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1964-02-28 第46回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十八日(金曜日)    午後一時十七分開議  出席委員    委員長 赤澤 正道君    理事 安藤  覺君 理事 椎熊 三郎君    理事 正示啓次郎君 理事 高瀬  傳君    理事 古川 丈吉君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    菊池 義郎君       濱地 文平君    福井  勇君       三原 朝雄君    平岡忠次郎君       松井  誠君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  毛利 松平君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎮男君         運輸事務官         (海運局次長) 澤  雄次君         運 輸 技 官         (船舶局長)  藤野  淳君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君  委員外出席者         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 二月二十七日  委員田原春次君及び永末英一辞任につき、そ  の補欠として河野密君及び西村榮一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員河野密辞任につき、その補欠として横路  節雄君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員横路節雄君及び西村榮一辞任につき、そ  の補欠として田原春次君及び永末英一君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十六日  日本国とアメリカ合衆国との間の領事条約の締  結について承認を求めるの件(条約第五号)(  参議院送付)  千九百六十二年の国際コーヒー協定締結につ  いて承認を求めるの件(条約第六号)(参議院  送付)  千九百六十二年の国際小麦協定締結について  承認を求めるの件(条約第七号)(参議院送  付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済協力開発機構条約締結について承認を求  めるの件(条約第一号)  大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実  験を禁止する条約締結について承認を求める  の件(条約第三号)      ————◇—————
  2. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、都合により委員長が出席できませんので、理事である私が委員長の職務を行ないます。  大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、まず提案理由説明を聴取いたします。大平外務大臣
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  核兵器実験停止交渉は、一九五八年十月以来米、英、ソ三国間において継続されてまいりましたが、一九六三年七月二十五日、大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約について、米、英、ソ三国代表間の合意が成立し、同年八月五日、モスクワにおいて右三国の全権代表によってこの条約への署名が行なわれました。次いで、同年十月十日、米、英、ソ三国による批准書の寄託が行なわれ、この条約は同日発効いたしました。  この条約は、その前文に明らかにされておりますとおり、厳重な国際管理のもとにおける全面的な完全軍縮についての合意をでき得る限りすみやかに達成することを念願しつつ、今後全面的な核実験禁止を実現するための話し合いを継続する決意のもとに作成されたものでありますが、各締約国は、大気圏内外のすべての空間及び水中において、また放射性物質爆発の行なわれる国の領域外に拡散するおそれのある場合には地下においても、核兵器実験的爆発のみならず他のいかなる核爆発をも行なわない義務を負い、また他国のかかる爆発を援助しない義務を負うこととなっております。  従来から全面的な核実験禁止を一貫して主張し、この目的達成のために努力してきたわが国立場から見れば、この条約は、決して満足なものとは申せないのでありますが、将来における全面的核実験禁止への一歩前進としての積極的意義を持つものと認められますので、わが国は、一九六三年八月十四日、米、英、ソ三国政府がそれぞれ保管するこの条約署名本書署名を行なった次第であります。  わが国国会の御承認を得てこの条約批准することは、わが国核兵器実験禁止に対する熱意を、国連の場におきましても、また広く世界の一般世論にも印象づけ、かつ全面的核兵器実験禁止に対するわが国の一貫した主張を推し進める上に、きわめて有意義であると考える次第であります。なお、この条約は、去る四十四回臨時国会におきまして審議未了となったものであります。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 これにて提案理由説明は終了いたしました。      ————◇—————
  5. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 次に、経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  平岡忠次郎君。
  6. 平岡忠次郎

    平岡委員 私は、本日質問に入る前に、委員長を通じまして政府から資料の提出を要求したいのであります。  昨年わが国OECD加盟交渉当時存在している文書二百三十二、その後追加された十三の文書右合計二百四十五の文書はいかなる内容を持つか知りたいのであります。この内容を知らずしてOECDに関する真の審議はできないと思うからであります。よって、委員長、まず政府に対しましてこれが提出の確認をしていただきたいのであります。
  7. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 承知しました。
  8. 平岡忠次郎

    平岡委員 議題に供せられているOECD案件につきましては、貿易外収支に関する問題、資本取引におけるジョイント・ベンチャーの問題、技術導入契約に関する問題、外国人株式取得の問題、低開発援助に関する問題、BIACに関する問題、TUACに関する問題等々、検討を要する問題がございますが、本日は、主といたしまして、本条約ILO八十七号条約に関する問題、同じく海運問題、同じく共産圏貿易に関する問題にしぼって質問をいたしたいと存じます。  大橋労働大臣ILO八十七号条約OECD加盟との関係についてお伺いいたしたいのであります。  ILOが二月の十五日の理事会会議におきまして結社の自由に関する対日実情調査団の派遣を決定しましたことは、経済、外交二面にわたってその影響まことに重大であります。事ここに至って、政府ILO調査団受け入れをよも拒否することはあるまいと思いますが、まず労相見解を承りたいのであります。
  9. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まず最初のOECDILO八十七号条約でございますが、これは直接には関係がないと心得ております。ILO理事会結社の自由に関する調査委員会に対する日本関係の事件の付託につきまして、日本政府の承諾を求める文書がすでにILO事務総長から外務大臣あてにまいっております。これに対する回答外務大臣において処理される事柄なのでございますが、労働省といたしましては、この問題の従来からの経緯並びに今回の調査調停委員会の小委員会構成等から考えまして、現在の段階においては、特に拒否する理由は考えられないと思っておりますが、しかし、これに対しまする正式の受諾回答は、小委員会が五月の上句にジュネーブにおいて第一回の会合を開会することに相なっておりますので、それに十分間に合うように回答をすればよかろう、こう考えております。
  10. 平岡忠次郎

    平岡委員 政府の腹としては回答するということで理解してよろしゅございますね。
  11. 大橋武夫

    大橋国務大臣 もちろん、それまでに回答いたしたいと思っております。
  12. 平岡忠次郎

    平岡委員 政府調査を受諾しまして、調査団来朝となる場合、その調査結果のいかんを問わず、来朝そのものわが国にとって国際信用上きわめて不利になると思っております。昨日の社会労働委員会懇談会でも、参考人青木大使からるるILOの空気を承りましたが、早期批准すべきことを強調しておられました。また、青木大使は、ラジオを通じまして、帰国談ということで次のように言うております。OECD機関であらわに日本の低賃金が問題になることはないが、商品の低価格が常に問題になっている、こういう情勢のもとでILO調査団受け入れを拒絶したり、あるいはILO批准について日本政府がこれ以上遅延するがごとき場合は、ソシアルダンピングとしての日本の低賃金が公然と論議されるようになることを心配していると申されておるのであります、このような事情から考えてみましても、ILO八十七号条約批准OECD加盟とは、労相お答えになったとおり法律的には直接的には関係がないかもしれませんが、少なくとも道義的に重要な関連があると思います。  昨年七月二十九日、国際自由労連ベクー書記長は、日本OECD加盟にあたって、自由労連は、OECDが社会問題の分野において民主主義的水準を維持する組織であることにかんがみ、基本的な労働諸法規を無視する国の加盟は許されないという趣旨の声明を発表したことは、留意に値することと思っております。また、昨年の十月、国際自由労連代表が来日した際に、やはりベクー書記長労働大臣と会見をし、再三の約束にもかかわらず、ILO八十七号条約日本政府によっていまだに批准されていない事実に言及し、覚え書きを手交しているはずであります。その中には、日本OECD加盟しようとしているが、この機構は、ヨーロッパ、北米及びカナダの諸国が、これらの地域における経済協力を育成し低開発諸国経済発展を促進する上で今日までこれら諸国を糾合してきたのである、OECD参加日本とこれら諸国とのきずなを一そう強めるであろうが、同時に、それは、日本政府労働界における義務を余すところなく尊重し、履行し、労働者の一切の労働組合権利日本労働者に保障しなければならないことを意味する、国際自由労連は、OECDは民主主義的諸国家の一つ機構と考えられるべきものであり、その参加国社会的領域においても民主主義的基準に準拠しなければならないと終始一貫主張してまいった、われわれ国際自由労連は、日本政府ILO第八十七号条約批准し、それを実行に移すまで、決してうむことなく戦い続けるであろうと述べております。  これらを見ましても、ILO八十七号条約批准OECD加盟とは事実上不可分の相互関係にあることがわかりますが、労働大臣はこの点についてどう考えておられるか、御見解を示されたいのであります。
  13. 大橋武夫

    大橋国務大臣 昨年ベクー書記長がこちらへお見えになったときに、私もお話をする機会がございました。その際に、国際自由労連日本OECD加盟に際してILO八十七号条約批准がその前提条件でなければならぬということをOECD当局に申し入れた事実があるかということを聞きましたところが、自分らは日本がすみやかにILO八十七号条約批准されることを希望はしておるけれども、しかし、国際自由労連OECD機関ではないから、OECDに対してさような条件を申し入れるというような立場にはないということを言われたのであります。しかし、いずれにいたしましても、OECD加盟ということによりまして、日本労働界も国際的に一そう注意を集めることに相なるわけでございまして、したがって、日本労働界においても特に労働者権利・利益を守るという点においては国際的な常識に適合せしめる必要があるということは、私もその必要を痛感いたしておる次第でございます。
  14. 平岡忠次郎

    平岡委員 では、次に外務大臣にお伺いしたい。  外務大臣もまた、二月の十三日に自民党労働問題調査会の席上で、日本ILO八十七号条約批准しなければ国際信用上きわめて不利となる、それはIMF八条国移行OECD加盟の問題などとも一関連してこようし、また国連経済社会理事会で問題にされる可能性もあるからである、結社の自由が確保されていないということになれば、国際信義の上でも、また貿易面でも、きわめてまずくなることが予想されるので、ぜひ今国会で八十七号条約批准すべきだと思うと発言されております。国際的な情勢から判断いたしますと、外相ILO八十七号条約早期批准要請は当然過ぎる要請でありまして、私ども外相に共鳴いたします。特に、ILO八十七号条約をほおかぶりでOECD加盟することは、国際道義上許されないことと思っております。ただ、気になるのは、外相のこの発言は、一体本心から言われたのか、党内向け発言か、それともILOに向かって政策的に発言されたものであるのかどうかという点でありまして、その真意を承っておきたいのであります。
  15. 大平正芳

    大平国務大臣 ILO当局に対して政策的にものを言うなんという段階は、私はもう過ぎたと思います。私が申し上げましたことは、ただいまの段階において私の本心でございまして、私は、その場合だけでなく、本心でないことは言うていないつもりでございます。
  16. 平岡忠次郎

    平岡委員 外相お答えどおりといたしましても、現実には、与党内には、OECDは早く通せ、ILO党内調整を待てという風潮が歴然としてあります。ものの運びには前後そごすることが間々あることでありますけれどもILO批准OECD加盟に著しくおくれるということでは、先進工業国クラブOECD高等サロンのじゅうたんを踏む資格はあるまいと存ずる次第です。クラブにはきちんとネクタイをつけてお入りになるべきだと思っております。ILO批准というノーネクタイOECDのとびらをあけるつもりであるのかどうか、この辺のところをお聞かせ願いたいのであります。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 したがいまして、私どもといたしましては早期に御批准いただくように切望をしておるわけでございます。OECDに入るにつきましては、いま平岡さんの御指摘のように、こういった問題も片づきましておることが望ましいばかりでなく、私どもにとりましては国際信用上大切なことと存じますので、そのように切に希望しておるところでございます。
  18. 平岡忠次郎

    平岡委員 私の聞いております重点は、ILOを先行して議決する、批准をするということ、その必要がないかという点なのですが、どうですか。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 批准の問題は、これは国会の問題でございまして、私どもといたしましては、ILO八十七号条約早期批准ということは前々から既定方針としてお願いをいたしておる、それを頭に置いておるわけでございます。OECD条約のほうは、去年の七月にすでに満場一致招請を受けておりますので、これに対しましてまた正式加盟時点がずれていくということもまた看過できないことでございますので、OECD早期批准も希望しますし、あわせてILO八十七号条約批准もすみやかにお願いをいたしておるところでございます。
  20. 平岡忠次郎

    平岡委員 いろいろの手順とか準備の都合上、国会審議の進行上、あるいは与党内部事情等において、ILOOECDのどちらの批准が先かということは、まあ大体皆さんが察知はしています。それから、野党たる私どもも、ネタクイをちゃんとつけてOECDの門をくぐるべきだという主張はしますけれども、この辺のところはたいへんむずかしいと思わぬわけではないのです。ただ、問題は、あまりにもおくれてしまって、ついにOECDはほおかぶりして通ったけれどもあとの始末がつかないという醜態をさらすようなことがあっては国辱的な問題になろうと思うので、それだけに野党といえども関心を持っておるわけなのです。その辺のところ、つまり、この前後が逆になったとしても、たとえばOECDが先に批准されるとしても、すぐそれにフォローしてILO批准が確実に実現するという見通しがないと、私はかえって日本政府としても立場上困ると思うのです。要するに、時間的な遅延の程度が問題なので、この辺のところをもう少し政府見解についてお伺いしておかなければならぬというのが私の趣旨なのですから、もう少しく具体的な見通しにつきましてお聞かせを願いたいのであります。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げたいことは、先ほど申し上げたとおりで、両方の条約とも早期に御批准いただくのが一番いいわけでございます。OECDのほうも遅延するということは忍びがたいことでございますので、できるだけ早期にとお願いいたしておるゆえんのものもそこにあるわけでございます。ILO八十七号条約のほうは、私の理解をもってすれば、たびたび国会におきまして御論議がございますように、ILO条約の中で最も基本的なものでございますし、これが日本批准できないというようなことは、私はあり得ないと思うのでございます。いま平岡委員が御指摘のように、時点がいうかという問題にしぼられてきておると思うのでございます。このことは、私といたしましては、一日も早くということをお願いする以外に道がないわけでございまして、これは国会の専管の仕事でございますから、批准手順時点というような問題について私の立場でとやかく申し上げるのはいかがかと思いますが、ただ、私としては、もう枯れ芝の燃えるような思いで、一日も早く批准していただきたいということをお願いするだけでございます。
  22. 平岡忠次郎

    平岡委員 大平外相から明確なお答えがない。顧みまするに、批准を逡巡すること四カ年、ILO批准勧告に対しまして待ったをかけること十四回というのが政府実績であります。日本国際信用保持の上からもILO批准先決であると私どもはあえて主張せざるを得ない理由であります。これが原則的な私ども主張であり、同時に、客観的な主張であると考えております。これに対しまして、時間的なあと先にそれほど固執されてもらっては困るというのが、大平さんの、すなわち政府の御見解であるようであります。せんじ詰めたところ、野党言い分をもっともとして、できるだけILO批准OECD批准先議先決せしめるよう努力を傾けたいというのが、政府の現在の立場であり、態度であると思っておりますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 私の感覚といたしましては、この問題は、いまあなたが御指摘になったように、何回も政府として約束をいたしたことでございまするし、国会のほうにもたびたびお願いをしておることでございますので、もう与党野党とかいう問題を越えた一つの接点に近づいた問題になっているのじゃないかということでございまして、そういう意味で、日本国の名誉のためにどうぞひとつ早期に御批准いただきますように、与野党の御高配を切にお願いしたいという気持ちです。
  24. 平岡忠次郎

    平岡委員 野党はもともと協力的であります。ILO批准の一日も早からんことをいままで政府にも要請してきましたし、国会においてもその大筋で進んでまいったわけであります。ただ、惜しむらくは、自民党内部に、労働組合政策というものを労働政策としてでなしに治安対策として考えるようなまことに前近代的な思想がばっこしておって、そのことが今日の暗礁に乗り上げた最大の理由であります。私は、ただいま大平さんに、政府態度としてはできるだけILO批准OECD批准先議先決せしめるよう努力したいというところであろうということを聞いたわけですが、それに対しましても、まだばく然としております。私の質問に対しましてイエスかノーで答えていただきたいのです。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 恐縮でございますが、もう一度確認いたしたいのですが……。
  26. 平岡忠次郎

    平岡委員 政府のほうが野党言い分をもっともとして、ILO批准OECD批准先議先決せしめるよう努力を傾けたいという御意思であられるかどうかを御表明願いたい。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 ILO条約、特に八十七号条約は、先ほど申しましたように、最も基本的な条約でございますので、もう一日も早く批准していただきたいということでございます。
  28. 平岡忠次郎

    平岡委員 またもとに戻りますが、ノーネクタイOECDのとびらをこじあけて入っていくというつもりかどうかということなのです。近ごろ、六本木あたりの私設のクラブにおきましても、やはりネクタイはちゃんとしてきてもらわなければ入れないぞというところが間々あるそうですか、気のきいたダンディは、ネクタイをしてこなかったけれどもということで、靴のひもをちょっと取ってネクタイがわりにして、さあこれでいいんだろうと通っていく。これはダンディにはなかなかいい思いつきなんですけれども、しかし、OECDに入る日本政府大国日本政府態度としては、こうした安直な方法はとり得ないと思うのです。ですから、私が重ねてお伺いしたいのは、ノーネクタイOECDに入っていこうとするのかどうか。ただ、その場合に、ちょっとネクタイを忘れたよ、取ってくるから待ってくれという程度ならいいのですが、すでに、先ほど申したように、批准を逡巡すること四カ年、十四回も勧告に対しまして日本政府がそれを応諾していないという実績を見ますと、やはりこの際は確実にILO批准をやってからOECD批准をすべきだろうと私どもは思うわけです。どうですか、外務大臣から重ねて御答弁願います。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 OECDについては、御承知のように、去年の七月二十三日に満場一致加盟招請を受けているわけでありまして、先ほど私が申し上げましたように一日も早く御批准いただいて加盟させていただきたいということを希望いたしておるわけです。ノーネネクタイで入るのかと言われますけれども、これは最も基本的な条約でございますから、これを批准しないなどという日本ではないと思うのでありまして、先ほど申しましたように、これはどの時点でという時間にしぼられてきておると思うのでございます。あなたの言うネクタイはもうちゃんとポケットにあるわけでございまして、諸般の事情加盟国皆さんも御理解いただいておると思うのであります。非常に不幸にいたしましてOECD加盟のほうが若干先行するというような状況になりましても、八十七号条約の性格がそういうものでございますから、私は御理解いただけると思います。しかし、それより何よりも、こういう基本的な条約でございます。与党野党ということの論議を越えて、ひとつ日本国の名誉のためにぜひひとつ早く御批准をいただきたいと思います。
  30. 平岡忠次郎

    平岡委員 大平さん、いまILO批准というネクタイポケットに入っておるのだとおっしゃっておりますが、ネクタイがどんなネクタイだかにつきましてこれからお尋ねをしたいのです。まさか靴のひもが入っていないだろうと私どもは思うのですけれども、この辺につきましてもただしておかなければならぬ。時間的に追い詰められて、何とかして、ILO先議先決でなくても、少なくともOECD批准にすぐフォローして批准されるようにということが政府のかまえであろうと思うのです。当然そうあるべきなのです。  そういう政府意欲と申しましょうか、立場から、私は次のことをおそれるわけです。すなわち、政府与党ILO批准するために公労法地公労法に手を加えるのは当然のことですが、しかし、要らざることに、国家公務員法地方公務員法、あるいは鉄道営業法等に手を加えることに意欲を燃やす、そして多数で不当の批准を強行した場合に、これはILO八十七号条約の精神を根本から踏みにじるものと私は考えております。政府は、国内法において、選挙法等に見られるごとくザル法の策定が非常におじょうずでありますが、少なくとも国際法だけはかかる手管はお用いになるべきではない思うのであります。念のため政府の良識的な答弁を承っておきたいと存じます。私は、結論的に申しますれば、最終限度倉石・河野案での修正可決でなければならないと思うのでありますが、政府見解を承りたいのであります。外務大臣並びに労働大臣からお答えを願いたい。
  31. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のとおり、政府は、今国会の劈頭におきまして、ILO八十七号条約批准承認案件に付帯いたしまして、御指摘公労法地公労法、国公法、地公法の改正案を一括して提案いたしております。公労法地公労法につきましては、公労法四条三項、地公労法五条三項はいずれもILO条約の八十七号に直接抵触をいたしますので、この修正は当然でございます。しこうして、国公法並びに地公法の改正をあわせて提案いたしておりまするゆえんのものは、公労法地公労法の改正ということに相なりますると、現在の日本の公務員の職員団体の実情、並びに政府の公務員に対する人事管理体制、こういう実情から見まして、どうしても、公労法地公労法の改正をするには、その前提として、あわせて国公法、地公法の改正が必要だ、こういう認識に基づいて提案をいたしたものでございまして、政府といたしましては、これを一括御審議いただきたい、かように思っておるのであります。しこうして、この国公法、地公法の改正につきましては、これがILO条約八十七号の趣旨に反するというがごとき性格のものでは断じてございません。この点はILOの事務当局ともすでにいろいろな機会に打ち合わせをいたしておるような事実もございます。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま労働大臣お答えになりましたとおりでございます。
  33. 平岡忠次郎

    平岡委員 御承知のとおり、時間的な制約があるわけです。それですから、あまり持って回ったような話をせずに、この際与党内をまとめていただいて、倉石・河野の修正案をもって議決するという勇猛心をふるっていただきたいことを、特に大橋労働大臣お願いしたいと思っております。大体結論が先に見えていることとして、その最終的な到着点に向かって邁進するというよりほかないと思うのです。そうでないと、いま私が申し上げたような、ノーネクタイでまかり通っていて、あとでつまみ出されるということはやられぬまでも、国際信用上から、日本がなっていないというようなそしりをまぬがれるためにも、この辺で腹をきめていただくことを強く要請いたす次第であります。面相から御見解を賜わりますれば幸いであります。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ILO八十七号条約は、OECD加盟するとしないとにかかわらず、日本といたしましては、十大産業国の一つでございますから、できるだけすみやかに批准をすべきものであると考えておるのであります。ことに、OECD加盟するということになりますと、八十七号条約批准は一そう必要を増すことは否定できないのでございまして、さような意味で、政府といたしましても、これが批准の手続を国会において完了されますことを一日千秋の思いで待っているような次第でございます。今日政府原案を提出いたしております政府立場といたしまして、いわゆる倉石修正案につきまして、ここでとかくの意見を申し上げるべき段階ではございませんし、また、その立場にもおりませんから、御趣旨のありますところはよく自民党のほうへも連絡いたすようにいたしましょう。
  35. 平岡忠次郎

    平岡委員 労働大臣はもうけっこうでございます。  OECDわが国海運との問題につきまして綾部運輸大臣にお尋ねをいたします。  わが国の海運収支は、三十七年度三億五千百万ドルの赤字、それから三十八年度は四億二千八百万ドル、三十九年度は五億ドルをこえる赤字が出るものと見込まれておることは御承知のとおりであります。わが国の海運を整備拡充し国際競争に耐え得るための対策として昨年七月制定された海運業の再建整備に関する臨時措置法は、五年を目途とするものであります。しかるに、OECD加盟条件は、石油について二年、石炭、鉄鉱石について各一年の猶予を認められたるにすぎず、政府の施策に大きなそごを来たしたわけでありますが、政府は自由化時期の短縮に対応するための措置として具体的にどのような措置をとったか、三十九年度予算措置でまたいかなる手当てをしたか、まずお伺いをいたします。
  36. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 OECD加盟に伴うわが国の海運再建、外貨収支の赤字等についての問題は、御承知のとおりでございます。私どもといたしましては、そういう不利と申しますか、欠点と申しますか、ありますけれども、世界全体の国際的な観点と日本の自由化その他に対する将来の観点から考えまして、多少の気に入らない点があってもこのOECD加盟すべきだと考え、すでにその方針でまいっております。それじゃどうしてその不利をなくすかということにつきましては、とにかく、タンカーについてはお説のように二年ですから、五年間にやるだけのタンカーを二年間になるべく間に合わすようにすることが一つ。さらに、鉄鉱石、石炭等については一年間ですが、それもやはり所要の船舶を一年間にできることならばそれに間に合わすようにやりたい。それにつきましては、政府としても、大蔵大臣が非常に奮発してくださいまして、いろいろな処置を講じております。たとえば予約制度を設けるとか、船舶の三十九年度に予想されておる融資、その他さらにたくさんの融資を心配してくれるとか、あるいは融資比率を七割から八割にするとか、海運については金利を六分から四分にするとか、市中銀行については七分ないし八分を六分にするとか等々をやりまして、OECD加盟した結果海運の上で不利をこうむるように予想されることにつきましては、大体の手段を講じまして、積極的にOECD加盟するほうがいいと私は判断をして了承をいたした次第でございます。  なお、外貨その他の収支については、数字にわたりますから、事務当局からお答えいたさせます。
  37. 澤雄次

    ○澤政府委員 国際収支の赤字は、ただいま先生がおっしゃったとおりでございます。
  38. 平岡忠次郎

    平岡委員 私がお尋ねした趣旨は、OECD加盟に伴って、自由化の時期が短縮された、ですから、その短縮に対応するための措置として具体的にどのような措置がとられたのかをお尋ねしておるわけです。特に三十九年度の予算措置でいかなる手当てがされたかということをお尋ねしておるわけです。
  39. 澤雄次

    ○澤政府委員 三十九年度の予算につきましては、ただいま運輸大臣から御説明申し上げましたように、融資比率を七割から八割に上げてございます。それから、金額は財政資金で二百四十七億を用意いたしております。トン数は六十四が二千トンでございます。
  40. 平岡忠次郎

    平岡委員 そのほかに国内計画造船について予算上の手当てはないのか、または財政投融資等においての手当てはないのか、お伺いします。
  41. 澤雄次

    ○澤政府委員 計画造船上の手当てといたしましては、これは融資の返還条件でありますが、OECD加盟に際しまして、いろいろ条件の緩和をいたしました。そのうちの一つといたしまして、開銀の資金は三年間据え置きであったのでございますが、OECD加盟にあたりまして、四年目、五年目の返還を、当該年度の半額を返還すればいいということにいたしまして、市中の融資と重複して最も多く返す時期の返還条件を容易にいたしております。それから、三十九年度につきまして、計画造船以外の財政資金は、外航船につきましては十億の開銀資金をつけまして、これは、老朽船を解体いたしまして新造船をつくる金、あるいは古くなりましたタンカーを貨物船に改装する、あるいは船形を大きくするということのために十億の予算措置を講じております。
  42. 平岡忠次郎

    平岡委員 焦点に答えていただきたい。早期化したための対応策としての予算措置です。いまあなたのおっしゃったのは、大部分そうでなくて、さきにきめられた臨時措置法の五カ年の猶予のあるときのことで、それは二年に繰り上がるということが決定する前の措置としてすでにきめられておったことだと私は思うのです。ですから、規制解除が早まったために対応する措置としては、私、いろいろ調べてみたのですが、どうやら市中銀行と開銀との協調融資のうち、開銀の比率が七〇%が八〇%になったということと、それに見合う措置としまして二百四十七億円が計上されたというだけではないかと思うのです。そのほかに、いろいろ予算書を調べてみましたが、いま澤さんからお答えの、返還条件の緩和だとか、あるいは老朽船に対して十億円をこれが更新のために予算として盛ったというようなことは、早期化に対する対応策ではないと思うのです。そのほかにも利子補給の問題もございますね。利子補給が十六億六千三百万円、これとても早期化対策ではないですね。結局対策としては一つきりないのですよ。この間、大平さんは、私の質問に対しまして、海運対策は、運輸大臣は予算を取るべきものはお取りになっているから、国内措置等、外国船用船制限以外の方法でカバーできるから大丈夫だという趣旨のことをお答えになっておるのですが、予算上見るべきものは何にもないじゃありませんか。まず大平大臣から、せんだってあなたの、悪く言えば思わせぶりな御回答内容は何か、ひとつこの際御解明を願います。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 私は海運のしろうとでございますが、平岡委員に考えていただきたいのは、長期用船契約はなぜできるかということを考えますと、これは船会社と荷主との間の力関係だと思うのです。船会社の力が弱いものだから、荷主の圧力に屈して長期の用船契約をつくらなければならぬようなはめに追い込まれる。したがいまして、いま運輸大臣や澤君からお話があった海運振興政策やそのほか企業の合併その他進んでおるようでございますが、これら一連の措置は、船会社の立場を強化して、そういったような無理な契約をしなくても船会社が立っていけるだけの素地をつくっていくという意味において、OECDに関連してあなたが御質疑をされたことに対するお答えになっておるという意味のことを私は申し上げたわけでございます。私の申し上げたことは間違いでないと思っております。
  44. 平岡忠次郎

    平岡委員 日本の海運の潜在的能力を大いに発揮させるために、このOECD加盟をきっかけとして政府・民間ともども乗り出そうということでなければだめだと思う。OECD加盟日本海運がハッスルするということは、あなたの論理に従いますと、何にも関係はないこととなってしまいます。そういうようにきわめてものを平板に見るならば関係はないのですけれども、そうではなしに、OECD加盟して、そこで国際競争場裏において日本が劣勢に立っているという現状を認識しながら、なおこの問題に対する克服を官民ともにやっていくという意思をあなたは表明されたので、それにしては、当初三十九年度予算に——私は大蔵委員会等において財政とか経済問題だけに取り組んできた男ですから、予算書をよく見たのです。見たけれども、大したことはないという結論になったのです。しかし、三十九年度は間に合わなかったけれども、四十年度からはやはりかまえを強くして海運の再建のためにがんばろうという御意思があってしかるべきだと思うのです。ですから、三十九年度においては手当てができなかったということをむしろ率直に認めていただかないと、私のこれからの発展的な意味での質問も初めから水をかけられるようなことになりますので、いま大平さんのお答えは、お答え一つではあるけれどもお答えの全部ではないと理解をしたいと思います。  次に、運輸省関係からのいろいろな立案等が新聞紙上等にも載っております。それから、国会でも野党質問に対しましていろいろお答えがありまするけれども、変転自在というのですか、何かきのうのことがもうきょう変わってくるというように、腰がないように思うのであります。この間、同僚の松平忠久議員は、本会議での質問のおりに、運輸省の試算によると、今後四年間に毎年二百万トン、すなわち八百万トンを建造して、邦船の積み取り比率を大幅に引き上げなければ赤字は解消しないということに触れまして、政府の決意をお聞きしています。この松平さんと政府側との応答にある限りは、二百万トンを四カ年間にということですから、八百万トンということで、現在の手持ちを合わせまして、七百六十万トンプラス八百万トンですから、千五百何十万トン、ただし、老朽船も出てくるでしょうから、千三、四百万トンのところを一応めどにしているように思えるのです。そうかというと、今度は、きのうの海運収支改善対策のための審議会の答申では、また数字とか計画の年数等が変わってきていますね。運輸省のこの問題に対処するためのかまえというのは一体どこにほんとのところがあるのですか、どれがほんとうなのか、この際決定版をお示し願いたいのです。
  45. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 なるべく早くやりたいというのが運輸省としての基本方針でございます。それでは、いかにすればできるかということにつきましては、その方法論で、ああでもないこうでもないと、いろいろいい方法を考えて、基本方針の筋においては変わることはないと思いますが、個々の場合にあるいは年限あるいは数字に多少の差異があることは、これは見込みですからやむを得ぬと私は思いますが、大局といたしましては、何としても優秀船舶をたくさん保有して積み取り比率をよくするというのが根本策で、それを一日も早くやりたいというのが運輸省の基本方針であるのであります。  数字につきましては、澤次長からお答えいたさせます。
  46. 澤雄次

    ○澤政府委員 船腹の増強計画につきましては、ただいまのところ、長期的にきめました政府の計画は、所得倍増計画でございます。所得倍増計画によりますと、昭和四十五年度千三百三十五万トンの外航船を保有するというのが長期計画でございます。ところが、昨年石油審議会で四十二年度を最終年度とする長期計画が発表されまして、石油は、御承知のように、日本の大量の輸入物資でございますので、一部修正を加えまして、また、具体的に荷主の業界と海運業界が話し合いまして、三十九年度は六十四万二千トンは荷主のほうで雇いますというかなりはっきりした見通しのもとに予算を要求いたしました。大蔵省はこれを一トンも減らさずに六十四万二千トンの予算を認めてくれたわけでございます。  けさの新聞に出ております数字その他は、六十四万二千トン程度の建造では自己資金船を合わせましても海運の国際収支は赤字の横ばいがやっとでございますので、それをもう少しよくするためにはどういう方向で検討したらいいかということにつきまして大臣から研究を指令されましたので、事務当局間で検討いたしている数字でございます。それにつきましては、まだ政府部内の間で了解ができた数字でもございません。まだ試算の段階でございます。
  47. 平岡忠次郎

    平岡委員 根本的には所得倍増計画がその数字である、ただ、ここで早めなければならなくなったから、建造計画を量的にもっとふやして、年限を短縮する、そういう趣旨ですね。終着点は結局千三百万トンくらいと理解してよろしいですか。
  48. 澤雄次

    ○澤政府委員 終着点につきましては、御承知のように、政府の所得倍増計画で中期計画をつくりまして、五カ年間の計画をつくろうといたしておりますが、そのとき政府として全体の確定した数字はできると思いますが、現在の段階では四十二年度がわれわれが得られます一番確定した数字でございますので、四十二年度におきまして、海運の運賃収支をとんとんにかりにするとすればどれだけの船腹が要るかということを、ただいま試算いたしておるわけでございます。
  49. 平岡忠次郎

    平岡委員 朝日新聞の記事をよく読んでみますと、海運収支がいつの間にか運賃収支に変わってきている。田中大蔵大臣が、二月二十五日の予算第一分科会におきまして、わが国の国際収支の見通しに触れての答弁ですか、四十五年度を目途として経常収支の権衡回復をはかる旨を言明されておる。経常収支において回復をはからなければならない最重点が海運収支にあるわけですから、海運収支については、当然均衡のためのプログラムが私はあると思ったのです。ですから、きょう田中大蔵大臣が来ましたら、四十五年を目途とするプログラムを聞きたかったのです。この場合は経常収支全体、あなたのおっしゃるのは運賃収支で、先ほどあなたがお答えになったとおり、運賃収支に限定されておるわけなんですよ。ですから、私どもの聞きますことに対しての答弁は、全部引き出しが違うんですね。これでは国会論議の焦点というものは一つもかみ合わないという気がします。そういうことで、私どもとしては非常に不満であります。運輸省の決定版的な計画、プログラムをぜひお聞きしたいと思ったのですが、それも不可能。では私どもは次のように理解してよろしいんですか。まだ決定版的なプログラムとしてはできておらぬということ、そういうことですか。
  50. 澤雄次

    ○澤政府委員 政府全体といたしまして決定しました長期の船舶建造計画あるいは収支計画というものは、所得倍増以外にはございません。ただいまのところは、中間的なもの、試算している段階でございます。
  51. 平岡忠次郎

    平岡委員 では、そういう限定的なプログラムにいたしましても、そのプログラムができ上がるのはいつごろでしょうか。
  52. 澤雄次

    ○澤政府委員 ほんとうに確定いたしますのは、経済企画庁を中心として行ないます中期計画ができますときに確定いたすと思いますが、この海運の問題は先ほど大臣も言われましたように、早急に実施する必要がございますので、なるべく早い機会に、中期計画よりずっと早い機会にこれを決定いたしたいということで、関係各省といま検討を続けております。
  53. 平岡忠次郎

    平岡委員 プログラムにつきましては、不確定要素ばかり多いですから、この辺でやめておきます。  プログラムのいずれを問わず、次に問題になりそうなのは、日本の造船界の建造能力の問題だと思っております。現況におきまして、オーシャン・ゴーイングの船を建造する年間の能力というものはどのくらいでありますか。
  54. 藤野淳

    ○藤野政府委員 能力の算定方法は、非常にむずかしゅうございまして、世界各国ともきまった方式はございませんけれども、平時の在籍の従業員が定時間働くとしまして算定いたしました能力は、約二百六十万トンでございます。繁忙時におきましては、ある程度の残業もいたしますし、また、協力工場等を相当大幅に動員いたしますると、約五割能力が増大いたしまして、大体のところ三百九十万トンというのがわれわれの試算でございます。
  55. 平岡忠次郎

    平岡委員 平常時とは何ですか。これは労働時間の平常時勤務ですか。どういう意味ですか。
  56. 藤野淳

    ○藤野政府委員 そうです。
  57. 平岡忠次郎

    平岡委員 それで二百六十万トン、夜勤をかければ三百九十万トンまでいけるということですね。
  58. 藤野淳

    ○藤野政府委員 そうです。
  59. 平岡忠次郎

    平岡委員 そうすると、三十九年度のオーシャン・ゴーイングの建造予定はどういうふうになっておりますか。輸出船の建造があるでしょう、それが一つ。それから、大きく分けますと、国内船といいましょうか、国内の発注にかかわるもの。その国内の発注をまた大別すれば、計画造船と、それから会社資本による自己発注、これ等であろうと思うのですが、三十九年度につきまして、以上のカテゴリーの建造配分割合がどんなふうになっているか、具体的にお示しを願いたい。
  60. 藤野淳

    ○藤野政府委員 三十九年度は、輸出船は約二百六十万トンでございます。そのほかに、予定されております国内船が、二十次船といたしましての計画造船が約六十四万トンでございます。それから、計画造船でない、いわゆる自己資金船というのが二十万トンございます。そういたしますと、合計三百四十四万トンになるわけでございます。それに、余力が、全くの余力で予定のないものでございますが、四十六万トンございまして、三百九十万トンになるわけでございます。
  61. 平岡忠次郎

    平岡委員 運輸省の海運収支の改善案の中では、四十二年を終着年度としまして、年間百八十万総トンのベースで建造していく、こう出ておりますね。そういたしますと、四十年度におきまして輸出船の建造が今年と変わらないというようなことになりますと、余力が四十六万トンですから、そうすると、日本の国内で計画造船が百七十万トンに量がふえましたときには、外国船のほうはできるけれども、つまり、輸出船のほうはできるけれども、国内船のほうは、造船能力から規制されるということにはなりませんか。
  62. 藤野淳

    ○藤野政府委員 先ほどお話のありました百八十万トンは、次第に建造量が増すという計画でございます。三十九年度は一応予定のものを含めまして百三十万トンが建造できるということでございます。
  63. 平岡忠次郎

    平岡委員 それでは、質問の角度を変えます。  国際収支の問題といたしまして、短見的には、外国船の注文、これはまあ国際収支上のプラスであることは間違いがない。だが、貿易外収支という長期的見地に立ちまして、日本船の建造がチェックされないかと思っていま質問したわけですけれども、その辺は、輸出船をよけいに貿易収支の上ではとりたいとした場合には、日本船の建造がチェックされ、そして、日本船の建造を主力に置くと、輸出船が思うように注文が取れない、こういうことで、どっちをとるかということは、政策としては重大なことであろうと思うのです。そこで、お尋ねしますが、運輸大臣はどちらに重点を置くつもりか。かまえとしてどういうおつもりであるかをお聞かせ願いたい。
  64. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 それが外貨収支の改善について一番問題点でございまして、始終論議の中心になっておるのであります。しかし、外船の注文を現在程度取って、それであなたがおっしゃるように船の製造能力がチェックされるじゃないかということにつきましては、さっき船舶局長からも申しましたように、あらゆる余力と申しますか、労働力、それから下請に出す分量等を多く出すことによりまして、私どもが所期しておる船をいまから計画的にやるならば、できるのじゃないかという結論に達しておりまして、私どもとしては両方現状のままで進めていきたい、かように考えております。
  65. 平岡忠次郎

    平岡委員 両方進められればけっこうであります。もうちょっと中身につきましてお聞きします。  現在、三十九年度で二百六十万トンの外国からの受注があるということをお聞かせ願いました。そうすると、その船の大きさは大体どの程度のものでしょうか。
  66. 藤野淳

    ○藤野政府委員 重量トンで申しますと四万トン以上の船が多うございまして、輸出船は巨船に集中しておると申しあげてよろしいと思います。
  67. 平岡忠次郎

    平岡委員 四万トンは重量トンですね。そうすると、総トンではどのくらいですか。
  68. 藤野淳

    ○藤野政府委員 二万五、六千総トンくらいでございましょう。総トン数は小そうございます。
  69. 平岡忠次郎

    平岡委員 総トン数のほうが大きいんじゃないですか。
  70. 藤野淳

    ○藤野政府委員 船にはトン数が二通りございまして、重量トンと総トンがございます。総トンは容積トン数でございまして、タンカーでございますと約七割増しのものが重量トンでございますので、重量トンで申します場合には、総トンに引き直しますと約六掛け以下になるわけでございます。
  71. 平岡忠次郎

    平岡委員 最初にあなたが四万トンとお答えになったのは重量トンですか。重量トンでは四万トンじゃないのじゃないですか。六万トン、八万トン、十万トンとか、輸出船の大きなものは十二万トンにもなるのじゃないですか。あなたのお答えは間違っている。
  72. 藤野淳

    ○藤野政府委員 あとで申し上げましたように、大きなほうに集中いたしておりまして、小さいほうでは大体四万トンくらいのものがあると思います。大きなものは六万トン、七万トン、八万トン、十万トンというのがございます。そういうのが多うございます。
  73. 平岡忠次郎

    平岡委員 それなら話はわかります。  それから、国内発注のものはどの程度のものが多いのですか。重量トンでおっしゃってください。
  74. 藤野淳

    ○藤野政府委員 国内発注も非常に大きゅうございまして、タンカーは七万トン、八万トン、九万トンあるいは十万トンということで、十九次船のごときは、船型で申しますと、タンカーは輸出船よりむしろ大きいということでございます。
  75. 平岡忠次郎

    平岡委員 結論的に聞きますが、外国発注のタンカーは大型であると理解していいのですね。超大型ですね。
  76. 藤野淳

    ○藤野政府委員 そのとおりでございます。
  77. 平岡忠次郎

    平岡委員 これはきわめて重視すべきであると私は考えております。五万トン、十万トンということになりますと、スエズ、パナマの通過が困難であります。できません。したがいまして、対日石油輸送を目的とする競争船の建造ということになる。現在の国際収支にプラスさせるための外国船建造がやがて将来海運収支で日本を立ち上がれないまでに痛めつける、こういうことになろうと思って心配します。その点につきまして運輸大臣の御見解をお示し願いたい。
  78. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私はさように考えておりません。われわれが考えております造船計画を進めていくならば、油の使用量がいまよりさらに驚異的に増加するとかなんとか、想像がつかぬような大きな数字がでる場合は別問題といたしまして、われわれが考えておる日本経済、所得倍増計画等々によりまして、現在の状況では、あなたがおっしゃるような心配はないと私は思っております。
  79. 平岡忠次郎

    平岡委員 現実に三十九年度の日本の造船界が受注しておるトン数について見ますれば、あなたも御承知のとおり、いま説明されたとおり、輸出船が二百六十万トン、片や対するに六十四万トンプラス二十万トンの八十万トンが日本国内船の現状なんです。来年度からの計画はまだ立ってないからということで数字としてはいろいろ逃げる手があるかもしれませんが、私どもは、最も確実な三十九年度の現況においては、二百六十万トン対八十万トンが日本の造船界の受注の現況だとし、これを重視しておるわけです。これは確実な数字です。それから推しまして、外注の二百六十万トンがことごとく超大型的なものとすれば、この超大型船はスエズ、パナマを通れないのですから、当然日本向けの石油を積むということを目途として計画し契約しておるに違いないですよ。だから、その発注は当面の国際収支の改善からは日本にとってプラスのように見えるけれども、長期の展望をもってするならば、これがことごとく日本にあだをするということにならぬかということを聞いておるのです。どうですか。
  80. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 これは考え方の問題でございまして、私はさようにならぬと考えて、あなたはそういうふうになるというふうに言っていらっしゃいますが、私は考え方の問題であると思います。
  81. 平岡忠次郎

    平岡委員 考え方の問題ではありません。数字的に出ておりますから、考え方ではないです。あなたの考え方は客観性がないです。
  82. 藤野淳

    ○藤野政府委員 世界の巨船建造の傾向は非常に顕者でございますけれども、これがすべてスエズ以東で使用されるものときまっておるわけではございませんで、アラビアの石油をケープ経由で運んでおる傾向もございますし、カリブ海あるいは地中海経由で欧州に油を運ぶということもありますし、われわれとしましては、これがすべて日本を目ざした建造であるというふうには考えないわけでございます。
  83. 平岡忠次郎

    平岡委員 いろいろ遁辞はありましょうが、政府のかまえとしては最悪のことに焦点を合わせて対策を立てなければならぬということなのです。確かに、消極的に、たとえばアラビアのほうから、イスラエルのハイファですか、あの辺にパイプがあるから、そこから十万トン船を地中海に浮かべてイギリスの方に持っていくこともあり得るのだから、この外注の大型タンカーは必ずしも日本向けではないというお答えも一応はうなづけます。理解できるのです。けれども都合のいいようにばかり理解しておるのはぐあいが悪いと思うのです。現状はそうでないということ、日本の市場が非常に大きくて、運ぶべき石油量も多くなることを見越して外国が発注しておるのが現実なのです。そうじゃないですか。
  84. 藤野淳

    ○藤野政府委員 私必ずしも専門家ではございませんけれども、石油の輸送は年々七%をもって増大いたしております。日本の石油の増大はそれに比べますときわめてわずかでございます。したがいまして、日本目当てで世界が巨船を建造しておるというふうには考えられないわけでございます。
  85. 平岡忠次郎

    平岡委員 それでは、少し折れ合いまして、傾向的には私の主張するところがあるということは……。(「しかし、たいしたことはないよ、君」と呼ぶ者あり)まあ自民党さん、つかみ金の名人なので、どうも理論的じゃないですよ。計数的じゃないし、その点できわめてあなた方の答弁は不満であります。  さて、次の問題に移ります。わが国の造船ブームに関連しまして、世界一と折り紙づきの優秀なわが国造船業を規制する動きが、OECD内部にあることは注目すべきことであります。最近、西欧各国の造船団体の親睦機関であるWESIC、すなわち西欧造船懇談会が中心となって、OECDを動かして工業委員会のもとに造船専門の第五作業部会をつくっております。この部会のねらいとするところは、輸出船の国別生産割り当て制と最低船価制をきめる国際カルテルの結成であり、近くOECD加盟するわが国を対象とするものであるといわれているが、このことについて政府はどう見ているか、お答を願いたい。
  86. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 最近に船舶局長がその会議に出席いたして帰ってまいっておりますから、その真相をひとつ御報告申し上げて御了解を得たいと思います。いいかげんな答弁じゃありませんから。
  87. 藤野淳

    ○藤野政府委員 OECDが造船の不況対策を頭に置きまして第五作業部会を昨年から設置して活動しておるわけでございます。ただいま先生のお話のように、輸出船の世界的な割り当て制あるいは最低船価制という問題が新聞紙上にはしばしば報道されておりますけれども、こういう問題につきまして真剣にまだ検討するような段階にまいっておりません。OECDの工業委員会第五作業部会は、まず各国造船界の実情を相互に把握し合う、それから、政府並びに民間の補助、助成その他含めましていろいろな措置を検討する、また、その措置の効果、あるいはその逆の効果もありますが、それらを検討する、その上で工業委員会に対する報告書を作成する、期間は一年、ことしの五月をもってその任務を終わる、こういう予定でございまして、世上伝えられるような割り当て制とか最低船価制についてまともな検討をしたことは全然ございません。
  88. 平岡忠次郎

    平岡委員 それは問題がまだあると思うのですが、この際はやめておきます。  海運収支の赤字と関連しまして問題となるものに、港湾収支の赤字の問題があります。三十七年度の海運収支の赤字三億六千百万ドルのうちの半分以上の二億七百万ドルは、港湾収支の赤字であるといわれておりますが、赤字のファクターは何であるかをお示し願いたいのであります。また、港湾収支の赤字を解消させるための対策は何であるかもあわせてお答えを願いたい。参考までに、米国では、運賃収支の大幅な赤字を港湾経費収支で埋め合わせて、海運収支はごくわずかの赤字にとどめておるといわれておりますが、わが国もこの点について慎重な対策を立てるべきではないかと思っております。大臣からお答え願いたい。
  89. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 海運収支の赤字の対象である燃料費その他水先施設の使用料あるいはとん税あるいは荷役等につきましてそれぞれ検討いたしまして、上げ得るものは上げ、また、順次さらに上げていくような考えでやっておりますが、現状においてはすこぶる少額の節約にしかならぬということをはなはだ遺憾に考えます。  詳細の数字は海運局次長から説明いたします。
  90. 澤雄次

    ○澤政府委員 港湾収支の赤字のうち約六割近くのものは燃料油でございます。これは、外国で取ります場合はもちろん、日本で取ります場合もボンド油と申しまして保税油となっておりますので、どこで取りましても外貨払いになるわけでございまして、それを除きました赤字は約一億ドルくらいでございます。日本の港湾経費でそのボンド油はなんともいたし方ございませんが、それを除きました港湾経費の改善につきましては、昨年からことしにかけまして港湾の施設料を上げましたり、とん税を上げましたり、改善をはかっておる次第でございます。しかし、これは各港のつくりました歴史あるいは管理形態が各国違っております。日本では横浜、神戸、関門、これらの港は、御承知のように、国が全額国庫でつくってきた港でございます。ただいまは違いますが、戦前におきましてはそうです。それで、道路のような概念でこの港湾をやっておりまして、諸外国ではこれをポート・オーソリティー、独立採算的な有料道路的な考えで港をつくっておるところが多いわけでございます。これらの歴史的な相違その他によりまして、港湾経費が日本のほうは非常に低くなっている。もちろん労務費が諸外国に比べて安いこともございます。しかし、この港湾経費が安いことが輸出の振興に非常に役立っていることもまたいなめない事実ではないか、こう思っております。
  91. 平岡忠次郎

    平岡委員 あなたのいまおっしゃった、何ですか、ボンド油ですか、それは要するに保税工場か何かに入っておって外国品と同じことだ、そこで、給油した場合、それは外貨で払うということから、その計上額が多いのだ、それがまず第一点ですね。あなたの言いましたそのほかの経費関係ということについて一億ドルの赤字が出るということは、三十七年度の二億七百万ドル中に占めるところのものが一億ドルだという意味ですか。年度が違がっては何もならぬのですから。
  92. 澤雄次

    ○澤政府委員 三十七年度の分析をちょっと持っておりませんが、大体六割が、その油でございます。
  93. 平岡忠次郎

    平岡委員 私が先ほど後段に質問しました、アメリカにおいてこの点は非常に合理化しているという先例があるわけなんです。その実情をひとつ御説明願いたい。
  94. 澤雄次

    ○澤政府委員 アメリカにおいて非常に合理化しているというのは、どういうあれでございましょうか。
  95. 平岡忠次郎

    平岡委員 米国が運賃収支の大幅な赤字を港湾経費収支で埋め合わせて、海運収支を結論としてごくわずかな赤字にとどめているという事実があるわけなんで、その実情を説明してほしいのです。
  96. 澤雄次

    ○澤政府委員 アメリカにおきましては、港湾経費の内容といたしましては、港湾施設の使用料それから荷役料と両方ございます。これは沿岸荷役、船内荷役。そうして、港湾施設の岸壁使用料そのものも日本の数倍になっております。それから荷役料も日本の数倍になっておりまして、アメリカの諸港におきましては港湾経費が日本よりも六倍ないし七倍高くなっておる。そういうことで、諸外国から入ってきました船がアメリカで非常に高い港湾経費を払っておりますので、港湾経費で運賃収支をカバーしている、こういうことであると思います。
  97. 平岡忠次郎

    平岡委員 日本船の積み取り比率というものは、輸出、輸入合わせまして大体五〇%、先ほどの説明では五三%ですか、ですから半分は外国船による積み取りなのです。ですから、そういう高い水準で全般的にかぶせて取るものは取る。それから、日本の五〇%のものは困るので、そういうものは、補助とか、じょうずに内面指導をせぬといかぬのかもしらぬけれども、そういう手はとれないものでしょうか。
  98. 澤雄次

    ○澤政府委員 日本の港湾経費を上げましたときに、これは国際収支の面から申しますと確かに改善になるわけでございますが、先ほど来先生のおっしゃっておりますように、いま海運業界は再建整備を大急ぎでやっているときでございまして、国といたしましても、現在の財政状態でできる限りの援助を行なっておりますので、港湾経費を上げますと、もちろん外国舶も高い経費を払うことになりますが、日本舶も高い経費を払うことになりますので、日本の船会社の再建整備を早めるという意味におきましては、港湾経費の急激な増加ということはあまり好ましくないことでございます。
  99. 平岡忠次郎

    平岡委員 そうじゃなしに、米国とか一般の諸外国の港湾収支における基準で思い切って日本でもやる、ただし、その高い水準になりますと、日本の船会社が困ることはわかっておるから、その部分だけは何らかの形で戻すという形にすれば、積み取りの全体の半分を占める外国船関係のものからよけいに取れるのじゃないかということを聞いているわけです。そういううまいぐあいにいかぬのですか、補助金とか何かで。
  100. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  101. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 速記を始めて。
  102. 平岡忠次郎

    平岡委員 次に、シップ・アメリカン等について政府見解をただしたいと存じます。  OECDは海運の自由化をきびしく要求しておる。特に、加盟国政府または政府機関は自国船を優遇するがごとき海運自由の原則に反するいかなる措置もとってはならないことを規定していますが、この規定は米国には適用されないとある。米国のシップ・アメリカン政策は自由化規約の適用外といわれております。シップ・アメリカンは明らかに海運自由の原則に反するものであり、OECDが何ゆえにこれを自由化規約の適用外としたかは大きな問題であります。政府はこのいきさつを説明せられたいと存じます。
  103. 中山賀博

    ○中山政府委員 インビジブル・トレードの自由化の中に海運条項がございまして、アメリカは確かに海上輸送の点について全面的な留保を行なっております。ただ、いまお話しの内外平等に取り扱わないという問題は、むしろ日米通商航海条約の問題かと存じております。
  104. 平岡忠次郎

    平岡委員 この点はOECDの場でアメリカ側に対して究明すべきだと思うのです。それから、日米通商航海条約が権威であって、それでそれに準拠すればアメリカの不当が許されるというのはおかしいですよ。しかも、日米間だけならいいですけれども、シップアメリカンの利害関係日本だけではないのですから、そういう点がOECD内部でまあまあというので過ごされておるといういきさつは、この際ぜひとも聞いておかなければならぬと思うのです。いまのあなたの説明では不十分ですから、重ねて御答弁願います
  105. 中山賀博

    ○中山政府委員 記録によりますと、OECDができましたときに、アメリカのこの留保は非常にたいへんな議論の対象になったわけでございます。ただ、アメリカはどうしてもこの留保をしたいということで、他のヨーロッパの海運国もやむを得ずこれを認めたということでございます。もちろん、この対立はその後も残っておりまして、現にアメリカのシップ・アメリカンの適用については、OECDの海運部会においても常にアメリカに対して攻撃の声を放ち、その後討議の対象になっておるわけでございます。
  106. 平岡忠次郎

    平岡委員 では、アメリカの留保を撤回し得る見通しがありますか。
  107. 中山賀博

    ○中山政府委員 従来の傾向を見ておりますと、アメリカとしてはその撤回の意思がないようでございますが、ただ、その適用にあたりましては、海運委員会その他の討議等も参照し、ときに妥協的な態度を示すこともあるかと思っております。
  108. 平岡忠次郎

    平岡委員 いま私アメリカの問題を聞いたのですが、まだあるのですね。フランスは、石油業法で、石油は三分の二自国船で輸送しなければならないときめてあるはずです。確かにそのとおりだと思うのですが、もし事実なら、フランスはこの点を留保していないのですから、明らかに規約違反です。このフランスの規約違反はOECDで問題になっていないのかどうか。シップ・アメリカンといい、フランスのやり方といい、大国はかってなことをしながら、わが国には過酷な条件をしいておるわけです。どうですか、フランスの場合について御答弁ください。
  109. 中山賀博

    ○中山政府委員 確かに、フランスは、いま先生のおっしゃったのは事実でございます。そうしてまた、フランスはこれに対して留保を施しておりません。それで、わが国加盟問題が起こりましたときも、わがほうとしましては、この事実をOECDの係官にも強く注意を喚起いたしまして、どうしてそういうことをフランスだけ認めるのかということを問題にいたしたわけでございます。そこで、目下OECDの中でもこの点が問題になっておりまして、もしフランスがこういうことを続けるなら当然留保すべきだという議論も強く、これの取り扱いにつきましては、貿易外委員会において議論が続行中と聞いております。
  110. 平岡忠次郎

    平岡委員 委員諸君、お聞きのとおりであります。日本の場合の要求はことごとく退けられ、アメリカの場合とかフランスの場合は、OECDにおきまして、やはり力関係で押しまくっておるという感じがいたします。この点に対しまして大いに日本政府もハッスルしていただかぬといかぬと思っております。OECD条約第二条は、加盟国は国際収支の安定をはからなければならないとうたつております。しかるに、一方国際収支に重大な影響を持つ海運の自由化をわが国にのみ一方的に押しつけて、国際収支の危機の実態に耳を貸さないことは、明らかに不当ではないのか。政府がこの不当な要求をいれ、海運自由化の圧力に屈したのは、OECD加盟を急いだ結果乗ぜられたものではないのか。それとも、外交そのものの弱さによるものなのか。いずれにいたしましても政府の責任と思うが、どうお考えでありますか。大平外相からお答えを願いたい。
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 ちょっと私は平岡委員のいまの御発言に異議があるのです。大国はかってに留保をつけてわが国に不当なことをしておる、そういうばかなことはありません。大国といえども、小国といえども、留保の権限があるわけでございますから、わが国も留保すべきものは留保いたしておるのでございます。問題は、いま言われた海運につきましての問題でございますから、海運について申し上げたいのでございますが、この前の委員会で私はあなたの御質問に答えて申し上げましたとおり、わが国は海運国でございますし、わが国は海運の自由を本来鼓吹してまいりますことがわが国の利益でございます。ただ、戦争という不幸な事態があって、わが国の海運業が壊滅に陥った今日の段階において特殊な問題があるので、いま海運界は苦悶を続けておりますけれども、本来は声を大にして海運の自由化を世界に求めていく立場にあるわけなんです。したがって、OECDは寄ってたかってわが国に海運の自由化を求めておるんだなんという認識を改めてもらわなければ、わが国の海運の未来のために、私はそんな量見だったら日本の海運は伸びないと思いますよ。  それから、アメリカのシップ・アメリカン、アメリカは所要の船腹に対しまして自国船なんというのはわずかしか持っていないし、シップ・アメリカン、シップ・アメリカンといっても、自分の使う船腹さえままならぬ状況なんで、あれは声を大にしてやっておりますけれども、そんなに実効はあがっていないと思います。アメリカのような大国でもやはり弱い産業はあるわけなんでございまして、そういう特殊な弱い産業、——あるいは綿製品交渉なんかが問題になりましたときに、綿製品に対して非常にアメリカが渋い態度をとるというのは、ちょうどわが国が石炭産業のために与党野党も大騒ぎするようなものでして、したがって、その国々が特殊な事情がある産業があるわけでございまして、OECD加盟につきまして、自分の国としてはこれだけは留保したいということは、これは大国であるがゆえにそうである、そういうえこひいきで、OECDのコードができ、OECDの運営ができておるというような、あなたがもしそういうように誤解をされておるとすれば、御訂正いただきたいと思います。  それから、第二点として、フランスが留保もしないでこういう不当なことをやっているという御指摘は、それは大いに糾弾すべきものだと思います。ところが、もしOECDというような仕組みがなく、そしてそれらが野放しに行なわれておったら、そういう問題を取り上げて是正を求めるチャンスもないじゃありませんか。したがって、こういう仕組みができて、こういう機会にこれを取り上げて、寄ってたかってこの問題を究明し、その是正を求めるという措置をとっていくということは、非常に建設的なマシナリーじゃありませんか。そういうように私は感じますので、OECDのコードというものは、そんなにぞんざいにでき、それがぞんざいに運営されていないんだということと、この機関はそういう建設的な役割りを果たすという仕組みを持っているんだということを御理解いただかなければならないのじゃないかと思います。
  112. 平岡忠次郎

    平岡委員 大平さん、ゾルレンとしてのOECDとザインとしてのOEODを混淆していますね。あなたの言い分をゾルレンとしてはそれで聞いてもいいのですが、現実はずいぶん不公平なものだということを指摘したわけだ。あなたの御希望なら、フランスとかアメリカとかの大国ということは消してもいいのです。そのことはとらわれていませんけれども、しかし、現実にそれだけOECDの先輩たちは横暴です。日本の海運はポテンシャリティーとしては力強いものがあるかもしれません、過去の例に徴しまして。しかし、現実は弱いのです。アメリカもシップ・アメリカンを主張せざるを得ないほど米国内の他産業に比べて海運界が弱いということをおっしゃるなら、日本の現実の海運はさらに弱いことは事実なんですから、あなたの議論は当たらぬと思うのです。それはそれくらいにいたしまして、日本としても、大平さん得意の鼓をならして、フランスとかアメリカとこれから大胆に渡り合い、公平なOECDの運営ができるように大いに努力していただきたいと思っております。ただし、むろん批准をしてからの話ですが。そういうことでよろしくせっかくの御努力お願いしたいと思うのです。  いままでの政府の御答弁を聞いていますと、結論的には、自由化時期が早まったにもかかわらず、計画造船は三十九年度を見ましても依然として六十四万トン程度にとどまっておって、そういうことから見ますと、大平さんからずいぶん先物を買ってのごあいさつがありましたけれども政府に海運危機克服の意欲はまるでないと私どもは考えざるを得ないのです。意欲のないところに問題の解決はありません。そこで、現実にこの海運をになっておる海運業界がこの政府の微々たる対応措置に対していかに反応しているか、はり切ってやる気があるか、それとも失望して投げているのか、あげて政府の責任と思うが、これを政府はどう見ているか、これをお答えいただきたい。
  113. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私はあなたのおっしゃるようには見ておりません。海運界は一生懸命で、復興再建と申しますか、国力の増進と申しますか、懸命に努力をいたしておると考えておりまして、あなたのおっしゃるように、投げておるとか、そういうようなことは考えません。それから、日本海運のあり方につきまして、私はあなたのおっしゃるようには考えません。日本海運は、政府が一生懸命でやっておる方策によりまして、今後五年以内には必ずや現状よりはよくなるということを確信いたしております。
  114. 平岡忠次郎

    平岡委員 政府のほうは直接責任があるようなないようなものですからそうおっしゃいますけれども、自由化期限短縮の被害をまともに受けるのは海運業界です。  そこで、次にお伺いしたいことは、国際競争の荒波の中で、私の考えでは、彼らは完全にインフェリオリティー・コンプレックスを感じていると思うのです。弱体体制のまま裸であらしを受けなければならない海運業界は、非常にみじめだと思っております。過去に造船疑獄とかそういうくだらぬことがありましたので、彼らはほんとうに主張すべきことも主張し得ないでおると思うのです。そういう点で、まず海運業界に、過去のことにとらわれずに、新しく日本の産業のチャンピオンとしてこれからのリーダーシップを発揮するんだというような心がまえがわいてこなければならぬと思うのです。さて、いま海運業界の各会社のリーダー、社長ですか、その人たちは造船疑獄時代と入れかわっておりましょうか。それとも引き続きその社長のいすにすわっておる人が相当多いのかどうか。この点を参考までにお聞かせ願いたい。
  115. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私は造船疑獄時代の当事者が何ぴとであるかつまびらかにいたしておりません。また、知ろうともいたしません。しかし、そんなことにおびえておったのではどうにもならぬから、私は非常に強く要請してまいっておるのでございまして、いまどういう人が残ってどういう人がおるかということ、そしてまたその人が造船疑獄に関係があったかなかったかというようなことは存じておりません。また、そんなことは問題でないと私は思っております。
  116. 平岡忠次郎

    平岡委員 われわれも問題にしていないのです。ただし、内心じくじたるものがあるとほんとうに先頭に立ってやっていくという意欲はわかぬはずです。だから、そういう点はやはりその人たちの心理的な状態というようなものがこれから大海運国をつくっていくということの前提になると思うと申上げるんですよ。身まわりを清らかにして、そのかわり日本政府の予算とか財政投資は思い切って出してやっていく、それで短期間に往昔の海運国をつくっていく、そういうことをやらなければならないと思うのです。どうしても過去の陰影がくっついているのでは、政府の一部の指導者が大いに張り切ってやろうとしても、三すくみじゃないけれども、ファイトが出てこないと思うんですね。   〔正示委員長代理退席、委員長着席〕  そういう点で、われわれとすれば、いまのような立ち入ったことについてもやはりここで議論をしておく必要があるということを申し上げたわけです。深追いをするわけじゃありませんし、そのことで政府をひっかけようというようなちっぽけな考え方は一つも持っておりません。ここに大平さんもおりまするけれども、例の「はだか随筆」で後年ばかに有名になりましたあの佐藤先生は、私の学生当時経済地理学を教えておりました。私も大平君も同窓ですから、大平さんもその講義を聞いておると思うのです。そのときに大国の定義を下しました。大国たるための条件は三つある、その一つは、大きな人口を持っているということ、それにふさわしい土地がやはり望ましいということ、しかし、それよりも一番大切なのは、国民の強者たらんとする意思ということでした。それは、狂信主義的国家主義者、そういう意味ではないのです。やはり国民の強者たらんとする意思が強国たる条件のうちで一番大切だと言っているわけです。ですから、海運業界を歴史的に見て、世界の最右翼に行けるような歴史的な実績もありますし、そういうことで、この苦境を何とか克服して前進させなけばならぬと思っております。そういう点で、特に運輸大臣は政府にあってこの部門を担当しておられるわけですから、業界を大いに鞭撻し、意欲をわかせ、予算もうんと取って、何とか短期間に海運を回復させるために挺身せられるように特に望んでやまないわけであります。  何か質問が横っちょにそれましたが、私が質問しようとしたのは、嵐の中に立っておる海運業界に対しまして緊急措置というものが一つもないことを心配いたしておるのです。商品の輸入の場合におきましては、まだ自由化のあらしを防ぐ防波堤があります。すなわち関税であります。国内産業を守るために、緊急関税の実施、セイフガードの発動等により、ある程度あらしをとめることができます。しかし、海運自由化によってわが国船会社が打撃を受けた場合には、このような緊急措置による救済の道はないと思うが、海運自由化の場合の緊急措置があるのかどうか、それを御説明願いたいと思います。
  117. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 さきに両院を通過いたしました海運再建整備法あるいは利子補給法によってそのあらしを防止し得ることができると事業者も考えておるし、私もさように考えて、さらにそれを強化して海運の力をつけるように努力いたしたいと思います。
  118. 平岡忠次郎

    平岡委員 結論は、商品輸入に対してあります防波堤、緊急関税とかセイフガードの発動というような保護機能に呼応するようなものは海運にはないということですね。
  119. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 病気をなおすのには、とんぷくもあれば栄養をつけてなおすこともあります。私どもは、とんぷくをやるよりも栄養をつけて海運界それ自体を強健にすることがより一そう必要であると考えてやっております。
  120. 平岡忠次郎

    平岡委員 とんぷくを飲んでとん死しないようにひとつ御警戒のほどをお願いいたします。  最後に、私は対共産圏貿易の問題につきまして大平外務大臣の御所見を承りたい。  昨年の十月二十五日付新聞報道によりますと、NATO諸国は共産圏延べ払い輸出について一定のワクを設けて規制する方針を内定し、わが国に対しても協力を要請してきたといわれておりますが、このような事実があったかどうか、まずこの点を外務大臣からお伺いしたい。
  121. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうNATO諸国に動きがあったことは通報を受けて知っておりますけれども、私どもはNATOのメンバーではございません。したがって、そういうことをインフォームされただけです。
  122. 平岡忠次郎

    平岡委員 協力を要請されてきたということではないのですか。
  123. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、NATOのメンバーではございませんから、日本としては独自な立場を堅持いたしております。
  124. 平岡忠次郎

    平岡委員 NATOのメンバーである米国等からその要請があったかどうか。
  125. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう要請はありません。
  126. 平岡忠次郎

    平岡委員 この間たしか横路さんがこの問題で聞いておると思うのです。中共貿易についての延べ払いは今年度三千万ドルに押えたというようなこと、押えたことは事実なんですね。
  127. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、輸銀のほうの資金の一応のもくろみと申しますか、その程度のことでありまして、政府が資金計画を立てて、そうしてこのようにやりなさいというような、そういう指示ではないのでございます。
  128. 平岡忠次郎

    平岡委員 私が尋ねたのは、NATOからメンバーではないのですから直接に要請ということはないというあなたのお答え、これはわかりました。米国を介しての要請があったかどうか。それはあり得るわけですね。NATOということでなしに、NATOのメンバーである米国が日本に、NATOの意向がこういうことだからそれに協力してもらえまいかということは、私はあり得ると思うのです。それに関連して、中共貿易の延べ払いの信用供与につきまして、三十九年度において三千万ドルに決定せざるを得なかったという事情はないかどうかということをお聞きしているわけです。
  129. 大平正芳

    大平国務大臣 それはもう全然別の問題でございまして、御承知のように、対ソ貿易を見ましても、対中共貿易を見ましても、最近の延べ払い信用の供与は相当な程度に伸びていまして、むしろ、これは、自由圏とのバランスから申しましても、野放しにこれをやるわけにもまいらないと私ども思います、貿易政策として。したがいまして、これはLT協定をやる場合に、大体の輸出入計画というようなものをたたいて一応のスケールを検討する場合に、延べ払いはそうむやみにできないということは当然出てくる、日本自体の要請から出てくるということでございまして、アメリカからはNATOで論議されたことをインフォームしてきましたけれども、私のほうはそれで日本にぜひ協力してくれというような要請は受けていないといま言いましたが、そのこととは全然別個に、日本自体の問題といたしまして、共産圏に対する延べ払いは締めぎみでいかないと、いまのままでやっておれば非常に信用供与がオーバーしていくのではないかということをむしろ注意すべき段階に来ておると思っています。
  130. 平岡忠次郎

    平岡委員 では、まあお答えどおりに受け取っておきます。ただし、大平さんに私は去年大蔵委員会でお聞きしたときも、原則的にいつでも引き締め的にしていかなければぐあいが悪いんだ、要するに商売ですから、勘定でもうないというときに無理にやってはいかぬということで答えられた。きょうもそのお答えなんですが、しかしフランスの中共承認をきっかけにして、それから中共それ自身の手元金の不如意の状況から相当いまは抜け出しておるでしょうから、そういう点で、やはり民間ベースの貿易はうんと進めなければならぬというのが客観的な要請だろうと思うのです。  そこで、次にお伺いしたいのは、吉田さんが台湾を訪問されまして、何か約束によって三千万ドルのわくが硬直してしまいやせぬかということをおそれるのですが、この点はどうでしょうか。あなたは引き締め方策でいくんだからというのですから、三千万ドルで余るともこえることはないというふうにお答えになるかもしれませんけれども、客観的には必ずしもそうはいかぬし、弾力的に輸銀のワクは運用していかなければならぬと思うのですが、そういう必要が生じてきた場合、吉田さんの訪台による約束によってその三千万ドルに拘束されやせぬかということを心配しますが、どうですか。
  131. 大平正芳

    大平国務大臣 その前段の答え、ちょっと誤解のないようにお願いしたいのは、延べ払い輸出のこととキャッシュ貿易のことと別でございまして、キャッシュのほうは私ども別に制約していないのでございますが、延べ払い信用ワクは、これはグローバルにできるだけ有効に使わなければいかぬわけでございますから、共産圏に偏重するなんというわけにはいきませんから、そういう一環として、ことしの日ソ貿易交渉におきましても、規模全体はふえたが、全体として日本のほうの輸出超過に持っていくように努力いたしまして、いままでの信用供与の分をできるだけお返し願うように努力しておるわけです。つまり、信用供与を押えるということは、共産圏貿易を押えるという意味じゃないんですね。その点は、平岡さん、賢明なお方ですから、お間違いないようにひとつお願いしたいと思います。  それから、吉田先生の台湾訪問の問題と信用供与の問題とは全然無関係でございます。吉田先生が台湾に行かれたということと、政府関係はないわけでございます。
  132. 平岡忠次郎

    平岡委員 関係があるかないか知らぬですけれども、吉田さんと蒋介石との間の合意点として三つが報道されています。まず、防共体制を進めていくということ、第二点は、日韓交渉を早く進め、妥結しなさいということ、三番目に、延べ払い輸出について、中共向けの延べ払い輸出については、蒋介石が吉田さんに説得されて、まあ商業ベースならやむを得ぬけれどもということを言ったと伝えられておりますが、しかし、その場合でも、日本の輸銀のうしろだてのある貿易については、蒋介石としては必ずしも民間貿易とはみなさないというような、そういう意向を述べられた。吉田さんは、いや、そんなことはあまり心配せぬでも輸銀のワクというものはきまっておるのだからということを答えておられるのですよ。ですから、私は、それに拘束されはせぬかということをあなたにお聞きしておる。
  133. 大平正芳

    大平国務大臣 吉田元総理と蒋介石総統とがお目にかかってどういうお話をされたのか、これはいろいろなお話をされたんだろうと思います。しかし、政府はこういうお話をお願いしたいとお願いしたことはございませんし、吉田元総理が政府のお立場でそういうお話をされたものとも私は了解いたしません。私がいま申し上げておりますのは、延べ払い輸出というものは、輸銀の資金のワクに限度があるわけで、これはグローバルにマキシマムな効果があがるようにいたさなければなりませんし、特定の地域に偏重するわけにはまいらぬという方針で処理してまいるわけでございます。しかし、それはあくまでも延べ払い輸出の問題についてそういう制約があるということでございまして、キャッシュ・デリバリーでございますれば、共産圏といえども貿易は活発におやりいただいてちっとも私は差しつかえないと思っております。
  134. 平岡忠次郎

    平岡委員 では、次の質問をいたします。米国は、先ほど申し上げた昨年十月のNATO会議で、期間五年以上の延べ払い輸出は原則として禁止すべきことを提案しましたが、英国の強い反対にあってたな上げになりました。その後十二月の十三日にワシントンにおいて、米英首脳会談が持たれましたが、会談の後に記者会見でヒューム英国首相は、共産圏貿易では米国と意見が違っていることを認め、英国は貿易をしなければならない、われわれはボイコットの効果を信じないと述べ、さらに、英国は数カ月以内にソ連とも新しい貿易契約を結ぶことは大いにあり得る、これには十二年から十五年の商業借款も含まれようと語ったといわれております。わが国が輸出を伸ばしていくためには、共産圏貿易ももっと積極的に進めていかなければならない。米国に気がねしているうちに英国を初めとする欧州諸国に先を越されるようなことがあっては、大きな痛手を受けるようなことになります。この意味で、五カ年期限設定の賛否に対しては、よほど慎重でなければならぬと思っております。共産圏貿易を進めるための延べ払いが、特に期限問題がOECDの貿易委員会の延べ払い部会で当然討議の焦点となると思いますが、これに対処すべき政府のかまえを明らかにしていただきたいのであります。具体的に英米いずれの立場を是とするつもりか、御所見をお伺いいたします。
  135. 大平正芳

    大平国務大臣 原則的なことは私から申し上げまして、詳細のことは事務当局からお聞き取りいただきたいと思います。  私は、共産圏貿易に対する基本的考え方として、貿易は可能な限り進めてまいるべきだと思っておるのでございます。貿易である以上は、究極においてバランスしなければいかぬと思うのです。何ぼ延べ払い延べ払いといってもむやみにやるわけにいかぬ。いつか回収せねばならぬ問題でございますから。結局、この共産圏貿易の規模をきめる問題は、こちらの輸出能力と共産圏の輸入能力、共産圏の輸出能力とこちらの輸入能力、この四つのファクターできまるわけでございまして、私の見るところ、あなたが御心配になるように、共産圏のほうに延べ払いをどんどんやって、それに究極において見合うところの輸出能力が考えられるかというと、私はそんなに甘い問題ではないと思っております。したがって、可能な限り共産圏貿易を手がたく進めてまいるという方針でいっている現在のわれわれの方針が、共産圏の輸入能力、輸出能力というものとそんなに軒輊があるとは思っておりませんで、現在われわれがとっておる共産圏貿易政策というものは実態に合っておると私は思っております。よそさまの国が大いに大胆な延べ払いをやって日本はおくれを取るじゃないか、——向こうにばく大な輸出能力があれば、あなたが言われるような前提であれば、あなたが言われるような心配がございますけれども、私はそういうことに対してあまりあわてないのです。したがって、現在、延べ払い条件そのものよりは、問題は、先方の輸出能力、こちらの輸入能力というような点のほうに重点がむしろあるのじゃないかというように私は感じ取っておるわけでございます。  五年とかなんとかいうような点につきましては、経済局長のほうから説明させます。
  136. 中山賀博

    ○中山政府委員 NATOの諸国の中で共産圏の延べ払いの話が出たということは聞いております。そのときに五年ということが大体の標準に話されたということも聞いておりますが、英国の反対で話は成立いたしませんでした。わが国といたしましては、一応これは商業ベースでケース・バイ・ケースできめていることでございます。共産圏に対する船、プラントの輸出は五年のものが多うございますが、御案内のように、ソ連に対しては五年以上の船舶クレジットを出したこともございます。これはきわめて例外的な場合でございましたが、全体から見ますと、それでなくとも、やはりソ連の場合を考えてみますと、去年なんかもも先方の対日支払いの中で大体三分の一くらいのものは延べ払いの支払いになっております。もう数年すれば、あるいは場合によっては半々くらいになるのじゃないかと思っております。そういうようなことから考えまして、現状のラインが大体順当なものではないか、かように考えておるわけであります。
  137. 平岡忠次郎

    平岡委員 商売ですから払ってもらわなければ困るということはわかるんですよ。それは向こうに払い得る能力がある場合を前提にしての話ですが、争点は、五カ年の信用供与をもって限度とすべしという米国と、それに限度を置くべきでないという英国の立場が対立したわけですから、日本としては、その場合にどちらの立場を支持するかまえかということを聞いただけです。むろん、その前提条件として、商売にならないというようなことは、これは除外論です。ちゃんと商売になるという前提のもとにおいて、なおかつ限度を五カ年に引かれることがよいかどうか、その点をお聞きしておるのですから、ひとつ明確にお答え願いたい。
  138. 大平正芳

    大平国務大臣 世界の例を見ながら日本としては独自にケース・バイ・ケースにきめてまいります。
  139. 平岡忠次郎

    平岡委員 私が特にこの課題に念を押したゆえんは、去る一月の日米閣僚会議のおりに来朝しましたラスク国務長官の主張から判断いたしまして、対共産圏輸出における延べ払い代金の輸出信用供与の限度を五カ年にすべしとの旧来の米国の主張をこの作業部会で繰り返すために、新入りの日本に片棒をかつがせようとする意図が見えておるからであります。これは中共封じ込めの旧態依然たる米国の時代錯誤として、現在の流動する国際政局にあっては加担すべからざるものと思うがゆえに、政府の考えをこの際明らかにせられたいという趣旨であります。どうぞお答えを願います。
  140. 大平正芳

    大平国務大臣 世界の情勢を見ながら、日本独自の立場でケース・バイ・ケースにきめてまいります。
  141. 平岡忠次郎

    平岡委員 のれんに腕押しですから、きょうはこの程度にとどめておきます。
  142. 赤澤正道

    赤澤委員長 本日はこれにて散会いたします。   午後三時三十九分散会