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1963-12-13 第45回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年十二月十三日(金曜日)    午前十時十分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 櫻内 義雄君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       安藤  覺君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       周東 英雄君    田澤 吉郎君       中曽根康弘君    古井 喜實君       古川 丈吉君    保科善四郎君       松浦周太郎君    松野 頼三君       山本 勝市君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    加藤 清二君       川村 継義君    小松  幹君       高田 富之君    滝井 義高君       堂森 芳夫君    野原  覺君       山口丈太郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       川上 貫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  福田  一君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 早川  崇君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         食糧庁長官   齋藤  誠君         通商産業事務官         (石炭局長)  新井 眞一君         通商産業鉱務監         督官鉱山保安         局長)     田原 正邦君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君  委員外出席者         運 輸 技 官         (船舶局長)  藤野  淳君         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十二月十三日  委員赤松勇辞任につき、その補欠として滝井  義高君が議長指名委員に選任された。 同日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として加  藤清二君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十八年度一般会計補正予算(第2号)  昭和三十八年度特別会計補正予算(特第2号)  昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第2  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。   〔発言する者あり〕
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 しばらくお待ちください。これより政府に厳重に注意を喚起いたしますから。   〔「注意ではだめだ」と呼ぶ者あり〕
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 では、どういうことにいたしましょうか。  国務大臣宮澤喜一君にお尋ねいたしますが、閣議は終わりましたか。
  5. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 閣議は終わりました。
  6. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 終わって、どうしてここへ呼び出される人が来ないのですか。正十時から予算委員会は始めておるのですが、いかなる理由でおくれておるか、ひとつお聞かせを願いたい。  質疑に先立ちまして政府警告を発します。すでに開会は十時十分開会しておりますが、政府閣議の都合でおくれたと言いますが、閣議はいかなる理由によって予算委員会を無視したか質問をしたいところではございますが、本日はいろいろの手違いがあるようでございますから追及いたしませんが、委員長責任において、政府は時間を励行してもらいたい。  以上警告を発します。  昭和三十八年度一般会計補正予算(第2号)、昭和三十八年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和三十八年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括議題とし、質疑を行ないます。  川俣清音君。お待たせいたしました。
  7. 川俣清音

    川俣委員 まず第一に、委員長警告を発したいと思う。先般の理事会で、極力補正予算の成立に協力するということで、異例の三日間という審議日程をきめたにかかわらず、このような政府出席率では約束の三日間で終了するということは困難になってきた。この責任委員長が負われるのか、政府が負われるのか、これを明らかにしてほしいと思う。審議を進めるにあたりまして警告を発しますが、委員長答弁を求めます。
  8. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの川俣君の御意見、ごもっともでございます。あくまでも理事会でおきめ願ったことは、委員長は尊重いたします。本日は手違いがありまして、政府のほうが多少おくれたうらみがございますが、しかし、今後政府におかれても一分たりともおくれざるよう時間を励行してもらうことにいたします。これは先ほど警告を申し上げたとおりでございます。どうぞ御了承をお願いいたします。
  9. 川俣清音

    川俣委員 了承できませんけれども審議は進めます。ただし、三日間という約束が、このような政府の怠慢によっておくれることが生ずるおそれがあることだけは警告いたしておきます。  次に、官房長官お尋ねをしておきたいのですが、この特別国会補正予算を提出されて、短い期間に審議を求められてきておるのでございますから、したがって衆議院の予算委員会は三日間という異例の超スピード審議をいたすことにいたしました。この要請された内閣が、このわずか三日間に政府答弁者をそろえることができないということでは、前の約束の三日間の審議ということが不可能になるということを御承知でございますかどうか、この点をお尋ねいたしておきたい。これが一点。  もう一つは、わずか三日間ですから、総理みずからが進んで——臨時国会じゃない、特別国会でありますために、総理みずからが出席をして審議を進められることが妥当であるのではないか、これは予算審議の上からいってもそうあるべきではないかと思う。これを怠っておりながら、いたずらにただ数の力をもって審議を進めようと思いましても、それは不可能の事態が起こることを私どもは憂える。政府態度をこの際明らかにしてほしいと思う。
  10. 黒金泰美

    黒金政府委員 いま川俣委員からのお話、重々ごもっともでございます。特に本日は閣議が少し長引いたり、あと始末がございまして、むしろその督促役の私がおくれて参りまして、はなはだ恐縮に存じております。お許しを願いたいと思います。今後はというよりも、今後ともでございますが、一そう戒心いたしまして、何とか間に合わせますように全力を尽くす気持でございますから、これも御了承賜わりたいと存じます。  総理の問題でございますが、もとより私どもは、国会にこちらから法案案件を提出して御審議を願っておりますので、この委員会はもとより、各委員会ともにできる限り出席いたすように努力いたしております。ただ本日は、まことに申しかねる話でありますが、デンマークのお世継ぎがお見えになっておりまして、その国際関係、宮中の行事なんかございますので、はなはだ恐縮でございますが、理事会にもお願いを申したような次第でございまして、これまたお許しを願いたいと思います。
  11. 川俣清音

    川俣委員 官房長官になお念を押しておきますが、この委員会は、閣僚中で他の法案審議のために、あるいは他のためにここから退席されることも時には了承するという了解のもとに審議を進めておる。しかもなお三日間という超スピード審議をしようというのですから、予算委員会はこれだけの熱意を示しておるにかかわらず、政府が怠慢であるための審議の遅滞の責任政府みずからが負われることと存じます。私どもは野党の精神に返りまして、こういう状態では約束が履行できないことを断言しておきますから、よろしく御了承願っておきたいと思います。おくれた責任は全く政府にあるということは明らかにしておきたいと思います。  そこで本論に入ります。まず第一に、農林大臣企画庁長官からお尋ねしたいのですが、ことしの米麦ともに、食糧需給の上に非常な不安が起こりつつあるのではないかという懸念がかなり深刻になってきておると思います。特に日本人の主食でありますところの米麦についての需給見通しが非常に暗いようでございますが、この点について明らかにしてほしいと思います。  これは企画庁長官お尋ねいたします。食糧の不安というものが起こってまいりますならば、あらゆる物価を押えようといたしましてもなかなか押え切れない事態というものが起こってくるのではないかと思うのです。そういう意味からも、いまにして食糧不安の解消をするような具体策を立てておかなければならないと思うのですが、この点について農林大臣企画庁長官からお尋ねしておきたいと思います。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お説のとおり食糧不安を生ずるような事態を起こさしたくない、またそういう事態が起きますと、お話のような状態になります。ことしの米の需給関係でございますが、ちょうど三十八米穀年度端境期のころにおきましては、出回り状況が地域的に非常におそかったようなところもございます。そういうことで、需給操作上いささか不安ではないかという気もいたしました。しかし、その後米の出荷が非常に順調に進みまして、昨年度の出荷状況に対しまして九八%程度になっております。こういうことでありますので、米の需給につきまして、全体としては不安なく推移するという状態になっております。私どもは、いまお話しのように、食糧の不安を起こしてはいけない、そのためには需給計画等も十分立てて、その需給計画のもとに進めておるのでございます。その需給計画が大きく変更するような状態ではございません。幸いに本年度の需給状況も非常に好転しております。そういう意味におきまして、米の状況について不安があるというような状況ではございません。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 川俣委員の御指摘は、まことにそのとおりであると考えます。ことにわが国ばかりでなく、ヨーロッパ、ソ連あるいはその他の国における今年の経験というものが、農業というものがいかにおそろしいものであるか、むずかしいものであるかということを物語っておるように考えております。今年の場合、緊急の措置ではございましたが、食糧全体で当初、これは飼料も一部含んでおりますが、八億四千万ドルの輸入を考えておったわけでございますが、三億三千万ドルくらい余分に輸入をして当面の処置をとるということにいたしております。しかし、問題のむずかしさというものは、まさに御指摘のとおりだと感ずるわけであります。
  14. 川俣清音

    川俣委員 そこで具体的にお尋ねをいたしますが、需給逼迫しておるという事態農林省はできるだけひた隠しに隠したい気持ちであることは、気持ちはわからぬわけではございません。しかしながら、だんだんぼろが出てまいりまして、今度の特別国会にも補正予算要請が出ておるわけでございます。すなわち、国内長雨のための麦の減収の結果、外麦を入れなければならない。または国内で一番消費価格の安い徳用米がもはや配給を停止しておるといわれておるほど、販売店徳用米が姿を消しております。こういうところから輸入米を考えざるを得ないというところにきておるのじゃないかと思うのです。政府補正予算説明によりますると、国内米買い上げ価格が上がったために補正要求するのだという説明になっておりますが、細部を検討いたしますると、外麦及び輸入米輸入するための補正要請が出てきておるわけです。これは国内食糧がいかに枯渇をしておるかということを、みずから補正予算において認めておられることだと思うのです。企画庁長官に聞きますけれどもパンがすでに小麦粉枯渇のために値上がりをいたしまして、卸、小売ともに三割八分から四割の値上げになっておる。したがって、パンが五割ないし四割の値上がり価格で上げないにしてもパンを小さくして上げておるという事態です。うどん、そば、ラーメンその他のものが刻々値上がりしつつある。これは需給見通しが甘かったために起こってきたものじゃないかと思うのです。この趨勢でいきまするならば、最も割り安だといわれる米の需要がもっと旺盛になるのじゃないか。これは三十七年度から起こってきておるわけですが、米の需要が非常に旺盛になってきておる。かつてこのように食糧が緩和の時代から逼迫時代にだんだん入ってきておる。需要が旺盛になってきた。その上にパン値上げが行なわれ、小麦粉値上がりが出てまいりますならば、当然米が逼迫をしてくると思うし、この逼迫に対応できないために自由流通米が非常な価格を生ずるのではないかと思われます。いま配給状態を見ますると、大体九八%から九九%、やや一〇〇%に達しようといたしております。配給辞退というものが姿を消してきています。大都市はまず配給に依存するでしょうが、地方都市などは配給に依存できない状態からいたしまして、ことに農村保有米逼迫をいたしまして、自由流通米というものが全く姿を消してきています。このあらわれとして、農家では大体古米を三月から四月まで食い越して、新米は春にならなければ食わないというのが農業の慣習です。ところが、すでに新米を食い始めておる。これは古米が、農家保有米枯渇をしておる現象なんだ。農家保有米枯渇をするならば、当然自由流通米というものが枯渇をしておるということは明らかだ。そのために、いわゆるやみ価格と申しますか、農家保有米である自由流通米が異常な価格を生ずるのではないかという危険を感ずるのですが、この点についての危険を感じませんかどうか、この点をお尋ねしたい。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米の消費が数年前に考えられておりましたよりは旺盛なことは御指摘のとおりであると思います。今年の場合、パンとのそういう関連もあると思いますが、この数年間考えておりました趨勢に多少変化が出てきました。理由は幾つかあると思いますが、一つは、やはりパンの副食になると思われます酪農製品等々が、私ども政策といたしましても、自由化をいたさないという政策をとっておる関係もありまして、比較的割り高であること、それから米そのものが、電気器具の発達によって都会で非常にたきやすくなったというようなこと、そういうことにも関連があるように思います。それからパンの規格が多少落ちかかっておるということも御指摘のとおりのように考えます。これは原料の値上がりもございますし、パン製造業生産性なり、賃金なりの問題にあるように考えるわけであります。しかしながら、食糧全体の需給につきましては、先ほど農林大臣答弁をされましたように、需給間に不安はないということは申し上げてよろしいのではないかと思います。
  16. 川俣清音

    川俣委員 かつて池田内閣ができました際には、食糧事常は非常に緩和しておるから、食糧管理制度もあらためて改善する必要があるということを打ち出した。その当時の誤った見通しが今日のような逼迫を起こす原因になったのではないかと思う。特に今年の米の不作につきましては、これは政府の指導が適正でなかったということがこの原因であると思う。すなわち、食糧が緩和されておるから、量よりも質へという方向で指導された。また農民所得倍増政策にのせられて、省力政策と申しますか、手不足から、収量をあげることよりも単価の高い、すなわち等級のいいうまい米をつくろうということに力が入ってきております。今年の、昨年からの出回りの状況を見ましても、いわゆる良質美味の米が非常に多く出回ってきております。また作付面積もふえてきております。この結果、試験場成績をまつまでもなく、良質美味な米というものは病虫害に非常に弱い品種でございます。たとえば大蔵大臣おられますが、コシヒカリとか、越栄というのは良質でうまい品種だ、非常に珍重されておる。多収穫ではないけれども良質な米だ。これがいもちには非常に弱い。病虫害に弱い。病虫害に弱いために、あえて今年のような不況がきたのではないか。天然現象もありましょうけれども天然現象に耐えられない品種を、食糧が緩和しておるということのためにそちらの方向へ向けた政府責任は重大ではないかと思うのです。産米改良の上からも、良質米、しかも等級一等、二等の高いもの、それで奨励をしてきた。この品種病虫害に弱い。病虫害に弱いために、むしろ期待した一等米、二等米が出ないで、良質の五等米なんというのはむしろ食うにたえない。むしろ多収穫のかたい品種でありますならば、これは等級が下がりましてもまだ歯ごたえがするのですが、良質米の五等米、四等米なんというのは、最も美味じゃない。食糧にむしろ適しない米だ。こういうことを計画し、奨励をしたための政治上の責任を感じなければならぬじゃないかと思うのですが、この点どうでしょう。農林大臣及び大蔵大臣からお答え願いたい。
  17. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のように、災害等を避けるため、すなわち、東北地方冷害等を避け、また九州地方台風等災害を避けよう、こういうことで、早場というか、早く米ができるような品種奨励いたしてずっと——その結果であろうと思いますが、ことし一部分冷害がありますが、冷害等を避けたり、台風を避ける、こういうことでいままで増産をはかってきたのでございます。しかし、いまお話がありましたように、決して、米の収穫がふえてきたから、今度は質のいいものをつくれ、こういう奨励はいたしておりません。奨励いたしておりますのは、収穫も多く、米の質もいいもの、その両面であります。収穫も多く、また米の味もいいものをつくれ、こういう奨励はいたしておりますが、いままでの収穫の多いものを捨てて、味のいいものだけつくれ、こういう方針はとっておりません。たまたまいまのお話のような点も事実上あるかと思いますけれども、これはたいへん天候等が悪くて、調製等、乾燥がよくなかったとか、こういう面があるかと思いますが、農林省として奨励いたしております品種は、先ほど申し上げましたように、収穫も多く、また味もいいもの、こういう品種奨励しておるわけでございます。
  18. 川俣清音

    川俣委員 せっかくの農林大臣ですから、私は敬意を表するのですよ。だけれども収量も多くて良質な米なんというのは、日本にまだできていないじゃないですか。農林省試験場成績を見てごらんなさい。まだそういうものは一つも発表されておりませんよ。ここに三十五年の作物統計がありますが、これは試験場成績が出ております。良質な米は比較的病虫害に弱いという結果が出ておる。たとえば全国的に見ますと、全国の米穀の品質出回り状況、三十七年の食糧庁企画庁の調査を見ますと、三十六年は、東北に多いササシグレというのが、出回りでは五・七%。三十七年になりますと五・一%。東北に多いホウネンワセなどは、全国収量のうちの六・三%という出回り、この品種だけで六・三%も出回りしておる。さっきのコシヒカリども全国収量のうちの二・四という出回り率を示しておる。それほど需要が高いと申しますか、農民の採算からいっても合うと申しますか、農村労働力が手不足になりますと、収量が多いよりも、収穫が少なくて、そして単価の高いものを選ぶのは当然なんです。その結果、こういううまい米という奨励もありましょうけれども一つは、収量が少なくても、単価が高くて収入の上がるものを選ぶのは当然のことです。労働力の不足から起こってくる現象です。そのためにこうした品種が、これは愛知さんの方のササシグレなどというのは、全国的に非常に旺盛になってきている。かつては、これは宮城の特産だったのですが、いまでは東北あるいは全国的にも第三位に位するほどの出回り率です。こうした品種は何といっても病虫害に弱い。こういう病虫害に弱いものは——農林省では多収穫で、しかも味のいい品種奨励しておるなんて、試験場でそういう試験をやっておりますか。何という品種をやっておりますか。どこの試験場でやっておりますか。私はこういうことを赤城さんから聞きたくない、事務的なことだから大臣に聞くべき問題でないのですよ。事務局がそういうことを教えるから、こういうあやまちを来たす。そういう品種奨励するどころでない、試験場試験研究をやっておらない。自分の試験場でやっていないものを、頭の中では、多収穫で優良な品種ということを考える。それは当然でしょう。それならば大きな予算要求して、そういう試験成績のあがるような品種奨励をやってごらんなさい、やらないじゃないですか。大蔵大臣試験場の新しい品種奨励のための予算要求がありましたか、ないでしょう。あったならば、大蔵大臣、すみやかに、多収穫で、しかも品種のいいものを作出したいという試験場熱意にはこたえてやるべきだと思う。これは予算もずいぶん長年月を要します。一時的なものであってはなりません。しかし、農林省自体計画をしていないで大蔵省に要求することもできない。せっかく赤城農林大臣百姓大臣として大臣に就任されたからには、下の食糧庁の若者のわからない連中のことを聞かないで、あなた自身の判断で、ひとつこれからの品種改良に力を入れる熱意がありますかどうか聞きたい。  続いて、ことしの麦が長雨のために災害を受けた。日本気象条件からいって、まことに麦には不適な気象条件にあるのです。ことし初めての長雨じゃない。日本が麦作を始めて以来宿命的な雨にあっておる。これに対応するような麦の品種改良をやらなければならないのに、怠っておるのですよ。長雨が初めてきたのではない。日本気象条件からいって、気象データからいって、常に麦には雨を伴う条件になっておる。そういうデータがあるにかかわらず、長雨のために麦が不作だという。不作を克服することが農林省のつとめじゃないですか。初めて起こったならば、手が伸びない。毎年起こってくる現象をつかまえないということになると、何のために農林省があるか。それでも食糧危機は防げますなんということは言えない。こういう根本対策を講じて、将来は食糧危機をこれによって防ぐという態度がなければならぬと思う。農林大臣、どうですか。
  19. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 耐病性も強く、また良質の多収穫品種を大いに奨励しろ、ごもっともでございます。いまお話しのように、奨励しているのですけれども、まだ完全にというわけにはいきません。その中途でございますが、決して試験場等でもそれを怠っているわけじゃございません。事務当局から教わったなんて言われても困るのですが、まあ教わったのですが、ホウネンワセとか金南風とか農林十八号、こういう作付面積も、パーセンテージもここに出ていますが、こういうものを大いに奨励して、どんどん成果をあげておるわけでございます。しかし、いまお話しのように、多収穫であり味もいいというものが全部でき上がったというわけでもございませんから、御指摘のようなことになお一段と注意いたしまして、試験研究ばかりでなく、実際面におきましてもそういう品種が多く栽培されるようにいたしたいと思います。また、大蔵大臣のほうにも、どの品種をやるという要求をしてはおりませんけれども試験研究予算といたしまして、その中にはいま申し上げたようなものの研究に相当力を入れるような含みをもって予算要求いたしております。  それから麦の長雨による災害でございますが、ごもっともで、とにかく雨の降る国でございますし、麦の収穫時期等においてはことに雨の多いときでございますから、前々から品種の面からはこれを避ける品種奨励いたしておりますけれども、ことしはたいへん異常の長雨でございましたので、まことに残念ながらああいう結果に相なったのでございますけれども、御指示の方針に沿うて、なお一そう督励いたしたいと考えます。
  20. 川俣清音

    川俣委員 これだけで時間を費やすわけにいきませんので、大臣大蔵大臣並びに企画庁長官にひとつ教えておきます。それは、ことし北海道だけが不作を免れたのは何か、北海道がたびたびの冷害のために品種改良に異常な関心を払って努力をしておる結果なんです。これはお認めにならなければならない。北海道で、冷害地帯が比較的ことしの収量がよかったということは、一番条件の悪い北海道がよかったということは何を物語るか。これは品種の改良に大きに力をいたしておるゆえんなんです。北海道がやれて農林省がやれないのはどういうわけなんですか。北海道は農産県でありますために、道庁の予算等を特にさきまして、品種改良には今日まで非常に力をいたしてきた。その結果、その効果じゃないですか。北海道だけですよ。例年であれば作柄が悪いところの北海道が、ことし作柄が比較的いいということはこれじゃないですか。こういう見当で農林省みずからがやらなければならない。このごろの食糧庁は、いままでの農民の努力によって食糧が緩和してきたものですから、少し横着になりまして、熱意が薄くなってきた。これは大いに戒心を要すると思う。私の計算だと、やみ米が百六十円から百八十円に値上がりするのじゃないかという計算も出てくる。もしそうなったら一体どうするのです。食糧庁は解散しなければならぬ。何の責任を持って食糧庁をやっておるか。多年の経験を持ちながら、やみ米価格が上がるというような想定ができない、この責任はもちろん農林省ですけれども、あれだけの組織を持っておる食糧庁責任だと言わなければならぬ。大臣よほど関心を持たなければならぬと思う。  次に、食糧事情緩和のために補正予算を出されておるわけですが、その内容を少し明らかに御説明願いたいと思います。私も知らないわけじゃございませんけれども、一応御説明を承っておきたいと思う。  三十八、三十九米麦年度輸入食糧の数量、価格補正を要する資料として、私のところへ出されております。三十七、三十八年の配給実績も出ておりますが、この説明によりますると、こういう説明なんです。三十八年度輸入食糧の数量、価格補正を要する理由、外国米買い入れ予算補正する理由昭和三十八会計年度の当初需給計画上の外国米買い付け予定数量は十一万五千トンであったが、その後食糧逼迫してきたので、さらにまた三十七年度の徳用米の供給不足が明らかになってきので、この需給を緩和するために外国米二十一万六千トン、すなわち最初の計画の培の外米を買い付けなければならないという補正でございます。外貨不足に悩んでおるときに、国内にある食糧ではまかない切れないで外米を買わなければならないという事態、しかも当初予定の十一万五千トンに対し、二十一万六千トンの補正要求でございます。これが補正要求なんです。いわゆる需給が困難だということ。さらに麦につきましては、本年の国内麦の凶作によって、政府買い入れ見込み数量が二百五十万トンだと思いますが、——政府のほうでは大幅に減少したというが、実は二百五十万トン内外。国内需要を充足するために、外国産麦類の輸入必要量は、当初計画では小麦が百七十六万三千トンと考え、約五百九億円を予定しておったのであるけれども、これも五割増し以上の二百四十一万三千トンの小麦と、大麦——日本にも大麦ができて相当な増産の傾向にあるのを、大麦につきましてはむしろ国内的には減産政策をとっておるわけですが、そのために起こった不足、十二万五千トンの輸入が必要になってきたという補正要求であります。これだけの補正をしなければ需給のバランスがとれないという事態なんです。そう甘く考えてはならない事態。しかも農林大臣、ことしの作柄は、九月十五日現在千三百万玄米トンという収量見込みである。その後脱穀調製のあとからいたしまして、だんだん減収歩合が激しくなってきた。この調査が、統計調査部の人員の不足と旅費不足から、十分調査が早くきまらぬために調整がおくれたんです、調査調整ですよ。おくれておりますけれども、新聞社の調査や農協その他の調査によりますると、農林省はかなり楽観的な収量でございますけれども、おそらく千二百八十万トン内外じゃないかといわれておる。あるいは千二百八十五万トンまでいくかもしれません。そういう事態だと、配給量を確保できないこと明らかじゃないですか。千三百万トンに出回り量を五三・四をかけ、四六九九ですか、七五とか出して、そしてわざわざ、その数字に算術上出てこないのに、四千六百五十万石の買い付けができるという計算になっておる。千三百万トンの見込みが間違い、五三・四%という出回りを見ることが困難な状態、しかも算術上の計算の誤謬をおかして、四千六百五十万石の出荷量はあるという計画なんです。あやまりないですか。
  21. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お答えいたします。まず輸入食糧の増につきましての先ほどの御説明でございますが、今年度当初の輸入計画に加えまして約十万トンの輸入の増加を見ましたのは、一つには、これは三十八米穀年度でございますので、三十七年産米の作柄が非常によかった関係で、下位等級米が非常に少なくなって参りました。前年にたしか下位等級米が五十万石ぐらいありましたのが、十四万五千というふうに非常に減りました関係で、これに見かわるものといたしまして、大体準内地米がこれに該当するであろう、それにおきかわる需給というものを考えまして入れましたのが一つと、それからもち米の作が必ずしも当初計画したとおりの数量にならなかったということで、これを外米におきかえて入れたいということが輸入量のふえた大きな理由でございます。  しからば三十九米穀年度においてどのような需給になるかということでございますが、先ほど農林大臣から御答弁申し上げましたように、確かに昨年に比べればことしの作は若干落ちるわけでございますけれども、いまのところ千三百万五千トンの当初の収穫作況の見込みに対しまして、先般統計調査部から出ました予想収穫高は千二百八十七万トン、これも史上第二位だということになっておりまして、これの昨年との買い入れの状況を対比いたしてみますと、大体九月末あるいは十月十日、十月二十日、いわゆる時期別格差のついた時期におきましては、いずれも昨年の実績を上回って政府の買い入れが進展しておるという状況でございまして、現在におきましては、つまり十一月の末におきましては、先ほど大臣からお話がありましたように、九八%までに至っております。大体各地方のその後の状況から、われわれ食糧事務所の組織を通じて集まっている見通しを見ますれば、昨年度の買い入れ量よりもはるかに上回って集まるんではないだろうか。したがって、いま御指摘になりましたように、大体四千六百五十万石程度の買い入れ見込み量というものを立てて需給を立てる、こういうことにいたしておるわけでございまして、大体いまお話しになりましたようなことが基調になっておると思いますが、米の需給については、全体としては何らの不安はないと考えておりますが、買い入れ比率が五三%というふうに、四〇%台からだんだん高まって参り、それに応じて売却量もおのずからふえる。しかし米全体の消費量としてみれば、大体安定した形をとっておる。つまり、食管の操作面だけについては多少比重が高まっておるという傾向があることは、御指摘のとおりであります。しかし、それは操作の問題でございまして、全体としての需給の形においては、大体三十九米穀年度におきましても不安はない、こう考えておる次第でございます。
  22. 川俣清音

    川俣委員 長官、あなたのほうは、最初は九月十五日現在で千三百万トンと見て、その五三・四で玄米トン六百九十四万四千トン、四千六百二十九万石と出てくるのですね。それは出てこないですよ。それをわざわざ六百九十七万五千トンと計算するからには、出回り率を五三・四より上げてこなければならぬ。上げていないで計算上出てこないじゃないですか。四千六百二十九万石より出てこない。玄米トンにして六百九十四万四千トンなんです。石に直すと四千六百二十九万石、このくらいの算術はできるでしょう。それがどうして四千六百五十万石になるのです。だから計算違いじゃないか、こう言う。それに千三百万トンと見たときの計算、千二百八十万トンとか七十万トンとかいうことになると、この比率が出てこないのです。ですから、そのほかに——私の最も心配しているのはそこじゃないのです。計算違いはいいのです。そんなものはそろばんを置けばいいことだから……。最も心配するのは、農村が金詰まりのためにあるいは生活が向上したために換金意欲が強く、なって、出回りを上ると起きてくる問題は何かというと、保有米の減少となるのです。この保有米の減少が流通性を失った米というものになって、やみ価格が横行するのではないか、奪い合いが始まるのではないか。農村保有米がなくなれば、大部市では配給に依存度が高いから、案外やみ米が出ないかもしれぬ。ところが、小都市は配給に依存しない。自由流通米を、農村保有米を相手に売買されておる。自由流通米というものが枯渇してくるというと、農村からやみ価格が高騰してくるのじゃないか。あなたのほうであまり吸い上げるので、農村保有米がない。保有米がないということが自由流通米を窮迫させておるんだ、これからやみ価格が出てくるのじゃないかということを憂えて話をしている。何らかの対策を講じなければならぬのじゃないかということなんです。これだけの数量が集まるから、それで見込みを少し越して集める。それはいま農村でも収入を考えて、換金意欲が強いから、生活が向上して換金意欲が強いから、ほとんど政府に売り渡すでしょう。かつてないほどの売り渡し量なんです。収量があったからじゃないのです。収量が不足でも、換金しなければならぬために出回りしておる。政府に売り渡されておる。それを収壁が多いんだということになってくると、大きな誤算が生じますよ。これを警告しているのです。
  23. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 先どの買い入れ見込み量につきまして、いま御指摘になりました数字から申し上げますと、まさに千三百万五千トンと見込みまして、五三・四%という過去の三カ平の平均の供出の推移から計算した率を使いますと、御指摘のとおり四千六百二十九万石ということになるわけでございます。それは数字上そういうふうになりますから、これはどのように計算してもそうなるわけでございますが、私のほうでこれを四千六百五十万石と見ましたのは、ことしの予約が前年度に比べまして非常にふえたということと、それから当初これを見込みました状況におきまして、昨年度よりも、予約の数量ばかりでなしに買い上げ比率も高まったし、また昨年度予約いたしました数量をこえて販売いたしました最終的な政府買い入れ量も、これもまた予約数量を上回っておるわけでございますが、ことしも、これまでの進展の状況から見ますと、若干これよりも、計算上したものよりもふえるのではなかろうかというような見込みをつけまして、まるく四千六百五十万石というように見込んだわけでございます。  そこで第二の御質問の、かりにそういう見通しに立つとすれば、それは農家保有米をさいてより多く政府に売り渡す結果を織り込んだことでないか、こういう御質問であろうかと思いますが、そういう面で、最近政府の買い上げ量がだんだん多くなったのは、やみが一部そういうものに転化して政府買いしげになってきたという部分が確かにあると思います。したがって、それだけに今度政府の売却量を増加するということになってきまして、いわば自由流通の形のものが食管の操作の中に入ってやっていくということにならざるを得ないわけでございます。そういう関係も十分考慮いたしまして、生産地におきまして確かにそういう事情もございますので、それに応ずる消費者の有効需要を考えて売却量の操作をし、増加もやっていく、こういうことで現在まで推移しておりますが、今後もその点は十分に留意いたしまして、不安がないように、またやみ価格が上がるというようなことがないように、売却量の面におきまして操作をしていく、こういう考え方でおるわけでございます。
  24. 川俣清音

    川俣委員 さっきから、大都市においては大体満配に近い配給をするならば自由流通米に依存する率は低いのだ、したがってやみ価格があまり出るということはないであろう、しかしながら生産地の近くの都市にはもあなた方の配給量から見ても、これは六十何%ぐらいの配給率といたしまして、配船の方法を一人当たりの配給量にいたしましてもかなり低く見て配給いたしておる。その計算になっている。そういう計算でしょう。配給率が下がっておる。従来から下がっておる。計画自体がそれに応じた計画になっている。それだから、完全配給をするにしても不足がそこから来るであろう。これが一つ。それに応じられなければ、自由流通米が不足をしておるから、むしろ生産地の都市からやみ価格が上がってくるのではないか。これをどうして防ぐか。私はほんとうに憂えておるのですよ。これほど食糧が緩和しておるという食糧庁の宣伝で今日まできたが、やみ価格が従来のやみ価格の四割増し、五割増しというような事態になったならば、食糧庁何をしているかという非難が横溢するだろうと思うのです。池田内閣なんか吹っ飛んでしまうかもしれない。それほど逼迫をしておるのに、当時者でなければ知らぬ、知っておらなければならない食糧庁が怠慢ではないかと私は訴えているのです。その事態が起こることをおそれているのですよ。あなた方を怒っておるのではないのですよ。けなしているのではないのですよ。われわれしろうとから見てもそういう不安があるのに、長年食糧庁でめしを食って機構の中におる人がこれがわからぬのか、これを訴えているのですよ。何もあなた方を非難しているのではない。個人を非難しているのではない。もう一度答弁を……。
  25. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お話しの点、あるいは私の答弁が不十分であったかと思いますが、まさにそういうことのないようにということで、一面生産地においては政府の買い入れ量がふえますから、それに応じて従来保有米なり自由米で米の消費をまかなっていたものに対しましては、売却量の増加というようなことは当然操作上考えていくべきことであろうと考えております。そういうことによりまして、一つやみ価格の基準を見ながら、売却操作上適切な措置をとってまいりたいという考えでございます。ただ、最近におきましては、一面そういう自由流通の生産地における現象もございますけれども、他方相当農村から都市に人口が流れていくというふうな面もありますので、両々相まちながら操作上売却面におきまして遺憾ないようなことを考えてまいらなければいかぬ、こう思っておるわけでございます。
  26. 川俣清音

    川俣委員 大蔵大臣農林大臣お尋ねします。  従来の生産者であって自己消費者が、これは都市で純然たる米の消費者になってしまっている。生産者であり自家保有米を持って食事をしておった者が、いまでは都市へ出て純然たる消費者になって、そのための消費量というものが、需要というものが非常に旺盛になってきた。しかも一人当たりの消費率が非常に高いのです。これが食糧事情を非常に逼迫させやしないかと憂えておる一つの根拠になっている。ただ、私は、いまあなた方を非難するなんという気持ち一つもないのです。ほんとうにこれは憂うべきことじゃないかということを憂えておる。したがって、つぶさに、農村を回りながら、一体、もう新米を食っておるのか、古米でまだやっておるのか、保有米は一体どれくらい節約できるのか、一々聞いて歩いてみているのです。それほど真剣に悩んでおるのに、従来農村付近の中都市では配給率というものは非常に低かったから、それよりも配給ルートに乗せた計算になっていないのです。従来どおりの配給のルートへ乗せた分だけより需給計画に乗っていないのです。それがやみ値が出ては困るということで配給するということになると、全体の需要に不足が来るわけです。総体の需要に見込んでないものを見込まなければならないということなんです。それが見込みが薄いのじゃないか、こう指摘をしているのです。やみが旺盛になるなら手を打たなければならぬ。ところが、それは予定外の需要計画だ、こういうことになって、全体の需給がまた逼迫をするのじゃないか、これを憂えているのです。大臣、いまから対策を講じなければならぬでしょう。ほんとうにおそろしいことです。これは政府責任なんです。従来、食糧というものは緩和してきたのだから、そう増産に真剣にならぬでも、選択的拡大だとか、いや構造改革だとか、いろいろな方面に転換させて、いろいろな方向に植えつけたことは、決して悪くはないでしょう。それも大切だったでしょう。しかしながら、目が、考えが、食糧が緩和されておるという上に立ってのいろいろな農業施策。したがって、いまや食糧が不安だということになったら、どんなに農業構造改善なんて、やったって、進みやしません。食糧が安全だという上に立って初めて農民があらゆる仕事に手を出すことになると思うのです。みずからの食糧が不安だという中に、何で農業構造改善なんか進められるものですか。諸般の政策にいろいろな影響を来たすであろう。しかも、先ほども申したとおり、政府がどんなに物価対策を講じようと、あるいは公共料金を押えようとしても、食糧値上がりから来る物価の騰貴に対しては、これは応じ切れないであろう。もう少し、大臣、これは大臣がやるべきでなくて、食糧庁が長年これで飯を食って経験を積んできているのです。ただ、いままで食糧は緩和しておったものだから、少し安閑としておるだけなんです。勉強すれば対策は出てくるはずなんです。無能じゃないはずなんです。だから、有能に働いたらどうかと、こう指摘しておるのです。大臣答弁を求めます。
  27. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一々ごもっともでございます。決して私ども食糧事情を楽観しておるわけではございません。やはり長期の需給計画等を立てながら慎重に食糧問題を考えて対処しておるわけでございます。しかし、悲観もするような状態じゃないということは、申し上げたとおりでございます。しかし、いまおっしゃるような全消費者の問題あるいは生産者の消費の問題それからまた、食糧事情が安定しなければ選択的拡大とかなんとか言ってもそういう方向に進み得ないのだ、こういうお話、一々私もそのとおりに考えております。でありますので、お話のことは十分食糧庁等にも厳重に話しまして、不安のないような、そしてまた、農業が選択的拡大の方面にも発展し得るような、あるいは全体の国民にも寄与できるような方向に、十分対策をなお進めていきたいと思っております。
  28. 川俣清音

    川俣委員 じゃ次に移りますが、農林大臣大蔵大臣お尋ねしますが、三十九年度の生産者価格、買い入れ価格は従来どおり生産費及び所得補償方式で計算をするということになっておりますが、この方針には変わりはないでしょうか。
  29. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その方針で進めるつもりでございます。
  30. 川俣清音

    川俣委員 この方針は、これは食管法に基づく再生産を確保することを旨として米価をきめなければならないという方針の一番的確な算出方法だということでこの方式がとられておるわけです。したがって、前の閣議におきましても、再生産を確保することを旨として食糧対策を講ずるんだという閣議決定がなされておるようでございますから、これには万変わりはあるまいと思いますが、特に今日におきましては、生産農民をしてよほど増産意欲に力を入れるような方式をとっていかなければならないところに来たのじゃないか。今日のようにいつまでも外米に依存し、外麦に依存することが非常に困難だ。特に、世界の市場を見ますと、自給自足のできない国に対する麦の売り渡しはかなりきびしくなってくるのじゃないかと思われます。一面自給自足がある程度達成されるという計画ができて、なお不足のときに外麦を買うというならば、有利な買い付けも可能でありましょうし、確保も可能でありましょう。しかしながら、全く国内における精細が逼迫をしておるなんという状態が続くならば、これは、つけねらわれまして、外麦の買い付けを初めとして確保が非常に困難なのじゃないかと思われます。これがいまの世界市場です。そういう意味からも、国内食糧というものの自給体制というものをもう少し強化していかなければならぬのじゃないか。そうして、やむを得ず不作のときにはこれを補う。基本的には自給自足の体制を整えておかなければ、需給の困難があまりにも明らかになってくるのじゃないか。こういう点に関心を持っていただきたい。そういう意味での米価の決定でなければならない。ただ、私は、上がるばかりが能だと言うのじゃないですよ。そういう意味じゃない。国内の自給体制というものを完備させる対策を価格の面からもとっていかなければならないじゃないか。価格が万能であるとは申しません。これに対する答弁を願いたい。
  31. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 何といたしましても、国内食糧が充足できる、こういうことは必要でございます。輸入をするといたしましても、工業方面のいろいろな輸入などを必要とする面が相当あるのでございまするから、米の国内で自給ができるということは、他の産業に対しましても、あるいは国の財政に対しましても、非常に寄与するところが多いと思います。そういうふうにいままでも進めてきましたが、そういうふうにいきたいと思います。  また、価格の問題等につきましても、あの生産費所得補償方式にのっとって、そうして、安んじて米の生産ができるような方法を考えておることは、従前のとおりでございます。
  32. 川俣清音

    川俣委員 次にお尋ねをしたいのは、これは大蔵大臣お尋ねします。  食管会計が赤字だということで大臣はいつも頭を悩ましておられます。三十八年度の政府コストと申しますか、国内米管理勘定コストと申しますのが正確でしょうと思いますが、このコストの予算は石当たり千二百八十二円です。これは予算コストです。ところが、いつでも予算は多く見て赤字の出ないようにするのでしょうが、決算は常に予算コストよりも下がっております。たとえば、三十七年は千二百四十円と見たのが補正で千九十五円、三十七年の決算では千五十五円と大幅にコストが減少しております。その例を見ますると、千二百八十二円というコストはおそらく決算ではもう少し減るのではないかと思われるのです。三十七年の補正のときにはこれを補正しておりますが、三十八年の今度には補正が入っておりませんようですが、決算ではおそらく千二百円台を下るであろうと思われます。これは基礎があるのです。大臣、これは検討させましたか。食糧庁でもいいです。
  33. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 御指摘のように、予算のときのコストと決算のときのコストにおきましては、運送の関係、あるいは保管期数の関係、さらにまた利子の関係、これは国庫余裕金を利用するという関係がございまして、当初予定したところよりも異なるという場合があり得るわけでございます。また、保管料、運送等のコストにつきましても、できるだけ合理化してコストダウンをはかるようにということを実行上は常に努力いたしておりますので、それらの変動要因もございますので、当初の予算に織の込んだときよりも若干変わることは従来もありましたし、今後も若干の変動はあり得る、こう考えております。
  34. 川俣清音

    川俣委員 若干じゃなくあり得るはずなんです。あなたの答弁の中にもう一つ説明が足りないのは、事務人件費というものは減るはずになっておる。なぜかというと、大臣、事務人件費というのは、これは米にかかった事務人件費ではないのですよ。振りかけしているのです。割り振りしているわけです。外米が多く入ったり、外麦が多く入ると、振りかけの率が違うのです。内地米は八〇%幾らです。八〇・七七ですかな。外麦輸入米については一〇%幾らなんです。これが、外麦がふえ、輸入米がふえると、この振りかけがもっと上がってくる。米に対するコストが事務人件費はもっと下がってくる。こういう要因ははっきりしているのですよ。今度の補正外麦を買う、外米を買うという。外米、外麦の総買い入れ高、総売り上げ高を総和にして、国内産米の総額とこれとを比較してみて、それで比率をきめておる。何も専務人件費なんというものは——金利にしたって実はそうです。振りかけなんです。割り振りだけなんです。かかった費用じゃないのです。割り振りの率がわからなければ、それでは説明しましょうか。そういう計算のしかたをしておるから、コストも下げようと思えば下げられる。人為的にも下げられる。大蔵大臣はそいつはわからなかったでしょう。ほんとうにかかった経費じゃないのですよ。ほんとうにかかった経費だといって、赤字だと思ったら、とんでもない間違いだ。振りかけしてある。保管料から運賃からみんな振りかけてある。特に大きなのは、事務人件費、金利です。これは振りかけしてあるのです。米に要する金利じゃないのです。米とほかのものと比較して、借りた金をどう分配するかという金利の分配のしかたをしているだけなんですよ。一体こんな会計というものはないですよ。会社でこんなものを出したら、計理士なんか見たら、こんな会計なんというものはみんなふしぎなんだ。だから、おそらく食糧庁長官を何年やったってこの経理はわからない。部長を何年やったってわからない。専門家が来て何年かかったってわからない。それほどまかふしぎだというか、ふしぎじゃないのでしょうけれども、これがあたりまえのような顔つきをしていままでやられておる。それで赤字だ赤字だなんと言ったって、赤字の出る要因というものは、単に買い入れ価格が高ければ赤字が出るのだというだけの頭で判断してはならない。どこに要因があるかということを、大蔵省はそれこそ何かのすみをつつくほどけちな計算をするのになぜこれをやらないか。大臣、もう一度ひとつ答弁願いたい。
  35. 田中角榮

    ○田中国務大臣 会計経理のやり方で、割りかけ費をきめて、その数量によって割りかけをするという方法はない、こう言われますが、これはあります。これは、支店をたくさん持っておるところは、本社経費は各支店に割りかけ費として案分するわけでありますから、会計の法則上から言えば何ら問題はありません。ただ、食管というのは、生産者米価が上がると、そのときに必然的に食管の赤字がどうなるという問題が惹起されますので、そういうことを言う場合には、より厳密に、割りかけ費を数量によって案分するというようなことではなく、実際に精算をすべきだという議論は、確かにあなたの言うとおりわかりますが、どうも、米で言えば、非常に多数のものを一年間にわたって各地から集めるものですから、その保管料や運送費や、また米にかかった人件費のみを厳密に集計をしてコストを積算するということは、技術上はなかなかたいへんな仕事だと思うわけであります。でありますから、在来とも食管会計全体の中の人件費その他を全部集計をして、それを数量に割りかけするということでありますので、実際のコスト計算の方法から言いますと、あなたが言われるように、より合理的にやれという議論は、存在すると思います。
  36. 川俣清音

    川俣委員 それでは、もう一つだけ。それは、 こんな複雑にしないでも、これは管理会計ですよ。事業会計ではない。あへん特別会計を見ましても管理会計なんです。管理会計であれば、これほど複雑にしないでも、当然管理上必要な経費というものを初めから見ておけばこういうことにならないので、これは一般会計で見る。いつでも、赤字が出てからあとで補てんするのだから、どうせ赤字が出るのだから一般会計で補てんするのだから、その点は明確でなくたっていいじゃないかというのが大蔵省の従来の頭なんです。そうでしょう。この頭を切りかえろと言うのです。初めから消費者が負担しなければならないものと政府が負担しなければならないものと明確にしておくならば、この管理会計というものはもっとわかりやすくなる、きれいになると思う。そうして、出た赤字についてはもっと厳格にやったらいいと思う。それを出し惜しみしながら、大きくなったらどうせ負担しなければならないだろうというけちな考え方をしないで、負担すべきものは負担する。たとえば金利のようなものでも、管理会計の金利というものは、あへん会計でもやっているように、これは負担するんだ、こういう考え方になると、金利費用の吸い上げなどしなくても済むようになる。そうするともっと会計が明瞭になると思う。消費者が負担しなければならぬもの、政府が負担しなければならぬもの、こう明瞭にすることによって、この出た赤字というものは消費者が負担しなければならないということがわかるだろうと思う。何が何だかわからないうちに赤字を消費者に負いかぶされるから不満が出てくるのだと思うのです。これがいつまでも改善されないゆえんだと思う。田中大蔵大臣の間にこれだけはひとつ整理されたらどうです。
  37. 田中角榮

    ○田中国務大臣 確かに、経費の割り振りにつきましては、あなたがいま言われたとおり、食管会計全体としては一般会計から補てんをするのだからという考え方でいままで処理をされてきたきらいは認めます。第二点として問題になりますのは、生産者米価等が上がった場合に、国内産米の食管会計内における原価計算が非常にできないじゃないかという問題に帰着するわけであります。そういうことをはっきりするために、食管会計の制度の調査会法案をひとつお願いをしまして、皆さんのようなエキスパートにそういう問題を公の立場で検討していただきたい、こういうことを政府は考えておるわけでありますので、あなたがいま言われたとおり、来年度は千億をこえる一般会計からの繰り入れが必要であるというようなことが起きますときには、当然国内産米に対する原価計算も必要でありますので、これらの問題に対しては検討いたしますが、政府だけの問題で片づく問題でありませんので、皆さんのような専門家に、食管会計の中の経理の問題のみにとどまらず、どう経理をすべきであるか、将来の食管会計の問題をどうすべきであるかというような問題も御検討を願えれば幸いだと考えます。
  38. 川俣清音

    川俣委員 私がせっかくあなたに、あなたの時代におやりになったらどうですかとすすめておるのに、どういう人と相談しようと、いいですか、あなたの時代にやらないと、これはなかなかできないと思う。従来の大蔵省のこちこちの頭では、同じ金を出すなら、そんなことはいずれ出すんだからということで、なかなか解決がつかない。そのために、一体消費者がほんとうに負担しなければならぬのかどうかわからぬ。消費者がほんとうに負担しなければならないというものであれば、これは、この処理はしやすいんじゃないですか。政府が何となく一般会計から出して、やるようた出さないような、そういう会計だからいかぬのであって、これは消費者が負担しなければならぬ赤字なんだ、これは政府が負担すべきだ、こう明瞭にしておくことが、食管会計をして非常に明瞭ならしめるし、また、車後処理についても、一般会計の負担も結局は軽くなって済むのじゃないか。出し惜しみをして、かえって大きな負担をしておるのじゃないかと私は思うから、あなたの時代にひとつ解決することをおすすめいたしたいと思うのです。  次に、時間の余裕がないので、もう一問だけお尋ねをしたい。これは農林大臣が主です。  従来、国有林の開放の問題が所々に起こってきております。最近なお熾烈に起こってきておる。ところが、これは国有財産でも、まかふしぎなことですが、大蔵省の国有財産についてはあまり売り払いという問題は起きない。ところが、農林省の国有財産だというと、何か特別に安くしてもらえるのかどうか、大蔵省というのはなかなか渋いけれど、農林省だというと、農民のためには安くもやってくれるんじゃないかという期待もあるのかどうか知りませんけれども農林省の持っておる行政財産については、あるいは事業財産については、安く売ったらどうだという連動が非常に強く起こっている。そのあらわれとして国有林の開放の問題も出てきておる。私はこの出てくるのは理由たしとはいたしません。会計検査院に指摘されて、従来から安く貸し付けしておったものを高く取るとか、そういうことをやりかねないものですから、ついに、それならば開放してもらいたいという問題も起きてくる。従来のやり方が悪いために起こってくる。利用させておるものを利用を剥奪するようなところから起こってくる開放運動もありましょう。もう一つは、林業もまた農業のうもだということの考え方が薄いために、農業は特別にいいものであって、林業というものは農業の外だというような考えからして、農業の中の林業と耕作農業とが土地を奪い合うというような考え方も出てきておるようです。耕作農業のほうが優先して、森林業のほうはあと回しだという、こういうようなところから国有林を開放せいというような運動もあるようです。こうしたことに対して、前から農林省は基本問題調査会をつくって林業のあり方というものを検討されておったはずです。林業に対する基本法ともいうべきもの、農業に匹敵する、対応する基本法というものをつくっておられないから、こういう結果になったのではないか。その責任農林省にあると思いますけれども、したがって、林業基本法というべきもの、私どもは、林業基本法と言わないで、山林基本法または森林基本法と言っておりますが、こういうものを次の国会に出す用意がなければならぬはずだと思うが、農林大臣のお考えを承りたい。
  39. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 林業につきまし出しては、いろいろ問題もございます。国有林との関係、また私有林等にもいろいろ問題がございます。しかし、考え方として、私は、やはり農業というものは、田と畑と、森林といいますか、山といいますか、そういうものとの均衡がとれたものでなければほんとうにいい発達はしないと、こう考えております。  そこで、林業基本法というようなものを出すか出さぬかという問題でございます。これにつきましては、国会等にも非常な強い要望もかねがねございました。また、私どものところに設けておりまするところのいろいろの審議会、こういうものの審議の答申も得ております。でありますので、結論的に申しますと、通常国会には成案を得て林業基本法を提案する、その準備をしろということで、事務当局に鋭意その成案を進めさせておりますから、通常国会には提案するという方針でございます。
  40. 川俣清音

    川俣委員 なかなか農林省が案をつくれないで苦労しておられたようですから、私どもはブルドーザーの役目を果たす意味で素案をつくった、参考に。このくらい手本を示したなら、まねるくらいなことはできそうなもんだと思うのですよ。ブルドーザーでわざわざ道をつけてやったのだから、その道が狭ければ広くしてもいいだろうし、広過ぎたら狭くしてもいいでしょうし、一つの案を示したのです。それを参考にしたらどうだ、こういう意味なんです。私のほうで提案をしようという準備をしておりますけれども、参考にされてはどうだ。せっかくこれだけの案を出したんだし、世間に発表しておる。それを参考にして、すみやかに提案願いたいと思うのです。  それから、もう一つは、いままで森林についての国民的理解が足りないと思うのです。農林省もまた国土保全のために保安林というものを持っておる。これは必要なことは認めます。ところが、保安林というのは、あまり厳重過ぎて、禁伐保安林ですから、一切切らせない。これも国土保全上必要なんですが、保安林までいかないにしても、国民保健上、健康上必要な森林というものがいま必要な時代だ。スモッグなんというものが起きてきて、工業の発達、自動車の発達によって排ガスがたくさん出てくる。その同化作用を行なうのは、天然にあるところの樹木なんです。この樹木を旺盛にすることが、こうした健康的な文化的な生活を営ませるゆえんだと思う。その機能を森林が負っておる。これをただ木材資源の供給源とだけ考えないで、こうした健康保全の上からも必要だという考えに立って公安林的な考え方を持たれてはどうか。保安林ほどやかましくはないけれども、公安性の高いということで、切ったならば必ず植えなければならぬ義務を植えつける、そこに樹木があることが必要なんだ、切ってはならないのじゃなくて、切ったならばすぐ植えていかなければ公安上影響を来たす、国民保健上影響がある、こういう公安林的な構想をひとつ持ってはどうかというのが私の構想なのですが、赤城さんならこれは賛成だと思うのですが、どうです。
  41. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 もう、エキスパートといいますか、ベテランの川俣さんの話ですから、一々ごもっともでありますが、もちろん、森林の意義といいますか、私から申し上げるまでもなく、あるいはこれは貯水池の役割もいたしておりますし、あるいはまたその国の気候を緩和しているというような役割もいたしております。あるいはまたいまのように保健上の役割等も演じているわけでございます。でありますので、森林というものが非常にあった時代には世界の国々も文明国であったというような歴史もございます。非常に大事にしなければならないと思います。特にこのスモッグその他、緑地帯等において森林を設けて保健等にも努めなくちゃならぬということも全くお説のとおりであります。ただ、それを制度上公安林というような形でやるかどうかということはなお検討を要しますけれども、御趣旨の点は十分私も賛成であります。
  42. 川俣清音

    川俣委員 もう一問だけ、農林大臣に漁業の問題でお尋ねをしたいのですが、去る十一日の本会議において、わが党の赤路友蔵議員から漁業災害補償法制定に関する質問について、池田総理赤城農林大臣の間に食い違いがあったというふうに見る向きもあるようです。私はそうたいした食い違いがあったとは思いませんが、農林大臣は、問題はあるが立法の面等においてはできるだけすみやかに立法できる態勢を整えつつあるのでこの点御了承願いますと御答弁されておる。問題のある点については法律の施行規則等によって調整することとし、とにかく漁業災害補償法炎を次の国会に提案されるものと答弁では了解したのですが、その了解、よろしゅうございますかどうですか。その点ひとつお答え願いたい。
  43. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この間の本会議答弁で、総理農林大臣としての私との間に食い違いはないと私は信じております。総理は非常に困難だというようなことを強調されたようでございます。確かに、災害共済制度、補償制度というものには、保険財政の関係から言ったり、あるいは加入の人数等から言って検討を要する問題が相当ございます。しかし、私が前に農林大臣時代に、試験研究をしろということで試験研究を進めてきておりました。試験研究の時ももう大体経過いたしましたので、大蔵省等におきましても、先ほど御答弁申しましたように、予算要求をして折衝中でございます。なお、立法につきましても案を練らしております。これはできるだけすみやかに提案したい、こういうことで作業を進めておるような次第でございます。また、実施につきましては、いろいろ環境というか、条件を整備していかないといけませんから、そういう面をも勘案しながら提案の準備を進めておる、こういう現状でございます。
  44. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 川俣清音君の質疑に対し、関連をいたしまして石田宥全君の質疑の申し出があります。これを許します。石田宥全君。
  45. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は、先般来問題になっております固定資産の、再評価並びに税率の問題について自治大臣お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、十一日の本会議総理大臣は、固定資産税については農地に関する限り私の責任において絶対に増税はいたしませんと答弁をいたしておるのであります。これは御案内のように経過がございまして、四十三国会では、やはり総理大臣が、固定資産税は増税とならないようにすると言明をいたしました。四十四国会では、同定資産税は減税すると言明をされておるのであります。そうして、この間十一日には、ただいま申しまするような言明となったのであります。今日、地方自治体では、来年度の予算編成の関係、三月一日からの縦覧期日を前にいたしまして、いささか混乱をいたしておるようでありますので、総理大臣の言明はそのまま受け取ってよろしいのかどうか。  それから、そのまま受け取るとすれば、第一は、売買実例価格による評価がえを農地に関しては行なわないということであるかどうか。  二番目には、税率を種目ごとに違わせて法律の改正を行なおうとするのかどうか。たとえば、税率を下げて償却資産の税額は下げるが、農地は据え置いて、その分は農地以外の税率を上げて税額を動かさないような措置をとるのか。  三番目には、固定資産税額を減額するものであるのかどうか。  この四点について自治大臣答弁を願いたい。
  46. 早川崇

    ○早川国務大臣 お答えいたします。  石田委員の言われることにつきましては、明確に農地は増税しない。その具体的方法は、税率を下げるとか、そういうことはやりません。法律で、前年度よりは農地の同定資産税は上げたい、個々の納税者に対して、明確に法律をつくりまして、農地については前年度並みというようにはっきり書きたいと思っております。
  47. 石田宥全

    石田(宥)委員 先ほども申し上げたように、売買実例価格による評価がえは行なうのか行なわないのか、この点答弁が落ちておりますので……。
  48. 早川崇

    ○早川国務大臣 評価がえをするということと増税するということとは別個に考えておりますし、売買価格による評価によりまして農地はあまり上がらぬかもしれませんが、宅地とか、あるいは山林とか、五倍、六倍と上がっているのがあります。しかし、政府の方針として農地は上げないときめましたから、評価と、税金をどれだけとるかということとは別個に考えまして、法律で前年度以上上げないというふうに書くわけでありますから、農家の方が評価がえによって増税されるということはございません。
  49. 石田宥全

    石田(宥)委員 答弁が不十分でありますから、もう一、二問お許しを願いたいと思いますが、そういたしますと、私はさっき一括して質問を申し上げたので、のみ込みにくかったと思うのでありますけれども、売買実例価格で評価がえが行なわれ、農地だけは増税はしないということになれば、これは地方税法の中でその税率はきまっておりますから、法律を改正して、農地に対する税率だけは上げないという、この固定資産税だけは上がらないような措置をとるというのかどうかということ。ですから、償却資産については、これは据え置きになりますから、税率が全体に下がればその償却資産の固定資産税は大幅に下がるわけですね。ところが、従来は、その分を、土地等、すなわち田畑、宅地、山林等の固定資産税を上げることによって総額は上げないという考えであったのです。ところが、償却資産のほうも減税になる、据え置きだとすれば、その総額を動かさないとすると、宅地や山林その他の固定資産税が非常な増税になることになるわけでありまして、宅地に対する非常な増税になるということになれば、これは家賃、地代の値上げ理由と口実を与えることになるので、非常に問題は大きいと思うので、私は一括してさっき質問を申し上げたのですけれども、その関連はどうお考えになっておるかを明らかにしていただきたい。
  50. 早川崇

    ○早川国務大臣 全体としては大幅に増税にならないように措置いたしたいと思っております。  それから、宅地関係におきましても、目下税制調査会と自治省で検討いたしておりますが、宅地につきましても、ほうっておいたら、評価のそのままをいま税率をかけますと六、七倍になるのです。ですから、法律で、三割以上は上げない。四割という説もありますけれども、三割どまりにして、家屋のほうは、御承知のようにむしろ減税になりますから、土地、家屋合わせた総合の税額というものはほとんど上がらないのじゃないか。したがって、全体としては、自然増収というような面は別でありますけれども、前年度並みの同定資産税総額、約二千億ちょっとこえますけれども、その線につきましては大幅に変動はございません。  私も、石田宥全先生の言われるように、評価が上がったんだからいまの税率そのままでも上がるのではないかと思っておったのです。ところが、それは、別個の特別法で、農地については前年度並みという法律をつくりますから、したがって、その特別法が優先して、農地については前年度並み。ただ、問題は、土地改良をしまして、前年度よりもうんと農地の価値が上がったという場合もあるいは中にはあるかもしれませんが、これもなかなかその評価はむずかしいですから、もうなべて農地については、特別法で前年度並みということを明記するというようにきめたわけであります。
  51. 石田宥全

    石田(宥)委員 一般の税率はどういうことになりますか。従来の税率を動かすのかどうか。
  52. 早川崇

    ○早川国務大臣 百分の一・四という据え置きか、百分の一・三とか、いろいろ議論がございますが、そういうことはまた別途検討いたしております。
  53. 石田宥全

    石田(宥)委員 先ほど宅地については一定の率で押えるというお話がございましたけれども、山林についてはどうですか。評価は四倍くらいになりそうな見通しなんでありますけれども、これについてもやはり一定倍率で押えるという措置をとられるのですかどうですか。
  54. 早川崇

    ○早川国務大臣 農地以外の土地と同じように頭を押えたいと思っておりますが、評価によりますと二、三倍になっておりますけれども、大幅な増税にならないように調整措置を講ずるというように目下検討中でございます。
  55. 石田宥全

    石田(宥)委員 これで終わりますけれども、評価がえが行なわれますと、自治大臣、これは実は法務省関係者を呼んであるのですけれども見えておりませんが、いまでさえも宅地も農地もすべて土地の値上がりで国民生活を圧迫しておるわけです。評価がえによってさらに土地の値上がりを招くことは言うまでもございません。そういうことで、さらにその上に登録税、譲与税、それから相続税、そういうものが大幅にいま値上げを法務省は検討しておるといわれておるのでありまして、そういう点についても、きょうは私は時間がありませんから、これ以上申し上げませんけれども、やはり自治大臣責任においてそれらも関連して考慮をされたいと思います。同時に、地方自治体が、先ほど申し上げまするように、財源の有力なものでありますから、それによって地方財政に及ぼすところの影響も甚大でございますので、それらの点も考慮されて慎重な検討を期待し、なおこまかな点については別の機会で御質疑を申し上げたいと思います。  以上で終わります。
  56. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これによって川俣清音君並びに関連質問といたしまして石田宥全君の質疑は終了いたしました。  午後一時十分から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時七分休憩      ————◇—————    午後一時十六分開議
  57. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十八年度補正予算三案に対する質疑を続行いたします。山口丈太郎君。
  58. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は、主として国鉄を中心とする交通問題に限定をいたしまして、御質問をいたしたいと存じます。  質問に入ります前に、まず私は、先ほど起こりました鶴見の大事故について御質問を申し上げたいと思うのであります。これは運輸委員会なり、あるいは本会議等におきまして、運輸省並びに国鉄当局からわれわれに対して報告せられたところでございますが、しかし、その後今日まで、事故の処置はどうなっておるのか、どういう処置をとろうとしておるのかについて、まずその経過を御報告願いたいと思います。
  59. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 国鉄のことでございますから、国鉄総裁に答弁いたさせます。
  60. 石田礼助

    石田説明員 ただいまの御質問に対してお答えいたします。  去る十一月九日に起きました鶴見事件につきましては、あれによって多数の罹災者を出した。まことに国鉄としては弁明の余地のないことであります。つつしんで罹災者のために冥福を祈り、また負傷者の早く回復することを祈るものであります。その後の処置につきましては、一体いかにしてあのような事件が起こったか、その原因は那辺にあるかというようなことにつきまして、ただいま徹底的に調査中であります。貨車が転覆するということは、何も鶴見事件において初めて起こったことじゃない、いままででもしばしば起こったことでありますが、それによって、結果がたいしたことでははかったというようなことによっていつも中途はんぱに、調査が不十分であった。今度のようなああいう大事故を起こしたということにつきまして、国鉄としては徹底的にひとつ調べまして、臨機にさっそくやり得ること、それからまた根本的に改良しなければならぬこと、こういう二つに分けてただいま検討中でございます。
  61. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は、ただいまの国鉄総裁の答弁はきわめて遺憾であります。私の質問をしておる本旨は、同時に、その事故によって生起いたしました遺族並びに負傷者等に対する補償その他の事案解決についての具体的な処置はどういうふうに運ばれているか、本会議場における質問に対しても、運輸大臣答弁はきわめて不満足であります。私どもは、今日一日も早くこれらの遺族への弔慰及び補償、負傷者に対するあらゆる慰問その他の処置をすみやかに講じて、この年末に差し迫っておる時期の窮状を救うべきだと思うのであります。したがって、その具体的なものをここでどうしておるかについて私は答弁を求めておるのであります。したがって、もう少し具体性のあるものをお示し願いたいと思います。
  62. 石田礼助

    石田説明員 ただいまの御質問に対して私がさっき言い漏らしたことは、まことに相すまぬと思います。詳しいことにつきましては、私よりはむしろ副総裁に説明させたほうがよいと思いますので、副総裁に説明をいたさせます。
  63. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 お許しを得まして、私からただいまの山口先生の御質問にお答えいたします。  まず死者、なくなられた方の数でございますが、御承知でございましょうが、百六十名でございまして、このほかに上り電車の運転士が一人殉職いたしまして、それを加えますと百六十一名でございます。去る十一月二十二日に鶴見の総持寺におきまして、御遺族方の御了解を得まして合同法要を営まさせていただきました。その後間もなく、ただいま先生のお話の御弔慰の具体的な御相談に入ったわけでございますが、その前にとりあえず御香典あるいは葬祭料等をお届けいたしましたが、金額は省略させていただきます。その後、各御遺族によりまして御遺族の御収入の状況、あるいは家族の構成等が多種多様でございますが、大体御遺族に当たって伺ったことがまとまりましたので、実は過般来具体的に各御遺族のもとに参りまして弔慰金につきましていろいろ打ち合わせをいたしている最中でございますが、けさ現在までに、おかげさまで全体の約二割強、三十五御遺族につきまして大体お話し合いがまとまって解決いたしておりますが、なお、今後まだ残っております方々につきましては、できるだけの手だてを尽くしまして具体的にお話し合いを進めてまいりたい、こういうふうに思っております。またきょうは、実はちょうど三十五日に当たりますので、総裁代理が各御遺族の御弔問に伺っている予定でございます。  以上、たいへん簡単でございますが、いままでの経過を御説明申し上げます。
  64. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 ただいままで処理されておる状況についてお答えがありましたが、これらの問題は、起これば、やれ不可抗力であるとかあるいは過失、無過失の問題が常に問題となるのでありますが、これは当然問題となるものであるとは存じますが、しかしながら私は、こういうことによってこの輸送機関の交通安全を期することはできないと思います。事故が起こりますと、口にはこれを唱え、あるいはまた事故防止に関しましていつも言われておりますけれども、しかしながら、事故防止に関するいろいろの欠陥を反省して絶無を期すべきものであると思うのでありますが、国鉄内部においては、いつも通り一ぺんの通達や、あるいはまた事務的な処置によって、常にこの根本策を解決するに足る処置に欠けておるのではないか、このように考えるのでありますが、一体この事故を契機として、ただ、いままでに言われておるようなおざなりの解決ではなくて、どういうふうな新しい抜本策をもってこの事故の再発を防止せんとしておられるのか。その抜本策について、私は運輸省並びに国鉄当局からお聞かせを願いたいと思います。
  65. 石田礼助

    石田説明員 まことにごもっともの御質問と存じます。国鉄といたしましては、三河島事故において非常な犠牲者を出したことにかんがみまして、しかもあの事故の主なる原因というものは、従業員の過失ということと、それからダイヤのあまりに細密であったというこの二つの原因であると存じます。したがって、あの三河島の事故以来、従業員の指導訓練の問題、適性考査の問題について大いに考えねばならぬということで、あるいは指導訓練に関する指導者の数とかやり方を変えるとかいうようなことで、特にこの問題につきましては、幸いに労働組合が非常に協力してくれたので、三河島以後十一月までの事故の件数というものはだいぶ減ってきた。ところが、これは山口さんから御質問がございませんでしたが、鶴見事故以後においてまたいやな事故が五つ起こっている。いわく、九州において、いわく山陽線において、いわく上越線において、北陸線において、また最近は新小岩において。この事故たるや、その性質はむしろ鶴見事故以上、比較にならないほど悪い。全くこれは従業員の過失というものが主なる原因をなしておるのであります。  そこで私は、三河島事故を契機といたしまして、何とかして従業員の指導訓練、適性考査その他の問題について反省して、こういうことのないようにということでやってきたのでありまするが、今度またぞろ引き続いて五つも悪質な事故が起こったということにかんがみまして、われわれ国鉄がやっておることについて、何か根本的に間違っておることはないかどうかということで、いまや徹底的に調べつつあるのでありまして、最近は支社長を呼んでいろいろしております。さらには管理局長を呼んで事情を聞く、さらに徹底して、運転局から三人のチームを十三つくって現場についてこれを調べて、われわれのやり方について根本的の何か穴がありはせぬかということについて取り調べておるのでありまして、それによって原因がわかり次第、徹底的に是正しなければならぬ。さらに安全装置の問題、いわく自動信号機の問題、自働停止機の問題、さらに踏切の問題につきましては、幸いに政府の了解を得まして思い切って予算を投入いたしまして、改善をはかったのであります。それから根本の問題は、何といったってやはり国鉄の輸送のダイヤというものの過密化にある。御承知のとおり、三河島のごときは普通百二十本のやつに対して二百二十本おのおの通っておる。外国あたりの専門家をして言わせれば、全くこれは軽わざ芸であると言われるまでに、ダイヤの過密化がある。この問題を解決しない以上は、市政が起こった場合においては連鎖反応を起こして大きな事故になるというおそれがありますので、この根本策を何とかひとつ改善せにゃ、ならぬ、こういうことで、実は三十九年度の予算等におきましても、少なくとも東海道新幹線の完成ととも、第二次五カ年計画の完成というものを三十九年、四十年においてひとつやる、いままではわずかに四割しか進展しないのでありまするが、残りの六割をこの二年においてやる、それで、その後の処置につきましては、単にこれは国鉄だけの計画にしないで、ひとつ政府全体の計画として輸送ダイヤの過密化を是正したい、こういうようなことについて進んでおるのでありまして、できるだけ私どもとしては鶴見事件をわれわれの生きた教訓として、何とか輸送需要の旺盛な要求に応ずるとともに、輸送の安全というものについて国鉄の使命を達したいと思って、いまや一生懸命でやっておるのであります。どうぞ御承知願います。
  66. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 ただいま国鉄の総裁が実地に当たりまして種々検討いたしましたる結果を、三十九年度の予算に、新五カ年計画をさらに改定する、その他によりまして、保安施設あるいはそのおもなるものとして踏切対策等につきまして、予算措置を万全にいたしまして、こういう事故が起こらないよう厳正に、国鉄並びに私鉄にも警告をいたしております。
  67. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 予算のことにつきましては、あとで質問をすることにいたしまして、いまの答弁というものは、私はこれは事故の原因を探究するにはあまりにもいままでと何ら変わりのないことを答弁されているにすぎないと思うのであります。  そこで運輸省にお尋ねいたしますが、運輸省は事故が発生するたびに、事故防止に関するいろいろの警告を出したり、あるいは今回のごときは特別監査をやっておられるようであります。これは事務的には諸種の手を打っているように見えるのでありますけれども、一体この事故防止のために監査をいたしまするその監査は、特別監査は何を一体重点に置いてやっておられるのか、またその監査の結果どういう指導をもってこの事故防止の指導をしようとしておられるのか、行政責任者としての運輸大臣からの御答弁を願いたいと思います。
  68. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 特別監査は、この事故につきましてあらゆる角度から事故原因を探究するよう命じました。すなわち技術的にあるいはダイヤの編成等につきましても、徹底的に調査をするように命じております。そしてその結果はまだ判明いたしません。判明次第に予算措置によるべきものがあれば予算指貫をやるし、さらに予算を要せずして訓練あるいは諸種の施策でできることは、それをやるようにいたしたい、かように考えております。
  69. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はそういう答弁を聞こうとしておるのではないのであります。一体事故防止を目標にして特別監査をやるのでありますから、したがって、その監査というものは何を重点に置いてやるのか、重点のない監査というようなものは、幾らやったってだめであります。したがって、この単純な——言えばこの事故というものに単純に起こるものであります。したがって、事故の再発を防止するためには、重点的に一体何を監査して、何を勧告しようとしておるのか。それがはっきりしないで、安心して私はこの重要な国鉄をまかすわけにはいかないと思うし、行政責任者としての責任は私は免れ得ないと思う。一体何を重点に監査をやったのか。そして勧告をするならば何を重点にその勧告をしようとしておるのか。これをはっきりしてもらいたいと思うのです。
  70. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。ただいま申しましたように、何を重点にというと、私は全体を重点に置いて監査を命じておりまして、技術的あるいは経営的に監査を命じておりまして、その結果をもって私はそれに対処したい考えでございます。何を重点にというと、事故が起こったこと全部についてでありまして、それは監査委員長の判断と常識によって、何が重点かというのは私はわかるはずであると思う。これをやれ、あれをやれというのでなくて、監査は、何によって起こったか、どういうことが原因で起こってこういう結果になったかということを徹底的に調査をしろということを監査委員会に命じました。その結果をもちまして、あなたが御指示になるような、あの点がいかぬからこういうようにする、それは予算が必要ならばあらためて予算要求する、予算がなくてやれることは即時やっていきたい、かように考えております。
  71. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 これは大臣に求めれば無理であろうと思いますが、事務当局はこれは知っておるはずですから、何を重点にやったのか、一ぺん事務当局から、その目標を何に置いてやったかを御答弁願いたいと思います。
  72. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 お答え申し上げます。ただいま大臣が申し上げましたとおりでございまして、まず今回の平政は、従来の単純な事故と違いまして、技術的に非常に複雑な問題をたくさん含んでおります。ただいま国鉄のほうでも技術的に調査を進めておりますが、要するに第一原因である、貨車がせり上がったということが直接の原因でございますので、まずそういった点の技術的な究明をやってもらう。それから事故を大きくしました二重衝突というふうなことも含めまして、どうやったらこういった連鎖反応的な事故が防げるかというような問題、要するに現在まだ原因が不明でございますので、まずこの原因を技術的に徹底的に究明してもらうということでございまして、その結果が判明いたしますれば、これについて具体的な対策も立ちますし、いま先生がおっしゃいましたように、種々の原因のうちでどれを重点にするかということは、原因が判明いたしてから対処すべきものというふうに考えております。
  73. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はこの答弁は満足ではありませんが、時間がありませんから次に参ります。  今日鉄道の輸送のふくそうしておることは、これは時代要請であります。過密になるといわれるダイヤの編成も、これは今日の状態においては、時代要請としてやむを得ざるものでありますが、だからといってその過密ダイヤ等が事故の遠因または原因一つに数えられるというようなことは許されないことであります。したがって、そういう事が起これば、他にその原因を求めて言いのがれをするようなことは、交通従業者全員とし絶対に許し得ないものである。事人命に関する問題であります。最も尊重さるべき人命を、そういう言いのがれによって糊塗することは断じて許すべきものではない。したがって、これに対処する責任というものはきわめて重大である。もっと責任感を持って全員が当たるような指導措置を講ずべきである。ただ単に貨車のせり上がりによって脱線をし、それによって事故が起きた、そういうことの原因だけを究明しておる。それでもって事足れりとするがごときは、まさに責任のがれと言われてもしようがないと私は思う。もっと人的に物的に監査をするというのであり、その監査によって事故再発防止のためのあらゆる手段を講じようとするのであるならば、そのすべての角度から監査をして、どこにそういう素因があったかをもっと責任を持って明確にし、社会にわびるべきものはあっさりと私はわびるべきだと思うのですが、そういう態度は、国鉄当局にも運輸大臣にも、遺憾ながらその他の全部に対しても見受けることができない。まことに私は遺憾に思うのですが、一体どうですか。
  74. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 たびたび申し上げましたように、私どもといたしましては、ほんとうに言葉の上でなく、心から、かような平作を起こしましたことは、国民に対し、また光輝ある国鉄に対していろいろ不信感が起こっては相ならぬというので、私どもといたしましては失心から、誠心誠意陳謝している次第でございまして、私は、今後かようなことの起こらないことを努力すると申し上げて、陳謝する誠意を示す以外に方法はないと考えておりまして、いまさように考えておる次第でございます。
  75. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。鶴見事故の貨車脱線というものが、単に貨車だけ走っておればああいう大きな事件は起こらぬ。ところがあそこはいわく電車、いわく客車というようなもので、一日に九百六十本も走っておる。結局、貨車が脱線したところに列車がきた。しかも過密ダイヤのもとで走っておる列車です。そこに連鎖反応が起こった結果ああいうふうになったということでありまして、事故の原因というものは貨車の脱線が原因でありますが、やはり過密ダイヤというものが非常に大きな原因をなしておるということは、私は考えられることだと思います。したがって、ああいうことを今後繰り返さないためには、貨車の脱線をしないようにするということはもちろんでありますが、過密ダイヤにおける連鎖反応というものを除去するということも、ひとつの大きなファクターだと私は考えております。三河島事故のごとき、全くそのとおりであります。三河鳥事故のごときは、普通百二十本走るところを二百二十本走っておる。これは、もう従業員がすぐ前後の予後措置をとれば絶対ああいうことは起こらない。ところがあの貨車が脱線した時分に、前後の予後措置をとらなかったために、ああいうような連鎖反応を起こしてあれだけの大きな平政を起こした。今度の場合においては、従業員には何らの過失はないが、あの貨車が脱線したときにおりあしく前後から電車が来た。全くあれは過密ダイヤの私は結果だと思う。だからわれわれとしては、安全度というものについて、余裕のない過密ダイヤというものは、もう是正しなければいかぬ、こういうことで、私どもが鶴見事故についてこれを生きた一つの教訓としてぜひやらなければならぬことは、つまりあの過密ダイヤというものを是正して、余裕のあるものにしたい。それで、同時にまた安全装置というものをひとつ設置して、従業員が過失を犯したときにチェックするような方法を講じたい。さらにまた踏切事故、これが今日非常に大きな原因をなしているので、何とかしてこれをひとつ少なくして、踏切事故の減少をはかりたい、こういうように考えて着々として進んでおるのであります。どうか御了承願いたいと思います。
  76. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そこで私はひとつ見解をただしたいと思いますが、これは言い古されていて私はいつも新しいことだと信じておるのであります。  まず私は輸送の安全と保安を確保することは輸送担当者の責任であり、およそ輸送機関に携わる者は、その身分のいかんを問わず、人命をあずかる者としての自覚の上に立ち、職場はもとより、もっと深く、自己の私生活に至るまで厳格に規律を正し、休養その他労働再生産に尽くすことが絶対必要であると私は思うのであります。しかし最近の時勢を見ますると、私生活上いろいろの休養を制約されるような社会事情になっております。たとえばちまたに競馬、競輪あり、あるいはパチンコあり、マージャンあり、いろいろのものが横行いたしまして、そのために私生活を自制すということはきわめてむずかしいことであります。しかしながら首脳部をはじめ全員が、事重大な人命をあずかる交通機関に携わる者としての誇りを持って、私は実践をしてきたことでありますから、人さまがこれを実践できないということはないと私は信じておるのであります。どうしても、他の一般の産業やあるいはまた自分で居眠りを少々やってもかまわない、他人に迷惑を及ぼさない、こういうものとは違いまして、たとえ一秒の何分の一といえども精神弛緩は許されない、重大な人命をあずかっておるのでありますから。したがってその責任を思えば、私生活においてももっと自制すべきである、私はこのように考えるのであります。したがって、これは各自の自覚に待つところ非常に多いとはいうものの、当局者としてもかくあるよう平素から自覚教育なりあるいは自制運動を起こさるべきだと思うのですが、これについての見解をただしたいと思います。
  77. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  山口委員の仰せられるとおりでございまして、全く一にも精神訓練、二にも精神訓練、自覚、これが一番大事なことであることは申すまでもありません。私どももその職場に携わる者の一員として、常にそのことは肝に銘じてやっております。国鉄におきましても、教育と訓練につきましては、職員の人格の陶冶と職貨の自覚と職域技能の向上をはかるような訓練指導をいたしております。また公共奉仕の精神の徹底をも期するよう、あらゆる機会、あらゆる機関を通じて、上下一体となっておるのであります。国鉄の職員がかりにも世間から非難されるようなことがあるならば、私は心外千万であります。私どもはそういうことを常に監督者を通じ、監督者それ自身も、いま山口さんのおっしゃるようなことを常にやってまいっておるのでありますが、社会環境その他によりまして不慮の災害を起こしたことは、さきにも申しましたようにかえすがえすも申しわけなく思っております。
  78. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいま大臣が申されましたけれども、国鉄といたしましては、過般来の非常に恥ずべきたくさんの事故にかんがみまして、実は従来からのやり方が、これはほんとうに先生のおっしゃったとおり、末端まではたして浸透しているかどうかということについても、若干私自身問題だと思いまして、直接の私どもの部下を現地につかわしまして、実際のやり方をもっとチェックして、そしてほんとうにいま先生のおっしゃったような精神が末端まで徹底しているかどうか。たとえば休日の休養が、ほんとうに休養されているかどうかということなどにつきましても、もっと具体的な問題として検討いたさなければならないというふうに考えております。たとえば過般の鶴見事故以後の乗務員の事故につきましては、六件のうち三件が休みの翌日の事故でございました。当日の休養その他について、いま調査いたしておりますが、いろいろな事情で、休養すべきときに完全に休養がとれてないといったようなことが事故の原因になっているといたしますれば、これはたいへん労務管理上、あるいは事業経営上問題だというふうにも思いますので、そういった休養の管理あるいは休養のできる環境等につきましても、十分具体的に検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  79. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 次に私はお尋ねをいたしますが、輸送機関の近代化とその進歩はおそるべきものがあり、ふくそうする輸送の現況は極限にありと言っても過言ではありません。これは私も認めます。しかしそれに対応する施設を完備することは、重大な責任であると思うのであります。しかしこの点に関し、国鉄は国鉄整備五カ年計画を実施する、これを私どもに公約されて実施中にあると思うのでありますが、現にこの国鉄整備五カ年計画につきましてどういうように進行しておるのか、これをひとつ御説明願いたいと思います。
  80. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。第二次五カ年計画のうち、東海道新幹線に関する問題につきましては、幸いにこの議会におきましてわれわれの要求する予算が通過いたしまするならば、来年七月一日に完成し、十月一日から大体業務開始ができるということに確信しております。  それから第二次五カ年計画、これは東海道新幹線以外の幹線に関する輸送力増強、そのほか合理化の問題でありますが、この中にはもちろん踏切の事件もありますし、保安対策の問題もありまするが、保安対策につきましては、大体予定どおりにいっておるのでありますが、その他の点につきましては、五年のうち三年経過したにかかわらず、わずかに四割しか完成しておらない。あとの六割というものが、三十九年、四十年度において完成しなければならぬ、こういうことになっておるのでありまして、われわれとしは輸送需要に追いつくために、ぜひとも三十九年及び四十年において残のの六割をひとつ完成したい、こういうことで三十九年度の予算を出しておるのであります。
  81. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 ただいま答弁がありましたが、総裁は知っておられると思うのでありますが、この国鉄整備五カ年計画は、たびたびの委員会におきまして、従来の計画のごとく途中で変更または延期するようなことは断じてしない、こういうことを言明されて、そして三十六年から第二次五カ年計画としてこれを実施に移されておるものであると私は承知をしておるのであります。しかるに今日の現状では、新線建設計画の言えばずさんから、国鉄のこの平常経費をも流用して、五カ年計画にまたまた大きな支障を生ぜしめているかのごとく聞いておるのであります。何をおいても現に使用している施設について、まず第一にその計画どおり当初立てられた、計画を実施して、そして現に使っている施設の安全を期した後に私は未使用の、建設途上にある新幹線に向こうべきものと思うのであります。ところが全く逆であって、現に使用しているものに必要な経費を建設部門に流用して、現に使っている施設というものをなおざりにしているということは許されないことではないか、一体これはどういうことなのか。私は国鉄並びに運輸省の方針を疑うものでありますし、大蔵省の考え方も私は疑わざるを得ません。どういう意味でこういうような既設経費を流用せしめて、整備五カ年計画に支障を来たすようなことをして、おるのか、まず大蔵大臣からこれについての見解を承りたい。また運輸省もそれを容認しておるとすれば、事、責任重大であります。一体この責任は運輸大臣はどう考えられるか、両者からお答えを願います。
  82. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほども国鉄当局から申し述べられましたとおり、昭和三十六年四月の五カ年計画の総額は九千七百五十億、これを年間平均しますと千九百五十億という数字になるわけであります。それが一年おいた三十七年八月には一兆二千四百四十一億に改定をせられておるわけであります。これを年次平均に分けると二千四百八十八億という数字になります。それがまた一年おいて三十八年七月には一兆三千四百九十一億に、毎年改定をされておるわけであります。これに対しまして、実績としては昭和三十六年に二千十億、三十七年に二千百六十五億、三十八年に二千六百八十八億、合計いたしまして一兆三千四百九十一億の改定五カ年計画の残事業として残っております金頭は六千六百二十八億ということでありますから、三十八年の七月に一兆三千億に改定せられたという事実に徴してみますと、三十七年計画から言いますと、おおむね年次割りになっておるわけであります。この中で、いま御説にありましたとおり、保安施設等既定の改良計画から二百五十億新幹線に流用した問題に対しての御指摘でありますが、この問題に対しては、いま御審議を願っております補正予算で百五十億は計上いたしております。まだ百億残っておるではないかということでもりますが、この問題に対しては、貨車その他客車等を製造しまして、それを借り入れておりながら、年次計画でこの代金を延べ払いで払っていくというような方式をとっておりますので、新幹線工市費が既定の保安費に食い込んでおるというふうには大蔵省としては考えておらないわけであります。
  83. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 お答えいたします。  ただい左大蔵大臣が示されたような数字の現況でまいっておりまして、第二次五カ年計画が三十九年、四十年において、予定のとおり完成するように努力いたしたいと考えております。
  84. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 国鉄にお伺いをいたしますが、ただいま答弁がありましたが、しかしこの新幹線の経費の増大に伴いまして、この整備五カ年計画のうち保安設備等の改良については、事実繰り延べられておる面がわれわれにも判然としておる。この流用した額は一体どのくらいになっておりますか。
  85. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 東海道新幹線の工事費の不足に対処いたしまして、去る六月、一般の改良費から流用いたしまして二時しのいだわけでございますが、その内容はただいま大蔵大臣がおっしゃいましたとおり百五十億でございまして、そのうちの百三十八億が車両費、すなわち貨車、客車、ディーゼルカー、機関車等の新製の製作費でございます。これらが欠けることは、やはり輸送力の増強に影響いたしますので、これらにつきましてはいわゆる民有車両制度をとりまして、借り入れによりまして輸送力の減退を防いでおるわけでございます。その他あと百億一時流用いたしましたが、これは今回の補正予算で見ていただきましたので、これらにつきましては、主として直接三十八年度の輸送力に関係のない工事を若干おくらしましたが、今回の補正によりまして、その点の影響は三カ月程度の工事のおくれということが部分的には出てまいりますが、全般的に影響はほとんどないと思っております。  なお先生の御質問の保安対策費は、ことしは全体で、鉄道経費を入れまして約百五十億でございますが、この保安対策費、すなわち主として車内警報と申しまして、列車の中で自動的に警報の鳴る装置でございますが、この車内警報装置と、それから問題の踏切の改良、この二つの問題を軸としました約百五十億の保安対策費には全然手をつけておりません。これはおかげさまで計画どおり進捗させていただいております。
  86. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 この百三十八億の車両費の中には、その他の残余の中には一体どういう経費が含まれておるのですか。車両の改良費その他はどうなっていますか。
  87. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 車両改良費は年間約三十億でございますが、これは全然手をつけておりませんで、主としてこれは私の中の工場でいたします車両の改造費でございまして、たとえば一等寝台車をつくるようなことでございますが、これには全然手を触れておりません。いま申しましたのは今年度新製いたします車両費をそちらにさいた、その穴埋めを民有車両でした、こういうことでございます。
  88. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は大蔵大臣にもう一つお伺いいたしますが、この補正予算によって、ただいま説明ありましたが、主として事故の原因が、他にも求めることはできますけれども、しかし保安施設の改良、これは組合側においても非常にやかましく言っておりますし、ただ施設の改良だけではなくて、やはり要員の問題にも原因があると私は思います。ただこれは国鉄だけではなくて、また交通機関だけではなくて、一般的に見られる傾向として、いわゆる施設の近代化、合理化といえば、必ず人員整理というものがつきまとう。なるほど人員整理というものは、機械化されて余剰人員を生ずれば、ある程度はやむを得ないかと存じますけれども、しかし過度の人員整理は、逆にいって、従業しておる者はもとより、第三者に対しても非常な災害を及ぼす原因となる。したがって、いたずらに機械化されたための過度の人員の削減というものは、よほど慎重に考えなくてはならぬ。しかるに今日の経営陣を見ておりますと、遺憾ながら、いままで肉体労働でやっていたものを機械労働にかえた。そのために生産は三倍、五倍に飛躍する。しかしながら、人員は逆に大きな削減をやって、休養その他に必要な、言いかえますと、肉体労働を知能労働にかえる、したがってこの知能労働の再生産というものは、肉体労働の再生産よりもはるかに時間を要するものであり、経費も要するものである。ところがその経費を十分にあてがわなければ、これは交通機関でいえば、たとえば休養時間が十分にとれていない、いわゆる知能労働の再生産ができていないのに、過度のダイヤの上で、しかもスピードアップをどんどんしていく。そのために精神的にも肉体的にも疲労は加重してくる。それが私は信号を見誤る大きな原因だと考える。こういう場合に、大蔵省はいたずらに経費の削減だけをして手柄顔をしているというようなことは、極端にいえば殺人行為といって過言でない。一体人員確保についてその予算をどうあてがうつもりか、ひとつ大蔵大臣の根本的な所見を承りたい。
  89. 田中角榮

    ○田中国務大臣 企業の合理化が進む過程において人員の整理が起きるということは、ある意味においてやむを得ないことではありますが、しかし画一、一律的に人員の整理をする、人間を機械にかえるということでその根本的な使命が達成できると考えてはおりません。その意味において、大蔵省は殺人的な人員整理などを考えるという考え方は毛頭ありません。私は今度の鶴見事故というものを契機にして、この間本会議で短い時間でありましたので、意を尽くせず遺憾に存じておりましたが、お互いがもっとすなおな立場で、国有鉄道というものがどうあるべきかということに対して真剣に検討しなければならない問題だと考えております。御質問にもありましたが、スピードアップをする、しかもそのレールは三十年前のものであり、四十年前のものであるというようなことを考えるときに、スピードアップにもおのずから限度がありますし、無制限な利益供与を求めるという考え方にも問題があると私は思います。これはただ国有鉄道だけではなくて、郵政、電々にも当てはまる問題でありますが、需要が多いから無制限にこれを倍増して都市の過度集中に拍車をかけるというような考え方では、公共投資も落ちついていくわけではないのでありますから、そのような根本的な問題にもお互いがもっと思いをいたして、国土をいかに合理的に開発すればいいのか。輸送関係は道路と鉄道と港湾等、あわせてどのように計画的に行なうべきかという根本的な問題とも取り組むべきだと考えております。しかも、あなたがいま言われた人員の問題については、私たちも機械に置きかえられた分だけ全部減員すべきだというような考え方で査定はいたしておりませんし、今度の事故を契機にして、合理的に国民の安全を保障するためにどうあるべきかという観点に立って対処してまいりたい、このように考えるわけであります。
  90. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 この際私は運輸省にお伺いをいたしますが、きょうは事故ばかりで非常に暗いのでありますが、起きておる事態についてでありますから、やむを得ません。最近の海上の事故は、きわめてひんぱんに起きております。その中で、これもやはりいま申し上げたことと関連をするのでありますが、船舶の構造がその積み荷の性質に合っていない。にもかかわらず、何でもかでも、とにかく金もうけをするためには手段を選ばぬといいますか、危険物でも何でもかでも積み取って輸送をさせる。そのために、明清丸ですか、ああいうような不祥事が起きておる。ラワン材の積み取りに至っても、そのとおりであります。しかもラワン材の積み取り船のごときは、きわめて粗悪な老朽船が非常に多い。しかもそのラワン材を積み取るに必要な、輸送に必要な船内の施設というものは何もできていない不適格船があります。今度の明清丸のごときも不適格船であります。しかるに、そういうものをそのまま放置しておくということは、これまた人命について非常にも大な障害となるものであります。一体運輸大臣はどういう指導をしておるのか。ただ経営者がもうけさえすれば目をつぶっておる、事故が起きたら、ああ監査をやる、やれ要望書を出す、それだけで事足れりとするのか。私はまことにもって運輸行政の手ぬるさというものを心外に思うのですが、どうですか。
  91. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 船舶輸送につきまして、非常に積み荷の不適格なもの、あるいは船に適しないものというようなものの積み取りにつきましては、運輸省といたしましても、これを是正すべく関係各省でいまその省令を改正すべく努力いたしており、お説のように、ややもすれば船舶所有者、用船者が利益追求の急なる余り、そういう不注意の積み方、適正でない積み方をするものがあるので、それについて、いま規制の法律を立案中でございまして、おそくも本年度末までには必ず施行いたしまして、いま山口さんの御心配になったようなことのないように、監督行政を進めていきたいと思います。なお、船舶の構造その他については、船舶局長説明いたさせます。
  92. 藤野淳

    ○藤野説明員 最近重大な海難がひんぴんと起こりまして、その原因が積載の不適正、あるいは不適当な船舶に不適当な貨物を積んだといったような原因と考えられるような海難が起こっておることを承知いたしておりますが、この対策につきましては、先般通常国会において改正されました船舶安全法に基づく省令を、ただいま準備をいたしておりますことは、ただいま大臣が申し上げたとおりでございます。これは穀類その他特殊貨物船舶運送規則でございまして、穀類のバラ積み輸送あるいは甲板積み木材貨物の輸送、あるいは先般の加明丸のごとき含水微粉精鉱の輸送のごとき非常に危険度の高い船舶の輸送につきまして、その積みつけ及び運送につきまして、特別の規制をする省令を、ただいま準備をしておる次第でございます。
  93. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 労働大臣一つお伺いをいたします。およそ今日では海上といわず陸上といわずあるいは各産業といわず、機械化の進捗によって、さきに私が言いましたように、肉体労働から逐次知能労働に変わりつつある。したがって、この知能労働の再生産というものは、肉体労働の再生産よりもはるかに時間を要するものであり、また知能労働、精神労働の再生産ということは、従来のような施設をもってしては再生産できないものであります。したがって、どうしてもその再生産のためには施設も金もかかるわけであります。同時にまた、その疲労しやすいところの知能労働、精神労働に対処するにあたっては、十分の休養を必要とするために、やはりいたずらなる人員の削減ということは許されないと私は思う。しかるに今日では、各産業ともにきそって人員削減ということに重点が置かれておる。したがって、三池のごとき災害も起こるのであります。一体労働省としてはこれらの各産業における労働人口の確保、労働人口の適正配置についてどういう指導を行なっておられるのか、これをひとつ労働大臣から基本をお示し願いたい。
  94. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 最近各産業におきまして、オートメ化ないしは機械化の進展が顕著でありますことは事実でございまして、これに関連いたしまして、従事しております労働者の作業についての緊張の強化、したがってまた疲労の増加の問題というものは、今日安全衛生の面におきまして新しい問題を提供しつつあることは事実であります。労働省といたしましては、この問題の重要性にかんがみまして、積極的な対策を講じていかなければならぬと考えるのでございますが、性質、上労働時間あるいは休憩時間ないしは作業環境の整備等について、特に従来と違った検討を要する問題が少なくないと思っております。現在のところといたしましては、一般的には産業疲労対策指針というものをつくりまして、これに基づいて各般の指導を行なっておるのでございますが、特に作業別にその特殊性に基づいた特殊な注意が必要であるという考えのもとに、先般まずキーパンチャーに関しまして、労働省の呼びかけによりまして特に作業環境並びに作業時間等につきまして調整基準を設け、これらに基づきまして労働基準局ないしは基準監督署の職員を通じまして、事業所ごとの指導を進めておるような次第でございます。なお、この問題につきましては、目下科学技術庁におきまして人間科学に関する研究委員会というものが設けられ、専門的な研究が進められておるのでございます。この委員会には、労働省からは労働衛生研究所及び産業安全研究所が参加いたしておりますが、これらの研究成果の具体化を待ちまして、さらに一そう適切な措置を講ずるようにいたしてまいりたい、一般的にはかような方針で進んでおるような次第でございます。
  95. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 さらにお尋ねいたしますが、研究の進んでおることはたいへんけっこうであります。ところが、さきに申しましたように、各産業における労働者の確保について、適正な人数を確保するということが必要である、そのためには、もっと、どういう産業はどういうような人員が必要であるか、こういったことを労働省としては常に研究をし、そしてそれを基準にして各産業の労働者の配置を監査すべきではないか、このように考えるわけでありますけれども、そういった面についての労働省の考え方はいかがでしょうか。
  96. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいまの御意見につきましては、私どもも全く同感でございます。ただ、労働基準法の実施といたしましては、法律に定められておりまする労働基準の実行を監視するという形で監督が行なわれておるのでございますが、お話のような、各個別企業ごとに、ことに作業別にまで定員等をも含めまして監督していくということになりますと、これは現行法規といたしましては行政上の監督という域を逸脱して、まずいわゆる行政指導という面が多分に加味されるのではないかというふうに考えます。と申しますのは、各般の新しい機械等につきまして、まだそこまで確定的な見解ができ上がるまでの検討が進められておりません。したがいまして、今後の各作業場の経験等を積み重ねて、これがおのずから労働基準として固まった時期に、基準法上の監督に移していくべきだろうと思いまするし、それまでの段階におきましては、労働省も作業場に協力いたしまして、これらの作業ごとにいろいろな安全の基準を検討していく、そしてこれをまず行政指導によりまして自主的に実行させていくというような形で、労使の協力を得ながら、新しい基準を得るための研究を進めていく必要があるのではなかろうか、かような見解のもとに、前通常国会におきましては労働災害の防止に関する法律案というものを提案いたしたのでございます。これは業種別の団体また全国的な団体をつくりまして、そういった労使の協力を得ながら各般のこまかい安全基準を積み上げていこうという考え方に基づいておるのでございます。この法案は、いろいろな事情で今日まで成立を見るに至っておりませんが、通常国会にはぜひ重ねて提出いたしまして、御審議をお願いしたいと思っておるのでございます。そういった各般の措置を通じまして、一日もすみやかに安全について自信ある行政を樹立いたしてまいりたい、かように念願いたしておる次第でございます。
  97. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 研究を進められておるようでありますが、いま労働大臣から御答弁になりましたように、行政指導をするにも、やはり一定の基準というものを設けて指導しなければ、その基準がなくて指導の目標はないと私は考えます。したがって、ここに新しく提起するわけでありますが、各事業所、その職種別にその作業の内容に応じて、一体どういう人員を配置すれば適正な人員配置であるか、こういったことの研究をする新しい諮問機関か研究機関を新設すべきではないか、そして絶えずその基準に基づいて行政指導を行なうようにすべきではないかと私は思いますが、いかがですか。
  98. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御趣旨はまことにごもっともだと存じますので、今後とも十分そのような方向に進むべくつとめたいと存じます。
  99. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 経済企画庁お尋ねいたします。  私の見るところによれば、今日の運輸行政は、運輸省が主管なのか、あるいは経済企画庁が主管なのか、行政管理庁が主管なのか、さっぱりわかりません。したがって、一般では非常に迷っておる現状であります。これは一体どういうことなのか、経済企画庁長官は今日の運輸行政をどう見ておられるのか、これについてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御質問の趣旨が必ずしもはっきりいたしませんので、おそれ入りますが、もう少し詳しくお尋ねいただきたいと思います。
  101. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 このくらいはっきりした質問はないと思うのです。いままで運輸省が何かやろうかと思えば、いや企画庁が許さぬからとか、いや行政管理庁がうんと言わぬとか、何とかかんとか言って、運輸行政そのものがまるっきり企画庁にあるがごとき、行政管理庁にあるがごとき錯覚を私どもは起こしているわけです。したがって、経済企画庁や行政管理庁というものは一体どういう役所なのか、それまでも私どもは疑わざるを得ないのです。ですから、運輸行政について勧告されることはけっこうです。いいことばかりです。ところが、運輸行政というものはやはり主務省でやるべきではないか。したがって、どこで出し、どこで運輸行政が行なわれているのかわからないような社会発表をしてみたり、行動をするということは、私は、行政管理庁やあるいは経済企画庁としてはその任務を逸脱しておるものではないかとさえ疑うのですが、いかがですか、こう言っている。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済企画庁の主管事務の範囲その他は、経済企画庁設置法にございますことは御承知のとおりでございます。総合調整官庁といたしまして、どの程度にその分界を守るべきかということは、確かに非常にむずかしい問題でございます。世間に山口委員のおっしゃいますような印象を与えておるとすれば、これはまことに遺憾でございますが、私としてはそういうことをしておるつもりはございません。
  103. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 ただいまの答弁は、それは企画庁としてはそう思っておらぬかもわかりませんが、しかし、各種の料金問題等についても、総合的に企画庁でやる仕事でありますから、その部面についてとやかく言っておるのではありませんが、しかし、私はもっとやる方法があると思う。あたかも許認可事項が企画庁にあるかのごとき錯覚を起こしておる。こういうことは企画庁としては厳に戒むべきではないか。そしてすべての事案についてはやはりその主務省に置かるべきである、このように考えるわけです。したがって、最近行なわれておる運輸行政についての行政管理庁、企画庁等のいろいろの発表というものは、私は悪いと言っておるのじゃないのです。悪いと言っておるのじゃありませんけれども、しかし、もう少しそれを運輸省主管の範面内において主管省に譲るべきではないか、そして行政の簡素化のために尽くすべきではないか、このように考えるわけです。これは行政管理庁あるいは企画庁のあり方の根本に触れるかもわかりませんけれども、私はそう思うのですが、一体どういうぐあいに考えられるか、こういうことなんです。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 料金問題につきましては、経済企画庁設置法の中に、経済に関する基本的な政策の総合調整、あるいは物価に関する基本的な政策の企画立案、それからまた運輸に関する基本的な政策及び計画の総合調整というようなことが書いてありますのを根拠にいたしまして、昭和三十六年に閣議決定がなされておるわけでございます。そこで、きわめて軽微なものについては、公共料金の決定については当該所管省と経済企画庁が協議をする、より重大なものについては閣議において一々決定をする、こういう閣議決定がなされておりまして、それに従ってやっておるわけでございます。正直のところ、あまり割りのいい仕事だと思ってはやっておりませんのですが、そういうことをそのままやっておるわけであります。  なお、運輸行政と言われましたのは、あるいはタクシーの免許とかいうことについておっしゃった意味かと思いますが、これは行政管理庁で行政管理をされた報告を出されましたので、これは私のほうの仕事ではないわけでございます。
  105. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 時間がありませんから、もう一度国鉄に戻ります。新幹線について一、二お伺いをいたします。  今度の補正予算におきまして、東海道新幹線の建設はいよいよ大詰めにくるのではないかと思われますが、しかし、これはいつごろから全線試運転の運びになるのか、これをひとつ明確にしてもらいたい。
  106. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  幸いにしてこの特別国会においてわれわれの要求しておる予算が通りますれば、来年の七月一日には工事が完成いたしまして、それから二カ月試運転にかかり、十月一日から開業することができるということに予定しておるのであります。
  107. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はさらにお伺いをいたしますが、その際、一挙に予定されているスピードをもって開業するのか、それともどういう構想でもってこの開業を行なわんとするのか、まずその点についてお答え願いたい。
  108. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  国鉄がこれまでPRしたところでは、開業早々直ちに二百キロまでのスピードを出して東京−大阪間を三時間で走るというようなことに考えられておったのでありまするが、これは試運転の結果にもよりますし、いずれにしても、われわれとしては、万一事故が起こる場合においては重大事故になることは当然のことでありますので、十月一日から開業いたしましても、直ちに二百キロのスピードを出して東京−大阪間を三時間で走るというようなことは考えておりません。そのときの情勢によりまして、真に確信がつくまでは絶対的にそういうような高速度は出さぬということに考えております。
  109. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 非常に慎重なようでありますが、これは技術陣にお伺いいたします。この新幹線は、主として盛り土堤防の路盤をもって構成されているところが多いのであります。そういたしますと、この盛り土路盤の安定いたしますのは、やはり相当の時日を要すると私は思いますが、それを念頭に置いて開業をしようとされておるのかどうか、これについてひとつお答え願いたい。
  110. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの御質問でございますけれども、御疑念のとおり、盛り土区間につきましては、その安定までに多少の日時が要りますので、全区間のうちの盛り土区間だけにつきましては、大体本年じゅうに工事が完成いたします。一番おそいところでも来年三月までには盛り土区間だけはあらかじめ完成いたしまして、来年のつゆは越した上で試運転するというふうな考え方をいたしましております。おかげさまで、大体盛り土区間につきましては、現在非常に順調に工事が進捗いたしております。
  111. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そこで、私はお伺いをいたします。  この新幹線については、自他ともに技術の粋を尽くしたものといっておられまするし、またそのとおりであろうと思います。そしてスピードにおきましても、ただいま慎重なお答えがありましたが、地上最大のスピードを誇るものである、こういわれておるのであります。しかし、反面においては、また危険度も私は地上最大のものになりはしないかということをおそれるのであります。したがって、これに対応する万全の策がなければならないと考えます。列車相互間の防護につきましては、これはいと簡単でありましょうけれども、しかし、線路上に異物を置きざりにされた場合、一体これはどうして事故を防止する考えなのか。一たんこの線路上にまくら木等の障害物を置きざりにされた場合、それに乗り上げれば、あの築堤上を走るのでありますから、ほとんど全員死亡すると言っても過言ではない。それだけの予測をして事故対策を講じなくてはならぬ。聞くところによれば、通り一ぺんの法規の強化によってこれを防ごうとしておるようでありますけれども、法律によってこれを防ぐというのはきわめて消極的であります。事故が起こってから、その人間がどういうことをしたからこれを処分するということだけでは事はおさまらないのであります。問題は、その事故が起こる前に確たる対策を立てる必要があると思うのであります。技術的にこれが解決されなければ無謀ということになる。ただスピードを出すということだけ、あるいは技術の粋を尽くして列車間の防護をすることができるということだけをもって、私はこの新幹線の事故防止の対策にはならないと思う。一体これをどう解決しようとしておるのか。これは重大な問題でありますから、親切に納得のいくように御答弁を願いたいと思います。
  112. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  障害による事故の発生ということが一番われわれが心配しておることであります。現にこれは新幹線のみならず、現在の線路に対しても、年々ふえこそすれ減らない。実にこれはあぶない。それに対してわれわれとしては、特に新幹線においてしかり、二百キロも出すときに、いま山口さんが申されたような陣雲があれした日には、日も当てられない災害が起こるということは想像できるのであります。それに対しては、あらゆる方法を講じてこの障害物を排除するということを考えておりまするが、これは機械的にはできない面が私はあると思う。それで、経費は多少かかりましても、ある程度監視人を置いて、そういう障害物がないようにいたしたいということに考えております。
  113. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 総裁からこれに対処する御答弁はありましたが、私はこれをもってしても得心がいかない。技術的にどういう解決をしようとされておるのか、また乗員の養成についても、どういう方針をもって乗員の養成をし、これに当たらんとされておるのか、主としてこれを技術面から解明を願わないと私は了解ができません。
  114. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 詳しい技術的なことは一応別といたしまして、私の御説明できる範囲について御説明申し上げますと、まず東海道の新幹線の問題でやはり一番私どもといたしましても心配いたしておるのは、いま総裁の申しました事故の問題でございます。  まず第一に、線路の構造そのものから、御承知のとおり、路盤あるいは軌条そのもの、それからまくら木等につきましては、全部コンクリートまくら木、あるいは軌条もロングレールにする。ポイントにつきましても特殊なポイントをつくりまして、いわゆる動揺によって線路が支障されることはないといった特殊なノーズというポイントをつくって、これを全部使用する予定でございます。列車と列車の間の安全装置につきましては、先生十分御承知でございますので省略いたしますが、御承知のとおり、自動列車制御装置と申しまして、ほとんど無人運転に近い、人がいなくても運転できるといった程度の、高度の電子技術の応用による防護を列車相互間でいたしておりますので、列車相互間の追突等の問題、あるいは駅の問題等につきましては、まずまず絶対に心配がないというふうに考えております。  やはり問題は、先生の御指摘のとおり、無謀な人がいて、石を置くとか、まくら木を置くとかといった、そういうきわめて原始的な列車に対する事故が一番こわい問題だというふうに考えております。これにつきましては、列車のサイドからと、それから線路の側からと、両方から対策を立てておりまして、まず車両につきましては、前のほうのスカートを非常に強固なものにいたしまして、その下と申しますか、うしろに御承知の排障器を二重に取りつけております。したがいまして、普通の石あるいはまくら木等のものならば、十分列車のスピードによって、その排障器とスカートの力によりましてこれを排撃できるということのテストを実はいま数回試みておる次第でございます。さらに、それだけではもちろん十分でございませんので、積極的にそういった妨害を受けない態勢をとりたいというために、人の入ってくる可能性のあるところにつきましては、多少の経費がかかりましたが、全部防護さくをつくりまして、約高さ一周半ぐらいのものでございますが、防護さくをつくりまして、無用の人が入れないといった防護の方法を講ずることにいたしまして、いま大部分をつくっております。  また、初列車の前には必ず一本先行列車を走らせたいということも考えておりまして、列車が走りだしますれば、いまの列車密度から申しますれば、途中の間の妨害ということよりも、やはり夜中だとかあるいは朝早く等の妨害が考えられますので、初列車の前には必ず一ぺん先行列車を出すということもいま考えの一つに入れております。  さらに、先ほど御指摘の法律を強化いたしまして、飛行場あるいは高速道路のように立ち入り禁止をするということは、これはほんとうの最後の手段でございまして、これにつきましては、先生のおっしゃったとおり、積極的な防護策では決してございませんが、防護の一つの方法としては考えておりますが、決して私どももそれだけをたよっているというわけではございません。やはり先生の御指摘のとおり、一番原始的な列車妨害が一番実は心配なのでございまして、この点につきましては、いまも申しましたとおり、車の面と線路の面と両方からできるだけの措置を講じ、まだ日にちも相当ございますので、排障器の強さ、あるいはスカートの強さ等については、具体的に物をぶつけてみて試験をするということもやってまいりたいというふうに考えております。  それから乗務員の養成でございますが、実は乗務員の養成は、ことしの四月ごろから始めております。これは全国から志望者も若干募りましたが、脳波のテスト等を厳重にやりまして、また、非常に成績の優秀な乗務員をいま小田原でもってすでに五十名ほど集めて、学科その他相当高度な運転技術——運転技術そのものとしてはきわめて簡単でございますが、機械そのものについていろいろな知識が要りますので、相当高度の教育を現在している次第でございまして、この点は来年の試運転までに十分間に合いますし、また、現在の試運転区間で毎日列車を動かしておりますので、列車を動かしつつ、また来年早々は大阪付近で約七十キロほどの試運転線区ができ上がりますの、で、その試運転線区も使いまして、極力実地訓練と学科訓練と両方並行的にやってまいりたいと考えております。
  115. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 これで私の質問は終わりますが、まず第一には、この質問で申し上げましたように、既設の保安設備につきましては、新幹線の建設等によりまして五カ年計画が狂いを生じてまいることは事実であります。したがって、鉄道保安の改良について、あるいはまた乗員の適正配置その他適当な労働再生産に必要な抜本策を講ずることは、これは社会的責任であります。したがって、一そうこれを強化してもらうことが、まず第一であると思いますし、不幸にしてこの思わざる大事故によってなくなられた方、あるいは負傷をされて今日病院において加療をせられておる方、こういった遺族並びに負傷者の方々に対しては、ただ従来のようなおざなりの解決策ではなくて、親切に、そして十分なる援護措置を講ぜられるように希望いたします。  次に、新幹線につきましては、ただいま二、三質問を申し上げましたが、私は、ただ単に一地点から一地点への迅速な輸送といったようなことのみにとらわれて、乗員の養成を怠ったり、あるいは思わざる障害物の障害によって起きる事故、そういったものの不測の事故を防ぐために万全の処置を講じて後でなければ、このようないわゆる高速度を持った列車がしかも地上を走るのでありますから、きわめてその技術的防護はむずかしいと思われます。したがって、これには万全の処置をとって、やむを得ずこういうことになりましたというようなことのないように、極力これは心してもらいたい。  以上希望を申し述べて、私の質問を終わります。
  116. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもちまして山口丈太郎君の質疑は終わりました。  次に滝井義高君。
  117. 滝井義高

    滝井委員 私は、まず第一に、石炭鉱業の合理化の問題を中心にして、同時に、十一月九日に起こりましたあの悲惨な三池の事故の問題に関連をし、同時に、当面問題になっております医療費の問題を厚生大臣大蔵大臣に尋ねてみたいと思います。  まず、いま御存じのとおり、石炭の産地の中心である筑豊は非常に落ばくたる姿になっております。こがらしが吹き始めると、ボ夕山というものが、われわれ住民に一そうの寒々とした気持ちをそそることになります。そして、そのボ夕山の下には失業と貧乏が渦巻いております。同時に、多くの未亡人たちが、その失業と貧乏の中で嘆き悲しんでおります。農家や中小企業の皆さん方は、売り掛け代金や鉱害をかかえて、同じように苦しんでおります。一方においては、内閣の首班である池田さんは、高度の経済成長とその繁栄を誇っております。その対照というものが非常に顕著に現われておるというのが石炭の産地の姿でございます。  私は、ここで、高度経済成長政策を誇っておる池田内閣の、しかも重要な高度経済成長政策の中における基幹産業の石炭産業が、一体有沢調査団の報告のとおりに行政が行なわれておるかどうかという点でございます。これを私はきょう実は総理に聞きたかったのですけれども総理がおられぬので、通産大臣に答えていただきたいと思いますが、有沢調査団の報告によりますと、昭和四十二年には生産規模が五千五百万トンで——これは精炭で五千五百万トン、生産能率は一人一カ月三十八・六トン、労働者の在籍人員は四十二年になったら十二万人になります。昭和三十七年から四十二年までの間に非能率の炭鉱の閉山を約千二百万トン程度、推定であるけれども、閉山に持っていきます。これがいわば石炭調査団の有沢さんの描いた姿であり、内閣もわれわれも認めた姿でございます。一方、石炭鉱業に働く労働者が、将来他の産業の労働者に匹敵する近代的な環境と労働条件のもとで、安定した職場を得るように措置をする、   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕  またその反面、離職者に対しては、企業と政府とが離職者対策を責務と心得て安定職場を供給することであるとの見解をとったのでございます。こういう姿だったのです。一体、いまの合理、化の姿というものは、まず前段における生産能率なり出炭の規模なり、労働者の在籍人員なりの姿はどういうふうになっておるかということをここで明らかにしてもらいたいと思うのです。
  118. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  ただいま御質問がございましたとおり、石炭産業の自立と安定をはかる目的で、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドの計画についての右沢調査団の答申がございまして、その答申の趣旨を尊重しつつ、当初予定をいたしておりましたいわゆるスクラップ・アンド・ビルドの計画は、大体その方向に沿って進めてきておりますが、事実は、石炭産業に従事する労務者の数等は、自発的に退職をする人たちが相当多くふえております関係上、数の上においては確かにおっしゃるような、もうすでに十二万何千人ということでございますから、数の上では当初の考え方とは相当数相違しております。しかし、これはスクラップ・アンド・ビルドをした結果というよりは、労務者がある意味において石炭残業に対する希望を失ったというか、将来の石炭産業に対して安定職場としてこれを認めるかどうかという点において、どうも将来がおもしろくないというような意味で、やめてくださいと言ったわけでないのに、自分のほうからよそへ転換されていくという人が相当数ふえてきたという事実が、かなり生産の面においても大きな影響を与えておることは事実でございます。私たちとしては、その結果、そういうことも含めてことしの出炭計画は五千五百万トンを基準としておったわけでありますが、事実は五千三百万トン前後になることになり、さらに今度の三池炭鉱の事故等が起きましたことによって、これが五千二百万トン前後に減少するのではないかというような見通しを立てておるような次第であります。
  119. 滝井義高

    滝井委員 大臣がいま御説明になったとおり、労務者の力が安定職場であるという観念を持たなくなってきた、希望を失ってきた。有沢調査団の報告書には、これは安定職場として、少なくともその労働環境、労働条件が安定職場になるようにしなければいかぬという積極性を持たしてくれておるわけですよ。ところが、それが行なわれていないので、若年の労働者は魅力を失って去ってしまうし、技術者も管理者も優秀な者は去る。いわゆる若い労働力と技術の空洞ができて、そこで働く労務者の諸君は非常に老齢化してきておる、こういう実態が起こってきている。そういう人たちに対して過度な労働の強化をやり、賃金は引き下げてくる、こういう形なんですね。こういう状態政府は一体どういう指導をしてきたのかということなんです。安定職場をつくるということが政府責任であったはずです。経営者はもちろん、政府においても、石炭産業に残る者に対しても安定職場を確立するし、去る者についてもその職場を与える。去るも地獄、残るも地獄という状態はやめなければいかぬというのが有沢さんの意思であったと思うんです。それを池田さんはやはりここでわれわれに誓ったはずなんです。いまの大庭のお言葉では、政府としての積極的な意欲というものは何もない。労働者が職場に魅力を失い、石炭産業に希望を失って去っていく。労働者が去っていくのだ。そういうことでは、一国のエネルギー政策をつかさどる通産大臣答弁としては、私はきわめて客観的な第三者的な答弁と言わざるを得ないと思うんですがね。  大橋さんにお尋ねしますが、いまの稲田大臣がお答えになりましたように、十二万台になってしまった。昭和四十二年に十二万台になるはずなのが、昭和三十八年の十一月の現段階で十二万人台になってしまったんです。そうしますと、あなたのほうで担当していらっしゃる炭鉱離職者再就職計画というものは、大きな変化を受けなければならぬと思うんです。これは一体どういう形で変化を受けてきておりますか。同時に、その変化をどういう形で受けてきておるかということを御説明していただく前に、一体現在の炭鉱離職者の滞留は——当初予算審議するときにあなた方が私たちに示したものによれば、昭和三十九年度に繰り越す炭鉱離職者の滞留者は、一万八千六百人程度だったと思うんです。すでに昭和四十二年の目標の十二万台を現段階で達成してしまったんですから、相当な滞留者がふえておるはずなんです。この滞留者は一体幾らになったのか、それに対応してこの再就職計画というものをどういうぐあいに政府は変更をしていく所存なのか、この点をひとつお示し願いたい。
  120. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 御指摘のように、石炭山の合理化に伴います退職者の数は、当初予定上りもだいぶ上回った結果が今日まであらわれております。その状況を申し上げますと、当初計画におきましては、三十八年度中における離職者の新規発生見込み数は三万四千四百ということになっておるのでございます。しかしながら、十月におきましてこの見込みは相当の狂いを生じましたので、したがって、当初計画の手直しをいたしまして、四万三百人というのを三十八年度の新たなる見込み数といたしました。この数字は、当初見込み数に比較いたしまして五千九百の増と相なっておるのであります。  この増加の原因を調べてみますと、大体三つの部類の毛のが総合されておるのでございまして、第一は、各炭山におきます希望退職の募集に際しまして、計画以上の応募者があらわれたということでございます。第二は、合理化の繰り上げでございまして、当初後年度において合理化が予定されておりました炭山でありまして、今年度に繰り上げて合理化を実施いたしますことになりますものが若干ございます。それから第三は、石炭会社におきまして離職の措置をとらさずに、社内操作によりまして他の鉱業所への配置転換計画を立てておりましたが、この食い違いが出ておるのでございます。これらの三つの合計が、大体この五千九百の増加の内容と相なっておるのでございます。  そこで、これに対しまして、労働省といたしましては、この離職者の増加は一応やむを得ないものと認めますとともに、離職者の予定以上の増加に対しましては必要な措置をとらなければならぬという結論に到達いたしましたので、政府といたしましては、この十月の審議会の意見を十分に尊重いたしまして、炭鉱離職者政策に万全を期する考えでございまして、このためには、まず当面の緊急措置といたしまして、移住資金、移動宿舎、委託訓練などにつきまして、当初計画を変更いたしまして、増ワク措置を講ずることといたしておるのでございます。かような措置によりまして、三十八年度滞留離職者の見込み数、すなわち三十九年度に持ち越すべき滞留離職者の見込み数は、当初計画におきましては一万八千六百でございましたが、計画手直しの結果は一万九千二百と、約六百名来年度持ち越しの離職者が増加をいたすことはやむを得ない、かように見込みを立てておる次第でございます。
  121. 滝井義高

    滝井委員 これは自分の就職その他も見込んだ結果が、おそらくこういうことになったんだろうと思うのです。われわれが調査をしてみますと、福岡県だけでも三万人ぐらいの滞留者がおります。労働省の調査は、自分の就職とか自営業とか帰農とかいうものもずっと入れてのことだろうと思うのです。実質的に見てみますと、中途はんぱな、食うや食わずやの低賃金の職について、次から次に炭鉱を回っておるという人たちが相当おるわけです。最近は大手の炭鉱はどう言い始めたかというと、いままでは石炭は斜陽である、もう命がない、早くみんな就職しなさいと言っておった。ところが、大手の会社の社報等を見ると、いまや石炭は斜陽ではないのだ、こう言っておるのですよ。そうしてかねや太鼓で石炭労働者を探して回るという、こういう形をつくっているのです。したがって、いま大橋さん、五千九百人ぐらい予定よりふえたとおっしゃるけれども、実質的にはもっと私たちはふえておると思うのです。そこで、そういう形になりますと、一体職業訓練その他の状態はどうなるのかということです。移動宿舎やら、それから委託訓練、移住資金等を出したにしても、これは委託訓練だけではなかなかうまくいかぬと思うのです。やはり職業訓練所でこれはきちっとした受け入れ態勢をつくって、職業訓練手当も出して、そうしてやらなければならぬと思う。ところが、あなたの数字のとおりに見ても、そういう五千九百人もの人がいて、そういう予算措置はないわけです。で、御存じのとおり、四百四十万トンの予算しか組んでいないのですから、それを途中で五百五十三万トンにし、六百七十二万トンにふやしてきておるわけです。その六百七十一万トンときめた合理化がさらに増加をしてきておるわけですから、したがって、予算は極度に不足してきておると思うのです。そういう予算のやりくりというものは一体どうしておったのか。予備費や何かからこういうものに大幅に注ぎ込んできておるというなら話がわかるが、そうでなければこれは宙ぶらりんになって、みんな自己就職とかなんとかいうことになってしまっておる。そこらの人員の変更に伴う職業訓練の手当や就職促進の手当、その他の諸手当の問題をひとつ御説明願いたい。
  122. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 職業訓練につきましては、約二千名が十月、十一月に入所いたしておりまして、大体希望者はほとんど全部入所できるような状況でございます。諸般の経費等は、なるほどお話しのとおり、見込みよりも実数が増加いたしておりますが、三十八年度におきましては、雇用促進事業団予算の移流用等の措置を講じて、大体支障なくいける、かように考えております。
  123. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと大蔵大臣がいないのですが、次は資金の計画です。御存じのとおり、いま大橋大臣説明によっても、五千九百人をこえる離職者が増加をしてきたわけです。そうしますと、三十八年度の石炭に対する資金計画というものは、すべてを入れて設備資金が四百五十五億です。それから整備資金が三百八十四億だったのです。今度は実際に収入面を見てみますと、設備資金が三百七十三億で、整備資金が二百三十三億。六月のあの国会の当時にわれわれが論議した点においても、設備資金が八十二億不足で、整備資金が百五十一億不足なんだ。したがって、何らかの形でこれを補わなければだめだということを、私は通産大臣大蔵大臣に質問をして申したわけです。当時、やがて近く閣議が開かれるので、特に整備資金の百五十一億の不足については、これは私は責任を持って処理をいたしますという御言明があったわけです。その後、聞くところによると、何か七月ごろの閣議で幾ぶんの補てんをやったらしいのです。ところが、さらにその上に、大橋大臣の言を信ずるとすれば、五千九百人の増が出てきているわけです。三井鉱山のようなところでも、来年三月閉山するのに、一挙に全部に退職金をやれないのです。そうしますと、退職金の分割払いが行なわれるということになれば、労働者は非常に不安になるわけです。したがって、一体この資金計画といろものはどういうようになっておるのか。同時に、三十九年度における資金計画というものをどういうぐあいに推進していこうとするのか。御存じのとおり、合理化のテンポというものは非常に早くなってきている。もう今年から来年三十九年をピータとして、非常な合理化が行なわれてくるわけです。したがって、当然いま申し上げました今年度の補てんの分と三十九年度の資金計画の腹がまえというものを、ここで明らかにしてもらう必要があると思う。
  124. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のように、今年度におきましては五百五十三万トンの整備計画をやるというたてまえで計画を立てまして、これが実施に移っておるわでけあります。それに要する経費その他につきましては、ただいま御説明のあったようなこともございまして、資金の不足等についてはあなたから御質問があり、御要望があった以後におきまして、閣議において、百五十一億、必要量はこれを出すということで、この決定をいたしまして、これを実施に移しておる段階でございます。  そこで、それがいまどの程度に進んでおり、また、来年度予算においてどの程度必要になるか、来年度の計画をどうするかということは、ただいま具体的な問題として計数整理その他を行なっておるのでありますが、いずれにいたしましても、あなたがおっしゃったとおり、当初予定をされておったいわゆる計画よりはいささか前進をいたしておることも、これは事実でございます。しかし、また一方考えてみますと、そういうふうになればなったで、それだけにアク抜けといいますか、非常に最悪の場面が出てきておるだけに、ここでわれわれがてこ入れをし、力を入れていけば、石炭産業全体としては合理化が進み、いわゆる高能率であり、また高賃金であるという石炭産業をここに現出することができるものと考えております。実を言いますと、最近石炭大会が日本において行なわれまして、その際、石炭の世界的な寿命についていろいろ論議が行なわれたのでありますが、石油の命脈というものは、今後二十年ぐらいは順次伸びていくけれども、二十年後にはそれで天をつくというか、山場へかかってしまって、そのあとはもう石炭にたよらないわけにはいかないのだ、地球が包蔵しておるところの石油資源、石炭資源というものを考えてみ、将来エネルギーをどれだけ使うかということを考えてみると、石炭はまだまだ命脈があり、また、これを尊重することでなければエネルギー源を獲得することはできないのである、原子力の問題は、今後二十年たったからといって、エネルギーのうちにおいて占める。パーセンテージはまあ五%前後ではなかろうかというような、一種の論文的な意見が発表されたりいたしまして、これを契機として、石炭産業を見直せというような空気が非常に業界に強くなってきておることも事実であります。そういうことも含めて大いに石炭産業を見直そうというやさきに、今度のような事件が起きたりいたしまして、またわれわれとしては非常に遺憾に考えておるのでありますが、われわれからいえば、石炭産業というものは、近代化し合理化をしていけば、必ず自立安定のできる産業であるという望みを捨てておるわけではありません。また、それには、いまお示しになったような相当数の金額を——有沢調査団によっても全部では千五百億以上の金をそれにつぎ込もうということで、今年度においても相当数の金をつぎ込んで、その自立と安定をはかろうといたしておるのでありまして、私はこういう意味からいって、今度のような事件が起きたことは非常に遺憾ではありますが、将来に希望を持ちつつ、より一そう積極的に石炭産業のいわゆる近代化、合理化をはかりつつ、高能率、高賃金の職場がここに現出するように努力をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  125. 滝井義高

    滝井委員 長々と言ってもらっても時間がございませんから……。ひとつ、大蔵大臣がおりませんから、主計局でもいいですが、百五十一億整備資金が不足だったのです。それを六月か七月ごろの閣議でやっておるはずです。今度はさらに、大橋さんの御説明のように五千九百人もよけいに切るわけですから、整備資金を一体今年幾ら追加する方針なのか。もう今年といってもちょっとしかないのです。それを聞いておるのです。その数字だけを簡単に答えてください。
  126. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お答え申し上げます。  石炭鉱業合理化事業団に対します整備資金の貸し付けは、当初計画は御承知のように六十億円だったわけでございますが、七月に八十億円を追加をいたしまして。その後さらに追加のお話が通産省からございまして、ただいま相談をしておるところでございます。おそらく数日中に話がきまりまして、年末までになお数十億の資金を追加することになろうと思っております。
  127. 滝井義高

    滝井委員 幾ら要求が出ていますか。
  128. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 要求は六十五億円だったと思います。
  129. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、来年度はどの程度の整備資金がいまのような状態からいくと要求が出ているのです。
  130. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お答え申し上げます。来年の要求としては五十億円の要求が出ております。
  131. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは五千九百人が当初の計画よりか増加をしたわけです。しかも当時二百三十三億の整備資金では百五十一億不足である。こういうことだったのです。その百五十一億不足のうちに八十億いま補一てんをしていただいておるわけです。そうすると、なお約七十億不足なんです。七十億不足だったところに五千九百人が加わってきたのですから、いま認めていただく六十五億を出してもまだ不定なわけです。当然これはやってもらわなければならぬのだが、通産大臣どういうつもりですか。大蔵大臣もここでひとつ、もうあれですから、こんなもの長くあれする必要はないのです。イエス、ノーだけ言ってもらったらいい。
  132. 新井眞一

    ○新井政府委員 御指摘のように、整備資金に関しましては、会社の資金繰りを見ながらこれを充当していくという考え方でおりますので、当然これが権利だという考え方ではございません。したがいまして、私ども、先ほど大蔵省のお話もございましたように、あの線でやっていけるというふうに考えております。
  133. 滝井義高

    滝井委員 あの線でやっていけるというのは、六十五億の追加をいただければ何とか今年はやっていける、こういうことですね。よし、わかりました。それでは大臣、いま事務当局が今年は少なくとも五千九百人の余分な計画以上の離職者が出たけれども、整備資金計画としては、なお六十五億をいただければだいじょうぶだという答弁があったわけです。これはあなたはおとりになる確信あるでしょうね。また、ここで大蔵大臣にどうしてもきてもらわなければいかぬな。ちょっと委員長、こういう大事なときに、一般質問だからといっておらぬことになれば、ぼくはその分だけ時間を延ばしますから。そんなばかなことはないですよ。
  134. 福田一

    福田(一)国務大臣 いまの一応の予定として百五十一億という数字が出てまいったことは事実でありますが、いま局長答弁をいたしましたように、実際に必要な額はそのときそのときに応じて折衝をしながら出していくというのがいままでの慣例になっております。したがって、おおむね百五十一億必要であろうということは、閣議においても主張いたします。しかし、さしあたり八十億出しておこう、また足りなくなったところを詰めていって、まだいま折衝しておるという段階でございまして、現段階においては六十五億でやっていけると確信をいたしておるところであります。
  135. 滝井義高

    滝井委員 あとは大蔵大臣がきてから聞きますから。  そこで大蔵大臣おりませんから、ちょっと文部大臣がいらっしゃっているようですから、文部省にちょっと移りますが、文部大臣御存じのとおり、当初の計画よりかさらに五千九百人もの離職者が出てきたわけです。その結果教育の場が非常に荒廃をしてき始めました。   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 このように炭鉱の離職者がたくさん出てくると、どういう形ができるかというと、いままですし詰め学級をやっておった学校ががらんどうになってくるわけです。すなわち、子供が親と一緒に他に移転をしてしまうわけです。こうなった場合に、いま筑豊炭田では学校の先生の首切りが行なわれるといううわさが行なわれてきたわけです。池田さんは人づくりを言われるわけです。そして、池田さんの間違った石炭政策のために失業と貧乏が渦巻いているわけです。たくさんの未亡人が出ているわけです。そういう中で、今度は池田さんが学校の先生の首を切るというわけです。これは私は人づくりの逆行だと思うのです。したがって、こういう状態になっておるならば、まずこういう貧しい子供の多い、しかも青少年の不良化の激増をしておるこの地域で、まずあなた方の言う一学級四十五人の制度を実施していくべきだと思うのです。何もこれは法律でなくてもいいわけです。政令でできるわけなんです。そういうところにはやはりどしどし補助金を出していく。こういう形をとることが私は人づくりだと思うのです。それはやはり全国一律の学級の標準数で先生を割り当てていくということになると非常に問題が起こってくるわけです。この問題に対するあなたの基本的な考え方はどういうものなのか。おそらくヒューマニズムに富んでいらっしゃる灘尾さんですから、りっぱなお答えをいただけると思いますが、どういうお考えかひとつお聞かせ願いたいと思います。
  136. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 産炭地の特殊事情についてのお話を伺いましたわけでございますが、児童数の減少に伴いまして、現在の標準法によりますと、教員の定数も減らさなければならぬことになっております。この問題も十分考慮いたしまして、今回標準法の改正をいたしたいと考えておる次第であります。その標準法の改正案が成立いたしますと、全部の学級編制につきまして、五年の間に順次最高四十五人となるようにいたしたい、こういう案になっておりますことは滝井さんも御承知のとおりであります。これの扱い方は、教育行政の見地からいたしまして、特定の地域だけに限ってまた特別の掛倒を講ずるということば必ずしも適当でないのではないか、かように考えておる次第であります。産炭地の事情はよく伺いましたわけでございますが、産炭地という特殊の地域だけに限って特殊の扱いをするという考え方はいたしておらないのでございます。ただ、この法律案は各府県ごとの教員定数の全体について無理のない漸減の措置を講じてまいりたいと思っております。整理が本旨ではないのでありまして、無理のない漸減の措置を講じてまいりたいと思っておりますので、たとえば一時的には定数以上のものになりましても、これを認めることにしておるような点もあるわけでございます。したがいまして、たとえば福岡県なら福岡県におきまして、教員の配置等におきましても特殊の考慮をしていただきますならば、ある程度御心配はなくなってくるのではないかと思います。また子供のいわゆる不良化防止というようなことにつきましても、余りましたような定員を、たとえばカウンセラーとして配置をする、こういうような方法も講じられる道があろうかと思うのでありまして、これらの手段によりまして、無理のないやり方でもって進ませていただきたいと存じております。
  137. 滝井義高

    滝井委員 ぜひいまのような弾力的な運営をしていただくように希望いたしておきたいと思います。  次は大蔵大臣見えましたけれども、いま石炭の設備資金と整備資金について質問したわけですが、ことしの五月か六月ごろに質問したときに、設備資金で八十二億、整備資金で百五十一億不足ですという答弁があったわけです。そこでそれでは困るではないか、離職者に退職金もいかないようなことになるということで、当時通産大臣が、これは私が責任をもって補てんをいたします、こういうことで七月の閣議で八十億たぶん追加していただいたわけです。ところが、いま大橋さんの説明によりますと、なお当時よりか五千九百人の離職者が計画よりか上回って出てきた。こうなりますと、また整備資金が不足してくるわけです。この前百五十一億不足だというのに八十億してもらってなお不足しておったわけです。そこでこの不足分についてはさらに何らかの前進を見なければならぬが、どうしますかという御答弁を伺いましたところが、いまわれわれとしては六十五億いただけば会社の状態その他の資金繰りも見て、六十五億あれば大体五千九百人の余分の離職者が出ても何とか今年はまかなっていけますという事務当局答弁があり、大臣答弁があったわけです。そこで、これはあなたの答弁の六十五億出すか出さぬかということだけになってきたわけです。ちょっとお便所に行っていなかったから、金をもらうことをここで突如とし言うのはなんですけれども、これを御答弁いただきたいと思います。
  138. 田中角榮

    ○田中国務大臣 離職者がふえることによって必要な資金は、どうしても調達をしなければならぬことは言うまでもありませんから、その方向で検討いたしておりまして、いま大蔵・通産の間で話し合いを進めておりますので、近くまとまると思います。またまとめようと思っております。これは査定をするとかどうとかいうものではなく、必要なものは出すという原則を持っておるのでありますから、御心配のないようにいたします。
  139. 滝井義高

    滝井委員 その名答弁でけっこうです。  次は、石炭鉱業の合理化のテンポが非常に早くなって、資金計画においても、離職者の再就職計画においても狂いがきた。同時にいま一つ、産炭地振興の非常なおくれがあるわけです。合理化のテンポは非常に早いけれども、産炭地の振興は遅々として進まない。今まで政府が、たとえば国営工場を持ってきますということを言っておられました。ようやく国営工場的なものは一つだけきまった。それは田川に百人使う専売公社のフィルター工場が一つきまりました。近く飯塚市を中心に自衛隊を千五百人くらい移動させることがきまったくらいで、あとは調べてみると、ほとんど家計補助的な、中学を卒業した女性を使う程度の、九千から一万二千円程度の賃金の工場しかないのです。いわば、ほんとうに日本の経済が高度に成長して、鉱工業的な生産がずんずん進んでいるという姿が筑豊炭田にあらわれてこないのです。  そこで、この産炭地振興の問題でまずお尋ねしてみたいのは、あれだけかねや太鼓で推進をしていったボタ山整備事業というのは、一体現実はどういう状態になっているかということが一つです。それからいま一つは、たとえば工場を誘致をするといっても、そこには用地、用水等、あるいは道路網もほとんど完成していないのです。それから、たとえば長距離の即時通話区域の編入も行なわれていないのです。だから東京や名古屋、大阪から企業が来ても、さて自分の本社に電話を通じようとしても、もう待ち時間が長くて即時通話ができない。わずかの金を入れればすぐに即時通話ができるのだが、なかなかやってくれない。こういうことで、産炭地振興をやろうといっても企業は来ないのですね。だから、こういう点をもう少し積極的にやってもらう必要があるんじゃないかと思うのですが、まずそういう用地、用水、道路の整備計画等の問題は、建設大臣がおられませんから、答弁は留保してもらうとして、ボタ山整備事業の状態はどういう状態か、簡単にひとつ御説明願いたい。
  140. 福田一

    福田(一)国務大臣 ボタ山の件でございますが、ボタ山処理は、筑豊を中心にいたしまして、土地造成、ボタ山処理という形において十二件、三十八万坪をいま手がけております。ただ、この問題については、御案内のように、ボタ山を整理をいたしまして土地を造成したときに、その土地の価格がどういうふうになるかという問題をめぐりまして、いろいろまだ問題は残っておるわけでありますが、われわれといたしましては、予算の範囲内において、きまったことについては極力これを推進しようと努力を続けております。順次その緒についておると考えておるところであります。
  141. 滝井義高

    滝井委員 時間がありませんから私から言いますが、大臣、私が調べたところによると、このボタ山整備事業は千二百人使う予定だったのですね。ところが、いまはどういうことになっておるかというと、わずかに四カ所しかできていない。長崎県の調の川、福岡県遠賀郡の虫生津、福岡県糟屋郡の田富、常磐の落合、合わせて二百八十一人です。一体こういうように事業がおくれる理由はどこにあるかというと、これは大蔵大臣のほうに責任があるのですか、まずそのつくった土地にすぐに企業が来るという形ができないとなかなか許さない。企業がすぐに来なければ大蔵大臣のほうが許さぬばかりでなくて、今度は農地の転用ができない。土地の取得ができない。だから、あのピラミッド型にそびえておるボタ山をくずそうとすれば、それは田んぼを埋めるか、あるいは原野を埋めるかしなければならぬ。ところが農地を転用するときには、五千坪以上は農地委員会にかけて農政局長の許可が要る、一万坪以上は農林大臣の許可が要るわけです。農地委員会は一カ月か二カ月に一回ずつしか開かぬから、なかなか許可がとれない、書類はたまってくる。こういう実態で、通産省があせりにあせってもなかなかうまくいかない。あれだけかねや太鼓でやったけれども、進まない。そこで、いまどういう考え方が出てきたかというと、とてもボタ山整備事業は炭鉱離職者を使うには適せぬようである。それはどうして適せぬかというと、御存じのとおり最近は土木が近代化されて、田中さんは専門家だけれども、ブルドーザーその他をどんどん使うわけです。それで普通のもろ手で働く労働は非常に少なくなってきた。したがって、一貫して始めるときから終わるときまで百人なら百人ずっと使うわけにはいかない。初めにかかりが少なくて、どんどん工事が進んで働く場所が広くなればたくさん使えますが、だんだん狭くなると使えなくなる。こういうような状態なのです。そこで、専門家の意見では、これはたんぼを埋めたりなんかするのではとてもたいへんだ、まず第一に今度できた用地が、坪当りの値段が、たんぼその他の取得の価格が高くなって、たとえば関西経団連の言うのには、九州の炭田に行くなら坪二千円くらいだと言っておる。ところが二千円じゃできない。五千円も六千円もかかる、あるいは三、四千円になる。こういうことで、まず工場が来るときまらなければなかなか大蔵省が許さない。来るためには農林省に行かなければならぬけれども農林省も、やっぱり来るときまったところがあれば農地の転用を許す。こういうことになって通産省はサンドイッチですよ。そこで最近は博多湾か響灘のようなところを、たとえば志免鉱山の閉山があったら、その鉄道の線路を使いながら響灘、博多湾でやったらどうだというような意見が出てき始めておる。いわゆる行き詰まりがきておる。これに対する何らかの対策をやらなければならぬ。朝令暮改であってはならぬわけです。そこで、これは農林大臣大蔵大臣にこのボタ山処理事業に対する見解を承りたいと思うのです。
  142. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いつも大蔵大臣、大蔵省が悪いようなことを言われますが、この産炭地振興に対して大蔵省がチェックしているような事実はありません。これは厳重に私から注意をいたしておるのであります。この問題は、土地造成をやるということが目的ではなく、産炭地の振興ということと、いわゆる離職をした人に対して応急的に職を与える、こういう大きな目的を持っておるのでありますし、産炭地振興臨時措置法ができておりまして、この精神にのっとってやらなければならぬので、まず人に職を与える、こういうことを前提にいたしておりますので、大蔵省が障害になっておる事実はありませんから誤解は解いていただきたい。ただし、この事業は初めてやる仕事でありますから、機構の整備その他でもってようやく軌道に乗ってきたというような事実と思います。もう一つは、私も、北海道の問題とか常磐の問題とか筑豊の問題とか、非常に心配をしておるのですが、これはただ政府が一方的にどうするということよりも、やはり地方団体、特に福岡県も佐賀県も長崎県もというように、地方団体と政府との呼吸がぴったり合って、しかも福岡県等では財界の有力者もおりますし、現実的に大きな事業をやっておる人もあるのですから、そういう人たちの総力をあげて一つの国家目的を果たすという態勢をとらなければ、なかなかこの事業はうまくいかぬというぐあいに私は心配しておるのであります。でありますから、事務当局も督励いたしますから、どうぞこの法律の目的を達成せしむるように、そういう意味でも広い意味で御協力を賜りたい、こう考えます。
  143. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お答えいたします。産炭地の問題につきましては、措置法等の趣旨もございますので、農地転用につきましては、ほかよりもなお注意して早く許可するように私は督励しております。すでに四件か許可になっておりますが、お話の出た田川等につきましても、ごく最近農林省にのぼってきました。迅速に許可するように一そう督励いたします。
  144. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣も大蔵省は障害でないと言うし、農林大臣も農地の転用については十分検討して早いところやると、こう言ったので、これで大体障害は除かれたと私は考えます。大いに推進をいたしますから、どうぞひとつ御協力を願いたいと思います。  次は鉱害です。御存じのとおり、いままでは石炭鉱業合理化事業団というのがあって、この合理化事業団が買い上げた石炭山の鉱害については連帯責任を持ってやっておったわけです。ところが、なかなか連帯在任の荷物が重くなったために、新しく法律を変えて新方式というものをつくって、その合理化事業団の連帯責任を解除してしまったわけです。その結果どういうことになったかというと、あるAという山を一億で整備資金を与えてつぶすということになると、その一億の限度内でやらなければならぬことになってきた。御存じのとおり、炭鉱経営者というものは、山を売るときにはもうすっからかんです。したがって、一億円の中で全部仕事をするということになるとうまくいかないのです。最近見ると、悲惨な状態が至るところにできてまいりました。政府は、この新しい方式を、いまのように石炭鉱業の合理化が急角度に進んでいくのですから、これはやはり再検討しなければならないような状態があるのです、この実施の一年間の状態をわれわれが見て。これをまず第一に再検討する意思があるかどうかということです。やはり、ある程度国が責任を持たざるを得ないかっこうになっておるのじゃないかという感じがするのです。たとえば、あとで触れますけれども、今度の三池の災害を見ても、三井鉱山にこの災害の一切のしりぬぐいをやれといってもとてもできる状態ではございません。やはり国が出ていかざるを得ない。それと同じで、災害が起こったときになかなか三井鉱山のような財閥会社でもあと始末がやりにくいと同じように、この石炭を掘ったあとの鉱害のあと始末についても、交付金の範囲だけでやれということになると、地域住民なり市町村の負担は非常にふえてくるわけです。これをやはり再検討せざるを得ない情勢がきていると思うが、通産大臣の見解ほどうです。
  145. 福田一

    福田(一)国務大臣 御説のように、実は鉱害の問題については、われわれも頭を悩ましておるところであります。しかも現実に現場へ行ってみますと、大へんな荒廃が諸所にあらわれておるのでありまして、これを何とかして処理をしていかねばならないというので、滝井さんも御案内のように、いわゆる無資力になったようなもの、また責任者がいなくなったようなものについては、今度は国等において処理をするという措置をとっておるのでありますが、実際問題として非常に鉱害の数も範囲も広いのでありますから、これを一挙に解決するというわけにはいきませんが、できるだけ予算を贈加いたしまして、鉱害復旧には努力をいたしてまいりたいという熱意については御理解を賜わりたいと存じておるところであります。
  146. 滝井義高

    滝井委員 この鉱害の復旧については、炭鉱が比較的健全な場合と、それから、もう買い上げられたけれども金も少ないし、未払い賃金等も多くてどうにもならぬ。無資力にならなければならぬという炭鉱と、この中間のものがあるわけです。これがどっちつがずというのが一番困る。これはもう全く処理の方法がない。無資力にもならなければ、有資力ではあるけれども、やる能力もたいしてない、こういう状態が出てきておるわけです。こういう問題はむずかしい問題ですから、きょうは時間がありませんからやめにして、右資力の場合に、今度七月に発足をいたしました鉱害賠償基金の法律が通りましてできましたが、一体これの運用の状態というものはどういう状態になっておるのか。しかも、これは政府が相当金を出資をしなければ、これはもう積み立て金やら前のあった供託金だけではどうにもならぬ。いまのように鉱害が三十億、四十億と年間に復旧しなければならぬことになると、相当国が金を出さなければだめです。一体これは国が相当金を出す意思があるのかどうか。たとえば去年は三億円出しておった。来年度はもう三億とか四億とか出すつもりがあるのかないのかということですね。
  147. 新井眞一

    ○新井政府委員 鉱害の資金関係につきまして御親切な御質問をいただいたわけでありますが、今年供託金もあるいは積み立て金等で差し繰りをいたしましてやっておりますが、来年度につきましても、同様出資金あるいは借り入れ金約十三億ばかりを大蔵省にお願いをいたしておるわけでございます。何ぶん基本も本年の七月設立したばかりでございますが、ようやく軌道に乗ってまいりまするので、今後特段の努力をいたしたい、かように考えております。
  148. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、出資金は去年はたしか三億円ですね。ことしは幾らの出資を要求しておるのですか。
  149. 新井眞一

    ○新井政府委員 ただいまのところ、出資金は二億をお願いいたしております。
  150. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、二億あれば大体基金の運営というものはうまくいきますか、二億くらいで。
  151. 新井眞一

    ○新井政府委員 これと、先ほど申し上げました借り入れ金等もございまして、全体で十七億くらいの資金量に相なりまして、総工事は約倍の三十四億程度の工事をやってまいりたい、こういうように考えております。
  152. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは二億の出資金はお認めになるのでしょうか、大蔵大臣のほうは。
  153. 田中角榮

    ○田中国務大臣 予算編成中でありますので、数字は申し上げられませんが、諸般の情勢を勘案して処置いたしたいと思います。
  154. 滝井義高

    滝井委員 次に、いま二億認めてもらえば、大体私の計算では、いまの技術者の能力からいって、やはり三十億か、三十五、六億というのがいま復旧の限界です。それは農業土木なり、それから家屋の設計なりの、この設計の技術者がいない。したがって、まず政府としては、ほんとうに三十億、四十億の鉱害復旧をやろうとすれば、この農地の技術者も要りますから、この技術者の活用というものを、相当よく各省が連携をして考えないとうまくいかないのです。  それからいま一つ、そういう復旧計画の有資力のものに関連して無資力のものが今度たくさん出てくる。これはもう御存じのとおり、三井鉱山でもお手上げですよ。お手上げの状態になりつつあるのですからね。そうしてしかもお手上げの状態になると、第二会社にみんな移してしまう。そうすると、最後にはこの第二会社がこれはやらなければならぬことになる。第一会社と第二会社との鉱害の分担の区分をどうするかということは今後における非常に重要な政治問題になります。そうしますと、無資力というものはますます増加してくる。われわれがちょっと調査したところでも、やはり二十億くらい要る、こういうのです。無資力、たとえば三十八年度でも二十億くらい要ると現地の専門家が言っている。一体無資力は三十九年度においてはどの程度やるつもりですか。
  155. 新井眞一

    ○新井政府委員 無資力の関係は八億余万円でございます。
  156. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その八億というのは、さいぜんの三十四億の中に入っているのですか。それとも別に八億なんですか。
  157. 新井眞一

    ○新井政府委員 これは融資ではございませんので、無資力認定をいたしまして、国と地方公共団体等が一緒になりまして復旧をするのでございますので、先ほどの貸し付け金とは別でございます。
  158. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうしますと、大蔵大臣、これが一番大事なところなんです。これは御存じのとおり、鉱業権者と国とがいままでは鉱害復旧は負担をする。ある場合は県が出てきて県が負担をしておったわけです。ところが今度は鉱業権者がいなくなるのですから、この前重政失言があったように、鉱業権者の分を国と自治体が見なければならぬことになるわけです。したがって国の負担が非常にふえてくることになるわけです。そこで八億をやるとすれば、おそらく六、七億は国が持たなければならぬことになる。これを一体やるかやらぬかということが、筑豊における民生安定の非常に重要なところです。いま八億ということでございますが、私が調べたところでは二十億くらい必要だといっているのです。ところが、その三分の一程度しか出ておらぬようになるのです。そうすると、これを一体おやりになるのかならぬのかということが一つ。  それから農林大臣にこれは関連をいたしますが、最近におけるいわゆる石炭鉱山の終掘に伴って、最後には乱掘が行なわれるわけです。そこで乱掘が行なわれる結果、どういう結果が出るかというと、すべての美田がみんな沼になってしまうわけです。そうしますと、反当りの復旧費が昨年は二十五万円が限界だった。それを、それではとてもできないという要望が強くて、三十五万円に引き上げました。ところが、いまや反当の復旧費が三十五万円でもできなくなっちゃった。こういうのがたくさん出てき始めた。どんどん石炭を、いわゆる上がり山になると払って上がってしまうわけですから、石炭が見えるところは取って上がってしまう。だから急激な陥没が起こってくるわけです。そうしますと、反当三十五万円でできなくなっちゃった。そこで、これは農林省の運用によってやらなければならぬことになってきた。一体大蔵大臣としては、この無資力のものを相当積極的にやる意思があるのかどうか。農林省として、こういう農地の少なくなりつつある日本において、三十五万円という限界だけで復旧が不可能な場合にはいかなる措置を一体農地にとるか、この二点をひとつお答え願いたい。
  159. 田中角榮

    ○田中国務大臣 本年度は鉱害復旧予算として三二%の大幅増額をいたしたわけであります。十三億三千二百万円、こういうことをやっておるわけでありますから、これから後年度のものにつきましても、特に無資力に重点を置いてやったわけでありますから、通産省の意見も十分聞きながら対処したいと思います。
  160. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農地の鉱害復旧につきましては、いまお話しのように、反当たり二十五万円を本年の二月に改めまして三十五万円にいたしました。しかし、それでもなかなか困難であるということでありますことを承知しています。そこで第一段階としては、反当たりという個別にしないで、その地区全体を平均しまして、あるいはもっと高いところも出るでありましょうし、あるいは低いところもあるかもしれません。三十五万円ということで落ちつけばそれでやっていく、それでもなお困難であるということでございますならば、三十九年度に三十五万円を引き上げるということもいま関係当省と協議の上検討をいたしております。そういう方向に持っていきたい、二段階に考えております。
  161. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ三十五万の反当たりというのをもう少し応用して、広い範囲で平均して三十五万、それでもいかなければ三十五万の単価を上げていく、こういう二段階はぜひひとつやっていただきたいと思います。  次に、産炭地の問題と関連して、大橋さんですが、来年の十二月になりますと、御存じのとおり、いま七千人のワクを持っている緊就が命が切れるわけです。これは、現在の筑豊における各市町村の土木費の中に占める割合は、五割から多いところは八割を占めておるわけです。これをいたずらに政府がじんぜんとして、来年の十二月にこれを延長する意思があるのかないのかということを明白にせずにずるずるっといくことは、この不安に包まれている炭田地帯になお不安を与えるわけです。この際、ここで、一体十二月のものを労働大臣としては責任をもって延長する意思があるのかないのか、明白にしておいてもらいたい。
  162. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 産炭地におきまする特殊の失業対策として実施いたしておりまする緊就事業につきましは、現在の産炭地の実情から見まして、失業者対策としては継続するほかはなかろうという考えを持っておるのであります。したがいまして、来年度の予算におきましても、労働省といたしましては、そういう趣旨で要求を提出いたしておりまするが、いずれ年内には予算も決定いたすと存じまするので、その上ではっきりいたしたいと思っております。
  163. 滝井義高

    滝井委員 労働大臣態度がはっきりしましたが、大蔵省としてはどうですか。これは田中さん、大丈夫だろうと思うのだけれども、一ぺん念には念を入れてお聞きしておきます。
  164. 田中角榮

    ○田中国務大臣 労働大臣とよく相談をして、善処します。
  165. 滝井義高

    滝井委員 石炭合理化の問題を、いま私は簡単に要点だけ、離職者対策も変更しなければならぬし、資金計画も相当変更しなければならぬし、産炭地の振興もおくれているから、それぞれ特徴的な隘路を示しました。ところが、そのように石炭鉱業の合理化のテンポが非常に早くなったために、いま一つの非常な特徴は、災害が激増したということです。重症の災害は、山によって違いますけれども、五割から七割程度に増加をしてきているわけです。特に今度大災害が起こりました三池の状態を見ても、たとえば殉職者は、昭和三十二年には四人でございました。三十三年も三人でございました。三十四年は一人だったのです。そうし三二十五年に三池のあの大きな闘争がございました。ところが、それが終わって三十六年になると、一挙に殉職者が十七人になりました。三十七年には十五人になり、三十八年十一月八日までに十六人で、そして十一月の九日に四百五十八人起こったのです。こういうように、異常な災害が増加をしてきているわけです。私は、このような災害の激増の状態を見て、保安監督の衝にあった通産省としては、一体どういう措置をまず経営者に対してとったのかということ、これをひとつお示し願いたいと思う。
  166. 福田一

    福田(一)国務大臣 いま御説明がありましたとおり、特に三井の三川鉱、三池炭鉱については、災害が最近非常にふえております。七月、八月、九月と実は多かったようなわけでございますので、そこで十月の二十一日に、鉱山保安局長が、現地の鉱山保安監督部を通じまして、三井の会社に対して厳重な警告を申し入れておったような次第でありますが、いずれにいたしましても、最近のこういうような状況を見て、通産省としては、これは非常に遺憾に考えておりますので、ことしの春にも、全般的に、特に災審問題については注意をするようにということを各山に通知もいたして、保安の厳重な監督について措置をいたしておったのでありますが、今回、このような事件が起きましたことは、まことに私としては遺憾にたえない。死没者の皆さんに対しても、また遺家族の皆さん、また現在病院に入っておられる罹災者の皆さんに対しましても、まことに申しわけないことであると考えておる次第であります。
  167. 滝井義高

    滝井委員 政府としては再三にわたって警告を発しておったということでございますが、私は、やはりここで会社の、経営者の社会的な責任と行政の責任について考えてみる必要があると思います。  私は、もう時間がございませんから特徴的なところだけ申し述べますが、まず第一に、十一月の九日のあの大変災が起こったときに、一体何人の人が入坑しておったのか、その入坑者の氏名を明らかにせよ、この問題について簡単に明らかにできてないのですか。当時千九百五十四名と発表をしたかと思うと、その次は千二百名だ、その次は万三百八十八名だ、わからないです。いまでも、私の手元に氏名をひとつ出してもらいたいと言うけれども、まだ来ておりませんが、わからないのです。一体こういうことで監督官庁としていいのかどうかということです。こういうことで大企業の経営者としての責任がとれるのかどうかということです。しかも、おそらく大臣も答え得ないと思うのですが、大臣、七百メートルのいわゆる崩落があります。その七百メートル崩落しておる中に、一人の死体もないと断言ができるかというと、断言できないでしょう。あなたのほうの事務当局の保安局長に私尋ねてみたけれども、断言できないのです。七百メートル崩落しておるが、そこに一つの死体も残っておりませんかと言ったけれども、それは私は自信を持って答えることができません、会社はないと言っておるからたぶんないんだろうと思います、こういう答えです。これで一体経営者としての社会的責任が果たせるのか、これで行政官庁としての責任が果たせるのか、こういうことなんです。こういう実態ですよ。  それから、組夫です。組夫は一体いま三井鉱山の三池には何人いらっしゃいますか。これまた答弁がよくできないのです。有沢調査団の答申の中には、組夫についてはきちっと法律で規制をすることになっているはずです。規制をされておるはずです。ところが、この組夫が何人おるかというのがはっきりしない。これは組夫の数は大橋さんのほうになると思うのですけれども、大橋さんのほうに何人おるか来ておるならば、ちょっとお教え願いたいと思うのですけれども……。
  168. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは災害当時の調査でございまするが、当時使用中の組夫の数は、坑内におきまして四百二十二、坑外において二百三十、合わせて六百五十二となっております。
  169. 滝井義高

    滝井委員 その数も、現地では、会社は、坑内は三百八十人と、こう答えたのです。いま大橋さんは四百二十二人と言った。今度は、基準局は、二百八十人と、こう言ったのです。こういうように全部違うのです。全部数字が違うのですよ。会社の数字と基準局の数字と国会で今度やる大橋さんのとは、みな違うのです。こういうことになるから、一体何人入っておったですかというと、全然わからない。坑内に組夫が入っておるのですから。わからないのです。そして、しかも、さて死体の引き取りをしようとなったときに、死体がわからないのです。こういうばかなことがありますか。日本一の、世界の有数の大企業ですよ。これは、私は、経営者がたるんでおるばかりでなくて、役所の監督もこういう大企業に対してはほんとうに監督ができていないということなんです。そういう実態です。しかも爆発が起こってまだ働かしているのですから。爆発が起こっても働かしておるのです。こういう点についても私は問題があると思うのです、経営者にしては。  もう一つある。もう一つ、いま警察は三川鉱の一部は立ち入り禁止をしているのですよ。ところが、立ち入り禁止をしておるところにどんどん千人以上の労働者が入っていっています。そうして、警察にこれを尋ねると、警察は、いやわしのほうはそれに監督をつけてやっております……。しかし、まっ黒な坑道の中でしろうとの警察が行って。何千人の人がやっておって、一体監督ができますか。こういう状態です。  それから、労災の支払いです。これは私は労働省はヒットだったと思うのです。十一月の九日に災害が起こって、十一月の二十日には支払いを開始しております。まだその会社の責任であるかどうか原因はわかりません。いままでこういう原因のわからないものについてはなかなか払わなかったのです、労災金を。われわれが三拝、九拝をしてようやく、責任を持つからということで、何とか払ってもらいました。ところが、今度は、十一月九日に起こって十一月の二十日に支払いを開始しておるけれども、十一日目に払っておる。しかも全額を払っておる。四億七千万円、これは私はえらいものだと思うのです。こういうやり方をすべてにおいてやらなきやならぬです。すべてにおいて。  こういう点から見ても、いかに会社の責任が重大であり、行政の責任が重大であるかということがわかるのです。しかも、この三井の問題は、あの豊州の水没、それから上清の火災、大辻炭鉱の火災のときも、同じことをみんな言ったんです。もう今後こういう事故が起こらぬようにいたします、監督は厳重にいたします、抜き打ち監督だっていつでもやりますと、こう言っておったのです。ちっともやってない。忘れたころに災害がやってくる。二年か三年たつとまた同じことがやってくる。だから、今度こそはひとつえりを正してやっていただきたいと思いますが、通産大臣、どうですか。
  170. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のように、保安の問題、特に人命尊重を第一義として生産を考えるということについては、われわれとしては、十分今後も戒心をいたし、またその方向で処置をいたしたいと思います。これについては法規の改正も必要でありますが、いまあなたのお話では、あまり監督ができていなかったじゃないかということでありますが、私は、かなり監督の目は届いておったのであるが、一部抜けておる面もあったという感触でございまして、特に怠っておったというわけでもないが、まあ事後監査というのが少し足りなかったのだと私は思うのであります。こういうことは決していいことではありません。お説のとおり、われわれとしては、十分戒心をいたしまして、今後そういうことのないように、すべて人員の配置あるいは予算の面その他についても今度は十分戒心をいたしまして善処いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  171. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつしっかりがんばっていただきたいと思うのです。それはやはり大企業だからといって遠慮する必要はない。きちっとやってもらいたいと思う。小さな企業には非常に峻厳に当たられるけれども、大企業についてはどうも少しふんどしがゆるんでおる感じがするんです。  次は、生産再開の条件です。いま、石炭の不足だ、もう三十万トンくらい緊急輸入しなければならぬから、早く三池を再開しなければいかぬ、あるいは七〇%の休業補償では食っていけぬから早く仕事をさしてくれ、あるいは関連産業の炉がだめになる、火が消える、だから早くやってくれ、こういうことが非常に言われているんです。一体、生産再開の条件はどういう条件がそろったら生産再開をさせますか。政府としてはどういう条件がそろったら生産再開をさせるつもりですか。
  172. 福田一

    福田(一)国務大臣 私が十四日に現地にまいりましていろいろの事情を勘案した結果、これは法律による生産停止命令ではございませんが、行政処分といたしまして、いままで坑に入っていた人の身体検査といいますか、健康診断を行なうと同時に、いわゆる保安が確保される、現実にいま確保されている、それから将来も一定の人数を配置してそれが維持されるというような形ができてくるのでなければ生産を再開することは認めないという、いわゆる行政的な措置によってただいま三池のこの生産を認めておらないのでありますが、その後会社側からも、こういうような措置をして保安の確保をいたします、こういうような書類が出てきておりますので、そこで、もうすでに、まだ坑道がほんとうにあいておらない、あなたが先ほどおっしゃったように、あいておらない三川鉱を除いて、四山と宮浦鉱につきまして、現在うちの監督官が保安の現実の状態がいかがであるかということをいま調査をいたしておるのであります。これが大体十六、七日ごろにはできる予定でございますが、私としては、こういうような大災害があったときに特に保安の万全を期するという意味で、いわゆる行政関係には関係のない大学の先生方を十名十日の日にお願いをして、十一日からこれらの方々が、大学の先生方が中心になられまして、いま現実に二つの坑道について保安の状況を見ていただいておるわけであります。これも、私の聞くところでは、十六、七日ごろには大体現地の調査を終えられて、私にその答申をなさる、こういうことを承っておりますが、私としては、そういうような答申を聞いた上で、その行政命令の一部を場合によっては解除する、場合によってはまたこれを認めない、こういうふうな措置をとるつもりでおります。しかし、これはただその会社が生産を再開することを認める、こういうことをすれば認めるという意味でありまして、現実に石炭が掘れるか掘れないかということになれますと、会社内部の問題もここに生まれてくるわけでございますので、これらの点については、会社の内部において、良識のある判断に基づいてすべての問題が措置されていくことを希望いたしておるわけであります。
  173. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ちょっと念を押しておきますが、単なる物理的な保安の万全と申しますか、作文はどうでもできます。たとえば、散水はいたします、岩粉はまきます。電気は明るくいたしますということは言っても、それは実行しなければ話にならぬわけです。実行するのは、だれが実行するかといえば、人間が実行するわけです。ところが、これは大臣も御存じのとおり、中野さん等の技術調査団も三池に行ってみたところが、そこでは保安委員会というものは形ばかりである、人間関係はきわめて冷ややかである、こういうことで、私は、保安は人間が守るものだと思うのです。したがって、ここに人間関係というものを改めない限りは、これはなかなかたいへんなことだと思うのです。だから、ここらの点を十分、ただ機械的な物理的な保安でなくて、そこらの人間関係についても十分考えてもらわなければならぬと思う。その人間関係というものは何になってくるか。遺族補償の問題が出てきます。あるいはいまの入院をしておる皆さん方の治療の体制の問題にも関連をしてきます。こういうものに心あたたまる状態を持っていかないと、これはなかなか生産再開ができないと思うのです。当然そういう点の万全の措置がとられて生産再開となると思うのですが、そう理解して差しつかえありませんか。
  174. 福田一

    福田(一)国務大臣 保安は人間がやるのだから人間関係が大事だ、こういうことでございますが、それは、やはりそれぞれの山々における状況によって差異が出てくると思うのであります。三井の場合においてどういうふうにするのが良識のある解決になるかというようなことは、それは三井の会社内部においてひとつ十分に検討されるべきものであると思いますが、私は、これ以上のことをここでいま申し上げないほうがいいのではないか、かように考えております。
  175. 滝井義高

    滝井委員 行政には表からいく指導と内部指導というものがあるわけです。たとえば、保安についても、さいぜん大臣が言われたように、警告はしておった、警告はしておったけれども、向こうで、やりました、りっぱに掃除はいたしましたと言って、その掃除をしたかどうかを見に行かなかったところに、いわば大きな欠陥がございました、こう言っておるのです。形式的なものが出てきても、現実にその状態を維持していく内部的な体制があるかどうかということは、これは人間がつくるものなんです。人間が動かしていくものなんです。その人間関係がうまくいかなければいかぬので、そこらは以心伝心よくわかりましたから、言う必要はございませんから、とくとひとつ、私とあなたの腹が通じ合うように、労使の間の腹が通じ合うように内面的にも十分御配慮願いたいと思います。  次は、大橋さんのほうになるかと思いますが、なかなかここでは私医者であるだけに言いにくうございます。言いにくうございますが、御存じのとおり、入院されていらっしゃる皆さん方の予後というものは相当重大です。いま御存じのとおり二十カ所に分かれてそれぞれ治療を受けておられます。こういう状態を長く続けるというわけにはまいらぬと思います。特に、さいぜん申しましたように、人間関係が、これは単に労使関係だけでなくて、医師と患者との間にも出てきております。これは、事業主病院というものがあって、そこにたくさんの人が入院しておるのですから、ここで治療する側と治療を受ける側とお互いに不信感があるとたいへんなことになる。こういう状態がありますので、したがって、一定の期間を経たならば、現地の医師その他とも十分に相談をして、これは例でございますが、臨時労災病院とでも申しますか、何かやはり集め得る人たちを一カ所に集めて、第三者の権威ある医者によって予後が指導されるという形のほうがいいのじゃないかという感じがいたします。こういう形が一体とれるのかとれないのかということが一つ。  それから、いま一つは、この入坑をしておった、千何百人かわかりませんが、その千人をこえる人たちと、それから、罹災をした人たちを救助に行った人たちがございます。これらの人たちの身体検査をおやりになったということでございました。しかし、御存じのとおり、一酸化炭素中毒というものは、いわば脳の中の酸素が欠乏するわけでありますから、いろいろな後遺症が出てまいります。そのときにはなくてももとで出てくるという状態がありますと、国の責任で少なくとも二年間くらいは二カ月ないし三カ月に一回ずつの定期検査をやる必要があると思います。いま労働基準法では一年に二回は事業場では身体検査をやります。しかし、それでは問題があると思います。たとえば、坑内に入っておって、あのとき救助に行った人がぽっこり心臓麻痺でなくなった場合に、一体、労災にとるべきか、それとも普通の心臓麻痺としてとるべきかという問題が起こってくるわけであります。こういう問題が起こったときに、遺族に迷惑をかけないように公正な判断が下せるようにするためには、やはり、二年間くらいは、少なくとも定期的に二、三カ月に一回だけは、入坑しておった人と救助に行った人全員について国の責任で身体検査をやる必要があると思います。いま、この問題を三池の現地で団体交渉で出したら、会社は拒否しております。こういう問題でさえも拒否する会社です。私はヒューマニズムから許せないと思います。おそらく皆さんもそうだと思います。会社がおやりにならないならば、やはり労災の金でやるべきだと思います。そのやる責任は労働安全衛生で、技術陣が労働省におられないならば、厚生省に委託してでも私はやるべきだと思います。この点について一体大橋労働大臣はどう考えておるのか。
  176. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まず第一の御質問、すなわち、一酸化炭素中毒患者の治療施設を一カ所に集中してやられる考えはないかという点でございますが、私どもといたしましては、ただいま厚生省におかれまして、医療問題についての調査のため専門家を派遣いたしておられます。十九日にはその調査が終了いたしまして、間もなく報告があることと存じますが、いずれその報告を待って具体化すべきものとは存じますが、しかし、この中毒患者の中には、長く後遺症等が残りまして、就業ができかねるような状態の続く方もあるのではなかろうか。したがいまして、そういう方のために、やはり労災施設として収容施設が必要であろう、かような考えを持っておるのであります。ところで、それはやはり建物ということになりますと、相当前もって準備をする必要があると思いますので、現在具体的な計画を進めつつあるのでございますが、それと並行いたしまして、それに使用すべき建物の一部を利用して、各地に分散されておりまするもののうち、あまり適当でないと考えられる施設で治療中の方々はそこへ集中して療養を開始する、また、療養終了後においては、後遺症患者として引き続きそこでお世話するというような考えを持っておるのであります。これは、むろん予算等も必要でございまするが、至急具体的な計画を立てました上で予備費あるいは後年度の予算等を措置したい。ただいま鋭意準備中でございまして、間もなく、年内には具体化したいと思っております。  それから第二の、後遺症に対して二年間ぐらい定期検査が必要ではないかという御意見でございますが、私は、専門的に見ましてそういう検査が必要であるかどうか、ただいまのところお答えはできかねます。しかし、この問題も先ほど申し上げました医療調査団の報告によって明らかにされるのではないかと思うのでありますが、そういうことに和なりますると、やはりその定期検査についてはある程度実行するようにしなければなるまいと思います。それは国でやるのがいいか、まあ元来産業災害のことでございまするので、第一次的には使用者の責任であるというのが本来のたてまえだと思いまするが、いずれその医療調査団の報告を待ちまして、経営者と相談をし、場合によっては法的措置を講ずるというようなこともいたさなければならぬかと思います。
  177. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ、医療調査団の結論を待ってでもけっこうですが、そうしていただきたい。その場合に、使用者は、年に二回やったらいいということで、現在団交では拒否しているわけですが、こういう点については、私は、こういうものは世界に発表すべき大きな一つのわれわれの悲しいながらもとうとい経験だと思います。いままで大正三年に方城炭鉱で六百有余名のああいう、ガス爆発があったのですが、そういう文献がほとんどないのです。だから、今度の場合でも非常に困っておるわけです。治療方針その他もきちんといかずに困ったという例があるわけですから、将来のためにも、これをやはり政治的立場から高い見地から処置をしておく必要があると思うのです。ぜひひとつ調査団の結論を待ってお願いをいたしたいと思います。  次は、三池の事故に関連をして、三百名、四百名のああいう負傷者が一挙に病院にかつぎ込まれた場合に、一体だれがその指揮をとってやるのかという、集団的事故に対する救急医療措置といいますか、こういう体制が日本では確立されていないのです。いま、災害対策基本法とか、消防法とか、あるいは警察官職務執行法とか、水難救護法ですか、こういう一体その場合に、たとえばジェット機が落ちて火事が起こって一酸化炭素がずっとびまんをするとか、——東京は、ごらんのとおり、もう日比谷から銀座までは、上に自動車が通って、下に人が通って、その下に今度電車が通るというような、こういう三重構造になるわけでしょう。そうすると、どこかにジェット機ならジェット機が落ちて火事が起こると、一酸化炭素中毒が、ばく大に起こってくるわけです。その場合に、一体救急医療に関する組織はどういう組織で、だれが指揮をとってやるのかということはさっぱりわからない。その費用はどこが持つのかということもわからぬ。そういうのが何にも確立されていない。だから、今度の三池の場合でも、三池の天領病院にどっとたくさんの人がかつぎ込まれてきた。さあたいへんだ、これではどうにもならぬということで、ばらばらと開業医その他に移して、十カ所、二十カ所にもならなければならぬ。これでは、一貫をした指揮系統がはっきりしないし、治療体系がはっきりしない。こういう問題で、助かるべき命も助からなくなってしまう。これは、御存じのとおり、脳外科なんというものは適切な医者がおって適切に適時に手術をすればなおるものなんです。それが、指揮系統がはっきりしない、組織がないためにこういう形になってしまう。この責任内閣にあるんだろうと思うけれども、担当の大臣はとりあえずここでは厚生大臣になるようです。こういうものについて厚生大臣はとくとこの三池の事故あるいは鶴見の事故を契機としてお考えになっておると思うのですが、その構想がおありなのかどうか。
  178. 小林武治

    ○小林国務大臣 お話しのように、まだ十分の組織あるいは運営というものができておらないのは非常に残念なことでありますが、医療関係につきましては、御案内のように、とりあえず災害対策本部の中に医療小委員会、こういうものを持ちまして、職務権限等を別にいたしまして、厚生省の九州の地方医務局長がその責任者として調整をとった、こういうことになっておりますし、その後は、福岡の地方対策協議会の中に医療保険委員会、こういうものをつくりまして、それも地方医務局長委員長となってその調整をとっておる、こういうことになっております。  なお、いま労働大臣お話しにたりました医療調査団につきましては、滝井委員からもかねがねの御要望があり、私どもも必要と認めて、東大の内村名誉教授を団長といたして派遣をいたすことにいたしておるのでございまして、医療関係につきましては、私どもとしましても十分の責任を持って当たりたい。  全体につきましては、こういう問題は一応知事の権限で、とりあえず知事が消防団あるいは自衛隊等に依頼をしてあの際は緊急出動をしておったのでございます。何分にも問題が主として医療の問題でありますので、私どもとしましてはいま申し上げたような措置をとりあえずとったわけであります。医療調査団の報告によりまして、今後の問題、ただいまの医療対策、こういうことにつきまして調査を十分していただきたい、こういうふうに考えております。
  179. 滝井義高

    滝井委員 この救急医療の組織と、それからその指揮系統、同時に、その医療費の負担、こういうものをやはり体系的につくっておく必要があります。いまのようにこんなに大都市に人口が密集してきますと、全くわれわれの思い及ばざる大災害が起こってくるわけです。そういう場合についても当然内閣としては対応できる体制というものをいつでも考慮をしておく必要があると思うのですが、これはきょう予告もなしに突如としてこういう質問をいたしましたけれども、ぜひひとつ内閣としても厚生大臣が推進役になって考えていただきたいと思います。  最後に二問ですが……。
  180. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 時間もだいぶ経過いたしておりますので、簡潔にお願いいたします。
  181. 滝井義高

    滝井委員 全く別の社会保障における医療費の問題です。先日小林厚生大臣は中央社会保険医療協議会に経済成長に対応する社会保険診療報酬の緊急是正について意見を問うという諮問を発せられました。これは具体的にはどういうことなのか、これをひとつ御説明願いたい。
  182. 小林武治

    ○小林国務大臣 医療費は、御案内のように、昭和三十六年に一応改定をされておるのでありますが、その後世間の情勢、あるいは物価問題、あるいは人件費の増高等いろいろの客観情勢の変化もありまして、医療経営にも影響がある、こういうふうな考え方を持っておる。したがって、この際医療費について何分の緊急的な措置が必要であるかどうか、こういうことをお聞きをいたしておるのであります。
  183. 滝井義高

    滝井委員 それは具体的にどういうことですかということです。大臣御存じのとおり、中央社会保険医療協議会というのは、健康保険及び船員保険における適正な診療報酬の額をきめるところなんです。額を大臣が諮問をすると、その建議をすることになっておるわけです。ところが、この諮問は、経済成長に対応する社会保険診療報酬の緊急是正について意見を問うということだから、具体的にはどういうことをするのか。為政者として、政党の大臣として、当然これは自分で意見を持っておらなければ、人から出てきた意見を判断するものさしがないわけです。だから、大臣としては、当然、予算編成前ですから、自分の緊急是正というものは大体こういうことなんだというその具体的なものがないと、われわれとしてもさっぱりわからぬわけです。
  184. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは、いまの医療費を現在のままでいいかどうか、こういうことをお聞きいたしておるのでありまして、むろんわれわれも多少の考えを持っておるが、しかし、それはそれとして、私どもは御意見をお聞きしておるので、そうして、御意見があればそれを尊重して処置したい、こういうふうな考えでおります。
  185. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 時間がだいぶ経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。
  186. 滝井義高

    滝井委員 大臣、十月一日には、御存じのとおり、薬価が下がって薬価基準を下げられたわけですね。それから麻薬の免許の手数料ですが、いま二百円ですが、これを五百円に上げられたわけです。ところが、下がったと判断するときにはお下げになるわけです。それから、手数料がよけいにいると思われるものは、二百円を五百円にお上げになったわけです。ところが、さいぜん、経済の変動があって人件費も物価も上がっておる、だから当然緊急是正をしなければならぬのだ、会の意見を問うという。そうすると、経済が成長したら、社会保険診療報酬の額のどこを直したら経済成長に対応することになるのですか。これは大臣としては見解をお持ちのはずです。
  187. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは全体の問題でありまして、私どもは、いまどこをどうこういうことを言うておるのじゃなくて、一般的に医療費がどうだろう、いまの客観情勢に対応してこういうことをお聞きしておるのであります。
  188. 滝井義高

    滝井委員 そういたしますと、医療費はどうだろうというのは、物価が上がり、公務員の給与その他の人件費も上がっておる、だから医療費は上がる方向で改定をしなければいけないのだ、これははっきりしておるわけですね。
  189. 小林武治

    ○小林国務大臣 そうそうこともお聞きしておるわけです。客観情勢にいろいろ対応して、いまの状態でよろしいかどうか、また、よろしくなければどういうことにしましょうか、こういうことをお聞きしておるわけです。
  190. 滝井義高

    滝井委員 国会は国権の最高機関なんですから、政党の大臣としては、一体いまの客観情勢から、——こまかいことはいいですよ。上げるべきなのか、それともいまのままで置くべきなのか、下げるべきなのか、この判断はあるはずなんです。これが答弁できないということになれば、大臣の資格はない。
  191. 小林武治

    ○小林国務大臣 いま申し上げるように、そういうことをお聞きしておるんだ、私どもの考えをいま述べる時期でない。こういうことなんです。
  192. 滝井義高

    滝井委員 それはどうしてですか。どうして述べる時期でないのです。諮問機関というのはあなたのほうのベースですよ。国会はわれわれとあなたとの取引ですからね。政党の大臣として、しかも一国の大臣なんですから、ものごとの判断というものはなければならぬ。では、薬価基準というものは、下がったから下げたんでしょう。その判断は自分でおやりになっておって、そうして、上げるのか下げるのか現状維持なのかという判断さえできないなら、あなたは、意見を聞くまではいつまでもやれぬということになるわけですね。
  193. 小林武治

    ○小林国務大臣 薬価基準の問題は、薬屋さんが値段を明らかに下げたから下がって、医者の薬局に対する支払いがそれだけ減った、こういう明確なる事実をただ表示しただけであります。また、医療費の問題ぼ、今言うように、いろいろの変化がありますが、どうでしょうか、こういうことをお開きしておるので、聞いておるものが、これをこういうことでどうだ、こういうことじゃありません。
  194. 滝井義高

    滝井委員 薬価は下がったから下げた。そうすると、米は昨年一二・四%政府は上げました。米が上がれば、入院するには米を食うのですから、上げなければならぬ。公務員のベースは三十六年八月には七・一%上げました。三十七年八月には七・九%上げました。三十八年八月には六・七%上げました。そうすると、公的医療機関の人件費はこれにならってみな上がっているのです。そうすると、薬は下がったから下げた。米代は上がったから、入院するには米を食わぬわけにいかぬから、食うから上げなければならぬ。人件費は上がったから上げなければならぬ。そうすると、下がったものはないんですからね、薬以外は。そういう点が明らかになっておるんだから、何も私はここで幾らの額を上げるとか、そういうことを聞いておるんじゃないですよ。下げるのか、現状でいくのか、政府としては上げる方針なのか、諮問の意味がまずわからないのです。経済成長に対応した緊急是正というものは、下げることなのか。現状維持は緊急是正じゃない。だから、上げるか下げるかどっちかしかないわけです。ところが、薬は下がったから下げたが、米が上がった、人件費が上がった、物価が上がった分はどうしますか、こう言っているのです。
  195. 小林武治

    ○小林国務大臣 医療費は、米とか人件費とか、そういうものを端的に基礎として、あらゆる要素を基礎としてつくっておりますが、薬は、薬そのものを薬屋が下げた、こういう事実によっただけであります。しかも、薬は端的に点数が出ておる、こういうことであります。
  196. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと待ってください、滝井君、お約束の時間はだいぶ……。これだけ許します。
  197. 滝井義高

    滝井委員 大臣、もうちょっと勉強しなければいかぬ。人件費と衛生材料とまかない費と光熱、水道、それから事務費、地代、家賃、こういうふうな、衛生材料等も加わるんですよ。そして医療費というものが出てくる。医療費というものは薬価というものが非常に大きな比重を占めているのですよ。そういう点がどうもここで……。もう一ぺん社会労働委員会でやり直さないといかぬ。もう少し勉強しないと、そういう機械的なものの見方ではこの問題は解決しないですよ。  どうもありがとうございました。
  198. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 答弁はいいですか。  以上をもちまして滝井義高君の質疑は終わりました。  次に川上貫一君の質疑に入りますが、川上君とのお約束理事会において二十分と決定しておりますので、どうぞお願いいたします。川上貫一君。
  199. 川上貫一

    ○川上委員 非常に時間がありませんので、私は質問をまとめていたしますから、防衛庁長官の御答弁をお願いいたします。  御承知のように、最近アメリカは市中戦略体制を変えたはずです。一部を改めて、海外の軍隊を削減して、そのかわりに本国からの大規模な空輸と、ポラリス潜水艦の配置を中心とする、防衛庁長官御承知だろうと思うが、いわゆる多角的軍事体制、これをとってきた。この戦略体制は、言うまでもないことですけれども、同盟国の防衛力の増強ということをどうしても要請する、こういう性格を持っておるのです。特に日本は安保条約で相当しばられております。ことに、アメリカの国防次官のギルパトリック、この人などは、将来韓国の防衛は日本に引き受けてもらう、こういうことまで言うておるのですから、今度の新しい戦略体制が非常に大きな強要を日本に向けてくるということは自明だと思うのです。現にこの点で、アメリカの国防省は日本にこの通告をしておるはずなんです。それから、日米両国の間でもこの具体策についての話し合いが行なわれておるということは、ワシントンでも日本でも、もういまでは公然の秘密です。  そこで、一つのお伺いは、その話し合いの内容、これを逐次国会に報告をなさる用意があるかないか、この話し合いの内容というものを明らかにされるつもりがあるかないか、これが第一点です。  それから第二点は、——まとめて質問しますから……。アメリカは現在日本に配置しておりますF100D、B57A、F102B、これらを一そう強力のものに取りかえると同時に、日本に対してはF104戦闘機の大量の増強を要求しておるはずであります。特にミサイル武装の強化、これを要求しておるし、核兵器の使用訓練というものを強く要請しておる。さらに、韓国のアメリカ軍の削減に肩がわりをするために、自衛隊に対して特殊訓練というものが行なわれておる。その上に、アメリカ軍の指揮のもとで、北海道や静岡では自衛隊の、しかも陸上自衛隊、海上自衛隊、それから空軍、この三軍の上陸演習が行なわれておる。これは普通のことではないと思うのです。この核兵器の使用訓練といい、敵前上陸演習といい、これは明らかに自衛隊の核武装という問題と海外派兵という問題を想定したものである、こう考えて差しつかえないと思うのです。  以上の二点について、その真相を防衛庁長官から明らかにしていただきたいというのが私の二つの質問です。
  200. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 十月にアメリカ側から、在日米軍の配置問題につきまして申し入れがあったことは事実であります。これに関連しまして、わがほうとしてもいろいろ要望事項がありますので、これを提案いたしまして、目下両国間で話し合い中でございます。話し合いができ上がった上で、日米同時に発表するという手配になっております。  第二の点は、自衛隊が核武装云々ということでありますが、そういう事実は全然ございません。なお日米合同演習は各幕とも常にやっておりますが、御承知のとおり指揮権は並行的にやっておりまして、米軍の指揮下で行なわれておる演習は事実に反します。なお、ギルパトリックが、将来韓国の防衛を日本側に頼むと言ったような事実はございません。
  201. 川上貫一

    ○川上委員 ギルパトリックが言うた問題については、ロイター電などは、日本政府はこれを了解しておるはずだということまで打電しておるのです。これはアメリカの新聞にもちゃんと出ておるので、これは言うておるのですが、まあこれは言うておると言われたら、ちょっと防衛庁長官の答弁では困るでしょうから、それはそれでけっこうです。しかし、核武装と海外派兵の問題、敵前上陸演習というのは、あれは何でやっているのですか。
  202. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 しばしば政府側も国会におきましてお答え申し上げていますとおり、今後自衛隊は、核武装につきましては一切考えておりません。この点ははっきり申し上げておきます。なお、海外派兵も、当然憲法の精神から禁じられておる点でございます。
  203. 川上貫一

    ○川上委員 防衛庁長官がそう言われるのも無理はないと思いますが、ここにこれがあるのです。これは野外令です。これは自衛隊が持っておる。これには核戦争を想定した中身がちゃんと書いてある。三カ所もあるのです。これは自衛隊が持っておるはずです。野外令合本というのです。これは防衛庁長官も御承知だと思うのです。ここの中には核戦争を想定した条項があるのですが、これは何の役に立つのですか。
  204. 海原治

    ○海原政府委員 御承知のように、自衛隊は法律の定めました任務に基づきまして、いろいろな場合に行動することになっております。その行動する前提といたしまして、核兵器によります攻撃を受ける場合もないわけではございません、理論的に申しまして。そういう場合にはどういうふうな防護措置をとったらよいかといったようなことを一般の訓練として教えておるだけでございます。
  205. 川上貫一

    ○川上委員 これはどういうものなのですか。昔の陸軍の操典と同じものですか、この野外令というのは。
  206. 海原治

    ○海原政府委員 各部隊におきまして部隊の訓練を行ないますときの参考の基準でございます。
  207. 川上貫一

    ○川上委員 これは、草案とありますが、草案なのですか、本物なのですか。
  208. 海原治

    ○海原政府委員 いろいろと訓練の内容によりまして、部隊の単位あるいは基準が違ってまいります。御存じのように、警察予備隊以来十数年たっておりますが、具体的に教範としてきめたものというのはまだ数が少のうございます。大部分のものはまだ草案の段階でございまして、各部隊におきましてそれの内容を実地に検討しておる、こういう段階のものが多うございます。
  209. 川上貫一

    ○川上委員 敵前上陸演習は、あれはどこに上陸する演習ですか。これは防衛庁長官に聞きます。
  210. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 陸と海との合同演習はございますが、敵前上陸というような想定はやったことはありません。
  211. 川上貫一

    ○川上委員 それならどこに上陸する演習ですか。自衛隊が一ぺん太平洋に出てそれから日本に上陸する演習ですか。
  212. 海原治

    ○海原政府委員 先生御存じのように、日本は四つの島でできてております。この四つの島の防衛が私ども自衛隊の任務でございますから、海を渡りまして陸地に上陸する、当然に私ども、これは予想しなければならないことでございます。
  213. 川上貫一

    ○川上委員 まことに窮した答弁だと思うのですが、これは朝鮮ですよ、韓国ですよ。日韓会談がここにあるのですよ。アメリカの要請なんですよ。これは敵前上陸の演習というものはさしあたって、韓国以外には考えられない。このことは包み隠さぬほうがよろしい。大体、一体政府の方々は包み隠しておられる、重要な問題を。私は思うに、この問題が国会において十分にまだ論議されておらぬと思う。これは日本の運命の将来に関する問題だと思うのです。しかも来年度の予算では、自衛隊の費用の増額も概算には出してあるはずです。これはどうしてもアメリカのこの戦略体制の変更に伴うて重大な問題が必ず起こってくる。  特に、もう一つ聞きますが、時間が非常に少ないのですが、アメリカの国防省は去る九日に十五・五センチ野砲の原子弾頭を世界の第一戦部隊の全部に配備する、これを発表したのです。この野砲は日本の自衛隊も持っておるのです。アメリカはたくさん持っておるのです。これが、配備してくる時分に、ちょっと一つだけ聞きますが事前協議の対象になるのですか、どうですか。
  214. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 核兵器の持ち込みは、当然事前協議の対象でございます。しかも、政府といたしましては、従来どおり、そういう場合にはっきりお断わりすることに既定方針は一貫いたしております。
  215. 川上貫一

    ○川上委員 従来、小型核兵器は憲法違反じゃないという政府答弁がある。それから防衛用の核兵器は、これは日本で装備して差しつかえないという政府答弁がある。これは岸さんもそう答弁しておる。たくさん答弁がある。だから一がいに核兵器、核兵器とおっしゃるけれども、核兵器の中でも憲法違反に該当するものと、憲法違反にはならないということを政府ははっきり分けておるのです。これはどっちにつくのですか。
  216. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 いま御指摘の問題でありますが、これは法理論的には持ち得る、しかし政治的にいっても、これは絶対に持ち込まない、二つに分けて答弁してあるはずでございます。
  217. 川上貫一

    ○川上委員 委員長、時間はありますか。
  218. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 まだあります。
  219. 川上貫一

    ○川上委員 この委員長、きついからな。
  220. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 余分なことを言わないで質問してください。
  221. 川上貫一

    ○川上委員 なかなかこの委員長、名委員長で活発でよろしい。  この十五・五センチ砲に核弾頭をつける、全部の世界の第一線部隊には配備する、こう発表しておるのですが、これが日本に配備するかしないか検査することができますか。この第一線部隊を、日本政府は行って、持っておるか持っておらぬかを調べることができますか。
  222. 海原治

    ○海原政府委員 現在日本に駐留しております米陸軍は、先生も御存じのことと思いますが、主としては兵たん補給関係の部隊でございまして、百五十五ミリ、すなわち十五サンチの砲を持つというようなことではございません。いま御指摘のありますような砲は、米軍のものは一門も日本にございません。
  223. 川上貫一

    ○川上委員 日本の自衛隊まで持っておるじゃないですか。
  224. 海原治

    ○海原政府委員 自衛隊にもなるほど口径十五サンチの砲はございます。しかし、これは口径が十五サンチであれば十五サンチの原子砲と同じものであるというぐあいには参りません。発射の装置も違いますし、長さも違いますし、砲身の構造そのものも違いますので、口径十五サンチの砲に今度米国で開発されました十五サンチの砲弾を装てんして撃つということは、技術的に不可能でございます。
  225. 川上貫一

    ○川上委員 そうじやないのですよ。十五・五センチ原子砲じゃないのです。十五・五センチ野砲につける核弾頭を開発した、これを十五・五センチ野砲に配備する、こう発表しております。
  226. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 アメリカ側からそういう申し入れなり提案も一切ございませんし、万一あった場合には、はっきりお断わりするつもりでおります。
  227. 川上貫一

    ○川上委員 私の時間は非常に少ないので、きょうは突っ込んで質問することができませんけれども、ぼくはそういう政府態度は非常に危険だと思う。率直に考えて、これはアメリカの戦争戦略体制の変更というものは日本のいわゆる自主防衛というものに重大な影響を持ってくるのです。これは莫大な国費を要するとともに、国民の知らぬ間に膨大なる軍事力をつくり上げおる。そうして軍国主義の復活が着々として行なわれるのであります。これはアメリカの要請です。このことが憲法改正に通じるのです。このことがやはり将来ポラリスの受け入れ態勢に通じるのです。安保体制の強化にこれが通じてくるのです。これが日米安保条約の至上命令なんです。この点については、私は防衛庁長官——外務大臣がきょうおられませんし、総理もおられませんけれども、この問題こそ国の将来の運命に関係すると思うのです。日本は御承知のようにこういう憲法を持っておる。これをアメリカの要請によってそうでない方向へぐんぐんいかざるを得ないところに追い込まれつつあるので、この問題は国会の質問に対して政府が何とかうまいことを答弁して抜ければよいという問題じゃない。民族の将来の運命に関係する問題であります。このことについては、きょうは時間がありませんから、これ以上深く質問しませんが、ときをあらためて総理大臣、外務大臣、防衛庁長官にも徹底的に質問したいと思うのです。  本日はこれで私の質問を打ち切ります。
  228. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 川上君に申し上げますが、まだ時間は何分か残っておりますが、よろしゅうございますか。
  229. 川上貫一

    ○川上委員 私はいいです。
  230. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもって川上貫一君の質疑は終了いたしました。  次会は明十四日午前十時から開会いたします。  なお、明日は淡谷悠蔵君が質疑することになっております。同君の質疑に際しては、内閣総理大臣、外務大臣大蔵大臣農林大臣、労働大臣、防衛庁長官の出席要求されております。  なお、明日は質疑終局後、引き続き討論採決に入ります。あらかじめ御了承を願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会