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1963-12-17 第45回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第2号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十八年十二月十七日(火曜日) 午前十時十一分
開議
出席委員
委員長
前田
正男君
理事
佐々木義武
君
理事
中曽根康弘
君
理事
福井 勇君
理事
岡 良一君
理事
西村
関一
君 小沢 辰男君 木村
剛輔君
小宮山重四郎
君 坂田 英一君 細田 吉藏君
渡辺美智雄
君 村山 喜一君
出席国務大臣
国 務 大 臣
佐藤
榮作君
出席政府委員
科学技術政務次
官 鹿島 俊雄君
総理府事務官
(
科学技術庁長
官官房長
)
江上
龍彦君
総理府事務官
(
科学技術庁原
子力局長
) 島村 武久君
委員外
の
出席者
総理府事務官
(
科学技術庁長
官官房会計課
長) 木戸 四夫君
総理府技官
(
科学技術庁計
画局長
) 杉本 正雄君
総理府技官
(
科学技術庁研
究調整局長
) 芥川
輝孝
君
総理府事務官
(
科学技術庁
振
興局長
) 杠 文吉君
総理府技官
(
科学技術庁資
源局長
) 村田 浩君 ————————————— 本日の
会議
に付した案件 閉会中審査に関する件
科学技術振興対策
に関する件 ————◇—————
前田正男
1
○
前田委員長
これより
会議
を開きます。
科学技術振興対策
に関する件について
調査
を進めます。 まず、
佐藤国務大臣
が閣議の都合によって若干おくれる見込みでございますので、先に
江上官房長
から
明年度
の
科学技術庁関係予算
の概況について
説明
を聴取することといたします。
江上官房長
。
江上龍彦
2
○
江上政府委員
昭和
三十九
年度
科学技術庁
で現在
予算
要求しております
重要事項
について御
説明
をいたしますが、その前に本
年度
の
予算
の
実施状況
について若干御
説明
いたします。
おかげ
をもちまして、
昭和
三十八
年度
は
科学技術庁
が従来考えておりました新
施策
がそれぞれ芽をふきまして、
予算
に従って着々と
施策
を進めておりますが、そのおもなものを申し上げますと、
防災科学技術センター
がこの四月に無事発足いたしました。それから、
原子力船開発事業団
はこの八月に設立いたしました。
水戸原子力事務所
、
科学技術庁最初
の
地方支分部局
でございますが、これは十月に発足いたしました。それから、
人形峠
のウラン鉱一貫製錬所につきましても
建設
が着々と進行しております。 それから、本
年度
にございましたおもなできごとといたしましては、八月に
行政ベース
による
最初
の
ロケット
の打ち上げが
新島
において行なわれまして、
成果
をおさめております。それから、
原子力研究所
のJPDR、
動力試験炉
は十月に
わが国最初
の
原子力
の灯をともしたのでございますが、その後
御存じ
のような事情で一たん運転中止されましたが、話し合いがつきまして、百時間の運転を終わりまして、去る十二月九日正式に
GE社
から
原子力発電所
に引き渡しを受けたわけでございます。それから、十月にパリで
OECD
の
最初
の
科学関係閣僚会議
がございまして、
佐藤長官
が
出席
して、
無事任務
を果たして帰られました。 大体以上御報告申し上げます。 それから、三十九
年度
の
科学技術庁重要事項
につきましては、お
手元
にお配りした
資料
のとおりでございますが、来
年度
予算
は
御存じ
のように五割
増し
という
ワク
に押えられました反面、
先ほど
申し上げましたように、本
年度
いろいろな新
施策
が芽を出しましたので、三十九
年度
としては新しいことを始めるよりは従来の
施策
を継続
強化
するということと、本
年度
に芽を出したこの芽を育て強めていくということに重点を置いて要求してございます。 お
手元
にお配りしました
資料
につきまして、おもな点について御
説明
申し上げます。 まず、第一の
科学技術振興
の
基盤
の
強化
でありますが、(1)の
科学技術会議
の
充実強化
。この
科学技術会議
いかにあるべきかという問題につきましては、現在
臨時行政調査会
で種々検討されておるところでございますが、いずれにいたしましても、
科学技術会議
をさらに
強化
しなければならないということは自明の理でございますので、従来
科学技術会議
は
内閣総理大臣
の諮問に応じて答申をするだけの
機関
となっておりますが、これを自主的に必要に応じ、みずから
調査
、審議し、意見を述べ、報告できるような
権限
を付与する。 次に(2)にありますのは、それに伴いまして
事務局ベース
の
調査機能
の
充実
をはかるということでございます。 それから(3)にありまする
国立試験研究機関
における
人づくり
の
推進
でございますが、従来
海外留学制度
を相当やっておりますが、さらに
国内留学制度
、これは
研究者
としてある程度の経歴を経た者に対して国内において半年なり一年なりの
留学
をさせるという
制度
を新たに設けたい、というようなことによって
人づくり
の
推進
をはかってまいろうということでございます。 それから(4)といたしましては、
科学技術会議
の三
号諮問
の線に沿いまして、さらに
国立試験研究機関
の刷新、
充実
を行なってまいりたい。これに関連いたしまして、例の
研究学園都市
に対する
国立試験研究機関
の
集中移転
によりまして、十分な
環境
の
整備
をはかり、効率的かつ総合的な
研究
が行なえるような
体制
に持っていくお世話をいたしたい、かようなことを考えております。 それから(5)の
税制
上の
優遇措置
の
強化拡充
でございますが、現在
日本
における
研究投資
というのは逐年伸びてまいりまして、現在
国民所得
の一・八%程度になっておりますが、これをさらに
研究投資
の
拡大
をはからないと
開放経済体制下
にあって
国際競争
に太刀打ちできないという
現状
にかんがみまして、
民間
における
試験研究投資
の
拡大
をはかるため、
税制
上画期的な
優遇措置
をはかりたいと考えております。そのおもな項目といたしましては、まず
試験研究用機械設備
について初
年度
に全紙償却する
全額損金算入
、それから
試験研究準備金制度
の創設、それから
技術輸出所得
につきまして、これは来年の三月で期限が切れるわけでございますが、これを延長するとともに、さらにその
ワク
を
拡大
するというような点で現在
関係
各方面と
連絡推進
をはかっておるわけでございます。現在の動きではこのうちの
相当程度
のものは認められそうな形勢でございますが、なお一段と努力してまいりたい、かように考えております。 次に、第二の
宇宙開発
の
推進
でございますが、
おかげ
を持ちまして、ことし
宇宙開発室
というようなほんの芽が出たわけでございますが、
行政ベース
による
宇宙開発
の
中核的実施機関
をつくらなければならないということが、今
年度
の
新島
の
ロケット
の経験に徴しましても痛感されますので、
宇宙開発
の
実施機関
として、当庁に
付属機関
として
宇宙開発推進本部
を設置したいと考えております。この本部は、
宇宙開発
に必要な
ロケット
とか
人工衛星
の
開発
、
軌道計算
、追跡などのための
地上機器
の
開発
、
飛しょう体
の
搭載機器
の
環境試験
、
飛しょう体
の打ち上げ
試験等
の
業務
を行なわしめる予定でございます。なお、従来から行なっておりました
委託研究
を
拡充
するとともに、さらに本
年度
も打ち上げ
試験
を行ないたい、かように考えておるわけでございます。 (2)といたしまして、これに伴いまして
研究機関
でございまする
航空宇宙技術研究所
の
ロケット研究部門
を
拡大
強化
するということを考えております。 それから、
宇宙開発
に関する
国際協力
の
推進
でございますが、
ロケット
とか、
人工衛星
とか、あるいは
搭載機器等
に関する
日米
間の
協力
をさらに
強化
し、
調査団
の
派遣等
も行ないたいと考えております。 次に、第三の
防災科学技術
の
振興
でありますが、まず、
おかげ
で本
年度
発足いたしました
国立防災科学技術センター
の
機構
を
拡充
いたしまして、さらに
強化
いたしますとともに、
現地
に
実験所
を設けたい。新潟県に特に
雪害実験所
というものを新設いたしまして、
現地
に即した
研究
を行なってまいりたいというふうに考えております。 それから(2)の
総合的試験研究
は、従来に引き続き
一括計上
によりまして、総合的な雪害、地すべり、
スモッグ等
の
研究
を行なってまいりたいと考えております。 それから(3)の
試験研究
の
助成
でございますが、従来行なっておりました
人工降雨
に関し、引き続き
委託研究
を
推進
してまいりたいと考えております。 次に、第四に移りまして、
原子力
に関する
研究開発利用
の
推進
でございます。 まず第一は、従来からの
継続事業
の
推進
でございますが、その(一)といたしまして、
原子力
第一船の
建造
でございます。この八月発足いたしました
日本原子力船開発事業団
の第二
年度
の
業務
として、
原子炉
及び船体の
詳細設計
まで持ってまいりたい、かように考えております。 それから、
材料試験炉
の問題でございますが、
原子炉材料
及び
燃料
の
照射試験
をやる炉が
日本
にはいままでないわけでございまして、もっぱらアメリカに対して非常に高いお金を払って
照射試験
をしてもらっておったわけでございますが、いよいよ
日本
においても
建設
に着手すべき時期がまいりましたので、
大洗
の
地区
を確保いたしまして、そこに
材料試験炉
の
建設
に着手いたしたいというふうに考えております。 次に
原子力
の(三)といたしまして、
研究開発計画
の
推進
でございますが、
国産動力炉
につきましては、三十九
年度
は
原型炉
の
詳細設計
までまいりたいと考えております。 それから、(ロ)
高速増殖炉
、(ハ)
プルトニウム燃料
については、従来に引き続き
研究施設
の
整備
を行なってまいりたいと考えております。 次の
使用済み燃料
再
処理施設
の
研究
及び
建設準備
でございますが、
原子燃料公社
で、再
処理施設
につきましては、三十八
年度
にイギリスの会社と契約いたしまして
予備設計
に入っておるわけでございますが、さらにその
設計
を進めて購入の
段階
に持っていきたい、かように考えておるわけでございます。 それから、新しい
原子力関係
の
施策
といたしまして、
アイソトープセンター
の新設ということをぜひ行ないたいと思います。
アイソトープ
につきましては、近く
本格的国産化
が開始されますし、
アイソトープ
の
利用
は非常に普及してまいりまして、すでに干以上の
事業所
が
アイソトープ
を使っておるような現況でございます。いよいよ
アイソトープ
についての
体制
の
整備
をすべき
段階
に入ってきたと考えられますので、それらを一元的に、
アイソトープ
の生産、頒布、それから
取り扱い技術者
の
養成訓練
、
廃棄物
の
処理
、
アイソトープ
に関連する各種の
サービス等
の
業務
を行なうための
体制
といたしまして、
日本原子力研究所
に
アイソトープセンター
という
事業体
を設けましてその
取り扱い
に当たらせたい。これも、
先ほど
申し上げました
大洗地区
を、三十八
年度
、約十万坪
予算措置
が講ぜられましたが、残りの三十万坪を買いまして、この四十万坪の
大洗地区
に
建設
いたしたいというふうに考えております。
原子力関係
のその他のおもな
事項
といたしましては、
日本原子力研究所
の
大洗用地
の確保、高崎の
放射線関係
の
研究所
の
整備拡充
、
基礎的研究
、
研究サービス
の
実施等
の一そうの
充実
をはかってまいりたい。 それから、
原子燃料公社
につきましては、すでに有望な鉱区も発見されておりますので、さらに探鉱、採鉱を進めるとともに、製錬及び
関連研究施設
を一そう
推進
してまいりたいと考えております。 それから、
民間企業
の
研究助成
。これにつきましては、従来の
ワク
を
拡大
いたしまして、
委託費
、
補助金
というものを出して官民
協力
した
原子力
の
研究
に当たりたい、かように考えております。 (四)の
安全対策
でございますが、いよいよ
原子炉施設
もいろいろできてまいりまして、安全の問題が非常に重要になってまいりますので、
わが国
の
原子力センター
でございます
東海地区
の
整備等
を行ないますほか、
放射能対策
の
充実
をはかってまいりたいというふうに考えます。 (五)として、
関係
行
礎機関
の
拡充整備
でございますが、
動力炉開発
を中心とした
体制
の
強化
をはかる等、
機構
、人員の
整備拡充
を行ないますとともに、本
年度
発足いたしました
水戸原子力事務所
について、さらに人員及び機能の
強化
をはかってまいりたい、かように考えておるわけであります。 次に、第五でありますが、
重要総合研究
の
推進
でございます。
総合的研究
で特に重要なものを
総合研究
といたしまして、この総合的、
計画
的かつ効率的な
推進
をはかってまいりたいと考えております。 (1)は
環境科学技術
でございますが、
水質汚濁
、
騒音振動
の
防止等
に関する
研究
を
推進
いたしてまいる考えでございます。 (2)は
海洋科学技術
でございますが、
沿岸海域
及び大陸だなの
調査
を行なうため、三カ年
計画
で
潜水調査船
、これは約六百メートルぐらいもぐれる
調査船
でございますが、それの
建造
に着手いたしたいと考えております。 その他の
総合研究
といたしまして、
ヒューマンサイエンス
、水の
高度利用
及び
凍結乾燥
に関する
研究
などにつきまして、引き続き
研究
を進めてまいりたいと考えております。 次に、
特別研究促進調整費
でございます。予見しがたい事態に備えて
研究
を進めますために、さらにその
ワク
を
拡大
し、その効率的な運用をはかってまいりたいというふうに考えております。 第六といたしまして、
国産
新
技術
の
開発
の
促進
及び
情報活動
の
活発化
でございます。 (1)として、新
技術開発事業団
、これは、かつてはテーマがなくてやや金が残っていたような時代もございましたが、最近非常に活発に
事業
をいたしておりますが、この
事業規模
を
拡大
して新
技術
の
開発
に当たらしたいと考えております。 次に、
発明実施化
の
助成
でございます。優秀な
発明考案
の
助成
をはかってまいりたいと考えております。 それから、
科学技術功労者
の表彰の
拡充
でございますが、
国民
の
科学技術
に関する意欲の
向上
をはかるために、
表彰制度
をさらに活発に
拡充
してまいりたい、かように考えております。 次に、
地方
における
科学技術
の
振興
でございますが、引き続きまして
地方発明センター
の設置の
助成
を行なうほか、
科学技術案内書
というようなものをつくりまして、
発明センター等
の
地方サービス機関
に配付いたしますとともに、いろいろな
資料
の
整備
とか、
相談員
の
設置等
につきまして補助を行なってまいりたいと考えております。 次に、
科学技術情報センター
の
育成強化
でございますが、現在あります
情報センター
、これは
共同ビル
の
建設
に着手しておりますが、その
推進
をはかるとともに、
業務内容
も
充実強化
してまいりたいと考えております。 第七といたしまして
国際交流
の
促進
でございます。
先ほど
も申し上げましたように、
OECD加盟
が近づきまして、
科学関係
の交流もいよいよ活発になり、
科学関係閣僚会議
も二年に一度は必ず開こうという決議もなされておる。そのほかにいろんな
委員会
がございまして、
科学関係
の連絡というものは常時密になるものと考えられますので、
OECD
に
科学アタッシェ
というものを派遣いたしまして、積極的に参加し、
国際協力
の実をあげたいと考えております。 次に、
国際協力事業
の
拡充
でございますが、現在行なっております
日米科学委員会
の活動をさらに
強化
推進
いたしますとともに、国連、
ユネスコ等
の
国際会議
にも積極的に参加して、さらに
研究者
の
交換等
も活発に行なってまいりたいというふうに考えております。 それから、
情報資料
の
国際交流
の
強化
でございますが、
情報資料
の収集、それから照会、
周知業務等
を
強化
してまいりたいと考えております。第八といたしまして、当
庁所管
の
研究所等
の
充実
でございます。 まず、
航空宇宙技術研究所
でございますが、
先ほど
宇宙開発
のところでも申し上げましたように、
ロケット関係
の
研究
あるいは
施設設備
というものを
充実
しますとともに、
研究用地
、
ロケット実験場
を確保したい、かように考えております。それから、航空機につきましては、第二次五カ年
計画
の三
年度
としての
業務
を進めてまいりたい。そのほかに超
遷音速機
、V/
STOL等
に対する
研究
を
推進
してまいりたい、かように考えております。 それから、
金属材料技術研究所
でございますが、まず、
金属材料技術研究所
の
研究業務
のほかに、
サービス業務
といたしまして
金属材料試験所
というのを設けまして、各
試験研究機関
あるいは
民間等
の要望に応じて
金属材料
の
疲労試験
、
クリープ試験等
を十分行ない得るような
試験所
をつくりたい、かように考えております。それから、従来の
施設設備計画
の残っておる部分を完備いたしてまいりたい、かように考えております。 それから、放射線医学
総合研究
所につきましては、
臨床研究
、
環境衛生研究等
の
強化
をはかるとともに、
研究
棟等必要な
施設
の増設を行なってまいりたいと考えております。それから、理化学
研究所
でございますが、サイクロトロンの
本格的建設
、それから
設備
の
近代化
を行ないますとともに、四年
計画
で
朝霞地区
への
移転事業
というものを進めてまいる。
先ほど
五割
増し
の
ワク
のことなどを申し上げましたけれども、この理研の
移転
だけで相当な金額がかさみますので、この意味でも五割
増し
の
ワク
というのは相当障害になっておるということが痛感されておるわけでございます。 第九として、
資源
の
総合的利用方策
の
推進
でございますが、
資源
の
総合的利用方策調査
の
助成
といたしまして、
クロレラ利用
による、
し尿処理
、
炭田ガス
の
有効利用等
についての
委託調査
を実施したいと思います。 それから、
資源総合利用方策
の
強化
でございますが、
生活環境
の転換、
生活水準
の
向上
のための
技術体系
を確立するための
調査
を実施いたしますとともに、
エネルギー変動
、
繊維加工構造
の
変動等
、最近における
資源利用構造
の急激な変動に対処するための
方策
を明らかにするための
調査
を
強化
いたしたい、かように考えております。 大体、以上が三十九
年度
重要事項
として現在
関係方面
と折衝しておる
事項
の内容でございます。簡単ではございますが、これをもって
説明
を終わります。
前田正男
3
○
前田委員長
次に、
佐藤国務大臣
が御
出席
になりましたので、
科学技術行政
に関する
所信
を承りたいと存じます。
佐藤国務大臣
。
佐藤榮作
4
○
佐藤国務大臣
御承知のように、私、引き続いて
科学技術庁長官
の
重責
をにない、そのいすを汚すことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。 この機会に、
所信
の一端を表明いたしたいと思います。 私は、
科学技術庁長官
の
重責
をにない、去る十月初め、
経済協力開発機構
の
科学関係閣僚会議
に
出席
し、
欧米諸国
の
科学技術担当首脳者
とひざを交えて懇談し、また
西欧諸国
における
科学技術
の目ざましい
進展ぶり
をつぶさに見てまいりました。
わが国
が、
世界
の
先進諸国
に伍して、
国民経済
の隆昌と
国民福祉
の
向上
を実現するためには、
科学技術
の
研究開発
の画期的な
強化
をはかることが現下の急務であることを身をもって感じてまいった次第であります。 昨今、
わが国
の
科学技術水準
が、
欧米諸国
に比べて遜色なきまでに
向上
したのは、
わが国
が諸
外国
の優秀な
科学技術
を導入し、それらをよく消化したことに負うところがきわめて大きかったことは、
周知
の事実であります。 しかしながら、今後、
開放経済体制
のもとにおいて、
先進諸国
との激甚な
経済競争
に耐え、これに打ち勝つためには、従来のごとき
外国技術
への
依存体制
からすみやかに脱却しなければならないのであります。 私は、以上の観点から、今後
わが国
においては、
独創的技術
の
開発
を
推進
するため、その
基盤
となる
基礎研究
の
充実
をはかるとともに、特に国として早急に
開発
すべき
宇宙
、
原子力等
の
重要科学技術
の
振興
を一投と
推進
する
必要性
を痛感する次第であります。 このための
具体的対策
といたしましては、今後次のごとき諸
施策
を強力に実施してまいる
所存
であります。 まず第一に、
科学技術
に関する
行政機構
の
整備強化
につきましては、現在
臨時行政調査会
を
中心
として鋭意
検討
が進められておりますが、さしあたり
わが国
の
科学技術
に関する
最高審議機関
である
科学技術会議
を
強化
し、急速に進展しつつある
科学技術
の
現状
に即応し得るよう、これに常時
調査
し審議する
権限
を付与する等所要の改正をはかりたいと考えております。また同時に、
科学技術会議
が答申した線に沿い、
国立試験研究機関
の
刷新充実
を極力はかりたいと思います。特に、
研究学園都市
への
集中移転
につきましては、
試験研究機関
が恵まれた
環境
のもとで緊密な相互の連携をはかりつつ、
研究
を効率的に
推進
し得るような理想的な
研究団地
の
建設
を進めてまいる
所存
であります。 第二に、
民間
における新
技術
の
開発
を
促進
するためには、国の
試験研究機関
の
積極的活用
をはかるとともに、
民間
における
研究投資
を
促進
するための
税制
上の
優遇措置
を画期的に
拡大
強化
し、また優秀な
科学技術者
の
育成
をはかるほか、新
技術開発事業
の
強化
、
情報提供業務
の
充実
、
発明実施化
の
助成
、
地方発明センター設置
の
助成等一連
の
措置
を
推進
いたしたいと思います。 また、
国民全般
に対する
科学技術思想
の
普及啓発
につきましても、
中央地方
を通じて強力に実施する
所存
であります。 第三に、
わが国
の
科学技術振興
の
中核
の一つとなる
宇宙開発
につきましては、従来その
総合的推進
に努力してまいり、特に去る八月には当庁の
気象観測ロケット
の打ち上げ
実験
に所期の
成果
をおさめ、国の
宇宙開発
に第一歩をしるしましたが、今後さらにその
開発体制
を
整備強化
するとともに、
国連等
の
国際機関
あるいは諸
外国
との密接な
協力
をはかりつつ、
宇宙開発
における
わが国
の地歩を確立し得るよう、強力かつ効率的な
推進
に努力してまいる
所存
であります。 第四に、
原子力
の
平和利用
につきましては、
世界主要諸国
において最近これを積極的に
推進
しようとする
機運
がみなぎっており、ここ数年前と比較するとその
意欲
には目をみはらせるものがあります。これは、
技術
の
進歩等
により、
原子エネルギー利用
の
経済性
が近い将来において他の
エネルギー源
に匹敵し得る見通しが強まったため、各国とも
原子力発電所
の
建設
や
原子力船
の
建造
に積極的に乗り出してきたことによるのであります。
わが国
におきましても、これら
諸国
に劣らず、数多くの分野で
原子力利用
をさらに
促進
せんとする
機運
が高まりつつあり、すでに
原子力発電
、
原子力船
、
国産動力炉
、
燃料
再
処理等
の
開発計画
に着手していることは御高承のとおりであります。これらの諸
計画
が、今後の
原子力開発
に有する重大な意義にかんがみ、
世界
の大勢におくれをとらぬようその
積極的推進
をはかるための
具体策
につき、鋭意
検討
を進め、力を尽くしてまいるつもりであります。特に
原子力発電
につきましては、将来における
わが国エネルギー
の
需給構造
上に占めるその
重要性
に思いをいたし、その
推進
につき特段の
措置
を講ずる
所存
であります。 第五に、最近産業の発展、
近代化
による
国民生活
の著しい改善にもかかわらず、台風、豪雪、
集中豪雨等自然災害
は依然としてあとを断たず、また
大気汚染
、
騒音等過大都市
の出現と工場の
過密化
に伴う公害の発生も増大化し、
国民生活
を脅かしております。これら
災害
を防止軽減するために、従来とも、
関係行政機関
それぞれの
立場
から
研究
を行ない、当庁においても総合的な
立場
からこれらの
研究
を
推進
してまいりましたが、今後とも
防災
及び
環境科学技術
の強力な
振興
をはかりこれに対処する
所存
であります。特に本
年度
当庁の
付属機関
として新設した
国立防災科学技術センター
については、その
役割り
を十分果たさせるよう格段の
育成強化
をはかりたいと考えております。 また、その他の
海洋科学技術等
の
重要総合研究
についても、一そうの
充実
をはかる
所存
であります。 なお、最近次第に
重要性
を高めている
資源
の
総合的利用
の
調査
及び
方策
についても、これをさらに強力に進めてまいりたいと思っております。 最後に、
科学技術
に関する
国際交流
につきましては、
宇宙開発
、
原子力利用等
今日の
科学技術
の
研究
は、いまや
国際的規模
において行なわれるべき時代となっていることは申すまでもないところであります。特に
わが国
の
経済協力開発機構
への加盟が目前に迫っている今日、
科学技術
に関する
国際交流
がますますその
重要性
を
増し
つつあることを痛感する次第であります。したがいまして、今後一そう
科学技術者
の
国際交流
の
推進
、国際的共同
研究
及び
国際会議
への積極的参加等により、
国際交流
の実をあげるよう努力いたす
所存
であります。 また、
科学技術
基本法制定の問題につきましては、いまだ
科学技術会議
で審議中でありますので、その答申を待って
検討
を進めたいと考えております。 以上当面考えております
施策
の大綱を申し述べましたが、
わが国
科学技術振興
の
重要性
にかんがみ、微力ながらもあらゆる努力をいたす
所存
であります。 委員各位の御支援、御
協力
をお願いしてやまない次第であります。
前田正男
5
○
前田委員長
次に、鹿島政務次官より発言の申し出がありますので、この際これを許します。鹿島政務次官。
鹿島俊雄
6
○鹿島政府委員 私はこのたび再度政務次官を拝命いたしました鹿島俊雄であります。はなはだ不敏、ふつつかな者でありますので、何とぞ今後とも御教示、御鞭撻を賜わりますようお願い申し上げます。 —————————————
前田正男
7
○
前田委員長
この際、質疑の通告がありますので、これを許します。福井勇君。
福井勇
8
○福井委員
先ほど
事務当局から三十九
年度
の
重要事項
の
説明
がありましたので、事務当局に簡単に、一番先の項目についてだけお尋ねします。 二ページの、
科学技術会議
の
充実強化
についての関連のことについてでございますが、
科学技術庁
に関連して、今日顧問、参与などが置かれておると思いますが、だいぶ古いことでありますので、昨年、一昨年ごろにあたってそういう
会議
がどのくらい開かれたか、ちょっと事務当局から
説明
していただきたいと思います。
江上龍彦
9
○
江上政府委員
顧問
会議
につきましては、昨
年度
一回開かれております。それから本
年度
は、実はきょう顧問
会議
を開く予定にいたしております。これが開かれますと本
年度
一回ということになるわけであります。 それから、参与につきましては、顧問とやや性格を異にいたしまして、それぞれ得意
事項
について御相談申し上げるというたてまえになっておりますので、参与
会議
というような名のついた
会議
は昨
年度
は開いておりませんが、そのつど問題に応じて参与の方と御相談申し上げる、こういう実情でございます。
福井勇
10
○福井委員 いまの
説明
でわかりましたが、それ以前にもさかのぼって私はそういう印象を受けたので、気がついたので申し上げるのです。いまの
前田委員長
や私たちが
科学技術庁
をつくった当時、難行苦行してこの
科学技術庁
をつくった当時は、名前は顧問、参与というようなことではなかったけれども、ずいぶん
民間
の知識を動員してもらって、いろいろ
会議
を重ねられてこの
科学技術庁
をつくった。いま村田局長が受け持ちとは知らなかったのですが、それ以前局長になられる前——もちろん現大臣は何の
御存じ
もない当時でありますが、この数年前から少しそういう面を活用することが退化したのではないかという心配がありますし、私だけのことではなくて耳にいたしておりますので、ここでちょっとあらためてお尋ねしたわけであります。 したがって、
科学技術会議
の
充実強化
ということを第一にうたっておりますけれども、こういうトップクラスの
充実
をはかりましても、世間で、陳腐な言い方でありますが、底辺をやはり相当
科学技術庁
としては活用してやっていただかないと私は事欠くのではないかと思いますので、第一の項目だけについて、簡単でありますがお尋ねしたわけであります。今後、もう少し活用をしていただきたい。 以上、私の希望を述べて私の質問を終わります。
前田正男
11
○
前田委員長
次に、岡良一君。
岡良一
12
○岡委員 ただいま承りました大臣の御
所信
、また
科学技術庁
の
重要事項
、いずれもまことにけっこうなことでございますが、私は、特に
予算
がいよいよ最終的な
段階
になろうとしておりますので、この
科学技術
予算
の運営を
中心
といたしまして、若干長官の御
所信
を承りたいと思います。 御
所信
にもありますように、諸
外国
における
科学技術
政策の
重要性
というものは非常に深く認識されておるということでありますが、一体
わが国
の政府が
科学技術
政策にどういう評価を与えておるかということであります。なるほど、ここ数年来の
科学技術
に関するいわゆる
研究投資
というものは、年を追って増加はいたしております。そして
国民
総所得に対する
研究投資
の比率は一・八というような数字で、大体西欧並みともいわれております。ところが、
研究投資
総額の中で政府の資金というものは、比率的には非常に少ない。総額を一〇〇とすれば三〇%
程度
です。ところが、諸
外国
の例を見ると、むしろ政府の出資というものが非常に大きい。そしてそれが
民間
のそれを上回っておる。
日本
ではその逆である。こういうようなことでは、
科学技術
政策というものに対する評価が政府においてはまだまだ不足しておる。いよいよ
予算
編成期を迎えて、こういう点についてどうされるか、長官の御
所信
を伺いたい。
佐藤榮作
13
○
佐藤国務大臣
科学技術振興
の基礎的なものとして
研究
費の必要なことは、御指摘のとおりであります。そこで、ただ一口に
研究
費というように申しますが、これは
科学技術庁
の
研究
費ばかりが
科学技術振興
に役立っておるわけではないことも、これまた御承知のとおりだと思います。文部省その他各省の
関係
で
技術
の
研究
をしておるものもありますし、すでに
民間
で生産に従事し、さらにそれを改善
向上
さす意味の
研究
費等、いろいろあると思います。 そこで、私ども、
科学技術庁
で
研究
費について特に力を入れるべきものは、
民間
あるいは他の官庁で手をつけかねるもの、そういうものに特に力を入れるべきではないだろうか、こういうことで指導をいたしております。しかし、ただいままでのところ、御指摘のように、まだまだ
研究
費として十分だとは思いません。その数字の
内容
は事務当局から
説明
いたさせます。
岡良一
14
○岡委員 長官も御多用のように承っておりますから、私は詳しい数字はまた
予算
要求の
資料
をいただいた機会に、来春でもゆっくり話を申し上げたいと思うのです。 ただ、私が申し上げたのは、何も
科学技術庁
の
研究
の
予算
が少ないというわけではないのです。文部省も通産省も全部含めて、政府が投資しておる
研究投資
というものが
民間
投資の半ばにも満たないということ。他の国々はそうじゃない。やはり政府が
科学技術
政策というものの
重要性
、
研究
に対する高い評価の結果として思い切った
予算
を計上しておる。いよいよ
予算
編成期を迎えておるが、大臣としてはこういうさか立ちの
現状
に立って一体どういう御決意を持っておられるか、どういう方針を持っておられるか、そのことをお尋ねしたいのです。
佐藤榮作
15
○
佐藤国務大臣
ただいま基本的な考え方はお示ししたとおりでございます。私ども、すでに新しい部門についての
研究
費をいろいろ要求し折衝いたしておりますが、各部門ともあらゆる機会に注意を喚起しないと、ただいま言われるような点が十分目的を達しかねるのじゃないか。当庁自身の
予算
から見ますと三、四割伸びておるのじゃないかというように思いますが、私はむしろ
民間
の経営しておるところの
科学技術
の
研究
費、それが宣伝費等と比べてさらにもっと積極的であってしかるべきじゃないか、そういう面も実は絶えず指導しておるつもりであります。
岡良一
16
○岡委員
民間
の
研究投資
がここ数年来非常に大幅に伸びてきたことは、数字をもって私どもも承知はしております。しかし、
御存じ
のように、
民間
の
研究投資
というのは、在来
技術
に対するいわば部分的改善というふうな方向に使われておる。やはり国がもっと本格的に腰を入れて、そうして大臣の
所信
にもあるように、
科学技術
の
開発
という方向にいこうとするならば、国の責任において、もっと大幅な、思い切った
研究投資
をぜひ計上すべきだ、これが私は国の責任だと思うのでございます。国務大臣として、また閣議の席上などにおいてはこういう点をお含みの上で、ぜひ今後ともわれわれの期待に沿うように御努力願いたいと存じます。 来
年度
の
予算
について見ましても、大体一六%増というふうなことでございます。そうしますと、物価の値上がりと人件費のベースアップで大体吸収されてしまう。実際実施
予算
、
事業
予算
というものはほとんどないというようなことでは、いかに美しいことばで来
年度
の役所の
事業
計画
がつづられておるといたしましても、実際これを裏づける
予算
がそういう状態であるということでは、私ども非常に残念なわけでございますが、こういう点、大臣はどう考えておられますか。
佐藤榮作
17
○
佐藤国務大臣
ただいまちょうど
予算
編成の重大な時期にかかっておりますし、また
予算
の基礎的な考え方から見ましても、今回の
予算
は均衡成長
予算
をつくっておる、かように申しておりますので、なかなか
予算
の獲得——ただいま御指摘のように、あるいは物価、人件費の高騰等を考慮に入れたときに、実質的にはたして純増がいかに見込まれるか、非常に私どもも苦慮しておる最中でございます。大事な
研究
の問題でございますので、こういう際におきましても、目的を達するようにできるだけ努力したい、かように思いまして、せっかく努力中でございます。
岡良一
18
○岡委員 均衡ということがよく言われるので、それは国のさいふのことですから、赤字を出してもらっては困ることだが、しかし、それにしましても、いわゆる大蔵省的均衡という
ワク
内に
科学技術
予算
というものを押えられるということでは私は妥当ではないと思うのです。これは
OECD
の
科学関係閣僚会議
でも指摘されたことだと思いますが、大蔵省の科学投資に対するいわゆる不当な干渉ということばで指摘されておる。要するに
科学技術
あるいは
研究投資
というものは、いわば自然界の真理を
研究
し、探究をする、これを
国民
の生活なり産業の発展に役立てるという意味においてりっぱな投資なんですね。しかし、この投資というものは、その
年度
内においてバランスがとれるというわけにはいかない。一年かかるか、二年かかるか、三年かかるかわからない。また、
研究
を進めている問に、二年後、三年後にどういう新しい
研究
が生まれてくるかわからない。
科学技術
というものはそういうものなんですね。 ただ、それをきわめて短見者流に、大蔵省流に、本
年度
の
ワク
内における均衡というような形で、
科学技術
予算
を大蔵省的均衡の
ワク
内にとどめられる。これにそのまま唯々諾々としてやってもらったのでは、
科学技術行政
というものの発展は望めない。そういう点について大臣の御
所信
というものをもう一度お伺いしたいと思います。
佐藤榮作
19
○
佐藤国務大臣
岡さんの御指摘のとおりであります。ただいま申し上げました
予算
編成の基本的方針、これはどこまでも全体の
予算
の問題であります。その中でただいま御指摘の
研究
費そのものは、短い期間の間に効果があがるとかどうこういうものではないと思います。したがって、
研究
費自身がこういう際におきましても必要である、これは大蔵省といえども認めざるを得ないと思いますし、また、すでにわれわれとしても皆様方の御支援によりまして手がけておる
研究
の
計画
がございますから、そういうものはどうしても
予算
を獲得し、その所期の目的を遂行していく、それに必要なものはとる、こういうことでなければならない。
研究
費そのものはいわゆる大蔵省的な均衡
予算
とか、これだけかければ幾らの効果があるとか、こういうものではない。そういう意味で
研究
費が
研究
費といわれるそのゆえんもあると思います。その点は、私も大蔵大臣をしたことがございますが、
予算
の項目等についてそういう点の誤解を持っておるわけではございませんから、御了承いただきたいと思います。
岡良一
20
○岡委員 それから、来
年度
予算
の数字を若干
資料
として拝見をいたしまして、たとえば公害問題、スモッグ対策の
予算
、それから
宇宙開発
の
予算
。それぞれ郵政省も要求する、文部省も要求する、
科学技術庁
も要求する。スモッグならば、厚生省も、運輸省も、
科学技術庁
も要求する。水
資源
であれば、通産省も要求すれば、また他の
関係
省も要求するというふうに、各省ばらばらに寸断分裂した
予算
を要求する。 もちろんこのことも、現在の
機構
からいえばやむを得ないとはいうものの、しかし
御存じ
のように、これからの新しい科学の進歩というものは、だんだんに専門化してくると同時に、それぞれの細分化された専門的な
研究
の
成果
の上に総合的に集約された新しい
技術
というものが生まれてくる、こういう形になってきている。それが
日本
のお役所流のなわ張り主義で、
予算
が非常に非効率的に寸断分裂されて運営される。同時にまた、乏しい人がまたそれぞれの、いわば一本に総合的に運営されない。
予算
も人も非効率なものになる。こういうことは、他の仕事ならいざ知らず、
科学技術
という問題と取っ組んだ場合には、これは非常に不利な
体制
だと私は思うわけです。 これは、御
所信
の中にも、いろいろ御見解もあるようでございますが、ほんとうに
予算
と人を効率的に運用するという
立場
から、強い決意をもって新しき
予算
の運営に当たられる御方針かどうか、その御決意をもう一ぺんお聞きしたい。
佐藤榮作
21
○
佐藤国務大臣
ただいま岡委員の言われるように、
科学技術
の部門、新しいものは別といたしまして、すでにそれぞれ各省で手がけておるものがございます。文部省
関係
、いわゆる大学の
研究
室における
研究
、これにいたしましても、一つ文部省内を見ましても各大学で重なっておるものがありますし、ずいぶんむだではないかというような見方もあるわけであります。 また、私どものやっておる
科学技術庁
として見ますと、ただ教育
研究
の場面ばかりでなしに、もうそれぞれ実用化されておる。たとえば農林
技術
、あるいは
建設
技術
、あるいは運輸、通信、それぞれの部門にそれぞれの専門的
研究
が遂げられつつある。そういうものを行政の分野としてバランスのとれたものにすることが一つの問題であると思います。私ども
科学技術庁
の
役割り
のうちに、
科学技術庁
自身がみずからの力で
研究
を進めていくものもありますが、同時に他の官庁のそれぞれの
機関
を調整し、またこれらに元気をつけて、バランスのとれた
研究
を進めていくという、そういう
役割り
といいますか、行政の部分もあるわけであります。これが御承知のように、特別
研究
の調整費というような形で
予算
を特にいただいてもおるわけでございますが、どこまでもバランスのとれた
研究
、またそれぞれの特質を生かしていくということが、
科学技術
を究極に発達さすゆえんではないか、
技術
の
向上
をもたらすゆえんではないか、かように考えております。 いずれにいたしましても、
科学技術庁
という名前にふさわしいように、各省に対しましても、各省のそれぞれのものをいわゆる割拠主義にならないで、
技術
の総合的な
協力
体制
のもとに進めていく、これを最善の私どもの努力の目標にいたしておるような次第でございます。
岡良一
22
○岡委員 確かにいま大臣の言われた
研究
調整資金、あれは当時の中曽根長官の非常な努力の結果であったと思う。ただしかし、単にリサーチだけでなくて、デベロプメントも含めて機動的に運営できる大きな流動的なファンドを持つというところまで高めなければ、次の
科学技術
の発展というものはあり得ないのではないかという気もするわけであります。 しかし、それは先のことといたしまして、いま御
所信
の中にもあります
研究学園都市
と申しますか、
国立試験研究機関
の団地化、これは実現の可能性はあるのでございますか。
佐藤榮作
23
○
佐藤国務大臣
科学技術庁
が調整に乗り出し、いろいろ具体的な案を
計画
いたしております。しかし、なかなかむずかしいことでございますので、まだ結論は出ておりません。しかし、たいへんけっこうなねらいだと思いますので、これを実現さすべく最善の努力をしておるというのが現在の
段階
でございます。
岡良一
24
○岡委員 これは
科学技術庁
の
研究機関
だけではなくて、他の各省にまたがっておる
研究機関
の中でも、大体
移転
の可能性のあるものは全部これを一まとめに集中しよう、そういう御
計画
でございますか。
佐藤榮作
25
○
佐藤国務大臣
ただいま御指摘のような意味合いにおいて、
科学技術庁
が各省の希望並びに規模それぞれを材料としてまとめて調整をはかっておる
段階
でございます。
岡良一
26
○岡委員
科学技術行政
の総合的、
計画
的な運営という
立場
からいえば、ぜひ第一歩としてこれは実現をしていただきたい。 その次に、よく文部省の大学における
研究
との
関係
が問題になってくるわけでございますが、この点については大臣はどういうお考えを持っておられますか。
佐藤榮作
27
○
佐藤国務大臣
私は、文部省の大学における教育
研究機関
の
整備
はたいへんけっこうだと思います。そういう意味で文部省も力を入れられるがいい、かように考えますが、しかし、学者の教育
機関
による
研究
、その限度というものはいずれあるんじゃないか。たとえば
ロケット
の問題にいたしましても、あるいは
宇宙開発
の問題にいたしましても、ラムダまで進んでまいりますと、その次の
段階
になると、もう
研究機関
としては限界に近いのではないだろうか、こういうことを実は考えております。ただいまのところで比較的先に進んでおるのが文部省所管の学校の
研究
部門、かように考えますので、これには大いに力を入れたい。文部省のやることに対しましても
協力
するつもりでございますが、おそらく一定の
程度
にくると文部省の
予算
ではこれの
処理
ができないのではないか、そういうことを考え、そういう意味で文部大臣ともいろいろお話し合いをいたしておる次第であります。 また、これはただいまの御質問に直接答えるわけではありませんが、過日
OECD
に参りまして、いわゆる
科学技術
担当閣僚
会議
というのに
出席
いたしてみますと、二十二カ国のうちで
科学技術
担当の専門の大臣を持っておる国はきわめてわずかであります。その他は、その
会議
に出てまいりますのも、いわゆる教育を担当しておる文部大臣、教育大臣、こういうのが大多数でありまして、したがいまして、各国ともただいま御指摘になったような点に非常な悩みを持っているのではないか。これが各国共通の現在の問題ではないかと思います。専任の大臣を持っておりますのは、
日本
、フランス、イギリス、イタリア、ドイツ、その
程度
であったかと思います。 そういう実情でございますので、文部省のやられる
研究
設備
、
研究機関
というものは、やはり
現状
といたしましては国として大いに力をかすべきじゃないか。しかし、それはおそらく一定の限度がある。これより以上はもう文部省の
関係
では手に負えない、こういう時期がくるのじゃないか、かように思います。
岡良一
28
○岡委員 いま大臣からお話しになった
ロケット
の問題にいたしましても、せいぜい四百キロ打ち上げとか、
科学技術庁
では三百キロ打ち上げを目的とする。おそらく国際的な
宇宙開発
の水準から見れば児戯にもひとしいようなもので、それぞれ各省に
予算
なり人を分割するということは、将来の展望からすれば非常に不利な
体制
ではないかと思う。これはもうアメリカあたりは三軍を一本にして、あくまでもNASAがその打ち上げ台を
利用
して
宇宙開発
を進めていく。そのアメリカとソビエトが
宇宙開発
、
平和利用
をやろうという協定を結んだという
段階
で、
日本
の役所が初歩の
実験
段階
で
予算
を分割し、人を分割して、新聞の記事を競合さしているようなやり方は——科学の
開発
ですから、冷静に合理的に、一本にして、できるだけすみやかにりっぱな効果があがるように進めていただきたいと私は思うのです。 それから、大臣も長く大蔵大臣をしておられたから御承知と思いますが、外資法が
昭和
二十五年にでき、大体去年までに公私を通じて二千億をこえる
外国
の
技術
の導入をした。
外国
の
技術
が導入されることそのことを私は全的に否定するものではございません。ところが一方では、一体
日本
が
外国
に
技術
を輸出して受け取った外貨がどのくらいか。これは正確な数字は目下
調査
中という状態でありますが、たかだか二十億をこえないでしょう。二千億の外来
技術
を買って、得るものは二十億、一%です。大臣もヨーロッパへ行かれて、フランス、ドイツなりイタリアなりへ行って
御存じ
だと思いますが、こんな国はどこにもないわけです。いわば
日本
の高度経済成長をささえているものは
外国
の
技術
にすぎないとさえもいえるのじゃないか。こういうことでは、いよいよ開放経済というような
体制
に向かってくると、
日本
は国際的な
経済競争
に太刀打ちできないのじゃないか。 そこで、
国産
技術
というものを育てよう、しかし、この堕性の中では
国産
技術
を育てる素地というか、土壌がないと私は思う。その土壌をつくっていく、これが現在の
科学技術庁
の大きな課題であろうと思うわけでございますが、こういう点について、方針として大臣はどういう御決意を持っているか、この機会にお伺いしたいと思います。
佐藤榮作
29
○
佐藤国務大臣
ただいま御指摘のように、今日までのところは
外国
の
技術
を導入し、
日本
の
技術
の輸出は非常に小さい。このバランスがとれるようにするというか、これから
日本
技術
をうんと
外国
へ出そう、そのために
科学技術
の
振興
も大きな
役割り
をするんだと思います。
先ほど
宇宙開発
の問題で、まるっきり児戯のようなものだということばがございましたが、私は別にことばじりを云々するわけじゃございませんが、確かに
宇宙開発
におきまして
日本
はおくれておる。これにもう御指摘になるまでもなく、非常におくれておる。しかしながら、ただいま
宇宙開発
に
関係
しておる
技術
者の諸君は、自分たちの力で、いわゆる
国産
によって、いましらばく時日をかしてくれれば、米ソに引き続いて
宇宙開発
に参加できる。そういう実は信念を持ってやっておるのです。したがいまして、すでに御承知のように、いわゆる児戯にもひとしいという批判の当たるようなものではございますが、カッパー・
ロケット
自身が
外国
に輸出されておる。こういう
現状
をごらんになりますと、
現状
はなるほど小さい、しかし
技術
者のそれらの意気込み、気魄というものをやはり養成してやることが必要じゃないかと思います。 そういう意味で、私どもはこの
宇宙開発
についてさらに力を入れるべきじゃないかと思いますが、ただいま
科学技術庁
と文部省、その二つの調整にもいろいろ悩みがある。そういう
現状
ではございますが、他の国においてはもっとこれは複雑であるようでありますし、
ロケット
の問題など、フランスの実情などいろいろ聞きますと、さらにそれに陸海軍が入るというようなことで、調整はまことに困難なようです。これはそれぞれの国がただいま悩んでおる状況だと思います。 そこで、私ども、今日までの
外国
から入ってきた
技術
は今日の
日本
経済発展の重要なる要素であったと思う。しかし、おそらく今後は
日本
の産業界も
技術
の導入は順次減っていくのじゃないだろうか。もちろん新しいものは
計画
されますが、戦後非常に急激に目ざましく導入したような事態とは、産業の実情から、変わってくるのじゃないか。そうして、今日まであまり
外国
には輸出されなかったが、今度は
日本
の
技術
がだんだん他の国にも出ていくようになるのじゃないか。そういうところに私どもも一つの希望を持ち、楽しみを持ちたいものだ。そういう意味で、
現状
においてはなるほどまだ不十分なものだと思いますけれども、その水準を高めていって、そうして国際収支の上にも役立つようにいたしたいものだと思います。 私、率直に申しまして、いろいろ政治的にも成功したから今日の経済の繁栄を招来したということは言えると思いますが、同時に財界、また国も許して、
外国
の最新式な、そのときにおける最高度の
技術
を導入したことが、今日の経済発展に非常に役立ったゆえんだと思います。しかし、もう
日本
の経済もりっぱに成長してまいりましたから、そういう意味では順次
技術
導入の量は変ってくるのじゃないか。そういうことを考えると、また同時に、
日本
から輸出するものも順次ふえていくのじゃないだろうか、ここらに楽しみが持てるのじゃないかと思います。問題になりました中共に対するプラント輸出なども、やはり
日本
技術
の輸出も一部あるわけでありまして、こういう意味で、
日本
の
科学技術
を担当しておる
技術
者の諸君が大いに元気が出せるように、ひとつ御鞭撻をいただきたいと思います。
岡良一
30
○岡委員 外資法が改正の
機運
にあるとうかがわれるわけですが、この場合外資法の中における
外国技術
の導入については、
科学技術庁長官
としてはどういう御方針を持っておられますか。
佐藤榮作
31
○
佐藤国務大臣
もちろん
科学技術庁
も、外資導入の場合に、事務的な
段階
におきまして十分審査するその
会議
に参画いたしておりますので、新しい
技術
なりや、あるいは特に導入を必要とするか、あるいはこれは
国産
で間に合うか、あるいはまた
国産
技術
による
国内
産業にどういう影響を与えるか、そういう見地に立ちまして、適正なものの導入を許し、また
国内
産業に波紋を起こすようなものについては慎重に扱っておるというのが
現状
でございます。
岡良一
32
○岡委員
国産
技術
の
育成
という
立場
から、そうして真の自力による
経済競争
力を養うという
立場
から、開放経済、外資法改正ということですね。ずるずるに無条件な
技術
導入をするというようなことは、よほど政府としては御戒心を願いたいと思う。特に自由化の声が上がり始めてから、外来
技術
の導入がここ二、三年非常に激しくなっているという事情にかんがみても、そういう点もあわせてぜひひとつお考えを願いたいと思います。 それから、
国際協力
の点でございますが、大臣は楽しみにしておるというお話ですが、児戯にひとしいということは若干極端な表現かもしれませんが、ただしかし、これは現在の
開発
水準から見たらきわめて初歩の初歩の
段階
ではないかということであります。この
国際協力
という点で、特に
宇宙開発
という問題で、たとえば飛行機を一つ取り上げてみましても、やがてアメリカでは二マッハ以上、おそらく二・二マッハぐらいの航空機が生産できるということです。これは、大体千五、六百億の金を投入してこれを生産する
段階
にきたということ。これに負けてはならじというので、とても一国の力ではやれないというので、英国とフランスが共同で、これも二マッハ以上の飛行機が生産される
段階
にきている。ところが、
日本
ではYS−11。一体これでは、
日本
も二千億の金、三千億の金を投入して二マッハ以上のものをつくる、その時分には向こうはもう三マッハをつくる。こういうように、絶えずあとを追っていくという状態です。 私は、
国際協力
というものの考え方をやはり考え直さなければならぬのじゃないか。
日本
の
国産
技術
を
育成
するということは、特に
宇宙
というようなものを相手にした場合には、
日本
も同じものをつくる、あれこれの国々もみな同じものをつくるというのではなくて、もっと大きく、それこそ開放された形における
国際協力
という
体制
を踏んでいくという方向へ、
日本
自身も進歩していく必要があるのではないかと思います。 気象衛星がいま打ち上げられて、最近の気象衛星の
成果
というものは、
日本
もこれを実現しょうとすれば実現できるということです。米ソの間にも、気象衛星については両方から相当きめのこまかいことをやっておる。あれが十分受信をされ、そして、ものの動き、国々の移り変わりというものが十分に地上から受け取られて、それが国際的な
技術
者の分析を経て、
検討
を経るならば、おそらく台風の原因というものもわかる。ハリケーンとかモンスーンの原因もわかるかもしれない。わかれば、これに対する
防災
的な
措置
の方向へ
日本
の
科学技術
が進み得る一つのスタートラインが開ける。こういう場合に、
日本
も気象衛星を打ち上げる、向こうも打ち上げるということではなくて、米ソの
協力
協定には
日本
も参加できるという余地は残してある。だから、そういう形で、
宇宙
に対する
国際協力
というものは、
日本
の
国内
において、ある
機関
とある
機関
が競争をやるというふうな非常にちゃちな
段階
を越えて、もっと打ち上げるものは向こうのものを
利用
して、こちらはカメラを出してもいいし、そういう形で、全人類の連帯的な責任感の上に立った
国際協力
という形で、地球の病気である台風なり
災害
なり、あるいはモンスーンをこの際予報するという展望の上に、ビジョンの上に
協力
していくという
体制
、そういう方向へ
国際協力
というものを進める必要があるのではないか。そういう点、まだ科学の
世界
で偏狭なナショナリズムにこだわるということは、真の科学というものの発展をしばしば阻害するような要因になりはしないかと思うわけです。
国際協力
についての基本的なお考えは、どういう御
所信
なのか。
佐藤榮作
33
○
佐藤国務大臣
ただいまの
科学技術
の
平和利用
、これは各国とも、そういう方向に非常な努力をいたしております。また、その面では各国の
協力
ということが強く望まれておる。私どもが欧州の
会議
に、オブザーバーではありましたが、
出席
したのも、やはり
協力
という
立場
においての要請だ、かように考えております。 ただいま御指摘になりましたような
宇宙開発
、こういうたいへん新しい、また大きな問題になってまいりますと、もちろん各国の
協力
を必要とすると思いますが、その以前におきましても、日常の
科学技術
の面においての
協力
も、これまた非常に必要でございます。それが
先ほど
来のいわゆる
技術
の輸出の問題になるとか、あるいは
技術
の導入の問題になるとか、相互情報の交換の問題であるとかいうことに発展してまいっておるのであります。 そこで
宇宙開発
、その問題自体は一体どうなのか。
日本
の
国産
技術
によるいわゆる
人工衛星
の打ち上げ可能な時期は一体いつになるだろう。大体五、六年先にはそういうものは可能なんじゃないか。そういう意味で
技術
者の動員が可能であり、またそういう準備を今日からすべきではないか。こういうことを機会あるごとに事務当局にもお話しをし、また、それぞれの専門部門の方にもそういうおはかりを実はいたしておるのであります。ただいまの
日本
の
技術
陣で、
外国
から一部を輸入することによって
人工衛星
の打ち上げも可能でございます。しかしながら、今日の
段階
においては、やはり
日本
の
燃料
で
人工衛星
を打ち上げるところにわれわれの夢があるのではないか、かように思いますので、
外国
から
燃料
を買い付けるということはしばらくおいても、いまの
研究
を進めさせていくつもりであります。 ことに、テルスターというものによって、来年のオリンピック等を控えていわゆる海外放送というものが積極的に唱えられ、しかも受信も可能だ。その
試験
はすでに成功いたしておりますので、そういう意味から見ますと、いまの
協力
の
関係
もいわゆる夢ではなくて、われわれの力によってこれに加入もできるだろう、またそういう方向へ進めるべきではないかというので、いろいろ話し合っておるというのが現在の
段階
でございます。
岡良一
34
○岡委員 何も
日本
の科学者の能力を低く評価したり、また、そういう
宇宙開発
の
事業
において、ある限度をことさらに政府が設けていいということを申し上げておるわけではないのです。ただやはり、能力と同時に資金の問題もあります。
御存じ
のように、ことしのアメリカの
宇宙開発
予算
は五億ドルです。
日本
の
予算
の三倍に近いものを使っておる。そういうようなことも考えますと同時に、また、
宇宙開発
をして人間が月に旅行する。月ならばいいが、他の天体に新しい文化や生命を発見するということになれば、全人類の
世界
観の大変化だと思います。東や西やという、そういう横の対立ではなくて、全人類が運命の共同的な連帯感において
宇宙
を
開発
するという状態の中で、われわれは全人類的な
協力
というものを考えなければならぬ時代です。そういうようなことも考えながら、大きな、幅の広い
協力
体制
——
人工衛星
で米ソが
平和利用
の競争をやっている、
日本
もそれに進んで参加してやっていくというような余地もあるのではないかということを申し上げたわけです。 それから、もう一つ、この
科学技術
を国が特に大きく中に入って進めるという場合、
計画
性が必要だと私は思う。ところが、ここに重要な
研究
課題としてあげられておる
原子力
研究
、ことしの六月だかにいわゆる
国産動力炉
、天然ウラン重水型というものが採用された。ところが、二号炉は軽水炉だ。そこまでは、まああれだが、三号炉、四号炉は大体また軽水炉で、これは
民間
の電気会社がやる。そこで、前期百万キロワットは一応できるだろう。それからあとは一体何をやるかというようなことで、軽水炉を入れたり、
原子力
委員会
では
国産動力炉
のタイプとしては天然ウラン重水型、一方では前期十年間に
研究開発
段階
と言いながら、これは電気会社にまかせればやはり利益採算から安上がりな軽水型というところへいって、そしてそれが
研究開発
段階
と称され、今度はまた後期十年間に五百万キロ、六百万キロやるのは一体何でやるのか。
国産動力炉
でやるのかどうかという見通しが立たないと思う。 そういうわけで、
原子力
の
開発
長期
計画
にも私は一貫性がないように思う。こういう点もう少し科学の
研究開発計画
というものは一貫性があっていいのではないか。全然
計画
性がない。こういうことではほんとうの
原子力
の
研究開発
というものが進まないわけだが、こういう点、
原子力
委員長
、一体どう考えておられるのか。
佐藤榮作
35
○
佐藤国務大臣
研究
の
計画
性は、ことに
日本
のような資力の不足のところにおいては最も必要なことだと思います。そういう意味において、
計画
性を私どもも強く主張したいのであります。 しかして、いまの
原子力発電所
の問題になってまいりますと、これはとにかく新しいものと取り組むのであります。そういう意味から、まだまだ
研究
の期間であり、そういう意味においてのいろいろ発電炉の形式などが云々されておる、かように思います。しかし、これも長いことではない。おそらく結論が出てきて今後の方向が定まるだろう。そういうことが定まれば、いま言われますように百万キロの発電
計画
、それに引き続いていかに進めるかという第二期の発電
計画
を立て得るのだと思います。ただいま何といいましてもまだ
研究
の部門である点もあるし、ことに
原子力
の問題、あるいは
宇宙開発
の問題にいたしましても、私どもの非常に困難なのは、何といっても
平和利用
という
立場
に専念いたしておりまして、そういう
立場
から各
方面
の見方がありますので、そういう意味であらゆるものをただいま
研究
している。必ずしも私は
原子力研究所
が失敗したとは思いません。しかし、もうそろそろ次の
段階
を考えてしかるべきじゃないか、そういう時期にきているのじゃないか、その意味では、岡さんが御指摘なすったと同様に、今後また
原子力研究所
のあり方等も私どもの政府が考うべき課題になりつつあるのじゃないか、かように私思っております。
岡良一
36
○岡委員 このことは、これも島村君には口がすっぱくなるほど私は申し上げておることなんだが、
日本原子力研究所
が電気をつけたり消したりしているというようなことも、これはやはり基本的には
原子力
委員会
そのものに長期にわたる一貫した
計画
がないということなんです。同時に自主性がないというか、要すると
原子力研究所
は、口が悪い人は、あれは
外国
の炉の展覧会場だ、やがてはみんな歴史的なモニュメントになるようなものをそろえておる、文字どおり炉多くして功少ないようなことをやっているのが
原子力研究所
だ。というようなことを言っている。 実際、冗談じゃなく、
国産動力炉
天然ウラン重水型を採用するというあれがあったが、この前私はカナダへ行ったが、あすこでは
国産動力炉
天然ウラン重水型でやっている、あすこは十年間それ一点ばりです。自分のアイデアを十年追求して、小型の天然ウラン重水型から始めてそれを大型にし、そしてそれでもって
材料試験炉
をつくり、そしてもうすでに
動力試験炉
はチョークリバーの上流につくって、あそこで二万四千キロの
実験
をやっておる。これでだいじょうぶだという確信を持って今度は三十万キロの実用炉をつくっておる。もう天然ウラン重水型一本でずっと追求してきておる。その間にはおそらく失敗もあったでしょう。しかし、失敗を十分に批判しながら、さらにその失敗を、禍を転じて福となすという努力をやって、十年
国産
の天然ウラン重水型一本でやっておる。 ところが、
日本
では、ああしていろいろなタイプの炉を入れ、これもどうだ、これもどうだとやっている。ほんとうに
原子力
委員会
がそれを必要とするのかどうか。むしろ別な向きがそれを無理に持ち込んでくるのではないかとさえいわれるほど多種多様な炉を入れて、半拘質炉のプロジェクトがどうなったかといえば、一年たつかたたない間にこれはだめだということになってしまう。実に一貫性がない。科学
研究
というものは人間の仕事なんだから、人間の終身の中から真剣な学問領域というものが出てくる。非常に一貫性がない、こういう点を私は非常に残念に思うわけでございます。他の問題についても、
研究
の態度、姿勢として、ビヘービアとして十分御
検討
いただきたいと思います。 最後に、
原子力
潜水艦の問題です。これはこの
委員会
で、もう何回も何回も口をすっぱくして論議を交した問題だから、その後のこの問題についての情報を兼ねて、大臣の御
所信
を伺いたいと思います。というのは、大臣が御就任直後に、
原子力
潜水艦の寄港承認の問題は政治的な判断に待って決定さるべきであるというような御趣旨のことを申されたということが新聞に伝えられております。これは私どもとすれば非常に関心の深い御発言でありましたが、たまたま
委員会
を開くことができなかったわけです。大臣の真意はそういうことでございますか、まずその点を伺いたい。
佐藤榮作
37
○
佐藤国務大臣
もちろん
原子力
の問題でございますから、その安全性についても学者の意見はもちろん尊重しなければなりません。そういうことの基礎的な条件はさることながら、ただいまのところこれは政治的な問題だ、私はかような見解を持っております。政治的な問題だから
技術
の面は無視する、こういう意味ではございません。その点は誤解のないように願いたいと思います。
岡良一
38
○岡委員
原子力
潜水艦の寄港を承認してくれということは
日本
とアメリカ間における条約に基づく政治的な問題だ、しかし、それを受け入れる
日本
側の態度としては、単に政治的な問題だとして済まされない。 そこで、私どもは、この問題が起こったとき、ことしの二月、この申し入れに対して
原子力
委員会
は一体どういう態度を持っておられるのかという統一見解を求めたことがある。そのときに、安全性について責任のある保証を取りつけるということが文書でこの
委員会
に報告されている。国会を通じて
国民
にお約束になっておる。公約なんです。 ところが、たまたま大臣が御就任になる前後、専門の学者が政府へ申し入れておるはずです。学術
会議
もそういうような意思表示をしたと思います。
原子力
潜水艦の安全性については重大な疑義がある。ところが、そのときそれに対して、いや、学者が何と言おうと、これは政治的な問題として政府は判断し決定すべきだというふうにとれるようなタイミングにおいてあなたはああいう発言をしておる。それは、安全性というものに疑義があっても政治的な判断においては寄港を承認すべきものである、あなたはこういうお考えを持っておられるのかどうか、この点をお聞きしておきたい。
佐藤榮作
39
○
佐藤国務大臣
ただいまお答えしたように、政治的な問題だから安全性を無視して解決する、こういう意味のものではございません。
原子力
潜水艦あるいは放射能、そういうものについての安全というか、その確保についての最善の努力をすることは当然のことであります。
岡良一
40
○岡委員 これはやはり大平外務大臣が国会で言明をしておられるのであるが、
原子力
委員会
等の意見は十分尊重しこれを聞いて決定したい。したがって、
原子力
委員会
の安全性に関する判断というものが寄港を承認するかいなかを左右する非常に重要なファクターである。 そこで、この前、外務省が安全性を
中心
とする
日本
政府とアメリカの政府との間の往復文書の抄訳を発表された。そのときに
原子力
委員会
は、それをもって安全性が立証されたものとは考えないという御答弁であった。してみれば、その後安全性について一体具体的にどういう照会をせられたか。また相手方からどういう答弁があったか。重要なポイントだけでけっこうですけれども、ひとつこの際、担当の方がおられればその方からでもけっこうです、お聞かせ願いたい。
佐藤榮作
41
○
佐藤国務大臣
この新しい
原子力
そのものにつきまして、なかなか
国民
の間には理解しかねるものもございます。ことに、第一の核の被爆国であるという意味合いにおきまして、なかなか感情的に解けないものもあるようであります。しかし、その点を冷静に十分話し合うといいますか、米政府ともよく話し合って、そうして納得のいく結論が出たときに政治的な問題が解決される、私はかように実は理解をいたしております。 御承知のように、ただいま
平和利用
で
原子力
はあらゆる面に使われつつあります。私どもも
原子力発電所
を設けてもおりますし、また皆様方の協賛を得て
原子力
観測船もつくるということで、すでにスタートしております。また
外国
では、いわゆる軍艦、潜水艦だけではございません、商船にまで
原子力
を動力にするものが出現しております。 そういう際でありますだけに、みんなに納得のいくようにこの安全の問題を取り上げてはおります。しかして、事柄自身は私ども
国内
においてあらゆる努力をしておるが、今度は陸上の問題ではない、海中の問題なんである。こういうような意味から、それに対する
調査
なども進めるということで準備をしておるというのが現
段階
であります。したがいまして、いわゆる条約にどうあるからこれは受けなければならない、ただそういう簡単な理屈ではございません。十分納得のいくような処置をとるということで努力しておるというのが実情でございます。
岡良一
42
○岡委員 大臣に人情論を聞いておるのではない。それは広島、長崎の被爆という経験を持っておりますから、われわれ
日本
人は
原子力
についてはやはり特に鋭敏な感覚を持っている。だから、私どもは、船をつくる場合でも、発電所をつくる場合でも、
原子力
の
平和利用
については慎重の上にも慎重を期さないと、それ見たことかということになって、今後の
平和利用
が蹉趺するようなことがあってはならないというな
立場
をとって、
平和利用
のことについては私ども非常に賛成をしておるわけであります。 そこで、私は別にわれわれの主観的な
資料
で申し上げておるのではないので、
先ほど
お尋ねをいたしました点でございますが、さらに具体的に申し上げますと、これは七月四日の国会が終わろうとする前の前の日の外務
科学技術
連合審査の席上で、私は特に御
調査
をお願いしておいたのです。それは、アメリカ側の公式な文書、いわゆる
日本
、アメリカの
原子力
合同
委員会
の文書において、人口の稠密な港に
原子力
潜水艦を寄港せしめるということは避けられれば避けたほうがいいということが繰り返し書いてある。そのことを私は文書を提示して申し上げた。さらに、
平和利用
のためのサバンナ号、あの
原子力船
である、貨客船であるサバンナ号についても非常にシビアーな停泊基準というものがアメリカの
原子力
委員会
において発表されておる。そうなってくると、サバンナ号の構造よりもさらに危険の度が強いといわれておる潜水艦であるだけに、この停泊については、さらに
日本
側としても安全保持の
立場
から明確な基準というものを持つ必要があると思う。寄港を承認する基準を持たなければならぬと思うが、具体的にどういう基準を持ったらいいと思われますか、これを次の機会にまでお答え願いたい、こうはっきり
委員会
で申し上げた。これは担当の方は島村局長ですか、どなたかひとつ、その後その結論が出ておられるならばこの機会にお示しを願いたい。
佐藤榮作
43
○
佐藤国務大臣
ただいま御指摘の点はまことに重要でありますから、そこで、
関係
の各国で協約を結んでおります。これこれの条件を満たすべきだ、こういうことを言っておりますが、その協約の
内容
、これを島村君から
説明
いたさせます。
岡良一
44
○岡委員 その協約の
内容
は、ギリシアとの協約の
内容
は私もよく知っております。 ただ、しかし、協約を結ぶために必要とするデータを向こうは出してくれないわけですね。出してくれないから、
原子力
潜水艦の場合にはコンテナの問題なり、
燃料
の問題なりについては、危険度が高いという
立場
から、危険度の低い
平和利用
のための貨客船のサバンナ号でさえこういうシビアーな停泊基準を設けておるのだから、
原子力
潜水艦については一段と慎重を期すべきであろう、特に人口稠密な横須賀、佐世保の場合においてはしかり、だからどういう基準を持っておられるか、用意せられておるかということを聞いておるわけです。 その点で、その後アメリカ側ともおそらく聞き合わされたことと思いますので、ひとつ持っておられるならばお示しを願いたい。なければこの次の機会でもけっこうなのです。
佐藤榮作
45
○
佐藤国務大臣
いま協約を引き合いに出しましたのは、ただいま各国の
科学技術者
がこれならば納得できるという、その協約、その基準に合わせたものでやりまして、そういうことで私どもは安全性の確保というか、これを交渉しておるというのが
現状
でございます。その点で一応御了承ができるかどうかという問題だと思います。いまそれより以上のものが学者の間にございませんので、各国が納得をしておる、いわゆる寄港の場合における受け入れの条件その他、その協約、これが基準になっておる、かように私は考えますので、協約を御披露いたしたのでございます。
岡良一
46
○岡委員 まあ、時間もたちますので、それではひとつ、この際結論として、
原子力
委員長
としての責任ある御答弁をいただきたい。それは、
原子力
委員会
としてはこの安全性を立証するために一体どういう方法、どういう人たちの意見を求めて決定されるのかということと、
原子力
委員会
がこれらの手続を経て安全性が立証されなかった場合には、寄港は承認すべきものではないという態度に立たれるのかということですね。これは
佐藤
大臣もデンマークに行かれて、デンマークのお話は
御存じ
だろうと思う、あそこでは、政府はNATO加盟国として当然なんだということでノーテラス号を入れようとしたところが、かの有名なボーアが
原子力
委員長
の
立場
からやはり危険性を指摘して、拒否することになったという御経験があったということは、デンマークにたしか大臣も私と前後して一日ぐらいおられたはずだから、お聞きになったろうと思う。 この点、はっきりした点をどうですか。
原子力
委員会
は、適当な、われわれの納得のいく民主的な手段によって
原子力
潜水艦の安全性の確認をされる、その上で、安全性が立証されないとするならば寄港すべきものではないという方針を打ち出されるか、これはこの前から引き続いている問題なので、一ぺんお聞きしておかなければならないと思っております。
佐藤榮作
47
○
佐藤国務大臣
就任以来の一番大事な、大きな問題であります。したがいまして、私もこの問題はおろそかにはいたしておりませんし、ことにただいま、御承知のように、いわゆる国が責任を持てるその
立場
は
原子力
委員会
だと思いますし、私はその
委員長
をいたしておりますので、この
委員会
において納得がいかない限りにおいては、ただいまの寄港問題というのは、条約であろうが政治問題であろうが、そう簡単にはまいらないと思います。したがいまして、私どもこの
委員会
におけるいろいろ疑義その他を外務省をして交渉さしておるというのが現
段階
であります。ただいままだ結論は得ておらないというのが
現状
であります。
前田正男
48
○
前田委員長
それでは、質疑はこれで終了いたします。
前田正男
49
○
前田委員長
この際、閉会中審査の申し出についておはかりいたします。 本国会が閉会となりました後も、
科学技術振興対策
に関する件につきまして、閉会中審査をいたしたい旨議長に申し出ることにいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
前田正男
50
○
前田委員長
御異議なしと認め、さよう決定いたしました。 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時五十二分散会