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1963-03-28 第43回国会 参議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月二十八日(木曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員の異動  三月二十八日   辞任      補欠選任    千葉  信君  山本伊三郎君    林  虎雄君  稲葉 誠一君    赤松 常子君  田畑 金光君     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            大谷藤之助君            川上 為治君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            北村  暢君            横川 正市君            小平 芳平君            大竹平八郎君            田畑 金光君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            加藤 武徳君            小林 武治君            小柳 牧衞君            後藤 義隆君            郡  祐一君            下村  定君            杉原 荒太君            館  哲二君            松野 孝一君            山本  杉君            吉江 勝保君            近藤 信一君            瀬谷 英行君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            松本 賢一君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            北條 雋八君            市川 房枝君            向井 長年君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 中垣 國男君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    厚 生 大 臣 西村 英一君    農 林 大 臣 重政 誠之君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 小沢久太郎君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 篠田 弘作君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 近藤 鶴代君    国 務 大 臣 志賀健次郎君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    内閣法制局第一    部長      山内 一夫君    公正取引委員会    委員長     渡邊喜久造君    防衛庁防衛局長 海原  治君    防衛庁参事官  麻生  茂君    経済企画庁調整    局長      山本 重信君    経済企画庁総合    計画局長    向坂 正男君    経済企画庁総合    開発局長    大來佐武郎君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省欧亜局長 法眼 晋作君    外務省経済協力    局長      甲斐文比古君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      高橋  覺君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主計局次    長事務代理   岩尾  一君    大蔵省関税局長 稻田 耕作君    大蔵省銀行局長 大月  高君    厚生大臣官房会    計課長     今村  譲君    厚生省環境衛生    局長      五十嵐義明君    農林大臣官房長 林田悠紀夫君    農林省農林経済    局長      松岡  亮君    農林省園芸局長 富谷 彰介君    通商産業省通商    局長      松村 敬一君    中小企業庁長官 樋詰 誠明君    運輸省自動車局    長       木村 睦男君    高等海難審判庁    長官      増田 一衛君    建設政務次官  松澤 雄藏君    建設省計画局長 町田  充君    建設省道路局長 平井  學君    建設省住宅局長 前田 光嘉君    自治省行政局長 佐久間 彊君    自治省選挙局長 松村 清之君    自治省財政局長 奧野 誠亮君    自治省税務局長 柴田  護君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    運輸省船舶局首    席船舶検査官  中野 由巳君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○理事補欠互選の件     —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和三十八年度一般会計予算昭和三十八年度特別会計予算昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、質疑を行ないます。  本日から締めくくりの総括質疑に入ります。まず、北村暢君。
  3. 北村暢

    北村暢君 私は、まず最初に、外交問題でお伺いいたしたいと思いますが、「わが国は、その国力の伸張と、国際的地位の向上に伴いまして、世界の平和と繁栄に対し、ますます重い責任を負担するに至りました。」、こういうことが外交の方針の中でうたわれて、それに対する核兵器実験停止の問題について、米ソ両国交渉が行なわれているが、「有効な……協定がすみやかに締結されますよう強く要望するものであります。」、そこの中で、そのために政府は積極的な働きかけを行なっていきたい、こういうことをはっきり外交の演説の中でおっしゃっておるわけでございますが、それでは一体いかなる具体的な動きをされたのか。特に、今度の三月十八日にフランスのサハラの地下核実験が行なわれております。これに対して一体どういう具体的措置をとられたのか、まずこの点についてお伺いいたしたいと思います。
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 核停問題につきましては、わが国は、政府ばかりでなく、各種の政党、団体等が精力的なアピール世界に向かってやって参りましたことは、御案内のとおりでございます。しかし、この経験を通じて私どもが感じ取ったことは、単なるアピールだけでは強大な核保有国自重を求めるに十分でない、どうしてもこれは核を現に保有する国々を有効に拘束するに足る国際協定というものの締結をみるに至らなければいけないということで、核保有国に対しましてそれぞれ自重を求めるところに努力の焦点を置かなければならないと存じまして、機会あるごとに核保有国自重を求めて参ったわけでございます。  しかるところ、御承知のように、ジュネーブ会議は、中立国核保有国等の間で行なわれておるわけでございますが、このメンバーを拡大いたしまして二十カ国程度にして、わが国もそのメンバーに入って、積極的に内部から推進するように努力し、要請いたしたのでございますが、この案はソ連の反対にあいましてお流れとなって、核停会議わが国が出席するというととはかなわなかったのでございまするが、それかといって放置しておくことができませんので、この核停会議に対しましては、執拗に反復的に政府から有効な国際協定締結ということを促進すべく要請を続けて参っております。  今御指摘フランス核実験の問題でございますが、これはまだフランス政府がコンファームするに至らない段階で、報道を通じてキャッチいたしましたので、前もってフランス大使をして、フランス政府に対し、わが国国是として、核爆発実験禁止ということは、政府国是であるばかりでなく国民悲願であるし、また終始一貫わが国は機会あるごとにこれを訴えてきておるのだということを宣明いたしまして、先方抗議を申し入れたわけでございます。行なわれましたことはきわめて遺憾でございますけれども、すでに核停交渉は御案内のようにもう四百回以上も行なわれて、まだ決裂を見るに至っていないわけでございます。この問題につきましては、非常な忍耐をもちまして今後も調子をゆるめることなく努力して参らなければならぬ課題であると考えております。
  5. 北村暢

    北村暢君 三月二十日の軍縮委員会の本会議で、フランス核爆発実験に対しましてアメリカ代表を除く以外の各国は全部猛烈な抗議を展開した、こういう事態があったわけでありますが、日本政府としてもこれに対して抗議をしたと、こういうふうにおっしゃられるのですが、大体具体的にどういうふうにはっきりしたのか。私ども新聞等ではあまり政府動きというものははっきり知ることができませんでしたが、どういうことをやられたのか。また、私は、やはりこういう問題はすかさず抗議をする、それが世界世論になっていくということが非常に必要だと思うのです。したがって、これらの問題にすみやかに対処できるように、こういうことで今度の予算委員会の当初の質問で、羽生委員がこの軍縮と核停問題に対する特別の調査機関を設けてやっていくべきじゃないかという提案をされているのですが、一体外務省は、政府は今後一体この核停に対する特殊な調査機関というようなものを持っていく御意思があるのかないのか、御検討されたかどうか、これについてお伺いいたしたいと思います。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、フランス核実験につきましては、政府が、まだフランス政府が正式にコンファームしない段階でおりまして、すでにわが国といたしましては、フランス大使に訓令いたしまして、フランス本国政府抗議をいたしてございます。  それから、核停ないし軍縮についての日本政府としての調査機関の問題でございますが、従来私どものほうでは、組織とか機関とかいう特別に設けたものではなくて、核停の問題、軍縮問題につきましては、民間の専門家も動員いたしまして一応の調査を進めてきておるのでございまするが、羽生先生の御意見もございましたし、また佐藤尚武先生からの御要請もございまして、これを組織化いたしまして外務省官房委員会というものを設けて、それでもっと組織的にもっと深くこの問題を突っ込んで勉強しなければならぬと思いまして、現在そのメンバーの選考、それから同時に、この問題につきましてどういう接近の方法を工夫したらいいのか、そういった点について今鋭意検討中でございまして、そう遠からず発足いたしたいと思います。
  7. 北村暢

    北村暢君 次に、一月に開かれました日米安保協議委員会意見が交換されて、その際に志賀防衛庁長官は、中共はすでに原子爆弾を持っていると思われる、こういうような新聞記者に対する発言を行なっているようでございます。この中国核爆発実験も近いというように言われているのでありますが、一体この国防会議、あるいはその他の機関で、中国核爆発問題についてどの程度検討をされたのか、この点について承りたい。
  8. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 第三回安保協議委員会の席上では、中共核実験問題等につきましては、一切話し合いはなかったのでございます。ただ、この委員会が終わった後に、防衛庁記者クラブの諸君と私が会談した場合に、雑談として、昨年の八月の二十八日に、本院の内閣委員会で社会党の横川委員から質問があった当時、答えた内容と同じことを話したことが、まあ当時の雰囲気もからみまして、だいぶセンセーショナルに新聞記事に掲載されたのでございますが、安保委員会においてはそうした話はなかったことを、まずここでお話ししたいと思うのであります。  したがって、国防会議その他において、その問題が討議された事実もございません。ただ、防衛庁として、防衛庁なりのいろいろな情報なり分析をいたしておるわけでありまして、一切、国防会議では何ら話がないのでございます。
  9. 北村暢

    北村暢君 すでにまあ原子爆弾を保有しておるというように言われているのでありますが、これに対して政府は、国防会議等でこれの問題について検討する用意があるのかないのか、また中国核爆発の時期というものを、いつごろというふうに見ておられるのか、この点について、これはひとつ総理からお答えを願いたいと思います。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一九五八年に北京付近実験炉が設けられたということは報道されております。また、その他三、四カ所に実験炉を設けたという、これは確報ではございませんが、うわさも聞いております。しかし、実験炉を設けましたからといって、原子爆弾ができるというまでには相当の時間を要するものと私は考えておるのであります。そうしてまた、ほんとうの核武装をするという段階には、なおそれ以上の相当の時間がかかることは世人の認めておるところであります。たとえばフランスのごときそれでございます。したがいまして、今いろいろうわさには上っておりまするが、遺憾ながらはっきりした資料はございません。すなわち、いろいろな雑誌とか、あるいは流説を収集する程度でございます。したがいまして、日本政府といたしましては、中共実験炉核爆発核兵器保有ということにつきまして、今意見を申し上げる段階ではないと思います。
  11. 北村暢

    北村暢君 政府の核停交渉に対する、すみやかに締結することに対する期待というものは、私どもも同様です。ところが、フランス核爆発実験をやり、しかも、中国でも、うわさであるが原子爆弾をすでに保有している、こういうようなことで核停交渉以外の各国が、核拡散防止対策としてケネディ大統領努力しているようですが、現実の問題としてこういう問題が出てきておる。これに対して、私どもは、この拡散防止対策というものが真剣にやはり考えられなければならないのじゃないかと思うのであります。したがって、これはやはり国際的な、世界的な世論というものを結集していかなければならない、このように思いますが、特に中国核兵器を保有するということになるというと、これは米ソ二大国が持っておるのと、日本国民感情からするというと、非常にまた変わった形というものが出てくる。非常な不安というものがやはり起こるのでないか、このように思うのであります。したがって、今日こういう問題を論議する段階でないと、こういうふうにおっしゃるのでありますけれども、それでは国民の不安というものは打ち消すことができないのじゃないかと思います。それに対する有効な手段というものをやはり政府としては持つべきでないかと思うのですけれども、御意見を承りたいと思います。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 核実験禁止停止の問題につきまして、有効な手段を持ちたいということは、全人類悲願であると思います。私は、それがために、特に唯一の被爆国である日本といたしましては、あらゆる機会にこれを持ち出してやっておるのであります。ケネディ大統領との会見の場合におきましても、一昨年の東南アジアを歴訪した場合にも、みなこれを共同声明に入れております。また、昨年のヨーロッパ訪問の場合におきましても、フランスを除いては共同声明に全部入れております。フランスにつきましては、いろいろ事情がございまして、話はいたしましたが、共同声明まで入る段階に至っておりません。しかし、私は、各国と比べまして、日本くらいこの問題について熱心に世界世論を出すべく努力しておる国は、うぬぼれではございませんが、ないと思います。日本がよその国に進んでやっておるという気持でおるのであります。また、それをやるのが日本の国の務めだと、こう考えてやっておるのであります。しかし、何と申しましても、全人類の望んでおるこの有効な核停止のための努力ということを、みんな願っておるのだが、たかなかできません。しかし、十分ではないが、最近の状況で見ますると、ジュネーブ会議をのぞきましても、われわれの同僚の参ります世界議員同盟におきましても、支持せられるし、各方面でその世論が出てきまして、相当強くなっております。ジュネーブのこの問題の会議にもだんだん現われてきて、今では相当の実効がもたらされるのではないかというところまで来つつあることは、私は御同慶の点だと思います。なお、この上とも、日本としては努力を続けていきたいと考えております。
  13. 北村暢

    北村暢君 国防会議で、この中共核実験等の問題について論議せられるというような新聞記事も出ているのであります。で、こういうような情勢の中で、国防会議としては将来検討するのかしないのか、さらにこの第二次防衛計画というものに影響があるのかないのか、あるいはアメリカのグアム島あるいは沖繩における基地の強化等の問題が起こってくるのじゃないかというような点がいわれているのでありますが、そういう点について、国防会議としてどういうふうに対処するのか、この点について防衛庁長官からひとつお答えいただきたいと思います。
  14. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 国防会議の問題は私の所管以外のことでございまして、ただ、お尋ね中共核武装をした場合に、日本防衛体制変化があるのじゃないか、あるいはまた影響があるのじゃないかというお尋ねのように承ったのでありますが、先ほど総理からも触れましたように、中共がたとい最初核実験を行ないましても、核爆発先進国の実例によりますと、少なくとも数年ないしは十年たたなければ核武装できないということに相なっているのでありまして、われわれはまあ十年先のことを考えて、今日あわてふためいて、日本防衛体制を強化しなければならない、そういうことは考えておりません。われわれとしましては、慎重に中共核開発状況は、各種情報に基づいて観察はいたしておりますものの、今日防衛計画に修正を加えるとか、あるいは第二次防衛計画を再検討するというようなことは考えておりません。
  15. 北村暢

    北村暢君 そこで、私は総理にお伺いしたいのでありますが、中国がそのように核爆発実験をするとかなんとかいうこと、これは非常に大きな政治問題である。で、そういう中で、日本ばかりでなしに、アジアの各国に対する影響が非常に大きいものがあるのじゃないか。もうそれ事態が、今日南ベトナムなり、ラオスなり、タイ、こういうようなところに現われてきているのじゃないか、このように新聞も報道している向きもあるわけであります。したがって、この問題は、もちろん安全の問題、平和の問題と関連いたしますが、非常に大きな国際問題として、また中国国連加盟の問題として、これを有効に使われるのじゃないか。実験の時期をもって、そういうことがなされるのじゃないかというふうに言われているのであります。  したがって、私がお伺いしたいのは、アメリカ中国に対する認識と、すぐ隣である日本中国に対する認識について、非常にやはり民族的に変わったものがある。この点については、池田総理が、はっきり中国主権者国民の団結とそれの指導力というものを高く評価されて、その実態なりに評価されている、こういう非常に従来と変わった表現をされたということは、これは私は一つの大きな前進だと思う。したがって、今後この中国核装備の問題と関連をして、池田総理は、一体、この中国代表権問題と関連して、今後の中国との根本的な外交政策というものについて、従来の行き方と若干変わったものがやはり出てきていいのじゃないか、情勢の大きな変化としてあっていいのじゃないか、このように思うのでありますが、御意見を承りたいと思うわけです。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろ仮定の事実に基づいて先のことを御心配のようでございますが、私は、中共核武装をしたというときを前提にして、国際情勢日本総理として申し上げることは早過ぎると思います。ただ、いろいろな点は常に注意を怠りません。しこうして、またたといそういうことがあったにしても、われわれは一喜一憂することなしに自分の国を固めていかなければならぬと。ちょうどこれは十分適切な例とは申し上げませんが、フランス核武装をしたからといって、そうしてその隣の方々、ポーランドやソ連衛星国がどういう考え方を持っているかということは、一つの参考になるんではないかと思います。その軽もの度はだいぶ違います。あくまで私は中共がそういうことのないことを——中共ばかりではございません、全世界の人が核を持たないで、そうしてその前提として核実験をしないということで努めるべきである。もし中共がした場合についてどういう対策をとるかということは、まだ私として意見を申し上げることは早いのであります。いろいろな情勢を常にそういうことのないように事前に努力することが第一だと思います。
  17. 北村暢

    北村暢君 次にお伺いしたいのは、原子力潜水艦寄港の問題でございますが、これについてはいろいろまあ論議せられておりますから、私はそういう今までに出た問題については申し上げません。ここでひとつ外務大臣にお伺いしたいのは、人的損害については無過失責任をとり、物的損害については無過失責任はとらないとアメリカ政府が説明しているようであります。しかし、政府は今、これについての補償問題について何らかの文書の形でこれをはっきりさしておきたい、こういう努力をしているようでございますが、取りきめにあたって、両国間の代表の調印というような形では他国との関係もあってアメリカは応ずるわけにいかない、こういう態度のようであります。これに対して、外務大臣一体この補償問題についてどういう形の取りきめをなさるのか、協定というものが可能なのかどうなのか、この点について意見を承りたいと思います。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、アメリカと、それからすでに原子力潜水艦寄港いたしております十数カ国との間には、その寄港をめぐって特別の取りきめはございません。したがって、日本アメリカの場合にも特別の取りきめを求めることはむつかしいと思っております。しかし、こちらからの問い合わせに対して先方から見解が一応示されましたが、私どもとしては、日本原子力災害につきましての現行の法制、それからアメリカ実定法上どういう手続でどういう補償をすることになっておるか、そういった点を十分究明いたしまして、人的物的損害全体について、現在あるがままの姿で一体どこまでカバレジがきくのかという点を見きわめつつあるわけでございます。なお、それでカバーし切れない問題というのがかりにございますならば、それはそのままの状態で国民に御納得いただくわけには参りませんので、何かそこの間隙を埋める方法というものを考えなければならないのではないかと。それで、私は従来、本院におきましても衆議院におきましても、それは一つ政治の問題であろうと思うと、したがって、すでにビキニのときにもそうでございましたが、まあ実定法というものにとらわれないである程度のことが行なわれた例もございますので、そこは私ども政治責任で、もう可能な限りカバレジをとっておかなければならないのではないかと思っておるのでございます。しかし、それはどういう形のものにするかという点までには決心いたしておりませんけれども、今の段階は、今の実定法上でどこまでぎりぎり補償がきくのかという点をまず見きわめるというところに努力の重点を置きましてやっておる最中でございます。
  19. 北村暢

    北村暢君 そこで、私はその補償の問題に入る以前の問題として、科学技術庁長官にひとつお尋ねいたしますが、先般来学術会議並びに原子力科学者からの声明が出されているわけです。で、専門家の立場でこれらの方々は、この米原子力潜水艦寄港問題について真剣に考えられているようでございます。それで、原子力委員会としては、寄港ということをまず認めるという前提の上に立って、この原子力潜水艦の運航上の規則等について検討をしているというふうに言われているのでありますけれども、私はそれ以前に安全性についての根本的な問題について原子力委員会検討をし権威を持つべきでないか、このように思いますが、原子力委員会としてはどのような対処の仕方をしているのか、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  20. 近藤鶴代

    国務大臣近藤鶴代君) ただいまお尋ねの件でございますが、原子力潜水艦寄港の可否ということについては、委員会といたしましては何も今まで申したことはございません。ということは、そういう権限を持っておらないからでございます。で、ただいま仰せになりましたように、いろいろ学者の方々から御意見が出ておりますことは、委員会といたしましても、すでにその点に十分考慮を払うということで、皆さんと御一緒に検討を重ねているのでございますから、どうぞその点のところ誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。
  21. 北村暢

    北村暢君 いや、誤解はしないのですけれども原子力委員会としてそういう権限がない、まあこういうふうにおっしゃられるわけですが、それでは寄港を認めるという前提に立って運航上の規則等について検討するということは、それじゃその点は権限としてあるのかどうか。  それから、その検討している中で、新聞の伝えるところによるというと、横須賀、佐世保を入港地としてアメリカが希望している。それに対して、横須賀は東京に近い上に船舶が輻湊しているから、原子力委員会としてはまず佐世保について調査をし指定をしたい、こういうふうなことが言われているわけです。これは佐世保のほうから言わせれば、非常に迷惑なことになる。横須賀は東京に近いからだめだ、まず佐世保だ、これでは危険があるという前提に立っているのじゃないか、このように思うのです。そういうものが、根本的なそういう結論もなしに、佐世保であろうと横須賀であろうと、危険があるという前提に立っているのだったならば、権限あるないの問題は私は法律的なことは知りませんけれども、この根本的な問題についてまず原子力委員会検討し、そうして国民に納得いくようなことになるべきじゃないか。  政府は、外務省にしても総理大臣にしても、まあ各国の例からいって安全なんだという前提に立っておるわけです。それで、専門家じゃないのですから、やはり科学技術の専門家がその安全性について検討するというのは当然のことでないかと思うのです。この点についてひとつお伺いしておきたい。
  22. 近藤鶴代

    国務大臣近藤鶴代君) お尋ねの件について、言葉を返すようでございますが、原子力委員会といたしましては、寄港の可否について言及する資格を持っておりません。したがいまして、佐世保であるとか横須賀であるとかいうようなことを前提として話をしたことも全然ございませんので、そういうことはどこから出ておるかということで、実は疑問を持つような次第でございます。  また、専門家である学者の方々の御意見ということでございますが、原子力委員会にはやはり専門の方も入っておられるわけでございまして、安全性という立場に立ってひとつ十二分に検討しなければならないということを、今日までたびたび繰り返して参っておるようなわけでございます。
  23. 北村暢

    北村暢君 私は、この原子力潜水艦が事故を起こしているという前例は、原子力科学者の中にもいろいろデータを出しておるところでございますから、絶対に事故はない、こういうことではないと思うのです。したがって、一体それではこの原子力潜水艦安全性について日本のどこの機関が、これは安全なのか安全でないのかということの検討をし結論をするという機関がどこにあるのか、これはひとつ総理大臣に、科学技術庁はそういう責任はないと言うのですから、どこでそれじゃそういう検討をする責任を持った機関政府の中にあるのかないのか、これをひとつ総理大臣にお伺いしたい。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約の運営に当たっている私ども責任でございます。原子力委員会にそういうことをお願いするものではございません。  安全性の問題は、アメリカ当局といたしましては、原子炉を、動力炉を作る場合の安全性の基準というものをもちまして、原子力委員会に付置いたしました安全保障審議会という権威のある機関にかけまして、そこをパスしなければ実用にならないという厳重な基準を作っておるわけでございまして、そのためには莫大な経費と精力を傾けてやっておられますので、私どもとしてはアメリカ政府が安全は保証しますということを十分の信頼をもって受け入れていいと思っております。ただ、しかし、わが国は原子力については特別に敏感な国情にありまするので、私どもとしては、わが国の相当進んだ原子力関係の科学者の方々にも十分ひとつお考え願うということで、疑問になるようなところは意見を聴取いたしまして先方に伝えておるわけでございまして、そういった問題はおそらく先方安全性の基準というものですでに御検討されておる問題と思いまするけれども、まあ念のためにそういう手順を踏んでおるわけでございまして、これはそういう検討を終えましたならば、国民安全性の問題も補償の問題もはっきり御発表申し上げて、御納得いただくようにいたしたいと思っておりまして、あくまで安保条約の運営の責任を持っておる私どもがその問題についての政府としての責任者であるということでございます。     —————————————
  25. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいま委員の変更がありました。千葉信君、林虎雄君、赤松常子君がそれぞれ辞任され、その補欠として、山木伊三郎君、稲葉誠一君及び田畑金光君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  26. 木内四郎

    委員長木内四郎君) この際、の補欠互選についてお諮りいたします。  田畑君が再び委員になられましたので、理事の補欠に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  28. 松本賢一

    ○松本賢一君 関連。今の原子力潜水艦の問題で一つ気になることがございますので、お聞きしたいと思うのですが、今横須賀に来るとか佐世保に来るとかいうようなお話が出ましたが、来るとすれば、どこか日本の港に入るのだろうと思います。その際に、その港の市民と申しますか、そういう人たちが非常に反対の意思を示され、そうしてさらにそこの市長が公式に反対の意見を表明し、かつまた市の議会が反対の決議をするというような場合も容易に想像され得ると思いますし、またそういうことがあり得るようなうわさも聞いております。そういう際に、政府はどういう態度をおとりになるか、お聞かせいただきたいと思います。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 十分私ども安全性問題等につきまして克明な検討をいたしまして、御納得をいただくように最後の努力をして、さようなところがないように努めなければならぬと思います。
  30. 松本賢一

    ○松本賢一君 それでは、絶対に安全だという結論が出た場合に、それをその港の市民あるいは正式の機関である市長、市議会というようなところの御納得がいくように御説明をなさって、その上で寄港を認めさせるというような御態度にお出になるわけでございますか。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あらゆる努力をしなければならぬと思います。
  32. 松本賢一

    ○松本賢一君 これ以上申し上げても明確な御答弁は得られないような気がいたしますので、これで終わりますが、そういう際も十分に予想されますので、十分慎重な態度でしていただきたいと思います。私の質問は終わります。
  33. 北村暢

    北村暢君 次に、経済外交の問題についてお伺いいたしますが、IMF八条国移行の時期並びにガットの十一条国移行の時期はいつごろと見ておられますか。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま移行の時期というのをはっきりきめているわけじゃございませんけれども、明年の十月わが国におきましてIMFの総会がございますので、そういった時期を目安にいたしまして諸般の準備を進めようじゃないかというのが、今の私どもの態度でございます。
  35. 北村暢

    北村暢君 ガット十一条国移行の問題についても同じですか。
  36. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 八条国になれば、当然と申しますか、ガット十一条国になるのであります。
  37. 北村暢

    北村暢君 そこでお伺いいたしたいのは、この最近の状況からいって、ガット十一条国に移行になるということになれば、日本の工業製品というものについては、ほとんどウェーバー獲得というのはむずかしいのじゃないか、できても農産物程度でないか、まあこういうふうにいわれておるのでありますが、これの見通し、それからウェーバー獲得は大体いつごろか、またその期限切れになるのはいつごろか、完全自由化を達成するという時期というのは一体いつごろになるのか、この点についてお伺いします。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ガット関係におきまして、そもそもウェーバーを要請する権利はあるわけでございますが、現在はそういうことでなくて、御案内のとおりに、一括して引き下げていくという動きがガットにあるわけでございまして、今そういうことの検討に入っておるわけでございまして、そしてその仕組みはどういう仕組みになるかということは各国の出方を見ないとまだわかりませんので、どういう形で日本の留保が認められるか、どういう品物についていつどういった関税率が課税されるかというようなことは、今から私どもが申し上げるといいましても、まだ事態が流動いたしておりますので、この段階で今お示しのようにその時期を言えと、こう申しましても、ただいま申し上げられる段階ではございません。
  39. 北村暢

    北村暢君 ガットの第三委員会が近く開かれるのですか、もう開かれたのですか、もうそういう時期であると思うのです。そこで、まあ関税一括引き下げの問題が問題になっておる。それからまた、関税引き下げだけでなしに、国内の物品税の体系の問題等、これらの問題についても論議になるであろう。それから、基本的にはこの際に、わが国の農業生産と低開発諸国との関連において、特にまあ農業問題について相当な論議が起こってくるのではないか、こう思うのです。その際に一体、この会議に臨む態度として、今まあ流動しているのだからはっきりできない、こういうことのようでございますけれども、私はやはり基本的態度はあっていいのではないか、このように思うのです。したがって、まあ特にこれは通産大臣が見えましたから、この鉱工業製品については現在まあ自由化されていない非常に困難な問題ですし、一体どの程度のことを考えておられるか、それから農林物資については一体どの程度のことを考えておるのか、この点について両大臣からひとつ具体的にその基本的態度についてお伺いいたしたいと思います。
  40. 福田一

    国務大臣(福田一君) 自由化の問題に関連いたしまして、工業製品の問題でございますが、私たちとしては、大体少なくとも来年一ぱいくらいにはどの産業についても一応自由化ができるような競争力をつけるようにしたい。それからまた、そういっても、どうしてもつかないものもあるでしょうけれども、来年末くらいまでには、それじゃその後どれくらいでできるかというような見込みは、はっきりつけるというところまで産業に国際競争力をつける努力をいたして参りたい、こういう考え方でおるわけであります。  それから、ただいま先に御質問になりました関税一括引き下げの問題でございますが、これはわれわれとしては、原則として関税を引き下げて貿易を盛んにしようということは賛成でございます。したがいまして、この点については異議がないのでございますが、しかし、具体的な問題に入って参りますというと、やはり日本の産業あるいは貿易の関係において、われわれはとういう——今ばく然と五年間に何か五〇%引き上げようじゃないか、まあしかし、全部の品目のうちで一割ぐらいは例外を認めてもいいというような提案があるわけでございまして、内容自体がまだはっきり出てきておりません。しかし、それだけの提案に対しましても、全部が全部日本の場合それに応じ得るか、どの品目も全部応じ得るかということになると、それは私は今ここで申し上げるわけにいかぬのであります。やはり例外というものもあります。また、やり方についても、いろいろの意見を申すことだけはしなければならない、かように考えておるわけであります。
  41. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 貿易自由化につきまして、農産物もやはりその方針に従って、できるものはできるだけ自由化していこう、こういう方針でありますが、そうして今日まで段階的に御承知のとおり自由化をやっております。しかし、当分、たとえば米麦でありますとか、あるいは酪農製品というものは、当分自由化を望めそうもないわけでありまして、こういうものにつきましては、その例外を何らかの形で要求をしなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、関税一括引き下げの交渉につきましても、政府といたしましては、そう方針に順応していこうという方針をとっております。むろん、それは無条件ではありません。一定の条件を付していこう、こういう方針をとっております。したがって、農産物関係におきましても、原則的にそういうことになると思うのでありますが、しかし、これは日本だけでなく、各国とも同様であります。先般のガットの委員会におきましても、作業部会におきましても、EECとアメリカとの間には非常に相当の意見の懸隔がある。私どもといたしましては、農産物については、これは一応特殊なものとして取り扱っていくのが適当ではないか、こういうふうな相談もいたしておったのでございますが、現実の問題といたしましては、EECとアメリカとの間にまだ話がつかないというのが現状であります。私どもといたしましては、そういうような国際的な情勢を見ながら、農業につきましては特別の考慮を払ってやって参りたい、こういうふうに考えております。
  42. 北村暢

    北村暢君 そこで、私、先ほどお伺いしたのは、ウェーバーを獲得するのはいつごろかというのは、今農林大臣がおっしゃったように、当分の間自由化できないものがある、こういうふうなお話ですから、八条国移行、ガット十一条国へ移行する場合に、このウェーバーの問題が出る。したがって、来年の十月ごろこれが出てくるのじゃないか。そしてウェーバーを獲得すれば、それじゃあずっと続くかというと、そうじゃないのでありまして、やはり一年か一年半か、せいぜい二年、これくらいしかウェーバー獲得ということは許されないわけですね。そうすれば、おのずから特殊的な取り扱いをするといっても限度がもう目に見えておるわけです。そういう点を先ほど実はお伺いしたがったのですが、意見がなかったのであります。そこで私お伺いしたいのは、そういう点と、そういうウェーバーを獲縛した後にも関税を一括引き下げで、先ほど通産大臣から話のありましたように、五年間に五〇%下げるのだ、こういうようなことが出てきているのであります。でありますから、早晩これは、基本的には自由化の方向へいかなければならないということをやはり国内態勢として考えるべきである。この場合ですね、私は先ほど意見が出ましたように、このEECの共通の政策、これが一体どういう形でアメリカなりイギリスなり、中南米のEECに対する農産物輸出国との間にどういうような内容のものが今日問題になっておるのか、EECはどのような排他的な形でこの話し合いがつかないでおるのか、その実情をもう少し詳しくお伺いいたしたい。それはやはり今後の日本の農業の置かれた立場というものについての基本的な考え方というものを決定する上において非常に重要であると思いますので、EEC内部の事情についてもう少し詳しく御説明いただきたい。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ガット加入の問題につきまして、少し誤解があるようでございます。これはやはり国民にはっきり知ってもらわぬといけませんので申し上げておきますが、ガットに加入しているからといって、今自由化していないものを直ちに自由化しなければならぬというのじゃないのであります。ガットに加入いたしましても、今まで自由化していないものは残存輸入制限としてこれを存続できるのであります。相手国が異議を申し立てない場合におきましては。だから全部異議を申し立てない、残存輸入制限を認めてくれれば何らそこに問題はない。しかし加入いたしますと、ある国がこういう問題、この問題については残存輸入制限をやめてくれ、こういう申し出があって、いろいろ折衝のときに、それじゃ何年かウェーバーをくれ、こういうことになるわけです。それで、今二年たったらすぐなくなると言うが、これは多分IMF八条国の移行を勧告した場合に、どのくらい余裕があるかということの二年というのが誤解されるもとじゃないかと思います。二年という制限はございません。あくまで話し合いでいくのであります。だから、二年という前提を置きますと、自動車でも何でも二年で全部ウェーバーがなくなる、こういうふうにお考えになってはたいへんでございます。それから農産物につきましても、当然、例を見ましても二年ということはないのであります。原則はやはり残存輸入制限を持ったまま入っていって、そこでの今度折衝になってくるのでございます。どうぞ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  それからEECとの関係でございます。今これはEEC内部、六カ国内部での農産物のことをやっておる問題であって、これが問題になってきたのは、イギリスが入った場合に、濠州、ニュージーランドの農産物、小麦がどうなるかという問題、この問題が解決ついていない。したがって、今御質問の東南アジア全体についての農難物とEECとの問題につきましては、私はここで見通しをどうこうつけるということは困難じゃないかと思う。今もっぱらREC内部の農産物その他の関係、そうして問題になりましたのは、英国を含む貿易自由連合、そうしてまた英帝国ということとの関係で問題が延びておるのでございます。一般の英連邦に入っていないところの東南アジアの問題は、まだこれから先のことであると思います。
  44. 北村暢

    北村暢君 ウェーバーの問題については、確かに総理大臣の言われるとおりなんでありますけれども、しかし過去の例においては、ウェーバーを獲得したのは西ドイツが工業製品の中で六品目だけ適用になっておる。しかもそれも非常に早い機会に期限切れということになっておるんですね。したがって、ウェーバーを獲得すればずっと続くという問題ではなくて、やはり相手国から相当強い要請というものがこれは当然出てくるわけなんです。もちろん現在でも、EHCでもこれらの問題について非常に論議せられて、特に共通農業政策確立のために、今EEC各国は農産物の自給度というものを臨めるための努力をしておるわけです。したがって、EECはやはり計画を持って自給度を達成するというところに、がむしゃらに、共同農業政策というものを遂行しようというところに、やはりイギリスの連邦諸国並びにアメリカ等今非常に大きな問題を起こしておるわけです。ですから私はそこでお伺いしたいのは、農林大臣に、こういう問題と関連をして、一体、当分の間とか何とかいうことをおっしゃられるけれども、この貿易自由化についての日本の農業の今後の行き方、いつごろになれば、どういうものについてどのように自由化されていくのかという見通しというものが立てられていなければならないんじゃないか。これはEEC各国はそれを持っておるわけですね、具体的な計画というものを持っておる。で、実際に日本の農産物が国際価格で五〇%以上の割高なもの、砂糖、バター等については約二倍、国内価格は国際価格からすれば二倍だ。これをどういうふうに縮めて、何カ年ぐらいで一体自由化に持っていくのか、そこら辺の見通しというものが計画的にやはり持たなければならないんじゃないかと思うのですが、一体政府はそういう自由化に対する国内態勢というものを持っていくところの計画というものを持っているのかどうか、この点お伺いします。
  45. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 農産物の自由化は、先ほど申し述べましたとおりに、当分の間できないものが若干あるわけです。しかし、ただいまお述べになりましたような酪農製品のごときも、いつまでも、自由化するせぬは別といたしまして、国際競争力をつけないで現状のままでいつまでもいけるかと申しますと、それはそうではない、そうあってはならないのでありまして、バターがアメリカ、濠州の値段の倍以上もしておるというこの現状は、どうしてもコスト・ダウンをやって、国際水準までその価格は達するように努力をしなければならぬと思うのであります。   〔委員長退席、理事斎藤昇君着席〕 それが何年ぐらいでできるかといわれますと、正直なところ今直ちにこれを何年ぐらいになったらどうなるということは申し上げかねるのであります。これは北村さん専門家だからよく御存じのことでありますが、かりにバターについて申しますれば、酪農業の体質を根本的に改善しなければなりません。第一に、この乳牛に食わす飼料を、牧草の少なくとも七制以上は食わすという経営方式に変えなければならない、そうしてまた今の一、二頭の飼育というのをいわゆる多頭飼育、七、八頭以上の飼育の状態に持っていかなければ、私はコスト・ダウンはできない、こう考えておるのであります。現在、政府が農業の体質改善として構造改善事業を真剣に推進をいたしておるのは、そういう重要な意味を持ってやっておるわけであります。でありますから、これは私としては、できるだけ早くそういうところまで持っていく、国際競争力をつける、これを一日も早くつけたい、こういうのでやっておるわけであります。その時期がいっかということは、ちょっと無理な話であろうと思うのであります。砂糖につきましては、これは御承知のとおり、国内産糖が約四分の一くらいでありますので、これは国内の産糖を保護する、国内糖業を保護する、生産を保護するということに万全の措置を払いまして、そうしてその態勢を整えて、できるだけすみやかに自由化の方向に向かっていきたい、こう考えておる次第であります。
  46. 北村暢

    北村暢君 私は、やはりEECは一九七〇年を目標にして完全な自給態勢に持っていく、主要農産物については完全な自給態勢に持っていく、こういうことを目標に置いて、現在輸入穀物については課徴金制度をとっておるわけです。そうして指標価格に運賃手数料を加えたところの国境価格というものと、それからCIF価格との差を、これを指標価格で持っていくための共同農業政策については、この農業の保護政策にかかっておる、こういう形をとっておるようでございます。しかもその指標価格というのが、最高価格をとって非常に高いものなんです。そういうことで、共同農業政策をとってから、その国境価格というものは非常に高くなっているのです。それを強引に実施をして、おるという状態なんです。したがって、そういうような形の中で、EEC諸国は相当やはり長期的に自給態勢を整えていく、こういう形をとっておるのですが、私は日本の農業の行く道というものについて、今、大臣がおっしゃられたのでありますが、これと反面非常に複雑な要素として持っておるのは、きのう、おとといとも出ましたいわゆる低開発地域における経済協力の白書が出されたわけです。これによるというと、この経済協力のあり方として、経済援助、それだけじゃだめだ、鉱業産物、農産物という第一次産物については積極的に輸入しなければならない、日本は輸入しなければならない、こういうことをいっておるのであります。したがって、この点、農業の保護政策と貿易政策の上において相矛盾したものが出てくるのであります。したがって、これは品目ごとによっていろいろ違うだろうと思うのですが、一体これに対してどういうふうに調整をとられるのか、政府部内の意見調整というものはどういうふうになっているのか、この点についてお伺いいたしたい。両大臣からひとつお願いいたしたい。
  47. 福田一

    国務大臣(福田一君) 低開発国援助の問題でございますが、やはり低開発国の産品というものは一次産品が多いのでありますから、そこで一次産品の買い付けをどういうふうにやるかという場合に、その一次産品のどういう種類がいいかとか、どういうふうにして、どういう時期にやったらいいかというようなことについては、やはり指導をするといいますか、そういうようなことを考えてやっていく必要がある。それから低開発国援助ということになれば、どうしても今外貨等も少ないのでありますから、そういう場合においては、ある程度の延べ払いというような問題等もある程度考えていかにやならぬのじゃないか、こういうようなことであります。しからばどういう場合にどうするかということは、それぞれの国によって、同じ低開発国といってもそれぞれ違っております。それから産品も違っております。だから個々の具体的な問題についてこれを考えていきたい、こういうふうな考え方で低開発国の援助をやって参るということに相なると存ずるのでございます。
  48. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 低開発国はお述べになりましたとおりに多くは農業国であります。したがって、その農産物を買ってやらなければならぬということは、これは当然考えられることであります。しかし、日本からいたしますれば、日本の農業に著しい影響を及ぼすようなものについて買い入れるということはできない。これはもう当然のことでありますが、しかし、できるだけこれを買い上げる、こういう方針で進まなければならぬ。これは東南アジアと日本との経済関係を緊密にする意味におきましても、これは向こうの唯一の産物を買ってやるという方向に進まなければならぬことは当然のことであります。そこで、向こうの農業と日本の農業とがなるべく衝突しないような行き方をしなければならぬと思うのであります。一つの例をあげますと、北村さん御承知のとおり、タイその他の南方のトウモロコシというものは、今日四十万トンをこえて日本に入っております。これは二年以前からで、三年の間にこれだけ急速な発展をいたしたわけであります。こういうことで、大いにトウモロコシを作って、それは日本の農業と衝突しないのでありますから、大いにこれは南方から入れてやるということを考えなければならないと思うのであります。その他砂糖にしても、あるいはバナナにいたしましても、さらにビルマの雑豆のごときものも、これはできるだけ日本で買い付けてやる、衝突しないような行き方に持っていかなければならぬと思うのであります。そうすると、米を買ってやらなければいかぬではないかというお話になると思うのでありますが、私は先年来、南方の米を何とか工業川原料にできないものかということを考えているわけであります。これは御承知のごとく、日本で澱粉が暴騰いたしまして、   〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕 澱粉が高騰いたしましたために、その数量が、供給量が足らないというような事態になりますと、南方の米を澱粉にすることはできないものかというようなことも私は研究をさしておるのでありまして。とにかく衝突しないようにして、そうしてできるだけ向こうの第一次産品を買う、そうして向こうの農業に協力するにあたりましても、そういった意味においてひとつ協力をしていく、そうすると、これは相当の余地がまだあると考えております。
  49. 北村暢

    北村暢君 そこでお伺いしたいのは、エカフェの問題、それからOECDの問題、いろいろありますが、時間の関係から省略をいたしましてお伺いをいたしますが、今申したように、特にエカフェの総会におきましても、とにかく先進国は苦労を忍んで、第一次産品を買わなければ、そうでなければ低開発地域の開発というものはできないということははっきりしているようです。したがって、日本先進国というか、中進国というか、そういう状態ですから、当然そういう任務というものを付与されるだろう、こういうふうに思います。  そこで、今後のエカフェ総会における低開発地域の経済協力の問題で経済ばかりじゃない、いろいろな協力の問題でお伺いいたしたいのですが、経済協力基金というものの、これは外務大臣が来られないであれでありますが、基金が百六十九億の基金を持ちながら今日二月末現在でこれは十九億五千万しか使っておらないのであります。これらは輸出入銀行との関係で調整の問題がある、こういうことを言われておるのでありますが、低開発地域の援助協力というものが強くうたわれておる時期に一体これはどういうことなんだろうか、非常に疑問に思うわけなんです。せっかくある金が使われないでおる、こういう状況でございまするので、この間の事情は一体どういうことになっておるのか、この点御説明願いたい。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように百七十億ばかりの金がございまして、今年度末に至りまして、そのうち八十億ぐらいしか金を出していないわけであります。海外経済協力基金の法律、業務規定等で輸出入銀行との重複を避けなければならないということが書かれておりますし、そういうふうに運用されておるわけでありますが、大体今までの経緯を見てみますと、主として話に乗って参りますプロジェクトが相手の地域の基本的な開発計画、天然資源の開発でありますとか、鉄道の敷設でありますとか、そういった種類のもの、あるいは水道の布設でありますとか、多いわけでありますが、事柄の性質上、話が起こりましても先方の事情でありますとか、現地通貨がないとか、いろいろな事情から、ある程度輸出入銀行と違いますので、それほどきびしい立場から先にまで計画をきちっとしろというふうな考えではやっておらないのでありますけれども、それにいたしましても、計画らしい計画に育ってこない場合が多いわけでございます。昨今もヘジャース鉄道の話がもう少し進むかと思って期待をしておりましたが、これもその後政情不安、その他で進まない、そういったようなことが、今まで貸し出しが比較的私どもが期待しておりましたほど進んでいないという根本の理由であろうと思います。運営の方針といたしましては、基金の性質上できるだけ輸出入銀行のようにきびしいことを申さずに、好意的に考えて参りたいということは、常々基金の当事者も思っておりますし、私どももそう申しておるのでありますが、なかなかそういう具体的な計画が最終的に生まれてこない。いろいろな話はぼつぼつあるのでございますけれども、計画らしい計画になってこないというのが、今までの実情でございます。
  51. 北村暢

    北村暢君 この点についてはあとでもう一度触れたいと思いますが、次に OECDの加盟の問題に関連する準備態勢においてこれを推進する側、特に通産省あたりでは非常に慎重な態度で臨んでおる、こういうことがいわれておるわけです。それで一体この点について経済政策委員会、貿易委員会両者で今後の検討がなされるようでございますが、これに臨む態度として一体どのように考えておられるのか、これは所管大臣でもどなたでもよろしゅうございますが、お答え願います。
  52. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) OECD加入につきましての準備は、いわゆるガットその他の準備と同じように進めております。政府部内に意見の不一致はございません。私は早晩加入についての手続がとられると思います。御承知のとおり、現在の二十九国が一人でも反対があると、これはもうだめなんです。大体今の情勢では全員一致の格好でいける見通しです。
  53. 北村暢

    北村暢君 具体的な問題でお伺いしますが、加盟国の経済について経済成長率を十年間に五〇%引き上げるのだ、こういう課題が一つある。それからまた貿易委員会のほうでは輸出所得控除というものについては、これは相当問題になるのじゃないか。あるいはは石油業法というものによって石油業というものを保護しておるわけでありますが、これらのことについても相当問題があるのじゃないか。こういうふうにいわれておるのでありますが、これらの点について一体どのように検討されておるか、ひとつお伺いいたします。
  54. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 十カ年五〇%増というのは、二十カ国全体の問題でございます。なかなか全体として五〇%にはいきそうにございません。フランス、イタリアは相当いっておりますが、アメリカ、イギリスはそういっておりません。日本の高度成長が入ったって五〇%の問題を云々するほどではないと思います。  それからOECDに入りましていろいろな財政、金融、経済政策でいろいろな討議をいたします。討議でございます。いろいろな問題があると思いますが、今の石油業法など入るとしてもすぐ上がるというようなことは私は考えておりません。
  55. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) OECDの加盟に対しては今総理が基本的な政府の態度を申し上げましたが、OECDに加盟して一番むずかしい問題は、IMFの八条国移行問題につきましては、資本取引という問題に対してはある程度の管理を認めておるわけでありますが、OECDに加盟いたしますと原則的に資本取引の自由化という問題があるわけでございます。普通からいうと、貿易外経常取引の自由化から始まりまして、資本の問題は一番最後になるわけでありますが、時ちょうどIMFの八条国に移行勧告を受けて同時にガットの十一条国に移行する態度をきめ、また近くOECDに加盟したいということでございますので、日本の自由化というものに対しては、資本取引も含めて自由化の態勢をとらなければならないというところが日本としては一番重要な問題であるということで、これを四月からの為替の自由化というものにつきましても資本の自由化ということに合わせて検討し、政府も去る閣議でこれが基本的な方向を決定いたしたわけでございます。  それから輸出所得控除の問題については、総理が昨秋ヨーロッパをお回りになったとき各国で問題になっておるわけでございまして、大蔵省としてもこれが対案をどのようにしてやったほうが一番いいかという問題に対しては、現在各省との間に、産業別品日別に対してどのような影響があるだろうか、またどういうふうな態勢をとるべきであるか、それがまた輸出振興という面にどのように作用するかということで世界各国の例に徴しまして現在作業を進めておる次第であります。
  56. 北村暢

    北村暢君 現在作業を進めておるということですが、税制上の保護措置というものが、やはり相当問題になるわけです。したがって、そういう面の対策というものは、いろいろ減価償却の期間を短縮する問題、いろいろ考えられておるようでございますけれども、これはきょうは時間がございませんから、そういうこまかいことを省略をさしていただきますが、いずれにしてもこの大勢は、OECDに加盟し、あるいは八条国移行、ガットの十一条国の移行、こういうことで大勢は自由化のほうへどんどん進むわけであります。そこで、今後の私は基本的な方針をひとつお伺いしておきたいのでありますが、その自由化に対応して、特定産業についての自由化対策というものが今考えられて、政府も真剣に検討されておる。そしてそのことが軍化学工業としての政策をとっていこう、移行していこう、こういう欧米先進国型の産業形態に移行していこう移行していこう、こういう形をとっておるようでございますけれども、そこで問題は、私お伺いしたいのは、そういう欧米先進国と競争していく中で、自由化と関連して、一体日本の貿易というものがどういうふうに将来進んでいくのか、欧米先進国を中心とした貿易に路展するのか、あるいは東南アジアの経済協力の形の貿易という方向に重点が置かれるのか、この点について、国際的な各国の経済情勢というものをどのように把握しておられるのか、私としてはそういうことも確かに必要であろうと思うわけですが、実際問題としてアメリカの景気の状態、EEC諸国の過剰生産になりつつある状態、こういう点からいって、貿易の方向というものの重点は、公聴会において、東西の貿易から南北の貿易へ移行していく、こういう公述人の意見もあったのでありますが、政府一体この貿易、経済、外交の面における輸出輸入、この貿易政策について、一体どういう荒木的な考え方で臨まれようとするのか、この点をひとつお伺いいたしたいと思います。総理からひとつ。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 貿易は、やはり相手のあることでございますから、相手の状況を見ながら随時施策を立てていかなければなりません。今お言葉に、東西の貿易が南北のほうに移りつつあるというお話でございます。これは移りつつあるのではございません、南北の貿易はずっと原則的に大きい問題でございます。東西の貿易というのはごく少ない、ことに共産圏内におきまする貿易というものは、中共が他の共産圏との貿易が最近ほとんど半分以下になった、半分程度になった。そういうことで、私は今の貿易関係で従来の東西の貿易というものがほとんど微々たるもので、しかもそれは南北に移るというのでなしに、これは南北と比較にならぬ状態であるが、日本の貿易をどちらに持っていくかという問題でございますが、これはどこへもみな持っていかなければなりません。アメリカとの貿易は、たとえば昨年は前年に比べて三〇%程度ふえておる、それからまたヨーロッパとの貿易も三〇%近くふえておる、しかしわれわれが昔から非常に力を入れておりまする東南アジア低開発国の貿易は大体横ばいくらいになっておるのであります。そこでその横ばいだからほうっておくというわけにいきません。これはやっぱりわれわれの同僚であるAA諸国でございますから、力はこれに向けていかなければならぬ。どちらかといえば将来のことを思えば、この低開発国のほうに対して相当の力を入れていくべきでございます。私はアメリカとの関係はほうっておいてもというわけではございませんが、大体うまく軌道に乗っておると思います。しかしヨーロッパに対しましては、先ほど申し上げましたように、ふえたとは申しましても、非常にまちまちでございます。たとえばオランダは一人当たり六、七ドル買ってくれております。イギリスは最近は二ドル半買ってくれております。ドイツは一ドル半くらい、フランスに至っては三十五、六セントでございます。イタリアが五、六十セントであります。非常に違いますが、そこで伸びるところを伸ばすと同時に、フランスとかイタリアとか、あるいはベルギー等のオランダに比較して非常に少ないところに力を入れていかなければならない。こういうので、どこへ重点を置くかというと、貿易はどこへもみな重点を置いていかなければなりません。しかし今としては、やはりヨーロッパに向いていく、そうして低開発国等も、今お話がありましたように、向こうが買えるようにしていく。買えるようにしていくということは、第一次産業の合理化をはかって、向こうの生産力をふやす、そうしてまた農林大臣の言っておりましたように、日本との生産物の競合を避ける、こういうような方向で、私は力の入れどころとしては、やはり東南アジアの低開発国、そうしてヨーロッパと、こう考えております。もちろん、あなた方のお話しの中共もあるいはソ連との関係につきましても、これはゆるめるという気持は毛頭ございません。できるだけやっていきたい。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 関連。先日予算の第二分科会で外務大臣にちょっとお尋ねしたのですが、今の北村委員質問に関連することですが、一つはクレイ報告があっても、日本日本の立場をとるという外務大臣のお話し、それはけっこうだと思いますが、その場合、賠償あるいは賠償に伴う経済協力、あるいはそれ以外の通常の経済協力、低開発国援助協力方式はいろいろありますが、その場合に、賠償もあるいは賠償に伴う経済協力も、だんだん期限がきて減ってきます。支払いが進んできますから。その場合、それに見合う程度の、いわゆる賠償並びに賠償に伴う経済協力以外の新たな低開発国援助を、それに見合う程度の額ぐらいは今後もやりたいと外務大臣は言っておられたのですが、総理大臣も同様な御見解であられるかどうか、これが一点。  もう一つは、今日とか昨日の各新聞が伝えておりますが、イギリスが対ソ油送管の問題でアメリカに申し入れをしております。これは戦略物資ではないからイギリス独自の立場をとる、フランスも同様な意向を表明しておる、西ドイツも自由党ですか、これまたやはりほぼ同じ意見を伝えておりますが、西欧並みと言われている、従来もこれについては西欧並みということを、総理もそれから各大臣からもお話がありましたが、世界各国がこのような対ソパイプラインの問題について態度をとってきた今日では、もっと日本としては積極的でもいいのじゃないかと思いますが、この二点について御見解を承りたい。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) わが国が OECDのDACに入りまして、三億五、六千万ドル昨年度低開発国にやったということは、世界各国認めておるところであります。だから、せんだってこのケネディ大統領の諮問委員会が賠償を入れないということは、それは個人の意見であって、私は、世界的には通らぬと思う。だから、私は、日本独自の考えでいきますが、三億五、六千万ドルというものが、日本の経済として、賠償を含めた海外援助としてどういうものか、多いか少ないかという問題でございます。私は、まだ少ないと思います。これは賠償であろうがあるまいが、日本の生産力等から見ますと、これをもう五億ドルにしても七億ドルにしても八億ドルにしても、私は他の機会に申し上げたと思いまするが、戦前に朝鮮、台湾、横太、あるいは満州、シナ、あるいは東南アジアに出しておった資本投下というものは、これは経済力からいって、今よりももっと割合が多いのじゃないかという気がいたしておるのであります。だから、私は、これからの日本の繁栄のために、そして東南アジア、低開発国の繁栄が日本の繁栄に直接最も近いということを考えますれば、この分は多々ますます足りる、こういう気持を持っておるのであります。  それから、第二の、ソ連に対する油送管の問題でございます。御承知のとおり、ドイツが、先般国会で制限をすることの結果が出てきたわけであります。キリスト教民主同盟が欠席したために、西ドイツのソ連への輸出は認めないということになった。で、西ドイツとしてはそういうことになりましたから、英国その他へ呼びかげております。ドイツの社会民主党並びに自由民主党は、キリスト教民主同盟と違っておりまして、今お話のとおりに、やるべきではないかという意見があるようでございます。この問題は、やはりもうしばらく様子を見たいと思います。で、どういうふうな結果になりまするか、われわれは、大体欧州並み、または日本の置かれた地位からいって、それよりもちょっと上ぐらいにしたいというのが私の気持でございます。しかし、自由国家群の一員でございまするから、欧州並みよりも非常に離れてやるというようなことはいかがなものかと思いますが、気持としては、欧州並みにちょっとプラス・アルファーぐらいの気持でいきたいという意見を持っております。
  60. 北村暢

    北村暢君 今の総理大臣の御答弁で、貿易を拡大していく、これはもうどこにもやっていくのだと、これは確かにそうだと思うのです。ただ、私どもがやはり考えなければならないのは、今後の日本の産業体制が弔工業に移りつつある、また、貿易に耐えるカルテルなり、あるいはトラストなり、企業合同して規模を拡大していくという面について、そういう方向へいこうとしておるわけです。それでなければ、また、欧米先進国の企業形態からいって、日本は相当大きな高度成長をしたのでありますけれども、産業の構造においては、まだまだ先進国には及ばない。そういうところとこれから激烈な競争をして貿易をやっていこう、しかも、欧米先進国にいくものには、ああいう遠隔の地でありますから、これは高級なものがいくに相違ない。それで向こうの重化学工業の製品と競争する、そういうことでありますから、私は、やはり相当大きな輸出に打ち勝つための日本の国内の体制というものがしかれていくのじゃないか。これはやはり私どもが心配するのは、その場合に、相当大きな国民経済的な犠牲の上においてそういうことがなされるのじゃないかという心配があるわけです。したがって、そういう点についての解明をひとつしていただきたいし、それから、東南アジアの貿易に重点を置いて、今、羽生委員も触れたとおりでありますけれども、大体これは総理大臣もおっしゃったように、アジアの貿易というものは横ばいであるわけです。したがって、これについて今後重点的に力を入れていく、まことにけっこうだと思うのです。そういう点でやっていくのですけれども、先ほど申し上げましたように、この経済協力の基金等も使われないでおるというような状況の中で、力を入れていくということについては、どうも何か抜けたところがあるのじゃないかという感じがするわけです。したがって、そういう面についてのひとつ解明をお願いいたしたいと思います。
  61. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、自由化を進めて参りながら貿易を拡大するということで政府の方針をきめておるわけでございますが、この貿易拡大ということに対しては、アメリカ及びEEC諸国とあわせて、先ほど申し上げましたとおり、共産圏貿易も政経分離で進めておりますし、また、低開発国に対する長期の貿易拡大をねらっておるわけでございます。これの先行をするものとして、経済協力等も十分やらなければならないということでございます。現在までは、御承知のとおり、賠償に伴う経済協力もございましたので、これの金額も少ないものではないと考えておりますが、先ほど御発言がございましたように、賠償等に引き続きまして対外経済協力を拡大していくという意味で、今年度の予算編成のときに、外務省、通産省その他と連絡をとりながら、海外経済協力基金の活用については、新しい角度からこれを検討して、あなたが今言われたような実効を上げるように、また、将来のシェア確保というような面にも大きく作用するように検討を進めておるわけでございます。  それから、これらの前提をなす国内体制の整備その他につきましては、三十八年度の予算を基点といたしまして、新しく自由化に対応し、国際競争力を培養するような各般の措置を行なっております。もう一つは、税制上の問題でございまして、税制に対しましても、政策減税その他の制度の上で格段の配慮を行なっております。  第三番目は、金融、金利負担の問題でございますが、この資本的な問題に対しては、金融環境の整備をいたしておりますし、また、長期に安定的な良質外貨の導入という面につきましても措置をいたしております。また、国内においてこのような措置を続けていくと大企業中心になりそうであるというようなことが考えられるし、また、言われますので、これらの問題に対しては、国内均衡を保持していき、また、地域間格差の解消という面に対しても格段の配慮を行ない、国際競争力をつけるための特殊の方途をお願いしておると同時に、中小企業基本法制定その他の法的措置も急いでおるわけでございますので、これらのものを総合的に判断をしながら、自由化、貿易拡大に対処して参りたい、このように考えておるわけであります。
  62. 北村暢

    北村暢君 次にお伺いしたいのは、経済の見通しの問題でございますが、当初予算の説明の際に出て参りました経済の見通しについては、上期においては横ばいで、下期において景気回復してくるだろう、上昇線をたどるだろう、こういう説明になっておるのですが、それに対して、池田総理は、秋を待たずして景気は回復する、こういうふうに言われておるのでありますが、その根拠は一体何であるか、これをひとつ御説明いただきたい。
  63. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 昨年予算を編成をいたします当時は、十二月の初めからでございまして、三十七年度の税収等による経済成長の現状に対しましても、まだきびしい見方をいたしておりました。ところが、三十七年度の税収も、御承知のとおり、われわれが当初考えたよりも多少上向きになっておるわけでございます。その後の三月末現在の外貨保有高は大体十六、七億ドルと考えておったわけでございますが、国際収支の改善も著しく進展をいたしまして、三十七年三月三十一日期末で、おおむね十八億六、七千万ドル——十九億ドル台に乗せるというような状態でございます。大体私たちの見込みでは十八億六千万ドルくらいでありますが、これは自由化に対処しての為銀の手持ちの資金等も幾らか減っておるというような事情もございまして、おおむね十九億ドルということは間違いないというふうに御理解賜ってもいいと思います。同時に、昨年日銀が行ないました買いオペの制度等も軌道に乗りまして、金融環境は、非常にわれわれが考えたよりもテンポが早まって環境整備がなされておるわけでございます。特に、去る十九日に日銀でも公定歩合の引き下げ等も行なわれましたし、また、自由化に対応して、非常に緩慢であるというふうに見られておりました国内産業の自由化体制の整備という問題に対しても、相当ピッチが上がっておりまして、三十七年度中の輸出、輸入の見通しも、年初に計画をいたしましたものよりも、相当に輸出実績も上回わりまして、おおむね貿易で三億ドル程度の黒字が計上せられるというような状態になっており、来年度の貿易の見通しも、今まで考えておったよりも伸びるのではないかというふうな状況を見ますときに、秋を待たず、ことしの六、七月くらいからは生産も相当上がっていくだろうという見通しをつけておるわけでございます。特に、二兆八千五百億に上る一般会計の予算案を今明日であげていただくということになれば、四月一日からこれが執行に移るわけでございますが、今までは予算の編成過程においてはいろいろ議論もされ、私たちも非常に緊張いたしておったわけでございますが、予算執行という面に対しては、まだ配慮が欠けておったというふうにも考えます。私が常に申し上げておるように、一般会計、財政投融資、民間資金の活用、その他十分な配慮を加えて、これを十二カ月に側って、計画的な支出を合理的に行なおうということを考えておりますので、四月からは、多少ずつ今までのじめじめしたような状態からは脱却をして、景気は、長期安定の見通しのもとに上昇過程をたどるだろうというような考えを持っておるわけであります。
  64. 北村暢

    北村暢君 今、大蔵大臣から説明がありましたけれども、この根拠としていろいろ考えられているようですけれども、私は、やはり景気に直接敏感に直ちに影響してくるのは在庫投資の問題ではないかと思う。特に、最近の経済指標を見ましても、今、大蔵大臣の言ったように、非常に楽観的な要素というものは私はないのじゃないか、このように思うのです。で、企画庁長官お尋ねしたいのですけれども、この在庫投資の中で、製品原材料の中に占める国内の製品原材料の動き、これが景気に直接関係してきたのじゃないかと判断するのですけれども、その動きはどういうふうになっているか、ひとつ御説明願いたい。
  65. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 景気が秋を待たずして上昇に転ずるのではないかということについてのお尋ねであるわけであります。これについて幾つかの要素がございまして、ただいま仰せられました在庫の問題も確かに一つであります。それから、設備投資の動向もその一つであります。それから、財政その他の動き国民消費の動き、それらのものの動向であると考えております。まず、簡単に一つ一つ申し上げますと、消費につきましては、昨年の暮れあたりのたとえば百貨店の売り上げ等は、必ずしも従来と比べてよくはなかったわけでございますが、この二月、三月になりまして、かなり売り上げが上がっております。三月のことはまだ確と申し上げられませんが、大体少し景気が上向きのときには、前年同期に比べて二割くらいの売り上げ増があるわけでございますが、十二月、一月あたりは、それが一割五分を切っております。しかし、二月になりまして二割という数字が出て参り、三月も引き続きそれに近い数字が出るように思われますので、消費は依然として堅調であるということはまず申してよろしいかと思います。  それから、設備投資でございますが、これは機械受注の見通しをつけるのが一番いい資料でございます。ただ、これには半年くらいの先進性と申しますか、半年くらいたって現実の結果が出てくるわけでございますけれども、これも十二月は少しよ過ぎました、季節的な要因があったと思いますが。しかし、十二月、一月あたり、機械受注は私ども考えましたほど悪くございませんので、まあそこから先行資料として、わりにいいものが出てくる。財政投融資につきましては、ただいま大蔵大臣がお話しのとおりでありまして、これは比較的、景気と申しますか、経済活動を振興するのによくできておると申しては何でございますけれども、そういう意図が甘、かれておるように思います。特に、予算の執行にあたって、そういう大蔵大京の御配慮であれば、なおさらそういう効果が出ると思っております。  残りましたのは在庫でございますが、この在庫の中で、原材料在庫につきましては、かなり底をついた感じがございます。原材料在庫が多少上がってきつつございます。この点は、今年度の輸入の見通しを先般差し上げてあるわけでありますけれども、三千万ドル近くは、あるいは輸入がふえるのではないかというふうに考えておるわけでございます。輸出もその程度ふえるかと思いますから、バランスは変わりませんけれども、そういう傾向が見えております。それから、商品在庫、流通在庫、流通在庫は確かに減ってない。問題は製品在庫であると思います。製品在庫については、北村委員が御指摘のように、どうももう一つ思ったほど減りませんで、むしろ操業短縮というものが、なかなか思ったとおり一本調子にいかないものでありますから、製品在庫が何となくもたれておるということは事実だと思います。その点が一つ気がかりになることでございますが、大勢としては、まずまず秋を待たずに経済が上昇気配になるであろうということは申してよろしいのではないかと思っておるのでございます。
  66. 北村暢

    北村暢君 今御説明がありましたけれども、これはやはり認識がだいぶ違うのでありまして、今の設備投資に対しても伸びている、こういうことでございますが、設備投資については、それでは一体どの程度伸びていくのか。これはもう計画は横ばいのように横ばいじゃない、逆に、ちょっと下がるように計画はできているはずです。九七・二%に見ているわけですから。したがって、これはまあ下がると、こう見ている。これが今の御説明だというと、上がるということですから、当初の見込みと、もうすでに違ってきておる。それから消費者物価の問題についても、二・八%はどうもこれは維持できそうもない、こういう状況である。それに関連して、この今の在庫の問題については、製品在庫が、これだけ減ってきてですね、そうして生産者製品の在庫はふえている。これはまあ若干減るような傾向も出ましたけれども、大きな要素をなす機械がもうぐんとふえているわけですね。これが、私は、この生産が今フル運転、なかなかできない一つの大きな要素を持っているのじゃないか。それから原材料は、今まで生産が上がっているのに輸入が減っておるということは、これは在庫の食いつぶしをやってきている。したがって、原材料の在庫はずっと下向きの方向をとっておる。最近ようやくと、これが上向きにちょっとなりかけた、こういう状態だと思うのです。  でありますから、今後設備投資がなされ生産がもっと上がっていくということになれば、これは今おっしゃったように、三千万ドルくらい輸入がふえていくだろう、こういうことのようですから、輸出がふえるからバランスがとれるのだと、こうおつしゃるけれども、この原材料の底をついた状況からいくと、またこの上期から明るい方向にいくということになれば、これはやはり相当輸入というものが伴わなけりゃならないのじゃないか。そうすると、国際収支の赤字という問題が、これはまた出てくるのじゃないか、このように思うのです。その場合、今までの貿易管理制度からいえば、規制ができるのでありますけれども、今後これが自由化されていく場合に、この規制の措置というものは考えられないということになってくれば、これはやはり相当徹底した安定政策というものを、金融面においても何にしても、とっていかなければならないのじゃないか。このように思うのです。  ところが、一方金融は、公定歩合は下げているわけでありますから、きょうの、五億株以上の取引がなされるということで、株式にも非常に大きな影響が出てきている。私は、この問題、公定歩合の引き下げについては、国際金利へさや寄せすること自体について反対はいたしません。しかしながら、これはやはり、金融の実勢によって金利というものが動いていく、そうあるべきだ。で日銀総裁も言っているように、景気刺激要因として引き下げを行なうということは、金利の引き下げを行なうということはいけないのだと、こう言っておりますが、そのとおりだろうと思うのです。それが現実に、そういう心配はないのだと言われておるのにかかわらず、今日もうその傾向が出てきている。ということは、私は、経済の実勢は、先ほど言ったように、非常に横ばい傾向で、どんよりとした不況が横ばいでいく。それに対して、今財政面、金融面、これが政府が積極的なやはり景気刺激政策というものをとっているのじゃないか。これは相当やはり危険ではないかというふうに私は思うのです。  そういう点に対して、ひとつどのように判断されておるか。これは総理大臣にもひとつお答えいただきたいと思います。
  67. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) どうも議論が少し、こう、あなたの初めの御質問とは変わった方向へいっておるのじゃないかと思う。  それは、昭和三十八年度上期が横ばいで下期が上昇する。三十八年度の下期とこう言いますと、九月からのことであります。この情勢に対して、池田は秋を待たずして景気が上昇すると言っておるじゃないか、こういうことだから、これはタイミングの問題でございますね。九月からか六月からかあるいは四月からか。その問題の御質問ならば、今の大蔵大臣あるいは企画庁長官の分では、私は半分しか答えていないと思う。だからタイミングの問題、九月からか六月あるいは四月からかという問題について、お答えいたしましょう。  それは、昨年の今ごろ——まあ昨年の今ごろよりちょっと前、一昨年の暮れか去年の一月ごろ、私はこう言いました。昭和三十七年の十月には貿易収支は黒字になると、こう言っている。みんな、ここで、そんなになるものかと言われましたが、私は、その当時、十月までには絶対になると確信を持っておりました。しこうして、ずっと様子を見ておりますと、五月から黒字になります。だから、一般の人の観念から私は五、六カ月早い。早く見ております。また国民の力によって、そういうふうに早く出てきたわけであります。それだから、非常に何というか、輸出がふえて輸入が減ったために、国内金融は散布超過と同時に、政府の財政資金の散布超過と同時に、為替関係で非常にお金がゆるんできたわけです。一般の人の想像以上に早くゆるんで参った。したがって、昨年金利の引き下げをやったわけだ。だから貯蓄もふえて金融は非常にゆるんできた。たとえば、三十六年度から三十七年度の初めの状況と、三十七年の春から今までの状況から申しますと、政府の対民間収支では差し引き六千億違います。これがたいへん早まってきたわけであります。これが第一の原因。五、六カ月早まる第二の原因は、そういう金融情勢のもとに、日銀の政策がこれに当てはまって金利を下げると同時に、今までのように手形割引制限あるいは規制とか、あの窓口規制というものが変わって参りまして、大蔵大臣の御努力と日銀の協力によりまして、賢いオペという普通の今のやり方が正常化してきた。で、まあほんとうの意味の正常化ではございません。しかし、コールが五銭五厘くらいしたのが今二銭二、三厘になっておる。こういうことが非常に正常化。これがやっぱり金融のあり方についての違った措置であるのであります。そうしてまた、昨年の暮れのときにも私はそう考えておったんですが、十一月、十二月はちょっと下がりましたですよ、今の国民の消費が。しかし、一、二月は、これはところによって違いますが、二月は東京の百貨店の売り上げは一九%程度、前年に比べて。しかし、関西方面は二〇%こえる。これはやっぱり国民の消費が強くなってきた。それだけやっぱり金融その他が正常化してきた。そうして見通しが明るくなってきた。しかも輸出は予想以上に伸びております。輸入は、在庫の一、二月、三月は輸入の原料の補填のときでございますが、思ったほどいっておりません。三月におきましても、きのうまでの輸出入の信用状の分は、二月の状態よりもよくございましょう。二月は二十五、六日現在で四千万ドル余りの輸出信用状の超過でございました。今月は六千万ドルぐらいの超過になりませんか、私毎日見ておりますが。こういうような状況で、一般の人が考えておるよりも、経済界のほうが先にどんどん進んできたわけであります。  私はこの前、ここでなせ秋を待たずして上がると言ったかというと、私の多年の経験と勘、この勘が当たってきていると私は自信を持っているのでございます。だから、この三月には、この一月なんかの財界の人の見通しは、三月に株が底だ、こう言っておりました。これは一般の定評でございます。財界のくろと筋の。しかも財界のリーダー・シップの人が皆そう言っておりますが、あにはからんや、どうでございますか、三月は今お話のとおり、きのうは五億三千万株ですか、そのうちバイカイが一億ほどありますけれども、四億三千万といったら、日本始まって以来、まだだれも想像しておらなかった。少しよ過ぎるのじゃないかと思っております。行き過ぎじゃないかと思っております。しかし、そういう状況なんです。そういう状況でございまして、私は、大蔵大臣、企画庁長官の御説明もそのとおり。しかし、九月か六月か四月かという問題になりますと、私が申し上げたように、一般の人より経済界のほうが先に進んでいる。私は勘から、経験率から、そういうことを言ったのであります。まあ当たるも八卦当らぬも八卦と申しますが、私はこういう考えで、秋を待たずに景気は上昇する。しかも今後大蔵大臣が、この予算案の施行につきまして、あの有能な頭を働かしていかれれば、私は秋を待たずに景気はあれするということをここで申し上げて差しつかえないと思います。
  68. 北村暢

    北村暢君 時間がないのですが、今の池田総理から言わせれば、経済企画庁なんていうのは要らないので、もう廃業していいと思う。池田総理のほうの勘で処理していったほうがはるかにぴったりだろうと思う。それなりに私も、経済通であることだけは認めないわけじゃない、認める。しかしその場合に、経済企画庁のこの指数、これは私はどうもはや、今のお話だというと、企画庁はほんとうに要らないような感じがする。あなた、これを出してから、実際二カ月たたないうちに、これを修正しなければならない。予算がまだ通らないのですよ。通らないうちに、これを変えなければならないというのは、それほど企画庁というのは、科学性、指導性がないのですか。私はそういう意味において総理大臣を信用するということになると、企画庁のほうが信用できなくなってしまう。これは企画庁では、一体どういうふうに対処するのですか。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたように、大蔵大臣、企画庁長官のおっしゃることは、これは事実そのとおりでございます。しかしタイミングの問題につきましては、説明が半分だと、こう言っただけで、企画庁は要らんとは言っておりません。私の考え方は、全部企画庁の数字によっているのであります。あなたのお聞きになるのは、設備投資が三兆七千五百億で、減っているじゃないか。その内容を今度は企画庁長官からお聞きになったらよろしいのでございます。それは去年の初めころは、年平均四兆円をこえました、半期ごとにやりますと。しかし下期におきましては四兆円を割っております。しこうして今の状態としても四兆円を割っております。そうして企画庁のあれは、六月くらいまでは横ばいで、下期にずっといきますと、平均では八・一%の総生産の増となっておりますが、三十八年の下期ではこれは一〇%で、それ以上のことを予定しているのであります。年の全体は三兆七千五百億の設備投資でございますが、ことしの三、四月のときには三兆七千五百億よりもちょっと下回るかもしれませんが、今度下期になると、これは相当ふえてくる、こういう計算をしておると私は見ておるのであります。私は企画庁の計算をもとにして私の勘を言っているのであります。企画庁がなかったならば、私の勘も何も出てこないことになる。企画庁は絶対必要な役所であります。
  70. 北村暢

    北村暢君 詳しく、こまかく論議すれば、この指数について、私、実はやりたかったわけでございますけれども、時間がございませんのでできませんけれども、実際、生産指数についても、ものによって非常に違っておりますし、それからまた製品、原材料の在庫投資の問題についても、これも非常に従来と変わった形をとっております。設備投資が伸びていっているのに、在庫投資が減ってきている。そういうような点が違う点です。それから設備投資が伸びてきているというのは、一部確かにあるだろうと思うのです。それは石油化学とかその他の問題で伸びている点もあるが、総体的にいえば、設備投資は、やはり企画庁の見通しのとおり伸びないのじゃないか。これはやはり過剰生産になっているのですから、伸びないのじゃないか。日進月歩していくのだ、そうでなくても自由化に対応して伸びる、こういう見通しもあるのですが、なかなかそうはいかないのじゃないか。こういう点がいろいろあります。  しかしながら、きょうはもう時間が来ましたから私は終わりますけれども、いずれにしても、先ほど申しました経済の見通しとしては、私はやはり安定成長のほうへいくことはけっこうな話でありますけれども、今の国際金利さや寄せというような形で、景気刺激的な公定歩合の引き下げでない、金融面において刺激要因じゃないのだといったことが、現実にやはり何週間かたたないうちに、景気刺激要因として出てきている。これはやはり日本の経済の実態というものがそうなんです。私は、決して今総理大臣が言われたような、五億株以上のもう空前の取り引きというものが行なわれているということについては、経済の実勢に合った取り引きではない、このように思っております。したがって、きょうの日銀総裁の新聞記者団との談話発表等を見ましても、よほど慎重な態度で、しかも企画庁の見通しのとおりでいかなければいけないのだというようなことなんで、総理大臣の言う、秋を待たずしてというのは、感覚からいえば、半年ばかり早いようでございますが、あまり先走りをしないのが、日本の経済のためにいいのではないか、このように思います。これは意見になりますけれども、以上申し上げまして私の質問を終わりたいと思います。
  71. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 北村委員質疑は終了いたしました。  これにて休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  72. 木内四郎

    委員長木内四郎君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。郡祐一君。
  73. 郡祐一

    ○郡祐一君 総理大臣に、まずわが国外交の基本的立場について伺いたいと思いまするが、特に極東の平和の確保、なかんずく韓国との国交正常化に関しまして御所信を伺いたいと存じます。  わが国は、自由陣営の一員としての立場を堅持しておりまするために発展をいたしておりまするが、同時にこのことが世界の平和を確保しておるのでありまして、わが国の位置いたします極東というところには、依然として政治的にも、経済的にも、また軍事的にも、きわめて不安定な要素が多いと思うのであります。それは極東における東西対立の様相が深刻であり、勢力関係も流動的でありまするがために、東西のバランスはこの部分において不安定である。勢いそれぞれの立場から勢力範囲を拡大しようとする動きも当然起こってくるのであります。このような意味合いにおきまして、私はわが国における中立主義的風潮は、いかなる場合においてもきわめて警戒を要すると考えておるのであります。わが国が経済にも、国民生活にも、あるいは自衛体制におきましても安定をしている先進国でありまするがゆえに、極東の平和は保たれておると思いまするが、そのような意味におきまして、わが国の堅持する外交の基本的立場について、極東の情勢の判断とあわせて御所信を伺いたいのであります。  ことに、歴史的、地理的に深い関係にありまする韓国において政情が動揺を続けておりますることは、まことに憂慮すべきことでありまするが、どうか、総理がしばしば言われまするごとく、一時の現象にとらわれることなく、国交正常化に熱意を注いで、懸案を一括解決して、両国の永久の関係を誤らないために、特に努力を傾けられたいのであります。  日韓国交正常化につきましては、常に両国国民がいかに関心を持っているかという観点から対処されることが最も大切だと思いますが、このような考え方によりますると、わが国民の大多数は、いかに言う人がございましょうとも、大多数は正常化を希望しておる。韓国側においても政情のいかんにかかわらず、大多数の政治家も国民も正常化すべしという一点では、あの混乱の中においても国論は統一していると思われるのであります。日韓国交正常化に対する御所見を伺いたいのであります。  なお、アジア諸国との経済的協力ということは、これは日本の繁栄の道であり、平和の道でもありまするが、ビルマにつきまして経済技術協力協定の運びになりますことは喜ばしいことでありまするが、戦争の荒廃から苦心して立ち上がりましたわが国といたしまして、韓国についても、もちろん私は実情をよく把握してということは申すまでもありませんけれども、どうか積極的な態度で経済的に力を貸して安定をはかることとしていただきたいのであります。このような点を含めて、すなわち極東における日本の基本的な方針、それから日韓国交の正常化につきまして、経済的な協力の点も含めまして、この二点を伺いたいと思います。
  74. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 極東並びに東南アジアを含めましての東西両陣営の角逐はお話のとおりでございます。そういう状態にありまするがゆえに、ますますわが国の中立主義というものが現実に合わない。これは日本の置かれた立場、日本の力、そういう点からしまして、私は二年半前に日本における中立主義は非現実的だと申し上げた気持をますます強く感じているのであります。しかもまた、この日本の立場に対しまして、東南アジアの大多数は非常に共鳴し、そして日本と手をつないでいこうという国が多いということを申し上げておきたいと思います。  なお韓国に対しましては、しばしば申し上げるとおり、向こうの韓国が軍事政権から民主主義政権に移る場合にいろいろな困難の状況はわれわれもよく知らなければならない。しかし、こういう生みの悩みのときに一喜一憂して、そうして日本外交方針を右顧左陣する立場は絶対にとるべきではない。その意味におきまして、われわれは韓国の政情の安定を心から念願しながら日韓正常化に邁進いたしたいと考えております。
  75. 郡祐一

    ○郡祐一君 私は依然として今の国内におきまして、相手が軍事政権である限りは交渉の相手方として不適当だとか、すべきでないとかいう議論がございまするが、このような国内の問題、共産体制の国は申さば軍事政権であります。これらについては全く顧みて他を言いまして、韓国だけについてこのような相手の政権について云々します点について、総理大臣の御所信を伺いたいと思います。
  76. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般の衆議院の本会議で申し上げましたごとく、相手の国が軍事政権なりやいなやということを交渉の対象にするということはおかしな話だと思います。おかしな話だ。私は世界でそういう議論はあまり通らぬと思うのでありますが、どうも日本ではそういうことがよく言われております。共産圏におきましては、もとは軍事政権、そうしてまた自由主義国家のうちにでもそういう国は多いのであります。だから私は相手が軍事政権なるがゆえにこれを交渉の相手にすべからずということは、これは私は理屈に、外交の常識に合わないと思っておるわけです。しこうして、われわれが軍事政権であろうと民主主義政権であろうと、相手の政府国民の支持を受け、そうしてその交渉が成立した場合に、これを行使できるだけの力があることが必要条件でございます。形態のいかんを問うべきにあらずと考えております。
  77. 郡祐一

    ○郡祐一君 外交につきましては、今申しましたような意味合いで、何か国内を迷わすような考え方、たとえば原子力潜水艦につきましても、これが核兵器の持ち込みに結びつくというような考え方、どうもおかしい考え方があるのでありまするが、その点については、ただいまの御方針を伺いましても、はっきりした所信をお持ちでいらっしゃいまするから、外交の問題は一応この程度にいたしまして、次に経済、財政についての御所信を伺いたいと思います。  私は本日の与えられた時間で、こういうテーマで一連の御質問をいたしてみたいと思うのであります。経済の高度の成長発展を続けますのには、わが国の経済で考えてみるのに、いろいろ問題がございましょうが、ただいまどうしても大事だと思いますのは、健全な資金を必要量だけ供給するということだと思います。このような点を考えの中心にして、そのような見地から経済の見通しについての御所信、金融政策のあり方、資金蓄積の何と申しましても、一番の眼目であろうと思われます貯蓄の推進、外資の導入、また三十八年度予算の執行等について、以下伺いたいと思います。  まず第一に、わが国の経済の今後の見通しと倍増計画のあり方ということについて伺いたいのでありまするが、わが国の経済は景気調整策の目的が達成されまして、財政金融政策の適切な運用等によって経済の好転、成長が十分期待されると思うのでありまするが、今日大切なことは、午前にありましたようなことしの秋がどうなるかというようなことよりも、すなわち目前の動向ではなくて、長期にわたる経済の発展が確保され、国民生活の安定ができるかどうかという点にあると思うのであります。そのような観点から、今後の経済をどういう工合にごらんになるか、総理大臣の御所信を伺いたいわけであります。  また、経済の見通しに関連いたしまして、所得倍増計画についてお考えを伺いたいのであります。これは私は所得倍増についての計画というものは、決して日本の国は計画経済をとっておるのではありませんから、日本経済が今新しいスタートにあるのだというような意味合いで問題を前向きに考えたいと思うのであります。所得倍増が最終年度を目標として定めておるわけでありまするから、今日の段階で実績と比較すべき計画数字が存在するものではありませんけれども、何と申しましても二カ年を経過してみまして、現実の経済の動きは計画との間におのずからひずみがあります。また海外の情勢にいたしましても、経済情勢は予想しない変化もあったのでありまするから、計画に検討を加えるということは必要だと思います。また、私は所得倍増計画について、先ほども申しました資金の面で、過去のことを申すのじゃございません。これからは資金の面でこれを重要な要点として考える必要があるのじゃないだろうか。過ぎ去った経過をここで言おうとするのじゃございませんが、経過に対応してどのような手を打ったらよろしいか。たとえば設備投資に行き過ぎがあったということをよく申しますが、それが優秀な設備であれば、これは与えられた条件として、これを出発点として今後必要な手を打つべきだと思います。現在におきまする経済のあり方をいかに評価され、いかなる政策によって今後全体として経済の成長を円滑に前向きに進行させますか。このような点を経済の見通しについて、総理大臣から承りたいと思います。
  78. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今後の経済の見通しは、私は過去の実績から考えまして、いろいろの行き過ぎあるいは停滞はありましたが、順調に所得倍増の線を達成し得るようにいたしたい。またそういう措置が官民ともにできたと考えます。所得倍増というのは昭和二十四年を基準にしますかあるいは二十七年を基準にいたしますか、いずれにしても、近い二十七年を基準にいたしましても、所得倍増以上の実績を上げたのであります。また、私が主張いたしました三十五年度を基準にいたしましても、予定以上の七・二%でなしに九%以上にいっております。三十七年度がある程度停滞しておりまするが、これは自由主義経済のうちにおきましてはいろいろの波があるものでございます。全体から見まして私は順調にいっておる、長い目で見れば順調にいっておると思います。また今後もいき得ると考えているのでございます。  そこで、順調にいかす場合におきましては、今お話しのとおり、私は日本におきましては資金面の調整が非常に必要だ、波が打ちますということも、そのもとは資金面にあるのであります。資金面につきましては量の問題と、そして与えられた量を正常に適切に運用する問題、いわゆる金融市場の正常化、お金の量の問題とその量をいかにうまく運用するかという問題である。私は今後この両方が必要であると思います。で、一面におきましては、量の問題では貯蓄の奨励が必要でございましょうし、またそれによりまして金利の調整が必要でございましょう。また、その与えられた量をいかにうまく動かすか、融通するかという金融制度の問題が起こってくると思います。この点につきましては、新しい時代に即応して日銀あるいは大蔵省で今検討を加えておると思うのであります。  それから倍増計画につきましては、いろいろ議論がございまするが、私は先ほど申しましたように、この方針は進めていきたいと思います。ただ、過去の実績から申しまして、非常に行き過ぎた点等がございますから、今後の倍増計画のもとにおける運営の参考に、やはり過去を振り返って検討し、そうして行き過ぎの起こらないように、また停滞に陥らないように、今後の施策の参考として振り返って検討をしていく、そうして今後の施策の万全を期したいと考えております。
  79. 郡祐一

    ○郡祐一君 ただいま総理大臣から、金融正常化が経済の健全な成長に非常に重安な関連を持つというお話がございましたことは、まことにそのとおりだと思います。したがいまして、大蔵大臣から金融政策のあり方について伺いたいと思います。  金融環境から見ましても、ちょうど正常化を促進するのによい時期だと思います。おそらく今後逐次銀行のオーバー・ローンの是正にいたしましても、金利体系の正常化等の方策もとられることと思います。しかしながら、同時に国内金利をできるだけ国際水準にさや寄せするということは、こうして企業の国際競争力を強化するということは、一方では本格的自由化に対応する当然な必要事でありますけれども、やはり容易ならぬいろいろな問題があろうと思います。国内の金利水準が高いのは、何といっても資金需要が活発だからであります。資金需要が旺盛なのは、企業の自己資本の蓄積が少なくどうしても外部資本への依存度が高いからであります。この際、大事なことは、企業の自己資本を充実させる、そのためには、かつて制度上の対策もおとりになりましたけれども、減価償却について思い切った措置をおとりになるというようなことは、やはりどうしても必要なのではなかろうか、金融正常化は広く待望されているところでありますので、御所信を伺いたいのでございまするが、さらにこれに関連いたしまして、中小企業金融の疎通についての対策並びに御所見を承りたいと思います。
  80. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御承知のとおり長期安定的経済発展をはかっていくために、及び国際競争力をつけながら自由化に対応していくために、金融環境の整備、正常化が必要であるということは、そのとおりでございまして、昨年来、国際収支改善の対策とあわせながら、金融の正常化を行なって参ったわけでございます。去る十一月に公定歩合が引き下げられましたし、またこの間の三月十九日にも日銀政策委員会の決定を経まして公定歩合の一厘引き下げが行なわれました。そのほか去年の秋から買いオペレーションの制度を作りまして、これが運用の万全を期しておるわけでございます。現在の状態で申し上げますと、金利を国際水準にさや寄せをしなければならぬということにつきましては、一方的に政府が自衛的にこれを引き下げるということをいたしますと、金融が混乱をいたしまして、これから正常化をして参らなければならない金融機関に、逆な現象を及ぼすことがあると思いますので、政府はこれに対しては非常に慎重な態度をとりながら、金融各界との緊密な連絡協調のもとに、今日まで約半歳、御承知のとおり徐々に正常化されて参っておるわけでございます。金利を引き下げ得る環境を作る第一の問題としては、御指摘もございましたが、資金量がふえなければならないというので、税制改正等におきましても、預貯金に対する分離課税の一〇%を五%に下げるというようないろいろな措置を行なっておりますし、ごらんのとおり、昨年下期から現在、引き続いて預貯金は堅実に増勢を続けておるのでございます。  それからもう一つ、外資の問題につきましても、ホット・マネー的な、日本の資本市場を撹乱するようなものに対しては、強くチェックをするような方法をとっておりますが、長期安定的良質のものについては、これが導入を促進するような状態を作っておるわけでございます。それから税制上の問題として、午前にも御質問がございましたが、輸出振興というような問題について現行法がございますが、これらの問題を、新しくOECDに加盟し、ガット十一条国になり、IMFの八条国になるというような、対外的な要請にこたえまして、どのような方法で別な方法に切りかえていけるのか、どういう処置をすべきかという問題に対しては、各省で具体的な法案の立案を急いでおるわけでございます。  中小企業金融につきましては、もう申すまでもなく、国際競争力をつける、といっても、大企業、輸出企業というだけではなく、国内の均衡ある発展をはかって参らなければならないわけでございます。設備投資の過熱というような状態において、中小企業と大企業との間が幾らかアンバランスになっておったというような面もありますし、私は大企業そのもの、輸出企業そのもの、基幹産業そのものに、設備が一部において過剰投資があったといいますけれども、これはこれからの自由化に対応して考えると、私はそれほど大きな設備投資の過剰であったとは考えておりません。ちょうど第二段階、第三段階として、中小企業の設備の合理化、近代化に進まなければならないときに、国際収支改善対策ということでストップをかげられたという面も見られたのでございますので、中小企業基本法の制定を軸としまして、中小企業金融の円滑化、金利負担の低下、また近代化、合理化のための資金確保という面に対しては、あらゆる点から格段の配意をいたしておるわけでございます。公定歩合の引き上げが行なわれましたときにも、中小企業に対しての金利は上げないようにという配慮はいたしておりますし、今度コール・レート等が非常に下がりましたため、コールに回しておった地方銀行等も中小企業に対して大幅に融資をするということを具体的に協力を要請をいたしておりますので、政府が考えておる総合的な一連の中小企業対策の推進によりまして、中小企業の設備の近代化も合理化も行なわれていくという考えでございます。
  81. 郡祐一

    ○郡祐一君 ただいま大蔵大臣からお述べになりました、外資導入に一つの重点を置いておられます。そのとおりだと思います。日本の経済が成長してきた過去を振り返りますと、外国の資金というものを非常に巧みに活用した、したがいまして、これからの日本の経済のスタートにあたっては、長期に安定する外資を導入するということは、国内の資本の不足を補いまして、国際収支の変動に対処できるのでありますから、経済の成長のために、できる限り活用すべきだと思いますが、外資導入の一環としての外債発行について、積極的にその促進をおはかりになるお考えをお持ちだろうと思いますが、御所見を承ります。
  82. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 外貨債の発行につきましては、この国会に法律をお願いをいたしております。産投国債といたしまして六千万ドル、それから電電債が二千万ドル、東京都債が二千万ドル、計一億ドルをニューヨーク市場におきまして発行いたしたいということでございます。なお、産投外債につきましては、法律の改正を御審議願っておりましたが、国会の意思決定もいただきましたので、四月の初めから時期を見てこれが発行をいたしたいという考えでございます。なお西欧の西ドイツにおきまして、大阪府市債としてマルク債二千五百万ドルの発行を計画しております。合わせて計一億二千五百万ドルでございます。なおこのほか民間のものにつきまして、昨年一年で計五億四、五千万ドルの投資が行なわれておるという状態でございます。これから資本の自由化もおいおい進めて参るわけでございますので、民族産業の保護、民族資本と外資との調整等、あらゆる角度から検討しながら、良質長期安定的な外資の導入に対しては、積極的に門戸を開いて参るつもりであります。
  83. 郡祐一

    ○郡祐一君 外債につきまして、外国の起債市場の状況、好ましい状況にあるかどうか、主として米国について御説明願います。
  84. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 外債につきましては、昨年の半ばごろはそう簡単な情勢ではないというようにいわれておりました。また、アメリカがドル防衛というような政策を行なっておりますので、大量な外貨債の発行というものに対しては、むずかしい状態であるということが常識化されておるわけでございます。私は去る九月、十二月の三回の訪米によりまして、専門家の間で十分意見の交換をして参ったわけでございますが、今、国会にお願いをしております一億ドルのニューヨーク市場における外債の発行は、四期に分けて行なう予定でございますが、市場は非常によろしい。また日本に対する対外信用も日増しに高まっておりまして、これが年度内における消化は十分可能であるというふうに考えております。特にアメリカはドル防衛の見地に立っておりますが、日米経済閣僚会議のジロン財務長官の冒頭発言におきましても、アメリカはドル防衛をいたしてはおりますが、日本の再建のためにニューヨーク市場で発行されるような国債及び政府保証債等に関しましては、アメリカ政府もこれを歓迎し、できるだけの協力を惜しまないという発言があったとおりでございまして、アメリカ市場においても日本の外貨債発行に対しては非常に好意的であり、これを扱わしてほしいというような人たちも、一年前、二年前に比べて急速に状態が変わっておるというような状態でございます。特にキューバ問題以後は、日本に対する関心が非常に大きく、ことしの一月、二月、三月——第四四半期に発行を予定いたしておりました開銀債等は、当初千万、ドルないし千二百五十万ドルの消化ができればということでございましたが、発行価格も前回よりも非常に優位に変更されましたし、特に千万トルプラスをして二千二百五十万ドル全額消化ができておるというような状態で御承知をいただければ幸いだと存じます。
  85. 郡祐一

    ○郡祐一君 三十八年度の会計年度をいよいよ迎えるのでありまするが、この国会においてもしばしば政府当局から、この三十八年度予算が経済なり国民生活に及ぼす影響についての御説明をいただき、政府の財貨、サービスの購入は、どの程度経済の成長に寄与するかとか、充実した社会資本の民間資本との均衡というようなことを伺ったのでありまするが、いよいよこれを執行して参るにあたって、特に大蔵大臣として重点を置かれまして留意されたい点について御説明をいただきたいと思います。
  86. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 午前にも申し上げましたとおり、予算は成立の過程において活発な議論が行なわれますが、これが執行ということになりますと、機関まかせというようなことで、地域的にも、また年度間を通じ、各月別にも、民間投資と競合するような時期に財政投資が行なわれたり、いろいろな弊害もあると思います。また二兆八千五百億で、一兆一千九十七億というような大きな財政投資というものが、民間投資とバランスをとって、総合調整を行ないながら合理的に投資をされるということになりますと、これが二〇%も三〇%も効率投資も可能だと思いますし、また物価その他についても調整機能を十分果たせると考えておりますので、これが執行に対しては、今までのようなことを考え、四月一日から昭和三十八年度、三月三十一日の年度末までにどのようにして民間資金との総合調整機能を発揮していくかというような問題も十分検討しながら、効率投資を続けて参りたい、このように考えます。
  87. 郡祐一

    ○郡祐一君 次に、私は地方自治というもののあり方についてのお尋ねをしたいと思います。  現に地方選挙が行なわれているのであり、この選挙におきまする大事な意義というのは、地方自治という意義が、有権者である住民に正しく理解されるかどうかということであろうと思います。したがいまして、地方自治のあり方について伺いたいのでありまするが、地方選挙というものは、申すまでもなく自治体の選挙である。そういたしますると、地方自治という、住民の責任において行なう民主政治というものが理解されなければ、地方選挙というものは私は実は意味がないのだと思う。ただ国会を小さくしたような議会があったり、執行機関があったりする、それが地方自治の意味じゃないのだと、そうすると地方自治がなぜ必要で、地方選挙がなぜあるのかということを住民に理解してもらわなければいけない。そこで、申すまでもないことでありまするけれども、地方公共団体というものは、国家を前提とした団体であります。したがって、一方では国の行政権に独立した存在でありながら、大事なことは国政と地方自治というものは緊密に調和しなければいけないということであります。これは憲法で、国は国民の福祉を保障するというようなことを書いてありますが、あれは国とあるのは、当然地方団体が入って読まれなければ意味をなさない。すなわち国民の福祉というものは、国と地方とが、正しい分担と協力をしてこれを達成するのだ、こういうことだと思います。したがいまして、第一にまずお尋ねしたいことは、国家全体の中における地方団体のあり方というものをどのように考えたらよろしいか、言いかえれば、国家と地方団体との基本的関係というものはどのようなものであるかということについての御所見であります。また、憲法にも「地方自治の本旨」というようなことを申しております。地方団体に自主性、自律性がある、これはそのとおりであります。けれども、実は私は地方自治というものの意味というのは、自治の民主的実践が正しくあるかどうか。言葉をかえてみますならば、自治体を構成いたしまする個々人が、創意と自由と責任を重んずる住民である、こういうことにいたしまして自治をやっていく。総理が申されまする、総理の期待される人つくりという、その人として熱意のある住民が存在し、実践するので初めて自治は生きてくる。そうでなければ、あのような膨大な自治というものがある意味が、私は生きてこないと思います。したがいまして、第二点としてお尋ねいたしたいことは、このように自治の基盤というものは人間形成にあり、民主的な生活環境の育成にある、そうでありまするならば、このような観点から、自治体というものは住民の人つくりの場であり、自治体と住民税とを結びつけるのは、むしろ郷土愛というような精神的な面なんだと、そのような意味合いで私は地方自治の本旨という意味を理解したいと思うのでありますが、これを発展させることが今日の急務であり、また地方選挙においても非常に大事な点だと思うのであります。そのような意味合いで国家と地方自治体との基本的関係ということ、地方自治の本旨ということ、この二点について総理大臣から承りたいと思います。
  88. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 民主主義の基でございまする地方自治体の発展は、これはもう絶対必要なことであります。そこで、国と地方自治体との関係でございまするが、これは私は地方自治体というものが国を離れ、また国と対立して存在すべきものではございません。国と対立すべきものではない、国を離れてはない。両者は一体密接不可分、しかも自治の精神を尊重しながら密接な協力関係、共同関係が必要であると考えるのであります。私はこういう意味において国と自治体が直結することが望ましいことと思っております。また、自治体の発展につきましては、そのもとはやはり郷土愛、これがもとでございます。そこに自治の発展もあるわけであります。自治のまた妙味もある、私は自治体の発展につきましては、その構成員たる個々の方方が自分の郷土、その自治を守る、こういうことであると考えております。
  89. 郡祐一

    ○郡祐一君 さらに地方自治に関連いたしまして、当面する問題として伺いたいことは、私は広域行政というものと地方自治との調和だと思います。広域行政というものの正確な把握というものがございませんと、地方自治というものの混乱が起こってくると思います。現に広域行政の要請というものは、かなり強いものであります。現に首都圏その他広域圏の行政について必要な措置がとられておりまするが、リージョナリズムの傾向というものは、国の経済なり交通なり文化なり、あらゆる面の発展に伴って切実になって参りました。これはしなけりゃいかぬことであります。したがいまして、そういたしまするとすぐ地方団体の区域を越えて行なわなければならない行政の必要が出て参るから、そうすると地方団体の区域を変えなければいかぬだろうかという議論が起こってくると思います。ここで私は広域行政のあり方というのが、そうなりますると現在の首都圏でありますとか、あるいは近畿圏というようなことで考えましたり、後進地域の開発として考えられるよりももっと強力な方式が必要となってくるのじゃないだろうかということを考えるのであります。ところが、強力な方式ということは、直ちに道州制論のような、自治体そのものに手を加えるということになるのではなくて、私は、国と地方団体とが対等の立場で参加する共同処理の方式というものがあるのじゃないだろうか、すなわち地方団体の区域は今のままにしておいて、しかし河川の関係であるとか、いろいろな関係から広域行政を必要とする行政がある、それは国と地方とが共同して対等の立場で——この点が大事だと思うのですが——対等の立場で処理するという方式があるのではないかと思うのであります。そのようにいたしまして、一方では広域行政の要請を満たしながら地方団体の自主性を生かしていくという考え方をとるべきものではないかと思います。この点について政府にお考えがあれば伺いたいのでありまするし、しかし、この点をこまかくこの際考えていくひまもありませんから、その点を多く申すつもりはございませんが、ただ私は、今の地方自治を見ましても、必要なことは、地方団体が小さい自分の立場にのみ固執してものを考え、固執してものを判断しないで、もっと広くものを考えて、したがいまして私は、この機会に広域行政に対する諸般の需要というものは、決して地方自治の重要性を減ずるものではないということをはっきりさせるべきだと思いますが、私自身が地方の自治体の模様などを見ましても、この点でむしろ自治体なり、地方の住民というものは十分自信を持っていないような感じをいたすのであります。むしろ行政が広域になるにつれて、住民の福祉のためには行き届いた地方自治が必要になってくるのだ、こういう工合に考えるのでありまするが、広域行政と地方自治の調和というものをいかにはかろうとされますか。また地方自治の将来をいかに展望しておられまするか、御所信を伺いたいと思います。
  90. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題は古くから議論されておる問題でございます。郡委員のお考え、まことに経験のおありの方で傾聴すべき点が多々あると考えます。ただ、御承知のとおりただいま臨時行政制度調査会におきましてこの問題につきましても検討中でございます。私は今お述べになりました郡委員意見が、たぶん向うにも反映して、よりいい案ができることを期待し、また、われわれもあの案を見まして判断する場合におきましては、いろんな御意見の点その他も考えまして善処いたしたいと考えます。
  91. 郡祐一

    ○郡祐一君 それぞれの機関で御検討に相なっておりまする解決が、ひとつ根本的な解決に達しまするよう私も希望いたすのでありますが、このような意味合いで、自治大臣が用意しておられる案に地方行政連絡会議という構想がおありのようであります。国及び地方団体を通じて広域にわたる行政の総合的な実施なり処理を促進いたしまして、そうして、地方自治を広域的な運営に向かわしめるようなこの御意図は、まことにけっこうだと思います。しかし、この考え方、必ずしも私は地方行政連絡会議という構想、それにこだわって言っているのじゃございません。ただ、このような会議でやっていく形というものが、はたしてどのような効果を上げるものであろうか。戦時中あの時局の強力な要請を背景にしました地方行政協議会でさえ、なかなか期待どおりの効果は上げ得られませんでした。したがいまして、私はこの案がどうかと申しますこれよりも、こういうような形態でもして当面広域行政と地方自治の調和をしようとする自治大臣のお考え方はよくわかるのであります。これについての御所見なり、どの程度のことが期待できるという御判断をお持ちになっておりますか、御所見を伺いたいと思います。
  92. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 社会の進展に伴いまして広域行政が必要となってきたということについては、ただいまおっしゃいましたとおりでございます。また、その処理の方法につきましても、ただいま総理大臣から御答弁申し上げましたように、地方の自治を生かしつつ国と地方とが一体になってやっていく部面であるということは、これも疑いのないところでありますので、そこで、しからばどういう方法が一番いいのであるか。郡委員のおっしゃいましたように、府県制を解体して道州制にする必要はないじゃないか、府県制のままに置いて広域行政を行なうためのいい方法を発展させるのがいいじゃないか、こういうお話でございます。そこでいろいろ研究してみた結果、府県制を現在のままに置きまして、しかも広域行政を円滑に能率的にやるためにはどうしたらいいのか。それにはそのブロックをなす一つ関係府県におきまして、各府県の知事あるいは政府の出先機関等の自治体に関係ある、あるいはまたその事業に関係のある長が一堂に集まりまして、そうして問題ごとに連絡をし協議をする形態というものが一番能率的であり、また地方自治の本旨にも反せず、しかも中央の意見も十分に反映し、地方の希望もまた十分に反映する、こういうことにおいて一番いいのじゃないかということが地方連絡会議を考えておる最大の理由であります。したがいまして、その効果というものは将来の問題に属するのでありますから、今ここで断言することはできませんが、少なくとも国の出先機関として責任を持っておる人々が参加するのでありますから、一々ひまをつぶして、あるいは金をかけまして東京に来て一々相談をするという必要もございませんし、少なくとも行政が簡素化され、能率化されるということは、私は十分期待できる。また、地方自治団体の意思もその場において十分に論議することができる、こういう効果を期待しておるわけでございます。
  93. 郡祐一

    ○郡祐一君 次に、ただいまちょうど地方選挙が行なわれておりますが、ことに地方選挙で痛感しますことは、狭い区域の選挙でありまするから、そのしこりと申しまするか、その影響というものはかなり強く、その後の地方自治体の政治なり行政に響いて参るのでございます。したがいまして、どこまでもフェアなオープンな選挙という毛のが基本になって参るのでございまするが、現在の地方選挙の模様について、経過中のものについて、その状況を伺おうとは思いませんが、しかしながら、これについて現在推進しておられる公明選挙についての御所信、御確信というものを承らしていただきたいと思います。
  94. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 御承知のとおり民主主義の基盤をなすものであります。スポーツにスポーツマン・シップがあるごとく、政治にステーツマン・シップがなければ成り立たないわけであります。そういう意味から申しますと、選挙というものは、すなわち君子の争いであり、また政策の争いであり、ステーツマン・シップの争いである。それが選挙後においてしこりを残す、あるいは党派的な派閥にこだわる、そういうようなことはできるだけ避けなければならない。こういうふうに考えるのであります。選挙の最も大切なことは、申すまでもなく選挙の公明化であります。そのために自治省といたしましては、公明選挙の推進のために全力をあげております。それからまた選挙取り締まりに対する警察といたしましては、いやしくも悪質なる選挙違反、すなわち民主主義の根本を毒するような、そういう悪質なものについては、選挙中といえども取り締まる。そうでないものについては十分に選挙の本旨というものを徹底さして、そして、あるいは警告を発し、その警告に従わない者は検挙するといったような二段がまえの方式で現在地方選挙に臨む態勢をとっておるわけであります。
  95. 郡祐一

    ○郡祐一君 最後に、経済企画庁長官に消費者物価についての若干の点をお伺いいたしたいと思います。  あらゆる機会を通じてやはり消費者物価というものは国民生活に敏感に響いておりまするから、実態よりもむしろその動きというものが非常に影響が大きいのであります。したがいまして消費者物価につきましては、私は早目に対策を講じて、早目に対策を講ずることによって世上の不安を解消し得るのでありまするが、特に公共料金については、各種のサービス料金の値上げに刺激的な役割を演じがちのものであります。したがいまして、公共料金について従来も抑制の方針をとられたことでありますけれども、この点については、近い将来についてどのような見通しを持っておられるでしょうか。公共料金は抑制方針といたしましても、ある段階に参りますると引き上げざるを得ないような傾向のあるものであります。したがいまして、十分なる御用意を願いたいと思うのであります。また、いわゆる便乗値上げ、一つ一つの例について申すつもりはございませんけれども、いわゆる便乗値上げというものが、国民に何かまた上がった、また上がったという感じを持たせがちのものであります。したがいまして、便乗値上げについては特に抑制すべきものだと思います。私は全体がバランスのとれた動きをすることを、この際とやかく言うつもりではございませんが、特に近時の消費者物価上昇の大部分の原因となると考えられまする生鮮食料品の問題、これにつきましては、私はやがて落ちついた状態がくるものだと、生鮮食料品については考えております。しかしながら、とにかく生鮮食料品が値上がりしたこの理由なり、これに対処される措置、ことにその流通機構の改善等について、この際国民に安心を与えるように、御所見を伺いたいと思うのであります。  なおあわせて、最近の賃金の上昇率と生産性の上昇率との状況、したがって大企業の賃上げが中小企業に波及し、ひいて消費者物価に影響するというような状況も見られると思いまするが、これに対する所見と対策を伺いたいと思います。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 経済の各分野におきまして、大体概括的にはあまり大きな誤まりのない政策の遂行が行なわれておるだろうと思いますが、ここしばらくの間、消費者物価につきましては、ただいま郡委員指摘のような現象が起こっておりまして、これが国民生活にかなりの不安を与えておるということは確かであると思います。その主たる原因は、ただいま御指摘のとおり生鮮食料品でございます。この点は一月におきましても二月におきましても、消費者物価の値上がりのうち九〇何%生鮮食料品が占めておりますことからでも明らかであります。その中で、多少こまかいことになりまして恐縮でございますけれども、魚につきましては一月にかなりの高騰が見られましたが、二月には反落をいたしております。したがって、生鮮食料品の中でも、野菜、果実について問題の主たる部分があるというふうに思われます。この点は作付反別で見ますと、一年前に比べまして一割ないし三割くらいの反別の増があるということは事実のようであります。したがって、やはり一つには、非常に不利な自然的な条件が重なったということを申し上げざるを得ないと思いますけれども、他方で、しかし国民所得の増大に従いまして、生鮮食料品は本来需給の弾力性は決して大きくないものとは思いますが、気候の変化あるいは需要量の若干の増加というものは当然でございますし、ほうっておくならば、供給のほうはどちらかといえば反別の減少あるいは消費地から生産地がだんだんと遠くなっていくといったようなことから、供給面では困難が少しずつふえていく。こういうことでございますから、数年という長期をとりますれば、生鮮食料品の値段が多少ずつ上がっていくことは、これはやむを得ないと思いますし、また生産者の側から考えますと、それなりに意味のあることだと思います。ただ、今回のような場合を判断いたしますと、やはり基本的には生産者に対して最低限度の何かの形での安心感を与えるということが必要であるということを痛感いたすわけでございます。すなわち、従来相当な値上がりがあり、その結果非常な生産をして、その裏で豊作貧乏というようなことが常に繰り返されておるわけでございますから、生産者の側に、そのような意味での最低の何かの安心感を与える。つまり需給の安定をはかるということが、やはり一番の基本であると考えておるのであります。ただいま関係省と具体的に何をなすべきかを検討いたしておるわけでございますが、生産者の側でも、あるいは関係の都道府県の中でも、何か自衛策を講じなければならないというような動きはかなりございます。お互いに資金を積み立てることによって、非常に価格が下がりますときに最低限度の共助、互助措置をやろうというような動きが見られるわけでございます。他方で、農林省では三十八年度の予算で、こういうものの主産地形成ということを考えておられるわけでございますから、何か二つのことを結びまして、そういう生産者なり当該都道府県なり、せっかく芽ばえておるところのそういうきざしを、国としても何かの意味で手助けをする。これは価格補償とかという意味では決してございませんが、そういう共助的な動きを何かの形で支援をするということは、需給安定、ことに供給の安定化に寄与するところが多いのではないか、私どもとしては、今そういうことを考えつつございまして、不日できれば結論を出したいと考えておるわけでございます。これは長期的に見ますと、どうしても需給の安定ということは必要であると考えるからでございます。なお、この一月、二月に起こりました生鮮食料品の非常に大きな動きというものは、昭和九年から十一年ごろ、戦前を見ますと、十二月から四月ぐらいまでの生鮮食料品の値上げのカーブは常に非常に鋭角的でございまして、戦後になりまして、いろいろ科学的な栽培方法などが出ましてから、そういうピークというものがかなりやわらかな丘のようなものになっておったわけでございますが、ことしはそれが自然的な要因で破れたということであったろうと考えます。しかし、いずれにしても、現在に関する限りは峠は見えた。この二、三週間の間に、ものによっては卸売価格が三分の一ぐらいになったものもあったりいたしまして、一番むずかしいところは越えたという印象は持っておりますけれども、こういう経験にかんがみまして、これから将来の需給の安定ということを考えるべき必要がある、そういうことを痛感いたしております。この問題を取り去りますと、あと、現在消費者物価であまり生活を脅かすような要素はございませんで、せいぜい申せば光熱費あるいは教養費等の雑費でございますが、これはそんなに大きな要因になるまいというふうに大観せられますので、ただいまの問題の処置がつきますと、昭和三十八年度を通じまして、消費者物価が従来のように大きな動きを示すということは経済全体の趨勢から見てもなくて済むのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  公共料金につきましては、昨年ある程度の手直しをいたしました。これは、資本費の負担等々から考えまして理由があると思われましたものについて最小限にいたしたわけでございます。そこで、ただいま出ております問題は、たとえば、公営企業でありますところの大都市のバスでありますとか、あるいはビール等の酒類、また、ふろ、公衆浴場でございます。ふろ代なんというものが問題として出かかっておるわけでございますけれども、生鮮食料品等を理由として毎月消費物価が幾らかでも上がっていくと、国民にとってそういう若干の不安があるというようなときに、理由はともあれ、そういう際に公共料金またはそれに類するものを動かすということは、どうも不適当なように考えておるわけでございます。バスにいたしましても、あるいはビールなどにいたしましても、今どうかしなければ直ちに問題が起こるというような種類のものではないように思うわけでございます。公衆浴場につきましては、東京都を初め、各地の調査が済んでおりませんので、何とも申しかねるわけでございます。まあ企業者が零細であるということがバス、ビールとは異なっておるかもしれないと思いますが、これはもう少し調査が済んでみませんとよくわからないことでございます。概括して申しまして、公共料金というものをこの際動かすということは、私は不適当のように考えておりますので、関係者の方々にはそういう意味でごしんぼう願いたい、こう思っておるわけでございます。  なお、中小企業の賃金と大企業の賃金との格差が縮まっておりますことは、ただいま御指摘のとおりでありますし、他方で、中小企業の生産性は向上しておりますけれども、大企業の生産性の向上には及ばない。生産性の格差というものは縮まっておらないというのがただいままでの現状でありますから、この点は、これから先設備の更新というものが中小企業に及んでくる、それによって生産性が上がり、大企業につれ上がって参りました賃金の負担というものを吸収していく、そういうような形で二重構造が直っていくということが一番望ましい姿だと思っております。ただいまのところ、中小の給与が上がりましたために、それが消費者物価に無関係とは申し上げかねますけれども、それが大きな要因で消費者物価が非常に上がってきたということは、サービス料金には現象があるわけでございますが、これは、サービスをする側のことも考えますと、サービス料金の上がりというものは、便乗的なものでない限りは、認めていってもいいのじゃないかという感じがいたすわけでございます。
  97. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 郡委員質疑は終了いたしました。     —————————————
  98. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、小平芳平君。
  99. 小平芳平

    ○小平芳平君 きょう、朝から、北村委員、郡委員質問の中に、所得倍増計画あるいは経済成長率というような問題が出てきたわけであります。私は、昭和三十八年度予算が成立することによって、国民生活にどのような影響を受けるかという点を中心にいたしまして、所得倍増計画その他の点について初めにお尋ねしたいと思います。  初めに、経済成長の見通しについてですが、一月十八日の閣議決定の実質六%、名目八%というこれが今日の時点においてもそう大きな変動はないとお考えかどうか、お尋ねしたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまのところ、変更する必要はない、大体そういうふうに行くのではないかという感じを持っておるわけでございます。  なお、お許しをいただきまして、午前中に北村委員に私がお答えいたしました分をあるいは多少誤解をしてお受け取りをいただいたのではないかと思いますのは、設備投資の額を昨年末予想いたしましたその数字を動かすのではないかというふうな意味におとりになったのではないかと思いますが、そういうことはございませんので、昨年末立てました見通しでよろしいのではないか、全般的にそう考えております。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理大臣にお伺いをしたいのですが、経済成長率というものを何%何%といって、この数年来のように、一〇数%の成長をしたかと思うと、あくる年には不況に見舞われるとか、そういうように成長率にあまりにもこだわるような経済政策というものは、国民生活にとっては相当迷惑な部面が出てくるのではないか、このように考えますが、いかがでしょうか。
  102. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 成長率というものは、見通し、予想でございまして、だれもこだわってはおりません。また、こだわるようなことはできないのが自由主義経済でございます。それを九%と私ども申しましても、名目で一七、八%行く、これはこだわっていない証拠でございます。決してこだわってはおりません。これは、午前中にもありましたOECD二十カ国も五%といわれております。すでに五%をこえた国もありますし、それの半分にも及ばぬ国もあります。そういう一応の見通しでございます。OECDの五%のことは、こだわっているのではないのでございます。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 所得倍増計画というものを政策の基本として打ち出されて、しかも、年間成長率平均何%というものを目標にされて、これを政策の基本としているのでありますから、全然こだわらないで、ただ見ていて、ああ今年は幾らだ、来年は幾らだと言っているのではないだろうと思うのです。いずれにしても、経済成長に対する考え方がそう大きく変動することは困る。できることならば、安定した成長、成長していく過程で安定成長を望みたい、こういう声が非常に強いのではないかと思いますが、いかがですか。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政策は所得倍増政策でございます。そうして、その間に七・二%というのは、その政策を年平均すればこうなるということだけなのであります。もう一つ、しいて言えば、年平均すれば七・二%だが、今の状態では九%程度でおさまることが願わしい、こういうことになるわけであります。あくまで政策と申しましても、これは、国民生活の向上、福祉国家というのが目的なわけであります。所得倍増計画というものは、そのための手段でございます。しこうして、これが政策でございます。七・二%というのは、算術で出しただけのものでございます。ただ、あの七・二%の算術が、雇用関係その他からいって、また、過去の成長の情勢からいって、当初の三年間ぐらいは九%程度になるのが望ましいと言ったので、これは強い計画とかなんとかというようなものではございません。見通しでございます。これのために、あるいは成長だとか、あるいは不景気だとか、こう言われますが、イギリスや何かのように二%ぐらいでよろしいでございましょうか、日本の状態からいって。私は、二%とか二・五%でそしてあれだけ持てる国が失業のストが起こるようなことよりも、やはり九%が少しそれより以上になっても、十四、五パーセントに事実上なりましたが、それでもなお日本の状態が景気、不景気がありましてもいいのではないかと考えております。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 景気、不景気のあるのはもちろんやむを得ませんし、また、景気、不景気があっても、成長したほうがいいのは当然でありますが、できることなら安定成長が望ましいということは言えませんですか。
  106. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 安定成長が望ましいことは、だれも考えていることであります。しかし、安定成長とはどういうことを言うのか。これは年度限りで言うのか、あるいは四半期ごとに言うのか、三年ぐらい一緒にして言うのか、この問題でございます。そこで、顧みて、朝鮮事変の起こったころの状態はさておきまして、昭和二十七年から八年、九年、三十年、三十一年、三十二年とずっと見て参りますと、今までの十年余りの日本の状態が、人に言わせれば、今の安定成長だったか、あるいは不安定成長だったかというと、二十八年のときには、これは非常に行き過ぎた。二十九年は、少し押えたが、相当行った。長い目で見れば、これが安定成長と言える。一年間ずつ、あるいは二年間ずつで見るか、三年、五年で見るかという問題でございます。これは統制経済ならばできましょうけれども、自由主義経済の中では、ことしはこうだったが、翌年は少し落ちた、そしてその次は上がった、こういうことも安定成長だと私は言えると思います。だから、自由主義経済のもとで安定成長とは何ぞや、口ではよろしゅうございますが、実際問題としてなかなかむずかしいのでございます。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 半年ごとあるいは一年ごとと言われますけれども、先ほど来申し上げていることは、前の年にかりに一四%成長した、あくる年には五%だというふうな、そういう大きな波をなるべく立てないようにやっていただきたい、そういうことを申し上げているのです。  それから、所得倍増計画そのものがそうこまかい計画経済ではありませんから、基準年次と、それから目標をきめていろいろなまた計画、構想を立てられているわけですが、必要な場合には再検討するであろうともなっているわけですが、この点については、今、再検討する時期であるというふうにお考えですか。
  108. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 倍増計画を再検討する気持はございません。ただ、倍増計画のずっと過去の実績を見まして、どういう点につきましていわゆる高度の成長をした、どういう点が高度の成長の原因か、それがまた非常に低くなったのはどういうところから出てくるかといった過去の実績を究明いたしまして、今後の倍増計画の途中において遺憾なきを期する、こういうことを考えておるのであります。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 経済企画庁で検討を始めているという点は、そういう点ですか。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) さようでございます。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、消費者物価についてでありますが、最初の見通しは二・八%程度の上昇に見込まれておられますが、先ほど郡委員の御質問に対してお答えがあったのですが、新聞の伝えるところによれば、宮澤長官は三%に押えたいというような談話が新聞には載ったりしておりますが、そういう点についてはどうでしょうか、消費者物価の値上がりも最初の見込みどおりでよろしいかどうか。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 最初の見込みどおり、政策目標としてやっていきたいと思っているわけでございます。一月、二月の消費者物価の動きが、先ほど申し上げましたような事情によるものでございましたから、これは五月ごろになりますと当然反落すべき要素のあるものだと考えておりますので、見通しを変える必要はないというふうに考えております。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、三%というようなことはお考えになっていないのですか。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、二・八というのはどういう根拠であるかというお尋ねがあったときに申し上げたことであったと思いますが、特に〇・八というようなことが非常に厳密な意味を持っているものではございませんのでというふうに申し上げたことをそのように表現されたのかと思います。それは二・八ということで行きたいと思っているわけでございます。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官お尋ねしますが、最近の一月、二月の物価の動向から見て、それは二・八%ということは非常にむずかしい状態ではありませんか。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、ただいまお答えを申し上げかけたわけでございましたが、そういう特殊な事情によって一月、二月の消費者物価が動いておりますわけで、五月ごろになりますと、経験的にはこれは反落をいたすべきものだと考えているわけでございます。したがって、四月にスタートいたしますときの消費者物価の高さというものは、昨年考えておりましたものよりも多少高いところから出るであろう。これまではそう考えざるを得ませんけれども、その過去の反落を考えて参りますと、それなるがゆえに二・八というのがむずかしくなるのではないかということはないと考えるわけであります。
  117. 小平芳平

    ○小平芳平君 農林大臣にお尋ねしますが、先ほど生鮮食料品の値上がりの点について企画庁長官からいろいろお話があったのです。そのことについて企画庁長官にはダブリますからお尋ねいたしませんが、農林大臣としては、生鮮食料品の値上がりの対策についてどのような対策をおやりになるつもりかお尋ねしたい。
  118. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) これは何と申しましても、需給の安定をはかることがその眼目であると思うのでありますが、御承知のとおりのような作物であります。相当本年の二月、三月の供給野菜につきましても、作付は相当に増加をしたのでありますが、早魃の関係でその収量が少なかったために、供給が十分に思わしくいっておらぬというようなことで値上がりがあったわけであります。しかし、先年に比べますと、おおむねその入荷も、需給のバランスもそれほど悪くはないのでありますが、ちょうどもう三月というようなときになりますと、端境期になります関係上、値上がりをするものも出てくるわけであります。なかなかこの需給の安定をはかるということは、工業生産のようにうまく参りません。作付の増加を進める、あるいはまた大市場に、東京市場に供給をするような野菜の生産指定の地域を設けて供給をしようということもやっておりますが、これまたやはり天候に支配される関係から、どうも十分に思うとおりにいかないわけであります。何とかこれはいたさなければならぬというので、今いろいろと検討をいたしておるわけでありますが、要するに、問題は需給の問題であります。うんとできたときに、それでは値が下がる、それをどういうふうにして安心をして栽培をさすかというようなことも重要な問題であろうと思うのでありますが、何とかできるだけのことはひとつ考えたい、こう思っておる次第であります。
  119. 小平芳平

    ○小平芳平君 農林大臣のお答えは、それは需給のバランスの問題であって、何とかできるだけ考えたいと思うというだけなんですが、もう少し価格安定なら価格安定のために、あるいは流通機構——卸売市場の改革なともずいぶん農林省として一時検討なさったことがあったようですが、そういうような点について何らかひとつ進んだ対策はございませんか。
  120. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) これは御承知のように、三十八年度予算にもそれぞれ計上をいたして、その対策をとることにいたしておりますが、それは魚につきましては、生産地における冷蔵庫を建設するとともに、消費地におきましても大冷蔵庫を建設しよう。それからまた輸送の面におきましても、冷蔵貨車を二百五、六十両はひとつさらに作ろう。それからまた市場につきましては、昨年は大阪の東部市場を中心にいたしましてその設備を拡充いたしたのでありますが、本年は築地の市場に重点を置きまして、その敷地の拡張をいたします。それからまた設備をさらに充実いたすことにしております。さらに進みましては、取引の内容につきまして、中央卸売市場審議会と連絡をとりつつ、せりの方法その他の問題についても改善を加えようというのでやっておるわけであります。小売につきましては、御承知のとおりに、昨年来、標準品小売店を東京都におきましては設けまして、現在では千五、六百程度の標準品小売店を設けておりますが、そういうことを一面においてはやり、さらには公認小売市場を建設しよう。これは、住宅公団の設けておる団地の付近にそういう公認の小売市場を設けるというので、これは建設をいたしておりまして、本年の九月ごろには第一号が落成をするのではないかと考えております。できるだけの流通機構の改善につきましては、それぞれ手を打っておるわけでありますが、ただいまの野菜の問題につきまして、価格安定の方面からは、御承知の三十七年度におきましては、タマネギについて、そのものずばりとは参りませんが、ある一定の限度以下に値が下がった場合におきましては、市場からのバック・ペイ——バック・ペイでは言い過ぎでありますが、市場から一定の歩戻しがあるわけでありますが、そういうものを積み立てておいて、ある一定の限度以下に値が下がった場合には、そういうものを出して生産農家の手取りが悪くなるということのないようにしようという制度を三十七年度から設けております。リンゴにつきましても、これは三十八年度から冷蔵庫を設けて、そうして出荷の調整をやろうというようなことも、予算的に計上を三十八年度はいたしておるようなわけでありますが、何といたしましても、青物は貯蔵性が全然ないのであります。したがって、価格安定の措置といっても、なかなか簡単に参りません。簡単に参りませんが、先ほど申し上げましたように、一面においては出荷調整をやりますと同時に、一面におきまして生産の奨励、増殖をやりますためには、値が非常に下がるということを何とかこれは防がなければならぬ、そういう場合に何か救済の措置を講ずる、こういうことを考えなければならないと思うのであります。そこで、今までタマネギの例もありますしいたしますので、そういうようなものを十分に勘案をいたしまして、何らかの措置を一つ講じたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  121. 小平芳平

    ○小平芳平君 この問題はいろいろむずかしい面があると思いますが、非常に農家にとっては、豊作なら豊作なりに豊作貧乏というし、消費者は消費者で、米が大豊作だといいながら値段が上がったり、かと思うと、端境期だからといって野菜が上がるというような、もう少しそこに農林省として対策を立てていっていただきたいと思いますが、時間がないからこの点は終わりまして、企画庁長官からお尋ねしたいことは、公共料金は上げない、がまんしてもらうのだというふうに先ほどお答えがありましたが、それにもかかわらず、どこかで上がりはしないかというような不安を国民は持つわけです。それで、経済企画庁としては、公共料金は全然上げないおつもりなんですね。大体どのくらい上げないおつもりでございますか。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま問題になり、あるいはなりかかっておりますのは、先ほども申し上げましたが、大部市のバス、一部の酒類、それにふろ屋の料金等でございますが、これは検討いたして参りますと、一応理屈としては、上げるというほうに計数的な理屈はあるわけでございます。あるわけでございますが、どうも国全体の経済政策から申しまして、消費者物価というものが毎月動く、毎月上がるというようなときには、さらにそれを刺戟するようなことはどうもやるべきでないというふうに考えますので、それでごしんぼうを願いたいという表現を用いたわけでございますが、したがって、そう考えております結果として、国民生活が消費者物価の動きにおびやかされない、そういうことがなくなってきた、そういう不安を国民が持たないようになったというときまでは、問題として取り上げたくない、取り上げない、そういうような気持とタイミングを考えておるわけであります。
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理大臣も同じ御意見でしようか。
  124. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体そういう方針で来ております。しかし、上げたくないからと申しましても、合理的に上げなければならぬ、しかも、また合理性を持ち、またその合理性を実現しない場合には日本経済全体が困るという場合におきましては、これは考えなければなりません。ただいまのところ、都バス等のバス料金の問題、これは民間のバスの料金と都営のものとはかなり違いますが、その中の人件費等が非常に高くなってきておる。そうしますと、人件費が高いからというので経営が不如意だ、それでまた上げるというのだったら、これはやはりがまんしてもらうものでございます。ビールなんかというものは、それは原料が高くなりました。人件費も高くなって参りました。また包装その他の関係、運賃その他が非常に上がって、合理性は持ちますけれども、しかし、これを上げなければ日本の経済が将来どうこうというわけではない。だから、これはがまんしてもらう。じゃ、昨年私鉄を上げたが、これをどうして上げたかというと、これは、上げなければ交通の緩和ができません。上げたくはないのですが、上げざるを得ないというものであります。そこで、今度の春闘の問題等、どういうことになりますか、われわれは非常に苦慮いたしております。これは非常に上がり過ぎますと、いわゆる輸送の拡充という理由で上げた私鉄の料金がどれだけ従業者の賃金引き上げに食われるかということがわれわれの心配しているところなんですが、そういうことのないことを望んでおるわけであります。だから、上げたくない、できるだけ上げたくない、しかし、上げなければ日本の経済が持たないということになると、これはやむを得ません。大体の考え方は宮澤企画庁長官が答えたとおりであります。
  125. 小平芳平

    ○小平芳平君 さて、その春闘の問題をお尋ねするつもりはなかったのですが、この問題は要するに、賃金が上がるから値上げをしなければならないというふうに、またせっかく値上げして輸送力を拡充しようとしたのに、賃金が上がればそれに食われてしまうというふうに、それだけのことをおっしゃいますけれども、やはり賃金は労働者の生活を一方ではささえているわけすから、一方において消費者物価が上がっていることは、消費者物価が上がるから、あるいは消費者物価の変動するこの時期に値上げは取り上げたくないという、宮澤長官がおっしゃるようなそういう時期でありますから、これはまた別個の問題としてやらなければならないと思います。  それで、次にお尋ねしたいことは、昭和三十八年度予算の減税の額でありますが、予算編成当時と客観情勢も多少は変わってきていると思いますが、現在においても、この減税の額なり、また政策減税その他を非常によろしいというふうにお考えでしょうか。
  126. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 減税は間々申し上げておりますように、昭和二十五年以来連続これを行なっておるのでございますし、また今年も、来年度以降も、十分減税を重要施策として推し進めていく考えでございますので、昭和三十八年度の減税案は、ただいま御審議を願っておるものをひとつお通し願いたいと、こういう気持でございます。
  127. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ当然そういうふうにお考えだと思いますが、次に、昭和三十九年以降の減税について、新聞ではもう早目に税制調査会がこれこれしかじか、あるいは自民党の地方選挙に対する公約が大幅な減税をとか、そういうように取りざたされておりますが、その見通しについてはいかがでしょう。
  128. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 昨年、内閣に設けられました税制調査会は、前三年度の減税その他に対しての御答申で一応任期が終わったわけでございまして、あらためて日本の将来の税制はどうあるべきかという根本的問題を御審議願っておるわけでございます。特に直接税と間接税との比率が一体現在のままでいいのか、また、租税特別措置というような問題にしても、これを整理をしていくという反面、新しい産業政策、自由化対策その他に対してどういうふうにして新しい税目を立てていくべきかというような問題を、広範にわたって御審議を願っておるのでございますので、これが答申を待って、政府はその答申を尊重しながら減税政策その他を進めて参りたいということでございますので、現在昭和三十九年度をどういたしますとか申し上げるような段階にないと、こう御承知願いたいと思います。
  129. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、大幅減税云々というようなことはどうですか。
  130. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そうあらなければならぬ、またそうありたいということでございまして、現在すでに三十八年度の予算で目一ぱい使ってしまったとか、三十七年度の産投会計繰りの場合にも、もう三十九年度に持ち越す財源もないじゃないかというような議論もございましたので、現在、三十九年度以降かくかくの大幅減税をいたしますというようなことを言うことは、当を得た発言ではないと考えます。
  131. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、そういうような報道は間違いですか。
  132. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そういう報道は、私の、税の主管大臣である私からは、そういうものは申し上げておりません。毎度申し上げておりますように、三十八年度の予算の執行その他によりまして、三十八年度、考えておるよりも経済成長も活発になるだろうという見通しでございますので、三十九年度の必要な税収は確保しなければならぬし、また、できるという考えは持っておりますが、どの程度、どういう方面にわたって減税をするということには、時期が非常に早いし、内閣の税制調査会に諮問をしておる政府としては、その答申も待たず、また内閣がそこに対して明確な意見も述べておらない現在、一方的にこれを公表するということは当を得たことではないというふうに考えます。
  133. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理大臣にお尋ねしますが、先ほどの経済成長とも関連しますが、経済が一方においては高度成長を遂げていく。一方においては相当の減税あるいは社会保障云々というものを長期にわたって見通しを立ててやっていかなければならない。経済成長が長期にわたって成長していくと同時に、また一方では、減税や社会保障にも目的をしっかり立てた長期計画が必要である、このように考えますが、いかがでしょうか。
  134. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 社会保障制度の拡充あるいは減税の長期計画と申しますが、その長期計画は何年、昭和三十九年にこう、四十年にこうという、こういう計画はちょっと立ちにくいのではないかと思います。ただ、できるだけ社会保障制度の拡充、また、当分の間社会資本の充実、あるいは文教の拡充、あるいは減税をできるだけやっていこう、こういう長期の考え方は、これはここでは約束できます。しかし、減税計画何年でなんぼ、社会保障制度はどうとかいうことは、これはもよっとやることがかえっていかぬのじゃないと思います。ただ計画としてこういうようなことを重点的にやるという計画は、これは私は組閣以来ずっと同じ方向でおるわけでございます。そういう意味の計画は立てておりますし、その計画を進めていこうと思っております。
  135. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、首都圏のことについてお尋ねしたいと思いますが、首都圏整備計画というものがどのようないきさつで立てられたか、また、現在の首都圏整備計画を立てるにあたっての基本的な構想、考え方、そういう点についてお尋ねしたい。
  136. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のとおり、東京は急激に過度に人口が集中して参りましたので、首都圏整備委員会最初に発足いたしました当時とは、その後逐次情勢変化によって、情勢に応じて変えていかなきゃならぬ時期にきつつあります。また同時に、経済界の発展、工場設置等いろいろな角度から研究いたしまして、御承知のように、だんだん最初と違って、周囲に都市を作りますとか、もしくは工場の分散をするとかいうような計画を遅滞なくやっておるわけであります。
  137. 小平芳平

    ○小平芳平君 首都圏の計画そのものが、整備計画を立て、整備委員会ができていても、それこそ水道が出ない、断水、減水をしなければならないというような現在の計画というものは、計画そのものがもう出発から無理だったのじゃありませんか。
  138. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今の水道の計画を立てました当初考えておった人口の増加と、まるで変わった人口がここに集中されてきたわけであります。御承知のように、一年に三十万人近くの人口の増加があるわけでございますから、したがって、これに対応する水源を求めて、また、従来の計画でそのまま補給をして参るという程度ではなかなか間に合わないというようなことであるので、水道につきまして一番問題があるようでございますが、今は周囲の川を従来のように貯水池でなしに、川の水をそのまま誘導いたしまして、それに切りかえをして参るということに変えて、せっかくこの工事を進めているということでございます。今もお話しございましたが、村山貯水池その他の貯水池につきましても、これを計画をした当時の東京都の人口を想定したときから人口の集中度が急激に増加いたしまして、東京都のその計画がみな当初の計画とは違った状態になってきているというところに困難性があるということで、さればといって、この人口の集中を排除する方法があるかというと、今別に積極的に法律的にこれを排除することもできませんので、これらのものを他に衛星都市とか、もしくは近郊に新しい住宅団地を作るとかというようなことでやっていこうということ以外に、今まとめて適切な方法があるかということになりますと、なかなかそれはありませんので、いろいろな角度から官庁の疎開をしよう、学校の疎開をしよう、もしくは工場団地を作ろうということで、むろん一つ方法でこれで目的が達成できるということはありませんが、いろいろな角度から研究してみたいというのが現在の実情でございます。
  139. 小平芳平

    ○小平芳平君 経済企画庁にお尋ねしますが、たとえば低開発地域工業開発促進法というのがありますが、その地域指定が行なわれているのですが、首部圏の中にその地域が指定されているのでしょうか。
  140. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 二、三カ所指定地域があると思います。
  141. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですからそういう点が、片方では首都圏の整備委員会でいろいろな計画を立てて勧告をし、調査をし、片方では低開発地域としていろいろな工業分散のための施策をするというような、そういう点がむだでもあり、また、しいて言えば現在の首都圏整備委員会のあり方ではもう限度がある。行政委員会として調査計画、調整勧告ですか、そういうことをやっているだけでは、今までのように東京都の周辺に工業団地をいかにして作ろうかというような計画や調査をしている段階では、今までそういうことをやったわけですが、現在のように、すでに工業団地の造成が実際にできつつあるとなると、学校を建て、公園を作り、道路を作り、また、住宅地を作る、住宅街を作るという、そういうことになると、現在の整備委員会というものはほとんど何の役に立つか。むしろないならないで、あるならあるで、もう少し整備委員会としての役目というものがなければならねと思うのですが、この点いかがですか。
  142. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) だんだんやっておりますことについて非常にまどろっこしい、何しているのだという御意見方々で伺うわけでございますが、しかし、さればといって、計画を立てずにほうっておくわけにも参りません。計画は計画として立てております。その計画、調査に基づいて、次にこれを実行にどういうふうに移していくか。その実行に移す段階におきまして私は十分でない点がある。予算措置等についても、もう少しやらなければならぬ点もあるだろうし、たとえばそれが総合的に基本的に将来どうするかということに欠けている点が従来ありた。いろいろな角度から、たとえばこういう膨大な都市でございますから、ときによって首都、政府機関を移してしまったらどうかというような議論をする人もありますし、学校を移してはどうかという意見の人もあります。いろいろな意見がいろいろな方面から出るわけであります。しかし、一つですべてが目的達成できるものはなかろうと私は思います。それだけやろうとしてもそういう大きなものはなかなかできるものじゃない。そういういろいろな議論がありまして、その議論をこまかく積み上げていきますと、そこにある程度の結果が生まれてくるのじゃなかろうかということがまた同時に一番すなおでいいのではなかろうかというような意味合いから、私たちといたしましては、今の首都圏整備委員会において調査を願っております調査の結果に対応いたしまして、建設省と両々相待ちまして、一方には官庁におきましても、新たに造営をする官庁については、閣議において、首都圏の範囲内に、東京都の都市外にこれを作るということに御決定をお願いしております。また、学校についてもそういうふうな目的でやるというようなことで、一つ一つ決定をして積み上げているわけであります。また、工場団地等につきましても、ようやくその緒についたところでございます。この機会に、なるべく早く新しい宅地造成もしくは住宅地開発の法律案を提案して御審議を願うことにしておりますが、こういうふうなものをいろいろまとめて、ようやく動き出せるようになるのではないかと思うのであります。今までは、何分安い土地があった、行ってみると高くなっている、それをまとめておるうちにどうにもならぬということになりますが、今度は少なくとも五十万坪とか百万坪とかというものを指定いたしまして、これらについて政府が先買権を持ちまして、そしてこの団地について、少なくとも人口を五万もしくは十万ぐらいのものを作っていく。そしてそういうふうなものを、どなたがごらんになりましても、東京の中にいて仕事をするよりもこっちのほうがいいだろうというふうなものを東京の周辺もしくは関東一円に作りまして、そしてそのほうに分散するということを積極的にやって参るということをしていきたい。まあそういうものを漸次作りましたら、相当効果が上がるのではなかろうかということで、せっかく努力を重ねておるわけでございます。なかなかやらずにおくわけにもいきませんし、さればといって一つのものですべてが解決するというわけにもいかぬ。したがって、こまかく積み上げていくということ以外にないのではないかということで、せっかく努力をしているわけでございます。なお、御意見がございますれば承り、御注意いただければけっこうだと存じております。
  143. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一つお尋ねいたしますが、首都圏整備委員会に予算の認証権を与えたらどうかというような意見に対しては、どのようにお考えでしょうか。
  144. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) せっかく建設省で仕事をするものにつきましては、各省の所管のものまでまとめて実際の建設事業をやり得るようにしているわけでございます。したがって、今首都圏整備委員会で企画され、そこに一つの方針が立ちますれば、それを建設省で予算に組み、もしくはさらにそれを東京都に流してやって参ると、一元的にするほうが適当ではなかろうか、こう考えます。
  145. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に建設大臣にお尋ねいたしたいことは住宅ですが、一方では産業基盤の整備のために相当の、道路の拡充その他、公共投資が行なわれていかなければならないと同時に、一方ではまた、生活環境の整備も非常に大事だと思います。とりわけ住宅は、たとえば三十八年度では二十二万何千戸という政府の施策住宅でありますが、これはかりに所得倍増計画の始まって以来の経済成長率に比べてみても、問題にならない伸び率じゃないかと思うのです。  それで、まあ住宅は農村に行けばそれほどでもないわけですが、東京とかその他大阪とか、そういう大都市では、十人なら十人、百人なら百人、とにかく何人か人が集まれば、住宅に困っている人が相当数いるのが現状だと思うのです。しかも建売り住宅があっても高ければとても買えないし、政府としては、家賃の安い第二種公営住宅あたりを中心にして、相当の住宅建設戸数をふやしていかなければならないのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  146. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のとおり、住宅十カ年計画、政府としては十カ年間に一千万戸ぐらい、民間政府ともどもでできるような施策をして参ろうといたしておるので、その前期五カ年の今三年目ぐらいでございます。大体予定のとおりに実はいっておるものと考えます。しかし私は、今お話のとおりに、宝くじを引くように、住宅公庫もしくは公団で作りますと、これについて殺到して参ります。そこで住宅を得られておられるのが多い。しかし、まあ衣食住は一応自分の責任において何とか御苦労願うという考え方は一体どうなんだろうか。これをひとつ共産圏のように、ソビエトのように、国で全部やるのだということに考えていくべきものかどうかという、そのまず基盤がどこに置くべきかということがきまって参りませんと、住宅政策というものはきまっていかないのじゃないか、こう思うのです。私は。私としては、低所得の諸君で、とても今の所得で自分で住宅を建設して入るというようなことはとうてい困難である、とうていむずかしいという所得の諸君に対しては、これはお世話申し上げなければならぬ。その次の諸君については、宅地が一番困っておられる。宅地が一番高い。宅地の入手難に困っておられるでしょう。これには宅地だけはどうしてもお世話申し上げるようにしたい。その他比較的いい人では、自分でやってもらうという一つの目安を置いてものを考えたらどうだろうか。したがって、今までは住宅公団あたりで建てますものも相当に所得の高い人を目当てにした住宅を建てております。しかし、こういうことは一切やめよう。そして政府もしくは公共団体もしくは地方団体が建てる住宅は、今申し上げるように、低所得の方の期待にこたえるためにやればよろしいのであって、そうでない人のは今申し上げるように、宅地をお世話申し上げよう。そこで今回は宅地についてだけ宅地債券を発行して、希望の方に宅地を差し上げましょう、お金を出してあげましょう、こういうことをまず始めてみた。これで相当の所得の方はそのほうでやっていただくということにして、皆さんに自分の家は自分でというムードをひとつ作っていただいて、そして政府のほうでお世話申し上げる。そしてどうしても所得が低くて自分で建てることは困難だという人の分については、ぜひこちらが万全を期するという方針でいこう。したがって、建てるものについても、あまり大きなものは、間数なんかは別にして、家賃の低いものを建てる、そして数をふやしていく、こういうことにいたしておるわけでございます。しかしやってみた上でまた問題が出てきたら、さらにまた考えていかなければならないのではないだろうかと、大体そういうふうに考えていたしておるわけであります。
  147. 小平芳平

    ○小平芳平君 今の御説明ですと、政府の施策住宅はなるべく低家賃のものを作る。そこで公庫や公団は住宅を作るよりもむしろ宅地の造成をやっていく。やがて住宅は自分で建ててもらう、安い家賃の公営住宅のほうへ数をふやして力を注ぐ、こういうような意味なんですか。
  148. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 従来やっております住宅公団の仕事に宅地造成の仕事をふやしていく。もちろん従来どおり住宅の建設はやらせます。作るものは従来のように高いものでなしに、安い家賃のものを数多く作らせるようにしたいということでございます。
  149. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに公庫、公団の今までのものはそのまま続けていくということですね。それでは、道路のほうは住宅とは違うように今御説明がありましたけれども、一方では道路の計画は二兆一千億を倍にしてでも大いに拡充しようというふうに建設大臣はおっしゃっておるわけですが、住宅のほうはそうは参りませんですか。来年になれば道路と同じように倍くらい建てるというふうには参りませんか。
  150. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今申し上げましたように、住宅につきましては低所得者の諸君の住宅は国で全部責任を持ってやるようにしなければいけないということでいきたい。したがって、そういうものについては基本的な調査をいたしまして、次の五カ年計画を作る場合にはある程度考え直していかなければならぬのではないかと思いますけれども、一応は今の一千万案を踏襲してやって参ろうと思っておるわけでございます。必要があればその必要にこたえて改訂して参ることに少しもやぶさかではございません。
  151. 小平芳平

    ○小平芳平君 必要があればとおっしゃいますけれども、相当必要があると思いますが、よく御調査願いたいと思います。  それから、今度お始めになる宅地債券の問題ですが、この着想といい、実際宅地が手に入るということが非常に今は困難でありますから、手に入るようになるということは朗報なんでありますが、どのくらいの額でどの程度の宅地造成ができるか、そういう計画についてお尋ねしたい。
  152. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今一応企画といたしましては、九億の、十億でしたか、公団と公庫とだけきめまして、その公債によって、仕事はもちろん御承知のとおりこれから場所を探し、そこにいろいろ事業して参るわけであります。あまり高いところは適当でございませんが、大都市の周辺で、そういう適当な場所を探して、それを分けて差し上げるということで、計画内容についてはまだ一応の案、九億、十億というような数字に基づいてやっていこうということできておるわけでございます。
  153. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから住宅基本法というような構想が出ておりましたですが、今の住宅政策は公庫、公団、公営、あるいは産業労働者住宅、いろいろな形で住宅が建てられておりますが、こういう住宅政策をもっと一元化してやっていくというような構想で、住宅政策の一元化ができないでしょうか。
  154. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ただいままで申し上げましたような意味合いにおいて、住宅問題を基本的にもう一ぺん再検討しようということで下僚に検討を命じました程度でございまして、その調査の結果がまだ成案を得るに至っておりません。
  155. 小平芳平

    ○小平芳平君 それからもう一つ、今度別の問題でありますが、河川法の改正の建設省案というものが発表になったようでありますが、その見通しについて、すぐ相当早くまとまって、国会に提案されるような様子もありましたし、またたいへん困難なような報道もありましたが、河川法改正の見通しについてお尋ねしておきたいと思います。
  156. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のように、明治二十九年以来そのままになっております法律でありますから、現実は法律自体と非常に変わっております。それを飛躍して新しい事態に処する法律を作る。そういうことでございますから、その間にいろいろな問題がございますので、なかなか各省の意見調整が困難でございます。しかし、どなたもぜひここで河川法を制定する必要は認めておいでになります。水の利用について非常に重要なことは強く意識されております。ただ問題は治水と利水ということで、われわれといたしましては治水に重点を置いて、まず治水については万全を期する必要があるという点から申しますると、意見の一致を見ることは非常に簡単でございます。ところが第二段の利水の点になりますると、いろいろと意見が分かれるのでございます。そこで治水について、治水のいかに重大であるかということについて、各方面の御認識がもう少し得られますならば、利水についてある程度の融通性、融合性というものが、私は発揮できるのではなかろうかと思うのであります。それについていろいろ御意見もございますけれども、幸いにしてほとんど各省の間に意見の調整が今終わろうとしております。建設省としても、自分で作りました案をいつまでも固執することも適当でございません、重要な法案でございますから。そこで、その点政府部内のお話を申し上げますと、総理大臣のもとで官房長官に各省の間をごあっせんをいただいて、なるべく早い機会に内閣としての案を取りまとめて、法制局のほうなども進んでおりますから、なるべく早い機会に議会に提案することにしたい。だんだんそのほうに進めておるわけであります。
  157. 小平芳平

    ○小平芳平君 建設大臣は御用があるそうで、建設大臣にはずっとお尋ねしたのですが、住宅建設はどうでしょうか、建設大臣のようなお考えでいくか、現在相当この住宅不足というものが深刻の状態にありますが、根本的に住宅政策を建て直そうというようなお考えはございませんか。
  158. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 住宅につきましては、御承知のとおり昭和三十八年度には二十八万七千戸を計上いたしておりますが、戦後住宅問題を一番初めやりましたときは、昭和二十七年だったかと思いますが、公営住宅法を作ったわけでございます。公営住宅法に基づきまして住宅金融公庫が設立され、住宅公団が設立され、各種の地方公共団体の住宅協会等が設立されて今日に至っておるわけでございます。この公営住宅法を作りますときに非常に問題になりましたのは、衣食住という、先ほども建設大原が言われましたが、これはもう根本的な問題でありまして、衣食住の問題、住を一般の税金からまかなうということに対して、憲法上問題があるというような議論が活発に行なわれたわけでございます。が、しかし事態も変わりまして、新しい社会的要請として、特に大都市というような状態で急速に産業人口が集中するというようなところに対しては、どうしても住宅を個人の力にだけ頼っておるわけに参りません。もう一つは、低所得者のいわゆる第三種厚生住宅式な意味でございますが、これらの問題をどうするか、産業労務者川の住宅をどうするか、現在新しい立場で農山漁村のだだっ広い家を改造して、新しく生活様式を変えるためにどうするかというような、政策的な要請面が出ましたので、国の費用を直接投資をしても憲法上の疑義はない、こういう考え方で公営住宅法が制定せられた経緯がございます。でありますから、足らないからこれを全部国でもってまかなうという考え方は、道路とはちょっと違うわけでございます。道路は当然生活をするために必要な基本として無料公開の原則がうたわれておるのでございますから、道路と住宅政策がそのまま同じラインで解決するというわけには参らないわけでございます。でございますので、東京、大阪のような大都市に産業人口が高度に集中しておって、実際社会問題として住宅問題を解決しなければならないという事実に徴しまして、政府は先般十カ年計画を立てて今進めておるわけでございます。これに対して、先ほどから御質問がありましたとおり、住宅債券の問題とかいろいろな問題がありますので、大蔵省でこれは検討しております。これは建設省と厚生省、労働省、大蔵省、四省間でもっていろいろな検討を続けておりますし、今度の十九億の債券の問題も、これで解決するとは思っておりません。あなたの言うように、限られた財政の中でもっとうんとやれということになれば道はあるのであります。これは今住んでおるところの家賃を上げるとか、家賃を上げない場合には当然今のものを分譲してしまうというような問題もございます。また、外国では、そのような制度をとってやっておるわけでございます。特に、スラム街の解消等をやるということで、ある一定のところに高層のアパートを作って、そこへ特定地区の人間を移して、このあとに高層住宅を建てるというようなことになると、今、十九億ぐらいの住宅債券を出すというようなものよりも何倍も多量に住宅が建設できる、また、安価の建設ができるということがございますが、これは土地収用の特例を開かなければならないわけでございます。アメリカや諸外国は、全部これに対して土地収用の特例を開いております。スラム街の解消については、一定期間告示をして、応じなかった場合には、一カ月に何十分の一ずつ地価が安くなって、一年たつとただで収用されてしまう。こういうような方法もございますし、ロンドンのニュータウンのように、都市改造ということで、都市の改造公社には換地権さえも与えているような特別立法をいたしておるものもございます。でありますから、金の額で解決しようという考え方だけでは住宅問題はなかなか解決し得ないのでございます。でありますから、土地の収用権の問題、それから換地権の問題、それから空間を立体的な建物によって建物を不燃化、高層化していくという問題、こういう問題と、その分譲その他を十分検討して、総合的に解決するということでなければ、今の十カ年一千万戸計画を大幅に修正するということはなかなか不可能でございます。しかし、いつまでも十カ年一千万戸計画というものをそのままやるというわけではないのでございまして、三十八年度予算の当初におきましても十分検討して、住宅債券制度を新設したのでございますから、三十九年度の予算編成までにこれらの問題も焦眉の問題として  何らかの方法で解決したいということで——何らかという内訳に対しては、今、その一端を申し上げたようなもろもろの問題に対して、諸外国の例も徴して検討いたしておるのでございます。
  159. 小平芳平

    ○小平芳平君 えらくふえそうな、ふえなさそうな、よくわかりませんが、要するに検討して下さる。  そこで、次は、厚生大臣にお尋ねいたしたいことは、公害防止についてですが、公害防止のための予算は八百万円から三千七百万円ですか、相当ふえているようですが、要するに公害防止について厚生省はどのように対処していかれるか、その点についてお尋ねしたい。
  160. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 昨年ばい煙規制法ができましてから、まだそれの地域指定もやっておりません。地域指定の基準は政令できめることになっておりますが、鋭意研究いたしておるのであります。これからばい煙規制法の地域指定等の基準をきめたいと思っております。これをきめまして、そうして工場からの煤煙を取り除けば、相当効果をあげ得ると思っております。  もう一つは、煤煙のみならず、特定有害物質ですが、いろいろな有害なガス、これを発生する工場がありますので、それにつきましては、先般政令をもって二、三の有害特定物質等を指定しまして、なお現在、これ以上の有害物質があれば、もう少し拡大していきたいということを考えております。  もう一つは、今これはばい煙規制法の対象になっておりませんが、例の自動車の排気ガスの問題です。これにつきましては確かに非常に大気汚染に——有害でありますので、実態調査をしたいというので、三十八年度におきましては、東京都で三カ所自動記録計をつけまして実態調査をしまして、それによって今後の問題をきめたい、実は自動車に設備をすれば排気ガスは少なくなるのでございますけれども、その自動車の施設というものが、なかなかそう安い金では自動車の施設ができないのであります。これはアメリカあたりでもまだできておらないようであります。一生懸命開発しつつあるのでございます。それができれば、自動車に設備をしますれば、排気ガスは相当に少なくなりますけれどもわが国におきましては、通産省あたりで一生懸命調査、研究をいたしております。そういうふうに、つまりその大気汚染の原因になる根源をなくするということでございます。もう一つは、その大気汚染によってどういうふうに人体に影響があるかということもあわせて調査をいたしております。三十七年度におきましては、科学技術庁から調整費をいただきまして、尼崎におきましてその実験をいたしております。つまり、いわゆる大気汚染によって気管支炎、喘息、こういうものが非常にひどくなる、その因果関係はどうあるのかというようなことを尼崎市でやっておりまするし、これは近くもう結論が出ると思います。結論が出ましたら、またそれによって対策を講じたい。その他全国で九カ所ほど選びまして、大気汚染の人体に及ぼす影響というものをそれぞれの研究所、大学の研究所その他に頼んで、目下研究をいたしておる次第でございます。煤煙を出さないということ、人体に及ぼす影響いかんということ、ようやく軌道に乗りつつあるのが現状でございます。
  161. 小平芳平

    ○小平芳平君 軌道に乗るというよりも、ようやく調査が始まったというのが現状じゃありませんか。そこで実際問題、調査しているだけでは、自動車の排気ガスも減らないし、また工場の煙突も、おふろ屋さんの煙突も煙を吐いているわけです。ですから、たとえば厚生省でしたら、おふろ屋さんの煙突の煤煙対策はこういうようにするとか、あるいはこういうような公害防止には、こういう補助金をつけて実現していこうとか、そういうようなものがなければ、町の公害は一向減らないわけです。それをやるためには、もちろん調査、研究が前提ではありますけれども、それにしても調査研究だけで、あまりにも公害がはなはだしい、もっと積極的な対策を進めなければたいへんなことになると、こういう段階じゃありませんか。
  162. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 先ほども申しましたように、ばい煙規制法で基準をきめて、基準で取り締まるのであります。それができますれば相当効果が上がると思います。
  163. 小平芳平

    ○小平芳平君 そのばい煙規制法は厚生省でおやりになるのですか。
  164. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) その基準がきめられますれば、工場においてそれ以上の煤煙を排出することはできない。一々取り締まられる。工場それ自身の監督は通産省でございますけれども、基準をきめましたら、それに準拠してやらなければならんということになるわけでございます。
  165. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、通産省のほうではばい煙規制法を実施して、煤煙の規制を行なおうというふうな発表を見ましたけれども、厚生省のほうとしてはどういうふうな対策があるか。もちろん通産省のほうでおやりになる工場の煙突が一番大きい問題であると思いますけれども、厚生省としては何か打つべき手はありませんか。
  166. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) この公害というようなものは全部各省に関連した仕事でございまして、厚生省だけでどうこうと押していっても成績が上がるものではございません。工場におきましては、所管しております通産省とやはり連絡し、自動車につきましては運輸省、いろいろそれぞれのところとの連携を保ちつつやるわけでございます。したがいまして、先般は科学技術庁が中心になりまして連絡会議を作りまして、それで効果を上げるようにと一これは、私のほうがいかにそういう基準をきめましても、工場が守らなければさっぱりうまくいかない。それらの点は各省それぞれ連絡協調して公害の除去、これは水質でも同じでございますし、いろいろ公害には各省の連綿を緊密にして効果を上げるということでございまして、私のほう一名だけでどうこうできる、こういうものではありません。
  167. 小平芳平

    ○小平芳平君 一省だけでどういうことは申しませんけれども、通雄省のほうで工場の煤煙を規制するといえば、それで一つ煤煙が減るわけですよ。そのように、ほかに、それは厚生省でなくもいいですから。たとえば排気ガスについてはこういう規制を行なうとか、そういうような具体的な対策が進まないことには公害は減らないと思うのです。そういう工場の煤煙以外に対策はありませんかとお聞きしている。
  168. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) その規制基準ができますれば、この煤煙を排出しないためには、たとえば煙突でございますとそれぞれ設備しなければならん。それから大きい新鋭の工場は大体コットレル集塵装置だとかいろいろ装置をやっております。今大きい工場は。しかし今問題なのは中小企業の場合、小さな煙突の場合、そういうのはあまりいい方法がないわけでございます。したがいまして、それの研究を一生懸命やっておるわけですが、近いうちに簡易な方法で煤煙の除去をやるということもできないわけでありまして、今ある集塵装置というものは非常に高いので、そういうものを今度は中小企業その他につきましてはもっと安いものをつける。集塵装置の研究、その他燃料のたき方の問題とか、そういう基準をきめれば、その基準を守るためのいろいろな技術上の方法を、それぞれの現場で講じなければならんという結果になって、そのために大気もよくなる、こういうことになろうかと思うのでございます。
  169. 小平芳平

    ○小平芳平君 結局、何も工場以外にはなさそうに思われるのですが、とにかく公害防止をするためには具体的に調査研究しながら、同時にまた、そうした公害防止のための具体的な施策というものを実施していかなければならないと思います。  それからもう一つ、厚生大臣にお尋ねしたいことは、厚生省の社会保障関係の予算は相当ふえました。で三十七年度に比べて三十八年度は二割、三割というようにふえた項目が相当ございます。相当ございますが、その対策が、たとえば精神病対策とか、とにかくそういう項目が非常に多くて、それで何割も予算はふえているけれども、ほとんど全国的に見たら、どれだけの対策ができたか、できないか、見当がつかない、あるかないかわからないというような点が多いんじゃないかと思うんです。もっとも出発したばかりの施策が多いせいだと思いますが、そこで社会保障制度を全般的に考えて、こういう点は最も進んでいる——たとえば、さしあたり病人は一切ただでお医者に見てもらえるとか、これはたとえばです。そういうような検討なり、研究なり、方策というものはいかがでしょうか。
  170. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) ただいま行なっておる社会保障の一つの大きい柱であるのは、国民皆保険、皆年金の問題でございます。そのうちでこの医療保険の問題、医療保障の問題は、これは諸外国に比べましても相当に進んでいると思います。ただしその保険の中にアンバランスがありますから、そのアンバランスを是正する、つまり国民健康保険があまりよくないから、それを改善していくということはありまするが、保険全体、医療保障全体からいえば相当に進んでおるわけであります。もう一つの柱でありまする所得保障の問題は、これは給付の改善がよくない、制度の相互間のアンバランスもありますが、総体に給付の改善がよくないから、これを改善しなければならぬ、こういう問題は社会保障の今後の大きい問題であるわけでございます。したがいまして今後検討しなければならぬのは、そのうちで厚生年金等の給付の改善等もやっていきたい、かように考えております。それから施設の面ですが、社会福祉施設、これはいろいろな施設があります。老人に対しては老人ホームその他、それから児童に対しては児童の施設、それから身体障害者、精薄、いろいろな施設がありますが、施設の面がだいぶおくれておりますのがありますのと、非常に戦後手直しが——戦後相当に経過しておるので、施設が非常に老朽いたしておるから、そういう老朽の施設に対しては十分改善をして参りたい、かように今考えておるわけでございまして、いずれにいたしましても社会保障は十分進めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  171. 小平芳平

    ○小平芳平君 社会保障制度は十分進めていくわけですが、特にこういう点を進めていきたいというような点があるかということをお尋ねしたわけですが、その点はそれで終わりにしまして、この前の二月でしたか、予算委員会のときに、大都市の水飢饉の対策についてお尋ねしたんですが、そのときに厚生大臣からは対策があることはあるというふうなお答えがあったと思うんですが、それで、さしあたり一番ひどかったのは東京都ですが、この水飢饉はどうでしょう、見通しは大体解消の方向に向かいますか。
  172. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) あのとき、この席でいろいろお話も申し上げましたが、大体この水飢饉になりましたのは人口の増加と、それからもう一つは、使用量がふえた。それから三十五年以来非常に東京方面は台風がなくて、雨が降らなくて、から梅雨で、それで水飢饉になったのであります。それぞれの対策は今講じているわけでございます。しかし、現在のままでいくと、どういうことかと申しますと、数字でありまするが、三月二十五日現在における貯水量は、村山、小河内全部の貯水量は四千百六十二万トンでございます。現在六十万トンずつ毎日減っております。したがいまして、今後どうなるか。からつゆの場合を想定しますと、雨が降らないということでございますが、貯水量は五月末に三千七百万トン、六月末に二千八百万トンになります。こうなれば、現在二五%の制限をしておりまするが、さらにこれを制限を強化しなければならぬということになろうかと思われます。しかし、過去の平均の降雨量で、今庄での平均で考えますると、五月末には四千万トンになる。六月末には四千八百万トンになる。まあ天気次第、天候次第ということにもなりましょうか。しかし、幸いなことにいたしまして、金町が来たる三十一日落成式をやりまして、送水ができます。したがいまして、今後の状況を見ましてこの制限のことは考えたい。かように思っている次第でございます。
  173. 小平芳平

    ○小平芳平君 天候次第とおっしゃるわけですけれども、それが、天候次第で、それ以上もう打つ手はないですか。
  174. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) あまり水が足りないからといって、これだけの人口をまかなうのですから、すぐするというわけにはいかないと思います。何かいい方法があったら教えていただきたいと思います。
  175. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、先ほどちょっとお尋ねしました河川法改正の点ですが、経済企画庁長官はいなくなったのですが、大蔵大臣が何でも御存じだから、河川法改正はどうでしょうか。あれは建設省案として出ておりますけれども、私もそうこまかい点はわからないのですけれども、これは、水源県のほうから問題が起きるのは当然のことだと思うのです。さしあたって困るのは、実際水道が断水したりする大都市は困っているわけですが、また、工業用水をくみ上げたために地盤沈下している大都市が困っているわけですけれども、そういう水源県に対する配慮というものが、ただ水を幾らもらうから幾らお金を払う、そういうような権利以上の何ものかを将来の政策として立てていかなければ解決できないのじゃないか。
  176. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 河川法の改正につきましては、先ほど建設大臣から述べられましたように、政府は今国会に河川法の改正案の提案をいたしたいということで、方向は閣議で了解をいたしているわけでございます。内容につきまして、今問題になっておりますものは二、三点ございます。  一点は、大蔵大臣として、一級河川、二級河川ということで、画一的にきめて、これを全額国庫負担にするという場合、一体国庫でまかなっていけるのかどうかというような問題が一つだけございます。でありますから、この一、二級河川の指定の問題に対して、まだ多少の調整をしなければならないという問題がございます。  もう一つは、各省にまたがって権限がございますので、行政組織上の権限として、この指定を行なう場合に、並列官庁の長である建設大臣が行なうか、もしくは内閣総理大臣が行なうかという問題が一つございます。  あとは、地方長官が考えておりますように、現状どおり水利権を何とかしてくれ、こういうことでございますが、一番の大きな問題は第三点目でございます。第三点目の問題に対しては、これは、現行河川法は明治二十九年の制定のものであり、それから戦後新憲法になってから、議員提案によって一回だけ、河川に関する費用の負担について改正が行なわれております。この問題が、地方長官に水利権の認可権があるというのは、御承知のとおり、戦前は、地方長官というものは政府の出先機関でございましたので、現在のようなトラブルはなかったわけでございます。ところが、戦後、知事が公選になりましたので、また、地域格差の解消などということを考えますと、なかなか水利権の認可ということはむづかしい問題でございます。利根川の水が少ないので、相模川の水を、小田原の水を流すということを例にとりますと、おそらくこの問題に対しては、関係県の知事が協議をやってやるわけでございますが、なかなか何年もものが片づかないというようなことがございます。吉野川の問題をこれから二十年、三十年後に全部水を使うというような計画に対して、これを一体愛媛県、徳島県、香川県というものにどのように合理的に水を流すことが一番国のためにいいのか、地方開発のためにいいのかという問題は直接ぶつかっておるわけでございますが、これは、現行制度のもとではなかなか解決がつかない。これはもう、公選知事としては私はやむを得ないことではなかろうか。でありますから、ある意味において、政府が河川法を改正すると、こういうことを言ったが、公選の知事は重荷が下りるというようなことも言い得るわけでございます。ただ、水利の使用料という問題がございますので、これは、河川法が改正せられて、建設大臣に認可権が移っても、水利使用料というようなものに対しては、当然これはその府県に還元すべきものであります。これは、雪で非常に苦労し、雨で苦労し、治山の問題で投資をしておるのでございますから、これは、水から得られる還元というものは当然考えられるのであって、私は、政府としては、この問題に対しては早急に考え方を出さなければならないし、また出し得るという考え方に立っておるのでございます。
  177. 小平芳平

    ○小平芳平君 早急に結論を出して、河川法を改正していくことが大事なことだと思いますし、私ももちろん賛成なんですが、先ほども申しますように、経済企画庁長官にもお聞きを願いたいことは、要するに、現在までのやり方と、自分の県内を流れておるところの水の権利はおれにある。そう言われたんでは、下流のほうでは飲料水にも困る。工業用水にも困る。したがって水道は断水する。減水する。あるいは地下水をくみ上げて、その地盤沈下が起こる。そういうようなことになるから、どうしても建設大臣なら建設大臣、そういうところで統括していかなければならない。そこまでは当然だと思うのですが、そこで問題は、その水源のほうで一たん用水路ができて、どこどこへもうその用水路をこれだけの水が通って、どこどこへ行くときまってしまえば、そうすると、そこの地域は永久に産業が発展しないんじゃないかという、とにかく用水が直通で下流に行ってしまいますから、そういう点に対する配慮が一番大事じゃないかと思うのです。そういう点についてどうですか。
  178. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは、あなたが今申されたようなことが地方公共団体の問題点になっておるわけでございますが、現在水は一体どのくらい使われておるのかといいますと、まだせいぜい二〇%以下しか使われておらないと思います。でありますから、現在水利権が地方長官から建設大臣に移って、これが合理的開発をせられても、上流が何十年後に水を使いたいと思うときに、全然水が使えなくなるなどというようなことを考えなくていいと思うのです。これは、一〇〇%まで水を使うということは、これはできないと思います。河川の維持のためにも、水は当然適量流されなければならないわけでありますから、水の使用の限度というのはある限度がございますが、少なくとも非常に安い。何十銭、何銭というまだ水が捨てられておるわけでございます。これから工業化されるアメリカなどでは、トン当たり十六円、十五円、二十円という水を作っているのでございますから、日本がまだ十円、十二、三円の水を作るということを考えますと、これから所得倍増また倍増、また倍増しても、水は、河川維持に必要な水以外はほとんど利用したものを国民に流す、しかも、発電所等においてバックウォーターをやって、一回ないし二回使うということを考えるならば、水の利用というのはまだ1無限にというのではありませんが、世界で一番恵まれている日本でありますから、どうも下流の計画ができると上流でもってもう水が使えなくなるなどということを考えるのは、いささかあまり心配し過ぎておるというふうにも考えられるわけでございます。それからまた、水源地の涵養は、治山の問題その他の問題で十分解決できるわけであります。
  179. 小平芳平

    ○小平芳平君 以上で終わりますが、そういうふうに大蔵大臣はおっしゃいますけれども、とにかく水は、昔からほんとうに血で血を洗う争いの種ですから、そういう水源県がそう簡単におさまるかどうかという問題もありますから、慎重に解決していただきたいと思います。  以上です。
  180. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 小平委員質疑は終了いたしました。
  181. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、近藤信一君。
  182. 近藤信一

    近藤信一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、締めくくりの総括質問をいたします。  まず最初に、池田総理お尋ねするわけでありますが、昭和三十五年七月に池田内閣が発足しまして、今日まで内閣改造もしばしばございまして、四十八人の大臣が今日まで任命されておるわけです。そこで、今までの内閣で、実力者の内閣だと、こういわれた時期もございました。また現在の各大臣、大蔵大臣を初め優秀な、りっぱな大臣ばかりでございまするけれども、なかんずく、その中で、河野建設大臣ほどいろいろと特異な注目をあびておる大臣はなかろうかと思うんです。これはジャーナリズムや、それから一般的にも、非常に河野建設大臣の行政手腕というものに対して大きく買っておられることも事実であります。そこで河野さんが、たとえば道路工事を予定の期間より早くやれ、こういうふうに叱咤督励したり、また、過般の豪雪地帯に対するところの問題もてきぱきとやってきた、そういう点でも、河野さんは非常に一般的にもなかなかやるわい、こういうことが言われておるわけでございますが、私は何も別に河野さんをほめるというわけじゃございませんが、やはり私どもとしては、そういう行政手腕を持って仕事をびしびしやる、これが私は内閣のあり方じゃないかと思うんです。そこで、池田内閣の各大臣諸公が、一体河野さんのような敏速な行政処置というものが十分なされていないのではないかと私は思うんです。ただそこで、私が考えますることは、河野さんが河野さん得意の巧妙な手段でおられるので、これは河野さんの個人プレーというように大臣は見ておられるのか、それとも、大臣はかくあるべきものだと、こういうふうにお考えになっておられるのか。まずこの点を総理お尋ねいたす次第であります。
  183. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは各大臣とも、ほとんど私の目から見たら、一様に仕事は熱心にやっておられます。ただ、事の性質上、非常に派手に出るときと派手に出ない、じみな仕事があるのであります。だからこの点は、私はそう径庭はないと思うのです。ただ、河野君は、なかなかの頭の回転の早い方でして、しかも、いろいろな問題のときに、しょっちゅう私に相談をされる。かなりお上手でございます。各大臣においてもみなそうでございますが、ちょっとやはり目につくようなことが非常にあるわけでございます。ただ私は、仕事として河野君ばかりがひとりやっているというわけじゃざごいません。外交問題については大平君、ことに財政経済の問題につきましては、最近の状況はよほどあれでございまして、ただ、そういう点は国民としても考えていただかなければならぬし、また、政治の衝に当たっている各大臣も、やはりそういう民主主義の政治でございますから、まあ総理は努めて引っ込み思案でいかなければなりませんけれども、それはそういう点が持ち味ということもありますし、仕事の性質ということもありますし、そう私は径庭があるとは思いません。
  184. 近藤信一

    近藤信一君 まあ総理も河野さんは高く評価しておられるわけなんで、私は、河野さんだけが池田内閣の実力者であってはならないと、こう思うのです。やはり大蔵大臣を初め、他の優秀な大臣も控えておられるのだから、これらの大臣も、河野さんのように、やはりあれは実力者大臣じゃわいと、こう言われるように、ひとつ行政手腕も十分にふるってもらわなければならぬと、こう思うのです。   〔委員長退席、理事川上為治君着席〕  そこで私は、総理は、各大臣が自分の能力を十分に発揮しておられないというふうには判断しておられぬと思うのです。まあみんなそれぞれ全知全能をあげてそれぞれ行政に携わっておられるわけでございますから、そういう点からいきまして、総理がいわゆる内閣の統率者でございまするから、やはり他の大臣諸公も河野さんの評価のように一般的に評価されるようにやっていただくならば、やはり池田内閣のためにもなり、日本のためにもなると私は思うのですが、その点はどうですか。
  185. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、各大臣ともみな全力を尽くしてやっておられると思います。河野君ばかりじゃございません。荒木文部大臣なんかは、もう非常に画期的なことでございまして、国民の多数の人が、荒木文政に対しましては、非常な評価と信頼を私は持っていると思うのです。新聞のゴシップにたびたび出るからといって、その人が仕事をしているというわけのものではないと思います。各部門の行政をごらん下されば、社会行政の厚生方面におきましても、また行政監察の面にいたしましても、私は径庭はないと見ております。ただ、やり方が上手下手といいますか、人口に膾炙するかせぬかという問題は、これは行政の実質の問題じゃないのです。その点は十分考えなければいかぬと思います。
  186. 近藤信一

    近藤信一君 次に、独占禁止法の問題でちょっとお尋ねするわけでございますが、独禁法の全面的改正について、最近いろいろと報道されております。いわゆる経団連や同友会では、独禁法の全面的改正を検討しておるようでもございますが、また、前委員長である佐藤さんも、独禁法は再検討をしなければならぬだろう、こういうふうな意見も出ておったわけなんです。独禁法の性質といいますのは、経済民主化の基本法ともいうようなわけでございまして、これが実施されまして、今日までいろいろないきさつはございました。そこで、そのいきさつは、あるいは独禁法自体の改正、あるいは適用除外立法、されには運用方針の変更等、それぞれまあ手続方法は異なっておりましょうとも、やはり制定当初の意思というもの、実質的機能というものが後退するんでは私は何もならぬと思うのです。やはりこれは、占領政策の一つとしてこの独禁法ができたので、いろいろな事情でこの問題をいろいろと検討することは差しつかえないと、私はこう思うのですけれども、もしこの独禁法が、今話題になっておるように、経団連や財界で、これは緩和しなければならぬと、こういうようなことがおもな話題になっておるわけです。そういうふうな方向へもし改正されるとするならば、私は、経済民主化ということは後退すると、こう思うのですが、大臣、この点をどのようにお考えになっておりますか。
  187. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 独禁法は、御承知のとおり、産業経済の民主化の基本問題、産業がどうあるべきかということをきめておるのであります。しこうして産業がどうあるべきかという問題は、やっぱり時代の変遷によって変わってこなければなりません。しかし、これはあくまで民主化でなければなりません。たとえば、独占と申しましても、国内の鎖国経済のときの独占と、そうして国際の自由競争時代の独占のことにつきましては、よほど考え方が違ってこなければならないと思います。要は、わが国経済が民主的にうまく運用され、また世界の経済の変遷に沿っていって国の繁栄をもたらすということを主題にして考えなければならぬと思うのであります。したがいまして、いろいろ議論はありましょう。また、前の佐藤委員長のお話もわれわれはわかります。そうしてまた財界の人が、これはどの問題についてどうこうというのでなく、ばく然と、経済のあり方が世界的になって変わってきたのだから、ある程度精細に再検討の余地はあるのじゃないかという程度のことならわかります。しかし、どの点をどうしろというところまではまた来ておりません。はしなくも今回、産業基盤の強化、国際競争に負けないで、しかも国内の産業が近代化、合理化して、そつのない経済のあり方、これを国際的に見てという場合におきまして、改正することが今の産業経済の民主化に反するか、あるいは長い目で見て国の繁栄に害をなすか、反民主主義かどうかということは、やはり私はその事情を考えていかなければならぬと思うのであります。ことに長い間の産業経済の発達したアメリカあるいはドイツ等の状態と、敗戦によってぶちこわされた日本のあのときの状況で作った独禁法の関係は、これはよほど違ってこなければならぬ、だから、やはり国全体の民主化、国民大衆の利益、長い目で見て利益になることを主体にして、独禁法の精神、民主化の精神は、これは守っていかなければならぬと思っております。
  188. 近藤信一

    近藤信一君 二十六日に官房長官が記者会見をやって、今政府が国会へ提案しておるところのこの特定産業振興臨時措置法、これが今国会で成立をせなければ、これは独禁法の改正も考えなければならぬと、こういうふうな意見を述べておられるのですが、大臣、その点はどう考えておられますか。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その発表は私は存じませんが、今のお話の点では趣旨がわからぬのですね。産業基盤の強化法が通らなければ独禁法を改正しなければならぬ、これは筋が合わぬのじゃございますまいか。独禁法の原則を守りながら、今の時代に沿うて特殊の産業について基礎を強化しようということを御審議願っておるのですから、これが通らなければもとも子もなくするんだというふうに見えるのですが、そんな気持は、だれも当内閣では持っていないと思います。独禁法の精神を守りながら特殊の場合についてこういうことを御審議をお願いしようとしておるのでありまして、それが通らなければ、その問題について再検討するのだということがあるにいたしましても、もとの独禁法全体をどうこうするということは考えるべきではござ、まずまい。私は、官房長官はそういう考え方を持っていないと思いますが、およそ政治というもは、一つの根本方針を立て、その方針に従って、それが今の時代に合うというところを御審議願っておるのでございます。それがたまたま今国会で通らぬからといって、われわれ民主経済の原則としても、独禁法をもとも子もなくするというようなことを私は官房長官は言っていないと思います。もし言ったとするならば、私は、改めさすよりほかないと思います。ただ、御趣旨がちょっと私にはわかりかねます。
  190. 近藤信一

    近藤信一君 今総理が、この発表を知らぬと言われるんですが、昨日のこれは朝日新聞に出ているのです。そうしてその中で黒金官房長官が言っておられることは、現在国会に提出中の特定産業振興臨時措置法が不成立に終わったならば、当然独禁法改正問題は表面化することであろうと、こう言っておられるし、それから、財界や産業界としては、特定産業振興臨時措置法案の成立よりも、むしろ独禁法改正を望んでおられる意向が強いと、こういうふうに新聞に出ておるのです。これはどうですか。
  191. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは、今二度目の御質問でわかりました。特定産業のあれが通らなければ、これは独禁法をやめるというのじゃありません。独禁法自体の解釈問題として独禁法の改正をすることも一つ方法でございましょう。例外規定を置こうとして出したのが通らなければ、本法につきましてそれを入れるということは独禁法の改正でございます。今度は、実質的には独禁法改正ですが、別の法案で出しておりますから、独禁法の改正にならぬということになる。精神的にはあれでございますが、だから方法論だけであって、根本の違いはございません。根本の違いはない。独禁法をそのままにしておいて、特別法で独禁法の例外規定を設けるか、その例外規定を設けない設けるというのでございまして、だから、独禁法自体に手をつける、これはこういう意味なら、黒金君の言うことは一つの理屈があります。  次に、財界の方々が、あるいはこの特別の例外規定を設けなければ独禁法を改正するという議論は、これは、先ほど私が答えましたとおりに、時代が変わってきているのだから再検討すべしという議論はある。しかし、いかなるところをいかようにというところでまだ来ていないわけでございまして、今回の分がたまたま来ているわけでございます。だから、独禁法について、それはいろいろ議論はございましようが、過去にもあるわけでございますが、しかし、私の独禁法に対する根本的な考え方は、ただいま申し上げたとおりでございます。
  192. 近藤信一

    近藤信一君 大体総理の御意見でわかりましたが、独禁法が全般的にいいとは私も思いません。若干改正しなければならぬ点もあるだろうと、こう思うのだけれども、それが緩和の方向に行って、そうしてここで、財界の諸君が言っているように、財界の言われている、また産業資本の有利なように緩和された場合、中小企業が困るのじゃないか、こういうふうに私考えるので、この緩和の方向へ行くのか、それとも、さらに強化の方向に行くのか、こういう点、どのように考えておられますか。もし改正するとするならばですよ。
  193. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは、独禁法を改正して、今回のような特定産業についての特別措置を考えることが即中小企業に影響があるか。いわゆる悪影響があるかという問題、もしそれ自動車工業が今のままでいって、そうして貿易、資本の自由化になって、そして外国の優秀な技術がきて、膨大な資本がきてやるときに、今の自動車工業がどういうあり方になるか、もし今の自動車工業が成り立たぬとしたならば、それの下請の中小企業はもう壊滅することになる、だからこの自動車工業なら自動車工業の力を強くし、そしてその業態が進んでいくということは、それに関連する中小企業が非常に潤うわけです。だから、独禁法を改正したら、すぐ中小企業がばたばたといくということは、これは事柄を解明せずに結論を出すことであって、私は自動車工業につきまして特定産業として指定して、これの発展を期するということは、中小企業のためにこれはやらなければいかぬ、こういう気持であるわけであります。だから、一がいに独禁法は中小企業のためにのみやっているんだという考え方でなしに、全体のための法律だと私はお考え願うべきだと思います。
  194. 近藤信一

    近藤信一君 そこで、新しく公取の委員長に就任されました渡邊さんにお尋ねするわけでございますが、特定産業振興法案の成文化までのいきさつに見られるように、独禁法なら独禁法に風穴をあけるとかなんとかいうことが盛んにいわれておったわけなんです。また、産業資本家を中心に財界が主張しているように、カルテルの容認範囲を拡大するとか、また、持株会社の設立を認めるとか、さらに、株式保有、合併、役員の兼任の制限、こうしたものを大幅に緩和しろ、こういうふうな意向が強いようでございますが、私どもはそういうことはどうも承服できない、こう思うのですが、新しく就任されました公取委員長としてのあなたの御所見を承っておきたいのであります。   〔理事川上為治君退席、委員長着席〕
  195. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) お答えいたします。ただいま総理大臣がお答えになったことと、私の申し上げることは、ほとんどといっても、全然同一であると申し上げてよいと思います。昨日も商工委員会で申し上げましたが、独禁法の持っている本質的な目的といいますか、経済の民主化、あるいは消費者の利益擁護といったような本質的なものは、現在の時代において、やはり同じように堅持さるべきである、そこに何ら変えるべきものはないと思います。ただ、総理大臣も言われたように、自由化と結びつきまして、新しい外国製品といいますか、そういうものがどんどん入ってくる場合に、ものの見方といいますか、そういう考え方を新しい見地でもってもう一ぺん見直すという問題はあり得ると思います。ただしかし、現在の独禁法につきまして、いろいろな角度の利害関係がそこに錯綜して出ております。したがいまして、私も経済界の人たちとか、いろいろなお話は率直に伺う気持は持っております。しかし、その伺った結論をどういうふうにもっていくか、独禁法の改正という問題につきましては、よほど慎重に考慮した上でないと、怪々にもっていくべき問題ではないと、かように考えております。
  196. 近藤信一

    近藤信一君 今、公取委員長から御所見が述べられまして、私、昨日も商工委員会でも質問いたしましたが、新しく就任された委員長が、何か新聞記者と会見されたか何かしらぬが、一昨日新聞に、新公取委員長としての意見ということで発表されたのであります。これは新聞とは若干自分のあれは違うと、こういうことを昨日も言われたので、私、了解するものでありますが、やはり私は、先ほど総理が御答弁なされておりましたが、独禁法を改正すれば、すぐ中小企業に悪影響がくるというふうには私も考えていない。だが、その一面においては、やはりいろいろと中小企業に被害を受ける点は出てくると思うのです。何としても独禁法改正ということは、これは強化されるとは私は当然考えられないので、やはりこれは緩和の方向へいくであろうということを私は考えるわけなんです。そうすると、やはりこれは産業民主化の後退にもなるのじゃないか、さらに、中小企業への影響は出てこないとは私は限らないと、かように思うわけでございますから、新公取委員長もそういう点を慎重にひとつ考えていただきたい、かように思うわけであります。したがいまして、今、委員長から御意見が述べられまして、改正するということはなかなか慎重にやらなければならぬ、こういうことを言っておられましたので、一応私了解するわけであります。  次に、新産業都市の指定の問題でお尋ねいたしますが、新産業都市の指定が非常におくれているように私は思うのであります。そこで、これはどうも私、選挙対策のにおいがするのじゃないかというふうにも思うわけなんであります。地方では、今、新産業都市の指定ということに対しては、いろいろと期待を持っているわけなんで、経済企画庁が中心となってこの問題をやっておられるのだが、経済企画庁の長官として、一体いつごろ指定する予定であるかどうか、ひとつこの見通しについてお聞かせ願いたいのであります。
  197. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 関係大臣が多数おられるわけでございますが、便宜私からただいまの作業の進捗を申し上げますと、全国四十数カ所から指定を希望する意思表示がなされまして、その一つ一つにつきまして、二月の初めから事情聴取を各省の関係官が始めております。非常に詳しく話を聞いておりますので、大体一日一件の割合で進んでいるわけでございまして、四月三十日ごろまでこの事情聴取にかかります。それからあと、各要請大臣がおのおのの見地におかれまして、御自分の適当と思われるところの指定について意見を述べられまして、これは総理大臣に述べられるわけでありますけれども、便宜経済企画庁長官がそれを取りまとめまして、総理大臣が最終的に指定をされる。したがって、事務的な作業だけで四月一ぱいかかるというのが実情でございます。現実に指定になりますのは、それより後になる。どのくらい、それからすみやかになされるかということにつきましては、要請大臣の間の議がどの程度早くととのうかということに一番かかってくると思います。
  198. 近藤信一

    近藤信一君 今答弁されましたが、私も大体統一選挙が済むまでは指定はされないだろうと、こう推察はしているわけでございますが、そこに私はどうも選挙対策のにおいがするのじゃないかと、こう思うのであります。そこで私は、今すでにもう首長選挙が始まり、きょうから五大市の市長選挙も告示になりました。これが四月十七日に終わると、すぐまたあとの市町村の選挙があるということになる。そこで与党の候補者は、いろいろとえさを与えて、産業部市の指定をしてもらうのだ、おれが出られなければこの指定がないのだとか、いろいろそういう必要以外の、これはもう政策の面なら私は何ともいいませんが、候補者並びに候補者以外の人が特にそういう点を主張して、これが出なければいろいろな問題はできないのだ、臨海工業地帯の問題もしかりでございまするが、そういう必要以外にいろいろと誘導的なことをすることは、私は公選法の二百二十一条の二項に該当するのではないかと、こういうふうに私は思う。この二項はどういうことが書いてあるかというと、「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって選挙人又は選挙運動者に対しその者又はその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき。」と、こういうふうに罰則の点であげられておるんです。私は、こういう必要以外に執拗にこの与党の候補者に対していろいろとそういう利益誘導的な宣伝をされるということは、その公選法の二百二十一条に違反するんじゃないかと思うんですが、これは中央選挙管理委員長は出られないそうでございまするが、それにかわる方からひとつ御答弁を願いたいと思うのであります。
  199. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 御承知のとおり、まだいろいろの希望を聞いておる程度でありまして、どこの場所に作るから選挙にお前らは協力をしろとか、そういうようなことがあれば、当然これは利益誘導にもなりましょうけれども、ただ事務の都合上、選挙後に延ばすということだけでは、私は、利益誘導にはならぬ、なりようもない、こう考えます。
  200. 近藤信一

    近藤信一君 今の答弁ではどうも私はおかしいと思います。ここにちゃんと出ておる、第二項に。いろいろと書いて、「その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき。」と、こういう問題がある以上は、必要以上に、この者が当選せなければこういうことができないんだとか、そういうふうな強いことで宣伝されるということは、私はここに該当すると、かように思うんですが、もう一ぺんひとつはっきりとこの点を御答弁願います。
  201. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 利害誘導罪が成立するのは、特定またはある限られた範囲の選挙人等にとってのみ、特別に、しかも直接に利害関係があることを利用して誘導するような場合でありますから、そうでなくて、事務の都合上、現在事情を聴取している程度であって、それがどうしても四月一ばいかかる。それから先ほど申されましたように、関係大臣が相談をしてきめるから時間的に五月以降になると。そういうことでは利害誘導にはならない、こう申し上げておるわけであります。
  202. 近藤信一

    近藤信一君 まあ、こんなことで討論していると時間がおくれてしまうので、私は次に質問をするわけでございますが、地方民には地方民がその首長を自由に選ぶ、こういう権利があるわけなんで、それをあたかも与党の息のかかっていない者が選ばれた場合には、その地方には国の恩沢を与えないような言動が、しばしばこれは各種の首長選挙等においても言われておるんです。こういうことは、私は、地方民の意思を無視する地方選挙のあり方じゃないか、こういうことは地方選挙の本旨に私は反すると、とう思うんですが、総理大臣、この点ひとつ総理の考え方をお尋ねいたします。
  203. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点がはっきりいたしませんが、それは何ですか、わが党の人でなければ何もしない、法律に違反もすると、こういうようなことを言ったならば、これはよくないと思いますね。これは、地方の自治というものは、もう民主主義の根本でございますから、あくまで尊重しなければなりません。しかし、地方の自治を尊重するからといって、地方が中央と離れて、また対立すべきものじゃないのであります。これは私は郡君の御質問にも答えた。やはり中央と地方とは密接な協力協同関係にある。そして中央は地方の自治発展のためにできるだけの努力をしなきゃならぬ。これはもう当然のことなんです。ただ、その場合において、協力関係が同じ党の人のほうが、反対党の人よりも協力しやすいという事実というものは、私は否定できないのじゃないかと思います。これは私衆議院委員会でも申しておきました。とにかく、中央と地方自治体とは協力、共同の密接な関係でいかなきゃならん、こういう原則です。ですから、共同、協力の関係がどちらがベターかということは私は言い得ると思うのであります。それを私は言うのだったら、別に民主主義に反するわけじゃございません。主義政策を同じくしている者の協力がよりよくいっている。しかしそれよりベターだからといって、法律——万人を同視する、同じように見ていこうという民主主義の精神をくずすものじゃございません。こう言っておるのであります。
  204. 近藤信一

    近藤信一君 じゃまあ次に移るわけですが、これは総理の強い指示でこのたび公定歩合の引き下げをやられたわけで、これは新聞にはっきりと出ております。首相が強い指示をしたというふうに。そこで私は今回のこの公定歩合引き下げも、やはりこれは選挙対策一つじゃないかというふうに思うのですが、これは御承知のように、さる二十日に公定歩合が一厘引き下げられた。新聞等では、いよいよ低金利政策の展開始まると、こういうふうな見出しで新聞にも出ておったわけです。そこで、私どもとしてはこの金利が下がり、企業の金利負担が少なくなることは、むろんこれは歓迎するわけでございますが、昨年の十月、それから十一月と、こう二回にわたって公定歩合が引き下げられておるのです。で、続いて今回また引き下げられたわけでございます。で、三十五、六年に行なわれた低金利政策、いわゆる成長金融の失敗、これを再び繰り返す心配がないものかどうかという点を、私は非常に懸念するわけでございまするが、この点について、これは総理並びに大蔵大臣からお答え願います。
  205. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 新聞に、首相が指示したということが載っておることは見ておりますが、私は絶対に指示いたしておりません。もともと、たびたび申しておりますごとく、私は長い大蔵大臣生活のときに、総理に公定歩合の上げ下げについては相談したことは一切ございません。大蔵大臣が相談に来たときも、私は佐藤君が通産大臣のときに相談を受けましたが、それは大蔵大臣がきめるべきものだ、こう言ってはねております。今回におきましても、田中君が聞きに来ましたが、それは君、日銀総裁と相談しろ、大体建前は日銀の政策委員会できめる、大蔵大臣が相談することではない。指示するというふうなことは絶対にいたしておりません。私には私の意見がございますが——それは新聞がうそでございます。はっきり申し上げます。私には私の意見がございます。それは日ごろから、常に自分の考え方は大蔵大臣と連絡しなきゃならんことでございます。だから、こういう問題で指示したことはございません。  それから、この引き下げにつきましても、もうずっと前から二厘下げということは、有力な新聞の社説に二、三回も出ている。これは社説として出ておるじゃございませんか。だから、これは大蔵大臣と日銀総裁が考えてやっておるわけだ。しかし、いろいろ金利の引き下げについて、とやこう、失敗だったとか、成功だったとか言いますが、あとからの批評はあれでございますが、なかなかそううまくいくものじゃございません。長い間を見てから——やってみて初めて歴史が示すのでございます。今回の措置は、私は大蔵大臣から聞きまして適当であったと思います。失敗なんかじゃないと、こう考えている。世論もそう見ていると思います。
  206. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 公定歩合は、金融情勢を見ながら、日銀総裁が日銀の政策委員会の議を経て決定することでございまして、私は、当時三月十九日の日に御質問を受けましたが、そういうことは相談を受けておりません、知りませんと申し上げたら、それから一時間後に、特別発表がございましたので、この席であらためて了解を得たことをもってしても、御支持を賜わりたいと思うわけでございます。  それから日銀総裁は厳正中立を守っておりますから、正式には何も関与しておりませんし、絶対に選挙対策などということはない。選挙対策のにおいが幾ばくかでもあれば、世論は承知しないはずでございますが、公定歩合というものは、一厘引き下げれば二厘がいいとか、二厘引き下げればこれはもうたいへんだと、いろいろな議論があるのですが、少なくとも今度の一厘に対しては、比較的妥当な時期に妥当なことをやったのだと、おおむねそう考えておりますので、世論のおもむくところ、ちょうど金融環境が整備をされた時期を選んで行なわれたものであり、世論もこれを支持しておるというふうに考えております。  第二の問題に対しては、これがまた、公定歩合を引き上げなければならないような時期が来ると失敗だというふうに端的に申されるかもしれませんが、公定歩合という制度そのものが、金融の情勢を見て弾力的に運用して、金融の正常化をはかるものでございますから、私は、下げることによってこれが景気刺激であり、また、これが元に逆戻りするのだというふうに、極端に考えるべきでないと思いますし、また必要があればこれを引き上げて、もう少し公定歩合という問題に対してすなおなものの考え方をするようになることが望ましいというふうに考えておるのであります。
  207. 近藤信一

    近藤信一君 今、総理が色をなして、この新聞記事はうそだと、こう言われましたけれども、私は、天下の大新聞に、これは毎日新聞ですが、このトピック記事として出ているのですね。まんざらうそが天下の大新聞、毎日に出るとは私は思わないのだが、この最初のほうに、「慎重だった大蔵省」という見出しで、「首相としてはかねがね自由化の進展や八条国移行に備えて」云々と、こう書き出してあるわけです。私は、何も火のないところに煙が立つわけじゃないのだから、やはりこの新聞を全然うそだということになると、私は、毎日新聞をもう信用できないことになる、これはどうです。
  208. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 公定歩合の引き下げについて首相が指示したという、その指示は、どういうことでございましょう。それからの問題でございます。財政経済の問題は、大蔵大臣が所管事項としてやっております。しこうして、一般の政治問題の中心でございますから、随時相談はいたしております。しかし首相に、公定歩合の引き下げを日本銀行の政策委員に命じるという首相の権限はございません。先ほど来から説明しておるとおりでございます。そしてまた今お話に、これは選挙対策だと、こういうようなことをおっしゃいましたが、政治をよくし、経済をうまくやっていこうということが選挙対策ならば、私の考えておることは全部選挙対策と言えましょう。これは選挙対策と国の政治をよくしようといういろいろな施策とをこんがらがしちゃいかぬと私は思います。だから、首相が指示したということの定義をひとつきめてから、結論を出すことにいたしましょう。
  209. 近藤信一

    近藤信一君 ここに総理ももうごらんになったと思うのですが、真中に大きくこんな活字で「首相が強い指示」と、こういうことで、「決定早めたか統一地方選」と、こういうようなことでしょう。その中で、首相は、早期引き下げ指示とともに低金利政策のスタートをはなばなしくするためもあって、一挙に二厘引き下げるべきだとの意向を持っていたと言われると、こういう内容が書いてあるわけなんです。私は、そのところが指示したかしないか、それがわからないから今尋ねておるわけなんです。ところが、指示したことはないと、こう言われれば、ああそうかなと、私は思うだけです。あなたがどういう点を指示したかと、私はこの新聞を見て判断しているだけのことです。それでは、ここに書いてあるのはみんなうそですか。
  210. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 公定歩合につきましては、先ほども申し上げましたように、日銀総裁が、これを行なうときに政策委員の招集をいたします。招集をいたすとき、私のところに一応御相談がございます。これはもう相談をしないで政策委員会議でやるのが正しいのでございますが、大蔵省と日銀というのはうらはらでございまして、まさに一体的な考え方を持っておりますので、実際の運用上はそのようにしております。でありますから、私は、この間ここで鈴木強君から御質問を受けましたが、私は現在まで御相談を受けておりませんということです。が、その間にすぐ、日銀政策委員を招集されて決定がなされたということに対して、間髪を入れず、私は、ここで誤解を受けては悪いので、各種の事情を御説明して御了承を得たわけでございまして、その間において、総理にこういう問題に対して一厘とか二厘とかいうことを指示を求めたことはございません。また、総理から言われたこともございません。私は十一月、十二月ごろ、公定歩合の問題を、総理にお会いしたときに、公定歩合というものは日銀がやるのであって、せいぜい大蔵大臣が話し合いに応じてやるべきもので、そういうものは総理のところへ持ち込んでくるものではない。大蔵大臣もしろうとだからと、こう言われたので……、もちろん相談を受けておりません。
  211. 近藤信一

    近藤信一君 大蔵大臣は非常に頭がいいし、頭の回転が早いから、私ども大蔵大臣と議論してもどうも追いつきませんが、また答弁するのもえらく大蔵大臣は楽しんで答弁しておられるので、私も非常に頼もしいと思っている。  そこで、今回の公定歩合の引き下げは、成長金融とは言っておりませんけれども、金利の国際水準へのさや寄せ、いわゆる企業の国際競争力の強化をねらったものでありまして、現実の金融情勢の反映というよりも、やはり外からの要請、それから人為的天下り的性格が強いのであろうと私は思う。そこで、金融市場の実情を無視して金利を下げますと、どこかにひずみが入るわけなんです。そこで大蔵大臣は再開国会の冒頭財政演説の中で、金利引き下げの環境を作ることが肝心だと、こういうことを言われましたのですが、そこで、低金利政策の条件作りには十分これは考慮されたと思いまするが、三十五、六年の失敗を繰り返さない、こういうような保証がありますか。
  212. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 保証はございませんが、そういう状態を繰り返してはたいへんだということを考えているわけでございます。国際収支改善対策を急いでおりまして、これが過程において、金利の二厘の引き上げを行なったわけでございますが、昨年からIMF八条国移行の問題は、時期の問題であるとすべての人が考えられるような状況でございましたので、三十八年度予算編成にあたりましては、これが自由化——八条国移行に対処してあらゆる施策を広範に検討いたしましたことは当然でございます。その意味において、金融の正常化ということをはかるために、日銀が人為的な買いオペレーションの制度を作りましたり、また相互銀行や信用金庫に対して公社債の持ち高をだんだん上げていただいたり、日銀との信用取引口座を開きましたり、日銀の買いオペレーションの対象として金融債、電電債までこれの対象を広げましたり、公社債の流通市場の育成強化をはかりましたり、いわゆる日銀のオーバー・ローンの解消というものに対しては、あらゆる措置をとってきておるわけでございます。でありますから、昨年の七、八月以降からとられて参りました各種の施策をずっと御検討願いますときに、今度の公定歩合一厘引き下げも、当然に行なわれたものではなく、金融環境の整備が行なわれておる環境の中で一連の施策の一つとして日銀が踏み切られたものであるというふうに理解しておりまして、これもだんだん金融環境が整備されてくると同時に、国際金利へのさや寄せ式な合理化等、各般の施策があわせて行なわれていくものと考えるわけでございます。
  213. 近藤信一

    近藤信一君 公定歩合が引き下げられ、それから市中金利もそれに追随して下がることは、これは私は当然だと思うのですが、金利が下がりますると、当然のことでございますが、資金に対する今度は需要も増大してくるわけなんです。増大した資金需要をまかなうには、十分な資金の供給があれば、これはいいわけでございまするけれども、ない場合、いわゆる選別融資ですね、選別融資が行なわれて、大企業や銀行と特殊な関係にある系列会社、系列企業、それが低金利の恩恵にあずかるということは、過去にもあったわけなんです。今度の場合も、こういう点が私は心配になるわけですが、その点はどうですか。
  214. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 公定歩合の引き下げによりまして、金融機関は直ちに連絡会合を開きまして、二十五日から、短期貸し出しの金利を一厘下げるということにいたしたわけでございます。これに引き続いて、損保も生保も、同じような措置をとっております。しかし、中小企業に対してどうするかというような問題もありましたので、政府としては、これが短期金利を追随して下げる場合に、中小企業向けの金利の引き下げ、こういうものに対しては、格段の配慮を願いたいということを、私からも、十分大蔵省側の意見を通じてございます。これからの問題としては、金利が下がってくるので景気過熱になり、設備投資がまたぞろ過熱状態に入るのではないかということが、どこでも言われるのでありますが、もうそうなってはいけないのでありますし、そうならないように日本人として考えてもらわなければならないわけであります。これが計画経済であり、統制経済であり、金融統制をしているなら、これは何でも理屈どおりにいくのでございますが、自由経済の中で正常な状態で長期安定をはかっていくということは、言うにやすくして非常にむずかしい問題でございます。でありますが、その前提となるものは、八条国移行であり、ガットの十一条国移行であり、自由化は目睫に迫っているのでありますし、関税は引き下げなければならない、それ以外に日本人の立つ道はないということは、動かすことのできない事実であります。でありますから、そのときに、国際金利にさや寄せしていくという状態が作られているときに、国際収支はどうあっても、おれはとにかく設備投資をするんだというような考え方を持つ企業家がたくさんいると、もう国際収支のまた逆調という問題が出て参りまして、今度こそ、もう一ぺん思い切って引き締めなければならない状態が来るわけでございますから、やはり銀行家も、また産業の責任者も、また労働組合も、政府も、また私たち日本人も、やはり一体になってこの難局に処していくんだというためには、まじめにものを考えて、やはり日本全体の国際収支というものに絶えず目を配りながら、みずからの首を締めるような設備投資拡大をして過熱せしむるというような、前に歩いた道を再び歩くべきじゃないというためには、国民各位の強い自覚をお願いをいたしておるわけであります。
  215. 近藤信一

    近藤信一君 中小企業の方に会っていろいろ聞いてみますると、金利は少しぐらい高くてもいいから、ある程度の量を借りたい、こういう人が多いんですね、実際は。で、金利の引き下げをはかると同時に、安い資金の一定量を中小企業など、銀行の選別融資ワクから落ちてしまいそうなもののために、これは確保するということが私は重要なことだと思うんです。それでないと、この中小企業のあれが選別融資からどうも見放されるというような危険が私は大きいんじゃないかと思うんですが、この点、どうですか。
  216. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そういうことがあってはならないということを原則に考えておるわけでございますし、中小企業基本法が制定されるのでありますし、特に二面において景気過熱といわれた当時、大企業等は、また基幹産業等は、設備が過重になったというくらいに施設投資が行なわれたわけでありますが、そのあとに続く中小企業は、設備近代化等がまだおくれておるわけでございますから、中小企業に対して特別に配意していかなければならない段階に至っておるわけでございます。その意味においては、金利を引き下げたからといって、大企業だけに優先するのじゃなく、今までの設備投資その他全部借入金によっておったというところに、需要と供給がアンバランスになって、金利が高くなったわけでございますから、今度は環境づくりをやりまして、一方においては貯蓄増強ということをやっております。でありますから、私本皆さんにいろいろなことを申されながらも、今度の減税政策において、預貯金の一〇%を五%に分離課税いたしたわけでございます。同時に、借入金によってまかなっておるものが非常に多いので、自己資本をふやすためにも、減税法によりまして資本蓄積に資するような方法をとっておるわけであります。同時に、外資に対しても道を開いておるわけでございます。でありまするから、政府金融機関を初めとして、中小企業に対しては、今までより以上に中小企業の金利負担を軽減してやらなければならないし、また、必要なる資金量確保に対しては、特段の配意を必要とするという考え方を基本にいたしているわけであります。
  217. 近藤信一

    近藤信一君 昭和三十五、六年当時、成長金融態勢の名のもとに行なわれた公定歩合の引き下げが、事実上アメリカの短期資本の流出を阻止する役割を果たした、日本にあまり流れてこないようにしてドル防衛に協力する政策の一環であったのだと私は思うのです。それで今日翻って考えてみますると、明らかになっていると思うのですが、アメリカは膨大軍事予算中心の赤字財政のため、相当な国際収支の赤字が予想されておりまして、金の流出も一そう激化するのじゃなかろうか、こういうふうに思うのですが、大臣の考え方はどうですか。
  218. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 公定歩合を引き下げましたことによって、ドル防衛がポンド防衛に一役を買っているということを申されるのはいかがかと思います。これはアメリカやイギリスが、日本はなかなか協力してくれているわい、こういうふうにお考え下さるのは非常にありがたいことでございますが、そういう国々に協力するなどというよりも、日本が自由化に対処してどうしていくのかということを、まず前提に考えているのでございますから、ここはひとつ御理解賜わりたいと思います。  それから現在のユーロ・ダラーその他の流出状況を見ますと、御承知のとおり、まだ金利は高いのでございます。でありますから、この間までユーロ・ダラーの流入一億ドル近くになったということで、約一カ月の間に三回も金利の引き上げを行なっているわけでございます。まあしかし、世界の主要工業国から見ますと、まだ日本は金利を引き下げるとか、それから国際金利にさや寄せをしたいということを言っておりますし、日本が不景気だからという議論もありますが、私は、やはり原則は外国から見たら、総理が言われるとおり、やはり日本は格好の投資場であるということだけは間違いないようでございます。これはアメリカが大減税をやって、内需をかき立てようとしております。イギリスも大減税をやり、まず国内消費をと言っておりますが、近時イギリス、西ドイツ、アメリカ等の市場を見ましても、日本に対する投資というものは、昨年から非常にピッチを上げて市場が正常化されておる、また、日本の対外信用が非常に高くなっているということをまじめに考えますと、すなおに見ていただければ、この程度のことをもって外国から長期良質な外資が日本に流入してくることを阻止する役目にはならないというふうに考えております。で、私たち自身も、日本産業のために、われわれ日本人のために必要な、長期安定的な、良質な外貨に対しては、これを積極的に受け入れるという態勢をとっておりますので、外国に協力をするということも外交上必要でございますが、まずわが国の生活基盤、産業基盤強化ということを第一義にしておるわけであります。
  219. 近藤信一

    近藤信一君 西欧諸国では、ドル防衛に協力する云々と、こういうようなことを、きれいなことを言っておるわけですが、外貨準備のうちの金の割合を寿々と高めつつあることもこれは事実でありまして、わが国も、今回の公定歩合の引き下げが必ずしもそうだとは私は申しませんが、ドル防衛に協力するばかりが能じゃない、次第に金を賢い入れる必要があると私は思うんですが、わが国の外貨準備の中で金の割合はどのくらいになっておるか、この点お尋ねいたします。
  220. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 二月の末現在で申し上げますが、外貨準備高十八億五千六百万ドルのうち、金の保有高は二億八千九百万ドルでございます。あとは外貨で十五億六千七百万ドル持っておるわけでございます。これは、米国、カナダ、フランス、西独、イタリー、オランダ、スイス、英国等の先進工業国に比べますと、外貨準備高と、そのうちに保有する金の保有率というものを比べると、確かに日本は低いのでございます。でありますから、これから積極的に買わなければならぬというような態度ではございませんが、外貨準備の許す範囲内において徐々に金の取得ということを考慮すべきであるというように考えております。
  221. 近藤信一

    近藤信一君 どうも、時間がどんどんくるので、この程度にしておきまして、次に総理お尋ねするわけでございますが、低金利政策をこれからやっていく環境が整っているかどうかという点から最近の経済情勢を見てみますると、輸入が漸増傾向をたどっている反面におきまして、アメリカや東南アジア向けの輸出が目立って落ちてあると私思うのであります。設備投資が、合成繊維、それから石油化学、石油精製を中心に、再び増加してきそうな気配があるわけでございますが、外貨準備は十九億ドル近くになっておりますけれども、そのうちの少なくとも数億ドルは短期外資で信頼を置けない等々、幾つかの気がかりな特徴があるわけなんであります。その中で一番の問題は、何といっても物価、特に消費者物価だと思うのですが、昨年一年は引き締めの年だといわれたのでございますが、それでも消費者物価は年間を通じて六・七%も上がっていると、こういわれている。政府は昨年三月物価安定総合対策なるものを決定したはずなんだけれども、その効果というものが私は一向になかったじゃないか、こう思うんです。昨年の十一月以降は、いわゆる金融緩和を期待して、そうして卸売物価も次第に強含みとなってきております。このような物価の上昇傾向をほうっておきますると、いたずらに低金利政策をとることは、物価の上昇傾向に拍車をかけるおそれがあると思うんです。物価問題について政府対策はどういうふうになっておるのか、この点総理からお答え願います。企画庁長官でも……。
  222. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどからこれについては何度か繰り返して御説明申し上げておるわけでございますが、総合物価安定対策をとりました一つの結果として、昨年の五月ごろから十一月ごろまで大体物価は指数にいたしまして一一二から一二二というあたりを歩きまして、この期間がほぼ半年まずまず消費者物価が安定しておったときでございます。これはやはり、十三項目ばかりございますが、各施策がまずまずじみながら効果を発揮しておったときと考えます。十二月に消費者米価の値上げがございました。これはある程度消費者物価に反映することは私ども覚悟をいたしております。そこで少し踏み上げまして、本来ならばそう大きな動きがないであろうと予想しておったわけでございますが、先ほどから繰り返し申し上げましたような理由で、一月、二月、おそらくは三月も消費者物価が少しずつ上がり続けるということであろうと思います。そうして、その原因は、先刻来申し上げました生鮮食料品が九二・三%くらい寄与をしておる、こういうことでございますから、この問題が当面の対策であって、そうしてその後は、三十八年度のような見通し得る経済情勢であれば、鉱工業生産からくるところの製品は、従来とも、価格が下がるか、あるいは価格が同じである場合には内容が向上しておるということでございますので、若干光熱費などに動きがございましても、相当安定した消費者物価の動きをたどるはずである、そうなるのがむしろ当然ではないかというような見方を全いたしております。当面の重点は、したがって、先ほども申し上げましたような、直接生活に一番関係の深い生鮮食料品等を主体に施策をとっておるわけでございます。
  223. 近藤信一

    近藤信一君 今、長官が御答弁されましたが、私は長官の考え方はちょっと甘いのじゃないかと思うのです。新聞なんかでも、まだまだこれは物価は上がってくるというふうにいろいろと出ておりますし、やはり私は、昨年から今年、さらに来年度——三十八年度は、まだ私は、いろいろな公共料金の値上げなんかも今問題になっておるときでございまするから、これらがもし上がるとすれば、さらにその他の日用品が、小売物価というものが上がってくる傾向が強いのじゃないかと、私はこう見るのですが、その点はどうですか。
  224. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) サービス料金については、多少そういう要素があるかと思います。しかし、他方で、いわゆる鉱工業生産の製品については、むしろ荷もたれが当分続く、かつ操業短縮が続くというような状態でございますので、卸売物価そのものが動いてくるとは考えられませんし、そういうことから、小売物価に影響があるというふうにはどうも考えにくいのでございます。この二、三カ月ちょっとそういうことが急にございましたので、何となく国民に不安を与えておるということは、これは申しわけないことだと思いますが、分析いたしまして、どうも三十八年度に大きな消費者物価の値上がりがあるということは考えられないというふうに私どもは思うわけでございます。
  225. 近藤信一

    近藤信一君 朝から長官の答弁、他の同僚諸君にも答弁しておられるように、物価の値上げの一番大きなものが農産物−野菜等であった、こういうようなあれでございましたが、それをだんだんと今もう押えてきて、一応野菜類の値上がりというものはとまった形になっておる、ちょっと下がったくらいだと、こういうふうなことでございまするが、私が今申しましたバスですね、これは各都市におけるバスもそうでございまするが、民間のバスもそうでございます。それからふろ代、こういうふうなものが上がるのじゃないか。まあ今それぞれ申請をやっておるわけなんですが、そういうものは、これはそういつまでもじゃあ今の現状のまま押えていけるかというと、これはなかなか押えていけぬじゃないかと、これは選挙でも済んだらこの点もぼつぼつしがってくるんじゃないか。そうすれば、これにつられた形で他のものもずっと上昇の機運が出てくる、こういう場合に、じゃあどういうふうに対処していかれるお考えであるか。それとも、バスや、ふろ代、そういうものはここのところ半年なり一年なり絶対上げないと、こういうふうにあなたのほうではお考えになっておられるのか、その点はどうですか。
  226. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先刻総理大臣からもそれについて実は答弁をされたわけでございますし、私も二、三度申し上げたわけでございますが、それは、バスにいたしましても、あるいはビールなどにいたしましても、一応値上げをしたいと言われる側の理屈もその立場に立って考えればございます。しかし、それは必要がないではないか、こういう点に再考の余地はありはしないかという理屈も、十分私どものほうで考えて申せるわけでございます。で、少なくとも生活に現在のような消費者物価の動きがあるという不安があります限りは、こういうものについてはしんぼうのできる種類のものと思いますので、しんぼうをしていただきたい。私どもそういうものの値上がりを認めることは適当でないという立場をとり続けるつもりでございます。  公衆浴場につきましては、実は調査がまだ完了いたしておりませんので、企業者が零細であるという点もあるかと存じますが、これについてはまだ調査が完了いたしておりませんので、話を受け取っておりません。全体的にはそういう心組みでございます。
  227. 近藤信一

    近藤信一君 過日の新聞によりますると、総理大臣の諮問機関である経済審議会は、例の所得倍増計画の再検討の作業にかかった、こういうことでございますが、これは政府みずからが倍増計画の誤りを認めたものにほかならない、私はこう思うのです。そこで、この点を再検討をして、あなたのほうでは、政府としてはもう一ぺん考えると、所得倍増計画失敗だったと、こういうふうにお考えになるのか、いやそうじゃない、当初の計画は間違いじゃなかったと、こういうふうに思われるのか、この点長官
  228. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど総理もその点に触れて答弁をしておられたわけでございますが、私ども、所得倍増計画というものは、一つのものの考え方でありまして、あれにいろいろ数字が入っておりますけれども、数字はそれを計数で表わすところのバック・データであるというふうに認識をいたしておりますから、したがって、国民の所得を伸ばし、経済基盤を強化し、福祉国家を作るという所得倍増計画に考えられておるところの思想及び理想というものは、これは少しも改める必要のないものであって、ただ現実に経済の動きというものは、計画が予想しておったよりもはるかに上回った、また、上回りました結果、一部にアンバランスというものも生じておる、こういうことであると思うのでございます。でございますから、過ぎ去りました二年間、少なくともどういう事情で計画を立てました当時見通しておったことが狂ったのか、それは何ゆえであったか、その結果現状はどういうものであるか、こういうことを大体秋ごろまでかかりまして各方面の権威を動員してやってみたいと考えておるわけでございます。それからあと、その後を予測いたしますか、いたしませんか、それは作業のでき上がり方によるものと考えておるわけでございます。
  229. 近藤信一

    近藤信一君 次に、綿製品問題についてお尋ねをするわけでございますが、綿製品の交渉が行き詰まって、その後何ら進んでいない。本日磯野繊維局長アメリカ日本代表として行かれたようでございまするが、この問題は私が去る二月二十二日の本会議において緊急質問を行なったわけでございますが、そのときに、大卒外務大臣、それから福田通産大臣、この両大臣の答弁は、私はきわめて不満足でございましたが、本日は総理もおられますので、この問題についてお尋ねするわけでございまするが、去る二十二日の私の緊急質問のときの答弁されたその時点から今日までの間における綿製品の交渉の経過、それをひとつ、外務、それから通産、両大臣から、交渉の経過をお願いします。
  230. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その後、二月二十九日に経済閣僚懇談会等を開きまして、交渉に臨む基本的な態度をおきめいただいたのでございます。それは長期協定の原則、すなわち今後五年間ルールするものでございますから、ことしだけのことを考えずに、また第三国への影響等も考えて、長期協定の精神をあくまで堅持して先方に対して臨むようにということでございまして、実行につきましては、通産大臣と私とにおまかせをいただいたわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、三月六日に、長期協定の解釈につきまして、六、項目にわたって先方に申し入れたわけでございます。しかるところ、三月の十九日に先方から返事がございました。これは、私どもが申し入れた六項目についての解釈問題について、いわば、イエスという態度でもございませんが、ノーという態度でもございませんでした。市場撹乱条項その他の第三条の問題にいつまでも拘泥しておってはなかなか問題が進展しないので、同じ長期協定の第四条によって実質交渉に入ろうじゃありませんかという意味の返事でございました。私どもの判断では、先方もやや柔軟な態度に出てこられたように判断いたしまして、このラインで実質交渉に入ってみようということで、本日担当局長が向こうに出かけるというような経緯になっております。
  231. 福田一

    国務大臣(福田一君) ただいま外務大臣からお答えしたとおりの経緯でございます。
  232. 近藤信一

    近藤信一君 すると、第三条のあれで、今大臣が言われました、日本から六項目向こうへ出したのですね、その具体的な回答がないうちに、今度は第四条に移行して、二国間協定をやろう、こういうことに今なっているわけなんですが、そういたしますと、この第三条の市場撹乱というものは、これは弔うアメリカのほうで、そういうことは解消したのだ、もうそういうことは思っていないのだ、こういうふうに解釈しても、この点はいいのですか。
  233. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、イエスでもない、ノーでもないということでございまして、したがって、私どもが申し入れたことは、そのまま先方もティク・ノートしておると思うのです。しかし、二月十三日にこちらに申し入れがあった、その線を先方がもう全部一応御破算にするのだという態度でもないのです。したがって、それはそのまま両方ともあるわけでございますが、しかし、いつまでもこういう状態では実質的な妥結ということの遷延を見るばかりでございますので、ひとつ分別を出そうじゃないか、しかも、それを先方が当方に申し入れるにつきましては、やや先ほど申しました弾力的な態度に見えますので、このあたりでひとつ局面の展開をはかってみようということでございます。
  234. 近藤信一

    近藤信一君 で、市場撹乱の事実はないということで、日本から向こうのほうに六項目申し入れをしたわけですね。それに対する具体的な回答もなく、さっと体をかわして、向こうは、今度は第四条の二国間協定をやろう、こういうことで今度はきておるわけなんですが、これは実際アメリカの経済外交というのは私はなかなか巧妙だと、とう思うのです。で、交渉が長引きまして、実際の輸出契約のキャンセルなども、これ今出始めておると私は思うのですが、特に二次製品業界では早期妥結を望んでいる声が非常に強い。綿製品の業界の大部分を占めておるのが、これは中小企業者が非常に多いわけなんで、それに従事する労働者にとっても、この問題の解決ということは非常に差し迫った問題であろうと私は思う。そこで、現実的な妥協を望む声が出ております場合に、アメリカのほうの経済外交というものを詳細にひとつ観察をされまして、そうしてこの経済外交に対しては十分に大千外相も取っ組んでもらいたい。で、私は、このわが国から輸出しておりまするところの数量、これは一方的にアメリカ側も主張をのむことは当然できないと思う。それから前に、意見の一致が困難であるとか、市場混乱をさしているとかしていないとかいうことは、解釈上の問題も非常に私はあったのじゃないかと思う。これは、ファスナーや、それからテープ、それから人形に着せてある薄物、ああいうものまでアメリカのほうでは計算に入れて、そうして日本アメリカに綿製品を、規定以外に来ているのだ、こういうふうなことを言って、解釈上の問題が私は相当両国の食い違いの大きな原因でなかったかと、こう思うのですが、この点はどうですか。
  235. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう問題もありましたが、現在の段階では、四条に基づく交渉に入りますと、今言及されたような問題が交渉の内容になってくるわけでございます。
  236. 近藤信一

    近藤信一君 綿製品輸出につきましては、わが国は過去七年間にわたりまして自主規制を行なってきておるが、綿製品のみならず、やはり陶磁器だとか、また金属洋食器、いろいろな品目についても、輸出に対しましては今まで何回も問題があったと思うのであります。日本が自主規制をアメリカからしいられて、しかも、この対米貿易だけでなくして、今ヨーロッパ貿易においてもやっぱりそういうふうな規制というものが加えられてきておる、こういう状態に私はあると思うのですが、この点はどうですか。新聞にもちょいちょい出ておる。
  237. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本特有の非常に競争力の強い産業の製品につきましては、そういうことが過去においてございましたし、そうしてそのことは、他からしいられて実行せざるを得ないと申し上げるよりは、秩序ある輸出を長期にわたって拡大方向に持っていくためには、わが国の利益のためにも自主的に考えるべき性質のものであったと思うのでございます。しかしまた、ヨーロッパ方面で輸入規制が現にございましたけれども、そういう品目はだんだん整理いたしまして、一部は自由化し、一部は規制品目として依然として残り、一部は自主規制に回すというような措置を長い交渉を通じてやってきているわけでございます。それで、自主規制に持っていったほうが、輸入規制の品目として残存しておるよりはわが国に有利でございますので、そういった措置を鋭意講じてきておるのでございますが、全体として、輸入規制、大きな意味における輸入規制という範囲はだんだんと狭くなる。また、それに期限をつけて、ターミナルをはっきりさせていくという方向に私どもの施策が進んでおるわけでございます。
  238. 近藤信一

    近藤信一君 欧米先進諸国の自由化率はわが国よりは高いことになっておりますが、その結果、日本に対して貿易の自由化の促進を迫っているのでございまするが、それと同時に、日本のような輸出国に対して、多くの自主規制というものを要求してきておる。で、自分のほうでは割当制をとらないが、相手の国に対しては自主規制という、こういう犠牲を押しつけておる。これは、事実上は輸入制限を行なっていると私は解釈するわけですが、これでは、先進国と称する国々の自由化率は、自由化率そのものは高くても、その自由化率はあまり意味がないということであろう。で、自国の輸入制限を、相手の国の自主規制という名目でカムフラージュしておる現実を深刻に考えてみますると、私は、こういう問題もおかしいじゃないか、こう思うのですが、この点どうですか。
  239. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、輸入制限を受けるというよりは、こちら側の自主規制のほうが、わが国にとって得策なのでございまして、従来輸入制限品目であったものの自由化を迫り、同時に、ただいまの段階でむずかしいというものにつきましては、自主規制に落としたものもあるわけでございますが、全体として、先ほど申しましたように、輸入規制の範囲がだんだん狭くなっておるし、期限をつけてやるという方向に着実にいっておるわけでございます。
  240. 近藤信一

    近藤信一君 次に、建設大臣にお尋ねをするわけでございますが、このごろの新聞の社会面を見てみますると、まあ、青少年の不良化、それから交通事故、それから火災、こういうふうなことが、もうすぐ目につくわけなんでございます。で、火災については、これは最近また下火になったようにも私は思うのですが、これは新聞に出ないだけかもしれませんが、毎年この火災で日本の失うところの住宅というものは非常に大きい。  そこで私は、いつまでもちゃちな住宅でなくして、やはり火事が起きてもばらばらと二一、三十軒すぐ燃えるということでなく、燃えない不燃化の住宅建築、こういうことを私は考えなきゃならぬのじゃないかと思う。これは、だんだんと合そういう方向に向かいつつある。建設省としても努力をしておられるわけでありますが、政府は率先して、私はそういう不燃化の方向へいくべきじゃないかと思うのです。三十八年度の建築不燃率の予定を見ますると、公営住宅において七四%、それから公庫住宅におきましては四六・五%、こういうようになっておるわけなんですが、これを将来全部不燃化にする、こういうふうなことは、まあ一つの住宅革命ということにもなるわけですが、特に頭の切れる河野建設大臣のことでございまするから、もうこれは間違いないと思うのですが、この点はどうですか。
  241. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お話のとおり、政府におきましても、鋭意不燃焼住宅に移行していく努力をしておりますが、何分、予算の関係もございますし、また、今お話しになりましたのは、地方の公共団体、公団、公社の場合は全部百パーセントされる——御承知のとおりに、今政府の計画は、政府自身が建てますのと、民間の方々が御自身でお建てになるのと、民間の方々が御自身でお建てになる分が六割以上あるわけであります。そういう関係からいたしまして、そのほうが比較的不燃焼というわけに参りませんので、全体を見ていきますと、まだなかなかそこまで参りませんけれども政府自身としましては、また住宅金融公庫あたりで融資する場合におきましても、なるべくそういうことを慫慂して参るということで努力いたしておるわけであります。
  242. 近藤信一

    近藤信一君 今建設省では、宅地づくりの法案などを出そうとされまして、いろいろと土地の問題については考えておられるようでございまするけれども、やはり土地の高騰に関する緊急対策でありますが、これは昨年建設省で施策らしいものを発表されたわけですが、相変わらず現在も年率五割くらいの高騰を続けておる。で、昨年三月の本予算委員会におきましても、わが党の大村穂八郎氏が鋭く指摘したように、土地を見返りに銀行から貸し出しをやる、それが今度は日銀券の貸し出し増加の大きな原因になる、こういうことで、昨年木村氏がいろいろ本委員会で追及されたわけなんであります。そこで、この土地の高騰に対する抑制策といいますか、こういうものは、この前の団地大規模開発、宅地づくり法案、これで抑制ができるかどうか、これは大臣、どうですか。
  243. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私が申し上げるまでもなく、需要供給の関係が、どうもバランスが合いません。これを押えることはなかなか困難であります。鋭意公団、公社等で造成をいたしますとか、ないしはまた、政府自身におきましてもそういう方向に指導する、または大都市周辺に大規模の団地を作るとかいうようなことはいたしておりますけれども、なかなか所期の計画を達成することが困難でございます。問題は、大都市周辺の道路を整備いたしまして、期待される、利用される道路をなるべく広範囲に求めることができるようにするということが一番適切な早い方法だろうと思います。そういう意味で、鋭意私は、東京、大阪、神戸、名古屋というような大都市の周辺に高速度道路というものを作るというようなことに努力いたしておりますので、これらがある程度完備いたしますれば、従来一時間以上かかりましたものが、バスで三十分で来られる場所がたくさんできてくるということになりますと、相当広い所から住宅適地が得られるということでありますから、相当緩和されるのではなかろうかというので、その方向に実は力を注いでおるわけでございまして、ある程度この道路ができますれば、そういう方面の開発に向かっていくということに努力したいと思っております。
  244. 近藤信一

    近藤信一君 特に河野建設大臣は、道路の建設については相当重点を償いておられるようでございますが、本来、道路の建設ということは、その期限より延びるのが普通なのだが、河野さんは、それを期限より早くやれと叱咤督励しておられる。過日も、二月十六日でしたか、名四国道の開通式がございまして、河野さんも出席されまして、あのときに地元から非常に喜ばれて、あなたが地元の各代表から最高の賛辞を受けられたことは、私もこの目で見たのです。  そこで私は、河野さんが道路行政に十分力を入れておられる、そこで、もう一つ河野さんにやってもらいたいことは、昔から行年の大計ということを言いますけれども、道路の問題なんか、百年の大計ではなく、十年の大計を立てなければならない。せっかく建設される国道が  私はちょうとあのときに、四日市から名古屋までずっと来たわけなんですが、せっかくりっぱなきれいな道路ができても、あの幅員では、一年か二年たつうちに、やはり交通の麻痺状態が私は出てくるように思うのです。そこで、せっかく国道を作るのでございますから、あの幅員をもう少し広くするというようなことは考えられないものかどうか、この点、どうですか。
  245. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) なるべくお話のようにいたしたいと考えまして、来年度から建設に着手いたしますものにつきましては、一応舗装するものは、さしあたりの使用の二車線なり四車線なりいたしまして、しかし道路の用地としては、さらに広く買っておくということで、主要道路についてはそういう計画で実は進めようと思っておるわけでございます。  実は、そうは申しましても、名四国道のお話が今出ましたから申し上げますが、名四国道でも、なかなか日本の経済はこまこうございますから、旧道路を通るのと名四国道を通るのと、ガソリンの使用量はどういうことになるか、どちらを通るほうがどうだろうということで、現にトラックは依然として新道路は通らない、乗用車だけ通りまして、トラックの道路と自家用車の道路が分かれるというぐらいにこまかく出て参りますから、これらも十分また建設する場合についても勘案してやりませんと、計算が狂うというようなことになりますので、十分研究調査をしたししで、なるべくお話の方向にいきたいと考えております。
  246. 近藤信一

    近藤信一君 そこで、問題があるのは、日本の道路が非常に狭いという関係もございまして、道路交通法違反でびしびしと取り締まられ、そしてわずかな給料の中から今日では高い罰金を徴収されるおけなんでございます。この罰金徴収の区別を見てみますると、追い越しとか駐車禁止違反だとか、それから右折禁止だとか、そんなようなことが多いのじゃないか、スピード違反とか。道路がもっと広ければスピードをもっと出せるし、追い越しも、そうやかましく言わなくても私は済むと思うので、一体、今そういう運転手からしぼり上げる罰金は、年間どれぐらいありますか。
  247. 中垣國男

    国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。  御指摘のとおりに、道路交通違反は年々増加の一路をたどっておるわけでございますが、三十六年度の会計年度におきましての、裁判所における罰金並びに科料言い渡しによりまして、現金、印紙その他をもちまして収納された金額は、全体で八十四億九千万円でございます。その中で、道路交通法の違反によりまして科刑をされましたものの件数の割合でいきますと、約九割になるのでありますが、他の刑法犯の罰金、科料が少し重いのでありますから、概算いたしますと、七十億程度が道路交通法違反者によって納められておる罰金及び科料であると存じます。
  248. 近藤信一

    近藤信一君 今法務大臣からのお答えでわかりましたが、年間八十四億九千万円——八十五億ですが、八十五億もですね、罰金で納めるわけですが、納める人は、これは運転手、安い給料で働いておる運転手なんですが、この運転手が、自分のわずかの給料から罰金を納めなければならない。そうしていろいろと生計にも困ってくるわけですが、この八十五億という金は、ガソリン税が道路の整備費の目的に使われるように、この八十五億という金をですね、道路整備とか、または立体交差、そういう方向に使うような方法というものは考えられないものですか、どうですか、この点。
  249. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 特定財源、いわゆる目的税式なものに対しては、あなたの言うように使うわけにいかないわけでございます。しかし、道路整備の財源というものは、ガソリン税と同相当額を道路整備の財源に盛っておりますので、その上に罰金まで盛るということは、ちょっと他に及ぼす影響もありますし、波及いたしますので、そういうことをする考えはありません。ありませんが、それ以上のものを盛っておるということを御理解願いたいと思います。
  250. 近藤信一

    近藤信一君 ただいま大蔵大臣は、道路整備の目的には使えない、こう言われる。それ以上のものを道路整備に出しておると、こう言われますけれども、それ以上出しておる上へ、やはりこの罰金を取られるのは、道路が狭い、それがおもな原因だと思うから、やはりそういう方向へ使うべきが当然じゃないか、そうすれば、何も運転手が狭いところを走って、罰金を取られることもなくなる、こういうふうに私は思う。この点河野さんどうですか。もらうほうとして。
  251. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 道路の幅が狭いから広いからということは、私は関係ないと思います。といいますことは、今第二阪神国道は幅員五十メートルで完成いたしました。五十メートルにいたしましたが、ここにスピードアップしようという要望がだいぶ強うございますが、公安委員会等は、これ以上早めることはますます危険で、とうていスピードを早めることはできない、相当の設備はいたしておりますけれども、まだなかなか、沿道の住民の諸君の側から申しますと、危険が多いというので、取り締まりはさらに厳重にしてくれという要望が強いわけであります。したがって、交通道徳をもう少し徹底して、そうして今お話しのように、運転手さんなどにはま  ことにお気の毒でございますけれども、運転手さん御自身が運転道徳に徹底して参るということが、まず第一に必要でありまして、そうでなければ、日本の場合には、なかなかそれはいかぬだろうと私は思うのです。したがって、今のこれを目的税にして、そうして道路を直すために罰金をじゃんじゃん取り立てるということになりますと、逆にまた社会の空気ということも考えなければなりませんので、苛斂誅求じゃございません、道路を作るためには、そういう目的税があろうがなかろうが、これはできるだけのことは大蔵省にお考え願うことにして、別にそれにひとつしるしをつけないで、金をたくさんもらうことに努力をして参りたいと考えておる次第でございます。
  252. 近藤信一

    近藤信一君 まあ、そこにお並びの大臣、みんな外国へ行っておられて、ようおわかりだと思うのですが、日本の国道では四十五キロという制限で抑えられている。今大臣が言われましたように、公安委員会で四十五キロと——四十五キロ以上出していけないというのは、これは道路が狭いから結局そういうことになる。外国へ行くと、百マイルぐらいで平気で飛ばしているものがたくさんある。私は、そういう思い切った、特に河野建設大臣は、池田内閣の中でも実力者と、こう言われておるのだから、あなたがひとつ、そういう革命的な道路計画というものをお立てになっても私はいいのじゃないかと、こう思うのですが、あなたは、将来日本の道路が、今の一級国道を走るのに、のろのろと四十五キロでよろしいと思われるのですか。
  253. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) これは、御承知のように、道路の幅員に影響するのでは私はないと思います。問題は、高い所を同じ平面で走りますにしても、横から子供が飛び出す。交通道徳が徹底しておりませんから、危険で、四十五キロ、五十キロでも危険がある。したがって、スピード・アップした道路のために、今目的地と目的地をつなぐハイウエー、高速道路を作るということに努力いたしておるのでございます。この方面は、スピード・アップしたものを走らすというつもりでございます。
  254. 近藤信一

    近藤信一君 時間がだんだんと切迫してくるから、こっちも質問しておっても気が気じゃないが、道路の問題はこのくらいにしまして、今度は、運輸大臣にお尋ねするわけでございますが、私は、このごろ海上における事故というものが非常に多いように思うんです。きょう資料をもらいました点を見ても、汽船、機帆船、こういうのをまぜて八千何百件というものが今日まで海難としてあげられておる。私のうちも代々が機帆船をやっておりまして、昭和十五年ごろまで機帆船がありました。七十トンばかりの舟を持っておりまして、私も子供時代から舟に乗っておったわけなんですが、そこで私は非常に心配になることは、海上事故、特に人命財産を預かるあの海上輸送の船がしばしば衝突する、衝突してすぐその瞬間に沈没してしまう、そうして尊い生命が奪われておる。こういうことは、私は非常に悲しむべき現象であろう、こう思うのであります。そこで、実際船の生命といいますか、年限——耐用年数というのかな、こういうのは、あなたのほうでは、何か規制というものはありますか。
  255. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) もちろんございます。大体鉄鋼船は二十五年となっておりますが、船種によっていろいろ違いますから、船舶局の中野首席船舶検査官をして答弁いたさせます。
  256. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 近藤委員、もう時間が来ましたから、簡単にお願いします。
  257. 近藤信一

    近藤信一君 そこで、私はこういう危険な海上  舟底一枚地獄だと、こういわれておる。こういう船に、耐用年数二十五年ですか、この二十五年の間、厳重な検査というものをおやりになっておると私は思うんですが、聞くところによりますと、その検査が、なかなか人員の不足や何かで思うようにいかぬ、こういうことも聞いておるわけなんですが、一体検査はどの程度あなたのほうでおやりになっておられますか。
  258. 中野由巳

    説明員(中野由巳君) お答えいたします。  ただいま、非常に船齢の古い船がございまして、これが海難に非常に関係があるということでございますが、もちろん、新造船よりも老齢船のほうが劣るということは当然でございますが、私どもといたしましては、船舶安全法におきまして、船は古くなるにつれまして検査の準規を強化いたしまして、厳重な検査を行なっております。したがいまして、大体検査証書を出す段階におきましては、船はそういった老齢なるがために危険であるという状態ではございません。  なお、船齢の二十五年という基準でございますが、これに対しましては、一応安全法上は、技術的に二十五年ということでやっておりまして、この二十五年は、外国のロイド、ABその他の国際的な海運国におきましても、おおむね二十五年ということで設定いたしております。
  259. 近藤信一

    近藤信一君 私たちしろうとから見ると、どうも船会社がボロ船を使っておるような気がする。それは、二月二十六日、ときわ丸が沈没したあれを新聞で見ましても、ぶつかった瞬間に、もうまつ二つになって沈んでしまっている。そういうふうな船は、私はやっぱりボロ船じゃないかと思う。船会社がボロ船をいつまでも使っているから、こういう危険が出てくる。やはり私は、少なくとも人間を輸送するという船については、もう少ししっかりした船、これを利用せなきやならぬと思うんですか、大臣どうですか、この点は。
  260. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) 全く同感でございます。
  261. 近藤信一

    近藤信一君 どうも、委員長が時間時間言われるから、気が気じゃないんですが、もう一つお尋ねしたいことは、今、自動車のはんらんで交通が麻痺状態に陥っていることは、もう大臣御承知のとおりだと思うんです。そこで、私がお尋ねしたいことは、都市または国道なんかに区分帯があるんですね、あれは一体何のためにありますか、区分帯。白線が引いてあり、そしてトラック、乗用車と分けてある。
  262. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) もちろん交通整理の必要上、交通規制をして、交通事故をなからしむる手段一つとしてやっております。
  263. 近藤信一

    近藤信一君 そこで、その区分帯を無視して走る車が非常に多い。特にトラックにそれがあって、乗用車がちっとも進めない。そうしてまた、区分帯を無視して、でっかい十ントなど、八トンなどという車が小さい乗用車のところに割り込んでくるから事故がよく起こる。こういう区分帯を無視した車の取り締まり方法、これはあなたのほうじゃない、警察のほうで、あなたのほうでないかもわかりませんが、これはどういうことでやっておられますか。
  264. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) もちろん区分帯を無視した者は、それぞれの規定に従って罰則を科しております。ただいま何十億か出している罰金の一種も、その中に入っております。
  265. 近藤信一

    近藤信一君 最後。請求がどんどんありますので、最後にお尋ねをしますが、区分帯で罰金をとるのはいいけれども、なかなか区分帯を無視したからといって、なかなか罰金をとっていない。初めて昨年の暮れだったか、名古屋でバスが区分帯を無視したからといって、罰金をとったという例が一つ新聞に出たのであります。そのほかに……。きちんと書いてあるのです。区分帯が道路に。区別が。そこを国道でめちゃくちゃに雷トラックが突っ込んでくる。こういうものは、もう少し取り締まりを私は強化してもらったならば、事故も一段と減ると思う。そうして願い生命というものも、そんなにぞうきんみたいに捨てられるということはない。特に私はこのごろ交通事故で悲しむことは、子供が非常に交通事故で生命を失う。ロスアンゼルスに私行きましたときに、そこで運転手が言っておった話は、ここで子供を一人殺したら一生涯かかっても罰金が払い切れぬと、こう言うのです。外国では子供の生命というものをそれほど大切にしている。ところが、日本へ参りますと、そうじやない。子供はほんとうにおとなの何分の一ぐらいの価値しかないような扱いなんです。死んだって、賠償金は子供だからといってわずかしか出さない。また、保険もそうなんです。こういうことでは、いつまでたっても今日の日本の交通におけるあの痛ましい事件というものは私はなくならない、とう思うのです。こういう点、その担当大臣である運輸大臣はもう少し研究をされて、そういう痛ましい事故というものをなくするこういうことにひとつ努力していただきたい、かようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。どうも長らくありがとうございました。
  266. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 近藤委員質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明二十九日は午前十一時に委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十七分散会