○
福本参考人 私は副
社長の
福本でございます。本日は
社長が参りまして申し上げるべきでありますが、あいにく不在でありますために私がかわって申し上げる失礼を
お許し願いたいと思います。
私は根っからの
航空人ではありませんが、
日本の戦後に驚ける
航空再開後の第一日から、
全日空の前身であります
日本ヘリコプター
会社のお手伝いをして今日までまいったわけでありまして、いわばここ十年間、門前の小僧をつとめたその体験から
国内航空の実情をありのままに申し上げて御
参考になればはなはだ幸いだ、かように存じておる次第でございます。
国内航空は、ただいま御説明のありました
国際航空とは違いまして、
日本の
国内の
航空というきわめて狭隘なる中に多くの
会社がひしめき合って
経営しておる
関係上、なかなか複雑な、一見外部からは想像のつかないような
経営上の困難さなり、あるいはトラブルも生じてくるわけでありまして、小
委員長のお話のように、率直に申し上げなければ
参考にはなりにくいのでありますが、とかく率直にこのまま申し上げますと、あるいはいろいろの方面に多少の差しさわりが生ずるやもしれぬということを非常に
心配するものでありますが、この点はそういう
意味におきまして、また申し上げる私自身は、この十年間、晩に自宅の電話のベルが鳴りますと、はっと胸を痛めつつ苦難の道を歩いてきた体験談であるという点に御同情を願いまして、御了承をあらかじめお願い申し上げたい、かように存じます。
わかり切ったことでありますが、
航空会社の
使命が、安全で便利な運航を提供するものであるということは、これはもう私が申し上げるまでもないことでございます。ところが今回こういうお催しのありました原因ともなりましたように、最近ことに
国内航空におきましては、いわゆる世間では
航空ブームとさえ言われるようなきわめて盛況を呈しておる業界であるにもかかわりませず、むしろ
事故が頻発をして、その基本の問題である安全性まで非常に
心配になってくるような奇現象を呈するようになっておるのが現在の
国内航空界の現状である、私はかように感じておるものでございます。しかも、その
国際航空については、ただいま
松尾さんから、その
競争力も
外国の
航空会社に比してきわめて弱いという点を非常に訴えられたように拝聴いたしたのでありますが、
国内におきましては、
民間航空会社、つまり
民間資本によるたくさんの
航空会社というものは、いま
日本航空が
国際線において他の
航空会社よりきわめて劣勢なる
競争力を持って運営をしておられる以上に不
利益なる
経営状態を続けていかなければならぬというのがこれまた現状でございます。と申しますのは、飛行場の設備にいたしましても、あるいは
会社の資本その他の力におきましても、また所有する人的要員におきましても、採算の点から見ると、きわめて不
利益な、採算性のきわめて悪い条件のもとに――ことに
日航と比べますと、そういうきわめて条件の悪い、あぶなかしい職場において
経営を続けておるというのが現状なのでございます。したがいまして、もちろん
航空事故の直接の原因としましては、すでに十分言及されておるところで、幾多の具体的事実があげられておるのでありますが、これを一口に申し上げてみますと、それは、まだ
日本の
国内航空界の経済的な底というものはきわめて浅いものであるにもかかわりませず、多数の
航空会社が乱立をいたしまして、その
経営基盤が固まるどころかまだ緒につかない間において、一方
航空界の実情は、
航空機の非常に急ピッチの
発達もありますし、ま
たちょうどただいまは
パイロットその他の
航空要員の人的な方面におきましても、戦前と戦後の人が入れかわるというきわめて重大なる一大転機に遭遇をしておるということが、あわせて
国内航空の存立をきわめて困難にしておる大きな原因だと私は
考えておるわけでございます。
大ざっぱにこれらを
考えてみますと、その内容をなすものは、
空港施設がもう少し改善されればよい、あるいは
事故は
パイロットの技術未熟によるものが大半を占めておるのであるから、この技術の向上をはからねばならぬというようなことから、結局は
経営の不如意ということが大きな
事故の原因になっておるのではなかろうかというのも、大体一般に言われておるところと同じような
考えを持っておるものでございます。
こういう状態におきましては、年々累積してまいりますところの赤字を見るにつけ、不安、焦燥の観念というものにかられまして、まじめに落ちついて
路線の開拓に専念するということができず、余儀なく有利な
路線を獲得するのに狂奔をして、無理な
経営を続ける。
先ほども
松尾さんからお話がありましたが、こういう甘い、またはある
意味からいえば利権的な
経営のうちにひそむ
考えというものが大きく作用しておるのではなかろうかということも
心配の種になってくるわけでございます。
したがいまして、その対策をどうすればいいかということにつきましては、これは
運輸省はじめ、小
委員会その他の
方々がすでに
調査団を派遣される運びになって、各項目について御検討が行なわれておるわけでありますが、見方によれば、これはまず
航空会社自体の反省または努力による事態の克服ということを前提とすることはもちろんのことでございますが、公益性のきわめて強い免許
事業でありますので、どうしても
政府の施策にまたなければどうにもならぬ部面というものがきわめて多いのでございます。この点は
国内のことでありますし、もうすでに御承知の点も多々あると思うのでありますが、毎日はらはらして
経営をいたすものといたしまして、二、三具体的な事実も申し上げて、御
参考になればと存ずる次第であります。
たとえば、条件の悪いもとに仕事をしなければならぬと申し上げましたが、この第一にくるものは、滑走路の問題でございます。これは聞くところによると、各府県に一飛行場を設けるというほどの盛況は呈しておりますが、その内容は
航空施設としてはきわめて不十分なるものがまだ多いのでございまして、大体ローカル線の延長は御承知のように千二百メートルが一応の規格になっておるようでございます。もちろんこれは技術上必要なる延長であることは間違いないと思うのでありますが、しかし人間が運航をいたします実用的な滑走路長といたしましては、きわめて足りない、不十分なる滑走路である、かように実際上の仕事をしてみて私は感じておるわけであります。たとえば戦後起きた
事故、またわれわれの
会社といたしましても体験をして、申しわけない事態も起こしたこともありますが、よくオーバーランをやります。滑走路からはみ出すようなことがしばしばあるのでありますが、これは滑走路が短いだけでなしに、滑走路へ入るときの進入角度というものが、滑走路がもう少し長くなければ、またその周囲の障害物がもう少し整理されていなければ、低い角度をもって遠方から近寄るわけにまいりません。ただいまは大体三十分の一で入ることになっておるのでありますが、少なくとも五十分の一ぐらいな角度をもって入れば、接地点が中のほうにならずに十分に使えるということがあるのでありますが、ちょっと誤まりますと、また障害物があれば、とかく人間の心理状態といたしまして、それを余分によけて入るということは、これは免れないことでございます。大分
空港における先般の
事故も、私はしろうとでまだよくわかりませんが、材木の積んであるのに当たったり、いろいろのことを見れば、多少こういうことも心理作用として影響しておったのじゃなかろうかと想像しておるようなわけでございます。そのほか
航空保安施設の問題でありますが、これは
離着陸の誘導装置あるいはレーダーというようなものでございますが、これがあるとないとでは、またこれが使えると使えぬということでは、運航上の安全性はもちろんのことでありますが、ちょっと天気が悪ければもう欠航しなければならない。また行ってみてちょっと雲が多ければ、ほかの飛行場に行かなければならぬ、かようなことは、単に安全性にきわめて重大なる不安を感ずるのみでなく、お客には迷惑をかけ、
会社は迷惑をかけた上に非常に損失をかぶらなければならぬ、こういうような事態が起きますので、
空港のいいところで商売をするのとしないのとの開きというものはきわめて大きくなり、ローカル
航空会社というものは、かようなところを本場の仕事場として使わなければならぬという条件下に置かれておるようなわけでございます。
それからもう
一つ、直接
空港に
関係のある方はよく
御存じでありますが、世間にあまり知られていないで、しばしば小言を食いながらどうすることもできぬ問題が
一つあるのは、飛行場
自体、
空港自体の運営時間の問題、これはローカル空航はたいてい十二時間勤務になっておりますが、これは少なくとも十六時間にしていただきたいというのが、ローカル
航空会社あげての念願でございます。しかしこれも
予算を伴うものであり、人員の不足というような点でなかなか実現がむずかしいのでございますが、しからば従来どうしておったかということになりますと、地元の
空港の従業員のお方の御協力、われわれもお願いをするのでありますが、そうして時間をオーバーしても、
飛行機がおくれたりいろいろする時分には、これを運営していただくということが起こっておったのでありますが、近来この労働組合運動というものが非常に盛んになってきまして、ある
航空会社でそういう行為をやっておるということが、
お互いの間ではなかなか許されぬことになって、いわゆる共闘とかという方式によって時間厳守ということに相なりますと、せっかくシーズンに入り、日も長くなって、まだ太陽はさんさんと照っておるにもかかわらずもう店じまいをして、
飛行機は遊ばせなければならぬ、こういうことに相なりますので、これは
飛行機の稼動率が非常に下がって不採算性を増すのみならず、ダイヤの編成も十分できないし、地元のお方のお客さんはまだ日があるのにもう店じまいをするとは何ごとかと言って小言をちょうだいするというようなケースがきわめて多いのであります。これは何とかして早く、幹線における
空港の運営と同じように二十四時間の運営にしていただければ、
日本航空さんがやっておられるように、暁の運航も夜中の運航も十分にできて双方利得が増す、こういうことが残されておる。
なお少し話はこまかくなりますが、その上に十六時間の運営の仕方にも、まだ改善を希望する点がずいぶんある。たとえば
全日空の便で宮崎を晩の六時にたって
羽田に直航いたしますと、八時二十分には着くことになっておりますが、六時に宮崎を出発した
全日空の
飛行機が
羽田に旭くまでは、宮崎
空港の運営にあたっておられる従業員のお方は責任が解除にならぬから待っておらなければならぬ。これは二時間余りもこういうことにさくということはきわめて重大な問題であり、技術の問題として、私はしろうとでありますが、わが社のそういう担当者に聞きますと、それは途中に飛行場が幾つもあるのだから、そこへバトンタッチしてやっていけば、だんだんもとのところは済むじゃないか、早く帰れるじゃないか、こういうような砧もしておったわけでありますが、こういうこともあるということを一言申し上げておきたいと思うのであります。
そのほかには、まだ米軍の
飛行機というものが
国内の至るところにあります。一等
関係の深いところには厚木にもありますし、そのほか
方々にあります。そうしてそこはスピードの速いジェット機の練習がしょっちゅう行なわれておる
関係上、これを避けて迂回航路を運航しなければならぬ。これは国情としてやむを得ないのでありましょうが、これも
先ほど松尾さんからも
政府に要請されたように、何とか主要の
路線についてはこういうことも緩和していただくならば、輸入ガソリンの
節約にもなり、
会社の
経営には非常なプラスになるということで、これは数億円の問題がすぐここにころがっておるようなわけでございます。
なお、危険性防止の問題につきましては、これは
先ほどもありましたから私は触れませんが、
羽田はすでに
東京における自動車と同じような様相を呈するような
傾向になりつつありますので、すみやかに
国際空港の実現を期しまして、そうしてその安全をはかってもらいたいと思うのであります。われわれも及ばずながら、さきに藤岡
航空を合併して以来というものは、あそこで遊覧の小さい
飛行機がちょろちょろいたしまして妨げをするのは大きな損失であるというので、合併後におきましてはこれを中止いたしまして、幾ぶんでも緩和のほうに貢献をしたいという気持ちをあらわしておるようなわけでございます。
そのほか、
パイロットの不足による
経営の圧迫ということは、
先ほどお話がありましたから、私は省略をいたします。ただ繰り返して申しますが、
パイロットは、われわれの
会社におきましても、戦前のベテランがただいままで主力になってきたのでありますが、十年たった今日は、年齢のかげん上、終戦後において養成された人々が新たに第一線の機長として交代をするという大きな転機に来ておりますので、これは専門家の間におきましても、その技術の向上、充実ということは真剣に
考えて善処しなければならぬ問題だ。これはみずから反省をしつつやっておるようなわけであります。
それからその他、これも
予算に
関係があるので、私からあまり申し上げるのはどうかと思いますが、
運輸省のチェック制度の問題であります。これも
空港の運営と同じように、
訓練ができまして機長になる、あるいは
路線の認可を得るためにチェックをしていただく申請をするのでありますが、何分その申請の数が多くて手数がないものでありますから、これは幾日も幾日も待たなければやってもらえぬというのが現状でございまして、これは累計いたしますと、一ぺん調べてみたことがあるのでありますが、合わせてみれば一年の間手をこまねいていて機長になる者が待つというような場合もずいぶんあるのでありますが、これも
予算に
関係のある人的問題でありますので、深くは申し上げないことにいたしたいと思います。
それから、
経営の内容につきましてこれは直接
関係のあることでありますので一言御
参考に申し上げたいと思いますのは、結果から申しますと、六社も七社もある各
国内航空会社が届け出をされておる。その届け出数字というものと、
日航さんも合わせ、われわれも合わせての数字から見ますと、相当の
利益を計上して、
お互いが共存し得る
航空基盤があるかどうかという問題が大きな根底的な問題をなすと思うのでございます。いろいろな数字から検討いたしてみますと、そういう余地はほとんどない。また、ここ数年それは見当たらない。ちょうどコップの水を大ぜいで分け合って渇をいやすようなもので、どんなにじょうずに分配をいたしても、渇をいやすだけの一人前の分量は存在しないというのが、まだ浅い現在の
日本の
国内航空の実情だ、私はそう
考えておるのであります。試みにその点で申し上げてみますと、三十四年以来今日までの状況が数字によってきわめて明らかになっておるわけでございますが、それは一口に言えば、需要は非常に順調に伸びておりますが、採算性はそれと反比例をして、低下の一途をたどっておる。これが私がただいま申し上げる理由でございます。ちょうど需要は四年間に四二倍伸びたのでありますが、ところが、その収益のほうは、ローカル
航空会社の赤字はむしろ逆に五倍くらいにふえてきたというような現状でございます。なぜそういうふうになったかと申しますと、
先ほども申しましたように、将来の収益を目当てに
航空機その他の投資をいたさなければできないし、
日本の現状におきましては、国産機のYSHもまだ実用に供しておりません。したがいまして、部品の
一つ一つに至るまで、ことごとく
外国からの輸入に待たなければならぬので、もちろんコスト高は当然のことでございますが、収益に比較して投資がきわめてオーバーになり、いわゆる投資効率というものが非常に低いというのが現在の
航空界の実情でございます。したがいまして、
先ほども話がありましたが、たくさんの
航空会社が非常な意欲を持ってわれもわれもと乱立するに至ったというのは、外見上の需要面だけの成長に幻惑されて、
官民ともに膨張政策を余儀なくされた。こういうところに相当大きな原因がひそんでおるように私は
考えるのでございます。したがいまして、これらの状況下における措置、対策をどうしていくかということが問題になるわけでありますが、これは希望はありますけれども、僭越にわたりますので、解決はその筋のお方にお願いするといたしまして、
参考資料を提供いたしたいと存ずる次第でございます。
御承知のように
航空機は償却ということがきわめて
経費の大きな部分を占めておるわけであります。償却の点について申し上げても、現在は新しい
飛行機だとたいてい七年間の償却年限がございますが、そうしてこれを償却することが次の
経営を維持する根本ではございますけれども、現在ローカル
航空会社で
ほんとうに完全なる償却をやっておるものがあるかといえば、私は皆無であると申し上げて過言でないと思います。と申しますのは、
航空機のいまの急ピッチの
発達から
考えてみますと、むしろ七年は長きに失するのでありまして、すみやかに償却を完了しなければ、古くなればなるほどコストは高くなって、お客のアッピールは下がってくる、こういう現象がありますので、償却におきましても定率償却ということは最も適当なる償却方法として行なわれなければならぬと思うのでありますか、定率の償却をやっておる
航空会社は、
日本航空はじめ全部ありません。われわれも定率で許可は得ておりますが、まだそこに達しない状況となっておるのであります。だから、
全日空が
利益を出しておるとは申しましても、これはまだ
ほんとうの
意味の
利益と一言い得るかどうかも、そこに疑問があるわけでございます。
それからもう
一つ飛行機の経済寿命というものは、先はど
スーパーソニックの
飛行機の話がありましたが、あんなりっぱな
飛行機でなくても、各
飛行機ともテンポが早いので、物理的には十分使えるのでありますが、実際上は経済的な寿命を縮めつつあるというような
傾向が現在の実情でございます。
それから、これも重複いたしますが、
会社が自立をして将来
経営を続けていくためには、どうしても資本の自主的増加をはからなきやならぬ。これはどうしても
増資をしなければできません。ところが、
増資をするのには
増資をするに必要な最小限度の
利益配当というものを行わなきゃならぬのでありますが、これを得るためには、現在
航空界を大ざっぱに申し上げますと、
日本航空も含めて
国内航空の全部の総資本は約百四十億ぐらいに見積もっておるわけでございます。そういう見当をつけておりますが、かりにそれに八分の
配当をしようといたしますならば、税引き前は二十三億円の、
利益をあげなければならぬ。しかも次々に変わっていく
飛行機を適当に増強していくためには、一般の
会社と同じように、またそれ以上に必要がありますので、大体三割程度の
増資をしなければならぬとしますと、総資本は百八十二億。そうすると税引き前の
利益は三十億円をあげなければならぬわけであります。これは現在の届け出のある
利益の総計を合わせてみましても九牛の一毛にすぎないのでありまして、当分これが適当な
利益にまで上昇するとは何としても
考えられないようなのが現在の
国内航空の状況でございます。そうして、いま申し上げたのもある程度の確実な数字ではないので、多少は相違をするところもあるかもしれませんが、それほど現在の
航空界における貸借対照表の描け出というものは、
ほんとうの実情を反映しておるかどうか疑問があるほどまだ整っていないのが現状でございます。
日本航空さんは別でありますし、われわれもその点は同様実情を反映しておりますが、一般にはまだそこまで至らぬのが実情であると思うのでございます。
以上申し述べてきましたので、大体
国内航空の歩んでおる現状がどうであるかということはおよそ御推察を願ったと思うのでありますが、しからば、そんな底の浅い分量の、ボリュームの少ない、片方においては七社も八社もある
航空会社を育成をして、
ほんとうに飯を食わしていくことができるのかどうかという問題が最後に残ると
考えます。この点については、多少愚見に属することがありますので失礼かもしれませんが、
考えの一端を申し述べさせていただきます。
それなら絶対に
考える余地は、
利益を見出す余地はないのかと申しますと、多少
日本航空さんに
関係があるので申しにくいのでありますが、私は、
日本航空さんの存在ということをどう見るかということがここに起こってこなければならぬと思います。というのは、
日本航空さんの
国内航空というものは、
国内航空の観点から申しますならば、きわめて飛び抜けた強大なる
競争力を持って臨んでおられるということが第一の前提でございまし七、しかもあげられた収益というものは、赤字を出しておる
航空会社の他のローカル線の穴埋めにカバーされるのではありません。これは十分知りませんが、聞くところによれば、
国内線でもうけて
国際線の赤字を埋めるんだ、こういうお話に聞いておりますが、現在もその政策がとられておるかどうかは別問題といたしまして、
現実の問題といたしまして、きわめて有利な、
国内といたしましては好条件のもとに運営をいたし、また強い
競争力のもとにこれを運営して、あげた収益というものは
国内のローカル赤字に還元することなく、
国内の
航空事情からはきれいさっぱり持ち去られるというのが現状でございます。私は、それほど
国内のローカル赤字が多いならば、それはそれに還元をしてやる方法、措置というものが政策として
考えられないものであろうかどうかということを思うものでございます。というのは、ローカル線の
航空会社は、赤字を続けていきますと、土俵からはみ出して破産のうき目にすぐ遭遇するのでありますから、ここに焦燥感を抱き、背伸びをして
経営をし、危険をおかしてやるということも、悪いことではありますが、また同情すべき点もあるのであります。ところが、法律によって存立を保証され、
利益が薄い場合であっても、大半の株主は後配株として
配当の必要はございません。さらに大きな赤字を続けてしまっても、破産ということはなくて済む状態に置かれております。したがいまして、私は、ここに
国内航空においては、少なくとも
日本航空さんと
競争的立場におるものは、経済上の公正なる
競争を行なわれるという観念は存立し得ないものだと
考えております。俗なことばで言えば、相撲の土俵の制約を受けない相撲取りさんと土俵の上で相撲をとるようなもので、勝ちっこは絶対にあり得ない、かような感じがいたすのでございます。こういうわけでありますので、この点をどういうふうに活用したらいいかということがいわゆるローカル線、ことに最近問題になっております合併三社の
日本国内航空の誕生にあたりまして、将来これを育成するのにいかなる栄養分をどこで調達してくるかということが問題になり、万一他人に、他の
航空会社に迷惑をあまり及ぼさないで滋養分をつけてやろうと思うならば、そういう点に支障のないところに資源を求めるということが賢いやり方じゃなかろうか、かように私は思うのであります。
日本航空さんというものの存在は国家的にきわめて重要なものであって、
先ほども話がありましたが、国際的には弱いこの
競争力は、二千億も鉄道幹線に入れる余裕があるならば、なぜ
外貨の獲得のこの
国際線の
路線建設にその半分でもつぎ込むことができないのかどうかということに対しては、私は国民の一員といたしましても多大な疑問を抱いているような次第でございます。
それからもう
一つ、これは
全日空に
関係のあることで恐縮でございますが、いま生まれてくる
日本国内航空の誕生の育成は、これはやらねばならぬことは
運輸大臣ははっきり申されているのでありますが、そういたしますと、これはまことにけっこうなことでございますが、他にまだ東亜
航空とか中
日本航空とか長崎
航空とかいうようなローカル
会社が苦難の道を歩んで
経営をいたしております。藤田
航空は、
先ほど申し上げましたように
全日空が合併をいたしましたので、ただいまはございません。そうすると、こういう
航空会社はいままでどうしておったかと申しますと、
全日空と自主的に業務を提携いたしまして、相互に
コストダウンなり、また運送の内容を向上させるために協力してまいった。そうして
全日空といたしましては、ローカル
路線でありまして、譲れば双方便利なようなところもありますので、逐次
お互いに共存の
意味におきまして
路線を譲りながら、いわゆる自主調整を遂げてきておるわけでありますが、万一
政府の恩典を浴するためには何社かの合併ということが必要であるならば、これらの
会社も
全日空と業務提携をしておる不利を振り捨てて、
政府にそういう同じような補助を得たいということを申し出ることに相なるということはきわめて明らかで、私なんかも、おまえさんのところとなまじっか提携しているために非常に不
利益に落ちそうだということをしばしば訴えられるような現状でございます。
それからもう
一つ、これも
日航さんに
関係があるので申しにくいのでありますが、この
航空の
経営を困難にする大きな問題は、
先ほど申し上げたように機材の償却ということもありますが、さらにもう
一つ大きな問題は人件費の重圧ということであります。急速にこれが盛んになってきましたのは――ことに他のことを言わずに
全日空の実情を申し上げますと、春闘があり、年末が参るたびごとに、
パイロットからは、同じところを同じように飛んでおるのであるから、乗務手当も
日航さんと同じにしてくれということをしょっちゅう言われるのであります。これはわが社のみの問題でなくて、他の
航空会社もまたわれわれより給与の内容が低いものでありますから、まず
全日空並みにしてくれということを言われるそうでございまして、逐次今日共闘の風潮が盛んになればなるほどこれはレベル化されるという趨勢は免れることができないので、いまやこういう対策が
経営の相当大きな部分を占めるようになっておるわけであります。私は、ここに実情は違うのでありますが、一般の産業界におきましては、
民間の給与が高くて官公のほうが低いのが通例のように記憶しておるのでありますが、
航空界におきましては、いわゆる国策
会社である
日航さんの給与が一等よくて、
民間の
航空会社のほうが下にある。これはそれが当然な結果かもしれませんが、平易に
考えてみますと、逆になっておるような気もいたします。したがいまして、レベル化を要求されることももっともではなかろうかと苦慮をいたしておるようなわけであります。
そこで最後に、
国内において何らかの栄養分をさがし求めるといたしますならば、以上申し上げたような点もありますが、
全日空といたしましては、
日航さんがIATAとして
経営をしておられる
国際線以外に、ごく近い
外国にはノンIATAの形式においてかせぎ場所を見つけるようにいたしますならば、これはまた
国内航空育成のために相なると思うのであります。現段階におきましてはCATその他二、三の
外国の小さい
航空会社はきわめて古い
飛行機を持って大阪あたりに侵入をして、
日本の
航空界に雄飛をいたしております。私はこういうふうなのを見るにしのびないような企業意欲をかり立てられるのでありますが、こういう点についてもわれわれは
国際線をやりたいというような希望でなくて、
国内の
航空にはいま申し上げるようなきびしい経済事情があるのでありますから、
外国並みに近隣の友好を助長し、
外貨をかせぎ、双方の交通を緩和するために必要あり、また余地があるならば、出ていくべきであり、出かせぎをすべきではないか、かように
考えておりますし、現にそういう実例は、保護もずいぶん受けておるわけでございます。あながち無理な
注文とのみは
考えていないような次第でございます。
いろいろ長く申し述べましたが、
先ほどもあらかじめ申し上げましたように、あまりに苦難の道を十年間歩んで、株主さんにも御迷惑ばかりかけてきたものでありますから、多少申しにくいことを申し上げた点もあると思うので、この点はあしからず御了承をお願いしたいと思います。
それから、もう
一つ言い落としましたが、
国内においてはまだ開発をして十分なる収益を上げるに至っていないような
路線に重複的にこれを認めるということは、いわゆる正直者がばかをみるというぐあいで、だれもまじめに
路線を開拓する者は将来なくなります。しかも同じ十分に収益が上がらぬところに二つの
会社が
競争いたしますと、どうしても
競争の中心は機材でありますから、劣性な機材を持っておるものは、必ず同じ機材を要求して、ここに無理な過当
競争、機材
競争というものを誘発することは明らかであり、ひいて
事故を起こす原因とも相なると思うので、最後にこれをつけ加えさせていただきまして、私の申し上げることを終わります。(拍手)