○大平国務大臣 先般の
委員会で
松井委員から御質疑がありました点、すなわち、
OECD条約の了解覚え書きについて国会の
承認を求めなかった理由につきまして、
政府の見解を御
答弁申し上げます。
OECD条約に加入するには
加盟国の全会一致による招請を受けることが必要であり、また、その招請を受けるためには、加入しようとする国が加入の上は
加盟国の義務を受諾する用意があることが前提とされております。これは
条約第十六条に明記されております。
しかして、ここでいう
加盟国の義務とは、原則として加入前に
OECDの
理事会がすでに採択済みの決定及び勧告から生ずる義務が主たるものでありますが、元来、
加盟国は、かかる決定等が採択される際、それぞれ棄権または留保を付することができたわけでありますので、新加入国についても、加入の際、すでに採択された現存の決定等について、ある
程度棄権なり留保なりを行なうことが認められるのが公平の原則に従うゆえんであると思います。
この了解覚え書きはかかる
趣旨からつくられたもので、要するに、わが国としては、国会の御
承認を得て正式に
OECDに加入する場合、第十六条の規定により原則として採択済みの
OECDの決定等に従うこととなりますが、その範囲はどの範囲までであるかを具体的に確認したものであります。つまり、わが国が既往の決定が採択された当時に
加盟国だったならば、
理事会における表決に際し棄権なり留保なりによって行なったであろう義務の免除を加盟に際して一括して行なうこととしたものであり、そのような棄権、留保等の措置は、本来
政府限りで行ない得ることであります。したがって、了解覚え書きについて直接国会の御
承認を得る必要はないと
考えたわけであります。
なお、
OECDは、その前身であるOEEC時代に採択した決定等の相当部分を継承しておりますが、OEEC時代
加盟国でなかった米国及び
カナダが
OECDの
加盟国になるに際して、同様の問題があり、類似の了解覚え書きができておりますが、これらについても、米加いずれも国会の
承認の対象にいたしておりません。
次に、二つの自由化規約を国会の
承認の対象としなかった理由について御
説明いたします。
両自由化規約はいずれも
理事会の決定でありますが、両規約を含め、一般に
OECDの決定の法的性格について御理解願いたいと思います。すなわち、
OECDは、第二条、第三条に明らかなように、元来
加盟国間の協議ないし政策調整を目的とするものでありますから、決定によって直接
加盟国の国民の
権利義務に
影響を及ぼすというようなことを意図してはいないのであります。決定は、すべて、各
政府がそれぞれの権限に基づいてその内容を実施するという目的でつくられておるものでありまして、
政府限りの権限で実施し得る事項につきましてはそれを実施する義務を負うわけでありますが、実施するについて法律の制定なり改廃なり所要の
国内手続を要するものについては、かかる手続要件が満たされた上で初めて実施すれば足りるものであります。
なお、
理事会の決定は、これに賛成した者の署名すら要せずに機構の決定となるたてまえをとっており、かつ、国による受諾を何ら成立の要件といたしておりません。つまり、この国際機関の意思決定を
条約として取り扱うことは、そもそも
OECD条約の
趣旨ではないのであります。
いま申し上げましたことは、
OECD条約第六条三項に明記されておりまするし、現に現
加盟国の措置ぶりを調査いたしましたところ、どの国も両規約を含め既存の決定についてこのような
考え方をとっており、
条約締結のような国会
承認手続は一切とっておりません。さらに、このことは
OECD事務局の法律専門家の確認をも得ております。
したがいまして、決定が自動執行的に実施されるものではなく、すべて法律の範囲内においてのみ実施されるものでありますので、国会の御
承認は必要としないと
考える次第であります。
以上、先般未了になっておりました御
答弁を申し上げました。