○横川正市君 私は、日本社会党を代表して、
昭和三十七年度
予算補正二号の三案に反対の討論を申し上げたいと思います。
三十七年度の
補正は、前回の
補正を含めまして総額一千三百六十五億円で、当初
予算の五・六%を示している膨大な額になっておるのであります。しかして、これらが大
災害等のために
補正したのならばともかく、そうではなくして巨額の
補正をするということは、これは
予算の執行の建前からいって異常な形と言わなければなりません。
政府が当初
予算の歳入見積もりであやまちを犯した結果であります。膨大な自然増収を出したために、真に必要な
経費を
予算に組むというのではなくして、この金を使うために
補正をするというような、逆な、全く乱雑な
財政運営の傾向が見られるわけであります。すなわち、本
補正予算の歳出額八百二十一億のうち、義務的
経費の補てんに二百六億円を計上されていますが、細部にわたって検対すれば、義務的
経費といっても、当初
予算の編成がずさんであったために必要とされた
経費や、三十八年度に計上されるべき費用が含まれているということであります。残りの大半を占めるのは、産投会計繰り入れ三百五十億円と、
地方交付税交付金二百三十七億円でありますが、後者は歳入の増加を計上したはね返りですから、
補正の中心は産投の繰り入れにあることは明確であります。
財政法二十九条によりますと、
補正予算の提出は「
予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった場合」と明確にうたっております。私が指摘したいのは、本
補正予算は看板に偽りがあるわけであります。名は三十七年度の
補正予算でありますけれども、その実態は三十八年度
予算の前座を務めるものであります。すなわち、今回の
補正で繰り入れる三百五十億円を三十八年度に九十三億円支出する構想は、
大蔵省の三十八年度
予算原案にはなかったはずであります。ところが、三十八年度
予算編成の過程で圧力団体や与党政調部会の
予算ぶんどり合戦に追い込まれた
政府が、
財政投
融資を大幅に拡大し、そのために必要になった
融資財源の確保に三十七年度の歳入から九十三億円を回さなければつじつまが合わなくなったという経過は、すでに周知のとおりであります。
以上が本
補正予算編成の実際の姿であると思うのでありますが、かりに一歩を譲りまして、
政府の説明のごとくに、産投会計の原資不足であるとしても、これは
財政法二十九条の「
予算作成後に生じた事由」ではなくして、三十七年度本
予算編成の際確定していた事実であります。すなわち、その一は、産投会計原資が不足した
最大の原因は、何といってもガリオア・エロアの対日援助資金の返済であります。毎年百五十億を上回る返済を産投会計から行なえば、同会計の原資の不足が目に見えることはあたりまえであります。わが党がガリオア・エロアの返済協定審議の際に口をすっぱくして指摘した点でありまして、しかし当時
政府は見返り資金の運用益で支払いは十分だと主張いたしたではありませんか。返済開始半年を出ずして原資が不足した、こういう口実で
一般会計から巨額の繰り入れをはかっておるのが実態であります。これは結局、一般財源、すなわち税金をもってガリオア・エロアの返済をやっておるということにほかならないと思うのであります。
その二は、特定物資納付金処理特別会計からの繰り入れがなくなった点であります。この会計が三十七年六月四日に廃止されることは、三十七年度
予算編成の当時にすでに既定の方針としてきまっていたのであります。これはまたあらかじめわかっていたことであります。
また、その三として、産投会計が資金として持っていた原資がなくなった点であります。三十五年度に繰り入れた資金三百五十億円は、三十六年度に三百億円、三十七年度に百五十億円使われてゼロとなることは、これまた
予定されていたところであります。
以上、この原資不足の原因は、いずれも
予算編成前に当然予想せられたというよりも、
予定された既定の
政府方針として行なわるべきものであった、これはもうだれが
考えてもそう
考えるところだろうと思うのでありしまて、
財政法二十九条の要件に合致したものではないと思うのであります。四十回
国会において、
財政法二十九条を「特に緊要となった
経費」と改めた意味について、同条改正の
国会審議の際に、わが党の木村禧八郎
委員が「
補正予算を組む要件を緩和した印象を受けるがどうか」と質問したのに対して、
政府は、改正前の「必要避けることのできない」という意味と全く同一で、決して
補正予算の要件緩和ではないと答弁をいたしております。しかし、今回の
補正は、三十九年度以降に使う金を主たる内容とするもので、「特に緊要」でも、「必要避けることのできないもの」でもないことは明白であります。この具体的な事例に対して、どうお
考えでしょうか。これらの点がこの
委員会の席上で明らかにされなかったということは、きわめて遺憾だと私は思うのであります。法規の解釈として、例外規定はこれは厳格に解釈をするのが当然であると思います。二十九条がそもそも単一
予算主義の例外規定でありますから、その要件はできる限り厳格に規制すべきでありまして、
政府の、
財政法の改正を悪用して、あたかも自由に
補正が組めると解釈することは、問題であると思うのであります。これは、
財政を
政府の
考えだけでなく、民主的なルールに従って運営することを定めた
財政法の建前を無視したやり方であると言わなければなりません。かりに百歩を譲って、資金繰り入れが
財政法上認められているとしても、
財政政策の立場から、今回の
補正にその内容を計上すべきかどうかは、はなはだ疑問とするところであります。
理由は、今回の繰り入れによって三十七年度剰余金は激減いたしております。
政府提出の
資料により計算すれば、今回
補正後の剰余金はほぼ四百億円
程度と見込まれております。三十一年度、三十五年度の
補正予算で産投会計に繰り入れされたときには、剰余金はそのあとそれぞれ一千一億円、一千二百五十一億円と巨額となったのであります。その限りでは、後年度
予算編成を著しく困難ならしめることはなかったのであります。しかし、今回は、その点で全く要件を異にしており、
昭和三十九年度
予算は著しい編成難に陥るであろうことは、何人も否定し得ないところであります。
総理は、三十八年度は景気も回復するから、税収入もふえるから、三十九年度は減税をやり社会資本を拡充しても公債発行をやらずに済むようになるだろうと楽観論を述べておりますけれども、われわれは景気の前途についてはそう楽観的な
状態ではないと判断いたしているのであります。冷静に三十九年度の
予算を
考えると、普通財源による
予算編成はほとんど不可能であると思われます。このように後年度
予算を危殆ならしめるごとき今回の産投繰り入れは、
財政政策上失当であると
考えるべきであると思います。また、当初
予算を含めて五百八十億という巨額なものを本年度産投会計に繰り入れるのでありますが、はたしてそれだけの緊要性があるのかどうか。現在最優先的に
経費の必要を迫られておりますのは
雪害対策費であります。
一般会計の
予備費はわずかに二十億足らずであります。これこそ当初
予算の際
予定されていない
経費で、
財政法第二十九条にいう
予算編成後に生じた緊急を要するという要件に該当するものであります。
雪害は、衆参の本
会議の議決からも当然
補正予算を組むべき義務があったのであります。少なくとも、三十八年度に使わない産投会計資金への繰り入れば留保いたしまして、
雪害対策に充てると発表することは、これはもう
被害地にいる
住民の皆さんの現在の不安や苦悩というのを幾らかでも緩和することに役立つことであります。国の
政治の姿勢は、そういう方向で正しくとられるべきであると思うのであります。
政府が本
補正を何と説明いたしましても、これが三十八年度
予算の前座で、それと一体となって、特に
財政投
融資を通じて独占資本に奉仕をするものであることは明白であります。池田内閣の
政治の姿勢と性格が、この
補正(第2号)によって如実に示されたと言っても過言ではないと思うのであります。
豪雪被害地
住民の血の出るような叫びも、私どもはこれをしっかりと耳にいたしまして、全国民の切実なる願いに水をかけた行為と
考えるこの
予算に対しては、
政府に強く反省を求めるところであります。
わが党初め、多くの国民の正当なる主張を入れ、産投会計への繰り入れを減額をいたしまして、
雪害対策のために
予算を留保し、組みかえを提出すべきであることを強く要求いたしまして、反対討論を終わります。(拍手)