○
国務大臣(
池田勇人君) 大蔵
大臣あるいは企画庁長官が答えたほうが、担当のあれで適切かと思いますが、特に名指しがありましたので
お答えいたします。
今
お話にあります金本位制とか管理通貨の場合、金本位制の場合におきましては、特に貨幣価値ということになりますと、やはり国際均衡の問題、あるいは主としてそういう観点から卸売物価の点が重要視されるのであります。金本位制でなくても、国の貨幣価値いかんということにつきましては、やはり主として外国との関係が多いのでございます。そしてまたデバリュエーションその他の場合におきましても、おおむねこれは外国、国際収支の点から来ることでございます。そういう
意味において、
経済理論的には、しかも国際
経済の立場から見ますると、卸売物価の安定しておることが、一番貨幣価値の問題に重点が置かれるべき筋合いのものでございます。したがって、
日本の卸売物価、朝鮮事変後の状態におきましては、これは一時異常の物価高はございましたが、
昭和二十七、八年ごろから申しますると、卸売物価は非常に安定しております。外国のどこの国よりも安定しております。そうして
昭和二十七、八年ごろのいわゆる卸売物価の指数を計算する、あのときの商品別のウエートその他と、三十年
——三十三年ごろになってからの商品別のウエート、ことに国民の消費の性向から変わっております。また新らしいものが出て参りました関係上、今の卸売物価、本年の一月は、三十五年を一〇〇にしてちょうど一〇〇になっておりますが、この三十五年を一〇〇にした分が、今でちょっと上がりましても、今年の一月で一〇〇でございますから、こんな安定した国はございません。しかもまた、
昭和二十八、九年ごろのものを基準にいたしまして、消費性向の変化その他消費
内容、消費の品物の変化等を考えますと、一〇〇にいたしまして九二、三じゃないかと思います。これまた、世界的に卸売物価は非常に安定しておると言い得るのであります。したがいまして私は、国際的には
日本の物価が非常に安定しておる、どこの国よりも安定していると、こう言い得る。しかし、個人の直接の消費につながるいわゆる小売物価というものは、これは卸売物価よりもある
程度上昇しております。しかし、小売物価を除いて消費物価ということになりますと、国民の生活水準の向上、ことに近代化、嗜好の変化等々によりまして、いわゆる先進国並みの生活水準に近寄って参りました。卸売物価が安定しても、小売物価は相当上がっている。それにもましてサービス料の
影響する消費者物価は上がっておるということでございます。しかし、三十年ごろに比較してみますというと、
日本がそう貨幣価値が変動するほど上がっておりません。各国に比べまして非常に
経済の進歩と言われておるイタリアにおきましても、昨年の初めから相当消費者物価が上がってきております。イタリアの好景気の結果として、消費者物価の上がりは一年ないし二年おくれて来ておると思います。
日本と比べて同じ
程度くらいな、前年に比べて六、七%の上がりをイタリアはしておるのであります。だから、やはり後進国と申しますとあれでございますが、イタリアとか甘木というものが、非常に先進国のイギリス、ドイツ、フランス並みに
日本やイタリアが上がっていこうとしますと、よその国よりも消費者物価というものは上がってくるのでございますが、貨幣価値に対しまして、通貨価値が非常に不安だという状態ではもちろんでございません。私は、御安心なすってしかるべきだと思います。