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1964-05-15 第46回国会 衆議院 運輸委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十五日(金曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君    理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君    理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君 理事 矢尾喜三郎君       木村 俊夫君    高橋清一郎君       高橋 禎一君    中馬 辰猪君       西村 英一君    長谷川 峻君       細田 吉藏君    井岡 大治君       勝澤 芳雄君    泊谷 裕夫君       野間千代三君    内海  清君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         内閣法制次長  高辻 正巳君         運輸政務次官  田邉 國男君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君         海上保安庁長官 今井 榮文君  委員外出席者         検     事         (刑事局総務課         長事務取扱)  伊藤 栄樹君         外務事務官         (アジア局北東         アジア課長)  前田 利一君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     石原 米彦君         日本国有鉄道参         与         (新幹線局総務         部長)     野村 慶昌君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨  げる行為の処罰に関する特例法案内閣提出第  一五三号)  海上保安に関する件(韓国警察艇による巡視船  ちく連行事件に関する問題)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  海上保安に関する件について調査を進めます。  この際、政府当局より発言を求められておりますのでこれを許します。田邊政務次官
  3. 田邉國男

    田邉政府委員 韓国警察艇による巡視船ちくご」連行事件につきまして御説明を申し上げたいと思います。  新聞テレビ等ですでに御承知のことと思いますが、十三日の午後李ライン海域において発生いたしました韓国警察艇による海上保安庁巡視船ちくご」連行事件について、ただいまお手元に資料を間もなく配付いたすわけでございますが、要約いたしまして御報告をいたします。  十三日午後零時五十五分ごろ、李ライン漁船保護の業務で韓国警備艇動静把握のために七発島灯台、これは韓国西岸大浦西方にある七発島という小さな島に設けられた灯台でありますが、その西方五海里付近におきまして漂泊中の巡視船ちくご」に、韓国木浦警察署所属警察艇ハンサン号、二十トン——通常漁船拿捕等を行なう海洋警察隊警備艇と異ります。——が、機銃二門を向けながら高速で接近接舷、おりから警察艇に同乗中の全羅南道警察局警備課長巡視船に乗り移ってきまして、「ちくご」は領海侵犯をしていると言いましたので、「ちくご」船長は、七発島から五海里の海上だから公海上であると主張しましたが、同課長は、一応話し合いのため、大黒山島へ入港するよう要請しました。「ちくご」船長がこれを拒否しましたところが、大黒山沖合いまで同行するよう要請を受けました。そこで、「ちくご」船長はこれを了承いたしまして、大黒山島沖まで同行、十四時四十五分大黒山北東一マイルの地点に到着しましたところ、十五時三十分NP六〇五号が接舷をいたしまして、「ちくご」に乗船中の警備課長が下船、かわって武装警官二名が移乗してきたのであります。その後話し合いを続行するために鎮里へ入港するよう重ねて要請がありました。十六時四十五分やむなく鎮里へ入港いたしました。  双方の主張対立点は、韓国側は、警備課長李ライン内を領海だと言い、わが方の巡視船は、当然のことながら、領海は三海里だと主張した点にあったわけであります。韓国側鎮里入港後、上部機関善後措置を協議したようであります。  海上保安庁事態を重視しまして、直ちに外務省厳重措置を依頼いたしました。同省は二度にわたって代表部抗議をしたわけでありますが、その後午後十時三十分警備課長鎮里警察署長巡視船船長のところにやってまいりまして、本件については地元警察にまかせられ、現地で解決せよとのことです、平和ライン韓国領海であります、日韓会談で問題になっているところで、一日も早く解決されるよう希望します、今後はこのように近寄らないようにしてもらいたい、こういうことでありました。これに対しまして、船長は、巡視船漁船保護目的でありまして、今後もこの方面に行動することがあるが、領海三海里を侵犯したりその他不法なことはしない、こう述べて会談を終わりました。十時四十五分鎮里を出港、門司に帰港したわけでございます。  会談にあたっての韓国側態度は終始非常に丁寧であったということです。  なお、韓国警察艇には、さきに申しました全羅南道警察局警備課長のほか、同局の局長、州地方検察庁検事長及び新聞記者四名が乗船大黒山付近視察途上であったということであります。  以上、概要を御報告申し上げました。     —————————————
  4. 川野芳滿

    川野委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  5. 久保三郎

    久保委員 一昨日の佐世保の海上保安部巡視船連行事件といいますか、その報告がありましたが、どうもふに落ちない点が二、三ございますので、時間もたくさん取っておりませんから要約してお尋ねをするわけですが、一つは、いまの報告では、一回は巡視船船長は移動することを拒否したという話であります。まず問題のとらえ方として、公海と認めておるわけであります。しかもこちらは公船でありますから、そういう観点からするならば、一回拒否したが、二回目に同行というか、そういうふうに移動すること自体が私はおかしいと思う。そういう指示のしかたをしているのかどうか。これはどうなんです。
  6. 今井榮文

    今井政府委員 私どもといたしましては、李ラインにおける漁船保護の基本的な考え方といたしまして、でき得る限り国際紛争を惹起しないというたてまえで、巡視船に対しては慎重に行動するように指示いたしております。
  7. 久保三郎

    久保委員 李ラインと言うが、李ライン日本政府は認めておるのですか。しかも、国際紛争と言うが、一方的に宣言したものに対して、公海上に宣言したものに対して、それを認めているから紛争云々ということばが出るのであります。紛争でも何でもないと私は思う。これはいかがですか。
  8. 今井榮文

    今井政府委員 私どもとして李ラインというものを認めておるというふうな点につきましては考えておりませんが、しかしながら実際問題といたしまして、私どもの基本的な立場というものは、やはり現実にいろいろな国際紛争を惹起しないで有効に漁船保護をするという立場に立っておるわけであります。
  9. 久保三郎

    久保委員 それならばその地点において、向こうの船が接舷したのでありましょうから、接舷するかどうかは別にして、その船同士のその地点においての話し合いを続行すべきであって、そういうふうに話し合いというものは持っていくのが当然じゃないですか。紛争を解決するなら、向こう主張とこちらの主張があるならば、そこで解決して話し合いがわかったということでなくちゃならぬと思う。そういうことはどうなんです。
  10. 今井榮文

    今井政府委員 先生のおっしゃるとおりだと思いますが、しかしながら私どもがわかっておる当時の状況からいたしまして、高速艇が武装しておって、洋上で、しかも巡視船の中において話し合いをいたしたわけでございますが、なかなか話し合いがつかないという状況で、おそらく船長としては自己の最良の判断というものによって一応同行を承諾したのではないかというふうに考えられます。現在「ちくご」は門司に向けて——本日の朝入港したはずでございますが、私どもとしては船長から当時の状況を十分聞いた上でさらに今後十分検討していきたい、かように考える次第であります。
  11. 久保三郎

    久保委員 巡視船——しかも巡視船でありますから、そこに他の国の公務員が乗船してくること自体がおかしいじゃないですか。その点はどうなのです。それは巡視船船長がどうぞお乗りくださいとでも言ったのですか。どうなのです。
  12. 今井榮文

    今井政府委員 当時の状況は必ずしも私どもはっきりいたしておりませんが、おそらく強制的に接舷して乗船してまいったものだろうと思います。したがいまして、その乗船を拒否するというためには、おそらく実力を行使するということであったのではないかというふうに感じられます。従来もそういうふうなケースが全然絶無ではないのでございまして、巡視船が追跡を受ける、あるいはまた向こう警備艇により銃砲撃を加えられる、あるいは臨検を受けるというふうなケースも、従来昭和二十七年以降三十八年までの間に約二十件ございます。その際にもわれわれとしてはでき得る限り現地で国際的にいろいろな紛争を起こさないというたてまえにおいて現実に処理をして、今日まで漁船保護目的を達してきておるわけであります。
  13. 久保三郎

    久保委員 いまの御説明だと、日本巡視船昭和二十七年以来数多く臨検を受けたというのですが、臨検を受けることは国際慣例なり国際法上、これは合法的ですか。妥当なんですか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいまの海洋法、それから成立した国際慣例から申しますと、非商業的な活動だけに従事する公船は、公海におきましては旗国以外の管轄権は全然及ばないということになっておりますし、まかり間違って領海の中におきましても、その指揮官の承諾がなければ、臨検その他の実力行使ができない、ただできることは、領海外に待避してもらいたいという要請をすることが沿岸国官憲ができること、そうようにわれわれは解釈いたしております。
  15. 久保三郎

    久保委員 いまの外務大臣お話、そのとおりだと私は思うのですが、そういう昭和二十七年以来何回もあったといういまのお話と、先ほどの政務次官報告で類推すれば、あなたの御報告では非常に丁寧に扱われたといわれるが、ちっとも丁寧じゃないのですね。これはしかも二十七年以来たくさんあった。ところが、いま新聞報道その他政府の動きもそうでありますが、日韓会談は中断いたしましたが、ごく最近これは再開ということで、韓国の新政権というか新内閣もできたというような話です。近く向こうの無任所の長官か何かが来て閣僚級会談に入ろうというさ中ですね。ちっとも丁寧じゃないです。しかも船長に脅迫——丁寧なんだから脅迫をしたのじゃないと思うのですね、そういうことばを使うならば。だからその巡視船船長がどういう態度をとったか、まだよくわからぬというお話ですが、丁寧ならば、少なくともそういう公船に乗り込ませること自体もおかしいのですね。断わる、こう言ったらいいのです。そこで話がつくかつかないか、つかない限りは本国に訓令なり何を求めて、そこでやる、筋を通す、そういうしつけというか、訓令というか、そういう指示が与えられていないことも一つじゃないですか。それはどうなんです。
  16. 今井榮文

    今井政府委員 その当時の状況の詳しい実際の雰囲気というものを私どもとしても船長から直接聞いた上で今後の措置を検討したいと思っておりますが、その当時の状況下において、どういうふうな雰囲気のもとにおいて、船長がそういう決意をしたかという点については、船長から当時の現実の模様を十分聞いた上で対策を立てていきたいと思います。
  17. 久保三郎

    久保委員 政務次官にお尋ねしますが、いまの保安庁長官お話ではまだ船長から詳細に聞いてないということです。その丁寧ということだけは聞いたのですか。いかがですか。
  18. 田邉國男

    田邉政府委員 私の表現がもし不穏当であれば取り消しますけれども、ただ従来のこの李ラインにおけるいろいろの漁船拿捕の経過を見ますと、韓国側警察警視艇と申しますか、そういう立場人たちの行動というものは非常に挑戦的であり、非常に挑発的である、そういうことから比較いたしますと今回の場合にはいともいんぎん、丁重にやったということでございまして、ただその比較論で申し上げておる、さようなことでございます。
  19. 久保三郎

    久保委員 この巡視船は、最初に船長が、いわゆる大黒山島へ入港する要請に対し、これは断わったのですね。ところが再びそういう要請があったので、こう書いてあるが、この文面どおりだとするならば、これはどうかしていると思うのです。船長がね、これは丁寧ではなくて、これは武力によって脅迫されたかどうかという問題ですね。それでしかたなくでしょう、このとおり私が善意に解釈すれば。それで大黒山沖合いまで行った。そうしたならばNP六〇五号が接舷してきて、さらに今度は鎮里へ入港する、こういうふうに引き回されているんですね。ちっとも丁寧ではない。そこでこれは外務大臣にお尋ねしますが、先ほどの御答弁のとおり、公海において、しかも公船他国官憲から臨検を受けたり、あるいは強制的に乗船されたり、強制的に連行されたりするということは、これは国際法上、国際慣例上、異例なことだろうと思いますが、そうでしょうね。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございます。
  21. 久保三郎

    久保委員 そこで、この異例なことに対して外務省というか、日本国政府としてはいかなる措置をおとりになりましたか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 とりあえずの措置といたしましては、「ちくご」が早く釈放されることを求めなければなりませんので、一昨晩二回にわたって要請いたしました結果、ともかく十時四十分釈放されたのでございますが、きのうの日韓会談におきまして、当方から、この段階でこういうことが行なわれたということの韓国政府側の意図は一体何かということを尋ねましたところ、先方答えは、韓国本土に接近した海域日本漁船集団漁労が目に余るものがあります、したがって現地官憲としてはこのような措置をとらざるを得なかったものと想像します、という答えでございました。われわれといたしましては、久保さんが御指摘のように異例なことでございまするし、明らかに国際法国際慣例にまっこうから違反しておる穏やかでない事件でございますので、いま海上保安庁長官から申し上げましたように、「ちくご」が帰りまして、船長以下から十分の正確なデータをちょうだいし、一面代表部を通じて韓国側事情調査を依頼してございますから、これらを取り寄せてから政府としてこの事件についての態度をきめて韓国側に申し出るつもりでございます。
  23. 久保三郎

    久保委員 いまのお話だと、韓国側言い分は、韓国沿岸近辺日本漁船がたくさん来ているので、そういうことからやったんだろう、こういうようなきのうの言い分だそうでありますが、これは漁船じゃなくて巡視船であります。巡視船漁船ではないのでありますから、そういう言い分は通らぬと思うんですね。それが一つと、もう一つ韓国側事情も調べてもらって、当方事情も調べると、こうおっしゃるけれども、事実行為としてはもう実際に起こっておるわけですね。いかなる事情であるかもしれぬが、公海上で公船他国によって侵犯されたということでありますから、これはもう何ら詳細なことをお調べになる必要はないほど明々白々なる事実だと思うんですね。こういう事実行為がありながら、一ぺんも抗議の申し入れはされておらないようですね。いかがです。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 抗議は一昨晩以来続けてやっておるわけでございますが、あなたが御指摘のようにこれは非常に異例な事件で、考えようによっては非常に重大な事件なんです。したがって私どもはこれを処理する場合に、単なる情報によってそれを基礎にしてやるということは軽率だと思うのでございまして、巡視船が帰りまして責任者から十分の事情調査究明し、韓国側事情も十分究明した上で適正な措置を講ずるというのが、私は正しい態度だといま考えております。
  25. 久保三郎

    久保委員 詳細に、銃を向けられたか、あるいは発砲があったかなかったか、そういうようなことはこの報告には出ておりません。しかしこれは、政府としてこの国会にいま報告になった点でありますから、これは事実だと思うのですね。新聞や何かの問題ではなくて、政府自体がこの国会に向かって御報告なさったんですから。この事実に対してどう思うかというんです。先ほど来のお話だと、公海でこういう公船がやられたのだということでありますから、これは国際法国際慣例も無視されたものだということなら、その理由に基づいて適切な措置をてきぱきととるのが当然ではなかろうかと思うのです。その過程については詳細に取り調べをしなければわからぬ、そうでなければ手配ができないという問題もあるかもわかりませんね。損害があったとすればその損害はどうするかという問題がありますね。しかしそれはあとの問題です。大綱としては、公海において公船が侵犯されたという事実に対して、それは即刻措置をとるのがほんとうじゃないでしょうか。国民感情からいってもおかしいじゃないかと思うのですが、どうです。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、御指摘を待つまでもなく、私どものほうは口頭で再三抗議をしてまいっておるわけでございます。私の申し上げるのは、正式の文書で、口上書をもって処理いたしますにつきましては、精細に事態を究明し、確かめた上でやりたいと考えておることであります。
  27. 久保三郎

    久保委員 口上書をもって正式に措置をするというお話ですが、もちろん正式には口上書をもって申し述べるということでありましょう。これはこれでいいと思うのです。しかしその態度について申し上げたいんですが、かかる事件はいままでも二十件あったそうであります。過去においてそれぞれ措置をとられたと思うのでありますが、いま非常に大事な時期だと思うのですね。いわゆる日韓会談にしても引き続きやるということでありますから、そういうさ中において、少なくとも国際法国際慣例から見ても不当なことをやられて、はたして友好裏会談が進められるかどうかの問題が一つあります。でありますから、まず第一に、それじゃ口上書をもって抗議なり何なりをするのでありましょうが、いままでかかる事件に対しては、国際慣例上どういう方法がありますか。陳謝を求めるとか、いろいろありますね。そういう方法は、どういう方法をおとりになりますか、これが事実だとすれば。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申しましたように、事態を精細に究明の上、どのような口上書にいたしますか、そして先方に対してどういう態度を求めますか、これを慎重に考え中であります。
  29. 久保三郎

    久保委員 時間がありませんから、外務大臣外務委員会のほうで約束の時間で呼びに来ていますから、もう一つだけあなたにお伺いしたいと思います。  かような事件を起こしながらも、日韓会談というのは進められるんですか。国民感情としては、少なくともかかる事件の結末がつかない限りは、納得しない限りは、日韓交渉がコースとしていいか悪いかは別として、進めるべきでないというのが大半の国民考えだと思うのですが、いかがでしょう。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓交渉が微妙な段階にあるときに起こりました事件として、非常に私は不幸だと思うのでございます。仰せのように、われわれが日韓会談を進めてまいる場合に、こういう事件が出来してまいるということは、全く戸惑わざるを得ないわけでございます。先ほど申しましたように、精細に事態を究明いたしまして、いま御指摘のようなもろもろの点も十分考慮に入れまして、日本政府といたしまして適正な措置をとってまいるつもりでございます。そして、日韓交渉は、仰せのようにこういった問題でもやもやしておるということではいけませんので、事態をはっきりさせておかなければいけないものと思っております。
  31. 久保三郎

    久保委員 続けて、この報告をお聞きになったと思うのでありますが、向こう警察署長でありますか、わかりませんが、最後に言ったことばですね。船長に言ったことばは、日韓会談中でもあり、今後はなるべく彼らが言うところの領海内に立ち入らないように希望する、こういう話でありますね。日韓会談中であるから、微妙な段階であるからと、あなたもそうおっしゃっていますし、向こうもそう言っているんですね。そうすると、これはやはり新聞報道などで一応推測しているように、彼らは、平和ラインというか、李ラインそのものの中に、将来にわたって自分たち領海だということで主張しようという魂胆がありはしないか。あるいはそういうことによって韓国内のいわゆる国民感情というか、そういうものもひとつ考えていやしないか。こういうことが前提で日韓会談を進めるということについては、私はこれはたいへんなことだと思うのです。向こう署長が出先の官憲として、日韓会談中でもあるから、今後はなるべく入ってきちゃ困る、こういうふうに希望しているんです。こういうことも十分考えていかなければならぬと思うのですがね。あなたはどうお考えですか。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 平和ラインといい、李ラインというものは、われわれは認めていないわけでございます。われわれが関心を持ち、日韓間でやり遂げなければならぬ仕事だと思っておりますのは、あの海域における漁業安全操業を確保するということでございまして、これが長きにわたって両国漁業関係者が最大限の利得を安定して得られるような環境をどのようにつくるか、安心して操業ができる環境をどのようにして整備するかということを鋭意究明いたしておるわけでございまして、李ラインとか平和ラインとかいうことに全く関係なく考えておるわけでございます。そういうものはできないということでございますれば、漁業協定というのはわれわれが考えておるようなことができないわけなんでございます。あなたが言われるように土台がくずれるわけでございまして、私はまさかそんなことはあるまいと考えております。
  33. 久保三郎

    久保委員 いま外務大臣がおっしゃるように、これは大体土台が、くずれておりますよ。こういうものを向こうとしても、李ライン内に入らないようにというようなことをやっているのは、向こう政情にしてもたいへんな問題があると私は思う。だからこの辺で日韓会談はおやめになって、静かに二十件に及ぶところのこういう事件を片づけて、静かに向こう政情を見て進めるべきだと私は思うのです。時間がありませんからそれだけにいたします。
  34. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 関連して一点だけ。——いま久保委員からるる質問がございましたが、一点だけお伺いしたいと思うのです。きょう、「海上保安の現況」というものを海上保安庁から配付されましたが、その報告書の中に、昨年の六月に釜山の港外の公海上において「のしろ」という巡視船が、このときには機銃あるいは小銃で威嚇を受けて停船を命じられ、臨検まがい尋問を受けた、そのときに日本政府は、これらの不法な拿捕臨検に厳重に抗議するとともに、それが日韓会談の円満な進展をはかる上で重大な障害となることを重ねて警告した、こういう報告になっておりますが、この警告に対して韓国から日本政府に対して何か回答めいたものがあったか。また、それから行なわれておりまする日韓会談等におきましても、そういう不法な行為に対してこちらの出した警告について論議されたようなことがあったがどうかということを一点伺っておきたい。昨年の六月です。巡視船「のしろ」です。このときには、公海上で機銃あるいは小銃で威嚇されて停船を命じられた。そうして尋問を受けている。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓交渉が妥結いたしておりませんし、日韓の国交は正常化いたしておりませんけれども、現に朝鮮海域におきましてはしょっちゅうそういう拿捕事件が起こること、これは両国にとって非常に不幸だと私は思うのでございまして、交渉中といえども正常化前といえども、できるだけあの海域が平穏であることを希求いたしまして、両国がお互いに理解し合って紛争が起こらないようにこれつとめてまいりました。幸いにいたしまして、去年からことしにかけまして拿捕件数が非常に減ってまいりまして、比較的平穏に推移しておったやさきにこういう事件が起こりましたことを実は非常に心を痛めておる次第でございます。いま矢尾さんの御質問の事件が起こりまして以来からずっと拿捕がありませんで、ことしの二月の六日でございましたか、一隻ありまして、これもすぐ即日返してもらったと記憶いたしておりますが、先方も非常に自制されておったということは、客観的事実が立証しておると思うのでございます。今度の事件が、一体これは偶発的な単なるあやまちなのか、それとも意図的なものなのか、それからこれは現地官憲のちょっと飛びはねた行動であったのか、そのあたりをよく究明してみないとわからぬと思うのでございますけれども、ここしばらく朝鮮海域は幸いに平穏に推移しておったのであります。この状況で、もう紛争を起こそうと思ってもからだが動かぬような状態にありたいものだと思って一生懸命にやってきたわけでございます。幸いにそういう雰囲気がだんだん出てきておったやさきでございます。いまのお答えといたしましては、そのように客観的事実はだんだんとあの海域は平和になってきておるということでおくみとりいただきたいと思います。
  36. 久保三郎

    久保委員 もう一つ伺っておきたい。  いま外務大臣時間でまいりましたが、矢尾先生のいまの質問で、去年の巡視船臨検事件というのは政府として韓国から何か回答を受け取って、たとえば陳謝の意を表したとか謝罪をさせたとかいうことはあるのですか。
  37. 今井榮文

    今井政府委員 昨年の「のしろ」の事件につきましては現在手元に資料がございますが、韓国側がその当時どういう回答を外務省に出したかという点については現在手元に資料がございません。しかし従来私どもは現在のような韓国態度と非常に異なった返事があったというふうには記憶いたしておりません。
  38. 久保三郎

    久保委員 この問題はいずれまた席をあらためてお伺いすることにいたします。いままでの二十件に及ぶところの拿捕事件の事後処理、これは外務省と協議の上資料を出していただきたいと思います。      ————◇—————
  39. 川野芳滿

    川野委員長 次に東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法案を議題とし審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  40. 久保三郎

    久保委員 前回に引き続き申し上げるのでありますが、前回担当の石原常務理事では御答弁ができなかったことがたしか一つあったと思うのです。それでお尋ねするのは、先般報道されたところによりますれば、東海道新幹線の高架下の貸し付けの問題ですが、これは行政管理庁からも運輸省あるいは国鉄に対してそれぞれ勧告というか、そういうことがあったと思うのです。その中ですでにもう貸し付けをしたということでありますが、貸し付けしたものがあるのかどうか、あるいはこの高架下の利用の方法はどういう方針でやられているのか、あるいは行政管理庁が言うように別途の会社をつくってそこへ下請けさせるというような考えでおられるのかどうか、いかがですか。
  41. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私から御答弁申し上げます。  新幹線の高架下の貸し付けのことでございますが、その御答弁に入ります前にちょっと概況だけ申し上げさせていただきます。  新幹線の線路の延長五百十五キロメートルのうちいわゆる高架橋の部分は約百四キロメートルございます。そのうちに駅もございますし、また通路等もございますので、それを除きますと、いわゆる高架下として利用できる部分は全体で約八十キロメートルというふうに現在推定いたしております。現在までの高架下の処理の状況でございますが、いままでの用地の買収あるいは建物を移転する等の際に相手方の地主あるいは建物の所有者等といろいろな折衝の経過におきまして、高架橋ができた場合にはそこを貸すという約束をしたものがございます。この約束の場合には正式に書面でもって約束したものもございますれば、あるいは第三者立ち会いの上で約束を明確にしたもの等もございます。これが約全体で十キロメートルに及ぶものというふうに推定をされます。件数といたしまして百八十七件でございます。すなわちこれは主として高架橋のできる部分に用地を持っておった人、あるいは高架橋ができることによりまして商売ができなくなったというようなことで、高架橋ができるまでは減収補償をしたり、あるいは差額の補償をしたり、休業補償をしたり、そういう補償をしながら高架橋のできるのを待っておったというものが大部分で、それがいま申しましたとおり百八十七件、そのほかに具体的事例といたしまして二件だけ特別な事例がございます。これは行政管理庁の過般の勧告にも入っておりましたが、名古屋と羽島でございます。これは私のほうの原案では、いわゆる土盛りの高架橋、土盛りの堰堤のつもりで計画いたしておりましたところが、地元の名古屋市、羽島市の有志の方々、これはもちろん市当局も入っておりますが、土盛りの堰堤では将来の市の発展に非常に大きな支障になるということで、工事費を負担してもいいからぜひコンクリートの高架橋にしてほしい、こういう御要望があったわけでございます。それが名古屋におきまして約一・三キロ、羽島におきまして百六十メートル、その部分だけは地元の方々から工事費を負担していただきまして、そして高架橋にし、できた後にはその方々にお貸しするという約束で、そのかわり土盛りを高架橋に改めたというところが二件ございます。これはすでに名古屋におきましても羽島におきましても会社ができまして、それに約束どおり貸し付けをいたしております。そのほかに百八十七件のうちですでに十件だけ、長さにおきまして約五百四十メートルを相手方にお貸ししたものがございます。これは相手方地主あるいは建物の所有者とのやはり約束におきまして、高架橋が完成したらすぐお貸しするという約束のもとにできましたものを貸したわけでございまして、先ほど申しましたとおり、主としてこれはその期間中、商店の休業補償あるいは減収補償等を現実に私のほうでやっておったものでございまして、これにつきましては高架橋ができるに従いましてその部分だけお約束どおりお貸しした、これが百八十七件中十件でございます。そのほかにいままでの御説明と違いますのは、全然新規の、すなわち新しく高架橋の下をぜひ貸してほしいという御要請のものが全体で二百五十二件ございます。この二百五十二件の中には、先ほど申しましたとおり書面あるいは第三者立ち会いのもとに正式にお約束したことでなくて、ある程度の口約束というものも入っておったようでございます。たまたま地主あるいは家屋の所有者と折衝する際に、それは高架橋ができたら極力お貸しするようにいたしますというような口頭の約束をしたものもあるようでありますし、二百五十二件のお申し出の方々の最近におけるお話を伺いますと、皆さんすべて約束したんだというようなことをおっしゃる方もおられます。これは一応先ほどのように書面なり明確な第三者の立ち会いがございませんので、いままだ全然処理いたしておりません。これが現在までにおける新幹線の高架橋の概要でございますが、このいま御説明申し上げました中には、いわゆる駅の部分の純粋の構内営業に属するものは含めておりません。これはまた別な問題になるわけであります。こういう順序で大体いままでやっております。  しからば今後の方針でございますが、先ほど申しました百八十七件のすでにいわゆる法律上私のほうでお約束して貸すべき義務のあるものにつきましては、これは約束どおり履行をしなければならないと考えております。その他の新規の貸し付け出願のその二百五十二件につきましては、業種も多種多様でございます。また要求される面積も多種多様でございますし、中には公共団体もあれば、個人もある、会社もある。いろいろ種別がございます。これをどういうふうにいたしまして私のほうでお貸しするかということは、非常なむずかしい問題ではありますし、処理を一たん誤りますと、いろいろ後々に問題を残す問題でございます。たまたま先ほど先生の御指摘のとおり、去る四月の三十日に行政管理庁から第七次の私のほうの国鉄の行政監察の結果の御勧告がございました。その中にいまの新幹線の高架下の貸し付け問題についての問題に触れておられるわけでございます。その中にはいままで——実はたいへん申しわけないことでございますが、新幹線でなくて、現在線の高架下の問題につきましては、すでに昭和二十八年以来いろいろあまり感心しない問題が起こりまして、ことに昭和三十二年におきましては衆議院の決算委員会の御決議等もございまして、その後昭和三十三年に私のほうでは民間の有識者の方々によって高架下管理刷新委員会というものをつくりまして、現在それは民衆駅等運営委員会に合併になっておりますが、いずれにいたしましても高架下管理刷新委員会というものをつくりまして、従来の国鉄の管理のしかたの欠点、欠陥等を徹底的に検討、指摘されまして、今後こういうふうにやるべきだというような御指示もいただいております。今後の問題といたしましては、その高架下管理刷新委員会の答申あるいはただいまの行政管理庁の勧告並びに昭和三十二年の衆議院の決算委員会における御決議の趣旨を体しまして、具体的にいろいろやり方を考えてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  42. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、いままでに貸し付け契約のできたものは、新幹線建設に伴って特殊な関係があって、その当時約束されたものだけである、新規の二百五十二件というものについては、ただいまお話があったようなそれぞれの勧告なり決議に基づいて、そういう趣旨を体してこれから方針をきめておやりになる、こういうことですね。——わかりました。いずれにしてもこの問題は、高架下の利用などは特に利用価値も非常に多角的に利用できるところであるし、片方を言うならば、この国鉄という大世帯でありますから、個人の貸借関係でないので、ともすればルーズになりがちだ、あるいはこの中でもどうもおかしいじゃないかというような貸し付けの形も出てきたということは事実でありますので、十分これは注意して、だれが見てもふしぎのない、妥当であるというところの方針を出して、きちっとなさることが肝要かと考えます。そこで、時間もありませんので次に移りますが、この前の委員会でもお尋ねしたのでありますが、きょうは法務省からも見えておりますから、前回答弁が残っているもののもう一つとしては、かようないま提案されているような法律をつくった場合、その実効というものはどういうふうに考えておるのかということなんです。これをどういうふうに考えておりますか。かかる法律によって、言うならば危険防止ということでありまするが、そういうものが実効が上がっていくのかどうか、いかがですか。
  43. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 ただいまお尋ねの関係でございますが、考えてみますと罰則というものの一般予防的効果はどうかということに帰するのじゃないかと存じます。もちろん一定の政策あるいは施策を実行いたします場合に、これに対して妨げとなる行為について罰則を設ける、ただ設けただけではその施策の円滑を期し得ないことはもちろんでございますが、ただいま御審議いただいております新幹線の法案を例にとって申し上げますと、国鉄御当局としましてもいろいろ列車運行の安全のための設備をされるでありましょう。しかしながら、ことさらこの設備の機能をそこなうとか損傷する行為、あるいは損壊する行為、こういうことをいたしまする者に対しましては、罰則を設けて一般予防的効果を期する。そういたしましてその罰則規定の適正な執行をいたしまする場合には、さような行為がかりに偶発的に起こりましても、その後さらに発生することを防遏できるというふうに考えるわけでございます。一例をあげますと、戦後覚せい剤などというものがたいへんびまんいたしましたときに、覚せい剤取締法という法律が制定されまして、その罰則の適正な執行ということと行政指導とが相まちまして、覚せい剤の密造とか販売というような事例はほとんどあとを断ってまいってきておるわけでございます。これは本件に適切な例であるかどうかは存じませんけれども、罰則を設けて一般予防を期するということの効果は十分あるもの、かように考えておる次第でございます。
  44. 久保三郎

    久保委員 その罰則の効果については、御説明ではよくわかりませんです。実際においてどの程度効果があるかということは、これははかり知れないだろうと思うのです。とにかく立ち入ってはいけないところに立ち入ったのだから罰則をつけようというように、単純に理解する以外に実際は方法がないだろうと思うのです。それ以外にございますか。私はこういう刑罰的なものにはあまり知識がございませんのでお尋ねしているのですが、どうなんですか。いわゆる予防的刑罰措置というのはどの程度にものの把握として考えているのか。予防的ですね。そうですね。
  45. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 私の御説明が舌足らずであったかもしれませんが、一般に刑罰を定めるということは、すなわち一般的なそのような行為の発生を予防する、そういう一般的な予防的効果があるということを申し上げたわけでございまして、これはすべての刑罰規定に共通する問題であろう、かように考えます。
  46. 久保三郎

    久保委員 それじゃお尋ねしますが、刑罰規定があれば、やろうといういわゆる犯罪行為がなくなるか、そういう犯罪行為も刑罰規定があるからやらぬというふうな人間がたくさん世の中にいるんでしょうかね。
  47. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 刑罰規定があるからさような悪い行為をしない、刑罰規定がなければそういうことをするという人間がたくさんいるかどうか、この点はまことにむずかしい問題で、私どもも確たる資料をもってお答えするわけにはまいりませんのでございますが、たとえばわが国に刑法なら刑法というものがございません場合に、あるいは軽犯罪法なら軽犯罪法というものがございません場合に、はたしてすべての国民が現在の刑法で禁ぜられておる行為あるいは軽犯罪法で禁ぜられておる行為をしないかどうか、そういう規定があるから規定に触れないようにしておるのか、そうでないのか、これはいろいろ見方があると存じますが、一般的な常識としてはやはり刑罰というものがあればそのような行為をすることを予防する、こういろ効果があるというふうに一般的に言われておるのではないか、かように考えます。
  48. 久保三郎

    久保委員 一般的にそう言われておりますね。予防的効果があるからということは一般的に言われているから、やはり刑罰規定はどんどんつくらなければいかぬというような思想になりましょうか。
  49. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 刑罰に一般予防的効果があるからどんどん刑罰をつくらなければならぬということにはならないと存ずるわけでございまして、他に適切な方法があります場合には、もちろんそれによることは当然でございますし、さらに、そういう違法行為、あるいは言い方を変えますと、よくない行為が侵しますところの保護法益と申しますか、それによって犯される利益の大いさに応じて刑罰というものは定まってくるべきであろうと存ずるわけでございます。悪い行為と申しましても、それによって犯される利益が小さい場合、あるいは多少小さくなくても他の施策で十分まかなえる、かような場合には当然罰則の存在は必要としないわけでございますが、御審議いただいておりますような関係におきましては、やはりある程度刑罰の制裁をもって一般予防的な効果を期する必要がある、かように考えておる次第でございます。
  50. 久保三郎

    久保委員 一つの例でありますが、殺人罪というのが刑法にございますね。人を殺したら無期懲役なり死刑ということであります。これはわかりますね。この規定があるから殺人をしないかということになると、規定がなくても殺人はやらぬですね。この刑法がなければ人を殺すという人がふえるかというと、ふえないですね。そうですね、常識的に。そうでしょう。これはどういうふうに考えますか。
  51. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 ただいまのお尋ねは、私の先ほど申し上げました設例が至らなかったための御疑問かと思いますが、一般に刑法に規定してありますような罰則は、国民の道義観念というものからおのずから出てまいりますような悪い行為、これをとって罰則にかけておるわけでございますので、国民の道義観念というものが存在します限りは、やはり罰則がはずれましても、そうむやみと殺人が起こるということではなかろうと存じます。
  52. 久保三郎

    久保委員 ただ、人を殺した場合には、当然報いがある。いわゆる応報といいますか、これは当然だろうと思います。この殺人罪のいわゆる刑法の規定と、この新幹線特例法の罰則とは違うですね。そういう意味から申しますと、そうですね。これはどうですか。その点からも……。
  53. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 御趣旨を必ずしも正確に把握しておらないかもしれませんが、何と申しますか、新幹線の法案に盛られました罰則と申しますのは、行政上の目的から罰則を設ける色彩が相当強くなっております。これに反しまして、刑法の殺人罪は、もっぱら国民の道義的な感情あるいは観念というものに基礎を置きましてできた規定でございますので、若干のニュアンスの違いはもちろんあると思います。
  54. 久保三郎

    久保委員 そこでお尋ねするのですが、殺人の場合は、刑法の規定がなくちゃいかぬと思うのです。これはだれもわかると思うのです。しかし、この新幹線の場合は、これはなくてもいいという理論もありますね。こういうものはなくても……   〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕 というのは、国家であれ、あるいは私企業であれ、私であれ、いずれにしても、たとえばこの新幹線のような列車を走らせるという企業の責任上から言うならば、線路に入らぬような措置をとる、あるいは列車自動集中制御装置をみだりに操作させないような方法をとって万全を期する、これがこの企業に与えられたいわゆる責任だと思うのです。その責任さえとっていれば、そういう心配はない。それから、殺人罪とはだいぶ違うのでありますから、これによって予防的な効果をどれほど上げ得るかといっても、これはちょっとどうかと思うのです。むしろ安全性ということから来ているのでしょう。麻薬のお話が出ましたが、麻薬の問題と国鉄の新幹線の安全性とは別ですね。たとえば列車の転覆や何かの場合は、これは刑法にあるとおりです。刑法の規定で、列車を転覆させれば懲役なり何なり、これは当然あると思います。ところが、みだりに操作したり、あるいは損壊したり、あるいは機能をそこなうおそれがある、あるいは線路にみだりに立ち入ったというような条項は、その性格とはだいぶ違うと思うのです。これは法制局にお尋ねしたほうがいいですか。もちろんあなたのほうは立案者だから、妥当なお話をしましょうから……。
  55. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほどからいろいろお話がございましたが、おっしゃいますように、法律、規則の特質性というものは、強要性にあるということはお疑いにならぬと思いますが、その強要性をいかなる担保によって保証するか、ものによっては社会的制裁なりあるいは国権の発動に対する服従の意思とか、そういうものによって十分果たされているものもありましょうが、特に人々の行為の順守を妨げるものであれば、中にはやはり刑罰的制裁をもって臨んでその順守を期する必要のあるものもあるわけでありまして、ただいままで法務省から例にあげられたものは、いずれもそういうものだろうと思います。ただいま問題になりますものも、おっしゃいますように、安全施設を十分整えてそういう事態が皆無ということになれば、あるいはおっしゃるようになるかもしれません。しかし、そういう施設を講じてもなおその安全性が阻害されるということが考えられます場合には、それを放置しておいてよろしいか、あるいはなお安全を期するために刑罰的制裁をもって順守を期するような措置を講ずるのがよろしいのかということに相なるわけでございますが、私ども立案に参画した者といたしましては、やはりこの法律案にありますようなものにつきましては、刑罰的制裁を科することによってその順守を期するほうがよろしいという判断に立って立案をいたしたわけでございます。むろん、おっしゃるように、法律というものは、刑罰的制裁があるからといってその順守の全きを期せる、違反者がなくなるという保障はございません。ございませんが、違反をした場合には刑罰的制裁をもって臨まれるのだというような措置を講ずることによって順守を期する効果というもの、これは否定することができないだろう。そこが実はねらいであるといえばねらいであるわけでございます。
  56. 久保三郎

    久保委員 それはそれぞれ人によって考えが違うと思うのです。お出しになった法制局としては、予防的な効果をねらうということでありますが、予防的効果というのは実際わからぬですね。先ほど出した殺人罪などは、これは予防的な法律ではないですね。そういう効果はねらっていませんね。むしろ応報主義に基づく刑罰でしょうね。
  57. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 刑罰の本質等につきましては、御存じのように、アカデミックな議論としてはいろいろございます。また、刑罰の順守を担保する法規の内容といたしましては、中身が技術的なものもあるし、あるいは道徳的なものもあるし、いろいろございます。ただいまおあげになりましたような刑法諸規定の事項のごときは、むしろ道徳規範というようなものを担保するためのものであるという意味において、確かに違うと思います。しかし、法の本質といたしまして、刑罰をもってなぜ順守を期するかというようなことにつきましては、相通ずるところがございますわけでして、なるほど、おっしゃいますように、道徳規範あるいは自律規範というような、中身は違いますけれども、大体私が先ほど申し上げたことに変わりはないと思います。
  58. 久保三郎

    久保委員 これはお互いのものの考え方でありますから、ある程度平行線ということになると思います。ただ問題は、法律をやたらにつくって、その法律は、しかも、たとえば東海道新幹線の安全を担保するというか、ごく一部補完するところの予防的効果をねらって、ごく一部を補完できるかどうかわからぬが、まあ補完するだろうという期待に基づいて出すわけです。ところが一たん出た法律というものは、そのときの情勢その他によってだいぶ違ってくる。こういう法律案については、慎重に扱わざるを得ないということが一つございます。慎重にお扱いになったと思うのですが、だめを押すようですが、いかがですか。
  59. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 法律案の中で、刑罰の法規に関する部分につきましては、ただいま見えております法務省の刑事局長と運輸省と私どものほうと非常に慎重な配慮をいたしているつもりでございます。特に刑罰法規は、非常に酷なる刑罰法規ということになって、むしろ違反者が非常に多いということになりますと、法の権威、刑罰の権威ということにも関連が出てまいりますので、みだりに刑罰法規を設けるべきではないということはお説のとおりだと思います。しかし、この法案につきまして、いまのような措置を講じましたことにつきましては、繰り返して申しませんが、十分に理由があるという考えで立案をいたしたわけでございます。相対論といたしまして、刑罰法規をみだりに設けるべきでないということにつきましては、私どもも同じような考えを持つ部面がございます。
  60. 久保三郎

    久保委員 そこでもう一つお伺いしたいのは、この法案はあなたのおっしゃることを是認しても片手落ちじゃないか。企業の責任というものはどこにも書いてないのですね。企業の責任、これは安全を確保するための予防的効果をねらった補完的な法律だ、こういうふうにとっていいわけですね。あなたのお説でこれはいいとしましても、それじゃ企業の責任というのはどこに書いてあるか、企業が安全を確保するという責任はちっとも書いてないじゃないか。この責任はどういうふうに考えておるのですか。こういう法律を出すのならば、少なくとも汽車を動かす企業の責任がこの法律の中に入らなければいかぬですね。いかがですか。
  61. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまもお話がございましたが、この法律案は、東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法案ということになっておりまして、そちらの関係からいろんな規定が出ておるわけでございますが、おっしゃいますように、企業の責任というものは、企業が特に公共的企業であります以上は、それに伴って責任が生ずることは当然のことでございます。それは法律上のいろいろな規定にあると思いますけれども、その一つとして鉄道営業法の一条あたりに、法としてはあるわけでございます。いずれにしましてもいま御指摘の点につきましては、また別個の問題としてこの法律案のねらいとしているところではないかということを申し上げましたが、その点につきましては、いま申しましたように、鉄道営業法その他の規定もございますし、また全般的に企業が、特に公共的企業として存立します以上は、そういうところの責任が伴うことは当然のことだと思います。
  62. 久保三郎

    久保委員 どうもあなたの御説には納得しがたいのでありますが、このタイトルでやるから、安全を妨げる行為の処罰に関する特例法案だから、その問題は別だとおっしゃいました一点がありましたが、これはちっとも別じゃない。安全を妨げる行為というのは、企業主体から出るかもわからぬ。たとえば二百キロを出して走らせるのですから、それに相応したいわゆる安全装置をつけることは企業の責任であります。これを怠るならば、妨げる行為でありますから、処罰されるのは当然じゃないですか、いかがですか。  それからもう一点、あなたの御所論の中で、営業法その他では、安全を怠った場合、企業体に対して処罰規定はございますか。
  63. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 営業法の例を出しましたが、私ども承知する限り、企業責任者が企業を怠った場合どうだというような規定はないと思います。しかし列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例、この法律案の中にあります諸種の罰則、これはむろん何人に対してでもございますことは申し上げるまでもないことだと思います。
  64. 久保三郎

    久保委員 何人に対してもというが、これは企業の責任者もこれにひっかかりますか。
  65. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私が申し上げる趣旨は、実はこの法案に出ております構成の要件に該当するような人であれば、何人もというわけであります。
  66. 久保三郎

    久保委員 それはそうですね。私は企業体のことを言っておるのです。企業の責任に基づくところの安全を妨げる行為、これはあります。たとえば道路運送車両法ですかには、車両運行管理者を置けとか、あるいは整備をしろとか、あるいはそういうものを怠れば経営者自体も処罰を食うのですね。これは安全運行に対する経営の責任です。それはちっともないのですね。
  67. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 東海道新幹線の安全確保のためには、たとばえ車両の構造とかあるいは線路の構造あるいは各種の保安装置というものは、先ほど法制局から御答弁がございましたように、鉄道営業法あるいは建設規程、こういうものに基づきまして規定をしておるわけでございます。これは一般の私企業と違いまして、国有鉄道は政府関係機関でございますので、運輸省といたしましては、十分に指導監督できる立場にある機関でございますので、かりに建設規程あるいは営業法に罰則がなくても、政府としては国有鉄道を十分に指導監督し、安全確保につきましては担保できるというふうに考えておりますので、事実上の問題といたしましては、各種の安全対策につきましては、国有鉄道が責任を持って遂行できる。またかりに遺憾の点があれば、政府といたしましては十分に指導監督できるという立場にあるというふうに考えております。
  68. 久保三郎

    久保委員 運輸省のほうでは、私のほうの力で担保できる、こうおっしゃいますが、いままで起きた事故を幾つか拾ってみても、担保できなかったから事故が起きたのですね。たとえば鶴見の事故の原因は企業の責任かどうかわかりませんが、三河島の事故などは大体において安全性からいけば企業の責任ですよ。ああいうところに貨物線を入れて、安全側線に近い、さらに隣接いたしておるというところでありますから当然のこと。ああいう事故が起きたというのが今日の結論じゃないでしょうか。幾多小さい問題はありますが、そういうことを考えると、運輸大臣が監督しておるから心配ないと言うけれども、なるほど建設規程やその他規定もございます。しかしそういう建設規程は大綱において示しただけであって、こまかい安全性については何もきめていないでしょう。これは国鉄自体考えに基づいたことだけやっておるのですね。この間じゅうの御説明では、たとえば全線にわたって鉄さくをつくる、こういうお話がございました。まず法律で、線路内にみだりに入った者を処罰するという以前に、鉄さくをつくるのは企業の責任ですよ。ところが鉄さくがこわれた、子供がちょろちょろ入ったというようなときに、これはやはり一つの処罰の対象になる。子供もおとなも入りますよ。わからんで入ったとする。この場合は企業の責任です。だから企業の責任として、やはりこういうものは担保する必要がありはしないかというのが私の考えなのです。そのほうが先決だと思う。先ほども道路運送車両法を持ち出しましたが、それには全部出ているのです。詳細ではなくしても、企業の責任が明確になる条項があるのです。だから、そういう点は片手落ちじゃないか。最近幾多の事故が陸海空にわたって起きております。たとえば海難などは、漁船一つとってみても、これはたいへんな事故なのです。ところがこの海難に対して、それじゃ船主の責任というのが明確になったものがいままであるかというと、ない。これはみんなトップヘビーの積み方をして、無理な積み方をして沈没していく。船長の操船の誤りということがあるかもしれないが、操船の誤り以前に、そういう漁船の搭載のしかた、あるいは乾舷の設け方、いまそういうことの制裁規定も何もありません。事、国鉄だけじゃありませんが、少なくとも企業の責任というのを、安全に対してかかる処罰規定を設けるならば、うらはらとしてこれが設定さるべきがわれわれは今日の情勢においては必要だと思うのです。これは法律家に聞いたほうがいいですか。法制局次長どうですか。
  69. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いま久保委員仰せになりましたように、企業の責任者がその責任を果たすための措置を講ずべき一般的な責任を持っておることは当然のことでございます。それを担保する方法としましては、先ほど運輸省のほうからおっしゃいましたような措置がある。それに対して、企業に対しては相当な国としての監督方法があるので、その全きな運用を得ていけば、それで一応果たせるのだというのがただいまの運輸御当局の御見解のようであります。それにつきましても、たとえば道路運送車両法とか、そういうような例をお引きになりましたが、そういうものについて将来考える必要があるかどうか、その辺はただいまのところ私どもにはよくわかりかねますので、御答弁は申し上げかねますが、一般的な監督方法を十分に尽くしてやっていきたいというようなことでございます。
  70. 久保三郎

    久保委員 いまの法制局の高辻次長のお話では、どうも納得しがたいのです。ここはいままでの観念から言えば、あなたがおっしゃるとおりなのです。法律は、国民大衆に刑罰規定は押しつけるが、そのうらはらになるところの、いわゆる政府なり国家機関、あるいは企業体というか、そういうものの責任というのはあまり追及されないのです。事故が起きたときには国鉄総裁以下ここへ並べられて追及されます。ただそれだけの話です。運輸大臣もそのとおりですね。それを担保する何ものもないのです。国会答弁というものをみんな御存じでしょう。運輸大臣にしても、今後は十分監督して誤りなきを期したい、こういうお答えなんですね。それはちっとも担保にならぬですね。だから、結局大きな事故が起これば国鉄総裁がやめていくというのが、言うなれば刑罰の一種なんですね。そういうことで、やめていく者もやめさせるほうもいいのだろうかということです。鉄監局長どうですか、さっきの話で尽きますか。
  71. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 先ほど私がお答えしましたことを繰り返すことになりますが、鉄道営業法なりあるいは国有鉄道法におきまして、国鉄を十分監督する道はございます。運輸大臣は、公共の福祉の増進のために特に必要がある場合には国鉄に対して監督命令を出すことができますので、たとえば新幹線の安全確保対策等につきまして、政府が必要と認めた場合には監督命令を出し、これによって国鉄は十分に対策を講ずるものと考えております。  なお、そういうことは考えられませんが、かりに運輸省の命令に違背したというような場合には、日本国有鉄道法第五十五条によりまして罰金刑が科せられますので、日本国有鉄道法の法体系におきまして、政府の意思を十分に徹底させるという道は開けておるというふうに考えております。
  72. 久保三郎

    久保委員 たとえばある事件が裁判にかかったといたします。その場合、これは企業の責任だったという場合には、企業は処罰を食いますか。たとえば鉄道なり国鉄の場合、そういう法律はございますか。
  73. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 いま久保先生の御設問のような場合に、法人である日本国有鉄道が処罰されるということはないと考えます。
  74. 久保三郎

    久保委員 そういうあり方ではいけないと私は思っておるのです。いままでの観念からいって、国家に責任があれば国家——しかもこれは大衆輸送ですからな。だからこれはいずれにしても、うらはらにそういうものがなければ片手落ちです。特に安全の問題についてはそうだと私は思うのです。   〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕 これはどうも説明がなかなか徹底しないようでありまするが、次の問題をお尋ねします。  これは刑事局にお尋ねしたほうがいいと思いますが、東海道新幹線なるがゆえに営業法その他刑法にもあるようでありますが、営業法と対比した場合に刑の量が多いのですね。刑の量が多いというのはやはり安全性を担保するために刑を多くしたのかどうか。
  75. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 鉄道営業法の罰則に比しまして、今回の法案の罰則がいわゆる高くなっておりますゆえんは、その違反行為によって惹起されますところの結果、言いかえますと、その罰則によって担保されます違法行為、これの大きさが格段に違うという点から、特に鉄道営業法に比して重くしておるわけでございます。
  76. 久保三郎

    久保委員 新幹線は従来の鉄道に比較して被害が大きいというか、損害が大きい。そういう行為を行なった場合の影響が大きいから刑罰を多くした、こういう意味ですね。そうですね。法制局もそうですか。
  77. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いま刑事局から御説明のあったとおりだと了解いたします。
  78. 久保三郎

    久保委員 鉄監局長、そうですか。
  79. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 同様でございます。
  80. 久保三郎

    久保委員 鉄監局長に聞きましたが、最後に政務次官、同様ですか。
  81. 田邉國男

    田邉政府委員 さようでございます。
  82. 久保三郎

    久保委員 大事な点でありますからだめ押しをいたしました。よろしゅうございます。  それで各案に入りますが、一つは第二条であります。第二条と営業法を対照した場合に、営業法は三十六条にございますね。それからもう一つは刑法の百二十五条あるいは百二十九条あるいは二百六十一条、こういうものに大体似通ったものがあるのでありますが、これとの関連をひとつ、これは刑事局ですか法制局ですか、どちらでもいいですから御説明を願います。
  83. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 ただいまのお尋ねは、新幹線法案の第二条のほうに、すなわち「新幹線鉄道の用に供する自動列車制御設備、列車集中制御設備その他の運輸省令で定める列車の運行の安全を確保するための設備を損壊し、その他これらの設備の機能をそこなう行為」、これと刑法の百二十五条にございますいわゆる往来危険、すなわち「鉄道又ハ其標識ヲ損壊シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ汽車又ハ電車ノ往来ノ危険ヲ生セシメタル者」、この構成要件との関係をまずお尋ねになっておると存じますが、この関係におきましては、特例法案第二条の損壊あるいは設備の機能をそこなうという場合には、必ずしもそれによって往来の危険が生ずる可能性があるという認識を必要としないのでございます。したがいまして、往来の危険を生ぜしめる可能性があるということを認識しながら、そのような行為を犯しました場合には、刑法百二十五条と本条とどちらが適用になるかという問題が生ずるわけでございますが、この関係につきましては、いわゆる法条競合という関係になりまして、刑法百二十五条のほうがもっぱら適用になる、かように考えるのでございます。それから次に本条と刑法の二百六十一条の器物損壊との関係でございますが、これもただいま申し上げましたと同じように法条競合の関係になりまして、どちらの構成要件にも該当するという場合には、本条すなわち特例法の二条の適用がある、こういうふうに解せられるのであります。なお、道路営業法の三十六条には「信号機ヲ改竄、毀棄、撤去」というのがございますが、東海道新幹線鉄道の特例法の二条のほうは、損壊あるいは設備の機能をそこなわれる、いわゆる客体のほうが鉄道営業法と異なっておりますので、実際の運用としてこのいずれにあたるかという疑義の生ずる場合は比較的少ないのではないかと思うのでございます。かりに両者に当たるとすれば、やはり法条競合の関係で特例法の二条の適用がある、かように解釈しております。
  84. 久保三郎

    久保委員 そこでこの法律案は、いうならばいま説明があったように、刑法の問題もひっかかってくる。それからもう一つは、営業法の問題、御説明のようにいわゆる客体が違う、そのとおりであります。信号機と自動制御機ではだいぶ違いますから、これはそのとおりだと思うのですが、いうならば、これは営業法の改正によって処理されるのが当然ではなかろうかという考えも出るのでありますが、これは運輸省にお聞きしたほうがいいのですがね。営業法の改正によってこと足るものをなぜ特別に出してきたかという問題になる。
  85. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 鉄道営業法の改正につきましては、運輸省の付属機関といたしまして臨時鉄道法制調査会というものを設けまして、鉄道営業法の全体の問題についてただいま調査審議中でございます。この結論は本年度末までに出すつもりにしております。したがいまして、先ほどから御審議を願っておりますように、東海道新幹線の開業を十月一日に控えておりますので、その間鉄道営業法の結論は出ないわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、この鉄道は在来の鉄道と違いまして非常に高速であるという特殊性にかんがみまして、一応営業法特例としてこの法律の御審議を願っているというのが実情でございます。
  86. 久保三郎

    久保委員 そこで営業法の検討をされているわけでありますが、もう一年以上たっているのじゃなかろうかと私は思う。ついてはこれは途中でありますが、どういう審議をしているのか、資料をもってあとで説明してほしいと思います。  そこでこの第二条の条文についてでありますが、前後しましたが、この中で「その他の運輸省令で定める列車の運行の安全を確保するための設備を損壊し、」となっておりますが、この省令はどんなものですか。こういう刑罰規定をこういうふうに省令に委任することについて疑問があると思うのだが、これはどうなんです。
  87. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 いま大体私ども考えておりますのは、ここに書いてございますように、自動列車制御設備あるいは列車集中制御設備その他と申しますのは、たとえばいま省令で予定しておりますのは自動進路設定設備、それから自動列車検知設備あるいは自動列車防護設備、こういったようなものを予定しております。なおこの内容がまだ多少追加するものもあるかもしれませんので一応省令に落としているわけでございます。こういった立法例は航空法にも例があるわけでございます。
  88. 久保三郎

    久保委員 法制局にお尋ねしますが、その他省令できめるという刑罰規定はたくさんあるというお話ですが、これは国民の権利にも関係いたします。こういうものは明確に法律として制定さるべきだと思うのです。ものの考え方としてどうも違うのではないですか。一般国民が知らぬうちに省令でどんどんふやせる、こういうことではたしていいのかというものの考え方、どうなんです。
  89. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 この刑罰法規の規定のいたし方でありますけれども、これは仰せのように当該規定そのものに明確にいろいろな要件が確定的にきまっているということが望ましいといえばそういうことが言えると思うわけでございまして、理由なしに省令で定める施設というようなことをみだりに使うことはあまりよろしくないということは言えると思います。ただし、ただいまも例が出ましたように、たとえば航空法の百五十条の三号でございますが、これも「運輸省令で定める飛行場の設備」というような規定がございますが、こういう設備、あるいはここにありますような設備、こういうものにつきましては、これは必ずしも一義的にただいま確定的にきめるわけにはいかない。そのことの進歩に応じて、そういうものが科学的な発達に応じてそういう必要なものも出てまいるということもございますので、そういう余裕をとることにおいて合理的に考えられるわけでございますから、この場合には運輸省令で定めるというふうにいたしたわけでございます。
  90. 久保三郎

    久保委員 なるほどいままでの立法例の中にも多少はありましょう。ありましょうが、ものの考え方としておかしいということを言っているのですよ。間違いである、言うならば。しかも、これは刑量は、いわゆる「五年以下の懲役又は五万円以下の罰金」ですね。それが単なる省令一片で規制されるということは、国民のいわゆる権利からいってもこれはどうかと思うんですね。国会の議を経てつくられたものなら、これはもちろん民主的な形で制限されるのは当然であります。これが省令に委任されるというものの考え方がおかしいじゃないかと私は言いたいんです。いかがです。
  91. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほども申し上げましたが、私ども法制局的な見地から申しまして、各罰則規定において確定的に定まっておるということが望ましいということは別に異議を立てるわけではございませんが、御存じのとおりに、政令は法律の特別の委任があれば罰則も設けることができるというようなこと、あるいは国家行政組織法には、省令につきましてもたしか同じような規定があったと思いますが、ともかくも、そういうことからもうかがわれますように、要するにそういう運輸省令で定めるということのその合理性といいますか、そういうことが言い得る余地があるかないかというようなところが問題の焦点になろうと思うわけでございます。ただいま運輸省令で定める設備といたしましたのには、先ほど申し上げましたようなことがありますので、運輸省令で定めるというふうに規定をしたということになるわけでございます。
  92. 久保三郎

    久保委員 運輸省令というか、いまの次長のお話では、政令も法律に委任されれば罰則をつくり得る、そのとおりです。ところが罰則の中に懲役なんというのはございますか。私は法律にあまり詳しくないのでありますが、政令に委任された事項に罰則がついているというお話ですが、あることはあるでしょう。そういうものは懲役などありますか。
  93. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いま、どうも政令に懲役があるかどうかということにつきましては、いま直ちにあれがあるということを申すわけにまいりませんが、ただいま申し上げましたのは、法律の委任があった場合には政令でも罰則を設けることができるという一つのそういうこともあるということを申し上げたわけでございますが、ここでは実は運輸省令で罰則を委任したというのではなくして、運輸省令に、実は設備の中身がこれはどういうものであるかということを規定することにしておるわけでございまして、私が例を引きました例は、ここと実は直接に結びつくものではございません。ただそういうこともあるということを実は申し上げたわけでございます。
  94. 久保三郎

    久保委員 これは高辻次長、結果としては同じなんですね。あなたがおっしゃるように、これは省令に委任するのが何と何ということだけであって、刑罰は委任しておらない。刑罰は委任してなくたって、これは結果として刑罰が出てくるのですね。政令にも刑罰があるのだ。政令の刑罰というのには制限があるのか、ないのか、どうなんです。
  95. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 その前に第二条の規定に関連しまして、ちょっと補足して申し上げますが、第二条の「運輸省令で定める列車の運行の安全を確保するための設備」運輸省令で何でもきめて設備をつくればよろしいというのではなくして、列車運行の安全を確保するための設備である。これは聞かれている方からいえばあたりまえのことだと言われるかもしれませんが、その場合に「自動列車制御設備、列車集中制御設備その他の運輸省令で定める列車の運行の安全を確保するための設備」ということでございまして、前段の自動列車制御設備、列車集中制御設備もまた運輸省令で定められることになるわけで、この法律上からいいますと、そういう「制御設備その他の」ということでありますので、規範的にはそれに相当するような、あるいはそれに準ずるような列車の運行の安全を確保するための設備ということで、一応のしぼりはありますし、また例示も明確にされておるわけでございまして、それほど特に何といいますか、何でもやたらにというようなことにはならないような仕組みになっているわけでございます。
  96. 久保三郎

    久保委員 あなたのお話の一番終わりのくだりですね。これを担保するものは何もないのですよ。あなたの答弁だけです。鉄監局長からの答弁ではまだ確定できない。お述べになったのはそのうちの一部分かほとんどか知りませんが、確定できない。もしあなたの言うようなことでありますならば、何の心配もないですよ。ここに書きあらわすのがほんとうです。  それから私がお尋ねしているのは、政令に委任されたものに罰則があるということでありますから、政令の罰則には制限がないのか。私が聞いているのは、法律で委任された政令の中の罰則というものには、懲役というものがあるのかどうかということを聞いているのです。
  97. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 憲法の規定なり内閣法の十一条の規定でございますが、「政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。」というほかに、憲法の規定には「政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」という規定があるわけでございまして、その規定自身に、法律、憲法の上で罰則の程度を制限をしているという根拠はございません。
  98. 久保三郎

    久保委員 実際問題としてあるかどうか。
  99. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 法律の委任がなければ政令を制定することができないわけでして、それぞれの法律には、私どもいま直ちに全部の政令を通じて申し上げるわけにはいきませんが、その政令には罰則の限度を委任に際して規定するのが例であると思います。
  100. 久保三郎

    久保委員 それはいずれにしても明確にしていただきましょう。  それからもう一つは、あなたのいまのお話だと、大体ぼくが疑問に思う点は——疑問じゃない、そのとおりだ。懲役もある。極端なことを言えば死刑があるかもしれぬ。こういうことは立法府としてはまかせられない。運輸省令で定めるという、そういうものは煩瑣で変化があるとするならば、そのつど法改正に訴えるべきです。私はそう思う。五年以下の懲役ですからね。科料とか何かならまああれかもしれませんが、これはいかがですか。
  101. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 政令に罰則の規定を委任する場合、これは重ねて申し上げておりますように、法律の委任がなければなかなかできないわけです。したがってまかせることにつきましては、国会が法律を制定の際に十分な監視をし、その結果として法律が制定されるわけでございますので、みだりに行政府当局がかってにつくるというようなものではない。これは十分ひとつ御了解願いたいと思います。  ところで、ただいまの問題は、実は先ほど申し上げましたように、省令なり政令の位置づけを申し上げるために、私よけいなことを申し上げたと思っておりますが、ここでは運輸省令で定める設備ということでございまして、設備の中身をここに掲げられましたような、例示されているものもまた運輸省令で定めるわけでありますが、それに相当するようなもの、確かにそれにつきましては、運輸省令で定めることになっておりますけれども、その定められるものは、私運輸当局ではございませんで、きわめて技術的にむずかしいことを申し上げるわけにはいきませんが、やはり技術的な進歩の道程とか、あるいは技術的なこれからのいろんな処理の問題とかに関連しまして、それに相応するような設備そのものを運輸省令で定める。それには私どもはそういう要素もあり得るだろう、それにつきましては、航空法等の例もございますので、差しつかえなかろうということに立案当局としては考えたわけでございます。
  102. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても省令に委任することについては、われわれは反対なんです。  それでは鉄監局長に聞きましょう。省令にということでありますが、いまお読みになったやつは、これはまだコンクリートしておりませんね。固まっておりませんね。
  103. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 現在運輸省として予定しておりますのは、この法律に例示がございますように、自動列車制御装置、ATC、それから列車集中制御設備、CTC、このほかに先ほど申し上げました自動進路設定設備、それから自動列車探知設備、自動列車妨護設備、こういったものを現在予定しておるわけでございますが、私どもなるべく、もちろん限定したい考えでおりますが、何ぶん非常に進歩の早い科学的な設備でございますので、全部を固定いたしますよりも、やはり科学技術の進歩に即応いたしまして、内容に若干弾力性を持たしたほうが運用上妥当であるというふうに考えて、このような体系をとっているわけでございます。運用はあくまで制限的に考えたいというふうに現在考えております。
  104. 久保三郎

    久保委員 それは科学の進歩に伴って変化があることは当然であります。これはいずれの法律にも適用されることでありますから、それはやはり法律改正に訴えるべきだと私は思うのであります。時間もありませんから先にまいりますが、これは承服しかねる。  それからもう一つは、これは法制局と刑事局に聞くのでありますが、この第二条に「損壊」という文言がある。さらには「機能をそこなう行為」、これはどこが違いますか。
  105. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 「損壊」と申しますのは、有形的な作用によりまして、そのものの効用を失わせる行為でございます。それから「設備の機能をそこなう行為」と申しますのは、有形的な行為によらないでその効用を害する行為というふうに解するわけでございます。これは従来刑法の器物損壊罪等におきます損壊の概念につきまして確立してきておりまする判例の立場からかように解釈するわけであります。
  106. 久保三郎

    久保委員 事実の問題として予想される問題は、「損壊」と「機能をそこなう」ということはどういうことでありますか。ことばではわかりましたが……。
  107. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 ただいま法務省から御答弁があったとおりでございますが、さらにやや具体的に例をあげて申し上げますと、この間新幹線でごらんいただきましたわけですが、たとえば線路上にありまして車両からいろいろ電磁波を発しますと、これを受ける線路上の地上子、アンテナがございます。これを有形的に変更すれば損壊ということになると思いますが、有形的な損壊でなくて、たとえば地上子の上に何かブリキの板、鉄板等を置くということは、有形的な損壊にはなりませんが、電磁波の関係で機能をそこなうおそれはある。具体的な例で申し上げますと、いまのようなことでございます。
  108. 久保三郎

    久保委員 そこで損壊の程度でございますが、損壊はないが、機能はそこなうという場合でも損壊でございますね。そうするとこれは懲役五年以下ですね。たとえば器物を損壊したという場合には半分とか一番端を損壊しても損壊ですね。全部を損壊しても損壊ですね。そうですね。どうですか。
  109. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 ただいまのお尋ねは必ずしも私ども考え方と一致しておるとは申せないと思います。「損壊」と申しますのは、先ほど申しましたように、そのものの本来の効用を失わせる行為でございまして、「損壊」の程度に至らないものを「損傷」と申しております。したがいまして、ただいまお尋ねのようなものの効用を失わしめない程度の傷つけ、これは後に第三項で出てまいります「損傷」ということに相なるわけであります。
  110. 久保三郎

    久保委員 なるほどそれは実態によって裁判官が認定するという意味ですね。
  111. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 裁判になりますれば、究極的には裁判所が判断するわけでございますが、「損壊」あるいは「損傷」ということばの概念といたしましては、法律関係者の間では、先ほど来御説明いたしておりますように、確定的に理解されておると存じます。
  112. 久保三郎

    久保委員 鉄道の設備は御案内のとおり非常に複雑なものもたくさんあります。その場合に損傷か損壊か、これはたいへん認定がむずかしいと思うのです。こう思いませんか。
  113. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 すべての場合にボーダーライン・ケースというものが観念的に考えられるわけでございまして、さようなケースが生じてまいりますれば、認定に若干の検討を要する場合もあろうかと思いますが、一般的にはしかく困難ではないんじゃないか。平たく申しますと、そのものが動かなくなるかどうかということが一応判断の基準になる。たとえば先ほど例示として仰せられましたグラスならグラスというものが、水を入れられなくなったのかどうかということが問題になるわけでございますから、必ずしも損傷と損壊との境というものは、判定が困難というわけではないと存じます。
  114. 久保三郎

    久保委員 あなたは判定困難ではないというお話ですが、判定が困難な場合もあるですね。ところが法律というのは一ぺん出てしまうと、いかようにでも一方的に解釈ができる。そこにたいへんな問題がいつも出てくるわけですね。そういうことをお考えになっているかどうか。あなたがここで答弁したことが、直ちにこういう事案が起きたときに、そのことばどおりになるかどうかといったら、なかなかそうはならぬのが実態です。ところがそういうことによって国民の権利が侵害されるということのほうが多いかもしれぬ場合がある。これをわれわれは心配するのです。国民の権利が侵害されるというのは最高のものだと思うのです。そういうものがこういう法律が出るたびに現場第一線というか、そういうところで侵害されているという場合が間々ある。このほうがおそろしいと私は思うのです。そういう点はどう思っているのですか。
  115. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 ただいまの点でございますが、かりに現在この二条なら二条を規定します場合に、従来刑罰法規で全く用いられておりませんでしたような概念を持ってまいりましてそれで規定をするということになりますと、その解釈をめぐっていろいろ問題が起きようかと存じますが、損壊なら損壊という概念につきましては、すでに旧刑法あるいは刑法制定以来その概念が逐次大審院あるいは最高裁の判例によって固まってきておる、いわゆる刑罰法規の上で固定してきておる概念でございまして、この解釈につきましては、物の効用を失わしめない程度のものが損壊に当たるというように解釈されるおそれは全くないのではないか、かように存ずるわけでございます。
  116. 久保三郎

    久保委員 これはその程度にしておきましょう。  そこで、第二条第一項の中で「設備を損壊し、その他」とあります。「その他」という文言はまたとか及びという意味ですか。
  117. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 これは「設備の機能をそこなう行為」というのは、広く申しますと損壊をむ含む概念になってまいります。損壊と申しますと効用を失わせる行為でありますから、その意味で、損壊と機能をそこなう行為とは全く並列的なものではないわけであります。すなわち、言いかえますと、またはでつなぐ性質のものではない。したがいまして、損壊しその他ということで、損壊というのは機能をそこなう行為の一部でありますので、それを取り出してきまして例示的にここにあげておる、こういうふうに解釈されると思います。
  118. 久保三郎

    久保委員 法制局に聞きますが、いまの御説明でよろしいのですか。「確保するための設備を損壊し、」損壊した者も罪になる、あるいは損壊と機能を一緒にした者ももちろん罪になる、さらには機能をそこなう行為をした者も罪になる、こういうふうに理解するとするならば、「その他」というのは通念でいえば及びとか、またとか、または、こういうことだと思うのでありますが、どうなんですか。
  119. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま法務省からお話がありましたのと全く同じことでございまして「設備の機能をそこなう行為をした者」、その設備の機能をそこなう設備の損壊も、その中身でありますので、そのことをつなげたわけでございます。
  120. 久保三郎

    久保委員 ちょっとはっきりわからぬのでありますが、どうも法律用語というか、刑罰規定は特によくわからぬのでありますが、「その他」とは何をさしておりますか。
  121. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 たいへん簡単に抽象的に申し上げますと、有形的な物の変更に当たらない場合を「その他」ということを言っておるわけでございますが、かりに例をあげますと、先ほど運輸省のほうから御説明のありました地上子と言われますものをブリキその他金属板でおおってしまうという行為は、その地上子自体には有形的な行為をいたしませんで、物理的には地上子と若干離れた個所に鉄板等をおおい載せる行為でございます。したがいまして、これは損壊という行為に入りませんで、損壊ではないけれども、「その他これらの設備の機能をそこなう行為」こういうことになるかと思います。
  122. 久保三郎

    久保委員 次に第二項で「前項の設備をみだりに操作した者」この「みだりに」というのはどういうふうに解釈するのですか。
  123. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 みだりと申しますのは、言いかえますと、適法、正当な理由がなくしてという意味でございまして、場合を分けると二つになるかと思います。一つは、こういった設備を操作する資格のない者が操作しましたような場合がその一つであろうかと存じます。もう一つは、資格あるいは権限のある方でありましても、使用目的に従わない方法で操作するというような場合が二番目の場合かと存じます。この両方の場合を含めている趣旨というふうに解釈いたしております。
  124. 久保三郎

    久保委員 そこでこの法律全体になりますが、これは過失に基づくというのは別にありませんね。
  125. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 そのとおりでございます。
  126. 久保三郎

    久保委員 そうしますとどういう結果になりますか、過失であってもこの規定どおりでいくというのですか。
  127. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 刑法の総則にもございますように、過失を処罰する場合には特にその旨を法律にうたいませんと処罰の対象になりません。したがいまして、ただいま御指摘の「みだりに操作した」その行為を過失によってやりました場合には、処罰の対象にならないわけであります。
  128. 久保三郎

    久保委員 これはこの法案全体にかかわりますが、過失によってやった場合には処罰がなし、それは刑法総則によってですか。
  129. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 この法案の各条に規定されております罰則に関しましては、過失犯は処罰いたされません。
  130. 久保三郎

    久保委員 次に三項の「そこなうおそれのある行為」というのはどうなんですか。これは非常に拡大解釈ができますが、この認定はむずかしいと思うのです。
  131. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 この「機能をそこなうおそれのある行為」と申しますのも、その上に「損傷し」とありますように、「損傷し、その他同項の設備の機能をそこなうおそれのある行為」となっておりまして、損傷と同程度の行為であって、有形的な作用によらないで、しかも設備の機能の効用を失わしめるまでには至っていないけれども、平たく申しますとそのままほうっておけばその機能をそこなうおそれがあるのじゃないかと思われる行為を言うわけでありまして、たとえば先ほど来例に出ております地上子の上に、それを全くおおってしまうような、あるいはおおわなくとも地上子が働かなくなる程度の金属板を置きますと、これは機能をそこなう行為で第一項に当たりますけれども、比較的小さい金属片で、それを置いたからといって直ちに地上子が動かなくなってしまうというものでないもの、そういうものを置く行為がこの「その他」の「機能をそこなうおそれのある行為」ということが言えるかと思います。
  132. 久保三郎

    久保委員 この「おそれのある行為」というのは、風が吹けばおけ屋がもうかるの筆法になる例が相当あるのですね。そういう方式の条項なんですね。だから、これが実際に適用される場合にその辺をどう、いわゆる国民の権利を侵害しないよう担保するものがありますか。
  133. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 まず第一に「機能をそこなうおそれのある行為」ということでありまして、こういう行為でない、何か別の行為をいたしまして、そういった行為が回り回って機能をそこなう行為ということでは足りないのでありまして、「設備の機能をそこなうおそれのある行為」というのをまず要するわけでございます。それから第二に「損傷し、」とございますように、「その他」で結びます場合、「損傷し、」を含みますと同時に、「損傷し、」と同程度の行為であることを要求される、こういうふうに読みますのが、こういった法文の普通の読みだというふうに存じます。したがいまして、「損傷し、その他」云々となっております場合には、損傷と同程度の行為が必要である、かように解するのが一般でありまして、従来のこういった法文の解釈もそのように固定してきておるのではないか、かように存ずるのであります。
  134. 久保三郎

    久保委員 どうも御説明では、お尋ねしている、どう担保するか——風が吹けばおけ屋がもうかる式のおそれがある行為が多いことになる、これをどう担保するかということでお尋ねしているのですが、その担保はあまりないようでありますけれども、時間もありませんから先に進みます。  それから次には三条でありますが、三条の第一項の一号の「列車の運行の妨害となるような方法で、」という、その「方法」というのはどういうふうに考えていますか。「なるような方法で、」こういうのですが、なるような行為ならちょっとわかるような気もするのですが、「なるような方法で、」というのはどうなんです。
  135. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 列車の運行の妨害となるような行為と、こう言ってしまいますと、たいへん広い概念になってしまうわけでございますが、問題は、この第一号の場合には、みだりに物件を線路の上に置くという行為、これを処罰の対象にしておるわけでございますが、単に置いただけでありました場合には、すべてこれが処罰の対象になるということになりますと、たとえば小さな木片を線路敷のまん中に置いたというような場合でも処罰の対象になって、法律の一つのねらいともはずれてまいりますし、また御指摘の苛察にわたるような場合もあるわけでございます。そこで「列車の運行の妨害となるような方法で、」というその行為のやり方の態様を規定いたしまして、構成要件を縮めてあるわけでございます。たとえば物件が直接車両に接触するような方法で置きます場合、あるいは列車の風圧とかあるいは列車の通過に伴います震動で物件が巻き込まれるというようなおそれのある方法で置く場合、こういう場合を考えておるわけでございます。で、そのような場合以外の場合までも罰するということになりますと、やや安全運行を確保するというこの法律の目的からははずれてくるおそれがあるのではないか、かようにも考えたわけでございます。
  136. 久保三郎

    久保委員 そこで、この条項で規定しようとする線路という概念でございますが、これはいわゆる「軌道の中心線の両側について幅三メートル以内」、こうこれははっきりしていますね。三メートル以内というのはどういうことになりますか。
  137. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 この軌道と申しますのは、いわゆる軌条、レール、それからまくら木、これでつけられました一体となった構造物をさしておりますが、ここで「三メートル」というのが出ておりますが、これは軌道の中心線、レールとレールのまん中から片側にとりまして三メートルということでございます。なぜ三メートルにしたかということでございますが、新幹線におきましては、軌道の中心から車両限界が一・七メートルございます。その外側に列車の風圧の限界が〇・八メートルございます。それからさらにその外側にいわゆる犬走りと申しますか、保線用の通路がございます。これが大体〇・五メートルということでございまして、これを全部合わせますと軌道の中心から片側に三メートルというふうになるわけでございまして、三メートルをとりました根拠はいま申し上げたとおりでございます。
  138. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、大体普通の線路の状態のところは、いわゆる中間的な線路ですね。これは大体犬走りまで、その両端の幅である、こういうように了解してよろしいですか。
  139. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 さようでございます。結局、通常の犬走りの一番肩のところまでと御理解いただけばけっこうだと思います。
  140. 久保三郎

    久保委員 それから線路の規定で、「軌道及びこれに附属する保線用通路その他の施設」をいう、そうすると、犬走り以外の「保線用の通路」これは読んでわかります。「その他の施設」というのは、どういうことになりますか。
  141. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 保線用の通路のほかに、たとえば通信用のケーブル等が埋設してある場合もございますので、「その他の施設」というふうに書いたわけでございます。
  142. 久保三郎

    久保委員 それは線路に付属するものですね。そうですか。
  143. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 いま、例をあげました通信等のケーブルは、線路に付属するというふうに考えております。
  144. 久保三郎

    久保委員 この場合、そうしますと、いわゆる線路というのは、全線にわたってその幅とその付属の通路、施設、こういうことになりますね。
  145. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 「附属する」と申しますのは、いま例をあげましたように、軌道と隣接いたしまして機能的にも軌道と密接な関連を有する設備をさすのでございまして、たとえば、停車場のプラットホームというようなものは、場所的には軌道に隣接しておりますが、「附属する」というふうには考えておりません。
  146. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、たとえば、プラットホームというようなもの、それから本線、たとえば副本線も本線ですから、それ以外の入れかえ線というのもございますね、そういうものも全部含むのですか。プラットホームは別として、プラットホームと線路との限界は何によって区別ができますか。
  147. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 先ほどの通信ケーブルの例で御理解いただきたいと思いますが、通信ケーブル等は機能的に軌道と密接な関係を持っておりますから、これは含む。しかし、ホームのほうは、物理的には線路、軌道と隣接してございますが、機能的には一体とは考えられませんので、これは除外しております。  それから後段のお尋ねでありますが、本線だけでなくて、側線等はどうかということでありますが、側線も含めて考えております。
  148. 久保三郎

    久保委員 国鉄にお尋ねしますが、そうしますと、線路のある限りは、どこもみんなということになるようないまの答弁ですが、そのとおりですか。
  149. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 法律的の問題でございますので、まず私がお答えいたしますが、側線、退避線等も本線と一体となって運営されておるものでございますので、含めておるわけでございます。なお、側線等におきましても、ただいまの列車自動制御装置あるいは列車CTCというようなものを設備されておるわけでございますので、一体的に考えていきたいと考えております。  なお、さらに先まで申し上げますと、側線等の一番末端で先ほどの車両からの電磁波を受ける地上子の設備されていないところは除外したいというふうに考えております。
  150. 久保三郎

    久保委員 これは除外規定はありませんね。この認定は運輸大臣が認定するのですか、あるいは国鉄総裁がここまでは法律の適用、これはなし、こういう区別でもするのですか。これはどうなんですか。法律にはないのですか、いかがですか。
  151. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 これは最終的には裁判所の判定となると思いますが、私ども、ここに書いてございますように、列車の高速運転に直接あるいは間接関連いたします側線ということを考えておるわけでございまして、非常に複雑な自動列車制御設備であるとか、列車集中制御設備、こういうものを頭に置いておるわけでございますので、この法律には明確には書いてございませんが、たてまえから申しまして、そういうものの設備されていないところは除外してまいるべきだというふうに考えておるわけでございます。
  152. 久保三郎

    久保委員 その除外してまいるという範囲は、いまのところわからぬということですか。
  153. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 ただいま申しましたように、たとえば車庫線等の、一番側線の先で車庫に入るような線を考えますと、そのある地点に自動列車制御設備あるいは列車集中制御設備の関係で関連して地上子を設けてありますから、その地上子から内側と申しますか、反対に申せず地上子から外側の車庫のほうにはそういった複雑な軌道設備はもうけませんので、車庫側寄りの地上子からの外側というものは対象に考えておりません。
  154. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、この二号も含めてのお尋ねになりますが、先ほど来刑罰の量についてお尋ねしたのでありますけれども、そのお答えは、御列席の皆さんから全部同一に、新幹線は、問題ができたときには既設線に比べて被害が大きいというか、影響が大きいから刑罰も増す、こういう御趣旨の答弁でそろっておりました。ところが東海道新幹線は、東京−大阪ノン・ストップで走るわけじゃないのです。しかも、われわれも現場を見せていただきましたし、話によりますれば、自動制御装置をつけておいて、しかも停車場進入などは当然スピードを落として入ってくるわけです。スピードを落とすということはとまるという前提でありますから、既設線区と何ら変わりはありません。そういうところまで法律の文言でいくならば、全部縛るということは、これは不当ではないか。比較論として不当ではないか。こういうように思うのですが、どうですか。
  155. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 私ども鉄道のしろうとでありますので、とんちんかんなことになるかもしれませんが、東京と大阪間をノン・ストップで走るわけではなくて、どこか途中でとまるのだろうと私も思いますが、とまる場合に、どのくらい先からスピードを落としてくるのか、常にスピードを落とす場所がきまっておるものか、おらないものかということも、私どもよくわかりませんが、いずれにいたしましても、東海道新幹線というものが一体として運用されていくのだろうと思います。そうしてみますと、東海道新幹線というものを一体として罰則を設けるというのが一番わかりやすい方法でもありますしまた適当な方法ではないかと思うわけでございます。この第三条の場合についてみましても、「一年以下の懲役又は五万円以下の罰金」とございますように、一番下のほう、すなわち刑の下限は千円でございます。さらに情状によってはこれを半分に下げるということもできます。さらに検察官の判断によりまして在来線の場合と変わりのないような行為であるとか、あるいは情状が非常に酌量すべきものがあるということになれば、当然起訴猶予というようなことになるわけでございまして、問題は東海道新幹線というものを一体として運行の安全を確保するための条件として、一番重い一年以下あるいは五万円以下ときめておるわけでございまして、具体的な運用におきましては、当然起訴されないものも出てまいりましょうし、されてもごく軽い罰金ということで終わるというケースが相当あり得るというふうに考えるわけでございます。
  156. 久保三郎

    久保委員 東海道新幹線を一体として運営する、それはそれでいいのです。しかし列車が停止するような場所で同じ行為をやった場合に、場所が違えば若干違うというのは、どうも私には理解しがたい。これは理屈でありますから別にしまして、次にお尋ねしたいのは、「線路内にはみだりに立ち入った者」というのは、これはたしか営業法の三十七条にこれに類する規定があるわけです。これも先ほどの御説明では東海道新幹線はたいへんなことになるからというお話でありますが、この第二号に書いたものの中身はどういう趣旨でこれをここへ置かなければいかぬのかということであります。線路内にみだりに立ち入った者、ただ立ち入っただけで一年以下の懲役ということはいかがかと思うのだが、これはどういうことですか。
  157. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 御質問の御趣旨をあるいはとり違えておるかもしれませんが、物件を置きますことがたいへん危険でありますように、線路内に人が立ち入るということになりますと、確かに当該列車の運行の妨げになることと考えられますし、またひいては、その列車に乗っておられる乗客の人たちの身体の危険というものも相当大きな蓋然性で考えられるわけでございます。そういう意味で物件を置きますのと同じ危険度が列車の運行に対してあると考えられるわけでございまして、そういう観点から、ごらんのように「一年以下の懲役又は五万円以下の罰金」ということで制裁を科することとしておるわけでございます。
  158. 久保三郎

    久保委員 あなたは、先ほどのお話によれば、東海道新幹線の機能というか、そういうものはあまり御存じないということでありますが、法案の作成の段階でいろいろ説明は受けておられると思うのです。もちろん線路の上に石を置いていいとか、物を置いていいなんという話はどこにもありませんが、これは物によってはみんな吹っ飛ばすというのですから、人間のごときも吹っ飛ばされてしまうのではないか。列車の前にエプロンのような防護板のかたいものがあったり、ゴムが何枚もあったりして、はじき飛ばしてしまう、むしろはじきとばされた先のほうが心配ぐらいのものである。「立ち入った者」というのは、あなたの御説明では、列車の安全ということにはあまり関係ないような御説明にとれるのです。だから、いまの御説明ではどうも少しおかしいじゃないか、こういうふうに考えます。
  159. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 ただいま御指摘のありましたように、私は鉄道のことには暗いものでございますが、法案の審議をいたします以上、あるいは列車に乗せていただくとか、その際技術的な点についても、私どもしろうとにわかる範囲内で十分承っておるつもりでございます。  なお、ただいまの仰せでございますと、人間ははね飛ばしてしまうから列車の運行の危険の問題とはならないというような御趣旨の仰せであったかと思いますが、かりにとまれないことがわかっておりましても、人の姿を認めた場合には、多分とまろうと努力するとかなんとかいうことは当然するのではないかと思うのでございます。ぶつかってはね飛ばしていけば列車は安全であるから走ってしまえということにはならないのではないかと思うわけでございまして、そういう意味におきまして、物件を置きました場合と全く同程度の危険性があるのではないか、かように考えるわけでございます。
  160. 久保三郎

    久保委員 はね飛ばしていっていいという理屈はありません。私もそう考えておる。ところがこの列車はそうせざるを得ない列車なんですよ。大体はね飛ばす、見つけてからとまらぬのですから。
  161. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 私も聞きかじっておるだけでございますが、かつて新幹線の試運転の過程である人が自殺をはかって、その人は何かはね飛ばされて肉体がむちゃくちゃになったということを聞いておりますが、はたしていかなる場合にもはね飛ばして何ら運行に支障なく走れるものであるのかどうか、この辺は私どもしろうとでわかりませんけれども、どんな場合でもはね飛ばして必ず行くのだというようなものではないのではないか。かりにその人がいろいろなものを身につけておりましたり、いろいろなものを所持しておりましたような場合を考えてみましても、しかく安全に運行が必ずできるものではないのではないかというふうにも考えるわけでございます。だから先生の仰せのお考え方と私ども考え方とちょっとその辺が違うのじゃないかというふうに思っております。
  162. 久保三郎

    久保委員 ちょっと違いますね。この間の例は私も聞きましたが、あれは自殺しようと思って中へ入ったのですから、はね飛ばしようがない。あれは横になれば線路の高さくらいの人間ですから、これは中でまるめられてミキサーにかけられたようになったというような話を聞きましたが、これは対象にしてもしようがないですよ。死んでいこうというやつを罰することも何にもできませんから、これは別ですよ、実際。だけれども通常の場合、先ほど私が申し上げたような装置になっていくということでありまして、列車の安全についてはこれは問題はない。私らはそう了解しておる。だからこれをそうだとすれば、これが安全を確保するための法律だとするなら、これは不可能に近いものを書いておくこともいかがかと思うのです。人間を見つけていまそれをとめようとしたってとまらぬですから、とまらぬものを、できないものを、片方では、できないのですからそれによって安全が阻害されるかというと、それはないと言うのです。そうだとすればこれは要らないじゃないか、理屈を言えばそうなりますよ。この辺はどうなんです。
  163. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 先ほど御説明申し上げましたような考え方で私どもおるわけでございまして、その立ち入った人が何にも身にまとわないでそこへ必ず立ち入るというわけでもないのではないか。何か持ったりあるいは着用したりして入るというようなことが普通なんではないかと思われるわけでございまして、物件を置いた場合と対比いたしましてその物件と同じ程度にあぶないものを身につけて入るという場合も十分考えられるわけでございます。さらに人がかりに何ら普通の服装だけをつけまして入りました場合でも、また私どもといたしましては常にはね飛ばしてしまうのだから鉄道営業法程度の罰則でほっといていいのだというふうにはちょっと理解できないわけでございまして、たいへんお考えとこの点は食い違うわけで申しわけないと思っておるわけであります。
  164. 久保三郎

    久保委員 これは先ほど来申し上げたように、線路に入って列車に接触するような場所におりますれば、もうこれは殺される以外に方法はないですよ。何と言おうとそういう状態なんです。だからそこへ入ろうというからには、そういう観念で来るならば、これは列車の安全運行の問題とは違う。だからたとえばいまの営業法に基づくところの既設線区の線路内に入った者は、これは科料か何か罰則がありますね。これならば、言うならば見つけた、すぐブレーキをかけた、とまった、とまったためにこれは列車の運行が乱れたりなんかいろいろな損害がございますね。損害があるから、そういう面からも考えれば、なるほど営業法としてはあるわけです。ところがこれはそれがないのですよ。だからこれは蛇足じゃなかろうかということなんです、私が言うのは。営業法でよろしい、もうここへ入ってくるのは承知しているのです。接近距離にいれば風圧やなんかで吸い込まれるかはね飛ばされるかしてしまう。ただでおかないという事情があるのですから、そうすればこれは何もこれによって担保される安全性は何にもないじゃないか。あなたがおっしゃるように何か身につけている、身につけているものも何もありません。どんなものを身につけているか知りませんが、これは自殺を観念してくる以外にない、実際は。私はそうだと思うのです。いかがでしょう。
  165. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 ただいま法務省から御説明のあったとおりでございますが、先生も各地をよくごらんになって御承知でございますが、確かに線路の設備あるいは車両の設備によりまして、単に人が入ったり人が線路の上におるというのは設備的に十分何と申しますか排除できぬというかっこうにはなっておりません。万全を期すためにはやはりかりに何か持っておるというような場合に何かあるといけないということもあると思います。それから運転士の立場に立てばなかなかとまれないということはわかりますが、人影を認めるということになれば、やはり車両は十分安全であるとは存じますが、運転者の立場としましては一応自動制動もかけるというような操作もするという、そういったことによりまして間接的には列車の安全運行にも関連してまいる。なおこれは一部やはり人が入ってくることは物を置くということとも関連してまいりますので、物を置かせてはならぬということに関連いたしまして、人が入ってこなければ大体物を置くということはないわけですから、無用の者がみだりに立ち入るということは極力排除すべきである、これはやはり列車の安全運行ということに直接間接の関連があるというふうに私ども考えております。
  166. 久保三郎

    久保委員 いまのようなお話でいろいろありますが、線路内に立ち入ったということだけで、われわれが知っている範囲ではそういうことも考えられるのです、いままで申し上げたように。そうだとすれば刑罰の置き方は少し重いじゃないか、こういう考えもするわけです。しかもこれは法律全体にわたって予防的な効果をねらっておりますから、なるほど実行行為はありますが、それによって直接列車の運行安全を妨げたという事実行為がなくても、これはみんな罰せられるのです。だからこれは慎重を期すべきだという考えなんですが、これはどういうふうに考えておりますか。これは法制局に聞いておかなければいかぬと思うのです。
  167. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 すべて刑罰法規につきましては、これは申し上げるまでもないことでありますが、罪刑法定主義という原則がございまして、その適用にあたっては厳密に適用すべきであるというのが一般の通則であると思います。そういう意味でこの法律案もまた刑罰法規をきめるものでございますから、同様に考えらるべきものであることは間違いないと考えております。
  168. 久保三郎

    久保委員 これで終わりますが、先ほど来たびたび申し上げておるように、私はこういう刑法的なものというか、こういう法律にはあまり出くわしておりませんのでよくわかりませんが、いま申し上げたように、少なくともこういうもので担保するとういのは気休めじゃないか、なるほど罰則を強化して、刑事事件としてはたくさんあるかもしれないが、ねらいであるところの安全確保については残念ながらこれではだめだろう、だめだろうというよりこれで気休めになったというだけであって、これによっていわゆる実行効果が上がるとは夢考えてない。むしろ冒頭申し上げたように、この東海道新幹線の列車というのは、従来の観念の列車ではないのだ、飛行機と汽車の間、そういうことで国民大衆にも知らせて、その安全確保に協力してもらうということのPRというのか、周知徹底が政府なり国鉄の大きな責任だと思うのです。  二つ目には、少なくともこういう罰則をやって担保されるといういままでの御説明があったが、私は担保されないと思う。よしんば担保されるにしても、企業の安全確保の担保の条項のないことは、これは先ほど来申し上げるように残念だということです。そういうことについては的確な御答弁がなかったのはこれまた残念であります。少なくとも私どもは、こういう国民の権利を制限するというか、これを押えるというようなものについては、やはり周到な配慮が必要だ、こう思うのですが、大体これを出してきた法律的な、立法的な概念は、従来もたとえば国道法とかあるいは航空法というものがあるから、これは大体これに見合わせてこの辺でいいだろうということでありまして、いうならばそういう基本的な問題についても御検討がほしかったと私は思う。御検討になっておらなかったのではないかと思うのです。交通の安全については、事、国鉄ばかりではありません、陸海空にわたってでありますが、その場合に強調したいのは、先ほど申し上げた二つの点がまず先行さるべきだと私は思うのです。以上です。
  169. 川野芳滿

    川野委員長 肥田次郎君。
  170. 肥田次郎

    ○肥田委員 簡単に質問をいたしますから、答弁もひとつできるだけ簡単にお願いしたいと思います。  まず一つお聞きしておきたいのは、先ほど質疑の中にありました第二条の一項の関係なんですが、この設備その他の機能をそこなうような行為、これは過失の場合にはこの罪の対象にはならない、こういうふうに言われました。ところが実際は、罪の対象にならないような過失が検察官の手で告発をされて、そしてそれが結局罪になる、こういうことが非常に多いわけです。機械の調整を誤ったために大きな事故が起きた、こういうことがいままでたびたびあるわけですが、そういう場合に、これは罪の対象にならないということだけでは実は済まないわけなんです。そのために特に国鉄当局あるいは運輸省が、これは過失であるから罪の対象にならないというようなことでこれを弁護するというようなこともあまり聞いておりませんし、こういう関係はどのようにお考えでしょうか。この過失というものと、それから罪の対象にならないということと、実際において検察官はこれを告発して、そしてこれが処罰をされておる、こういう関係についてお聞かせ願いたいと思います。
  171. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 先ほど私の御説明が若干足らなかったかもしれませんが、この法案自体では過失を罰する規定は全くございません。過失犯が罰せられますのは、刑法に該当する場合だけであります。この関係で刑法で関係をしてきそうな条文を見ますと、百二十九条の過失往来危険罪というのがございます。それから、先ほど御指摘の検察庁で割合数多く受理しておりますのは、二百十一条の業務上過失致死傷罪、これで受理しているわけでございます。
  172. 肥田次郎

    ○肥田委員 そうすると、これも結論的に言うと、特にこういう特別立法をつくらなくても、いわゆるこの安全運行というものにはたいして差しつかえない。このほかにも一般法で十分これを守れる状態になっている。要はそういう法律が一般に周知徹底されておるかどうか、こういうことになるように私は思います。  もう一つ、これはこの施設の関係でお聞きしたいのですが、今度のこの新幹線については、いわゆる十分に近いほどの防護施設ができておる、こういうふうにいわれておるのです。そのために特にみだりな立ち入りを防ぐためにいろいろネットも張るとか、そのために十六億もかけるとか、こういうお話でしたが、ここでちょっとお聞きしておきたいのは、いわゆる民間ともありますが、国鉄の現東海道線とこれと完全に密着して並行しているところがありますね。こういう地域についてはどういう防護対策を講ぜられるのですか。
  173. 石原米彦

    ○石原説明員 お答え申し上げます。並行しているところがだいぶございますが、並行しておりますところは現在の東海道線と新幹線との間に防護さくを立てることにしております。要するに防護さくは、新幹線に関する限りは人の立ち入りそうな地形のところには全部張られることになるのでございます。
  174. 肥田次郎

    ○肥田委員 そうすると、こういうふうに理解したらいいですか。新幹線とその他の並行路線とはもう完全に遮断をされるものだ、そういう設備を講ぜられるわけですか。
  175. 石原米彦

    ○石原説明員 そのとおりでございます。
  176. 肥田次郎

    ○肥田委員 大体久保委員のほうから質問がありましたので、私は、時間もありませんから結論的な質問に入りたいと思いますが、今度のこの特例法をどういうふうに一般に周知徹底をされるのか、その具体的な方法をひとつ示してもらいたいと思います。
  177. 石原米彦

    ○石原説明員 これは、前回からも御指摘がございましたように、よくPRさせることが非常に大事な問題だと存じます。しがたいまして、この法案が両院を通過いたしましたならば、直ちにジャーナリズムに強くPRをするつもりでおります。またこれは、現在でも新聞記者その他一般の人たちも非常にこの点を心配しておりますので、おそらくジャーナリズムとしてもこの点に大いに協力してくれることと存じます。しがたいまして、ラジオ、テレビ、新聞その他を通じまして、こういうことが定められたのだ、入ってきたりしてはならないし、物をこわしたりすれば厳重な罰になるのだということは十分にPRいたします。そのPRのしかたは、ただいま申しました一般的なPRのほかに、網を張りまして、道路に近いようなところには、この網の中に入ることは危険であるし、入れば厳重に処罰されるということは、要所要所に全部掲示することにしております。なお、沿線の市町村あるいは学校等に対しまして、立ち入りとか石を置くとかいうことにつきまして、そういうことのないように、交通安全期間とか何とかいろいろな機会をつかまえまして盛んに働きかけておるのでございますが、今度は、こういう法律も定められますならば、なお一そう沿線の学校、家庭といったようなものにもPRいたしますし、なお万一みだりに立ち入る者がありましたならば直ちに通報してもらうように、いつも沿線の各地に協力してもらうように、各現場から働きかけるようにいたしております。
  178. 肥田次郎

    ○肥田委員 まことに卑近なことを伺いますが、要するに、入ったら罰金を取られる、入ったら罪になる、そういうことだけの周知徹底なのですか。私が言いたいのは、この二百キロで走る新幹線をどうすれば守れるかというのが法案の趣旨ですから、そうすると、入ったら罰金だ、物をほうってはいけない、こういうようなことじゃなしに、二百キロで走る新幹線の列車を皆の力で守ろうじゃないか、安全運転させようじゃないか、こういう周知徹底でいくのが必要じゃないかと思うのです。そういうことはもう新聞やテレビ、そういうものだけにまかせて、網に入ってはいかぬという、いままでのお役人がやっておったと同じような、ここに入ると罰金を取る、ここをのぞいてはいかぬぞ、こういうようなことだけの徹底で終わるのですか。
  179. 石原米彦

    ○石原説明員 これは少しことばが足りなかったかもしれませんのでございますが、従来列車の運行の安全を期するために協力をしてくれという宣伝は機会あるごとにいたしております。たとえば学校に出向く、あるいは掲示を出す、それからビラを張るというようないろいろな方法によりまして、列車の安全を守るように協力してもらいたいという宣伝はいたしております。それは当然この機会に一そう強力にいたすのでございますが、いまの法律の関連においてでございましたので、さらにこういう法律も加わりましたので、旧来以上に注意しろ、また罪にもなるんだぞということをつけ加えて、一そう宣伝をするということでございます。
  180. 肥田次郎

    ○肥田委員 この立法精神はあくまで常識内の事故を防ぐ、こういうことですね。非常識なものは、たとえば進行中の列車に向かって石を投げたり、物を投げたり、あるいは銃器を発射したりしてはいけない、こういうようになっておるのです。これは鉄砲や空気銃のことで、機関銃をぶっ放すような気違いがいたら常識外のことなんですから、あくまで常識内ということになる、私はこういうように考えるわけです。常識内で防げるものならあくまで常識内でお互いがレールと列車を守ろうじゃないか、こういうことだけでもほんとうは足りるわけですね。それが守れないような心配はどこにあるのですか。非常識なもの以外に何がありますか。
  181. 石原米彦

    ○石原説明員 これは前回、前々回の委員会でも御説明いたしましたように、そういうように鉄道といたしましても警察といたしましても、列車の安全に協力してくれということは、毎年相当人手や金を使いまして宣伝いたしているのでございますが、まことに遺憾でございますけれども、前の審議のときにもございましたように、たとえば石を置くような事故は一日に三件ぐらい過去の例でございます。それからモデル線を運転を始めましたのが一昨年の六月でございますが、それから試運転中に物を置く、これはほとんど石でございますが、それがすでに二十三件も発生しております。なおこれをつかまえまして、子供がつかまった例がございます。全部がつかまったわけではございませんが、子供をつかまえまして学校にも厳重に申し入れておりますし、親たちにも注意いたしましても、率直に申しまして、それが非常に大ぜいの人の生命にかかわるほどの悪いことだという観念が薄いように見受けられます。どうもそれはたいへん失礼なことをいたしましたというようなぐらいのことを親も申しまして、従来ののろい列車でございますと実際問題としてそう大きい被害にはなりませんのでございますけれども、こういうことではとてもあぶなくて、高速度で東京から大阪まで突っ走ることはできないということを痛感いたしましたので、この沿線に全部網を張らなければならないということを決意いたしましたし、さらに法律によりましてこういうことは厳重に悪いことなんだということを周知してもらわなければ、とても安心してお客さまに乗っていただけないということを考えまして、運輸省にもお願いいたした次第でございます。
  182. 肥田次郎

    ○肥田委員 私が聞いている趣旨は少し違うのですが、あなたのほうではもう防護設備は大体常識的に考えたらこれで完全なことをやっておるのだ、その足らないところを補おう、こういうふうにおっしゃった。ですから、私が聞いておるのは、子供か小学校の生徒か、あるいはその他の者が中へ入って石を置こうたって、今度は置けないような状態になるのでしょう。だから今度はその心配はないのですよ。ネットを張ってあるから、その心配はないのです。ただ心配なのは橋梁の上だとかいわゆる立体交差になっておって新幹線が下になっておるようなところ、あるいは国鉄の現在の東海道線と並行しておるところ、あるいは京阪神急行と並行しておるところ、こういうところから何かやりはしないかという心配、それでもネットを張ってある程度防げるようにしております。こういうふうにおっしゃっておるわけです。ですから非常識以外はまず守れるのじゃないかというのが今度の問題点じゃないかと私は思って、それで非常識というものは一体どういうものをもっとほかに想像しておるのか、こういうことを聞いたわけですが、答弁が違いましたから、もうよろしいです。  最後にひとつお伺いしたいのですが、要するにこの法律が通れば、設備と相まっていわゆる完全な列車運行ができる、このくらいな自信がなければいけないはずなんですが、これはそういうことですか。それとも先ほどからずっと三日間ほどの質疑が聞いておると、いわゆる特例法を設けなくても設備の点では自信があるのだ、こういうふうにも聞こえたのですが、その点はどうでしょうか。
  183. 石原米彦

    ○石原説明員 これは前にも何べんか申し上げたと存じますが、安全を絶対に確保しなければならないという点になりますと、一つの施策だけで完全にカバーする、安心していられるということはできないと思います。いろいろな網を何段にか張り詰めなければならないと思いますが、おっしゃいましたように、まず知能の少ない子供なんかは、いま設備いたします網で大体防げると思います。それを破って入る者は確かにお話しのように非常識な、しかしそれを破るだけの能力のある者になりますが、そういう者はやはりこういうことをすれば罪になるのだぞということを反省もできる人間でありますので、これは法律が非常に有効だと思うのです。さらに前々申し上げましたように、最後の手段といたしまして前を厳重にいたしておりまして、それでなおくぐって物を置かれるとか、物が落ちてくるという場合にも、相当程度ははね飛ばすことができるようにしております。それから上から落ちてくるものは自動車のように大きなものも考えられますので、上から落ちてくるものについては、普通の網でないもの、落ちないように防ぐ設備ということで、厳重なものを設計して考えております。大体それらを総合いたしまして、長い間にわたって安全を確保することができるものと考えております。
  184. 肥田次郎

    ○肥田委員 そうするといわば今度の特例法というものは安全の上にも安全をという、こういう意味で特例法ということになったのですね。そうしましたらこの法律がかりに通らなければ、それでまた運行の支障はとりあえずはない。要するにもっとわかりやすく言うと、この特例法がなくても十月一日からの運行というものはこれは予定どおりやる、中止することはない、こういうことになりますね。
  185. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私どもといたしましてはぜひこの特例法を通していただきまして、物心両面で安心して十月一日から営業を開始いたしたいと考えております。
  186. 肥田次郎

    ○肥田委員 私が聞いておるのは、万が一この法律案が通らなくても、列車運行というものは十月一日からは実施できる、これほどの自信はあるのでしょうね。それをお伺いしておるわけです。通ればこれにこしたことはない、それはもちろんです。
  187. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 物理的に、鉄道技術的には通ることは絶対可能であります。十月一日から実施いたします。がそれだけでは関係従業員の安心その他のこともありますし、最近のようなわけでありますので、どういうような人が、どういうことが起こるかわからないという、全然鉄道外の心配についてはぜひこの法律で解決していただきたいと考えております。
  188. 肥田次郎

    ○肥田委員 私は先ほど久保委員の質問の中で特に問題点になったのはそこだと思うのです。この法律が通ろうと通るまいと、列車の運行は自信をもってやれる状態である。それをなお安全なものにするためには、いわゆる常識内でこれを防護することも考えなければならぬ。こういうことですから、非常識というものはこれは問題外になっておるわけです。そうすると先ほどから問題になっておるような、すなわち特に特例法を設けなくても運転はできるのではないか。この特例法というものとそれからその他の関係法と考えてみると、みな関係しておるのだから必要ないじゃないか。特に鉄監局長のほうで言われるのは、全体に鉄道営業法というものを検討中なんだ、こういうように言われておるのですから、私が感ずる限りではいまただちにこの特例法を通さなくても、当局の言われるようにりっぱに運転はできる、こういう理解に立つわけなんですが、それでは何か誤りがありますか。
  189. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私が申し上げましたのは、鉄道技術としては十月一日から通れるということを申し上げたのであります。ただ鉄道技術の問題と私どもはたくさんの旅客の命をお頂かりして、安全に、国有鉄道法第一条の目的に沿って仕事ができるかできないかという問題とは、少しその間に問題があると思います。その問題を埋めるのがこの法律であるというふうに私どもは解釈しております。
  190. 肥田次郎

    ○肥田委員 これは何も問答するという意味じゃないのですが、そうすると、これじゃ不十分じゃないかという点が久保委員から指摘をされておるわけです。この不十分だという点はどういうふうに理解をされておりますか。この程度で十分だ、いや、そうじゃなしに、とりあえずこれでやっていこう、こういうことなんでしょうか。
  191. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 私ども政府といたしましては、この法律案を提出したわけでございまして、あるいは不十分という御見解もあろうかと存じますが、現実の問題としては刑罰法規でございますので、なるべくしぼっていきたいということで、したがって実際問題といたしましては、現在御審議を願っております法律案が、私どもあらゆる観点から考えまして、一番いい方法であるというふうに考えております。
  192. 肥田次郎

    ○肥田委員 これで私は終わりますが、この特例法は要するに現在の一般法で十分やっていける、特に国鉄には現在営業法があるじゃないか、こういうことがわれわれの主張点なんです。ですから、話を聞いてみれば、もっと十分にしたいという気持ちはおありのようですけれども、一応これで十分だ、一応これで十分だという内容については、われわれは、これでは同じことじゃないか、何もこれをやらなくても、いままでどおりで十分やっていけるじゃないか、こういう見解の相違点というものが明確であります。ですから、われわれとしては、この特例法を通さなくても、当局は十分安全運転ができるという、こういういわゆる機械的、設備的その他の全体的の対策を当然講じられてしかるべきであろう、こういうふうに考えるわけです。  いずれにいたしましても、いろいろ問題点がありますので、何か先ほど久保委員のほうではいろいろと対照資料というものを要求しておるようでありますから、それらを見た上で、最終的にわれわれの態度もきめるべきだと考えております。  これで私の質問を終わります。
  193. 川野芳滿

    川野委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十三分散会