○野原(覺)
委員 いまの大臣が出席されないととはきわめて遺憾でありますけれ
ども、やむを得ませんから了解いたしておきます。
私は、
日本社会党を代表し、
政府提出の
昭和三十八
年度補正
予算案に対し反対の討論をいたします。
反対の第一の理由は、本補正
予算案の性格についてであります。最近、わが国の経済は、社会党が前から警告していたとおり、物価と
国際収支という二つの壁にぶつかって、重大な危機に直面し、
政府も経済政策の転換を余儀なくされております。さきに日銀が決定いたしました準備率の引き上げは、この政策転換の第一弾であり、近く公定歩合の引き上げが行なわれることは必至の状況となっております。これは
池田内閣になってから二度目のできごとであります。
池田内閣が成立して以来、所得倍増のかけ声によって景気を刺激し、大資本のむちゃくちゃな設備投資をあふり、その結果、物価が上がり、
国際収支が赤字になれば、一つ覚えの金融引き締めによって、その犠牲を中小企業、農民、勤労者にしわ寄せするということの繰り返しであります。しかも、今度の場合は、いわゆる開放経済体制への移行という重大な課題をかかえているだけに、その
影響は一そう深刻なものがあります。
このような
情勢を背景にして組まれた本補正
予算には、当然経済
情勢の激変に伴う国民経済全体への配慮が示されていなければなりませんが、実際にはその片りんすらうかがうことができないのが、その実態であります。たとえば財源は租税の自然増収を充てておりますが、これは物価値上がりによる名目的な増収であり、これを財源に充てて
予算をふくらまし、それによって追加支出を行なうという操作は、それ自体財政インフレをつくり出すものと言わねばなりません。こうして通貨はますます増発し、したがって物価はますます上昇し、勤労者の実質的生活水準は切り下げられるわけであります。申すまでもなく、物価値上がりは労働者、農民、中小企業者その他、働く人々の生活を圧迫しますが、しかしその反面、物価値上がりで大もうけしている人もいるのであります。たとえば土地値上がりによってばく大な利益を得るものもあるわけであります。
予算の財源は、これらインフレで不当利得を得るものを捕捉し、これに重税を課すことによって捻出すべきであり、それなしには現在のなしくずし財政インフレにストップをかけ、物価を安定させることは不可能であります。ところが、
政府は依然として租税特別措置その他いろいろ巧妙な方法で、大資本、大金持ちには優遇措置を講じており、したがって、重税の負担は働く者の肩にかかっている現状を少しも改めようとせず、さらに進んで株式配当の分離課税さえ
実施しようとしているありさまであります。こんなことでどうして財政インフレを停止し、物価値上げをストップすることができましょうか。本補正
予算は、物価を一両年で安定させるという
池田総理の言明が全く裏づけのないものであることを数字をもって証明するものであります。以上が反対の第一の理由であります。
反対の第二の理由は、国家公務員の給与改定の
内容についてであります。この給与改定は、本年八月十日行なわれた人事院勧告に基づくものでありますが、その勧告そのものについては、社会党はすでに本
委員会においても批判をいたしたのであります。まず第一に、人事院の調査のしかたに客観性がない部分が見られることであります。たとえば、人事院は、初任給は一〇%程度の上昇だとしているが、労働白書によると二三%の上昇になっております。また、標準生計費について見ると、
総理府統計による
東京都平均五人世帯の消費水準は、本年四月に五万四千七百十六円であるのに、人事院の調査による標準化計費は四万二千二百九千円であります。つまり、人事院は
総理府統計よりも一万二千三百六十円、二二・六%低く見積もっているのであります。第二に、この結果として、長期的に官民給与の上昇割合を比較してみますと、
昭和二十六年以降の民間賃金の上昇度合いに対して、公務員給与は二五%の立ちおくれを示しているのであります。第三に、人事院の勧告時期がいつもおくれぎみであり、そこに国家公務員の給与を意識的に操作をしていることが明らかであります。人事院は、公務員給与を積極的に民間賃金水準に引き上げるという意欲を持たず、常に民間賃金のあとを追うという方向をとってきており、ここに国家公務員に労働基本権を確立すべしという主張の出る理由があるのであります。人事院勧告はこのように多くの欠陥を持っておりますが、このきわめて低目に見積もった勧告すら
政府はそのまま
実施しようとせず、五月
実施の勧告を五カ月もずらした十月
実施の方針をとっているのであります。このように見てきますと、この給与改定では、物価値上がりにあえぐ公務員の生活の負担を軽減することはできないことが明らかであります。これが反対の第二の理由であります。
反対の第三の理由は、事故対策についてであります。去る十一月九日、鶴見事故と三池事故という二つの事件により、実に六百人を上回る人命が一瞬のうちに失われ、全国民は大きな衝撃を受けました。その際
政府は、しきりに安全運転、保安作業について強調いたしましたが、その後も国鉄事故は続発しておるのであります。しかも、本院に提出された本補正
予算は、この二大事故が起きる前に提出されたものと全く同じであります。このことが、
政府の言う保安対策等は全くかけ声だけで何らの裏打ちのないものであることを如実に証明していると思うのであります。しかもこのことは、
池田内閣の所得倍増政策が経済の成長しか念頭になく、国民の幸福などは全く無視していることをまたまた雄弁に物語るものであります。これが反対の第三の理由であります。
以上三つの理由により、
日本社会党は、本補正
予算案に反対するものであります。
以上をもって私の反対討論を終わります。(拍手)