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1964-05-29 第46回国会 衆議院 運輸委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十九日(金曜日)    午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君    理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君    理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君    理事 矢尾喜三郎君       佐々木義武君    進藤 一馬君       高橋清一郎君    西村 英一君       長谷川 峻君    細田 吉藏君       島上善五郎君    泊谷 裕夫君       野間千代三君    山口丈太郎君       内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 佐藤 光夫君         運輸事務官         (海運局長)  若狭 得治君  委員外出席者         運輸事務官         (船舶局監理課         長)      佐原  享君         運 輸 技 官         (船舶局造船課         長)      千葉  博君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇八号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 西村直己

    西村(直)委員長代理 これより会議を開きます。  川野委員長が所用のため、委員長の指名により、私が委員長の職務を行ないます。  臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。久保三郎君。
  3. 久保三郎

    久保委員 前回委員会で、中途委員長が散会を宣告したので、実は質問も切れ目がなくてやめさせられたようなかっこうでありますから、あらためて海運局長にお尋ねするのですが、いわゆる海運収支改善ということによる船腹拡充自社船建造の問題で、実は話が中途で、というよりは入り口で質問は中断になっているわけです。  あらためてお聞きしますが、自社船建造に対するところの運輸省というか政府方針はどうなっておるか、概括的にまずお話しを願いたい。
  4. 若狭得治

    若狭政府委員 前回もお答え申し上げましたように、石油会社自社の油を輸送するために船舶建造するということにつきましては、これは自己資金でおやりになることにつきましては一向差しつかえないことでございますし、また外国船を雇うのに比べまして外貨収支の面から見てむしろ奨励すべきことであるというように考えておるわけでございます。ただ、財政資金を出すかどうかという問題につきましては、石油業自体に対して財政資金を出す場合に、はたして石油精製施設に出すべきか、あるいはその輸送施設に対して出すべきかというような問題がありますと同時に、海運業界との関係におきましては利害の必ずしも一致しない点がございますので、われわれといたしましては、今後日本国際収支輸入物資邦船の積み取り比率を向上させるという観点からしまして、石油輸送日本船をいかに多く使っていくかというようなことにつきまして、石油業界海運業界とができるだけ協力し合っていただくことが望ましいというように考えております。その協力の形態の一つの問題といたしまして、この自社船の問題を両業界において話し合いをしていただくということを考えておるわけでございます。そういう話し合いによりまして何らかの結論が出ましたならば、われわれとしてはこの協力関係を促進するというようなたてまえから、必要な政府施策考えてもよろしいというようなことでございまして、先日も申し上げましたように、運輸大臣から経済団体連合会に対しましてこの問題についての考え方をまとめていただきたいということをお願いいたしておりまして、その結論の出るのを待っているという状況でございます。
  5. 久保三郎

    久保委員 昨年の国会で成立を見た海運集約というか、海運基盤強化というのと国際収支改善というものは、必ずしも一致しないのが現状かと思うのであります。そういう現状認識に立って、いわゆる海運収支改善というものを考えているのかどうか。ところが先般、これは試案ではありましょうが、この前にも聞いたと思うのでありますが、四十二年までに海運収支をとんとんにするということで実は運輸省中心にして船腹拡充試算をした。ところがその試算に基づくところの五百万トンなりあるいは七百万トンというような、そういう船腹拡充がはたして集約合併されたところの六グループによって、海運専業者がこれを建造することが可能かどうかという問題が一つ出てきたと思うのであります。さらにもう一つは、海運収支改善、たとえばいまお話し石油安定供給という問題、こういう問題は必ずしも一致しないのであります。その一致しないものを、いままで政府部内でも論議をされていると思うのです。大体これも前に申し上げたと思うのでありますが、海運収支改善ということは、これは言うべくしてなかなかできない。極端なことを言えば、そういう海運収支改善だけをいわゆる国際収支改善一つの大きなものとして取り上げること自体に誤りがありはしないかという話を私はしているわけです。というのは、あとからもお尋ねしますが、いまの貿易構造を変えない限り、海運収支改善するというのは現状では非常に困難である、こういうふうに言っているのです。と申し上げますのは、船腹を無制限——といっては語弊があるが、あなたのほうで試算をしたような数に近づけようとしておる。それで船腹拡充はできたが、はたしてそれで船腹拡充によるところの輸入物資の積み取り率が向上するかというと、あなたのほうの試算では七〇%まで上げるというが、その上げる目安というものはどこにもないじゃないかと私は言いたいのです。と申し上げますのは、いまの輸入物資の、いわゆる海運収支を悪化させる大きな原因は、FOBの買い付けの問題ではなくてCIFというものの買い付けが多い。石油しかり、鉄鋼しかり、あるいは石炭しかり、こういうもののいわゆる貿易取引関係が変わらぬ限りは、残念ながらできない。  さらにもう一つは、日本海運収支改善するのには、その船足について、いわゆる行動半径についてもう一ぺん再検討すべきである。戦前におけるところの日本海運がやや安定的な形を持っていた。それは大体極東水域におけるところの安定というか、そこにおけるところの比重が重かったということ。だから、極東における貿易海運との関係を関連させて展開させなければ、残念ながら、あなたのおっしゃるような海運収支並びに国際収支改善はできない。  さらにもう一つ国際収支改善でありますが、いままでのような野方図設備投資をやっていく。いわゆる高度経済成長政策の中では、残念ながら海運収支は悪化の一途をたどるのが当然であります。だから、これがいいとしましても、これは全体の中で解決するものであって、海運収支だけを改善しようということは、そういう意味からも不可能だ、私はこう言っているのです。だから、そういう矛盾したものを持ってくるから、いまのお話のように、タンカーの問題は自社船建造までやらなければ安定供給はできない、こういうふうになってくると思うのです。そういう点について明確な基準というか、方針というものがない。運輸省自体はいわゆる専業者中心にものを考えている。通産省はいわゆる原料入手荷主中心考えている。ばらばらでありますから、これはなかなか決着はつかぬと思うのです。だけれども、国策として日本海運基盤強化をするというのが四月からすべり出したばかりであります。だから、これに影響を与えるようなことで船腹拡充はすべきではないというのが大原則なんですね。だから、そういうことからいくならば、自己資金でつくるところの自社船においても、船腹調整をしなければならぬというのが前提ではないかと思うのです。ところが、あなたのお話だと、自己資金でつくるものはいざ知らず、開銀融資によるところのものは云々と言う。これではどうも話の筋がだいぶ違うと私は思うのです。いかがでしょう。
  6. 若狭得治

    若狭政府委員 石油会社と一口に申しましても内容はいろいろ変わっておりまして、ことに外資系会社が非常に多いような実情でございます。こういう会社につきまして油の買い取りの問題と、それから船舶の問題というものはいろいろからみ合っておるのが実情でございまして、そういう面で外資を入れて船舶建造する、あるいは現在の石油会社は相当の収益を上げておりますので、自己資金船舶建造する場合には、外船を用船するよりも国際収支の面から見てベターであるというようにわれわれは考えているわけでございます。ただ、これに財政資金を投入するかどうかという問題につきましては、いま御指摘のように、海運集約が終わったばかりでございまして、今後の海運助成というものは集約企業体に集中的に行なうということが考え方でございますけれども、これと背反するというものについては、われわれはそれをとらえることができないわけでございます。したがいまして、海運業界石油業界との十分な協調ができまして、その船舶建造について今後海運事業健全化ということを考えながらも、邦船の積み取り率を漸次増加していくという方策をとっているわけでございますけれども、その問題の解決の一環として、石油会社に対しましてもある程度自社船建造するために必要な財政資金を出してもらいたいというような話し合いがもし両業界協調の間においてまとまるといたしますれば、政府はそれを取り上げて考慮してよろしいというような考え方でおるわけでございます。政府のほうから石油会社自社船についてはこういうような措置をとるということは、私たち海運集約を指導してまいりました立場といたしましては、これを言うことを差し控えさしていただきたいというような考え方でおるわけでございます。  先ほど船腹拡充というものと海運企業健全化というものは両立しないではないかというような御疑問がございましたけれども、これはやはり今後建造される船舶というものは、今次の海運のいろいろの対策によりまして、財政資金融資率なり利子補給あるいは企業合理化等によりまして、十分国際競争力を持ち得るものであるというようにわれわれは考えておりますので、国際的な水準に立って船腹拡充する場合には、必ずしも海運企業健全化という面と背馳しないものであるというような前提に立ってわれわれ考えておるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、両業界協調ということが大前提でございますので、それを基本にしてものを考えてまいりたい、こういうふうに思います。
  7. 久保三郎

    久保委員 そこで臨時船舶建造調整法の第三条の許可基準、一項一号でございますが、これでは「当該船舶建造によってわが国の国際海運の健全な発展支障を及ぼすおそれのないこと。」という基準一つあるわけでありますが、自己資金でつくる自社船については、現状においてどの程度ならばこの国際海運の健全な発展支障がないと見ているか。そういうことはどうなんですか。
  8. 若狭得治

    若狭政府委員 自社船の問題につきまして、われわれは現在どういう基準でどこまでいいのだというようなことを具体的に申し上げているわけではございませんけれども自己資金建造するものにつきましては何らこれを規制しないというような考え方でおるわけでございます。したがいまして、問題が残るとすれば、たとえば自社船というものが海運市況を乱しておるじゃないか、現在ある程度国際的運賃市況運賃水準というものがございますけれども自社船の場合にはそういう水準が非常に不明確であるというような面から、運賃水準を乱す、そういうような結果、海運事業経営というものを非常に混乱させるというような面がありはしないかというようなことから、それについていかなる規制をすべきか、それから自社保有船腹量というものと用船船腹量といいますか、他の業者につくらせる船腹量との比率というものをどういうふうに見るかというような問題がいろいろあるわけでございます。しかし、そのいずれも現在のところはそれほど深刻な問題になっておりません。事実、たとえば現在の石油会社自社船保有率というものを見ましても約一九%程度でございまして、この程度のものは国際的に見ましてもむしろ正常な形ではないだろうかというような感じを持っておるわけでございますので、そういう面から自社船というものをこの臨時船舶建造調整法の規定によりまして規制するというような考え方はわれわれはとっていないわけでございます。もっぱら現在のところ問題になっておりますのは、これに対する財政資金を出すかどうかというような問題だけでございます。
  9. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、自社船はいまのようなことで、自己資金によるものはこの対象から除かれるということでありますが、そうしますと、いまお話しのように、財政資金による自社船についても多少は考慮するという考え方から、両業界話し合いを進めておられるのですか。
  10. 若狭得治

    若狭政府委員 両業界協調ができまして、自社船をこういうような形式で考えてもらいたいというような結論が出ますならば、その上に立ってわれわれとしては努力してみたいということを考えておるわけでございます。
  11. 久保三郎

    久保委員 つい最近の新聞報道では、通産省は、タンカーについて四年間に百万総トンをつくらせたい、こういうことで経済閣僚懇談会にも臨むという報道がなされておるわけですが、これは外国用船規制がはずれる、そういうようなことが一つあるわけです。それからもう一つは、外国のほうから、そうなった場合に、大体マイナス八〇ぐらいの安いレート積み荷契約の申し出があるというようなことから、実はそういう方向をとらざるを得ない、こういうことなんだが、これに対する運輸省の見解はどうなんですか。
  12. 若狭得治

    若狭政府委員 ただいまの御質問の中にございました日本船コストが高くて、外船が非常に安い運賃をオファーしている現状であるから、自社船をつくらなければならぬというようなことを申しておる者があるというふうに聞きましたのでございますが、船舶運航コストあるいは建造コスト、その他いろいろ考えてみまして、自社船のほうが海運専業者よりより安くできるという要素は一つもないわけでございます。具体的に海運専業者、特に集約に参加いたしておるものにつきましては、財政融資率も、大型タンカーにつきましては八割の融資をいたしております。それから財政融資及び市中融資それぞれにつきまして、その全額について利子補給を行なっておるわけでございます。財政資金が四分でございますし、市中資金につきましては六分に至るまで利子補給を行なっております。そういう面から、建造資金金利コスト償還条件その他を見まして、資金コストが他の船に比べて非常に安いわけでございます。それから、たとえば運航コストでございますけれども船費を比較してみましても、むしろ自社船の場合には、融資率関係その他いろいろな面から見まして、どうしても船費が高くなるというのが実情でございます。それから、われわれのほうで調査いたしました結果、船費も高い。いろいろな面がございまして、外船が非常に安いレートでオファーしておるから、自社船をつくらなければならぬということは全く理由のないことであるというふうにわれわれは考えております。むしろ自社船をどうしてもつくりたいという面は、そういう船舶運賃レートを安くするということではなしに、石油企業全体として、全体の経営にとってこの建造というものはいかなる意味を持つかというところに意味があるのではないだろうかというふうにわれわれには考えられるわけでございます。
  13. 久保三郎

    久保委員 あなたはそう考えていらっしゃるが、向こうは安い運賃レートによって運ばなければならぬ、そういう口もあるということから、そういう積み荷保証をとるためにも自社船建造が必要だと主張しているように思う。こういうことから、これは海運収支改善と並んで、自社船の問題は、いまのような論争を続けていたんではなかなか決着点はないと思う。  そこで、あらためて運輸大臣にお尋ねします。いわゆる集約による海運企業のもとに、自社船建造通産省の言うごとき形でやることは、私は支障があると思うし、また海運界の将来の展望を見ても、やはり海上輸送専業者がおよそその大体を専有しなければ、海運企業も、産業としても、あるいは全体の立場からもおもわしくない、そういう意味集約もされておると思うのでありますけれども、この決着はどういうふうに、いつの時期にきめるのですか。
  14. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 自社船の問題につきましては、私どもといたしましては、久保委員の御説と全く同感でございます。海運二法案が成立いたしまして、ようやく軌道に乗ったその際に、自社船に処すと同じような補助を与える、援助を与えるというようなことは、私は政策としていかぬ、かように考えておりまして、私どもとしてはあくまでもそれに反対態度をとってまいるつもりでございます。と申しますのは、海運集約を実行してまいりましたゆえんは、たびたび申しますように、過当競争を排除して、そうして海運会社内容をよくして力をつけて、そうして世界の海運市場で対抗のできるようなぐあいにする前提のもとにやっておるのでございまして、その前提にひびが入るような諸施策につきましては、海運行政をつかさどる運輸大臣としては反対でございます。いろいろな説がございましょうが、私はそういうような説は日ならずして解消するものと考えております。  ただ、それではそれでやればいいじゃないかとおっしゃいますが、どうしても積み取り比率をよくするためには、日本全体、いわゆる財界全体の荷主協力を得なければなかなかむずかしいのです。そこで、荷主協力を得るために、大荷主の一人である石油業界の意見を最初から無視してかかるというような態度協調の精神に反すると考えまして、せっかく経団連の中に小委員会が設けられまして、そして検討中でございますから、その検討の結果を参考にいたしまして私ども態度を決したい、かように考えております。しかし、その検討の結果がわれわれの予期しておるようなことにならないで、あくまでも自社船でやるというようなことになれば、私はあらためてその態度について、先ほど申しましたような前提のもとに反対せざるを得ぬ、かように考えております。
  15. 久保三郎

    久保委員 そこで、OECD対策で前にお尋ねしたときに、この対策外国船に対抗できるというお話があったと思う。それが、いま申し上げたように、通産省のほうの考えというか業界考えでは、マイナス八〇のような安いレースで実は話がある、こういうことなんです。そうしますと、OECD対策によってとられた処置がこれに対抗できないという意味になるわけですね、そういうふうに理解してよろしいですか。
  16. 若狭得治

    若狭政府委員 現在外船が非常に安いレートを申し出ておることは確かなようでございます。ただ、日本船がそういうレートを出さないかという問題になりますと、やはり海運企業健全化という問題と直接関連を持ってくるわけでございます。われわれは端的に外船コストより高いというような状態はもうすでにないのだというように割り切って考えておるわけでございますけれども現実の問題としては、商取引でございますので、いろいろ競争上安い運賃を申し出るというようなケースは間々あるのではないか。その最低の運賃というものを基準考えて、われわれは対策を立てる必要があるかどうかということになってくるわけでございまして、われわれの考えといたしましては、非常に安いものがあることは事実でありますけれども、数量的には決して多いものではない。したがってわれわれの考えておる運賃水準というものは国際的に見て決して高いものではないというように考えておるわけでございます。具体的に申しますと、たとえば現在の開発銀行融資対象となるものにつきましては、十年の船価回収ということをベースに考えております。外船が非常に安い運賃をオファーしておりますのは、たとえば十五年償還であるとか十六年償還であるとかというような程度のところで計算しているということではないかと考えられますけれども、それは決して量的には多くはない。現在のいろいろな経済情勢から見まして、十年以上の長期にわたる回収ということは、非常に不安定であるということは争うことができないわけでございますので、われわれといたしましては、現在の日本海運対策によりましてでき上がりました運賃コストというものは、国際的に十分太刀打ちできる運賃である。したがってそういう運賃日本船を使っていただきたいということを現在お願いしておるわけでございます。
  17. 久保三郎

    久保委員 しかし現実にはいま申し上げたような点があるのでありますが、それは協調というか、そういう誘導方向政府施策としてとらぬ限りは、なかなか計算どおりにはいかぬと私は思う。この点は運輸大臣に要望いたしておきます。  そこでまた自社船に戻りますが、自社船建造を絶対認めないかというと、これはそうはいかぬと思うのです。というのは海運企業基盤強化必要物資安定供給というものが片方にあります。これは先ほど申し上げたように、必ずしも一致しないということでありますから、そこでこの調和をとるという場合には、多少なりとも自社船建造はあり得るのだ、ところが自社船建造が単に当該業界の要望だけではこれはいかぬと思うのです。片方にはいわゆる体質改善の問題もありますから、そこでいま話に出たような業界協調というか、誘導政策というものをとりながらも、なおかつ必要量を確保できがたいという場合には、自社船建造は最悪の場合として認めざるを得ないと思います。だから何%だからだいじょうぶだというようなことじゃなくて、必要物資安定供給にどうしても必要だという船腹海運企業そのものがつくり得ないとするならば、これは万やむを得ず自社船として建造すべきだと思う。そういう観点から問題をほぐしていかぬ限りは、単に運賃の問題ということで通産省が出しているような形では、これは承服しかねると思うのです。政策として相反することになる。だからそこら辺をはっきりけじめをつけるべきだと思うのだが、この点についてはどうですか。
  18. 若狭得治

    若狭政府委員 石油安定供給という問題につきましては、現在のタンカー建造というものはすべて長期契約のもとにつくられておるわけでございます。したがいまして、安定という面につきましては、自社船と全く異ならない安定性を持っておるわけでございます。どうしても自社船をつくりたいということを現在主張しておるわけでございますけれども、それはむしろ安定供給ということよりも、いろいろな外資関係であるとか、あるいは社内の資金繰りの問題であるとか、造船所との関係であるとか、いろいろな面から出てまいる問題でございまして、安定供給自体の問題といたしましては、長期契約で張りつけるわけでありますから、決して問題はないというようにわれわれとしては考えておるわけでございます。
  19. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、安定供給の面からは、自社船の必要は今日ただいまでは認められない、こういうことですね。だめを押しておきます。
  20. 若狭得治

    若狭政府委員 さようでございます。長期契約を締結するということは自社船と全く同様に一定の航路に張りつけるわけでございますから、その点についてたとえば市況が好転した場合に、他に逃げていって非常な供給の不安定が起こるというような事態は、われわれとしては考えられないと思います。
  21. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、結局は運賃の問題になるわけでありますね。ところが先ほどの説明で、運賃では大差なし、十分外国用船と対抗できる。ところが現実には違うということになりますれば、それでは荷主邦船利用誘導政策というものは、促進をする施策が何かあるのかどうか。これについて当然考えるべきだと思うのです。それなくしては、石油企業一つ企業でありますから、安い運賃で運べるものならば、これは同じ安定供給ができるのですから、安い運賃でやるのが一番安定ですね。だからそこに問題があるので、そういう点については政府はどう考えていますか。
  22. 若狭得治

    若狭政府委員 運賃の問題でございますけれども、先ほど御説明申し上げましたように、非常に安い外船があることは事実でございますが、それは数量が非常に限られておるのであって、ことばは悪いかもしれませんけれども、ダンピング的なものも含まれているだろうというふうにわれわれは考えるわけでございます。ただ日本船は、そういうような取引ということは、海運企業健全化の面から見て、現在許されておらないわけでございまして、やはり一定の基準のもとに運賃交渉を行なっておる。したがいまして、外船に対抗できるような弾力的な運賃交渉というものが現在できておらないというところにやはり問題があるのではないかというように考えられるわけでございます。ただ、それと同時に、従来のいろいろな取引関係あるいは資本的なつながりというような面から日本船に切りかえていくということは、ことばで言うほどやさしいことではないというようにわれわれとしては考えられます。たとえ同じ運賃であっても、従来の関係から外船を使うというような傾向が出てくることを非常におそれておりますので、やはり荷主に対して邦船を利用いたしました場合には、何らかの意味の税制あるいはその他による報償的な考え方というものを取り入れてまいりたいということで、現在検討いたしておるわけであります。
  23. 久保三郎

    久保委員 しかしそういうことだけで、はたしてうまくいくかというと、やはり最後には自社船もある程度認めなければいかぬ。その場合に財政融資によるものも認めていく。当然のことだと思うのです。これはどこまでも海運企業の問題といわゆる安定供給の問題並びに運賃の問題を含めてやはり詰めていかなければならぬ。ところがいまのようなお話だけいたしておると、これは一方的な話になるわけですね。これはもちろんまだ日にちもあることだと思いますから、なんでありますが、ただこの場合、自社船というのは船舶調整法には関係ないわけですか。
  24. 若狭得治

    若狭政府委員 先ほども申し上げましたように、石油会社自社船につきましては、直ちに船舶建造調整法を適用いたしまして、これによって規制するという考え方は、現在のところ持っておらないわけであります。
  25. 久保三郎

    久保委員 これは財政融資によるものも同様ですか。
  26. 若狭得治

    若狭政府委員 財政融資は、これは政府の資金でございますので、政府間において明確な融資基準というもの、あるいは融資ワクというものができなければ、これはできないわけでございますので、先ほど大臣もおっしゃったわけでございますけれども、両業界話し合いができて、財政融資についてこういうふうにしてもらいたいというような意見が出てまいりましたならば、それをどうするかということをまた検討するというような考え方でございます。
  27. 久保三郎

    久保委員 海造審の審議というか、答申というか、意見というか、そういうものはこれには関係ありませんか。
  28. 若狭得治

    若狭政府委員 海運造船合理化審議会ではすでに一昨年の海運対策の中に答申があるわけでございますが、今後の財政融資集約した企業に原則として限定するということばがあるわけでございます。したがいまして、われわれとしてはその答申にのっとってやはり今後の政策を行なっていく必要があるというように考えております。
  29. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、海造審の答申というのが原則として集約合併した企業にのみ許すということでありますれば、当然運輸大臣はその意見を尊重してそういう方針を決定した、決定したらこれに従わなければならぬですな。そうしますと、この海造審の答申というか意見というものを尊重してきめたところの昨年のいわゆる二法にかかるところの方針というのは、ここで修正せねばならぬ。——修正するかどうかは別にしても、一応方針が修正の機運にある。そうすれば当然海造審にも、業界内の話し合いをきめて、それで運輸大臣が決定するのじゃなくて、海造審にかけてこれは決定する筋合いじゃないですか、どうなんです。   〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
  30. 若狭得治

    若狭政府委員 御承知のように、石油につきましては、三十九年、四十年、四十一年度、この三年間に三百数十万トンの船腹量が必要であるというように考えられるわけでございます。これだけの船腹を今後建造していく。それにはもちろん、たとえば外船契約が切れるものは邦船に置きかえてまいるというようないろいろな問題があるわけでございます。したがいまして、計画を実行していく段階において、海運及び石油業界協力ということはどうしても必要なわけでございます。したがいまして、その協力関係を今後いろいろ検討されるわけでございますけれども、その両業界話し合いのうちにおきましてこういう問題が取り上げられて、むしろ多少の財政融資をしていただいたほうが両業界の今後の協力関係を進める上においてベターであるというような結論がかりに出たといたしました場合には、これをどう取り扱うかという問題として、いま久保先生がおっしゃいましたように合理化審議会にもう一度検討していただくというような問題も起こるかと思いますけれども、またわれわれ政府といたしましてもいままでの考え方ということを一部改めるということになりますので、政府自体態度というものもきめなければならぬというようなことになってくるのではないかと思われるわけでございます。
  31. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、これは海運収支改善の一環としてものを考えていくのか、それとも自社船問題単独に考えていくのか、どっちですか。
  32. 若狭得治

    若狭政府委員 海運収支改善のために邦船をできるだけ利用していただく、その中の派生的な問題として自社船問題というものを考えておるわけでございます。
  33. 久保三郎

    久保委員 では海運収支改善と関連して考えていくということになりますれば、当然それと相反するといっては語弊があるが、安定供給の問題なり運賃の問題が出てくる、いままでお話があったとおりであります。そこであなたからきつくお話が出たように、絶対量の供給には事欠かぬ、専業者によって事欠かぬということでありますが、経済の問題、国際貿易の問題全体から見て、事欠く場合が出てくるわけです。そういう場合には当然のごとく自社船もあり得る、こう私は思うのですよ。だから、あなたはそういうことはないとおっしゃるが、ないという論拠は何かあるのですか、心配ないでしょうか。
  34. 若狭得治

    若狭政府委員 具体的に申しまして、昨年の秋、経団連によりましてOECD対策検討していただきました際に、その申し合わせといたしまして、今後のタンカー建造につきましては海運集約に参加した業者に集中的に行なっていただく、しかしどうしても海運業者で建造できないような場合において外国船を使用しなければならないという場合には、石油会社自社船というものも認めようという申し合わせができておるわけでございます。具体的な例を申し上げますと、特定の港だけを対象にして非常に極度に大型の船腹建造するというような場合に、その会社のたとえば今後の見通しその他につきまして海運業者が十分納得できないということで、どうしても私は建造できないというものが出てきた場合には、石油業者につくっていただいてけっこうでございますという考え方でございます。しかし、現状はそういうような例が出ておりません。また現在の運賃というものも、国際水準から見まして決して割り高であるというようにはわれわれには考えられないわけでございます。そういう面から見まして、石油業界が必要とする船腹量建造することについては、海運業界としても全面的に協力するということを申しておりまして、また現に本年度の建造希望を見ましても、九十数万トンのタンカー建造希望というものがすでに出ておるわけでございます。これは大体石油業界で必要とする船腹量が八十数万トンでございますので、そういう面から見ましても、船会社のほうで石油業者の利用する船腹供給できないというような事情では決してないというふうにわれわれには考えられるわけでございます。
  35. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても結論は近く出るでありましょうけれども、これは大体いつごろ結論を出すつもりでおられるのですか。
  36. 若狭得治

    若狭政府委員 できるだけ早く結論を出したいということでございますけれども、これはむしろわれわれが結論を出すということではございませんで、経済団体連合会において結論を出していただきたいということをお願いいたしておるわけでございます。
  37. 久保三郎

    久保委員 財界に結論を出してもらうということなんですね。自主的にきめていただこう、こういうことなんですね。
  38. 若狭得治

    若狭政府委員 さようでございます。
  39. 久保三郎

    久保委員 まあ、たよりがないといったら語弊がありますが、政府として一貫した方針をとり得ないというととろに問題があるのじゃなかろうかと思うのです。もちろんそういう関係業界の意見を聞いて十分対処することはけっこうだと思うのでありますが、政府政府なりの方針を打ち出すべきだと私は思っております。いずれにしても、次の問題にまいりましょう。  次には、仕組み船の問題でありますが、仕組み船の定義を教えていただきたいのです。
  40. 千葉博

    ○千葉説明員 仕組み船と俗にいわれておりますが、明確なこれに対する定義というものはまだないのでございますが、俗にいわれておりますのは、日本荷主長期契約のもとに日本向けの輸送を行なうにあたりまして日本からの輸出船を使う場合、この輸出船を仕組み船と称しているのでございます。
  41. 久保三郎

    久保委員 そこで、この臨時船舶建造調整法の中で、大体いまあなたが御説明になったような仕組み船を対象にして今度の期間延長をなされたのかどうか、いかがです。
  42. 千葉博

    ○千葉説明員 この仕組み船だけではないのでございまして、本法の趣旨から申しまして、まず本法の調整機能でございますが、これは第一にわが国の商船隊を優秀なものにしようというのが第一の調整目的でございます。それから第二が輸出船との競合の問題でございますが、これにつきましては、その船台の確保、国内船の建造、特に計画造船等につきまして船台を確保するという点が、これまたこの調整機能の中の主たる問題になっております。現に後者の場合は、輸出船が多量に受注されまして、昨年度におきましてはもう五百万トンに達するという大きな受注を持っておりますので、船台の確保という問題が本法の調整機能の中で大きい役割を演じているわけでございます。
  43. 久保三郎

    久保委員 先般官房長でしたか、船舶局長事務取扱でしたかから補足説明がありまして、その中には、あなたが言う船台の確保ということ、競合関係が非常に増大してきたこと、「さらに」と、こう言及されまして、いわゆるあなたがおっしゃるところの仕組み船との競合関係が非常に多いということでありますので、言うならば船台の関係で、この本法は船台の関係ももちろんあるかもしれませんが、本法のねらいは、言うならば、官房長がさらに言及された輸出船との関係、いわゆる仕組み船との関係だと思うのであります。わが国国際海運の健全な発展支障を及ぼすおそれがないことというのが大きな柱になっていますね。でありますから、言うならば仕組み船に対するものの考え方できちんとしないと、これは造船あるいは海運との間でなかなか調整がとれ得ないと思うのですね。なるほどそのつど海造審にかけておやりになることでありましょうが、そこでこの仕組み船について先般海運局長の論文を拝見したのでありますけれども海運局長は仕組み船というものに対してどういう考え方をしておりますか。
  44. 若狭得治

    若狭政府委員 仕組み船と申しますのは、先ほど造船課長から御説明がございましたように、日本荷主長期輸送契約というものをもとにいたしまして日本で輸出船をつくって長期に運送させるという場合でございますけれども、これにつきましては、われわれといたしましては、そういう長期契約はできるだけ日本船を利用していただきたいということを考えておるわけでございます。それで具体的には、現在FOBの契約のものについて明確に配船権というものは日本荷主が持っておるにもかかわらず、外国船長期に雇うというような状態のものがあるわけでございます。またCIFの契約でございましても、その中でやはり日本荷主が実際上は配船権を持っているという場合が比較的多いわけでございます。そういう面から見まして、そういう場合には日本船をできるだけ使うべきである。従来はコスト関係日本船が高くて外船が安いということで日本船を利用できなかったということが言われているわけでございますけれども、すでにこの前の海運対策あるいはOECDの対策等によって、日本船には十分国際競争力があるという状況でございますので、ぜひとも日本船を使っていただきたいというのがわれわれの考え方でございます。したがいまして、FOBの契約の場合において外船長期に雇うということが明らかなものにつきましては、今後の建造許可はやめていただくということをわれわれとしては考えたいわけでございます。
  45. 久保三郎

    久保委員 いまの海運局長お話の中で、CIFの契約においても日本荷主が配船権を持っているというようなものがたくさんあるというのですが、それは一例としてどんなものがございますか。
  46. 若狭得治

    若狭政府委員 具体的にたとえば鉄鉱石を豪州から輸入している契約はCIFのものが相当あるわけでございますけれども、それにつきましても、その配船の決定についてはやはり日本着のいろいろな港湾施設の問題であるとか、あるいは貯鉱の問題であるとか、そういう需要先の要求がございまして、具体的にはCIFの契約でございますけれども、その船舶を決定する場合には、荷主の了解を得なければできないというような約束になっておるものがあるようにわれわれは聞いております。
  47. 久保三郎

    久保委員 これは両局に聞くわけですが、今度の期間延長の大きなねらいは仕組み船については認めないというような考え方から期間延長してありますか。
  48. 若狭得治

    若狭政府委員 仕組み船であるということが明確にできるものにつきましては、これを許可しないという方針で今後運用していただきたいとわれわれとしては考えております。
  49. 久保三郎

    久保委員 船舶局も同じですな。
  50. 千葉博

    ○千葉説明員 海運局長のおっしゃった点でちょっと補足させていただきますと、仕組み船が特に日本船と非常に競合した場合、その場合はその仕組み船は規制する、こういうことでございます。
  51. 久保三郎

    久保委員 海運局長、いまの船舶局の造船課長の話であなたの話を補足したものが統一見解である、こういうふうに了解してよろしいでしょうか。
  52. 若狭得治

    若狭政府委員 具体的に建造許可を与えるかどうかというような問題になりますと、いま造船課長が補足いたしましたとおりでございます。ただわれわれといたしましては、競合する競合しないという問題の前に、産業界日本船をできるだけ使うのだというような根本的な態度というものを日本の産業界に望みたいということで、仕組み船というものは一般的にこれを排除するというような考え方でおるわけでございます。ただ法律上の許可を与える、与えないという問題につきましては、いま造船課長から補足されたとおりでございます。
  53. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、排除される仕組み船というものの定義はおおよそこういうことになりますか。わが国の貿易貨物の輸送にその船が引き当てられるということが一つ。それからその仕組み船が、その審査時期にこれと対応するような国内船の建造計画がすでに具体化している場合、それから当該仕組み船の、輸出船の貨物がいわゆる積み荷保証といいますか、そういうものが国内船に確実に肩がわりできるという場合、そういう場合に限定されると思うのですが、それでよろしいか。
  54. 若狭得治

    若狭政府委員 そのとおりでございます。
  55. 久保三郎

    久保委員 それでは次に参りましょう。  次は、定期航路におけるところの代替建造の問題でありますが、すでに計画造船は二十次であります。当初の計画造船の重点は、御案内のとおり定期船であったと思うのです。すでにもうここ三、四年で船齢に達しつつあると思うのです。しかもそういう船齢に達する時期において、これの代替建造という問題が遠からず出てくる。これは国際間収支の改善というところの船腹拡充の中でも勘案をしているのでありましょうが、代替建造の場合、いまの姿のままで代替建造を認めていくのかどうか。いうならばこの海運二法を審議した際にも私から申し上げたように、定期航路におけるところの航路調整をすべきだ。これの形の変わったものがニューヨーク運航会社というものだろうと思うのでありますが、その他の定期航路においてもやはり安定経営をやらせるには航路調整が必要だ、こういう話をしているのです。航路調整と代替建造とは、これはやはりからみ合わせてものを考えていく時期だと思う。いうならば航路調整方針にのっとって、今後定期船においては代替建造を行なう、こういう方針があってしかるべきだと思うが、これは海運局長どうなんですか。
  56. 若狭得治

    若狭政府委員 御指摘のとおりでございますけれども、定期船の建造の問題につきましては、現在航路採算が非常に悪化いたしております。このリプレースが非常におくれているわけでございます。具体的な数字を申し上げますと、三十七年度の輸出の積み取り率は五二%でございまして、三十八年度は四六%でございます。三十九年度はおそらく四四%前後になる。四十二、三年ごろになりますと、三二、三%になるというのがわれわれの見通しでございます。これは現在の定期航路採算が、具体的に申しますと、アメリカ関係のオープン・コンファレンスにおきましては、経営内容が非常に悪いわけでございます。それから経営内容が比較的安定しておりますヨーロッパ関係の面におきましては、増配が非常に困難であるというような実情からいたしまして、定期船のリプレースというものが非常におくれているわけでございます。しかしこういう状態では、輸出の積み取り率というものを増加するということは非常に困難である。増加するよりも、維持することすら困難であるというような実情にございますので、われわれとしては定期航路政策について何らかの新しい考え方を出さざるを得ないというような考え方でおるわけでございます。  ただ現実の問題といたしましては、国内的にはたとえばニューヨーク航路の運営会社による航路調整というものの効果というものも十分考えなければならぬ。それから現在集約に伴いましていろいろ航路調整というものが行なわれているわけでございますが、それが大体本年の中旬までかかるという見通しでございますので、それが終わった場合に、どういうような今後の定期航路の合理化という方針、方策があり得るかという問題を考えなければならない。それからもう一つは国際的に、たとえば国連の貿易経済開発会議におきまして、後進国の航路同盟、定期航路というものについてのいろいろな考え方というものが現在討議されておるわけでございます。そうして遠からずそれに対する何らかの考え方というものが出てくるだろう、そういうものも考えなければならない。同時にまた、アメリカ関係の航路同盟の二重運賃制の推移という点もある程度考慮して、その上で新しい定期航路政策というものを考えなければ、日本の輸出の積み取り率というものは、現在の採算状況から見まして、どんどん低下するということは避けられないというように考えておるわけでございます。その際先生の御指摘のような代船建造の場合あるいは新しい増配のための新しい船舶建造の場合の航路調整ということは、当然われわれとしては指導してまいりたいと考えております。
  57. 久保三郎

    久保委員 次に新興国の海運日本海運の問題でありますが、新興国はそれぞれ自国で船を持ち、海運をやっていこうということで、海運界にも新たな波紋を実は投げかけてきておる。新興国の大半は日本に近いところが多いのであります。この場合いままでの日本海運の姿勢でもってこれに臨むことは、必ずしも私は得策ではないと思う。そこでこれは新興国との間にそれぞれの海運企業がいわゆる共同の運航という形もあってしかるべきだ。いわゆる技術提携というものも含めてあるべきだと思うのです。そういう構想は今日考えておられるか。ただ単にたとえば新興国に対して国旗主義はいけないとかいうことでありますが、すでに二、三年前のエカフェ会議でも出たように、運賃が高いということで自分のところでやろうという問題も出てきておるわけです。あるいは国旗主義の問題も出てきておる。これを一がいに、いままでの日本海運のあり方というか、そういうものの考え方だけで押していく時期ではないだろう。政府も経済協力とか技術提携とかいっておりますが、むしろ海運日本の六つのグループの海運企業というのは、そういう方向にも問題をとらえて発展すべきだと私は思うのだが、そういう用意というか、考えは持っておりますか。
  58. 若狭得治

    若狭政府委員 現在後進国に対する海運の問題というのは国連で討議されておると先ほども申し上げたのでありますが、これは非常に強く後進国諸国から議論されておるわけでございます。われわれといたしましては、海運の先進国といたしまして、やはり海運国と後進国との間の協力関係というものはどうしてもつくり上げていかなければならない。そういう場合に、どういうふうにそれぞれの職務を分担するかというような仕事から始めてまいらなければならないように考えておるわけでございます。  それからもう一つは、現在航路同盟というようなものが後進国の経済に与える影響というものにつきましても、十分慎重な配慮が必要である。それから同時に、船員の教育あるいは建造技術等につきまして、後進国に対してどういうような協力をするかというような各般の問題点について、やはり国連において今後議論されましょうし、エカフェにおいても現在議論されておることでございますので、われわれといたしましても、海運の先進国といたしまして、できるだけこれに協力していくという立場をとってまいりたいと考えております。
  59. 久保三郎

    久保委員 大臣にお尋ねするのでありますが、国連やエカフェでいろいろ提案するのもけっこうでありますが、局長の答弁のように海運日本であります。後進国というか、そういうものは身近にあるし、アジア、アラブに多いのであります。そういうことを考えれば、日本がこういう後進国に対して寄与する道は、単にいままでの海運政策だけで乗り出すべきではないと私は思う。むしろそうなると国旗主義がはなはだしくなってくるということでありますから、共存の体制でこれに対して新たな提案をすべき時期だと思う。ついては、時期だと言っても、何も調査もしなくて、あるいは何らの思索もめぐらさぬではなかなかできないと思う。ついてはこういう問題に取り組む姿勢を具体的につける時期だと思うのですが、いかがでしょう。
  60. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 同感でございます。現に私どもマレーシアとある種の共同の協定をすべくいま折衝をやっております。その他順次後進国との共同もしくは技術提携等によりまして後進国を日本と一緒に引きずっていくような構想については、できる限りやっておるつもりでございます。根本の思想といたしましては全く久保委員考えと同様でございます。
  61. 久保三郎

    久保委員 マレーシアとある種の交渉というか、しておるそうでありますが、寡聞にして知りませんけれども、私は単にいま海運局長が言ったようなことだけではなくて、もっと踏み込んだ姿勢が必要な時期だと思うのです。この方法その他について私も具体的にいま直ちに持っているわけじゃありませんが、とにかく後進国もよくなる、水準も上がってくるという体制、それには単に航路整調をしていこうとか、あるいは海運同盟をどうしようというふうな既成観念では私はいかぬと思うのです。むしろこれは新しいケースとしてやってみたらいい、こういうふうに思うのです。これは要望しておきます。  次に、集約化におけるオーナーの存在というのは、将来の展望に立ってどういう位置づけをしようとしておるのか、この点をひとつ御説明いただきたい。
  62. 若狭得治

    若狭政府委員 御承知のようにオーナーというものがございまして、従来は船舶建造資金を導入するという大きな役割を持っておったわけでございます。また同時に非常に小さい企業体でございますので、船員費、店費その他いろいろな運航経費が安い。そういう経済性というものによって、オーナーというものが発展いたしてまいったわけでございます。しかしながら現在の状況は、海運集約によりまして、五年間の長期用船を各中核体と契約をいたしておるわけでございまして、市況によって船舶の用船先を変えるというような事由もすでにないわけであります。ただ現在多数の人間がこれに従事いたしておるわけでございますが、また現に相当数の船舶を持っておるわけでございます。したがいまして、今後の問題といたしましては、オーナーに適するような船舶建造させる。たとえば近海就航の定期航路あるいはフィリピン方面の不定期航路の船舶というものをオーナーに建造させるという考え方で現在のところは進んでおるわけであります。具体的には本年度から老朽船対策ということで財政資金を一部つけておりますけれども、これはオーナーに対する代替建造ということで今後の方策をつけていこうという考えでおるわけでございます。
  63. 久保三郎

    久保委員 大体オーナーの性格というか、そういうものはいまお話しのように、海運市況によってのうまみというか、そういうものは今日集約化においてはないですね。あとオーナーの特色としては、海運企業のいわゆるリスクの分散ということでありますが、これも今後はありません。だから私は大体二つの特徴を持ったオーナーが、これがなくなるとするなら、どういう立場でどういう役割を果たすべきかということを聞いているのですよ。そういう位置づけを考えていらっしゃるかどうかです。
  64. 若狭得治

    若狭政府委員 大体において今後オーナーとしては、近海の定期及び不定期の航路に従事する船舶建造ということを主体にして考えていくというようにわれわれとしては考えておるわけであります。
  65. 久保三郎

    久保委員 どうもしろうとでよくわかりませんので、議事録を見てあとの機会にお尋ねいたしますが、私はオーナーというものに対する政府集約化における将来の展望に立った役割というものが、全然どうもあいまいだと思うのですね。そういうことになりますと、オーナー企業は将来存在の価値があるのかないのかというところまで、極論的に出てくると思うのです。それであっていいのかどうかということです。一言だけ疑問点をあげておきます。ひとつおりを見て疑問を解消していただきたい。実際われわれにもわからぬのです。  そこであなたがおっしゃった老朽船の代替建造のことでありますが、代替建造融資比率はどうなっておりますか。財政比率はどうなっておりますか。
  66. 若狭得治

    若狭政府委員 五割の財政融資を行なう方針でおります。
  67. 久保三郎

    久保委員 五割、確かですか。
  68. 若狭得治

    若狭政府委員 現在五割ということで大蔵省と折衝いたしておりますけれども、大体において五割ということに決定されるだろうと思います。
  69. 久保三郎

    久保委員 五割間違いなくとれますね。  それともう一つは、それはいつ確定しますか。それから全体のワクはどの程度になりましょうか。やはり十億ですか。
  70. 若狭得治

    若狭政府委員 これは本年度が最初の年度でございますので、資金量としてはいま御指摘の十億ということで非常にささいではございますけれども、われわれとしては今後これを継続してまいりたいと考えておるわけでございます。  なお、融資比率が最終的に決定するのは、形式的には多少おくれるかと思いますけれども、実質的には数日以内に明確になるであろうというようにわれわれとしては考えております。
  71. 久保三郎

    久保委員 それでまだ代替建造の受付というか申し込みは受けておらないと思うのですが、おりますか。
  72. 若狭得治

    若狭政府委員 まだ申し込みは受け付けておりません。正式に融資比率その他の基準が最終的にきまっておりませんので、現在は希望調査をして、具体的な検討を行なっておるという実情でございます。
  73. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、最低五割は確実に確保すべきだと思うのですね。というのは、大体巷間伝えられているような低率では、残念ながらオーナーは集約によって何のメリットもない、こう思うのですね。これは運輸大臣にも要望しておきますが、いま若狭局長が言うように、五割を切ったのではなかなかむずかしいように思います。でありますから、これをやると同時に、十億でどの程度代替建造の申し込みがあるかわかりませんが、少なくともこれらが持っておる船は、御案内のとおり大半が老朽不経済船であります。だからこれを促進しない限りは、オーナーの行く手はどうあろうとも、船会社としての行く手についてはこれは疑問が出てきます。でありますから、十億ではおそらくまかない切れないだろうと思います。これは今年度もまだございますから、十億をさらに拡大するという方向にはもうだめですか。この資金の絶対量はどうなんですか。
  74. 若狭得治

    若狭政府委員 現在大蔵省との間におきまして、融資比率の問題と同時に、今年度内にどれだけの資金を使うか。具体的に言いますと、十億でも契約だけでの金額として使う場合には、これは四十億に使えるわけであります。そういう面の折衝を行なっておるのが実情であります。したがいまして、われわれとしては、この資金量、総ワクの追加ということは考えておりませんけれども、現在のきめられたワクの中でどうしたら多数の船舶建造できるか、一応予算的には建造規模、つまり二分の一までということで、実際上は十億でございますけれども、二十億にして使うという考えで、予算はきまっておるわけでございますけれども、現在金額がいずれにいたしましても小さいために、大蔵省との間でいろいろなやりとりがございまして、一応融資率は五割、しかし実際本年度どこまで資金を出すかという問題については、なお最終的に煮詰まっておらないというのが実情でございます。
  75. 川野芳滿

    川野委員長 内海清君。
  76. 内海清

    ○内海(清)委員 いろいろこの調整法に関連しまして、海運関係の問題が論議されてまいったようであります。時間の関係もありますので、なるべく調整法に関係深いようなことについて一応お尋ねして、一般問題につきましては、時期を得てまた御質問申し上げたいと思います。  まず、その前提として私一つお伺いしておきたいと思いますことは、わが国の船腹の保有量を非常に増大して海運関係国際収支改善をはかるという、この施策は当然強力に推し進められなければならぬ、かように思うのであります。先般運輸省が発表いたしました海運関係国際収支改善、鋼船の船腹の拡大に関しまする措置によりますと、昭和四十二年度末において、海運収支、特に海運運賃収支につきましての均衡を目標にいたしての案があるわけであります。これによりますと、四十二年後において所要船腹量は千二百九十九万五千総トンである、こういうふうにきめられておるようでありまして、それで、三十八年度末におきまする保有船腹量でありまする七百六十一万五千総トン、これとの差である五百三十八万総トン、この建造を三カ年間に行なうことになっておるのであります。ただし、これには、現在持っております船腹の老朽化あるいは滅失等によりまする代替建造、あるいは改造、こういうようなものによりまする増減は含まれていないようであります。そこで、この五百三十八万総トンから、三十八年度末までに決定いたしたといいますか、起工または起工準備を完了したもの、六十四万七千総トンを差し引きますならば、今後三年間の所要建造量は四百七十三万三千総トン、こういうふうになっておるのであります。この三年間に大体約四百八十万総トン、こういうものを建造しなければならぬが、これを年平均にいたしますというと、約百六十万総トンということであります。この船腹拡充いたす計画なのでありますが、そこで、この際明らかにしていただきたいと思うのは、この約四百八十万トンの三カ年の建造の年次計画と申しますか、その他があれば、ひとつこの際お示しいただきたい。
  77. 若狭得治

    若狭政府委員 実はまだ年次計画を作成するという段階でございませんので、われわれといたしましては、これだけの船腹量が必要でございますという試算をいたしただけでございまして、これを具体的な産業界の需要というものに当てはめて、どれだけの船腹量が必要であるかということを実は経済団体連合会において御検討いただいたわけでございます。この中で、一番大きな比重を占めておりますところの石油及び鉄鋼原料というものについて検討いたしたわけでございます。そのほかに問題になりますものは、定期航路の今後の建造をどうするかという問題が残るわけでございますが、これは別問題といたしまして、一番大きな比重を占める石油及び鉄鋼石につきましては、経団連におきまして検討の結果、大体運輸省試算した程度のものが必要である。ただし、その場合に、現在スポットの輸送というものは非常に数量が多いわけでございます。石油については約二千万トン、鉄鉱石については約一千万トン程度のスポット輸送のものがあるわけでございます。これにつきましては、たとえば石油については約五%だけ日本船が運んでおる。その他は全部外船が運んでおるというような事情でございますので、これをいかに日本船で運ばせる対策考えるか。たとえば、その半数を日本船で積み取るということにいたしますと、われわれが試算いたしました三年間四百七十万トン程度ということで、年平均百六十万トン程度船腹量が必要になってくるわけでございます。それから、もう一つは、定期航路のリプレースというものを現在、先ほど久保先生の御質問に対してお答えいたしましたように、採算が非常に悪いので、リプレースはおくれておりますので、これを一応計画を立ててリプレースするといたしまして、その分等も合算すれば、われわれの計画程度のものは当然必要であるというような結論が出てくるわけでございます。ただ、そういう一応の見通しのもとで、年次的な計画を今後も実施するわけでございますけれども、昭和三十九年度につきましては、現在のところ、建造規模は約百三十三万総トン出ております。これは、明年度、明後年度におきましてさらにふえると思いますけれども、要は、本年度どういう形態においてどういうふうな——具体的に申しますと、運賃等の問題もございますけれども、どういう形態できまっていくかということによって、今後の問題も左右されるのではないか。したがいまして、一応本度年の問題としては、百万総トン以上という程度を目標にする。来年度は、さらに本年度の実績を見まして、本年の秋には経済企画庁において中期計画というものが作成されるわけでございますので、それまでに来年度の見通しを明確につけたい。再来年度以降につきましても、それまでにある程度の見通しを持って、中期計画の中に織り込んでいただくということを考えておるわけでございます。
  78. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまのお話によりますと、まだ経団連等の関係ではっきりいたしていない。ところが、この五百三十八万トンというものが運輸省から一応提示された。その後において、経団連の海運委員会ですか、ここで出た数字には、私ども当時のものを記憶している者からいいますと、少しそこに差があったのじゃないかと思いますが、いずれにしても運輸省としては、今日までなおこの五百三十八万トンというものは変更になっておらぬというふうに考える。それで、この三十九年度は大体現在百三十三万総トンというものが計画に載っておるが、いずれにしても、百万総トン以上できるだけ多くのものをつくりたいということのようであります。そこで、この点は私は少なくとも年次計画ができなければ、三十九年度におきまする計画でも、できるだけ早く決定願いたい、かように思うのであります。これは私新聞で見ましたのではっきりいたしませんが、ひとつ大臣にお伺いしたいと思うのは、きのうの二十八日ですかにおそらく経済閣僚懇談会があった。そこで、三十九年度の計画造船、これらにつきまして、いわゆる二十次船をどう実施するかということについて話が出たのじゃないか。これはまあ新聞報道であります。これはさっき海運局長からお話がありましたような船主希望からいえば、このスポット船約十五万総トン程度を含めて、いまの百三十三万グロストン程度がすでに出ておるのだと思います。しかもこの百三十三万グロストンというものは、大体船台の手当てもできておる、こういうふうなことでありますが、これに基づいて、いまの運賃問題その他いろいろな関連の問題はありましょう。三国間輸送の専従船の建造問題、その他いろいろあると思う。海運融資の問題もあったと思いまするが、ここで大体二十次船に対しまする政府としての閣議決定といいますか、経済閣僚懇談会での話し合いはどういうふうになっておるか、その点をひとつ伺いたい。
  79. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 昨日の経済閣僚懇談会におきましては、単なる経済状況の月次報告が議題になったのみでございまして、海運に関する問題につきましては話が出ませんでした。と申しますのは、さっきの自社船の問題について経団連で意向をまとめることになりまして、それに引き続きまして、それと相関連して決定するのが一番いいのではないかと私ども考えておるものでございますから、昨日はそういう話は一切出ませんでした。
  80. 内海清

    ○内海(清)委員 そういう話が出なかったらやむを得ないわけでありますけれども、少なくとも三十九年度の計画造船につきましては、できるだけ早く御決定願いたい。これは今回ようやく船舶建造長期予約ができるような制度になってきた。そのことは対造船所対策と、さらに今後のわが国の計画造船の全般的な船体構成の上からいってきわめて大事なことだということであります。しかも御承知のように、今日輸出船の引き合い等もかなりあるわけであります。国内船のこの計画が早く決定されなければ、それによっていろいろ支障を来たすのは造船所関係でございます。できるだけ一日も早く、少なくとも三十九年度程度におきましてはひとつ計画をつくっていただきたい。この問題はこの程度で終わりますが、これを強く要望しておきたいと思います。  さらに、さっき自社船の問題、あるいは定航の問題、いろいろございましたが、これは私はいずれ時を変えて御質問申したいと思いますが、ただここで私ども申し上げたいことは、ことに自社船等につきましては、わが国の石油業界にしても、その業界が希望するような船腹量が、わが国においてなかなかできないということ、ここに問題があるわけでございます。もちろん今度の海運二法案によります集約によりまして、海運企業の基盤が強化されて、そうして国際競争力も強くなってまいるわけでございますが、しかし、企業設備投資には、それぞれやはり限度がある。したがって、それに対しては国が大きな助成をしなければならぬということでありまするが、これもやはり限度があることだと思う。そこで、これらにつきましては、いずれいろいろ質問したいと思いますが、かつて論議されました船舶の保有会社であるとか、あるいは公団方式というふうなものが今日また一部において論議されておるゆえんでもあると思うのであります。これらにつきましては、いずれ時を変えてただしたいと思いますが、こういう面につきましても今後事務当局におきまして十分ひとつ御検討願いたい。このこともあわせて要望しておきたいと思うのであります。  それから次にお尋ねしたいのは、先ほど仕組み船の定義のお尋ねもございましたし、それに対する御答弁もあったわけであります。この問題は非常にやっかいな問題で、はっきりした定義もない。したがって、仕組み船ということで今日までいろいろ論議があったわけでございまして、ことにこの点についてたいへん遺憾に思いましたことは、運輸省部内において、海運関係船舶関係と、今日では意見は一致いたしておるのでございましょうが、当初においては多少の解釈の違いがあったのではないか。これはいろいろの立場もあったでしょうが、こういう点は少なくとも運輸部内で最初から意思統一をしていただかなければ、業界を迷わせ、さらにいろいろな論議をかもすゆえんだと思います。今後十分御注意いただきたいと思うのであります。したがって、私はここでそういう仕組み船ということばをなるべく使わずに、具体的にお尋ねしてみたいと思います。  第一にお尋ねしたいのは、臨時船舶建造調整法でありますが、これは御承知のように二十八年に、国内船については、それが真に国民経済の要請に適合したものか、また輸出船については当該船舶建造がわが国海運の健全な発展支障を及ぼさないか、その調整をやるということで制定されたのであります。したがって、制定されてからすでに十年以上を経過いたしておるのであります。それから今日まで、特に調整法第三条の許可基準、こういうものによって、これに適合しないということで不許可になったものがあるかどうか、これをひとつ具体的に御説明願いたい。
  81. 千葉博

    ○千葉説明員 この十年間に本法の運用上建造許可申請のあったもので不許可処分にした例はございません。これは建造を計画した船舶が本法の許可基準に合致しないため申請者において申請をまず見合わした、あるいは許可基準に合致しない船舶建造申請がなされましても、その当時におきまして申請の内容を変更させるとか、それから申請を取り下げるよう行政指導を行なった結果であるということでございます。
  82. 内海清

    ○内海(清)委員 不許可処分の例は今日まで一件もない。そのことは申請書が出される以前においての審査あるいは指導ということが大きな力があったのだ、こういうことでありますが、これはまことにけっこうだと思うのであります。少なくともこういう面につきましては、ことに造船などというふうな非常に長期建造を要するというふうなものについては、それを早く行なわなければ、業者におきましてもかなり損害をこうむる点もありまするし、さらにまた鋼材の手当てその他ができた後であるならば、これはわが国の経済の損失からいっても大きいものがあると思うのであります。この点は今後におきましても、今日までのような審査あるいは指導の方針で進んでいただきたい。  それから次にお尋ねしたいと思いますのは、現在わが国の造船所で受注いたしておりまする輸出船であります。これはすでに四百万総トンをこえまして、五百万総トン近くになっておるかと思いますが、これが大体許可に相なっておるのだと思うのであります。これらの建造が許可されております輸出船の中で、日本輸入物資長期積み荷保証のもとに輸送するという予定で建造されておるものがあるかどうか、言いかえれば、国内船と競合関係にあるものがあるかどうか、この点についてもひとつお伺いいたしたい。
  83. 千葉博

    ○千葉説明員 ただいままでに受注いたしました輸出船でございますが、三十八年度は四百三十七万トンに達しております。それでこれが許可になっておりますが、さらにさかのぼりましてこの十年間の許可の実績でございますが、輸出船約一千五百万トンにも達しております。このうちですでに引き渡しを一千四十万トンくらいやっております。しかしながらこの中で実際にいま長期契約日本向けの輸送に従事いたしておりますのは二十五隻の七十七万総トンでございまして、いままでに完成いたしました全体の輸出船は先ほど申しました千万トンをこしておりますので、約七%ということになっております。  さらに現在手持ちの輸出船は五百万トン以上でございますが、その中で長期輸送契約日本荷主から取りつけるというのはいまございません。
  84. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまの御答弁によりますと、現在の受注は四百三十七万トン、これについては別にいわゆる国内船と競合するものはないということ、それでいいのですね。
  85. 千葉博

    ○千葉説明員 さようでございます。
  86. 内海清

    ○内海(清)委員 そこでいま造船課長から御答弁いただいたのでありますが、終戦後今日までそういうふうなあなた方船舶局のお考えになる仕組み船ということばを使えばいいかもしれませんが、最初から長期積み荷保証建造を許可した船で、今日まで予定どおりに就航した船というものが幾らかあるのじゃないかと思います。それからいま一つは、建造後において日本荷主から長期積み荷保証を取りつけた例があるかどうか、輸出船で最初から積み荷保証建造して予定どおりに動いた船とそれから建造後に積み荷保証を取りつけた例があるかどうか、この点をもう一度明らかにしてもらいたいと思います。
  87. 千葉博

    ○千葉説明員 過去の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、実際関係として過去の輸出船でこの仕組み船として運航しておりますのは二十五隻、七十七万総トンでございます。内訳は鉱石専用船が六隻の二十一万トン、石炭の専用船が十隻の二十八万トン、それからタンカーが九隻の二十八万トン、かようになっているわけでございますが、過去におきましては仕組み船の問題は表に出ないで、どちらかと申しますと国内の問題としてもあまり問題ではなかったのでございます。と申しますのは、御承知のとおり国内の船会社がまだ力がなくて、相当な長期建造計画というようなことはできない、それでかような大きな石炭、鉄鉱石、それから輸送船、こういったものを大量につくることもできませんので、あまり問題とはなっておらないのでございます。この二十五隻のうち、どれだけあらかじめ長期契約をとっておったかということははっきりしておりませんが、この中の一部のものは輸出入銀行の貸し出しの条件としてこの長期輸送契約を担保として入れておりますので、この中に数隻あるそのものだけがあらかじめ入っているということでございます。
  88. 内海清

    ○内海(清)委員 これらの点ははっきりしないということですが、建造許可のときには長期積み荷保証をとっていなかった。ところが建造後にそれをとって動いているものもわかりませんか。
  89. 千葉博

    ○千葉説明員 当時のものについてははっきりいたしておりません。
  90. 内海清

    ○内海(清)委員 次にお尋ねいたしたいのは、わが国の輸入貿易物資のうちFOB建ての場合は荷主日本船主でありまして、いろいろ問題がある。海運局長は先ほどこれらについても問題があるということでございました。それから荷主外国荷主であるCIF建ての場合、これは外国荷主船舶の指定権を持っておる。わが国で建造された輸出船が外国荷主から指定されて使われてもやむを得ないのではないかと思うのですが、この点は海運局と船舶局から、ことにいま船舶局長が外国へ出張しておられますが、この前の参議院での船舶局長の答弁と海運局長のさっきのお話と多少そこらに違いがあるのではないかという疑問を私は持ちますので、両局からひとつ明らかにしていただきたい。
  91. 若狭得治

    若狭政府委員 根本的に日本船をより多く使用するという面から見まして、輸入物資についてはFOB建ての契約を結んでいただきたいというのがわれわれの考え方でございます。ものによりましてはもちろん売り手市場のものもありますし、買い手市場のものもございますので、必ずしも輸入は全部FOBというわけにはまいらないという実情であろうかと思いますけれども、できるだけそういう方針協力していただきたいということを実は申し上げておるわけでございます。ただCIF建てになるものも積み地の関係、山元の関係、その他いろいろな関係で、実際上の配船権というものとは関係なしにやはりCIF建てという契約が結ばれる場合があるわけでございます。しかも実際の配船の取りきめにつきましては、受け荷主の了承を得てもらいたいというような契約もあるようでございます。それは契約形態いかんにかかわらず、できるだけ日本船を使っていただくという考え方で今後進んでいただきたいということをわれわれとしては申しておるわけでございまして、できれば契約形態自体につきましてもFOB契約をふやしてもらうということをわれわれとしては考えているわけでございます。
  92. 千葉博

    ○千葉説明員 船舶局といたしましても海運局と全く同様でございまして、できるだけ日本船日本輸入物資を運ぶという点については、これはもう意見は全く同じでございます。したがいましてCIF建ての輸送物資につきましては、できるだけFOBのほうにしてほしい。さらにCIF建てのものの輸入物資を運ぶにあたりましても、国内船が配船されるということを希望しているのは、これは海運局と全く軌を一にしております。
  93. 内海清

    ○内海(清)委員 大体いまので明らかになりましたが、もちろんわが国の輸入物資をできるだけ日本船で運ぶということ、これはだれしも希望することで、これはできるだけ運輸省当局が通産省当局と御協力になって、そういうふうな荷主に対する指導ということが私は最も必要なことだと思うのであります。FOB建ての場合、これはもちろん日本荷主の意思によって決定されることでありますから、必ずそうなければならぬ。もちろんこれはそういうふうになっておって、これをできるだけ多くするということが必要だと思うのであります。ただ、CIF建ての場合は、これはあるいは荷主との話し合いはあるかもしれませんけれども、表面からまいりますと、やはりこれは外国荷主船舶指定の権限があるわけで、ここに非常にむずかしさがあると思うので、これが話しがつかない場合には、やはり外国船主が日本の輸出船をできるだけ使ってくれることがいいのではないか、こういうふうに私は考えるのであります。これは私ども、鉄鋼業者から聞きましても、外国船であっても自分のところで生産した鋼材を使った船が来ることが、より国民感情としては好ましいのだ、こういうふうなことも聞いておるわけであります。これらの点につきましては、今後できるだけ運輸当局と通産当局の話し合いによって、この荷主のほうに十分ひとつお話し合い願いたい、あるいは鉄鋼業者、石油業者等とも十分お話し合い願いたい、こういうふうに考えるわけであります。  さらにお尋ねだしたいのは、運輸当局が策定されましたさっきの海運関係国際収支の均衡策について見ましても、昭和四十二年度末までにわが国の船腹量が予定どおりにこれが増強されたといたしましても、なお輸出で三九%、輸入で二八%というものは外国船によらなければならぬということであります。これに依存しなければならぬ。これははなはだ遺憾のことでありますが、しかし一〇〇%日本船で積み取るということはなかなか困難な問題だと思う。これはやむを得ぬと思いますが、これらの外国船の中で日本建造されている輸出船があっても、これは私は何ら支障はないのではないかと思うのであります。むしろ日本建造された輸出船が多くこれの中に含まれることこそが、わが国の貿易の振興あるいは船舶輸出の観点から申しますならば好ましいのではないか、こういうふうに私は考えるのであります。と申しますことは、これは世界における造船国がわが国が一つであれば問題ない。一つでありません。わが国と競合関係にありまする多くの造船国があるわけであります。これらの造船国も船舶の受注には今日最大の努力を尽くしておる。わが国の造船界の今日までの非常な努力、それと世界の最高といわれておるような日本の造船技術、こういうものと、さらには造船業の経営合理化等によりまして、非常に激しい競争で、いわば紙一重の差で受注いたしておるのであります。したがって、もしわが国で受注できなければ、他のいかなる造船国でも外国船主も船をつくり得るのであります。もしわが国でこの輸出船の建造を拒否した場合には、逆に外国荷主外国建造した船舶でわが国の輸出入物資を輸送するということになるということになるのでありまして、どうせ外国船を使うならば、日本で造船したいわゆる輸出船でありますが、これを建造してもらったほうがこれまた貿易振興の立場から申しましても、あるいはまた外貨の獲得の面から考えましても、その他いろいろの条件がございますが、そういう方向が好ましいのではないか、かように私は考えておるのであります。これに対しましては大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  94. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私は全くさように考えておりまして、貿易の振興という面から申すならば、幾らかでも安くして輸出を増進したいというのがわれわれとしての考え方でございますが、海運の面から申しますと、どうもそれと相矛盾するので、その調整をいかにすべきかという問題が常に経済閣僚懇談会の大きな話題になっておるのでございます。私は、双方がいずれにしても外貨収支改善ということに役立つ方面に向かいまして考えてまいりたいと考えております。すなわち、ただいま申しましたように、日本でこしらえました船で日本の物資を運ぶ、両方ある場合には日本でつくった船で運んでもらうように努力することは当然のことと考えますが、根本問題は、ただいま申しましたように、造船輸出としては向こうの船をつくりたい、またつくる力がある、現に世界一の造船国になっておるので御承知でございましょうが、そうすると、どんどん外国の船がつくられると日本の船の積み取り比率が悪くなって外貨の面で困る、この相矛盾する両問題をいかに解決するかということが私は当面の外貨事情改善策の盲点であると考えまして、始終それを論議しておるような次第でございます。
  95. 内海清

    ○内海(清)委員 いまの大臣の御答弁によりますと、輸出船をわが国の造船所でつくることがわが国の海運の振興と相矛盾する、したがってそこを調整するのに苦労するのだというお話でありますが、私がさっき申しましたことは、運輸当局で策定されました海運収支施策から見ましても、先ほど申し上げましたように、この四十二年度になりましてもなお輸出では三九%、輸入では二八%の外国船に依存しなければならぬ、どうせそれに依存するのであるならば、その依存する船は日本でつくられたものであっても何ら日本海運の振興に障害になるものではないではないか、外貨獲得、輸出振興の面からいえば、その三九%あるいは二八%という外国船舶日本建造された輸出船であることがむしろ日本貿易の振興あるいは国際収支改善の上からいえば好ましいのじゃないか、全部日本の輸出入物資を日本船輸送するだけの海運船腹量の増加がわが国にできますれば、これは問題ないのです。そのことをお尋ねしておるのであります。もう一度御答弁願いたい。
  96. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 そういうようになりますことを念願いたしまして、海運二法案ができて増強するのでございますが、現時点におきましては、遺憾ながらできないのです。しかし長い目で見ると、どうしても日本船をよけいこしらえて、そうしてできることなら日本船でフルに持っていくのが理想なんですが、外船をどんどんつくっておりますと、日本船のフルに積み込みの率が完全になる時期がどんどん遠のいていくということは考えられると思うのです。それが問題である。速急に今日の時点においてはあなたのおっしゃるとおりにすべきでありますが、長い目で見ると、それは日本海運の増強というものと矛盾しやせぬか、こういうことについて議論がされておるのであります。いま直ちに今年、来年の問題につきましては、それはあなたのおっしゃるように、輸出を増進して輸出船をつくって、外国船に頼む場合においては、なるべく輸出した船によって運航してもらうようにすることは、これは当然のことでございます。
  97. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、あなたの御所見によりますと、日本が輸出船をやらなければ、外国船主は船をつくり得ないという一つ前提があるわけですか。
  98. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 いや、さような前提はもちろんありません。船をつくるのは向こうの自由でございますから、それはありませんが、大体日本の技術が進んでおりまして、世界の造船技術については競争力十分であります。というのは、ここ数年の日本の造船量は非常に多い。造船の先進国であるイギリスを凌駕したということにつきましては、私は日本の造船業が非常にすぐれておるからそうなるのであって、必ずしも日本へ来ないでよそへ行くというようなことがあるかもわかりませんが、私はそうすることによって日本の造船の受注が減るとは考えておりません。
  99. 内海清

    ○内海(清)委員 どうもただいまの御答弁、私承服しかねるのですが、特に大臣はそのほうの所管でありまして、この点は十分御承知のことと思うのであります。なるほどいま日本造船所に、先ほど申しましたような四百万トン以上の輸出船が来ておる。それがどういう状況において受注されてきておるか。これは、受注競争というものはきわめて熾烈なわけです。いわばほとんど紙一重です。したがって、日本がこれを拒否すれば、他の造船国でいずれもみなこれをつくっていく。ことにいま船舶局長がOECDの作業部会に行っておられるようでありますが、これは帰られて十分聞かなきゃわかりませんけれども、新聞紙上によりますと、建造の国別の割り当てをやろうかということまで出てきておる。それほどいまの造船界における受注というものは熾烈であります。したがって、私は、これは日本が拒否すれば必ずどっかの国で必要なものはみなつくっていく。ことに外国の船主というものは、日本の船主よりも基盤が強固であるということ、ここに問題があるわけであります。したがって、そういう点から申しますならば、日本でつくらなければ、いかなる国でも造船国がこれをつくるわけです。それでは、日本ではそれだけ輸出船を受注しないで、これを国内船に依存するということのみにいくということであるならば、これは私は今後に大きな問題を残すのではないか、こう思うのです。
  100. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私の申し上げましたのは、いまあなたのおっしゃるように、日本の物資を運ぶために、外国船があるのと日本船があるのとでは日本船にまかす、同じ外国船にまかす場合には、日本の受注した船を使ってもらうようにするのが当然じゃないか、これはもう私はあなたと全く同意見なんです。しからばその域をどんどん進めていきまして、造船のほうで外貨獲得はできましたが、海運集約の面におきましては、海運を強化する面におきましては、将来必ずしもプラスにならない。いまの現時点においてはあなたと全く同意見でございますが、遠い将来を考え日本海運方策をどうすべきかということにつきましては、必ずしもあなたの説に賛成できない、こういうことなんで、現時点におきましては私はあなたと全く同感でございます。あなたもおそらくはそういうお気持ちだろうと思いますが、できるだけ日本のものは日本船で運びたいというのが理想なんですから、その理想に一歩遠のくような結果になりはしないかということを私は言うておるのでございまして、現時点において同じ外国船で運ぶ場合には、日本で造船した船で運ぶということを希望し、推進していくことは当然でございます。またその荷物を運ぶために外国船を注文するというような場合には、造船で外貨を獲得することにおいてあらゆる努力を日本政府が払うのは当然でございまして、それも私はいまの場合においては一つも変わっていないと思いますが、どうでございましょう。
  101. 内海清

    ○内海(清)委員 せっかく大臣の御意見でありますが、今後将来を見ましても、外国の造船国が日本にはもう造船はかなわぬというので、設備の拡大もやらず、合理化もやらず、これがだんだんさびれていくならば別問題でしょう。日本のみが造船国であるというぐあいになれば別問題でしょう。わが国で世界の造船を牛耳る立場になれば別問題です。おそらく今日の西欧の造船国におきましても、造船業の振興ということに対してはあらゆる努力を払っておるはずです。この状態は今後ますます熾烈にこそなれ、私はいまの状態が大きく変化するということはないと思う。そういたしますならば、遠い将来を考えましても、やはりその点はわれわれ考えていかなければならぬのじゃないか、こういうふうに私は考えるわけであります。くどいようでありますが、もう一度……。
  102. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私とあなたは現実の問題で——よく船舶局と海運局が意見が違うというのは、おそらくそれをいうのです。遠き将来を考えまして、両方とも理屈があると思いますが、当面といたしましては、あなたのおっしゃるとおりでございます。どんどん造船業に力を入れまして、船をつくるのがいい。ところがその船が非常にたくさんできまして、そしてCIFが多くなって、向こうが日本でつくった船でどんどん向こうの荷物を運ぶように、CIFは主として油、鉱石が多いのですから、そうやられたら海運業界としてはたまらぬ。国策としてはたまらぬ。こういうことがいま非常な問題になっておる点であると思うので、現時点においては、あなたのおっしゃるように、なるべく造船でうんと外貨をかせいでいって、その船で——日本のつくった船と日本の資本でつくらない船とどちらかといえば、それは日本でつくった船に荷物をやりたい、これは当然であると思います。それですから私の言うのとあなたの言うのとは違っておらぬし、世界の造船業界に対する見解も違っておりません。  ただ、国の政策というものは申すまでもなく永遠の将来のことを考えなければいけないから、将来のことを考えるならば、ちょうどタコが自分の足を食うように、どんどん外国の安い、日本の経済で採算の合わないようなものを、いわゆるあなたの言う紙一重でとって、向こうへ船をやって、そして日本が参ってくるような状態になったときには困ってしまう。当分そんなことはありませんよ。しかし、国策として考える場合にはそういうことは言い得る、こういうことを私は申しておるのであります。
  103. 内海清

    ○内海(清)委員 その点、将来のことは、論議になりますが、多少意見が違うので、やはりつくりました船というものは一応の耐用年数が、タンカーにしても、あるいはその他の専用船にいたしましても、貨物船にいたしましてもあるのであります。したがっていまつくったものが将来それほど大きな影響を与えるとは私は思いません。世界の海運というものは今後ますます国際競争も激しくなると思います。そういう状態でありますけれども、私はそれが将来におきましてわが国の海運の問題に大きく影響するとは思わぬのです。それよりも、もっとこういう世界の海運競争場裏においては、特に日本の船主の経営基盤は弱いのでありますから、この点を強化する方策こそが大事である。ほんとうに競争ができるようになってくるならば、これは十分日本造船所もまず日本の国内船をつくることが第一の希望である。ただ、現在まではそれが十分造船能力を満たすことができないから輸出船をとっておるのであって、少なくとも三十九年度早く計画造船を御決定願いたいというのはこういう一つの面もあるわけです。これはまたいずれいろいろ御意見を伺うこともあると思いますが、時間の関係がございますからきょうはその程度にいたします。  特に日本船舶輸出は、この輸出船契約実績から見ましても、今日までかなりの努力をしてきていると思うのです。昭和三十八年度末までに大体三十八億四千八百万ドル、これだけのものを獲得しておる。三十八年度のみを見ましても八億二百万ドルであります。こういうふうな実績を持っております。三十八年度の品目別の輸出実績から見ましても、鉄鋼についで第二位です。そのほか外貨獲得の面から見ますと、三十八年度におきますプラント輸出の六五%を輸出船で占めております。こういう実情であります。そこでさっき申しますようないわゆる貿易振興、外貨獲得の面から見ましても、この点は将来十分考えていただかなければならぬのではないか。もし今日海運収支改善を急ぐのあまり、輸出船を規制しまして、——もちろん国内船と競合するものは厳に規制しなければならぬと思うのです。ところが輸出船をむやみに規制して、あくまで国際収支改善の根幹であるところの貿易収支の面でマイナスが出ては相ならぬと私は思うのであります。このような外貨獲得の実績をもしそういう規制によって失うことがありますならば、その損失はきわめて重大だと私は思います。輸出産業としての造船業というものは、むしろ今後ますますこれは国内船と競合しないようにする。競合した場合にはこの調整法でこれを調整するというのが趣旨でございます。むしろ輸出産業としての造船業というものは、私は育成強化し、振興をはからなければならぬと考えるのでございますが、この面に対しましての大臣の御所見をひとつ承りたいと思います。
  104. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私はその点全くあなたと同感です。政府におきましても輸出船の規制をしようなどというような考え一つもありません。私はその点は、あなたと全く同感です。当面の外貨対策として利潤は少なくとも、外貨獲得の面は、あなたがお示しになったように多量の外貨を取っておるのですから、私はその点については全く同感です。政府もそういう方針をとっておりません。
  105. 内海清

    ○内海(清)委員 それでは次にちょっとお伺いいたします。船舶関係ですが、現在わが国の造船能力はどのくらいに見ておられますか。
  106. 千葉博

    ○千葉説明員 海運造船合理化審議会におきまして一応出ております現在の能力は、一年間で二百六十万総トンということになっておりますが、最近労働時間の延長、それからさらに施設の改善等によりまして、約四百万トン弱くらいのものが着工できるということになっております。
  107. 内海清

    ○内海(清)委員 これはまあ労働力の関係、施設の関係でいろいろ取り方があると思うのですよ。  それといま一つお伺いいたしたいのは、いま盛んに大型船の建造に対する施設の拡張などが行わなれておるわけですね。したがって、ここ二、三年でかなり増大すると思うのですが、四十一年ごろでは、大体どの程度になるお見込みでありますか。
  108. 千葉博

    ○千葉説明員 ただいま四つの大きなドックを掘っておりますので、そういったものができますが、一面またある程度の造船船台をつぶすことも計画されております。将来は、大体普通の考え方によりますと、三百二十万総トン程度の能力になるかと思われます。
  109. 内海清

    ○内海(清)委員 現在で運輸省のつかんでおられるのは、現在の労働力と施設、設備というもので二百六十万トン、四十一年ごろになると三百二十万総トンということであります。これは重量トンに直しますと、相当の数字になるわけです。その際私は特に運輸当局としてお考え願わなければならないのは、こういうふうに造船能力がだんだんと大きくなりつつある。それは運輸当局としても、将来を見越してこの施設の拡大強化をお考えになっておると思うのです。もちろん大型のものができますから、小型の船台などが一面減る面がございますけれども、それらを勘案してこういう数字になる。したがって、わが国の造船界が今後いかなる場合でも、いかなる不況に遭遇しても、これだけの能力を消化するようにやっていかなければならない。これだけの船が建造できるように推進していかなければならぬと思うのです。そうならなければ将来大きな問題が起こってくる。特にそういう点から言いまして、わが国の今後の必要船腹量がこれまでに一度に増大するとも考えられない。したがって、ある程度の輸出船というものは今後も取っていかなければならぬということ、これは明らかであると思うのです。その場合にもしここで先ほど輸出船についてはさらに規制する考えはないという大臣の御所見でございましたが、かりそめにもここに輸出船に対する規制が行なわれるようなことがありますならば、これは将来に大きな影響を及ぼすと思うのです。この点につきましては十分ひとつお考えいただいて、わが国の造船能力を十分充足するような今後の受注活動が必要であると私は考えております。それにはやはりある程度の輸出船をどうしても取っていかなければならぬと思うのですが、その点に対する大臣の御所見をひとつ伺いたいと思います。
  110. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 全く同感です。
  111. 内海清

    ○内海(清)委員 なるべく早く終わりますが、少し時間が延びまして申しわけございません。  そこで私、今度のこの臨調法の適用にあたって、政府はこの輸出船の許可申請について特にどういうふうにお考えになっておるかということでありますが、私がここで特に要望したいと思うことは、輸出船の許可申請、これをいたしました場合に、もちろん今日まで事前の申請あるいは指導によってこれが許可申請がされなかったものもあるわけでありますけれども、ときに許可されるまで非常な日時を要する場合がある。そしてなかなか許可がおりなが、そのために当該の造船所の海外に対しまする信用をかなり失墜した場合があるのであります。したがって、一たん信用を失墜しますと、その後の発注活動に大きな支障を来たすということであります。そういう点について特にどういうふうにお考えになるか。もちろんこれは疑わしいものについては十分審査していただかなければなりませんけれども、これは事務的な問題でありましょうけれども、今後できるだけ早く許可申請が出たものについては処理願うということが、私は今後の発注活動に大きな影響を与えると思います。この点はひとつ船舶関係から……。
  112. 千葉博

    ○千葉説明員 過去におきまして、千五百万トンの輸出船の許可をしてきたわけでございますが、その輸出船の申請をいたしまして、その許可の手続その他の時間がかかったというようなことで、あまり支障を来たした点は少なかったようでございます。将来におきましては、一段とこの事務的な面につきましては、迅速にやっていきたい、こう考えております。
  113. 内海清

    ○内海(清)委員 その点はひとつ強く要望しておきたいと思います。  次に、日本海運の再建に抜本的に海運二法案の制定によりまして、取り組まれたわけであります。そこで、政府としてはまずわが国の海運の健全な発展ということが中心的な課題だと思うのであります。しかし、そのために外貨獲得に大きな役割りを持っておりますところのこの造船業をしばるようなことがあっては相ならぬ。さっき、縛らぬということで規制は与えない、競合する以外のものについては与えないということで了解するわけでありますが、今後特にこの点をお考えいただきたい。大いに船舶も輸出して、さらにそれと並行して、並行してというよりもむしろまずもってわが国の海運の助成措置を強化して、そして国際競争力が十分できるようなわが国の海運基盤をつくり上げていただきたい。こういうふうに思うのでありますが、この海運再建につきまして、特に今後運輸当局で、あるいは金融、財政その他の面で、一そうの助成措置を講じようというふうなお考えがあるかないか、その点をひとつお聞きしたい。
  114. 若狭得治

    若狭政府委員 海運対策といたしましては、いま御指摘の海運二法案の実施によりまして、現在の国際海運の状況から見まして、十分国際競争力はあるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。ただ先ほど久保先生の御質問の中で申しましたように、定期航路等の特別なものにつきましては、また別の施策が必要であるかと思いますけれども、一般的に見まして、海運融資その他の問題から見まして、現在の政府施策というものについては、十分国際競争力のある船舶ができるような条件が整っておるというようにわれわれとしては考えておるわけでございます。ただ、一部さらにそれを促進する、日本船の積み取り比率を急速に引き上げるために、何らかのたとえば税制等の促進剤的なものは、今後とも検討してまいりたいと考えておるわけであります。
  115. 内海清

    ○内海(清)委員 この点につきましては、今後非常な御努力を払っていただきたい。特に私この際ひとつお願いしておきますのは、集約化によって参加したオーナーはけっこうでございます。これに参加していないオーナーで、今日経営が非常に困難になったものがある。すでに倒産したものもあると思うのであります。これは海運二法が成立いたします際にもいろいろ質問した点であります。参考人にも質問いたした点でございますが、そういう現実が出てきております。したがって、この点につきましては、先ほど久保委員からも御指摘もいろいろあったようでございますけれども、今後大いに考えていただかなければならぬ問題があると思うのであります。このことはひいて今日造船所にさらに影響が来ておるということであります。そういう資金的な面から来るならば、また船の修繕その他でなかなかスムーズにいかぬということになれば、ますます倒産を早める結果にも相なる。この際早急にこれらに対する一つの処置をお考え願わなければならぬのじゃないかと思うのでありますが、きょうは時間の関係でこれはまたの機会に譲らさしていただきたいと思う。  次にお尋ねしたいのは、この臨調法の適用にあたりましては、今日までひっかかったものはない。したがって今後におきましても、国内船との競合の場合を除いてはほとんどないだろうというふうに解釈できるのでありますが、この補足説明の中にありますこの許可基準であります。二つありますが、第二の基準のほうは、これは当然だと思うのであります。結局基準で問題になりますのは第一の基準であります。「船舶建造によってわが国の国際海運の健全な発展支障を及ぼすおそれがないかどうか」ということであります。第一の場合、具体的にどういうふうな競合、ただ抽象的なあれでなしに、どういうふうな場合にこれは輸出船の建造を許可しないのだというふうなあれがありましたらひとつお伺いいたしたい。
  116. 千葉博

    ○千葉説明員 第一の場合についてでございますが、この輸出船が非常に多量の発注がございまして、船台の点で非常に国内船と競合して、具体的に競合するというようなことがあった場合には、これにつきましては規制をされることに相なります。また先ほどから問題になっております仕組み船の点につきましても、長期積み荷の保証でもって受けて、それでこれは日本の船主から融資を受けまして、それで日本輸入物資輸送する、こういう場合でございますが、これに使う輸出船、これで具体的に日本の国内船と競合したというようなときにはまた規制されるというようなことが考えられるわけでございます。
  117. 内海清

    ○内海(清)委員 時間が経過してやめたいと思いますが、いままでいろいろお尋ねいたしましたことからいたしまして、私はこの臨調法が適用されまして、国内船との競合ということで輸出船の建造を許可しない場合、先ほど久保委員からもお話がありまして、全く同様なのでありますが、この点をひとつ私は確認したいと思います。建造許可を申請しておる輸出船というものがここにある、そうしてその輸出船がわが国の貿易物資の輸送に引き当てられることが明らかであって、しかもその輸出船の建造許可の可否を審査する時期におきましてちょうど建造計画が具体的に進んでおるところの国内船がありまして、その輸出船の建造を許可しないことによってその輸出船の建造の引き当てになっておるわが国の貿易貨物の輸送が確実に国内船に振りかえられることが明らかになったような場合に限って輸出船を許可しない、こういうふうに私は思うのでありますが、それに対しまする御所見、これは海運局、船舶局、両方からひとつお願いいたします。
  118. 若狭得治

    若狭政府委員 大体そのとおりの運用ということを考えておるわけでございますが、もう一つ、輸出船につきましては輸出入銀行の金融が先行するわけでございます。この点につきまして、大体においては仕組み船というものは明確を欠くというのが常態でございまして、過去において長期の用船契約というものを輸出入銀行へ担保として提供したという例はございましたけれども、今後そういうものははたして期待できるかどうかわからないというような問題があるわけでございます。いま先生がおっしゃいましたような条件が整うならば、当然われわれとしては建造を抑制するということで運用してまいりたいというように考えておりますけれども、輸出入銀行の金融を受けるという面から見ますと、多少幅の広いものがあり得るのじゃないだろうかという気がいたしておるわけでございます。ただそれは実際のケース・バイ・ケースによってそういう精神で具体的な運用をやっていただくということ以外にはないわけでございまして、法律の運用といたしましては、いま先生がおっしゃいましたとおりの運用以外にはないというようにわれわれ考えております。
  119. 千葉博

    ○千葉説明員 船舶局の側も、先生のおっしゃるとおり、そのように運用することになる、かように考えております。
  120. 内海清

    ○内海(清)委員 法律的に適用する場合には大体これだ、ただ実際の場合、いま海運局長が言われました輸銀の資金というものの問題が出てくるということでありますが、ただその問題につきましても私は一つ明らかにしておきたいと思うのは、国際収支改善というものは、これは貿易収支と貿易外収支というものがあるわけです。しかしこれはあくまでも貿易収支が基本である、こう思うのであります。もちろん貿易外収支というものは国際収支に大きな影響がありますから、これも改善していかなければならぬことでありますけれども、そのためにこそ船腹の増強をして、そうして積み取り比率を上げようというのが今日進められておる施策であります。しかしそのために貿易収支にマイナスを与えるということは、私は国際収支改善立場からいってどうであろうかという気持ちがいたすのであります。この点につきましては今後十分お考えいただいて、十分ひとつそれらの点はこの法の運用にあたりましても考えていただかなければならぬ、かように考えておるのであります。その点につきまして、大臣、御所見がございましたらちょっと……。
  121. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私も全くさように考えます。現下の問題におきまして海運二法案をやり、いろいろないわゆる根本のなには、外貨の収支をよくしよう、日本の経済の安全をはかろうというのにほかなりませんから、直接外貨収支に非常な影響を持ついま内海委員の指摘されたようなことにつきましては、まず貿易中心考えていくということは当然だと思います。
  122. 内海清

    ○内海(清)委員 大体以上で終わりますが、最後に、私は、いずれにしましても本法の運用にあたりましては、かりそめにも船舶輸出という——国内船と競合するものは別でございますけれども船舶輸出の伸長を阻害するようなことがあっては相ならぬ、かように考えるのであります。この点について強く要望いたしまして、質問を終わります。
  123. 川野芳滿

    川野委員長 他に御質疑はございませんか。——他にないようでございますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  次会は来たる六月二日火曜日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十六分散会