○奥むめお君 このたび
中小企業のために画期的な
基本法ができたことは同慶にたえません。国民各層の立場から見ましても、買うものの七割以上は
中小企業者に負うものでありますから、これら
中小企業が
社会的制約による不利が
是正されて、その自主的な
企業努力を活発にして、金詰まりが解消され、高能率の
技術者を雇うことができて、生産性及び取引条件を
向上することができますならば、国民全体のしあわせこれに過ぎないのでありますから、私は、本
法案がすみやかに公平に一切の
中小企業を潤おすように念願して、この
法案に
賛成するものであります。
しかし、若干の問題点をここで指摘しておきたいと思うのでございます。
第一章第三条「国の
施策」の項には、立案者として考えられる限りのものを網羅した感じである点にかえって不安を感じます。何らヴィジョンを与えません。三条に、「次に掲げる
事項につき、必要な
施策を総合的に講じなければならない。」として八項目ありますが、何もかもよいことずくめであるから、
中小企業者はだれよりも先に自分の
企業にこの恩典がほしいと願うに違いないと思います。ところが、わずかに八億五千万先ほど近藤委員も指摘されましたけれども、通産省の予算だけを見ましてもわずかに三%、この限りある予算、人員で、起こり得べき過当競争をどう処理するというのでしょうか。何としても公平にこれを生かして助けていかなければならぬ。政治ボスの介在、政治的ひもつき
企業の暗躍、それに各官庁間のなわ張り争いもからんで、さぞ入り乱れることでありましょう。これらをどう処置したらよろしいか。
次に、
中小企業の扱う品ほど大衆に身近いものはありません。その価格は大衆の生計費に直接響くことはなはだ大であるのですから、大衆の生活安定すなわち
中小企業者の安定だとも言うべきでありまして、この
法案が、消費者つまり大衆の購買者に向かった面を少しも持たなかった、これを考えなかったのは、重大なミスだったと言わねばなりません。中でも、明確な価格
政策を加えて、今後の
中小企業の行くべき方向づけをすべきでありました。価格
政策には、配分関係、原価計算、中間経費その他こまかい点まで分析して公表し、不当な価格や、暴利や、便乗値上げは、びしびし警告して、また厳罰をもって臨む姿勢が必要でございます。立案者は、既存の
法律で取り締まっていくなどと、なまぬるいことを言っていますが、非常の際の暴利取り締まり以外に何もしていないではありませんか。
中小企業基本法ができて、またまた物価値上がりムードを作るのであるまいかと大衆のおそれていることが、杞憂であってくれと願うのは、私ばかりではないと思うのであります。
実例で私の知っている限りでも、とうふ屋が、自己
資金で機械を買い入れて、短い時間でおいしい「とうふ」を作っていますが、一般の店では四百グラム二十円で売るのに反して、機械化とうふは三百グラム十円で売ってなお十分もうけが出る。しかし、組合の干渉がきびしくて、三年前にはなぐり込みを受けて血の雨を降らした事件がありました。クリーニング屋さんも、新式の機械を入れてから能率が上がるので安くしたところが、組合幹部がじゃまをしています。八幡市のことはテレビにも出ていましたが、もっと大がかりの機械を共同
資金で買い入れて、約半額でクリーニングを迅速に丁寧に安くしてくれると大好評を受けています。ここでは、婦人会員やたばこ屋など
市内八十カ所に注文品の集散所を置いて、
協力者には五分のマージンを分けております。しかし、全国のクリーニング組合はカンパをして人を出して、やめろ、やめないと、今大騒ぎをしているのですが、機械化による生産性の
向上によってコスト・ダウンしても、
企業努力をほめるのでなくて、組合できめた値段や料金を守れと強要するのが、組合ボスの多くの姿でございます。機械化とうふ屋が組合幹部との会見を申し込まれたときに、お客さんも一緒の席で会いたいと申したということですが、これだけの勇気と自信が一般にはないから、なすべき
企業努力を怠り、
合理化に踏み切れないのです。
中小企業とは、えてしてこういうものであることについても、この
法案の立案者が十分考える必要があると思うし、
中小企業のコンサルタントさえも、値上げさえすればいい気で、意欲を持たないのが困ると言っていられます。どんなにいい
法律でも、解釈や運用を誤ってはたいへんであることを私は強調したいと思います。たとえば、
中小企業団体組織法、小売
商業特別
措置法、環境衛生関係営業法、及びこれらがたびたび
改正されたいきさつを見ても明らかでありますように、過度競争
防止という名のもとに、結局、カルテル行為を
増大させるか、まじめに安く消費者に
サービスして自分の暮らしを立てていくのを誇りとしているアウトサイダーを規制することに、組合幹部が不当に働いた事実は幾らもあるのですから、この際十分にこれらを調査資料にまとめて、本法運用の参考にしてほしいと思うのであります。
次に、本法に盛られている業種は多種多様で、一口に
中小企業といいましても、鉱業あり、工業あり、
商業あり、大
企業に近いものもあり、いわゆる
中小企業もあり零細
企業もあり、また、高齢者や未亡人のしているささやかな業種があり、生活保護を受けるのを恥じて、働ける限りは自分で働きたいとがんばっている、なりわいとしての小売商もあるのですから、
対策は、産業別、業種別、
企業別、階層別に、きめのこまかいものが要求されます。ことに零細
企業や、なりわいとしての業を営んでいる着たちが、この際、整理、切り捨てられて廃業させられるのではないか、生きていく道を失うのではないかと、沈痛な表情でいますが、この不安を解消する道は、
社会政策また
社会保障の拡充を急ぐよりほかないのであります。第十九条で、「
中小企業者以外の者の
事業活動による
中小企業者の利益の不当な侵害を
防止し、」云々とありますのは、往年の反産運動を思わせる刺激を、立案者である
政府みずから取り上げたものと言わざるを得ません。生協、農協、漁協などは、営利を離れて自衛的に持つ消費者組織でありまして、これを敵に回すことではなく、むしろ適正価格の表示場としてこの消費者教育のモデルケースに学んで、互いに刺激し合って、
商業者も消費者とともに生活を
向上して正しく伸びていく道を講ずるように
指導すべきでございます。
人、だれか平和と文化的で福祉国家の実現を望まない者があるでしょうか。他人の福祉を侵害せず、私の福祉を高めて、
社会連帯的の福祉と人格の尊重などが、
中小企業面でも確かに実現されることを熱望するものであります。カン詰めの中に石を詰めて大もうけをした話は古い日本の語り草になっていましても、今、
合理化してコストが下がったから安く売ろうとしても、じゃまだてをして一律のやみ
協定価格で売らせるか、アウトサイダーとしての規制の手を差し伸ばしてくるのは、独占
禁止法があってもなきがごとくに扱う今日の日本の状態が第一の問題点でございます。国民の血税が
基本法によって各種の道を通してばらまかれるのですが、公の金と自分が汗して作った金と、この二つのものに対する心がまえに格段の差がある現在の世の中では、私は不安が大きいのであります。各般にわたって高度
資本主義からくる矛盾と困難を
経済的に調和させる権能を発揮するものでなかったならば、
経済法の本質を持つものとは言えないと思うのであります。
以上、私の
意見を申し述べまして、いろいろ注文をつけた
討論にしたいと思うのでございます。(
拍手)
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