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国務大臣(宮澤喜一君) 経済の各分野におきまして、大体概括的にはあまり大きな誤まりのない政策の遂行が行なわれておるだろうと思いますが、ここしばらくの間、消費者物価につきましては、ただいま郡
委員御
指摘のような現象が起こっておりまして、これが
国民生活にかなりの不安を与えておるということは確かであると思います。その主たる原因は、ただいま御
指摘のとおり生鮮食料品でございます。この点は一月におきましても二月におきましても、消費者物価の値上がりのうち九〇何%生鮮食料品が占めておりますことからでも明らかであります。その中で、多少こまかいことになりまして恐縮でございますけれ
ども、魚につきましては一月にかなりの高騰が見られましたが、二月には反落をいたしております。したがって、生鮮食料品の中でも、野菜、果実について問題の主たる部分があるというふうに思われます。この点は作付反別で見ますと、一年前に比べまして一割ないし三割くらいの反別の増があるということは事実のようであります。したがって、やはり
一つには、非常に不利な自然的な条件が重なったということを申し上げざるを得ないと思いますけれ
ども、他方で、しかし
国民所得の増大に従いまして、生鮮食料品は本来需給の弾力性は決して大きくないものとは思いますが、気候の
変化あるいは需要量の若干の増加というものは当然でございますし、ほうっておくならば、供給のほうはどちらかといえば反別の減少あるいは消費地から生産地がだんだんと遠くなっていくといったようなことから、供給面では困難が少しずつふえていく。こういうことでございますから、数年という長期をとりますれば、生鮮食料品の値段が多少ずつ上がっていくことは、これはやむを得ないと思いますし、また生産者の側から考えますと、それなりに意味のあることだと思います。ただ、今回のような場合を判断いたしますと、やはり基本的には生産者に対して最低限度の何かの形での安心感を与えるということが必要であるということを痛感いたすわけでございます。すなわち、従来相当な値上がりがあり、その結果非常な生産をして、その裏で豊作貧乏というようなことが常に繰り返されておるわけでございますから、生産者の側に、そのような意味での最低の何かの安心感を与える。つまり需給の安定をはかるということが、やはり一番の基本であると考えておるのであります。ただいま
関係省と具体的に何をなすべきかを
検討いたしておるわけでございますが、生産者の側でも、あるいは
関係の都道府県の中でも、何か自衛策を講じなければならないというような
動きはかなりございます。お互いに資金を積み立てることによって、非常に価格が下がりますときに最低限度の共助、互助措置をやろうというような
動きが見られるわけでございます。他方で、農林省では三十八年度の予算で、こういうものの主産地形成ということを考えておられるわけでございますから、何か二つのことを結びまして、そういう生産者なり当該都道府県なり、せっかく芽ばえておるところのそういうきざしを、国としても何かの意味で手助けをする。これは価格
補償とかという意味では決してございませんが、そういう共助的な
動きを何かの形で支援をするということは、需給安定、ことに供給の安定化に寄与するところが多いのではないか、私
どもとしては、今そういうことを考えつつございまして、不日できれば結論を出したいと考えておるわけでございます。これは長期的に見ますと、どうしても需給の安定ということは必要であると考えるからでございます。なお、この一月、二月に起こりました生鮮食料品の非常に大きな
動きというものは、
昭和九年から十一年ごろ、戦前を見ますと、十二月から四月ぐらいまでの生鮮食料品の値上げのカーブは常に非常に鋭角的でございまして、戦後になりまして、いろいろ科学的な栽培
方法などが出ましてから、そういうピークというものがかなりやわらかな丘のようなものになっておったわけでございますが、ことしはそれが自然的な要因で破れたということであったろうと考えます。しかし、いずれにしても、現在に関する限りは峠は見えた。この二、三週間の間に、ものによっては卸売価格が三分の一ぐらいになったものもあったりいたしまして、一番むずかしいところは越えたという印象は持っておりますけれ
ども、こういう経験にかんがみまして、これから将来の需給の安定ということを考えるべき必要がある、そういうことを痛感いたしております。この問題を取り去りますと、あと、現在消費者物価であまり生活を脅かすような要素はございませんで、せいぜい申せば光熱費あるいは教養費等の雑費でございますが、これはそんなに大きな要因になるまいというふうに大観せられますので、ただいまの問題の処置がつきますと、
昭和三十八年度を通じまして、消費者物価が従来のように大きな
動きを示すということは経済全体の趨勢から見てもなくて済むのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
公共料金につきましては、昨年ある
程度の手直しをいたしました。これは、資本費の負担等々から考えまして理由があると思われましたものについて最小限にいたしたわけでございます。そこで、ただいま出ております問題は、たとえば、公営企業でありますところの大都市のバスでありますとか、あるいはビール等の酒類、また、ふろ、公衆浴場でございます。ふろ代なんというものが問題として出かかっておるわけでございますけれ
ども、生鮮食料品等を理由として毎月消費物価が幾らかでも上がっていくと、
国民にとってそういう若干の不安があるというようなときに、理由はともあれ、そういう際に公共料金またはそれに類するものを動かすということは、どうも不適当なように考えておるわけでございます。バスにいたしましても、あるいはビールなどにいたしましても、今どうかしなければ直ちに問題が起こるというような種類のものではないように思うわけでございます。公衆浴場につきましては、東京都を初め、各地の
調査が済んでおりませんので、何とも申しかねるわけでございます。まあ企業者が零細であるということがバス、ビールとは異なっておるかもしれないと思いますが、これはもう少し
調査が済んでみませんとよくわからないことでございます。概括して申しまして、公共料金というものをこの際動かすということは、私は不適当のように考えておりますので、
関係者の
方々にはそういう意味でごしんぼう願いたい、こう思っておるわけでございます。
なお、中小企業の賃金と大企業の賃金との格差が縮まっておりますことは、ただいま御
指摘のとおりでありますし、他方で、中小企業の生産性は向上しておりますけれ
ども、大企業の生産性の向上には及ばない。生産性の格差というものは縮まっておらないというのがただいままでの現状でありますから、この点は、これから先設備の更新というものが中小企業に及んでくる、それによって生産性が上がり、大企業につれ上がって参りました賃金の負担というものを吸収していく、そういうような形で二重構造が直っていくということが一番望ましい姿だと思っております。ただいまのところ、中小の給与が上がりましたために、それが消費者物価に無
関係とは申し上げかねますけれ
ども、それが大きな要因で消費者物価が非常に上がってきたということは、サービス料金には現象があるわけでございますが、これは、サービスをする側のことも考えますと、サービス料金の上がりというものは、便乗的なものでない限りは、認めていってもいいのじゃないかという感じがいたすわけでございます。