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1964-10-26 第46回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月二十六日(月曜日)    午後二時二十四分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 菅野和太郎君 理事 西村 英一君    理事 福井  勇君 理事 岡  良一君    理事 原   茂君 理事 山内  広君      小宮山重四郎君    坂田 英一君       保科善四郎君    渡辺美智雄君       田中 武夫君    三木 喜夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 愛知 揆一君  委員外出席者         内閣法制局参事         官(第一部長) 吉国 一郎君         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         外務事務官         (アジア局中国         課長)     原 富士男君         外務事務官         (アメリカ局安         全保障課長)  山中 駿一君         参  考  人         (静岡大学教         授)      鈴木 安藏君         参  考  人         (神戸大学教         授)      山田 幸男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力行政に関  する問題)      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  本日は、原子力行政に関する問題調査のため、参考人として静岡大学教授鈴木安藏君及び神戸大学教授山田幸男君に御出席を願っております。  この際、両参考人一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用のところ本委員会に御出席くださいまして、どうもありがとうございます。どうかそれぞれの立場において忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  なお、参考人の御意見の開陳はお一人約十五分程度といたしまして、後刻委員からの質疑の際、十分お答えくださるようお願い申し上げます。  それでは、鈴木参考人からお願いいたします。鈴木参考人
  3. 鈴木安藏

    鈴木参考人 参考人として意見を求められましたのは、科学技術振興のために検討さるべき原子力行政に関する問題でございます。  私は憲法学政治学等を専攻し、講義しているもりでありますから、したがって、右に関しましても法的観点からの見解あるいは原子力行政についての関係法規についての見解を述べることにいたしたいと思います。またそれが本特別委員会から求められた意見であろうと思います。  そうしますと、第一に、憲法及び関係法規原子力行政に関してどのような基本的態度規範として定めているかを顧みなければならないと思います。  科学技術振興学問の発展も、日本国憲法のもとにおいては、国民基本権のよりよき保障国民の福祉に寄与するために追求さるべきものであることは申すまでもなく、そうしてまたこの国民が平和に生きる権利の確認、日本国憲法が前文及び第九条において明示しているところの絶対平和、戦争及び一切の戦力の永久放棄を確保し得るためになさるべきものであることは当然であります。明治憲法体制下におけるような意味、内容においての、国家のために、国運の隆盛のために、あるいは国威の発揚のために等々が科学技術振興究極目的であるわけはございません。  原子力行政について基本的な定めというべきものは、原子力基本法及び原子力委員会設置法であります。言うまでもなく、原子力関係法規のうち原子力基本法がその名の示すとおり基本法根本規定、いわば総則的規定であります。その根本趣旨は同法第一条及び第二条に明らかであって、これら両条はその立法当時の立法精神立法理由においても、また法文規定自体から明らかなところでありますが、憲法がこの種の研究開発利用等について国家に求めておる原則を正しく表明しておるものであります。原子力研究等は、憲法基本規定よりして、平和の目的に限り民主的な運営のもとに自主的に行なうべきものであり、その成果が広く公開さるべきものとされておりますが、まさにそのとおりであります。  原子力委員会は、この原子力基本法によってその設置定められたのでありまして、右の基本方針に沿って活動すべきことは言うをまちません。原子力委員会設置法定めている所掌事務権限は、原子力基本法定め基本精神すなわち憲法に示されておる基本精神に基づいてのみ認め得るところのものであります。  右の点は、自明のことであって、このほか、日本原子力研究所法あるいは核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律等、いずれも同様であり、現にこれらの法規自体にその旨が明文で掲げられております。  ところで、原子力は、特に他の物質、対象と異なって、その研究開発利用の過程においてきわめて危険な破壊的な被害を生じ得るものでありますから、このおそるべき危険に対する防止に最大の配慮がなされなければならぬことは申すまでもなく、原子力基本法放射線による障害防止等について特に定めておりますし、また原子力損害の賠償に関する法律等が制定され、さらに原子力委員会設置法に対しまして特に専門学者の強い要求がありまして、原子炉安全専門審査会に関する規定が追加されたわけであります。事は研究者開発者等のみならず、広く国民一般の人命に直接の致命的な被害を与えるものであり、原子力行政においては、他の場合と違いまして、この点に最も慎重な配慮が要求されるものと思います。  しかるに、この最も重大な点について、原子力行政はいささか意を用いることが十分ではないのではないか。われわれ専門外の者が単にそういう危倶を感ずるというだけではなく、たとえば原潜、いわゆる原子力潜水艦問題についての政府あるいは原子力委員会のとった態度、また核兵器、核武装の問題について歴代の政府のとってきた外交政策というようなものから私どもが受ける印象、あるいはそれをもっと整理してみた場合に、この原子力行政の一番中核的なものとなるべき右の点について現状は十分でないという欠陥がありはしないか。たとえば関係専門学者自身の最近の発言におきましても、私どものこの危惧が強く主張されておるのであります。一々ここでこまかい引用は差し控えますが、以上の危惧の点に関しましては、たとえば衆議院並び参議院等における外務大臣の答弁、あるいはまた「政府の窓」十月十日号の政府関係者発言、あるいは自民党の刊行いたしました「原子力潜水艦のすべて」というような文献、また日本学術会議の発表した見解、また最近科学者たちの声明に示されている見解、このようなものは私どもの以上の危惧を示す材料となるかと思います。  一例だけ引いておきますというと、専門学者である三宅泰雄博士の去る十月二日の新聞に述べられた見解によりますと、まず第一に、政府も民間も原子力平和利用積極面を取り上げるのに急で、放射能被害対策が忘れられているということ、いますぐ対策を立てなければ四日市公害以上の公害となるのではないかという危惧を表明しておりますが、また第二の点は、学者の自由な発言保障し、政府も理性をもって検討してもらいたい。原子力潜水艦問題でも、何か言えば不利な扱いを受けるのでは困るというような傾向が学者の間にもないでもないが、これでは学問が萎縮してしまう。後の点は、もうこれはいやしくも学問研究の上においてはここで論及するまでもない問題でありますから、以上の陳述においても述べなかったわけでありますけれども放射能被害対策が非常に安易に考えられているのではないかという点が、私の最も心配するところであります。  たとえば、私どもの静岡県においても、最近問題になって、広く議員の皆さまも御承知でありましょうけれども、三島、沼津等におけるコンビナート、これは私ども直接関係いたさないことでありますが、県民の一人として、どうも厚生省調査団の発表した結果に対しては、二つの点から、この原子力行政に示されるような同じ被害公害に対する軽視があらわれているのではないかと思いますので、一言論及したいのであります。  第一は、今日、私ども県民としましても重大な問題でありますから、一県民として、四日市実情調査したり、若干公害関係研究も読んでおるわけでありますが、そういたしますと、これは根本的に防止する方法は、理論的にまた政策的に幾らでもあるわけであります。ただ、今日の状態のもとにおいて技術的にそういう完全な防止策をとるということが、資本設備、そういう観点とのバランスにおいて必ずしも十分に要求することができないというふうな問題がある。しからば、すでに専門家意見を出しておりますように、この種のコンビナートは稠密な人口の居住地帯から最小限二キロから四キロ確保すればほば防止できる。で、わが国は、狭いと申しましても、国家的に今日の最も先進的な産業であるこの種のコンビナートを、一般住民居住地帯から二キロないしあとう得べくんば四キロ隔離して、そこに整然と系統的にコンビナート設置するというようなことは、もう技術的に十分可能であると思うのでありますけれども、そういう処置をとらない。厚生省調査団の発表したものも、この煙突を百メートル以上高くして空中に放出すれば煙害は起こらないというような点が一番大きいのでありますけれども、そのこと自体を批評する場所ではありませんからこれ以上は論及いたしませんけれども、およそ住民のそういう日常生活に対する、また生命自体に対する被害を可能な限り防止するという観点に立っているのではないか。  これはコンビナート公害自身が大きい問題でありますけれども事原子力関係事柄に関しましては比較を絶する被害があるのでありますから、もっと原子力行政の一番前提条件、あるいは本質的な目的というふうに置かれる必要があるのではないかと考えるのであります。  次に、原子力潜水艦寄港の問題は、これは委員長からの依頼に当たります原子力行政に関する問題に直接私は入らないと思うのでありまして、もしも御質問があれば関連して申し上げたいと思いますが、ただ以上の点に関連しまして、かりにこの特別委員会においても問題になっておりますような原子力潜水艦寄港ということが原子力行政の点で問題になるとするならば、私は、原子力委員会設置法第二条第九号の条文を、事柄の本質に即して許される拡張的解釈——これは許されると私は考えるのでありますが——その観点から、この原子力潜水艦というもの自身が、日本国民に対して、特に横須賀、佐世保という立地条件のもとにおいてどのような放射能被害を生ぜしめる可能性があるか、こういうことは学問的に調査研究することは許されると思うのであります。  しかし、そういう観点からかりに許されるといたしました場合には、この原子力行政立場から申しますと、私どもの知る限りにおいて、最近とってまいった原子力委員会なり、また政府自身対策あるいは態度というものは、以上私が申し上げました原子力行政に関する憲法及び原子力基本法の要求する最も重要な基本的な規範原則に十分に適合していないのではないか、こういうふうに考えるので、こういう点を十二分に御反省いただきたい。  あえて意見を申し述べろということでございましたので、以上陳述した次第でございます。
  4. 前田正男

    前田委員長 次に、山田参考人にお願いいたします。山田参考人
  5. 山田幸男

    山田参考人 神戸大学行政法教授山田幸男でございます。  ただいま鈴木先生から憲法学のお立場からの陳述がございました。私は、速記録を拝見いたしますと、田中武夫先生からの御質問が出ておりますし、また、行政庁を通しまして、質問六つの点にわたっているというふうに承知をしておりますので、解釈法学者立場からできる限りこまかく私の考えますところを申し上げてみようと思う次第でございます。  まず最初に、鈴木教授のおっしゃいました趣旨は、いろいろな法律のところにあらわれてまいります。いわゆるニューサンス関係行政法というところで申しますれば、ばい煙排出規制法でありますとか、水質保全法でありますとか、火薬類取締法高圧ガス取締法消防法というようなものがあり、また本特別委員会の直接関係をお持ちのところでは、原子炉等規制法障害防止法というような法律は、すべて同様の資格に立ってとらえることができるわけでございます。こういうものを、いってみますれば危険物行政法と呼ぶことができようかと思いますが、かような危険物行政法体系的説明をどう行なっていくかということは、私ども一介法学者にとりましても重要な課題であると存ずるものであります。  それだけのことを最初に申し上げておきまして、さっそく田中武夫先生から触れられております六つの問題、つまり原子力潜水艦問題と原子力委員会についてと題しておられます質問の第一は、原子力基本法原子力委員会設置法関係をどう考えるべきかということでございます。この問題につきましては、他の行政法規の例を求めますと、御承知のように教育基本法という法律があり、そのもとに学校教育法でありますとか、社会教育法、あるいは地方教育行政の組織及び運営に関する法律というふうに定められておるわけでございます。これらは、法律のいわゆる形式的効力という意味におきましては同じ段階に位するものでありまして、基本法であるからといって上位の法規範であるということはできないのでありますが、しかしながら、かような定めをしております一連の法体系におきましては、言うまでもなく原子力基本法とか学校教育基本法というものが、その全体の関連法根本になるいわば精神定めているものであることは動かないところでございます。  しかしながら、田中武夫委員から御質問の出ておりますその意味は、そういうことを言えというのではなくして、この原子力基本法とか、原子力委員会設置法とかいうものは平和目的限定をされるのではないか。その証拠には、この原子力基本法の第二条におきましては、「原子力研究開発及び利用は、平和の目的に限り、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、」と定められているからでございます。そういう意味での御質問であろうかと拝察いたしますので、その点について考えるところを申し上げてみたいと思います。  原子力基本法並びに原子力委員会設置法という法律は、言うまでもなく平和目的限定をいたして定められたものであることは、その立法趣旨に徴して明らかでございます。ところが、この基本法第四条というところにおきましても、その旨は一応そうでございますが、こまかく見てまいりますと、原子力基本法の十二条というところには、核燃料物質に関する規制についての規定を置きまして、「核燃料物質を生産し、輸入し、輸出し、所有し、所持し、譲渡し、譲り受け、使用し、又は輸送しようとする者は、別に法律定めるところにより政府の行う規制に従わなければならない。」とし、これを受けまして、いわゆる原子炉等規制法が制定をされておるわけでございます。また、基本法の二十条におきましては、放射線による障害防止措置という規定を置いておりまして、一々読み上げることを省略いたしますけれども、こういう事柄を「別に法律定める。」としております。そこで、定められておりますのが、簡単に申します放射線等障害防止法であることは疑いがございません。その二つ法律が別に置かれまして、そして原子力委員会と申しますものは、言うまでもなく基本法四条を受けまして原子力委員会設置法定められているわけでございます。  問題になりますのは、その二条の中に、四号、五号、九号という規定がございまして、四号には「核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること。」とございます。これは抽象的に定められておりますけれども、その具体的な行政適用が先ほどの原子炉等規制法によるということは、これは疑いのないところでございますし、また五号の「原子力利用に伴う障害防止基本に関すること。」というこの事項も、具体的には先ほどの障害防止法によるということも疑いがないわけでございます。  以上のように、一応法の根本の立て方、規定のしかたというものを見てまいりますと、言うまでもなく、原子力基本法二条におきまして平和目的に限るということになっておりますので、これは日本国政府のもとにおきまして、いろいろな形で原子力開発研究利用が将来行なわれていく、その目的は一〇〇%平和目的限定をされるということはこれは全く動かないところであり、それは立法趣旨にかんがみましても、原子力基本法の成立にあたりましての国会の附帯決議におきましては「超党派性を堅持し、」というふうにいっておられるところでもうかがうことができるわけでございます。  ところで、現実に問題になっておりますところの外国原子力潜水艦わが国に入港してくるという場合に、いま御説明を申し上げました法の適用はどうなるのかと申しますと、これは原子力委員会設置法二条四号、五号というところ——九号はもちろん放射性降下物質に関するものでありますので、そういう形では一応核爆発の実験の結果のテストということが考えられておるわけでごさいましょうから——とりあえずは四号、五号というものをお考えいただくことになります。そしてこれらの二つ規定に対応いたします二つ実定行政法というものが、先ほど申し上げましたように、原子炉等規制法障害防止法というふうにしてあるわけでございます。その二法のそもそもの立法趣旨は、わが国内において開発をされ、利用されていきますものについてであることは疑いがございませんが、日本国主権の及びます領海内に入ってまいりまする外国原子炉利用につきましても、これは事柄性質上、当然に、これらの条文適用があるということになるわけであります。  いま最後に申し上げましたことを、もう一度繰り返して申し上げてみようと思います。具体例を申し上げますと、どの国でもよろしゅうございますけれども原子力を動力にいたします商船貨物船が入ってくるという場合に、一体日本国政府はほうっておくかといいますれば、そういうことはもちろんされない。そこでおやりになることは、いま引用いたしました二つ規制法障害防止法適用して行政権力を行使されるということになります。ここは一〇〇%疑いがないと申し上げてよいと思います。そういうところまではよろしいと思うのですが、それが商船あるいは貨物船ではなくして潜水艦であるということになりますと、どうなるのか。これはやはりいま申し上げた二つ法律適用があるということは、純理論としては少しも変わるはずはないのであります。ところが、その純理論と申しますか、国内法を中心といたします法の適用に関する解釈は、軍事特権という国際法上の理論との壁にぶつかりまして、その両者のかね合いをどう考えたらよいかということが、これまた解釈論といたしましては非常にむずかしい問題になるわけでございます。この点は、あまりこまかいことばかり続けて申し上げるのはどうかと思いますので、御質問の第三に、潜在的権限があるというがそれはどういうことかというような御趣旨がございますが、そこに入れることにいたします。  以上、御質問の第一点について申し上げましたことを一言で申し上げますと、原子力基本法に始まるこういう立法例というものは決して異例なことではない、ほかにも例があることである。そういう法のきめ方というものの性質は、同じ形式的効力を持つ法律でありながら、総則的な、あるいは一番基本的な精神基本法の中にあらわれている。そしてあとの法律はその細部を受けて書いていくことになる。その細部を書くにあたりましては、基本法には明文であらわれていないことを書くことも妨げない。こういうふうにはっきり申し上げませんでしたけれども、それが第一点であります。  それから第二点は、平和目的限定をされるかという点につきましては、それはもちろん限定をされるのである。しかしながら、日本国政府のもとではそうであるが、外国から入ってくるという事態に対しましては、これはおのずから考え方が別になってくるのであるということを申し上げた次第でございます。  だいぶ時間が過ぎておりますので、簡単に申しますと、第二の原子力委員会設置法第二条第四号及び第九号の解釈についてとございますのは、これは御質問がございましたときにお答えいたそうと思いますけれども、この問題に対する私の考え方というのは、すでに第一の問題についてお答えをしたところと同じことになるわけでございます。それ以外に御質問趣旨をそんたくいたしましていろいろに考える点もございますけれども、どうぞ後ほど御討論、御質疑をいただきたいと思います。  それから第三の、潜在的権限があると言っているが、潜在的というのは定説としてあるのかという点でございます。これは率直に申し上げまして一つのレトリックと申しますか、表現であるということでございます。それはことばといたしますれば、沖縄の主権潜在主権であるというようなことを言わないわけではございません。しかしながら、潜在的権限という説明をいたしますだけでは、これはやはり実定法のこまかいところにまでおりた説明とは必ずしもならないのでありまして、その点については少し時間をいただいて申し上げてみようと思います。  先ほど来の説明で御想像しておられると思いますけれども、端的に申しますと、原子力潜水艦寄港という問題が、わが実定法であります原子炉等規制法障害防止法という二つ法律に短められております取り締まり権立ち入り権質問権というような行政権限の行使は、領海内である以上は当然にあるはずである、これが一つの問題である、ところが、軍事特権ということによりまして、これまた確立をしております国際法上の理論でありますので、そのかね合いが非常にむずかしいということであります。  そこで、便宜平たい例をほかに求めて説明を申し上げようと思います。市外公館、大使館とか領事館というところにおいて火災が発生しているという場合に、その火災を消すための消防法に基づきます消防権力を行使できるのかどうか、これは強制的にという意味であります。実情は、東京消防庁のお手元で調べていただきますと、火災麻布地区だけでも在外公館にかなりございます。それらはすべて同意を得て立ち入り消火をしているということになるわけでございますが、私がいま申し上げているのは相手方の同意ということではないので、強制力をもって消火をやることができるかという純理論上の問題であります。これに対しては、これは実態を調べたのではわかりませんので、やはり学者の自分の頭で考えてみますと、およそ三つの考え方があり得る。  第一は、治外法権ということが、官憲の立ち入りを許さないということでありますから、それをそのとおりとりまして、立ち入ることはできない。たとえ火事であってもできないということになります。  第二の考え方は、これは火事というのは単なる治外法権の問題として扱うべきではないので、現に火災が広がると隣接する民家に移るおそれもあるということを考えますと、中に入ることはできないが、外から水をぶっかけることはできるではないかという考えが、一つ理論としてはあり得るわけでございます。しかし、これまた法の具体的適用というところまで考えますと、いろいろ実務上問題がおありかと思いますので、実務ではそれもやっておられない。  で、実務上やっておられるのは三番目の、隣接する民家に水をかけるということであります。それは行政権限という形での問題でありますから、実態は、同意を得、あるいは在外公館の申請を待って消火をやっておるということに相なるわけでございます。  それと本件の問題を比べていただきますと、非常によく似ているわけであります。  まず第一の考えでいけば、原子力潜水艦寄港しているときに、艦内に立ち入って検査できるかといえば、これはできない。それは消防の場合と同じである。  第二の場合はどうかというと、これは厳密に比較してごらんになりますと事案が違っているわけでありまして、つまり燃えて延焼の危険がある火に水をぶっかけるということと同じようにはならない。つまり寄港している潜水艦はとまっているわけでありますから、水をぶっかけるのに当たることは、それを動かせということになる。これをやることは事実上不能であると言わざるを得ません。  そこで、それを少し変わった次元からとらえますと、現に寄港しております潜水艦の艦長に対して質問権を行使する。これは権限行使でございますが、行政権の行使としての質問をやる。これはできるはずであります。ところが、やりましても答えなければそれっきりであり、答弁を強要することは、これはできない。これは一般の質問権の場合においても同様でございます。そこで、通常のさような関係行政法規におきましては、質問権とともに資料提出命令ということを定めておりまして、やるわけであり、また何よりも立ち入り権とか収去権ということによって行政の実効をあげるわけでございます。ところが、それらの事柄は、先ほど申し上げましたように、理論上は適用を考え得ましても、軍事特権の壁にぶつかりますために、事実上の不能に帰着してしまうということになります。  最後に申し上げるべき消防との比較論は、先ほどの三番目のことになりますので、これは何もしないということになります。つまり隣接する民家のほうに水をぶっかけるということの例でございますが、これは原子力潜水艦が出ていったあと、水を取って汚染度を調べるということである。これは原子力潜水艦に対しては何もしないということと同じであります。  そう考えてまいりますと、一体どうしたらよいのかということは、私はこれは解釈法学者として申し上げているのですからあまり断定はできませんが、解釈論といたしましては、結局はいま申し上げました原子力潜水艦寄港につきましては四つの考え方があるのだが、その第一、第二はともにだめである。つまり事実上の不能を主張するに帰着する。わずかに考え得るのは第三である。——第四であるというならばこれはそれまでのことですけれども——第三であるということになります。しかし、その点もよく考えてみますと、これまた事実上の不能という面が出てくるわけでございます。  細部はまた後ほどの御質疑の際に譲りまして、大急ぎで御質問の四、五、六というところをお答え申し上げようと思います。  第四の、原子力委員会権限についてとおっしゃっておられますことは、これは権限ということばの使い方と申しますか、必ずしも学問上確立した使い分けがあるわけではないのでありますけれども行政官庁として行政処分権を持つという意味での行政権限という使い方があるわけです。こういう意味でとらえます場合には、原子力委員会にはさような行政権限は全くございません。ところが、権限ということばは、事務の所掌というような意味で使われている例があるわけであり、その典型例がここに申します原子力委員会の企画、審議、決定という機能をとらえまして所掌事務と称していることからもおわかりいただけると思うのでございます。こういうものは行政官庁としての権限ではない。でありますから、それとは区別していただかなければならぬことは明瞭でございます。  そして、もう一つだけ申し上げますと、しからばさような原子力委員会の分掌されております事務の内容は、一体どうきまってくるかと申しますと、これは法律をごらんいただきますれば一応書いてあるわけでありますけれども、しかし先ほども一こと申し上げましたように、これはかなり不確定な概念を用いてあります。先ほどの二条の四号、五号というような場合でありましても、具体的にどういうことかということは必ずしも明らかにならない。そこでその内容をほかの関連法律とのいわば体系的解釈ということによりまして定めていくことに相なろうかと思うのであります。その意味は、何よりも原子力基本法であり、それから先ほどの二つ原子炉等規制法及び障害防止法というところから導かれてくると考える次第であります。  第五の、原子力委員会は安全性を確認する法的権限があるかという点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、領海内における質問権の行使ということは純理論としては考え得るわけです。それに対応する形での外交権力の行使、外交上の交渉ということは事前にあり得るわけです。事前と申しますのは、原子力潜水艦なら原子力潜水艦領海内に入ってきて初めていま私の申し上げる質問権が出てくるわけでありますから、入ってくる前は全然ないわけであります。といたしますと、入ってくるまでほうっておくかということになりますが、入ってくる以前の段階におきましても、科学的な調査を慎重に原子力委員会において、また専門的な御立場からやっていただくためには、外交交渉を通して必要な資料を収集するということは当然おやりいただくべきことであり、それらについての判定でありますとか判断は、当然下されてしかるべきであると思います。そういう意味におきまして、さような調査をおやりになることは、何ら法の禁止するところでもないし、またそういうことは、解釈法学者でなくして一個の人民の立場から申しますれば、ぜひそのくらいのことはやってもらわなければ困るということに相なろうかと思うのであります。  最後の第六点の御質問でございますが、原子力委員会は、平和利用以外の軍事利用についても審議する権限があるかという点は、たったいまお答え申し上げましたことと同じ論旨でございまして、端的に申しますとそれはないということであります。ただし、他国の軍事的利用わが国領海内において行なわれるときは別論であるということになるわけであります。  以上、ちょっと時間を超過いたしましたが、まだまだ申し上げたいことがたくさんございますので、どうか御質疑をいただきたいと存じます。
  6. 前田正男

    前田委員長 以上で参考人からの御意見の聴取は終わりました。      ————◇—————
  7. 前田正男

    前田委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。田中武夫君。
  8. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま二人の参考人の先生方から意見を伺いましたが、鈴木参考人の御意見は大体私とあまり変わらないように拝聴しました。山田先生は若干見解を異にいたしますので、山田先生にまずお伺いいたします。  山田先生は設例を設けられて、外国の同船あるいは貨物船、これが原子力を動力として入ってくる場合、こうあげられております。そこで、先生があけられました二つ法律、すなわち原子炉規制法及び障害防止法、この二つ法律がそれらの商船あるいは貨物船適用あるということは当然です。これは領海内にあるものですから。しかし、外国軍艦は若干違うわけです。  私が申し上げておるのは、どんぴしゃり申しまして、原子力委員会に、原子力潜水艦が入ってくることに関連して、その安全性を確認する権限があるのかないのかということなんです。先生は四号及び五号をあげられましたが、この四号及び五号でどうしてその権限が出てくるかということをいま伺いましたが、もう一つ納得がいかないわけです。先生みずからも、原子力委員会設置は、基本法の四条によって設けられておる、また平和利用のみに限られておるということを言われておる。そこで、この原子力潜水艦が入ってきたときに、それに対して政府として、国として手をこまねいておるということを私は言っておるのじゃありません。その安全性の確認について、原子力基本法原子力委員会設置法の二条の所掌事務の各号のどこから出てくるのか、こういうことを伺っておるわけです。もう一度すみませんが……。
  9. 山田幸男

    山田参考人 私は解釈法学者でありますので、どうもこまかいことばかり申し上げて申しわけございませんが、ただいまおっしゃいますように、商船の場合であれば、文字どおり行政権限は出てまいるという点はよろしいわけでございますね。問題は、軍事特権というものを持ちます原子力潜水艦についてはどうかということでございます。それについては田中武夫先生は、これはないというふうにおっしゃるわけですね。
  10. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、原子力委員会権限がある……。
  11. 山田幸男

    山田参考人 いや、委員会ではありません。私は一番下のほうから具体的に押えていくわけです。つまり抽象的に原子力委員会設置法の二条四号、五号の解釈というものは、それだけ切り離して行なうことはできないわけです。それは先ほど来申し上げておりますとおりでございまして、それは何よりも鈴木先生がおっしゃるとおり、憲法から、そして原子力基本法から、そして関連をいたします二つ原子炉等規制法障害防止法というところでどうなっているかということを解釈いたしまして初めてきまってくるのでありまして、原子力委員会設置法の二条の四号、五号だけを取り上げてどうであるという解釈は、学者といたしましては、あるいは解釈論といたしましてはできないのでございまして、そのために非常にこまかいことを申し上げている次第でございます。でございますから、商船の場合ならある。原子力潜水艦の場合にもあるわけなんですね、あるのですが、それが軍事特権ということとぶち当たるために、その両者をどう調整するのかということが解釈論としては一番むずかしいところだということを申し上げているのでございまして、そこの検討の結果、私の先ほど申し上げましたように、質問権というものはあるのだ、そこまで言っていいでしょう。とすれば、そういう権限実定法によりまして行政庁に与えられている。原子力委員会にあるわけではございません。それは内閣総理大臣でありますとか、科学技術庁長官だそういう行政権限、これは行政官庁としての権限です。先ほど権限ということばを二つに使われましたけれども、それがあるということが私の申し上げているところで、疑いないとお考えいただきますならば、当然今度は原子力委員会権限と申されますことは、所掌事務ということでございますけれども、その不確定概念をもって、二条四号、五号に書いておりますこともおのずからそれらの事項を内容とするということに解釈されるわけでございます。
  12. 田中武夫

    田中(武)委員 内閣総理大臣なり科学技術庁長官が、おっしゃるように権限があることは認めます。これは行政権です。ところが、原子力委員会は、先生もおっしゃったように行政官庁じゃありません。したがって、それはありっこないわけなんです。しかもこの原子炉規制法あるいは障害防止法、これが外国商船なり貨物船に及ぶといいますか、その適用を受けるということは認めるわけなんです。私の言っている権限ということは、狭義に解しまして、狭義といいますか、二条の所掌事務という観念でもあります。そうした場合に、原子力潜水艦が入ってくることに対して、原子力委員会が安全性を確認するという、権限というか、公認されたものがどこにあるのか、こういうことなんです。先生のおっしゃっておられる質問権だとか何だとかいうことは、それはあります。また二つ法律、いわゆる原子炉規制法障害防止法、これが外国商船その他に及ぶことは当然です。しかし、この二つ法律からさかのぼって、設置法の二条四号及び五号の解釈が出てきますか。
  13. 山田幸男

    山田参考人 その点が、私は解釈法学者でありますので、法の解釈というものは絶えずそういうふうにやってまいっております。これは私だけではございませんで、法の解釈というものはそういうものなんでございます。特定の条文一つだけ読んでどうということでは、これはどうにもなりませんので、その点は講義演習みたいなお話になってしまいますので申し上げませんけれども、私は、田中武夫先生のおっしゃる気持ちは、おそらくこういうことだろうと思うのです。私、山田は、別にある原子炉規制法とか、障害防止法のほうから、ことばの正しい意味での行政処分権というものを見る。それが商船の場合には全面的適用がある。軍艦の場合には部分的適用がある、適用があるけれども、それは事実上の不能という壁にぶち当たっているのだ。だけれども権限はある。権限があるんだから、したがって、原子力委員会というものは、設置法に基づいて設けられておりますものは、その所掌事務が、不確定概念で書いてある二条四号、五号でございますね、その不確定概念で書いてあるけれども、先ほど申し上げましたように、一番下のレベルで質問権というものがあるんだから、それに見合う限りにおける調査をする事務があるはずだ。その調査というのは、領海に軍艦が入ってくるまでは質問権すら行使できないのですから、それは日本国政府とされては、事前に外交交渉を通していろいろな資料を集めて、見る。それを原子力委員会のほうにお願いをして、そうして専門家原子炉安全専門審査会というようなものがあるわけでございますから、専門学者立場から判定をしてもらう。いわばこれは事前にやっているわけです。それは行政処分権限という意味では毛頭ないのであることは先生よく御理解のとおりでありまして、そういう事務をやれるかやれないかということになるわけでございます。それは先ほどの私のように、質問権というものがあるというわけですから、それに見合う事務分掌というものが原子力委員会にもあると解釈をしなければならない。それが二条四号、五号の解釈になるのでございます。と申し上げておるわけでございます。
  14. 田中武夫

    田中(武)委員 質問権と言われておるが、その質問権行政官にあるわけでしょう。
  15. 山田幸男

    山田参考人 もちろんそうです。
  16. 田中武夫

    田中(武)委員 原子力委員会にあるわけではないのでしょう。  それから設置法の四号、五号で、これはばくとして定められてある。そうして一つ法律条文解釈するときに、そのものだけ単独に抜き出して解釈できないという程度のことは私も知っております。  しかし、先生のあげられた二つ法律、すなわち原子炉規制法あるいは障害防止法、これは原子力委員会が二条の四号及び五号のことを行なうに対しての一つ法律なんですよ。原子力委員会はこの法律を守らなければならぬ、そういうように解釈しているのです。そうでしょう。  したがって、私が申し上げておるのは、四号及び五号単独でなく、この法律がいわゆる原子力基本法から出てきたのだ。原子力委員会それ自体原子力基本法四条によって設置定められ、そうしてその構成その他は別に法律定めるという法律設置法なんです。しかも、鈴木先生の言われておるのに私は同感ですが、法律はすべて憲法のもとにある。その上に立って高度の憲法の理念を通じて解釈しなければいけないということは当然だと思うのです。  そこで、先生は四号、五号によってあるのだとおっしゃるが、その根拠が原子炉規制法及び障害防止法、この二つからあるということには納得できないわけです。この法律はそういうものではなくして、四号及び五号との関係においては、原子力委員会がいわゆる原子炉規制あるいは障害防止等についての基本施策を立てるときの一つのよりどころである、これを守らなければならないという法律である、そういうふうに解釈するのですが、いかがでしょう。
  17. 山田幸男

    山田参考人 それはそのように解釈をしていただくことはもちろんけっこうだと思うのですが、私は、先ほど来きわめていろいろなこまかいところまでおりまして議論を申し上げておりましたのは、原子力委員会設置法の二条の四号、五号というところだけで具体的内容がきまってこない。そこでほかの二つ法律を見てみますと、先ほど来申し上げておりましたような行政処分権が内閣総理大臣なり科学技術庁長官にあるということ、これは動かない。そういたしますと、たいへんことばづかいは悪くて申しわけありませんが、原子力委員会設置法の二条四号にきめられております事務分掌というものは、単なるファンファーレと申しますか、実定法的にきめ手のないファンファーレのようなものではないのであって、現実定法として行政処分権がほかの法律で他の主務官庁に与えられているのだ。でありますから、専門技術的な事柄については原子力委員会の手元でまさに企画し、審議し、決定をするということをやってもらう。その企画し、審議し、決定する事項の内容がこれこれであるということになるわけでございまして、その事項の内容は、正確を期しまして読み上げますと、二条の四号に「核燃料物、質及び原子炉に関する規制に関すること。」とあるわけです。この「規制に関すること」ということを具体的に申しまして、先ほどの立ち入り検査権、質問権というようなものまで実定法のレベルでは書いているわけでございますね、一般の商船に対しまして。ですから、そこまでの行政をやるのだからということで、原子力委員会とされては、企画し、審議し、決定をされるということになるわけでございまして、そこは田中武夫先生とちょっと違うのかもわかりませんけれども、そういう解釈をやるということもおわかりいただけるだろうと思うのですけれども……。
  18. 田中武夫

    田中(武)委員 山田先生の言われておることは、わからぬことはないのですよ。しかし、議論というか、そこに混同があると思うのです。科学技術庁長官がやるということならわかるのです。しかし、科学技術庁長官でなく、原子力委員会がやる場合に、あなたのおっしゃっておる二つ法律規制法防止法、これによって原子力委員会へそういう権限が出てくるということがわからぬのです。  もっと言うならば、ここにかりにもう少し詳しくといいますか、新たに条文でも設けて、総理大臣なりあるいは科学技術庁長官からそういうことについて諮問があったときにやれるということなら話はわかるのです。先生が言われておることの前半はよくわかります。しかし、そのことによって、規制法なり、防止法によって立ち入り検査権、質問権があるから、これは行政官庁にあるわけなんですよ。それが行政委員会である原子力委員会にそのままイコールしてくるという点がわからぬのですよ。
  19. 山田幸男

    山田参考人 これは繰り返しでございますのでお許しいただきたいと思うのですが、いまおっしゃいましたように原子力委員会というのは、これは行政官庁ではないわけでございますね。でございますから、公正取引委員会というようなああいう準司法機関であるものとは全く違うわけであります。しかし、それらと違うと同時にまたいわゆる独任制の行政官庁でもない。でありますから、原子力委員会というものの性格は、私はしろうとでありますけれども、もっぱら技術の専門家の方々の場と申しますか、そういう方々の知識経験によって原子力行政全般についての遺漏のない措置を講じていこうというのが原子力委員会設置法根本精神であると考えるわけです。私は専門家じゃありませんけれども、大体条文を読みましてもそういうことはうかがえるわけであります。  したがいまして、そういう行政官庁ではない原子力委員会というものに具体的な行政処分権限というものを与えるということ自体が論理上あり得ないわけでありまして、そこで、別の行政官庁に与えているわけでございます。しかし、そういう行政処分権限原子力行政のもとで与えているほかの法律があるということは、結局原子力委員会所掌事務内容というものが、単なる抽象的なことを書いてあるだけじゃない、もっと具体的な、原子力潜水艦が入ってくるときに一体どういう法律問題になってくるのか、そこまで考えた上で原子力委員会としては当然その機能を果たされるべきことをこの原子力委員会設置法は要求をしているんだと私は考えるのでございます。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 行政官庁にそういう質同権だとか立ち入り権がある、原子力委員会行政官庁ではない、そこまではわかるのです。それで、二つ法律行政官庁にそれらの権限を持たしておるところから、原子力委員会においてもそういう権限が出てくるんだというところがわからないのです。
  21. 山田幸男

    山田参考人 お答え申し上げます。  私も、法の解釈と申しますのは、どんぴしゃりとこれしか解釈ができないのだというような頭の固さはないのです。ですから、まず関係条文を見まして、その条文の書いてある意味、内容を国語の知識からいって確定をするということが第一の作業でございますね。その次に出てまいりますのは、同じような事柄がほかの条文にあるかないかということを見るわけでございますね。そういう形で文理解釈ということをやります。論理解釈とおっしゃってもよろしゅうございます。その上で一体この条文意味はどうかということをきめていく。ここまではどの法律学者でも、どういう法律実務家でも私は同じだと存じます。  本件の場合は、その作業で一応のところは出てくるわけでございまして、むしろ問題は、先ほどの立ち入り権であるとか質同権であるとか申しますようなことは、これは原子炉等規制法という法律にせよ、障害防止法というところにいたしましても、これは頭から外国潜水艦が入ってくるとかなんとかいうことは考えていないわけですね。明文規定はそういう意味ではないんだけれども、そういう意味で法令の欠缺があるのだけれども、どう考えても事柄性質上これは権限があるといわなければならぬという解釈すら私どもはやるわけでございますし、その点は田中武夫先生も先ほど全然反対なさらなかったわけなんです。これは目的論的解釈ということに相なるわけでございます。  で、いまその点については問題とされなくて、文理解釈で足りるというところについてだけどうして私がほかの法律条文を持ってくるのか、理由がないのではないかとおっしゃるのは、たいへん失礼でございますけれども、私から申し上げますと、どうしてそういうことを田中武夫先生が言われるのか、私こそ理由がわからないのでございます。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも、もうちょっとわからぬですね。これを科学技術庁長官がやったというのならわかるのですよ。二つ法律原子力委員会所掌事務というのはどこでつながります。  こういうことばかりやっておってもしようがないのですが、私、あなたの言われることは何だか一つの御用的な解釈に思います。なぜかというなら、行政官庁としての処分権は認めます。原子力委員会がそういうことを決定する権限は、あなたの説明でも納得がいきません。しかも、原子力基本法のもとにあるといいますか、法律としてはどうか知らないが、四条によって設けられておるものは、すべてやはり原子力基本法原則に立つべきであって、あなたのような拡張解釈は許されないと思います。  そこで、こういうことばかりやっておってもしかたがないのですが、もしそれがあなたのおっしゃるようなことであるならば、なぜ三十七年に二条九号を入れたか。あなたのおっしゃるような四号及び五号でできるなら、ソ連等の核実験のときに死の灰をまぜた雨が降るとかなんとかいうことに対して、その法改正をやらなくてもできるはずなんです。それをわざわざ九号を三十七年の四十国会でなぜ改正を出してきたか。そこに疑問があったからじゃないですか。  それから、鈴木先生、先ほど来このやりとりを聞いておられるわけですが、鈴木先生、どんぴしゃり、そういうようなことに対して、私が言っているのは、原子力潜水艦寄港に伴う安全性の確認について原子力委員会がこれを決定したという、そういうことが二条四号及び五号——愛知長官は九号もあげられました。−出てくるかということなんです。それをどんぴしゃりでお願いします。  それから、愛知委員長にお伺いします。あなた、この話を聞いておって、先日、十月の一日ですか、委員会において言われたことと今日では同じ考えを持っておられるかどうか。あなたは九月九日の前々委員会においては、法律権限はないような発言をしておられる。ところが、十月一日では潜在的解釈によって云々と言われ、しかもあなたの言われたのは四号と言って、四号を私が再質問をすると、今度は九号と言われておる。参考人の二人の先生方の意見を聞いて、現在どういう考えを持っておられるか。順次お伺いいたします。
  23. 山田幸男

    山田参考人 お答え申し上げます。  私は、時間がありますれば田中武夫先生ともっとこの問題を議論いたしたいと思うのですが、神戸でありますから、また神戸のほうででも議論をしてもよろしゅうございます。その点はいまの循環論法みたいなものでございますので——しかし、私は私なりの考え方を強く申し上げているのであります。それには一応の筋は通っているということはお認めいただいてもよろしい……。(田中(武)委員「いや、それが認められないのです。」と呼ぶ)いただけませんか。まあ御用学者とかなんとかいうことは、ものの見方でございますので、私は別に行政庁の肩を持って発言をしているわけでは毛頭ないわけです。私が先ほどのようなことを申し上げております趣旨は、法の解釈として原子力委員会調査をする事務が分掌されているんだというふうに言いませんと、われわれ一般の国民といたしましては、現実に原子力潜水艦が入ってくるまでは日本国政府は何もしないということになるわけです。(田中(武)委員「それは違います。」と呼ぶ)それは所掌事務田中武夫先生原子力委員会ではなくて、内閣総理大臣なり科学技術庁長官でやらせればよろしいとおっしゃるのですけれども、しかしそういうところには専門の科学者がいないわけでありまして、原子力委員会にこそ専門の方々が集まっておられる。しかも、その調査ということは行政官庁のやる行政処分権ではないわけであります。でありますから、そういう事務というものは、この法律体系のもとにおきましては原子力委員会がこれをやるということは、少しも私は妨げられないのであるし、さらにいえば、一般国民の法感情からいえば早く徹底的にやってくれということを言いたいということになるわけでございます。  いろいろ申し上げたいことはございますけれども、一応これでいまの問題につきましてのお答えとさせていただきたいと思います。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたのおっしゃるそこがわからぬのですよ。原子力委員会権限がないということならばほっとくのかというと、そうじゃないのです。政府が当然やるべきことなのです。あなたが議事録を読んでもらったならばわかると思いますけれども、九月九日の委員会で明らかになっておるのは、政府から原子力委員会に対して、何らそのことについて諮問もないわけなんです。ところが、積極的に原子力委員会がそういうことをやれる権限法律に認められておるのかということです。原子力委員会ができないということと、国が手放しでおるということとは話が別なんです。しかも、そのことを調査したことを言っているのじゃないのです。私は安全性の確認ということが、法的に権限があるものとして原子力委員会でできるのかということです。
  25. 山田幸男

    山田参考人 先ほど申し上げましたことと同じでございまして、権限ということではなくて、そういう事務を行なうことは原子力委員会としてはできるのだ。それは二条四号、五号というところだけを見たのではわからないけれども、ほかの行政処分権に連なる個々の法律を見ればそういうことが起こってくる。とすれば、原子力委員会としてはその関係の事務をやることは当然にできる、というふうに私は解釈すると申し上げているのであります。
  26. 鈴木安藏

    鈴木参考人 委員長にお願いしておきたいのでありますが、冒頭に申し上げましたように、委員長からの御依頼には、原子力行政の問題とございました。ただ、参考資料としてお送りいただきましたのに十月一日の当委員会会議録がございましたので、拝見しました。私は、原子力潜水艦寄港問題が原子力行政であるかというふうに考えると少し疑義があるのでありまして、これは政治の問題でありまして、行政はもっと次元の低いものであります。しかし、それが問題になっておる会議録をいただきましたから、一応読んで考えましたけれども、そこに焦点を合わせる準備をしてまいらないのでありまして、今後は、田中委員のおことばによるとどんぴしゃり、その原子力委員会原子力潜水艦寄港の安全性について確認する権限ありや、こういうふうな問題にしていただかないと、私どもとまどうのでございまして、よろしくお願い申し上げます。ときおり参上いたしますので、これまではそういう迷いがございませんでした。したがって、ここでお答えいたしますことは一応考えましたことでありまして、十分に研究が終わっておりませんから、留保づきで一応の見解として申し上げます。せっかく本委員会に参ったのでございますから、発言いたします。  そこで、先ほどから山田教授のお話を聞き、また田中委員からの質問も承っておりましたが、問題の根底に、どちらの御意見に対しても私の見解と若干重要な点において違う点がある。また同一の点もございます。  そこで、順序を申し上げますと、この原子力委員会設置法所掌事務、これを普通私ども権限と、先ほど山田教授の言われたような意味、内容においてとるのでありますが、これは言うまでもなく原子力基本法に基づくところの制約がある。ですから、山田教授の言われたように、文理解釈、論理解釈等々、つまり解釈の問題といたしましても、これはあくまでも平和利用のための所掌事務権限である。そういたしますと、外国の軍隊であるという問題は、あとでまた国際法上の問題がありますから一言いたしますけれども原子力潜水艦は核弾頭をつけたそういう武器を持つ持たないにかかわらず、これは軍艦でありまして、軍事用の存在であることは、もう一点の疑いもない。そういたしますと、平和目的に限って研究開発利用をするというこの基本的な規定のもとに存在する原子力委員会というものが、軍艦に関することについてやれるわけはない。  一番極端な例をあげますと、たとえば原子力委員会におきまして、軍艦自身の機能として、また国民に対して、二つ意味において安全な原子炉原子力潜水艦においてどのようにあるべきかということを研究することは、これは初めから問題になりませんね。それはもう自明のことである。ましていわんや原子力潜水艦をいよいよつくるのだけれども、どういう構造がいいか、コンテナはどうしたらいいかというようなことについて、専門的学者の集まり、委員の集まりであるから答申せよというようなことは、これはあり得ないことですね。これはわかりきったことでありますが、それが問題の一番の右翼にございます。  しかしながら、原子力委員会が発表しました安全性に関する説明というものを私も拝見いたしましたが、これ自身原子力潜水艦日本でつくる場合はどうだというようなことには関連いたしませんけれども、しかし安全であるということは、原子力潜水艦という軍艦の存在を認め、そしてそれについて保証する、承認する、こういう意味、内容を持つと、これは平和的利用に限るという性質からいって決して当たっていないのであります。国際法上の問題はいま一応捨象して議論を進めますから。  ただ、私はこの点で田中委員とも若干見解を異にするかと思うのでありますけれども原子力潜水艦は、私の一応理解するところにおいては、一〇〇%安全ということはあり得ない。そういたしますと、日本国といたしまして、条約に基づくにせよ何にせよ、原子力潜水艦日本の人口稠密な港湾に入ってくる、こういう問題がいま政治的に決定されようとし、生じようとしている。これは必然的に平和的利用とか、先ほど申しましたような国民基本権を尊重するというたてまえに立っておるところの原子力基本法趣旨から申しましても、当然この一〇〇%安全でないところの原子力潜水艦が入ってきた場合に、どんな放射能被害が起こり得るだろうか、起こった場合にはどうなるだろうかということは、どんな国家機関、どんな研究施設によるかは別問題としまして、やらなければならない。  そういう点からいたしますと、たとえば私は第二条第九号を引いたのでありますが、これは「放射性降下物による障害防止」と書いてございます。原子力潜水艦の放出するところのものとは、降下物でございませんから違いますけれども、これは事柄性質上、ほかに原子力潜水艦というふうな形態の放射能の危険が生ずるということは全然予想しておらなかったからそういう規定がないだけであって、そうすると、この放射能降下物に対するこの所掌事務を与えた趣旨からいって、これは国民の生命の安全を要求することでございますから、この場合そういう危険性に対する科学的の調査なり対策なりは第二条第九号によって原子力委員会が、政府の諮問があれば一そうけっこうでありますけれども、やってもかまわない。しかしながら、それはあくまでも万が一入ってくることになった場合にどんな危険性が起こり得るか、それに対しては万全の措置をとるにはどういう方法が必要であるかということを、原子炉安全の専門委員会も設けられておるのでありますから、そういう審議を経まして、原子力委員会が諮問に答申するという機能は私はして差しつかえない。  しかしながら、それはあくまでもそういうふうに国民の安全ということを保護するために許されることでありまして、原子力潜水艦自身が入ってくるけれどもこれは安全だ、こういう積極的な答申は何を意味するかというと、決していま申しましたような国民の安全ということを必死になって防止する、それに対する政策を立てるという見地でないと私は思うのであります。軍事利用という範囲にもちろん入ってしまう、そういうことを積極的にこの第二条第四号等によってなし得るということは、原子力基本法趣旨から申しまして私は絶対に出てこないと思う。  それで、会議録の中には具体的顕在的権限潜在的権限ということばがございましたが、これは専門の山田教授からもお話がありましたように、学術語としてはなじまない、まだないと言っていいと思います。ただ考え方はわかるのでありますが、そういう正当な、認め得る類推解釈、拡大解釈ないしはもっと直接マッチしませんけれども行政権の自由裁量というようなことを申しますならば、私が申しましたような第九号の放射性降下物、海域中に放出する放射能、こういうところに適用するのは認められるけれども、いやしくも平和利用ということを何よりも前提としておるところの第四号についてそういう基準をつくる、この程度の基準ならばこの潜水艦は入っても安全だというようなことは、これは根本趣旨に反する、これが第一点でございます。  しかし、問題はこれだけでは済まないのでありまして、せっかく御質問でありますから、たとえば会議録を拝見いたしますと、兼重説明員、これは兼重原子力委員の方だろうと思いますが、私ども学術会議のときに、学術会議の議長をやっていらっしゃったと存じ上げておりますが、失礼ながら原子力専門家ではいらっしゃらないのであって、それからまたこの原子力委員会の方々を見ても、われわれよりはこれについて専門がお近いかもしれないけれども、原子物理学とか核物理学とか原子炉の運転操作とか、こういうことに、藤岡氏が若干関係ありますけれども、ほかの委員はない。しかもこの会議録を見ますと、原子炉安全審査会にもはからない。はからないのは、十分に科学的に審査する材料がないから、そこに責任をとらせることはおかしいから、自分たちが責任をとって決定したのだというのでありますが、これはかりに愛知国務大臣が委員長として政治的にそういう責任をとってこういう決定をするとおっしゃるのであれば、私はこれは認められると思うのでありますが、この原子力委員会自身は専門的なそういう調査研究についての科学的な結論を出す委員会である。それが、これを決定された委員のうちにはわれわれの信頼できる原子物理学なりそういうものについての専門家があまりいらっしゃらないのに、政治的な判断をされるような結果になったということは、私はこれは二重において不当だろうと思います。権限がないから違法であり、かつまたそういう決定のしかた、安全審査会の答申も待たないで、そういう原子力委員だけが決定するということは、これは非常に違法であると同時に不当であるというふうに私は考えておるのであります。  さて、私の考えでは以上の解釈で疑義がないと思うのでありますが、ここに日米安全保障条約第六条あるいは施設等に関する協定第五条というものがございますが、これはこの原子力基本法、またしたがって原子力委員会設置法等の予想していない事態を生じたわけでございます。以上のような規定によりまして、この原子力潜水艦日本の港に随時出入をして、領海内にある日本の港の間も移動するということになるのでありますが、こういうことが一応認められているというふうに解されておる。しかし、これは確かにすでにアメリカの軍事体制のもとにおいては原子力潜水艦といわず、核兵器が第七艦隊等にも設けられているということは確認できることでございますから、これがそういうものでなくて、いわゆる在来兵器でありますならばまだ困難な問題は起こらないと思うのでありますが、ここに私たちが単に条約及び協定であるとか、国際慣行であるというだけで済まない新しい問題が起こっているのではないか。つまりほかの場合と違いまして、これらは万が一の場合には広島、長崎に匹敵する、いな、それ以上越えるような非常な大惨害が起こる危検性をはらんでいるのでありますから、こういう問題が起こりましたときに、条約、協定あるいは国際慣行ということだけで私どもは黙視しているということはできないはずであります。  しからばどういうふうに考えるべきであろうか。つまり現行原子力基本法なり原子力委員会設置法にはこういう事態は全然前提も予想もしていないのでありますから、そこにこれに対処する法の明文がないことは明らかであります。そうしますと、私は政治学をやっておりますが、当委員会性質上、政治論には入りません。したがって、法律論に限定して考えてまいりますと、私はとにかくまだまだ原子力委員会の発表されたような見解は信頼できない。学術会議その他の専門学者意見に非常に根拠があるように思うのであります。そういう危険のある場合に対して、政治的な問題を離れまして、法律的にほうっておくわけにいかないけれども、同時にいま存在するところの関係法規というものはこれに対応するようにできていない。法の欠缺があるんだ。欠缺があるからといって、これを類推解釈でやれるならば問題はありませんけれども、そもそもそれは原子力委員会なり、そういうものの存在を、軍事利用のためにやるということであればひっくり返してしまうようなことになるのであります。  そこで、私は最小限、法的には新たに、特にそういう原子力潜水艦というようなものについて、これはアメリカのものを検討しなくても、今日の科学上の発展から申しまして、また国際的に提供されているいろいろな資料によりまして、どういう構造、どういう内部構造あるいはその機能、あるいはまた寄港する港の立地条件、こういうものを客観的に十二分に研究調査して、広く国民の間に、こういうことであれば絶対に間違いない、こういうことは立て得ると思うのであります。アメリカの原子力潜水艦は軍事機密上、内部を公開しない。もちろんいろいろ特殊性はございましょうけれども、しかし原子力潜水艦についてでも世界の科学が、この安全性の問題に対して日本立場から対策を立て得るだけの資料はもっともっと出ているのではないか。ですから、そういうふうな従来の法規からいうと、原子力潜水艦というようなものは一切日本に来てもらってはいけない、こう言うべきなのでありますけれども、現実にそうでない事態が起こったのでありますから、新たにそういう法的措置を講じて、われわれ国民が十二分に安心できるような調査研究を相当の準備と時日をかけましてやっていただく。そうでなくして、いとも安易に、全然そういう事態を予想しないところの平和目的にだけ限る研究開発利用という委員会にこれを諮問すること自身私は不適当であろうと思うのであります。ましてや積極的に意見を述べるというようなことは、これは先ほど申しましたようにほとんど許されないことではないか。  それから、そういうふうにしまして最小限の、これなら絶対にもう間違いない、絶対に間違いないとわれわれが判定しましても、あらゆるものがわれわれの予想を越えて危険が生ずるのでありますが、そういう場合に備えまして、この条約及び協定の存在にもかかわらず、事原子力潜水艦に関してはこういうような運航、こういうような日本の港の出入はやめてもらいたい、こういうことは私は主張できると思うのであります。たとえば一九五八年ジュネーブにおいて協定されました領海及び接属水域に関する条約がございます。この十六条四号及び第二十三条、これは必ずしも原子力潜水艦という非常に物騒な危険なおそるべき放射能を放出するような兵器が十分に検討されていないのでありますから、直接適用されないと思うのでありますが、国際法専門家意見によりますと、この条約は沿岸国が、領海内であっても、軍艦に退去を要請できるのは、軍艦が領海通行に関する沿岸国の規則を守らなかった場合、かつ軍艦に対して行なわれる順守の義務を無視した場合、つまり沿岸国、日本なら日本定めた規則を守らない、あるいは軍艦に対して行なわれる順守の義務を無視した場合には、日本領海内において沿岸の通行を拒絶することができる。  こういうような国際法規も、これは直接に適用できないにいたしましても、こういうぐあいにできているのでありますから、あらためて政府はアメリカに対して安保条約及び施設等に関する協定というようなものは、原子力潜水艦というような、そういう存在を予想しない。少なくともそういうものまで、条約に基づく、国際慣行に基づくから、内部をわれわれ自身が科学的に確かめなくても入れるのが政治的義務なんだということになるのであれば、もっと国民はこれに対して反対し、まただめを押したに違いない。また政府においても、そういう重大な問題が明確になったといたしますならば、もう少し、単なる事前協議というような原則の獲得だけでない措置をとられたのではないかと思うのであります。ですから、そういうふうな措置をあらためて法的におとりになるだけのことは、これは必要ではないか。ですから、この前の会議録において愛知国務大臣が第九号を出されましたのは、これは、この放射性降下物というのは、これは平和的利用からばかり降ってくるのじゃありませんから、これは正当な主張である。さらに私はこれを類推解釈して、当面の場合最小限原子力潜水艦についても、いま申しましたような意味内容において、原子炉安全専門審査会の十分な答申というばかりではなく、広く日本の学界の意見を聞いて、そしてある場合に、そういう先ほど申しましたような法的措置がまだ講じられなくても、場合によっては政治的責任をとられる内閣の諮問に応じて原子力委員会が答申するということは、これは許される。こういう点で田中委員のいままでお述べになったことと若干違うのでありますけれども……。  それからもう一つ会議録にはあまりございませんが、先ほど申しました政府方面の発表したものの中に寄港ということばを使っております。寄港というと、ちょうど従来ありましたように、何か外国の軍隊なんかが世界を歩いているときにちょっと横浜を訪問した、一時的なような感じを受けるのでありますが、今度の問題は単なる寄港というのではございますまい。寄港ということばの使い方にもよりますけれども、絶えずここに出入りすることができるのであります。そうして横須賀と佐世保だけにとどまっているわけではなくて、両方の間をぐるぐる歩くこともありましょう。ですから、単なる寄港というような一時的に入ってくる、しかもそれがレクリエーションのために気休めにちょっと入ってくるのだという問題の立て方は不適当ではないか。  それはさておいて、このアメリカ自身の文書によりましても兵たん補給というようなことがございます。兵たん補給についても、政府の発表しましたのは、生鮮食料品、水、酸素などの補給だというふうに説明されておるのでありますが、これは最後の軍隊というものを知っている私どもから見ると少しおかしいではないか。やはり兵たんの補給ということになりますと、もっと軍事的な活動に備える準備ということが入っているのではないか。そうしますと、やはり放射能の問題ということ以外にもさらに重要な問題が含まれている。しかし、これは当委員会の範囲外に属すると思いますので、これで終わります。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 いま鈴木先生からもお話がありましたが、設置法の二条の四号、これは規制なんです。それから五号及び九号は防止なんです。したがって、先生が言われましたように、私は国民の保健衛生といいますか、そういうたてまえから規制をし防止することについて、やってはいけないとは言っていない。積極的に安全でございますというような結論は出すべき権限がない。こういうように私申し上げているわけなんです。  そこで、愛知長官、先ほど来の質疑応答をお聞きの上、所見を伺います。
  28. 前田正男

    前田委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  29. 前田正男

    前田委員長 速記を始めて。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの参考人の両先生の意見の中にもちょっとおかしいところがあったと思うのです。と申しますのは、鈴木先生は、ただ原子力行政についての云々ということだけであって、そういうことについてのどんぴしゃということについてはお尋ねがなかった、そういう参考になるものはなかった、こういうふうにおっしゃった。ところが山田先生は、私の質問に対して一点から六点まで逐次あげて反論を加えられたというか、見解を述べられたわけです。何か参考人に対する書類の送り方あるいは意見を述べてもらうことについて、別な取り扱いをしたのですか。
  31. 前田正男

    前田委員長 いや、参考人に対しては原子力行政に関することでお願いをして、それに速記録をつけて差し上げたわけなんです。だから、速記録を読まれて、山田さんのほうはあなたの質問に対してお話をされて、鈴木先生のほうは、その速記録は読んでこられましたけれども原子力行政ということだから、全体を見ていろいろとお話ししていただいた、そういうふうに御意見をいま述べられたわけなんです。速記録を参考に差し上げたのです。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、もう一度山田さんに伺います。  この四号、五号、規制とか防止について、やってはいけないとは言ってないですよ。積極的に、しかも諮問があれば云々ということですが、諮問もないのです。それが進んで安全でございますと言うていったこと、しかも兼重さんも、そこの議事録にありますが、資料は十分でなかったことを明らかにしていますね。そういう諮問もないのに進んで安全でございますと言うていくこと自体が茶坊主的行為じゃないか。しかもそれは設置法に定められた所掌事務ではないじゃないか、こう言っておるわけなんですよ。その点で伺います。
  33. 山田幸男

    山田参考人 お答え申し上げます。私は解釈法学者でございますので、あまり必要以外のことは申し上げたくないのですが、ただいまの御質問に対しましてはちょっと時間をいただいて、およそ五分くらいお答えをさしていただきたいと思います。(田中(武)委員「簡単に願いますわ」と呼ぶ)  二条の四号、五号ないしは九号という点につきまして、私は先ほど来、これでは事務分掌についての具体的な内容というものはそうこまかいことまできまっているわけではない、でありますから、関連法律にどう書いてあるかを参考にして二条四号、五号の内容を限定をしていく解釈をとらねばならないということを申し上げているわけであります。そこはよろしゅうございますか。(田中(武)委員「そこはわかります」と呼ぶ)  ではその次に、そこで原子力委員会所掌事務といたしましては、原子炉に関する規制でありますとか、障害防止基本に関すること、その具体的内容といたしましては、原子力潜水艦が入ってくるということを、あるいは商船が入ってくるということを想定をして、どういうことが起こるかということを考えてやってよいということなんですね。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 それは防止とか規制とかいうことなんですね。そういうことについてではなしに、安全でございますということを言うているのですね。
  35. 山田幸男

    山田参考人 その点お答えを申し上げます。  これはどうしてもあれでございますが、私ども学者の考えるところによりますと、法律の留保ということがございまして、これは元来ドイツの公法学において言われてきておることでございますが、人民の自由、財産に関する事項は形式的な法律に留保するということなんですね。その意味は、行政組織でありますとか、公の財産管理でありますとかいうようなことは、これは議会の定める形式的法律による必要はないということで従来やってきたわけであります。それは明治憲法下の体制にそのまま適用いたしまして、御承知のような官制大権というようなことになっていたわけでございますが、現行憲法のもとにおきましては、法治行政の徹底ということからいいまして、すべての事柄は形式的法律で書かねばならぬのだという考え方も現在においてないわけではないですけれども、しかし、私ども学者といたしましては、ことに専門の行政法学者といたしましては、法律の留保ということは、いろいろな行政法規解釈するにあたりましては、いまでも一つの有力な解釈原理になっているわけなんです。それは、こまかいことは申し上げませんが、自由裁量というような問題をこまかく議論いたしますにあたりましては、どうしてもその理論法律の留保ということに触れてくるわけでございます。  そこで、いま御質問になっています二条の所掌事務につきまして、こういう問題について一々内閣総理大臣からの諮問があったときにどう答えろというようなことにはなっていないし、現に、伺っておりますと、原子力委員会から出されました決定というのは、この二条に申します「企画し、審議し、及び決定する。」という決定ではなくて、いわばことばは悪うございますけれども、事実行為としてやっておられるように存ずるわけでございます。  そういうことを一体やれるかやれないかという問題につきましては、これは先ほど申し上げました行政法解釈といたしましては、こういう事柄は、法律の留保という概念から、はずれてくることになるわけでございます。したがいまして、くどいようでございますけれども行政処分の権限という意味で、つまり行政官庁の権限ということと、この原子力委員会所掌事務というものは、同じ権限ということばを使いましても、その法的意味は全く違うということを前から申し上げているのは、いまの法律の留保という考え方に連なっているからなのでございます。  そういたしますと、私は、具体的な事情にははなはだうといので、はなはだお恥ずかしいことですけれども原子力委員会とされましてどういう程度の審議をされたということは私は存じません。しかし、一介の解釈法学者立場から申しますと、そういうことをおやりになる、つまり法第二条にいう決定ではない、あるいは審議ではない、決定ではないということ、つまり事実行為とでもいうべきことをおやりになるということを禁止すべき条文、条項は、この原子力委員会設置法の上にはない。また、どの法律を見てごらんになりましても、そういうことはないということなんです。  ただ、こういうことを私が申し上げますことは、誤解していただくと困りますので申し上げますけれども解釈論としてそういうことを申し上げているのでございますので、その行なわれました事実行為なら事実行為と呼んでもよいかと思いますけれども、その内容が、国民に対して説得力を持つか持たないかということは、これは全く別の問題であります。ですから、できるかできないかということと、妥当か妥当でないかということは、これは全く別個の次元の問題でありまして、後者の問題につきましては、まさに国会において国会議員の方々が良識をもって審議をされ、そしてわれわれ国民に納得のいくように審議を進められ、こうだということを明らかにしていただきたいと思うわけでございます。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、原子力委員会が安全性の確認について結論を出したということが、事実問題として——事実やっておるのだから、事実問題としてやったということではなしに、設置法の二条各号の権限としてというか、法によって裏づけられた所掌事務としてやれるかということが問題なんですよ。だから、先生がいまおっしゃった事実問題としてやったということとは別なんです。それは何も法律解釈論であなたに聞かなくてもいいわけです。私が聞いておるのは、事実行為じゃなしに、そのやったことが法律的に有効であるのかどうか、法律というのは二条の各号ですが、それに定められた所掌事務の中にあるのかないのか、そういうことなんですよ。だから、やってはいけないということについては別です。これはこの法律じゃなしに別な次元です。
  37. 山田幸男

    山田参考人 お答え申し上げます。  私は、先ほど来申し上げてまいりましたように、所掌事務に入るというふうに解釈をしているわけなんです。ただ、それがこの二条という条文上の審議、決定ということをやっておられるのかというと、議事録などを拝見すると、どうもそうではないようであると思いましたので、事実行為という言い方をしたわけです。  そこで出てまいります問題は、またいまのことばを使うといけませんが、法治行政とか法律の留保という原理からどんぴしゃりときまってまいります人民の自由、財産に関し規制を加えていくという場合には、これは必ず明文法律定めるところによりましてそのままやるべきであり、ただ残るところは、どの程度の裁量権があるかということだけなんでありますけれども、しかし本件の場合におきましては、これはそういう問題ではない。したがって、原子力委員会とされて、二条の条文のもとに一定の審議をおやりになり、ある決定を出されたということと、それから、二条の条文上の、私はよく知らないのですけれども、この条文上の企画、審議、決定という手続をどっかでとりそこなっておられたか一そう言うのはいけないかどうか知りませんが、とにかく二条の上での審議、決定ではないことをおやりになったと仮定いたしますと、その後者を事実行為と先ほど申し上げたわけですが、それは無効とかなんとかいうことになる筋合いのものではないということなんです。それは一般の行政処分、行政行為というようなこととかでありますと、これは無効ということ、取り消し原因、いろいろこまかく議論いたさなければならないのですけれども、この問題というのは、われわれ個々の人民にとりましては、これは非常に大きな利害関係のある問題であることは言うまでもないのですが、であるからこそ、ぜひよく慎重に審議をして安全なことをやっていただきたいということなんですけれども、しかしこれは妥当かどうかということであり、よいかどうかということなんです。でありますから、単なる条文上の読み方といたしましては、二条の上にそのまま載っていないことを事実行為としておやりになりましても、それを無効だといってみてもどうにもしかたがないことであり、そういう問題はやはり出てまいりました決定をどう評価されるかというところでおきめいただくほかはありません。  ただ、審議とか決定ということが、私は事情を存じませんけれども、あまりにも一方的な情報に片寄るということであれば、そういうことを立証されて、これではほんとうの審議になっていないということをおっしゃるなら私はわかるのですけれども、ただ二条のその条文だけをとりまして、原子力委員会にその権限があるのかないのかというふうに繰り返しお尋ねいただいているのですけれども、私は、そのことばの正しい意味における行政権限という問題ではないのでございます。と申し上げているわけなんでございます。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 もう私は参考人からはよろしい。  しかし、山田先生にぼくは最後に申し上げたいことは、いまおっしゃったように、事実行為としてやる、そのことは、してはいけないという禁止規定がないからやってもかまわないのだ、そういうことと、私が言っている設置法の二条各号からそういう安全性の確認というようなことが法的権限としてできるのかどうか、こういうこと。先生の言われた、そういうことを原子力委員会がやったが、それがどうかということについては別な、法律の問題じゃなしに、それは政治の問題というか、あるいは行政の問題というか——行政よりそれは政治の問題です。しかし、先生の言われているところでどうしてもわからないのは、原子炉に関する規制法障害防止法から演繹してきて、この四号及び五号にそういう権限が含まれるのだということだけは、私は絶対わかりません。この法律はあくまでも規制なり防止という上に立っているのです。そこで、行政官庁が質問権、検査権がある。だから、原子力委員会ができるのだなんていうことには、ぼくは飛躍があると思うのです。これは意見が違いますからこれ以上は伺いません。それから、事実問題としてやるかどうか、事実問題についてあなたに伺っているのじゃないのです。  そこで、ちょっと私は愛知国務大臣に質問したいのですが……。
  39. 前田正男

    前田委員長 ちょっと待ってください。ほかに参考人に対する質問の方がありますから、その質問をひとつ終わってからお願いしたいと思います。  それでは次に、福井勇君。
  40. 福井勇

    ○福井委員 委員長から非常に時間をせいたお話がありましたし、田中委員の時間ということも考慮に入れまして、こんなにたくさん私の伺いたいことがありまして、詳しくお尋ねしたいということが私の本意でございますが、先ほどからずいぶん長い時間両参考人の方にお世話かけておりますので、私のお尋ねすることについてもきょうに限って簡単でよろしゅうございます。そのことを申し上げて、ちょっとお尋ねしたいと思います。  先ほど鈴木教授のお話の中に、原子力潜水艦寄港した場合には広島、長崎以上の大惨害が起こる可能性があるということも言及されておりますが、そういう技術的な見解はどこから出ておるかということを簡単にお答え願いたいと思います。
  41. 鈴木安藏

    鈴木参考人 いま廃棄する放射能の液のことが主として言われておるようでございますけれども、十月一日でございましたか、前回の本委員会における服部参考人意見とか、あるいは日本学術会議政府に申し入れた意見とか、それから十一月号の「世界」、これは比較的信頼してよい雑誌でございますが、これらに載った諸論文において、やはり非常に東京湾のように海難事故、衝突事故が多い。スレッシャー号というのはかなり特殊のケースであったためにまだ原因がわからないけれども、やはり原子力潜水艦を今日までの外部から判断するところによると、衝突して、そういう単なる廃液を出すようなこと以外の惨事だってあり得ないとは言えない。こういうふうな危険の可能性も十分確かめなければいけないというふうな考え。そうなりますと、おそらく今日のあの潜水艦に内蔵されておる原子炉の性能からいって、あるいはまたその他の連鎖反応的な爆発によって、単なるこれまで主として論議されたような被害以上のものが起こり得るのではないかという危惧を表明したわけでございます。
  42. 福井勇

    ○福井委員 私はそういう見解につきましては、鈴木さんが原子力関係の技術の専門家でないために、こういう席で表現されるのは、それ以上のというようなことは、これは速記録に残って国民全般に知れますので、オーバーしたような印象を受けるということで、私は反対でございますので、ちょっとお尋ねしたわけでございます。  たとえばいま私が調べましたアメリカの原子力潜水艦の保有隻数は、現在起工中のものを合わせると七十九隻になっておりますし、ソ連は大体二十五隻くらいと見ております。それから、ヨーロッパの方面の一、二隻ずつ保有し始めておるということも、これは一般に英国やその他の国が保有し始めておることもわかっております。今日アメリカの潜水艦が就航しておるのが四十五隻くらいあります中で、その国内を中心として運航しており、またもちろん北極あるいは他の七つの海にも行っておるようでありますが、私たちは、自国の安全をアメリカなどは一番考えて設計し、運航しておると思います。ソ連においても同様でございます。先ほどちょっとほかの話の中にありましたコンテナの問題なんかについても、非常な注意を払って、今日安全であるという段階で、米ソ両国ともその国の科学者の保証のもとに運航されて、今後は米国の潜水艦原子力潜水艦に限るというふうにきめたようでありますし、ソ連も同様の気配でございます。  そういうふうに安全性を確立されてきておる状況でございますので、私は日本原子力委員会もそういう点を科学的に調査したものだと信じておるわけでございます。  私は去る九月上旬に米国のニューロンドンにおけるスケート号の四百五十七号をつぶさに、技術者として私も政治の世界に入ってはおりますけれども、昭和二十四年以来原子力のことばかりやっておったような立場を向こうが読みとってくれたのでございましょうか、日本の国会議員として初めてその運航も、リアクターの設置されておるところまで入ってつぶさに見てまいりました。これなら私たちの見解では、原子力委員会がだいじょうぶだと判定されたことはなるほどなと非常に感じたわけでございます。その点について鈴木教授と相当見解が異なっておるということを表明しておきたいと思います。この件についての御答弁はけっこうでございます。  それから、愛知大臣がおりますれば、原子力行政に関する問題ということが本日の議題になっておりますので、日本原子力潜水艦をつくるようなことはありませんので、原子力商船を今後もっとピッチを上げなければならぬということ、並びに原子力行政面においてもっと原子力発電などについて急速な飛躍を遂げるように努力してもらいたいということを大臣に申し上げようと思っておりましたが、都合でほかのときに譲ることといたしましょう。  次に、前もって申し上げたとおり、簡単にということを前提として申し上げますから、もう一、二お答えを願いたいと思います。  鈴木参考人にお願いいたしたいのであります。原子力潜水艦寄港可否の問題は、私は外交上の問題で、国内法である原子力基本法の問題ではないと常に考えておりますが、その点いかがお考えですか、簡単に。
  43. 鈴木安藏

    鈴木参考人 どうも原子力潜水艦問題についてだんだんむずかしい話が出てまいったので、先ほど申しましたようにちょっととまどう点もございますけれども、せっかく出席したので一言申しておきます。  私は憲法学、政治学をやっておる関係から、原子力潜水艦問題についても、日本原子力潜水艦がいわゆる寄港、こういうルートがしかれました場合に、これは非常に重大な政治的な結果も生ずるのであって、この前の質問については答えなくてもいいということでございますが、そこに話がまいりますから一言だけ答えておきます。これは単に技術的な障害からの事態だけではなくて、やはり原子力潜水艦というものが日本の領土内に存在するというような事態から引き起こすところの非常に不祥な事態の危険性もある。したがって、万が一にそういうような事態が生じた場合に、広島、長崎以上の被害が起こらないという可能性は絶対に否定はできないのであって、ただ原子力潜水艦の問題それ自身をここでさらにそういう問題についてまで論議する必要はないということでございますから、これだけにしておきます。  あとの問題は、先ほど申しましたように外交と国内法の問題という点がございましたけれども、これは先ほどジュネーブにおける条約について申しましたように、従来の国内法に全然予想もしない今度の事態でありますけれども、しかしそういう危険性のある、技術的にまた政治的にも非常に重要な危険性のあるような問題が外交上の結果として起こってまいりましたならば、これはやはり日本国自身憲法を頂点とした法体系を持っておる国家なのでありますから、それに対応する国内法規を定めるということは当然であって、法がなければあらためて検討して、国内法体制を整備して、条約と国内法と体系が異質的なものでないように整備することは当然だと思います。そういうことに関連して従来の専門家意見をさっき引用したのでありますが、従来の国際法上考えられないような、領海内においても外国の軍艦の航行に関して国内においてきめた規則なんかを順守してもらうことを要求するというような条約が認められてきたのではないだろうか。だから、切り離すことができないのではないか。どちらがどういうふうに調整されるにいたしましても、条約というものと憲法を頂点とする国内法規とは、異質的に対立的に別個のものとして切り離されることではいけないのではないかというのが私の見解でございます。
  44. 福井勇

    ○福井委員 なお三、四鈴木参考人にお尋ねしたいことがありますが、一番先に、本日の議題の内容について御提示してなかったということは、これはごもっともなお話でありますので、私は必要と思いますれば、当委員会にはかった上で文書でまたお尋ねするかもわかりませんから、そのときには御教示を相願いたいと思います。それで鈴木参考人に対するお尋ねは以上で終わることにいたします。  もう一つだけつけ加えさしていただきたいのは、先ほど田中委員から、神戸大学教授の山田参考人は御用的な答弁ばかりしておるということを、速記録にも残るようなことばで発言されておりますが、私はこの委員会理事でもあって、いろいろこういうような参考人の問題についてもお願いするという場合には相談に乗っておるわけでありますが、私はきょう初めて山田さんにはお会いして、どこのどなただか御発表がない前は知らない、与党の重鎮の私が知らないというようなことでありますから、御用的な連絡などはとった立場でないということを、頼まれてはおりませんが、山田参考人が非常に熱心に陳述してくださったその立場に対して、御用的ななには私たちのほうからはない、みずからの参考人としての立場で御発言なさったものと確信を持っておりますので、そのことは、これもだれからも頼まれておりませんが、一言申し添えて、私の質問はきょういろいろな関係から打ち切ることといたします。
  45. 前田正男

    前田委員長 次に、岡良一君。
  46. 岡良一

    ○岡委員 参考人の方に少し教えていただきたい、また御意見を承りたいと思います点が三点ほどありますので、時間もだいぶおくれておりますが、簡潔にお尋ねをいたすので、率直にお答えを願いたいと思うのでございます。  まず第一の問題は、もともと私は法律に関しては全くのしろうとでございますので、きわめて常識的なお尋ねをまず申し上げたいと思いますが、原子力基本法第二条に平和目的に限ると規定されております。あの法律は、いまから約十年ほど前に与野党一致で議員提出立法で国会を通過した法律でございます。しかも、特に平和目的に限る、こう強くうたったのは、御存じのように広島、長崎、あるいはビキニなどで日本が唯一最大の犠牲を払ったものとしてうたったわけであります。原子力は毛頭平和目的以外は使うべきではないという、いわば国民の悲願に裏づけられたものとして、私どもはあれを議員提出立法として、国会の満場一致の御賛成で議決をされたわけでございます。  ところが、しばしば条約は法律に優先をするということで、安保条約あるいはそれに基づく協定等が持ち出されまして、いまの原子力潜水艦の問題などもいろいろ政治的な論議を呼ぶことになっておるわけでございます。一体、条約は国内法に優先するなどという一片の形式的な解釈だけで、原子力基本法第二条というものが無視されていいのかどうか。やはり事法律の問題とはいいながら、それを運用する立場にある者は、もっと道義的な勇気と申しますか、人道主義的な責任感と申しますか、やはり新しい法律運営というものは、そういうものに裏づけられて運営さるべきだという時代に来つつあるように私は感ずるのでございますが、その点についての両先生の率直な御所見と申しましょうか、御所信と申しましょうか、承れればと思います。簡単でけっこうです。
  47. 鈴木安藏

    鈴木参考人 この人道的ということは私も全く賛成でありますが、いま問題になっております法律問題及び原子力潜水艦のいわゆる寄港という問題については、憲法自体定めるところという切実な重要な問題があると思います。ですから、私はいまも山田教授とちょっとささやき合ったのですけれども山田教授は非常に篤学な、およそ御用学者なんというような、そんなレッテルはかりにも張られることのない有能な行政学者でありますが、君の意見等についてただ一つぼくがふに落ちないのは、この行政法解釈においても、憲法及び原子力基本法というこの基本的な原則、ワク、そういうものがはっきりとあるのに、その上に立った法律解釈において、その基本精神基本規定に反するような軍艦についての研究開発利用——開発利用にはなっておりませんけれども、そういうことを法解釈としても認め得ないのではないかという、そういう意見をいまささやいておったのであります。  そういう意味におきまして、ただいま岡委員からの御質問については、もちろん法律以上の人道問題だという考え方は、あらゆる問題について、ことに近代憲法国家においては重要でありますが、法律問題としても、憲法問題としても、非常に重要な問題であるということをもう少し学者も認識する必要があるのではないかと思います。
  48. 山田幸男

    山田参考人 お答え申し上げます。  きょう参考意見として私の求められましたことは、非常にこまかいことばかり申し上げておりましたので、あるいは若干の表現の不正確な点があったかとも思います。ただいま鈴木先生から御指摘のありましたような点、つまり外国の軍事力の利用という問題に対して規制権限が及ぶのだという点と、それと軍事特権とのかね合いという点でかなりこまかい議論を申し上げました。その議論をいたしましたことは、私は決して外国の軍事力の利用という形での原子炉の問題を日本原子力委員会所掌事務とすることができるというような意味で言っていたわけでは毛頭ないわけであります。たいへんこまかいことばかりもう一度申し上げますけれども、この原子炉等規制法でありますとか障害防止法の中で、立ち入り検査権、収去権、質問権というものがあるわけでございますが、これが事柄性質上と申しますか、軍事特権から申しまして事実上不能ということで、残るのは質問権だけであるということは、その行政権限を行使するためにそのもう一つ上のところで、上と申しますか、原子力委員会のレベルにおいて科学的な知識がまずなければ困る。そういう知識は日本学者にももちろんおありのわけですけれども、なお外国の資料などをとりまして、現実に原子力潜水艦が入ってくるという場合にはぜひ調査をした上で審議し、決定をしていただきたいということを申し上げていたわけなのであります。  ですから、それを逆の言い方でいたしますと、原子力委員会設置法を改正しなければ、原子力委員会外国原子力潜水艦についての資料をとったり、あるいは研究をしたり、審議をしたり、決定をしたりすることは法的にできないのだと言っていただくことは、かえってわれわれ国民の法感情からいえば困るわけでありまして、それはやっていただかなければならない。そのやっていただくことは法律上可能か不可能かといえば、原子力委員会設置法の二条の解釈としてはできるということを申し上げていたわけであります。  それがほんとうに一番よい方法であるかどうかということは、これは別の問題だ。これは先ほど田中武夫先生にもお答え申し上げたとおりであります。  したがいまして、私は解釈法学者という土俵の中ですべてお答えを申し上げておるのでありまして、私が憲法学立場から、あるいは一個の日本の市民として、一体原子力潜水艦寄港の問題をどう考えるのかといえば、これは非常に重大な問題であり、そういうことはできるならば絶対に避けるということをやっていただきたいということ、それくらいのことは言えるわけなんですね。ただ、私は、解釈法学者という立場からこまかい議論をすることにつとめておりましたので、その点何だか政府の御用解釈みたいに受け取られたかもわかりませんけれども、これはやはり現実の解釈をこまかくやってまいりますれば、私どうしても先ほど来申し上げていたようなことにならざるを得ないのでありまして、別に政府意見に迎合しようというような気持ちでやったわけでは毛頭ないのでございます。でありますから、その二つの、政治の問題とそれから実定行政法解釈の問題ということは、これは別個の問題だということをもう一度申し上げまして、解釈論としては、この原子力委員会設置法による、原子力所掌事務として、原子力潜水艦についての危険性についての調査、審議、決定をおやりになることは、これはできるのだ。そういうことは明文で書いてないのに何でできるのだということに対しましては、再び繰り返しになりますけれども、先ほど来の二つの、規制法防止法というところからいいまして、これは演繹ではないのでございまして、帰納的に申し上げているわけなんです。でありますから、その所掌事務を行なうことができるというふうに申し上げているのでございます。  おやりになっておられることがいいか悪いかということは私にはわからないのでありまして、それは何よりも専門の技術の方々、そして政治的にはこの国会において御審議になるべきことであり、一介の解釈法学者のとやかく意見を述べることではないというふうに申し上げているのでございます。
  49. 岡良一

    ○岡委員 ちょっと私の申し上げ方が非常に独断的であったかもしれませんが、重ねて先生方と議論をしようとは思いません。  ただ、問題は、先ほど申しましたような全国民の悲願に裏づけられた平和目的を掲げておる、しかし、これは外国が軍事的利用をすることを阻止することもできないし、またこれを規制することもできないことは言うまでもございません。しかし、さてそのようにしてつくられた原子力推進機関を持つ潜水艦日本へ来るという場合には、あのような悲願に裏づけられた大きな目的を掲げ、またその法律のもとにつくられた原子力委員会としては、もっと道義的な責任というものがあっていいのじゃないかということを私は申し上げたわけでございます。これについては、もちろん道義的などと申しますれば主観的な要素が入りますから、これ以上法律論的な解釈はお願いいたさないことにいたしまして、いま、それでは安全審査の問題でございますが、この点について両先生にお尋ねをいたしたいと思います。  実は、先生方は、たとえば原子力委員会には所掌業務として一応入ってくるということになれば、安全性について審査し、決定をすることは一応いいじゃないか、あるいはまた放射性降下物による障害防止するという項目もあることだから、これに準拠して原子力潜水艦の安全性を審査することも可能ではなかろうかとも思う、こういうふうな御意見があったように思います。  そこで、お伺いをいたします。私どもも一年半ばかりこの原子力潜水艦の安全性とこの委員会ではしょっちゅう取っ組んでまいったわけです。ところが、これは先生方も御承知のように、原子力潜水艦のいわば原子炉の安全性について、これを立証する一片の情報もほとんどない。少なくとも日本が陸上において原子炉設置を許可する場合に重大な要件としておるこれらの資料というものはほとんど入手することができなかった。したがって、私どもはこの国会で原子力損害の賠償に関する法律をつくった。非常にこれはシビアーな法律でございます。シビアーな法律であればあるだけに、まず原子炉設置者の責任が非常にきびしく、この賠償規定によって無過失賠償責任という重い責任を課せられる関係上、原子炉の安全性については政府も責任をもって規制しようじゃないかということで、原子力委員会に安全審査会というものができたわけです。  したがいまして、安全審査会は、なるほど形式上は日本国内設置される原子炉の安全性を審査することを本来の仕事としておるものではございますけれども、しかしながら、資料が全然入ってこないというような状態の中では、安全審査会としても、これは専門学者の集まりでございますが、日本が陸上で設置を許可するために必要な重要な安全性を立証するためのデータというものを得ることはできない、安全審面会の力でそれを提出することもできない、こういうような状態に現実には原子力委員会は置かれたわけです。アメリカはその提出をきっぱり拒んでおるわけです。そういうことになれば、もはや原子力委員会としてはもちろんのこと、安全審査会はもちろんのこと、原子力潜水艦の安全性というものは、事実上審査し、決定し得ないわけです。これがかりに放射性降下物に対する対策原子力委員会の所掌業務としても、あるいはまた広く所掌業務としてそういう権限があると解釈してみても、いま申したような事情の中では原子力委員会は事実上審査し得ることができなかった、安全性を確認し得ることができなかった、こう言うべきではないかと思う。私はそう見ておるわけです。  現にデンマークでは、原子力委員会がこれらのデータを入手し得ないために、安全性を立証することはできない原子炉は、現在の段階では安全性が立証できないから安全ではないかもしれないが、同時にまた不安全であるともいえないなどというようなしろものではないという立場から、政府にきびしく勧告いたしまして、NATO加盟国ではあるが、ただ一つ原子力潜水艦寄港を拒否しておるという事実もございます。  私は、原子力委員会が、先ほど来先生のお話しのように、科学的な信憑性をもって審査する、決定をするという権限を持ち、またそういう所掌業務としてそれをやるべきであるならば、以上私が申しましたように、日本が陸上の原子炉設置の際に最も必要な与件とするデータが提出されておらないにもかかわらず、それに対して安全性の確認を与えたということは、原子力委員会としてはいわば非常に軽率であり、無責任であり、いわばでき過ぎた、科学的な判断ではなく、それこそきわめて御用的な判断であったと私は言わざるを得ないと思う。  私の申し上げたような事実が事実であるならば、両先生は原子力委員会態度をどのようにお考えになりましょうか。先ほど来、田中先生との間にいろいろ原子力委員会の任務、権限、業務等についてお話がございました。以上申し上げたような次第であった場合には、一体原子力委員会の安全性を確認するという八月二十四日の決定というものは、はたして法律的に、たとえ所掌業務であり、あるいは放射性降下物の障害対策というふうなことから演繹してその仕事があろうとしましても、妥当であったでしょうか。その点について先生方の御意見をお聞かせいただきたい。
  50. 鈴木安藏

    鈴木参考人 いま岡委員からお話しのような、最後の個所において申されたような御判断が事実であるとすれば、それは事の性質上、先ほど来私が非常にこの生じ得る危険性、技術的にのみならず政治的にも重大であるという危険性に論及したわけでありますが、そういう事実であるならば、私は当然否定的な答申が出るべきだろうと思います。かりに原子炉安全特別審査会というようなものに諮問されましても、いま御指摘のようなことが事実であるとするならば、そこに科学的な責任のある、また科学者及び国民を納得せしめ得る結論が出るはずはないのでありますから、そういう場合には、とうてい責任を持てない。したがって、前回の会議録にも若干ありますように、服部参考人、藤本参考人等の意見にもありますように、そういうもののいわゆる寄港を政治的に拒絶するとか、あるいはそういう確実な日本自体における安全性の確信を持ち得るまで延期するとか、そういう政治的な態度政府に対して要求せざるを得ないだろうと思います。
  51. 山田幸男

    山田参考人 お答え申し上げます。  私は、この原子力委員会の決定につきましては、申しわけないのですが、詳しく検討する機会を持っておりませんでした。ただ、この先回の特別委員会会議録を拝見しておりますと、自然科学的な立場からいろいろな参考人の方々が意見を述べておられます。それを見ますと、これは、にわかにはわからない、認定のできない問題であるというふうに思います。私は法律学者でありますので、これは常にそういう比喩を用いていけませんけれども、裁判官が事実を認定するにあたりましては、これは法律解釈などというよりも、事実の認定のほうに精力を使うわけでございまして、そういう意味で、私にはこの問題についての事実認定をやる能力は全くないのでございますから、ただいま岡先生のおっしゃいましたとおりであるとすれば、これほど困ったことはないという、これはひとりの国民の感情であります。
  52. 岡良一

    ○岡委員 兼重委員もそちらにおられますから、参考人の方だけへの御質問という委員長のお指図でございますから、ただ一言だけ申し上げておきます。  私がいま両参考人に申し上げましたことは、あなた方が陸上の原子炉設置の場合に必要不可欠な条件として報告を求められる。ところが、最も原子炉の安全性を立証するに足る重要な科学的データというものをあなた方は入手しておられない。にもかかわらず、これが安全であるという確認をされたということは、原子力委員会としてはきわめて無責任なことではないか、私はこう申し上げた。私の申し上げたことについて原子力委員会として御異論があるならば、この機会に両先生に申し上げていただきたい。
  53. 前田正男

    前田委員長 政府に対する質問意見は後刻お願いすることとして、参考人関係のほうを、時間がたちましたからひとつ……。
  54. 岡良一

    ○岡委員 いや、これは非常に率直な話ですから、私が申し上げたことが原子力委員会の権威なり名誉なりを失墜するということがあってはいけませんので、また釈明の余地があったらおっしゃっていただきたい、こういう意味で申し上げたわけですが、委員長の御指示があればいずれまた次の機会に譲りましよう。  それでは、第三点についてお尋ねをいたしたいのでございます。もしかりにこういう事実があったといたしますならば、先生方はどうお考えでございましょうか。日本には原子力基本法があり、第二条には先ほど申し上げましたような規定がございます。ところが、政府のいわばお役人が公の機会にかりにも、もし原子力推進機関というものが普及するならば、自衛隊も行く行くは原子力艦船を持つかもしれない、こういう発言がもしあったといたしますならば、これは私は憲法上からも重大な問題だと思うわけです。そういう発言がもしあるとすれば、原子力基本法第二条の問題であるだけではなく、私は憲法上からもゆゆしき発言だろうと思います。もしこういう発言政府のお役人が公の席上で、あるいは原子力潜水艦説明等の場合に一般の国民におっしゃったとするならば、これは一体どういうことなんでしょう。まことに私は憲法上からもゆゆしき発言だと思いますが、両先生の御見解を承りたい。ことばをかえていえば、原子力基本法が存する限り自衛隊は自衛の手段といえども原子力利用することはできない、原子力基本法を改正しない限りは、たとえ自衛といえども、自衛行動といえども、それはやはり確率行動であり、戦争であるから、したがって、自衛隊はこの艦船等に自衛の手段として原子力利用することはできるものではない、私はかく信じているのでございますが、両先生の御見解はいかがでございましょう。
  55. 鈴木安藏

    鈴木参考人 後者の点については、本日の参考意見のうちにもすでに明確に申し上げましたように、絶対にできないと考えております。  それから、前者の問題について、この原子力委員会における原子炉の安全特別審査会の機能についてでございますが、これは当然そういうことをなし得るということの前提には、平和的利用はいうまでもなく、自主的に、またその研究の結果、成果を公開するという重要な原則があるのでありますから、先ほど申しましたような事実であるとすれば、それはもうそもそもその法の規定するそういう原則が全然貫かれないのでありますから、正当な権限の職務の行使としてもなし得ない。でありますから、前者に対しても、先ほども簡単に申しましたように、事実がそういう事実であるとするならば、その委員会でこれは審査し得ないことでありまして、法律上そういうすべての資料を自主的に科学的に十二分に調査し得るということを前提としなければ活動できないことは言うまでもないと思います。
  56. 山田幸男

    山田参考人 お答え申し上げます。  私は、本日の参考人として与えられました目的にかんがみまして、いまのお尋ねに対しましてはあまり立ち入った答えをしないほうがよいというふうに思うのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、事実の認定と申しますのは非常にむずかしいのでありまして、それを私の答えに対しまして、かりにこういうことがあったらどうかという例をおとりになったのですけれども、そういう例というものが具体的などういう状況下においてどうということまで、全部私どもは事実を認定するときには見るわけでありますので、ですから非常に捨象された形でどうということはちょっと解釈法学の立場から申しますと申し上げられないということでございます。  事のついでに、もう一つ申し上げますと、先ほど岡先生は、原子力基本法を改正すれば別としてというふうにおっしゃいましたけれども、これは事実の問題ではなくして法だけの問題でございますが、これは申し上げるまでもなく憲法第九条のもとに原子力基本法があり、そしてこれらの法律があるわけでございますので、原子力基本法を改正して軍事的目的のために日本原子力開発利用することができるというようなことを置くことは、これは明らかに憲法違反になるわけでありまして、そういうこと自体あり得ないのだと私は考える次第でございます。あまり仮説的な事柄については、ひとつ御猶予をいただきたいと思います。
  57. 岡良一

    ○岡委員 それでは、新聞紙の誤報かもしれませんので、ひとつ国連局長、お調べをいただきたいと思う。過日、原子力潜水艦説明会において外務省の方のそのように受け取れるような御発言がございましたので、その御発言の内容を、できるだけ誤解を解くように、ひとつこの際、次の機会にでも私ども委員会に資料として御提出願いたい。  それから、第四点として、最後に私はお伺いをいたしたいと思います。御存じのように、政府は前々から、原子力潜水艦寄港は断わる立場にはない、しかし日本の特別な国民感情を考えて特に相談を持ちかけてきたものであろう、こういうような説明をしておったわけです。いわゆる断わる立場にないと言っておる。ところが、断わる立場にあるかないかという問題でございますが、なるほど安保条約六条に基づく地位協定などによって原子力潜水艦が入ることは断わる立場にないかもしれません。  ところで問題は、それが事前協議の対象となるかならないかということをまず私は法律的にお聞きをしたいと思う。御存じのように、休養あるいはレクリエーションあるいは兵たんの補給等の業務、兵たんの内容は水や生鮮食料品云々となっております。こういうことのために、たまたま立ち寄るということになれば、これは安保条約の交換公文に示されたいわゆる重大なる配備あるいは装備の変更にはならない、したがってこれは事前協議の対象にならない、法律的に見てこれは一体なるのかならないのかということが第一点。  それから第二点としてお伺いをいたしたいことは、国会でも九月になってから、原子力潜水艦の入港がいよいよ承認ということになってから問題となって、いろいろ論議されておるいわゆる核弾頭を持った魚雷というものがあるわけです。これが二つの、両用の目的でつくられておるので、普通火薬も使える。そこで、核弾頭を持たないで入ってくるのだから心配は要らない、こういう説明をされるわけです。私はしかし、事前協議の対象とならないならば、たまたま核弾頭をつけたサブロックが装備されておったとしても、一体それが事前協議の対象とならないのだ、これは全然核兵器の持ち込みではないのだ、たまたま立ち寄るのだということで、事実上これら核弾頭を持ったサブロックを装備した原子力潜水艦、いわゆる攻撃用原子力潜水艦日本に立ち寄ることは十分あり狩るのではないか。これは全然安保条約やまたその交換公文において縛られない、いわゆるアイゼンハワーと岸、両方の何か相談、取りきめというふうなものに縛られない形で、わずか短期間休養やそういうものに来ておるのだから事前協議の対象にならないからといって、事実上核弾頭をつけたサブロックは十分入り得るのではないか、こういうふうな懸念を感ずるわけなんですが、こういう点について、両先生の御見解二つ目にお尋ねします。  三つ目は、問題は、かりに核弾頭をつけておらないといたしましても、いつでも核弾頭をつけ得るものなんです。いつでも核弾頭をつけ得るサブロックを装備した攻撃用原子力潜水艦日本寄港し、その目的が兵たんの補給にあるということは、結果において日本の港が原子力潜水艦といういわば攻撃用原子力潜水艦の基地となることではないか、そういうような懸念も持つわけです。こうなりますと、ちょっと法律的な問題よりも政治的な問題となりましょうから、まあ第三点はよろしゅうございますが、以上二点について法律的な立場からの御見解があったら承らしていただきたい。  以上、二点で私の質問を終わりたいと思います。
  58. 鈴木安藏

    鈴木参考人 非常に重要な問題でございまして、安保条約及び施設等に関する協定自体解釈ということは少なくとも含まれておりますので、本日御依頼の点から少しはずれると思うのでありますけれども、しかしせっかくの御質問でありますから、平素私自身憲法学、政治学の上から考えておりますことを御参考までにお話しいたしますが、十分の準備をしておりませんから、これはあくまでも私の最終的意見を国会においては留保さしていただきたい。  私は、この安保条約なるものが日本国憲法趣旨からいって合憲的であるとは考えていない。これはたびたび私の著書、論文において表明しているとおりであります。ですから、ただいまのような問題は、すでにこれに対する総括的な見解は申し上げるまでもないと思います。  さらに、一応私はそういうふうに考えるのでありますが、最高裁はこれに対する違憲の判断を差し控えまして、御承知のように国家の政治的部門にこれをゆだねておる。ひいては国民自身の問題であるというふうな言い方をしておりますので、そういう主張は常に続けていってよろしい、また続ける必要があると考えております。  その点から申しますというと、重大な装備の変更というふうなことがございますけれども、安保条約の論理は、日本及び極東における安全というのでありますが、この極東における安全がどの範囲のもの、どういう内容のものかということは、これは非常にあいまいで、議論の余地がある。国会においても多々これは論議されたのでありますが、とうとうわれわれが納得できるような限定的な明確な解釈政府は示さなかったのであります。しかしながら、日本自身の安全ということに重点のあることは言うまでもないだろうと思います。そうではなくて、日本の安全はイコール極東の安全だというふうにやりまして、ベトナムとかラオスとかあるいは韓国とか、ある場合においてはインドであるとか、こういうところにおけるトラブルが存したことがすべて極東における国際的安全が破壊されているのだ、これを防がなければならないのだということになりますと、少なくとも日米安全保障という条約の名称及び本来国民の間にいわれました趣旨から非常に違うのでありますから、そうしますと、日本の安全というのもあくまでも防衛的なぎりぎりやむを得ない、そういう装備を持って、そして対処する、その程度のことはアメリカ軍に対して認めるという前提があったと思います。だからこそ、重大な装備の変更というようなことについては、事前協議という形で日本の意思も聞くという交換公文があったものと思います。  そういたしますと、すでにこのわれわれしろうとが承知している範囲におきましても、B52というふうな機種、あるいはF105Dジェット戦闘機というものは、少なくとも当初私どもが受け取った、日本の安全のための防衛的な、受動的な装備という点から見ると、非常に異質的なものになっておるのではないか。もうすでにそれは相当攻撃的な武器と言わざるを得ない。そうなりますと、この核兵器さえも行使される現段階において、日本の安全を守るためにも、場合によっては先制攻撃を加えて相手方のロケット基地もたたかなければいけないというような議論も出てくるのでありますが、そこまで問題を認めますと、これはもうほとんどいかなる場合にも先制攻撃を加えることもあり得るのだというので、一そう日米安全保障条約ということによって国民が受け取ったものとは違ったことになる。  ましていわんや原子力潜水艦は、先ほどからあまりそれには触れることはできませんでしたけれども、私ども国民としてはソ連のこれに対する重要な警告をとうてい聞きのがすわけにはいかないのであって、日本原子力潜水艦が随時出入し得るということになれば、軍事的に考えて、日本の港に入るときには核弾頭をつけてこないのだということがありましても、そのとおり世界各国が、また日本国民が受け取ることは、これはほとんど不可能だろうと思います。また外電なんかから見ましても、いままで大西洋を主として原子力潜水艦の体制が、太平洋にも随時この秋ぐらいから拡充してくるというような報道があります。こういう体制の一環として、私ども原子力潜水艦日本の港に対する出入ということを、どうしても受け取らざるを得ない。でありますから、明らかにぎりぎりしぼりましても、事前協議の対象たるべき重大な装備の変更でありますし、またいままでの在来兵器によるもの以上に不祥な事態を招く危険も一方において日本が負担することになるのであって、政治的に見ると非常に重要な問題がからんでおるのではないか。  簡単に要約いたしますと、私は憲法第九条と日米安全保障条約というものとは、これはとうてい合致し得るものではない。学界では、だから日本の法体制は憲法体制と安保体制、この異質的な二つの法体制に分裂しておるのだということを言う学者が多いのでありますが、そういう用語は、私の立場からすると学問的に十分でないと考えておりますが、そういう考え方には私は賛成せざるを得ない。しかし、かりに最高裁が公権的に違憲ではないと言っておる現段階に、その次元に立って考えましても、日本の安全ということを中心にして締結されている条約のたてまえからすると、原子力潜水艦寄港というようなことは、これは非常にワクを越えておる。単に事前協議の対象ということ以上に重大な問題ではないか。しかし、もうすでにB52であるとかF105Dジェット戦闘機というようなものはそういうワクを越えたような状態にある、これにプラスしてさらに原子力潜水艦寄港を恒常的に日本で認めるということは、一そう不祥な事態を招く原因になるのではないか、そう考えておる次第であります。
  59. 山田幸男

    山田参考人 私はただいまの重要な御質問に対しましては、全然——専門が行政法ということであり、そして私の従来の研究行政法と古典的市民法——民商法との関係でありますとか、あるいは古典的民商法が経済法、労働法というようなところで修正をされてまいります、そういうところを統一的にとらえようという勉強をやってきておりますので、国際法の、ことに安保条約の一々の点につきましての解釈は、時間をいただきませんと、こういう大切なところでは私は意見を申し上げることはできないのであります。そういう意味で、たいへん重要な事柄であるということは重々承知しているわけでございますけれども、私の責任——私にもやはり学者としての発言内容に対する責任感がございますので、どうかただいまの御質問はお答えを御猶予いただきたいと存じます。
  60. 前田正男

    前田委員長 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  両参考人一言ごあいさつ申し上げます。本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  次会は公報をもってお知らせをいたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会