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国務大臣(
田中角榮君) あなたが
先ほどから言われました問題もくるめて申し上げますと、政治路線をやりたいために大蔵省は鉄道建設公団を設けたのでは絶対ございませんから、これだけはひとつ明らかにいたしておきたいと思います。
国有鉄道というものは、御
承知のとおり、鉄道の建設もやるべきことを任務といたしております。でありますから、明治、大正にかけては、
先ほど申し上げたとおり、年間延べ千キロも鉄道建設をやってきたわけでございますが、戦後の荒廃から立ち直るということが急でありますのと、特に戦後十七、八年間で東京、大阪というような大都会に産業と人口が過度に集中いたしましたために、その東京、大阪のいわゆるメーン・パイプの修理をやったり増設をするのに手一ぱいでございまして、現在のままでしておりますと、新線の建設はできないのでございます。新線というものは大体赤字であるから、これは政治路線としてやればいいんだという——純経済論から簡単に測り切るならば、私は建設公団など作る必要はないのでございます。北海道の鉄道は、御
承知のとおり、明治初年から赤字でございます。北海道から一体鉄道を取ったらばどうなるでありましょう。鉄道とはそういうものでございます。鉄道というものは、鉄道という会計の中で、赤字であっても、その赤字の何十倍、何百倍という、いわゆる世に稗益して国の富を増しておるのが
日本国有鉄道の性質なんでございます。でありますから、御
承知のとおり、釈迦に説法でございますが、産業には、収入を得るように、酒や切手でも税金を取っておりますようなものもございますし、それから三公社五現業といって、雪の道を配達をするには一通幾らかかるか、郵便でも
国家がこれを五円ではがきを配達しなければならないというものに対しては、明らかに独立採算制を要求はしながらも、ものによっては一般の
公共事業と同じように無料に近いような場合もある。このような制度でもって五現業というものを作っておるわけでございます。三公社は民間とちょうど一般会計との中間であるというような状態でございまして、これらは独立採算的な企業ではございますが、あなたが
先ほど言ったとおり、
公共的使命が非常に大きいので、申すまでもなく、学生に対しては九割引きをしなければならない。もっといえば全額国が負担してもよいというような建前でやらなければならない鉄道でございますから、独立採算制は要求しながらも、
日本国有鉄道という制度でまかなっておるわけでございます。だから、そういう
意味で、現状を静かに認識するときに、大正や明治の時代のように、国が必要とする
国家目的に沿った線というものは、鉄道会計では赤字であっても、どんどん作らなければならないということをもし国鉄に要求するならば、一般会計から国鉄に繰り入れる以外に国鉄でやる道がないのでございます。公団を作るよりも、それをやったらいいじゃないかということが議論として出るのでございますが、それは
国会できめられた
法律がございます。鉄道の新線に対しては、鉄道建設審議会の建議によって無条件に国鉄はこれをのまなければならない制度になっておるわけでございます。でありますから、現在の国鉄というものに対しては、独立採算制を要求しながらも、よりよい環境と、よりよい経理状態を求めながら、いわゆる一面政治路線といわれ、これが別な
国家目的を持った新線というものと区分をして、明らかに
国民の前には鉄道会計としては赤字でございますが、このようなものは、国の
政策として必要なんでありますと、こういうことであるならば、一般会計に込めて国鉄に入れるよりも、鉄道公団という特別会計でもって、明らかにその
目的を達したほうがより理想的であろうという
考え方に達しておるのでございます。あなたが
先ほど言われましたように、東京−大阪をどうするのだというときに、地方を発展せしめるのに、鉄道や道路なくして発展しないのでありますから、その
意味においては、もうやむを得ず自動的に大都会が大きくふくれていくわけでございます。もう
一つ、
河野建設
大臣がさすがに明快な
答弁をなさいましたが、道路を現在の一級国道と二級国道でもって合わせて——地方道合わせて五万キロございますが、十万キロに整備を行ないます。大体改定五カ年計画をやる最終年度から以降の道路は大体どのくらいかかるかと申しますと、全国平均しますと、鉄道よりも道路はかかるのであります。新線建設でもって今建議をいただいております。一番よけいかかるのは熊木から延岡に向かう日ノ影線でございますが、キロ一億一千万でございます。現在道路幅員六メートルないし十一メートルに対して、
日本の十万キロ以上の道路整備は一体幾らかかるかと言うと、橋梁、隧道を入れるとキロ当たり一億五千万円でもできないと思うのでございます。しかも道路は無料公開の
原則でございます。維持管理は全部国及び
地方公共団体でやらなければならぬ。でありますから、そういう事実を比べてみる場合、鉄道がいわゆる百億のうち五十億の赤字が出ても、同じ道路は三割ないし五割よけいかかって、そして維持、修繕が国や
地方公共団体が全額持つという場合に、
国家財政に及ぼす
影響というものは鉄道が安いか、道路が安いかというと、大体十万キロ以上にすると、鉄道は二分の一になるのであります。そういう
考えに立って公団を新設したものでありますから、少なくとも政治路線をやるために自民党
政府が公団を作ったというような
考えに対しては、ひとつあらためて認識をしていただきたいと思います。