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1964-04-03 第46回国会 衆議院 運輸委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月三日(金曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 關谷 勝利君 理事 塚原 俊郎君    理事 西村 直己君 理事 山田 彌一君    理事 久保 三郎君 理事 肥田 次郎君    理事 矢尾喜三郎君       木村 俊夫君    佐々木義武君       進藤 一馬君    壽原 正一君       高橋清一郎君    高橋 禎一君       中馬 辰猪君    西村 英一君       長谷川 峻君    細田 吉藏君       増田甲子七君    泊谷 裕夫君       野間千代三君    山口丈太郎君       内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸政務次官  田邉 國男君         運輸事務官         (海運局長)  若狹 得治君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局参事         官)      高林 康一君         専  門  員 小西 真一君     ――――――――――――― 四月二日  東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨  げる行為処罰に関する特例法案内閣提出第  一五三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月一日  東北地方工業開発のための輸送力増強等に関  する陳情書  (第三二五  号)  内山線開通促進に関する陳情書  (  第三二七号)  四国循環鉄道開通促進に関する陳情書  (第三二八号)  国鉄越美線全通促進に関する陳情書  (第三二九号)  国鉄只見中線建設促進に関する陳情書  (第三三〇  号)  四国循環鉄道海岸廻り線建設線編入に関する  陳情書  (第三三一号)  関西本線複線電化促進に関する陳情書  (第三八九号)  千歳飛行場の第一種空港指定に関する陳情書  (第三九〇号)  近畿日本鉄道株式会社伊賀線の存置に関する陳  情書(第三九一  号)  高山線輸送力増強に関する陳情書  (第三九二号)  国鉄樽見線の延長に関する陳情書  (第  四八四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨  げる行為処罰に関する特例法案内閣提出第  一五三号)  小型船海運業法及び小型船海運組合法の一部を  改正する法律案内閣提出第一一六号)      ――――◇―――――
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為処罰に関する特例法案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。綾部運輸大臣。  特殊性の第一は、高速度のため運転方式が全く異なっていることであります。東海道新幹線は、在来線こだまクラス最高速度時速百十キロメートルであるのに対して、その約二倍の時速二百キロメートルという超高速度で運転され、これに伴いまして非常ブレーキを使用して列車が停止するまでの距離もこだまの約五倍の二キロメートルが必要とされております。このため、在来線におきましては運転士信号機と進路の状況を肉眼で確認して列車運行させるという運転方式であるのに対しまして、東海道新幹線におきましては、主として自動列車制御設備等一連運行保安設備により列車運行させる運転方式を採用しているのであります。  特殊性の第二は、万一事故が発生しました場合に、その被害がきわめて大きいと予想されることであります。東海道新幹線航空機に匹敵する高速度で走行しますため、万一衝突等事故を引き起こしました場合には、航空機なみ事故となり、大被害が生ずるものと予想されるのであります。  以上述べましたような東海道新幹線特殊性にかんがみまして、その列車運行の安全を確保するため、運行保安設備としましては、自動列車制御設備列車集中制御設備等技術的に現在最高水準にあります諸設備を設けますとともに、運転士等教育の面におきましては、モデル線区におきまして高速運転に適応した高度の教育訓練を行なっております。また施設面におきましては、全線にわたって鉄道や道路と立体交差とすることによって踏切事故をなくしますほか、線路内への人の立ち入り、物件の落下を防止するため、必要な箇所に厳重な防護さくを設置いたしております。  このように政府及び国鉄は、一体となりまして東海道新幹線安全確保のため必要な諸措置を講じておりますが、このような諸措置を講じましても、あえて行なわれます列車運行の安全を妨げる行為につきましては、東海道新幹線列車高速度で走行するためきわめて重大な結果が発生するものと予想されますので、これら列車運行の安全を妨げる行為規制することによりまして、安全確保に万全を期する必要があるのであります。  この法律案は、以上に述べましたような観点から、列車運行の安全を妨げる行為のうち、鉄道営業法等におきまして規制し、おりません行為、すなわち第一に、東海道新幹線の用に供する自動列車制御設備等運行保安設備を損壊し、その他機能をそこなう行為、第二に、これらの運行保安設備をみだりに操作する行為、第三に、これらの運行保安設備を損傷し、その他機能をそこなうおそれのある行為、第四に、列車運行の妨害となるような方法で、みだりに、物件線路に置き、またはこれに類する行為、第五に、線路にみだりに立ち入る行為、第六に、走行中の列車に向かって物件を投げ、または発射する行為、に対して罰則を定めるものであります。  以上が、この法律案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願いいたします。
  3. 川野芳滿

    川野委員長 本案に対する質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  4. 川野芳滿

    川野委員長 次に、小型船海運業法及び小型船海運組合法の一部を改正する法律案議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  5. 久保三郎

    久保委員 質疑に入る前に、この前の委員会で要求した資料が出てまいりましたから、海運局のほうから概要を説明願いたいと思います。
  6. 高林康一

    高林説明員 資料が四部あります。そのうちまず内航船腹量推移という資料から御説明申し上げたいと思います。  内航船腹量推移と申しますこの資料は、三十二年以降三十八年に至ります間の船腹量推移大型鋼船五百グロストン以上、それから小型鋼船五百グロストン未満、それから機帆船、こういうふうに区分けをいたしまして作成した資料でございます。全体といたしましては、三十二年におきましては、この総計といたしまして百六十三万七千トンでございます。三十八年度におきましては二百六十七万一千トンでございます。その間百三万四千トン増加でございます。年平均にいたしますと、十七万二千トン増加でございます。このうち特に顕著な増加を示しておりますものは、この一番上の大型鋼船の欄の油送船でございまして、五万七千トンから十九万七千トン指数にいたしまして三四八という指数でございます。それから小型鋼船の欄で貨物船の八万三千トンから三十五万五千トン、四二八という指数でございます。それから油送船に至りましては二万八千トンから二十万五千トンというふうに七二五という指数になっております。こういうふうに、全体といたしましては小型鋼船増加が非常に著しい。他方機帆船におきましては、ほぼこれは一二七くらいの指数でございまして、漸増をしている、こういうような状況になっているものでございます。以上、内航船腹量推移に関する資料でございます。  次に、縦書き資料でございまして、運輸省告示第三八四号と書いた資料がありますが、これについて御説明申し上げます。  これは標準木船運賃及び標準回漕料をきめましたものでございます。これは昭和二十八年の八月に設定いたしました標準木船運賃及び標準回漕料でございます。これは二ページにございますように、九航路品目についてこれを設定したものでございます。この右下の欄にありますように、昭和三十三年の十二月に改正になっております。ただ、この改正は実質的な改正ではございませんで、当時の尺貫法の改正に伴って木材等石表示を改めたということでございまして、内容的な改正にはなっていない。このようにいたしまして、二十八年に設定されてそのままというのが標準木船運賃状況でございます。  次に、内航運賃推移という横書きの表について御説明申し上げます。まず第一に運賃市況でございます。これは三十二年度から三十七年度に至ります間の貨物船油送船運賃市況を実数及び指数であらわしたものでございます。貨物船の一トン当たりの運賃は、三十二年度は九百七十八円ということでございますが、三十七年度には八百円、これが指数にして一〇〇に対して八二というふうに内航運賃は下がっておる状況でございます。次に油送船につきましても、三十二年度から三十七年度の推移を見ますと、三十二年度の一〇〇に対しまして三十七年度は六七というふうに下がっております。これは先ほど船腹量推移でも御説明申し上げましたように、タンカーの非常な激増ということも一つのあらわれであるというふうに考えられるものでございます。  次に、第二といたしまして、船型別につきまして、主要航路別運賃推移を、ここで大体主要な航路と主要な品目について、三十二年から三十八年までの推移を掲げてございます。たとえば営業用炭の欄では若松阪神間——若阪の石炭運賃につきましては、大型鋼船は三十二年四百九十円から三十八年四百三十円、これは若干の下落を示しておるわけでございます。機帆船については大体においてある程度途中で下がり、若干回復しておるというようなこと、この辺は調整運賃作用があるものと考えられるのでございます。国鉄用炭につきましても、これは途中で一時下落しておりますけれども、少し持ち直したものでございまして、これはやはり三十二年に対比いたしますと、相当な低下を示しておるという状況でございます。鋼材につきましては最も安定した運賃状況を示しておりまして、八幡−阪神につきましては、全体といたしましてほぼ同じ水準推移して一おるというふうに考えられるわけでございます。なお、しかしながら一番下落のはなはだしいのはやはり重油関係でございます。重油関係につきましては、たとえば小型鋼船の京浜−名古屋六百二十円が五百三十四円になるというふうに、非常に運賃水準下落しておるという状況でございます。  以上が内航運賃推移に関する資料の御説明でございます。  次に、横書きの表で「調整規程実施海運組合概況表」という表がございます。これについて御説明申し上げます。  調整規程を現在実施しておりますものは十六組合でございます。なお海運組合結成されておりますのは、全体で約百二十くらいございますけれども、そのうち十六組合のみが調整規程実施しておるものでございます。この調整規程実施しておりますところの組合中、最もたくさんの組合員数あるいはまた所有船腹数を持っておりますものは、中国の中国地方海運組合連合会、これは組合員数六百六十八という数字でございます。それから九州若松地区海運組合が五百七十三の組合員数を持っておりまして、最も大きな組合でございます。こういうふうに調整行為実施しておりますものは非常に少ないというような状況でございます。  以上が四枚の資料の御説明でございます。  なお前回、先生の御要求のございました資料のうちで、小型船海運組合法によりますところの団体協約実施状況について資料のお求めがあったわけでございます。ただ、小型船海運組合法九条の規定によりますところの団体協約は、現在までのところ締結された実例がございません。したがってまた十条に規定しますところの団体協約の認可をした例もございませんので、ここで資料としては別に出していないという状況でございます。  以上でございます。
  7. 久保三郎

    久保委員 いま御説明のありました最後の団体協約の問題でありますが、そういう必要がなかったのかどうかでございます。大体運賃の問題からいきましても、いまの御説明で見ますれば、少なくともこの運賃の低迷というか、だんだん悪くなってきている、そういうときにおいて、せっかくある団体協約制度というものが活用されないのはどういうわけか。非常に疑問に思うわけなんですが、どういうことなんですか。
  8. 高林康一

    高林説明員 団体協約が非常に必要なこと、ことに小型船海運組合法のように調整事業を主たるねらいといたします場合におきましては、この種の団体協約が非常に必要であるということはもちろんでございます。ただ、これにつきましては、団体協約にはおそらく二つの種類の団体協約があるかと思います。一つは、横の関係団体協約でございまして、いわば組合員以外の者あるいは大企業との団体協約、それから縦の団体協約と申しますか、荷主等取引条件に関するところの団体協約、こういうようなものがあるかと思います。ことに組合法制定におきましては、この縦の団体協約実施ということに特に重点を置いたと考えられるわけでございますが、それが先ほど申しましたように、一件も実施されていないといいますものには、実態的には先ほど運賃の御説明でもいたしましたように、同じ航路につきましては、やはり大型鋼船なり機帆船なり小型鋼船なり、それぞれみな同一品目についていろいろ調整なり何なりをやっておるわけでございます。その点につきましては、現在の小型船海運組合法というものが五百総トン以下のものを対象にしておったというところで、実際的には実勢の運賃というものがその関係のほかのところといろいろ関係があるというようなところでなかなかまとまらなかった。それからなお調整規程実施率から申しましても、やはり実際的にはなかなかアウトサイダー等もございまして、組合自身結成も非常に少ない、組織率が五〇%以下であるというふうな状況から見まして、なかなか所期のような効果をあげ得なかったというふうに考えられるのでございます。この点やはり五百総トン以上の内航海運業全体をつづめたところのもので組合結成をやっていかなければ、事実上なかなか困難ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  9. 久保三郎

    久保委員 五百トン以上の大型船について、実は組合法からはずれていたから、団体協約といっても、なかなかむずかしいというふうなことが一つございます。それは今回の法改正で一応その原因というか、それははずれる。しかしあなたのお話しになったように、組織率の問題が一つございますね。組織率が大体五〇%内外だというのでは、団体協約を結びようもないはずだと思うのです。いわゆるアウトサイダーが半分以上もいるということでは、残念ながら満足な協約を結んで、公正な取引というか、そういうものが不可能だと思うのです。今後この法律だけの改正でそういう組織率が一〇〇%に近くなる予定ですか。そういうお見込みですか。
  10. 高林康一

    高林説明員 法律改正に伴いまして五百総トン以上の内航海運業全体が組合員の資格を持つということで、組織の面におきましては相当促進されるとは思います。しかしながら、何と申しましても、この海運組合結成及びそれに伴いますところの自主調整ということは、やはりそれぞれの海運企業の熱意といいますか、努力というようなことが根本的に前提になるわけでございます。私どもといたしましては、これらの点については、法改正機会にこの組織率というものをどんどん高めるようにいろいろな面で努力してまいりたいというふうに考えております。
  11. 久保三郎

    久保委員 法改正機会組織率を高めていくというお話でありますけれども、そういう努力をなさることは当然だと思うのでありますが、どうも今度の法案だけ見てまいりますと、最高船腹量というか、そういうものをきめて、そうして何とかそれだけで安定させようということであります。言うならば、団体協約というか、そういうものの作用によって安定させることが一番好ましい姿だとわれわれは考えているのです。ところが、組織力については努力していくというのだが、努力の限界というか、方法もあると思うのですが、どういう努力をされて、組織率を高めていくのか、その点はどうなんですか。
  12. 若狹得治

    若狭政府委員 従来内航海運対策といたしましては、こういう組合統制中心にした対策と、それから登録制度というような非常に弱いものだけであったわけであります。われわれは過去のいろいろな施策効果というものを十分考えてみたわけでございますけれども、その弱点の第一は、内航船舶を全部網羅するものではなく、一番運賃の面から見まして、撹乱する要素でありますところの大型船を全部その規制対象にするということが一つと、それから船腹規制調整という面につきまして、最高限度というものの方法によりますけれども、やはり規制方法というものを考えないことには、とうてい内航海運健全化をはかれない、それからさらに新しい施策といたしまして、公団を活用いたしますところの財政資金の投入ということを考えておるのでございますが、これにつきましてもやはり組合の考え方を中心にして今後運用していきたい。したがいまして、この新しい船の建造についての財政資金の活用とそれから建造規制と、それからそういうものを背景にいたしました組合自主的統制の強化ということによって、この組合活動を十分にしやすいようにわれわれとしては今後考えていきたい、そういうことによって組織率を高めるということは十分期待できるのじゃないかと考えておるわけでございます。
  13. 久保三郎

    久保委員 そこで、その組織率を高めていくということと、この法案が通過すれば、最高船腹量というか、そういうものを設定することになるわけでありますが、組織率が高まらぬうちに最高船腹量を設定するというふうになりますれば、必ずしも的確なものでないように思うのです。それはどういうタイミングでやりますか。
  14. 若狹得治

    若狭政府委員 最高船腹量は、御承知のように、需給の著しく混乱するという状態のもとでこれを制定するわけでございますので、当然組合組織率が十分でない場合にもこの最高限度量決定告示というようなことは考えられるわけでございます。これの運用につきまして、具体的には各企業からの建造の申請というものを関係官庁決定するというような方法をとるわけでございますけれども、その際に組合意見を十分聞きまして、組合意見を尊重いたしまして、また組合というものを活用して、たとえばスクラップ・ビルドの状況その他を調査いたしまして、これによって組合の力をさらに強めていくということを考えておるわけでございます。
  15. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても、組織率が高まらぬ限りは、残念ながらこの法案あるいはいままでの法律全体に盛られている方法によって安定させるということはなかなかむずかしいとわれわれは思っているので、とにかくしつこく聞いているわけですが、現在その組織率を高める自信はお持ちなんでしょうか。たとえばいまのお話のように、その組織率を高めていく指導官庁としては、出先の海運局の支局なり出張所なりというものなんでありますが、そういうものの陣容を見れば必ずしもこれは十分でないというように考えているわけなんです。十分でない陣容において、移動の激しいたとえば小さい船などはなかなか捕捉しがたいと思うし、それから組合自身に対しても、中身の組合のいわゆる事業というか、機能というか、そういうものに対して必ずしも全船主に深い理解と協力を得られるような立場には今日ただいまではないと思うのです。そういうことを考えると、どうも組織率は高まらぬけれども、まあ最高船腹だけきめていけば何とかこの低迷した内航の実態から脱却できるだろうという淡い希望を持っているように思うわけなんですが、これはどういうふうに思っておりますか。
  16. 若狹得治

    若狭政府委員 内航対策というのは当然組合の自主的な統制というものを基本に考えておりますので、組織率を向上させるということはわれわれの最大の眼目でございます。最高限度量決定による船腹規制ということも一つ方法でございますし、また運賃の自主的な統制ということをいかにして今後維持していくかということによって、組合の存在というものを今後内航船主に力強く印象づけるというようないろいろな方策を講じまして、やはり組織率を向上させなければならぬ、これが前提であるというふうにわれわれは考えております。
  17. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても、組織率が高まらぬことには完ぺきを期し得られないので、むしろ私は、内航の整備の第一前提組織率を向上する、一〇〇%組織化するということがまず前提にならねば、いろいろな施策をやりましても、やはり指の間から水が漏れるということになると思うのです。だから、これに対して何かもっと積極的な対策がないかと思うのですが、いかがです。まあ通り一ぺんといえば語弊がありますが、大体だれもが気がつくような方法はいままでお話がありましたが、もう少しそれ以外にないのですか。
  18. 若狹得治

    若狭政府委員 これは御指摘のとおりでございまして、組合活動組合への加入率を向上させるということがわれわれの眼目であるということは先ほど申し上げたとおりでございますが、当面の問題といたしましては、組合活動をしやすくするということと、それからやはり組合中心に考えなければどうしても各船主事業活動が円満にいかないというような方向に持っていくということが一番大事でございます。それにはやはり国家的ないろいろな施策が並行してまいりませんとそれが実現しないということでございまして、従来せっかくりっぱな組合法がございましたけれども、それが活用できなかったのは、その裏づけとなるような何らの国家的な施策がなかったからではないかというようにわれわれ考えておるわけでございます。そういう意味におきましては、今後の代船建造についての財政融等につきましては組合意見というものを十分尊重し、またそれを中心としてこれを活用するということも考えておるわけでございます。それからさらに燃料輸入問題等についての要望もございますけれども、やはり組合というものを中心にしてわれわれは今後の内航政策というものを考えていこうということでございますので、一挙にはまいりませんけれども、漸次いろいろな国家的な施策組合中心として集中的に行なっていくということによって、この組織率の向上ということは十分期待し得るとわれわれは考えておるわけでございます。
  19. 久保三郎

    久保委員 いまお話のあったような点は魅力ある組織対策一つだと思うのでありますが、組織対策ばかりじゃなくて、いわゆる船質改善というか、そういうことに主たる目的があるのでありますが、そこで先般通りました予算の中でも、運炭船代替建造石炭専用船代替建造の問題がございますが、そこでこれは先般説明を聞いたときには、おそらく三千トンというか、そういうものを基準に考えておられるようでありますが、それはそうでしたかね。
  20. 高林康一

    高林説明員 石炭専用船の大きさ、型ということにつきましては、一応考えておりますのは、三千グロストン、デッド・ウエートで約五千トンぐらいになりますか、そういったものを一応考えておりますけれども、他方港湾事情その他から見まして、いわゆる一六型といいますか、大体グロストンで千トンぐらいのものも、地域によりましては、たとえば九州のいろいろな島々の聞の輸送というようなことについてはそういう型のものも要るのではなかろうかという点で、そういうこともいまあわせて検討しておりますけれども、最終的な結論にはまだ達しておりません。
  21. 久保三郎

    久保委員 いま参事官からお話がありましたように、一六型の問題は、あなたがおっしゃる理由によってももちろん必要でありましょう。三千トンでなくて、地域によってはいわゆる一六型というようなものが必要だと思う。そのほかに考えてもらわなければいかぬのは、零細船主といっては語弊がありますが、いわゆる小さい船主代替建造からいいますと、これはなかなか個人では代替建造まで押し切れない。といって三千トンではこれまたなかなか容易でない。しかも共同化によって船を代替建造しようといたしましても、残念ながら三千トンではかなりの金高になる。これでは負担し切れない。いうならば、そういう小さい船主は大半が組合の中にも吸収されないのが現状だと思うのです。だからこれらの組織を高めるということが一つと、もう一つは、中小企業の救済、共同化ということからいいますと、やはりそういう面からも、石炭専用船については一六型をやはり重点として取り上げるべきではないか、こういうように思うのですが、これは海運局長、どうですか。
  22. 若狹得治

    若狭政府委員 石炭専用船の問題につきましては、石炭鉱業の現状から見まして、相当今後出炭量も減少する、そのために遊休の機帆船というものが当然出てくるわけでございます。われわれはこれを運炭機帆船対策と称しておるわけでございますが、その方向というものはやはりどうしても鋼船の新造船にかえていくということでございまして、それができるような施策をわれわれとしては考えてやらなければならぬと思います。いま御指摘いただきましたように、中小と申しますか、機帆船船主事業協同組合をつくらせる等の方法によりまして、石炭の専用船の建造ということを考えたい。その場合、たとえば解撤比率の問題等もございますし、あるいは船主の資産、信用力等の問題もございますけれども、われわれは、どうしてもそういう小さい機帆船船主の共同して建造する船舶を最重点に取り上げるという方向でこの問題を解決していきたいと考えておるわけでございます。
  23. 久保三郎

    久保委員 いまのお話で大体わかりましたが、ただ船の型、これはやはり経済的負担力といいますか、そういうことから言いましても、先ほど指摘したように一六型等も十分考慮しないと、いまのお話もなかなか実現できないであろうと思います。その点は十分留意していただきたいと思います。  もう一つ関連して、代替建造の比率でありますが、機帆船のような場合の船主代替建造の場合は、一般的な比率と大体同様な比率でいきますか。
  24. 若狹得治

    若狭政府委員 代替建造につきましては、一般的には新造船による能率増加というような問題もございますし、それから新造船の価格とスクラップすべき船舶の価格との非常な価格差というような問題もございますので、われわれといたしましては、一般的には一・五トンの解撤に対して一トンの新造を認めるというような考えでおりますけれども、機帆船の問題につきましては、現在の機帆船が、積みトン数というものとそれから総トン数というものが非常に違っておりまして、たとえば二十トン機帆船で五十トン運ぶというような状態でございますので、そういう事情をわれわれとしては十分調査いたしまして、原則的には大体積みトンというものを基本にいたしまして、スクラップ・ビルドの比率をきめてまいりたいと考えておるわけでございます。したがいまして、一般の総トン数一・五トンに対して新造一トン、スクラップ一・五トンに対して新造一トンというようなものよりはるかに緩和されたものになるであろうというようにわれわれは考えております。
  25. 久保三郎

    久保委員 次に標準運賃にしても、二十八年にこれだけきめたのですが、参事官の先ほどの説明では、たとえば若阪の機帆船運賃が大体四百九十円ぐらいでずっときている、あまり低くならなかったというのは、この告示があったからだというふうにおとりになっておるようでありますが、われわれ自身はどうも奇異に感じているのです。若阪の石炭は、標準運賃が大体六百六十円になっておるから四百九十円で保ってきた、こういうふうにとっておられるだろうと思うのでありますが、標準運賃というのは内航ではどういうふうに考えておられるのか伺いたい。
  26. 高林康一

    高林説明員 私の先ほどの御説明で、標準運賃が六百六十円でありましたから四百九十円程度でもったというつもりではなかったのでございますけれども、標準運賃といたしましては、ここにありますような原価、利潤というようなものを考えておるわけでございます。ただ問題は、標準運賃の設定のしかたにつきまして、やはり絶えずその実勢を見ながら、そうしてまたその推移もいろいろ考えて、絶えずこれの改定をやっていかなければならないのではないか。したがって今後の問題といたしましては、当然標準運賃というものを考えていくわけでございますけれども、その場合には、やはり一度出したら出しっぱなしということでなく、少なくとも一年一回ぐらいはいろいろ検討し直すというふうに持っていかなければならないのではないかというふうに考えております。それと同時に、従来標準運賃というものと実勢運賃、たとえば若阪の石炭につきましては六百六十円と四百九十円、こういうように非常に違いが出ておるわけでございますが、これにつきましては、やはり大型鋼船それから小型鋼船機帆船というようなものの相互関係というものも十分考え直さなければならないわけでございますが、木船だけをきめておりました従来の標準運賃制度というものは、そういう意味ではなかなか担保がむずかしかったということで、今後はそういうふうなものを全部ひっくるめて考えてまいりたいというふうに考えております。
  27. 久保三郎

    久保委員 この標準運賃制度などは、大体現況においてはその機能を発揮しないということなので、一回出してみたがあとは出さぬ、こういうふうになっていたわけですね。そうですね。
  28. 高林康一

    高林説明員 機能を発揮しないと断定できるかどうか知りませんが、一度やってみまして、実勢というものと、先ほどの資料でもございますように、六百六十円というものとがかなり違うということで、そのまま標準運賃というものをつくりましても、とかく形骸化するというようなおそれもありましたし、それからまた物価の変動もその間の過程において相当あったと考えられますし、プレスすることに非常に問題がありましたので、そのままとまっておったのじゃないかと一応想像しておりますけれども、今後はそういうような点については、絶えず実勢と物価の動きというものをにらみ合わせ、さらにまた荷主側のほうとよく実態も検討いたしまして、妥当な標準運賃を設定したいと考えておるものでございます。
  29. 久保三郎

    久保委員 断定はできかねるようなお話ですが、私は断定していいんじゃないかと思うのです。法律はできたが、機能は一ぺんやってみたが、とてもこれじゃ標準運賃どころじゃないということで、やってもむだだからこれはやめよう、団体交渉並びに団体協約もどうもこれではだめだというので、一回も申請もなし、認可もない、こういうことだと思うのですね。これまでにほうってきた政府当局の責任というものは、あらためて追及されなければなりませんが、ここで再び法を改正して、いまと大差ない内航の実勢ならば、これはあらだめてきつく反省を求められる時期が来ると思うのですね。この法案が成立すれば、まあまあいまの二つの法律にあるところのそれぞれの機能は完全に果たし得られる、それによって内航は安定するという見通しを持っているのかどうか、あらためて聞きたいのです。
  30. 若狹得治

    若狭政府委員 内航問題につきましては、予算措置もまだ決して十分ということができないような状態でございますし、先ほど御質問にございました組織率の問題もなお今後相当時間のかかる問題であろうというようにわれわれ考えておるわけでございます。いま御指摘の標準運賃制度につきましては、いまおっしゃいましたように、とにかく最初やってみたわけでございますけれども、なかなか組合統制力というものが及ばないために、その標準運賃の維持ができないという状態でございまして、これを新たに原価計算を十分やりましても、なかなかそういう運賃を維持するという見通しがつかないままに今日まで放置されておったことは事実でございます。われわれはその一番大きな理由といたしましては、組織率が弱いということと、それから組合の加入、非加入によって何らの制裁措置というようなものが考えられないというようなこと、あるいは大型鋼船というものの活動というものがございまして、その面からやはり運賃の切りくずしが行なわれておったという事実がございますので、まず内航の動いておる船を全部組合に入れるという仕組みを考えて、そういう面から法律改正をしたということと、組合統制力を強化するためのいろいろな裏づけの施策を今後やっていく、それは一つには船腹規制というもの、それからもう一つには、代替建造の資金の融資の場合に組合意見を尊重するというようないろいろな施策を講ずることによって、組合組織率を強化し、それによって標準運賃制度の活用をはかっていくというようなことを考えておるわけであります。ただこれが、法律が施行になりまして直ちに一〇〇%組合加入ということが実現できるわけではありませんし、また標準運賃制度の完全なる実施がはたしてできるかどうかという点につきましても、われわれ心配はいたしておるわけでございますが、とにかくそういう方向に向かってできるだけの努力をいたしてみませんと、内航問題というものは永遠に解決しないわけでございますので、われわれとしては今後ともなおさらにいろいろな施策というものを考えていかなければならないわけでございますけれども、その前提となりますところの大型船組合加入の問題とか、あるいは組合活動に対するいろいろな政府施策の裏づけ、借款というものを本年度以降実施してまいりたいと考えておるわけでございます。
  31. 久保三郎

    久保委員 次に調整規程でありますが、組合資料がございます。この組合自体は調整規程を設けて実施しておるのでありますが、はたしてその調整規程にきめられた事項は守られているのかどうか、これはどうなんです。
  32. 高林康一

    高林説明員 この調整規程については、各組合状況によりまして多少の違いがございます。おおむね言いますと、その調整行為調整運賃というものは大体守られておるというふうに聞いております。特に最もこれが完全に守られておるというようなところにつきましては、たとえば新潟−両津間に関しますところの新潟県機帆船海運組合の場合、あるいはまた三重県の機帆船海運組合の砂利の扱い、これはほぼ完全に調整規程どおりの運航を示しておるようでございます。それから組合加入者の非常に多い中国地方の海運組合連合会あるいはまた九州若松地区海運組合、これらの石炭運賃につきましては、大体所期どおりの効果をあげておるようでございます。しかしながら、ほかの組合についてはやはり若干まだ問題があるようにも聞いております。
  33. 久保三郎

    久保委員 守られないものはそうでありますが、守られない原因は何ですか。
  34. 高林康一

    高林説明員 根本的にはやはり組織率の問題だと思います。それからその組織率をまた非常に弱める原因といたしまして、やはり大型船の鋼船の存在、それからまた絶えず新船が購入されておる。それがまたアウトサイダーとして活躍していくというようなところにあるように考えられます。
  35. 久保三郎

    久保委員 そこで自社船は対象外になるようにこの法案ではなっておるが、自社船はどの程度船腹内航に投入されておるか。
  36. 高林康一

    高林説明員 建造実績で申し上げます。三十五年度につきましては八千三百トン程度でございます。それから三十六年度につきましては九千トン程度でございます。それから三十七年度については約七千トン、三十八年度は、これは上半まででございますけれども、一万トンというような状況になっております。したがいまして、三十五年以降のものといたしましては、約三万四、五千トンというようなものが建造され、投入されておるという状況であります。
  37. 久保三郎

    久保委員 三万四、五千トンのものが自社船で要る場合にはかなりの比重だと思うのですが、そう思いませんか。
  38. 高林康一

    高林説明員 それ自身といたしましては、全体の船腹量といたしましては二百六十万トンのうちでございますが、これ自身は大体専用船の形態をとっておりますし、かつ相当大型のもの、たとえば、三十八年度で申しますと、これは一ぱいだけでございますけれども、一万トンのものというふうなものがありまして、かつ専用船という形式をとっておりますので、稼航率その他を考えますと実態的には相当な比重を持ってくる、また将来も持ってくるだろうというふうに考えております。
  39. 久保三郎

    久保委員 これはなぜ自社船は除外してあるのですか。
  40. 高林康一

    高林説明員 自社船につきましては、いわば今回の改正法につきましては、現在の適正船腹量の策定ないしは最高限度が設定されました場合に、それについて何らかのことを考慮すべきであるというふうには私ども考えておったのでございますけれども、やはり根本的には内航海運業というようなものを基幹として法体系が組み立てられておりますので、自社船、自家船というようなものについては非常に法的に規定しにくかったというようなことがございまして、この際、いろいろ問題はあるとは考えておったわけでございますけれども、事業法というような範疇を考えまして、一応これを規制対象外とした次第でございます。
  41. 久保三郎

    久保委員 いずれそれらの点は相当な意見が出ると思うのでありますが、言うならば、全体量を把握して、その中で適正船腹量を策定してやらなければ、輸送の実態は、いままでの御説明でも、大体自社船は大型が多いんでしょう、そうだとすれば、こういう自社船というのが、専業者のシェアを侵しながら、運賃のダンピングとか、そういうものの要素になるわけです。先ほど組織率が非常に低いからということで、運賃の低迷というか、混乱というか、そういうことを力点に御説明がありましたが、そこであらためて聞きたいのは、自社船の問題が一つあります。いままでの説明のいわゆる組織率の問題が一つあります。これが大体いままでの質疑の中ではっきりしてきた運賃低迷の原因であります。これによって自社船の問題は、後刻各党で考えなければならぬと思うのでありますが、そこで、そのほかに運賃低迷の原因が何かありますか、たった二つですか。
  42. 高林康一

    高林説明員 根本的には船腹過剰であるということにあると考えております。
  43. 久保三郎

    久保委員 船腹過剰の問題についてほこの間も質問がありましたが、船腹過剰であるかどうかということは的確に出てこぬのではなかろうかというふうにも考えられます。一応数字としてはわかりました。ただ現象面にあらわれた運賃低迷という事柄は、大体船腹が多過ぎる、多過ぎるから過当競争で運賃のダンピングがあるのだ、こういうストレートの考えが一つ出るわけです。そうすると船腹過剰、これで三つ。それ以外にも原因がありますか。
  44. 高林康一

    高林説明員 それ以外ということになりますと、あるいはその三者が皆まざり合った結果といいますか、そういうことのための過当競争ということが原因になっておると考えております。
  45. 久保三郎

    久保委員 それ以外に、内航でありますから、陸運との関係はどうなんですか。陸上運賃との関係は、関係がないのかどうか。
  46. 若狹得治

    若狭政府委員 鉄道運賃の、たとえば遠距離逓減あるいは政策割引というものが、内航海運運賃市況を圧迫いたしておることは事実でございます。御承知のように、戦前の回漕費というものは、陸送費に比べて非常に低価格であったわけでございますけれども、今日鉄道運賃というものは長く据え置かれております上に、さらに政策割引あるいは遠距離逓減というものがあって、それによって機帆船運賃の頭を押えられているということは事実でございます。  また、最近の道路運送の状況から見まして、やはり貨物自動車というものが競争的な立場にあるということも事実であろうと考えられるわけでございます。ただ、貨物運賃につきましては、われわれ、現在、全国的に的確な資料を持っているわけじゃございませんので、はっきりしたことを申し上げることはできませんけれども、鉄道運賃につきましては、具体的な事例が非常に多いわけであります。そういう面で内航運賃が非常に頭を抑えられているということは言えると思います。  それから、現実の問題といたしまして、たとえば三十六年の鉄道運賃の値上げの場合に、石炭につきまして、たとえば省用炭につきまして、運賃の値上げを機帆船組合その他が非常に陳情いたしておったわけでございますけれども、石炭産業自体が不況のため、一般炭の運賃値上げができない。一般炭との関係上省用炭の運賃の値上げもできないというような状態でございまして、鉄道運賃は一三%ばかり値上げになりましたけれども、機帆船運賃は五%未満というようなところでとどまっておるというような問題もございます。他の産業の、特に一番内航対象貨物でありますところの石炭産業の不振ということも、やはり内航運賃を圧迫いたしております非常に大きな理由であるかと考えております。
  47. 久保三郎

    久保委員 これは海運局長だけの問題ではないのでありまして、運輸省全体の問題でありましょうが、結局陸運と海運との関係をいかに調査するかの問題があると思うのです。しかも、石炭合理化のしわ寄せで、国鉄運賃は、御案内のとおり、石炭の運賃については延納まで認める——延納というか、実際はこれは棒引きだろうと私は見ている。国鉄はこれで決していいはずはないのであります。そうかと思うと、いまお話しのとおり、今度は内航にしわ寄せが来る。他産業の犠牲で、ある産業の再建なり合理化があるはずはないと思う。そういう政策が今日やられているということは、これはちっとも政策じゃないと思う。池田内閣の閣僚であられる綾部運輸大臣がおられますが、特に運輸省の中の矛盾と撞着をはらんだままで、石炭合理化は一つの例ですが、今日までやってきたところに私は大きな問題があると思う。こういう問題についてどういうふうに処理されようとするか、これは運輸大臣にお尋ねしたほうが適切だと思うのですが、どうでしょうか。
  48. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 確かに御指摘のような政策の矛盾は、日本の高度経済成長に伴って、また世界の経済機構の変革等によりまして、ありますが、その間をいかにするかということが大問題でございまして、私ども日夜苦慮いたしております。現実面におきましては、内航海運については、私どもは内航海運懇談会を開きまして、そうして内航海運についての衆知を集めました結論に基づきまして本法案を提出いたしたような次第なのでありまして、御指摘の矛盾は確かにあります。私どもは国鉄につきまして、今日国鉄の経営を非常に圧迫しているものは、いわゆる政策運賃であると考えております。そういうことについても、今後国鉄のあり方について基本問題調査会等におきまして根本的に調査いたしまして、この方面からも御指摘のような矛盾をなくするように努力いたしたいと考えております。
  49. 久保三郎

    久保委員 運輸大臣の答弁は必ずしもはっきりしませんが、あなたの所管のところでよその省のしわ寄せを食って、次から次へと波動的に矛盾撞着を起こしておるということを私は言いたいのですよ。だから政策というのはそのものずばり出すべきであって、ほかの産業やほかの官庁の政策にしわ寄せしてどうにもならぬというようなことは、これは政策じゃありません。だからそういう点についてやはり運輸省自体が見直すべきだ。外航にしても再建二法ができて今月からすべり出しをしましたが、まだ再建のめどなんかつきません。内航またしかりです。言うならば、見直せというのは、輸送は他産業の従属機関ではない、こういう考えが前提にならなければ、どんな政策を持っていっても他産業のしりぬぐい的な政策をやる以外にないのです。運輸行政の基本というものは、私は今日ただいまではそうだと思うのです。陸上交通一つとってもそうです。陸海空全体そうです。だからここでこの法、案を成立させることも一つでしょうが、その前提となる、ただいま申し上げる理念が運輸省自体に、あるいは政府自体になければ、結局何をやってもさいの川原の石を積むようなもので、あとからあとからまた手直しということになる。だからもっと性根を入れて、内航なら内航の建て直しはどうあるべきか、大局から考えて政策は出してほしいと思うのです。この理屈はその辺にしますが、少なくともこれをやって、いずれにしてもいまのような方針と政策のあり方では、残念ながら運輸省全体で所管する運輸行政はもみくちゃです。最近基本問題調査会から答申が出ましたが、これも実際言うと、通り一ぺんの話でありまして、だれも考えるようなことであります。もっと性根を入れるということが一番先です。だからそういう意味で運輸大臣に申し上げたのであります。ところが運輸大臣は、委員会へ来ると真摯になってなにするが、閣議では真摯じゃない。運輸大臣としてもう少しものを言ってほしいと私はかねがね思っておるのです。この際言いにくいことですが、もう少しものを言ったらいいだろうと思います。  そこで陸運との関係でありますが、運賃値上げをしようということではございません。ところが輸送が片方では過剰ぎみ、片方では逼迫ということで、このままの姿でやったのでは、船腹量をきめたところでこれは同じですよ。だから運賃調整はある時期にやるべきだ。しかし政府の一貫した政策は、貨物運賃特に大宗貨物についての運賃に手をつけることが、残念ながらいままであまり積極的ではない。運賃ということになりますと、定期券がどうのこうのという。もちろん定期券の問題も半面問題にはなりましょう。しかしながら今日最も大事なことは、貨物輸送の問題です。これが野放しであります、というよりは、政策的に何らの前進がないのであります。思い切った考えを持ってやるべきだと思うのです。  これは海運局長に聞きますが、陸運と海運との関係運賃調整について今日ただいまどう考えていますか。
  50. 若狹得治

    若狭政府委員 この問題はわれわれは非常に長い間検討いたしておるわけでございますけれども、ただいま大臣からお話し申し上げましたような政策運賃というもの、政策割引、それから遠距離逓減制度というものについては、省内に一おきましても長い間検討いたしておりまして、今後運賃改定がある場合には、ぜひともこういう問題を考えていただきたいということを申しでおるわけでございます。われわれといたしましては、具体的には、先ほど申し上げました石炭運賃等につきまして、国鉄当局としては、一般炭の値上げというものができるならば、それに国鉄もフォローすることについては全く異存はないという状態でございますので、今後この法律が施行されまして、組合の自主的調整ということにつきまして相当の実力を持つということができますならば、石炭運賃の引き上げということも十分考えられるというふうに期待いたしておるわけでございます。
  51. 久保三郎

    久保委員 まあいずれその問題はあとで論議になりましょうから申し上げませんが、ただ、だめ押しをしておきたいのは、われわれは運賃値上げは反対ですよ。だけれども、あるべき姿の運賃調整は、これはやはり考えなければならぬと思うのです。そういう意味で申し上げておるのであります。ところがその運賃というか、先ほど大臣から答弁がありましたが、国鉄の問題も、基本問題調査会でこれから運賃の問題をやっていくというが、おそらく結論は千編一律に運賃値上げに落ちつくだろうと思う。そう私は予測しておりますが、間違えばそのときあやまりますよ。そういうことでは残念ながら矛盾はちっとも解決しない。国鉄自体の問題も解決しないのです。だからこの際大臣に申し上げておきますが、これは御返事は要りませんけれども、少なくともそういうことでは決して問題の基本的なものは解決できない、こういうふうに申し上げておきます。  そこで次にお尋ねしたいのは、船腹量を策定するわけでありますが、船腹量を策定する場合には、これは基準でやる基準船腹量は、いわゆる適正船腹量というのか最高船腹量というのか、中身の意味はどっちなんですか。
  52. 高林康一

    高林説明員 船腹量については、この法案では二通りの船腹量を考えております。一つは適正船腹量、必要にしてかつ十分というような意味の適正船腹量一つ、それからもう一つは、そういうような適正船腹量に照らしまして、非常にアンバランスになるというような状態において設定いたしますところの最高限度量といい直すか、最高船腹量といいますか、その二つの種類の船腹量をこの法案では考えておるものでございます。
  53. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、適正船腹量、これが標準で、最高というのはそれより上回ったものをつくるわけですね。やはりそこに幅があるのですね。最高の出たときには新規の登録にやめさせる、こういうことですね。それでは適正船腹量というのは、何のために必要でしょうか。
  54. 高林康一

    高林説明員 法律効果といたしまして、適正船腹量というものは、直接な法律効果というものはそこからは出てまいらないわけであります。ただこの場合に適正船腹量というものが毎年五カ年計画として設定されまして、それに照らしまして著しくアンバランスになるような場合において最高限度量というものを設定するという考え方でございまして、いわば法律的には最高限度量というものの設定の一つの基準といいますか、先生のおことばでは一種の標準といいますか、目安になるものということでございます。ただそれ自身の適正船腹量法律効果というものは、この法では直接には考えていないという状況でございます。
  55. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、適正船腹量をきめておいて、これは毎年度五年間のものを策定するわけですね。それで今度はその適正船腹量に照らして過剰になるという見込みがあるときには、いわゆる最高船腹量というもの、最高限度をきめる、こういうことなんですね。そうしますと、適正船腹量をきめておいて、これをオーバーしそうだというときには最高限度をきめる、こういうのですね。そうなると、適正船腹量の上に最高限度というのがあるのかどうか、これを聞いているのです。適正船腹量にもう達しそうだというときにこれが最高限度だというふうにするのか、それとも、適正船腹量というのが一つあって、それを突破してきたから幾らにするというのはあらためてきめるのか、いかがですか。
  56. 高林康一

    高林説明員 条文では二条の三にございますように、当該年度に定められた当該船種別の船腹量、これが適正船腹量でございますが、これに照らして著しく過大になるおそれがあると認めるときに最高限度量を設定するわけでございます。したがいまして、最高限度量の考え方といたしましては、適正船腹量に照らしまして著しく過大になるおそれがあるということでございますが、大体適正船腹量といたしましては一種の需給がバランスしておる状態というようなものを考えております。現実には需給の完全に均衡するというようなことはないと考えられますが、それをオーバーする場合において最高限度量をきめるわけでございますから、実際問題といたしましては、最高限度量は適正船腹量よりもやや上回ったものになる可能性があるかと考えます。
  57. 久保三郎

    久保委員 この五年間に毎年これはやりますか、毎年改定していくわけですね。
  58. 高林康一

    高林説明員 第二条の二にございますように、毎年度当該年度以降の五年間について各年度の適正な船腹量をきめるということでございます。
  59. 久保三郎

    久保委員 そこで船腹量の策定にあたっては船種別をきめるわけですね。なるほど船の種類ごとにきめるのは必要だと思うのですが、そのほかに内航の特質からいって、地域別の問題が残ると思うのです。これはどうなさるのですか。
  60. 高林康一

    高林説明員 御指摘のように船種別をきめます場合に、当然その地域というものが背景になければならないと考えます。したがいまして、地域別にもやはり考えていくべきではないかと思いますけれども、一応その場合にどのようなきめ方をやりますか、ただ船舶の代替性ということもございまして、必ずしもその地域に張りつかないといろこともございますので、その場合におきましては、地域別の輸送需要を算定の基礎に考えつつそれをきめていきたいと考えております。
  61. 久保三郎

    久保委員 地域別の需給を勘案しながらきめていくというのだが、たとえば北海道から東京への石炭、あるいは若松から阪神への石炭、こういうのを全体をひっくるめれば、適正船腹量を著しく上回る。しかし地域的に見れば、若阪のほうがかなり大きな数字になってきている。北海道のほうはそれほどでないというようなことが想定されます。そういう場合に一括してやった場合に、たとえば、函館のほうは、少ないなりに押えられる。こういう矛盾が出てくると思うのですが、それはどういう操作をしますか。
  62. 高林康一

    高林説明員 御指摘のように、たとえば北海道−東北間の定期航路あるいは北海道の石炭、若阪の石炭というように、比較的需要の姿というものが特定されていると申しますか、はっきりしておりますそういうものにつきましては、やはり全体というものと関連なし——なしというのはちょっとことばが悪いのですが、いわばそこを切り離したものを考えてもいいのではなかろうかという点で、これらの点につきましては、海運造船合理化審議会の内航部会にいろいろお話し合いをしながら設定をしていきたいというふうに考えております。
  63. 久保三郎

    久保委員 実際に地域別の問題が加味されなければ実態に応じた操作はむずかしい、かえって混乱するだろうと思うので、いまの参事官の答弁で可能だというならあえて何も言いませんけれども、そのときになってから問題になってくると思うのですね。だから、その点は十分考えてやらなければいかぬだろう、こういうふうに思います。  それからもう一つは、二十トン未満はもちろんこの組合法にも入りませんし、業法にも入りませんね。
  64. 高林康一

    高林説明員 まず、二十トン未満は組合には入ります。それから、小型船海運業法、内航海運業法の適用につきましては、登録ではございませんが、届け出ということにしております。
  65. 久保三郎

    久保委員 二十トン未満は、その適正船腹量の策定なり、あるいはその制限の中に入りますか。
  66. 高林康一

    高林説明員 入りません。
  67. 久保三郎

    久保委員 そこで、二十トン未満の問題がこういう法律によって政策が出ますと、二十トン未満いわゆる十九トン半というものがかなり、もぐりと言っては語弊がありますが、合法的な形で出てきはしないかという心配があるのです。そういう点はどう考えておりますか。
  68. 高林康一

    高林説明員 確かにいわゆる二十トン未満の不登簿船というものが従来いろいろ問題があったことは確かでございます。ただ、現実の輸送需要といたしましては、比較的これが最近の検査制度の強化その他に伴いまして、かつてのように大きくこれを乱すことはなかろうというようにも考えております。また、こういうような点につきましては、海運組合調整行為というものをやはり根本的にはいろいろ期待していかなければならないという状況もございますので、これらの面について、われわれといたしましても、組合と一緒になりまして、実態把握をし、それから乱すことのないように十分努力してまいりたい、こういうふうに考、えております。
  69. 久保三郎

    久保委員 海運組合そのものは組織率もかなり低いし、なかなか前途多難であるという形からいけば、いまの参事官のお話だけで、はい、そうですかと言うわけには参らぬのではなかろうかと思うのです。そこで、二十トン未満のこういう内航に従事しておる船はどの程度あるのですか。
  70. 高林康一

    高林説明員 二十トン未満の内航船腹貨物船につきましては九万一千トン輸送船につきましては二千六百トン、その他はしけ、引き船がございます。
  71. 久保三郎

    久保委員 これは漁船の場合でも例があるのですが、カツオ、マグロの四十トン船というものがありまして、いわゆる三十九トン、マグロ船というのが実は今日水産業界では問題になっておるのですね。これは労働条件その他も非常に劣悪であります。危険度が多い。漁船でありますから、遠洋でカツオ、マグロをやるのでありますから、内航の場合はそれほどではないかもしれませんが、これらについても適切な政策がなければならない、二十トン以下を否定しようということでなくて、これもやはり健全な発展というのを考えない限りは問題は解決できないと思うのです。むしろこういう小さい船は、言うならば、蛋民——と言っては語弊があるが、そこで住居をかまえているものも中にはあるでしょう。移動するのもちょろちょろ移動するということでありまして、これらもやはりこの中へある程度含めて、そして健全な発展ができるように考えるべきだと思うのですが、これについては新たなお考えは持っておりませんか。
  72. 高林康一

    高林説明員 二十トン未満につきまして事業法のほうでこれを適用対象としていないのは、やはりこれは事業規制といたしましては特にあまり大きな問題はないのではなかろうか。ただ、全体の輸送の部面におきましてはいろいろ問題がございますので、やはりこれは海運組合というようなものを通じてその発展を期していくということが一番大事ではなかろうかというふうに考えておるものでございます。
  73. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても、この制度実施されるようになりますれば、二十トン未満の問題も新たな問題として再び出てくるだろうと思うので、再び出てこないように適切な対策を講じておく必要があると思うし、また、こういうものについては業法には入らぬが、組合法には入るということで、ともすれば出先も本省も含めて二十トン未満について目を注ぐことがおろそかになりはしないかというふうにわれわれは心配しているわけです。これの維持、発展、こういうものについてやはりもう少し前向きというか、積極的な対策を立ててやらなければならぬ。これはおそらく零細企業でしょう。大体そうだと思う。零細企業に対してやはり企業として健全に成り立つように指導、育成をしなければならぬ。この点をもう一つ申し上げておきたいのです。  それから、大体どうだどうだと言うから、きょうはこの辺にしておきますが、もう一つ木船の問題であります。木船の建造というものについて海運局はどう見ているのですか。この間の答弁では、大体木船は減っていくだろうというふうに簡単に言えば御答弁があったと思うのでありますが、木船自体もやはり木船としての強みがあるし、必要性もあるとわれわれはまだ見ているわけです。なるほど鋼船に切りかえるというのが一般的な常識かもしれませんが、そうでなくて、やはり木船は木船なりの用途と機能を果たす余地が十分にあると思う。だからこれに対しての対策も考えていくべきだと思うのですが、代替建造はみんな鋼船になるということでしょうね。それではちょっとどうかと思う。これはどうなんです。
  74. 高林康一

    高林説明員 大きい傾向といたしましては、木船は鋼船化してくるということは事実だと思います。ただ、木船それ自身においては、やはり木船でなければなかなか果たし得ない分野というものがやはり相当程度残るだろうというふうには与えております。ことに将来の問題として、また現在もう始まっておりますけれども、工業地帯というものが分散してくる。そして新産業都市をはじめといたしまして、いわばそういうものを中心にするところの地域輸送というものが、今後は輸送距離というものはそういう意味では短くなるかもしれませんけれども、やはり木船によって果たさなければならないという部面も相当存在し得るのではなかろうか。そういう意味では、すべて木船は鋼船化するというふうにはなかなか言えないのではなかろうか。相当程度の木船のシェアは、国内輸送の分野におきましてはあり得るであろうというふうには考えておるものでございます。
  75. 久保三郎

    久保委員 だから新たな政策を考えるべきだ、こう言っておるのですよ。内航対策といえば木船も入る。この間の資料では、木船の比重は、輸送力から言ったって鋼船と大体とんとんなんですね、多少下回るかもしれませんが。だから、この木船対策はもう少し前向きで考えるべきだ。今度の三十九年度施策の中には、新たなものは何もありませんね。そうですね。これは運輸大臣どうでしょう。考える一つの盲点ですよ。一つも考えておらぬですよ。
  76. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 もちろん十分考えるべきことであると思いますが、運賃の面において、三十九年度の運賃対策の中に木船に関する事項も含まれておると記憶いたしておりますが、詳細は海運局長からお答えすることにいたします。
  77. 若狹得治

    若狭政府委員 鋼船に対して今後とっていこうといたしておりますものは財政資金による助成でございますが、木船についてそういうような方法は考えられないかということをわれわれも検討したわけでございますけれども、全般的に見まして、木船に対する需要は今後必ずしも増加しない。大体におきまして、過去の建造実績を見ましても、船腹保有量をもってみましても、一万トンないし二万トン程度の増加率であります。したがいまして、大体現状の横ばい程度というようにわれわれとしては考えておるわけですが、もちろん木船でなければどうしても運べないというような、たとえば港湾設備関係その他あるいはロットの関係もあると思いますけれども、そういうものがあるわけでございます。これを鋼船化するのはとうてい考えられないというところもあるかと思いますけれども、全般的に見まして、木船は大体現状維持程度というような考え方でおりますので、われわれといたしましては、組合の中へこれを取り入れまして、運賃の面で協力して、必要な統制を行なっていくことによって企業経営の改善をはかっていくということを考えておるわけでございます。
  78. 久保三郎

    久保委員 運賃の面でというお話でありますが、もっと前向きで、代替建造の場合もあるでしょうし、そういうものは零細企業で、なかなかその資金も得られないというのが実態だとわれわれは見ておる。そういうものについて木船なるがゆえに代替建造ができない、資金の手当もないということではどうかと思うわけで、この点は十分考えていかなければならぬ、こう思うのであります。  そこで、もうきょうは時間でありますからなんでありますが、もう一つだけ聞いておきたいのであります。このいわゆる船腹量を策定するというのは、内航の立場からは一つの前進的な政策だと思うのです。これはそう思います。ところがこれを単純にそれではそれでけっこうだと言うわけにはいかぬ。というのは、船をつくるほうの造船でありますが、造船との関係もかたがた多少——と言っては語弊がありますが、考えなければ、頭の中に入れておかなければ、これも造船業というものがございますから、そこでこの造船業というものとのかね合いも考えていく。言うならば、さっき言ったように、老朽船の対策船質改善をもう少し大幅にやっていくというのが両方に役立つ政策だと思う。ところが、先般の質問でも申し上げたように、必ずしも三十九年度からすべり出した内航の老朽船対策というのは、将来の展望に立っても、残念ながらその目ざましいものではない。だからこのワクをさらに拡大するということが必要だと思う。これは強調しておきたい点であります。  さらにもう一つは、この適正船腹量なり最高限度をきめる場合には、この法案によりますれば、当然海造審の意見を聞いてということになっていますね。海造審の意見を聞くという前には、おそらくいままでやってきたように、専門部会というものを設置されると思うのです。そういう専門部会の中には、やはり造船の関係もメンバーとして入れて、そこでいま私が申し上げたような点も勘案しながら適正船腹量なり最高限度をきめていくということが一番好ましい姿だと思うんだが、そういうメンバーを入れる考えがあるかどうか。特に最近における造船業、中小造船のほうは御承知のとおり必ずしも好転はしておりません。海運集約化に伴って造船の問題もそういう形が出てくる。ところが、大造船所はまあまあ安泰にしても、中小造船所はそういうふうにはまいらぬ。そこへもってきてまた一方的に適正船腹量がきめられて、老朽船対策もかんばしくないということでは、かなり問題があると思う。こういう問題についてはどう考えているか。労使ともメンバーの中に入れるべきだ、こう思うんだが、いかがですか。
  79. 若狹得治

    若狭政府委員 海運造船合理化審議会あるいは下部機構の専門委員会等に中小造船の代表の方も当然入っていただく。現在も入っておるわけでございますが、今後も、専門委員会をつくります場合、あるいはその下の幹事会をつくります場合にも、当然これは入っていただきまして、いろいろな御意見を拝聴したいとわれわれは考えておるわけであります。根本的に最高限度を設定いたしましても、これは船腹量を全般としてふやさないというだけでございまして、現在の内航海運につきましては、先日も申し上げましたとおり、非常に多くの老朽船があるわけでございます。これを財政資金の援助によりましてスクラップ・ビルドを行なっていくということでございますので、われわれとしては造船の工事量が減るというようなことは考えておらないわけでございます。できればこのスクラップ・ビルドをさらに拡充いたしまして、工事量をふやすと同時に、内航の体質改善にも資していきたいと考えておるわけでございますので、中小造船の方々とも十分相談いたしまして、明年度以降におきましてはさらにこの財政援助の幅を拡大していくということであらゆる努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  80. 久保三郎

    久保委員 その専門部会なり幹事会、そういうところへはやはり造船関係、労使ともはいれるように考えておりますか。
  81. 若狹得治

    若狭政府委員 現在の合理化審議会には労使ともお入りになっているわけでございます。幹事会の構成はまだ最終的にきめておりませんけれども、そういう御意見も十分考えまして今後措置してまいりたいと考えております。
  82. 久保三郎

    久保委員 まだ質問の残しがたくさんあるのですが、きょうは、お呼びしたのが船員局長あるいは関係者もどこかへ出張で、おいでにならぬということでありますし、それから無線関係内航船の通信の問題等も関連してございますので、次会は電波監理局長、電電公社の担当理事、それから船員局長、それからできれば港湾局長という方々をお呼びして質疑を続行したいのでありますが、委員長の御了解をいただいて、本日はこの程度にしておきます。
  83. 川野芳滿

    川野委員長 承知しました。  内海清君。
  84. 内海清

    ○内海(清)委員 けさほど来いろいろ論議されてきたのでありますが、大臣もいま席をはずしておられるようでありますので、この法案の内容につきまして少しお伺いをいたしたいと思います。  この内航海運の不振の大きな原因の一つには、確かに船腹量の過剰ということがあるのであります。この改正案によりますと、新たに船腹量の策定が盛られております。第二条の二におきまして、「運輸大臣は、内航海運業の用に供する船舶について、運輸省令で定めるところにより、毎年度、海運造船合理化審議会の意見をきいて、当該年度以降の五年間について各年度の適正な船腹量を運輸省令で定める船種ごとに定めなければならない。」こういうことがいわれておりますし、さらに第二項で、「前項の船腹量は、国内における貨物輸送の需給事情その他の経済事情を勘案して定めるものとする。」こうあるのであります。この第二項でいいますところの貨物輸送、それから経済事情を十分勘案された場合に、現在の内航海運におきまする適正な船腹量は、一体どのくらいの見込みになるわけでございますか。
  85. 高林康一

    高林説明員 一応私どもといたしまして試算しておりますところでは、三十八年度について考えてみますと、大体全体といたしまして二百二十二万トンあたりが適正船腹量ではなかろうか。現在は全体として二百六十七万トン船腹量がございますけれども、三十八年度の適正船腹量としましては二百二十二万トン程度ではなかろうかというふうに考えております。
  86. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、三十八年度の場合を考えてみますと、現在二百六十七万トン、三十八年度の適正船腹量が二百二十二万トンといたしますと、四十五万トン過剰という形になるわけですね。それについてお尋ねしたいと思いますけれども、船腹量の策定は、具体的にどのような基礎といいますか、調査資料といいますか、そういうようなものに基づいてされたのか、それをひとつお伺いいたしたい。
  87. 高林康一

    高林説明員 現在試算いたしておりますのは、やり方といたしましては、輸送需要見通しにつきましては、大体鉱工業生産指数というものの姿をとりまして、将来の輸送需要のあり方を考える。そのほかに、国民総生産との数というようなことも考えて将来の輸送需要を考えていく。その場合に、適正船腹量を算定いたします基礎といたしましては、私どもは原単位方式というものを考えているわけであります。この原単位につきましては、従来も内航船腹の運航実績を基礎にいたしまして、運航実績によりまして原単位を実は過去五年間とっておりますが、かなりバラついてはおりますけれども、大体そこに一定の伸びがございます。それらの伸びも勘案いたしまして、この原単位を一応きめて、そして適正船腹量をはじくというような操作をやっておりますが、さらに原単位の適正であるかどうかについては、さらに実際の問題といたしまして合理化審議会等にはかって、いろいろまた御検討をお願いいたしたいというふうに考えております。
  88. 内海清

    ○内海(清)委員 この適正船腹量の算定というものは、いま大体具体的な問題を承ったのでありますが、内航海運の問題にとりましては、何か非常に大きな問題になるわけであります。でありますから、この原単位方式で原単位をいかにとるかというふうな点につきましても、これはよほど慎重にやっていただかないと、これによりまして、そのあとにさらに最高限度船腹量をきめられますけれども、まずこれが出発でございますから、内航海運のいわば死命を制するようなことになると思うのであります。したがって、この点につきましては、今後十分ひとつ縦知を集めて、最も適正なものが出るようにお願いしなければならぬと思っております。  次は、二条の三であります。二条の三におきましては最高限度船腹量の設定であります。これは二条の一項で定められた船腹量に照しまして「著しく過大になるおそれがあると認めるとき」これが決定される。先ほど御答弁のあったとおりでありますが、この「著しく過大」ということです。これは具体的にどういうふうな場合になりますか。
  89. 高林康一

    高林説明員 現在検討いたしております段階では、各年度につきまして適正船腹量が設定されておるわけでございまして、したがいまして、「著しく過大」といいますのは、その年度百万トンと適正船腹量がかりにきまっておりますれば、その百万トンをこえて、しかも次の年度の適正船腹量、かりに百十万トンとございますと、それにも何するおそれがあるというようなときには、やはりどうしても最高限度を設定する必要があるんではなかろうかというふうに考えております。
  90. 内海清

    ○内海(清)委員 「著しく過大」ということになると、たとえば二百万トンなら二百万トンが適正船腹量である、それをどの程度上回っておるか、一割上回っておるのが過大であるか、あるいは一割五分の場合が過大であるか、その辺が非常に問題になる点だと思います。そういう点につきまして、大体の基準がございますか。
  91. 高林康一

    高林説明員 現在のところ考えておりますのは、たとえば昭和四十年度に二百万トンと、こうきまった適正船腹量がございます。そして昭和四十一年度の適正船腹量が二百二十万トン、こういうふうに仮定いたします。そういたしました場合に、昭和四十年度で登録その他を受け付けておりますと、その二百万トンという昭和四十年度の適正船腹量をこえるというような状況になってまいるといった場合におきまして、しかも、こえる量が、次の年度二百二十万トンにかりにきまっておりましたら、その二百二十万トンに達するようなおそれのありますときには、そのときに最高限度量を設定いたしたい。そういうふうにいまのところは考えております。
  92. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、次の年度の適正船腹量を基準にして、次の年度の適正船腹量以上にはしない。大体その内輪でもってきめていこうということですね。そういたしますと、この年度と次年度の間の船腹量の伸びというもの、この差が非常に少ない場合は、過大というこの表現はどういうことになりますか。
  93. 高林康一

    高林説明員 差が少ない場合につきましては、やはりこえたその年度のものは、こえましたときにすぐそういうような最高限度の設定があり得るかと思います。問題は、そういう場合に五カ年間におきますところの各年度別の適正船腹量というものが、どういう幅があったら妥当か、この辺は全体の成長率なり何なりというものを勘案してきめるべきだと思いますが、その幅の定め方になるわけでございます。
  94. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、いまのお話によりますと、「著しく過大」という表現が適切かどうかということはちょっと問題だと思う。普通の場合、過大と言えば、これはかなりの数字が常識的には考えられると思うのです。したがって、ただいまの説明のようであるならば、「著しく過大」というこの表現はどうかと思いますが、この辺はどうお考えになりますか。
  95. 高林康一

    高林説明員 ただいま申しましたように、「著しく過大」という認定の基準といたしましては、いわば次年度の適正船腹量というものに達するおそれがあるというようなときを考えるわけでございます。したがいまして、当該年度におきましては、次年度の適正船腹量に達するということは、何と申しますか、非常に船腹過剰というものが当該年度にすでに出ておる状況になっております。したがいまして、これは次年度の適正船腹量に到達するような船腹量といたしましては、当該年度に比べますれば「著しく過大」であるというふうに私どもは考えておるものでございます。
  96. 内海清

    ○内海(清)委員 次年度の船腹の伸びがない場合でもですね。たとえば四百万トン、これが五万トン伸びたという場合、これも四百万トンを少しこしたら、それは「著しく過大」、こういう解釈をするつもりですね。
  97. 高林康一

    高林説明員 成長率から動向を考えてみますと、おそらく現在のところ、かつての一〇%以上の成長率ということはないといたしましても、やはり実質におきまして六、七%以上の成長率というものが、現在の段階では考えられるわけでございます。したがいまして、そういうような成長率から考えてみますと、輸送需要、またそれに対応しますところの適正船腹量というものは、やはりある程度のパーセンテージを持ったものになり得るだろうとは考えます。しかしながら、御指摘のように、今後五万トンくらいしかというような場合も、経済が非常に順調な成長を遂げないといった場合にはあり得るかと思いますが、いずれにいたしましても、やはりこういつた場合においても、次年度をこえるような船腹量が当該年度で出ますことは、決して好ましくないことと考えておるのでございます。
  98. 内海清

    ○内海(清)委員 現在の経済の成長の姿をまず頭に持ってこれをお考えになったと思いますが、現状は全く御意見のとおりであります。しかし将来におきましては必ずしもそうではないと思います。したがって、この表現が適切であるかどうか別にいたしまして、大体これの考え方というものはわかりましたが、これらにつきましては、「著しく過大」という内容がやはり十分わかりませんと、ただ法案を見ただけでは誤解も受けるし、なかなか納得もいきにくい表現ではないかというふうに考えます。  ついでにお尋ねいたしますが、現状ではほとんどの船主が過大になっておるのじゃございませんか。現実の問題としてどういうふうになっておりますか。
  99. 高林康一

    高林説明員 先ほど総数で三十八年度の姿を見てみますと大体四十万トン以上の過剰船腹になっておると申し上げたわけでありますが、個別的に見ました場合には、鋼船につきましても、貨物船輸送船ともに過剰ではある。それから木船につきましてもやはり過剰になっております。過剰の程度といたしまして非常にはなはだしいのは、鋼船、輸送船の場合において過剰の程度がはなはだしいのではないかというふうに考えております。
  100. 内海清

    ○内海(清)委員 さらに第二条の三で設定された最高限度船腹量をこえる場合に、今度は第六条の二項で登録の拒否を行なうことになっておりますね。この場合に、新船建造を行なったが登録を拒否されたということがあり得るわけです。そうすると、最高限度船腹量のみによって登録拒否を行なった場合に、建造と登録について不均衡が生じてきはせぬかと考えるのでありますが、この点についてはいかがですか。
  101. 高林康一

    高林説明員 不均衡と申しますのは……
  102. 内海清

    ○内海(清)委員 結局六条の二項で最高限度をこえる場合には登録が拒否される、ところが建造はやったわけですね。そうすると建造をやったが登録されないということで、不均衡ということばはよくないかもしらぬが、最高限度船腹量のみで押えて登録を拒否した場合に、建造したけれども登録されないで運航できない船ができる、こういうことは考え得るわけですね。
  103. 高林康一

    高林説明員 確かにそういうような問題点が生ずる可能性があると思います。したがいまして、私どもは内航海運業の登録あるいは変更登録につきましては、これが通った場合におきましては、船舶の建造に着手する前に変更登録あるいは事業登録というものをしていただくように通達してあります。そこで、事前に建造に着手する前にそういうふうにやっていただきました場合におきましては、ただいま先生のおっしゃいましたように、建造中あるいは建造されました船舶についてそれが使用できない、あるいは登録が拒否されるというような事態はあまりないのではなかろうか。むしろ事前に、建造の前に申請していただくことによりまして、また逆にいいますと、最高限度の設定もそのことによってどう見るかということが資料として出てくるわけでございます。事前にそういうような措置をやっていきたいというふうに考えております。
  104. 内海清

    ○内海(清)委員 その点が私も考えられるわけで、建造したけれども登録は拒否された、したがって運航はできないということになるが、それがあってはならぬと思う。したがって、この問題は建造に着手する前にチェックされなければならぬ。そのことは何も法には出ないので、したがって一つの行政指導だと思います。ただそういうふうに指導するということだが、建造を願い出た場合に、十分ひとつ船主のほうと調整できる何かの方法が必要ではないかと思いますが、いまこれは何もできてないということですね。ところがこれは全体についてみて登録拒否をされると思うので、そういうことが、建造許可を願い出た場合に、その出先の機関ですぐチェックできるかどうか、この辺にも私は問題があると思いますが、実際問題として、その辺はどうですか。
  105. 高林康一

    高林説明員 実際問題といたしましては、先生の御指摘のように、非常にいろいろと問題が出てまいるのではないかというふうに考えておりまして、私どもも、この点法案の概要をつくりましたときに海運局の担当者ともいろいろ連絡をいたしまして、どのように実施の確保をはかるかという点を検討したわけであります。この点については、私どもといたしましては、たとえば建造の事前の申請ということについては行政指導で可能であろうというふうに考えておると同時に、やはり根本的にはこういうような制度が樹立されておる場合におきましては、海運組合なり何なりの組織を通じましてこういうようなものがあるということをよく周知し、また海運組合自身の調整行為というものも期待して、そうして行政官庁、組合ともに共同して遺憾のないようにこの実施をはかってまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  106. 内海清

    ○内海(清)委員 その点は、内航にしても、少ししっかりした大きいものになれば、これはいいと思います。しかし一ぱい船主で零細な者がすでにいろいろ準備をして、ある程度投資をして願い出て拒否されるとか、あるいは場合によれば建造して拒否されたという場合は、私は問題だと思います。これは社会的な問題も起こしかねないわけですが、そういうことがあってはならぬと思います。でありますから、それらの点については、今後法が施行される場合には万全の措置をとってもらいたいということを強く要望しておきたいと思います。小さい造船所で一ぱい船主が小さい船をつくってやる場合は、そういうことがないとは限らないと思います。願い出るまでにかなり船はできておるということが実際問題としてはあり得る。したがってそういう点について、もしこの法が出て一隻でもそういうものが出てくれば問題です。この点は、できれば何かの方法で事前にチェックできることをお考え願いたいと思います。こういうふうに思うのですが、この点は特別にひとつ万全の措置をとってもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  それからその次に、これは法案改正の部分ではないのですが、先ほど久保委員からもお尋ねがございましたが、十六条で標準運賃がありますね。多少重複するかもしれませんが、この十六条は、いままでどういうふうに運用されてきたか、もう一度はっきりひとつ御説明願いたいと思います。
  107. 高林康一

    高林説明員 標準運賃の運用につきましては、先ほど申しましたように、二十八年に九航路、七品目につきまして設定した次第であります。その後これは昭和三十三年に若干法の改正によるところの改正を行ないましたけれども、実質的な運賃につきましてはこれを改正しないでそのまま今日に至っておるという状況でございます。
  108. 内海清

    ○内海(清)委員 これは二十八年にきめられて、それをさらに改定がないということですが、この標準運賃というものがありながら、いかにこれが有名無実なものであるかということが言えると思います。これは特に内航海運業者で強いのは、たとえばいまの資料にもあるわけでありますけれども、運搬について考えてみても、若松阪神間というものが、標準運賃が六百六十円が四百九十円ないし四百七十五円程度である。全く標準運賃が標準運賃でなくなっているのです。かような意味から申しましてもこれは全く有名無実だ、こう思うのであります。今後これについて標準運賃というものがあるのでございますから、この標準の名にふさわしいような運賃告示すべきではないか、こう思うのですが、その点はいかにお考えになりますか。
  109. 高林康一

    高林説明員 御指摘のとおりと考えております。従来標準運賃をこのように事実上あまり採用していなかったということは、やはり組織率の問題もございます。また根本的には船腹過剰というようなことによりまして、いわばそういうような運賃体系というものを実施していく一つの環境といいますか、そういうものが非常に整っていなかったというふうに考えられるわけでございます。今後船腹量の設定等を通じまして船腹についての適切な調整をやる、そういうことを基盤にいたしまして、そうしてまた組合活動ということを前提にいたしまして、適切な妥当な、そしてまた法の適用し得るところの標準運賃というものを設定してまいりたい、こういうふうに考えております。
  110. 内海清

    ○内海(清)委員 これは先ほど来いろいろお話がございましたように、組織関係というものと非常に大きな関連があると思うのであります。しかしこういう制度があります以上、これが告示されましたら、実際上の運賃とあまり差のないようにこれはやはり指導していかなければならぬと思うのでありますが、もし差ができた場合には、これは今後はどういうふうな処置をとられるお考えですか。
  111. 高林康一

    高林説明員 現行法の十八条におきまして、この標準運賃の設定されておりますところの航路、貨物について、この標準運賃云々と異なる料金がございました場合におきまして取引をしておりまして、そのことが非常に事業の健全な発達を阻害するおそれがあると認めますときには、取引の是正その他の必要な措置をとるべきことを勧告するという規定がございます。これらのことについて実態的によくその実態を考えまして、そうして、場合によりましては必要な勧告等の措置を今後はとってまいりたいというふうに考えております。
  112. 内海清

    ○内海(清)委員 結局標準運賃というものは、この算定の基準というふうなこともまた問題になると思うのです。標準運賃をつくってもこれが守られぬということにつきましては、それは船腹過剰でありますとかいろいろ問題はあると思いますけれども、その標準運賃というものが妥当なものでなければならぬということは言うまでもないことなんです。そういう意味でひとつお尋ねしたいのですけれども、標準運賃を算定します基準というふうなものがございましたらひとつ……。
  113. 高林康一

    高林説明員 標準運賃につきましては、この現行法の十六条の二項に一種の基準というものが書いてございます。「当該運送の特質に従い、能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むもの」ということが、一応現行法の考え方です。問題は、その場合におきまして当該運送の特質に従ってどのようにきめるかということであります。やはりその航路の貨物あるいは積み揚げの荷役能力あるいはボート・チャージあるいは航路の距離というようなこと、さらに船舶につきましては船型別、船齢別、船費、航海経費あるいは燃料、これらの組み合わせで具体的な標準運賃をきめていくわけでありますが、考え方の基準といたしましては現行法の十六条二項にあるものによってやっていきたいというふうに考えております。
  114. 内海清

    ○内海(清)委員 これに関連しまして、組合法の八条で言いますところの業者間の調整ですね。この業者間の調整による運賃と標準運賃とに、もしはなはだしい差異がある場合は、どういうふうな措置をとられますか。
  115. 高林康一

    高林説明員 この組合法による調整運賃と標準運賃の問題でございます。この調整運賃につきましては、内航海運業者の自主調整の結果でございます。そういうことでは標準運賃法律的には関係がないわけでございます。しかしながら調整運賃はできるだけ能率的な経営のもとにおきますところの採算運賃である標準運賃に近づけることが望ましいというふうに考えております。またそのような方向で、調整運賃のあり方についていろいろ指導してまいりたいというふうに考えております。
  116. 内海清

    ○内海(清)委員 この問題はもちろん組合が自主的にこれを決定すべきものでありますけれども、やはり標準運賃が最も妥当なものであるならば、これはやはり標準運賃に近づけるべきである。これがとかく従来過当競争でありますとか、船腹の過剰であるとか、いろいろなことで運賃の低迷を来たしておる一番大きな原因だと思うのです。でありますから、この指導につきましては、この組合法の関連からいたしまして、ひとつ十分運輸当局において指導をされなければならぬと思う。そうでなければ、やはり今後におきましても内航運賃問題というものはなかなか改善されていかない。この面がやはり出てくると思いますので、これは十分この調整につきましてお考え願いたい、こう思うのです。  それからこの組合法によりますと、内航海運の秩序というものは業者の自主的な努力によって確立するということで、これはまことにけっこうだと思うのです。しかしあくまでも個人的な自由意思にあるために、当然アウトサイダーが出てくることもまた考えなければならぬと思うのであります。そのために運賃等の適正化が妨げられることになるおそれが今後におきましても十分ある、こう考える。組合員以外のものによる、つまりアウトサイダーによる内航海運の混乱をどうしても防いでいかなければ、せっかくこの二法はできましても、また後退するおそれが十分に内蔵されておると思う。それらにつきましてはどういうようにお考えになっておりますか。
  117. 高林康一

    高林説明員 現在の組合組織率が五〇%以下であるというような状況でございます。これはやはり船腹過剰というようなことが一つの原因になり、また五百トン以下というような現行の組合法の資格制限ということも原因になっておると思います。そういうような点で、この内航海運業法によるところの船腹調整、それから小型船海運組合法改正によりますところの組合員資格の拡大、こういうようなことによりまして、先ほど申しましたように、できるだけこの組合の加入ということについては促進をはかっていきたいと思います。しかしながら、先生が御指摘のように、そういうようなアウトサイダーというものが相当存在するということも考えられるわけでございます。その点につきましては、私どもといたしましては、やはりこういうような制度改正を通じまして、大部分のものが組合に入るということをできるだけ指導してまいると同時に、そういうようなことを基礎にいたしまして、現行法五十九条にございますように、大部分のものが同一の調整規程の適用を受けることになった場合におきましては、事業活動規制に関するところの命令をアウトサイダーに対して命ずるということをやっていきたいということを考えておるものでございます。
  118. 内海清

    ○内海(清)委員 いずれにいたしましても、組合に、少なくとも内航海運業者をできるだけ多く加入せしめる、このことが一番重要なことだと思うのです。そのことによりまして、内航海運の秩序もまた生まれてくるのだと思いまして、この法がせっかく成立いたしましたならば、これに対します指導をひとつ十分にやっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  法案については大体以上のようなことをお尋ねしたいと思いますが、なお次会に少し御質問いたしたいと思うわけでございますが、この際ついでに伺っておきたいと思いますことは、御承知のように、今般外航船舶の固定資産税、これは撤廃されるということになったわけです。ところが、内航海運についてはなされていないのであります。この点についてどうお考えになるのか。やはり内航海運につきましても同様に撤廃されることが最も好ましいのではないか、こう考えるのですが、この点についてひとつ御意見を伺いたい。
  119. 若狹得治

    若狭政府委員 内航海運の固定資産税につきましては、従来この負担が非常に重いということでいろいろ折衝してまいりました。現在は課税標準が船舶価格の二分の一ということになっておるわけでございます。これは他の産業に比べましては一番軽減されている。たとえば航空機等のいわば国際的なものにつきましても、現在は、課税標準は三年間三分の一、それから以後まるまる取るというような状況になっておるわけでございます。したがいまして、地方自治体の側から言わせますれば、現在は内航船舶の固定資産税が最も優遇されておるというような考え方をとっておるわけでございます。われわれとしては、外航の固定資産税については本年度から撤廃するということで法律改正をお願いしておるようなことになったわけでございます。内航といいましても、必ずしもその地域に固定するものでございませんし、できるだけこれを軽減していただきたいということでいろいろ折衝をいたしたわけでございますけれども、全体の課税の体系の中で、国内にある船舶その他の、たとえば自動車その他のものと比較いたしまして、内航船舶だけをさらにこの軽減度を強めるということは非常に困難であるということで実現しなかったわけでございます。しかし、現実問題として、外航船舶、内航船舶と申しましても、現在内航の船舶も相当大型化してまいりまして、外航船舶とほとんど同じようなものが就航しているわけでございます。しかも内航の経営は非常に苦しい状態でございますので、今後ともこの軽減についてはさらに努力を続けてまいりたいと考えているわけでございます。
  120. 内海清

    ○内海(清)委員 この問題につきましては先般私も一応質問もいたしましたので、あまり申し上げませんけれども、従来からいえば外航の三倍だ、それが今度ある程度の軽減になったわけであります。少なくとも私どもが考えるのは、これまでの外航船舶並みにでも持っていってもらいたい、こういうふうに考えるのです。これは先般もだいぶん論議したところでありますから、十分私の考えについては御了解いただいておると思いますので、この程度でとどめますけれども、これはどうしてもひとつ内航海運の育成という今日の状況から見れば、この点に意を用いられて、少なくとも従来の外航船舶並みには引き下げてもらいたい、このことを強く要望しておきたいと思うのです。これはいままで海運局におきましてもずいぶんいろいろ折衝されたようでありますけれども、今日この内航の立て直しをやろう、育成強化をやろうという時期でありますので、こういう時期にこういうふうな問題はやはり一つ一つはずしていかなければ、他の面でやりましてもなかなか思うようにいかないということがございますので、この点運輸省としては何ら遠慮するところなしに、十分主張をしていただいて通していただきたいとお願いいたしたいと思うのであります。  それから次に、先般予算委員会で大蔵大臣は、繊維のような不況色の強い産業や、経済の開放によって大きい影響を受ける業種に対しては、納税延期など特別の配慮を講じたい、こういうふうに述べております。ところが私考えるのは、今日の内航海運というものは、田中大蔵大臣の言います不況産業にまさに当たっているのではないかという気持ちがいたすのであります。この内航海運あるいは中小造船等に対します税制上の特別の措置をとられるべきであると私は考えるのでありますが、これらについては税制上特段の配慮をしようという御意思があるかないか、この点をお伺いをしておきたい。
  121. 若狹得治

    若狭政府委員 現在のとこ不況産業としての、たとえば税の延納というような問題は、具体的には実は考えておらないわけでございます。そういう問題は今後各省いろいろ検討することと思いますけれども、内航の問題につきまして、たとえば原油関税の軽減の問題があるわけでございます。これはわれわれ非常に長い間努力してまいっておったわけでございますけれども、漁船につきましては漁業組合を通して関税を払わない燃料油を購入することができることになっている、ところが機帆船についてはそういうことになっていないということは、非常に不合理なわけでございます。ただ従来の、先ほどから問題になっておりましたような機帆船組合、あるいは内航海運組合、小型船海運組合組織の状態から見ますと、いろいろ問題がございますので、われわれとしては今度法律改正をしていただきました上は、この組織率をできるだけ高めて、組合統制力も強化するということによって、今後この関税の問題につきましては漁業と同じような取り扱いをしていただくようにさらに努力を続けてまいりたいと考えております。
  122. 内海清

    ○内海(清)委員 燃料油の問題については当然であると思うのであります。これは外航と漁船については燃料油の関税免除が行なわれておるわけで、ひとり内航に対してはこれが行なわれていないということは、私ははなはだ不合理だと思う。この面についてはもちろんでございます。当然やらるべきでありますけれども、その他の税制の問題等につきましても、税制上の特別措置を今後講じていくということについて特別なお考えがあったら、できれば具体的にお話し願いたいと思います。
  123. 若狹得治

    若狭政府委員 不況産業としての特別な取り扱いにつきましては、今後各省とも相談いたしまして、検討してまいりたいと考えております。ただいまのところはまだ具体的な対策を持っているわけではございません。
  124. 内海清

    ○内海(清)委員 この問題はひとつ今後十分御検討いただきたい。特にいまの燃料油の関税免除につきましては、この法も成立しようといたしておるので、もし成立いたしましたならば、早急にこの問題と取り組んで、これが実現をはかってもらいたい。これを強く要望しておきたいと思う。それから、この問題も先ほど多少触れられたようでありますが、結局陸上運賃との問題、これ全体につきましては、私はできれば大臣にお伺いして論議したいと思うのでありますけれども、海上運賃と陸上運賃の問題、これは国全体の輸送秩序というものがまず確立されないとなかなかむずかしい問題だと思うのです。今日の状況ではむずかしい問題だと思いますけれども、貨物の面におきましては、国鉄貨物運賃との問題がある。国鉄におきましては遠距離逓減あるいは特別割引というような特別措置がとられておるわけであります。これが内航海運には強く影響をいたしておるわけであります。この国鉄運賃との間におきまして、運賃調整ができなければならぬと思う。国鉄の特別運賃に対する特別措置というふうなものについて、国の責任において、国鉄に対しまして調整されなければならぬ問題だと思うのです。これらにつきましてどうお考えになっておるか、その点もう一度お伺いいたします。
  125. 若狹得治

    若狭政府委員 今後の国内物資の輸送につきましては、現在運輸省におきまして長期の計画を策定いたしておる最中でございます。大体におきまして国内物資の今後の輸送の伸び率というものを見てまいりますと、内航海運というものは非常に大きなウエートを占めておるわけでございます。トンキロにいたしまして大体半数近くのものを内航海運輸送するというような考え方でおるわけでございます。御承知のように国鉄の貨物輸送というものは限界に達しつつあり、今後大きな伸びを期待することはできないような状態でございます。これは数字的にはそういうことでございますけれども、現実の問題としてはなかなか鉄道の貨物の海送転移というものは実現しにくいという状況でございます。これはいま御指摘の運賃問題があるからでございます。したがいまして、われわれは、国民経済上、どういう輸送機関によって国内物資の輸送をはかるのが最も合理的であるかというような観点から見ますと、どうしても内航海運に依存せざるを得ないわけでございますので、そのためには、やはり運賃体系全体というもの、海陸を総合した運賃体系というものまで検討してまいりませんと、われわれの長期計画はできないわけでございますので、そういう面から、国鉄の現在の運賃問題についても、さらに検討していただくようにお願いしておるわけでございます。
  126. 内海清

    ○内海(清)委員 この問題はいまお話しのように、国全体の運賃体系、さらにその前に国全体の輸送体系、こういうものが確立してこなければなかなか解決せぬと思う。しかしこれは運輸省の立場からいえば、これ全体の調整ができる立場にあるのであります。今日までほとんどこういう問題はなおざりにされておったのではないかと思うのですけれども、今日の情勢から考えれば、これは早急に手をつけなければならぬ。ただ単に内航海運の育成強化ということで法案をつくってみても、他の面からこれがどんどんくずされてくるということでは相ならぬと思うのであります。この問題は今後のわが国の産業経済の発達の過程から見ましても、特に産業面からいいますれば、輸送運賃ということは非常に大きな要素なんです。これから考えましても、これは早急に手をつけられなければならぬと思うのでございます。この点についての次官のお考えをひとつ承りたいと思います。
  127. 田邉國男

    ○田邉政府委員 御指摘のとおり、私らもこの海上輸送の必要性は十分承知いたしております。現在国鉄の陸上輸送の問題につきましても、すでに限界にきておる。しかも海上輸送すべきものが陸上輸送をされておる面もあるわけでありまして、しかも片方におきまして、国鉄運賃については遠距離逓減の問題等がございまして、それに関連して海上輸送運賃が押えられている関係は十分わかるわけであります。こういう点につきましては、ただいま局長からも答弁がございましたように、私ども真剣にこの問題を解決することが、日本の内航海運の進展に重大な影響があることだと十分認識をいたしておりますので、これはこの際同じ運輸省の中の問題でもございますし、ひとつ前向きの姿で解決していきたい、かように考えております。
  128. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまの問題は非常に根本的な問題だと思う。早急にひとつ前向きでこれと取り組んでいただきたいと強く要望いたしたいと思います。  もう時間が来たからいま一つお尋ねしてきょうはやめたいと思います。運賃につきまして、従来は貨物の引き渡しと同時に運賃支払いが大体終了するのが内航海運運賃支払いの原則になっておる。ところが、最近の傾向は、特に大企業においては運賃の支払いが非常におくれておる。さらに手形というふうなものにかわったりしてきておるのであります。そのために、中小船主というものは経営の困難にさえ直面しておるというのが実情だと思うのですが、こういう事態を政府はどういうふうに考えておられるか。さらに、これについてはどういうふうな行政指導が行なわれつつあるか、その点ひとつお伺いいたしたいと思います。
  129. 若狹得治

    若狭政府委員 いま御指摘の、運賃の手形払いの問題でございますけれども、現在約二一%のものがわれわれの調査では手形払いになっておるというような状況でございます。これも三カ月以内が半数でございますけれども、五カ月程度のものも約四〇%というような実情であります。そもそも運賃は現金払いというのが商法の原則でございます。それが実行できないということは、結局はやはり内航海運業者の組織力が弱くて、先ほども久保先生から御指摘がございましたけれども、従属的な立場にあるためにこういうような現象があらわれてくるわけでございます。われわれといたしましては、やはりこの法律によりまして、組織力を強め、組合統制力を強めることによって、こういう傾向を是正してまいりたいと考えておるわけでございます。
  130. 内海清

    ○内海(清)委員 結局は組織力の強弱によりましょうが、しかし、この法案が通過いたしましても、これで組織を強化するのにはかなり時間がかかるわけです。それまで待ちにくいというのがいまの内航海運の現状だと思います。したがって、それまでは、内航海運の振興をはかろうとするならば、何か運輸当局その他政府におきまして、強力な行政指導があってしかるべきだ、こう思います。その点についてはいかがですか。
  131. 若狹得治

    若狭政府委員 運賃の手形払いについては、不況期にはいつも出てくる問題でございまして、その機会ごとにわれわれは注意を喚起いたしておるわけでございますけれども、実際問題としては、金融が逼迫いたしておりますと、こういうふうな現象が相当多数出てくることは、なかなかわれわれの力だけでは、われわれの監督だけではとうてい防ぎ得ないような状態でございます。どうしてもやはり組合員自体、業者自体の結束によってこういうものを防止するという方法以外、方策がないのではないかと考えているわけでございます。したがいまして、多少時間はかかりましても、組合の結束力自体を強化することがこういう問題をなくす唯一の道ではないかというようにわれわれは考えているのであります。
  132. 内海清

    ○内海(清)委員 運輸省としてはそういう立場かもしれませんが、これは大企業が多いので、やはり通産省あたりと密接な連携のもとに行政指導をするというようなことは、いままでやられたことがありますか。
  133. 若狹得治

    若狭政府委員 たしか昭和二十九年ころであったかと思いますけれども、通産省と協力いたしましてそういう指導をしたことがございます。ただ、なかなか効果が上がらないという事情であったかと思いますけれども、今後ともできるだけの措置は講じてまいりたいと考えております。
  134. 内海清

    ○内海(清)委員 二十八年に行なわれて、今日これほど内航海運が不況になっておるのに、さらにそういう措置をしておらぬということは、はなはだ遺憾だと思っている。それによって抜本的な何はできぬかもしれませんけれども、少しでも前進することが考えられるではないか、こう思うのです。そういう行政指導を行われれば、内航海運業者もやはりその線によって強く要請もできるわけです。ただ運輸省の一つのからにこもらないで、こういう問題は国全体の施策として措置してもらわなければならぬと思います。この点を強く要望しておきまして、本日はこれで終わります。
  135. 川野芳滿

    川野委員長 次会は来たる七日火曜日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五分散会