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1964-03-11 第46回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十一日(水曜日)    午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 赤澤 正道君    理事 安藤  覺君 理事 椎熊 三郎君    理事 正示啓次郎君 理事 高瀬  傳君    理事 古川 丈吉君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    菊池 義郎君       鯨岡 兵輔君    佐伯 宗義君       竹内 黎一君    濱地 文平君       福井  勇君    三原 朝雄君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       帆足  計君    松井  誠君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)      小川清四郎君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (重工業局長) 森崎 久壽君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁刑事局         捜査第二課長) 関根 広文君         日本輸出入銀行         理事      斎藤 正年君         専  門  員 豊田  薫君     ――――――――――――― 三月十日  委員田原春次君及び松井誠辞任につき、その  補欠として野原覺君及び阪上安太郎君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員阪上安太郎君及び野原覺辞任につき、そ  の補欠として松井誠君及び田原春次君が議長の  指名委員に選任された。 同月十一日  委員鯨岡兵輔君、竹内黎一君、及び赤松勇君辞  任につき、その補欠として大倉三郎君、田村元  君及び岡田春夫君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員大倉三郎君、田村元君及び岡田春夫辞任  につき、その補欠として鯨岡兵輔君、竹内黎一  君及び赤松勇君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 三月七日  日ソ平和条約即時締結等に関する請願(長谷  川正三紹介)(第一〇〇三号)  在日朝鮮公民祖国往来自由実現に関する請  願外一件(重盛寿治紹介)(第一一〇四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  国際情勢に関する件(日韓問題等)      ――――◇―――――
  2. 赤澤正道

    赤澤委員長 これより会議を開きます。  連合審査会開会に関する件についておはかりいたします。  経済協力開発機構条約締結について承認を求める件について、大蔵委員会及び運輸委員会からそれぞれ連合審査会開会申し入れがありました。この申し入れを受諾し連合審査会を開会するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤澤正道

    赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、連合審査会の日時は、関係委員長と協議の上、公報をもってお知らせいたします。      ――――◇―――――
  4. 赤澤正道

    赤澤委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。岡田春夫君。
  5. 岡田春夫

    岡田委員 きょうは日韓問題について少し掘り下げて伺いたいと思います。これは日韓問題と非常に深い関係にある問題でございますが、例の話題の人といわれております朴魯楨という人物が、三月の二日午前八時半ごろ対馬の大浦というところで密入国の疑いで逮捕されて、入管出先当局取り調べを受けておったのでございますが、九日の午後入管厳原出張所から放免になったという話を聞いておりますが、その経過について入管局長からまず詳細に承りたいと思います。
  6. 小川清四郎

    小川政府委員 ただいまの御質問に対しまして、私どものただいままで持っております材料に基づきまして一応の経過を御説明いたします。  朴魯楨は一九三七年以来、つまり戦前からわが国に在留しておりますいわゆる法律第百二十六号に該当する韓国人でございます。銀座ニュー銀座ビル内に安田商事以下多くの会社を経営しております。すでに従来数回にわたり、商用目的ないしは法事その他人道的な理由もございまして、再入国許可を取って韓国に参った経歴を持っておる実業家でございます。今回も、いわゆる世上で問題になっておりますセナラ自動車会社の問題につきまして、商用目的で再入国の申請がございました。去る二月二十二日に東京入管におきまして再入国許可書を発行して、韓国におもむいたものでございます。それが、私どもがただいままで聞いておりますところによりますと、韓国でそういった渡航目的を遂行しております途中で、はからずも二月の二十五日に出国をしようといたしました。金浦飛行場に参った由でございますが、そのときに出国を差しとめられたので、身の危険を感じて、旅券と再入国許可書を置いたままで、船を雇って、三月一日に韓国出国いたしました。二日に上対馬町へ不法入国した。これは現地の警察署でつかまえまして、不法入国容疑で逮捕いたしました。直ちに長崎地検厳原支部のほうに身柄を送致いたしております。長崎地検厳原支部におきましては身柄不拘束のままで捜査を続けて、そして三月の五日に私ども厳原出張所のほうに身柄を引き受けております。そうして、ただいま御指摘ございましたように、一応取り調べが終わりましたし、一二六の韓国人でもございますし、それから再入国許可も一応受けておりますし、本人の所在は日本国で定着しておりますので、逃亡のおそれもございませんので、九日に仮放免を受けて出まして、きのうこちらへ出発したそうでございます。
  7. 岡田春夫

    岡田委員 だいぶいろいろお伺いをしたい点が御答弁の中からあるわけであります。  一つは、正規旅巻を持って、それから再入国許可手続もして、それにもかかわらず、金浦飛行場でそれらの書類を取り上げられて、それらのものを持たないで日本にいわゆる密入国したということは、よほどこれは急迫した事情があったのだろうと思うのだが、そういう点についてもこれは、ぜひ伺わなければならないのですが、これはどういう事情であったのでしょうか。こういう点をまず伺いたいという点が第一点。  それから、いまの点で、仮放免というお話になりますと、入管令に基づく仮放免だろうと思いますが、この点は非常に重要な点なので、仮放免ですから、事実上これは法律上の措置がそれ以上――いわゆる仮の放免であって、確定したことになっておらない、それ以降の措置は今後もあり得るということになるので、そこら辺の関係も含めてお聞きしたいと思います。
  8. 小川清四郎

    小川政府委員 本人正規韓国旅券も入手いたしまして、それに基づきまして入管といたしましては東京事務所において再入国許可証を出したわけでございますが、それにもかかわらず、それを所持しないで不法入国をした、その動機と申しますか、そういう点についてまずお尋ねがあったと存じますが、その点につきましては、私どもといたしましても、不法入国動機というものにつきましては一応の調べはいたします。いたしますけれども、それを深く追及するという点につきましては、その場合その場合に応じてやることでございます。そういたしまして、たとえば事件背後関係とかその他につきましては、私どもとしては一応の参考として聞くわけでございます。しかも、本件につきましては、まだ刑事処分も終了しておりませんし、それから、私ども調べもまだこれから継続するわけでございまして、第二の御質問に関連してくるわけでございますが、一応身柄は仮放免として放したわけでございますけれども、今後違反審査段階に入るわけでございますから、ただいまの段階におきましては詳細なことは申し上げることを差し控えたいというふうに考えます。
  9. 岡田春夫

    岡田委員 第一点ですがね、相当急迫した事情でもなければ密入国をするということは考えられないのですが、この点についてもう少し具体的に伺いたい。
  10. 小川清四郎

    小川政府委員 確かに急迫した事情のもとに向こうを密出国してわがほうに密入国したことはそのとおりでございますけれども本人の陳述その他につきましても、ただいまの段階では申し上げられないというふうに考えております。
  11. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、またあと伺ってまいります。  局長、この事実は後宮さんに聞きたかったのですが、後宮さんが来てないから伺いますが、あなたはこれは御存じでしょうね。セナラ自動車工業株式会社というのは、朴軍事政権再建計画の第一号としてつくられるというので、その当時たいへん大きな問題になった。このセナラ自動車が昨年差し押えられて競売にされるということで、その社長である朴魯楨が実は先月の二十二日に韓国入国をした、そういう事実は御存じでございますか。
  12. 小川清四郎

    小川政府委員 そういう事実は伺っております。
  13. 岡田春夫

    岡田委員 だれから伺っておりますか。本人ですか。
  14. 小川清四郎

    小川政府委員 それは、私どもも事案を処理する場合にいろいろの情報として取ることは当然でございますので、東京入管におきましていろいろ調べた結果、大体のことは伺っております。
  15. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、もう一つ伺いますが、ここにございますけれども、あなたはそれほど情報をお取りになっているなら御存じだろうと思うが、朴魯楨の書いた「セナラ自動車工業株式会社経緯」というのが出されております。これをお読みになったのだろうと思いますが、情報通のようですから、一応韓国語で出ておりますが、これはお読みになっているのだろうと思いますが、伺います。
  16. 小川清四郎

    小川政府委員 そのものは私は読んでおりません。
  17. 岡田春夫

    岡田委員 そういうものがあることは御存じですか。
  18. 小川清四郎

    小川政府委員 それも、そのものが存在しているということも実は寡聞にして伺っておらない次第でございます。
  19. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、あとでお教えいたします。  もう一点伺いたいのは、彼の出国にあたって彼が所持しておった旅券は、いわゆる韓国代表部が発行した旅券でございますか。
  20. 小川清四郎

    小川政府委員 そのとおりでございます。
  21. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、お伺いいたしますが、福岡の入管厳原出張所に収容されたときに、同所の調べでは、朴魯楨という人は韓国人じゃない、日本人である、こういう事実が明らかになっておるはずです。国籍日本国籍のはずですが、あなたの出張所のほうで調べているはずですが、どうですか。
  22. 小川清四郎

    小川政府委員 厳原出張所からは、そういう報告を私どもは受け取っておりません。
  23. 岡田春夫

    岡田委員 もっとはっきり申し上げます。昭和十七年二月に青森弘前戸籍並びに国籍を移して日本国籍になった、この事実はあなたは御存じでしょう。これは厳原出張所ではっきり言っている事実ですが、どうでございますか。
  24. 小川清四郎

    小川政府委員 厳原出張所報告を私どもまだ入手しておらないのでございますが、韓国籍について疑念があるということは新聞などでも出てまいりましたので、私ども目下詳細に調査中でございます。その調査の結果につきましては、また機会を見て御報告いたしたいと思っております。
  25. 岡田春夫

    岡田委員 入管ともあろうものがそんなことでは困りますね。名前は三浦光雄というのです。これは入管のほうで御存じなくても警察庁捜査二課で知っているはずですよ。日本国籍であったら、あなたはどうするのですか。問題にならぬじゃないですか。
  26. 小川清四郎

    小川政府委員 そういうふうな問題につきまして、実は目下すでに調査を開始しておるわけでございます。しかしながら、青森県の問題につきましてはまだ幾多の疑点も残っておりますし、それで調査中と申し上げた次第でございまして、全然調査をしておらないということではないのでございます。
  27. 岡田春夫

    岡田委員 それはちょっと困りますね。厳原出張所では明らかにこれは日本国籍であるということをはっきり新聞記者にも言っているんですよ。あなた方ちょっと電話をかけて聞いてごらんなさいよ。あなたのほうの所管ですから。私は入管に別にあれはないのだけれども、私のほうはこれを取っているのだが、あなたのほうは……。ちょっと困りますね。昭和十七年に日本の女性と入夫結婚して入籍しているので日本国籍であると厳原出張所担当官に対して供述している。この事実はいま警察庁捜査二課の人が来たらもっとはっきりするのですが、委員長、困りますね。来てないとこれ以上はっきりした事実は申し上げられないのですが……。
  28. 赤澤正道

    赤澤委員長 いままいりました。質問内容がわからないと思いますから、もう一度質問してください。
  29. 岡田春夫

    岡田委員 捜査課長さんがおいでになった早々、はなはだあれでございますが、御承知のように、この間から対馬厳原入管出張所でいろいろ取り調べを受けております朴魯楨といえ人がおります。この朴魯楨という人については、あなたもよく御存じのとおり、昨年一つ疑惑事件がございまして、あなたのほうでお調べになっておるはずです。そのお調べになった内容等については私はあまり詳細に伺いません。そのお調べになった事件は東海道の新幹線のいわゆる汚職問題といわれておる。熱海の八丁園の下を新幹線が通る、それの補償問題にからんで疑惑事件が起こっている、こういう事件でお調べになったはずでございますが、この朴魯楨という男は、はっきり申し上げますが、昭和十七年の二月に本籍青森弘前市在府町五十八三浦ふみさんと結婚をして、その後十八年五月に男の子が生まれた云々という経過もございますが、この人はその当時以来戸籍も入り、三浦光雄という日本国籍を持っているはずです。この点は明らかになっているはずでございますが、捜査課長にお伺いをしたい。
  30. 関根広文

    関根説明員 お尋ねの点が十分わかりませんでしたので、事件関係のことは調べてまいりましたが、ただいまの件はちょっと把握しておりません。
  31. 岡田春夫

    岡田委員 事件関係のことはきょうお持ちになったわけでございますね。
  32. 関根広文

    関根説明員 そうでございます。
  33. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、事件関係のことを、せっかくお持ちになったのだからお話しいただけますか。この朴魯楨という人が国籍日本人であるというのは捜査二課で調べているはずですが、これは電話でお調べいただければすぐわかりますから、いま直ちにでなくても、あとでお答えいただいてけっこうです。
  34. 関根広文

    関根説明員 ホテル八丁園関係する事件、こういうふうに私どもほのかに伺ったものですから、静岡県で捜査しておりましたホテル八丁園関係のことについて若干調べてまいりました。昨年の八月に告訴告発が数件出ておりまして、それぞれ現在までに処理をしておる、大体そういうことについて調べてまいったのであります。
  35. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、一点だけ伺います。その事件には朴魯楨という人は関係をしておりますね。
  36. 関根広文

    関根説明員 五件ほど告訴告発がございます中に、八月十日、八丁園ホテル従業員岩瀬重輝という人が安田観光社長安田英二こと朴魯楨被告訴人とする傷害罪告訴が出ております。もう一つ、八月十三日、紀太俊彦という人が安田英二こと朴魯楨西山正夫という人を被告発人とする封印破棄罪という告発が出ております。もう一つは、ただいまお調べになりました安田こと朴魯楨を相手方とする事件でございます。この事件静岡県で調べまして、本年の二月十七日に地方検察庁沼津支部へ送付されております。
  37. 岡田春夫

    岡田委員 私、朴魯楨という人については去年大体いまごろの時期に日韓会談の問題について国会で取り上げたのです。その結果朴魯楨という人から私は脅迫を受けているのです。たしか告訴もされておるはずです。だからよく知っているのです。朴魯楨という人については、あなたのほうでお調べになっておるし、本人をお調べになったということは事実なのでございますか。
  38. 関根広文

    関根説明員 告訴告発について一応調べて、送付したというふうに聞いております。
  39. 岡田春夫

    岡田委員 調べたということですから、本人をお調べになったのですね。
  40. 関根広文

    関根説明員 ただいま申し上げましたように、事件について調べて送付したということを聞いております。
  41. 岡田春夫

    岡田委員 捜査二課で調べたはずです。知っておりますよ。  委員長にお願いします。お調べになっておる事実もありますし、朴魯楨という人は日本国籍であるということは捜査二課では明らかになっておるはずです。これはいま御答弁を用意しておられないのでしかたがありませんから、もう少しあとまでに御連絡の上でここで御答弁願いたい。この問題は入管あとの問題と非常に重大な関係がありますので、その点委員長からお確かめをいただきたい。
  42. 赤澤正道

    赤澤委員長 御希望のとおり取り計らいます。
  43. 岡田春夫

    岡田委員 入管局長、これほど重大なんですよ。厳原でお調べになる前から、すでに日本国籍であるというのは警察庁でわかっている。警察庁でわかっておるのに、入管のほうではこれを密入国として扱っている。日本国籍なら密入国にならないでしょう。日本国籍であるからということで仮放免をしたのじゃないのですか。どうなんですか。
  44. 小川清四郎

    小川政府委員 そうではありません。韓国人として扱っておりますから、外国人として仮放免したわけでございます。私どもは、登録関係、それから韓国戸籍謄本その他から見まして、この朴魯楨韓国人であるというふうに考えて、再入国許可書を出したわけであります。日本人であるかどうか、あるいは二重国籍であるかどうかという点につきましては、目下私ども調査しております。
  45. 岡田春夫

    岡田委員 いま小川入管局長が言われた、ただ一つの例として二重国籍の例があるということだが、韓国人日本人との間に二重国籍の例はあり得ないはずですよ。昭和二十六年のいわゆるサンフランシスコ条約締結、翌年の条約発効に基づいて、戸籍朝鮮にある人は全部朝鮮籍に戻って日本国民ではないということになった。この人の場合には、戸籍青森県にあり、入籍もすべて手続を行なって、日本国民としての国籍を取得している。もしあなた、日本国民であった場合において、朝鮮に出る場合、日本政府が発行しないパスポートを持って出ていったという、そのこと自体問題になるでしょう。そういう大きな問題なんですよ、これは。日本国民日本政府の発行しないパスポートを持って、韓国代表部パスポートを持って行ったということは、これは重大問題ですよ。これは入管手続上も重大問題ですよ。なぜこういう点はっきりなさらないのですか。二重国籍なのかどうか、この点をまず伺います。
  46. 赤澤正道

    赤澤委員長 速記をとめて。   〔速記中止
  47. 赤澤正道

    赤澤委員長 速記を始めて。
  48. 小川清四郎

    小川政府委員 ただいま私が二重国籍ではないかということを申し上げましたことにつきましては、一応取り消します。韓国籍として私どもは扱っておりますので、なお詳細な取り調べができましたならば、またお答えいたしたいと思います。
  49. 岡田春夫

    岡田委員 それはますます重大ですよ。韓国籍としてお扱いになった。ところが、日本政府の一部機関、――警察庁ですよね。昨年の春、この人は日本国民であるということが確認されておる。一年前に、日本国民であるという事実が明らかになっているのに、入管としては、この日本国民に対して、韓国代表部から発行されたパスポートによって、そのパスポートによって出国許可している。再入国許可している。こんなことはますます入管としてはでたらめきわまることになるじゃありませんか。二重国籍だという御答弁なら、まだ救いの道はあるかもしれないですよ。あなたはいま取り消されたんですから、二重国籍をお取り消しになったんですから、日本国籍を持っているという事実に立っているんなら、入管としてはますます重大なことをやったということになりますよ。いま申し上げたように、非常にこの関係は重大ですから、ひとつ厳原のほうもお調べになっていただきたい。はっきり本人が言っているはずです。昭和十七年に日本国籍を取得していると言っているはずです。
  50. 小川清四郎

    小川政府委員 いずれにいたしましても、私どもは、韓国籍ということで許可を出しておりますので、その点にもし疑惑がございますようでしたら、さらに詳細な調査をいたす所存でございます。
  51. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、もう一点伺います。もしこの人が日本国籍だったらどうしますか。
  52. 小川清四郎

    小川政府委員 その判明したときに処置いたします。
  53. 岡田春夫

    岡田委員 処置では済まないですよ、あなた。これは政府責任ですよ。日本国民外国パスポートを持たして、それによって行ったり帰ったりした。しかも、あなたがさっき答弁されておるように、今度が初めてじゃない。数十回行ったり帰ったりしたんでしょう。さっきから言っているように、数十回は別にしても、数回行ったり来たりしている。それは全部韓国パスポートでしょう。日本国民外国パスポートを持たして、数回行ったり来たりしたなんというのに、入管が黙っているというのはおかしいじゃないですか。入管、何なさっておられるのですか。処置いたしますという程度では済まないですよ。責任を明らかにしてください。
  54. 赤澤正道

    赤澤委員長 岡田君、他に質問ございますか。
  55. 岡田春夫

    岡田委員 いや、いまの答弁。――外務大臣はどうしましたか。あと外務大臣への質問に入るのだけれども
  56. 赤澤正道

    赤澤委員長 後宮君にありませんか。後宮君が来ています。
  57. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、後宮さん、いまあなたがお見えになる前に出たのですが、あなたは日韓交渉をやっておられるので、セナラ自動車工業というのができているのは御存じですね。
  58. 後宮虎郎

    後宮政府委員 承知しております。
  59. 岡田春夫

    岡田委員 それが差し押えられて競売に付されようとしているのも事実でございますね。
  60. 後宮虎郎

    後宮政府委員 そういうふうに伝えられておることも承知しております。
  61. 岡田春夫

    岡田委員 朴魯楨という人はその問題で先月の二十二日に韓国に渡った、これはまあそういうように伝えられていますが、その点は御存じですか。
  62. 後宮虎郎

    後宮政府委員 そういうように聞いております。
  63. 岡田春夫

    岡田委員 それで、今度密入国したのですね。その密入国はどういうわけか。正規韓国代表部パスポートを持ち、しかも再入国許可書も持っているのに、急に密入国してきたわけですね。よほど急迫した事情があったと思うのだが、その急迫した事情というのはどういう事情か、御存じでございますか。
  64. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先方の韓国内における内政問題との関連等いろいろ複雑な事情があるように韓国側新聞等に伝えられておることは聞いておりますが、日本政府として、あるいは外務省として、はっきりどれがほんとうの正確な事実であったのかということは承知いたしておりません。
  65. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、いまの問題で、小川さん、警察庁のほうでもいま来るのです。日本国籍であった場合、そういう場合は、――これはあなたがお調べにならなくともすでに一年前にはっきりしている。そういう場合に、これに対してどういうお手続をおとりになるか、ここの点をひとつ総合的な見解を伺って、私は次に進めたいと思うのです。こういう点をもう一度念を押して伺ってから進めたいと思います。
  66. 小川清四郎

    小川政府委員 警察庁のほうですでに一年前に日本国籍であるということをお調べになっているということでございますが、私どもといたしましても中間報告は受けておりまして、本人朴魯楨であるかどうかという同一性を確認するというふうな点につきましてもいささか疑問もございますし、私どもにも一応調べさせていただきたいというふうに考えている次第です。
  67. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっと話がよくわからないのだが、同一性というのは、本人同一性といって、本人そのものですから、同一性と言われましても、これはちょっとわからないのですがね。
  68. 小川清四郎

    小川政府委員 三浦光雄というものが朴魯楨であるかどうかというふうな点につきましては、いろいろまだ詳細に調べる余地がございますので、ひとつ……。
  69. 岡田春夫

    岡田委員 これはお調べになったらひとつできるだけ早く御答弁を願いたいのですが、厳原出張所で、私は昭和十七年日本女性と入夫結婚、入籍しているので日本国籍でありますと供述している、同出張所弘前市役所に照会して取り調べたところ、昭和十七年二月、本籍青森弘前市在府町五十八の三浦ふみさんと入夫結婚し云々、こう書いてある。ここまで出張所調べておるのですよ。だから、これは明らかなのです。あなたのほうの出先が調べたのです。これは明らかなのです。明らかだから私言っておるのです。それなのに、あなたのほうは厳原のほうから聞いてないとおっしゃったら、厳原のほうがサボっているのです。厳原におこらなくちゃだめですよ。
  70. 小川清四郎

    小川政府委員 厳原出張所からはそういう報告は私どもまだ受けておりませんので、さらに厳原に照会いたしまして……。
  71. 岡田春夫

    岡田委員 もっとしっかりお調べください。こういうようにはっきりしているのですから。それで、本籍まではっきり私ここで速記に残しておきますから、お調べいただきたい。  そこで、私は外務大臣が来ないとちょっと困るのですが、それじゃ、外務大臣が来られる前に、後宮さんに、先ほど小川さんにも伺ったのですが、朴魯楨という人が「セナラ自動車工業株式会社経緯」というのを韓国文でことしの二月に発表しておる。これは御存じでございますかどうか。そして、その内容はごらんになりましたかどうか。
  72. 後宮虎郎

    後宮政府委員 内容は直接見ておりませんが、彼がそういう文書を韓国内で配布したというふうに伝えられておることは承知しております。
  73. 岡田春夫

    岡田委員 だから、これは事実なんです。私の持っているのは、うそじゃない。日本語に直したものです。この中で、外務大臣にも聞きますが、一つだけあなたに伺っておきます。この中にこういうことが書いてある。セナラ自動車工場落成式の直前、すなわち昭和三十七年八月の十九日、中央情報部次長補石正善、その当時の中央情報部長は金鍾泌、その次長補の石正善の要求によって、「朴議長らが出席している席上においてセナラ自動車会社の運営権の一切を韓国の商工部長官に委任するという委任状を強制的に朗読させられ、朴議長に委任状を手交させられた」、こう書いてある。これは、明らかに、朴魯楨氏がつくったセナラ自動車工場を、中央情報部長金鍾泌のもとにあるこの人の強圧によって、朴正煕もその前におって、朴正煕に渡したというのですから、朴正煕と一緒になってこのセナラ自動車工場の経営一切の委任状を強迫的に取り上げられた、こういう事実を朴魯楨それ自身が言っておるのです。このことが、いわゆる韓国の朴政権の本質なんです。こういう事実。しかも、もう一つ問題になるのは、これはさっきから問題になっておる日本国民だったらどうしますか。日本国民の持っている所得財産を韓国という外国が強迫のもとに取り上げたということになる。まず第一、こういう文章のこういう経過があったことは御存じでございましょう。
  74. 後宮虎郎

    後宮政府委員 そういう文書が配布されていることは承知しているのでございますが、その事実がほんとうにそのとおりであるかどうかということは承知しておらないわけでございます。
  75. 岡田春夫

    岡田委員 これも後宮さんおかしいですよ。私、去年のいまごろですよ。この問題に関係をして、金浦飛行場で、朴魯楨がこの落成式で委任状を強制的に取り上げられたときに、石正善の部下に、金鍾泌の部下に判こを取り上げられたじゃないかと言って、私予算委員会質問したでしょう。ほんとうなんですよ。ここに書いてある。あなた、この関係はよく知りませんと言うが、お調べになったことありますか。
  76. 後宮虎郎

    後宮政府委員 ございません。
  77. 岡田春夫

    岡田委員 あなたしょっちゅう韓国へおいでになっていて、こんなことお調べにならないのですか。  外務大臣がお見えになりましたから、外務大臣伺いますが、いまいろいろ重大な問題を、外務大臣いらっしゃらないけれども、あなたの部下に伺っていたのですが、朴魯楨というが「セナラ自動車工業株式会社経緯」というものを発表した。このことは後官アジア局長もお認めになった。この内容はまだ読んでないという、こういうことである。この中に、「いまにして考えれば結局初めからわれわれを利用して会社を創立させ、時機を見て会社を奪い取り、漁夫の利を得ようとしたものである。このような事情を考慮すれば、金鍾洛氏らの行為には不明朗な意図が介在し、何か特別な野心あるいは当初から一貫した一種の謀略であったといわざるを得ない。」、こう言っておる。そして、この点について日本のある通信社の記事によれば、「セナラ事件には、現在民主共和党議長金鍾泌元情報部長とその実兄である金鍾洛氏が関係をしておる。朴魯楨氏は被害者であった。」、このように言っておる。セナラ自動車乗っ取りは初めから行なわれた、その乗っ取りの陰謀の中心は金鍾泌であるということを明らかに言っておる。こういう問題について、あなたはどういうようにお考えになりますか。金鍾泌という人が近く日本に来るそうですか、こういう疑惑があっていま韓国の内部でたいへん問題になっている人だ。問題になっているのは、いま始まったことじゃない。去年のいまごろ私が四大疑獄事件といって取り上げたあれにも金鍾泌が関係している、セナラ自動車乗っ取り事件にも金鍾泌が関係しているといわれている。こういう事実に対して大平外務大臣はどういうようにお考えになりますか。
  78. 大平正芳

    ○大平国務大臣 伺いますと、韓国の問題のようでございまして、私からとやかく申し上げるべき性質のものでないと思います。
  79. 岡田春夫

    岡田委員 あなたが日韓交渉をやっている相手の韓国の問題ですからね。先ほど後宮さんは、こういうようなことを聞いておりますと言われた。しかも、あなたは近いうちに金鍾泌と会うのでしょう。この金鍾泌がこういうことをやっている人であるならば、日本の名誉のために会うべきじゃないですよ。こういう疑惑があるので南朝鮮の内部で大騒ぎですよ。金鍾泌という人はこういう黒い疑惑のある人なんだ。この点はこの議会を通じて国民の前に明らかにしていかなければならぬ。あなたが知らぬとおっしゃってもこれは明らかにしていかなければならぬ。あなたはこういう問題についてどういう御感想をお持ちですか。あなた自身は何とも言えませんとおっしゃるが、何か御感想があったら伺っておきたい。
  80. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申し上げたとおりです。
  81. 岡田春夫

    岡田委員 ともかく、私は、この委員会を通じて、国民の前に、あなたが話し合われようとされている金鍾泌というのは、去年の四大疑獄事件、今度にもこういう黒い疑惑がある人物であるということを明らかにしなければならない。日韓会談の裏に隠れているこの事実を国民の前に明らかにしなければ、国民は釈然としないのです。そういう意味で私取り上げていきます。  続いて伺います。通産省の方おられますか。これは去年私が質問した問題の続きです。このセナラ自動車工業関係をして、日産のブルーバードというのが、これは去年の予算委員会で私が質問した四百台というのはお認めになった。完成車四百台が韓国へ送られた。ところが、その後私が調べたところによると、四百台どころじゃないのですね。昭和三十七年には千六百四十二台、昭和三十八年には九百五十台、合計二千五百九十二台の自動車が、ブルーバード完成車として韓国に送られているということですが、これについては通産省としては許可をお出しになったのですかどうですか。
  82. 森崎久壽

    ○森崎政府委員 お答えいたします。  昭和三十七年四月及び五月に完成車といたしまして四百台出たことは、先ほど来申し上げたとおりでございます。いまおっしゃいました台数につきましては、こまかい数字をいま持っておりませんけれども、御承知のように、ノックダウン方式によりまして、こちらから部品を輸出して、向こうで完成するというかっこうで輸出しております。
  83. 岡田春夫

    岡田委員 それをノックダウン方式だと称しておるのですよ。だから私は伺っておるのですよ。重工業局長にもっと具体的に申し上げましょうか。このセナラ自動車工場というのは去年の七月につぶれているのですよ。つぶれているのに、ノックダウン方式で行くはずがないわけです。だから、完成車で行っているに違いない。そこらの事情はどうですか。
  84. 森崎久壽

    ○森崎政府委員 昨年六月以降は日産からは輸出が行なわれておりません。ただ、昨年の八月、十月の間に部品の積み残しの部分だけが若干出ております。
  85. 岡田春夫

    岡田委員 では、結局完成車としては去年とおととしは何台出たんですか。
  86. 森崎久壽

    ○森崎政府委員 昭和三十七年にダットサン・ブルーバードが四百台出ております。
  87. 岡田春夫

    岡田委員 韓国の国会で、韓国の国会議員用に四百台の完成車を日本から輸入した。これはいまの四百台とは違うんですよ。四百台を輸入したといって問題になっておる。これは汚職の関係があるといって問題になっているが、この点はどうですか。
  88. 森崎久壽

    ○森崎政府委員 用途については、私どもは存じておりません。ただ、四百台は三十七年四月及び五月に出た四百台しか存じておりません。
  89. 岡田春夫

    岡田委員 これは去年の予算委員会でお認めになったのですが、これは観光用なのです。それから。UN、国連用ですか、その関係なんです。それとは別に四百台があるわけです。三十八年に韓国の国会議員用として四百台、これに汚職の関係があるというのです。
  90. 森崎久壽

    ○森崎政府委員 そのような四百台については存じておりません。
  91. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、この点は御存じありませんか。この日産自動車、これらをあなたのほうは組み立てだとおっしゃるのだけれども、組み立てじゃないんですね。せいぜいやってもセナラではペンキを塗った程度なのです。ところが、これは日産のブルーバードを一台輸出すると三%のリベートが出る、このリベートが金鍾泌らに使われておる、そういうことでこれが韓国の国会で問題になっている。十九億ウォンです。不当利得だといわれておる。十九億ウォンというのは日本の金に直すと四十五億円です。これらのリベートを含めて金鍾泌らがブルーバードという自動車による不当利得四十五億円をせしめているという話を聞いているのですが、まあ、こういうように聞けば、あなたは知らないと言うのだろうと思いますけれども、この韓国でこういうことが問題になっていることは御存じでございましょう。それならば、その点はどうですか。
  92. 森崎久壽

    ○森崎政府委員 そういう問題についても、私存じておりません。
  93. 岡田春夫

    岡田委員 そういうことは後宮さんのほうでは知っているでしょう。ずいぶん韓国の国会で問題になっていますから。この問題だけで韓国の国会で大騒ぎをしているのですから、御存じでしょう。
  94. 後宮虎郎

    後宮政府委員 韓国系の新聞に非常に大きく扱われておることは承知しております。
  95. 岡田春夫

    岡田委員 重工業局長、そうなんですよ。出ているのですよ。十九億ウォン、四十五億円の不当利得を金鍾泌らが取っている。  そこで、もう一度、大平さんいやだろうけれどもセナラ自動車の乗っ取りをやったのも金鍾泌たち、不当利得も金鍾泌たち、こういう疑惑の男なんですよ。この疑惑の男金鍾泌が今度日本に来るそうだが、何の目的で来るのですか。どんな資格で来るのですか。
  96. 大平正芳

    ○大平国務大臣 おいでになるのかならないのか、おいでになるとして、どういう目的でおいでになるのか、私は全然聞いておりません。
  97. 岡田春夫

    岡田委員 きょうの新聞に出ておりますが、それはお読みになりましたか。
  98. 大平正芳

    ○大平国務大臣 新聞読みました。
  99. 岡田春夫

    岡田委員 新聞の中で、あなたにも会いたいと言っておりますが、お会いになりますか。
  100. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私のところに何も言ってきておりませんので、何とも答えようがありません。
  101. 岡田春夫

    岡田委員 もしそういう申し出があったら、お会いになりますか。
  102. 大平正芳

    ○大平国務大臣 申し入れがないのですから、何とも言いようがありません。
  103. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、お会いになるのですか。お会いになったときに、あなたはどういうようにやるのですか。
  104. 大平正芳

    ○大平国務大臣 もし申し出があったら、とくと考えます。
  105. 岡田春夫

    岡田委員 金鍾泌から非公式にもそういう連絡はありませんか。アジア局長後宮さん、どうですか。
  106. 後宮虎郎

    後宮政府委員 未開発国関係会議で台湾に旅行し、それから南ベトナムに行く、その帰りに立ち寄るということは非公式に情報を受けております。
  107. 岡田春夫

    岡田委員 この間の委員会では、ビザの申請をして、そうして来るということは、大平外務大臣はお認めになったそうですから、来るのは間違いないでしょう、申請したというのだそうですから。
  108. 大平正芳

    ○大平国務大臣 どういう種類のビザがもらえるかということで照会がございましたので、まだ正式の申請が出ていないわけであります。
  109. 岡田春夫

    岡田委員 どういうビザがというのはどういうことですか。この人は政府の役人じゃないでしょう。民間人じゃないですか。民間人にどういうビザといっても、大平さんや後宮さんは特別な御関係があって何か国賓にでもなさるというお考えですか。
  110. 後宮虎郎

    後宮政府委員 ビザの期間の問題とか、そういうことでございます。技術的な問題でございます。
  111. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、またあと伺いますが、そうすると、この金鍾泌という人は、きょうの新聞を読んでみてもはっきり出ておりますが、台湾、南ベトナムに行って、そして日本に寄る。特に、その台湾では、蒋介石と今度岸元首相が行くので、三者会談をやると言っている。こういう情報は、後宮アジア局員、お聞きになっておられませんか。
  112. 後宮虎郎

    後宮政府委員 新聞紙上だけですから、その点につきましては承知しておりません。
  113. 岡田春夫

    岡田委員 ここで三者の陰謀が進めれらるわけですね。特に大平さんに先に言っておきますが、台湾に行って、日本と台湾の不和を仲介するのが目的である、そしてその調停の功労によって日韓会談の主役を果たして、そして日本に恩を着せて日韓会談を進めようというのが金鍾泌のねらいだ。大平さんが台湾に何だか行くのか行かないのかあいまいな態度をとっているところを金鍾泌がうまく買って出て、それによって日韓会談をうまくリードしようというのが金鍾泌のねらいですよ。しかもこう言っておるじゃありませんか。きょうの新聞をあなたはごらんになったとおっしゃるが、ごらんになったとおりですよ。漁業会談においてうまくいかなかったら、おれが買って出てまとめてやると言っている。私はきょう新聞を持ってきておりますが、政府の方針は農相が持って行くので、私には腹案はないが、双方が理解し得ないときには、日本韓国が理解し得ないときには、私が調停を買って出てまとめてやると言っている。大平さんはそれを期待しているのじゃないですか。その疑惑の男金鍾泌に期待を持っているのじゃないですか。あなたはともかくも金鍾泌という人にこういう形でお会いになることは、私はおやめいただきたいと思う。政府の代表ではございませんから、おやめいただきたいということを強く要求しておきますが、この点についていかがでありますか。
  114. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御本人人が私に会いたいということを言ってきてないのですから、言ってきてないのに会うとか会わぬとか私が申し上げること自体がおかしいと思うのでございます。
  115. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、時間があまりありませんので、続いて進めますが、今度は主として経済問題について伺ってまいりたいと思います。  韓国の経済について、たしか予算委員会でこの前も質問があったように記憶しておりますが、調べましたがはっきりいたしません。去年の末のところで外貨保有高はどれぐらいになっておるか、そういう点についてアジア局長にひとつ詳しく御答弁をお願いいたしたい。
  116. 後宮虎郎

    後宮政府委員 韓国銀行の資料によりますと、一九六四年、本年度の二月十日現在におきまして約一億三千五百万ドルでございます。
  117. 岡田春夫

    岡田委員 それで、一億三千の中で、本年度当初に決済をしなければならないその分、これは私も韓国銀行の発表を使うのですが、それから日本とのこげつき債権、これを含めるとどれくらいになりますか。
  118. 後宮虎郎

    後宮政府委員 はっきりした統計は手元にちょっとございませんが、私の記憶では、自由になるのは三千万ドル程度だろうと思っております。
  119. 岡田春夫

    岡田委員 三千万ドルは自由にならないのでしょう。赤字三千万ドルでしょう。違いますか。私も韓国銀行のこれを調べてきたのですが、赤字が三千万ドルのはずですよ。
  120. 後宮虎郎

    後宮政府委員 まだ細々ながら信用状も発給しておりますので、純赤字にはなっておらないと思います。
  121. 岡田春夫

    岡田委員 そこの点はあまりはっきりなさらないようでございますが、お調べになってお答えいただけますか。
  122. 後宮虎郎

    後宮政府委員 あと取り調べまして……。
  123. 岡田春夫

    岡田委員 これは赤字になっているはずです。私の調べたのでは、本年度の初めの決済を必要とする分が八千九百万ドル、それから日本のこげつき債権が四千五百万ドル、合計すると一億三千万ドル。ところが、ただいまの御答弁では、外貨保有高は一億三千五百万ドルだ、こういうお話ですが、私の調べましたのでは一億一千五百万ドルなんで、赤字一千五百万ドル、こういう計算が出てくるのです。これは時期の違いがあるのですが、ともかくも、赤字か、使えないかという状態のはずです。  次に伺いますが、昨年度末の日本の対韓貿易の実績はどうなんですか。
  124. 後宮虎郎

    後宮政府委員 お答え申し上げます。  通関統計によりますと、昨年度、輸出のほうが……。
  125. 岡田春夫

    岡田委員 末ですか。
  126. 後宮虎郎

    後宮政府委員 そうでございます。暦年でやっておりますから、昨年の末でございまして、輸出がざっと一億六千万ドル、輸入がざっと二千六百万ドルで、バランスといたしましては約一億三千万ドルの輸出超過になっております。
  127. 岡田春夫

    岡田委員 それでおわかりのように、日本は一億三千万ドルの取り分があるわけですね。ところが、日本が一億三千万ドル取ったら、向こうの外貨はなくなっちゃうじゃないですか。これはどうなんでございますか。ともかくも一億三千万ドルの赤字になっているのは事実なんですね。これは政府の御答弁です。  そこで、話を続けて進めます。延べ払いの問題について伺いたい。去年私が予算委員会で、正確に申し上げますと昭和三十八年の二月二十八日に質問したのに対して、その当時の通産省の担当局長は、私が、新潟鉄工、近畿車輛、この二つから五十二両のディーゼル機関車を輸出することについて延べ払いをきめたはずだ、――その延べ払いの時期についてもここにございますから申し上げてもいいのですが、延べ払いの金額は三百五十万ドル、時期は昭和三十八年七月に三〇%、三十九年二月に三〇%、四十年四月に四〇%、このような延べ払いの条件で三百五十万ドルを払うことにきめたはずだ、こういうことを質問したら、そういう事実はございませんと答えているのです。これは速記録がここにございますからお見せしてもいいのですよ。松村政府委員がこういうように答えております。「延べ払いの場合には、民間の会社では輸出入銀行の資金を使って延べ払いするのが普通でございまして、その場合には政府の認可を必要とするわけでございます。政府において認可したものはございません。」、このように当時の松村局長は答えている。私が再度念を押して聞いたら、「繰り返して申し上げますが、政府が認可した事実はございません。」、こう言っている。ところが、認可しているでしょう。どうなんですか。これは通産省のほうで認可したはずなんですが、認可したことはアジア局長はこの間の予算の第二分科会で答えているわけです。いつ認可したのか。私に予算委員会でごまかしたのです。
  128. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 いまお話しのディーゼル車両につきましては、昨年の四月輸出の許可をいたしております。
  129. 岡田春夫

    岡田委員 輸出の許可というのは、延べ払いを認めたということですね。
  130. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 延べ払いは一年五カ月という比較的短期のものでございますが、そういう条件で認めております。
  131. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、輸出入銀行の方がお見えだそうでございますので、ひとつ伺いたいのですが、韓国に延べ払いがだいぶあるはずですが、どれくらいありますか。
  132. 斎藤正年

    ○斎藤説明員 現在、韓国向けで融資申しましたもののうちで貸し出しが残っておりますのは二件でございまして、合計二億四千七百万円でございます。
  133. 岡田春夫

    岡田委員 その二件とおっしゃる一つはディーゼル機関車でございますか。
  134. 斎藤正年

    ○斎藤説明員 二件ともディーゼル機関車でございます。
  135. 岡田春夫

    岡田委員 お話しになりましたの  は、ちょっとわからないのですが、そうすると、いま申し上げた五十二両以外にもう一件ある、こういうことですか。
  136. 斎藤正年

    ○斎藤説明員 一件は、新潟鉄工所の分、ディーゼル機関車二十六両。それから、一件は、近畿車両の分、ディーゼル機関臓二十六両。
  137. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、この間アジア局長のお答えになったのは違うのですか。昭和二十九年の延べ払いにもう  一件ありますと予算の第二分科会で言われましたね、それはないのですか。
  138. 斎藤正年

    ○斎藤説明員 融資残として残っておりますものはございません。
  139. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、昭和二十九年の分は、延べ払いは認めたけれども、それは済んだ、こういうことですか。
  140. 斎藤正年

    ○斎藤説明員 二十九年のものは、二年半の短期の延べ払いでございまして、完済になっております。
  141. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、ひとつ伺いますが、日立製作所など八社で、客車、炭車、金額は千二百五十万ドル、これも延べ払いになっているでしょう。
  142. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいまお話しの件は、通産省のほうでも聞いておりません。
  143. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、忠州水力発電と韓国電力と丸紅飯田とでプラントの延べ払い輸出四千七百四十八万ドル、これはおととしすでに延べ払いがきまっているはずです。これはどうなんでございますか。
  144. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいまお話しの発電所の件は、当時話を若干聞いておりますけれども、具体的に申請が出て許可したという事実はございません。
  145. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、もう一点伺いますが、伊藤忠と朝鮮紡績の紡績プラント、これは去年の十二月の十六日に契約をしている。プラントは紡績機十万錘、金額は千五百七十万ドル、延べ払いの条件は二年間据え置きで十年間償還、そして、そのうち七百七十万ドルは製品の輸出による償還、こういうことで、韓国側ではすでにこれは決定をしているわけでございますが、これについてはどうですか。
  146. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいまの件は、うわさで聞いておる程度でございまして、まだ正式に日本側のほうには通報がございません。
  147. 岡田春夫

    岡田委員 これはちょっと重大なのは、ことしの二月六日に韓国の国会で金裕沢経済企画庁長官は、このプラントがすでに入ったという事実を認めている。これはどうなんですか。密輸出ですか。延べ払いのあれもなしに、品物はプラントで行ってしまった。(「幽霊輸出だ」と呼ぶ者あり)いま自民党の議員のおっしゃるように、これは幽霊輸出でございましょうね。これはどうでございますか。その点は御確認になっておられますか。
  148. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 ただいまの件につきましては、ひところそういう延べ払い輸出の話が向こうで出ておるということをごく間接にうわさで聞いただけでございまして、あと具体的なことは通産省といたしましては何ら承知いたしておりません。
  149. 岡田春夫

    岡田委員 これは重大ですから、ひとつお調べいただけますか。韓国の国会で問題になっているのですからね。
  150. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 当事者が当方は伊藤忠という名前が出ておりますので、具体的に会社関係者の方に一応照会をしてみたいと思います。
  151. 岡田春夫

    岡田委員 一応じゃなくて、伊藤忠ということがはっきりしているのですから、お調べください。これはまたこのあと委員会伺いますよ。お調べいただけますか。
  152. 山本重信

    ○山本(重)政府委員 実は、いま係のほうから聞きましたところによりますと、当時そういう話がございましたので、係のほうから伊藤忠に照会をいたしましたところ、伊藤忠としては、本件は韓国の国会で問題になっておるようですが、問題になるほど話が進んでおるわけではございません、先方から具体的に契約の条件その他についての申し入れもまだない段階である、こういうことでございました。
  153. 岡田春夫

    岡田委員 これは、伊藤忠ばかりでなくて、アジア局長のほうでも韓国調べればわかるのです。国会の答弁ですから、これはお調べ願いたいと思いますが、そのほかに延べ払いというのはたくさんあるのです。それもやみ輸出で延べ払いをやっておるのではないかと思われる節が非常にあるのです。もう一度念のために申し上げますが、これはお認めになったディーゼル五十二両、三百五十万ドル。客車、炭車導入、日立製作所など八社、千二百五十万ドル。忠州水力発電四千七百四十八万ドル。源林産業と東洋棉花、これがやはり延べ払い千四百六十万ドルのプラント輸出。それから、伊藤忠と朝鮮紡績、これもプラント輸出千五百七十万ドル。こういうようにあるわけです。  何はともあれ、こういう形で事実上品物を送って請求権の見合いにする、五億ドルを埋めていくという腹ですよ。だから、われわれは、日韓会談がきまらないうちに請求権五億ドルが使われつつあるということを前から言っておる。外務大臣、これはひとつ御注意願わなければならぬ。しかも、先ほど申し上げましたように、外貨の保有高は、かりに百歩譲って後宮局長の言うとおりに三千万ドルの黒字があるとしても、昨年度末の貿易残高の赤字が一億三千万ドルですよ。これをどうやって処理されるのですか。この点外務大臣伺いたい。
  154. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は韓国の大蔵大臣ではございませんから、韓国の国際収支についてここで御答弁申し上げることは、私は不見識だと思います。岡田さんの御心配の点は、日韓貿易じりが順調に決済されるかどうか、こういう問題が一つあると思います。その点につきましては、私の伺っておるところでは、決済は順調に行なわれておると聞いております。  それから、五億ドル云々の話でありますが、日韓交渉が妥結して国会の御承認を得ておるわけでも何でもないのでございますから、そういう問題は、その金が使われるはずはないじゃありませんか。そういうことを私に聞かれるのもいかがかと思います。
  155. 岡田春夫

    岡田委員 いま不見識だとおっしゃったが、日本政府として、外務大臣、どうするんですか。これだけ赤字のものをあなたほっておくのですか。あなたが不見識だと言うなら、私はあなたの不見識をあえて問いたい。あなたは知っているでしょう。昭和三十六年四月二十二日の、日本韓国のオープン勘定残高の決済等に関する交換書簡というのがあります。アジア局長、知っているでしょう。これによれば、第二項に、韓国は今年二月以降すなわち昭和三十六年二月以降新規に発生する債務を毎月確実に現金で決済するとなっておるではありませんか。そうでしょう。それならば、それこそ外務大臣不見識じゃないですか。去年の末から一億三千万ドルも赤字があるのに、三月の現在になっても決済ができない。順調に進んでおりますとはどこにあなたの見識があるのですか。見識はないじゃないですか。このオープン協定に反しておるではないか。
  156. 後宮虎郎

    後宮政府委員 御承知のとおり、日韓貿易オープン勘定と、それから現金決済と、両建てで行なわれておりまして、韓国向けの輸出の半分程度は現金で行なわれておるわけであります。そして、オープンのほうにつきましては、御承知のとおり、スイング額を二百万ドルこえる分についてはきちんきちんと現金で払っておりまして、その状況を申し上げますと、一九六一年度には十一回、六二年度が二十八回、六三年度が二十七回、計六十六回、金額にいたしまして大体総額約一億二千万ドル払っております。向こうのほうは、輸入のほうを非常に進めまして、オープンに関する協定ができまして以後、払えないようなひどい赤字が出ないように注意しているように見受けられます。
  157. 岡田春夫

    岡田委員 ともかくも、この協定との関係はまだ伺いますが、時間もないし、もっと問題があるので進めますが、あなたは請求権はまだ調印はしていないから払いようがないとおっしゃるが、請求権を見合いにしてやっているのですよ。だから私は言っているのです。もう世論一般に共通じゃありませんか。いま日韓貿易で貿易をやったって向こうから金の支払えないのはわかっている、しかし、いずれは五億ドル日本のほうから払うのだから、それの見合いにして送るのだと言っているじゃないですか。あなたがそういうことをおっしゃるのは、それこそおかしいです。  それじゃ、続いて請求権について伺いますけれども、請求権は韓国側は再々こういうふうに言っているのです。無償三億ドル、有償二億ドル、民間借款一億ドル、合計六億ドル、五億ドルではなくて六億ドル、こういうふうに言っておりますね。六億ドル以上と言っているのですね。それはなるほどそういわれる節はあるのですよ。あなたのほうでお出しになった、昭和三十八年一月三十日、日韓予備交渉において「両首席代表間に現在までに大綱につき意見の一致を見た請求権問題の解決方式」、 この中で洋数字の1と2がございまして、1の(イ)には、無償経済協力は三億ドル、そのあとに生産物と役務ということを書いてあります。(ロ)は、長期・低利借款二億ドル。(ハ)に、以上のほかに相当多額の通常の民間の信用供与が期待されるとある。そうすると、五億ドルプラスアルファであるという事実は日本政府も認めているのですね。したがって韓国のほうでは、五億ドルではなくて六億ドルプラスアルファだ、六億ドルというのは、民間借款一億ドルを含めてプラスアルファだ、こう言っているわけなんですが、これは事実なんでしょうか。
  158. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府が期限・条件をきめてコミットしておりますのは、三億ドル、二億ドル、いまあげられましたイ、ロでございます。そのほかに、日韓の間でございますから、貿易が行なわれておるわけでございまして、民間の延べ払いの形式で将来相当額の信用供与があり得る、そういう期待を述べたものでございまして、その期限は何年になるとも、条件はどういう条件であるとも、ちっとも書いてないわけでございます。そういう期待を持っているが、そういう期待は持ってしかるべきでしょう、そう申し上げているところです。政府がコミットしておるわけじゃありません。
  159. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、請求権の解決方式の中にこれがあるわけですから、プラスアルファー億でないにしても、厳格に言えば一億でないにしても、プラスアルファというものがあることをここにうたっているわけですから、当然そういうことは請求権の問題の解決としてそういうふうになっておるということでございましょう。
  160. 大平正芳

    ○大平国務大臣 三億ドル、二億ドルというのは非常に不満だということですが、しかし、民間レベルでは将来長きにわたって経済協力が行なわれるじゃございませんかということでございまして、常識だと思います。
  161. 岡田春夫

    岡田委員 この問題も当然政府の出した資料に基づいてそういうことになっておるわけですから、もう一つ伺いますが、請求権の内容について、去年のいまごろの予算委員会で、内容をぜひ出してもらいたいと私申しました。その前に横路君や何人か質問して、最後に私が質問したのに対して、大平外務大臣は、できるだけ早く提出するようにいたしますと答弁しておられるが、この内容をいまだにお出しにならないのですが、どうなんですか。お出しいただけますか。
  162. 大平正芳

    ○大平国務大臣 もう本委員会におきましても予算委員会においても御質疑がありましてこちらから答えておりますので、御質疑される方ももう十分おわかりかと思います。私はそのように思いますが……。
  163. 岡田春夫

    岡田委員 もっと詳細にお出しいただきたいということなんです。この間からこの資料要求を政府にしておるのですが、これは出せませんか。この間石野君が質問したのについても、あなたはいまこの問題については交渉中ですから出せませんと言われておる。お出しいただきたいのです。
  164. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま岡田さんの言われる資料というものはどういう資料ですか。あなたが頭に描いていられるのは……。
  165. 岡田春夫

    岡田委員 いままですでに交渉の中で請求権の内容について合意が進んでおるはずです。それについてお出しいただきたいこういうのです。
  166. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それにつきましては、私から本委員会で申し上げておる以外に内容がないのですが……。
  167. 岡田春夫

    岡田委員 御答弁以外に幾つかの問題があるのですが、これは事実でございましょう。私こっちのほうから伺ってまいりますが、請求権を一応五億ドルといたしましょう。五億ドルのその内容は、特徴として、日本国内で生産された資本財と用役あるいは役務、それ以外に、請求権により建設される工場施設、建設等に必要な労賃を調達するため、総金額の一〇%以下を消費財にする、このことをおきめになっておるのでしょう。
  168. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうことはございません。
  169. 岡田春夫

    岡田委員 ございませんとおっしゃるが、アジア局長、どうなんですか。もう交渉して相当進んでおるはずですよ。
  170. 後宮虎郎

    後宮政府委員 韓国側でそういうような希望、すなわち、日本から受け取る経済協力の中で、資本財と消費財の割合はどういうふうにするかとか、そういうような問題についていろいろな議論が行なわれておることは承知しておるのでございますが、この問題については、実は今後の交渉におきまして論求権問題の実施細則をつくるときの問題になるので、全然何もまだそこまで話が進んでおらない現況でございます。
  171. 岡田春夫

    岡田委員 向こうは合意に達したと言っておりますが……。
  172. 後宮虎郎

    後宮政府委員 まだ話には入っておりません。
  173. 岡田春夫

    岡田委員 日本政府のないしょにしている間に、資料が行って、向こうが発表しているのですよ。これは韓国政府が発表したのを記事にしているのです。これはもう合意になっていると言っているのです。しかし、ベトナムの場合にしても消費財の輸出を認めていますから、これは当然そういうことはあり得ることなんです。そうでしょう。
  174. 後宮虎郎

    後宮政府委員 協定ができましたあとで、たとえばビルマの賠償の場合のように各年賠償計画をつくりますときに、消費財をどれだけやるかということが問題になるわけでございますが、それ以外の場合、大体協定でそこの実施細則まで話が入っておりませんが、たとえばタイ特別円協定のときには、主として資本財とはというような言い方になっておりまして、協定に出てくるのはそのくらいの問題でありまして、こまかいところは後ほど協定ができてから実施の段階においてきまってまいりますので、現実そこまで韓国側との話し合いは全然ないわけであります。
  175. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはタイの例をおあげになった。ベトナムの賠償の問題は消費財にしてあるのです。それと同じなんです。これはあなたのほうは知らないとおっしゃるが、それでは、私はこれを発表して終わりにしますが、すでにこれは合意しておるということで韓国政府側が発表しておる。それの具体的な内容に基づいて外務部が対日導入交渉をする、そして韓国の経済企画院、財務、商工等経済部処が国内執行計画をつくるということまでになっておるのです。しかも、これは、ここに書いてございますが、お手元に行っておると思いますが、もう一度念のためにはっきり申し上げておきたい。「金鍾泌・大平合意にもとづいた対日請求権金額無償三億及び有償二億ドルに決定された日本資本の性格、導入手続、導入機構、用途制限及び附帯条件等施行細則が六日(二・六)はじめて政府により明らかにされた。外務部が対日導入交渉を、そして経済企劃院、財務、商工等経済部処が国内執行計画を、現在検討、作成中である。請求権金額の特徴は、日本国内で生産された資本財と用役を原則として、消費財は総金額の約一〇%以下、現在まで通常貿易で輸入していた物資は請求権により導入することはできず、」――これは一億三千万ドルの赤字の分です。「韓国政府日本業者及び個人との通常的商業契約による直接購買方式により国内建設を執行することになっている。」、そして、合意された内容が次のように書かれている。「性格。請求権により受入れる生産品は資本財を原則とする。生産品は日本国内で採掘、製造、加工されたものとし、外国製品は除外する。現金、あるいは金の導入は認定されない。日本人用役は請求権金額から支払われるが、第三国人には適用されない。消費財は原則上認められないが、請求権により建設される工場施設、建設に必要な労賃用資金調達のため約一〇%未満の対充資金用にのみ制限する。」「用途。国内基幹産業施設、水産業及び工業発展に直接たずさわる事業に限る。これに随伴し必要な自然科学部門の留学生及び研修生派日費用に使用される。」、「導入手続」は一応省略しますが、最後のところ、「物資輸送は韓国船舶優先主義にする。」、「附帯条件。一切の清算は円貨(日貨)でする。第三国に対する直輸出は認められない。円貨以外の貨幣で支払わねばならない事業や費用は含むことはできない。」というように決定されたといわれている。決定されておらないのですか。これは韓国政府が発表したものです。こういうような話し合いをしているのに、日本政府は発表していないじゃないですか。さっきから請求権の内容を発表してくださいと言ったって、これも全然内緒にしてしまって、外務大臣、この分の三分の一ぐらい発表したっていいじゃないですか。発表しなさいよ。
  176. 後宮虎郎

    後宮政府委員 韓国側が交渉促進の立場から早く請求権問題についてもこまかい実施細則まで交渉に入りたいという希望があることは事実でございますが、御承知のとおり、漁業問題がひっかかっている段階で、漁業以外のすべての交渉というのは事実上足踏み状態になって、こういうところまで話が進んでいないというのが現実でございます。
  177. 岡田春夫

    岡田委員 だって、あなた、きょうから本会議で、基本委員会、請求権関係委員会、それぞれやるのでしょう。違うのですか。
  178. 後宮虎郎

    後宮政府委員 明日から予備会談が公式会談に変わりまして、各委員会スタートすることになります。従来全然といってもいいほど進んでいない現状であります。
  179. 岡田春夫

    岡田委員 これは非公式でコミットしていることですよ。
  180. 後宮虎郎

    後宮政府委員 全然話になっておりません。  それから、もう一つ、先方では将来の交渉に備えまして日本の従来の賠償協定の細則というのを非常によく研究しておられます。これは大体従来の賠償や特別円に関する実施細則をピックアップしたもののように見受けられるわけですが、向こうの研究資料だろうと存じます。
  181. 岡田春夫

    岡田委員 研究資料じゃありません。日本政府がコミットしていると書いてあるじゃないですか。合意に基づいた金額で決定された云々と書いてある。見なさいよ、コミットされていることは事実じゃありませんか。これはいずれ事実が明らかになるでしょう。だんだんあなた方は発表して、これと同じことを発表しますよ。初めは三分の一ぐらい出しておいて、あとになったら別口でこれと同じものを出しますよ。これはわれわれ注目して見ていますから。  私の時間がもうこれでなくなりましたので終わりますけれども警察庁のほうはどうなりましたか。
  182. 赤澤正道

    赤澤委員長 警察庁のほうは、いま現地へ警察電話で盛んにやっている最中だそうでありますから、しばらく御猶予願います。
  183. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、私はこれで終わりますけれども、この委員会中に御返事をいただくように、お待ちしております。
  184. 赤澤正道

    赤澤委員長 わかりました。  次に川上君。  前回の川上委員質問について外務大臣から答弁したいという申し出がありますので、この際これを許します。外務大臣
  185. 大平正芳

    ○大平国務大臣 条約局長から……。
  186. 中川融

    ○中川政府委員 前回の委員会で川上委員から、日華平和条約の国会の御承認を求めました当時の政府委員答弁について、主としてサンフランシスコ条約十四条関係の問題についての問答について、池田総理の、賠償問題は中国との間にすでに片づいておるという答弁との間に食い違いがあるじゃないかという御質問があったわけでございますが、それについてお答えいたしたいと思います。  あの当時のアジア局長答弁と申しますのは、これは速記録で通読してみればおわかりになるわけでございますが、要するに、サンフランシスコ条約の十四条で、一般の賠償のほかに、在外財産、いわゆる旧敵国にありました日本人の財産につきまして、その当該国政府がどういう処分をしても日本はそれに文句を言わない、平たく言えば文句を言わないという規定があるわけでございますが、その在外財産のほうの問題があの問答であったわけであります。  この日華平和条約に書いてあるその在外財産の条項というものは、一体台湾、澎湖島の財産に適用があるのか、あるいは中国本土の財産に適用があるのか、こういう御質問に対して、当時のアジア局長が、それはやはり国民政府の権限の及んでいるところにだけ適用がある、しかしながら、台湾、澎湖島にはそもそも日本と戦争関係がなかったのだから、ここにある日本人の財産についてその条項が適用があるということはあり得ないのである、将来本土にもしも国民政府の権力が及んだというような場合には、その本土にある日本人の財産について国民政府がどのような措置をとっても、日本政府はそれに異存がない、こういうことになるわけである、要するに、将来そういう場合にこの条項が生きてくるのだ、こういう答弁をしたわけでございます。  これは、御質問自体がそういう趣旨の御質問であり、その倭島局長答弁に対してまた質問された方は、それでは日本人の台湾、澎湖島の財産は依然として残っておるのですね、この条項は中国本土にある財産のことだけですね、こういうふうに念を押しておられるのでありまして、前後の関係から、まさしくその在外財産の処置についてだけの答弁でございました。いわゆる役務賠償、これについての答弁ではなかったわけでございます。したがって、池田総理の最近の御答弁と食い違いはないと考えております。
  187. 川上貫一

    ○川上委員 御答弁がありましたが、私がこの問題を聞いておるのは、古い速記録なんかを持ち出して何か政府のあげ足を取ってみようかというような意味ではない。池田総理の、賠償問題については全面的に解決しておると言われた分がわれわれには了承できませんので、この問題を明らかにするために質問をしたのですが、いまの御答弁によると、この倭島政府委員の答は、日台条約の第三条、これによるのだという御答弁ですか。このことを言うておるというのですか。
  188. 中川融

    ○中川政府委員 日華条約の第三条は、いわゆる請求権問題の相互取りきめをやるという規定でございます。つまり、台湾、澎湖島にある日本人の財産と、それから、日本にある台湾、澎湖島関係の財産との決済をするという規定でございますので、この問題には直接触れないで、むしろ、第十一条でございましたか、要するに、この条約に規定のない事項については、サンフランシスコ条約の当該規定が適用になる、こういう規定が別にあるわけでございまして、その規定に基づいて、サンフランシスコ条約十四条の(a)項2という規定、つまり在外財産の規定が適用になるわけであります。その在外財産の規定は地域的限定の対象になるのですねという質問に対して、地域的限定の対象になります、こういう答弁を倭島局長がしたわけでございます。
  189. 川上貫一

    ○川上委員 しかし、第三条にも明らかに書いてある。台湾並びに澎湖島、ここの分の処理も中華民国政府日本国政府との双方の取りきめの主題とするとある。台湾に問題はないということにはなっておらぬ。第三条にちゃんと台湾、澎湖島と書いてある。
  190. 中川融

    ○中川政府委員 第三条にただいま川上委員御指摘のような規定があることは事実でございまして、つまり、台湾における日本財産、日本にある台湾関係の財産については、相互取りきめをしてきめなければいかぬわけでございます。この義務は別に第三条ではっきりしておるわけでございます。この現状につきましては、しばしば御質問もありますが、なかなか交渉が進捗しない、こういう実情でございます。
  191. 川上貫一

    ○川上委員 そんなことを聞いているのじゃないのです。あなたは、台湾にはもう日本人なんだから請求権も何もないのだから、倭島政府委員はこう言うておるのだと言っておる。しかし、条約の第三条には、台湾、澎湖島の分を除くと書いてない。ちゃんと一緒になっておる。あなたの答弁は、台湾におるのは日本人だから、これには問題はもうないのだから、倭島政府委員の言うたのは台湾を除くと言うてあるのだとおっしゃる。ところが、条約にはそんなことは書いてない。
  192. 中川融

    ○中川政府委員 私が申したのは、そういう趣旨ではないのでございまして、その問答自体の出発点が、日華平和条約第十一条でございますが、これでサンフランシスコ条約の当該規定が要するに一般的に適用になる、こういう規定があり、したがって、サンフランシスコ条約第十四条で、旧敵国にある日本人の財産というものが一方的にその政府によって処分される、こういうことを日本は認めている、その条項もまた日華間に適用になるわけでありまして、したがって、そうなると、日本人財産、要するに中華民国にある日本人財産、旧敵国にある日本人財産は一方的に向こうの処分の対象になる、こういうことになるわけで、一体その地域がどこかという御質問が出たわけでございます。それに対し倭島局長は、その地域は、日本と戦争した地域、つまり台湾、澎湖島ではなくて、中国本土にある日本財産に適用する趣旨です、台湾、湖島の分は、むしろ日華平和条約第三条の相互取りきめをやるわけでございます。そのほうで処理されて、要するに、向こうの一方的処置の対象になる財産というのは、中国本土の財産でございます。こういう答弁をしたのが倭島局長答弁である、かように私が申したわけでございます。
  193. 川上貫一

    ○川上委員 その解釈はおかしいというのです。ここのところで倭島政府委員は、台湾、澎湖島の分は問題がない、新しく支配する地域の問題が残っているんだ、こう言うておる。ところが、日台条約から言えば、第三条には台湾、澎湖島が一緒に含めてあるので、あなたの答弁のようなことにはならぬのです。あなたは、台湾にいるのは日本人だったから、これには問題がないのだという説明なんですが、サンフランシスコ条約のことを聞いているのじゃない。ところが、日台条約には、台湾、澎湖島の分は除いてはないというのです。しかるに、倭島政府委員答弁は、請求権と言うてない。賠償と言うてある。請求権と賠償とは違います。これは国際的な用語でも違う。こう書いてあるのです。賠償の問題は、大ざっぱに申し上げて、中国の大陸関係でなければ生じません、したがって、「現在の台湾、澎湖島、現在支配下にある程度のところ」、つまり台湾、澎湖島、これは「賠償義務は生じないのでありますが、将来支配下に入った範囲において」だけ、将来「賠償関係というものが起きる建前であります。」と、ちゃんと台湾を除いてある。これは賠償と言うてある。ところが、あなたの答弁は、これには合わぬのです。倭島さんはこう言うておるのです。第一点は、大体大陸関係でなければ賠償義務はできぬ。第二点は、台湾、澎湖島の分はもう義務が生じないと言っておる。第三点は、大陸関係につきまして義務が生ずるのは将来支配下に入った範囲内のことだけである。こう三点出ておる。これは賠償と言うてある。あなたのおっしゃるようになれば、こんな答弁はできないのです。私はこの答弁をたてにとってあれこれ問題を言うておるのじゃないのですから、この点はいいくらいにごまかさないようにしてもらいたい。というのは、われわれは中国との戦後処理は解決しておらぬと考ええておる。ところが、池田総理は、きっぱり申し上げますが、賠償の問題その他はすっかり済んでおりますと、こう言うておる。ここのところがわれわれは疑問だし、了解できないのです。そのために私はこのことを聞いておる。  それでは、もう一ぺん聞きます。この問答を繰り返してもしようがない。条約局長のいまの御説明はこれには合いませんから了承できませんが、池田総理が衆議院の予算委員会で今澄委員質問に対して、賠償問題は中国との関係においてはすっかり解決しておる、何にもないと答えておりますが、これは、外務大臣、そのとおりお認めになりますか。
  194. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本政府としてはそのように考えております。
  195. 川上貫一

    ○川上委員 それはどういう根拠ですか。
  196. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本は中華民国と戦火を交えて、そうしてそれと日華条約を結びまして戦争を終結し、一連の国交の正常化をはかったわけでございます。したがって、戦争状態を終結するとか、あるいは賠償を終局するとかいう問題は、条約のたてまえから申しまして、地域的限定はないという解釈に立っておるわけでございます。
  197. 川上貫一

    ○川上委員 しかし、その放棄というのは議定書でしょう。日台条約の時分にやった議定書の1の項目の(a)と(b)、これなんでしょう、賠償が済んだというのは。これはどうですか。
  198. 中川融

    ○中川政府委員 条約のことですから、私からお答えいたしますが、川上委員の御指摘になりましたとおり、日華平和条約の付属議定書の1の(b)で役務賠償の権利を先方が自発的に放棄しておる、この規定が根拠でございます。
  199. 川上貫一

    ○川上委員 一体、日華平和条約とおっしゃるものは地域を限定してある。日華平和条約をごらんなさい。台湾と湖島と将来その支配下に入る地域、これが条約の対象なんだ。この条約に付属した議定書なんだ。この議定書で放棄してあるというのが、この条約できめてある台湾、澎湖島と将来支配下に入る地域以外の分までどうして消えるんですか。この議定書というものは別ものですか、日台条約とは。
  200. 中川融

    ○中川政府委員 この日華平和条約の適用地域の問題につきましては、日華平和条約が国会の御承認の対象になっておりましたときから政府が繰り返して御説明しているところでございまして、岡崎外務大臣がはっきり説明しておりますが、要するに、付属交換公文で、適用地域は国民政府が現に支配しまたは将来支配する地域に適用されるのだという合意があるわけでございますが、これは、しかし、事の性質から、その条項の内容の性質から適用し得ないものもあるのだ、それは、たとえば第一条で、日本国と中華民国との間には平和状態が回復したというような戦争終結の条項、これは、戦争が国家と国家との間の戦争で、状態である以上、その終結というのが地域的に限定するということは無意味である、これは国家全体に適用がなる、中華民国という国家全体に適用になるということを言っております。賠償につきましても同じような性質であるのでありまして、戦争の結果持つであろう相手国の賠償請求権、これを放棄したというのに、地域的に限定して台湾、澎湖島だけに賠償権を放棄したというようなことは無意味であるのであります。そもそも台湾、澎湖島は日本の旧領土でありまして、これと戦争状態はなかったわけでありまして、そこに賠償というものが起こるということはあり得ないわけであります。これはやはり国家として中華民国政府が賠償権を放棄しておる、こういうことに解釈せざるを得ない。つまり、日華平和条約の規定の内容によって、地域的に適用し得るものは適用する、しかしながら、国家全体に適用すべきものは国家全体に適用があるということは、これは当然である、こういうことがその当時の政府の御説明でありまして、その後政府としてはもちろんこの趣旨で一貫して考えておるわけでございます。
  201. 川上貫一

    ○川上委員 よくいろんなことを言われますがね、こういう問題を解決するのは、わしはこう思うとか、日本政府はこう考えるのだというようなことでは解決できません。これは条文によらなければならぬ。この条文をごらんなさい。議定書というものは本条約の付属議定書なんです。本条約には適用の地域が限定されておるのだ。この限定されておる本条約の付属議定書なんです。その付属議定書で請求権を放棄したんだ。この放棄は限定された地域の放棄なんだ。これ以外のところへどうして行くのですか。(「そんなばかなことはないよ」と呼ぶ者あり)これが、ばかなことがないとおっしゃるのは、よほど頭がおかしいのであって、(「あなたの頭がおかしいよ」と呼ぶ者あり)そうではない。われわれはこういう問題は条約によって解決せなければいかぬ。政府がこう考えるというようなことでは解決で雪ない。そんなことを主張なさって、将来、大平さん、どんな問題が起こると思いますか。将来これが問題ですよ。われわれはこれを心配しておる。あげ足を取るんじゃないのです。しかも、これは近い将来だと思う。その時分にどういう問題が起こると思いますか。外務大臣は、将来日本と中華人民共和国が国交を回復する、こういうようなときにこの問題が出てこぬと思うておるんですか。われわれはこれを考えてあなた方に心配してあげておるんだ、実際の問題は。政府委員会で適当な答弁をしてのがれさえすればいいという問題じゃないです。アジアにとって重大な問題、日本にとって将来重大な問題でしょう、これは。ただ国会で言い抜けをすればいいというのと違うのじゃありませんか、この問題は。この条文の解釈上、支配が及んでおらぬ大陸の戦後処理が、どうしてついたと言えるのですが。これは、外務大臣、ちょっとあなたの意見を言ってください。
  202. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日華平和条約の解釈につきまして政府の見解を尋ねられたわけでございますから、政府はこのように考えるということを申し上げたわけでございます。川上先生と意見が違うのもやむを得ませんけれども政府の意見はこうだと申し上げたのでございます。
  203. 川上貫一

    ○川上委員 政府の意見はとおっしゃいますがね、条約を結んだんですよ。日華条約はあるんですよ、いわゆる日台条約は。その日台条約には、本条約に、繰り返しますが、地域を限定してある。その日台条約の付属の議定書で請求権放棄という問題があるのです。ところが、この放棄をとらえて、政府のほうは、わしの解釈じゃと言うて、限定された地域以外の請求権も済んだんだと言う。どこから出るんでしょう、そんなことは。ここから、これ以外に解釈しちゃいかぬです。だから、あらためてこの議定書のところにちゃんと書いてあるんじゃないですか。具体的に1の(a)と(b)に書いてある。これが確かな条約なんです。これが日台条約の精神なんです。ここに書いてある。この書いてあるのを、地域を限定されてあるのに、支配の及ばぬ地域のことまで何にもこれはきめる権利はない。ところが、政府のほうじゃ、こうなっておるのに、大陸全体の請求権、すなわち中華人民共和国との戦後処理は済んだんだとおっしゃる。こんな道理が通りますか。
  204. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そのいうところの日華条約を、あなたのような解釈から申しますと、政府の申し上げることは、あなたは違っておると言うのだが、しかし、政府の意見はどうだ、政府の見解はどうだと聞かれますから、政府はこういう意見でございますと、こういう解釈でございますと、すなわち、戦争状態の終結とかあるいは賠償の放棄というようなものには地域的な限定はないという解釈に立っておりますということを申し上げておるわけでございます。あなたと意見が違いますけれども、これはやむを得ません。
  205. 川上貫一

    ○川上委員 私は意見を述べておるのじゃないんですよ、その点は。私はこめ条約を言うておるのです。何にも私は意見を言うておりません。この条約にこうなっておるが、あなたのほうは意見意見とおっしゃるが、この条約のどこからそういう解釈が出ますかということを聞いておる。意見を聞いておるのじゃない。これは答弁がおそらくできんのだろうと思う。
  206. 大平正芳

    ○大平国務大臣 意見というのは、ちょっと私のことばが熟しませんが、政府の解釈、その条約の解釈は、先ほど条約局長からるる申し上げたとおりでございます。その条約の政府の解釈としては、条約局長がいま申し上げたような解釈をとっておりますと、こういうことでございます。
  207. 川上貫一

    ○川上委員 どうも根拠のない解釈をすることがなかなかじょうずである。これはしかし国際的には通りませんよ、根拠のない解釈では。  台湾の帰属問題については、台湾の帰属は未決定である、将来連合国と国連で所属をきめるだろうとおっしゃった。あの根拠は何ですか。あなた、根拠のないことをよく言われるから、この根拠をちょっと聞いておきます。台湾の帰属未決定の根拠。
  208. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは、大体、サンフランシスコ平和条約におきまして、台湾と海潮島における権利・権原一切を日本が放棄した。どこに対して放棄したと書いてありませんので、まだ帰属はきまっていないというようにわれわれは解釈いたしております。
  209. 川上貫一

    ○川上委員 サンフランシスコ条約には、放棄した、それだけです。連合国できめるとか、国連で所属を決定するとか、何も書いていない。その根拠は何か、これを聞いておる。
  210. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおり、連合国できめるとか、国連できめるとか書いてございません。どこに帰属するかということは未決定でございます。未決の状態にありますということを申し上げておるわけです。
  211. 川上貫一

    ○川上委員 書いてないのにどうして言う。連合国が決定するものだ、国連でこれはきめるだろう、こう答弁しておるんです。これはどうなんです。その根拠を聞いておる。
  212. 大平正芳

    ○大平国務大臣 帰属をどこまできめるとかは書いてないということは、川上先生御指摘のとおりでございます。今度はどういう機関がきめることになるかということは、それは総理の御意見かと思いますけれどもサンフランシスコ条約におきましては、権利・権原を放棄したということ、それだけでございまして、帰属をきめてないということを申し上げておるわけで、あとはやはり論者の御意見の問題だと思います。
  213. 川上貫一

    ○川上委員 池田総理大臣がはっきり言われたんですよ、連合国が決定するものだということを。これは間違いですか。外務大臣としては間違いと言いますか。
  214. 大平正芳

    ○大平国務大臣 サンフランシスコ平和条約に署名した国々がしいて言えば決定する立場にあると見られる、という意味のことを言われたものだと思いますが、講和条約そのものにおきましては、あなたが御指摘のとおり、帰属をきめるということは書いてないと思います。
  215. 川上貫一

    ○川上委員 そうしたら、ここではっきりしましょう。この所属は連合国がきめるとか国連できめるだろうということは、思いつきで言うのは言うたけれども、これは全部取り消しですか。それならそれでいい。
  216. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その点は、ただいままでの政府答弁を一ぺん取り調べまして答弁いたします。
  217. 川上貫一

    ○川上委員 いま大平さんは連合国が言うたなんということを言われますけれども、蒋介石が……。   〔発言する者多し〕
  218. 赤澤正道

    赤澤委員長 私語を禁じます。
  219. 川上貫一

    ○川上委員 あと調べて言うのなら、はっきり言うてもらいましょう。連合国が言うたなんて言うておるが、蒋介石まではっきり言うておりますよ。カイロ宣言、これを受けたポツダム宣言によって台湾は中国に帰属しておるのだ、中国の一省だと去る六日に声明をしておる。中華人民共和国が台湾は中国の一省であると言うことは、これはもうあたりまえです。ところが、日本政府が、あれはどこの所属かわからぬのだ、これはどんなようなことになるのですか。あなたは蒋介石とも一生懸命に仲ようしようとしておる。仲ようしようとしておる蒋介石すらこう言うておる。そこで、聞きますが、蒋介石の声明は間違いですか。政府はどう思いますか。
  220. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本政府は、サンフランシスコ条約におきまして台湾、澎湖島における権利・権原を放棄した、そしてその帰属はまだきまっておる状態にないという見解をとっておる。(「だれが」と呼ぶ声あり)――日本政府は。どなたがどうおっしゃるか知りませんけれども日本政府はそういう見解に立っておりますということです。
  221. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば、サンフランシスコ条約に、放棄して中国のものじゃないとか、所属は決定せぬとか書いてありますか。所属未定とか、中国にはやらぬのだと書いてありますか。放棄したということは何にも台湾が中国に所属しないという証明にはならない。日本は放棄した。これは事実です。放棄はしたが、それ以上に中国に行くのじゃないという取りきめがありましたか。ないでしょう。これはどうなるんです。
  222. 大平正芳

    ○大平国務大臣 放棄したままです。
  223. 川上貫一

    ○川上委員 放棄したままであるのに、日本政府が所属未決定と言うのは何を根拠にそんなことを言うているのか。相手の蒋介石さえも中国だと言っているんだ。これで一体将来外交が進みますか。もう時間がありませんが、周恩来総理は、日台条約を結ぶ三年前に、蒋介石との一切の条約は中国は一つも承認しない、全部無効だ、こうはっきり声明しておるのです。また、蒋介石すらも、中国の一省だと言うておる。日本が、中国でもない、中国の一部でもない、所属未決定だ、ひどいことになるとこれは連合国がきめるのだ、こんなことを言うておる。しかも、何にも根拠がないんです。こういうことで、大平さん、将来日中関係についての外交ができると思いますか。周恩来は台湾との条約さえ全部無効であると宣言をしておる。これは日台条約の三年前の一九五〇年です。こういう状態があるのに、政府答弁はきわめて危険です。これは、ただ言い回しで何とか言うのじゃなしに、危険だ。外交上のルートをはずれておる作法だ。外交になっておらぬ。  私は約束の時間がきっちり来ましたからこれ以上長引かせようと思いませんが、この問題は了解も何にもできません。さらにあらためて大平外務大臣その他に私は聞きたいと思います。なぜ聞きたいかといいますと、繰り返すようでありますけれども日本と中国との戦後処理は終わっておらぬのです。全部残っておるのです。これを終わっておるかのごとく政府答弁するのです。ここに問題があるのです。こういう形では、将来アジアの平和を考えることも、日本と中国との関係を正常化することもできない。この点について私は質問したい。はっきりしませんからきょう私はこれでおきますが、この問題は重要だと思いますから、あらためて機会を得て質問をしたいと思います。これで終わります。
  224. 赤澤正道

    赤澤委員長 先ほどの岡田委員質問に対して警察庁から答弁の申し出がありますので、これを許します。
  225. 関根広文

    関根説明員 岡田さんの御質問の、安田英二こと朴魯楨国籍につきまして警察はどう見ているかということでございましたが、本籍は大韓民国の京城特別市、出生地は大韓民国の忠清北道、現住所は東京の渋谷区穏田町ということでございまして、国籍は警察では韓国人という取り扱いでやっております。
  226. 岡田春夫

    岡田委員 これは、私も非常に具体的に先ほど申し上げたように、青森弘前市、先ほど速記録に残っているように、三浦という人と結婚して三浦姓を名のって、これがほんとうで、通称は安田こと朴魯楨、これは去年警察庁でお調べのときにはっきりしているはずです。それでなくちゃ私は知らないのですから。その点は私はいまの御答弁では了解しない。国籍が向こうにあるようなことになると、弘前市役所にある本籍は一体どうなっているのかということが問題になります。そうすると二重国籍の問題というような問題が起こってくるのではないか。そういう点から言っても、いまのお調べでは私はまだ了解できません。特に福岡入管厳原出張所でそういう点を明確にして、しかも出張所弘前の市役所に問い合わせた結果そういうことになっているのですから、これは非常に明確なんでありまして、いまの御答弁では私は了解いたしません。この問題は、きょうの質疑応答の中では、その他の点についてもきわめて不明確でございますので、今後に質問を留保いたしておきます。  しかし、アジア局長も残っておられますが、こういうセナラ自動車の問題、朴魯楨問題あるいは金鍾泌問題、また、先ほどの延べ払い問題、いろいろこういう点をあげてまいりますと、日韓会談というものはいかに疑惑に満ちたものであるか、日本国民にとっていかに迷惑なものであるか、こういうことは次第々々に国民に明らかになっております。だから、政府としては、ほんとうに日本の将来を考え、日本国民のことを考えるならば、日韓会談なんか直ちにおやめなさい。それを私は強く要求をいたしまして、私の意見を終わります。
  227. 赤澤正道

    赤澤委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時二分散会