運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-02-12 第46回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十二日(水曜日)     午後三時九分開議  出席委員    委員長 赤澤 正道君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 高瀬  傳君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       宇都宮徳馬君    菊池 義郎君       鯨岡 兵輔君    佐伯 宗義君       竹内 黎一君    野見山清造君       福井  勇君    三原 朝雄君       森下 國雄君    黒田 寿男君       田原 春次君    松井  誠君       永末 英一君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政府次官  毛利 松平君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎮男君         外務事務官         (情報文化局         長)      曾野  明君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房審議         官)      藤崎 萬里君         外務事務官         (経済局次長) 加藤 匡男君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 二月十一日  委員竹内黎一君辞任につき、その補欠として松  野頼三君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松野頼三君辞任につき、その補欠として竹  内黎一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十一日  経済協力開発機構条約締結について承認を求  めるの件(条約第一号) 同月十日  日ソ平和条約即時締結等に関する請願田原  春次紹介)(第三三三号)  同外百三十四件(松浦定義紹介)(第四〇四  号)  同外十一件(松浦定義紹介)(第四三三号)  同外四件(石田宥全君紹介)(第四五〇号)  海外移住者に対する助成金増額に関する請願(  二階堂進紹介)(第四九一号)  在日朝鮮公民祖国往来自由実現に関する請  願(下平正一紹介)(第五二六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済協力開発機構条約締結について承認を求  むるの件(条約第一号)  国際情勢に関する件(日中問題)      ————◇—————
  2. 赤澤正道

    赤澤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 大平外務大臣お尋ねをいたしたいと思います。問題はやっぱり中国問題を中心にして、政府アジア外交政策近隣外交政策内容についてお尋ねいたします。  いままで他の委員会あるいは本委員会等において、政府の御答弁は、はなはだしく情勢判断も不十分であり、かつ甘くもあり、しかも、主体的な方針というものは、様子を見てということで、自主的な政策というものは何ら国民に示されていない。はなはだわれわれは不満であるとともに不安に思うわけでございます。  そこで、私は、その後だんだんと情勢が進んできておりますから、単に政府責任を追及するとか、あるいはあげ足を取って答弁の食い違いを指摘するとかいうようなさまつな質問はしたくないのであります。やはり、特にあらわれてまいりましたドゴール中国承認以後、アジア外交国際関係というものは大きなうねりを示しているわけですから、国民希望するものは、野党にも与党にもともに大きな国の外交路線というものを明らかにし、しかも具体的な足取りを明確にしてもらいたいということであろうと思うのです。私も、そういう立場質問をいたしますから、どうか、聞かざる言わざるというような態度でなくて、この際、国民の不安と不満、疑惑に対して、日本外交路線はどちらへ行くべきであるかということを指し示すべき絶好機会であるというふうに、この委員会の権威のためにも考えるわけでありますから、どうか率直に所信を明らかにしていただきたいと思うのです。  まず第一にお尋ねいたしますが、先般、先月の二十七日にドゴールが対中国国交樹立の決断をとりましたことに対して、政府は、一体これを歓迎しておられるのか、あるいはこれを迷惑に思い、快く思っていないのか。われわれの考えでは、アメリカアジア政策に縛られた日本外交が、中国問題になり東南アジア問題で全く膠着状態にあって、行き詰まったまま停滞をしておる状態を打破するために、このドゴールの対策というものは大いに歓迎すべきではないかと思うのです。それをわれわれとしては一つ政治事実としてさらに前に発展せしめるべきではないか、このように思うのですが、ドゴールの対中国国交樹立政策に対して、これを歓迎するのかしないのか、日本政府気持ちをひとつ最初に伺っておきたいと思うのです。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 フランス政府北京政府外交関係を樹立するという措置に出ましたことは、フランスがその主権に基づいて決意されたことでございます。私どもは、それが戦後のアジア問題の処理にどういう影響を持つものか、事態を注視しておるのでございまして、これを歓迎するとか歓迎しないとか、そういう意味合いのものではなくて、こういう措置の及ぼす影響というものを注視しておるというのが偽らない心境でございます。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 日本政府アジア政策を、近隣外交を自主的に進めるためには、この情勢は好ましいものだとわれわれは思うのです。国民のほとんどすべての者も、今度の政策を、これは絶好一つ機会であるといって歓迎をする気持ちが非常に強い。そのことを聞いておるのです。注視することはあたりまえのことで、どういう立場で注視するのか、その受け取り方が問題だと思うのです。率直にお答えをいただきたい。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 この措置歓迎するかしないかということにかかわりなく、フランスは決意し、フランス措置をするわけでございますから、私どもといたしましては、こういう措置がとられたという前提に立ちまして、事態推移日本立場で注視しておるということでございます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、この問題はこれ以上押し問答してもしようがありませんが、もう一つは、この政策に対して、国民党政府国交の断絶をもってこれに対処したわけです。これに対しては、日本政府としてはこのことを予期しておられた、また、これが当然の筋道としてこれを了承されますか、歓迎されますかという点を第二点としてお尋ねいたします。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 これもまた国民政府の問題でございまして、日本として歓迎するかしないかということを申し上げるのはいかがかと思います。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 これは、われわれ推測するのに、ドゴール中国との間の国交回復に関する話し合い、特にフランス側方針が、二つ中国ではないが、その変形として、一つ中国一つ台湾ということをあなたは受け取って、しかもこれは日本政府としてはやりにくいことをやってくれて、中国問題を打開するのに他力で非常にいい条件ができたというふうな、むしろ歓迎気持ちを含んで、そういう主観的な希望のもとに、フランス中国との話し合いは、一つ中国一つ台湾ということで大体話がついたのではないか、そういう意思ではないかということをあなたは国会でも言っておられる。ところが、それは間違っているのです。事実としても間違っておりますし、アジア外交を今後展開させて、その中心としての中国外交を打開するためにも、この論理というものは、実は外交政策としても国際法上の論理としても誤っておるわけです。ですから、ある意味ではイージーゴーイングでいけると思った日本政府アメリカにとってはお気の毒ではありますけれども、これはやはり正しい論理である、正しい筋道であるというふうに私は思うのです。当然の帰結であるというふうに思うのです。そういうふうにお考えになりませんか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 フランススが当初一月二十七日にとりました措置、すなわち、北京政府外交関係を取り結ぶことになった、同時に国民政府とは関係を断絶するという措置をとられなかった、そのことはどう解すべきかという話が出ましたので、これはこのように一応解釈できるものではなかろうかということを申し上げたまでのことでございまして、私は主観的な考えをこれに盛り込んだつもりは毛頭ございません。その後の経過は、いま穂積さんがおっしゃったとおり、北京政府のほうもこれに異論が出たし、国民政府からも異論が出た、そして事態はそういう私が一応解釈した方向には進んでいないということを認めるということでございまして、日本政府主観的な意図、好悪の情、そういうものを込めたつもりは毛頭ございません。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 一つ中国一つ台湾という観測をしたということは、これは甘い観測で、誤りであったということは認めますか。外務省判断ですね。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように解釈できるのではないか、つまり、北京政府外交関係を樹立することにし、国民政府との間に外交関係は断たない、こういうことでございましたので、そのように解釈できないことはないじゃないかと申し上げたので、その限りにおいて間違いはないと思うのです。その後の事態推移は、先ほど申し上げたとおりでございます。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 そうではないのです。いまになって言うわけではないのであって、当時から国民党政府も申して、中華人民共和国政府二つ中国というものは断じて認めないと言い、フォールの報告にいたしましても、その点は国際法上明確になっておるわけです。にもかかわらず、外務省は、一つ中国一つ台湾の方式が中国問題解決の過程においてでき上がるのではないかという、それを歓迎する気持ちがあったから、そういう誤った判断をしたのです。そのような事実は初めからありません。何を根拠にして、一つ中国一つ台湾という考えフランス政府の中にあったということを証明されますか。その事実はないし、また、われわれ仄聞しておる中国においてのフォール元首相と毛沢東主席との話し合いにおける事実も、そういう問題に対してこれは明確になっておるわけです。にもかかわらず、外務省は、一つ中国一つ台湾をつくり上げようという底意があって、そういうことは自分のところではやりにくいけれどもフランス政府がつくってくれることを歓迎する気持ちがあったから、外務省当局もそういう誤った判断をし、あなたもそういう誤った判断をし、そして、この線で国連に臨んで、この線で国民党政府を納得せしめる、こういう下心があったことは事実でしょう。あらゆる説明がそうです。この誤りをただすことが日中問題を解決する最初基本点であると私は思うのです。その判断誤り、あるいは、あなたは口には言わなかったけれども日本外務省あるいは日本政府の中に一つ中国一つ台湾論というものがあって、これはフランス中国との国交回復の中においては消えてしまいましたが、しかし、これが今後国連の場において、あるいはまた日本を含む他の国の中国国交回復の中でこの二つ中国論というものがあらゆる機会に出てくる危険があると私は見ておりますから、そのあなたの反省と、あなたの二つ中国論に対する誤った認識をこの際明確にただしておくことが、中国問題を前向きに、しかも自主的に解決できる基本点であると思うのです。私の質問趣旨はそういうことですから、これは、野党がやろうと与党がやろうと、自民党がおやりになるから二つ中国でいけるのだ、社会党がやるから一つ中国になるのだということではないのです。日本国外交として、当然一つ中国論に筋を通していかなければ、かえって問題は遠回りになり、混乱をし、解決にならないということを私は憂えます。そういう意味で聞いておるのですから、単に情報が不足であってちょっと受け取り方が違っておったとかいう問題ではないので、ちょっとしつこいようですが私は伺うわけであります。だから、情報の取り方が不十分であったとか、私はそんなことをいつまでも責めようと思っておりません。事実が証明しておるのですから、もう議論の余地がない。これは単にフランス国交回復における対国民党政府関係ではなくて、どの国がやろうと、つまり、日本がやろうと、この変形二つ中国論というものは成り立たないということを日本外務省は認識しておくことが必要である、このように思われますが、私の意見に対して誤りがあったら正してもらいたい。御答弁がなければ、それを承認したものと私は受け取りたいのでありますが、どうです。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、私どものほうで主観をまじえて申し上げたつもりはないのでございまして、そういう願望があったからそう言ったのじゃないかというのは、あなたの思い過ごしだと私は思います。それはむしろお互いにはっきりさせておきたいと思います。  それから、二つ中国論一つ中国一つ台湾論というのは、少なくとも北京政府が否認いたしておりますし、国民政府も否認いたしておることは、厳たる事実でございます。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、日本がやがて中国との国交正常化をはかる場合に、もう、二つ中国論、あるいは変形して一つ中国一つ台湾論というようなものは成り立ちもしないし、また誤りであるということは認識されますか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 いま北京政府も台北の政府もそれを頑強に否認されておるわけでございまして、日本政府は、こういう問題について、北京政府考え方国民政府考え方、それはそれとして、そのまますなおにそういう考えであるということを承っておくのが穏当なことだと思います。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、その御答弁は、やがてこれから日本が次の時期に、適当と判断する時期に中国との国交回復を促進する場合に、一つ中国一つ台湾というような考え方ではなくて、一つ中国立場に立ってこれを促進する、それを認めざるを得ないというように理解してよろしゅうございますね。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申し上げましたとおり、両政権がそれに強く反対されておるということは、すなおに日本政府としては受け取っておらなければならぬものと思います。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 その点は、私の一つ中国論によって問題を処理すべきである、また処理せぜるを得ない事実でもあるということ、大臣答弁とは一致したものとして私は理解いたしておきます。それがもし誤りであるならば大臣のほうからお答えをいただきたいが、そういうように理解しておきます。  次にお尋ねいたしますが、前向き政策について、前の委員会で、当委員会でも戸叶委員が前向きの具体的内容を示せということで、これは国民の率直なる真剣なる要望なのです。にもかかわらず、大臣は、これに対して何らお答えにならない。ただ、子供だましのように外交は常に前向きでありますということで、あなたは主観的に前向きと思っても、客観的に横を向いたり、うしろを向いている場合があるわけですから、それがあなたの主観のとおり前向きであるかどうかは、客観的な行動、政策の中であらわさなければならないわけでしょう。それはおわかりでしょう。そうであるならば伺いますが、一体日本中国との二国間における関係を前向きに打開するための具体的な中国に対するアプローチ方法、これについて、その後情勢が進んでおりますから、重ねてお尋ねして、明確にしていただきたいと思います。この点が実は国民の一番不満に思っておる点であり、一番不安に思っておる点です。そうして、世論を見て、国連の場において、主体性がなく自分ではきめられぬから人にきめてもらうのだ、これは、おれの行くところはどこだと言って世界の各国に聞いているようなものです。お互い選挙をやると、定員が一人にかかわらず立候補希望者がたくさんある。それを党の主体性できめ切れないで選挙でやってくれという。国連の場に投げ出すのと同じです。主体性も前向きもあったものではないわけです。だから、国連の場のことはあとで聞きます。そうではなしに、中国に前向きであるならば、日本中国との二国間におけるアプローチ方法というものを、やはり政府は、漸進的であろうと、フランスのように一挙であろうと、それは政府考えですからわれわれ強制するわけにはいかないが、少なくとも前向きでありますと言う以上は、それを何らかの形で示す必要があるでしょう。ぜひこの際基本的かつ具体的にそのことをお示しになって、国民不満を取り除いていただきたいと思うのです。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 これは総理の施政方針演説でも私の外交演説でも申し上げましたとおり、中国大陸との間におきましては政経分離の原則によりまして経済文化等民間レベルの交渉は進めてまいるというたてまえは堅持してまいりたいということを申し上げておるわけでございます。それをいま変えるという意思はないということを申し上げておるわけでございます。それで、ここ二、三年来中国大陸との関係をどのように進めてまいるかということは、私どもにとりましても重大な問題でございまして、考え方といたしまして、今日あります貿易関係あるいは人的な交流関係文化交流等、これをもう少し正常な姿に持っていけないものかということを期待しておったわけでございまして、御案内のように、貿易の領域におきましてはLT協定というものができました。これはもとより民間が取り結ばれた協定でございますけれども、ただいまの政府経済政策のたてまえから申しまして、政府と無関係にあり得ない面もございますので、私どもが間接的に関与いたした面が皆無であるとは申し上げません。しかし、いずれにいたしましても、貿易関係は一部の友好商社の間に行なわれておった状態よりは漸次正常な状態になってきておりますし、したがってまた貿易量も漸増の方向をたどっておりますことは、客観的に立証されておると思うのでございます。これが前向きでないんだという論証があれば伺いたいと思います。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 経済文化人事交流について具体的に拡大、アプローチしたいという。それでもやらぬよりはいい。その意欲は、それだけの分に関しては多といたしますが、その具体的なことについてはあとで私は一つ一つ提案をしながらお尋ねをいたしますけれども、その前に私が伺いたいのは、それはいままでのペースなんです。いままでの情勢におけるぺ−スならそれでいいわけです。それでよくはないが、政府としてはそういうことを言い暮らしておったわけだけれども、これだけドゴール承認で、——そして単にフランスだけの承認の問題ではないのです。このことは、東西両陣営アメリカとソビエトとを頂点とする外交に対する大国主義というものがこれでくずれていくわけです。そして、西側から言うならば、NATOがくずれ、CENTOがくずれ、アジアにおいてはSEATOがくずれ、そして中国封じ込め政策基本というものがこれでくずれ去ろうとしているわけです。したがって、いま政府がやろうとしている日韓会談、それに伴う日米安保条約拠点とするNEATOというものも、つくる前からだめになってしまっておる。全く逆行する政策であるということがこの世界の潮流の中で証明されつつあるわけです。そういう大きな変転があるときに、ただ、中国との関係は従来どおり政経分離で、経済文化交流をやや広げていく、それで何ら差しつかえがない、これであなたアジア外交のイニシアをとれると思っておりますか。アジアにおける大国意識を持ってあなたも池田さんも振り回しておられるけれども、それで一体アジアにおける日本の任務というものが果たされるでしょうか。中国問題を拠点とするアジア外交における発言権、重大な問題に対する発言権というものが、それで一体確保できるとお考えでしょうか。私どもはその点について大きな疑問を持っておるわけです。単に、国交を回復しなければ貿易量が伸びないとか、人事交流に、一々つまらぬビザを取ったり、パスポートを取るのに一週間も二週間もかからなければならぬというような、そういう手続上の不満から国交を回復しろと言っているのじゃないのです。そんなことのために中国問題を解決しろということを言っているのじゃないのです。ドゴールの打った一石というものは、これは当然のことなのですけれども、すなわち、資本主義諸国における内部的矛盾と対立のあらわれなんです、経済政治における主導権の。そういう動きが行なわれることによって、東側陣営も含んで、いままでの大国主義的な外交主導体制というものが根本的に変わっていくわけでしょう。そして、日本はようやくにして経済の成長とともにアジアにおける自主的な外交をとろうとしておる。そのときに、従来どおり経済文化交流をやや伸ばしていくつもりだ、おそるおそるながら台湾の前を通って、香港を通っていきたいんだ、アメリカに気がねをしながらやや伸ばしていくんだ、それでアジア外交前向き政策、これがおれの前向き外交だと言って、前向き外交でないなら文句があるなら具体的に言ってみろということでしたから私は申し上げてお尋ねしたいのです。外交上における情勢というものは、単にフランス中国の二カ国の問題ではないんですよ。西側陣営にとっても大きな変化があり、世界全体にとって大きな外交体制変化があるときに、日本が自主的な近隣外交アジア外交をやらんならぬと言いながら、中国問題について経済LT貿易以上には何ら出られない。これでは国民は納得いたしません。われわれ野党社会党が納得しないだけではありません。このごろ、あなたタクシーに乗ってみなさい、そして、おれは外務大臣だということを言わないで、このごろ政府方針はどうだなどといって聞いてみなさい、みな罵倒しますよ。おれらが考えたほうがりこうな考えができるではないかと実はみな言っておる。それほど実は常識の基本において政府は何も持っていないということなのです。  だから、私が聞きたいのは、LT貿易の問題やその他のことはあとで聞きますが、この外交的なうねりの中で外交的なアプローチ方法はないのかということなのです。それを示していただきたい。戸叶委員質問はその趣旨であり、私がくどくも蒸し返して、言っている趣旨もそのことですから。先ほど言ったように、あなたをやっつけるとか、あるいは政府責任をなにするとか、答弁がないからあげ足を取るとか、そういうさもしい根性で聞いているんじゃないのです。日本外交主導権責任上握っておるあなたですから、どうぞひとつこの際、外交における日中二カ国間における具体的の前向き方策はゼロなのか、あるなら何か示していただきたい、こういう趣旨ですからLT貿易で逃げられちゃ困りますよ。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 フランスが今度とりました措置世界情勢に及ぼす影響というものを、穂積先生から非常に明快にかつよりグラマチックに解説を伺ったわけでございますが、その点は私は若干あなたと所見を異にするわけです。ドゴールさんのやられた措置が、あなたの言われるような、つまり新しい世界情勢を生むヌーベルバーグかというように評価すべかどうかは、まだわからぬじゃないかというのがわれわれの立場でございます。私は、戦後の世界情勢に処してドゴールという方が政治家としてかつフィロソファーとして一つのすぐれた見識をお持ちであることを認めます。そして、今度取り上げられた措置というものにつきましても世界でこれほどの論議を呼んでおるわけでございまするから、これはドゴールさんの名声に照らしてさもあることだろうと思うのでございますが、一体、今度の措置が、戦後の世界の平和というもの、戦後の世界の秩序をもたらす上において、あなたの言われるようなすばらしい役割りを果たすものかどうかということ。あるいは、そうでなくて、この措置はあるいは自由陣営の団結の弛緩を招くのじゃなかろうかという批判も、それからまた、こういう措置を現在の時期になぜやったかということに対する批判もあることは、あなたも御承知のとおりでございます。私どもは、こういう措置を評価するのは、あなたみたいに、いまの段階でもう決定的に論断するほど早急ではないのでございます。もう少し、これは、この措置が及ぼす影響というもの、届く射程というものをよく見きわめないと、まだ論断するのは早いじゃないかということを申し上げておるわけです。それが一点でございます。  それから、第二点として、政府は何もなすところなく、中国大陸の問題は貿易文化交流を適当にやっておればいいじゃないかということを一歩も出ないじゃないか、知恵がないのもはなはだしいという御批判でございます。私どもも、自信を持ち、日本のためにいいことであればやりますことにやぶさかでございませんし、あなたに劣らない勇気を持ってやらなければならぬと思っておるわけでございまするが、中国問題は、これは穂積先生もよく御承知のとおり、わが国にとりましては大きな問題であるばかりでなく、アジアにとって、あなたが御指摘されますように、非常に重大な問題でございまするので、戦後のこの状態に新しい秩序をもたらしてアジアに平和と繁栄を享受できるような状態をどうしてもたらすかは、あなたも考え、私も考え日本人すべてが考えておることでございますが、このことはあくまでもアジアが平和のうちに行なわれなければなりませんし、アジアの安全と繁栄がそれによって保障されるような形において行なわれなければなりませんし、また、全世界の関心の中心課題の一つであることもまたいなめないことでございまするので、私どもは、この問題は世界的な重要問題であるという実態認識、これは少しも変えておりません。いやそれはかまわぬから日本のほうは手っとり早く何かやれというような御議論に対しましては、にわかに私は賛成いたしかねます。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣並びに外務省幹部がきょうおそろいですから、御忠告申し上げておきますが、一つの勢力があって、あるいは新しい外交における体制というものが登り坂のときは飛躍はないのです。たとえば、それがくずれ出したり落ち出すと、これは加速度をもって予想以上に早くくずれ去るものです。すなわち、アメリカ中国封じ込め政策というものは、これで半年を出ずして目に見えてくずれてきますから、その点はおやりにならぬなら無理にやらすわけにはいかぬから、御忠告申し上げておきますが、どうぞもう一ぺんいまの認識については再検討していただきたい。私もまた、この委員会の席上ではなく、きょうは時間がありませんから、申し上げたいけれどもまた別の機会にとくとお話をし、外務省のお考えも伺いたいと思っております。  そこで、お尋ねいたしますが、そうなりますと、大体、池田内閣の対中国政策というものは、二国間におけるアプローチはやらないで、そして国連の場でやる、それしかないのだということなんですね。そうであるならば、国連の場における政府のお考えについてお尋ねをいたしましょう。  第一にお尋ねをいたしておきたいと思いますが、国連において、おそらく、私ども判断では、この秋のあるいは十一月に選挙がありますから、十一月のアメリカ選挙以後になるか、あるいは、予定どおり行なわれるかは別として、それまでの間に必ず中国問題は中国代表権が承認される可能性のほうが強いという判断をいたしております。それがなくても次の機会には必ずするでしょう。いずれにいたしましても、そういうことがもう切迫してきておる。多少の時間の差の程度になってきておる。この中国の代表の交代の承認の問題、これが国連の場において多数をもって決定された場合には、中国承認に踏み切ることができますか。そういう意味でございますか。あなたは、国連の場において中国の代表権が承認された場合には、日本政府としても重大な決意をしなけばならぬ。あなたは世論に従ってやると言うのですから、そういうことでしょう。そういう意味でございますね。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 国連外交を重視し、国連世界平和の維持機構としてその機能を充実さしていくということに力を入れてまいっておりますことは御承知のとおりでございます。国連はあくまで尊重してまいるという外交基本方針は変えておらないわけでございます。したがいまして、国連におきまして中共政府国連に加盟される、世界の祝福の中にそういう事態が起こりますならば、当然わが国として重大な決心をせなけりゃならぬのは、これは理の当然だと私は思います。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、いまのお答えは、国連において中国の代表権が承認された場合においては、日本政府としても中国政権承認の問題について決意をしなければならない、そういう理解でよろしゅうございますね。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 国連加盟とか国連で代表権を認められるとか、これはいろいろ表現がございますが、どのようだ手順になるのか、これはどういう議案がどういう姿で出て、どういう審議の様子になるのか、いまのところわかりません。私が申し上げておるのは、世界世論の一つの鏡として、国連に中共政権が祝福を受けて入られるというような事態になれば、当然わが国としても重大な決心が要るのではないかという一般的な感じを申し上げておるわけです。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 重大な決意の内容というものは、政権承認の問題でございますね。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 それはどういう手順になりますか、いまから私もその手順を明らかに脳裏に描くことはできないわけでございますが……。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 手順のことを聞いているのじゃないのです。結果を聞いているのです。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 日本と中共政権との政治的な関係につきましては、重大な決意を持って当たらなければならぬ段階に来るだろうという一般的な感じを申し上げておるわけです。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 同じことを何べんも言わないでいただきたいのです。重大な決意をしなければならぬということは、日本国連尊重の精神であって、しかも、先ほど言ったように、二つ中国というものが考えられない事実になってきておるから、それがいかなる経過をとろうと、結論として、中国国連における代表権を回復した場合には、日本中国との間が国交未回復という状態は理に反することであるので、両国間の国交正常化の問題を政府としては考えなければならない。それが重大決意の内容であるとわれわれは理解いたしますが、誤りがあったら言っていただきたい。誤りがなかったら、それでよろしい、その理解で聞いてもらいたいということです。どっちでもいいですから、簡単にお答えいただきたい。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように御理解いただいてけっこうです。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、国交正常化国連代表権の回復のときにその問題について具体的に進める、こういうことでございますね。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 その時点をそのときにするとかしないとか、そういう問題は、そこまで入るのは、いま確定的なことを私は申し上げられないと思うのでございます。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 時点のことを聞いているのじゃないのです。基本的態度を聞いている。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 基本考え方は、いまあなたが御理解いただいたような、国連において正当なメンバーとして祝福されるというような事態になれば、国交の正常化を考えなければならぬのは当然のことじゃないかということです。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 よくわかりました。  次にお尋ねいたします。そうすると、問題は国連にかかってくるわけだが、アメリカはややともすれば中国の代表権がこの秋の国連総会で認められないように努力する、言いかえれば妨害をする、こういうことははっきりしておるわけですが、日本政府はまさかこれから中国代表権の回復について妨害するようなお考えはないと思うけれども、妨害するのか、何もしないのか、あるいはこれを促進するのか、どちらであるのか、基本的な態度をこの際伺っておきたい。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 日本政府に対してたいへん非礼な御質問だと思いますが、日本政府国連憲章の精神に基づきまして公正に国連活動をするわけでございます。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 公正な国連活動であるならば、妨害はしない、こういうことですね。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申しましたとおり、公正に国連活動を展開するつもりです。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 国連というものは、実は、思想が違い、社会制度が違い、利益が相反しましても、すべてこれを入れて、話し合いの中で国際問題を解決していこうというのが基本的精神です。包括的な精神です。排他的なものじゃないのです。軍事同盟のように仮想敵国をつくってやるというのじゃない。したがって、国連精神に従うならば、すべての世界の中に事実上存在する国々が全部国連に加盟することが望ましいというのが原則なんです。それが時間的には一ぺんにはいかぬから、ある国は入っておるがある国は入らないという事実はあるでしょう。これは公正な精神というなら当然そういうことです。そうであるなら、二つ中国問題という原則がくずれて、一つ中国の原則を認めざるを得ないと大臣は先ほど言われたわけだから、そうであるならば、一つ中国すなわち中華人民共和国の国連代表権回復について、少なくとも日本政府は妨害する考えはあり得べからざることだと思いますが、やや心配ですから、念のために伺っているのです。妨害をしませんね。そういう精神ではないですね。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、国連憲章に基づきまして、公正に国連活動を展開いたします。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 公正という意味は、妨害しないという意味ですか。そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 私の申し上げたことで御理解いただきたいと思います。   〔委員長退席、高瀬委員長代理着席〕
  45. 穗積七郎

    穗積委員 それはちょっと大平先生おかしいですよ。なぜそんなことをあなたは逃げるのですか。つまり、積極的に推進するように努力するか、あるいはノータッチでいくか、中立でいくか、あるいは妨害をするか、こういうことだと思うのです。そのとき、私は、少なくとも妨害すべきではないと思う。中国政策に前向きだというならば、少なくとも中国国連における代表権承認の問題について妨害の態度をとるべきではない。妨害はいたしませんと答えられぬところがおかしいじゃないか。積極的に阻止するかということを私は聞いているのではない。少なくとも妨害はしない、それが公正な態度であると私は確信いたしますが、それが誤っておったら教えていただきたい。公正な態度とは、妨害しないということでしょう。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 ちょっと問題をはき違えないようにお願いしたいのですが、一つの議案が出て、具体的な個所が問題になっておって、それに対してどういう措置日本立場でやるかという問題ではなくて、いま問題にいたしておりますのは、どういう議案がどういう状況で出るかわからない。その議案に対してどういう議案が出るかわからない先に、日本政府は妨害するのかしないのかとか、そういうことをお尋ねになるあなたのほうが無理なんで、私がお答え申し上げますように、公正に国連活動をやりますということでもう満点じゃございませんか。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、さらに関連して具体的にお尋ねしましょう。公正とは、すなわち妨害しない、インターフェアをしない、こういうことですから、そこで、われわれの心配は、吉田さんが近く台湾に行かれるわけですね。われわれは党としてすでに反対を申し入れておる。それから、さらに、松井国連大使は、近くブラザビル諸国の動向をリサーチするという意味でアフリカへ行かれるわけです。すでに国連総会前にしてこういう具体的な政府の行動が起こっておる。そのときに私がお尋ねいたしたいのは、吉田さんは蒋介石総統と話をされて、国連対策について、中華民国の国民党政権の国連における地位を確保するためには中華人民共和国の国連における代表権承認を阻止しなければならぬ、そういう問題について話し合いをされる心配があるわけです。また、松井国連大使は、情勢を見に行くんだといいながら、フランス承認に同調されては困るというような意向を示しながら諸国を歩かれる心配もある。そういう意味で、その疑惑はもうすでに国際的に起きておるわけです。国内でもある。だから聞いているのです。吉田さんはそういう問題については話をされるのですかされぬのですか。それは吉田さんの個人の個人訪問だから、するかしないかわからぬ、政府は関知しないと言われるでしょうけれども、そういう重大な政府外交権に関することを、かつて総理でありましても、政府の代表者ではない一個人として、個人的な蒋介石との親交をあたためながら国際情勢について懇談をするために行くというなら、そういう話をされましても、それは個人のことであって、政府責任を持つべき筋合いのことではない。政府政策決定にそれが影響を及ぼさるべきものではないとわれわれは思うのです。その点を明らかにしていただきたい。同時に、松井国連大使は、一体どういう主体的な態度を持ってアフリカ諸国を歴訪されるのか。いまの国連における、秋の国連総会の問題の情報をつかむために行くのですから、もう目標は国連にあることは明瞭ですね、その旅行目的は。松井大使は、これは政府の代表です。その点を明らかにしておいて、国民の疑惑を取り除いていただきたいと思うのです。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 吉田茂先生が訪台されることは、吉田先生の個人の御資格で、個人の意思に基づいておやりになることでございまして、政府といたしましては、吉田先生の訪台によりまして、日本国民政府との間の空気が、零囲気がよくなれば、たいへん歓迎すべきものと思っております。具体的な政策というものにお触れになるはずもございませんですし、また、具体的な政策の問題は私が責任を持ってやることでございますので、御心配には及びません。  それから、松井さんのアフリカ旅行は、これは今度のドゴールさんの措置がとられる前から計画をいたしており一まして、去年も御承知のように岡崎前大使に御足労いただきまして、やっていただいたわけです。御承知のように、アジア、アフリカ、中近東、つまりAA圏というのは、国連で過半数を占めるほどの多数の議席を持っておるわけでございます。わが国もその光栄あるメンバーでございます。したがいまして、閑暇を得れば、そういうメンバーの国々をおたずねいただいて、御懇談をするということは、政府として前々から考えておったことでございます。国連総会というのは、何も中国代表権だけの問題が出るわけではございませんで、御承知のように、人種の問題もございまするし、機構改革の問題もございまするし、パレスタインの難民対策、その他国連でことし非常な活発な論議を呼びました問題がたくさんあるわけでございます。それで、AAのメンバー諸国と緊密に連絡いたしておるわが国といたしましては、この間に処していろいろ苦心をいたしておるところでございまして、したがって、これはことしに限りませんで、できるだけ、松井さんに限らず、将来ともこういう計画は推進してまいるつもりでございます。特別な政治的意図があるというようなものでは決してございません。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 それで、具体的にこれから国連において予想される事態について、事前に政府方針を伺っておきたいと思うのです。  第一、先ほどからのおことばによると、外務省は今度中国問題について、国連においては、重要事項であるから、重要事項指定方式のことを頭に考えておられるようですけれども、私は事実問題を言いましょう。私の判断では、こんなものは問題にならぬと思っております。おそらく問題にならぬでしょう、そういう情勢はもうすでに通り越しておる。重要事項指定方式なんという議題が問題になるような段階ではないというふうに思いますけれども政府は多少そういうことを考えておられる。アメリカも窮余の一策でまた考えぬとも限らない。そういうことですから、念のために伺っておきますが、中国の代表権の承認の問題というのは、私どもとしては、第一に伺っておきたいのは、手続事項でございますから、単純過半数でこの問題は決定さるべきものと解釈をいたしております。十八条ですね。それで間違いはありませんかどうか、重要なことですから伺っておきたいと思います。
  50. 齋藤鎮男

    ○齋藤(鎮)政府委員 御承知のとおりに、第十六回総会におきまして、日本は、本件は重要問題であるということに賛成いたしました。これと同じような議案が出るかどうかわかりませんので、現在なお方針をきめておりませんけれども、重要事項であったことは、第十六回総会、それから十七回総会、昨年の第十八回総会まで変わりございません。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、重要事項問題については、日本は継続の方針で、もしこれが問題になったときには重要事項指定として提案されるつもりですか。これは基本政策ですから大臣から伺いたい。提案国になりますか。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 第十九回国連総会に臨む態度は、政府としてはまだきめておりません。考えておりません。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと大臣にもお願いしておきますが、あとにまだ質問者がおられるので、もう時間がないから早くはしょるようにという委員長からの注意ですから、私も質問を簡単にいたしますから、あなたも答弁を明快にして、ぜひこの際伺っておきたい問題はここへ列挙的に申し上げますから、全部答えていただきたい。あまり押し問答の時間を必要としないように。  次にお尋ねいたしますが、私は、アメリカは、今度国府が対仏断交する前は、重要事項を通り越して、継承国国家方式で二つ中国をつくるという考え方があったと思うのです。この際日本政府としては、二つ中国あるいは変形した一つ台湾というものは考えられないということでありますならば、こういう間違った、国連におけるクーデター的な提案というものは考えられないと思うのですが、継承国国家方式というものは大体本来から誤っておる。それについての日本政府基本的な考えを伺っておきたい。
  54. 齋藤鎮男

    ○齋藤(鎮)政府委員 承継国家理論なるものが巷間伝えられるのでございますけれども、正式の考え方として日本政府はいままで受けたこともございません。それから巷間伝えられる承継国家理論なるものの内容はきわめて不明確なんでございまして、これは批判の対象にならないと思うのです。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 それから、次にお尋ねいたします。大臣台湾問題に対して非常な未練がまだ残っておる。これが中国に対するアプローチを妨害しておる、困難ならしめておる最大の理由であるということは、この前も大臣は御答弁になった。そのときの台湾とは、一体どのことを言っておるわけですか。蒋介石グループを中心とする国民党政府のことを言ってるのですか。台湾と一口に言いますけれども、あるいは国民党政権と一口に言いますけれども、その中に含まれている因数は三つあるわけです。一つは、台湾の人民を中心にした問題。それから、第二は、国民党政権の蒋介石政権の問題、この持続の問題、援助の問題。それから、第三は、アメリカの軍事基地なんです。アメリカの軍事基地としてこれを確保する必要があるからという考えアメリカは、最近中国問題がこういうふうに進みますと、台湾の政体はどうであろうとかまわぬ、あるいはその所属がどうであろうとかまわぬ、ただ台湾における軍事基地の確保ということさえできるならば、そのためにはいかなる方法でもとろう、すなわち、独立国家台湾共和国でもよろしい、それから、蒋介石グループの中の内部的対立を利用して親米的なクーデターを起こして、それができてもかまわぬ、こういう考え方があり、最近特に危険なものは、台湾独立、すなわち自決の方向というものが、これはかねがね言われておったところですが、あるわけです。そういうわけですから、われわれは蒋介石に恩があるとか、あるいは台湾政府との間で条約を結んでおるということを言いますけれども、独立国家、台湾共和国となれば、これはいままでの日華条約というものは根本的に解消さるべきものです。クーデターによってそういう台湾共和国というようなものができた場合でも、それは継承すべき性質のものではないわけですね。一体どれを言っておるのでしょう、台湾に対してわれわれは恩義があるとか、台湾に対して条約を結んでおるとか、いろいろなことを言っておられますが、それは国民大衆の耳に入りやすいことなんです。具体的に大臣からお答えをいただきたいと思います。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもが相手にいたしておりますのは、国民政府でございます。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 今度の断交によりまして、国民党政権の国際的位置というものはおそらくは下がる一方でございましょう。そうしてまた、同時に、もし台湾地域に限った限定政府だということが明確になれば、人民八百万と二百万の国民党グループとの間の事情は、私も訪問したことがあってよく知っておるけれども、水と油です。対立です。ここでは民主主義がとれないのです。だから、国会の選挙はもう大陸から来て以来ずっとやっていない。やれないのです。くつがえされるから。したがって、この対立というものを最後の手としては考える。そこで、私どもは、この際の台湾処理の問題については二つの可能性が考えられると思うのです。その一つは、第三次国共合作が行なわれることです。この可能性が非常に私はその後増してきておるというふうに判断をいたします。それに対する唯一の方策である継承国家論というものは、国連においてはもちろん、日本政府のおっかなびっくりの外務省ですら、そんなことは問題にならぬと言っているのだから、そうなると、アメリカの最後の手としては、自決すなわち独立運動を援助する、それで政権の交代を一挙につくり上げる、そうしてあそこの軍事基地を確保する、こういうことが考えられるわけです。そういうことを頭に置きながら、蒋介石はアジアにおける孫文以来の民族主義者としてわれわれ戦時中も東条さん以上に敬意を表しておるが、その人がいまアメリカ帝国主義のふところに抱かれて、アジアの分裂、中国の分裂、そしてトラブルメーカーに成り下がっている、もしほんとうに蒋介石に対する友情と愛情があるならば、蒋介石の生きる道というものは中国に帰ることである、こう私は思うのです。国共合作に対してむしろ日本はこの際積極的にあっせんなり協力なり支持をして、その事実をつくり上げることが、アジアの自主的な外交関係をつくり上げるものであるというふうに考えますが、それについて二点お尋ねしたい。一点は、そういうことに対してこれを支持するお考えはないかどうか。それから、もう一つは、台湾独立運動というものに対しては、これは支持すべからざるものであると思うが、これに対して、中華人民共和国としては、国内における国土の分割的なクーデターでございますから、当然実力をもってこれを鎮圧することも国内問題の処理としてはわれわれとして認めなければならない。これは安保条約の問題には私は関係のないことだと思いますが、安保条約との関連においてそういう事態が起きた場合における日本政府の解釈をこの際伺っておきたい。これは空想的なことでは必ずしもないわけですから。国共合作、それから、もう一つは、台湾を分離して独立共和国をつくるというようなクーデターに対する中華人民共和国政府の実力行使に対しては、これは他から干渉すべきことではない、また安保条約の協議にもならないというふうにわれわれは理解するわけですが、その二点についてお尋ねをしておきたいと思う。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 以上二つの問題、いずれも国民政府の問題でございまして、私どもが関知する問題じゃございません。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 私は解釈を聞いているのです。それじゃ、国共合作については何らの支持も反対も関心も持たぬ、こういうことであるなら、独立クーデター、反乱が行なわれた場合に中華人民共和国政府がこれを実力をもって鎮圧することは、国際的なトラブルではない、国内の問題である、したがって安保条約の協議事項にはならぬ、その法律解釈を聞いておる。条約解釈を聞いているのです。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 これは国民政府の内部の問題でございまして、日本政府関係はありません。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 よろしい。これは安保条約の対象にもならず、国内問題として理解する、——正しい理解でございますから私は了承いたします。  実は時間がなくなりましたから以下列挙して私はお尋ねいたしますが、そこでちょっとメモしておいて答えていただきたいのです。  まず第一に、かねてわれわれ社会党はこの際中国に対して政府代表を送ってアプローチすることを提案いたしましたが、これはいまでもやらないというお考えであるかどうか。  第二点は、これは党の問題ですが、党の代表を中国に送って、そして中国との間における、つまりこの間のフォールの訪問のようなものでございましょう。これはわれわれは第二の次善の策としておすすめをして質問をするわけです。  それから、第三点は、中国から現在もうすでに代表団が来ております。アジア・アフリカ連帯委員会の代表者迫安博氏も来ておる。これは、御承知のとおり、周恩来総理の周辺の対日政策の重要なグループの一人である。それから、三月末には、御承知のとおり、見本市前に国際貿促の責任者である南漢宸氏が日本に団長として来訪されることが予定され、情勢の進むにしたがっては、秋または来年春のものですが、これは情勢ですからまだ未確定ですが、承蓼志氏が日本を訪問する可能性も考えられるわけです。こういう人と政府との間で、正式であればよし、非公式であっても何らかの接触をされることが私は望ましいと思う。特にこの前私はお尋ねをしたのであらためて伺いたいが、LT貿易をもっと発展せしめるということであるなら、当面予想されておる南漢宸氏との間で外務大臣または通産大臣が接触をして意見の交換をする、そうしてLT貿易の拡大執行について円滑にやるということは私は望ましいと思う。福田通産大臣は、そのときになったらお会いしましょうと言い、あなたは考慮する価値があるということを答弁されましたが、この点はもう少し明快に、この際LT貿易を発展せしめるということであるなら、大平外交の前向きの具体的な行動としてひとつ考えていただきたい。これが第三です。  まだありますから書いてください、忘れぬように。その次に問題があるのは、領事館の交換の問題でございます。これは、これから向こうからの人もこっちからの人も行ったり来たりする。それから貿易取引も拡大されますから、この問題は考慮に値する問題であると思うが、どうか。  それから、第五は、これは民間の団体でけっこうですけれども貿易代表部の相互交換の問題は、これはもう具体的に考慮すべき段階に来ているというふうに思う。われわれの仄聞するところでは、通産省はそれについて賛意を表しておられるようですけれども外務省台湾に不当な気がねをしてこれを押えているというのが実情のようです。貿易代表部設置の問題については、これは、LT貿易をさらに発展させ、さらに飛躍せしめるためにはどうしても第一段階として必要なステップである、前向きのステップであるというふうに考えるけれども、どうであるかということです。   〔高瀬委員長代理退席、委員長着席〕  それから、第六にお尋ねいたしたいのは、延べ払い問題についてです。延べ払い問題は、これは昨年は倉敷ビニロンを認め、ことしはいま日紡のプラントの話が進んでおる。ところが、日本政府の内規として、対中国のワクというものは、資金の面で三千万ドルというふうにワクがかぶせられておるわけです。これでは、今後の新たなる情勢の中で、あなたはLT貿易をもっと発展させたいと思うというふうに言っておられますが、これでは発展のしようがありません。延べ払い問題は、釈迦に説法で申し上げるまでもありませんけれども、学者の中ですら、これは政治的援助だというばかばかしいことを言っている人がある。そうではない。今日ヨーロッパの諸国の貿易取引でも、LT貿易、すなわち売り掛けで物を売るということは、国内の商売でも、国際的貿易でも、これは商売の手段になっているんですよ。そのときに、これこそ私は政治的圧力を加えているものだと思うのです。だから、延べ払いのワクをこの際広げるべきである、このように思うわけでありますが、いかがですか。それらの具体的な発展の、あなたの誓う経済文化交流の前向きの具体的な内容として、提案があれば聞きたいということですから、提案いたしましょう。まだ時間があれば私はまだありますけれども、きょうはこの程度にしておきますが、それについて一々再質問しないで済むようにお答えをいただいて、これで終わることにいたしましょう。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 北京のほうに政府代表を送るとか、党の代表を送るという考えは、ただいま持っておりません。  それから、先方の要人と私どもが接触を持ってはどうかという御質問でございますが、これは御遠慮いたしたいと思います。  それから、領事館の交換、貿易代表部の設置等も、ただいまのところ考えておりません。  最後に、延べ払い問題でございますが、私は、穂積さんと同じように、延べ払いというのは政治援助であるとは思いません。商売であると思います。ただ、しかし、これは自由圏、共産圏、低開発圏等、それぞれわれわれの貿易を進めておりますので、やはりある程度の輸銀の資金的制約は受けることは当然であります。したがって、私どもとしては、そういう全体の貿易をマキシマムにふやすという観点から検討すべきものと思うのでございまして、昭和三十九年度のものにつきましては、まだ相談いたしておりませんが、全体を見て検討したいと思います。
  63. 赤澤正道

  64. 田原春次

    田原委員 私も、同僚の穂積氏の質問に続きまして、中国問題、特に中国国民党と中国共産党との妥協合作による新事態が来ておりはしないか、これに対する日本民族の行き方についてどうすればいいか、それを中心に御質問申し上げたいと思います。  昭和三十一年の十一月二十七日の夕刊に、APのカンボジア発電報として、周恩来首相とシアヌーク殿下との会談の記事が出ております。この中に、周恩来が蒋介石氏に対する態度を言っております。これは、要約しますと、蒋先生の処遇について私は旧友であるから申し上げます、北京にお帰りになれば、部長の地位では低過ぎると思います、——溥作義が当時国防委員会の副主席でありましたが、少なくともそれ以上でなければならぬと思います、それから、台湾の帰属は、まず蒋先生が北京に帰ることが先であり、その後において平和的解決を進めますという電報が載っております。私は私なりに一つの夢を持ちまして、同年の暮れに単身第二回目の中国訪問をいたしました。そして、北京飯店にずっと一月中旬までおりまして、私なりの情報の収集と要望をして回ったのです。それは、もはや大陸は中国共産党が完全に占有しておるし、台湾に蒋介石国民党が行っておるんだから、いつまでもこのままでおってはやっぱりよくないから、この辺で話し合いを進めてはどうか、われわれ日本民族がいつまでもお手伝いするという申し出をした。ところが、向こうは笑って、そんなむずかしいことを言わないで、芝居でも見なさいということでありました。しかし、私はまじめにやるということで回ったわけです。最後に、謝南光という台湾の人で高等師範を出ました非常に有能な方で、台湾同志会の会長をやっておる人がおりまして、私の泊まっておる北京飯店に参りまして、実は田原先生がおいでになると同じ飛行機でアメリカ人のコーヘンという者が参っております。これも北京飯店に泊まっております。そうして、自分は蒋介石の密使である、中国国民党と中国共産党との話し合いができないかと言うて来た、田原先生と同じであるし、同じ飯店に泊まっておるから、何か連絡があるかと思って二週間見ておったが、何にもない、そこで、あなたがお帰りになるならば、コーヘンとの交渉のこともありますので、周恩来首相としての公式の御回答を香港に着くころいたしましょうと言うて、私は北京を立ったわけであります。そして、香港に参りまして、昭和三十二年の一月の中旬に某大新聞の香港特派員が特電を打ちまして、六段抜きで記事が載ったそうであります。先日来さがしておりますが、どうしてもわかりません。それは、香港に大公報という中国側の公式の新聞があります。その新聞に出たわけです。題は、「蒋先生に答える、周恩来」という題であります。内容は、私が言うてまいった内容を全くそのまま周先生の案として出しておるわけです。私は非常に喜んで帰ったわけであります。たまたま、いま御質問になりました穂積さんは、穂積さんの独自の見地から大陸においでになった。帰りまして情報を聞いております。しかるところ、浅沼稻次郎故委員長が、私たちがそういう行動をしておることをあまり知らずに向こうに参りました。ただいまの成田書記長と一緒に行ったのですが、行きましたら、私の接触しておる部面の連中が、田原先生の案はどうなりましたかと聞いたから、何もしておりませんというわけで、私はその話を聞いたのです。田原君、かってなことを言ってもらっては困るということで、その後運動を打ち切っております。本日外務省のほうに要望して資料を出してもらいましたのは主として国共合作の従来の経過ですが、現在吉田さんの行こうとする段階における日本民族の行くべき道はどうかということについて、特に日本政府大平さんの御見解を明らかに聞いておきたいと思う。  それは長くなりますから簡単にいたしますが、第一次国共合作は一九二四年から二七年、孫逸仙の時代にやっております。これは結果があまり思わしくなかった。第二次は、一九三七年から四五年の長きにわたりまして、主として抗日戦線の結成の意味で、当時アメリカのほうからマーシャル特使が参りまして、中国共産党と中国国民党との提携による抗日戦線の結成を要望いたしまして、これも途中では少し変わってきておりますが、一応できております。第三次の国共合作に似たようなものは、一九五五年から今日まで、ヨーロッパにおいてやられておることは、ときたま新聞に出て、私ども承知しております。ある場合においては、ポーランドで米国と中華人民共和国大使との交渉、ある場合にはジュネーブにおいてやっておる。すでに八十数回やっておるというふうに聞いておるわけです。これはこまかい問題でありますが、両国にとって必要な問題については、国交は回復しておりませんが、出先の機関において話をする。これは出先だけで勝手にやっておるのではなくて、本国政府意思を十分聞いておると思います。したがいまして、その米中の大使級会談はそれなりにそれは意味があることとしまして、いまわれわれが考えるべきものは、フランス中国承認による問題をどうするかという問題もさることながら、台湾と大陸とをいかに仲よくさせるかという問題であると思います。先ほど穗積委員も言いましたように、台湾台湾人は大体八百万人おり、これは、過去五十年間、日本の支配のもとに日本の教育を受けて、やや裕福に暮らしておったわけです。そこに大陸から蒋介石軍が大体六十万、それに随伴して来ました文官その他避難民四十万、約二百万と言っておるわけです。この二百万が中国国民党と称して日本と結び、それと話をしているわけであります。これに対しても様々な動きがあることは、おそらく外務省も御存じだと思います。東京におきましても、私のところにも蒋介石関係の代理の者が、要らぬことをしなさんなということで来まして、いろいろな動きがあるわけです。そこで、なるほど吉田茂氏は個人で行か執ると言い、また、私ども社会党としては好ましくないと思っておりますけれども、池田首相とも会ったりしておることを見れば、全然現政府考え方を無視して行かれるのじゃないと思います。行かれるならば、この辺で蒋介石とその御一統が北京に平和に帰れるような方法、メンツ、待遇等を考え、号して中国台湾との平和的な統一をさしてやるべきじゃないか、こういうふうに私は思っております。この意見に対しまして、なかなかむずかしい問題もありますけれども大平さんの御見解をただしておきたいと思います。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 田原先生の、人間して御真情から出たただいままでの御努力、御勉強、また御見解に対しましては、敬意を表します。ただ、日本政府としてそういう問題にどういう見解を持っておるかと切り込まれたら、私といたしましては、これは先方の問題でございますと答えざるを得ないと思うのでございます。ただ、私どもがいま問題にしておりますのは、日本国民政府との間は、戦後日本中国大陸との間柄の問題として、若干の問題について誤解が生じておるわけでございます。したがいまして、そういった誤解のないように、ちゃんとした理解を取り戻さなければならぬ、こう思っておるのがいまの私の関心事でございまして、それよりさらに、いま言及されたような問題についてわれわれがとやかく介入しよう、そういう意図は持っておりません。
  66. 田原春次

    田原委員 じゃ、別の面からもう少し同じ問題についてお尋します。外務省の調査でも、香港にアメリカの商社が二百二十社来ております。一体香港にアメリカの商社が何ゆえにおるかということです。日本に売りたいならば東京におります。韓国に売りたいなら京城におります。台湾に売りたいならば台北におります。フィリピンに売りたいならマニラにおります。インドネシアに売りたいならジャカルタにおればいい。何ゆえに香港におるかということです。これは、要するに、アメリカの品物を数段階を経て中国大陸に売っておるということです。外務省の御調査によると二百二十社おるが、大部分は日用品を取り扱っておるといいますけれども、必ずしもそうでない。ゼネラル・モータース、あるいはゼネラル・エレクトリック、あるいはカイザー等、相当大きな商社その他が行っております。私は、第二回に中国に行ったときに、向こうの要人から、私の親友から聞いたのでありますが、イギリスの労働党の、前首相のアトリーがモスクワ経由で北京に着いたとき、北京の飛行場に五百台のぴかぴかしたキャデラックからクライスラー、ビュイックなど、アメリカ製の自動車で迎えたので、アトリーがこの迎えの車を見ながら、どうして一体アメリカの自動車をこんなに持っておるのかと言ったら、アトリー先生、私のほうは全世界に千四百万の華僑がおる、必要なものはどこからでも買えます。と言ったということを、私の中国の友人が言っておったのです。ひとり自動車だけでありません。工場プラント等も相当のものが第三国を介して入っておるのであります。さればこそ香港に米国商社二百二十社が行っておると私は解釈せざるを得ない、そこで、あなたの部下である朝海アメリカ大使が、これは私は直接聞いたわけでありませんが、ワシントンにおりながらノイローゼになっておる。それは、いつ夜中に国務省から、今般わが米国は中国承認することに決したと電話がかかるのではあるまいかということで、危惧しておったということが伝わっております。事実であるかどうか存じませんが、そのことは、要するに、ワシントンにおきましても、ある時期に米国が中国承認するのではあるまいか、どういう条件か、時期は別といたしまして、そういう空気があるのではないか、それを出先の日本大使館がキャッチいたしまして、大使が夜中も寝られなかったのではないかと私は想像いたします。なおまた、フランス中国承認問題以来、日本の新聞に出ますニューヨーク・タイムスであるとかニューヨーク・ヘラルド・トリビューンの論説、あるいはウォルター・リップマンの批判、これらの断片的なものを総合いたしましても、アメリカは未来、永久に中華人民共和国を承認せぬのじゃないような印象しかない、いわんや、いまのジョンソン大統領のベトナム問題からわれわれが類推いたしまして、永久に承認しないようなことはないような気がするわけです。穗積委員が心配して質問したことはそこにあると思う。要するに、突っ走ってはいかぬかもしれませんけれども、わが日本民族の中国に負います恩義、義理というものは大へんなものだと思う。日本が戦争を起こし、日本が大陸を占領し、そして日本が負けて、そのためにいろいろな犠牲を負わされた。なるほど、蒋介石総統は、あの有名な、恨みに報いるに徳をもってせよと言いましたけれども、これはまさにそのとおりでありますけれども、現に中国から帰りました人々の個人個人の話を聞いてみなさい。中国国民党並びにその当時の中国人の日本人に与えた被害というものはひどいものであります。最も整然としておったのは八路、赤軍で、紅軍は奪略その他はしなかった。そういう行動があったから、蒋介石総統がああいう有名なことばを吐いたと思うのであります。義理も確かにありますから、これを尽くす必要があります。義理を尽くす道としては、蒋介石総統のメンツの立つような方法を講ずべきでないか。そのためには、いま穗積委員が言いましたように、政府政府間で話をするか、吉田茂という人の交渉で話をするか、あるいは香港あたりに私的会談の機会を設けて、双方の打診をするか、もっとあなたが前向きになって、そういうことに努力したらどうか。このことが私たちの心配の種でありますから、申し上げておるわけであります。  たいへん私見をたくさん申し上げましたが、これらに対するあなたの御見解をもう一ぺんお尋ねしておきます。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、私ども、可能であり、日本のためになりいたしますことは、前向きで大いにやらなければならぬ責任がございまするし、また、それだけの勇気を持たなければならぬと思っております。問題は、それが可能であるか、日本の利益になるかどうかといった角度から、いま仰せのような問題は慎重に吟味いたしまして措置いたしたいと思います。
  68. 田原春次

    田原委員 慎重に吟味して措置したいというのは、いろいろ含蓄がありますから、幾とおりにも解釈できますが、さしあたり、外務委員あたりから超党派的に打診工作をやりながら、何かの前向きの動きをすべきじゃないかと私は思うわけでございます。たいへん私見をたくさん申し上げましたが、第四次国共合作に対して日本のとるべき道について申し上げたわけです。  最後に、これも穗積委員からちょっと触れておりましたから、簡単に触れますが、東京に台湾共和国臨時政府がありまして、大統領蓼文毅閣下という方がいらっしゃるらしい。その秘書の王建台という方から刷りものをときどきいただいておりますが、そこには臨時国会があって、議長もおられるようであります。いろいろ書いてありますが、心配することは、一つ中国論のほかに、それとは別個に台湾共和国、いま日本に芽ばえて扶植しているものを言うかどうかは別といたしまして、それに対する特に日本政府考え方中国一つであるということは、先ほどのことで大体わかりました。しかし、台湾人が自主的に共和国をつくることを妨害できないということで、これを一体認めるのかどうか、これこそは私はこの際はっきりした御説明を願っておきたい。なぜならば、もし日本で製造されたる台湾共和国なるものが台湾に帰った場合を想定いたしますと、まずこれはそれこそ第三次大戦の原因になる。中国一つだが、台湾人がつくるのだからいいじゃないかということになるかどうか。しかも日本でつくったということになれば、かつてアメリカにおこったキューバ人が入ろうとしたのと同じかっこうになります。しかも、それは、アメリカの従来の中米、プエルトリコ等に対してとった態度、キューバに対してとった態度、最近パナマにおける傾向等を見れば、やけくそになれば、蒋介石はだめだ、国共合作するかもしれぬ、それじゃ台湾をビューペット政府としてつくるということができないとも限らない。これに対するはっきりした方針日本国民にあなた方は知らしておかなければならぬ。台湾独立政府のようなものを、いまの日本の池田内閣が認めるかどうか。認めぬならば、帰ってもらったらよいと思う。東京におることは迷惑千万だ。これに対する御見解を聞きたい。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 いま仰せのような団体が存在するということは聞いておりますけれども、それは一つにとどまらず若干あるということも聞いております。しかし、必ずしも統一がとれておるとも聞いておりません。また、非常に有力であるとも聞いておりません。しかしながら、それはともかくといたしまして、これが日中の国交の上から申しまして有害であるというようなことになりますれば、政府として適切な措置をとらなければいかぬと思います。
  70. 田原春次

    田原委員 大体本日承りたいことはこれで終わります。
  71. 赤澤正道

    赤澤委員長 永末英一君。
  72. 永末英一

    ○永末委員 きのうの参議院の外務委員会で、大平外務大臣から、一つ中国一つ台湾という考えはしぼんでしまったというような御発言があったと聞いておるのですが、それはどういう内容のものであったか、お聞かせを願いたい。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 フランスが一月二十七日に北京政府外交関係を樹立するということを決意された、それと同時に、国民政府との関係は切られなかったという事実を、その時点でこれを解釈すれば、一つ中国一つ台湾ということを考えておるように解釈されるということを申し上げたことが予算委員会でございます。それが、片や北京から、片や国民政府側からきのうの朝対仏断交の措置をとるようになったので、フランスがそのように考えておったかどうかわかりませんが、一応その事実をとらえて解釈すればそう解釈できるじゃないか、そういう解釈が成り立つとすれば、そういう解釈は、その後起こった事態によってついえたと見るべきじゃないか、そのように申し上げたわけです。
  74. 永末英一

    ○永末委員 いまのお話を承りますと、フランス政府がそう考えておったかどうかは別として、日本外務大臣フランス政府が中共政権と国交回復をするといった事実をとらえた時点において、そういう御解釈をなすった、こういうぐあいに聞えるわけです。ところが、われわれの疑問とするところは、なぜ日本外務大臣がそういう考えを持ち、そして、きのう国民政府フランス政府に対して外交関係を断絶する言った瞬間にその解釈はなくなる、そんなにネコの目のように日本外務省外務大臣の解釈は変わるのですか。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 解釈が変わったわけではありませんで、一月二十七日の時点にはそういう解釈ができるという、それを材料として解釈して見れば…。しかし、その後の事態でそれはついえた。客観的にそれを見たり、そういう過程を経たそういう考え方は、ついえたと見るというだけのことでございます。日本政府考え方がどうこうという問題じゃございません。解釈を申し上げておるわけでございます。
  76. 永末英一

    ○永末委員 解釈でございましても、政府外務大臣が言われることばでございますから、はなはだ重大でございます。すなわち、フランス政府が中共政府国交を回復すると申しましたときにも、それは台湾政府との関係においては無条件である、こういうことが前提にあったと思います。その無条件の解釈について、ある解釈を私はされたと思う。しかし、無条件であるというフランス政府のこれは表現でございますが、北京政府も、それから台北政府も、従来と変わらず、フランス政府北京政府との国交回復意思表示があった直後において、一つ中国ということを言っておった。これは事実だ。その事実を踏んまえながら、なおかつそういう解釈をされたのですか。もう一度お伺いします。
  77. 大平正芳

    大平国務大臣 私がお答えを申し上げましたように、一月二十七日の時点において、フランス政府がとりました措置そのままを解釈すればそうなるのではないかということを申し上げただけでございます。その後事態は発展いたしましたということでございます。
  78. 永末英一

    ○永末委員 いま起こっておる一つ二つの事件ですが、一つまた違うことが出れば解釈が違って、私は困ると思うのです。問題は、北京政府も台北政府もともに一つだと言いながら、現実の姿はどうであるか。これは日本政府としては現実を踏んまえながらそれぞれやってこられたと思います。すなわち、台北政府とは日華条約をつくって、そうして、その台北政府が現に領域として行政権の及ぶ範囲はこれこれだということを日華条約を結ぶときにちゃんとお互いの合意の上でそれをやってこられておる。しかも、北京政府に対しては、日本政府側は政経分離ということで、いわば政府政府との間では交渉しないというたてまえだけれども日本国民がやっていく、中共側とやっていく経済行為に対しては認めておるし、あるいは、先ほどお話がございましたように、その日本国民のある経済行為に対して政府の行為が必要なものについては措置をしてきておる。こういう形になっておると思うのです。問題は、政経分離といって、一言でわかったような気がするのでありますけれども、相手方は日本とは違って政経分離状態にない。ことばではございません。日本民間団体が相手方としておるのは、これはすべてが名前は変わりましょうとも政経分離状態になっていない。そこで、政経分離を押し進めていく場合に、いままでのように経済の量が少ないときはいざ知らず、これがどんどん進んでいく暁においては、一体この政経分離というたてまえが押し通せ得ない限界が来るのではないか、いやもう来ておるのではないかということが考えられる。このことについてどう考えられるか。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいまの体制で、中国大陸との間の貿易を進めてまいる上におきまして、別段の支障は感じておりません。
  80. 永末英一

    ○永末委員 台北政府については、昨日の予算委員会におけるわが党の小平君の質問に対して、池田首相は、一つ中国です、相手方は台北政府ですということを言われました。しかし、いまあなたがお答えになるように別段の支障は感じていないけれども、北京政権との間に日本国民が行なう経済行為について日本政府がいろいろな措置をしてきたことは、これは事実である。しかも、相手方は決して政経分離状態になっていない。もう少し、高い次元がお好きですから、高い次元からながめてみれば、それぞれやはり現実に支配している台北政権と北京政権との現実の力を見ながら処置してこられたと私どもは思うのでございますが、いかがですか。
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 国民政府との間に外交関係を持ち、条約を持っておるわけでございます。にもかかわりませず、中国大陸との間には貿易等の民間レベルの接触があるということは事実でございます。もとより、最近、中国大陸日本との間柄につきまして、若干の認識の相違というか、距離がありましたことは事実でございますが、ともかく現にこういう民間レベルの接触が同時に併存しておるということ、これは条約上の保証も何もない姿においてあるということは事実でございまして、それは国民政府も知っておると思います。
  82. 永末英一

    ○永末委員 問題は、経済取引がどんどん進んでいった暁において、その経済取引をやはり最終的に認めておるというのは日本政府の行政行為だと思うのです。延べ払いにいたしましょうと、それぞれの日本政府の行政行為がなければこれはできない。それをやっておいて、いまのところ条約上の何らのいわゆる保護する力、権限がそういう意味合いでは国際的にはないという状態で進ましておいて、一たん何かあった場合、どうだ、こう言われた場合に、一体日本政府はどうしますか。やはり、いま行なっておる日本政府の行為そのものが、将来何かが起こるであろう場合に、裏を返せば、結局相手方と日本政府とが相対さなければならぬ、こういうことになるつもりで進めていなければ無責任きわまると私は思うのですが、いかがですか。
  83. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへんむずかしい御質問でございますが、そういう事実があるということ、つまり、政経分離の原則とは何ぞやといって、厳密にこれは国際法にこういうプリンシプルが別にあるわけでもないわけでございます。一つ日本中国大陸に対してとる政策をそのように表現しておるわけでございます。事実関係として両国の間に民間レベルの貿易が相互の信頼に基づいて行なわれておるということでございまして、これは商取引その他文化交流の場合でも、両当事者の間で信頼というものが基調にあって運営されておると思うのでございます。それ以上の保証がどこにあるのだと言われても、これは条約も何もないことでありますから、あるとは申し上げられないわけでございます。ただそういう事実があるということを申し上げるよりほかに説明のしようがないと思います。将来はどうなるのだということでございますが、いま私どもはこういう仕組みで別段支障なくやっていけておりますという御報告をしておるわけです。
  84. 永末英一

    ○永末委員 この問題については、いまおことばにございましたように、民間レベルということばを使われておる。相手方は民間レベルですか。これをひとつ伺います。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 私どものほうは民間レベルでございまして、先方のほうはそれぞれつかさつかさがあることと思います。
  86. 永末英一

    ○永末委員 時間があまりございませんから、一つの問題にあまりかかわりたくはございませんが、先ほどのお話を伺っておりますと、北京政権に対する対処のしかたは、国連でこの問題がある決着に達したあと考える、こういうお話のようでございましたが、そうですか。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 私はそのあととか前とかいう時点を申し上げたつもりはないのでございまして、一つの私のほうの基本的感じ方として、そのような事態、そのようになるにはいろいろな事態が先行してくるわけでございます。そういうことになるということになれば、日本政府としても決意しなければならぬのじゃないかということを申し上げたのでありまして、時間的な手順がどうなるというようなことは、さだかに私にはわかりません。
  88. 永末英一

    ○永末委員 私どもは、北京政府と台北政府とがお互い一つ中国だということを、これは従来の行きがかり上そういう主張をせざるを得ないからやっておる。しかしながら、日本政府としては現実に即した外交方針をとらざるを得ないと思う。ただし、現実に即したと言ったって、外交でございますから、相手方の言い分がある。その言い分をどう解きほぐしていくかというところに、私は、日本外交の自主性と特殊性があると思います。その意味合いで、まさしく北京政府政府間の交渉はございませんが、たとえ経済問題であっても、日本人が接触をしておる限りにおいては、必ずはね返りが台北政権にあるはずでございます。たとえば、そういう意味合いで台北政権というものが一体どんなものかということをわれわれは考えてかからなくてばならぬ。いま民間レベルなり私人ということばを私が申しましたけれども、吉田さんが台北に行かれる。これは政府の知ったことではないという外務大臣考え方。ところが、新聞の報道するところによれば、もしそこで日本政府国連等においてとる行動あるいは日本政府の行動についてあちら側が注文を出す、——吉田さんはどうされるか知りませんが、注文を出すということはあり得ることである。そういうことを出された場合に、大臣は、答えられるかどうか知りませんが、わが日本外交関係がないとお考えですか、響いてくるとお考えですか。
  89. 大平正芳

    大平国務大臣 日本の現実のとっておる政策に対して、吉田先生に御注文されるようなことはあり得ないことと思っております。これは日本政府の問題でございます。
  90. 永末英一

    ○永末委員 たとえば、近い過去に、周鴻慶という人の問題がある。これは、日本政府の法律行為としては、十月二十六日に入管が強制退去ということで判定を下して、あとは行政事務として本人が希望する北京政府が支配している領域へ帰ればそれでよろしい。ところが、問題は、それから八十日近くももたもたとして、その間やはり同じような、私は私人の資格だと思いますが、自民党の大野副総裁が台北へ行くというようなことがあり、そうして、周鴻慶という人が北京のほうへ帰るやいなや、国民政府経済断交をする。国民としては非常に迷惑だと思うのですね。日本外務省一体何をやっておったのかしらぬけれども、わけのわからぬうちに何かぽかっと経済断交をやられたというのでは、幸い今度は民間経済断交はあまりないということで済んでおるようですけれども、何かその辺に、私人には間違いないが、私人のやる行為等によって日本国民が不利益をこうむるということでは、外務省責任は免れないと思います。この辺について外務大臣のお考えを伺いたい。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 周鴻慶問題は、日本政府としては、日本政府の法令に従った行政措置としてやったわけでございます。とりました措置に私は間違いはないと思っております。これに対して国民政府側でいろいろの抗議がなされたり、あるいはこれに対して報復の措置がとられたということも事実でございます。なぜそういうことが起こるのかということがむしろ問題なのでございます。これは、先ほど私が申しましたように、わが国は正規の外交関係を国府と持ちながら、中国大陸との間におきましては事実いろいろの接触を持っておるということ、そのこと自体は国民政府も私は知っておると思うのでございますが、事柄によりましては、日本政府のとりました措置に釈然としないものがあるように思います。これは、要するに、理解、認識の違いと申しますか、そういうものが現にあることは、私は事実であろうと思うのでございます。したがって、国府との間の国交調整、国交改善という問題は、そういう認識のベースが違うというのは困りますから、そういうことがないようにやらなければならぬのではなかろうかと思っておるわけでございます。これはいい悪いの問題でなくして、現にそういう事実があるということでございまして、それはおそらくお互いの認識の違いに基因しておるのではなかろうか、そういうものをもうなくするように努力するのが私の任務ではないかと思っておるわけです。
  92. 永末英一

    ○永末委員 日本国民外務省のやっておられることに非常に不安の念を持っておる点があるわけです。たとえば、いま申しましたように、最初、吉田さんの訪台というものは、周鴻慶問題のあとで、ともかく台北政府の気分を何とかやわらげようということが事の起こりのようでありますが、私の知りたいのは、台北政府日本外務省に向けて五回ほどいろいろ意見を言ってきておる。何を言ってき、そのことに対して外務省はどう答えたかわからぬ。その間八十日たって、とたんに経済断交、こう来たわけです。そういうものを本委員会で明らかにされる御用意がございますか。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもとしては、日本政府はこういう法令に基づいてこのような措置をとっているんだということをるる説明をして、向こうの誤解を解くべくつとめたわけでございます。異例の措置でございますが、後宮アジア局長を派遣いたしまして、諸般の実情も説明させて、手順は尽くしたわけでございますが、遺憾ながら十分徹底しなかったうらみはあるわけでございます。私どもがそのために法を曲げたり措置を誤るというようなことは絶対してはいけません。そういうことはいたしてないと思います。
  94. 永末英一

    ○永末委員 いまの外交政府政府でやっておりますが、先ほどの外務大臣のことばの中には、国連憲章を順守して、国連の精神に即してやっていくということがありました。憲章の第一条第二項には、自決の原則というものを尊重し、その上に立って国際社会の平和を保っていこう、こういう原則がうたわれておる。これは日本政府としてもその国連憲章どおりに現在も堅持しておられますか。
  95. 齋藤鎮男

    ○齋藤(鎮)政府委員 国連における行動につきましては、国連憲章の目的と原則がございまして、そのほかに、決議によってそのおりの事情を考慮してということもございます。ただ一つの要素だけでなく、いろいろな要素が入ってくると思います。
  96. 永末英一

    ○永末委員 日本政府は他国の政治に干与する必要はございません。ただし、他国の政治内容が変わってきた場合に、その現実は現実として認めていくのが国連憲章のいわゆる自決の原則を尊重する精神だと思いますが、外務大臣はどうお考えですか。
  97. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 国内事項のことにつきましてはほかに規定がございますが、民族自決のことは、国連憲章で言う場合には、主として植民地とかというように、ほかの民族によって支配されておる民族の自治ないし独立の促進という趣旨から言われておるものと思います。
  98. 永末英一

    ○永末委員 この秋に北京政権の問題が国連で問題になると思います。決着するとかどうかは将来のことですから私どももわからぬと思います。日本は、その前に極東の安全のために、特にまた日本の安全のために日韓会談をいまやっておられる。私は、外務大臣のこれからつくられていかれる日程の中にこれら重大な問題が一つになってかかってくるということであっては、現在のところ日本の国内においてこれらの問題を一挙に解決することは非常に困難だと思う。その意味においては、日韓会談はいわゆる中国問題に先がけて日本としては解決をしておかなくちゃならぬ問題だとわれわれは考えております。外務大臣はどうお考えになりますか。
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうスケジュールを組みまして、うまいぐあいに片づいていけばいいですけれども、事柄がスケジュールにうまく入り込むように解決できるかできないか、これは交渉の内容次第でございます。日韓会談につきましは、私は、早ければ早いほうがいいと思いまして、鋭意努力をいたしておりますが、まだ漁業問題で渡り合っておる最中でございまして、これがいつ片づくということをいま自信を持って申し上げる段階ではございません。
  100. 永末英一

    ○永末委員 きょうはプロローグでございますから、この程度で終わります。      ————◇—————
  101. 赤澤正道

    赤澤委員長 次に、経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件を議題とし、政府から提安理由の説明を聴取することといたします。外務大臣
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  経済協力開発機構条約は、一九六〇年十二月十四日、欧州経済協力機構の加盟国十八並びに米国及びカナダによって署名され、翌一九六一年九月三十日に効力を生じたものでありまして、この条約により、欧州経済協力機構は、欧州の地域的性格を脱し、かつ、後進国の援助をその目的の一つに加えた新たな経済協力開発機構に改組されたのであります。  わが国は、同機構への加盟の希望機会あるごとに表明してまいりましたが、一九六二年十一月の総理訪欧を契機として、機構側においてもわが国の加盟を招請する気運が急速に高まり、一九六三年三月、機構は交渉の開始を決定いたし、同年五月から七月にかけて東京及びパリにおいて交渉が行なわれ、その結果、同年七月二十六日、機構はわが国の加盟を正式に招請するとともに、交渉の結果を記録する了解覚え書きの署名が行なわれた次第であります。  経済協力開発機構は、高度の経済成長、後進国の援助及び貿易の拡大を三大目的とする国際機関でありまして、経済通商の面のみならず、金融、科学技術、農業、漁業、原子力、教育、労働等、きわめて多岐にわたる分野において活動しております。  わが国は、この機構に加盟することにより、先進工業国との間の協力関係の緊密化を通じ高度の経済成長を達成し、もって世界経済の発展に貢献することができるのみならず、他の加盟国の経済動向に関する情報の入手、対外投資の円滑化、後進国援助の合理化等の面においても期待し得るところが大であります。  よってここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  103. 赤澤正道

    赤澤委員長 これにて提案理由の説明は終了いたしました。  明日午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十四分散会