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大屋参考人 イギリスの
AGRと最近の
模様、
アメリカの
ニューヨークのレーべンスウッドの百万キロの
原子力発も所の
建設見送りといいますか、そういう
二つの問題について情報を申し上げます。
最初の
AGRは、御
承知のように、アドバンスドという字がついているくらいで、
進歩型でありますが、そのねらいは、従来の
イギリスの一貫した
発電原子炉計画というのが、御
承知のとおり、
天然ウラン・
ガス冷却というその
やり方ではどうもがかいが大きいものでありますから
コスト、
建設費が高過ぎるというので、それをもっとコンパクトの
設計にしたいということと、それから蒸気の
温度をもっと高めまして熱の
効率をよくしよう、こういうねらいで、もういまから五年くらい前から
イギリスの
原子力委員を中心にしまして、プロジェクトをつくっておりまして、それが三年半ほど前にウインズケールで
建設に着手しまして、最近に臨界に達して、いま試
運転をしておるのであります。これをやってみますと、なかなかいろんな困難がありまして、
炭酸ガス冷却であることば従来の型と変わりはないのでありますけれども、
温度が高いものですから、その
炭酸ガスが
減速材であるところのカーボンを腐食するといりような問題がありました。それにつきましては、何かメタンをまぜるとかいうふうな
方法で大体解決をした。それからいま
一つは、従来は
天然ウランの棒みたいなものを
燃料に使っておるのでありますけれども、今度は微濃縮の
酸化ウランのペレットと申しますか、そういう粒になったものを
燃料として使う。それのさやが、
最初はベリリウムでやっておったのがぐあいが悪いというので、最近は
ステンレススチールを使う
といりょうな
改良をした結果、たいへん順調に
運転をしておる。
イギリスの
原子力委員のほうとしては、もっと大きなもの、五、六十万
程度の
コマーシャル・サイズのものにやりたいということの希望を持っておるようでありますけれども、
原子力発電所を実際つくっておりますのは、何と読むのですか、
中央電力庁とでも申しましょうか、それの総裁は
日本に
米たことのありますザー・クリストファー・ヒントンでありますけれども、そのほうの実際家からいいまして、従来の型が、なるほど
考え方は旧式であるかもしれぬけれども、もう十くらいの
発電所を
建設もしくは
建設中でありますので、どんどん
技術的の実際上の
進歩があるんだ、それから、
最初は小さな十万キロ
内外のものだったのが、いまは御
承知のとおり
一つで五十万キロ
程度の
原子炉を使うようになりまして、普通の
火力の
発電所に比べまして、
容量がふえるというと急激に
コスト、
建設費が安くなるということが
原子力発電の特色でありますので、そういう大きなものをつくり得るということに引かされまして、そういう新しい
AGRというふうなものはもう少し見送ろうというような
考えであったようであります。
それで今日、
昭和四十三年度でございますか、四十三年までに五百万キロという英国の
計画というものは、大体従来の
コールダーホール改良型で押すつもりであったのでありますけれども、その
最終、もしくは次の
段階の一番スタートの
ダンジネスという
発電所がありますが、その
ダンジネスでは六十万キロくらいの
AGRのものをやろうじゃないかということに、
発電庁のほうも踏み切ったような
模様であります。
しかし、
イギリスは、いま申し上げましたとおり、
一つの
方法をだんだんに
開発をしていって、そうして
容量を大きくすることによって
コマーシャル・ペースに乗せよう、こういう方針で今日きておるのであります。それでありますから、
AGRというものにつきましては、
考えもいいし、また相当長く
研究もしておりますので、もう実際の
段階には近づいてきたのでありますけれども、
日本などでこれをすぐ取り上げてやるというところの
段階に、はたしてきておるかどうかということは、私は存じません。そういうのがいまの
イギリスの
AGRの状態であります。
その次の
アメリカのレーベンスウット、
カラス森と訳するわけでございまますが、
レーベンスウッドの百万キロの
原子力発電所の問題は、もう昨年の春からだいぶ
日本でも問題になりました。これは
ウエスチングハウスでやっておるのであります。
ウエスチングハウスは、そのほかロスアンゼルスにも二カ所、相当大きなものも受注をしたということを言っておりますし、
原子力発電所をニューコークの町の
まん中につくるという画期的の
計画に非常に大きな反響を与えておったのであります。
原子力発電というものは非常な危険なものであるということをやかましくいわれておった時代に、従来の
火力発電所こそ日常に
空気の
汚染をするのであるから、
空気汚染を避ける意味においてはむしろ
原子力発電の大きなものを
ベースロードとしてつくるべきものだというような議論がだんだん有力になりまして、
ニューヨークの
コンソリデーテッド・エジソンでありますか、その
会社が百万キロの
原子力発電所というものを
ニューヨークの町の
まん中につくるということに踏み切ったのであります。これは
ウエスチングハウスでありますから、
加圧水型でありまして、そして
原子力発電の
温度の低いということの
対策といたしまして、
スーパーヒーターを使って、油でもって
原子炉から出ましたスチームをさらに加熱する、こういう仕組みになっておるようであります。そういうものを発表したのでありますが、これは何といっても非常な大きな飛躍でありますので、だいぶ
地元の人が反対をしたり何かしております。
最初アメリカの
原子力委員会としては、いま申し上げました理屈で、これは踏み切るべきものだということで賛成をしておったようでありますが、
地元の不安というものも相当あったのでありましょう、たまたま
コンソリデーテッド・エジソンでもってこれと並行的に、何かほかに
電源がないかということで
研究をしておりましたのですが、ちょうど
カナダの
水力をひとつ
ニューヨークまで持ってきたら、どうかというような話がありまして、
カナダの一番近いところ、そこに大きなダムをつくりまして、これは
カナダでつくるのでありますが、それを一千百マイルというずいぶん遠方の距離を
送電をしてまいりまして、それを
ニューヨークで売る。こういう
カナダ側の
計画といまの
原子力発電というものを並行的に
考えておったようであります。ところが、その
水力のほうが、従来は
カナダ政府は
外国に
電力を出すということを禁じておったのでありますが、
カナダ政府が出してもよろしいということになった。一千百マイルというのはずいぶん遠い、
長距離送電でありますが、それを
直流送電という
——これは必ずしも新しいものではありませんけれども
——直流の
高圧送電でもって
長距離送電も
技術上差しつかえないということがわかった。しかも、
ニューヨークで受け取る値段が
原子力発電で期待しておるよりも少し安くもらえる、こういう話になりましたものですから、いろいろうるさい
原子力発電よりも、まずそのほうを先にもらおうじゃないかということで、二百万キロの
電力を
カナダからもらうということにすりかえまして、一応
原子力発電の仕事は見送る。延期でありましょうか、そこらの
事情はよく知りませんですけれども、見送ることになって、申請を取り下げたという
報告を聞いておるのであります。大体そういうことであります。