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1964-04-03 第46回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月三日(金曜日)     午前十一時五十七分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 安藤  覺君 理事 椎熊 三郎君    理事 正示啓次郎君 理事 高瀬  傳君    理事 古川 丈吉君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       宇都宮徳馬君    菊池 義郎君       鯨岡 兵輔君    竹内 黎一君       野見山清造君    濱地 文平君       福井  勇君    森下 國雄君       赤松  勇君    田原 春次君       中嶋 英夫君    平岡忠次郎君       松井  誠君    松平 忠久君       山本 幸一君    永末 英一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)      小川清四郎君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局中国         課長)     原 富士男君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    鈴木 秀雄君         大蔵事務官         (為替局資金課         長)      下条進一郎君         大蔵事務官         (為替局外資課         長)      堀  太郎君         大蔵事務官         (為替局投資第         一課長)    荒川  健夫         専  門  員 豊田  薫君     ――――――――――――― 四月三日  委員赤松勇君、黒田寿男君及び平岡忠次郎君辞  任につき、その補欠として松井政吉君、松平忠  久君及び中嶋英夫君が議長指名委員選任  された。 同日  委員中嶋英夫君、松井政吉君及び松平忠久君辞  任につき、その補欠として平岡忠次郎君、赤松  勇君及び松井誠君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員松井誠君辞任につき、その補欠として黒田  寿男君が議長指名委員選任された。     ――――――――――――― 四月一日  在日朝鮮公民の祖国との往来実現に関する陳情  書  (第二九五号)  同  (第三六七号)  同  (第三六八号)  同  (第三  六九号)  同  (第三七〇号)  同  (第三七一号)  同(第四一二号)  同(  第四一三号)  同  (第四一四号)  同(第  四一五号)  同(  第四一六号)  同(  第四一七号)  同(第四一八号)  同(第四一九号)  同(  第四二〇号)  同(第四二一号)  同(第四二二  号)  同外百四十一件  (第四二三号)  同(第四五八号)  同  (第四五九号)  同  (第四六〇  号)  同(第四六一号)  同(  第四六二号)  同(第  四六三号)  同(第  四六四号)  同  (第四六五号)  同外四十三件  (第四六六号)  F一〇五D戦闘爆撃機横田基地移駐に関する  陳情書(第二九七  号)  沖縄の施政権返還等に関する陳情書  (第三六六号)  F一〇五D戦闘爆撃機横田基地移駐反対に関  する陳情書  (第  四五五号)  米原子力潜水艦日本寄港及びF一〇五D戦闘  爆撃機配置反対に関する陳情書  (第四五六号)  日韓会談即時打切り等に関する陳情書  (第四五七号)  日中国交正常化に関する陳情書  (第四六七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  経済協力開発機構条約締結について承認を求  めるの件(条約第一号)  道路交通に関する条約締結について承認を求  めるの件(条約第一四号)(予)  自家用自動車の一時輸入に関する通関条約の締  結について承認を求める  の件(条約第一五号)(予)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。山本幸一君。
  3. 山本幸一

    山本幸一委員 委員長法務大臣は来ませんか。
  4. 臼井莊一

    臼井委員長 法務大臣は一時ごろまでちょっとむずかしいと思います。小川入管局長原中国課長藤崎条約局長が来ております。
  5. 山本幸一

    山本幸一委員 それでは、私、実は、きょう御質問申し上げようとしていることは、大平外務大臣はよく御承知だけれども、四月九日に大阪市において国際見本市があるわけです。これに対して北朝鮮の商社代表が三名入国査証手続をいたしております。したがって、私はこのことについて主としてお尋ねをするわけですが、その前に、簡単ですけれども、この一両日問題の、南漢宸さん一行のうち呉学文氏が入国拒否されておりますから、このことについて少し外務大臣並びに法務省の皆さんにお尋ねをいたしたいと思うわけです。  これは、私が言うまでもなく、呉学文氏は、今度の見本市への参加に際して、南漢宸氏団長とする一行の一人です。ところが、昨日の新聞によると、政府は、経済閣僚会議において、そのうち呉学文に関しては入国を認めない、こういうことを明らかにされたわけですが、一体どういう理由でお認めにならぬのか、この際ひとつその理由を詳細に御説明願いたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国に対する外国人入国につきましては、定立した国際慣行に従いまして、わが国判断で処置いたしておるわけでございます。いまお尋ね呉学文氏に対する措置でございまするが、同氏は過去におきまして日本入国された経緯がございますが、その場合の言動わが国の基本的な外交政策あるいは現政府に対する批判等から見まして適当でないと判断いたしまして、この入国はお断わりをいたしましょう、こういうように政府は考えて、そのように、この方を除く以外の方につきまして査証を交付するように、香港のほうの官憲に処置させたわけでございます。
  7. 山本幸一

    山本幸一委員 そうすると、大平さん、あれですか、過去に呉学文さんがたびたび入国されたその際に外交上好ましからざる言動をしておられる、したがって、それはわが国外交基本方針基本政策に反する、だから今度はお断わりしたのだという御答弁ですが、一体呉学文さんはどういう発言をされたのですか。過去にどういう発言をなすったのですか。それを承りたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもといたしましては、同氏日本に来られた場合の御発言といたしまして、先ほど申しましたように、安保体制という基本的なわが国外交政策、あるいは現内閣の対米英従属というような点についてきびしく批判されたという事実を承っておるわけでございます。これは同氏入国目的から逸脱いたしておる言動でございますので、去年同氏から日本入国いたしたいという希望がありましたときもお断わり申し上げたわけでございまして、その後、今回また御申請がありましたが、断わるのが至当だと思って断わったわけです。
  9. 山本幸一

    山本幸一委員 大平さん、私もっと具体的に聞いているのですがね。いわゆる入国目的に反するからお断わりしたのだというあなたの御答弁ですが、しからば、一体、入国目的に反するような安保批判なりあるいは日本政府批判したその内容はどういう内容なんですか。これは聞いておきませんと、将来やはり各国の入国者にもそれぞれ影響のあることですから、それで私はお尋ねしているのです。安保でどういうことを批判したのか、また現政府をどのように批判したのか、それが一体現政府外交政策とどう反するか、そういう点を少し聞かせてもらいたいと思います。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、入国を認めるか認めないか、これは、国際慣行といたしまして、入国を認否をする国の裁量になっておるわけでございます。同時に、その理由とするところは何であるかということを申し上げなければならぬという慣行ではないわけでございまして、普通一般に、こういう事実がありましたからということを具体的に申し上げるというようなことは、国際慣例上あまりいたしていないわけでございます。全然そういうことをおっしゃらない国もあるわけでございます。私どもといたしましては、入国目的を逸脱した言動があったということを承りましたので、それでは御遠慮いただこうというように考えておるという以上のことを、一々の具体的事実を申し上げるということはいかがかと思っておるわけです。
  11. 山本幸一

    山本幸一委員 まあ、あなたのお話だと、入国目的に反する言動報告を受けた、さらに、入国の判定はその国の政府にあるのだ、したがって、自分たち判断では、入国を好ましくないと思う、こういう御答弁です。私は、それ以上、それではどこでどういうことを言ったのか、またはどれが日本基本外交政策に相反したのか、そのことをくどく聞こうとは思いませんが、少なくとも、今度の入国に際しては、おたくのほうの元総理石橋さんが法務大臣に会われて、身元について保証をする、こういうことまで言われておるわけですね。これは事実ですね。身元まで保証すると石橋さんが申し込まれた、これは事実ですか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように承知いたしております。
  13. 山本幸一

    山本幸一委員 そうすると、石橋さんの保証でも信用できない、こういうことになりますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいままで、中共方々日本に来られる場合、身元を引き受ける方々がそのような保証をずっとしてきたわけであります。いま現にそういう慣行でいたしておるわけでございまして、そういうもとでその目的をはずしたというような言動が見られたわけでございますので、政府といたしましては、この方に関する限りは御遠慮いただくのが適当だ、そう判断いたしたわけです。
  15. 山本幸一

    山本幸一委員 いま外務大臣の言われたように、それぞれやはりスポンサーがいろいろ保証をしていることを私は聞いております。聞いておりますが、さらにそれに加えて、新たに石橋さんみずからが保証しようとおっしゃる。しかも、石橋さんは、自民党の党員であり、元総理大臣なんですが、そういう人までさらに加わって保証している。それは呉学文だけでなく石橋個人をも信用することができぬ、こういうことでけられたんですか、こうお尋ねするわけです。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 石橋総理でございますからどうという、石橋さんの身元のお引き受けに対しましてとやかく申し上げるものではないわけでございますが、従来身元引き受け人にちゃんと御誓約をいただいて御入国をいただいておったわけでございまして、そういうたてまえのもとで逸脱行為があったという報告を受けたわけでございます。それで、去年の八月には御入国をお断わりした経緯があるわけでございます。それで、その後何が月かたっておりますので、そして、あなたがいま御指摘されたように、石橋総理が、責任を持とう、こういう態度に出られたという事情も新しい事実としてあるわけでございます。したがって、私ども気持ちといたしましては、この際その間の時間の経過、そういう石橋さんの気持ちという点も十分考慮いたしたわけでございまするが、去年私どものほうで入国をお断わりした以後、従来のたてまえを変えなければならぬ、変えるべきだという積極的な理由に乏しいと判断いたしたわけです。
  17. 山本幸一

    山本幸一委員 どうも大平さんの説明は何を言うのだかしまいにはわからなくなってしまうのだが、大平さん、日本外交基本政策に反する、いわば日本政府を誹謗したり、あるいは安保条約批判を加えて、したがって日本政策に反するのだ、そういうことをおそれて呉学文入国拒否した、——呉学文さん一人がかりに入国されて、それほどおそろしいのですか。かりにそういうことを言ったとしたなら、おそろしいことですか、どうですか。それはなぜ発言するかというと、たとえば、別の立場で言えば、あなた方の言う自由主義国家群の諸君でも来てやはりいろいろ批判しているし、私ども新聞でときどき聞きます。特にアメリカなんかは、むしろ自民党政府を喜ばせるような批判をしておるか知らぬが、その反面やはり社会党の考え方政策には反対批判をし、場合によれば圧力もかけてきておる。これだって私は日本政党についての批判だと思います。批判本質に至っては同じことだ。他国の者が日本政党なり政治なりにいろいろ発言するとすれば、あなた方のことばを借りるならば、いわゆる内政干渉。したがって、その点は立場は違うけれども本質には変わりないと私は思う。そういうときに、呉学文だけをなぜそんなにおそれなければならないのか、私は不思議でしょうがない。率直に言うと、呉学文から批判されても一向に恥ずかしくない政治をあなた方がやっておられれば、何もこわくないと思うのです。なぜおそれるのか不思議なんですが、それを聞かしてもらいたいと思います。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 山本さんの言われる意味呉学文氏の入国をおそれているということでは決してないのでございます。これは一つ国際礼譲の問題でございまして、たとえば、お互い国交を持っておる友好国でございましても、大使を交換しようという場合にアグレマンを拒否することもあるのです。これは何もその個人拒否するということが友好関係を阻害することではないわけでございます。問題は、国際礼譲として、お互いの国の交わり、関係の取り結びにおきまして、ちゃんとした一つ折り目をつけていこうじゃないか、私どもの希望するところは、中共政権日本とは国交はございませんけれども、事実上いろいろの関係があり、人の交流があり、物の交流があるわけでございまして、こいねがわくは、お互い立場を尊重し、お互いのメンツを尊重し、ちゃんとした折り目の上に立ってそういう関係が打ち立てられていくことが望ましいわけでございます。したがって、日本に入られた方が、日本の最も基本的な政策について、あるいは現内閣につきまして、あなた方野党がどんどん攻撃されることは、これは国内政策をつくり出す上におきましての道程におきまして果敢な論戦があることは当然でございますが、他国方々がその国の政府につきまして不当な論評をされるというようなことは、私は国際礼譲に反すると思うのでございます。かりに、逆に、日本の方が北京に参りまして、毛沢東政権についてそんなことを言われる方はないであろうと私は思うのでございます。国際礼譲の問題といたしまして、日中関係というものは、お互い立場を尊重した上で、礼譲をもってやってまいることが両者の将来のためになると私は思うのでございまして、過去にそういうことがある方は御遠慮いただきたいと申し上げることは、決して日中の友好関係の阻害とかなんとかいうのじゃなく、また、その方が来られることがこわいというわけでも何でもなく、これは折り目正しい両国関係を取り結んでいく場合の当然の礼儀じゃないかということでございまして、これはもう国際的に定立された関係でございます。決してこの方がお入りになることがこわいとかなんとかいう意味でそういう措置をとっているわけではございません。
  19. 山本幸一

    山本幸一委員 大平さん、呉学文拒否しても日中友好関係に決してひびが入らないと思う、こういう明確な答弁をされたのですが、私は、呉学文さんの入国を否拒せられた先ほどからお尋ねしておる理由についてはあなた方も明確におっしゃらぬのですから、したがって、これはどちらがほんとうかわからぬ。だから、仮定的に申し上げたので、呉学文入国をそれほどおそれる必要はないじゃないかと仮定的に申し上げたのだが、しかし、今度の拒否によって、少なくとも私ども新聞等を通じて拝見すると、南漢宸団というものはあるいは訪日不可能になるかもしれない、こういうことを南団長みずからが新聞を通じて談話を発表してみえる。私は、あなたの言う、日中関係の将来の友好に傷をつけるものでないという断定はできぬと思うのです。場合によると憂慮すべき事態になるかもしれない。そういうことをあなた方は十分御検討の上、断じて友好関係を傷つけるものでないと確信しておやりになったのですか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 お互い政権に対して礼譲をもっておつき合いするということが、私は友好関係を増進していく上において最も根本的なことと思うのであります。逆に、呉学文さんの御入国についてお断わりする、けじめをちゃんとつけていくということが、私は、日中関係の将来にとりまして、友好関係の増進に役立つものと思います。
  21. 山本幸一

    山本幸一委員 私は新聞で散見したのですが、これは法務大臣談話だと記憶しておりますけれども呉学文入国すると、この問題の状況いかんによっては第二の周鴻慶事件を起こすおそれがあるというようなことを言っておりますが、それはどういう意味ですか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 それは私は一向関知していないことでございまして、私どもは、山本さんも御承知のとおり、査証を与えるというのは、個人個人に与えているわけでございます。その人の入国を認めるのが適当かどうかということは、日本主権国家として判断するわけでございまして、この問題はもう呉学文さんだけの問題でございまして、それ以上のものでもないし、以下のものでもないと考えているので、周鴻慶問題とは全然関係ございません。
  23. 山本幸一

    山本幸一委員 大平さん、私はあなたの本心じゃないような気がするんだ。これはうがった見方かもしらぬけれども、実は、今度の問題については、法務大臣一人ががりがりに、例によってがんこを売りものにしている人ですから、それでがんばった、その結果あなた方はその意見に屈服した、こう承っております。いまのあなたの説明本心とは私は思っておらぬ。あなたのような理解力のある人が、呉学文一人だけを拒否することによって何か日本利益をそこなわされないというような考え方を、それほど大平さんが持っているとは思わぬのですが、この意見はやはり法務大臣のが強かったのでしょう。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 私が終始念願いたしておりますことは、承認国であろうと未承認国であろうと、国交を持っておろうと持っておるまいと、外交を預かる私といたしましては、常に一番第一に考えなければならぬことは礼儀だと思っております。それから誠意だと思っておるわけでございます。この問題につきましては、日中関係というものの展望に立ちまして、日中関係を将来打ち立てていく上におきまして一番基本的なお互い礼譲気持ちでその点は御注意いただきたいということを申し上げることは、これは非礼どころじゃない、私は先方も十分御理解いただけるのじゃないかと思うわけでございます。私がだれかにそそのかされてこう申し上げているわけじゃなくして、私は、正真正銘そのことを朝から晩まで考えて外交に当たっておるわけでございます。
  25. 臼井莊一

    臼井委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。松本七郎君。
  26. 松本七郎

    松本委員 せっかくの山本さんの外務大臣に対する理解ある質問なのですが、池田内閣中国に対して前向きだとしきりに宣伝しておったけれども、どうも最近の動きを見ていると決して前向きじゃない。それがはたして池田さんなり大平さんの本心だろうかというのは、これは国民一般が最近疑いを持っていますよ。それから、そういう政府のいままで言ってきた公約とか宣伝ばかりでなしに、やはり、いまの段階では、ビニロン・プラントの延べ払いも少しは前進しようという時期だし、やはり日中両国の人民は相互に理解を深めたいという空気が最近両方で高まっていると思うのです。これは、私は、幾らども反対党政府であっても、こういう空気を十分にこれから生かしていくということがどれだけ日本の将来の利益になるか、これは一般国民と同時に私どもも大きな関心を持って、ただむやみやたらと政府を攻撃しようというような気持ちは私どもは毛頭持っていないのです。  そこで、いまも山本さんからいろいろ御質問があったのに対する御答弁でも、国際慣行に基づいてわが国判断でこれはきめるのだということで、基本的な立場はそうでしょう。これは当然のことです。しかし、それをそういう立場で処置をしていくについても、担当大臣である法務大臣が自分かってにやれるものではない。幾ら国際慣行といったって、やはり国内法に基づいてその範囲内でやるわけですから。これはいままでもしょっちゅう入国の問題で外務委員会質疑応答の中で政府が再三再四言ってきたことです。これは出入国管理令に基づいてやるのでしょう。今度の呉学文さんの入国拒否も当然出入国管理令に基づいて処置したのだろうと思いますが、一体何条の何項を法的根拠にしてこれを処置したのですか。それをまず外務大臣から伺いたい。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 出入国管理令というのは、水ぎわで日本に入れるか入れないか、そこから発動するわけでございまして、いまの呉学文さんの問題は、まだ出入国管理令段階には至っておりません。
  28. 松本七郎

    松本委員 それなら、その前にさっき言われたようなもろもろの理由をあげて拒否したということになりますから、なおさら、さっき言われたところの具体的な事実というものを、これを決定される前には当然検討されただろうと思うのです。あなたのさっきの答弁では、過去に入国したときのいろいろの言動について承っておる、あるいは報告を聞いておる、こういうあいまいな御説明なんですが、これは、正式に入国拒否をきめるにあたって、何年のいつ呉学文さんがどこでどういう状況のもとにどういう発言をしたかという記録を一つ一つ検討されてこの結論を出されたのですか、どうですか。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 法律論といたしましては、私いま松本さんに申し上げたとおり、入国管理令というのは、本人がかりに羽田に着きまして、それを入国を認めるか認めないかで有権的に働く法律なんでございます。それで、かりに外務省のほうでビザを発給いたしておる者でも、入国管理令の趣旨に反する者はそこで拒否できるたてまえになっておるのです。ところが、それが外務省法務省の見解がしょっちゅう違うということになりますと、日本入国される外国方々に御迷惑をかけますので、実際の手順といたしましては、外務省法務省と打ち合わせまして、それでそごのないようにいたしておるわけでございます。したがって、私どもといたしましては、入国管理当局の御意見というようなものもよく伺って判断しなければならぬ、そういうわけで、先ほど申しましたように、そういう御報告を私どもは受けておるわけでございます。
  30. 松本七郎

    松本委員 そこで、本来はだれでも入れる。しかし、人によっては入れてはぐあいの悪い場合がある。だから、出入国管理令である程度制限できる規定をつくっておるわけでしょう。しかし、それだけではいかぬというので、いま法務当局外務省との間で、国交未回復の国民入国についてはどうするかというようなことが慣例的にいままでもずっとやられてきた。それに基づいて、呉学文さんの場合は過去入国したときに具体的な行動が好ましくない、そういう結論なんですね、さっきも法務大臣説明していたように。それについての報告を、あなた法務当局から受けたと言われるけれども、その報告は、いつどういう状況で具体的にどういう発言をした、あるいは行動をしたからいけないのだ、そういう具体的な資料も提出を求めて検討されたのですか、そう聞いておるのです。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 法務当局のほうから事実を伺っております。ただ、先ほど山本さんにも申し上げたとおり、それはどういう事実であるか、いつどこでどうしたのだというようなことを、まあ申し上げないのが通例でございますので、御遠慮しておるということでございます。
  32. 松本七郎

    松本委員 それは外務大臣は知っているのですか知らないのですか。法務大臣から、ただ、これは思わしくないのだ、過去の入国のときの言動が当時の誓約と違反している、だからこれはやめたほうがいい、こういう報告だけを受けているのか、あるいは、その根拠になっている具体的な事実を資料としてちゃんと提出されて、それを検討されたのかと聞いておるのです。
  33. 大平正芳

    大平国務大臣 ええ、そういう事実は法務省のほうから御連絡を受けております。
  34. 松本七郎

    松本委員 そうすると、そういう事実をもとにして、そしてさらに入国拒否した場合の政治的影響とかそういうことも一切考慮した上で内閣の責任できめた、こういうことですか。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございます。   〔委員長退席、安藤委員長代理着席〕
  36. 松本七郎

    松本委員 そうなると、いかに国交未回復の国の関係とはいえ、へたをするとでっち上げでこれを好ましくない者と判定して入国拒否するというような事態になりかねないのです。だから、これは、国会としても、これからの日中の関係というものは非常に大事な時期ですから、特に中国との関係については慎重に検討する必要がある。はたして政府のとった処置の根拠になっておる呉学文さんの過去の言動というものを具体的にどれだけはっきり政府はつかんでいるのか、その具体的につかんだ事実がはたして拒否するに値するものであるかどうかということは、私は最高の機関である国会がそういう具体的な事実を中心に検討する必要があると思うのです。一担当の法務大臣報告を聞いて、ああそうですか、それじゃ今回はやめておきましょう、こんな簡単に処置して済むものではないと私は思う。特に、大平外務大臣は、日中については相当積極的な意欲を持っておると推察できるような発言方々でありました。ワシントンポストの編集主幹に対して、あなたは、アメリカもこれから中国と特に新聞記者の交流をやることはいいじゃないか、場合によってはひとつ日本が橋渡しをしてもいいというような積極的な意見さえ述べている。私は呉学文さんという人をよく知っております。日本人でもあの方に世話になった人がたくさんいます。人柄は温厚篤実な、ほんとうにりっぱな人です。日本に来たときは、飲み屋に行って気楽に酒を飲みながら談笑のうちに政府批判をすることもあるかもしれない。だから、どういう環境でどういうことを言ったのか、それを具体的に明らかにしてもらわないと、私どもは、法務大臣からそういう報告がありましたから好ましくないという結論を出しましたでは、国会としては承知できない。だから、それはどうしても内容的に言っても公にできないのだということがあれば、秘密会でもけっこうですよ。やはりこれはざっくばらんにそういう事実を言っていただかなければわからない。先方さんだって疑心暗鬼を生みますよ。呉学文さんとしても、事実が違っていれば黙っていられないでしょう。それが事実かどうかをまずはっきりさせなければならない。そして、それが日本政府に非常に大きなあれを与えたということになれば、呉学文さんとしても、ははあこのくらいのことで日本政府がそんなに神経をとがらすなら、これからもう少し気をつけなければならぬ、両国の将来のためにならぬなということになってくるでしょう。事実を明らかにしないで、ただおまえさんの言動はけしからぬ、これではほんとうの友だちづき合いのやり方、ではないと思う。だから、少なくとも国会でもう少し具体的な事実を発表して、話し合いをする機会をつくりたいと思うのです。それは委員長とも相談しますが、やはり政府がそういう態度に出る国会尊重のかまえというもりが第一に必要だと思うのです。大臣の御意見を伺っておきたい。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 国際慣例といたしまして、どういう理由で、どういう事実を踏まえて、どういう処理をしたというようなことを明確にすることは、普通しない慣例になっておるわけでございまして、そういうことを政府のほうで公開するということは穏当でないと思います。ただ、精一ぱい申し上げたのは、現政府に対する御批判あるいは安保体制に対する御批判というようなことは、日本政権にとりましては非常に重大な問題でございますので、そういったことにつきましてはお互いに相手の立場を尊重して、そして礼儀をもっておつき合いをするというようにありたいと思うわけでございます。私はそのことが日中関係の将来を律する上において非常に大事だと思っておるわけでございまして、それは中共のほうも御理解いただけるものと思います。そのことは日中関係のために非常に大事なことだと私は思っておるのでございます。
  38. 安藤覺

    ○安藤委員長代理 関連質問を許します。川上貫一君。
  39. 川上貫一

    ○川上委員 私は関連でありますが、いま松本委員質問されたことは非常に重要な件だと思います。そこで、いま大平さんはああいう答弁をなさいましたが、これは外務省法務省かは別にして、文書をつくっておる。その文書は、ペーパーで約四枚、呉学文がこのようなことを言うたという材料がある。このものを人に見せておる。だれに見せたかということを言えと言われたら言いますよ。あなたは、こういうものはあるのはあるけれども、発表してはいけないとおっしゃいます。ほかの人に見せたものが国会に見せられませんか。だれに見せたかということを言えということになれば、それは申し上げます。一人じゃない、多くの人に見せておる。この事実はわれわれははっきり知っておる。これをこの国会で明らかにしなければ、国会を通じても、あるいは政府の真意のあるところも討議することができない。穏当でない人間だ、そうですかというわけには国会としてはいかない。この点については、松本委員質問は全く正しい。私の言いたいのは、これは重要だからというようなことを外務大臣も言われますが、なぜそれならば人に見せておるのか。それもちょろっと見せたのではありません。こうこうこういう事情でありますから呉学文は入れられませんと言うて見せておる。これを国会になぜ出せませんか。われわれは、これを見なければ、外務大臣はそう言われますけれども、これがほんとうに正しいかどうかということを判断することはできない。これを要求します。ちゃんとできておるのです。ペーパー四枚ほどです。事実を明らかにして政府はすみやかにこれをここに出されるかどうか。そうしなければ審議にも討議にもならない。どうしますか。私の関連はこれだけであります。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 いま川上先生のあげられたことは私存じないことでございます。よく調べてみます。
  41. 安藤覺

    ○安藤委員長代理 山本幸一君。
  42. 山本幸一

    山本幸一委員 それでは、大平さんとこの問題でいつまでもやってもしようがないのですが、私も、冒頭申し上げたように、あまりくどいから二、三問にしたのですが、あなたは、国際外交慣行上そういうものは事実を発表することは非礼に当たる、こういうことですが、私の見解でいけば、具体的事実があるとするならば、それをはっきり示したほうが非礼に当たらないのではないか、それを隠して、ただ法務省からの報告を承ったという抽象論、いわば安保批判した、現政府批判したという抽象論だけで入国拒否することのほうがむしろ非礼だと思うのです。そういう意味において、私はきょうとは言いませんけれども、少なくとも次の機会までには、やはり、入国拒否したと称する呉学文の過去の言動、それはいつどこでやったのか、それがまたどういう内容なのか、それをひとつ具体的に示してもらえるかどうか。私は強く要求するのですけれども、きょうとは言いませんよ。示せるかどうか。示す方法についてはいろいろ考えましょう。示す方法はまた相談に乗りますが、示されるかどうか、これだけ承っておきます。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 実は、入国拒否というようなことは、外交事務の上ではしょっちゅうあることでございます。それは完全に政府の主権に基づいた判断でやっておるわけで、これは定立した国際慣行でございます。それから、先ほど申し上げましたとおり、それにつきまして事実も理由も全然申さない国もあります。それから、私どもといたしまして、それをどのように国会に対して申し上げるべきか、一般世間に対して申し上げるかということにつきまして、特別の基準も何もないわけでございます。特定の個人の問題でございます。こいねがわくは、これは政府の認定ということでやっておるわけでございまして、御信頼をいただきたいと思うのでございますが、それをたってどうしよう、こう言われることでございますので、私はやるともやらないとも申し上げられませんが、もう少し検討さしてもらいましょう。お約束はできませんけれども
  44. 山本幸一

    山本幸一委員 あと一問でやめます。それをぜひ私どもに示してもらう機会を早急につくってもらいたい。示し方については相談に乗ります。私はなぜそういうことを言うかというと、それはなるほど単にこれだけではない、他にケースがあるんだとあなたは先ほどからおっしゃるが、私が聞いておるのは、あなたとは言わぬけれども、少なくとも代表的には賀屋さんのごとく、共産主義諸国の頭の共の字だけでもしゃくにさわる、虫が好かぬ、そういう人々の考え方で多くはそれらの国について拒否されておるわけなんですね。あんまり他に私は聞いていませんよ。それはないとは言いませんよ。あるには違いないが、聞いておりません。したがって、私どもは、少なくとも国会もこの問題を取り上げた限りにおいては、やはり国会議員としてその具体的な事実だけをしっかり聞いて、せめても私どもが納得できる線を発見したい、これが私どもの強い要求なんです。   〔安藤委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、ぜひひとつこれはそういう機会をおつくりいただきたい。このやり方については、それぞれ理事会で御相談願うなり、また私どももその方法についてはいろいろ相談に乗る用意があります。  そこで、私は、この問題はこの程度にしておきます。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 関連。
  46. 臼井莊一

    臼井委員長 穂積君。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 関連でございますから、いまの呉学文の問題について一括してお尋ねいたしますから、漏れなくお答えをいただきたいと思います。  まず第一に、外務大臣に御注意申し上げますが、呉学文発言と称せられるものは、日本外交政策について、その部分の特に中国に対して影響の甚大な部分について中国側の意見を言ったにすぎない。こういうことは当然承り得ることです。たとえば、われわれが北京へ参りまして、中ソ同盟条約の中の対日軍事条項というものは好ましくない、だからこれはわが国の今後の外交路線と話し合いの中で修正または削除してもらいたいという意見を、われわれは堂々と述べています。それに対して向こうは、わがほうの基本的な方針、外交路線に反対する意見であるから困る、お帰りなさい、もうあなたは二度と入れませんよなどとは絶対に言ってませんよ。内政の問題じゃないのです。中国に直接重大な関係のある安保条約というもの、その部分について、日米の協力の問題だけじゃなく、外交条約中国に直接重大な関係のある部分について中国側の希望的意見な言ったのが何が悪いのですか。何が内政干渉ですか。われわれも外へ行って言っているんですよ。日本の議員も、外国へ行ったときに、われわれ日本外交路線は、自民党自民党立場、社会党は社会党の立場意見を言っておる。それを言わないで、それで何の一体友好がありましょうか。何の訪問の価値がありましょうか。いまの山本委員の要求によって秘密会でもけっこうですから、事実をぜひ明らかにしてもらいたい。しかも、やったのは外務省の調査じゃないでしょう。このごろの公安調査庁なんというものは、われわれの会合にも尾行をつけて、しかも昔の特高と同じなんだ。あることばじりだけをメモして、好ましくないことを言った、誹謗したと言う。前後の脈絡がない。そんなものを外務大臣が信用して、それを呉学文氏のこの時期における——今度の呉学文立場というのは、昨年の原水禁の一員としての立場とは違うのですよ。南漢宸の責任における使節団の団員ですよ。そういう判断を誤るなんということは、もう外務大臣として、外務省として失格だと思うのです。最近の公安調査庁の調査と称するものが、いかにも公平・公正で権威のあるかのごとくあなたは言われるけれども、われわれは信用できない。そういう意味で私は聞くのです。だから、外交官に対してアグレマンを拒否した場合に、そういうことを対外的に発表しないのが国際慣例であることはわれわれも心得ております。しかし、国内の行政の取り扱いとして、最近公安調査庁の調査と称するものは、もう目に余るものがありますから、先ほど松本委員の言われたように、場合によってはでっち上げすら可能である。そういう意味で、一体どこでどういうことを言ったのか。われわれも全部心得ております。一昨々年の三十六年の呉学文の会合は、どこでどういう会合が行なわれた、どういう規模の程度のものであったということは、われわれのほうにも全部記録がありますから、それと符合するかどうか、明らかにしていただきたい。これは内政問題です。だから、いまのことについて、私は希望を申し述べて、考慮しましょうということですから、御考慮された上の御回答を期待いたしております。  そこで、私が申し上げたいのは、それなら保証人がついているでしょう。受け入れる団体が保証書を入れている。そのときに、われわれの聞いているところでは、公安調査庁が調べたのは三十六年に各地において数回にわたりその好ましからざる発言をしていると言っているが、そうであるなら、なぜ第一回のときにこの保証人に対して注意をしませんか。注意をしましたかどうか、それを聞きたい。ほんとうに友好的なら、あなたはお客さんとして来たんだ、だから、あれは言い過ぎですから、今後呉学文さん注意してもらいたいということを、保証人を通じて言われるのが、友好的な儀礼じゃないでしょうか。そのことをやられたかどうか、法務省お尋ねをいたします。その事実をお尋ねするのです。これが第一点です。  第二点は、特にあなたと池田さんが、この呉学文拒否することによってどういう結果が生ずるという、その見通しなり判断をされた上で拒否を了解されましたかどうか。これは賀屋法務大臣の所管であります。おそらくは、賀屋法務大臣は、昨日石橋さんに会われる前に、すでにあなたやそれから総理その他関係大臣には了解を取られたと思うのです。了解なしにやったとは思いません。そのときに、池田さんやあなた、特にあなたが、これをやれば日中のいまの外交関係にどういう結果、影響を持ち来たらすかということを御判断になって拒否されましたか、これを伺いたいのです。われわれはちょっと参考のためにそのことについて申し上げますと、これは賀屋さんもそう言うのですが、昨年呉学文さんは原水禁大会に来ると言ったのをお断わりした。ところが、中国の諸君は、彼を香港に残して、ほかは入ってきた。だから、これは個人の問題だ、今度もそうだと言う。あなたも、そういうことを報告を聞いておられるから、それであるかのごとき御発言がさっきありましたね、昨年も断わっていると。昨年のときとことしとは違うのです。ことしは、実は、日本側の団体から向こうを招待して、そして南漢宸さんどうぞおいでくださいということで、実はそれじゃお伺いいたしましょうというので、南漢宸使節の団の編成をして、これは非常にりっぱな団です。だから、これは御承知でしょう。団の名簿を外務省御検討になっておられなきゃ教えてあげますけれども、これは非常に権威を持った、好意に満ちた団の編成になっているわけです。その一員に対してことでけちをつけるということは、南漢宸を信用しない、南漢宸使節団全体に対する非友好的な態度である、こういうことになるわけです。したがって、呉学文一人を置いて南漢宸その他十一人が入ってくるというようなことを一体お考えになってこういう措置をおとりになったかどうか。私はそういうことはあり得ないと思っているのです。のみならず、この十日からの見本市が問題になりましょう。この十五日からは広州において交易会が始まります。この交易会もどうなるかわからぬでしょう。あなたのほうの党で、しかも池田さんに最も近いという松村さんがこの一両日中に北京に行こうと言っておられる。こういうことで行けますか。あなたはそういうもろもろのどういう結果が起きるかということに対しての外交上の御判断の上でこういうことをやり、そのはね返りというものを考えてやったのか、お尋ねいたします。  第二問は何かというと、北京から三十日に日本の受け入れ団体に対して相当強い電報が来ております。昨日の朝もまた同様の電話がかかってきております。この文章は関係団体から法務大臣並びに外務省にお届けしておるはずですが、これは大臣はごらんになりましたか。そういたしますと、私がいま申しましたように、呉学文入国拒否することは外交上における重大な障害になってくる。日中問題前進のために、その責任をあなたはおとりになる覚悟の上で、いまでもこれを拒否し続けるつもりであるかどうか。あるいは、そういうような情勢になるならば、ここでよく話し合いの上で、そして、今後好ましからぬ者は好ましからぬと言いますから、そういう点についてはひとつ友好的にやってもらいたいということで、もっと友好かつ柔軟な態度をとるべきだと私は思うのです。ここで長崎国旗事件以上のような障害を池田内閣大平外務大臣の手によって引き起こさしめるということを、私はあなたのためにも日本中国とのためにも好ましくないと思うのです。特に、これを断わる理由については、これから先に明らかにしようということになっておる。それから、保証人を入れさしてやっておるというが、保証人に対して、第一回に好ましからぬと思ったときに注意したかどうか。それから、これからこういう問題に対して大きな影響が起きるわけですが、それに対しても、どんな影響が起きてもかまわぬ、日中関係に非常な障害になってもかまわぬ、こういう態度でお進めになるつもりであるか。その結果に対する外交上の責任についてあなたにお尋ねをするわけですから、そういう見通しに立っておったか、そういう事態が起きてもかまわぬといって、今後それを頑強に推し進められるつもりであるかどうか、検討の余地がないかどうか、そのことをお尋ねいたします。  関連ですからこれでやめますから、一括して漏れなくお答えをいただきたい。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 私に対する御質疑の部分についてお答えいたします。  私どもといたしましては、先ほど山本先生にもお答え申し上げましたとおり、日中の真の友好の増進のために、お互い礼譲を踏まえた上で進めてまいりたいと念願いたしておるわけでございまして、呉学文氏につきましては、私どもとしては、この際御遠慮願うということが、その意味において適切であると判断いたしたわけでございます。  第二点として、これはあくまで呉学文個人の問題でございまして、南漢宸氏団長とする使節団の問題としては考えていないわけでございます。査証制度そのものは、もう穂積さんも御承知のとおり、個人として取り扱っておるわけでございまして、これはあくまでも個人の問題として処理をいたさなければならぬ仕組みに相なっておるわけでございます。  それから、これによって起こる結果がどうか、どういう判断かということでございますが、これによって起こる事態というようなことを私は別に考えておりません。これはきわめてあたりまえなことをお願いいたしておるわけでございますので、これがどういう事態になりますかということを私は別に考えておりません。しかし、だからといって、私は外務大臣であることに間違いないわけでございますから、この問題ばかりでなく、どの問題につきましても、外務大臣として責任ある立場で責任ある行動をとっておるつもりでございます。  それから、いま御指摘の電報は、宿谷さんでしたか、お届けいただいて拝見いたしました。  いつもあらゆる言動につきまして私は責任を持って行動いたしておるわけでございまして、いま私どもがとっておる方針を変更するつもりは毛頭ございません。
  49. 山本幸一

    山本幸一委員 それじゃ、さっき私が要求したことをぜひ実現するように頼みます。  委員長にもこれはぜひ御配慮願いたいと思います。いずれ理事会で御相談願うことでしょうから。
  50. 臼井莊一

    臼井委員長 ただいまの御要望は、いずれ理事会で相談いたしまして決定いたします。
  51. 山本幸一

    山本幸一委員 そこで、私は冒頭申し上げたように、きょうの質問をしようとする本論の質問をしたいと思います。  これは四月九日から大阪市で大阪国際見本市の主催で開かれるわけですが、これを機会に北朝鮮の貿易代表者が三名入国を希望しておるわけです。それから、同時にまた、先方の希望だけでなく、日本の北朝鮮との関係商社、七つの商社が招待をしたい、さらにまた、国際見本市委員会でも、ぜひ訪日願いたいというので招待を出しております。かいつまんで申し上げますとこういう経過です。  そこで、私どもは、こうした問題をなるべくなら国会等で大上段に取り上げることを避けて、ぜひひとつ政府側、特に法務省側とできる限り話し合いをしてこの問題の結論をつけたいということで、もう一カ月も一カ月半も前から法務大臣法務省側にも要請をし、さらにまた黒金官房長官にもその旨を詳細に説明して要請をしております。あなたにも、これは外務省には行きませんでしたけれども個人的にこの問題は伝えておると記憶しております。そこで、そういう手段を尽くしながら、私は私なりにできるだけひとつ話し合いで片をつけようという努力をしてきました。ところが、依然として何らの明確な回答がない。そこで、先般、日にちは記憶はございませんが、いまから十日ほど前、あるいは十日以上前かもしれませんけれども、いま国家公安委員長になられた当時の外務委員長赤澤君、それから、現法務委員長の濱野君、このお二人にもその経過を御説明申し上げて、いまだに返事がないので、これをこの際ひとつぜひお二人のあっせんで外務、法務の合同理事懇談会でも持ってもらえぬだろうか、そこで私ども法務大臣の御出席を願い、ひざ詰め合わせてとっくり相談をしょう、こういう手配をしたわけです。幸いに両委員長はこの旨を御理解いただいて、いま申し上げたように、十二、三日前だと思うのでありますが、常任委員長次室で両委員会の合同理事懇談会を開いたわけです。その際に、もちろん朝鮮人の帰国、往来保障の問題等も話題になりましたけれども、主として中心になりましたのは、いま申し上げたように貿易の問題です。私はあらゆる努力をしてそういう手配を運んできた。ここで読み上げてみますと、朝鮮側で三人が来たいという皆さんは、団長に朝鮮国際貿易促進委員会の常務委員・書記長呉炳翊君、朝鮮金剛協同貿易商社副社長朴哲胡、それから、朝鮮金剛協同貿易商社機械金属部長康生竜、この三人の、いずれも貿易関係の相当の地位の方ばかりです。そういう経過で、この三人のお話をしてまいりましたけれども、全然ナシのつぶてです。法務大臣のほうの回答もありませんし、官房長官のほうの回答もありませんし、ナシのつぶてで、私は一昨日特にまた官房長官に会って、もう四月九日は目の先だ、数日後に四月九日が迫るので、まごまごしておれませんから、きょうのうちに回答を願いたい、こう申しましたけれども、これまたナシのつぶてです。私は昨年北朝鮮に参りました。そこで貿易問題等についても話し合いをいたしましたけれども、お聞き及びでございましょうが、鉄鉱石三十万トンの契約の促進もいたしましたし、これはおそらく契約はできていると思います。本年はさらに六十万トンの契約が促進せられると伝えられております。これは、言うまでもなく、一昨年いわゆる強制バーター制だとかあるいは決済禁止措置などが解かれて、そうして対朝鮮との貿易取引は年々増加しております。一昨年より昨年、昨年よりことし、本年はおそらく昨年の六、七割を上回る取引額になると私は見ております。それで、これは御承知のように、特に最近の商談の中心が、各種のプラント、それから大型機械、この引き合いが非常にふえてきておるわけです。したがって、金額が毎年のしてきておる。こういう状況で、これらの商談を進めるについては、理屈抜きに、やはり、その機械の特徴、あるいは機械の技術上の問題、あるいは専門的な知識、そういう関係から、両国の人事の交流がなければできません。人事の交流といえば抽象論ですが、少なくとも、両国の技術者、専門家が交互に交流し合ってそれらの知識の開陳をし合わなければ、スムーズな商談が進行できないと思います。外務大臣は、大蔵省にもおられて、将来大蔵大臣になられるといううわさも聞いておりますが、こういうことは知っておられると思うのです。それを全然ナシのつぶてで返事がない。日にちは刻々と迫っておる。一体、外務大臣及び法務省の、私は名前を知りませんが、そこにぞろっとすわっておられる幹部の諸君、こういう大型機械やプラントの取引で技術的な交換や専門的な打ち合わせが必要であるかどうか、それとも、必要なしで、単なる文書の交換や電話でやれるかどうか、これをまず最初に私は承りたいと思います。
  52. 小川清四郎

    ○小川政府委員 ただいま山本先生からのお尋ねでございまして、ナシのつぶてのままになっておるというふうに御質問になっておられますが、この問題につきましては、法務大臣からも検討するように御指示がございましたし、私ども外務省その他と意見の交換と申しますか検討をやっておるのでございますが、ただいままでのところ、確実に決定的な回答を申し上げる段階に至っておりません。ただいまのおことばもございますし、至急検討の結果をまとめまして、あの懇談会の席上に私もおりましたので、両委員長を通して御返事を申し上げたいというふうに考えております。
  53. 山本幸一

    山本幸一委員 いま私が尋ねておるのは、この種の取引には、細目の打ち合わせあるいは技術的な打ち合わせ、それらの専門的な打ち合わせから、人と人の交流がなければならぬと思うが、その必要があるのかどうか、それを聞いておるのです。これはひとつ外務大臣、あなた専門家だから答弁してください。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたの御指摘のような人の交流はあったほうがベターだ、当然だと思います。
  55. 山本幸一

    山本幸一委員 そうすると、外務大臣、その意味において入国の要請は当然だ、こう思うが、いかがですか。いまあなたは、ベターだ、それは必要だと思うと、こうおっしゃったが、それなら、入国の要請も当然じゃないかということになるのですが、その点いかがですか。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 そこがむずかしいところでございまして、その場合に入国問題をどう政府として判断するかという場合に、いろいろな要素をあわせて考慮しなければなりませんし、いま入管局長が御報告申し上げた趣旨も、いろいろな角度から、いま御提示の問題について、そういう御事業、御商売をやられる上におきましての必要もあわせて考慮しながら、その他の要素もあわせて考慮検討いたしておるという段階でございます。
  57. 山本幸一

    山本幸一委員 外務大臣も入管局長も聞いてもらいたいのですが、あなた方、気のきいたお化けの引っ込んだころの回答では困るのですよ。九日ですよ。八日までに入国しなければならぬのですよ。八日までに入国しなければならぬのに、いまだに検討検討では、これはだれも理解しませんよ。それも、突然私どもがこういうことを申し上げたのなら、それは検討ということばもふさわしいかもしれません。しかし、先ほどから私が申し上げておるように、ずっと一月も前から、なるべく国会でこの問題を大上段に取り上げることは好ましくないと思って、あらゆる手を尽くしてきておるのですね。それをいまだにナシのつぶてで、やっと今日国会で取り上げるようになってから検討しますということでは、私ども納得しない。だから、私は、技術あるいは専門的知識の交換のためには当然入国は認めるべきだと思うのです。また、それが日本利益にもなる、もちろんこれは貿易が互恵平等ですから相手方の利益にもなりましょうが、日本利益にもなるんだ、こう私どもは考えておるのです。したがって、もう検討の段階でない。入れるのか入れぬのか、こういう点を私はここではっきりさせてもらいたい。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 いま言われたこの国際見本市開催の時期も頭に入れて検討いたしておるわけでございまして、決して無責任に遷延いたしておるつもりはありません。
  59. 山本幸一

    山本幸一委員 私は外務大臣にもう一つ聞いてもらいたいのですが、われわれが昨年北鮮へ行ったときに、北鮮側の貿易大臣は、日本で間に合う品物は日本で間に合わしたい、こういう態度です。これはもう私だけじゃなしに多くの人の前で言明しておった。ところが、技術者の交流すらも日本政府は許していない、こういう状況である。その結果北鮮に対する貿易の現状はどうかと申しますと、最近は、特に西ドイツ、イギリス、オランダ、ベルギー、こういうところからどんどん大口の商談が進行して、せっかく日本の商社が商談を進めておったものがほとんど横取りされておるのです。具体的な例を申し上げますと、私の調べたものでは、たとえば日本と引き合いのあった三千トン級の冷凍運搬船、それから、大型コンプレッサー、この二十台が、商談が進められて引き合いができかかったその瞬間、技術者の交流もできないので、オランダに取られてしまっておるのです。これはごく最近の問題です。それから、特に最も近い問題としては、十万トン能力の尿素プラントがやはりオランダに取られているわけです。こういうことは、言うならば日本商社の非常な不利益であると同時に、そのことは私は日本自体の不利益になると思うのです。しかも、これらの三人の諸君は、いまお読みしたように、この点賀屋さんも認められたのですけれども政治色は全然ない、こう私に言明しております。賀屋さんは、したがって、前向きでこれは検討できると言われたのですが、先ほど申し上げたように、何らの返事がない。きょうになってから検討いたしますと言われるが、九日から開かれる。北朝鮮から日本へ来るには飛行機で来たって三日かかるのですよ。地図で見れば隣だけれども、三日かかるのです。それに、あすから三日もかかって、かりに二、三日後に検討の結果こうだといったって、もう時間的には間に合わなくなるのですよ。だから、私は、あなた方のいまの御答弁は気のきいたおばけの引っ込んだころの御答弁だと言っておるのです。だから、きょうが勝負ですよ。きょう、入国させるかさせぬか、この問題を私は明確にさしてもらいたい。できなければできないでいいですよ。私は私の覚悟がある。もう一ぺん頼みます。
  60. 小川清四郎

    ○小川政府委員 ただいままで検討を続けておるというふうに私は申し上げたつもりでございますが、何ぶんにも北朝鮮との間にはまだ人事の往来につきまして非常にむずかしい状況が続いておりますので、昨年スケート団十名を入れましたほかは、まだ北鮮からの人の入国につきましては先例がないわけでございまして、関係省においてもいまの状況入国を認めるということは非常に困難ではないかというふうなお話でもございますし、近日中にはっきりした結論を出しまして、先般の会合のときに大体きまりましたルートを通じてお答えをいたしたいというふうに考えておる次第であります。
  61. 山本幸一

    山本幸一委員 それは、局長、国交未回復は北朝鮮だけではない。中国もそうなんです。中国では、先ほど外務大臣が言われておるように、それぞれのケースにおいて人事の交流を認めておると思うのです。私はそんな形式論でないと思うのですよ。いま幾つかの日本商社がこのために非常に困っておる。しかも、日本の経済の立場から言ってもこれは不利益だ。こういう事態が差し迫っているときに、未回復だからという理由で困難ですというような、そういう答弁では何人も納得させることはできぬ。それなら、夫回復の国が全部そうなっているなら、それは私は場合によるなら納得しましょう。しかし、現に中国は人事の交流をやっておるではないですか。そういうことになれば、あなた方の見解でいけば、中国より北朝鮮のほうが好ましくない、こういう結論になると思うのですが、どうなんです、それは。
  62. 小川清四郎

    ○小川政府委員 環境といたしましては、確かに類似しておる点はございます。しかしながら、やはり、国家間の関係というものは、歴史的ないろいろな背景を積み重ねた結果、だんだんとそういうふうになっていくものでございますし、たとえば中共ないしは北越からは入国を認めておりながら、北鮮からは認めないのは話が違うではないかというお考えもお持ちになるかもしれませんけれども、やはり、入国をさせるかさせないかという場合におきましては、入管だけで判断するわけには参りませんので、いろいろな国際情勢とか、国内の諸問題等を勘案いたしまして、私どもが窓口になってきめるわけでございますので、やはり、諸般の関係を検討していまだ時期が適当でないというふうな空気が濃厚でございますから、そういう意味で先ほど申し上げた次第でございます。
  63. 山本幸一

    山本幸一委員 あなた方はすぐ答弁には国際情勢の問題あるいは国内の諸種事情と言って、そのことばですりかえるのですが、それで私は聞きたいが、いまの国際情勢から言って、どういう理由で、北鮮のいわゆる政治性を持たないという法務大臣の言明の貿易代表団が入ることがどういう差しつかえがあるのです。また、日本国内情勢から言ってどのような差しつかえがあるのです。その具体的な事実を示してください。ただ単に抽象論で国際情勢と諸般の事情と言ってみたところで、それはどうにも承認できぬですよ。それではその理由をあげてください。こういう国際情勢だから北朝鮮からかりに経済の代表であろうとそれが政治性がないにしても入国ができぬならできぬと、その事実をあげてもらいましょうよ。
  64. 小川清四郎

    ○小川政府委員 いかなる国際情勢ないしは国内状況がはばんでおるかということでございますが、私どもも、先ほど来申し述べておりますように、独自の判断でやっておるわけではないのでございまして、その点は御了承をいただきたいと存ずるのでございます。
  65. 山本幸一

    山本幸一委員 それでは、外務大臣に聞きましょうよ。自分ではとても答えられぬというのですから。独自の判断ではない、いわゆる政府としての判断だ、そうなると、外務大臣が一番国際情勢には詳しいわけだ。詳しいからなっていると思うのだが、そこで、あなたから、現下の国際情勢から言って北朝鮮のそういう経済代表を入れることは好ましくないという理由をあげてもらいたいと思う。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 不幸にいたしまして朝鮮半島が南北に分かれておりまして、一方の国との正常化交渉というものをやっておるという事情、そういう事情が対北鮮との事実上の関係を取り結ぶにおきまして関連がありましたということは、山本さんも十分御承知のことと思うのでございます。そこで、私どもといたしましては、対北鮮の関係につきまして、商売、貿易の関係等、事実上依然可能な限りやらなければなるまいということで、従来とも、いま御指摘のように決済関係その他考えてまいったわけでございまして、それから、一点、人の交流だけが残ったというのが現時点における問題でございまして、したがって、この状態でいいものかというと、私はいいものとは思っておりません。それはたびたびあなたにも申し上げておるとおりでございまして、これをどのように打開してまいるかということを、日韓交渉との関連等におきましていつも頭に置いて考えておるわけでございます。この人事の交流という先例のないことを踏み切るということにつきましては、それだけの決意が要るわけでございまして、それをしょっちゅう検討いたしておるわけでございます。この状態が不自然であり、また事実不便な状態であるということは、重々あなたが御指摘のとおり私は心得ておるつもりでございます。いま現時点で、しかしそういう一般論をやっておってもいけませんので、あなたがいま持ち出されておる問題というのは焦眉の問題でございます。あなたも先ほど御披露されましたように、いろいろな経緯をたどって運動を推進されたわけでございまするし、私と法務大臣で早急に御相談いたしまして御返事いたします。
  67. 山本幸一

    山本幸一委員 どうも、大平さんの答弁は、承認したようなしないような、結果においてはしない、こういう答弁に聞こえるのですが、私は、大平さんの答弁の中に、現下の国際情勢とは主として日韓交渉の継続中でもある、こういうことばを承りましたが、日本と北朝鮮とは、たとえば強制バーター制にしても決済の制限にしても解除されて、現に貿易がやられておるのですよ。現に、先ほど説明したように、それは年々歳々ふえておるのですよ。そういうときに、その専門家が技術的な話をしよう、あるいはその機械の特徴を教えてもらいたい、そのために人事の交流をしようというのは、日韓会談と何の関係があるのか、何で日韓交渉とからませなければならぬのか、それは納得できませんよ。もっと率直に言ってもらいたい。もっとほかの理由があるでしょう。それをもう一ぺん答えてもらいたいと思います。しつこいようだけれども
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 北鮮との人事交流につきましては、沿革的に申しますと、帰還問題という問題がありまして、あるいは赤十字社のごあっせんで順調にいったわけでございます。第二に起こってきた問題といたしましては、自由往来の問題が起こってきたわけでございます。この問題につきまして私どもが懸念いたしますことは、これは山本さんにもたびたび申し上げたことでございますが、自由往来運動が展開された場合の運動者側の言い分等に、えらい事実を歪曲されている結果誤解がありはせぬか、それから、事実上の必要と運動全体の規模のバランスから言いましても、非常に政治的なにおいがいたしたのでございます。その点は、政治的な問題、政治問題というもので過熱してくるというようなことはできるだけ避けねばなりませんので、正確な事実の上に——いまあなたのおしっゃる貿易の必要上人事の交流・技術者の交流をしないのはいかぬじゃないかというような事実を踏まえての御発言というものは、私は非常によくわかると思うのでございますが、運動の立脚している、何か日本政府が非常に非民主的で非常に非人道的でという、政府に対する誤解があるようでございますので、そういった空気を一ぺんなくしまして、それで事実を事実として踏まえた上で合理的に考えていくような雰囲気というものがまず必要でなかろうか、そう感じたのでございまして、したがって、北鮮との人事交流の問題につきましては、不当に政治性を持つ、そしてそれにいろいろ間違った尾ひれがつかぬようにしていただかなければならぬじゃないかというようなことが、今日まで人事交流をちゅうちょする、日韓交渉と別の一つの要素になっておったのではないかと思うのでございます。そういった点につきましても漸次理解が進んでおるように私は思いますので、そういう事態の推移をも見まして、至急に法務大臣と御相談しようということを私もお約束をいたしておるところでございます。
  69. 山本幸一

    山本幸一委員 あのね、大平さん、あなたの答弁と局長の答弁とは違うのですよ。あなたはできるだけそういう事実を踏んまえて法務大臣と相談しようという意図だ。局長はそうじやない。いまの国際情勢から言ってむずかしい、こういう答弁です。むずかしいという答弁。これは内容にはたいへんな違いがあるのですよ。そういうここだけのがれるあいまいな態度は許されぬと思うのです。特に私が申し上げたいのは、先ほどから言っているように、日韓会談と何が関係があるのだ、純然たる経済関係者が現に進行している商談のために来たりあるいは国際見本市に参加することが、何が日韓会談関係がある。それも日本と全然取引がなければ別です。先ほどからくどく言っているように、取引はどんどんやられているのだ。そういう現実、事実があるのですから、その上に立って、それに必要な商談だとかあるいは技術の交流だとか、あたりまえのことじゃないですか。私はそこのところにちゅうちょする余地なんかないと思うのですよ。したがって、少なくとも大平さんの答弁の中に、九日の開催日までに間に合うように私のほうは前向きで検討するという答弁があれば別だ。その答弁をはっきり聞くまでは、私はいまの御答弁では納得することはできぬわけです。どうですか。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 早急に法務大臣と御相談いたしましてお返事いたします。それで、その日をどうするかという、いつ返事するかというようなことは、御相談申し上げてからあなたにお返事申し上げることでお許しをいただきたいと思います。
  71. 山本幸一

    山本幸一委員 私は別段外務大臣をさして言っているわけじゃないのでありまして、法務省を中心にする現政府、まことに不誠意であり、これは人間性が全くないと言っていいと思う。たとえば、赤松君が、法務委員会かあるいは外務委員会か存じませんけれども、少なくともあの朝鮮人が願望としておる自由往来の保障の問題についてお尋ねしたら、法務大臣は、ケース・バイ・ケースで行ないます、こう言っているのです。そのときはこの問題も出ているのです。たとえば芸能人の交流の問題も出ているのです。それらを全部合わせてケース・バイ・ケースで検討します、やります、こう言っているのです。ところが、事実、それじゃそのことばを正直に受け取って窓口で手続すると、てんで受理しない。これらは上のほうから何らかの指示があるまでは私どもは受理することはできませんと窓口は言っている。受理してみなければケース・バイ・ケースになぬじゃないですか。受理した結果初めて、これはいけないとか、この人はだめだとか、この人ならよろしいとか、具体的な事実が出てくるので、受理を拒否しておいて、ケース・バイ・ケースとは一体何ですか。だから、不誠意だと私は言うのですよ。そういう不誠意の積み重ねを今日までやってきておる。しかも、私が先ほどから申し上げておるように、この問題についてはあらゆる手を尽くしてきておるが、やはりその不誠意は依然として全然解消されていないのです。そういう不誠意の積み重ねというのは、私どもはがまんできないのですよ。だから、大平外務大臣は至急にお答えすると言っているが、お答えをおそくもらったって間に合わぬのですから、私はそういうお答えなら必要ない。あなた方はやらぬとおっしゃるに違いない。そして、私どもをどたんばまで引っぱり込んでしょい投げを食わせようという気持ちがあるかもしれない。そうなれば、あなたの不誠意に対しては今後私個人としてもあるいは党としても承認しがたいのです。特に、先ほどから言っているように、この貿易の問題をここまで私が発言するに至っては、——何も私は発言を好んでおりませんよ。あらゆる手配をしてきておる。あらゆる話し合いを積み重ねてきておる。いわんや、両委員長の肝いりで、十日以前に懇談会まで開いている。そうして、そこで法務大臣が私に言明したのは、これは、人事往来、いわゆる自由往来の問題と違って、政治性はありませんから、私は前向きで検討しますと言明しておる。あの言明で政治性がないことは明らかになったのですよ。それにもかかわらず返事がないというようなことは、私どもに対する政府の不誠意です。少なくとも私個人をばかにしたということです。これは単にこの問題だけじゃない。そういう不誠意の積み重ねで国会運営ができるならやってごらんなさい。私もこれからその決意でやりますよ。これは国会運営に関連する問題ですよ。ことごとにうそを言って、ことごとく相手を裏切る、一回の返事もしない、全く誠意が認められぬじゃないですか。これは私は国会運営全体に関係する問題だと思う。私は、即日、きょう直ちに返事がない限りは、これは重大な決意をしております。国会運営の問題として扱いますよ。そういう意味で、それが明らかになるまでは、何の条約があろうと、何の法律があろうと、その審議進行には外務委員の一人として私は反対です。賛否は別ですよ、賛否は別だが、あなた方の誠意が認められてこそ初めて私どもは国会運営に協力できるので、誠意のないところに国会運営の協力ができますか。どうです、あなた、きょうじゅうに回答してもらえますか。きょうじゅうに回答してください。だめならだめ、よろしいならよろしいと、法務大臣と相談して回答してもらいたい。その結果で私の態度をきめましょう。これほど私はばかにされたことはない。その返事をしてください。できなければ、私はこれを国会運営上の問題として扱いますよ。もしいまきまるのだったら、休憩してその間に相談してもらいたい。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、私は早急に法務大臣と御相談して御返事いたします。法務大臣の御都合も私はまだ聞いておりませんので、きょうじゅうというお約束は一〇〇%ただいまここで私が独自でできないかもしれませんが、速急に相談いたしますから……。
  73. 山本幸一

    山本幸一委員 私は強く要望しているんだが、法務大臣と相談の上、少なくともこれが間に合う期日に回答が出るか出ぬか、その返事をきょうしてもらいたい。いなやは別です、賛否は別だが、法務大臣と相談して、いつまでに回答しますということをはっきりさせるまでは休憩を要求します。  これは外務委員会を進めるわけにいかない。これほど侮辱されて、私どもは今後国会運営に協力することはできませんから、その点はっきり委員長に要求します。それで私は休憩をお願いして打ち切りたいと思います。国会運営上の重大な問題ですよ。
  74. 赤松勇

    赤松委員 関連。
  75. 臼井莊一

  76. 赤松勇

    赤松委員 私はいま法務委員会で実はこの問題について法務大臣質問をしたわけです。事は入管の問題でもあり、きょうは相当突っ込んで話し合いをしたい、——経過はすでに山本君から述べられたとおりなんです。そこで、相当時間を取ってやりたいと思っておったのだが、法務大臣は、これは検討いたします、いま検討中であります、こういうことばだった。そこで、私は、法務委員会におきましては、入管局長も知っているけれども、簡単にその点を質問しておいて、あとは外務委員会山本君から外務大臣質問してもらって、法務大臣は検討中だというし、それから、あなたも当然このことについては考慮されておる、こう考えておったので、私は、当然ここで結論は出る、こう思っておったのです。ただいま法務委員会は終わりまして、法務大臣はからだはあいたわけだ。相談するには何も手間ひま要りません。ですから、いまの要求を、委員長、ひとつはからって、そうして休憩なら休憩するとして、法務大臣と打ち合わせして、至急本委員会報告してもらいたい。以上要求します。
  77. 臼井莊一

    臼井委員長 この取り扱いにつきましては、理事会において協議をいたしたいと思います。
  78. 山本幸一

    山本幸一委員 私は無理なことを言っておらぬつもりですよ。入国させるとかさせぬという返事をきょうくれとは言っておらぬ。その返事については、九日までに入国できる時間があれば、それまでにしてもらえばよろしい。しかし、きょう外務大臣法務大臣と相談をして、間に合うような日にちに結論が出せるか出せぬかの返事をきょうくれと言うんだから、無理な要求はしておらぬと思う。だから、それができるまでは休憩ですよ。何といったって休憩ですよ。あなた、さんざん人をばかにしておいて、冗談じゃないよ。あまりなめちゃいかぬよ。
  79. 臼井莊一

    臼井委員長 御趣旨はわかっていますから、ただいま申し上げたように、この問題は理事会でひとつ協議をいたします。   〔「理事会の問題じゃない、委員長から政府にいまのことを要求しなさいよ、何でもないことじゃないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  80. 臼井莊一

    臼井委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  81. 臼井莊一

    臼井委員長 速記を始めて。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 山本委員の御質疑の案件につきましては、早急に法務大臣と御相談いたしまして、国際見本市の開会ということを頭に置きまして、それに間に合うように結論を申し上げるようにいたします。
  83. 山本幸一

    山本幸一委員 あとは保留します。
  84. 臼井莊一

    臼井委員長 それでは、本会議散会後再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時四十二分休憩      ————◇—————    午後三時三十一分開議
  85. 臼井莊一

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  松平忠久君。
  86. 松平忠久

    松平委員 前回の質問の際に大蔵大臣がお見えにならなかったので、きょう御出席を願って、このOECDの問題について大蔵大臣に若干質問したいと思います。  いままで大蔵大臣と、IMFの八条国移行その他で、大蔵委員会その他において、日本の外貨事情についていろいろ質疑応答がございましたが、私もそれを聞いておったのでありますが、ふに落ちないところがありますので、その点をお伺いしたいと思います。  まず第一にお伺いしたいのは、開放経済に向かう場合におきまして、日本のいわゆる外貨準備、これは約二十億ドルぐらいあるということをいわれておる。スタンドバイを入れて二十億ドル。そこで、長期の見通し、大体日本の賠償が完了するころまでのことを考えると、今後七年くらいあると思うのですけれども、その辺の長期の見通しを考えてみて、現在の日本の国際収支におけるバランスというものが一体どうなっているのかということをお尋ねしたいわけです。  私ども承知しておるところによると、外貨の準備、その中には、外国銀行に対します預金もあれば、金もある。それらを合わせて二十億ドルくらい。それから、日本のいわゆる長期のクレジットもあります。短期のものもある。その中にはオープン・アカウントもあるし輸出ユーザンスもある。こういうものも全部合わせまして、日本の今日の手持ちのもの並びに七、八年後のことを予想して日本の持っておる債権その他を入れまして、ドルは大体幾らくらいございますか。私ども承知しておるところによると、大体計算してみまして四十九億ドルくらい持っているのではないか、こういうふうに思いますが、その点についてはどういうふうに政府としては計算しておられるか、まずそれから伺っておきたい。
  87. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御承知のとおり、この三月三十一日の外貨準備高は十九億九千六百万ドルでございます。この中にはIMFのゴールド・トランシュ一億八千万ドル分を加えております。このほかにオープン勘定の残高が八千四百万ドルばかりございます。そのほかに為替銀行に貸し出しておりますものが約三億七千万ドルばかりございます。そのほかに民間で投資をしておりますものが十億ドル余ございます。そのほかにもございますが、日本の資産の内容、それから外国勘定の内訳につきましては、いつも申し上げておりますように、世界各国もこれを公表しないということでございますので、この席で申し上げられるのは、私がいま大ざっぱに申し上げた程度のことでひとつ御理解いただきたい、こう考えます。
  88. 松平忠久

    松平委員 合計をちっとも言わないのだけれども、合計が聞きたいわけなんです。私が申し上げますから、合っているかどうか、あとでチェックしてもらいたいと思う。延べ払い輸出、これは円借款を含んでです。これが約十億ドル、直接投資が五億六千万ドル、国際機関への出資金が二億七千万ドル、したがって、長期のものは約十八億五千万ドルあるということになる。短期のものは、輸出ユーザンス、オープン・アカウント、貸し越し、為替銀行の手持ちの外貨筆入れまして約九億四千万ドル。外貨準備、これはいま申し上げました。ゴールド・トランシュ、スタンドバイを合わせまして、全部合計してみますと、それが約四十九億ドルくらいになるのです。日本のいわゆる外貨並びに日本の持つであろうところの長期並びに短期のものを含めまして、大体四十九億ドルくらいになる。そこで、今度は支払い勘定はどうなっているのか。支払い勘定は、株式並びに国債、外債、借り入れ金の返済、余剰農産物借款、延べ払い輸入、これで三十三億五千万ドルばかりございます。長期のものが、賠償、ガリオア・エロア、これを合わせまして十二億四千六百万ドルばかりございます。短期の輸入ユーザンス、ユーロダラー、自由円、石油の関係のスタンドバイ、これらのものを合わせまして二十二億五千九百万ドル、それから、IMFのスタンドバイ、これも払わなければならぬと計算しますと、これが三億ドル。これを計算しますと、支払いのほうは七十四億ドルになるわけであります。日本で持っておる外貨並びに日本の受け取り勘定として今後七、八年の間に日本が持つべきと予想されるものが四十九億ドルで、日本が支払わなくてはならない外貨は逆に七十四億ドルあるわけであります。この数字に対して、大蔵大臣は大体正しいと思っておるかどうか。私の見るところでは、すべて計算してきているのですが、今後賠償を払う、その年限までに日本が支払うべき金というものは、およそ七十四億ドルある。したがって、今日のバランスを見ると、受け取りは四十九億ドル、支払いは七十四億ドル。受け取りの中には現在持っている外貨も含まれております。そういうのが日本の外貨のバランスなんです。いまのような日本の外貨のバランスが、四十九億ドルに対して七十四億ドル払わなくちゃならぬというこのこと、これは七、八年でやらなくちゃならぬと思うのですが、こういうような今日の外貨のバランスというものは、日本としてはきわめて重大な関係でながめなくてはならぬ問題である。今後この外貨を支払っていくと、日本は賠償を取るのではありませんから、国民が働いて支払っていくわけであるけれども、あえて支払っていくという場合におきまして、見込みがあるならばよろしいけれども、しかし、本年度のような、むしろ逆に、貿易関係で四億ドル、貿易外収支で四億ドル、来年はさらに貿易外収支は五億二千万ドルというぐあいに赤字がふえていくということであるならば、いつまでたったら一体借金が返せるのかということになるわけであります。大蔵大臣はきわめて楽観しているように見えます。しかしながら、日本の外資の収支の数字をこまかく検討してみると、いまのような数字になるわけでありまして、これは日本の財政としてはきわめて重大な問題ではなかろうかと思う。しかも、韓国に対してさらに有償・無償を五億ドル払うというわけでありますから、それにまたプラスされるということになる。そういたしますと、十年後までに日本は八十億ドルのものを払わなければならぬ、こういうことになるわけであります。日本の貿易その他の収支において今後見通しがあるなら私はいいと思います。しかし、ここ当分、おそらく五年や六年では見通しはない。海運の赤字だけでもとんとんにするのには七、八年かかるというわけでありますから、この問題はきわめて重大であろうと思います。いま申しました、受け取り四十九億ドル、支払い七十四億ドルというこのバランスについて、大蔵大臣はどういうふうに一体処置をするつもりなのか、これを伺っておきたいと思います。
  89. 田中角榮

    ○田中国務大臣 国際収支の長期拡大安定は非常に重要な問題でございます。なお、私は、日本の将来の外貨準備その他につきましては、悲観もいたしておりませんし、また、楽観もいたしておりません。一々国際収支の長期拡大安定をはかるべく細心の注意をしながら適切な施策を行なってまいりたい、こういう考えでございます。  第三点目の、日本の資産・負債勘定につきましては、先ほど申し上げたとおり、これをどこの国でも発表いたしておりません。また、日本も発表いたしません。こういうことでございますから、あなたがいまお述べになりました数字と実際の数字が違うかという御質問に対してはお答えできません。しかし、お互い国民の一人として、日本の将来の問題に対して取り組みながら、まじめな立場で論議をいただくということは、好ましいことでありますし、政府もそのような発言に対してはまじめに受け取っておるわけでございます。しかし、私が申し上げられるとすれば、その内容は言わぬということでございますから、なかなか話しにくい話でございますが、ただ、そうでなくても国際収支が悪いとかいろいろなことを言っているときに、あなたがそういう数字を御発表になりますと、いろいろどうも誤解などがあっては、これはたいへんだと思いますから、私の感じを率直に申し上げますと、少し健全過ぎるお考えのようでございます。こちらのあるものに対して非常に低目に見ておられるということでございます。それから、これから払うものに対しては、ドルで払うんじゃなく、日本が役務及び物等で払うというようなものまでみな外貨でもって支払うというふうに少し誇大に計算をされているような気がいたします。しかし、いずれにしましても、私のほうでは内訳は申し上げられません、こう申し上げておるわけでございますので、これ以上申し上げるわけにいかぬと思いますが、松平さんの御心配になるような状態ではない、これだけは言えると思います。日本の企業においても、オーバーボローイングの解消、こういうことが唱えられておりますが、その唱えられておる日本の企業等に比べて、日本がどうかというと、これはそれよりも非常にいい立場にある。また、日本のたくましい経済成長の状況を考えてまいりますと、私は、将来の国際収支は楽観ができるということではございませんが、国民がたゆまない努力を続けていく場合に、必ず将来に向かっても前進がはかられる、国際収支の不安がないような状態を招来することのできる国民であり、できる日本の経済の状態である、また政府もそのような施策をとっていける、こういう考え方でございます。
  90. 松平忠久

    松平委員 数字を発表すると、不必要な混乱を与えるということで、数学を発表しないという大蔵大臣の答弁であったのですが、計算してみるとそうなります。ただ、しかし、いま大蔵大臣が言われたように、日本の支払い勘定の中には、物、役務等で払うものもある。私どもは、それを計算して、それを引いてみても、なお支払い分が九なり多いのです。大体今後六十二億ドルくらいになります。日本の取るほうの分は手持ちまで入れて四十九億ドル。日本のバランスはまことにまずいのです。そういうことです。  そこで、こういった外貨収支の非常なアンバランスが、いま日本に、発表できないけれどもあるわけなんです。しかしながら、これは、大蔵大臣は悲観しないと言われたけれども、やり方によっては悲観すべきものではないと思う。どこの国だってかなり借金もしていましょう。しかしながら、私が心配をしておるのは、これは不必要な心配じゃないと思うのですけれども、いまのこのような数字に対して、日本が今後ドルでどんどん払っていけるのだという財政金融の措置ができて、そうしてドルで払っていけるのだ、借金を返していけるのだというなら、私はそれもいいと思うのですよ。ところが、しばらくの間は見込みはないと思うのです。貿易にいたしましても、あるいは貿易外の収支にしても、ことしは昨年よりむしろ経常取引なんかは多くなる、すでにそういう数字が政府自体からも言われておるわけです。したがって、私たちが心配しておるということはそういうところにあるわけであって、減っていくというならいいのです。しかしながら、ここ当分の間はふえていくというのだから、これはますます困ったものである、こういうふうに考えているわけです。その点いかがですか。
  91. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これからますますふえるということが心配だと言われますが、政府も心配しております。払うほうがふえないように、受け取るほうはふえるように、こういう施策をいまやっておるわけでございます。でございますから、公定歩合の引き上げをやったり、窓口規制を行ないましたり、預金準備率の引き上げを行ないましたり、また輸入担保率の引き上げを行なったり、国民に対して、一〇%も一五%も伸びては、これではどうにもならないから、ひとつ名目九・七%、実質七%の成長で押えながら、また国内においては自己資本比率を上げるように資本の充実をはかったり、また貯蓄の増強をはかりましたり、最もいい体制を迎えよう、こういう施策をやっておるのでありまして、私は、あなたの言うことに対して、まじめに、ありがたい御発言だと思って伺っておるわけでありますが、しかし、あまり不安ばかり考えておって、手をこまぬいておるということよりも、やはり、日本の過去の歴史等を見て、また現在の状態も十分見た場合には、十分やれるという考えに立って、自信を持って前進を続けるというほうが、日本のためにも、国民のためにも好ましい。いまから十五年ばかり前に世界中の学者が来て、日本は一体金をつぎ込めば経済が復興できるだろうか、三年間かかってやって極東委員会報告は、日本はいかにしても再起不能であるという結論が出たのですが、再起不能どころではなく、この状態をつくったわけでございますから、やはり、日本人の持つ優秀性、日本人のたくましさ、勤勉性、こういうことをすなおに評価をするならば、日本民族の将来は暗いものであるという考えには立っておらぬのであります。
  92. 松平忠久

    松平委員 それは田中大蔵大臣の人生観もそういうことだったと思う。いまもそういうことだ。しかし、大蔵大臣は七月ころにはやめなくもやならぬかもしらぬ。だから、これはあなたがいま悲観ばかりしては困るというのですけれども、あなたのようなぐあいに幾らか楽観論をしないと、実際日本としては困るだろうと思うのです。だから無理してあなたも楽観論を述べているのだろうと思うけれども、しかし、これはきわめて重大でありますよ。  それから、戦後における日本の復興というものについて、いま御発言があったけれども、私は違うのです。戦後のいままでの復興と今後の日本の行き方というものは違うのです。戦後は、とにかく閉鎖経済であって、一生懸命にやるということでやってきたが、今度は四面敵の中でやっていくのですから、そうやすやすとうまくいかぬですよ。そこで、その考えはやはり引き締めていかなくちゃならぬと思う。  そこで、お伺いしたいのは、いま、いろいろなことをやってかせいでいくんだ、公定歩合の引き上げもやったり、貯蓄もするということでかせいでいくのだということでありますけれども、それでは伺いますが、本年度、来年三月までに予想される日本の国際収支の赤字というものは、大体どれくらいに予想しておりますか。
  93. 田中角榮

    ○田中国務大臣 昭和四十年三月三十一日まで、総合収支じりで一億五千万ドル、こういうことでございます。これは政府が発表しました見通しでございます。しかし、まだこれから一年間、すべり出したばかりでございますから、いまあなたがおっしゃるような、こういう気持ちに全部国民がなってくださって、もっと合理的に経済を進めてもらう、消費の抑制もやる、物価の安定もやる、また輸出の振興に全力を注ぐということになれば、政府が計算した一億五千万ドルの赤字は出ないようになるかもわかりません。少なくとも政府が計算いたしました一億五千万ドルの赤字をなるべく少なくしたい、こういうことでいま各般の施策を行なっておるわけでございます。
  94. 松平忠久

    松平委員 その一億五千万ドルの赤字というものは、これは、もう少し分析してみると、かなり外国から短期でも何でも借りてこなくちゃならぬ。そういう金があって初めてそこで一億五千万ドルということになるのじゃなかろうかと思うのですが、一体、どれくらい借りてきて、そしてなおかつ一億五千万ドルの赤字ということになるのですか。
  95. 田中角榮

    ○田中国務大臣 すでに世に明らかにいたしておるわけでございますが、輸出が六十二億ドル、輸入が六十二億ドル、経常収支じりの赤字が五億五千万ドル、これに資本収支の四億ドルを差し引きますと、一億五千万ドルの赤字ということでございます。この見通しを発表しましたときには、輸出の六十二億ドルはできるだろう、これは大体議論のないところでございます。ただ、輸入が、今年すでに五十七、八億ドル、多くなれば五十九億ドルにもなろうというときに、大体六十二億ドルの輸入で押えられるか、こう考えるならば、当然この一億五千万ドルというものはふえる、こういうことが国会でも言われたわけでありますし、新聞雑誌にも書いてあるわけです。ところが、今度引き締め的ないわゆる金融調整等を行ないました結果、輸入もうまくいけば六十二億ドルでバランスをするかもしれぬ。しかし、輸入がバランスをするような場合、多少輸出の六十二億ドルは伸びるかもしらぬ。まあとんとんにはいくだろうということで、その不安は消えたわけでございます。とこるが、利子平衡税等の問題で、外資というものは入らないだろう、入らない入らないと何回か私は半年間やられてきたわけでありますが、結局、三月三十一日になったら、外資は三十八年度も政府が予想したよりも順調に流入しておるわけでございます。でありますから、利子平衡税等で皆さんが、入らない入らない、君が幾ら入ると言っても入らぬよ、こう言ったものですから、四億ドルという低い数字を計上したわけでございますが、しかし、その後の状況を見ると、これは一億ドルか一億五千万ドルはよけい入りそうだ。悪くてもそのくらいは入るだろうということがもし事実とすれば、総合収支じりでバランスをするということもあり得るわけであります。でありますから、三十九年度一ぱい、政府が見通しを立てた国際収支よりもよりよくしたいというのが政府のいまの願いでございます。
  96. 松平忠久

    松平委員 資本収支四億ドル、あるいはそれがもっと一億五千万ドルも上回るかもしれない、こういうことだったけれども、その資本収支の中に、将来やっぱり返さなくちゃならぬものもかなりあると思う。将来返さなくちゃならぬものもあるだろうし、利子もあるだろうし、配当もあるだろうし、いろいろあります。そこのところの四億ドルの内容をもう少しこまかく説明していただきたい。
  97. 田中角榮

    ○田中国務大臣 経常取引につきましては、輸出が六十二億ドル、それから輸入が六十二億ドルで、貿易収支のしりはゼロであります。貿易外収支が三十七年度が二億二千五百万ドルの△、三十八年度の四−二月が三億六千六百万ドルの△、三十八年度見込みが四億千万ドルの△、それを三十九年度は五億五千万ドルの△に見ておるわけであります。それから、資本収支につきましては、長期で二億五千万ドル。これは三十七年が二億九千七百万ドル、三十八年四−二月が四億三千五百万ドル、三十八年度が四億ドル、こう見ておったものを、非常に低く見て二億五千万ドル。短期収支につきましては、三十七年が一億七千二百万ドル、三十八年度が二億七千万ドル、こういうことでございますが、これをうんと低く見て一億五千万ドル、こう見て、長短合わせて四億ドル、こう見ておるわけでございます。でありますから、それで五億五千万ドルマイナス四億ドル・イコール総合収支じりが一億五千万ドルの△ということになるわけでございます。もう特別借款等は三十八年度末までに全額返済をいたしておりますので、このような数字が出るわけでございます。
  98. 松平忠久

    松平委員 この公定歩合二厘引き上げですね。公定歩合の二厘引き上げということで、予想しておったよりも外貨が入ってくる。つまり、公定歩合の二厘引き上げの前にお考えになったときより、引き上げてからの外貨の日本への流入というものはかなり促進されると思うのだけれども、これはどの程度見積っておりますか。
  99. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これは、まだ引き締め調整期間中でございますので、この調整でもってどのくらいきくかということは、なかなか申し上げられないわけでございまして、少なくとも、この公定歩合引き上げの以前に想定をしたものが一億五千万ドルの△でございますから、これよりもよくなるということは申し上げられますが、全部それをよくして、今度黒字が出るかというようなことは、いまの時期としてはなかなか想定しにくいわけでございます。しかも、あなたが言うように、あまり甘いことばを国民の前にすること自身がいいことか悪いことかという問題もございますので、いまの段階では、少なくとも当初想定いたしました四十年三月三十一日の総合収支じりは少しよくなるだろう、こういう考えであります。
  100. 松平忠久

    松平委員 欧州における外貨の手当てというようなことについては、どういうようなことをいま考えており、いまやっておられますか。たとえば、ロンドンあるいは西ドイツ、スイスも若干あるでしょう。つまり、利子平衡税の結果、欧州からの手当てというものが必要になってきておるということで、政府はお考えになっておるようだけれども、現在どの程度それは進捗しておるか、その点を伺っておきたいと思う。
  101. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御承知の、昨年の七月の利子平衡税問題から、非常にヨーロッパ市場が小さいからと思っておったわけでございますが、その後はヨーロッパ市場では比較的に日本の外資調達というものが円滑に行なわれております。これは御承知のとおりでございます。一番初めにやりましたのは、御承知の、戦前の国債、英貨債の発行を行なったわけでございます。これは小さい金額でございましたが、これが非常に人気を得たということでございます。それから、二年前からでございますか、やっておりますマルク債、大阪府市債の二千五百万ドル、一億マルク、これがすんなりと出ました。そのほかに、スイス・フランの五千万フラン、千百五十万ドルだと思いますが、これも私たちは三十九年の半ばごろからできるかなと思っておったわけでありますが、現地側の非常な要請もございまして、首尾よくと言える情勢で消化をしたわけでございます。そのほか、ドル建て債の転換社債が出たり、これは武長とか民間のものが四つ五つ出ておるようであります。三十八年度の欧州市場の見通しに対しては私たちも慎重でございましたが、その後アメリカで未発行であった国債分くらいは三十八年中に流入したわけでございます。三十九年の上期にどのくらいになるかということでいま試算をしてみますと、欧州で起債できるものが大体一億二、三千万ドル程度は見込まれるというような状態でございます。
  102. 松平忠久

    松平委員 次に、個々のケースについて若干伺いたいと思うのですが、技術導入はOECDにおいて日本で留保しておるわけなんです。ところが、いままでの技術導入の例によりますと、昭和三十五年から三十七年、三カ年で約二千件くらい輸入許可をしております。そこで、ロイアルティーはすでに一億ドルをこえるというような状況になってきておる。さらに、OECDに留保はしておるけれども、従来よりも緩和をするという考え方に立たざるを得ないと思う。したがって、問題は、過去に見られたことは、比較的技術導入の制限がきつかった時代においても、かなりの件数に達しておるし、それから、実際の状況はむしろ過当競争がかなり行なわれていると思う。たとえば、モンテカチーニのポリプロピレンにしても、非常な過当競争を行なって高いものを買ってきておるという反面において、むしろ国内の技術開発というものをにぶらせるような傾向もなきにしもあらずなんです。そこで、技術導入の関係について、いままでも過当競争はなかなか制限できなかった。今後ますますこういうことがあるのじゃないかと思いますが、これについては一体どういう考え方で過当競争をやめさせていくような手だてをとろうとするのか。むだな競争をしてむだな外貨を払うというのがいままで行なわれたわけです。今後これらのことはむしろ逆にもっとひどくなるという傾向があるのじゃなかろうかと思うので、その辺の対策についてお聞きしたいと思う。
  103. 田中角榮

    ○田中国務大臣 技術導入につきましては、御承知のとおり、戦後、石油化学等、技術導入をすることによって長足に日本の産業基盤が強化され、技術水準も向上したといえ、利点があるわけでございます。同時にまた、特に何年も何十年もかかって築き上げた高度の技術に対して、日本人がそれを受け入れて直ちにこれを消化するだけの能力であったということもありまして、世界で驚くべき経済発展の基盤をなしたということも事実でございます。でありますが、その反面、技術導入というものに対して、日本人が舶来品が好きだ、こういう性質が技術導入の状況にまでうかがい知れるような状態である。いわゆる過当な導入をやっておったというような状況も確かにございます。あなたがいま御指摘になったものも四グループに集約をしなければならなかったというような例もございますし、特に、日本人の同じ企業の中、同じ業種の中で、A社がアメリカの技術導入したから、B社は今度は西ドイツだ、C社はフランスだ、こういう考え方で、確かに一時花盛りのようなことがありまして、私も技術屋でありますから苦々しく感じました。しかし、その反面、非常に日本の経済にたくすしい成長力を植えつけたということもあり得るわけでございます。でありますから、ロイアルティーなどにつきましても、年間一億ドルをこすというような状況でもありますので、OECD加盟に際しても留保いたしたわけでありますし、この問題に対しては、外資に関する法律もありますので、これからもやはり十分厳選をして、日本の技術でもって間に合うものとか、また、同じようなものをやったり、またせり合って高い料金を払わなければならぬというようなものに対しては、厳選主義で臨むつもりでございます。同時に、日本にも輸出をする技術はたくさんあるわけでございますから、低開発諸地域等に対しましては日本の技術も十分輸出してまいりたいということで、日本の技術提携、それから現地に対する技術援助、また技術の輸出というようなことも行なうことによりまして、これらの必要ならざる手数料を払うというような弊害は、もう以後絶対にないように細心の注意を払ってまいりたい、こう考えます。
  104. 松平忠久

    松平委員 いま、大蔵大臣も御承知だろうと思いますが、特定産業振興臨時措置法という法案が出ております。この対象になっておるいまあなたが指摘された石油化学にしてもあるいは自動車にしても、これらのものが競争して外国と提携して技術導入をして、なるほど産業は発展しました。しかしながら、一面において過当競争が行なわれている。これを統合しなくちゃならぬ。しかも、統合するには特別の融資をし税金をまけてやるという、また国家が損をしなければならぬということを法律によってやろうとしておるわけです。このことは、一つは、いまあなたが指摘された過当競争の結果なんです。そういう意味において、過去においてすでにそういったあやまちを外資委員会等において行なってきた。今後開放経済に向かってますますそのあやまちが濃厚化してくるということを私は心配しているわけです。いま大臣は厳重に厳選主義で臨むということを言っておったけれども、過去においてすでにそういう実績を積んできて、しかも開放経済に向かっていま以上に厳選主義ということがとれますか。私はその点について非常な懸念を持っているわけなんです。一体どういうやり方で厳選主義を過去以上にやっていくおつもりであるのか、そのことをお伺いしたいと思う。
  105. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いままでは案外こちらもよくやったつもりでございますが、あなたが御指摘になるように、確かに技術導入ブームというようなことでマイナスもあったと思います。そこらは認めるにやぶさかでないわけでございます。これは、しかし、戦後の無資本の状態から、とにかく立ち上がるためには何でもかんでもという国民的な機運がございましたから、そういう意味でも、急ぎのあまり、木を見て森を見ず、こういうことで、自分の産業がよくなれば国際収支の問題よりもまずという考え方国民的にもあったと思いますし、いろいろまだなじまない行政上の問題もあったと思いますが、今度は、もう八条国移行、OECD加盟等で再びあと戻りができないということでございます。そういう意味で公定歩合の引き上げ等も行なっておるわけでございますから、やはり、歴史的な金解禁にも匹敵すべき確かに重要な時期でありますので、国民各位もいままでよりもより引き締まった気持ちになっていただきたいということでありますし、政府も八条国移行ということがいかに重要であるかということに対しては十分PRするつもりでございます。また、いままでの失敗によって、いままで幾らかそういう過当な導入等がありましたから、今度非常にわれわれも専門化しておるわけでございますので、そういう問題に対しては、今度は万遺憾なく、通産大臣、また農林大臣、外務大臣、大蔵大臣というようなそういう機構が、要らないものを導入すれば国際収支が悪化して長期にわれわれの首を締めることになるのでありますから、しかも、このように国際収支問題が世に喧伝され、国会においても最重点的に議論されるという時期はいままでなかったのでありまして、ちょうどその時期に際して皆さんが国際収支の問題に対して将来を考えながら活発に御議論をいただいておるということ自体が、重要さをお互い自身ひしひしと感ずるのでございますので、そういう意味において、これからは万遺憾なきを期してまいりたい、こう考えておるわけであります。
  106. 松平忠久

    松平委員 日本の企業家が、経済の復興発展ということでもってがむしゃらに過去においてやってきたという、いまの大臣の答弁なんですが、どうも、日本の企業家のものの考え方というものが、やっぱり欧米と違う感覚というものがあると思うのですよ。これを直していかなくちゃならぬ。つまり、国内においても、相手を倒せばいいのだ、相手を倒して、おれがひとりやっていくのだというような気持ちが、いまの企業の中には非常に濃厚なんです。この点が欧米とかなり違う点じゃないか。つまり、資本主義の発展の過程が違うので、日本におけるこういう経営者の考え方というものが社会性を持たない半面がある。非常にがむしゃらなところがある。そこが非常に復興を早めた原因でもあるけれども、また、行き過ぎで今日困っておる状態が出ておる。もっと企業家に社会性を持たせるという指導を政府はしなくちゃならぬと思うのです。企業家の言いなりになってやっているというのではなくて、企業家の教育、訓練が必要だと思います。ヨーロッパにおいては、ギルドから発達した資本主義というものは、この精神がずっとあるのであって、そして、無理な、相手を倒せばいいのだという企業意識はないわけですよ。ここらに、私は、日本の将来について日本の企業家のとるべき態度というものに対しては、大蔵大臣なり通産大臣というものは相当国家的な立場に立って彼らを指導し教育するというかまえがあってしかるべきだと思うのです。それはあらゆる制度のもとにおいても必要だろうし、場合によっては法律措置も必要だろうと思います。あるいは行政的措置も必要だろうと思います。これはその考え方でやっていただかなければいかぬ。それが日本の特徴でもあるが非常な欠点だ、こういうふうに考えておるわけですが、その点についての大蔵大臣の御所見を承っておきたいと思う。
  107. 田中角榮

    ○田中国務大臣 非常に前向きな御発言をいただいてありがとうございました。まことにそのとおりでございます。日本人のいいところであり、悪いところであります。抜けがけの功名、暮夜ひそかに一人だけ行って敵の大将首を取ってくる、こういう考え方であります。それがたいへんなマイナスをつくっておるということも事実でございます。それは、やはり、日本が一面において原材料のない国であり、労働力でもってカバーする非常に苦しい経済環境のもとで過去何十年間、明治初年から九十年にわたってやってきたその反面、日本人の持つ通有なマイナス面が事業面に対しては相当出ておる、こういうことは確かに言えます。同時に、企業の合理性という問題とチームワークという問題に対しましては、これはヨーロッパなどのように何回か何回か戦乱でもって無資本になって立ち上がってきた、そういう経験から来る民族的なたくましさというもの、むだをしないという考え方に対しては、確かに日本人は、英知も持ちながら、技術も高い水準でありながら、平均にむだをやる。これだけは確かに日本人の特性であり、戦争に敗れたことのなかった日本人の国民性がこうしてつちかわれてきたのだと思います。がしかし、今度戦争に負けて、これはたいへんだということで努力をしてまいりましたが、これからはだんだんとやはり合理性を持ってきて、売れるか売れないかわからないものをとにかくよけいつくってみずからの首を締めたり自分の同業界を混乱させたりするような悪弊はだんだんなくなってくる、こういうふうな風潮であろうと思う。なぜかというと、これは、いままでは国内的に敵は隣の同業者であったわけですが、今度は世界じゅうの国と競争をしなければならぬわけであります。ですから、兄弟げんかなどをやっていられるような状態ではないのです。でありますから、先ほど申し上げたように、いままでは温室的な半鎖国経済的な中におりましたから、やはり社会の窓も小さく、また考え方も暗かったわけでありますが、その意味で、今度は高いロイアルティーなどを払えば自分がコストダウンできないわけでありますので、そういう意味で、世界の同業者というものと絶えずコストを比較しながら努力をしないと国際経済社会でもって立っていけないわけでありますから、私は、そういう意味で、いままでのようなロスというものは少なくなるし、まじめな経営態度になるであろうと思いますし、同時に、過当な競争をして高いロイアルティーなどを払うような余裕もなくなる、こういうことを考えておるわけでありますが、これは鳥が落ちてくるようなことを待っておるわけにいかないので、政府もあらゆる角度からロスのないように施策をしなければならぬというふうに考えておるわけであります。でありますから、私は、海運の集約化、少し荒っぽいことではございましたが、これなども、いつまでも政府がやってくれるまでほっておく、われわれが力がなくなったのはわれわれの責任ではないのだというような考えでおる者に何か活を入れなければいかぬ、そういう考え方で海運の集約を前提にして各般の施策を行なったわけでありまして、あらゆるものをこうしようというのでは全然ございませんが、国民の自覚に待ちながら、政府もあらゆる施策を行なって、国際競争力に打ち勝つような状態をつくっていかなければならないというふうに考えます。
  108. 松平忠久

    松平委員 私は、開放経済であってもなかなか直らぬと思います。日本の企業体のいままでの意識ですね。そういうやり方は開放経済に向かっても相変らずやっていくのではないか、こういうふうに実は見ておるわけです。そう簡単にこの習性というものは直りません。ですから、それは輸入の面でも輸出の面でもともにあらわれてくると思う。現在、たとえば輸入の面におきましても、従来におけるような過当競争というものは相変わらずやはり行なわれていく。そこに非常にむだというものを私はかかえ込んでいくと思うのであります。輸出の面にいたしましても、いつか、あなたじゃなかったが、大蔵委員会で私も申しましたけれども、かなりダブって合弁事業等を一つの場所で日本の企業体というものはやっているわけであります。それでみすみす利益を失うというようなことを平気でやっております。だから、これはどこかでチェックしていくような強力なものを持たぬと、やはり直らぬと私は思う。このような状態がしばらく続いていくと困難な状態になるから、そのときには思い切った措置をやはりとるということをしなければならぬ。日本のいまの資本家の頭は昔と違います。それはみな三流の重役なんです。これはだめなんです。そのことは私は少し大蔵大臣とは見方が違っているわけです。  それはそれでおきまして、技術導入の件ですが、技術導入の件につきまして日本は留保条件を持っておりますけれども、問題は、技術導入については、加盟国二十カ国でどの国も留保してないわけですね、経常取引として。ところが、日本は、技術提携、技術導入の問題は資本取引、こういうカテゴリーの中に入れておる。それは、そのシェアを持つとか、いろいろの条件がくっついているから資本取引の部類に入っておる。資本取引の部類だから、なるべく留保条件もつけてもいいというかっこうでつけておるわけだけれども、技術導入そのものは経常取引であって、ほとんどどこの国も、これはいわゆる第二流国といえども留保をつけておらぬわけです。ただ、日本は、御承知のような中小企業のこととか過当競争ということで留保をつけておるわけなんですけれども、最終の目標はこれをはずすんだということをやはり言わざるを得ないんです。その点について、OECDの考え方日本政府考え方にギャップがあるわけですね。OECDは、経常取引だ、だからなるべく条件をつけさせないという考え方日本のほうじゃ、資本取引だということで、それをあくまで主張していくという考え方。  そこで、私は伺いたいのは、最終の目標というものはフリーにしちゃうんだということを、これはどうしても言わざるを得なくて、あの声明の中に入っているわけです。そこで、これは外務大臣のほうになるかもしれないけれども、大体十八ヵ月でOECDは再検討をする、こういう条項があります。したがって、一年半たつとこの問題が蒸し返されてくる。あれをはずせ、留保をはずせということになってくる。それでがんばっても、三年目にはまた来る、こういうことになっていくと思うのです。この条項に関する限りは、早く自由化を迫られてくる条項ではなかろうか、こういうふうに思いますが、外務大臣はどう考えておられますか。大蔵大臣でもいいです。
  109. 田中角榮

    ○田中国務大臣 技術導入を経常取引にするか資本取引にするか。これは確かにほかの国はみな経常取引でございます。私のほうは、資本取引ということで、外資に関する法律措置しておるわけであります。これはどっちでもたいしたことはないわけであります。実害があるかないかということでございますから、これは実害は日本においてはないわけであります。長期にわたるものは、資本取引と認定して、外資に関する法律によって措置しているわけです。ただ、これは、特別の留保を取っているんだから、十八カ月後にはまたやめさせられる、少なくともそういう議論が出るだろう、こういう御議論でありますが、まあ普通考えればそうでありますが、私はそう考えておらないのであります。この問題に対して、OECDはもちろん資本の自由化を目標としてはおりますけれども日本が入る場合に、技術導入に対しては留保をするという場合、どうしてするのですかと言うから、日本は戦前・戦中・戦後を通じまして三十年間も実際鎖国状態でありました、しかもいま一年間に技術導入料というものを一億ドル以上も払っているのですよ、しかも日本には世界に例のない中小企業というのがあるので、この中小企業というものは三年や五年や十五年で片づくものじゃないんです、こういう事実を申し述べましたら、これは異口同音にすなおに、もうほとんど問題なく留保を認めておるわけでございます。でありますから、この日本の特殊性ということを十分理解をして、対日コンサルテーションでも非常によく理解していったわけでありますから、まあ次回、その次というような、可及的すみやかにこの留保を撤回しなければならないというようなものではないわけであります。また、同時に、日本が何年も何年もやっているうちに、年間何億ドルも払うような技術導入をこれから何年もしていくというほど日本の技術が低水準であっては困るわけであります。私はさっき申し上げたのですが、日本でも外国に輸出できる技術がたくさんあって、レンズにしろ、御承知の、望遠鏡とか、テレビとかラジオとか、まだまだ精密機械においてもひけを取らないものがたくさんあるわけでございます。OECDに加盟をして留保を取っておるこの技術導入というものが近い機会に撤廃要求にあって日本が非常に混乱をするというようなことは、いま考えておらないわけであります。
  110. 松平忠久

    松平委員 その次に伺いたいのは、商業資本といいますか、つまり、割賦販売制度というようなものによって外国の金融機関なり会社なりが日本に入ってくるという傾向がだんだん増大してきておると思う。昨年でしたか、日本の自動車業界が金に困って、アメリカのゼネラルが金が余っているというので、使節を出して懇請をさせた。そしたら、六億ドル金があると言う。その金を貸してくれと言ったところが、これは実は日本の自由化を待ってPRとして広告宣伝並びに支店開設のために取っている金なんだ、こういうことを聞いてきて、連中はびっくりして帰ってきた事実がございます。したがって、私は、いわゆる耐久消費財のようなものについては、この販売ルートというものが出てきて、相当日本の流通機構に混乱を与えやしないかということを実は心配しているわけです。これに対して、何かこれを規制するというようなことを考えておられるのか、そのままにしておるというのであるか。いま国内で小売り商がスーパーマーケットで困っているというのと同じようなことで、今度は大きな資本によって日本が脅かされるということになるわけなんです。この点についてはどう考えていますか。
  111. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほども申し上げたとおり、日本には中小企業という特殊なものがあるわけでございます。物価を下げなければいかぬ、消費者物価に対しては台所にできるだけサービスしなければいかぬということで、生活協同組合組織ができているわけです。それに対してまた割賦販売ということになるわけであります。でありますから、こういう特殊な事情を十分考えて、少なくとも外国からの消費者金融ともいうべき割賦制度というものに対しては慎重に対処しなければいかぬという考えでございます。確かに二つ三つ持ち込んできておりますが、私たちは、いまこれを許可しようという考えは持っておらないわけであります。消費者物価を引き下げるとか、消費者に対するサービスから考えれば、確かに安くていいものが入るということになれば当然考えなければならないことではございましょうが、日本に消費者金融というものがまだ発達をしておらぬ、こういうことで、日本でできる機械であっても、外国のほうが延べ払いでもってやってくれるので外国から機械を輸入する、それで国際収支さえ悪くなっておるのでございまして、特にそういうものに対処して開銀に対して体制金融のワクをつくったという経緯から考えましても、これ以上一般消費者の中に膨大な資本力を持ってくるということは、撹乱するおそれがありますので、まず、原則的には、日本の中小企業などを絶対撹乱をしないということでなければこういうものを許可しないという考え方、もう一つは、アメリカの品物とか、また西ドイツが西ドイツの品物を持ってきて安く売られてはたまらないので、よしんば許可するにしても、九〇%日本品を売るかとか、せめて八〇%は日本品をやるかとか、この程度の考え方を持っておるわけでありますから、非常に慎重である、このように考えていただいていいと思います。
  112. 松平忠久

    松平委員 もう一つの懸念は、いわゆるノックダウン方式、これが出てくると思う。組み立て工場。いままでの国会審議においても、一体政府は知っておるのか、あるいは国会議員がうかつなのか、ノックダウン方式ではないけれども、貿易の自由化に対してかなりいろいろなミスをしてきたように思うのです。たとえば、トマトジュース、ケチャップ、これは自由化を延期した。ところが、トマトの濃縮したものは自由化になっちゃったんだから、いま久里浜あたりの工場では、濃縮したトマトを持ってきて、日本のトマトを買わない、それでもってケチャップやジュースを製造しておる。こういうばかな、何というか、変なことにしてしまった。それから、去年でしたか、大蔵委員会にかかったところの、例のブドウ酒の原料に干しブドウを使うという酒造法の一部改正ということが行なわれて、今日山梨県その他のブドウ生産地は非常に困っておる。あの少しべたべたしたのをどんどん自由化で持ってくる、こういうことでブドウの生産は日本としては非常に困る、こういうことが現在あるわけです。ですから、私は、いままでも、これは政府のほうでもそういう点についての手抜かりというものがあっただろうし、国会でもあったのじゃないかと思う。大蔵委員会の議事録を見ても、干しブドウを原料にするという一部改正案について、だれもそれに対して発言をした議員がないのです。やってしまってから、これは大ごとだということがいまわかった。こういうような状態なんで、よほど政府はきめのこまかいことをしてもらわぬと、国民に非常な迷惑を与えてしまうおそれがあるわけなんです。  そこで、いま私が申しましたようなノックダウン方式にしても、同じようなことが考えられはせぬか。前半申し上げました自由化のことについては、これはもう通産省の責任であろうと思いますし、あるいは農林省の責任であろうと思いますけれども、組み立て工場等の場合は、これはやはり大蔵大臣の管轄下に入らざるを得ない。これに対しては一体どういう措置をとろうとしているのか。
  113. 田中角榮

    ○田中国務大臣 非常に専門的な御発言でございます。確かにそこは日本の盲点であったわけでございます。戦前も車などを部品で持ってきて品川でもって組み立てたこともある。これはグラハンページなんという車はそういうケースによって持ち込まれた。現在でもそういうようなことがたくさんございます。これは、私がカナダとかアメリカへまいりましたときに、日本人というのはりこうそうであっても案外ばかなんだなあということを私は逆に考えた。外国は全部そういうふうに持ち込んできておるわけです。どうして一体デトロイトあたりの市でフォルクスワーゲンとかヨーロッパの車が組み立てられているか、一体何でやっているんだろう、こう言いますと、製品はなかなか関税が高かったり非常にうるさいというので、材料として半加工のものを自由に持ち込んできて、そうして、ドイツ系のアメリカの国民がおるわけですから、ドイツ系の国民とドイツ本国の資本が提携をしておって、アメリカ・フォルクスワーゲン、こういうような会社でもってどんどんつくってきて、国内で関税なしでもって販売できる。こんなことは商道徳としていいことだとは思いませんし、日本人は、武士は食わねど高ようじ式な考え方でこういうことはしないんでしょうが、まあ、やり方によっては、こっちばかり受けておるのではなくて、先方に対してもやり方はある。私はアメリカの人と話をしましたときに、日本人は、かきねを幾ら高くしても、関税を幾ら上げても、そのかきねを飛び越して入ってくる、いかんともなしがたい猛烈な国民である、こう言うのです。西ドイツなどは、飛び越さないで下をくぐってくる、だから、くぐってくる西ドイツの国民と、幾らかきねを高くしてもそれを飛び越してくる日本人のたくましさを比べると、まあ日本のほうがたくましいんでしょうなと、こういうことでございましたが、これは外国の人さえもそう言われておるのですから、日本が出ていくについてはよくなかった点があったかもしれませんが、やはり入ってくるものは押える、これは当然対抗措置として考えられるわけであります。合法的であるからといって、国内経済が混乱されるものを拱手傍観しているということでは行政にならぬわけでありますから、そういう意味でも、十分ひとつ考えていきたい、こう思います。ところが、私は帰りにハワイに寄りましたら、あのアロハなどは全部生地のままで日本から来るんだそうでありますが、実際は裁ちがみんな入っておるということで、ただ向こうで縫い上げるだけだそうでございますが、形はもうこっちでできているんだそうです。だから、日本にも入ってくるし、日本もぼつぼつとそういう高級なやり方を考えてきたというのが事実のようでありますが、日本人が出ていくことは別にして、日本に入ってくることに対しては、これは行政上大いにひとつ十分細心な注意をして、国内混乱を起こさないということには万全の行政をやりたい、こう考えます。
  114. 松平忠久

    松平委員 時間がございませんし、あとで質問者もあるようですから、あと一点だけ聞いておきたいと思うのです。  観光収入ですね。日本の海外渡航については、OECDにも留保をした。ところが、そのときの留保は、一年一回五百ドル。先方は一年というのを削れということを言ったように聞いておるけれども、これは一年一回五百ドルという制度はどの程度続けていくのですか。ということは、つまり、向こうは一年というのを削れということをかなり主張しているのではなかろうかというふうに思いますが、そういうことはございませんか。
  115. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これも先ほどの技術導入の問題と同じことで、日本の特殊性ということを非常に理解をしております。何しろ三十年間も国民は自由に観光渡航できなかったわけでありますから、その反動的に非常に多くなるだろう、こういうことはIMFでもまたOECDでも理解をいたしておるわけであります。でありますから、いままでは、大体、百万ドルの黒字、二、三百万ドルから六百万ドルくらいの赤字、まあたいしたことはなかったわけでございます。今年度は四月一日から一年一回五百ドルで許可をすることになりましたから、今度は相当出るだろう、しかし、日本人も今度は国際収支のこともこのくらい鳴りもの入りでやっておるから少しは緊張してくれるかと思っていましたが、外務省の窓口には、四月一日にもう三倍、こういうのでございますから、日本人のたくましさはいかんなくここであらわれておるわけであります。でありますから、私がやはり十万円ずつの出国税を取ろうか、こういうことを考えたのもあながち無理じゃなかったということは証明されたわけであります。これは、IMFでも、私が十万円の出国税を取らざるを得ないだろうと言ったときに、IMFは初めは反対しなかったのであります。これは国内の財源確保ということでやるんですから、IMFとは関係ない、こういう私の発言に対して、お取りになることは私のほうで何とも言えないのでございますが、このくらいたくましく日本が成長して、錦上花を添えるということもございますので、そういうものはお取りにならないほうがいいのではないですかということしか言わなかったのでありますが、その後、評判も悪いし、取りやめたんですが、私は非常に心配しておったわけであります。こういう事実をIMFでもOECDでも非常によく知っておりますから、正常な状態になるまで、最上の施策ではありませんが、やむを得ずして、一年一回五百ドル、こういう制限をしたわけでありますから、これに対して早急に撤廃しろというような議論はいままでもありません。私は、当分の間ないものだ、その当分の間にひとつ日本の観光対策等もやりまして、こちらの受け取りもひとつ十分多いようにいたしたいと考えております。イタリアは年間七億ドル余の観光収入で国際収支に寄与しておるわけでありまますが、日本は逆であります。ことしは四月一日から自由になりますから、相当程度出ると思いますけれども、ちょうど九月の一旬にIMFの総会があります。同時に、引き続いてオリンピックの大会がありますので、今年度は、出ることも出るけれども、入ることもありますので、非常にいい時期に自由化をした、こう言えるわけでありますが、来年はオリンピックはないのでありますから、そういう意味でひとつ国民にも大いにPRして、これからはもういつでも行けるのでありますから、まず国内の観光を先にしていただいて、それから、こういうことをひとつ大いにPRしよう、こう考えております。
  116. 松平忠久

    松平委員 そこで、一体観光の収支はどう考えておりますか。ことしは、支出がどの程度で、収入がどのくらいあるか。
  117. 田中角榮

    ○田中国務大臣 三十八年度で海外旅行の受け取りが六千七百万ドル、それから支払いが七千六百万ドル、去年は、支払いが五千六百万ドル、それから受け取りが五千八百万ドルでありますので、二百万ドルばかり黒字でありますが、今年度は、四月からの自由化で五千万ドルぐらいよけいになるのではないか、こういう見通しを私は立てておるわけです。五千万ドルというと、いままでの約六割方ふえる、こう見ておるわけですが、そのくらいはIMFの総会とオリンピックで来るということを先ほど申し上げたわけですが、来年はそういうことはないというので、少なくともことし一ぱいに観光収入でこちらが受け取り超過になるにはどうすればいいかを考え、また、受け取り超過になるまでは、ひとつ出ることは御遠慮というか、いつでも出れるのですからということは、大いにPRしなければいけないと思います。
  118. 松平忠久

    松平委員 あとのことはまた大蔵委員会でやることにいたしまして、きょうはこれでやめます。
  119. 臼井莊一

  120. 松井誠

    松井(誠)委員 大蔵大臣は時間がないようですので、簡単に一、二点だけお伺いをいたしたいと思うのです。  今度OECDに加盟をすることによって資本取引が自由化される。その結果、この場合技術導入を含めてですけれども、外資導入の将来がどうなるだろうか、こういう問題について簡単に見通しをお尋ねをいたしたいと思うのです。  いま松平委員から技術導入の話がございましたけれども、先ほどの大臣の御答弁ですと、これは私はことばじりをつかまえるのではありませんが、むしろこれからあとはいままでよりも技術導入は少なくするような指導をする、あるいは少なくなるような見通しであるという趣旨に伺ったのでありますけれども、そのようにお考えになっておるわけですか。
  121. 田中角榮

    ○田中国務大臣 三十五年、三十六年、三十七年、三十八年と、こう見ていきますと、確かに件数もふえております。ふえておりますが、今度は完全に八条国に移行するわけでありますし、目も肥えてまいりますし、外国の製造業者とコストで争わなければいかぬということでありますから、いままでのように外国から技術を導入すれば自分の会社はもうかるのだというような安易な考え方はなくなるわけでありますので、いままでのようにやみくもにというような状態ではなく、業者自身が非常に慎重になるであろうということは言い得るわけであります。同時に、いままで導入したものが日本の技術水準を高めてきておるわけでありますから、何でもかんでも入れなければならぬというような状態ではなく、特殊なものに限っては相当技術水準の差が縮まっておりますので、幅が非常に大きいときと比べて、技術導入の量、件数というものがふえるとは、常識的にも考えられないわけであります。しかし、促進提携とかそういう問題は、新しいケースとして、自由化になりますとある時期起こり得ることだと考えます。
  122. 松井誠

    松井(誠)委員 技術導入の結果、過当競争の問題があり、もう一つは中小企業に対する影響という問題がある。それで、技術導入というものはそういうものを理由にして留保をしておるわけですけれども、先ほどの大臣の御答弁ですと、日本の過当競争というのが日本の資本家だけの特性であるかのような印象を私は受けたのですけれども、これは、しかし、程度の差はあるにしても、過当競争というもの、あるいはその資本家のエゴイズムというものは、資本の本来の性質ではないかと思うのです。そこへもってきて、このような非常に過当競争が起きてきた日本の特殊事情としては、先ほどもちょっとお触れになりましたように、技術の低さという、技術の面における日本の後進性、それで悪ければ中進性でもけっこうですけれども、そういうものがあったわけだと思うのです。したがって、大臣が盛んに愛国心を鼓吹されて、そうして精神訓話をされても、それだけではこれはなかなかうまくいかない。やはり、資本が持っておる本来の衝動であり、そして日本のそういう資本主義というものの構造から来る問題であるとすれば、相当大きな考え方を持たないとうまくいかないのではないかと思うのです。  そこで、お伺いをしたいのですけれども、先ほど大臣も言われましたが、中小企業に対する影響というものが留保の一つ理由になっている。いままでの日本の技術導入というのは、ほとんど全部と言ってもいいくらい、大資本、超大企業のための技術の導入であったわけですけれども、最近、技術の導入というものが多少頭打ちになる、これは、技術革新というものがおよそ一巡をして、一巡をしたということからあるいは技術の導入が多少下火になるということがあるかもしれません。しかし、逆に言えば、そういう技術の導入が一巡をした結果、今度はまた、さらに新しい技術革新、それだけにほんとうに超大企業でなければとり入れることができないような技術革新というものがあり得るとすれば、現在の日本の中小企業の状態をそのままにしておいたのでは、中小企業に影響のないような形の技術導入というのはあり得ない。さっきの大臣の話ですと、五年や十年で日本の中小企業のこういう特殊な状態がなくなるわけではないのだという説明をしたら了解したと言うのですけれども、逆に言えば、そういう中小企業の保護を理由にして技術導入に対するチェックをするということは、五年、十年先までOECDの機構では認めてくれるというような見通しなんですか。
  123. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私たちのほうでは、日本の技術水準ができるだけ早く上がって、スクリーンなどをしなくても、どうぞいらっしゃいと、そういう状態になることが好ましいわけであります。それでまた、今度は逆に、日本の技術水準が上がって、日本が技術輸出国になる、こういうことに将来したいというのが政府の考えでございます。私は日本の中小企業の状態も十分考えながら今度留保したわけでありますが、三十年間も鎖国をやっておった反動でありますからこういうことでありますが、少なくともこれから技術導入は可及的すみやかに少なくするというような考え方で、全く日本の製造工程を変えるとか、新しいものをまるまる入れるとかいうような状態になるという心配は、大体一巡した今日、ないのじゃないか。日本は低水準だ低水準だと言うのですが、日本の技術は高いのですぞ、ほんとうにこれは。この間など、ある人が中共とソ連へまいりましたらすばらしい工場があったと言うのですが、私は、そうですか、あなた日本のナショナルの工場なんか見たのですかと言ったら、いやそんなもの見ませんと言う。ナショナルの工場などは世界で最高の水準にあるのです。これは、西ドイツの技術屋が来て、日本にかかる水準のものがあるのか、こう思ったぐらいに、ナショナルの工場はとにかくおそるべき高水準にある。これは日本の製鉄業者でもそうです。八幡でも、川崎でも、富士製鉄でも、アメリカの連中が自分で金を貸しておって、そして世銀の連中が来て、どうして一体こんなに早くよくなったのだろう、こう言うぐらいに、非常なテンポで今日発展しておって、操短をしなければならぬという状態にあるのですから、少なくとも、いままでの技術導入の結果というものは、かくのごとく操短をしなければならぬぐらいによくなったのでして、これからまだまだ月旅行でもするということになれば別ですが、私はそういうことはあまり考えないでいいと言うのではなく、まず入らぬように大いにやろうというのでございますし、必要やむを得ざるもの以外はできるだけセーブすべきだということでスクリーン制度を考えておるわけであります。これから十年も十五年も中小企業の問題があるのでOECDが認めるかということの答えにはならぬと思いますけれども、これは、お互いに、十年も十五年もそんなことを延ばさないように、ひとつ与野党協力一致して日本の技術革新に御協力いただきたい、こう考えております。
  124. 松井誠

    松井(誠)委員 私も技術のことはきわめて弱いのですけれども、統計の教えるところによると、日本外国から技術のロイアルティーをもらうそれの比率と、日本が払っておるそれの比率とでは、外国に比べて後者のほうが非常に低いのですね。確かにそれは終戦直後のようなああいう状態から見れば長足の発展をしたに違いないけれども、やはり、国際的に見れば、なるほどあなたがいま言われたように、超大企業、世界一流の企業も日本にあるわけですけれども、そういうものはまだきわめて少ない。そういう中で過当競争というものをなくするためには、単なるお説教だけではだめなんで、やはり、技術の進歩という裏づけ、そういう構造的な変化がなければどうしてもだめだろうと思うのですが、この点は大臣のいまの御答弁で終わりたいと思います。  もう一つ、直接投資のことについて、大体これの見通しはどうなるだろうかということをお尋ねいたしたいわけです。政府では、外為法や外資法はいまの法律のあれをあのままにしておいて、ただ運用でやっていこう、それでまかなっていこうということを考えておられるようですけれども、しかし、少なくともいままでと運用の方針が百八十度の転換をするわけですから、したがって、具体的にやはりいままでの取り扱いと違った、法律の形式や体裁はそのままにしてあっても、現実に違った取り扱いをせざるを得ないのじゃないかと思うのです。そこで、そういう問題について、たとえば経営参加的な株式の取得、これに制限がある。そういう制限についてこれからあと具体的にどういうようにお考えになっておるか。あるいは業種についてなどの制限がある。その業種というものについて、現状のままで、現在の業種のまま将来やっていかれるかどうか、そういう将来の具体的な見通しというものをお持ちかどうかをまずお伺いをいたしたいと思います。
  125. 田中角榮

    ○田中国務大臣 この問題に対しては三つの段階があるわけでございます。その一つは、現在の段階、それからOECD等の国際機関からいろいろの問題を制約される場合、第三点は、二国間でいろいろな問題等があります。良質な外資はこれからも導入をしていくということでございます。しかし、日本の産業、特に中小企業等に影響のあるものに対してはスクリーンをするということでございます。いま、業種に対しては、何業種というのではなく、すべての業種に対してスクリーンできる体制になっておるわけでございます。これも法制上は非常に自由化の規定はゆるやかでありますから、これがスクリーンができないというような支障はないわけであります。ですから、日本の企業に影響のあるようなものに対しては、関係各省間で十分連格をとりながら結論を出しておりますから、このような法制下において現在は行政上支障はないということでございます。しかし、将来の問題として一体どうなるかということでございますが、日本が国際競争に耐えていけるような資本蓄積ができて、戦前は自巳資本比率六一%、現在は二五%を割っているという惨たんなる状況でございますが、こういう状態であるからこそいろいろな問題があるわけであります。戦前は、御承知のとおり、電力とか鉄道とか、そういうものに外資が全部入ったのですが、外国に取られるというような心配もなかったし、日本人のその後の経済成長のたくましさですべてのものを補ってまいったのですが、日本は消費市場として戦前とは違いまして非常に高いまた広い市場になりましたので、世界的に見ても戦前とは違って今度は相当食指が動くということは言い得るわけでありますので、戦前がどうであったから戦後はだいじょうぶだというような考え方は持てないわけであります。でありますから、私たちは、国内産業の状態を十分考えながら、現在のスクリーンをしコントロールをしていくという制度は続けていきたいという考えでございます。いまこの問題に対してOECDその他から問題を提起して何年間でやめなければいかぬというような考え方はありません。特に、OECDに加盟しますと、御承知のとおり、全会一致制度をとっておるわけでありますので、事実上日本が主張すべきところは大いに主張できるという利点があるわけであります。そういう意味で、一方的に裁判をされるような状態では困るので、OECDの正式メンバーになることによって共同の利益を享受しようというところに本条約加盟の趣旨があるわけでございますので、ひとつこの条約を早く通してもらうことによってそういうことがないようにしたい、こういうのが政府の考えであります。
  126. 松井誠

    松井(誠)委員 だいぶOECDのPRをされたようですけれども、私がお伺いをしたいのは、抽象的な運用の方針ではなくて、これはもう当然そういう心がまえでやることを決意をしたからOECDに入ろうということなんです。株式取得の制限について現行のワクを動かすという意思があるかどうか、あるいは動かさざるを得ないというところへいくおそれがあるのじゃないか、あるいは、業種によって制限をしているその業種というものについて、この業種の幅は多過ぎるじゃないか、もう少し狭めろというような要求があり得るのじゃないか、そういう問題について具体的にお伺いをしておる。
  127. 田中角榮

    ○田中国務大臣 持ち株比率の制限を変えるかということでございますが、これは、バイ・ケースで非常にこまかく検討してみないと、なかなかこれを変えるという状態にはならぬわけであります。これは、先ほど申し上げたように、自己資本比率が非常に大きくなって外資を入れてもいいというような状態になれば、これは別でございますが、そういう状態が招来されるまでは一つずつの業種によってその事態を検討しないと、これを変えるというようなことはにわかに申し上げることはできません。
  128. 松井誠

    松井(誠)委員 もう一つ、円ベース投資のことなんですけれども日本の覚え書きによると、そういう投資の現状及び総額は現在把握されていない、そういう円ベース投資の実情を調査した後にこれの取り扱いをどうするかをきめようということが書いてあるわけですけれども、この円ベースという形で、外貨送金を認めない形で投資をされたもの、それが現在大体把握をされたか、そうして、それの送金についての取り扱いは具体的にどうされるつもりなのか、そういう点について方針がきまっておりましたらひとつお聞かせを願いたいと思います。
  129. 田中角榮

    ○田中国務大臣 元本が一億四千万ドルでございます。年間の利子が千三百万ドル。円ベース投資につきましては、元本・果実の送金を認めないということで、株式投資その他国内投資に向けられておりますが、こういうものも、八条国移行というような時期を契機にしまして、できるだけ早い機会にこれを自由に送り返せるようにすることが、国際的には前向きな体制でございます。といって、条件づきでもって入れさしたものでありますから、こちらから送金をさせるということになれば恩典を与えるわけであります。でありますから、そう向こうがやいやい言うからさっそくこれをやろうというような考えではなく、国際収支の動向等も見ながら徐々に送金を許すというようなことが好ましいことだ、こういう考え方を基本的には持っておるわけであります。
  130. 松井誠

    松井(誠)委員 そういうことにならざるを得ないと思いますけれども、その方針について、具体的に、何年なら何年というようにしてやるとか、そうでなしにケース・バイ・ケースで取り扱いをきめるとか、そういう大体の方針はきまっておいでだと思うのです。その点はどうですか。
  131. 田中角榮

    ○田中国務大臣 特別勘定をつくって、その中にみんな入れさしておきまして、年末残高の五分の一もしくは二千ドルというようなワクをつくって送らせるというようなことを、いま事務当局では考えているらしいです。      ————◇—————
  132. 臼井莊一

    臼井委員長 道路交通に関する条約締結について承認を求めるの件、自家用自動車の一時輸入に関する通関条約締結について承認を求めるの件、以上両件を一括議題とし、提案理由説明を聴取いたします。大平外務大臣
  133. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました道路交通に関する条約締結について承認を求めるの件及び自家用自動車の一時輸入に関する通関条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案の理由を一括して御説明いたします。  道路交通に関する条約は、一九四九年八月二十三日から九月十九日までジュネーブで開催された道路輸送及び自動車輸送に関する国際連合会議において作成された条約でありまして、その前文に述べられておりますように、国際道路交通の発達及び安全を促進するために統一規則を定めたものであります。すなわち、この条約は、自家用自動車の一時輸入について与えられることがある通関上の便宜について規定するとともに、これらの自動車については新規の登録を免除し、運転者については国際運転免許証の効力を認め、同時に国際交通の安全を確保する見地から締約国の道路交通規則を一定の基準に合致させることをその内容とするものであります。  また、自家用自動車の一時輸入に関する通関条約は、道路交通に関する条約を補完する目的をもって、一九五四年五月十一日からニューヨークで開催された自家用自動車の一時輸入及び観光旅行のための通関手続に関する国際連合会議において、わが国がすでに批准した観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条約及びその追加議定書とともに作成されたものであります。この条約は、この条約に基づく一時輸入書類と称する税関用の書類の使用により所定の条件を備えた一時旅行者が持ち込む自家用自動車について再輸出を条件として免税一時輸入を認めること、そのための手続を国際的に統一することを内容としております。  この二つの条約の参加国は、道路交通条約については七十カ国、一時通関条約については四十七カ国を数えておりまして、わが国も一時通関条約につきましては一九五四年十二月二日に署名を行なっております。  わが国がこれら二条約に参加いたしますと、わが国から他の締約国へ旅行する者のみならず、わが国を訪問する外国人旅行者も自家用自動車の通関手続の簡易化及び新規登録の免除、国際運転免許証の使用等、これら二つの条約に基づく便宜を与えられることになる次第であります。このことは、国際間における人的交流を促進するという面において国際協力及び国際親善の増進に資するのはもちろんのことでありますが、さらに、オリンピックの本邦開催を控えている現在、わが国の観光政策の振興にも寄与するところが大きいものと思われます。  よって、ここにこれら二つの条約締結について御承認を求める次第でございます。何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  134. 臼井莊一

    臼井委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。      ————◇—————
  135. 臼井莊一

  136. 松井誠

    松井(誠)委員 資料を一つお願いをいたしたいと思うのですが、私の記憶では、OECDについて前に平岡委員から、いわゆる二百幾つにのぼる機構の文書について、ちょっと表目の資料はもらったけれども、その具体的な内容についての資料はない、これではしょうがないからというような要望があったと思うのですけれども、私はその二百幾らを全部というように申すつもりはありませんが、しかし、この中で、表目だけを見ますと、これは一体どういう内容なんだろうかということで、その内容について検討をしたいと思われるような項目がないわけではありません。そこで、そういうものについてひとつ次回までに提出していただきたい。大まかな分類や大まかな説明は別に資料をいただいておりますけれども、たとえば原子炉の保護基準についての決定というのはありますけれども、これについてもその具体的な内容説明は全然ございません。したがって、これが、放射能の保護基準をどうきめて、どういう取り扱いをしようとする趣旨の決定であるのか、かいもく見当がつかない。これではしょうがないと思うのです。私は全部ほしいとは言いませんけれども、その中で、ちょっと見ましても、たとえば漁業政策についての決定というのもあります。これは中身を見なければわかりませんが、そういうように、やはり非常に重要な影響を持つと思われるものについて、その選択はしようがありませんから外務省にまかせますが、そういうものについて、内容についての資料、単なる項目とか、あるいはきわめて簡単な要約だけではなしに、もう少し詳しい資料を提出をしていただきたいと思います。
  137. 中山賀博

    ○中山政府委員 私のほうで、先般来平岡先生とも御相談しまして、非常に文書が膨大なものですから、御希望のところだけを差し上げたわけです。したがって、私、いまここに残っておりますから、御関心のある点を言っていただけば、それを抜き書きにしてお渡しするようにいたしたいと思います。
  138. 松井誠

    松井(誠)委員 この間いただいた資料というのは、自由化規約のあれですよ。そうではなしに、付属文書、いわゆる機構の文書と称される、理事会の決定なり、勧告なりについてのことです。
  139. 中山賀博

    ○中山政府委員 承知いたしました。
  140. 臼井莊一

    臼井委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後五時十一分散会