○
一柳参考人 一番最初は、争議が多い根本的原因は何かという
お話でございます。この点に関しまして、
理事者のほうで出しておられます「
原研調査報告」、これには、
給与等に関し
理事者の
自主性の幅が少ないということが紛争の起こる根本的原因であるというように書いてございます。一方
組合のほうは基本的な労働条件である
給与制度の決定とかそういうものは
労使間の交渉により行なうべきであるという公式論に終始しておる、というふうにいっておられるわけでございます。
そのうち、
理事者の
自主性の幅がないということが
労使紛争の原因になっているということに関しましては、私
どももそれはそういうことではないかというふうに
考えております。
それから、
労働組合のほうが基本的労働条件たる
給与制度の決定は
労使交渉によって行なうという公式論に終始する、というふうにいっておられますが、これは公式論ではなくて正当論である、そういうふうに私
ども考えております。私
どもそれに終始しておるわけではございません。それに終始しておりますと、これは当然、何といいますか、妥結せぬわけでございますが、毎年妥結いたしておりますところを見ますと、別に終始しておるわけではないのであります。
それから、そういうのを正常化するにはどうしたらいいかという第二点の御
質問でございます。その点に関しましては、
理事者が
給与等の労働条件につき
自主性を回復していただくということが何より大事なことである、そういうふうに私
ども考えております。
労働組合のほうといたしましては、これは従来ともそうであったと私
考えておりますが、今後ともますます
組合員の意思を集約し、その意思に基づいて行動する、健全に運動を展開するということが、
労使間の正常化ということにとっても私は非常にいいことである。そういうふうにすることによって
理事者のほうは
給与の決定に関して
自主性を回復する。私はダラ幹とかはね上がりとか、そういうふうなことではないような、健全な
組合員の意思に基づく健全な運動を展開していくということが、
労使間を正常化するのに何よりのことである、そういうふうに
考えております。
三番目に、士気が沈滞していることについてでございます。士気が沈滞しているということは、やはり残念ながら事実である、そういうふうに思っております。これにつきましては、
理事者側の「
調査項目」によりますと、人事考課等はあまりやっていないとか、あるいは職務給的な賃金を採用していないということがそもそもの原因であるというふうに述べられておるわけでございます。同じ
給与に関する「
調査項目」の中で、毎年昇給昇格に必要な原資が十分についてこないとか、あるいは近い将来非常に大規模な
給与の頭打ちが起こるということが予想される、
給与費全体が非常に苦しい、パンクしそうだ――そういう中において人事考課とかあるいは職務給とか、そういうものが導入されてまいりますと、これは
給与全体を低める方向でしか働きませんので、そういうふうなことでありますと、これはますます士気が低下することになります。そういう全体を低めるような職務給とか人事考課というものでは、職員に対しまして将来の見通しをますます暗くする。モラルも低下させざるを得ないのではないか、というふうに
考えております。
この士気の上がらない原因と申しますのは、話しますと非常に長うございますが、たとえば
JPDRなんかにつきましても、ああいう炉をつくるということに関しまして、私
ども初めは、将来軽水型の動力炉というのは
日本の動力
開発の中心になるというふうに話されまして
仕事を始めるわけでございます。ところが、途中になりますと、実際の
発電所のほうはコールダーホール型というふうな全然違うものが途中で導入されてみたり、あるいはその次の国産動力炉は重水型でいくというようなことがぽんと出てきたり、こういうような
状況というものが、
原研の中に一ぱい起こっております。そういうことで、途中までやっておりますと、ひょっと変わってしまうというようなことが
研究所の中でいろいろなところにございます。士気が低下するということは、それが最も大きな原因である、そういうふうに私
どもは
考えております。
原研を特殊法人にしたのは
給与を高くするためであるけれ
ども、だんだん
給与が低くなっておるという点でございます。その原因に関しまして、私
どもは、これは
原研でお出しになっている「
原研調査項目」というのにも載っておりますが、
給与に関する大蔵省の画一的査定というものが
給与をだんだんに低くしていく最大の原因である、そういうふうに
考えております。具体的に申し上げますと、高年齢でやめていく人が少ないにもかかわらず、毎年よそと同じ三・八%という定昇原資に縛るということ、あるいは学歴構成とか
人員内容に見合った
ベースアップの原資が獲得できないということ、こういうところにやはり全体に下がっていく原因があると思います。この点に関しまして、別のところでは、
原子力ブームというものが退潮しておる、あるいは
労働組合が政労協というふうな
立場で横断的な
労働組合運動をやるから下がるんだと言っておられますが、私はそういうものではないというふうに
考えております。
それから、経済闘争が最終目標ではないんじゃないかという批判があるということでございます。これは私
どものほうとしては、どういうことであるかよくわからぬのであります。先ほど申しましたように、私
どもの経済的地位の向上に関しまして
理事者の
自主性の幅というものが非常に少ない、あまりにも少ない、そういうことでございますので、当然
理事者と話をしておっても行き詰まってしまうわけでございます。それじゃ困るじゃないか、だから困るということで、経済条件だけではどうしてもすぐ壁に行き当たってしまうので、一体なぜそんなことになるのだということで、かつてそういう問題と機構の
不備の問題とが一緒になりまして、
理事者に不信任闘争というふうな形で起こってきたことがございます。それから、あるいはそのうしろにあるものは何だ。これはやはり
原子力局とかそういうところの画一査定だ。それじゃわれわれだけでは足りないから、政労協というふうなわれわれと
立場をともにする人と一緒になって、大蔵省へ陳情に行こう、そういうふうなこともやるわけでございます。したがって、そういうことが最終目標、それがその御批判であるとすれば、それは私やはりそういうふうなことはあると思います。しかし、それはいずれも経済闘争というものから付帯して起こってくる当然の帰結である、そういうふうに
考えておるわけでございます。
それから、
争議協定の問題につきまして、これが長引いたのはなぜかという
お話でございます。これにつきましては、
争議協定をめぐってごたごたいたしましたのは、最近二度ばかりあるわけでございます。一度は昨年の十一月でございます。十月の二十九日から始まったので、まあ十一月でございます。これは動力試験炉がまだ工事中でございまして、そこの施工者であるゼネラル・エレクトリックからの指令によって
原子炉がとめられたわけでございます。そのときでございます。もう一度は、本年の二月の半ばから、これは新聞等の報道によりますと、
原子力局あるいはその他から何か
お話があってやったというふうに私は聞いておりますが、それによって
原子炉がとまった、その二度でございます。
昨年の十一月のときには、これは御
承知のように、後に訂正されましたけれ
ども、
日本人技術者のミスオペレーションの問題であるとか、そういうふうな問題に関するGEに対する
理事者の
主体性の問題であるとか、こういうふうな問題がひっからまりまして、それと、いまちょっと前におられますので少々あれなんですが、毎週週末になると
理事者が東京に帰っておしまいになったというふうなことがありまして、長引いたわけでございます。
今回の二月の場合には、この
争議協定の問題に関しまして、炉がとまる前に、それに先立ちまして
労使間で非常に平和裏に話し合いをやっておったわけでございます。話し合おう、そういうことになっておりまして、やっておったわけなんでございますが、そこへ突然炉がとまっちゃった。せっかく話し合ってやろうというときに炉をとめて、その問題についてやろうというのは、これは一種の所のほうの
ストライキみたいなものでございまして、しかもそういう行為というものが、交渉等によって聞くところによりますと、あるいは新聞報道等によりますと、
理事者の主体的な意思ではない、よそから何かやられたものらしいというふうなことで、話し合いの空気というものは非常にこわれたわけでございます。しかも時を同じくしまして、たまたまその前の
JPDRの事件につきまして、労務の担当の
理事の方が辞表を提出されたり、あるいは
労務担当の
理事がかわられたりした。ちょうどそれが同じ時期にきましたので、この間お休みみたいなことになりまして、早く片づかなかったというのが表面的な理由でございます。
しかし、こういう簡単な問題がこういうふうに長引くことには、その背景にもう少し大きな問題があると私は
考えております。それは何かと申しますと、まず一つは、先ほどから申しておりますような
給与の
先細りというふうな中でこういうことが行なわれた、そういうことが一つでございます。さらに最近、去年あたりから私
どもの
委員会になりましたわけでございますが、その間に
種々のごたごたが起こっております。そのごたごたのほとんどが、労働条件に関する外からの圧迫と申しますか、それが強くなったせいか、労働条件を切り下げるというふうな零囲気の中で紛争が起こっておるということでございます。たとえば昨年の七月に動力試験炉で紛争が起こっております。これは先ほど申しましたように、交代手当の切り下げ並びに五班三交代の時期をおくらすということが紛争の原因になっております。それから、年末に至りますと、期末手当の問題が起こっております。これは二つ目でございます。これは、昨年度支給
実績その他が、不況になったのでも何でもないにもかかわらず、昨年の支給率を二割も下回るような案を提出してこられたということが紛争の原因になっておるわけであります。それから、そのほかもう一つの紛争といたしまして、
ベースアップがございます。
ベースアップにつきましては、私
どもの要求を提示いたしましたのが十月であります。しかし、その後回答がずっとゼロ回答、あるいは団交は拒否というのではないのですが、私
どものほうから何度も何度も団交を申し入れておるのですが、いまはまだだめであるということで、団交が延期になった。実質的な拒否だと思います。そういうような形で交渉がずっと長引かされて、しかもゼロ回答のままである。最近出てまいりました所側の一時回答というものを見てまいりましても、他の労組に比べて著しく低いというふうな
状況であるということが非常にぐあいの悪い点なんでございます。そのほか、まだ先ほど
森山委員のほうから御指摘のありました超過
勤務手当の問題がございます。これについても、私
どもは歴史的な過程、歴史的な経過というものの中でそういうものを
考えなければならないということを申し上げたわけでございますが、そういうところを無視してかってにその部分を切り下げてしまうというふうなことは、私
どもといたしますと、これは昨年のそういういきさつから見まして、やはり労働条件の切り下げであるというふうに
考えざるを得ないわけであります。そういうような
状況の中で
争議協定というのが行なわれておるわけでございます。ことしの四月になりますと、先ほど
森山委員からも言われたように、争議行為については厳然とやれというような御要請があったわけでございますが、しかし、そういうふうな厳然とやれということは、
森山委員が言われるまでもなく、
理事者はそういうことを言っておられる。そういう
状況の中でくるものだから、
争議協定については
組合に対する弾圧である、そういうふうに私
どもは
考えております。そういう背景の中でこういう話が行なわれる。しかも、そういう中で
原子炉をとめて
争議協定だというふうにやるというふうにこられるから、非常に話し合いが長引いておるという結果になっておるわけでございます。そういうふうな
給与全体に関するじり貧的な傾向、そういうふうなものさえなければ、さらに所側が外から
規制が強くて非常に硬直した態度をとるということがなければ、もっと話はスムーズにいっておるのではないか、私はそういうふうに
考えておるわけでございます。
それから、二十四時間の意味であります。二十四時間の意味という点に関しましては、団体交渉の席上でも問題となったところでございますが、別にこれは安全性ということとは
関係はございません。つまり、炉をとめるのに何分である、それからそれを連絡するのに何分である、そういうふうに積み上げた値ではないのでございます。現にJRR2という
原子炉は、三千キロワットで
運転しておるときに一分でとまります。それからその後、炉心の熱除去のためには、ポンプを一ないし二時間回しておればよいということでございます。それからJRR3、国産一号炉という
原子炉は、一千キロワットの
運転時に自動制御計によってとめますが、それには大体三分で出力を下げ、次の一分で化学反応は停止する。それから後三十分ばかり炉心の熱除去をやるということになっております。それから、動力試験炉
JPDRに関しましては、さきの
争議協定期間中に一度とめたことがございますが、そのときには大体二時間ぐらいでとまったという
実績がございます。
それから、三十分前予告の
ストライキの
お話がございました。これは昨年の十月の二十五日に行なわれました
ベースアップの第一波の争議のことであると
考えます。この日は午後二時に
ストライキの実施を所側に
通告いたしまして、現場において直ちに保安要員の交渉に入ったわけでございます。交渉成立後、炉がとまってから
ストライキに入るということにいたしまして、所側の手で炉の停止が行なわれております。それで二時三十九分に完全に停止いたしましたので、二時四十分から保安要員を残して退出したということになっておりますので、これは安全上は何ら問題はない、こういうふうに
考えております。
原子炉の
管理手当について
組合が反対しておるのはどういうわけかという点でございます。これはまだ所のほうから具体的な
お話がございませんが、交代制がしかれている現状では、一直当たり――一直と申しますのは一日を
三つに分けた三分の一でございます。――直当たり本俸の一・五%プラスアルファという形で交代手当と称するものが支給されております。これにかえて、今後、パーセントではない一定額の交代手当と、それから
原子炉対
管理手当を支給しようというのが所側のお
考えであるようでございます。ただ、この
原子炉管理手当というものに関しましては、これも過去におけるいきさつがございまして、
昭和二十五年ごろに
労働組合より提出いたしました放射線手当というものの要求がその初めになっておるわけでございます。ところが、その放射線手当の問題に関しましては、その後所内に
労使双方より
委員を出します予防補償
委員会というものが設置されまして、そこで検討されて答申が出たわけでございます。その答申の中に、低線量の部分については一定額の補償を行なうということが答申されたわけでございます。所側のほうもいろいろお
考えになったらしくて、
原子力局あたりとも
いろいろ話をされたらしいのです。放射線手当ということではこれはまずい、放射線を取り扱うには高度の技術が要る、だから放射線取り扱い手当ということならどうかというふうなことで、放射線取り扱い手当という形に一たん変わりまして、話をされておったようでございます。ところが、
原子力局あたりへ参りますと、まだそれでもやっぱりいかぬということで、
原子炉等については、そういうものの
運転は社会的な責任があるから、その責任に見合う手当としてなら払える、そういうふうなことで
原子炉管理手当てというふうなものが
考えられたわけでございます。ところが全体の額から申しましても非常にぐあいが悪うございますし、そういうわけで、全体の
給与が小さくなる中で受ける職務給というような形がはっきりしてまいりました。したがって、
労働組合としては、これについてはやはり困る、もとの放射線手当という形にしていただきたいということを申しておるわけでございます。
それから、高崎研の従業員
組合と申すものにつきましてでございます。これは本年一月二十二日ごろに、高崎
研究所におきまして
組合員二十二名で結成された一種の第二
組合のようなもののことではないかと思っております。この高崎研と申しますところは、一昨年あたりからずいぶん
組合員がそっちに行っておりまして、建設に従事しておったわけでございます。昨年来急に警備員とかそういう方がふえまして、常用臨時というふうな形で二十人ばかり採用されたわけでございます。急に人間がふえた。しかも、あそこは建設時期でございますので、
東海研の建設初期のような
状態であると思われますので、それらの
人たちは身分的にも、また労働条件の面でも、いろいろ不満があったようでございます。われわれの
組合でも、そういうものを早く組織しようじゃないかと言っていたのですが、昨年来いろいろ問題がありまして、なかなかそっちへ手が回らなかったというのが実情でございまして、その点が一番遺憾なところなのです。その
人たちの不満というものを吸収組織してやれなかったというところが一番ぐあいが悪いところなのですが、その点私
たちも反省いたしておるわけです。とにかくそういろわけで、これは第二
組合と申しましても、普通の第二
組合とは若干性質の違ったものではないか、そういうふうに
考えております。ただ問題は、その第二
組合を
つくりました指導者と申します者が、それらの
人たちの不満を組織する場合に、普通の正常な労働感覚の持ち主でありましたならば、これはわれわれの
組合の分会とかあるいは支部をつくるというふうな形で話をこっちへ持ってくるだろうと思うのです。それを法律上はれっきとした第二
組合という形に指導したということには、何か悪い意図があるのではないかというふうに私
ども考えたわけでございます。私
ども若干
調査いたしたのでございますが、その結果、第二
組合の結成を新聞発表されるときに、一部の
理事の方と幹部の人がどうも一緒にやったのじゃないか、あるいは結成手続等について、そういうものが完全に行なわれたかどうかということをあまり確認しない前に、一部の
理事の方と団体交渉みたいなものをおやりになったのじゃないか、というふうな点でいろいろ問題が出てきたのでございます。したがいまして、われわれとしては今後またさらに
調査につとめまして、もしそういう支配介入の事実があるという場合には地労委等にも提訴する必要がある、そういうふうに思っております。
それから、私
どもの
労働組合の活動につきまして、朝から晩まで何かかってにやっておるような印象を与えるということでございます。その点につきましては、私
どもといたしましてはそういうことはないのでありまして、先ほど労働省のほうからも、大会等まで金を出すのはおかしいという
お話がございましたが、私
どもの大会は全部賃金カットされております。それから、職場大会、分会その他はいずれも時間外に行なっております。ただ、先ほどから申しておりますように、交渉事項が非常に多い。たくさんある。現在
労使間でペンディングになっておる問題が二十ばかりあるかと思いますが、非常に多い。だから、しようがない、毎日一生懸命詰めてやっておる。その準備等のために執行
委員のうちのある部分はずっと
仕事をしなければならない。そういう
状況でありまして、大会その他一般
組合員の活動につきましては、全く賃金カットされております。全く正常に行なわれておる、そういうふうに
考えております。