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梶本政府委員 ただいま
観光基本法の十一条を御
指摘いただきましたが、「国は、家族
旅行その他健全な国民大衆の
観光旅行の容易化を図るため」と、こうなっております。この「容易化」という
ことばを編み出すまでには、なかなか容易ではなかったのが立案の実情でございます。そもそも「国民大衆」とは何ぞやということから問題になったのでございますけれ
ども、「国民大衆」という
ことばは、相互銀行法あるいは国民金融公庫法等の中に、第一条に「国民大衆」という
ことばがございますので、「国民大衆」という
ことばは
法律用語としてすでに使われておるから、
基本法の中で使ってもいいだろうというので、「国民大衆」が入ったわけでございます。特に一部で非常に御熱心に御主張に
なりました「修学
旅行」等もこの「国民大衆」の中に含まれる、このような
法律解釈になっておるわけでございます。
この「容易化」というのは何ぞやということでございますけれ
ども、これには、まず
旅行に行きたいんだけれ
ども時間がないという人には、できるだけ時間を与えるようにすること、これが容易化の第一でございますが、これには有給休暇
旅行制度の問題等が、この法案立案の過程において御審議になったのでございますけれ
ども、それには労働条件の問題、あるいは労使間の折衝に待たなければならない問題等いろいろございますので、
観光基本法の中に、有給休暇
旅行制度というもの、そのものずばりをここにうたい込むかどうかということについては、いろいろ
お話し合いがなされまして、その
一つのあらわれとして、「容易化」ということになったわけでございます。したがって時間がないことによって
旅行に出かけられない人に時間をできるだけ与えるということは、現在の
日本におきましては、労使間の折衝に待つべき問題だ、かように考えております。
第二には、
旅行に出かけたいんだけれ
どもお金がない、こういう問題が出てまいります。そういう人に対しましては、できるだけそのような援助を国としてして差し上げたい、こういう問題が出てくるわけです。それがいわゆる
旅行金庫法の問題でございます。将来この
基本法に基づきまして、子供の
法律、子法として
旅行金庫法をつくっていくような場合には、この十一条が
一つの母体になってまいるわけでございまして、われわれ
運輸省としましては、将来
旅行金庫法の立案を考えていきたい、かように考えております。これは、欧光先進
観光諸国におきましては、つとに立法化されておる問題でございまして、すべてが、いわゆるソシアル・ツーリズムと
旅行金庫法とが裏はらの
関係におきまして実施されておるような
状況でございますので、
わが国といたしましても、将来はこのような
方向に進めていきたい、かように考えております。これが容易化の第二でございます。
それから第三の容易化は、交通手段というものを便利なものにするということが
一つの問題でございまして、いわゆる交通の障害の排除とでも申せば申せる問題じゃないかと思います。要するに時間の問題と資金の問題とそれから交通機関の障害の排除であります。
それから第四番目は交通機関を利用して
目的地に到達した場合の
旅行関係施設が不足しておる、あるいはまた好ましくないというふうなことを解決していくのが、容易化の内容をなすものだと考えております。
したがいまして、この「容易化」ということは、簡単に
日本字で書きますとわずかの三字でございますけれ
ども、
観光基本法の中に取り上げるに至りました経緯をつらつら考えますと、まことにたいへんないきさつを持った
ことばでございまして、この線に沿って、国民大衆の健全な
旅行、いわゆるソシアル・ツーリズムの
方向が将来にわたって打ち出されていくべきものだというふうに考えております。
「国は、」というふうに書いてございますが、これはただいま御
指摘のありましたように、公営ユースホステルに対しては、
運輸省のほうで予算を計上して補助金を出す、あるいは厚生省のほうでいわゆる国民宿舎につきましては、厚生年金の還元
融資によりましてこれを拡充していく。最近では国民休暇村というものを各地につくるというふうな方法がなされておるわけでございます。そのほか、ただいま第二番目に御
指摘に
なりました、中小企業金融公庫をもっと活用してはどうか、この問題が次に出てまいるわけでございます。そもそも中小企業金融公庫の
融資が
旅館に始まりましたのは
昭和三十一年でございます。このときは資本金が一千万円以下で、常時使用する従業員が三十名以下という条件がついておったのでございますが、いわゆる
融資限度額といたしましては、一千万円であったわけでございます。一千万円じゃ何ができるか、もっと
融資を高めてもらいたいという折衝を
運輸省としてはいたしまして、三十六年の五月十五日から二千万円にまで高められたわけでございます。この二千万円まで高められると同時に、二千万円はいわゆる中小企業金融公庫の本店扱いと申しますか、直接貸し付けの形態になるわけでございまして、
運輸省の本省と中小企業金融公庫の本店との間の折衝によってこれを直接貸し付けしていただく、それから一千万円は陸運局と中小企業金融公庫の
地方の支店との間におきまして折衝をして貸し付けをする、このような形態をとっておるわけでございます。ところが二千万円でもまだ足りないわけでございます。もっともっと高めていきたいという
努力を続けまして、ようやく昨年の九月三十日にこの二千万円が三千万円に高まっております。したがいまして、現在は三千万円まではいわゆる直接貸し付けとして本省と中小企業金融公庫の本店との間の折衝で行なわれ、一千万円までは陸運局におきまして
地方の支店との折衝においていわゆる代理貸し付けの形態で行なわれる、このような経緯をたどって今日に至っておる次第でございまして、
昭和三十一年に始まった中小企業金融公庫の
融資はいまや一千万円から三千万円にまで高まった、このような
状況でございます。しかし、われわれは決してこれをもって満足はいたしておりません。将来は
融資の限度額をさらに高めること、
融資の条件を緩和していただくことと、もう
一つは、やはり一番大きな問題でございますところの利息の引き下げ——中小企業金融公庫はただいま年九分で借りております。これをさらに引き下げていただく、このような
方向に向かって
運輸省としましては
努力いたしたい、かように考えております。