運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-04-14 第46回国会 衆議院 運輸委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月十四日(火曜日)    午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君    理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君    理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君    理事 矢尾喜三郎君       亀岡 高夫君    佐々木義武君       進藤 一馬君    壽原 正一君       高橋清一郎君    高橋 禎一君       南條 徳男君    西村 英一君       長谷川 峻君    細田 吉藏君       勝澤 芳雄君    泊谷 裕夫君       野間千代三君    山口丈太郎君       内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (観光局長)  梶本 保邦君  委員外出席者         運 輸 技 官         (観光局整備課         長)      滝浦  濶君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 四月十日  委員中馬辰猪辞任につき、その補欠として一  萬田尚登君が議長指名委員に選任された。 同日  委員萬田尚登辞任につき、その補欠として  中馬辰猪君が議長指名委員に選任された。 四月十四日  委員田中彰治辞任につき、その補欠として亀  岡高夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十一日  国鉄の安全輸送確保に関する請願原茂君紹  介)(第二五〇〇号)  同(小川平二紹介)(第二六〇二号)  同(唐澤俊樹紹介)(第二六〇三号)  同(増田甲子七君紹介)(第二六〇四号)  鹿屋市に国際航空路開設に関する請願(二階堂  進君紹介)(第二五七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  旅行あっ旋業法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二〇号)(参議院送付)  国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二六号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  旅行あっ旋業法の一部を改正する法律案及び国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案、両案を一括議題として、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。山田彌一君。
  3. 山田彌一

    山田(彌)委員 前会に引き続いて質問を継続しますが、国際観光ホテル整備法の六条の二の「遵守事項」について、残された部分についてお尋ねいたします。  巷間伝うるところによりますと、省令チップを規制するという風評がありますが、チップを強制で禁止するということは、一般旅館に対しても及ぼす影響が非常に重大でありますので、私はこういうことは省令で禁止すべきことでなく、行政措置で行なうべきことだと思うが、観光局長考え方を伺いたいと思います。
  4. 梶本保邦

    梶本政府委員 現行法を受けまして、国際観光ホテル整備法施行規則という省令昭和二十五年六月に制定されておりますが、その省令の第五条に、「料金」というところがございます。それによりますと、「第六条第一項の業務に関する料金」というのは、まず第一が「宿泊料金」、第二は「朝食又は夕食料金を含む宿泊料金を定めた場合における朝食又は夕食を利用しないときの料金」、これは要するに、原則として一泊二食になっておりますけれども夕食を食べなかったような場合には、それをはっきり引いた料金をあらかじめ届け出ていただく、こういうふうになっているわけです。それから第三は「サービス料」でございます。このサービス料はいわゆる領収書の中に一割とか一割五分とかはっきり書いてございますが、あれを意味するわけでございます。要するに運輸省で提唱いたしておりますノーチップ運動は、領収書の中にサービス料としてはっきり書いてあるもの以外はお心づけ無用に願います。こういう趣旨ノーチップ運動でございますので、ここのいわゆる「サービス料」とは違う趣旨のものでございます。したがいまして、いわゆるノーチップ運動業界自体運動としてやっていただくか、あるいはまた行政指導によってやるべき問題でございまして、法律とか省令とかの中で書くべき性質のものではない、かように運輸省といたしましても了解をいたしておる次第でございます。
  5. 山田彌一

    山田(彌)委員 次に、第十六条の第一項についてお伺いいたします。第十六条は「主務大臣は、この法律施行を確保するため必要があると認めるときは、省令の定めるところにより、登録ホテル業を営む者に対し、その事業に関し報告をさせることができる。」とあるのでございますが、これは在来もあった条文でございます。したがいまして、今後といえどもいままでの慣習による報告でよろしいというふうに解釈しますが、いかがですか。
  6. 梶本保邦

    梶本政府委員 お説のとおり、現行法の第十六条、「報告」という条文がございますけれども改正案現行法よりも非常にゆるやかに書いたつもりでございます。と申しますのは、現行法によりますと、「主務大臣は、登録ホテル業の用に供されている施設状況変更があったとき、その他必要があると認めるときは、当該登録ホテル業を営む者その他の関係者から、報告を求めることができる。」つまり「その他の関係者」ということが入っておりますが、この関係者とは、たとえばそのホテルなり旅館を建設いたしました何とか組だとかあるいは何とか建設というようなところから、一体あなたはどのような建築を行なったのだということを運輸大臣が聞けるというたてまえになっておるわけでございますけれども、それではあまりひど過ぎるじゃないか、登録ホテル業を営む方からだけ報告を求めればいいのであって、関係者まで範囲を広げる必要はないのじゃないかということで、関係者を削除いたしております。そのようなことで、むしろこの件につきましては、この条文に関する限りは、関係者が落ちたということによりまして、いわばゆるやかになっておる、規制が緩和されている、このように御了承いただきたい次第でございます。
  7. 山田彌一

    山田(彌)委員 第十六条の二項に「主務大臣は、この法律施行を確保するため特に必要があると認めるときは、その職員に、登録を受けたホテルに立ち入り、ホテル施設、これに関する書類その他の物件検査させることができる。」とあります。この立ち入り検査についてお伺いしたい。この中に「これに関する書類」とあるが、この場合の書類とは施設等に関するものをさすと思うが、その点はどうか。また「その他の物件検査させる」とあるが、この際の「物件」とは、ひとつ事例をあげて説明してもらいたい。特にそれを質問するのは、法律用語物件ということになると意味が広範囲になるから、特にそういう質問をしたい。  なお、立ち入り検査という字句でございますが、民主政治の現在、まことに非民主的なにおいがする、官僚統制時代の遺物のごとき感を強くするが、この法律制定にあたって、他に適当な用語がなかったかどうか、その点についてお伺いいたします。
  8. 梶本保邦

    梶本政府委員 まずお尋ねの第一点でございますが、第十六条の二項に「ホテル施設、これに関する書類」とございます。これとは施設をさすわけでございます。したがいまして、ホテル施設施設に関する書類、このように御了承いただきたいのでございます。  それから第二の「物件検査させる」とあるが、この「物件」とは何であるか、こういう御質問でございますが、これはたとえば客室、食堂、浴室、便所というふうなものについて、和英両文で表示していただきたいというふうなことを遵守事項の中にうたうわけでございます。そういったものについて、はたしてそのような表示がなされておるかどうか、あるいはまた非常口、非常階段避難ばしごの所在、こういったことが、日本語のみならず、英語等において表示されておるかどうか、そういったことをこの「物件」ということば意味しておるわけでございます。あるいはまたフロントだとか両がえをする場所だとか、そういったことを同様に表示をしていただきたい。要するに国際観光振興観点から接遇向上ということを考えておりますこの法律のたてまえからいたしまして、ここにいう物件というのはそのような表示を大体意味しておるというふうに御了承いただきたいのでございます。  それからその次の第三の御質問立ち入り検査でございますけれども、この立ち入り検査は非常に問題になった条文であることは御指摘のとおりでございます。要するにこの法律の設けられました目的が第一条にございますように、結局外客接遇向上のために考えられた法律でございます。したがって、登録基準というものが法律の中に明示されている。その明示されている登録基準を満たしましたものが、先生に申し上げるのは釈迦説法でございますけれども、このような登録証が交付されるわけです。交付されますと、こういう表示なります。レジスタード・ツーリスト・ホテル・バイ・ガバメント・ジャパニーズ・スタイル、こうなるわけです。そうすると、これを読みました外人はこのバイ・ガバメントということに絶対の信頼を置く。政府によって登録された旅館だから、おそらく自分たちが入っていっても非常によくできておるのだろうというので、安心をしてその旅館なりホテルなりに入っていくと思います。その場合に登録できめられておる基準を満たしていないというふうなことでありますならば、法の趣旨にもとる次第でございます。現にそのような事例が間々ございます。たとえば洋式の便所のとびらをくぎづけにいたしまして、年がら年じゅう使用禁止の札をぶら下げておくとか、あるいは便所を物置きに改造したり、あるいは事務室改造したりするようなこともございますし、あるいは洋間がこれだけなければならないということになっておるのを全部日本式の畳を敷いて部屋に改造をしてしまったり、それから避難ばしごは物置きにしまったままで一向置いてなかったり、いろいろの例が私どものいままで体験したことにもあるわけでございます。まことに失礼でございますけれども、一番なまなましい事例としましては、先生の選挙区にございました例が一件あるわけでございます。実は昨年の十月十六日に政府登録をいたしました伊豆のある旅館でございますけれども登録をするやいなや直ちに改造を始めまして、便所をつぶしまして事務室電話交換室に切りかえてしまった。改造をした業者のほうからごらんになりますと改造でございますけれども、この法律精神から考えますと、改造ではなくして改悪であると私ども考える次第でございます。そうしますと一階にお泊まりのお客さんは一階で便所の用が足せないで、階段を上がって二階へ行って用を足さなければならぬというふうな事列がこの旅館に起こった次第でございまして、そのような場合に私どものほうで調査にまいりますが、その調査立ち入り検査と申しておる次第でございます。この立ち入り検査ということば一つ法律用語になっておりまして、いわば例文的なものでございます。別にこれによっていわゆる戦前の臨検というようなことを運輸省としましては毛頭考えておるわけではございません。したがいまして、第十六条の一項と二項をごらんくださいますと、一項の場合には「この法律施行を確保するため必要があると認めるときは、」と書いてございます。二項のほうは「この法律施行を確保するため特に必要があると認めるときは、」というので、「特に」ということばを入れてございますけれども、この「特に」ということばを入れましたところに法律的な意義がある、かように私ども了解をいたしておる次第でございます。要するに、この法律施行を確保するために、どうも登録基準に適合しないように改悪されたんじゃなかろうか、そういうふうな疑いのある場合と、このように私ども了解をいたしておる次第でございます。そのような場合にはホテルの中へ入って施設施設に関する書類その他の物件検査することができるんだ、こういうたてまえでございます。したがいまして、いわばパトカーが東京都内を四六時中走り回って交通違反を見つけて歩くというふうな意味で、観光局職員が始終立ち入り検査をして回るというふうな意味立ち入り検査では毛頭ございませんので、あくまでもこの法律精神に従ってこの条文を設けたのでございまして、そのような意味立ち入り検査を私ども了解いたしておる次第でございます。
  9. 山田彌一

    山田(彌)委員 しからば「必要があると認めるとき」という意味は、第十六条の「施設状況変更により当該施設が別表の第一に掲げる基準に適合しない疑いがあるとき」とか、または「第一条の目的を達成するため」立ち入り検査をするというふうに解釈してよろしいですか。
  10. 梶本保邦

    梶本政府委員 大体そのような意味に御解釈いただいて間違いないと思います。
  11. 山田彌一

    山田(彌)委員 次に二十八条についてお伺いいたしたいと思います。近来航空機の発達により世界各地からの観光客の来日が年々増加する、また貿易の自由化等から海外旅行が自由になる、その結果わが国における観光行政も大いに発展してまいりまして、この際梶本観光局長の敏腕に期待するものが多いのでございますが、そのような際に昨年五月観光基本法成立を見ました。また今国会の三月、日本観光協会法成立をさせた。またここに二つの関係法案が日の目を見ようというような際に、練達たんのうの士である観光行政の第一人者といわれておる観光局長に、私は特にお伺いいたしてみたい。それはこの二十八条の問題でありますが、整備法並び観光基本法は冒頭にただしたごとく助成法である。特に登録旅館について整備法第七条は除外されておりますが、この第七条を二十八条の中に挿入する意思があるかどうかという点であります。基本法精神地域格差是正の点からいって、ぜひそうあるべきだと私は考えております。その理由を申し上げてみるならば観光基本法第一章の総則に「国の観光に関する政策の目標」が掲げてある。その第一条の第一項から三項に照らしても明らかなるごとく、「旅行必需化に対処」し、かつまた「地域格差是正」ということがいわれておりますが、その見地からして整備法第七条の意味するものは、「登録ホテル業の用に供する建物については、地方税法第六条第二項の規定の適用があるものとする。」とあるのであるが、第七条についてだが、第二十八条の中に第七条の抜けておるというのはどういうわけか。現在では国際観光外客受け入れ登録ホテルのみならず登録旅館にも相当の実績があるにもかかわらず、依然として不均一課税適用されておらないということは、これは格差を助長する差別待遇ではないかという点につきまして、特に局長の所見を伺いたいと思います。
  12. 梶本保邦

    梶本政府委員 昨年六月に御制定いただきました観光基本法精神が、私ども観光行政に携わる者にとっての根本的な立場であることにつきましては、ただいま先生の御指摘のとおりでございまして、私どもその精神にのっとってやっておる次第でございます。  ただいま具体的にお話のございましたいわゆる不均一課税の問題でございますが、なるほどお説のとおり旅館には準用が二十八条でございません。しかし地方税法の第六条第二項によりますと「地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一課税をすることができる。」というふうな条文がございまして、いわば地方税法の面で実施することが可能である、このような状況になっております。それで観光局のほうで最近、一体どのような状況になっておるかということを、ホテル旅館に分けて実績を調べてみたのでございますけれども、それによりますとホテルのほうの固定資産税軽減状況は全体のホテルに対しまして約八〇%、旅館のほうは約八四%になっておりまして、軽減状況からいたしますならば、ホテルよりも旅館のほうがより恵まれた状況になっておる次第でございます。それから軽減割合は、これもまことに釈迦説法でございますけれども、各市町村によりまして率はまちまちでございます。一番多いのは、やはり五割の軽減というのが圧倒的に多いようでございまして、一番多く引かれておりますのは七一%というのが一カ所ございます。これは山口県の長門市でございますけれども、これが一番軽減割合の高いものでありまして、これは旅館適用が行なわれております。  そのようなことで、結局地方税法の運用で実施が可能でございますので、運輸省といたしましては登録になるつど一軒一軒の具体的なホテル旅館について、国税庁長官当該都道府県知事、それからそのホテル旅館の所在いたしておりますところの市町村長あてに、具体的に一軒ずつそのつど依頼状を出してお願いしておるというような状況でございます。何と申しましても、運輸省観光局だけでできることでございますれば、できるだけ業界の御要望に沿いたいというのが私どもの偽らざる気持ちでございますけれども、特に税の問題につきましては何しろ相手のある仕事でございまして、私ども機会あるごとにこの税の問題については今日まで努力を続けてまいったような次第でございますので、この点につきましても、今後旅館については外客宿泊実績もだんだん高まってきておるんだというようなことで、関係各省庁に対しまして今後とも一段と努力を続けていきたい、かように考えておりますので御了承いただきたいと思います。
  13. 山田彌一

    山田(彌)委員 この問題で実はもう少しただしてみたいと思いますが、私は角度を変えてもう一つ話したいと思うのは、オリンピックを真近に控えており、ネールが日本に来た際に東京や大阪を見ても少しも感心しなかった、しかしながら、山間僻地全国津々浦々を見て日本のよさがわかったということを言われております。外国に行って日本を考えた場合に、やはり風光明媚な日本の山河というものがまぶたに浮かんでくるのであります。ネール同様に、日本のよさというものは全国津々浦々にあるのでありまして、東京周辺のみのホテル整備されても観光客は満足するものではないのであります。私どもはこの考え方を十数年来叫び続けてきたもので、一つの例は、今回の東京オリンピックに対しまして、日本旅館に対する助成を国や東京都が考え、川島正次郎さんが中心になって、開発銀行中小金庫あるいは商工中金東京都というようなものが五十億くらいの資金源を集めて、これで日本旅館に対して三千人くらい収容するだけの施設をしてくれということで、ここ二、三年来行なってまいりましたけれども、十億の金さえ使い得ないというのが東京旅館現状であります。しかしながら、東京以外におきましては、静岡県の例ですが、十億、二十億という個々の施設はさておきまして、われわれ業界人や県、地方銀行等の協力によりまして、三十九億円という融資団体として行ないまして、東京とは違った面において三十九億が消化されて、箱根、伊豆方面に対しては三千や四千のオリンピック関係観光客が来ても困らないような設備をいたしております。これは近畿地方においても、東北北海道あるいは九州地方においても、それぞれの県がかような努力をいたしておるのでございます。地方における旅館現状というものは、自己資金を豊富に持っておるということが、東京都の旅館業界にでき得なかったことを、地方旅館自分の山を売り田を売るというふうなことによって、今日全国津々浦々にわたるところの政府登録旅館整備が日一日と進んでまいっておるのでございますから、このような現状からいたしまして、東京以外にもりっぱな政府登録が続々とできており、今後は東京周辺以外の登録旅館使命はますます重要性を帯びてまいると思うのであるが、この際観光局長のお考え方を伺いたいと思います。
  14. 梶本保邦

    梶本政府委員 ただいま先生よりお話しのとおり、私どもも最近において来訪外客がだんだん日本旅館を利用する率の多くなってきつつあるということは了承いたしております。現に三十四年ごろでございますとホテルに対する宿泊のパーセンテージが八四%、旅館に対しては一六%でございましたけれども、最近では八〇対二〇、つまり二割は大体日本旅館宿泊する、そのように来訪外客日本旅館に対する宿泊実績が高まってきつつあることは事実であります。これは全く日本旅館関係方々にいろいろ御努力をいただきました結果であると、私ども心から感謝いたしておる次第でございます。  それから開発銀行お話がございましたけれども開発銀行に対する融資はようやく三十八年度に六十億という額に到達いたしたわけでございまして、三十七年度に比べますとちょうど倍になっております。つまりオリンピックを控えて、開発銀行あるいは関係方面におきまして、国際観光についての財政投融資を考えていただいた、このように私どもも了承いたしておる次第でございます。  それと同時にもう一つの問題は、ただいまも先生が御指摘なりましたけれども地域格差是正あるいは低開発地域開発というふうな観点から、要するに地方開発というものを、日本旅館中心財政投融資ワクを拡大して観光客を誘致する、このような方策が当然打ち出されなければならないわけでございます。現に日本開発銀行におきましては、ようやく私どもの希望を入れてくれまして、昭和三十七年度に初めて地方開発ワクの中から旅館に対する融資が行なえることになった次第でございます。地方開発ワクから融資されますのはホテルではございませんで、全額日本旅館に対する融資でございます。三十八年度におきましては、まだすっかり集計ができておりませんけれども、大体五億程度融資が行なわれた、かように私ども考えておる次第でございます。あるいはまた北海道東北開発公庫におきましても、同じく三十七年度から日本旅館に対する融資が行なわれたわけでございますが、これが三十七年度は一億六千六百万円、三十八年度に入りますと、一躍増加いたしまして、これも中間報告でございまして、まだ最終的な集計は出ておりませんけれども、八億四千五百万円ということで非常に増額になっております。これもすべてホテルではございませんで、全額あげて日本旅館に対する融資でございます。  このようなわけで、運輸省としましても、旅館わが国国際観光に果たす使命ということは十分に考えておるようなわけでございまして、今後ともこういった財政投資ワクの拡大につきましては努力をいたしていきたい、かように考えております。  それから東京地方との旅館自己資金を持っておるとか持っていないとかいうことについていろいろ先生のお説を伺ったのでございますが、これも私全く先生と同感でございます。特に東京オリンピックを控えまして、東京都のとりました措置は、東京自体商工中金に二億円預託をいたしました。神奈川県も一億円商工中金預託をいたしております。東京なり神奈川県が商工中金に二億なり一億なり預託して、そのかわり商工中金からそれの倍額程度のものを旅館業者融資をしてもらいたいというふうな措置をとった次第でございまして、これも先生の御指摘のとおり、地方に行けば行くほどと申しますか、地方旅館業界方々は非常に自己資金をお持ちでございますけれども、比較的東京都を中心とする大都市におきましては、そのような面で地方よりはいささか欠ける点があるかもしれませんが、そのようなことに対する東京なり神奈川県の打った対策の一つがただいま申し上げましたような方策でございまして、とにかく日本旅館の果たす使命ということにつきましては、十分私どもも考えまして、その方向に向かって今日まで努力を続けております。将来もそのような方向で一段と努力を続けていきたい、かように考えております。
  15. 山田彌一

    山田(彌)委員 私が先ほど言いましたことは、地方旅館資金源が豊富である、東京一般旅館政府関係資金のみにたよらざるを得ないから、今回のオリンピックに見合うところの整備充実というものに対してもついていけなかった、その反面にはオータニとか東京プリンスというふうなデラックスなホテルができてきたので、オリンピック後に実際借りた金が返せるかどうかというふうな考え方からいたしまして、川島正次郎氏のあっせんによる五十億の資金というものがいまだに十億も使い得ないというふうなことを申した反面には、東京においてはホテル外客誘致に役立っているけれども地方においてはほとんどが登録旅館がその用を足しておるのが現状であるということを私は言ったわけであります。  そこで、先ほど局長の答弁の中で、固定資産税の減税については、実質的にはホテル旅館もあまり差違がないということを言われておりましたが、事実差違がないなら、ひとつ法制上においても差違のないようにしてもらいたい。くどいようですが、この問題を重ねてお話しいたしますが、国際ホテル整備法第七条において、登録ホテル業の用に供する建物に関しては、地方税法第六条において規定する公益上に必要のある場合においては不均一課税をすることができる条項を適用できるようになっているにもかかわらず、同整備法第二十八条においては、登録旅館にはこれを準用するように明文化されておらないのでございまして、この点を私は突いておるのですが、これは整備法に基づいて外客宿泊施設整備し、外客接遇の充実をはからんとする同じ登録旅館においては、ホテルに対して片手落ちであると言わなければならない。一方また、これを準用し、不均一課税を行なっている地方自治体の間においても、その軽減率は、先ほど局長が言われたように二〇%のところもあれば五〇%、また上のものもあるというふうに大いな開きがある。中には全く軽減率を適用しておらないところもあると言われておる。また東京都のごとく、不均一課税の有効期間をオリンピック開催年次までと限定しているなど、その実施の状況は自治体ごとにまちまちの取り扱いでありますが、観光基本法精神助成法としての整備法の性格からして、これらの点を統一し、政府登録旅館には強制規定を設けて、一率に適用されるように整備法第七条を同法第二十八条に加入改正するとともに、実施面においても軽減率を五〇%の線として実現できるように、観光局といいますか、運輸省としてはこの際踏み切る考え方があるかどうか、現在なければ、次の国会においてでもそのようにする考え方があるやなしやという点について、これは大臣に伺いたいところでありますけれども、大臣がおりませんので、ひとつ局長に……。
  16. 梶本保邦

    梶本政府委員 実情はただいま先生の御指摘のとおりでございまして、まことに各市町村によってまちまちの税率でございます。運輸省としましては、一番軽減率の高いところに歩調をそろえたいというのが当然の気持ちでございますし、かつまたはっきりとさせたいということも私どもの気持ちではございますけれども、税の問題につきましては、運輸省だけでどうこうというわけにもなかなかいかない面もございますので、今後関係方面と十分に折衝いたしまして、前向きの姿勢でひとつ努力を続けていきたい、かように考えておる次第でございます。
  17. 山田彌一

    山田(彌)委員 次に、別表第三についてお伺いをいたしたいと思いますが、その中に「ロビーその他の客の共用に供する室があること。」こういうふうに書いてあります。この際のロビーというのに対しては坪数がどのくらいのものをさしておるのか。ロビーの規模について一つの規格をお持ちでしたら、ひとつお話しを願いたいと思います。
  18. 梶本保邦

    梶本政府委員 法律の別表第一には、ホテルの表と申しますか、ホテル登録規格が書いてあるわけでございますが、その別表第一の三には、「客その他の関係者が、営業時間中、自由に出入することのできる玄関及び収容人員に相応した規模のロビーその他の客の共用に供する室があること。」このようになっております。要するにホテルの場合には自分の部屋でお客に会うというふうなことよりも、むしろ自分の部屋は自分の部屋としてちゃんととっておいて、お客に応接する場合は、ロビーとか共用の部屋で会う、このようなたてまえになっておりますので、このように詳しく規定が行なわれたものだと解釈いたしております。ところが別表第三の、いわゆる旅館についての登録基準の場合におきましては、日本旅館のたてまえがホテルと異なりまして、いわゆる自分の部屋でお客さまにもお会いするというふうなことが、ホテルの場合とは違って多いわけでございます。したがいまして、ホテルの場合におけるロビーと、旅館の場合におけるロビーとの間にはおのずから旅館なりホテルの本格的な性格の相違と申しますか、そのロビーの規格等において異なるところがあってもいいのではないか。このような考え方を持っておるのでございます。したがいまして、旅館につきましては、規模だとか配置等につきましては特に限定することは考えておりません。でございますから、適当に「ロビーその他の客の共用に供する室があること。」というのが別表第三の二の二として今度入れたいというのがそのような趣旨でございまして、別表第一とは違った趣旨で、ロビーを設けるのだ、このように御了承いただきたいのでございます。
  19. 山田彌一

    山田(彌)委員 次に付則四のエレベーターに関する経過規定は、既存のものは増築または改築工事が行なわれるまでは通用しなくてもよろしいというふうに解釈いたしておりますが、その点はいかがですか。
  20. 梶本保邦

    梶本政府委員 法案に増築とか改築とかいうことばがございますが、増築、改築につきまして昭和二十八年十一月十七日付で建設省の住宅局から国家消防本部に対する公文書の回答が出ております。これが改築あるいは増築ということについてのいわゆる公の見解になって今日まできておるわけでございますが、それをちょっと読ましていただきます。第一に、「改築とは建築物の全部若しくは一部を除却し、又はこれらの部分が災害などによって滅失した後引続きこれと用途、規模、構造の著しく異らない建築物を建てることをいう。従前のものと著しく異なるときは新築又は増築となる。」第二に内部改造をやる模様がえは入らない。第三に事務室、倉庫等、客の用に供しないものの増築は支障ない。このようになっております。したがいまして、そのような意味での増築、改築というふうに御了承をいただきたいのでございまして、たとえば日本旅館で、一つ旅館ではございますけれども建物があちこちにばらまかれているといいますか、たくさん分布されておって、それが一つ旅館になっているというふうな旅館もあるわけでございますが、その場合に、どこかの一部分で部屋を増築したから直ちにこちらのほうの問題にそれが影響を及ぼしてこの条文にひっかかるというふうなことは、私どもも考えていない次第でございます。要するに当該建物について、しかもそれが四階建以上の建物につきまして、将来増築、改築というふうなことが行なわれます場合までは、それが五年かかろうと十年かかろうと、ときと場合によれば二十年かかっても、それはいわゆる既得権としてそのまま存続していこう、このような考え方をこの附則の第四項において書いておる次第でございます。
  21. 山田彌一

    山田(彌)委員 別表第三のロビーまたは基準浴室、基準シャワー室云々ということばがございますが、それらの基準に合っておらない旅館基準に合わせるために小改造を行なう必要が出てくる場合ですが、このような場合には改築とはみなさないというふうにいまの局長の答弁からして解釈できるが、そのように考えてよろしいですか。
  22. 梶本保邦

    梶本政府委員 お説のとおり、内部改造や模様がえは改築という法律概念の中には含まれていない、このように御了承いただいてけっこうでございます。
  23. 山田彌一

    山田(彌)委員 次に参議院における質疑の中に、二つや三つの部屋の改造はよろしいといっているが、建設省は一室でも二室でも増築だという見解をとっているが、この点に対する考え方はどうですか。
  24. 梶本保邦

    梶本政府委員 これにつきましては、施設ということと、それから建物ということが附則の第三項と第四項で書き分けてございます。第三項のほうは施設になっております。第四項のほうは建物となっております。施設と建物の相違は、建物がたくさん集まってそれが施設になる。あるいは建物でなくても、庭園であるとか、最近では庭園の中に植物園を設けたり、あるいは特にあたたかい地方ではワニを養殖して動物園をつくったりというふうなことで、いわゆる庭園、植物園、動物園等も含めて一つ旅館としての施設をなしておるような場合も間々最近ではあるわけでございます。そのような場合のことを考えまして、旅館施設ということばをそこに書いた次第でございます。建物のほうはそのものずばりのことを表現いたしておる次第でございまして、あるそういった建物がかりに五つなら五つ、六つなら六つあるような旅館がございました場合に、片方のほうの建物を増築したというふうな場合に、それが一階の場合あるいは二階の場合等もございましょうが、それを増築するというふうなことがあった場合に、直ちにその登録になっておるエレベーターのないほうの部屋がそのままであっても、こちらのほうの増築が行なわれておるから、それはもう登録ではなくなるのだというふうなことは毛頭私ども考えていない次第でございまして、それがいわゆるこの建物の意味でございます。要するにこの法律の立案の過程におきまして、私どもは非常識なことのないように、常軌を逸することのないように、根底は法の運用は結局は健全な良識であるというふうに、私どももそのように考えておる次第でございます。そのような気持ちでこの法律の運用をやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  25. 山田彌一

    山田(彌)委員 いまの点がよくわからぬですが、附則の三においては「旅館施設」という字句を使っておる。また附則の四においては「当該建物」という字句を使って、増築、改築という表現をしております。このように一方においては「施設」、一方においては「建物」というふうに表現をしておりますが、これが業界側でいろいろと誤解を生んでおるのでございますから、この点について滝浦整備課長から特に字句を変えたという点についてひとつお伺いをしたいと思います。
  26. 滝浦潤

    滝浦説明員 お答え申し上げます。整備課長の滝浦でございます。  ただいま先生から御指摘のございました附則第三におきます「施設」、それと第四におきます「建物」との差違でございますが、先ほど局長から御説明もありましたように、登録旅館施設といいますと、いろいろ本館、別館、離れ等の建物、あるいは庭園、プール等を全部含んだ施設全体が登録になっておるわけでございます。したがいまして、その中に本館は本館、別館は別館、離れは離れというふうにいろいろ建物の区分がございます。四項の建物と申しますのはそのおのおのをいっておるのでございまして、たとえば本館は五階であって現在エレベーターがないというのは、その本館だけについての問題でございまして、ほかの三階以下の別館、あるいは二階、一階の離れ等につきましては全然関係のない問題でございますから、エレベーターの条項につきましては、その本館の五階の分の建物だけに限定されてくるわけでございます。この本館をいじらない限り、五年でも十年でもその登録についての問題は起こらない、登録の取り消し等の問題は起こらないと考えております。ただ、施設全体といたしまして、新しい基準によりまして、あるいはロビーを少しつくらなければいけないとか、あるいは基準浴室をふやさなければいけないというための増築につきましては、いまの別館ないし離れ等に増築をいたすことは自由でございますから、これによって御解決願えれば——現在私たちの調べた範囲におきましては、この附則第四項によってエレベーターをつけなければならないと思われる旅館のおのおのにつきましてチェックをいたしましたのですが、その本館に少し増築をしなければ新しい基準に沿うことができないという旅館は、具体的には一件もないというふうに事務当局としては考えております。
  27. 山田彌一

    山田(彌)委員 局長並びに整備課長の答弁を要約しますと、当該建物の増築、改築という文字が使ってありますが、この場合は小改造や少しばかりの手直しでなく、大増築、大改築というふうな解釈をしてよろしいかどうか、ひとつ重ねてお伺いします。
  28. 滝浦潤

    滝浦説明員 ただいまの御質問施設全体としての大改築、大増築は、それが相当大きなものであっても支障ないわけでございます。たまたまその建物に関する、現在高層建築であってエレベーターがないという建物だけにつきましては、そうした四階以上や五階等に増築することはやめていただく。しかし施設全体としての増改築につきましては、新しい基準に合致する限り支障はないという考え方でございます。
  29. 山田彌一

    山田(彌)委員 なおエレベーターの問題ですが、別表第三の四号の三における昇降機の設置基準については、傾斜地において階段状に階ができている場合、本条文適用はないものと解釈してよろしいですか。
  30. 梶本保邦

    梶本政府委員 まことに旅館がございます場所というのは多種多様でございまして、特に景色のいいところほど、いわゆる平地じゃなくして、傾斜地が多いのではないかというふうに考えるわけでございます。したがいまして、具体的にケース・バイ・ケースでいきたいと考えておりますけれども、その傾斜地にあるものについて一律に四階建てというふうなわけにはいかない場合が出てくると思います。ということは、傾斜地にあって、あるいは廊下でつなげなければ次の階へ行けないというようなことも、地形によってはあるわけでございまして、それを一律にすべてエレベーターがなければどうのこうのというふうなことは、私どもとしては申さないつもりでおります。要するにケース・バイ・ケースで常識を持って運用をいたしていきたい、かように考えております。
  31. 山田彌一

    山田(彌)委員 大臣が見えましたので、先ほどの二十八条の点につきまして要約して大臣にお伺いしたいと思います。  私が機会あるたびに申しましたように、この国際観光ホテル整備法は、助成法として出発しまして、昨年観光基本法もでき、現在観光局の指導よろしきを得て各地にりっぱな登録旅館が四百数十の多きに達しておりまして、中にはホテルにまさるとも劣らない数多くの登録旅館を持つような状態になりましたので、前段申しましたごとく、二十八条の中に七条を挿入して、不均一課税の恩典を与えるべきであると考えますが、ひとつ大臣の所見を伺います。
  32. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 税制の問題でございますが、これは私のほうもさることながら、自治省、大蔵省と非常に関係があるので、私どもといたしましては、御趣旨によくわかっておりますが、関係当局とよく相談をいたして、なるべくその恩典にあずかるように努力いたしたいと考えておるのが従来の考え方でございまして、その考え方には変わりございません。
  33. 山田彌一

    山田(彌)委員 大臣は従来からそのように考えておるということを言われましたが、運輸省並びに観光局は、登録旅館には不均一課税の恩典を与えてやろうという考え方をいままで持っておらなかったように私は考えております。したがって、そんなていさいのいい御回答をなさるより、いままではどうであろうとも、今後は運輸省は、少なくとも地方における登録ホテル現状からいきまして、大蔵省や自治省はどうであろうとも、運輸省くらいはひとつ味方になって、助成、援助を惜しまないというような考え方になってもらいたい、かように考えます。  次に、広間が登録から除外されておりますけれども、広間を除外された理由というのは、外人観光客というのは広間を利用しないからというようなことで除外されたものと思いますけれども、現在における広間の利用度というものは、邦人客同様に広間を利用しておるというような状態からいたしまして、これは運用の面においてできる問題であるから、少なくともこのような法律の制定の機会に、広間を登録部分に加えるというような考え方運輸省当局は踏み切る考え方があるかどうか、これまた大臣にお伺いします。
  34. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 これもいろいろ考え方がございまして、われわれ研究いたしておるのでございますが、御要望の趣旨はよくわかりましたから、この際はいま直ちに変えるという意思はありませんが、研究いたします。
  35. 山田彌一

    山田(彌)委員 この辺で私も委員長から打ち切れということですから打ち切ろうと思いますが、これは運用の面でできることですから、ひとつこの際十分御考慮のほどをお願いしたい。  以上で私の質問を終わります。
  36. 川野芳滿

    川野委員長 泊谷裕夫君。
  37. 泊谷裕夫

    泊谷委員 先日自民党の総務会長をやっております藤山さんから「これじゃドルはもうからない」、そして「観光日本への提案」というサブタイトルをつけた本をいただいたわけです。この本は皆さんいただいたので、ごらんいただいたと思うのですけれども、これはツヨシ・松本という二世の方の書いたものです。この本を全体を通じて読みますと、いまのオリンピックを前にして、その観光に対する根本的なかまえ方に手きびしい批判をしていると思うのです。一応その根本的な考え方について、これから二、三お尋ねをしてみたいと思うのです。  この本の一節を紹介しますと、こういうことが書いてあります。「外国から日本に来る人も、みな、なにか偉く見えるのでしょうか、そして金持に見えるのでしょうか、ありがためいわくです。」、こういうふうに書いてあります。「もちろん「偉い人」も来るには来ます。しかし「偉い人」は「偉い人」同志うまくやるもので、損をしないように出来ています。たとえば政府の高官が来れば、これらもその訪問客にふさわしい日本政府の高官が羽田まで出迎えて下さいます。そしてデラックスな公用車で、迎賓館か、かねて用意されたホテルの特別室にご案内という段どりです。日本一流の料理屋でゲィシャパーティをしていただき、日光、箱根、京都、奈良とまことに結構な観光ルートを視察させていただき、立派なキモノや人形や日本の美術品のお土産をちょうだいして、ワンダフル・サヨウナラ」、こういうふうに書いております。「日本のお偉方があちらにおいでになっても、そのお返しはして上げるようです。金持ちや偉い人は自分のフトコロをいためず大名旅行が出来るよう世の中は出来ているのです。日本観光業者旅館業者日本国内での社用族とお役人とを対象として参勤交代の昔から今日まで商売をやってきている。頭が古いのも当然です。そして、政府当局の業界に対する考え方も、そういうお役人自らの立場から出発していますから、古くて超現実的で大名的です。」こういうふうに指摘をしております。「そのよい証拠は飲食遊興税です。旅行中、のみくい一切ぜいたくなあそびごとだという世にも不可解千万なアイデァー。」、こういうふうに書いております。確かに指摘されておりますのを見ますと、昭和二十九年芸者の花代が三割から一割五分に下げましたけれども、逆に旅館の税金は五分から一割に引き上げた。最近は八百円減税点に下げました。そういうことで「偉い人が何人日本へ来ても、直接外貨かせぎにはプラスしないとおもいます。」とこの人は言っております。「それこそ日本側におんぶする「お客さま」ですから、問題は普通の外国人」とこの本は最終的な結論を出しておるのであります。  こう考えてみますと、観光事業からいえば、東京オリンピックは確かにたいへんなものでありまして、お産のようなものだと思います。産むまでがたいへんで、産んでからがなおたいへん、子供を授かることは楽しいけれども、決して楽な遊びごとではないと思うのであります。オリンピック目当てに張り切って準備した観光施設は、あとどういうことになるのだろうか。  なお松本氏は、「アメリカ人の通常週末一泊二日で使う金は、旅費、宿泊料その他一切を含めて約十ドル程度」と指摘しております。三千六百円ぐらいであります。毎週十ドル、年間五十週としまして計五百ドルのお金が国内に落ちることになるのであります。一ぺんにそう高額なお金を外国では使わないということを鋭く指摘をしております。こういうことを裏書きするかのように、日本交通公社の調査資料のOECDいわゆる経済協力開発機構加盟国における観光事業の一九六三年度版は次のように書いております。「ホテル界がデラックスまたは一級ホテルを造り、質とサービスを改善しようと努めている一方では、顧客層の大部分はますます中級ホテルを利用する傾向にある。」この事実は特にイタリア当局提供による統計の表にあらわれており、それによると「デラックス・ホテルにおける宿泊日数は減少し、また一級宿泊施設宿泊日数は目に見えては変っていないのに、三級ホテルまたは下宿では外人観光客宿泊日数は二五%も増加しているのである。」と伝えております。  日本におけるホテル旅館整備は、ごらんのとおり、超デラックスなホテルが雨後のタケノコのように十七階あるいは十一階、それを自慢げに増築あるいは新築を開始しております。このことはオリンピックを期して一挙にドルをかせぎまくろうというのでありましょうけれども、このことは宿泊費の割高として、ときたまたま世界各国から集まってきた報道関係の諸君の筆によって全世界に日本の悪評が、しかも早い速度で伝えられることになるのではないかと心配するのであります。オリンピック終了後は日本を通過し、観光の拠点として香港なり上海なりが大きく浮び上がってくるのではないかという、日本を素通りして直通するのではないかという心配をするのは私一人ではないのではないかと思うのであります。監督官庁の運輸省がこの実態に対処して最近の超デラックス・ホテル建設促進の方針、これはきょう審議しようという法案ばかりでありません。数多く金融面でもあらわれているのでありますが、この方針を改めさせ、日本古来の、そして日本の情緒を残しながら、日本人を中心に外国の方々にも利用していただける従来の旅館ホテルの育成につとめるべきだと思うのでありますが、政府のお考えをまず最初にお聞かせいただきたいと思います。
  38. 梶本保邦

    梶本政府委員 ただいま御指摘の松本さんの「これじゃドルはもうからない」という本は、実は私どもも先般これを読んだ次第でざいます。まことになるほどと思われる点もあるわけでございまして、観光行政に携わる者といたしましては非常に参考になった次第でございます。ただいま先生がいろいろ御指摘なりましたけれども一つの問題は、ホテルが雨後のタケノコのようにできておるけれどもオリンピックが済んでしまったら一体どうなるんだというふうな問題を中心に、特に、必ずしも金持ち階級だけが日本を訪れるとは限らないが一体どうなんだ、こういう問題が一つの大きな御質問の要点であったように考えております。それにつきましては先般お届けいたしております観光関係の資料集の三十ページでございますけれどもホテルの部屋数の増加のグラフとそれから日本を訪れた外人観光客の滞在日数の伸びというものを比較してみますと、昭和二十八年をおのおの一〇〇にいたしますと、ホテルの部屋数の増加は三〇〇をちょっと切っております。それから外人観光客の滞在日数の伸びは五五〇ということで、ホテルの部屋数の増加率よりも外人観光客の滞在日数の伸びのほうがはるかに多くなっております。つまり一面それはホテルの利用率が高まったということになってあらわれておるわけでございまして、私どもとしましては、オリンピックが終わっても、日本ホテルががらあきになり、あるいは利用者が減るというふうなことは考えておりません。むしろオリンピックが開催された国々の例を考えてみましても、これを一つの契機として日本国際観光は躍進するのではないかというふうにも考えておるのでございます。それから何と申しましても日本の若い青年層がホテルというものになじんできておるということもホテルの利用率を高めていくのじゃなかろうか、このように考えておるわけでございます。しかしながら、御指摘にもございましたように、デラックスなホテルだけをつくったんじゃ意味がないではないか、このお説に対しましては全面的に私どもその気持ちで賛成をいたしておる次第でございます。  まずそれに対して運輸省のとっております方策の第一は、財政投融資運輸省のほうでお世話いたします場合に、どんな計画を持ってこられましょうとも、一室五百万円で査定をいたしております。現在では大体一室一千万、あるいは特に超デラックスなものでは一室当たり、一千二百万円見当かかるのが最近の状況でございますけれども、実際はどうあろうとも、運輸省開発銀行に推薦いたします場合は一室五百万として査定を加えております。そしてその五百万の三分の一を財政投融資、三分の一を市中銀行、三分の一は自己資金、このようなたてまえを貫いております。それよりもデラックスなホテルをおつくりになりたければ、どうぞ自己資金を調達してやってください、これが運輸省観光局のとっております立場でございます。ところが、あのホテルがあれだけのものをつくった、今度こそ負けるものか、自分のところはもっとデラックスなものをというのでおつくりになるのがホテル業界旅館業界の実情でございまして、これに対しては運輸省としては財政投融資のお世話をするときの額を査定する以外に方法はないと考えて、そのような方策をとっておりますことが第一でございます。  それから第二の方策は、そのようにしてできました登録ホテル登録旅館宿泊料金の届け出制を実施したわけでございます。届け出制を実施いたしましたのは、いまを去る二年前の国会で整備法の一部改正をしていただきまして、そして料金の届け出制を実施したわけでございます。それまでは、昨日まで三千円であったものが一夜明くればそれが一万円になろうと、あるいはもっと高額なものになろうと、どこもだれも査定のしようがないというのがホテル旅館料金の現実の姿でございました。十円上げるのでも大へんな国鉄、私鉄運賃に比べますと、ホテル料金旅館料金については野放しである、このような状況でございます。これについて国際観光振興上困るではないかということで、これは運賃値上げのように認可、許可というわけにもまいりません。やはり一つの限度がございますので、したがいまして届け出制をしいたわけでございます。これもすべての旅館に対して届け出制をしようというのではございませんで、片っ方で税の恩典のあるような登録旅館登録ホテルにつきまして、料金の届け出制をしこう、このようなたてまえで、二年前の国会で整備法の一部改正をしていただいた次第でございます。  そのようなことで、両面から、融資の面と料金の届け出制の面で、いわば業界に対して要望をいたしておるような次第でございます。根本的には、やはり世界の大勢が高額所得者層だけの世界旅行から、いわば国民大衆の世界旅行へというふうな動向が世界各国を通じての傾向でございますので、今後のわが国観光施策の重点は、勢いそのような、必ずしも高額じゃない方々旅行層相手に重点を注いでいかなければならないということにつきましては、全く先生の御指摘のとおりだと私ども考えております。
  39. 泊谷裕夫

    泊谷委員 ホテル問題は、私の感ずるところでは、英語のわからぬ者には英語で話をし、また日本語のわからぬ者に日本語で話をしているような感じがしてしかたがないのです。なぜかというと、いまの観光局長の説明で、融資で押えるという話でありますが、銀行で貸す条件になってまいりますと、超デラックスのホテルをつくらなければ金は貸さないしかけになっております。後段で言われます国民の大多数の人々の余暇をさいて楽しもうということに基点を置くとするならば、本来観光業務に対する政府の施策はどうあるべきか。アメリカのように、ドルを防衛するというならば、観光行政を一本にして、アメリカの飛行機を利用する、アメリカの出先を利用することによってその行程を一括して安上がりにする、こういう措置をアメリカはとっております。ちなみにこの本からそれを引き出してみますと、アメリカでは、世界各国を回る場合に、海路、空路の自由の保証をしまして、しかも航空機利用あるいは家族を同乗した場合の割り引き、こういう措置をとっておりますから、日本からの東京−パリ間、これは四十五万円、一千三百ドルかかるコースを、逆にアメリカから出発したとすれば、ニューヨーク—ロンドン−パリ−ローマ、二週間の行程で往復航空料金宿泊料、食費、それから観光施設の観覧料など含めまして、これはガイドのチップも入っておるそうですか、二十三万四千円、六百五十ドルでございます。半分でこれだけの多いところが回れるのであります。この措置がなしに、逆にいまの局長の話によりますと、デラックスのところは融資面で押えておるという話であります。そうしますと、地方宿泊施設整備に、日本開発銀行北海道東北開発公庫、中小企業金融公庫の融資の増額を出しておるわけでありますが、開発銀行融資対象外客宿泊施設整備基準北海道東北開発公庫も準用しておりますけれども国際観光ホテル整備法別表のホテル基準旅館基準より優秀な宿泊施設であることが条件になっております。それ以上のものをつくらなければ、まず金を貸さないという条件を金融面でたがをはめておるのであります。いかに局長がその金融面でしぼっておるといっても、一般旅館のほうがお金を貸してもらいたいといっても、窓口で拒否をされるしかけになっておるのであります。先ほど山田委員からも指摘がありましたが、旅館は和式の大広間、これらは融資の対象施設にならないのをはじめ、基準客室、食堂、浴室、暖房、便所と条件がきついので、結果的にはデラックスのホテルにのみ手を染めなければお金が借りられない形になります。ちなみに、私はインド、東南アジアしか歩いたことはありませんけれども、西欧陣営を歩いた方の話を聞きましても、アメリカにいったからといって、東洋人を収容するのに日本間、畳式の部屋があることも聞かされませんし、あらためてガイドを頼まなければ、カウンターで日本語を話してそのまま通るというしかけになっていないようであります。いまの局長お話が、もしその問題の本質をえぐっているとするならば、具体的に各金融機関の融資条件を、現行ホテル整備法別表のホテル及び旅館基準まで緩和すべきだと思うのでありますが、それについての見解をお聞かせいただきたいと思います。
  40. 梶本保邦

    梶本政府委員 まことに問題の核心をずばりと御指摘いただきまして、むしろありがたいのでございます。開発銀行目的は省略させていただきまして、毎年いわゆる政府資金の産業設備に対する運用基本方針というものが、経済企画庁を中心に、その年度、その年度ごとに立てられるわけでございますが、たとえば昭和三十九年度はまだできておりませんので、昭和三十八年度の運用基本方針について見ますと、国際観光施設については国際観光収入を増加させる効果の顕著かつ確実な施設について、その重点的整備をはかるというのが、政府の運用基本方針として経済企画庁で立てられた方針になっております。したがいまして、このような線で開発銀行融資というものが行なわれておる次第でございます。北海道東北開発公庫もこれに準じております。ただ、中小企業金融公庫につきましては、これは開発銀行とは少し目的が異なる次第でございまして、中小企業者の行なう事業の振興に必要な長期資金であって、一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通する、これが中小企業金融公庫の目的になっておる次第でございます。いま御指摘のように、開発銀行融資基準というものと、整備法にいう登録基準というものを詳細に検討いたしました場合に、開発銀行のいう融資基準のほうがちょっと高いのは事実でございます。たとえば、先ほど来問題になっておりますエレベーターについて申し上げますと、開発銀行融資は三階以上の建物についてはエレベーターがなければ融資しない、このようになっております。これは開発銀行が、先ほど申し上げましたその年度、その年度の運用基本方針に基づいて、融資基準としてつくっておる基準でございます。われわれとしましては、できるだけその基準というものをダウンさせたいという気持ちを持っております。したがいまして、従来も、開発銀行に、ホテル旅館料金が高くなるのはあまりにも基準がむずかしいからではないかというふうな点をつきまして、基準をダウンさしていただくようにお願いを続けてまいっておる次第でございます。今後われわれとしましては、さらに一そうこのような努力を続けていきたい、かように考えておる次第でございます。  それからもう一つの問題の、地方的な地域にある旅館、これにつきましては開発銀行地方開発ワク融資が行なわれておりますけれども、これはホテルではなくして旅館だけが対象になっておりまして、むしろホテル側からは地方開発というものは何も旅館だけではない、ホテルだってその使命があるではないかというふうなことで、逆にホテル側からお小言をちょうだいしているような実情でございますが、やはり地方開発としては、日本の現在の状況ではホテルよりも旅館整備したほうがよりふさわしいのではないかというふうな考え方で、地方開発ワク並びに北海道東北開発公庫融資旅館だけに限定をいたしまして、御趣旨のような線で努力をいたしておる次第でございます。
  41. 泊谷裕夫

    泊谷委員 せっかくお見えですから大臣にお尋ねしますが、観光局長としてはやはりいろいろの関係法案融資の条件があって、いまのようなお話をされると思うのですけれども、どうしてもボールのやりとりのような感じがしてなりません。一面、なるほど先ほどの前段の説明では、ホテルにしても旅館にしても、宿泊料金についてはこの社会機構の中で最高額を押えることができない。そして旅館側から、あるいはホテル側から見ましても、相当高利の金を融資期間の短い中でやるとすれば、やはり宿泊料をつり上げなければならぬわけです。ところが、この助成するという根本的な目的は、国際観光を強化して、外貨の獲得をして、国の政策に協力しようというのであります。先ほど松本さんの指摘したように、往年そういう時代があったのでありましょう。いまでもそういう高額のホテルを利用される方があっても、それは直接的ドル穫得にならずして、国と国との儀礼的なものには多く利用されるけれども観光客の増加についても観光局長からいま説明を受けましたが、ほとんどその人々の求めておるのは、中級のホテルで安直に泊まれるものということであります。オリンピックを機会にしてこの割り高なホテル代を経験した報道関係の諸君が一斉に全世界に流されたとすれば、本質的な問題を誤ってはいないかと思うのであります。具体的な措置として、いまお話のありましたように、観光局長としては基準を下げるという意思をお持ちでありますけれども関係する各省が数多いのでありますが、大臣から関係する各省に意欲的に折衝していただけるかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  42. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 ホテル賃が安くなることはわれわれも希望いたします。またこのごろの趨勢が、泊谷委員のおっしゃったような趨勢にあることを私も承知いたしておりますが、ドル防衛の見地から外貨穫得につきましては各省に強く要望いたしまして、たとえば航空機はできる限り日航機を使え、ことに役人の海外出張、公務員の出張についてはそれを厳達いたして、だんだん利用率がふえておるような状態でございますから、私どもといたしましてはあなたの説に賛成で、あなたがそうおっしゃらなくても、外貨穫得の見地からそういうことを常に要望いたしておるのであります。ただ、どういたしましてもこの飛行機で行かなければならぬ、その飛行機が日本においてはない、また、このごろは客船等も一そうできましたが、いままでは船で行きたいといっても日本には客船がない、こういうようなことで幾らかその点にあなたの趣旨に沿わないような点があるかもわかりませんが、われわれとしては、観光ももちろんその一つでありますが、すべての点から外貨穫得というか、海外収支改善のためにそういう方針はとっております。今後ともなお続けて強硬に言うことはもちろんでございます。
  43. 泊谷裕夫

    泊谷委員 大臣は意識的に避けられたのかもしれませんが、私のお尋ねしたのはそういうことではないのです。外貨穫得は私どもも賛成なんです。だが、ほかから来る人々は、大きなドッジボールがほしいと言っているのではないですよ。手ごろな野球ボールがほしい。日本人もそうなんです。ところがそのボールを買うのは、先ほども指摘をしたように、どうしてもドッジボールを買わなければならぬ仕組みになっておるのです。お金を貸す銀行では、三階以上はエレベーターがなければならぬということ、それから、一ぱい並べることはないと思うのでありますけれども、大広間などはその対象にしないということ、それから客室の基準にしても、いまありますホテル整備法の別表できめられておる基準登録旅館の条件をはるかに上回らなければ融資の対象にしてないのです。ですから、一般的に観光旅館として私どもが集まってきめた法律基準まで融資の対象は下げるべきだ、そしてほんとうにみんながほしいというホテルなり旅館をつくらせることに政治面から協力をするということが必要だと私は思うのです。観光局長は、それは考えが同じだ、こういうふうにお話をされたので、私は役所を担当する観光局長ことばを聞いて、大臣の政治性で各省にそういう方向で今後やらせるように御努力いただけるかどうかということをお尋ねしたのです。
  44. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 もうそれは、あなたが申すまでもなく努力いたします。もちろん、それでいままでもやっておるのです。
  45. 泊谷裕夫

    泊谷委員 次に国内観光、これと関連して質問させていただきたいと思うのです。  いまさらという感がいたしますけれども観光基本法の第十一条は、「国は、家族旅行その他健全な国民大衆の観光旅行の容易化を図るため、家族旅行その他健全な国民大衆の観光旅行に適する旅行関係施設整備等に必要な施策を講ずるものとする。」と家族旅行その他健全な国民大衆の観光旅行の容易化を明記しております。観光白書には、「経済の発展とともに、社会機構の複雑化、人口の過度集中、社会経済生活のテンポの急速化、労働形態の単純化等の現象も著しく、そのため、社会生活における緊張の度合が増大し、生活における緊張の緩和と疲労の回復とが国民生活にとって欠くべからざるものとなってきている。また、一方、観光に対する国民の考え方も大きく変化しつつあるものと考えられる。最近、とくに、若い世代を中心として、生活自体を充実させ、有意義にすごしたいという積極的な態度がみられ、余暇というものについての考え方や余暇と仕事とに対する比重の置き方にも変化の傾向がみられる。このような生活態度の変化に伴い観光旅行に対する関心や意識も積極的なものとなり、いわば生活の一部というように考えられるにいたっている。」と書いております。昭和三十九年度の予算は、大臣も御承知のとおり、オリンピック、そして外人誘致にすべてを集中しておるように私は見受けるのです。お年寄り夫婦が静かに公園のベンチでひなたぼっこをするような、ほのぼのとした施策に積極的な姿勢が見られないのであります。林野庁の観光資源調査の予算は削減され、厚生省の温泉源の保護及び保養温泉地の整備費の増加もありません。国民宿舎の設置及び国民休暇村の造成も、厚生年金及び国民年金の積み立て金融資で考えると、お茶を濁す程度であります。こうなってまいりますと、先ほども指摘いたしました観光基本法十一条、観光白書に指摘されておりますように、国民の生活の一部が変わりつつあります。この問題について、政府の具体的な諸政策をこの際お伺いをしておきたいと思うのです。  なお当面、法案審議がホテル整備法中心になされておりますから、一般国民の一番よく利用する旅館融資は、先ほどもお話のありました中小企業金融公庫でいたしますので、これが融資の限度の増額、融資期間の延長、利子の引き下げなどを考慮されなければならぬと私は考えるのでありますけれども政府の具体的な方針を明らかにしていただきたいと思います。
  46. 梶本保邦

    梶本政府委員 ただいま観光基本法の十一条を御指摘いただきましたが、「国は、家族旅行その他健全な国民大衆の観光旅行の容易化を図るため」と、こうなっております。この「容易化」ということばを編み出すまでには、なかなか容易ではなかったのが立案の実情でございます。そもそも「国民大衆」とは何ぞやということから問題になったのでございますけれども、「国民大衆」ということばは、相互銀行法あるいは国民金融公庫法等の中に、第一条に「国民大衆」ということばがございますので、「国民大衆」ということば法律用語としてすでに使われておるから、基本法の中で使ってもいいだろうというので、「国民大衆」が入ったわけでございます。特に一部で非常に御熱心に御主張になりました「修学旅行」等もこの「国民大衆」の中に含まれる、このような法律解釈になっておるわけでございます。  この「容易化」というのは何ぞやということでございますけれども、これには、まず旅行に行きたいんだけれども時間がないという人には、できるだけ時間を与えるようにすること、これが容易化の第一でございますが、これには有給休暇旅行制度の問題等が、この法案立案の過程において御審議になったのでございますけれども、それには労働条件の問題、あるいは労使間の折衝に待たなければならない問題等いろいろございますので、観光基本法の中に、有給休暇旅行制度というもの、そのものずばりをここにうたい込むかどうかということについては、いろいろお話し合いがなされまして、その一つのあらわれとして、「容易化」ということになったわけでございます。したがって時間がないことによって旅行に出かけられない人に時間をできるだけ与えるということは、現在の日本におきましては、労使間の折衝に待つべき問題だ、かように考えております。  第二には、旅行に出かけたいんだけれどもお金がない、こういう問題が出てまいります。そういう人に対しましては、できるだけそのような援助を国としてして差し上げたい、こういう問題が出てくるわけです。それがいわゆる旅行金庫法の問題でございます。将来この基本法に基づきまして、子供の法律、子法として旅行金庫法をつくっていくような場合には、この十一条が一つの母体になってまいるわけでございまして、われわれ運輸省としましては、将来旅行金庫法の立案を考えていきたい、かように考えております。これは、欧光先進観光諸国におきましては、つとに立法化されておる問題でございまして、すべてが、いわゆるソシアル・ツーリズムと旅行金庫法とが裏はらの関係におきまして実施されておるような状況でございますので、わが国といたしましても、将来はこのような方向に進めていきたい、かように考えております。これが容易化の第二でございます。  それから第三の容易化は、交通手段というものを便利なものにするということが一つの問題でございまして、いわゆる交通の障害の排除とでも申せば申せる問題じゃないかと思います。要するに時間の問題と資金の問題とそれから交通機関の障害の排除であります。  それから第四番目は交通機関を利用して目的地に到達した場合の旅行関係施設が不足しておる、あるいはまた好ましくないというふうなことを解決していくのが、容易化の内容をなすものだと考えております。  したがいまして、この「容易化」ということは、簡単に日本字で書きますとわずかの三字でございますけれども観光基本法の中に取り上げるに至りました経緯をつらつら考えますと、まことにたいへんないきさつを持ったことばでございまして、この線に沿って、国民大衆の健全な旅行、いわゆるソシアル・ツーリズムの方向が将来にわたって打ち出されていくべきものだというふうに考えております。  「国は、」というふうに書いてございますが、これはただいま御指摘のありましたように、公営ユースホステルに対しては、運輸省のほうで予算を計上して補助金を出す、あるいは厚生省のほうでいわゆる国民宿舎につきましては、厚生年金の還元融資によりましてこれを拡充していく。最近では国民休暇村というものを各地につくるというふうな方法がなされておるわけでございます。そのほか、ただいま第二番目に御指摘なりました、中小企業金融公庫をもっと活用してはどうか、この問題が次に出てまいるわけでございます。そもそも中小企業金融公庫の融資旅館に始まりましたのは昭和三十一年でございます。このときは資本金が一千万円以下で、常時使用する従業員が三十名以下という条件がついておったのでございますが、いわゆる融資限度額といたしましては、一千万円であったわけでございます。一千万円じゃ何ができるか、もっと融資を高めてもらいたいという折衝を運輸省としてはいたしまして、三十六年の五月十五日から二千万円にまで高められたわけでございます。この二千万円まで高められると同時に、二千万円はいわゆる中小企業金融公庫の本店扱いと申しますか、直接貸し付けの形態になるわけでございまして、運輸省の本省と中小企業金融公庫の本店との間の折衝によってこれを直接貸し付けしていただく、それから一千万円は陸運局と中小企業金融公庫の地方の支店との間におきまして折衝をして貸し付けをする、このような形態をとっておるわけでございます。ところが二千万円でもまだ足りないわけでございます。もっともっと高めていきたいという努力を続けまして、ようやく昨年の九月三十日にこの二千万円が三千万円に高まっております。したがいまして、現在は三千万円まではいわゆる直接貸し付けとして本省と中小企業金融公庫の本店との間の折衝で行なわれ、一千万円までは陸運局におきまして地方の支店との折衝においていわゆる代理貸し付けの形態で行なわれる、このような経緯をたどって今日に至っておる次第でございまして、昭和三十一年に始まった中小企業金融公庫の融資はいまや一千万円から三千万円にまで高まった、このような状況でございます。しかし、われわれは決してこれをもって満足はいたしておりません。将来は融資の限度額をさらに高めること、融資の条件を緩和していただくことと、もう一つは、やはり一番大きな問題でございますところの利息の引き下げ——中小企業金融公庫はただいま年九分で借りております。これをさらに引き下げていただく、このような方向に向かって運輸省としましては努力いたしたい、かように考えております。
  47. 泊谷裕夫

    泊谷委員 局長からお答えがありました旅行を容易化するという方策については、私もいま瞬間的に考えられるのは、体系づけて話されると、そういうところでほぼ実施されるのじゃないかと思うのですが、ただお話をお伺いして、そのことについては、昨年の五月二十三日に同じこの運輸委員会で、私どもの久保委員から、旅行休暇を含めて、修学旅行も含めてずいぶん話をされておるわけですね。約一年たつのです。この委員会で、運輸省と私どもとの話では一応前進したかのように見えて、なぜそれが具体的に一般の国民が利用する領域までこないのか、日数が足りないことなのだろうか、あるいは、これはまた本質的な問題になりましょうけれども観光行政の交通整理をしなければならぬ問題もあると思いますけれども、あまりにも遅々として進まないということについて、私は逆にふしぎな感じを持つのです。いま私はできるだけホテル旅館に合わしてお話をいたしましたので、中小の融資限度の増額、これについて三千万、これはわかりました。そこで運輸省として関係各省に折衝しております融資期間の延長、利子の引き下げの具体案ですね、これは先ほどもお尋ねいたしましたが、中小企業金融公庫ばかりでなくて、開銀もそれから北海道東北開発公庫も、先ほどの御答弁がありましたので、具体的に関係各省と折衝を試みられておると思いますので、その内容を明らかにしていただきたいと思います。
  48. 梶本保邦

    梶本政府委員 開発銀行のほうは融資期間は十年ないし十五年、利息は八分七厘でございます。それから北海道東北開発公庫のほうは、融資期間は一年から十年までで、利息のほうは同じく八分七厘でございます。それから中小企業金融公庫のほうは五年以内で年九分ということになっておるわけでございますが、実は運輸省の内部におきましても同僚の海運局長の担当いたしております海運関係、あるいは船舶局長の所管いたしております造船関係におきましては、御承知のように非常に恵まれた利息になっておりますので、せめて運輸省内のバランスからしても、何とか同様に肩を並べてくれないかというふうなことで、関係方面にお願いをいたしておるような次第でございまして、私どもも機会あるごとにこの利息の引き下げ、融資期間の延長ということにつきましては、開発銀行、経済企画庁それから大蔵省、こういった関係する方面と常に折衝をいたしておる次第でございますが、いまのところこの利息の問題につきましてはなかなか壁が厚いようでございます。しかしこんなことでくじけてはなりませんので、今後とも努力をいたしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  49. 泊谷裕夫

    泊谷委員 船舶と同じ金融条件というのには私自身議論がありますけれども、一応具体的な方策が示されましたので、次に移ってみたいと思います。  本来、本日提起されております法案を中心にお尋ねをする用意をしておりますけれども、大臣が出かける時間の関係もあるという話でありますので、もう一つ、直接的には国際観光ホテル整備法に関連を持たないと思いますけれども、一言運輸大臣にお尋ねをしたいと思います。  先日観光委員会で八人の参考人を呼んでいろいろと意見を聞かしていただいたのです。その中で最も私どもとして配慮しなけばならぬものは、先ほど観光局長からもありました全体の国民の緊張緩和、そして新しい勤労意欲を倍増しようということで、国民の観光事業というものに力を入れよう、こういう筋で考えておるときに、まだ交通事情その他でささやかな修学旅行にさえ出れない子供たちがある。その場合の大きな弊害は、国鉄運賃が二十五名以上でなければ団体割引の対象にならない、それから数多い観光バスが、少人数であれば、これまた混乗ということで快く乗せてもらえない、あるいは山村僻地から鉄道の接続駅まで来るのにほとんど利用すべきものがないということなんです。ここら辺にいる子供たちは、よくテレビに出てきますけれども、栄養失調で、頭だけが大きくて手足が細くて、ランプのほやをみがいておる、本来この子たちこそ、この発展する経済におくれないように育て上げなければならぬのではないかと思うのですけれども、具体的に考えてみますと、鉄道との接続駅までかりに自衛隊の車両を借りて輸送する、鉄道の団体割引の人員も特殊な学校について考慮をする、それから観光バスなどについて、少人数だからということで拒否をしないで、同じ子供たちとして扱ってもらう、こういう方策を私はすみやかに大臣の手でつくっていただきたいと思うのでありますが、大臣としてこの問題についてどうお考えであるか。すみやかに事務当局にその検討を指示される用意があるかどうか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  50. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 そういう問題は、始終運輸当局の間、国鉄の間で論議されております。私は一日もすみやかにそういう憂いのないようにすることに努力いたすつもりでございます。
  51. 泊谷裕夫

    泊谷委員 大臣のせっかくのおことばでありますから、近い機会に具体的なそれに対する方策が提案されることを私は強く期待をいたしたいと思います。  それでは国際観光ホテル整備法に限定して、これからの質問をしたいと思うのです。  先ほどもお話がありましたが、この法案は助成法であったと聞くのでありますけれども、今回の改正は規制の面が強く打ち出されたように私は感じます。しかも「宿泊約款」とか「立入検査」などとかおよそ観光事業にはふさわしくない字句が挿入されてまいっておりますけれども、なぜこういう改正をしなければならないのか、その事情をお聞かせ願いたいと思います。なお、この改正提案は、観光政策審議会もあるわけでありますが、この皆さんの意向もこういう姿勢であるのかどうか、こういうことをまず最初にお尋ねをしたいと思います。
  52. 梶本保邦

    梶本政府委員 先ほど来たびたび先生が引用していらっしゃいます観光基本法精神に照らしまして、既存の法律で改正を要する点は改正をしていく、新しい立法を必要とする場合には新しい立法をつくっていくというのが運輸省としての根本的な立場でございます。そのような立場から、既存の法律観光基本法精神に照らして改正を要するものをこの国会で改正をいたしたいというのが、私どもの根本的な考え方であったわけでございます。ただいま整備法に限定してというお話でございますので、この整備法でなぜ改正するに至ったかということでありますが、この法律目的が第一条に書いてございますけれども、「外客宿泊施設整備を図り、外客接遇の充実に資することを目的とする。」これが整備法目的だと考えております。したがいまして、この目的に照らしてわれわれは改正を要する点は改正をしていこう、こういうことでございます。  まず第一のなぜ宿泊約款のようなものを設けたのだということでございますけれども、平たく申しますと、いわゆる宿屋の観念から近代的旅館経営にまで脱皮していただきたい。これが私どもの偽らざる念願でございます。と申しますのは、約款ということばが何だか非常にしちめんどうくさい法律的なにおいを持っておるやに一部ではお感じになるかもしれないのございますけれども、「利用者の皆さまへ」とか「お客さまの皆さまへ」というふうにたいがいのホテルなり旅館には書いてございますが、ああいったことを法律で表現いたしますと約款ということばになるわけでございます。決してむずかしいことを意味しておるわけではございませんで、むしろ今後どんどん外人観光客がふえてくることを予想いたしまして、旅館なりホテルなりとこれらの観光客との間にいろいろのいざこざ、トラブルがあってはならないと思いまして、そういうことを未然に防止して気持ちよく日本旅行していただきたい。また日本人が泊まられる場合におきましてもお互いに気持ちよく利用したり利用させたりというふうな考え方で、この約款を届け出していただきたいというふうに法律改正を考えておる次第でございます。要するに近代的経営のホテルなり旅館に脱皮していただくための一つの必須条件である、かように考えておる次第でございます。  それから観光ということが何ということなしに一つのムードを持っておることにつきましては、御指摘のとおりだと思います。しかしながら、そのムードがあるから立ち入り検査ということばはふさわしくないというあるいは御意見かとも拝聴いたしたのでございますけれども、現在ホテル旅館の数はお届けいたしておりますこの観光関係資料集の二四ページにもございますように、旅館という旅館を総合計いたしますと六万三千七百三十四軒ございますが、その中で政府登録になっておりますものが四百五十五軒、〇・七%でございます。つまり現在の整備法はこの四百五十五軒、〇・七%の政府登録旅館を対象にいたしております法律でございます。すべての旅館についてこの整備法適用しようというふうな考え方法律ではないわけでございます。そういたしますと、この整備法目的そのものが外客接遇の充実を期するのだということでございますれば、一方においてはいろいろ基準等をつくってもいただかなければならないし、また一方においてはそれに対して国としてはできるだけの助成措置をとっていく。これがまた国としてとるべき当然の措置だと考えております。そのようなたてまえで現在の姿をながめてみます場合に、先ほども申し上げたのでございますけれども、一たび登録をとってしまうと、いわばあとは野となれ山となれ式で、いわゆる施設改造、それを法の精神に照らして考えますと、改悪されるような場合があったような場合に、それでは困るわけでございますので、立ち入り検査をするということでございまして、決して四六時中観光局職員検査をして回るというふうな意味合いのものでは毛頭ないわけでございます。それがために、十六条の第二項に「特に」ということばが入りましたのは、そのようなことが法案の審議の段階におきましても議論になったから、「特に」ということばが入った次第でございますので、これに対して業界の一部で御心配になっておるかもしれませんけれども、そのような方法でこの検査を行なうというふうな意味合いのものでは毛頭ないつもりでおります。
  53. 泊谷裕夫

    泊谷委員 局長の説明によりますと、約款というのは、法律用語で適当なのがあれば、あまりこだわるというようなニュアンスのものでもないようでありますから、それはそれとして、立ち入り検査の問題は、先ほども具体例がありまして、具体的な伊東の旅館の問題が指摘されましたけれども法律でやらなければならぬほど数多くのそういう不心得の業者が出ておるのかどうか、その実態をこの際お聞かせをいただきたいと思います。あわせて陸運局の仲間が検査に行くというふうなことは考えてないというふうな話でありますけれども法律でそういうことが制定されますと、勢い担当者はその業務が負担過重になってくるわけでありまして、当然運輸省における検査担当の要員増というものが考慮されなければならぬと思うのであります。しかし、予算面を見ますと、これが何ら具体化されておらないのであります。これについてお答えをいただきたいと思うのです。  私はこの際申し上げておきたいのですけれども、問題の根本的なところが間違ってはいやしないだろうかと思います。よく列車内で年寄り同士が新聞紙を置いて、私が先に座席を取ったということでいさかいを起こしているのを見ますが、これはそれらに切符を売った国鉄が全部すわれるように整備するのが、その問題の解決だと思うのです。戦前三分四厘融資旅館の育成をしてまいりましたものが、先ほども指摘がありましたけれども、八分七厘あるいは九分、しかも国民金融公庫などは七年、中小は五年という融資期間で無理をかけた中で完ぺきなものを求めることよりも、この改正のほうが旅館を健全なものにするポイントじゃないかと思うのでありますが、これもあわせてお考えをお聞かせいただきたいと思うのであります。
  54. 梶本保邦

    梶本政府委員 先ほど伊豆旅館の例をあげましたのは、比較的最近に起こった一番なまなましい事例でございましたので御説明いたしたわけでありますけれども、そのほかにも、先ほども申し上げましたけれども、洋式便所のとびらをくぎづけにして年がら年じゅう使用禁止という……。
  55. 泊谷裕夫

    泊谷委員 それは何軒くらいあるのですか。
  56. 梶本保邦

    梶本政府委員 いままでにわかりましたもので、旅館の名前を具体的に申し上げることはひとつこの際御了承願いたいのでございますけれども、一年間の間に十軒ばかりでございます。それで何も悪意の方ばかりというわけでは毛頭ございませんので、ほとんどの方が善意の気持ちで国際観光に御協力いただいておるわけでございますが、中にはたまたまそういうふうな事例がございました場合に、この検査ということを発動したいというだけのことでございまして、繰り返して申しますように、四六時中立ち入り検査、特に旅館のような商売をしていらっしゃる建物の中に入っていくというような非常識なことは毛頭考えておりません。それは施設についてでございますが、私どものほうの整備課長以下整備課は建築の技術屋がおります課でございますけれども、事務屋が行ったんじゃこの施設のことはわからないわけでございまして、これは建築の専門家が中心になって参ることになるというふうに御了承いただきたい次第でございます。
  57. 泊谷裕夫

    泊谷委員 局長お話をお伺いしますと、それじゃこの検査は、立ち入り検査をしなくとも、ただの検査でもいいのではないかと思うのですが、いかがですか。
  58. 梶本保邦

    梶本政府委員 これは一つ法律用語になっておりまして、いわゆる立ち入り検査というのは一つの例文になっております。たとえば、同時に御審議いただいております旅行あっ旋業法は、実は議員立法でございます。この議員立法の旅行あっ旋業法にやはり立ち入り検査ということばが使われておるわけでございます。けれども旅行あっ旋業法に書いてございます立ち入り検査を、この法律を議員立法でおつくりいただきましてから今日まで行なった例があるかといいますと、実は一件も例がないというふうなことでございまして、何も書いてあるから行なうというわけのものではございませんので、たてまえとしてそういう条文を入れておくということにすぎないわけでございまして、この条文が入ったから、それによって直ちに四六時中見て回るというわけのものではないことを御了承いただきたいのでございます。
  59. 泊谷裕夫

    泊谷委員 旅行あっ旋業法とはおのずから質が違うと思いますけれども、いま何か法律用語の設定で、実態としては違うというお話でありますから、それはそれなりにいまの段階で理解をして、次に移ってみたいと思います。  第六条第一項で「業務に関する料金」の下に「及び宿泊約款」を加えた。従って本文は、「宿泊料金その他省令の定める業務に関する料金及び宿泊約款を定め」と、こうなるわけですね。この場合、省令宿泊約款まで含まれるのか含まれないのか、なお、料金のみにて宿泊約款にはかからないと解してもよいのかどうか、この点をお答えいただきたいと思うのです。
  60. 梶本保邦

    梶本政府委員 これは、かからないわけでございます。  それから省令でございますけれども、これは先ほど申し上げましたが、国際観光ホテル整備法施行規則という省令がございますが、それの第五条に料金のことが書いてあるわけでございまして、宿泊料金とそれから朝食あるいは夕食を含めました場合における、つまり一泊二食つきというたてまえで料金をきめました場合に、朝御飯を食べなかったり、あるいは夕食を食べなかったりした場合の料金、それからサービス料、こういったものがいわゆる法律第六条第一項の「業務に関する料金」ということになっておる次第でございます。
  61. 泊谷裕夫

    泊谷委員 そうしますと、宿泊約款の内容は省令などにおいて定めるのではなくて、業者が自主的にきめたものを届け出るというふうに理解していいのですか。
  62. 梶本保邦

    梶本政府委員 そのとおりでございます。従来行なわれております利用規則のようなものを集約いたしてみたものを先般お手元へお届け申し上げましたような次第で、あのようなものがいわば例示的なものとして考えられるのではないかというのが運輸省観光局の気持ちでございまして、省令できめるという性質のものではございません。
  63. 泊谷裕夫

    泊谷委員 それでは次に移りますが、第六条第二項にあります「特に必要があると認めるときは」「その変更を指示することができる。」とあります。これはどういうものを意味するのか、その内容について関係業者との調整が終わっておるのかどうか、これは少し飛躍していると思うのですけれども、いま起きている生存者で叙勲しようというような問題とも関連いたしまして、省令で何でもかんでも、がたがたきめるということについて一面恐怖心もありますので、その内容をお知らせいただきたいと思うのです。できることならば、もう省令案も作成されておるのではないかと思いますので、それについて参考資料として御提示いただけないものかどうか、それもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  64. 梶本保邦

    梶本政府委員 まだ法案御審議の段階でございますので、実は省令案まで手が及んでいないのが実情でございます。ただいま御指摘の「その変更を指示することができる。」というのは一体どういう場合かというお尋ねでございますが、「外客接遇上不適当であり、特に必要があると認めるときは、」と書いてございますけれども、これは先日の当委員会におきましても、私お答え申し上げたのでございますけれども、たとえばチェックアウト・タイムの時間につきましても、これを午前九時あるいはもっと早い時間にチェックアウト時間をきめてお届けいただきましたような場合には、これはどなたがお考えになってもやはり少し非常識ではないかというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、どなたがごらんになっても、あまりにもそれでは非常識にすぎるではないかというふうなことがあった場合には、変更を指示することができるというふうに私ども解釈をいたしております。それの一番いい例は、チェックアウト・タイムなんかを午前九時にきめるというふうな場合がこれに当たるのではないかというふうに考えております。
  65. 泊谷裕夫

    泊谷委員 それでは次に、先ほど一度お尋ねしました検査について、「この法律施行を確保するため必要があると認めるときは、省令の定めるところにより、」とありますね。省令できめていいことになっているわけですが、検査だけに、やはり気になるわけであります。先ほどもお話がありましたように、くどいようでありますが伺いたい。これはただ検査権を立法化するのに法律用語がこれしかないということで、実態としては具体的な検査内容はあまり従来と変わらないというふうに理解をしたいと思うのでありますが、それでよろしゅうございますか。
  66. 梶本保邦

    梶本政府委員 それでけっこうでございます。それで、省令できめますのは、その手続規定でございまして、国民の権利義務に関するようなことは省令ではきめないというのが立法の通例になっておりまして、省令では大体手続的なものというふうに御了承いただきたいのでございます。
  67. 泊谷裕夫

    泊谷委員 最後ですけれども、先ほど山田委員も提起しましたが、ぼくは別な角度からエレベーターについて伺いたい。エレベーターの新式なのは、大量生産になれば別でありますけれども、一基一千万円ぐらいかかるそうですね。そうして少なくともやはり各層で一坪、普通五坪ないし六坪くらい要する。しかもこのエレベーターを設置するのには、直接工事以外の条件も相当きついようでありますし、維持費も大きな額になってまいるのであります。これは先ほども指摘をしましたけれども、ほかの国に行ったからといって、日本の畳敷きの部屋が別にあるわけではありませんし、先日参考人の石川さんが言っておりましたけれども、数少ないでしょうけれども、外国からおいでになりましても、座便式の便所よりも日本式便所のほうが腰のばねを強くして、たいへん日本旅館のほうがいいという指摘があったようであります。日本旅館は従来やはり監督官庁の運輸省基準に照らして運営されてきているわけであります。厚生省所管の部分もありますが、いまは運輸省所管分について質問しております。運輸省としてエレベーターを設置基準の中に入れなければならないものだろうか、この金利の高いときにこれだけのものを必要条件とすることについては実態が伴わないのではないか、新しく建てる人は建てるというかまえでかかるでしょうけれども、従来のものについてはこの条項については考慮してしかるべきだと思うのでありますが、局長のお考えをいただきたいと思います。
  68. 梶本保邦

    梶本政府委員 この法律が制定されましてから、昭和二十四年の制定でございますので、もう十数年たっているわけでございます。今日までエレベーターのことが登録基準の要項になっておりませんでしたのは、この制定当時の建築業界と申しますか、日本全体のビルの建設の状況等にかんがみまして、そこまでは、何と申しますか、少し厳重すぎるのではないかというふうなことであったのだと考えておりますけれども、やはり建築業界は日進月歩でございまして、今日の建築業界というもの、あるいは続々として東京都内に建っておりますビルをごらんになりましても、エレベーターというのは、ビルというもの、人間が利用する建物と私はもう不可分のものになっておるのじゃないかと思うわけでございます。それも特に二階、三階にまで必要だとは運輸省は申しておりませんので、四階建て以上の建物については必要だ、こういうふうな一つのいわば妥協的な線を打ち出しておるつもりでございます。現に四百五十五の登録旅館がございますけれども、四階建て以上の建物でございましてエレベーターのないものは、現実には十五軒ほどしかございません。これがたとえば四百五十五の旅館のうちで大半のものがエレベーターがない、それにエレベーターをつけるのに一千万円もかかるというのならば、運輸省の申し上げることが非常に理不尽であり、またあまりにも非常識な考え方かもしれませんけれども、現実に数えてみますならば、四百五十五の旅館のうちで、四階建て以上の建物でエレベーターのないところがわずか十五軒ほどでございますので、私どもはやはり今日の建築業界の趨勢にかんがみまして、エレベーターは四階建て以上の建物については必要だ、このような結論に到達した次第でございます。
  69. 泊谷裕夫

    泊谷委員 最後と言って、もう一言お伺いしたいのですけれども、先ほどもちょっと議論がありましたが、旅館が傾斜地にある場合は、これから除外されるというふうに理解していいのかどうか。それからエレベーターの場合も絶対必要条件だとお考えの観光局長と、数は小さいのですが、最近の旅館なりホテルのかまえ方が、日本の古来の美風を逆にそこねておると思われるものについて根本的に考えてみる必要があるのではないかと思うのです。松木さんのこの本でも指摘しておりますように、ぎょうぎょうしいパンフレットとかなんかよりも、湯飲み茶わん一つ贈るほうが、ほかの国に行ってから、この茶わんはどこどこのものでということで話題を豊富にするし、そして昔からある折り紙などのみやげものを喜ぶと言っておるのです。だとするならば、四階建てで歩行がたいへん困難だという実態は認めますけれども日本日本らしい旅館にすべきではないでしょうか。どうしても外国の人々が拒むこと、から紙があいていてのぞかれるというようなことは極度にきらうわけですが、こういう寝室というか、部屋といいますか、これが外部から遮断されておること、いわば最小限度の条件は必要と考えるのでありますけれども、何もかにも全部洋風並みというふうに考えることについては、運輸省としても抜本的に検討を加えてもらってよいのではないか、こう思いますので、答弁をいただこうとは思いませんけれども、御検討をいただきたいと思うのであります。  以上で私は質問を終わります。
  70. 川野芳滿

    川野委員長 久保三郎君。
  71. 久保三郎

    ○久保委員 運輸大臣に、法案には直接関係ありませんが、先に二、三お尋ねしておきたいと思います。  先般参考人をお呼びしたときに、たしか修学旅行協会とかそういうところの代表だと思うのでありますが、そこで取り上げられた問題で、いわゆる僻地の学校ですね。僻地の学校は、御案内のとおり、一学年の数も非常に少ない、あるいは三学年を一緒にして複数教育というか、そういうものをやっていく。そうしますと、この修学旅行においては非常に負担もかかるし、あるいは輸送その他について非常に苦労するという話がございました。と申しますのは、国鉄の運賃割引にしましても、団体割引はたしか二十人以上の児童生徒に対して割り引きするわけですね。ところが二十人以下の僻地の子供たちは、そういう恩典には浴していないということです。なるほどそう言われてみれば、そのとおりなんです。初めて知ったような感じを受けたのでありますが、こういうものについては、これは国鉄当局との関係もございましょうけれども、数の多いものではないのです。でありますから、この際早急にこれらに対する運賃割引の制度もひとつ考えてみたらどうかということと、もう一つは、輸送手配にいたしましても、これはかなり小人数でありますから、容易でないと思う。これに対して新たなくふうがあるかどうか。たとえば僻地なら僻地を、そういう小単位の児童生徒を一括して輸送するというような考えはできないか。この東京には僻地はないかもしれませんが、福島県なら福島県下のその地域の僻地の子どもたちを集めて一つの修学旅行コースをつくってやって、そしてそれがたとえば国鉄なら国鉄の一車両単位くらいになる、あるいはバス一台くらいの単位になるまで、そういう方法をとらせるようにしていくことがまずさしあたり望ましいことだ、かように思うのであります。観光局長もおられますが、旅行の容易化というのは、身の回りの具体的なものを取り上げることも一つだと思うのです。制度上に対する検討は先ほど泊谷委員が言ったとおりであります。むしろそういう現実的な問題を一つ一つ解決していくところに、やはり観光基本法のねらいがあったと私は思うのです。そういう意味で大臣に御考慮をお願いすると同時に、御所見のほどをお漏らしいただきたい、こういうふうに思います。
  72. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私もそういうことを希望いたしまして、そういうように国鉄へひとつ話してみたいと思います。
  73. 久保三郎

    ○久保委員 観光局長、時間がありませんので、あなたの説明は懇切丁寧過ぎますから簡単に。もちろん私のほうでも少しよけいなことばが入るかもしれませんが、時間を詰めてやりたいと思います。  いまの問題について、大臣から御答弁がありましたが、所管の局長としては積極的にお働きいただきたいので、近く関係省庁というか、そういうところと御相談いただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  74. 梶本保邦

    梶本政府委員 基本法に基づく修学旅行法のようなものを関係方面と折衝して、何とか具体化していきたいという気持ちを持っております。その一連の問題として、ただいま御指摘のような問題は善処してまいりたい、かように考えております。
  75. 久保三郎

    ○久保委員 いまの一連の問題は、修学旅行法に関係なく——修学旅行法は、どうもすぐにはお手元ではできかねるような様子でありますから、すぐに期待はいたしておりません。われわれとしては、来春まで待ちましよう。待ってできなければこちらでやる。しかしいま申し上げたのは具体的な問題でありますから、早急に取り組んでいただきたい、かように考えております。  そこで、あっ旋業法の問題でありますが、このあっせん業の保証金であります。この積み立ての保証金というか、そういうものの額は、大体この程度なら悪質な者はいなくなるだろうということで引き上げになったと思うのでありますが、この引き上げの理由は何ですか。
  76. 梶本保邦

    梶本政府委員 いわゆる営業保証金というものは、資力信用を一般的に担保する制度でございますが、旅行あっせん業者の中には、いわゆる机一つと電話一本でやっておるような悪質なものも中にはあるかもしれませんけれども、私は大部分の方はやはり善意のあっせん業者だと信用いたしておる次第でございます。したがいまして、悪徳の業者という面からだけ考えますと、営業保証金の額は多ければ多いほどいいわけでございますけれども、やはり大部分の方は善意のあっせん業者でございますので、そこはやはり営業保証金の額というものは適当な額というものがおのずから見出されなければならないと考えております。現在の営業保証金が設けられましたのが昭和二十七年でございまして、旅行あっ旋業法制定の年でございます。それから今日までのいわゆる消費者物価指数というふうなものを検討いたしまして、そして今度は最高五割から四割というふうな引き上げを考えた次第でございます。
  77. 久保三郎

    ○久保委員 あらためてお尋ねしますが、この営業保証金というのは、いわゆるこのあっせん業者が資力信用があるという証拠に取るわけですか、どういうねらいで保証金を取るのですか。
  78. 梶本保邦

    梶本政府委員 資力信用を一般的に担保するのが目的でございまして、これによって起こった損害のすべてを保証金の中でまかなうという性質のものではございません。これはすべての営業保証金について共通の考え方でございます。  それから、この保証金の中から旅客なり旅館の債権が一般債権者に優先するという性質をこの保証金は持っておるわけでございます。それで、繰り返して申し上げますが、すべて起こった損害を保証金でまかなうという性質のものではございません。
  79. 久保三郎

    ○久保委員 損害をまかなうものではない、やはり資力信用があるという証拠だ、こういうふうになりますね。そうしますと、大体限度額は七十万の三十万ということになりますね。そうすると、あっせん業者の一番小さいのは大体一カ月にどのくらい金額にして扱っているのでしょうか。大きいのは億という単位がつくかもしれませんが、小さいのは……。
  80. 梶本保邦

    梶本政府委員 これは先般お届けいたしております観光関係資料集の中に旅行あっせん業者の現況がございますが、いわゆる一般旅行あっせん業者が昨年の四月一日現在では四十六、きょう現在でちょうど五十でございますが、邦人旅行あっせん業者の数が二千六十四、もう二千を突破いたしております。この中には海運局長登録するものもございますれば、陸運局長登録するものもございますが、大半のものは都道府県知事への登録になっております。したがいまして、業者の数も二千を突破しておりますので、最小のものはどの程度だと言われましても、ただいま手元にその数字を持ち合わせてはいないのでございますが、登録はしておるけれども、実際にはあまり仕事をしていないというふうなものもあるのではないか、あるいはまた他の業者の下請的なことをやっているものもあるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  81. 久保三郎

    ○久保委員 私がお尋ねしておるのは、その額はどの程度扱っておるのでしょうか、こうお尋ねしておるわけです。おわかりにならないようでありますが、私は大体一カ月に三十万やそこらの扱いはたいていしていると思うのです。そうでなければ商売にならないと思うのです。たとえば、マージンが五%といたしましても、三十万で幾らになりますか。その中から人件費を払ったり何かしたら、それは食ってはいけないということでしょう。だから、この保証金の限度というのはただ単にいままでのものを五倍にしたものでいいのかどうか。ある一定の基準というものがどこかにあると私は思うのです。たとえば扱い数量を大体平均して、零細はどの程度、あるいは中はどの程度一カ月間に金額にして扱うか、大はどの程度に扱うかというようなことで、その中の一割なら一割を担保する、資力信用が担保されるというのなら、一つの理屈としては成り立つのです。だから、ここで額をどうこうというのは一つの問題点でありますが、私はどうも保証金というのが権利金みたいになりはしないかと考えております。だから、保証金があること自体で何かオーソライズされるように思うのです。たとえば、これはいままでの雑多な業者を見ますと、必ずしもこんなものは何にもならない、資力信用の担保にはちっとも役に立っておらない、こういうふうに言えるのですが、局長どうですか。
  82. 梶本保邦

    梶本政府委員 先ほどお尋ねの取り扱い高でございますけれども、年間百万円までと五百万円まで、二千万円までというふうに分類いたしました表はございますが、百万円までの取り扱い高のものが邦人旅行あっせん業者二千六十四のうちで三百六十一ございます。パーセンテージにいたしまして一八%でございます。つまり、一割八分のものは年間の取り扱い高が百万円未満である、このような数字を示しております。最低のものがどうかということにつきましては、ただいま数字を持っておりませんけれども、概括的に申し上げますと、そのような状況でございます。  それから営業保証金の金額は権利金的なものではないかというお話が第二にございました。これはいわゆる免許制ではございません、登録制でございますので、いわゆる免許に伴って生まれ出るような権利金的な性格を持っておるものではないというふうに私どもは了承いたしております。たとえば、そのほかの例で申し上げますと、宅地建物取引業法には、やはりこれは登録制でございますが、営業保証金の額は、主たる事務所が十万円、従たる事務所が五万円で限度額が三十万円、小型船海運業法のほうが、登録になっておりますけれども、これが主たる事務所が十万、従たる事務所が三万、限度額が二十万、それから割賦販売法、これも登録でございますけれども、主たる事務所が十万、従たる事務所が五万、限度額が百万、それから証券取引法でございますが、これも登録でございますけれども、主たる事務所が十万、従たる事務所が五万、これは限度額がございません。こういうふうな状況でございまして、大体ほかの法律とのバランスを考えてみましても、また制定された当時と今日との物価の指数等を考えてみましても、大体この辺のところが一番妥当な線ではなかろうかというふうに考えた次第でございます。
  83. 久保三郎

    ○久保委員 もちろん私が権利金と言ったのは、これでオーソライズされるという形になると思うのです。政府から登録というか承認されたあっせん業といいますか、看板をあげておいて、そうしては預かった金を持ち逃げしたり旅館に払わなかったり、それから旅行者に迷惑をかけたり、こういうことがたびたびあるわけです。先般も新聞に出たとおりです。こういう業者をどうしてなくすかというのが一つのねらいだと思うのです。そうだとすれば、いま言ったように最高限度をもう少し上げたらどうかという気持ちになる。上のほうにはほとんどないでしょう。そういう点で私は言っておるわけです。しかし、これはどれだけ上げても悪いことするやつには、なかなかこれだけでは取り締まりというか押えることは不可能だと思うのです。  そこでもう一つ、このあっ旋業法の問題で申し上げたいのは、あっせん業界というか、そういうものは確固たる組織になっておるのか、小さいものも二千幾らあるそうでありますが、そういうものをひっくるめて、これが一つの組織立ったものになっておるような現状ですか、いかがですか。
  84. 梶本保邦

    梶本政府委員 一般旅行あっせん業者だけでは、国際旅行業者協会というものを昨年の秋に社団法人の認可をいたしました。いわゆる認可法人がございます。それから邦人旅行あっせん業のほうにつきましては、全国旅行団体連合会、略して全旅団連と申しておりますけれども、これは二千六十四の中で実際に加盟いたしておりますのが八百業者程度でございまして、むしろ邦人旅行業者の組織活動ということについて今後やっていかなければならない面があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。これは社団法人でも何でもございません。任意の団体になっておるわけでございます。
  85. 久保三郎

    ○久保委員 これらの業界の態様もいろいろだと思うのでありますが、少なくともやはりこれを正しい方向に持っていくというのは、旅行を安全に楽しいものにする上には不可欠な要素にいまなっておるわけです。ですから、業界というか、この業者の組織立ったものをさらに育成強化していくという方向一つあると思うのです。保証金の引き上げではこれはとうてい間に合いません。そういう考えがあるかどうかを聞きたい。この業界の組織をさらに強化していくという努力をすべきだと思うが、これはどうか。簡単に答えてください。  それからもう一つは、これに対していわゆる保証金を積んで認可したというか、そういうものは、たとえば陸運局がある、海運局がある、都道府県もあるということなんですね。そうなりますと、どこでこれが一貫して監督していく立場にあるのかというと、これのたばねは観光局でありましょうが、少なくとも末端でそういう人員が今日あるのかどうか。中間的に監査するというか、大体この見回りと言っては語弊があるが、指導するなりなりという要員は適当に配置して、そういう機能を十分発揮している現状かどうか。たとえば予算一つとっても、残念ながら観光局の予算の中にはそんな項目はなかったと思うのですが、どうですか。
  86. 梶本保邦

    梶本政府委員 観光基本法十七条に観光関係団体整備という条文がございますが、この精神にのっとりまして、邦人旅行あっせん業界の組織化ということは将来絶対に必要なことだ、かように考えております。  それから陸運局に登録いたします者は、いわゆる陸運局関係業者、ハイタク、バス、私鉄関係業者旅行あっせん業を営まれる場合は陸運局長への登録、それから海運業者旅行あっせん業を営まれます場合は海運局長への登録、それから陸運関係業者でもなし海運関係業者でもない方が邦人旅行あっせん業を営まれます場合は都道府県知事への登録、このように分かれておるわけでございます。  それから予算的にはほんのわずかでございますけれども旅行あっせん業登録関係業務執行体制の一環といたしまして、ほんのわずかではございますけれども、都道府県に対しまして、登録事務関係として、運輸省のほうからいわゆる事務委託費として配分をいたしておるような次第でございます。
  87. 久保三郎

    ○久保委員 それじゃ特に問題があるのは都道府県ということでありましょうが、都道府県がそれぞれの機関で登録を受け付けたり何かして、その費用は些少だがやっておく、しかしこれが指導なり育成というか、そういうものについての体制はどうなっておるのか、各都道府県でやった実績について観光局が的確に握っておられるかどうか、いかがですか。
  88. 梶本保邦

    梶本政府委員 これは年に一回でありますけれども観光局主催で全国都道府県の観光課長会議を開催いたしまして、その席上において都道府県に委任いたしておりますような事務についての打ち合わせ、あるいはまた本省の方針等を指示するということをいたしております。毎年大体六月か七月ごろに開催することになっております。本年度もそのような準備をただいま進めております。
  89. 久保三郎

    ○久保委員 年に一回だそうでございまして、一年に一ぺんなんで重要な会議でありましょうが、一年に一ぺんで趣旨徹底というか、観光局長訓示ということで、あるいは所管の課長の説示か何か知らぬが、方針を説明して、そこで各府県から聞くということでございましょうが、それでは私は手ぬるいと思うのです。むしろ各陸運局長なり各海運局長に、——海運局長のほうは数が少ないと思いますが、陸運局長に随時、特に観光なり業者の多いところはこれらの会同なりなんなりして、的確にこれを指導育成するという方向をとらせるべきだと思うのですが、それはどういうふうになっていますか。陸運局長はやらぬのですか。
  90. 梶本保邦

    梶本政府委員 陸運局におきまして、観光局の下部機構としましては総務部の総務課が観光関係の仕事を所管いたしておりまして、したがいまして陸運局、海運局の総務課長会議は年に何回か行なっておるわけでございまして、特にほかの部局主催の総務課会議のときを利用して観光局が話をするというようなこともございますので、これは実際は年に何回か行なっておる次第であります。
  91. 久保三郎

    ○久保委員 いずれにしても、もう少し具体的に、このあっせん業を正しく業務をやらせるためには、観光局もただ単に法律によって取り締まるという条項を置いておけば何とかなるというふうに考えているわけじゃないだろうけれども、そういうふうな傾向になるととんだことだと私は思うのです。そういう意味で、先ほど言った組織化についても具体的な方策を早急に練るべきだ、そういう考えるだけではなくて練るべきだと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  92. 梶本保邦

    梶本政府委員 その点につきましては、全く先生のおっしゃるとおりだと思います。今後、先生のおっしゃる御趣旨を体して、また従来もそのつもりでおりましたけれども、そのような方向でやっていきたいと思います。
  93. 久保三郎

    ○久保委員 次に、先ほど話が出たと思うのでありますが、十三条の三号であります。これはなるほどこう条文に書いてあれば不正な業者がある場合にはこれはいいのであります。ところがいまのあっせん業といわゆる旅館なりなり関係というものは、実際は必ずしも明確でない。たとえば、旅行をあっせん業者に依頼する場合、どこの旅館があいているか、ここがあいている、向こうでも大体何月何日はお客もたくさんないだろうというようなことで団体を引き受けたとすると、団体は大体五十人といっても一割くらいは減るだろうというような山をかけておいてたところが、全員行ったので、そのお客に迷惑をかけたという場合も想定されますね。そういう場合に十三条三号によってあっせん業が悪い、こういうことになると、これは問題がだいぶ違ってくると思うのですがね。だからそういう点についての法律上の配慮は別にここにはないのでありますが、どういうふうに考えられますか。
  94. 梶本保邦

    梶本政府委員 この十三条の三号は、旅行あっせんに関しまして取引をする者、つまりお客さんあるいは旅館、交通機関、こういったものが取引をする者に該当するわけでございますが、そういった方に対しまして「取引に関する重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」ということでございますが、この事実を告げなかったということは、たとえばこの旅館からはスキー場はもうほんの目と鼻のところで、ほんの二、三分で行けますというふうなことで宣伝誘致してあっせんをした、ところが現実に行ってみますと、その旅館に泊まってバスに乗らなければそのスキー場へは行けなかった、ずいぶん時間がかかったというふうな場合、そういった場合のことを大体意味しておるわけでございます。それから不実のことを告げる行為というのは、桜を見に行かれたついでにウ飼いをごらんになれますというようなことであっせんをした、ところがウ飼いは五月十五日からでなければ始まらないというふうなことで、桜の花は見たけれども、ウ飼いはできなかったというふうなこともあったわけでございまして、そのような場合にこの不実のことを告げる行為ということになるわけでございます。  ところが「故意」にというふうに書いてございますので、われわれとしましては何でもかんでもそういった場合にあっせん業者にしわ寄せをするというふうなことではございませんで、「故意」にということばをここに入れておりますのは、読んで字のごとく故意に言った場合をいうわけでございまして、しかも取引に関する重要事項でございますから、この重要事項というのは一体何であるかと申しますと、通常の、いわば刑事処分を受けるような段階にまでは至りませんけれども、もし通常の人がそれを知ったならば——通常の人は知らないのが当然であるような事実で、もし真実を知ったならば旅行には行かないであろうような重要な事柄、こういうふうに私ども解釈をいたして、そのようなつもりでこの条文ができ上がっておるわけでございます。もしお客さんがほんとうに真実のことを知ったならば、おそらく契約内容の変更を申し出られたか、あるいは旅行そのものを取りやめたであろうような旅行の重要な要素になっておるような事柄について、故意に事実を告げなかったりまた不実のことを告げる行為、こういうふうな意味でございまして、決して何もかもこれによって旅行あっせん業者にしわ寄せをするというふうな意味ではございません。むしろ国民大衆の健全な家族旅行その他の旅行というものを促進する意味から、安全の確保、利便の増進という見地からこの条文が私は必要である、かように考えておる次第でございます。
  95. 久保三郎

    ○久保委員 なるほどおっしゃるようなことは特にけしからぬことでありますから、そういうことをやっていいなんということはどこにもありません。それは当然なことでありまして、当然なことを当然として書かなければならぬことはどういうんでしょう。これは罰則がございますか。
  96. 梶本保邦

    梶本政府委員 これは登録の取り消し、事業の停止ということがございます。
  97. 久保三郎

    ○久保委員 しかしいま局長が具体的におあげになったようなことは、これは当然なことじゃないかと思うのですが、それを法律で書かなければいけないのか、どうでしょう。
  98. 梶本保邦

    梶本政府委員 これはだれが考えてもおよそ旅行に出かけたいという人の立場になって考えた場合には当然のことなのでございますけれども、それを書かないと登録の取り消し等ができないわけでございますので、ここに書いた次第でございます。
  99. 久保三郎

    ○久保委員 これはあっせん業者として不適当と認めたらばということで一括したらどうですか。そういうのはだめですか。
  100. 梶本保邦

    梶本政府委員 法律的にはそういう表現では十分ではないというふうに考えております。
  101. 久保三郎

    ○久保委員 それはそうでしょうな、法律としては。しかし法律は必ずしも細分化された具体的な文言でなくていいわけですね。ここに書いてあるものをあなたが説明されないと、故意に事実を告げずというのもわからぬですから、この程度なんですから、この程度までしか細分化されない、具体化されないですね、事実は。だから先ほども言ったように、裏返しで、今度はあっせん業者は旅客なりあるいは旅館なり輸送機関というものの不実のために、この条文でその罪というか、あれに該当するようなことがありはしないかという心配が一つ逆にあるわけです。むしろ法律が出てしまうと逆の場合もそのとおりになってきますから。そこでこの判定はどなたがなさりますか。不実のことを告げたという判定はだれがなさるのですか、観光局ですか。
  102. 梶本保邦

    梶本政府委員 これは旅館、交通機関、その他旅行あっせん業者関係する面があるわけでございますけれども、その旅行あっせん業者関係する面の側の方々の責任によって起こったような場合まで旅行あっせん業者に何でもかでもしわ寄せをしよう、俗に言うしわ寄せをしようというふうなことで書かれ、立法をしたわけでは毛頭ございません。ただいま申し上げましたように、だれが考えてもそれは少しおかしいじゃないか、もちろん刑事事件にはならぬかもしれないけれども、それじゃあまりお客さんがかわいそうじゃないかというふうな事例を私ども考えておるわけでございまして、旅館側の責任によって、たとえば先ほども指摘のありましたように、五十人の団体が来るという申し込みであったが、どうせ一割ぐらいは減るだろうというので四十人ぐらいしか部屋をとってなかった、ところが実際に約束どおり五十人来た、したがって二人のところへ三人詰めるというようなことが起こった、それはあっせん業者がけしからぬじゃないかというふうなことがもしかりにあったとするならば、それは私はあっせん業者の責任じゃない、これは旅館側の責任だ、かように考えております。そういうふうなことで、事いやしくも旅行の途中に起こったことは何でもかでも旅行あっせん業者が悪いのだというふうな気持ちで、この十三条の不正行為というものを考えておるわけではございません。  それから一体だれがこれを認定するのだということでございますけれども、これは行政庁がすることになっておりますけれども、これは現在の法律によりますと、いわゆる聴聞をすることになっております。したがっていきなり取り消しというふうなことをするような仕組みにはなってございません。十分行政庁としては手続を経た上で真相を確かめていたしたい、かように考えております。
  103. 久保三郎

    ○久保委員 次に先ほどの保証金のことで、ちょっと戻りますが、たとえば持ち逃げしたとか、あるいは損害を与えられたというような旅館なり輸送機関から、企業から、あっせん業に対して保証金の先取特権があるわけですね。ところが実際に保証金をそういう手続まで持っていくのにたいへんな手数と日数がかかるということなんで、実効はちっとも上がらぬという話を聞いているのですが、そうですか。
  104. 梶本保邦

    梶本政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、まことに残念ながらそういうふうな傾向もなきにしもあらずだと思います。ところが、これは観光局の事務と申しますよりも、供託されました営業保証金につきましてのただいま御指摘のような問題につきましては、これは法務省の所管になっておりますので、私どもとしましてはできるだけそういった場合にはすみやかに措置をしていただきたいということをお願いをいたしておりますのが現在の実情でございます。
  105. 久保三郎

    ○久保委員 それからもう一つはっきり悪いことをしたというか、不正なことをした、損害を与えたというような業者登録抹消はさっそくするのですか、できるのですか。直ちにできるのですか。
  106. 梶本保邦

    梶本政府委員 そのような場合には、この法律の規定にございますように、聴聞をいたしまして、その上で措置をすることになっております。
  107. 久保三郎

    ○久保委員 大体、局長、持ち逃げしたのは出てこぬですよ。聴聞はできないのです。ただ被害者だけの話を聞くだけですよ。それでいいのですか。それは聴聞は……。
  108. 梶本保邦

    梶本政府委員 持ち逃げをしたようなものを観光局へ出てこいといったって、決して出てくるものでもございませんので、それにつきましては御指摘のようなことでございます。刑事事件になりました場合は運輸省の手を離れまして、そちらのほうの所管で処理をしていただくということになっております。
  109. 久保三郎

    ○久保委員 それじゃ、しつこいようですが、刑事事件になった場合には、この刑事事件の判決というか、決着がつくまでは登録はそのままですか。
  110. 梶本保邦

    梶本政府委員 その他不正行為というのがございますので、それを待たなくてもできるわけでございます。
  111. 久保三郎

    ○久保委員 そこでいつかも申し上げたかと思うのでありますが、あっせん業の中に、先ほど泊谷君もちょっと言及しましたが、修学旅行というのはやはり単なる旅行じゃなくて、学校教育の一環としてあるものでありますから、国民全体としてやはり修学旅行にはそれぞれの手段を尽くして守らなければならぬ立場にあると思うのです。でありますから、先ほど申し上げたように修学旅行法というものが先行さるべきだという考えを昨年の基本法審議の際にも申し上げておいたのでありますが、それにはなかなか関係各省のこともあるから容易でないということをわれわれは察しております。しかし、少なくともあっせん業については、修学旅行を扱うという業種は、やはりこれは一つワクできめたらどうかという主張をいまでもしているのですが、修学旅行あっせん業というやつ、これはどういうことかというと、先ほどのような一つの例もあるし、手数のかかることでありますから、経験があり、組織があって、もちろん資力もたくさん持っていなければいけません。そういう安定したあっせん業者がこれに当たらぬというと、最近はいろいろな小さい業者ができてきて、先ほどお話が出たような、下請でやっているのもある。ところがかわいそうにそれのぺてんにひっかかった学校の子供は途中で立ち往生だ、そういう例も過去においては幾つかあった。こういうものをやはり早急に解決するのには、あっせん業というものの中に、修学旅行専門というか、それを扱い得るところの資格あるものを選定して、これを登録させるということが一番だと思うのです。なぜならば、観光というか、旅行の中におけるところのあっせん業の地位は決して他のいわゆる代売りをするものではないと私は思うのです。いままでは、なるほど切符の代売りなり旅館を売ることがあっせん業の主たる任務であります。現象的には、なるほど旅館を売る、輸送を売る、観光地を売るということがあっせん業の一つの大きな仕事であります。しかしもう一面考えるのは、あっせん業というのは、いうならば旅行の中枢である。これは中心的な存在であって、これのいい悪いによっていわゆる旅行の質と量が違ってくる。こういうふうに置きかえるのが現代におけるいわゆる旅行の本質だと思うんですね。だから、あっせん業は他の産業に従属するものではない。むしろあっせん業というのは旅行の中枢的な地位を占めて旅行全体をコントロールできる——コントロールということばがいいか悪いかわかりませんが、少なくともそういう地位にまで引き上げないと、旅行基本法目的のようにはならぬと私は思うのです。だからあっせん業が、たとえば観光開発でむやみやたらに観光地を開発する、これは国民経済からいっても、国民の観光からいっても、国民の旅行からいっても不適当だと思えば、あっせん業はこれは売らぬ、そういうものは売りません、質の悪いもの、全体から見て不健全なものは売らぬというような支配力が旅行あっせん業者に出てこなければ、ほんとうのあっせん業としての使命は達成できない。たいへん話が長くなりましたが、少なくともそういう意味でも、やはり修学旅行というものは一番大事なんだから、この際一番先に手をつける。だから、あっせん業の中に修学旅行のあっせん業をひとつ設けるべきだと思うのですが、これについてのお考えはどうですか。
  112. 梶本保邦

    梶本政府委員 修学旅行の重要なこと、またそれが非常に大事なものであることにつきましてはお説のとおりでございまして、昨年来、修学旅行の問題は当委員会並びに参議院運輸委員会におきましても御論議いただいた次第でございまして、私どもも修学旅行一つの範疇として何らかの措置ができないかということをこの一年間ずいぶん検討を続けてまいった次第でございます。特に今回一般旅行あっせん業、邦人旅行あっせん業のほかに修学旅行というものを第三のあっせん業としてつくれないかという気持ちを事務的には持った次第でございます。その点は全く先生と同じ立場に立って問題を進めていったわけでございます。ところが旅行あっせん業の中に修学旅行を特別に掲げて修学旅行を保護しなければならないということはわかるけれども、逆に保護しなければならないのは修学旅行団体だけに限らない、そのほかにもたとえば戦災未亡人の団体もあれば遺家族の団体もあるし、また宗教関係団体旅行もある、そういったものについてもやはり保護をしなければならないということは観光基本法精神に照らして同じではないか、同じであるとするならば、そういった範疇を設けること自体法律的にはどうもぴったりいかないというのが実は法律専門家の見解でございまして、現実には、それでは修学旅行はどうなっておるかと申しますと、国鉄の規定に、団体取扱手数料交付規程というものを昭和三十年につくっております。この三条の中で、いわゆる国鉄指定業者というものが十三指定になっております。一番大きな日本交通公社をはじめといたしまして十三あるわけでございますけれども、資力、信用、全国的なネットワークを持っておるかどうかというふうなことが、国鉄の指定するかどうかの要件になっております。現実には修学旅行に行かれる場合には、国鉄を利用されるということがほとんどすべての場合と言っていいわけでございます。そういたしますと、修学旅行を扱う業種は勢い国鉄の指定業者に限定される。それは国鉄のほうでも、信用、ネットワーク等を考えて指定しておられるというようなことで、事、修学旅行につきましては、国鉄のほうで一度ふるいにかけられておりますので、資力、信用等の面におきましても十分ではないかというふうにも実際問題としては考えておる次第でございます。実際論はいま申し上げたとおりでございますが、法理論として修学旅行だけを別の範疇で設けることについては、法制上どうもしっくりいかないというのがこの立案の過程におきましての経緯でございまして、私どももそのようなつもりで始めたのでございますけれども、事このような経緯をたどりまして、今回のような改正にとどまらざるを得なかった次第でございます。もっと根本的に、やはり修学旅行そのものを運輸省としましては文部省等と話を詰めて、また大蔵省とも話を詰めて、全般的な問題として考えていくのが大筋の進め方ではないかというふうに考えております。
  113. 久保三郎

    ○久保委員 あなたの意見ではないと思うのでありますが、いまの前段の法理論というもの——私は法律をつくる立場にありながら法理論はあまり知らないのであります。いまの法制局の法理論というのは、業者のほうから向いた修学旅行を考えておるのですね。私が言っておるのは、修学旅行のほうから業者に向くという形でものを考えないといけないということです。だから特殊なものだと言うのです。しかも教育という問題がある。実際論として国鉄で十三社か何か指定しておるようでありますが、国鉄にかわるところはなるほどあるでしょう。ところがいまの修学旅行の実態はそれだけではない。バスの旅行も、毎日国会においでになるからおわかりでしょう。バスでたくさんの人が遠くから修学旅行で国会にも毎日何十台と来ております。そういうことを考えますと、国鉄の実際論からいってもおかしい。それだけではだめだ。  もう一つは、修学旅行のほうから業者を見た場合には、私の言うとおり、修学旅行あっせん業というものがきちんとあるべきだと私は思うのです。これはここで論争しても始まりませんし、時間もありませんから、次の機会にもう一ぺん検討するなり、法制局の法理論に対抗する理論をもって確立してほしいと思うのです。法制局のほうは業者のほうから見て一般と邦人というかそういうものがある。それならば未亡人の団体もある、あるいは宗教団体もある、そういうふうなことを言っておるが、それと修学旅行は違うのですよ。団体を扱うほうの立場は同じでしょう。団体というのでは、これは特殊な団体ですが、やはり団体だから、業者のほうから向いた話ではだめだと思うのです。これに対する御見解はどうですか。私のほうは、修学旅行というところから業者を見てものを考えるべきだ、こういうふうに言っておるのです。法制局のほうはいまの御意見だといわゆる業者のほうから向いて修学旅行を見たから、修学旅行と同じような特殊なものは、宗教団体もある、未亡人団体もある、農協の団体もある、こういうふうなことですが、それでは違うと思うのです。いかがです。
  114. 梶本保邦

    梶本政府委員 確かに先生のおっしゃるように、向きを変えて修学旅行というものの側から考えました場合には、お説のようなことになると私も考えます。しかし、業種といたしまして旅行あっせん業の中に第三の種別を設けるということになりますと、邦人旅行あっせん業とどこが違うのだということに法律的にいろいろ問題が出てまいるわけでございまして、私ども先生のお考え方と同じような気持ちでこの問題に取っ組んだのでございますけれども、残念ながら今回の改正にはそこまで話が詰め得なかったのでございます。そこで、運輸省観光局としましては、現実に登録が出てまいりましたときに、修学旅行をあなたのところは扱うかどうかということを別に書かしておいて、それによって、修学旅行自分のところは扱う気持ちがあるというふうなあっせん業の登録が出てまいりました場合には、特に登録の審査をいたしますときに厳重な査定、審査をいたしておるというのが実情でございまして、この問題につきましては、今後なお修学施行一つの大きな立場から検討を続けさしていただきたい、かように考えております。
  115. 久保三郎

    ○久保委員 あっせん業法のほうは、いままで申し上げたような点がわれわれとしては問題だと思っているわけです。  次にホテルのほうでありますが、ホテルのほうは山田委員泊谷委員からお話がありましたから、私のほうからつけ加えるものはありませんが、ただ受け取る面では、いつかも申し上げたかもしれませんが、どうも振興的なものがなくて——御説明を聞くと、振興の面もあるそうでありますから、まあまあでありますが、少なくとも法文から受け取る範囲では、どうも監督というか、そういうものが非常に強烈に映るのですね。これは表現でありますから、やむを得ないと思うのでありますが、そういうことがありますので、この法の実施にあたっては、それぞれ適切な手を打たれることがまず第一大事だと思うのです。  それからもう一つは、設備をよくするということはけっこうでありますが、むしろ泊谷委員からもお話があったように、国民大衆なりあるいは国際的な観光客にしましても、大きなデラックスなものにはあまり関心が持てない。むしろ、ソシアリズム的な要素が多いし、またそういう方面で国際観光も国内観光も展開をしないと、日本観光というものは見せもの観光になるというふうにわれわれは思うのであります。そういう点の御配慮が、今回の提案には残念ながらあまりない、こういうふうに思うのであります。  さらに設備をよくする、エレベーターをつけるということもけっこうでありますが、最近におけるところのこういう業者の実態が、観光ブームと言われながらも、必ずしもそううまい商売ではないという話をこの間から参考人もいたしております。そういう際でありますので、十分この辺の配慮もしながら、しかも国際水準に近づけるというなら近づける方法もありましょう。これは十分裏づけも考えながらやっていくべきだと思います。いままでの御説明で意図するところはわかりましたが、法律というのは、一ぺん出てしまうと、ここの説明とは違った、法律の文言に合ってさえおればいいのだということになりますので、そういう点が危険です。ですから、たとえば立ち入り検査ということで先ほど論争がありましたが、立ち入り検査というと、税務署かどこかで、たいてい免許を受けているものは立ち入り検査、補助金をもらっているものは立ち入り検査ということになると、立ち入り検査というと、すみからすみまで立ち入って検査をするという印象を受ける。これは当然ですよ。ところが法律の文言からいえば、検査という文言はないのです。これはそうかもしれません。ところが実際立ち入り検査を悪用する関係の役人はないと思いますが、中には意地の悪いのがおりますから、人間ですから、虫のいどころというのがありますから、あそこに行って泊ったら待遇が悪かった、おれを観光関係の役人とは知らなかったのだろう、それで二、三日過ぎて行って、立ち入り検査をするというようなことをやるものがないとは限らないと思います。そういうことが想定される。だから、そういう点をやはり質疑応答の中できっちりとまず言明をすることです。それが一つ。  それからあとは登録するとかしないとかいうのでありますが、どこまでいったら登録の水準が——もちろん永久的なものではありませんね。将来どうなるかわかりませんね。五年先にはわからぬということもありますから、その辺の見当をつけてから別表なんていうものは逐次直していくべきだと思います。直すのには将来の展望を見てから直すべきだと思います。そういう意味で、私は総括的にあなたからこの法案についてのお話を聞きたい。時間もありませんので、要点だけに二、三分でけっこうですから、きっちり御答弁をいただきたい。
  116. 梶本保邦

    梶本政府委員 全般的にただいま御指摘なりましたいわば根本的な法律運用についての心がまえについての御説を拝聴いたしたわけでございますが、私ども全くそのとおりだと考えております。御説の線に沿って私ども法律の運用をやっていきたい、かように考えている次第でございます。
  117. 川野芳滿

    川野委員長 次回は明十五日水曜日午前九時五十分より理事会、午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十六分散会