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1963-11-29 第44回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年十一月二十九日(金曜 日)    午前十一時二十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事            井上 清一君            草葉 隆圓君            長谷川 仁君            岡田 宗司君    委員            青柳 秀夫君           大野木秀次郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            森 元治郎君            二宮 文造君            佐藤 尚武君            曾祢  益君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    外務省アメリカ    局長      竹内 春海君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)   —————————————   〔理事井上清一委員長席に着く〕
  2. 井上清一

    理事井上清一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員諸君すでに御承知のごとく、アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディ氏は、去る十一月二十三日凶弾に倒れ逝去せられました。まことに哀悼の至りにたえません。本委員会といたしまして、この際、議事に入るに先立ちまして、同氏の霊に対し、つつしんで哀悼の意を表したいと存じます。   —————————————
  3. 井上清一

    理事井上清一君) それでは、本日は国際情勢等に関する調査を議題とし、当面の国際情勢について、質疑を行ないたいと存じます。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  4. 岡田宗司

    岡田宗司君 ケネディ大統領暗殺をされました。これは全世界に非常な衝撃を与えました。ジョンソン大統領議会におきまして、ケネディ大統領方針を踏襲するということを表明されておりますが、ケネディ大統領葬儀に列席をされました大平外務大臣から、このケネディ大統領の死後、アメリカ外交方針ジョンソン大統領の言うように変わらないとしても、なおいろいろな点で変化があると思われる、また、これに対して日本政府といたしましてとるべき方針も微妙な変化があるはずだと思うのでありますが、それらの点につきまして、この新しい情勢に当面しての大平外務大臣方針を伺いたいと思うのであります。
  5. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ケネディ大統領の不幸な逝去は、全世界にとってたいへんな驚きと悲しみでありましたことは御指摘のとおりでございます。この事件があまりにも唐突でありましたし、あまりにも大きな衝撃でありましたために、アメリカ政府といたしましても、これをどのように受けとめたらいいかということについては、私はたいへんな戸惑いがあったと思います。当初この葬儀参列するに際しまして、各大使館を通じましてアメリカ政府から、あまりに特別なデレゲーションを送るような措置はディスカレッジしてもらいたいというような通知も来たりしまして、したがって、ごく内輪であるいはおやりになるつもりであったかもしれませんが、またしかし、しばらくたつと、もうディスカレッジするのはやめたという御通知にも接したし、初めての経験であり、あまりにも突然であり、あまりにも大きな衝撃でありましたので、おそらく相当な戸惑いがあったように私どもには拝察されたのであります。それほど大きな衝撃であったと思います。しかし、葬儀参列いたしまして私が受けました印象といたしましては、全米の国民で、遠くからワシントンケネディ大統領最後のお別れをしたいということでお集まりになった人が数十万を数えたということでございまするし、各国からは皇帝、皇族の方が十三名、大統領総理大臣十六名、外務大臣が三十六名、国会議長が七名、参謀総長等が五名というような、非常にかつてない要人が多く葬儀に参集されましたことは、世界がこの事件について非常な関心を持っており、故大統領の人格に対して欽慕の念が全世界的だったということを示したものだと思います。そこで、この事件を契機として、世界が有力な指導者を失ったという共通悲しみをかみしめ、そうして、この共通悲しみの上に立ってお互い決意を新たにして世界平和を守らなければならないという機運がみなぎっておりますことは、私から申し上げるまでもないことと思っております。  日本との関係でございますが、これは葬儀参列いたしましたあと池田総理大臣と新大統領との会見国務長官との会見がございまして、これを通じて日米関係には何ら変化がないばかりか、より一そう緊密に協力していこう、こういうことを誓い合っておるわけでございまするし、ジョンソン大統領は従来ともケネディ政府の最高の政策決定には参与されておりましたし、非常によくインフォームをされておりました副大統領であられたわけでございますので、その方が故大統領精神政策を踏襲するということでございますので、大筋におきまして日米関係には何らの異変がないものと私どもは確信をいたしておるわけでございます。  以上が私が受けました印象でございます。
  6. 岡田宗司

    岡田宗司君 ケネディ大統領暗殺をされましたのは、どうも私ども単なる狂人の偶発的なしわざとは思われないのでございます。特にケネディ大統領がソ連との間に部分的核停止協定を成立をさせ、さらに軍縮の方向に進むというようなことや、またケネディ大統領キューバ事件に対してとりました態度等につきまして、アメリカの中におきましてケネディ大統領外交防衛方針等につきまして非常に批判、特に右翼的な方面からの批判が強くあったわけでございます。これは軍部のうちにもありましたし、あるいは右翼団体といわれる多くの団体もそれらの態度を表明しておりますし、また、そういうような空気がかなり南部方面におきましては黒人の問題と関連いたしましてみなぎっておったように思うのでございます。で、今回ケネディ大統領暗殺の背景にそういうものがあったということは、今後のアメリカ外交方針一つの影響を与えやしないかということを私どもはおそれるのであります。ケネディ大統領がとって参りました平和共存方向、特に部分的核停止協定を結びましてから、さらにそれを進めていこうというようなことが特にアメリカの内部におきまして抵抗にあっておるということは、これは事実であります。そうしてその雰囲気のもとにおいてケネディ大統領暗殺されたということは、今後のアメリカ外交方針一つ変化を与えやしないかということを私はおそれる。ジョンソン大統領は、ケネディ路線を踏襲するということを明らかにしてはおりますけれども、やはりこういうような事態のもとにおきましては、具体的には何らかの形で微妙な変化が起こるのではないかと想像されるのであります。おそらくそういう点は各国とも懸念をしておるところでございましょう。たとえばジョンソン大統領あと一年の任期を余すのみであります。そうして、アメリカにおきましては、大統領選挙の前の年におきましては、いろんな点で大統領の思うにまかせないような事態が起こるのでございますが、特に今回はジョンソン大統領はたとえケネディ大統領方針を踏襲するといたしまして竜、なお具体的に諸般のことをケネディ大統領が生きておった当時のまま進めるということは困難な事態にあろうと思うのであります。また、特にいま私が指摘したような問題からいたしまして、平和共存政策を進めるということに若干コースの狂いが出てきやしないかということを私はおそれるのでございますが、このケネディ大統領暗殺をされましたそういう雰囲気、そこからしてアメリカの今後の政策に微妙な変化が起こりやしないかどうかという点について、外務大臣はいかなる見解をお持ちになるか、それを伺いたいと思います。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国際情勢それ自体はいつも流動的であるわけでございますので、これから生起してまいる国際情勢に対処してジョンソン外交がどのように展開されるかということは、私にはただいまの段階でよく読み取れないのでございますが、ケネディさんとジョンソンさんと個性の違いがあること御指摘のとおりでございますので、アプローチの仕方において若干の相違が見られることもあるいは考えられることかとも思います。ただ、いままで私どもに判明いたしておりますことは、ジョンソン大統領ケネディ政策ケネディ路線というものを踏襲していくのだという決意を漏らされておることが一つでございます。それから、同時に、アメリカとの同盟国、四十二国ございますけれども、このケネディ大統領の死というものを、大きな悲しみをかみしめてお互いに結束していこうという機運にありますことは、私はジョンソン大統領外交を助ける精神的な雰囲気を形成しておるように思うわけでございまして、したがつて、ただいまの段階ジョンソン外交が今後どのような問題に現実に内外において直面してまいるかということについては、具体的にお答えするのは時期尚早ではないかと思うのでございまして、私といたしましては、卓越した議会政治家であるジョンソン氏がすぐれた指導力を発揮されて、世界の平和のために手がたく貢献されることを期待することが、ただいまのところ精一ぱいでございます。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 部分的核停止協定の締結後の平和共存への方向というものがこの際足踏みをするということになりますというと、これは世界平和の確立の方向に非常に大きな障害にもなろうかと思われるのであります。私どもはそれを懸念するものであります。特にアメリカ国内におきましてそういうような空気が高まってまいりまして、ケネディ路線というものが曲げられるということになりますというと、これは世界にとりましてきわめて不幸なことだと思うのであります。この際、いま外務大臣がお話しになりましたように、もし世界各国がやはり結束をして、そうして平和の方向、つまり米ソの二つの対立しておりました大きな陣営の間の話し合いがもっともっと積極的に進められるように、そうしてケネディ路線といわれるものが狂いなく進むように、これはやはり外からジョンソン大統領に要望し、またアメリカ国内のそういうような空気からしてその方向を曲げないようにさせるということも、私は非常に必要だろうと思うものであります。日本外交はよくアメリカ追随外交といわれておりまして、まことにその点につきましては、私どもも、そういうことを聞くことさえ遺憾だと思っておったのでございますが、この際には、やはり日本といたしましてはそういう点において確固たる方針をとって、やはり平和共存方向現実に踏み出したのでございますから、それを進めるように、やはり各国とともにアメリカ協力をして、アメリカが後退をしないようにさすような方針をとっていただけるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 岡田委員からたいへん善意に満ちた御激励をいただきまして、私といたしましてたいへん多といたします。われわれもジョンソン政権を鞭撻いたしまして、この平和共存ムードをこわすことなく、手がたく世界平和への前進に鋭意当たっていただくように終始鞭撻してまいる決意でございます。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 ケネディ大統領の御不幸は、私は御同様心から遺憾に感ずる点でありますが、いまの岡田さんの御質問とも関連をして、一言だけお伺いをしておきたいと思います。ケネディ大統領あとジョンソン大統領でどうなるかというようなことを、いまここで早急にいろいろな見解を披瀝するのも時期的にもいかがかと思いますので、そういう点については、私はやはりしばらく成り行きを見たいと思います。ただ問題は、いま岡田さんも触れましたけれどもケネディ大統領平和共存冷戦緩和というこの正しい意思をどうして定着さしていくかというこの問題だったろうと思います。早急にアメリカが新大統領のもとで路線を変更されるというようなこともあり得ざることと思いますが、しかし、何といいましても、この大統領の交代ということは一つの大きな問題でありますから、将来についてはいろいろな問題も生起されると思います。  そこで問題は、昨晩実は私池田首相記者団との会見をずっとテレビで見ておりました。また発言内容も承っておったわけです。そこで池田総理は、ケネディに続こう、一口に言えば、ケネディ遺志を継承してやっていこう、こういう発言に終始されたと思います。もちろんその中には、ケネディがどうとかジョンソンがどうとかというアメリカ意思で動くわけではない、日本日本独自の立場で動くという注釈もつけられておりますが、いずれにしても、ケネディに続こうということを大筋として述べられておったと思います。そこで私の申し上げたいことは、ケネディ大統領からジョンソン大統領に移って、それでアメリカに若干の外交路線上に何らかの異なる条件が出てきた場合のことですが、そんなことをいま私は予測するわけではありませんが、しかし、池田総理が昨日そういうようにケネディ路線を継承すると言われたことは、私はケネディ大統領の言うことが全部正しいとは必ずしも思っておりません。しかし、その中で一番正しいことは、やはり緊張緩和平和共存路線ケネディ路線と言う場合に、そういう言葉で代表されて差しつかえないと思う。そういう形の考え方ケネディ氏が推進していたということです。だから、池田総理がそういう形においてケネディ路線を踏襲しよう、受け継いでいくと言うならば、これは私どもとしても全く文字どおり異議はないし、ぜひそうしてもらいたいと思います。だから、アメリカジョンソン大統領にかわってどうなるとかならぬということではなしに、日本自身として総理ケネディ路線を受け継ぐということは、やはり平和共存緊張緩和という路線を継承したもので、その遺志を受け継いでいこう、こういうことに私どもは了解しておるので、だから、新大統領のもとどういういろいろな問題の変化があっても、総理ゆうべ記者団に述べられたその見解、それから、いま外務大臣がここで岡田委員に答えられたそういう見解、そういうものをもっと定着をさして発展をさしていく、そういう形でアメリカ協力をしていく、こういうことでないと、またジョンソン大統領のもとで変わった力、条件が出てきて、それにも協力していこう、それが日米親善だということでは、これは意味がないと思う。だから、ケネディ路線というものが、くどく申し上げますけれども平和共存緊張緩和という、この大局的な世界史的な意味一つ前進を象徴しているわけですから、ケネディ路線というものが、だから、そういう意味日米関係というものを前進さしていく、そういう受け取り方をしないと、ジョンソン大統領で新しい問題が起こってきたその場合にも、新政権にただ調子を合わしていくということが必ずしも日米親善につながるものではない。だから、前者の正しい遺志を生かしていくことが、またその意味において積極的な協力をすることが、日本のとるべき外交の基本的な姿勢であるべきではないか、こう考えますので、岡田委員に対するお答えで一応尽きておるとは思いますが、重ねて御意見を承りたいと思います。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 池田総理気持は私も拝聴いたしましたが、ケネディの平和に対する勇気、それから限りない人類愛というものに打たれた、この精神は、われわれははっきり継承していかなければならぬ精神であり勇気であるということを言われたと思うのであります。したがって、今度ジョンソン政権がどのような外交を展開されていくか、その場合、一々御無理ごもっともでございますと、そういう筋のものではないと私は承知をいたしております。いま羽生委員が御指摘されたとおりの気持でおられると確信いたします。
  12. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は、今度のケネディ大統領のなくなられましたことに対しまして、総理大臣並びに外務大臣葬儀参列のための渡米をされましたその前後のことにつきまして、少し申し上げたいのでございます。  それは、総理大臣外務大臣は、最近毎年アメリカに、あるいはヨーロッパに、あるいは東南アジアにおいでになりまして、日本の国が諸外国から非常に高く評価されている、そして日本はいまや世界の三本の柱である、こういうような御発言があるわけでございます。この三本の柱の一本に、もし日本がそういうような重要な役割りを果たすことができるとしたら、それは非常に日本にとっても大事なことでございまして、ぜひその使命を果たすような日本になってほしいと、私もほんとうに心の底からそれを思うわけでございます。しかし、このたびのケネディ大統領の死に対して総理大臣のとられました態度というものは、これは少しも日本が三本の柱の一本であるというような、そうした意義をほんとうに心の底からわきまえていらっしゃる総理大臣であるというような態度とは思えません。これはどういう御事情がございましたにせよ、対内的にも対外的にも非常によくない印象を与えるような態度をとられた。これは国民として非常に皆残念に思っております。それはいま外務大臣の御発言の中にも、最初参列するときにあまり大げさな参列はディスカレッジするようにという情報が入ったということでございますけれども、あれだけの大国の大統領がああした死に方をなさったときに、それがそんな小さなお葬式で済むなんということは、これはあり得ないことなんでして、そんなことはもうあり得ないというような考え方を当局としてお持ちになるのが当然じゃないか、そういうような小さな情報でもってためらっていらっしゃる。それはたいへんおかしいことだと思います。これは世界情勢認識という点において非常に欠けているからそういうことになると、私はそういうふうに考えます。そして最後にやっと総理大臣おいでになるというようなことになりましたけれども、どうもケネディ大統領の功績について、いろいろ平和のために非常に尽力をなさったその方の死をいたむというような考え方ほんとうに徹していらっしゃるのかどうか、私は非常に疑わしいと思います。それは、そういうことを申すのは私もほんとうにいやなんでございますけれども、何であそこで、みんなが、あるいは全国民が、そして世界の平和を愛する人たちケネディさんの死をいたんでいるときに、何でにこにこ笑うような、白い歯を出した総理大臣写真を写されるというような、こういうまずいことをなさるのですか。私はもうほんとうに残念です。ほんとうに心から平和を愛している人なら、あんなふうな表情というものは出てこないと思う。外務大臣態度としても、申し上げにくいですけれども、一国の外務大臣なんです。総理大臣の番頭さん、お供みたいな格好をなさらないで、やっぱり外務大臣外務大臣として堂々として一本の外交をしょっているというような、そういうような態度をとっていただきたいです。総理大臣にしても、外務大臣にしても、ほんとうにこのたびの態度は私は遺憾だと思います。これは外務大臣の口からもはっきり総理大臣に言っていただきたいです。ああいうような表情が出るということは、ほんとうに平和を愛する人たちが悲しんでいるというその気持に徹していらっしゃらなかったその証拠であると私は思います。ですから、こういうようなことに対して、ほんとう日本が三本の柱であるというようなことを外国の人から言われているのか、それとも自画自賛で、自分たちが勝手に三本の柱だなんと言って自分でほめていらっしゃるのか、その辺も反省していただきたいと思います。ほんとうに諸外国日本は三本の柱であると言うなら、やはり総理大臣及び外務大臣国際全般に対する認識、そしてそれに対応する態度、頭の回転、そういうものに対して、もっと確固たるものがあり得べきものであると私は思います。なければならないと思います。いろいろの御発言がはなはだよくなかったと思います。  もう一つよくなかったと思うのは、アメリカに行ったらば日本総理大臣は新しい大統領に三番目に会見することができた、三番目ですぞ、三番目に会ったから、日本がどんなに重く取り扱おれているか、というようなことが御発言の中にあったように伺いますけれども、三番目であるとか五番目であるとか一番目である、そんなことは何にも関係ないじゃございませんか。そんなことは、少し外交場裏になれていらっしゃる方なら、それはめいめいの都合なんですから、何番目だから非常に自分は重く評価されたというふうな、そんな感じを与えるような御発言をなさるということも、これも非常に不見識だと思います。また、もし三番目にしてもらったから日本はえらくかわいがってもらったのだというふうにお考えなら、ほんとうに卑屈な追従外交であると言われてもしかたがないと思います。私は返す返すもこのたびの総理及び外務大臣のあちらにおいでになったことに対しまして、日本ほんとうにもっと国際的にき然たる態度をとった独立国であるという御認識世界の平和をほんとうに愛好していたこの若き大統領の死を、もう全世界の名において悲しんでいるというお気持ちに徹底していなかったこと、こういうことについて、それがそんなにまずく表現されたことを私たちは非常に遺憾に思っているという、そのことを申し上げたいのでございます。もし外務大臣からそれに対して何か御所見がございましたら、承ります。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は弁解いたそうと思いません。事実を事実のままお伝えすることは私の責任だと思います。  当初、この不幸な事件が起こりまして、日本政府としてどう対処すべきかということにつきましては、まず先方の国、政府がどのようなことを期待せられておるか、御遺族の方々がどういう御心境でおられるのかということを、一応日本政府としてもわきまえた上で対処すべきものと思ったわけでございます。もしそうしないと、いま加藤先生がおっしゃる意味とは反対の批判をわれわれが受けると思うのでございます。したがって、先方の御意向を確かめつつ、日本政府対処方針を打ち出したわけでございまして、私どもといたしましては、日米関係から考えまして、私どものとりました態度は間違っておったとは私は思っておりません。米国政府総理の訪米に対してたいへん感謝の意を表明されております。  それから途中、写真……、まあスマイルがあったとかどうとかというお話でございましたが、厳粛な葬儀に列席しておりますので、池田総理といたしましても、私といたしましても、一〇〇%厳粛に出席いたしたつもりでございまして、決してぞんざいな態度をとった覚えはございません。伝えられることが、加藤先生はどういう事実を踏まえた上での御発言か存じませんけれども、新聞に一部、総理がスマイルされた写真が載っておったことは事実でございます。それはサンフランシスコの空港で記者陣と別れるときの写真でございまして、ワシントンにおける葬儀の現場の写真では私はないと確信いたしておるわけでございます。私どもといたしましては、終始敬虔な気持ち日米関係の過去、現在、将来を考えまして対処いたしました次第でございますが、ただ、神ならぬ身でございまして、客観的に見て何か足らないところがあるといたしまするならば、それは十分反省いたしまして善処しなきゃならぬことと思っておりますが、私といたしましては、自分の全能力をあげて対処いたしました所存でおりますわけでございます。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 あと若干、最近の問題につきましてお伺いしたいと思うんですが、まず第一に、韓国の総選挙の結果と日韓会談の今後の問題についてお伺いします。  韓国におきまして最近総選挙が行なわれて、そして与党が大勝した。このために朴政権が安定をし、そのもとにおいて日韓会談が急速に進められ、妥結の方向に向かうだろうということが予想され、また若干そういうふうな観測も行なわれておるわけであります。この点について、おそらく近く大平外相と向こうの外務長官との間の話し合いも行なわれるのじゃないかと思われますが、しかし、日韓両国の間にはまだまだ非常にむずかしい問題も多々あるわけであります。特に漁業問題あるいは竹島問題につきまして、私どもは、日本がもしこれらの問題について妥結を急ぐあまりに非常に譲歩するということになりますならば、私はやはり重大な問題であろうと思うのであります。で、もう新しい政権が安定をしたということで会談を進められる際に、大平外務大臣としては早急に妥結する、そのためには、日本側としては漁業問題、竹島問題その他について相当譲歩するつもりでお臨みになるのかという点を、まずお伺いしたいと思います。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私はたびたび本委員会を通じて申し上げておりますことは、日韓の間の懸案は、合理的なものでかつ国民の納得を得られるような内容において、できるだけ早くということを申し上げているわけでございまして、その心境にいまもって全然変わりございません。特に、日本側が譲歩いたしまして、無理をしてまで早目に妥結に持っていかなければならないというようなことは、毛頭考えておりません。その点は、従来御答弁申し上げたとおりの心境でいるのでございます。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、たとえば漁業問題につきまして、はたして李ラインの問題について、日本側の考えているとおりに韓国側においてこれを撤回する、そういう用意が一体あると予想されるのか、あるいはまた、いま委員会で問題になっております専管水域、これらの点につきまして、例の四十海里、こちらは十二海里、あの問題について、まん中をとるというような、合理的でないような考え方に出るのでは、私どもは非常に将来いろいろな方面に影響を及ぼすと思うのです。ことにこの専管水域の問題ですが、それらについて日本側としては確固たる方針を持って臨まれるのかどうか、まずお伺いしたい。
  17. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 当面問題になっておりまする漁業問題につきましては、いま御指摘の専管水域の問題と、共同規制の問題と、漁業協力の問題、三つございまして、専管水域の問題につきましては、岡田委員指摘のとおり、私どもはこれは交渉によって妥協するという問題ではないと心得ております。日韓双方が、国際社会における名誉ある市民として、未来永久に繁栄を続けていかなければならぬとすれば、日韓両国とも、国際的な公準というものは、その名誉において私は維持すべきものだと思うわけでございまして、これは妥協の対象ではないと心得ております。それからまた第三国との漁業交渉等におきましての支障が起こることでございますし、私どもは、両国の名誉におきましてこの国際的な公準は守りたいものだと念願いたしておりまするし、私は韓国もそのようにお考えいただいているものと思います。  それから第二点の共同規制措置と漁業協力の問題につきましては、日韓双方の漁業技術に大きな格差がありますことは御承知のとおりであります。したがって、でき得べくんば、この両方の漁業の実態を踏まえた上で、それから朝鮮海域の資源も考慮の上で、共同規制と漁業協力につきましては、ある程度弾力的な心がまえで私ども臨んでおります。しかし、これとてもお互いに直接関係がある漁民の方々を韓国もかかえておるし、日本もかかえておるのでありますから、また双方に国内世論というものもあることでございましょうから、私どもそういう点を十分慎重に吟味いたしまして、御納得がいくような解決を期したいと思ってせっかく努力いたしておる最中でございます。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 竹島の問題につきまして、これは韓国側のほうでも問題にしているわけで、日本側としても、これは島根県であったから、今までも日本側はそれを主張してきているわけであります。この問題について譲歩するということになれば、国民に非常に大きな衝撃を与えることになるだろうと思います。これらの問題につきましても、日本側は旧来の主張を変えず臨むという態度でおられるかどうか。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございます。
  20. 岡田宗司

    岡田宗司君 日韓会談をこれから急速に進めるという問題について、私は、今回池田総理並びに大平外務大臣ジョンソン大統領と会われまして、今後の日米間の問題やあるいはアジアの外交方針等についてお話になった際に、これを促進するという問題が論じられたか、そうしてアメリカ側からそういう要望があったのか、それをお伺いしたい。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日米間の個々の具体的な問題につきましては、日米貿易経済合同委員会のこと以外は、日米首脳会談では出ませんでした。  合同委員会のほうは、ちょうどケネディ大統領のなくなられた瞬間、すでに六人の閣僚を乗せた飛行機がハワイを出て一時間半たっておりました。で、この不幸な事件で中断されたという経緯がございますので、これだけを特別に取り上げていつごろ再開するかということの話はいたしましたけれども、その他の具体的な案件につきましては、取り上げる雰囲気もございませんし、またこちらから申し上げるのは礼儀を失すると思いまして申し上げませんでした。世界の問題、アジアの問題等について一般的な意見の交換がありましたにすぎません。
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、最近この日韓会談を促進する問題につきまして、韓国側から、大野自民党副総裁が乗り出すことを希望しているような報道がされているのであります。それは正確にそういうことを求めているのかどうか私は知りませんけれども、いまこちら側との間でいろいろな話が行なわれている際に、それを差しおいて、今の段階でそういうことを言ってくることは私どもは非常におかしいと思います。で、これは外務大臣としてそういうことがあったほうがいいとお考えなのか、私はないほうがいいと思いますけれども、その点を伺いたい。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大野先生には大所高所から日韓の間の親善友好の空気を醸成するためにいろいろ御心配をいただきましたことは事実でございますし、私は、その点大野副総裁に対して感謝を申し上げております。ただ、外交交渉は、申すまでもなく、外務大臣の専管の仕事でございます。したがって、私の仕事の中の一部を取り出して副総裁にお願いするというような非礼なことは、私は絶対にお願いしないつもりでおります。あくまでも一〇〇%私の責任において実行してまいるつもりでおります。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、政府としては大野副総裁を特使とかなんとかいうことで派遣するつもりはない、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の申し上げましたのは、外交交渉は私が当たりますということでございまして、友好親善使節としてただいままでもお願いいたした経緯もございますし、今後絶対にそれじゃお願いしないなんというつもりはございませんので、そのときの景況に応じまして考えてみたいと思っております。私の申し上げましたのは、外交交渉はあくまで外務大臣が専管でやりますということでございます。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、またそのためにいろいろ国民の間に疑惑を招くような事態が起こらないとも限らないと思うんです。過日大野副総裁、船田中氏らが台湾に行かれました。これも何かビニロン・プラントの輸出の問題あるいは周鴻慶事件のための了解を求めに行ったのだというようなことであると伝えられておりますけれども、こういうようなことは私はまことに不見識なことであり、必要のなかったことじゃないかと思う。こういうことが繰り返されないことを私どもは望むんです。そのためにかえって日本の立場というものがおかしなことになってくるというふうに考えられますので、その点は十分に外務大臣としても考えていただかなければならぬ問題だと、こう思います。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、近接いたしました国々との間の親善友好の空気というものは、どの瞬間をとりましても維持していかなければならぬことでございまして、それに応じまして高度の政治的な接触をお願いする場合があることは、岡田委員も御案内のとおりでございます。ただ、私が申し上げておるのは、そういう親善の使節をお願いしたり、親善の空気の醸成に寄与するようにお働きをいただきますことでございまして、外交交渉のデテールにわたってお願いする趣旨ではないということでございます。
  28. 曾禰益

    ○曾祢益君 日韓問題について今岡田委員からも御質問ございましたが、私からも若干御質問したいと思います。  最初に、私どものほうはかねがね申し上げているように、元来日韓会談すなわち日韓間の懸案の解決と、したがって国交調整に至る交渉は、必ずしも南北両朝鮮の統一を待つまでもなくこれは進めるべきである、こういう立場をとってまいりました。しかし、むろん同時に、韓国ほんとうに民主的な基盤の上に立って一たん約束したならば、それが民意にしっかり根のはえたものでなければいかぬという意味から、韓国の民主化というものは一種の条件ぐらいに重要に考えてやってほしい。ただいたずらに軍事政権との間に手っとり早くやるということはいけない。むろん内容的にも日本の合理的な自主性を守らなければいかぬということもありましたが、そういう意味で非常に慎重にやるべきであるけれども、慎重にということにウエートを置いてきたわけであります。しかし、とにかく大統領選挙が行なわれ、今度は国会議員の選挙も行なわれて、民政移管も近く行なわれるという羽目になったわけです。率直に言って、私ども気持からいうと、どうもまだまだ形の上の民政移管で、実質的の軍政延長的な点があるのではないかという一種の不安は持っておりますけれども、しかし、とにかく民意を経た選挙の結果について他国から云々すべき筋合いでもないと思いますから、一応軌道は敷かれたと見て、これからいよいよほんとうに双方が本格的の交渉をすべきである、今まではいわば一種の予備交渉であったとすら言えるのではないかと、こう思うわけです。そこでこれからの日韓交渉を進めるということの原則は、われわれは異存ありません。ただその心がまえについては、いま大臣のお話もありましたが、いやしくも単に妥結を急ぐのではなくて、これから進めるけれども、あくまで慎重にという心がまえがなければいかぬ、こう考えるのですが、これは非常に抽象的ですけれども、その間の基本的な姿勢について、あらためて外務大臣からお答えを願います。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私ども、ただいままでの日韓交渉につきましても、時期を逸するとあせった覚えもございませんし、事柄の吟味をぞんざいにいたした覚えもございません。あくまでも、この委員会を通じて申し上げましたとおり、国民が納得がいく内容においてやりたいということを主眼に力点を置いてやってまいりました次第でございます。これからも全然その気持に変わりはございません。先方の政治状況がだんだんと整いつつありますととは、隣邦として私どもも非常に勇気づけられておりまするけれども、ただいままでも、先方の政治状況いかんにかかわらず、日韓交渉につきましては中身第一主義で慎重にやってまいりましたつもりでございます。この上一そうそういう気持を持って慎重に対処いたす所存です。
  30. 曾禰益

    ○曾祢益君 具体的には、やはりこの諸懸案をどういうふうな態度で解決に努力するかということだろうと思うのですが、どうも今までのやり方から見ると、これは交渉のやり方としては無理もないとは思うけれども、何か一つ一つ片づけて、そしてまた次に難点を残すようなやり方のような気がするのです。少なくとも結果的には、一番大きな障害と認められた請求権問題で譲ってしまったところにいわばピッチャー、キャッチャーのピッチャーばかりでキャッチャーがいなくなって、向こうの受けとめる人がいなくなったという事態が起こったわけです。そのときから残された漁業問題あるいは李ライン問題に一番集中することはこれは当然であるけれども、その障害を取り残し、今度はまた次にやはりこの竹島問題とかあるいは在日朝鮮人の地位の問題、これは言うまでもなく南北の問題が非常にからんでくるやっかいな問題ですが、こういうものが次々に残されていくのでは、何のことやらわからぬということを国民は心配するわけです。ですから、そういう諸懸案を一括解決するための交渉のテクニックや折衝の内容に立ち至って申し上げるつもりはありませんけれども、どうも日本国民として少しはらはらするような、人がいいような、懸案を一つ一つ向こうさんのペースで譲っていくということにならぬように、これは十分にその点は日本側の利益を守ってくださると思うのですけれども、諸懸案の一括解決ということに非常に重点を置いていただきたいという気がするわけです。この点はどうですか、抽象的ですけれども……。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 曽祢さんは外交の専門家であられるから、十分私は御理解いただけると思うのでございますが、外交交渉として日韓交渉ほどむずかしい案件はないと私は思います。これがやさしい問題であれば、平和条約のときにもうすでに片づいておる問題であろうと思うのでございます。それからまた、こういう問題を日韓双方でバイラテラルな形で解決しなければならぬということも、私はたいへんまたむずかしい問題であろうと思います。あるいはまた第三者の調停があったほうが、たとえば請求権問題なんていうのは、やりやすい問題じゃないかと思うのでございますが、そういうぐちはもう言うておれなくなりましたので、一応私どもとしては最善を尽くしてこれまでやってまいりましたが、それについて御批判はいろいろあろうと思いますけれども、私は先方のペースに巻き込まれて譲っていくのだということは毛頭考えておりませんし、与えられた状況のもとで最善を尽くしていくと心得ております。それから、その他のいろいろな懸案が、漁業問題がかりに片づいたとしてもまだあります。しかし、一括解決するという基本方針は、あくまで国会にお約束いたしましたとおり厳守してまいる所存です。
  32. 曾禰益

    ○曾祢益君 あと二点ばかり。これはいずれも岡田委員が融れられた点ですけれども、重要ですから、もう一ぺん私からも申し上げたいのですが、漁業に関連する問題ですけれども、大臣の言われた意味はわかるような気がしますし、また交渉の内容に関連することですから、あんまりこれに断定的な言明をあえて求めるつもりはありません。しかし、やはり何といっても、いわゆる李ラインなるものは実際上実質的にこれを撤廃させて、そして領海とそれから漁業専管区域といいますか、これが大体国際法的に認められて外国でもこれを認め、日本も今までの三海里だけではいけなくなっているようですから、大体領海は六海里なら六海里、その他漁業専管区域はプラス六海里なら六海里ぐらいの、そういうような線以上は、これはどうしても両国の将来のために譲るべからざる線だ。そして弾力的なものは漁業に関する相互規制、これはもちろん相互主義に立たなければいかぬし、これにプラス漁業に関する協同、こういうラインについては、言うまでもなく相当に弾力性があってもいいけれども、そういうプリンシプルの問題になると、この問題もしかり、竹島問題もしかり、やっかいな問題ですけれども、そういう問題についてはやはり筋は通していくということにしないと、先ほども岡田委員がちょっとヒントされたけれども、どうも請求権問題のように、足して二で割るどんぶり勘定的な数字が、まさか専管区域問題なんかじゃあり得ないと思いますけれども、そういうことは私は絶対にやってはならないのではないか。これはあえて韓国の諸君にもそういうことは譲るべきではないという方針で一貫したほうが、やっぱり日韓国交上からも将来に悔いを残さないものだと思うのですが、その点はいかがですか。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 曽祢委員のおっしゃるとおりの心境で臨んでおりまするし、私は双方の間の理解はだんだん進んでおると思っております。
  34. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後にもう一点。  これも岡田君から御指摘の点なんですけれども、どうも外務大臣の立場をある意味でサポートする、支持するつもりで、かえって野党からそう言われるのがお困りなら別ですけれども、どうも大所高所というのが出てきちゃ今まであまりろくなことをしていないと思うのです。竹島問題でもおいでになってお帰りになって、竹島なんか、あんなものは何だったら海軍の大砲で島をつぶしてしまえと……これはほんとうに大野さんがそう言ったかどうか知りませんけれども、やはり領土権の問題なんかは非常に厳粛な問題なんで、いたずらにあまりウルトラな国粋的な主張をすべきことでないことはあたりまえです。領土権の問題を、足して二で割るなんてできないことであって、そういう解決はあり得ないのですから、どうもいざというときに、親善使節で民政移管の式に行った人が、大体大きなラインをきめて帰ってくるのもいいけれども、たいてい譲ってくるようにきめてくるということであってはならないと思うのですよ。私は、そういう点は大臣に対しては失礼のようだけれども、やはり内閣全体としてやっぱりそこは筋を立てて、親善はけっこうであるけれども、取引の窓口は絶対に曲げない、これはやはり突っぱっていただかないと、やはり私は議会制のりっぱな内閣制度でない。いかに偉い人でも、党のほうからいろんなことを、差し出がましいことをやることははねつけていくというき然たる態度が必要じゃないか。特に日韓の問題については大所高所論は非常に危険だという実例もあるので、これは十分に国民もそういう意味で監視しておりますから、外務大臣としてはりっぱにその職責を全うしてもらいたい、こう考えております。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、親善の使節として機能していただいた経緯もございますし、今後そういうことがないと私は申し上げませんけれども、大所高所は一〇〇%外務大臣の責任でやるつもりでございます。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 ちょっと、いま大平外務大臣発言の中に、請求権の問題についてですね、調停が入ったほうがよかったんじゃないかというような御発言があったんですけれども、今後、まあ漁業の問題でも、あるいは竹島の問題でも、なかなかむずかしい問題がある。その際に、そういうものが入って何らかの形で解決に向かうということを求められておるのですか。そういう意味の御発言ですか。これはどうも私どもちょっと聞き捨てならぬと思うのでお伺いしたいのですが。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう意味でなくて、請求権問題というようなむずかしい、たとえば第三者の調停をまたぬと解決ができないんじゃないかと客観的に考えられるような問題も、バイラテラルな形で合意に達しておるのでございます。いわんやほかの問題につきましては、調停を頼もうなんという、そういうさもしい根性は毛頭ありません。
  38. 岡田宗司

    岡田宗司君 とにかく、調停が出るであろうということがときどきどこからともなく放送されたこともあるし、いま外務大臣がそう言われたので、私もちょっと気になったんで、これからそういうものが出るようなことになったら、これはたいへんだと思うのです。それこそ日本外交の自主性はそこなわれるおそれがあるので、ちょっと気になりましたからお伺いいたしたわけです。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと簡単に一つ。  いま懸案一括解決とおっしゃいましたが、そうするとあれですか、個々の問題をみんな片づけて、調印のときに一まとめにすることを一括解決というような意味になるのですか。今のような形だと、一つ一つ片づけていって、調印のときに一まとめにするから一括解決だと、そういうことになるのですか。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一応全部セトルをしていきまして、それで一つ一つの案件、これは軽重の差別はございません。みんな大事なことでございます。一つ一つ全力をあげて解決の素材を作って参りまして、それで全体をひっくるめてそのときに完成した形にしようという、こういうわけでございます。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 あときわめて簡単に二つほどお伺いしたいのですが、一つは周鴻慶事件の結末をどうおつけになるか。これはだいぶむずかしい問題になって、外交的な問題になってきておるのですが、もう周鴻慶氏のからだも回復して退院する時期に来ております。これはもう早急に片づけなければならぬ問題ですが、外務省はいまだにこれに対して方針がきまっておらないではないか。特にこの問題について台湾政府から強い抗議があったと聞いておりますし、また過日この問題について大野副総裁、船田中氏が台湾に行きましたとき、いろいろ弁明やら釈明やらをしたそうですけれども、向こうの態度が非常にきつかったと聞いておる。そんなことでこの問題をぐずぐず解決し得ないということですと、これは私は重大なやはり問題だと思うのです。日本外交の自主性の問題からいいましても、この問題はもう本人が大陸中国のほうへ帰るという意思表示をはっきりしておるのです。私は、この問題は当然すみやかに外務大臣が断を下すべき問題である、こう考えるのですが、その点についての外務大臣の所見を伺います。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 周鴻慶氏はいま入管の管轄のもとにございまして、日赤に滞在されております。私ども外務当局といたしましては、御指摘がございましたように、国民政府側がこの問題についていろいろな感触をお持ちになっていることもよく承知しているわけで、外交的な事件の性格を帯びてきていることを否定しようとは思いません。こいねがわくは、この問題が入管の公正な手続を通じまして円満に解決されて、外交的なトラブルが起こらないようにしたいというのが私のこいねがっているところでございまして、関係方面の御理解を得て、特に周鴻慶氏御自身の御意思というものも十分聴取した上で、内外にわたって公正に解決したいということで、せっかく努力いたしている最中でございます。関係方面もだんだん理解が深まってきておるように私は聞いております。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも、関係方面の理解が深まってきておると言われますけれども、結局は、台湾政府の抗議といいますか、それが一番外務省の頭痛の種になっているのだろうと思う。しかし、私はこの問題について、本人自身がはっきり中国へ帰りたいと言っているのに対して、台湾政府からいろいろ抗議が来ること自身が私にはおかしい。それに耳を傾けて、弁明をしたり、了解を求めたり、そういう必要がどこにあるのか。私は、この問題はすみやかに日本政府態度を明らかにして、そうして早く送還すべきものは送還するという処置をとるべきである、こう思うのですが、あまり了解々々で長いことかかっておるということは、これまた別のむずかしい問題を起こすだろうと思いますが、台湾政府の抗議をそうそう気に病まれる必要はないのじゃないか。この問題については私はすみやかに断を下されんことを望みたい。いかがでしょう。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) すみやかに公正に解決したい所存でございます。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 もう一つお伺いしたいのですが、実は原子力潜水艦の問題で、これは外務省のほうから向こう側にいろいろ照会を出している。その回答が来ないので、まだ返事をする段階に至っていないと思うのですけれども、伝えられるところによると、近く回答をせられるというようなこともあるわけなんです。ところが、この選挙中でありますが 十一月の十七、八日ごろですけれども、新しい太平洋艦隊の司令長官のシャープ提督が横須賀に来られた。そうして十七日の日にプレス・コンファレンスで潜水艦の寄港問題について問われまして、軍事上必ずしも必要でないのだ、日本に入港をすることは必要でないのだということを言っている。このことは御存じでしょうか。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) よくまだ承知しておりませんが……。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカ局長、御存じですか。
  48. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) 私も承知しておりません。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 重大なことなんですね、この問題は。ちゃんとジャパン・タイムズの十八日号の一面に大きく出ているのですよ。しかも見出しには、アドミラル・シャープ・セイズ——Nサブマリーン・ビジッツ・ヒヤ・ナット・アブソリュートリー・ヴァイタルと大見出しをもって出している。ですから、これは私、中を読もうとは思いません。しかし、とにかくこの太平洋艦隊の司令長官が、日本に原子力潜水艦の入港について、あまり重要でない、必ずしもヴァイタリーでない、こう言っているのですね。それだのに、なお、日本側でもってこれを入れるのだ、入れるのだと言うことは、私はたいへんおかしいと思うのですよ。いまアメリカ局長に聞いたら、御承知でないというのは、これはほんとうに御承知でないのか。私は、ジャパン。タイムズはたいがいお読みになっておるだろうと思うし、切り抜きはあるだろうと思うのですが、ほんとうに御承知ないのですか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 原子力潜水艦の寄港の目的については、たびたび国会でも御説明申し上げましたとおり、兵員の休養と補給が目的であるということでございまして、休養と補給が日本でなくてもできることは、これは物理的に考えられることでございます。そういう意味でヴァイタリーでないという意味であれば、私は了解できると思うのでございます。私どもは、この問題を取り上げる場合に、兵員の休養と補給ということで国民に御説明申し上げておるわけでございまして、グアムとかハワイとかにわざわざ給水のために帰るというようなことをしないでも、もよりの日本に寄って差しつかえないものであるというように私どもは理解して、国民に御協力を求めておるわけでございます。そういう趣旨からいうと、その司令官の言われたと称することも、別にたいして意に介する必要はないのじゃないか、私はかように思います。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 とにかく向こうの提督が必要でないと、こう言っておるのに、そういうことは意に介する必要はない、あくまでも入れるというのは、ずいぶんおかしな話だと思うのですがね。この中にこう書いてあるのですよ。その点を言いますと、「われわれはこの武器のシステムのフレキシビリティーを非常に誇っている。そうして六十日間も水上にあらわれることなく海中をクルーズすることもできる船をわれわれが持っておるとき、どこそこの港に入るということはたいへん重要なことじゃないのだ」とはっきり言っているのですね。これはどうお考えになりますか。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 航続距離がそれだけ長いということを言われたものと思います。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 長いということを言ったあとで、「どこそこの港に入ることはペリー・インポータントじゃない」と言っている。それをどうお考えになるか。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それにいたしましても、そこで休養ができたり、補給ができたりすると便利なことは、それはまた岡田さん当然常識的に御理解いただけると思います。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 向こうさんが「重要でない」と——それはそうに違いない——「重要でない」と言っているのに、あなたのほうでもって一生懸命そんなことを言う必要はないでしょう。  ぼくはちょっとアメリカ局長にお伺いしたいのですが、あなたのところではジャパン・タイムズおとりになっておるのでしょう。
  56. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) とっておりますが、私、ちょうど出張中でありましたので、その記事を読んでおらないのでございます。ただ、ただいま伺いますところによりますというと、シャープ提督は、絶対必要とは言っていない、しかし、寄港を認めてもらうことは望ましい、こういう発言をしている、こういうふうに伺っております。
  57. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうは言っておりますけれども、そのあとに、六十日間とにかく姿をあらわさないで済むような船をおれたちは持っているのだから、別にどこの港に入る必要はないのだということを言っているのでしょう。この提督の言は、この記者会見——横須賀でしているのですよ。これは重要な発言と思いませんか。これは外務大臣に、これは重要な発言と思いませんですか。ナット・ヴァイタリーですか。ナット・インポータントですか。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その御発言がこの寄港問題の判断にとってそうヴァイタリーな問題ではないと、こう考えております。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 政事家が言ったとか、それから、だれか評論家が言ったというのなら私もここで今問題にしませんけれども、とにかく太平洋艦隊司令長官が、それも入港を求めている横須賀で言っているんですね。だから、私はこれは非常にヴァイタリーだと思うんです。インポータントだと思うんです。どうでしょう。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それはちょうどあなたと私の見解が違うあれでございまして、私は、そういう発言はこの問題の判断についてそうヴァイタリーだというふうには考えておりません。
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうふうにおっしゃるのなら、もう一度シャープ提督のこの発言について十分御検討を願いたいと思います。少なくともこれは秘密な発言じゃなくて、プレス・コンファレンスで言った発言で、ほとんどそのとおりの言葉で述べているんですから、これはよくお考えを願いたいと思います。  それからもう一つ。これは外務大臣にお願いしたいのですけれども、原子力潜水艦の放射能の廃棄物の許容の基準ですね。これは日本アメリカとずいぶん違うのです。で、これがまあ一番大きな問題になっていると思うんですが、その点についてひとつアメリカ側の基準ですね、これも秘密でないと思うんです。それをあなたのほうでお持ちになっているならば、それと日本側の基準と、両方資料として私に出していただきたい。それが一つですね。  それからもう一つ。私はデンマークに行きましたが、大平外務大臣は前にデンマークにおいでになったようですけれども、デンマークでは原子力潜水艦を一九五九年に原子力委員会の助言で政府は入港を拒否しております。それ以来今日まで続いております。これはNATOの加盟国ですね。それが原子力潜水艦の寄港を拒否している。そのことは御存じだと思うんですけれども、デンマークにお寄りになったときにその事態についてお調べになったことがありますか。その点お伺いしたい。
  62. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一の資料の点は、科学技術庁等と相談いたしまして御返事をいたします。  それから、そういうデンマークが五年前に断わった事実があるということは私は承知いたしておりますが、ことしの夏おたずねしましたときに、その理由、背景等をお伺いすることはいたしませんでした。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 もう一つアメリカに対してまあ外務省のほうからこの点について照会をしていますけれども、その回答が来ていないということですけれども、その照会している問題について、どういう点を照会しているのかということをここで公表できませんですか。
  64. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘のような問題も含めて照会をいたしておりますので、全体を整えた上で御報告させていただきたいと思います。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 いつ照会されたのでしょうか。これはアメリカ局長御存じでしょう。
  66. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) これは随時やっております。
  67. 岡田宗司

    岡田宗司君 随時やって何も返事来ないのですか。
  68. 竹内春海

    説明員(竹内春海君) ときどき返事が参りますけれども、まだ全般的にはまとまっておらないという状況でございます。
  69. 井上清一

    理事井上清一君) ほかに御発言もないようでございますから、本日はこの程度で散会いたします。    午後零時三十九分散会