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1963-12-12 第45回国会 衆議院 運輸委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年十二月十二日(木曜日)    午後一時二十二分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君    理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君    理事 山田 彌一君 理事 井手 以誠君    理事 久保 三郎君 理事 肥田 次郎君       木村 俊夫君    佐々木義武君       壽原 正一君    高橋清一郎君       高橋 禎一君    中馬 辰猪君       西村 英一君    長谷川 峻君       細田 吉藏君    井岡 大治君       勝澤 芳雄君    田中織之進君       泊谷 裕夫君    矢尾喜三郎君       山田 耻目君    内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君  出席政府委員         運輸政務次官  田邉 國男君         運輸事務官         (大臣官房長) 今井 栄文君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君  委員外出席者         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  向井 重郷君         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     山田 明吉君         日本国有鉄道常         務理事     川上 寿一君         専  門  員 小西 真一君 十二月十二日  委員下平正一君及び松原喜之次辞任につき、  その補欠として泊谷裕夫君及び山田耻目君が議  長の指名委員選任された。 同日  委員泊谷裕夫君及び山田耻目君辞任につき、そ  の補欠として下平正一君及び松原喜之次君が議  長の指名委員選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  日本国有鉄道経営に関する件(東海道本線鶴  見列車事故等に関する問題)      ————◇—————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  この際、小委員会設置に関する件についておはかりいたします。  すなわち、都市交通に関する小委員会、観光に関する小委員会及び踏切道整備に関する小委員会設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、各小委員の員数並びに小委員及び小委員長選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  各小委員及び小委員長は、追って公報をもって指名することといたします。  また、委員の異動に伴い、小委員及び小委員長に欠員が生じた場合は、その補欠選任等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 川野芳滿

    川野委員長 この際、綾部運輸大臣及び田邉政務次官から発言を求められておりますので、順次これを許します。綾部運輸大臣
  7. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 御承知のように、去る九日、私は第三次池田内閣に再び運輸大臣の重責を汚すことに相なりました。まことに時局多端のときに非常に責任の重いことを痛感いたしております。私は今後とも各位の御協力によりまして大過なきを期したいと思っております。この上とも御支援あらんことを切にお願い申し上げまして、簡単でございますがごあいさつといたします。(拍手
  8. 川野芳滿

  9. 田邉國男

    田邉政府委員 私は、今回再任をいたしました運輸政務次官田邉國男でございます。  実は七月の終わりに就任をいたしました際には、ちょうど臨時国会でございまして、委員会へ一度も出席をする機会を得なかったわけでございます。まことに遺憾でございます。  浅学非才でございますが、よろしく御指導をお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  10. 川野芳滿

    川野委員長 それでは、日本国有鉄道経営に関する件について調査を進めます。  この際、国鉄当局から発言を求められておりますので、これを許します。石田国鉄総裁
  11. 石田礼助

    石田説明員 まずもって皆さまにおわびを申し上げねばなりません。  御承知のとおり、十一月六日には鶴見事故という大事故が起こったのであります。これに対しては何んとおわびのしようがないのであります。国鉄といたしましては、まず罹災者に対しできるだけのことをする、現に負傷者に対してはできるだけ早く全快されるように、全力を尽くしておるのであります。それから今後こういうことが再び起こらないようにするために、事故原因を徹底的究明しておるのであります。これまでも貨車脱線というようなことはたまたまあったのでありますが、いつもその調査というものが中途はんぱに終わって、ほんとう原因をつかむことができなかった。しかし今度の場合には多数の人命を犠牲にしたということもありますので、全力を尽くしてわかるまで究明する、そして今後再びこういうことのないようにしたいということで努力しておるのであります。  それから鶴見事故という大きな事故が起こった後に、またきわめて短期間の間に、あるいは九州に、山陽に、高崎に、北陸に、また最近においては新小岩というぐあいに、五件も引き続いて非常なミスをやっておる。しかもその事件たるや、質からいえば鶴見事故より悪質のものです。これは国鉄従業員ミスであります。われわれ国鉄は、三河島以来何とかして職員過失によってああいう事故が起こらぬようにということを念願いたしまして、従業員指導訓練適性考査の問題に対しては最善を尽くしてきた。さらに、幸いに労働組合のほうが非常に協力してくれましたので、指導訓練考査の問題は順調に進んでおったということに考えておりました。現に十月までは、三河島以来、過去に比べると職員責任による過失というものは少なくなっておった。ところが鶴見事件以来五たびもわずかな期間の間にこういう事故が起こったということは、実に遺憾千万。これは何かいまわれわれ国鉄指導訓練考査その他について欠陥があるのじゃないかということについて調べたのであります。それがために支社長会議を開くとか、あるいはまた現場を直接管理しております鉄道管理局長会議を開くとかいうようなことをやっておりますが、しかしそんなことでは私はほんとうの根本の原因はつかめないと思う。よって本社から三、四人を現地に派遣して、現場において何か欠陥があるのじゃないかということについて根本的に一つ探究をして、今後こういうことがないようにしたいと思います。そのほかにも、三河事故を起点といたしまして、保安設備強化ということに力を尽くしまして、もとの計画は百十七億くらいのものでありましたものを、これにさらに二百四億を追加して、合計三百二十一億で保安設備強化をする。さらに、事故の相当に大部分原因をなしておる踏切の問題、この問題につきましても、現計画の二百億を三百億に増加してやるということに全力を尽くしてやっておるのであります。そして、とにかくこの問題につきましては、ひとつ新しきスタートにおいてほんとう原因をつかむことに努力する、そうしてこういうみっともない事故の起こらないようにしたいということが私の念願でありまして、最善努力をしておるのであります。これは皆様におわびすると同時に、私は、鶴見事故によって不幸にかかられた人にほんとうおわびをするほかに道はないのであります。
  12. 磯崎叡

    磯崎説明員 お許しを得まして、私から鶴見事故の概況とその後の事故のあらましについてごく簡単に申し上げます。  鶴見事故につきましては、お手元にごく簡単な資料を準備いたしましたので、すでに新聞その他で御承知のことと思いますが、いままでわかりましたことにつきまして、簡潔に御報告させていただきたいと思います。  初めから三枚目に折り込みの図面がございますので、それをごらんになっていただきたいと思いますが、別図1という図面であります。この図面は、左側が東京方右側横浜方、一番上の二本の線路京浜東北線、すなわち大宮から桜木町に参ります普通電車線路でございまして、それが図面の左のほうでもって東海道線立体でオーバーしております。したがいまして、その次にございます1、2、3、4、5と書いてございます線路東海道線の汽車あるいは湘南電車、あるいは横須賀線下り線でございます。その次がやはり東海道線上り線路でございます。それから一番下の二本の線路は、新鶴見から出ました貨物列車が、鶴見近所におきまして東海道線に接近してまいりまして、ちょうどこの地点で、京浜東北線東海道線をオーバーいたします近所でもって東海道旅客上下線に接近してまいりまして、これから先が複々線になって運転されておる。旅客線まん中で、貨物線が下、こういうふうな場所でございます。  事故の起こりましたのは、ただいま総裁から申し上げました十一月九日の夜九時五十分ごろでございまして、当時新鶴見の駅を出ました下り貨物列車の2365と申します列車が四十五両の貨車を引っぱって、この図面の下から二番目の線路を左から右に走ってまいりました。そうしてこの列車は、先頭——図面の一番右側滝坂踏切と書いてございます。この滝坂踏切のもう少し横浜寄り機関車が参りましたときに、後部から非常ブレーキがかかりましたので、すぐ停止したのであります。その当時の状況は、その図面にございますとおり、ちょうど図面まん中ごろに貨車三つ横になっておりますが、一番最後貨車がワフ28088、これが四十五両の一番最後の車でございます。その前のポム92という車、それからその前のワラ501、この三両は一番最後部の三両でございます。この三両が脱線いたしまして、このワラ501と申しますのは、そこにございます電柱にぶつかりました。脱線したと思われる地点は、この図面にございますとおり、脱線地点とありまして、十六・三メートル、この付近から脱線いたしたというふうに思われますが、この地点脱線いたしまして、枕木上を約五十メートルほど走りました上で、そこの電柱にぶつかってこの列車から離れたわけであります。そのワラ501と申します貨物列車、そこへたまたま上り旅客線を疾走しておりました横須賀線上り電車、二〇〇〇Sと申します電車、これがこの図面の右から左のほうに走ってまいりました。そうして先頭部がこのワラ501という貨車にぶつかったわけであります。そういたしまして、第一両目はこの図面下り線の2113S、これは後ほど申し上げますが、この下り線電車の五両目の上にのしかかりまして、二両目と三両目は逆に貨物線のほうに脱線いたしまして、四両目から以下は、その場に停止したわけであります。2000Sの運転士はなくなっておりますので、詳細なことはわかりませんが、このワラ501が脱線いたしましたとき、間もなく、貨物列車の車掌が発炎筒をたいたことははっきりしておりますが、その発炎筒を2000Sが認めたか認めないかは、運転士がなくなっておりますので、まだよくわかりませんが、いずれにいたしましても、非常手配をとりましたが問に合わず、ワラ501のほうにぶつかったというように推定されます。  ちょうどその時刻の少し前に東京から出ました2113Sと申します下り横須賀線電車が、この京浜東北線立体交差の少し手前から、先ほどの貨物線を走ってまいりました貨物列車うしろをずっと追ってくるようなかっこうになっております。この2113S電車は、途中で急遽非常制動をかけました。そのかけました理由は、この2113S電車運転士が前方に火花を認めたということと、それから間もなくちょうどワラ501がこの電柱にぶつかりまして、架線が大きくゆれましたために停電いたしました。その二つでもって、ちょうどこの図面にございます場所に2113S電車がとまっておった。そのとまりました時刻ワラ501が脱線いたしましてから約一分か一分三十秒くらいじゃないかというように推定されております。そのとまっておりましたところへ、さっき申し上げましたとおり上り電車が参りまして、一両目が五両目の上に乗っかった。そうして五両目、六両目に乗っておられたお客さんの大部分死傷を受けられた、こういうことでございます。  原因につきましては、先ほど総裁から申し上げましたとおり、なお目下技師長中心といたしまして、技術調査委員会設置いたしまして、現地におきまして試験を行ない、またこれと同じような曲線の場所実地試験を行ないましたが、何ゆえにこのワラ501という貨車脱線したかということにつきましては、まだ原因が不明でございます。しかしながら結果的に、この図面にございますとおり、いわゆるせり上がりと申しまして、貨物列車車輪線路の上に上がってしまった。この図面にございますとおり、約十六メートル半、線路の上を車輪のタイヤが走った上で脱線いたしまして、かような結果になったということだけははっきりしております。この脱線原因そのものについてはまだ目下検討中であります。  事故の概要は、さっき申し上げたとおりでございますが、本日現在の死傷者は、なくなった方は、乗客百六十名、職員はさっき申しました2000Sの電車電車運転士が殉職いたしております。現在入院中のお客様は五十二名でございます。横浜鶴見の病院にそれぞれ入院治療を続けておられます。なくなられました方々に対しましては、とりあえず香典十万円、並びに葬祭料二十万円をお渡しいたしました。また負傷者に対しましても、負傷程度に応じましてお見舞いの金をお渡ししております。十一月二十二日には鶴見の総持寺で合同の慰霊法要を行なわせていただきました。  なお、御遺族並びに負傷者に対します慰謝の問題につきましては、現在各御遺族につきましていろいろ調査をさせていただいております。と申しますことは、御家族の構成なり、収入の状況なり、非常に皆様違っておられますので、具体的にいろいろ調査いたしませんと、後々いろいろな問題の起こる可能性もございますので調査を進めておりますが、おかげさまをもちまして現在まで、もちろんなくなった方のお命を金でというわけではございませんが、一応約二割程度方々につきましては御遺族の方とお話し合いがつきまして、すでに一部解決の運びになっているということだけは、せめてもの慰めというふうに考えております。以下、こまかいことは省略いたしますが、とりあえず事故の内容並びに、その後の処置につきまして御報告申し上げた次第でございます。  なお鶴見事故発生以後、ただいま総裁が申し上げましたとおり、一昨日の総武線事故に至るまで、実に五件の列車衝突あるいは列車接触と申しまして、私どものほうで申しますと最も悪性な事故が実は続発いたしております。初めの事故のときは、ちょうど昨年の当委員会におきまして、三河事故のあとに車内警報の急速な設置につきましていろいろ御支援を賜わりまして、現在高崎線、鹿児島本線、北陸線等につきまして車内警報装置を急遽工事中でございまして、たまたまその車内警報装置工事中のところで起こりました事故でありましたために、車内警報装置がつけばこういうことは絶対ないということも、実は参議院の委員会で申し上げたところでございますが、不幸にして一昨日の総武線事故は、車内警報がついておって、車内警報ブザーがなっておるにかかわらず、絶対的に侵入のできない赤信号を暴進したということでございまして、何とも私どもといたしましては申し上げようのないことで、先ほども総裁が申しましたとおり、私どもの考え方を根本的に変えなければいけないのではないかというふうな気もいたしておる次第でございます。この運転士はまだ二十五歳ではございますが、教習所の卒業成績等も非常によろしゅうございまして、現地を約四カ月問、百回以上も乗務見習い運転をしておるわけでございます。一人前の運転士になりましてからはまだ十数回目でございますが、すでに指導運転士とともに四カ月間の乗務見習い現地でしておるわけでございまして、こういうような事故を起こすことは、とても考えられない職員ではございましたが、何と申しましてもブザーが鳴っておるのをとめました上で赤信号を侵したというわけで、私どもといたしましても全くこういった種類の事故につきましては今後どういうふうにするかということにつきまして、もう一ぺん根本的に考え直さなければならないというふうな段階に立ち至っておるような次第でございます。  対策につきましては、また御質問等によりましてお答えいたしますが、とりあえず先ほど総裁が申しましたとおり、本社運転局長以下を三名ずつ一班に分けまして、とにかく一ぺん現地の模様も見、しかもこの事故のあったところだけでなしに、全国的におもな局、おもな現場に参りまして、実際に設備進捗状況あるいは実際の指導やり方等につきまして、もう一ぺん私どもの直接のスタッフが現地に行って見て、その報告によりましてもう一ぺん考え直そうというふうな、いままでにない対策をとらなければいけないというふうな段階にまで到達いたしておりまして、たいへん私どもといたしましても、ここの席で御答弁申し上げにくいような気持ちでおりますけれども、とりあえずいままでの報告を申し上げました次第でございます。     —————————————
  13. 川野芳滿

    川野委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  14. 久保三郎

    久保委員 ただいままで御報告がありました鶴見事故中心にして二、三お尋ねするわけでありますが、もちろん直接の原因についての調査なり究明というのは、技術的にもこれからおやりになることだと思うのであります。われわれ自身、その結論を待つ以外にないと思うのですが、そこで振り返って戦後の国鉄経営の問題から考えてみまするのに、大体この五カ年計画というのが第一次から始まりまして、今日第二次というか、そういうことになっておるわけですが、この第一次の目標は、大体戦後荒廃した施設の取りかえ、こういうところに重点があったと思うのであります。しかし、これも第一次五カ年計画の中では計画自体に対してはややそれに近い実施をしたわけでありましょうが、実際においてはその計画自体が、進行する輸送需要というか、そういうものに合わぬということで、第二次五カ年計画というので今日きているわけです。  そこで第二次五カ年計画重点は、輸送力増強ということでございましたが、実際の中身は、局限された東海道輸送力を増強するということで、東海道新幹線に今日まで比重があったわけであります。そうしますと、おしなべて第一次、第二次引き続きの五カ年計画重点は、言うならば老朽施設の取りかえということだったが、これも実際は時代の進運というか要請にこたえ得られるものではなくて、実は最低限度のものでお茶を濁すと言っては語弊がありますが、そういうことでやってきた第二次では東海道新幹線がその主たる比重であった、こういうことに一つ問題があると思います。  その前に、言うならば、戦前、戦後を通じて、国鉄施設国家的要請ということが先行されまして、実際は戦争中は御承知のように施設の酷使、これのぎりぎり限度までやってきた。戦後においてはその取りかえも、いま申し上げたような格好で最小限の取りかえはできたが、輸送需要に応ずるような形での取りかえはできなかった。ところが輸送需要は御承知のように年々増大しているということでありますので、かたがた国鉄経営形態公共企業体という性格、言うならば独算制をたてまえにしたものに変わってきた。そういうところに大きな問題が一つありはしないかと思う。  そこで、言うならばこの国鉄性格自体に、今日大きく見たならば、保安対策が立ちおくれた、こういうふうに言っても過言ではないと思うのであります。しかし、このままの性格とこのままのいわゆる何と申しますか、国鉄に対する取り扱いを国家自体がしている限りは、残念ながら事故は起こるべくして起こる、今後の絶滅を期したいという気持ちとは相反して、鶴見以後五件にわたるような問題も出てきている。これではただ単に国会中心にした言葉のやりとりだけであって、実際は保安対策というか、安全第一の輸送の確保というものはとうてい不可能ではないかという気持ちもするわけであります。ついては、この辺で国鉄自体のいわゆる企業体に対するところの扱い、さらに言うならば国鉄投資に対する国の責任、こういう問題に対して明確な方針をまず打ち出さねばならぬ時期だと思うのでありますが、この点について運輸大臣の御所見をまず第一に承りたい、かように思う次第であります。
  15. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 お説のとおりでございまして、私どもといたしましては、財政の許す限りにおきまして何とか抜本的なことをやりたいと考えまして、極力各方面の御協力とお知恵を拝借いたしまして、何か抜本的なことを考えたいと思っておる次第でございます。
  16. 久保三郎

    久保委員 運輸大臣のお答えでありますが、財政の許す限りにおいてというのは、これまでもそうなのです。財政の許す限りにおいて万全を期します、あるいは新しい予算の審議にあたっても、この予算でやっていけるのかどうかという質問もこの委員会等中心にしてたびたびあったのです。そのときには、何とかこれで努力していきます。ところが努力の限界というのは、財政範囲ではもう限られたものです。これは如実にあらわれているわけです。このことを考えないで、いままでのしきたりというかやり方をそのまま踏襲して、一言に言うならば、財政の許す範囲においてということでいくこと自体に私は疑問があると思うのです。いわゆる財政の許す範囲においてこれだけしかできないというならば、その範囲にとどめて安全輸送第一主義で国鉄輸送というものは制限されねばならぬわけです。こういう半面がなければ、残念ながら私はうまくいかぬと思うのです。いかがでしょうか。
  17. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 極言いたしますならばそういうことになると思いますが、それかといって財政、すべて金のみでもまいりませんが、まあ主として金をかければよくなる。たとえば全部高架線にするとかいろいろなことをやれば抜本的なことはできると思います。またそういうことをやりましても、人的方面におきまして欠くところがあれば、結局は機械を幾ら整備しても動かすのは人でございますから、人の問題になってくると思います。しかし全部の国家財政の金を鉄道のみにつぎ込めと申されましても、賢明な久保さんよくおわかりだと思いますが、現在の政治情勢においては私はなかなかむずかしいと思うのです。ただ最高と申しますか最低と申しますか、これだけの予算でこれだけのことをやってくれれば、少なくとも事故をなくすることができるという国鉄従業員各位の認識のもとに予算を組まれまして、それを実現すべく私は目下努力をいたしておるような次第でございます。実際われわれといたしましては、もう毎日そればかり頭にきておりまして、ほんとうに、朝、事故がなくてよかったというような気がするくらい安全運転人命尊重ということが念頭を離れず私を初めやっておりますが、国鉄職員もみなそうであろうと思います。ことに日本鉄道は、世界水準を越しておると実は自他ともに許しておる国鉄でございますから、こういうことの起こりましたることについては、ただもうひたすら陳謝する以外に現状においては方法がないとすら考えておるような次第でございまして、今後ともその心がけをさらにさらに周知徹底せしめまして、万全を期していきたいと考えております。
  18. 久保三郎

    久保委員 毎日神に祈るような気持ちでその日を過ごされる、なるほど敬虔な気持ちで尊敬はいたします。しかし、神に祈ると言っても、裏づけのない祈り方では、残念ながらこれは実際において通らぬと思うのです。何とかきょうは事故がないようにという気持ちだけで事故が防げるなら——国鉄職員だれ一人とっても、これは国民全体がそうだろうと思う。列車脱線したり転覆したり追突したりすることを好んでやっている者は、実際言って一人もない。そこに問題があると思うのです。もちろん人間の力には限界があるのですね。だから私はその限界を改めていかなければならぬと思うのです。これが一つです。  先ほど石田総裁から職員に対する精神的な面を強調されたようでありますが、私は決して精神的な面を否定しようとは思いません。必要だと思います。しかしながら、その精神面だけでやり得ない制度の中に矛盾があると思うのです。具体的な個々の事故原因を、それは職員責任であるとかないとか、これはもちろん大事ですが、私はそれ以前の問題を申し上げているわけです。戦後いわゆる国鉄に対する投資はどういう形ですか、国家財政の中でなるほど財政投融資の面ではめんどうは見た。しかし財政投融資だけではたしてそれができるかどうか、あるいは財政投融資というものがそれじゃほかの社会資本に比較して十分なされたかどうかというと、私はなされていないという結論だと思うのです。立ちおくれている。しかも先行されねばならぬところの国鉄に対する投資が、単なる独算制というワクの中でものを考えている、第二義的に考えられているというところに、当然のごとく国鉄経営は企業中心だ。公共性というか、その安全というものはまあ重点としては考えておられても、これは後退していく。独算制の中でどうしたってかせがなければいかぬということが先行する。でありますから、なるほど先ほど総裁の言ったように、昨年来保安対策費も倍に近いものを増額したという。これはなるほど倍になったかもしれないが、実態から見て実際はたしてこれは倍であるかどうかわからない。そういうことを考えると、個々の国鉄を扱ういわゆる姿勢、こういうものをもう少し考え直す時期だ。だからいままでのとおり財政の許す範囲内においてというだけではいかぬと思うのです。私は少なくとも国鉄の改良事業費なら改良事業費は公共投資の分野であるというふうな規定さえ置くべきだと思うのです。そうでなくていまのような形で行く限りは、これは何らの進展はありません。いわゆる輸送需要に追いつくために、そこからくるところの合理化、さらに保安対策は後退するという矛盾をどんどん積み重ねている。だからそういうものの考え方についてもう少しはっきりした見解を示す時期だろうと思うのです。石田総裁総裁就任以来、その点では総裁になられる前に強調されたことがあるようでありますが、いまどういうお考えでありましょうか。
  19. 石田礼助

    石田説明員 久保さんの申されることは、私は一々ごもっともだ。とにかく戦争中にぶちこわされた国鉄、それが戦後においてはようやく三十二年に至って第一次五カ年計画を達成した。これはもう実にゆうゆうたる態度である。一方に経済発展による輸送需要というのは非常にふえた。国鉄もぼやぼやしておって、輸送力の増強ということに対してはきわめて保守的というか、憶病というか、一向元気を出してやらぬ。第一次五カ年計画のほうにしたって、私はこれは問題にならぬと思う。その結果は二年か三年やったところでまた訂正しなければならぬ。そこで第二次五カ年計画ということになってきたが、これだって全然輸送需要に応ずる態勢をつくるような計画ではない。その結果が世界にまれに見るような非常な細密ダイヤ、そうして非常なスピード化ということで今日までどうにかこうにかやってきた。そのほかにたよれるところはつまり職員の軽わざ。それでことに三河事故以来何とかしてこの職員の技量というものの向上をはからなければいかぬということでもって、指導訓練というものを非常に強化してやってきたのでありまするが、その結果は、はなはだうまくいっていると思っておったのにかかわらず、鶴見事故以来五回も実にみっともない事故を起こしたというようなことで、われわれとしては、ここに根本的にこの際掘り下げて、その原因の追及にかからなければならぬが、やはりその根本は、久保さんの言われるような輸送力の不足というようなこと、これが最大原因だ。これを何とか是正しなければいかぬ。しかもこれを是正するためには非常に金がかかるのです。ある人はこれを三兆と言い、ある人は三兆じゃできぬ、四兆も五兆もかかると言う。これを急にやろうということは、国家の財政においてはとてもできることじゃない。それだからしてこれはできる範囲において輸送力の増強をしなければならぬ。そのためには、私は少なくとも——この東海道新幹線というものはいまのところでは来年の十月ごろには開業になるようになりまするが、これはさっき久保さんから、東海道新幹線に主力を注ぐあまりほかの線がどうとかいうことがありましたが、御承知のとおり東海道というものは輸送需要のふえることにおいては日本一なんで、どうしたってこれはやらざるを得ぬところから、東海道新幹線の新設というものが出てきた。そのほかにやっているのは第二次五カ年計画というもので、幹線の輸送力の増強でありますが、これは東海道新幹線の問題に関して、御承知のとおり変な問題が昨年来起きまして、そのために、これを完成するためにほかの幹線の改良費というものの一部を回すということのために、東海道新幹線以外の幹線の改良というものはおくれてきたのですが、これはぜひとも三十九年、四十年のうちに完成すること、実際的な方法としてまずとるべきものはそれだと思う。ことにまた国鉄の技術の力にも、能力にも限度がありますので、かりにこれを三兆円、四兆円、国家が金をくれてやれといったってできるものじゃない。これはやはり国鉄の力の許す限りにおいてやる。その限度はどこにあるかと言えば、つまり三十九年及び四十年において、いまわずかに四割しか完成してない第二次五カ年計画というもののあと残りの六割というものを、この二年内でぜひやりたい。こういうようなことにして予算の要求をしつつあるのであります。ただし、さらに申し上げたいことは、過去におけるいろいろの事情から、国鉄人というものは予算を要求するにきわめて憶病なんです。要するに出してみたところでなかなか通らぬというようなことで、これは近ごろの問題じゃない、ずっと昔からの問題で、それが性となって、要求すべきものを要求しなかった、こういうことがあるのであります。私はこれは国鉄の管理者としてとるべき態度じゃないと思う。要求すべきものは遠慮なく要求したらいい。国家の財政の規模でもって切られるならば、そのときに切られたらいい。われわれ国鉄人としては、その切られた予算範囲内でできるだけのことはやるということで、三十九年度の予算においては、今度来たるべき議会においてごらんになるとおり、ずいぶん思い切った予算を出しております。久保さんのおっしゃるとおり、輸送力の増強ということが問題解決の根本なんだということに即してわれわれは進退しておりますので、その点はどうぞ一つ御了承の上、今度の議会においてできるだけの御便宜を願いたい。何だかどうも説明しながらお願いするようで、はなはだ変ですが、同時に一つこの点は御了承願いたいと思います。
  20. 久保三郎

    久保委員 せっかくの問題はあまりお話がなかったのですが、総裁おっしゃるように、いままでの国鉄というか、昔でいうと鉄道省ですが、これは昔から予算を取ることにはへっぴり腰でありまして、それは何回も当委員会で指摘したのであります。その点は同感であります。今度新総裁になりましてそういうことを十分お気づきの上、来年度予算の要求をしておるとおっしゃいますが、仄聞するところによると、これまた実際はどうもへっぴり腰じゃなかろうかと思う。たとえば、いま予算委員会中心にして審議されておりますことしの補正予算一つとりましても、補正が通れば、改良費は既定予算から二百五十億——いままで流用いたしております穴埋め資本に百億円、あとの百五十億はいうならば東海道新幹線のために圧縮されたという形なんです。その中には若干のものがあるかもしれませんが、保安対策費も押えられておる。それでいいのかということです。別に東海道輸送をほったらかしにしてよろしいということでないが、ものにはバランスというものがございます。それから順序がございます。昨年の三河事故以来、御承知のように保安対策について目がさめたと言っては語弊があるが、これはどうしてもやらなければいかぬということで、先ほど御説明のとおりに方針を変えられた。しかしこれは実際言うと十分でない。そういうことを考えると、私が言うことは別に間違っておらぬと思う。だから、東海道ももちろん大事でありますが、たとえば東京周辺の通勤輸送一つとっても、総武線事故一つとっても、これは大きな問題なんです。そういうバランスのとれた形でおやりになることが一つありはしないか。それには財政の問題がある。財政の問題を言うならば、先ほど申し上げたとおり独算制の中で当然のごとく企業性が先行せざるを得ない。安全対策保安対策は、これは早く言うならば企業性とは相反します。これによって金は住まぬのです。しかし輸送は安全でならぬというのが至上命令でしょう。そうだとするならば、もはやいままでの観念によるところの五カ年計画というものはやめて、新しい観点から五カ年計画をつくり直す段階ではないか。むしろ私は、来年度予算要求の基本は五カ年計画を修正しなさいということです。ものの考え方をまず第一に変えて、それに基づいた五カ年計画をつくるべきじゃないか。それには先ほど運輸大臣にお尋ねしたとおり、私が言いたいのは、国鉄のいわゆる独算制公共企業体というものの扱い方、見方について考えていかなければならぬじゃないかということです。話がへたでありますからおわかりにくいかもしれませんが、私はそういう気持ちです。それにはどうしても運輸省なり国鉄なりが知っている国鉄ではだめです。国民全体が納得する国鉄の姿に変えてほしい。そうすべきじゃないか。安全対策一つとってもそうですよ。国民全体が納得し、国民全体がこれに協力できるような国鉄にするべきだと思う。それにはどうしても基本的なものの見方、考え方を変えてほしい、こう思うのです。運輸大臣、いかがでしょう。
  21. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私も久保委員のおっしゃるとおりに考えまして、新総裁の人事等におきまして、従来と考え方を変えまして、一つ違った角度から、いま久保さんのおっしゃるように、国民の信頼する、国民が納得する、何か違った観点から国鉄というものを考え直していきたい。それには他面、自由経済のセンスの非常に豊富な、申さば企業の採算性と公共性をどの点で調和せしむるかということにつきまして、新たな角度と新たな観点から何かいい知恵と申しますか、施策はないだろうかということで、実は石田総裁をわずらわしたような次第で、まだ就任されて半年前後でございますから、この大きな問題を、直ちにこれで万全だというふうには、幾ら練達たんのうな総裁といえども、なかなか困難であるから、現時点におきましてこれが一番必要だという観点でおそらく御予算を組んでおられると思います。  そこで、私は、この予算が実現するように最善努力をいたしてまいりまして今日に至っておりまして、昨年度、すなわち三十八年度の予算も、従来の国鉄予算に比べますと非常な増額をいたしております。今年はさらに、一般の増加額を一四%しか認めぬというものを、ほとんど倍近いような大きな予算をいませっかく編成中でございまして、少なくともこれだけはひとつ実現いたしたい、かように考えております。私も、運輸行政といたしましてはしろうとではございますが、あなたと同じような観点に立ちまして、国鉄の諸公にそのことをよく申しまして、それでまあ財政のことを考えながら、たとえば運輸省といたしましても、高架公団をもう昨年度から要求いたしておるのでございますが、これはそれこそ何兆円とかかる問題でございますから、なかなか具現に至りませんでしたが、私としては根強く要求し続けよう、かように考えております。(「財政は大蔵大臣だから、あなたは諸公としてやらなければならぬ」と呼ぶ者あり)ええ、諸公として——もちろん、その意気でやっておりまして、私は、三十八年度には従来にまさる予算をとったつもりでございますが、これでもまだ少ないという——何といいましても、国の収入あげて全部、すなわち、今年度におきましては補正予算を含めまして二兆九千何百億円の全部を国鉄へつぎ込めと言ったって、これは常識的に考えても無理だということはおわかりでしょうけれでも、いわゆる財政と見合いまして、それの許す範囲内で極力努力いたしておるつもりでございます。この上とも不敏、非才ではございますが、各位の御後援、御支援を得まして、その大きな目的のために、国民が納得する日本国有鉄道が一日もすみやかにでき上がりますよう努力いたす所存でございます。
  22. 久保三郎

    久保委員 大臣は中途で退席されるのですか。
  23. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 まだ、予算委員会が呼びにくるまでここで御高見を拝聴いたします。
  24. 久保三郎

    久保委員 いまお話がありましたが、三兆円とか二兆円とかを考えているわけではございません。そんなことはもうお茶飲み話の話でしょう。全然考えておらぬけれども、たとえば先ほど総裁から御発表になった、六百何十億かの保安対策費がこの五カ年計画で消化されるということでありますが、はたしてそれで足りるかということなんです。先ほど申し上げたように、安全対策ということ、これ一つとっても問題です。それから、改良工事は、この補正が通れば当然のごとく既定計画、三十八年度では百五十億減るわけですね。中身で多少やりくりはございましょうが、形の上から言っても国民は納得しません。東海道新幹線の完成を急ぐというか、その計画に沿わせたために、そのしわ寄せがきたというのでしょう。そういう点は国民が納得しないです。なるほど東海道新幹線も、おっしゃるとおり必要でしょう。必要だろうと思う。だからといって、その他の改良工事費がなぜ削られなければならぬか、なぜ圧縮されなければならぬか、そこに私は問題があると思うのです。保安対策費の若干の費用でも押えなければならぬという理由がどこにあるか。これはやはり国民として納得しませんぞ。限られた財政でありますから、もう少し納得した方法の使い方をやはり示さなければいかぬ。これは使い方を示そうとしたところで、今日の国鉄経営では示しようがないでしょう。だから、その抜本的なものを考え方として変えなければならぬと思うのです。財政の許す範囲、これでやれ、こういうことで押しつけられまして、まあしかたがありませんからやりましょう、それではこっちを引っ込めましょう、こういう観点が端的に出ている。だから、保安対策費は、当分の間、今度事故が続きましたから、国民が監視していましょうから、政府も国鉄もやはり頭にのぼせておりますが、幸いにしてこれから一年なり二年重大事故がなかったとすれば、おそらくまたこれはもとの形に逆転しますよ。私はそう思うのです。そういうことを考えると、やはり方針はきちっと今度きめなさい、こう言いたいのです。そういうことを私は痛切に考えているのですが、まあこれは問答みたいになりまして具体的じゃありませんから、少なくともいままで申し上げたような考えで、五カ年計画はあらためてつくり直す必要があると思うのですが、これについては運輸大臣総裁はどうお考えでしょうか、いかがでしょう。
  25. 石田礼助

    石田説明員 久保さんの申されることは私はごもっともだと思います。それで、どうせこれは世論のバックがあって初めてできると思うのです。鶴見事件が起こってからの世論というのは、私はだいぶ変わっていると思う。確かに鶴見事件の以後における一般の国民の考えというのは、やはり国鉄輸送力というものは小に過ぎる、とてもこれでは安全の輸送というものはできぬということにだんだん幸いに認識を新たにしてきておるようであります。そこで、国鉄としても、今までのような憶病な予算に関する態度をやめて、さっき申したような、ほんとうに必要とするものは遠慮なく出すということでできたのが三十九年度の予算であります。それで、さっき申し上げたように、第二次五カ年計画におきましても、三年たった三十八年度の点においてわずかに四割しか完成しない。あと六割というものは残っておる。これを三十九年、四十年にやる。これは相当に大きな予算になりまするが、私はぜひともこれでやってまいりたい。また、国鉄の技術陣の能力から申しましても、この第二次五カ年計画の六割を二年で完成するということは、私は相当の負担だと思うのだが、これはぜひともやりたい。その問不足の点は、ひとつ従業員協力を得て、それによってささえていく。それじゃ、そのあとをどうするか、これが問題。第三次五カ年計画——五カ年計画になるか三カ年計画になるか知らぬが、私は、これは単に国鉄だけの案にしないで、国の案としてひとつ立ててみたらどうか。ということは、いままでは、第一次五カ年計画といい、第二次五カ年計画といい、これはすべて国鉄の案です。結局その結果は、予算の出たときに、ははん、こういう案があるなということでわかる。これは私ははなはだおもしろくない。そこで、第三次五カ年計画を立てるについては、原案はもちろん国鉄で立てますが、これに対する最後の案というものは、単に国鉄だけじゃなくて、いわく経済企画庁、いわく大蔵省、いわく建設省、いわく通産省というぐあいに、政府全体の案としてひとつ立てて、一たん立てた以上は、事実予算の裏づけがあり得るような案にしてひとつやってみたらどうだ、こういうことでこの間からも運輸大臣に相談しまして、大体そういうことに進みつつありますから、これからはだんだん久保さんの申されたような理想に近い輸送力というものがついてくるんじゃないか、こういうことに考えております。
  26. 久保三郎

    久保委員 総裁からお話がありましたが、私どもはそういうふうにすべきだと思う。政府が責任を持つ。だからここで運輸大臣にお尋ねしたいのは、いま石田総裁のおっしゃるような中身、構想を盛った、いうなれば国有鉄道再建整備措置法というか、そういうものをつくって、やはり五カ年計画なら五カ年計画は政府の責任でコンクリートする。中身はもちろんいうまでもありませんが、安全第一ということで置きかえる、こういう考えを持っておられるのですか、いかがですか。
  27. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 もちろんそういう考えを持って、ただいま国鉄総裁が申されたように、ひとつ大きな国の施策としてこれをやらなければ、経済の発展も所得倍増もできぬじゃないかというくらいな意気込みをもって私はいきたいと考えております。
  28. 久保三郎

    久保委員 そこで大臣、法律が中心になりますが、そういうものを準備されておりますか。
  29. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私は必ずしもそういうことに法律を要しないと思います。たとえば農業基本法ができたからといったって、そう法律ができてもすべてが解決をしておりません。法律も非常に必要でありましょう。しかし、その意気込みをもちまして、法律にきめるようなことを実現に移すことこそ重要なことではないかと私は考えております。
  30. 久保三郎

    久保委員 なるほど大臣がその職にとどまる限りはそのおことばどおりでいけるでしょう、実力がありますから。しかしそうは参らぬと思うのですね。しかも国民に約束するのは、閣議了解事項などはいつでも変更できるのですね。これはこの委員会の席でも間間あるのです。そういうことでは残念ながら国民に対する約束ではないと思うのです。むしろ私が申し上げるような法律制定の上に立って解決すべきだと思うのです。ほんとうに言われるなら、高架公団をつくる前に、あるいは建設公団をつくる前に、そのことこそ私は一番大事だと思うのですが、いかがでしょうか。
  31. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 たびたび申しますように、あるときに至れば法律ももちろん必要でありましょう。しかし法律を待たなくてもやり得ることはやって何ら差しつかえないと思います。そういう方向に行くことはここで明言して差しつかえない。またそういうように努力いたしたいと思います。何分にも非力でございますから、ひとつ諸君の御後援をお願いいたします。
  32. 久保三郎

    久保委員 しつこいようでありますが、港湾一つとりましても、特別法がございます。そういうことを考えれば、それじゃ港湾も大臣がおっしゃるような方法でできないかといえば、やればできるのですよ。しかしなぜ法律ができたか、それをやはり私は考えてほしいと思うのです。ここで法律を出すとか出さぬとかいうことを押し問答してもしかたがありませんが、大臣がお出しにならぬというならば、私ども出しますよ。御協力いただきたい。いかがですか。
  33. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 そのお出しになるものがわれわれの納得し、政府としてやり得る自信がつけば、協力することを惜しむものではありません。
  34. 久保三郎

    久保委員 それは石田総裁がおっしゃったようなことですから、政府も納得されるでしょう、いかがですか。
  35. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 ここで押し問答しておってもしようがないのですが、御趣旨はもうよくわかっております。われわれの考え方もちっとも変わっておりませんですから、そういう方向に向かって努力すると申し上げる以外に言いようがございません。
  36. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても、大臣もまだ閣議にも御報告になっていないようです。石田総裁の中身についてもお聞きになった程度で、予算でひとつめんどうを見てやるからとおっしゃっただけだととっていますが、それじゃどうもほんとうの姿勢ではないと私は思うのです。いずれにしても、この問題はあとへ残しておきましょう。  そこで都市交通の問題でありますが、都市交通一つの問題をとりましても、ここで一つだけ伺っておきたいのですが、東京都のいわゆる交通問題、あるいは東京周辺といいますか、それも含めてのことですが、これについてはそれぞれの機関がございまして、いろいろやっております。まず第一に一元化の問題があるのです。これについては高架公団より以上にまず先べんをつけてやらなければいかぬと思うのですが、いかがですか。
  37. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 運輸省に設けられております都市交通審議会におきましても、特に東京都の経営の一元化という問題もいろいろ検討しておりまして、方向としてはそのような方向を打ち出しておりますが、何しろ現在は営団と東京都と両方二本建てで目下建設に邁進中であります。元来営団をつくりましたときのいきさつは、東京都も出資いたしまして、東京都における高速鉄道は営団が一元化をして建設に当たるという趣旨でつくったものでございますが、その後御承知のような状態で、非常に建設のスピードを上げなくてはいかぬというようなたてまえから、東京都にも建設を許しまして、現在二本建てで鋭意建設中でございます。まだ路線もたくさん残っておりますので、方向としては一応先生のおっしゃるようなかっこうで考えておりますが、現在はさしあたり両方の主体におきまして建設に邁進中でございます。
  38. 久保三郎

    久保委員 事、地下鉄ばかりではございませんで、国電もございましょうし、路面電車もトロリーバスもございます。しかしこれがばらばらの形で実際にやっておるわけです。こういう問題も解決しないと、実際は問題の本質的な解決にはならぬと思うのです。高架公団を提唱する前に実は一元化に立って、高架はどうするか、立体交差はどうするかということを考えるべきだと私は思うのです。この問題は問題の本質からちょっと違いますが、ついでにお聞きしたのです。その辺の配慮のことがあってしかるべきだと思うのです。  そこで事故対策の問題ですが、総裁は、来年度予算は先ほど御発表になった保守対策費を第二次五カ年計画のワク内で要求されておりますか、それともワクをはみ出して増額して要求されておるのですか、いかがですか。
  39. 川野芳滿

    川野委員長 ちょっと久保委員に御相談を申し上げますが、運輸大臣が御用件があるそうで暫時おひまをいただきたいということですが……。
  40. 久保三郎

    久保委員 それでは後ほどお見えになるという約束で……。
  41. 石田礼助

    石田説明員 久保さんのいまのお尋ねの保安対策の問題につきましては、副総裁の方から詳しく御説明したいと思います。
  42. 磯崎叡

    磯崎説明員 保安対策費につきましては、昨年の三河島の直後、当委員会におきましていろいろ御支援賜わりまして、御承知のとおり既定の第二次五カ年計画に対しまして約三百五十億ほどの増額をしたわけであります。それのうちの一部を三十八年度に要求いたしまして、保安対策費につきましてはほとんど全額通してもらいました。これが約百五十億でございます。先ほどのお話にございましたが、年度初めの新幹線の予算不足の際にもこの点は過般の国会でも申し上げましたが、私どもといたしましても、保安対策には全然手を触れないで、主として車両の装備の方に手を触れて捻出したというふうに申しました。したがいまして、今年度におきましても約百五十億の保安対策費は、そのまま順調に進めておるわけであります。しかしながら、今回の事故にもかんがみまして、今後抜本的な保安対策をどうするかということにつきましては、なお、過般のように、貨車の構造そのものが非常に問題になる、たとえば二軸車ではだめだ、どうしてもボギー車にしなければだめだ、あるいは上下線の間隔はいまのままではいけない、もっと広げなければいけない、もしこういうような根本的な問題でも出てまいりますれば、これはいずれも数千億を要する問題になりますので、この問題は、現在といたしましてはもう少し将来の研究に待つということにしておりまして、さしあたり、現在昭和三十九年度として要求しておりますのは、鉄道経費を入れまして約二百三十億でございます。これを現在来年度の保安対策費として要求いたしておりますが、このほかに、いわゆる輸送力増強という項目の中にも、一方輸送力を増強し、一方保安度を向上するという、一つの仕事が両方の性格を持っておる仕事が相当ございます。たとえば、駅の構内の連動装置を直すとか、あるいは線路増設にあたって自動信号をつけるとか、あるいは踏切を除くとか、こういった輸送力増強工事の中にも、相当保安度に密接な関係のある工事がございます。これらが約二百五十億でございますので、こういったものをあわせますと、両方で来年度予算では五百億程度の要求をいたしております。  さらに、最近ではあまり問題になっておりませんが、防災設備といたしましては、たとえば河川の改修問題とか、隧道の改修の問題とか、いろいろございますが、こういったものにつきましても、いままで大体年間五十億くらいの投資しかいたしておりませんが、最近の情勢にかんがみまして、それらにつきましても現在の倍程度の要求をいたしたい、こういうふうに考えております。
  43. 久保三郎

    久保委員 全体の保安対策費、これは増ワクをしたたてまえで要求はされておらない。いわゆる四十年度までの保安対策費は従来の修正したものだけである、そのワク内において来年の要求をしておる、こういうふうに了解してよろしいですか。
  44. 磯崎叡

    磯崎説明員 特に今回の事故にかんがみまして非常に膨大にふえるということは考えておりません。一応、昨年御説明いたしました、主として車内警報の問題、踏切の除去の問題、この二大重点中心にいたしまして、あとこまかいものを加えた過般の約六百億の保安対策費をそのまま進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  45. 久保三郎

    久保委員 それはもちろん増額しろといっても、具体的な対策のとり方、施設、そういうものが積み上げられなければならぬと思うのです。いま、新たな観点から保安対策費は検討しておられるのですか、いかがですか。
  46. 磯崎叡

    磯崎説明員 その点につきましては、先ほども申し上げましたとおり、現在私どもで考えております保安対策費のおもな重点は、何と申しましても車内警報装置、それから踏切の問題、この二つが一番大きな保安対策になっております。しかしそのほかに、先ほどちょっと申し上げましたが、たとえば二軸貨車はだめだ、将来ボギー車にしなければいけない、これが保安対策費の面から取り上げられたといたしますれば、これは相当大きな問題になりますけれども、今回の鶴見事故対策の技術委員会におきましても、そういった問題も一応検討の対象にいたしております。さしあたり、現在鉄道施設といたしましては、先ほど申しました車内警報踏切の二つ、それに信号保安施設の増強、こういったものをつきまぜていくことが、一番当面の保安度の向上になるのではないか、こういうふうに考えております。
  47. 久保三郎

    久保委員 あと二、三お伺いしたいのですが、合理化、近代化ということで取り上げてきているものが相当あると思うのです。特に合理化の問題でありますが、合理化が、輸送力不足に対して何とかカバーしていこうという面に重点があって、ともすれば安全という面を忘れがちなものが相当ありはしないか、こういうふうに思うのですが、これに対しての点検はいたされておりますか。
  48. 磯崎叡

    磯崎説明員 合理化問題につきましても、実は従来までいろいろと問題が起きております。これらの中におきまして、たとえばいたずらにただ人を減らすとか、あるいは作業量を減らすということでなくて、やはり、合理化と、それによって生ずる輸送の安全の問題、あるいはそれに従事する職員の勤務体制の問題、そういったことをやはり総合的に考えてまいらなければならないというふうに考えまして、近代化、合理化のいろいろな措置につきましても、できるだけ安全度の向上、それから職員の問題とを並行して今後とも考えてまいりたい、こういうふうに考えます。
  49. 久保三郎

    久保委員 そこで、乗務員の勤務時間にしましても、一応は七時間なら七時間にきまっておるようであります。ところが、一仕業をとりますと、折り返しの先方でかなり待ち合わせ時間がありまして、これは勤務時間に入らないということで、長いのは一仕業十五時間かかるというのがあるそうであります。こういうのは、なるほど勤務時間という、いまきめられた時間から見れば多分七時間で押えられるでありましょう。ところが、出先における休養がはたして妥当であるかどうか、これはあまりにも機械的に合理化したところの勤務体制だと思うのです。こういう問題についてもやはり点検すべきじゃないだろうかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  50. 磯崎叡

    磯崎説明員 その点については全く私も同じように考えておりまして、過般の五回にわたる事故につきましても、過去一週間ないし十日間の乗務員の勤務状態を一々全部調べてみましたが、さっき先生もおっしゃいましたけれども、全体から見ますれば、いずれも問題のない勤務状態になっております。やはり出先で休むとか、その休んだ場所施設等につきましてもできるだけ具体的に検討いたしまして、はたしてほんとうに出先で休めるかどうかということが、それを勤務時間に入れるか入れないかの問題と関連してくると思います。そうした点で、乗務員の休養施設等につきましても十分いままで検討してまいっておりますけれども、先ほど申しました、今回私どものほうの直接の人間を現地に出し、その見てくる項目の一つとして、乗務員の休憩施設がはたして勤務時間からはずすだけの休養施設になっているかどうかということも、実は今回の現地視察の重大項目の一つに入れております。したがいまして、東京付近のように、わりあいにダイヤの組みやすいところにおきましては、なるべく出先における休養のないようにいたしたい。そして、なるべく家庭で休めるように、もし家庭で休めない場合でも、勤務先におきまして、十分とはいえないまでも、十分に近い休養のとれるような設備をぜひしてやりたい、こういうふうに考えております。
  51. 久保三郎

    久保委員 それに関連して、少し具体的な話でありますが、たとえば時間短縮の問題が今日まだきまっておらないのであります。乗務員の例とすれば、いわゆる出勤時間、それから退業時間といいますか知りませんが、そういうものを多少縮めて時間短縮ということで持っていくような考えもあるそうでありますが、これはあまりにも機械的だと私は思います。時間短縮したものはまとめて休養をとらせるという人事管理の面に欠けていはしないか。これは経営の問題にひっかかってくるわけですね。人間をふやさぬでいわゆる輸送力強化というか、うんと生産性をあげていくということに矛盾があるわけです。私は生産性をあげることに決して反対ではありません。しかしながら、生産性をあげるもとは労働力でありますから、これの労働再生産をどう確保するかという配慮がなくて、機械的なことでは私はいかぬと思うのです。こういう問題についてもう一ぺん新たな目で検討する必要がある、こういうふうに思うのが一つあります。  それからもう一つは、新小岩の問題でありますが、当面、あの事実がそのとおりであるとするならば、その運転士は大きな責任を持つ、これは当然であります。しかしながら、考えていかなければならないのは、この運転士は養成期間はどれくらいあったのか、昔のことを引き合いに出して悪いのでありますが、われわれが見た目では、たとえば機関助手になるのに機関区でおよそ少なくて三年間、かま掃除といっては語弊があるけれども、これをやって、やっとそこで教習所にはいれる資格ができてくる。それで試験にとおれば入る。それで出てきて機関助手に直ちになるかというと、機関助手にはならない、機関助手見習いになる。これは二年か三年、少なくとも一年半はやる。そして初めて一本立ちの機関助手になる。そしてすぐ機関士になるかというと、これまた機関助手三年以上やらなければ、機関士の試験は受けられない。幸い受かっても直ちに機関士になれるかというと、これまた一年なり一年半は機関士見習いとしてこれをやっておるのです。ところが新小岩で事故を起こしたこの運転士は、私は新聞で拝見しただけでありますからよくわかりませんが、どうもわれわれのように昔のそういうものを聞き知っているものにとっては、どうもずいぶんスピードを上げているな、こういうことです。なるほど実際それでもできるのですね。自動車の運転でもそうです。きのう運転免許をとったものでも東京都内を乗り回せるのです。乗れば乗れるのです。しかし残念ながらキャリアがないのでありますから、臨機応変の処置とか、幾多の経験というものは積んでおりませんから、これは応用がききません。だからこれはもう少し考え直す必要がある。今日聞くところによれば、養成定員というものは、定員制度はないそうであります。私の住んでいるところは常磐線でありますが、いま電化に切りかえつつあります。これはやはりその職場にいながら転換教育を受けておる。いままでは蒸気機関車、今度は電車か電気機関車です。なるほどレールの上を走るということは同じであります。操作で一点一致するのはブレーキですね。ブレーキのかけ方というか装置は、同じだと思うのです。あとはまるっきり全部違うのです。そういうことははたしてそういう窮屈な人間の中で完全にやれるのか。いままでの蒸気系統のエンジンは荒っぽいんですね。ところがこれがディーゼル・カーに引き継がれる、電車にも引き継がれる、私はそういうような問題があると思う。もちろん今日までそういうことで事故が起きたためしがないから心配がないという御意見もあるかもしれません。事故はどこから起きるかわからない。そういう意味でこの養成定員についてどう考えるか、あるいは訓練というか、そういう機関についてどう考えられているか、いかがでしょう。
  52. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの御質問の、最初の乗務員の勤務時間の短縮の問題でありますが、これにつきましては、いろいろ組合との話も現在進んでおります。私のほうといたしましても、先生のおっしゃいましたように、単にいたずらに数字的につじつまを合わせるという勤務時間短縮でなしに、できるだけそれをまとめて、そして休養あるいはその他に充てたい、充てることができるようにしたいという案でもって目下いろいろ話をいたしておりますが、十分お話の御趣旨を考えてまいりたいというふうに考えております。  それから、先ほど新小岩で事故を起こした運転士のお話がございましたが、この運転士は昭和三十二年に国鉄に入りまして、その後津田沼の電車区におきまして三十七年一ぱいいわゆる電車掛ということをやっておりまして、電車につきましても、乗務員系統でなしに、整備系統ではございますが、電車の技術的な知識は相当持っておったわけであります。ことしの一月に電車運転士科に入所いたしまして約六カ月間、これは正規は五カ月半になっております。正規の電車運転士の教習を経まして、七月に電車運転士見習いに任用いたしまして、電車運転士見習いは三カ月ないし六カ月ということになっております。この者は四カ月の電車運転士見習いをいたしまして、十一月の六日に局であらためてもう一ぺん技量審査をいたします。その技量審査試験にも実は無事合格いたしまして、十一月十四日から乗り始めておるということでございまして、現在この程度の、たとえば津田沼電車区で申しますと、この運転士と同じ程度職員がやはり八名くらいおるわけです。全体の割合から申しますれば少のうございますが、全体の需給関係から申しますと、やはり二十四、五歳の職員が新陳代謝で入ってまいりますので、大体教習所を五カ月半、それから実施の指導が約六カ月ということで大体一人前になれるというふうな見方をしております。  なお養成定員につきましては、昔は非常に養成定員が潤沢にあったことは事実であります。本人が入所中は、その養成期間中はその穴埋めを完全にして養成するということもございましたが、一時非常に養成定員が窮屈になっておりましたが、最近は一〇〇%のめんどうは見られないまでも、相当程度転換養成等につきましては、養成定員とは申しませんが、人事の余裕のあるやり方をしておるというふうに聞いております。詳細は山田常務のほうから御説明させたいと思います。
  53. 山田明吉

    山田説明員 私から時間短縮の問題につきまして全般的な御説明をいたしますと、大体その時間短縮に関係のある職員の数が三十六万人になるかと思います。そのうち約十五万人につきましては、関係の労働組合との話し合いが終わりまして実施中でございまして、二十二万人につきましてただいま話を進行中でございます。なおそのうち勤務形態がいろいろ種類がございますが、特に事故に関係のある点で乗務員にしぼって申しますと、従来平均八時間のものを七時間三十分、三十分短縮いたしまして、これは電気機関車とディーゼル機関車乗務員につきましては話し合いが終わりまして実施に移しております。その結果、大体従来平均的に言いまして七時間三十分くらいのものが、その時間短縮の協定実施後は七時間十分くらいになっておるかと思います。なお、それに引き続きまして、組合としてはあるいは四十二時間というような要求が出ておりますが、これは最初の段階のいまやっておりますものは、御承知のように調停ができまして、調停案の趣旨に沿ってやっておる作業でございますので、それが終わってからでなければ、新たな将来の四十二時間という問題には取り組めないという見解を表明しておるわけであります。
  54. 久保三郎

    久保委員 いずれにしても、この養成定員というか、養成の制度、そういうものについてもやはり再検討する時期ではなかろうかと思うのです。というのは、昔は世の中全体が言うならばのんびりしたというか、落ちついたというか、そういう時代でございました。ところが最近はそんなことではございません。その中で高スピードで走る電車を運転するのですから、言うならばもっと余裕をとった訓練というか、養成をしなければならない時代なんです。そうでしょう。昔なら一線に、一つの停車場の間に一個列車の単線運転でしたが、最近はそういうことではございません。一分五十秒の間にどんどん電車が来るのでありますから、むしろ昔より以上に訓練が必要だということになる。だから養成過程においてももう少し充実した実地訓練というか、そういうものがやはりなされなければならないと思う。そういう点についてももう少し検討をなさることを私は希望しておきます。だからといって事故を起こしたのは、そういう制度が悪いからということでは私はないと思うのです。この点ははっきりしておきたい。判を押して出勤して乗務すれば、幾多の生命財産を自分の責任輸送するのでありますから、責任回避の口実にはならないと思うのです。誤解のないようにしておきたい。しかし、だからといって、判を押して乗ったのだから、お前の責任だということでこれまた追及さるべきものでもないと思う。もう少し人間の扱いについても考えるべきだと思うのです。世の中ではよく言っております。最近の大へん事というのは物と金で全部片づいておる。そこには人間性が失われつつあるということを言っております。これも国鉄の中にしのび寄っておるのではなかろうかと思うのです。池田政策を私はまっこうから批判はしませんが、これは事実だと思います。池田政策から出てくるかどうかは別にして、そういうことを考えると、どうしても人間を主体にして問題を解決しなければならぬ、こう思うのです。国鉄も右へならえで、ほかの産業と同様にやっていくのでは、国民は安心して乗れない、そういう点をひとつ考えていただきたい。  それからもう一つお伺いしたいのは、国鉄内部には保安対策というか、安全対策の点検班というのはございますか。安全対策を点検して歩く、そういうのはございますか。
  55. 磯崎叡

    磯崎説明員 実はいままでそういう制度は確立しておりませんでしたので、昨年の六月か七月ですか、本社の中に安全企画室というものをつくりまして、これが安全の企画の長期構想もやりますと同時に、安全の具体的な仕事の進行のしかたのチェックもやっております。しかしながら、どっちかと申しますと、いままでは将来の安全対策重点が置かれまして、いままでの安全の仕事がはたしてわれわれが考えているように実行できているかどうかということのチェックの面が足りなかったのではないかというふうな気もいたしますので、今後安全企画室を中心として、安全の、たとえば踏切の問題にいたしましても、あるいは車内警報器の設置の問題にいたしましても、あるいは乗務員の指導訓練の問題にいたしましても、そういうことをきちっとチェックするということを安全企画室においてやらせたいというふうに考えております。また、ことしの七月から本社の常務理事を一人、安全担当の専門に——ここにおります川上でございますが、それを一人専門に置きまして、もっぱら最高幹部の一人として安全問題を今後検討し、またいままでやってきたことを再検討するという制度も実はつくったばかりでございます。人員の数その他については、まだ必ずしも十分とは存じませんが、今後安全方面のチェックにつきましては、もっと私ども本社としても力を入れなければならないというふうに考えております。
  56. 久保三郎

    久保委員 いまの安全対策ということで、やはり現場の末端までの点検が常時行なわれることが必要だと私は思うのです。この際そういうこともやはり考えてみる必要があるということです。  それから、話は飛び飛びになりますが、車両の修繕回帰キロの問題です。これも技術の進歩によって回帰キロの延長は当然だというふうにおやりになっておるようでございますが、これまたもう一ぺん点検し直す必要がありはしないかと思うのです。いかがでしょうか。
  57. 川上寿一

    ○川上説明員 車両の検修回帰キロの問題でございますが、これは蒸気機関車から電化あるいはディーゼル化をいたします際に、新しい車両に生まれかわりますので、設計の面からもできるだけ常に点検しないでもいいような新しい車両に変えております。そういう場合につきましては、車両の回帰を延ばしておるということも考えております。手を省くということだけで回帰を延ばすということは考えておりません。
  58. 久保三郎

    久保委員 結果はそういう手を省くということになるんじゃないですか。いかがですか。
  59. 川上寿一

    ○川上説明員 蒸気機関車のようなものでございますと、全部取りかえるために持ってまいりまして、それをつくり直すとか、あるいはかじ屋に入れるというようなことをいたしますが、近代的車両になりますと、そういう時間をかけないで、取りかえるだけで済むというものもありますし、材料の進歩その他によりまして、長く持つというような場合もできてまいりますから、それを勘案して周期を考えるということでございます。
  60. 久保三郎

    久保委員 しろうとでわかりませんから、何とも言いません。言いませんが、警告だけは発しておきたい。車両の事故というものは案外少ない。車両の点検を手抜きしたためにという理由はいまはないかもしれませんが、これはいつ何時出るかわかりませんよ。だからそういう点検をしたらどうかということです。  それで、もう最後でありますが、車両一つとりましても、いろいろ問題があるんです。鉄道技術というものは、大体事故があって発達してきたというような言い方をする人がいる。鉄道の歴史を見るというと、いわゆる事故があるたびに発達してきた。だから、言うならば、それで今日まで鉄道技術というものはきたということです。鶴見のような事故一つとって見ましても、副総裁がおっしゃるように、今度はボギー車にしなければいかぬじゃないか、どうもリンクのリンクずれはぐあいが悪いとか、そこでいろいろ研究をする。これまではそれでよかったかもしれない。ところがこうたび重なる大きな事故が起きると、事故が起きてから鉄道の技術は進歩するといういままでの歴史というか、そういうものを追っかけていたんでは大へんなことである。ついては鉄道技術研究所というのがございますが、そういうものなり本社で、少なくとも事故を追っかける技術でなくして、事故を先回るところの技術の開発というものは積極的におやりになっておるのでしょうか。あるいは、ないとすれば、これからどうしようと考えておるのか。
  61. 川上寿一

    ○川上説明員 ただいま事故を追っかけているというお話でございますが、これは一般的にはそういうことが言えないことはないと思いますが、国鉄の技術研究所におきましても、将来の近代化の研究を大いにやっておりますが、じみちな軌道の構造でございますとか、動力車の研究室でございますとか、あるいは車両動揺に関する研究室というのがございまして、今回の脱線につきましても、脱線理論というようなものはここ数年間非常に進歩して、いまリンクのお話が出ましたが、二段リンクにしたのも、実は、走行性能がよくなるということで、二段リンクを採用いたしたのでございます。そういうじみちな研究もやっておりますし、先ほど副総裁が申し上げました安全企画室をつくりました理由の一つは、事故に追っかけられないということを考えまして、じみちな将来計画と同時に、十分な現地の点検をするということでつくったわけでございます。
  62. 久保三郎

    久保委員 そういうふうにやっておられるということでありますが、私が申し上げたいのは、あらゆる想像をもとにして事故に対する研究というものを始めるべきだと思います。脱線理論とかなんとかということはおやりになっておるそうですか、想像されるあらゆる事故に対してどうあるべきか、こういう研究の開発はするべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  63. 川上寿一

    ○川上説明員 お説のとおりでございますので、実はそういうことも考えまして、鉄道の運営は人間と機械と両方でやっておりますので、ことしの夏に——従来からもございましたが、労働科学研究所を設立いたしまして、人間と機械のシステムの問題についても十分に考えるようにいたしまして、そういう意味であらゆる事故を想定いたしまして、研究を開始したところでございます。実はおそきに過ぎたかと思いますが、今後先生の御趣旨を体しまして、さらに進めてまいりたいと思っております。
  64. 久保三郎

    久保委員 最後に、総裁に申し上げておきますが、先ほどあなたがおっしゃったような方針で、まず新たな観点から国鉄を立て直すことが一番大事だと思う。これは言い方はちょっと悪いのでありますが、職を賭してでもやるお考えなのでしょうか、いかがですか。
  65. 石田礼助

    石田説明員 実は私は、もう国鉄のダイヤを見るときに、外国の専門家はまさに軽わざ芸である、輸送の安全の根本というのは全くあのダイヤというものに余裕を置くということ、つまり輸送力というものを輸送需要に見合わせるについて十分の安全度をもって見る、それにはやはり輸送力というものを思い切ってふやさなければならぬということで、実は私は職を賭するのはいつでも賭するのだが、問題はいかにしてこれを実現するかということにあるのでありますからして、実はこの問題につきましては総理大臣によく私の意見を申し上げまして、近いうちに総理大臣とよく相談いたしまして実現に邁進したい、こういうことに覚悟しておるのであります。私は職を賭することによって実現ができるなら、いつでも私は職を賭することは辞せぬということだけはひとつ御了承願いたいと思います。
  66. 山田耻目

    山田(耻)委員 関連する問題について見解を述べ、御所見をいただきたいと思います。  国鉄事故をなくする抜本的な対策というものについて、久保委員質問に対してそれぞれ御回答がなされたのでありますが、非常に抽象的な感じもいたしますし、実行するにあたって首をかしげるというふうな困難な度合いも、長い間この問題を担当してきました私にとっては感ぜられる部分もあります。委員会できれいなやりとりをしておっただけでは、また次の事故が起こるのではないかというふうな気持がしてならぬほど、事故対策については少なくとももっと具体的に、しかも実行性の上がるような施策を求めなくてはならぬという気がしてなりません。桜木町の事故以来三河島、三河島からずっと今日まで四つばかり大きな事故が続いておりますが、国鉄当局のとられてきた施策というものは、事故が起こればその事故原因を究明し、必要な対策をお立てになる。桜木町事件はとびらがあかなかったために多くのお客さんが負傷死された。とびらをあけるようにしたら、その事故が防げるだろうということでそういう措置をなされました。ところが三河島の事故はとびらがあいたからあんな大きな事故に発展をしていったのです。ここに私はやはり事故を撲滅する、なくしていくという施策が一貫して打ち立てられていないところにそういうなされ方で過ごされていたのではないかという気がしてなりません。その意味では、今回鶴見事故を契機といたしまして、三河事故以来かなり前向きで事故対策が打ち立てられ、必要な予算の計上がされておるのでありますが、今回の鶴見事故を契機といたしまして積極的に予算増の要求をされて、それを必ず実現するという決意が経営者の皆さんにあるかどうか、その点をまず総裁にお伺いしたいと思います。
  67. 石田礼助

    石田説明員 どうもあらゆる場合に処して事故のないようにするということは、神ならぬ身のなかなかむずかしい問題でありまして、いわゆるそこにわれわれの経験というものがあると存ずるのでありますが、とにかくわれわれとしては、鶴見事故三河島の事故、参宮線の事故というああいう事故というものをいかに生かして、事故というものの絶滅を期するかということに全力を尽くしておるのであります。それで最後の根本は、やはりいまの国鉄で一番大事な問題は、安全度を増すために、あの細密なダイヤというものの緩和をはかる、こういうことになるのでありまして、それには輸送力の増強、輸送力の増強をするのにはどうしたらいいかという一番実行のできる案は、まずもって第二次五カ年計画の残りの六割というものを、この二年のうちにとにかくやっつけるというところにあると存じまするので、この点につきましては、私としては、総理に対して、ぜひこれを実行するようにお願いしたいということでもって、運輸大臣のオーケーを得まして総理に申し入れているので、この上は皆さま国会議員諸君の御尽力に待たねばならぬ、こういうことであります。
  68. 山田耻目

    山田(耻)委員 輸送要請と実際の輸送の実情との関係の中に、おっしゃっておる事故発生の要因があるような御見解と聞いたのでありますが、私はここ数年来の大きな事故の実情を見ますと、ほとんど都市並びにその近郊において起こっておる。ここに輸送要請輸送実行との問の事故発生の要因があるのではないだろうか。たとえば今日の複線区間における線路容量は、大体二百四、五十本であります。それが東京あたりでは四百五十本から五百本という倍のダイヤを入れておるのであります。この輸送実績の中に、大惨事に発展をする事故原因はあるのかないのか。むしろそれがありとするならば、経営責任である総裁経営上の施策というものをその中に今日具体的に生かすことが一番望ましいと私は思っております。その具体的な施策をどうお考えになっておるか、今日の問題としてお聞きしたいと思います。
  69. 石田礼助

    石田説明員 要するにただいまの御質問は、路線というものを酷使しておる、運転回数が多過ぎるということにある。たとえばこの間の鶴見事件にいたしましても、あるいは三河事件にいたしましても、結局回転数があまりに多い。ダイヤがあまりに密なるがゆえに、あの事故が起こると連鎖反応を起こして大きな事故になる。これを何とかしなければいかぬということが、三河事件、あるいは鶴見事件あたりの問題解決の一つだと思います。もちろんこのほかにも人的の要素もありまするが、人的要素を除いた大きな原因はそこにあると思う。それにはやはり輸送力を増強してダイヤの安全度というものをふやすというところにあるんじゃないか、それには輸送力をふやす。ここにおいてか、第二次五カ年計画の残りの六割というものを、とにかく予定どおり三十九年度ないし四十年度において完成する、こういうことが国鉄としてまずもってやるべきことじゃないかということで私は進んでおるのであります。
  70. 山田耻目

    山田(耻)委員 輸送力を増強することによって解決をし得る、それはわかります。しかし、それは将来の問題でありまして、今日の解決策ではないと私は思います。今日御存じのように、ラッシュのときには中央線、東北、山手は一分五十秒ヘッドで運転しておるのでありますが、対向列車は大体四、五十秒ですれ違っておるのであります。こういうふうに密度がずっと詰まっておりますと、たとえば車軸の折損だとか、あるいは線路に、信号に顕示をあらわさない程度の亀裂が起こったら、非常に悲惨な事故が起こると私たちはかねがね憂慮しておったのです。ですから、線路容量をふやして輸送力増強の具体的な実効があがるまでは、いまの一分五十秒ヘッドを三分なり四分なりに間隔を広げていくというふうな具体的な施策をおとりになることがいま一番大切だと思うのですが、その点についてはいかがでございますか。
  71. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたしますが、これは実にむずかしい問題なんです。結局、サービスというものを犠牲にして輸送安全に即するということができれば、ただいまおっしゃったような御質問の趣旨に沿うことでありまするが、国鉄はやはりサービスというものを提供しなければいかぬ、輸送需要があればこれを満たすためには全力を尽くしてやらなければいかぬ、そのためには、つまりダイヤの改正によって輸送密度というものをふやし、そうしてまたスピード化するということにどうしてもいかざるを得ぬ、これはやむを得ない手段でありまして、実にそこに国鉄のジレンマというものがあると私は考える。これに対する対策としては、とにかく、機械的にも輸送安全設備というものを増強する、さらにまた人間の養成によってこの軽わざ芸というものを間違いなくやっていくというところにある、さらにまたこの事故の非常な大きな原因になっておるあの踏切というものの問題を何とか早く解決していかなければならない、こういうことにいかざるを得ない。これは、好むと好まざるとにかかわらず、国鉄がいまやらざるを得ない唯一の輸送安全の問題だと存じております。
  72. 山田耻目

    山田(耻)委員 先般フランスの鉄道の副総裁がお見えになったときもそうでしたし、私が国際運輸労連、ITFに出席したときもそうでしたが、日本側の三河島の事故を聞いて、外国から見ればよく今日まで起こらなかった、そういう評価が国際的な鉄道業界の中ではいわれておるほど日本輸送密度というものはこまかいのであります。この点は、単なるサービスということばによって片づけられるべき性格のものではありますまい。その点については総裁もおっしゃっていることでありますから了解いたしますが、そういう立場を、どうかひとつこれからの施策の中に十二分に生かしていただかなくてはいけないという気がいたしております。  次に、三河事故以来相次いで起こりました幾つかの事故の中で、国鉄職員の怠慢あるいは指導訓練の欠如、こういう事柄が指摘をされ、通達にもなって流されておりますし、本委員会にも述べられております。私は、あの事故の中に、確かに職員として信号を十分確認をしなかったことによって起こった事故というものも承知をすることができますし、遺憾なことだと思うのです。しかし私は、ただ単にそれをそういう角度から追及をしておったのでは、これだけ輸送度の詰まった中で、人間の注意力というものにも限界があるであろうという気がいたします。そこで私はその面だけでなく、もう一つ角度を変えてお尋ねをしたいのは、最近国鉄職員気持ちの中に動揺が起こっておるのではないか、人心に動揺があるのではないか、この動揺を起こさせないようにして、生産に正確に従事をしていく体制を整えるのが労務管理行政だと私は思っておるのです。最近そういう人心の動揺が起こっている一つの事例として、明日動力車労働組合が闘争に突入をするということを総裁も御存じでございましょうが、私はその一事例の中に次のような気持ちを持っておりますので、それに対しての所見をいただきたいと思うのです。  今日久保委員が追及されましたように、国鉄経営というものは、公共性、安全性というものを非常にきびしく追求する前に、企業性の追求をしなくてはならない。独立採算制の苦しみがそこにあるのだ。私は国鉄経営者として企業性を追求し、生産性を高められるということについて全面的に否定はいたしません。しかしながら企業性を高め、生産性を高めるということの中心が人件費の節約に置かれておるということも否定できない事実です。その人件費の節約の具体的な施策が合理化ということによっていま進められております。私は合理化全般についても全面的に否定はいたしません。しかしながら今日この安全をどう保つかということを本委員会で特に私が指摘をしたというのは、たとえば昭和三十六年以来、車掌の二人乗務をおやめになりました。機関士の二人乗務をおやめになりました。車両の中間検査もおやめになりました。そうして線路工手の保守方式をお改めになって、多くの線路工手の流れをおつくりになりました。人をお減らしになりました。そうして今回は全国にある機関車なり電車区を十五か十六に集中をされて、人の数を減らす合理化を発表される段階になりました。こういうことが——国鉄職員というものも他産業の職員もおおむね似通った点がありますが、非常に土着性があるのです。自分の家から自分の職場に通う、あるいは片側で農業に従事をしながら鉄道に働くという人たちも、わずかではございますが数があります。こういう国鉄職員の労働の実態というものが、こうした相次ぐ人減らし政策、そうして安全度を低下させるような合理化の諸政策というものが、職員の中にかなりの不安を起こしておることは間違いございません。こういうことがこのまま進められていくならば、何か事故を起こせば刑務所に入れられて、妻子はたいへんな幾つかの制圧の中で苦しむということで、第一線の職員が一生懸命になって反対の闘争を起こすという気持ちが私はおわかり願えるのではないかと思うのです。ですからほんとうに安全を保って、輸送の完全さを確立をしていきたいという立場をこの中に見つけ出そうとするならば、こうした安全の度合いを低下させていくような、言いかえたら人心の動揺をますます拡大させていくような政策というものはいましばらく見合わせて、もっともっと職員の人たちと、それを代表する組合と話し合いを深めていく中で、納得をするような結論を求めつつ実施をしていく、こういう立場を特に大切な輸送産業であるだけに御配慮願わなくてはならないと考えておるのであります。そういう立場を総裁としてどのようにお考えになっておるのか、御所見をいただきたいと思います。
  73. 石田礼助

    石田説明員 御承知のとおり国鉄というものは公共企業体です。この企業精神というものは何かというと、できるだけ運営の上の合理化をし、投資効果というものをいかにしてあげるかということ、これが私は企業的精神というものだと思います。それで、御承知のとおり、国鉄というのは一方に独立採算制というものがある。収支というものをちゃんと合わせねばならぬ。ところが、国鉄経営を見るというと、路線のうちで二割五分というものはもうかっているが、七割五分というのは損である。なかなかこれは苦しい経営になっている。ことに人件費のごときは、全収入の五割を占めており、しかもこれが一年に約一割のウエートをもってだんだんふえていく。ここに独立採算制である国鉄経営における非常にむずかしい問題がある。そこに好むと好まざるとにかかわらず、この合理化というものが要求される。合理化というものは人間を減らす。人間を減らすということは、人間を切ることではない。年々歳々ふえていくこの業務量というものを、できるだけ人間をふやさないでやっていくというところに人事行政というものの一つのポイントがあると思う。その結果は、たとえば機関庫というものも、スチームロコがディーゼルになれば、それによって機関庫というものの数を減らし得る。その結果、人間というものをできるだけ節約する。これは公共企業体である国鉄に課せられたる一つの条件なんです。これはさっきあなたのおっしゃったような土着性の問題、私は国府津に住んでおるからよくわかりますよ。たとえば、国府津あたりで国鉄につとめている人間はみんなうちを持っている。だから、あそこから通える範囲における配置転換ならいいけれども、わきへ移されるというのは非常な犠牲なんです。これは実によくわかっている。だから国鉄が人事行政の上において配置転換をやるについても、その点については十分な配慮が私は必要だと思う。しかし、この独立採算というものと公共負担というような大きな負担、つまり国の政策のために国鉄は犠牲にされる。そういうところになかなかむずかしいところがある。この点は、ひとつやはり御了察願わなければならない。これは何も好んでやるのではない。実にやむを得ない。これはひとつ国会議員諸君が国鉄予算をあれするときに考えてもらわねばいかぬ。独立採算制でなくてよろしいというなら何でもないことである。一方に独立採算制を守っていかねばならぬ。七割五分という損する線路の運営もやっていかねばならぬ。なかなかこの経営というものは苦しいですよ。金持ちの経営とは違うんです。これはやはりわれわれの身になってお考え願わなければならぬということが私のお答えであります。
  74. 山田耻目

    山田(耻)委員 公共企業体でありますから、確かにむだのない経営をして、国民の負託にこたえなくてはならない。これは間違いないところです。独立採算制であるから、安全度を低下してよろしいということにはなりませんよ。三十六年の一月に山陽線で特急が追突をいたしました。このたった二月前に車掌の二人乗務の廃止がきまったのです。私はそのときに、これをおやりになったならば、追突事故が起こる危険が出ますと言ったら、複線区間で追突事故が起こるということはあり得ないという立場が国鉄本社から示されました。しかし、いかがです。ああいう濃霧で電話線が故障になって、一番原始的な閉塞方式であるいわゆる票券指導の方式をとらざるを得なかった、そういうことだってあり得るのです。私はそういう場合をも想定をして、安全対策を立てるのが事故防止の対策だと思っているのです。その後、重要列車には二人乗務を認めよう、こういう形の変化が起こりました。一たび何か起こらなければ正しい主張というものが生かされないというふうな安全対策ではいけないと思うんです。そういう面から、総裁の、独立採算制という予算の非常に狭い中で幾つかのことを考えるけれども、実行に移し切れない、こういうお気持に対して、私は大臣にお伺いしたいのですけれども国鉄の公共性と国鉄の企業性というものと、そうして独立採算制というものの中には、総裁のおっしゃっているような幾つかの矛盾点がございます。この矛盾が今日の事故防止をするために必要な具体的な対策を立てるのにも障害になっております。これらについてやっぱり大臣なりあるいは総理なりが真剣に取り組んでもらわなければ、この解決はできません。これを職員指導訓練の欠如というふうに責任転嫁をされておったのでは、事故の撲滅はできません。その点、この事故を契機に最近相次いで起こっておるのでありますから、どうかこれ以後絶対事故が起こらないように具体的な施策をいまの三点にからめてお立てになっていただけるかどうか、このことについて御所見をいただきたいと思います。
  75. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 さっきるる総裁が述べられましたように、それが、ここで議論することは簡単ですが、なかなかむずかしい。(「大臣、腹をきめろ」と呼ぶ者あり)大臣が幾ら腹をきめても、財政が、金がなければどうにもならぬのです。私はいまの非常にむずかしい三つをいかにコンビネーションして論理の結論を出すかということに苦慮をいたしまして、従来より違った角度の石田総裁を迎えて、せっかくその方面について研究をしていただいておる最中でございます。私は、いま直ちに公共性をやめろとか、企業体のことは財政で全部まかなうのだというようなことを言い得る立場にいないことをはなはだ遺憾とします。言ったってできないのですから、それはそれで努力をしておるのです。私は運輸大臣になって、まだ予算は二度しか組みません。今度で二度目です。そこで私は、山田きんのおっしゃるような趣旨を体して、良知と勇気をもちまして予算折衝に当たる、ということを申し上げて答弁にかえるよりしようがないのです。
  76. 川野芳滿

    川野委員長 次会は明後十四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十九分散会