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1964-04-15 第46回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月十五日(水曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 安藤  覺君 理事 椎熊 三郎君    理事 正示啓次郎君 理事 高瀬  傳君    理事 古川 丈吉君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君       池田 清志君    小渕 恵三君       亀岡 高夫君    菊池 義郎君       鯨岡 兵輔君    佐藤 孝行君       竹内 黎一君    渡海元三郎君       野見山清造君    橋本竜太郎君       服部 安司君    三原 朝雄君       粟山  秀君    田原 春次君       帆足  計君    山本 幸一君       永末 英一君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         外務事務官         (条約局外務参         事官)     須之部量三君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 四月十四日  委員鯨岡兵輔辞任につき、その補欠として三  池信君が議長指名委員に選任された。 同日  委員池信辞任につき、その補欠として鯨岡  兵輔君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員愛知揆一君池田正之輔君宇都宮徳馬君、  佐伯宗義君、園田直濱地文平君、福井勇君及  び森下國雄辞任につき、その補欠として粟山  秀君、服部安司君、佐藤孝行君、小渕恵三君、  池田清志君、渡海元三郎君、亀岡高夫君及び橋  本竜太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員池田清志君、小渕恵三君、亀岡高夫君、佐  藤孝行君、渡海元三郎橋本竜太郎君、服部安  司君及び粟山秀辞任につき、その補欠として  園田直君、佐伯宗義君、福井勇君、宇都宮徳馬  君、濱地文平君、森下國雄君、池田正之輔君及  び愛知揆一君議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十一日  米国原子力潜水艦寄港反対等に関する請願(田  中武夫君紹介)(第二四九三号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第二四九四号)  同外六件(八木昇紹介)(第二四九五号)  同(佐野憲治紹介)(第二五五六号)  同外三件(華山親義紹介)(第二五五七号)  同(松井誠紹介)(第二五五八号)  同(重盛寿治紹介)(第二六一〇号)  同(東海林稔紹介)(第二六一一号)  同(穗積七郎紹介)(第二六一二号)  同(細迫兼光紹介)(第二六一三号)  同外四件(山崎始男紹介)(第二六一四号)  同(吉村吉雄紹介)(第二六一五号)  米国原子力潜水艦寄港反対及びF一〇五D戦闘  爆撃機撤去に関する請願小林進紹介)(第  二五五五号)  同(千葉七郎紹介)(第二六一六号)  同(吉村吉雄紹介)(第二六一七号)  米国原子力潜水艦寄港反対等に関する請願(  吉村吉雄紹介)(第二六一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外交関係に関するウィーン条約及び関係議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第一一  号)  日本国アメリカ合衆国との間の領事条約の締  結について承認を求めるの件(条約第五号)(  参議院送付)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の領事条約締結について承認を求めるの件、外交関係に関するウィーン条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件、以上二件を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は日米領事条約について二、三点質問をしたと思いますが、大臣には肝心なところをお聞きすることにしまして、事務的なことは局長でけっこうです。  まず最初にお伺いしたいことは、日米領事条約は、日本と他の国との二国間の領事条約最初のものだと思いますけれども、そうかどうか、念のために伺っておきたいと思います。
  4. 須之部量三

    須之部説明員 戦前におきましては、ドイツ、それからオランダ、ベルギー等領事職務条約というのがございました。しかし、それは戦後復活されておりません。戦後におきましては、ノルウェーとの通商航海条約で、領事職務特権等については最恵国待遇を与え合うという規定がございますが、内容的に具体的な規定はございません。それだけでございます。したがいまして、日米が初めてでございます。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今後においてこの種条約を結ぼうとする空気がありますか。
  6. 須之部量三

    須之部説明員 わが国としましては、わが国が比較的多数の領事館を出しております国と結ぶのが実態的には必要なわけでございましてイギリスとは、話がかなり詰まりまして、近く調印までいくかと存じます。それから、ブラジルとの間にも、話したいという意向を申し込んであるわけでございますが、いろいろな事情で交渉が具体的にはまだ進んでおりません。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 イギリスなりブラジルなりと今後この種の条約を結ぶとしますと、やはり、この日米領事条約がモデルといいますか、これと同じような内容、これよりも利益の違わないような形の内容になると思いますけれども、そうでしょうか。
  8. 須之部量三

    須之部説明員 日米条約は大体日本が現在におきまして他の領事等にも与えております待遇等規定しておりますので、内容的にはほぼこれと一致すると思います。ただ、それぞれの相手国側には、それぞれの条約一つのパターンと申しますか、いろいろ書き方等もございますので、こういう点、多少の差異は生じてくるかと存じます。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、念のために伺っておきますけれども、大体アメリカ日本との間で現在与えているような待遇を基礎としてこの日米領事条約もできた、今後結ぶ場合には、そのそれぞれの国の国内法令にもよることであるから多少の違いはあるのですが、大体これと同じようなものであると了解してよろしゅうございますか。
  10. 須之部量三

    須之部説明員 大体においてこれと実体的には同じと考えてよろしいかと思います。申し上げましたのは、条文の書き方とかなんとかがそれぞれの国のあるいは型があると思いますので、そういう点で違いが出てくるかということでございます。実体的には同じになるかと思います。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今度日米の間の領事条約を結んだ理由は、「日米間のように領事関係複雑多岐にわたるような場合には、その領事関係一般国際法及び国際慣行によってのみ律することとせずに、二国間においてその領事館及び領事特権を各事項について具体的に取りきめておくことは、相互利益となる」からである、こういうふうにこの領事条約を結ぶにあたっての趣旨説明の中には書いてあるわけでございますが、その趣旨説明から言いますと、在来日米間の領事館について行なわれていたような特権そのものをむしろ条約にしたほうがいいから条約にした、こういうふうに理解してよろしいわけでございましょうか。それとも、交渉中に、何か、これまではこういうふうな特権、あれがあったけれども、この辺ははっきり条約の中でうたっておいたほうがいいというようなことがつけ加えられたかどうか、この点をお伺いいたします。
  12. 須之部量三

    須之部説明員 この条約をつくります一つ理由は、従来慣行等で一応の観念はあるわけでございますが、細目の場合にその解釈等で違う余地があり得るような点についてはっきりさせておいたほうがいいという点がございます。ことに、職務内容等につきまして、いろいろな司法書類の送達というような点は、従来必ずしも認められていなかったことを相互に認めようとしたという点がございます。  それから、もう一つの点は、米国の州はかなり広い権限、課税権等を持っているわけでございますが、従来米国連邦政府との交渉では、たとえば州の当局がその州にあります日本領事館課税をするというような場合に、連邦政府との話し合いでは必ずしも解決しないような点があり得たわけでございます。それらあたりの点が今度正式の条約によりますと解決されるわけでございますので、将来問題が起こるのをあらかじめ防止するという意味も大きな意味一つであろうかと考えます。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この条約締結するにあたって、交渉中に大きな問題点になったことがございますか。スムーズにいったのでしょうか。
  14. 須之部量三

    須之部説明員 特に大きな問題点というのは必ずしもなかったわけでございまして、実際問題としまして、三十七年ごろにこの交渉を始めまして、かなり技術的な内容でございますので、それぞれの専門家が行ったり来たり、また国内官庁とも広く相談するというようなことで、意外な時間がかかったということでございまして、特に大きな原則的な見解の相違ということはございませんでした。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、原則的な考え方の相違はないとおっしゃったのですが外務省から出ております「わが外交の近況」という七号の雑誌といいますか本を見ますと、相当もめたように書いてあるわけです。たとえば、「元来国際法上、領事職務特権外交官の場合ほど確立しておらず、各国国内法制に依存する面が少なくないが、日米両国領事はこの条約によって任国で明確な地位が与えられるので、自国民の保護や援助などの任務を遂行しやすくなるものと期待される。」、そうして、そのあとで、この「締結交渉は、一九五三年四月に東京で開始され、その後一九五六年八月から約五年間中断されたが、一九六一年七月に」、これがいまの三十七年だと思いますが、「六一年七月に交渉が再開され、十年ぶりにまとまった。交渉がこのように長びいたのは、領事職務および特権両国国内法制との関連で複雑な問題を持っており、また、わが国としては、これが戦後に結ぶ最初領事条約であるため、諸外国条約例参考とし慎重を期したためである。」こういうふうに書いてありまして、一度一九五三年に話し合いが始められたが、何かいろいろな国内法の違いで中断されて、再び話し合いを始めてまとまったということが書いてあるわけでございます。これは外務省から出たのですから、うそを書いてあるわけじゃないと思います。  そこで、このことばに従ってはっきりさせておきたいのは、交渉の長引いた理由は一体どこにあったかということです。
  16. 須之部量三

    須之部説明員 外務省としても、仕事の内容のまあPRと申しますか、そういうような意味で多少具体的に書いてあるのだと思いますが、最初断絶しましたのは、別にそう深い意味ではございません。元来、通商航海条約のできますときに、領事条約、それから二重課税防止条約という、この三本は比較的関係が密接でございまして、三つ結ぶ例がかなり多いわけでございます。先ほど申しましたイギリスとの領事条約も、実は通商航海条約と二重課税防止条約領事条約三つ案が初めから討議されておったわけでございます。ただ、領事条約の場合は、重要度と申しますか、緊急度から申しますと、おのずから、通商航海条約ないし二重課税防止条約等に比較しますと、目に見えての緊急度は比較的低いという点もございますので、それで延び延びになっておったということでございます。その他の案件が片づきましたので、いよいよ本格的に取りかかろうということになったのが、再開されたあと状況でございます。  それから、各国国内法制等との点でございますが、これは、食い違いがあったというよりは、むしろ各種の関係する国内官庁が多いものでございますから、双方とも非常に密接に連絡してやりませんとうまくいかないというようなことで、そのために時間をとったという点に触れたものであろうと考えます。  それから、最後に、これが戦後初めてのものであるので慎重を特に期したという点でございますが、この点は、占領直後の状況ですと、どうしてもその他の点が一般国際慣習法ないし慣行に比べてルーズな点もあったわけでございます。それらの点をきちんとしょうという点で多少研究もし、また多少折衝したというような点もあるわけでございます。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの御答弁では、国内法制などで複雑な問題を持っているというのは、むしろ、国内法としての違いで議論があったのではなくて、諸官庁が分かれているので、その連絡のためにいろいろな問題があったというふうにおっしゃいましたが、それだけでいいのでしょうか。それをもう一度念のために伺います。  もう一つは、各国のものを参考にしたとおっしゃるのですが、大体どこのものを中心に参考にされたか、それに最も類似したものはアメリカとどこの領事条約だったか、伺いたい。
  18. 須之部量三

    須之部説明員 参考になりましたのは、米国は現在二十三カ国と、これは戦前のものも含めてでございますが、結んでおるわけでございますので、米国が最近結びました条約、ことに、新しいものといたしまして、米国アイルランドとの条約等、それから、米国イギリスとの戦後に結ばれた領事条約参考にいたしました。それから、イギリスがほかの国と結んでおる条約とか、あるいは第三国、たとえばフランスイタリーとの間に結んでおる条約などを一応参考にした次第でございます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、いまお話にあった米国アイルランドとか、米国イギリスとか、フランスイタリー、そういう戦後に結ばれた二国間の領事条約参考にしたこういうふうに了解していいわけですね。  それは一応そういうことにしまして、それじゃ、日米領事条約で、十七条の(1)の(b)項はどういうふうに解釈したらよろしいでしょうか。読みますと、「国民的服役義務に関する派遣国法令により必要とされるところに従い、派遣国国民に対し通知を発し、その国民から届出を受理し、及びその国民身体検査を行なうこと。」、こうあるわけですけれども、これはどういう意味に解釈するわけでございますか。
  20. 須之部量三

    須之部説明員 これは、米国側制度に従いまして、米国側のほうで米国国民につきまして、国民的服役義務、コンパルサリー・ナショナル・サービス、一応軍事義務に服役するという点に関しまして必要がある場合には、米国領事日本でそのようなことをすることができるということを書いたものでございます。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう少し具体的に言えば、米国領事日本で、日本にいるアメリカ人徴兵のための身体検査ができる、こういことですね。
  22. 須之部量三

    須之部説明員 そのとおりでございます。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣、いまのをお聞きになりましたか。それを平気で日本で双務的な条約として認めていいのでしょうか。米国領事日本にいて、日本にいるアメリカ人徴兵のために徴兵検査ができるのですけれども、そういうことは許されていいことでしょうか。双務的という面から見ても私は問題があると思うのですが、日本領事官アメリカへ行って日本国民に対して国民的な義務身体検査をするということは、日本憲法に禁じられておりますから、そういうことはあり得ないはずですね。それで、アメリカだけ領事日本に来て身体検査をして徴兵することができるということは、ちょっと問題じゃないですか。
  24. 須之部量三

    須之部説明員 私から説明さしていただきますが、何項に、「国民的服役義努に関する派遣国法令により必要とされるところに従い」ということになっているわけでございまして、日本国法令でそういうことができない場合には、もちろんできないわけでございます。したがいまして、その趣旨米国側のことを規定したものでございます。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはわかっています。派遣国法令というのですから、アメリカ法令で、日本にいるアメリカ領事がやることです。ところが、日本では憲法九条ではっきりと軍備は禁止されているわけですね。そうすると、アメリカの場合は日本でもって徴兵ができるの、だけれども、日本はできない。そうすると、この徴兵問題だけを双務的とか対等という面からだけ考えてみたときに、この条項は要らないことにならないですか。いまできないのですよ。そうしたら、こういうものを入れる必要ないじゃないでしょうか。双務的な条約という面から見ても、こういう条項があることがおかしいじゃないかと私は思うのですけれども、大臣はいかがお考えになりますか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 日本徴兵制度を持っていないわけで、そういうことは日本としてやる必要もないわけでございます。ただ、アメリカ国内法でそういう規定がございまして、在日米人徴兵事務在日領事がやるということはちっとも差しつかえないことだと私は思います。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣、そんな答弁されていいのですか。国民は納得しませんよ。アメリカ領事日本にいて、そして、その現地日本アメリカ法令に必要とされるところに従ってその国民身体検査をして徴兵制度を施行することができるということになったら、たとえば、いま問題になっておる韓国兵隊徴兵してやるかもしれないというような疑問も出てきます。——現地採用するということで。日本でそういうふうな外国行政権の行使を認めるということが、条約の中で一体許されていいのですか。これは問題じゃないですか。
  28. 須之部量三

    須之部説明員 補足的にちょっと申し上げたいと思いますが、たとえば米国アイルランド条約等でも、十七条の第一項の(b)でございますが、やはり国民的な服役義努についての規定があるわけでございます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでフィリピンとの条約にありますか。米比条約。私、参考資料をいただいたのですが、私の目が悪いのかしら、ぱらっと見たのですが、ないのです。米比領事条約にはないと思います、私が見た限りでは。英文ですからあまりよく見られなかったこともありますけれども、ないと思います。
  30. 須之部量三

    須之部説明員 米比条約、いまここに持っておりますから至急調べてみますが、ただ、米比条約の立て方も多少日米のやっと変わっておりまして、これは特権関係等を非常に主としておりますので、この種の一般的な領事職務内容を書いたのがあるかどうかということだと存じます。いまいずれにしましてもちょっと調べてみるようにします。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大急ぎで見ていただきたいと思います。私これをいただいたのですけれども、ないのです。さっきから伺っておりますと、アメリカアイルランドとの領事条約アメリカイギリスとの領事条約参考にしたとおっしゃるのですが、私はそういった参考資料を出していただきたいと言ったのですが、外務省からいただいたのは、米比米英だけだったわけです。それでもいいのですけれども、米比の中には、私の見たところない。それから、米英の中を見ました。米英の中には似た条項が十七条にあります。ありますけれども、抜けておることは、「及びその国民身体検査を行なうこと。」ということが抜けております。そうすると、イギリスの場合は、現地においてアメリカ領事徴兵はできないけれども、日本の場合は、新しくこの文句が入れられて、そしてアメリカ領事日本国内国民的服役義務に従っての身体検査ができるということになっておるわけです。ですから、参考にしたのに、こういうことも足してある。その理由はどうしても納得できないわけなんですけれども、この点をはっきりさしてただきたい。
  32. 須之部量三

    須之部説明員 これは要するに、通知を発し、その国民から届け出を受理し、その身体検査を行なって、その結果を通報するということでございましょうし、特にこれが、先方法制上これをやりたいということならば、それ自体で特にどうこうということはないような感じがいたします。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 こういうふうな条項を置けば、このとおりのことを日本にいるアメリカ領事はやることができるのです。やることができれば、結局、身体検査をして、そこで現地徴兵ということもできるわけでしょう。できないということは書いていないわけですね。身体検査することができるということは、通知を発して現地徴兵をすることができるのですね。そういうふうなことになってまいりますと、いま韓国の問題あるいはいろいろな問題があるときに、こういうふうな条項をわざわざ戦後のしかも最近になって初めての日本アメリカとの間の領事条約になぜ入れなければならないかということは、私だけじゃない、国民がみんないろいろと考えさせられることがあるのじゃないかと思うのです。ことに、日本の場合、いま防衛庁を昇格して防衛省にしようとしている。憲法の改正もしようとしている。そうすると、五年間この条約は有効のようですけれども、その間にそういうふうな事態が起きたときに、日本先方にいる領事もこれと同じような双務的なことができるようになれば、双務的になるからというので、前もって入れておいたのかとも思わざるを得ません。この辺は一体どういうことになっているのか。大臣、これでもいいとお思いになりますか。別におかしくはないとお思いになりますか。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 それは戸叶先生思い過ぎでございまして、「国民的服役義務に関する派遣国法令により必要とされるところに従い」とうたわれておるわけでございまして、わが国では徴兵制度をしく意図はないということは、政府はたびたび言っておるところでございます。そういう派遣国法令がないわけでございまして、あくまでも国内法に準拠してやるわけでございます。そういう国内法がないわけでございますので、あなたが懸念されるような事態は起こらないわけでございます。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣日本の場合はそれでいいのです。思い過ごしと言いますけれども、双務的である以上、日本憲法を改正して徴兵制というようなことになれば、当然同じような条項が向こうと結んであるのですから、これは生きてくるわけですけれども、それはさておき、アメリカ側がこういう条項をこの条約の中に入れさせたということ自体が問題だというふうにお考えになりませんか。アメリカ領事日本に来て軍事的な行政事務をやってもいいというふうに考えていらっしゃるのも少しおかしいのじゃないかと思うのです。日本に来て領事アメリカ法令に従って届け出をさせて身体検査をして、場合によってはそれを兵隊にする、こういうふうなことを一体領事官特権として与えていいものなんでしょうか。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 派遣国法令によって必要とされるところに従って派遣国国民に対して派遣国領事がやることでございまして、日本国民には関係がないことでございまして、派遣国がそういう意思を持っている場合に、それを尊重して差し上げるのが礼儀だと思います。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ちょっと驚くべき答弁ですよ。派遣国派遣国国民に対してやることなんだから日本国民に問題はない、そんなことで済ましていられる問題じゃないと思うのです。だってアメリカ領事ですよ。軍部じゃないのですよ。領事日本に来て国民的義務のためにアメリカ法令に従ってアメリカ人身体検査をして徴兵するということになると、私たちが知らないうちにアメリカ人がそこで兵隊になってどこへやられるかわからないでしょう。一体どういう関係でなぜこういうものをここの中へ入れたのですか。そしてまた、どういう立場に立って日本がこれに賛成されたのですか。
  38. 須之部量三

    須之部説明員 つまり、これがない場合、米国人の場合、一定の年齢に達しまして、徴兵検査といいますか、身体検査を受けなければならぬ、そのために一々本国へ帰らなければならぬということでは本人のために不便でございますので、それにかわって現地領事がやられる、その結果を本国に報告できるようにしようということでございますので、特にどうこうというほどのことは考えておらないわけでございます。
  39. 臼井莊一

    臼井委員長 関連質問がございますので、これを許します。川上貫一君。
  40. 川上貫一

    川上委員 関連して外務大臣にお聞きしたいのですが、いま戸叶委員からいろいろ御質問があったのですが、この領事条約というのは相互的なものでしょう。相互条約でしょう。日本国内法がないんだからアメリカではできないから問題がないと言うが、この条文を見ると、アメリカだけが日本で行なえるとなっておらぬ。どっちも行なえることになっておる。派遣国はとなっている。それですから、日本国内法がないからそれはできんじゃろう、こういう答弁をなさるけれども、この条約を見ると、できることになっておるのです。本来できぬのなら、条約にどうして入れるのか。この条約に、アメリカ領事日本でこれこれのことをすることができるというのならあなたの答弁でもよいかもしれぬ。まあ戸叶委員の意見はありますけれども。しかし、これは両方になるのです。ただ、問題は、国内法に従ってとある。国内法がないんだからできぬと言う。それなら、そんなものをなぜ入れたんです。相互条約でしょう。たてまえが両方できるということになっているのでしょう。こんな条約憲法に抵触しませんか。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 憲法に抵触するとは思いません。
  42. 川上貫一

    川上委員 思わぬというのじゃなくて、日本もできるという条約なんですよ。国内法は今月今日はありません。外務大臣の言われるように、徴兵はできないでしょう。永久にということはあなた方は考えておらぬ。その条約を、国内法がありもせぬものをいま何で結ぶのです。なぜこの条約に、「アメリカ領事は」、こう書かないのです。これはどういうわけなんです。
  43. 須之部量三

    須之部説明員 この種の二国間条約で形式的に双務的に書くのはもう通例でございますし、それから、先ほど大臣も申されましたとおり、派遣国法令によるということが入っておるわけでございます。もう明らかなことでございますから、あえてそこまでの書き方もしなかったということでございます。さらに、第二十六条の二項でございますが、これあたりでも、この条約領事官に何らかの職務を遂行する権利を与えている場合でも、その権利を保持する決定を行なうのは派遣国であるということが書いてあるわけでございまして、それぞれの派遣国、どこまで領事職務を行なうか、はっきりきめる立場になっておるわけでございますし、いま御指摘の御懸念は、いまの書き方でも、全然ないと思うわけであります。
  44. 川上貫一

    川上委員 日本ではできぬことだ。外務大臣が言うておるように、法令がないから日本アメリカではできぬことじゃ。どうしてこの条約に入れるのです。たてまえが両方できるという形になっている。国内法のあるなしにかかわらず、領事はこれができるという条約なんだ。どうしてこの条約に入れるのです。こういうことそれ自体憲法に抵触するじゃないですか。できぬことを入れてある。これはどうなるのです。
  45. 須之部量三

    須之部説明員 たとえば十七条の一項の(a)、「国籍に関する派遣国法令に基づいて行なうことを要求される届出を受理すること。」という内容を見ますと、両国の国籍法の関係から届け出内容が違うことはあり得るわけでございます。したがいまして、双務的な書き方でございますけれども、その国の法令により必要とされるところに従いというふうに書いてあるわけでございますし、御懸念のような点はないと思うわけであります。先ほども申しましたとおり、それなら身体検査を行なうために一々米国人本国に帰らなければならぬというのも非常に不便なことでございますので、そのための便宜をはかろうということで、別に領事徴兵令書を出して徴兵するというような趣旨では全然ございません。
  46. 川上貫一

    川上委員 そうすると、こういうやり方は今後もよその国との条約では何べんかあり得るのですか。これは特例ですか。
  47. 須之部量三

    須之部説明員 これは相手国のそれぞれの国の法令との関係にもなってくるわけでございますので、その国との交渉の結果をまだ待たなければならぬと思うわけでございます。
  48. 川上貫一

    川上委員 そうしますと、特別の例外ではないんですな。これはアメリカとの関係によって特別にこういう条約をつくったというわけではないんですな。
  49. 須之部量三

    須之部説明員 特に米国だからという趣旨ではございません。その国の国内法で要求されておりまして、日本に来ている御本人のために便利であろうというならそれを認めて差しつかえないのじゃないだろうかという趣旨でございます。
  50. 川上貫一

    川上委員 わかりました。そうしたら、あなた方は日韓会談をしきりにやっておりますが、日韓会談が妥結したら、あなた方が言うように、今度は日本韓国との間でやはりこれをやることになりますな。そうしたら、韓国日本徴兵検査をすることになりますな。これは断わることはできぬでしょう。日本におる外国人は、一番多いのは朝鮮人です。六十万近くおるのです。実質はもっと多いとさえ言われている。日韓会談をやって、アメリカとこんなのを結んでおいて、たとえば韓国が将来これを要求してきたら、断わることはできぬでしょう。そういう場合には、日本で、韓国領事か何か知らぬが、そういうものが徴兵検査をやる、これは認める気ですか。
  51. 須之部量三

    須之部説明員 御本人がそのために一々本国に帰らなければならぬというような不便が非常に大きいような場合、便宜をはからってあげるのは一向かまわないように考えます。別に韓国からその点についての具体的な話はもちろん何もないわけでございますけれども、もしそのほうが便宜であれば、考えても一向にかまわないと思います。別にこれは徴兵ではない。領事官兵隊として徴集するということじゃございませんで、一定の年齢に達しているという届けを出し、それでその際にどういうからだであるかということを検査するということでございます。
  52. 川上貫一

    川上委員 私は関連でありますからこの一問で終わりますが、これはたいへんな御答弁だと思うのです。われわれは、もちろん日韓会談は反対です。妥結にも反対しております。しかし、政府はどうしてもやろうとしている。国交回復をしようとしている。韓国日本徴兵検査をやる、これを認めようとしておる。これはきわめて大きな問題だ。朝鮮人は一番たくさん日本におる。世界じゅうの人で一番たくさん日本におるのは朝鮮人です。しかも相手が韓国、さしあたって朴政権、あそこは六十万の軍隊を持っているが、まだ兵隊が足らぬのです、戦争をしようとしているから。これに対して、あなた方は、韓国側がそう言うてくれば、——予想しているのかもしれない。日本徴兵検査をする、現地徴集をやらせる、こんなことを考えている。私はこれについて時間がありませんからこれ以上質問はしません。あとの機会に質問をいたしますが、これは、外務大臣、相当の問題です。関連ですから私はこれで終わります。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣、いま川上委員からの質問でもおわかりになったと思うのですが、外務省は腹からそう思っていらっしゃるか。大したことない、大したことないとおっしゃるのですけれども、私どもは、大したことないというふうにおっしゃるその気持ちがどうしてもわからないのです。  それで、さっきの答弁を伺っておりますと、領事徴兵令書を別に出して身体検査をするとかなんとかいうのじゃない、こういうふうにおっしゃったわけなんですけれども、そうすると、その検査をするのは一体だれがやるのですか。
  54. 須之部量三

    須之部説明員 これは、「派遣国法令により必要とされるところに従い」でございますから、おそらく領事館としてきめておるお医者さんにお願いするということになるのだろうと思います。
  55. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、その監督は軍にあるわけですか。
  56. 須之部量三

    須之部説明員 一般的に、領事の性格でございますけれども、たとえば船なんかに関連しましても、普通国内におるならば国内官庁がそれぞれやるであろうということを、たまたま外国におるために領事がかわって行なうということが多いわけでございます。軍が監督するかどうか、それは、米国内におきます国民の兵役義務者の身体検査を行なうものが軍の監督になっておりますかどうか、それは米国側の内部の問題であろうと思いますが、同じような体系になると思います。
  57. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本アメリカとの間の領事条約なんですよ。そうすると、こういうふうな一条一条について相当突っ込んで討議をした上でなければまとめるものではないと思います。そうだとすれば、いま参事官のおっしゃったような答弁はなっていないと思うんです。たとえば、領事がするかどうか、それはアメリカ国内の法律によるものなんだから、アメリカのかってなんだ、そういう形で答弁されるんでは納得できないと思います。一条一条相当責任を持ってお話し合いをしたと思うんです。さあそれはアメリカ国内法で適当にやったのでしょうから、ほんとうならアメリカの所管官庁がやるのですけれども、出先ですから領事がどこまでやるのでしょうかというような答弁では、私はとても納得できないと思うんです。これは、領事がそれだけの権限を与えられてやるという話し合いであったのか、それともまた、そこに軍の関係が介入するのか、そういうこともやはり突っ込んで話し合いが行なわれたと思うんですけれども、いまおっしゃったようなあいまいな形でこの条約は結ばれたんですか。
  58. 須之部量三

    須之部説明員 条約上はあくまでも領事だけが関連してやることでございます。したがいまして、この条約上はあくまで米国領事身体検査を行なう。もちろん、自分自身でやっても意味がありませんから、医者に、頼んで行なうということになると思います。
  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その程度にわかれば、あとは軍のほうでやるかもしれないけれど外務省として正式にわかっておることは、領事がやるんだということなんですね。  そこで、こういうふうな、日本にとっても必要のないことだと思うのでありますが、この条項は一体どちらの要求で入れたんですか。そしてまた、この条項を挿入しなければならなかった理由は一体どこにあるんですか。さっきから、アメリカへ一々帰すのはたいへんだから日本でさせるのだというふうにおっしゃいますが、徴兵の問題なんかを、日本の今日置かれておる立場から、そう軽々しく承知をすることは、どうも日本国民として見た場合におかしいんじゃないかと私は思うんです。
  60. 須之部量三

    須之部説明員 この条項米国側のほうの要望で入ったものでございます。私どもからいまこれを言う必要はないわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、御本人が一定の年齢に達して徴兵届け出をする、そのときに身体検査を必要とする、それをわざわざ本国まで帰るのはたいへんだ、したがって、ここで領事が行なって、その結果を届け出るということで、特に重大な意義も認めなかったし、別に置いてはならぬという理由もないというふうに考えるわけでございます。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本一つ参考にした米英領事条約の中では、その国民身体検査領事が行なうことということが抜けておりますけれども、わざわざ日本アメリカの場合にこれを挿入した理由はどこにあるのですか。
  62. 須之部量三

    須之部説明員 これは、要するに、実際問題として、イギリスでは文字としては入っていないわけでございますけれども、一応この通知を出し届け出をしなければならぬわけでございまして、その届け出のときに身体検査を行なうこと自体は、何らかまわないように思いまして、認めておるわけでございます。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それじゃ、百歩譲ってもイギリスの形と同じ形をなぜとらなかったんでしょうか。イギリスでも、いまの例で言えば、そういうふうなことは含みがあるといいながらこの文句を入れてないわけです、ところが日本の場合だけ、「及びその国民身体検査を行なうこと。」ということを入れておるわけなんですが、同じなら何も入れる必要はないじゃないですか。それだけ強くなっている。その地域で身体検査をして、そこで徴兵させるということになっているわけです。
  64. 須之部量三

    須之部説明員 英国との条約は、御存じのように、一九五一年、いまから十三年前にできている条約でございます。その後おのずからある程度こまかく書くような、何せ一応つくってみたものの、もう少しこまかくという要望が出てくるのも当然でありますし、米側でこれを希望した場合に、あえて反対する理由もないということで入れたものでございます。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ごろ出していただいた資料の中に、アメリカとほかの国と結んでいる領事条約の表だけがあります。それで戦後締結された二国間の領事条約でこれと同じ文句が入っている国があるかどうかということを、いま急に申し上げても二十幾つかですから無理ですから、あとで調べて出していただきたい、こういうふうに考えます。それは早急に出していただきたい。これが一つです。それから、こういうふうな一九五一年にアメリカイギリスとの間に結ばれた領事条約は古いから、最近になってくるとこういう要求が出てくるのも無理ないとおっしゃったのですけれども、徴兵検査の問題は原則的な問題で、古いとか新しいとかいう問題じゃないと思うのです。そういう意味から、米英領事条約にないのをあらためてこのことばを起こしたというところも、私は一つの問題じゃないかと思いますけれども、いまの古い新しいという理論から言うならば、たいへんに古いころの条約を見ますと、日本がやはり押しつけた形でこういう条約を結んでいるわけです。たとえば、「満州国ニ於ケル治外法権ノ撤廃及南満州鉄道附属地行政権ノ移譲ニ関スル日満条約」というのがあるわけです。その中の十六条には、「満州国政府条約実施後日本国政府が満州国領域内ニ於テ日本国臣民二対スル徴集、服役、召集等兵事ニ関スル行政ヲ行フコトヲ承認スベシ」、こういうふうに押しつけた形で書いてあるわけなんです。これがちょうど今日アメリカ日本との間に結ばれた同じ内容になっているわけですね。そうすると、まるでこの当時の従属関係が今度はアメリカ日本との間の従属関係みたいになった、こういうふうに想像せざるを得ないわけです。だから、古いからこういうものがどうとか、新しいからどうとかいうことは言えないと思うのです。この当時の条約を、条約局ですからよく御研究になっていると思うのですが、そういうふうに書いてあるんですね。いかがですか、その点。
  66. 須之部量三

    須之部説明員 いまお読みになりましたのは、服役等、つまり現地でそのまま徴集ができるというようなあるいは書き方になっておるかと思いますが、今度の場合の趣旨は、先ほど申しましたとおり、一応本国に帰って受ける身体検査現地で受けることができるという趣意でございまして、別に従属関係云々というようなこととは、一応無関係のことじゃないかというふうに考えます。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、ここの十七条の(b)項では身体検査を行なって、そうしてどうするのですか。もしもそれが体格が徴兵に合っている、そうするとそこで現地採用はしないのですか。合ったということでそのまますぐ帰すのですか。そういう権限もないのですか、ここでは。
  68. 須之部量三

    須之部説明員 ここでは、単に身体検査を行ないまして、その結果を報告するだけのことであります。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 しかし、これだけの条項があるからには、日本側で、一々それを報告するとかしないとかいうことはわからないわけでしょう、アメリカ法令によってやるのですから。ですから、アメリカが、こういう条項がある以上は、つつかれないような形で、日本においてアメリカの人の身体検査をして、そしてこれを本国に知らせる、しかし場合によっては現地で採用することもあるわけでしょう。この条項から言えば、できないということは書いてないわけですからね。日本ではそれはできないと思っていらっしゃるかもしれないけれども、条項がここにある以上は、できるかもしれないと思うのです。この点はそこまでお話しになっているのですか。
  70. 須之部量三

    須之部説明員 もし個々の本人がいよいよ現実に服役するということになれば、一たん帰国した上で服役することになるわけですし、ここで言っているのは、先ほど申しましたとおり、身体検査を行なうというだけのことでございます。
  71. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの問題ですけれども、本人は本国に帰って服役する、こうおっしゃるのですけれども、そういうふうに日本が理解をしていても、アメリカ領事館に行って、だれだれの届けがありましたか、どういうふうにして身体検査してどうなっていますかということは、一々日本は聞くわけではないのですから、ここでもって現地採用されてよそへ持って行かれても、わからないと私は思うのです。むしろ、それよりも、こういうあいまいな条項は抜くべきだと思うのです。五一年のアメリカイギリス条約の中よりももっときびしい徴兵制というものの確立がここになされているのですから、私は、むしろ平和的な方向に世界がいくというならば、この条項自身を除いてしまうべきだと思うのです。こういうふうな条項を除くべきだという考えに対して、大臣はどうお思いになりますか。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 それはアメリカの問題でございまして、日本のほうでは、アメリカ法令に従って領事がそういう仕事を日本でやるということを尊重するにすぎないわけでございます。問題は、あなたの議論を聞いておりますと、徴兵制度自体の評価の問題に関連した御議論が多いようでございますが、徴兵制度をしくかしかぬかということはアメリカの問題でございまして、アメリカ法令に従いましてアメリカ日本におる領事がそういう仕事を日本でやる、その領事の権限をきめた、それを日本側は条約上尊重してあげるというだけのことで、日本には全然関係のないことでございます。いわんや、日本徴兵制度という問題は、日本の国会と政府の問題でございまして、この条約はそういったことに何にも関係を持っていないものでございます。
  73. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣と私と平行線ですけれども、ただ、問題はアメリカの問題で日本の問題でないというふうにおっしゃるのですけれども、これは日米領事条約なんですね。日本が知らぬ顔をしていられない問題なんです。やはりそういうことを知っていなければならぬ。私は何も日本徴兵制度云々ということを言っているわけではないのです。アメリカがこういうふうなものを設けている、この条約は双務的であるにもかかわらず、日本憲法でそういうことを禁じているのですから、この条項から言ってもそれでは双務性はない、この条項は少なくともこの条約の中で双務的でない、こういうふうに言ってもいいわけですね。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう徴兵制度日本にないのでございまするから、この条項日本で動きようがないわけでございます。それは当然のことだと思うのでございます。
  75. 戸叶里子

    ○戸叶委員 だから、ないなら双務的でないのですから、その条項を消したらいいと思うのです。話し合って消すべきだと私は思うのです。そういうことはお考えにならないかどうか。  それから、もう一つは、やはり、この日米の間の領事条約というものは、将来においてこれがモデルケースになって、先ほどおっしゃったようなノルウェーとかあるいはほかの国とこのような条約を結ぼうというような用意もあると聞いているのですけれども、ノルウェーと日本との間には通商航海条約締結されていて、その五条に、「領域内で職務を遂行する領事官の権利、権限、名誉、特権、免除及び除外に関して、いかなる第三国の領事官に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。」、こういうふうなことが書いてありますから、またやはりこういうふうな条項が入れられるというふうに解釈してもいいわけですか。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 相手国でそういう仕事をする場合に、また一々本国へ帰ってやるということはたいへん不便なことでございまするから、できるならば日本でそういう仕事をさしてあげたほうが私は便利だと思うので、これは単なる便宜の手段にすぎないわけで、本質論では決してございません。
  77. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま私の質問に対しての御答弁を承っておりましても、いままでの答弁を承っておりましても、どうもまだ納得できないのです。双務的という面から見ても、双務的でない。だとするならば、そういう条項は削るべきであると私は考えるわけでございまして、この点については、先ほど要求いたしました資料等をもよく検討した上で質疑をしたいと思います。この条約に関する質疑はきょうはこれでやめて、次の機会に譲りたいと思います。  なお、先ほど要求しました資料で、英文のものをだっと出されても私そう読めませんから、中の条項のここにこういう文句があるということを日本語でちゃんと指摘して出していただきたい、こう思います。  次に、外交関係に関するウィーン条約について二、三質問したいのですが、この一条の中の(e)に「「外交官」とは、使節団の長又は使節団の外交職員をいう。」というふうに書いてあるのですが、外交官とは具体的にどういう官職にある者を対象にしているのか、伺いたいと思います。
  78. 須之部量三

    須之部説明員 確かに、御指摘のとおり、外交官とは使節団の長またはその外交職員をいうということで具体的な定義がないわけでございます。したがいまして、どこまで外交官と認めるかは、普通の参事官、書記官等々が外交官であることは間違いないわけでございますが、具体的な場合に、たとえば電信官がどうなるかというような点は、それぞれの国の間の話し合いできまることになると思いますが、原則としまして、外交官リストというものをそれぞれの国が出しておりますので、それに載っておるのが外交官、こういうふうにお考えいただいてよろしいかと思います。
  79. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、具体的に言うと、参事官とか書記官とか、日本の場合よく言われる理事官というのはどうなっていますか。
  80. 須之部量三

    須之部説明員 理事官は、大体一等理事官、二等理事官、三等理事官までは外交職員に入っております。ただ、副理事官の非常に若い人につきましては、国によりまして外交官リストに載せたくないという国もございますので、そういう点は載っていない場合が若干あるかと思います。
  81. 戸叶里子

    ○戸叶委員 各国にある大使館には庇護権というものはあるのでしょうか。この中には何ら規定がしてないと思うのですが。
  82. 須之部量三

    須之部説明員 庇護権の問題につきましては、この条約の討議をいたしましたときに、別の面の問題であるので、この条約では触れない、——実は国際連合の国際法委員会で別途いま研究しておりますので、この条約では触れない、ただし、触れないということは大使館に庇護権を認めるという意味ではないということが議事録に載っておるわけでございます。それで、いまの一般的な考え方といたしましては、大使館には庇護権はないというのが一般考え方になっております。ただ、現実に逃げ込みました場合に、大使館の建物が不可侵であるということの反射として、直ちに踏み込んでその者を捕えるというわけにはいかないわけでございますが、その点は、結局、起りました場合に、関係国間の交渉、それから、どうしても相手が応じないというような場合には、たとえばその館長の召還を要求するというような形で解決するほかはないかと存じます。
  83. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、大体いまおっしゃったようなことが慣習的になっているのかどうかということが一点。それから、もし自国民が庇護を求めてきたような場合にはどういうことになるのでしょうか。それは身柄を渡さなければならないのか、あるいはまた、そのまま、いまおっしゃったような事情で庇護をしているのかどうか、この点も伺いたいと思います。
  84. 須之部量三

    須之部説明員 まず第一の点でございますが、国際慣行として大使館に庇護権がないということは一般に認められておるわけでございます。ことに、一九五〇年に国際司法裁判所の判決がございまして、その中で、大使館が外交的に庇護を与えるということは、その法的な基礎が各国別の場合に設定されてない限り領土主権の侵害として認められるということを言っておるわけでございまして、一般慣行として庇護権が認められないということは確立しておると申してよろしいかと思います。  それから、自国民の場合でございますが、自国民がその国の刑法犯人となりまして逃げ込んだ場合、それはやはり保護すべきではなくて、その国の司法当局に引き渡すべきであると考えます。
  85. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第十四条一項(c)の「外務大臣に対して派遣された代理公使」、これはどういうものでしょうか。代理大使というようなものがあるのかないのか。それから、代理公使と臨時代理大使とか公使というのは、身分上・職務上の違いはどうなっておりますか。それから、よくいまの政府がなさいますように、池田さんが総理でないころに、大蔵大臣のころでしたか、池田特使をつかわすとか、あるいは韓国へ大野特使をつかわすとかいうふうな場合の特使というのは、一体どういう範疇に入るのか、これも伺っておきたいと思います。
  86. 須之部量三

    須之部説明員 十四条一項(c)の代理公使でございますが、これは最近あまり例もございませんので、なくしていいじゃないかという議論も会議の際あったようでございます。しかし、やはり若干例はあるから置いておこうということでございます。この代理公使は、いわゆる臨時代理大使、臨時代理公使、すなわち、本任の大公使がおりまして、それが職務を執行できない場合に臨時的に暫定的にかわって職務を行なう者を言うのではございませんで、あくまで館長としての代理公使でございます。したがいまして、普通の臨時の場合は、シャルジェ・ダフェール・a・iとついておるわけでございますが、この場合にはe・pということになるかと思います。  それから、特派大使等の問題でございますが、これらのものにつきましては、いわゆる特殊使節でございますが、この条約では一応触れておりません。これも国際連合の先ほど申しました国際法委員会が現在研究中の問題でございまして、その点を一応反映いたしましたのがこの条約の前文の最後の文でございます。「この条約規定により明示的に規制されていない問題については、引き続き国際慣習法の諸規則によるべきことを確認して、」というふうに書いてございますが、要するに、従来の慣行によって処理されるということになっております。
  87. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまちょっとはっきりしなかったのですが、そうすると、代理公使というものは、たとえば臨時代理大使とか、それから臨時代理公使とは違うということなんですね。身分上はっきり違うということですね。  二十六条ですけれども「使節団のすべての構成員に対し、自国の領域内における移動の自由及び旅行の自由を確保しなければならない。」とあるわけですが、移動及び旅行の自由は無差別に与えられるのであるかどうかということですね。あるいは相互主義的に与えられるのかどうか。この点をお伺いいたしたい。
  88. 須之部量三

    須之部説明員 原則は無差別でございますが、相手国が日本外交官に対しまして旅行の自由を制限いたすときには、むしろ対抗措置としまして制限する場合はあり得るわけでございます。
  89. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、ある国が移動、旅行というものに対して制限をしたときに、日本側がそれに対して、やはり、あの地域に対しては制限されたのだから、こっちも制限するということで通告するわけなんですか。
  90. 須之部量三

    須之部説明員 おっしゃるとおりでございます。
  91. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、そういう場合、ある特定の国には移動、旅行の制限を加えて、そしてほかの外国の使節団にはその自由を許すということは、この二十六条からはどういうふうに読んだらいいわけでしょうか。ある国には制限して、ある国にはしない、こういうふうなことはどういうふうに解釈したらよろしいでしょうか。
  92. 須之部量三

    須之部説明員 この点はウィーン条約会議でも議論されたところでございますが、その場合には、この条約とは別に、一応国際法の原則がいろいろあるわけでございます。いわゆる復仇の原則というものがございまして、相手が国際法違反の不法行為をやった場合には復仇措置がとられるということで、復仇の法理で説明するということに、そのウィーン会議でもなっております。
  93. 戸叶里子

    ○戸叶委員 二十七条ですけれども「使節団が、無線送信機を設置し、かつ、使用するには、接受国の同意を得なければならない」とありますけれども、この同意を得ないで実際に無線送信した場合の措置をどうするのでしょうか。たとえば、無線装置なんということは、はっきりとわからないような場合もあるのじゃないかと思うのですけれども、そういう場合には一体どういう措置をとられるのでしょうか。現在実際にそういうことをやっているような場合もあるのじゃないかということを想像するわけですけれども、それはわからない以上はしかたがないということで放置されるのかどうか。この点。
  94. 須之部量三

    須之部説明員 その場合には、結局、先ほど申しましたように、大使館等のやかたの不可侵というのは非常に強い規定でございますので、踏み込んで調べるわけにはちょっとまいらないわけでございます。それで、結局、当該公館ないし一般的に外交団の注意を喚起するという措置をとるということになるだろうと思いますし、要すればその国と話し合う、協議するということになるだろうと考えます。
  95. 戸叶里子

    ○戸叶委員 実際問題としてはこの条項はむずかしいのじゃないですか。いまおっしゃったようなことが無線の場合にはなかなかとられないのじゃないかと思うのでけれども、どういうふうにお考えになりますか。
  96. 須之部量三

    須之部説明員 御指摘のとおり、実際問題としては建物の中に入れないということでなかなかむずかしいわけでございますが、同時に、いわゆる電波のチェックをいたしますと、ある程度はわかるようでもございます。それで、ただ一般論として申します場合には、この電波の送信機の設置を一応認めるか認めないかという原則論としましては、ウィーン会議の議論は実は二つあったわけでございまして、結局接受国の許可を要するというたてまえをとるというものと、届け出だけでいいのだという考え方と、二つあったわけでございます。後者の考え方をとりましたのはイギリスとかソ連等が一番強く、ウィーン会議で主張したようでございます。それで、現在、最近と申しますか、一応調べました例で申しますと、約五十カ国近い例を調べまして、外国の公館が送信機を置いておるかどうかということを調べましたところ、約半数ちょっとが現実にやっておるようでございます。したがいまして、許可を要するか要しないかという問題、もし送信機の設置を原則として禁止することが許されるかどうかということを考えますと、やはり、電波送信機の設置は一応認める、ただ、各国とも、電波の余裕が非常に少うございますので、かといってなかなかそうもできないということの問題があるわけでございますけれども、たてまえとしては、一応送信機は認めるというのがいまの一般的な考え方かと存じます。
  97. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第二十九条で、外交官の身体は不可侵であるということが確立されておるわけでございますけれども、もし外交官が犯した現行犯に対して、接受国の官憲はどういうふうに措置をするようになっておるのか、この辺をお伺いいたします。
  98. 須之部量三

    須之部説明員 これは、たとえば酔っぱらってあばれておるという場合これを抑止するのは当然のことでございまして、これは原則論を書いておるのでございまして、現行犯の場合には、押えるとかその他のことは当然できることでございます。特にどういう場合がどうこうということはございませんけれども、ほかの人に迷惑を及ぼしていくというような場合、これを抑止するのは当然のことかと思います。
  99. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの問題常識的には当然だと思いますけれども、この条約では、「いかなる方法によっても抑留し又は拘禁することができない。」というふうになっておるわけですね。条約上はないけれども常識的にやるというふうに了解していいわけでございますか。
  100. 須之部量三

    須之部説明員 この条約で与えられた特権は、その職務を能率的に遂行するためにのみ与えられるのだということが実は前文にも書いてございます。いまの考え方は、いわゆる帰納説と申しますか、要するに、外交官というものが仕事をする上に必要な範囲の特権を認めるのだという考え方でございますので、この条約としましても、根拠といえばあえて前文に求め得ると思いますが、この不可侵等とのあれも、職務の執行に必要なということに当然かかってくるわけでございます。
  101. 戸叶里子

    ○戸叶委員 三十一条の二項ですが、「外交官は、証人として証言を行なう義務を負わない。」、こう規定されておるわけでございますが、自発的に証言することも禁止されておる、こういうふうに理解すべきでしょうか。
  102. 須之部量三

    須之部説明員 いや、そうじゃございません。自発的にするのはもちろん差しつかえありません。さらに、訴訟当事者になったような場合には、当然それは出廷せねばならぬ。それから、さらに、ウィーン会議のときに問題になったのですが、たとえば、たまたま一つの自動車事故が起こったとき、外交官が唯一の目撃者であった場合、そのようなときには職務に支障のない限り協力することが期待されるという考え方でございます。
  103. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第三十二条の第一項は、「派遣国は、外交官及び第三十七条の規定に基づいて免除を亨有する者に対する裁判権からの免除を放棄することができる。」、外交官の家族の構成員とか、使節団の事務及び技術職員、その家族の構成員が亨有する裁判権からの免除の特権を放棄することができるとありますけれども、どういうふうな場合に派遣国が裁判権の免除を放棄するのか、また、どういう必要の場合にそういうふうにするのか、この点具体的な例をあげて説明をしていただきたいと思います。
  104. 須之部量三

    須之部説明員 先ほど申しましたとおり、この条約特権・免除等が認められておりますのは、外交官職務の執行を支障なからしめるためというのが趣旨でございますから、原則的に申し上げますれば、外交的な職務と全く関係のないようなことの場合は放棄することが期待されるわけでございます。極端な例は、最近もあったようでございますが、外交官が麻薬の密輸をやったというような場合、これは当然その特権を放棄せらるべきであろうというふうに考えらるわけでございます。
  105. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第八条の第一項では、「使節団の外交職員は、原則として、派遣国の国籍を有する者でなければならない。」、こう規定しているわけですが、第三十八条の一項では、「接受国の国民である外交官」云々と、こう書いてあって、「その任務の遂行にあたって行なった行為についてのみ裁判権からの免除及び不可侵を享有する。」、こう書いてあるわけですが、この八条と三十八条との間に、外交官の身分上の条件について異なっているように思います。これは八条の「原則として、」の解釈がはっきりしていないからじゃないかと思うのですが、この八条の「原則として、」の解釈を伺いたいと思うのです。たとえば日本法制では外国人を外交官に任命することができないと思うのですけれども、できるのでしょうか。そういうふうな関係をもからみ合わせて説明していただきたい。
  106. 須之部量三

    須之部説明員 これは、第八条があくまで原則でございまして、通常の例を考えますれば、外交職員が原則として派遣国の国籍を有する者であることは当然であろうと思います。日本の場合は、日本国籍を有しなければ外務公務員にはなれないわけでございます。ただ、第八条の二項等で、接受国が同意した場合には例外としてあることもあり得るわけでございますし、そのことを考えまして、三十八条のほうで、非常にしぼった形でございますが、一応認めた以上は、その公務についての裁判権からの免除は認めようということを置いたわけでございます。八条があくまで原則でございまして、三十八条はあまり適用がないような例外規定であろうと考えます。
  107. 戸叶里子

    ○戸叶委員 具体的に、わが国に在勤する外国外交官のうちで、三十八条の一項に該当するような外交官はおりますか。
  108. 須之部量三

    須之部説明員 現在日本にあります外国公館にはその例はございません。
  109. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第三十九条の第二項で、武力抗争が生じた場合にも特権・免除はなお存続すると規定してあるわけです。この武力抗争の意味を明らかにしておいていただきたいと思うのです。たとえば国境においての武力紛争が発生した場合も第三十九条に規定する武力抗争の範疇に入るかどうかというような点、あるいは、この武力抗争というのは従来の戦争状態の発生ということに解釈すべきかどうか、あるいはもっと広い意味に理解すべきかどうか、この辺のことはやはりはっきりと承っておかないと、またいろいろな問題が出るのではないかと思いますので、具体的に例をあげて説明していただきたいと思います。
  110. 須之部量三

    須之部説明員 三十九条二項のただし書きでございますが、それは三十九条二項の本文のほうをまず受けておるわけでございまして、大体外交官の任務が終了した、しかしその国を立ち去るまでに要する合理的な相当な期間が経過するまでは一応特権を認めるというのが原則として書いてあるわけでございます。それで、かりに武力抗争、もちろん従来の戦争も含むわけでございますが、そのような場合には、とかく感情的にそのような特権を無視して乱暴することもあり得る、したがって、その場合に、「武力抗争を生じた場合においても」と書いてございますが、「おいても」といいます場合には、そのような事態になった場合でもなお尊重しようという趣旨でございます。したがって、この文字としまして言っておりますことは、戦争も含め、あるいは、単なる外交団の引き揚げというようなことで、戦争に至らない場合、それでも何か小さな地方的な武力紛争が起きている、そのために国民感情が非常に興奮しているというような場合もこの場合に含めるという意味で、「武力抗争」と、多少広い文字を使ったものと考えております。
  111. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第四十条ですが、外交官が赴任または帰国する場合に第三国を通過する場合、この第三国が与えるべき特権・免除を規定しているわけでございますが、もし国交関係のない第三国を通過するような場合は一体どういうふうに扱われるのかを伺いたいと思います。たとえ国交がなくても、この条約の加盟国であれば、四十条による特権・免除を与える義務があるのかどうか、その点も伺いたいと思います。
  112. 須之部量三

    須之部説明員 この条約の加盟国であれば、当然それは与えるべきであろうと考えます。
  113. 戸叶里子

    ○戸叶委員 加盟国でない場合は…。
  114. 須之部量三

    須之部説明員 加盟国でない場合は、そもそもこの条約の適用がないわけでございますから、それはその国の一般的な裁量の範囲内で国際的に常識的なラインで取り扱うということになると考えております。
  115. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ここにあります陸海空の駐在武官の任命は、通常一般外交官の任命とはその手続を異にするように思いますけれども、そういう点については規定がなかったのじゃないでしょうか。規定がないですね。それはどういうふうに扱うのでしょうか。たとえば事前にその名簿を接受国に提出するような必要があるのじゃないかと思いますけれども、そういう点はどうなっているのでしょうか。
  116. 須之部量三

    須之部説明員 第七条にその点規定がございまして、等七条の第二文でございますが、駐在武官等、これは十九世紀等々からの長い慣行もございますので、第七条によりまして、「接受国は、承認のため、あらかじめその氏名を申し出ることを要求することができる。」、もちろんしなくてもいいわけでありますが、希望すれば要求することができるということになっております。
  117. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本に駐在する駐在武官というのはどういう形で来ているわけですか。たとえば参謀本部とかなんとかいうのがよそにはあるわけで、そういうところの許可を得るとか、あるいはそこへ通告をして来るとかいう形をとると思うのですけれども、日本の場合は参謀本部がない。こういうような場合に、駐在武官はどういうふうなところに連絡するわけですか。たとえば防衛庁に連絡するとかなんとか、そういうのはどういうふうになっているのでしょう。
  118. 須之部量三

    須之部説明員 日本としましては、あらかじめ氏名を申し出ることを特に要求してないのが現在のやり方でございますけれども、先方外務省通知してまいります。そうして、武官は全部いわゆる外交団リストに載っておるわけであります。おそらく、内部的には、外務省としては、通報があれば一応防衛庁のほうに連絡はいたしますけれども、いまのところは外務省のほうに連絡してまいります。
  119. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、公式には外務省に通達をして、外務省から防衛庁のほうに連絡をするこういうふうに了解していいわけですか。
  120. 須之部量三

    須之部説明員 別に制度的にきまっておるわけではございませんが、仕事の面でおのずから関係が深いわけでございますから、一応防衛庁のほうに連絡するということだと思います。
  121. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本の国で防衛庁の制服を着た人が外国に在勤をしていると思うのですけれども、そういう人の身分はどうなっているのですか。駐在武官と言うのですか、何と言うのですか。
  122. 須之部量三

    須之部説明員 防衛駐在官と言っておりますが、これは外務公務員でございまして、ただ、公の名称に関する外務省令がございまして、要すれば、たとえば主として財政に関係する者を財務参事官と申しましたり、それから、農林関係の者を農林参事官と言うようなこともございますけれども、そういう意味で、防衛駐在官という名前を公の名称として使うことは認めておりますが、この性格は外務公務員でございます。
  123. 戸叶里子

    ○戸叶委員 駐在武官というようなことばは英語で使わないのですか、何というふうに英語で言っているのですか。
  124. 須之部量三

    須之部説明員 たとえば、書記官であります場合には、大使館における書記官と書きまして、そのあとにディフェンスアタッシェというのをつけるということはありますが、常に、セクレタリーとかカウンセラーとか、大使館としての身分も併記しております。
  125. 戸叶里子

    ○戸叶委員 最後に伺いたいのですが、よくアタッシェということばを使うのですけれども、あれは第一条の定義の第何項にあたるのですか。科学アタッシェとか文化アタッシェとか、その任務とかその目的というものは大体どういうふうになっているかを伺いたいと思います。
  126. 須之部量三

    須之部説明員 アタッシェということばを用いますのは、これはその国々によりましてかなり用い方が違っておるようでございます。日本の場合ですと、アタッシェということばはいわゆる官補、外交官補の場合は外交アタッシェとしておるわけでございます。ほかの国では、たとえば労働関係とか農林関係とか文化関係、特殊のことを担当する人にアタッシェということばを与えておるようでございます。  その場合の取り扱いでございますが、結局その仕事の内容にかかわってくるわけでございまして、日本でありますれば、普通の書記官が担当するような仕事をやる人であってアタッシェということばで通報を受けましても、その場合は外交団として載せております。もし、アタッシェということばを、非常に低い、つまり先ほど申しました副理事官的な補助的な業務のみを行なう者に使っておる場合には、これは事務職員のほうにするわけでございます。それぞれの人の職務内容・地位等にかんがみてきめておるわけでございます。
  127. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、アタッシェの内容というのは非常に幅が広いのですね。地位から言ってそれほどでもない人も、それからまた非常に高い地位にある人も一応みなアタッシェと言っておるわけですか。
  128. 須之部量三

    須之部説明員 それは、先ほど申しましたように、それは国によって用い方は違うようでございますが、非常に幅が広いようであります。たとえば、アメリカの大使館の外交団リストを見ますと、ずいぶん上のほうにアタッシェということばがついておる方がずいぶんございます。      ————◇—————
  129. 臼井莊一

    臼井委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
  130. 帆足計

    ○帆足委員 きわめて短い時間でありますけれども、貴重な時間ですし、また外務大臣が御在席の時間でありますから、この機会を活用いたしまして、国民のだれしもが聞きたいと思っております二、三のことについてお尋ねしたいと思います。なお、台湾問題及び日韓会談の今後の動向等についても伺いたいことが山積いたしておるのでございますが、これらの問題は与野党ともにきわめて重要な問題と考えておりますから、いずれ系統的に質疑を続けることにいたしまして、本日はとりあえず、昨今新聞で伝えられておりますアメリカ上院外交委員長フルブライト氏の談話につきまして、大臣の所見を伺いたいと思います。  世界の情勢は一刻の休みもなく変化しつつあるわけでございまして、その変化の方向は、眼光紙背に徹して、その背後の諸問題を十分資料によって把握すれば、およその見当は私はつくと思うのでございます。およその見当をつけるその最高のものは何でありましょうか。  人類の歴史を動かします最高の力は、人間の生きようとする力、生産力である。生産力の中で私どもが最も最近注目すべきものは、何としても技術の発展であると思います。  ジェームズ・ワットの蒸気機関車の発明が自由・平等・博愛というスローガンを現実の日程にのぼせ、ペルリの四隻の黒船がアジアの孤立した島に明治維新という一つの民主革命をもたらしたと同じように、今日の時代は、やはり、原子力すなわち原爆、ロケット、人工衛星、電子工学等を中心として大きく動いているのでございまして、この大きな歴史の流れから見るならば、昨今行なわれておる日本の政界の閥族の争いのごときは、もって取るに足らぬ蝸牛角上の争いと私は見ておる次第でございます。原子力とロケットの発達は、世界の戦略を変えるのみか、戦争そのものの概念を変えようとしておることは、御承知のとおりであります。また、地球も小さくなってしまいました。また、かつては、社会主義といえば鬼か蛇のように考えられ、共産主義者といえば銀座街頭を五分間散歩しただけで直ちに逮捕されたものです。それがわずか二十五年前のことだと思うと、感概無量でございます。  また、世界各国に絶対王制が長い間支配しておりまして、朕は国家なりとまで言われたその残渣は至るところにあったのでございますけれども、いまではカンボジアからエチオピアの王さままで民主化され、日本の天皇政治もいまでは人間的・国民的象徴というふうに実質的にその歴史的意義が変わってきました。思えば夢見るような世界の変化でございます。  したがいまして、共産主義の世界を不倶戴天の敵と考えていたダレスは、中共兵に殺されたのでもなく、ソ連から攻撃を受けたのでもなく、ガンによって死んでしまいました。むしろガンや高血圧のほうが人類の共通の敵でありまして、外務大臣といたしましても、われわれといたしましても、五十の年代になれば、われわれの敵は共産主義でもなく、また中共兵でもなく、むしろガンと高血圧、これが諸君の直接の敵である。ダレスは断じて中共兵に殺されたのではなくて、ガンに殺されたのです。したがって、これら人類の敵に対する防衛が最も必要なのであって、共産主義の国はもはや人口十億をこえております。極度に貧しい国に暴力革命がときとして起こる。これは別に共産主義に限ったことではなくて、ジョージ・ワシントンの暴力革命、マッカーサー元帥も日本において暴力革命を起こして地主から土地を奪い、そして彼は東条さんを縛り首にし、近衛さんを青酸カリ自殺にまで追い込め、そして彼自身もまた、ソ連兵に殺されたのではなくして、何で死にましたか、診断書に書いてある病名をもってなくなりました。  私は、外務委員会の権威において、われわれがそういう時代に住んでいるということを深く外務大臣の大脳に印象づけたい、こう思って申し上げているわけです。われわれはそういう時代に住んでおるから、したがって、ものごとに対する価値判断はどんどん変わっていく。単に変わるだけでなく、より理性的になり、より聡明になり、より現実を見る目が深くなっていく。  思えば、十二年前に、私は戦後最初日本人としてモスクワ、北京を訪問し、最初にスターリンに会いました。いまスターリンに会った同僚政治家諸君は一人もいないでしょう。その点において私はもはや一種の天然記念物でありますから、その天然記念物を落選さしてはならぬといつも申しておる次第でありますけれども、わずか十二年です。あの十二年前のことを思ってみても、あのときは外務省は腰を抜かさんばかりに驚いた。いまではモスクワを訪問し中国を訪問するがごときは何でもない平凡なことです。  かつて回教徒とキリスト教徒とが数十年にわたって血の争いをした時代がありました。信条の相違のゆえをもって血で血を洗うということは、ロミオ家とジュリエット家との仲たがい以上に不合理なことであります。今日社会主義の社会がとにかく人口十億をこしておる。もうこれが倒れることはないでしょう。それはそれなりの道を通じて生産力を発展せしめ、生産が発展すれば生活が豊かになる。生活が豊かになれば心が豊かになる。心が豊かになれば人は寛容になる。したがって、すでにソビエトが示しておりますように、社会主義社会にも雪解けが起こっておるることは皆さんの御承知のとおりです。資本主義社会におきましても、民衆が自覚してくるにつれまして、福祉国家ということばがだんだん常識化されつつある。私は、日本の保守政党がわが社会党とほとんどもう同じ程度の政策になるように望んでおります。選挙のときに聞いてみると同じようなことを言っておるのですが、実行なさることはまだそこに至ってない。(「ストの問題はどうか」と叫ぶ者あり)ストの問題はどうかといえば、これは外務委員会の所管外のことですが、これはやはりインフレ一般に問題があると私は思うのです。  そこで、私は、ダレスの時代を思い出していま感慨無量です。私個人といたしましても、いまから十四年前は経団連の事務局長をし、そして植村甲午郎氏と一緒に仕事をしていた時代がありました。その時代には、当時帝国銀行、いま三井銀行の頭取の佐藤喜一郎さんが新年の年頭の辞をラジオで述べ、一万田ローマ法皇と言われた方が同じく新年の年頭の辞をNHKで述べますときに、日本の進むべき外交の道は、戦争の長い体験と悲劇から学ぶことである、中立と平和の道を進もう、アジアのスイッツルたれと言ったあのことばを忘れまい、そういうような演説を当時はしておりました。朝鮮戦争が起こって突如として情勢が変わりまして、そして、最初優位であった、アメリカは、やがてミグ戦闘機、ジェット機があらわれまして、B29は博物館行きになり、驚くなかれ、 マッカーサー元帥は、危険な将軍として、鴨緑江を越えようとしたときにトルーマン大統領にやめさせられました。そのマッカーサー元帥もいまはなく、毎日の新聞紙上で回顧録を読んで、私はうたた感慨無量であります。ダレスの政策の全盛期に、私は経団連にとどまれなくなって辞表を出して、そしてソ連に旅行したことが縁となって、本来ならば当時の改進党にでも入るべき立場でありました私が、歴史の宿命の糸に導かれて、いまは忠実な社会党員になっておりす。この一つのことを思い出してみても、私はやはり感慨無量であります。  いまやそのダレスその人もなく、そしてフルブライト・アメリカ上院外交委員長が最近どういう演説をしたかというと、この内容を見て私は驚いております。彼は、米国はこれまでの神話を捨てて現実的な態度をとるべきである——これまでの神話と言っているのです。二十世紀の神話というローゼンベルクの愚かな本がありますが、アメリカはこれまでの神話を捨てて現実的な態度をとるべきである、もし米国が中共との関係でもっと合理的かつ柔軟な態度をとる能力を導入することができたならば、それはアメリカにとっても有益なことであろう、中でも最も重要なことは、二つの中国というものは実際には存在せず、あるのは一つの中国、すなわち大陸中国であり、これは今日現実として共産主義の制度によって支配されており、今後無期限の将来にわたってこの支配が続くものだと考えられる、一たびわれわれが、この厳粛な現実を受け入れるならば、大陸中国と比較的正常な関係に入るための諸条件について考慮することも可能となってくるであろう、こう述べております。さらにまた、こういうことも言っております。人は驚くほど短時日のうちに敵意を忘れ親密な友情に道を譲ることがある、アメリカとかつてのドイツ、日本との関係考えてみても余はそのように思う、競争的共存という程度になることはあり得ないことでないし、そうなれば世界の平和のために有益なことであろう、これは社会党員たる私の議論ではないのです。アメリカの上院外交委員長のことばがすでにこの程度になっておるということを私は皆さんに申し上げたい。また、もし極東で緊張が緩和されるならば、大陸中国を軍備の縮小、貿易・文化・教育交流などの分野において東西間の既定の平和協定の中に引き込むことによって、世界平和を強化することもやがて可能となるかもしれない、そのほか、なおパナマの事件についてこう言っておるのです。御承知のように沖繩とパナマとは非常によく似ている条件に置かれております。沖繩には自治権がなく、人口九十六万。パナマは人口八十六万です。パナマの運河ゾーンに対しては、キャラウェーと同じような高等弁務官の機能に似た総督が専制支配しております。そのパナマが、いまや自治権の回復を要望いたしましたのに対して、御承知のように、国際連合の植民地解放宣言では、住民が自治権を回復しようとする運動に対してはいかなる弾圧も下してはならぬということをすでに決定いたしております。この国際連合の精神をも考慮したのか、フルブライト上院外交委員長は、パナマ問題に言及して、米国はたとえ国内的に多少の批判が広範囲に起ころうとも、パナマ運河条約改定でパナマ政府交渉に入るべきである、こう言及し、さらに、キューバに対してこのような発言をしております。われわれはキューバに対する政策を率直に再検討する必要がある、たとえ気に食わない結論に達しようとも、現実を直視すべきである、フィデル・カストロの政権はアメリカ政府にとって不愉快ながら、なおかつ許容できぬほど危険な存在でないということをいまや認めるべきであろう、こう言っております。人口四百万のキューバにバチスタという軍曹上がりの暴君が支配していたのを、若いフィデル・カストロが打倒した。若きがゆえに彼は急進民主主義者から社会主義者に急激に傾斜した。そのときにアメリカが弾圧を加えたので、彼はソ連に助けを求めた。しかし、人口四百万のキューバが、どうして人口一億数千万のアメリカに対してそれほど大きな脅威になり得るでしょうか。なり得るとしたら、それはアメリカがすでにフィーブル・マインドになっておる証拠で、キューバのごときは何ぞおそるるに足るものでしょうか。私はこのフルブライトの議論を読みまして感慨無量でありました。そこで大平外務大臣の所見を伺いたいという衝動を感ずることは、私は自然の情だと思う。  そこで、お尋ねいたしますが、きょうは時間が中途はんぱですから、その問題だけに限りまして外務大臣にお尋ねいたしたいのですが、平和共存ということについて外務大臣はどういう信念をお持ちであるか、これが私の最も伺いたいところです。アメリカの上院議員でもかほどの転換が徐々にまた急激に起こりつつあるときに、大平外務大臣は、ただアメリカの目の色をうかがうだけでなくて、その背後にある世界の大勢を御認識くだすって、そして日本の進むべき自主的な平和の道を保守党としてもさがしていただきたい。平和共存についてどのようなお考えか。  なお一括してお尋ねいたしておきます。台湾の国際的法的地位については、まだ申し上げたいことがたくさんありますが、一応省きまして、とにかく台湾共和国というものは存在いたしておりません。これは蒋介石もそう言っておりますし、それから毛沢東政権もそう言っておりますし、また、一九四五年でしたか、すでに日本は台湾を放棄し、放棄された台湾の焼きイモ一つだれも拾い手がなくて、これは蒋介石政権が接収手続をいたしました。台湾省として省長を置きまして、それをアメリカイギリスも認識し、承認いたしておるのでございます。これはもう過去において済んだ事実でございます。したがいまして、フルブライト氏の言うように、現実を直視するならば、やはり中国は一つしかない、こういうことになると思います。  それから、時間がありませんから、もう一つだけお尋ねします。沖繩は日本の領土です。そして九十六万の人口のおる領土です。この沖繩に日本国民が互いに往来することは、私は当然の権利だと思うのです。特殊の破壊工作や何かで行く人ならば、若干の問題があるということを言う人もおるでしょうが、少なくとも通常の国民が往来するのに、何のはばかることがあろうかと私は思います。いわんや、国会議員、外務委員等が、ときとしては沖繩の風光をめで、ときとしては沖繩の住民の自治権の問題を視察しようと考え、ときとしては沖繩美人にあこがれを持ってまいったところで、妻の許可さえあればいいことである、別に旅券課の干渉を受ける必要はなかろうと思いますが、外務大臣は、国会議員がときとして沖繩を訪れる、あるいは風光をめでに参ったり、その他、昨日は沖繩という映画を超党派的に議運のお許しを得て五階でみんなして鑑賞したわけです。だれしもあの映画を見ると沖繩に行きたくなる。それを国会議員でありかつ外務委員である者が遠慮せねばならぬという手はないし、そういうようなことについて、万一アメリカのほうで、外務委員のような有力者は来てもらっては困るなどと言われたならば、それはおまえのほうが民主主義の精神を知らないものである、ファッショと誤解されるぞとさとすくらいの確固たるお考えがあるかどうかお伺いいたしたい。  この三点についてお尋ねして、そしてあとは採決に移る。こういうことにいたしたいと思います。
  131. 大平正芳

    大平国務大臣 いま上院の外交委員長の上院における演説の御引用がございましたが、名前はフルブライト氏であります。この演説は、帆足先生おっしゃるように、私どもも興味を持ちまして拝見いたしたのでございますが、私どもは、アメリカ政府外交関係を持ち、アメリカ政府話し合いをいたしておりまするので、この演説についての論評というものは御遠慮いたしたいと思います。ただ、非常に興味を持ちまして、私どもも演説に関心を持っておるということだけは申し上げさせていただきたいと思います。  それから、平和共存政策でございますが、私も本委員会においてたびたび申し上げましたように、平和共存という文字どおり平和共存政策には賛成でございますが、しかし、この平和共存という同じことばが、違った意味内容において主張されておるところに、世界の平和が脅かされておる根因があるのではないかと私は思います。すなわち、ある体制の上に乗った平和、ある体制を前提にした共存、そういうものでなく、あるがままの、その国民が厳粛に選んだ政府と、その政府のとっておる政策、それを文字どおり尊重した、前提に置いての平和共存政策であれば、私は全幅的に賛成です。  それから、第二点といたしまして、台湾の法的地位の問題でございますが、わが政府として申し上げられますことは、われわれは台湾、澎湖島に対する権利権原を一切サンフランシスコ条約で放棄いたしたという立場におるということでございます。事実の問題として国民政府が支配しておることは、そういう事実はございますけれども、法的地位を法律的に論ずる場合には、わが国といたしましては、これはわが国が放棄した立場にあって、帰属はまだきまっていないと承知しておるということ以上に申し上げられません。それから、沖繩の問題でございますが、これは格別に規制をしていないわけでございまするが、セキュリティの立場から旅券の発給が事実上若干手間どっておるということは私も認めます。沖繩問題につきましてのお互いの理解が進みまして、そして、こういうセキュリティの観点から事務が渋滞することのないような状態が早く現出することを私は期待いたしておりますし、また、そういう方向に努力したいと思います。
  132. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、私はこれで質問を終りたいと思いますが、いまのセキュリティという意味は、沖繩の祖国復帰を願う人、そういう人は有害であるといって干渉なさるならば、それは国連憲章違反になるということを注意を促しておきます。いわゆるアヘン密売とか、精神錯乱的破壊、婦女誘拐者、そういう者の移動を規制するということは国際的に行なわれておることであります。しかし、祖国復帰、住民に自治権を与えてもらいたい、いわばアブラハム・リンカーンの弟子のような叫びをする人をもって秩序違反と考えることは国際連合において禁止されておるということについて、外務省当局の注意を促したいと思います。      ————◇—————
  133. 臼井莊一

    臼井委員長 外交関係に関するウィーン条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件に対する質疑をこれにて終局いたします。     —————————————
  134. 臼井莊一

    臼井委員長 これより討論に入りますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  137. 臼井莊一

    臼井委員長 国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。帆足計君。
  138. 帆足計

    ○帆足委員 もうお昼も近づきましたから、十二時半で打ち切ることにさしていただきます。いま戸叶里子議員からも、非常に貴重な時間であるし、人生は短い、そういう御忠言もありましたので、もう十分間質問さしていただきます。   〔委員長退席、正示委員長代理着席〕  台湾の問題でありますけれども、私は、英国が台湾を承認していないという事実、この事実の背後にやはり重大な問題があると思うのです。それは、台湾共和国という国ができたということはまだないわけです。したがいまして、アメリカの対華白書によりますと、北京から内部的に腐敗した政権が亡命政権としてとにかく台湾に逃げてきたということであって、その台湾の領土の帰属は、日本政府としては、放棄したまま、こう言っているし、蒋介石政権及び北京の中華人民共和国政権は、それは日本が放棄したあとを中国の政権が台湾省として接収した、こう言っております。歴史的事実としてはこれは争うべからざる事実であると思います。したがいまして、日本政府としては、もう少し正確な態度をとったほうが自主的判断を持つ政府として世界に尊敬されるためにも、またアジアの国々からも理解されるためにもいい。何か日本政府はミステリアスな神秘なところがある。われわれの友人にも、非常によい友人であるけれどもときとして神秘的なことを言うよき友人がおりますけれども、やはり大事なことはそういう友だちには頼めないということになる。私は、アジアにおいて、日本政府として、占領直後ならばそういう態度もやむを得なかったかもしれないが、しかし、もう人から神秘的と思われるような点はよくないと思うのです。もちろん、多くの国々がありますから、礼儀正しく、発言を控え目にしたり、言うべきことを内輪にし、言わなかったりするということは、ときとして必要でありますけれども、いつも論旨は明確に通っておるように願いたい。その点はやはり英国を学ぶべきでなかろうかと思います。一体、外務省当局は、イギリスとは長い間のお近づきでありますのに、どうしてもう少し英国のことを御勉強なさらないのか。外務大臣はどうですか、イギリス外交に対して。非常に賢い英国の首相並びに外務大臣の演説など、私ども野党にとっても心ひかれるものがあるくらいですが、外務大臣の御感想をひとつ承りたいと思うのです。
  139. 大平正芳

    大平国務大臣 外交は私の方寸で展開できるというようなものではないと思うのであります。やはり国民的な基盤がなければいけませんし、国民の理解がなければならぬわけでございまして、私は、イギリス外交の政策の立案についてもまた展開についても与党と野党との間に大きな軒輊がないということは、イギリス外交政策の展開を非常に力づけておると思うのでございます。日本におきましてもそういうような状況になることを私どもは心から希求いたしておるわけでございまして、そういう状況になれば日本外交政策というのはもっと勇敢に展開できるのではないかと思うのでございます。そういう状況をお互いにつくっていくように努力したいものだと思うのでございます。しかし、うまくいかないのは国民のせいだということを申し上げるつもりは毛頭ないわけでございまして、与えられた条件のもとでも最善を尽くさなければならないのはわれわれ外務省のつとめでございまして、あらん限りの能力をしぼりまして、日本の実態に合い、日本利益のためによりよい外交を現実的に推進してまいっておるつもりでございまして、足らないところはいろいろあると思うのでございますが、十分の御指摘をいただきたいと思うのでございますけれども、与えられた条件のもとにおいては、われわれはベストを尽くしておるつもりでございます。
  140. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣が困難な諸環境の中で御苦労なさっておることはよく存じておりますが、私は、外務大臣なり池田さんなりが前向きになろうと非常な努力をされておるということはときどきわかるような点もあるわけです。しかし、全体として、国内的にはインフレーションに対する総合対策が欠けておる。内政と外交とは関係があるのですが、やはり三カ年計画くらいをお立てになってインフレーションのひずみを直し、正直な者が損をするというような状態を真剣に直さなければこの数日間のような政治情勢がおのずから生まれると憂慮するものです。同時に、外交に対しましても、外務大臣の足を引っぱる力が少し強過ぎるように思います。国民の普通の平均的常識から考えて、アメリカのフルブライト上院外交委員長の適度の常識でおやりになるのが、イギリスアメリカアメリカフランスフランス日本の保守政党の適切なバランスではあるまいか。したがいまして、足を引っぱられたくらいのことで、先日申し上げましたように、ウイスキーをあまりたくさん召し上がったりなどはなさらぬほうがよかろう、こう思っております。  それから、もう一つ、これは御了解を得ておきたいのです。これは、外務委員会の空気としては、私あちらこちら打診いたしましたが、御承知のような空気です。朝鮮人帰国問題も八万人をはるかにこえました。あのときの約束は五万人をこえたら勲章をいただけるということになっておりましたが、不幸にして社会党は現在の勲章法に心から納得することができませんので、いただきかねる状況ですが、そのときは桜内委員長がごちそうしてくださるという約束でした。しかし、それもまだ実行に移されておりません。しかし、それらのことがありまして、日本赤十字総裁が仁川から京城を、副総裁が京城を訪れ、それから、なき、最も尊敬する与党の岩本さんのお伴をして、私は国会のお許しを得て、しかも直接旅券までいただいて京城を訪れました。行きて迎えざるは礼を失するものなり、これは有名なアジアの格言でございます。行きてしかして迎えざるは礼を失するものなり、外交には礼儀というものが必要でありますから、行きましたならば、ときとして客を迎える。迎えることができないくらいなら、ただ行くのは礼儀に反していることであるまいかと思います。もちろんそれらの問題は少しずつ積み上げ方式でいかなければならぬということも、ときの順序でありましょう。どうか、それらの点は、とくと慎重にそして必要なときには聡明な御判断をお願いしたい。これはケース・バイ・ケースによって解決しようと、さすがのがんこな賀屋法務大臣もそう申しました。したがいまして、法務省にまいりますと、昨今どうも、外務省のほうが日韓会談にちょっとおびえ過ぎて、外務省のほうの判断がフラクチュエートするものだからうまくいかない、最近は責任が外務省のほうに転嫁されたような傾向がありまして、私も心外だと思っております。しかし、物事には順序というものがありますから、今日全面的に否定的な回答を伺おうとは思いませんが、肯定的な面がありましたら、お漏らしできる範囲においてお漏らしいただく。そして、今後のことを与野党相談して何分にも国際緊張のまだ十分緩和されざるむずかしい状況の中ですから、前向きにともに進みたい。実は、私どもの友人の中には、超党派外交などはあり得ないと言うよき友もおります。しかし、私は、平和と貿易に関する限りは超党派外交というものはあり得るし、また、完全に一致しなくても、互いに話し合って誤解を解き、理解を深め得るということはあり得ると思いまして、野田武夫氏、宇都宮氏、桜内氏と私ども有志とは、ときどき朝めし会を持っておるような状況でございまして、友情と理想と平和に関しては、与野党ときどき話し合うことが必要であると思っておるわけでございます。そういう気持ちでおりますから、どうぞ外務大臣も、国際緊張もなにですけれども、外務委員会における国内緊張はなるべく少なくいたしまして、野党の言うことの中からも、理に合ったこと、情に沿うたことがあったならば、やはりできるだけ聞き届けてやる、そして、与党の中のがんこ派の諸君が多少暴れましても、そうしたのでは野党の立つべき瀬もないではないか……
  141. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 帆足委員に申し上げますが、外務大臣には参議院の本会議から御催促が来ておりますので…。
  142. 帆足計

    ○帆足委員 そういうことで、ひとつ前向きの姿勢で解決していただきたい。  いずれ、ケース・バイ・ケースに従いまして、それぞれ専門の議員なり専門家が御相談すると思いますから、きょうは、全面的否定のような御答弁ならばむしろやぶへびですからいただかないほうがけっこうでございますから、前向きのお気持ちだけをいただいて、もう時間がまいりましたから、これで質問を終わりたいと思います。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど貿易関係者の入国問題もございましたのでございますが、北鮮からの入国問題に関する現在のような状態、いつまでも続けていいと私は思っておりません。将来、オリンピック関係者以外につきましても、北鮮よりの入国問題につき再検討を加うべき時期があるものと私は考えます。したがいまして、日韓関係を含む諸般の国際情勢、これとの関係におけるわが国外交上の利害得失等慎重に考慮しながら、いま御指摘の問題につきましては引き続き検討をさせていただきたいと思います。
  144. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後零時三十三分散会