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1963-12-12 第45回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年十二月十二日(木曜日)    午前十時十八分開会   —————————————   委員の異動  十二月十日   辞任      補欠選任    鳥畠徳次郎君  高橋  衛君   —————————————  出席者は左のとおり。    委員長     中山 福藏君    理事            後藤 義隆君            迫水 久常君            稲葉 誠一君            和泉  覚君    委員            大谷 贇雄君            鈴木 万平君            田中 啓一君            坪山 徳弥君            大和 与一君            石田 次男君            山高しげり君            岩間 正男君   国務大臣    法 務 大 臣 賀屋 興宣君   政府委員    警察庁刑事局長 日原 正雄君    法務政務次官  天埜 良吉君    法務省刑事局長 竹内 壽平君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所    事務総長    関根 小郷君    最高裁判所事務    総局総務局長  寺田 治郎君    最高裁判所事務    総局経理局長  岩野  徹君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務大臣官房経    理部長     新谷 正夫君    法務省入国管理    局長      小川清四郎君    法務省入国管理    局次長     富田 正典君    外務省アジア局    中国課長    原 富士男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付予備  審査) ○検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付予備  審査) ○検察及び裁判運営等に関する調査  (昭和三十九年度法務省及び裁判所  関係予算に関する件)  (出入国管理に関する件)  (選挙違反事件に関する件)   —————————————
  2. 中山福藏

    委員長中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。  この際、賀屋法務大臣天埜法務政務次官及び最高裁判所関根事務総長から、それぞれ発言を求められております。順次これを許します。
  3. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 本年の七月、私、法務大臣に就任することになりました。それ以後機会を得ませんで皆さま方にごあいさつを申し上げることもいたしておりませんが、まことに失礼でございますが、お許しを願いたいと思います。また、先日の第三次池田内閣にも引き続きまして留任することになりました。何とぞよろしくお願いをいたします。  打ち明けて申しますと、私は法務関係は全くしろうとでございまして、それゆえに一そう重大な責任を感じまして、大いに努力をいたすつもりでございます。しかしながら、そういうしろうとでございますので、ほんとうに万事行き届かないと思います。何とぞ皆さま方の御高配また御後援をひとえにお願い申し上げたいと存じます。  なお、法務関係としましては、さしむき明年度予算の編成の問題がございまして、法務予算ははなはだ不十分な点が長い間積み重なってきておるのではないかと思っております。これらの点につきましても、まあ何とかできるだけ充実するように希望しておりますが、こういう点につきましてもまた皆さま方の御配慮、御後援を切にお願い申し上げたいと存じます。  どうぞよろしく……。
  4. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、天埜法務政務次官のごあいさつを願います。
  5. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) 法務政務次官に就任しております天埜良吉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  6. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、最高裁判所関根事務総長のごあいさつをお願いいたします。
  7. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者関根小郷君) 本年の七月に最高裁判所事務総長に就任いたしました関根でございます。  裁判所行政の面を通じまして法秩序確立ということに努めて参りたいと存じますが、何ぶんにもふつつかな者でございますので、特に裁判所のことにつきまして御理解をいただいております法務委員会皆さま方の特別の御支援をお願いいたしまして、簡単でございますが、私のごあいさつとさせていただきます。   —————————————
  8. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題とし、それぞれ提案理由説明を聴取いたしたいと存じます。賀屋法務大臣
  9. 賀屋興宣

    国務大臣賀屋興宣君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。  政府は、人事院勧告趣旨にかんがみ、一般政府職員給与改善する必要を認め、今国会に一般職職員給与に関する法律の第一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしましたことは、御承知のとおりであります。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第であります。  改正要点の第一は、裁判官報酬等に関する法律別表及び第十五条に定める裁判官報酬並びに検察官俸給等に関する法律別表及び第九条に定める検察官俸給の各月額増加することとする点でありまして、改正後の裁判官報酬及び検察官俸給の各月額現行のそれに比較しますと、その増加比率は、おおむね一般政府職員についてのこれらに対応する各俸給月額増加比率と同様となっております。  第二は、一般政府職員については、今回一般職職員給与に関する法律別表行政職俸給表(一)の一等級に新たに特号俸を設けることとしておりますので、裁判官及び検察官につきましても、これに準じて、その報酬または俸給の号として裁判官報酬等に関する法律及び検察官俸給等に関する法律の各別表判事特号または検事特号を設けることとする点でありまして、この報酬及び俸給月額は、一般政府職員について設けられます一等級特号俸俸給月額と同一となっております。なお、この判事特号及び検事特号を設けることとすることに伴いまして、従前の例にならい、裁判官報酬等に関する法律第十五条に定める判事報酬月額を、この特号報酬又は俸給月額をこえる額に改めることとしております。  この両法律案の附則におきましては、一般政府職員の場合と同様、この給与の改定を昭和三十八年十月一日から適用すること等、必要な措置を定めております。  以上が裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願いいたします。
  10. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 以上で説明は終わりましたが、右両案に対する質疑は後日に譲りたいと存じます。   —————————————
  11. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査議題といたします。  まず、法務省及び最高裁判所当局より、昭和三十九年度予算概算要求説明を聴取いたしたいと存じます。法務省新谷経理部長の御説明を願います。
  12. 新谷正夫

    説明員新谷正夫君) 法務省経理部長でございます。昭和三十九年度法務省関係歳出予算要求の概要につきまして、ごく簡単に御説明申し上げます。資料を差し上げてございますので、それによって大体御説明申し上げます。  まず、総括的に申し上げますと、来年度法務省所管概算要求額は六百三億五千八百万円となっております。昭和三十八年度予算額四百二十二億三千一百万円に比べますと、一四三%に当たる金額となっております。なお、昭和三十九年度歳入見積総額は五百七十三億三百万円でございます。  法務行政は、治安の維持並びに国民の権利義務に影響することのきわめて大きい仕事を担当いたしておりますが、最近その事務量の激増に伴いまして職員負担の過重と施設の不備を痛感いたしておりまして、こういった点に特別に重点を置きまして来年度予算要求をいたしておるのでございます。  おもな事項について申し上げます前に、ちょっと総括的に御説明申し上げます。先ほど申し上げましたように、事務量がだんだん増加いたしておりますのに伴いまして職員負担がきわめて過重になっておるという現状法務省といたしまして一番関心の強いところでございます。特に法務局、検察庁あるいは入国管理事務所等におきましては、年々事務量増加いたしまして、職員一人当たり負担量も、単純計算に基づきまして検討いたしましても、負担の度合いが年々大きくなっておるような現状でございます。一人当たり職員処理能力にも限度がございますので、こういった点をできるだけ緩和いたしたいということでございます。さらに、それ以外の矯正関係あるいは更生保護関係等におきましても、従来の職員の数が必ずしも十分でございませんでしたので、現在でもなお負担が非常に重いのでございますが、さらに、それに加えましていろいろの施策を遂行いたしますためには、なお新しい人員の増加を必要とするような事態になっているのでございます。そういった点を勘案いたしまして、出先機関それぞれにつきましてかなりの大幅な増員要求をいたしております。本省分を含めまして、合計二千八百三十一名の増員要求でございます。  それからもう一つ、特に法務省といたしまして重点を置いておりますのは営繕費でございます。庁舎が非常に朽廃いたしておりますので、裁判所あるいは地方公共団体から借り上げておる、あるいは民間の建物を借り上げておるもの等もございまして、現状必ずしも満足すべきものではございません。こういった施設改善を年々お願いいたしておるわけでございますが、特に来年度におきましては刑務所の移転問題が特に名古屋、福岡につきまして最終の決裁をいたす段階になっておるのでございます。そのほか、数ヵ所の刑務所の移転問題をかかえておりまして、営繕費につきましては特にそういった面に粗漏のないように私ども事務的には予算を組んだつもりでございます。営繕費は、本年度予算額は二十九億二千九百万円でございますが、来年度要求額は九十一億六千九百万円、かなり大幅の要求になっております。これは、ただいま申し上げましたように、庁舎の新営のほかに、刑務所の移転というふうな大きな問題を処理いたしますためにぜひとも重点的に御配慮をいただきたいと考えておる次第でございます。  以上申し上げましたのが特に重点的に考えておるところでございますが、各組織別に、それらの事項のほかに、あるいは事務能率の増進とか一般執務環境改善のための庁費とか旅費とかあるいは活動費というようなものの充実をはかりますとともに、特殊なものといたしましては、矯正関係におきまする被収容者処遇改善あるいは刑務作業充実あるいは職業補導、さらに保護関係におきましては補導援護費増額人権擁護関係におきましても人権擁護委員実費弁償金あるいは調査経費増額、そういったものを織り込みまして来年度予算要求をいたしておるのであります。  お手元の資料にあります主要事項につきまして、ごく簡単に申し上げます。  まず、第一点は、法秩序確立のために、来年度十九億五千八百万円の要求をいたしております。前年度に比べますと十億八千万円の増額要求となるわけでございまして、その内容は、資料の一ページの下のほうから逐次書いてございますので、逐一これを読み上げることは省略さしていただきますが、項目だけ申し上げますと、暴力事犯公安検察強化充実麻薬事犯対策充実公判審理迅速充実化破壊活動調査機能充実不法出入国者取締体制充実強化刑法改正作業迅速化ということを内容にいたしておるのでございます。  第二点は、非行青少年対策推進強化でございます。これにつきましての来年度要求額は二十六億百万円でございまして、前年度に比べますと十一億六千百万円の増額要求となっております。内容は、青少年検察充実強化少年院の教化活動充実少年鑑別業務充実少年受刑者職業訓練充実青少年犯罪者に対する保護観察機能強化充実少年非行予防対策実証的研究充実並びに職員研修強化でございます。  第三点は、交通事件処理体制整備強化でございます。交通事件は御承知のように逐年非常に増加いたしておりますので、これに対処いたしますための検察体制整備強化をはかろうとするものでございます。来年度要求額は七億九千万円でございまして、本年度に比べまして六億三千万円の増額要求となっております。  第四点は、法務行政充実強化でございまして、来年度要求額は百十七億二百万円でございます。本年度に比べますと四十一億二千九百万円の増額要求になっておりまして、その内容は、登記事務適正化迅速化——これは増員を中心とするものでございます。さらに、矯正施設収容者処遇改善刑務作業充実基本的人権擁護の伸長、正規出入国審査業務迅速化オリンピック東京大会対策整備事務能率化機動化、そのほかに、先ほど申し上げました以外のこまかい増員要求でございます。さらに、組織全般の問題といたしまして、職員待遇改善を各方面からやってみたいと、かように考えておる次第でございます。  第五点は、施設整備充実でございます。先ほど申し上げましたように、特に法務省といたしまして重点を置いておる点でございます。要求総額は九十一億六千九百万円でございまして、前年度に比べますと六十二億四千万円の増額要求でございます。内訳につきましては、施設費不動産購入費各所修繕費換地清算金刑務所施設取得費、このようになっております。なお、注のところにもございますが、法務本省の新館新営工事の継続分をさらに来年度からお願いいたしたいのでございます。これは建設省予算に計上されておるのでございますが、特にこれも重点一つとして私どもお願いいたしておる次第でございます。  資料にこまかく書いてございますので、内容につきまして逐一申し上げるのを省略させていただきますが、何とぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。
  13. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、最高裁の岩野経理局長に御説明願います。
  14. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者岩野徹君) 昭和三十九年度裁判所所管概算要求額につきまして、御説明申し上げます。  昭和三十九年度裁判所所管概算要求額は二百九十五億一千九百八十九万五千円でありまして、これを前年度予算額の二百十一億九千六百三十七万二千円に比較いたしますと、差し引き八十三億二千三百五十二万三千円の増加になっておりまして、この増加率は、約三九形に当たるわけであります。  次に、重要事項を拾い上げまして御説明申し上げます。  まず、交通事件処理円滑化であります。激増いたします交通事件を迅速に処理いたしますため、昭和三十八年度から、特に事件の多い東京外二十四地域において交通切符制を採用いたしておりますが、事件増加はその後も著しく、これを円滑に処理いたしますため、裁判官等増員関係機関との連絡会担当裁判官会同心理テスト器具及び能率器具整備等に要する経費といたしまして、増員は、成人の交通事件処理について、簡易裁判所判事四十三名、裁判所書記官等百六十四名の増員に要する人件費として一億五千七百二十九万二千円を、少年交通事件処理につきまして、判事補十六人、家庭裁判所調査官、百三十一人、裁判所書記官等八十六人の増員に要する人件費としまして一億五千二百十五万八千円、連絡協議会会同等で一千六百八十三万九千円、心理テスト器具等整備として三千七百五十万三千円をそれぞれ要求いたしております。  次に訴訟迅速化でございますが、東京大阪等大都市地方裁判所におきます訴訟迅速化をはかりますため、裁判官等増員いたしまして、審理期間を、現在民事では平均一年、刑事では平均半年を要しておりますが、それを半減して、六ヵ月、三ヵ月で終わらしめる措置を講ずる必要があるわけでございます。また、能率器具裁判資料等整備することによりまして、裁判事務能率化合理化をはかる必要があります。そのために裁判官増員五十四名、書記官の百十二人の増員を要しますその費用として一億五千六百二万七千円、裁判事務処理機械化に要する経費として四億三千八百四十一万四千円、裁判資料(——と申しますのは、図書購入大審院判決録その他の資料印刷費がこれはおもでございますが、——)整備するために必要な経費として二億九千八百四十六万千円をそれぞれ要求いたしております。  それから、次が補助機構整備充実の問題で、裁判所書記官事務量増加に伴いまして、現在裁判所書記官事務を、恒常的に取り扱っております裁判所書記官補定員裁判所書記官定員に組みかえ、裁判官補助機構を合理的に再編成する経費として、裁判所書記官補定員六百九十四人を裁判所書記官定員に組みかえる費用といたしまして三千六百五十万円を要求いたしました。  次に、裁判官待遇改善の問題で、裁判官管理職手当増加要求しておりますが、昭和三十八年度予算では、判事五百九人の管理職手当が計上されておりますが、昭和三十九年度予算におきましては、地家裁所長長官代行等八十七人二五%、高等裁判所総括裁判官地家裁所長代行等百七十五人一八%、地家裁総括裁判官等に二百九十人一二%に改めるために要する経費として二千六百六十二万八千円を要求いたしました。  しかし、ただいま御審議願っております裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案が原案どおり成立いたしますと、同法第十五条に定める報酬月額報酬及び特号報酬を受ける判事は、管理職手当支給対象外となりますので、昭和三十九年度予算要求地家裁所長代行等百三十六人一八%、地家裁総括裁判官等二百五人一二%の二千六百二十万九千円となるわけでございます。  次に、最高裁判所裁判官退職手当要求いたしております。  最高裁判所裁判官退職に際しまして、その地位にふさわしい生活を保障し、かつ、その功績に報いたため、既定の退職手当のほかに勤続期間一年につき報酬月額の六八〇%に相当する額の退職手当を支給するのに必要な経費として一億四千五百七万一千円を要求いたしました。  次が、家事少年事件処理適正化でございますが、家事調停事件の適正迅速な処理に要する家庭裁判所調査官七十七人の増員に要する人件費として五千百五十二万一千円を要求いたしました。  次は、少年非行対策関係でございますが、少年事件の適正円滑な処理をはかるため、適宜高等学校等連絡会を開催するとともに、非行集団化対策として特殊調査カード整備し、また、少年補導委託費増額により試験観察制度充実をはかる等に要する経費として四千八百三十三万円を要求いたしております。  次に、刑事補償金増額で、刑事補償金昭和二十五年刑事補償法が制定されて以来据え置かれておりますので、その後の物価の変動、賃金の向上等の事情に照らしまして増額する必要がありますので、現在は一日二百円から四百円となっておりますのを五百円から千円に改訂する考えでございまして、それで五百八十四万一千円を要求いたしております。  次が、国選弁護人調停委員執行吏等待遇改善でございます。  国選弁護人報酬増額として、国選弁護人報酬現行基準地裁一件六千二百円でありますが、これを二〇%増額して地裁一件七千五百円とするに要する経費としまして四千二百十四万三千円を要求いたしました。  次に、調停委員司法委員参与員鑑定委員及び検察審査員等の日当を、現行七百円から千円に増額するに要する経費としまして一億九千二百八十四万一千円を要求いたしました。  次に、執行吏補助金増額といたしまして、現行執行吏国庫補助基準額十七万四千円は、執行吏の公務員としての地位職務重要性困難性等から見て、最低収入の保障としてはあまりにも低廉でありますので、これを三十三万一千円(——七等級十一号相当——)に引き上げる経費といたしまして八百二十三万九千円を要求いたしております。  次が研修所の指導の充実強化でございまして、司法修習生の五十名の増員要求いたしております。それで、判事検事及び弁護士の給源であります司法修習生採用者を五百人にしますため、司法修習生五十人の増といたしまして二千百七十四万五千円でございます。  次が、裁判所書記官あるいは家庭裁判所調査官等研修の拡充をいたしたいわけでございまして、裁判所書記官家庭裁判所調査官等研修充実強化いたしましてその資質能力向上をはかるために必要な経費としまして一千八百五十六万八千円を要求いたしております。  次に、人事管理体制確立の問題でございますが、最近における事務量増加及び人事行政事務複雑困難化等諸般の状況に対応しまして、事務能率化をはかるため、能率担当官を新設いたしますとともに、協議会講習会等を通じて人事管理体制強化するに必要な経費として二千六百六十万七千円を要求いたしております。  十といたしまして職場環境整備であります。まず、執務環境改善事務能率向上をはかるために、事務用器具整備するに必要な経費として一億九千六百八十八万四千円、庁舎の新改築による坪数及び施設等増加と相まって庁舎管理要員充実し、庁舎維持管理に万全を期するため、庁舎管理要員三百二十六人増員に要する人件費として一億七千三百六十六万六千円を要求いたしました。  次は、営繕費でございますが、まず、最高裁判所庁舎新営でございます。最高裁判所庁舎は終戦直後旧大審院建物を改修いたしたもので、最高裁判所正式庁舎としてはその規模、体裁がふさわしくないため、この新営は多年の懸案であったわけでございます。そこでこの新営にあたって、日本法衙代表たるにふさわしい庁舎にいたしますため、新営計画立案及び敷地を買収するに必要な経費として、外国旅費二百二十一万三千円、委員会に必要な経費五十六万九千円、敷地等整備費九百十六万二千円、敷地買収費四億八千九百三十三万六千円を要求し、下級裁判所庁舎の新営費といたしましては、全国下級裁判所庁舎の総坪数は二十五万五千坪でございますが、このうち、建築後四十年経過いたしました老朽木造庁舎五万二千坪、戦災後のバラック庁舎八千坪、臨時借上庁舎三千坪等を新改築するために必要な経費としまして、庁舎営費等四十三億二千三百二十四万三千円、敷地買収費等二億七千五百二十万二千円を要求し、裁判官宿舎等整備としましては、裁判官及び裁判官以外の職員宿舎を増設しまして人事交流円滑化をはかるため宿舎営費として五億九千六十万円をそれぞれ要求いたしたわけでございます。  以上が昭和三十九年度裁判所所管概算要求額の大要でございます。何とぞ十分御審議下さいまして、裁判所予算の獲得に御支援を賜わらんことをお願い申し上げます。
  15. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 本件に関してはこの程度にいたします。   —————————————
  16. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 次に、出入国管理に関する件につきまして御質疑を願いたいと存じます。  この際、皆さま方に申し上げておきますが、政府側からは、法務省天埜政務次官竹内刑事局長小川入国管理局長冨田入国管理局次長が御出席になっております。外務省からは原中国課長がお見えになっております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今いろいろ問題になっております周鴻慶という人の事件といいますか、出入国管理の問題、ことに帰国の問題ですが、こういうふうなことに関連をして、要点だけ簡潔に聞きたいと思います。  この人が日本に参りまして、それから何か法務省入管のほうで強制退去の処分ですか、したわけですが、それまでのひとつ経過の大要をちょっとお話し願いたいと思います。
  18. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) それでは、私から御説明をさしていただきます。  本件は、きわめて特異な事案でございまして、入国管理局といたしましても、いままでかつてなかったような事件でございます。ある程度新聞その他で発表されておりまするので、私は、入管のほうで身柄を引き受けましてから後の事情につきまして、なるべく簡略に申し上げたいと存じます。  この中国人周鴻慶は、去る本年の九月から一ヵ月間中国の油圧機器、オイル・コンプレッサーでございますが、訪日代表団の一人といたしまして入国してまいりまして、三十日間の在留資格を持って入ってきたわけでございます。代表団における地位は、代表団の通訳ということになっております。  それで、一行八名は一応在留期間三十日の期限がきまして、無事に本邦から出国したわけでございますが、当該本人だけは、十月六日の滞在期間をこえまして、その翌日にソ連の大使館に逃げたわけでございます。その後、警察のほうで身柄を引き取りましたのでございますが、これは入国管理令違反容疑ということで警察に身柄が渡されまして、そうして東京地検におきまして結局微罪ということで起訴猶予に相なりましたわけでございます。  われわれのほうへは、十月九日に収容令書を執行いたしまして東京入国管理事務所に調査取調のために収容いたしました次第でございます。本人が東京入国管理事務所に収容されましてから、取り調べが行なわれたのでございますが、先ほど申し上げましたように、きわめて特異な事件でございますので、慎重に取り扱うようにという注意は一応いたしておきました。もちろん入管令上、御承知のように、東京入管の所長が、これは主任審査官になっておりますが、独立の官庁として権限を行なうものでございますので、取り調べ一切につきましては、東京入管事務所において執行されてまいったわけでございます。  調査は、入管令に従いまして、違反調査、違反審査、そうして最後に口頭審理という手続に従って行ないましたわけでございます、ところが、彼がホテルを出てソ連の大使館に入りました事情につきましてもいろいろございますようですが、非常に異常な精神状態で出ておりますので、われわれのところで東京入管で違反調査、違反審査等の段階におきましても、きわめてむずかしい取り調べになったわけでございます。と申しますのは、当人の意向が、それぞれの段階におきまして相当変わってきております。もちろん当人の異常な状況で残留したという事情に基づくものとは思いますが、はなはだしく矛盾したいろいろな供述を行なっている次第でございます。ただ、この供述につきましては、当人のやはり将来の問題にも影響いたしますので、ここではなるべく申し上げるのを差し控えたいと存ずる次第でございますので、平板的に調査審査、口頭審理の段階につきまして簡単に御説明いたしたいと存じます。  まず、十月十日、十一日にわたりまして違反調査が行なわれたわけでございます。この段階におきましては、もちろん中共へ帰る意思がない、日本に在留したいというふうな、もしそうでなければ他の第三国に行きたいというふうな供述をいたしております。ところが、違反審査の段階に相なりますと、またかなり異なった供述が行なわれているのでございます。十月十四日、十五日の二回の違反審査におきましては、本人は、日本には左右両派の華僑がおって非常に活動が制約されるので、台湾に行きたいと、こう言っております。ところが、翌日の第二回目の違反審査におきましては、前回日本が在留を認めないと思ったので台湾に行くと申しましたけれども、もし日本政府において受け入れてくれるならば、ぜひ日本におりたいというふうなことを言っております。そこで、次の口頭審理の段階に入ります前に、前日及び前々日の違反審査の結果、不法残留と認定する、それに対して口頭審理の段階にいくかどうかということを確かめましたところ、さらに口頭審理を願いたいということで、次の口頭審理の段階に入ったわけでございます。口頭審理の段階に至りますまで、すなわち、調査審査の段階におきましては、本人の冷静な心理状態を保つという意味におきまして面会は一切許可していなかったわけでございます。  そこで、十月の十六日に口頭審理の期日の指定書を交付いたしましたわけでございます。入管令によりましてその際は代理人を選任することができるということを説明をしておきました。そこで、本人の選択によりまして国府の代理人というものと、それからこの中共の代表団を招聘します際の保証人となっておりました日本油圧工業会と日中貿促会というものの代表として小田弁護人にも面会したいというようなことで、口頭審理に入る前に、代理人の選定のために順次面会をいたされましたのでございますが、その際、最初に本人の希望によりまして国府側の人が会いましたときに、本人は台湾に行きたいという意思表示をしたわけでございます。そうして、台湾への渡航手続の依頼、それから藤井弁護人への委任状というものを一応書いておる次第でございます。ところが、その次に、先ほど申し上げました小田弁護人が面会いたしましたときには、小田弁護人が質問したのに対して、周本人はできれば日本にいたい、もしそれがだめならば台湾に行きたいというようなことを申しております。そこで、国府側の代理人とそれから今申しました小田代理人との間にその趣旨がやや相違しておりますので、さらに三人——周本人と藤井、小田両代理人とを会わせまして、はっきりした意思確認と申しますか、本人の希望を確めております。その結果、藤井代理人のほうは、それでは、本人が台湾に行く希望がないということならば、日本に滞在を嘆願する場合の代理人の一人として協力するというふうな形になりました。  結局、口頭審理の期日を延ばしまして、十月十八日に口頭審理を行なったわけでございます。十八日とそれから二十一日、いずれも十月でございますが、それから二十三日と三回にわたりまして口頭審理を行なったわけでございます。その際、結局最終的には台湾には帰りたくない、ぜひ日本に滞留したいという希望を表明いたしまして、結局日本在留のための手続をお願いしたいという結果になった次第でございます。もちろん、この際、口頭審理の判定が出まして、そうしてそれに対しましては異議の申し出を提出することに相なりますので、本人も異議の申出書を提出することにお願いしたいというふうにはっきり申したわけでございます。そこで、一応口頭審理の判定の結果に日本在留のための特在を嘆願する意味におきまして異議申出書が出る手順になっておりましたところ、翌十月二十四日に至りまして、周本人が百八十度と申しますか非常に意見が変わりまして、結局、自分は中共に帰りたい、それでお願いしようと思っておった異議申し出は放棄するということを申しました。小田弁護士もいささか驚いておったようでございますが、そこで、周は、御承知のように、中共に帰るという新聞発表を小田弁護人に依頼しておりました。二十五日の朝刊で各紙に発表されたわけでございます。われわれ東京入管の立場といたしましては、急に意思の変更がございましたので、すぐに退去強制令書を出さないで、本人の十分な気持をよく確かめるという意味で、念を押した上で二日後の十月二十六日に退去強制令書を発付いたしたわけでございます。この点で、いままで本人の意思が転々しておるのにもかかわらず、何ゆえに退去強制令書を早急に出したかというふうな意見もございましたが、これは、入管令の手続といたしまして本人が異議の申し出をしないということに相なりますとすみやかに退去強制令書というものが出るように入管令上相なっておりますので、二日間の考慮期間をおきまして出したわけでございます。  その後のいきさつにつきましては、いろいろ変転がございましたけれども、本人としては退去強制令書も出たことであるし、自分の意向も中国本土に帰りたいということを主張いたしまして、すみやかに出国をさしてくれるようにということでわれわれのほうにいろいろ連絡があったわけでございます。しかしながら、退去強制令書が出まして、令書には、一応強制退去させる送還先を、法律の条文に従いまして、中華人民共和国というふうに書き入れをしてございますが、しかしながら、本人が退去強制令書に書かれた送還先に帰る、送るということにつきましては、従来のいろいろな慣例もございまして、中国本土とは国交もございませんし、いろいろ途中の経路などにつきましても問題がございますし、自費出国という形で国交のない国に対しては取り扱いをいたしておるわけでございます。そこで、この自費出国を許可するかどうかということにつきましては、条文で、直ちに送還できないときは、一応送還ができるまで収容するという建前にもなっておりますし、この点につきましては、ある程度主任審査官の裁量と申しますか、自費出国の時期とか方法等につきましては、ある程度の自由裁量権を持っておるわけでございます。  とにかく本人の入管における段階につきましては以上のとおりでございまして、その後本人はすみやかに自費出国をしたいという意味で非常な熱望をいたしました結果、早急に自費出国の許可が下りないことに対して断食を十一月の一日から始めたわけでございます。これにつきましては、入管当局といたしましても、せっかく公正な……
  19. 中山福藏

    委員長中山福藏君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  20. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 速記をつけて。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その十月二十六日までの経過は今の説明でわかったわけです。そうすると、それが今日まで中国に帰れないというか、出国できないというふうになっておるわけですが、その間の事情はどういうふうなのか。これは簡潔でけっこうですが、その点御説明を願いたいと思います。
  22. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) 二十六日に退去強制令書が出ました後のことにつきましてお尋ねがございましたのでお答えをいたしたいと存じますが、先ほど御説明を申し上げましたように、本人の自費出国の意向というものにつきましては、一応中国本土と申しますか、中共という言葉を使わせていただきたいと存じますが、中共に帰りたいという意思表示をいたしておるわけでございます。ところが、この中共に帰りたいという希望につきましては、関係国の間におきましても、最初国府のほうへ帰りたいというふうに言っておりました段階、時期もございますし、どうも本人の気持が必ずしもはっきりしていないのではないかというふうな内外の批評もありまして、入管の手続上といたしましては、ただいま申し上げましたように、きわめて公正に入管令にのっとりまして処置をいたしておりますけれども、これを外部的に見ました場合には、必ずしも納得がいかないというふうな印象を与えておるかと存ずるのでございます。したがいまして、入管といたしましては、手続上の問題は別といたしまして、そういった必ずしも入管の手続が公正に行なわれたという印象がないとすれば、その問適当な期間を置きまして、適当な方法でその意思をさらにはっきりさせるといういわゆる冷却期間を置きたいというふうな気持もございまして、しばらく本人の気持のおさまるまで待ちまして、そうして適当な方法で本人の意向を最終的に確定するのが入管令としても妥当な考え方であろうと存じまして、いままでそういうふうに扱ってまいった次第でございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、本人の最終的な意思というのは、法務省当局としては一応確認をしている。だけれども、外務省なら外務省がそれでは云々というようなことになってきて、まあ冷却期間を置こうというようなことになったのですか。
  24. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) これにつきましては、一応国府側からも、いかなる理由でそういうふうな本人の意向が決定したと認められるのであるか、われわれの国府側と接触した当時においては必ずしもそういうふうに聞いていないというふうな意味合いにおきまして一応照会の手紙も参っておりまするし、われわれといたしましても、問題がもしも国際的に発展するという可能性がございますると、入管当局といたしましても結局公正な扱いをしたということがいわゆる一般に認識されないかもしれない。それはすなわち入管令の処置においてもやはり遺憾の点があるかもしれないといったふうな意味合いからも、これを冷却期間を置きました次第でございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ新聞等で見ると、外務省で、外務大臣なり次官なりアジア局長ですか、これらの人が集まってこの問題で再三協議をしておることが報道されているわけですね。いま外務省では、きょうは外務大臣もアジア局長予算委員会のほうへ行っているので来られておられないんですが、中国課長ですか、来ておるので、中国課長として、これはもちろん外務大臣なりアジア局長なりといろいろ相談をして来られていると思うんですが、外務省としては、今の段階ではどういう態度をとっておるんですか。
  26. 原富士男

    説明員(原富士男君) 外務省の態度でございますけれども、これはただいま小川入管局長が申されたことを大体確認するようなことでございますが、従来、本人の意思尊重ということについては、もちろんその点一貫してとってきているわけでございます。ただ、いま御指摘のように、新聞その他で出ているわけでございますけれども、これも入管局長の御説明になられましたとおり、本人の意思が非常に転々とした。そして、いわば世間内外、特に外国は日本と法制が違い、亡命などに関しましてそれ自身の単独法なり条約なりに加盟しているというようなこと、そういうふうな点に対して誤解を与えたという点は免れないわけでございまして、日本政府としてはやはりそういう点ははっきり晴らさなければいけない。特に、これはすでにやはり新聞などで御承知なんでございますけれども、中華民国から強い抗議が来ているわけでございます。本人が亡命して出て来たのに、そして中華民国へ一たんは来るという意思を表示したのに、何というか、大陸へ日本政府が送り帰すことは非人道的だという抗議が来ているわけであります。これにつきましては、やはり今ずっと誤解を解く努力−誤解と申しますか、理解してもらう。まあ誤解を与える点は、日本政府の立場にはなくて、本人のほうに確かにあったことは事実でございますので、この点ひとつぜひ理解してもらいたい、こういう努力をしている。そういう点で絶えずいかにして理解してもらえるか、で、そうした上で何というか相互に気持よくこの問題を解決したい。相互にと申しますか、また必ずしも中華民国のみならず、全世界に対してこの問題をきれいに処理したいのだということを示したそういう気持だと私は大臣そのほか上の方々の意向をそんたくいたしておるのであります。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現在の段階では、周氏が出国をして中国へ——中国というのは中華人民共和国へ帰るというか、帰れるという見通しというか、それはどういうふうになっているわけですか。
  28. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) ただいま外務省側からも御答弁がございました次第でございますが、私ども入管当局といたしましては、いついつまでに決定するというふうな時期の問題につきましては、なるべくすみやかにというふうに考えておる次第でございまして、これはなるべくいわゆる外交的な問題にならないように、そうして入管令上の措置として十分内外ともに納得のいける方法、処置を講じました上でなるべくすみやかにというふうに考えておるのでございます。何ぶんにも、本人の心境も、先ほど来申し上げましたように、異常な環境で異常な精神状態と見るべき節もなきにしもあらずというふうにも感ぜられますので、この本人の状態がだんだんと鎮静してきておりますので、やはり最終的には、内外の世論に対しまして、先ほど外務省から申し上げました疑念と申しますか、そういったものが解消されるという保証がつきました暁におきましては、当人のほんとうの意向を尊重して、その希望するところへ送るというふうにいたしたいと、こういうふうに考えております。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、最後の質問といいますか、要望になるわけですけれども、これは本人の意思というのは、私どもが今の経過を聞いた範囲では、それはある一時期においての変転というのはあったといたしましても、少なくとも十月二十六日以降、あるいは十一月以降、あるいは近来といいますか、そういうようなところでの意思は確定していると、こういうふうに見るのが私はこれは常識的ではないかと、こう思うわけです。中華人民共和国の人ですし、その人が自分の国へ帰りたいと言っておる。しかも日本政府でもこれを認めておるわけですから、これは一刻も早く出国を許可して、そして本人の希望するところへ帰れるようにする、これは私は一つの大きな人権の尊重という立場からいっても当然のことだろうと、こういうふうに考えますので、すみやかにこの問題を解決をして、あまりに各方面にというか日本政府が気がねをし過ぎているのではないかという印象を強く持つんですが、そういう問題よりももっと前に本人自身の人権の問題としても私は当然早く帰れるようにすべきだと、こういうふうに考えておりますので、一刻も早くそういうふうになることを私は要望をいたします。  私のこの問題に対する質問はこれで終わります。
  30. 岩間正男

    ○岩間正男君 私も二、三質問したいのでありますが、今入管局長の答弁によりますと、本人の意思が鎮静してきてはっきりしている、あくまで本人の意思を尊重して中国へ帰す、こういう希望については言明されたようでありますが、一体、いままでの経緯から考えますと、この見通しはどういうことになるんですか。すでに強制退去命令が出されてからもう一ヵ月以上たっているわけですね。そして仮放免を二回やり直したわけなんですね。こういう例が今までありますか。私はあまり聞かないんですが、これはお聞きします。  そうしますと、このケースについていろいろあなたの内外の事情という言葉で表現されたそういう事情があることも聞いているわけですけれども、しかし、法治国の法を守る最も本拠である法務省の立場として、あなたたちがすでに決定されたこの意思そのものを急速に履行するというそういう立場をとらなければ、これは法治国としての体面が守れないのじゃないか。法務省の権威から見ても私はこのことは重大問題だと思う。実はこの前の七日に法務省に参りまして、法務省のあそこの建物に大きなかっこうで「人権週間」というたれ幕が下がっている。この人権週間というあの週間の中でこういう問題が長引いている。そうしてどうも不明朗な形を残している。国内で非常に不明朗なだけでなくて、国際的にも、日本の法治国としての法的権威はいずこにあるか、こういう点で非常に大きな問題になっていると思う。これは法務次官にもお聞きしたいんですが、政治的な判断においても、長引けば長引くほど日本の権威を失墜するのだ、こういうふうに考えるんですが、これはどういうふうに考えておられるのですか、この点お聞きします。
  31. 富田正典

    説明員(富田正典君) ただいま岩間委員から御指摘のございましたとおり、法務省といたしましては、本件は当初から周氏自身の意思を尊重して公正に解決するという方針をとっておりますし、現在もその方針を堅持しておるわけでございます。ただ、今入管局長並びに外務省のほうから御説明がございましたように、周氏自身の心境が、何人が見ても安定したと認められる状態に立ち至りまして、その状態において周氏自身が自分が招いた彼自身の心境に関する内外の疑問というものを解消させるに至りますならば、その時期はおのずから来るのではないか。結局その辺に本件の解決のポイント歩きておるわけでございまして、政府としても一刻も早くそういう時期が参りまして、事件がすみやかに公正に解決されることを期待しているわけでございます。
  32. 岩間正男

    ○岩間正男君 法務次官からも。
  33. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) この問題は非常に特異な例でございまして、先ほどからも説明を申しておりますように、非常に本人の話が変わって参りまして、そういう点で、自動的に送り返すということにはなっておりますものの、その辺の関係がまだ十分信頼できるような程度にもならないというような点もございますし、まあそういうような点を十分見きわめるまでこれは処置をするようにしていかなきゃならぬというふうに考えております。
  34. 岩間正男

    ○岩間正男君 法務省の答弁としては頼りないと思うんですね。やっぱり法を守る一番大もとの法務省としての政治的責任を負うのでありますから、きょうは大臣来ないのでありますが、これは池田総理にも聞かなくちゃならない問題でありますけれども、この点であなたたちはすでに意思を決定している政府の意思を。強制退去というのは、少なくとも本人の意思を確かめることなしに、そうして本人の意思が変わらないという判定なしに強制退去命令を出すはずはない。十月二十六日付であなたたちはこういう確認をされて、その上に立ってこれは出されたものでしょう。この確認をせられて出すということは、これはどういうことです、あなたたちの事務処理は。いまごろそんなことを言っている。本人の意思がぐらぐら動いているから見きわめなければならぬ。決定をしておいてから見きわめなければならぬと。法律というものはそういうものじゃないでしょう。決定する前に手続がちゃんときめられていて、そういう手続であなたたちはさっき入管局長説明のように判定をせられた。そうして、この意思は変わりはない。この前提の上に立って退去強制令書というものは出されたものだというふうに判断する以外にはない。そうでなければ、これは法的な裁決などというものはおかしいことになります。そうしますと、いまごろそういうことを言っているということは、私は非常におかしい。とにかくあなたたちはほんとうにあくまで法を守るという立場に立っていなくちゃならないと思うんです。そうすると、いまのようなことで一日でもじんぜん日を送っているということは、これは許されないことだと私は思う。むしろほかの理由があるのでしょう。これはあらためてお聞きします。ほかの理由によって、他からのいわゆる干渉、あるいはこれに対するいろいろな圧力、こういうものによって、第二義的なそういう理由によってあなたたちはじんぜんと日を送っているというのが真相じゃないですか。そうでないと、退去強制令書との関係というものは——説明して下さい。どうも法的にわからない、そういうことを言われたんでは。なぜ意思を決定したのか、どうですか。  その点と、もう一つお聞きをしたいのは、二十六日にはっきり決定をした。決定してから周氏の意見というのは一度でも変わりましたか。その後すでに、きょうでもう五十日近くになりますね。六週間以上経過しております。その間に変わった事実はございますか。そういう点についてまずお聞きしたい。
  35. 富田正典

    説明員(富田正典君) ただいまの御質問に関連いたしまして、一応入管会の手続構造を御説明申し上げておきたいと思います。  入管会は、御承知のように、裁判のように審級的な構造になっておりまして、本人の意思に基づいて進行してまいるわけであります。違反調査から違反審査に移ります。違反審査で、たとえば不法残留であるという認定が下りまして、本人がそれにその段階で服しますと、そこでやはり退去強制令書が出される。しかし、さらに口頭審理を仰いで、口頭審理でもう一度よく調べて在留をお願いをしたいということになりますと、口頭審理に移ってまいるわけでございます。口頭審理でもやはり審査の……
  36. 岩間正男

    ○岩間正男君 さっきの説明と違う。口頭審理をやってから決定している。
  37. 富田正典

    説明員(富田正典君) さようでございます。口頭審理に入りまして、口頭審理で今度はさらにもう一度不法残留に間違いないという判定が下ります。そうして、その判定に本人が服しますと、服して異議の申し立てを放棄いたしますと、そこで事件が自動的に確定いたしまして、退去強制令書が出されるわけでございます。各審級について本人の意思が動いてまいっておるわけでございまして、本件は、口頭審理が終結した段階で本人が異議の申し立てを放棄したわけでございます。そこで、自動的に退去強制令書が出された。  ところが、一般の例におきましても、その段階で異議の申し立てを放棄した者が、将来あのときはこういう事情を知らなかったんだ、だからもう一ぺん異議の申し立てを回復させてもらいたいというようなことがございますと、その異議の事情によりましては、異議の申し立ての回復を認めて、さらに大臣の特別在留を許すかどうかという手続にまで上げることがございます。また、その際に、退去強制令書で送還先が自動的にきまるわけでございますけれども、本人の国籍の所属する国、あるいは市民権の属する国ということが入管令上退去強制先になりますので、それが退去強制令書に記載はされますが、そのあとの段階において本人が自主出国したいという場合に、退去強制令書に書いた以外の国に行こうという場合に、国としては国外に退去さえすればいいのでございますから、それを認める場合もございます。そういうわけで、口頭審理終結の段階で本人が異議申し立てを放棄したということは、これはその当時の自発的意思によるものとわれわれは確信しております。しかし、一般的に申し上げますると、それがその後の段階において変わるという事例も従来はあるわけでございます。  そこで、周自身が十月二十六日以降現在までそのとききめた中国本土に帰りたいという希望が変わっておるかおらないかという御質問でございますが、この点については変わっておりません。ただ、それまでの経過が非常に変転いたしました関係上、そしてこれが一種の亡命的な性格を帯びてスタートした事件でございますので、こういう入管令の手続を説明申し上げますと皆さん御理解いただけるのでございますけれども、こういう点をよく認識しておりませんと、亡命を申し出した者をなぜ退去強制令書を発行してそのもとの国に送り帰すのかというような点でも強い非難がございますし、その誤解がひいてはいろんな国の利害にマイナスになってはね返ってくるというようなこともございます。そういう点も考慮いたしまして、確かにもう一ヵ月以上も経過しておりますが、なおやはり周の心境が安定したかどうかという点に関する疑問が内外にわたって完全に解消しておらないのではないか。そうしますれば、やはり周自身がみずからまいた種をみずから刈り取りまして、結局自分の最終的意思はこうであるということをはっきりして、その段階において周自身の最終的意志を尊重して事件の公正な解決をはかる、その時期がすみやかに来たることをわれわれも期待しておるわけでございます。
  38. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、皆さんも、発表されたことや記者団の談話をお読みになったでしょう。先ほど異常なというふうなお話がありましたが、これは異常な状態ですよ。これはあとで質問しますけれども、これは全くいろいろな背後からの工作や圧迫やこれに対する干渉が行なわれて、そういう中で意思の変更があったかもしれません。しかし、それがはっきり決定されて、その上に立って法的措置をとられたわけですね。それからきょうで四十六日になりますよ。先ほど声明されたように、話がありましたけれども、これは意思の変更は少しもないんです。全然それだから一回も変わっておりません。そうしたら、その意思を尊重して一日も早くその手続をとるように努力をするというのが日本政府の当然の責任だと思うのです。こういう点がどうもじんぜんとしていつになるかわからない、そういう形で、しかも一ヵ月の期間が切れて、この前七日ですか、仮放免の手続をまた二度もとられた。こういう例はございますか。今度の第二回目の仮放免の手続というのは、だれか申請者があってやったんですか、それとも、あなたたちの強制職権による発動ですか。そしてこういう事例というものはいままでございますか。その点をお聞きしたい。
  39. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) ただいま岩間委員からいろいろなお言葉がございましたのでございますが、一応退去強制令書が発付された以後本人の意思はすでに確定しておるはずである、何ゆえにじんぜん日を過ごしておるかというふうな御質問がまずございましたのでございますが、この点につきましては、やはり退去強制令書そのものの入管令上の性格、次長からただいま詳細な御説明がございましたのですが、やはり先ほど私自身から申し上げましたように、国交のない国へ送るという場合には、やはり強制送還を執行するためには、またいろいろな問題がございます。そういう場合には、先ほど来申しましたように、自主出国の形をとるわけでありますが、そういう場合にも、やはり本人の自由意思に基づいて自主出国をしたいというふうな希望がこれは確かにずっと引き続きございますけれども、そういう点につきましては、やはり入管令そのものが本質的に行政処分でもございますし、行政的ないわゆる政治的な配慮というものがある場合には必要になってくるわけでございまして私どもといたしましても、できるだけ早く本件を処理するのが妥当であるとは存じておりますけれども先ほど来申し上げましたようないろいろな内外の事情というものもやはり国家全体の利益というところから考えますると、本人の個人の人道的な配慮ということももちろんでございますけれども、やはりある場合には、特にこういった異常な事件の場合にはある程度のそういった高度の配慮というものも必要になってくるわけでございます。  そこで第二点の仮放免の件でございますが、これは第二回目に継続をいたします際に、本人はできるだけすみやかに自分の希望するところへ行きたいという意思表示もございまして、仮放免の継続につきましてはやや逡巡する面もございましたけれども、その後現在の日赤本社でやはり預かってやろうという気持が引き続き起こって参りましたので、一応その手続が間に合わない場合、すなわち、本人の意思に基づく仮放免延長という手続が間に合わない場合もあり得ると存じましたので、とりあえず職権でまる一日余り延ばしまして、そうして申請に基づく仮放免に切りかえたわけでございます。
  40. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは何ですか、いまのような職権で延長をしたという例はいままでございますか。
  41. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) 事件そのものがいまだ私どもが扱ったことのないような性格を帯びた事件でございまして、従来職権で延長したことはございませんが、法律の解釈上これはできるということでございまして、延長いたしましたわけでございます。
  42. 岩間正男

    ○岩間正男君 その根拠をちょっと解釈して下さい、法的根拠を。
  43. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) 入管令の施行規則によりますと、仮放免の延長の場合には、一定の様式があるわけでございます。最初、代理人からの願い出によりまして一応仮放免を許可いたしましたのでございますが、許可書のほうには条件その他が書いてございます。それで、結局、条文の解釈といたしましては、仮放免期間をきめます場合には、もちろん本人もしくは代理人の要望、希望を十分しんしゃくしてきめるわけでございますが、これは職権で期間をきめることができるようになっておるわけでございます。
  44. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはどこですか、その条文を明示して下さい。
  45. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) 仮放免の規定は五十四条にございますが、それには法務省令で手続をきめることになっておりまして、そうして施行規則の四十二条によりまして様式を定め、その様式に条件をつけることになっておる次第でございます。
  46. 岩間正男

    ○岩間正男君 私が聞いておるのは、再延長の場合には、何か法的根拠がございますか。第何条に職権できるという、そこのところをお聞きしておるんです。
  47. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 法律解釈の点になりましたので、私もひとつ意見を言わしていただきたいと思います。仮放免の期間の更新につきましては、出入国管理令上、明文はないわけでございます。そこで、明文がないということは、最初仮放免の願書が出て、それに対して仮放免という手続がとられるので、継続をする必要がある場合には、重ねて願いがあった場合だけに許されるのであるが、職権でもできるかという疑問があるわけでございます。しかしながら、ただいま入管局長も御指摘になりました規則のほうの願書の場合の書式をよく読んで見ますると、願書には期間については希望は述べても国がきめるという建前をとっております。ということは、本人の、願いをする人の仮放免の期間ということは、そのまま承認されるという意味ではなくして、国の立場からどの程度の期間を必要とするかということは判断してきめるべき事項だという意味になるわけでございます。したがって、ある期間を区切って許可を与えました場合に、さらにその仮放免を継続すべき事由があるというふうに国で判断しました場合には、その期間の部分だけにつきましては、本人の願いのあるといなとにかかわらず、国の立場から判断して期間を延長することができる、こう解釈するのが入管令上正しい解釈であろうというふうに私どもも考えておる次第でございます。
  48. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ刑事局長の解釈ですが、相当苦しいんじゃないですか。まあ明文はない、そうして、最初に意思を政府がちゃんと決定して、本人にも通告しておるわけだ。期間は十二月の六日、行く先は中華人民共和国もうちゃんと本人はそのつもりでいるわけですよ。それを今度は——そうすると、政府の判断は非常に不十分だと思う。そうして、その結果を今度は本人の人権に及ぼすということは、これは法解釈が妥当だということは少し曲解じゃないか。明文もないじゃないですか。これは適用上でも私は法文の解釈はもっと厳重にやってほしいんです。いまのはまあ一応お聞きしたことにしておきますけれども、これは非常に問題が残りますよ。いまのような解釈が、この法務委員会で私が質問して刑事局長がそれに答弁されて、それで今度は慣行にされたということになればたいへんなことですから、私は承認できません。そういうやり方は苦しいから、前例もないことですから、これは慎重に検討しなければ、法務委員会の権威の問題じゃないかと思う。私はむしろ聞かないことにしておいたほうがいいんじゃないか。私どもが法務省にお伺いしたときには、それだけじゃない、この問題は空白の事態だった。あなたは何か日赤に行って、だれもあすこにいないんです。で、法務事務次官に会って、そうしてその点を確かめたのだが、まあ大体仮放免の延長をするという意思は決定しておるが、公表されていない。それで日赤との話し合いでやったというようなことにまあこれはなったのでありますけれども、その空白というものは、こういうことを軽々しく私はやっていけないのじゃないかというふうに思います。  今度は何日延長いたしましたか。
  49. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) 第一回は、御承知のように一ヵ月でございます。第二回目は、先般、一応二週間、二十日までということにいたしております。  それから先ほど来職権延長の問題につきまして、いろいろ法律的に御疑念がおありになることを申し述べられた次第でありますが、これは本人自体の意思を無視して行なったわけではないのでございまして、本人もやはり身柄の安全という意味からいたしまして、日赤病院を本人も非常に希望いたしましたという事実がございますので、つけ加えさせていただきます。
  50. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは本人はそういうじんぜん日を送ってというか、何かわからないから、そういう自分の希望でなくても、第二次、第三次の処置としてやったので、第一の意思は一日も早く帰りたい、こういう意思をしばしば表明されている。これは手記を見ても何を見ても明らかにされておるのですから、その意思を尊重しているということにはならないと思うんです。第二回の延長は二十日までですが、これは三回、四回やるんですか、どうなんですか。どうも権威失墜だと思うんですがね、こういうことをやっておっては。どうなんですか。
  51. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) 私どもが考えておりますのは、先ほど来われわれが御説明申し上げましたように、本人のはっきりした意向が内外ともに公平に認められる時期までということで鋭意努力をいたしておりまして、特に関係国も非常な疑念を最初から持っておられますので、これらの向きに対しましては、入管といたしましてはつとにいろいろ説明はしておりますし、本人もそういう意味合いで新聞なぞにいろいろ発表しておりますけれども、これは、もし本人がはっきりした意向を持っておるとすれば、やはりその疑念を持っておる向きに対しましても適当な方法で直接話をするのが一番本件の解決に早道であるというふうな見解で努力を重ねておりまして、できるだけすみやかに解決したいとは思いますけれども、一応仮放免の期間も二十日までというふうにいたしまして、できるだけそれまでの間に解決するように努力をいたしておる次第でございます。
  52. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、三回、四回延長しないという保証はないという御答弁になるのですが、これは法の権威から考えてどうですか。ことに事務局は法を守ることを私はやはり中心におかなくちゃまずいのじゃないかと思うんですよ。それなのに、あたりのことを絶えず考慮してどうするこうすると言っておるんですが、その間に法的権威を失墜しますよ。国内法というのがこういう外部からの介入によって実は権威を失墜しておるんです。そう考えませんか。そうでしょうが。これは、ここには総理もいないし、法務大臣も外務大臣もいないので非常に残念なんです。法務次官がいられますから、政治的な判断から考えてどうですか。このことで一方からそういう外部からのある話し合いが、圧力というか、干渉というか、そういうふうにとらざるを得ないのだが、国内法の施行に対してそういう意思表示があって、そのためにどうもぐらぐらしておって、そしてここであなたたちは無理をしてまでも延長した。その仮放免の期間をさらに三回も四回もやらないという保証はない。できるだけその間に努力をしたい、そういうふうに言っておられますけれども、二十日までに解決しないという事態が起こると、これはまた延長でやっていくというかっこうになるのではないか。そうすれば、私はこの法というものは非常にそこなわれていく、このところを心配しておるんです。法治国の立場としてこれはどうなんですか。私はこういう点から考えて、また、日赤も非常にこれでやはり迷惑しておるんですね。これはそうでしょう。実際は非常に迷惑しておる。あなたのほうから頼まれて、そして仮放免の延長申請のようなことに形をつけてこれはやっておりますけれども、一日も早くこの問題は日赤としては解決したいという希望を持っておることは間違いないことだ。それからほんとうに心のある人たちだったら、こういう問題でいつまでもぐずぐずしておることに対して非常にやはりまずい感情を持ちますよ。疑惑も起こってきますよ。何りよも問題なのは、一体日本の法の執行というものは自主的に行なわれているのかどうか。対外的ないろいろな影響やそういう圧力やあるいは干渉がましいことがあるとぐらぐらする。そういうことでは非常にまずいと思う。法務大臣はここにおいでにならないんですけれども、大体この退去強制令書が出されるときには法務大臣はサインをしておられますか。
  53. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) 入管令の建前と申しますか規定におきましては、主任審査官がやはり独立官庁といたしまして、たとえば退去強制令書には主任審査官が署名するということに相なっております。
  54. 岩間正男

    ○岩間正男君 法務大臣に報告し裁可を受けるという、これだけの問題ですから、こういう手続は今までのうちにされましたか。
  55. 小川清四郎

    説明員小川清四郎君) 私どもが扱っております限りにおきまして、やはりこういう機構になっておりますので、主任審査官の署名ということが最終的な処分の決定というふうになっておる次第でございます。
  56. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、ほかの、つまり法務大臣のいろいろなそういう指揮監督なりも受けないで独自にやれると、こういう見解ですか。そうすれば、今度の問題は何をやっているんですか。主任審査官の判断で独自にやったらいいじゃないですか。どうなんです。
  57. 富田正典

    説明員(富田正典君) 入管令の手続では、入管令の四十八条の第八項で、容疑者が判定に服したときは、主任審査官はその者に対してすみやかに退去強制令書を発付しなければならないと、主任審査官の権限として規定されているわけでございます。したがって、異議申し出の放棄がございますので、自動的に退去強制令書が出される仕組みになっている、こう御理解いただきたいと思います。
  58. 岩間正男

    ○岩間正男君 しかし、これは法務省としての意思は決定されたと見ていいわけですね。法務省の指揮監督下にあるんですから。それはどうなんです。法務大臣がいないので工合が悪いんですが、法務次官どうですか、あなたが就任されてからの事件なんですが。
  59. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) 自動的になっても、それはそういうことになります。
  60. 岩間正男

    ○岩間正男君 法務大臣はこの強制令書に賛同された、そしてこれは政府の意思と、そういうふうに考えているわけですね。どうなんです。
  61. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) 自動的にそうなっております。
  62. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、政府の意思はすでに決定されている。そうでしょう。中華人民共和国に、しかも一ヵ月の仮放免の期間をおいてそして早い機会に帰す、こういう工合に決定されている。これは強制令書の写しはそこにございませんか。これは実はほしいんですが、写しが今なければ、ちょっと話していただいて、あとで資料としていただきたい。これは政府の意思と考えていいと思うんですね。そうすると、その政府の意思に対してまた別な官庁が横やりを入れているというかっこうになると思うのですよ。政府の意思は分裂しているんじゃないですか。
  63. 富田正典

    説明員(富田正典君) ただいまおっしゃられましたとおり、退去強制令書が出た場合に、これを執行するのが原則になっております。ただ、その執行にあたりまして右か左にすぐ執行しろということには法の建前ではなっておらないわけでございます。と申しますのは、通常たとえば強制送還する場合に、いろいろ外国に行く旅費予算を大蔵省に折衝するとか、あるいはまた受け入れ国と引き取りの交渉をするとか、あるいはいろいろ船の準備をするとか、相当の期間がありますので、そういう出国のためのいろいろ手続をするために、その時期、方法をいつにするかという裁量権はこれは入管令上でも残されておるわけでございます。  そこで、本件の問題で退去強制令書が出ている以上、これを執行しないということは入管令違反ではないかという御趣旨の質問に帰着すると思うのでございますが、この執行する方法、時期というものを考えるにあたりまして、今直ちにこれを執行いたしますると、亡命としての事件なるがゆえに非常に内外の注目を集めておる。それが直ちにまたもといた国に送還されてしまった、なんという非人道的なことを日本はするのであるかという批判が起こるのは必然だと思います。また、自分のふところに逃げ込んでこようとしたいわゆる国府にいたしますれば、それを送り返したということに対して、日本のそういった非人道的あるいは非友好的な措置というものについて、いろいろな日本の国の利益に支障を来たすようないろいろの事態が起こり得ないとは否定できない。そういう問題を考慮いたしまして、そういう問題がある程度おさまりまして円滑に送還が実施できるというときまでその時を選ぶということも、やはり一つの送還の時期、方法を選ぶ裁量権の範囲に属しておるとわれわれは解釈して、現在その時期、方法の公正な解決というものがすみやかになされることを期待しておる現状でございます。
  64. 岩間正男

    ○岩間正男君 現状がここにいわば追い込まれた形になったからあなたたちはそういう弁解をされると思いますけれども、これは行政官のやるべき任務じゃないと思いますよ。政治的判断とか考慮とか、そういうふうなことで実は法の執行そのものがゆがめられるということには問題があるんですよ。越権ですよ。そういう判断は、これは政治的になにすべきだと思うんです。あなた方手続上の問題と言っておりますけれども、船とかなんとかそういう明白な問題でしょう。しかし、今のような外国に対する影響だとかなんとかという政治的背景、そういうものにまで立ち入って、しかもそいつを明らかにしないうちには非人道的とか言っておりますけれども、今日では、送還をおくらせ、そして何ともわけのわからないあいまいなところに追い込んでいるようなことこそ非人道的なことだと思うんですよ。そういう点でこれは非常にまずいですよ。今まで入管のあれでこういう例ないでしょう。大体船の便を調べるとか、旅費のいろいろな調達をするとか、そういうことで四十六日も延ばしたという例がありますか。それはないでしょう。そういうところにあなたたちの職務上のしかも法律に従うところのそういう執行面においてちゃんとした方針を持っていればいい。ところが、上からこれに対する待ったが来たり、それから外務省からこれについてのいろいろなまた横車がきたり、そういうようなことから今あなたたちがじんぜんとしておることの何か弁解のように聞こえることは、法の行政の立場で執行する者としてはまずいのじゃないか。そういうことは考える必要はないと思うんです。あなたたちは法律を忠実に守ってそうしてそれを執行する立場にいなくちゃならぬ。政治的な問題についていろいろ日本の法の運用がゆがめられておることについては、われわれ自身は全くこれは追及しなくちゃならぬ。だから、そういう弁解がましいことまで私は御答弁としては期待していないわけです。  で、これは政務次官にお聞きしますが、そういうふうに政府の意思として決定されたものが、とにかく具体的に言えばこれは国民政府からのいろいろなこれに対する何といいますか日本の国内法の執行に対してどうもわれわれが納得のできないような干渉がましいことが言われる。あるいはまた、このきっかけになったのは大野伴睦氏が三十日に台湾を訪問されたこと。行かなければよかったと思う。行ってとんでもないものをしょい込んできた。何もこんなことは必要なかった。これはたいへんなミスだと私は思う。そういうものをしょい込んできて、その結果待ったというようなことであなたたちが混乱するというようなことでは、法治国の権威から考えて私は非常にまずい問題だと思うんですよ。その点についてこれは政務次官どうなんです。この問題いま言った再延長をしない、そうしてそのために全力をあげて年内にこれを解決する、そうしてちゃんとこの退去強制令書にはっきりと出しておるその方針を貫いていく、こういう努力を法務次官としてこれは法務大臣に当然相談されて、そうして閣議の中でもこれを通すということは必要だと思うのですが、どうですか、それは。
  65. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) この問題は、最初からいろいろお答えをしておりますように、非常に異常な事件でございますし、また、本人の話が非常に変わってきております。で、ただいまのお話にございましたように、努力をいたしますけれども、やはり内外の情勢がそういうふうな状況になるように努力をしていきたいというふうに考えております。
  66. 岩間正男

    ○岩間正男君 再延長の問題はどうですか、具体的に。
  67. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) 再延長はなるべくしないでも済むような情勢になるようにしたいと考えておりますが、それはいま何とも申し上げられません。
  68. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題に対して、外務省の態度で、これは外務大臣に出席を求めなければわからないことですが、どうなんです。私、島次官に会った。そうしたら、このとき退去強制令書の内容を知らなかった。こういう事態が暴露されておる。知らない。へえ、中華人民共和国にやるということがはっきりきまっておりますか、そんなこと私見たことない、こんなことなんです。こういうような立場で一体この問題に介入するということは正しいと思いますか。ここにいないのだけれども、こんな形できめられたのじゃかなわないと思う。令書をあなたたちのほうではもらっておりますか。あなたは課長さんだから、当然そういう事務的な仕事をやっておられると思いますが、これはどうなんですか。
  69. 原富士男

    説明員(原富士男君) 通常の仕事といたしまして御連絡は絶えず受けております、法務省のほうからでございますね。ただ、いろいろの先ほど来の御質問に関連しまして一言申し上げさしていただきますと、これはやはり法務省の御答弁の繰り返しに近いことになるのでございますけれども、やはり中華民国からの非常に強い抗議と申しますか、コンプレインでございますけれども、これが非常にやはり大きな動きの原因の一つになっておるということは否定できない。ただ、それについては、周本人の一番最初の出方がとにかく亡命という形であった、少なくとも。そうしてしかもその意思が非常に転々とした。こういうところにおいて、御承知のとおり、日本と中華民国は平和条約を締結して正常な国交関係にある国でございますが、私はやはりこれをいい形で解決をしたい。特に貿易も非常に大きなウエイトを持つ、いろいろな友好関係にあるわけでございますけれども、これをそこなうような形においては解決したくない。もちろん法治国としての日本の立場を何ら曲げるということではないのでありますけれども、先ほど入管当局からの御説明のように、やはり入管令には行政措置としての性格を持っておる。そういう意味において、ひとつ法治国の範囲内においてとにかく国全体の——これも小川局長そのほか政務次官からも御強調になったところですけれども、国全体の利益という面から解決したい、なるべく早くぜひ解決したい、これは外務省としても変わらないところでございます。
  70. 岩間正男

    ○岩間正男君 国全体の利益と言うけれども、いま当面している台湾のいわば何といいますかおどかしみたいなことですね、それで非常に日本の法そのものの執行が曲げられているという感じのほうが、国全体の利益という点ではどうですか、非常に不利になっている。対外的にどうですかね、台湾のことだけ特に頭にきている、そういうことではこれは話にならぬのでありまして、日本の法治国としての立場から考えても、こういう問題をこういうかっこうで実はじんぜん日を送っているというようなやり方では、私は非常にこれはまずいと思うんです。ことに、どうですか、周氏の意思が二転も三転もしたということを非常にいままであなた方何回もあげてこられ、それを非常に何か唯一の口実のようにされておりますけれども、これも先ほど言われたように、非常に異常な中に行なわれたということはこれは明白でしょう。手記の中でも今日はこれが明らかになっておると思うんです。とにかく滞在中絶えず電話をかけて同氏について圧迫が加えられたというような事実、それからそういう中でさらにまた、これは何ですか、入管なんかでも「中外グラフ」なんか差し入れをして、その中に、国府の、これに対して周氏が中国に帰れば死刑になるとか、それから非常に不利になるだろうというようなことを書いた記事というようなものを入れたとか、それから十月九日の段階では産経新聞、そういうものでもって——その中身はやはり同じような非常に不利になるようなものを入れたとか、それから房の窓越しのところでマイクで盛んに放送するとか、こういう問題はどうなんです。こういう問題は明らかにされなければならぬと思うんですが、時間の関係から詳細を申し上げませんけれども、こういう事態の中で今のような動揺や波が起こった。しかもこれは国交も回復していない国の代表が、しかも一人残されて、そういう中でいわば全部これは包囲されているようなものですね。そのときのことだけあなたたち言っておる。それから亡命亡命と言っておりますけれども、亡命の意思ははっきりないということを言っているんです。手記の中で、亡命するのなら単身何も持たないでソ連の大使館にあえて乗って行く、そういうことはないだろう——もっともだと思う——と言っているわけです。そういうことが明らかになるにつれて、不当なそういう圧力でいつまでもこの問題をごたごたしていることは非常にまずい。政府がしたその意思決定をぐらぐらぐらぐら、いまの段階になってまるで分裂したような形の中に追い込まれていった。そしてその中で国際的な背景だ、こういうことを言っている。そういうことでこの問題を延ばすということは私は許されないと思うんです。  二つの問題からこの問題は考えなければならない。一つは、周鴻慶氏の人権を守るという立場ですね。あるいはまた世界人権宣言のそういう立場から考えましても、当然その立場に立って考えるということが一つです。これは重大なこの問題を解決するポイントです。第二には、日本の国内法というものがこういう形で実にあいまいな、そうして何かこの執行について疑惑を持たれるようなこの点については、非常に将来やっぱり禍根を残し、不利になるという点。こういうことをすべきじゃない。はっきりしたやはり意思決定をやるべきだ。第三に、もう一つ言いたいのは、これはいずれまた政治責任のある立場から法務大臣なり外務大臣に出てきてもらって質問したいと思うのでありますけれども、今度の選挙で自民党内閣は自主外交の確立ということを掲げているんです。そういうやさきにこういう問題を起こすということは情けないと思うのだが、これが自主外交の正体かということになる。何が一体自主外交なんですか。自分の国内法そのものの執行が、非常に苦しい答弁をやったり、それからほんとうにそれを拡張解釈をしたり、そういうことをしなければ執行できないようなところに追い込まれている。いわばほんとうに国内法に対するところの内政干渉みたいな、そういうものに動かされていくようなかっこうで、そうしてこういう問題が非常におくれているということは、私は非常にまずいと思う。そういう点から考えて、総合的に判断して、私は当然これは行く道は明白だと思う。とにかく今度の仮放免の再延長は絶対しない、この期間の中に政府の決定された意思を、やはりはっきり法の権威を守り、さらに人権を守り、日本の自主外交を守る、そういう立場に立って徹底的にこれは執行していくのだという、こういうはっきりした方針がここに表明されるということは、これは私は絶対必要だと思う。しかし、ここにおいでになる方々ではこれは御無理なようでありますから、この点についてはぜひ政務次官から伝えておいていただいて、もう一度法務大臣並びに外務大臣の出席をわずらわしてここで明らかにしたいと思いますが、いかがですか。これは次官からお答え願いたい。
  71. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) お話の点はなんですが、私としてお答えできますことは、やはり自主的に判断して、そうして非常に変わりやすい状態の人であるので、なお内外の情勢がそういう状態に至るまでこれはそういう強制送還というようなことはまず差し控えていきたいのだというような状態で進みたいというように考えております。  なお、大臣には岩間先生の御意思はよくお伝え申し上げます。
  72. 岩間正男

    ○岩間正男君 年内送還——こういう問題は来年まで持ち越すべきじゃないと思うのですが、どうですか。
  73. 天埜良吉

    政府委員天埜良吉君) その点についても、先ほど申し上げましたとおり、そういうような情勢に至ることを努力をいたしますが、ただいまそういうことを約束しろと、こう言われても、その点は申し上げかねます。   —————————————
  74. 中山福藏

    委員長中山福藏君) それでは、次に、選挙違反事件に関する件について御質疑をお願いいたします。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、時間もあれですが、各地で今度の選挙の中で選挙違反が起きているわけです、その選挙違反に籍口してというか、民主的な活動、労働組合の運動を弾圧するというか、そういう形が強く起きているわけで、その二、三点について、私が実地に党の命令で調べたというか、島根県の松江で行なわれました戸別訪問を中心とする十五人以上の逮捕者を出している事件があるわけですが、これに関連をして、時間をできるだけ短く聞いていきたいと思います。  それは、最初に警察に聞くわけですが、戸別訪問を法で禁止して処罰しているわけです。これは個々面接は許されているわけですが、なぜ戸別訪問が法で禁止をされているのか、そこら辺はどういうふうに理解されているわけですか。そこら辺からひとつお聞きしたいと思います。
  76. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 法では、戸別訪問は禁止されておりますが、個々面接は禁止されておりません。やはり、戸別訪問につきましては、これに関連していろいろな弊害が伴うからと考えます。
  77. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはちょっと頼りない答弁で、僕のほうでもそういう点を十分に通告しておかなかったからかもわからぬけれども、これは刑事局長じゃ………。法務省刑事局長はどうでしょうか。
  78. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 戸別訪問が禁止されております理由は、私の理解しておりますところでは二つあろうかと思います。  一つは、やはり戸別訪問という形において買収その他のさらに選挙を害するいろいろな違反の危険性を多くはらんでおるという点が、そういう危険罪といいますか、そういう意味の事実的な行為であるという戸別訪問は禁止しておくのがいいという考え方。それからもう一つの考え方は、やはり選挙民のプライバシーといいますか、個々の家を訪問して押しつけがましく頼みにくるということは、それ自体選挙民としては自由に選挙権を行使する上において迷惑にもなることでありますし、そういったような意味が戦後のプライバシーが強く主張される世相のもとにおきましては、やはりこれも一つの理由になっておるのではないかというふうに思うのでございます。いま連呼行為が、禁止されたり、禁止されなかったり、また許されたりという幾変遷を経ておりますが、これとよく似た同じような取締理由というようなものがこの戸別訪問の中にも内在しておるように思のでございます。私どもは、一、二の二つの理由から戸別訪問は禁止されておる、こういうふうに理解しております。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 警察庁としても、法務省としても、同じようなことで戸別訪問禁止の意味を認めておるのだ、こういうふうに思うわけですが、しかし、選挙法の改正の中で、一時的か、戸別訪問が許されたことがありましたね。これはどうですか、御存じですか。無制限じゃないですね。制限的に許されたことがあるんです。
  80. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) お話のように、無制限じゃなくて、一時あった場合がございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 僕のほうが問いを発して、自分で答えているようなあれですが、(笑声)これは、親戚だとか、友人とか、知己——知己という範囲の限定はいろいろ解釈があると思いますが、相当広い範囲に戸別訪問を認めたことがあるわけです。  そこで、戸別訪問の従来の取り扱い、これは法務省のほうではどの程度の処罰を普通はやっていたんですか。これは、私の聞いている範囲内では、大体各高検管内に事例を集めて、何軒以内は不起訴とか、何軒以上何軒までは略式であるとか、こういうようなものの基準をきめて、その基準はもちろん外部に発表しませんけれども、基準をきめてやっていたと、こう私は承知しているのですが、そこはどうでしょうか。
  82. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せのとおり、処理の公正を期するために基準を定めまして、その基準に満たないものにつきましては起訴猶予にする、その基準をこえたものについては起訴をいたしますが、また、その程度によりまして、あるものは罰金を納める、あるものは体刑に持っていくということもあったと思いますが、そういう基準を定めて処理の統一をはかっております。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 普通、戸別訪問の場合は、略式でなくて、公判請求してそれで禁錮なり何なりを求刑するというのは、もうきわめてまれじゃないですか。
  84. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) さようでございます。戸別訪問にもよりますけれども、通常は全く候補者思いのために個人的な知り合いの筋をたよって頼みにいくというようなきわめて単純ないわゆる戸別訪問というものが多いのでございまして、そういうものにつきましては体刑をもって臨むということは割合少なかったと思います。文書違反のようなものにつきましてもまた同じようなことが言えるのでございますけれども、しかし、最近の選挙を見ておりますと、やはり時とともに犯罪の態様も違ってくるのでございまして、計画的に組織的にやるという場合には、単純な戸別訪問として処理することは適当でないというような場合には、金で処理することをやめて体刑に持っていくということもあり得るのでございまして、事案によってそれはきまる事柄でございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはもちろん事件ですから、事案の内容によりますけれども、買収とか供応と比べますと、戸別訪問は一般的な概念としては軽微だと常識的に考えていいわけでしょう。
  86. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そのとおりでございます。さように扱っておると思います
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、島根県の松江に起きた、当選した私どものほうの代議士ですが、その選挙違反で、私が行っているときで十五人、その後ふえたかもわかりませんが、逮捕され勾留されていたわけですが、これについてはいま捜査中のことでもありますが、そのことと関連をしての捜査のやり方なり何なりということについて、これからちょっと伺いたいと思います。どうも、われわれが見ても、納得がいかない非常に乱暴な捜査、そうして組織的に組合をねらってそれを破壊させるというか何というか、そういうような動き、意図が非常に露骨に見えるわけですね。  そこで、ちょっと警察のほうに聞くわけですが、戸別訪問の場合に、現行犯は一体どの程度までのものを現行犯だというふうに見ているわけですか。
  88. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) お話の趣旨がちょっとわかりかねるんですが、戸別訪問の場合に現行犯………。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現行犯逮捕できるのはどの程度までですか。
  90. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) これは戸別訪問の場合にもいろいろの態様がありまして、一がいに現行犯逮捕ということになれば申し上げられないと思います。態様によって違うんじゃないかと思います。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の質問が悪いかもわかりませんが、たとえば戸別訪問しますね。現にそこのうちに行って玄関から出てきたということで、あからさまに戸別訪問をしてきたという状況がわかる場合なら、玄関から出てきたとか、出てきてちょっとのところだというようなのは、現に罪を行なったということになるかもわかりませんが、だいぶ離れて普通の道路を歩いているときに、それを一体現行犯と認めるんですか。そこはどうなんですか。
  92. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 現行犯で家を出てきたときには現行犯。それ以後の場合に、四軒五軒歩いてそうしてそれを現認しておるというような場合は、多少の距離がございましても、それを現認してそこまで追随して行ったということなら、現行犯と言えるのじゃないかと思います。距離のあれにもよりますが。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現認して追随して行ったら現行犯だと言えるの。それは準現行犯だというんですか。
  94. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) そういうことです。要するに、罪を行ない終わって間もないという段階に入る場合ですね。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、具体的に——今ここで抽象論をやってもあれですけれども、逮捕というのじゃなくて、これは貯金局に勤めている女の人がたくさん呼び出されているわけです。呼び出されておって、調べられた人五人ばかりに私は会って事情をいろいろ聞いてきたんですがね。まず、その中での警察の調べというか、そのやり方ですが、これは女の人を尾行して行ったんでしょうけれども、二、三軒行った——どこまで尾行したのかわかりませんが、最後はねえさんのうち、そこを出て来て二千メーターぐらい行ったところで道路へ出てきたわけですね。そこへいきなり五人の警察官が囲んだわけです、女の人をね。そうして、どこへ行って何をしたのかというようなことを聞いて、現行犯だから来てくれというようなことを言った。しかし、ただそのうちに行ったからといって、準現行犯になるとは限らないのじゃないですか。しかも、最後はねえさんのうちなんですよね。出て来て、有料道路に出て来たところで、五人で囲んじゃった、女の人を。警察へ来てくれ、ジープでもしかたがないのだけれども、きょうはかんべんしてやるからといって、ハイヤーを呼んできていきなり警察へ連れて行ったわけです、人の見ている前で。しかも、若い女の人ですよ。ちょっとこれは常識的に言ってもおかしいのじゃないか。現行犯で逮捕したのか、任意同行なのか、どうもこの点がはっきりしないのですが、いずれにしても、車が来たから乗って行ってくれと言って一緒に連れて行ったわけですね。
  96. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) たぶんそれは一応の任意同行であった場合じゃないかと思います。それから、一番最後の親戚のところにだけにたまたま行ったものならばこれははずれますが、それ以前の、以外の戸別訪問があった場合ではないかと考えます。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 女の人なんかがあっちこっち行きますね。行くのに、それが一体普通の人のところへ行くのだか戸別訪問に行くのかどうかわからぬのじゃないですか、普通の場合にはね。それをつけて行くというのはどういうわけなんですかね、これは。
  98. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 島根県のこの戸別訪問の事案につきましては、一応全逓の労組員が組織的に戸別訪問をやっておるという容疑をもって現在調べておるわけでございます。そういうことでございまして、その最初に女の人が調べられた事情は詳しくは存じませんけれども、一応その親戚のところへ行ったということだけでなしに、何軒かを戸別訪問して歩いている容疑で警察においでを願ったのじゃないかと考えます。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、女の人が歩いているときに、初めっから戸別訪問しているのだ、戸別訪問の違反だ、容疑があるということでつけてくるのですか。そういうことはしかし許されるのですかね。そういうことの現実に戸別訪問するかしないかということの確証というのはないのじゃないですか、その段階で。
  100. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 私どものほうで予断をもってやることはいたしていないつもりでございます。しかし、情報があり、現に戸別訪問をやっておるであろうというような情報があったとすれば、その現場に参る場合もあるわけでございます。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、選挙事務所から出てきたとか、たとえば組合の事務所から出てきたというなら、また話は違うかもわからぬわけですよね。それを一々女の人のあとを、しかも五人くらいでつけて行って、これじゃあ女の人だっておっかながって——どうも常識的におかしいと思いますが、いきなり女の人を五人で取り囲んじゃったというんですがね。その女の人がかりに戸別訪問したとしても、これは主婦の人ですが、五人の警察官が取り囲むというのは行き過ぎじゃないかと思いますが、そこまでしなくてもいいんじゃないんですか。驚いたというんです、囲まれて。
  102. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 五人という人数は、初めから計画的でなかったかもしれません。とにかく情報があって、現場に行って、それで戸別訪問の現認というのはなかなかむずかしいものですから、それでそういう人数になったのかもしれませんが、必ずしもそれによってその女の人に来ていただくのに別にそれほどの人数が必要であるとは思いませんが、事情の成り行き上そういうふうになったのじゃないかと思います。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうして、その場合、任意同行だとすれば、その人がかばんを持っているわけですよね、それを見せてくれと言って中をあけようとしたというんですね。あなた方のほうから言わせれば、見せてくれというときに十分断わらなかった、だから承諾したのだという、こういう理屈をつけるかもわかりませんが、それはほんとうの承諾かどうか疑問だと思うけれども一、いずれにしても引ったくるようにして中をあけて、貯金局からもらった積立金か何か、自分が必要でおろした積立金か何か持っていた、通帳か何かを。そうしたら、この金はどうしたとかなんとか盛んに聞くわけです。そうして、ポケットの中を見せろということを言ったというわけですが、ポケットの中を見せろというようなことが言えるんですか。
  104. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) いまの場合が、逮捕の場合でございませんでしたら、荷物をあけてくださいというのは、もちろん任意のあれでございますし、また、それを拒否されましても、それによってすぐに疑うというわけにはまいらないと思います。あくまでも任意の協力を得たということであろうと思います。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ形式的には断わらなかったのは任意ということになるかもわかりませんけれども、五人の男の人がいて、一人は女の人で、かばんまでとるようにして、中をあけて見せてくれとかなんとかということを言っておれば——それでもうその場に車まで呼んできたというわけですね。これじゃあちょっと任意同行とはこれは言えないのじゃないかと思うのですが、いずれにしても、こういう点は女の人に対するやり方としては少し行き過ぎじゃないかということが言えるわけですね。  それで警察に行ったわけでしょう。警察へ行って聞いたら、結局いろんな話が出たわけですが、その中で、何かというと、すぐ今晩は泊まってもらうかもしれませんというようなことを言うんですね。これは口癖になっているのかもわからぬけれども、口癖になっているから、別に強い意味で言ったのじゃないけれども、言われたほうの者にすれば、ことに女の人で、だんなさんがいる、子供がいる。戸別訪問ということで警察官がつけて行ったというのは、その人が三軒目くらいをつけて、四軒目くらいを出て取り囲んだらしい。最後の一軒がねえさんの家だったらしいのですが、その程度のことで逮捕状出して泊めなければならぬものですか、一体。かりに組織的に行なわれたというふうに見ておったとしても、末端の女の人を、子供までいる、だんなさんもいるというのに、それは少し行き過ぎじゃないかと思うんですよね。
  106. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 先ほども申し上げましたように、これが組織的、計画的と、一応そういう容疑でやっておりますので、もちろん私どものほうは、戸別訪問のことでございますので、逮捕はできるだけ人数を少なくしていたさなければなりませんし、また、女性の取り扱いについては、特に慎重にするように一般的に従前から十分に都道府県警察にお願いをいたしているわけでございます。ただ、この場合につきましては、そういうような事情もございまして、戸別訪問でございましても、逮捕者を出しているわけでございます。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、戸別訪問で組織的にやったから逮捕者を出すというのは、実際に組織的に計画したという人を逮捕するということなら、これは一つの警察の行き方でしょうけれども、末端の現に動いた女の人を逮捕するといって、泊まってもらうかもしれないというようなことを言うのは、これは行き過ぎだと思うんです。これは逮捕しなかったのですが、だから、その女の人は非常に憤慨しているわけですよね、警察というものに対して。  それが一つと、それから調べるときに、どうも女の人なんか調べるのに一人の人が調べたらいいと私は思うんですが、全部一人じゃないんですよ。二人ないし三人で調べるんですね。これは、何かそういうふうな、一人で調べちゃいけないと、そういうことになっておるんですか。
  108. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 私どものほうとしては一人で調べちゃいけないということはないと思いますけれども、やはり調べ方としては、むしろ複数であることがその場の状況を担保するなりあるいは言葉を担保するなりという意味で、二人以上の場合のほうが多いのじゃないかと思います。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、取り調べの状況を担保して、あとで証人かなんかに出すために、二人でやる場合もあるでしょうけれども、しかし、これは二、三軒戸別訪問してきた現行犯か何かの疑いで任意同行を求めて来ておるという程度で、なにも二人で調べる必要はないのじゃないですかね。一人が立ってあちこち行ったり来たりしている。二人でやられると何かこっちもこわくなってしまうと、こう言うんですよ。しかも、五人の女の人に私会ったんですが、一人は調べられておる女の人のうしろに立っておる。一人は前のほうで調べるわけだけれども、これは非常に僕はいかんと思うんです。それから三人で調べておるのがあるのですよ。それで、女の人なんか調べる場合には、やはり女の人の場合にはあとでいろいろな問題が起きる場合があるんですよ。僕も知っておるんですが、そういう例が過去においてあったかもしれないけれども、それなら、もう一人の人は、女の人がいるから、女の人が立ち会いをしておるという形をとればいいのに、いかにも屈強な者が二人か三人いてやるから、おっかなくなってしょうがないんですよ。それで、一人なんか、お昼ごろ行って夜九時ごろ調べを受けるんですよ。いったい戸別訪問をやったということが、そんなに八時間も九時間も調べる必要があるんですかね。戸別訪問をあなたのほうで確証をあげておるというなら、被訪問者のほうを調べてあるはずだから、証拠が十分固まるので、何も自白を求める必要はないんですよ。そんなにやる必要はないのじゃありませんか。どうも長いですよ。夜も九時ごろまでやるんですよ。女の人は驚いてしまう。そんなに調べるというのは熱心な警察官かもしれませんが、そんなことまで要求しておるんですかね。
  110. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 戸別訪問ではございますが、組織的に相当規模も大きいものですから、それで現在でもなおかつ捜査中でございますし、事案を固めることができますれば、全貌が明らかになりますれば、私どものほうとしては早く帰さなければならぬ、また、それが当然だと思います。非常に組織的であるのと規模が大きいのとということからそういうふうに長引いておるものだろうと思います。  それから先ほどの女性の取り調べの際の人数の問題でございますが、確かにお話のとおりあとでいろいろな問題が、特に女性の場合ですと起こる場合が多いわけでございますので、やはり一人で調べるということは差し控えたいものと考えております。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、女性の場合に一人で調べたら、あとでいろいろ問題が起きる場合があるというか、問題が起きるというよりも、言われる場合がなきにしもあらずです。それはやっぱり女の人がいるから、女の人に立ち会ってもらうとか、いろいろな形ができるのじゃないかと思います。こういう点についての配慮が足りないと、こう思うんですね。  それから訪問された被訪問者のおばあさんがいるわけですが、おばあさんのところに警察のほうで、来てくれ来てくれと言うわけだけれども、おばあさんは、来たけれども、候補者に投票してくれなんということは言わなかったと言っておるのですね。そのときには。それでは困るから、候補者を頼むというふうに言ったようにしてくれと言われた。いやそんなことはないからと言ったところが、今度は検察庁に呼ばれることになるわけで、検察庁に対する呼び出しを、主任が副検事ですが、副検事が警察官に呼び出しを頼んだわけです。その警察官がおばあさんのところに行って、来てくれと言ったが、来ない。いやだと言った。いやだということはない、命令だと言った。命令かということを聞いたら、命令なんだから出頭してくれと、こういうふうなことを言った。訪問を受けたほうは何も罪にならないわけです。罪にならないのに、命令だから出頭しろといって、副検事から呼び出しの命令を受けた警察官が行ってやっているわけです。こんなばかな話はないじゃないかということで、弁護士がその副検事に会って談判したんですね。そうしたら、その副検事はあやまりました。そういうつもりじゃなかったのだけれども、警察のほうが行き過ぎてそういうようなことになったというようなことであやまりましたけれどもね。その人は、参考人ですね、純然たる。犯人じゃないのだから。警察官は、呼び出しのときに、もし出頭しないのならあなたも警察ざたになるかもしれませんよというようなことを言うんですね。こういうふうなことをやられたんじゃ、訪問を受けた女の人なんかとてもかなわんというわけですよ。とてもおこっておるんですよ。こういう点は、常識から考えて、ないというふうにあなたはお考えになるかもわからないわけです。だけれども、現実にあったんですから、ほんとうにこういう点は注意してもらわないと困るんですがね。
  112. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) いろいろ巡査の言葉で、もちろん参考人ですから、相手方に命令するわけにもいかないわけです、自分が命令を受けているというなら別問題ですけれども。それから、うその供述をするように相手方に言ったり、あるいはそうしないと脅迫がましいことを言ったというような事実がありますれば、今後十分私どもとして注意をしてまいらなければならぬと思いますが、現場の状況を現在のところよく詳細は存じませんけれども、もしそういううそを言わせる——うそを言わせたところで、公判廷で問題になればすぐもとへ戻ってしまうわけですが、うその供述を強いるとか、あるいは出頭を命ずるとかいうような言葉が、多少行き過ぎの言葉があったとしますれば、今後十分徹底させたいと思います。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もう一人の女の人で、子供が二人いるんですがね。——五人の女の人が呼ばれた。僕は五人の女の人に全部会ったんです。それは子供が二人ある女の人で、からだがあんまりじょうぶじゃない。呼び出しがあったので、注射して出ると言ったら、それならいいからということであくる日になったわけですが、そのときにも、注射して出ますと言ったら、仮病をつかっているんだろうとかなんとかいろいろ言ったらしいんですが、とにかくその日はぐあいが悪いからというので、あくる日行ったわけです。あくる日行ったら、調べているうちに結局ぐあいが悪くなっちゃって、その女の人が倒れてしまったわけです。これは目の前がまっ暗になって倒れてしまって、一時間くらいベットの上に寝ていたわけです。それで起きて帰ろうと思ったら、また倒れちゃった。女の人がからだが悪いといって注射でもしておるというのに、そんなに一日、二日を争って呼び出して調べなければいけないんですかね。どうしてこういうやり方をするんですか。
  114. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 現実にそれほど悪いような状況にあって、初めから倒れるというような予想がつくような場合でしたら、それはわざわざ来てもらうのは無理な場合もありましょうと思いますけれども、その場の状況で考えて取り調べには耐え得ると一応判断したのだと思いますが、まあ女性の方でございますので、取り扱いには特別の注意をするようには言ってございますけれども、今後とも女性の取り扱いには十分注意いたしたいと思います。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それで、女の人を呼び出すでしょう。呼び出すときに、貯金局へ行きまして出勤簿を持ってこさしたわけですね。これは官側から警察が行って出勤簿をとったわけですね、任意提出ですが。そうすると、十一月に欠勤の日があるんですよ。そうすると、欠勤している人を全部呼、ぶわけですよ。出勤簿を持っているわけだ。この欠勤になったのは何だ何だ、と呼んでやるわけですよ。警察のほうで戸別訪問なら戸別訪問で戸別訪問をされたところがあるとかなんとかという形で確証を握っているなら、それは捜査だからいいと思うんですが、そうじゃなくて、出勤簿を持ってきて、欠勤になっているからこれはあそこへ行ったんだろう、ここへ行ったんだろうということでもってみんな八十人に呼び出しをかけるわけだ。出てきた女の人に対して七時間も八時間もやるわけです、どこへ行った、どこへ行ったといって。どこへ行ったって、警察のほうでも証拠をつかんでいないわけですから、押し問答をして終わるわけです。しようがないから、七、八時間やって、夜になると帰ってくれというわけだ。遠いから帰れないと言うと、警察の車で送ってやりますということで送ってくれるわけだけれども、警察の車なんかで送ってこられたのでは近所迷惑だからということで断わって帰ってくる。一体、捜査の場合に、出勤簿に欠勤があるからというだけで人を呼び出して、これはどこへ行ったかどこへ行ったかということをやる、そんな見込み捜査というか、そんな捜査のやり方を科学的な検察庁が教えているんですか。
  116. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) これは、ただ普通の場合に出勤をしなかったからということではなしに、この場合には、全逓労組員の組織的な違反である、こう考えましたので、それで欠勤をしておられる方々に一応欠勤の事情をお聞きするということはやむを得ないのじゃないかと思います。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 組織的なとかなんとかということを言うんだけれども、それはあなたあとになって調べてみればわかるかもわからんけれども、いまはそうやって女の人にたくさん来てくれといっている段階では、まだ組織的とかいうことはわかっていないのじゃないですか。あなた方の予断というか、偏見という形で、これは組織的にやったのだということが頭の中にあるから、裏づけをつくるために、出勤簿を見て、来てくれ来てくれと言っておるんじゃないですか。証拠の上で組織的ということが固まってきての裏づけならば議論は別だと思うんですけれども、そうじゃない。いきなり初めから出勤簿を持ってきて、女の人たちに出てこい出てこいだ。これはあまりにも偏見を持った非科学的な捜査のやり方をしていると思う。えてして、こんなことを言っちゃ悪いけれども、新しい検事正とか新しい警察本部長、新しいという意味は、初めて検事正になったり初めて警察本部長になったりすると、点数を上げるためかもしれないけれども、そういうことをやる人が従来いる。非科学的な捜査をやっておる。結局、人権じゅうりんの形ができてきますよ。
  118. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 私どものいままでの捜査段階では、組織的なものという容疑が濃厚でございます。ただ、現在捜査の途中でございますので、申し上げられませんが、本部長がかわりましても、本部長だけの意思で捜査ができるものでもございませんので、その点は御心配がないのじゃないかと思います。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 本部長がかわったからやったとかなんとかいうのは、これは添えものの話ですから、あれですけれども、出勤簿を全部持っていって、そうして欠勤している人を全部呼び出すんですよ。そんなことしちゃいけないんじゃないですか。かりに組織的にやったかどうかということを確かめなければいけないとしても、一割か二割を呼び出せば、組織的にやったかどうかということの証拠は固まるのじゃないですか。証拠は最低限確実なものでいいので、それを全部呼び出している。みんな子供を持っておる。呼び出せば十時から夜九時ごろまでやるんですから、みんなのびちまいますよ。憤慨しておりますよ。そういう捜査は僕はやるべきじゃない、こう思います。  それから、結局、どこへ行ったどこへ行ったと聞くんです。聞いたって、警察のほうではどこへ行ったかわからないわけです。つかんでないわけですから。どこへ行ったか、どこそこへ行ったろう。どこそこへは行きません、自分の私用です。私用でどこへ行ったかそんなことは言う必要がないから、結局私用ということになる。そうすると、非常にずうずうしい女だとか、そういうふうに答えたら組合に帰ってほめられるだろうとか、いやみを言い出す。これは警察官としては言いたいところかもじれないけれども、そういうふうなことを盛んに言う。僕は警察官には品性というものがなければいけないと思うんです。こういうふうにして、女の人に対し、お前はずうずうしい女だとか、こんなのは見たことないとか、もっと大きな声を出すのを連れてこようか——警察官が小さな声で調べていると、女の人はそんな事実がないから、知らないといってがんばるので、ばかにされたように思うのかもしれないが、もっと声の大きいのを連れてこようじゃないかといって、かわりに声の大きいのが入ってきてまたそれがやる。昔の徳川時代の映画でも見ているような感じのやり方をしている。これは事実です。これは私の調べた範囲でも多少誇張はあるかもしれない。それはあなた方のほうでも十分調べていてもらいたいと思うんですが、そういうことを盛んにやっているんです。これはいかんと思うんです。今後そういうようなことについては十分注意してもらいたいと思う。何かというとすぐどなるらしいんです、大きな声で。どうもいかんですね。こういうふうなことは十分注意をしてやってほしい。  それから、結局、そういう事実はないと言うと、それじゃあしたでもあさってでも何度でも呼び出すと言うんです。そんなに呼び出されちゃかなわない。同じことを聞くんですから、押し問答ですから、夜おそくなってこっちも参っちゃう。こういうふうなことは、ぼくは十分注意してもらいたいと思う。これは場合によると警察官の罷免要求をするかもわかりませんよ、名前がわかっていますから。そういうようなことは十分ないようにしてほしいと思います。
  120. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) いま事件の全貌がまだ固まっておりませんので、事件の全貌が固まるまで捜査を続けて参りたいと思います。  それから取り調べの点についていろいろお話がありましたが、私どものほうも十分気をつけますが、またもしその中で明らかにそれが暴行脅迫というような事実がございますれば、ただいまは非常に抽象的なお話ですが、具体的にお示し願えますれば、またそれに基づいて調査をいたしたいと思います。
  121. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的な事実は私は調査してきてありますけれども、それはまた別な機会にどういうふうなことをするかはよく相談してやりたいと思います。  それからこれは検察庁ですが、僕はこういうことを言っちゃ悪いと思いますが、これは警察のほうにはおこられるかもわかりませんけれども、参考人にしろ被疑者にしろ、警察に呼ばれてしばらくたってから検察庁に行くわけですが、そのときに、検事に調べられたということで一つの喜びと言うと語弊があるかもしれないが、警察の調べとは違うんだというところが検事の調べの中から出てこなければならないと思う。こんなことを言うと警察の人にはおこられるかもしれぬが、僕はそう思っている、今までの例からいって。ところが、これは検事のほうがすごい。検事のほうが大きな声を出しておどかしたりなんかしてやるんです、副検事ですけれども。女の人は、警察より検事のほうがこわいと言っている。女の人がおこっているんです。これはやはり注意しなければならないと思う。特に副検事にそういうような弊害があります。これは十分注意していただきたいと思うんです。  それで家宅捜索のことを聞きますが、一体戸別訪問の家宅捜索をやっているときに、ほかの容疑で家宅捜索をやっていいんですか。これはいけないんでしょう。そうなっておりますか。
  122. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) もちろん、家宅捜索をいたします場合の令状に示された容疑事実に基づいての家宅捜索でございますから、その容疑事実に含まれる範囲以外のことにつきましてはやるべき筋合いでないと、かように考えます。
  123. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、戸別訪問の容疑で出ているわけでしょう。家宅捜索をする。これは検事が指揮して行ったのだと思いますが、そこに行って何か割りばしの袋なんかが出てくる。そうすると、これはどこへ行って供応したんだという形でそれを盛んにつっつき回したりなんかする。それからいろいろ関係のないところまでだいぶやったりなんかしているらしいんです。  今度は検察庁の問題でちょっと聞きたいんですが、逮捕して勾留するわけでしょう。その場合に、弁護人なんかが接見指定を求めるわけです。そうすると、検事はなかなか許さないんです。これは一体どうなっているんですか。これは、三十九条でしたか、許すのが原則なんで、日時の指定をするというのはむしろ例外なんじゃないですか。それを、全くと言うと語弊がありますが、とにかく弁護人が被疑者なりに会うのをいやがって会わせないんです。これは検察庁ではどういうふうな指導をしておられますか。
  124. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せのとおり、刑事訴訟法の三十九条でございますが、これは弁護人としましては被告人あるいは容疑者、被疑者に接見をする権利を認めているわけでございます。同時に、この権利は、捜査中におきましては捜査官の便宜も考えないと捜索を円滑に遂行することができないという考慮から、その権利を行使する場合に、検察官側が日時、場所を指定する権利もまた一方において与えておるわけでございます。そこのほどよい調和ということが法の期待しているところでございますから、運用にあたりましては、弁護権を毀損しないように、かつ捜索に支障を生じないように、こういう観点から考慮をして指定をすべきものだ、かように考えるわけでございます。
  125. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、刑訴の三十九条では弁護人が接見できるというのは権利なわけです。だから、会うことが禁止をされていてそうして検察官なり何なりが禁止を解除して会うことを許可するというのとは違うわけですね。それが全く今は許可みたいになっているわけです。検事のほうがまるで許可しているような状況です。弁護士が行っても会わせないんですよ。日時の指定なんといっても、なかなかさせないようにしていて、許可権を持っているように錯覚しているような実情で運用されているわけです。これは法務省でもよく調べていただくとわかりますが、たとえば今の松江の事件でもそうですよ。こんなもので検察官は接見の日時の指定を拒否したわけです、弁護人に対して。それで準抗告にしたわけです。準抗告にしたので、結局準抗告が通って、昭和三十八年十二月四日の松江地裁で「昭和三八年(む)第一九六号」の準抗告の決定で、結局「検察官の右処分を取消し、検察官は」云々「夫々二〇分づつ右弁護人に接見を許さなければならない。」という主文が出ているわけです。これは実に検察官として率直な話みっともないと思いますね、面会、接見を求めたら拒否されて準抗告されて通ったということは。こういうことのないようにしてほしいと思う、運用として。これは十分法務省のほうで注意していただきたいと思うんです。その点どうでしょうか。
  126. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) まさにおっしゃるように、運用の面でそういうようなことのないようにしていきたいと思っております。ただ、私も詳しいことは存じませんけれども、拒否の結果そうなったというふうに法律的に見るか、そこのところがあるいは稲葉委員と考え方が違うかもしれませんが、弁護側が何日のどこで何時何分に会いたいという希望を申された場合に、検察官側が、いや、その場所でなくてもっと違う時間ではどうですかといった場合、それで応ずれば問題はないわけです。そのときに、いや、その時間と場所以外には困ると、こういうことになりますと、いまの別の日時、場所の指定は、あたかも申し出を拒否したような形になります。その場合を指して拒否だと、こういうふうにもし御理解をなさるということになりますと、やや私どもは考え方が違うのでございまして、そうじゃなくて、やはり場所、日時を指定することができるという検察官の権限というものは、それは拒否したのではなくて、別の時間、場所を指定したのであって、このことがどういういきさつでそういうふうに準抗告のような形で解決をはからなければならなかったのか、私にはちょっと理解ができないわけですが、運用といたしましては、仰せのとおり、そういうことにならないように、もっと話し合いでうまくやっていただきたいというように思っているわけでございます。
  127. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは準抗告の決定があるわけです。この決定だけではその点は書いてありませんけれども、私の聞いたのではそうじゃないんです。これは昼間は検事が調べるから工合が悪いというので、では夜にしてくれというので、夜ならばということで、それはだめだということで断わった事案らしいんです。あるいはほかの弁護士が会ったから会わなくてもいいじゃないかというので断わった事案でもあるらしいんです。いずれにしても、準抗告で検察官の処分を取り消されて弁護人に接見を許さなければならないというのが出てくるのは、これはほんとにみっともないんです。こういうことが十分ないようにしていただきたいんです。  それからもう一つは、勾留延長ですね。検察官は、こういうふうなことになってくるというと、たとえば十日間で、あと十日間の勾留延長はあたりまえのことだと考えるわけです。これは常識的にというか、忙しい関係もあってかもしれませんが、勾留延長はあたりまえのようにして、十日間が過ぎればあと十日間というふうに安易に考えておる。これはおかしいんじゃないか。この場合でも、現実に下のほうで戸別訪問してしまって、もう略式でいいかどうかということを本人に承諾を求めるわけで、お前の事案は済んでしまったから略式でいいという承諾をとって判こを押しちゃっておるわけです。判こを押しておるわけです。まだ勾留期間があるけれども、勾留延長するんだと、こういうわけです。ほかの者はしゃべっていないから勾留延長するというのですか。これはおかしいじゃないですか。その人の勾留であって、ほかの者の証拠をとるために勾留しておるわけじゃない。それを盛んにやっておるのです。それも裁判所をごまかすわけですね。ごまかすと言うと語弊があるかもしれないけれども、適当にやって勾留延長をとってしまう。現にこの中でも勾留延長というようなことを言い出したわけですよ。言い出したけれども、その調べはすでに済んでいて、承諾の判こをとっちゃっておる。そんなばかな話はないじゃないかといって裁判所に抗議に行ったわけです。勾留延長はしないでくれといって抗議に行ったんですが、そうすると、結局、検事があわてて、夜寝ている被疑者を起こして調書をとって、その日に釈放しちゃった。だから、その日のうちに夜寝ている者を起こして調書をとって釈放できるというならば、何も勾留延長する必要はない。勾留延長すると言ったものだから、今度は勾留延長の理由開示で裁判所に行ったわけです。勾留延長の開示ということの話があったということを検察庁に連絡したのかどうかしりません。あわてて検事が行って調べて釈放してしまった。こんなことはやっちゃいかんと思うんです。どんどん勾留延長はあたりまえとしてやっておる今の弊風は非常に強いわけですね。現実に警察から放されてから四、五日から一週間は調べないのが多いんです。忙しい関係もあるし、場所にもよりますけれども、入れっぱなしです。いわゆる漬けっぱなしです。最後の二日調べて、まただめだからといって勾留延長をやるわけです。これは十分こういうことのないように注意をしていただきたいと思います。どうも松江の場合のやり方は、そういうような面で検察庁の行き方はどうもぱっとしない、アン・フェアだと思います。
  128. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せのとおり、勾留期間を延長するのが当然だというような運用、これに堕しておるという御指摘でございます。さようなことはまさしく御指摘のとおり弊風でございますから、そういうような弊風を助長するようなことになってはなりませんので、十分私どもとしましても戒心をしてまいりたいと思っておりますが、稲葉先生は直接お聞きとりになっての御質問でございますし、私のほうは間接に書面による報告の程度でございますので、適切なお答えができないと思いますけれども、私のほうで報告を受けておりますのは、検察庁で身柄を拘束しましたのは十六名だと聞いておりますが、そのうち十名は十日間のいわゆる勾留期間の満期によりまして釈放しておる、こういうふうに聞いておりますので、十六名のうちの十名は形の上では少なくとも十日間の期間中に釈放しておりますので、もう延長が当然だというふうに報告だけからは判断しますことは必ずしも適当でないと思いますので、よく実情を調査しまして、御趣旨と違うようなところがありますならば、運用の是正をはかってまいりたいと思っております。
  129. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのは、十日間の勾留で釈放されたのは全部で十名と言われました。最初の二人は、一人は病気で釈放になったんです。釈放になった日にちが違うわけです。その最初の二人のうちの一人は、今言った勾留延長の場合で、勾留開示の裁判をやろうとしたら、検事があわてて調書をとって釈放したんです。あとの人は、十二月の七日が満期です、土曜日が。私が五日の晩立っていって、六日に行って、検事正に会い、警察本部長に会って、勾留延長をしないでくれということをいろんな関係で、何といいますか、頼んだというか何というか、それは弁護士が行って、そして七日の日にあと八名ですか——七名だと思いますがね、ちょっと一名違っているような感じがしますが、いずれにしても一釈放になった、こう思いますがね。あれはそのままにしておいたら、また勾留延長された可能性はありますよ。そういう点はいずれにしても十分注意をしていただきたいと、こう思うんですが、本件の松江のような戸別訪問で十五人も十六人も逮捕したというようなことは、いままでないんじゃないですか。そんなにまでしなくちゃいけないんですか、どうなんです。警察でも、法務省でも、悪質な買収だとか、うんと金を使った供応だとかいうんならこれはそうかもわかりませんけれどもね。戸別訪問をかりに組織的に行なったとしても、一人の人が何軒もやったわけじゃないのですし、それをとらえて組合の委員長から幹部全部でしょう、ほうり込んじゃって、そんなことをすることは考えられないんですがね。そんなにまでしなくたって、普通の捜査は十分できたんじゃないんですか。どうしてこんなことをやるんですかね。
  130. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) なるほど戸別訪問は一応普通には形式犯でございますけれども、やはり組織的、計画的という意味から申しますと、もちろんこれは容疑の段階でございますが、一応私どものほうとしては悪質な事犯と見ておるわけでございます。
  131. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ただいまの段階では、捜査中でございますので、私も全体的な評価ということはまだできかねるわけでございますが、中間的に聞いております報告を見ておりますと、勾留されておりますのは、もちろん組織的な犯罪という観点に立っての捜査でございますけれども、直接に訪問をした人たちではなくて、要するに、組織を動かしていたと見られるような容疑の人たちが勾留されておるようでございます。したがいまして、この捜査がこれでいいのか悪いのか、妥当であるかないかというようなことは、ちょっと私どもの立場ではなかなか批評しにくいわけでございまして、私も先般検事会同がございまして広島の検事長が見えましたので、具体的に妥当な措置をとってもらわぬと困るので、その具体的に妥当というものをどこに持ってくるかということは検事長の御良識によって判断をしてもらわなければならぬわけでございますが、そういうことで検事長と話し合ったことも実はあるわけでございます。全体的評価が実はまだできませんので、可否適否等につきまして適切な意見を述べることができないわけでございますが、捜査の完了を待って十分考えてみたいと思います。
  132. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ、きょうはこれで一応終わりますけれども、これに類するようなのが相当あっちこっちで出ているわけです。それで私のほうで組織的に調べているわけですが、これはみんな手分けしてやると思いますが、どうも私どもが行って実情を調査したのでは、そんなにまでしてやらなければならぬことはないんじゃないか。ほかにもいくらでもあるじゃないか、悪質な買収であるとかなんとかというものは。こういうものをちっとも手をつけないと言っちゃ語弊があるけれども、そういうのももちろんやった。そういうのは保守系だ。そうすると、結局こっちのほうも出さなくちゃなんということで一応やっている。しかも、このごろは全逓なら全逓が相当活発に行動するから、それをここで押えつけなければいけないんじゃないかという意図のもとにやったというふうに勘ぐられるというか、そういうふうにどうも考えられてくるわけです。出勤簿なんか全部持って行っちゃって、休んだのをみんな呼び出して、どこへ行ったどこへ行ったとやっているんですからね、毎日。こういうふうなことはどうしても私どもは行き過ぎだというふうに考えるわけですけれども、いずれまたこの点については日を改めて別な機会に質問をするなり何なりする、こういうふうに思います。  きょうはこれで終ります。
  133. 中山福藏

    委員長中山福藏君) 本件につきましてはこの程度でとどめまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後一時十五分散会    ————・————