    大平国務大臣 まあ、アメリカに関する限りは、地下爆発という点では、先方が発表いたしておりますので承知いたしておりますが、ソ連のほうのことはさだかにわかっておりません。これは、探知技術がだんだん進みまして、あなたの言われるような国際査察的なことにならぬでもわかるような事態になることを希望いたしますけれども、国際査察という問題は、軍縮問題につきましての最も基本的なネックになってきておるわけでございまして、そういうことが関係国において受け入れられるような状況がはたしてできるかどうかこれはまたよほどの問題でございまするし、そういう提案を卒然としてすることが有効なものかどうかそのあたりはよほど慎重に考慮しないといかぬと思うのでございます。要は、この条約一つのステップである。その次に現実的に有効で建設的なアクションは何かという点を軍縮委員会の討議その他を見ながらつかみ取るという努力、それが何であるかということはいまさだかにわかりませんけれども、そういう方向に全神経をとがらして努力していくということがわれわれの当面の任務じゃないかと思います。
  257. 永末英一

    ○永末委員 もう一点。この条約に参加をしておりませんフランスは、昨年の九月以来南太平洋のムルロア環礁で一九六七年度を期して水素爆弾の実験を行なおうという準備を現実に進めてきております。つまり、これが行なわれますと、再び太平洋地域には汚染された大気が立ち込めるという、そころまではいかぬかもしれませんが、われわれ日本人としても非常に大きな被害をこうむってくる。もちろん、これはフランス側の計画でございますから、現実にその時期にそうなるかどうかはまだこれからの問題ではありますが、しかし、フランスの政府はすでに方針を立ててこれを企図しているわけです。そこで、ひとつ、日本政府としては、これが行なわれないように、たとえば国連の中で一番多く被害をこうむるであろうところの関係諸国の海軍の力を動員して、国際連合の海軍力として、これをさせないような措置をするかどうか。やはり、そういう実効ある対抗力を持っていかなければ、この条約の基礎をゆるがすような問題が起こってくる。これらの問題については何かお考えがございますか。
  258. 大平正芳

    大平国務大臣 核実験につきましては、いずれの国にかかわらず、われわれはその具体的な計画が判明次第抗議いたしております。それを続けてまいるつもりでございますが、ただ、関係国の海軍力を動員してそれを阻止するという手荒なこと、そういうことはいかがなものかと思います。
  259. 永末英一

    ○永末委員 私は、必ずしも各国の海軍力を動員せよと申したのではなくて、フランスは国連の加盟国ですから、国連でそういうような機運をひとつ努力してつくったらどうか。まだ先の話ですが、ほとんどでき上がったところをやめろとはできませんが、いろいろな障害が起こるのは当然のことでありますから、わかり切ったことをフランスがやろうとしておるのですから、そういう機運を国連の中でつくれるように政府としては努力すべきではないかこういう意見を申し上げておるわけです。  もう一つの問題は、先ほど、中国が核武装をする点について、防衛庁長官は、現在のところほとんど打つ手がない、こういう答弁でございました。外務大臣のほうは、これらの問題については、まず国連における中国の代表権の問題を解決しなくちゃならぬ、こういうような御意向でございましたが、そのほかにも、ともかくわが国にとっては中共の核武装は非常に大きな問題でございますから、やはり世界の平和を公然と議論できる舞台に北京政府が登場できるよう努力をしていく、こういう御決意があるかどうかをこの際伺っておきたい。
  260. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど松井さんの御質問にもお答え申し上げましたとおり、実効ある軍縮を実現していくためには、中国が国連の外におる、国際社会の外におるというようなことでは不便がある、その限りにおいてはそう思います。しかし、この問題は軍縮問題だけの観点から割り切られる性質のものではなくて、その他もろもろの問題がからんでおりますので、われわれは、先ほども申し上げましたように、これは重要な問題である、慎重に対処せなければいかぬ問題であるという認識に立って国連活動をしておる、また今後そういう方針に変わりはない、いままでのところ変わりはないということを申し上げておるわけです。
  261. 臼井莊一

    臼井委員長 本件に関する質疑はこれにて終局いたします。     —————————————
  262. 臼井莊一

    臼井委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。  川上貫一君。
  263. 川上貫一

    ○川上委員 私は、日本共産党を代表しまして、この条約の承認に反対を表明いたします。  私は、この部分核停条約については、この前の本委員会で疑点をこまかに述べまして質疑を行ないました。それに対して、大平外務大臣答弁は、重要な点についてはほとんど答弁されておりません。のみならず、答弁された点についても、れれわれは了解することができない。この条約は、アメリカの核戦略についてはまことに都合よくでき上がった条約であります。核の脅威を防ぐにはほとんど役に立ちません。これは質疑の過程を通じても明らかです。特に日本にとってはむしろ危険な条約であると考えております。そこで、私は、本条約が本会議に上程、審議される場合には、十二分に反対理由と意見を述べさしてもらいたいと思います。しかし、この前の質疑である程度のわれわれの見解は述べておりますので、本日は、この部分核停条約には全面的に反対である、賛成が絶対にできないということを表明するにとどめて、私の討論を終わります。
  264. 臼井莊一

  265. 正示啓次郎

    ○正示委員 私は、ただいま議題となっております大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約の締結について国会の承認を求めるの件に関し、自由民主党を代表して賛成の討論を行ないます。  本条約締結に至る経緯、本条約内容等につきましては、すでに詳細なる審議を重ねましたので、私は、特に、本条約成立の重要性と、わが国の本条約加入の意義とについて三百申し述べたいと思います。  核兵器実験の禁止の重要性につきましては、いまさら申し上げるまでもありません。特に、核兵器のおそるべき危害を身をもって経験した唯一の国であるわが国にとりましては、核兵器の全面的実験禁止は全国民の悲願であります。  地下実験を部分的に除外しております本条約は、この観点よりいたしますれば不十分でありまするが、これが最近の東西対立の国際情勢下にあって初めて成立した重要なる合意であることと、将来における全面的禁止のための積極的第一歩であることに重要な歴史的意義が認められる次第であります。  本条約の不備な点につきましては、その前文において、米英ソ三国がすべての核爆発実験の永久的停止のために交渉を継続する旨述べておりますが、また、昨年の国連総会におきましても、この条約の前文の目的を達成するための交渉をジュネーブ十八カ国軍縮委員会において継続することが圧倒的多数をもって決議されておりますので、これらの不備の点を是正するための努力が今後とも継続されるものと期待する次第であります。  わが国が本条約を批准いたしますことは、このような努力を助長する一助ともなり得るものでありまして、同時にまた、核兵器実験禁止に対するわが国の従来の主張を裏づけ、この問題に対するわが国の熱意を内外に示すものともなり得るものと信じ、ここに全面的に賛成の意を表するものであります。(拍手)
  266. 臼井莊一

    臼井委員長 松井誠君。
  267. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、この条約に賛成の立場から討論をいたしたいと思います。  この条約は、すでに明らかになりましたように、いろいろな点で非常に不十分であります。しかし、それにもかかわらずわれわれが賛成をいたしまする理由は、その直接的な理由一つは、この条約の成立によってわれわれが死の灰の恐怖あるいは水中汚染の恐怖というものから少しでも遠ざかり得るということであります。このことは、死の灰の谷間と言われるところに位置しておる日本、あるいはあの第五福竜丸の悲劇を持っておる日本としては特別な大きな意義がある。したがって、この条約の締結はそういう意味でわれわれの悲願の一部が実現をされたという趣旨で賛成をいたしたいと思います。  しかし、この条約の最大の意義というのは、単にそれだけにはとどまりません。先ほど来からお話がありまするように、この条約は、あくまでも全面軍縮、平和共存というものへの第一歩だという、そういう評価が大事であると思うわけであります。  しかし、この評価をめぐって実はいろいろな意見の相違がございます。われわれも無条件で手放しに楽観をして賛成をするわけではありません。つまり、このような評価をするためには、いろいろな理由、いろいろな条件というものがどうしても必要であると思います。  と申しますのは、この条約が一九五八年以来の交渉の結果急速に進展をして妥結をしたその直接的な動機としてはいろいろなことがあるわけでありますけれども、少なくとも、原締約国としては、その消極的な動機として、まず第一に、いわゆるオーバー・キル、過剰殺戮という状態にまですでに米ソ両国が達しておる、あるいは、それと比例をして、財政的にもその負担がだんだん耐えがたい荷になりつつあるというこのことが消極的な理由としてはあけられるわけであります。しかも、さらに、この条約の締結によって、この原締約国は自国の安全の脅威に対してほとんどと言ってもいいくらい影響を持たない、これがこの原締約国がこの条約の締結に踏み切った消極的な動機だ。さらに、積極的な動機としては、大気や水中における汚染、特に大気における汚染というのは人類にとって危惧すべき状態になりつつある、そういう認識が出始めたということ、そして、それよりさらに大きな理由としては、現在の核保有国がこれ以上核保有の拡散を欲しない、核保有の拡散の防止をこの条約によってしようとする、そういう動機が積極的にはあったと思う。この消極的な理由あるいは積極的な理由は、いずれも、この条約の前文でうたっておるような完全軍縮あるいは平和共存というその考えから直接ストレートに出てきた理由ではございません。しかし、この条約が締結をされたその底には、核兵器の発達がかえってその使用を不可能にするという、そういう矛盾に直面をしておる。いわゆる平和共存、全面軍縮という考え方に到達をした。このことは、現在の段階においては少なくとも核兵器を確実に防御するということには限度があり、一〇〇%の防御は不可能だ、したがって、これからの核戦争には勝者もなければ敗者もないという、そういう厳粛な現実というものを認識をして、そして、特にキューバの危機というものを契機にしてその認識がほんとうの切迫した現実感として迫ってきた。それがこの条約締結に原締約国をもかりたてた重大な動機だと思うのです。  このことは一体何を意味するか。これは、一つには、ただじっとすわっておったのではこれが全面軍縮への第一歩にはならない、これらを締結した動機に実に多くのものが含まれておるということ自体から明らかなように、ただすわっておったのではこれが全面軍縮に直接結びつく平和共存への実質的な第一歩ということにはならない、そして、それを実質的な第一歩にするためには多くの努力というものがそれと並行して行なわれなければならぬということを意味しておると思うのです。  どういうことが必要か。これは、第一には、やはり、この条約の致命的な欠陥であるところの、現に核保有国であるフランス、あるいは近い将来保有するであろうと思われる中国がこの条約に参加してないということ、この致命的な欠陥をまず除去することにわれわれの努力が向けられなければならぬと思うのです。このことは、この条約をほんとうに実効あらしめるために必要なことであり、将来全面核停、全面軍縮ということを実現をするためには、この両国の参加というものはどうしても欠くべからざる条件である。それだけでなしに、現在の段階においても、できるだけ早い機会に核保有国がこれ以上の拡散をするということを防ぐ、このことが私は率直に言って必要だと思うのです。なぜかと言うと、東の陣営であれ西の陣営であれ、どっちかの陣営で核保有が広がるということは、相手側の陣営にも広がるということを意味する。そのこと自体がこの条約を全く無に帰するということになる。それは少なくとも全面核停への迂回という結果にならざるを得ない。このことを考えますと、フランスや中国がこの条約に参加をするための話し合いの場というものがどうしても必要だ。その話し合いの場というものを持つのに欠くべからざる前提条件は、先ほどもお尋ねを申し上げましたように、やはりこれが実質的に全面的な軍縮への第一歩であるということを具体的な事実によって示す、そのことと引きかえでなければ、そういう形でこの五カ国が同じ土俵に上るということでなければ、このことの実現は不可能だ。そういう努力をまずやることが必要だ。それから、もう一つ、特に中国については、アメリカ南ベトナムに見られるような中国封じ込め政策、あるいは中国の中国代表権が現在ないという不合理な状態、そういうことを改めるということが、この五カ国が同一の土俵に上るという欠くべからざる前提条件というふうに考えるわけです。この条約が結ばれてからあと、去年の国連においては核衛星の打ち上げ禁止の決議があり、ことしの四月には米ソの核物質の軍事用の生産を削減するという声明をいたしました。しかし、これはいずれも実質的に現在の核保有国の手を縛るということはほとんどないというように言われておる。したがって、核保有国が自分の特権的な地位をそのままにして核の拡散を防止をするということは現実にきわめて困難です。ですから、ほんとうにこの五カ国が同一の土俵に上るということがこのフランスや中国を参加させる欠くべからざる条件だというように考えざるを得ないわけです。  なお、先ほど来から穗積委員がいろいろ御指摘になりましたように、この条約が現在のままで固定をすれば、かえってマイナスの面というものは目立ってくる。やはり、この条約が実際に全面軍縮への第一歩であろうとするためには、日本になし得るものは何かといえば、一つ日本自体の非核武装の宣言です。それをさらに具体化するものとしてのF105Dの配置を認めない、あるいは原子力潜水艦の寄港を認めない、そういう形で日本自体の非核武装の宣言というものをやるべきです。あるいはまた、単にアジアに限りませんけれども、われわれの現実に最大の利害関係を持っておるアジアにおける非核武装地帯の設定ということも、われわれのイニシアによって実現をするような努力というものが積み重ねられなければならないと思うのです。  これらの努力を放棄して、そして本条約の前文を全く空文に帰せしめるならば、本条約が大気や水中における放射能の減少という直接的な効果を持つにかかわらず、かえって全面軍縮への道を長引かせるという、そういう非難に力を貸す結果になることを私はおそれるわけであります。したがって、このわれわれの危惧が単なる杞憂になるようなことを期待をして、そして、そのために努力をするという決意を表明をして、私はこの条約に賛成をいたしたいと思います。(拍手)
  268. 臼井莊一

    臼井委員長 永末英一君。
  269. 永末英一

    ○永末委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっております部分的核実験禁止条約の批准について賛成の討論を行ないたいと存じます。  この条約は、地下核爆発の実験を禁止するに至らず、さらにまた、核兵器の製造、運搬、保有、拡散ないしは使用というものの禁止というところまで至らない、いわば非常に不十分である条約であることを、われわれは非常に残念だと考えております。  しかし、この条約によって、現在の世界の平和が恐怖の均衡によって危うく保たれている事実がはっきり示されたことを、われわれは銘記をしなければならないと思います。すなわち、核兵器を保有しておりましょうとも、相手方の攻撃を全部防ぐことはできないという核保有国の認識、さらにまた、双方とも相手方の都市を破壊する能力を持っているんだ、こういう事実の認識、これが今回の条約を締結せしめた主たる動因であったと私は考えます。このような観点に立ちますとき、日本の防衛が従来力の均衡という考え方に立って築き上げられてまいりましたことを思いますときに、この際根本的にわが国の防衛方針を再検討する余地があるとわれわれは考えます。  しかしながら、これらの条約からいたしまして、私どもは、何よりもまず、人類に多大の害悪を及ぼす大気汚染が防止されたことを喜びます。第二に、これまで無制限の核兵器拡張の競争が行なわれ、そして、これによって世界が破滅するのではないかという非常にどす黒い不安を世界人類に与えておりましたこの不安が緩和の方向に向かいつつある、こういう状態がもたらされたことを喜びます。第三に、これまでこういう核兵器を製造しつつ相互の不信の念がさらに高まってまいりましたのと反対に、これからはどんな核兵器を保有いたしましょうとも相互の信頼というものがなければ世界の平和が保たれないんだ、こういう信頼感がこの条約によって示されてきたということをわれわれは喜びます。  しかしながら、日本政府といたしましては、唯一の被爆国家として、これからこの不満足なる条約を完全にし、そうして、全面軍縮、全面核兵器禁止に至る道筋について、これまで見られたようなちゅうちょ逡巡あるいはまた無方針とも思われるような態度を一御して、勇気を持ってこれらの目標に向かって前進をする、この態度をわれわれは強く要望いたしまして、この条約の批准に賛成をいたすものであります。(拍手)
  270. 臼井莊一

    臼井委員長 これにて討論は終局いたしました。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  271. 臼井莊一

    臼井委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本件に対する委員報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  272. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日はこの程度にとどめ、次回は来たる十五日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時五十一分散会