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1963-03-04 第43回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月四日(月曜日)    午前十時四十二分開会   ―――――――――――――    委員の異動  二月十六日   辞任      補欠選任    森 八三一君  大竹平八郎君    市川 房枝君  小林 篤一君  二月二十二日   辞任      補欠選任    吉田 法晴君  近藤 信一君  二月二十五日   辞任      補欠選任    竹中 恒夫君  後藤 義隆君    丸茂 重貞君  杉原 荒太君  二月二十七日   辞任      補欠選任    田中 清一君  米田 正文君    西田 信一君  小山邦太郎君  三月一日   辞任      補欠選任    北條 雋八君  二宮 文造君  三月四日   辞任      補欠選任    米田 正文君  山本  杉君    大倉 精一君  松澤 兼人君    田畑 金光君  曾祢  益君    向井 長年君  田上 松衞君   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            大谷藤之助君            川上 為治君            斎藤  昇君            平島 敏夫君            北村  暢君            横川 正市君            小平 芳平君            大竹平八郎君    委員            井上 清一君            植垣弥一郎君            太田 正孝君            加藤 武徳君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小柳 牧衞君            古池 信三君            後藤 義隆君            河野 謙三君            郡  祐一君            杉原 荒太君            館  哲二君            松野 孝一君            山本  杉君            吉江 勝保君            稲葉 誠一君            近藤 信一君            瀬谷 英行君            戸叶  武君            豊瀬 禎一君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            松澤 兼人君            松本 賢一君            山本伊三郎君            鈴木 一弘君            二宮 文造君            小林 篤一君            曾祢  益君            田上 松衞君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 中垣 國男君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 西村 英一君    農 林 大 臣 重政 誠之君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 小沢久太郎君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 篠田 弘作君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 近藤 鶴代君    国 務 大 臣 志賀健次郎君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    内閣法制局第一    部長      山内 一夫君    総理府総務長官 徳安 實藏君    防衛庁長官官房    長       加藤 陽三君    防衛庁防衛局長 海原  治君    防衛庁教育局長 小幡 久男君    防衛庁装備局長 伊藤 三郎君    防衛庁参事官  麻生  茂君    経済企画庁調整    局長      山本 重信君    経済企画庁総合    計画局長    向坂 正男君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省経済協力    局長      甲斐文比古君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      高橋  覚君    大蔵政務次官  池田 清志君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省理財局長 稻益  繁君    農林政務次官  大谷 贇雄君    農林大臣官房長 林田悠紀夫君    水産庁長官   庄野五一郎君    通商産業省繊維    局長      磯野 太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○昭和三十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから予算委員会開会いたします。  まず、委員変更について御報告いたします。去る二月十六日、森八三一君及び市川房枝君が辞任され、大竹平八郎君及び小林篤一君が選任されました。二十二日、吉田法晴君が辞任され、近藤信一君が選任されました。二十五日、竹中恒夫君及び丸茂重貞君が辞任され、後藤義隆君及び杉原荒太君が選任されました。二十七日、田中清一君及び西田信一君が辞任され、米田正文君及び小山邦太郎君が選任されました。三月一日、北條雋八君辞任され、二宮文造君が選任されました。本日、米田正文君が辞任され、山本杉君が選任されました。   ―――――――――――――
  3. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、理事補欠互選についてお諮りいたします。理事大竹平八郎君は、去る二月八日委員辞任されましたが、十六日再び委員になられました。よって大竹君を理事補欠に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   ―――――――――――――
  5. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 昭和三十八年度一般会計予算昭和三十八年度特別会計予算昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題といたします。  三案は一昨二日衆議院から送付され、本付託となっておりますので、念のために申し上げておきます。三案の取り扱いについて理事会において協議いたしました、そのおもなる内容について御報告いたします。  総括質疑は、本日より開始して六日間を目途といたしました。その質疑総時間は千十五分とし、各会派への割当時間は自由民主党三百七十分、社会党三百七十分、公明会百分、第二院クラブ及び民主社会党それぞれ七十分、共産党三十五分でございます。質疑順位は、第一回は社会党自由民主党公明会社会党、第二院クラブ民主社会党社会党共産党とし、第二回以降につきましては社会党自由民主党社会党自由民主党公明会、第二院クラブ民主社会党の順でございます。  次に公聴会については、来たる十四、十五日の両日にわたり開会することとし、公述人選定等につきましては、理事会で協議いたすことにしております。  以上報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。   ―――――――――――――
  7. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいま委員変更がございました。  大倉精一君、田畑金光君及び向井長年君がそれぞれ辞任せられ、その補欠として松澤兼人君、曾祢益君及び田上松衞君が選任されました。   ―――――――――――――
  8. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは、これより質疑に入りたいと思います。羽生三七君。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは、主として外交経済の二つの問題をお尋ねしたいと思いますが、最初に、まず外交問題から入りたいと思います。  キューバ危機が良識にささえられて克服されたことは、御同様喜ぶべきことでありますが、しかし、最近の世界情勢はすこぶる複雑で、潜在的にも顕在的にも多くの問題点をはらんでおります。今日、この国際情勢のもとで日本外交路線をどのように設定していくかということは、きわめて重大な問題と思います。池田内閣の今日まで示してきた基本的な路線は、まず日本自由陣営の一員として確認をし、さらに最近では、三本の柱という立場一つ日本を置いて、日本役割について大いに自負されていることは特に言うまでもないことであります。しかし、具体的に問題を検討すれば、非常に多くの疑点に突き当たります、まず最初に明らかにしていただきたいことは、昨年十一月日米貿易経済合同委員会昼食会の席上におけるいわゆるケネディ発言についてであります。あの際ケネディ大統領は、中国封じ込めについて日本協力を求めるといいますか、日本の注意を喚起したのでありましょうが、それはケネディ大統領が抱懐をしておる常日ごろの考えをそのまま率直に述べたということだと思います。しかし、私は今そのことについてとかくの詮議はいたしません。問題は、いうところの中国封じ込めについて米国日本に何を期待しているのか、具体的にはそれはどういうことを意味するのかという点であります。この点についてまず最初総理にお伺いいたします。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題につきましては、たびたび申し上げておりますごとく、東南アジアでの共産勢力拡大を阻止しよう、こういうケネディ氏の考え、われわれはこれはケネディ氏の言をかりるまでもなく、共産主義の浸透を阻止する必要があると私は考えております。ケネディ大統領お話で、日本中共貿易に対しての考え方をとやかく言っておるとは私は考えておりません。また、そういうことを言うべき筋合いのものでもない。中共との関係は、国際連合中共立場についての考え方重要議題として審議されることになっております。その他の問題につきましては、日本独自の考えで進むべきだと思います。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 いや、私の言うのは、そういう抽象的、一般的なことでなしに、それは軍事的な性質のものか、あるいは経済的な性質のものか、あるいは単なる精神訓話であったのか、したがって、アメリカ日本に要求しているのは具体的に何であるのか、単なる精神訓話的なものであったのかどうか、そういうことをお尋ねしているわけです。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 軍事的ということはもちろんないと思います、日本はそういうことはないのですから。それで訓話的といっても、単にケネディ大統領の自分の考え、日ごろの考えを申し述べられただけであって、それがわが国にどういうふうな影響を持つというようなことは、私は考えておりません。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 影響を持つとか持たぬとかいうことでなしに、一体それは何を意味するのかということで、もう少し具体的でないとはっきりしないと思いますが、一体何を意味するのでしょうか。これは外務大臣でもよろしゅうございます。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あの御発言の背景といたしまして私どもが見ておりますのは、これはアメリカが公然申していることでもございますけれども、御承知のように、アメリカの財政は近年赤字続きである。国際収支も御承知のように逆調が続いておる。このことは、アメリカの強大な国力をもっていたしましても、今日世界政策アメリカが果たしておる役割は、アメリカ国力を越える仕事をやっておるということであろうと思うのです。したがいまして、NATO諸国を初めといたしまして、わが国も含めまして、勤勉な成長経済の実を刈りとりつつある国々が、それぞれの立場で大いにやっていただくことは、アメリカにとって望ましいことであるということでございまして、具体的な要請ではなく、今日の世界におきましてアメリカが果たしておる役割がいかにも重いので、他の国々がそれぞれの立場におきまして、世界の平和のために、繁栄のために貢献をしていただきたいという願望が、この御発言の中に込められておると思います。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 これはあとからだんだん具体的な問題に触れてお尋ねすることにしますが、日米安保協議委員会で、対中国問題について日米間に見解相違があったと言われておりますが、これは新聞にはっきり出て、外務大臣談話等も出ております。したがって、どういう見解の――対中国問題でどのような日米間に見解相違があったのか、お聞かせいただきたい。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、中国大陸の問題を考える場合に、アメリカ日本との歴史的な立場が違うということでございます。アメリカは、御承知のように、国会並びに世論から申しましても、中国に対していい感じを持っておりません。というのは、朝鮮戦争を通じましてもたくさんの同胞の血を流しておる事情もございまして、中国大陸に対するアメリカ世論というものは、決してよくないのでございます。しかし、翻ってわれわれの立場考えてみますと、長い中日戦争によりまして多大の損害を与えておるということに対する国民の意識というものがございますし、古い古いつき合いでございますので、日米間の中国大陸に対する感じ方というのは、私から申し上げるまでもなく、日米間に非常な軒輊があるということでございます。そういう両方の感じ方の違いから、たとえば中国貿易というようなものにつきましても、感じが、政策上の違いが出てくると思うのでございます。そのことはいわば考えられ得ることでございまして、そういう違いがあってならぬという性質のものではないと私は思うのでございまして、このことのために日米関係云々という性質のものでは私はないと考えます。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 次のことは、若干意見も入るわけですが、日米貿易経済合同委員会における討議課題は、バイ・アメリカン、シップ・アメリカン等の問題を中心に、いわば日米片貿易の是正、具体的には日本商品輸入制限の問題、また、通商拡大法の成立に伴う関税一括引き下げの問題、さらに貿易、為替の自由化促進に関連する問題等々、日本側としては、日本の当面する経済的要求の実現がその主要な課題であったと思うのであります。しかし、ケネディ大統領のいわゆる次元の高いと言われておる発言――高いか低いかは別として、そういう発言で、日本側発言というものが逆に封じ込められて、アメリカの巻き返しに出会って、むしろアメリカに活を入れられた形で、日本経済的要求の影が薄れたというのがあのときの実情ではなかったかと思うのですが、いかがです。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大前提として、日米貿易経済合同委員会というのは、特定の課題を持ちまして交渉するという会ではないのでございまして、今日日米間の共通の問題、通商経済上の諸問題につきまして率直な、隔意のない意見を交換し合うということが主目的でございます。かくして得られた双方の理解を通じまして、その後出てくるべき、起こるべきもろもろの問題を解決する精神的な理解の基礎というものを作り上げようということでございまして、その日米経済貿易委員会というもので勝負をうけるという性質のものではございませんことを、まず御了承いただきたいと思うのでございます。したがいまして、ここで最小限度議題を発表してございまするけれども、論議の中身を公表することにいたしますと、今後こういう会合をやる場合に、お互いメンバーの議論がかたくなってきますので、そういうことにならないように、きわめて自由な、きわめて濶達な意見が交換ができるような雰囲気を、環境を作るようにいたしておるわけでございます。具体的な諸問題の討議、そしてその討議を通じて帰結を見るというようには初めから仕組んでないことは御了承いただきたいと思います。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 これもまたあとからだんだん具体的に触れていきますが、もう一つ伺いますが、中国封じ込めという問題の場合に、封じ込めておれば中国崩壊するという考え方前提にしておるのかどうか、これはハリマンなんかがその代表的な人物だと思いますが、とにかく中国封じ込めということが中国進出を阻止すると、先ほど総理からお話がありましたけれども、具体的には崩壊前提として考えておるのか、国際環境から遮断をするということが目的なのか、その辺はどういうふうに判断されておるのか、この点お伺いいたします。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一般的に申しまして、先ほども総理からお答えいたしましたように、共産主義進出ということにつきましては、好ましくないという立場に立っておると思うのでございます。そして、一つ地域一つのもんちゃくが起これば、それがまた他の地域連鎖反応を起こすというようなことについて、米国も非常に警戒的であると私ども感じ取っております。しかし、現実の中国大陸の政権の崩壊目的としておるかどうかというようなことはアメリカ政府のお考え方でございまして、私ども承知いたしません。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 これは総理に対するお尋ねですが、中国が今日置かれている内外の諸情勢を考慮する場合に、むしろアメリカの対中国政策は逆に中国の姿勢を一そう高いものにする結果となるのではないか、かえってアジアの、ひいては世界の緊張を強める結果となるのではないかと私は判断をいたしております。だから、むしろ中国国民生活を発展させ、生活水準を高め、近代国家内容を強める方向を期待することのほうがより賢明ではないか、こう思うわけであります。そういう観点から、総理としては中国政府安定性についてどういう評価をされておるか、この機会に総理の見通しなり、抱負なりを具体的にひとつお聞かせ願いたいと思います。それと関連して日本政府は……これは先ほど外務大臣から一応のお話があったから割愛しておきます。一応中国政府安定性に関する評価であります。これを総理大臣からお伺いいたします。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中共政府安定性につきましては、私は従来の延安から起こった指導者の結束、また国民指導者に対する信頼も相当強いものと見ております。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 次に進みますが、ただいままで述べてきた問題との関連になりまするが、さきにアメリカギルパトリック国防次官来日して、池田総理初め関係閣僚会談をされたことは周知のとおりでありますが、もちろん私は、この会談を通じて何らか具体的な取りきめや直接的な義務が負わされたとは思っておりません。しかし、各方面の情勢を総合して、米国ギルパトリック次官を通じて日本防衛力増強要請し、日本極東における防御の中心勢力たる役割を果たすことを求めたことはほぼ間違いないと思います。その間の事情をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ギルパトリック国防次官は、先刻も申し上げておきましたように、御来日同盟国に対する定期的な訪問であるということでございまして、日本を終えて以後、欧州のほうを回られておるようでございます。それから、私ども感じ取ったところは、キューバ事件以後、ことに英国のEEC加盟中断というような事態のあとで、アメリカ政府世界政策の基調は、そういうことにかかわらず、不動のものであるということを同盟各国に伝えるということがおもなる目的ではなかったろうかと私どもは見ております。  それから、わが国防衛力の問題、防衛力増強という問題は、私が先ほどの御質問で冒頭に申し上げましたように、NATO各国日本防衛力が漸増して参ることをアメリカは期待しておるに違いございません。しかし、この来日を通じまして具体的にどうこうという要請はございませんでした。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 これは総理に対するお尋ねですが、日米安保条約が成立した当時の情勢は、日本が自国を防衛する有効な手段を持たないので、日本が基地を提供し、米国日本防衛についての役割を果たす、これが主眼であったと思います。しかし、その後ときの経過するに従って、米国日本に対して極東における防衛中心勢力たる役割を果たすことを求めるようになったことは確実だと思います。そういう意味で、そこに相当大きな変化が生じていると思う。そういう意味で、米国日米のこの軍事協力というもので一体日本に何を期待しておるのか。あとからだんだん具体的にお尋ねいたしますが、まず総括的に安保条約以来の世界の客観的な条件日本の主体的な条件変化、それに対応してやはりアメリカ日米軍事協力への要請というものはもっと進んできておるのではないか、単に安保条約締結当時の状況にとどまっておることはないと判断をしておりますが、その間の総理の具体的な御見解を承りたい。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 安保条約締結並びに先般の改正の当時と今と変わってきておるとは、私は考えておりません。今お話にありました、極東における防衛日本中核体になるというふうなことは、私は考えたことはない。われわれは、外部からの侵略に対して国連がそれを阻止するだけの力を持つまでは、安保条約によって日本を守ろうとしておるだけでございます。極東防衛中核体になるというふうなことは、私は考えてはございません。また、そういうことをアメリカから聞いたこともないのでございます。締結当時と何ら変わっていない、こう考えます。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 このギルパトリック次官発言を通じて理解されることは、米国通常兵器分野日本防衛力増強を期待しておる。つまり、日本通常兵器分野核兵器は今のところ日本に持ち込まない、また持ち込む場合には日本の合意を求める、こういうことであります。これは新聞の御本人談話のとおりに私は申し上げているのです。同時に同次官は、現在米国が持っておる核兵器配置は効果的である、こうちゃんと付け加えて新聞発表しております。そこで私の聞きたいことは、日本通常兵器アメリカ核兵器という一種の分担協力関係と、こう思っておりますが、核兵器は持ち込まないという場合、この陸上だけの持ち込みのみでなく、ポラリス潜水艦寄港等も将来ないものと理解していいのかどうか、この辺の見解を承りたい。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもも、さよう心得ております。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 防衛庁長官にお伺いいたしますが、その場合、決して米国の言う核兵器の――これはギルパトリック次官の言っておることですね――核兵器の効果的な配置とか、あるいは防衛ということは、具体的にはどういう状況をさしておると御判断になるのか。これは私の主観ではない。御本人がちゃんと新聞発表しておるのですが、日本には核兵器を持ち込まないが、しかし効果的な核兵器配置ができておると、こう談話で発表しておるのですが、それはどういう状況を指すのか、お答え願いたい。
  30. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) お答えいたします。ただいまお話しになりましたことは、先月の七日にホテル・オークラにおいて、ギルパトリック内外記者団との会見内容のことを申されたことと存じますが、蛇足でございますが、その会談におきまして内外記者団の問いは、「きびしい極東情勢に対処するため、米国日本核兵器持込み考えているか」云々ギルパトリック次官、答え「そのような考えはない。日本核兵器を持込む場合は、日本政府の同意が必要である。しかし、」――ここがただいま御指摘の点でございますが、「われわれが現在行っている核兵器配置は、ソ連に対して十分価値ある配置だと思っている。」、このとおりに了承いたしておるのであります。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 いや、その場合に、防衛庁としては効果的であるかないかはこれは別の話で、日本中心としてどういう配置ができておると了解されておるか、防衛庁としては了解をされておるか、判断をされておるか、こういう問題であります。
  32. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) この問題は作戦に関する問題でありまして、私どもは十分に承知いたしておりません。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 これはまたあとでだんだんお尋ねいたします。  そこで、この核兵器は絶対に持ち込まない。これはアメリカも持ち込まない――まあ一応その言葉どおり受け取って、持ち込まない。それから日本も持ち込ませる意思はない。それなら、むしろ積極的に非核武装宣言なり、あるいは非核武装地帯の設置を具体的に考慮してはどうかと思います。そういう立場に立ってこそ、拡散防止の立場において、中国がかりに核保有の場合においても抗議をし得る条件が整うのではないでしょうか。おそらく将来必ず起こり得る問題と思いますけれども、なぜ、絶対に持ち込まないと言うならば、日本が、国会なり政府なりが、非核武装宣言なりあるいは非核武装地帯の設置を積極的に進められないのか、これはひとつ総理からお聞かせをいただきます。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題につきましても、従来この席上でお答えしたことがあるのでございますが、われわれは、非核武装宣言を各国がやることを衷心より望んでおります。しかし、今の現状におきましては、実験停止もなかなかむずかしい、こういう状態でありますので、日本がこれを宣言いたしましても、私は現実的な問題としては効果のないことじゃないかと思っております。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 いや、これはもう平和外交に取り組む日本の基本的な姿勢の問題になりますが、これはまたあとでだんだん触れていきますので、次の問題に移ります。  米国はトルコ、イタリア等の基地から従来のジュピター中距離ミサイルを撤去して新たにポラリス潜水艦にかえようとしておることは御承知のとおりであります。アメリカの核戦略体制は、ある意味ではポラリス中心変化しつつあるのではないか、そういう意味で、米国日本に今直接核兵器を持ち込まなくても、ポラリス等を通じて事実上日本は核戦略体制の中に組み込まれたことを意味するのではないか、こう思いますが、総理大臣はどのように御判断なさいますか。
  36. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、他国の作戦上の問題につきましてとやかく言う資料を持っておりません。将来、アメリカ世界の戦争防止のためにどういう措置をとっていくかということは、つまびらかにいたしておりません。したがいまして、その問題についてお答えすることはいかがかと思います。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 これは他国の戦略ではないのです。日本自身が当面しておる一つの重要な問題であります。世界的な兵器の発展による戦略体制の変化、それに伴い、日本の今置かれている現実を考えて、そこから出てくる一つの方向が、いわゆる今私の申し上げた問題だと思います。これはよその国の戦略をかれこれ批判するのは適当かどうかという問題で片づけられる性質のものではない、私はこう判断しております。  それで、これもあとで触れていきますが、防衛庁長官にお伺いしたいことは、自主防衛とかあるいは防衛力増強という場合に、米国の対日援助の削減は当然起こることでありますが、その場合、今後予算上、財政上相当強い影響が出てくると思いますが、どの程度の予算上、財政上の影響があるのか、一応の見通しをお伺いいたしておきます。こまかいことは要りません。
  38. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 御承知のとおり、ケネディ予算教書によりますというと、六四米国会計年度におきます同盟国に対する軍事援助は、前年度に比して三億ドル減、十四億五千万ドルと相なっているように承知いたすのでありますが、その三億ドルの減の中に日本の分がどの程度含まれているか現在かいもくわかりません。したがって、正確な資料を入手しなければ、今後日本の第二次防衛力整備計画にどのような影響があるかもちょっとはかり知れない現状にあります。いずれは新しいアメリカの予算編成の推移等などを見ながら、また資料を入手しまして、いろいろ検討するつもりでありますが、少なくとも、御審議を願っております三十八年度の防衛予算には影響なしと現在判断いたしております。また、第三次以降の問題についてのお尋ねでありますが、第二次防御整備計画の初年度はようやく終わって、来月からその二年度に入ろうというやさきでございまして、実は第三次以降の構想なり、あるいはまたその概要について目下考えておりません。いずれはだんだんにこの問題も検討しなければならぬと思いますので、現在どの程度の影響があるかということを申し上げる段階には、まだ立っていないのでございまして、以上御了承を賜わりたいと思うのであります。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 これはまた他の機会にさらにこまかくお尋ねをいたしたいと思います。  そこで、次は防衛庁長官お尋ねしたいことは、自衛力の強化という場合に、質的なウエートが多くなると思います。そういう意味で、この自衛隊の整備の近代化の方向というものは一体どこにあるのか、どのようなことを指向しているのか、具体的にその構想、内容について伺いたいのであります。特に陸、海、空と区分をして、今後どこに重点を置くのか、それぞれについて具体的な計画内容をお示しいただきたい。これは特に先ほど来それぞれの方からお答えがあって、アメリカ日本に直接的に何らの要請なり義務を負わせるようなことは言っていないが、一言にしていえば、日本防衛力増強だ、こういうお答えであります。そこで、防衛力増強する場合に、当然質的なウエートが多くなると思う。その場合、一体陸、海、空に分けてどこに重点を置き、何を指向しているのか、この問題をひとつ具体的にお聞かせいただきたい。
  40. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 仰せのとおり、現在防衛庁防衛力の質的な向上に力を入れております。その力を入れておりまする現実は第二次防衛力整備計画でございます。御案内のとおり、第一次防で骨幹的な整備の体制ができたのでございますが、これを質的に向上させるために第二次防衛力整備計画が策定せられて、今日実施進行中でございます。ただいまお尋ねの陸海空の質的な向上についてのお尋ねでございますが、まず陸上自衛隊について申しますると、機動性の向上という点に重点を置いております。さらにまた海上自衛隊につきましては、対潜水艦作戦能力の向上を目ざしております。また航空自衛隊につきましては、これは当然の任務でございますが、防空作戦能力の充実向上に力を入れておるのでありまして、今日陸海空の三自衛隊についてどこに重点を置いて、他の方面は若干手を抜くというようなことは考えておりません。三自衛隊につきましてそれぞれの立場から申しますると、作戦の能力の向上、この問題について三自衛隊とも共通にこれは重点を置いておりますが、それぞれの部隊につきましては、ただいま申し上げたとおり、重点を置いてその質的な改善向上に鋭意努力をいたしておる次第であります。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 防衛庁発行の文書の中に次の言葉があります。「計画の実施に際しては、内外情勢の推移に伴って戦略構想等に基づき、長期的見通しに留意しつつ、」云々とありますが、この防衛庁の戦略構想及びその長期的見通しとはどういうものか、具体的に御説明いただきたい。というのは、他国の戦略と先ほど総理はおっしゃったが、これは今度は日本自身の戦略です。だから、具体的に戦略構想を持って、しかも長期的見通しに留意しつつ日本防衛力増強をはかっておるとおっしゃるのですから、その具体的戦略構想は現段階ではどこに置いておるのか。将来どういう長期的見通しを持っていらっしゃるのか。莫大な経費を使って、しかも一国の運命をになう問題を含んでおるのでありますから、いいかげんなことでなしに、具体的にお答えをいただきたい。
  42. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 第一の戦略体制云々のことでございますが、自衛隊それぞれの任務なり、あるいはまた訓練の行動一切は日米安保条約を基調として行なっておるのでありまして、それ以外に外国の戦略がどらのこらのと、そういうことは考えておりません。また長期という御指摘でございましたが、これは今日の軍事科学が異常な発達を遂げて参っておるのでありますから、兵器装備の点について長期の見通しを立てながらこれをやるということを申しておるのであります。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 戦略がどうのこうのなんということは考えておらぬというのなら文書から削り取りなさいよ。防衛庁発行の文書に公然と書いてある。私は昨日見たのです。だから、それに基づいて今の自衛隊なり、それから防衛庁としての作戦計画が立っておるのでしょう、当然の話じゃないですか。そんなものは関係のないことだと、そんなものなら文書から削り取りなさい。安保条約関係あませんよ、日本自身のことです。
  44. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) ただいま申し上げたとおり、安保条約に基づいてわれわれは訓練行動いたしておるのでありまして、これが外国の核兵器がどうのこうのというのはそういう意味なんであります。核兵器を背景とするいろいろな戦略体制に即応するような戦略云々というものではないということを申し上げたのでありまして、この点御了承願いたいと思います。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 大臣でなくてもいいのですが、防衛庁のしかるべき人から、現段階における戦略構想とは一体何か。文書に示しておる以上、当然責任を持って説明すべきである。何を考えて戦略構想というのか、具体的に御説明願いたい。
  46. 海原治

    政府委員(海原治君) お答え申し上げます。  ただいまお話になっております点の「戦略構想等に基づき、長期的見通し」云々の点でございますが、これは第二次防衛力整備計画が作成されましたときに、国会の各委員会で御説明申し上げたことでございますが、一応できました二次計画というものは、将来「内外情勢の推移等に伴って、戦略構想等に基づき、長期的見通しに留意しつつ、随時再検討せられるもの」、こういうことを書いておるのであります。したがいまして、ここに書いてございますように、先ほど来、日米間の問題でお話が出ておりますが、私どもは随時再検討をするわけでございますけれども、その後、この二次計画を作りました当時の戦略構想というものに変化がないということでございます。したがいまして、長期的見通しに留意するということは、先ほど大臣からもお答えいたしましたように、たとえば航空自衛隊につきまして、F104というものの生産を行ないました。これは世界的にどの程度の戦闘力があり、今後どの程度これは使えるものであるかというようなことを絶えず研究してやっていく、こういうことを方針的に二次計画にうたったわけでございます。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 日米安保協議委員会等では、かなり私は具体的に大きな意味の戦略構想が検討されておると思うのです。そんな今のようないいかげんなことでは困ります。これはあとからだんだん具体的に聞いていくことにいたします。  次に、ポラリス潜水艦とノーチラス型との区別はだれが判定をするのか。日本はその寄港の場合に、実際にそれを判定するための臨検をすることは可能かどらか、これをお答えいただきたい。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 問題は核装備をしておるかどらかということでございまして、御案内のように、重要な装備の変更ということは事前協議の対象に相なっておりますが、今日まで事前協議を受けたことはないわけでございまするし、アメリカ側も核兵器を持ち込まないと申しておりまするし、わが国も持ち込みを認めないという、この基本的な態度はすでに確定いたしておるわけでございます。寸毫もそこに疑点がないわけでございます。で、問題になっておりまする潜水艦の寄港問題につきましては、そういう前提に立ちまして、本来ならば事前協議の対象にならないわけでございますから、安保条約に基づきましてアメリカ側に寄港する権利があるわけでございまするけれども、この問題につきましては、国民の受ける感情という点をわれわれ特に考慮しなければなりませんので、先方も特に用心深く事前に御相談があったわけでございまして、先方からの申し入れに応じまして国内の原子力委員会その他専門家の御意見を承りまして、安全保障上支障があるかないか、あるまいと思いますけれども、念のために専門家の御意向を聴取いたしておる段階なのでございます。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 臨検の問題はどらですか、臨検ということはできますか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもは、臨検して確かめるという意図は持っておりません。なぜならば、たくさんの飛行機なり艦船が日本の領域に入ってくるわけでございまして、それを一々点検するというようなことをしておっては、安保条約の運営はできないと思います。私どもアメリカ側を信頼いたしておりまするし、またその信頼を今日まで裏切ったことはございませんし、今後もそういうことはあり得ないことだと考えております。
  51. 戸叶武

    戸叶武君 関連。外務大臣の答弁によりますと、アメリカ側に寄港の権利があるという答弁でしたが、その寄港の権利があるという答弁の具体的な、理論的な基礎を説明願いたいと思います。
  52. 中川融

    政府委員(中川融君) 安保条約に基づきます地位協定の第五条によりまして、アメリカの軍艦を含む公船が日本の港に入る権利を認めておるのであります。その際に、施設、区域に入る際にはあらかじめ日本に連絡する必要もないわけでございますが、日本の開港場に入る場合には原則として日本当局に通報する、かようになっております。しかし地位協定から申しますならば、アメリカの公船は、日本政府がそのたびごとに許可を与えることなしに入ってこれるということになっておるわけでございます。もっとも今回の原子力潜水艦につきましては、アメリカが別途政治的な意味から日本側と相談しておる、かような段階でございます。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 次に核兵器を持ち込む場合には、事前協議をして、日本の同意を求めると、ギルパトリック次官は言っているのです。日本核兵器の持ち込みは絶対に認めない、こう言っているわけです。したがって事前協議に合意するはずはないと思います。しかりとすれば、事前協議というような余地を残さず、何らか明白な規定を設けて、これを明文化してはどうかと思いますが、いかがでしょう、外務大臣
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本の国が持ち込みを認めないという大方針を内外に宣明いたしておりますし、同時にアメリカも毛頭そういう意図は持っていないということであります。今の体制でちっとも支障はないと思っています。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 そうすれば、核兵器については、今、外務大臣が言われたとおり、また政府しばしばの言明のとおり、これの持ち込みを認めるという意思はない、それに変わりがなければ、かりに将来事前協議の場合が起こったとしても、それに日本政府としては合意することはない、こう判断してよろしいかどうか。これは先ほど申し上げたように、地上のみならずポラリス潜水艦の場合もすべて含めて、事前協議になった場合においても、日本が合意することがない、こう確認してよろしいかどうか。
  56. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府の不動の方針として持ち込みを認めないという立場に立っている以上当然のことと思います。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 それで、これははっきりさしたいと思うんですが、これはあとからこの問題にもう一度具体的に関連することがありますから、そのときにしまして、アメリカの戦略体制の変化に伴って、日本の米軍基地の問題はどうなるのか。これは漸次縮小、最終的には廃止の方向へ進むべきだと思います。これは戦略体制の変化が起こり、またそれを可能とする客観的な条件が出てきたわけです。したがって基地は縮小、廃止、将来そういう方向へいくべきであるし、またその条件は漸次整いつつある。この基地問題にどう対処されようとするのか、お伺いいたします。
  58. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 仰せのとおり、将来はどうなるかちょっとわかりませんが、現在のところでは重大な変化がないと、われわれは心得ておるのであります。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、アメリカの基地は、今後何を中心に運営されるのですか。しかもその場合、日本の自衛隊の増強を求めておるのでしょう。そうすると、核兵器のことは別とします、通常兵器の場合ですが、それで、核兵器は持ち込まない、その他の兵器の場合、いい悪いは別です。私はそういう意見を述べているのじゃないですから、客観的な事実をもとに論議しておるのです。その場合、日本防衛力増強していき、漸次アメリカがやっていることを肩がわりするわけでしょう。その場合、基地はだんだん要らなくなるのでしょう。どういう意味で永久――将来といっても、長い十年も二十年も先のことを言っているのではないのです。求められている防衛力に対応する基地問題、こういう立場でお伺いいたします。
  60. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 先刻から防衛力の強化の問題がいろいろお話しになりましたが、私どもはあまりそうはだ身に感じておりません。先ほどもお話がありましたギルパトリックといろいろ私が話し合いましたとき、第二次防御力整備計画を説明いたしましたところ、彼は非常に同慶の意を表せられたくらいでありまして、もう何も改まっての忠告は、あるいは要求がましいことはないのであります。したがって、今後基地問題が、アメリカの戦略体制の変化によってなくなるであろう。あるいはまた、なくなれば、それがまた肩がわりになって、日本防衛力の強化につながるのではないかというお話でございますが、私はそのようなことは考えておりません。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 それはおかしいのでね、よくお聞きいただきたいと思います。私はいわゆる主観的な意見を述べているのではないのです。客観的な事実をどう把握しようかということでお尋ねしているのです。だから日本防衛力がだんだんふえていけば、それに相当するアメリカの基地の削減なり、廃止はあってしかるべきでしょう。核兵器のことは別ですよ。そうすれば、何も見込みなしに、日本防衛力だけは永久にふやしていく、アメリカの基地はそのまま、こういうことですか。
  62. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 先の先のことまでは、私はここでお話しする限りでございませんが、現在におきましては、アメリカの基地が縮小されたり、あるいは廃止せられると私は考えておりません。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 次に、この自衛隊の装備の近代化の限界はどこにあるのか。この核弾頭装置可能な兵器に関連をして、事前協議の対象となる戦略兵器、核兵器、一応私もここに資料を持っておりますが、この機会に具体的にその名称をお示し願いたい。
  64. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 専門的にわたりますから、防衛局長から答弁させます。
  65. 海原治

    政府委員(海原治君) 従来から御説明しておりますように、一つには、核弾頭付きのもの、それから中、長距離用のミサイル、こういうものがその例でございます。
  66. 羽生三七

    羽生三七君 じゃあ、内容はここに持っておりますからけっこうです。そこで、これは総理から御答弁いただきたいと思いますが、自国を防衛するために必要な最小限の自衛力という意味、その限界はどこにあるのか。きょうの新聞を見ますと、蝋山政道氏が憲法九条との関連で、なかなか重要な発言をしておりますが、それは別として、自国を防衛するために必要な最小限の自衛力、こういう場合、その限界はどこにあるのか。具体的に言えば、核兵器を除けば、日本の自衛力の増強には何らの限界はないのか、その壁は破られたのかどうかということです。もし制約があるとするならば、それは予算上、財政上の理由だけかどうか、この問題であります。これは総理からぜひお答えをいただきたい。
  67. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の真意がちょっとつかみにくいのでございますが、もし答えが的はずれだったらまた訂正いたします。やはり自衛力というものは他国に脅威を与える筋合いのものではございません。あくまで自分の国を守る範囲にとどまるべきであります。最小限度の限界ということは、やはりその兵器の進歩、その他によりまして、いろいろ変わってくると思いますが、これは単に財政上、経済上の理由だけでなしに、私は他国に脅威を与えないという一つの問題があると思います。
  68. 羽生三七

    羽生三七君 これは非常に重要な問題だと思うのです。主観的にはどこの国だって他国に脅威を与えていると考えて軍事体制を進めているとは思いません。みんな平和という名目で一応やっている。そういう議論は別として、繰り返して申し上げますが、最近ではお互いに不感症になって、もうその限界がなくなったような感じです。それを制約しているものは財政上の理由だけで、核兵器さえ持ち込まなければもう際限なしに兵器の増強ができる、それを制約しておるものはただ一つ、財政上予算上の理由だけだ、こういう形に受け取られる。しかも先ほどから防衛庁長官が、今の戦略構想も言わないでしょう。そんな具体的なものも何もない。それじゃ一体どこまで伸ばすのか、どの程度か、兵器の発展に照応してやる場合、これは具体的にはなかなかむずかしい。新しい兵器が開発されればそれに対する手段も講ずるでしょうから、なかなか具体的にはむずかしいでしょうが、しかし、一応の限界というものはあってしかるべきだと思う。何も限界がない、予算上財政上だけでしょう。今の状態を私ども見ていると、何を基準にどこまでこの拡大をされていくのか、これは非常に重要な問題だと思いますから、もう一度総理大臣からひとつお聞かせ願いたい。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今の最小限度の限界というものはなかなかむずかしい問題だと思います。私は先ほど申し上げましたように、他国に脅威を与えない、しかもまた、自分の自衛の目的を十分果たし得るように、こういうことでございます。その最小限度の限界というものは、財政上経済上、いろいろな点があると思います。こういうものはやはり国会の審議できめるべき問題だろうと思います。どこが限界かということは言いにくいと思います。
  70. 羽生三七

    羽生三七君 もう一度お尋ねしますが、そうすると、何カ年計画などでこの程度いけば今の世界の戦略体制、兵器の段階から見て一応日本としてはほぼその目的を達成する――私どもの主観は別です。一応そういうものはないんでしょう。いつまでたっても無制限にどこまでもいける、こういうことなんでしょうか。どうもそこのところは、制約しておるものが財政上だけと言われ、財政上だけかどうか知りませんが、一応他国に脅威を与えないという見解総理は示されましたけれども、どの程度が一体脅威になるのかならないのか、この辺はなかなか判断はむずかしいと思いますが、今の日本状況では無制限であります。わずかに制約があれば総予算の中の何%という、そういうことで一応の財政上の制約をしておる。これでは非常に問題があると思いますので、くどいようでありますが、総理大臣からもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  71. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) こういうものはそのときの状況によりまして常識で判断すべきもので、今問題は、やはり国民所得についてどうだとか、予算の何割とか言っておりますが、あるいは人によってこれでは少ないという人もおりましょうし、あるいはまた、それでは多過ぎるんではないか、こう言う人もおりましょう。これは物理的、数字的にどうこうという問題ではないと私は思います。
  72. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題に移る前に、一応今までの問題を総括をして総理にもう一度お尋ねいたしますが、結局先ほど総理の答弁にも少しありましたけれども安保条約以来各種の変化が起こっておると私は見ておりますが、総理としては重大な変化はない、したがって、アメリカ日本に対して極東における何らかの役割を期待するといっても、具体的に何らの義務を負わされておるような事実はない、根本的な変化はない、今までどおりだ、こう了解してよろしいのですか。
  73. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そのとおりでございます。
  74. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題は日韓会談に触れますが、この具体的内容についてはあとで同僚議員が触れますので、私は簡単に一、二の点だけをお尋ねいたします。  この日韓会談の促進は、特に最近朴議長が軍事政権は失敗であったと自己批判をしておる。こういう状況のもとで交渉継続は賢明ではないと思いますが、との状況下における日韓会談にどういう姿勢で対処しようとするのか、この機会に政府のひとつ基本的な見解をお示しいただきたいと思います。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 軍事政権は、御案内のように、政権を樹立して直後、これは暫定政権であって、やがて民政に移管するのだという基本方針を内外に明らかにいたしました。しかもそのスケジュールまで発表いたしたわけでございます。で、私ども立場は、相手国がどのような政治形態をとるかということにかかわりなく、いずれの国とも国交を醇厚にして参るということでございまするし、国交未調整の国に対しましては、国交をどう取りつけて参るかということを考えなければならぬ立場におるわけでございまして、軍事政権がわが国との国交の正常化に熱意を示されましたので、それを相手に引き出しまして折衝を続けて参ったわけでございます。しかるところ、今御指摘のように、朴議長が退陣する、あるいは軍政は失敗であったということを告白されるというような事態に立って日本側の姿勢はどうかという御質問でございますが、私どもは、この政権はもともと民政に移管する前提であったと思いまするし、その場合に朴氏がそのヘッドになるのであるということを前提にしておったわけではございませんので、今の過程は私どもの予定どおり、民政移管への道程にあるものと理解しておるわけでございます。そのことによって日本側の交渉の姿勢にちっとも狂いはない、変える必要があるとは思っておりません。ただ現実の交渉でございますので、これは申すまでもなく、先方も日本も、お互いに国民が納得するような妥結内容を作り上げねばなりません。そのようにしなければならぬわけでございまするが、今日の韓国の状況におきまして、日本側がこれは合理的である、日本側も妥結してしかるべしという建設的な御提案につきまして、残された懸案について今具体的な話し合いにまで入っておりません。しかし、先方にも政党がだんだん形成されておるようでございまするし、それを、日韓の問題をどうするかということにつきましては、各政党の綱領においてだんだん具体化してくるだろうと思っておるのでございまして、私は、今日の状況は非常に困った事態というようには考えておりません。それから朴議長がこの軍政は失敗であったということはどうかということでございますが、これは韓国の指導者がそういう判断をされたと承っておるだけでございまして、日本政府として何らこれに対してコメントすべき問題ではないと思っております。
  76. 羽生三七

    羽生三七君 この問題はいずれ同僚議員があとから詳しく伺いますので、次の点に移ります。  この消費財の延べ払い輸出という問題、これは先日の当院の本会議の質問で、同僚議員がお尋ねしたことに対する総理大臣の御答弁の中から出てきた問題でありますが、この消費財の延べ払い輸出は、形式はとにかく、実質上中断と見られるこの日韓会談のつなぎ的意味を持っておるのかどうか、その辺はどうでございますか。というのは、この有償無償のほかに、五億ドルというあのほかに、プラス・アルファということにこれがなるのか。交渉がこういう状況にあるので、そのつなぎ的な意味を持つのか、その辺はどういうことですか。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その問題は正常化の交渉と関係はございません。ただいまで日韓の間にいわゆる延べ払いを認めておるということはなかったわけでございます。これは先方の外貨事情もございますし、韓国民の態度もございまして、今日までは延べ払い信用供与ということは政府として原則としてやっていなかったわけでございますが、今日、中共貿易につきましてもある程度のあと払いの信用供与を与えておりますし、インドネシアに対しましてもある程度の延べ払いを認めるというような段階になって参りましたので、日韓の貿易関係というのは今までのままの態度でよろしいかどうかということは、検討すべき問題として今検討中でございます。これは日韓交渉が停滞状態にあるからそのつなぎだというような性質のものでは決してございません。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題は、総理からお答えをいただきたいと思いますが、日韓会談の促進が軍事戦略面からNEATOにつながるという批判が各方面からあることは御承知のとおりであります。確かに、米国中心として日米、米韓、米台というようにそれぞれ独立した軍事機構が存在はしておりますが、日韓の国交関係が未調整ということで、ここに一つのエア・ポケットがあるということから、特にアメリカが日韓の国交回復に非常な期待を寄せておるのじゃないかと思います。そういう意味のことだろうと思います。ところが、それに関連をして今の日韓会談ではいろいろな経済的な問題が中心で進められておるわけでございますが、そういう経済的な問題のほかに、軍事的にも何らかの期待があるのじゃないか、こういうふうに言われております。そこで、日本が従来とってきた日米間のワクを越えて、アジアの集団的な防衛体制を指向しているのじゃないかという疑惑が各方面から出ておるわけであります。しかし、総理日本がそういう関係に入ることはないし、また、そういうことはこじつけだということをしばしば機会あるごとに答弁をされておる。そこで私としては、ただ単にこじつけであるとかないとかということでなしに、新たに他国との軍事同盟関係は今後絶対に持つ意思があるかないかということを、この機会に国民に明らかにする意味で、総理からお答えをいただきたいと思います。
  79. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はNEATO、いわゆる北東アジアの軍事同盟というふうなことは自分も考えたことはないし、また、われわれ同士の口から聞いたこともない。全然あり得べからざることだと考えております。われわれは、日本防衛のためには安保条約が必要で十分、それ以上のものは要らない。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 さきにも触れた問題をちょっとまた重ねて申すことになるわけですが、日米安保条約当時と比較して、国際面における客観的な条件も、あるいは日本自身の主体的な条件も今日では大きく変化しておると思います。池田内閣は、従来軍事力の増強にあまりウエートを置くと国民感情を刺激するということから、日本としては経済の自立体制を確立して、アジアにおける繁栄した安定国家として進むことが得策だという主張が強かったと思います。そういうことで池田内閣がきたのじゃないかと思います。しかし、最近米国日本に対してNATOの西独、イタリア並みの防衛体制の確立を求め、また、米国の援助も漸次削減して、日本自身の防衛負担率の増加によってこれを達成する、こういう期待が強くなっていることは確実だと思います。そこで私のお尋ねしたいことは、日本としては従来の姿勢です、経済繁栄を中心としてアジアの安定国家としての役割を果たしていく、そういう姿勢を今後とも持ち続ける意思があるのかどうか。というのは、一部には日本経済の繁栄だけを誇ってNATO並みの協力をしないという批判もあると聞いておりますから、そういう場合に、先ほどの総理のお答えである程度わかっておりますが、この機会に今後とも従来の方針に変わりはないのかどうか、これを持ち続けることが可能かどうか、お伺いいたします。
  81. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 変化はございません。私の外交、政治の根本観念はそこから出ているのであります。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、もう一度重ねてお伺いしますが、この日米協力の限界という問題でありますけれども経済関係のことはあとから触れます。  軍事戦略面については、防衛力増強、それを自前でやるというそれだけが日本に対する要請のすべてであるのかどうか。あるいは今申し上げました情勢変化に基づく何らかの極東における日本の軍事的寄与というものについては何らの制約もないし、また、今後も負う意思もないということを率直にお聞かせ願いたいと思います。なぜ私が率直にということを特に付言いたすかというと、先般日米安保協議委員会では、私たちの想像以上に非常なPRをしたわけです。今まではむしろ控え目に、なるべくならば隠密に、こういう姿勢から、公然と日米の体制というものをPRする、これがこの前の日米安保協議委員会の実際の姿だと思いますが、そういう点から判断して重ねて申し上げますが、経済面についてはあとから聞くといたしまして、自衛力の増強を自前でやる、それ以外には何ら日米間には極東問題を中心に制約がないのかどうか、なければ全然ない、こうお答えいただければいいのですが、その辺を率直にお聞かせ願います。
  83. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ギルパトリック国防次官と私との話をして御了解を得たいと思いますが、初めは二十分か三十分会う予定でおったのであります。しかるところ、ケネディ大統領より親書が参りまして、自分は非常にギルパトリックを信用し、常に諮り合っている。したがって、ギルパトリック氏と十分意見の交換をしてくれという話で手紙が参りました。私は国会の関係もございますが、実は八時半に繰り上げまして、一時間半あまり、大体話の内容は、日本防衛力の問題についてはほとんど出ませんでした。主としてキューバ以後のアメリカ状況、そして自分がこれからヨーロッパへ行く。イタリア、ドイツへ行く、その用務、そして東南アジア情勢、そしてまたカナダの問題等々、一般の問題を大体一時間半のうちで五十分程度ギルパトリックの話、そしてあとの四十分を、私がその問題に対しての私の判断、これをケネディ大統領にお伝え願いたいという話をした。日本防衛力につきましてただ言ったことは、軍事援助はだんだん減ってくる。だから今まで約束したものはいいけれども、今後の問題はある程度減ることがあるという程度のことでございます。主としてケネディ大統領の使いとして、そして日本総理大臣としての話でございまして、私が受けた感じでは、決して日本に非常にむずかしいことを押しつけるとかなんとかいうことは全然ございません。日米関係の今までの非常にいい関係を続けていこう、そうしていろんなことを相談し合おうというのが主でございます。防衛力の問題あるいは外交上についていろんな制約とかいうことは全然なく、非常にうまくいっておるのであります。で、私先ほど来申し上げましたごとく、日本世界における立場は非常に上昇する。経済的に他国に協力するということは、これは当然日本のためにもなる。外交上その他につきまして変化はない。そうして、日米関係は日に月によく理解が深まっていっておると私は信じておるのであります。
  84. 羽生三七

    羽生三七君 一応経済を除く外交防衛関係はここで終わりまして、次に経済外交についてお尋ねいたしますが、最初に、低開発国援助問題に関連してお尋ねをいたします。これはなぜ私がこの問題を持ち出すかというと、アメリカ日本に対する要請は、防衛力増強という問題もあると思いますが、低開発国援助がもう一つの主要な要求であろうと思います。まあ日本自身の問題でもありますけれども。そこで、日本としては今後この問題にどういう角度から取り組むのか、また、日本国力から考えてどの程度の援助を考えているのか、こういうことであります。そこで、一応私は今日までの――低開発国援助と直接の関連はないが、日本の賠償それから経済協力等の詳細な数字を一応ここに用意しましたが、これを私が読んでおると時間がなくなっちゃうので、政府のほうから純賠償それから経済協力、これを、総額、それからそれを年度別にして一年に日本がどれだけの負担になるか、これをひとつ御説明をいただきたい。
  85. 稻益繁

    政府委員(稻益繁君) 賠償関係についてお答えを申し上げます。  いわゆる純粋の賠償、ビルマ、フィリピン、インドネシア、ベトナムでありますが、この協定総額は、それぞれ円で申し上げますると、ビルマが七百二十億円、それからフィリピン千九百八十億円、インドネシア八百三億円、ベトナム百四十億円。年度別でありますが、これは協定によりまして各年次異なっております。このほかにいわゆる経済技術協力があるわけであります。これは、御承知のように、カンボジアとラオスに、賠償を放棄いたしました代償として無償で提供いたしております。これがそれぞれ十五億、十億。以上であります。各年次ごとの計数は、それぞれ協定によりまして異なっております。御必要であれば御報告しますけれども……。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 今も説明がありましたように、これは総額では一応日本の円にして三千六百億の余になると思います。このほかにさらにビルマと今交渉中の一億四千万ドルの問題、それから韓国の三億ドルを一応純賠償と見て、こういうふうにしていきますと、その統計は、私のほうの計算では、約十四億五千二百八万ドル、五千二百二十七億円と、こうなりまして、年度間の――国によってあるいは年度によってだいぶ違いますが、支払い額は、約一億一千六百万ドルくらいになる。日本の金にして四百十七億円くらい。さらにそれに経済協力関係がたくさんあるわけであります。そうしますと、こういうような場合に、経済の伸びが今後あるとしても、ある程度伸びるとしても、日本の負担は相当なものになると思います。そういう際に、低開発国援助に日本が、アメリカ要請だけではない、OECDに加入すれば当然そういう問題にぶつかってきて、特にOECDの場合は、加入の場合に、利益に均霑するだけでなしに、その義務もあるわけでありますから、当然この低開発国援助が重要な問題になると思います。こういう場合に、日本の財政規模と見合った援助を計画的に合理的に、しかもその援助のあり方、条件、金額等を相手国との関係で正しく設定して、その上に立ってこれを推進するということは今後の非常な重要な問題となると思います。しかも、低開発国援助の場合に、貿易では農産物その他第一次産品を中心とした貿易拡大政策が当然とられなければなりませんが、それはまたわが国の農業保護政策と矛盾をするというようなことで、非常な困難な条件に置かれる。しかも、低開発国援助は日本の差し迫った一つの問題になる。しかも、賠償、経済協力等、年にして一億何千万ドルという多額を要する。さらに、それに低開発国援助であります。こういう条件の中で、場当たりというのはいささか言い過ぎかと思いますが、何らの方針なしにただ低開発国援助――私はそれは賛成でありますが、それを何らの方針なしにやっていいのかどうか、その援助のあり方、条件等を将来のOECD加盟との関連も含めて今後どのように設定して計画的に遂行されようとするのか、ひとつ具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今羽生委員御指摘のとおり、経済協力問題というのは、非常にこれからの日本にとりまして容易ならぬ――やらなければならぬが、しかし容易ならぬ問題であると私ども考えております。かつ、わが国の財政能力、対外支払い能力というものとの見合いにおいて慎重でなければならぬ、仰せのとおりでございます。各国との話し合いにおきまして、私どもは、わが国の財政能力、対外支払い能力というものを見合いながら、その期限、条件をどうするかということに一番エネルギーを使って配慮いたしておる次第でございます。で、問題は、しかしながら、わが国の生産力系列がだんだんと伸びていくということ。しかもそれは一国だけが孤立した繁栄を維持できる性質のものではないわけでございまして、各国との経済的な協力関係の基盤の上に立たなければわが国自体の発展もあり得ないという基本の認識に立ちまして、これからも広範な範囲におきまして経済協力関係を持たなければならぬと思っております。過去は、幸か不幸か賠償という戦後処理の問題がございまして、今日まで今御指摘のような膨大な支払いを計画し、一部は済み、今継続中でございますが、この関係が一九六九年にはピークに達しまして、それから漸次純賠償的な支払いが減って参ります。したがいまして、それからあと経済協力をどう続けて参るかということにつきましては、ただいまから仰せのように、いろいろな関連を見ながら合理的なかつ適実な経済協力関係を打ち立てて参らなければならぬ、そういう心がまえで私どものほうも関係各省と協力をいたしまして鋭意検討をいたしておる状況でございます。
  88. 羽生三七

    羽生三七君 これは日本経済の発展成長に伴って、昨年十月の貿易自由化を八八%ですが達成しましたが、さらに一そうの促進を要請されておるわけであります。しかし、私は、ここで自由化率やあるいはそのことの是非には全然触れません。問題は、このような情勢のもとでわが国はガット十一条国への移行を表明して、さらに明年はIMF八条国移行もすでに具体的な日程に上っておる。こういう時期に世界貿易事情はどうかといえば、かなりきびしい情勢になっておると思います。まず当面する問題をあげれば、関税一括引き下げの問題、英国のEEC加盟の中断、米国の綿製品を初めとする多くの商品分野にわたる輸入制限米国及びNATO等の対共産貿易への圧力、さらに最近になっては西独もアンチ・ダンピング法を適用しようという、わが国貿易経済にとってはまことに好ましくない重大な動きが相次いで起こっております。しかも、この世界の各国に起こっておる動きは、今後何らかの連鎖反応を起こさないとも限らない。そういう状況が今日の日本の置かれた状況だろうと思います。これは、一口にいえば、自由主義、資本主義諸国のマーケット・シェア――市場争奪戦とも言えましょうが、このような状況の中で日本経済外交をどう進めるのかという問題であります。従来、日本外交は、欧米諸国全体を単純に自由陣営として一元化をして、これに対する協調を基本的な外交路線として進めてきたと思われます。しかし、最近の世界の趨勢を見ると、従来のような単純一元化の外交ではなく、相手国の置かれた国際的な地位、環境条件等を詳細に検討分析して、より多元的な外交の展開が積極的に要請されておるのではないか、そういう時期ではないか、こう判断をいたしております。したがって、これは総理から、従来の日本経済外交を振り返って見られて、この激動する世界市場に対処する新しい経済外交姿勢についてお聞かせをいただきたいと思います。
  89. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 貿易は非常にむずかしい面がございますが、幸いに日本の昨年における貿易、ことに輸出は非常に伸びて参りました。アメリカに対しましてもその前年に対して三〇%余り、ヨーロッパに対しても二七、八%、三〇%近く伸びておるのであります。私は、この情勢を今後とも確保していきたいと考えております。しこうして、今お話に、ヨーロッパに対してはこれは一元的にやろう、交渉相手とかなんとかというお話がございましたが、そうではございません。やはり個別的にずっとやっておるわけでございます。日英通商航海条約によりまして日本とイギリスとの関係はよほどよくなってくると思います。ドイツ、イタリーはガット三十五条は援用しておりませんが、ベネルックス三国につきましても、私参りまして近々のうちにこちらの三十五条撤回の要求が認められるのじゃないかと想像しております。また、フランスにおきましても、私は年内と、こう前に本会議で言った覚えがございますが、秋を待たずごく近いうちに話し合いがつくのではないかと思います。また、アジアにおきましても、豪州とも話をしておりますが、個別的に各国の事情を見ながら折衝を重ね、そして貿易拡大をはかっていっているのであります。やはり各国ともいろいろ事情がございますので、むずかしい点はございますが、しかし、日本がヨーロッパの国々に対しまして非常に有望な輸出市場であるということだけは、イギリスを初め非常にわかってくれたと思うのであります。そこで、今ドイツの非鉄金属のダンピング税の問題も、これも何とか解決できると思いますが、私は、やはり前向きで日本が信用を高めていくことが貿易拡大の一番の方法であると思います。信用を高めるのはどうかといえば、やっぱり輸出秩序の確立、そうして卸売物価ができるだけ上がらないように、これが一番の方法ではないかと考えております。
  90. 羽生三七

    羽生三七君 対ソ貿易は一応伸びております、この前の協定で。しかし、先般の貿易協定を内容的に検討しますと、これはわれわれの期待にも反するし、かつ、将来の拡大基調がくずされておると、私はこう判断して差しつかえないと思います。日ソ、日中貿易については、政府は、その延べ払い期間等を西欧並みという理屈で一応説明されておりますが、政府は、従来、対共産圏貿易については政経可分の原則を前提としてきたと思います。しかし、ソ連向けの油送管問題などに現われた政府の態度は明らかに米国NATO諸国の軍事的要請経済面から歩調をそろえようとしておるのではないか、こう判断してもそうたいしては間違わないと思います。きびしい世界貿易経済の実情からも、さらに日本経済の成長テンポと供給圧力の点から見て、将来の貿易構造の展望と関連して対共産圏貿易に一そうの勇断を求めたいと思います。私、過去のことはかれこれ言いません。将来についての展望であります。これをひとつ総理からやはりお聞かせを願いたい。
  91. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは、政経可分で進んでおるのであります。日ソの貿易につきましても、御承知のとおり、こちらはプラント物が多いのでございます。片貿易になり、しかも債権の回収が非常におそい。こういうことになりますと、このことによって他の諸国への延べ払いが制約を受けるというふうなことではいけませんので、やはり均衡をとりながら延べ払いのできる範囲内でやるよりほかにございません。しこうして、原則はあくまでもやっぱり支払いの過不足のないようにしていくのが私は本筋だと思っておるのであります。中共に対しましてもこの原則を適用していこうとしておるのでございますが、御承知のとおり、延べ払いなんかでもあと払いということになりまして、なかなか収支の均衡というのがとりにくいのでございます。できるだけ日本の今の経済状況を見まして、生産過剰になっておる部門につきましては、できるだけ条件を緩和して輸出に努めたいと思っております。
  92. 羽生三七

    羽生三七君 簡単でいいんですが、一口に言って、将来とも対共産圏貿易については政経可分の前提に立って拡大基調を進められると了解してよろしゅうございますか。
  93. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 原則はそうでございます。ただ、日本としては、自由国家群のうちにありまして、ココム、チンコムなんかの制約もあることは、御承知のとおりでございます。やはり日本立場ということを考えながら原則は政経可分で行きたいと思います。
  94. 羽生三七

    羽生三七君 ココム、チンコム等の制約からすみやかに解放されて、積極的に推進されんことを期待いたします。  それから率直に言って、日本外交は、政治、経済いずれの面から見ても、若干意見を入れますが、自由陣営の一員ということにこだわり過ぎておるのではないか。私は、今ここで世界観がどうとかこうとかいうそういう観点からこの問題に触れる意思はありません。それは全く政府の自由であります。ただ、問題は、それは自由であるが、それにもかかわらず、自由陣営の一員ということにこだわり過ぎておる。したがって、ときにはそういう立場で自由を喪失しておる、自由を失っておる、こういうことであります。私がこんなことを言うのはいささかどうかと思いますけれども外交は冷厳であります。各国それぞれナショナル・インタレストで動いておる。ところが、日本外交は自由世界にあまりに情緒的ではないか。情緒的です。その点は逆に私たちの立場でも考えなければならぬ問題を含んでおることは事実でありますが、これはまあ別の問題として、とにかく私はそういう立場から、政府が自由陣営の一員であるという今の立場を変えよと言ったところで、できない話でありますから、そんなことは言いません。問題は、それにしても、自由陣営の一員であっても、もっとより柔軟性、弾力性があってもいいのではないか、そういう感じがいたします。これは、先ほど総理からお話があったように、やはりココム、チンコムに制約されるし、それからアメリカの対ソ貿易に対するパイプラインの問題、あるいはそのほかいろいろありますが、対中国問題、どうもやはりその点自由陣営の一員ということに少しこだわり過ぎておるのじゃないか。そのために自由をかえって喪失しておる。もっとより日本としてのナショナル・インタレストを強く持ってもいいのではないかと、そういう感じを強く受けるのでありますが、これは若干私の主観的な意見にもなりますけれども総理見解を伺いたいと思います。
  95. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) やはりナショナル・インタレストということは、これは根本であります。そのためにどういうふうな方法をとったらいいかということであるのであります。ソ連、中共との貿易を第一義に考えていって、自由国家群との貿易をそのために阻害されるようになっては、これはナショナル・インタレストの基本をくずすことであります。だから、どこへもいい工合に日本の利益を考えながらやろうとしておるのであります。対ソ貿易なんかで非常に日本がきついようにお考えになりますが、昨年の船舶の延べ払い六年というのは、私の今調べたところでは、六年というのは、外国は、ヨーロッパはやっておりません。一、二、五年四カ月、五年六カ月、ごく小さいケースがあるだけで、そういう点から見ますと、日本は相当弾力的にやっておると考えております。それから塩安は、国内の需要によったのでしょうが、あと払いということはほかの国はどこもやっていない。こういう点から見まして、私は相当弾力的にやっておると考えておるのであります。したがいまして、今後におきましても非常に片貿易になるだろう、また、非常に延べ払いが多くなる、日本の輸出入銀行の資金に枯渇を来たすということは別でございます。貿易拡大は私はどこの国とも伸ばしていく、そう考えておるのであります。
  96. 羽生三七

    羽生三七君 西欧などの先進国が日本に対して実施している差別的な対日輸入制限、この撤廃を要請することは当然だと思います。日本に対して相手が自由化を要求する以上、日本としても相手国に対して同様の要求をするのは当然だと思います。相手国がもしこれに応じない場合、日本としては、日本が受けている差別に見合うだけの品目を関税引き下げの対象から除外するようにガット会議等で強く主張すべきではないかと思うのです。これは今のナショナル・インタレストに関連する問題であります。これは特に最近の綿製品問題なんかでは外務、通産両省の立場といいますか見解が若干食い違っているようでありますが、これはこの問題についてはどういう態度で臨むのか。つまり、先進国の日本に行なっておる対日差別です。この制限、これに見合うだけの日本としても何らかの処置をガット会議を通じて主張すべきではないか、こういう問題であります。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そうするにいたしましても、やはり、ガット関係に入ることが第一でございますので、私どもは三十五条の援用撤回という点に力点を置いて個別的な二国間交渉を各国でやっておるわけでございまして、わが国がフルにガット関係に入りますると、さらにガットの場を通じましてもお説のような交渉効果を確保することができるわけでございます。力点はあくまでも差別待遇の撤廃、完全なガット関係に入るという点に主眼を置いてやっていきたいと思いまするし、今後もやって参ります。
  98. 福田一

    国務大臣(福田一君) ただいま外務大臣から御答弁申し上げましたとおりでありまして、私たちとしては、ますガット会議に正式にといいますか、三十五条を撤回して、いかなる国ともそういう意味で対等の立場で交渉ができるようにすることをまず第一義といたしておるわけであります。しかし、それに入らない、まあ三十五条が撤回にならないまでも、その間においてもわれわれとしては経済外交その他を通じまして十分ひとつあまり差別待遇をしないように努力をしていくつもりでございます。
  99. 羽生三七

    羽生三七君 ついでに、綿製品問題に対して、アメリカに対しては今後どういう方針で対処されようとするのか。
  100. 福田一

    国務大臣(福田一君) 綿製品の問題につきましては、先般も経済閣僚会議を開きまして、政府の意思の統一をはかりつつ対処をいたしておるのでございますが、われわれといたしましては、アメリカから今日持ち出されておりまするところの提案の内容につきまして、いわゆる綿製品委員会の条文の解釈等についてまだ納得いたしかねる面があります。そこで、こういう点を明らかにしていくということは、将来の日米関係を処理していく上においても、経済的な問題を処理する上においても、非常に重大であると思いますし、さらにまた、世界の各国とのこの入った協定の内容において、私たちだけが話し合い、日米間だけの話し合いで納得がいけばいいのですが、納得のいかない場合、これをどういうふうにしていったらいいか。単に二国間だけできめていくということが将来のやはり国際協定を結んだ場合への影響、また、この問題自体への影響ということを十分考慮しながら、一方におきましては、また日本米国とのこの経済的な非常に重要な立場というような関係も十分に考慮しながら、ひとつわれわれの目的を達成するように努力をして参る、こういうことになっておるのでございまして、ただいま申し上げた線において交渉を進めておる段階でございます。
  101. 羽生三七

    羽生三七君 外交問題の最後にお尋ねしたい点は、平和に対する日本政府の取り組み方であります。この問題については、池田総理また歴代の外務大臣が一応は核兵器の禁止協定、あるいは完全軍縮の達成等についてそのすみやかなる実現の希望をそのつど表明されておることは、これは事実であります。しかし、それはいつも希望や期待の表明であって、積極的に日本がこの問題と取り組む気魄と情熱に不足しておると思います。これは率直に申し上げますが、不足しております。本来ならば、東西の谷間にあって、また、特別の憲法を持っておる日本としては、十八カ国の軍縮委員会のメンバーとなって積極的に軍縮の問題に取り組む機会があったはずであります。ところが、中国の重要事項指定問題に関する共同提案国になったことからその構成国にならなかったことは、これははなはだ遺憾であるし、また、ある意味では不名誉なことであると思います。また、日本は、昨年の国連総会における核停決議等の場合でも、相当動揺したこともこれは事実であります。そこで、私は総理に要望したいことは、核停問題や完全軍縮問題等を単に希望したり期待するだけでなしに、積極的な発言や行動を通じて、より強力に推進すべきではないか、こういうことであります。これはもう今までどおりのただ希望し期待するというお答えは、はやもう今まで十分承っておりますが、そういう立場に立って、より積極的に日本が何らかの努力をする意図を何らか建設的なものをもう少し持たないのかどうか、この問題であります。総理大臣からお答えいただきたい。
  102. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、機会あるごとに、ことに外国を訪問いたしましても、その国の首脳者と常にこれを話し、そうして共同声明にもおおむね載っておるのであります。しかし、こういう問題は、政府と政府の関係のみならず、御承知の列国議員同盟でございますか、こういうふうなときにも、わが国の国会議員の代表はこれを申し出まして、そうして各国議員の協力を得まして決議したり、いろいろな方法をとっておるのであります。ただ、何と申しましても、核を持っておる国がその気にならないとなかなかむずかしいので、今、ジュネーブの十八カ国がだんだん実を結びつつあることは、非常に喜ばしいことでございます。私は、ああいうところへはいりたい、また、はいるべきだと思いますが、お話しのような状況ではいれない。しかし、ほかのあらゆる機会を通じて、あらゆる機会をとらえて、努力はいたしておりますし、今後も努力する考えであるのであります。
  103. 羽生三七

    羽生三七君 これは、先日参議院の外務委員会で佐藤尚武委員がちょっと触れた問題にも関連いたしますが、そういう場合、軍縮や核停に関する日本独自の考え方を政府みずからこれを立案し推進するくらいの熱意があっていいのではないかと思う。そういう意味で、何らかの機関を一つ作ってはどうか。国連の出先で少数の代表が世界の動きを見て適当にしかるべく動く、こんな消極的なことでは全然だめだと思います。ですから、全くこの問題については世界の動きを見て適当に対処するだけで、日本自身としてのかまえというか、積極的な立場というものは全然ない。それを何らか具体化する意味で、この問題を中心とする何らかの機関、これを日本が十八カ国軍縮委員会にかわって特別な案を持つなんという大それたことは今すぐできるとは思いませんが、しかし、より積極的な何らかの検討の機関を作ってはどうかと思いますが、外務大臣いかがですか。
  104. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 十分検討いたしたいと考えております。
  105. 羽生三七

    羽生三七君 まあいずれにしても、これで外交問題を一応終わりまして、経済問題に移りますが、今の世界の中における力の均衡の拡大――力の均衡どころか、むしろ最近では恐怖の均衡とまで言われておりますが、そういう世界情勢の中で、力の均衡を縮小し、最終的には廃絶するということは、これは人類が当面する最大の課題だと思います。この問題について、どうも率直に申し上げて、日本の態度は、消極的であるだけでなしに、何ら建設的な努力を示しておらぬ。一そうの熱意ある努力を希望して、経済問題に移ります。  最初に、三十八年度の経済見通しについてお尋ねいたしますが、三十八年度の経済見通しでは、実質六・一%の成長を見込んでおりますが、この四半期別の数字をひとつぜひ示していただきたい。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 成長の測定につきましては、先般もこの席で申し上げたことがあるわけでございますが、全体を巨視的と申しますか、マクロ的に把握をいたしておりますために、それが四半期ごとにどういう姿をとるかということは、実は申し上げることが無意味とは申しませんけれども、年度初めと年度末とをかりにまっすぐグラフでつなぎましたような姿しか申し上げられないわけでありまして、そういうことは実際にもあり得ないことでありますし、また、作業がそういうふうに積み重なっておりませんので、四半期別の数字を申し上げるととは、これは事実上不可能と申しますか、意味のあるという意味では不可能だと申し上げるしかないわけでございます。
  107. 羽生三七

    羽生三七君 通産省にはおありでしょう、その数字が。あったらお示しを願いたい。
  108. 福田一

    国務大臣(福田一君) 通産省におきましても、年度間の数字は調べておりますが、四半期別の数字というものはとっておらないわけでございます。ただし、三十八年度でどれくらい鉱工業生産が伸びるかといえば、まあ平均して一割くらい伸びるであろうという大体の数字は持っております。三十七年度と比較をいたしました場合には、六%前後の伸びに相なるかと考えておるわけでございます。
  109. 羽生三七

    羽生三七君 まあどこからということは申しませんが、私も一応の数字を持っております。それから、企画庁長官は、そんなものはないし、無意味だと言われましたが、なければ、平均六・一%でしょう。これは平均だと思います。それなら、四半期が無理なら、下期、上期の大よその見通しがあっていいと思う。しかし、私は、そんなことはどっちでもよろしいから、それは申しませんが、私の得ておる数字で言えば、これはやはり下期へいって急上昇します。少なくともこの数字がでたらめなものなら別ですが、私が得ている数字で言えば、下期へ行って急上昇いたします。これは一〇何%。初めのほうは、第一・四半期等では横ばいかちょっとマイナスくらい、第二・四半期で三%以上くらい、第三・四半期で七%くらい、第四・四半期で一二、三%と、こうなって、平均年率六・一%となると思いますが、その数字の点はよろしゅうございます。いずれにしても、政府の説明でも、下期に上昇を期待しておりますが、その下期の上昇の場合の景気の浮揚力は、一体何でやるのか、何に期待しているのか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一般的な景気の三十八年度における浮揚力は、先般も申し上げましたとおり、消費支出、財政による先行投資などでございますが、ことさら下期における特に働く浮揚力は何かという、特にというお尋ねであれば、それはやはりただいま御審議願っております予算あるいは金融、税制等での新しい措置がとられますので、それから参りますところのいわゆる先行投資その他の予算執行、それが本格的に出てくるところが、とりわけて下期にと仰せであれば、そういうものが浮揚力になると考えるのでありますが、しかし、それと同時に、同じようなことは、一般的な企業の設備投資あるいは在庫投資、それらに対する意欲もそういうものに引きずられて出てきやすいものでありますし、また、そう申すならば、個人消費についてもそうでございますから、とりわけ何か一つが下期の浮揚力の要因になるというふうには考えておりません。しかし、とりわけてのお尋ねならば、ただいま申し上げたようにお答えするのが適当かと思います。
  111. 羽生三七

    羽生三七君 三十八年度見通しにおける設備投資三兆五千億円の推定根拠ですが、これは何でしょうか。単純に各産業別の投資計画を積み上げたものか、あるいは、それとも、三十八年度経済成長率実質六・一%が前提にあって、それから設備投資水準をはじき出したものか、その辺はいかがですか。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、そのいずれとも申し上げかねます。ことさらに後段六・一%が前提になってというような想定ではございません。いろいろなデータがございますが、通商産業省でときどき各企業ごとに、企業としての将来の設備投資計画を企業別にとっておられるわけでございます。また、季節ごとに機械受注の将来の見通し、これは大体半年くらいの先行性があるわけでございますが、そういうものもございます。また、私どもまでも投資予測調査をいたしておりますし、日本銀行にも似たような調査がございますので、それらのものを総合的に把握したということになるわけでございますが、国民所得の倍増計画ではGNPの中で設備投資がどれくらいあるかということにつきまして、初年度では、基準年次では一六・一%、それが昭和四十五年には一三・九%になるということを申し上げておるわけでございまして、過去の実績を見ますと、昭和三十三年度あたりから大体一六くらい、三十五、六年度になりますと、これが二〇をちょっとこすわけでございますが、三十七年度は推定をいたしますと、おそらく一九%くらいでございます。で、私どもの予測しております三兆五千億が正しいといたしますと、それは一七%くらいになるわけでございますが、まあ三十七年度より高くはいくまい。しかし、先ほど申しましたような要因から考えれば、そう落ち込むこともあるまいといったような、そういう把握の仕方をしておるわけでございます。
  113. 羽生三七

    羽生三七君 これは事前に通告して資料の提出を求めたのでありますが、いわゆる三カ年九%成長計画の実績の成長率は幾らか、その場合に三十五年度を十三兆六千億で出発する場合と、同年度の実績十四兆六千億の場合とで違うと思いますが、それを分けて実績をひとつお示しをいただきたい。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) あとで資料でお目にかけることにいたしますが、ただいま口頭でお尋ねの点だけを申し上げておきます。  それは、したがって三十五年度価格で申し上げることになると思いますが、三十五年度価格で申しますと、三十五年度の計画で十三兆六千億を基点として考えますと、これが九%ずつ成長いたしたとします場合に、三十六年度は十四兆八千二百億、三十七年度は十六兆千五百億、三十八年度は十七兆六千百億になるはずでございます。これは三十五年度価格で九%ずつの成長を想定いたしました場合でございます。それに対比いたします実績でございますが、三十五年度は十四兆六千億、三十六年度は十六兆七千億、三十七年度は十七兆四千億、三十八年度十八兆四千億でございます。したがって、三十八年度につきましても、あるいは三十七年度につきましても、いずれの場合についても九%の成長を上回っておるということでございます。  それから、後段にお尋ねになりましたのは、三十五年度の実績、すなわち十四兆六千六百億を基点にして、そうして九%ずつの成長があった場合にどうなるか、そういたしますと、三十六年度には十五兆九千億、三十七年度十七兆四千億、三十八年度十八兆九千億、ほぼ十九兆、そういう数字になるはずでございます。これはいずれも三十五年度価格でございます。
  115. 羽生三七

    羽生三七君 これは総理お尋ねいたしたいと思いますが、今後日本経済を安定成長の線に持っていくために、毎年の設備投資水準をどうきめるか、これは一つ問題点だと思いますが、そこで総合政策研究会の専門家たちの意見を見たのでありますが、これは種々試算の結果、次のようにいっております。私の意見ではなしに、総合政策研究会の専門家たちの意見であります。すなわち、産業設備投資が三十六年度で三兆七千億、これは実績は四兆円をこしているわけでありますが、三十六年度三兆七千億から横ばいとしても、総供給増加は実質で年一〇・三%となり、これに対して産業設備以外の需要要因が過去六年の増加傾向線を続けると仮定して、設備投資は横ばいで総需要の成長率は年四・五%にすぎない。三十七年度、三十八年度はこの横ばいの線に沿っております。これは私が見た議論です。それから続いてその学者の意見でありますけれども、総供給と総需要の成長のアンバランスを放置しておけば、操業度の驚くべき低下となり、企業経営は破綻するであろう。ところでいろいろ需要を捕捉するとしても、それは国際収支均衡、労働需給均衡、物価への影響を考慮するとき、日本経済の安定成長率は七、八%であり、設備投資水準は三兆七千億程度か、若干低くするように努力しなければならない、こう総合政策研究会の諸君は種々試算した結果結論を出しているわけであります。これらの専門家の見解を、総理が安全と考えられる場合の成長率と見合った民間設備投資水準というものは、ほぼどのくらいのものと想定されているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  116. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 設備投資の幾らかという問題、また、在庫投資が幾らかという問題、これがなかなかむずかしい問題でございます。設備投資よりも在庫投資の見方がむずかしいと思います。そうして、それが国際収支にどう影響するか、いろいろの考え方はございますが、今私は三十九年度あるいは四十年度のことを申し上げるわけにも参りませんが、三十八年度につきましては、大体企画庁で計画立案したのが適当ではないかと考えます。ただ、今お話のありました過去の設備投資による相当の供給力の増加と需要の増加のつり合いということは、やはり考えなければならぬものでございます。したがいまして、今回の一般会計予算並びに財政投融資その他の特別会計予算等々は、こういうことを頭に入れまして組んだのでございます。私は、この予算が通過し、そうしていくならば、先般施政演説で申しましたごとく、秋を待たずして相当のいわゆる生産その他の上昇があり、景気好転が望み得ると考えているのであります。数字的に将来のことはいえませんが、大体私は企画庁の本年度の計画は実現できると考えているのであります。
  117. 羽生三七

    羽生三七君 やはり経済問題で今の当面の最大の問題は、経済成長率を決定する場合の投資水準、投資率の妥当な基礎をどうきめるかということだと思います。こういう諸係数を早急に権威ある機関で研究させる必要があると思いますが、今も何か審議会があるわけですけれども、それを、より、たとえば通産省が産業界の立場経済企画庁は計画だけ、大蔵省が銀行局、日銀は窓口規制、こういうものでばらばらであります。今も何かその間の連絡調整機関はあるとは思いますけれども、より強力な機関を作って、もっと将来に対する展望を明らかにする必要があると思いますが、そういうお考えはお持ちになりませんか。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 設備投資の水準を一定にして、そして操業率をある程度のところで維持しよう、そうしなければ経済の中のアンバランスが非常にはなはだしくなると仰せられることは、実はそのとおりであります。そのとおりでありますが、一定の設備投資がどれだけの操業率を呼び起こすであろうかということを予測しますためには、三つぐらいの要因が必要であるわけであります。その一つは資本の算出係数であると思います。つまり一〇〇の資本投下がありました場合に、それが毎年幾つの生産を呼び起こすであろうかという資本係数、これがわかってこなければならないと思います。第二に、かりに資本の懐妊期間とでも呼ぶべきものがはっきりしてこなければならないのであります。それは資本が投下されてから生産に移るまでにどのくらいの期間が平均して必要であるかという問題であると思います。それから第三には、投下された資本のうちどの程度が新しい資本となり、どの程度が古い資本に取りかわるか、これは古いものをスクラップして新しい能率のいいものに置きかえる割合がどのくらいであるか、この三つのただいま申し上げました要因がわかって参りませんと、一定の設備投資からどれだけの操業率が生まれるかということがつかめないわけでありますが、ただいままでのところ残念ながらその要因のいずれについても定説がございません。それは研究が行き届かないということも片方でございますが、他方で経済の成長の過程にあるために、おそらくはそういうファクターというものが一つずつ年とともに変わっているからであろうと思います。したがって、さしずめ私どもがいたすべきことは、過去において所得倍増計画で一定の前提を置いて考えておりました国民経済の成長が実績と照らしてみて、事実と想定とが非常にかけ離れた、乖離をしたということはどういう要因の結果であったかということを精細に分析いたしますならば、ただいま申しましたことについての何がしかの手がかりが得られるはずであるというふうに考えられるのでございます。  そこで、私ども関係各省、ただいま御指摘のありました各機関の人々にお集まりを願いまして、さしずめ過ぎました過去何年かの想定と実績との乖離について詳しい分析を数カ月かかってやってみたいと思っております。それによって将来への何がしかの指針を得てみたい、こういうふうにただいま考えております。
  119. 羽生三七

    羽生三七君 今後日本経済のこの成長をリードしていくものは、従来の投資先行型でなしに、内需、輸出、あるいは投資の均衡のとれたものと、これはもうだれでも当然考えておる必要条件であります。その場合、輸出の重要なことはもちろん言うまでもありません。そこで、これもちょっと資料として、お尋ねするのは恐縮ですが、今後の日本の輸出の伸び率、それから世界の輸入の伸び率との関係、あるいは世界の成長率との関係、つまり日本の輸出の弾性値をどう見るか、もし政府に資料があればお伺いいたしたいし、今資料がなければ口頭でもよろしいから、一応の見解を承りたいと思います。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 弾性値と言われますのは、世界の通関の輸出入の伸びに対比してわが国の輸出の伸びがどういう割合に立っておるかということであると思いますが、昭和三十五年ごろからでよろしゅうございましょうか――昭和三十五年には、世界の輸出入の伸びは八・一%でございましたが、わが国の場合は一四%でございますから弾性値は一・七三でございます。三十六年には世界が四・五、わが国が五%でございますから弾性値は一・一、三十七年度は、推定をいたしますと、世界の輸出の伸びは大体六%と見込まれますが、わが国の輸出の伸びはおそらく一七%――一八%に近いかと思います。その場合の弾性値はほぼ三であると考えます。三十八年度は全くの見込みでございますが、かりに世界の輸出の伸びを四%、わが国の伸びを七・五%-七・一五%までは参らないかもしれませんが、その場合には一・七とか八という弾性値であろうと思います。
  121. 羽生三七

    羽生三七君 私は今日まで過去何回かの当予算委員会質疑を通じて、この設備投資中心の高度成長政策の矛盾といいますか、欠陥を指摘して参りましたが、この日本経済一つの転型期にきておるということは確実だと思います。これは転型期という意味は、言う人によってそれぞれ内容が違うようでありますが、しかし、その内容のいかんを問わず一つの転型期にきておると思います。三十八年度の予算及び財政投融資計画は、その意味一つの新しい方向、ある意味では国内均衡を指向しておるのではないかと思います。しかし、それは現実に設備投資中心の高成長政策が頭打ちとなった結果としてとられた処置で、ある意味では高い授業料を支払ったものだと思います。それはとにかく、三十八年度予算が政府の財政支出を通じて、先ほど企画庁長官から一応の御説明がありましたが、政府の財政支出を通じて景気の浮揚力としておる従来の設備投資にかわって、今度は政府の財政支出が非常に目立っておるわけでありますが、それを一種の景気の浮揚力としておる、これは事実だと思います。ただこの場合、一つ私たちは考えさせられる問題は、ある学者の検討を私引用するのでありますけれども、政府の財政支出に基づく公共投資が産業基礎関係中心に行なわれて――三十年以降の行政投資の推移を、一、産業基礎、二、民生関係、その他幾つかに分けられておりますが、その他は略して、一の産業基礎と二の民生関係に分けて見ると、三十年当時は産業関係が三〇%程度、それが三十七年では三八%に上昇して、上昇はいいんですが、ところが民生関係では三十年当時が一三%、それが三十七年では一一・五%と低下をして、三十八年度ではそれが一そう顕著に現われておる。こういう指摘を学者がしております。この数字の当否は別といたしまして、常識的に考えても確かにそうだろうと思います。だから私は設備投資中心の成長政策が一応頭打ちになって、今度三十八年度予算の編成にあたって、予算並びに財政投融資の計画を通じてある意味においては国内均衡、一つの国内における財政支出に景気の浮揚力を求めたことは、必ずしも間違ったこととは思いませんが、それにしても民生関係に比べて、いわゆる一般的な産業関係の公共投資のウエートがだんだん多くなって、民生関係はそれに比例して少なくなっていく、こういう傾向があることはいなめないと思います。そういう意味でこの三十八年度あるいは明年度、九年度のことにも関連するけれども、民生関係の公共投資をもっと積極的に考慮すべきではないかと思う。ですから、同じこの設備投資中心ということから国内均衡ということに移行しても、その場合においても、なお内容的にそういう問題があると思いますので、これは特に三十八年度予算の一つの重要な性格だと思いますから、今後一そう民生安定的な公共投資に十分な配慮をすべきではないか。これはひとつぜひ大蔵大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  122. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十八年度予算編成にあたりまして、あなたが申されたとおり日本経済そのものが、一つの転機にある国際経済の中に入って、しかも健全な経済成長を遂げなければならないという非常に大きな転換期に立っておりますので、まず輸出環境の整備をはかることを第一義にしながら、国内均衡を目標とし、しかも民生安定その他に対しても重点的な態度を貫いておるわけでございます。また将来公共投資を行なうことは必要であるけれども、民生安定、特に社会保障関係費については重点的に予算配分を考えなければならないという基本的な考え方に対しては、あなたが考えておられることと同じ考えを持っておるわけでございます。三十八年度の一般会計の予算を見まするとおわかりになるとおり、公共事業においては二〇%、社会保障費に対しては二二%、文教に対しても二〇%余というこの三本の柱を立てております。公共投資と準民生安定費といわれる環境衛生対策等に対しては、率で申し上げると、公共事業の総伸び率が二〇%であり、環境衛生対策が四九%、約五〇%で、前年度対比で伸びておるのでありますから、一応当面としては非常に重点的な施策を行なっておりますということは言えるわけでございますし、また、政府も重点配慮を行なっておるわけでございます。が、しかしこれが絶対量から見て、需要供給のバランスがとれておるか、また世界先進国と同じようなレベルにアップするにはどの程度の年次計画を持っているのかというような面から見ると、必ずしも十分だというわけにはいかないと思いますが、日本の財政のワクの中で、しかも健全財政主義を貫きながら政府が重点的な態度をとっておるということは御理解賜わると思うわけであります。  それから財政投融資の面は、いつも申し上げておるのでありますが、一兆一千九十七億という非常に大きな財政投融資のワクをきめたと言われますが、政府の考え方では、設備投資が減少するというような状態も考え合わせて、財政投資によってこれがマイナス面をカバーし、相当程度の浮揚力になり得るという考え方で組んだわけでございます。それから財政投融資については、いわゆる公共投資がほとんど重点的に行なわれると言われましたが、民生安定というものに近いものを申し上げますと、住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、文教、中小企業、農林漁業というものが一兆一千億のうち五千四百四十五億という大きなものを占めております。第二には、国土保全、道路、運輸、通信、地域開発、こういうものが三千七百二十一億円であります。基幹産業や輸出振興に対しましては千九百三十一億というような状態でございますので、直接間接民生安定ということを主眼にして財政投融資計画が組まれておることも御理解賜わることと思うわけでございます。政府はなお一そうこれに重点を置きつつ予算の編成を行なって参る予定でおります。
  123. 羽生三七

    羽生三七君 今の大蔵大臣の数字の取り方ですが、産業関係、民生関係、国土保全関係、その他いろいろ数字は学者によって示した数字はありますが、時間の関係でそれらはすべて割愛をして、将来の一そうの配慮を希望しておくわけであります。  その次は、しごく常識的なことでありますが、日本経済の成長がこの数年間世界で最も高い水準であったにもかかわらず、国民生活水準では今日なお世界のほぼ二十番目前後にある。したがって、成長率の高きをもってたっとしとせず、要は国民生活水準の向上だという認識に立って最大の努力を傾けなければならぬと思います。そういう意味で、今後の経済成長要因あるいは景気浮揚力を、個人消費支出の拡大にウエートを置いてしかるべきではないかと思う。中には、これをインフレだとかあるいは国際収支関係に結びつける方もありますけれども、もちろん限度はあるでしょう。しかし、貿易関係でいえば、輸入依存度は個人消費支出関係のほうは、設備投資に比べてむしろ少ないことは、これは常識でありますから、そういう意味で三十八年度の五四・八%を今後戦前水準の六〇%以上くらいに個人消費支出の比率を高めていく必要があるのではないか。それで初めて均衡のとれた安定的な成長が可能ではないかと思います。そうしなければこの総供給と総需要のバランスがとれないことは明白だし、それからまた、設備投資に浮揚力を求めれば、従来の過去の失敗を繰り返すことになる。そういう意味で、適正な労働賃金の上昇、低所得者階層に対する保護対策あるいは中小零細企業、農業等に対する積極的な対策、減税、そういうものが一そう喫緊の要請となってくると思います。そういう意味で、私は日本経済の転型期ということを言っておるのでありますけれども、その問題はとにかく、個人消費をある程度ふやすということは、そうお答えになると思いますが、しかし、私の言っているのは、具体的に五四・八%という本年の目標を戦前並みの六〇%以上くらいまで持っていくような経済構造にされてはどうか、こういう問題でございますけれども総理大臣からひとつお伺いしたいわけです。
  124. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先進国の例を見ますと、お話のとおり七〇%ないし六.五%というのが通常のようでございます。ドイツはフランス、イタリアよりもやはり国民消費支出が少ないようでございます。三十八年度は五四%くらいになっておりましたが、三十六年度は五〇%前後だったと思います。これがどういうふうなことがいいか、まあ六〇%くらいまでは行ってもよろしゅうございますが、あまり国民消費が多過ぎますと、やはり国際収支に相当影響があります。今のイギリスなんかの政策は、どっちかと言ったらあなたのお話より逆の方向へ行こうとしております。設備投資を相当思い切ってやって、それで景気上昇をはかろうとしておるのであります。一概には言えませんが、やはり日本は設備投資その他の関係がまだ十分ではございません。だから六〇くらいまで行くことは理想でございますが、今三十九年度が六〇だというところまで行くのはいかがかと思います。
  125. 羽生三七

    羽生三七君 まあこの議論は時間がないので、またにしまして、もう一つ総理にお伺いしますが、三カ年九%上昇というこの総理の従来の公約は、三十八年度で一応完了するわけであります。所得倍増計画は十カ年でありますが、その中の三十六年度から三十八年度までの三カ年九%というのは一応完了する一わけであります。そこで、新しく三年なり五年の新しい経済成長計画を立案される御用意があるかどうか、この点を伺います。
  126. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体九%をこえて参りました。そうして失敗だったとかいろいろな批判があるわけでございますが、私はそう失敗ではなかったと思います。で、今後どうするかという問題は、私は今結論を出しておりません。先ほど企画庁長官がお答え申し上げましたごとく、過去の実績と計画との違い、それがいかなることから基づいておるか、いかによかったか、どういう方面が悪かったかという過去の実績と計画とのひずみを研究するということは、企画庁長官にも私は言っておりますが、今、今後の三年、五年という計画は持っておりません。もし計画をするとすれば、それより先に、過去のいわゆる実績と計画との分を調べてみる必要があります。そういう意味において、過去三カ年の荷検討を今命じておる次第でございます。将来に向かってはまだ結論を出しておりません。
  127. 羽生三七

    羽生三七君 その問題はもう一度あとにしますが、それと関連して、かりにまあ三年ないし五年を予想して、日本経済の安定成長の可能なGNPの伸び率を、いったいどのくらいにしたら適当とお考えになるのか。これは総理考えがあってしかるべきだと思います。
  128. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 十年以内に倍増と、こう言っておるのでございます。これは高いにこしたことはございませんが、しかし、行き過ぎはございます。十年以内に倍増、もう今の三年の実績がございますから、今後は七・二%の必要はないと思います。しかし、私は日本がほんとうに繁栄し、また世界各国の繁栄に協力するというのならば、やっぱり相当の上昇率は考えなければならぬと思っております。OECD加盟国が大体平均五%を目標にしておるようでございます、そこまでは行っていないかもしれませんが……。こういう点から考えまして、私は七、八%くらいはまだ続けていくべきではないかと思います。しかし、これは単なる見通しでございます。十年以内の倍増だから、私は今後七・七%で十分だと思いますが、しかし、やはり伸びるということはいいことで、力相応に、しかも、日本国民のエネルギーというものはほかの国よりはよほど高いと考えております。まあOECDが五%というのなら、七、八%くらいは日本はそう無理しなくてもできるのじゃないかと思います。
  129. 羽生三七

    羽生三七君 これは今の御答弁の前の総理の御答弁と企画庁長官の先ほどの御答弁に関連することですが、所得倍増計画が各分野にわたって多くの矛盾を生んで、また、それを拡大したことは、機会あるごとに申し上げたとおりでありますが、それとともに重要なことは、今のお答えにあったように、計画と実績の乖離であります。たとえば倍増計画は、まず具体的目標を二十六兆円と設定して、十年でそこに到達するためには、単純複利で年七・二%のべースをきめて、その上で目標年次四十五年二十六兆円のときのGNP各項目の均衡を求めたにすぎない。だから、そこに到達するためのプロセスは描かれておりません。また、二十六兆円がかりにいかなる意味で理想像たり得るのか、その点の合理性もない。また、もし現実がかりに三十兆円あるいは三十五兆円になれば、それでもよいということになると、計画というものは政策の基準たり得ない。また、単純複利の線は景気変動を無視している。一そうこの途中年次における基準となり得ないわけであります。しかも、私が具体的に数字をあげるまでもなく、倍増計画発足以来三カ年の歴史は、現実にこれを証明しておる。所得倍増計画はそういう意味で私は確かに失敗だと思いますが、しかし、私はここで失敗とか破綻とかいう政治論をやる意思はありません。問題は、以上述べてきたような意味で、所得倍増計画は根本的に改訂する必要があるのではないか。総理は、今、過去のことをよく調べてみてと、また、企画庁長官も先ほどそういう話があった。これは計画と実績との乖離は歴然たるものでありますから、失敗とか破綻という政治論議は一切別にして、新しく私はこの際計画を立て直す必要に迫られておるのじゃないか。それが三年ないし五年の中期的見通しになるか、十年を今までどおり一期として長期的見通しを作るかは、それは政府の御自由でありますが、そういう意味で倍増計画の根本的な改訂、三年ないし五年を、今すぐ新しいのを立案するということはどうかと思いますが、少なくともそういうものを改訂する必要に迫られておるのではないか、ころ思いますが、総理から先に伺って、それから企画庁長官から承りたいと思います。
  130. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたとおりで、つけ加えることはございません。ただ、私はここで申しておかなければならぬことは、とにかく日本人の努力により、国民の努力によりまして、世界の人は成功とか不成功とは申しておりません、非常に驚いておる。日本に対する信用が非常に高まっておる。これは事実でございます。
  131. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私どもは計画は成功したと思っておりますが、これは議論いたしません。もし、非常に大きな間違いがあったとすれば、国民経済の持っておる力自身を過小評価したというところにあったと思うのであります。しかし、ただいまのところでやはりわからないと思います問題は、一つは設備更新というものがこれから中小企業に回ってこなければならないはずであります。わが国経済の持っておる二重構造というものを、どうして毛中小企業と農業の面で改めていかなければならないわけでございますが、ことに、設備更新が中小企業にどういうふうにこれから動いていくか、いくべきだと思うのでありますが、その方向などもさだかでございません。そういう国内的にもはっきりしない要素がありますし、まあ日本の置かれた環境世界環境から見てもなおそうでございます。いずれにしても、当初掲げた目標を大きく上回りつつあるわけでございますから、目標そのものをもう一ぺん考え直してみたらどうかと仰せられます意味は私どもによくわかりますが、しかし、作業の結果を見ませんと、考え直したつもりのものが、はたしてどのぐらいの正確度を持っているかということについて、絶えず成長していく経済でありますから、よほど一生懸命やらなかったら、また前と内容は違いまして毛、結果としては似たようなあやまちを犯さないものでもございません。そういったようなものを確たる自信なしに国民にお示しするということが、はたしてどういう意味を持つであろうかということについても、多少の疑問を私どもは持っておりますので、いずれにしても、過ぎ去ったところの作業をいたしてみてから、この問題はきめたいと思っておるわけでございます。
  132. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、そんな確たる成算もないのに新しいことを考えるのは変だというなら、所得倍増計画を撤回されたらどうです。それは非常に無責任ですよ。そういう成算もないのに、そういう御発言というものは、少し私責任上いかがかと思う。むしろそれは所得倍増計画という名前を変えられたらどうか、もし所得倍増計画というものを今までどおり変更なしにお進めになるとするなら、これはやはり国民のいろいろな、要望にこたえて、従来の計画と実績との乖離をすみやかに明らかにして、いつ幾日までなんということは私は言いません、すみやかに明らかにして、そうして計画のどこに欠点があり、将来はどうすべきだという事態を明らかにして、何らかの検討を進められなければ、私は非常に責任上からこれは問題だと思いますが、いかがです。
  133. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) すでに実績の出ましたところについて、計画で想定しました部分との乖離を国民にお示しするということは、これは作業としていたしますことは、先ほど申し上げましたとおりでございます。  それから後段に申し上げましたことは、いかに全知全能を尽くしましても、やはり予測というものにはそれなりの限定が当然あるわけでございます。そのことは当然のことでありまして、それならば所得倍増計画が無意味であったかといえば、これはやはりかなり具体的に積み上げて、お互い国民経済一つの目標とビジョンを与えたという意味で、これは大いに意味があったと思っておるのであります。そういうふうに考えておるのでありますが、いわゆるアフター・ケアをやりました上で、さらに新たなものを国民にお示しすることが政治全体としていいのかどうかということは、また別個の判断があります。こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  134. 羽生三七

    羽生三七君 これは時間がありませんので、この議論はまた後日にいたしますが、いずれにしても、結局のところ、所得倍増計画は今までどおり何の変更もなしに進めていくと、こういうことをおっしゃっておるのですな、結論的には。そう了解してよろしいのですか。
  135. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 倍増計画自身の中には、羽生委員も御存じのとおり、かくかくあらねばならないといったような具体的な政策を具体的に規定するような考え方はしておりませんわけでありますから、まあこういう目標に向かって進むことが望ましいという、そういう意味での大きな目標を描いているだけでございますから、したがって、現在ありますところの倍増計画をここで廃止してしまうのかとおっしゃれば、別段その必要はないというふうに思うわけでございます。
  136. 羽生三七

    羽生三七君 まあ結局そうすると有名無実で、そのままにしておく、たなざらしにしておく、結論的にはこういうことじゃないかと思いますが、私は、やはり責任ある経済閣僚としては、すみやかに過去の計画と実績との乖離、どこにその原因があり、どういう見通し上の誤算があったかを明らかにして、すみやかに計画の改訂をおやりになるべきだ、もし責任を持っておやりになろうとするなら、これを要望しておきます。  最後に、けさ初の金融懇談会が開かれたようでありますが、日本経済は率直に申し上げて、公定歩合を上げたり下げたりで景気調整の役割をはたさしてきておるわけですが、金融政策の重要さについては、もちろん言うまでもありません。また、大蔵大臣もこの場合、たとえば公定歩合を引き下げるような場合には、その環境づくりが重要だと、こうおっしゃっておりまして、確かにそのとおりだと思うんです。問題は、今まで私がずっと経済問題の場合述べてきたことと関連して、安定的な成長の条件がやはり金融政策中心ではないか。小手先のいろんな操作もあると思います。しかし、根本的には、やはり日本経済の成長は成長でも、安定路線というものは確立して、その中に初めて金融政策というもののあまり上がり下がりのない環境というものがほんとうにできるんではないか。そういう意味で、日本経済の安定成長ということが基本的な条件になるのではないかと思いますが、これに関連をして大蔵大臣の御見解を承りたい。
  137. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、日本経済にとりましては一つの転機である、しかも、画期的な、非常に大きな歴史上の転機であると考えております。それに対して財政金融政策が基本になることは、言うを待たないことでございます。もっとはっきり申し上げますと、これからの八条国移行、自由化等を進めて参りますと、日本国際収支のあり方が日本経済を左右するというような言い方をしても過言ではないというぐらいに、非常に重要な意義を持つものであるというふうに考えておるわけであります。その意味におきまして、財政投融資、民間資金等が、効率的に、しかも相互調和ある運用をせられて初めて日本経済基盤の確立に資するわけでありますので、これが運用につきましては、政府も姿勢を正すとともに、国際情勢の推移を十分見詰めながら、これに対応する財政金融政策を確立すべく努力をいたしておるのでございます。日本の金融につきましてはいろいろな問題がございますが、これらを一つ一つ解決いたしていきますためには、一方的な押しつけというようなことではなく、お互いが理解をし合いながら、国際環境の推移を十分見詰めながら環境の整備を行なう、相当ピッチを上げた態勢で環境の整備を行なうという目的をもって金融関係との懇談会を開催いたしたわけでございます。これから随時各界との総合的な連絡をはかりながら、財政金融政策に誤りなきを期したいというのが、政府のこの懇談会を作った目標であります。
  138. 羽生三七

    羽生三七君 なおまだ若干残った問題はありますが、ちょうど時間がきましたので、これで私の質問を終わります。(拍手)
  139. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 羽生委員質疑は終了いたしました。  これにて休憩し、午後二時二十五分より再開いたします。    午後一時二十四分休憩    ――――・――――    午後二時三十九分開会
  140. 木内四郎

    委員長木内四郎君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。杉原荒太君。
  141. 杉原荒太

    杉原荒太君 外交問題に関し、南北朝鮮問題、日韓問題を中心として、質問いたします。現に交渉中の日韓会談内容それ自体に立ち入ることは、これは差し控えますが、実質的にはそれに関連する問題にも触れてお尋ねいたします。一般問題の形で質問いたします事柄も、特に朝鮮問題、日韓問題を念頭においての質問でありますから、そのおつもりでお開き取りの上御答弁願います。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、わが国が当事国である場合の国際紛争の処理方法に関する政府の基本方針についてであります。一国がその国の関与する国際紛争の処理方法について、いかなる基本方針を持って臨むかということは、その国の外交政策の根幹に触れる重要問題だと存じます。政府は必ずやこの問題について深く思いをいたし、一定の基本方針のもとに外交を運営しておられるに違いありません。そこで、わが国の関与する国際紛争の処理方法につき、政府がとっておられる基本方針をお示し願いたい。ポイントだけごく簡単でけっこうです。
  142. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国といたしましては、すべての国際紛争は国連憲章の精神に従って、平和的な手段によって解決するという基本的方針でございまして、事の性質が法律的な性質の紛争でございまして、外交的な交渉で解決し得ないものにつきましては、国際裁判方式によって解決するということが望ましいと考えております。領土問題に関する紛争におきましても、紛争の性質がそういう性質のもの、法律的性質のものでございまして、外交交渉でむずかしい場合は、国際司法裁判所のような公正な第三者の判断によって解決しますことが望ましいと考えております。
  143. 杉原荒太

    杉原荒太君 ただいまの政府の御答弁の中の、前段と後段に分けてみまして、前段のほうはよく理解できますが、後段についてなお多少疑いを持っておりますので、引き続いてお尋ねいたします。国際紛争の平和的処理方法のうち、国際裁判の方式をとることについての基本的の態度についてでありますが、今、外務大臣触れられましたけれども、私は、多少疑いを私個人として持っておるからお伺いいたします。国際裁判方式は、国際紛争の処理方法の一種として、主義上としてはともかく、そしてまた実際上これはある程度認められて、一般的にも認められておりますけれども、一定の具体的事件の処理にあたって、幾つかの処理方法のうちで、実際上、国際裁判方式を選ぶかいなかについては、他の方法を選ぶ場合に比べて、格段に慎重周密の態度と高い水準の政治的、外交的配慮を要することだと存じます。一たび事件を国際裁判所に付託した以上、それから先は当事国の意思を離れて、第三者の意思決定にゆだねられてしまうわけでありますから、一定の具体的事件の処理方法として、国際裁判の方式を選ぶかいなか、その選定を誤れば取り返しのつかない結果を招くことになるからであります。わが国は、かつて外交上未熟であったころ、居留地の家屋税問題を国際司法裁判にかけて敗訴した苦い経験を経て以来、主義上はともかく、実際上は具体的事件の処理方法として国際裁判の方式を選ぶことについては、多分に、きわめて慎重な警戒的な態度を持って一貫して参りました。それが外交上苦労を経て、いわばおとなになってからのわが国外交一つの伝統的の政策であります。特に戦後、いつごろからか、この国会においても見たところでありますが、一定の国際紛争は国際裁判にという声がしばしば聞かれるようになりました。私の見たところから率直に言うことを許していただきますならば、あまりにも気軽に、あるいは無邪気に国際裁判方式論を唱えられておる傾向があるやの感じがするのであります。軽微な事件で、しかもその性質がテクニカルな純粋な法律問題で、そうしてまたそれに対する適用法規の存在が明らかな場合のごときはともかく、そういうものとは違って、たとえば領土権の帰属の問題のごとき、その本質上、国民感情の深くまつわる国家的の問題、しかも適用さるべき法的基準そのものの存在がさだかでないような、そういう政治的問題の処理方法として国際裁判方式をとることが、大局上、得失及びその適否については深く考えなければならないものがあるように思う。特にこの種の問題の処理方法として幾つかの道が考え得られるのに、他のすべての方法が試みられずして、すなわち他のあらゆる方法が失敗に帰したという経路を踏まずして、そのような政治的問題の処理方法として国際裁判方式を選ぶというがごとき外交のやり方はいかがな、ものでしょうか。ことに後者の領土問題をかかえているわが国としては、特に慎重の上にも慎重を重ねて、大局を誤らぬようにしていく必要があると思う。私はそういった見地から、私個人としては、先に触れたような国際裁判方式論の傾向に対しては、かねて疑いを持つがゆえにお尋ねするわけでありますが、政府は、国際裁判の処理方法として、国際紛争の平和的の処理方法として国際裁判方式をとるかいなかについて、一般的にいかなる基本方針をとられるか、また、現にわが国がかかえている幾つかの困難な領土問題の処理方法として、実際上、国際裁判方式を選ぶかいなかについて、政府はいかなる態度、方針を持って臨むか、お伺いいたします。
  144. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国際裁判方式を紛争解決の手段として考えるということは、主義上の問題として望ましいという考え方を先ほど申し上げましたが、これはあくまでも外交的手段によって解決のできないもの、あるいは外交的手段によることを当を得ていないもの、そういったものにつきまして、最後的な手段としてそういう方法が望ましいと考えておりますが、現実の処理におきましては、戦後いろいろの紛争事件がございましたけれども、国際司法裁判所に持って参るというよりは、外交的な手段によって解決する、し得ると、また、そのほうがわが国立場を守る上において当を得ておるという判断に立ちまして、戦後処理の問題も、二国間の交渉によって懸案の解決をはかってきておりますことは御案内のとおりであります。そこで、今、裁判所方式をとるという場合に、慎重な上にも慎重な態度をとり、かつ紛議の案件についての要件の整備につきましても周到な注意をしなければならないというお示しに対しましては、私どもも当然そのように心がけて参りたいと考えます。
  145. 杉原荒太

    杉原荒太君 具体的な外交交渉の過程におきましては、相手方の出方とにらみ合わせて各種の提案がいろいろ含みを持って提起せられることはわかるのであります。で、最後的の決定にあたっては十分お考えになってやっていただきたいということを私は希望として申し上げて次に移ります。  一般に植民地の独立の場合において、旧本国が分離独立した旧植民地との新たなる関係を作るにあたってどういう方策をとるか、ことにその新独立国を防げるため、どういう援助政策をとるかということは、両者の新関係を築き上げていくという見地から、外交政策の立て方としてきわめて重視されておるところであります。さればこそ、第二次大戦後独立した旧植民地に対して旧本国の諸国はある種の援助政策をとってきておる実例が少なくないと思う。その中で日韓問題処理の参考の上からしてもわれわれの特に知りたいのは、わが国と同様第二次大戦の敗戦国であったイタリア及びドイツの場合の実例であります。イタリア及びドイツは敗戦の結果分離独立した旧植民地に対していかなる援助政策をとってきておるか、なお、イタリア及びドイツは旧植民地の相互のクレームの問題をいかに処理されておるか、その実例の概要を御説明願います。
  146. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ドイツは第一次大戦によってすべての海外植民地を失いました。したがいまして、第二次大戦の結果としてドイツから分離した植民地はございません。第二次大戦後、急速にドイツが復興いたしまして、低開発国の援助にたいへん力を入れているようでございますが、これは一般の低開発国に対するより広範な経済援助であろうと思われます。しかしながら、これら低開発国に対する経済援助のうち、第一次大戦によって失った植民地に対しましては若干の例がございます。それはカメルーンに対する援助、タンガニーカに対する援助、それからトーゴーに対する援助等がございます。イタリアに対しましては、イタリアは第二次大戦によって失いました旧植民地に対しまして援助を与えておりますが、一つはリビアに対する援助、ソノマリアに対るす援助は実例として拝見できるところでございます。  それから、第二点のクレームの問題の処理でございますが、まずイタリアにおきましては、第二次大戦により放棄した植民地といたしましては、先ほど申しましたように、リビア、エリトリア、ソマリランド等がございますが、一九四七年のイタリア平和条約第二十三条で一切の権利権原が放棄されております。これら地域に対するクレームの処理をリビアについてみると、次のようになっております。リビアに一九四七年イタリア平和条約第二十三条により米、英、仏、ソ四カ国の管理下に置かれて、一九四九年国連総会決議第二百八十九に従いまして独立をいたしました。そこで、在リビアのイタリア私有財産はリビアの経済財政条項に関する一九五〇年の国連総会決議集三百八十八の第六条の規定に従って尊重される。それから第二点で、在リビアのイタリア国有、準国有財産及び一定の公有財産は、同決議第一条の規定にしたがってリビアに帰属する。それから第三点といたしまして、イタリアとリビアとの間の私法上の関係につきましては、金銭債務は同決議第六条五項の規定に従って存続する。第四点として、旧イタリア国恩給受給権者に対する恩給支払いは、同決議第三条の規定に従ってイタリアが引き続き支払い義務を負うとなっております。  ドイツにつきましては、先ほど申しましたように、第二次大戦において放棄した植民地はございません。ドイツから分離独立したものとしてオーストリアがあるわけでありますが、その場合の処理は次に申し上げるように相なっております。第一、オーストリアにあったドイツ財産は国有、私有の別を問わず、米、英、仏、ソの四連合国に没収されました。一九五五年オーストリア独立に際し、米、英、仏、ソとオーストリアの間の国家条約第二十二条の規定に従って、オーストリアは米、英、仏の三連合国よりソ連没収の分を除いて右ドイツ財産の譲渡を受けました。その後独喚問に交渉が行なわれ、その結果、一九五七年六月十五日、財産法上の関係を規制するための条約が締結され、一部はドイツ人の旧所有者に返還されました。第二として、オーストリアとドイツとの間の私法上の関係につきましては、オーストリア国民がドイツ国民に対して有する私的債権債務は、原則としてオーストリアが請求請放棄を行なっておりますが、ただし、一九三八年のオーストリア併合以前に締結された契約、負った債務、取得した権利から発生するものは存続することとなっており、上記ドイツ、オーストリア財産法上の関係を規制するための条約第二部の規定に従って処理されました。第三点として、オーストリアにおけるドイツの現地政府機関に勤務するものに対する恩給は、一九三八年以降オーストリア国が継続したかのごとき建前でオーストリアが支払い義務を負っております。ただし、オーストリア独立後オーストリア国籍を取得せずドイツ国民の地位にとどまったものに対しては、ドイツが一九三八年の併合以前からの勤務を通算して支払い義務を負っているということになっておるのでございます。
  147. 杉原荒太

    杉原荒太君 次に、国際漁業問題の処理方式についての政府の基本方針に関しお尋ねいたします。李承晩ラインの問題処理にも実質的に関連することは申すまでもありません。第二次大戦後特に顕著な傾向として、幾多の国々が一方的宣言や国内法の制定等によって従来の公海漁場に対して管轄権の行使の意図を示してきております。広く世界の諸海域における漁業に利害関係を持つ水産国日本としては、重大な関心を持たざるを得ません。漁業資源の保存そのものには、わが国としては協力すべきは当然でありますけれども、今日までの多くの国際漁業紛争の真相を見ると、正直なまともな資源の保存措置そのものについての意見の対立よりは、資源保存のワク内において、いかにして自分の国の分け前を多く取るかということが中心になっておるといっても過言ではないように見受けられます。しかし、それだけに、わが国としては国際漁業問題に対処する基本政策をよほど合理的かつ現実的なものにしていく必要があると思う。この見地から、ここには三つの点について質問いたします。  第一点は、一九五八年四月二十九日ジュネーブ海洋会議で採択された漁業及び公海の水産物資源の保存に関する条約についてであります。この条約は沿岸国が隣接公海に対し特別の利害関係を有することを認むる点において、また沿岸国に対し一方的の保存措置をとる権利を認むる点において、主義上からも、またわが国立場から見ても、私はこの条約に対し疑いを持つがゆえにお尋ねするのでありますが、政府はこの条約の加入の問題に対していかなる態度方針をとっておるか、お伺いいたします。
  148. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいまお尋ねの条約は、二十二カ国の批准または加入によって効力を発生することになっております。現在までのところ、米英その他の国を合わせまして十一カ国が加入いたしておりますだけで、まだ効力を発生するに至っておりません。わが国の加入の可否の問題でございますが、この条約は単なる国際慣習法の法典化というにとどまらず、多くの立法的内容をも包含しておりますので、加入の可否につきましては慎重に検討中でございまして、まだ態度をきめておりません。
  149. 杉原荒太

    杉原荒太君 ついでにお尋ねしますが、今のことと関連するから。あるいは関連性はないとみるほうが正確かもわかりませんが、同じ海洋法会議でできた条約のうち、領海及び接続水域に関する条約、公海に関する条約、これはその内容から見て、なぜ政府はもっと早く加入の手続をとられないか、私には理解できない。しかし、何か特別の御事情でもあるのか、その点をお尋ねいたしたい。
  150. 中川融

    政府委員(中川融君) 杉原委員御指摘のように、この二つの条約、つまり公海に関する条約と領海に関する条約、この二つの条約は、同じジュネーブでできました四条約のうちの二つでございますが、主として国際慣習法としてすでにでき上がっていることをいわば法典化したという性質のものでございまして、日本としても当然従来から順守しておるところを盛った条約でございますので、主義上はこれに異存はないわけでございます。ほかの国の批准状況も見ておりましたが、大体批准田も必要な数に近づいてきておりますので、近くこれを国会で御承認を得まして批准することにしたいと考えております。
  151. 杉原荒太

    杉原荒太君 国際漁業問題に関する質問の第二点は、日本がまだ占領下にあったころ、ダレスの要請によって締結された日米加三国間の北太平洋の公海漁業に関する条約が、たしか本年の六月有効期間が切れることになっていたと思うが、この条約の改定に関する政府の態度についてであります。この条約は、わが国が一定の魚種の漁獲を抑止する、アブステンする、いわゆる抑止の原則、アブステンションの原則という考え方が基本になっておるのだろうと思うのであります。しかるに、いわゆる抑止の原則なるものは漁業条約の共同保存の措置の原則を離れて、内実は沿岸国の漁業独占につながっておるやの疑いを持たざるを得ないがゆえにお尋ねするのでありますが、政府は日米加三カ国の漁業条約の改定に対していかなる基本的態度をもって望まれるのか、また特にいわゆる抑止の原則を引き続き認めていくかどうか、また米国、カナダとの関係以外の他の場合にこの原則を一般化して認めていくかどうかについて、政府はいかなる態度、方針をもって進まれるか、お尋ねいたします。
  152. 大谷贇雄

    政府委員大谷贇雄君) お答えを申し上げます。  杉原委員から仰せの日米加漁業条約は、今お述べになりましたように、抑止原則をその骨子として構成をされておるのであります。この抑止原則は、抑止の適用につきましてきびしい条件を課してはおりますが、仰せのように、海洋資源独占の思想につながりやすい欠陥がありまするために、ことしの六月十一日で十年間の据え置き期間が終了いたすのを契機にいたしまして、いかなる締約国の漁民も差別されることがなくて、平等な立場において公海における漁業資源の保存利用に参加し得るような、そういう建前の条約にこの条約を改めることをアメリカか、カナダに申し入れをしたい、かように存じております。
  153. 杉原荒太

    杉原荒太君 国際漁業問題に関する質問の第三点に移ります。新聞報道によりますと、カナダ漁業委員会が自国の政府に対し、外国漁船に対し沿岸十二海里以内での漁業を禁止せよとのリポートを提出したとのことであるが、それは事実であるか。また、政府は、国際漁業問題の処理方式に関する方針として、沿岸国に対し最大限十二海里の排他的漁業専管水域の設定を認むることに踏み切られたのかどうか。また、踏み切られたとすれば、それは特定の国との間の現実的妥協の必要から出た便宜的措置にすぎないのか、それとも主義として、わが国のこれからの国際漁業問題処理方式の一般的の原則としてこれを採用するという趣旨か、その点をお尋ねいたします。
  154. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一九六〇年の第二次ジュネーブの海洋法会議におきまして、御指摘のように、米加両国は沿岸国に対し最大限十二海里の漁業専管水域を設定する案を提出したことは事実でございます。この案は同会議で最終的にまだ採択までに至っていないのでございますが、その後、英国と北欧諸国との間における漁業紛争が、この方式に基づいて解決された例があることも事実でございます。わが国といたしましては、目下日韓交渉においてこの方式を頭に赴いて日韓間の漁業問題を解決するための交渉を続けておるわけでございますが、しかし、現段階におきましては、韓国のごとき特殊な事情の存在する場合を除きまして、全般的にこのような水域の設定を原則にするというような考えはございません。
  155. 杉原荒太

    杉原荒太君 次の問題に移ります。昨年末及び本年初頭、北鮮の外務省からわが国の外務省に対し文書が送付されてきておるやに聞き及ぶのでありますが、それは事実であるか。また、事実であるとすれば、その文書の内容はいかなるものであるか、お尋ねいたします。
  156. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答えいたします。  北鮮から参りました文書のことは事実でございます。だれが持ってきたのかわからぬように、役所の文書の受付へほうり込んでいったというふうな格好になっております。前にも一度そういうことがございます。  内容は、新聞で発表いたしましたとおり、日韓交渉に対する反対、特に北鮮をも加えたこの三者会談ということを言っている点において、新聞の発表と同じでございます。
  157. 杉原荒太

    杉原荒太君 だれがほうり込んだかわからぬ文書にしても、北鮮の外務省の文書であるというならば、それの処置、こちらとしてそういうものを受け付けるわけにいかぬというものならば、これは突っ返しておくのがあとくされなくていいのじゃないかと思うが、これはどういうように処置せられたのでしょうか。
  158. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 北鮮とは、御承知のとおり、国交関係もございませんので、全然黙殺いたして、何ら措置をとっておりません。
  159. 杉原荒太

    杉原荒太君 ただいまの政府委員の御答弁によれば、日本と南北朝鮮との間の三者会談とする。あるいはまた、かねて北鮮が、交渉をやるならば南北統一後にせよというようなことを主張しておる。そうして国内にもこれに同調した主張をなす向きがあるようであります。これらの主張に対する政府の立場は、反対であることは問わずして明らかでありますが、その反対の根拠を明確にお示し願いたい。また、特に政府は、南北統一を阻害する根本原因がどこにあると見ておられるか。また、三者会談論の真のねらいはどこにあると見ておられるか、御所見を承りたい。
  160. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私ども、朝鮮半島における南北の統一を希求しておりますことは、たびたび本委員会を通じても申し上げたとおりでございますが、この統一方式につきまして、南北の間に見解相違があることは、これまた御承知のとおりでございます。で、私どもは、国連の決議によりまして、大韓民国が合法性を持っているという建前に立ちまして、日韓の間の懸案の処理をやろうという建前で今進んでおるわけでございまして、この統一を阻害している原因につきましては、すでに御案内のとおりでございまして、私どもがこの交渉を進めることによって阻害されるのではなくて、統一方式につきまして、国連方式というものが半島において採択されないというところに原因があると考えておるわけでございまして、南北朝鮮並びに日本の三者会談によって話し合いをしようという提案は、建前の上から申しましても、また、実際的にもそういう会談は成り立たないわけでございまして、まじめな提案とは考えておりません。
  161. 杉原荒太

    杉原荒太君 今、外務大臣の御答弁の中の、南北統一阻害の原因に関する見解のお言葉、これをどう見るかということは今後の対策に関連を持つことで、われわれ重視しているのですが、これはまたあとのほうで触れることにいたします。  次に、韓国の政情と日韓交渉との関係についてお尋ねいたします。  現下の韓国の政情を理由として、日韓交渉を打ち切りまたは休止せよという主張をなす向きがあります。なるほど、韓国の政情は、軍事政権から民政への移行の過渡期にあって、いろいろな波紋が起こっていることは事実であります。しかし、そのことから、交渉を打ち切りまたは休止せよとの論の成り立つ条件が熟しているかどうか、これは冷静な判断を要するところであると思います。  そこで、私はこれを以下四つの角度から質問いたします。  まず第一に、韓国政情の表面に現われた変化のうちで特徴的なものは、言うまでもなく、韓国の政界において勢力のあった金鍾泌氏が表舞台から去ったということと、朴議長が民政不参加の意思を表明したことに表現されております。政情の変化によって朴政権は政府としての実権を失った、または朴政権の内部が今までと異なって、日韓正常化政策に反対の勢力によって支配せられるに至ったとかというようなことが事実上あるならば、打ち切りまたは休止の論の成り立つ条件が新たに生じたと見るべきでありましょう。  そこでお尋ねいたしたいのは、政情の変化によって、朴政権が政府としての一般的資格を実質的に失ったことになっているか、または日韓国交の正常化を目ざす交渉の意思と能力がなくなったというような事態が新たに生じておるかどうか。この点に関する政府の判断、特にその判断の根拠についてお尋ねいたします。
  162. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび申し上げておりますように、韓国の政情をどう見ておるかということに関連して申し上げておることでありますが、軍事政権は交渉の当初から民政移管ということを標榜してきた。それに応じて政党活動が認められ、政府批判の論議が活発になってきたということは、これは民政移管における当然の道程をたどっておると私どもは見ておるわけでございまして、それは現在の政権そのものが内外に宣明いたしました道しるべに従って行なわれておることにすぎないと思うわけでございまして、現政権が政権担当の能力を失ったというように私ども考えておりません。  それから第二点として、この情勢の転移というものは、韓国が日韓正常化政策というものを根底から変えたものだとは思っておりませんで、むしろ、日韓正常化に対する世論というものを正当な形で組織化いたしまして、そうして、これを受けとめる国民的基盤というものが漸次醸成されつつあること自体は、私は、日韓交渉について積極的な前進であると見て差しつかえないと思うわけでございます。現政権自体も、日韓正常化という基本の国是につきましては、寸毫も動揺を来たしておらないというように私どもは見ております。
  163. 杉原荒太

    杉原荒太君 第二に、もう少し違った角度から質問いたしますが、遠からず出現すべき民政移管後の政府が、または国会を構成するであろう政治勢力、またさらに国民の多数が日韓問題につき朴政権のとっておる方針に基本的に反対または非協力の態度に出るであろうと推断される形勢が新たに生じておるような場合には、交渉を打ち切りまたは休止の論もあるいは成り立つでしょう。韓国最近の政情の変化から見て、これらの点、政府はいかに判断するか、その判断の根拠とともにお示し願いたい。
  164. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもはそのように見ていないわけでございます。特に今回の朴議長の大統領出馬を断念する場合の条件としても、特に第九項が加わって各政党が日韓正常化について協力するという基本の線を受諾しておるところから見ましても、今御指摘のように、韓国の民論が日韓交渉について反対であるというように新しく展開をしたというようには判断いたしておりません。
  165. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう一つ、問題は同じでありますが、違った角度からの質問でありますが、現在の軍事政権と民政移管後の政府との間に、国家を代表する政府としての法的の継続性が欠如することになるような、そういう新たな事態ができておる場合には、交渉打ち切りまたは休止の論も成り立つかもしれません。両者の法的継続性が確保されておるのだと政府は見られるならば、その根拠をお示し願いたい。
  166. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今度新しく憲法が制定されて公布されることになっておりまするが、憲法の定める条章に従いまして政権が合法的に変わるという場合に、その方向は連綿として続くということを、私ども考えております。
  167. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう一つ、第四の質問でありますが、韓国政情の変化によって、現在の日韓交渉の、これは進み工合にもよるのでありますが、あるいは軍事政権の間に結ぶことあるべき条約の効力が、民政移管後にはどうなるかわからん、あるいは無効になるということになってきておるならば、それならば交渉の打ち切りまたは休止もやむを得ないことでしょう。しかし、政府はそういうことになっておらんのだと見られるならば、その根拠をお示し願いたい。
  168. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 今度公布されました新憲法の中に経過規定がございまして、その中に軍事政権の間に発布せられた法律、政令、それから締結せられた条約等は新憲法の精神、新憲法にそむかざる限り、この新憲法施行後も効力を存続するという経過規定が入っておりますので、法律的には一応、たとえ軍事政権下において結ばれました条約といえども、民政移管後も効力を存続するものと見ております。
  169. 杉原荒太

    杉原荒太君 韓国の政情いかんにかかわらず、本来、日韓交渉そのものに反対の立場から、韓国政情に乗じての打ち切り論盛り上げを企図しての声も聞かれるようでありますが、私は、以上、韓国政情を理由としての打ち切りまたは廃止の論の当否を冷静に客観的な立場から、事実上に即してこれを明らかにする必要があると思うので、質問した次第であります。  次に、朝鮮半島の平和維持の問題と、わが国対外政策との関係について、以下六つの問題についてお尋ねいたします。  その前にちょっとお断わりしておきますが、私の質問の趣旨を明らかにする意味において、多少私見をまじえて申し上げることをお許しいただきたい。朝鮮半島の平和維持の問題を見るとき、われわれはまず第一に、南北朝鮮対立の問題に着目せざるを得ません。しこうして南北朝鮮の対立は、単に朝鮮半島に限られた局地的性格のものではなくして、広く世界的規模における東西両陣営対立の一環たる根本性格を持つものだと思う。したがって、たとえば南北統一を阻害する原因は、南北朝鮮両政権の統一方式に関する見解相違にあるというような見方は浅い見方だと私は思うのです。そうではなくして、それは今申した世界的な東西両陣営の対立の一環たる根本性格に淵源するものと見るべきだと思う。南北統一を阻害する原因の所在点をそう見てくるというと、南北対立の関係から見た朝鮮半島の平和維持の問題に対処するためには、大所高所からわが国の全般外交のもろもろの面にわたって周密な施策が講ぜられなければならんことだと思われるが、この点に関する政府の御見解を念のためにお尋ねいたします。
  170. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 南北の統一を阻害する原因が、その統一方式にあるということを申し上げたわけでございますが、これは御指摘のように現象面でございまして、根本の原因は世界情勢そのものにあることは、御指摘のとおりに心得ておるわけでございます。したがいまして、対韓外交はもとよりわが国全体の世界に対する外交姿勢との関連におきまして考えて参るべき筋合いであることは、仰せのとおりに心得ております。
  171. 杉原荒太

    杉原荒太君 そこで、その全般外交の施策のうちで特に一つ、二つについてお尋ねしたいと思いますが、特にわが国の国連外交の面において、朝鮮半島の平和維持問題につき、政府はいかなる方針をもって具体的の施策を講じておられるか、その点お尋ねいたします。
  172. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御案内のように、朝鮮問題はずっと以前から国連において取り上げられまして、国連の朝鮮復興委員会が所掌をいたしておるわけでございます。この委員会が効果ある成果を上げるよう私どもも希望、期待をいたし、御協力を惜しまないつもりでございます。
  173. 杉原荒太

    杉原荒太君 ただいま外務大臣の御答弁にありました国連において絶えず朝鮮問題をにらんでおることそれ自体が、朝鮮半島の平和維持の上から見てきわめて意義があるので、この国連における朝鮮問題の特別委員会の常置そのものがきわめて必要なことに違いありません。しかし、これに対しては共産側はこれを廃止せよというような主張をしておるのでありますが、わが国としては、今外務大臣の申されたように、この点を特に政策の上から見て重視してやってゆかれることを希望します。また、この朝鮮問題特別委員会が中心になって、国連の朝鮮問題の基本方針として武力統一否認の決議をやった、それに含まれておる政治的外交的の意義を高く評価して、そうして朝鮮半島の平和維持のための外交的武器としてこれを活用するという着眼をもってやってゆかれることを私は切に希望します。  次に、わが国の国連外交課題は広範にわたっておるけれども、その中において朝鮮半島の平和維持の占むる重要度というものは、わが国立場からすれば、他国の場合に比べてみて、格段に高いものがあると思う。最近帰朝した岡崎国連大使は、中国代表権問題を国連において重要事項に指定する仕事が済んだから、自分の使命は終わったというようなことを語ったと新聞に伝えられております。今、岡崎大使の言明そのものについて、私はとやかく申し上げるつもりはないのでありますが、わが国としては朝鮮半島の平和維持の特段の重要性にかんがみて、朝鮮半島の形勢を絶えずウォッチして、大事に至らしめざるようで、あらかじめ国連を通じて国際世論の牽制の組織をはかるということこそ、わが国国連外交の、他の国の場合と違った、特別の使命だという線を太く打ち出して当たってもらいたいと思う。この見地から国連における朝鮮問題の討議や決議にあたっては、わが国が建設的提案のイニシアチブをとるくらいの用意をもって当たられてしかるべしと思うが、この点に関する政府の心がまえと、今日までの実績はどうであるか、質問いたします。
  174. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今お示しのような気持で、私どもも朝鮮問題解決に関する国連の基本方針というものの形成に努力いたしておるわけでございます。で、昨年秋の第十七回総会も、この国連の朝鮮政策というものを再確認いたしますとともに、北鮮当局に対しまして、総会が繰り返して確認してきました国連の目的を受け入れるように要請し、これらの目的達成のために継続的な努力が払われるようあわせて要請し、国連朝鮮統一復興委員会に対しまして、総会の関係決議に従い、その事業を継続するよう要請する趣旨で、私どもは努力いたしたのでございます。で、その結果、その趣旨に賛成の数が六十三、反対が十一、棄権が二十六という圧倒的な多数をもって、その決議が採択されたわけでございます。お示しのような方針に従いまして、私どもといたしましても、今後とも努力いたしたいと思います。
  175. 杉原荒太

    杉原荒太君 ぜひそういうことで進んでいっていただきたいことをお願いいたします。  しかしそういっても、朝鮮半島のこの平和維持の問題は、わが国にとってきわめて重大な関係があるにもかかわらず、方策の方面から見ますと、ことにわが国の能力の点から見て、これに対し、わが国が単独の力をもって有効な方策をとり得る範囲は、きわめて限られておる。これに反し、朝鮮半島の平和維持の問題は、アメリカやソ連、中共政策いかんによって左右されるところが、きわめて大きいのが事実であるのであります。したがって、朝鮮半島の平和維持の問題については、わが国は、国連外交を通ずるほか、対米外交の運営の面を特に重視する必要があると思う。  この見地からして、特に朝鮮半島の平和維持問題に関しては、日米間の連絡を一そう密にする意味合いにおきまして、たとえば過般書面を見ました独仏協力条約の定めるような程度まではいかないでも、意見交換やあるいはコンサルテーションの機会を、両国各階級のレベルにおいて、さらに十分に持つために新たに特別の工夫を加える必要はないか。その点お尋ねいたします。
  176. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 朝鮮政策、すなわち国連方式による南北の統一、平和維持というような基本の政策につきまして、日米間に意見の疎隔はございません。また、日韓の国交正常化のための努力ということにつきましては、先方もこれを高く評価いたしておるわけでございまして、基本的に日米間に見解相違は毛頭ございません。  で、今お示しのように、それではその連絡が緊密かどうかということでございまするが、私どもは、与えられた状況のもとで、日米間の広般な協力関係のすみずみにわたりまして、できるだけ連絡の緊密化をはかってきておるわけでございますが、今お示しのように、各階層にわたってのコンサルテーションというようなところまで、まだ至っていないということもこれまた事実でございまして、どういう連絡協調の仕組みをどう考えているかということにつきまして、なお足らないところがございますれば私どもは、それを開拓して参るにやぶさかでございません。  ただ、日韓の交渉が第三国の干渉というようなことを受けてのことでないかというような間違った憶測も国内の一部にあるようでございます。私どもはしかし、これはあくまで主権国家として日韓間の二国間の問題であるという認識に立ってやっておるわけでございまして、日米間の協力関係というものが、日韓交渉の場面において、これに圧力を加えておるというようには決して考えておりません。あくまでも二国間の交渉であるという基本の態度で臨んでおります。
  177. 杉原荒太

    杉原荒太君 私の質問の前提は、今日米間に、朝鮮問題に対して政策上の意見の食い違いがあるとか何とかということを予想しての、そういうことを前提としての質問じゃありません。そうして、またそれに対して交渉――ネゴシエーションをするについての、まだ不備であろうということを予想しての質問じゃありません。そうじゃなくして、私の言うのは、ことに情勢判断等の問題については意見――見るところを交換し合う、エキスチェンジ・オブ・ビューズ、いわゆるネゴシエーションというところまではいかなくても、コンサルテーションという程度、そういうことについての連絡方法の問題を私はお尋ねしたのです。  次に移りますが、一般に平和維持の問題は、経済安定の問題と互いに結びついておることは、あえて指摘するまでもありません。しこうして、韓国の経済安定は、単にひとり韓国だけに限ってじゃなくして、朝鮮半島全体の平和維持の上から見ても、これをほとんど不可分の関係にあると見るのがほんとうでしょう。そういう見地からして、わが国の韓国に対する政策は、今現に行なわれている日韓正常化交渉の題目になると否とにかかわらず、わが国の韓国に対する政策の中において、韓国の経済安定に寄与し、ひいては平和維持につながるものが重視されなければならぬと思われるが、この点についての政府の方針をお伺いしたい。
  178. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、国交の正常化の以前におきましても、隣国との経済の交流という点につきましては留意して参らなけりゃならぬ問題だと思うのでございます。しかし、現実には、対韓債権が未処理であるというようなこと、あるいは先方の国際収支が困難な状況にあるというような事情から、ただいままでキャッシュ・デリバリーの貿易は相当活発に行なわれておりまするけれども、いうところの経済協力による信用供与というところまで、まだ踏み切れない実情にあったわけでございます。しかし、経済協力の問題をもう少し深く押し進めて参る上におきましては、他国との振り合いも見ながら、特に最も近接した隣国でもございますので、今までの既定の姿勢というものに変改を加えて参る必要があるのじゃなかろうかというような角度から、どのような接近の方法を考えるかということにつきましては、今政府部内で前向きに検討中であるという状況でございます。
  179. 杉原荒太

    杉原荒太君 次に移りますが、朝鮮半島のこの平和維持の問題は、わが国の国防上の観点から見ても、重大な関心事であることも申すまでもありません。国防の問題は、大きく分けてみると軍事国防といわゆる政治国防の両面から見ることができると思います。昭和三十五年五月、国防会議決定のわが国の国防の基本方針も、この両面から構成されております。そうしてわが国防上の観点から韓国に対する関係を見る場合も、軍事国防の観点から見る場合といわゆる政治国防の観点から見る場合とでは、そのあり方に異なる面があることは申すまでもありません。  そこでお伺いしたいのは、軍事国防及びいわゆる政治国防の観点から、政府は韓国に対しいかなる方針をもって臨まれるか、お伺いいたします。これは外務大臣のほか防衛庁長官のほうからも御答弁を願います。
  180. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国の国防方針といたしましては、今朝来もお話がございましたとおり、日米間の安保条約を軸といたしまして、国連が有効に体制ができるまで日本防衛に当たるという基本方針で、国力と国情に応じまして防衛費の充実に努めておるわけでございまして、安保条約というものは百パーセント防衛的なものでございまして、わが国が他国に軍事協力をするという建前ではないことは御承知のとおりでございます。したがいまして、対韓軍事協力ということは、政府として毛頭考えておらないし、また考うべきものでないと思っております。政治国防という建前からの御質問でございまするが、私どもは、わが国自体が秩序ある民主国家として充実した国になることが第一だと思うのでございまするし、われわれが経済協力を通じまして近隣諸国とお互いに繁栄して参るという条件を作り上げて参ることは、即その国の安定に役立つことになるわけでございますので、経済協力の画におきましては、わが国の成長と相待ちまして、もっと果敢にかつ積極的に協力の道を切り開いていくべきものだと考えております。
  181. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 防衛庁長官としての意見も、ただいま外務大臣がお答えしたとおりでございます。
  182. 杉原荒太

    杉原荒太君 今の政府の御答弁、私基本的にはよく理解できます。ただ、これはおそらく政府としても当然のことと認められて、御答弁の中には出なかったと思いますけれども安保条約の中のいわゆる極東条項、これの存置は、それの意義を認めて、そうしてその前提に立って、その運用を適正にしていくということは、きわめて重視されておるところであろうと思います。また、そのほかの点は、私もここで申しません。これはしかし、私が質問するまでもなく、そうだと思うから、私は答弁を求めません。  世界の今の大勢を見ますというと、兵器革命の進行や、後進諸民族の政治的目ざめを背景として国際政治の様相は大きな変貌をはらんでおります。その間にあって、いわゆる核冷戦は、特に政治的、経済的の不安定の要素の多いアジアの舞台を主戦場として展開されております。一九六〇年代のある時期から一九七〇年代の初頭にかけて、危機の様相を帯びてくるのじゃないかということが言いふらされております。朝鮮半島の事態についても、今後幾多の起伏、波乱がありましょう。しかし、そうであればこそ、朝鮮半島の平和維持の問題については、われわれはいつそう深く関心を持たざるを得ません。韓国との関係の正常化や朝鮮半島の平和維持のため、政府がよく大局を見て、基本線を誤らず、確固たる決意を持って対処していかれんことを期待してやみません。あえて質問というわけではありませんが、この点に関し、政府において、何らか御所見がおありであるならば承った上、私の質問を終わることにいたしたいと思います。
  183. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 平和の問題は、最深最大の問題でございまするが、同時に、きわめて容易ならぬ問題でございますので、内政、外交を通じまして、この問題に対する日本国としての決意と、そして責任というものは、十分把持した上でやって参らなければいかぬと思うわけでございます。対韓政策というものは、しかしながら、ただいま私どもがやっておりますることは、それ以前と申しますか、本来、あるべき国交がこわれた状態になっておるのを、とりあえず作ろうということが、当面の課題でございまして、私どもその次元に問題を限っておるわけではございませんので、アジア外交はもとより、世界外交におきましても、日本は常にお示しのように平和に対する希求ということを根幹として、すべての施策を実効的に進めて参る決意で当らねばならないと思います。
  184. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来の杉原委員の御意見、まことに私はごもっともであり、同じ方向で同じ問題を同じように処理していきたいと、こう考えておるわけであります。
  185. 杉原荒太

    杉原荒太君 ありがとうございました。これで私の質問を終わります。
  186. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 杉原委員質疑は終了いたしました。   ―――――――――――――
  187. 木内四郎

  188. 二宮文造

    二宮文造君 だいぶ長時間になりまして、大臣各位も、また先輩の諸兄も御苦労さまでございます。私は昭和三十八年度の予算につきまして、主として外交問題に関連しまして、政府の所信をお尋ねしたいと思うのでありますが、質問に先だちまして申述べたいことは、率直に申しまして、国民は政治の方向、特に外交については何も知らされていない、言いかえるならば、政府がきわめて不親切であるということを申し述べたいのでございます。大平外相は、日本外交が必ず内訌を引き起こしてやりにくいという旨を漏らしておられますが、もちろん外交は超党派でやるべきものであります。しかも、それが国民の利益に向かって進んでいくものであることは当然でございます。これは決して政争の具に供すべきものではないと信じております。これが私たち公明会の念願であり、また、理想でもありますけれども、だが、そうする前には、今、日韓交渉に見られますように、外交に名をかりて、ただ結果だけを押しつけるというような行き方ではなくて、経過に対する国民の納得の上に立っていかなければならないと信じております。そのような立場から、私は、限られた時間で、いささか冒険ではございますけれども日本外交の方針につきまして、その基本的な問題をお伺いして参りたいと思うものであります。  まず、総理お尋ねいたしますが、昨年の一月、記者会見の際に、日本外交三原則というのに触れておられます。端的に申しまして、それは自由陣営との協力、それから国連中心主義、アジア、アフリカ諸国との協力というふうにいわれておりますが、これは岸総理の時代のものをそのまま受け継がれたものか、あるいは総理独得のお考えに基づくものか、お伺いしたいと思います。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 特に三原則と申しますか、もう今では私は三原則というのじゃなくて、われわれ自由民主党の前からのこれは外交の基本方針であると心得ております。ただ、御承知のとおり、国連における百十カ国のうち、AA諸国が五十五カ国にもなって参りましたから、吉田さん時代とは違って、AA諸国というのがクローズ・アップされてきたのでございますが、いずれにしましても、自由国家群の一員として、国連の場において、私は、世界の平和を維持し、繁栄を拡大するよう努力しよう、これはもうわれわれの昔からの基本方針であるのであります。
  190. 二宮文造

    二宮文造君 今の総理お話でございますが、そういたしますと、去る国会で総理は、特に自由陣営の三本の柱というのを強調し始めまして、また、本国会では、大西洋両岸だけではなくて、太平洋の西北岸も加えるべきだ、このようにさらに強調をされておりますが、そういたしますと、今申されましたAA諸国というものが非常にクローズ・アップされたとはいいながら、この三原則の中の自由陣営協力というのが強く浮いて参りまして、あとの国連協力外交とかAA諸国との協力というのが、比重が軽くなったように思われるのですが、この点はいかがですか。
  191. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外交の基本方針には変わりはないのであります。ただ、日本の置かれた地位、また、世界に対し、ことに自由国家群のうちにおける日本の地位が、そういっては少し自負したといわれるかもしれませんが、非常に強い立場になってきておる。外国から信頼され、協力を求められる立場になっているということを言っているのであります。外交の基本方針が変わったというのではないのであります。
  192. 二宮文造

    二宮文造君 私は、しばしば日本外交が対米追従外交であるという言葉を聞くわけでございます。今のお話で、自由陣営自由陣営と、このようにいわれることが、かえって対米追従外交というふうな認識を国民に強く与えるのではないかと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  193. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 対米追随というようなことは、われわれは考えておりません。これはいろいろ批判は別でございますけれども、われわれは独立国として、ただ、外交におきまして、また、政治理念において相似ておりますから、共通の場にあるというだけでございます。追随しているという気持は毛頭ございません。また、先方もそう考えておると思います。
  194. 二宮文造

    二宮文造君 さらに総理に続いてお願いしたいと思うのですが、さきの国会で、中立主義というものは非現実的である、このようにお述べになっておりますが、このことについてお開かせを願いたいと思います。
  195. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本のような国が中立主義ではあり得ない、こういうことを言っておるのであります。中立主義自体を非現実的だと言っているのではないわけです。よその国は別でございます。日本は、その間かれた地位、立場等からして、中立主義ではあり得ないということを、これは組閣当初から、言っているのであります。
  196. 二宮文造

    二宮文造君 これもまた総理にお伺いするわけですが、憲法に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と、このようにございます。こういうところから、国民は戦争がいやだという気持と、それからもう一つは、戦争に巻き込まれたくないという気持が強うございます。したがって、中立という言葉、これには非常に国民としては魅力を感ずるわけでございますが、その中で、あえて総理が、日本のような国では中立主義はあり得ない、こういうように申されますと、国民の感情とだいぶそぐわないものになってくると思うのですが、この点はいかがですか。
  197. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はそうは考えません。中立主義でいくよりも、日本のように、自由国家群の一員、そうして安保条約によってわが国の安全を保障するというのがわが国として適当な措置であると考えて、国民も、大多数はそう考えておられると思います。
  198. 二宮文造

    二宮文造君 もう一つお願いしますが、今世界は二つの国になっている。そうして、また、力の均衡というふうにいわれておりますが、キューバの問題や、それからアメリカ、イギリスの核実験の停止の問題、そのときに政府が発表されましたアメリカの態度は理解できるというふうなあの説明の仕方が、どうも対立を意識させるようなことになりまして、これまたあの当時国民が非常に心配をいたしたのでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  199. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、あのときアメリカ立場理解できる、そうしてあのキューバーの問題を拡大することなく済んだことは、アメリカ中心とし、いわゆる中南米諸国がこれに一致し、また、自由国家群もわれわれと同じような声明をイギリスやイタリア等がいたしました関係上、私は大事に至らずに済んだと思うのでございます。日本の声明が適当であったということを今も信じております。
  200. 二宮文造

    二宮文造君 国連協力外交という問題について、外務大臣にお伺いしたいと思います。  最近、今も総理が申されましたように、この国連の加盟国は百十カ国を数えて参りました。しかし、私たちが感じますのは、重要な議題というものは、全部国連のワクの外で、特に平和の問題なんかは、ワクの外でそれが協議されております。このような国連の実体について、日本外務大臣としては、この国連のあり方というものについてどのような考えをお持ちでございますか。まず承りたいと思います。
  201. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 平和をこいねがう人類の悲願を、国際連合というような機構にかけてこれを作り上げていくというわれわれの先輩の英知に対しまして、われわれは敬服いたします。と申しますのは、今あなたが御指摘のように、国連の現実に果たしている機能が十全であるかといいますと、重要な問題が国連のワク外で議論されておるということも事実でございます。しかし、百幾つかの平和を願う国民が、国連という機構を持って、そこに定期的に集まっておるということ自体が、世界の平和が維持されておる最低の保障なんでございまして、そこに紛争をいろいろ持ち込んで、公正な世界世論の鏡に照らしてでき得べくんば解決しようという願望が、そこに秩序正しく行なわれておるということは、世界平和にとって最も基本的なことだと思うのでございまして、私は、この国連の機能が今のように十分果たされていないことを十分認めつつ、これの権威を高め、その機能を高めて参るということにわが国としては積極的に努力すべきととが、世界平和に対するわが国の責任であると考えます。
  202. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっと本論からはずれますけれども、今、外務大臣が、国連に集まることが非常に意義があるというふうなお話でございました。そこで、私ちょっとお伺いしたいのは、岡崎代表が辞意を漏らされておるということを承っております。しかも、国連は、あの総会での話し合いよりも、むしろロビー外交が重要であると、このようにも聞いております。そういたしますと、辞意を持たれた方がそのまま国連の代表としてロビー外交がうまくいくかどうかというふうな心配も出てくるわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  203. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 岡崎さんであれだれであれ、与えられた任期満了までは最善を尽くされるのが当然であると思うわけでございます。
  204. 二宮文造

    二宮文造君 次にお伺いいたしたいのですが、日本は、今まで国連の中で、AA諸国の中の穏健派と、このように定評をとっていたようでございます。ところが、最近はどうもイエスマンだ、重要な議決の場合には、たいていアメリカの態度を見て賛成をするか棄権をするかというふうな態度をとってきたので、すでに日本は、もうAA諸国の中の存在よりも、自由陣営、特にアメリカとの立場のほうが強くなったので、西欧陣営として色分けされるというふうになってきたと聞くのですが、この点はいかがでございますか。
  205. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ一口にAA国と申しましても、いろいろな色分けがございまするし、その独立の淵源を異にする国々でございますから、総じて非常に急進的な考え方を持っておられる国々と、比較的漸進穏歩の国是を持っている国々がございます。したがって、AA国が一つの案件について帰一した態度をとるということは非常に困難なことでございまして、わが国は、その一員といたしまして、国連の目的に照らしまして、そして現実的に世界の平和と繁栄をはかっていく上において是であるという方向に動いておるわけでございます。で、先ほどから二宮さんは、対米追随について非常にお気にされているようでございますけれども総理も申しましたように、私ども、何も追随いたしているわけでございません。目的が是と信じますれば、その方向に勇敢に努力することは当然のことでございます。
  206. 二宮文造

    二宮文造君 具体的な例でございますが、昨年の第十七回総会で南アフリカの人種問題を討議いたしましたときに、当初はAA諸国と一緒にその決議案を作成するというふうな役目に大いにあずかって力があった。ところが、いざそれが上程をされた場合に、その決議案に日本は反対をしたというふうに聞いておりますが、そのいきさつについて承りたいと思います。
  207. 高橋覚

    政府委員(高橋覚君) お答え申し上げます。ただいま御質問の、昨年の国連総会におきます南アフリカの人種差別問題に対する決議案の作成の経過でございますが、わが国はAAグループの中においてこの起草委員一つとなり、その起草に参画いたしまして、そうしてこの会議におきまして、わが国としては、人種差別というものには、従来きわめてはっきりとした反対の態度をとって参りました。したがいまして、その点について各国との意見は一致しておりましたが、ただ、これをいかに南ア政府をして是正させるかという点につきまして、急進的な国々経済制裁その他の制裁措置を否む決議案を作ろうということで、わが国といたしましては、そういうような過激な制裁措置というものをやっても実効がないということで、この制裁措置について反対したわけでございます。それで、最終的にできました決議案のときには、わが国の主張が入れられませんので、この決議案に反対投票をした次第でございます。
  208. 二宮文造

    二宮文造君 私は、さらにお伺いしたいのですが、今どうも日本が、そういうAA諸国から、政治の問題については、大体見放されてきているというふうな感じがするわけです。といいますのは、ジュネーブの軍縮委員会の際にも、アメリカの支持があって、ソ連の反対があったために理事国として招待されなかった。また、キューバの問題のときにも、国連の中で、アラブ連合やガーナなど、中立四十カ国ほどが集まって事務総長に対して解決策委嘱の方針を決定しましたけれども、そのときも日本は何ら相談にあずからなかった。あるいは最近はインドと、それからまた中共との問題でも、日本は相談にあずからない。また、何らその調停の役目もなし得ない。また、西イリアンの問題につきましても、日本は何らその調停に対する動きも見せられない。このように、先ほどから日本という国は、非常に世界の中で大きくクローズ・アップされてきた、こうは言われながらも、現実はこのように孤立化していく、こういうふうな方向をたどっているのではないかと心配するわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  209. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国際場裏で生起いたし、解決を待つ問題はたくさんあるわけでございます。国連の機構内でも、各種の分科委員会が設けられているわけでございます。あなたのおっしゃるようにいたしますと、どこの委員会でも顔を出して日本立場を主張し、宣明するということが望ましいわけでございまするが、これは議席の関係もございまして、私どもは、日本が適当と認める委員会には当然出て主張いたしているわけでございまして、経済社会理事会では、引き続き理事国の地位を圧倒的多数をもってかちとったという、前例のない成果を上げ得たゆえんも、私は、国連における日本に対する評価が牢固たるものがあると思っているわけでございまして、国際協力分野で、私ども可能な限り、当然の務めをやってきておりまするし、諸外国のこれに対する評価も漸次高まってきているというふうに私は観測いたしているわけでございまして、この努力を今後もじみちに続けたいと思い、そうしてそれによって信用と権威が高まるに連れまして、日本発言力というものが実効を上げるというふうになってくるものと確信いたしております。
  210. 二宮文造

    二宮文造君 次に、防衛庁長官にお伺いしたいと思うのですが、さきにコンゴへ国連軍が派兵されましたときに、日本にも、これは国内での一部の話でございますけれども、もし日本に派兵の要請があったらどうするかということで、だいぶ物議をかもしたようでございます。この自衛隊の海外派兵という問題につきまして、防衛庁長官から、今後日本はこうあるべきだという明快な御答弁をお願いしたいと思います。
  211. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 海外派兵の問題については、いろいろ論議があることは承知いたしておるのでありますが、現実の問題として、現行の自衛隊法には、自衛隊の海外派兵の規定はないのでございます。したがって、現在では、たとえば要請がかりにあったとしても、派兵はこれはできないのであります。派兵をするということになりますれば、現在の自衛隊法を国会において改正しなければ不可能であることを申し添えておきます。
  212. 二宮文造

    二宮文造君 さらにお伺いしたいのですが、今、防衛庁長官は、自衛隊法の改正がなければ派兵はできない、このようなお話でございましたけれども、外国では、日本には自衛隊があるじゃないか、そして、しかも国連協力外交といっているじゃないか、今の世界の趨勢は、一国の軍備よりも、集団保障というものをとるべき時代じゃないか、こういうふうな一部の意見もございます。そして、暗に日本に海外派兵を要請するような話もございます。今自衛隊法といわれましたけれども、私は、むしろ憲法第九条の関係があると思うのですが、そのことに触れられなかったのはどういうわけでございますか。
  213. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) われわれは、海外派兵という観念は、非常に厳格にこれを理解いたしております。したがって、簡単に派兵を求められても、これに応ずるわけには参りませんし、また、わが国の置かれた立場からしますると、ただいまお話のように、憲法上からも、一般的には海外派兵はできないものと心得ております。
  214. 林修三

    政府委員(林修三君) 国連が、いわゆる国連軍あるいは国連警察軍というものを組織いたした場合に、それにいわゆる日本の自衛隊のような部隊が参加し得るかどうかということにつきましては、まあ第一次的には自衛隊法の問題でございまして、自衛隊法の問題につきましては、先ほど防衛庁長官がいわれたとおりでございまして、自衛隊法を別にいたしましても、憲法だけの観点から考察した場合どうなるかという問題でございますが、これはかつてこの席でも、私何回か御答弁したことがあると記憶いたしておりますが、なお十分な結論を得ていない点もございますが、これは一口に国連軍といい、あるいは国連警察軍と申しましても、その態様はいろいろとございます。今までできましたものについて見ただけでも、それぞれ態様は違っております。今後想定されるものもいろいろの態様があり得ると思うわけでありまして、その中には、憲法九条とは全然関係のあり得ない、持ち得ないような組織も、あるいは態様もあり得ると思います。そういうものについては、もちろん憲法九条との関係はないわけであります。たとえば全然軍事行動を伴わないような監視的な問題については、これはもう憲法九条の問題はもちろんないわけでございます。それから、また将来、あるいは国連と申しますか、国連の機構、あるいは国際社会のああいう機構が非常な理想的な形態に進みまして、本来の意味の、いわゆる国内警察と同じような意味の国際警察というものができた場合に、それに日本が参加することは、これまた憲法問題では私はないと思います。憲法九条の禁止規定はないと考えます。そういうような問題はございます。しかし、現実の問題になりますと、あるいは朝鮮半島の場合の国連軍、あるいはコンゴの場合、エジプトの場合、いろいろ態様はそれぞれ違っておりますので、一口にこれはいいとか、これは悪いとかいうことは言いかねる問題があると思います。
  215. 二宮文造

    二宮文造君 ただいまの答弁は、聞き方によっていろいろにとれるわけですが、私は端的にお伺いしたいのですが、海外派兵というものを一くるめにして、それができるかできないか、するかしないかということをお伺いするわけでございます。
  216. 林修三

    政府委員(林修三君) 海外派兵をするかしないかという問題は、私の問題ではございませんけれども、できるかできないかという問題、今おっしゃいました海外派兵とは何ぞやという問題のまず定義をきめてかかる必要がございます。これは一口に海外派兵と申しましても、いろいろな方がいろいろな意味で使っておられます。したがいまして、単に海外派兵という御質問に対して、それに的確な御答弁はできないわけでございますが、こういう意味における海外派兵はどうかということに実はなるわけでございます。いわゆる普通海外派兵――今の自衛隊法、憲法九条で許されないと考えられます海外派兵は、つまり、たとえば二国間あるいは数国間の戦争において、日本が、その外国に対して侵略行動的な行動として出る、そういうことは当然憲法では許されておりません。しかし、いわゆる国連における活動として、国連が、国連の組織として国連警察軍を作る、あるいは国連軍を作る、その場合にもまたいろいろな態様などがあることは御承知だと思いますが、その場合に、それぞれの国が主権を存しつつ部隊を派遣する国連軍もございますし、それぞれの国が人員を供出して、国連そのもののもとに一つの総合的な軍隊を作る場合もございます。それによってまた場合も違って参ります。主権を存しつつ派遣をする場合は、いろいろ問題があるわけでございます。それから、たとえば朝鮮半島における例のように、国連軍対国連外の国との間のああいう戦闘行動の場合もございますしこれはエジプトとかコンゴのように、国連のワクの中の問題もございます。それから、これは将来の問題でございましょうけれども、たとえば紛争のある国境確定のための、たとえば住民投票について、当事国の警察ではいろいろ問題があるから、国連が警察的な任務を遂行するというような意味の国連警察軍もこれはございましょうし、そういういろいろなものがあるわけでございまして、まず、軍事行動を伴わないような国連軍あるいは国連警察軍であれば、憲法との関係はあり得ないと思います。  それから、もう一つは、先ほどちょと申しましたが、つまり国連が、社会というものが非常に理想化した形態ににおいて、いわゆる何と申しますか、国内警察と同じような意味の警察任務、治安維持という任務を持つような時代になった場合における国連警察隊あるいは国連警察軍の任務は、現在における戦争の観念とは、全然軍事行動の関係とは違って参ります。そういう場合におけるものは、私は、憲法の許容せざるとろではない、かように考えております。この点は、かってここでお答えをいたし、委員の方の御共鳴を得た点もあったと思いますが、そういういろいろな態様があるはずであります。一口に海外派兵と仰せられましても、その時代いかんによって、これは論者の使われる言葉の内容にはいろいろあるわけでございまして、一口にお答えするのは困難でございます。
  217. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連。今の答弁を聞いておりますと、海外派兵が場合によってはできる、いわゆる監視的行為や、あるいは軍事行動を伴わないところの警察的行為ならかまわない、こういうようにとれるわけですが、そうすると、監視行為で出て行ったのが、事実紛争が起こってまき込まれるような場合には軍事行動になってくる、そういうような非常な危険性がある、そういう点はどうなっていくかということは、出て行くときは保証ができないわけであります。国民としては、絶対に海外派兵は好まない、当然憲法第九条の上からもできないことであるし、それを唯一のたよりにしておるわけでありますけれども、そういう点が非常に不明確な感じを受ける。このままでいけば、国民のほうはそのおそれに陥るのじゃないかと思うのですが、もう一ぺんその辺はっきり、将来紛争になるようなおそれがあるときには当然できないと思いますし、もちろん監視などにも出せない、そういうような答弁はできないものなのかどうか、その辺のことをもう一ぺんはっきりしてもらいたい。
  218. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 法制局長官は憲法論が得意ですから、憲法論をやったとお考えいただきたいと思います。一般に、海外派兵といえば、武力行使を想像しておりますのが一般でございます。したがって、憲法上は、私は、武力行為を伴うものはできません。それから、また、いろいろな背景で、学問的に可能だといっても、今の自衛隊法では海外に出ることはできないことになっております。私は、御安心下すってけっこうだと思っております。
  219. 二宮文造

    二宮文造君 続いて防衛庁長官にお伺いしますが、今、防衛庁では第二次整備計画をやっておられます。また、さらに第三次の整備計画というものも考えておられる。これがけさほどからのいろいろな応酬の中で大体出て参りましたですが、その方向というものは、はっきり言ってミサイル化するということでございます。そこで、私はお伺いしたいのですが、こういうことがいわれております。そのミサイル化の目的を果たすためには、防衛費を現在の国民所得の一・四五%から二%に引き上げなければできないというふうなことがいわれておりますが、この点はいかがでございますか。
  220. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 先ほども、午前中にお答え申し上げましたが、第三次防は全然考えておりません。いずれは考えなければならぬ段階に参るとは思いまするけれども、何しろ第一次防衛力整備計画がその初年度を終ろうとしている際でありまして、来月からいよいよ二年度に入ろうとしているときでありまして、三次防がどうなるとかこうなるとかいうことは私は考える余裕がないのでございます。私としましては、至上命令として二次防を完全にこれを遂行させることにあるのでありまして、三次防は現在考えておりません。
  221. 二宮文造

    二宮文造君 大蔵大臣にお尋ねしますが、将来そのような問題が出て参りましたとき、日本国民所得の中から二%の防衛費負担ということについての御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  222. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在までの国民所得と防衛費の関係は、平均して一・四%程度でございますが、その段階におきましても、他の歳入歳出面を十分検討しながらバランスをとって、いずれが優先すべきかを決定いたしておるのでありまして、将来二次防の完成、また、三次防というような将来計画を樹立し、これをもし遂行しなければならないというような状態であっても、これが総額の決定、また、年度間における予算額の決定等につきましては、他の歳出の重要性とのバランスをとりながら考慮すべきものと考えております。
  223. 二宮文造

    二宮文造君 防衛庁長官に、ちょっとこまかいことですが、大事な問題をお伺いいたします。といいますのは、聞いた話でございますが、航空自衛隊の総司令部の司令官室が、アメリカの第五空軍の司令部と同じ建物にある。また、航空自衛隊の本土北部における戦闘部隊は、その主力が北海道の千歳にあるにもかかわらず、その司令部は第五空軍と同じように、青森の三沢にある。九州もまた同じ。このような状態になっているということ自体が、航空自衛隊が常にアメリカの第五空軍と同じ行動をするということを意味するのですか、どうですか。お伺いしたいと思います。
  224. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) お話のとおり、航空隊総司令部が第五空軍の司令部と同じ建物にあることはそのとおりでございます。また、三沢基地もそのとおりでございますが、これはあえて説明しなくても御理解願えると思うのでありますが、事は防空でございます。寸刻も許せない一つの瞬間的な行動を要する防空の問題でございまして、もしもそれぞれかなり離れた所に、たとえばわがほうは千歳にあって、米空軍のほうが三沢にあるとしますれば、まあいろいろな点においてそごを来たすのでございまして、緊密な連絡をとるという意味で同じ建物におるのでございます。そういう次第でございまして、一々同じ行動をとるというようなことは全然ございません。わが航空自衛隊は、航空自衛隊の行動目標なり、あるいは、また、私が決裁をいたしております業務計画に基づいて航空自衛隊が毎日運営され、また、行動いたしておるのでありまして、第五空軍と同じ行動をとっておる事実はないのでございます。
  225. 二宮文造

    二宮文造君 私がお尋ねしますのは、昨年のキューバのことでございますが、その後政府は、そうでなかったと、このようにおっしゃっておられますが、事実は、キューバのときには、日本の航空自衛隊は、幕僚長の命で、第五空軍と一緒に、自動的に同じ行動をとったという報道のほうが正しいと私は了解しております。そのようなことが国民にたいへんな不安をまき起こしている。今後もそのようなことがあるのではないかということでございます。この点についてもう一度お答え願います。
  226. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) ただいま航空自衛隊が第五空軍と同じ時間に同じ行動をとったというようなお話でありますが、それは誤りでございまして、おそらく私の想像するところでは、第五空軍は、十月の二十一日でございましたか、これは記憶違いがあったらあとから訂正いたしますが、あの重大なキューバ事件が発生した朝に、もうすでに第五空軍が指令を出しておるようでございまして、私が航空幕僚長に命じて、警戒態勢にさらに注意すべしという指令を発しましたのは当日の午後一時でございまして、自動的に指令を出した事実はないのでございます。
  227. 二宮文造

    二宮文造君 先ほどの海外派兵のときに憲法第九条という問題が出て参りましたけれども、第二次防衛力整備計画の中から考えてみても、ミサイル化だとか、あるいは対潜水艦作戦というものがうたわれているようでございます。したがって、私は、将来の問題として、防衛庁がいわれる局地限定作戦という限界、このことについて承っておきたいと思うのですが、お願いいたします。
  228. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) これは私から説明申し上げるまでもなく、局地限定戦争ですか、この国際紛争は、通常兵器による紛争事件でございまして、この局地的な限定された地域に起こりました紛争が全面戦争に発展することのないことが前提でございまして、第二の前提は、核戦争に発展をしない、あくまでも局地的に限定せられた地域における通常兵器による紛争事件と考えておるのでありまして、この線に沿うてわがほうの第二次防というものが策定せられておるのでありまして、今後といえども、この線に沿うて第二次防の順調な進行を期する次第であります。
  229. 二宮文造

    二宮文造君 時間の関係で次に参ります。  総理お尋ねするのですが、自衛隊にこのたびの豪雪に対しまして不眠不休の活躍をしていただいて、この自衛隊の隊員の各位に心からお礼を申し上げなければならないのでございますが、私は、このようなあり方が、自衛隊の平和的な国土防衛、平和的な国土建設というものに自衛隊の使命がなっていくならば国民も喜ぶのではないか。まして核兵器絶対反対というわれわれの立場から考えてみましても、防衛力増強という問題には反対でございますけれども総理のお考えはいかがでございますか。
  230. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 世界情勢が、戦争が絶対にない、また、日本には絶対外部からの侵略がないということならば、これはお話のとおりでございます。しかし、必ずしもそう断定できません。したがいまして自衛隊は、一朝有事の場合に国を守ると同時に、また、平時におきましては国土保全ということ、両方をやることになっておるのであります。
  231. 二宮文造

    二宮文造君 次に、日米の綿製品の交渉についてお伺いしたいと思います。  総理は常に、日米関係は打てば響くような間柄である、このように声を大にして言われているのでありますが、私たちはこの総理お話とは逆に、むしろ将来の姿というものを暗示したのが、この綿製品の問題ではないかと、このように考えております。  まず、通産大臣にお伺いしたいのですが、一月来にたびたび日米間の折衝がございました。そこで、数字的に日米考え方の違いというものがはっきりして参ったと思うのでございますが、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  232. 福田一

    国務大臣(福田一君) 綿製品の交渉につきましては、日米の間における種種の解釈の問題が、実は今大きくクローズ・アップされた問題になっているわけであります。そこでアメリカがどういうことを、では、申し込んできたかといいますと、四十品目について規制の水準を示してきたわけであります。ところが、その四十品目のうちで三品目、すなわちズボン、ブラウスというような、男と女にこれは分かれますが、三品目についてはすでに昨年のうちに話がついておるわけであります。ところが、残りの三十七品目のうちで一つの品目は今までは雑品と言われておったものでありまして、チャックみたいなもの、こういうような種類の雑品類についても規制をしてきております。したがって、われわれとしては三十六品目というものについて、アメリカから今度は規制の水準を明らかにしてきたものと解しているのですが、ところがその三十六品目のうちで四品目くらいは、今度できました国際協定によっていわゆる市場撹乱の事実が認め得るとわれわれも考えておりますので、それについては話し合いをしてもいい。しかし、今のところ、残りの品目の三十二品目については、市場撹乱の事実があるかいなかについて、まず条文の適用が適正であるかどうかということを考えてみなければならぬ。その条文の適用の内容といいますのは、市場撹乱の事実がありと判定すべき条文というのはどういうところかといいますと、急に輸入国に対して輸入がふえた、数量が増加したという場合、もう一つは、非常に安値の品物が入ってきた、こういうことであります。もう一つは、その輸入国に対して入ってくる品物がその田の産業に大きな影響を与える、こういうことであります。この三つがいわゆる市場撹乱の条件になっております。で、私たちが見るところでは、その解釈の適用のやり方においてどうしてもまだ納得がいかないというので、実は、その数字を明らかにしてもらいたいということを向こうに申し入れて、そうしてその内容を聞くと同時に、われわれとしては日本のとっている今までの数字の立場から見ると、どうも市場撹乱の事実があるという、その事実がはっきりしない、だからそれをもっと明らかにしてもらいたい、条文の解釈上もどうもまだはっきりしないということを言っておる段階でありまして、最近新聞紙上によりますと、向こうから返事があったように聞いておりますが、まだ私その翻訳を正式に受けておりません。したがって、ここでは明らかにすることはできませんが、私たちとしてはまず、一応筋を正していくということで、この問題の交渉に当たっておるわけであります。  しかし、今、二宮さんがお話しになりましたが、こういうようなことが出てくるということは、日米経済関係とか、日米関係は打てば響くような関係なんだから、そんなことを言ってくるはずがないじゃないかと、こういうような御質問であったようであります。これは、私はひとつ、みんながといいますか、国民があるいは誤解するおそれがあると思うので、申し上げておきたいと思うのでありますが、貿易というのは、二国間のやはり商売でございます。商売というものはそれぞれの国の立場がありまして、それぞれの国にはそれぞれの要望があるわけでございます。日本もまた日本としての要望を強くアメリカに言っているわけでありまして、これはこの会議の席上でもしばしば総理からも言われておりますが、アメリカあたりはほんとうは自動車の自由化をもっと早くしてくれということをずいぶん言っておるわけであります。われわれは、そんなことできるものかといって突っぱねているという実情であります。アメリカに言わせればアメリカの言い分がある、日本に言わせれば日本の言い分がある、その言い分をうまく調和させていくということによって、初めてほんとうの意味での友好関係が成立するのだと思います。何か向こうがこちらを、いわゆる経済的に気にくわないことを少しでも言ったら、それで友好関係は終わりだ、そういうことでもないのでありまして、友達の関係も同じでありまして、お互いがざっくばらんなことを言えるようになって、初めて親友と言えると思うのでありまして、遠慮をしている間は親友と言えないのであります。
  233. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっと御意見と違う気持ではありますけれども、確認しておきたいのですが、今まで通産省でおはじきになった日米の食い違いは一一、二%、このように了解してよろしゅうございますか。
  234. 福田一

    国務大臣(福田一君) その数字は取り方がまたいろいろ議論が出てくるのであります。ここでもし必要とあれば、政府委員から申し述べさせますが、その数字の取り方にまた意見の食い違いがある。この取り方じゃ因るじゃないかということを言って、今話し合いをしているということもあるのであります。必要ならば政府委員から申し述べさせましょうか。
  235. 二宮文造

    二宮文造君 私が心配しておりますのは、通産省ではじいた数字とそれから外務省が考えておる数字と、この間に食い違いがあってはたいへんでございます。ことに外務省の出先機関が担当するわけでございますから、その交渉に当たって弱腰でございますと、なおさらたいへんなことになるので、確認をいたしたかったわけでございますが、承ってみても、どうせ私が了解できるような数字は教えていただけないと思うのであります。といいますのは、前もっていろいろな数字の計算があるということで煙幕を張られておりますので、あえて私のほうでお尋ねいたしません。  次に、通産大臣にお伺いしたいのですが、今回の長期協定の第三条の市場撹乱のことでございますが、アメリカ新聞報道ではありますけれども、輸入品全体のワクでもって市場撹乱というふうな考え方を一応立てているようでございます。そういたしますと、日本側からの数字をただあげただけではおそらくアメリカはこの市場撹乱という問題には了解をしないのじゃないか、口先が見えているような感じがするわけでございますが、通産大臣はいかがでございますか。
  236. 福田一

    国務大臣(福田一君) まずもって、前の話は聞かんでもよろしいとおっしゃったようでありますが、これも私は誤解があると思うのでありまして、外務省と通産省は常に密接な関係といいますか、しょっちゅう連絡をとりまして、通産省と外務省との間に何ら意見相違はございません。たとえば訓令を出す場合にしても、ちゃんと通産省の者が見てからでなければ外務省では打っておりませんから、この点はひとつ御安心を願いたいと思うのであります。  それから、今申されましたアメリカが全体として申し込んできておるかということでございますが、全体のワクとして、全部の総ワクとしてこれがもう市場撹乱のおそれあり、こう言っておるのじゃないかということでありますが、向こうは今度品目をうんとふやしまして、今までの品目をこまかく六十四品目にしたわけであります。そしてそのうち四十品目について市場撹乱の事実がありといって申し込んでおるのでありまして、全体の形において市場撹乱の事実がありということは申し込んできておりません。
  237. 二宮文造

    二宮文造君 今のは通産大臣がちょっと受け取り方を違えてお答えなすったと思うのですが、アメリカの全輸入、日本の輸入ではなく、各地からの輸入で、したがって総額、こういうふうになって市場撹乱を引き起こしているという考え方に立っているのではないかという質問でございます。
  238. 福田一

    国務大臣(福田一君) その点については、お説のとおりでございます。しかし、われわれはその点を認めてみても、なお、市場撹乱の事実ある数量、それほどの数量が入っているかどうかというような点について、意見を異にしているものが多いのでございます。
  239. 二宮文造

    二宮文造君 さらにお尋ねしますが、ちょうどあの長期取りきめにきめられております六十日はすでに過ぎました。今までの経過としては、打ち切らないで交渉するというふうな言い方のようでございますが、アメリカのほうとしてはいつ打ち切ってもいいようになっております。したがって、お互いの調整がつくまでは打ち切らないというようなその確約がありましたかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  240. 福田一

    国務大臣(福田一君) 向こうが言っておりますのは、交渉継続中は打ち切らないと言っております。そこで、その解釈が今あなたのように交渉継続中だと言うならば、アメリカが打ち切ると言ったら、それは無効で継続でないんじゃないか、こういうお話かと思いますが、その点私たちは何といっても、アメリカから日本が相当程度の綿を輸入をしているし、また、経済関係においても相当密接な関係に立っておるというような観点から見て、こちらのほうから、向こうが交渉継続中打ち切らないと言うのを、一方的に破棄されるのだというふうな解釈で臨みたくはないと思います。依然としてやはり信頼の上に立ってこれは話をしていく、これが相互理解し合った国の態度であるべきだと考えているわけであります。
  241. 二宮文造

    二宮文造君 この前、緊急質問のときにもお伺いしたのでございますが、アメリカではすでにもう交渉は第二ラウンドに入った、このような言い方でございます。また、かつてラスク国務長官ももうすでに政治折衝に入らなければいけないんじゃないかというふうなことも二十日ごろでございましたか、言っていたように思います。大平外務大臣は特使は出さない、出先で十分に折衝ができる、このように言っておられるのですが、国内のこの心配している空気と、それからまた外務大臣が特使は要らないというような考え方と、私ちょっと納得がいかないのですが、むしろこの場合は特使を出して、そうしてアメリカの反省なりあるいは説明なりを求めるべきではないか、このように思うのですが、通産大臣の御意見はいかがでございますか。
  242. 福田一

    国務大臣(福田一君) この問題は日米間の問題だけではないのでありまして、国際協定でありますから、もし特使を考えるというようなことであれば、一応国際間のいわゆる綿製品協定の会合において何らか意見を言うということのほうが、まず、先になるべきだと思うのであります。したがいまして、現段階において特使のことはまだ政府部内においては考えておりません。今後私たちとしては、やはり粘り強く、そうしてほんとうに市場撹乱の事実があるのかどうかということについて、相互がいわゆる解釈の面において納得のいくところまで詰めていく、それがすぐにまた数字にもつながっているわけなんですから、それを詰めていくことが大事だと思っておるわけでございます。
  243. 二宮文造

    二宮文造君 総理もたいへんに御心配されておるようでございまして、この間の新聞にも、書簡でも出してもいいぞというふうな話を漏らされておったように伺っておりますけれども、北方漁場などの場合には、毎年特使が出ていくような形で交渉がされて参りました。このたびのこの綿製品の問題はかねてからもたいへんないきさつがあったわけです。したがって、まだその業者というものが大半が政治力の弱い中小企業にも関係をして参りますので、この交渉の成り行きが非常に期待を集めていると私は思うのでございます。したがって、総理がこの問題が暗礁に乗り上げてどうこうということを考えるのではなくて、強い対策をお考え願えないかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  244. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題は長期協定の二条の問題また四条で両国間でやるという問題、いろいろな問題があるわけでございます。私、十分向こうの意見も聞き、こちらの意見も向こうへ申し入れて、そうして円満な解決をはかりたいと思います。御承知のとおり、昨年今ごろは綿製品の賦課金の問題が断りました。八・五%の賦課金をかける問題で相当騒いだのであります。これはわれわれの希望どおりに賦課金をかけることはやめました。アメリカの繊維産業、綿糸産業というのは、かなり斜陽産業になっております。そうしてまた、日本の綿糸産業は日本では最も強い産業でありまして、中小企業の関係はありますけれども、非常に組合その他の関係もうまくいっているのであります。われわれはこういう事情を十分に考えながら、日米両国間に円満なまた適正な解決ができるように努力していきたいと思います。
  245. 二宮文造

    二宮文造君 農林大臣に伺います。きょうから日ソ漁業交渉が始まって参りましたですが、新聞なんかで大体その問題点は了解をいたしましたけれども、従来ともに百日交渉といわれるような、なかなかたいへんな交渉のように承知いたしております。したがって、この経過というものが新聞報道によりますと、ある程度楽観視されているようなことでございますが、特に私は昨年の河野・イシコフ会談で暗黙の協約と申しますか、豊漁年に当たっているから、A海域では一割増しにするというふうな暗黙の了解を取りつけているというふうに承知いたしているのですが、この点についてさらにそれを農林大臣としては強く主張をし妥結に持っていくというお考えでありますかどうか、承りたいと思います。
  246. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 御承知のとおりに、日ソ漁業条約に基づく昨年の交渉では、A、区域とB区域に分けられているのでありまして、B区域のほうは特使によりまして一割前後の増減が昭和三十八年度はあるということをきめているわけであります。A区域についてはそれがないのです。五万五千トンということを去年きめただけであります。A区域については一割の増減ということがないわけであります。そこで河野・イシコフ会談によりまして、B区域と同じようなふうに取り計らうという確約ができたということは聞いているのであります。私といたしましては、もちろん資源の状態にもよるわけでありますが、資源状態が今年豊漁年であるということが科学者によって結論をつけられることになりますれば、そういうふうにできるだけ持っていきたい、こういう考えでおります。
  247. 二宮文造

    二宮文造君 根室の海岸のあのコンブの採集のことについて協定で持ち出すあるいは交渉に持ち出すお考えでありますかどうか。これは特に毎年問題を起こしております。しかも零細漁民でございます。そういうことで特に配慮を願いたいのですが、交渉に持ち出す御予定でございますか、どうでございますか、承りたいと思います。
  248. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 今回の交渉は御承知のとおりに、北西太平洋のサケ、マス、カニ、ニシンについての交渉であります。そこで、正式に貝殻島付近のコンブ採取についての安全操業ということが議題にはおそらくならぬだろうと思うのでありますが、本日から明日、明後日にかけまして、その議題の相談をいたしておるわけでありますが、おそらくそういったようにはならぬと思いますが、必ずしも、交渉の途中ではそういう問題にでもあるいは触れることになろうと思うのであります。この問題は、御承知のとおり、昭和三十二年以来いろいろの経過をたどって、あるときにはソ連側はこの安全操業問題について交渉に応ずるという態度を示したのでありますけれども、しかし、その後に至りまして、平和条約が締結をせられるまではこの問題についての交渉には応じがたい、こういうことを正式に言って参っておるような事情もあるわけでありまして、ところが最近はまた、これはもちろん私的の話し合いだろうと思うのでありますが、聞くところによりますと、漁業当局ではないのでありますが、これは日本側の言うことがもっともだというようなことを言われるということも聞いておりますが、いずれにいたしましてもこの問題は非常にめんどうな問題であると私は考えております。正式の議題にこれをするということはあるいは無理じゃないかと考えております。
  249. 二宮文造

    二宮文造君 日ソ間の領土問題が未解決であるということが日ソの間のたいへんな問題になっておりますが、一昨年はクーリル・アイランドの見解をめぐりまして相当の議論が断り、また日ソ間の書簡の応酬があったように承知いたしておりますが、外務大臣、昨年北方領土につきましてソ連に対して何らかの交渉をなすったことがありますかどうか承りたいと思います。
  250. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 総理とソ連首相との間の書簡の数次の交換を通じまして、双方の見解が対立のままの状態であるわけでございまして、私どもは、この問題の解決ということが、先方が平和条約の締結ということを前提として考えられておりますのみならず、私どもが念願としておる固有の領土の確保という点についての見解を根本的に容認していない立場にあられる以上、二国間の交渉によってこの問題の前進をはかるということは目下のところ困難であると判断いたしまして、この問題に限って二国間の交渉をやったという経緯はございません。
  251. 二宮文造

    二宮文造君 二国間の交渉が非常に困難なので、あらためて交渉はしていない。ならば、北方領土あるいは沖繩の問題を含めまして、国連という機関にその返還ないし領土の確定ということについて提訴されたことが今まであるのですか、ないのですか、承りたいと思います。
  252. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは、一応考えられますけれども、先方が応訴しないと問題になりませんので、そういう見込みは目下のところありません。
  253. 二宮文造

    二宮文造君 時間の関係で、次にアジアの問題に入って参りたいと思います。  日本アジアの問題を考えますときに、必ず私たちは、二つの中国とか、あるいは二つの朝鮮とか、二つのベトナムとかいう言葉を、また現実を目にするわけでございます。しかもそれは、日本にとっては与えられたものだ、国民としては与えられたものだ、それがそこにある以上は、二つのものとも善隣友好であるべきだ、このように素朴に考えております。  そこで、外務大臣お尋ねしますけれども、一昨年の十二月の国連総会で、岡崎代表が発言しましたその結論は、要するに、日本中共の国連加盟には反対ではない、ただし中華民国にかえて中共を国連の中国代表にすることは重要議題だ、このように提案して、賛成もしたというふうに了解してよろしゅうございますか。
  254. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本国民考える前に、中国であれば中国、朝鮮であれば朝鮮の方々は、自分らが統一を希求している祖国に二つの政権を他国が認めるなどということに対して、根本的に反対であられるわけでございますので、私どもそういう態度をとることはできません。
  255. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっと答弁がよくわからなかったのですが、今私が結論づければと申し上げたことは、どうなんでございますか。
  256. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 相手の国民が希望して、絶対に容認できないことを、日本側外交的態度としてとることはできないということでございます。
  257. 二宮文造

    二宮文造君 総理は、衆議院予算委員会で、台湾及び韓国と、このようなお言葉をお使いになっているのですが、これは通称として、わかりやすい意味で申し述べられたのですか、あるいは台湾という呼び名に政府部内で統一されてのお言葉なのか、ちょっと承っておきたいと思います。
  258. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 通常、台湾政府、こう言っております。しかし、これは中華民国という正式の呼び名もございますが、台湾政府ということがよく外国なんかでも言われている。それを言ったのであります。
  259. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっと先に急ぎます。私たちの考え方でございますが、中共は近く核武装するということで、この間から委員会でも盛んに論議がされております。また、日本といたしますならば、中共が核武装しなくてもいいような条件を作り出すというのが、日本の、平凡に言えば、国家的な利益でございます。したがって、そのためにも、日本中共の国連加盟の道を開く積極的に努力をするというような使命があると思うのですが、外務大臣、いかがでございますか。
  260. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもは、先ほど申しましたように、中国の正統政府として中華民国政府を承認いたしまして、外交関係を持っているわけでございます。中共の国連代表権の問題は、その道をやめて、そうして北京政府を中国全体を代表する主体にして国連加盟の道を認めろという議論でございます。私どもがもしそういうことをやるということは、日中間ばかりでなく、極東の平和の問題として重大な問題であるし、世界政治の問題としても重要な重みを持った問題であるわけでございまして、広く国際世論に照らして慎重に討議されるということが正しい道であると心得て、重要事項の指定に賛成したということで、そういうことにいたしたのでございます。
  261. 二宮文造

    二宮文造君 それに関連いたしまして、対中共貿易のことでございますけれども、この間からの論議を聞いておりますと、総理がしばしば申されることは、中共貿易には反対でない、商売だから大いに促進したい、だが、商売だから金のないところには売ることはできない、このように言明されたように承知いたしております。ところが一方では、同じ外貨枯渇に瀕しております韓国には、有償無償あるいは、きょうの新聞には、それ以外に延べ払いで消費物資を送るというような道を開こうとしておりますが、こういう問題を聞きますと、特に中共貿易に関心を持っております国民はその論議に非常に矛盾を感ずるわけでございますが、総理大臣いかがでございますか。
  262. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御承知のとおり、中共日本との貿易は、もうたびたび申し上げているように、とても韓国との貿易の比較にならない状況でございます。韓国に対しましては、日本は一億数千万ドルの輸出をしている。しかも、前のオープン勘定のときの分を残しましてずっとキャッシュで今までいっているのであります。しかし、中共との貿易は、御承知のとおり五千万ドルくらい輸入したいといってもほとんどあと払い。今度の塩安なんかもあと払い。これでは、やはり日本としてもそう多くは期待できない。私は、韓国は今農作物が不作である。あるいは、いろいろな関税政策その他で非常に物価高を来たしているといえば、日本は相当物が余っておりますから、これである程度売りつける、買ってもらうということは、日本としては至当なやり方ではないかと思います。
  263. 二宮文造

    二宮文造君 次に、賠償あるいは経済協力という問題について質問をして参りたいと思いますが、けさも羽生委員のほうから、賠償のことについて質問はあったようでございますけれども、若干ダブりますが、大蔵大臣に、日本の戦後の賠償、それからタイの特別円、ガリオア・エロアを含めた対外債務、この総額が幾らになっておりますか、まずお伺いしたいと思います。あわせて、その支払い済みの金額。
  264. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。ビルマ、フィリピン、インドネシア、ベトナムに対する賠償、ラオス、カンボジアに対する経済技術援助、タイ特別円、ガリオア合わせて邦貨換算五千五百二十八億四千九百万円でございます。これに対して、すでに支払われておりますものが千四百六十二億八千九百万円、残りが四千六十五億六千万円でございます。
  265. 二宮文造

    二宮文造君 さらにそれにビルマの再交渉が加わっていくものであると思いますが、さきにはタイの特別円の関係があり、今度はまたビルマの問題が出て参りました。日本経済成長というものに伴いまして、同じようなケースのものがまた再発するという心配をしている向きもございますけれども外務大臣はこの点、どうお考えでございますか。
  266. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 賠償問題といたしましては、ビルマ再検討問題が出てきますと、そのあとは、これで打ち切るということになると思います。
  267. 二宮文造

    二宮文造君 つい近年まで、中共からの報道では、中共は対日請求権を留保するというふうな報道をしておったと思いますけれども、このような中共の賠償に関して請求権を持ち出してくるというようなことは、外務大臣はどのような見通しを立てておられますか。
  268. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことは考えておりません。
  269. 二宮文造

    二宮文造君 賠償協定がまとまりますときに、賠償のほかに、たとえばビルマに五千万ドルとか、あるいはインドネシアに四億ドルとか、フィリピンに二億五千万ドルとか、ベトナムにもございます。このように経済協力というものを与えることになっておりますけれども、この進捗状況は、外務大臣、いかがでございますか。
  270. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは、そういう経済協力を対民間べースでやることを容易にするという論理的な義務を政府が持っておるわけでございまして、あくまでも本体は民間べースの交渉によってきまることでございます。ただいままでのところ、若干動いておるのがございますけれども、大幅な進捗は見ておりません。
  271. 二宮文造

    二宮文造君 それについて、非常に各国から不満があるという声もあがっておりますし、それを借款に切りかえるというふうな声もあがっているようでございますが、今までにこれらの賠償で調達されましたものは、資本財あるいは消費財、大ワクに二つに分けまして、その割合はどのようになっておりますか。
  272. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは主として資本財を提供することになっております。ただし、それぞれの国の事情に応じて消費財も若干出しております。過去の実績では、ビルマにおきましては約二五%、フィリピンでは一・八%、インドネシアでは六・六%程度が消費財で出ておるのでございます。
  273. 二宮文造

    二宮文造君 企画庁長官にお伺いしたいんですが、賠償調達で考えなければならない問題でございますけれども、現在及び将来の日本の輸出との競合という問題が非常に大きく浮かび上がって参ると思います。たとえば消費財を出して参りますと、これは現在の輸出の競合の問題が出て参ります。あるいは資本財を調達しますと将来の問題が出て参ります。これは、プラントの輸出という問題にからみましても重要な問題になってくると思うのでございますが、この点につきましても、政府がどのような考え方をしているか、企画庁の長官からお伺いしたいと思います。
  274. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 賠償の本則は、今、外務大臣が答弁をされましたように、資本財、役務でございますけれども、従来、ときとして消費財を送っておることがございます。そういうときの私ども考え方は、私どもが賠償を支払いますときに、それが相手国の経済建設にとってよかれかしという気持でいたすわけでございますから、相手国の経済状態のそのときの状況によって非常に、さしずめ、消費財が窮迫をしておる、これをもらうことが相手国の経済安定のためにいいという場合もございます。また、過去においてございました。それからまた現にありました例といたしましては、たとえば相手国である建設事業をいたしたい、しかし、そのときに現地通貨を調達することが困難である。したがって、現地通貨を調達するために、わが国から消費財を入れてその売却代金で現地通貨を作りたい、こういう希望を持っておうたような場合もございます。そのような場合には、私どもは本来、仰せのように消費財を賠償で出すということは、潜在的な意味貿易との競合があるわけではございますけれども、それが相手国が特に望むことであるというような場合、及びそういう国の場合には、正常貿易でそういう消費財をわが国から買うということも現実には困難であるから、そういうことを言って参るのでございますから、競合関係は多くの場合に、一種の概念的なものであって、二千万ドルの陶器を渡したから二千万ドルの陶器の現実にあるところの輸出がなくなってしまうといったような、現実の競合関係に必ずしも立っておるわけではないというふうに考えておるわけでございます。で、そういう消費財を出しますことによって考えられますまあ利点と申しますれば、それがまあ相手国の当面の需要を満たすということのほかに、やはりわが国の商品に対して相手国に親しみを与える道がつくというような意味があると思います。生産財、資本財、プラントにつきましても、同じような競合の問題はございますけれども、それは、ただいま申しましたほかに、そういう資本財を送ることによって、将来相手国の経済水準が上がって、わが国に対する需要が全般的な意味でふえるであろうということ、及びその資本財についての将来のパーツなり、あるいはさらにそれを増設する場合などに、わが国に新しい需要を求めてくるであろう、こういったような観点から考えまして、そういうことを例外的には従来やって参っておるわけであります。
  275. 二宮文造

    二宮文造君 先ほどから私がお伺いいたしておりました、日本がAA諸国の中からだんだん浮き上がってきたんじゃないかというふうな心配を、先ほどからお話をいたしたわけでございますけれども、スポーツの問題でございますと、特に政治が介入するということは好ましくはございませんけれども、当面重要な問題が出て参っております。  そこで、川島担当大臣にお伺いいたしたいのでございますが、オリンピックの場合は、通常一年半くらい前に招請状を出すと、このように承っております。したがって、その時期になるんでございますが、何カ国くらいに招請状を出すとお聞きになっておられますか、伺いたいのでございます。
  276. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) オリンピックの招待状は、政府ではございませんで、IOCの委任を受けました東京オリンピック組織委員会から発送されるのであります。大体六、七月ごろに出す予定だそうでございます。発送先は、IOCに加入している国全部でございます。
  277. 二宮文造

    二宮文造君 そうしますと、この前インドネシアがIOCから除名をされております。したがって、インドネシアは当然この関係からいうと加盟招請をされないわけになってくるのですが、この問題にからみまして、アラブ連合など数カ国では、その報復手段といいますか、まあ言葉が適切でないかもしれませんけれども、それならいっそインドネシアに同情的な態度で、東京大会と同じ時期に競技大会を開こうじゃないか、賛成しようというふうな話し合いが進んでいるかのように聞いておりますが、もしもそのようなことになりますと、われわれの言います善隣友好親善ということと非常に離れてき、オリンピック大会がぶざまなものになってくるのですが、との点については、大臣としていかがでございますか。
  278. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 初めてアジアで開きますオリンピック大会でございますから、アジア諸国が参加することを切望いたしております。しかし、参加させるか、しないかということは、IOCの決定に従うのでございまして、インドネシアに対しましては、IOCの指示を受けまして処置することに相なろうかと考えております。この問題につきましては、先般オリンピック組織委員会を開会いたしましていろいろ協議をいたしました。JOC――日本オリンピック委員会において善処するようにいたしております。まだ各地の報告がわかりませんが、それぞれ情報を集めまして、適当にJOCにおいて処置いたしますが、政府は、スポーツに干渉しない範囲内でできるだけこれに協力いたしたいと、かように考えております。
  279. 二宮文造

    二宮文造君 この際でございますので、ちょっと本題から離れますけれども、懸案の最高人事のほうも決定をいたしましたし、また開催ももうすでに一年有余と、このように迫って参ったのでございますが、施設の進捗状況などはいかがでございますか。
  280. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) オリンピック開催に直接関係がありまする競技場、選手村等は声々準備を進めておりまして、明年の大会までには十分間に合います。開運道路も、ただいま東京じゅう掘り返しておりますが、あれも開会までには間に合う予定でもってやっております。ただ、多少不足するのじゃないかというのは、ホテルの設備でございますが、これも業者諸君と協力いたしまして、なるべくよけい外客が来るような設備をいたしたいと考えておりまして、全体といたしまして、明年十月までには完全に準備が完了すると、かような確信を持ってやっております。
  281. 二宮文造

    二宮文造君 最後に、日韓の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  この問題につきましては、最近の国会審議を通じまして、請求権というもののあらゆる角度からの分析があります。だいぶ明らかになって参ったのでございますけれども、反面また、今度は韓国の政情の不安というものがかえって交渉の前途を暗くするようになって参ったと、このように感ずるのでございますけれども外務大臣の見方はいかがでございましょうか。
  282. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび申し上げておりまするように、相手国の政情なり政治形態、そういうことに一応関係なく、最大限度の誠意と尊敬の気持をもちまして外交交渉に当たるのがわれわれの姿勢でございます。現実の政情の問題は、けさほども御議論がありましたけれども、私ども、民政移管の過程におきまして起こるべき問題は起こっておるというように考えておるわけでございます。しかしながら、交渉は二国間の交渉でございまして、先方が先方の国民を納得させ、同時に私どもがこの交渉に臨む基本的方針と協調し得る建設的な御提案が望ましいわけでございまして、そういう現実的な交渉過程におきまして、現在活発に先方から積極的に提案があるかと申しますと、ただいま開いております予備交渉におきましても、私どもが期待しているような建設的提案は、今問題になっております懸案につきましてまだ出ていないわけでございます。私どもは、できるだけ早くそういった御提案が先方からあることを期待いたします。
  283. 二宮文造

    二宮文造君 総理がしばしば言っておられます善隣友好、こういう立場からこの問題を考えて参りましたときけ、あえて反対を唱えるようなものでもないのですが、私は、今までのやり方の中に、そうでない部面を非常に強く感ずるのです。といいますのは、善隣友好の話し合いを進めながら、一方では李ラインで漁船の拿捕、抑留をするということが非常に私は納得がいかないわけです。そこで、これもたびたび論議されたと思いますが、政府がとるべき態度として、この交渉が妥結するまではそのような措置はとらないというふうな確約をおとりになろうという気持が外務大臣におありになるかどうか、承っておきたいのでございます。
  284. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あらゆる交渉の部面におきまして、そういう交渉の途次におきまして不祥事件が起こることのないようにわれわれは要望いたしておるわけでございます。また、個々に問題が起きて参りますと、そのつど賠償権を留保するとともに、それ自体の解決を急いでおるわけでございます。問題は、先方のやりますことは不当であることはもとよりでございますけれども、それが終始繰り返されたこともまた事実でございまして、こういったもんちゃくはできるだけ早い機会に一掃してしまうという意味におきましても、正常化への話し合いというものにわれわれが一そう努力しなければならぬものと思います。
  285. 二宮文造

    二宮文造君 これと同じことですが、やはり日本の代表部の設置も、これも先ほどの拿捕の問題と同じように、問題が起こるたびに、請求を留保すると、このような言い方で今まできてこられました。また、代表部のほうも、相手が納得をしないので延び延びになっているというふうな説明でございますが、私も、これもまた日本側としては、今の漁船の措置と同じように、当然交渉の前提に強く主張していくべきものであると、このように申し上げておきたいわけでございます。  また、韓国の現状が早期妥結を求めている、これまた政府の答弁でございますけれども、最近、崔外相が、民政移管後になるかもしれない、このようなことを述ベております。また韓国民も、必ずしもこの早期妥結、あるいは現状の交渉というものに賛意をも表しておりません。こういうふうな状態から見まして、私は、交渉の妥結が非常におくれるのではないか、このように見通すわけでございますけれども、大臣のほうはいかがでございますか。
  286. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先方にもいろいろな意見があるようでございますけれども、私どもは、できるだけ早く建設的な話し合いをいたしまして、妥結に近寄りたいという念願に変わりはございません。
  287. 二宮文造

    二宮文造君 総理は、日韓交渉早期妥結が国民の熱望するところである、たびたびこのようにおっしゃっておられますが、冒頭にも私申し上げましたように、国民は最近になってこの請求権の問題ということにも大体明るくなってきたというふうに、何にも知らされてなかったということが実情ではないか、このように思います。また、昨年の参議院の選挙のときにでも、自民党は、この日韓交渉早期妥結の公約を掲げて選挙に臨んではいらっしゃらなかった、このように私は記憶しております。むしろ、政府の早期妥結のムードというものは、参議院選挙以後にできたと、このように私は了解しておりますが、総理は、何をもって国民の熱情と、求めるところである、このようにお考えになったか、承りたいと思います。
  288. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、昨年の参議院選挙に、至るところの演説で、早期妥結を叫んできたのであります。しこうしてまた、いろいろの方面での世論調査も私は見ておりまするが、多いときには、調査人員の五〇%をこえる場合もあります。大体四〇%前後から上が普通でございます。で、反対する人の数倍賛成者があるのであります。わからないというのは相当ありますけれども、反対者に対しましての五、六倍くらいの賛成でございます。私はこれをもちまして、国民大多数が日韓交渉早期妥結に賛成しておると考えております。
  289. 二宮文造

    二宮文造君 世論調査などで御承知になったというふうなお話でございますし、また、昨年の参議院選挙のときに至るところで、というふうにおっしゃっておられますが、自民党の公約の中に、あえて日韓早期妥結ということは出ていなかったと私は承知いたしております。したがって、総理の申されたことは、国内の一部の意見であると私は了解せざるを得ないのであります。また反面、国内には、これまた一部でございますけれども、日韓交渉打ち切りというふうな考え方もございます。したがって、その判断をいたします国民には、内容とか意義とかということのPRが徹底できておりません。このような中で、いたずらに論争を重ねていくということは、私は、政治の常道でない、日本の不幸だと、このように感ぜざるを得ないのであります。私がよく聞きます言葉は、為政者というものは、また政治に携わる者は、大地に耳を当てて大衆の声なき声を聞けと、このようなことをよく教えられております。  そこで私は交渉それ自体、これがまとまりましても、このような雰囲気の中でまとまっていったのでは、やりにくくて仕方がない。そのまとまったあとという問題から考えてみましても、この際むしろ解散をされて、そうしてこの問題をひっさげて国民の信を問うべきときではないかと、このように感ずるわけでございますけれども総理見解お尋ねいたしまして私の質問を終わりにいたしたいと思います。
  290. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日韓交渉早期妥結ということは、私は自民党の政策にはっきり載っていると記憶いたしております。しこうして、私は選挙のときに常にこれを言ってきております。そうしてまた、日韓交渉におきまする一般の世論は、先ほど申し上げたとおりでございます。請求権についていろいろの議論はございましょうが、日韓交渉早期妥結ということは、私は国民大多数の世論だと確信を持っておるのであります。しこうして、この問題につきまして解散をするというようなことは、私は考えておりません。もう参議院選挙のときもあれしておりますし、できれば私は、外交問題で解散ということは避けたいという気持を持っております。
  291. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 二宮委員質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明日午前十時から委員会を開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十七分散会    ――――・――――