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1963-03-05 第43回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月五日(火曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            大谷藤之助君            川上 為治君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            北村  暢君            横川 正市君            小平 芳平君            大竹平八郎君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            太田 正孝君            加藤 武徳君            木村篤太郎君            小林 武治君            小柳 牧衞君            小山邦太郎君            古池 信三君            後藤 義隆君            郡  祐一君            杉原 荒太君            館  哲二君            松野 孝一君            稲葉 誠一君            近藤 信一君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            松澤 兼人君            松本 賢一君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            二宮 文造君            小林 篤一君            曾祢  益君            田上 松衞君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 中垣 國男君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 西村 英一君    農 林 大 臣 重政 誠之君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 小沢久太郎君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 近藤 鶴代君    国 務 大 臣 志賀健次郎君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    内閣法制局第一    部長      山内 一夫君    総理府総務長官 徳安 實藏君    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁刑事局長 宮地 直邦君    経済企画庁調整    局長      山本 重信君    法務省入国管理    局長      小川清四郎君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省経済協力    局長      甲斐文比古君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    大蔵省銀行局長 大月  高君    厚生大臣官房会    計課長     今村  譲君    厚生省医務局長 尾崎 嘉篤君    厚生省社会局長 大山  正君    厚生省年金局長 山本 正淑君    厚生省援護局長 山本太郎君    農林大臣官房長 林田悠紀夫君    通商産業省企業    局長      佐橋  滋君    通商産業省繊維    局長      磯野 太郎君    中小企業庁長官 樋詰 誠明君    運輸省海運局長 辻  章男君    労働政務次官  田村  元君    労働省労働基準    局長      大島  靖君    労働省職業安定    局長      三治 重信君    労働省職業訓練    局長      村上 茂利君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    通商産業省通商    局次長     宮本  惇君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和三十八年度一般会計予算昭和三十八年度特別会計予算昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。藤田藤太郎君。
  3. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は第一に日本の……。ちょっと委員長企画庁長官見えてないですね。
  4. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 他の委員会に行っておりますので、今呼びにやっております。
  5. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと総理にみなお答え願うのは、企画庁長官も来ておらぬと工合が悪い。
  6. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 見えました。
  7. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は経済の問題の質問から始めたいと思うのですが、通産大臣衆議院に行っておられて非常に残念なので、できるだけ早く来ていただくことをお願いしておきたいと思います。  経済発展池田総理は今日まで謳歌してこられたわけでありますけれども、しかし、経済発展というのは、私は需要供給バランスがとられて発展していくというところに基本があると、こう思うわけです。ところが、今日の経済発展を見ておりますと、生産力設備拡大だけはどんどん進んで参ります。供給の面は進むけれども、需要の面がおくれている、こういう状態でなかろうかと思うわけであります。ですから、この経済発展基本というのは、生産と消費のバランスをとっていく、これは欧米諸国、特に欧州の各国がこの基本に立って進めてきたことは、池田総理も昨年行かれたのですからよく御存じのとおりだと思うのです。ですから、この日本経済発展供給需要、このバランスをどうとっていくかということについての基本的な考え方総理からお答え願いたい。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済発展は、需要供給バランスするということだけでは経済発展にならぬと思う。やはり拡大バランスしていくことにあると思います。ヨーロッパのほうで申しますと、イギリスはバランスしているかもわかりませんが、経済発展は非常に遅々としている、だから今までの政策を変えようとしている。そうして、われわれの考えておる拡大均衡ということにつきましては、私は大体所期の目的を達しつつあると思います。ただ問題は、業種によりまして少し需要増大よりも供給力拡大のほうが進み過ぎている場合もあります。これは自由経済のもとでございますから、いたし方はございません。それはやはりだんだんならしていくということになると思うのであります。で、供給力拡大が、またこの需要拡大の面にもなってくるわけです。設備投資なんかもそういうことです。だからどの程度にいくかということは、やはり国際収支均衡を見ながらやっていく、そうしてこれも国際収支均衡経済拡大によって、設備増大によって輸出力をふやしていく、こういうふうにうらはらになるものであります。拡大均衡という線に沿ってわれわれは着々歩を進めていっていると思います。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今池田総理の言われた拡大しながら供給需要均衡していく、私は当然のことだと思うのです。それを申し上げているわけでありますが、しかし、たとえば所得倍増計画一つとって見ましても、所得倍増計画の四十五年目標年次の総生産を見ても、二十六兆になっております。ことしの計画を見ますと二十兆三千九百億、こういうことになっておるわけです。三十六年度から出発をいたしまして四十五年までの所得倍増計画でありまするが、三十六年度から倍増というのか、その所得倍増計画のこの目標年次を達成するためには、いつから倍増になるのか。この点も総理から、経済企画庁長官からお聞かせ願いたい。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が十年以内所得倍増といったのは、三十五年の総生産を十三兆五千億というところから出発したのでございます。しかるところ、十三兆五千億が三十五年において実績は十四兆六千億だったと思います。さようになっておりますので、どちらをとっても私は差しつかえない。初めの計画は十三兆五千億で参りました。しかし実績が変わってきたものですから、十四兆六千億をとっても差しつかえないと思います。いずれにいたしましても、計画より小し早目に今までのところは進んでおるのであります。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま総理が答弁されましたとおりでありまして、三十五年を基準目標年次までの十年間、一応そういうふうな考えをしております。
  12. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういたしますと、所得倍増計画にならって参りますと、十三兆五千億が、十四兆六千億ということを基準にいたしますと、二十六兆がこれは変わってくると思います。二十九兆ぐらいになると思いますが、たとえば二十六兆を基本にして今日の総生産が二十兆、で、急速度に三十五年、六年と伸びて、生産拡大がして参りました。ですから、これに応じて他の雇用の面とかそれから国民所得生活の面とか、こういうものをやはり速度の早さに応じて拡大していかなければならないと私は思うわけであります。ところが、この面はあんまり進んでいない。所得倍増計画を見ても、基準年次から目標年次までがあって、各年ごと計画がないわけでございます。ですから、この各年ごと計画というものが十年倍増計画の中にあるのかどうか。これがあったらお話を願いたいと思います。
  13. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは昨日の羽生委員お尋ねにも多少関連をいたすことでありますが、巨視的に十年後の目標を定めまして、この間のおのおのの要素については年率どのくらいで進むのが適当であるかということは、倍増計画で申しております。しかしこれは年率で申しておりますから、そういう意味では平均率で割ったような、グラフで申しますと直線を書いたようなグラフになるわけでありますから、もっと厳密な意味で、それが成長の過程で経過地点がおのおのどういう姿であるだろうかということは考えておりませんので、最初と最後を直線グラフで結びまして、それを複利のような形で平均年率出しておる、こういうことでございます。
  14. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういたしますと、当初言われたのは七・二%ずついって十年で倍増になる、こう言われたわけであります。三十五年、三十六年に非常に急速に設備投資がふえて、その母体は拡大をした、それが延長をして総生産の急速な上がりの傾向を示しておるわけだと思うのです。そうなると今度は、三十八年は実質六・一%という計画でありますけれども、その三十五年、六年に日本経済成長して参りました。その格好で今度は三十七年から三十八年にかけてダウンをする、また、いつの日か成長率をうんと上げる——私は景気変動の形を極端にとっておる国は日本だけだと思うのです。景気変動をなるべく少なくしてノーマルな形で経済発展をしていくというコースを、どの国も努力を私はしておると、こう思うわけであります。たとえば、その要因は何かということを私も少し調べて参りましたが、先ほど申し上げました需要の手当ができていない、それから、たとえば貿易の一面を一つとってみましても、私は一番大きな問題は対米貿易ではないか、こう思うのです。昭和三十二年に日本輸出が五億九千万ドルで、輸入が十六億一千万ドル、こういう格好であったと思うわけでございます。そしてあの不況に追い込まれまして、今度は極端な状態は、たとえば三十六年では対米貿易輸出が十億五千万ドル余り輸入が二十億七千万ドル余り、そういう状態で、半分の輸出入のバランスでございます。それでまた日本経済ダウンをする、そしてダウンしたときにはバランスをとるようにしているという、私はこういうことも大きな要因ではなかろうかと思うわけでございます。ですから、そういう点の調整を今後どうとっていこうとしておられるか、私が申し上げた数字に間違いがあるのかないのか、企画庁長官からお聞きをしたい。
  15. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま藤田委員の仰せられましたのは、三十六年の暦年では、為替ベース輸出が十一億ドル余り、十一億二千五百万ドルという数字が出ておりますが、三十七年は、これ暦年でございますが、十四億五千万ドルくらい、これはいずれも為替ベース数字でございます。
  16. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は通産白書の三十七年度輸出輸入の統計を言っているわけです。通産白書が間違っておりますか。通産省の方お答えを願いたい。
  17. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは年度で言われましたのですか。私が今申し上げましたのは暦年で申し上げましたが……。
  18. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 年度です。
  19. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 通関ベースでなく、私は為替ベース暦年を申し上げましたが、藤田委員が仰せられましたのは、やはり為替ベースでございますか。もし通関ベースでございますと、三十六年、これは年度でございますと十一億四千万ドル、それから三十七年度は同じく通関ベースで大体十五億ドル、こういうふうに思われます。
  20. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の言っているのは、通産白書の三十七年度に載っております一九六一年の輸出輸入関係、これが明確に表にして載っておるわけです。それをここで申し上げているわけでありまして、それは輸出が十億五千万ドル、それから輸入が二十億七千万ドル、こういう数字が出ています。出ていますから、それをお尋ねしているわけです。通産省がこの白書をお作りになったんですから、通産省からお答えを願いたい。
  21. 宮本惇

    説明員宮本惇君) ちょっと白書をただいま手元に持っておりませんが、三十六年度通関ベースアメリカ向け輸出が十億六千七百万ドル、輸入が二十億九千六百万ドルでございます。
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと数字が違いますけれども、大体輸出が十億で輸入が二十億、こういうことだと思うのです。企画庁長官聞いて下さいよ。私はその一つ要因を言っているわけですよ。だから、たとえば三十二年に五億九千万ドル輸出して、十六億一千万ドル輸入して経済が非常に困難になっている。そして三十三年度バランスをとろうとしてやったところが、少し経済伸びてきたら、また三十六年にこういう状態になって、またバランスがくずれていくという順序を踏んでいるのが一その要因ではなかったか。だからこの貿易の問題一つ限ってみても、今後こういうことのないようにどう調整されるか、特に今問題になっている綿製品の問題にしても、私は対米貿易がこういう状態にありながら、アメリカ規制に甘んずるといいましょうか、外務省通産省意見が違うようでありますけれども、こういう問題について、きぜんとしたる態度で私はやはり政府は臨んでいいのではないか、これは一つの問題でございます。しかし全体の問題としては、こういうアンバランスたびごとに、日本経済が鈍化する、こういうことでは、私は少し施策が足らぬのではないかということを申し上げているわけです。
  23. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 輸出一般につきまして、いわゆる秩序ある輸出を行なうということの必要性は、しばしばこの席で議論のあったところで、そのとおりであると思います。その上に対米貿易について一つ特色考えますと、わが国の対米輸出というものの中で、品物によっては、すでにアメリカ国内におけるマーケットシェアを相当程度支配しておる種類品物がございます。経験的には、こういうものはこれからあと伸びがかなりむずかしいという——これはたとえばトランジスタ・ラジオ等はその一番いい例でございますが——そういうものがございますので、したがって、対米輸出考え方基本は、やはり輸出品多様化をするということであろうと思います。すなわち、従来アメリカマーケットにおけるシェアの少なかったものについて輸出を伸ばしていく、輸出品全体の種類多様化するということが一つ必要なことであると考えられます。それからもう一つは、労働集約的な製品について、従来相当の輸出があり、これも伸ばさなければなりませんが、それと同時に、国の経済の体制に即応いたしまして、ある程度やはり重化学工業というようなものについての輸出も、これからさらに伸ばしていかなければならない、この二つのことが、とりわけ対米貿易については大切なことと考えております。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は貿易の問題にもう少し解れて、通産大臣がおいでにならぬから企画庁長官お尋ねをしておきたいと思うわけであります。貿易原則は、総理もいつも言われていると思いますが、何といってもフィフティ・フィフティ原則だと思うのです。口ではフィフティ・フィフティ原則だと言う、これはやはり国連を中心にした平和社会が続いている限りは、各国自立経済国民生活を引き上げていこうというかまえ、この、国同士貿易ということでなくてはならないと私は思うのです。特に極端な原料国との関係は少し違って参りましょうけれども、しかし、そういう状態でなくてはならないと思います。だから昔のように、力が強い国が弱い国に、相手の国のバランスを問題なく輸出を強行していくということは、今日の平和社会には許されないと私は思うわけでございます。なぜ日本神武景気といわれ、岩戸景気といわれたあとで、対米貿易がこういうことになっているのか、こうなると、何か国民としての立場からすると、日本はなぜもっと自立経済立場からノーマルな経済に動くような貿易計画を立てないか、アメリカに何としても経済的に従属しているような格好印象を受けるのではないか、そういう国民の声、私もそう印象として受けるわけです。そのアメリカとの片貿易が極端に伸びたときを起点にして、神武景気もそうでございます、今度の岩戸景気もそうでございましたが、日本経済ダウンしている、こういうことが私は日本自立経済自主性を持った経済政策なのかどうかということを、これがすべてとは言いませんけれども、大きな要因として、私は企画庁長官はどうお考えになっているか聞きたい。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御承知のように対米貿易、対米輸入関係で申しますと、わが国輸入しておるものの種類は概して原材料が多いわけでございます。それから食糧も相当ございますけれども……。したがって、わが国経済伸びていきますときには、どうしても原材料輸入が多くなる。この点は米国から買わなければならないから買うというのでなく、米国から買うことが有利でありますから原材料輸入をいたしておるのでありますが、経済伸びのあるときには輸入が多くなる。したがって米国に対して入超になる。これは私は、原材料輸入するという関係から、当然の結果であろうと思うのでありますが、問題は、そういう原材料をこなしまして、一定の期間を置いてそれが輸出に向かっていく、その輸出について、対米との関係では、輸出品の総価格のうちで三割あるいは三割以上のものが、何らかの形でわが国自主規制なり何なりで、いわゆるオーダリー・マーケティングをやっていくために規制をしていく、この点であろうと思います。この点はわが国市場撹乱といったようなことが商慣習としてだんだんなくなる、そういう形によって相手方の信頼を得て、自主規制等のことを漸次はずしていく、こういう形で解決すべきものであろうと思います。経済が非常に伸びますときに原材料輸入が多いことは、これは当然の姿でございますけれども、問題は、そうしてできましたところの製品輸出について、より自由な姿で輸出をしていきたい。こういうことに帰着いたすのであろうと思うのであります。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はなかなかそこのところが納得いきにくいわけでございます。で、あなたはそうおっしゃいますけれども、そういう御意見を裏返せば、それじゃその景気が、経済が上昇してきたときには、雇用需要も幾らか進んでいく。そうすると、がたんと経済ダウンしたときには、だれが一番最初犠牲になるかというと、中小企業労働者じゃございませんか。そうして、その間が続いて、そうしてまたバランスがとられて経済が上がっていく、その間に膨大な、あなたの言を借りれば、原材料輸入があるという、経済拡大だと言いますけれども、設備拡大はどんどん進んで参りますけれども、その波の中で犠牲になっておるのは資金のない中小企業政府が保護をしない中小企業労働者犠牲になっていく。それで、準備ができた時分にまた今度幾らか上がっていく、こういう波の中でいつも犠牲になっておるのは中小企業労働者またはあわせて農民までじゃないですか。こういうことを申し上げたいわけであります。一番最初総理お尋ねしたのも、供給需要拡大バランスということを言われますけれども、そんなら経済成長した、生産力拡大したときに、それに応じてなぜ需要の面も拡大するような方法をおとりにならないかという議論がここに出てくるわけであります。そこで私は、貿易の問題を一つ取り上げたわけでありますけれども、あなたのおっしゃったことだけでは国民は納得しない。そんなら日本経済生産力を握る特に大資本というところだけが拡大していくという答えしか出てこないのではないか。国民全般の上に自立経済を進めていこうというなら、もう少しやはりバランスをとりながら日本拡大均衡という問題に持っていかなければならぬのじゃないか、こう私は思うが、どうですか。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) お説の議論がわからないわけではないのでございますけれども、しかし過去のそういう成長の中で、大企業中小企業との格差が縮まりつつあること、それからそこに雇用されている人々の所得格差がやはり縮まりつつあること、それらについては過去に、所得の五分位層による比較、あるいは三十人以上及び三十人以下の常雇用企業における雇用者の給与の格差の縮まり方などについて申し上げたとおりでありまして、この間の格差は、私はここ数年間縮まってきていると思います。その点はそうだと思いますが、おそらく藤田委員の御指摘になるのは、その間における企業生産性における格差が、はたして縮まってきたかというお尋ねではないかと思います。で、確かに資本金一千万円以上と一千万円以下というような企業の分け方をしてみますと、生産性伸び経済が興隆しておりますときには、一千万円以上の企業において、はるかに大きいのでありまして、それ以下の企業伸びては参りましたが、遺憾ながらただいままでのところ、その生産性格差というものは縮まってはおりません。ここらが中小企業基本法等によって中小企業設備近代化等に国としても大いに援助をしなければならないという、ああいう提案を申し上げました考え方のねらいでございます。で、おそらく御指摘になりましたのは、所得の問題、所得格差の広がりということではなく——それは事実縮まっておりますから——生産性格差というものが縮まっていないではないか、こういうことではないかと思います。その点はそのとおりであります。それについては、やはり中小企業設備近代化ということで、その格差を縮めていくというのが、とるべき政策であろうと考えるわけでございます。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いずれ賃金格差の問題については、あとほど私は申し上げたいと思うのです。生産性格差が、今、企画庁長官の言われたように開いている、景気上昇順位が……。それから全体としても私は開いていると思うのです、機械化ですからね。そういう中で、今後貿易自由化に対処するために、特定産業振興臨時措置法という格好のものをお出しになる様子でございますが、——よろしいですか、特定産業振興法案というものを今度政府は国会にお出しになるということが、きょうの新聞で伝えられているわけでございます。これは、たとえばどういうことが行なわれるかというと「自由化に対処して急速に振興を図る必要のある製造業について、生産の専門化、事業の共同化、企業の合併を行い、その振興を図る。」そうして十二の業種を選定をして、それにはいろいろの、たとえば資金の確保であるとか、それから合併の場合の法人税または登録税を軽減する、課税上の特例をこしらえる。独禁法の縛りをはずすという問題が、今日大々的にここへ出てきているわけでございます。今の企画庁長官の答弁からすれば、私は機械化をして、それが人間の幸福につながる限り賛成でございます。機械化賛成でございます。機械化して、人にかわって機械が生産をするということになりますれば、自然に労働者の完全雇用の道を進めるには——あとほど触れますけれども、労働時間短縮と、完全雇用の問題が私は出てくると思うわけであります。この大きな産業をどんどん機械化や何かで援護されることはけっこうですけれども、中小企業にもそういう手を講じないで、大きい企業だけはこういうことをおやりになる、現実、こういうことをおやりになって、こういう法案が実際に実行されるということになれば——独占行為の禁止ということは、これはもう今日社会においては至上命令だと私は思う。ところがこれをあえて政府の保護によって独占行為が行なわれる、特定産業がより独占行為を進める、独禁法もはずすということになりますれば、次には非常に大きな問題が出てくるのではないか。たとえばどういう問題が出てくるかというと、企業ごとの生産力が、少数の会社で独占されるでありましょうし、価格カルテルの問題が出てくるでありましょう。国民の、消費者の生活というものを無視したような問題が出てくるでありましょう。また、合理化のときには何といってもその労働者犠牲というものがその合理化の段階において出てくるであろうと私は思う。だから、こういう片手落ちな今日の経済が、私は独占資本といっておりますけれども、大企業本位の保護政策をおやりになって、まだこういうものを今度の国会にお出しになる、片方では中小企業基本法をお出しになっている、これはどういうことなんですか。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一方において過去数年間の経済の高度成長が、いわゆる設備投資の非常な膨大な競合によって国民経済のいわゆるウエイスト——浪費を来たし、シェア拡大競争によって要らない設備投資をたくさんしたではないかという御指摘がございます。私どもはそのことはある程度事実だと考えるわけでございます。そこで、そういうような国民経済のためにならないところの設備競争というものは、これは消費者の利益のためにも、ある意味規制をしていかなければなりませんし、また秩序ある輸出のためにもそれが必要であると考えるのでございます。今度の特定産業の振興措置法案のねらっておりますものは、やはりただいま御指摘のように、生産の専門化、あるいは共同化等によって、そういう大企業間における設備投資の不必要な競争を排除して、そうして国民経済の運営を最も効率的にやっていこうという考え方でございますから、これは一方において輸出の秩序化に役立つとともに、他方において、明らかに消費者の役に立つというふうに私どもは過去の経験に徴してもそのように考えるわけでございます。それから、それと同時に、中小企業について、先刻申しましたように、労働者一単位時間当たりの生産性というものは格差が縮まっていかないのでございますから、それはやはり設備近代化によってこの格差を縮めていかなければならない。それによって国民経済の二重構造の解消ということに寄与していこう、こういう考え方でございますから、いずれの場合にも、基本的にはこれは国民経済全体、あるいは消費者全体というものを守る立場であると考えるのであります。独占禁止法の基本的な目的は、不公正な競争を排除して消費者を守るということでございますから、このたびの措置法案も、そういう同じ目的に奉仕をするものというふうに私どもは認識をいたしておるわけでございます。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 あなたそうおっしゃいますけれども、今の日本経済の動きというものは、私がここでくどくど言わないでもわかっていると思う。機械化生産がどんどん進んでいるわけですから、資金を持つものがだんだん新しい機械の設備をしていく、生産力がそこで片寄っていく、あなたがおっしゃるとおり、中小企業との生産性の問題については差が出てくる、差が出てきて、まだこの特定産業振興法案で、臨時措置でその大企業を守ると、中小企業は保護育成するとおっしゃいますけれども、これは言うだけに終わってしまうのではないか、膨大な資金を投じ、共同化をし、生産能力化のための受入れ態制を作りながら、政府が本腰を入れてそれに援護をしない限り、私は中小企業は倒れていく運命以外にないと思う。生産性も低ければ、そこで働いている労働者の賃金は上がるはずはないでしょう。中小企業と大企業との賃金の差を見ると、欧米諸国は大体大企業を一〇〇にして、中小企業は八〇ぐらいです。日本は三〇ですよ。あなた、生産性の差がだんだんついてくると言うならば、そこに縮まる理由がないじゃないですか。縮めようとしたら企業がどんどんそれに耐えられぬでつぶれていく以外にないじゃないですか。その答え以外に何もないじゃないですか。あなたどう思いますか。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 中小企業生産性も上がってはおりますけれども、大企業生産性との格差は縮まっておりません。これが現状でございます。それでいかにして中小企業生産性をさらに上げるかということは、何としても中小企業設備近代化ということを進めていく以外に道がないというふうに考えるわけでございます。中小企業に十分その意欲はございますけれども、それに対する資金措置その他に十分でないところがあるわけでございますから、中小企業においても資金措置を講じ、あるいは税制措置を講じ、あるいは共業化等を進めることによって、その生産性を上げていこう。これは明らかに中小企業雇用者の給与水準をも上げる道である。これが中小企業基本法の基本的なねらいであり、考え方であると思いますので、あの施策そのものは、藤田委員指摘のお考えからいって、私どもまさにその線に沿うものというふうに考えるわけでございます。
  32. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 あなたはそう言われても、特定産業振興法という格好で大きな十二業種を特別な、私がさっき読み上げましたような特典をもって保護して、合理化しながら、そこへは大きな力をもっていこうというのでありますね。そういうところに力が入って、中小企業のほうは今までどおりということにならざるを得ないじゃないですか、あなた。国民の感じとしては、今日まで政府の進めてこられた経済活動からいって、そう理解する以外に何もないじゃないですか。これくらいの特典をもって中小企業を大胆に、資金の面から、税金の面から、それじゃやろうという工合のかまえがありますか。私は中小企業基本法については、ここで議論をしようと思いませんけれども、傾向を申し上げているわけであります。それから次の問題は、通産大臣がおいでにならないので残念ですけれども、今の操業度合い、鉱工業生産、それから貿易の推移、それから総需要の分類、これについて通産省の事務局から推移をお聞かせ願いたい。
  33. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の知る限りでお答え申し上げてもよろしいのでございますが、まず操業度については実は非常に議論がございますが、通産省の持っております統計に関する限り、昨年の暮れあたりの操業度は大体七八・九%ということになっております。
  34. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 時限をずっとはっきり言って下さい。資料に基づいてきちっと言って下さい。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その数字に間違いございませんので、全産業、製造業平均いたしまして七九%ぐらいのところになっております。
  36. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 昨年暮れですか。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) はい、昨年暮れでございます。それから、その後に八〇%をややこえたという数字が出ております。八二%ぐらいという数字が出ております。企業別に申し上げましょう。これは製造業全一体の平均でございます。
  38. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 主要産業だけを言って下さい。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は私ども多少の疑問を持っておりますけれども、一応通産省の調べました統計で申し上げますと、鉄鋼が七三%、機械が八六%、化学工業が六四%、石油製品等が九一%、繊維が七九%、こういうような数字でございます。
  40. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 鉱工業生産指数の今後の推移、それに貿易、それから需要の分類。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 鉱工業生産の指数につきましては、昭和三十五年を一〇〇といたしまして、昭和三十七年の一月あたりが一二二でございます。昭和三十七年の十二月になりまして二二〇、三十八年の一月は再び一二二と、こういうことでございます。それから輸出は三十七年度を大体四十八億五千万ドルぐらいと考えておりまして、来年度目標は一応五十二億ドルと考えております。——失礼いたしました。新しく改算いたしまして、輸出は三十七年度実績見込み四十八億五千万ドル、そう申し上げましたか、来年度五十二億でございます。
  42. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 総需要との分類ですね、来年度需要の分類、総生産に対する需要の分類、わかりませんか。
  43. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) GNPをどういうふうに分けていくかということでございますか。それは先般お手元にお届けいたしました経済の運営の基本態度に数字出しておりますが、国民生産を二十兆三千億と考えまして、その中で個人消費が十一兆七千億、民間の総資本形成、そのうちでいわゆる設備投資を三兆五千億、在庫品の増加が六千億、個人住宅を六千二百億、輸出を五十二億ドルというようなふうになっております。
  44. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、今操業度の問題をお聞きしましたところ、大体七九%、今年になってから少し上向いてきた。こういうお話でございました。その期間の品目をとりますと、化学六四、鉄が七三、これは石油は九一でありますけれども、その他は低うございます。全体の生産生産力の活動というものが大体二割あまり遊休をしているということでございます。そこからくる工業生産指数というものは、操業短縮をしながら進めていこうという格好に、ここしばらくなってきたと私は思うわけであります。そういたしますと、ここで問題になってくるのは、生産性と、それからたとえば労働者の賃金というものがどうかという議論がここに出てくるわけであります。それとその賃金格差の問題を先ほど申し上げましたが、生産性とそれから賃金の上昇は、三十年度を基礎にしますと、一六〇ですか、三十六年度は一五九に対して名目賃金は一五〇、実質賃金は一三二ということになっておるわけです。それから順次昨年の三月から進んでいるわけですけれども、しかし、この操業度というものが、まず根本で言わなければならぬことは、操業度が経済政策で下げられている。操業度が上がれば生産性はもっと上がるはずであり、これに一つ問題がある。操業度が下っても、生産性と賃金の関係は今私が申し上げたような格好になっていくわけであります。これもやはり需要一つ要因の問題だと私は思うわけであります。だから、これもあとから御意見をお聞かせいただきたいと思いますが、問題は、雇用計画ということが、私は企画庁が経済政策をお立てになるのに一番重要な問題ではなかろうか。一昨年農業基本法が出たときに、私はここで当時の迫水企画庁長官議論をいたしました。農業基本法で六百万戸の農家があり兼業農家が非常に多くなっておりますけれども、その中で自立農家が百万戸指定をされて、毎年何十万という農業労働者が工業に、第一次から第二次に転化していかれる。これが一つの問題、それから今日の労働者の中にも非常にたくさん潜在失業者がおいでになる。これが第二の要因、第三の要因は、今度は通産省関係で商業を取り上げることができると思う。商業は零細商家が非常にたくさんおいでになるわけです。老後の生活保障ができておりませんから、官公労は五十五才で年金支給ですけれども、民間では厚生年金が六十才で、五十五才がほとんど定年なんであります。その五十五才から六十の間をどう生活するかということはたいへんなことだと思うのです。仕事がないから小さい小商売でもしようかということになるわけでありますけれども、これすら大資本がスーパーマーケットをもって進出をしてくると、何十軒というようなものが、もっと大きな数が、一つができるたびにだんだん倒れていくということになると、この人もやっぱり工業の第二次生産のほうへ吸収しなければならぬ。これが今日の私は雇用問題の中心課題ではないかということをここで議論をした。迫水長官は、そういうことなんだ、だからこれをひとつどう労働力を配置していくかという問題については、専門的な研究機関を置いて、そしてこれがうまく移動ができるような方法を考えて研究してみようということをおっしゃった。ところが、いまだにここへ労働力の配置計画というものは全然お出しにならないで、企画庁がお出しにならないで、経済の頭の上だけの生産数字だけをだんだんおやりになっているということになると問題がありゃしませんか。こういうところが外国の三十五条援用であり、三十五条をたとえばはずすとしても、留保条件をつけるというような貿易の態度になってくるのではないかということを私は思っているわけです。そういう点はどうお考えになっているか、お聞かせ願いたい。
  45. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一番最後に仰せられましたようなことは、私ども確かにそういうことがあると思います。で、操業度と雇用の問題でございますが、先ほど鉄鋼の操業度が七三、四ということを申し上げました。私どもは実は率直に申すと、現在の鉄鋼業がそれほど高い操業度を持っておるだろうかということにやや素朴な疑問を抱いておりますが、しかし統計がそう示しておりますからそうといたしまして、先進国において、たとえば米国などにおいて鉄鋼業の操業度は六〇%ぐらいでも損益分岐点の関係で操業がやっていけるわけであります。わが国の場合、それがそうでございませんのは、やはり労働の雇用の流動性というものをはなはだしく欠いておるからだというふうに考えるわけであります。で、より雇用の流動性を高めますためには、やはり一般的な社会保障の施設でありますとか、あるいは企業年金の問題でありますとか、そういう問題がからんでくると考えるのでありますが、そういうことの制度が改善されますと雇用の流動性というものは高まってくるであろう。したがって、操業度を動かすことによって、いわゆる勤労階級に非常に大きな影響を与えるということが少なくなる。したがって、企業の側も操業度というものを比較的自由な立場から動かし得る。そういう経済になっていくことが望ましいということは私ども考えるわけでございます。で、昨年、三十六年でございますか、藤田委員が当時の企画庁長官と質疑応答されました中で、藤田委員がやはり弱年労働者、学校卒業者については非常に需要が多い。しかし中、高年令層については非常に需給のバランスがとれていないと仰せられましたのは、そのとおりでございまして。これはやはり、これから先ますます中、高年労働者に対する再教育と申しますか、技術的な再訓練と申しますか、そういうことがどうしても必要になって参ると思います。また、その結果、労働の流動性が高まっていくであろうと考えるのでありまして、現在のように、ある一部の年令層について非常に需要が多く、一部の年令層について非常に供給が多いという状態が続きますと、やはりその供給の方の年令層の給与等をめぐって、諸外国が、日本の場合は低賃金が続いておるではないかというような批判を加えやすいということは、そのとおりであるというふうに考えるわけでございます。
  46. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今のお話でもはっきりしないのでありますけれども、そのとおりでありますというなら、なぜそういう問題は、労働省におまかせすることだけでなしに、企画庁が経済政策をお立てになるときに、なぜこのような問題をお立てにならないかということを私は言いたい。これなしに経済計画は成り立つんですか、実際問題として。結局、宝の持ちぐされじゃないですか。生産力拡大しても、それが操業できない、バランスがとれないというなら、生産設備は宝の持ちぐされ以外にないじゃないですか。  そこで、私は今の問題について労働大臣からもお聞きしたいわけでありますけれども、昨年労働省は、また企画庁もそうですけれども、技能労働者が百二十六万不足していると、こうおっしゃった。そして、そんならことしはうんとひとつその技能労働者を養成されるのかと思ったら、そうではない。公共職業訓練所で七万六千人、事業所に委託したやつが七万二千人、合計十四万八千人です。これだけしかとにかく技能訓練をされないわけです。それじゃ百二十六万の技能労働者の不足というのは、いつの日や解消するのですか。私はこれを言いたいわけでございます。大学や短大や工業高校課程を出た人が大体十二万人ぐらいおいでになります。これを半分就職としても、六万人でございます。これは文部省の関係から出られておる。だから、こういう問題の相互関連において、技能労働者の養成というものが私は必要ではないか。百二十六万足らないというなら、それを充足するような積極的な手が打たれなければ意味をなさないんではないかと、私はそう思うわけです。そうすると、それではどこでするかというと、経済政策をお立てになるときに、雇用計画、労働配置という問題が、まず第一に経済の基礎として考えられなきゃならぬ、私はそう思うのです。労働大臣とあわせてお聞かせ願います。
  47. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 所得倍増計画では、たしか毎年の雇用伸びを四・一%と考えておったと思いますが、これは三十四年ごろからただいままで、毎年、五%の年もございましたし、四%ちょっとしか上回らなかった年もございますが、計画考えましたよりは、いずれにしても雇用伸びは上回っておるということは実績が示しておるわけでございますが、先般経済審議会が総理大臣の諮問に答えまして、人的能力の振興について答申をいたしました際にも、ただいま御指摘のような問題、私がただいま申し上げたことについても、かなり具体的に答申をいたしております。これは各省ともその線に沿って、徐々に実現をしていっていただく施策の基本になると考えておるのでありますが、ただ、私どもが経済計画を立てます上に、雇用の具体的な配置について何か青写真を書くということは、実際問題としては非常に困難でございまして、私どもとしては、一般的に雇用がふえていく、雇用条件がよくなるということをやはり目途とする程度にしか、経済計画は現在のところ至っておらないわけでございます。
  48. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 藤田委員のお述べになりました技能労働者の養成の問題につきましては、全く同感に存じております。なるほど、ただいま百二十数万の技能工の不足に対しまして、本年度政府の養成計画は十四万人でございます。非常に数としては少ないようでございまするが、また決して十分ではございませんが、しかし、技能工の養成は政府においてもむろん力を入れるのでございまするが、事業自体において従来からもこの問題が相当やってきておられますし、今後一そう努力を期待いたしておる次第でございます。特に事業所内訓練として、政府が予算において助成しようといたしておりますのは、これは自力でやることの困難と認められまする中小企業を対象といたしておるわけでありますが、大企業におきましては自力でもって技能工の養成をやってもらいたい、こういうふうな考え方をいたしております。しかし、それにつきましても、決して施策が十分とは申し上げかねまするので、今後努力をいたす考えでございます。
  49. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、企画庁長官お答えは全く、私はこんなことで経済をおやりになっているかと尋ねたい。総理経済発展拡大均衡にあると、こうおっしゃっている。拡大均衡の基礎は何かというと、生産設備拡大をするとともに需要拡大をするわけです。需要拡大は何でする。要の拡大は、国民の中の労働力を持っている者がすべてその労働力を社会に提供していく、それで生活を立てていくということが、需要拡大の根源じゃないですか。その根源を忘れて経済政策を立てるというのは、どういうことですか。  あなたに私はお聞きしたいのだが、世界の国がどういう労働時間制をとって、そして完全雇用の道をとっているかということを御存じだと私は思う。昨年ILOで、日本は常任理事国でありますけれども、四十時間制の勧告を決定しているわけです。そして完全雇用の道を開くということとあわせて、労働者生活国民生活を引き上げていこうということをILOで決定している。この決定している重大問題を忘れて、経済政策を立てるとおっしゃるのですか。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは広い意味の勤労条件が改善され、そして国内の完全雇用が行なわれるということは、まさに経済政策あるいは政治そのものの理想であると思いますけれども、具体的に何年先の労働の配置をこうしろ、ああしろといったところの計画は、経済政策では今日私どもなお手が及ばないところでございます。そういう青写真を書いてみましても、それは書くだけのことであるということを正直に申し上げただけでありまして、全体の方針としては、雇用増大し、雇用条件が改善され、そして完全雇用を目ざして経済政策を立てる、これが大切でありますことは申すまでもないことでございます。
  51. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、どうもそこらあたりは納得ができないのです。首切り法案は次から次と出てくる。農業にいたしましてもそうです。自立農家の一戸当たり反別の拡大化が行なわれ、通産省の工業におきましてもそうでございます。合理化や機械化が行なわれて、それで人手がだんだん要らなくなってくる。そういう工合にどんどんと日本は全体として近代化していくということになっているわけです。近代化していこうということになってくることに応じて、その受け入れ態勢をどうするか、生産が上がるに応じて国民生活をどう引き上げていくかという問題は、雇用の問題と、労働者とすれば賃金の問題です。それから、一般に国民生活水準を引き上げる問題だと私は思う。この問題が具体的に経済計画の基礎に入らないで、ただ物をこしらえるところだけ作ったらいいのだ、資金のあるところでは物を作り、拡大しろ、余る分だけ国民生活に回すということでは、話にならないじゃありませんか。これが私が今お尋ねしている中心の問題なのです。それをなぜあなた方は真剣にお考えにならないのですか。労働者がみずからの手でこのような世の中を築いていこうということにだんだんなっていくのも、政府の私は施策の足りなさだと思うわけであります。労働省は、たとえば今労働時間短縮の問題がILOできめられ、そしてきているわけですけれども、この勧告の問題と完全雇用の問題との関係についてどう考えておられるか、企画庁長官、あわせてお答え願います。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やはり私どもは経済政策考えます上に、御指摘のように国民全体の生活内容が向上するということを考えていっておるわけでございますから、たとえば消費水準の数字をとりましても、毎月六%ないし八%の消費水準の向上が過去三十四年からただいままで上がっておるわけでございますから、経済政策全体の指向するところとして私は誤っておらない。ことに低所得者と高所得者の間の格差が縮まっておることは、さきに申しましたとおりでございますから、全体としての考え方は誤まっておらない。ただ、今わが国としていわゆる四十時間制をとって直ちにそれを採用していくことが、すぐに完全雇用への道にそながるかどうかということについては、私どもにわかに判断ができないこういうふうに考えております。
  53. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ILOの労働時間短縮勧告の趣旨につきましては、各国における経済的社会的条件の差異を考慮におきながら、漸進的、段階的に労働時間を短縮するということでございまして、政府といたしましてもこの線に沿うべきものと考えております。したがって、この勧告は週四十時間という基準を具体的に掲げる点におきまして、なお現在わが国当面の実情に即しない点もありますが、その趣旨とするところはわれわれもこれを尊重し、わが国経済社会の実情に即しました労働時間の短縮をいかに進めていくか、この進め方につきましてさらに検討を重ねたいと考えております。
  54. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これに関連して、今の企画庁長官のお考え方によりますと、これは私は農林大臣にお聞きしたい。農林大臣は百万戸の自立農家を中心に農業基本法をお立てになった。青年農業労働者がだんだん減っていく。しかし、そればかりでなしに、零細農家は生活ができないのです。生活ができないので、そこで順次離農されていく、こういうことでございますけれども、この受け入れ態勢を担当する経済企画庁が今のような考え方であったら、農林大臣はその離農していく農民の生活をどう今お考えになっておりますか、私はそれをお聞きしたいと思います。あわせて通産大臣にもそこのところをお聞きしたいわけでありますけれども、中小企業がだんだんと倒れていく、または商業も順次倒れていく、そういうところの過剰労働力が生産向上の工業のほうへ移動していくわけです。あなたのほうは、工業とのバランスを、そこでどういう工合にやっていこうという政策を立てていこうかということは、あなたの省が実際に、管轄だけでものをお考えになったらできるわけでございますけれども、雇用計画というものが基本的に企画庁にないとするならば、あなたのほうはどうそこのところをおやりになるつもりですか、これをお聞きしたい。
  55. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 離農者が安定した職業につかれるようにすることは最も必要なことであります。これは農林省関係だけでとうていできることではないのでありまして、労働省の職業訓練でありますとか、あるいは技術の練習でありますとか、そういう方面の施設を大いに利用さしていただいて、そうして特に必要である中庸年令層の離農者に対しては十分な技能訓練をして安定職業についてもらうようにいたしたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  56. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  私は、藤田さんの御質問でございますが、御承知のように、企画庁というものが一種の計画を立てて、そうしてその計画に基づいていわゆる統制的にものをやっていくということであれば、私はあなたの御意見のとおりであると思っておりますけれども、御承知のように、今の経済は自由主義経済であることは、これはもちろんおわかりのことで、私、失礼なことを申し上げるのでありますが、自由主義経済ということになっております。それからまた、日本経済の変化も非常に激しいときでございます。急流を下るようにどんどん変わっていく。それからまた、世界経済自体が日本に及ぼす影響というものも非常に大きいときでございます。こういうようなときにあたりまして、いわゆる、今あなたが御心配のような、たとえば通歴行政にいたしましても、中小企業者、特に零細企業というものが相当な問題をはらんでおることは事実でございますので、そこで私たちは、これをどういうふうにして処理していったらいいかという考え方から、まず基本的にはこの中小企業者も何とかして大企業に負けないように、格差がだんだん狭まるようにしていく方針を立てなければいけない、こういうことで中小企業基本法を出しておるのですが、そういうものを出しておりますけれども、そのときの経済というもの全体から見ますと、では、どこまでが大企業でどこからどこまでが中小企業、零細企業はどれなんだといいますと、業種によってみなそれぞれいろいろの事態も違ってきます。しかしながら、大体の数字は、中小企業者という定義は一応きめますけれども、それだって、これは将来一定不動のものというふうにはいかないでしょう。やはりこれは可動するものです。日本経済成長するに従ってまた可動していく。また、消費構造が変わるに従って可動して参るかと思うのであります。これはあなたが十分おわかりのことを私はあえて申し上げたわけでありますが、その中において今そういうふうに可動しつつあるものをできるだけ金融面とか、税制の面とか、あるいはその他の補助、指導の措置等々によって、格差をなくしていくというやり方で今やっておるわけであります。  そうしますというと、中小企業のうちでも、私は、中企業あたりはかなりまだいいのですが、一番心配なのは、あなたのおっしゃったように、いわゆる零細企業といいますか、特に商業に関係のあるようなもので小さいものというのは、スーパー・マーケットとかあるいは市場等が出てきたり、百貨店が出てきたりして、相当影響を与えているということは事実でありますが、しかし、それでは小企業なんかで労働問題がどの程度どういう形になっているかというと、むしろ小企業では人がなくて困っているのですね、今の実情は。何か店番をさしたいと思っても、だれも子供が来てくれない、そんなところには行けないというような、そういう実情になっているのが実態だと思うのであります。だから、そういうようなものを今後どういうふうにいたしていくかということになれば、やはりそういう場合には、市場なら市場というものでも、小売業の者が集まって市場を持つ。スーパー・マーケットとまでいけるかどうか、これはスーパー・マーケットにするのがいいかあるいは普通のマーケットを作るのがいいか、私、問題だと思いますが、いわゆる共同的なものを作って、そうして消費者がそこに行けば何でも物が、一応品物がそろうというような施設、いわゆる協業化をさせる。そういう場合にわれわれは大いに骨を折る、こういうような考え方で商業の問題は一応考えていくより方法がないと思っております。  それならば、小さい製造工業のもの、五人くらいか七、八人しか使っていないというようなものの場合はどうなるかといいますと、これはいろいろ、そういう人たちは情報もないのですから、できるだけ今の世界経済はこういうふうに動いている。今あなたが作っているものは、こういうような用途が今ある。こういう代替物も出てくるかもしれないというような情報を流してやる。そういうことをしながら、やはり場合によっては、職業の転換等もはかる。そのときに金がないというならば、金のめんどうも見てやる。こういうようなことをしていく以外に、今おっしゃったように、碁盤のようにちゃんと割り切ってしまって考えていくということは、なかなかむずかしいのではないか、こういうふうに考えておりますが、しかし、この問題は非常に重大でありますから、これは今後私どもも十分関心を持って処理をいたして参りたい、こう考えております。
  57. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 通産大臣は関心を持ってやると、こうおっしゃっておる。私は池田総理に一言聞いておきたいと思うのですが、今、通産大臣の話を聞くと、企画庁というものは、計画を立てるだけで、実際の面では何にも関係がないのだというような御発言がありました。きょうわれわれがこの予算委員会で、政府がわれわれにお出しになっておりますこれは、経済企画庁が今年の経済計画見通しをお出しになっているわけです。これは私は経済企画庁が担当して、池田内閣として、これは見通しを立ててお出しになって、経済企画庁がお立てになった。これは政府全体の責任だと私は思うのです。ところが、今の話を聞くと、それは計画だけは立てるけれども、実際はそういう計画と実行の責任体制ではないのだというような話になってくると、私たちは、これはもう総理に伺う以外に何ものもないわけでございます。これは、池田総理、この計画をお立てになとる、計画どおり、やはりこれは監督機構というか、同じ閣僚ですから、そうはありませんけれども、総理大臣の名のもとにおいて企画庁が調整をとって、この計画どおり実行していく、さしていくということになっているのかいないのか、そこのところあたりを総理から聞きたい。
  58. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政府でやります方針は、そういうふうな方針でございますが、たとえば、その計画どおりに実行するといっても、設備投資を三兆五千億以上に使ってはいかぬ、あるいは在庫投資は五千億以上になってはいかぬとか、こういうことはできない。ことに国民消費十一兆数千億を、これだけ消費しなさいというわけのものではない。これはもうわかり切ったことだろうと思います。ただ、財政経済の運営として、政府はこういう程度に考えておるということでありまして、これをそのとおりに実行するという意味ではない。もちろん、政府内部におきましては、予算を組みますときは、それをもとにして予算編成をいたしております。しかし、輸出をこれだけしなければならないのだと、五十二億ドルの輸出目標は作りましたけれども、これだけしなさい、これ以上になってもいけません、これ以下になってもいかぬというわけのものではございません。
  59. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 なおわからなくなってきたのですが、そうすると、これは何ですか、絵にかいたもちですか。ねえ、池田総理、これをお立てになり、これを中心に努力をされるわけでしょう。池田内閣は、これを実行しようとして努力をされるわけでしょう。その努力も何もないのですか。そうでないでしょう。せっかく国民にこれだけ約束されるのですから、これを実行しようとして、いろいろの振幅の問題については、ますではかったようにいかぬということは、それは私もよく知っております。しかし、これを実行しようという努力は、池田総理を中心にこれを実行しようとされるのではないですか。そして、その調整は具体的には、事務的には、企画庁がはかっていくということに相なるのではないですか。調整も何もしない、こういうことはないでしょう。
  60. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) どうも、お話しの点がわからないのですが、政府としては、そういう目標のもとに財政計画、予算等を立て、施策をそれに向かっていくのであります。しかし、それを押しつけるわけではない、こういうことであります。
  61. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ、池田総理との問答をやっても、何ですけれども、とにかく政府はこれを国民に約束されている。これはやはり、実行するためには実現するように努力される。これは突き詰めてみたら、そういうことにならざるを得ないと私は思うのです。だから、その基本の上に立って、私は話をしているわけです。その基本のところに一番肝心なものが抜けていはせぬかということを、私は企画庁長官に先ほど申し上げたわけです。ところが、通産大臣はそうでないような口ぶりをされるようなことでは、これは雇用問題やその他生活貧困については重要な関心を持っている程度では、私は外国との貿易もうまいこといかない、そう思う。そん格好では私は困るということをここで申し上げておきます。政府そんな程度ならそれ以上追及いたしませんが、そんなことでは雇用の問題についても私は話にならないのではないか。たとえばここに求職と求人の殺到率が出ておりますけれども、たとえば北海道は〇・八、東北が一・九、それから九州になりますと三・八と、四倍の殺到率がある。これを企画庁としては計画をして、産業の地域開発をやりながらここで労働力を吸収していくという手を、こういうのがきちっと出る以上はしなければならない。その点はどうですか。企画庁長官通産大臣
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘の点がだんだん明らかになってきたと思います。私どもが与えられております任務は、そういう現実があって、それをどういう形で解消していけばいいかということを経済政策全体の上で考えておるわけでございます。たとえば一方において地域格差の是正のために、そういう低雇用地区のあるいは低賃金地区の経済開発をはかるということも一つの方法でございますし、他方で、大体のいわゆる都会地における労働需給の関係を見まして、そして企業家にそれを示すことによって、企業家が、たとえば今御指摘になりましたような地方に行って求人をする、そういったような全体の大きな姿と、それからそれらを政策として長期にわたってどういうふうに解決をしていったらいいかということをいたしますのが、私どもの役所の仕事であろうと思いますので、現実にそこにそれだけの失業があるから、これをそのときにこっちにこうもってくるといったような、そういう意味での経済政策をやっているのではございません、こういうふうに申し上げたいわけでございます。
  63. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 通産大臣は。地域産業の開発……。
  64. 福田一

    国務大臣(福田一君) ただいま企画庁長官お答えをいたしましたところで尽きるわけでありますが、私たちの考えておりますのも、地域的にこの産業をここへ興すと、こういうような利得がある、またこういうふうにすべき状況であるという方向は示しますけれども、あなたの会社はこういきなさい、あなたの会社はこれをやめてしまいなさい、こういうことを命令するということになると、命令した場合には、政府はその責任を負っていかなければならない。自由主義経済でありますから、その会社が今の経済はこういう方向に動いておる、世界はこういうふうに動いておりますよということを、自分でも判断する、また、政府の言っていることも十分に考える、その上でやはり処理をしていく。ただし、その場合において、残っておればこういう不利益があります、こっちに行かれれば、こういう利益を与えますということによってそういう方向に誘導していく、こういうようなものの考え方で政治をやらしていただいているわけでございます。
  65. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 自由主義、自由経済だからというお話しでございますけれども、しかし自由主義、自由経済であっても、地域の労働者国民が困ったままになっておる。企業者はいいとこ取りで、大量にいる地帯だけにおったらいい。こないものは生活がどんなになってもいいということまでおっしゃらないと私は思う。そこにはやはり財政投資と申しましょうか、国が事業を興してやるか、生活を引き上げるか、何らかの手を打たなければならないと思うのです。ところが、この殺到率の低い所でも、一番ノーマルな三十七年の九月の労働時間を見てみても、四十九時間以上が二千三百八万人ですね。六十時間以上一週間に働いているのが千五十万人おるということですね。これは何を意味しているだろうかということを言いたい。こういうたくさんな時間を働いている陰には、半失業者がたくさんおる。求人と求職の関係を見て、中高年になってくれば、一〇%かせいぜい二〇%ぐらいしか就職率がないという状態、これは都会、いなかを通じてでございます。ところが、先ほどから議論しておれば、一口でいえば、中高年といいましょうが、農民もそうであります、中小企業の零細企業もそうである、新規学卒じゃありません。今の半失業者もそうであります。そういうのが今日の過剰労働力といいますか、潜在失業者であって、処置されるのでしょうか、それで実際働いている人の極端な例をとると、四十九時間以上二千三百万人も働いている、六十時間以上千万人以上も働いておる、これはまた賃金に関係をしてくるわけでございます。これだけ長く働かなければ生活ができない要因一つ持っているわけでございます。だからそういう点からいって、私はやはり何としてもその問題は、重要な問題として政府は取り上げていかなければいかぬのじゃないかということを申し上げたい。  それから雇用の問題でいきますと、最近の雇用の問題は、労働省にお尋ねしますが、どの程度雇用の振幅があるか、各産業ごとに聞かしていただきたい。
  66. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 数字のことでございますので、政府委員から申し上げたいと思います。
  67. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 担当局長がおりませんので、私、訓練局長でございますが、政府委員という立場お答えをいたします。  最近の雇用情勢の動きの中で、特に雇用の幅の傾向という点についての御質問がございましたが、御承知の毎月勤労統計調査によりまして、昨年三十六年平均と三十七年平均の比較をいたしますと、調査産業全体につきましては、六・九%の増になっております。なお、その中で製造業について申し上げますと、三十六年平均に対しまして、三十七年平均は五・三%の増加と相なっております。
  68. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっとそれは詳しいことは、私はいずれはまたあらためてやりますけれども、労働省がお出しになっておる三十七年四月から三十七年七月までの雇用指数について、製造業では一・九、繊維では一・二、紙パルプでは一・五、みなマイナスです。化学はマイナス一・二、鉄鋼はマイナス二、非鉄金属はマイナス二・一、電気機械マイナス一・七という工合になっておりますね。こういう数字が労働省の統計でここに出ておるわけですけれども、こういう工合にして、雇用と今おっしゃったこととは、主要産業はこういうことになっておるわけでありまして、これは何としても、労働時間短縮、完全雇用ということで生活を引き上げていくという道を積極的におとりにならないと、何としても福祉国家とか、近代国家とか、生産と消費のバランス日本経済がノーマルに発展するということは、私は期待ができないと、こう思うのです。  次に、賃金の問題に入ります。賃金の問題は、昭和九年から今日まで、三十六年あたりまでは、だいぶん上がりました。この政府の統計、労働省の統計を見ても一四九になっております。それから問題は、最近の賃金の問題でございます。最近の賃金の問題を見ますと、たとえば外国の例をとってみますと、賃金が戦後一〇〇にして今まで何ぼ上がっておるのかというのをこう見てみますと、アメリカが一八〇、カナダ一七二、イギリスが一七五、ドイツが一四九、日本が一二五というような傾向を示しております。それから名目賃金もそのような指数で、実質賃金のその国の対比をしてみますと、日本からみんな高うございます。それから今度は、それじゃその賃金の源泉になっておる付加価値生産性というものを見てみますと、日本の付加価値生産性というのは、そんなに外国と比べて低くないわけです。一九五九年がこれがとられておりますけれども、イギリスが一人当たり二千五百七十一ドル、日本が六〇年で二千百ドルと付加価値生産性はこういう数字を示しておるわけであります。ところが、今度は労働分配の率の問題に入ってきますと、これは一九六〇年の国連統計でございますけれども、たとえばフランス、イギリス、アメリカ、オランダとずっとありますが、その辺のところがフランスが五七、それからイギリス、アメリカが五六、五五です。それから日本はずっと下がって、一九六一年には三三なんです。付加価値生産性に対する労働分配率は、国連統計によりましても、大体半分とはいきませんけれども、五割五分か六割ぐらいというところになるわけでございます。よく厚生福利費とか法定社会保険に金をたくさん日本資本家は使っておるから、そこで賃金は安いのだというお話がございますけれども、たとえば一、二の例をとってみますと、厚生福利費は、賃金一〇〇%にしてどれだけ一人当たり外国が支払っておるかといいますと、たとえばフランスが厚生福利費に三〇・八%法定社会保険費に二六・三%ドイツが二一・一%、一一・九%、イタリアが厚生福利費四二・四%法定社会保険費が三六・二%、それから日本が福利厚生に対して一一・八%、それから法定社会保険に対して六・八、こういう工合に、こうずっとどの面を見てみましても、私は日本労働者の賃金がこれで高いとかどうとかいうことは言えない。先日も、補正予算のときに池田総理に私は質問したのでありますけれども、昭和三十年を基準にして先ほどの数字日本は出ておる。しかし、通産省の指令といいましょうか、指示によって、労働省も統計を一番ピークの高い三十五年を中心にして生産性の問題や賃金の問題の比率を云々、これは時限のとりようによってどのようにでもなるわけでありますが、それじゃ三十年から日本発展してきた今日の状態において、それだけ半分ぐらいしか上がっていない。生産性の上昇と賃金の上昇率と同じにして、物価は横ばいにするという、ヨーロッパ各国が今日までとって参りましたこの状態とは、非常に差異があると私は思うのです。それから、イギリスやアメリカは一九五三年以来、またはドイツ、フランスは五六年以来、成長率よりも賃金が全部高こうございます。今日も商いわけであります。なるほど経済成長率は、昨年の成長率は、イギリスにしてもドイツにしてもアメリカにしても抵うございますけれども、これよりみな生産水準、賃金を高くしている。そして、多少の物価の値上がりや、その他国民生活を引き上げるために努力をしているというのと日本の賃金というのは大きな差異があるのではないか、私はそう思うのです。これについて、ひとつ企画庁長官総理の御意見もあったら承りたい。また、労働大臣からも御意見を承りたい。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもも、この数字は国連統計からとりましたので、誤りはないと思っておりますが、昭和三十年を一〇〇といたしましたときに、昭和三十六年の末におけるわが国の名目の賃金と申しますか、二〇九・六でございます。その間、消費者物価が一三%ばかり上がっておりますから、実質では一三二でございますが、これから便宜比較のために実質だけを申し上げますが、わが国は一三二、アメリカが一〇九、イギリスが一〇九、フランスが一二三、西独が一三七、イタリアが一一一でございます。この六年間をとってみますと、実質賃金の上がりは、わが国が西独よりやや低く、他の米、英、フランス、イタリア、いずれよりもかなり高い。国連統計に資料を求めましたので、誤っておらないと思いますが、そういう数字でございます。  それから、消費水準につきましては、わが国の場合、逐年——先ほどこれは申し上げましたから省略いたしますが、六%ないし七%、大体そのくらいの上昇を毎年続けております。
  70. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 生産と申しますか、売り上げ総額と申しますか、それから労働賃金に対する分配率が、外国は五五%だが、これに対して日本は三二%である。なるほど統計から申しますとそういう結果が出ておるようでございます。しかし、これは各国企業の状況にいろいろ相違があるようでございまして、特にわが国におきましては金利が高い、あるいは販売に対するいろいろな支出が多い、かような事情で、賃金及び生産費以外に相当な経費が企業ではかかる場合があろうと存じます。もう少し内容をこまかく検討いたしませんと、どの程度日本の分配率が悪いのであるかどうであるか、これは簡単には結論が出ないのではないか、かように存じて、目下調査をいたしております。
  71. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 指数は間違いないけれども調査する、こういうお話でございます。それにつけ加えて、物価はどのようになっているかといいますと、総合で三十六年から三十七年九月にかけて八%上がっております。それから住宅も八%上がっております。それから食料品も八%上がっているわけであります。こうなると、政策の物価政策の一・一、去年のやつがくずれ、ことしは二・八ということでいわれておるけれども、これもくずれる。そして生活を引き上げるには、物価を抑えるか所得をうんと上げるかしなければどうにもならないところにきているんではないかと私は思う。賃金の問題は、先ほど外国の例をおっしゃったけれども、外国の成長度合いと日本成長度合いを比べてみて、外国と同じ成長度合いで高いとか安いとか、ドイツよりかちょっと低いぐらいだというお話ではなく、日本は非常に成長を多くしている、それでいて賃金が安い。だから三十年を基礎にして一三二、生産性が一五九——一六〇になっているのにそんなところだ。昭和三十年から今日までの平面的な比較でなしに、その間に日本生産力というものはものすごく拡大をしたのに、賃金は低滞をしているではないか。これはやはり操業度合いにも関係してきている問題ですね。それから雇用の問題もそうでございます。農民の過剰労働力も潜在失業者に押し寄せてくる、そういう格好雇用の問題もそうでありますし、賃金の問題も、引き上げなければどうにもならぬところにきているのではありませんかということを私は言っている。これはぜひとも今のようなことでなしに、経済政策をお立てになるときには、ちゃんとこの問題が、せめて近代外国国家並みに、その問題を基礎にして経済計画を立ててもらわなければ、私は、国民の不満というものはそういうところに集中をしてくるということを私は申し上げてこの問題は終わります。  次は、社会保障の問題で、一言厚生大臣にお聞きしておきたいのであります。社会保障の問題というのは、本来、まず経済の中で、労働能力がある者は全部完全雇用で仕事をする。そして最低賃金制をもって生活を引き上げる、国民生活を引き上げる。働く能力のない人を中心に所得保障をやっていくのと、個人の責任でない医療保障をやっていくのが社会保障の私は中心だ、こう思う。しかし、前提がくずれておりますから、非常に社会保障も混乱をしていると私は思う。だから、そういう点で厚生大臣はどう考え経済政策の中に前提をどういう工合に作れという主張を閣議の中でされているかということを、まずひとつ聞きたい。  その次に、具体的な問題でありますけれども、国民皆保険とされているわけですけれども、無医地区やその他の問題をどうするか。  二番目は、憲法の問題であります。憲法の労働者というのは、官公庁では五十五才定年で年金がつきますけれども、民間は五十五才定年で首を切られる、厚生年金が支給されるのは六十才であります。これは来年四月から改定になりますから、これは大幅に上げなければいかぬことでありますが、私はここであまり議論をいたしませんけれども、今日フラット二千円でございます。これは本来所得保障として老齢の保護をやっていくのですから、これに力を入れてやらなければならぬのでありますけれども、健康保険はその間どうなるか、今までの昔からの統計を見ますと、働いておって定年制でやめると、大体五年くらいが平均寿命だとされてきた。健康保険で、本人は一〇〇%、家族は五〇%の給付があるような状態から、一ぺんに、やめたとたんに国保に入って給付の低いところに追い込まれる、そうして病気になるということでは、生産の中心の柱でありまする労働者は、あまりにも取り扱いが悪いではないか、だから、この点をせめて六十才まで延ばす考え方はないか。  それから、もう一つ第三点は、施設職員であります。老人福祉施設とか保育所とかの施設職員の給与の問題でありますけれども、昨年の予算のときの本会議で、厚生大臣は公務員並みにするということを約束されております。具体的に、その後の審議で、公務員との間に三〇%差があるから、三十八年度一五%、三十九年度一五%をもって公務員並みに改正を二年計画でやるのだということを厚生省は言っておられる。ところが、ことし上げられたのは、公務員の給与が七・九%上げられた。それに対して八%しか上がらない、そうすると三〇%の差はどうするという問題がここにある。それは厚生大臣は、どういうつもりでこういう方針をお立てになったのか、基本的な問題と具体的な問題とをお伺いしたい。
  72. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) こういうような経済下において社会保障制度をどういうふうに考えるかということが第一点でございますが、経済成長は社会保障の前提条件を作るものであり、社会保障は経済の安定成長をはかるものである、相互の関連はそうなっておるであろうと思うのであります。したがいまして、経済成長が非常に進むと、それに取り残される業種はありまするし、また、階層があるのでございまするから、これはその各種の所得格差を縮小するために社会保障を進めなければならぬということは当然でございます。私たちは、そういう意味で今後の経済成長に見合って、あるいは国民生活の向上に見合って社会保障制度を進めて参りたいと、かように考えておりまするし、三十八年度の予算におきましても、そういうことを十分考えてやったつもりでございます。  それから、第二の点は、皆保険下における僻地対策、医療対策はどうしておるかというお尋ねでございますが、医療対策、実はこれは非常に現在でも困った主要な問題でございます。第一に、施設の面と医療担当者の面で、両方の困難さがあるのでございますが、施設の面におきましては、昭和三十一年から三十七年まで相当の数の僻地の診療所を作りました。親元の適当な病院で、それから医者を派遣するというような僻地の診療所を作りまして、第一次計画は終了いたしましたので、第二次計画といたしまして、来年から二百カ所ぐらいな個所を今後進めていくつもりでございます。僻地といいましてもいろいろあるわけでございまするが、そういうような診療所ができないような所につきましては、それだけでは役に立たないというような所につきましては、巡回の診療所を作るとか、いろいろな施設があると思います。  次に、医者の面でございますが、これは非常に困るのでございます。今第一次計画でやりました二百数十カ所の僻地におきましては、大体医者の配置ができましたが、どうも僻地でございますから、医者が十分でないのでございます。ことしは若干の経費はみましたが、今後この人的な方面については、相当に僻地は考えなければならぬとか、かうに思っておる次第でございます。  それから、厚生年金の問題でございまするが、厚生年金の支給年限が六十才になっておる、それで、その間にギャップができるということになっておるということですが、御承知のとおり、厚生年金は、昭和二十九年に、五十五才の支給年限を六十才に上げたことは御存じであろうと思いますが、それを今は柳定期間でありまして、昨年の七月から、四カ年ほどは五十七才になっておるのでございまするが、やはり支給開始年限の六十才というところは、諸外国の例を見ましても、割合に年限が低いほうでございます。大体のところは藤田さんも御承知のとおりに、六十五才くらいになっておるのじゃないかと思いまするから、今それを引き下げるということはあまり適当じゃないんじゃないかと思っております。ただし、厚生年金のこれは抜本的な改正を三十九年にやる時期に際会をいたしておるのでございます。その際に、減額年金——年令を引き下げたら減額して支給するというようなことも一つのやはり議題となってくるんじゃないかと思っておりまするから、十分その辺は検討させていただきたいと思っております。失業者が一番医療問題で困るわけでございますが、健康保険におきましては、今でも若干の任意継続の制度がございます。今回は法律を改正いたしまして、任意継続の期間が六カ月でございましたが、一年にこれを延長したい、かような法律案を提案して御審議を願うことになっております。しかし、それは事業者持ちの分がやはり自分で負担しなければならないので、十分ではないけれども、一歩前進した失業者に対する医療保障をどうするかということは、これは全体としてさらに検討をいたしたい、かように考えておるのでございます。  施設職員の給与の問題ですが、これは大体公務員とダイレクトに、直接に比較することは相当に無理があるようでございます。しかし、公務員よりは一般的に給与が低いということで、昭和三十五年以来、ずっとこの改正をいたしてきたのでございます。今三十八年度のこの予算にも、平均八%となっておりまするけれども、それは公務員の七・一%が上がって、それに対応する一般のベース・アップは九・一%くらいになっておるのでございます。しこうして、その上に全部の職員に八%かぶせるわけでございます。八%というのは、非常に率として少ないようでありまするけれども、実は保育所の職員のうちで、皆さん方が一番給与が低いと心配をしていただいたのは保育所の保母でございます。この保母は甲地、乙地、丙地と三地区ありまして、今回三十八年度の予算が通過しますれば、丙地はなくなって、丙地の職員は全部乙地に上がるわけでございます。しこうして、乙地に上がった上に、さらに八%をかぶせることになっておるのでございまするから、相当にベース・アップになるのであります。試みに、この保育所の保母の方の状況をとってみますと、昭和三十七年の四月、これと予算が通過しました三十八年の四月におきましては、甲地におきましては三三・八%、乙地におきましては三二・七%、丙地の保母さんは四三・九%のベース・アップになるのでございまして、相当に私たちは喜んでもらえるんじゃなかろうか、かように思っておるのでございます。  なお、公務員との開きがどのくらいあるかということですが、これはなかなか簡単に出てきません。出てきませんが、総体的に若干の開きがあろうかと思われますから、今後施設職員の特殊性にかんがみまして、十分今後も検討してベース・アップ、給与の改善には努力したい、かように考えておる次第でございます。
  73. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 厚生大臣のあなたの第一のお答えは、経済の見合いの中で社会保障を進めていきたいということをおっしゃった。私のここで議論しているのは、あなたはお聞きになっていると思うのです。経済の見合いというのは、完全雇用の問題と最低賃金の問題を基礎にして経済を打ち立てる、生産と消費のバランスをとって立てるということが基礎である。あなたのほうは完全に働ける人でも、生活が困難だったら生活保護で引き受けなければならぬ、そういうことになっておるから、あなたの主張としてはそれをなぜ経済計画を立てるときに主張されないのかという、その上で老齢とか、疾病とか、不具とか、廃疾の社会保障、医療保障をもっと高めていく、そういう考え方を持っておっていただきたいということを私は前提にして話をしているわけです。  それからもう一つの二段目のお話ですけれども、外国の年金は六十才以上六十五才だということをおっしゃった、それはそのとおりでございます。日本は体力のあるときだけ使って、五十五才になったら全部定年制で首を切られているということを認識をして、あなた、その問題をとらえていただかないと、ただ、年金が六十才とか六十五才だからということでなしに、そういうとらえ方をしていただきたい。それなら厚生省から企画庁とか池田内閣に、労働省に発言があってしかるべきだ。定年制の延長の問題であるとか、そういうところで解消していけば、今のような議論は出てこないわけです。それをよくお考えをいただきたいということを言っておるわけですから、ぜひそういう工合に理解していただきたい。  それから今度は時間がありませんので、労働大臣にお尋ねしたいと思うのです。私の取り上げたい次の問題は、公労協関係の三公社五現業の労働組合の要求している当局との間の賃金問題なんです。これはこの年次別に見てみますと、昨年の幕に要求をして、そしてことしの二月十一日まで当局は検討中だということで団体交渉を一つも持たなかった。二月十二日、十三日に回答があったのはゼロ回答でございます。それから団体交渉が持たれないで二月二十二日、それから二十五、六日ごろに調停委員会に出すのだということで、団交が打ち切られて調停にずっといったわけであります。そうすると、本来、労使の賃金、労働条件の問題は自主交渉、対等の立場で、基準法の第一条に書いてありますように、その立場で交渉される、労働三法で守っているわけであります。労働組合と当局側の交渉というのは、私はそういうことでなくてはならないと思うのです。ところがこの何カ月かの間は——三カ月の間は、全然交渉らしい交渉はしていない。初めはゼロ回答だった。次の交渉が開かれたときには、調停委員会に出すのだ。こういうことでございます。そうなりますと、この公労協の諸君の賃金問題の解決というものは、私はずるずる、ずるずる延びていく以外に何もないのじゃないか。そのときに組合側の発言は、自主交渉も何もできていないのだから、一ぺんに仲裁に持っていけという主張をしております。しかし、その当局側は調停委員会にいって、きょう総会が開かれて調停にするかどうかきめられるようでありますけれども、私はやはり公務員の賃金が決定いたしまして、公労協関係労働者との間に差が相当ございます。千五百円からの差があるわけです。これを平気でゼロ回答をして調停委員会に持っていく、時間をつぶす、時間をつぶすといったら失礼ですけれども、調停委員会にそういう経路をもって仲裁ということになると、一カ月も二カ月もかからなければ、この問題が解決しない、そうなると、要求が十一月に要求しているんですから、相当日限がありましたから、組合はやかましい。円満に解決しようというなら、早期に解決するような、ほんとうに自主的な団体交渉によって問題を処理するか、そうでなきゃ最も近い方法によって、この賃金問題を処理するということを、私は、政府が応援されてもいいんじゃないか。こう思うんですけれども、労働大臣の見解を伺います。
  74. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 労使間の交渉につきましては、自主的な交渉によって解決を見出すことは、もちろん望ましいことでございます。しかし、そのときどきのいろいろな事情によりまして、自主的な交渉が困難な場合におきましては、調停、仲裁等の手続があるわけでございます。  今回の公労協の問題につきましては、各企業体においても、かような考えで自主的に進めておられたことと存ずるのでございます。いろいろ自主的交渉で妥結できない。かような判断のもとに調停に移行されたのではなかろうかと考えます。もとより労使間の調停におきまして、かような場合に、一方的に調停に持ち出す方法も定められているのでございまして、この定めに従って調停が始められたのであろうと思いますが、私どもは、この新しい場におきまして、十分平和的な解決の成立することを期待いたしております。
  75. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の言っているのは、調停に入ったからどうこうという話をしているんじゃない。まだ、これからきめられるんですよ。自主交渉が何もやられていない。兼子公共企業体等労働委員会会長は、とにかく自主交渉を十分にやって持ってきてもらわなくては困るということを去年も言っておられるんです。今年は何もしないで、これを持っていっているわけです。この労働組合と当事者との、当事者資格能力というものがほんとうにあるのかどうかね、私はそれを聞きたい。そうでなきゃ、こんな格好で、全然当事者能力がない、相手方に、当局側にない。事業法によると、予算の云々とかいうような条項がありますから、それでいて、交渉をする当事者は資格能力はない、ゼロ回答で調停に持っていくというようなことは、おかしいじゃないか。労働三法の建前からいってもおかしいけれども、公労法の建前からいってもおかしい、これはどう考えているんですか。
  76. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 何分にも公共企業体につきましては、毎年度予算によって経理をいたしておりますので、賃金の金額につきましても、その予算に関係し、したがって、予算上、資金上、その支出が可能かどうかという問題が伴う場合が多いのでございます。かような制約のもとに、この公共企業体の労働関係というものはできているのでございまして、これは公共企業体の経理の建前からいきまして、この制約はやむを得ないものと言わざるを得ないのではなかろうか、かように考えているのでございます。しかしながら、できるだけ運用によりまして、自主的交渉を進めていき、また当事者に十分な自主的解決の能力を与えることが望ましいのでございまして、今後さような方面に向かいまして、もう少し運用上、いろいろ考慮をいたしてみたいと思います。
  77. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 公労法の八条の建前からいっても、自主交渉によって問題を解決する条項があります。兼子会長も、そのような事情をよく御存じの上で、事業法があるということを御存じの上で、自主交渉をやって、煮つめて持ってきてもらいたい、こう言っているんですね。それに公然ゼロ回答をやって、政府関係の機関、三公社五現業が、こういう格好でやっているということは、労働大臣がもっと正常な労使関係に戻すということが一つ——平生の労使関係を。それからもう一つは、この賃金問題を、公務員の賃金がきまったのであるから、早く問題を解決するための努力をする、この二つを、私はここであなたの決意を聞いておきたい。
  78. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 第一の問題につきましては、いろいろ実際上の制約がございますので、御趣旨は十分に了解いたしましたから、今後その線に沿いまして、できるだけ検討を加えて参りたいと存じます。また、できるだけ今回の解決を急ぐようにという第二の点でございますが、これらにつきましては、それぞれ公共企業体において、十分配慮されるものと思うのでございます。もっとも仲裁手続につきましては、御承知のごとく、労働委員会においても、公益委員のみで処理することになっておるのでございます。その前置手続として考えましても、労使の委員が一緒になりまして、問題を掘り下げていくということは、決して時間のむだづかいということばかりではなかろうかと思います。しかし、それも程度によりますので、今後よく公共企業体等の実情も検討いたして、できるだけ早期に解決するように話し合っていくことにいたしたいと思います。
  79. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働大臣にお尋ねしますが、今度ILO八十七号の批准案、あわせて国内法規の改正、私は改悪案だと思うわけでありますけれども、結社の自由、団結権の擁護という関係からいきますと、これはILOに加盟している最低の条件、フリーな形で結社の自由、団結権の擁護はされるのが建前だと私は思います。それを国内法でいろいろと問題を、たとえば公務員法から鉄道営業法までこれにさわって出しておられる、これはいずれ出された以上は、国会で審議されるでありましょうけれども、国際的な観点から見て、このような国内法の改悪をやらなければ批准ができないという、この根本理由はどこにあるのですか、それを聞きたい。
  80. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ILO条約批准に関連する国内法の改正につきましては、八十七号条約に抵触する規定の改正に付随いたしまして、それ以外にも、この条約の趣旨精神を一そうよく実現するとともに、公務員、公共企業体の正常な労使関係と、また、公共企業体の業務の正常な運営を確保するための法律の整備を行なう、かような趣旨で、これを立案し、提案いたした次第でございます。
  81. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 時間がありませんが、一言だけ。  私は、今のようなもっともらしい理屈をつけておられますけれども、これが日本が近代国家として経済的にも社会的にも発展していく中において、とにかく働く者を、あらゆるものを犠牲にしてやっていくという、経済政策しかり、雇用、賃金、生活の問題しかり、あらゆるものを、そういうことをやっていって、まだこの問題まで、そういうことをおやりになるということは、私は日本のほんとうの、真の近代的発展は危ぶまれると思います。いずれこの問題については、委員会において議論いたしたいと思います。これで終わりたいと思います。
  82. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 藤田委員の質疑は終了いたしました。  これにて休憩し、午後一時四十五分より再開いたします。    午後零時四十五分休憩    ————————    午後二時一分開会
  83. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。大竹平八郎君。
  84. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、最初に日韓問題につきまして、今まで質問をせられた方々の角度と違いまして、一、二点お尋ねをいたしたいわけでありますが、私どもは、正常の日韓会談につきましては、これはぜひとも遂行しなければならぬと、こう思っております。しかしながら、それには総理もしばしば言明をいたしおりますとおり、国民が納得のいく線でなければならないということを言明をせられておるのでございますが、私どもも、まさにそのとおりでございます。したがいまして、この日韓会談にあたりまして、いろいろの曲折はございますが、その国民の納得をいたしまする根本的な線はどこであるかと、こう申しますると、言うまでもなく、李承晩ラインの問題であり、それからまた竹島問題に帰するわけでございます。そういう意味合いにおきまして、先般、大平外相が交渉をせられました中におきまして、有償無償五億ドル、それから賠償協定に伴う経済協定的な意味においての一億ドルと、合計いたしまして六億ドルの数字でございますが、これは、聞くところによりますと、韓国側が提示をせられてきた数字そのもののように私どもは承知をいたしておるのでございます。しかしながら、その数字の問題につきまして、私はここでとかくの批評をいたすわけではございませんが、前段に申し上げましたような、国民がどうしてもこの線だけは譲れないという、その李承晩ラインというものが一番大きな交渉の問題になるわけでございます。そういう意味におきまして、大平外相が先方と話をせられ、そうして内諾をいたしましたこの金額の中に李ライン撤廃というものが含まれていると承知をいたしてよろしいかどうか、それをまず伺いたいと思います。
  85. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御承知のように、日韓の間にはもろもろの懸案がございまして、大きく分けまして、請求権の問題、漁業問題、法的地位の問題、文化財の問題、竹島の問題というような懸案があるわけでございまして、私どもは各懸案につきまして、すでに申し上げておりますとおり、国民の納得が参るような妥結を志して努力いたしているわけでございまして、どういう懸案から先にやって参るかということは、たびたび申し上げておりますとおり、交渉技術上の問題でございまして、最初に両方で請求権の問題というものを話し合おうということになりまして、請求権問題については、大綱におきまして合意を見ているわけでございます。しかしこのことは、全懸案を一括して解決するという基本の方針に照らしまして、経過的な合意でございまして、全体がまとまるまでは拘束力を持たないわけでございます。そうして、今お尋ねの請求権に対する合意というものは、李ラインの合意を含んでいるかと申しますと、そういうものではございませんで、それぞれの懸案につきまして、それぞれ国民の納得いくような解決の仕方をしなければならぬと思っているわけでございまして、各懸案それぞれ別個に解決して、しかも、それを一括して同時に最終的な解決に持っていきたいということでございますので、相互の懸案について連関性はございません。請求権の合意は李ラインの合意を意味するというものではございません。
  86. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そうしますと、李ライン撤廃の問題というものは、一切具体的には触れなかった、こう承知してよろしいんですか。
  87. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたように、交渉の手順としてまず請求権問題に取り組んだということでございます。ただいま漁業問題に取り組みつつある段階でございます。
  88. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 交渉の経過といたしまして、外務大臣のお感じといたしまして、この請求権との大きな連関であるというあなたのお説をわれわれはそのまま信用いたしまして、これは李ライン自体というものも十二分に含めておるというような解釈はできませんか。
  89. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 全然これは別個の問題と、こう思っております。
  90. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 竹島問題はいかがですか。
  91. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それぞれ別個の懸案でございます。
  92. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そこで私どもは、李承晩ラインのこの漁業権というものと朝鮮の経済、あるいは朝鮮の漁民というような点等をいろいろ勘合いたしまして、これは非常にむずかしい問題であるということは、私どもも一応は考えられるのでありますが、そういう意味におきましては、私は、今後の韓国の政権の推移がどうなるかわからないのでありますが、むしろ、この朴政権の独裁制的な政権を持っておる政府のほうが、そういうような李承晩ライン撤廃というようなことの交渉の相手といたしては、むしろ私はやりよかったんじゃないか、こう思うのでありますが、これはあとの問題といたしまして、今後、国民がほんとうに李承晩ラインということを切実に感じておるわけなんでありますが、今後、いろいろな形において交渉がまた行なわれると思うのでありますが、今後の外相の李承晩ラインに対するところのお考え方につきまして、ひとつお示しを願いたい。
  93. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは、本院におきましても外務委員会等で御説明申し上げておるわけでございますが、一般に公海は自由でございまして、この公海に広範囲にわたって一方的に、しかも、排他的な権利を行使するということは、国際法の上から申しましても、国際慣行の上から申しましても、不法であり、かつ、不当であるということは、言うを待たないところでございまして、したがって、李ラインという言葉で表現されておる韓国の一方的な権利の行使ということにつきましては、私ども反対でございます。したがって、この撤廃を求めることは当然でございます。しからば、漁業問題についてどういう基本的な態度で臨んでおるかということでございますが、これは目下交渉に差しかかった段階でございますから、詳しく申し上げる自由を持ちませんけれども、しかし、私どもといたしましては、日韓双方の漁業者が、関係の水域におきまして、その水域の資源を保存しつつ、最大の利益にあずかるような工合に考えなければならぬということと、それから同時に、漁船の安全操業を保障して参らなければいかぬという考えに立ちまして、最近の海洋法上の傾向も頭に置きながら、合理的な漁業協定というものを取り結んでそういう成果を上げたいということで、すでに先方に御提案しておるわけでございます。先方の反能といたしましては、ただいまの段階まで、まだ私どもが期待するような柔軟性を持った反能は示されていないということでございます。
  94. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、総理お尋ねをいたしたいのでございますが、二月十八日に朴最高会議議長が記者会見をいたしまして、大統領選に出馬しない旨を言明するとともに、九項目にわたりましていろいろ声明をされたわけであります。これは、しばしば国会でも問題になっておるところでございますが、その最後に、日韓問題については、超党派的な立場から政府の方針に協力をすることを言明をせられたわけでございます。そこで、私どもがこの韓国の政権をいろいろ分析をいたしてみますると、はたして、いうところの八月十五日の民政移管までに、この朴議長の率いまする今の政権というものが保持できるかどうかということを疑うのであります。  それから、それともう一つ大きな問題になっておりまするのは、韓国のいわゆる経済的な危機でございます。この問題につきましては、先般の本院の本会議におきまして、日韓問題の緊急質問に対しまして、総理もその点に触れておられるので、この際伺いたいのでありますが、非常な経済的危機をはらんでおる、ことに昨今の通貨改革以後におきまして、通貨に対する不信感からいわゆる換物思想が当然出てくるわけでありますが、そういうような状況から、当時、改革後の通貨が今日では十数倍にもなっておるというように聞いておるわけであります。それから先般総理もお触れになりました米の凶作の問題、それからさらには、米国の援助が、昨年に至りまして突如一億ドル欠けるというような状況になりまして、韓国の経済というものが、朴政権であろうが許政政権であろうが、だれがやりましても、非常な危険な状況を経済的にはらんでおる、こういうときに際しまして、まさか八月十五日の民政移管まで待って新たな交渉をやられるとは思いませんので、その間の非常な事態に対しまして、その日韓の正式な交渉とは別にいたしまして、何らかの日本政府といたしまして、韓国国民を救うというような立場において、経済的援助というものを御考慮されておるかどうか、その点をひとつ伺いたい。
  95. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 韓国の経済的状況は、昨年の通貨改革は、官民ともに失敗であったといっておられる。私も、あのやり方はあの時期では適当でなかったのじゃないかと思っております。通貨改革問題後起こりましたのは、米の不作でございます。あれは三割減とも申します、一割減ともいっております。その米の不作の問題と関税政策、それから輸出の何と申しますか、割当制等々があります。消費物資その他の不足また値上がり、換物思想も相当びまんしておるようでございます。しかし私は、何とかやはり切り抜けていきましょう、アメリカのほうにおきましても、これを捨ててはおけないと見て、いずれは平静になることを私は期待いたしております。しこうして、外貨事情もあまりよくはないようでございますが、御承知のとおり、日本からは毎年一億数千万ドルを輸出しております。日本の韓国からの輸入は、その五分の一程度でございます。やはりこういう点から考えまして、今までオープン・アカウントのしりをおいて、そうしてそれ以外はキャッシュ・ベースでやっておりましたが、やはり隣国のこの苦しい状態を見ました場合に、もし向こうの要求があれば、私はこの際延べ払いその他の方法で経済危機を緩和するようにこちらも協力することが適当な方法ではないかと、こう考えまして、外務省その他に調査をさせておるのであります。そういう状態であるから、今の日韓正常化の問題をどうするかということは、いろいろ議論があるようでございます。打ち切れという議論もあります。慎重にしろ、あるいは政治交渉はしばらく停止せよという、いろいろの議論がありますが、私は従来から申し上げておりますように、正常化はぜひやらなければならぬことである。で、向こうが軍事政権から民事政権に移管する場合に、いろいろなごたごたがありましょう。それによって一喜一憂すべきものではない。常にわれわれは誠意をもっていつでも交渉に応じ、そうしてできるだけ早い機会に妥結しようという努力と誠意を尽くすべきものだと私は考えておるのでございます。したがいまして、常に交渉継続の気持で、話があればそれに応じていくという心がまえで進んでおります。
  96. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今の問題に関連してでございますが、これもぜひ総理からお伺いいたしたいと存じますが、あとで私賠償問題のときにも触れたいと思うのでございますが、東南アジア諸国全体は、まあ賠償全体の総額にいたしましてたしか十一億ドルくらい、それからまた賠償に伴う経済協力、これは七億ドルくらい、それからさらに新たに韓国との問題がまあ出てきておるわけでございます。そういう中に、ただ一つ一衣帯水の間にございます台湾の国民政府に対しまして何らの援助が加えられておらないわけであります。これは私ども本身をもって経験をいたしたわけでございますが、かつての大陸の戦争におきまして、日本が人的に物的に天文学的な数字に類する損害を与えたその中国が、終戦のときに二百七十万人軍官民がおりましたが、当時の蒋介石総統のただ一片の声明によって、暴に対しては徳をもって報いなければならぬということによって二百七十万人の軍官民が助けられたことは、御承知のとおりであります。その政権が台湾に参りまして、そうしてその台湾は現在一千二百五十万人軍人以外はおります。そこで、日本との貿易状況を見まするというと、最近の例を一つあげましても、一九六一年にオープン・アカウントが廃止をされております。しかしながら、人口わずか一千万のところに、一九六一年でも九千四百万の日本輸出をいたしておる。向こうからの輸入が五千六百万。それから経済提携を一つ見ましても、全体のうちの——諸外国の六七%、二十六件というものが、日本と台湾との経済提携によって、そうして軽工業的な物資というものが作られておる。こういうようなわけで、きわめてスムーズにいっております。しかしながら、今の台湾の経済全体というものが必ずしも豊かなものでないことは、御承知のとおりでございます。昨年先方の外貨委員会の主任でございました尹仲容氏がこちらに参りまして、外務省との間に借款が成立をしたということは聞いておるのでございますが、そういう周囲のいろいろな状況を勘案をいたしまして、積極的にこの台湾にも……。終戦の直後の状況を見ますると、これは韓国とほとんど同じ状況にまああったわけでございます。しかも、そこにおりまする一千幾万の人たちは、これくらい親日的な人たちというものは世界に例がないのであります。こういうような国に対しまして、今まで何らの経済援助というものが施されていなかったというような点等を考えまして、今後先方の積極的な申し出があるならば、政府はこれに対してこの援助をやられる考え方があるかどうか、この点をひとつ総理から伺いたい。
  97. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の点、全く同感でございまして、われわれもできるだけの援助を、協力をする気持でおるのであります。ただ、台湾は、御承知のとおり、経済的には他の国よりも割に恵まれておる状況にあるのであります。しかし、十分ではございません。したがいまして、あるいは五千万ドル、あるいは三千万ドル案というのがありまして、借款の話し合いが進んでおったのでございますが、今ちょっと中断されておるようでございます。われわれの気持といたしましては、その程度ならば、相当の延べ払い、あるいは借款ということも考え得ると思っております。
  98. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、外務大臣と通産大臣お尋ねをいたしたいのでございますが、先般来問題になっておりまするアメリカ日本綿製品規制の問題でございます。これはすでに、日本側のガット理事会における正式抗議によりまして、国際的に表面化してきたことでございますが、私どもが知り得る範囲におきましては、米国側の情報というものは依然として強硬のようで、全く暗礁に乗り上げた感じがいたすのであります。綿製品が、一九五三年に千八百ダースのワン・ダラー・ブラウスが向こうに参りまして、それが米国の消費者にアッピールをいたしまして、翌年は二十一万ダース、さらに五十五年には二百五十万ダースと、こういうような膨大な数字になったことにつきまして、当時の米国の業者が問題にするということは、これは私は一応納得ができるのであります。しかしながら、現在の綿業貿易は、秩序ある輸出貿易量の漸増を目的といたしまして、向こう五カ年間の長期取りきめが関係国の間で結ばれたわけでありますので、そういうところに今度のような問題が降ってわいたわけでありまするから、その驚きはたいへんでございます。そこで、本日の新聞を拝見をいたしまするというと、きょう大平外相と福田通産大臣が政治的な新たなひとつ決断を下すべく御相談をされるということを新聞で私どもは伺ったわけでございますので、この際ひとつ、アメリカ側のこの問題に対しまするところの通告と、それから今後日本がどうやっていくべきかということについて、差しつかえない範囲においてお答えをひとつ願いたいと思う。
  99. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 本問題につきましては、きのう本委員会におきまして福田通産大臣からあらましお答えをいたしたわけでございますが、今御指摘のように、この問題は、国際的な長期取りきめが去年できまして、ことしの一月一日から発効するという手順になったわけでございます。きのう福田大臣からも御説明がありましたとおり、この長期取りきめの読み方、解釈の仕方ということにつきまして、日米の間に見解の相違があるわけでございまして、先般、政府におきましても、事態にかんがみまして、経済閣僚懇談会をお開きいただいて、ただいままでの経過と問題の実態につきまして御相談いただいたわけでございます。その結果、われわれといたしましては、本問題は、昭和三十八年の日米間の綿製品の取引というだけの問題ではなく、今後五年にわたって長期取りきめの有効な期間日米間を律するルールというものでございまするので、と同時に第三国と日本との関係につきましても影響を及ぼすべき性質のものでございますので、筋を通した解決をしなければならぬというのが大方の御意見でございます。同時に、綿業界の実情から見ましても、いつまでもこの問題が未解決のままおるということはいけないので、筋を通しつつ日米間の話し合いというものを進めて参らなければならないという御意向でございましたので、それを受けまして、福田大臣と私との間で御協議を申し上げる段階になっておるわけでございます。  なお、御指摘のように、先週の土曜日にアメリカ側から市場撹乱についての見解が示されましたので、それも当方で検討いたしておるわけでございまして、そういったことも考慮に入れて、通産、外務両省で一応すでにこの問題の検討を始めておるわけでございまするが、これからの運び方につきましては、閣僚懇談会でお示しのような方針に従って、どう私対処していくか、慎重にしかもできるだけ早く取り進めて参らなければならぬと思っておる次第でございまして、今ちょうどその途中にあるということでございます。
  100. 福田一

    国務大臣(福田一君) この問題につきましては、ただいま外務大臣から御答弁を申し上げたとおりでございまして、両省の間において、事務的にも、またいろいろと向こうの言ってきた内容等も検討をいたしておる。まだ私は、新聞にはどう出ておったかわかりませんが、外務大臣との間でこの前取りきめて向こうに訓令を出しておきました後の段階における態度の決定はいたしておりません。しかし、先ほど外務大臣が申し上げましたとおり、経済閣僚会議において方針をきめておりますので、その線に沿って善処をいたして参りたい、かように考えておるわけでございます。
  101. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 いま一言外務大臣にお伺いいたしますが、この問題は日米国交の上にも重大な影響があるわけでございますので、そういう意味から申し上げまして、業界といわず、あるいは非業界といわず、これが円満な解決を望むわけでありますので、その一つの促進策といたしまして、かつて政府がとられたような、業界代表を経済移動大使というような形において任命をして、これを米国へ派遣をして交渉をさせるというようなお考えはお持ち合わせはないか、この点を伺いたいと思います。
  102. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 在米大使館の大使以下外交機能をあげてやっておりまするし、私どもは今の態勢でこなせられないことはないと思っておりますので、ただいまの段階におきましては、特派大使を派遣するという、そういう意向は持っておりません。
  103. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、財政、金融、為替等の問題につきまして、大蔵大臣にごくその大要をお伺いいたしたいと思うのでありますが、まず財政平衡資金制度の問題につきまして伺いたいのでありますが、自由化に対応いたします財政政策は、均衡的な健全財政から機能的な財政に漸次移行していかなければならないと私は思うのであります。その場合に、財政投融資政策を、本来の補正的な財政政策といたしましてその機能を発現せらるべきであろうと思うのであります。換言いたしますれば、景気調整的な機能を財政投融資にも持たすべきである。現在の財政構造及び財政法におきましては、その機能を十分に発揮していないうらみがあるのであります。私は、財政が機械的な均衡予算主義に縛られることなく、好況期には財政収入の一部を留保し、それから不況のときにはこれを支出をするというような、財政平衡資金制度を設けて、景気調整に財政が積極的に作用すべき体制を整備する必要が現段階において来つつあるのではないか。こういう点につきまして、政府の見解をお示し願いたいと思います。
  104. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 財政運営の弾力性を確保するために財政平衡資金的な制度を作ってはどうかというお考えのようでありますが、お説のとおり、財政は今単年度主義でございまして、これからの自由化等に対処いたしまして、特に産業政策その他に対しても十分な配慮が弾力的に行なわるべき事態に直面をいたしておりますので、このような制度に対しても考えていくべきだという考えでございますが、財政政策のあり方は、基本的な問題でありますので、本問題につきましては、財政制度審議会等に諮問をいたしまして、検討をわずらわしたいと考えております。
  105. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次いで財政と金融との調整の問題でありますが、わが国におきましては年度を越える財政資金収支の振幅というものが非常に大きいわけでございますし、同一年度におきましても、租税の徴収方法あるいは食管制度に起因をいたしまして、財政の対民間収支の季節的波動というものが非常に激しいわけであります。したがって、これらの波動が重なって現われる場合、民間資金を圧迫いたしまして、その結果、オーバー・ローンによって民間資金を供給し、そうして国庫対民間収支関係調整をしておるのが現状でございますので、政府景気変動に対応いたしまして余裕金の運用について制度上の改善方法としてどのような措置をお考えになっておるか、この点をお尋ねをいたしたい。
  106. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。御承知のとおり、昭和三十六年には四千九百七十三億円の揚超を示しておりまするし、それから本年の三十七年度は二千三百億、それから三十八年度は引き続き三千七百五十億円程度の散超ということでありますので、両年度を合わせますと約六千億くらいの大幅な散超が見込まれる。こういうように、そのときによって財政余裕金の幅が非常に大きくなるときがありますので、これが余裕金の活用という問題に対しては、池田総理が大蔵大臣当時から、この問題に対しては非常に慎重にかつ熱心に検討をいたしておるわけでございます。現在までには、これが揚超になりましたときには、この資金をもって買オペレーション等をやるということによって民間に戻す、またある時期においては売り戻しをするというような状態で、財政と金融との調整機能を果たしておるわけでございます。去年の十一月から、御承知の日銀の買いオペレーション制度を設けまして、相当大幅な買いオペレーションの制度を行なっておるわけでございまして、まあ今までは、これらの方法によって比較的円満に財政金融の調整を行なってきたと考えておりますが、新しく制度上の問題を考えるとすると、諸般に及ぼす影響も相当でありますので、これらの問題に対しては、広範な立場で、しかも総合的な財政金融のあり方という面から、慎重な検討を続けておるわけでございます。
  107. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 関連いたしまして、次に産業投資と公共投資の問題でありますが、わが国の産業の国際競争力は、個々の企業について見ますれば、御承知のとおり、かなり強化をされておるのでありますが、産業活動の基盤となる工業用水であるとか、あるいは用地の整備であるとか、さらに交通政策、港湾など、公共投資におきまして、はなはだしく民間とアンバランス状態にあることは御承知のとおりであります。このため、流通部門を含みまする全体としての生産性の効果が十分発揮されていないわけでありまして、資本効率を低めまして、勢いコストの上昇を招いておるという現状でございます。  そこで政府は、工業立地並びに産業活動に、先行的に、誘導的指標といたしまして、公共投資政策をさらに積極的に、かつ計画的に実行し、この面での国内均衡をはかるということが当面必要じゃないかと思うのでありますが、具体的に何かお考えをお持ちでございましたら、この際ひとつお聞かせを願いたい。
  108. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お説のとおり、国力発展の基盤を充実いたしますために、社会資本の充実、産業基盤の強化ということに政府は視点を置いておるわけでございます。特に、三十五、六、七年の三年に及ぶ民間の設備投資が積極的に行なわれました結果、これに対応する公共投資がアンバランスであったということは御指摘のとおりでございまして、三十八年度の予算編成に対しては、これらのアンバランスの面を是正すべき十分の配慮をいたしたわけでございます。まあ、予算の上で申し上げますと、道路や港湾、その他地域開発等に対しては、前年対比、相当大幅な増額がはかられております。道路に対しては、御承知の道路整備五カ年計画とか、また水の利用及び港湾整備等につきましては、特別会計制度にもうすでに移しているのでありまして、一般会計、財政投融資、地方債等のワクを加えて考えますと、対前年度比六〇%、七〇%という、日本の戦後十七、八年間の予算の数字を見ますと、非常に大幅な増額をはかっております。おりますが、まあ、あなたの言われることは、それ以上の問題、すなわち、東京、大阪、表日本のベルト地帯に産業も人口も過度に集中いたしておりますから、将来の計画均衡ある発展をはかるために、バランスのとれた公共投資というものはどう考えるかということを指摘せられておるわけであります。  これに対しては、現在までの年次計画で行なわれております道路整備の問題に対しても、建設省ですでに発表いたしておりますように、五カ年計画の改定というものが必要であり、また必要な場合、どういうふうな新しい計画、いわゆる産業の分布というもの、経済発展の基盤である産業の分布状態をどういうふうに新しい角度に立って計画図を書くかというようなことを、新しい視野に立って検討いたしておりますので、三十八年度の大幅な公共投資をはかりましたことにあわせて、三十九年、四十年と新しい計画に沿ったバランスある公共投資を進めて参りたいというふうに考えております。
  109. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今の問題に多少関連があるのでありますが、公債発行の問題についてなんでありますが、今国会には、今後における外貨公債発行の基本を定めるために、外貨公債の発行に関する法律案が提出されているわけであります。政府自身、みずからが、外貨の導入によりまして資金調達の道を開こうとしておるのであります。内国債の発行につきましては、ここ数年来予算編成と関連いたしまして、しばしば問題になっているのでございますが、そのつど、財政法の規定との関係等におきまして、実現していないことは御承知のとおりでございます。三十九年度予算の財源は、三十八年度よりその調達が困難であろうということは、私どもにもこれは想像をされるのであります。当然、そこで内国債の発行の是非ということが論議になって参ると思うのであります。わが国の公債発行は、国民所得の大体四・五%と聞いております。それからアメリカは六八・七%であります。フランスは三九・五でございます。イタリアは三六・二であります。西ドイツは一二%でありまして、非常に日本のほうが規模が小さい。さらに、イギリスのごときは、国民所得の一三九・五%の公債を発行しておる現状でございます。国民所得より見ますならば、公債発行の余力は、そういう意味におきまして私は十二分にあると思うのであります。国の財政政策が、健全財政政策から、先ほど申し上げましたとおり、機能的な財政政策に移行しつつあるという建前から、財政法に規定する公債発行の制限制度を改めまして、公債の自由発行の制度を採用いたし、財政制度運用上の欠陥を改める必要がきているのではないかと思うのであります。しかしながら、それには、公債発行が財源調達を理由として安易に流れることを厳に戒めるということを前提にいたしまして、公債を発行する場合におきましては、財政白書なり、あるいは公債白書というものを発表いたしまして、財政上の理由から公債発行がやむを得ない理由というものを国民に明らかにいたし、国民の協力を求めるという慣行を立てまして、その上で公債政策を運用すべきであると考えるのでございますが、公債発行に対する政府基本的な態度をこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  110. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 公債問題につきましては、衆議院予算委員会におきましても御質問がございまして、総理大臣からこの問題に対する考え方を明らかにいたしておるわけでございます。将来の財政のあり方といたしましては、社会資本の充実などのために公債政策の活用をはかるということも、理論的には検討すべき問題でございますが、この問題は、現実の経済金融情勢等も十分考えまして、しごく慎重を要する問題であるという原則立場に立っているわけでございます。三十八年度の予算編成につきましても、道路、港湾、その他の財源確保のために、一部公債発行論というようなものがあったようでございますが、私も就任以来、一貫して、三十八年度の予算編成に対しては、健全均衡原則を貫きたい、その意味において、公債発行をしないということを言い続けて参ったわけであります。一億二千五百万ドルに及ぶ外貨債の発行を今御審議をお願いしているわけでありますが、これは、おのずから外国市場における制約もございますし、これによって日本の対外的な信用をはかる問題にもなりますし、そういう意味で外貨債の発行を計画いたしておりますが、国内債の問題に対しては、なお慎重に検討いたしたいという立場をとっております。  御指摘のとおり、諸外国、先進国等の例を見ますと、一般会計の総ワクくらい持っておる国もございますし、日本は現在約四千億程度でございまして、これが三十八年、九年、四十年と償還をせられますと、四十一、二年には二千四、五百億というような、非常に国債としてあるのかないのかというような程度までの償還計画が立っておる現在でございます。しかも、財政需要は、御承知のとおり、自由化、八条国移行等に対して非常に大きな需要があるのでございますから、これらの問題に対しては、財政金融のあり方、特に財政金融の調節機能を行なうというような面からも広範に検討すべき問題であると考えております。特に申し上げたいのは、財政需要増大で、いやしくも赤字公債になるというようなことは慎みたいということが一つでありますし、もう一つは、内国債の発行が真にやむを得ないというような場合でも、これを引き受ける、消化をする金融市場というような問題の整備も先行しなければならないと思いまして、まあこれらの問題を十分地ならしをしながら、将来あるべき日本の国債論に対しては鋭意検討を進めており、これを国民に明らかにし、国民の理解を求め得るときには、それらの原則に対して政府は所信を明らかにいたしたいと考えます。特に慎重に今考えておりますのは、対外的な問題もございますので、昨年から今年にかけましてようやく国際収支が改善をせられたばかりであり、このようなときに内国債発行論が大きくクローズ・アップをするということに対しては、特に慎重な態度をとっておるわけであります。
  111. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 あと、金融、為替、貿易等があるのでありますが、ほかの予定の質問がございますので、時間がありましたら申し上げ、また時間がなかったら別にいたしますが、ただ一言伺いたいのでございますが、今度日本が八条国移行によりまして、為替法とかあるいは外資法とか、こういうものが、ただ暫定的な改正では間に合わない状況になってくるのではないかと思うのでありますが、これに対して、為替、外資、その他一連の法律に対しまして、近くこれを改正する意向をお持ちであるかどうか、これを一点お聞きしておきたいと思います。
  112. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御承知のとおり、八条国移行に際しまして、貿易業界の自由化を進めていかなきゃならないということは、もう御承知のとおりでございます。まあ、資本取引の問題につきましても、漸次緩和の方向をとって参るわけでございますが、日本国際収支上の問題もございますので、また日本の産業に及ぼす資本、外資の問題等も十分勘案をしながら、これが改正、整備を考えているわけでございます。まあ、外資法の問題その他につきましては、日米通商航海条約との関係もございますので、これらとにらみ合わせながら、十分実情把握をしながら、これが整備の方向を考究中でございます。
  113. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、運輸大臣に対しまして少しく質問をいたしたいと思いますが、御承知の、最近海運業の合併集約問題ということが非常に大きな問題になっておるのでありまして、今国会におきましても、海運業の再建整備法案という名前におきまして、この問題が取り上げられておるわけであります。この法案は、利息徴収猶予という助成措置適用の前提要件といたしまして、そうして海運企業の合併集約が明確に義務づけられておるわけでありますが、このような合併を前提として助成を行なうというような法律は、おそらく私は今まで前例がないのではないかと思うのでございます。それだけに、本法案の真のねらいは、あくまでも業界の再編成ということであって、現存企業に対しますところの総花的な、あるいは画一的な助成を考えているものではないと解せられておるのでございます。  そこで、以下数項にわたりまして御質問をいたしたいと思うのでありますが、まず第一に、助成措置によりまする日本海運の再建の可能性の問題でありますが、今回の海運に対しまする助成措置については、将来とも国民経済における海運の使命を遂行させるため、海運業の再建整備をはかることをもって法案の目的としておりますが、はたしてこれで日本海運は国際競争に打ち勝ち得るようにりっぱに再建せられるものであるかどうか、この点をまず伺いたいのであります。
  114. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。  第二次大戦によりまして、日本の海運界は非常な影響を受けたことは御承知のとおりでございます。そこで、今後日本の海運をどうすればいいかということは、結論的に申し上げまして、合併・集約による競争力の強化、続いて過当競争排除、続いていろいろな意味における負担の重圧から海運業界をして除去せしむるということが、この海運業の再建整備に関する臨時措置法案のねらいでございまして、そうすることによりまして、日本の海運は、私は必ずや再建されまして、往年の世界に雄飛した海運ができるものと確信いたし、その点から、利子の軽減と、それから過当競争の防止と、その手段として海運の集約等を考えて、本法案を提出した次第でございます。
  115. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、集約の手段といたしまして、オペレーターの合併等が義務づけられておるのでございますが、合併と同様、またはそれ以上の効果を上げ得る集約方法を採用することを認めるというがごとき弾力的な考え方を必要とするのではないか。ただ単にその合併をするというだけでは効果が必ずしもあるとは思わない。いわゆる、集約法をたとえて申しますならば、トラスト的な考え方も一例としてはあるわけなんでございまして、ただ集めたというだけで、私どもは必ずしも効果が上がるとは思っていないのでありますが、この点はいかがでございますか。
  116. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、合併が即海運の再建になるとは必ずしも考えておりませんが、日本海運の現状は、いかように考えましても、だれが考えましても、あまりに業者が多過ぎる。同時にまた、業者が多いからして、したがって過当競争になる。その過当競争をためるためには、オペレーターといわず、オーナーといわず、また海運業それ自体の船主といわず、それが集約をして競争力をつけるということは、私どもは非常に必要であると思います。しこうして、オーナーなり、それからオペレーターなり、なるべく幾つかのグループに分けたところの集約に参加せられるように、弾力的にお示しのようにやって参りまして、要は、日本海運が、過当競争の弊から脱却して、そうして資本構成を堅実にいたしまして、そうしてもって世界の先進国との競争に耐え得るようにいたしたいというのが私どもの考えでございます。
  117. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今回のこの法案の根底に流れまする業界の集約、合併問題は何か実際上金融ベースによって推進をせられておるような印象を私どもは深く受けるのであります。これでは、わが国海運業の国際競争力強化という本来の目的が失われることになると思うのでありますが、この点に対してはいかがでありますか。
  118. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。日本の海運界は御承知のように、資本構成が非常に脆弱でございまして、大部分が借入金に依存しておるのが現状であります。そこで、金融機関に非常に依存する度合いが多い。したがって、その重圧を除くために、私どもといたしましては、この重圧を除く手段として集約をして、その集約したものがりっぱな、国際競争力に耐え得るような状態になるまでに私どもはこれを育成していきたい。したがって、金融機関がその合併、集約に相当の比重を持つということは、資本構成の面から見まして、私はやむを得ないものと思いますが、それかと申しまして、金融資本、金融機関に全部を依存するという考えは持っておりません。金融機関のいろいろな方面の意見も聞き、そうして最終的には海運企業整備計画審議会に諮りまして、適当なところできめていく。それはあくまでも海運業者の自主的な結論に依存いたしまして、そうしてこれであれば独立ができて、競争力に耐え得るというような自立態勢の見通しのつくものについて、ただいま申しましたようないろんな財政措置を講じて参りたいと考えております。
  119. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、この集約問題に関連いたしまして、人員整理の問題でありますが、本案で規定をいたしておるような海運企業の合併、集約が行なわれるといたしまするならば、相当の人員の整理が出るのでございますが、ことに人の問題は大臣も御経験と思いますが、これは非常なたいへんなことであります。総務課長一人動かすのでも何カ月もかかるというようなばかばかしい話が民間には幾らもあるわけです。そういうことで、こういう問題に対しまして、政府の見解と、それから具体的な対策があればこの際お示しを願いたいと思うのであります。
  120. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) ただいま私どもが考えておりますところの海運の集約ができますというと、そしてそれに対しまして強力な助成措置を講ずることによって船も次第に大きな船ができるようになりまして、海員の部分に対しましては、私は配置転換その他によりまして、さような、お考えになっておるような大きな人員整理の問題は私は起こらないと考えております。また、陸上の要員につきましては、多年非常な優秀な技能を持っておりますからして、根本的な対策を立てるために、あるいは大きな調査機関をこしらえまして、それに転用するなり、その他によりまして、従来日本海運がゼロから今日までになったということは、資本もさることながら、海員諸君のなみなみならぬ努力によってやられたのでありますからして、その労に報いる意味をもちましても、そういう方面に人を転用いたしまして、そうして御心配になるようなアンエンプロイドの問題をなくするように努力いたしたいと考えております。
  121. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから集約の期限の問題なんでありますが、法令に規定いたしまする企業の合併、集約の期限は、登記完了後一年以内、こういわれているのでありますが、この大企業が合併、集約をするのに一年以内ということは、実際問題としては不可能じゃないかと思うのでありますが、これは無理とお考えになりませんか。あくまでも一年以内で御遂行をしようとされるのかどうか、この点を伺いたいのであります。
  122. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) すでに御承知のように、海運界ではこの集約化ということにつきまして。いろいろな話し合いが行なわれておって、基礎的な要件は、これはもう法律が出る前に、いろいろ研究されておりますから、法律が出てしまえば、手続的には私は一年以内でやられると確信いたしております。また、やらなければ、なかなか長引けば長引くほど種々な困難が出るのではないか、そういうことを含めまして、海運企業整備計画審議会に有力なるお方々の御参加を願って、そうしてその結論に向かって、これなら自立態勢ができる、こういう段になってくると思いますので、一年以内でできることを期待し、また、確信いたしております。
  123. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それからこの整備計画提出すべき会社の申請資格といたしまして、その企業の所有する外航船舶が五十万重量トン以上である。同時にその扱い外航船舶が同じく五十万重量トン以上、合計百万重量トンをこえるものであることを要求をされているのであります。これは法律の第四条、五条に明らかでございます。この基準さえ達するならば、整備計画は承認をせられるものと考えてよいのかどうか。現在まあ百万トンという量的効果さえ満たせばよいという今の私の申し上げた説と、これに加えて、さらに合併効果をも重視すべきであるという説と、この二つあるようでございまするが、あくまでも法律に準拠をいたしまして、百万重量トンを満たせば、その資格があるということに、単純にお考えであるのかどうか、この点をお伺いいたします。
  124. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。すでに百万トンを持っている船主もございます。海運会社もございますが、どうしても百万トンを持っておりましても、どこかほかと合併しなければ、この適用を受けない。そうしてしかもそれは自立態勢が確立するというめどを必要といたしますので、その点で私どもは株券の保有その他、役員の更迭、それから荷受けの約束そういうようなことを勘案いたしまして、そうして百万トン以上になり、そしてまた、この取り扱い量が五十万トン以上であるようになったものが一緒に合併をするということが必要になっしてくる。それはさっき申ましたように、自立が達せられるという目標がつかなければならぬと考えております。
  125. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 最後に、これは集約問題とは別でございますが、南米の移民船の問題でございますが、これは御承知のとおり、命令船の就航として、大阪商船その他が長くこれに携わっていたわけでありますが、しかし、その計画的な移民の数字というものが、ほとんどこの終戦後出たことはないわけでございますね。そういう点につきまして、その持っておりまする会社の損失というものは非常に大きいわけであります。それからまた、移民の方々に対しまする食料費の値上げとか、こういうはこともう毎年大きな問題になってきたわけでありますが、そういう移民船を持っているがために非常な赤字を累積をしているというような会社すら今日まで見られたわけでありますが、今度の新年度の予算につきましては、これについてどういう処置をとられたか、そのことをひとつ伺いたい。
  126. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。移民船の命令航路につきましては別途に考えまして、本年度の予算においても、命令されただけの移民が政府の責任において集まらなかったということが明らかな場合には、それに対しまして、その損失と申しますか、費用を補償いたすようにいたしまして、大阪商船に対する移民船の損失につきましては、三十八年度の予算におきまして三億数千万円を補償するようなふうに予算上の措置をとっておりまして、また、商船会社におきましても移民船を切り離す。別個の会社をこしらえるやに聞き及んでおるので、移民船は一般海運の集約再建とは切り離す考え方で参りたいと思っております。
  127. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 最後に賠償問題につきまして、ごく簡単に、大ざっぱに伺いたいと思いますが、賠償はおそらくスムーズに進行いたしておると思うのでありますが、賠償に伴う経済協定、これが金額にいたしますれば相当膨大な数字になっておるのでございますが、これは各国ともに、必ずしも協定といいますか、合意といいましょうか、こういう点が一致はいたしていないようでございますが、賠償に伴う経済協定の、一体協定というものはどういう工合に解釈をいたしたらよいのか。あるいは日本側だけが勝手に解釈をいたしておりましても、他の国がこれを承知をしていないという、こういう例もままあることでございますので、賠償に伴う経済協定で結ばれたこの協定なるものは、どう私どもは解釈してよろしいか、この点をひとつ伺いたいのでありますが、外務大臣。
  128. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 本件につきましては、きのう本委員会羽生先生の御質問に答えたとおりでございまして、これは政府として義務づけられておるものじゃございませんで、政府は民間ベースでやられる経済協力を容易にする道義的な責任といいますか、義務を負っておるということでございまして、政府がみずから相手側にコミットしたものではございません。
  129. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 大竹委員の質疑は終了いたしました。   —————————————
  130. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 曾祢委員
  131. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は日韓問題を中心として、おそらく時間の関係で日韓問題に限られるかと思いますが、総理並びに政府の御所信を伺いたいと思います。  第一、日韓問題に対する私どもの考え方を念のために申し上げておきたいと思います。  私どもは、日韓会談につきます基本的な態度といたしましては、わが国が平和条約によって朝鮮の独立を認めた以上、国連の承認した韓国政府との間に一切の懸案を解決して正式に国交を開くことは当然であり、南北朝鮮の平和的統一を望むが、統一まで交渉を見送るべきでなくて、次の条件を整えつつ交渉の妥結をはかるべきであると考えております。その条件とは、第一に、一切の懸案の同時解決、特に請求権問題に限らず、李承晩ラインの撤去と公海における漁業の自由の確保、竹島に対する日本の領土権の確立、これを条件とし、第二は、請求権の解決には筋を立てること、経済協力は懸案解決を条件とし、また軍事協力は伴わない。第三には、韓国の民政移管並びに名実ともにその民主化を要求し、政局の安定を見守り慎重に事を運ぶこと。以上の三つの条件をみづから作りつつ妥結に努むべきであると考えております。  ところが、最近の韓国の政情はあのとおりでございまして、朴議長の大統領不出馬、金氏の政界からの隠遁等、情勢は動いております。これらの情勢は、一面におきましては軍事政権から民主化への、あるいは軍事政権から民政移管への一つの胎動であり、生みの悩みであるという面もございますが、同時に、政局は非常に不安である。したがいまして、この情勢におきましては、政府におかれても懸案の一括解決という見通しと、いま一つは、民政に移管した後に、交渉の結果、すなわち協定が民議院等におきまして承認される、この二つの問題についての確たる見通しがあるまでは日韓間の政治折衝はこれはしばらく停止して事態を静観すべきである、かように考えております。  以上の見解に立ちまして、以下質問を試みんとするものでありますが、まず第一に、一体日韓交渉の目的は何なのか。ちょっと奇異な感じを受けられるかもしれませんが、実はこれは非常に根本的な問題であると存ずるのであります。すなわち交渉は個々の懸案を解決すればいいのか、それともそれにとどまらず、日本と韓国、独立朝鮮の正統政府としての韓国との間に国交調整をするということが最終の目的なのか。この点についてまだ政府の明確なる態度をお示しいただきたいのであります。
  132. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 韓国が独立いたしまして、しかも隣国でございますから、われわれは、日韓両国が正常な国交に入るということでございます。そのためにはいろんな懸案を解決することが必要条件であると思って、懸案を解決して正常な国交回復を持ち来たすということでございます。
  133. 曾禰益

    ○曾祢益君 まさにお答えのとおりだと思います。したがいまして、交渉の相手というものは、私は、懸案のある種のものは北鮮当局とやってもいいものがあると思います。これは、見解のあるいは相違になるかもしれませんが、経済問題あるいは人道的な在日朝鮮人の北鮮帰還問題、これは事実上北鮮当局とやっていると思います。しかし、懸案の解決にとどまらず、いやしくも平和条約で独立を認めたこの朝鮮の正統政府として、その国と国交を開くということが目的であるならば、当然にその相手方は韓国政府のみでなければならない、かように考えるのですが、その点についての総理の所信をお伺いしたい。
  134. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでございます。
  135. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういたしますと、むろん今交渉中ではありまするが、交渉が妥結した際を想定いたしますと、当然に、大体日韓間の国交調整並びに懸案解決に関する国際取りきめの形、取りきめの骨格と性格というものがはっきりあると思うのであります。つまり、言いかえますると、このでき上がるであろう協定なるものは、請求権の問題はこう解決する、竹島はこうだ、文化財産はどうだ、在日朝鮮人の法的地位の問題はどうだ、個々ばらばらに懸案を解決したそういう協定だけではなくて、一つの筋として、たとえて申しますならば、サンフランシスコ平和条約第二条における朝鮮の独立ということを基礎として、両国の間にここに友好関係を開く、よって懸案はかくかく解決する、こういう趣旨の条約というものを頭に描いておられるのではなかろうかと考えるのですが、それらについての基本的な考え総理からお示し願いたい。
  136. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 懸案がいろいろございます。お話のように、平和条約第二条、第四条の規定に基づきまして、こういうふうに打ち立てるということも考えられます。しかし、李ライン問題はまた別の問題でございますから、そういう日韓正常化に移る場合の協定の仕方等につきましては、今後十分検討していきたいと考えております。
  137. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣、もう少し技術的にわたって御説明願いたい。
  138. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 懸案の煮詰めのでき上がりを見まして、どのような形のものにするかということを考慮いたしたいのでございまして、ただいまのところ、別に予定した方式というものは持っておりません。
  139. 曾禰益

    ○曾祢益君 この点については、さらに請求権の問題の関連においてもう一ペん触れると思いますが、大体政府もむろん、交渉の途中であるから、条約の形から字句までおっしゃれないと思いますけれども、大体の御趣旨から言うならば、私が申し上げた、単に個々の懸案の解決のばらばらの文章でなくて、その上にかぶさる一つの一種の基本条約的なものがある、それで初めて国交調整条約になると思うのですが、そういうものをお考えのものと、大体その方向は承知してよろしゅうございますか。総理から伺います。
  140. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 具体的にはっきりそのとおりとは申しませんが、考え方としては、それがやはり将来の正常化に非常に役立つと思います、個々の問題を別々にやるよりも。
  141. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連して。私どもの今まで承知しておるところでは、その場合には共同宣言方式というように聞いておるのですが、今のお話では、条約または協定と、協定はある程度できるかもしれませんが、その点はどうなんでしょうか。北鮮との関係もあるので、条約という形式をとられるかどうか。
  142. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいまお話し申し上げましたごとく、形式はきまっておりませんが、考え方といたしましては、個々の問題を一々、これはこうきまった、あれはこうきまったということでなしに、大きく、たとえば条約の前文であるとか、あるいは共同宣言であるとか、その形式は今後研究いたしますが、個々の問題を解決したということでなしに、大きく日韓間の将来を規定するようなことをやったほうがいいんではないかという気持を持っております。
  143. 曾禰益

    ○曾祢益君 大体その方向について意見が一致しているように思います。  次に、請求権問題について伺います。まず第一に、私どもの基本考えというと、口が少しはばったいようですけれども、むしろ国民の良識とでも申しましょうか、それによれば、やはり懸案の一括解決と、それから、筋道の通った、あとくされのない解決を請求権問題に関してやっていただきたい。これが国民の声だと思います。ところが、現実には、遺憾ながら政府は、難問題であるがゆえに、動機としては無理からぬ点があったにせよ、請求権問題という一つの障害を乗り越えることの妥結を急ぐあまり、結果的には請求権においてまず譲ってしまわれた。しかも、その譲ってしまわれた相手方が退陣してしまったので、一種の伸士協約とは言わなくても、暗黙の気持としては、請求権では譲るが、これに対応して、李承晩ライン等についての、これに対応するステーツマンシップの発揮を待っておられたと思う。それが今度、もはや人去ってなしという結果を招来していると思う。もう一つは、今度は請求権解決の内容でございまするが、政府は従来から、御承知のように、請求権とは、結局主として双方の個人的な債権、個人的なクレームを集積したものだ、これが請求権の内容である。いろいろ評価が七千万ドルかどうかありましょうが、こういう性質のものだ、こういうことを言っておられたわけですが、それにとらわれているんでは解決できないというので、いわゆる大平方式というので、経済援助をやる、その随伴的効果として請求権問題はこれ以上主張しないというか、これで打ち切るというか、解決したというか、そういう形をとろうとされるわけですが、この点については、いろいろな関係から、やはり私は累を将来に残しはしないかという心配を持つものでございます。まず第一に、協定の文書がまだできておりませんけれども、文書のでき方が非常に重大だと思います。政府は、経済援助をやる、その随伴的効果として請求権はなくなるのだと、こうおっしゃいますけれども、韓国側から言えば、むしろ逆に、請求権問題を解決するために、無償三億、有償二億というふうに日本は払います、こう書こうじゃありませんかと要求するのが、これは私はかけ引き上当然だと思う。もしそういうことになったならば、政府が、三億ドル、二億ドルの無償、有償を払うという実質的の効果だけを与えてしまい、現実には、何のことはない、請求権という膨大な主張に屈して、ただ形を経済援助という形で片づけたということになりかねない。その最後の文章を見ないうちは、これで請求権問題の障害を越したことにはならないんじゃないか。文章の書き方一つ日本側の全面的な主張が非常に後退するということがそこにちゃんと残っている。いわんや李承晩ラインの問題については言うまでも及びません。請求権問題そのものの解決も、最後の文章の書き方いかんによっては、まさに大平外相の言っておるのと逆に、完全に韓国の主張に屈服することになりゃせぬか、かように考えますが、大平外相、いかがですか。
  144. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まず、私と金鍾泌氏の話というのは、私は外務大臣でございまするし、当時金氏は韓国政府の要人であり、最高会議議長の特使として参って話し合いしたわけでございます。政府政府との話し合いでございます。そうして、その到達した理解は、予備交渉に持ち上げましてそこで正規の代表が確認し合っておるわけでございまして、大平個人と金個人との話し合いではございません。したがいまして、両国政府が経過的に合意したことになっておるわけでございます。これはたびたび申し上げておるとおりであります。それ以後、おっしゃるとおり、一括同時解決という基本の方針をとっておりますので、自余の懸案が片づきまして一括して発効するというときまで拘束力を持つものではございません。ちょっと余談になりますけれども、きのう二宮さんから私に対する御批判がいろいろあったのでございますが、本来ならば、外交交渉でございまして、こういった問題はほかの懸案が妥結に達してそれから世間に出すのが筋なものでございますけれども、非常に長い交渉でありまして、民間におきましてもいろいろ議論を招来いたしておる問題でございますので、経過的な合意を本国会を通じて申し上げて御批判を仰ごうという手順をとったわけでございまして、むしろ私としては相当決心をしてやったことなんでございます。秘密外交のそしりということでは、むしろ逆な批判、そういう批判に対しましては私は相当抵抗を感じておるわけでございます。前置きはそういうことでございますけれども、そういう性質のものでございますので、これは両国政府の間の経過的な合意である、一括解決の時点までは法的拘束力を持つものではございませんということはたびたび申し上げておるとおりでございます。  第二点として、経済協力方式によって請求権問題を片づけるということはあとに問題を残しはしないかというお尋ねでございますが、そのお答えに入ります前に、請求権問題という問題を片づける、これは、曾祢委員が御指摘のように、実体は個人にからむ債権という実体を持っておるものでございますが、これはそのままその実体を把握して、その実体に即して解決するのがベストのやり方であることは私もよく承知しております。もしそれが可能であれば、そうすべき性質のものでございますので、そのように努力いたしたわけでございますが、この実体は十数年経過いたしておる間に事実関係の捕捉が困難になったという事情、それからいやしくも権利という以上は、双方に法律的な見解、解釈が一致しなければならぬわけでございますけれども、遺憾ながら彼此の間に法律的見解が氷と炭のように相合わぬという事態に逢着いたしましたので、それではこの困難な問題は放置しておこうというわけにも参りませんので、こういう懸案をどうして解決するかという場合に、いろいろ苦心いたしまして、次善の策として、この請求権というものはもうないことにしようじゃないかということの了解が双方で完全につけば、それで一つの解決になるではないかということ、そういうまあ分別を考えたわけでございまして、したがって、でき上がりまする協定におきましては、この請求権問題はこれはなくなったのだということを確認し合うという大筋の気持は先方も了承いたしておるわけでございます。ただ、条約ないし協定でそのように宣言しただけで問題がはたして全部最終的に解決を見るかどうかということにつきましては、理論的にはいろいろな問題が私はあるだろうと思うのでございまして、両方の政府で合意することによって直ちに個人の請求権というものがそのまま消えてしまうかどうかということにつきましては、国内立法等を国が考えないと最終的に片づいたと言えないのではないかという問題が残っておりまするが、大きな大筋といたしましては、そのようなことで解決するよりほかに道はなかろうと、こういうことで考えたわけでございます。したがって、経済協力というのは、これは全然別個の概念でございまして、請求権とかかわり合う性質のものではございません。そのうちに請求権の分が幾ら含んでいるかというように考えないわけでございます。これは純然たる経済協力である、観念上全然別個のものであると思うわけでございます。  将来にもんちゃくが残りはしないかという御懸念はごもっともでございますので、一切の懸案を解決するという方針で、あとにもんちゃくを残さぬように最善の工夫をこらしていかなければならぬと考えております。
  145. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は、何も外務大臣のやられたのを秘密外交だと言っているわけじゃありません。ただ、しり抜け外交じゃないか、先にお譲りになるのも一つの交渉のテクニックだとは思いますけれども、残念ながら相手方がいなくなったのでは、せっかくのしりが抜けやせぬかということを心配するのです。  いま一つは、お言葉を返すようでたいへん恐縮ですけれども、請求権問題が解決すればいいのではなくて、やはり解決する仕方が日本国民の感情に合うか、むろん韓国の国民の感情もございまするけれども、われわれからいえば、日本国民の感情に合うか。先ほど申し上げましたように、請求権を韓国の言うなりに払えば解決するでしょう。そうではなくて、請求権問題は出さない、経済援助はやってやる、その効果として請求権に関する一切の主張は完全にドロップするのだということがほんとうに文章的に確約されるまでは、ただこれで解決すればいいじゃないかということでなく、解決の仕方、方法が非常に重大な影響を持つ。北鮮に対して持つのみならず、他の日本に対してクレームを持ちあるいは持ち得るかもしれないたとえば中共ということを考えても、これは解決の仕方が重要ではないかということを申し上げているわけです。その点に対しては御説明が足りないと思いますけれども、これはさらに論点が展開いたしまして、次に、この請求権問題が北鮮に対して及ぼす影響ということについて私はもう少し慎重な考慮が必要ではないかと考えるわけです。政府は、従来から、北鮮関係の請求権は日韓交渉妥結後も残るということを言っておられました。請求権の解決は、先ほど申したように、個人的なクレームの集積を算定してやるのだと、そういう従来の政府の方針からいえば、私は人道的にもよくわかる、こう思っておりました。しかし、今回政府はその態度を変えられたわけです。そういう個人的な債務の集積でやったのでは解決つかないから、いわゆる次元を異にして、経済協力方式といういわゆる前向きのハイ・レベルの姿で自然にクレームを解決しようとやられたと。その次元においてなおかつ政府は、社会党の諸君等の衆議院等における追及に対して、いや請求権問題について韓国といかなる協定をいたしましても、北鮮関係は残るのだ、日本の北鮮に対するクレーム、北鮮側の日本に対するクレームは残るのだ、こういうことを答弁されておる。私は今北鮮当局が日本とこの問題で交渉する地位にあるかないか、認める認めないの議論もさることながら、それよりも、政府が将来北鮮側にあり得るというこの点についてかなりの疑問と危険を感ずるものでございます。個人的債務ならばそれでいいかもしれない。少なくとも日本及び北鮮の公的なクレームが残るのだということになると、これは相当大きな問題であるし、日本の他の諸国との条約関係から見て、これは非常に筋が立たなくなるのではないか、かように考えるのですが、政府のお考えは、依然として北鮮関係のクレームというものは、私的のもののみならず、公的のものも一切日韓からはずされているのだ、残る、こういうふうにお考えかどうかを明らかにされたい。
  146. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 平和条約の読み方としてそういうように解釈するよりほかに道はないと私は考えております。
  147. 曾禰益

    ○曾祢益君 政府は、そうすると、公的の債務も残るというんですね。
  148. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 双方の公的債務は残ると思います。
  149. 曾禰益

    ○曾祢益君 政府は、野党の質問に対して、たとえばベトナムの問題を考えるとおかしいではないか。ベトナムの場合には、南ベトナムに賠償を——これは賠償ですけれども、やはり国家的な債務を払えば、北ベトナムには払わない。しかも、北ベトナムと南ベトナムとは支配地域が違うのである。南ベトナムは、国際的な約束によって、単に事実関係だけでなくて、十七度以北には支配権を及ぼしていない。にもかかわらず、この場合には南ベトナムのみが賠償支払いを受ける資格がある、こういう解釈。ところが、事朝鮮については、何ゆえに韓国についてそれほど制限的な見方をしなければならないか。この点は私は論理が一貫しないと思うのですが、いかがですか。
  150. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ベトナム政府は、サンフランシスコ講和条約の調印国でございます。で、この講和会議におきましては全ベトナムを支配する政権ということを認められての調印でございますので、韓国の場合と趣を異にいたしていると私は考えております。
  151. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務省の条約局長に伺いますが、南ベトナム政府がサンフランシスコ講和条約の当事者よりほかないと思うのですが、その点を明らかにしていただきたい。
  152. 中川融

    政府委員(中川融君) ベトナム政府は、サンフランシスコ条約の当事国でございます。
  153. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは、ベトナム政府といっても内容が違うのであって、今の南北に分かれたベトナム政府ではないと、私はこう思うのですが、しからば、サンフランシスコ平和条約の当事国だから認める、こういうわけですか。韓国はサンフランシスコ平和条約の当事国でないから、三十八度線以南の支配地域しか認めない。したがって、韓国と何をやってもその政治効果は全部三十八度線以南に限る、こういうお考えですか。
  154. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 平和条約との関連、その後の国連決議等から判断いたしまして、そのように解釈するよりほかに道はないと考えております。
  155. 曾禰益

    ○曾祢益君 それでは伺いますけれども、今度中国の場合ですね、全体の中国の場合、これは御承知のように台湾政府と平和条約を結んで、そうして台湾政府との平和条約の議定書によりまして、先ほど大竹委員指摘されたように、台湾政府のほうは平和条約第十四条の賠償の請求権を日本に放棄しております。そうですね。ところが、平和条約の付属交換公文によりますと、この条約の効果は現に台湾政府が支配しておる地域に限るということになっておる。そういたしますると、政府の解釈では、中国の台湾の賠償請求権の放棄というものは、中共つまり中国本土には及ばない、こういうふうに解釈するのですか。
  156. 中川融

    政府委員(中川融君) 日華平和条約の解釈でございますが、あの議定書によりますと、御指摘のように、この条約は中華民国政府が現に支配しまたは将来支配する地域に適用されるということが書いてございます。その議定書から見ますと、日華平和条約は、現に支配しておる所あるいは将来支配する所だけにしか全然適用がないというように読めるのでございますが、しかしまた、翻って条約の各条章を読んでみますと、日本と中華民国との間の戦争状態は終結するというような規定もございます。また、日本と中華民国との間の戦前の条約は効力を失うというような規定もございます。そのような規定が地域的に限局されるということは、実は論理上意味をなさないのでございまして、これはやはり国家と国家との間の条約であります。国家と国家の間の戦争状態が終結する、国家と国家との間の戦前の条約が失効する、こういうことを書いた規定であると読まざるを得ないのでございまして、そういう意味から、日華平和条約は、地域をもととする条章は今の付属議定書でこれは地域が限定されます。適用地域が限定されますが、国家相手として読まなければならない条章はやはり国家としての中華民国との間の規定である、かように考えるのでございまして、その意味ではやはり中華民国政府が中国の正統政府だという立場日本はとっておるわけでございます。  なお、先ほどの御質問に関連いたしまして、ベトナムにつきましては、これはサンフランシスコ条約等の関係もあり、日本は、いわゆる南べトラム政府は全ベトナムの正統政府という観念を持っておるわけでございます。韓国の場合どうして韓国が三十八度線以南だけの政府であるという立場をとるかといえば、これはサンフランシスコ条約等の問題もございませんし、ことに、国連決議によりまして、三十八度線以南を有効に支配する合法政府ができたあの決議で、今の韓国政府というものは三十八度線以南を支配する政府、これは合法政府でございますが、そういう性格をもった政府である。これとの条約できめますことは、やはりその地域的限定がどうしてもあるのだ、こういう考えに立っておるわけであります。
  157. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうも非常に無理してつじつまを合わせているような感じがしてならない。台湾の場合には、もし賠償放棄の結果が中国本土に及ばないということになると、では戦争状態の終結宣言も本土に及ばないことになって、とんでもないことになるから、そういうふうにつじつまを合わせておられると思うわけです。なるほど韓国の場合には、国連の決議によって当時国連が監視団を出そうとして行かれなかった北鮮については、これは合法的政府として認められないという決議があるけれども、そのことは何も未来永劫に韓国に全朝鮮を代表する資格を与えないというそういう趣旨に解釈すべきではないのじゃないか。そんなことをいえば、ベトナムについても同じことである。これはむしろ国際的な協定からいって南北ははっきり分からされておる。中国の場合の事実関係と違って、もし現実の支配地域だけの問題にするならば、南北朝鮮、南北ベトナム、二つの中国のこの関係はあまり変わらない。もし変わっているとすれば、むしろ国連における議席があるかないかということが一つの違いかと思いますけれども、これも考えてみれば、ベトナムが国連に議席を与えられた、承認されたのは、国際的な冷戦の取引としてそういうものがぽかんと受け入れられる場合もある。韓国の場合は、それはいつ韓国が国連に議席を要求したって、ソ連側の拒否権に会って通りっこない。これは偶然の所産だと思う。はたしてしかりとすれば、やはり今条約局長が言うように、国家と国家との間の政治関係——国交を回復するとか、戦争状態を終結するとか、国としての援助をするとか、債務をやるとか——政治行為については、これは日本が韓国を代表として交渉する以上は、しかもその交渉の内容が単なる懸案解決ではなくて、ほんとうの国交調整、友好関係を打ち立てることが目的であるならば、これは当然にその効果というものは、その請求権についても公私ともにと言いたいけれども、私的の財産については現実の問題としてこれは気の毒だから残しておくにしても、公の関係については合法政府は韓国である以上は、韓国と日本の間で例の請求権問題は、公の請求権を解決するということは可能であるし、当然それを日本としてはやるべきではないか、なぜそれをやらないのですか。
  158. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) この分離国家というのは第二次大戦後できました新しい問題でございまして、この状態を規律する国際法あるいは国際慣習法というようなものは実はわれわれ持っていないわけでございまして、曾祢委員がおっしゃるように明快に割り切るルールがございますれば、もとよりそれを援用するにやぶさかでないわけでございますけれども、ただいまのところでは、その地域地域の具体の条件に照らして、わが国としてどう処理するかということを探究して参るという段階でございます。今、私どもが考えておる方式というものは完全無欠であると自負してはおりませんけれども、いたしかたない、今の具体情勢に即してどう処理するかということよりほか、道がないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。御説は十分傾聴いたしまして参考にいたしますけれども、ただいまのところ、私どもはそういう考え方でいるということを申し上げておる次第でございます。
  159. 曾禰益

    ○曾祢益君 意地の悪い質問ではなく、これは非常に重大な問題だと思うのです。先例はないことはない。ですから、こういうことはやはり筋を立てて解釈すべきである。今まで個人的債務だから北鮮関係は残る、これはいいと思います。そういう政治考慮はあっていいと思う。北鮮側の気の毒な人に韓国と何しても、それはそれでいいが、いやしくも国家対国家の関係ではそういうあいまいなものではいけないと思う。それは今のあなたの方式でやればどうしても現実問題としてやって、不幸にして朝鮮が二つに分かれれば、北鮮政府なるものと、あなたの議論によると、公的な請求権の平和条約四条a項に基づいて交渉しなければばならない、この場合にいろいろ議論はありましょうけれども、同時に日本は五億ドル南朝鮮のために事実上出しておるということを必ず先方は援用してくるに違いないと思う。そういうことを考えますと、私はやはりそういう不明確な態度ではなく、日本と韓国とやはり政治的な国交調整をやる以上は、この問題に限らず、在日韓国人の国籍の問題、処遇の問題についても現状からみて、あまり無理なことはできない。筋道は韓国と政治的約束ができるのだ、こういう建前をとらなければ何もできないのじゃないか。砂上の楼閣ですよ。そうではありませんか。私は、そういう筋道を立てずに、今までの答弁の、足を引っ張られるのはいやだから依然として一生懸命になって、あなたのほうは外務大臣も総理大臣も条約局長衆議院において、いや韓国の支配権は三十八度線以北に及びませんから、この協定というものは請求権だけの協定ですから、全協定が全部三十八度線以北に及ばないのですが——だとすると、これは国交調整条約はできないと思うのですが、それでいいのですか。そういう点をひとつぜひ、もっとまじめにお考えになって、その場逃れの答弁ではなく、筋の立つような、累を将来に残さないように私はお考えを願いたいと思うのですが、総理大臣の御所見を伺いたい。
  160. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外務大臣、条約局長からお答えをしたとおりで、われわれは現実の問題をいかに処理しようかということでございます。で、今の北鮮の問題についていろいろ御議論があるようでございますが、それではあなたはどうしたら完全だとおっしゃるのでございますか。われわれが今言ったように、サンフランシスコで参りますと、ベトナムは南ベトナムが代表するものとして賠償のあれをしたのでございます。そうして、韓国につきましては国連の決議によって三十八度線以南の韓国を合法のものと見ておる。そこで、それは北鮮のほうには及ばない、この事実は尊重しなければならぬ、こういうことになっておるのでございまするから、今までお答えしたように、韓国との関係は国連の決議に基づいて北鮮を認めず、韓国をあれしようとしておるのでございます。それじゃ、北鮮はどうなるかという問題になりますと、北鮮が今後独立して一緒になりますか、そのときはそのときで、今私は独立国、平和条約第四条b項等で、南、北と違いますから、一応請求権、両方の請求権も残る、こういう解釈でいっておるのであります。
  161. 曾禰益

    ○曾祢益君 不幸にして、私は当局者じゃございませんけれども、少くともこれがベストだということの自信がありませんが、もっと筋の通った解決があると思います。北鮮に関する個人的な債務など残しておいてけっこうです。国家的な関係は韓国だけおやりなさい。そうでなければ李承晩ラインの問題は解決しても、他の全部について、それではこの協定は、あるいはこの条約は全部三十八度線以南に関する条約だというふうに性格づけられる、それでは国交調整自身ができなくなる。ですから、そういうことでない、私は筋をお立てになったほうがいいと申し上げておる。私の申し上げているほうが大体筋が通っておる。ベストだということじゃありませんが、不幸にしてあなたが当局者なんで、私にやらせればもっとうまくやってみせる。そこで、そういうことをあまりがんばらないで、もっとすなおにお聞きになったらどうですか。ほんとうに国交調整条約がそれでできるとお考えですか。韓国側の主張もさることながら、むしろ韓国としては自分の憲法で現実には三十八度線以南しか支配してないけれども、資格においては全朝鮮を支配するという建前をとっておることは当然でありませんか。北鮮またしかり。あなたの解釈でいくと、北鮮と南鮮をほとんど分離国家と認めることにすらならないと限らない。やはり韓国は支配地域は南に過ぎないけれども、資格においては一応朝鮮を代表するものだ。ただ事と次第によっては、解決の内容についてはこれは北鮮側に残していい問題もある。在日朝鮮人の北鮮帰還の問題については、なるほど韓国内においても堂々と北鮮にお帰りになって当然である、そういう筋の立った解釈でおやりになっていただきたいことを申し上げているので、いやに、これだけ高姿勢ですけれどもおかしいじゃないですか。もう少しすなおにお考えになったらどうです。
  162. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) すなおに考えておるからでございます。われわれ意見の違っていないところはそのとおりと言っておりますが、今あなたのおっしゃるとおり、韓国政府が北朝鮮までも統治しているので、三十八度以南の南朝鮮、すなわち今の国際連合で認められた韓国というものとやって、そして三十八度以北の問題については個人の請求権は認めるが、国との関係は韓国だけで朝鮮全土がこれできめるのだということが成り立ちましょうか、そこの問題、成り立つというドグマはいいかもしれません。われわれはそういうこともしたい点もありましょうけれども、しかしそれは良識もなければならぬ。筋が通る通らぬということは、納得できるかどうかということが中心だろうと思います。
  163. 曾禰益

    ○曾祢益君 どちらがドグマであるか後世の史家の批判に待たなければいけませんけれども、私は筋は十分に通る。むしろそちらのほうが筋が通る。国と国との約束で、この国の支配権が事実上支配しているところに限るという解釈は間違っていると思います。そういうことは日韓国交調整条約に累を及ぼすことを心配いたします。しかし、これは残念ですけれども、私は請求権問題としてぜひこの点を私はもう一ぺんお考えになることを希望いたしておきます。  次に、きのう杉原委員が触れられた点でありまするけれども、いわゆる母国と分離国との間の債権、債務の継承の問題、並びにそれに伴って、まあそれに関連してと申しますか、母国から援助を与える問題でありまするが、先般本院の外務委員会外務省に資料をお願いしておったのですが、きのうの杉原委員に対する外務大臣の答弁もそれに触れられておりましたけれども、私はこういう例を通覧いたしまして、大体一つの型というものはあると思います。パターンが、分離国の場合にですね。それは公の財産は、分離して分かれたほうの国にやる、まあ多くの場合無償でやるということであります。いろいろそこの債権、債務の清算の問題もある。公的財産をやる、しかし私的財産を取られるというのは、これは非常な異例である。ただ、第一次世界大戦のドイツの場合そういう特例の場合だけが、まあ敗戦国の取り扱いとして、私有財産までそこに置いてあるものは留置されるといいますか、賠償に繰り入れられる、こういう一つの異例があるけれども、原則としてはそういう懲罰的なことはない。これは言えると思います。きのう外務大臣が述べられた、第二次世界大戦後のオーストリアにおけるドイツの財産ですら、一応連合国に、四カ国に、没収されたけれども、あとでソ連以外の国は返しました。そうすると、オーストリアは大部分は私的財産はドイツ人に返している。こういう私は原則というものはあると思う。ですから、日本から、少なくとも戦争して出て行く国じゃないです。朝鮮人と日本が戦争して朝鮮が独立するのじゃない。日本の敗戦という一つの契機で分離独立するのですから、もう少しあたたかな気持で考えるならば、いろいろな例を考えても、私有財産が取られる、おまけにさらに特別に大きな経済援助をやるということは非常に異例中の異例だということは、これは認めざるを得ない。政府、特に自民党の諸君のPRぶりを見ると、何か終戦後——第二次世界戦後独立している国に、母国が何でも経済援助をやるのはあたりまえなようなことを言っているけれども、その前提というものは、少なくとも私有財産が完全に保障されているということが前提なんです。それは私は隠すべからざることだと思っている。それはそうじゃないですか、外務大臣、どうお考えになりますか。
  164. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおり心得ております。
  165. 曾禰益

    ○曾祢益君 心得ただけではなくて、ぜひその辺即応した外交交渉をやっていただきたいと思う。私は請求権問題については最後に、最初に申し上げたことになるのですけれども何といっても、金さんとの話し合いは、請求権で譲っても、向こうのやはりこれに対応するものを、ステーツマンシップの発揮によってほかの問題を打解する道が得られるということに大きな意義があると思うんです。それが今やそうでなくなったと断定はできませんけれども、まだ経過中ですけれども、少なくとも大きくめどを失ったことは否定できない事実だと思います。したがって、この点は非常に大きな失敗ではないかと非常に憂慮するものでございます。  次に、私は日韓問題で、割合と注意されておらないけれども非常に重要な問題と思いまする、在日朝鮮人の処遇の問題について伺いたいと思うのです。私は、この問題は非常に人道的にも重要だし、社会的にも治安的にも非常に重大な問題だと思う。こういう問題に必ずしも十分にスポットが当てられていないような感じがいたします。しかし、私はこれは非常に重要な問題であると思います。これは決してほっておいていい問題でない。むしろ解決を迫っている問題だと思います。この意味で以下各関係大臣から御説明を願いたいんですけれども、まず、在日朝鮮人の社会条件と申しますか、どういう生活条件にあるのか、一般的に気の毒な人が多いんではないか。生活保護法の適用を受けている、あるいは日雇い労働者というような階層の人が多いのではないか。また、言いかえるならば、日本国民の税金によって、日本の中央、地方の政府の負担において、相当多くの、おそらく純粋の日本人よりかパーセンテージとしては多い部分を在日朝鮮人がそういう社会保障的なものを食っている——と言っては悪いけれども、適用を受けているんじゃないかと思うんですが、まず、厚生大臣から生活保護法適用問題状況、朝鮮人で統計が完全でなくとも大都会等の例を実例から御説明願いたいし、労働大臣から——労働政務次官から大臣にかわって労働条件、日雇い労働者状態をお示し願いたいと思います。
  166. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 在日朝鮮人につきましては生活保護法を準用しているのでありまして、現在その数は昨年の十一月現在で五万九千人、約在日朝鮮人の一割ぐらいになっておるのでございます。
  167. 田村元

    政府委員(田村元君) 職業紹介の基本でございます職安法におきまして、人種、国籍等によって差別待遇をしちゃいかぬという規定がございますので、労働省としては、日雇いとかあるいは失対においてどの程度第三国人が従事しておるかということは、まだ調査をいたしておりません。ただし、関西地方には相当数多いように聞いております。たとえば失対におきまして三分の一程度の数が第三国人によって占められておるという町もあるやに聞いておりますが、大体関西地方において非常に多い。二割程度大都市においてはあるのではなかろうかという程度の、これは想定でございます。
  168. 曾禰益

    ○曾祢益君 大体の大勢として、非常に一般日本人より割合が多くこういう生活劣悪条件に置かれ、日本の社会保障の適用を受けているということがわかると思う。これとかなり関係は深いと思いますが、しからば、わが国の治安という関係から見まして、朝鮮人問題の特異性というようなことがあるか、一般的にどうなのかということを警察担当大臣からひとつお示しを願いたい。
  169. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) お答えいたします。在日朝鮮人の犯罪構成でございますが、三十七年中におきまする刑法犯の検挙件数が約三万五千、検挙人員が一万七千、また、道交法その他特別法犯関係が八万一千件の七万九千人ということになっております。この犯罪の比率というものを、在日朝鮮人の分とその他の外国人また日本人というので比較いたしてみますると、日本人の犯罪者率は一千人当たり六・〇、朝鮮人が三三・一、その他の外国人が一九・五ということになっておりまして、犯罪の率は相当に高いという状況になっておるわけでございます。
  170. 曾禰益

    ○曾祢益君 長官にもう一点伺いますが、それに関連して、これは必ずしも朝鮮人だけが悪いというより、やはり朝鮮人で本来ならば外国人として退去をすべかりし人がおる。そういうやはり前科者の割合が非常に多いんではないかと推定されるんですが、そういう点はおわかりでしょうか。
  171. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) ただいまの前科の率というのはここに持ち合わしておりませんが、朝鮮人は、先ほど来お話しのように、生活困窮者と申しますか、低い生活におる者が相当多いということと、それから、当然悪質な者についてならば強制退去をすべき者が必ずしも退去されないでおるという者もあるわけでございます。そういうようないろいろの事情から犯罪率が多くなっているんではないかというふうに考えます。
  172. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで、国籍問題と送還問題というのは非常に重要になってくるわけです。そこで法務大臣から、この国籍問題と送還問題についての朝鮮人に焦点を合わしてお話を願いたい。
  173. 中垣國男

    国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。在日朝鮮人の国籍の問題につきましては、なかなかここで一方的に申し上げることはできないのでありますが、終戦前より引き続き日本に在住した在日朝鮮人、それから、その人々を母体として新しく生まれた人々、それからもう一つは、日本の入国管理令に違反いたしました不法入国者、その三つが在日朝鮮人になっておるわけでありますが、これらの人々の国籍を日本政府が一方的に決定するという権限がないのでございまして、日本といたしましては、自分の国は北鮮だと主張する人、韓国だと主張する人、あるいは統一朝鮮だと主張する人、それらの人々のいずれも朝鮮人という言葉で扱っておるのであります。したがいまして、日韓協定が将来成立いたしました暁には、これは当然のところとして韓国人というものがあらためて在日朝鮮人の中から区分されるわけであります。したがって、韓国人と韓国人でない在日朝鮮人とに分かれると思うのであります。  先ほど御指摘になりました強制送還の問題でございますが、これは御承知のとおりに、平和条約が発効以前には若干の送還をしたのでありますけれども、発効後におきましては、悪質犯罪人の強制送還はいたしておりません。ただ、管理令に違反をしました不法入国者につきましては、今までに約一万六千人を韓国に送っております。なおまた自費出国の形で二千百数十名の者を返しております。それから、これは犯罪人ではございませんが、国際赤十字のあっせんによりまして希望帰国者として約九万人弱の者が北鮮に帰っておる、そういう状態でございます。したがいまして、その法的地位の問題をめぐりましてただいま韓国側と折衝しておりますのは、やはり犯罪人引き渡し条項の内容等について交渉を行なっておるという途中にあるわけでございまして、それはまだ申し上げることはできません。
  174. 曾禰益

    ○曾祢益君 大体、今いろいろお話し願ったような関係で。本来ならば、終戦後日本から独立したときに、みずからの決意で外国籍、朝鮮籍、その細分がまた南北いろいろやかましいですけれども、朝鮮人になって、したがって、そこで本来ならば内国民の待遇はできないわけでありますけれども、しかし、これは普通の場合と違うので、従来日本人であった朝鮮人の人には、他の外国人とは違った、いわば内国民に近い待遇を情義上与えてきたわけです。私はこれはいいと思う。しかし、それにしても、いつまで日本で生まれた者を日本人待遇をする朝鮮人とするか、そのようなことをはっきりきめませんと、強制送還すらできない。こういうことで、やはりそこに治安保持上からもゆゆしき問題があるのだと思う。そういうバック・グラウンドを背景としたところの在日朝鮮人の法的地位の問題を解決することは、むろん在日朝鮮人の安定のためにもなるし、また日本のためにもなる私はほうっておけない問題だと思うのですが、この問題に対する外務大臣の処理方針を伺います。
  175. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今御指摘のような特殊事情は、十分私どもとして考慮しなければならぬと思います。そしてまた、将来わが国の政治的あるいは社会的な禍根を生ずることのないように、日韓双方で十分納得ができまする合理的な解決線というものを目安にいたしまして、今せっかく話し合いをしているところでございます。
  176. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう少し大体のラインをお話し願ったほうがよいのではないかと思うのです。ある程度、ある時点まで日本におった者、その一代限りでは特別の待遇を与えるとか、どの程度の外国人と違った内国民的な待遇が職業その他においても与えられるのか、アウト・ラインでもいいですから、もう少し御説明を願いたい。
  177. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 今御質問にございましたとおり、一番重要な問題は、いわゆる永住権と申しますか、ほとんど日本人に近いような待遇、処遇を得ます韓国人の人の範囲をどれだけにするかということが一番の問題でございます。終戦前から日本に来ておりました人については、まず問題はないのでございますが、そのいわゆる子孫の場合になって参りますと、これは実は今在留韓国人の三分の二が日本生まれということになっております。これをどの程度、いつから生まれた者までを特別の処置を与えるかというのが一番根本的な問題になりまして、これをどちらに有利と申しますか、甘くきめるかによって、ほかの随伴的な問題、技術的な問題もそれによってにらみ合わせて協議するというような格好になっておりまして、両方を並行してにらみ合わして協議している段階でございます。当然韓国側としては、できるだけその範囲を広く甘く、極端なことを、もし理論的に極端なことを言えば、子々孫々いつまでもというくらいの理想論というような強い立場をとっておりますし、こちらといたしましては、そう無制限にということも言えませず、結局その中間、どこに線を引くかということが、今の交渉の懸案になっておるわけであります。
  178. 曾禰益

    ○曾祢益君 漁業問題については、きのう杉原委員の非常に適切な御質問があったわけですが、結論的に言いまして、やはり日米加条約のような、ああいう自主規制といいますか、そういうものを残しておくと、これは韓国に一つの言いがかりといいますか、主張根拠を与えます。そういうことをやめるということと、いま一つは、むろん相手のある交渉ですから、あまり無理なことは言えないと思いまするけれども、安易に、韓国の場合は特別だから十二海里までは専管漁業区域と認めるということになると、今度はそのことがまた韓国だから特別だというような日本人のセンスであって、日本の国際的主張にはそれは通じません。したがいまして、十二海里まで譲るかどうかということについても、特に慎重な御考慮が望ましいと思うのですが、総理大臣のお考えを伺いたい。
  179. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話しのとおり、この問題は、韓国と日本だけの問題と限り得られぬ状態でございます。そういう点は十分考えまして交渉いたしたいと思います。ただいまのところは、十二海里のほうへ話を進めておるんではないかと思います。
  180. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後に、日韓会談の今後の見通しと、これに関連する政府の態度について伺います。まず、私どもの主張については、冒頭比較的正確を期する意味で、大体の私どもの文書を読みまして申し上げたのでおわかり願ったと思います。すなわち、現段階においては、やはり政治的折衝は実際問題として相手方が動いているのでありまして、今まで協定をやるべき相手方が、同時にある意味では、何といっても民政移管後もバック・ボーンに残るという、そういう一つの好条件を考えながら進められたのではないかと思います。いずれにいたしましても、協定を今の段階でやっても、はたして民議院においてどうかなあということは何人も心配することなんでございますから、そういう段階では、韓国側がはたして各政党の受け入れ態勢、協力態勢等が大丈夫なのかどうか、そういう政治的見通しなしに、ただ漫然と——という言葉は悪いでしょうけれども、ただ交渉を進めりゃいいんだ、そういうかたくなな態度ではいけないのではないか。同時に、私ははっきり申し上げまして、日韓会談が絶対反対なんだからという立場から、隣の国にごたごたが起こったからいい機会に打ち切れという主張に、私は断じてくみしませんけれども、それは論外であるけれども、政府の態度の中に、やはりそういう意味の、私申し上げるような、政治交渉についてはしばらく見送るというくらいのおおらかさというか、慎重さといったほうがいいかもしれませんが、これは当然だと思うのです。特に、この間本院の本会議における総理の岡田委員に対する答弁の中で、いささかわが党の主張に誤解を与えるような節が、御答弁があったので、この点は、われわれの主張は、政治的な折衝はこれを停止、そしてしばらく情勢を待て、しかもその意味は、先ほど私が申し上げた二つの条件、懸案の一括解決、もう一つは、そのできるであろう協定というものを民議院等においてこれが守られる受け入れ態勢はどうか、これの確たる見通しがつくまでしばらく停止、こういうことを申し上げたのですが、この点も、総理もいささか言葉が不十分であったような感じがするので、この際所信とともに、そこら辺の点を明らかにしていただきたいと思います。
  181. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は西尾委員長とも会いました。そうしてまた、その前に参議院の外務委員会であなたの質問がございました。あなたの質問は、いろいろの事情はございますが、私は基本的に言うならば、これらのごたごたがあったからといって、隣の国のごたごたに乗じて会談を打ち切れというような態度はとるべきではない、会談を打ち切れという態度はとるべきでないというあなたのお考え、私はお答えしました。けっこう、そういう考え方ですと言っておる。  それから、西尾さんがおいでになりまして、これは一々私読まなかったのです。大体、政治折衝を停止しろとか、停止しろというのと、打ち切れというのとは、だいぶ違うと思いますが、慎重にやらなきゃいかぬ。その慎重というのは、あなたがお話しになっているように、相手方と話をしたら、その話が実を結ぶような状態であるかどうか、そういうことは外交折衝においては当然第一前提でございます。場当たりでやっていけばいいというものではございません。それから私、あなたのお考えといい、また西尾さんの態度といい、これはよほど注意してやれ、せっかく結んでもそれがあとだめになるようなことでは両国のためによくないという心配から、一応停止をして様子を見たらどうか、打ち切れという意味ではないと私は感じておるのであります。したがいまして、岡田さんが、多分西尾さんも打ち切れというような態度じゃないかというお話でございましたから、打ち切れという意味じゃないでしょう、慎重にやるべきだということでございまして、政治交渉は停止しろ。政治交渉とは何ぞや。今の向こうから来ている代表とは一切会わぬということか、あるいはこまごましい問題はずっと下交渉してもいいという意味か、その点ははっきりしないのでございますが、政治折衝停止という問題は、はっきりしないのでございますが、しかし、事柄は、基本的にいって、ああいうごたごたが起こったから日韓交渉を打ち切れという意味ではない。そうして、民政移管へのいろいろなごたごたがあるが、また、政党も今三つできるようになっている。朴さんも今のところは大統領に立たぬということになれば、民政移管後の政治状況、しかも、それまでにやるか、あるいは今の状態ではもう少し見送るか、いろいろな点は私は考えなければならぬ。しかし、一国の政府として、代表者が来てやっているのに打ち切るとか、表向き停止しますということは言えない。私は、あなた方のお考えは、慎重にやって、あまり大きいことをきめずに、こまごましい問題、あるいはいろいろな話し合いということは私はいいんじゃないかと、こう感じてああ答えたわけでございます。私は繰り返して申し上げますが、やっぱり相手も代表を送っておることでございますから、必要に応じまして交渉はいたします。しかし、向こうの政権の推移、政治勢力の動向につきましては十分考えながら、交渉を進めていきたいと考えます。
  182. 曾禰益

    ○曾祢益君 質問を終わります。
  183. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 曾祢委員の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明六日は、都合によりまして、午後零時三十分から委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十七分散会