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1963-03-25 第43回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月二十五日(月曜日)    午前十時二十八分開会     ――――――――――――― 昭和三十八年三月二十日予算委員長に おいて、左の通り分科担当委員を指 名した。            井上 清一君            太田 正孝君            小山邦太郎君            下村  定君            杉原 荒太君            館  哲二君            近藤 信一君            羽生 三七君            横川 正市君            鬼木 勝利君            田畑 金光君            須藤 五郎君     ―――――――――――――    委員の移動  三月二十五日   辞任      補欠選任    羽生 三七君  大矢  正君    田畑 金光君  田上 松衞君     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    主査      館  哲二君    副主査     近藤 信一君    委員            井上 清一君            太田 正孝君            下村  定君            杉原 荒太君            大矢  正君            羽生 三七君            横川 正市君            鬼木 勝利君            田上 松衞君            須藤 五郎君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    防衛施設庁長官 林  一夫君    防衛施設庁施設    部長      鈴木  昇君    経済企画政務次    官       舘林三喜男君    経済企画庁長官    官房長     吉岡 英一君    経済企画庁長官    官房会計課長  佐藤 二郎君    経済企画庁調整    局長      山本 重信君    経済企画庁総合    計画局長    向坂 正男君    経済企画庁総合    開発局長    大來佐式郎君    経済企画庁水資    源局長     崎谷 武男君    外務大臣官房長 湯川 盛夫君    外務大臣官房会    計課長     佐藤 正二君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省経済協力    局長      甲斐文比古君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      高橋  覺君    大蔵政務次官  池田 清志君    大蔵大臣官房会    計課長     御代田市郎君    大蔵省主計局次    長事務代理   岩尾  一君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    大蔵省銀行局長 大月  高君   説明員    外務省経済協力    局外務参事官  鶴見 清彦君     ―――――――――――――  本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和三十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――   〔館哲二主在席に着く〕
  2. 館哲二

    館哲二君 ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、分科担当委員中、年長者が正副主査選挙管理することになっておりますが、年長者である太田正孝君がお見えになりませんので、かわって私が正副主査選準管理を行ないます。  これより正刑主査互選を行ないます。
  3. 横川正市

    横川正市君 私は、この際、正副主査選挙は、成規の手続を省略して、選挙管理者において、主査館哲二君、副主査近藤信一君を指名せられんことの動議提出いたします。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 館哲二

    館哲二君 ただいまの桃川君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 館哲二

    館哲二君 御異議はないと慰めます。  それでは、私から、主査に不肖私、副主査近藤信一君を指名いたします。
  6. 館哲二

    主査館哲二君) 審査に入ります前に、議事の進め方についてお諮りいたしたいと思います。  本分科会所管は、昭和三十八年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算中の総理府のうち防衛庁経済企画庁科学技術庁、及び外務省大蔵省通商産業省所管を審査することになっております。議半を進める都合上、主査といたしましては、本日午前を外務省所管、午後を大蔵省及び経済企画庁所管、明二十六日午前を防衛庁所管、午後通商産業省及び科学技術庁所管という順序で進めていきたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 館哲二

    主査館哲二君) 御異議ないと認めます。  なお、明後二十七日午後の委員会において主査報告を行なうことになっておりますので、御了承お願い申し上げます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  8. 館哲二

    主査館哲二君) 速記を始めて。  それでは、昭和三十八年度総予算中、外務省所管を議題といたします。  まず、政府説明を求めます。外務大臣
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外務省所管昭和三十八年度予算について大要を御説明申し上げます。  予算総額は百九十一億二千八百四十八万千円で、これを主要経費別に区分いたしますと科学技術振興費六千二百万九千円、遺族及び留守家族等援護費九百万円、貿易振興及び経済協力費二十七億八千七百八十六万千円、その他の事項経費百六十二億六千九百六十一万千円であります。また組織別に大別いたしますと、外務本省九十二億二千八万六千円、移住あっせん所四千三百二十一万七千円、在外公館九十八億六千五百十七万八千円であります。  ただいまその内容について御説明いたします。  第一に、外務本省一般行政に必要な経費十七億五千九百四十四万三千円は、外務省設置法に定める本名内部部局及び附属機関である外務省研修所外務省大阪連事務所において所掌する一般事務を処理するため必要な職員千五百三十八名の人件費及び事務費等であります。  第二に、外交運営充実に必要な経費六億七千万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。  第三のアジア諸国に関する外交政策樹立及び賠償実施業務処理等に必要な経費二千二百二十九万三千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整並びに賠償の円滑かつ統一的な実施をはかるため必要な経費であります。  第四の米州諸国に関する外交政策樹立に必要な経費二千九百二十九万六千円は、米州諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人ラテンアメリカ協会補助金二千二百三十万六千円であります。  第五の欧州中近東アフリカ諸国に関する外交政策樹立に必要な経費千二百三十二万九千円は、欧州中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人アフリカ協会補助金三百二十万円、財団法人中東調査会補助金百万円であります。  第六の国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費三千百四十二万四千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行なう際の準備等に必要な経費であります。  節七の条約締結及び条約集編集等に必要な経費千六十七万三千円は、国際条約締結、加入に関する事務処理並びに条約集等編集条約典型の作成、条約国際法及び先例法規調査研究等のため必要な事務費であります。  第八の国際協力に必要な経費二億六千五百四十三万九千円は、国際連合機関との連絡、その活動の調査研究等に必要な経費及び諸種の国際会議わが国代表を派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費並びに財団法人日本国際連合協会補助金千三百九十万五千円、社団法人日本エカフェ協会補助金八百二十四万四千円、財団法人日本ユニセフ協会補助金三百一万七千円であります。  第九の情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費五億八千四百三十八万七千円は国際情報に関する国内啓発海外に対する本邦事情啓発及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに財団法人国際学友会補助金五千五十九万三千円、財団法人国際文化振興会補助金一億六十九万八千円、財団法人国際教育情報センター補助金七百二十三万四千円及び啓発宣伝事業委託費一億七百五十二万円であります。前年度に比し二億千八百二十万七千円の増加は、啓発宣伝費及び国際文化振興会補助金等並び啓発宣伝事業委託費等増加によるものであります。  第十の海外渡航関係事務処理に必要な経費三千二百六十四万円は、旅券法に基づき、旅券発給等海外渡航事務に必要な経費と、その事務の一部を都道府県に委託するための経費千四百四十八万七千円であります。  第十一の海外経済技術協力に必要な経費十五億三千三百九十五万五千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整を行なうに必要な経費と、コロンボ計画等に基づく技術者受け入れ、派遣及び各種技術センター設立等技術協力実施に必要な委託費十二億五百二十万六千円及び海外技術協力事業団出資金一億円、同交付金二億千四百六十七万円等であります。前年度に比し一億七千四百九十一万八千円の増加は、海外技術協力実施委託費及び海外技術協力事業団交付金増加等によるものであります。  第十二の国際分担金等支払いに必要な経費二十一億四千百二万二千円は、わが国加盟している国際連合その他各種国際機関に対する分担金及び拠出金等を支払うため必要な経費であります。前年度に比し六億五千六百四十七万円の増加は、国際連合分担金世界食糧計画拠出費増加によるものであります。  第十三の国際原子力機関分担金等支払いに必要な経費六千二百万九千円は、わが国加盟している国際原子力機関に支払うため必要な分拠金及び拠出金であります。  節十四の経済協力関係国際分担金等支払いに必要な経費九億九千八百七万九千円は、わが国加盟している経済協力関係各種国際機関に対する分担金負担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。前年度に比し二億千七百六十六万五千円の増加は、後進国経済開発技術援助拡大計画及び国連特別基金拠出金経済協力開発機構開発センター負担金等増加によるものであります。  第十五の移住振興に必要な経費十億五千七百十二力二千円は、移住政策企画立案及び中南米諸国等移住する者八千名を送出するため必要な事務費及び移住渡航費貸付金五千九百十五万九千円、移住者支度費補助金九百四十六万八千円並びに移住者援助及び指導その他海外移住振興及び助成に必要な業務を内外一貫して効率的に行なうことを目的として新たに設立する海外移住事業団に対する交付金七億七千六百十三万五千円等であります。  第十六の旧外地関係事務処理に必要な経費九十八万五千円は、朝鮮、台湾、樺太及び関東州等旧外地官署所属職員給与恩給等に関する事務を処理するため必要な経費であります。  第十七の旧外地官署引揚職員等給与支給に必要な経費九百万円は、三十八年度中の旧外地官署所属の未引揚職員留守家族及び引揚職員に対し支給する俸給その他の諸給与に必要な経費であります。  移住あっせん所について申し上げます。移住あっせん所業務処理に必要な経費四千三百二十二万七千円は、外務省付属機関である神戸及び桃浜移住あっせん所事務を処理する職員五十名の人件費と、移住者送出の万全を期するため、本邦出発前に健康診断、教養及び渡航あっせん等業務を行なうため必要な経費であります。  在外公館について申し上げます。  在外公館事務運営等に必要な経費八十三億二千九百九十八万三千円は、既設公館百二代表部八百六十九名と三十八年度新設予定の在アルジェリア、在象牙海岸、在アイルランド、在ニカラグア各大使館、在ミラノ総領事館エンカルナシオン駐在員事務所設置のため新たに必要となった職員十五名並びに、既設公館職員増加四十五名、計九百二十九名の人件費及び事務費等であります。  第二に外交運営充実に必要な経費七億三千万円は諸外国との外交交渉わが国に有利に展開するため在外公館において必要な工作費であります。  第三に輸入制限対策等に必要な経費二億二千四百四十万三千円は、諸外国におけるわが国商品輸入制限運動等に対処して啓蒙宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第四に対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費一位六千七百二万六千円は、わが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国の政治、経済及び文化等の、実情を組織的に緒外国に紹介するとともに、国際文化交流を行なうため必要な経費であります。  第五に在外公館営善に必要な経費四億千三百七十六万六千円は、在トルコ大使公邸新税、在インドネシア大使館事務所新営、同大使公邸増築、在インド大使公邸増築、在ビルマ大使館事務所新営、在アメリカ大使公邸冷房設備その他公邸事務所の諸工事に必要な経費と、在パキスタン大使公邸及び事務所用土地の無期限使用のための無体財産権購入費並びに在外公館事務所館長公邸用建物補修費等であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和三十八年度予算大要であります。慎重御審議のほどお願い申し上げます。
  10. 館哲二

    主査館哲二君) ただいまの説明に対しまして、質疑のある方は順次御発言を願います。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 私は、最初に、日本のこの対外援助といいますか、低開発国援助関連する問題で少しお尋ねいたしますが、この問題、は前の総括質問のときに一応お尋ねしましたが、いずれ本年中に日本OECD加盟することになれば、加盟に伴う利益とともに当然義務も随伴することで、その結果、低開発諸国に対する援助ということは、OECD加盟に伴う一つ条件にもなろうと思うわけであります。ところが昨日も、アメリカクレー報告で、アメリカ対外援助に関するかなりきびしいいろいろな勧告がケネディ大統領のもとに提出されたようですが、そこで、私たちとしてお尋ねしたいことは、いわゆるこの低開発国に対する、後勘、それと賠償に伴う経済協力、そういうものの限界が必ずしも明白でないので、最初に、一応政府のほうから具体的にその内容をお示しいただいて、それに基づいて御質問をして参りたいと思うのです。賠償の点は先般も御答弁で承ったし、私自身も、ここに調べた資料を持っておりますが、それから、経済協力の一応の額は、ここに賠償に伴う経済協力、これも一応の額はここに私持っておりますけれども、一体それといわゆるこのクレー報告等にいわれる対外援助、一本の場合の対外援助というものとは一体どういう関連になるのか。その間の区別、それから、今日まで純粋賠償賠償に伴う経済協力、それらの内容を少しお聞かせいただいて、それからひとつ具体的にお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、一つ賠償と、それから賠償に伴う経済協力、それからそれ以外に若干の数字は出ているようですが、クレー報告にありましたところの低開発国援助、それに該当する経済援助はそもそもどういうもので、どの程度の額か、最初にこれをお示しをいただきたい。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済協力は、御指摘のように、賠償賠償に伴う経済協力、それから、そういう賠償協定なんかと関連のないものになるわけでございます。賠償のほうは、御案内のように、今まで約束いたしておりますのが十億一千万ドルぐらいございまして、約四億ドルは支払い済みでございます。今度新たにビルマが加わるということになりますと、これに伴う経済協力の点は、別に政府がこれを促進するという意味の約束はいたしておりますが、具体的にコミットしたものではございませんで、事実動きが活発でございません。したがって、今後賠償は、御承知のように、一九六九年にはインドネシアが終わりまして、そこがピークになりまして、それから漸減方向をたどると思うわけでございまして、私どもといたしましては、その賠償協定とかかわりのない、いわばはだかの経済協力というものを日本経済情勢財政能力等と見合いまして工夫をこらしていかなければならぬというので、せっかく検討いたしておるわけでございます。何といたしましても、アジアの低開発国は第一次産品をよけい買ってあげなければならない事情にあるわけでございますが、不幸にいたしまして、日本はこういう地域には輸出超過の状態になっておるわけでございます。したがって、そういう困難な状況のもとにおいて、第一次産品日本の農業問題その他の関連を見ながら、どのように買付を増していく工夫をすべきかということになるわけでございまして、その点は、目下政府部内でもいろいろ慎重に検討を続けておる次第でございます。クレー報告アメリカ政府に答申になったということは伺いましたけれども、しかし、これの報告の内応につきまして、日本政府として論評を加えるというのはおかしいと思うわけでございまして、アメリカ政府がこれを受けてどのような政策をとりますか、それをわれわれは注目いたしておるところでございます。しかし、いずれにいたしましても、日本政府としては、既定賠償支払いそれから経済協力の姿勢というものには大きな変改は加える必要はないと私は思います。なお、詳細な点は事務当局から御説明申し上げます。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 それで、今の大臣の御答弁の点は、私もまあ承知しておる点でありますけれども、問題は、先ほど申し上げたように、純粋賠償賠償に伴う経済協力、それ以外のいわゆる低開発国に対する援助と、そう分けた場合、特にこの低開発国に対する援助は、賠償に伴う経済協力で、それで事足りるという解釈で今後とも臨まれるのか、その辺を光にお伺いをして、それからあと説明をいただきたいと思います。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、賠償は、一九六九年がピークになって、だんだん漸減方向をたどると申し上げました。したがって、われわれとしては、今から重点を置かなければならぬのは、この賠償協定なんかと関係のない経済協力というものをどのように進めていくかということを今から準備してかからなければいかんことだと考えて、重点はそこにあると考えます。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、結局日本としては、低開発諸国に対する援助は今後の検討に待つということで、具体的にまだ何も案もなければ考えてもいしないと、こういうことですか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今までも、御承知のように、賠償に伴う経済協力も部分的にはやっておりますが、先ほど申し上げましたように、全体として活発ではないということでございます。それから、インドパキスタンに対する円クレの供与、これは、既定計画に沿いましてやっておるわけでございます。今度もまたパリのほうで会議がございますので、各国の出方も見て、なお考究すべきものは考究しなければならぬと思います。しかし、そういうことと別に、私の申し上げておりますのは、日本自体として東南アジア地帯輸出超過になっておりまするから、これをバランスさせるという方向に配意せなければなりませんので、これにつきましては、今の経済協力態勢というものに吟味すべきものがあるかないか。それから、受けるほうの国の事情として国別に相当克明に勉強しておかなければならぬと、大きく言えば、経済計画全体で一体経済協力のどのような幅において市民権を認めるか、輸出やあるいは財政消費や等と肩を並べまして、経済協力という分野をどのように措定してかかるか。さらには、口頭に申し上げました経済協力機構は今のままでいいか。具体的に言えば、輸出入銀行海外経済協力基金、両分町の調整というようなものも、円資金調達等とからみまして、そればかりでなく、受け入れ国要望等も勘案いたしまして、どのように改定して参らなければいかぬかというような点につきましては、ずいぶん前から政府で各行の間で今話し合いを進めております。しかし、まだ国会に報告するまでに固まったものではありません。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 それで、クレー報告によると、日本対外援助条件をもつと緩和せよと言っておることは、そもそも何をさしているんでしょうか。これはひとつ、私も理解できない点があるので、お聞かせを願いたい。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは、従来からも、経済協力長期かつ低利ということで、アメリカ側主導権を持ちまして各国に要請いたしておるところでございまして、何も新しい提案ではないんです。ないんでございますが、私どもといたしましては、十二月の日米貿易経済委員会におきましても私も主張いたしたのでございますが、あなた方のような金持まねはできぬ、日本はやはり円資金調達しなければならぬし、円資金郵便貯金その他非常に零細な金を集めるわけですから、相当高い資金コストをかかえておるわけで、長期低利ということになりますと、結局日本経済協力の太さが細くなるだけの話でありまするから、日本としては、無条件に、長期低利に踏み切るなんということはできません。経済協力が大事であればあるほど、私どもとしては、いきなりお金持の国のまねはできません。しかし、のみならず、非常に東南アジア地帯のような所は出校的民族資本が少ない所ですから、逆に言えば、資本の効率が高い所ともいえるわけですから、低利長期でなければ金は使えぬのだということはなかろう。それだから問題は、比較的回収がおそい、公益性を持ったパブリック・ユーティリティのようなものと、それから、ミドル・サイズの企業投資というものとは分けて考えてもいいんじゃないか。したがって、そこらあたり国際的な分業が考えられるんじゃないか。で、私ども経済協力を進めたいと思うが、進める以上は、円資金調達をしなければならぬし、そのためには相当の資金コストがかかることはもう明瞭なことなんだから、そういう点を考慮して、お互いに分業的にやることを考えてみようじゃないかというような提案を向こうへもして、いや、それはいけないということを先方も言っておりました。それじゃひとつ、それは要検討項目じゃないかということでございます。したがって日本政府としては、経済協力を進める立場から考えますならば、クレー報告にいうように、長期低利にばかり貸し切れないということは各国にも十分申し出てございます。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 くどいようですが、そうすると、賠償に伴う今日までの経済協力、それから、先ほどお話のあった、まあ特に東南アジア諸国の第一次産品日本が買い付ける場合、日本農業保護政策と競合し矛盾する、しかし、そういうことも考慮をして、いろいろな貿易関係で十分な考慮を払う、そういうようなことを総称して、いわゆる低開発諸国に対する援助といっておるのか、そういうもの以外に、別途低開発国に対する援助というものが、別ワクで今後とも、たとえばOECD加盟したような場合、何かそういうものの促進を促されるのか、そういう点がどうも明白でないので、その点を承らしていただいて、それからあと政府委員のほうから、もしそこに資料があったら、賠償経済協力、それからそれ以外の経済協力も具体的にひとつ数字をあげて説明をしていただきたいと思います。
  20. 鶴見清彦

    説明員鶴見清彦君) それでは御説明申し上げます。  ただいま羽生先生から御質問のございましたように、たとえばOECD加盟した場合、現在の日本のやっております経済協力あるいは低開発国援助というものをさらに促進するようにという圧力がかかってくるのかどうかという御質問がございましたが、現在まで、御承知のように、日本はDAC、昔はDAGといいまして、一九六一年の一月からずっとやっておりますが、そのDAC、現在はOECDの一員たるDACという、開発援助委員会というメンバーに引き続きなっておりまして、そこでいろいろ日本援助のやり方とほかの国の援助のやり方とをにらみ合わせまして援助を続けてきております関係もありまして、あらためて今度OECD加盟いたしました場合に、さらにその場合のプレッシャーがかかってくるということも必ずしも考えられないというふうに存じております。それで、御質問の趣旨の形態別の援助について御説明いたしますと、まず賠償につきましては、先ほど大臣から御説明ございましたごとく、約十億一千万ドルばかり、そのうち、御承知のように、フィリピンが五億五千万ドルで二十年間、インドネシアが二億約二千万ばかりで十二年間、ビルマが二億ドルで十年間、ベトナムが四千九百万ドルばかりでございましたか、それで、あと二年で大体終わるはずでございますが、それが賠償の実績でございます。もう少し詳細につきましては、実は私は賠償のほうは直接やっておりませんが、賠償部のほうでやっておりますが、賠償のほうは年々着実に進行いたしておりまして、年額の賠償支払額は、その四カ国を合わせまして、大体七千五百万ドル程度が毎年々々支払額になっておるわけでございます。  その次に、賠償に伴う経済協力でございますが、経済協力につきましては、フィリピンが御存知のように二億五千万ドル二十年間、インドネシアが四億ドル二十年間、ビルマが五千万ドル二十年間、ベトナムが九百十万ドルだったと思いますが、それが賠償が済んだあとという形になっておるわけでございます。ただ、ビルマにつきましては、先ほど御説明がございましたごとく、今度新たに経済技術協力協定というものが近く調印され、国会の御承認を得まして発効するわけでございますが、それによりますと、別途経済技術協力協定に基づきまして、一億二千万ドルを十二年間というものが出て参りますし、そのほかに、三千万ドルという通常のコマーシャル・ベースによるところの協力ということが行なわれるわけでございます。そこで、賠償に伴う経済協力につきまして御説明をさらに申し上げたいと存ずるわけでございますが、それにつきましては、従来フィリピンのほうから、主としてフィリピンでございますが、二億五千万ドルの賠償に伴う経済協力というものを動かしたいということをしばしば言って参っております。ただ、これにつきましては、御存知のように、賠償に伴う経済協力は若干、フィリピン、インドネシアビルマと、協定の書き方が違っておりますが、大体全体を通じて言えますことは、これは通常のコマーシャル・ベースの信用供与、したがって民間の業者が先方の業者、場合によっては、インドネシア等の場合は政府の場合でありますが、と契約ができて、普通の延べ払い輸出をする場合にそれを認める、またそれを促進してやる、政府の義務といたしましては。そういう形になっております。したがいまして、政府があらかじめ条件をきめまして、たとえば十年間の返済期間で、金利が五%なら五%といったような、あらかじめ条件をきめて供与する信用ではございません。あくまで民間が先方の関係者ときめた普通の延べ払い条件。それを促進して、便宜をはかってやるというのが政府の義務になっておるわけでございますが、したがいまして、フィリピンにつきましてもインドネシアにつきましても、この点で従来賠償に伴う経済協力とわれわれは考えるわけでございますが、すでにインドネシアに対しましても相当な信用供与が行なわれておるわけで、御承知のように、インドネシアの場合におきましては、賠償、貸与、借款というものが三回にわたって与えられておりまして、それがすでに七千万ドル近くになっておるわけでございます。私どもといたしましては、これもいわゆる賠償に伴う経済協力の一環ではないかというふうに考えております。また、フィリピンにつきましても、普通の民間の延べ払い輸出という形で、船だとか繊維、機械というものが出ております。これも、今までの合計では、八千万ドル近くになっておると思うのでございますが、これもまた賠償に伴う経済協力の一環ではないかと私どもは主張しているわけでございます。これに対しまして、先方のほうは、賠償に伴う経済協力という以上、若干普通の延べ払い輸出の信用供与の条件と違ったものでなければならぬのではないかということを言っておるわけでございまして、この点では、まだ両者間に必ずしも意見が一致していないという状況でございます。  次に、賠償とは全然切り離れました普通の経済協力といいますか、この関係につきまして御説明申し上げます。  先ほど大臣もちょっとお触れになりましたように、インドパキスタンに対しましては、いわゆる円クレ、円借款というものを供与いたしておりまして、第一次の、一番当初の円クレジットは、インドに対しまして一九五八年五千万ドルを供与いたしまして、これは全額使われておるわけでございますが、その後インドの債権国会議パキスタンの債権国会議等を通じまして、両国にそれぞれ日本が供与しました円借款につきましては、インドの第三次五カ年計画、現在その第二年度をまさに終わらんとしているわけでございますが、その第三次五カ年計画の第一年度、第二年度に分けまして、九千五百万ドルの円借款を供与しております。さらに、パキスタンにつきましては、同国の第二次五カ年計画の第二年度、第三年度というものに対しまして、合計四千五百万ドルというものをすでに供与済みでございます。これによりまして、大きな製鋼所だとかあるいは肥料工場とか、そういったものがインドあるいはパキスタンにおいて建設され、先方の経済開発に役立ちつつあるわけでございます。円借款としてまとまったものは、大きなものはインド及びパキスタンに対するものでございますが、あと別の形では、ベトナムにダニム・ダムの建設の関係で約八百万ドルの措款供与がなされております。さらに、パラグワイに対しまして約三百万ドルぐらいの借款が出ております。それで、条件についてでございますが、これは、インド及びパキスタンに対する円借款は、五年の据え置き期間を含めまして十年の返済でありまして、すなわち五年据え置き十年返済という形で行なわれておりまして、現在のところ、わが国の対外低開発国に対する援助条件といたしましては最も緩和された形になっているわけでございます。その援助条件の緩和につきましては、返済期間の点、据え置き期間の点あるいは金利の点、こういう点がございまして、日本としてどの程度までできるかということは、先ほど大臣が御説明いたしましたとおりでございまして、私どもとしましても、ほかの国の出方などとにらみ合わせつつ、できるだけ日本の財政あるいは経済力の許す限りにおいてなるべく援助条件を緩和していきたいという感じを持っておりますけれども、なかなか十分には進み得ないわけでございます。さらにまた、私どもの考えといたしましては、プロジェクトすなわち事業案件によりまして、ある程度それが収益性の高いものならば、長い緩和条件を出す必要はないのではないかという考え方も持っているわけでございますし、一律にアメリカのやっておりますような、アメリカのいわゆるAID方式といいますか、十年据え置き四十年返還、金利は取らずに手数料は〇・七五%というやり方でございますが、これは、日本がとうていそのままやれるという方式ではもちろんないわけでございまして、したがいまして、わが国経済力の許す限りにおいて、また相手国の支払い能力等と見合い、相手国の計画している計画あるいはプロジェクトと見合いました条件というものを考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 このクレー報告による対外援助の削減あるいはその他の条件等は日本貿易関係とも関連しますが、これは今の場合の問題ではありませんから別としまして、純粋経済関係の低開発国援助という対外援助の場合、そうすると、クレー報告は、今日本対外援助条件を緩和せよと言っていることは、先ほどの大臣のお話では、日本日本の立場があるということでございましたが、向こうが言っていることは一体何を意味しているのか。今御説明のあったようなことの条件を緩和せよと言うのか。今後新たに行なうべき対外援助に対する条件の緩和を言っているのか。その辺はどういうことなんですか。具体的にひとつ。
  22. 鶴見清彦

    説明員鶴見清彦君) その点につきまして御説明申し上げたいと存じますが、先ほど大臣が御説明ありましたごとく、従来からも、先ほどちょっとお話し申し上げました、現在のDAC、開発援助委員会でございますが、その場を通じまして、あるいはアメリカから直接二国間の会議等におきましても、日本援助条件というものをもう少し緩和してもらえないだろうかと。先ほど申し上げましたごとく、現在日本の与えております援助条件というものの最も緩和された形は、五年据置期間を含めました十行年返済、したがって五年捉え置き十五年返済という形でございまして、金利につきましては大体世銀並みということでございますが、現在のところ、インドパキスタンに対しましては六%ということでやっておりますが、それをもう少し、たとえば返済期間を長くする、据置期間については具体的に五年あるいはそれ以上長くするということについては、別にいろいろの話では出てきておりません。もう一つは、金利をもう少し下げてもらいたいという点があるわけでございます。これにつきましては、先ほどちょっと触れましたが、ほかの同様な国、たとえばイギリスあるいはフランスあるいはドイツ、カナダ、オランダといったような、同じような先進諸国があるわけでございます。それらの国がどういうやり方をやっているかということ等とにらみ合わせますし、同時に、先ほど申し上げましたごとく、日本経済力あるいは相手国の計画内容、プロジェクトの内容、相手国の支払い能力の内容というものを個々に検討して考えていきたいというのが私どもの立場でございます。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 この純粋賠償が、先ほどお話があったように、年額では七千五百万ドル程度、それからそれ以外に、今の経済協力、さらにそれ以外のものと、たいへんなものですが、それ以外にガリオア、エロアの返済、さらに今度新たに、今すぐの問題にはならぬにしても、韓国に対する有償、無償の五億ドルの供与等々を見ると、これはかなり莫大な額に上るわけですが、日本経済の成長も、もう三十六年の一四%というようなことは今後そう簡単に期待できない条件の中で、はたしてこういう多額な賠償なり経済協力あるいはその他の援助を今後とも続け得るのかどうか。その場合、もうすでに賠償あるいは経済協力等である程度すでに、その半ば支払い済みになったような場合ですね。そういう場合には、それに見合って新しくまた経済協力というものを別途考えることを考慮しておるのか。それは日本経済の力との関連にもよりますが、その点は、これだけ多額の資金というものを賠償なり経済協力に使って、なおかつ今後とも相当程度の対外援助というものを日本政府としては具体的に考えられるのかどうか。賠償が済んだ部分だけは、それに見合う経済協力を将来考慮するのかどうか。その点はどういうことなんですか。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、年々の対外支払い能力といいますか、そういうものが一番私どもの気にかけてきたところでございまして、ガリオア、エロア協定、それからビルマ賠償問題と対韓援助、そういったものを見ますと、年々どれだけの半径のものを期待できるかという点は十分吟味いたしたわけでございます。それから、財政当局とも十分打ち合わせをして、その苦心のあとは、期限で調節しまして、大体サイザブルな口径の対外支払いというものを考えたわけでございます。したがって、その判断によりまして、それ以上支払いができるじゃないかと、または援助できるじゃないかという判断もありましょうけれども、一応今の時点に立って可能なところを一応想定いたしまして、年限の点を十分吟味しながらただいままでやってきたわけでございまして、一体それ以上にできるのかどうかという点は、これからの経済情勢に依存するわけでございまして、何とも申し上げられないところでございますが、ただ、御質問の点から、私どもが今後考えなければならぬ問題といたしましては、つまり賠償に伴う経済援助、協力にいたしましても、受けるほうの側からいうと、これをもう少し条件の甘いものをという当然向こうの要請があるわけでございます。それから、外国の、第三国の出方から見ると、日本条件より有利な条件をオファーしておるところが相当ございますので、私どもは今一つの岐路に立っておるわけでございます。一方において賠償という無償の協力をしておるのだから、他方経済協力はコマーシャル・ベースでやりましても、ウエィテッド・アバレージをとれば、日本の供与条件というものは相当低い条件になり、よその国よりはよくなるのだから、あなたのほうの内部操作でもう少し工夫すれば、りっぱに活用できるじゃないか。いいかえれば、今のコマーシャル・ベースの六分見当の借款というのがインドパキスタンでも動いておるし、また、賠償を受ける国にとってみれば、一方において無償の協力を受けるわけだから、この態勢でいいじゃないかという議論もあるわけでございますが、しかし、一方経済協力基金をパイプにして、これはあまり経済協力基金のほうはまだ動いておりませんけれども、ある程度この特別、コマーシャル・ベースでなくて、若干援助政策を加味した行き方をもう少し進めていいんじゃないかという議論とがございまして、今からの経済協力といたしましては、ある程度先方の要望を、第三国の出方などを見ながら、この方面をもう少し活用していくというようにすべきじゃないかという議論がございます。まだ最終的にきめておるわけじゃございませんけれども、そういう気運は動いてきておりまするし、そういうものを今部内で検討中でございます。問題は、いわば条件を今後どういうところを目安にやるか、そしてそれのにない手になる機関をどのように整備して参るかということが私どもの関心群でございまして、クレー報告云々とか、あるいはアメリカ対外援助政策があるからどうだというようなところよりは、むしろ日本側の事情のほうが大きなわれわれの判断においてウエートを占めておると思います。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 じゃ、もう一度その点を重ねてお尋ねしますが、今の大臣の最後の御答弁のところで、ある程度わかってはいるのですが、クレー報告が何を言おうとも、まあどういう要求といいますか、条件を示そうとも、日本日本としての立場があるし、それから日本経済的な事情もあるから、日本日本としての判断で、自主的に今後経済協力なり低開発国援助を進めるのだ。アメリカクレー報告に制約されることはないのだしこういうことですか、一言で言えば。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そう心得ております。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 その場合、援助する場合の受け入れ国の態勢ですね。相手国に対して、こういう目的で――目的はわかっておりますが、どういう方針でその相手国の受け入れ態勢というものはどういうものか。どういうことが望ましいのか。何かそういう一応の基準というものはあるのですか。要求があれば何でも話をするということなのか、その辺はどうなんですか、何か一応の指針というものはあるのですか。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これはなかなかむずかしいんでして、たとえばインドネシア外務大臣が参りましたときに、私も懇談したのでありますが、問題はインドネシア政府が――たとえばインドネシア政府を例にしますと、一体第一次産業、農業とかマイニングとか漁業とかいうようなものを固めていくことが政府政策なのか。それともいわゆる工業建設という点に重点がおかれているのか、どうなのか。政府の基本方針をまず確かめなければいかんと存じまして、これも聞いてみたんです。そうしたら、やはり前段のほうの、第一次所業から地道にいくんだということでございます。だから、そうすると、第一次産業をどのように整備していくかということについて、日本側にどういう役割が望ましいかという場合に、インドネシアはコンソーシアム、つまり債権国団を作って、方々の国からインドパキスタンが今やっているような、ああいうことは全然考えてないというのです。バイラテラルに日本からの援助を期待しているわけでございます。しかし、インドパキスタンは今言ったコンソーシアムというのが相当板についておりまして、そういう仕組みで動いてきたわけですし、今からも動かそうとしているわけでございます。それからビルマになると、インドネシアとやや傾向を同一にしまして、コンソーシアムなんかあまり考えていないわけでございますが、しかし、コマーシャルなベースでの借款というものはこなせない、そういう能力はない、そういう条件もないのだ。したがって、もう賠償はこれは無償ですから、一番動きやすいわけでございますが、それ以外の経済協力も、とても普通の借款では消化でなきいから無理だ、こういうわけでございまして、各国いろいろ考え方が違っているし、それぞれの置かれた条件が迷うようでございます。したがって、日本が対外経済協力政策をどう展開していくかという場合には、まず今、御指摘のように、受けるほうの側の国のことをもっと勉強するし、またその身になって、その国々が、経済の再建にどういうプログラムでいくのかを、よく踏まえてかからなければならんと思うのでございまして、日本側のいろいろ経済協力経済技術的な考慮をやる前に、まずそういう点も、今、十分踏まえてかからなければいかんじゃないかということで勉強いたしております。それと同時に、経済一画におきましては、たとえば所得倍増計画と一口に言いますけれども、あの中に、一体経済協力というのはどういう足場を与えられているのか、どのくらいの経済協力日本の成長の中でこなしていけるのか、そういうような点も、今まで比較的議論されておらないところなんです。したがって、われわれはそういう方面と日本側の事情、それから先方の事情、それから第三国の出方等を見ながら、一番賢明な指針を立てていかなければいけないと思うのです。幸いに賠償が動いておりますから、当面はこれでいけるわけですが、賠償が減って参りました段階で、裸で経済協力しなければならんという場合に、ちゃんとしたものを待たなければいかんというわけで、今から地固めをしておこうというわけで、せっかく勉強中ですが、まだこの勉強は中途でございまして、国会で御披露するところまで、まだ参っておりませんけれども、せっかく勉強中です。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 こういう理解でいいでしょうか。つまり賠償がだんだん減っていくので、今度はそれに見合うわけでもないが、それを上回る場合もあるでしょうけれども日本経済に応じての新しい裸の、純粋経済協力を今後検討するということだと思いますが、そういう場合、今後相当程度のいわゆる低開発国援助の名に値する援助というものを、どこの国に幾らということはないにしても、全体的にある程度今後推進するということを考えて、問題を検討されておるのかどうか。その辺をひとつ。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりです。
  31. 横川正市

    横川正市君 先ほど羽生さんへの答えに、日本のベースはくずさない。そういふうに外務大臣が答えられたんでありますけれども、私は、このクレー報告の中心になっておるものというのは、今まで相当、百三十億ドルにもなるような対外援助というものをやってみて、そのやった結果として必ずしも所期の目的を達しておらなかったというところに、援助についての再検討、こういうことになったんではないかと思うのです。それがその中心になって、結局アメリカ援助の中心というのが、少なくともアメリカの安全に寄与する、ないしは経済に寄与するという形の独立国であることを、非常にクレー報告の中でも要請いたしておるわけです。  私は、この極東における各国対外援助資金をもらっておる国の内情等考えてみますと、必ずしもどの国の情勢をもって見ても、対外援助資金が効率的に、効果的に運営されておったというふうには判断のできない状態というものが、随所に出てきておるわけです。そういう面とあわせて、キューバの事件以来、アメリカのいわゆる同盟国に対する要請といいますか、その点が非常に急激に態度を転換されてきているように報道されております。いわばアメリカの、援助に肩がわった援助というものを強く同盟国に要請するという格好になってくるのではないか。そういった点がこのクレー報告の中心ではないかというふうに思うわけでありますけれども、こういうアメリカの同盟国に対する要請が非常に厳しくなってくるという段階で、日本の場合には当然、この英国とか西ドイツとか日本とかというのは、最も対外援助に対してアメリカから強く要請をされる立場に立たされておるようでありますけれども、そういう立場に立たされておっても、なおかつ、この日本のベースというものは守っていくという、こういう考え方で進められるかどうか、この点をお聞きいたしたいと思います。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど羽生先生の御質問にもお答えしたとおり、クレー報告を新聞で拝見したんですけれども、あの思想は別に新しい問題じゃないのです。それは御案内のように、アメリカ政府自体の予算も、今年は百十九億ドルの赤字予算を初めから組んでおるわけです。今の進行年度におきましても、七十億内外の赤字ですね。それから国際収支も貿易面では黒字ですけれども援助があるので、ずっと四十億ドル内外の赤字でしたけれども、ずいぶんドル防衛に努力されて、それでも年間にいたしまして二十億以上の赤字だという状況が背景にあるわけでして、したがってケネディ大統領が私どもとの昼食会で言われたことも、ともかく強大なアメリカの国力をもってしても、現在やっていることは力を越えているということで――だからアメリカばかりに責任を食わさずに、先進国でそれぞれひとつしょってくれぬかという、こういう率直な発言だったと思うのです。これは別に新しいことでも何でもないわけでございます。そういうことをアメリカの大統領が言われたとしても別に不思議ではないので、きわめてあたりまえのことを言われたと思うのでございます。ところが今御指摘のように、それでは日本が同盟国としてアメリカ側にまあ少ししょってくれぬかと、こう言われた場合にどう受け取るかということは日本政府の問題でございまして、日本政府事情から申しますと、軍事協力はできない立場にあるわけで、そしてまた軍時協力ができないということについては、アメリカもよく承知しております。ひとつもそういうことを、それができるとはおっしゃっておりません。問題は経済協力でございます。経済協力日本経済成長に見合いまして、日本自体アジアにおいて永久の繁栄を確保せなければならぬ立場にある以上、日本の基本的な政策として経済援助を積極的に進めて参るということは当然のことでございまして、これはアメリカ側からそのような要請があったから考えるというのじゃなくて、それより以前から、日本としては当然のこととして考えて実行しつつあるわけでございまして、財政のほうが許せばもっともっとやっていいわけでございます。したがって、われわれが今なお堅持している経済協力を、前向きに、もう少し果敢にやっていこうということは、そのまま非常にアメリカとしても歓迎すべきことなんでございます。したがって、問題は今のアメリカ政府がそういう要請をしてきたから出てきたのじゃなくて、それより以前から日本政府として、そういう措置をとってきて、今後もそれを進めて参るということにちっとも痛痒を感じないのです。そういうことを続けていけばいいのだという意味で、私どもは何らの負い目を感ずることなく、自主的に、しかも自発的にやっていっておるわけでございまして、ますますこの経済協力というのは事情の許す限り進めて参ろう、これは政府の閣僚、各省当局みんなそういう考え方でございますので、私どもとしてはそういう協力を進めるのに、何らの障害物がない状況にあることは、非常にしあわせだと思っております。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 須藤委員が次に御質問のようでありますので、私一問だけで打ち切りますが、ただそういう今後も積極的に経済協力を進められる場合に、韓国に対する援助をやったから、その額がたとえば無位有償五億ドル、したがって日の低開発国というか、対外協力がこれで相当額やったなんていうことにすりかえられては、これは困りますから、これは一応私としては注文をつけておきます。  それからお尋ねしたいことは一つだけですが、この東南アジア諸国との今後の貿易関係で、特に先ほどもちょっと触れましたが、第一次産品中心に日本が貿易をやる、東南アジア諸国から第一次産品を輸入する場合に、日本の農産物との競合、それから日本の農業保穫政策との矛盾、これは本来農林省の関連のことですが、私は外務省としても非常に重大な問題だと思って、これが今後のアジア各国に対する経済協力なり交流なりの非常なキー・ポイントになるんじゃないかという感じがするのです。したがって、そういうことについて農林省とは別個に外務省として十分な用意をされておるのかどうか、どういうことを指向されておるのか、その点を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、東南アジア経済協力日本の農業問題というものは原理的には二律背反になるのです。なるのですけれども、しかし克明に見て参りますと、日本でできない農産物、それから日本の今の条件のもとで日本で始めることが非常に不利、そういうようなものがあるわけでございまして、そういった第一次産品は、どういう産品東南アジア諸国で栽培されて、そして日本へ輸入し得るかという対象をまず調査しなければなりません。これはいろいろ土壌、気性、その他相当技術調査をやらなければいかぬわけでございます。一度タイでトウモロコシでございましたか成功したのもございますが、ああいうつまり事前調査を相当やりまして、これは十分農林省当局とも打ち合わせた上で、日本の農業に支障ないもので、そしてしかも、それが非常に経済性を持たなければなりませんので、そういうような点を十分克明に調査をしていけば相当の分野があるわけでございます。そういうことを、今どういう仕組みでそういう事前調査というものを進めるかということを、今当面私どものほうで検討いたしておりまして、そういう分野は相当あると思っております。日本の農業問題、それとのフリクションは十分考えております。     ―――――――――――――
  35. 館哲二

    主査館哲二君) この際、分科担当委員の変更について御報告申し上げます。  本日付で田畑金光君が辞任されまして、その補欠として田上松衞君が選任されました。     ―――――――――――――
  36. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、日韓問題と基地問題について御質問したいと思います。まず第一に、日韓会談について外務大臣に御質問いたします。韓国の朴政権はまさに朝令暮改の状態ですね。二月十八日隠退声明を出し、宣誓式まであげておいて一カ月もたたない三月十六日には軍政の四年延期を声明しました。そうかと思うと、反対派から突き上げられると二日後の十八日に、三月末まで決定を延期するというような声明を出しておるような始末です。しかし憲法改正の国民投票をやってまだ三カ月もたたないうちに、まるで正反対の内容を持つところの国民投票をやるということを言い出しておる。全くネコの目のように変わっておると思うのです。そこで大臣は、三月十八日の本院の予算委員会で、山本伊三郎君の質問に対しましてこう答えておられる。「最近の韓国は、予想を越えた振幅の大きい政界の動揺を見ておるわけでございますが、」「今の段階でどう見るかというような点につきましては、自信を持ってお答えする用意がただいまのところございません。」と、こういうふうに大臣はお答えになっております。今日において、この段階においてお答えを願える用意ができたかどうかという点を、まず伺っておきたいと思います。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだ依然流動的であるようでありますから、いましばらく静観いたしたいと思います。
  38. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは、まだ大臣として国会で答える用意がないとおっしゃるんでしょうか、どうでしょうか。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今申しましたとおり、まだ動いておるようでございますので、しばらく静観さしていただかなければ、自信を持って申し上げるという段階ではございません。
  40. 須藤五郎

    須藤五郎君 政府はどういう見通しを持っておられるのか、当の交渉相手なんですからね、大臣は。だから他国の内政の問題であるから全然知らないとか、そういうことを言って済まされる問題ではないと思うのです。少なくも大臣は何らかの見通しを持って立っておられると思うのですが、その大臣の見通しについて伺っておきたい。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この間申し上げましたように、最近の韓国の政情というのは非常に目まぐるしく転回いたしておるわけでございまして、一体どういうおさまりになるものかという点につきましては、全く私どもも今確たる見通しを遺憾ながら持っておりません。ただ須藤さんが言われたように、交渉相手だということでございます。これはまさに交渉相手なんです。だから、ただ私ども交渉いたしておるのは、日韓の間の、たびたび申し上げますように懸案がいろいろあるので、それをどのように消化していくかということを究明検討いたしておるわけなのでございまして、そういうことは、韓国の政情いかんにかかわらず、私どもは怠っちゃいけないという態度で臨んでおるわけでございます。政界の帰趨がどうなるかという点につきましては、私どもも全くまだ見当がつかぬという状況でございます。
  42. 須藤五郎

    須藤五郎君 韓国が今後どういうふうな方向に発展していくかということについては、全く今のところまだ五里霧中だ、こういうふうに理解していいのですか。
  43. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 確たる見通しは立てにくいと思います。
  44. 須藤五郎

    須藤五郎君 はなはだ心もとない御答弁だと思うのですね。やはり日本の責任ある外務大臣とすれば、何らかの見通しを立てて、そして手を打っていかないと、とんでもないことになると思う。それとも今日の新しい事態から判断しまして、もしも大臣の考えの中に何らきまった考えも見通しもない、全く五里霧中だというならば、日韓会談は即刻私は中止するのが当然ではないかと思うのです。相手の帰趨も何もわからないで、そういうものを相手に日韓会談を続けるというようなことは、全く無意味なことであり、また実際にはできないことではないでしょうか。そして今までのことは全部白紙に返して、私は出直すのが当然だと、こういうふうに考えます。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その点は、僕は須藤さんと所見を異にするわけです。相手方が非常に困難な状況にあるというときには、やはり日本側はより深い友情をもって対処して差し上げるというのが道だろうと思うのでございまして、どのような転回、帰趨を見るのかまだわからぬというときには、御指摘のように、今は日韓の交渉がありますけれども、実費的には進展は遺憾ながら見ていないわけでございますけれども、これをしばらく待って、先方が安定して、建設的な御提案を待つという姿勢を日本政府はいよいよ固くしてあげるのが道だと思うのでございまして、この際打ち切るという気持は毛頭ございません。
  46. 須藤五郎

    須藤五郎君 しかし、相手のわからぬものを相手に交渉を続けるということは、はたして可能なんですか、全然今相手はわからないわけでしょう、だれと交渉していいか。けさの報道なんかによると、またこれが変わってくるような報道もされているし、それは大臣が見通しがつかぬとおっしゃるのは、私は本音であり、当然だろうと思うのです。そういう見通しのつかぬ相手を相手にして交渉を続けていこうということ自体が、私は非常に不合理なことではないかと思うのです。朴政権はもう今日ではその正体をはっきり暴露しておるわけですね。軍事ファッショであり、アメリカの完全なかいらいであることは、もうこれは世界じゅうに全部知れ渡ってしまっている。そうして完全に韓国の人民からは見離されているというのが私は今日の現状だと思うのです。そういう相手をつかまえて――人民から見離されている相手をつかまえて、交渉しようなどということは、これはとんでもない私はあやまちを犯すことになるのじゃないだろうかと思うのです。そこでアメリカは自分たちの失敗を何とかして取りとめようと思って、やっきになって、今度は露骨な内政干渉をアメリカが始めている。これも世界に対して周知のことだと思うのです。事態がここまではっきりしてきておるのに、なお会談を続けるというように、あなたはおっしゃりますが、先方が交渉を継続するからといって、崩壊寸前の政権と外交交渉を続けるなどということは、古今東西の歴史を通じて私は聞いたことがないと思うのです。そういうばかな交渉なんというものがあり得るでしょうか。常識的に考えましても、一応中止をして、これを白紙に戻して、相手がはっきりして、相手の状態が明確になってから、私はもう一ぺん交渉するならするというのが、これが当然ではないか。だから即刻に日韓会談を中止するのが当然ではないかと考えますが。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたが言うような意味ではっきり割り切って――割り切れないと私は思います。朴政権の能力、民衆の支持度合い等、これは須藤さんははっきり割り切っておられますけれども、そうはっきり割り切れないと私どもは考えております。したがって、こういう隣国の政府が苦悶中であればあるほど、先ほど申しましたように、私どもとしては、より深厚な友情をもって対処して差し上げるのが当然の道だと思うわけでございまして、今交渉が実質的には進展を見ていないことは遺憾でございますけれども、それを先方が安定をして参って、交渉に臨んでくるということを、私どもは期待しているわけなんでございまして、重ねて恐縮でございますが、打ち切るというような考えはございません。
  48. 須藤五郎

    須藤五郎君 須藤は割り切っているが、自分は割り切れないとおっしゃいますが、あなたが割り切れない理由は何ですか。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今の民政移管への振幅の激しい動揺でございますし、先方の動きというものの背景、その動因等、これはよほど克明に分析しないといけないわけでございまして、私どもも、そういうことを怠っているつもりはないわけでございますが、いろいろあっせんの動きも出ておりますし、もう少し事態を静かに見たほうが私はいいと思っております。
  50. 須藤五郎

    須藤五郎君 国民から見離された朴政権との取引ですね、国民の意思を無視した取引で真の友好新柳関係を打ち立てることはできないことは明らかだと思うんです。口先で幾ら国交正常化とか友好親善とか言っても、それは私はごまかしに過ぎないと思うんです。この期に及んでなお日韓会談を継続しよう、強行しようとする真意は何かと言えば、これは大臣アメリカに対する追従、反共、反朝鮮民主主義人民共和国、反中ソの政治軍平体制を固めること、その目的ではないでしょうか。
  51. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) よく須藤さんの言われるようなことを言われる方がおりますけれども、私どもはそういうふうに考えていないのでございます。日韓の間はたびたび申し上げますように、今日の時点において事実上の関係はあるし、貿易はやっておりまするし、人の交流はございまするし、また日本の国内には六十万の朝鮮人の方方がおられるわけで、こういう方々は祖国の動きというものに非常に心痛されておるわけでございまして、私どもは日韓の国交正常化は望ましいと、そのために前提に横たわるもろもろの懸案をどうしてほぐしていくかということは、たびたび私が申し上げておりますように、外務当局といたしましては、一日も忘れてはならぬことなんでございますのと同崎に、今日あるがままの日韓関係というものを踏まえてかからないと、先方が困難な状況にあるからしばらく見放すのだというような、ぞんざいな外交方針をとっておれば、私は日本国民から私の責任を問われると思うのでございます。したがって私どもは、普通あるべき外交的姿勢というものは、当然こうあるべきだと思ってやっておるわけでございまして、その点どうも意見の合致をみないのは非常に遺憾に思います。
  52. 須藤五郎

    須藤五郎君 しかし日韓会談をアメリカが非常にプッシュして――促進をアメリカがやかましいということも、これも事実、それから日韓関係が成立した暁には、おそらくNEATOの軍事同盟が結ばれるだろうということも、これも世界が認めておる、日本国民の常識になっておる点だと思うんです。その点大臣はどういうふうに考えるんですか。
  53. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう先入主はお持ち願わぬようにお願いしたいと思うんです。アメリカ側が日韓交渉、日韓正常化を希望されておりますけれどもアメリカが一々このことで私のところへ注文はきておりません。これは日韓の間の問題でございまして、自主的に私どもがやることでございますということを、たびたび私は本院を通じても申し上げてあるわけです。  それからNEATO結成なんということは、私どもも、どうしてそんなことを言われるのか私は全く常識を――その方々の考え方を理解できないんです。なぜならば、安保条約を結ぶときに、もう日本アメリカとの間の安全保障上の協力は日本アメリカでやるんだということを、最終的に長い村議を通じてきめたわけでございまして、アメリカ日本を含めたNEATOなんということは頭から考えておりませんし、それからまたフィリピンだとかその他の国々、台湾の国民政府にいたしましても、日本とのNEATOなんということはてんで頭から考えていないわけでございます。にもかかわらず、日本の一部にNEATO結成だ何だというのは、僕は世界から笑われると思うわけです。その点がもしも、そういう先入主をお持ちでございますれば、それははっきりともう御一掃いただかないと、議論が紛糾するばかりでございまして、非常な私は迷惑を感ずるのです。
  54. 須藤五郎

    須藤五郎君 では外務大臣は、NEATOなど絶対やらないと、こうはっきりおっしゃることができるわけですね。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私が申し上げるばかりでなく、政府はたびたび申し上げていることなんでございまして、それはすなおにおとり願いたいと思うのでございます。もうひとつ、今からNEATOは言わないようにしてもらいたい。
  56. 須藤五郎

    須藤五郎君 今回のことで、アメリカはずいぶん露骨な干渉をやっておると思うのですよ。韓国の政治情勢に対して、二月十八日の引返声明の直前、二月十四日のバーガー・金鍾泌会談で、バーガーが韓国の予算の三分の一以上にのぼる児返り資金と援助外貨の使用を禁じ、余剰農産物の放出も承認せず、金と朴の引退についての態度決定を迫ったと伝えられております。これは日本の新聞にもちやんとそのことが出ておりますし、また金鍾泌が日本に来て、東京新聞の記者との談話でもそういう意味のことをはっきり言っておるのを見ましても明らかだと思います。そうして引退声明が出るとすぐ、米国務省は大量の余剰農産物の提供を決定した。こういうふうに、今度はアメリカはずいぶん露骨な干渉をやっておるのです。これは援助などと体裁のいいことをいっておりますが、それは全部植民地支配、その道具に過ぎないと私どもは考えますが、大臣はいかがでしょう。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 須藤さんの御暦間は、新聞の記事をごらんになって、あなた特有の判断をされているものと思うのですけれども、私は対外援助方針というのは、もうアメリカのほうできまっておりまして、そうしてそれの一環として各地域に行なわれておるわけでございまして、韓国の政情がこんとんとしているし、民政移管へスムーズにいかぬ事情であるから、援助政策を――対柳援助方針を変えるのだというようなことを伺っておりません。今度の政情にからんで、対韓援助アメリカが変えるというようなことは、これは新聞が色めがねで観測記事を書いているに過ぎないのでありまして、私ども承知している範囲におきましては、アメリカの対韓援助方針というようなものが、今度の政情によって変わったとは見ておりません。  それから第二次世界大戦という、史上空前の規模において、深さにおいてたいへんな戦争が行なわれたわけでございます。この戦争それ自体もたいへんでございましたが、第二次世界大戦後の戦後経営というものを、どうやっていくのかということは、私はもう世界の各首脳は相当苦悶をしていると思うのです。定律した国際的ルールもないし、相当のとまどいを、人知全体が、第二次世界大戦の跡始末について苦労いたしておるわけでございまして、アメリカの対韓の方針につきましても、アメリカも神様じゃございませんから、全部が全部成功的であるとは言いかねるかもしれませんけれども、みんな苦悶をしているわけでございますから、戦後経営というものにつきまして、既成の概念でとらえるには、少し問題がむずかし過ぎるわけなんですが、相当私は各国政府政策というものに、割引をして評価をして差し上げないと、多少私は無理じゃないかと思う、一々のケースを取り上げて批評されますと。私は申し上げられることは、対韓援助方針というものは今回の事件を契機にして変えたというようなことには私は承知していないわけです。
  58. 須藤五郎

    須藤五郎君 大臣は新聞の記事などは頭から否定しておられると思うんですがね、今のお話では。しかし、新聞記者といえどもそんな無責任な記事は書きませんよ。もしもそんな無責任な記事を書くなら新聞の信頼に関することですから、私たちはある程度やっぱり新聞の記事を信頼する以外に道はないと思うんです。一つの新聞だけじゃなしに、たくさんの新聞がそういうことを書くんです。だからやっぱり新聞の記事は信用しなければ――大臣の言葉と新聞の記事とどっちを信用するかといったら、僕はやっぱり大臣の言葉より新聞の記事を信用するということになりますよ。大臣アメリカ経済援助政策が変わらぬと言っていますが、一九六一年の二月に締結されました米韓経済協力協定によりまして、予算編成にあたりましては、アメリカの承継が必要だということになっていますね。韓国の予算の編成にあたってはアメリカの承認が必要だということになっている。見返り資金収入が韓国財政の五割前後を占めている事実を大臣は認められた。児返り資金はアメリカの承認なくしては使えない。こういうことに一九六一年二月に締結された米韓経済協力協定によってそういうふうにきめられておるんです。この兄返り資金の使用につきましては、日本もかつて経験をしたことがあるわけなんですが、国家財政の半分を兄返り資金が占め、その使用がアメリカのオーケーなしに使えないというならば、予算の編成権は韓国にないということは明らかではないでしょうか。幾らアメリカ経済協力によって内政に干渉するようなことがないとおっしゃっても、条約上、法律上そうなっているんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは米韓の問題でありまして、日本政府の問題じゃないと思います。
  60. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、先ほどアメリカの韓国に対する内政干渉の問題で話をしているんです。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) だから私が申し上げたのは、アメリカの対峠援助政策は今度の事件で変わったもんじゃない、アメリカ既定の方針だと、私はそう思っておりますということを申し上げたわけでございます。米韓の協定によってどのようにやっておりますかというようなことに対する批評は、これは日本政府がすべきものじゃなくて、米韓の問題だと思います。
  62. 須藤五郎

    須藤五郎君 私が質問していますのは、大臣経済援助などと体裁のいいことを言っているけれども、それは全部植民地交配の道具にアメリカがしているのではないかという点なんです。そのために一九六一年、こういう協力協定ができているが、その内容を見てもやはり植民地支配の道具として経済協力援助がやられている、こうではないかということを私は大臣質問している。
  63. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま須藤先生御質問の一九六一年の米韓経済協定、前にこういう御質問が実はございまして、私も米韓協定を調べてみたのですが、韓国の予算全体についてアメリカの承認が要る、こういうふうにはなっていないようでございます。アメリカが出す経済援助関連してその使い方、あるいは見返り資金の使い方だとか、これについては相談することになっています。
  64. 須藤五郎

    須藤五郎君 その見返り資金が韓国の財政収入の五側前後を占めているということ、この見返り資金の占めるパーセントが非常に大きいでしょう。それらについてアメリカの承諾がなかったら使えないというようなことになれば、予算編成権もアメリカに握られていることと同じじゃないですか。予算の半分以上の金がアメリカの許可なしには使えないというならば、そういうことが言えるんじゃないですか。それは論弁じゃないですか。
  65. 中川融

    政府委員(中川融君) アメリカ経済援助に基づく児返り資金が、韓国の予算の相当部面を占めている、これは事実でございます。しかしながら、アメリカが、見返り資金の使い方について、いわばひもをつけたというのは、韓国の経済を支配しようという意図からではないと思うのでございまして、これは例のマーシャル・プランをアメリカが、ヨーロッパ各国にやりました際も、やはり同じような条件がついているわけでございます。その援助に基づく見返り資金の使い方については、やはりアメリカと相談する。これは日本の場合も先ほど先生のおっしゃったとおり、同じようなやり方になっておったわけでございます。まあ、アメリカ一つの一貫した方針であると思うのでございます。結果的には、なるほど予算の相当部面を、アメリカにも相談しなくては使えないような仕組みになるわけでございます。これは、韓国の経済支配をしようとする意図でできたのじゃないというのが、すなおな解釈じゃないかと思います。
  66. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなた方は、かつてわれわれ日本が置かれた立場、それを十分に味わってきたわけです。それでもまだ土性骨がなおらぬと言わなければならない、そんな考え方を持っているのでは。もう十分われわれは味わってきた、それを、今韓国が味わっているのです。アメリカが何と言おうと、アメリカ経済援助はそういうひもつきなんですよ。そうして韓国の財政、軍事全般的に自分の思うとおりに動かしている。というのは、すなわちそれが植民地支配なんです。そういうことで、あなた方は事アメリカのことになると非常に遠慮するよりも非常に同情と深い理解を持っておられるようですが、はなはだ私遺憾だと思う。もっとあなたちゃんとした、姿勢を正して、池田さんがよく言う、政治の姿勢を正して、はっきりとやったらどうですか。おかしいですよ、あなたたちの言うことは。  時間もないような紙が回っておりますので、少し先を急ぐことといたしますが、軍政延長を声明した直後の三月二十日、メロイ第八軍司令官が、アメリカの「態度を支持しないときは、首都防衛軍に武器弾薬を補給しない」と圧力をかけた。また、経済援助の打ち切り、削減をちらつかせて、ワシントンに従がえと強要しております。これは三月二十二日の朝日新聞の記事です。それから「首都防衛軍だけは、国連軍の指揮を放れる朴議長の手兵なのである。」こう言っているのです。こういうことを逆に言いましたならば、軍の統率権は全部アメリカの手で握られている、こういうことになると思うのです。アメリカはその政策遂行上、必要に応じまして軍の政治的中立ということを言います。それは二月十八日の声明の際に、三軍の司令官が建議をして、軍の政治的中立ということを建議しております。この三軍の司令官というのは、これはアメリカ軍に握られている、指揮下にある軍隊です。だからアメリカ軍の声明と考えて差しつかえない問題だと思います。そうかと思うと、今度は、先ほど申し上げましたような政治的な圧力をかけてきている。これから見ましてもアメリカ経済援助内容というものは、はっきりと私はすると思うのですが、この軍事的な支配というものにつきまして、外務大臣はどういうふにうお考えになっていらっしゃいますか。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは米韓の問題でございまして、日本政府の関知するところじゃございませんです。あなたの、私に御質問されるのは無理かと思います。
  68. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは外務大臣は何も知らぬとおっしゃるのですか。こういうことについてどういう……。何も考えを持っていらっしゃらぬというのですか。どうなんです。われわれは、あなたの意見じゃこれから日韓会談を続けていこうという相手国のことでしょう。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は、日韓の国交の正常化に関心を持っておりますが、韓国の内政に干渉めいた発言をすることはできません。
  70. 須藤五郎

    須藤五郎君 韓米協定で韓国三軍統帥権は国連軍司令官の手に握られている、李承晩とマッカーサーとの往復書簡でもそういうことが確認されているということを御存じですか。どうでしょうか。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 韓国の内政の問題には、私は言及いたしたくございません。
  72. 須藤五郎

    須藤五郎君 えらい遠慮ですなあ。それじゃあこういう事実はあるともないともお答えないのですか。外務当局どうですか。韓国の三軍の統帥権が国連軍の司令官の手中にあるということはこれは事実でしょう。
  73. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御指摘のとおり、書簡によって、国連軍という立場において米軍も韓国軍も一つの国連軍を編成して、メロイ将軍がその国連軍指揮官という資格において韓国軍もその統率のもとに持っているわけであります。
  74. 須藤五郎

    須藤五郎君 だから、アメリカ経済協定でとにかく予算の編成権まで握り、財政的な面ではそういうふうに韓国を握り、そうして軍政においては軍事力のほうではこういうふうに三軍の指揮権を握り、経済、事事面面から韓国を牛耳っている。これが完全な植民地支配というものです。全くそういう状態だということがこれでも私ははっきりすると思うのです。  それではお伺いしますが、米韓相互防衛条約が結ばれておりますが、行政協定が結ばれたということを聞いたことはないのですが、行政協定は結ばれているのですか、どうですか。
  75. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 目下交渉中というふうに聞いております。
  76. 須藤五郎

    須藤五郎君 行政協定さえないのですから、アメリカ軍オールマイティなんです。その上、今申しましたように、予算編成権もなければ、三軍の統帥権もない、全部アメリカに握られている、そんな独立国というものがありますか。私はないと思うのです。その絵にかいたもちのような独立国を相手に、日本外務大臣ともあろうあなたがむきになって交渉するというのは全くおかしいことじゃないでしょうか。私はこれは噴飯ものだと思うのです。私は一カ月前、前後の事態の発展はますますその正体を全世界の前に暴露していると思うのです。今後軍政が継続しても、民政移管が実現しても、そのどっちにしましても、アメリカの干渉なしには解決しない。必ず干渉は強まってくると思う。これは当然のこととして人民の反米闘争が激化することは避けられない、こういうふうに考えます。  二月二十六日のジャパン・タイムズに政府与党内に――日本のことです――政府与党内にアメリカの対韓政策への批判高まるという記事が載っておりますが、あなた方もそう見ているのではないでしょうか。アメリカのやり方があまりにへたくそだという気持が皆さんの中にあるのじゃないですか。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私さきに申しましたように、第二次大戦後の戦後経営という問題は人類にとって非常にむずかしい課題だと思うのでございまして、まあ十九世紀的な概念ではっきり割り切っていくには事態が少し大きいし、複雑じゃないかと思うのです。直ちに植民地支配云々というようなそういう既成概念を駆使してとらえるには事態がもう少しむずかしいという気がするわけでございます。したがって、アメリカが戦後に軍事援助経済援助等を通じていろいろの世界政策をやられておりますけれども、これはそれなりにむずかしい課題と取っ組んでおられると思うのでございます。私はそういう意味で米国の対韓政策という問題も観察しなければならぬと思うわけでございます。私どもとして言い得ることは、一日も早く韓国が安定を回復いたしまして、そして私どもが長い懸案として苦心いたしておりまする懸案を通じて正常化への基礎ができるようにひたすら希望いたしておるというのが偽らない心境でございます。
  78. 須藤五郎

    須藤五郎君 問題は、アメリカの植民地支配そのものに私はあると思うのですよ。ところで、国連は今日、一体どんな役判を果たしているのか。いわゆる国連軍はどういう動きをしているのか。国連朝鮮統一復興委員会すなわち国連監視委員会はどんな動きをしているのか。これは一体、国連監視委員会は今回の事態とその見通しについてどういう見解をとっているのか、この点、大臣、答えて下さい。
  79. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 国連監視委員会につきましては、今度の国連総会におきましても決議がなされまして、引き続いてその活動を継続し、そうして国連決議に基づくこの朝鮮の統一が行なわれるように尽力するという趣旨の決議ができているわけでございます。それに基づき、それの一環といたしまして昨年の暮れに例の憲法改正草案の国民投票が行なわれましたときも、あそこにあります国連委員会はその国民投票の状況を視察いたしまして、それが公正に行なわれたという報告を出しているわけでございます。今度の政変と申しますか、政局動揺に対しまして、この委員会がどういう活動をしているかということについては別に情報は入っておりません。
  80. 須藤五郎

    須藤五郎君 国連監視委員会は事態を静観しているということじゃないかと思うのですがね。すなわち結局アメリカが今日戸惑っているのだ、日本外務大臣も戸惑っているごとくアメリカも戸惑っているのだ、何の方策も見出せない、そのうちにアメリカのやり方を合理化する見解が私は出てくるのではないかと、こういうふうに思うのす。そのときになると、日本外務大臣アメリカのしり馬に乗って得々と見解を表明されるのではなかろうかと、私はそういうふうに想像するのですがそれが私は落ちだろうと思うのです。国連監視委員会は今まで一貫してアメリカの代弁を努めて、その合理化に努めてきたのです。ところが、この委員会報告を出すとたんに反対の事態が起きているということは皆さんも御存じのとおり。李承晩末期の選挙のときに民主的努力が圧倒的勝利を占めたという報告が国連に出されるとたんに李承晩政権が崩壊してしまった、張勉政権のとき、張勉政権は安定しているという報告が国連にいくというと、とたんにクーデターが起こった。それから韓国の経済情勢はどうか、経済情勢は安定しております、こういうふうな報告を出すと、今度は経済状態が急激な悪化を来たしている。今度も朴が民政移管への着実な努力をされている、こういうふうな報告がいくというと、とたんに軍政だということになってくる。こういうふうに報告がいくとそのすぐ直後に逆の状態が起こっている。人民の意思を無視して、情勢の発展を冷静に客観的に見ようとせず、アメリカのかいらいの合理化にのみきゅうきゅとしてきた結果、常に見通しを誤ってきたわけです。事態は全部逆になっております。国連の名をはずかしめる最も典型的、代表的な例であり、恥さらしの見本だと言わなければならぬと思うのです。しかも平和を乱す役割しか果たしていない国連軍、国連監視委員会のようなものは即刻解放させ、撤退させるべきではないでしょうか。国連尊重をするという日本ならば、日本が率先して国連に国連軍の解放、撤退を提起すべきではないかと、こういうように考えますが、これに対しまして、大臣はどういうようにお考えになっていらっしゃいますか。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国連における朝鮮政策につきましては、わが国も終始協力をいたしておるわけでございまして、今の国連の対韓政策というものを支持して、その成功を庶幾いたしておりまして、撤退を求めるというようなことは毛頭ありません。
  82. 館哲二

    主査館哲二君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止
  83. 館哲二

    主査館哲二君) 速記を始めて。
  84. 須藤五郎

    須藤五郎君 結局、国民の怒りをそらしながら、あくまでも植民地支配を続けていこうというアメリカの考え方、それが今度のまた三十八度線に首をもたげてきているということを私は心配するものなんです。韓国のああいう政情の中でアメリカはどんどんと失敗を重ねていく。だから韓国の政権は、朴政権がやろうと何がやろうと、ほんとうの民主的な政権ができない限り維持することができないような条件がきているわけです。それを何とかして延ばそうとして今度三十八度線でまた韓国軍を使嗾して問題を起こそうとしているということがソウル放送として、三月二十日北朝鮮軍が侵入した、それで少し撃ち合いが起こったというような記事になって現われていると思うのですが、こういうことをやろうとしている。前の朝鮮戦争の二の舞をやって、そういうことによって辛うじてアメリカの勢力を維持していこうというような計画があるやに私たちは判断するのです。こういう問題に関して、日本外務大臣はどういうふうなお考えを待って対処していこうとしておられますか。伺って私の外務省に対する質問を終わることにいたします。
  85. 館哲二

    主査館哲二君) 速記をちょっととめて。   〔速記中止
  86. 館哲二

    主査館哲二君) 速記を始めて。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたとおり、私どもといたしましては、韓国の政情いかんにかかわらず、国交正常化への願いを持ちまして、お話し合いが先方からございますればこれを討議するという態度に寸毫の変更もございません。ただ、韓国の政情につきましては十分慎重に見守っていくという態度でおるわけでございます。
  88. 館哲二

    主査館哲二君) では杉原君、今の事情をお含みの上、御質問願います。
  89. 杉原荒太

    杉原荒太君 とっくに含んでいるのですが、もう時間が二、三分しかありませんから簡単にお尋ねいたします。  最初に、一番初め羽生さんが質問されたことに関連することでありますが、外務大臣答弁の中でも述べられたように、対外経済協力基金というものは実際上あまり十分に動いていないというのが事実だと思います。その動いていない原因は一体どこにあるのか。また、今後改善の方策の方向の大筋についてどういう考えをしておられますか、関係省との間にもいろいろ御相談になっておるということでありますが、外務大臣としてはどういうふうな基本的な考え方でおられるか。その点だけ外務大臣の御意見をお尋ねしたいと思います。
  90. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私が承知しておるところでは、賠償支払いというのは本筋の仕事として進められ、そうして賠償債務を見返りに、それを担保にアドバンスしてし貸付けるというようなことが今までの仕事の主力であったと思うのでございます。したがって、普通の借款ということに対して、先方もたいして要望を事実持って参っていなかった。少々のことはございましたけれども、持ち出さなかったということがただいままでの経緯でございますが、なぜそうなったかと申し上げると……。
  91. 杉原荒太

    杉原荒太君 ちょっと話し中失礼ですが、私の聞いたのは、対外経済協力の問題一般ではなくして、いわゆる対外経済協力基金のことなんですから、それに限定してひとつ……。
  92. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それでは基金のほうを担当しておる局長からひとつ正確に。
  93. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) ただいまの御質問でございますが、御承知のように、経済協力基金というのは二年前にできたわけでございます。それまでは、わが国では、日本輸出入銀行経済協力の要請に応じてきた……。
  94. 杉原荒太

    杉原荒太君 いや、もっと簡単に。外務大臣、急いでおられるから。
  95. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) それで、結局、輸銀がある程度経済協力ができるということになっておりますので、日本では、まず輸銀に行く。そして輸銀でどうしても処理できないものが協力基金に行くという制度になっておりますので、そのために経済協力基金が実際に動いていないというのが実情でございます。この点は、関係省の間でも、目下何とかもう少し基金を活用するようにという方途について検討中でございます。
  96. 杉原荒太

    杉原荒太君 そこで私の聞いているのは、まあ現在の点も十分じゃないと思うけれども、今後、まあ過去のことを幾ら言ってもしようがないから、今後どういうふうに一体これを改善するのか。改善するとすればどういう方向で、今こまかいことはわからぬだろうから、少なくとも外務省としてはどういう方向で、これはむしろ外務大臣の御意見を聞きたかったから外務大臣においで願ったのですが、方向だけでいいです、大筋だけ。
  97. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) これは実は大臣ともよく御相談する間がなかったのでございますが、まず関係各省との間の事務的な意見をまとめようということで、御承知のように、なかなか問題が多いものでございますから、しかし、今申し上げましたように、結局、まず輸銀に行ってそれから基金にということでありますと、なかなか基金が活用できない。それで、ある案件はもうこれはいきなり基金で取り扱うべきである――これはまだ具体的に総額がきまったわけではございませんが、たとえば海外投資というような場合には、これは輸銀でもできることになっておりますが、基金でやってはどうか。また、借款につきましても、非常に長期のもの、あるいは低利を要するものというようなものは、いきなり基金で取り上げるということにしてはどうかというような大筋を考えておるわけでございます。
  98. 杉原荒太

    杉原荒太君 これはいずれまた別な機会に聞きます。もう一点、コンゴ問題と国連との関係、いつぞやアメリカの新聞だったと思いますが、とにかくコンゴ問題がああいうふうになっておって、直接には国連の財政危機を来たし、ひいては国連の権威というものが非常に低下している。非常にみんな憂慮しておる。そして国連の専務総長あたりは、コンゴの現地の情勢とも関連があるわけですけれども、なるべく本年一ぱいぐらいには国連軍を引き揚げるようにもっていきたいものだということを語ったというようなことが出ておったが、一体現地の情勢というものはそういうことが可能なような情勢か。あるいはまた、できるだけそういった方向で、もちろん適当な監視機構などは必要だろうけれども、また、あるいはほんのシンボルとしての兵力は必要だろうけれども、非常に膨大な経費がかかる。これは何とかして早く脱却したいという努力、そういうものについて、日本として、これは日本だけでできることじゃないけれども、しかし、日本としては、国連においてこの問題に対してはどいうふうな態度、方針でやっていこうとしておられるのか、その点を聞きたい。
  99. 高橋覺

    政府委員(高橋覺君) お答えをいたします。コンゴ問題は、今仰せのとおり、最近大体片がついたと申しますか、一応現地の情勢も平静になっておりまして、それで、今までのところは、費用といたしまして、事務総長が月に一千万ドルずつ支出する権限を与えられて、一千万ドルのワク内でやっております。これがこの三月あるいは四月ごろから八百万ドルぐらいには減らせるのじゃないか。と申しますと、ある程度軍隊の減少することが可能になってきているように思われるわけであります。まあだんだん現地の状態が平静になるに従いまして、軍隊を引き、それから今後は経済援助も、国連を通じて一般の今までの軍隊の派遣にかわって、いろいろな技術援助経済の復興に対する援助をしようというのが、事務総長などの目算のようでございます。
  100. 杉原荒太

    杉原荒太君 その軍隊を引き揚げる時期、大体その時期などについてはどういうふうな見込みになっているか。今全然見込みは立たぬのかどうか、その辺のところ、どうです。
  101. 高橋覺

    政府委員(高橋覺君) 今申しましたように、今国連がコンゴに送っております兵隊がたしか一万八千から二万の間だと思います。で、これをある程度三月ごろになったら若干は引ける。で、だんだん減らしていく。で、その先のほうのめどはまだはっきりついていないようでございます。
  102. 杉原荒太

    杉原荒太君 それじゃそのほか二点ばかり、ごく事務的なことですが、特殊語学をやる者の養成ですね。その中で、きょうは特に僕は聞きたいのは、朝鮮語をやる者の養成です。それは特にいろいろ、上級、中級、下級というふうにあるいはあるかもしれぬが、一体上級――上級と言っちゃ何だが、そういう点について特に朝鮮語の研修、修習、そういうものを朝鮮語に要するに通じた者を養成するということについて、どれくらいの力を入れてやろうとしておるかということを、具体的に数字で言うと何人ぐらい、予算などでも持っておるか。それを聞きたい。
  103. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 予算上の数字は会計課長からあとで申し上げることにいたしまして、人数といたしましては、大体二年に一名ぐらいの割で天理外語へ入学いたしまして――現地へまだ出せないものでございますから、天理外語で韓国語の研修を受けております。
  104. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 年限によっていろいろ金額は変わっておりますが、ちょっと現在のところ……。
  105. 杉原荒太

    杉原荒太君 いや、本年、新年度の予算では幾らぐらい……。
  106. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 研修予算の中に入れておりますが……。
  107. 杉原荒太

    杉原荒太君 いや、人数。この予算で見ておる人数などは一体何人か。
  108. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 大体一名程度ということになっております。
  109. 杉原荒太

    杉原荒太君 それはどのくらいのクラスの人です。
  110. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 上級のいわゆる朝鮮語の専門家を作るという形でございます。
  111. 杉原荒太

    杉原荒太君 上級というのは、外交官試験などを通った人ですか。
  112. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) いや、現在までやっておりますのは、中級試験を通った人間にこれを研修させまして、朝鮮語の専門家を作っております。
  113. 杉原荒太

    杉原荒太君 それから、ここの順序で言うと一番おしまいのほうになるのだけれども、十六あるいは十七に関連することだが、台湾のもとの州の公吏というか――の人たちの恩給の問題で、前からこれは外務省でもずいぶん調査をしておるわけだけれども、一体これは外務省のほうでは、どういうふうにしようとしておられるのか、それをお聞きしたい。僕は前からあるいは外務省にもその点を特に聞いて、書きものにしてその実情をほしいということで、まだもらっていないのだが…。
  114. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) この問題につきまして前々から杉原先生の御関心ありましたことは承知しているのでございますが、御存知のとおり、これは地方公共団体の退隠料等の問題でございまして、それにつきましては昭和三十二年の恩給関係審議会の答申で、これを恩給法改正によって払えるようにすることについては問題があるという答申がされておりますので、外務省といたしましても、戦時補償全般の問題の一環として、原則上相当慎重な考慮を要するということでございまして、まだ具体的の解決案まで到達しておらない状況でございます。
  115. 杉原荒太

    杉原荒太君 恩給の問題としてこれを処理するということはむずかしいとすれば、ほかのどういうふうな処理の仕方が考え得るのか、その辺について外務省、どう考えておるのか。
  116. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) ほかとの関連の問題がございますので、具体的にまだ、恩給法のワク外でどういうふうな解決法をとるかということについて、具体案を出すに至っておりません。
  117. 杉原荒太

    杉原荒太君 前から僕は頼んでおるのだけれども、その関係のを、今までの経過それから今後に対する、どういうふうにやっていこうとしておられるのか、書きものにしてあとで下さい。
  118. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 承知いたしました。
  119. 杉原荒太

    杉原荒太君 至急下さいね。
  120. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) はあ。
  121. 須藤五郎

    須藤五郎君 外務省並びに防衛庁関係の方にお尋ねするわけですが、板付基地はまた拡張されているように聞いておりますが、その工事は今どのくらい進捗されているか。板付基地の拡張工事の概略をできるだけ詳しく説明してもらいたい。
  122. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 板付の飛行場の施設の延長の問題でございますが、御承知のように、一昨年滑走路の延長に安全施策を設置するということで、土地の買収、借り入れをいたしたわけでございます。土地を買収しまして、現在オーバーランと進入灯の施設の設置の工事をいたしております。すでにオーバーラン並びに安全灯施設の、進入灯施設の工事については、大部分ほとんど完了に近いところまで進んでおります。
  123. 須藤五郎

    須藤五郎君 その工事をやる問題で何か問題が起こっているということを聞いておりますが、そのあらましを。
  124. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 現在板付飛行場の工事に関して問題の起こっておる点は、オーバーランの設置個所の中に県道が通っておる。その県道の補修については、従来県道の管理者である県当局と協議をして参ったのであります。本年に入りまして、ほぼ県道の補修についての御了解を得たので、県道の補修にかかったのでございますが、かれこれ意思の疎通を欠いたために、まだ県道の補修を完了するというところまで至っておりません。
  125. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたごまかしちゃいけませんよ。これはなんでしょう。二月二十日完了目標で県道の掘り返しをやったということですが、県道を掘るときに、県と当局との了解は現在やっているのと全く違うのでしょう。県が了解を与えたことは、工事の規模と範囲という中で、長さ五・七メートル、これは県道の幅ですね。県道を横切るわけでしょう、工事するのに。それから掘る幅は一・八メートル。いいですか、一・八メートル、深さは一・二メートル、こういう条件のもとで県は了解したんでしょう。ところが、現実にやったことは違うじゃないですか、全く。現実にやったことをあなた知っているんですか。知っておったら、申し述べて下さい。
  126. 林一夫

    政府委員(林一夫君) この県道の補修につきましては、具と協議いたしまして、ほぼ……。
  127. 須藤五郎

    須藤五郎君 補修の問題を言っているんじゃないですよ。この工事にあたって県と当局とが約束したことは、私が今申し述べたことです。ところが、実際にやったことは、全く違ったことをやっているんです。それを知っているかと言うんです。
  128. 林一夫

    政府委員(林一夫君) ただいま申しましたように、県道の補修のことについて県とほぼ了解がつきました。その工事をいたしたのでございます。その工事が行き過ぎがあるというようなことで、県からちょっと待ってくれというようなことがございまして、県道の工事を現在中止しておる次第でございます。この県道の補修については、現在県と協議をいたしておる次第でございます。
  129. 須藤五郎

    須藤五郎君 行き過ぎるにもほどがありますよ。長さ五・七メートル、幅下八メートル、深さ一・二メートル、こういう約束でした工事に対してですよ。県道一・八メートルの幅どころじゃないんです。七十メートルの幅を掘ってしまったんですよ。間違いにもほどがあるじゃないですか。一・八メートルの幅を掘るというのに七十メートルも掘るというのは何ごとですか。これには一つの意図があるわけです。ちゃんと隠された意図がある。七十メートルというと、板付飛行場の滑走路の幅なんです、そこへ来ておる。滑走路の幅だけ県道を掘り返してしまった。ということは、滑走路を作ろうという意図です、そこへ。それで県当局も困ってしまった。何のために七十メートルを掘ったんです。言ってごらんなさい。
  130. 林一夫

    政府委員(林一夫君) この県道の補修につきまして、下五メートルとか、幅がどうのこうのというようなことについては、別に約束をしておるわけではございません。今まで通っておりました県道の補修について大体の御了解を得ましたので、工事をいたした次第でございます。その工事が行き過ぎであったということで、児からちょっと待ってくれという中止の話がございまして、現在協議を進めておるという状況でございます、
  131. 須藤五郎

    須藤五郎君 でたらめを言っちゃいかぬ。本年一月十七日、よく聞いておきなさいよ、福岡防衛施設局の中村次一長が県土木部を訪れ、県道に埋設するケーブル土下の緊急性を訴えて、県の許可を申請した。県では、この申請を検討し、翌十八日には、持ち回り決済によって次の条件付で工事を許可した。いいですか、許可の内容アメリカ軍の工事による磁気ケーブル埋設、進入誘導灯の工事、配電工事を認め、次の条件を付した。  一、工事の着工、竣工の際は、福岡土木事務所に届け出て指示、許可を受けること。二、一般交通に支障がないようにすること。(通路の完全閉鎖を許さないという意味と考えられる)これはこっちの考えです。三、既定の工事標識を告示すること。四、竣工の際における道路面の復旧は原形に復すること。工事の規模と範囲、長さ五・七メートル――県道の幅員です。それから幅下八メートル、深さ一・二メートル、こういう工事の規模と範囲をきめて、そうして許可をしたんです。ところが、今言ったように、一・八メートル――五・七メートルの長さで幅を一・八メートル掘るという条件でやったにもかかわらず、長さ五・七メートル、幅七十メートルの道を掘り返してしまった。何の目的でそういうことをしたか答えられますか。あまりに間違いにもほどがあるじゃないですか。一・八メートルと七十メートルですよ。三十-四十倍近い幅を掘っちゃっているんです。これはどういうことになりますか。
  132. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 先ほどから申し上げましたとおり、この県道の補修につきましては、県のほうから補修してもらいたいという申し入れがありましたので、その当時の県道を基準といたしまして、補修工事をやったのでございまするが、その補修工事をやるについて少し掘り過ぎたと、あんまり道路の下を基礎固めをしっかりやり過ぎたというようなことで、これはやり過ぎだからちょっと工事を待ってくれという中止の申し入れがございまして、そういうことで中止して、現在協議いたしておる段階でございます。工事の行き過ぎがあったということは、県から強く申し入れがありまして、中止をいたしておる次第でございます。
  133. 須藤五郎

    須藤五郎君 よけいなこと答えないで下さい。七十メートル掘った理由を私は聞いているんですよ。一・八メートル掘るという工事に幅を七十メートルも掘ってしまうというようなばかげた間違いがありますか。何らかの意図がなかったら、そんな間違いをしますか。何でそんな間違いをしたか。間違にもほどがあるじゃないですか。
  134. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 幅七十メートルというのはちょっと私もはっきり存じませんが、県道の改修工事をするについては、地元の当局から早くとにかく改修をしてもらいたいという申し出がありましたので、その当時の状態におけるところの県道の補修工事を実施いたした次第でございます。ただ、その工事が先ほど申しましたように、深く掘り過ぎたというような点がございましたので、その点について、県のほうからちょっと待ってくれというような申し入れがございましたので、その補修工事を中止しまして、児と協議を進めておる次第でございます。現在においては、県がこの工事を実施するということで、県において工事を実施しておるというのが現状でございます。
  135. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじゃ、どれだけの幅を掘ったんですか。
  136. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 補修工事で掘りました県道の幅は、当時の県道の幅そのままの幅の掘り返しをいたした次第でございます。
  137. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたは幅と長さと勘違いしている。違いますよ。こう道があって、この県道の道幅が五・七メートルなんです。それを横切って掘ったわけです。その掘るときの幅は一・八メートル許可しているんです。ところが、その幅を七十メートル掘っちまったわけです。何で一・八メートルものを埋没するのに――ケーブルを埋設するのに、何で七十メートルの幅を掘らなきゃならぬ。そこに問題があるんですよ。深さの問題はあとで言いますが、深さもあるが幅が問題なんです。何でケーブルを埋めるのに七十メートル幅が要りますか。それを単なる間違いで済ませますか。どうです。はっきり答えなさい、ごまかさないで。
  138. 鈴木昇

    政府委員(鈴木昇君) お尋ねの点について、県道と申しますのは、オーバーランが出て参りますところに横断している県道のことでございまして、お尋ねの一・八メートルとか申しますのは、私どもの希望――米軍の希望をいたしております県道のところの改修の問題と、もう一つ、オーバーランの中央に新設を予定されております進入灯の工事のことかと存じますが、進入灯のためのケーブルを中央に敷く。それがそのぐらいの幅になるものではないかと、このように思うわけでございます。
  139. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじゃ、あなたたちが県と取りかわした契約書をそこで発表しなさい。どういう契約で工事をしたか。
  140. 鈴木昇

    政府委員(鈴木昇君) 二つに分けて申しますが、一つの安全施設に設置いたされます進入灯の工事につきましては、これは正式に県当局に道路の使用の許可を受けまして工事に着手するということに相なったわけでございますが、もう一つの県道-オーバーランを横断いたします県道――につきましては、これは先ほど御指摘がございましたように、本年一月十七日に、この県道の地区を米側で施設工事を進めますについて、たいへんいためたということで、早急に補修してくれという申し入れがございまして、補修をしたものでございます。
  141. 須藤五郎

    須藤五郎君 僕はここにちゃんと地図持っているんですよ。飛行場があちら側とこちら側にアメリカの軍事基地が分かれているわけですね。まん中を県道が通っているわけです。アメリカとしては、この県道を何とかほかへ回してここを手に入れて、この滑走路の延長をはかりたいわけです。そういう意図を持っているんですよ。そこでケーブルの埋設に名をかりて、そうして工事の申請をしたわけです。そのときの申請は、先ほど申しましたように、県道の幅五・七メートル、それにケーブルを敷くだけだから一・八メートルの幅を掘り返したい、深さ一・二メートルのものを掘りたい、そこへケーブルを埋めたいのだ、こういう申請をして、県の許可を得たわけです。そうして対際にやってみると、その目の前まで来ている滑走路と同じ幅の、七十メートルにわたって道を掘り返してしまったわけです。しかも、あなたが言うように、一・二メートルの深さじゃなしに、もっと深い、滑走路を作るのに必要な深さに掘ってしまったわけです。それを私は取り上げて問題にしているんです。何で七十メートルの幅を掘らなければならないのか。何で滑走路を作るに必要な深さなものを掘らなければならないか。これはケーブル埋設に名をかりて滑走路の下準備をしたわけです。いつでも滑走路を作ることができるように下準備をしたというふうに理解をしているわけです、また、県のほうでも、そういうふうに理解しているわけです。だから、県からそういう苦情が出たわけです、深さが深過ぎると。深さが深いほど道は丈夫でいいじゃないですか。しかし、それは滑走路を作る前提としての深さだから、そこへ滑走路を作ってもらっちゃ困るというので県から横やりが出た。幅だって、七十メートルの幅で、もしもりっぱな道になるのなら、県道全部直してりっぱに舗装してもらってもいい。しかし、七十メートルというのは、そこの上を滑走路が通る――将来滑走路にしようという意図を持ってそういう下準備をされたと思う。ごまかしてこういう工事をやっているということがわかったから、県当局は苦情を申し入れたわけです。これは一体、この工事は県の当局の承認を得たのですか。県当局に対して、そういう掘り返しをするということは通知もしていないのでしょう。それで政府は、そういう工事をやることを認めたのですか、どうですか。この東京通商に対してそういう工事をやるということを認めたのですか。それともアメリカが勝手にやったのですか。どちらですか。
  142. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 県道の補修につきましては、ただいま説明申し上げましたように、あそこのほうに、工事によりまして、そこを横断しておりまする県道に相当損傷を来たしておる。だから、至急その損傷を直してもらいたいという県の申し入れがありまして、その申し入れによりまして工事を実施したのでございます。別に滑走路を延長するというようなことでやったのではないのでございます。あそこを工事をやっておりまするのは、オーバーランと安全灯施設、進入灯施設、いわばいずれも航空安全施設、その工事をやっておるわけでございます。
  143. 須藤五郎

    須藤五郎君 私の質問答弁にはならぬです。そんなことを何回繰り返しても意味ないです。それでは、七十メートル掘り返したのはだれがやったのですか。軍が認めてやったのですか、アメリカ軍が。政府の指示ですか。それとも日本の工事者が勝手にやってしまったのですか。どうなんですか。
  144. 林一夫

    政府委員(林一夫君) この工事は、米軍と、米軍が契約しました工事人、その契約によりまして、その請負業者が工事をいたしたものでございます。それをやるにつきましては、もちろん米側と請負人とが契約して実施をしておるわけでございます。実情はそういうことでございます。
  145. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、この工事は米軍と請負者が契約してやった、そうして、そのめちゃめちゃな掘り返しをやったというのは、米軍の指示によってやった、米軍と工事者と契約してやったということに理解していいのですか。あなたの今の言葉ではそうなりますよ。
  146. 林一夫

    政府委員(林一夫君) この工事実施につきましては、先ほども申しましたように、県当局のほうから、至急補修工事をやってもらいたいという申し入れがございましたので、それでは早速工事をやるようにということで米側に連絡し、米側はそれによってその請負業者と契約をして工事にとりかかったということでございますし
  147. 須藤五郎

    須藤五郎君 県のほうから頼みがあったから工事したのじゃないでしょう、あなたのほうから、そういう工事をしたいからと言って、県に許可申請をしたのでしょう。その結果そういう工事がなされた。そうすると、その工事者と米軍との契約でそういう工事をした、そうなると、最初の話と全く違った話をアメリカ軍の意思でやったということになる。アメリカ軍の意思、すなわち飛行場の拡張の問題じゃないですか。滑走路の延長の問題じゃないですか。それも政府は知らぬ、アメリカ軍もそういう意思はなかったけれども、工事者があやまってそういう深さの工事をやってしまった、こういうことになるのですか。
  148. 林一夫

    政府委員(林一夫君) ただいま申し上げましたように、この補修工事について、県のほうから至急やってもらいたいという申し入れがございましたので、その旨を米側に伝え、米側が工事請負人と契約しましてその工事を実施したわけでございます。御質問の中に、政府のほうから県のほうに改修工事の計画書を出して許可をとったかどうかというようなお尋ねがあったかと思いまするが、これはそういうことではなくて、県のほうから、あの道路が相当いたんでいるから早くこれを損傷について補修工事をしてくれという申し入れがあったので、補修工事を実施したということでございます。
  149. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたは私の質問に対して、掘り返したあとの始末の問題について答弁しているのです、補修々々と言って。そうじゃないのです。言っているのは、掘り返す前からの話なんです。何でそういう掘り返しをしたかということが問題なんです。あなたは掘り返したあとの埋めることばかり言っているじゃないですか。だから話が食い迷って、いつも話にならないのです。もしも県のほうから、道がいたんで困っておるから幅七十メートル掘り返してくれ、そういうふうに直してくれという申請があったら、その文書を見せて下さい。
  150. 林一夫

    政府委員(林一夫君) こういうことでございます。もともとあそこは安全施設をやるということで、安全施設を作るということで工事を始めたのでございます。その安全施設の中に県道が横断しておる。その安全施設の工事をやるにつきまして、またあそこに、先ほど申しました進入灯への連絡ケーブルを埋設する工事をするために県道が相当いたんでおる、その県道を補修してもらいたいという申し入れがございまして、その申し入れによって補修工事をいたしたのでございます。
  151. 須藤五郎

    須藤五郎君 その申し入書を見せて下さい。
  152. 林一夫

    政府委員(林一夫君) この申し入れば、県当局から地元防衛施設局に対しまして、口頭によって申し入れがあったのでございます。
  153. 須藤五郎

    須藤五郎君 それはごまかしだ。そういうことを言って逃げようとしたのはずるいですよ。口頭だからといって、今さらそんなことを言ったって、僕はちゃんと文書を持っているのです。県当局が許可した文書を持っているのです。あなたのほうが願い出て、そして県当局が許可したという、ちゃんと証拠があるのです。そんなごまかしたってだめです。  それじゃ、何で七十メートル県が…いたんでいるというならば、道は全部いたんでいますよ。あそこの道、通っていますから知っているのですよ。いたんでいるところは七十メートルでなく、もっと直してもらいたいですよ。道を全部直すならわけがわかりますよ。しかし七十メートル、滑走路の来ている正面七十メートルだけ直したのは、掘り返したのは、それは何の理由によるのです。もっと直したらいいじゃないですか。なんで七十メートルだけ直すのです。
  154. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 先ほども申しましたように、あそこは安全施設の工事をやっておるのでございます。工事をやっておりますので、そこを横断しておる県道に損傷を来たした。損傷を来たしておりまするから、その県道を補修してもらいたいという県からの口頭の申し入れがございましたので、補修工事をやったのでございます。須藤委員が申されておる、県から何か計画によって承認をしておるというようなことでございますが、県道を掘り返しまして、安全進入灯のほうに通ずるケーブル、これを布設するための工事については、具のほうに承認申請をいたしまして、県のほうからはそれに対して、その工事施行の許可があったわけでございます。そういうわけで、一つのほうの、補修工事のほうにつきましては、県から口頭による申し入れがございました。一つのほうは、承認申請による承認ということでございます。
  155. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、県からそういう依頼があったということは、僕は信用しません。だから、文書でなしに口頭でということを言ってあなたのほうは逃げるのだけれども、それは信用しませんが、もしも県からそういう要請があったら、道の補修をするのですか。国費で、防衛庁の費用でそんなものを補修するのですか、どこでも。どうなんですか。
  156. 鈴木昇

    政府委員(鈴木昇君) ただいまのお尋ねの、道路管理者が、道路をいためられた場合に、道路法上その損壊をした原因者に補修を命ずることができるようになっておりまして、そのようなことで、県当局から米軍工事のためにいためられたその原状回復をするということはございます。
  157. 須藤五郎

    須藤五郎君 もちろんケーブルを埋めるために、最-初の約束どおりですね、県との約束どおり、掘り返してそこをもとどおりにするのは当然ですよ。それはだれでもわかっている。ところが、御丁寧に七十メートルも掘ったということは、県から依頼があったからと言うのですよし県が何でそこの七十メートルだけ依頼しますか。もしも依頼してやってもらえるなら、県道全部依頼しますと、直してくれって。県は決して、七十メートル掘り返して、深く掘って、こちらの滑走路とちゃんと連絡のできるような、そういう道を作ってくれと県はだれも頼んでいません。頼んでいないから、県から苦情が出たのじゃないですか。それを見ても明らかじゃないですか、県がそういうことを依頼していないということは。県の依頼でないにもかかわらず、勝手なことをやった。それをあなたたち承認しているのですか。七十メートル掘るということは、承認しているのですか。どうなんですか。そこをもう一ぺん聞いておきましょう。
  158. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 県当局から早く補修工事をしてもらいたいという申し入れがあったことは、これは……。
  159. 須藤五郎

    須藤五郎君 それはわかっていますよ。
  160. 林一夫

    政府委員(林一夫君) これは、はっきりしている。これはひとつ御信頼願いたいと思います。
  161. 須藤五郎

    須藤五郎君 補修工事の問題じゃないのだ。僕は、補修工事の前の問題だ。七十メートル掘るということを県から依頼されたということだ。はっきり答えなさい。
  162. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 先ほどから申し上げておるとおり、県道の補修工事をしてくれという申し入れがございましたので、まず県道の補修をしたわけです。
  163. 須藤五郎

    須藤五郎君 主査、注意して下さい。僕は補修の問題を言っているのじゃない。補修の前の掘る問題を僕は質問している。それに対して補修々々と言って僕の質問に対して答弁しないのです。主査、注意をして下さい。
  164. 館哲二

    主査館哲二君) できるだけひとつよく答弁して下さい。
  165. 須藤五郎

    須藤五郎君 こんなことでは、一日、二日かかったって問題は片づかない。やりますよ、二日でも。
  166. 鈴木昇

    政府委員(鈴木昇君) お尋ねの七十メートルの道路を掘ったという問題と、長官が答えております道路補修とは、同様の問題かと存じますが、これは滑走路の延長上に、先ほど来申し上げておりますように、安全施設としてのオーバーランと進入灯を作るということで、その工事を進めておるわけでございます。図面で申し上げますとたいへんわかりいいかと思うのでございますが、その工事が県道の近くまで行なわれつつあるわけでございます。もともとこの安全地帯のために、国といたしましては、滑走路の延長上に県道をはさみまして約幅六十メートルで、延長上にいたしますと三百メートルばかりの土地を、すでに地主との間に売買契約が成立いたしまして、買収しておるわけでございます。その場所は、買収いたしました場所を航空機のオーバーランのところにいたしたい、こう考えておるわけでございますので、それらの工事の実施の際に県道をたいへんいためたということから始まったことなのでございます。おわかりいただけたでしょうか。
  167. 須藤五郎

    須藤五郎君 何をとぼけたことを言っているのだ、君たち。たいへんいためたといったって、県との約束は、道の横断五・七メートル、掘る幅は一・八メートル、深さ一・二メートルという約束で工事を始めた。それを無視して幅七十メートル掘ってしまった。その理由は何かと僕は質問している。そのあとの補修の問題なんか僕は問題にしているのじゃない。何で一・八メートルの道を幅七十メートルも掘ったのです。その理由を言いなさい。――答えられないでしょう。答えたらおかしいよ。答えたら詭弁だ。うそか詭弁じゃなくちゃ答えられる道理がないんだ。
  168. 林一夫

    政府委員(林一夫君) ただいま施設部長から説明申し上げましたように、あそこの安全施設の工事を実施したのでございます。安全施設と申しますのは、オーバーランと進入灯の施設、そのオーバーランの区域を県道が横断しているわけでございます。したがいまして、オーバーランとか進入灯の工事をやっておるときに、それに関係するところの道路に損傷を与えたので、その県道の補修をしてくれということで、補修の申し入れがあったので、その血についての補修工事を実施したのでございまするが、あるいはその工事が行き過ぎであったというようなことで、県当局から中止の申し出があったというような次第でございます。
  169. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、一・八メートル掘るという工事に七十メートルにも及ぶ幅の道に損害を与えてしまったということなのか。
  170. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 一・八メートルの幅ということを盛んにおっしゃるようでございますが、私のほうは一・八メートルの幅を七十メートルに掘ったというようなことはいたしていない。ただ一・八メートルの幅を掘るというようなことは、県からの申し入れがあったわけではなし、県としては、ただオーバーランの工事によって県道が相当いたんでおる、したがって、その補修をしてもらいたいということで申し入れがあったので、県のお申し入れのとおり補修工下をいたしたのであります。
  171. 須藤五郎

    須藤五郎君 全くうまくそのつじつまを合わせるように心労しておるようだけれどもね、それでは何で滑走路の幅と同じ七十メートルの幅だけ損害をなぜみごとに与えたんだろう。いかにもみごとにうまいことやったね。七十メートル与えたということはどういうことだろうね、あまり話がうま過ぎやしないかね。
  172. 林一夫

    政府委員(林一夫君) これは同じことを繰り返してまことに恐縮に存じまするが、先ほどから申し上げましたように、県のほうから、いたんでおるから早く補修してもらいたいという申し入れがございましたので、その申し入れに従って補修工事をいたしたので、別に一・五メートル補修せよとかというようなことがあったわけではないのであります。損傷したところを全般的に補修するということで工、を進めたわけでございます。
  173. 須藤五郎

    須藤五郎君 だんだんとはっきりしてきましたよ。県から依頼があったでもないのに、わざわざ深さは将来滑走路に適しただけの深さを掘って、そうしてこちらの滑走路と結びつけるために滑走路と同じ幅の七十メートル道を掘り返して、そして県当局から横やりが入って文句が出たために、それでは埋めますと言って埋めた。その埋めた土は、滑走路の下に埋められておる滑走路に最も適した土を埋めて、そして今上っつらをごまかしている。これが真相なんです。あなたたちは国民の目をごまかして、いつでもさあといったときにすぐ滑走路になる下準備をしている。だから、県当局でも、稲岡の民主勢力も黙ってない、反対している。これが真相なんです。これはいつまでやりとりしても切りがないから、僕はそれで次に移ります。とにかくそういうことははっきりこの討論の中でやりました。しかも、政府ははっきりした取りきめもないでそういうことをやってしまって、そしてあとで口頭で向こうから頼まれたとかなんとか言ってごまかしている。とにかく、日本全国至るところ、アメリカ軍と日本の御用商人の間で勝手な約束がなされて、日本の国民の不利益になる工事が着々やられている。それの僕は一つの例だと言って差しつかえないと思うのです。こういうことは、われわれ国民は許しませんよ。絶対許しませんよ。  それではもう一つ質問しますが、もっと拡大する計画、現在よりももっと拡大する計画があるのじゃないですか、板付飛行場。
  174. 林一夫

    政府委員(林一夫君) 防衛施設庁としましては、あれ以上拡大をするというような考えを現在は持っておりません。
  175. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちのつかんだニュースによりますと、南側のほうに拡大しようとする計画がある。昭和三十六年二月十三日の日米合同委員会の施設委員会で、アメリカ側から板付飛行場の南側にも二万二千九百六十坪のオーバーランを設置したい旨の要求が出されております。また昭和三十七年五月八日の施設委員会では、レーダー・リフレクター・サイト、約五十坪設置の要求が出ております。これは事実ではないですか。しかも、オーバーランの問題は、今もめている北側のオーバーラン延長との関係もあるので、当分地元関係者に伏せておこうと、こういう方針になっているということを聞いておりますが・どうですか。
  176. 林一夫

    政府委員(林一夫君) この板付飛行場の滑走路のことでございまするが、南側についても安全施設を実施したいという希望を米側が持っておることは事実でございます。ただし、正式にこれを米側に提供するということになるについては、合同委員会の合意を得て両国政府協定ということによって決定するのでございます。もちろんそういう希望を持っておりまするが、そういうような申し入れがありましたら、これは地元と十分協議して手続を進める、こういうことになっておるわけでございます。米側がそういうふうな希望を持っておるということは事実でございます。
  177. 須藤五郎

    須藤五郎君 外務省当局、どうですか。
  178. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) こういったような施設の提供というものは、地位協定によりまして日本がやることになっております。そして、アメリカからいろいろ希望がございますそのものにつきましては、先ほど施設庁長官が言われましたように、日米合同委員会のもとに施設分科委員会というのがございます。そこでいろいろ向こうと折衝あるいは話し合いをしまして、それで大体話が煮詰まりましたら、今度は上の合同委員会に上げましてそこで決定し、重要なものは閣議決定を経てきめる。もちろんそれの実施につきましては、先ほど施設庁長官が言われましたように、関係者から土地の買収、そういったことをやりまして、そうして実施いたすわけであります。ただいま長官が答えられましたたしか南側の拡張の問題については、まだ合同委員会の正式の議題として上ってきていない、すなわち、施設委員会の段階でいろいろ向こうと話し合っておる、また、向こうから話が出たという段階でございます。
  179. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは、重ねて伺いますが、私が先ほど言いました昭和三十六年二月十三日日米合同委員会施設委員会で米側からこういう申し入れがあったということは、全然ないのですか。将来あったらどういうふうな対処をしようというのですか。
  180. 林一夫

    政府委員(林一夫君) これは、ただいま御指摘の施設委員会において正式にそういう申し入れがあったということではないのでございまして、米側から非公式にそういう希望の申し入れがあったということでございます。これを今後進めるということにつきましては、十分その施設委員会なりあるいは合同委員会において慎重に協議するということになるわけでございます。もちろんその前に地元の意見を十分聞いて、十分御了解を得てから話を進めるということになるわけでございますが、現在まだそういうことをいたしておりません。現状においては新しくそのような施設をするということについては非常にむずかしいというふうに私ども考えておりますので、米側はそういう希望を持っておるのでございますが、これを進めるということについては十分慎重審議をする必要がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  181. 須藤五郎

    須藤五郎君 将来それではそういう話が問題になったときには、地元民とよく相談して、地元民が――あなたは今地元民はおそらく反対するだろうという予測を持っているらしいが、反対しています。必ず反対する。そのときに、絶対拡張しないということは言い切れますか。
  182. 林一夫

    政府委員(林一夫君) このような基地の問題は、当然地元の方々の十分の御了解を得なくちゃならぬということになっておるわけでございます。そのために、これをもし米側の希望どおりこの話を進めるということになりまするならば、十分地元の方々の御納得をいただいて手続を進めるということになるわけでございます。地元の方々の御納得をいただけない場合においてはこの話を進めることができない、こういうふうに考えております。
  183. 須藤五郎

    須藤五郎君 最近、アメリカ軍は、非常な強引なやり方でものを進めてきているのです。今申しましたように、勝手に掘り起こしたり、また、これを隠密のうちにやったり、またごまかしてやろう、こういうやり方で強引にやってきている。そうして、今申しましたように、日本本土内で最大の滑走路を持っている。三千六百六十フィート。さらに南にも拡大しようとする、そういう計画を持っている。これは一体何によるのかということになります。これは、アメリカの対韓戦略、また、中国封じ込め政策、そこから私は来ていると思うのです。今、板付には、空対空ミサイル、サイドワインダー、ファルコンなどの装備をして、F100とF102型、これが常に水爆を積んで飛んでいる。それからボーイングB52、これも水爆搭載。これからF105戦闘機、これが今度七十五機日本に配置されることになっているわけです。このF105戦闘機というものは、マッハ2クラスで、五トン枝みの、広島に落とした原爆の二倍半の威力を持つ水爆です。それからナパーム弾やロケット弾を枝むことができる飛行機です。これが七十五機日本に持ってこられるわけです。ところが、こいつはやっぱり長い滑走路が必要なんです。そのF105の戦闘機の基地は、桃山、板付、三沢、那覇、こういうことになっているのですが、このF105を入れるためにオーバーランの拡大が必要になってきているわけです。その工事を今板付で強硬にやるわけです。人民をごまかしてそうして強硬にやろうとしている。こういうふうにやられている。板付だけじゃないのです。板付の拡張と並びまして、西日本になると、自衛隊の基地の極化も急ピッチで今やられている。築城基地、これは海に三百メートル突き出した新滑走路を作っております。それから新田原基地、これはロッキード104ジェット機二十機配置予定、こういうふうに拡張計画がされている。それから日生台、十文字演習場、これもアメリカから日米合同使用の申し入れがなされている。これは三十七年の九月二十八日の合同委員会でこういう申し入れが出ている。これはオーケーを与えているですね。そうして、今度は、佐世保と横須賀に原子力潜水艦が入ろうとしている。もうすでに佐世保においては原子力潜水艦が入ろうとして工事をしている。今工事中です、佐世保は。通行止めして工事してやっているじゃないですか。こういうことがなされている。これはすべてアメリカの対韓戦略、中国封じ込め政策、ここから来ているんです。これに日本が片棒かついでいる、こういうことになるわけです。板付飛行場の管理権一体はどこにあるのか、伺っておきたい。
  184. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 根本的な問題に触れることかと思いますが、日本に米軍が駐とんし、また、それに施設を提供しているというのは、日本の防衛のためでございます。日本の防衛のために最小限度の基地が今提供されているということが大前提でございます。それで、板付の基地の問題等については、それはいろいろ見方はございましょう。しかし、現在問題になっておりますのは、航行の安全のために進入灯を作る、あるいはまた、オーバーランを作るということが目的でございます。要するに、離着陸の安全ということも非常に大きな問題でございます。同時に、最近のいわゆる航空機とかその他の発達というものは、御承知のとおりでございます。自衛隊が滑走路を長くするというのも、その一つの現実性に基づいたものかと思います。  それから、先ほど原爆が入っておるかのごときお話がございましたが、これは入っておりません。御承知のとおり、安保条約に付随いたしまするところの日米交換公文におきまして、原子兵器、核弾頭をつけた兵器の持ち入れば日米間の事前協議の対象になっております。そして、米側は、それを持ち込まないとはっきり言っております。日米関係は信頼の上に立っておるわけです。おごそかな厳粛な外交上の取りきめによってやっておるわけでございます。そういったようなことでございます。  それから、この基地と称するか、施設というものは、地位協定の二条に基ついて日本が提供しておるわけです。それが、アメリカ日本に防衛の援助をいたaその施設となるわけでございます。基地におけるいわゆる管理権と申しますのは、一応は米側にございます。しかし、日本の法律が全然適用されないというわけでもございません。適用し得る法律はそこに適用されるということになっております。治外法権的ないわゆる租借地ではございません。そこの答案権とかそういったものは一応向こうにございまするが、しかしながら、種々な点において日本の法律が適用される面もございますし、そしてまた、特別な取りきめによりましていろいろそれに制約もついておりますし、それから協議によりましていろいろなことが行なわれるわけでございます。
  185. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一、二点質問しますが……。
  186. 館哲二

    主査館哲二君) もうやめて下さい。
  187. 須藤五郎

    須藤五郎君 もうすぐです。板付飛行場の管理権は、米側に完全に握られておる、こういうように理解していいわけですね。
  188. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 米軍に提供いたしました施設、その管理権は、管理権と申しますか、それを維持管理し、そしてそこにおける警察、防衛とかいう点、いろいろございましょう、そういったものは、一応米側にございます。しかし、それの行使については、いろいろ先ほど申しましたような具体的な制約があるというふうにお考え願いたいと思います。
  189. 須藤五郎

    須藤五郎君 昨年十月、国際空港問題で外務省を訪れた福岡市移転協の代表に対して、外務省の高橋安全保障課長の発言がきわめて意味深長だ。こういう発言をしておる。現在の板付基地は米軍の軍事基地で、日本側に権限は何一つない、日航の基地使用は米軍司令官の許可の範囲が前提である、もともと一切の管理権が米軍にあるので、日本側が滑走路の共同使用権などと言っても、日米で権利を分有することは不可能である、こういうふうに答えておるのですが。
  190. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 板付の国際空港化といいますか、あそこの米軍提供施設を国際空港にしたいという御要望は、先ほど御指摘になりました高橋課長のところのみならず、私のところにもお見えになりました。そして、現在、御承知のように、あれは軍の施設として提供しておるのでございますが、米軍と話し合いまして、米側としてはいわゆる主目的沿う範囲内で、いわゆる平平施設としての目的を阻害しない範囲内で、事実上具体的には日航があそこを使っておるわけであります。国際空港というものはいろいろな制約がございます。提供の目的そのものを、米軍の施設として提供した目的を阻害するというようなことになりますれば、これは提供の目的が実現できないわけでございます。おのずからそこに制約があることは当然だと思います。しかし、実際問題として、国際空港というかあそこの空港を日本の民間航空に使用さしてほしいという問題も、現地では強い要望であるということはよく承知しております。現に日航があそこを使っておられるということでございます。それから、私も現地に行って具体的に見たわけでございませんけれども、空港事務所というのですか、それの問題とか、いろいろ付随した問題があるようでございます。
  191. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじゃ、政府としては、板付の国際空港論に対して、許可をする方針なのかどうなんですか。
  192. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 先ほど申し上げましたように、板付の施設いうものは、米軍のために提供した施設でございます。施設の目的を阻害するようなことはいたしかねるとおもいます。ただし、実際現在におきましては日本航空もあすこを使っているということは、御承知のとおりでございます。また、この問題につきましては、いろいろお話がございます。その具体的内容。それからまた、関係各省もたくさんございます、運輸省とか。それから、どういったような設備が必要であるとか、どういった航空機が入るか、そういった具体的なことを十分検討しなければならぬ問題だと思います。くれぐれも申し上げますが、やはりあすこを米軍に提供したいわゆる本来の目的というものを阻害しないということが前提かと思います。
  193. 須藤五郎

    須藤五郎君 阻害しないという内容を具体的にちょっと聞いておきたい。
  194. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) これは具体的な問題が双方からどういう程度で使用したいかということとからみ合ってくる問題でございます。一般的に申し上げられますことは、あすこの施設というものが米軍の施設として提供しておるということでございます。したがって、本来の目的は、米軍航空隊が使用するということが本来の目的であります。
  195. 須藤五郎

    須藤五郎君 今、国際空港論が起こって、福岡のある面からは政府に対して、陳情がなされているように聞くわけなんですが、政府として、今あなたが言った条件がいれられるならば、国際空港として承認をする方針なのかどうか。
  196. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) これは、まだ問題がそれほど煮詰まっておらないと考えます。関係各省との話もございます。第一、どの程度のことが実際希望されて、いるのか。現在すでに日航が入っているその意味においては、一部そういった使用をしておるわけで、ありますが、これが非常に頻繁になりまして主客転倒ということになりますれば、これは施設としては目的を阻害するわけであります。そういったような具体的なことをよく考えませんことには、抽象的にどういう方針だとおっしゃられても、われわれとしては今お答えする段階ではないと思います。
  197. 須藤五郎

    須藤五郎君 最後に、現在の板付け飛行場はあくまで米軍の基地であるということは、あなたがおっしゃったとおり、米軍板付基地司令官の戦闘作戦業務遂行の上に支障のない範囲内においては基地の施設を貸すという形をとっているのじゃないか、これはわかります。そうだろうと思いますが、だから、日航その他の旅客機も、基地指令官の命令なしには離着陸ができませんね。着陸の許可がおりずに飛行場の上空を旋回待機させられているということもしばしばわれわれは見るわけです。板付は、国際空港はおろか、国内戦の民間空港でもなく、空港としての格づけはもちろんないわけですね。民間飛行場ではない。国際空港でもない。ところが、国際空港ということになりますと、航空機の乗り入れ路線については、その当事国内の条約により定められることになり、相互乗り入れという形をとるのが普通だと考えます。アメリカにとってみれば、自己の軍事基地の中に社会主義国の旅客機が発着するのを黙って見ているわけがないと私は思うのです。どうです。
  198. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 先ほど冒頭に申し上げましたように、そもそも板付の飛行場というものは、日本を防衛しているところの米軍に設備として提供しておるわけでございます。したがいまして、主目的はそこにございます。しかしながら、実際の便宜を考えられて、要するに考慮されまして、日航がこれを使っておるというのもこれは事実でございます。しかし、あくまで目的はこれは米軍に提供した施設でございます。
  199. 須藤五郎

    須藤五郎君 だから、板付飛行場が国際飛行場なるとかならぬとかまだ煮詰っていないといいますから、私はこれで質問を終わります。国際空港ときまったというならばまだ私は意見があるわけですが、まだきまってないというから、意見は述べませんが、この国際空港ということは、常に国民をだます、ごまかす一つの手段ですよ。大阪の伊丹飛行場が国際空港になるということでまんまと手に、乗ってしまって、あそこの飛行官が拡張されてしまったんです、滑走路が。ところが、今日の状態を見ると、あそこにはアメリカの軍飛行機も来れば、韓国の飛行機も来るわけです。そして、勝手気ままにそこを使用しておる。ですから、伊丹が国際空港だということを名にして拡張して、それをうまくテコにして飛行場の拡張をやるということになるのだろうと私は思うのですが、ところが、その暁はどうかといえば、やはり韓国の飛行機、アメリカの飛行機が自由自在に使うというのが目的です。要するに、あそこは韓国と台湾との中継所に一番いい、そういうことを目標にしているのじゃないですか。また、対韓戦略の基地として板付を強大にしよう、拡大しようというのが国際空港の一つのねらいではないかと思うのです。
  200. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 板付の飛行場に韓国軍用機が来たことはございません。私は行って調べました。そして、米軍の飛行機がよくあそこに来ますのは、これはご存知のとおり、先生十分御存知じだと思いますが、あそこに新明和工業という航空機工場がございます。
  201. 須藤五郎

    須藤五郎君 伊丹でしょう。
  202. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 伊丹には、韓国機は来ておりません。私も今度行って調べました。
  203. 須藤五郎

    須藤五郎君 韓国の飛行機が来ていますよ。
  204. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 米軍機が参りまして、そうして、そこで新明和工業で修理をされております。ちょうど飛行場の引込線の先にございます。私も名を見ましたのですが、米軍機、自衛機、その他いろいろな飛行機がいわゆるコマーシャル・ベースで修理されています。
  205. 須藤五郎

    須藤五郎君 これ以上議論してもむだだからしませんが、私は伊丹飛行場のそばに住んでいるのです。韓国の飛行機が修理のためにあすこにときどき来ているということも事実です。これはあなたが隠していると思います。隠しているか知らないか、もっとよく調べて下さい。よく調べたら、はっきりします。これは事実入っているのです。これは地元で問題にしている、  主査、これで終わります。
  206. 館哲二

    主査館哲二君) 他に御発言がございませんか。――ないようでございますから、以上をもちまして、外務省所管に関する質疑は終了したものと認めます。     ―――――――――――――
  207. 館哲二

    主査館哲二君) この際、分科担当員の変更について御報告申し上げます  本日で、羽生三七君が辞任され、その補欠として大矢正君が選任されました。     ―――――――――――――
  208. 館哲二

    主査館哲二君) 午後は、大蔵省経済企画庁所管について審議を行うことにいたします。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時四十三分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十分公開
  209. 館哲二

    主査館哲二君) 休憩前に引き続いて分科会を再開いたします。  昭和三十八年度総予算中、大蔵省及び経済企画庁管轄を議題といたします。  まず、政府説明を求めます。
  210. 池田清志

    政府委員(池田清志君) ただいまから昭和三十八年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算についてご説明いたします。  まず、一般会計歳入予算額は二兆八千五億八百万円でありまして、これを前年度予算額二兆五千六百三十億九千万円に比較いたしますと二千八百六十九億千七百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうちおもなる事項について内容を御説明いたします。  第一に、租税及印紙収入の総額は二兆三千五十三億二千四百万円でありまして、前年度予算額に比し千二百六十九億二千四百万円の増加となっております。  この予算額は、現行の税法によって見積もった場合の租税及び印紙収入見込み額から今次の税制改正に伴う減収見込み額を差し引いたものであります。  次に、各税目別におもなるものを申し上げますと、まず、所得税につきましては、今次の税制改正に伴う基礎控除の引き上げ、配偶者控除の引き上げ、扶養控除の引き上げ及び専従者控除の引き上げによる減収額二百七十六億九千四百万円のほか、租税特別措置及び税制の整備に伴う減収額三百十三億七千七百万円を見込み六千三百六十一億三千万円を計上いたしました。  法人税につきましては、今次の税制改正に伴う留保所得課税の軽減による減収額十九億四千五百万円と税制特別措置及び税制の整備に伴う増収額六十八億二百万円とを見込み、差引七千六百五億千七百万円を計上いたしました。  関税につきましては、今次の関税定率法等の改正による増収額四十三億五千七万円を計上いたしましまた。  以上申し述べました税目のほか、相続税二百二十四億五千六百万円、酒税三千三十九億九千百万円、砂糖消費税三百三十六億九百万円、揮発油税千九百二億五千九百万円、物品税千七十七億千八百万円、及びその他の各税目並びに印紙収人を加え、租税及印紙収入の合計額は二兆三千五十三億二千四百万円となっております。   第二に、専売納付金は千五百七十九億七千万円でありまして、前年度予算額に比し十五億六千万円の減少となっております。これはアルコール専売事業特別会計納付金において、一億四千三百万円増加いたしますが、日本専売公社納付金において十七億四百万円減少することによるものであります。  第三に、官業益金及官業収入は二百五十九億四千万円で、前年度予算額に比し二十一億三千三百万円の増加となっております。   第四に、政府資金整理収入は二百二十四億四千六百万円で、前年度予算額に比し六十三億九千三百万円の増加となっております。この収入のうち、おもなるものは国有財産売払収入百二十三億七千二百万円、地方債証券償還収入八十九億千二百万円となっております。  第五に、雑収入は七百五十六億七千百万円で、前年度予算額に比し百五十五億二百万円の増加となっております。  雑収入のおもなるものは、日本銀行納付金二百八十八億三千万円、恩給法納金及文官恩給費特別会計等負担金三十七億四千六百等であります。  最後に、前年度、剰余金受け入れにおきましては、昭和三十六年度の決算によって同年度に新たに生じた純剰余金二千六百二十六億四百万円を計上いたした次第であります。   次に、当省所管一艇会計歳出予算額は二千八百十二億五千九百万円でありまして、これを前年度予算額二千五百二億八千八百万円に比較いたしますと、三百九億七千百万円の増加となっております。これは、政府出資金において六十八億円賠償等特殊債務処理、費において五十一億円、産業透視特別会計資金への繰り入れにおいて三百五十億円減少いたしましたが、他方、国債費において四百七十六億円、産業投資特別会計の繰り入れにおいて二百六十七億円の増加を見たこと等によるものであります。  この歳出予算額を、まず組織に大別いたしますと、大蔵本省二千三百三十二億五千二百万円、財務局四十五億六千五百万円、税関四十四億九千六百万円、国税庁三百八十九億四千五百万円となっております。以下、この歳出予算額のうち、おもなる事項について内容を御説明いたします。  まず、国債費につきましては千百六十一億五千万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計の負担に属する国債の償還、も国債の利子及び大蔵省証券発行割引差額の支払い並びなそれらの事務取り扱いに必要な経費でありまして、国債整理基金特別会計へ繰り入れるものであります。このうち、国債の償還財源に充てる額につきましては、財政法第六条の規定に基づく三十六年度決算剰余金の二分の一に相当する額として千六十七億三百万円を計上いたしております。  次に、公債員宿舎施設費につきましては三十八億六千万円を計上いたしておりますが、この経費は、国家公務員に貸与する国設宿舎の設置及び借り上げのため必要な経費でありまして、公務員宿舎の充足がいまだ不充分である現況にかんがみ、前年度にし八億五千万円を増加し、その充足をはかろうとするものであります。  次に、賠償等特殊債務処理費につきましては二百四十億千九百万円を計上いたしておりますが、この経費は、連合国との間に締結する条約に基づいて行なう賠償その他賠償等特殊債務処理特別会計法に規定する賠償等特殊債務の処理に充てるための財源を同特別へ繰り入れるため必要な経費であります。  次に、産業投資特別会計への繰り入れにつきましては四百九十七億円を計上いたしておりますが、この経費は、産業投資特別会計において行う産業投資支出の財源に充てるため、一般公計から同特別会計へ繰り入れるものであります。  次に、政府出資金につきましては、農林漁業金融公庫等八機関に対し、一般会計から出資するため必要な経費として百七億九千四百万円を計上いたしておりますが、この内訳は、農林漁業金融公庫十四億円、中小企業信用保険公庫三十億円、医療金融公庫二十六億円、森林開発公団二十億円、水資源開発公団二億円、新技術開発事業団五億円、国民生活研究所一億円、理化学研究所九億九千四百万円となっております。  次に、予備費につきましては、予見しがたい予算の不足に充てるため二百億円を計上いたしております。  以上が、大蔵本省に計上された歳出予算額のおもなるものでありますが、財務局、税関及び国税庁につきましては、その歳出予算額の大部分は、これら機関事務処理のため必要な経費でありまして、その内容につきくましては、説明を省略させていただきたいと存じます。  次に、各特別会計の歳入歳出予算でありますが、当省所管の特別会計としては、造幣局特別会計を初め、十一の特別会計がありますが、そのうち、おもなる会計につきまして、概略を申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも六十三億七千五百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも二十五億八千六百万円の増加となっております。歳出増加のおもなる理由は、補助貨幣の製造量の増加に伴う経費及び工場施設等を整備するため必要な経費増加等によるものであります。  印刷局特別会計におきましては、歳入百十九億三千二百万円、歳出百十四億九千三百万円、差引四億三千八百万円の歳入超過であります。歳出におきましては、前年度予算額に比し、四億八千二百万円の増加となっておりますが、これは主として日本銀行券の製造量の増加に伴う経費及び工場施設等を整備するため必要な経費増加等によるものであります。  資金運用部特別会計におきましては、歳入歳出とも千九百七十四億五千九百万円でありまして、瀬千年度予算額に比し、いずれも三百六十一億六千九百万円の増加となっておりますが、これは主として歳入においては、運用資金の増加に伴う李氏収入、歳出においては、預託金の増加に伴う支払い利子がそれぞれ増加することによるものであります。  国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出とも五千四百十五億五千九百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも五百四十四億千五百万円の増加となっております。増加いたしましたおもなる理由は、国債償還費の増加等によるものであります。  産業投資特別会計におきましては、歳入歳出とも千四十九億三百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも四百十一億五千三百万円の増加となっております。  この会計におきましては、本年度新たに六千万ドルの外貨債を発行することとし、その手取金二百三億円をもって、日本開発銀行及び日本道路公団への貸し付けを行なうこととしております。  また、出資につきましては、前年度に比較して百二億円を増加し、総額六百三十四億円の出資を行なうこととし、その原資の一部として、一般会計から四百九十七億円及びこの会計に設置されている資金から九十三億円を受け入れることとしております。  以上申し述べました各特別会計のほか、貴金属、外国為替資金、経済援助資金、余剰農産物資金融通、賠償等特殊債務処理及び国有貯炭特殊整理資金の各特別会計につきましては、お手元の予算関係書類によりましてごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の名政府関係機関の収入支出予算につきまして、簡単に御説明いたします。  まず、日本専売公社におきましては、収入四千百十三億二千百万円、支出二千七百七十一億八千三百万円、差引千三百四十一億三千七百万円の収入超過であり、専売納付金は千五百七十一億八千百万円を見込んでおります。  これを前年度予算額に比較いたしますと、収入は二百四十六億九千四百万円、支出は三百七十四億千八百万円の増加でありまして、専売納付金は、十七億四百万円の減少を見込んでおりますが、これは市町村たばこ消費税の税率引上げ等によるものであります。  なお、専売公社の事業のうち、たばこ事業につきましては、本年度の製造たばこ販売数昂は前年度に比し、六十二億本を増加し、千五百、五十二億本を見込んでおります。  次に、国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、北海道東北開発公庫、公営企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、医療金融公庫、日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各機関につきましては、収入支出予算は、主として、これら機関の事業の運営に伴う貸付金利息収入並びに借入金の支払利息及び必要な事務幾等を計上したものでありますが、本年度におきましては、前年度に比し各機関とも専業量の増加を見込みましたことに伴い、収入支出とも増加いたしております。  これら各機関の収入支出予算額及び前年度予算額に対する増減等につきましては、お手元の予算関係書類によりまして、ごらんいただきたいと存じます。  以上をもちまして、大蔵省関係予算の概略について御説明を終ります。
  211. 館哲二

    主査館哲二君) 次に、経済企画庁長官から御説明を願います。
  212. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昭和三十八年度経済企画庁予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算の要求総額は一百十億九千九百八十二力七千円でありまして、これを前年度予算額八十一億七千二百十三万円に比較いたしますと二十九億二千七百六十八万七千円の増額となっております。  この増額となりましたおもな理由は、離島振興事業費において十一億六千六百四十八万二千円、水資源開発事業費において四億九千七百二十八万七千円、国土総合開発事業調整費において二億円、国土調査費において一徳九千二百八十万八千円、それぞれ増額になりましたことと、新たに新産業都市等建設事業調整費八億円を要求しているためであります。  次に、経費の内訳を申し上げます。第一に、経済企画庁の項では、要求額は五億五千八百五十七万六千円でありまして、前年度の四億九千四百四十万円に比較いたしますと、六千四百十七万六千円の増額となっております。  この要求経費内容を御説明申し上げますと、人件費三億八千三十六万八千円と事務費一億七千八百二十万八千円であります。  この事務費は、一般庁務の運営に必要な経費四千七十六万三千円並びに次に申し上げる内容のものであります。  その一は、年次経済計画及び経済運営の基本方針の策定、物価の安定、国民生活の充実海外経済協力の推進等に関する経費として二千二百四十二万六千円を計上しております。  最近における消費者物価問題の重要性にかんがみまして、三十八年度は、公共料金を初め、諸物価の安定に一そうの努力を払うため、定員を増加し、今後とも消費者物価安定対策を強力に推進いたす所存であります。  なお、昨年設立されました特殊法人、国民生活研究所の育成、充実をはかるため、前年度の一億円に引き続き同研究所に対する出資金一億円を大蔵省所管政府出次資金の項において要求しております。  その二は、長期経済計画に関する経費でありますが、これには経済審議会等の運営及び長期経済計画に関する経費としまして、一千百四十六万五千円を計上しております。経済審議会におきましては、かねてから、国民所得倍増計画に照らしつつ、経済動向の、実態の分析を進めておりますが、三十八年度は計画の第三年目にもなりますので、一そう綿密にこれを推進することにいたしております。  その三は、国土の総合開発に必要な経費といたしまして三千三百六十五万七千円を計上しております。  御承知のように、国土総合開発に関する施策は、新産業都市の建設を促進し、あるいは開発のおくれた地域の産業を振興することにより地域間の所得格差の是正に努め、国民生活の均衡ある発展をはかろうとするものであります。  このための経費といたしまして、国土総合開発審議会関係経費、豪雪地帯対策、特殊土じょう地帯対策、地盤沈下対策、台風常襲地帯対策等の特殊地域開発振興に必要な経費、東北・九州・四国・中国・北陸の各地方開発に必要な経費、地方産業開発審議会関係に必要な経費、離島振興対策に必要な経費、地域経済問題調査関係経費及び拠点開発調査に要する経費を計上しております。以上のうち、前年度と異なります点は、特殊地帯対策として豪雪地帯対策費四百九十二万七千円が新た加にわったことであります。  その四は、水資源関係経費であります、産業の急送な発展と都市人口の増加に伴う水需要の増大に対応して、水資源を開発確保するための経費、並びに公共用水域の水質保全に関する経費といたしまして三千一百三十万円を計上しております。  このうち、公共用水域の水質保全をはかりあわせて水質の汚濁に関する紛争の解決に資するため、水質審議会を運営し、水質の調査及びそれに基づく水域の指定並びに水質基準の設定等に必要な経費としまして二千八百六十六万三千円を計上しております。  なお、水資源開発公団に対し、前年度の三億円に引き続き出資金二億円を大蔵省所管政府出資金の項において要求しております。  その五は、内外経済事情調査に関する経費であります。国内及び海外経済の動向を的確に把握し、また、経済白書等の報告書及び統計資料を作成する等経済動向の調査分析に必要な経費として三千八百六十万七千円を計上しております。  第二に、土地調査費の項では、要求額は五億五千九百四十万二千円でありまして、前年度の三億六千二百五十九万四千円に比較いたしますと、一価九千二百八十万八千円の増額となっております。  この増額となりましたおもな理由は、国土調査事業十カ年計画の初年度分として地籍調査の面積が増加したことによって、補助金が一億八千八百八十五万九千円増額となったためであります。  要求額の内容を申し上げますと、基準点測量に要する経費として二千七百五十九万五千円、国土調査法の規定によって、地方公共団体、土地改良区等が地籍調査を行ないますときの補助金として五億一千九百五十五万二千円、土地分類調査と水文資料調査に要する経費として七百九十二万八千円となっております。  第三に、経済研究所の項では、六千一百三十二万三千円を要求しておりまして、前年度の五千四百三十八万九千円に比較いたしますと、六百九十三万四千円の増額となっております。  この増額のおもな理由は、国民経済計算に関する経費が増額となったためであります。  経済研究所の経費内容は御説明申し上げますと、人件費四千五百六十七万三千円と事務費一千五百六十五万円であります。  この事務費は、経済研究所の一般運営費と研究調査費でありまして、そのうちの研究調査費の内容を申し上げますと、わが国経済の構造と循環、その他経済の基本的な事項を研究調査するために要する経費並びに国民経済計算の整備改善等に要する経費とに大別されます。なお、この国民経済計算の整備改善を促進するため、三十八年度に国民経済審議会を新たに設置することにいたしております。  第四に、国土総合開発事業調整費の項では、十三億五千万円を要求しております。  国土開発に関する事業は、各省庁におきまして、それぞれ実施されておりますため、開発事業相互間の事業の進捗度に不均衡を来たし、総合的な効果が発揮せられない場合があります。このような場合に、この経費によりこれを調整いたしまして、総合開発の効果を上げようとするものであります。  調整費使用の対象地域は、国土総合開発法に基づく特定地域及び調査地域並びにそれぞれ単独の開発立法に基づく東北地方・四国地方・九州地方・中国地方・北陸地方及び首都圏の地域等でございますが、次に申し上げます新産業都市等建設事業調整費使用の対象地域は、除かれることになっております。  第五に、新産業都市等建設事業調整費の項では、三十八年度から新たに八億円を要求いたしております。  この経費は、新産業都市建設促進法に基づいて指定される区域においてその建設基本計画に従って実施する建設事業について、各省庁の所管する事業相互間の不均衡の調整をはかるために必要な経費と、低開発地域工業開発促進法に基づいて指定された地区内において実施される開発事業について、各省庁の所管する事業相互間の不均衡の調整をはかるために必要な経費として、使用されるものであります。  第六に、地域経済計画調査調整費の項では、前年度と同額の五千万円を要求しております。  この経費は、地域経済計画の策定のための調査について、各省庁間の調整をはかり、調査効果を高めるために必要なものであります。  第七は、離島振興事業関係でございますが、離島振興事業費の項では、五十二億六千九百八十二万三千円、揮発油税等財源離島道路整備事業費の項では十億二千八百万円、合わせまして、六十二億九千七百八十二万三千円を要求しております。  この経費は、離島振興法に基づきまして、離島振興対策実施地域において、国または地方公共団体が実施しますところの治山治水道路整備、港湾、漁港、空港、農業基盤整備等等の公共事業及び電気導入事業、簡易水道事業等に必要な事業費またはこれを補助するための経費であります。  この経費は、経済企画庁に一括計上し、実施にあたりましては、各省に移しかえ、または特別会計に繰り入れて使用するものであります。  第八に、水資源開発事業費の項では、十四億二千六百六十九万三千円を要求しております。この経費内容を御説明申し上げますと、水資源開発公団が行なう矢木沢ダム外二つのダムの建設事業に対して公団に交付いたします交付金の国庫負担分として治水特別会計に繰り入れるために必要な経費十二億四千四百万円と、公団が行なう水資源開発事業に関連して印旛沼開発事業等の費用の一部を補助するための経費一億八千二百六十九万三千円であります。  以上、一般会計予算案の概要を御説明いたしましたが、次に、当庁関係の財政投融資計画につきまして、簡単に御説明いたしたいと存じます。  まず、東北開発株式会社につきましては、比較的開発のおくれております東北地方の経済発展に貢献する産業の育成助長を目的としまして、三十八年度は、砂鉄事業、セメント事業等に重点を置くことにいたしております。三十八年度に措置する事業資金は前年度と同額の三十四億円であります。このため、出資金六億円と政府保証債二十八億円を財政資金に仰ぐことにいたしております。  なお、このほかに前年度からの繰り越しが十八億円ありますので、総事業費といたしましては五十二億円となります。  次に、水資源開発公団につきましては、その事業量の増大に伴い、総事業費は前年度の四十一億円から三十八年度は六十九億円増の百十億円を確保することにいたしております。このため、前に申し上げました一般会計からの出資金二億円のほか、財政資金から二十九億円の融資を受けることにいたしております。  次に、北海道東北開発公庫につきましては、その資金運用規模は、前年度の二丁目二十億円から、三十八年度は二百五十五億円に増加しております。そのため、出資金十億円、債券百七十五億円を財政資金に仰ぎ、そのほか自己資金七十億円を充てることにいたしております。  以上をもちまして、経済企画庁関係予算案並びに財政投融資計画説明を終わりますが、なお、御質問に応じて詳細御説明を申し上げたいと存じます。  何とぞよろしくご審議の上、御可決下さいますようお願いいたします。
  213. 館哲二

    主査館哲二君) 以上、両省庁の説明がありましたが、これに対して御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  214. 大矢正

    大矢正君 最初に、大蔵省関係質問を二、三行ないたいと思います。ただ大蔵大臣にお願いしておきたいんですが、大蔵大臣、まあものをたくさん覚えているというせいかどうかわからぬが、質問の時間に対して三倍ぐらい答弁をされるのでどっちが質問しているかわからないことがしばしばあるので、そういう意味ではひとつ簡潔に御答弁願わないと、私も時間の制約を受けているものですから、その点よろしくお願いいたします。  最初質問は、金融の正常化といいますか、ないしはそれとからんで金利の体系、そういうものについてお尋ねをしたいと思うのです。そこで、一昨年国際収支の逆調に伴って金融の引き締めを基調とした、いうならば経済の縮小政策というものがとられて一年半ばかり経過をして、最近は金融がかなりゆるんできた。そこで金融がゆるんできたから、この際、たとえば経済の成長に伴っての通貨の供給ももちろんでありますが、さらには貿易の自由化にからんでの、いうならば金利負担といいましょうか、そういう意味で、高い日本の貸し出し金利というものを国際的な水準にさや寄せをしていきたいという考え方をもって先般公定歩合の一厘引き下げが行なわれ、また、私ども新聞その他で聞くところによりますと、近くもう一厘下げたいという大蔵省の意向もあるんだと、こういうように聞いているわけでありますが、そこでまあ大蔵省にいわせると、ないしはその他日銀でもそうでしょうけれども、先般の一厘の金利の引き下げというものは景気を刺激するという意味ではなくて、いうならば金利の国際水準にさや寄せをするんだという立場だけを強調されているようであります。がしかし、最近の株価の動向を見ますると、かなり急速に株価が上昇しております。もとより特定産業に対しては自由化になっても太刀打ちができるような体制を作ってやろうという政府の体制整備といいましょうか、そういうものもあるから、それらも加味されていることは事実であります。がしかし、全体として受け取られている意味では、国際的な金利の水準へのさや寄せ、金利の負担の軽減ということよりは、むしろ経済の、いうならば拡大といいましょうか、成長といいましょうか、そういう意味に受け取られている向きが私はあるんじゃないかという気がするんでございますが、まずその点で大蔵大臣の見解を承っておきたい。
  215. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 金利の引き下げをすれば経済の拡大に資するということは間違いありませんが、今度の一厘引き下げというのは、経済、景気刺激というものに重点を置いたのではなく、常に申し上げておりますように、八条国への移行ということ、また、貿易の自由化に対処して国際競争力をつけていかなければならないということで、当然のことして公定歩合の引き下げが行なわれたと考えているわけであります。
  216. 大矢正

    大矢正君 そこで、先般一厘の公定歩合の引き下げが行われて、これに、対し銀行が、特に普通銀行では協力の態勢をしきたいという考え方の表明がなされております。がしかし、なかなか地方銀行内士は相互銀行あるいは信用金庫というこういう資力の乏しい銀行ないしは金庫に参りますと、そういう公定歩合一厘の引き下げというものが全体の金利の引き下げに通ずるということにはどうも疑問があるのであります。大蔵大臣はどういうように考えておられますか。
  217. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 日銀から借りておらないい銀行は、公定歩合の引き下げが行なわれて、そのまま追随して金利を下げなければいかぬということになれば、相当負担が生ずることは御承知のとおりでございますが、御承知のように、公定歩合というのは、金利というものに対する一つの基本的な尺度になるわけでありますから、公定歩合が上がれば当然貸し出し金利が上がるということになりますし、公定符合が下がればおあむね貸し出し金利を下げていくということになるわけであります。公定歩合が下がることによって地方銀行その他の中小金融機関と申しますか。そういうところは非常に困るじゃないかいう御説がありますが、これ業務の合理化その他を行いながら、やはり国際水準にだんだんとさや寄せをしていかなければならぬということはこれは不可避なものでございますから、ある意味においては、日銀からの借り入れということも考えられるわけでありますし、急激に下げれば非常に衝撃が大きいのでありますが、なるべく金融の環境整備をあわせ行なっておりますので、合理化を進めてもらいながら低金利というよりも国際金利水準にさや寄せをしていかなければならぬと、こう考えておるわけであります。
  218. 大矢正

    大矢正君 たとえば、日本銀行と取引関係のある都市銀行、地方銀行あるいはまた、相互銀行の一部、極端に大きな信用金庫、こういうものは日銀からの借り入れの対象になるし、もちろん口座も設けて取引もしているわけでありますから、かなり日銀の意向というものは浸透していくだろうとこう思います、また、大蔵省の金利水準の国際的なさや寄せと申しましょうか、そういう意味では協力は可能だと思うのでありますが、しかし、相互銀行の大多数ないしは信用金庫、もっと小さく信用組合というものもありますけれども、そういったような金融機関というものは、日本銀行のかりに公定歩合の引き下げというものが直接にみずからの貸し出し金利には影響しない、影響しないよりか引き下げるという立場をとらないということも一つ考えられると思うのでありますが、その場合どうするか。
  219. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 金融機関の連合会等がありまして、公定歩合引き下げの場合はこれに対してどのような態度をとるかということを自主的に協議して、できるだけ日銀の〃方針に沿うような態度で進められて参っておるわけでございますが、強制的に下げるというようなことはいたしておりませんし、また、公定歩合が下がったからといって、貸し出し金利を下げないというところもございます。
  220. 大矢正

    大矢正君 そうすると、大銀行というものは、大企業を中心にして融資をしているであって、中小企業には昔から、私の知っている限りでは二割程度しか中小企業には普通銀行は金を貸していないわけですが、そういうところからいくと、大きな銀行では金利引き下げが行なわれる。がしかし、中小といいましょうか、資力の弱い銀行は金利の引き下げが行なわれないということになると、中小企業に対する影響というものは、これは結局政府がそういう方針を出したって何ら利益にはならない、こういうことになるのではないですか。
  221. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 金融機関は、特に公定歩合の引き下げに対して、中小企業の金利負担を軽減するというので、中小企業向けの貸出金利の引き下げに対しては特に配慮をするように大蔵省側としても求めております。なお、ご承知のとおり、中小企業に対する金融機関に対しても日銀の買いオペの施策が行なわれておりまするので、画一、一律的に下げろというわけにはいきませんが、現実の問題としては、中小企業に対しての金利負担軽減のために引き下げ措置が行なわれるわけであります。
  222. 大矢正

    大矢正君 私が特に強調したいことは、二年ほど前にもたしか私は、当時大蔵大臣は田中さんじゃなかったのですが、議論したことがあるのですが、結局、金利の引き下げというものは、いうのならば、一般市中における資金の需要関係はどうなっておるのかということが一つあるでしょうし、それから国際収支の心配がないのかという問題も一つあるだろうと思いまするし、それからまた、産業界における設備投資の意欲があるのかないのか、それが極端に高いのかどうか、あるいはまた、それとうらはらの技術革新や合理化というものが積極的に産業外の課題として取り上げられているのかどうかという、いろいろな問題があると思いますが、しかし、私はどう考えてみても、先般の一厘引き下げ、それからまた、やりたいという意思のようでありまするが、この引き下げというのは、そういう市中における資金の需要関係から自然にそうしたというのではなくて、無理をして、無理々々金利の水準を国際的なところまでさや寄せするのに大蔵省と日銀が音頭をとって下げさせたというふうにわれわれは考えざるを得ないのですがね。そういうことになると、必ずこれはどこかで破綻が出てくるわけです。たとえば、最近、資金の需給関係はたいへん緩和の方向に向かっているというような説をなす人もあるのですけれども、実際においては、それは上のほうは一番最初にしみ渡って参りますから、大企業はこれはそういうことも言えるかもしれませんけれども、全体としてはまだまだ資金はゆるんでいるのではないのだ、借りたくても借りられないのだという、そういう線が強いのじゃないですか。それが金利が下がるのが当然だとあなたは思って下げられるのですか。私はそうじゃないと思うのですよ。
  223. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 公定歩合は私が下げたのじゃない、日銀の総裁が下げたのであります。日銀総裁の権限でございまして、公定歩合の引き下げげが行なわれておるわけでございますが、無理をして下げておる、政府、日銀が一体的な立場で、いわゆる引き下げの環境整備ができておらないにもかかわらず、下げておるという考え方はとっておらないわけであります。私も、日銀当月の一厘引き下げに対しては、時期としては適当な時期であろうというふうに考えておるわけでございます。国際収支も大体十八億六、七千万ドルということで年度をこすようでございますし、しかもその間において二億三千万ドルというアメリカ三行及び七行借款の借入金も返済をしてのものでございます。で、輸出入のバランスも、当初考えました輸入四十八億ドル、輸出四十七億ドルということでございましたが、その後改訂をいたしました輸出入のバランスはおおむね達する見通しでございます。大体、輸出が四十八億五、六千万ドルないし四十九億ドル、輸入は四十六億ドルくらいに考えておったのでございますが、大体十五億五、六千万ドルという程度まてになっております。三十八年度の設備投資意欲に対してはおおむね三兆五千億という考え方でございますので、このような状態を考え、特に四月は財政資金の散超期になりますので金融がゆるむという考え方で日銀が一厘の引き下げを行なったわけでありまして、公定歩合の一厘引き上げ、引き下げに対しては相当、時期が早いとかおそいとか、マスコミも、いわゆる専門家もいろいろの立場で文句を言うものでございますが、二厘引き下げということも説としてはあるとしても、まあ大体厘が妥当であろう、時期も、四月一日とか、三月の十九日、二十日は別にして、おおむねやるべきことをやった。この前の十一月の引き下げというような場合とは迷って、おおむねの批判もただいま申し上げたような状態でありますし、まあ残余の一二%の自由化ということも前提にして考えておりますと、一部議論はありますが、方向としてはおおむね妥当な方向であり、妥当な時期に日銀当局の引き下げがきめられたと、こういうふうな認識に立っておるわけでございます。
  224. 大矢正

    大矢正君 私も、そういう金融問題については専門家じゃありませんから、あなたが言われておる三日がよかったのか、四月になったらよかったのか、そんなところまで議論するほど私も知識がありませんが、ただ全体としてながめてみた場合に、これからの日本経済がどうなるのかということを全体としてながめてみた場合に、最終的にいえば、あと半年ぐらいは様子を見てから、やはり国際的な水準に金利をさや寄せするという考え方があるとするならば、その時期に判断をするべきでなかったかという気がするのです。なぜそういう気がするかというと、あなた自身もそう言っておられるとおり、ことしの夏あたりからはかなり日本経済は上向きになるというような説明をされておるようですね、日銀の総裁もそういう話をしておるようです。そういう段階において、今先行きのことを見ないで、ただ金利の引き下げということを強硬にやるということは、これは将来の日本経済が安定して成長するという政府の方針とは合わないのではないかという、そういう心配を自分は持っているわけです。そこで、今あなたのお話の中に、もう一厘下げたらどうかというような話が出ましたが、先般新聞などになりますと、池田総理は一厘なんてけちくさいことを言わないで一ぺんに二厘下げてしまえということが出ておるわけであります。しかし、現実には一厘しか下げなかったが、さらに追加して四月か五月にはもう一厘下がるだろうというような説もなされております。あなたはさっき言われたとおり日銀総裁じゃありませんが、しかし、大蔵大臣として、近々もう一厘下がるということが好ましいと思っておられるのでしょうか、あるいはまた、下げるべきだと考えておるのでしょうか、また、下げられる環境が整っておると考えておられるのですか。
  225. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 公定歩合は、先ほどあなたが申されたとおり、金融の環境が整備されることが前提でございますし、実行するときのその時点における金融調整が前提になるわけでありますので、現在の時点で公定歩合を引き下げるほうがいいというような考え方は持っておりません。まあこの引き下げや引き上げに対しては日銀当局がその時点における金融情勢を十分把握して、しかる後に政策委員会の議を経てきめるものでありますので、今の段階において、四月、五月に再引き下げを行なうべきかどうかというようなことに対しては、確たる見通しを持っておりません。ただ申し上げられることは、政府としての公式見解のとおり自由化に対応してできるだけ国際金利水準にさや寄せをしていくということを前提にして金融環境の整備に全力をあげておるわけでございます。
  226. 大矢正

    大矢正君 そこで、先般の一厘引き下げが、たとえば銀行にとりましては、資金コストの面その他でなかなかゆるくないという話がありますが、さらにもう一厘なんということになりますと、とうていこの預金金利をいじらないで貸出金利だけ引き下げるということは、現実には不可能と思います。預金金利を引き下げる方向に、あるいはまた、預金の金利を除く資金コストとのかね合いでいろいろ金利を検討するということもできるでしょうけれども、現実問題として、預金金利というものに対して大蔵大臣自身が考えてみて、これを引き下げなければならないと考えておりますか、それとも、かりに貸出金利が下がっていっても預金金利はいじることがない、いじる必要性がないし、また、いじるべきじゃない、こういうように考えておられますか、その点を。
  227. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 現在の一厘引き下げに対して、対応しての措置としては、預金金利を引き下げる必要はないのではないかと、こういうふうに考えております。将来の問題としては、ご承知のとおり、国際金利にさや寄せをするということを言いながら、一方には貯金増強という大きな仕事をいたさねばならないのでございますし、日本の貯蓄というものが非常に将来のことを考えて、まさに勤倹貯蓄というような立場に立ってただいま貯蓄が行なわれておるので、できるだけ預貯金をなす方々に対しては、それを保護して参りたいという考え方を持っております。まあしかし、将来貸出金利がまた一厘も二厘も三厘も下がるといううような場合を考えますと、どこまで預金の金利を据え置きにして金融機関の合理化その他の金融環境整備の施策だけによって、貸出金利が下げ得るものかというものに対しては、慎重に考慮しておりますし、金融機関自体の態度や考え方も十分参照して、慎重に態度を決定して参らなければならないと、このように考えておるわけでございます。
  228. 大矢正

    大矢正君 この貸出金利の引き下げに伴って政府関係金融機関の貸出金利というものについては、再検討するという考え方はありませんか。これはもとより何を基準にして市中銀行の金利が下がったらという意味で私は申し上げるのじゃなくて、全体として考えてみて、たとえばあなたの言われているように、国際水準にさや寄せするとか、自由化に対処するために金利負担を軽減するという意味からいきますと、政府関係の金融機関の水準も当然のこととして引き、下げなければならぬという結論が出るのですが、その点についてはいかがですか。
  229. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 現実の問題としては、民間金利と政府関係機関の金利というものはバランスを、とっていかなければならないということは基本であります。政府関係機関の金利というのも、ただきめておるのではなく、賞金コストによっておのずから定められておるわけでございます。先ほど申されたとおり、貸出金利が下がる、また、おっつけ公定歩合も下がるというようなことが続いていった場合を仮定した場合、郵便貯金の金利その他を引き、下げなければならないという事態が起こるかもわかりません。そういう場合に、郵便貯金の金利が下がると政府資金の資金コストが、下がる場合には、当然貸し出しの金利も下がるということになるわけでございます、まあ、もう一つ政府関係機関の資金こコストを下げるという場合には、一般会計からの繰入出資というものが考えられるわけでございますが、現在の状態において一厘公定歩合が引き下げられましたものを対象にして考えますときに、政府関係機関の金利を下げ得るかどうか、また、下げなければならぬかどうかという問題に対しては、現状のままという考え方でございますが、もう一厘でも引き下げるというような場合を仮定して考えれば、政府関係機関の金利水準というものとの間には十分バランスがとれておるかどうかということに対しては検討を必要とすると考えます。
  230. 大矢正

    大矢正君 まあ企業家は、自由化に備えての資金コストを下げてもらいたいという強い希望があることは当無でありますが、政府も自由化に対処するためには企業に力をつけなければならぬ。そのためには金利が、今日非常に資本の中におきましては大きな負担になっているのだから、下げなければならぬのだという考え方があるならば、むしろ市中銀行に引き下げをやらせる以前に政府関係機関が、金融機関が積極的に金利の引き下げをはかるほうが妥当じゃないですか。あなたも言われているとおり、確かに郵便貯金や、資金運用部その他からお金を当然借りてやるわけですから、資金コストは下げられない限度というものがあるかもしれないけれども、今言われているとおり、政府が出資をして、出資の額をふやせば当然のこととして金利が下がることは下がるわけだから、政府がやろうと思えば幾らでもやれるわけですね。それをなぜやらないのか。市中銀行の音頭をとる前に政府みずからがなぜやらないのかということに対して私は大きな疑問を持っている。
  231. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 政府のほうも相当やっております。御承知のとおり、農林金融に対しては三分五厘という低金利も今御審議を願っておりますし、それから石炭や海運に対しては利子補給も考えておりますし、一般会計からの出資等も考えておりまして、これはもう財政需要を十分見ながら歳入歳出のバランスをとっておるのでございまして、現在日銀当局が公定歩合一厘を引き下げたというのは、ちょうどおととしの水準から一厘引き下げるというのでございますから、それから三十七年度と三十八年度という予算政府関係機関は相当合理化をやっておりますので、まあ今御審議を願っておる三十八年度の予算に出ておる水準で考えた場合、日銀は政府関係機関の金利引き下げということを求めない前に、日銀みずからが貸出金利を下げるということでおおむねバランスをしておる。少なくとも政府の考えておるような範疇にありというような考えで引き下げたものだと考えられます。
  232. 大矢正

    大矢正君 時間がないのであまり議論してもしようがありませんからやめますが、そこで、日銀貸し出しというのは依然として一兆三千億、非常に高い水準からさっぱり落ちてこないですね。一時は一兆五千億という時期もありましたが、やはり依然として日銀券の発券高と比べると高いということが現実ですがね。そこでその理由の一つには、財政収支の揚超ということがある。また一つには、経済成長に伴っての現金、通貨の供給ということがあると思う。しかし、実際問題として一体いつになったらこの日銀貸し出しというのが平常の状態になるのか、一兆三千億というのが平常の状態なんですか。私は昨年一年間の経過を考えてみますと、特に昨年が非常に大幅にふえているわけですね。なるほど財政収支が揚超であったということもありますけれども、しかし、それ以後政府は一次補正、二次補正を行ない、しかも三十八年度はこれはまあ積極財政といいますか、そういう面では揚超にはならぬわけですね。そういうことから考えて参りますと、日銀貸し出しは本来どんどん下がっていかなければならないはずなんだが、依然として変わらない。おそらくこの調子でいけば、三十七年末になっても依然として変わらないということになって参りますが、それがいうならば政府の金利引き下げの一役買っているわけですが、急速に貸し出しを、返済させるということになりますと、当然資金の需給関係がありまするから金利を引き下げるわけにいかないので、そういう関連でやっておられるのですか、その点をお伺いしたい。
  233. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 日銀の貸し出し方に対しては、これを正常にしなければならないということは基本的にお説のとおりでございます。これに対して高率適用の制度を作りましたり、公定歩合を引き上げたり、また、逆に通貨供給の手段として買いオペレーション制度を作りましたりやってみたわけでございますが、今日はこれも逆に公定歩合を引き下げていこうというような状態になったわけでございます。日銀の貸し出しというものが一兆三千億をこすということに対しましては、日銀依存度が非常に高いということに対しては、これはもう改めていかなければならないことでありますが、この通貨発行刊の量そのものに対してはなかなか議論のあるところでございます。大体今のように一兆二千八百億というような限度で持っていいのか、どうも日本は少し通貨量が不足しているのじゃないかというように、総理がそういうことを衆参両院で御説明になっておられますが、私たちはしろうとでございますから、そんなにこまかいデータを持って、これが多いのだ、これが少ないのだというようなこまかい議論は申し上げかねるのでございますが、現在のように、金融環境の整備を行なって参ると、いわゆる買いオペレーションの制度も弾力的に相当幅を広げて参るということでございますし、また、信用金庫や相互銀行に対しては、日銀との信用取引の口座を作っていく。なお、これらの機関の公社債の保有限度額もだんだんと上げておるというような考え方で見ますときに、私は、金融は正常化されつつあるということは、大多数の国民にも認めてもらえる状態になりつつあるのではないかということだけは申し上げられると思います。まあ日銀の貸し出しが一兆五千億円になったら、五千億円の買いオペをやれば一兆円になり、このままの制度を続けていけば、やがて一兆円を割ることもあるでありましょうし、これらの問題は、自由化の体制、先ほどあなたが申されたとおり、いわゆる資金の需要供給の状態等を十分慎重に検討をしながら、無理な政策的な動かし方をやるために産業界自体を混乱に陥れて、角をためて牛を殺すようなことがあってはならないというように、十分なる配慮が必要であると考えます。特に去年などは、相当引き締めを行なっておりながら、逆に日銀券は増発されておるじゃないかという問題がございますが、私は、増発をされておるような状態、まあ経済理論としては非常に指弾せられるような、また議論のあるような状態を続けて緩慢な正常化をはかって参ったから、引き締め過程における産業界の混乱や大きな倒産というようなマイナス面が露呈しないで、究極の目的を達成できるような方向に来たと思います。これは、事業をやっておれば当然でありまして、もう数字のようにぴしゃぴしゃと何割切ってしまうというようなことをやると、ほんとうに産業界自体を麻痺せしめる、再起不能にせしめるということがありますので、大きく引き締めを行なう、正常化を行なう過程において、ある時期においては、引き締めの当初におけるよりも通費供給を多額に行なわなければならないというような場合が間々あるわけであります。しかし、これが逆戻りをするというようなことが前提であってはならないと思いますが、その意味で、過去一年間、特に昨年の十一月ごろから今日までの半年間を振り返って見て、まあ金融は正常化しつつある、こういう認識に立てると思います。
  234. 大矢正

    大矢正君 次に、たしか衆議院のいずれかの委員会だったと思うのでありますが、金利に対する課税、今度四月一日から半分に引き下げられるわけですね。それに対してあなたは、まあここ一、二年のうちには金利に対しての課税は全廃したいということを言ったというようなことが新聞記事に載っておりますが、事実そうお考えになっておられるのですか。
  235. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 全廃できるぐらいであれば、それにこしたことはないとは思いますが、いずれにしても、税負担の公平の問題もございますし、慎重に検討していかなければならない問題だと思います。衆議院の予算委員会で、なぜこういうことを言ったのだという質問がその後ございました。あのときは、目の中に指を突っ込まれるような激しいことを言われればこういうような答弁になるのですと、こういうことを言ったら、大体御理解を願ったようでありますが、いずれにしても、政府には、税制調査会という、大きな新しい視野に立つ、新しい立場に立った機関を設けておりますし、また将来の税のあり方に対しても抜本的なひとつ御答申を求めたいと諮問をいたしておりますので、現在分離課税一〇%を五%に下げた二年間の時限法の措置に対しては、これ以上の問題をどうするかというのは、税制調査会の答申を待ちながらそれを尊重いたしますと、こういうふうに大蔵委員会及びその後の予算委員会で申し上げたら、さもあろうということで御了解を願っておるのでございまして、私の考え方を現時点について申し上げますと、税制調査会の答申を待ちながら慎重に対処して参りたいと、こう申し上げる次第でございます。
  236. 大矢正

    大矢正君 あなたが、まあここ一、二年のうちには利子課税は全廃したいという表明を予算委員会でなされたということで、銀行屋さんはえらい喜んだのですよ。ところが、今の御答弁を聞くと、銀行屋さんは落胆しなければならないということになるわけです。そこで、あなたの考えとして、そのほうが正しいのだ、そういうことが正しいのだと、こうお考えになっておられるのですか。どうですか。たとえば、その調査会に逃げ道を求めて、調査会の結論が出たら云々と言われますが、調査会々々々と言ったって、今度だって税制調査会の言ったとおりになっていますか。なっていないでしょう。調査会に逃げ込まないで、大蔵大臣としての判断をこの際明確にしてもらいたいのですよ。
  237. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 調査会の答申プラス・アルファで考えて政府案はきめたと思っておるのですが……。
  238. 大矢正

    大矢正君 プラスじゃない。マイナスだ。
  239. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そういうふうにばかり言われますので、今度は調査会の意見を聞けということで、今度調査会の答申を待ち慎重にいたします、こう申し上げているわけであります。
  240. 大矢正

    大矢正君 銀行の利子保税と関係して、支払い配当が最近損金に算入されるらしいという風評がもっぱらでありますが、支払い配当を損金に算入するという考え方が根本的にあるのですか。
  241. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ昔から、法人税をもっと考えなければ日本の産業自体が立たぬとか、それから、配当金を損金算入したほうがいいという議論も昔からあります。また、党の税制調査会等にも、そういうものが多多持ち込まれてもおりますし、検討もせられておりますが、しかし、これは金融全般、いわゆる金利の問題とも関係しますし、また預貯金に対する優遇措置、いわゆる特別措置等のバランスの問題等もございますし、税負担公平論という問題もございますし、まあ世界の諸外国の例を十分見たり、これこそ世の有識者の意見を十分徴してからでなければ軽々にできるものではないわけであります。現在大蔵省としては、これを損金算入にするというような考え方をきめてもおりませんし、正式な議題ともいたしておりません。
  242. 大矢正

    大矢正君 そこで次に、税問題の点についてちょっと質問しますが、村山局長、今大蔵大臣は、税の公平というようなことを盛んに言われておりますが、私、一つだけ税が公平でないことがどうも最近考えられてしようがないのです。それはどういうことかというと、最近の金を持った者は、資産を持った者は非常に頭の回転がよくなって、いかにして脱税をするかということには実によく知能が回るようになってきたのですよ。ただ勤労者は、勤労所得、頭から源泉徴収をやられますし、一般の事業家は、小さな零細企業――商店とかそういうところは、昔からよく議論されましたが、標準率表とか効率表というものがあって、ものさしがあるから、ぴたっと当てはめて、お前のところは税金は幾ら、これを払わなければ容赦しないぞということをよく言われるのです。ところが金持は、いうなれば収入を隠す道というものは非常にあるわけです。特に資産三十億とか五十億、全部現金で持っているわけでもないでしょう。株もあるし、土地もあるし、建物もあるし、いろいろありましょうが、そういう資産を非常にたくさん持っている人たちの隠し場所を、あなた方一体検討されたことがあるのかどうかという問題です。たとえばこういうことがあります。去年までは個人の名義で株式を保有していた。だから、それに対する配当は当然のこととして総合課税で計算をされるということがあります。次の年はぽこっとそれがなくなってしまう。どこになくなったかというと、別に幽霊会社を作って、その会社が株を持っているということにします。そしてその会社に配当が行く。だから、個人に来ないから税金がかかってこない。こういう式のごまかしが非常に多くなっているのではないですか。具体的なことは引き続いて聞きますから、とりあえずそういうことについて。
  243. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 執行価の実際問題でありますのであれでございますが、私の経験で言いますと、脱税事犯は漸次減ってきつつあるように思っております、全般的に申しまして。それで、当初非常に大きなものがありましたが、その後、全般的に申しまして、だんだん小さい規模のものになってきておるというふうに私は理解しております。ただ、そのやり方等につきましては、おっしゃるように、いろんな方法が現在でもあるのではないかというふうに考えております。脱税事犯を見ましたときに、その稼得した元本をどこにどういうふうにしているかというふうなことを見ましても、だんだん手が込んで参っているというようなことはあるようでございます。
  244. 大矢正

    大矢正君 脱税出犯は少なくなったと言いますが、確かに脱税というのは法律違反するわけですが、だから脱税になるわけでしょう。ところが、合法的脱税というのがふえたというのです。私の言うのは、法律に違反してやるのじゃなくて、法律の裏をくぐってやる傾向が強いのじゃないか。たとえば、個人でもって株式を保有して、それの配当をもらう場合と、法人会社を設立して、その会社に配当が行った場合と、税というのは大きく迷うのじゃないですか。かりに個人であります場合には、総合課税であれば、累進保税でしょう。ところが、片一方のほうは、きまった固定した税金だけしか払わなくてもいいわけでしょう、何億あっても。資産がたとえば五十億、六十億なんという膨大な資産を持っていて、その人たちの年間の所得が一億だとか七千万とか、そんなべらぼうな話はないのですよ。そうでしょう。これは、かりに自分の資産を平均して一割くらいの程度で回してみたところで、五十億あったら五億の金が上がってこなければならぬはずですよ。それらが七千万とか八千万円とか、ひどいやつになると三千万円しか払っていない。そういう傾向が最近非常に多いのです。どうして逃げるかというと、みんな法人会社ですが、ここで名前をあげようと思えば、個人の名前もあげられるけれども、そんなことをここでやるとたいへんいいことでもないと思うから言いませんけれども、そういう傾向に対して、新しくできた法人会社というものは、それじゃその会社が持った株というのは、一体どこから持ってきたのかということを具体的に税務署では最近検討されているのですか。株を収得したときには何も知らぬ顔していて、それによって配当が来た場合に対しては、これは個人が配当をもらう場合よりずっと安い形で税金を取られるという矛盾が、これは今の最大の矛盾だと思うのですよ。どうですか。
  245. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 実は、個人の株が法人になる、その形が問題でございます。おっしゃるように、どういうことか、具体的なケースを聞かないとわかりませんが、かりに株を贈与したとすると、そのまま時価で法人に、元木に対して贈与を受けた株がそのまま利益になりますから、課税になるわけでございます。どういう形か、ちょっとわかりかねますが、普通小さい規模でありますのは、同族会社の適用を免れるため、本来個人株主が持っているものを、それは法人に限りませんが、名義を他の人に分ける。その場合に、使用人とかあるいは自分の関係している会社に一部名義を分けるということは往々ございます。しかしその場合は、また同族会社の調査がございますので、そのときに実際の取得者はだれであるかということで追及されますので、一気にはわかりませんが、長い間にはわかってくるという問題でございます。ですから、株の移転の形態で問題になると思います。その後における課税方式は、おっしゃるように、個人が持っておりますれば、普通に総合課税になるわけでございます。会社が持っておりますと、現在四分の三だけは益金不算入、こういうことになって、その後の課税関係は変わってくることは御指摘のとおりでございますが、株の名義が変わったときに課税関係がどう変わるかということについては、どういう形でやっているのか、もう少し具体的に伺わないと、正確にお答えできないわけでございます。
  246. 大矢正

    大矢正君 このあと経済企画庁にだいぶ質問がありますし、こまかい議論をしていますと、あなたとだいぶやり合わなければなりませんから、ただ、私はあなたに申し上げておきたいことは、あなたは税を徴収する立場でないから、国税庁ではありませんから、ですから、あなたにそう強く言ってみてもしようがないわけでありますが、いずれ別な機会に、私もこまかく説明をしたいと思います。ただ、お願いしておきたいことは、やはり勤労者は、源泉徴収で、頭から一銭もごまかせないように税金は取られるというような状態でありながら、資産を持った者ほど税金を隠しやすい、税金をごまかしやすいというような体制ではやはりいけないのであって、極端なことを言うと、今のかりに税務署なり国税局なりの配置というものは、大会社ないしはそれに付属するそういった会社の法人税ないしは個人についても大口の、そういうものに対する調査とか何とかいうものは比較的手薄で、三百万とか五百万の金しか持っていない、土地しか持っていない者に対しては、そういう者に対しては徹底的に調べてやり玉に上げるという傾向が強いから、そういう意味で、全体として考えてもらいたいということを要望としてお願いしておきます。  それでは、大蔵省は終わります。
  247. 井上清一

    井上清一君 大蔵大臣にちょっとお伺いします。海外経済協力の問題について若干お伺いしたいと思います。海外経済協力につきましては、総理大臣外務大臣の施政方針演説の中でもいろいろ言及されまして、重要なことについていろいろお話があったわけであります。大蔵大臣としても、海外経済協力についてのお考えなり抱負なりを承りたいと思います。
  248. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 海外経済協力という、面につきましては、これから順次拡大をし、また量もふやしていきたいという考え方でございます。また、特に主要工業国との間でバランスのとれた低開発国援助海外協力というような面からも要請もされ、また要請をされなくても、日本としても、将来の友好関係樹立、また貿易拡大のためにも、長期投資として海外経済協力をやりたいということを考えておるわけでございます。しかし日本は、御承知のとおり、他の主要工業国と違いまして、相当大きな賠償支払いというものもございます。賠償に付随をして協定をせられた経済援助というものもございます。この量が非常に大きいので、この年次計画実施の状況等も十分にしんしゃくをしながら、その上にどのような経済協力ができるのだということを十分に考えながら、海外協力をやっていくべきであるというふうに考えておるわけでございます。それから、海外経済協力基金の問題につきましては、今まで、基金はあったけれども、なかなか実行せられておらないということが一つの問題になっております。でありますので、新しい基金の運用計画を一体どういうふうに考えていくかという問題をひとつ今関係省の間でもって検討しようということで、大蔵、通産、外務というような関係省の間で、この経済協力基金の運用の問題、それからその対象をどういうふうにするかというような問題も十分ひとつ検討して、抜本的な対策を立てようというふうに話し合っておるわけでございます。これは、昭和三十八年度予算編成の当初から、そのような方向で今検討を急いでいるわけでございます。先ほど申し上げた賠償に伴う経済協力の問題も、額としては非常に大きいのですが、相手方の国が合弁会社は作れないとか、その条件に適合できないとか、日本としては、相当安い金利でもって、このような金利でもって国内に放出をすれば幾らでも需要があるにもかかわらず、相当好悪ある処置をやっていると思っても、それでもなお使えないという低開発の国がたくさんあるわけでございます。一体こういうものを実行に移すために、具体的にどうすればいいのだというような問題も検討しなければならない。  もう一つは、日本と低開発国との間の二国間交渉だけを続けておるよりも、いわゆる第二世銀を使ったり、またアメリカのような先進工業国との三角関係、四角関係というようなもので、日本がどの程度分担をしていけるのかというような問題もひとつ検討していかなければならぬというようなことで、相当広範な立場で新しい海外経済協力の方途をきめたいというふうに、今鋭意努力をいたしておるわけであります。
  249. 井上清一

    井上清一君 大臣のお考え、よくわかりました。実は私は、海外経済協力基金の問題についてお伺いしたがったのですが、大臣から先にお話を承りましてあれですが、二年前に基金ができましたにもかかわらず、今日まだ動いていない。これは私ども、まことに遺憾に思っております。どういう点で一体海外経済協力基金というのが動かなかったかということについて、どういうふうにお考えになっておられますか。
  250. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは、制度上の問題もございますし、それから金利の問題その他もございますが、問題は、逆に日本国際収支が相当悪くなったという問題もございますし、相手国に貸し付けたもの自体も、相手国の外貨事情が悪くなったとか、政情不安とかいうような問題で中断をいたしましたり、いろいろ今まであまり日本自体の現状もよくなかったということと同時に、相手に貸しても、やってしまうなら別だけれども、テコ入れをしても、一体返るのかというような面に対しては、わが国さえも外貨事情がこんなに悪いんだからということと、バランスをできるだけとっておりましたので、相手が使わなければしようがないじゃないですかと、また、使えないような場合でも、賠償というのはどんどん進んでおるのだから、世界各国が低開発国に対してやっておるくらいのものは賠償自体でもって日本から金が出ておるのだからというような考え方が大蔵省にも通産省にも外務省にも、これはやはりどこの省とはいわず、政府部内にも、また民間でもそういう問題があったと思うのです。ですから、まあ海外経済協力基金以外のコマーシャル・ベースで、輸銀の問題でも、例のブラジルのウジミナスの問題なども追加出資をしたり、いろいろなことをするけれども、相当長期の口数がかかったというようなことでありますので、それよりも、より政治的に考えなければならない海外経済協力基金には手がつかなかったということだと思いますが、外貨事情もよくなりましたし、世界各国との問題もございますし、また、貿易の自由化という将来の日本の問題もありますので、やはりこれらの将来の日本の貿易シェアともなるべきところに対しては、長期投資という面もやはり考えなければならないということで、新たなシェア観点に立ってひとつ検討をしようというふうになったわけでございます。
  251. 井上清一

    井上清一君 海外経済協力という仕事は、各省に相当またがっておりまして、あるいは外務省、通産省、大蔵省経済企画庁というふうに各省に仕事がまたがっております関係上、どうもその間の呼吸が十分合っていないのじゃないかという、上のほうの大臣はよく御了解になっておりましても、事を運んで参ります場合に、どうも各省間の呼吸というのが合わない。そのために、どうも日本海外経済協力というものが私は円滑に進まないような感じがするのです。こういう点について、大臣のお考えはいかがですか。
  252. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そういう問題もございますので、外務省の専管にして事業団を作ったわけでございますから、これからよくなるというふうに思うわけでございますし、それから、これは時期は早いかもわかりませんし、固定した考え方ということになるとわかりませんが、やはり対政府借款というものだけを考えないで、民間ベースの延べ払いとかあと払いとかいろ問題もすでに各国との商談においてきめられておるものでございますので、こういう問題ともミックスをして、もう少し官僚式な投資じゃなく、どうせやるにしても、必ず将来戻ってくるようにとか、きずなが非常に深くなるとか、少し幅を広げて考えていけば、私は、今までのあまり成績が上がらなかったということに徴して、今度は逆に相当ピッチを上げていかなければならぬだろうというふうになるのじゃないかと思うのです。
  253. 井上清一

    井上清一君 大臣のお話を承っておりますと、非常にけっこうだと思うし、また、そういう方向に進んでいくことを私どもは希望するわけです。ただ、実際の問題についてお話を伺っておりますと、大蔵省は個々の問題についていろいろこまかく指示をされたり、またいろいろな、たとえば海外の投資とか何とかいう問題について、なかなか大蔵省のほうが非常にきびしい。これは国の財政なり国の経済という立場からいろいろ注文をつけられたり、あるいはまた、いろいろ議論があることは当然だと思いますし、また非常に仕事熱心な点からも、それは私ども非常に大蔵省の諸君の労を感謝しなければならぬと思いますが、ただ問題は、もう少し大局的は見地から対外経済協力という問題について大蔵省当局が考えるように、ひとつ大臣も御指導願わなければならぬわけでありますけれども、ことに大蔵省は、対外経済協力問題については、主計局、為替局、理財局というように、いろいろ局が分かれておりまして、各局間の調整ということもなかなか円滑にいかはいように私は聞いておるのです。ですから、こういうふうな対外的な仕事は、どこか窓口を一本にしぼるとか、大蔵省として、こういう問題についてあまりこまかい指示をするとか、いろいろなこまかい問題までにくちばしをいれるということでなしに、基金とかあるいは銀行とかには、りっぱな総裁なり理事長なりがいるわけですから、そういうものにまかせて、大きなところでひとつ指導監督をしていく、そうしてまた、対外経済協力という問題については、そうこまかいことはあまりつつき回さないで大きな見地からこの仕事を進めていいようにひとつ御配慮を願ったら非常にいいのじゃないか、、こういうふに私は考えるのでございます。
  254. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 大蔵省も、これからはあまりみみっちいことを言ったりしないで、緩急よろしきを得てやります今までのことは、あまり大蔵省の評判か悪いから、調べて見ましたら、大蔵省だけが悪いようではないようです。持ってくるのがこま切れであったり、経済ベースに乗らないものであったり今までやったのは、これは一体何だという、こういうようなものもあったので今までの状態は政府部内の共同の責任として、過去の問題まで言ってもしようがないことであって、私は、これからの問題に対しては、やはり計画的であり、長期的てあり、出して見てやめてしまうというようなことではなく、まあ布石はぴちっと打ちながら、長期の見通しで、どこかやはり碁石の線かつながっていくように、どこかで何年後にはつながっていくようなことでなければならないのだと、また、そういうことに対して、また海外経済協力基金そのものの運用ということに対して、抜本的にひとつ方向をきめようというのでございますから、これから大蔵省がとやかくのことを言ったり、歯どめになったりするようなことはないと思います。同時に大蔵省か各省に文句を言わないでいいように、やはりお互いの共同の責任で案を作れるというようなことでなければならないであろうというふうに考えておりまして、私は、海外経済協力の問題自体は、新しくやは一歩を踏み出していくべきであろうというように考えております。
  255. 大矢正

    大矢正君 それじゃ次に、経済企画庁関係で、特に経済見通しについてお尋ねをしたいと思います。長官、あなたのところから出されておる「三十八年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」、この中に、「昭和三十七年度の経済情勢」として、「わが国経済は、三年続きの高度成長を達成した」と、こういうふうに書いてあるのですね。ところで、ここにある高度成長という言葉は一体どういうことなんでしょう。という意味は、高度成長というのは、一体具体的にはどういうことをさすのですか。それをまずお尋ねしたい。
  256. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 高度成長といいますのは、国民経済を構成しておるところの各要素、つまり経済界の設備投資でありますとか、あるいは在庫投資でありますとか、あるいは国民の消費でありますとか、また輸出入、そういうものが、経済が普通の意味での拡大再生産をしていくのに必要だと思われる以上の割合をもって増大をして、その結果、表に現われたところでは、国民総生産の額というものが同じく拡大再生産で通常考えておるより以上の拡大をしたと、そういうときに申す言葉だと考えております。
  257. 大矢正

    大矢正君 あなたの説明からいくと、経済の成長というものが通常考えられている以上に早かったとか、大きかったという場合だと、こういうのですね。通常考えられているという場合には、かりに国民総生産で現われます場合には、何パーセントとかいうような大よその目安というものがあるわけです。それがなくて、通常考えられているより大きかったとか、早かったとかいう議論はないわけです。どのくらいが通常考えられているところなんですか。
  258. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、どういう種類のどういう段階にある経済について考えるかによって私は異なるであろうと思います。わが国の場合とたとえば欧米諸国の場合とでは、おのずから通常という考え方に違いがあると思います。現在普通いわゆる資本主義国家で先進国といわれております国において通常だと考えられておるところの成長率というのは、やはり二%とか三%とかいうものであろうと考えておりますが、わが国の場合、確かに経済そのものが、経済の発展段階が、そういう国におけるそれとは異なることは私は確かだと思います。また、それと同時に、敗戦という事態から復興に向かいましたから、そこにおのずから、いわばゼロから立ち上がった、非常に厳密な意味からいえばゼロではないでありましょうが、一般にいわれております敗戦後の要因といったようなものから考えますと、また経済そのものの成長段階から、発展段階からいいましても、わが国の場合、欧米で考えておるような成長率を通常だと考えることは、これは適当でないであろう、おのずからそれより高いものであるであろうということは申せると思うのであります。それがしかし、何パーセントくらいが適当であるか、正常であるかということは、有権的には申せないことだと考えますけれども、まあ五%とか六%とかいうものは、これは正常のうちに入るであろうと、これも昭和三十年ごろとただいまごろとでは、あるいは違ってくるのかもしれませんけれども、この十年くらいの間を平均して考えてみて、それくらいのものはまず正常の成長卒であろうと、こういうように考えてよろしいのではないか。したがって、それが一〇%とか何とかいうことになりますと、はるかにそれは正常をこえたところの高度なものである、こういう程度の認識をしておるわけであります。
  259. 大矢正

    大矢正君 今あなたは、アメリカのことを言われたのですが、確かに私が記憶しておる限りにおいては、一九五五年から六〇年までの六年間のアメリカの成長というのは、二・三%だという数字が出ておるようでありますね。しかし、先般ケネディが新大統領になって、アメリカの成長率は三%台では低いのだと言われた。これは五%を上回るところまで上げなければならないと、こういうように最近はずっといっておりますね。ですから、今あなたが言われた、アメリカは三%だと言っておりますけれども、それは低成長、低い成長だということ、それがものさしだと考えることはおかしいのじゃないかと、こう考えるのですが、それからもう一つ、あなたが言われた言葉の中に、日本日本なりの成長率というものがあるべきであるし、必要だ、これは、アメリカの二%とか三%じゃなしに、もっと商い立場において考えるべきだというお話がありましたが、しかし、ここ十年来の日本経済成長率というのは、大よそ一〇%から一一%くらいになっているはずですね。そうすると、これが一応のものさしになるわけですね。これが一応の標準の成長率になるのですね。どうなんですか。それより低いのを高度成長というのですか。それより低いのを低い成長とこういうのですか。
  260. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) アメリカ経済成長を現在考えております際に、これは、米国の経済成長政策には、私は一つのかなりはっきりした目標があると思っているわけであります。この点がわが国の成長政策と異なると思っているのでありますが、今御言及になりました、ケネディが三%云々と言いましたときの目標は、失業率を五%を切りたい、失業率を少なくとも四%くらいに持っていきたいという、そういう雇用政策アメリカ経済成長政策の目標でありまして、したがって、それにいろいろな施策を集中していくということで、そういうことを達成するためには、二%台の成長では、一九七〇年ごろに向かってアメリカの雇用問題はいよいよ困難になりこそすれ解決するほうに向かっていかない、こういうことから、一つの政治的な課題として三%以上という問題が出ているのだと思うのであります。それに比べて、わが国経済成長というものは、これはそういう政策的な一つの要請あるいは目標に達するための結果として出てきたと申すよりは、昭和二十七、八年ごろから数年間というものは、戦後的な要因、技術革新その他から、ある意味では自然的に成長すべくして成長したというふうに考えるのであります。その率が年率一割あるいはそれを上回るというようなことは、これは、そういう自然的な要因がなければ、政策的な要請としてはなかなか私は達成できない程度の大きな成長率であったと考えるわけであります。この二、三年になりまして、初めて経済成長ということが一つ政策の課題として現われるに至ったと思うのでありますが、そのときには、すでに設備の更新等がかなりの程度に進んでおった。どの程度に進んでおるかということは、今日でもはっきりいたしませんけれども、かなりの程度に進んでおったことは確かであります。そこで、二、三年前に成長政策を考えましたときに、やはり中心となったものは、私は、一つ給与と申しますか、雇用、雇用と申しますよりは賃金水準とでも印したほうがよろしいかと思いますが、そういう国民の所得そのもの、生活水準そのものを上げていこう、それが意識的な政策の目標になってきたように考えます。それでありますから、昭和二十八年から三十三年ごろまでの一種の自然的な成長というものとそれからあと政策の目標として掲げられた成長というものとは、多少性格的に違っているのではないかというふうに考えるわけでありまして、したがって、過去七、八年間の平均一〇%ぐらいの成長をしたから、今後もそれをもって正常と言うかというお尋ねに対しては、どこか昭和三十四年とか行年とか、その辺を境にして成長というものの性格が変わってきたのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  261. 大矢正

    大矢正君 僕はそういうむずかしいことを聞いているのじゃなくて、三年続きの高度成長を達成した、こう書いてあるのです。三年間高度成長したのだと。こういう意味は具体的には、それじゃどれだけになったから高度成長になったのだということを聞きたいのです。だから、その点についてのお答えをいただけばいいのですよ。
  262. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは冒頭に申し上げましたとおり、一〇%以上の成長といったようなものは、これはかなり高度なものである、わが国の現在の経済にとって正常なもの、ノーマルなものをこえるものである、こういうふうに考えて、そう申しておるわけであります。
  263. 大矢正

    大矢正君 この議論を、あなたとしていてもしようがないので、具体的に、六%なら高度成長とか、五%なら普通、並みの成長だという言葉が得られないならしようがありませんが、この三十八年度の経済見通しの中で、特にあなたのほうは、国民総生産を具体的に検討する場合に、いろいろなものを積み上げてきてやられるから、最終的に一つ数字を作っておいて、それに当てはめるのとは違って、私どもの行き方と、ちょっと経済企画庁経済見通しを作る場合の積み立て方とは異なると思うのでありますが、ただ国民総生産を裏返して、需要面でものを見た場合に、個人消費、それから民間の資本形成といいますか、住宅とか、設備投資とかありますが、それと、それから貿易の中における輸出と輸入の差の問題、それから、最後に政府の財貨サービスの問題というふうに、おおよそ四つに一般的に分けられると思いますが、この需要の面では、それぞれのこの四つの分野において、三十八年度は対前年度、すなわち三十七年度に対して、大よそ何%ずつそれぞれ伸びているのか。それをお答え願いたい。それはあなたでなくても、事務当局でもけっこうです。
  264. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、まず国民総生産においては、名目で八・一%の伸びを考えておるわけであります。個人消費支出においては、一〇%の伸びを考えております。鉱工業生産指数においては六%。それから、輸出は七・二%になるわけでございます。それから政府の財貨サービスは一割四分、一四%の伸びというわけであります。
  265. 大矢正

    大矢正君 そこで、三十八年度では、私の計算からいくと、約一兆五千二百億くらいですかね、その程度のいわば需要の増加、そうして国民総生産の増加ということになってくると思うのでありますが、そこで一兆、五千二、三百億の国民総生産並びに需要の増加の中に占める、たとえば個人消費、それから設備投資を中心とした資本形成、それから政府の財貨サービスの占める比率というのは、どのくらいになっておりますか。
  266. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、ちょっと計算をいたしますとすぐに出るわけでございますが、今の一兆五千億と仰せられましたのは、おそらく三十七年度の総生産が十八兆八千億で、三十八年度は二十兆三千億とこう見ましたので、その差額を一兆五千億と、こういうふうに言われましたと思います。で、この御質問のありましたのは、寄与率、おのおのの要素がどのくらい寄与しているかという点を……。
  267. 大矢正

    大矢正君 そのとおりです。
  268. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) お答えすればよろしいのだと思いますが、個人消費については、三十七年度では五三・八%という割合を見ておるわけであります。三十八年度においては、五四・八%というふうに見ております。それから輸出入でございますが、輸出は貿易外を合わせまして三十七年度で一一・七%、三十八年度で一一・五%でございます。それからもう一つ政府の財貨サービスの率を申し上げればいいわけでございますが、これは三十七年度の二〇・八%に対しまして三十八年度の二二%、こういうふうに見ておるわけでございます。それが、各要素が持っておりますところの全部の一〇〇といたしましたときの構成比でございます。
  269. 大矢正

    大矢正君 次に、昭和三十一年以降の個人消費の前年に対する伸び率は、どのくらいになっておりますか。
  270. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府委員からお答えいたします。
  271. 山本重信

    政府委員(山本重信君) 三十一年が対前年の伸び率七・五%、三十二年度が八・七%、三十三年度が五・二%、三十四年度が九・三%、三十五年度が二・九%、三十六年度が一五・九%、それから三十七年度は一三・八%の見込みでございます。三十八年度は一〇%の伸びを見込んでおります。
  272. 大矢正

    大矢正君 そこで、個人消費が三十八年において約一側、一〇%伸びるということの根拠は、一体どこにあるのですか。
  273. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、いろんな要素から集めましたので、主税局の税務統計とも少し異なっておるのでありますが、大体給与の伸びが六%ないし七%、雇用の伸びが三%ないし四%、まず非常に大まかに一番ベースになる要素は、そんなところでございます。
  274. 大矢正

    大矢正君 そこで、個人消費については、やはり給与がどのくらい伸びるかということが問題だと思うのでありますが、ここ二、三年来の、特に公務員の給与というのは、一体どのくらいの比率で対前年伸びていったのか、それはその収入全体ではなくて、給与そのものが一体どのくらい伸びてきているのかということをお答え願いたい。
  275. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府委員からお答えいたします。……公務員だけでなくてはいけないですか。一般の賃金じゃいけませんか。
  276. 大矢正

    大矢正君 だめです。高いのを持ってきて、下を全体聞くするという、そういうやつはだめです。
  277. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一般の賃金でなくて、公務員だけ……。
  278. 大矢正

    大矢正君 公務員だけです。そうでなかったら、一般のやつは高いのを持ってきて、下を全体高くするような統計的なものは……。
  279. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そうでもないですよ。
  280. 山本重信

    政府委員(山本重信君) 比較的最近の数字しかございませんが、私のほうで労働省と連絡をとりまして、一応作っております資料について申し上げますと、公務員の一人当たりの賃金の上昇率は、三十五年度が一三・二%、三十六年度が一四・五%になっております。なお、三十七年度は二・五%と見込んでおります。
  281. 大矢正

    大矢正君 それから公共企業体関係の、俗にいわゆる仲裁裁定というやつがありますね。この仲裁裁定というのは、初任給を引き上げるとか何とかということは抜きにして、いったい何%くらいずつこれは上がっているのですか。これは仲裁裁定の数字だけ、パーセントで出していただけばけっこうです。
  282. 山本重信

    政府委員(山本重信君) ただいまその資料を持ち合わせておりませんので、後ほど提出いたします。
  283. 大矢正

    大矢正君 そこで、最近日本経営者団体連合会ですか、日経連と俗にいわれる、これは新規の賃上げに対して、経済成長が大体四%くらいしかならないだろうから、質上げは最高限四%だ、こういうことを説明しているところがありますけれども、これは新聞等にも出ておりますから、おそらく企画庁長官も読まれたと思うのです。それから最近問題になっている公労委の仲裁裁定云々といわれるやつですが、これは公共企業体の当局関係は、これはもう初任給以外にはとてもベース・アップなんかできないということを明確に答弁していますね。これは政府関係機関ですが、前のほうはそれは普通の企業でありますから別としても、そうなってくると、あなたは給与が六%か七%上がるだろうと、こういわれているが、一銭も上げないと公共企業体の当局はいっている。そこで、どうしてこれは一〇%の個人消費が伸びますか。そこを聞いている。
  284. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 推計いたしました根拠は、後ほど政府委員から申し上げますけれども、一般の賃金水準の伸びを考えますときに、そこには、一つは定期昇給といったようなものがございます。それからもう一つは、従来被用者でなかった者、つまり人から給与をもらわずに、自分で事業をしておった者が、最近、その後に雇用の形体に入る、こういう傾向はこの節顕著でございますけれども、そういう者もございますし、必ずしも公務員なりあるいは公共企業体の、いわゆるべース・アップということと面接に関係があるということは申せないわけでございますが、なお、これは推計の根拠をもう少し詳しく申し上げたほうがよろしいと思いますから、政府委員からその点はお答えいたします。
  285. 山本重信

    政府委員(山本重信君) 賃金の動きにつきましては、一応毎勤対象の三十人以上のところと、公務員、それからその他というふうに三つに大分けにいたしまして、賃金の動向を過去の実績を調べまして、そうして新しい年度における伸びを想定をしていく。そうして全体の平均賃金の伸びを算出してみたわけであります。約六%ということを先ほど申し上げましたが、これは当然定期昇給がかなり入っておるわけでございます。また、初任給の号俸も当無織り込んでおるのでございまして、いわゆる春闘のほうで賃上げを幾らにするとかという問題とは結びつかない数字でございます。それで、消費の動向を出します場合には、そのように一人当たりの賃金の上昇の平均値を考えまして、それと同時に雇用者の増加がございます。雇用者の増は、最近おおむね毎年対前年比で四・五%程度伸びてきております。これは人口統計のほうからも推計を加えておりますが、三十七年度の実績見込みが四・六%の伸びがありまして、三十八年度も大体同じ伸びを示すであろうという推計を下しております。そういたしまして、雇用者の増と、一人当たりの賃金の上昇等から賃金総額の増加を出し、そうして、それから勤労所得総額を一応計算いたしまして、さらにそれに消費性向等を加味いたしまして、一つの推計を出しております。もちろん消費が一〇%伸びるという結論を出します場合には、今申し上げました計算も一つ資料でございまして、そのほか、実際に今度は小売の売上高の動向とか、百貨店の販売の動向等も加味いたしまして、達観して一〇%という数字を出しておる次第であります。
  286. 大矢正

    大矢正君 昭和三十八年度の経済見通しの中で、特に支出の中に占める個人消費というものを見ると、これはまあ私の計算では大体五四%くらいになるのです、そのうちの個人消費が。そこで、そうなってくると、個人消費の伸びいかんというものは経済成長の非常な大きな部面をなすわけです。そこで、個人消費がはたして一割伸びるのかどうかということになって参りますと、今もちょっと議論いたしましたが、結局六%から七%程度の収入増を見込んでいるといいますが、現実には一銭も上げないとこういう、賃上げはしないとこういうのでしょう。日経連は四%しかやらないと、こういつている。そういう中でどうして一〇%の個人消費が見込めるのか。それから、もしそれでも、なおかつ個人消費が見込まれるというのであれば、それは貯蓄の食い潰しでしょう、結局のところが。そうでなければ個人消費はふえてこないのですから、ですから、その点でどういうふうにお考えになっておられますか。
  287. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは先ほど申しましたように、六-七%、あるいは雇用の伸び四%内外、多少四%を上回わるかもしれませんが、合わせまして一〇%以上ということを、これが一番ベースになると申し上げたわけでございますけれども、実際問題といたしましては、いわゆる春のベース・アップというようなものが、いわゆる労使と申しますか、その町方の間の交渉の問題になっておって、実際に経験的にこれがどういうきまり方をするか、ゼロ回答のままちゃんと落ち着くかといいますと、経験的にはどうも必ずしもそう落ち着いていない場合が多いわけであります。で、私ども経済見通しを立てますときに、そういう意味での政策的な、こうあるべしという考慮をいたしておるわけではないのでありまして、過去の経験から、現実にどこら辺になっておるかということを考えておるわけでございますから、今大矢委員が御指摘になりましたような、実際ゼロ回答だからゼロになるだろうというふうには、過去の経験は必ずしもそういうふうにはなっておらない。  それから先ほど、ついでに申し上げましたように、定期昇給ということは出然に給与の伸びに入るわけで、これは交渉の対象にならない、ベース。アップの対象にならないわけでございますから、そういうことも考えまして、年間の消費が一側くらい伸びるだろうということは、これは私は達観としてはいいところではなかろうか、というふうに思っております。
  288. 大矢正

    大矢正君 あなた、いいところはいいところだろうなんという調子で考えられたって困る。三十五年、六年、七年の三カ年間はなるほど一〇%以上の個人消費の伸びがあるけれども、三十一年から三十二、三十三、三十四年の四年剛というのは全部一〇%を割って、この平均が大体七%をちょっと上回わる程度しかなっていない、個人消費の伸びが。あなたが三十五、六、七年という、いうならば非常に神武景気から岩戸景気ですか、そういうような時代においての個人消費の伸びということを頭に入れて、一〇%は伸びるだろう、そういう腰だめではなくて、もっとやはりはっきりしたものがなければならないのじゃないかと私は思う。ですから、そういう意味においては、個人消費が一〇%ということを事実経済企画庁が考えておられるのだとすれば、個人消費を伸ばすためにどうするか。どうするかということのためには、結局のところ給与を引き上げるなり勤労所得を増加させるということ以外にないのじゃないですか。それ以外に金持の個人消費をどんどん伸ばすような方法でも考えておられるのですか。
  289. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど、それは結局貯蓄の食い潰しになるのではないかということを付言してお尋ねだったわけでありますが、たしか私の記憶では、三十八年度でも、所得に対する消費性向を前年あるいは前々年よりは低くみたりはいたしておりませんので、消費性向も貯蓄性向も、大体、同じとみておりますから、過去の食いつぶしがあるというふうには考えておらないわけでございます。  そこで、確かに、先ほど、政府委員から申し上げましたように、三十、三十一、三十二の個人消費の支出の伸びは八%程度で、三十三年には五%になったりしておるわけでありますが、しかしことしに入りましてから、百貨店の売り上げなんかを見ておりましても、一月には懐うございましたが、二月には、対前年同期比また二〇%というような数字が出て参りました。三月も、どうも、相当高いようでありまして、どうも、経験的には、消費というものは、相当荷いと、これは、何が原因になって荷いかということは、既往の事実になってから、分析するほかございませんけれども、相当高いと思わざるを得ませんし、給与の伸びが六、七%あるという達観についても、全体の雇用の伸び、あるいは個人企業から被雇用者に変わってくるというような人の動き、農村からの人口の流出などから考えていきますと、どうも、私は、やはり、一割ぐらいはあるだろうと、おおまかに結論を出しますときに、私が判断をいたしたわけでございますけれども、どうも、やはり、そのくらいはあるとみておくほうが穏当ではなかろうか。しかも、それは過去の貯蓄の食いつぶしという形においてではないというように考えるわけであります。  なお、お尋ねになりました点で、経済成長を支える一つの大きな柱は、やはり雇用である、あるいは賃金であるということは、私ども、まさしくそう考えますので、わが国経済が、さらに成長ずるために、対内的にも、あるいはいろいろな海外からチーフ・レーバーだというような非難を受けておる点に対する回答としても、国民全体の給与水準というものが上がっていくことが望ましい。私どもは、その当面の懸案になっておりますことについては論評いたしませんけれども、大勢としては、給与というものは、もっと上がっていくことが望ましいということは、確かに考えております。
  290. 大矢正

    大矢正君 全体的な関係がありますから、次に、物価との関連を伺っておきたいと思うのでありますが、三十五年度、三十六年度二年間に、前年度に対する物価の上昇率はどのくらいか。これは消費者物価です。
  291. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 消費者物価は、全都市について申し上げますと、三十五年度は三・八%でございます。三十六年度が六・二%でございます。それから三十七年度は出ていないわけでございますが、暦年で申し上げますと、三十七年は六・八%というふうになっております。
  292. 大矢正

    大矢正君 そこで問題は、三十七年度の年度としてみた場合、暦年じゃなくて、年度としてみた場合の物価の値上がりについて、あなたのほうでは、経済見通しからいくと、五・九%と、こういうふうに書いておられますね。しかし現実には、一月には、消費行物価が一・六%、二月には一・一%と、こういうふうに、漸次上ってきております。三月に伸ばして考えていけば、こういうふうに、五・九%どころではなくて、六%をこえて、六・五%程度までは、消費名物価が上がるのではないかと、私どもは見通しを持っておりますが、ほんとうに、あなた、年度で考えた場合に、五・九%しか物価の値上がりがないというふうにお考えになっておられますか。
  293. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういう政策の目標を立てて、昨年の八月ごろから努力して参りましたが、この時期になりますと、もはや五・九%を維持するということは困難であるというふうに申し上げざるを得ません。
  294. 大矢正

    大矢正君 そこで、あなたのほうのこの経済見通しと経済運営の基本的態度、どうも、うそばかり書いてしようがないのだが、これにこの経済の、一番最初に私がさっき言った「高度成長」云々と書いてあって、それから四、五段聞をおいて、「高騰を続けた消費者物価にも騰勢鈍化の兆しが現われてきた。」、こういうふうに書いてある。どこが一体騰勢鈍化したか。
  295. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一月十八日にこれを決定いたしたわけでありますが、昨年一年の消費者物価の動きを見ておりますと、多少ずつ上がっていくという騰勢そのものは、消えなかったわけでございますけれども、対前年同月と各月とを比較して申しますと、年末に向かってずっと低くなっておったわけでございます。それはたとえば昨年の五、六月ごろは、対前年同月に比べて、消費者物価が八%以上九%近く高かったわけでございますが、それが月とともにだんだん下がって参りまして、七から六になり、六から四になり、四から三になりまして、昨年の十一月には、対前年同月に比べて、三・八高いというレベルまで、ともかく騰勢が落ちてきておったわけでございます。それが昨年の十二月から、これはお尋ねがございますと、後に申し上げるわけでございますけれども、生鮮食料品を中心とした値上がりが始まりまして、十二月は四・九、一月は六と、こういうふうにまた異常な数字になってきたわけでございます。これは特殊の原因に基づくというふうに、私ども認識しているわけでございますけれども、いずれにしても、そういうものをも含めまして、この一月にこれを決定いたしましたときには「騰勢鈍化の兆しが現われてきた。」というのは、これは真実であったわけであります。
  296. 大矢正

    大矢正君 今議論しているのだから、そんな昔のものを、われわれ議論させられちゃかなわないわけですよ。まあ、あげ足とっても仕方がないから、それはそれとして、最初経済審議会では、所得倍増はどうも実態にそぐわない面が出てきたし、当初考えたときとは、かなりの相違が出てきたということで、手直しをしなければならぬじゃないかという議論が行なわれているわけですね。経済企画庁は、一体それをどういうふうに考えておられますが。
  297. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まず最初に、現実に経過いたしました二年間について、経済の実態の歩みと計画で予想しておったところとが、どういう理由で、どういうふうに離れたかということは、これは当然分折をいたさなければならないのでございますから、その作業はすでに着手をいたしたわけであります。これは数カ月を要すると思うのであります。で、そういたしました結果、いわゆる現状分析というものが、いろいろな形で出てくると思うのでありますが、それから先、そのような現状であるならば、今後、わが国経済がどういうふうに進むだろうか、あるいはどうなければならないかという課題は、そういう分析の中から、おそらくおぼろげながら出てくるというところまでは、私は間違いない。また当然分析をすれば、将来へのプロジェクションが出てくるとは思うわけであります。しかしながら、それを新しい一つの、いわゆる従来の倍増計画に置きかわるものとして、これを世論に問うべきであるかどうかということについては、いろいろ問題があると思うわけであります。つまり私ども、できるだけの能力を尽くしまして、民間におかれても、あるいは政府部内においても、最高の権威をもって作業をいたしますし、また将来の予測もそこから出てくると思いますけれども、そういう作業そのものには、それ自身の制約がいろいろあるわけでございます。いかに権威者を集め、いかに知能を動員いたしましても、それ自身に制約があることでございますから、それをもう一度いわゆる従来の計画に置きかわるものとして、国民の世論にこれを問うのがいいのかどうか。しばしば権威というものと、それ自身の持っておる制約というものを混同して受け取られがちでありまして、しかも、これが民間に同じような研究がないために、ただ一つのものであるということから、余計に過大な信頼を寄せられるということにもなります。で、そういうこともございますので、いずれにしても作業が終りますのは秋近くになると考えますから、そのときのわが国経済情勢が非常に平静なものであって、そういう私ども新たに掲げますところのものを、国民がそういう平静な立場から批判をし、受け取っていただければよろしいと思いますが、万一、そうでない場合には、それから生ずるいろいろな弊害、そういう制約を持っているものでありますがゆえに、なおさら弊害があり得るわけでありますから、そのときまで、その時点においてどういうふうに取り扱うかを判断する。それまで作業は作業としてとにかく全力をあげてやってみる、こういうような考えでいるわけでございます。
  298. 大矢正

    大矢正君 時間がありませんからまとめて質問しますが、政府のこの見通しによると、三十八年度は消費者物価は二・八%しか上がらない、こういうふうに言っておりますね。しかし、私ども三十六年、三十七年の所得倍増計画と言いますか、特に池田さんが誇張された高度成長と言いましょうか、それが出て以来、経済企画庁が出す物価の見通しと、現実の消費者物価の値上がりは合ったためしがない、常に三%なり四%の狂いが現実に出てきております。そこで私どもとしても、三十八年度に二・八%しか物価の値上がりはないのだということ、これは認めるわけにいかぬのです、今までの経過がそうなんですから。まともに、そのとおりになったことは一つもないのです。全部大幅に消費者物価の値上がりが行なわれておりますから。しかし、政府があえて二・八%しか物価の値上がりがない、それしかないということなら、具体的にどういうことがあるから二・八%しかないのだ、従来六%以上二年間続いて上がっているのに二・八%しか上がらないという根拠がなければならないと思うし、その根拠は、今日の段階では対策の裏付けがなければならないはずです。ですから、たとえば食料品関係は一体どうするのか、この大幅な野菜を中心とした物価の値上がりをどうするのか。日本の最近の食生活は変ってきて、米から酪農というように――肉とか卵とかというように変っておりますから、そういう意味で野菜の需要はふえているはずです。それを対前年度と同じような考え方でいっても、私は当然そこに狂いが出てくる問題だと思う。ですからたとえば、そういう生鮮食料品に対しては一体どうするのか、それについてどの程度抑制することができるのか。あるいは最近いろいろ議論されておりますバスの値上がりについては、政府は最後まで上げないという態度で臨むのか、あるいは風呂代もまた出ておりますが、これについてどうするのか。そういうように非常に不可欠な公共料金と目されるべき内容について、経済企画庁として絶対上げないという態度で、ここ一年なら一年やるという考え方の上から二・八%という数字が出てきたのか、そういう点について御説明願います。
  299. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 何分にも従来の成績が非常に悪いのでございますので、二・八はまただめだろう、と仰せられるのに対しては、どうも事実をもって今度はできましたと申し上げられるかどうか――そう申し上げるしかないくらい今までの成績はよろしくないわけでございます。ただ、この一月と二月というものを見ますと、先ほど御指摘のように一・六、一・七という、二月は東京だけでございますけれども動きがありまして、その九割三分までが生鮮食料品、それもほとんど魚でなく、二月の場合をいいますと野菜だけでございます。ここに、したがって対策を集中する。それ以外の要素では上がっている要素がないわけでございますから、ここに対策の主点を置かなければならぬということは明らかであると思います。ただ野菜については十二月から四月までが一番むずかしいときだといわれておるのでありますが、この一週間ですでに野菜の値段が三分の一ぐらいになったりしておりますので、このようにまことに対策の相手としては扱いにくい対象であります。ただはっきり申し上げられることは、高度成長政策をやっているかたわらで、こういう問題についての政策がはなはだしくおくれておった。これについて政府が、前もってその生産者に対して指導に当たってこなかったということだけは、これはたしかであります。私ども政策のこれが現在泣きどころになるわけでありますが、この時点に立って考えますことは、やはり目先の上下ということよりは需給の安定ということだろうと思うわけであります。つまり生産者に対していわゆる豊作貧乏というようなことが時期的に来るというようなことでなしに、今後どうやっていくか。一定量の生産に対して一定価格で何かの形で最低のものを市場で受けてやるというような、それを指向するようないろいろな政策、それはたとえば生産指導でもありましょうし、あるいは流通、貯蔵その他いろいろな政策が必要であると思いますので、そういうものの総合的な施策をすることによって、高度成長から取り残されておったこの部分について、本格的な長期政策をしなければならない、これだけはたしかであると思います。それについては、私ども関係各行相談してぜひやって参りたいと思います。それから公共料金については現在のように消費者生活が脅威を受けておるというような場合に、公共料金の引き上げをするということは、私は不適当であると思います。したがって、バスでありますとか、あるいは生産者が相当大きな規模を持っているもの、たとえばビールでありますとか、そういうものについて相当の理由はありましょうとも、この際料金改訂、価格改訂をするということは不適当であるというふうに、私は考えております。ふろ代についてお尋ねがございましたが、いかにもこれは相手が零細な相手でありまして、申し分にも相当の理由があるのではないかというふうにも考えられますが、これはまだ調査が、東京都においても厚生省においても完結をいたしておりませんから、この点はしばらく時間をかしていただいて、いずれとも結論を出したいと思いますが、一般的に公共料金を動かすということは、こういう消費生活に不安がある間においては私はとるべきでない、こういうふうに考えております。
  300. 大矢正

    大矢正君 まあ、あなたのほうでは、最近の物価値上がりは生鮮食料品が中心だから、それが落ちつけば物価の値上がりというものは政府の考えているとおりになるのだというような発言が当然出てくると思います。しかし、たとえば生鮮食料品が一ぷくして値上がりが止まったとして、そのときになると、あなたのほうは何をやるかといえば、よし、この時期にバス代なり電力料金なり入浴料金なりビールなり酒なり、その時期に値上げするのですよ。それは常套手段です。生鮮食料品の高い時期に、ほかの公共料金なども上げればとんでもないから、生鮮食料品が高いときにはだまっていて、それが落ち着いたら、そっちのほうを上げる。だから一年間通してみれば同じことになる。過去二年間がそれなんです。それを国民が非常に心配している。あなたのほうでは二・八%しか消費者物価の値上がりがないということになったら、今民間企業でもこれはそうでありましょうが、公共企業体関係でもそうでありましょうけれども、経営者側、当局者側が物価の値上がりが二・八%しかない、その二・八%を基準にして賃金を上げればいいという考え方が出てくる。それが逆に一年たってみたところが六%、七%になったということになりますと、それだけ押えられるということになりますよ、実際の経済生活から見た場合に。そこを見てもらわなければいかぬ。だから二・八%というものは単に見通しとか、単なる統計の資料とか言わないで、あなた方の二・八%という場合には、経済全般にどういう影響を与えるのかということも十分考えてもらわないと、過去二年間の経験があるんですから、私はそのことを強くあなたに言っておきたいと思う。  それから、時間がもうなくなりましたから、最後に二点、経済企画庁長官に、どうすればよくなるかということをお尋ねしてみたいと思います。  一つは、最近、大企業と中小企業との間の賃金の格差というものが縮まってきたということは、私も統計上認めます。しかし、最近の中小企業の企業状況を見ますると、特に去年の九月期決算、ことしの三月期決算を見ますれば、利益率というものが若干下がっている。なぜ下がるかというと、これは私が今言ったとおり、大企業と中小企業の賃金格差を是正してきたために、それだけ中小企業の利益率というものが下がってきた。利益率が下がるということは、それだけ再投資ができないということになってきますから、中小企業のこれからの経営というものに対しては、かなりの脅威になる。しかし、全体的に大企業と中小企業の格差が縮まることはけっこうなことだ。同時に、もう一つ考えなければならない問題は、昭和三十五年から四十年、この五年間というものは非常に、生産年令人口と言いましょうか、労働可能な人口と言いしまょうか、ふえていっているんですね。ところが、このふえ方が四十年以降は非常にスピードが早く減っていく。そうなって参りますと、今の経済の現状、それから大企業と中小企業における若年労務者の不足、こういうものとのかね合いにおいて、中小企業というものは、ここ二、三年のうちには貿易の自由化とからんで非常に困る事態が出てくる。そのときに、あなた方が言われている高度経済成長の中における中小企業の位置というものをどういうふうに考えられる。中小企業というものは、どうしたら生きられるんですか。これが一つ。  それからもう一つは、農村、それから漁村、それしか何らの工業がない。それに付随した工業は、まあ多少は農産物加工なり、漁業資源の加工なり、これはありましょうけれども、そういう町や村では、一体どうやったら、所得倍増計画に置き去りにされないでそこの住民が、その地域に住んでいる人々が生活していくことができるんでしょうか。これは単に生活ができるからというだけの問題ではなくて、それと所得倍増計画との関連は一体どうなるのか。これは、私の北海道にも農村地帯、漁村地帯が非常に多いのですが、それの所得の伸びが、他の工業地帯の所得の伸びと比較して非常に差があります。これは一体どうすればよくなるのですか。それをお尋ねしておきたい。
  301. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 前段の、中小企業の現状についての今御指摘になりました認識は、私どももまさに、大体そのとおり考えております。つまり、給与の格差は縮まっておりますけれども、生産性の格差というものは、中小企業でも生産性は逐年上がっておりますけれども、大企業の生産性の上がりに追っつきませんから、生産性の格差というものは縮小していないわけであります。で、労働の需給状況もまさに仰せのとおりでありまして、ここしばらく供給が多うございますけれども、しかし、傾向は明らかにそういう労働人口はより多く大企業のほうに吸収されております。これも統計的に明らかであります。そこで非常にはっきりしていることは、中小企業がこれから設備の更新に取りかかって、そうして、必要な機械設備を入れることによって生産性を上げていく。そういう方向に向かうということが、両方の問題を解決するところの基本的な考え方になると思います。それは、私どもが中小企業基本法関係の法律案というものの御審議をお願いをいたしまして、これによって生産の協業化、あるいは専門化、あるいは機械施設導入のための資金のめんどうを見るとか、こういったようなことで、中小企業の体質の改善、設備の更新をはかっていきたい。これはまたわが国のこれから先の設備投資、経済成長をささえるところの一つのかぎになるであろうというぐらいに考えておるのであります。  それから、農村、漁村については、先ほどの食品加工といったような施策もその一つでありますけれども、やはり中・心になりますのは、農業基盤強化、いわゆる選択的拡大、農業構造の改善といったものが中心になるでありましょうと思います。農業所得というものは、大体半分は所得の増大でありますが、半分は農業人口の減少ということで一人当たりの所得がまあまあ一般の所得の上がりに追っついている程度のことでありまして、農業自身の生産性というものは、まだたいして上がっておらないということでございますが、やはり農業人口の流出と、片っ方は農業構造の改善ということで、農業というものが業として成り立つように向かっていく、こういうふうに施策をしていくべきであると考えておるのであります。両方通じまして、中小企業と農業を通じまして、これで経済の二重構造の打破をしていきたいと思っておるのでありますが、自由化との関連でそれに非常な障害があるというものについては、その部分だけは自由化というものをしないでいく、こういう政策をとる以外に方法がない。また、そらすべきであろうと思っております。
  302. 館哲二

    主査館哲二君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  303. 館哲二

    主査館哲二君) 速記をつけて。
  304. 杉原荒太

    杉原荒太君 ごく簡単に、国土総合開発事業の調整費の問題でお尋ねいたします。この調整費は、企画庁の予算としては比較的重要度の高いものだと思うんですが、三十七年度で実際に使用されたのは、具体的にどういう場合で、その件数は幾ら、また、各件の金額はどうなっておるか。金額のほうは全部でなくても、おもなものだけでけっこうです。
  305. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは実績がきわめて明らかになっておりますので、どういたしましょうか、非常にたくさん件数がある。
  306. 杉原荒太

    杉原荒太君 ただ数だけでいいです。金額もごくおもなものだけでけっこうです。
  307. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 件数は四十六件でございます。それから、金額の合計は十一億五千万円でございます。
  308. 杉原荒太

    杉原荒太君 それから、この三十八年度の予算として十三億五千万円計上してあるわけですが、従来の実績、経験等から見て、三十八年度に大体予想される必要額といいますか必要量、それを充足するに足る額と見ておられるか、あるいは、それとも、予想される必要量から見れば、もっと多額を要するけれども、財政上の関係でこの辺で落ちついたというふうな、そういうものであるかどうか、その辺のところはどうですか。
  309. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、先ほど申し上げましたような性格の経費でございますから、大体所要額は公共事業費の伸びに比例をするわけでございます。それから判断いたしますと、これだけの予算を認めていただきますと、私ども仕事をいたします上に、従来と同程度のことは当然やって参れると思います。不自由をいたさないつもりでございます。
  310. 杉原荒太

    杉原荒太君 念のためにお尋ねしておきたいのだが、企画庁の本年度の当初の概算要求では、この調整費は幾らになっておったのですか。
  311. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 三十八年度……。
  312. 杉原荒太

    杉原荒太君 予算編成の際の当初の概算要求額は。
  313. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いろいろな考慮もあってと思いますが、二十億要求いたしたそうであります。
  314. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、主として私は税制問題で、今回の税制についてお尋ねしたいと思いますが、一般減税、いわゆる所得税の減税、こうしたことを私どもは望んでいるんですが、中山さんの答申案でも私は一般減税ということに重点を置いてあるんだと思いますが、むろんあの答申案の中には、それは政策減税のほうもあるんだと思いますが、国民一般は、やはりいわゆる所得税の軽減ということを、減税ということを私は望んでおると、こう考えますが、最近の上不況を財政の力で回復させようと、こういう声が財界の一部とか、あるいはあなた方の自民党の皆さんの一部からそういう声が出てきた。つまり、景気回復のために役に立つような資本の蓄積あるいは企業への融資、援助というようなことをお考えになって政策減税に持っていかれた。ところが、国民の声としては、やはり私は所得税の減税ということを一般は望んでおるんじゃないかと、こういうふうに考えるんですがね。あなたはなかなかヴェテランだから、あなたのほんとうのお気持を、一般減税でなくても政策減税もいいんだ、こういうことを先般からもだいぶお話になっておったようですが、その点のあなたの御見解をまず私ひとつ承りたいと思います。
  315. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 所得税の減税を重点的に考えなければいかぬということはお説のとおりでございます。政府は、税制調査会もそのように考えておるということも認めております。政府は、過去も現在も将来もそのように重点的に考えておるわけでございます。今度は特例法の問題と合わせて行なったわけでございますが、まあ税制調査会の答申どおり、所得税の一万円上げをそのまま改正案といたしまして、その上になお俗にいわれる政策減税というものをプラス・アルファしていれば全然問題が起きなかったと思いますが、何分にも所得税の問題につきましては、過去昭和二十五年から単純累計にいたしましても一兆一千億の減税のうち八千億近いものは所得税の底上げということをやってきておるわけであります。これは単年度で終わるのではなく、ことしも来年も引き続いて行なうものでございますので、所得税の減税はこのようにいたしました。御承知の八条国移行というような自由化に対応しなければならない日本の実情に徴しまして、将来の飛躍のために、そしてこういう処置をやることによって、国民全体にやがてその福音が返ってくるという考え方に立ちまして、俗にいわれる政策減税も加味をいたしたわけでございます。でありますから、毎度申し上げておりますように、所得税の減税問題については税制調査会の答申も待ちながら、過去も現在もまた来年以降も重点的にこれを考えて参りたい、こういうふうに政府の考えを明らかにいたしているわけでございます。
  316. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 それでは、あなたのお気持は私も大体そのとおりだろうと予想はしておったのですが、八条国への移行というような点を加味して政策減税をプラス・アルファしなければならないような状態になった。そういうことを、それは十分私はわかりますが、今までいわゆる池田減税内閣という看板のもとに、毎年千億からの減税をしてこられたのが、ことしそういうことをおやりになるということは、あるいは三十八年度の自然増収が少ないであろうというようなことを見込まれて、そういうことも加味して減税されたのですか。今回の減税制度はそういうことですか。
  317. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 三十八年度の財政規模の問題もございますし、歳入歳出とのバランスという問題もあり、特に歳出要求というものが非常にたくさんございましたので、税に対しましては、来年度からは新しい税制調査会を設けまして、今度のやつは、三十八年度の予算編成に対して見合うように臨時答申を求めただけでございまして、抜本的改正を行なってもらいたいということを税制調査会にも諮問をいたしておりますので、今年度の予算といたしましては、この程度のものでやむを得ないのではないか、こういう考え方のもとに今般の減税案を策定いたしたわけでございます。
  318. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 税制調査会のことは、御承知のとおり、十分信頼し得るりっぱな方、オーソリティのおそろいがほとんど一年間もかかってあらゆる角度から研究をされてそうして答申をされた。ところが、政府においては僅々一月ばかりの間に政府案を策定してしまわれたということは、これは田中さんもなかなかその道の大家で、さすがに池田さんから見込まれて現内閣の台所を預っていらっしゃるのだからたいしたものだと思うけれども、私は税制調査会の答申を重視してもらって、あなたは重視したとおっしゃっているけれども、結果はそうじゃない。ですから、私は税制調査会の少なくともこの減税問題に対しては、あれを尊重していただいて、そうして一万円控除の問題は三者一様に引き上げてもらわなければ、ほんとうの減税にはならぬのじゃないか。中山会長もさようにおっしゃっておられるようですが、そういうような点につきまして大臣はどういうふうにお考えになっておるか。一色明はたいへんお上手にしていただくから、私のようなしろうとはすぐそれに巻き込まれてしまうような調子になるのですが、大体政策減税というような方針は、私は最も平凡な方法だと思う。政府に金を出せとか、あるいは公共投資をやってくれ、あるいは大幅に予算を、歳出を大幅にふやしてくれ、拡大してくれと、そういうことの処置なら、これは私はだれでもできるのだ。必ずしもあなた方のような、そういう財政通のヴェテランでなくても、私はだれでも大蔵大臣はできると思う。そういう政策減税というようなことは、最もこれは安易な平凡な方法だと、私はそう思いますがね。大臣どういうふうにお考えですか、
  319. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 政府の税制調査会の答申を尊重いたしておるということは、過去現在も将来もでございます。これはひとつ御信用賜わりたいと存ずるわけでございます。減税は、現在やらなきゃいかぬという問題を強く考えますものと、それから、まあ今度はこういう状態でがまんをしてもらうが、そのかわりにこういうことをするので、来年はそれよりもより多く減税はできるのだと、こういう取捨選択がなかなかむずかしいのでございます。まあ政策減税よりも一般減税というふうに、いわゆる所得税減税にウエートを置かれた答申がなされたわけでございますが、当時はまだ財源見積りも不確かでございましたし、われわれがとっておる指数よりも、過去の何年間かの物価の値上がりというような、消費者物価の値上がりというようなものもとっておりまして、でき得べくんば一万円引き上げのほうが理想的であると、こういうふうに御答申に相なったわけであります。でありますから、政府は今までも長いこと税制調査会の意見を尊重して参ったわけでごいざますし、また今度ももとより尊重しておるのでございますが、御承知のとおり、大蔵省には主税局という専門家たちの部局もございますし、それから、自由民主党という与党には税制調査会も設けられておりまして、大蔵省に長いこと職を奉じた職員も議員として新しい角度から税制の検討も行なっておりますし、御承知の総理は、税で三十年も飯を食ってきた方でありまして、そういう意味で、内閣等と大蔵省の主税局、そういうものが渾然一体となって、内閣調査会から受けました答申をもとにしながら、三十八年度の減税政策をきめたわけでございまして、こうすることが将来より大きな減税が行なえ、より国民のレベル・アップをはかっていくのに必要である、こういう考え方に立って今御審議を願っておるような原案をきめたわけでございまして、まあひとつ過去の実績を見ていただいて、また将来も、何しろ二十五年から十何年間もやっておるのでございますから、まあ今度一万円を一部五千円に下げたけれども、こうすることによって、来年、再来年はひとつ一万五千円の減税をやるつもりだなと、こういうふうにやはりいい角度から御審議を賜わるように特にお願いをしたいと、こう思います。
  320. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 ただいまの大臣のお話、聞いていると、将来は大いにこれは望み多く、私もありがたいと思いますが、基本的問題としまして、具体的に申しまして、先ほどから言っているように、配偶者、扶養者、それから専従者の基礎控除を一括引き上げなければ減税の目的は達せらないということを答申案に書いてあるわけなんですね、中山さんの。一つでも引き上げないということになると、これは逆に増税になるおそれがある。こういうことを中山会長の答申案の中にははっきり書いてあるようですが、それだけの大蔵大臣も減税に対して熱心なお考えを持っておられるのに、どうして五千円という引き下げをされたのか、その大きな、もっと私ははっきりした根拠と言いますか、理由が何かあるのじゃないか。その点どうぞもう少し、くどいようですけれども
  321. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私も一万円の引き上げという問題に対しては、一万円引き上げたいという考えでおりました。この際五千円なんという半端なそういうものをやって、どうも画龍点睛を欠くという考えであって、私もそう思ったのです。思ったのでございますが、そこが大蔵大臣の非常に苦しいところでもございます。必要があれば増税もあえてやらなければらぬというところが大蔵大臣一つの職務でもありますので、増税に踏み切らなければならないようなときの大蔵大臣もございますし、大幅に一千億、二千億減税をやれるときもありますし、今度はその中間に当たるというぐらいにひとつ事実認識というものをお持ちになっていただければ、これは長い過去の実績と、この内閣が現在から将来ずっと考えていることをるる申し述べておるのでございまして、私も今度の未亡人加給の問題、総額八百億、こういう問題の解決に当たりましても、とにかく純理論とすれば当然底上げをはかっていくということが一番いいことでありますし、可処分所得をふやしていくということも知らないわけではありませんし、私どももそういうものに対しては深刻なものの考え方をいたしたわけでございますが、まあ各般の事情を十分検討いたしました結果、先ほど第一に質問がございましたように、公定歩合を下げていく場合に、一体日銀から金を借りない金融機関、特に中小企業の金利負担を下げなければならないと言っている金融機関などは、公定歩合下げられても貸し出し金利を下げるわけにいかぬじゃないか。こういう御質問がございましたが、やはりそういう金融環境を整備していく。国は非常に無理をしても貯蓄をし、将来の国のため、お互いのためを考えている人には特別の施策を行なっていくのだ、こういうことをやることが一つの金融環境の整備であり、そうすることが、よりはっきり国の目標を国民に示すことでもあり、少くとも政府の毒悪の処置であるということもやらなければ、自由化にも対応していけないし、国際競争力もつけられないしというような考え方で、歳出も、先ほど申し上げたような未亡人加給その他いろいろな必要もございますし、道路も二兆一千億のものを四兆円にしなければならないというようなものを押さえるのに非常に苦しい立場でもって、三十八年度はその目的とするところはわかるのですが、三十八年度の状態ではどうにもならないので、三十九年でひとつ何か改訂計画をお互いに考えましょうというような、いろいろな歳出増の要因を十分比較検討しましたときに、まあ先ほど言われたとおり、私も一万円というような引き上げをやりたいし、中には一万円、七千五百円、五千円、二千五百円、ゼロ、こういう案も検討したわけでございます。少くともゼロにはできないし、二千五百円などということもできないから、七千五百円ということも考えてみたわけでございますが、その当時は、もう財源はそうでなくてもまるまる食ってしまった、三十九年度どうするかというような御意見があったときでございますので、当時の状況としては最善の道を歩んだということで、五千円というようなものになったわけでございます。私も少しその放漫に近いと言われたような予算も、参議院の最終的な審議をお願いしますときには、まあ必要であろうというふうに考えていただいたわけでありますから、現在になると、これが中山調査会の答申どおりに一般減税をしておれば、これは少なくとも六十点、七十点だったなと、こういうことを言われる友人知己や先輩もおりますが、私としては、当時の状況として、一年灘、三十八年度を見通して最善の努力を傾けて、今年度行なえなかったものは次年度、将来において、よりプラスをして行ないたいという考え方に基づいて予算の作成を行ない、減税案をきめたのでございますので、事情をひとつ御了解賜わりたいと思います。
  322. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 あなたのお気持は私はよくわかりましたが、税制調査会の答申案どおりにすればよかった、自分もしたい気持は十分あったということをおっしゃっておりますからね、これより以上申し上げても何と思いますが、問題は、景気対策としての、景気回復の私は大きな要因は、やはり一般の需要ではないかと、こう思うのです、私は。所得税減税ということが景気対策としては最も大きく役立つものではないかという私は考えを持っておる。その点は大臣はいかにお考えになっておるか。これは将来、また来年のこともあるのですから、再来年のこともあるし、将来ずっと自分は一万円あるいは一万五千円、二万円にでも基礎控除を引き上げていくという、そのあなたのお気持を聞いて、私は非常にうれしく思うのですが、根本的にそれで私はあなたのお考えをもう一度お聞きしておきたいと思うのですが、それは多少景気回復ということもおくれると思うのですけれども、それは政策減税と比較した場合にはそういかぬかもしれぬと思いますけれども、大体日本の現在のこの景気の後退ということの問題を取り上げても、私は簡単に設備投資の行き過ぎだけだとは考えないのです。それから景気はこうなったんだ、そうは思わないのです、私は。やはり消費と投資のバランスの問題、あるいはもっと構造的に基本的な問題を持っておるのではないか、基本的な構造の問題を持っているのじゃないかと、そういうことを考えて参りました場合に、くどいようですけれども、あなたにお尋ねしているのは、一般減税という形で所得の低い隅一を擁護して、その購買力を旺盛ならしめるということが私は最も大事なことじゃないか。先ほどから貿易の自由化だとか八条国移行で、こういう諸般の事情でこうなったと仰せになっておるが、それはよくわかります。わかりますが、まず節一に、やはり私いつも考えなければならぬことは、一般需要の問題ではないか。そういうことから考えたときに、今回のやはりおとりになった減税の処置ということは、どうも私は、あなたの実際のお考えと非常にそごしておるように思う。でありますから、もう一度その点をお聞きしたいと思います。
  323. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 所得税減税をやらなければならないということは、しかも低所得者附属の税を免税にし、免税点をどんどん引き上げていくという考え方は、政治の根本的なものでありまして、これはもう政府としては当然第一義に考えなければならないものであるということを、まず観念上から考えております。それからもう一つ国際競争力をつけ輸出を伸ばしていくためにも、まずこれは経済の初歩でありますが、節一歩とも言うべき議論でございますが、できるだけ減税を行ない、可処分所得をふやし、国内需要を喚起をして、そして国内需要が活発になることによって産業が非常に合理化され、国際競争力がつき、ひいては輸出が伸びていくのだということも知っております。それから、自由民主党の内閣はいわゆる所得減税を第一義に考えておるということも承知をいたしておるのでございます。だから、あなたと同じ考え方なんです。ところが、なぜ、そういうことを考えておりながら、税制調査会の答申から五千円ずつ三項目にわたって切ったか。それで答申をしておらないものまでプラス・アルファをしたか。ここは、ここであらためて私は申し上げておきたいのでございますが、議論を呼ぶかもわかりませんが、私の根低に流れるものとして、先ほど申し上げた純理論、侵すことのできない、だれが考えてもあたりまえの議論は、あなたと同じ考えを持っているのですが、ただ、アメリカが、現在ケネディ政権が景気を刺激するために、またドル防衛とかいろいろのことを考えているのですけれども、要は、アメリカの内需をかき立てなければいかん。もうそれには、理屈よりも何よりも一大減税を行なう、一か八という表現をいたしておりますが、こういうようなものをやる以外に究極の目的は達せられないであろう、こう言っております。また、EECに加盟できなかったイギリスが、非常に健全財政をとっておりますけれども、とにかくEECに加盟できなかったイギリスとして、内需を興す以外にない。思い切ってこれも――一面においては、非常に日本の二年前、というよりももっと悪い国際収支の悪化が続いております。御承知のとおり、昨年は二十億ドルIMFから借りて、ようやく外貨危機を乗り越えるというような状態であったにかかわらず、大幅な減税をやる。ところが、イギリスにおいてすらもこうやっているのに、日本は逆の政策をやったという議論が出ておりますが、私もそのような円価に対しては、去年の九月から十分検討いたしたわけであります。私は、アメリカが減税をやって国内消費をかき立てる場合に、アメリカの景気というのは、確かに私は何とか景気は、ケネディ政府が考えているほど急速に伸びないにしろ、いわゆる低開発国にどんどんとドルを持ち出しているということに比べて、バランスのとれるぐらいな効果はあると思うのです。ところがイギリスでも、モードリング大成大臣と私も九月に会っておりますが、イギリスという国がアメリカと同じような減税政策をとって、一体危機を乗り切ることができるだろうか。これには、私はいくばくかの不安を感じているのであります。なぜかと申しますと、イギリスと日本は非常によく似ているのです。イギリスは、御承知のとおり、膨大もない原材料をやはり海外から得ておりますが、イギリス国民というのは、御承知のとおり、長いこと、歴史上も非常に勤倹貯蓄の国民でありまして、自分たちが海外から膨大もない原材料を輸入して、これに加工をして逆輸出をしているわけであります。でありますから、イギリスというのは、内需というものの刺激を非常に抑えながら今日のイギリスを作ってきたわけです。日本も同じように、イギリスよりもより悪い状態において原材料を入れ、これを逆に輸出しているのが、日本輸出依存の、貿易依存の日本の実態でございますから、どうも材料が日本国内にあって、これをそのまま製品として出せる国であれば別ですが、材料を外国から持ってきて、これを売らなけれ一文にもならない国が、自分で全部食ってしまうという三つ子でもわかるような国内刺激というものをやって、はたして一体よくなるのかどうか。私はこの問題は、アメリカの減税とイギリスの減税と日本の減税というものとは、おのずから立場によって迷うわけであります。同じものさしをもってはかるわけにはいきません。そういう意味で、日本が自由化というか八条国移行という現実に対処して、日本がやはり立ち上がっていく、今よりもよりいい生活をしていく、将来、今よりも大きな減税をしていくのには、やはり内需を刺激するというものよりも、結局、少しは詰めても輸出のほうにも力を入れてこれを先行させていかないと、結局世界の一般的経済論では成り立ちますが、勘定足って銭に足らずという問題が必ず出てくる可能性がある。こういうことは、世界各国の問題を全然比較検討しないで政策減税を加味したわけではないのであります。これは、明治以後百年間の日本の歴史が明らかに日本の姿というものを表わしておるのでございますから、そういう意味でも、政策減税は、ある意味においては、ある時期においては、先行しなければならないのだ、少なくとも今日自由化に対処してこの程度の両立をした税制というものはこれは当然とらざるを得ないのだと、こういう認識のもとにやったのでございまして、私は、産業界が弄ぶほうが先だなどという観念的な議論をもってこのように踏み切ったわけではないのであります。
  324. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 いや、よくわかりました。あなたのなかなか意気盛んな財政論は、私非常に傾聴に値すると思いますが、最後に、時間がありませんので、本年はそういうあらゆる諸般の事情から、産業界の貿易の自由化、あるいは八条国移行というような諸般の事情からやむを得なかった、根本的に考えは一緒だけれどもこの際やむを得なかったとおっしゃることに対しては、私もよくわかる。でございますから、ひとつ先ほどあなたのおっしゃるように、将来は池田減税内閣という面目にかけて、その方針を、あなたの抱負を貫き通していただきたい。今のあなたの御意見を承って、私も安心しました。その点ひとつお願いして、これで終わります。  時間がありませんので、もう少しいろいろお伺いをしたいと思ったけれども、またいずれ機会をみて……。  どうもありがとうございました。
  325. 須藤五郎

    須藤五郎君 私も、朝から少し長く質問しましたので疲れましたし、時間がありませんから、きょうは簡単に質問を済ませたいと思いますが、きのうの朝の日経によりますと、今度、税制調査会では、三十九年度所得税を中心に一千億減税の方針で検討すると、こういう記事が出ていたと思うのです。大蔵大臣は、この減税の中で、低所一考に対する減税をどのように考えておられるのか。今年度ほとんど減税はやらなかったのですが、来年度はどのような減税をやろうというふうに考えていらっしゃるのか、聞いておきたいと思います。
  326. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 先ほどからも、あんまり大蔵省の考え方だけを出すものですから、しかられてばかりおりますので、一切税制調査会の答申を持ちましてということを申し上げておるわけでございますが、法律上大蔵大臣は税制に対する主管大臣でございますので、その答弁答弁といたしまして申し上げたいと思いますが、少なくとも減税につきましては、低所得者の減税というものは、だんだんと底上げをしていきたい。しかも、今のような状態でおりますと、理論の上では世界先進諸国と比べてそんなに勤労所得者の税率も高くないということを言えますが、何か観念的に私考えても、とにかく、天引き、いやおうなしに、庫出税金というのでございますか、いわば略奪徴税式にいやおうなしに取れるのでございますから、源泉保税という制度の上から見ても、こういうものに対してはできるだけ課税限度を上げていきたいというのが、個人的にもまた政府の考え方としてもそういう考え方でございます。こういうものに対しては、やっぱり国民が将来に希望を持てるためにも、毎年何年というよりも、でき得れば一年間定率ずつこれだけずつは底上げしていくのだというような減税の基本的態度が打ち出せるような財政状態になりたいということを基本的に考えておりますので、私は、低所得者の減免税の限度の引き上げということに対しては、将来も十分に配慮して参りたいと、こう考えております。
  327. 須藤五郎

    須藤五郎君 はなはだ初歩的な質問になるのですが、日本における所得税を払う人数、また、所得税を払わない人数というのは、どういうような比率になっておりますか。
  328. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 数字的な問題は主税局長から答弁をいたしますが、現在で千七百万人ぐらいの所得税を納める人があると思います。これが九千六百万人の中におります。しかし、その家族の中で何人家族という問題になりますので、納める人数だけでもっては割り切れないと思いますが、いずれにしても、全人口のうち、そのような税を納める人があると思います。
  329. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 三十八年度の所得税の納税人員の推計でございますが、これは、源泉の給与とそれから申告と単純合計でございます。したがいまして、若干ダブっていると思います。その数字は、千七百六十二万人でございます。これから重複分がどのくらいあるかというのは非常にむずかしい推計になりますが、われわれは、大体そての辺が七十万から九十万ぐらいと見ているのでございます。これはいろいろな推計の立て方でございますが、七十万から九十万ぐらいあると、こういうことでございます。これに対して、有業人口がどのくらいあるか、これとの比較できまるわけでございます。それで出してみますと、有業人口に対しましては、重複分を控除した割合が、大体四六・六%が納税者である。それから非納税者が逆に見ますと五三・四%ぐらいになるわけであります。
  330. 須藤五郎

    須藤五郎君 伺いたいのですが、低所得者と高所得者の払う間接税の負担率ですね、大体低所得者が、収入に対して間接税を払う金額のパーセントは高いと私たちは考えておるのです。できることならば、月収一万円の人が間接税を大体何%払うか、五万円の人がどのくらい払うか、十万円の人がどのくらい払うか、三通りぐらいはパーセントを――もっと詳しく出していただければそれにこしたことはないのですが。
  331. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは机上の推計がございますが、三十四年度の間接税の推計でございます。月収二万円から十万円でのところで計算しております。  二万円から三万円までの階級でございますが、この間接税が七・八三%、それから三万円から四万円までの階級のところで六・二%、それから四万円から五万円までが、五・四%、それから五万円から六万円までのところで四・九%、六万円から七万円のところで四・六%、七万円から八万円のところで四・三%、八万円から九万円のところで四・〇%、それから九万円から十万円のところで三・八%、それから十万円超のところで三・七%ぐらいのところでございます。もちろんこれは去年の大改正前の数字でございまして、この比率は、低額所得者のほうが今度は負担率が少し少なくなってくる、だろうということは想定されます。
  332. 須藤五郎

    須藤五郎君 今のお話でも、私たちが想像していたとおり、低所得者のほうが間接税を払う率が高いということはこれでわかったと思うのですね。それで、来年度の減税のときに、その所得税を払わない人たちも減税の恩典に浴することができるように、私は間接税を下げることが所得税の率を下げることにより以上に今日重要になってきているのではないか、こういうふうに考えるのですが、大臣はどういうふうにお考えですか。
  333. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 非常にむずかしい御質問であります。間接税は、御承知のとおり、三十七年度で大幅な減税を行なっておりまして、三十六年度と合わせると、地方税、間接税合わせて三千一百億という思い切ったものをやったわけでございますが、それをやりまして世界の普通の国々と日本の税制というものが大体バランスがとれている。まあちょっと凹凸は幾らかありますけれども、先進国と比べて、バランスがとれていると税学者は言うわけでございます。ところが、先ほど申しましたように、いわゆる所得税法というもの、いわゆる源泉課税を取られているような勤労所得者のような者は、理屈の上ではちゃんとした理屈がつきますけれども、何といっても観念的にも実際上からいっても待ったなしの税金であるだけに、先ほどの高額所得者や財産を待っている人が幾らか脱漏ということがありますけれども、待ったなしに取られてしまうのですから、そういう意味からいって、源泉所得というものは、国会議員の歳費から源泉で税金を取られている計算を見てもわかるのですけれども、少なくとも源泉所得というものは多少過重ではないか。だからこれは下げていかなければならないのだ、そういう考え方がどうしてもあるわけであります。そうしますと、世界の各国と比べて日本は間接税と面接税とのバランスはおおむねとれているのだ、こう言いますが、思い切って所得税を下げるということになりますと、何かでもって税収をはからなければならぬ。そうすれば、一番わかりやすいのは間接税においてはかるということであります。間接税というのは、これは消費をした人の消費量によってかかってくるものであります。千万円使う音は、千万円に対してかかってくる。一億円使う者は、一億円に対してかかってくる。こういうことなんですから、間接税にウェイトを置く。間接税というもので一番いいものは何かというと――これは中小企業でもって十万円ずつ月に売り上げがあって年間百二十万円でも税金はかかるのです、もうかれば。ところが、大きな企業は、百二千億の取引をしても、赤字が出ておれば払わぬでもいい。これはおかしい。これを合理的にやるには、取引高税であります。しかし、取引高税は、過去にやって失敗したわけであります。私は、あの当時は失敗したですけれども、少なくとも日本の税制の抜本的改正といえば、取引高税というものをこれは理論上も現実上の問題としても考えないで日本の税制の抜本的改正はないと考えますが、まあこういうことを今言えば、またやるのかということでたいへんなことであります。また、そこにきても、あなたがおっしゃる低所得者を見ましても、十万円の方が二万円の者より間接税を負担する割合が少ない。こうなると、これは確かに所得の絶対量が少ないものですから、取ってきた金は全部使ってしまう。生活費になってしまう。これを何とかして恩典を浴せしめるにはどうするかというと、間接税を下げるということ。それからもう一つ合いう社会保障でもって一般会計から出していくとかというような方法しかないわけでございます。だから、低所得者の間接税の負担割合が高いからといって、間接税を下げると、金持はもううんと安いものを買うということになるわけですね。いわゆる一般会計からまかなっていくという低所得音階層に対する対策、あとは税法上の間接税と応接税のバランスをどうとるかという問題をよほどバランスをとって考えていかないと、理論上は低所得者の軽減になるようなことを考えながら、実際の上ではあまり実効がなかったということになっては困るので、バランスは今十分検討しております。ただ、酒を例にとりますと、大衆酒は下げる。高級酒になるほどうんと税額を高くする。たばこもそのとおりであります。そういうふうにすれば一番いいというので、三十七年度の間接税は大衆向きのものだけ下げたわけであります。まあ入場料でも何でも大衆向きでないものは別に高くしよう、こういうことで調節をとっているわけでありまして、低所御者に対して、税を納めておらない人たちに対して、どういう恩典を与えるか、どういう施策を行なうかという問題に対しては、比較検討しながら十分の配慮をして参りたい、かように考えているわけであります。
  334. 須藤五郎

    須藤五郎君 今、源泉徴収の話も出ましたのですが、源泉徴収の問題では、水田さんが大蔵大臣のときに、私は、源泉徴収は憲法違反だという議論をやったことがあります。そこにおる主計局長は知っております。事実、法律の上から、源泉徴収は違法だということが明らかになった。水田さんは最後にこう言ったのです。もしもこれが違法ならば、法改正をしてでもやらなければならない、こういうことを水田さんそのとき言っている。これはちゃんと記録が残っております。それで、源泉徴収が無理があるということをあなたも見ていらっしゃる。だから、源泉徴収を受けるような階層のために減税しなければならないということを言っている。しごくけっこうだと思うのです。ところが、源泉徴収を受ける以前の人ですね、その人が相当数あるわけです。要するに、税金を取らない人が今のお話によりますると五三・四%あるというわけです。来年一千億減税するといっても、この人たちはその減税には何ら触れぬわけです。だから、この人たちのために何か考えなくちゃならぬ。そのためには間接税を下げること以外にないのじゃないか、こう私は思うのです。だって、その辺で日雇いの人たちが一日に五百円ぐらいの金をもらってくる、四百五十円ですか、二十五日働いてこの人たちは所得税は払わぬわけですよ。ところが、この人たちが一本のたばこを吸えば、その中にたばこの税金が入っている。しょうちゅうを飲めば、しょうちゅうの税金が入っているということなんです。二万円以下の所得の人、一万円の人はもっとふえるのです。私が調べたところでは、月収一万円の人も一二%間接税を払っているという数字が出ているのです。千二百円間接税払っているのですよ。二万円の人が千六百円ぐらい払うのです。そういうことで、低所得者ほど間接税を払う負担割合が非常に大きいのだから、来年一千億の減税ということを言っているが、はなはだけっこうだと思いますけれども、こういう低所得者をどうして救うかということなんです。そのためには、間接税を下げる以外に道はないと私は考えるわけです。そこで、大臣に、来年度の減税のときに間接税に対してどういう考えを持っているかということを伺っているので、政治的な答弁をして下さい。
  335. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) だから、昨年までの問題を申し上げましたのです。大衆酒とかそういうものに対しても大幅減税を行なったわけであります。三十八年度を起点として、税制調査会に、間接税と直接税とのバランスをどうすべきであるか、また、新しい税個というものはどうすべきか、それは、いわゆる材負担の公平という理論ももっと出しながら、低所得者に対して、税を納めておらない階層に対してどうするか、税を納めるようになった階層というものに対しては底上げをしなければいかぬと、こういう問題をあわせて全部答申を求めておるわけであります。それだけではなく、税法自身も、私もよくわからぬから、税法自身も納める人がよくわかるようにひとつ書き改めて下さい、こういうことを申し上げておるのでございますから、今度は相当積極的である。あなた方が象牙の塔の中におって、われわれが読めるから納める人もみんな読めるのだろう、こういう考えではだめですぞ、こういうことさえ言っておるのでありますから、とにかく今までお預けになっているようなものをすべてひとつ、狭く深く学問的な面だけからだけで検討しないで、実際の面をよく把握してひとつ御検討願いたい、私たちも、その意味で、皆さんの答申だけ待つというのでは困るし、答申が出てから変更するとまた叱られるから、その間にわれわれの意見も申し上げますし、学者だけでなくて、実際働いておってどうすれば物が安くなり、どうすれば国際競争力がつくとか、どうすればわれわれがもっと働きいいかという人たちの意見も十分聞いてもらわなければ困る、あまり高いところからだけ、自分だけでもってわかるようなことでは困るので、お互いにその間においてはもうあらゆる角度から衆知を集めて三十八年以降の税制に対しては御検討願いたい、こういうことを言っておりますから、私は、今の大衆、いわゆる税金を納めておらない階層に対し一般会計からの社会保障を増していくということも一つの問題でありましょうし、また、そういったバランスをとって間接税のほうでどういうふうにすべきか、その内容を品目別に税目別にどうすべきかというような問題も当然検討せられる問題だと考えております。
  336. 須藤五郎

    須藤五郎君 税制調査会の会長の中山伊知郎君は私の中学の同級生なんですよ。だから、私は一度中山君に会って私の意見を述べたいと思っているのですが、それで大臣がもしも答えられるならば、来年度の減税の場合は間接税の免税あるいは減税に対して考慮を払う、こういうことは言えないのですか、この際。
  337. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) どうも、私が言いますことは、国務大臣として国会で正式な発言で申し上げると、その一分前には内閣の税制調査会の答申は全部飲みますなんて言っておりまして、またぞろ勝手なことを言うことになりますから、まあひとつ今までの発言で大体何を考えているかぐらいごしんしゃく賜わりたいと思います。
  338. 須藤五郎

    須藤五郎君 そこで、入場税について私は伺いたいのでございますが、大臣は、衆議院の予算委員会ですか大蔵委員会ですか、入場税は撤廃したい、こういうふうに述べられたということを聞いたのですが、その真意を伺いたいのでございます。
  339. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ現在の税法上の考え方からいうと、バランスもとれておりますし、なかなか理屈も通っております。で、この前の間接税、地方税等の減税を大幅にやりましたときに、段階別なものを残して、下をまずきめて、それから特殊なものに対しては段階的にその税率を上げていこうという考え方は、もうそんなことをしてもしようがないから、もう下に一本にしてしまう、こういうことをやったわけでありますから、もう現在はある意味においては相当減税はやり過ぎるくらいやっておりますというふうな理屈も立ちますが、しかし、何分にも百円程度の入場料でも五十円のものでも税金がかかるということになれば、わずか一〇%でございますから、今までの税率に比べればうんと安くなっているじゃないですかと、こういう議論も十分成り立ちますし、また、そうも御答弁申し上げられるわけでありますが、テレビと映画を考えてみても、テレビはうちでもってただで見れるということで映画産業は非常に困ってもおりますし、外国の税を見ますと、荷いところのものは、非常にいいものはうんと高い。しかし、免税点というものは、少なくとも日本の今のような免税点とは比べものにならないというような問題もありますし、娯楽というものは大衆娯楽である、今言った、大衆酒と同じものであるという考え方に立ちますと、これらの問題も新しい観点に立って十分検討するに値する問題であるというふうに申し上げることはできるだろうと思うのです。まあしかし、減税は、今までですと何年間かかかってやってくるものが、先ほど申し上げたとおり、五割のものも三割のものも全部一〇%に、一番下にきめてしまったということでありますから、実際の御答弁としては、今の日本の税率はそれほどアンバランスのものではございませんということは申し上げ得られると思います。
  340. 須藤五郎

    須藤五郎君 衆議院のほうでお答えになったのは、入場税などは撤廃すべきだと思うというような意味のお答えをしたと私は聞いているのですが、そうじゃなしに、免税点を引き上げるというようなお答えだったわけですか。
  341. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) それは、速記録はどうなっておるかわかりませんが、いずれにしても、今のようなことを申し上げたのです。今のようなことを申し上げたことは間違いないのでして、まあ五十円、三十円、百円というようなものでも税金を払わなければいかぬのだというようなものではないじゃないかというものに対しては全廃できるような状態になることは好ましいと思いますという原則論を述べたと思います。
  342. 須藤五郎

    須藤五郎君 これは、技術的な問題じゃなしに、政治的に考てもらわないと解決しない問題だと思うのですがね。私は前に大蔵委員をやっておったわけなんですが、そのときに、入場税の問題が一度問題になったわけなんですね。そうして、そのとき、相当時間をかけて入場税の性格なり入場税が不当であるというような問題についていろいろ話をしました。参考人を呼んだりまでして意見を聞いたわけです。その中で、自民党の青木一男さんや、それから今大蔵委員長をやっている佐野廣さん、この人たちまで私の意見はもっともだ、入場税は撤廃すべきものだという意見に傾いてこられたわけです。それで、何とか機会を見て入場税を撤擁しようではないかという話になった。それで、ただいま、日本の音楽家、舞踊家、演劇家などから、自民党に対して、入場税撤廃をしてもらいたい、こういう請願が二、三十万もすでに自民党のほうに行っていることだと思うのです。大臣は御存じでしょうか、そのことを。
  343. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあそういうことは十分聞いておりますし、私も政務調査会長をやっておりましたので、いろいろな方々からの御意見も聞きましたし、私自身も先ほど申し上げたような気持でおりますし、まあ昔のような考え方で一律に律すべき問題ではないだろう、こういうふうに考えております。先ほどの、衆議院で話しました速記録がございますが、大体今言ったことと同じことを言っております。
  344. 須藤五郎

    須藤五郎君 入場税が高いからとか安いからとか、免税点の引き上げとか、そういう問題もまあもちろんあるでしょうけれども、私はそういうふうに考えていないのですよ。要するに、入場税というような税金はこれはやはり悪税ではないか、こういうふうに考えているのです。人間が生きていく上に食べ物と同じように必要なそういう文化施設に対してそういう娯楽に対して税金を取るというようなことは、これはどうかと思うのですがね。ですから、そういう税金は一日も早く撤廃すべき性質のものではないかと、それでこそ初めて文化国家と言えるのではなかろうかと、私はそういうふうに考えるのですよ。それと同時に、今日入場税を取っても平気でやっていく団体もあるでしょう。しかし、多くの新劇団体、それから音楽家団体、それから舞踊家団体というのは、会をやるたびにマイナスの面がたくさん出てくるのですよ。だから、せめて入場税を廃止してもらえぬかと、こういう意向が非常に強いわけなんです。で、やはり日本の文化を育てるという立場から、大蔵大臣が政治的な立場に立って入場税をこの際撤廃するというふうに考えをひとつ持っていっていただきたいと、こういうふうに私は考えるのですが、大蔵大臣はそういう御理解はないでしょうか、どうでしょうか。あなたもなかなかそういうほうの通人だということを聞いているわけなんですが、能をやったり狂言をやったり、ああいう人たちまでやはり税金を取られて非常に経学が困難だということも言われておりますので、日本の文化を育成する、日本の健康な文化を育成し、そうして国民に十分それを楽しんでもらうという立場から、税金というものはやはりやめるような方向に持っていくのがほんとうじゃないかと、私はこういうふうに考えるわけなんです。
  345. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これはまあ財源の問題もございますし、世界各国との問題もありますし、昨年の減税のときは私も政調会長でございまして、映画の入場税という問題が党の税制調査会で出て参りましたときに、演劇も入れたらどうかと言ったのは私でございますが、まあ演劇などはあまり陳情などもなかったようでございますが、当然そういうものは入れるべきであるということで、一番最終段階の総務会の段階で演劇も一〇%引き下げたと思います。そういうわけで、理解がないわけではございません。よそではどうも文化人とほど遠い人間のように考えておりますが、そういうものの理解はございます。そういう意味で、まあ撤廃をすることができるかどうかは、これはいろいろな問題もございます。先ほど言ったように財源確保の問題もございますので、慎重に検討すべき問題であろうと思いますが、事実問題としてまあ歌舞伎のようなものは、日本の古典として国が助成をしても残さなければならない。国立劇場のためには国が一般会計からも金を出すというようなことでもありますので、やはり必要なもの、将来残すべきものというようなものに対しては、別な角度から検討していかなければならない問題も多々あると思います。今のその音楽それから演劇の問題に対する考え方は、私も承知をしております。承知をしておりますが、昨年の減税案を作りますときには、先ほど申し上げましたように、一番下のラインに一ぺんにこう改正をした直後でございますので、先ほど申し上げたように税制全般の改正案について審議をわずらわしておるのでございますから、こういう中で比較検討して議論をせられる問題だと思います。
  346. 須藤五郎

    須藤五郎君 最後にもうちょっと聞いておきますが、大蔵大臣は、勤労者音楽協議会という勤労者が会費を出し合っていい音楽を聞く組織のあることを御存じでしょうか。主税局長は知っているはずなんです。大臣は御存じないですか。
  347. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) よくわかりません。
  348. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじゃ、私は大臣の参考までに、ちょっとその点くどいようですが申し上げておきます。戦後非常な荒廃した生活の中で労働者が音楽を聞こうと思ったとき、入場料が高くて聞けなかったわけなんですね。それで、みんなが五十円くらいの会費を持ち寄って、そして自主的に音楽会を聞いたわけです。最初七、八百人くらいの会員から始まったわけです。それが、今は全国的に見て五十万くらいの会員にふえているわけなんですね。物が高くなって参りましたから、出演料も高いというので、会費も高くなって参りました。今は百円前後になってきているわけです。その団体は、自分たちの持ち寄った安い会費でいい音楽を聞いて、そして人格の向上に資そう、こういうことが第一なのであります。それから、組織の力によって日本の新しい音楽を、民族的な音楽を土台にして新しい音楽をひとつ作っていこうではないか、それをやる者がないからひとつ労音の力でやろうではないかということ。それから、若い優秀な人たちをひとつ労音の力で勉強してもらっていこうじゃないか。こういう三つの原則を立てて労音というものが出発したのです。最初は税金はなかったのです。ところが、途中から税金を取り立て始まったわけです。それで今日税務署から盛んに督促なり税の取り立てがなされるというような状態が起こっているわけです。こういう営利を目的としない何もしない、むしろ自分たちの力によって日本の文化に貢献しようというこういう意図を持った団体から税金を取り立てるということは、私は不当だと思うので、むしろ政府はこれに対して補助金を出すのが当然じゃないか、こういうふうに私は考えておるわけなんですね。それで、この団体のためにできました……。
  349. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) うたごえ…。
  350. 須藤五郎

    須藤五郎君 うたごえ運動と違います。これは聞くほうです。うたごえは歌うほうです。  それで、この団体の力で、日本の新しいオペラが、外国にまで紹介されるような、オペラ「夕鶴」、団伊玖磨の作った「夕鶴」、これはアメリカのオペラ劇場でもやられた。それから「聞き耳頭布」、こういうオペラもこの団体の力で日の目をみているわけなんです。こういう団体がなかったら、もうこういうオペラはできないのです。やっても上演する所がないからできない。そういう仕事もやっております。それからオペレッタ「可愛い女」「劉三姐」とか、また今度はオペラ「山城国一揆」というようなものを今計画しておりますが、こういうような新しい創作に対してこの団体は非常に力を入れているわけですね。それからもっとほかのものでは、「人間を返せ」とか「無名戦士」とかというようなカンタータも作っております。バレー「白毛女」「バッチサライ」「白鳥の湖」、こういうものも非常な力でりっぱな上演がなされているわけです。こういう団体に普通の営業団体と同じように税金をかけることは、私は不当だと思うのです。大臣はどういうようにお考えになりますか。
  351. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) どうも分野が専門的でございまして、これはやっぱり税当局のほうがいいようでございますから、税当局のほうから……。
  352. 須藤五郎

    須藤五郎君 税当局の答弁は、私もたびたび聞いているのですよ。ですから、聞く必要はないのです。税当局は、技術的な答弁しかないのです。こういう問題を解決するのは、やっぱり大蔵大臣が政治的見地に立って日本の文化をいかに育成すべきかという立場に立って判断を下さらないと、主税局長なんかじゃだめですよ。だから、私は大蔵大臣の見識ある意見を伺っておきたい。
  353. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 収益事業でなければ税金を取らないわけですから、やはり収益事業だと認定せらるべき状態にあるのでございましょう。まあこの問題、せっかくのことでございますから、主税当局の意見も聞き、また、私の意見も申してみて、こういうものはきっとこれから将来いろいろな団体として出てくると思いますから、十分検討してみたいと思います。
  354. 館哲二

    主査館哲二君) 他に御発言もございませんか。――以上をもちまして大蔵省及び経済企画庁所管に関する質疑を終了したものと認めます。  明日は午前十時に開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十七分散会