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1964-04-24 第46回国会 衆議院 運輸委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十四日(金曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君    理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君    理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君 理事 矢尾喜三郎君       亀岡 高夫君    木村 俊夫君       佐々木義武君    進藤 一馬君       高橋清一郎君    高橋 禎一君       中馬 辰猪君    西村 英一君       増田甲子七君    井岡 大治君       勝澤 芳雄君    泊谷 裕夫君       野間千代三君    山口丈太郎君       内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸政務次官  田邉 國男君         運輸事務官         (海運局長)  若狭 得治君         運輸事務官         (船員局長)  亀山 信郎君         海上保安庁次長 有田  毅君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局参事         官)      高林 康一君         海上保安官         (警備救難部         長)      猪口 猛夫君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 四月二十二日  臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇八号)(参議院送付) 同月二十三日  踏切道改良促進及び踏切保安員配置等に関  する法律案久保三郎君外八名提出衆法第四  七号) 同月二十四日  海上衝突予防法の一部を改正する法律案内閣  提出第一三一号)(参議院送付) 同月二十三日  小型船海運業法及び小型船海運組合法の一部を  改正する法律案の修正に関する請願永田亮一  君紹介)(第三〇七四号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第三一四二号)  同(關谷勝利紹介)(第三二一四号)  九州地域国際観光地及び国際観光ルートの総  合的形成に関する請願池田清志紹介)(第  三〇九六号)  南九州国際観光ルートに指定に関する請願(  池田清志紹介)(第三〇九七号)  農林畜水産関係物資国鉄貨物運賃公共政策割引  の恒久制度化に関する請願池田清志紹介)  (第三〇九八号)  農林畜水産関係物資港湾荷役作業料金値上げ  抑止に関する請願池田清志紹介)(第三〇  九九号)  関東地区一般乗用旅客自動車運賃改定に関す  る請願小平久雄紹介)(第三一八〇号)  静岡地区一般乗用旅客自動車運賃改定に関す  る請願山田彌一紹介)(第三一八一号)  福井県南越、大野両地区一般乗用旅客自動車  運賃改定に関する請願坪川信三紹介)(第  三三六七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  水先法の一部を改正する法律案内閣提出第一  三三号)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  水先法の一部を改正する法律案を議題とし審査を行ないます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。野間千代三君。
  3. 野間千代三

    野間委員 水先法改正案について、二、三質問をいたします。  初めに、私は水先法のつくられた経過等についてあまり詳細でございませんので、ただ海難等の、港の中の事故等をできるだけ防止をするということがきわめて重要な任務じゃないかと思います。そういう意味で、水先人技術が独得の技術を持っていて、しかも港内事故防止をするというきわめて重要な任務がある、そういう意味水先人技術の向上あるいは配置充実あるいは水先人組織を確立をして安定をする、そういうことが必要じゃないか、そういう意味から二、三質問をしたいのですが、今回提案がされている資格免許要件でございますけれども船長を通ってくるというコース一つ、それから修業生というコースを通ってくることが一つ、それから運輸大臣試験を経てくるというコース一つ、大体コースとしてはこの三つのように見受けられます。このうち、今回は般長のコースの問題について改定が行なわれるわけですが、船長コースを通ってきた者とその他のコースを通ってきた者との現在の表ですね、四月二十二日につくられました現在員の比率がわかっておりましたら、ちょっとお知らせ願いたい。
  4. 高林康一

    高林説明員 ただいまの御質問でございますけれども船長コース、それから修業生コース、それと試験コース、この三つ要件を全部満足して水先人資格というものが免許をされるわけでございまして、それぞれ個別にあるわけではないのでございます。
  5. 野間千代三

    野間委員 そういうことで、日本の場合に、船長コースを通って、それから修業生コース試験をするといういまの御返事でございます。たとえば、まだよく調べてはございませんけれどもイギリスとかあるいはドイツとか、そういう方面で、港内ボートマン等から始まって、主として水先修業生を通過をしてきて水先人になるという、ややギルド的なことになると思いますが、そういうコースを通ってきて水先人になるということが外国で行なわれているというように聞いております。そういう制度というものは日本では考えておられないわけですが、そういう関係について少しお考えをお聞かせ願いたい。
  6. 高林康一

    高林説明員 ただいま先生から御指摘のございましたように、諸外国におきますところの実勢を見ますと、いろいろの例がございます。御指摘のございましたように、たとえばイギリスにつきましては、ボートハンドといたしまして、そこの水先人組合に勤務いたしまして、これを約四年ないし六年というようにいたしまして実習をやって、特に船長履歴というものを経過しないでやっていく。あるいはアメリカにおきましては、州法によりまして若干の違いはございますけれども、おおむねイギリス的に、いわゆるアプレンティス制度でやっていくというやり方もございます。他方フランスドイツイタリア等におきましては、船長または航海士といたしまして六年以上の履歴を有する者が六カ月間程度の短期の実習をやりましてやる。むしろ日本法的なやり方をやっておるようなのが大陸法の傾向であるかと思います。日本法といたしまして、主としてこのようなドイツフランスイタリア等のようなやり方をとりまして、船長実歴というようなものを基本にいたしまして、それから実習試験というようなコースをとりましたことは、やはり英国あるいは米国的な徒弟といいますか、いわゆるアプレンティス制度というものが、やはりギルド的ないろいろな問題が生じ得るというようなことを考えましたので、私どもといたしましては、これは旧法以来、こういうような船長履歴というか、そういう経験を積んだ人に水先人としてやっていただくというふうに考えた次第でございます。
  7. 野間千代三

    野間委員 船長コースを通って水先人資格を得る、そういうコースも確かに一つ方法だろうと思いますが、水先人技術といいますかそういうものは、ぼくらよくわかりませんが、やはり船長とは違う。船長が行なう業務と確かに関連といいますか、必要性があるということはわかりますけれども、やはり一つの独立した技術というんですか、勘というんですか、そういうものが必要じゃないか、いわば独立をした一つ技術だということも言えると思う。そういう意味で参りますと、水先人というものを充実していくという意味門戸を開放するということと、それから水先人になることを最初コースとして考えて、港内でいろいろな仕事をしながら、水先修習経過を経て水先人になるということも一つ方法ではないか、あるいは一つ体系ではないかというふうに考えるのです。日本の場合に、船長コースを通った場合のほうが、船長の持っておる技術水先人技術との一種の共通性といいますか、そういうものが考えられますから、確かに早いとは思いますけれども、いま私が言った水先になるということをコースとして来るということも、一つ体系としてはあり得ていいんじゃないかと思うのです。そういう点についてどう考えていらっしゃいますか。
  8. 高林康一

    高林説明員 御指摘のように、そういうような体系については十分考えられると存じます。また現実に、イギリスあるいはアメリカ等におけるところの立法例も、そのような経過をたどっておると思います。ただ、私どもといたしましては、やはり大型船操船というものはいろいろ困難がございまして、それは相当技術を要するというふうに考えられるわけであります。一方水先人になりますと、水先区を航行する船舶からの求めがあるときには、大小を問わず、全部求めに応じていかなければならない。したがって、水先の実際の仕事をやりますときには、やはり船長経験ことになるべく大型船船長経験を持っておることが望ましいんじゃないかというような実際上の考え方から、現在の制度のようなものを考えておるわけでございます。  一方、また英米的な徒弟制度ということになりますと、たとえばリバプールの例なんかでいきますと、十六歳から二十三歳に達するまで、ずっとボートハンドとして勤務いたしまして、そうして、その間に五年以上のそういうような見習い時期というものを含めておらなければならないわけでございます。そういうような制度をとりますことが、徒弟制度というものにとかくつきまといがちな弊害が生ずるおそれがあるのではなかろうかというような観点からいたしまして、そういうような制度を取り上げなかった次第でございます。ただ、先生の御指摘になりましたように、一そうの経験を積む必要、これが非常に大きいことは御指摘のとおりでございます。その点につきましては、やはり水先経験を積ませるという意味におきまして、船長経歴を持つ者におきましても、水先人となろうとするときにはそれぞれの水先区において実習——いわゆる修業生といたしまして、そこでいろいろ経験を積んでいくというようなことを水先人要件としてきめておる次第でございます。
  9. 野間千代三

    野間委員 そのいずれをとるか、私も片方だけをとるというわけにはなかなかまいらぬと思うので、現状のところは、いま御説明のように、船長コースをとっていったほうが実際問題としては早いと言えると思うのです。それを別にどうこう言うわけじゃないのですが、だんだん港の状況困難性といいますか、ふくそうといいますか、そういう点が非常に多くなってくると思うのです。そうなってまいりますと、水先人充実もはからなければならぬ。それから一つ私が疑問に思うのは、今度の改正を見ますと三千トンの大型船船長経験オンリーになるわけですけれども、そういうことがはたして水先人技術を向上することのただ一つの道であろうか。これでまいりますと、三千トン以上の船長ですから、いわば小さな船の経験者というのはなくなってくるのじゃないか、そうなると大型船船長経験者オンリーになっていく危険性はないかというふうに心配をするのですが、その辺はどういうようにお考えですか。
  10. 高林康一

    高林説明員 御指摘もございましたように、今回の改正法案におきましては、従来の船長履歴を三千トン以上、三年以上というふうに引き上げた次第でございます。これにつきましては、従来の港湾におきます入出港の状況を見ますと、先生御存じのとおり、非常に最近は大型化しておるわけであります。二十四年と三十七年を比較いたしまして、それぞれ水先をいたしましたところの平均最大船のトン数だけをとってみましても三倍半になっておるというふうに、その間における船舶大型化現象が非常に著しい次第でございます。そういうような点で、水先需要をいたします船舶が非常に大型化いたしてまいったことを考えまして、水先人となり得る者の一つの基準を引き上げたわけでございます。水先人といたしましては、その船が大型であろうと小型であろうと、求めがありましたときは当然応じなければならないということでございます。しかも大型船操船小型船操船よりも非常に困難であり、また高度の技術を要するというふうに考えられますので、やはり水先人となる者はなるべく大型船船長としての経験長期に持っておるほうが望ましいというふうに考えて、このような履歴を引き上げた次第でございます。  なお、そのようなことに伴いまして、給源が非常に困難にならないかという点でございますけれども、この点につきましては現在なお相当資格者がおります。必要な需要には十分こたえ得るのではないかというふうに考えておるものでございます。
  11. 野間千代三

    野間委員 確かに航行船大型化をしてきているということはそのとおりだと思います。ただ水先人が乗船を求められる船の大きさは、これは強制区の規定にあるように千トンのものもあるし、あるいは小さな船も種々あると思うのです。そういうふうに種々雑多な船の水先人求められることになると思います。これはいまちょっとした感じですが、水先人にある段階をつける、この表でまいりますと最低一名のものもありますからそうもいかないのですが、段階をつけるということは考えられないか、これが一つ。それは質問に答えてもらえばいいが、前に戻って、そういうふうな大型船だけではなく種々雑多な船の水先をしなければならないというのが水先人でございますが、大型船長経験があれば小型船水先は問題がないということのように見受けるのですけれども小型の船の経験があって、小型船長技術大型水先をする場合に阻害をする要因があるのかどうか、小型船長経験者あるいは小型技術を持っておる者が水先になった場合、水先という独特の技術になった場合に、大型船水先をする場合の困難性があるかどうか、それはどうでしょうか。
  12. 高林康一

    高林説明員 確かに小型船並びに大型船それぞれにおきまして特殊性がございます。また操船の点におきましてはそれぞれ違った面があるということは確かに考えられるわけでございます。ただ一般的に見まして、たとえば千トンの船と、最近タンカーなんかは非常に大型化しておりますが、十万トンの船との操船技術については、やはり相当違いがございます。そういうような違いがございますし、一方また大型船船長というものは、従来の船長履歴の実際をながめておりますと、まず乗りましたときは、初めは小型船に乗り、だんだん大型船に移っていくというふうにして大体船長履歴を重ねていくというのが実態でございます。したがいまして、船長履歴を中心に考えていきましたほうが、大型船小型船ともに大体の経験を積んでおるというふうに考えられるのが実際ではないかというふうに思っておる次第であります。  なお、この水先人につきまして、グレードといいますか、いろいろな何トンから何トンまでの資格者とかいうふうにつくることも一つ立法としては考えられるわけでございますけれども水先人全体といたしましては、お手元の表にございますように全体で百八十名程度でございます。また地区によりまして非常に少ないわけであります。あるいはまた相当多いところがございます。一方それを求めますところの船舶の側からいいますと、求めましても資格がないというようなことがありますと、非常に円滑な遂行が困難なわけであります。したがいまして、それはやはり同じようにどのような水先人もどのような船も扱えるということが応召体制としては望ましいのではないか。それから先ほど申しました小型船から大型船にいろいろな経験を重ねておくということで両方兼ね合わせるというふうに考えられる次第でございます。そのような考え方現行法及び改正法をやっておる次第であります。
  13. 野間千代三

    野間委員 今度の改正でちょっと私が感じますのは、大型船船長経験者限定されはしないか、門戸が閉ざされはしないかということです。前段に申しましたように、水先人のそういう任務がございますから、大型船船長限定し、門戸を閉じるということではなくて、やはり水先人に志す者が、たとえばいま言われる船長経験としては小型船から順々にくると思うのですけれども、その過程大型船に乗らない場合が多くの船長の中であると思うのです。そういう船長でもある程度船長経験を経て、たとえば千トンの船長でもあるいはそれ以下の船長でも、修習して水先人になれるというような門戸を開放しておいたほうがいいのではないか。それから直感ですけれども大型船船長限定をしてまいりますと、やや年齢老齢化がありはしないかという心配はないのか。何かちょっと見た資料では、外国のほうの水先人年齢は、ギルドみたいな関係もあるでしょうけれども、五十歳から六十歳くらい、日本のは六十五歳以上になりはしないかということを見たわけですけれども、そういう年齢問題等老齢化をする危険性はなかろうかというふうに思うのですが、この点はどういうことになりましょうか。
  14. 高林康一

    高林説明員 御指摘のございますように、確かに現在の水先人平均年齢は六十・八歳でございます。そういうふうに比較的高齢でございます。その点につきまして、やはり水先人のいろいろな操船の困難あるいは航路の操船技術経験というようなことから、長期船長履歴海上履歴というものによってそういうようなかっこうになるかと思います。ただ平均年齢といたしましてそうでございますが、実際の一番多い水先人の層は五十歳から五十五歳というような層になっております。そこで、全般的にはそのような老齢化というようなことは比較的避けられるのではないかというふうに考えておりますが、今後の問題といたしまして、確かに若いときからやっていくというようなことは考えられる問題ではあると思います。ただ問題は、その場合にやはりどうしても英米的なやり方におきまして非常にギルド的なことになる。ことにイギリスあたりでは大体十五世紀くらいからそういうような組織でやっております。いろいろその間にはやはり問題が多かったようにもこれは聞いております。そういうような点でことに未成年時代、大体十六歳ないし十八歳くらいからそういうような徒弟勤務につくわけでございます。そういうような状況になりました場合に、今度は水先人という観点から以外に、いろいろ問題が相当出得るのではなかろうか。そういうような点でそういうような発生を極力少なくしたいというようなことを考えまして、いまのような制度をとっておるわけでございます。  それからなお、高齢化というような現象につきましては、常に定期検査身体検査を行ないまして、あるいはまた、今回技術上の措置といたしまして退職年金制度というようなものを水先人の団体においていろいろ実施いたしまして、そういうような高齢化現象というものを避けていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  15. 野間千代三

    野間委員 大体お考えはわかりましたが、現在の法律ができてずっときておりますから、直ちにということはなかなか困難もありましょう。ただ、今回三千トン以上に変えていくという改正の問題ですが、いまあなたの言われるような趣旨で参りましても、若返りなりあるいは私が言うように門戸をなるべく閉鎖をしないということでいくとすると、三千トン以上の三年以上となりますとどうしても限定をされるし、老齢化の方向に進んでいくということに改正の面ではなってしまうのじゃないか、自動的にそうなっていきはしないか、そういう心配がしますけれども、それはどういうことになりますか。
  16. 高林康一

    高林説明員 まず船長履歴要件を引き上げましたのは、先ほども申しましたように、非常に大型化あるいは交通量がふくそうしておるというようなこと、しかも港湾施設が必ずしも十分に進んでいないというような観点から、こういうような条件が悪い状況におきましては、やはり高度の技術水準というものが当然要るのではないか、ことに最近におきましては、全体の数値といたしましては海難件数は非常に減っておりますけれども、しかし重大海難というものはむしろ実質的には相当ふえておるというふうなことから考えまして、海難防止し、そしてまた船舶の運航を安全化するという観点からは、やはり高度の技術水準というものがますます要請されてくるのではないかというふうに考えられるわけでございます。そこで、そういう観点からいたしまして、たとえば今回の船長履歴の引き上げについては、五千トン以上という意見もいろいろ審議の過程においてわれわれの中でも考えたわけでございます。しかしながら、一挙にそのように引き上げることもまた問題がございます。そういう観点から三千トン、三年というふうに引き上げてみて、そして、これによって非常に高度の技術を要求するような最近の水先行為に対するところの要望というものを満足させていきたいというふうに考えていったわけでございます。  それから、それに伴いまして、従来より非常に要件が引き上げられたから、いわばますます供給源を枯渇するという点はいろいろ検討しましたけれども、現在こういう要件を満たしておるところの船長経験者勤務者、これは予備員を合わせまして約千人ございます。それで船長退職の方が従来の経験率では大体五%程度が毎年退職されるわけでありますけれども、そういうような現在の船長履歴、これを満足するところの船長履歴実態ということから考えまして、必ずしも供給源を枯渇させることではないのじゃなかろうか。したがって、こういうような門戸を開放する点は非常に重要な点でございます。そういう意味においてはなるべく試験制度をおおらかに、大きくいたしますと同時に、やはり、しかしながら高度の技術水準というものをますます加味させていきたいというふうに考えまして、そしてやっていったわけでございます。  なお、御参考までに昨年の試験過程におきまして、この受験した者の中で、引き上げいたしました三千トン、三年という要件に満たなかった者は一人だけでございまして、大体従来の受験者もみなこのような資格を満足させておるというふうに考えられる次第でございます。
  17. 野間千代三

    野間委員 私が言っているのは供給源の問題じゃないのです。たくさんおるから水先人の陣容に差しつかえないという問題も、もちろんもし少なければありますけれども、そうではなくてできるだけ老齢化を防ぐというか、若返りをするというか、そういう方面と、それから水先人という特殊な任務を志す人があると思うのです。そういう立場からすると、日本の場合には最初から言うように、一、二、三というふうにコースを踏んで、一本のコースでいくということになるそうですから、そうなりますと、三千トン、三年以上の経験者以外にはなれないというように、閉鎖をすることになるわけですね。そうなりますと、確かに供給源としてはそう問題にならないにしても、一応それ以外の相当技術が優秀であり、水先人として適当だというふうに考えられる人も閉鎖をされているというふうになると思うのです。その辺が少し、いわばやや大型船船長限定するということに閉鎖をしてしまうことがあり得るので、それを少し何か、たとえばこれが並列をしておれば、並列をして、第二号の水先人になろうとして修習をしていこうというコースがあれば別ですけれども、一本であるとするとそういう心配があるのです。何かその辺を緩和するというか、門戸を多少でも開いていくというか、そういう方面についてはお考えはないのですか。
  18. 高林康一

    高林説明員 門戸を開放するという要請と同時に、やはり現在の港湾事情その他から見まして、ますます高度の技術というものを必要とするという要請と、この二つをどのように組み合わせるかということが実際問題として問題になるかと考えられます。そこで、門戸を開放いたします方法といたしまして、たとえば英米的なアプレンティス制度をとることももちろん考えられるわけでございますけれども、これも実は結果的には、従来のイギリスの過去の例なんかから見ますと、実はそこで採用されておらないところの人間はかえって一切逆になれないというようなこと、そういうようなこともございまして、必ずしもそういうようなアプレンチィス制度というものは適当ではないのじゃないかというふうに考えて、その道をとらなかったわけでございます。確かに、御指摘のように、そういう意味では高度の技術を要求するという要請のほうに強くわれわれはやはりものを考えておることは事実でございますが、しかし、今後の海難をいかにして少なくさせていくかというようなことについて考えていきますと、どうしてもやはりいろいろの技術水準というものをますます高めていく必要があるのではなかろうか。もちろんあるいは個々の方でこういうような形式的な資格要件に合致しなくても、実際上は非常に優秀な方がおられるということもあり得るかとも存じますけれども、一応いろんな資格要件というものは、ある程度画一的になる点もございますが、やはり相当程度大型船操船技術というようなことを中心に考え、その大型船の基本として三千トンというのが、大体の通念ではなかろうかというふうに考えた次第でございます。
  19. 野間千代三

    野間委員 この問題だけでそう時間もとれませんが、水先人技術を向上させなければならぬということは、これは私も否定しません。またそれはぜひ必要だというふうに思います。ますます大型化するでしょうし、あるいは船もふくそうもするでしょう。港の施設そのものも高度になってきて、いろいろなものが出てくるでしょう。そうなりますから、事故問題から考えると、技術を十分に向上させなければならぬということは当然です。この概念は否定しませんが、ただ、そういう方向についての手段として、千トンが三千トンになるということでしょう。それだけが技術の向上として考えられる。しかもそれは門戸をよけいに閉鎖をしていくという方向になっている。それがはたして技術を向上させる唯一の道であろうか。そこにぼくは心配を持つわけです。ですから、ギルド制度でやっていけということじゃない。いま日本でそれを直ちにやれといっても非常に無理でしょうし、歴史もございませんから、それはまあ必要ないと思うのですけれども、この第一項の改正だけが技術を向上させることであろうかということを心配をするわけです。ですから、現在の二年以上、トン数千トンの一項を改定しないでも、ほかにたとえば二項をどうするとか、あるいは三項をどうするとか、そういうことでむしろ技術を向上することのほうが、門戸閉鎖しないし、老齢化も防げる。そういう総合的な考え方技術の向上について考えることのほうが、港の実態に合ったり、水先人の将来の安定といいますか、そういう方向にもいくのじゃないか。かつそれの技術を向上させるということも考えたらいいのじゃないかというふうに思うのです。そういうことについては、今度の場合には確かに船長経験は長くなります。大型化になってくるから船長経験としては長くなると思うのです。そういう方面での技術の向上はあり得ると思うのですけれども、しかし、一面では門戸閉鎖になる、老齢化の方向になるということがあり得るということになる。そういう弊害といいますか、そういう点もあり得る。そういう改正のしかたで技術の向上をはかることには多少ぼくは疑問があるような気がする。それは将来どういうように考えていらっしゃいますか。
  20. 若狭得治

    ○若狭政府委員 御承知のように水先制度は従来非常にギルド的な弊害があるということをいわれておったわけでございます。実際問題といたしましては、まず水先になりたいという者がございますと、それは水先人組合修業生になりまして、修業生になったあとで試験を受けるというような制度を昨年まではやっておったわけでありますが、そのために、水先になりたいと申しましても、実際は現在水先をやっている人の個人的な関係で次の水先が生まれてくるというような関係であったわけでございます。したがいまして、小さな会社の船長経験者水先になろうと思いましても、なかなかなれない。郵船であるとか商船であるとか三井であるとかいうような代表的な会社の船長経験者以外には、もう水先になれないというような状態であったことは事実でございます。われわれはそういう技術的、ギルド的な運用というものでは優秀な人材を得ることはできないだろうということで、昨年度からまず第一に国家試験を先にやりまして、その中から第三者の選考委員会で選考いたしまして、推薦いたしまして、その推薦した者の中から各水先人組合修業生を採用する。そうして修習したあとで、さらに国家試験を行なうという二回の試験制度というものを昨年から始めたわけでございます。そういうことによりまして、従来は、大会社の船長を長くやっておりまして、そうして船長退職した者が水先人になるというのが実情でございましたけれども、今後そういう制度を変えましたために、最低の法律要件があれば、だれでも国家試験が受けられる。そうして、その国家試験を受けた者の中から水先人を第三者が推薦するというような制度になりましたために、今後の傾向としては、おそらく小さな会社の人でも、水先になりたいという方も非常に多いわけでございますから、いろいろな方が志望されまして、公正な選考の結果、水先になる方がふえてくるだろうというようにわれわれは考えておるわけであります。  それからトン数の問題につきましては、現在の日本水先制度にたよっておるものは、外国船が約六割五分程度でございます。その外国船の大部分は大型船でございます。実際問題としては、ほとんどが五千トン以上でございます。そういう実際の水先求める側のほうの船が、大体もう少なくとも三千トン以上という実情でございますので、そういう面からやはりその程度船舶の運航を実際に手がけた人に一応資格を制限するのが実情に合うのではないだろうかというようにわれわれは考えておるわけでございます。
  21. 野間千代三

    野間委員 いまの最初のお答えでまいりますと、国家試験を受けて、修習をして、それからもう一回国家試験を受けてというコースもあるのですね。
  22. 若狭得治

    ○若狭政府委員 それだけでございます。
  23. 野間千代三

    野間委員 そうすると、三年以上の経験がない船長で、三千トン以上の、この第一項にあるものでないものでもいいのですか。
  24. 若狭得治

    ○若狭政府委員 三千トン以上の船長経験を三年以上やっておりました者で、水先の希望をする者につきまして国家試験を行なうわけであります。国家試験に合格した者を選考委員会で選考いたしまして、これを各水先に対して推薦する。その中から修業生が出てまいりまして、それをさらに特定の水先区につきまして今度は最終的な水先試験を行なうということでございます。一般的な水先人としての知識、経験につきましては、第一次試験でこれを検査する。それから特定の水先、たとえば阪神であるとか、あるいは京浜であるとか、あるいは鹿児島であるとかいう特定の港湾のいろいろな地形なり状況についての水先人としての知識の試験というものは、第二次の試験においてこれを行なう。そこで初めて正式の水先人資格を与える。したがって、水先人というものは全国どこへでも行けるということではございませんで、阪神の水先は阪神における資格を持っておるという関係でございます。
  25. 野間千代三

    野間委員 いまの御答弁は先ほどのと同じだと思うのです。そういうことなんですが、これはこういう改正案が出ておりますから実は問題にしておるのですが、いま私が述べました問題、そういうやり方技術を低下させるかどうかという心配だろうと思うのです。技術を向上させることがこの三千トン、三年以上の経験だけかということなんです。それが別の弊害でもないのでしょうけれども、つまり門戸閉鎖するとか、そういうことになる心配がある。事実そうなるわけです。ですから、その辺が今回少し強めたわけだから、それをもう一回広げることを検討しろというのはおかしな話には違いないが、そういう問題について少し検討をしてみたらどうかというふうに思う。三千トンの問題はきょうはその程度にとどめておきます。
  26. 久保三郎

    久保委員 関連。——いまの資格要件というか、それを引き上げる問題ですね。これは科学的に何か根拠があって上げるのかという問題、科学的と言っては語弊があるが、何かそういうものがあるのかどうか。ただいまの御答弁では抽象的なものでありまして、たとえばいままでの経験年数なり船の大きさでは非常にまずいという面が今日まで出たのかどうか。  それから海上航行安全審議会、この答申によって云々と提案されていますが、寡聞にして海上航行安全審議会のほうは実際聞いていない。だから、親切に説明するなら海上航行安全審議会の答申というか、そういう結論を本委員会に出してほしいと思うのですね。これはまだ時間がありますから、もし印刷したものがあれば配ってほしい。そのほうが説明しやすいならそうしてほしい。だから、そういう点でなぜそういうふうに上げるのか、もう一ぺんきちっとできるかどうか、それをしてもらいたいことが一つ。  それからもう一つは、これは海上保安庁にお尋ねするのがいいかと思うのですが、いままで水先人をつけた場合とつけない場合との、いわゆる海上航行の事故というか、そういうものの比率はおわかりかどうか。水先人をつけた場合がいいかどうか、そのほうと、いわゆる三年以上ですか、その港に出入りした船長水先人をつけなくてもよろしいというようなことがありますが、実情についてわれわれはよく知らぬのでありますから、もちろん船長水先人をつけなくてもよろしいという港に出入りする場合でも、船長によっては、あるいは船主によっては水先人をつけるのじゃなかろうかと思う。そういう実情はどうなっているか、そういう三点についてちょっとお伺いします。
  27. 高林康一

    高林説明員 まず三千トンに引き上げました理由でございます。これにつきましては、まず従来現行法は昭和二十四年に制定されておるものでございます。昭和二十四年におきまして千トン未満の船舶は全体の日本船腹の中では約二五%、三十七年におきます姿を見ますとこの三千トン未満が大体二一%になっております。したがって、全体の日本の船腹構成といたしましては、二十四年制定当時におきます千トン未満の船腹構成と三千トンで区切った船腹構成とがほぼ同じになっておるということが一つであります。さらに水先利用船の平均トン数であります。水先利用船の平均トン数は、昭和二十四年当時におきましては三千百三十八トンであります。三十七年の水先利用船の平均トン数は七千五百トンであります。大体これは二倍半近くに上がっております。それでこういうように水先利用船が、強制水先区におきましてはもちろん下限のものが相当ありますけれども、全体といたしまして水先利用船というものがすでに三千トンをはるかにオーバーして七千トン程度平均トン数になっておるというような実情から見まして、当然水先人というものは岸壁につけるだけではございませんで、行き合います相手の大型船の運航というものを十分知っておる必要がございます。現在の大体のものはほとんどそういうようなものが要召の対象になりますので、そのような関係からこれを三千トンというような限度をつけた次第でございます。  それから海上航行安全審議会の答申につきましては、水先人技術水準を引き上げるため、船長履歴に関する水先人免許要件を改めることという答申でございます。この審議の過程におきまして、率直に申し上げまして五千トンというような考え方もございます。ただいま申しましたように、水先利用船の平均トン数が七千トンをこえておるような状況から見まして、五千トンというような意見もございます。あるいはまた現行法のような考え方でいくという考え方もございましたけれども、結局ただいま申したような状況から見まして、これをもっと引き上げたほうがいいというようなことで、先ほど申しましたような数字的な根拠からこれを三千トンというふうに引き上げた次第でございます。
  28. 有田毅

    有田政府委員 お答え申し上げます。水先中の船舶につきまして発生いたしました海難は、昭和二十八年におきまして五十八件、三十五年におきまして五十九件、三十六年が六十七件、三十七年が五十二件、三十八年が四十六件となっております。
  29. 久保三郎

    久保委員 いまのは水先をつけた場合の事故件数でありますが、これと同様に、たとえば強制水先地域、そういうものもありますし、いずれにしても水先をつけなければならぬような地域で、それではつけなかった場合の事故は何件あるか、こういう比較なんです。それは出ておりますか。
  30. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 お答え申し上げます。御承知のように、年間の海難総事故件数は約二千八百件ばかりあるのでございますが、そのうちの三四%は港内海難でございます。でございますので、先ほど次長からお話のありましたように、その三四%、七百隻くらいの港内海難の中で水先人をとった海難が約五十七件ばかりということに相なろうと思います。
  31. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、概括的に見れば、水先はとったほうが事故件数は少ない、こうですね。そこでその事故の内容でありますが、これは水先の責任というか、その技術的なものによったものはどの程度あったか。それはあまり調べてないですか、どうですか。
  32. 高林康一

    高林説明員 水先の乗っておりましたところの水先中の船舶の発生した海難につきましては、先ほど海上保安庁から御答弁がありましたとおりでございます。この水先中に発生いたしましたところの海難に関しまして、水先人の責任のある事件といたしまして、海難審判によりまして水先人が懲戒された事例といたしましては、昭和二十八年は四件、三十五年が三件、三十六年が五件、三十七年が四件、三十八年は二件というふうになっております。
  33. 久保三郎

    久保委員 その事故を起こした水先人というのは、技術的に全く間違いがあったということになるのですか。それはどうなんです。その他の条件が何かあったのですか。そういう点はお調べになってないですか。
  34. 高林康一

    高林説明員 この点につきましては、海難審判によりまして懲戒されました件数が、先ほど申しましたようにございますが、それぞれ業務停止なり戒告なりがございまして、それらについてはやはり水先人の過失というようなことが原因になっておるわけでございます。その他いろんな条件はもちろんあり得たかと思いますけれども水先人の過失に基づくところが大きかったのではないかと考えられます。
  35. 久保三郎

    久保委員 それで、この水先人資格要件に関連して技術の向上でありますが、先ほど説明があったいわゆる昭和二十四年ごろは平均三千トンくらいだ、最近では七千トン以上だ、だから大体扱う船からいっても、これは三千トンの経験をさらに延長する、こういうことなんで、一つの理屈としては成り立つと思うのです。ただそこで水先にかかる船は種々雑多だということでありますが、特にその事故を起こすようなものは大きい船が多いのですか、いままでのあれでは。これは保安庁が調べてあるのですか。わかりますか。
  36. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 私たちの統計から類推いたしますると、先ほど申し上げました港内海難件数の約六〇%ばかりは汽船の海難になっております。御承知のように、汽船の海難は、大部分が水先人をとらなければならない、またはとるべき対象の船でございますので、先生のおっしゃったようなことに相なるかと思います。
  37. 久保三郎

    久保委員 関連ですからこの辺でやめますが、先ほど水先人が懲戒処分を受けたというのだが、船長との関係は、先ほどお話があったとおりでありまして、船長は一切の責任からのがれるわけではないですね。そうしますと、水先人というのは船長との契約ですか、船会社との契約ですか。この契約は、いわゆる民法上の契約だろうと思うのですが、そういう場合に船長は処罰されておらぬのですかな。これはどうなんです。まず一つは契約の形態、それと事故を起こした場合に、いま幾つか例があったその懲戒処分を受けたという水先人が乗った船の船長は、その場合どうなっているのですか。
  38. 高林康一

    高林説明員 まず水先人水先契約といいますか、水先人の法的地位といいますか、それにつきましては、いろいろの議論があるわけでございます。それでまず船長が処罰されておるかどうかという点につきましては、水先法十七条二項にありますように、船長の責任は解除されておらないわけでございまして、船長も同様に処罰されるわけでございます。水先契約の性質につきましては、これが請負契約であるか、あるいは雇用契約であるか、あるいはまた委任契約に準ずるものであるか、いろいろ学説、判例が分かれておりますけれども、大体において船長の助言者というような考え方のほうが現在は強いようでございます。
  39. 久保三郎

    久保委員 しかしそれは法律的には問題があるというか、契約の形態はきちっとしておかないと混乱がさらに起きやしないかと思うのですが、そういう話は政府部内にはないのですか。
  40. 高林康一

    高林説明員 もちろん水先船長からの要召に基づくところの契約で、あくまでも船長からの要召に基づいてやるわけでございまして、その実体的な中身は変化はないと思います。
  41. 久保三郎

    久保委員 それはいいでしょう。  もう一つお尋ねしておきますが、技術的にさらに向上するというのには、その特定水域、水先区域の航行に十分習熟していればいいと思うのです。これが要件としては最大だと思うのです。そのほかに一般的な要件、気象なりあるいはその他の法規ですか、そういうものに熟していることが当然必要だと思うのですが、一番必要なのはその港の状態を十分知っていること、自分の庭と同じようによく知っている、目をつぶっても歩けるというふうになれば、これは一番適格だと思うのです。そういう意味から言うならば、必ずしも船のトン数ではなくて、その港における習熟さが必要だと思うのですが、そういう観点からはあまりものは考えないのですか。いまのたとえば修業生にしても、一緒に乗って見習うのは三ヵ月ないし四ヵ月でしょう。そうしますと、たとえば関門をよく知っている、船長をやっていた、関門ならばしょっちゅう出入りしていた、しかし京浜にはただ一ぺんも入っていないというような船長は、三カ月、四カ月とした場合にはたいへん問題があると思うのですが、そういうケースはあまりないですか。
  42. 高林康一

    高林説明員 御指摘のように、水先人が当該水先区の実情というものを十分把握しておらなければならないということは当然であります。その点につきましては、現行法六条におきましても、水先人試験というものは、水先区の実情に即して水先能力を確かめるということをいっておるわけであります。ただその具体的な水先区についての知識ということは、そういうようなことで、試験あるいはそのところにおきまして、先生がおっしゃいましたように四カ月程度実習をやるというようなことをやっておるわけでございますが、しかしながらそれよりも、基本的にはやはり全体的に操船技術そのものが非常に重要な要件である。どこにどういうふうな場所があるかというような具体的な実情について、もちろん相当程度個別的な知識というものは重要な要件ではございますけれども、やはり現在の運行の状況から見ますと、一般的な操船技術操船知識、そういうようなことが非常に重要な要件になるというふうに考えておるものでございます。
  43. 久保三郎

    久保委員 それで、操船技術の問題ですが、これはトン数で必ずしもきまるものではないようにも思うのですが、どうですか。たとえば自動車に例をとりますと、一種免許という大型のほうをとっている者が、たまたまわれわれも経験するのですが、小さい車を運転してもこれは大体できるのです。楽になりますから。大体免許はとってあるが、普通小さい車に乗っている。たまたま大きい車も運転するということになると、大きい車はしょっちゅう運転しないが、二、三回やれば身について大体運転できる。船と車で大きさがだいぶ違いますけれども……。だからその辺のこともあるんだから、むしろさっき言ったように、三千トンに上げたことも一つの理由でありますから、これはいい。しかしこれを全然度外視しては考えられないけれども、少なくとも千トンの船長であっても、修業期間中に三千トン以上の船で修業すればいいということにはならぬのですか、どうですか。
  44. 高林康一

    高林説明員 現在の水先利用船のトン数が非常に大きくなったことは先ほど申し上げたとおりでございます。なお、水先区につきまして入港船がどんなふうな状況になっておるかといいますと、最大のトン数といいますのは、二十四年が八千トンでございますが、三十七年には三万トンというふうになっておるわけであります。これも約三倍以上上がっておるわけです。したがって、こういうような大型船操船ということが特に強く要望されることが水先区の実態だというふうに考えておりますが、この大型船操船につきましては、やはり小型船操船ということよりも困難であり、かつ高度の技術を必要とする。先ほども申し上げましたように、実際のやり方におきましても、各船会社におきましては、まず小型船に乗り組み、それから逐次大型船のほうへ移っていくというふうなことをやっておるところもやはり相当——小型船技術というものが直ちに大型船に通ずるものではございません。やはりその間に相当程度技術的な違いが出得るのではないか。もちろんこの場合に、千トンと三千トンと、どこまで質的な違いがあるかというような点についてはいろいろ問題があり、画然と数字的に技術の水準というものを出すことは困難でございますけれども、現在の港湾の入出港状況から見まして、やはり三千トン以上の船を自由に操船できるような技術水準というものを確保したいというふうに考えておるものでございます。
  45. 野間千代三

    野間委員 いままでの久保先生質問あるいは御答弁などで大体わかったのですが、確かに船長技術が必要には違いないけれども船長技術だけで水先人技術がオールマイティだということにはなかなかいかない部分があるのじゃないか。それは先ほどの久保先生の御質問などにもあったように、そういう点もあると思うのです。ぼくもそんなふうな気がするのですよ。それで、今度の改正の場合に、最初言いましたように、改正の部分でまいりますと、どうもその辺だけに詰められてしまうという気がするので、なおほかに検討する必要のある部分が、水先人技術という部門で必要じゃないかというふうに考えましたので、いままで質問しておったのですが、一つの機会を見て、どこで検討するのでしょうか、あるいは審議会等で検討するなり、そういう機会を持っていただいたらどうかということを考えますので、その辺だけつけ加えておいてこの分は終わることにいたします。  それから、新設になりました設備の問題なんですが、第十五条の二、これは新設ですね。「水先船その他の水先業務に必要な施設であって省令で定めるものを確保しておかなければならない。」こうなっておりますが、この確保しなければならないのはだれなんでしょうか。だれが設備をするのでしょう。
  46. 高林康一

    高林説明員 水先人でございます。
  47. 野間千代三

    野間委員 水先人が、自分の業務上の設備としてつくる。その場合に省令でもって基準をきめるわけですね。基準をきめて、その基準に基づいて水先人がそれぞれその施設を確保しなければならない、こうなるわけですね。そうなりますと、全然運輸省のほうでは、どういう設備になるのかよくわからないのですが、そういう設備について、水先人に対して補助をするとか、そういう面はないのですか。もっぱら水先人が独自で、自分の費用でするのかどうか。
  48. 高林康一

    高林説明員 省令で定めますものは、水先艇のほかに、必要な電話あるいは見張り所、信号所というようなものを確保の対象として考えておるわけでございます。これを確保いたしますところの必要な資金と申しますか、そういうものにつきましては、直接国からの補助を出すものではございません。ただこの二十二条におきまして、水先料を省令で定めておるわけでございますけれども、その水先料の算定につきまして、こういうような水先業務用施設というものを確保できるように、そういうようないわゆる業務施設というものを、その水先料というものの中で考えてこれを定めておるものでございます。
  49. 野間千代三

    野間委員 第二十七条などで、「水先人は、水先区において左の事項を認めたとき」というふうにいろいろありますが、水先人がしなければならない水先をしておるとき以外の、たとえば標識がどうしたとか航路の障害となるべき物があったとか書いてありますね。確かに水先人水先をするときに必要なものですけれども、そういうものが、いまの御答弁ですと、たとえば見張り所であるとかあるいは信号所であるとか、そういう方面等からも、つまり港の安全を相当程度監視をするといいますか、そういうような面の仕事があるとすると、それに必要な信号所あるいは見張り所はどの程度のものなんでしょうか。それを水先人という個人に責任を負わせる。これは施設として置くべきものじゃないかという気がするのですけれども、そういう関連はどうなんですか。
  50. 高林康一

    高林説明員 先ほど申しました見張り所、信号所と申しますのは、たとえば港湾におきまして、それぞれ港湾管理者あるいは海上保安庁等において設置しているのが実際としては大部分でございます。ここで申しますのは、いわば自分の業務をやります範囲内におきまして必要な、あそこに入ってきた、それだからこれから行かなければならないというような意味の見張り所やなんかでございます。全般的な航路標識あるいはまたその他の信号所その他につきましては、現在国または地方公共団体においてそれぞれこれを施設しているという状況でございます。
  51. 野間千代三

    野間委員 まだよく調べていないのですが、けさの新聞でちょっと見たのですが、横浜の港のほうで水先人が、ストライキというのですか、そういうことになるのでしょうかどうですか、そういうことがあるというふうに伺っているのですが、どういう要求あるいは問題があってそうなっているのでしょうか。何か水先人水先料とか、いま言われるような施設とか、そういうものとの関運があるのかどうか、おわかりでしたら……。
  52. 高林康一

    高林説明員 まだ詳しく調べておらないのでございますが、大体聞いておりますところでは、水先艇がございます。その水先艇に乗り込んでいるところの船員がいるわけでございますけれども、その賃金改定に関しますところの要求のようでございます。ただいままでの状況では、特に水先業務に支障が生ずるような状況には立ち至っていないようでございます。なお、詳細は調べて報告したいと思います。
  53. 野間千代三

    野間委員 それは私のほうでも調べが十分でないので伺っているのですが、水先人というふうに新聞に出ておりましたものですから、もう少しおたくのほうでも詳細に調べていただきたいことが一つと、それからいまちょっと出ました船員に何か問題があるようでしたが、それは水先人が雇っているのですか。それとも何か組合が雇っているのですか。水先人組合が雇っているのですか。それはどういう関係になっておりますか。
  54. 高林康一

    高林説明員 これは水先人が雇っておいでになるところもございます。それから地区によりましては、水先人が共同して何かの団体をつくりまして、そこで雇用契約を結んでいるというような地区もございます。必ずしも一律ではないかと考えます。
  55. 野間千代三

    野間委員 そうすると、その船員そのものにもまたいろいろ問題があるようですが、事情はよくわかりませんから、そういう実態について、あとでけっこうですから、どういう実態になっておるのか、いまの問題と合わせて少し詳細にお調べをしておいていただきたいと思います。
  56. 高林康一

    高林説明員 現在水先人または水先人組合が雇用しておりますところの水先船の乗組員の合計は八十一名でございます。なお先ほどの横浜の件につきましては、その賃金の改定要求ということになっておるようでございます。
  57. 野間千代三

    野間委員 わかりました。  それでは次に移りますが、その前に施設の問題、大体いまのお話ですと、そう多額なものでないというのですが、つまり水先人が個人で負担してもそう問題がない。自分の商売上に必要な道具だという感じを受けるのですが、それであればそう問題ないと思いますが、そうでないことの施設になりますと、多少個人に負担させるのは問題があるというような気がしますので、その辺はもしそういうことであればひとつお考えをいただきたいと思います。  それから約款ですけれども、第二十二条で新設して、水先人は約款を定めて運輸大臣に届けるということになっております。その約款というものはどういうものを規定するのですか、その項目についてちょっと御説明願いたい。
  58. 高林康一

    高林説明員 水先約款に規定いたします事項といたしましては、私ども現在考えておりますのは、業務内容に関する事項、水先の引き受けに関する事項、水先修業生の帯同に関する事項、水先人の責任に関する事項、それから損害賠償に関する事項あるいは水先料の収受に関する事項、こういうようなことを大体約款の内容として考えております。なお具体的なことにつきましては、さらに今後またこの約款の内容について検討を重ねてまいりたいと思っております。
  59. 井岡大治

    ○井岡委員 関連ですから私は簡単に二、三お尋ねをしたいと思います。  この水先約款とそれから水先人会の会則、これとの関係はどういう関係になるのですか。もっとわかりやすく言うと、水先会というものは何をする会なんだ、こういうことです。それによって本人の約款と若干関係が出てくるのです。
  60. 高林康一

    高林説明員 水先人会は何をするかということが第一点でございますけれども、これは改正法案の二十二条の三にございまするように、「水先業務の円滑な遂行に資するため、合同事務所(会員のする水先の引受けに関する事務を統合して行なうための事務所をいう。以下同じ。)の設置及び運営、水先人の養成並びに会員の指導及び連絡」ということでございまして、結局その港におきまして複数の水先人がいらっしゃるわけであります。そういうようなところに水先の要召がございます。それの引き受けに関して、あっちに行ったりこっちに行ったりしなくてもいいように、全体的にそこでいわばセンターとして活動するということが主たるねらいでございます。
  61. 井岡大治

    ○井岡委員 そこで事務を統合して行なうということについては、こういうように理解していいですね。水先を依頼する、それを引き受ける、そこでその会は特定の人に、あるいは順番でもいいのですが、これに委託をする、こういうように理解していいですか。
  62. 高林康一

    高林説明員 水先人の契約の締結主体は、あくまでも個々の水先人でございます。したがいまして、その水先人会が船長または船舶所有者と契約の相手方となるわけではございません。個々の水先人の方が契約の主体になるわけでございますけれども、その場合にいろいろな順番、だれが引き受けるとか、またどこに行ったらいいのか、その辺もわかりませんと困りますので、そういうような一種の、先ほど申しましたことばで言えばセンター的なものとして考えておるものでございます。
  63. 井岡大治

    ○井岡委員 単にセンターということだけでなくて、もっとわかりやすく言うと、あっせんをする場所だ、こういうように理解していいのですか。
  64. 若狭得治

    ○若狭政府委員 法律によりまして、水先求めがありましたら水先人は必ず船に行かなければならぬということになっておるわけでございます。ことに強制水先におきましては、水先人を乗せなければ船は入ってはいけないということになっております。水先人の能力にはもちろん限度がございますし、多数の水先人がおりまして、これをどういう順番でどういうふうにどの船を担当させるかということを連絡をし、協議するために一つの機関を置いたほうがいいのじゃないか。現在は水先人組合という民法上の組合がありまして、そういう連絡は事実上行なっておるわけでございます。しかしその運営についていろいろな問題がございますので、これは法律に取り上げまして、法律上こういうものを強制的に置かせると同時に、その合同事務所的な水先人会に対して、運輸大臣が必要な監督権を行なうということが今回の改正の趣旨でございます。したがいまして、個々の水先人水先行為というものは、個々の水先人の契約でございますけれども、多数の水先人が同時に存在する場合におきましては、それをいかに調整して水先需要にこたえていくかという便宜のために、こういうものを強制したほうがいいのじゃないかということでございます。
  65. 井岡大治

    ○井岡委員 そうすると、その約款——本人の約款というものにもいろいろ何が出てくると思うのです。たとえば水先を絶対必要とする港、その港における約款というものは、ほぼ同一のものだというふうに理解していいですか。
  66. 高林康一

    高林説明員 そのとおりでございまして、私どもといたしましては、実際の面といたしましては、一種の標準約款的なものをいろいろ考えていきたいと思っております。
  67. 井岡大治

    ○井岡委員 そこでもう一つ尋ねますが、それではその水先人会に入会及び脱退ということは、一つ法律の中で明らかにしておりますが入会は二十二条の五で「水先人は、当該水先人会に入会しなければならない。」という義務規定を出しておる。ところが脱会をする規定というものは会則の中にあるわけです。これはどういうときに脱会をするのか、その点を明らかにしていただきたい。
  68. 高林康一

    高林説明員 法律上におきましては、かってな脱会というものはないという考え方でございます。ただ水先人会の会則におきまして脱会あるいは退会といいますか、そういうようなことを規定いたしますのは、法律によりまして水先人免許の取り消しを受ける、あるいは老齢のゆえに退職するとか、そういうようなことがございます。水先人会においては、やはりそれぞれそういう退会に関するところの規定を置く必要があるのではないかと考えております。
  69. 井岡大治

    ○井岡委員 もうこれで終わりますが、それでは退会をした者あるいは出ていった者は、その港においては水先業務ができない、こういうように理解していいですか。
  70. 高林康一

    高林説明員 そのとおりでございます。すべて水先人はそこに入会するということになっておりますので、したがって退会する理由といたしましては、先ほどの取り消し等の理由による場合にのみ考えられます。
  71. 井岡大治

    ○井岡委員 退会の理由はわかりましたが、退会をした場合、その業務はもう廃業した、あるいはまあ簡単なことばで言えば廃業ですね。老齢であろうが何であろうが、これはやめるということですから、廃業した、こういうように理解していいかということです。
  72. 高林康一

    高林説明員 廃業した結果、退会ということになるわけだと理解いたします。
  73. 井岡大治

    ○井岡委員 それじゃ、あなたの言われるのは、退会ということは、廃業するから退会したい、こういうことなんですか。私が退会をする理由というものはどこにあるんだ、こう言えば、あなたは老齢のためにこれをやめたい、こういうことでやるんだ、こういうことなんです。ところがいまのお答えは、廃業してから退会をするんだ、こういうことだったですね。若干そこのところが違うように思います。ですから、退会をする者はやめるということが条件でなければやめられない、こういうように理解していいか、こういうことを聞いておるのです。
  74. 高林康一

    高林説明員 そのとおりでございます。
  75. 久保三郎

    久保委員 関連していまの問題をついでだから聞いておきますが、そうするとこれは退会する。というと水先業務はやれない、それはどこに書いてありますか。やれないとは書いてないんだな。その地域においては組合をつくらなければならぬ、こういうことなんですね。その辺の関係はどうなんです。
  76. 高林康一

    高林説明員 改正法案の二十二条の三に、「水先区を同一にする水先人は、当該水先地区について一個の水先人会を設立しなければならない。」、そして加入強制の規定があるわけです。したがいまして、水先人たる間は当然そこに入っておるということになっておる次第でございます。
  77. 久保三郎

    久保委員 だけれども水先人免許を与えておるわけですね。退会すれば、また入会しなければ、その間は業務が停止される、こういうことなのか。資格はそののままでしょう。入会することが資格要件一つにはなっていないわけですね。業務をやることになっている。退会した場合にはどうなるか、これは業務の停止ととるかどうかということ、どうなんですか。
  78. 高林康一

    高林説明員 水先人たる水先業務を行ないますところの者は、当然水先人会を設立いたしまして、そこに入会しておるわけでございます。したがいまして、その設立をし、そしてそれに入会していないときには、その入会しない者については、これは水先人たるところの一種の就業資格というものが二十二条の三等できめられておるわけでございまして、この就業資格というもの、そういうようなものが、結局二十三条の規定によりまして、そこに入会しなかった場合、あるいはかってに退会した場合、そういうような場合には法律規定の違反になるわけでございまして、そこで行政罰というようなことが出てまいるわけでございます。
  79. 久保三郎

    久保委員 でも、いろいろ水先人会というのは、これはこの時期で直ちにどうということは言いませんけれども、言うならば弁護士会、こういうものと対比してみて、もうちょっときちっとしたらどうかと考えるのですがね。たとえば内部的な規律にしても、弁護士会にはあるわけですね。あとから野間君から質問が出るかと思うのでありますが、たとえばどうも水先人が怠慢だったり、あるいは技術がどうもまずいとか、いろいろな苦情が船長から出ますね。出ますが、それが運輸大臣に直接いくわけでしょう。しかし実情としてはなかなかそうはいかぬと思うのです。そういう場合には、言うならば、これは水先人会で処罰というとおかしいのでありますが、懲戒の権限もあるとかいうようなことに持っていったらもっとすっきりしてよかろうと思う。  それから、水先人の約款でございますが、契約についても水先人会が介在しておる。いわゆる職業安定法に基づくところの仲介あっせんですね。そういうことになるのですよ。これはそうではないのでしょうが、もしそうだとすれば、職業安定法か何かで別の問題が出ると思うのですが、そういうところが、やはりあいまいですね。こういうところをきちっとしてやっていく。  それから、関連だからあわせて意見を言いますが、海上航行安全審議会の答申の一番終わりに、やはり全国的なものをうたっておりますし、公益法人として云々、その場合には、どうしてもいま言ったように、弁護士会的なものを少し考えて、もっとそこへ入れてやったらどうか、こういうように考えます。これは言うならば、水先人船長との契約関係が、どうも前からのしきたりでずっとなっていくから、こういう少しすかっとしない体系だと思うのです。その辺をあわせて研究する必要が私はあると思うので、意見だけ申し上げておきます。
  80. 野間千代三

    野間委員 ちょっと問題があるのですけれども一つは約款を水先人がこれの規定でいきますと持っているわけです。そうすると、約款というのは、水先人によってそれぞれ違うということになるのかどうかが一つ。それから約款というものと水先人会との関係ですね。これは無関係なのかどうかという点をひとつお尋ねいたします。
  81. 高林康一

    高林説明員 御指摘のように、この二十二条の二の規定では、水先人それぞれが水先約款をきめますので、形の上では個々別々ということは法律的にはあり得るかと考えます。ただ二項、三項の規定にありますように、私どもといたしましては、これらの規定を考えまして、これを先ほど申し上げましたように、なるべく統一した標準約款的なものにやっていきたいというふうに考えております。もちろん、個々の水先の特殊事情を反映させるというようなことについては、またそれぞれの違いは出てくるかと思いますけれども、全般的に共通したところの標準約款的なものを考えてまいりたいというふうに考えております。  それから、水先人会との関係につきましては、水先約款を定めるのは、二十二条の二の規定にございますように、水先人自身でございます。したがって、形の上では水先人会と直接的な関係はないわけでございますけれども、実際問題といたしましては、先ほど申しましたように、統一した約款というものを考えておりますので、水先人会においていろいろ相互の連絡というような意味におきまして、これを研究するということは十分あり得ることと考えております。
  82. 野間千代三

    野間委員 この法律がそういうふうにできておるのですから、そういうことになるのでしょうけれども、約款というものですね。先ほど井岡先生あるいは久保先生からちょっと触れておりましたけれども、同一の水先区においては、同じ約款で契約をして仕事をしていいんじゃないか、そうあるべきじゃないかというふうにぼくらは思うのです。そうすれば、しかもこの規則では、同一の水先区には一つの会をつくれ、こう言っているわけでしょう。それにクローズド・ショップですね。入らなければならぬ、そうなっているわけでしょう。そうなってくれば、当然水先人会と約款との関係をきちっとつけて、これはいわばしろうと考えかどうか、それほどきちっと同一区では水先人会を一つつくらなければならぬ、それで脱会する者はだめなんだ、入らなければならぬ、それほどきついものであるならば、この水先人会が持っておる権限といいますか、性格といいますか、そういうものも、ただ単に事務所を持つとか、つまり、こちらからもちょっと話があったのですが、水先人会は看護婦会みたいなものですね。そういうふうなますらを派出会みたいなものではなくて、きちっとした規則があって、その中に約款的なものを入れて、そしてその会がきちんと団体として成立をして、船との契約をするなり、それくらいの性格をつけないと、脱会するものはだめなんだ、入らなければできないのだ、国の法律でそういう義務づけをしているのですから、これはそれぞれの水先人にすれば、いわば拘束するならするだけのきちんとした会の性格を与えるというふうにするべきではないか。一つ触れたいのは、水先人の、たとえば第二十三条の「怠慢」、「拙劣」、「非行」等があった場合となっていますね。これはいまの規定でいくと船長が勧告するなり申告するのだと思うのです。船長以外にないと思います。そうすると、これは人情の問題でしょうが、船長が依頼するわけですね。船長さんは水先人を依頼をしてやるわけでしょう。それがへただと言えばいいのでしょうが、自分が依頼した水先人は、なるべくとにかく確実な、優秀な水先人でありたいというふうに思うわけでしょう。ところが来た人がうまくなかった場合に、船長の責任で勧告をするなり申告もする、こういうことになるわけでしょう。そうして水先人の中で切磋琢磨するなんということがあったほうがいいのじゃないか。それが水先人の持つ責任じゃないかと僕は思う。水先人同士の中で規制があって、なおかつ船長が自分の船独得の問題で技術上問題がある。先ほど言われるような、この船には適当でないとか、三千トンの船だ、一万トンの船なんだから、この来てもらった水先人は適当でないという判断は船長がしていいと思うのです。そうではなくて非行であるとか怠慢であるとか、そういうものまで船長に、——それはもちろん最終的には船長に責任があるでしょうが、それを運輸大臣に届けたり何かすることはしにくいという事情もあるのじゃないかと思うので、やはりこの規定も並べ方に問題があるとすれば、あとは法制局のほうの関係でしょうが、いずれにしても水先人一つの区で会をつくって、そしてその会を経てなりして水先人が供給されるとすれば、 それだけの性格を水先人会に与えるべきじゃないかと思うのですが、そういう点はどうですか。
  83. 高林康一

    高林説明員 御指摘の点、私ども実は水先人会というものについて、たとえば先ほど久保先生の意見の中にもありましたように、弁護士会あるいはそういうような規定ということもいろいろ考えてみたわけであります。ただそこで一番問題になりますのは、法人格を与えるかどうか、あるいはまたそこに自治組織といたしまして、いろいろな懲戒権を与えるとか、あるいは先生のおっしゃいましたようないろいろな中に対するところの強制権を与えるとか、そういうような点について検討したわけであります。ただ問題は、資料にもございますように、全体といたしまして水先人の数が非常に少ない。また各水先区ごとにとってみますと、一人区というようなものも若干程度ございます。したがって、そういうものについて一律的にこれをやるということには相当無理があるのではなかろうかというふうに考えまして、そういうような、いわば一人、二人あるいは五人以下、その辺の境目が非常に問題でございますけれども、御指摘の点は私どもといたしましてもいろいろ検討してみたわけでございます。しかし、そういう一種の自治組織にあまり強力な権限を与え過ぎることも、また逆の意味で問題が出得るのではなかろうかというふうに考えまして、いわば事務の共同処理という点を主眼においたところのこの水先人会という規定を置いたわけでございます。
  84. 野間千代三

    野間委員 この表でも、いま言われるように、実情としてはわかるのです。それはわかるのですけれども、しかし、言われるように、脱会をしたら廃業だというのですね。何というか、クローズド・ショップでいくわけでしょう。それほどの水先人会というものをつくっておいて、しかもその仕事は事務所だけというのはどうもふに落ちない。しかも一方では約款をつくってそれをちゃんと事務所に見せて、利用者の利益を害することがあってはならないというような約款でなければならぬわけでしょう。そういうことですから、いま直ちにどうこう言いませんが、どうも不合理な点があるような気がします。実情がこういう事情であるからそれはわかりますけれども、実情がそうであるならば、水先人会に入らなければならぬということをそれほどきつくする必要があるのかどうかというふうな質問がむしろ出ると思うのです。それならば、実情がそうであれば、これは二十二条、二十三条をもう少しやわらげて、便宜をはかったほうがいいことは事実ですから、事務所をつくりなさいということはいいと思うのですが、この面はもう少し検討していただいたほうがいいじゃないかというふうに思います。これはひとつ御検討いただきたいと思います。  もう一つ、海上航行安全審議会ですが、これはまだよく調べていないのですけれども、構成人員についてお答えいただきます。
  85. 高林康一

    高林説明員 海上航行安全審議会は、水先法、それから船舶職員法に定めます事項、その他海上航行安全に関する重要事項を調査審査するための運輸大臣の諮問機関でございます。これは水先部会と船舶職員部会とに分かれておりますけれども、当面関係いたしますところの水先部会については、部会長は海難防止協会の理事長、委員といたしましては、委員全部で八名でございますが、この委員の八名は、学識経験者船長協会、あるいは船会社、商船学校卒業者、あるいは港湾管理者、パイロット協会というようなところから選任されておるものでございます。なおそのほかに専門委員といたしまして水先人の方、その他の学識経験者あるいは船主協会の方たち、そういうような方が入っておいでになります。
  86. 野間千代三

    野間委員 わかりました。何か船長の方が、船長という仕事上から参加がしにくいというような事情があるのじゃないかと直感したのですが、船長協会というようなところからも委員として出ているわけですね。——わかりました。  以上で終わります。
  87. 川野芳滿

  88. 久保三郎

    久保委員 二、三お尋ねします。  水先修業生の問題でありますが、先ほどの説明だと、第三者機関が推薦して、そして水先人に推薦する修業生、これは拒否権はございますか。法律のどこにもないのですが、拒否権があるかどうか。たとえば第三者からいいという者が私なら私に推薦されたが、ちょっと困るという場合もあると思うが、いかがですか。
  89. 高林康一

    高林説明員 理論上は拒否権があると思います。ただ実際問題といたしましては、いままでの経験におきましては、専門委員会において推薦した者を拒否したような事例はございません。
  90. 久保三郎

    久保委員 それともう一つ、これは二十九条になりますか、現行では三十条でありますが、「組合または水先人は、」「水先の業務及び水先修業生に関する事項を運輸大臣に届け出なければならない。」こうなっている。今度のものについては、二十九条ではそういうものがないのですね。いわゆる修業生というものを三十条では特にうたっていた。ところが今度の二十九条にはそれがない。ないとなれば、これはどうするのですか。いかがですか。
  91. 高林康一

    高林説明員 改正案の二十九条におきまして、運輸大臣が必要な報告を聴取するというふうに改正しておるわけでございます。そしてこの報告聴取権に基づきまして、現行の三十条の規定に基づいて聴取しておりますところの水先実績とか、あるいは水先修業生に関する事項とか業務というようなことについての報告を求めることを考えておるものでございます。
  92. 久保三郎

    久保委員 現行法三十条で特にこの修業生に関する事項というものをきめてある理由は、これは言うまでもなく、従来、修業生水先人との間の関係が必ずしも近代化されていないというようなところに私はあると思うのです。今度これを明記されていたものを削除するということについては、いまの説明で包括されているのだと言うけれども修業生に関する事項は非常に大事な点だと思うのです。これは省令か何か、規則でそういうものをきめるのですか。
  93. 高林康一

    高林説明員 これは省令で定めるつもりでございます。
  94. 久保三郎

    久保委員 特に第三者機関で推薦された者は、スムーズに水先人について修業生になり得るというような道が円滑にいかないと、これはやはり近代的な水先人というものはできないと思うのです。そういう点で私は申し上げたわけです。  それからもう一つは、これは海上保安庁に聞きますが、水先人制度ですね。いままでの制度では、皆さんのほうは現場においてこれの監督権はないようでありますが、いろいろこれと接触する。水先人制度についていままでどういう点がまずかったか。そういう点が幾つかあると思うのです。特に昨年でありましたか、宗像丸のタンカー衝突事件のときにも水先人の問題が出たと思うのです。そういうのが今度の改正で解消されると思っているかどうか。その点どうですか。
  95. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 先ほどもお答え申し上げましたが、たとえば昭和三十七年の例を見ますと、水先人をとった船が約六万七千隻くらいございまして、そのうち事故が起こりましたのがわずか五十二件というような点から見まして、私ども、完全と申し上げることはできませんが、ある程度まで現在の制度なり、あるいはいま考えられております改正制度で差しつかえないのではないかと考えておる次第でございます。
  96. 久保三郎

    久保委員 特に最近の海難実態から見ましても、単に強制——強制ばかりではありませんが、現行の水先区、それだけに限定してよろしいかどうか。範囲の問題。いわゆる水先人をつけなければならぬ区域の問題ですね。特に狭水道というか、そういうところ、これはこの間も東京湾の入り口ですか、あすこはしょっちゅうやっているようでありますが、そういう場所は当然水先案内をつけるというところまで踏み切るべきじゃなかろうかと思うのですが、こういう点についてはどう考えておりますか。
  97. 高林康一

    高林説明員 全体的に水先区の設定につきましては、確かにこの新設等が考えられなければならないのではないかというふうに思います。たとえば北海道方面におきましても、苫小牧等におきまして、最近非常に船舶のふくそうが激しいというようなこともございます。その他いま水先区の新設廃止等の検討をしております。さらに強制区につきましては、いま五区が強制区になっておりますけれども、この五区のほかに御指摘のありましたような東京湾というようなことについてもやはり考えなければならないのではないかということで、検討を急いでおるわけでございます。
  98. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、水先区を新たにそういう場所には設定をするということでありますか。それとも、そういうものは、いうならば外洋に近いところでありますが、シー・パイロットというか、そういうかっこうになると思うのですね。そういう新たなものを航行制限令というのかどうか知りませんが、規制令をつくって、そういう地域は規制するということですか、どちらですか。
  99. 高林康一

    高林説明員 二つとも考えております。まず水先区を新設いたしますような地域というようなものについても、今後さらに新設を検討しております。それから強制区につきましても、先ほど申しましたような次第でございまして、また場合によりましては、現在港則法の問題でございますけれども、特定水域航行令等におきまして、特定水域を二カ所きめておりますけれども、これらの特定水域をまた若干拡張といいますか、新設と申しますか、する必要があるのではないかというので検討しておる状況でございます。
  100. 久保三郎

    久保委員 問題は、水先制度そのものにも問題があって、今回若干の改正案が出てきたと思うのです。これは取り上げたのは昨年だと思いますが、綾部運輸大臣が一年かかってこれは出てきたのですが、衝突予防法もかかっているわけです。最近の海難からいって、衝突予防法並びに水先法改正だけでは十全ではないと思うのです。いうならば、港則法は昨年ちょっと直しましたが、港則法を含めた、参事官がおっしゃるところの特定水域航行制限というか、そういうものを含めてやらなければならぬ。  そこで海上保安庁にお尋ねしたのは、たとえば水先の問題、この法律限定していうのですが、法律案そのものは、案はそのとおりでいいとしても、いま私が言ったような特定水域の水先をさせるような場所が相当あると思うのです。そういう必要性がないかという点について聞いたのですが、現場を扱う保安庁としてどう考えておりますか。
  101. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 先ほど海運局のほうから御答弁がございましたが、私たちも狭水道対策あるいは港内海難防止対策、あるいは沿岸三海里以内とでも申しますか、近い沿岸内におきます海難防止対策上から見まして、先ほど海運局側から御説明のありましたような対策は今後ともぜひ必要だと痛感しておるものでございまして、事務的にはいろいろ御意見などを申し上げまして、その制度化をお願いしておる次第でございます。
  102. 久保三郎

    久保委員 そこで、最後に申し上げておきますが、これは一年前にも申し上げたと思いますけれども、海運局で実はこういう趣旨の監督をされるわけですね。たとえば水先法もそうだ。衝突予防法もそうですね。そういう考えですね。これはこれなりの歴史的な経過はあると思うのですが、海上保安庁は現場を扱うのです。いまお話に出ているような特定水域というか海域、こういうところへもいわゆる強制水先をつけるというようなことは、むしろ海上保安庁の実務から出てくる要求だと思うのです。これは海運局のほうからは実際は出てこぬと思うのです。これは同じ運輸省だから問題はないと私は思うのだが、これは若狭海運局長じゃなくて前の海運局長は否定したのだが、むしろこういう業務というか、こういうものは海上保安庁に移して、実態に合ったような指導というか監督というか、そういうものをしたほうがよさそうに思うのだが、これはあらためて、若狭局長には一ぺんも聞いたことがないから、どうですか。
  103. 若狭得治

    ○若狭政府委員 実は海上保安庁におきましてこういう問題を所管いたしまして、船舶検査あるいは海上の安全、海難防止というような問題を取り扱っていた時代があったわけでございます。その後、たとえば船舶検査につきましては船舶行政との関係、それから海難防止等につきましては船員の問題、あるいは航海の場合における事業者の問題、いろいろな問題に関連してまいりますので、海上保安庁はむしろ航海の安全につきましては、その実施面に専心する、それからいろいろな法規面等につきましては運輸省自体において、具体的には船舶局、船員局、海運局というようなところにおきまして、これを分担して仕事をしていこうということになっておるわけでございます。実際問題といたしましては海上保安庁と常時連絡いたしておりますので、現在その面における欠陥はないであろうというようにわれわれは考えておるわけでございます。先ほどから水先法の問題、いろいろ御議論があるわけでございます。現在率直に申しまして、水先制度につきましてはいわば過渡期でございまして、われわれ、今度の改正につきましてももっと思い切った改正ができないかということをいろいろ検討したわけでございます。具体的に申し上げますと、たとえばロンドンの水先制度につきましては、ロンドン港長自身がこれを行なっておるわけでございます。日本の場合におきましては、各水先人がこれを責任を持って行なうということに何らかの無理があるのじゃないだろうかということをいろいろ検討したわけでございます。しかしながら、現在の日本水先制度の内容というものは、先ほど参事官からも御説明いたしましたように、一人区あるいは二人区というものが数としては大半を占めておるわけでございます。最近船舶が非常にふくそうしてまいりましたので、この人数につきましても相当ふえてはまいっておりますけれども、たとえば京浜あるいは阪神、名古屋、関門というようなところにつきましては、もっと思い切った何らかの制度を確立する必要があるのではないかということをわれわれ痛感いたしておりますけれども水先制度全体としては、やはり水先人というものを基礎にいたしまして、この個人的な契約というものから出発するという制度をいま一挙にくずすことにつきましては、非常な混乱が生ずるおそれがある。船は毎日のように出入いたしておりますので、そういう業務の混乱によって船舶の運航が阻害されるということは、われわれとしても当然考えなければならない問題でございますので、やはり漸進的な改革方針をとってまいりたいということを考えておるわけでございます。したがいまして、現在の水先人会につきまして、先ほどから御批判もあったように、われわれとしても非常に不十分なものだとは思っておるわけでございますけれども、これは運用によりましてできるだけ強力なものに育て上げていきたいというように考えておるわけでございます。制度の目標としては将来もっと強固なものにしていきたいということを念願いたしておるわけでございます。
  104. 川野芳滿

    川野委員長 内海清君。
  105. 内海清

    ○内海(清)委員 いろいろ論議してまいられましたので、私は簡単に二、三御質問したいと思います。  水先人資格につきましては、これは法文化されております。ところが水先人の身分と申しますか、これは、語弊があるかもしれませんけれども、そういうものについてはきわめてあいまいな点が多いと思う。それで、わが国の水先区につきましては、強制水域と任意水域とあるということで、これが併存しておるわけです。私従来感じておりましたのは、こういう関係におけるときの、特に水先人の損害賠償責任、これはいままではきわめて不明確であったと思うのです。ところがいま承りますと、今度新設されました二十二条の二によって水先約款ができる、その水先約款の中には損害賠償責任等についても考えたいという御発言があった。いまお考えになっておりますこの水先人の損害賠償責任についてどういうふうな見解を持っておられるか、これをひとつ承りたい。
  106. 高林康一

    高林説明員 水先人の損害賠償責任の問題につきましては、過去につきましては、過去ずっと、判例あるいは学説等もいろいろ多数分かれておるわけであります。この点につきましては、また外国立法例につきましても、水先人を無責任とするもの、あるいは有限責任とするもの、あるいはまた全責任を負わすもの、いろいろ多々分かれておるわけであります。そこで私どもといたしましては、現在このようにやるということを、はっきりまだ成案を得ていないわけでありますけれども、もちろんこれは、故意または重過失によるものは問題なく責任があるわけでございますが、問題は軽過失の場合と考えます。それでこの軽過失の問題につきましては、一般私法との関連から非常に問題がございます。問題点の一つといたしましては、水先人個人の負担能力ということから見まして、軽過失について全面的な責任を負わせることは非常に無理ではないかというような見解もありますと同時に、しかしながら、やはりある程度の責任を持たなければならぬじゃないかというようなこともございます。そこで考えられますのは、たとえば英国法のように、イギリスでは百ポンドを考えておりますけれども、一定の額をある程度供託なり積み立てなりいたしまして、そういうような範囲におけるところの有限責任ということも考えられるのではないかと思って検討しておりますけれども、全般的な私法の関係がございまして、なかなか早急な結論は得られませんで、いまのところは最終的な結論を持っていない状況でございます。
  107. 内海清

    ○内海(清)委員 これはなかなかむずかしい問題だと思うのです。現在まではきわめて不明確だった。そこで、そのためにいろいろな問題を起こし、水先人もここにいろいろな不安もあったと思う。この問題は私はきわめて重大だと思うのです。いま、今度の水先約款でこの点を十分考えようということでありますから、私は時間の関係もございましてここで深く入りませんが、ひとつ、これをきめられるにあたりましては、十分各方面からも検討されて、その責任も明らかにしなければならぬでしょうし、だといって、ここで水先人に大きい影響を与えることもどうか、それらの点を勘案の上で御決定を願いたい、この点をひとつ強く要望いたしておきたいと思います。  それから次には、これは十二条に水先人の員数をきめてあるわけであります。けさほどこれはいただきましたが、水先人の最低員数というのと水先人の現在員数というのがある。これはどういう関係になりますか。
  108. 高林康一

    高林説明員 現行の十二条で水先人の最低員数を省令で定めることになっております。これはもちろん最低の員数でございまして、これを上回るのが適正ではないかと考えます。ただ実態的にはこの最低員数は昭和二十四年に現行水先法が制定されましたとき以来改定されておりませんので、この数字自身は改定を要するのではないかというふうに考えておりますので、この点につきましては、先ほど述べましたように、もちろん最低員数の数字についてなお改正をしたいと考えております。
  109. 内海清

    ○内海(清)委員 最低員数というのは二十四年にきめられたままである。そうしてそれ以上の者、実際に今日百七十九名、大体倍近くの人が水先業務に従事しておるということであります。したがって、私はいまの最低員数というものは意味をなしておらぬと思うのです。特にこれからわが国の輸出入物資はますます増大しましょう。さらにまたオリンピック等を契機にしまして、観光船が入るとかその他渡航はますますふえていく傾向である。だからこの水先人の最低員数という、いまのこの法にあるものは何ら意味のない有名無実のものでありまして、少なくとも現在約百八十名近い者が実働しておるということは、これは現在の姿であって、今後を考えればますますなお多くの人が必要になってくるということであります。したがって、今回のこの改正のおりにあたりましては、この点を考えて、法案の趣旨に沿ったような員数の決定をすべきである、私はこう考える。この点は早急に公的な十分の裏づけがあるような員数に持っていきまして、水先案内が十分できるようにしなければならぬ、こう思うのですが、それについての御所見をお伺いいたします。
  110. 高林康一

    高林説明員 御指摘のとおりと考えておりまして、非常に水先需要というものが増大をしてまいっております。それで、この点につきましては、水先人の増員ということを相当今後とも推進していかなければならないと考えますと同時に、この現行の最低員数というものは、水先区によりましては実情に合わない点が出てまいっておるかと思いますので、早急にこれを改正してまいりたいと思います。
  111. 内海清

    ○内海(清)委員 もちろん員数の問題は水先区によって違うものだと思います。その実情に合った決定をすべきであると考えるのです。  それから次にお伺いいたしておきたいと思いますのは、この十三条によって強制水域がきまっておるのです。いま強制水域になっておる水域と港、これをお知らせいただきたいと思います。
  112. 高林康一

    高林説明員 現在強制区域になっている水先区の名称でございますが、横浜区、横須賀区、神戸区、関門区、それから佐世保区、以上五つでございます。
  113. 内海清

    ○内海(清)委員 いま五つの強制水域があるわけですね。この強制水域にも十三条によりますと特例もありまして、必ずしもいつもつけなくてもいいというふうになっておると思うのでありますが、こういう点から考えますと、この水先水域の、従来別表があるわけでありますけれども、たとえば区域は、横浜、横須賀といえば東京湾水域に入っておるのですか、これより別個に独立しておるのですか。
  114. 高林康一

    高林説明員 東京湾水先区のうちの一部でございますところの横浜区が強制区になっておるという状況でございます。
  115. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると東京湾水先区の中に横須賀、横浜という二つの港は強制の区域になっておる、こう理解していいのだと思いますが、こういう点がなかなかいまの水先区の従来ありましたもの、これから見ますと明確でないと思う。今度は十一条に水先区の規定があるわけですが、従来は「別表の通りとする」を「政令で定める」こうなっておるので、これらについて今後整備されるお考えだと思いますが、現行水域はそういう意味合いできわめて不明確なものが多い。あいまいなものが多い。そこでこれを整理統合といいますか、実情に合ったようにする必要があるのではないかと考えますが、その点いかがですか。
  116. 高林康一

    高林説明員 御指摘のとおり、水先区、港湾事情というものの変化が非常に激しい状況でございます。そういう意味では絶えずこれを改定し補正していく必要があるかと考えまして、今回条文の改正を行なっておるわけでございますが、今後の新設、改廃あるいは水先区の統合というようなことについてこれを実情に合いますように早急に改定を重ねていきたいと考えております。
  117. 内海清

    ○内海(清)委員 これは早急に改廃、改定、統合が行なわれるべきだと考えるのです。  それからさっきのお話によりますと、水先人平均年齢は六十・八歳ということです。現行では水先人の定年制もないわけです。ところがかなり老齢な方もある。したがって、健康の点その他いろいろ問題が存在しておると思うのです。したがって今後何らかの形で老齢の人の水先就業について配慮する必要があるのではないかというふうに考えておるのですが、この点に対しましてのお考えがございましたらお聞かせ願いたい。
  118. 高林康一

    高林説明員 水先人の現在の平均年齢が六十・八歳、相当高齢でございます。この点につきましては特に戦前法のように六十歳というような定年制を置かなかったのでございますけれども、ただ御指摘のようにこれが老齢化いたしておるということがやはり水先の質的な業務の担保という点では非常に問題がございますので、それらの方々の新陳代謝と申しますか、そういう面も推進していく必要があるかと考えます。ただこれを法的に規制するという方法ではございませんで、いわば退職年金というような制度を設けまして、新陳代謝を進めていくということを考えております。目下の考え方では、水先人の方々がそれぞれ全国団体を結成して、そしてその全国団体に一定の額を退職年金あるいは養老年金と申しますか、そういうような共済年金制度をつくっていただく。そして、現在の考え方では、これで退職いたしました場合には月額五万円というようなものはずっと退職後支給されるというような方向で、現在そういうような内容の全国団体の組織が進められつつある状況でございまして、それらの点によりまして、老齢化という現象を防いでいきたい、また同時に退職後の安定を期していきたいと考えております。
  119. 内海清

    ○内海(清)委員 この点はわれわれもなかなか意見もございますけれども、やはり狭水道でございますとか、船舶のきわめてふくそういたします港につきましては、この水先人任務はきわめて重大なわけです。これが、もちろんいま六十・八歳というのは平均年齢からいえばそれほど老齢とも考えませんけれども、実際やっておられる人の中にはかなりの老齢の方もあるということで、そういうことによってこの海難事故が起きるというふうなことがあっては、これはまことに相ならぬということを考えるのです。しかし、それらの人々の今後のこともございましょうから、これは私どもそういうことを実は考えておる。何かやはり老後の生活の安定ということも考えながら、この点は何かの形で処理すべきであるということを考えておったのでありますが、当局にそういうふうな考えがあれば、この点はひとつ早急に進めていただきたい。同時に、いまのようなお考えがあれば、これはもちろん今度の改正で定められましたが、水先人会というふうなものも、さっきいろいろ議論がございましたが、どうも聞いてみると、いまの近代的な、そういう法で定めるような会としては、ちょっとどうだろうかという考えもいたしますので、もう少しこれは、そういう法で定められてない任意の会にいたしましても相当はっきりしたものはたくさんあるわけでございますし、せっかく法で定めてあるならば、そういう万般のことも考えて、この水先人会ということにつきましても今後お考えいただく必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  それからもう一つ、これは申し上げる必要もあまりないかと思いますが、先ほどいろいろこの水先人の受験の資格等につきまして議論がございましたが、これは私どももこの点を実は考えておったのでありまして、三つのいろいろ水先人としての条件があるようであります。この条件も、先ほどいろいろ議論がございましたように、考えようによってはいろいろ問題も出てくるわけであります。将来水先人として独立してやっていきたいというふうな人もあると思います。これの養成の点もあると思いますけれども、そういうふうなことも将来考えて、自分は一生水先人としてやりたいというふうな人があれば、これもやはり国としては考える必要があるのじゃないかと考えておるわけであります。先ほどいろいろ問題がございましたからいまさら申し上げませんが、これらの点につきましてもひとつお考えおきいただきたいと思うのであります。  大体以上で終わりたいと思いますが、この水先の問題は、今後ともだんだん船舶が激増いたしますのと、それから船の大型化、こういうふうなことによりまして、さらにいま一つ港湾設備の問題、これらとともに、思い切った措置をとっていかなければならぬのじゃないかと考えるのです。そうして合理的に運営されていかなければ、わが国の産業の発達による輸出入物資の増大、あるいは観光船の出入等、これらが処理できぬのじゃないか、こう考えるわけであります。したがって、先ほどからいろいろ御質問いたしましたが、水先人の養成の問題あるいは増員の問題、あるいは採用ワクの拡大の問題、こういうふうな水先全般についてお考えいただくときが来ておる。先ほど局長もいま過渡期で今後さらにこれはいろいろな面から考えていこうということでございますけれども、きわめてこれは重要なことだと思うのであります。それらにつきまして、最後にひとつ大臣の御所見を伺って終わりたいと思います。
  120. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 御趣旨を体しまして、さらに強力にするよう今後ともやっていきたいと思います。
  121. 川野芳滿

    川野委員長 本案に対して他に御質疑はございませんか。——他にないようでございますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  122. 川野芳滿

    川野委員長 続いて本案に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決することといたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  123. 川野芳滿

    川野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  125. 川野芳滿

    川野委員長 この際、山口丈太郎君より発言を求められておりますので、これを許します。山口丈太郎君。
  126. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は資料の提出方を要請いたしたいと思います。  委員長のお手元にただいま提出をいたしておきましたが、海上における衝突の現状、気象庁の予報並びに予報と相違をした気象の現況、海上保安庁に対しましては、救難活動の三十八年度中の活動の実況、及び、国鉄に対しては、濃霧等による連絡船の海上停止回数または予報による出港停止回数、以上四件を資料として御提出願いたいと思います。
  127. 川野芳滿

    川野委員長 承知いたしました。  次会は来たる二十八日火曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十九分散会