○佐藤(光)
政府委員
臨時船舶建造調整法の一部を改正する
法律案の提案
理由につきましては、先般御
説明申し上げたとおりでありますが、なお補足的に現行
臨時船舶建造調整法の制定
理由とその
内容、並びに今回その存続期間を延長することの必要性等につきまして
説明させていただきます。
現行法は、昭和二十八年に制定されたものであります。すなわち、戦争によって崩壊したわが国の商船隊の再建のために戦後
多額の財政
資金及び市中
資金が投下されてきたのでありますが、昭和二十八年に至り当時の海運市況の悪化の状況にかんがみまして、財政
資金の融資比率の増大、市中融資に対する利子補給制度の確立等の強力な助成策が講じられることとなったのでありますが、これらの助成を真に効果的たらしめるため船舶の建造及び改造を許可にかからしめて、建造される船舶が国民経済の要請に適するよう調整することによって、わが国の外航商船隊の整備をはかることを目的として本法が制定されたのであります。
その後、本法は、昭和三十一年及び昭和三十五年において二回その有効期間を延長したのでありますが、これはわが国外航商船隊の再建整備並びに国際競争に耐え得る
企業基盤の確立が十分達成されない状況にありましたので、本法の調整機能を継続させる必要があったからであります。
次に、この法律の
内容について簡単に申し上げますと、まず、造船事業者が外航船舶を建造し、またはその重要な改造をいたします場合には、着工前に
運輸大臣の許可を受けなければならないこと、また、
運輸大臣は右の許可をいたします場合には、この法律に定める基準に従ってこれをなすことを要すること等を規定しております。
ここに許可の対象となる船舶とは、総トン数五百トン以上または長さ五十メートル以上の船舶で近海区域以遠に就航し得るもの、すなわち、外航に従事し得るものであります。これを船の種類別に申しますと、旅客一船、貨客船、貨物船、油送船等の一般商船のほか、貨物の運搬を主たる
業務とすることができる構造を有するもの、たとえば漁獲物運搬船等も含められております。
法律の定める許可の基準は第一に、その船舶の建造によってわが国の国際海運の健全な発展に支障を及ぼすおそれがないかどうか、第二に、その船舶を建造する造船事業者が、その船舶の、建造に必要な技術及び設備を有しているかどうかの二点であります。
以上が現行法の制定
理由とその
内容の概略でありますが、この法律に基づく許可の
実績は、昭和二十八年八月以降昨年十二月末までにおいて、建造一千九百四十三隻、二千二百五万総トン、改造七百二十六隻、四百七十二万総トンとなっておりまして、本法により国内向けの船舶につきましては、それが真に国民経済の要請に適合するよう、また輸出船につきましては、当該船舶の建造がわが国の国際海運の健全な発達に支障を及ぼさないよう調整する機能を発揮してまいったのであります。
さてひるがえって、わが国の海運を見まするに、外航船の船腹量は昨年十二月末現在におきまして、七百二十八万総トンと目ざましい復興ぶりを示しておりますが、開放経済体制の移行にかんがみまして、一そうわが国経済の自立と発展をはかる必要があり、その一環として外航船腹の
計画的増強と海運業の再建整備が緊急の課題とされております。そのため、昨年海運業の再建整備に関する臨時
措置法が制定されまして、五年間に、集約等の海運業側の合理化
努力と日本開発銀行の融資に対する利子の支払い猶予
措置によりまして、わが国海運業の自立体制の整備をはかることになっているのであります。
しかしながら、最近わが国造船業に対する輸出船の注文は飛躍的に増大しておりますので、輸出船と国内向け新造船との間に、建造船台等について競合関係を生ずるおそれが増大してきております。さらに、わが国貿易量の増大に伴って、長期積み荷保証のもとにわが国の貿易貨物を輸送しようとする輸出船がわが国造船業に対して発注され、これら船舶と国内船との間に競合関係を生ずるおそれも増大してきております。
したがいまして、わが国海運業の自立体制の整備を主眼として外航船腹の整備を促進いたしますためには、国内船と輸出船との競合関係を調整する機能を持つ本法の有効期間を、海運業の再建整備に要する期間に見合いまして、少なくとも四年間延長する必要があるのであります。
なお、現行法は、昭和四十年三月三十一日まで効力を有するものでありますが、その有効期間延長についてのこの法案を今期通常
国会に提出いたしますのは、造船の場合におきましては、着工の相当以前に契約が締結されるのが通例でありますので、昭和四十年四月以後に行なわれます船舶の建造につきまして、混乱を引き起こさせないためであります。
以上が、この
法律案を提案する
理由であります。
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