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鈴木参考人 委員長にお願いしておきたいのでありますが、冒頭に申し上げましたように、
委員長からの御依頼には、
原子力行政の問題とございました。ただ、参考資料としてお送りいただきましたのに十月一日の当
委員会の
会議録がございましたので、拝見しました。私は、
原子力潜水艦の
寄港問題が
原子力行政であるかというふうに考えると少し疑義があるのでありまして、これは政治の問題でありまして、
行政はもっと次元の低いものであります。しかし、それが問題になっておる
会議録をいただきましたから、一応読んで考えましたけれ
ども、そこに焦点を合わせる準備をしてまいらないのでありまして、今後は、
田中委員のおことばによるとどんぴしゃり、その
原子力委員会は
原子力潜水艦の
寄港の安全性について確認する
権限ありや、こういうふうな問題にしていただかないと、私
どもとまどうのでございまして、よろしくお願い申し上げます。ときおり参上いたしますので、これまではそういう迷いがございませんでした。したがって、ここでお答えいたしますことは一応考えましたことでありまして、十分に
研究が終わっておりませんから、留保づきで一応の
見解として申し上げます。せっかく本
委員会に参ったのでございますから、
発言いたします。
そこで、先ほどから
山田教授のお話を聞き、また
田中委員からの
質問も承っておりましたが、問題の根底に、どちらの御
意見に対しても私の
見解と若干重要な点において違う点がある。また同一の点もございます。
そこで、順序を申し上げますと、この
原子力委員会設置法の
所掌事務、これを普通私
ども権限と、先ほど
山田教授の言われたような
意味、内容においてとるのでありますが、これは言うまでもなく
原子力基本法に基づくところの制約がある。ですから、
山田教授の言われたように、文理
解釈、論理
解釈等々、つまり
解釈の問題といたしましても、これはあくまでも平和
利用のための
所掌事務、
権限である。そういたしますと、
外国の軍隊であるという問題は、あとでまた
国際法上の問題がありますから
一言いたしますけれ
ども、
原子力潜水艦は核弾頭をつけたそういう武器を持つ持たないにかかわらず、これは軍艦でありまして、軍事用の存在であることは、もう一点の
疑いもない。そういたしますと、
平和目的に限って
研究、
開発、
利用をするというこの
基本的な
規定のもとに存在する
原子力委員会というものが、軍艦に関することについてやれるわけはない。
一番極端な例をあげますと、たとえば
原子力委員会におきまして、軍艦
自身の機能として、また
国民に対して、
二つの
意味において安全な
原子炉は
原子力潜水艦においてどのようにあるべきかということを
研究することは、これは初めから問題になりませんね。それはもう自明のことである。ましていわんや
原子力潜水艦をいよいよつくるのだけれ
ども、どういう構造がいいか、コンテナはどうしたらいいかというようなことについて、専門的
学者の集まり、
委員の集まりであるから答申せよというようなことは、これはあり得ないことですね。これはわかりきったことでありますが、それが問題の一番の右翼にございます。
しかしながら、
原子力委員会が発表しました安全性に関する
説明というものを私も拝見いたしましたが、これ
自身は
原子力潜水艦を
日本でつくる場合はどうだというようなことには関連いたしませんけれ
ども、しかし安全であるということは、
原子力潜水艦という軍艦の存在を認め、そしてそれについて保証する、承認する、こういう
意味、内容を持つと、これは平和的
利用に限るという
性質からいって決して当たっていないのであります。
国際法上の問題はいま一応捨象して議論を進めますから。
ただ、私はこの点で
田中委員とも若干
見解を異にするかと思うのでありますけれ
ども、
原子力潜水艦は、私の一応理解するところにおいては、一〇〇%安全ということはあり得ない。そういたしますと、
日本国といたしまして、条約に基づくにせよ何にせよ、
原子力潜水艦が
日本の人口稠密な港湾に入ってくる、こういう問題がいま政治的に決定されようとし、生じようとしている。これは必然的に平和的
利用とか、先ほど申しましたような
国民の
基本権を尊重するというたてまえに立っておるところの
原子力基本法の
趣旨から申しましても、当然この一〇〇%安全でないところの
原子力潜水艦が入ってきた場合に、どんな
放射能の
被害が起こり得るだろうか、起こった場合にはどうなるだろうかということは、どんな
国家機関、どんな
研究施設によるかは別問題としまして、やらなければならない。
そういう点からいたしますと、たとえば私は第二条第九号を引いたのでありますが、これは「放射性降下物による
障害の
防止」と書いてございます。
原子力潜水艦の放出するところのものとは、降下物でございませんから違いますけれ
ども、これは
事柄の
性質上、ほかに
原子力潜水艦というふうな形態の
放射能の危険が生ずるということは全然予想しておらなかったからそういう
規定がないだけであって、そうすると、この
放射能降下物に対するこの
所掌事務を与えた
趣旨からいって、これは
国民の生命の安全を要求することでございますから、この場合そういう危険性に対する科学的の
調査なり
対策なりは第二条第九号によって
原子力委員会が、
政府の諮問があれば一そうけっこうでありますけれ
ども、やってもかまわない。しかしながら、それはあくまでも万が一入ってくることになった場合にどんな危険性が起こり得るか、それに対しては万全の措置をとるにはどういう方法が必要であるかということを、
原子炉安全の専門
委員会も設けられておるのでありますから、そういう審議を経まして、
原子力委員会が諮問に答申するという機能は私はして差しつかえない。
しかしながら、それはあくまでもそういうふうに
国民の安全ということを保護するために許されることでありまして、
原子力潜水艦自身が入ってくるけれ
どもこれは安全だ、こういう積極的な答申は何を
意味するかというと、決していま申しましたような
国民の安全ということを必死になって
防止する、それに対する政策を立てるという見地でないと私は思うのであります。軍事
利用という範囲にもちろん入ってしまう、そういうことを積極的にこの第二条第四号等によってなし得るということは、
原子力基本法の
趣旨から申しまして私は絶対に出てこないと思う。
それで、
会議録の中には具体的顕在的
権限と
潜在的権限ということばがございましたが、これは専門の
山田教授からもお話がありましたように、学術語としてはなじまない、まだないと言っていいと思います。ただ
考え方はわかるのでありますが、そういう正当な、認め得る類推
解釈、拡大
解釈ないしはもっと直接マッチしませんけれ
ども行政権の自由裁量というようなことを申しますならば、私が申しましたような第九号の放射性降下物、海域中に放出する
放射能、こういうところに
適用するのは認められるけれ
ども、いやしくも平和
利用ということを何よりも前提としておるところの第四号についてそういう基準をつくる、この程度の基準ならばこの
潜水艦は入っても安全だというようなことは、これは
根本の
趣旨に反する、これが第一点でございます。
しかし、問題はこれだけでは済まないのでありまして、せっかく御
質問でありますから、たとえば
会議録を拝見いたしますと、兼重
説明員、これは兼重
原子力委員の方だろうと思いますが、私
ども学術
会議のときに、学術
会議の議長をやっていらっしゃったと存じ上げておりますが、失礼ながら
原子力の
専門家ではいらっしゃらないのであって、それからまたこの
原子力委員会の方々を見ても、われわれよりはこれについて専門がお近いかもしれないけれ
ども、原子物理学とか核物理学とか
原子炉の運転操作とか、こういうことに、藤岡氏が若干
関係ありますけれ
ども、ほかの
委員はない。しかもこの
会議録を見ますと、
原子炉安全審査会にもはからない。はからないのは、十分に科学的に審査する材料がないから、そこに責任をとらせることはおかしいから、自分たちが責任をとって決定したのだというのでありますが、これはかりに愛知国務大臣が
委員長として政治的にそういう責任をとってこういう決定をするとおっしゃるのであれば、私はこれは認められると思うのでありますが、この
原子力委員会自身は専門的なそういう
調査研究についての科学的な結論を出す
委員会である。それが、これを決定された
委員のうちにはわれわれの信頼できる原子物理学なりそういうものについての
専門家があまりいらっしゃらないのに、政治的な判断をされるような結果になったということは、私はこれは二重において不当だろうと思います。
権限がないから違法であり、かつまたそういう決定のしかた、安全審査会の答申も待たないで、そういう
原子力委員だけが決定するということは、これは非常に違法であると同時に不当であるというふうに私は考えておるのであります。
さて、私の考えでは以上の
解釈で疑義がないと思うのでありますが、ここに日米安全
保障条約第六条あるいは施設等に関する協定第五条というものがございますが、これはこの
原子力基本法、またしたがって
原子力委員会設置法等の予想していない事態を生じたわけでございます。以上のような
規定によりまして、この
原子力潜水艦が
日本の港に随時出入をして、
領海内にある
日本の港の間も移動するということになるのでありますが、こういうことが一応認められているというふうに解されておる。しかし、これは確かにすでにアメリカの軍事体制のもとにおいては
原子力潜水艦といわず、核兵器が第七艦隊等にも設けられているということは確認できることでございますから、これがそういうものでなくて、いわゆる在来兵器でありますならばまだ困難な問題は起こらないと思うのでありますが、ここに私たちが単に条約及び協定であるとか、国際慣行であるというだけで済まない新しい問題が起こっているのではないか。つまりほかの場合と違いまして、これらは万が一の場合には広島、長崎に匹敵する、いな、それ以上越えるような非常な大惨害が起こる危検性をはらんでいるのでありますから、こういう問題が起こりましたときに、条約、協定あるいは国際慣行ということだけで私
どもは黙視しているということはできないはずであります。
しからばどういうふうに考えるべきであろうか。つまり現行
原子力基本法なり
原子力委員会設置法にはこういう事態は全然前提も予想もしていないのでありますから、そこにこれに対処する法の
明文がないことは明らかであります。そうしますと、私は政治学をやっておりますが、当
委員会の
性質上、政治論には入りません。したがって、
法律論に
限定して考えてまいりますと、私はとにかくまだまだ
原子力委員会の発表されたような
見解は信頼できない。学術
会議その他の
専門学者の
意見に非常に根拠があるように思うのであります。そういう危険のある場合に対して、政治的な問題を離れまして、
法律的にほうっておくわけにいかないけれ
ども、同時にいま存在するところの
関係法規というものはこれに対応するようにできていない。法の欠缺があるんだ。欠缺があるからといって、これを類推
解釈でやれるならば問題はありませんけれ
ども、そもそもそれは
原子力委員会なり、そういうものの存在を、軍事
利用のためにやるということであればひっくり返してしまうようなことになるのであります。
そこで、私は最小限、法的には新たに、特にそういう
原子力潜水艦というようなものについて、これはアメリカのものを検討しなくても、今日の科学上の発展から申しまして、また国際的に提供されているいろいろな資料によりまして、どういう構造、どういう内部構造あるいはその機能、あるいはまた
寄港する港の
立地条件、こういうものを客観的に十二分に
研究調査して、広く
国民の間に、こういうことであれば絶対に間違いない、こういうことは立て得ると思うのであります。アメリカの
原子力潜水艦は軍事機密上、内部を公開しない。もちろんいろいろ特殊性はございましょうけれ
ども、しかし
原子力潜水艦についてでも世界の科学が、この安全性の問題に対して
日本の
立場から
対策を立て得るだけの資料はもっともっと出ているのではないか。ですから、そういうふうな従来の
法規からいうと、
原子力潜水艦というようなものは一切
日本に来てもらってはいけない、こう言うべきなのでありますけれ
ども、現実にそうでない事態が起こったのでありますから、新たにそういう法的措置を講じて、われわれ
国民が十二分に安心できるような
調査研究を相当の準備と時日をかけましてやっていただく。そうでなくして、いとも安易に、全然そういう事態を予想しないところの
平和目的にだけ限る
研究、
開発、
利用という
委員会にこれを諮問すること
自身私は不適当であろうと思うのであります。ましてや積極的に
意見を述べるというようなことは、これは先ほど申しましたようにほとんど許されないことではないか。
それから、そういうふうにしまして最小限の、これなら絶対にもう間違いない、絶対に間違いないとわれわれが判定しましても、あらゆるものがわれわれの予想を越えて危険が生ずるのでありますが、そういう場合に備えまして、この条約及び協定の存在にもかかわらず、事
原子力潜水艦に関してはこういうような運航、こういうような
日本の港の出入はやめてもらいたい、こういうことは私は主張できると思うのであります。たとえば一九五八年ジュネーブにおいて協定されました
領海及び接属水域に関する条約がございます。この十六条四号及び第二十三条、これは必ずしも
原子力潜水艦という非常に物騒な危険なおそるべき
放射能を放出するような兵器が十分に検討されていないのでありますから、直接
適用されないと思うのでありますが、
国際法の
専門家の
意見によりますと、この条約は沿岸国が、
領海内であっても、軍艦に退去を要請できるのは、軍艦が
領海通行に関する沿岸国の規則を守らなかった場合、かつ軍艦に対して行なわれる順守の義務を無視した場合、つまり沿岸国、
日本なら
日本の
定めた規則を守らない、あるいは軍艦に対して行なわれる順守の義務を無視した場合には、
日本の
領海内において沿岸の通行を拒絶することができる。
こういうような
国際法規も、これは直接に
適用できないにいたしましても、こういうぐあいにできているのでありますから、あらためて
政府はアメリカに対して安保条約及び施設等に関する協定というようなものは、
原子力潜水艦というような、そういう存在を予想しない。少なくともそういうものまで、条約に基づく、国際慣行に基づくから、内部をわれわれ
自身が科学的に確かめなくても入れるのが政治的義務なんだということになるのであれば、もっと
国民はこれに対して反対し、まただめを押したに違いない。また
政府においても、そういう重大な問題が明確になったといたしますならば、もう少し、単なる事前協議というような
原則の獲得だけでない措置をとられたのではないかと思うのであります。ですから、そういうふうな措置をあらためて法的におとりになるだけのことは、これは必要ではないか。ですから、この前の
会議録において愛知国務大臣が第九号を出されましたのは、これは、この放射性降下物というのは、これは平和的
利用からばかり降ってくるのじゃありませんから、これは正当な主張である。さらに私はこれを類推
解釈して、当面の場合最小限
原子力潜水艦についても、いま申しましたような
意味内容において、
原子炉安全専門審査会の十分な答申というばかりではなく、広く
日本の学界の
意見を聞いて、そしてある場合に、そういう先ほど申しましたような法的措置がまだ講じられなくても、場合によっては政治的責任をとられる内閣の諮問に応じて
原子力委員会が答申するということは、これは許される。こういう点で
田中委員のいままでお述べになったことと若干違うのでありますけれ
ども……。
それからもう
一つ、
会議録にはあまりございませんが、先ほど申しました
政府方面の発表したものの中に
寄港ということばを使っております。
寄港というと、ちょうど従来ありましたように、何か
外国の軍隊なんかが世界を歩いているときにちょっと横浜を訪問した、一時的なような感じを受けるのでありますが、今度の問題は単なる
寄港というのではございますまい。
寄港ということばの使い方にもよりますけれ
ども、絶えずここに出入りすることができるのであります。そうして横須賀と佐世保だけにとどまっているわけではなくて、両方の間をぐるぐる歩くこともありましょう。ですから、単なる
寄港というような一時的に入ってくる、しかもそれがレクリエーションのために気休めにちょっと入ってくるのだという問題の立て方は不適当ではないか。
それはさておいて、このアメリカ
自身の文書によりましても兵たん補給というようなことがございます。兵たん補給についても、
政府の発表しましたのは、生鮮食料品、水、酸素などの補給だというふうに
説明されておるのでありますが、これは最後の軍隊というものを知っている私
どもから見ると少しおかしいではないか。やはり兵たんの補給ということになりますと、もっと軍事的な活動に備える準備ということが入っているのではないか。そうしますと、やはり
放射能の問題ということ以外にもさらに重要な問題が含まれている。しかし、これは当
委員会の範囲外に属すると思いますので、これで終わります。