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1964-03-18 第46回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十八日(水曜日)    午後一時四十八分開議  出席委員    委員長 赤澤 正道君    理事 椎熊 三郎君 理事 正示啓次郎君    理事 高瀬  傳君 理事 古川 丈吉君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       鯨岡 兵輔君    佐伯 宗義君       竹内 黎一君    野見山清造君       濱地 文平君    福井  勇君       赤松  勇君    平岡忠次郎君       松井  誠君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房審議         官)      藤崎 萬里君         外務事務官         (経済局外務参         事官)     平原  毅君         外務事務官         (条約局国際協         定課長)    徳久  茂君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    中島 清明君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 三月十三日  遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約の  締結について承認を求めるの件(条約第一三  号)(参議院送付) 同月十六日  沖縄住民国政参加に関する請願(石橋政嗣君  紹介)(第一三四七号)  同外一件(井岡大治紹介)(第一三四八号)  同外一件(井岡大治紹介)(第一四一九号)  同(稻村隆一君紹介)(第一四二〇号)  在日朝鮮公民祖国往来自由実現に関する請  願(大柴滋夫紹介)(第一四二八号)  同外十件(二宮武夫紹介)(第一五一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済協力開発機構条約締結について承認を求  めるの件(条約第一号)  千九百六十二年の国際小麦協定締結について  承認を求めるの件(条約第七号)(参議院送  付)     ————◇—————
  2. 赤澤正道

    赤澤委員長 これより会議を開きます。  平岡君。
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員 資料提出方につきまして、重ねて政府要求いたします。  先般OECD文書提出を求めましたところ、確かに配付されましたが、ごらんのとおり、配付されたものはOECD文書一覧表としてタイトルだけの羅列でありまして、ものの役に立たないのであります。むろん、二百四十五もありますので、政府としても用意しかねたろうと思いますので、私は、この際あらためてこの項目をしぼって提出方をお願いしたいと思います。すなわち、昨年の五月の東京交渉のおりに討議の対象となった項目は、当初におきまして九十近くのもの、中途におきましてしぼったもので恥六十四項目あったはずであります。最終的には十七にしぼられたわけですが、少なくともこの六十数項目ないし九十項目に近いものにつきましては、内容をやはり、ダイジェストしていただいたものでけっこうですが、出していただかないと、討議資料になりませんので、そのようなお計らいを委員長から政府に向かって要求していただきたいと思います。そのお取り計らいをお願いいたします。
  4. 赤澤正道

    赤澤委員長 ただいま平岡君の御要求がありましたが、政府はその資料の御提出を願います。何かその資料提出について政府側の御意見がありましたら、述べていただきます。
  5. 平原毅

    平原説明員 御趣旨に沿いまして、できる限り概略わかりいいようにまとめて提出したいと思います。
  6. 平岡忠次郎

    平岡委員 来週、再来週にOECD審議がかなり緒につくと思うので、その前になるべく早い機会に御提出にならないと、審議自体がやはりおくれることになろうと思うのですが、その辺のところをひとつ心得て早急にお出し願いたいのですが、おおむねいつごろ出ますか、お聞かせ願いたいのです。
  7. 平原毅

    平原説明員 まあなるべく、ただいま仰せのタイミングを考えまして、できる限り早急に出したいと思います。
  8. 平岡忠次郎

    平岡委員 けっこうです。      ————◇—————
  9. 赤澤正道

    赤澤委員長 千九百六十二年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  松井誠君。
  10. 松井誠

    松井(誠)委員 国際小麦協定について一、二点お尋ねをいたしたいと思います。  これは、私、実はよくわかりませんで、文字どおり質問でありますけれども、具体的にこの小麦協定が果たしておる機能といいますか、そういう面をはっきりお聞きをいたしたいと思うのです。  そこで、最初にお伺いをいたしますのは、世界全体の小麦貿易取引量の中で、この協定ワクの中で行なわれる取引がおよそ何割くらいを占めておるか、およその数字でけっこうですけれども、お教えをいただきたいと思います。
  11. 中島清明

    中島説明員 大体世界小麦取引の約八四%程度でございます。
  12. 松井誠

    松井(誠)委員 私は、ここにないですけれども、外務省経済局か何かで出しておるあれでは、四割くらいと書いてあったと思うのですけれども、違いますか。「国際経済機構ABC」という本に、世界貿易量の約四割がこのワクの中で行なわれている、そのように読んだんですけれども、違いますか。
  13. 徳久茂

    徳久説明員 参考資料としてお配りいたしました一九六二年の国際小麦協定に関する参考資料、これの十三ページ、十四ページに、いま御質問のございました点の数字が出ております。いま八四%と御答弁がありましたのは、この最後の欄に「世界取引との比率」というのがございまして、一九五九年−六〇年度が八四%ということになっております。六二−六三年度が九二%であります。これは世界取引から特殊取引を除いたものの比率がこういうふうな数字になっているわけでございます。
  14. 松井誠

    松井(誠)委員 この特殊取引というのは、商業ベースによらない援助というような、そういうものだけなんですか、あるいは、この小麦協定ワクの外における商取引もこの特殊取引に含まれているのですか。
  15. 徳久茂

    徳久説明員 協定の第三条で、「特殊取引」と申しておりますのは、「関係国政府により通常商業的慣行に適合しない特殊性を付与された取引をいう。」、具体的に申し上げますと、政府が介入し、その条件通常商業的条件に合致しない信用供与に基づく売り渡し、借款による売り渡し、それから、交換できない現地通貨による売り渡し、そういうものが入っております。
  16. 松井誠

    松井(誠)委員 たとえば去年あたりのソ連の大量の小麦買い付け、こういうものはこのワクの外ですね。
  17. 徳久茂

    徳久説明員 御質問がございましたのは、ソ連買い付けました小麦の問題でございますが、それは、この協定で申しております特殊取引ではございませんで、商業ベースによる取引ということでやっております。
  18. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから、その特殊取引でない商業ベースによる取引で、これは小麦協定による取引でもそのワクの中における取引でもないわけでしょう。
  19. 徳久茂

    徳久説明員 商業取引でございますので、その協定で申しております取引に該当するわけでございます。
  20. 松井誠

    松井(誠)委員 そうですか。ソ連は、この小麦協定に入ったのは、小麦輸出国としてですか、輸入国としてですか。
  21. 徳久茂

    徳久説明員 協定に入りましたのは輸出国として入っておりますが、輸出国として入りました国が輸入する場合、これは協定上の条項がございまして、八条(3)項で、「附表Bに掲げる国で」——これは輸出国でございますが、「小麦の買入れを希望するものは、価格帯内の価格輸出国から自国の要求数量を買い入れるように、また、その要求数量を満たすにあたってはこの協定の実施を害するようないかなる行動をとることも避けるように、できる限り努力するものとする。」、こういう規定がございまして、これにのっとって買い付けをやっておるわけであります。
  22. 松井誠

    松井(誠)委員 私がお聞きしたいのは、世界全体の小麦取引数量の中で、この小麦協定による取引数量が幾らあって、この協定ワク外における取引数量が幾らあるかということを実はお聞きしたかったわけですけれども、   〔委員長退席高瀬委員長代理着席〕 そのことを私がお聞きするのは、この協定協定価格と、それから協定外取引における市場価格というものとがどういう関係になっておるだろうかということをお尋ねしたかったわけです。その点、これはもらった資料に一部ありますけれども、一九五〇何年でしたかまでは協定価格市場価格とが開きがあった。五三年になりますか、そのころからは協定何格と市場価格とが一本になった、そういう資料をいただいておりますけれども、これはどういう事情でこういうことになるわけですか。
  23. 中島清明

    中島説明員 国際小麦協定は、実は価格最高最低の幅がございまして、相場最高価格以下の場合におきましては、輸入国はその輸入量一定割合加盟国から買う義務がございます。そして、もし市価最高価格を上回ります場合には、今度は逆に輸入国のほうは過去の五カ年のうちの最近の四カ年の輸入量加盟輸出国から買う権利がございます。したがいまして、輸入国にとりましては農高価格以下でいずれにしても小麦輸入ができる、こういうたてまえになっておりまして、実は、いま先生が御指摘になりましたように、この協定の初期におきまして価格最高価格に達したときもあるわけでございます。その際には最高価格輸入ができた、それ以後は世界価格がいずれも最高最低の幅の中におさまっておりますので、その幅の中の価格加盟輸出国から輸入をしておるというのが実情でございます。
  24. 松井誠

    松井(誠)委員 ちょっとよくわからないのですけれども、この協定価格のその価格帯の中で一つ価格ができる。その価格は、自由な市場価格といいますか、そういう協定ワクの外における商取引の結果生じてくる市場価格と、一体どっちがどっちにさや寄せをするという現象が起きておるのか。こういうことをお尋ねをするのは、この小麦協定というのは、当初は知りませんけれども、最近は、少なくとも過剰生産で、元来下がるべき価格がこの協定価格で下ささえをされて、市場価格よりも高く保たれておるのじゃないかということを私は疑問に思うものですから、一体この価格の形成というのはどういう形でできるのか、それを実はお伺いしたい。
  25. 中島清明

    中島説明員 実は、この協定の仕組みは、協定最高価格最低価格というものをきめておりますが、協定による価格というのは、協定上何ドルで売るとかいう価格はないわけでございます。したがいまして、実際の輸入価格は、それぞれの要するに相手国との交渉によりまして、そしてその価格でもって買い付けをすることになりますので、価格最高最低の幅の中にありますれば、もちろんそのときの市価買い付けをすることになりますし、もし市価が非常に高騰いたしまして最高価格を上回るような事態になりますと、小麦協定理事会最高価格宣言というものを出すわけでございます。その最高価格宣言を出しました後におきましては、輸入国加盟輸出国から最高価格で買い入れができる権利が生ずるわけでございます。  そこで、いまお尋ねのございました、非常に過剰だから下ささえをしているのではないかというお尋ねでございますけれども、確かに、この二、三年前には、小麦在庫もふえまして、供給も過剰というようなこともございましたが、それを特定の最低価格というようなものをつくって特に価格値下がりを防ぐというような効果はむしろあまりなかったので、確かに過剰状態価格下落ちぎみにはなっておりますけれども、なお最高最低の幅の中に入っております。したがって、私どもは、この協定に入れば、いまの最高最低の幅の中で安定した価格による買い付けができる、それがこの協定の大きな効果であろうというように考えておるわけでございます。
  26. 松井誠

    松井(誠)委員 依然としてよくわからないのですけれども、去年はソ連のああいうことがありましたから別としまして、その前数年は確かにもう過剰ぎみであったと思うのです。それにもかかわらず低開発国の一次産品のように激しい値下がりをしなかったというのは、それはこの協定の結果なんですか、あるいは協定以外の原因によってそういうことになっておるのですか。
  27. 中島清明

    中島説明員 非常にむずかしい問題でございますが、協定では一応最高が二ドル二セント五十、最低が一ドル六十二セント五十、その間に価格を安定させるというのが協定最高最低の幅になっております。なお、一九五九年から六二年までの旧協定におきましては、最高が一ドル九十セント、最低が一ドル五十セントでございました。そこで、一九六〇、六一年においては一応一ドル六十九セントというような水準にございまして、まだいわゆる協定最低価格との間には一ブッシェル当たり約二十セントの差がございます。それから、六一、六二年には、一ドル八十一セントというような水準で、約三十セント上回っております。六二、六三年はほぼ同じような水準でございます。  そこで、なるほど過剰というような状態はございましたけれども、現在の需給関係では、まだ協定の線に近いようなところまで価格が下がるという事態には相なっておりませんので、いまの現状のこの程度価格水準であれば、特にこの協定があるために世界小麦価格を高い水準に押えたということは言えないように思われます。
  28. 松井誠

    松井(誠)委員 あなた方に、責任ある答弁といいますか、そういうものをお願いするのは無理かもしれませんけれども、たぶんこれは外務省で書いたものでしょうが、さっきもちょっと言いました「国際経済機構ABC」という本があるでしょう。その中に低開発国の等一次産品のように激しくなかったのは、この輸出国が主として先進国であるという理由と、それからもう一つはこの協定の作用というように書いてあるのですが、低開発国の一次産品値下がりをするのに先進国の一次産品はなぜ値下がりをしないのか、元来下がるべきものをこの協定で下ざさえをしているとすれば、われわれは低開発国の犠牲において高いものを買っているということになるのですが、そういう現象が一体あるのかないのかということをもう少しお聞きしたい。
  29. 平原毅

    平原説明員 実際問題といたしまして、過去においてこの小麦協定最下限価格が達したためにそこで押えられたという例はございません。いまおっしゃいましたように、実際問題といたしまして、小麦生産国と申しますのは、御存じのように、主としてアメリカカナダ、こういういわゆる先進国農業国と申しますか、そういう国々でございまして、こういう国々は、過剰生産の場合も、たとえば四千万トンというようなストック政府の力で押え、それを市場に出さないということによりまして、まず自分の国の国内価格食料政策の面から価格をあまり下げたいようにしております。したがって、こういうカナダアメリカというようなところでストックをかかえました場合は、天然の経済原則というものは作用せず、ストック流通面から横に置かれるということで価格が維持される、こういうことでございます。したがって、過去におきましては、この協定最下限に達してしまったためにそこでとまってしまったというところまでいかないラインで各国の政府がやっているというのが実情でございます。
  30. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、結論としては、この協定価格の下ざさえになっているという現象はいまのところないというようにいまの御答弁は理解をしてよろしいですね。
  31. 平原毅

    平原説明員 そのとおりでございます。ただ、国内価格、あるいはどこまでアメリカ政府あるいはカナダ政府が下げるかという場合に、精神的に、この協定できめられた最下限ということを念頭に持つであろうということは、ある程度推測されます。
  32. 松井誠

    松井(誠)委員 つまり、そういう意味で事実上下ざさえという役割りを果たすということはあり得る、そういう趣旨だと思いますけれども、私が疑問に思うのは、低開発国の一次産品については商品協定というものはあまりやりたくない、これは先進国にとっては高いものを買わされるということになるからやりたくないということを、貿易開発会議に臨む政府態度としてもそういう趣旨のことを答弁なさっているわけです。であるにもかかわらず、先進国の一次席品については、こういう商品協定というものを何の抵抗摩擦もなしにやってきているらしいことについて、私も疑問を持つ。したがって、これが実際にどういう機能を果たしておるのだろうという率直な疑問を申し上げたわけなんです。  大体のことはわかりましたので、私の、質問はこれで終わります。
  33. 平原毅

    平原説明員 ちょっとただいまの点申し添えます。  実際は、一次産品商品協定に関しまして、われわれといたしましては、主として後進国のみから産出されるいわゆる動帯性の一次産品というものの商品協定は、できる限り参加いたしていきたい。この点はこの前御審議を願いましたコーヒー協定の際にも申し上げたつもりでございますが、今回近く開かれます国連貿易開発会議、これなども、正式な態度というものは、会議も始まっておりませんので、申し上げられる立場に私自身ございませんが、考え方といたしましては、熱帯性の一次産品についてはなるべく前向きに考えていきたいし、むしろ先進農業国のみを利するような温帯性一次産品商品協定までもこの後進国援助国連貿易開発会議考えることは避けていきたいというのがわれわれの考え方であります。先生のお考えと一致するような見解であります。
  34. 松井誠

    松井(誠)委員 私は終わるつもりでありましたが、いま御答弁がありましたので私も申し上げたいのですが、実は、先般通りましたコーヒー協定は、価格の点については触れてないわけですね。この間私が貿易開発会議のときにお尋ねしたのは、もちろんこれは低開発国の一次産品についての商品協定についてお尋ねしたのです。そうしましたら、これは日本輸入食糧価格高騰という形になってはね返ってくるから困るという答弁であったのです。私はその論理の筋道がわからない。つまり、日本輸入食糧というのは、低開発国からの輸入というのはほとんど言うに足りる数量じゃないわけでしょう。それを、農産物自由化反対という陰に隠れて、先進国の一次廃品の問題とごっちゃにしてそこに含ませるというからくりがよく行なわれている。今度の低開発国の一次産品の問題についての答弁も、私はそうじゃないかと思う。そのときもそういうことを申しましたけれども、このことはなぜ一体日本輸入食糧高騰になってはね返ってくるか、筋道は必ずしもはっきりしませんでしたが、あなたの言われるように、熱帯産品温帯産品をきちっと分けて、日本経済に対する影響が全く違うのですから、その点をこれからあとも仕分けをしながら対処していただきたいと思います。
  35. 平原毅

    平原説明員 私も大体いまのお話と同じように考えております。
  36. 高瀬傳

  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一問だけ質問しておきたいと思いますが、この国際小麦協定は、最高が二・〇二五ドル、最低が一・六二五ドルというふうに、その間に安定帯か何か設けているわけですね。最近中共なりあるいはソ連が大量に買っているわけですけれども、市場価格というものには影響があったかどうか、その辺のことを承っておきたいと思います。
  38. 中島清明

    中島説明員 実は、中共でありますとかソ連の大量の買い付けがありましたあと価格は相当強含みでございました。たとえば、アメリカハード・ウィンターをとってみますと、八月にはブッシェル当たり一ドル七十一セントでございます。これが十月には一ドル八十セントという水準に上がっております。なお、カナダについて見ましても、八月にこれはマニトバ・ノーザン一号がブッシェル当たり一ドル七十八セントでありましたが、十月には一ドル八十六セントというような水準に上がっております。その後の情勢につきましては、国によりましてだいぶ違っておりますが、手元にございます資料によりますと、カナダのマニトバ一号は、八月一ドル七十八セント、十月一ドル八十六セント、本年一月は一ドル九十セントというようなやや強含み数字を示しておりますし、アメリカハード・ウィンターは、その後下がりまして、ことしの一月が一ドル七十八セントというような水準になっております。  総じて見ますと、ソ連とか中共買い付けが発表されましたあと価格が一時上がりましたけれども、その後やや落ちつきまして、最近ではむしろやや弱含みというのが、われわれ仕事をやっております上での実態でございます。  なお、これは蛇足かもしれませんが、シカゴ先物相場等を見ますと、本年の七月ごろの先物が非常に弱くなっておりまして、たとえば、シカゴ定期では、現物が一ブッシェル当たり二ドル二十セント、これに対して七月ものでは五十セントばかり下がるような相場も立っております。したがいまして、新麦が出ますまでは、大体いまのようなやや弱含み水準で参るかと思います。新麦出回り後どうなりますかということにつきましては、なお予測が困難でございますけれども、大体現在まではいま申し上げましたような推移を示しております。
  39. 高瀬傳

  40. 竹内黎一

    竹内委員 私も関連して一、一二点お尋ねしたいと思います。  第一は、この商品協定の一種である小麦協定には、いわゆる価格苦という考え方はあるわけですけれども、いわゆる需給均衡のための国内生産規制あるいは在庫規制輸出上の規制といったような考え方はないように見受けられるわけでございます。たとえば、すずのような場合は商品協定にはそういう考え方もあるようですが、この点はどういうお考えでございましょうか。——それじゃ、ただいまのはあとで御説明をいただくことにして、次のことをお尋ねいたしたいと思います。  この協定のいわゆる国内価格の点でございますけれども、国内価格の点については全くフリーハンドである、だから支持価格制をとってもいささかも差しつかえないもあと了解してよろしゅうございますか。   〔高瀬委員長代理退席、一委員長着席
  41. 中島清明

    中島説明員 この協定上からは国内価格について格別規制はございませんで、いまおっしゃいましたとおりに了解をいたしております。
  42. 竹内黎一

    竹内委員 そうしますと、何らかの形で輸出補助金的なものをつけた場合はどうなるのですか。
  43. 中島清明

    中島説明員 たとえば、一番卑近な例でございますが、アメリカ輸出補助金をつけて、現在国内価格は高いのですけれども、世界輸出をいたしております。アメリカ加盟国でございますが、この協定上は持に輸出補助金をつけてはならないというような規制はございません。
  44. 平原毅

    平原説明員 先ほど竹内先生から御質問になりましたが、この小麦協定につきましては、御承知のとおり、物、すず協定あるいは熱帯性の一次産品等と違いまして、国内生産制限ということは書いてございません。これは、御承知のように、二十三条に、むしろ自由であると積極的に書いてあります。ではどうして商品協定の種類によって違うかという点は、私のある程度の推測という点で考えてみますと、やはり、農業あるいはすずのような鉱産物、何と申しますか、主として後進国で生産される熱帯性の第一次産品というものと、生産性伺い農業国で生産される小麦生産構造、あるいはその国における政府のコントロールの差というものがこの協定にあらわれておる、そういうふうに推測いたしております。
  45. 竹内黎一

    竹内委員 もう一点、わが国の小麦買い付けのためにどれだけの外貨を支払っているか、ここ二、三年内の数字を御説明願いたいと思います。
  46. 中島清明

    中島説明員 小麦輸入のための外貨数字でございますが、ここ二、三年を申しますと、昭和三十六年度は一億三千三百八万一千ドル、これが主食用小麦輸入代価でございます。そのほかに、えさ用小麦といたしまして六千百二十二万八千ドルございます。三十七年度は、ほぼ同じでございますが、主食用小麦が一億三千百二十九万八千ドル、飼料用小麦が六千六百四十万九千ドルでございます。なお、三十八年度は、これはまだ終わっておりませんが、見通しといたしまして、主食用小麦一億九千二十二万三千ドル、えさ用小麦六千百九十万一千ドルの見込みでございます。
  47. 竹内黎一

    竹内委員 終わりました。
  48. 赤澤正道

    赤澤委員長 本件に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 赤澤正道

    赤澤委員長 御異議なし上と認めます。よって、本件に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  50. 赤澤正道

    赤澤委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに御田共議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 赤澤正道

    赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 赤澤正道

    赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  53. 赤澤正道

    赤澤委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  54. 赤澤正道

    赤澤委員長 速記を始めて。  経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  大平外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大平外務大臣。
  55. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先般の委員会松井委員から御質疑がありました点、すなわち、OECD条約の了解覚え書きについて国会の承認を求めなかった理由につきまして、政府の見解を御答弁申し上げます。  OECD条約に加入するには加盟国の全会一致による招請を受けることが必要であり、また、その招請を受けるためには、加入しようとする国が加入の上は加盟国の義務を受諾する用意があることが前提とされております。これは条約第十六条に明記されております。  しかして、ここでいう加盟国の義務とは、原則として加入前にOECD理事会がすでに採択済みの決定及び勧告から生ずる義務が主たるものでありますが、元来、加盟国は、かかる決定等が採択される際、それぞれ棄権または留保を付することができたわけでありますので、新加入国についても、加入の際、すでに採択された現存の決定等について、ある程度棄権なり留保なりを行なうことが認められるのが公平の原則に従うゆえんであると思います。  この了解覚え書きはかかる趣旨からつくられたもので、要するに、わが国としては、国会の御承認を得て正式にOECDに加入する場合、第十六条の規定により原則として採択済みのOECDの決定等に従うこととなりますが、その範囲はどの範囲までであるかを具体的に確認したものであります。つまり、わが国が既往の決定が採択された当時に加盟国だったならば、理事会における表決に際し棄権なり留保なりによって行なったであろう義務の免除を加盟に際して一括して行なうこととしたものであり、そのような棄権、留保等の措置は、本来政府限りで行ない得ることであります。したがって、了解覚え書きについて直接国会の御承認を得る必要はないと考えたわけであります。  なお、OECDは、その前身であるOEEC時代に採択した決定等の相当部分を継承しておりますが、OEEC時代加盟国でなかった米国及びカナダOECD加盟国になるに際して、同様の問題があり、類似の了解覚え書きができておりますが、これらについても、米加いずれも国会の承認の対象にいたしておりません。  次に、二つの自由化規約を国会の承認の対象としなかった理由について御説明いたします。  両自由化規約はいずれも理事会の決定でありますが、両規約を含め、一般にOECDの決定の法的性格について御理解願いたいと思います。すなわち、OECDは、第二条、第三条に明らかなように、元来加盟国間の協議ないし政策調整を目的とするものでありますから、決定によって直接加盟国の国民の権利義務に影響を及ぼすというようなことを意図してはいないのであります。決定は、すべて、各政府がそれぞれの権限に基づいてその内容を実施するという目的でつくられておるものでありまして、政府限りの権限で実施し得る事項につきましてはそれを実施する義務を負うわけでありますが、実施するについて法律の制定なり改廃なり所要の国内手続を要するものについては、かかる手続要件が満たされた上で初めて実施すれば足りるものであります。  なお、理事会の決定は、これに賛成した者の署名すら要せずに機構の決定となるたてまえをとっており、かつ、国による受諾を何ら成立の要件といたしておりません。つまり、この国際機関の意思決定を条約として取り扱うことは、そもそもOECD条約趣旨ではないのであります。  いま申し上げましたことは、OECD条約第六条三項に明記されておりまするし、現に現加盟国の措置ぶりを調査いたしましたところ、どの国も両規約を含め既存の決定についてこのような考え方をとっており、条約締結のような国会承認手続は一切とっておりません。さらに、このことはOECD事務局の法律専門家の確認をも得ております。  したがいまして、決定が自動執行的に実施されるものではなく、すべて法律の範囲内においてのみ実施されるものでありますので、国会の御承認は必要としないと考える次第であります。  以上、先般未了になっておりました御答弁を申し上げました。
  56. 赤澤正道

  57. 松井誠

    松井(誠)委員 いまの御答弁は具体的にこの覚え書きやあるいは自由化規約という問題だけに限定をした御答弁でありましたけれども、私がこの前お伺いをしましたのは、もちろんそういう問題を解決する大前提としてのこの国会における条約承認権の範囲という問題をお伺いをしたわけです。この原則がいままであいまいであったために、安保条約のときに、最初は行政協定は国会にかけなかった、次の地位協定は国会にかけるといった、必ずしも合理的の理由がはっきりしない違う取り扱いをしてまいったのも、やはりそういうところから来る混乱であったのです。ですから、この際、このOECDという通常条約とは確かに違う一つの国際機構に入るという特殊な条件はありますけれども、そういうものも含めて、条約承認権の範囲をきめる原則は何かということについても、実はお答えをいただく予定であったと思います。その点についての御用意はございませんか。
  58. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 国会の承認をお願いする条約の範囲につきましては、大体現在まで次のような基準で処理いたしてまいっております。  第一に、法律事項を含む条約、たとえて言えば通商航海条約、租税条約というようなものでございますが、そういうようなものは国会の御承認をお願いする。第二に、予算または法律で認められている以上に国の財政負担をもたらすような条項を含む条約、たとえば賠償協定や分担金の支払い義務に関する条項を含む条約などでございます。それから、第三に、右のような法律事項または財政条項を含んでおらなくても、政治的な重要性があると認められるもの、たとえば友好条約、文化協定というようなものでございます。  それから、先ほどちょっと安保条約の行政協定と新しい安保条約の地位協定の問題にお触れになりましたが、前の安保条約の際には、安保条約の第三条に、施設、区域の提供その他については行政協定によるという委任規定といいますか授権規定がございまして、それに基づいて政府間限りでやったわけでございます。新しい安保条約を改定します場合にその方式によりませんでしたのは、形式面として授権があり委任があればいいんじゃないかという考え方も一応成り立ちますけれども、内容が重要であるから、これはやはり別に御承認をいただくという取り扱いにしたほうがいいというわけで、したがって、本条約のほうに授権、委任の規定を置いてございませんので、当然に独立の承認案件といたしたわけでございます。
  59. 松井誠

    松井(誠)委員 その承認の原則と、このOECDの付属の覚え書きや自由化規約との関係はどうなっているのですか。
  60. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 先ほど大臣から御説明がありましたように、すべて政府が現在の国内法によりまして権限を与えられている事項の範囲内で実施し得るもののみであるということで、一応この両自由化規約は国会の御承認をいただくような必要はないという判断をしたわけでございます。
  61. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから、いままで取り扱ってきた三つの基準とどういう具体的な関係になるかというのです。
  62. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 さっき申し上げました、第一の、法律条項を含む条約ではない、つまり、その自由化規約を実施するために新しく法律を制定しあるいは改廃していただく必要はない、法律の権限の範囲内のものであるということでございます。
  63. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは、この一般的な基準についてちょっとお伺いをしたいのですけれども、いまの御答弁の形式からうかがわれることは、承認を求めるのがむしろ例外であって、原則としては承認は不要なんだという、そういう発想のしかたのように、これはことばじりをつかまえるわけではありませんけれども、そういうようにうかがえるわけであります。こういう場合に承認を求めるというように、限定的に条約承認というものは考えるべきものなのか、原則として承認は必要だが、こういう場合には承認をはずすというように考えらるべきものなのか、憲法の原則から言ってどのように大体お考えなのか。
  64. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私は御質問趣旨を少し勘違いして、あまり個条書きみたいなことだけ申し上げて誤解を生じたかもしれませんが、趣旨は、仰せのとおりに、憲法上は何ら限定なく条約締結については国会の承認を求めるべきものだとなっておるわけでございます。ただ、それでは、その趣旨が、およそすべての国際約束については国会の承認が要るという趣旨であるかというと、そうではないであろう。やはり、これはほかの国の憲法例からもうかがわれることでございますが、大体国際の慣行として確立しているものもあるわけでございます。一方に、外交関係の処理ということは内閣の権限、責任の範囲になっておるわけでありますが、たとえば、ある委員会で何か国民の権利義務に何ら関係のないような決定をした、それに賛成するということは拘束を受けるわけだが、それではそういうことに国会の承認が要るのか、そういっては外交関係の処理もできなくなる、そういうわけで、自然の一般的な慣行として国際的にも認められているのがいま申し上げたような範囲ということになろうと思います。ただ、第三にあげましたのは相当包括的になっておるわけでございまして、むしろ、実際の慣行は、明らかに政府にまかされておるようなもの以外は大体国会の承認をいただく、たとえば文化協定なんというものも、見方によればそれほどの必要もないのじゃないかと思われるかもしらぬけれども、そういう手続をとるというぐあいにいたしております。さっき申し上げた趣旨は、非常に狭い範囲で承認をいただいておるという意味ではなかったのであります。
  65. 松井誠

    松井(誠)委員 整理をしますと、原則として条約は国会の承認を必要とする、しかし、そうすれば、先ほどの基準というものを裏返しにして、法律事項を含まないもの、あるいは予算とか新たな財政負担を伴わないもの、あるいは政治的な軽微なもの、こういうものに限っては国会の承認は必要ではたいんだというようにもちろん政府考えておられるということになるわけですね。念のために……。
  66. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 全く仰せのとおりでございまして、その三つの条件がそろった場合にのみそういう手続をとらないということになるわけでございます。
  67. 松井誠

    松井(誠)委員 先ほどの大臣の御答弁で、この自由化規約が一体実質上の意味における条約なのかどうかということについて、何かだいぶややこしい言い回しがあったようでしたけれども、これはやはり実質上の条約とお考えになっておりますか。
  68. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 実質上の条約とは考えておりません。つまり、条約というのを、国会の承認をいただいてそして締結される条約という意味であれば、この決定というものは、法律の範囲内で、つまり国会の御意思によって許された行政府の権限の範囲内で実施されるというのが趣旨で、そういう拘束力しか持たないものでございます。国会の立法権も制約してしまうようなものでないという意味において、いまのその条約の定義の問題でございますが、そういうふうな定義づけての御質問だとすれば、条約の実質は備えておらないわけでございます。
  69. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、あなたのさっきの御答弁で、自由化規約がなぜ承認からはずれるかということは、これは条約じゃないんだというそのことを言えばいいわけですが、あるいは法律事項を含まないんだ、条約ではあるけれども法律事項を含まないということに先ほどは御答弁になったのですけれども、いまの御答弁と違うのですね。
  70. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 ちょっといまの御質問趣旨はよくわかりませんでしたが、内容、形式ともに条約ではないのでございます。内容から言いましても、先ほど大臣から御説明がありましたように、法律上政府の権限の範囲内のことだけで実施されるものであり、形式的に言いましても、ただこの機関がそういう意思決定をしたというだけであって、国の代表が署名し受諾するというような手続も踏まない、そういう機関の意思決定の形をとっており、形式的な意味でも条約の体裁を終えていないということでございます。
  71. 松井誠

    松井(誠)委員 国会の承認権という問題はもちろん条約に限るわけですから、条約でないということになれば論議の外になるわけです。そうしますと、一体自由化規約か条約かどうかということになるわけですが、なるほど、普通の機構の決定というものは国の代表が調印をするという形式はとっておりません。しかし、自由化規約についてどれを留保しどれをどうするかということについては、覚え書きで政府の代表が調印しておるわけでしょう。そうしますと、この覚え書き、そしてそれと一体になっておるその一部門ともいうべきこの自由化規約というものは、やはり通常条約締結のしかたと同じような形式をとっておるのじゃありませんか。内容の点についてはまたあとでお伺いしますけれども……。
  72. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 形式は全然違うわけでございます。決定というものには、さっき申し上げたような、国際約束の場合に採用される署名とか、受諾とかいう手続がとれていないわけであります。
  73. 松井誠

    松井(誠)委員 私は自由化規約そのもののことを言っておるのじゃないのです。自由化規約の中でどれを認めどれを留保するかということを覚え書きで調印しておる。したがって、その調印の一部に自由化規約がなっておる。ですから、自由化規約というものは調印覚え書きに含まれたという限りにおいてはやはり覚え書きの一部をなしておる。そして、その覚え書きは通常条約締結の形式と違わないじゃないですか。
  74. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 御質問を誤解しておりましたが、これは便宜了解覚え書きという形をとっておりますけれども、これはすでに決定が行なわれているために、留保とか棄権とかいう行為ができなかったための便宜の措置でございまして、ああいう覚え書きの形式になっているから決定が行なわれたときになされたであろう棄権とか留保とかいうものと性質的に異なってくるということにはならないわけであります。
  75. 松井誠

    松井(誠)委員 これから国際的な機構というものはずいぶん多くなるわけですから、そういう国際的な機構の中で、一ぺん条約に入ってしまったらもうあとのいろいろな決定なり何なりというものは国会の承認からはずされてしまうということになりますと、相当大きな影響を持ってくると思う。ですから、通常条約の問題とはまた違って、先ほども私ちょっと言いましたけれども、この国際的な機構のいろいろな、OECDでは文書というようなことを言っておりますけれども、そういう文書についての承認権の範囲というものは、これからはそういう国際的な情勢を考えるとずいぶん重要な意味を持ってくるわけですね。ですから、私はいまの問題についてほんとうはもっと詳しくお聞きをしなければならぬと思うのです。と申しますのは、 いま言ったように、私はその覚え書きとそれにくっついておる自由化規約というものは、これは形式の上からでも条約と同じだと思いますけれども、その問題を一応離れて、理事会の決定が通常条約という形をとっていなから一切国会の承認をはずすべきだという考え方自体、新しい国際機構の発達というものから見て国会の権能を不当に制限をするという結果になるのじゃないか。ですから、形的な条約論、いままでのありきたりの条約論から何か違う観点をとらなければ、国会が相当広範囲につんぼさじきに置かれるという結果を招来すると思うのです。この点は、大臣、いかがでございましょう。そういういまのような政府考え方ですとどうなるか。ともかく一度国際的な機構に入る、そして、その条約そのものは、このOECD条約もそうですけれども、きわめて抽象的な包括的な、言ってみればあたりまえのことを書いてある。したがって、その限りにおいては反対のしょうがない。しかし、それが実際に具体化されるときにどういう決定が行なわれ、どういう規約がつくられるか、これこそ重要なわけでしょう。その重要なものについて国会の承認はもう初めから求めなくていいのだ、これは条約ではないのだということになると、これからあと特にこういう多国間の条約というものが発達をしてくるということを考えますと、これは非常に重要だと思うのです。ですから、この点、いまの政府の御答弁は私は非常に不満なんですけれども、こういう新しい観点から立って、やはり通常のいままでの条約であるかどうかという形式論は一応別にして、こういう結果を招来するということ自体、政府考え方の欠陥というものを露呈をしておるのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  76. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そうではなくて、この了解覚え書きをつくったということ、これも政府が国会から与えられた権能の範囲内においてやっておることでございまして、国会から与えられた権能を踏みはずすことでございますれば、国会の了承を得なければできないわけでございます。その論法で、将来新しい機関の決定がある、そして日本がそれに対して賛成することも考えられれば、棄権することも考えられるし、反対することも考えられますが、かりに日本政府として新しい機関の決定を受け入れたい、賛成したいという場合に、現に政府が国会から与えられておる権能の範囲内においてできない場合、それに賛成する場合には国会の承認を得た上で政府が賛成しなければならぬ、あるいはそれを条件として賛成しなければいかぬと思うのでございまして、いかなる場合におきましても、国会から与えられた政府の権能を踏みはずすようなことは、自由化規約の名におきましてもできないわけでございまして、これは私ははっきりしておると思います。
  77. 松井誠

    松井(誠)委員 その国会から与えられておる権能ということ自体が問題だと思うのです。つまり、立法事項でなければ全部政府が権限を与えられておると考えること自体に問題がある。問題があるからこそ、そういうものでなくても、政治的な重要なものであるならば国会の承認を得るという慣行が出てきたというのは、むしろ立法事項というような形式論で片づけることに問題があるという結果ではないかと私は思う。ですから、国会から与えられた権能というものは一体何か。それは、形式上の条約であるかないかということよりも、むしろ、国民の生活、国の政治、そういうものに重大な影響のあるものは元来かけるべきだ、そういう考え方のほうが先に立たなければいけないのじゃないですか。   〔委員長退席、古川委員長代理着席〕 ですから、国会から与えられておる権能というそのことを大臣は前提にされましたけれども、まず何が与えられておるかということがどだい問題ではないか。そういうときに、それこそ、政治的に重大なものはやはり国会にかける、政治的な観点から言ってこれは当然ですけれども、そういう原則がむしろ打ち立てられることが大事じゃないですか。そうしますと、自由化規約というものは、この前大臣が内容は重大なものでありますということを二回も御答弁なさっておりますけれども、そういう意味で非常に抽象的な包括的なOECD条約の具体的な中身をなすものとしての自由化規約というものは、これは条約かどうかという形式論を越えて重要なものではないかと思う。それを、このOECD条約締結さえ認めてくれれば、あとはそれこそ法律の範囲内であればどういうものでも締結ができる、決定に参加することができるという考え方自体に問題があるのじゃないかと私は思うのですけれども、どうでしょう。
  78. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど説明員からも御答弁を申し上げましたとおり、法律条項を含まない、すなわち新しい義務を国民に課すというようなことがないとか、あるいは予算または法律で認められておる以上の国の財政負担をもたらすようなものでないという場合には国会の御承認をいただく必要がないということは先ほど申し上げましたが、逆に、今後OECDの機関が意思決定をし、日本がそれを受諾しようとする場合に、これが新しい権利義務の問題を生むものである、あるいは新しい財政負担を予算または法律で認められた以上に生ずるものであるという場合には、これは当然所定の国会の承認を求める手順を経なければ政府はオーケーと言えぬと思います。政府はそんな力を与えられていないわけでございます。要するに、現存予算とか法の形式におきまして政府に与えられておる権能の範囲内においてやれることはやる、やれない場合にはあらためて国会の御承認を得てやるのだというきわめて公明な態度で終始しているわけでございまして、私は、御心配のようなことはないと思います。
  79. 松井誠

    松井(誠)委員 念のためにお伺いを.しておきますけれども、このOECD条約の六条の三項に、「いかなる決定も、いずれかの加盟国がその憲法上の手続の要件を満たすまでは、当該加盟国を拘束しない。」、こういう規定がありますけれども、このことは決定そのものが憲法とかかわり合いがあるということを前提としておるわけですが、これはどういう趣旨でこういう条文が入ったのか、御説明を願いたいと思います。
  80. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 その決定を実施するために国内法上新しい立法とかあるいは既存の法律の改廃をする必要があるという場合に、一応加盟国として決定には賛成しておっても、そういう国内的な憲法上必要とされる手続が終了するまではその決定の拘束を受けない、こういう意味でございます。
  81. 松井誠

    松井(誠)委員 いま政府は外資法の改正を国会に出しておりますけれども、この外資法の改正は、一つ外貨予算をなくするということでありますが、もう一つ、円ベースによる投資についての改正も提案をされておりますね。これはどういう趣旨の改正なのですか。
  82. 中山賀博

    ○中山政府委員 八条国移行に伴いまして外資法関係あるいは為替管理法関係の整理を必要とする時代に入ってきたわけでございます。そこで、外資法につきましては、IMF八条国に移行する前とあととでは、御承知のとおり、非常に大きな相違がございます。つまり、資本の果実の送金につきましては、IMF八条国に移行いたしましたならば、これを自動的に認めなければならないわけでございます。従来の外資法のたてまえでは、その果実の送金というところでこたえまして、もしも外資法によって送金を保証されようと思ったならば、外資法の条件を満たし、外資法の道を通って日本の中へ外資が入ってこなければならぬというたてまえになっておりました。そうでなくて、外資法の送金は要らない、ただ何かの理由で国内で円を持っている外国人がその円を使う、そのかわり果実の送金は別に要求しないというときには、これは取り締まりようがなかったわけで、ここに円ベースの問題が生じてきておったわけであります。しかし、今後は果実はいかようなる場合にも送金を認めるわけでございますから、そこで、むしろこのたてまえを変えまして、円ベースというものはやめて、円ベースもその他のベースもないわけで、外資が日本に入ってきたときには、入ってくる前に一応国の経済全体とにらみ合わせてスクリーンするという考え方が、今度の外資法改正の骨組みだと思います。
  83. 松井誠

    松井(誠)委員 いま、IMF八条国移行が四月ということで、OECDの正式な加盟のほうがあとになりそうですけれども、もしこれが逆になって、IMFのほうがあとで、OECDの加盟が先であったとすれば、この外資法の改正はどうなるのですか。
  84. 中山賀博

    ○中山政府委員 もしもOECDの資本移動あるいはインビジブル・トレードに関する規約の要求するところが日本の現在の法律の改廃を必要とする場合には、もちろんその法律の改廃、つまり議会の立法あるいはその他がきまってから初めてわれわれはそれらの規約に格順することができるわけでございます。  それで、もしもIMF八条国に移行しない前にOECDのコードを守ることが要求された場合はどうかというお話でございますが、私の承知しております限りでは、先般この点について先方の事務当局と洗いましたときには、一応現行の法令の範囲内で、法律自身の変更を待たなくても、この程度の自由化はできるということであったと承知しております。
  85. 松井誠

    松井(誠)委員 まあOECDの拘束力がIMFの拘束力より弱いというところから来るのかもしれませんけれども、しかし、この外国為替法や外資法のたてまえは、制限が原則で自由が例外というたてまえをとっておる。そうして、本来ならば、それを、自由が原則で制限が例外だというひっくり返した形にするのがたてまえですね。そういうことで、法律的にきちっと必要かどうかは別として、いまのこの外国為替及び外国買易管理法と外資法の二つに手をつけないでOECDをまかり通れるという考えは、これは非常に苦しい窮余の一策と考えるべきであって、本来ならばやはり改正するのが本筋じゃないのですか。そうしなければ、少なくともその精神にも合わないし、OECD加盟に伴っての開放体制というものの一つの軸であるその法制が旧態依然だということになると、つじつまが合わないと思うのですけれどもね。
  86. 中山賀博

    ○中山政府委員 先方といろいろ折衝しました際になかなか苦しいところがあったことは事実でございます。ただ、当時としましては、外資法その他の法律の改定あるいは変更ということは必ずしもはっきり予見されてあるいはそれを織り込み済みでやるわけに参りませんでしたから、できるだけ現行法令解釈のワク内でOECDの町規約をわれわれとしては守っていくことにしたいということで、ああいうかっこうになったわけでございます。
  87. 松井誠

    松井(誠)委員 私もやはりそういう事情があったと思うのです。元来ならば、この二つの法律を改正するというのが自然の成り行きであったと思うのです。したがって、元来ならば、先ほどの基準によればまさに立法事項であったと思うのです。それが、たまたまIMFというものが先に来たために、実際の取り扱い上いろいろの操作をして、最小限度外貨予算をなくするという程度の立法の改正で済みましたけれども、しかし、IMFより先にOECDが来たとすれば、やはり何がしかの形でこの法律に手をつけるということになった、あるいはならなくても、いまの御答弁ですと、いまの法律のままでは非常に苦しいという事情があった。そういう事情があるとすれば、 このOECDへの加盟ということは、本来事実上本質的に立法事項だと思うのです。それをいろいろな意味で立法事項からはずしたにすぎない。こういうように、立法事項かどうかということを非常に形式的に考えて、立法事項ならば承認を求められる、立法事項でなければ承認からはずされるという考え方のつじつまの合わなさというのがやはりここに出てきておるのではないか。元来ならばやはり法律を改正すべきそういう重要な問題を含んだ、条約はもちろんですけれども、自由化規約であったわけです。それが、たまたまIMFのほうが先行したものですから、この改正はOECDの自由化規約によるそれの結果ではありません、IMFの八条国移行に伴う改正でありますというように逃げられる。しかし、実質的には、IMF八条国移行のためでもあり、実はOECDの自由化規約を受け入れるというためでもあるわけでしょう。ですから、この自由化規約というものを承認からはずされるということは、いま法律的なことはしばらくたな上げにして、やはり政治的につじつまが合わないということの一つの証左になりはしないかと私は思うのです。大臣、重ねてひとつ御答弁をお願いしたい。
  88. 大平正芳

    ○大平国務大臣 非常に複雑な事態を実定化した法律で規制していかなければいかぬわけでありますから、これは法律の専門家のあなたはよくおわかりのとおり、解釈で補い、よくその紛争の解決をやってまいらなければならぬことになると思うのでございます。極端に言えば、法律に書いてあるとおりに、ちょうどあつらえ向きに事態が起こってくれたら、これは一番いいのですけれども、そういうことばかりにもまいりませんので、行政当局の苦心はその法律の解釈をどうするかという点に苦心があると思うのでございます。事実、OECDの事務局がまいりまして、数日間の折衝を私もはたで見ておったのでございますが、OECDの連中は、日本の事務当局の能力に全く舌を巻いておりました。わずかの間にうずたかくよく整理ができて、留保する事項もあそこまでにまとまったということに対して、ちょっと人間わざでないといって非常に舌を巻いておりましたが、これは余談でございます。しかし、有能な行政官がおりまして、そういった点について実態に合った行政を行なっていく領域というものは、私はあると思うのでございます。しかし、あなたが言われるように、できるだけ、実体法上、解釈上無理があるというようなことは、実体法自体を直しておくほうが、私はベターであると思うのでございます。しかし、それでないからといって、一がいにこれは非常に非立憲的である、やったことは違法であるということをきめてかかられるのは、若干酷じゃないかと思います。  それで、松井さんが御心配されておるのは、将来の問題といたしまして、OECDへ加盟して、いろいろな機関決定があった場合に、行政当局が国会の目をかすめて、相当自由に、奔放とまではいかないでも、やりはしないかという御心配があるのじゃないかと思うのでございますけれども、しかし、その点につきましては、私は政府部内で育った男でありますし、また国会で政府とのおつき合いをやっておりまして、そういう点で、日本政府というのは法律に対して非常にセンシチブだと私は思いますし、また、政治の問題といたしましても、そんなことがないように、国会で権能を新しくもらわなければできないようなことに対して、ぞんざいなことは絶対にいたさない、そういうつもりでおります。
  89. 松井誠

    松井(誠)委員 こういう問題で時間をつぶすのは本意ではありませんから、私も適当に切り上げたいと思いますけれども、しかし、それは政府の御見解を承認したという意味では決してないわけです。一つは、やはり日本の憲法が少なくとも形の上では条約はすべて国会の承認要求しており、そのたてまえから言って、政府があげられたこの基準というのは、あるいはそれは行政的には一つの説かもわかりませんが、しかし、無条件にともかくすべて条約は国会にかかわらしめておるという日本の憲法のたてまえから言えば、私は広過ぎるのじゃないかというのが一つの問題だと思うのです。それから、もう一つは、先ほども申し上げましたけれども、これからあとこういう国際機構が出てくるそのときに、最初に条約承認さえすれば、あとはもう国会はノータッチだということになると、政治的な問題ですから、やはり憲法が実質上国会の権威として考えているその立場から言っても非常に問題がある。だから、この際、この理事会の決定というのはなるほどいままでの旧来の条約締結の方法と違うでしょうが、しかし、それだけに、新しい決定というものを国会の承認にかかわらしめるという考え方をとるのがほんとうではないかということを考えるわけです。さらにまた、具体的に、この自由化規約が条約でないという考え方自体、これは覚え書きというものに包括されて、覚え書きの一部になっている限りは条約だと思います。しかも実質上の条約であって、そして、この間大臣が御答弁になったように、その内容というのは重大なものです。経済的にも重大であるということは、もちろん政治的にも重大なものですから、そういう基準に当てはめても、やはりこの自由化規約を含む覚え書きというものの承認を求めるというのが本来の筋だということを考えますので、政府の御答弁には私は承服するわけにはまいりません。  そこで、そのことだけを申し上げて、あとOECDの具体的な内容についてお尋ねをしていきたいと思うのです。  最初に、OECDの基本的な性格といいますか、そういうものについてお伺いしたいと思うのです。  OECDというと、すぐに自由化という問題がその中心の柱であるかのような印象がありますけれども、私は必ずしもそうではないのではないかという疑問を持っているわけです。そこで、このOECDの性格をはっきりさせるために、OEECからOECDに変わってきたいきさつというものをひとつ考えてみたいと思うのです。つまり、その中でアメリカが具体的に果たした役割というものを考えてみたいと思うのです。アメリカがこのOEECからOECDへの切りかえについて積極的に主導権をとったということは、これはまぎれもない事実です。そのアメリカの意図というものは一体どういうところにあったのかということについて、ひとつ大臣から御見解を伺いたいと思います。
  90. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカOECDに対する政策のねらいについてでございますが、これはアメリカ政府が答えるべきことだと思いますが、私どもがこれをどのように見ているかということでございますと、その限りにおいてお答えいたしたいと思いますが、これはOECD条約にもうたわれておりますように、経済的な力、繁栄というのが人類の福祉増進のために決定的に重大であるということ、そうして、経済関係は密接な相互の依存関係がある、そして、経済政策を遂行していく場合に、今日各国の協力関係というものが非常に不可欠の要素になってきたという大前提は、アメリカも十分読み取っていることと思うのでございます。したがって、OEECという地域的性格を持った機構を、地域性を開放いたしまして、より広い視野におきまして全世界的に経済の成長、貿易の拡大、そして後進圏に対する援助という三大目標をより効果的に達成するためには、地域性のからを打ち破って、みずからもその機構の中に入りまして、そこで施策するところがなければならぬ、そのように考えたに違いあるまいと思います。
  91. 古川丈吉

    ○古川委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  92. 古川丈吉

    ○古川委員長代理 速記を始めて。
  93. 松井誠

    松井(誠)委員 アメリカの意思をそんたくした御答弁がありましたけれども、これはOECDになって初めて御承知のように開発ということばが入る。つまり、低開発国援助というのがOECDの新たな目的となった。その低開発国援助というものがこれほど大きな世界的な問題になった原因の一つには、アメリカのいわゆるドル防衛という立場からの、低開発国援助をほかの国にもひとつ分担をしてもらいたいという、そういう要求があった。それがこういう国際的な資本主義陣営における国際的機関で開発というものを正面から取り上げた一つの大きな理由であったと思うのです。それがアメリカの意図どおりに動くか、どうかは別ですよ。これは大臣が日本日本の意思で動きますということをおっしゃるだろうと思いますので、私は先回りをして言うのですけれども、少なくともアメリカの意図は、自分のドル防衛というもののためにほかの資本主義国に肩がわりをしてもらいたいという要望、それが低開発国の開発という新しい国際的な目的を設定させたというふうに、——そればかりがもちろんOECDの性格の全部じゃありませんけれども、それがOEECからOECDに変わってきた一つの大きな変化としてつかまえられるのではないかと私は思うのです。どうでしょう。
  94. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカがドル防衛政策、ドルを自国のカレンシーであるばかりでなく世界貿易上のキー・カレンシーとしてそれを防衛していくということをきめるのは、きわめて当然のことであって、私がアメリカの為政者であってもやると思います。しかし、そのことと他の国に肩がわりさすということとはまた別問題でございまして、アメリカが、ドル防衛をしなければならぬから日本やドイツにひとつアメリカを助けてくれとは言うておりません。問題は、後進国の開発というそういう時代の課題について、お互いにみなでやろうじゃないかということであって、これは、あなたがすでに申されたとおり、各国は各国の意思によって経済開発をやるわけでございますから、ドル防衛政策と直接の関連は私はないと思います。私は、前段で御答弁申し上げたように、地域的なからを破って、よりグローバルな機構にしてやることが、OECDの目標とするところを効果的に達成するゆえんだというように、すなおに見ております。そしてまた、それが事実だと思います。
  95. 松井誠

    松井(誠)委員 最もグローバルな組織としてならば国連があるわけですから、単にそういう地域を広げるというだけではなくて、もっと別な意味があるのではないか。その後進国援助について、アメリカがドル防衛の必要があれば、昔ならば自分自身が後退をすればよろしい。自分自身があとずさりをすればよろしい。そうではなくてほかの国に肩がわりを求めるということ自体、それはすでに政治的意図があるということを言わざるを得ない。つまり、後進国援助の問題については三つの柱の一つでありますので、あとであらためて、また伺いますけれども、やはり、そういう後進国援助というものが、いわゆる東西の援助競争ということばにあらわれておるように、非常に政治的な意味を持ってくる。したがって、後進国援助という形で、ほっておけば低開発国が社会主義国になるのを何とか食いとめなければならぬ。これは、何も私が言うばかりではなくて、例のケネディの対外援助の特別教書にもそういう趣旨は盛られておる。クレイ委員会の報告にもそういう意図というものはやはり盛られておる。低開発国援助そのものが政治的な意図を持っておるということ自体、これは疑うべくもない事実です。それに大平大臣がそれこそユニークな立場から乗るか乗らないか、それは別です。別ですけれども、少なくとも、そういうドル防衛というものが、世界的な関係の中で、資本主義陣営全体の中で考えさせられるということ自体、やはり、東西の対立、冷戦ということを除いては考えられない。これはそれこそ集団的な新植民地主義だとか新しい帝国主義だという表現がありますけれども、そういう表現が当たっておるかどうかは別として、ともかく、資本主義陣営の結束を固めるその一つの具体的な方法としての低開発国援助である。あるいは、EECとEFTAに分かれてごたごたしておる、この分かれた二つの資本主義陣営を何とか協力させ、その問に生じたひびをなくするというのが、資本主義の盟主をもって任ずるアメリカの意図だ。そういう意味でOECDというものには初めから政治的なにおいというものがつきまとっておるのではないか、単に自由化という経済的な要求だけを追求するのではなくて、むしろその本質はもっと政治的なものではないかということが私の根本的な疑問なんですけれども、そういう点も踏まえて大臣の御見解はいかがですか。
  96. 大平正芳

    ○大平国務大臣 OECDというのは、三大目標を達成するためにお互いに協力して政策の調整をやり、情報の交換をやろうじゃないかというクラブであります。それに特定の国がどういう政策的意図を持っておるかということは、これはまた別問題でありまして、ここで討議される問題を客観的に見まして、そしておのおのの加盟国がそれぞれの足場を持って判断し、賛成すべきは賛成し、反対すべきは反対していくという仕組みなんでございまして、あなたがおっしゃる、加盟国がここにどのような政治的意図を心の中で持っておるかというようなところまで別にせんさくする必要はないのじゃないか、また、そういうことがかりにあったとしても、それに影響されるされないは、あなたが御指摘されたとおり、われわれの自主的判断によることでございます。
  97. 松井誠

    松井(誠)委員 その隠された心の奥底を探るなどという問題ではなくて、このOECDの結成そのものは非常に政治的なものであるということは、そこにおられる中山さんも言っておられるのですよ。私、持ってくるのはめんどうですから書いてきたのですが、去年の七月二十七日に日本経済で座談会があった。そのときに中山さんはこういうことを言っている。「OECDの成立過程は政治的なものだ。要するに欧州が割れては困る、欧州が米国から離れてはいけないというので、これを合同したが、次には日本をはずしていたのではダメだというので、欧州的なものからさらに世界的なものになってきた。」、こういう発言がもう一回そのあとにもある。つまり、それがやはりOECDというものの客観的な評価じゃなかったのですか。だから、そのことを私は何も包み隠す必要はないと思う。それはあくまでもアメリカの意思であるかもしれない。しかし、そのアメリカの意思というものに一体日本がどう立ち向かうかということになると、これはまた別の問題です。私はそのことは別に切り離してお尋ねをするつもりですけれども、少なくともアメリカの意図というものはOECDの結成の中で主導権を取っていくということであり、その限りにおいては、OECDの性格というものは、つまり、西の陣営の結束強化という経済的な面だけでなしに政治的な強化という、そういう政治的なねらいを持っている。その具体的なあらわれとしては低開発国援助という形で出てこようとする。このことを私はOECD一つのむしろ自由化の問題よりももっと基本的な性格としてとらえるべき問題ではないかと思う。大臣はこの座談会の記事はお読みにならなかったかもしれませんけれども、そういう中山さんの発言があるのですよ。
  98. 大平正芳

    ○大平国務大臣 経済の成長をはかるとか、後進国援助を強化するとか、あるいは貿易を拡大するとかいうようなこと、これは経済的なことでございますが、やはりこれは政治の問題だと思うのでございます。高次の政治の問題で、人間の思惟の能力が足らぬものだから、政治だとか経済だとか分けておりますけれども、あなたの言われる意味で、中山君が言われた趣旨も、そういう政治目標というのは、経済力を有効に開発し協力関係を有効に結集していくためにこういう仕組みをとるということは、私は政治の問題だと思いますよ、そういうことを別に否定してはいないのでございます。ただ、このOECD条約というものは三大目標を達成するための仕組みであるというようにすなおに私は受け取っておるということを先ほどから申し上げておるわけでありまして、全部政治から無縁なものであるとか、私はそんなに仙人じゃございませんから、そんなばかな考えは持っておりません。
  99. 松井誠

    松井(誠)委員 大臣はわざわざ質問趣旨を曲げてお答えになるものですから横へいくのですけれども、政治と経済が不可分だというようなことはあたりまえのことなんです。そこで、政治的というのは、つまり、資本主義陣営の強化という意味の政治的、逆に言えば社会主義陣営との対立において勝っていこうというそういう意図、これは政治的の中でも非常に高度の政治的なものだ、そういう意図があるのだということなんです。もう一度そのあとを読みましょうか。これは中山さんには悪いけれども……。この日本の加入について、「大国は公式あるいは非公式に、日本を入れるのは政治問題だ、だからあまりここで小さいことを言わずに入れろというのが、若干の後進国はそうはいかんといった」というように、日本の加入そのものも実は政治的なねらいがある。このことはあとでお伺いしますけれども、そういうことがむしろ私はこのOECDの本質をついておると思うのですよ。押し問答になりますけれども、どうでしょう。
  100. 大平正芳

    ○大平国務大臣 資本主義各国が協力することはいいことだし、それから、社会主義圏との競争に打ち勝つ、それもけっこうなことじゃございませんか。コンペティティブ・コーエギジステンスといわれておるわけなんで、私は大いに競争をしていいと思うのでございます。それを別にはばむ必要はちっともないと思います。資本主義国は結束の自由を持っておりますし、競争の自由を持っておる。それは尊重されてしかるべきだと思います。
  101. 松井誠

    松井(誠)委員 私はいい悪いを言っているんじゃないですよ。そういう意図があるかどうかということをお尋ねしておるのです。いい悪いについての判断をいま大臣にお尋ねしているのではない。しかし、いまの答弁の中からも、やはり資本主義陣営の結束というそういう問題も含まれておる、それはけっこうなことであるけれども、ともかくそういうものがあるのだという御答弁だと私は承った。そこで、その具体的なあらわれが、やはり日本がこのOECDの下部機構であるDAGへ加盟をするときにもあらわれておるのではないか。つまりDAGに入るときにアメリカが非常に日本のバックアップをしてくれた、しかし、ほかのOECD諸国は非常に気乗り薄であり、あるいは反対であった、そうして、日本がそのDAGに加盟をすることができたのは、やっと第一回の会議が開かれる十日ぐらい前でしたか、そういう直前にその加盟が実現をした、アメリカのいわば非常なあと押しで実現したという事実があると聞いておりますけれども、この点の事実は御存じでしょうか。
  102. 中山賀博

    ○中山政府委員 DAGの加盟につきましては、ヨーロッパの経済の復興によって、ヨーロッパ自身としても後進国に対してかなりの責任を分担する地位にあるということがDAGというものの結成の一つの理由だと思います。それで、日本に対してもまた、いろいろう形を通じて日本の対外的な経済活動が盛んになり対外援助が進んでいるということも考慮して、日本に対する要請があったのだ、かように承知しております。
  103. 松井誠

    松井(誠)委員 いや、アメリカが非常に熱心にあと押しをしたかどうかというそういう事実を聞いておるわけです。つまり、そのときまでは欧州の地域的な機構にすぎなかったものに、いわば異質の分子である日本を入れることにアメリカが非常に一生懸命であったという、そういう事実があったかどうか、政治的な意図のことはまた別として、そういう話を聞いておりますけれども、それは事実であったのかどうかということをお聞きをしておる。
  104. 中山賀博

    ○中山政府委員 アメリカが非常に熱心に日本の加盟を支持してくれたことは事実でございます。同時に、 ヨーロッパの諸国におきましても日本の加盟につきましては誠意を示してくれたわけであります。
  105. 松井誠

    松井(誠)委員 OECDに入るにあたっては、消極的な反対はあったにしても、それほど積極的な反対はなかったかもしれません。しかし、DAGに入るときには相当な抵抗があったというように私は見てきたわけではありませんからわかりませんけれども、聞いておるわけであります。ヨーロッパの諸国が日本を、招かれざる客であろうと何であろうと、お客さんとして初めから遇するのではなしに、むしろアメリカに対してこの地域的な性格がなくなるということで反対したというように聞いておるのですけれども、そういうことはございませんか。
  106. 中山賀博

    ○中山政府委員 私は承知しておりません。
  107. 松井誠

    松井(誠)委員 御存じなければしかたがありませんけれども、日本OECD加盟前にその下部機構であるDAGに入ったということ自体、私はOECDというものの性格をあらわしておるのじゃないかという気がするのです。  そこで、その基本的な性格の問題についてもう少し伺いたいのでありますけれども、きょうは都合によりまして……。
  108. 古川丈吉

    ○古川委員長代理 本日はこれにて散会いたします。   午後三時五十二分散会