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太田参考人 太田でございます。
原子力船の問題のうちで、その主
動力源になります
原子炉につきまして、申し上げさせていただきたいと思います。
ただいま
委員長から
海外の各種のデータという
お話がございましたが、私、
三井物産といたしまして、
米国のゼネラル・エレクトリックのオーソライズド・ディストリビューターとして活動しておりますので、
通称GEとしてみなさんおなじみでございますが、
GEの
開発いたしました、ただいま
お話のございました六三〇Aにつきまして、
お話しさせていただきたいと思います。
GE社は
ボイリング・ウオーター・タイプの
原子炉をつくっているということを一般的に
考えられておりますが、
GEにおきましては、現在この
ボイリング・ウオーター・タイプをつくっておる
部門以外に、強力な
原子力部門を相当持っておりまして、こと
舶用の
原子炉に関しましては、
ボイリング・ウオーター・タイプだけでなしに、加圧水型、また
液体金属の
冷却型、
ガス冷却型というふうな、型式の
範囲も広く、また数といたしましても
世界におきまして最もたくさんな実績と
経験を持っております。これは
原子力潜水艦を除いた話でございますので、さように御
承知願いたいと思います。
この六三〇Aの生まれました
いきさつを簡単に申し上げますと、一九五一年以来、
アメリカの
原子力委員会と
米国の空軍の
依頼を受けまして、大型の航空機用の
原子炉の
開発に着手したわけでございます。これは高温
ガス冷却灯の
開発でございますが、五一年から、もう十数年以前になりますか、始めました。ところが、六一年に至りまして、ロケットの発達が非常に盛んになったので、
米国空軍といたしまして、大型航空機はもうやめようということになり、当時ケネディの判断によりまして、布告によりまして、大型の航空機自体が中止になり、したがって、これに伴いまして、航空機用の
原子炉がやめになりました。
この前後から、これをひとつ
民間に解除しまして平和的の利用にしたらどうかという
考え方で、
GEといたしまして全社的な知能を集めて、約四年間かかりまして
開発いたしましたのが、今日出てまいりました六三〇Aなんでございます。
この航空機をやりました後に、
米国の
原子力委員会また海運局並びに
GEのほうで協議の結果、船
舶用の推進機用として利用すべきだという結論に達したわけでございます。ただ、しばらくの間このいろいろなデータが秘密になっておりましたので、改良に相当日数がかかったのでございますが、昨年の八月に至りまして、この秘密が解除いたされまして、一般に公開されたわけでございます。
GEといたしまして、この六三〇Aが
舶用として最も優秀なものであると結論を
出したわけでございますが、これは
GE独断の結論でございません。
米国の
原子力委員会、また海運局、また
船舶設計会社あるいは船会社、これらがめいめい独自に
舶用の
原子炉を
研究されておりましたが、それらの結果の御
意見も同じくこれを慰められまして、はっきりした裏づけを得たわけでございます。
これは非常に目方が軽くて、小型でございます。そうして、
過熱蒸気を発生する能力を持っております。八百八十トンの上に摂氏九百九十度という過熱無気を発生する能力を持っております。したがいまして、従来の油だきボイラーを使っております船のボイラーを取り除きまして多少手を加えれば、そのままそこにこの
原子炉並びにボイラーを据えることができるという、形といたしまして軽便なものでございます。在来の蒸気タービンとかはそのまま使用することができます。
次に、ただいま軽量と申し上げましたが、軽量ということは
原子力の炉の値段に大きく影響する問題でございます。御
承知のとおりに、
原子力の炉というのは、運転の費用は、燃料代は油より安い。ただし、一番問題は最初のイニシアル・コストなのでございますが、これが、非常に軽量であるがゆえに値段を下げる大きな要素となっておる次第でございます。また、小型でございますので、その製作、組み立てにあたりましては、工場内で一貫して組み立てができ、運搬も非常に簡単でございます。現場における、船内における据えつけも非常に作業が簡単でございます。また、燃料の
交換におきましても、在来のものが相当長時日を要しましたに比べまして、数日間で取りかえができるということで、船全体といたしましての
経済性を著しく向上する見込みを立てております。
軽量小型という一例を申し上げますと、ここにシャフトホースパワー一万馬力の
原子炉並びにボイラーを組み立てましたユニットでございますが、これは
原子炉の遮蔽も、圧力ベッセル、遮蔽、それからボイラー全部含めまして大きさが、大体円筒型で直経五メートル、高さ十メートルぐらい、重さ三百十二、三トンという
設計データが出ております。
さらに一例をとりまして、現在御
承知の
アメリカのサバンナ号でございますが、この馬力よりも大きい三万馬力の六三〇A型を例にとりますと、この重量は四百トンでございます。サバンナ号の現在の
原子炉ボイラーの重量が二千四百トンでございますから、重量が約六分の一ということになっております。しかも馬力は、三万馬力と申しますとサバンナ号よりだいぶ大きゅうございます。
なお、安全性につきましては、これは気体
冷却炉でございます。
軽水を減速といたしました
空気冷却炉でございますが、
空気冷却炉のほうは本質的に
軽水冷却よりも安全と一般に
考えられております。また、小型であるために、突衝の事故あるいはいろいろな船内における安全装置の取り方というものに対して非常に楽でございます。小さいということはまた衝突の的が小さくて、破損のプロバビリティー、災害をこうむるプロバビリティーが少ないということもいえるわけでございます。
この六三〇Aの前身であります一号炉というのは、一九五四年から五六年の間に製作されまして、引き続き一九六一年まで運転されまして、この間に各種の
実験をやり、試験データもとっております。ただ、当時は航空用として
考えておりましたが、航空用に対して要求されておるデータというものは、相当きびしいものでございます。したがいまして、寿命があまり長くなかったということはいえるのですが、
舶用といたしましては相当そういう要求データを下げることができますので、自然それが寿命と信頼性を増すことができたという結果を来たしました。
なお、この六三〇A型は将来における発展性を内減しております。たとえば現在の
空気冷却でございますが、この空気を蒸気に変える、あるいはさらに
技術が進めばヘリウムに変えるというふうなことによりまして、同じ炉で出力をさらに高めるということもできるわけでございます。また、現在の濃縮ウラン二三五にかわりまして、プルトニウムを使うというようなことも
考えられるわけでございます。
なお、国産の問題でございますが、この
原子炉と蒸気発生装置と含めましたユニットは、大体四〇%輸入、六〇%が国産ということが検討の結果可能と
考えられております。タービンとか補機とか、これは全部国産でできることは申すまでもございません。また、この組み立てば一貫して
日本の工場で行なわれます。現在受注後三十六カ月で納入できる。百時間の試験をして渡すという自信を持っております。燃料の寿命は、一回のチャージによりまして全出力で連続一万五千時間、約二年近くもつわけでございます。
米国におきまして、
米国の
原子力委員会、海運局の
依頼に基づきまして、
船舶設計のオーソリティーでございますジョージ・G・シャウプ社、これがこの六三〇Aをつかまえまして、
舶用としての経済の比較検討をやっております。その結果、現在としては六三〇Aが最も優秀なものであろうという結論が出ておるわけでございます。
GEにおきまして、現在USメール・ラインとかその他の会社と具体的な商談を行なっております。また、ヨーロッパ、英国、西独な
ども、この六三〇Aの採用をきめたわけではございませんが、
技術的の検討を始める決意をきめたと聞いております。
わが国としましては、先ほど
石川さんからも
お話ございましたが、海運界の将来、また、
日本の産業として大事な
船舶の輸出、こういう面から
考えまして、
世界の趨勢におくれないように、一歩でも先んじていくという必要を私
ども痛感するわけでございます。
この六三〇Aは、現在すでにでき上がったものでございまして、決して紙の上の推測とか、あるいは希望としてとどまっておるものではございません。また、現実に各種のテストも行なったプルーブン・タイプの炉でございます。最も進歩した
舶用の
原子炉として、これを
原子力船開発の一環として、この
研究、解明をお取り上げいただくことが、最も緊急必要なことではないかと
考えております。また、これを御紹介申し上げるのが商社としての義務であると
考えて、以上御
説明申し上げる次第でございます。どうかよろしく御考慮を願いたいと思います。