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説明員(宇佐美毅君) ただいまお尋ねのございました点につきまして、その
経過から申し上げて私
どもの考え方も申し上げたいと存じます。
問題になりました小説は、実はある雑誌におきまして二十六年の初めから連載をいたしているのでございますが、最近同じ会社の週刊誌におきまして、二月二十三日の浩宮様のお誕生の特集号といたしまして発行されましたものに大部分のものを再録いたしたものでございます。この小説は、小説ということでございまするけれ
ども、事実を追って書いたといわれているのでございまして、いわゆる実名小説というものにつきましては、われわれは全体としてあまり歓迎しない
態度でございます。初め書かれるときに、宮内庁のある係りに見えたことがございまして、そのときに、そういう実名小説を書かれることにつきましては遠慮を願いたいということをお話しをいたしたのでありますが、毎月連載されるに至ったわけで、そこでわれわれといたしましても
経過を見ておったのでございます。この小説が、小説という名におきながら実際を書いたという
立場をとっておりまして、いわゆる語録的な感じを与えておるわけであります。その中にいろいろ事実と違い、あるいは事実が曲がって述べられておる、あるいは相当の私的な点に深く入り過ぎるという点がございまして、われわれは、こういう出版、言論に対しましては慎重な
態度で見ておったのでございますが、最近におきまして、放置しておきましては、いろいろな世間に誤解も与え、また皇室の方々に御迷惑もかかるという
判断をいたしまして、出版社に対しましてこの掲載を中止し、これを一本にまとめて発行することを遠慮願いたいということを申し入れたわけであります。こういう点につきまして、出版社のほうも検討の結果、これを了承されまして、そういう措置をとるということに回答をいただいたわけでございます。私
どもといたしましては、さらにこれを雑誌協会というのがございますので、そのほうの理事会のほうにも
関係のものが出まして
経過を
説明して、今後においてもそういう点についての了承を願ったのでありますが、幸いに理事会といたしましては、それを全部了承されまして、近く総会にも話をするということでございます。私
どもは、皇室に関する問題は、いわゆる天皇制でございますとか、皇室制度というものがまじめに論議されることにつきまして何も言うことはございません。これは当然なことだと考えております。ただ、非常に興味本位、あるいは営利のにおいがするような報道、あるいは写真報道というものに対しましては、やはり一定の限界を、良識のある限界を保ってもらいたいといういう考えを持つわけでございます。一々こまかく事実に違うとか、あるいは若干の相違というものをこまかくほじくる気はございません。昨年度来私
どもは個々に対する問題よりも、そういった雑誌協会等におきまして、そういう点をよく考えていただいて、そういう少さなことでも積み重なりますと間違った
判断を読者に与えるということも出て参りますし、私
どもは、もう一つ皇室の方々は特殊な地位におられますから、われわれは私人よりもいわゆる私的な問題についても報道されるのは、ある点においてはやむを得ませんけれ
ども、しかし、やはりある一定の線というのは守るのはお互いの生活においても当然ではないかと考えるわけであります。そういうふうに発行されまして二年もたってどうかという御批評もあろうかと思いますが、われわれとしては、きわめて慎重に推移を見守り、そしてこの事件を解決すればよいというのではなく、今後において世論の動きも十分見きわめ、社会全体がこういう問題について理解ある
態度をとっていただくように願うことを、むしろ本願として今回のことをいたしたわけでございます。