○赤松
委員 最近
神奈川県におきまして
発生した
事件にいたしましても、これは朝鮮人側から挑戦したとか挑発したとかいうことはなしに、全く一方的に被害を受けておるということが明らかになっておるわけであります。私
ども、この問題が民族問題に発展しないように十分に慎重な配慮、政治的な配慮が必要なのでございますけれ
ども、こういう傾向が助長されますと、将来国際
関係に重大な影響がございますので、法務当局も
警察当局も、これに対しては断固たる態度をもってひとつ善処してもらいたいということを希望します。
そこで最後に、法務大臣にお尋ねしておきたいのは、この間の予算
委員会における私の
質問に対しましてあなたはこうおっしゃっておられます。「特に北鮮との自由往来を主張する人は、北鮮人に差別をするということを申しておりますが、私が承知しておるところでは、そういう理由で入国を申し立ててこれをとめた例はないのであります。そういう申し立てがまだないのでございます。そういう実情もございまして、決して差別待遇をしたり、
日本に閉じ込めておくなどということは、非常な誤解ではないかと思っております。」というような答弁をされております。ところが、私の
調べたところによりますと、申し立てをする、
申請はするけれ
ども、その
申請はほとんど受理されていない、こういう事実が明らかであります。ここにいろいろな証拠がございますけれ
ども、たくさんの申し立てをいたしましても、ほとんどその
申請が拒否されておるという状態であります。特に韓国側に対しましては非常にゆるやかな態度、北朝鮮側に対しましては非常にきびしい態度で扱っておられるようでございます。私
どもは、この問題は思想、イデオロギーの問題でなしに、全く人道的な問題である。御承知のように、朝鮮動乱によって、三十八度線ができた。そして北と南に分かれた。また戦後
日本の国内におります多くの朝鮮人の諸君は、なるほど帰国はできるけれ
ども、通常外国との慣例によるところの手続によって入国ができない。こういうことは、私
ども何も無制限にフリーパスでもってどんどん入れろというような乱暴なことは言っておりません。そうでなしにちゃんとした、たとえば中国に対しましても、北ベトナムに対しましても、これは入国を認めておるわけであります。ひとり朝鮮人に対してのみどうして差別待遇をするか、差別的な取り扱いをするのか。この点につきましては、法務大臣ぜひひとつ考えていただきたいと思うのであります。私も先般北朝鮮に参りましたけれ
ども、アメリカに対する反米感情というものは非常に強いものがあります。これは朝鮮戦争でたくさんな犠牲者が出たという意味からいって、あるいは細菌兵器などどんどん使ったというあの非人道的な戦争
行為、野蛮な戦争
行為に対する怒りが、これが北朝鮮の中にみなぎっておる。しかしながら、
日本人に対する感情というものは、アメリカ人に対する感情と全然違うわけです。非常に親日的で、何といいますか、ある意味でいえば中国よりももっと親日的かもわかりません。これは、長い間、
日本帝国主義の植民地的な統治のやり方のよしあしは別といたしまして、私
ども長い
日本歴史の中で朝鮮と
日本との交流が文化的にあるいは政治的に、経済的に行なわれてまいりました
関係もございましょうが、
日本人に対する態度というものはアメリカ人に対する態度とは根本的に違うわけでございます。この間も私は池田総理に申し上げましたが、
日本というものはアメリカ依存政策をやる限り、アメリカがくしゃみをすれば
日本がかぜをひくというような非常に脆弱なものだ。そうでなしに、大陸経済との結合なしに
日本経済の自立発展はあり得ないのだ、したがって将来はシベリア、中国、朝鮮を含めた広域経済というものが確立しなければならぬ。そういう歴史の必然性があるのだということを強調いたしましたが、
賀屋法務大臣は非常に長い政治歴を持っておられる。しかも高度な識見を持っておられる人だと思うのです。失礼ながら伴食大臣ではない。ある意味でいえば副総理的な立場におられるのであります。でありますから、私は、あなたが戦争中の閣僚であるとかなんとかということはいまさら言いません。そうでなしに、そうであればあるほど、私はあなたが新しい世界というものに着目し、新しいアジアというものをよく理解して、そうしてアジアの、そして
日本の生きるべき将来というものを考えていただきたい。そういうことを考えてまいりますと、いまここで日韓会談を進めて、いつ革命の起きる。あるいは南ベトナムのように、ああいう状態になるかもわからないような、あの朴反動政権との間にくだらぬ協定などを結んで、そして
日本の国民の血税を使うのではなしに、むしろ
——これは外国のことでありますから、われわれは干渉する必要はありませんが、
日本の立場から南北朝鮮の統一を促進をしていく、そういう平和な機運を、アジア的な規模においてこれを醸成していくという方向こそ私は平和憲法を持つ
日本政府のとるべき態度でなければならぬし、当然の義務であると私は考えておるわけであります。それをアメリカの軍事政策のおしりにくっついて、そして南に対してはゆるやか、北に対しては非常にきびしいという態度をとるべきではない。悔いを千載に残すおそれがある。すでにわれわれは大東亜戦争、太平洋戦争において悔いを千載に残した。もう再びあやまちをやってはいけない。このあやまちをおかさない道は平和への道であると思うのであります。したがって、この際は、アメリカとの
関係がございましょうけれ
ども、思い切って、せめて、国交未回復の状態ではあっても、朝鮮人と
日本人との、自由往来と私はあえて言いません、その往来の権利を認めていくというような人道的な配慮、これは私は特に要請されるのではないかというように考えております。
日本の国内には、親を朝鮮に残して、あるいは子供を朝鮮に残して、一目会いたいという人もあります。行くのは自由じゃないか、ところが行ったら帰ってこれないわけです。これは自由じゃありません。したがって、この点につきましては人間
賀屋としてひとつ考えていただきたい。
それから非常に不当なことは、先般朝鮮にまいりましたけれ
ども、あの帰国船で朝鮮人が朝鮮へ帰るといったときに、
日本から五名の
新聞記者が入国をしたわけです。これは国際慣例としまして互恵平等の原則に立つならば、五名を向こうが入国を認めたのでありますから、当然朝鮮の
新聞記者五名を
日本に迎えなければならぬ。ところが
日本政府はがんとしてこれを拒否しておる。あるいは
賀屋さん御承知のように、あなたも親交あったと思うのでありますけれ
ども、崔承喜のお嬢さんなどが非常にりっぱな芸術家になって、この間も踊りを見ましたけれ
ども、ずいぶんりっぱな舞踏家に成長しております。
日本には在日公民が六十万人おるのですから、こういう人
たちはアメリカの裸踊りを見るよりも、やはり朝鮮文化に接したいという切々たる民族感情というものがあると思うのです。そうすれば、中国などは舞踏団が
日本に入ってきているのですから、ソ連の場合もそうでしょう、朝鮮の場合もこれを快く入れて、そうして在日朝鮮公民六十万の人
たちが故国の文化に接する機会をつくる。あるいは朝鮮赤十字と
日本赤十字との間に、あの深い理解の上に立って朝鮮人の帰国が実現したのでありますから、この際は朝鮮赤十字の
代表、これを政府でできなければ
日本赤十字の手によって
東京に迎えてお礼の一つも言うというのが、私は国際礼儀だと思うのであります。どうしてこういうことができないのであるか。
私は具体的にあなたに申します。この間
新聞で見ますると、佐藤国務大臣は、オリンピックに、選挙だけでなしに相当広く応援団も入国を認めていく考えだということを
新聞に発表されております。もちろんあたりまえであります。スポーツというものは思想、イデオロギーを乗り越えてやるものでありますから、当然であります。そこであなたにお尋ねしたいのは、いま申し上げましたように、朝鮮赤十字の
代表を
日本赤十字の手で
日本に迎える、
日本赤十字はこれをやりたいと言っているのですよ。あなたがオーケーと言えばすぐできるわけです。人数のことは私はこの際言いません。こういうことをおやりになる考えはないか。日赤がそれを要求した場合にやるお考えはないか。それから朝鮮舞踏団あたりも、六十万人の在日朝鮮人が要望するという場合におきましては、これを認める考えはないかどうか。あるいはいま言ったように
新聞記者の派遣、これは
日本から行った
新聞記者、これに対する五名の
新聞記者を
日本に迎えるということは、互恵平等の原則からいって当然の
措置でありますが、こういうことを認める考えはないか。
この間、私は大平外務大臣に対しては以上の諸点についてぜひ検討してもらいたいということを申し入れておきましたが、もしあなたの判断だけでできないという場合には、外務大臣と法務大臣とよく協議をされまして、そしてその結論を出していただきたいと思いますけれ
ども、この際あなたの所信をお伺いしておきたいと思います。