○細谷
委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党を代表いたしまして、ただいま提案されました
炭鉱災害防止に関する決議案に、賛成の討論をいたしたいと存じます。
去る十一月九日午後三時十二分、三井
三池炭鉱の三川鉱が大
爆発を起こし、史上第二といわれる大
災害を惹起いたしました。これによる死者ほ四百五十八名に達し、現在入院中の患者は二百八十一名にも及んでいるのでございます。ところが、さらに一カ月後の十二月十三日午後十一時二十分ごろ、田川市の上
尊鉱業の
糒炭鉱が
爆発を起こし、死者十名、重傷一名を出したことも、すでに御
承知のとおりであります。
私は、まずこの
爆発によって殉職されました多数のみたまに対しまして、心から哀悼の誠をささげますとともに、入院加療中の皆さまが一日も早く健康を回復され、元気に産業戦線で活動できますように、心からお祈り申し上げる次第でございます。また御遺族の皆さまには、衷心よりお悔やみ申し上げたいと存じます。
三井三川鉱の
爆発が炭じんによることは確実であります。この種炭じん爆憩が近代
炭鉱払起こることは、全く肴発とされておるところでございます。一方、上
尊鉱業糒炭鉱の
ガス爆発もまた、断じて容認し得ないていのものであります。すなわち、
昭和三十五年九月二十日、豊州
炭鉱の
水没事故によって六十七名の犠牲を生じ、今日なおその
遺体も
収容することができないのであります。さらに
昭和三十六年三月九日、
上清炭鉱が
坑内火災を起こし、七十一名の方々が死亡いたしたのでございます。この三つは、いずれも同一資本
系統に属することが注目されなければなりません。
このように最近続発する
炭鉱災害の共通点は、第一であるべき
保安を軽んじ、
生産のみを追求した結果と申さなければなりません。思うに、
石炭産業
合理化のテンポの異常の速さが必然的に能率、増産第一主義を生み、
保安と人命軽視を結果したと申すべきであります。
まず第一に、人員の削減は坑外夫を
坑内夫に、
坑内では間接夫から直接夫へ、直接夫では仕繰りから採炭夫へと一連の移動が起こり、
保安関係が手薄となったわけでございます。第二に、労働の強化が起こり、疲労の増加によって、注意力喚起にたよるべき
保安の体制がくずれたと
考えられるのであります。第三に、貸金の低下による生活の苦しさから、あえて請負給による無理な仕事に従事するようになったこと、第四に、経費の削減から
保安あるいは救護施設の手抜き、あるいは放置等が因となり果となったものと
考えられるのであります。
災害は忘れたころに来るということばがありますが、私は今回の
炭鉱災害を追及いたしました結果、起こるべくして起こった
災害、いつの日か予期された
災害といっても過言でないと思うのであります。人命はあくまでもとうとばれなければなりません。
保安を
確保し、
保安第一主義のもと、エネルギー革命のあらしの中に呼吟する
石炭産業を生かし発展きせることが、現下最も喫緊の課題と信ずるものであります。そのためには、今回の二つの
炭鉱災害の
原因を徹底的に究明し、二度とこの種
災害が起こらないよう、万全の対策を講じなければなりません。
まず第一に、
鉱山保安法令の
改正があげられると存じます。たとえば現在、甲、指定乙、乙と、
保安の
状況、施設に応じて分けられていますが、
三池炭鉱の場合、乙炭坑としては
考えられないような炭じん
爆発を起こしたのであります。また、
昭和三十三年以来今日まで六カ年間の統計を見ましても、指定乙及び乙炭坑の
爆発が圧倒的に多いのであります。このことは法令の
改正とともに、その
運用にも厳格さを要求しているものと申さなければなりません。
第二に、
鉱山保安監督行政の拡充強化の必要性が痛感されるのであります。三川鉱の場合、
福岡鉱山保安局は四月二十八日以来数回にわたって、
爆発地点を含めて、火災の
危険性を具体的に
指摘いたしておったのでありますが、たまたま八月以降落盤
事故の頻発等のため、安全性を確認することができず、ついに今回の
爆発を惹起いたしたのであります。もし
指摘事項の確認を行なっておったならば、今回の大
災害は未然に防ぎ得たのではないかとも
考えられ、まことに遺憾に存ずる次第であります。かくして私は、
保安監督行政の故充強化により、
違反事項の発見と確認を厳正にし、適時予告なしに
抜き打ち検査をすることが、
炭鉱保安確立上緊急必要なりと確信するものであります。
第三に、
鉱山保安機構の充実と
保安教育の必要性を痛感いたすのでございます。アメリカの例をまつまでもなく、
保安管理者の権限は強大でなければならず、現地
所長の
指摘下にあっては、
生産に従属せざるを得ないのであります。今回の
災害においても、このことが
指摘され、したがって
保安委員会の運営の不適正、
保安要員の削減、
保安教育、待避訓練の不徹底さが強く
指摘されるのであります。かりに待避訓練
一つでも十分であったなら、これほどまでの
ガス中毒による死者は生じなかったのではないかとすら
考えられるのであります。特に針の穴のような小さい
原因から大
災害が起こることに思いをいたし、
保安委員会の運営の適正と活用が強く望まれる次第であります。
第四に、
保安施設、機材器具の整備があげられます。今回の
爆発に際し、
保安器具、たとえはCCマスク等が完備されておれば、被害ははるかに軽減されたものと想像されるのであります。したがって、万一の場合に備え、
保安施設、機材器具等の充実を促進することが肝要であります。中小
炭鉱に対しては、これらに対し四0%の補助が行なわれておりますが、大手
炭鉱に対しても、
資金難の現況から、無利子
融資等特別な
措置が強く要請されるのであります。
第五に、罹災者及び遺家族の援護の必要性が痛感されるのであります。不幸にして死亡された方の遺家族に対しては、労災補償等の不備な点を
改正するなど可能な限りの援護
措置を講ずるとともに、就職対策等に万全を期して指導援助することが絶対必要と存ずるものであります。また、一酸化炭素中毒により後遺症を残す者も多数生ずるものと予想されますので、医療についても専門的、一元的に行ない得るよう配慮するとともに、じん肺法適用によってもなお救い得ないような深刻さを蔵していることに思いをいたし、完全な対策と指導が絶対必要と
考えられるのであります。 以上、今回の二つの
炭鉱災害にかんがみ、二度と再びこの種
災害が起こらないよう、
炭鉱災害防止の施策を徹底的に講じ、もって全国
炭鉱のすみずみまで
保安第一、人命尊重の精神が確立することを切に願って、私の賛成討論を終わります。(拍手)