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1964-02-26 第46回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十六日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 赤澤 正道君    理事 安藤  覺君 理事 椎熊 三郎君    理事 正示啓次郎君 理事 高瀬  傳君    理事 古川 丈吉君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       菊池 義郎君    鯨岡 兵輔君       佐伯 宗義君    竹内 黎一君       野見山清造君    濱地 文平君       福井  勇君    三原 朝雄君       森下 國雄君    黒田 寿男君       田原 春次君    帆足  計君       松井  誠君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         国 務 大 臣 福田 篤泰君  出席政府委員         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 三輪 良雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         外務政務次官  毛利 松平君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎭男君  委員外出席者         専  門  員 豊田  薫君     ――――――――――――― 二月二十二日  委員高碕達之助辞任につき、その補欠として  園田直君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員田原春次辞任につき、その補欠として山  口シヅエ君が議長指名委員に選任された。 同日  山口シヅエ辞任につき、その補欠として田原  春次君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二十一日  大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実  験を禁止する条約締結について承認を求める  の件(条約第三号) 同月二十四日  日ソ平和条約即時締結等に関する請願(安宅  常彦君紹介)(第五五七号)  横田基地にF一〇五D戦闘爆撃機移駐反対に関  する請願中村高一君紹介)(第六六二号)  同(山花秀雄紹介)(第六六三号)  同(長谷川正三紹介)(第八〇五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十四日  日韓漁業協定締結促進等に関する陳情書  (第五三号)  沖繩即時日本返還に関する陳情書  (第五四号)  F一〇五D戦闘爆撃機横田移駐に関する陳情  書(第五五  号)  F一〇五D戦闘爆撃機横田基地移駐反対に関  する陳情書(第  五六号)  同  (第二一六号)  同  (第二一七号)  同(第二一八号)  同(第二一九号)  同  (第二二〇号)  インドネシヤ警察にだ捕された漁船早期釈放  に関する陳情書(  第五七号)  原子力米潜水艦日本寄港及びF一〇五D戦闘  爆撃機配置反対に関する陳情書  (第五八号)  沖縄の施政権返還に関する陳情書  (第五九  号)  同(  第六〇号)  在日朝鮮公民の祖国との往来実現に関する陳情  書  (第六一号)  同  (第六二号)  同  (第六三号)  同(第六四号)  同(  第六五号)  同(第六六号)  同(第六七号)  同(  第六八号)  同外七十件  (第二一  五号)  同(  第二六一号)  北方地域の諸問題解決促進に関する陳情書  (第七〇号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 赤澤正道

    赤澤委員長 これより会議を開きま  す。  本委員会委員でありました高碕達之助君が去る二十四日逝去されました。まことに哀惜の念にたえません。つつしみて哀悼の意を表し、御冥福をお祈りいたします。      ————◇—————
  3. 赤澤正道

    赤澤委員長 国際情勢について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。菊池義郎君。
  4. 菊池義郎

    菊池委員 これは総理にお伺いしたほうが適当かと思いますが、同時に防衛庁長官の御意見も伺っておかなければならぬと思うのであります。  日本政府は絶えず国連中心ということを言っております。それで、日本といたしましても、その国連強化協力せんければならない、これは当然のことでございます。ところが、一番大事な一たん事あるときの警察隊協力することができないようになっているのです。前に、アラブ、イスラエルの紛争のときに、レバノンに派兵しろと国連から要請されて、これに応ずることができなかった。さらにまた、コンゴの紛争のときにも、同じ要請があったにかかわらず、これに応ずることができなかったのであります。これは国連理事国日本といたしましてもまことに遺憾なことでありまして、なさけないと思うのでありますが、長官は、日本憲法改正して正式の軍隊を持ち、——いまの自衛隊をそのまま切りかえてもよろしい。ふやす必要もない。そして国連協力し得る体制を整えることにどういう御意見を持っておられるか、賛成であるか反対であるか、まずそれからお伺いしてみたいのであります。
  5. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 わが国の外交政策の基本的なものとして、国連強化協力というものがその中心であることは、お説のとおりであります。ただ、問題は、自衛隊国連の対外的な活動の場合になぜ協力できないか云々の御質問でございました。過去にもいろいろ論議せられた問題でございますが、海外派兵という点につきましては、現憲法解釈といたしまして、私どもはなし得ないものであるという解釈をとっておるわけであります。ただ、問題は、国連活動につきましては、かりに海外国連警察軍的なものが派遣された場合に、それがどういう動機で設置せられ、その内容がどういうメンバーで構成されておるか、さらにまた、その任務はどういうものであるか、あらゆる観点から検討して慎重に対処すべきものであるというふうに考えておるわけでございます。  憲法改正の問題もございましたが、憲法改正につきましては、総理もしばしば国会におきまして答弁いたしておりますとおりでありまして、近く予想される憲法調査会答申並びにこれに対する世論動向、こういうようなものによって改正問題は決定されるべきものである、こう考えております。
  6. 菊池義郎

    菊池委員 私のお伺いするのは、長官憲法改正賛成反対か、これだけです。
  7. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 ただいま申し上げたとおり、憲法改正の問題は、憲法調査会答申並びに世論動向によることで、私はやはり内閣の構成メンバーでありまして、個人的な意見は差し控えたいと存じます。
  8. 菊池義郎

    菊池委員 世界軍備を持たないのは、アイスランドと、人口わずか一万六千のリヒテンシュタイン、それから日本と、三つですね。われわれは防衛のための軍備なんかはナンセンスであると考えております。十万や二十万、三十万、五十万の軍隊を持ったところで、原爆・水爆のある今日においては、そんなものは鎧袖一触でほうむることができる。何にもならない、ナンセンスであるとすら考えておりますが、国連協力する体制をつくるためには、どうしてもこの憲法改正して、世界各国並み軍備を持たなければならぬという結論になるわけでございます。もちろん、その憲法改正の順序は長官の言われるとおりでありますけれども長官はこの憲法改正して軍備を持つことに賛成かどうか、これをお伺いしてみたいのであります。長官の信念をお伺いしたい。
  9. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 現在の憲法下における自衛隊並びにその存在の問題につきましても、菊池委員よく御案内のとおりで、しばしば本院におきましても論議された問題であります。独立国として固有の権利として持つ自衛権を基礎とした最小限度自衛力を持つことは、これは当然でございます。ただ、問題は、個人的な長官としての憲法改正に対する考え方を述べろというお話でありますが、この点は、個人的な見解は差し控えたいと存じます。
  10. 菊池義郎

    菊池委員 国連警察隊に参加することのできないような国であっては、これは結局においては国連の居そうろう的存在としか考えられないのです。一たん事あるときには国連の世話になる、ところがその反対給付は何もないというのでは、これは世界に対する恥辱だと私は考えております。いままでの国連大使がいつも日本に帰ってはそれを嘆いておるのです。  憲法改正がむずかしいとなりますと、自衛隊法改正するということも考えられる。私は憲法改正論者でもなければ軍備保有論者でもないが、ただ、国連協力ということを考えますというと、何らかの方法でもって日本からも警察隊に参加することのできる仕組みを考えなければならぬと思うのであります。自衛隊法改正すれば海外警察隊を送ることもできるわけでありますが、これについて長官はどういうお考えを持っておられますか。
  11. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 自衛隊が本来の任務以外にいろいろな任務を、自衛隊法改正によって現在まで与えられております。たとえば、第百条の三における国際的規模運動競技、オリンピックの競技でありますとか、あるいは近く考えられます南極探検に対する協力問題、そういうような問題は自衛隊法の一部改正によりましてだんだん法的にも権限が与えられたものであります。ただ、御指摘の、国連海外に派遣せられるであろう国際警察軍に対する協力云々の問題であります。これは、先ほど申し上げましたとおり、海外派兵とのいろいろな関連も出てまいります。警察軍の設置せられた目的・内容その他あらゆる場合をやはり考えまして、これは慎重に検討せらるべきではないか。ただいまのところ、自衛隊法改正して国連警察軍に対する協力をするということは考えておりません。法的には、この国会におきましてもしばしば論議せられたとおり、きわめて厳格な意味における警察的な任務にはいいではないかという議論も成り立つようでありますが、政治論としては、これは非常に慎重に私ども取り組まなければならぬ、こう考えておるわけであります。
  12. 菊池義郎

    菊池委員 さらに、日韓会談の途上において韓国がまだ日本漁船捕獲しております。李ラインは彼らがかってに引っぱったなわ張りでありますが、そのなわ張りの外の公海における漁労に従事する場合においても、彼らは日本漁船をこれまで捕獲しております。これは純然たる海賊行為である。どこの国でも、自分の国の漁船他国との国境海域において漁労に従事するときにおきましては、その国の艦艇を現場に派遣して、他国の妨害を受けないようにその国の漁船を守るのが世界各国常識であり、常套手段となっておるのであります。日本はこれをやらない。これを私は非常にふしぎに思っておる。なぜ李ライン方面海域において日本海上自衛隊艦艇を用いて警備に当たらないのであるか。韓国のほうでは艦艇をもって警備に当たっておる。そうして、島陰に隠れて、日本漁船が来るとそれをつかまえるというようなことをやっておるのです。それに対して日本艦艇を用いないで海上保安庁巡視船をもって巡視させるというやり方なんでありますが、これがどうもわれわれはふしぎでならない。世界各国並み日本艦艇をもって守ったらどうであるか。逃げることばかり教えて守ることを知らぬ、こういうふしぎな国策が一体どこにあるか。私はこれをどうも不満に思っている。これについてお答えを願いたいと思います。
  13. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 李ラインの問題、あるいはマッカーサーライン、あるいは大陸だなその他は、今度の敗戦後に生じました新しい国際法的な大きな問題であろうと存じます。ただ、問題は、御質問のとおりに、なぜ自衛艦が出動してわがほうの漁船を保護しないかという点でありますが、御案内のとおり、韓国側は、いわゆるコ一スト・ガード、警備隊海上警備に当たっておるわけでありまして、私どももこれに相応する海上警備をする海上保安庁巡視船が当たるのが適当ではないか。直ちに、向こう警備隊、いまは内務部所管のようでありますが、それに対抗しまして自衛艦を出させるということは不穏当ではないか、こう考えておるわけであります。
  14. 菊池義郎

    菊池委員 総理は、きのうの予算委員会において、日韓交渉が妥結すれば李ラインは自然に解消するということを言われましたが、李ラインが解消されても、いままでの韓国やり方を見ますと、やはりこの捕獲は続くと思うのであります。それで、この捕獲が続くとなりますと、今後永久に日本漁民はたいへんな苦難に遭遇せんければならぬということになるわけでございます。それで、いままで捕獲された日本漁船は何隻くらいになっておりますか。大体でけっこうです。
  15. 後宮虎郎

    後宮政府委員 現在まで拿捕されました船舶は、損害額にいたしますと、船体、機関装備等だけで十四億円、その他の物的精神的損害までも入れますと、これが七億にのぼるというような算定も一応されております。拿捕されました隻数は、李ラインの設定後今日まで二百二十隻、それにこの間第二十二佐代丸が加わりまして二百二十一隻になるわけでありますが、乗組員の数は約二千六百七十名ということになっております。
  16. 菊池義郎

    菊池委員 私の調べるところによりますと拿捕された漁船が三百十七隻、そのうち返されたのが百十何隻であります。返されたのはみんな役に立たないぼろ船で、いいものはみんな向こうに残されておるわけなんであります。韓国は、大統領の選挙のときにも、選挙工作のためにすらも日本漁船をつかまえておるのです。つまり、自分たち日本に対する威力を示さんがために、そして選挙自分のほうに有利に好転せしめんがために日本漁船をつかまえて、海上保安庁の隊員に銃口を突きつけて連れていく写真までが日本新聞に出ておるのです。これを見るところの青少年、国民はどういう考えを持つか。政府信ずるに足らず、日本国家頼むに足らずとの不信感を起こすのは当然であります。こういう点をよく考えてもらいたいのであります。海上保安庁巡視船が適当であるということを言われましたけれども、どこの国でもみな艦艇をもって保護しておるのです。日本艦艇韓国に比べまして数等まさっておる。装備においても、それから隻数においても断然段違いになっておる。何も戦う必要はない。しかし、にらみはきかさなければならない。向こう警備艇がやってくると、さあ逃げろ逃げろ逃げろ、逃げることばかりで守ることを知らぬ。これじゃどろぼう張り番みたいです。政府みずから日本漁船をどろぼう扱いにしていると同じで、これはけしからぬと思うのであります。何ゆえ艦艇をもってこれを守ることができないのであるか。私ははなはだこれを遺憾に存じ、またふしぎ考えておるのであります。日本の保有する艦艇は今日四百七十隻、十三万五千トン、韓国艦艇は何隻かといいますと七十五隻、五万三千トンにすぎない。しかも、韓国艦艇装備は、これはお話にならない粗末なもので、アメリカのぼろ船を持ってきたものなのです。そういうように、装備においてもトン数においても隻数においても、まるで段違いなんです。これでなぜ韓国警備艇に対してにらみをきかすことができぬか。何ゆえ巡視船を用いるのであるか。そして逃げてばかりおる。国民思想に重大な影響を及ぼす。幾ら総理人つくりを唱えたところで、愛国心高揚をしたところで、こういう記事を新聞で見、それからあんな情けない写真新聞で見せつけられるときに、日本国民はどういう考えを持つか。総理人つくり愛国心高揚も直ちに吹っ飛んでしまう、私はかように考える。韓国警備艇を持ってくるならば、日本もその優秀なる警備艇をもってにらみをきかすことが必要であるが、何ゆえにこれができないか。どうもふしぎでならない。この点についてお答え願いたい。
  17. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 先ほどお答えしたとおりでありまして、韓国は、いわゆるコースト・ガード内務部所管警備隊海上警備に当たっております。われわれとしては、やはり海上警備に当たる海上保安庁巡視船が穏当ではないか。自衛隊は、いろいろな立場から申しましても、私どもはあくまでこれは厳格に解釈する必要がある。同時にまた、近く予想せられます日韓交渉話し合いができますならば、こういうような問題もすべて解決が期待できるわけであります。私どもは、武力解決なり、あるいは武力行使というものは、あくまで厳格に解釈してまいりたいと思います。
  18. 菊池義郎

    菊池委員 艦艇をもって守るということは、何も武力行使を慫慂するわけでもなければ、戦争を予想する必要もないのであります。これによって戦争が起こるなんて考えるのは、国際情勢の片鱗たりともわきまえない古い頭の考え方で、軍事同盟に誓いて日本米国につながり、韓国米国につながっておる。そういう国柄で戦争が起こるなんてことはこんりんざいあり得ない。また、撃ち合いが起こるなんてこと、これもあり得ない。向こう艦艇をもって追っかけてくる。こっちは逃げてばかりおるものだから、向こうはおどかして漁船をつかまえようという考えもって機関銃も撃つでしょう。こちらが優秀なる艦艇をもって臨むならば、向こうはそれにおそれて絶対に手を出しません。機関銃も撃ちませんし、追っかけてくる心配も絶対ないのであります。どこの国においてもみな国境海域において艦艇をもって漁船を守っている。これが常識であり、常套手段である。なぜこういう考え方を変えることができないのであるか。もう一度お伺いしたい。
  19. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いま御指摘の点は、法的に申しますならば自衛隊法八十二条の問題であります。この条文の中にも、「特別の必要がある場合」ということをはっきりと条件として書いております。あくまで私どもは、いまの時代は、武力解決する、ないし紛争武力背景としてこれを解決する考えは古いのではないか、時間がかかりましても、また手数がかかりましても、あくまで話し合いでやるということを考えておるわけであります。お説はよくわかりますが、相手が警備隊コースト・ガードでやっておる以上、私ども海上保安庁で当たらせるのが穏当である。同時に、李ライン自体も国際法的にいろいろむずかしい問題を含んでおります。これは外務省の所管でございましょうが、こういう明確な意見対立がある問題について、直ちに漁船保護のために自衛艦を出すということは適当でないと考えております。
  20. 菊池義郎

    菊池委員 繰り返して言いまするように、決して武力行使なんということは私は絶対に考えておりません。向こう純然たる海賊行為に出ております。李ラインの外において、公海において、日本漁船をとらえておる。こういうものに対してもなおかつこちらは隠忍自重せんければならぬのであるか。日本韓国に対して劣勢な艦艇を持っておるという場合ならば、これはわれわれは容認することもできるのでありまするが、絶対優勢であり、空軍においても日本自衛隊の有する空軍は千六百五十機ある。韓国は三百しかない。空軍においても海軍においてもかくのごとくかけ離れて絶対優勢な防備力を持っておりますところの日本が、なぜそういうふうな海賊行為に対して手も足も出ないという情けない状態を続けているのか。まるでキリストの山上の垂訓のように、人もしなんじの右のほおを打たば左のほおを出せ、上着をはぐならば下着も与えよといったような、そういう理想主義考えにとらわれて、実際の現実の大損害を見のがすのであるか。そして、国民思想に悪影響を及ぼし、全日本漁民を憤激せしむるのであるか。これはどうしても理解に苦しむことである。どうか長官は、艦艇をもってにらみをきかすこと、これを再三再四考慮してもらいたいと思うのであります。これに対してもう一ぺん御答弁を願いたいと思います。
  21. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 海賊行為云々ということは非常に微妙な問題で、李ライン自体が国際法的にまた日韓双方当事国にとりましても意見対立がございまして、そういうことばとして私どもは使いたくございません。ただ、御説のとおり、日本の権益を守る、あるいは平和と安全を守るという点についての自衛隊任務についての御意見、あるいは御激励につきましては、十分参考として承っておきます。
  22. 菊池義郎

    菊池委員 日韓交渉の最中においてそういうことを言ってくれるなという先輩からの意見もありましたが、国会における与党議員意見背景として交渉をやってもらえばやりいいように、われわれは側面擁護援護射撃のつもりでこの話をやっておる。それが理解できぬなどということは、全然政治力も何もない人だと言わなければならない。どうか、将来はこういうことのないように、必ず艦艇をもって守るということに頭を切りかえていただきたいと思うのであります。  それから、もう一つ伺いたいことは、終戦後に日本に残された艦艇がずいぶんありました。四万トン級の伊勢、日向、三万トン級の長門、榛名、二万トン級の天城、葛城、以下三百六十隻、そのうちでもって港をつくるために沈められたのが栃木、矢竹、夕風、潮風ほか二十二隻、まだ相当残っておるはずでありますが、これは一体どう使われているか。商船にでもつくりかえられておるのかどうか、どういうふうになっておりますか、それを参考に伺っておきたいと思う。
  23. 海原治

    海原政府委員 終戦当時日本海軍が持っておりました艦艇は、ただいま先生御指摘のように、いろいろな方面に分散いたしました。先ほどからお話が出ております韓国に行ったのもございましょうし、国府に参ったのもございます。現在海上自衛隊の手には、当時の駆逐艦一隻だけが引き揚げられまして、これを改装してて保有いたしておりますが、これ以外には旧海軍駆逐艦級以上のものは持っておりません。  なお、小型の艦艇につきましては、終戦直後にそれぞれ、先ほど申しました軍艦の処分と同様に、たとえば交通船とか雑船とかに利用できますものは関係国の間で処分されたと聞いておりますが、それにつきましては、ただいま資料を持ち合わせておりません。
  24. 菊池義郎

    菊池委員 それから、自衛隊応募者がだんだん減っておるということをわれわれ心配しておりますが、最近の応募状況はどんなものでございましょうか。
  25. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 これは充足率の問題になりますが、大体菊池委員も御承知と存じますが、海上自衛隊航空自衛隊はそれぞれ九割以上、いい成績をおさめておりますが、陸上自衛隊のほうは、素質を問わないで人数さえそろえればいいならば非常に簡単でございますが、勤務意欲も高い、素質のいい者を選ぶとなりますと、なかなか困難であります。これは、いろいろな当時の経済状況あるいは各種のむずかしい条件がありまして、なかなかむずかしいのでありますが、この点は、来年度三十九年度は八四%という率を要求し、御審議を願うことになっております。大体目標の二万五百人は、補充できるという考えを持っております。ただ、問題は、英国あたりにしましても、日本地方連絡部に匹敵する募兵の事務所が、あの狭い本土の中で二百四十もあって、日夜熱心に募集の業務に従事しております。日本ではわずか七十ぐらいの地方連絡部があるだけであります。こういう機構なり、あらゆる努力につきましては、まだまだ改善する余地がある。陸上につきましては相当困難な問題があるわけであります。
  26. 菊池義郎

    菊池委員 自衛隊の飛行機がだいぶたびたび落ちますが、あれは応募者に対してだいぶ恐怖心を与えるのじゃないかと思うのですが、飛行士になるのは命令でなるのですか、あるいはまた志願制度になっていますか。
  27. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 航空自衛隊事故率の問題でありますが、これは、よく落ちるという御指摘がありますが、そうではございません。国際水準から申しますと決して悪い率ではないのでありますが、しかし、私どもとしては、一回でもそういうことをしたくない。いろいろ世上論ぜられる104ジェット機にいたしましても、創設以来、大事故は一件のみであります。あとはきわめて微々たる事故が四件、合計五件であります。大体ドイツ並みであります。  また、パイロットにつきましても、もちろん志願制でありまして、これも二月一日現在では六百六十六名。パイロットを擁している。しかも、そのうち五百時間以上の経験を持つ者が五百人をこしておるという、国際的に見ましても相当優秀な数字を示しております。
  28. 菊池義郎

    菊池委員 それから、もう一つ、中共の核武装について長官はどういう考えを持っておられますか。
  29. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 核武装となりますと、これは、各国のいままでの先例を見ますと、相当長年月を要するというのが専門家の観測であります。たとえば、英国なんかでも十年、原子炉が発動いたしましてから装備するまで七年かかっている。フランスが十三年、そうしますると、いまいろいろ言われている中共がそのうちに核爆発を行なうだろうという報道がありますが、たとえこれに成功いたしましても、ソ連の技術援助打ち切りもありますし、いろいろな条件を見て、数年の相当長い年月を要する、こう考えております。
  30. 菊池義郎

    菊池委員 終わります。
  31. 赤澤正道

    赤澤委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  32. 赤澤正道

    赤澤委員長 速記を始めて。  松井誠君。
  33. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、現在の国際情勢の一つの焦点であるいわゆる南北問題、先進国と後進国との関係、この南北問題について基本的な政府考え方をお尋ねいたしたいと思います。  御承知のように、来月の下旬から国連の貿易開発会議が開かれる。これは、国連に加盟してない国の参加も含めて約百二十カ国、史上最大の国際会議がこの南北問題の一つの焦点である貿易という問題を中心にして開かれようとしておるわけです。このこと自体が明らかに示しておりますように、いわゆる南北問題というのは最近の非常に大きな一つの問題になりつつあるわけです。一九五九年にあるイギリスの銀行家が言ったといわれる南北問題あるいは南北関係ということばが世界の一種の流行語になりまして、一九六一年の十六回国連総会では、ケネディの提唱によって、一九六〇年代は国連開発の十年だというスローガンができてきた。特に、ことしに入りまして、年の初めごろの情勢では、いわゆる東西問題というのが米ソの接近から一応冷静に返ったという観点もあって、ことしは南北問題の年だといわれたわけです。それで、ことしのいろんな雑誌なんかも、正月号は南北問題というものを正面から取り上げる、そういう機運になってまいりました。その後、この南北問題の比重というのは、ドゴールの投じた一石によってまた東西問題のほうにいま重点が行っておりますけれども、しかし、それにしても、やはりこの南北問題の重要性というものは依然として大きいわけです。  そこで、最初に大臣にお伺いをいたしておきたいと思いますけれども、最近急にこの六〇年代になってから新しく脚光を浴びるようになった南北問題、これは一体どういう原因で何が機縁になってそのようなフットライトを浴びるようになったのだろうか、そういうことについての御見解をお伺いをいたしたいと思います。
  34. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、ただいまの世界の最大の問題の一つが南北の間の問題であることは、松井さんのおっしゃるとおりと私ども心得ます。  なぜこれが問題になったかということでございますが、南北間の問題の解決とまでいかなくても、その間におのずからなる調整が行なわれてまいらなければ、世界の安定した平和というもの、そして安定した繁栄というものを所期できない、平和の経済的、政治的な基盤というものはこの問題の解決が一大要件であるという認識が一つ根本的に横たわっておると思うのでございます。  それから、第二点として、私ども考えられますのは、御承知のように、国連がいま百十三国もの加盟を擁した世界的な空前の機構にまで発展してまいりましたが、その加盟国の大半がいまなお低い経済開発の水準にあるということ、したがって、国連世界平和維持の一環として担当すべき問題の焦点として南北問題を取り上げていくという機運がわいてまいったということが考えられると思うのでございます。  第三点として、戦後の最近の世界貿易の状況を観察しておりますと、松井先生も御案内のように、先進国相互の貿易の拡大はきわめて顕著な速度で見られるわけでございますけれども、先進国と、俗に言う低開発国との間の貿易、さらには低開発国同士の間の貿易の拡大が思うにまかせないという状況でありますことも数字が示すところでございまして、格差というものの縮小の方向より、むしろそういう意味で拡大の傾向さえ見られるじゃないかということに対する反省がこの問題を取り上げさしておる大きな要因であるという感じがいたします。
  35. 松井誠

    ○松井(誠)委員 いま大臣が言われたように、南北の間の格差が拡大をする、低開発国の世界全体に占める輸出の割合というものが相対的に減退をしてくる、そういうことから、南北の格差をもっと縮めようじゃないか、それが世界の平和のためでもあるという認識が一般化してきたということも確かに大きな原因であると思いますけれども、そのほかに、私はやはり、南北問題といいますと、いわゆる援助だとか、あるいは貿易だとかいう主として経済的な側面が強調をされる傾きがあり過ぎると思いますけれども、たとえば、最近急に南北問題というのがクローズ・アップされるようになった一つの大きな原因というのは、いわゆる東西援助競争という名前であらわれておるように、冷戦ということばで言われる東西の対立関係が、いわゆる南北問題という形になってあらわれてきた、つまり、社会主義国が共産低開発国の援助に積極的に乗り出した、そこで、それに対する政治的ないろいろな必要から、資本主義の国のほうでも低開発国の援助なり貿易なりというものをさらに真剣に考えなければならなくなったという、言ってみれば、東西問題の一つの焦点、東西問題に触発された南北問題、そういう意味では政治的な側面というものが無視できない比重を持っておるのじゃないか、このように考えるのですけれども、いかがですか。
  36. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう事実を私は否定いたしませんが、同時に、そのことは、東の陣営と言わず、西の陣営と言わず、南北問題に関心を持ち、援助を互いに競い合うというような傾向はむしろ歓迎すべきことでございまして、いままでの援助の実績から見まして、むしろ西の陣営のほうが大部分を占めているというような状況でありますが、これがさらに共産圏のほうも援助に積極的になってまいられることは、私は望ましいことだと思うのでございます。単なる宣伝という問題ではなく、実質的に南北の格差の解消ということにつきまして、進んだ国がおくれた国に対してのことを考えるという意味におきまして、援助の拡大充実という方向にいま燃えておりますことは、御指摘のとおりでございます。そのことは非常に歓迎すべきことだと思います。
  37. 松井誠

    ○松井(誠)委員 もともと、南北問題というのは、この地球から飢餓と貧困をなくしよう、格差を縮小することによって世界の平和というものを確保しよう、そういう一種の理想から出ているにもかかわらず、実はその中に東西問題というのがからまってくるために、援助にしろ、貿易にしろ、いろいろな隘路ができてくるのではないか。その隘路を打開するためには、やはり、現在クローズアップされるようになった一番大きな原因だと思いますけれども、東西問題というものを切り離すような形でやらなければ本来の目的が達せられないのではないか。元来平和を目ざした南北間の調整ということでありながら、実は東西間のブロック化を強めるということになったのでは、目的そのものと矛盾をする。このことは私はこれから具体的にお尋ねをしたいと思うのです。そういう意味で、南北問題というのは、現在では残念ながら東西問題の一つの派生した形のようになっているけれども、しかし、そのままでは本来の目的は達せられないのではないかという観点からお尋ねをしたいわけです。  援助と貿易との二つに分けてお尋ねをいたしますけれども、最初に具体的に日本の立場に立って、日本の低開発国に対する援助の基本的な方針を伺いたいのでありますが、基本的な方針というとちょっと抽象的にすぎますけれども、たとえば、いままでの後進国援助、低開発国援助というのは、いわゆる後進国のためというよりも、援助をする国の立場というのが非常に意識され過ぎた。したがって、低開発国をいつまでも農業国としてのワクの中に押しとどめておいて、そして安い一次産品の輸入をして、高い製品を援助国からは輸出をして、そして低開発国の犠牲において先進国が栄えるという形が見られましたが、これではもういけないと思う。ほんとうに、援助国の立場でなしに、被援助国の立場に立って考えるという、そういう基本的な方向、つまり、被援助国の工業化を進めるということに基本的な目標を置いて、そうすることによって低開発国の経済成長を高めていくという、そういう基本的な立場は、もう世界の大勢として持たざるを得ないと思いますけれども、たとえばそういうことについてはどういう方針ですか。
  38. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私も全く同感でございまして、被援助国の主体的な立場、意図、事情、またそれから編み出した計画というものに対して、できるだけ親切であらねばならぬと思います。ただ、わが国の、こういう限定した御質問でございましたので申し上げますが、わが国といたしましては、御承知のように、戦後の広い意味の経済援助というものは、賠償を槓杆として行なわれてまいった。これは選択の余地のない一つの支払い義務として行なわれたわけでございます。したがって、いま松井さんが提起された問題は、賠償という仕事がいま支払いの過程にございますが、やがてこれもだんだん減ってまいる方向にあるわけでございまして、経済協力一般の問題として、日本として本格的に将来取っ組まなければならぬ問題になってくると思うのでございます。その経済協力一般のやり方といたしましては、いまあなたが御指摘のように、被援助国の立場と意思というものを十分考えて差し上げるということが基本でなければならぬと思うのでございます。  同時に、わが国の生産力系列は、御承知のように、最近非常な伸びを見せておるわけでございまして、これが、国内の消費であり、あるいは輸出であり、あるいは政府の需要であるというようなアイテムで消費されるばかりでなく、さらに一つの経済協力という分野においてこの拡大された生産力が活用されてまいるということも、当然われわれは勘定に入れて考えなければならぬと思うのでございまして、それは、あくまでも、政治的意図とか軍事的意図とかいうようなものでなく、被援助国、被協力国の立場というものに対して非常に親切な心情を持って当たるべきものであり、また、そのように現実にも進めてまいらなければならぬと思います。
  39. 松井誠

    ○松井(誠)委員 低開発国援助に政治的な意図というものは持つべきではないというお話でありますけれども、昨年のちょうど総選挙が始まって間もなくのころに報道されたところによりますと、外務省では、そのあとで開かれた日米貿易経済合同会議、それの準備の一つとして、日本の後進国援助についての基本方針をきめたということが報道されておりますけれども、この点はどういう基本的な方針をおきめになったのか、まず伺いたいと思います。
  40. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それはどの事実をさして言われておるのか、私にはにわかに思い出せないのでございますけれども、基本的方針を外務省はきめたというのでございますけれども、どういう事実をさしていま御質問になったのか、念のために言っていただければと思います。
  41. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それでは、ことしの春初めに開かれた日米合同会議で、日本の立場からの南北問題、日本としての低開発国援助というものについてアメリカとの間に議論があったかどうか、その点をお伺いします。
  42. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカの援助政策の説明があり、日本の援助政策の説明をかわしたことは事実でございます。それで、両方で問題になりましたことは、一つの援助協力という問題でございます。すなわち、アメリカの援助と日本の援助が競合するというケースが事実問題としてところどころ出てきております。これはいわば一つのプロジェクトについてでありますが、これは、アメリカばかりでなく、世界各国いろいろな国と日本との経済協力の競合という問題はあるわけでございますが、対米関係ででもそういう事例が皆無ではございません。したがって、私どもが主張いたしましたのは、一つのプロジェクトがある場合に、技術から申しましても、またコストから申しましても、これは被援助国の立場から考えますと、アメリカがやったほうがいいという場合、それからわが国がやったほうがいいという場合、これはプロジェクト単位でそういうこともあり得るが、一つのプロジェクトを分解して、その中で、アメリカが担当したほうがその被援助国の場合には負担が軽くなるのじゃないかという場合もあれば、日本がやったほうがいいのじゃないかというケースもある。したがって、これから援助政策を実行していく場合には、被援助国の再建というたてまえから考えますと、そこは親切に考えて、先方の不当な負担にならないように、おのおの得意とする方面を生かすということをひとつお互いに考えてみようじゃないかという点を申し上げたのでございます。  それからこれは今度の委員会では問題になりませんでしたが、去年の委員会、一昨年の末行なわれた委員会でも私どもが申し上げたのは、つまり、援助資金の調達という面におきましては、巨大な資本市場を持ち財政力を持った国と、日本のようにそう十分でない国とがございますので、したがって、プロジェクトで、たとえば非常に長期にわたる道路とか港湾とか鉄道とかいうものは相当たくさんの金がかかりまするし、あるいは収益性も乏しいというようなものもありますけれども、また比較的資本効率の高いものも考えられる。したがって、援助資金の原資の調達コストというものを考えてみると、日本とアメリカを比べると、資本市場が未熟のために日本のほうがずっと高くなっておる。そういう場合はおのずから一つの分業が考えられやしないか。これは長い間の課題の問題であり、いまから大いに勉強しなければならぬ問題ですけれども考え方としてはそういうことが考えられやしないかというような問題も提起いたしておるわけでございます。どの国にやるべきである、どの国にやらざるべきである、やらないほうがいいとか、そんな議論は一切私どもの間ではございません。
  43. 松井誠

    ○松井(誠)委員 援助を受ける国の名前が出なかったという話ですけれども、それでは、日本とアメリカとの援助が競合をする、そういう部面の多い国というのは大体どこですか。
  44. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私が頭に置いてお話し申し上げたのは、韓国などにそういう実例がいままでありましたことは事実でございます。その他の国で競合があったというようなことは、私、あまり聞いていません。
  45. 松井誠

    ○松井(誠)委員 台湾やフィリッピンなんかもそうじゃありませんか。国府とフィリピン。
  46. 大平正芳

    ○大平国務大臣 台湾、フィリピンでは、私はそういう事例は伺っておりませんが、なお調べてみます。
  47. 松井誠

    ○松井(誠)委員 先ほど、その合同会議に臨む外務省の方針というものを大臣お忘れになったようでありますけれども、去年の十一月三日の毎日新聞に出ておる内容によると、この低開発国援助は、これからは韓国と国府とフィリピンとインドネシア、この四つに集中的に援助をするという方針を外務省を中心にして検討した結果きめて、それを合同会議に持って出るというように報道されておりますけれども、この点は御記憶ございませんか。
  48. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうことをきめたこともございませんし、そのように考えてもおりません。
  49. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その新聞の記事によりますと、この四つの国をあげたということは、インドネシアは別としましてこれを一読して感ずることは、何かNEATOということをすぐ連想するわけです。あるいはまた、先ほど話が出ませんでしたけれども、南北の問題というのが大きくなった一つの原因は、アメリカのドル防衛の必要ということから、後進国援助の肩がわりをアメリカが求め出したということもその原因に言われておりますけれども、そういうものを考え合わせてみて、この四つの国に集中をするということ、しかもアメリカとの合同会議にそれを持ち出す、これは一面から見れば首尾一貫をしたきわめてあり得る決定だと思うのですけれども、重ねてお伺いしますが、そういうようにおきめになったことはございませんか。
  50. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうようにきめたこともございませんし、また、私がいま申しましたように、そういう考えも毛頭ありません。
  51. 松井誠

    ○松井(誠)委員 これは、もっと具体的な方針を、この内容によれば書いておるわけです。つまり、いままでは輸出の振興というような経済的な目的を主にして低開発国の援助というものを考えてきたけれども、むしろこれからはこういう国との政治的な結束をかためる、そのために低開発国の援助をしようという、いわば日本の南北問題についての一つの転換だという、そういう注釈までついておるわけです。これでもやはりこういうことは全然ございませんでしたか。
  52. 大平正芳

    ○大平国務大臣 新聞社の作文に対しては、私は答える義務がありません。何かそこに私の談話とか、私が責任を持つ発言があるのなら問題にしていただきたいと思いますけれども、そういうことをやっておったのではもう限りがございませんで、私がここで責任を持って御答弁申し上げておるように、私どもは、そういう方針をきめたこともなければ、そういう考えもないわけでございますから、私のこの国会における答弁を御信頼いただきたいと思います。
  53. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それでは、新聞の記事は全くの事実無根だという、そういうことになるわけですが、一体、この合同会議で話し合われた内容でありますけれども、具体的な国の名前は出なかった、しかし、アメリカとの援助の競合の点については、言うならば過当競争を排除しようじゃないかというのが一つの点であったというのですが、これは、たとえばインドやパキスタンに対するコンソーシアムというのですか、ああいう形のものでもお考えになっておるのか、あるいは日本とアメリカとだけの調整というような方式でいこうとされるのですか。
  54. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは、インドやパキスタンのように、コンソーシアム方式でやっておる国もあれば、バイラテラルでいく国もあるわけであります。私どもが申し上げているのは、被援助国の立場になってみれば、コストの高い設備を抱えるということは、これは相ならぬことでございますから、そこはもっとくふうのしようがあるのじゃないかというまじめな議論をしておるわけであります。先ほど申し上げましたように、どこの国に対してはこういう加減でやるが、どこの国に対してはこうやるというような、そんな政治的な配慮を両国で話し合うというようなことは全然いたしておりません。また、そういう意図も全然ございません。
  55. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は必ずしも政治的な意図ということで問題にしているわけではない。これだけ話が出て、具体的にどこの国に対してはどうする、どこの国は一体どれだけ競合しているのか、それに対してアメリカはどうする、日本はどうする、そこまで全然話の出ない単なる茶飲み話でこれが終わるはずはないと思う。ですから、この低開発国援助の方針について、いま言ったような程度のことしかなかったのか、もう少し何か具体的な合意に達したのか、あるいは具体的な話題が出たことさえもないのか、その辺をもう一度お伺いしたい。
  56. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは合同委員会の性格がしからしむるところでございまして、これはそういう援助問題が出たときにお互いに頭にあることを話し合っておくということでございまして、それをどう具現してまいるかということ、これは、たとえば大使間レベルで相談したりする場があるわけでございます。問題は、合同委員会の限られた時間の中で、いまあなたが言われたように国別のプロジェクト別の精細なる検討をする時間はとうていございません。問題は、こういう考え方はどうだ、こういう考え方はどうだということでお互いにフランクに話し合うので、そこで合意に達するとかあるいはそこで申し合わせをするとか、そういうことは、この会議ではもともとそういう性格を持たしていないのです。そういうことを持たしたのではぎこちなくなりまして、所期の成果が得られぬと思いますので、フランクな討議のもとにおいてやるということ、それを受けて、これは外交チャンネルを通じまして実行上配慮していくことになるという性格のものでございますから、そのように御了承願いたいと思います。
  57. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それでは、先ほど大臣のお話ですと、アメリカと競合する国として大臣が考えておられたのは実は韓国ということが頭にあったというお話でしたけれども、大臣の考えでは、この韓国に対する経済援助というものについて、日本とアメリカの役割りについてどのようにお考えになっておるのか。およそのプランというものはお持ちじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
  58. 大平正芳

    ○大平国務大臣 韓国についての競合ということではないのです。一つのプロジェクトについてそういう問題があったということを私は申し上げているわけでございます。韓国についてアメリカはこういうことをやる、日本はこういうことをやるなんという分野協定をやっているわけではないのでございます。これは経済協力でございますので、民間の方々がお互いに話し合って成約をしていく性質のものでございまして、政府があらかじめ援助計画のプログラムをきめて、それを発表して、そして民間はそのラインに沿ってやる、そういう性格のものではないということを御了承いただきたいと思います。
  59. 松井誠

    ○松井(誠)委員 先ほどのお話では、とにかくアメリカと援助が競合をしている具体的な例として韓国というものが頭にあった、そして、そういう援助が競合をする場合にはうまくないから、アメリカとの間には何がしか調整をしようという、そういう意図を会議で表明をされたという。だから、当然、具体的な話が出たか出ないかは別として、そして韓国の具体的なプロジェクト、具体的なプログラムがどうであるかということは別にして、大よそアメリカと日本との韓国援助に対する役割りの調整というものぐらいは考えておられたに違いない。ですから、そういう点についてお聞きしているのです。
  60. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうことはやっていないわけでございまして、 つまり、私が申し上げたのは、一つのプロジェクトをやる場合、これは必ずしもアメリカばかりじゃなく、どこの国とでも、一つのプロジェクトを一つの国が全部取ってしまうということが経済的かどうか、被援助国のためになるかならぬかという問題なのでございまして、それはお互いに長所を生かして協力してやれば、もっとコストが安くつくじゃないかというくふうもあるじゃないかという一般論を申し上げて、そういうくふうを現実の場合もっと考えたらどうだという意味の提言をいたしておるということでございます。つまり、国別、プロジェクト別に一つの役割りを考えろ、そういうあなたがいま描かれているようなものじゃないので、これは、どこの地域であろうと、どういうプロジェクトであろうと、くふうのしかたはこういうくふうのしかたがあろうものじゃないか、こういう提言なんでございます。そのようにすなおにおとりいただけばいいわけです。
  61. 松井誠

    ○松井(誠)委員 どうも肝心な点になるとナマズ問答みたいになってしまって、私は聞いていてもよくわからないのです。しかし、ともかく具体的に出てきた話がどんなに抽象的なものであろうと、その背後には自分自身は何がしかの具体的なイメージというものを持っておられるはずだ。それを私はお聞きしている。具体的に話題になったかどうかということじゃない。この点重ねてお尋ねします。
  62. 大平正芳

    ○大平国務大臣 案ずるに、あなたの頭の中には、つまり、アメリカはドル防衛の必要上軍事援助、経済援助はセーブしていかなければならぬという姿勢である、したがって、その肩がわりを日本政府は要請されておるんじゃなかろうかという、よく私どもも耳にする一つの認識があるのではなかろうかと思うのでございますけれども、これは、申し上げるまでもなく、アメリカは軍事援助や経済援助を三十億ドルも四十億ドルもするということによって、自分の国際収支上の赤字をここ数年間経験してきた。したがって、ドルは防衛せねばならぬ、セーブせねばならぬ、これはアメリカの国策として当然だれが局に立ちましてもそういうことは考えられたと思うのです。しからば、わが国が経済援助をやるということは、これはわが国がわが国の国策上わが国の経済能力・財政能力をはかりながらわが国が考えることでございまして、アメリカの経済援助が多くなっても、——少なくなるとか多くなるとかいうことと関係ないことなんでございまして、何か荷物を背負ってきたんではないかという先入観があるとすれば、それは松井さんの頭の中から取り去っていただきたいとぼくは思うのです。そういうことは全然ないということでございます。  私どもは、先ほど申しましたように、日本はいままで賠償を軸として経済協力を進めてきましたが、これから本格的にだんだんと賠償ばかりでなく経済協力というものを進めてまいらなければならぬ段階に来ておるということでございまして、その場合は、いままでの実績もごらんになっておわかりのように、インド、パキスタン、インドネシア、ビルマその他とやってきておるわけでございまして、私どもが特殊な政治的意図を持ってやっておるかどうかということは、もう実績から私は御理解いただけると思うのでございます。日本は政治的な意図でこの経済協力をひん曲げたりなんかする意図はないわけでございます。  私どもといたしましては、アジアにおきまして最も近接な友だち、親切な友だちでありたいということを考えておるのでございまして、先方の国の政治体制というようなことのいかんによってわれわれの援助の色合いをいろいろつけてまいるというようなことでなくて、いままでもやってまいりましたし、今後もすなおにやっていくつもりでおるわけでございますので、その点は日本政府のやってまいりますことに御信頼をいただきたいと思います。
  63. 松井誠

    ○松井(誠)委員 大臣はしきりに後進国援助が政治性を持っていないのだということを強調される。先般永末委員からの質問にも、相手が、——これはアメリカのという意味らしいですけれども、同盟国であろうと非同盟国であろうと、そういうことには一切かかわりがないんだという御答弁をされた。しかし、その援助を受ける国が、民間企業というものがまだあまり発達をしていない。主として経済援助というのは政府に対する援助になるという国がずいぶん多いだろうと思う。そうしますと、結局、その政府に対する援助、政府間ベースの援助という場合が多いと思いますけれども、そうなりますと、その政府の性格というものとどうしても不可分の関係になってくるのではないですか。政経分離ということを盛んに池田内閣は言われますけれども、しかし、後進国の援助については、どうしても政経を分離できない。経済の未発達の国に対する援助は、いやでもおうでも政経不可分の場合が多いのではないですか。そうしますと、政治的な、少なくとも結果的にはその政府を援助する、その政府の政治的な経済的な基礎を固めるという結果になるということはあり得る、これはお認めになりますね。
  64. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ちょうど日本のような政治経済体制を持っておる相手国でありますならば事柄は簡単でございますけれども、あなたが御指摘のように、政府を相手にしなければできない場合があるし、民間の側がそう成長していない国が多いわけでございますから、自然政府を相手にしなければならぬケースが多いと私は思うのでございます。しかし、私の申し上げておるのは、その政治体制をどうきめるかという問題は、その国の主権の問題でございまして、日本政府がとやかく言うべき問題ではないわけでございまして、私どもは、アジアの先進国といわれる国といたしまして、あらゆる国々から信頼を受け、親近感を持った国としてありたいという念願をいたしておるわけでございます。したがって、政治体制を異にする国だから差別をするというような頭で経済協力をやっているのではございませんということを私は申し上げて、いままでの実績から御判断いただきましてもそれは御理解いただけることじゃございませんか、こう申し上げておるわけです。
  65. 松井誠

    ○松井(誠)委員 しかし、これは主として賠償でありましたけれども、例の南ベトナムの問題を考えてみると、相手の政府が何ものであれそれはかまわないんだという考え方が、私はどうかと思うのです。御承知のように、最近アメリカの中では北ベトナムに進攻しようという冒険主義がまた出てきておるようです。そういう結果、あるいは南ベトナムそのものが雲散霧消してしまうということにもなりかねない。ですから、相手の国の政治体制、その体制に干渉をするというのではなくて、しかし、そうかといって、その政府がどういう政府として成長していくのかという、そのことを考慮の外に置いて援助をするということが正しい方法だとは私は考えられない。ベトナムにせっかく賠償したものがいま全く役に立たなくなったという、そのこと自体を考えてみても、これは援助じゃないにしても、あなたがさつき言われたように、いままの援助というのは実は賠償という形で経済協力をやってきた、その経済協力政府の性格というものを考えなかった一つの失敗が南ベトナムに出ているのじゃないですか。そう考えると、やはり、政府に対する援助ということについては、その政府の性格というものを考えるということが当然じゃないですか。
  66. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは、何事をやるにも、相手国の事情を十分調べてやらなければならぬことは、もう当然の大前提であるわけでございます。私が申し上げておるのは、政治体制によって、体制上の相違があるからということで援助を曲げるというようなことはしないということを申し上げておるわけでございます。もとより、御指摘のように、事柄をなす場合に、その国の事情につきまして、政治、経済の状況につきましては可能な限りわれわれも承知の上でやらなければならぬことは当然でございます。
  67. 松井誠

    ○松井(誠)委員 これはまたいずれOECDの審議のときにお尋ねをいたしたいと思いますけれども、OECD諸国の援助の方式というのは、ほとんど全部が、二国間方式といいますか、そういうものになっておる。そして、現に、そういうOECD諸国の援助は、集中的に、アジア、その次にアフリカ、中南米という順序。なぜそういう援助がアジアに集中されておるか。これは、OECD諸国だけでなしに、社会主義国の援助もアジアに集中されておりますけれども、これは援助というものの政治的な性格をおのずとあらわしておるというように私は考えざるを得ないと思う。で、こういう二国間方式というものが、どうしても、冒頭に申し上げましたように、東西の援助競争、それを遂行するいわば手段、冷戦の道具というものになってくる危険性、むしろ必然性を持っておるのじゃないですか。大臣はさっきから政治性を排除しようと思って大わらわのようですけれども、現実はちっともそうじゃなくて、逆じゃないかと私は思うのですけれども、この点についていかがにお考えですか。
  68. 大平正芳

    ○大平国務大臣 DACという仕組みを通じてコンソーシアムの形でやっておる例もありますし、バイラテラルの形で援助が行なわれておる場合もあります。しかし、どういう形でどういう国から援助を受けるかということは、被援助国がきめることでございまして、援助国と被援助国がバイラテラルな形で、どういう意図でどのような援助を、どういう規模、どういう時期、どういう条件において受けるかということは、その国々がきめることだと思うのでございます。ただ、わが国といたしましては、いま私が申し上げましたような心がまえでやっておりますということでございます。世界一般の援助を分析いたしまして、これにはこういう傾向があるじゃないかというアカデミックな分析は別にいたしまして、わが国の政策はどうだと聞かれますので、私のほうはそういう考え方でやっております。こうお答えしておるわけです。
  69. 松井誠

    ○松井(誠)委員 何もアカデミックな分析でも何でもなくて、これは常識でしょう。つまり、二国間援助の方式というのはどうしてもひもつきになる。むしろひもつきにするために二国間援助という方式を採用しておる。そうして、それがいわば東西問題の延長としての南北問題という形を出してきておる。ですから、私がお伺いしたいのは、この援助の方式として、被援助国の意思ばもちろん大事ですが、しかし、被援助国もひもつきの援助というものをきらっておることは間違いないことで、そのひもつきの援助を断ち切るためには、やはり、東西を含めた国連を舞台にして、その機構を通しての援助という方式が、本来の南北問題の出発から考えればあるべき援助の方式だと思うのですけれども、御見解はいかがですか。
  70. 大平正芳

    ○大平国務大臣 被援助国がどういう国からどういう条件で援助を受けるかということについて、日本政府として一々干渉する意思はありません。ただ、あなたが言われたように、国連が問題を取り上げたほうがフェアじゃないかという。その取り上げ方の問題として、それは私は十分考えられることであり、現に国連が取り上げておるわけでございます。それで、私ども国連の開発計画の推進にはできるだけ協力していこうという態勢をとっておるわけです。
  71. 松井誠

    ○松井(誠)委員 国連を通す援助といっても、現実に国連を通す援助というのは技術援助みたいなものが主で、ほんとうの実質的な援助といいますか、大部分の援助というのは、いわゆる二国間方式というような形式でやられておる。そこで、たとえば国連の資本開発基金というような構想がある。国連自体が援助資金というものをプールをして、国連を通して援助をしようという具体的な案がある。これについてはそれでは大臣はどのようにお考えですか。
  72. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは、どういうもくろみがございましても、それに対してミートするだけのファンドが調達できなければ画餅に帰するわけでございます。したがって、ファンドを供出し得る能力を持った国々の協力を待たなければならぬと思うのでございます。その場合に考えておかなければならぬことは、開発援助基金というようなものが、各国の協力を得てそれが有効に働くということは、もしできればそれは私はけっこうなことだと思うのでございますが、問題は、後進国の開発を促進するということが与えられた命題でございますから、それに対して実行可能な、与えられた条件のもとにおいてより有効な手段がほかにあるかないかという検討があわせて行なわれなければならぬと思うのでございます。したがって、後進国開発の問題は、あなたが冒頭に申しましたように、貿易の問題と援助の問題と二つあるわけでございまして、何といってもこの貿易の振興拡大というものをはかってまいることを本格的に進めていかなければならぬし、それを補完するものとして、やはり援助という問題が出てくるわけでございます。したがって、そういうほんとうの目的に対して目的的な対策が同時に行なわれないと、いま御質問の開発援助基金というものがどうだという問題の提起のしかたに対しましては、いろいろ留保をつけてお答えをするよりないと思うのでございます。いままで御承知のようにバイラテラルな形あるいはDACを通じての形のほうが非常に多いわけでありますが、しかし、世銀とか第二世銀とか、国連の専門機関として低開発国の援助にあたっておることは御承知のとおりでございまして、その比重は年とともに増しつつある。まだ支配的な金融機関にはなっていませんけれども、しかし、だんだんと比重は増しつつあるというのが現状で、これはわれわれを勇気づけるに十分だと思いますけれども、こういう問題ばかりではいけないということをあわせて私は考えなければならぬと思います。
  73. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この国連の開発基金という構想は、現に二十五カ国ですが、そういうものが準備委員となって六一年から存続をしておる。大臣は第二世銀のお話を言われましたけれども、第二世銀には社会主義の国は入っていない。そういうことではなかなかうまくまかなえないということから、この開発基金という構想が出てきたに違いない。ですから、いますぐに可能かどうかという、きょうあす可能かどうかという問題よりも、これがやはり好ましい形式だ、好ましいやり方だということになれば、まさに国連の場で日本はその立場を主張するということで道を開くということが必要じゃございませんか。それはいますぐファンドは集まらないかもしれない。しかし、すでに二十五カ国というものがそういう一つのかたまりになって一つの目的について推進をしておる。これに一体日本は背を向けるのか、進めるのか、傍観をするのかくらいの態度決定はあってしかるべきだと思う。
  74. 大平正芳

    ○大平国務大臣 だから、問題は、後進国の開発のためになる有益な措置を考えなければいかぬわけでございまして、こういう機関を設けると非常に理論的に首尾一貫してなかなかいいアイデアじゃないかということだけではこれはなかなか動かないわけで、あなたが言われる国連中心の開発援助機関というものが、いまのところ先進国は一致して反対しておるような事情では、なかなか実が結ばないわけでございます。だから、問題は、後進国の開発にどう与えられた条件のもとで何が有効かという具体的なことを漸次考えていくくふうが大事だと思うのでございます。国連自体のいま御指摘機関が順調にスタートして、御指摘の社会主義国も入ってファンドを堂々と提供されるような機運になることは非常にけっこうなことでございますし、そういうことを育てることは私も希望いたしまするが、問題は、いま申しましたように、後進国のためになる実効的なものを把持して、それを着実に進めていくということに歩武を進めていくのが日本政府の親切なやり方ではないかと思います。
  75. 松井誠

    ○松井(誠)委員 池田政府はいつも国連中心主義ということを言われる。きのうの池田総理の用語を借りれば、まさに何とかの何とかだと言わなければならぬとう思のです。何とかの何とかという伏せ字に活字を入れれば、これはばかの一つ覚えということになるのだろうと思う。国連中心主義というのは、でき上がった国連の決議に従うということなら、これは政治じゃないと思う。国連をどこへ持っていくのか、国連の中で日本が主体的な立場で何をしようとするのかということがなければ、国連中心主議というのは、国連追随主義、国連に盲目的に従うというだけになってしまう。  大臣が貿易のことを申されましたので、私は貿易の問題について伺いたいと思いますけれども、この貿易開発会議の事務局長のプレビシュという人の報告書の一番終わりのほうに、きょうの幻想があすの現実に変わることも可能であるということを書いている。私はそのとおりだと思う。きょうは幻想だと思ったことが実はあすには現実になる。中共承認という問題がそうだと思う。ですから、いまできないから、いま言ってもむだだからということで、いつでも追随するという形で日本の外交がしょっちゅう動いておるということに私は大きな不満を持っているわけであります。  この貿易の問題でありますけれども、来月から国連の貿易開発会議が開かれる。それに向かってもうすでに三回の準備委員会が行なわれている。十五日にはその事務局長のプレビシュ氏の報告書も提出される。そこで、この貿易開発会議に臨む日本の態度、姿勢というものについてお伺いをしたいと思いますけれども、もっと具体的に言えば、この貿易開発会議で主要な議題となるものについて、大体どういう考えで臨まれようとするのか、およその見当はおつきになっておるはずだと思いますけれども、その点をお伺いいたします。
  76. 齋藤鎭男

    ○齋藤(鎭)政府委員 幾つか問題点がございまして、目下検討中で、まだ結論が出ておりませんが、一つの問題点は、第一次産品の先進国の輸入に一定のターゲットをつくるという考え方でございます。これはどの国もそれに従えということではなくて、一応ターゲットをつくって努力目標とするという点が第一点。  第二点は、特恵の問題でございまして、第一次産品、それから製品、半製品に対して特恵を与える。これは、普通の特恵と違いまして、あらゆる商品について特恵をかけるというところに従来の考え方と違う点がございます。  第三点は補償融資でございまして、これは、松井委員初めに御指摘のとおりに、先進国と後進国との間に大きな収益の格差がある、その原因は後進国においては交易条件が逐次悪化しまして欠損が非常に多くなっている、その欠損は過去においても非常に大きかったのでございますが、将来においてもそれが回復する見込みがないということで、それを補償するという意味で融資をする。これは具体的にはある程度グラントのような形にならざるを得ないと思うのでございますが、その点が第三点でございます。内容は三つございますが、そのほかにもう一点問題点は、機構の問題がございまして、プレビシュの案に従えば、将来はITOといいますか、世界貿易機関のようなものをつくるが、とりあえずは今度行ないます貿易会議を常設化しまして、その下に、常設委員会のようなものを置いて事務局的な仕事をさせるという点でございます。以上が大体おもな点でございます。
  77. 松井誠

    ○松井(誠)委員 問題点の大体はわかりましたけれども、それに対してどういう態度で臨むかという政府の態度をお聞きしたい。
  78. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまあげました特恵の問題、これを普遍的にやるということになりますと、これは非常に重大な問題になると思うのです。わが国の産業構造から見まして、低開発国との間にいろいろな競合が出てくると思うのでございまして、これを野放しにやるというわけにはいかぬと思います。そういう特恵をどういう範囲において推進していくかということが私どもの課題であろうと思うのでございまして、これをいま御指摘の草案にあられるようなぐあいに大胆にやるというわけに私はまいらぬと思います。  それから、補償融資の問題でございますが、これは、先ほどからもあなたに対していろいろお話を申し上げておりますように、相当の実効をあげてまいるためにはそれだけのファンドの拠出が必要なわけでございまして、ただいま先進国の国々の状況は必ずしも帰一いたしておりませんが、私はそのようにクリア・カットの問題の提出の前に、現にきょう参議院で御承認いただきました国際小麦協定、これは御承知のように低開発国ばかりではなく先進国も出しておる商品でございますけれども、最高価格と最低価格をこしらえて、これを国際的に維持していこうという一つの商品協定が国際的にできておるわけで、きょう参議院で同様に御承認いただにましたコーヒー協定、これも生産過剰のために値くずれがないように輸出国も輸入国もそれぞれ自制をしていこうという仕組みのものでございます。したがって、そういった実効的な仕組みをいろいろ考え、端的に野放しにやっておいてあとは補償融資というような橋のかけ方ではなくて、その中間領域においていろいろくふうのしようがあるんじゃないかということも考えなければならぬと思うのでございまして、そういうような点につきましては、日本産業の実態に照らしまして、また世界の各国の状況も見ながら日本政府考え方をまとめたいと思って、せっかく検討中であるという状態です。
  79. 松井誠

    ○松井(誠)委員 特恵の問題や補償融資の問題についてはお答えがありましたけれども、一次産品の輸入について貿易の障害を撤去する、除去するという問題と、新しい機構の問題、これらについてはどのようにお考えになりますか。
  80. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一次産品の障害撤去、これは、今度初めて言われたことでなくて、従来からやかましく言われておる問題でございまするし、その声に応じて日本側もいろいろ考えてまいり、措置してまいったことでございます。したがいまして、そういう制限撤廃の方向に可能な限り日本としても協力していくということでございますが、御承知のように、日本といたしましては、米麦はもとよりでございますが、酪農製品その他たいへん腰の重い農産物をかかえておりますので、この輸入制限をどの程度どういう順序でどういうようにやってまいるかということは、産業構造との関連におきまして従来とも慎重にやってまいりましたが、今後もそういう方向に努力はいたしますけれども、非常にクリア・カットな解決というような問題に対して大胆に踏み出すという主体的な条件のもとにはない、こう考えるものでございます。  機構の問題は局長からお答えいたします。
  81. 齋藤鎭男

    ○齋藤(鎭)政府委員 機構の問題は、先ほど申し上げましたように、ITOという目標を将来に置くというところに問題があるかと思いますが、もう一つは、いかなる結果が今度の会議に出るかによって機構の問題に対する考え方は違ってくると思うのであります。この機構をつくりたいという考えは、今度の会議ででき上がったものを将来とも実施するというために考えるものでございますので、具体的にいかなるものができるかということを見てから態度をきめる必要があると存じますが、一応現在の会議を常設化する、その下に常設委員会をつくるというような方向には、あるいはその場の空気を見て好意的に考えてもいいのではないかという気がしております。
  82. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この四つの問題点については実はいろいろとお伺いをいたしたいことがあるわけですけれども、だんだん時間が迫ってまいりましたので、大ざっぱなお尋ねをいたすよりほかはないと思いますが、具体的にこの一次産品の貿易障害を除去するということによって日本の経済がどういう影響を受けるかという、そういうことはあとでまたお伺いをいたしたいと思います。  そこで、こういう問題について、たとえばOECD諸国はどう考えているか。先般の大臣の御答弁では、OECDに早く入らなければならぬのはこの準備もあるのだというようなお話でありましたけれども、OECDとしては大体足並みをそろえて臨むという、そういう形になる見通しでございますか、あるいは、そうじゃなくて、各個ばらばらでその態度をきめるということになるか、その辺の見通しはいかがでございますか。
  83. 大平正芳

    ○大平国務大臣 OECDでメンバーがどのように相談をしてどういうようになっているか、私はまだクリアにしておりませんから何とも申し上げませんが、これは一般的に申し上げたわけでして、ガットの関税引き下げ交渉にいたしましても、今度の国連貿易会議にいたしましても、事前に有力な国々が打ち合わせ、インフォーメーションの交換をしておくということは、その国々の利益であるばかりでなく、こういう会議を成功に導くために非常に大事なことだという意味のことを申し上げたわけです。
  84. 松井誠

    ○松井(誠)委員 元来、この貿易開発会議ができたのは、いわゆる低開発国がガットの場でいろいろ要求をし抵抗を試みた、しかし、なかなかうまくいかない、したがって、そういう資本主義の国だけの場で話をするということにいわば見切りをつけて、国連という場に持ち込んだ。ガットでは、さっき大臣も言われましたけれども、一次産品の問題その他について長い間論議があった。しかし、なかなかうまくいかない。OECDの諸国の中でもその問題について足並みがどだいそろわない。したがって、いわゆるガットの実行計画というのですか、それのワクの中で今度はとどめようと思っても、なかなかとどまらない。もう少しはっきりした形にならなければ追い詰められた低開発国がなかなか承知をすまいという空気が一般に観測をされておるわけです。ですから、この会議に臨む政府の態度というものも、腰だめでなしに、ほんとうに再検討しなければならぬと思います。  そこで、一つお聞きをしたいのは、池田さんは日本は先進国だということを盛んに言われますけれども、しかし、さて日本の輸出構造というものを見ると、先進国というよりも、やはり中進国です。貿易構造や産業構造自体が中進国です。で、多くの学者、専門家などが同じような問題について言っておるのは、日本は一体先進国の立場に立ってこの貿易開発会議に臨むのか、後進国の味方として、そういう意味ではアジアの友としてこの会議に臨むのか、中進国としての日本の立場は一体どっちなんだという問題があるわけですけれども、この点については基本的にどういうふうにお考えですか。
  85. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あなたはさっきプレビシュさんのことばを引いて、今日幻想であるものが将来は現実になるのだということを言われましたが、しかし、幻想から現実への過程は、あなたがいま言われたように、いろいろな困難な過程があるわけでございまして、それを一挙に飛び越すことはできないと思うのでございます。私が申し上げたいのは、実力のある先進国の十分の理解と協力を得なければ実効があがらぬと思うのでございます。それで、先進国側に立つのか後進国側に立つのかなんという、そういう勝負ではないのでございまして、問題は、後進国の開発というものをどう有効に実効をあげてまいるかということが目的なのでございますから、私どもは後進国の立場に立たなけりゃならぬ場合もありましょうし、先進国の立場に立たなけりゃならぬ場合もありましょう。現に国連におきましてはAAの仲間にも立っておるが先進国の仲間にも入っておるということは、これは、私は、日本をAA圏が持っておることはAA圏の非常な財産だと思うし、また、先進国が日本メンバーに持っておることはそれだけ先進国の財産だと思うのでございます。日本のユニークな役割りというものはそこにあるわけでございまして、どちらの側に立つというそういう割り切り方でなくて、目的をどのように有効に果たすためにどういう手段をどのように組み合わせていくのがいいか、非常に現実的な実効的なことをどう日本が役割りを果たしているかということが、私は日本任務だと思うのでございます。たいへん歯切れが悪いようでございますが、歴史的実践というものはそういうものだろうと私は思うのでございます。
  86. 松井誠

    ○松井(誠)委員 先ほどから催促をされておりますので、あとの質問が残っておりますけれども、これで一応留保いたしたいと思いますけれども日本が無理に背伸びをして、先進国的な経済の実力がないのに、先進国の仲間入りをしたいということの矛盾がそこに出てくるのではないか。やはり、その矛盾を解決するためには、いっそのこと低開発国の立場でこの際大いに先進国に対する貿易障害の撤去を押していくというかまえになったほうが、まさに日本にはふさわしい役割りだと思うのです。こういう問題については、このあといずれ適当な機会にお伺いをいたすことにしまして、きょうはこれで終わります。
  87. 赤澤正道

    赤澤委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会